勇者「仲間TUEEEEEEEEEEEEEE!!」 (1000)

ー 十五年前、とある村 ー


少女A「」エグッ、エグッ

少年B「とうとうお別れの日が来ちまったか……」ゴシゴシ

少女C「勇者! 向こうに行っても元気でやるのよ!」グスッ

少年D「僕たちの事、絶対忘れないでね!」グスッ

少女E「約束だからね! 十五年後の今日、またこの木の下に来て、それでみんなで魔王を倒しに行くんだから!」


子供勇者「わかってる! 俺、その時は絶対勇者になってるから! 絶対に! 絶対に!」ポロポロ

少女A「わたしは立派な……僧侶に……」グシュッ

少年B「俺は戦士だ!」グスッ

少女C「あたしは武闘家に!」エグッ

少年D「僕は魔法使いに……!」グスッ

少女E「私は商人に……!」グシュッ


全員「十五年後に、またこの木の下で!!」

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ー 十五年後、王宮 ー


国王「騎士隊長、いや、今や女神の加護を受けた勇者よ」

勇者「はっ」

国王「女神の神託通り、そなたを魔王討伐の旅へと出す事をここに宣言する」

勇者「ははっ。慎んでその任、お受け致します」

国王「思えば、そなたは一介の兵士から、最年少で騎士団の一員となり、そして更にまた最年少で騎士隊長へと就いた男」

国王「その素晴らしき剣と魔法の才能には驚いておったが、勇者となれば納得だ。そなたを失うのは魔王軍との戦いにおいて不安が残るが、しかし、勇者の旅立ちを妨げる様な事を余がする訳にはならぬ」

国王「こちらの事は気にせず、自由に旅するが良い。そなたが選び進む道こそが、それ即ち勇者の道だ」

国王「迷わず進め。そして、必ずや魔王を倒し、この世界を救うのだ」

国王「魔王を倒した暁には、我が娘である姫との婚姻をも認めよう。そなたの進む道に女神の加護があらん事を」

勇者「もったいないお言葉、ありがとうございます。不肖、この勇者、魔王討伐に全力を尽くす所存です!」

期待

ー 訓練所 ー


騎士団長「……そうか。遂に、勇者として旅立つのか」

勇者「はい。明日、出発します。それで最後の御挨拶に伺いました」

勇者「騎士団長様には、幼い頃から目をかけて頂き、言葉では表せない程感謝しております。長い間、本当にお世話になりました」ペコッ

騎士団長「よしてくれ。そんな堅苦しい挨拶は私は苦手だ」

騎士団長「それに、これで最後と言う訳でもあるまい。魔王を倒せば、君もここに戻ってくるのだろう? 私はその時をずっと待っているよ」ニコッ

勇者「……っ、ありがとうございます」グスッ

騎士団長「ふふっ。旅立ちの前に涙は縁起が良くない。これで拭きたまえ」スッ

勇者「はい……」ゴシゴシ

騎士団長「……もっとも、次に帰って来た時には、君は次期国王様という事になるのか。こうして気安く語り合える事もなくなるのだな。それだけが少し残念だ」

勇者「いえ、それは……ないです。俺が次期国王とか、想像もつかないですし。それに姫だって俺と結婚など……」

騎士団長「したくはないと?」

勇者「はい。姫はあれだけお美しい方ですから……」

騎士団長「君も、十分美男子だよ。自信と誇りを持ちたまえ」ニコッ

勇者「そんな……。やめて下さい」

騎士団長「やれやれ。これまで何人も女を泣かしている男の台詞ではないな。まったく、お前というやつは……」(軽く頭に手を置く)

勇者「団長……」

騎士団長「昔からずっと世話してるんだ。お前の考えてる事は何となくわかる。政略結婚だから嫌だと言うのだろう。姫が可哀想だと」

勇者「…………」

騎士団長「だが、私からすれば、貴族のボンクラ息子や、他所の国のバカ王子の元に嫁がされるよりは、お前の方が遥かに良いと思うぞ」

勇者「誰かに聞かれたら、不敬罪で捕まりますよ……」

騎士団長「まあ、それはいつも通り秘密だ。とにかく、今はあまり深く考えるなという事だ」

勇者「ですが、それは……」

騎士団長「魔王討伐の旅がどれだけかかるかは私にはわからない。だが、どれだけ少なく見積もっても一年か二年ぐらいはかかるだろう」

騎士団長「その間に、お前はお前で様々な体験をするはずだ。その体験が、きっと帰って来たお前に色々と教えてくれるだろう」

騎士団長「これからどうすればいいのか、何が正しい選択なのか、という事をな」

騎士団長「世界を見て、そして一回りも二回りも大きな男になって、無事にここに帰ってこい」

騎士団長「考えるのは、それからでも遅くはないぞ。未来の事に今思いを馳せるよりも、今やらなければならない事に対して精一杯努力しろ」

騎士団長「これが、私からの最後のアドバイスだ。頑張れよ」

勇者「……団長。……ありがとうございます!」

ー 酒場 ー


隊員A「それでは、隊長殿の栄誉ある旅立ちを祝って……」

隊員A「かんぱーい!!」

「かんぱーい!!」カチンッ、カチンッ


隊員B「いやー、しっかし、本当に隊長殿が勇者様とは!」グビッ

隊員C「子供の時から、散々聞かされてきた伝説! いつか女神様からの神託が降りて、魔王を倒す勇者様が現れるとは聞いておりましたが!」

隊員D「この国から勇者様が出るなら、多分、隊長か騎士団長様なんじゃないかって俺たち噂してたんすよ! でも、本当にそれが当たるとはなあ!」グビビッ

隊員E「…………」グビッ

隊員A「もう何回も言いましたが、おめでとうございます、隊長殿!」

勇者「ああ、ありがとう。俺も子供の時からの夢が叶って嬉しいよ」グビッ

隊員B「あ、あまり飲みすぎないで下さいよ、隊長。明日は旅立ちの日だってのに、二日酔いじゃ洒落にならないんで」

勇者「わかってる。この一杯だけにしとくから」

隊員E「」グビッ

ー 一時間後 ー


隊員A「それにしても、俺らが一緒に旅に行けないのが、本当に残念です」グビッ

隊員B「だよな。団長様も残念がってたからな」グビッ

勇者「仕方ないさ。最近は比較的平和とは言え、防衛を疎かにする訳にはいかない。首都のここから、兵士を割く余裕はないよ」

隊員C「だからといって、隊長殿お一人で旅に出るってのもきつい話だと思うんですけど」グビッ

隊員D「せめて、直属の俺らだけでもついて行きたかったですよ」

勇者「今はどこの都市も兵士数に余裕がないんだよ。人員補充して調整したとしても、旅立ちが三ヶ月近くは延びる事になるし」

隊員A「っても、一人はねーっすよ、一人は。中隊全部とは言わないですけど、小隊の一つぐらいお供につけてもいいと思うのに」グビッ

勇者「危険な旅だし、何よりその間、給料が出ないからな。希望を募っても、どうせ誰も立候補しないさ」

隊員B「見損なわないで下さいよ、隊長殿! 自分はそれでも立候補しましたとも!」グビッ

隊員C「そうっす! それに、上手く無事で帰ってくりゃ、英雄扱いでしょうし!」グビッ

勇者「酔いすぎだぞ、お前ら」ハハッ

隊員E「ちっ……」グビッ

勇者「……?」

隊員E「隊長さんよ……。いい加減、その白々しい嘘やめてくれませんか」グビッ

勇者「…………」

隊員A「ちょっ、隊員Eさん、また酔ってんすか。今日は絡むのはなしにしましょーよ」

隊員B「そうそう。今日は穏便にいきましょうって。壮行会ですし……」

隊員E「うっさい。あんな適当な事言われて黙ってられっかよ!」ダンッ

隊員C「落ち着いて下さいって。まあまあ」

隊員E「お前らだって嘘つかれてんだぞ!」

隊員D「嘘?」

隊員E「隊長さん、あんた、本当は陛下から兵士を一緒に連れていけって言われたのを断ったそうじゃないか」

隊員A「え!」

隊員B「隊長……!?」

隊員C「そうなんですか!?」

勇者「…………ああ」グビッ

隊員E「なのに、こいつらときたら簡単に騙されて。情けないったらありゃしねえ」ヒック

隊員A「隊長……どうして?」

隊員B「何で断ったんすか! 味方は多い方がいいのに!」

勇者「…………」

勇者「……理由は幾つかあったんだけどな」

勇者「一つは、武装した兵士を何百人も引き連れて行ったら旅に支障が出る」

勇者「行くのはこの国だけじゃないからな。兵士を引き連れて旅してたら国際問題になる。それに宿や食費がその分加算されるから、戦争と同じぐらいの負担がかかる。国としても養いきれない」

勇者「だから、三十名程の少数精鋭でって事を陛下は言われたんだが、それも断った」

勇者「本当に今は兵士の数に余裕がないからな。うちの国は貧しい国だ。軍隊も他国に比べて多いわけじゃない」

勇者「陛下は新たにその分、兵士を募って補充すると仰ってたが、そこから精鋭を何人も引き抜いたらその補充した新兵の訓練を誰がするかって話になる」

勇者「兵士が使い物になるまで最低でも二年はかかる。精鋭となると年数や人数の問題じゃなくなる。数は同じでも内部が弱体化したら、結局、同じ事だ。この国を危うくするような事は避けたかった」

勇者「それと、さっきも言ったけど、危険な上に給料も出ないんだ。一度旅に出たら、もうそれっきりなんだぞ。魔王を討伐するまで何年かかるかもわからないしな」

勇者「そんな危険で得にもならない目に、他の誰かを無理矢理遇わしたくはなかったんだよ。それなら、一人の方がよっぽど気が楽だし、旅しやすい」

勇者「そして、最後の理由。俺にはもう仲間がいる」

勇者「昔、約束した仲間がいるんだ。だから、他の仲間を連れてく訳にはいかない。それだけだよ」グビッ


隊員たち「…………」

隊員A「……でも、俺らだって同じ隊の仲間じゃないですか」

隊員B「いや……やめとけ。お前、この前、結婚したばかりだろ……? 隊長の気持ち、考えろよ」

隊員A「う……」

隊員C「俺も……子供いるな……」

隊員D「だけど、こうして騎士団でいる以上、死ぬ事も覚悟してるぞ……!」

隊員C「それは全員がそうだろ……。それもわかった上で、隊長は一人で行く事を選んだって話だ。……そういう事ですよね?」


勇者「……悪いな。だけど、俺だって本音を言えば少しは怖いし、こんな何年かかるかもわからないような旅をしたくないって気持ちもあるんだよ」

勇者「勇者として選ばれた以上、断れないし断ってはいけない種類の話だから、やらなきゃならないって義務感もあるしな」

勇者「だけど、魔王を倒して平和な世界にしたいって気持ちもあるんだ。俺しかやれないってんなら尚更そう思う」

勇者「だから、俺が自分から行くのはいいさ。自分のしたい事をやってるんだから」

勇者「でも、その為に無理矢理誰かを巻き込むってのは嫌なんだ。わかってくれ」


隊員A「…………」

隊員B「…………」

隊員C「…………」

隊員D「…………」

隊員E「…………」グビッ

隊員E「……精鋭を勝手に選ぶってんなら、家族持ちのやつらも中に入るかもしれないからな」グビッ

隊員E「志願者だけにするってんなら、数がどれだけ集まるかわからんし、何より腕のバラツキが出る」

隊員E「役立たずが志願してきたり、何も考えてないお調子者が来たら、今度はそいつらを守らなきゃならないから逆に迷惑だ」グビッ

隊員E「……なら、確かに一人の方がマシかもな。なにせ、あんたは剣も魔法も一流の腕前だ。あんたと近いレベルのが少ないぐらいにな」

隊員E「十歳上の俺をあっさり抜かして、一気に隊長になっただけはある。将来は騎士団長間違いなしとまで言われてたしな」グビッ

隊員E「誠にご立派だよ。生まれながらの天才と周りから言われて、人望も厚いしな」

隊員A「隊員Eさん……。そんな話しなくても」

隊員B「それに、実力は隊長のが遥かに上だってみんなわかってるじゃないですか……」

隊員E「ああ、そうだよ! わかってるよ、これは嫉妬だ! 当たり前だろ、悔しいじゃねーか! 誰よりも必死に努力してきたのに、結局は才能の差だってんのがな!」ダンッ

隊員B「隊員Eさん! やめましょう! 落ち着いて!」

隊員E「なのに、あんたは勇者に選ばれて! たった一人で旅に出るとか言って!」

隊員E「それで、空いた騎士隊長の座がどうなったかと言えば、俺にひょいと転がってきたんだ!」

隊員D「え」

隊員E「今日、団長から推薦を受けて内々で決まったって事を言われたよ! 俺は内心、嬉しいやら悔しいやら悲しいやら情けないやらで、ずっとずっと……」ポロポロ

勇者「隊員Eさん……」

隊員E「」ゴシゴシ

隊員E「あんたの事は前から認めてた。だけど、それを自分で認めたくなかった」グスッ

隊員E「なのに、あんたが旅に出るってなって、自分に騎士隊長の座が転がってきたら、もうそれだけであっさりとあんたの実力を心の底から認めてる自分がいたんだよ」グスッ

隊員E「だから、こんな器の小さい男がこれから隊長をやっていくのかと思うと、それがもう情けなくてみっともなくてな」ポロポロ

隊員E「いっそ、辞退しようかと何度も考えたんだが、それも出来やしねえ」ポロポロ

隊員E「あんたがいなくなって欲しいような、欲しくないような、自分でもよくわかんない状態なんだよ。だから……」ポロポロ


勇者「…………」

隊員E「俺は本当に情けない……」ポロポロ


隊員A「……もう完全に出来上がってますね」

隊員B「……普段は取っつきにくいけど、根はいい人なんですけどね。酒癖悪いところがたまに傷ですから」

隊員C「隊長殿、ここは俺たちでなだめとくんで」

隊員D「もう時間も遅いですし、これでお開きにしましょう。後は任せといて下さい」


勇者「いや、だが……」


隊員A「ああなってから長いの、隊長殿も知ってるじゃないですか」

隊員B「俺ら慣れてますし、任せといて下さいよ。伊達にこの人と五年も過ごしてないですよ」

隊員C「あと、隊員Eさんの言葉は隊長も気にしないで下さいね。どうしようもない愚痴なんですよ。本当なら隊員Eさんの年齢で騎士隊長になるのも十分早い方ですし」

隊員D「騎士団長と騎士隊長のは特別で例外なんです。それと比べちゃう隊員Eさんのが駄目なんですよ。あの人も本当はそれがわかってるはずなんです」

隊員A「だから、気にしないで下さい」


勇者「……そうは言ってもな。隊員Eさんには毎回助言やら補佐で助けられたし……。このまま俺だけ帰るのは……」

隊員A「まあ、気持ちはわかるんですけどね。俺らも正直言えば、最初はこんな若い隊長なんて、っていう抵抗ありましたし」

隊員B「でも、実力と指揮能力で毎回あれだけ差を見せつけられたらそんなの消し飛んでますよ」

隊員C「ずっと前に起きた魔物襲撃事件の時の事、覚えてますか? あの時、俺らは隊長の指揮下にいたからこうして無事に生きてるんですよ」

隊員D「別の隊は全滅したところもあるし、そうでなくてもかなりの殉職者を出したってのに……」

隊員A「隊長の率いていた隊だけが、生還率九割だったんです。一番長く戦場に留まって、一番最後に帰還したっていうのに」

隊員B「だから、死んでいったやつらの事を思うと、年下だってのに隊長の事は尊敬さえしてますよ」

隊員C「この人の下にいたら、俺らはずっと死なずに生き残れるんじゃないかって、そんな気になりました。それは隊員Eさんもきっと同じはずなんです」

隊員D「だから、隊長は気にせず胸を張って下さい。俺ら全員、感謝してるんですから。隊員Eさんも必ず感謝してます」

隊員A「ただ、最後に言わずにいられなかったんですよ、きっと。それだけです。明日になったら、全員何もなかった振りをして、それでおしまいにした方がいい話じゃないですか」

隊員B「隊員Eさんもそうして欲しいと思いますよ。だから……」


勇者「……わかった。ただ、この一言だけは伝えておいてくれ」

勇者「今までありがとうございます、って」


隊員C「わかりました……。必ず」ニコッ

勇者「君たちも、ありがとうな。いや、もう俺は隊長じゃないか……悪かった」

勇者「先輩方、ありがとうございます」


隊員A「やめて下さい。俺らの中じゃ、隊長はいつまで経っても最強で最高の隊長ですよ」

隊員B「隊長なら必ず魔王を倒してこの国に帰って来るって、俺たち信じてますからね」

隊員C「伝説の勇者様として帰って来る日をずっと待ってますから」

隊員D「明日はきっと、ろくに話せないと思うんで今言っておきます。絶対に生きて帰ってきて下さい、隊長」


勇者「……ああ、必ず生きて帰ってくるよ。約束する」


「今まで、ありがとうございました、隊長!!」


勇者「こちらこそ……。みんなと会えて本当に良かったよ」

かきため尽きたんで、また

乙乙
これは期待

こんなクッソ感動的な導入部なのにスレタイを見ると大体想像がつくから困る

だって15年の間に下手に怠けてたら仲間に合わせる顔ないやん?
……みんな真面目だなあ

勇者もある程度は強いみたいだからまぁ……

この勇者より仲間の方が強いのか…

胸糞の予感と聞いて

うんごめんでも言わせて
勇者なら納得(>>2)できるレベルなら仲間に追い越されてもしゃあないわ
だって普通に職業勇者って他の職業とどっこいっていうかむしろ器用貧乏のきらいがあるじゃない

分かりきってる事だから言わなくてもいいんやで?

>>24はチラシの裏にでも書いておけばいいんじゃね?マジ

>>24お前言っちゃいけないこと言ったな

ギャグだと思ったのに

ヤムチャだな

(ハルヒのキョンSSのタイトルに似てるなーとか思ったが黙っておこう)

俺TUEEEEって定型句があってだな?

勇者「仲間TUEEEE」なら普通だけどE多目にして!つけたから被って見えるってことでしょ?

いや流石にないわそれはww

ー 夜、自宅 ー


勇者「色々考えさせられたけど、壮行会、行って良かったな」

勇者「昼間に挨拶回りに行った人たちも、みんな別れを惜しんでくれて……。励ましてくれて……」

勇者「……嬉しかった」

勇者「…………」

勇者「でも……」

勇者「本当に明日、この町とはお別れなんだな」

勇者「寮から出て、自宅をこの前買ったばかりだってのに、もうここには帰ってこれなくなるのか……」

勇者「騎士団のみんな、それに近所の人、馴染みの店の人たち、神父さん……。その全員ともお別れだ……」

勇者「そして、団長とも……」

勇者「必ず、魔王を倒して生きて帰ってくる……。そういう約束をした。だけど逆に言えば、それまではずっと会えないって事だ……」

勇者「……流石に寂しいな」

ヒヒーン

勇者「あ」

勇者「いけない、相棒も腹が空いてるよな。すぐに用意しないと」

勇者「人参はと……」サッ

勇者「よし、今行くからな」タタッ

ー 厩舎 ー


馬「」カキ、カキ

勇者「よしよし、ちょっと待ってろ。飼い葉を餌箱に入れてと」ザッ、ザッ

勇者「あと、明日からたっぷり走る事になるからな。これもたっぷり持ってきたぞ。食ってくれ」っ人参

馬「」ヒヒーン

勇者「ああ、嬉しいか。ふふっ」

馬「」モグモグ

勇者「これからは辛く厳しい旅になると思うけど、頑張ってくれよ」

勇者「一緒に、生きて帰ろうな、相棒」ナデナデ

馬「」ヒヒーン

ー 家 ー


勇者「さてと、少し早いけど、明日の為にもう寝るか」

勇者「仕度も全部終わってるし、体調を万全にして出発しないと」

コンコン

勇者「……?」

勇者「誰だ……こんな時間に?」

勇者「」テクテク、ガチャッ


団長の娘(以下、幼馴染み)「あ……こんばんは」


勇者「幼馴染みか……。どうしたんだ?」

幼馴染み「今、ちょっといい……? 中、入っても大丈夫?」

勇者「いいよ。どうぞ。何か温かい飲み物でも出すよ。紅茶だけはまだ少しだけ残ってるから」

幼馴染み「うん……。ありがと」

勇者「」コポコポ

勇者「はい、どうぞ。残念な事に少ししかなかったけど」スッ

幼馴染み「うん……」ソッ

幼馴染み「」ゴクッ

幼馴染み「…………」

幼馴染み「……部屋、綺麗に片付いちゃってるんだね。物とかほとんど無くなってる……」

勇者「明日出発だからな。きっと当分は帰って来れないだろうし。物があっても埃をかぶるだけだよ」

勇者「その間、管理してもらうのも悪いし、結局売りに出したんだ。明日には、このベッドもそこのテーブルも食器棚もなくなってるよ」

勇者「その持ってるティーカップも。何もかも」

幼馴染み「そっか……。全部、売りに出しちゃったんだ……」

勇者「まだ一年ぐらいしか住んでなかったから、もったいないとは思ったけどな。でも、帰ってきて蜘蛛の巣だらけの家を見るのは嫌だったから」

幼馴染み「……そっか」

勇者「うん」

勇者「それで、どうしたんだ? 明日の式典の前に、もう一度会いに来てくれたのか?」

幼馴染み「そうじゃない……。ただ……」

勇者「うん」

幼馴染み「本当に行くんだなって……。それを確かめに来たの」

勇者「……うん。行くよ」

幼馴染み「だよね……。もう町中その話だらけだし、広場じゃ明日の為の式典の準備してるし……」

幼馴染み「私の家にも挨拶に来たし、お父さんからも帰ってきてから話をされたし……」

勇者「団長が……。何か言ってた?」

幼馴染み「……寂しくなるけど、明日は笑顔で見送ってやりなさいって。……そう言われた」

勇者「……うん。俺も明日は笑顔で見送って欲しいと思う」

幼馴染み「うん……。だけど……」

勇者「だけど?」

幼馴染み「……なんかね。今までずっと、実感わかなかったの」

勇者「何が?」

幼馴染み「勇者が魔王討伐の旅に出るっていう、その実感。頭では理解出来てるけど、どこか現実味がないっていうか……」

勇者「……うん。かもね。女神様から神託を受けたって話を初めて聞かされて、俺もしばらくはそんな感じだったから。ふわふわしてて、どこか他人事みたいな」

幼馴染み「そうなんだ……」

勇者「うん」

幼馴染み「だけど……。今日、このがらんどうな部屋を見て……それでやっと実感したんだ。本当にいなくなっちゃうんだなって……」

勇者「……うん」

幼馴染み「昔の事……覚えてる?」

勇者「覚えてるよ。毎日、幼馴染みに意地悪されてたっけ」

幼馴染み「……ごめん」

勇者「いいよ。今はもうそんな事ないし」

幼馴染み「あの頃は……お父さんやお母さんが取られちゃったみたいに思ってたから……」

勇者「いきなりやって来て、今日からこの子も一緒に住む事になった、家族だと思って仲良くしてくれ、なんて言われたらきっと俺もそう思っただろうね」

幼馴染み「……お墓参りはもう行ったの?」

勇者「こっちのお墓には。でも、中は空っぽだからね。向こうの村に戻ったら、きちんと墓参りするつもりだよ」

幼馴染み「そっか……」

勇者「うん」

幼馴染み「…………」

勇者「…………」


幼馴染み「ねえ、勇者……」

勇者「うん」

幼馴染み「……私。話、聞いちゃったんだ……」

勇者「何の?」

幼馴染み「…………」

勇者「…………」

幼馴染み「……私も」

勇者「うん」

幼馴染み「ついてく……」

勇者「……どこに?」

幼馴染み「旅に……」

勇者「…………」


幼馴染み「……私さ、魔法、使えるし」

勇者「うん」

幼馴染み「……学校の成績、魔法と数学が良かったの勇者も知ってるでしょ。学年で7位と4位だったんだよ」

勇者「うん」

幼馴染み「……料理も出来るし。洗濯も、掃除も、裁縫も。一通りの家事は全部出来るし」

勇者「うん」

幼馴染み「……体力も意外とあるんだよ。子供の頃みたいにすぐバテたりとかしないよ。体も丈夫な方だから、風邪とか滅多に引かないし」

勇者「うん」

幼馴染み「魔物だって怖くないよ。お父さんについていって、魔物と出くわした事が二回あったけど平気だった。普通に戦えるよ」

勇者「うん」

幼馴染み「……だから、私も一緒についてく」

勇者「……ごめん」

幼馴染み「…………」

勇者「……ごめん」

幼馴染み「……何で」

勇者「危険だから」

幼馴染み「危険だから、私がついて行くんだよ。一人より二人の方がいいじゃない」

勇者「……ごめん」

幼馴染み「……足手まといにならないから」

勇者「ごめん」

幼馴染み「……なら、どうすればいいの」

幼馴染み「……どうやったら、私、勇者と一緒にいられるの」

幼馴染み「……教えてよ」グスッ

勇者「待ってて」

幼馴染み「ぅ……」ポロポロ

勇者「帰るのを待ってて。幼馴染みやみんながいるから、俺はここに絶対に帰ろうって思えるんだ」

勇者「俺が魔王を倒すから、幼馴染みは帰ってきた俺を誉めてくれ」

勇者「だから、ここで待ってて」

幼馴染み「ぁぅ……」ポロポロ

幼馴染み「待ってたって……」エグッ

幼馴染み「意味……ない……!」エグッ

勇者「幼馴染み……」


幼馴染み「だって……私は……聞いたんだから……」エグッ

幼馴染み「帰ってきたら……お姫様と結婚するって……」エグッ

勇者「…………」


幼馴染み「なら……何で……私が……待つ意味……」グスッ、エグッ

幼馴染み「どうして……何で……どうして……。どうして……こうなるの……」ヒック、エグッ

幼馴染み「私は……勇者が……勇者の事が……。前からずっと……ずっと……」グシュッ、エグッ

勇者「…………」

勇者「……もう遅いし、送ってくよ」

幼馴染み「いや……やだ……」グスッ

幼馴染み「ねえ……何で……」グスッ

幼馴染み「何で……私は……ダメなの……。何で……」グシュッ

勇者「……幼馴染みの事は、妹みたいに思ってるんだ。ずっと一緒に過ごしてきたし、もう家族なんだよ」

幼馴染み「好きで……私……そうなった訳じゃない……」エグッ

幼馴染み「なら……幼馴染みなんか……嫌だ……。嫌だよ……なりたくなかった……」エグッ、ヒック

勇者「俺も好きで孤児になった訳じゃないよ」

幼馴染み「違う……。そんな……つもりじゃ……」エグッ

勇者「でも、団長と亡くなった父さんが親友で、俺を引き取って色々と面倒を見てくれた。そうでなかったら、俺はきっとどこかの教会に引き取られて、今頃、貴族や大金持ちの家で下働きをやっていたかもしれない」

勇者「俺にとっては、優しくしてくれた団長はもう一人の父さんだし、奥さんはもう一人の母さんなんだよ」

勇者「そして、幼馴染みは妹なんだ。それ以外にはもう見えないんだよ……ごめん」

幼馴染み「う……うぅ……」グシュッ

勇者「……送ってくよ。立てる?」

幼馴染み「ぅぅ……ぁぅ……」ガタッ

勇者「……ずっと大事に思ってるよ。幼馴染み」

幼馴染み「ぅん……ぅぅ……」エグッ

ー 翌朝、広場 ー


国王「それでは勇者よ、期待して待っておるぞ」

王妃「吉報を待っています。道中、困難や苦境もあるでしょうが、挫けず頑張りなさい」

勇者「ははっ! ありがたき御言葉、旅の励みに致します!」


ワーワー、キャーキャー、パチパチ!!(大歓声、大拍手)


王女「」ツイッ

王女「勇者よ」

勇者「はっ!」

王女「父上からお話は聞いています。その上で貴方にこう言いましょう」

王女「必ずや、生きて帰ってきなさい。私はいつまでもそれを待っています」

勇者「……姫」

王女「返事は、はい、しか私は受け取るつもりはありません。……どうかお気をつけて」

王女「そして、私をあまり待たせないようにして下さい。頼みましたよ」

王女「……姫のお気持ち、しかと承りました。最善を尽くします」

王女「ええ……」


ワーワー、キャーキャー、ピーピー、パチパチ!!(更に大きい大歓声、大拍手)


団長「……姫も心を決めたか」

幼馴染み「……ぅ」グスッ

大事なところで姫の一人芝居に……

これは幼馴染ワンチャンあるで

国王「では、女神より祝福を受けし勇者を総出で見送れ!」

国王「かの者の旅立ちに、幸運と幸福が舞い降りる様に!」


団長「楽隊、前に!」スサッ

楽隊「」ザッ、ザッ

楽隊「」パッパッパー、パッパパー

カラーン、コローン、カラーン、コローン


(盛大なファンファーレが鳴らされ、教会からは一斉に鐘の音が響く)


勇者「行くぞ、相棒」サッ

馬「」ヒヒーン


隊長A「開門! 開門せよ!」

隊長B「勇者様が旅立たれる! 門を開け!!」


ギギィーーー…… (ゆっくり門が開かれる)


団長「全隊! 旅立つ勇者様に向けて敬礼!」ビシッ

隊員全員「はっ!」ビシッ


団長「魔法弾、打上用意! 放て!」

ヒュー……ボンッ!! ボンッ!! ボンッ!! (花火)


市民A「勇者さまー、必ず世界に平和を!!」

市民B「この世界の事を、お願いします!!」

市民C「勇者様、お気をつけてー!!」

市民D「勇者様、バンザーイ!!」

市民E「勇者様、バンザァーーイ!!」


幼馴染み「勇者! 必ず帰ってきて!! 必ず!!」

隊員たち「隊長ー! 俺たち待ってます! この国を守りながら待ってますから!!」

隊員E「隊長! どうか御無事で!!」


『南の国、王宮日誌より一部抜粋』

かくして、勇者は王都より旅立てり。市民の惜しみ無い大歓声を背中に、漆黒の馬にまたがり颯爽と門を駆け抜け、外へと勇ましく進んでいった。

国王陛下はそれを無言で見送り、姫は名残を惜しむ様にその姿が見えなくなるまでいつまでもその場に立ち尽くされた。

男は口々に勇者の名を熱狂的に叫び、女はハンカチを振ってその門出を祝い見送る。

旅立っていくその勇姿は正に伝説の勇者に相応しきものなり……。

勇者「さあ、行くぞ、相棒!」パシッ

馬「」ヒヒーン


勇者「約束の期日まであと十日あまり」

勇者「お前の足なら、ゆっくり行ってもお釣りが来るぐらいだ」

勇者「途中の魔物に気を付けつつ、十五年前の約束を果たしに行こう!」

勇者「ひょっとしたら、約束を覚えているのは俺だけかもしれないが、それでも構わない!」

勇者「父さんと母さんに改めて挨拶をして、決意新たに魔王の城へと向かおう!」パシッ

馬「」ヒヒーン!!


パカラッ、パカラッ、パカラッ


勇者「いざ、魔王討伐の旅へ!!」

>>47の訂正
王女「……姫のお気持ち、しかと承りました。最善を尽くします」

勇者「……姫のお気持ち、しかと承りました。最善を尽くします」

ここまで。また

乙です

ここまで真面目にやってること自体が既にギャグになってる感すごい

乙!

スレタイ想像しながらだとねw


溜めるなあ

ー 同日。東の国、酒場 ー


マスター「さて、もう昼か……。そろそろ開店の準備をしとかないとな」

【酒場のマスター】
『体力 :24
 攻撃力: 7
 防御力:10
 魔力 : 2
 素早さ: 5』


ギィッ、チリンチリーン

マスター「っと。あー、駄目駄目。まだ、準備中だ。真っ昼間だぞ」

名剣士「そいつは悪かったな、マスター」

マスター「おお、なんだ、名剣士か。久しぶりじゃないか」

名剣士「忙しいなら出直すぜ」

マスター「ははっ。冗談はやめてくれ。あんたならいつでも営業中だよ。とにかく適当なとこにかけてくれ」

名剣士「そいつはどうもっと」スタッ

【名だたる剣士】
『体力 :9999
 攻撃力:7432
 防御力:8914
 魔力 :   0
 素早さ:3809』

マスター「で、何を飲む? この前、いいのが手に入ったんだ。西の国の252年もののワインだ。そいつにするか?」

名剣士「いや、普通にウイスキーにしてくれ。ロックで」

マスター「はいよ。つまみはどうする?」

名剣士「適当に。お任せする」

マスター「オーケー。少しだけ待っててくれ」カチャカチャ

マスター「とりあえず、これな。生憎、今はこの燻製肉ぐらいしかいいのがなくてね、我慢してくれよ」コトッ

名剣士「十分だよ」

マスター「それで、いつこっちに帰ってきたんだい?」

名剣士「東の国に着いたのは一週間ぐらい前だな。それまで、北の国にいた。援軍に行ってこいって言われてね。勅命だからってタダ働きさ」ゴクッ

マスター「ああ、その活躍は聞いてるよ。タダ働きってのは聞いてないけどね。何でも劣勢に陥ってた北の国軍を勝利に導いたそうじゃないか」

名剣士「親玉のガーゴイルを斬り飛ばしてやっただけさ。後は大した活躍はしてないぜ」

マスター「謙遜するねえ。あんたが通った後は魔物の死体で道が出来てるってぐらいの活躍だって聞いてるのに。わずか二日で、北の国軍がこれまで倒した魔物の数よりも多く葬ったらしいじゃないか」

名剣士「んなもん、いちいち数えてないっての。その話、尾ひれどころか、背びれまでついてるんじゃないのか?」

マスター「相変わらずだね。それで、ようやくこっちに帰ってこれたのかい?」

名剣士「ああ、事後処理だとか祝勝会だとかで引っ張り回されてね。その間に、引き抜きやら暗殺やらに何度遇った事か。面倒でかなわなかったよ」ゴクッ

マスター「それを面倒で済ますあんたの方がどうかしてるよ……。まあ、あんたの強さ考えたらそれも仕方ないだろうけど」

名剣士「いや、俺なんかまだまだだな。修行が足りないといつも思ってるぜ」

マスター「謙遜も度が過ぎると嫌味に聞こえるから気を付けた方がいいよ。今回の件で、あんた一人で兵士五千人分の価値があるって言われる様になってるんだからね。最早、伝説の領域だよ」

名剣士「伝説? 何だそれ?」

マスター「知らないのかい? こっちじゃもうすっかり逸話になってるよ。あんたと陛下のやり取りさ。吟遊詩人や講談家が何回もここでそれをやるもんだから、俺もすっかり覚えちまった」

名剣士「やり取り? どんなだよ?」

マスター「ゴホン。あー……あれはつい半年ほど前の事。この頃、北の国は魔王軍からの本格的な攻撃を受け、苦境に立たされていた」

マスター「そこで、我が東の国に援軍要請が入ってくる。だが、我が国はようやく革命が終わって新政権に変わったばかり。援軍を出すだけの財政的余裕がない」

マスター「しかし、北の国とは軍事同盟を結んでいる。何よりこれまで革命を裏から支援してもらい色々と援助を受けてたから、断る訳にはいかない」

マスター「そこで、陛下は名剣士を王宮へ呼び寄せた。そして、やって来た名剣士に向けて、さも当然の様にこう仰った」

マスター「兵士を五千人ほど出せば向こうも納得するだろう。だから、お前が一人で行け。そうすれば全部片付く」

マスター「そして、実際に向かった先で、兵士五千人どころか一万人以上の働きをしたのが名剣士。これにちなんでつけられた異名が『一振り五千斬りの名剣士』!」

マスター「構えは隙なく、攻めれば鬼神、守りに入ればこれ鉄壁、進んだ後に魔物なく、進む先には敵もなし。これぞ正に世界最強の剣士!」

マスター「ってな具合にね」

名剣士「……よくもまあ、そんなある事ない事を」

マスター「でも、実際、それだけの活躍をしてるんだろう? そりゃ言われるよ。巷じゃ史上最強の剣士って言われてるの、あんた知ってるかい?」

名剣士「初耳だね。それに、俺は史上最強でも何でもないよ。剣士としては世界で三番目ぐらいだとは自分でも思ってるけどな」ゴクッ

マスター「へえ、じゃあ一番と二番は誰なんだい?」

名剣士「二番は俺の師匠だよ。一番は俺の師匠の師匠だな」

マスター「ああ、なるほどね。そう来たか」

名剣士「なに勝手に納得した様な面してんだよ」

マスター「いや、別にね。それより、もう一杯飲むかい?」

名剣士「ああ、もらう。何せ今回はしみったれた旅立ったからな。金貨二十枚分ぐらいの働きはしたのに、報酬はなしだってんだから。傭兵稼業が身に付いてる身としてはきつかったわ」

マスター「宮仕えを断るからだよ。新政権が誕生した時、騎士団長のポストについてれば、給料に加えて特別手当ても出ただろうに」

名剣士「根っからそういうのが向いてないんでね。用意してくれた陛下には申し訳なかったけど、務まる気がしなかったからな。……まあ、そのせいで、今回タダ働きになったんだがな。断った借りを返すって意味で」

マスター「それはまた、ずいぶん重い借りになったもんだね。一国を救ったってんだから」ハハッ

名剣士「って事で、しばらく振りに本業に戻るからよ。最近は何か美味しい話はあるかい? 金になりそうな依頼とかさ」

マスター「生憎、金にならないのしかないね。金貨以下のものばかりだよ。もっとも、銀貨でも普通は十分高いんだけどね……」

名剣士「懸賞金がかかってる魔物とかもいないのか?」

マスター「それも、金貨以下」

名剣士「残念だな」

マスター「いっその事、魔王でも倒しに行ったらどうだい? あんたが討伐出来ない魔物なんている気がしないよ、俺は。魔王倒して、史上最強の英雄として歴史に名を刻めばいいと思うんだがね」

名剣士「いや。流石に魔王は無理だな。あれは俺が倒せる代物じゃない」

マスター「それも謙遜かい? それとも本気で?」

名剣士「本気で、だよ。これはマスターだから言うけど、俺は前に魔王城があるって噂の妖魔の森に行った事があるんだよ」

マスター「……そもそも妖魔の森なんて本当に存在してたのかい。てっきり、伝説の中だけの空想話だと思ってたんだけど」

名剣士「実際にあるよ。北の国の更に北。地上の彼方。最果ての地だ。そこにいるのは全部神話クラスや伝説級の魔物だけっていうイカれた森さ」

マスター「……本当なのかい、それ。冗談とかじゃなく」

名剣士「ああ、もう何年も前に実際に行ってきて、体験したからな。しばらく進んだところでいきなり巨大な魔物に出くわして、何をされたかもわからず気が付いたら吹き飛ばされて瀕死状態だった」

名剣士「あの時は命からがら逃げてきたよ。敵に背中を向けたのはあれが初めての事だった」

マスター「……あんたが、そんな目に……?」ブルッ

マスター「あ、いや。だけどさ……」

名剣士「ん? どうした?」

マスター「一応、先に言っとくけど、あんたの話を疑う訳じゃないんだ。ただ、ふと疑問に思った事があってね」

名剣士「そんなん気にしないでくれ。で、何だい?」

マスター「いやね。そんな伝説級の魔物がウジャウジャいるってのに、どうして魔王はそいつらを使ってこっちに攻めてこないのかなって……」

名剣士「何だ、そんな事か。そりゃ、単純な理由だよ」

マスター「どんな?」

名剣士「あの森には、竜がいるんだよ」

マスター「竜……!」

名剣士「そ。最強無比の孤立種族と言われる竜たちがワンサカいて、そいつらが魔王軍とドンパチやってんだ。魔王からしたら、こっちに割く戦力なんてほとんどないんだろな」

マスター「…………」

名剣士「聞いた話だが、あの森は、元々竜たちの住み処だったそうだ。魔王の目的は多分世界征服だから、きっと最初に竜にケンカ吹っ掛けたんだろう」

名剣士「で、本格的な大戦に突入。ただ、竜ってのは当たり前だが強さがどれも半端ないから、雑魚をどれだけ投入しても蹴散らされて一瞬で終わりだ」

名剣士「だから、戦力にならない余った奴等をついでの様に人間の方に向けたんじゃないのか? つまり、魔王からしたら、人間なんて初めから眼中にないんだよ。猛獣と戦ってる時、足元にネズミがいたようなもんだ」

名剣士「魔王がその気になりゃ、多分、一日で人間は根絶やしに出来るだろうな。俺たちなんて、そんな程度なんだよ」

マスター「…………」ツルッ、ガシャン

名剣士「おいおい、マスター。落ち着きなよ。震えんなって」

マスター「あ、ああ、悪い……。あまりに強烈というか……すさまじい話を聞いてしまったもんだから……」

名剣士「ま、そういう事だよ。こっちにいる魔物なんて戦力外通告受けた雑魚ばっかなんだ。もっとも、その雑魚に俺たちは世界の三分の一を征服されて大苦戦してる訳なんだけどな」

マスター「…………」

マスター「……じゃあ、もしも竜たちが魔王軍に負ける事になったら、俺たちはもう一貫の終わりって事……なのかい?」

名剣士「普通に考えたらな」

マスター「……まだ何かあるのかい? いや、希望はあった方がいいんだが」

名剣士「ま、安心しなって、マスター。例え竜が全滅しても、俺たちは平気だよ」

マスター「どうしてそう断言出来る?」

名剣士「おいおい、マスターだって知ってるだろ? こっちには魔王を倒す伝説の勇者がいるじゃないか。俺ごときじゃ到底無理だが、勇者なら必ずこの世界を救ってくれるさ」

マスター「……」ハァ

名剣士「ん?」

マスター「よしてくれ……。ありゃ、単なる伝説だろ? お伽噺みたいなもんじゃないか。まさか、あんたがそれを本気で信じてるとは思わなかったよ」

名剣士「そっちこそ冗談きついぜ、マスター。伝説だって? そんな訳ないだろ。本当に勇者はいるさ。間違いなくその内名乗りを上げて、この世界を救ってくれるからよ」

マスター「……そうかい。まあ、期待しないで期待しておくよ」

名剣士「どっちなんだよ」ケラケラ

マスター「……さてね。どっちだろうね」ハァ

マスター「ああ、そういえば……。さっきの話で思い出したけど……」

名剣士「ん?」

マスター「この前、南の国に女神の神託を受けた勇者が出たらしいよ。そんな情報がこの前入ってきた」

名剣士「お、おい! それ、本当か?」ガタッ

マスター「え? あ、ああ……。何人もの情報屋が同じ事を言ってたし、南の国の国王も公式に発表してるよ。間違いないだろうね」

名剣士「それ、南の国で間違いないんだな? 勇者の年齢は? 生い立ちは? 名前は? 詳しく教えてくれ」

マスター「ああ、えっと……。名前は……何だったかな、ド忘れしちまった。確か年齢は26歳で……。元は騎士隊長を務めてた人間だ。もちろんあんたほどじゃないだろうが、剣と魔法の才能は天才的だという評判だよ」

マスター「ただねえ、肝心の女神の神託ってのが眉唾ものなんだ。それと言うのも、教会側が沈黙を保ったままなんだよ。勇者が選ばれたっていう公式発表を一切してない」

マスター「だから、これは南の国側が教会に無断で行った、政略としての単なるでっち上げだって言われてる。ただの宣伝工作か、もしくは潜入任務か何かだってのが一般的な見解らしくて」

名剣士「そんな事はどうだっていい! それより、肝心の名前は? 思い出してくれ」

マスター「ああ、名前ね。ちょっと待ってくれ、確かこの紙に」パラパラ……

マスター「あった。名前は『勇者』だよ。生い立ちは南の国の外れにある、山奥のへんぴな村だな」

名剣士「……間違いない」

マスター「……ん? なんだい、知ってる相手なのかい?」

名剣士「悪いがマスター、急用が出来た。これで失礼するぜ」サッ、タタッ

マスター「あ! ちょっと!」

名剣士「代金は、次来た時に払う! 悪い!」ガタッ

チリンチリーン……


マスター「いや、代金はいらないんだけどさ……。もう十分もらってる様なもんだし」

マスター「『名剣士、馴染みの酒場』ってだけで、ずっと大繁盛だもんな……」

マスター「そうじゃなくて、旅の話とか色々聞きたかったんだが……」

マスター「しかし、伝説の勇者ねえ……。あの名剣士がそこまで気にかけるなんて……」

マスター「まさか、本物……? いや、それこそまさかだろうけど……」

とりあえず、ここまで

【名だたる剣士】
『体力 :9999
 攻撃翌力:7432
 防御力:8914
 魔翌力 :   0
 素早さ:3809』

ツエエエエエエエエエエエエ‼


魔王と魔物TUEEEE!
仲間でもきついとか勇者ワンパンされるんじゃないか…

予想以上にTUEEEEEEEEEEE

しかしカンストしてるのに苦戦する相手は数値で表せないレベルになるんじゃなかろうか

いつから9999がカンストだと錯覚していた…?

苦戦したのはもう何年も前の話だぞ

乙です
勇者のステータスはどうなってるんだろ

このレベルが4人いれば勇者とかいりませんわそりゃ

ドラクエステ勇者にFFステ仲間みたいになったら怖い

名剣士が少年Bなんだろうか

ー 中央国、とある町 ー


コンコン、ダンダン!!

騎兵A「旅の者だ! 開門せよ!」

騎兵B「…………」
騎兵C「…………」
騎兵D「…………」

大司教「…………」


見張りの兵士「んー……何だ?」ヒョイッ (城壁から顔を覗かせる)

兵士「……!? あいつら、鎧に十字マーク!?」

兵士「まさか、神殿騎士団!」


騎兵A「そうだ! 我らは教会本部より遣わされた神殿騎士団である! こちらの大司教様の、旅の護衛としてこの地までやって来た!」

騎兵A「わかったのなら、即座に開門せよ! 通行手形ならここにある!」サッ


兵士「は、ははーっ! すぐにお開け致します! しばしお待ちを!!」

兵士「伝達だー!! 開門、開門ー!」

兵士「大司教様と神殿騎士団様がお入りになる! 周囲に魔物なし! 急げー!!」


「了解ー!! 急げー! 大司教様と神殿騎士団様がおみえになられるぞー!!」


ギギギギギッ…… (門が開く)


騎兵A「うむ」

騎兵B「大司教様、門が開きました。馬をお進め下さい」

大司教「ああ」カッポ、カッポ

騎兵C「では、我らはこの後、情報収集に回りますので」

騎兵D「大司教様は一足先に教会へとお向かい下さい。念の為に騎兵Aは護衛として残しておきます」

大司教「わかった。あの方が見つかったら不用意に接触せず、まず私のところに知らせてくれ。それと……」カッポ、カッポ

騎兵B「はっ」

大司教「調べる際は、その鎧は脱いでおくように。教会本部の人間だとわかると、あの方が逃げてしまうからな」カッポ、カッポ

騎兵C「御意」

ー 広場 ー


ワイワイ、ガヤガヤ、ワイワイ、ガヤガヤ


老婆「ああ、ありがとうございます。ありがとうございます」ペコペコ

女「いえ、お気になさらないで下さい」ニコッ

女「では、次の方、どうぞ」

大工「すみません、お願いします。先日、屋根から落ちて足と腰をやっちまいまして……。この通り、足は折れちまってますが……」ヒョコ、ヒョコ

女「大丈夫ですよ。少しだけじっとしていて下さい」

女「治癒の光よ、この者に女神の庇護を……」パァァッ……

大工「おおっ……」

女「はい、もう治っているはずです。次からはお気を付けてお仕事して下さいね」

大工「え、もうですか? じゃ、じゃあ」ソッ

大工「お、おお! 凄い! まるで痛くない! 治っている!!」

女「」ニコッ

大工「ありがとうございます! ありがとうございます! 天使様!」ペコペコ

女「お気になさらず。それと、その呼び方はやめて下さい。私はそんなたいそうな人間ではありませんので」

女「それでは、次の方どうぞ」

病人「は、はい。お願いします。原因はわかりませんが、かなり前から咳が止まらなくて……」ゲホゲホ





騎兵B「流石、『紅の天使』様だな。有名なだけある。居場所はすぐにわかったな」ボソッ

騎兵C「ああ。お前はここに残って、もしもあの方が移動したら尾行を頼む。俺は大司教様のところに行って指示を頂いてくるから」

騎兵B「了解した」

ー 夜、みすぼらしい宿屋 ー


主人「……本当によろしいのですか、天使様? 天使様ならこの様な貧しい宿屋でなくとも、いくらでも無料でお泊めする宿がありますでしょうに……」

女「お気遣いなく。それと、天使様はやめて下さい。その様な大それた者ではありませんので」

主人「も、申し訳ありません」

女「いえ、謝る様な事ではありませんから」

主人「それと、天使……いえ、女様。今日、治して頂いた者たちから、お礼にとこちらを預かっています」スッ

主人「全部で銅貨が678枚ありました。既に換金して銀貨3枚と銅貨78枚にしてあります。みな、口を揃えて少なくて申し訳ないと言っておりましたが、旅の路銀の足しにして下さいと……。どうかお受け取り下さい」

女「では、銅貨だけありがたく頂いておきます。銀貨の方は、この町の城壁の補修費用に加えておいて下さい」

主人「それは……。ですが」

女「構いません。城壁は町の防御の要ですので。魔物に壊されないよう、どうか補修費用に当てて下さい」

主人「本当に……よろしいのですか?」

女「はい。よろしくお願いします」

主人「ありがとうございます。無料で皆を治療して頂くだけでなく、この町の事まで心配してくださるなんて……」グスッ

女「女神様は、持つ者に厳しく、持たざる者に優しいお方です。私は人を治す力を既に頂いていますので、これ以上は何も望みません。それだけで十分幸せです」

主人「本当にあなた様は、地上に舞い降りた天使です。どうか女様に女神様の愛と祝福が与えられますように……」グスッ

女「ありがとうございます」ニコッ

ー 深夜 ー


コンコン

女「……?」

女「どちら様ですか?」

「この町の神父です。夜分遅く申し訳ありません」

女「いえ。それでどうされました? 誰か急患でも出ましたか?」

「そうではありません、御安心を。ただ、女様に少しお話がありまして……。中に入れてもらってもよろしいですか?」

女「ええ、構いません。今、開けますので」タタッ、ガチャッ


神父「すみません……女様……」

騎士A「」サッ (ドアを手で押さえて固定)

女「!?」


騎士B「」ササッ
騎士C「」サッ (整列)

騎士D「どうぞ」

大司教「御苦労」スッ


女「……その服装、教会本部の! そして、神殿騎士団まで……!」

神父「……申し訳ありません、女様。この様なだましうちの様な事をしてしまって……」

【神父】
『体力 :17
 攻撃力: 2
 防御力:11
 魔力 :10
 素早さ: 6』


大司教「人聞きが悪い事を言うものではない。全ては教会本部の意向だ。君はそれに従っただけだよ」

神父「…………」

大司教「では、改めて私の自己紹介を……。初めまして、『紅の天使』様。私は大聖堂から遣わされた者で、大司教と申します。以後、お見知り置きを……」

【大司教】
『体力 :31
 攻撃力: 8
 防御力:44
 魔力 :40
 素早さ:19』


大司教「そして、この者たちは、護衛の神殿騎士団たちです。全員、精鋭揃いですよ。逃げようなどとは考えない事をお勧めします」

騎士A「…………」ペコッ
騎士B「…………」ペコッ
騎士C「…………」ペコッ
騎士D「…………」ペコッ

【神殿騎士団精鋭】(四人の平均値)
『体力 :94
 攻撃力:35
 防御力:42
 魔力 :19
 素早さ:26』



女「…………」

【教会を破門された女】
『体力 :6254
 攻撃力:   1
 防御力:9999
 魔力 :8870
 素早さ:4209』

こんなん敵うわけないですやん

女「それで……どんな用件でしょうか?」

大司教「ええ、ですがその前に……」

大司教「神父、あなたはもうこの場には必要ありません。教会の機密事項に関わる話になるので、退出しなさい」

騎士A「」チラッ
騎士B「」コクッ

騎士C「すぐにこの部屋から出ていくように」ズイッ

騎士D「なお、今回の件は口外禁止とする。いいな?」ズイッ

神父「……は、はい。それでは……失礼します。申し訳ありません……」スゴスゴ……


ガチャ、バタンッ……

女「……少しも変わってないみたいですね。教会の内部は」

大司教「秩序の為にですから」

騎士A「…………」
騎士B「…………」
騎士C「…………」
騎士D「…………」

女「それで、用件は何ですか?」

大司教「貴女を、再び教会へお連れする事です」

女「私は教会から破門を受け、全ての教会から出入り禁止となった身のはずですが」

大司教「その破門は取り消しになりました。最高会議で先日決まった事です。教皇もそれを御承認されました」

女「…………」

大司教「また、これまでの勝手な振る舞いや、度重なる規則違反、命令違反も全て不問に処すとの事です。……もちろん、貴女が教会本部へと戻ってきたらの話ですが」

女「…………」

大司教「その若さで、以前は枢機卿にまで上られた貴女です。今回も、戻ってきて頂いたらそのまま枢機卿へ復帰させるとまで教皇は仰られています」

大司教「破格の条件だと思いますが……」

女「いいえ、お断りします。私は教会とは縁を切った身なので」

大司教「……そうですか。困りましたね……」ハァ

大司教「ちなみに、理由を聞かせてもらってもよろしいですか?」

女「簡単な事です。私は教会の闇を知りすぎてしまいましたから。もうあそこに戻る気はありません」

大司教「闇と言うのは?」

女「色々と、です。例えば、治療の有料制とか」

女「回復魔法を使えるのは、女神様の祝福を受けた僧侶のみです。だけど、それを使うのに対して料金表を作り、その規定の金額以下で怪我や病気を治療する事を禁止するというのは私には納得出来ません」

女「難病や重傷ほど治療費は高くなります。貧しい人にとっては払えない金額です。そして、そういう人達を安い金額で治療したら、罰則が下されます。こんなの間違っています!」

大司教「なるほど……」

大司教「ですが、特例として生死に関わる様な怪我や病気の場合は無料で治療する事が許可されているじゃありませんか」

大司教「それに、打ち身や風邪などの軽いものであれば、教会は寄付や謝礼を頂いてませんよ。だからこそ、こうして厚い信頼を得ているのです」

女「それはただの人気取りに過ぎません。それに、瀕死状態を救えるほどの高位な回復魔法が使える人間は限られています。さほど多くありません」

女「何より、女神様は貧富の差によって救う者を決める様な真似は許さないはずです!」

女「そして、その得た高額な治療費が何に使われているかと言えば、護衛と称した実質軍隊である神殿騎士団の育成や、司祭司教の贅沢に使われてるんです」

女「私は治療費を取るなとは言いません。教会という巨大な組織を維持してく以上、寄付だけではまかなえない面もあるでしょうから」

女「ですけど、それを規則として定めたり、庶民には払えないほどの高額にしたり、破ったら罰則を加えたりというのは、どう考えても間違ってます!」

女「本来なら、教会は善意のみによって運営されるべきなんです。私はそうならない限り、教会に従う気も、戻る気もありません」

女「教皇に……いえ、あのただの強欲頑固ジジイにそう伝えて下さい。私は貴方を聖職者として認めないと」


大司教「……ふふっ。これはまた過激な」

騎士A「…………」チャキッ (剣に手をかける)
騎士B「…………」チャキッ
騎士C「…………」チャキッ
騎士D「…………」チャキッ

騎士A「大司教様。今の発言は看過出来ません。多少、躾を入れさせてもらってもよろしいですか?」スッ

大司教「いや、やめときたまえ。手荒な真似はするなと上からきつく言われている」

騎士B「しかし……教皇様をあのように侮辱するとは……」

大司教「元より、そういう方なのだよ。でなければ彼女を破門する訳がない」

大司教「そうでしょう? 教会の重鎮職に抜擢されながら、教皇に再三に渡って意見し、遂には反省の為に地下牢にまで入れられた方ですからね」

女「大聖堂に牢屋があるという事実が既に間違っているとは思われないのですか?」

大司教「本来は、封印しなければならなかった魔物の為の牢ですよ。少しもおかしくはありませんがね」

女「詭弁を」

大司教「事実ですよ。大聖堂の地下には何体もそういった魔物が封印されてますしね。強すぎて殺す事も出来なかった凶悪な魔物の封印場所です」

女「いざという時には、その魔物さえ利用しようと考えているではないですか。あそこは封印場所ではなく、兵器の保管庫の様なものです」

大司教「まさか。その様な危険な事など考えていませんよ」

女「口では何とでも言えます。そして、教会の実体は、口先だけ綺麗な、国土を持たない軍事政権でしょうに」

大司教「世迷い言を。御勘弁して頂きたい。その様なデマを口にされては教会の名に傷がつきます」

女「名ばかり綺麗で、何の意味があるというのです」

大司教「ふっ……。どうにも困ったお方だ。予め聞いていた通りのお方ですね」

女「…………」

大司教「一体、誰に手引きされたか知りませんが、地下牢から脱走し……」

大司教「そして逃亡の為に各国を渡り歩きながら、教会の規則に背いて無料で治療をして回り……」

大司教「贅沢もせず、見返りも求めず、どんな難病奇病大怪我でもたちどころに治してしまう」

大司教「その噂がこの四年の間に世界中に広まり、遂にはついた二つ名が『紅の天使』」

大司教「僧侶着用の白のローブをまとわず、常に赤いローブをまとっていた事から、その様な名がつき、今や天使の化身扱いです」

大司教「あなたの名声は古今東西ありとあらゆる英雄をしのぎ、市民からの人気はどんな名君でも霞むほど。教会の神父達も揃って貴女を匿い庇いだてする始末」

大司教「こうなってしまっては、教会としては、破門にした事自体が既に不名誉扱いなんですよ。まったく、厄介な事をして頂きました。有名になりすぎているので、今や公に連行も裁判も出来ませんからな。そんな事をしてはこちらが非難される」

大司教「我々としては、教義に違反している者を、正当に処罰しようとしているだけなのにね」

女「…………」

大司教「なので、教会としては取るべき道を変えざるを得なかったんですよ」

大司教「ですので、私がこうして派遣されたのです。今、教会では更なる問題を抱えていて困っていますからね」

女「問題?」

大司教「ええ。勇者が現れたのですよ。南の国にね」

女「!?」

女「勇者が……! 南の国に……!」

大司教「そうです。教会はまだそれを公に認めていませんがね」

女「どうして! 神託は下されたのでしょう! それなら、全世界に発表して、人々に希望を与えるべきです!」

大司教「それがそうもいかないんですよ。裏話をするなら、勇者は、女神の加護を受けし神殿騎士団から出てもらわなければ教会としては面子がありませんからね」

大司教「ところが実際には、何の関係もない、更には教会に対して非協力的な態度を取っている南の国から選ばれてしまった」

大司教「これを認めれば、教会は面子を潰し威厳を無くします。だから、正式にはまだ認めていません。しかし、その神託が本物なのもまた確か」

大司教「なので、この状態で、もしも勇者が魔王を倒してしまったら、更にまずい事態に陥る。勇者でないものが魔王を倒してしまったら、これまでそう教えを説いていた教会に対しての信頼は地に落ちてしまいますからね」

大司教「なので、いつかは教会側としても公表しなければならないでしょう。あるいはこういう手も取れますがね……」

大司教「そうなる前に、勇者には死んでもらう、という手が」

女「!?」

大司教「と言っても、もちろん暗殺などというリスクの高い事を教会はしませんよ」

大司教「そんな事をしなくても、教会は全世界、どの町にもある。また市民からの信用と信頼は国王よりも勝っています。何せ教会の言葉は女神の言葉と同義ですからね」

大司教「なら、こう発表してやれば良い。先日、女神の神託を受けた勇者とやらは、真っ赤な偽物であり、神の名を勝手に騙った最低な不届き者である、と」

大司教「そうすれば、瞬く間に世界を救う勇者は一転して、各町や村で迫害や弾圧を受ける事になるでしょう。宿にも泊まれず、買い物も出来ず、そもそも町や村に入れてもらえるかどうか」

大司教「武力で勇者を殺すなど愚か者のする事です。そんな事をせずとも、野垂れ死にさせれば良い」

女「あなた方は……! 私利私欲の為に、女神の名を汚し、あまつさえ世界を救おうという勇者様の妨害までしようと言うのですか! どちらが人間の敵なのです!」

大司教「勇者など、死んでもいずれまた現れるでしょう。問題ありません。それに女神というのは、人が作り出した幻想に過ぎませんよ。世界一つ救えない神など、私は神と認めていません」

女「っ! 大司教の身でありながら……! あなたはどこまで女神様を侮辱すれば気が済むのです!」

大司教「私は私の考えを述べたまでです。それに、大司教などと言うのは役職を示す記号でしかありませんが」

女「傲慢な! 聖職の風上にも置けない男!」

大司教「別にあなたからの評価など、私はどうでも良いのです。それよりも、これを聞いてあなたはどうされますか?」

大司教「聞き及んでおりますよ。あなたは勇者の出現を教会にいる頃からずっと気にかけておられたと」

大司教「そして、勇者を深く尊敬し、女神同様とても大切に考えていると」

女「当然です! 勇者様は特別ですから! 必ずやこの世界を救って下さる方なんですから!」

大司教「ところが、現在の状況では恐らくそれは無理だというのが、流石に貴女でもわかって頂けたはずです。勇者だろうと何だろうと、人の子である以上、俗世の風聞や迫害からは逃れられませんからね」

女「……っ」

大司教「しかし、出来れば教会側としてはその様な不穏な真似はしたくない……。これはご理解頂けますよね?」

女「……結局、何が言いたいんですか?」

大司教「要は、最近、教会にとって不都合な事が起こり過ぎているのですよ。名誉を別のところに持っていかれるばかり。ならば、こちらも面子を保つ為に、何かしら都合の良い事が起きて欲しいと願っているのです」

女「つまり……私が教会側に戻れば、その面子が戻ると」

大司教「先程も言った通り、貴女の人気と名声は凄まじいですからね。世界を救えるのか不確定な勇者よりも、弱い者の味方であり実績が既にある貴女の方が市民からの人気はより上です」

大司教「貴女が教会に復帰してそれを宣言して頂ければ、勇者がどこの国から出ようと大した事ではない。教会側としてはお釣りがきます」

大司教「簡単に申し上げれば、勇者の旅の邪魔をされたくないのであれば、私と共に教会に戻って頂き教皇様に忠誠を誓って下さいと、そういう話ですよ」

女「…………」

女「……わかりました。ですが、その前に一つだけ確認をさせて下さい」

大司教「なんなりと」

女「その勇者の名前は、なんと言いますか?」

大司教「名前、ですか……? 確か『勇者』だと聞いておりますが……」

女「ふふっ、そうですか……。『勇者』ですか」

大司教「?」

女「わかりました。私は大聖堂へと戻ります。明朝には出発しますので、それまでに馬の手配をよろしくお願いします」

大司教「……そうですか。それはお話が早くて助かりますが……」

女「まだ、何か?」

大司教「いえ……。特には……。それでは、話もまとまった事ですので、我々はこれでおいとまします。……行くぞ」

騎士A「はっ」

騎士B「」ガチャッ、スタスタ

騎士C「」スタスタ
騎士D「」スタスタ

大司教「くれぐれも約束を違われないよう、お願いしますね。では……」バタンッ


女「…………」

ー 宿屋前、路地 ー


騎士A「大司教様……。あの者、逃げ出したりはしないでしょうか? 念の為に見張りを立てた方がよろしいのでは……」

大司教「いや、必要ない。嘘をつく様なお方ではないと聞いている。そうでなければ、『天使』などとは呼ばれる事はないだろうしな」

大司教「それに、逃げたとしても、こちらもそれほど困る訳ではない。むしろ、困るのは向こうの方だ」

騎士A「左様ですか……。ならば、そのままにしておきますが」

大司教「それよりも……。私はあの表情の方が気になったな。どこか嬉しそうだったが……」

騎士B「それは私も感じました。あの女、何か企んでいるのでしょうか?」

大司教「わからんが……。まあ、いいだろう。とりあえずこれで私の受けた任の半分は終わり、そして良い方に転がったのだからな」

大司教「残りの半分は無事に大聖堂まであの方を連れていくだけだ。翌朝には旅立たれるという事だったから、上等な馬を今日の内に手配しておけよ」

騎士C「はっ!」

大司教「戻れば、枢機卿になられるお方だ。無礼な口の振る舞いもそこまでにしておけ。良いな?」

騎士D「ははっ。肝に命じておきます」


大司祭「……しかし、何を聞くかと思えば、名前を聞くとはな。まさか、元から勇者に心当たりでもあったのか……?」

ー 宿屋内、女の部屋 ー


女「……ついに、勇者様が」

女「本当に、十五年前の約束通り……。覚えておられたのですね……」

女「やはり、この運命を女神様は知っておられたのでしょう……。このタイミングで私の元に安全に大聖堂へと行く好機が舞い降りてくるなんて……」

女「……感謝致します、女神様」ギュッ (強く手を組んで祈りを捧げる)


女「後は、一刻も早く大聖堂に戻って……」

女「『あの方』に、私は何としてでもお会いしなければ……!」

ここまで
予想より長くなりそう

勇者は弱いんだろうな

勇者も数値で言ったら3桁くらいは普通にありそう



仲間はあと3人か。
商人が一番ヤバそうだな。イロイロな意味で。

合流までにどれだけかかるんだ。

全員集まれば国作れるレベル

騎士A~Dを改心(物理)するかと思ったら本当に天使だった

なお防御力は盾役できるレベルな模様

殴りプリじゃないのが唯一の救い

メタルキングも真っ青な硬さだな

ぶ、物理攻撃が通らないだけで状態異常耐性や呪文耐性は大した事……ありそうだな

女神の加護受けまくりだからな、DQ3のゾーマの闇の衣レベルの耐性持ってるんじゃね?

戦士も僧侶もかなり防御力あるな…

ー 西の海、海上、海賊船 ー


海賊A「二時の方角に所属不明の船を発見しやしたぁ!」

海賊B「帆のドクロマークを確認! 海賊船だあっ! 獲物が出たぞおっ!!」

海賊C「ははっ! ついてない奴等だぜ! 俺らに見つかっちまうとはなあっ!!」

海賊D「野郎共ぉ! 敵船だぞぉ!! 戦闘準備だぁ!!」

海賊E「いや……! おい……待て! あの海賊旗をよく見てみろ!!」

海賊A「あれは……!!」

海賊B「『凪』の海賊団っ!! まさか、とうとうこんなところにまで来やがったのかよっ!」

海賊C「バカ野郎っ! ビビんな! 相手はガレオン船とはいえ、一隻だけだろうが! うちが何隻いると思ってやがる!」

海賊D「そうともよ! 俺らの縄張りにまでノコノコ乗り込んで来やがったんだ! 海の藻屑にしてやれ!」

海賊E「とにかく、船長に報告だ! 急ぐぞっ!!」ダダッ

海賊C「おうっ!!」ダダッ

ー 一方、『凪』の海賊団 ー


海賊A「船長! 見つけやした! 『不死身の銀髪鬼』の船団でさあ!」

海賊B「数は、10、20、全部で34隻! 恐らく本船団だと思いますぜ!」

海賊C「向こうもこちらに気付いたのか、大慌てでさあ! バタバタ走り回ってやす!」

海賊D「船長! こちらはどうしやす! まさかいきなり本船団にかち合うなんて予想外っすけど!」


女船長「ふっ」

女船長「手間が省けて丁度いい。船団ごと潰してやるぞ!! 真っ直ぐ進め!!」

副船長「マジですかい! だけど、このままじゃ多勢に無勢で、囲まれて船を沈められますぜ!!」

女船長「わかってる! だから、私が先に行く! お前らは祝勝会の用意でもしとけ!!」ググッ

女船長「」ダンッ!! (大ジャンプ!)


ビューン……


副船長「おおっと……行っちまったか、船長」

海賊A「しっかし、相変わらずどういう脚力してるんですかね、我らが船長は……。あんな遠くの船まで一足飛びとか、あの人、人間じゃないっすよ……」

海賊B「常識が通用しない人だからなあ……。うちの船長は」

ー 『不死身の銀髪鬼』船団 ー


女船長「はっ!」ダンッ!! (着地!)


グラッ……! グラッ……! (衝撃で船が激しく揺れる)


『船内』

海賊A「何だ!? おい!?」

海賊B「一体、どうした!? 何が起きた!? 高波か!?」


『甲板』

海賊C「な!? おい、何だ、お前は!? 今、急に空から降って……!!」

海賊D「ちょっと待て! こいつのこの長い髪にあの青い腕輪は!!」

海賊E「まさか、『神速の隼』!? 乗っていたのかよ、あの船に!!」


女船長「ふっ、こんな海域にまで通り名が広まってるとはね。私もそれなりに有名になったもんだ」

女船長「じゃあ、あんたたちには悪いけど、早速始めようか」トントン (片足踏み)

女船長「あんたたちにとっての、終わりの始まりをね!」ダダッ

ー 『不死身の銀髪鬼』船団、司令船 ー


海賊F「船長! 一大事です!」ガチャッ!!

銀髪鬼「何だ? 騒々しいな」

海賊F「敵から攻撃を受けてます! そのせいで、さっきから次々と船が沈んでいってます!」


銀髪鬼「船がだと!? どういう事だぁっ! 強力な魔法弾でも撃たれてるってのか!?」

海賊F「いえ、それが……!!」

海賊F「素手です!! たった一人の敵にやられてるんです!! 相手は、あの『神速の隼』です!!」

銀髪鬼「何だとっ! まさか、さっきの報告にあった船にやつが乗ってたってのか!」

海賊F「はい! もう十隻近く沈められました! 副船長の乗っていた船まで!!」

銀髪鬼「畜生っ! わかった、すぐ行く!!」


ドウンッ!!

グラッ……グラッ!!


銀髪鬼「おい、どうした!?」


海賊G「船長!!」ガチャッ

海賊G「船の横っ腹にドデカイ穴を開けられました!! この船ももう持ちません!! すぐに避難を!!」

銀髪鬼「っ!! 馬鹿な!! 鋼鉄で造られたこの船までだと!! 有り得ねえだろ!!」

ー 甲板 ー


銀髪鬼「」ダダダッ、ガチャッ!!

銀髪鬼「なっ!?」


ゴボゴボ、プカプカ…… (一面に広がる、船の残骸)


海賊F「何だよ……これ! 嘘だろ!!」

海賊G「一隻だけ残して、他は全部……沈められてる……」

海賊F「五分も経たない内に、33隻の大船団が……」

海賊G「壊滅……させ……られた」ガクッ


銀髪鬼「ぬおあああああああっ!!!」(咆哮)

ー 本船の隣の船 ー


女船長「おや、遅かったじゃないか。おかげで生憎、この通りだ。見通しが良くて、ずいぶんとさっぱりした景色になっただろ?」


銀髪鬼「……貴様の仕業か、これは……!!」

海賊G「そうです……! こいつ一人に、船団が……!! 仲間が全員……!!」

海賊F「こいつが『神速の隼』です!! 間違いありません!!」


女船長「ああ、そうだね。敵からは憎悪の対象として、味方からは敬意を込めて、私はそう呼ばれてるとも」

女船長「きっと、あんたもそうなんだろ? 『不死身の銀髪鬼』。こっちの海にも名前は届いてる。全身、傷のない箇所はないってほどの、勇猛な男だってね」

銀髪鬼「今は違うがな……! 俺は今、貴様に傷をつける為だけの鬼と化している!!」ゴゴゴゴゴ

女船長「ふふっ。やれるものなら、やってみるといい。こっちの船まで来なよ。相手してやるよ」クイッ (手招き)

銀髪鬼「黙ってろっ!! 今、そっちに行って、その生意気な舌を切り取って魚の餌にしてやるっ!!」ダダッ、ダンッ!! (ジャンプして飛び移る)

海賊F「俺達は避難するぞ! 船長の技の巻き添えを食っちまう!」ドボンッ

海賊G「おうっ!!」ドボンッ


ゴゴゴゴゴ……


女船長「へえ、威勢だけはいいようだね。せいぜい、楽しく踊ってくれよ。こっちは近頃、物足りなくて退屈気味なんでね」

銀髪鬼「数分後、同じ台詞を言えるといいな、生意気なメス犬がっ!!」ジャキッ (抜刀)

海賊F「船長、頼みます! 仇を取って下さい!!」

海賊G「そのアバズレを、出来る限り惨たらしく殺してやって下せえ!!」

【海賊F】   【海賊G】
『体力 :31 『体力 :35
 攻撃力:17  攻撃力:13
 防御力:10  防御力: 8
 魔力 : 2   魔力: 6
 素早さ: 8』 素早さ:11


銀髪鬼「わかってる……!! だいいち、そうしなきゃ到底俺の気がおさまらねえからな!!」ズサッ (構えを取る)

【海賊団の船長】
『体力 :217
 攻撃力: 51
 防御力: 89
 魔力 :  3
 素早さ: 31』


女船長「グダグタ言わずにかかってきな。こっちはもう火がついてるんだからね」トントン (片足踏み)

【天才格闘家】
『体力 :7703
 攻撃力:9999
 防御力:4056
 魔力 :  12
 素早さ:9999』



銀髪鬼「なぶり殺してやるっ!! 覚悟しなっ!!」ダダッ (大剣を持って斬りかかる)

女船長「来なよ!」サッ (構える)


その銀髪の男は、十二才で海賊になった。

激しい気性が災いして、親から勘当同然に家を叩き出された。当てもなく町をさ迷っているところを海賊に拾われ、そのまま海へと出た。

その男は海賊見習いの頃から、常に最前線で戦い続けた。

臆病という言葉を知らない男だった。どれだけ斬られ、どれだけ攻撃魔法を受けても、一歩も退かず常に戦いの只中に居続けた。

戦った回数は万をゆうに超え、その間についた傷は千を超す。死の淵を覗き見た回数は両手の指ではまるで足りない。

その苛烈で命知らずな戦いぶりは、勇猛ではなくただの馬鹿だと何度言われた事か。しかし、五年も経った頃には、別の名で呼ばれる事となっていた。

『不死身の銀髪鬼』

その男は、どんなに危険な場面であろうと必ず生還し、どんなに致命傷を受けても必ず生き残ってきた。

仲間は囁く。この男は死を知らない。

負けた敵は地団駄を踏みながらわめき散らす。あいつは馬鹿だから、そこらの酒場に『死ぬ』って事を忘れて置いてきちまったんだよ。

本人は満足そうに豪語する。俺は一度死神に会った事があるんだが、そいつからお前は二度と来るなって追い出されてな。以来、会った事がねえんだよ。

そんな彼はやがてクーデターを起こす。船長を殺して船を乗っとり、自分が船長となって新しい海賊団を結成した。

その海賊団は、十六年の歳月をかけて、西の海の覇者と言われるほど巨大なものに成長していった。そして今……。



女船長「せいっ!!」ドゴゴゴゴオオオオオオンンンンンンンンンッッ!!!

銀髪鬼「ごふぎああぐぼおおおおぐええあががぎぐぼぼぼおおごおおおおおおおおおおっっっ!!!」ズガゴラバキガッシャーン!!!

9910ダメージ!!
体力:217→0


海賊F・G「船長ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」



一撃で壊滅した。

ー 戦闘終了後 ー


副船長「ったく。船長、勘弁して下せえ。船ごと沈められたら、お宝がパーじゃないっすか」

海賊A「そうっすよ! 食料や水や酒だってあっただろうに!」


女船長「うるさい。宝なら海中から引き上げろ。酒や水なら樽がそこらに浮かんでるから回収しとけ」


海賊B「それが面倒だから言ってるんすよ! 大体、残した一隻も生き残った奴等に渡しちまって!」

海賊C「船も貴重な宝だってのに、全部沈めるから! もったいない!」


女船長「黙れ。ともかく、これで西の海域は八割方制覇したも同様だ。まずはそれを祝え」


海賊D「つうか、俺ら何もしてないんで」

海賊E「祝えも何もって感じなんすけど」


女船長「くどい。それより、ぶんどり物はここに集めておけよ。後できちんと山分けだからな」

海賊A「うっす!」

海賊B「ああ、そうだ、船長。これをどうぞ。さっきの船に新聞があったんで」スッ

女船長「ああ、ご苦労。気が利くな」

女船長「どれどれ……。最後に陸に立ち寄ってからずいぶん経つからな。例の、東の国の革命記事が載ってりゃいいが……」パサッ


『北の国軍、魔王軍に全面勝利。立役者は東の国の援軍、名剣士!』


女船長「ふうん……。東の国軍は、革命後、初の軍事行動となるが、見事にこれを成功させ……。へえ……」

女船長「つまり、もう革命は成就してたってのか。私らも裏から支援したかいがあったな」

副船長「ですね。資金や武器を結構回しやしたっけ」

女船長「ああ、投資が実ったぞ。これで東の国の海域を大手をふって航海出来るからな。本格的に海上貿易が出来るってもんだ」

副船長「にしても、これじゃあもう、どっちが本業かわからなくなってきやしたね。今じゃ貿易業の方が儲かってるってんだから」

女船長「元は密輸のカモフラージュだったんだがな。何がどう転ぶかわからないもんだ」

副船長「まったくで。つっても、狩る海賊がいなくなっちまったからしょうがないんですがね。商船は襲わないってのがウチのポリシーですし」

女船長「で、出会った海賊は、全部、潰すか傘下におさめてやったからな。気がつきゃ国もビビるぐらいの最強の海賊集団になってた。痛快なもんだ」

副船長「『凪』の海賊一味ってのも、こっちから名乗った訳じゃあないんすけどね。海に敵なし、風一つなし、って事で、いつのまにかそう呼ばれる様になりやしたし」

女船長「まあな。とはいえ、未だに魔物にはちょくちょく襲われてるから、完全に敵なしとは言えないが」パラッ

副船長「魔物は厄介すからね。潜って船底から攻撃されると、こっちも海に飛び込んで戦」

女船長「なっ!?」

副船長「」ビクッ!!

副船長「ど、どうしやした、船長? 急に大きな声だして……」

女船長「まずい……。相当前の事だったから、すっかり忘れていた……」ワナワナ

副船長「?」

副船長「……何か気になる事件でもあったんですかい?」ヒョイ (覗き見る)


『南の国から勇者(自称)が旅立つ。盛大な式典の裏には教会との軋轢が?』


副船長「勇者? へえ、神託があったんですかい。だけど、自称ってのは一体……。なになに、名前は『勇者』で、歳は……」


女船長「副船長っっ!!」

副船長「」ビクッ!!

副船長「ア、アイサー!」ビシッ


女船長「緊急の用事が出来た!! 私は今すぐアジトに戻るぞ!!」

副船長「はひ!? 今すぐって、まだお宝をサルベージ中ですぜ、船長!?」

女船長「関係ない!! 先に向かうぞ!! お前らは後から来い!!」ダッ (ジャンプ)


副船長「ちょっ、ちょっと船長!! 海に飛び込んでどうするんですかい!? まさか泳いで帰るってんじゃ……」ササッ (甲板から下を覗き見る)

副船長「!?」

副船長「水の上に……!! 立って……!?」


女船長「当然だ! 海の上ぐらい立てなくて、いっぱしの海賊が名乗れるか!!」チャプチャプ


副船長「!!!???」

※『軽気功』
気功の一種。己の存在を自然と一体化する事により、気配どころか体重そのものを消す。
完全に修得すれば、舞い落ちる枯れ葉の上にも乗れると言われる。
会得の難しさから、史上、最高難易度の気功と呼ばれる。


女船長「後の指揮は、副船長、貴様に任せる!!」チャプチャプ

女船長「私なら、船で行くよりも、走った方がよっぽど早いからな!!」

女船長「任せたぞっ!!」ダダダダダダダダッ!! (ダッシュ)


副船長「ちょ! 船長ぉぉぉぉ!!!」


シーン……


副船長「って、くそっ。もう姿が見えなくなっちまった……。本当に、どんな足をしてやがんだよ、あの人は……」

副船長「それに、何で急にまたアジトに戻るだなんて……」

副船長「一体、なんだってんだ……?」

ー 海上 ー


女船長「まずい! くそっ、私とした事が!!」ダダダダダダダダッ (ダッシュ)

女船長「何で今の今まですっかり忘れていたんだよ、こんな大事な事を!!」ダダダダダダダダッ

女船長「急いでアジトに戻らないと、絶対にまずい事になる!!」ダダダダダダダダッ

女船長「対応によっちゃ、この海賊団が崩壊するぞっ!! 急げっ!!」ダダダダダダダダッ


女船長「にしても、畜生っっ!! 何だって十五年も前にした約束を覚えてやがるんだっ!! バカ勇者がっっ!!!」ダダダダダダダダッ

ここまで

乙です

軽気功ってあれか、空渡り

それにしてもフリが長い

確かになー
勇者のところだけやって、みんなと再会したら圧倒的な強さを見せつけられて…くらいのテンポの方が個人的には面白いとは思う
まぁ書きたいのはそういうのじゃないのかもしれないし、そもそも金取ってるわけじゃないSSだから>>1の好きに書けばいいが

俺は好きだからこれでもよい。がんばってー!

勇者のステータスを見るのが怖い

ドラクエの世界観とステータスの中にFFのカンストキャラが混ざる恐怖

商人が気になり過ぎるよな

武闘家がカンスト値二つもってるからか
ステカンストしてる気がしない>商人


スプリガンの朧かと思ったが他にも同じようなのがあるのか



今回で、攻撃翌力-防御力=ダメージってわかったな。

こりゃ僧侶に殆どのダメージ0か1だろうな。

これ勇者のいた辺りだけドラクエで他の国がFFなんじゃね?勇者は999がカンストとか、商人……どうなるかね?

どんなオチがついても「前フリ長え!」しか感想つかなそう

教会を破門された女さんは、教会に戻らず勇者と合流しても良かったんじゃ?
紅の天使が勇者につきつつ神託の正当を説けば、腐った教会の権威を貶めつつ、勇者一行に民のフォローは入ると思うし
なにか教会に戻る理由があるのかな?

何かある感じに描いてあるやん

いや前フリが長いほどオチが際立つというのもある

タイトル落ちなんだから前フリも何も…
話自体は面白いぞ

これだけ前ふり長いと別のオチの可能性があるな

おつ

乙でした
是非とも完結して下さい

ー 最果ての地、魔王城 ー


魔王「ふむ……。北西地区の被害がきつくなってきたな」

魔軍師「はい。向こうに新たに黄金竜が二匹ほど、投入された事が原因です」

魔王「それで、対応は考えてあるのか?」

魔軍師「比較的優勢な東地区から、フェンリル狼を援軍として派遣します。下策ですが、今のところはそれ以外手の打ちようがないですね」

魔王「……奴か。だが、大人しく命令に従うかどうか。気性の激しさは折り紙つきだぞ。激戦区に回されると聞いて黙ってるような奴ではない」

魔軍師「ですが、フェンリル狼は欲望には忠実な魔物です。特に奴は魔結晶が好物ですし、出来の良いのを二十個ほど与えて懐柔すれば大人しく従うでしょう」

魔王「それは構わんが、またか……。魔結晶一つ作るのに、どれだけの魔力と金を注ぎ込んでいると思っているのか……」


※『魔結晶の作り方』
1、魔石に特別な魔法加工をし、魔力を吸収するマテリアルに変える。
2、そのマテリアルに魔法をひたすら放ち続け、魔力をひたすら吸収させる。
3、吸収出来る許容一杯になると、マテリアルは結晶化する。
4、それを更に強力な炎魔法で1000時間近く炙り続けると、不純物が無くなり、純粋な魔力のみで構成された魔結晶に変わる。
5、魔力が無くなった時に服用すると、吸収した分の魔力が回復する。ヤバイぐらい美味。宝石の様に美しい。物によっては、城が建てれるぐらいの高値で取引される。


魔軍師「だからこそ、魔結晶には価値があるのですよ。ここは惜しむ様な場面ではありません、魔王様」

魔王「ちっ……。わかった。良きに計らえ」

魔軍師「はっ」

魔王「それで、他に耳に入れておかねばならぬ情報はあるか」

魔軍師「これといって、特には……。ただ、些細な事ですが、一つ、気になる情報が入ってきてますね」

魔王「何だ?」

魔軍師「人間どもに、女神の神託を受けたと言われる勇者が現れたとか」

魔王「勇者? それに女神だと? あの女は確か、かなり前に封印してやったはずだが……」

魔軍師「はい。ですが、身動きを封じてあるだけですので、神託や祝福は与えられる様ですね」

魔軍師「とは言っても最後の足掻きでしょう。加護を与えられたとは言え、所詮は人間ですから」

魔軍師「魔王様の力から考えて、特に気にするほどのものではないと思いますが、一応ご報告はと。聖なる力というのは、それだけで厄介な代物ですから……」

魔王「確かにな。そのせいで女神にはかなり手こずった。余の片腕だったルシファーが犠牲となってくれねば、封印すら出来なかったはずだ」

魔軍師「他にも高名な悪魔や魔獣がかなり犠牲に……。あれは痛ましい戦争でしたね」

魔王「だからこそ、散っていった者達の為にも、余は竜属を滅ぼし、この世界を統一せねばならん。何としてでも」

魔軍師「はい。その決意をお忘れなきようお願いします」

魔軍師「それで、魔王様。勇者は如何致します? 放置しておいても構わないでしょうが、もし潰す気なら初めから潰しておいた方が良いかと」

魔王「ふむ……。確かに気にはなる話ではあるな」


魔王「良かろう。確かこの前、軍に入ったばかりの新兵がいたな。そいつらを使え。この機に、人間どもを根絶やしにしておく」

魔軍師「新兵というと、あの五体ですか……。まだまだ訓練不足で兵士としては使い物にはなりませんが……まあ、人間を全滅させる程度なら問題ないでしょう」

魔軍師「わかりました。後で手配しておきます」

魔王「うむ。それと……」

魔王「例の試みはどうなっている?」

魔軍師「異界への扉を開く件ですか……。一応、古文書の解読も終わり、その記述通りに魔方陣は完成させていますが……」

魔軍師「ですが、魔王様自らが異界に乗り込むのはどうかと……」

魔軍師「確かに、あの古文書が真実であれば、異界には下手な竜よりも遥かに強力な魔獣が数多くいるとの話です」

魔軍師「戦力不足に陥ってる今、その魔獣達を倒して、従わせ、味方につけたいというそのお気持ちもわかります」

魔軍師「ですが、魔王様本人が向かうというのは問題があります。万が一の事があったらどうするというのですか」

魔王「だが、その魔方陣で異界へと移動出来るのは二人だけだというではないか。そして、そいつらが桁外れに強いと言うのなら余が向かわねばならぬ。他の者では返り討ちに遇うだけだろうからな」

魔軍師「それはそうかもしれませんが……。しかし……」

魔軍師「そもそも異界から帰って来れるという保証がございません」

魔軍師「扉を開けたはいいが、帰りは開かない、となればこちらには二度と戻ってこれないのですぞ」

魔王「だからこそ、余が行くのだろう。世界広しと言えど、時空魔法を使えるのは余だけだ。いざとなれば時空に穴をこじ開けて帰って来れる」

魔王「代償として恐らく寿命を百年ほど失うだろうがな。禁術に手を出してそれで済めばもうけものだ」

魔軍師「……いくら魔王様の寿命が長いとは言え、命を縮める様な魔法は。リスクが高すぎます……」

魔軍師「どうか思いとどまって頂けないでしょうか? 今の状況はそれほど厳しい訳ではありません。そこまでリスクを背負って異界へと行くメリットは……」

魔王「……魔軍師」

魔軍師「はい」

魔王「勘違いするな。余はただテーブルについて料理が出てくるのを待つだけの客ではないぞ。獲物は自ら狩りに行く」

魔王「メリットなど二の次だ。余は王である前に征服者なのだ。わかったら、これ以上は口を挟むな」

魔軍師「……左様ですか。承知しました……」

魔軍師「ならば、せめて供には側近をお連れ下さい。あやつは守りに秀で、忠誠心が厚き者。必ずや魔王様の良き盾となりましょう」

魔王「ああ、余もあやつを連れていくつもりでいた。心配には及ばぬ」

魔軍師「はっ。ならば、先程の命令にあった新兵どもに指示を与えた後、異界行きの儀式の準備を整えさせます」

魔王「うむ」

魔軍師「それでは、私はこれで」ペコリ


魔軍師「」スタスタ

ガチャッ、バタンッ……


魔王「異界か……。久々に腕が鳴るな……」

魔王「ふっ、ふふはははははっ。これはこれで心踊るというものだ」

魔王「この一策で、一気に竜王との片をつけてやろうではないか。首を洗って待っていろ、竜王!」

ー 訓練場 ー


魔軍師「それでは、これよりお前たち新人五名に魔王様からの命令を伝える。心して聞くように」


闇死霊「はい……」

【死神の使い】(人型・霧状)
『体力 :134977
 攻撃力:  7198
 防御力: 16127
 魔力 : 23346
 素早さ: 17271』


焔鳥「SIGYAAAAAA!!!」

【不死鳥】(全長41メートル)
『体力 :271840
 攻撃力: 13319
 防御力:  5044
 魔力 :  9106
 素早さ: 17676』


クラーケン「URYYYYYYY!!!」

【烏賊の王族】(全長39メートル)
『体力 :131347
 攻撃力:  9930
 防御力: 22044
 魔力 : 11665
 素早さ:  7673』


琥珀蝶「…………」バッサ、バッサ

【神秘の幻蝶】(全長34メートル)
『体力 :128290
 攻撃力:  9625
 防御力:  7411
 魔力 : 23697
 素早さ: 15732』


雷獣「GAOOOOOOO!!!」

【破滅の魔獣】(全長52メートル)
『体力 :208724
 攻撃力: 18050
 防御力: 10437
 魔力 :  8502
 素早さ: 12140』


魔軍師「うむ」

【不敗の名将】(身長177センチ)
『体力 :129万
 攻撃力: 13万
 防御力: 27万
 魔力 : 45万
 素早さ: 18万』

魔軍師「お前たちはこれから南に向かって進み、妖魔の森を抜けて、人間どもを全滅させてもらう」

魔軍師「人間の国は五国あるから、それぞれが一国ずつ担当せよ」

魔軍師「手を抜かず、必ずや全滅させる事だ。一人も生かしておくな」


雷獣「GYAOOOOOOOOOON!!」

ビリビリ…… (大気の震え)


魔軍師「なお、わかってるとは思うが、妖魔の森を横断する時は必ず西側を通る様に。東側は竜の支配下だからな。もしも遭遇したら、今のお前たちの実力じゃ瞬殺されるだろう」

闇死霊「……理解」


魔軍師「では行け。一週間もあれば足りるはずだ。それまでに任務をこなして帰って来るように」


闇死霊「……はっ」フワッ (暗黒の霧となって移動)

焔鳥「SIGYAAAAAA!!!」バッサ、バッサ (全長41メートル)

クラーケン「URYYYYYYY!!!」ウネウネ (全長39メートル)

琥珀蝶「…………」バサバサ、バサバサ (全長34メートル)

雷獣「GAOOOOOOO!!!」ダダッ (全長52メートル)

インフレがひどい

ー 北の国、北東部、小さな村 ー


大賢者「流石にここまで来ると寒いな……。手が凍りそうだ」ハァ…… (息を吹きかける)

大賢者「防寒着もきちんと買っていかないとまずいな……。食料の前にそっちから先に行くか……」テクテク


占い師「ふぇっふぇっふぇっ。そこのマントをかぶったお兄さんや」


大賢者「?」

占い師「そう、そこのあんたじゃよ。他にはいないじゃろうに」

大賢者「……僕に何の用かな、お婆さん?」

占い師「あんた、普通の人とはどこか雰囲気が違うからね。悪い意味で言ってるんじゃないよ、オーラを感じるんだよ」

占い師「袖すり合うも多生の縁って言うじゃないか。興味がわいたから、ちょいとタダで占ってやるよ」

大賢者「占いですか……」

どうすりゃいいんだ…

敵強すぎだろ。
こりゃあ商人のアイテムに期待だな。

大賢者「すみませんが、遠慮しときます。それ、よくある手ですよね? そう言ってろくでもない予言をして、その後、この御利益の高いお守りを買えば回避出来る……って言ってくるつもりなんでしょう?」

大賢者「一種の詐欺です。その手に乗る気はないですよ」ニコッ

占い師「あらまあ、なんちゅう事を言うんだかね、このボウズは。人が善意で占ってやろうって言ってんのにさ」

占い師「ほんと、最近の若いもんはすーぐにこれだ。人の好意を平気で踏みにじって、更には小賢しい事を言って逆に得意気なツラしてさ。まったく、嫌な世の中になったもんだね」

占い師「ああ、いいさ、いいさ。どこへなりともお行きよ。見所ありそうだと思ったのに、あたしのとんだ勘違いだったよ。ったく」ブツブツ

大賢者「わかった、わかりましたよ。それならどうぞ、是非お願いします」(苦笑)

占い師「もう有料だよ。そんでもいいって言うなら占ってやるがね」

大賢者「ホント、商売上手ですね。わかりました」

大賢者「はい、これ。銅貨四枚でいいですか? それぐらいが相場ですよね」スッ

占い師「あたしゃ、当たる事で有名なんだ。銅貨は七枚だよ」

大賢者「わかりました。じゃあ、もう三枚どうぞ。さ、お願いします」スッ

占い師「毎度あり。ふぇっふぇっふぇっ」

大賢者「参るなぁ、本当に……」(苦笑)

たわむれに生かされてるに納得した

占い師「それじゃあ、お兄さんや。この200枚のカードの中から適当に4枚引いておくれ。それがお兄さんの運命だ」

占い師「このカードにはあたしの魔力が込められてるからね。純粋に未来だけを導き出す。そこには運や気まぐれが入る要素はないよ」

占い師「お兄さんが引く4枚は自分で選んだものじゃない。未来が導いた4枚だ。わかったなら、さあ、引いておくれ」スッ


大賢者「……じゃあ、これと、これと、これと、これ」スッ


占い師「………………………………」

大賢者「ん? どうしたの、お婆さん。そんな深刻そうな顔して」

占い師「…………あんた、これはまずいよ。……だって、あんたが選んだカード…………」ブルブル


『恐怖』 『死神』 『墓場』 『時計』


占い師「最後に引いたのが時計ってのが、更にまずいんだよ……。四枚目の時計は、時間の無さの表れだ……」ブルブル

占い師「あんた……近い内に、何かに巻き込まれて死ぬよ。こんな危ない予言出たの初めてだよ……。どうすればいいかあたしにだってわからないよ……」ブルブル


大賢者「…………」

大賢者「えっと……」

大賢者「それって、やっぱり、僕が最初に言った通りの結果で……」

大賢者「ああ、結局、僕は騙されちゃったって事か……。参ったなあ、降参です。こういう駆け引きとか自分では得意だと思ってたんだけどな」(苦笑)


占い師「違う……! 女神様に誓って言えるけど、この予言は本物だよ! あんた、今すぐどっか遠い町にでも行った方がいい!」

占い師「予定があるんなら、それは全部変更しな! でなきゃ、本当に死ぬよ!!」


大賢者「わかりました。参考にしておきますね」ニコッ

占い師「違う! あんた、全然わかってないよ!! 嘘じゃないんだ! 本当なんだよ!」


大賢者「そう言われましても……」(頬をかく)

大賢者「生憎、僕は寿命以外では絶対に死なない自信があるんで」ニコッ

【大賢者】
『体力 :5254
 攻撃力:  12
 防御力:8296
 魔力 :9999
 素早さ:6238』

占い師「冗談言ってないで、あたしの忠告をお聞き! ちょっとばかし、腕に自信があったって、それが完璧って訳じゃないんだよ!」

占い師「世の中にゃ、あんたみたいな若いのが想像も出来ない様な怪物もいるし!!」

占い師「想像もつかない様な、不運や出来事だってあるんだ!!」

占い師「黙ってあたしの忠告をお聞きよ!! この跳ねっ返りが!!」


大賢者「わかりました。心に留めておきますよ」ニコッ

大賢者「それでは、僕はこれで……」クルッ、スタスタ


占い師「ちょいとあんた! これからどこ行く気だい!?」


大賢者「装備を整えて、北に向かいます」スタスタ


占い師「こっから北って……」

占い師「あんた、何にもわかってないじゃないか!! そっちには妖魔の森があるんだよ!!」

占い師「人が生きて帰って来れる場所じゃない!! そんなとこへ、一体、何しに行くんだい!!」


大賢者「軽く腕試しです。勇者が現れたって話を聞いたのでね」ニコッ

占い師「!!?」


大賢者「それでは……」スタスタ


占い師「この……馬鹿男が……!!!」

ここまで

想像以上に魔法使いが硬かった

仲間達(あと勇者)のLVが表示されていない、つまり…

読者「魔物TUEEEEEEEEEEEEEE!!」



DQとFFかと思ったらディスガイアだった。

ラストリベリオンか

なんだただのディスガイアか
ならまだまだ全員雑魚レベルだな(真顔

勇者だけ出るゲーム間違えたのか

敵TUEEEEEEEEEEEEEEEE!!

読者「作者TUEEEEEEEEEEEEEE!!」

(敵の)仲間TUEEEEEEEEEE

ステータス十分の一以下にしないとまず話にならないレベルの敵が新兵とな……

登場だけでこのすれ終わりそうだなww

魔王とか読める範囲の数字で収まるのだろうか

>>177
^「ワイらの出番やな^^」

16進数で表せば問題ない

那由多でも恒河沙でも使えばいいじゃない

むしろ名剣士が生きて帰ってこれた事に驚きだわ

大まかに、人間の一般兵士の戦力を1とすると、
勇者の仲間が500位、魔族の新人が1000、魔族の幹部クラスが10000位と言った感じか

DQやFFというよりディスガイアか下手すりゃドラゴンボールの世界だ

おつ

大賢者本当に大丈夫か?
敵のステータス見た後だとかませっぽく見えてしまうんだが

マジで期待
やっぱ勇者物はいいな

賢者は、いつでもリジェネといつでもアレイズ持ちやしヘーキヘーキ

逆に言えばこんな連中を手こずらせて片腕や名だたる魔物とかを潰した女神はどんだけ強いんだ……いやこの場合は聖なる力の底上げドーピングか。

仲間のステータスがLv1の物なら、どうとでもなりそうではある

ー 北の国、王都

『七つ星大商会』本店三階

      冒険用品売場 ー


大商人「はい、いらっしゃい、いらっしゃい。七つ星印でお馴染みの魔法銃がズラリと揃ってるよ。これを売ってるのはうちの商会だけだよ。他にはないよ」

大商人「魔力を使えない人でも平気な代物だよ。誰か魔法が使える人にこの特製の弾を持ってもらって、後は魔法を唱えてもらうだけ。すると、その魔法が弾に込められて、引き金を引けばこの銃から飛び出すって便利な代物さ」

大商人「弾さえ事前に用意しときゃ、魔力を気にせず何度でも撃てるし、射程距離だって普通の魔法の四倍はあるって優れものだよ。今じゃどこの国でもこの魔法銃が正式採用されて大人気だよ」

大商人「旅の必需品だし、弱い者の味方さ。値段もお手頃価格になって販売中だ」

大商人「弾は一発につき、銅貨4枚。ラム酒1瓶と同じ値段だ。だけど今日は勇者様旅立ち記念バーゲン中につき、特別に銅貨3枚で売っちまうぜ。さあ、持ってけ泥棒」

大商人「銃本体も、銀貨4枚ポッキリの大特売だ。これだけ安値なのは今日だけだぜ。さあ、買った買った」

大商人「今ある分だけの限定特別価格だ。後になって無くなってても知らないよ。今しかチャンスはないよ」


※『通貨のおおそよその日本円換算』
銅貨1枚→250円
銀貨1枚→5万円
金貨1枚→50万円

なお、通貨の価値は国や質によって微妙に変動する。



アリガトウゴザイマシター!!


若者「ヤベエ、ついつい買っちまった……。だけど、これさえあれば、魔物とか襲われた時、役立つだろうし……」スタスタ


大商人「おっと、毎度ありぃ! お兄さん、今日は良い買い物したよ。また来てくれよ」

大商人「もしも、高度な魔法を弾に込めたいって思ったら、この通路を真っ直ぐ行った専用の魔法屋に行ってくれ。熟練の魔法使いが待ってるからさ。そっちも今日は特別価格で営業してるよ」


大商人「はい、いらっしゃい、いらっしゃい。今日は特別バーゲン中だよ。安いよ、安いよ」

女大富豪「」スタスタ
秘書「」スタスタ


大商人「はい、いらっしゃい、いらっしゃっい。そこの美人なお嬢さんもナイスミドルな紳士も是非見ていってくだ……か、会長!?」

女大富豪「うん。ちょっと立ち寄ってみたとこ。自ら売り込み、御苦労様。店長」

大商人「は、はい!!」ペコペコ

秘書「どうも。御無沙汰してます」ペコリ

大商人「はい! 秘書の方も、お元気そうで」ペコペコ

女大富豪「それにしても、やっぱり手慣れたものね。本店の店長ともなると、何をやらせても一流。さっきから見ていたけど、お客さんの食いつきが違ったから」

秘書「ええ、本当に」

大商人「あ、ありがとうございます!」ペコッ

女大富豪「でも、今日はどうしてまた売り込みなんて?」

大商人「はい。バーゲン初日という事で、店員全員の気合いを乗せる為にと。現場に出ないとわからない事もありますし」

女大富豪「なるほど……流石だね。ちなみに、売り上げはどう? 今月も好調?」

大商人「ええ、そりゃもう。やっぱりこの魔法銃の量産化が効いてますね。ここまで安く出来たら、国相手だけでなく一般にも販売出来ますし」

女大富豪「地道な研究開発がようやく実ったからね。魔法銃の開発に5年、量産化まで3年、ずいぶん長い道のりだったけど……」

大商人「はい。ここからまだまだ上が見えますね。いくらでも上っていけそうなぐらいに」

女大富豪「そうだね。その為にも、あなたには期待しているわ」ニコッ

大商人「ありがとうございます!」ペコッ

秘書「引き続き、この店を宜しくお願いしますとの事です」

大商人「はい! ありがとうございます!!」ペコペコ



商人B「おい……。あの店長がめっちゃ嬉しそうに頭下げてるぜ……」ヒソヒソ

商人C「何者なんだ、あの二人……?」ヒソヒソ

女大富豪「それじゃあ、私はこれから寄るところがあるから。悪いけど、これで」

秘書「失礼しますね」

大商人「はい! お気をつけて!」ペコッ

女大富豪「ふふ。大丈夫よ。護衛もいるしね」

秘書「…………」

【秘書、兼、ボディーガード】
『体力 :182
 攻撃力: 61
 防御力: 64
 魔力 : 38
 素早さ: 69』


大商人「それもそうですね、要らぬご心配を」

女大富豪「ええ。それじゃあね」クルッ、スタスタ

秘書「では」ペコッ

大商人「はい!! またのお越しをお待ちしてます!」ペコッ



商人A「おお……。最後までずっと頭下げ続けてるぞ」ヒソヒソ

商人B「……一体、誰なんだよ、本当に。店長があそこまで頭下げるなんて……。国のお偉いさんの娘か?」ヒソヒソ

この仲間達がパーティーに入ってからレベルアップするかしないかで味方TUEEEEEか勇者ZAKEEEEEEになるな、
楽しみにしてる

ー 休憩時間 ー


商人A「店長、ちょっといいですか?」

大商人「ん? どうした?」

商人B「さっき、ごつい人と、若いお嬢さんの二人組いたじゃないですか。あれ、誰なんです?」

大商人「お前らなあ……。うちの商会の会長と秘書をつかまえて、その言い草はなんだ」

商人A「会長!? あの人が!?」

商人B「で、でも、会長なのに、やけに腰が低くなかったですか? 頭、何回か下げてたし」

大商人「逆だよ、逆。そっちの人が秘書だ。女性の方がうちの会長なんだよ」

商人B「はい!? いやいやいや、それは店長、冗談きついですって。うちの商会ですよ? 全世界、全部の町に支店がある、前代未聞の大商会ですよ?」

商人B「総資産は国家予算を超えているって言われてる、そんな馬鹿デカイ商会の会長が、あんなに若い訳がないじゃないですか」

大商人「だろうな。それが普通の反応だよな。だから、俺はだいぶ前から、それを信じてもらうのを諦めてる」

商人A「?」
商人B「?」

商人A「それ、どういう事です?」

大商人「だから、そのままの意味だよ。うちの会長と初めて会う人は、必ず勘違いしてお付きの秘書に握手を求めるそうだ。事前に女だって聞いてるはずなのにな」

大商人「あんまりにも間違えられるもんだから、会長も段々めんどくさくなったのか、終いには私が秘書ですって自分から言ってたらしいしな。そっちの方が話が早いからって」

商人B「いやいや、それ絶対嘘ですよね?」

大商人「だから、信じる信じないはもう好きにしてくれ。そもそも、うちの会長の逸話はどれも人に信じてもらえる様な類いのものじゃないんだよ」

大商人「元々、小さな雑貨屋の商人だったのが、今じゃインクから堤防建設まで扱う巨大商会の経営者だ。わずか10年で全世界に3000店舗出してんだぞ」

大商人「やる事なす事全部大当り、画期的な新商品を大量に産み出しては大ヒットの繰り返しだ。そのせいで、『七つ星商会には、魔女と錬金術師がいる』って根も葉もない噂が囁かれるぐらいだしな」

大商人「金塊を作り出すか、完璧な未来予知でも出来ない限りあの急成長は考えられないんだと。会長も、投資しかり開発しかり、商売で外した事は一度もないって言ってたしな」

大商人「で、極めつけがうちの魔法銃だ。他の商会が真似しようにも、あれは中身が複雑過ぎててコピーが出来ないらしい。千年先の技術だとか言われてる」

大商人「だから、作れるのはそれ専用の工房持ってるうちだけで、完全な独占状態。しかもそれが大量に売れてるときたもんだ。1秒ごとに金貨が10枚近く空から降ってくるような売り上げを上げてる」

大商人「平民としては史上初で教皇に会ったって人だし、各国の財務大臣からは毎年の様に高価な贈り物が届けられるとか。こっちから贈るんじゃなくて、その逆なんだぞ?」

大商人「どこの国にも大金を貸し付けてるから、国王でさえ面会を断れないし、自分から挨拶をしてこない貴族はいないらしい。ただの平民なのに、最早王族以上の待遇を受けてるみたいだしな」

大商人「もう全部が嘘くさくて俺も信用出来ないぐらいなんだが、どれもこれもきっと本当の話なんだよ。うちの会長は真面目におかしいんだ。商売の天才って言葉じゃ足りないぐらいな」


商人A「いや、そんな……まさか……」ブルッ

商人B「そうですよ……いくらなんでも……」

大商人「まあ、会長が何で今日ここに来たかは知らないが……」

大商人「あの人が来る以上、金貨一万枚以上の金が動くのは間違いないな」

大商人「なにせ『歩く経済』なんて呼ばれ方をしてる人だ。あの人が、≪最近、小麦が安いわね≫、ってちょっと呟いただけで、次の日には小麦の買い付け価格が倍以上につり上がったなんて伝説もあるほどだしな」

大商人「ここが本店だってのに、姿を見せるのも二年ぶりだ。俺でさえ、会長が最早どこで何してるのかわかりゃしねえ」

大商人「常に世界中を旅していて、自宅ってものがないらしいしな。毎日の様に町を移動して情報収集やら指示出しとかしてるから、寝る時の景色も時間も毎回違うんだと」

大商人「その生活に唯一ついてこれたのがあの秘書で、それまでに五人以上秘書を変えたらしい」

大商人「て事は、本人もあの秘書並の体力があるって事になるんだがな。色々と規格外な人なんだよ、うちの会長は」


商人A「……なんかもう、おかしいって言葉しか出てこないですね」

商人B「……おう」


大商人「ちなみに、お前たちと同い年だぞ」

商人A「!?」
商人B「!?」


大商人「ほら、お前たちもいつまでも休んでないで商売に精を出せ。成功の秘訣は? って質問に、会長は、寝る時以外は働く事って言ってたからな」

商人A「……はいっす」

商人B「……なんか、聞きたくない話を聞いちまったなあ」ボソッ

ー 町の外 ー


女大富豪「んー、久しぶりに店長見たけど、元気そうにしてたわね」パカラッ、パカラッ (馬で移動中)

秘書「ええ」パカラッ、パカラッ


女大富豪「ただ、建物はやっぱり古くなってたかな。一号店だし、もう少し綺麗にした方がいいかも」パカラッ、パカラッ

秘書「では、デザイン部門と建設部門に連絡して改修工事させておきます」パカラッ、パカラッ


女大富豪「あと、ここの街道も、もう少し広くした方がいいわね。走りにくいし」パカラッ、パカラッ

秘書「早速、街道専門チームと護衛請負部門に手配させます」パカラッ、パカラッ


女大富豪「あ、向こうに魔物発見」パカラッ、パカラッ

秘書「お任せを」ガチャッ (大型魔法銃、構える)

秘書「FIRE!!」バンッ!!

一つ目狼A「ガルルル」
一つ目狼B「ガウウゥ」
一つ目狼C「グルルル」

【魔物・タイプ狼】
『体力 :19
 攻撃力: 7
 防御力: 3
 魔力 : 0
 素早さ:11』


一つ目狼A「ウォン、ウォン!!」ダダダッ
一つ目狼A「ガウォォン!!」ダダダッ
一つ目狼A「ガウッ、ガウッ!!」ダダダッ


BANG!! (魔法弾・氷)

ガキンッ!!!


一つ目狼A「!!!」ビキッ (氷漬け)
一つ目狼B「!!!」ビキッ (氷漬け)
一つ目狼C「!!!」ビキッ (氷漬け)

全体に35ダメージ!!
体力 :19→0

これが普通なんだよな

女大富豪「うん。あの距離を馬乗ってる時に一発で仕留めるなんて、あなたもずいぶん手慣れたみたいね、魔法銃に」パカラッ、パカラッ

秘書「練習しましたからね」パカラッ、パカラッ

女大富豪「最初は魔法銃なんて邪道だなんて言ってたのに、練習はしたんだ?」パカラッ、パカラッ

秘書「私は幼い頃から剣一筋に生きてきましたので……。しかし、魔法もそれなりに使えたので、そこまで頑固ではありません」ガシャッ、ガコッ (次弾、装填)

秘書「便利だとわかれば使いますし、苦手だとわかれば練習もします。それだけです」パカラッ、パカラッ

女大富豪「そうそう、そういう柔らかさがやっぱりないとね。この時代はこれからどんどん変わってくでしょうし」パカラッ、パカラッ

女大富豪「私が作り出した魔力伝達物質、『魔導鉄』によっていくらでもね」パカラッ、パカラッ

秘書「ええ」パカラッ、パカラッ

女大富豪「魔力を貯める事の出来るマテライト。あれは本当に素晴らしいものだったわ」パカラッ、パカラッ

女大富豪「それを魔結晶にする前にちょっといじって、鉄と一緒に錬成してやれば、魔力を伝達する『魔導鉄』に変わる事がわかったんだから」パカラッ、パカラッ


※『魔導鉄』
魔力を伝達する特性を持つ金属。なお、命名者は開発した女大富豪。ある程度、鉄の特性も維持しているが、ほとんど別物。


女大富豪「それで、マテリアルと魔導鉄を使って造ったのがその魔法銃。だけど、銃以外にもありとあらゆる使い道があるもの」パカラッ、パカラッ

女大富豪「これまでの実験で、魔力のエネルギー変換や伝達理論もだいぶわかってきたしね。特定の用途ごとに魔導鉄で魔力伝達回路を作って、マテリアルに貯めた魔力で動かしてやれば、きっとどんなものでも作れる」パカラッ、パカラッ

女大富豪「軍事に商業、その応用はいくらでもきくわ」パカラッ、パカラッ

女大富豪「その内、スイッチ一つで町が昼間の様に輝いたり、遠くの景色を別の場所から見れる様になったり、馬よりも速く走れる乗り物が走り回る時代がきっと来る」パカラッ、パカラッ

女大富豪「マテリアルと魔導鉄が世界を変える日が必ずやって来るのよ。いいえ、私が必ずそう変えてみせるわ!」パカラッ、パカラッ

女大富豪「まだまだ先は長いのよ。なのに、人生は短すぎるから。私は今の内に、もっともっともっと、沢山の夢を見ないと!」パカラッ、パカラッ

秘書「はい。私も陰ながらその夢、応援させて頂きます」パカラッ、パカラッ

女大富豪「ええ! 頼りにしてるわよ、秘書!」パカラッ、パカラッ

【世界一の大富豪(流通王・商業王・資産王・発明王)】
『体力 :5439
 攻撃力:2510
 防御力:2644
 魔力 :1073
 素早さ:2276』

『所持金:金貨9999万枚 (約50兆円)
 総資産:金貨   8億枚』(約400兆円)



女大富豪「さあ、急ぎましょう! 皆との十五年前の約束を果たす為に、例の場所へとね!」パカラッ、パカラッ

秘書「はい。御供します!」パカラッ、パカラッ

ここまで



やっぱり商人も強いな。

もしディスガイア空間なら時空間に穴開けれる技も確かにあるな。

金貨1枚1gと考えても約100トンの所持金……そりゃ商人でも高ステータスになるわな

商人かと思ったらそっちか

乙です。
さて俄然勇者のステータスとどう展開するのかが気になってきたぞ……てか秘書はさすがに常識的な能力なんだな……つまり生活環境や出会った魔物の強さではなく純粋な仲間本人達の才能なのか。

むしろ勇者が、仲間達のステータスを更に上げる添加剤みたいなものになるんじゃないだろうか?
完全サポート特化みたいなもので、一緒にいる事で初めてレベルが2以上に上がるとか。
パーティ参加しないと経験値入んないし

勇者「仲間TUEEEEE!」
勇者「でも俺も負けないくらいTUEEEEE!」

って可能性も微レ存

乙乙
最近の楽しみになってる

勇者「魔王の仲間TUEEEEE!」
かもしれない乙

魔王の手下も仲間にするんじゃないか…?

今日もこうして雑談という名のネタ潰しが行われる

それもこれも前置きが長すぎるのと乾巧って奴のせいなんだ

こんな雑談がネタ潰しになると本気で思ってるなら作者ってもんをナメてる

と、ネタ潰しを擁護するのでした

むしろ出ちゃったとしても潰されたと思って日和ったり無理に方向転換しようとする方が問題

ネタ潰し・ネタ予想・ネタ被りされたくないなら、一気に終わりまで投下するしかないやろ

と、ネタ潰しを擁護するのであった
ネタ潰し雑談をやめようと言う気はさらさらない模様

それを作者の心の声だと思っておく

ネタ潰し云々の前に雑談は専用スレでやれよと思う
俺もこれで黙るわ

ー 南の国、鉄鉱の町付近 ー


勇者「もう陽が落ちてきたな」パカラッ、パカラッ

勇者「相棒、もうすぐ町だぞ。今日はちょっと早いがそこで休もうな」パカラッ、パカラッ

馬「」ヒヒーン


勇者「だけど、その前にもう一踏ん張りだ。周辺の魔物を片付けないと、門を開けてもらえないからな」チャキッ

勇者「さあ、向こうの魔物の群れに突っ込むぞ! 回避は頼んだからな!」

馬「」パカラッ、パカラッ、パカラッ!!



勇者「せやっ!」ズバッ!! (剣攻撃)

スライムA「ピギーッ!!」
体力:4→0


勇者「はっ!」ザシュッ!!

一角ウサギ「ピギャー!!」
体力:8→0


勇者「それっ!」ドシュッ!!

人喰いネズミ「ギャァゥ!!」
体力:11→0



スライムB「ビェ!! ビッピーッ!!」スタコラサッサー

巨大トカゲA「ジュイーッ!!」スタコラサッサー

巨大トカゲB「ジュニィィー!!」スタコラサッサー


『残りの魔物たちは逃げ出した!』



勇者「うしっ! どうどう。もういいぞ」グイッ

馬「」ヒヒーン

【伝説の勇者】
『体力 :197
 攻撃力:112
 防御力:106
 魔力 : 73
 素早さ: 85』

【名馬】
『体力 :109
 攻撃力: 16
 防御力:  8
 魔力 :  0
 素早さ: 24』

勇者「」スタッ (馬から降りる)

一角ウサギ「」(死体)

勇者「うん、大丈夫だ、角には傷がついてない。一角ウサギは角が売れるから、これは根本部分から剣で削って……」ゴリゴリ

勇者「おし」パキッ

勇者「いい感じに綺麗に取れた。これは布で包んで、それで革の袋に入れると」ゴソッ

勇者「王様からたっぷり軍資金を貰ったとはいえ、少しでも資金の足しにしていかないとな。これから何があるかわからないし、大切に使いたい」


※『一角ウサギの角の相場』
長さにもよるが、およそ銅貨2枚ほど。


勇者「ここに来るまでに、一角ウサギの角が6本、電撃ヒツジの羊毛が1袋分、一つ目狼の牙が4つ。あと、レアな七色トラの爪と牙も手に入った」ズシッ

勇者「これだけあれば、銅貨70枚(約一万七千円)ぐらいにはなるはずだ。今日は大収穫だったな」


※『勇者の所持金』
金貨20枚、銀貨3枚、銅貨63枚(約1000万円)


勇者「今夜は酒場で少し奮発したお酒でも頼もうな。相棒にも何か買ってやるぞ」ナデナデ

馬「」ヒヒーン


勇者「さて、それじゃ行こうか。門を開けてもらって、この荷物を売り払わないと」カッポ、カッポ

ー 開門後、すぐ横の検問所 ー


兵士A「すみません、通行手形を改めますので、宜しくお願いします」

勇者「ああ、これを」スッ

兵士A「おお、この鷹の紋章は! 確かにこれは国王様直々の認可証!」

兵士B「やはり、あなたが勇者様なのですね! お話は伺ってます! 遠路、お疲れ様です!」ビシッ (敬礼)

勇者「ああ、ありがとう」

兵士A「王様からも、旅の便宜をはかるようにとの仰せが届いております。後で町長にも連絡を入れときますので、何かお困りの時には、いつでも私どもにお声をかけて下さい。出来る限りの事はさせてもらいます」ペコッ

勇者「それは有り難い。なら早速。安くて良い宿と、酒場を知っていたら教えて欲しいんだが」

兵士A「ああ、それでしたら、町の中央付近にある『満月亭』がお勧めです。すぐ向かいに酒場がありますし、そちらもお勧めですよ。どちらも旅の者に人気があるところです」

勇者「そうか、なら今日はそちらに泊まる事にするよ。ありがとう」

兵士B「しかし、やはり流石ですな、勇者様は」

勇者「?」

兵士B「その格好ですよ。服や鎧に返り血や泥がほとんどついていないものですから」

勇者「ああ……なるほどね。と言っても、そう大した魔物に遭遇してないだけなんだが」

兵士A「いえいえ、御謙遜を。服の綺麗さは強さを表すパラメータの様なものです。これまで何人もの賞金稼ぎや旅の者を見てきましたが、勇者様ぐらいお綺麗なのも珍しいですよ」

勇者「それはどうも。じゃあ、悪いけど俺はこれでもう行くから。明日にはまた旅立つつもりだから、その時にまた」

兵士A「はっ!」ビシッ (敬礼)
兵士B「はっ!」ビシッ (敬礼)

ー 町中、道具屋 ー


チリンチリーン

商人「へい、らっしゃい! 買い物ですかい、旦那!」

勇者「いや、売りに来たんだよ。品を見てくれるかな」

商人「毎度! どれですかい!」

勇者「これを。袋の中、全部だ」ズシッ

商人「おお、結構ありますね。どれどれ」サッ、パッ、ゴソゴソ

商人「ふうん……。全部、魔物の素材ですか……。お客さん、その格好からして騎士様とか?」

勇者「ちょっと前まではね」

商人「一応、身分証いいですか? この国は、騎士様が魔物の素材を売りに出す事が禁止されてるんで。国で管理してまとめて売る事になってるんで、密売になっちまいますからね」

勇者「知ってるよ、大丈夫。小金稼ぎとかじゃないから安心してくれ。これは身分証」スッ

商人「あ、はい。どうも」ソッ

商人「!?」

商人「ゆ、勇者様でしたか! これはとんだ御無礼を!!」ペコペコ

勇者「いや、大丈夫。やめてくれ。そういうの苦手なんだ」

商人「いえいえ、ホント申し訳ない! お詫びにこちらの品、通常の倍額で買い取りさせて頂きますんで!!」

勇者「それこそ、まずいよ。頼むから普通の価格にしてくれ。勇者が不正を働いたって噂が立ってしまう」

商人「そ、そうですね! ホント失礼しました! えーと、なら、何かオマケつけますんで!」

勇者「それもいいよ。本当に普通の客として扱ってくれればそれでいいから」

商人「いえ、ですが! 勇者様にそんな失礼な事をする訳には!」


勇者「参るな……。こういうのは逆に困るんだが……」

勇者「それなら……代わりに何か情報をもらえないかな? 何でもいいんで。最近の噂だとか、この町の事とか……」

商人「あ、そうですか。えっと、なら、あー……うーん……」

勇者「なければないでいいよ。そこまで無理して考えなくても」

商人「いえいえ! あ、そういや!」

勇者「うん」

商人「ここ最近、魔結晶の値段が高騰してるって御存知ですか?」

勇者「いや……初耳だな。魔結晶自体、高価な代物だから、そう買う機会もないし」

商人「まあ、ピンキリとはいえ、安いもんでも銀貨五枚ぐらいはしますからね。ところが今は金貨一枚出しても買えないんですよ」

勇者「……それは。相当なもんだね。二倍以上になってるのか。魔結晶は貴重な魔力回復アイテムだから、この先買う事もあるだろうに……」

商人「ですよね。うちでもたまに買われるお客さんいるんで。だけど、仕入れにそれだけの金額を使う訳にはいかないんでさあ。なんで、魔結晶は、入荷させず品切れにしてるんですよ。実際、今は相当手に入りにくいですし。他の店に行ってもまず品切れのはずですから」

勇者「となると、安くなるまで魔結晶は手に入らないって事か……」

商人「で、ここからが本題なんですが……。勇者様、すみませんが、誰かに聞かれないようもう少し近くにお願いします」

勇者「……ヤバめの話か。わかった」スッ

勇者弱ええええええええええええええ


【伝説の勇者】
『体力 :197
 攻撃翌力:112
 防御力:106
 魔翌力 : 73
 素早さ: 85』

あっ……(察し)

商人より弱いじゃねぇか……

商人「これは、言いふらさないで欲しい事なんですが……」ヒソヒソ

勇者「ああ」ヒソヒソ


商人「七つ星商会はご存知ですよね、勇者様」ヒソヒソ

勇者「流石に知ってるよ。王家御用達の大商会だからね。この前、ついに全世界に支店を出したって話も聞いてるし。俺もこの通り、魔法銃は持ってる」ガチャッ

商人「……流石に勇者様となると銃まで高級品ですね。かなりの代物じゃないんですか、それ?」ヒソヒソ

勇者「まあ、自前で買ったから結構な額はしたね。それで、その七つ星商会がどうかしたのかい?」ヒソヒソ

商人「何でもね、そこの商会が最近、魔結晶を密かに買い占めしてるらしいんでさあ。おかげで、値段が高騰してるって噂で」ヒソヒソ

勇者「魔結晶を……? どうしてまた?」ヒソヒソ

商人「それは何とも……。だけど、その買い占めてるって噂の七つ星商会も魔結晶は品切れになってるんです。つまり……」ヒソヒソ

勇者「七つ星商会が、故意に値段をつり上げてるって事か?」ヒソヒソ

商人「多分ですけどね。だから、商人仲間の間じゃ、近々、相当デカイ戦争でもあるんじゃないかってもっぱらの噂です。魔結晶を大量に購入するのって大体国とかですからね」ヒソヒソ

勇者「戦争……? 要はどこかで大規模な戦争が起きるかもしれないってネタを七つ星商会が掴んでるって事だよな、それ」ヒソヒソ

商人「ええ。戦争が起きりゃ、魔法使い達の魔力回復の為に魔結晶は必ず必要になりますからね。だから足元見て、各国に高額で売り付けようって考えてるんじゃないかってそういう噂なんですよ」ヒソヒソ

勇者「……なるほどね」ヒソヒソ

仲間「勇者YoEEEEEEEEEEEEEE!!」

仲間「勇者YOEEEEEEEEEEEEEE!!」

商人「あそこはこれまでそんなやり口した事はなかったんですけどねえ……。ただまあ、必要品の買い占めとかはどこもやる手口ですから」ヒソヒソ

商人「で、そんな噂が密かに広まってるんで、今は武器や防具とかも値段が上がってるんですよ」ヒソヒソ

勇者「そうか……。あまり良くない話だな。戦争も武器の値上がりも……」ヒソヒソ

商人「で、その当の七つ星商会はと言えば、値上げした武器屋や防具屋を嘲笑うかの様に、勇者様旅立ち記念って事でバーゲンをやり始めまして。おかげで値上げしたやつらは客を七つ星商会に全部取られちまったらしいですがね」ヒソヒソ

勇者「……というか、そんなバーゲンやってたのか」ヒソヒソ

商人「はい。まあ、あの七つ星商会ってのは、昔から機会を見るのが上手いっていうか、タイミング外さない商会なんでね。こっちからしたら、商売上がったりでたまったもんじゃないんですが……」ヒソヒソ

商人「ただ、今回の件についてはちょっとあこぎなんで、うちら商人の組合連中からはかなりの反感を買ってますよ。出る杭は打たれるのが当然の世界ですから。元よりあの商会は仲間内から閉め出し食らってますし」ヒソヒソ

勇者(……というより、今の勢力図を考えると、閉め出しを食らってるのは逆に彼らの様な気もするがな)

商人「まあ、噂とかはこんなとこです。お役に立てましたかね」

勇者「ああ。貴重な情報をありがとう。きっと、今後の役に立ってくれると思う」

商人「それは良かった。何かしら勇者様のお役に立てたなら嬉しいもんで。ええと、それで買い取りでしたよね。すぐに値段つけますんで、少々お待ち下さい」

勇者「ああ、頼む。色とかは本当につけなくていいから」

商人「普通、逆なんですがね。しかし、わかりやした。いつも通りの価格でやらせてもらいますね」

勇者「よろしく」



チャリン
『+銅貨62枚!』



勇者「ああ、そうだ。あと、小さな金槌ってあるかい? テント用の布を持ってきたはいいけど、建てる為の金槌を忘れてきてしまったのに後から気付いてさ」

商人「もちろん、ありますよ。ちょいとお待ちを」ゴソゴソ



ジャラッ
『-銅貨3枚』

ー 宿屋、満月亭 ー


チリンチリーン

女商人A「いらっしゃいませー」


勇者「やあ。一名で一泊。部屋は普通で、夕食なしの朝食ありでお願いしたいんだけど」

女商人A「あ、はい。かしこまりました。それでしたら、銅貨10枚頂きます」

勇者「へえ、本当に安いな。それじゃあこれを」ジャラッ

女商人A「はい、確かに。ところで……」

勇者「?」

女商人A「その格好……。もしかして、勇者様では……?」

勇者「……ああ、いや。普通の旅人だけど」

女商人A「ですけど、先程、兵士さんに聞いた通りの服装ですし……」

勇者(……先回りして、宿屋の方に連絡をしたのか。親切なんだろうけど、さっきの事もあるし、出来ればやめて欲しかった)

女商人A「それに何より、雰囲気が違います。強そうなオーラって言うか、そういう特別な感じの雰囲気がビシバシ出てますし……」

勇者(どんなのなんだろうか……)

女商人A「やっぱり、勇者様なのでは? もしも違ったら申し訳ないですけど……。町長も後から御挨拶に伺うって聞いてるので、私も見落とす訳にはいかなくて……。怒られてしまいますから。……すみません」

勇者「……わかった。降参だ。確かに、女神様から神託を受けてる」

女商人A「ああ、やっぱり! 店長ー! 勇者様が御来店されましたー!!」

勇者「いや、そんな大声で……」


ドタドタドタ!!


主人「これはこれは! ようこそいらっしゃいました、勇者様!!」

女商人B「ようこそいらっしゃいました! 勇者様!」
女商人C「ようこそいらっしゃいました! 勇者様!」
商人D「ようこそいらっしゃいました! 勇者様!」
商人E「ようこそいらっしゃいました! 勇者様!」
料理人F「ようこそいらっしゃいました! 勇者様!」



勇者「またか……。しかも総出で……」

主人「ささ、大したおもてなしも出来ませんが、どうぞどうぞ。一番上等な部屋を用意しておきましたので」

勇者「いや、普通の部屋で構わないんだが……。それに、支払いも普通の部屋分しか」

主人「いえいえ、お気になさらず。代金はそれだけで結構です。なにせ、世界を救う勇者様ですから、それぐらいのサービスは致します」

勇者「出来ればこういうのはやめて欲しいんだが。俺は王族や貴族という訳でもなく、ただの平民なんだから」

主人「はっはっは。勇者様がただの平民でしたら、私どもは奴隷になってしまいますとも。ご冗談を」

勇者「いや、そういう話じゃなく」

主人「本当にお気になさらず。大した事ではありませんので。だいいち、勇者様を普通の部屋にお泊めしたなんて言ったら、私どもが恥をかいてしまいます」

主人「ですので、ささ。私どもを助けると思って、どうぞこちらに」


主人「おい、勇者様のお荷物は丁重に運べよ!」

主人「あと、こちらへは馬で来られたらしいからな! 多分、表にいるはずだ! そちらも丁重に馬小屋に連れてけよ!」


主人「ささ。勇者様。どうぞ」

勇者「……参った。迂闊に名乗るものじゃないな……」ハァ

ー 夜、宿屋『満月亭』 ー


勇者「しかし、参ったな。結局、一番豪華な部屋に通されてしまったし……」

勇者「服の洗濯や相棒の世話もチップなしでやってくれるんだからな……」

勇者「これ以上、タダで世話になるのも悪い。もう寝るだけだから、酒を飲みに酒場まで行くか」

コンコン

勇者「っと、その前に誰か来たか。まあ、そろそろ来る頃だろうとは思ってたけど……」

勇者「はい。どちら様ですか?」スタスタ

「こんばんは。私、この町のまとめ役をしております、町長と申します。勇者様がこちらにご宿泊なさってると聞きまして、ご挨拶に伺いました」

勇者「そうですか。ありがとうございます。(殺気は感じられないな……。音からして一人だけだし、問題ない)」

勇者「今、開けます。どうぞ」

ガチャッ

町長「どうも、初めまして。町長でございます、勇者様」ペコリ

勇者「ご丁寧な挨拶痛み入ります。勇者です」

町長「しかし、こうして勇者様とお逢い出来て光栄ですよ。これからの自慢話に出来ます」ニコリ

勇者「そんな自慢出来る程の者ではないですよ。それより、今晩はこの町にお世話になります。宜しくお願いします」

町長「いえいえ。しかし、流石は勇者様ですな。噂通り、誠に御立派で勇敢そうな方で」

勇者「ありがとうございます」

町長「聞いた話によると、元は騎士隊長様だったとか。さぞかし剣や魔法も優れていらっしゃるんでしょう。その凛々しいお姿がまた心強い」

勇者「ありがとうございます。ですが、まだ修行中の身ですので、日々精進している途中です」

町長「左様ですか。となると、やはり毎日稽古や訓練などを」

勇者「旅立つ前はそうでしたね。今は実戦に身を置いていますので、休息を取る方を大事にしてますが」

町長「ああ、なるほど。そうですね、疲れていては出せる実力も出せなくなりますからな」

勇者「というより、旅自体が緊張と警戒の連続ですからね。気を緩める時は緩めないと、体が持ちません」

町長「……左様ですか。そこら辺はやはり勇者様も人の子なのですな」

勇者「元から人の子ですよ。女神様から加護を頂いてるだけで、それ以外は他の方と変わりません」

町長「そうなのですか……?」

この程度のステータスでやれやれ系なのがじわる

町長「しかし、その加護というのは、やはり凄いものなのでは? 例えば、魔物から攻撃を受けてもまるで効かないとか……」

勇者「流石にそれはないと思います。実感的にはほとんど前と変わりませんね。もっとも、まだ魔物から攻撃を受けた事がないので、実際のところどうなのかはわかりませんが……」

町長「それはそれでまた……凄い。やはりお強いのですな、勇者様は」

勇者「いえ、馬で街道を走っているので、そんなに魔物とは出くわさないだけです。それに、ここら辺に強い魔物は少ないですから」

町長「いえ、私どもからしたら、よく見るスライムや一角ウサギでさえ、十分、脅威ですとも。やはり勇者様はお強いのでしょう」

勇者「そうだといいんですが……。しかし、上には上がいると言いますから。慢心して油断する様な真似はしたくないですし」

町長「いやはや、心掛けもやはり御立派で。流石は勇者様です」

勇者「ありがとうございます。……ただ、それよりも」

町長「はい?」

勇者「何か私に言いにくいお話でもあるのでしょうか?」

町長「あ、う……。わかるのですか……?」

勇者「ええ。先程から、無理に話題を繋げようとしてる感じでしたし、何より誉め言葉があれだけ続けばこちらも自然と構えます。後に、何かあるんじゃないかと」

勇者「王都で騎士隊長をしていた頃、よくこういう事がありましたので。大体は、公に言えない様な下世話な頼み事でしたが」

町長「申し訳ありません……。お察しの通り、誠に恥ずかしながら、勇者様にお願いがあるのです……。ただ、決して私利私欲だけではありませんので、どうかお話だけでも聞いて頂けませんか……」

勇者「一応、話だけは聞きます。断るかもしれませんが」

上には上がいる……まぁ、確かにな

勇者「それで、一体、どの様な事でしょうか?」

町長「実は……最近新しい採掘場を発見しまして」

勇者「採掘場ですか。そういえば、この町はそれで成り立っているような町でしたね」

町長「御存知ならお話が早い。その通りなんです。ここら辺は良質な鉄が採れますので、それで発展した町なんです」

町長「それで、今、掘っている採掘場があるのですが、そこはかなり深くまで掘り進めていて、段々と採れる鉄の量が減ってきているんです」

町長「そこで、新しく別の場所をずっと探してまして、つい半年ぐらい前にようやく見つけました。掘り進む為の足場やトロッコなども作り、今、ある程度形になってきたところなんです」

町長「ところが、ここ最近、その採掘場の近くに魔物が頻繁に現れる様になりまして」

町長「そこまで強い魔物という訳ではないので、幸いな事にまだ軽い怪我人しか出ていません。ですが、何度も何度も現れるのでこれでは採掘は到底出来ません」

町長「元騎士隊長様ならおわかりだと思いますが、国が守ってくれるのは町だけなんです。外の採掘場までは兵士を回してくれません。なので、採掘場は私どもの力だけで守らねばならない」

町長「ですから、採掘場にはそれ専用の護衛を雇って配備してますが、魔物があれだけ多く現れてはその護衛の数がとても足りません」

町長「結局、その新しい採掘場で掘るのは諦めざるを得ず、今は封印しています。しかし、これまで莫大な金額を投資していますから。そして、そのお金は町の者達も多く出しています。結局、皆が大損をしているのです」

町長「かといって、護衛を多く雇ってそこを掘る様にしても、護衛料が毎月かなりな額になり、大した儲けは出ません。やはり意味がないのです」

町長「ですので、今のこの苦境を、勇者様のお力でどうにかならないかと……。こうしてお恥ずかしながら相談に参りました。どうかその知恵とお力を貸して頂けないでしょうか」

勇者「……なるほど。そうですか」

勇者「ちなみに、魔物が最近よく現れる原因はわかっているんですか?」

町長「いえ……。なんとも……。ただ、恐らくはという程度の見当ならついてます」

町長「以前、採掘場近くの森で、奇妙な魔物を見たと言う者がいましたので……。初めて見る魔物だったそうです」

町長「ですから、ひょっとしたらそれが原因ではないかと思っています。強い魔物は、周辺の弱い魔物を引き付けますから」

勇者「……そうですね。それは十分、有り得そうな話です」

勇者「それで、その奇妙な魔物の姿とか形はわかりますか?」

町長「はい。何でも、ライオンの体に蛇の尻尾がついていた巨大な魔物だったと……」

勇者「それはまさか! キメラ……!?」

町長「……? キメラというのは?」

勇者「そういう強い魔物がいるんです。私も本の中でしか見た事ありません。嘘か本当かは知りませんが、魔王軍が、違う種類の魔物を掛け合わせて新たに作った、人工的な魔物だとか……」

町長「そんな魔物が……。しかし、どうしてまたこんなところに……」

勇者「それはわかりませんが……。ひょっとしたら、前の北の国軍との戦いで破れた際、本隊とはぐれてこちらの国に迷いこんだのかもしれません」

勇者「大きな戦争の後には、そういうはぐれ魔物が必ず何十匹かは出ますから。私も、前の戦いの時は、ずいぶん長いこと残党狩りをしました」

勇者「……しかし、キメラか。もし本当だとしたら、相当厄介ですね」

町長「……そんなに強い魔物なのですか……?」

勇者「はい。その本の記録によると、キメラ一匹仕留めるのに、軍の中隊がまるごとやられる程の被害が出たと書いてありました。もしそれが本当なら、訓練された兵士150人分ぐらいの力を持っている事になります」

町長「……っ!!」

やれやれ系…?

町長「それは……また。いやはや……どうすれば……」

勇者「本当にキメラであれば、近くにあるこの町自体が危険ですね。城壁は高く堅牢に作られているとはいえ、下手したらそれを破りかねない」

勇者「とにかく、今日はもう暗いので無理ですが、明日の朝にでも私が確認に行ってきます。それでもしもキメラであれば、王都に連絡して軍を派遣してもらいます」

町長「そ、そうですか……。それは有り難い。是非、お願いします」

勇者「ええ、話からして、もう採掘場の問題どころではなさそうなので。この件は引き受けました。お任せ下さい」

町長「ありがとうございます。助かります。勇者様が引き受けてくださるのなら、実に頼もしい。安心出来ます」

勇者「元騎士隊長として、当然の処置です。それより、この話は内密にお願いします。まだはっきりした訳ではありませんので、変なデマとなって流れたら困りますから」

町長「はい、それはもう。口に鍵をかけておきます。パニックになる可能性もありますし」

勇者「お願いします。では、申し訳ありませんが、今夜はこの辺で。夜明けと共に出るつもりなので、早い内に寝ておきたい。体調を整えないと、こちらも不安ですから」

町長「あ、はい! では、私はこれで失礼します。宜しくお願い致します、勇者様」ペコッ!!

勇者「ええ、御安心を」

ここまで
普通なら省略する部分をちょいと真面目に書いてるから、ダルくなるかも。魔物がいて困ってるんで助けてってだけなんで
あと、雑談はお好きな様に

乙!
しっかり書いてくれた方が面白いよ
人物像がわかっていいと思う

乙!

【名だたる剣士】
『体力 :9999
 攻撃翌力:7432
 防御力:8914
 魔翌力 :   0
 素早さ:3809』

【教会を破門された女】
『体力 :6254
 攻撃翌力:   1
 防御力:9999
 魔翌力 :8870
 素早さ:4209』

【天才格闘家】
『体力 :7703
 攻撃翌力:9999
 防御力:4056
 魔翌力 :  12
 素早さ:9999』

【大賢者】
『体力 :5254
 攻撃翌力:  12
 防御力:8296
 魔翌力 :9999
 素早さ:6238』

【世界一の大富豪(流通王・商業王・資産王・発明王)】
『体力 :5439
 攻撃翌力:2510
 防御力:2644
 魔翌力 :1073
 素早さ:2276』

『所持金:金貨9999万枚 (約50兆円)
 総資産:金貨   8億枚』(約400兆円)






【伝説の勇者】
『体力 :197
 攻撃翌力:112
 防御力:106
 魔翌力 : 73
 素早さ: 85』

闇死霊「はい……」

【死神の使い】(人型・霧状)
『体力 :134977
 攻撃翌力:  7198
 防御力: 16127
 魔翌力 : 23346
 素早さ: 17271』


焔鳥「SIGYAAAAAA!!!」

【不死鳥】(全長41メートル)
『体力 :271840
 攻撃翌力: 13319
 防御力:  5044
 魔翌力 :  9106
 素早さ: 17676』


クラーケン「URYYYYYYY!!!」

【烏賊の王族】(全長39メートル)
『体力 :131347
 攻撃翌力:  9930
 防御力: 22044
 魔翌力 : 11665
 素早さ:  7673』


琥珀蝶「…………」バッサ、バッサ

【神秘の幻蝶】(全長34メートル)
『体力 :128290
 攻撃翌力:  9625
 防御力:  7411
 魔翌力 : 23697
 素早さ: 15732』


雷獣「GAOOOOOOO!!!」

【破滅の魔獣】(全長52メートル)
『体力 :208724
 攻撃翌力: 18050
 防御力: 10437
 魔翌力 :  8502
 素早さ: 12140』


魔軍師「うむ」

【不敗の名将】(身長177センチ)
『体力 :129万
 攻撃翌力: 13万
 防御力: 27万
 魔翌力 : 45万
 素早さ: 18万』

勇者よっわ!

伝説……?

勇者はこれでもそこそこ強いよな?少なくとも旅に出る前のパラメータと考えたら破格の強さだわ……ドラクエなら。
んで改めてやべぇな魔王軍……新米や参謀でこれなら側近や魔王とかどうなるんだ……魔王とか体力8桁くらいあるのか?

新米なら5人でかかれば勇者守りながらでも行けそうだけどどうなる事やら

なんかずれてる

【名だたる剣士】
『体力 :9999
 攻撃力:7432
 防御力:8914
 魔力 :   0
 素早さ:3809』

【教会を破門された女】
『体力 :6254
 攻撃力:   1
 防御力:9999
 魔力 :8870
 素早さ:4209』

【天才格闘家】
『体力 :7703
 攻撃力:9999
 防御力:4056
 魔力 :  12
 素早さ:9999』

【大賢者】
『体力 :5254
 攻撃力:  12
 防御力:8296
 魔力 :9999
 素早さ:6238』

【世界一の大富豪(流通王・商業王・資産王・発明王)】
『体力 :5439
 攻撃力:2510
 防御力:2644
 魔力 :1073
 素早さ:2276』

『所持金:金貨9999万枚 (約50兆円)
 総資産:金貨   8億枚』(約400兆円)



【伝説の勇者】
『体力 :197
 攻撃力:112
 防御力:106
 魔力 : 73
 素早さ: 85』

ぶっとんでんなぁ

神殿騎士の精鋭と比べたら勇者の強さがわかるけど
まぁうん……

冗長過ぎる

ディスガイアかよ

あと、勇者は戦略得意なのかもな、最初に書いてあったし

見えてないステータスがありそう

ゆ、勇者くんにはカリスマがあるから…

運に極フリしてるから…

女神の加護受けてるし……

勇者にはト○ネコよろしく馬車番の大役があるやろ!

ドラクエのキャラがFFの世界に来たらこうなるんだろうなぁ勇者が雑魚敵より弱いって。

勇者及び一般人やザコ魔物 ドラクエ
仲間 FFテイルズ
魔王軍及びドラゴン ディスガイア

まず勇者が土俵に上がれてもいない……。

勇者には隠しパラがあるんだよ(必死)

女神の封印が解ければ超絶バフ入って強キャラ化すると思う

実は魔王弱いとかありそう

異界に乗り込むくだり見てる限りそれはない

魔王「異界TUEEEEEEEEEEEEE!!」

異界がTUEEEEってなんだよそこはYABEEEEEEだろ

早く勇者が仲間の強さに唖然するシーンがみたいぜ

仲間「勇者YOEEEEEEEEEEEEEE!!」

ー 翌朝、早朝、門の前 ー


勇者「それでは、行ってきます。昼までには戻ってきますので」

町長「はい。申し訳ありませんが、お頼みします」


兵士A「勇者様、またお戻りになられるのですか?」

勇者「ああ、ちょっと用事が出来てしまったのでね。軽くこの辺りを偵察してまた戻ってくる」

兵士A「そうですか。勇者様なら大丈夫とは思いますが、御武運を」ビシッ (敬礼)


兵士B「門を開くぞー! 滑車を回せー!」


「はいっ!!」


ギギギィィィ……


勇者「では、また」ヒラリ (馬に飛び乗る)

勇者「行くぞ、相棒!」タンッ

馬「」ヒヒーン


パカラッ、パカラッ、パカラッ


町長「どうかこの町を宜しくお願いします、勇者様……」

ー 新しい採掘場、付近 ー


パカラッ、パカラッ、パカラッ


勇者「よし、着いたな。ここで間違いない」

勇者「どうどう」グイッ

馬「」キキィッ


勇者「話によると……向こうの森だな」スタッ (馬から降りる)

勇者「悪いが、こっからは別行動だ、相棒。繋いではおかないから、もしも強い魔物が来たら構わず逃げてくれ」

勇者「戻る場所はわかってるよな。またあの町だぞ」

馬「」ヒヒーン


勇者「よしよし、流石は相棒だ。それじゃあ、しばらく向こうの森の中に行ってるから」

勇者「気を付けるんだぞ、こんなとこで死ぬなよ」ナデナデ

馬「」ブルル

勇者「ああ。それじゃあな、相棒。危ないから、鳴き声はあまり出すなよ」タタッ

ー 森の中 ー


ガサッ、ガサッ

勇者(……結構、広い森だな。それに木が多い。歩いてると、どうしても音は出るか)


勇者(一応、風下から進んではいるが、それもあまり意味がないかもしれないな。キツネやウサギの姿さえ見つからない)

勇者(ただ、その代わりに……)



ガサッ、ガサササッ

巨大山猫「シギャァァ!!」ダッ (茂みから突然現れ、襲い掛かる)


勇者「ふっ!」ズバッ!! (一閃)



巨大山猫「グギャッッ!!」ドサッ
体力:42→0


勇者(魔物には頻繁に出会うな……。しかも、ここら辺ではあまり見ない強めの魔物が多い)

勇者(キメラがいるってのは、やはり本当かもしれない。キメラでなくとも、かなり強い魔物がいるのは確かだろう)

勇者(だが、はっきりと姿を見ないと、軍を要請するのは厳しい。どうにか見つけて確認をしな)


ザシュッ!! メキメキッ!! (木が根本から倒れる音)


勇者「!?」 (慌てて後ろを振り向く)


キメラ「グワオオオオオオオッッ!!!」ダダダダッ




勇者「キメラ!?」

勇者「くそっ! 先に向こうに見つけられてたのか!!」

キメラ「グルルルルッッ!!」ダダダダッ (全長4メートル)

【合成魔獣・獅子タイプ】
『体力 :451
 攻撃力:129
 防御力: 77
 魔力 : 74
 素早さ: 50』


勇者「くっ!! 迂闊だった! 俺のミスだ!!」

勇者「もう、やるしかない!!」チャキッ (剣を構える)




キメラ「ガルルルルッ!!」ダッ!! (飛び込んでくる)

勇者「はっっ!!」ダッ!! (斬りつける)

鮮血が空中に舞った。

飛び込みざま勇者が振り抜いた剣は、キメラの巨大な足を掠めた。
だが、一方で勇者も、肩口を爪で切り裂かれ、服を赤黒く染め上げていた。

その一回の攻防は、それだけで相手の力量を把握するにはお互い十分だった。


油断出来ない相手だ。それが、キメラが抱いた印象であり、

これは俺の手に余る。それが勇者が抱いた印象だった。


その印象の差が、即ち、両者の実力の差と言えた。


キメラは足の傷口を軽く舐め、再び突撃の構えを取る。

勇者は剣を鞘に納めると、代わりに魔法銃を取り出して構えていた。


弾に込められた魔法は閃光魔法。
主に灯りとして用いられる魔法だが、目眩ましとしてもよく使われる。

勇者はその魔法が使えないので、いざという時の為に王都で弾として何発か込めてもらっていた。逃げる為の用意だ。

強敵相手に無理をする必要などない。ここは素直に退いて軍に援軍要請をすればいい。
これまでかなりの月日を戦場で過ごしてきた勇者は冷静に今の状況を判断していた。

キメラの目に狙いを定め、手慣れた手つきで勇者は引き金を引く。

反動で銃が浮く。砲声! そして着弾!

眩いばかりの光が辺りを一瞬で包んだ。

勇者は即座に背中を向けて走り出す。


だがーー。


咆哮がすぐ背後から轟いた。背筋が凍りつく。
勇者は反射的に剣を抜いていた。考えるよりも先に体が動いていた。振り向きざま斬りつける。

鼓膜を破るかの様な悲鳴!
肉を裂く感触が手にずしりと伝わった。
巨大なキメラの前足が視界一杯に映り、血しぶきが顔にかかる。

だが、それと同時に体に強い衝撃が来た。斬られながらもキメラはその前足を振り切っていた。
勇者の体がゴムまりの様に勢いよく弾き飛ばされ、木に当たって地面へと崩れ落ちる。

倒れ込んだところに、呻く間も許さず、今度は巨大な蛇の顔。キメラの尾!
それが大口を開けて襲い掛かってきていた。

しゃにむに足で蹴り上げた。顎の部分に運良く当たり蛇が怯む。その隙に勇者は転がる様にして必死で飛び起きる。少しでも気付くのが遅かったら、今頃その牙が体に食い込んでいたはずだ。


だが、休む間など与えられず、キメラが口を開けて巨大な炎を吐き出す。勇者はすぐに氷魔法を唱えそれを相殺する。

キメラが血だらけの前足で飛び掛かって襲う。勇者が剣で逆に切り返して更なる傷を負わす。

キメラが突進する。避けきれず直撃。だが、吹き飛ばされながらも、勇者は魔法銃を撃ち体に火傷を負わせる。


両者の実力が拮抗しているが故に、逃走は最早不可能だった。閃光魔法もキメラには効果がなかった。再び背中を向ければ今度こそ無防備なその背に鋭い爪痕が刻まれるだろう。

両者の攻撃は途切れず、互いに一瞬の弛緩も許さず、そのまま死闘へと突入していった。

激しくも長い攻防が続く。だが、消耗戦の様相となってきた時、そこで両者に決定的な差が出た。
それは体力の差だ。それに関しては勇者の方が圧倒的に不利だった。

一対一の時点で、この勝敗は半ば最初から決まっていた様なものだった。

インフレの後だと茶番だな

勇者「」ハァハァ、ハァハァ
残り体力:12 残り魔力:18


キメラ「グルルルッ……!」
残り体力:51 残り魔力:26



勇者(ヤバイ……。さっきから血が流れ過ぎてる……)ハァハァ、ゼェゼェ

勇者(もう体が思う様に動いてくれない……。あと、一撃でも喰らったら死ぬぞ……)ハァハァ、ゼェゼェ

勇者(体力回復アイテムも、ある分は使いきった……。俺は僧侶じゃないから回復魔法も使えない……)ハァハァ、ゼェゼェ

勇者(魔法銃は……元から回復魔法は使えない仕様だ……。魔力はまだ多少残ってるが、こいつの毛皮には炎魔法も氷魔法も効きづらい……。逆転の手にはならない……)ハァハァ、ゼェゼェ

勇者(詰んだな……。死ぬのか……俺……。こんなとこで……)ハァハァ、ゼェゼェ

勇者(まだ何もしてないのに……。まだ十五年前の約束すら果たしてないのに……)ハァハァ、ゼェゼェ

勇者(だけど、体がもう……もってくれな……)ガクッ (膝が崩れ落ちる)


キメラ「グルルルルッッ!!」ガキッ、ガキッ (威嚇の噛み付き)


勇者(くそっ……。流石に魔物だ。死の匂いには敏感だな……。向こうも……次で決着だってわかってやがる……)ハァハァ、ゼェゼェ

勇者(何だよ、これは……。こんな俺の……どこが勇者なんだ……。魔物一匹倒せない勇者のどこが……)ハァハァ、ゼェゼェ

勇者(こんなところで……死ぬ羽目になるのか……。まだ……本当に何もしてないってのに……)ハァハァ、ゼェゼェ


勇者(女神様……。もしも見ているなら……どうか俺を……)ハァハァ、ゼェゼェ

勇者(俺を救ってくれ……! 俺に加護を与えてくれ……! どうか……!)ハァハァ、ゼェゼェ




キメラ「ウォォォォッ!!」ダダッ


勇者「くそおおおおおっっ!!」(剣を構える)




キメラ「グオオンッッ!!」ガブッ!! (体に噛み付き)

勇者「ぐああああああああああっ!!!」メキョッ、バキッ



キメラ「ガウルッ!!」グググッ (顎に力を込める)

勇者「あっ! ぎあっ!! いぎゃああああああっっ!!」メキッ、ゴキッ

勇者の体に巨大な牙が深々と食い込み、力任せに潰されていく。

骨も折れただろう、内臓も相当やられただろう、余りの痛みに脳が壊れそうになり、目の前の景色が一気に色を失っていった。


これが『死ぬ』という事なのか……。


薄れゆく意識の中で、ふと勇者の頭の中に次々と過去の光景が映し出されていった。

ああ、これが走馬灯というやつかと、勇者はぼんやりとそれを見つめていた。




少年B「せやっ!」ブンッ (木剣を振る)

子供勇者「当たるかっ! それっ!」ベシッ!!

少年B「うぎっ!! っ痛ーーー!!!」ピョン、ピョン


子供勇者「やったね! また、俺の勝ちだよ!」

少年B「ちっくしょー! 何でいっつもお前に勝てないんだよ!」

子供勇者「そりゃ、そうだよ。少年Bって、目でどこ狙ってくるかすぐわかるし!」

少年B「目って何だよ! そんなん俺、わかりゃしねえぞ!」

子供勇者「わかるって。目とか見てたら、多分ここ狙ってくるんだなあ、みたいなのが」

少年B「わかんねえよ! そんなのお前だけだ! ちくしょう、もう一回勝負だ! 覚悟しろ!」サッ

子供勇者「いいよ! でも、絶対負けないから!」サッ


「「そりゃ!!」」


カンッ、コンッ、カンッ

ベシッ!!

「っ痛ーーーーー!!! またかよ、ちくしょう!」


 




少女A「ふふ……。ここをこうして……。これはこっちのがいいかな……?」ゴソゴソ

子供勇者「あれ、少女A。何してるの?」


少女A「あっ、見ちゃダメ……。秘密なんだから」サッ

子供勇者「えー、そういうの気になる」

少女A「気になってもダメ……。もうすぐ出来上がるから、その時に教えてあげる」

子供勇者「ホントに?」

少女A「ホント」

子供勇者「なら……待ってる。後ろ向いてればいい?」

少女A「うん」ニコッ



「出来たよ。お待たせ。ほら」ポフッ

「え? これ、花冠?」

「ううん、兜。子供勇者にあげたいと思って作ったの。……大事にしてね」

「兜なんだ。これ、カッコいい? 勇者みたい?」

「うん。勇者みたい」

「やった! ちょっと、お母さんに見せてくる!」

「あっ、待って、私も行く! 置いてっちゃやだ!」


 

主人公の聞きなのに茶番にしか見えないというこの




少女C「川の向こう? そっちに行くの?」

子供勇者「うん! イチジク見つけたんだ! だから行こう!」

少女C「イチジク! あたしも食べたい。でも、他のみんなは誘わなくていいの?」

子供勇者「だって、危ないから。少女Cじゃないときっと無理だし。だから、みんなには秘密だよ」

少女C「秘密はいいけど、あたしじゃないと無理ってどいう事?」

子供勇者「ほら、ここ。あそこの川の上に出てる石を飛んでくんだ。見ててね」

子供勇者「よっ、それっ、もう一回っと」ピョン、ピョン、タンッ

少女C「うわ、上手……」

子供勇者「ほら、少女Cも」

少女C「え、でも……」

子供勇者「大丈夫。少女Cなら出来るよ。すっごい身軽じゃん」

少女C「う……。わかった。ちょっと怖いけど……」


「せーのっ」

「それっ、わっ、きゃあっ、っとっと」

「ほら、やっぱり! 少女Cなら絶対出来るって思ってた!」

「ホントだ……! スゴい、あたしスゴいかも!」

「じゃあ、行こう! ここ越えたらすぐだから!」

「うん! 二人でいっぱい食べようね!」


 




子供勇者「蛇の脱け殻?」

少年D「そう。昨日、見つけたんだ。子供勇者も見に行く?」

子供勇者「何かちょっと気持ち悪そう」

少年D「じゃあ、やめる?」

子供勇者「でも、気になる」

少年D「だよね。みんな見たくないって言ってたけど、子供勇者だけはそう言うって思ってた。じゃあ、やっぱり行くよね?」

子供勇者「うん……。行く。で、どこで見つけたの?」

少年D「内緒だよ。村の柵の外に出ちゃうから」

子供勇者「え、それまずいよ。っていうか、外に出たの、昨日?」

少年D「うん。だから内緒。小さな抜け穴見つけてさ。そこからたまに外に出るんだ。そんなに遠くまで行かないけど」

子供勇者「見つかったら物凄く怒られちゃうよ」

少年D「その時はその時」

子供勇者「見かけによらず、こういう悪さするよね、少年Dって」

少年D「だって、外の世界って気になるじゃん。大きな柵で囲ってて、まったくわかんないしさ。だから、見たくなるんだよ。大人になるまで待ってられないもん」

子供勇者「それはわかるけど……」


「実は、この前、魔物も見たんだ。これは本当に内緒だからね」

「え! どんなんだった! 何を見たの!? スライム!?」

「うん。スライム。急いで逃げてきた」

「そっか、スライム見たんだ。いいなあ、俺も見たい。そして、倒したい」

「勇者とか魔物の事とかになると、僕以上に食いつくよね、少年勇者って」

「だって、俺、勇者になりたいもん!」

「そうなんだ。でも、僕は魔法使いになりたいなあ。そして、いつかは賢者になって、世界中を見て回るんだ。行けるんだったら、妖魔の森だって一度行ってみたいし」

「妖魔の森って?」

「ああ、それはね……」


 




少女E「あーあ、今日は雨降りかあ……。つまんないね」

子供勇者「そう思ってさ、これ、持ってきたんだ」

少女E「本……?」

子供勇者「うん、この前町長さんから借りたんだ。冒険のお話。ほら」パッ (本を広げて挿し絵を見せる)

少女E「面白そう……。でも、子供勇者、この本読めるの? 難しい言葉でいっぱいなのに……」

子供勇者「お父さんとかに聞きながら、ちょっとずつ読んでる。もう半分まで読んだんだよ」

少女E「そうなの? どんなお話? この子、お姫様?」

子供勇者「うん、そうだよ。お姫様がお城の外に出ちゃって困ってるところを、この主人公が助けるんだ。それでね」

少女E「あ、待って。出来れば、私も読みたい。だから先に言わないで」

子供勇者「じゃあ、一緒に最初から読む? わからない言葉が出てきたら教えてあげるから」

少女E「うん! 読む。そうする」


「そういえば、子供勇者って、本、好きなの?」

「うん。好きだよ。外で遊ぶのも好きだけど、本を読むのも好きなんだ。だって、読んでてワクワクするから。大きくなったら、絶対、俺もこんな冒険するんだ」

「勇者になって?」

「うん! 勇者になって! それで、みんなと冒険の旅に出るんだ! もう約束してるし!」

「私も、一緒に行きたい……って言ったら、仲間に入れてくれる?」

「もちろん! 少女Eも大切な友達だもん!」

「そっか……。良かった。なら、私もがんばるから」

「うん!」


  




「今日は、お父さん、お母さん……遅いな。まだ帰って来ない」

コンコン

「あ、やっと帰ってきた! お帰りなさい!」ガチャッ

「……子供勇者」

「おじさん……? どうしたの? 何か顔が真っ青だけど……」

「落ち着いて……よく……。よく聞いてくれ」

「え? うん……」

「昨日、大雨が降っただろ。それで……。お前の畑の近くで、ついさっき……」

「…………」

「土砂崩れが……あって……。お前のお父さんとお母さんが……そこで畑仕事してて……」

「!!」

「土砂をどけた時には……もう……」

「お、お父……さん……と……お母さん……は……?」

「天国に……。行ってしまった……」

「あ、う……あ、あ、ああああああああ!!」


 




コンコン、コンコン、コンコン、コンコン

「ぇぐっ……ぅっ、ぅっ……」


ギィッ……

「鍵もかけてないのか……」

「あ……。騎士さん……ぅぐ……」

「あいつが亡くなったという報せを聞いてな……王都から飛んできた。残念な事に……葬儀には間に合わなかったがな……」

「ぅ、ぇぐっ……ぅぅっ……」

「墓にあいつの好きだった酒を供えておいた……。天国で飲んでくれてるといいが……」

「……ぉ、お母さんも……一緒に」

「わかってる……。良い人を亡くした。本当に、良い人間ほど早く亡くなる……。何でなんだろうな……」

「だから……お、俺……一人になって……。と、遠くの町の……教会に……。ぃ、行かなきゃ……ならなくなったって……。そう……言われて……」

「ああ……聞いたよ。去年も今年も冷害が続いてるからな……。どこも余裕がないんだろう……」

「ぃ、行きたく……ないっ……。この家も……離れたくない……。なのに……。みんなと……一緒にいたいのに……。行かなきゃ……いけないって……ぃ、言われて……」

「……それなんだが。良かったら……俺の家に来ないか?」

「ぅぁ、騎士さんの……家に……?」

「ああ、王都だから遠くに行かなきゃいけないってのは変わりないんだけどな……。だが、教会に孤児として引き取られるよりはいいだろう。あそこの生活は辛いと聞いているからな……」

「ぅう……ぅっ……」

「それに、うちにはお前と同じ歳ぐらいの娘がいる。きっと寂しくはないぞ。少しおてんばだから、お前と気が合いそうだしな」

「ほ……本当に……いいの……?」

「ああ、遠慮せずに来い。気にするな」


 




「……みんな。……そういう訳で、俺、王都に行く事になったから……。だから、もうみんなとは……」


「何でだよ……。俺、お前にまだ一回も勝った事ないのに……!」

「やめなよ……! 少年勇者のせいじゃないでしょ! 辛いのはみんな同じよ!」

「見送らないと……。僕たちは何も出来ないんだから……」

「ぅっ、うあ……」

「泣かないでよ。泣いたら、私まで……ぅぅ」



「俺も……。みんなと離れたくない……。だけど、だけど……。う、ぅぁ……」


「いやだ……。そんなの俺はいやだ……! もっと一緒にいたいのに……! これでお別れなんていやだ!」

「もう会えなくなるなんて……。わたしもいやだよ……! また帰ってくるんだよね……? でなきゃ、でなきゃ……」

「また会えるよね……! そうでなきゃ……あたしもいや……!」

「だって……! 僕たち、仲間なんだから……!」

「また、きっと……。きっとじゃなくて、絶対に……ぅぅ」


「うん……! 絶対にまた……会おう……! 大きくなって大人になったら、絶対にまた俺はこの村に帰ってくるから……!!」



「だから、その時は……! この木の下で……!! もう一度会おう……!!!」



「その時、俺は……勇者になってるから……!! 絶対に勇者になってるから!! それまでみんな、待ってて……!!!」


 

ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー


そんな約束……してたのに……。

一体……何してんだよ……俺は……。


こんなんじゃ……勇者失格だ……。勇者だって……名乗れない……。


子供の頃からずっと……。ずっと聞かされてきたのに……。

勇者は諦めない……。

勇者は挫けない……。

だから、勇者は不可能を可能にするんだって……。


そう……俺は……こんなところで……死ねない……。

死んじゃいけない……。


あの木の下で……。

みんなが……。

きっと待ってるから……!








『勇者よ……』


『聞こえますか……勇者よ……』


『貴方にこの世界の命運を託します……』


『この世界を正しい方向に導けるのは、世界にたった一人……。貴方しかいないのです……』


『今の私は封印されし身……。加護と祝福を与える以外、ろくな力を持ちません……』


『ですから、どうかお願いします……』


『魔王を倒し、必ずやこの世界に平和をもたらして下さい……』


『頼みましたよ……勇者よ……』








『負けないで……』


 

ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー


キメラ「ガルルルッ!!」ガギッ (噛み砕こうと更に力を込める)

勇者「ぅっ……がはっ……!!」ボキッ、メキャッ!!



その時の勇者は、ほとんど意識のない状態だった。

だが、手が、口が、体が、勝手に動いていた。



勇者「女神……よ……迷える……子羊に……祝福の光を……」パァァッ (回復魔法)
体力:1→29

キメラ「!?」


勇者「あぐっ!! ぬぐあああっ!!」ググッ (牙を掴んで持ち上げていく)

キメラ「!!??」

勇者「俺は……!! もう諦めない……!!」グギギギッ!!

勇者「約束一つ果たせない勇者なんか……勇者と呼べない!!」グギギギッ


≪ 次に会う時は絶対にお前に勝ってやるからな! ≫

勇者「ああ……。わかってる……。決着……つけないとな……!」グギギギッ!!


≪ 約束……。忘れないでね……。またここで会うんだよ……! ≫

勇者「忘れる訳……ないだろ……! ずっと覚えてた……!」グギギギッ


≪ そして、あたしらで魔王を倒す冒険の旅に出るんだ! ≫

勇者「そうだよな……! なのに、俺がここで死ぬ訳にはいかないよな……!!」グギギギッ!!


≪ みんなで世界中を旅するんだよ! ≫

勇者「ああ……! 楽しみにしてるっ……!!」グギギギッ!!


勇者「ぬああっっ!!!」メキョッ、バキッ!! (牙をへし折る)

キメラ「グオアギガアアアアッッ!!!」ビクッ


≪ そして、世界を平和にするの! 私たちで! ≫

勇者「約束だっっ!! 絶対に果たす!!」ドスッ!! (剣を突き立てる)

キメラ「ギアアアアアアッッ!!」


勇者「雷よ! 我が剣に宿れ!!」バチバチッ!!

勇者「とどめだっ!!」


『魔法剣!!  雷 鳴 閃 !!』



 

剣が煌めき、雷撃を伴って一閃された。

その剣はキメラの固い皮膚を斬り裂き、そしてーー。


一瞬の事だった。これまでの長い攻防がまるで嘘だったかの様に。


勇者の剣がキメラの体を一刀両断にした。




ズバッ!!


キメラ「ガ……!! ギッッ…………」ドサッッ
体力:51→0


勇者「倒した……! どうにか……勝てた……!!」ガクッ (膝から崩れ落ちる)



『勇者の強さが上がった!!』

【伝説の勇者】
『体力 :197
 攻撃力:112
 防御力:106
 魔力 : 73
 素早さ: 85』
    ↓
【伝説の勇者】
『体力 :204
 攻撃力:115
 防御力:110
 魔力 : 77
 素早さ: 87』

『勇者は回復魔法を覚えた!!』
回復魔法(弱)

『勇者は雷魔法を覚えた!!』
雷魔法(弱)

『勇者は魔法剣を覚えた!!』
雷斬り、炎斬り、氷斬り

ここまで


焼け石に水…

乙!
お約束展開キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

でもあの数字達を見た後だと切なすぎる……

回想長い…


オチがわかってる分シリアスがギャグに見える

シリアスな展開なのに、ステータスのせいで茶番にしか見えないwww
レベルが上がっても、スズメの涙か…文章だけ見ると、レベルが1から10くらいいっきに跳ね上がった風に見えるけど

オチがどうとか考えずに普通に楽しんじゃってる
良いよここまでの展開

勇者には死に戻りの能力があるから(震え声)

勇者の故郷は特産品:ステータスUPの種とか、そーゆー魔境村だったんだろーか

乙ー

各国に影響力を持つ宗教の神殿騎士団(精鋭)が
体力:*94 攻撃翌力:*35 防御力:*42 魔翌力:19 素早さ:26

1人で経済を動かすレベルの大商人のボディーガードが
体力:182 攻撃翌力:*61 防御力:*64 魔翌力:38 素早さ:69

34隻の船団を従えて西の海の覇者と呼ばれた海賊団の長が
体力:217 攻撃翌力:*51 防御力:*89 魔翌力:*3 素早さ:31

と考えると勇者も間違いなく強いんだよね
体力:204 攻撃翌力:115 防御力:110 魔翌力:77 素早さ:87

仲間のステがおかしいのと魔物のレベルが頭お詳しいんだけど

こうして見ると強いんだよな……強いのになぁ……

なお

勇者
体力:****204 攻撃翌力:***115 防御力:***110 魔翌力:****77 素早さ:****87

戦士
体力:***9999 攻撃翌力:**7432 防御力:**8914 魔翌力:*****0 素早さ:**3809

僧侶
体力:***6254 攻撃翌力:*****1 防御力:**9999 魔翌力:**8870 素早さ:**4209

格闘家
体力:***7703 攻撃翌力:**9999 防御力:**4056 魔翌力:****12 素早さ:**9999

賢者
体力:***5254 攻撃翌力:****12 防御力:**8296 魔翌力:**9999 素早さ:**6238

商人
体力:***5439 攻撃翌力:**2510 防御力:**2644 魔翌力:**1073 素早さ:**2276 

魔軍師
体力:1290000 攻撃翌力:130000 防御力:270000 魔翌力:450000 素早さ:180000

やめてあげてよぉ

ディスガイアかな

勇者もみんなと会う頃には同じように強くなってるさ

こうして見てみると仲間の低い方のステータスも結構異常だな

もし仲間たちのステが9999でカンストだとすれば、勇者にもワンチャンある

敵がめちゃくちゃ強い所連れてって高速レベリングしなきゃ…

パワーレベリングはする方にもされる方にも傷跡が残るからヤメロォ(ネトゲ経験

メタルキングかはぐメタ狩ればいいしへーきへーき(ドラクエ感)

勇者養殖はよ

おかしな事は何もしていないのに何故か全てがギャグになっている不思議

スレタイとか前フリがなければ熱い展開なのになあww

続きはよ

ー 新しい採掘場、付近 ー


勇者「」ハァハァ、ゼェゼェ

勇者「どうにか森を……抜けられたが……! さっきからずっと魔物に襲われっぱなしだぞ……!」ハァハァ、ゼェゼェ


スライム「ピギィー!!」ドスッ (体当たり)

勇者「ぐっ……!」
残り体力:10→9


勇者「はっ!」ズバッ!!

スライム「ピギャーッ!!」
体力:4→0


勇者「くそっ。スライムの攻撃すらもう避けられなくなってる……」ハァハァ、ゼェゼェ

勇者「目眩と吐き気が酷い……。大きな傷はあらかた治せたけど、血の再生まで回復魔法がいき届いてないのか……」ハァハァ、ゼェゼェ

勇者「それに、血の匂いのせいで魔物もうじゃうじゃ集まってくるし……」ハァハァ、ゼェゼェ


一つ目狼A「ガルルッ」ガブッ!!
一つ目狼B「ガウッ」ガブッ!!

勇者「ぐあっ!」
残り体力:9→7

勇者「離れろっ!!」ザシュッ、ドシュッ

一つ目狼A「ギャウン!!」ドサッ
一つ目狼B「ギィッ!!」ドサッ
体力:19→0


勇者「倒しても、倒しても、きりがない……! やめろ! 来るな!」ザシュッ!!

一角ウサギ「ミギュー!!」ドサッ
体力:8→0

吸魔コウモリ「」バサバサ!!

食人植物「」ガサガサ

呪いイノシシ「ブルルルッ!!」


勇者「くそうっ!! まだ来るのか!!」

勇者「森を抜けたってのに、しつこく追って来る……!!」ハァハァ、ゼェゼェ

勇者「このままじゃ、町に帰るまでに殺される……!!」ハァハァ、ゼェゼェ


ヒヒーン!!


勇者「!!」


パカラッ、パカラッ、パカラッ


馬「ブルルルッ!!」ズガッ!! (体当たり)

食人植物「……!!」メキッ!!
体力:10→4


勇者「相棒!!」

勇者「ふんっ!!」ズバッ!!

呪いイノシシ「ブギィィ!!」ドサッ
体力:21→0


吸魔コウモリ「ピィィィー」ボッ!! (炎魔法)

馬「」ヒヒーン!!
残り体力:46→39


勇者「やめろ!! 相棒に手を出すな!!」ザシュッ

吸魔コウモリ「ギィッ!!」ドサッ
体力:7→0


馬「バルルッッ!!」ドカッ!! (足蹴り)

食人植物「」ドサッ
体力:4→0


勇者「相棒! 大丈夫か!!」

馬「」バルル……


勇者「こんなに一杯、怪我して……。お前、傷だらけじゃないか……」

馬「」ブルルルッ

勇者「逃げずに、わざわざ俺を迎えに来てくれたんだな……。相棒」グスッ

馬「」ヒヒーン


勇者「ああ、ありがとう。相棒」

勇者「わかってる。二人で町まで帰ろう。乗るぞ」ヒラリ

馬「」ブルルルッ

一角ウサギA「キュイ!!」ダッ (突進)
一角ウサギB「キュキッ!!」ダッ (突進)


勇者「やられるかっ……!!」ザシュッ、ズバッ

一角ウサギA「」ドサッ
一角ウサギB「」ドサッ
体力:8→0



勇者「よし……」ハァハァ、ゼェゼェ

勇者「さあ、行くぞ……!」グイッ

馬「」ヒヒーン!!



勇者「相棒は真っ直ぐ進んでくれ……! 血路は俺が開く!」チャキッ

馬「ブルルルッ!!」パカラッ、パカラッ、パカラッ

ー 鉄鉱の町 城壁上 ー


兵士A「おい。あれ、勇者様じゃないか?」

兵士B「ああ、お戻りになられたみたいだな。ずいぶん早かったが……。いや……だけど、何か様子が……」

兵士A「おい、勇者様の服、真っ赤に染まって血だらけだぞ! 何かあったんじゃないか!」

兵士B「周辺に魔物は!?」

兵士A「スライムが一匹だけだ! 今、仕留める!」グイッ (弓を構える)

兵士A「それっ!」ピュンッ!!



ピギィー!!



兵士A「よしっ! 一発で仕留めた! 運が良いぞ!!」

兵士B「伝令ーー!! 勇者様がお戻りになられるぞーー!! 急いで門を開けろーー!!」


「おーーっ!!」


ギギギィィ……!!


ー 門のすぐ近く、検問所 ー


パカラッ、パカラッ、パカラッ!!


馬「」ヒヒーン!! (急停止)



勇者「良かった……。助かったな……相……棒……」ハァハァ、ゼェゼェ

兵士A「勇者様! 御無事で何よりです! ですが、どうされました!」

勇者「魔物に……やられてね……。だが……町長に伝えてくれ……」ハァハァ、ゼェゼェ

勇者「キメラは……倒したから……。もう心配は……いら……ないと……」グラッ

勇者「」ドサッ (落馬)


兵士A「勇者様!?」

兵士B「気を失ってる!! 急いで担架を!!」

兵士C「教会まで運ぶぞ!! 神父様に治してもらわないとまずい!!」

兵士D「おい! 手の空いてるやつは、先にひとっ走りして神父様と町長に事情を話して来い! 急げ!!」

兵士E「馬の方もかなり怪我してる! こっちは獣医に連れていけ!」

ー 教会 ー


神父「これはまた……酷い怪我を。すぐにそこの寝台に」

兵士A「はい! 運ぶぞ。お前、足を持て。せーのっ」ソッ
兵士B「よしっ」ソッ

勇者「」ボフッ……


神父「では……」サッ (十字を切る)

神父「天にまします慈愛の女神よ……。この者に、愛とあなたからの庇護を与えたまえ……」パァァッ…… (回復魔法)

勇者「ぅ……」
残り体力:4→18


兵士A「な、治りましたか……。神父様?」

神父「いいえ……。傷が深いので、これだけではとても」

兵士B「なら、もう一度回復を……」

神父「駄目です。女神様の加護とはいえ、回復魔法は自然の摂理を曲げているのですから」

神父「何度も使えば確かに傷は治るでしょう。ですが、これほどの大怪我だと、疲労や体への痛みは逆に激しく残るはずです」

神父「逆効果です。薬も飲みすぎれば毒になる。それと同じです。私は高位な僧侶ではありませんので、こうして何日もかけてゆっくり回復させていかないと」

神父「しばらくはここでお泊めして、休養して頂きましょう。当分の間は休まないと」

兵士A「そうですか……。しかし、勇者様ともあろうお方が何でこんな大怪我を……」


ガチャッ

町長「それは、私から話そう……」


兵士A「町長! 何か知ってるんですか?」

町長「ああ……。まさか、こんな事になるとは思ってもいなかったが……」

ー 説明後 ー


兵士A「そんな怪物がこの近くに潜んでたってんですか……」ゾクッ

町長「ああ……。勇者様がこれだけ酷い怪我を負っているんだ……。間違いない……」

神父「では、勇者様はその怪物と戦って……。この様な怪我をされたと」

町長「ええ、きっと。ですが、それでどうなったのかまでは……」

兵士B「あ! それなら俺が聞いてます! キメラは倒したと!」

町長「なんと! 本当にか!?」

兵士B「はい! だから、心配はいらないと町長に伝えて欲しいとおっしゃってました!」

神父「それは……。流石は勇者様……」

町長「なら、新しい採掘場の方はもう行っても大丈夫という事か……。すまないが、兵士さん。あなたたちの隊長にこの事をお伝えして、その事を確認してくれんか」

町長「それだけ強い魔物だ。もしも死体がそのままなら、燃やして処理した方が良い。新しい魔物の苗床になるかもしれないしな」

兵士B「わかりました! 隊長にお話ししてみます!」

町長「うむ。すまないが、頼んだ」

神父「しかし……。その様な強い魔物をお一人で倒されてしまうとは……」

町長「ええ。おかげでこの町も助かりました。この様な大怪我をされてまで……。勇者様にはなんとお礼をすればいいのやら……」

神父「正しく……伝説の勇者様ですね。この方ならば、きっと魔王をも倒してくれるでしょう」

町長「ええ。必ず……」

ー 二日後 東の国、王都 ー


名剣士「」スタスタ


門番A「止まれ! ここより先は王宮の敷地……これは名剣士様!」

門番B「お戻りになられたのですか! 失礼致しました!」


名剣士「なに、構やしねえよ。それより今日はちょっと急ぎの用件でね。陛下に会いに来たんだ。取り次いでくれるか?」


門番A「はっ! 名剣士様の頼みでしたらすぐに!」

門番B「きっと陛下もお喜びになられるはずです!」

ー 同時刻 中央国、大聖堂 ー


大司教「只今、戻りました。教皇猊下」

教皇「うむ……。遠路御苦労であった。して、あやつは首を縦に降ったか?」

大司教「はい。教会に従い、教皇猊下に忠誠を尽くすとの事です」

教皇「なるほど……。やはり勇者の件が効いたか……。だが、あやつの姿が今ここには見えぬが……これはどういう事だ?」

大司教「それが……。枢機卿の着任式までは、教皇猊下にはお会いしたくないと申しまして……」

教皇「それで、忠誠を尽くすとはよく言ったものだな」

大司教「誠に申し訳ありません……。私の方からもお諌めしたのですが、これだけは譲れないと頑固に言い張るもので……」

教皇「まあ良い……。所詮は籠の中の鳥と同じ。私に歯向かえぬという事が理解出来ているのなら良かろう……」

大司教「はっ……」

教皇「それで、あやつは今どうしておる?」

大司教「はい。大聖堂を回って、昔の馴染みに挨拶をしてくると」

教皇「昔の馴染みに……?」

大司教「どうされました?」

教皇「いや……まさかな……。それに『あの方』に会うのは不可能であろうし……」

大司教「……?」

ー 大聖堂敷地内、離れの特別礼拝堂 ー


女「」テクテク


神殿騎士A「そこでお止まり下さい、女様」サッ (槍を構える)

神殿騎士B「ここより先は、聖なる領域。教皇猊下の許可がない者は、例え国王であろうと通す訳には参りません。お引き取りを」サッ


女「……知っています。だからこそ、私はここに来ました」

女「ここに来る為だけに私は戻って来たのです。そこをおどきなさい」


神殿騎士C「いいえ。例え女様であろうと、ここをお通しする訳には参りません」

神殿騎士D「どうかお引き取りを。怪我をなされない内に」チャキッ (剣を抜く)


女「……ならば仕方ありませんね」

女「押し通らせてもらいます」スッ


神殿騎士A「お引き下さい!」サッ (槍を喉元に突き立てる)


女「どうぞ。私は抵抗しませんから。どのような理由であれ、危害を加える事を私は致しません」


神殿騎士A「こちらは本気です! どうかお引き取りを!」グッ……

女「いえ、引きません。通らせて頂きます」ソッ (槍に手をかけ、横に逸らす)


神殿騎士D「ぐっ! ならば御免!」サッ (剣を上に振り上げる)

おお!更新きてる!楽しみにしてました

騎士が剣を降り下ろした。

とはいえ、それはあくまで威嚇行為であり、肩あたりにかすらせるつもりだった。

しかし……!



バキンッ!!


騎士D「剣が……! 折れた……!?」


騎士の降り下ろした剣は、女に当たると同時にあっさりと、まるで枯れ木の枝の様に折れ散らばった。

呆然と鍔だけになった剣を眺める騎士。女がその横をゆっくりと通り抜けていく。


女「生憎、私は女神様から多大な加護を頂いています」

女「それ故に、剣も魔法も、私の前では意味を成しません」

女「御自分の武器を処分されたいというのであれば、他の方も御自由にどうぞ……」


そうして、固く厳重な鋼鉄製の扉を開けてゆっくりと大礼拝堂の中へと入っていく女……。

騎士達が我に返り、慌ててこの事態を報告しに行くまでの間に、女は大礼拝堂の奥の奥へとその姿を消していた……。


特別大礼拝堂の一番奥。その先にある異常に巨大な一室。

そこには、異なる聖域結界が六重にかけられ。

更に、教会が禁忌としている、魔と陰陽道を用いた複合結界も二重に張られている。

恐らく、人間が考えうる最強の結界。

その奥目指して。

女は一歩一歩確かめる様に進んでいった。

ー 同時刻、南の海

 『凪の海賊団』拠点

 占拠している島 ー



ダダダダダッ……


海賊A「おい、あれ! 津波か!」

海賊B「待て! 落ち着け! あれは!」


「はっ!!」ダンッ!! (大ジャンプ)


ヒューンッ……


女船長「せいっ!!」ズサッ!! (着地)


海賊A「女船長!!」

海賊B「何でこんなとこに!? 確か西の海まで遠征に行ってたはずじゃ!!」


女船長「話は後だっ!! 緊急事態が起きた!!」

女船長「全員に伝えろ!! もしもの時に備えて、この島からすぐに出て避難しろとっ!!」


海賊A「避難!? どういう事ですかい、女船長!!」


女船長「説明する暇もない! 巻き込まれて死にたくなかったらさっさと動け!!」
 

海賊A「ア、アイサー!!」

海賊B「避難命令だーっ!! 全員、この島から出ろーっ!!」


女船長「ったく! 来るのにずいぶんかかっちまった! 手遅れになってなきゃいいが!!」ダダダダダッ

女船長「間に合えよ!!」ダダダダダッ  

ー 同時刻、魔王城、庭園 ー


魔軍師「魔王様。異世界への扉を開く儀式、全て整いました」

魔軍師「万が一の時を考え、城の中ではなく、この庭園に魔方陣は描かせてあります。ここなら、仮に異世界から魔獣が飛び出してきても十分対処出来ます」

魔王「うむ。御苦労」


魔王「では、側近。これから向かうぞ。覚悟しておけよ」

側近「はっ。この命にかえましても! 魔王様は必ずお守り致します!」

魔王「固いな。少し心をほぐしておけ。何が起こるかわからんのだ。臨機応変に対応出来るよう、柔らかくな」

側近「はっ!」


大魔導師「魔王様、側近様。朧月が向こうの空に上り始めております。これで異界送りの条件が整いました。どうぞ、あちらの魔方陣の中央に」


魔王「うむ」スタスタ

側近「」スタスタ


大魔導師「では、魔力を込めます……」パアアッ

魔導師A「我々も」パアアッ

魔導師B「はい」パアアッ


魔導師C「」パアアッ

魔導師D「」パアアッ

魔導師E「」パアアッ

魔導師F「」パアアッ

地面に血でもって描かれた魔方陣が、注ぎ込まれる魔力に感応して、徐々に朱色に、緑に、黄金色へと変化していく……。


大魔導師「古より伝わりし、名も姿もなき魔神王よ……。黄泉と現世の狭間に降臨し、新たな世界を生み出せし、混沌と創造の大悪魔……」

大魔導師「血と我が魔力を贄に、その世界への扉を今ここに開けたまえ……。我らは祖を同じくする、闇の魔神の一族……」

大魔導師「敵でも味方でもなく、敵にも味方にもなる者……。混沌を好む魔神王よ。我らの呼び掛けに応えたまえ……」


その言葉が終わった直後、空間の揺らめきが魔方陣内に発生した。そして……。



フッ……



魔軍師「消えた……。魔王様と側近の姿が……」


大魔導師「」フゥ…… (額の汗を拭う)

大魔導師「異界送りの儀式は成功です。上手くいきました」


魔軍師「そうか……。これで当面の肩の荷は下りたが……」

魔軍師「問題は、次に魔王様がいつお戻りになられるか……。そして、その間、竜王軍との戦いに敗れぬ様にする事だな……」


魔軍師「各方面にいる魔将軍に伝えよ! 魔王様は予定通り、異界へと向かわれた! お戻りになるまで、各自奮起して持ち場を死守せよとな!」

魔兵士「はっ!!」

ー 同時刻、妖魔の森、最南端近く ー


大賢者「あれが……妖魔の森か」

大賢者「凄まじく広いんだな……。端から端が見えない。地平線一杯に広がってる……」

大賢者「それに、何て言うか……。見てて寒気がする……。こんなに遠くから見てるだけなのに……。おどろおどろしい……」

大賢者「流石、魔王城があるって言われてる森だ……。これは想像以上だけど……」

大賢者「恐れてばかりもいられないよな……。腕試しと様子見がてら、中に行ってみよう」


大賢者「」テクテク……

ー 妖魔の森、最南端 ー


闇死霊「……到着」フワッ (暗黒の霧から人型に)

焔鳥「」バッサ、バッサ (全長41メートル)

クラーケン「」ウネウネ (全長39メートル)

琥珀蝶「…………」バサバサ、バサバサ (全長34メートル)

雷獣「」ズダンッ (全長52メートル)


闇死霊「……ここから分担して攻撃。我は中央国」

闇死霊「焔鳥は、東の国」

焔鳥「SIGYAAA!」

闇死霊「クラーケンは南の国」

クラーケン「URYYYY!」ウネウネ

闇死霊「琥珀蝶は西の国」

琥珀蝶「…………」バサバサ、バサバサ

闇死霊「雷獣は北の国」

雷獣「GARRRRR!」


闇死霊「三日で人間を全滅。集合。二日で魔王城へ戻る」

闇死霊「では、散……」フワッ (暗黒の霧に変化)


闇死霊「む……? 向こうに人間?」





大賢者「っ! 何だ、この化物達は!!」

>>153

闇死霊「手始め。血祭り」

闇死霊「死の霧……」フッ……


闇死霊の体から暗黒の霧が放たれ、それはまるで生き物の様に大賢者めがけて近付いていく!


大賢者「っく! 即死系の霧か!?」

大賢者「結界魔法! 我を死神の鎌から守れ!!」フインッ


大賢者の周囲に光り輝く粒子が現れ、円を描く様に大賢者の体を包み込んだ!


闇死霊「……魔導師か。人間にしては高位」

闇死霊「面倒だ。焔鳥、雷獣。交代」


焔鳥「SIGYAAAAAA!!!」バサッ!! (全長41メートル)

雷獣「GAOOOOOOO!!!」ダダッ!! (全長52メートル)


大賢者「っ!!」(身長180センチ)

180センチって書く必要あるのだろうかwww

巨大な二匹の生物が、大賢者めがけて襲いかかった!

片方は体が燃え盛る焔の怪物、もう片方は雷を身に纏った化物!

焔鳥はそのまま突撃してきた! その体は鉄をも溶かす高温! 最早、体自体が危険極まりない武器!

大賢者はすぐさま氷魔法を唱え、それで障壁を作る!

だが! それは横から放たれた雷撃によって瞬時に破壊された!

雷獣が口から吐き出した、魔力を伴った雷球だった。その間に焔鳥の突撃! 素早い! 逃げられない!

咄嗟に大賢者は右手で防御魔法を、左手で回復魔法を放った。だが!

気が付けば、大賢者の周りには琥珀蝶の鱗粉が舞っていた。魔法は放たれなかった。魔力そのものを無効化する特殊な鱗粉! それに大賢者が気付いた時には最早完全に遅かった!


「うぐあぁああぁっがっ!! ぎあっぐっがぁぁ!!!!」


焔鳥の灼熱の体が通過し、大賢者の全身を焼いていく! 熱さではなく最早痛み! 激痛!

そこへ雷獣からの雷撃! スパーク! 爆発! 大賢者が糸の切れた人形の様にその場に倒れこむ! そこへ、クラーケンの巨大な足が飛んできて、地面へと激しく叩きつけた!


クラーケンが足をどかした時にはもう、大賢者はその場で息絶えていた……。動かない……。亡くなった……。その魂は天へと召されていった……。

絶対ジョジョ見てから書いただろw

闇死霊「多少、邪魔が入ったが……」

闇死霊「問題なし」

闇死霊「各自、人間を根絶やしに……」

闇死霊「散……」フワッ (暗黒の霧になって移動)


焔鳥「SIGYAAAAAA!!」バサッ、バサッ

クラーケン「URYYYYYYY!!」ウネウネ

琥珀蝶「…………」バッサ、バッサ

雷獣「GYAOOOOOOO!!」ダダダッ






大賢者「」…… (骸)

ジョジョじゃん

地の文が完全にスピードワゴン

雑魚が忠告無視して調子にのるから…

ステータス見たときからわかっちゃいたがこれ勇者の仲間すら雑魚だな

ー 同時刻、西の国、小さな町 ー


女大富豪「ようやく着いたわね。予定より少し遅れてしまったかも」テクテク

秘書「そうですね。多少ですが」テクテク

馬車「」カッポ、カッポ


女大富豪「馬車一杯の魔結晶……。これだけの魔結晶を集めるには流石に手間取ったものね」テクテク

秘書「そうですね。買い占めとも誤解されてしまいましたし、入手がより困難になりましたから」テクテク

馬車「」カッポ、カッポ


女大富豪「最後らへんはかなり足元見られたしね。おかげで、財産の三分の一を使ったわ。まあ、必要経費だから仕方ないけど」テクテク

秘書「……国が動く金額なんですがね」テクテク

馬車「」カッポ、カッポ


女大富豪「いいのよ、別に。元からこの為だけに財を成したようなものだし」テクテク

秘書「はあ……」テクテク

馬車「」カッポ、カッポ


女大富豪「さ、着いたわ。私専用の特別研究所」ピタッ

秘書「はい」ピタッ

馬車「」ピタッ


女大富豪「行きましょうか。魔結晶は全部中に運んで」ガチャッ

秘書「はい」ゴトッ、ゴトッ (馬車に積まれた、魔結晶が大量に入った木箱を次々と下ろしていく)

馬車「」ブルルルッ (鳴き声)

ID変わってまったけど>>1
ここまで

乙です。
これ大賢者マジか?なんかで復活するのかどうか……てか仲間が本当に集まれるのか疑問になってきたな。

180㎝とかチビだなwwwwww



ん?

成長すると6mくらいになるんだよきっと(震え声)

スピードワゴン絶好調

魔獣は全長50m近いから、人間対サイコガンダムやビグザムみたいなもんだな
勇者の仲間も人間離れした能力だから、ザクやジムくらいの戦力はありそうだけど

(鳴き声)
いらないだろwwwwww

>>1がノリノリで安心した

トリップとか、つけてらっしゃらないんですか?

それでも僧侶ならなんとかしてくれそう(希望的観測)

ー 翌日。鉄鉱の町、門付近 ー


勇者「それでは、相棒共々お世話になりました」

馬「」バルルルッ


町長「いえ、お世話になったのはこちらでございます。勇者様がいなかったら、この町は滅んでいたかもしれませんので……」

兵士A「そうです! あんな化物をよくぞお一人で倒して下さいました! 感謝の言葉もありません!」

兵士B「この町の者は全員、勇者様から頂いた御恩を忘れません! 改めて、ありがとうございます!」

勇者「元騎士隊長として当然の事をしただけだよ。それに戦闘になってしまったのは、見つかった俺の責任だからね」

町長「なんと勇者様らしきお言葉……。功を誇らず恩を売りもしない……。誠に貴方こそが真の勇者様でございます」グスッ

神父「まったくです。女神様と勇者様に感謝を……」

勇者「神父様も、どうもありがとうございます。昨日は無理を言って、相棒にまで回復魔法をかけて頂きまして」

神父「いえ。勇者様の愛馬となれば、それぐらいはお安い御用ですとも。それよりも、体調の方は大丈夫でしょうか?」

勇者「ええ。おかげさまで。自分でも回復魔法を使いましたし、万全とは言いませんが、傷はもう完治しています」

神父「ですが、本来ならもう何日か治療を要する怪我です。疲労などは完全に抜けてはいないはずですので……。やはり、もう少しここに滞在した方が良いのではないでしょうか?」

勇者「生憎、そうもいかないんです。とある約束をしていて、のんびりしていたら、その期日までに間に合わなくなってしまう」

神父「そうですか……。仕方ありませんね……。ですが、お気をつけて。人馬ともに決して無理をなさらないように」

勇者「ええ。御心配ありがとうございます」

神父「……しかし、我々、僧侶以外で回復魔法を使える方がいるとは思いませんでした。やはり、女神様の加護を受けておられる勇者様なのですな」

勇者「自分でも驚いてます。ですが、自信にもなりました。旅をする上でも役立ちますし、ありがたい事です」

神父「ええ。貴方にこれまで以上の女神様の加護があらん事を……」

勇者「それでは、行ってきます。皆さんもお元気で」


町長「勇者様も、どうか御無事で」

兵士A「ご武運を!」ビシッ (敬礼)

兵士B「お祈りしております!」ビシッ (敬礼)

神父「お気をつけて……」


勇者「行くぞ、相棒」ヒラリ

馬「」ヒヒーン



兵士A「勇者様の旅立ちだ! 開門! 開門ーっ!!」

兵士B「鐘を鳴らせー! 勇者様の御無事を祈れーっ!!」


カラーン、コローン、カラーン、コローン


ギギギギィィ…… (門が開く)



勇者「どうもありがとう。いつかまた」

勇者「さあ、出発だ、相棒!」タンッ

馬「」ヒヒーン!



パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ……




【英雄譚、『伝説の勇者』より、一部抜粋】

かくして勇者は、鉄鉱の町から旅立つ

町の危機を未然に防ぎ、更には町の発展に貢献せり

町の者は勇者が去った後も、こう語る

彼こそ、魔王を倒す伝説の勇者に相違なしと……

ー 街道 ー



勇者「予定より、ずいぶん遅れてしまったからな」

勇者「途中で休憩を挟みつつも、飛ばしていくぞ、相棒!」タンッ

馬「」ブルルルッ!!



パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ!!



一角ウサギA「キュイ!!」

一角ウサギB「キュキッ!!」

【一角ウサギA、Bが現れた!】



勇者「押し通るっ!」ザシュッ、ズバッ

一角ウサギA「」ドサッ
一角ウサギB「」ドサッ
体力:8→0



四つ目カラス「ガァー! ガァー!」バサッ、バサッ

【四つ目カラスが現れた!】



勇者「はっ!」ザシュッ

四つ目カラス「」ドサッ
体力:19→0



パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ……


【古書、『勇者伝記』より一部抜粋】


その後、勇者は途上で何回か小さな町に立ち寄って宿泊しつつ、通常は六日の道程を四日で駆け抜けた

この頃には、勇者は自分が勇者である事を秘匿して旅をする様になっていたので、具体的にどこの町に立ち寄ったかまでは不明である

あるいは、木や枝を使って布を張り、野宿した可能性も否定出来ないが、一人旅の為、恐らくそれは選択しなかったと思われる


※『注釈』
当時は魔物が至る所に跋扈していた為、旅の途中で野宿する人間はほとんどいなかった
夜間の方が魔物の動きが活性化するし、暗闇である為、敵に気が付きにくいからというのがその理由となる
その為、馬で都市と都市とを点々と繋ぎながら旅をするのが一般的だった
どうしても野宿をする場合は、まず周りに聖水(アイテム)を振り撒き、焚き火をしながら交代で見張りをするのが基本となる


そして、勇者は生まれ故郷の比較的近くにある大都市、『商業で栄える町』へと辿り着く……

ー 商業で栄える町 ー


勇者「さて、宿屋に荷物や鎧とかは全部置いてきたし」

勇者「少し早いが、軽く酒場に行って英気を養うか」テクテク


勇者「ここから、俺の生まれ故郷までもう少しだ。明日にはきっと辿り着ける。丁度、約束の日だ」

勇者「みんな、あの木の下で待っていてくれてるんだろうか……」

勇者「別に戦士や僧侶とかになってくれなくててもいい。パーティーとか組まなくてもいい。みんなが普通に生活をしてて、元気に暮らしてくれてたらそれでいいんだ」

勇者「約束を覚えていて、待っていてくれるだけで嬉しいから」

勇者「ひょっとしたら、もう誰か結婚してるかもな……。結婚してても全然おかしくない歳だしな。もしかしたら子供もいるかもしれない」

勇者「明日が楽しみのような、誰もいなかったらどうしようみたいな……不思議な感覚だな……」

勇者「今日は何だか強いお酒が飲みたい。興奮して眠れなくなりそうだし」

勇者「でも、良い夢が見れそうな、そんな気分だ……」

勇者「本当に……」

勇者「明日なんだな……約束の日が」ソッ


ギィ……

カランカラーン


「いらっしゃいませー」

ー 酒場 ー


女店主「いらっしゃい。ご注文は?」

勇者「ウイスキーを。あと、オススメ料理を幾つか。予算は銅貨10枚以内で」

女店主「あいよ。にしても、お客さん、その注文の仕方ずいぶん手慣れてる感じがするね。旅の人かい? それも結構、旅慣れてる方でしょ? 賞金稼ぎか何か?」

勇者「まあ、そんなところかな」

女店主「そう。なら、懸賞金がついてる魔物の情報はいる? こっちは銅貨2枚で教えるけど」

勇者「いや、それはいいよ。それより、何か日持ちしそうでかさばらない食材を沢山包んでくれないかな。こっちは銀貨1枚出すから」

女店主「そりゃありがたいね。にしても、銀貨1枚分ってやけに気前がいいじゃん、結構な量になるし。そんなに長旅になるの?」

勇者「いや、昔の馴染みや知り合いにお裾分けしたいんだ。これから生まれ故郷に戻るものだから」

女店主「ああ、なるほどね。お土産か。それじゃ、保存のきく干し肉とかがいいかな。それでいいかい?」

勇者「いいよ。よろしく」

女店主「はいよ。おーい、キッチン。オーダーだよ。パンと特製ビーフシチュー、あと鴨のソテー。それから、干し肉を銀貨1枚分包んでおいて」


「へーい!」


女店主「あとウイスキーだったね。割るかい?」

勇者「いや、ロックでいいよ」

女店主「それじゃあ、グラス」トポトポ、トンッ

勇者「ありがとう」

ー 食事中 ー


女店主「ところで、あんた、旅してるんなら、その途中とかで聞いた何か面白そうな噂や情報とかないかい? ネタによっては値段をつけるよ」

勇者「生憎、売れる情報は特にはないね」

女店主「そうかい、残念だね。まあいいさ、ならあんた自身の事を聞いてもいいかい? さっき言ってた故郷ってのはどこなんだい?」

勇者「ここから少しいったところにある、『山奥の村』だよ。道は険しいし、きちんとした道になってないしで、ろくに都会との行き来がない田舎だけどね。でも、とてもいいところだった」

女店主「……『山奥の村』……なのかい」

勇者「?」

女店主「あんた……ひょっとして、かなり子供の時にあの村から外に出てきたんじゃない?」

勇者「そうだね。もう十五年も前の話になるから」

女店主「やっぱりか……」ハァ

勇者「……何か、まずかったりするのか?」

女店主「……まあ、どうせわかっちまう事か。それに言っておかないと駄目だしね……」

勇者「……どういう事だよ」

女店主「先に言っておくけど、あんたにとっちゃかなりきつい言葉になると思う。悪い事は言わないけど、『山奥の村』に行くのは諦めなよ」

勇者「え……?」

女店主「もう十年ぐらい昔の事になるんだけどね……」

女店主「その頃から、あの山に奇妙な魔物が色々出没する様になったんだよ……」

女店主「最初はそういう魔物を見たって話が少なかったから、そんなに噂にはならなかったし、特に誰も気にはしなかったんだ」

女店主「だけど、段々と。年数を重ねるごとに少しずつ。その『見た』って目撃談がどんどん増えていってね」

女店主「しかも、どれもここらじゃ見かけない、見た事自体ないって魔物ばかりだったんだよ。それこそ、本や図鑑にも載ってない様な魔物がうじゃうじゃと」

女店主「今じゃあそこの山に行くって人は誰もいないよ。気味悪がって近寄らないし、危険だからね。今じゃあの山は、奇妙な魔物の巣窟と化してるのさ」

勇者「そんな…………」

女店主「何で、あの山がそんな風になっちまったかなんて誰もわかりゃしないんだけどさ……」

女店主「例えば、あの山のどっかに、空間の歪みがあって、そこから魔物が続々とこっちに来てるんじゃないかとか……」

女店主「もしくは魔王の軍勢が、あそこの山を秘密の軍事拠点にしてるんじゃないかとかね……」

女店主「あと、嘘かホントか知りやしないが、竜まで見たって話もあるぐらいだから」

女店主「竜だよ? 国を簡単に滅亡させちまう様な伝説の化け物だよ」

女店主「その竜が一匹、あの山を気に入って自分のねぐらにしたって噂もあるんだ」

女店主「だから、それにつられて強い魔物たちもあの山に住むようになったんじゃないか……って風にも言われてる。強い魔物は、他の魔物を引き付けるからさ……」


女店主「まあ、どんな理由にしろ……」

女店主「もうあの山は駄目なんだよ。人が入れる様な場所じゃなくなってるから」


勇者「じゃあ……あの山奥にあった……村は…………」

女店主「……気の毒だけど」

女店主「あの山が魔物の巣窟みたくなってから、もう何年も経ってるからね……」

女店主「……言いたかないけど、今でも無事とは到底思えない」

女店主「村の人達はとうの昔に逃げたか、もしくは……」


女店主「その先は、言わなくてもわかるだろ……?」


女店主「全員、無事に山から避難出来たんじゃないかって信じるしかないよ……」



勇者「……そんな。……嘘だ」ガタガタ、ガクガク

勇者「王都にいた時も……そんな噂……入って来なかったのに……」

勇者「みんなが……。みんなが……」

勇者「隣のおじさんも……優しかった村長も……」

勇者「それに、大事な仲間たちが……!」

勇者「もうあそこにいないなんて、そんな事……!」

勇者「またあの木の下で会おうって! そう約束したのに……!!」


女店主「……気持ちはわかるけどね」

女店主「でも、事実なんだよ。認めないと……」

女店主「ここから王都まではかなり離れてるし、そもそも魔物たちも年単位でゆるやかに増えていったからね。噂があんたの耳まで届かなかったか、もしくは噂にすらなってなかったって可能性はあるよ」

女店主「あの村は、山奥にあって、元から孤立してた村だったらしいし……。あの山自体、鉄だとか魔石とかが採れるって訳でもなかったし……」

女店主「それに、あの山から魔物は出て来ようとはしないからね……。自分から行かない限りは、被害が出ないんだよ。だから、そんなに目立つ噂にもならなかったろうし……」

女店主「あんたが知らなくても、そんなに不思議じゃないんだ。それに、知ってたとしても……」

女店主「あんたに何か出来た訳じゃないだろ? ……結局、どうしようもない事だったんだよ」



勇者「でもっ!! だけどっ!!」

女店主「やめとくれよ。そんな大きな声を出さないで。他のお客さんもいるんだし」

勇者「ぐっ……!」ウルッ


ザワザワ……


女店主「あー、大丈夫。この人、ちょっと悪酔いしちゃってるみたいでね。それだけだよ。平気だから」

女店主「気にせずみんな飲んどくれ。この人はあたしがなだめとくからさ」


ガヤガヤ……


女店主「……さてと」

勇者「うぅっ……!」グビッ

女店主「やっぱりね……。やけ酒は体に悪いよ」

勇者「違う。そんなはずはない……! あの村がもう無くなってるなんて、そんなはずが……!」

勇者「みんなだって、きっと絶対に生きてるに決まってる……!!」グビッ

女店主「……」ハァ

女店主「何も、生きちゃいないなんて言ってないよ。確かにみんな、どっかで生きてるのかもしんないさ」

女店主「でもさ。村だけはもう無くなってるんだよ。確認した訳じゃないけど、これだけは確かだよ」

女店主「疑ってるのなら、他の人にも聞いてみなよ。この町に住んでる人間なら誰もがそう答えるはずだからさ」

女店主「繰り返すけど、あの山は、もう近付いちゃいけない山になっちまってんだ。今は恐ろしい魔物の巣窟なんだよ」

女店主「あんたの故郷が無くなったから、辛いのはわかるよ。仲の良かった人が、全員亡くなってるかもしれないって知って、かなりショックだったってのもわかるよ」

女店主「でも、そういう事もあるんだよ。そこは認めないと。こんな御時世なんだから、仕方ないんだよ」


勇者「ぅっ……!! うぅぅ……!!」ポロポロ


女店主「……干し肉はキャンセルにしとくけど……構わないよね?」

勇者「ぐっ!」グビッ

女店主「うん……。代わりにしこたま飲んできな。酒は涙を全部流させてくれるからさ」


勇者「ぅぁっ……! うぁぁっ……!!」ポロポロ

ー 深夜、宿屋 ー



「あーあ、もう……。世話が焼ける人だねえ、ホント。よいしょっと」


商人「ん……? あれ、酒場のおかみさんじゃないか。どうしたんだい?」

女店主「なんか、あんたのとこの客らしいからね。完全に潰れちまったから、ここまで引きずってきたんだよ」


勇者「ぅぅ……」グシュッ


商人「ああ、この人かい。確かにうちのお客さんだね。顔を覚えてるよ。わざわざすまないね」

女店主「いいよ、別に。普段なら店の外に放置しとくとこなんだけど、ちょっと飲み過ぎた理由が理由だったからね。そのままにしとくにゃ可哀想でさ」

商人「なんだい、結婚を前にして女にでも逃げられたのかい?」

女店主「それよかもっと可哀想だね……。店に来た時は目を輝かせてたのにさ……。まったく、嫌な世の中だよ、ホントに」

商人「……なんだか訳ありっぽいね。まあ、聞かなかった事にしとくよ。後はこっちで部屋まで運ぶから安心してくれ」

女店主「ああ、頼んだよ。それじゃあね」


勇者「何で……こんな事に……」ポロポロ

ー 同時刻。異界、炎王の城 ー


炎の魔神「外界より来たりし者よ、滅せよ!!」(全長14メートル)

【異界の四王・炎】
『体力 :789万
 攻撃力:438万
 防御力:102万
 魔力 :247万
 素早さ:161万』


「 灼 熱 流 陣 撃 !!」


炎が四方八方に踊りながら流星の様に舞う。それは炎と言うよりも、最早マグマに近かったかもしれない。火山が噴火し、溶岩が雨のように降り注ぐ様に似ていた

逃げようのない全体攻撃。隙間なく、灼熱の炎が襲う

この二人を


魔王「ふっ。この程度で最も攻撃に優れた四王の一人だと言われているとはな。期待外れだ。話にならぬ」

側近「魔王様、ここは私が防ぎます。魔王様はその間に攻撃を」


側近が腰の刀をすらりと抜き床に突き刺す。それと共に固有の結界技が展開された


「 絶 対 不 可 侵 領 域 !!」


側近の周り、半径五メートル。そこに正四角形で展開された闇の鎖が覆う。ありとあらゆる魔法・物理干渉を受け付けない完璧な防御結界
多大な魔力を消費し、使用中は自身が何も行動が出来なくなるが、それはあくまで使用者のみの話である


側近「魔王様、お願い致します」

魔王「うむ」


闇の鎖に阻まれ、次々と落ちては消滅していく灼熱。その炎に彩られた景色の中で、魔王はそっと右手をかざした

その手に、はっきりと目で見える程の膨大で純度の濃い魔力が集約されていき……


「 魔 装 弾 !!」


放たれた。魔法ではなく、魔力そのものを撃ち放つ、魔王オリジナルの技
夜空に光を放つかの様に、その暗黒の魔力は空間を切り裂いていく。そして!


炎の魔神「グあガあアアぁギぁあアアあアあっっ!!!」

ダメージ、631万! ×7撃(total4417万ダメ)

残り体力:789万→0



魔王「他愛ない。拍子抜けだな」

側近「いかにも」


崩れ落ちていく炎の魔神を眺めながら、魔王は不敵な笑みを浮かべた。それは勝者のみが許される笑みであり、そしてこの魔王にはその姿があまりにも似合っていた

魔王「さて、炎の魔神とやら」スタスタ

炎の魔神「ヴ……あ……」(炎で出来た体が少しずつ崩れ消えていく)

魔王「余は強い者が好きだ。そして、余は今、この異界にて余に従う者を集めている」

魔王「余と比べれば話にならぬが、お前の強さは異界においても、余の軍においても上位に位置するだろう。魔将軍クラスかそれ以上の力は持っていると見た」

魔王「故に、お前に人生を選ばせてやろう。余の軍門に下ると言うならば、その燃え付きようとしている命、拾ってやる。我が魔力を与え、その体を修復してやろうではないか」

魔王「返答を聞くぞ。心して答えよ。どうする?」


炎の魔神「フッ……下らヌッ……」ボロッ……

炎の魔神「既に一度……拾っタ命ダ……。二度も拾う気は……ナい……」ボロッ、ズササッ……


魔王「ほう。それは、どういう意味だ?」


炎の魔神「ククッ……我らハ四王などト……呼ばれテイるガ……」ボロッ、グシャッ……

炎の魔神「元はソの四王全員が……こノ異界の覇権ヲ争って対立してイた四人の王ダった……」ボロッ、ボロッ……

炎の魔神「とコロがある日……我ら全員ガ一人の者にヨって倒さレたのだ……」ボロッ……

炎の魔神「今ではそやツが真の王だト……誰もが認めテイる……」グラッ……


魔王「つまり、この世界の魔王という訳か。そして、お前たちが四天王という事だな」


炎の魔神「ククッ……。その通りダ……。そして……我は四王の中デモ最弱……」ボロッ、ボロッ……

炎の魔神「我に勝ッた程度……大しタ事ではなイ……。他の三王ヲ倒し……まシてや真ノ魔王を倒す事ナど……貴様らニハ絶対不可能ダ……。ククくクッ……」ボロッ、ズサッ……


側近「同じ台詞を他の三王も吐いていたがな」


炎の魔神「!? まさカ……既に他ノ三王全員を……!!」グラッ……


魔王「そう。お前で最後だ。残りは真の魔王一人という事になる。だが、この様子ではどうせそやつも大した腕ではあるまい」


炎の魔神「ア……ガがグアあぁぁ…………」グシャッ……

魔王「……逝ったか。しかし、どいつもこいつも服従よりは死を選ぶとはな。目的は達成出来ぬが、見上げたやつらだと誉めるべきか」

側近「ええ。気骨のある武人ばかりでした」

魔王「だが、手ぶらで帰る訳にもいくまい。せめて、この世界の魔王ぐらいは傘下に置きたいものだな」

側近「はい。さすれば、この異界に住むその他大勢の魔獣たちも大人しく従いましょう」

魔王「うむ。では、行くとするか。確か、中央の巨大な塔に住んでいるとの事だったな。一応、休みを取って、そこに向かうのは明日にしておくか」

側近「はい。まだまだ魔力は残っておりますが、念には念をという事で……。その方が私も良いかと思います」

【魔王の片腕】
『体力 :530万
 攻撃力:218万
 防御力:681万
 魔力 :497万
 素早さ:405万』


魔王「では、行くか。飛翔魔法!」フワッ……

【史上最強の魔王】
『体力 :999万
 攻撃力:999万
 防御力:999万
 魔力 :999万
 素早さ:999万』



魔王と側近の体が浮かび上がり、彼ら二人は城の窓から暗黒の空の彼方へと飛び去って行った

「明日には、この異界をも制覇してくれようぞ!! 」

その言葉を中空に残して……

ここまで


驚きのインフレっぷり

インフレし過ぎて魔王TUEEEEEEE

勇者YOEEEEEEEE

勇者が王道の旅やってるはずなのにすべてが茶番という

勇者の仲間は化け物が住むようになって強くなったのかな?

英雄譚があるってことは...
そういうことかもしれない

乙乙

将来は平和になってるぽいし勇者覚醒あるぞ

乙!
ここまで差が有ると女神の加護(チート)が無いと倒せないんじゃないですかね?

倒さなくていいんじゃないかな
竜が勝手になんとかしてくれるor竜に働きかけてなんとかしてもらおう

乙!
いきなり桁が違ってワロタw

999とか雑魚かよwwwwww(万とか見てないし見えてないし…)

そもそも数値の基準値が違うのかもしれないし…

>>378
>炎の魔神「ククッ……。その通りダ……。そして……我は四王の中デモ最弱……」ボロッ、ボロッ……


自分で言うのかよwwww

魔王さんカンストしてるじゃないですかヤダー……してるよね?

>>394
そこんじょそこらの態度だけやたら尊大な噛ませ連中と比べてすごく好感持てたわ

ー 翌日。商業で栄える町、酒場 ー


カランカラーン


女店主「あら……また来たんだね、あんた」

勇者「……ああ。昨日は宿まで送ってもらったと聞いたから……。ありがとう」


女店主「なに、構わないよ。それよりも酷い顔してるね。目なんか真っ赤じゃないか」


勇者「鏡を見て自分でもびっくりしたよ……。本当に酷い顔をしてた」

女店主「うん。……でも、目には光が戻ってきてるね。それだけは救いかな。現実は受け入れたのかい?」

勇者「それはまだ何とも……」

女店主「そうかい。まあ、いいさ……。昨日の今日でなかなか受け入れられる事じゃないだろうからね」

勇者「かもね……」

女店主「それで、今日は律儀にお礼に来たのかい。店はまだ開けてないけど、折角だから軽く食べていく? 何か作ってやるよ」

勇者「いや、ありがたいけど……。それより、上等な酒を皮袋でもらえたら助かるかな」

女店主「呆れたね。昨日あれだけ飲んだのに、まだ飲むつもりかい? 二日酔いになってないぐらいだから、酒は強い方なんだろうけど、流石に体を壊すよ」

勇者「そうじゃないんだ。俺の分じゃない。村の人達の分だよ。もしも、本当にみんなが亡くなってる様だったら、せめて墓だけでも作って、そこに供えたいから」

女店主「……あんた。まさか、あの山に登ろうなんて考えてるんじゃないだろうね?」

勇者「色々考えたけど……そうするつもりだよ。やっぱり自分の目で見ないと気が済まないし」

女店主「バカ言ってんじゃないよ。死にに行くようなもんだよ。魔物の巣窟になってるって言っただろ!」

勇者「腕には多少自信がある。どれだけ魔物がいても、一目見るぐらいならきっと出来る」

女店主「それを驕りって言うんだよ! そう言って二度と帰って来なかったやつがどれだけいると思ってんだい! やめな!」

勇者「じゃあ、もし全員が生きていたらどうするんだ!」

女店主「!」

勇者「約束通り、あの木の下で待っていたら! 俺だけが約束を破った事になる! そんな事、俺には出来ない!」

女店主「……アホだね、ホントに」

女店主「呆れたよ……。約束と命、どっちが大事なんだい。第一、その幼馴染み達だって、約束を覚えていたとしても山に登るはずがないよ」

女店主「もしも約束を覚えていたなら、きっとこの町にいるはずだから、ここで探しな! それで見つからなかったら、もう諦めなよ! そういう事だったんだよ!」

勇者「それでも、自分の目で一目見るまでは、納得出来ない!!」


女店主「とんだバカだね、あんたは」

勇者「約束を破る訳にもいかない……。例え誰も来なかったとしても、俺は行くから」

女店主「それで、あんたが死んだら、結果的に約束を破る事になるんだよ」

勇者「死なないよ。必ず生きて帰ってくる」

女店主「だったらもう好きにしな。うちは酒場だからね。バカにつける薬は置いてないよ」

勇者「ああ……。それと、もしもの時はきっと馬だけこの町に戻ってくるから、その馬を頼む。これ、登録証だから」スッ

勇者「良い馬だから、大事にしてくれる人に売って欲しい」

女店主「あたしは便利屋かい。少し優しくしてやったからって調子に乗るんじゃないよ! そんなんで手に入れた金なんて誰が使えるもんか!」

女店主「大体ねえ。死ぬ覚悟してまで守る必要のある約束なんてこの世にはないんだよ。とっとと忘れちまいな。それがあんたの為だよ」

勇者「もう意地だよ。それに、ここで約束を破ったら、俺は一生後悔するだろうから」

女店主「約束守って死ぬより、一生後悔して生きる方が賢い生き方ってもんだよ。どうしてそれがわかんないかね」

勇者「……さっき言ってた上等な酒、用意してもらえるかな?」

女店主「死ぬつもりなら代わりに有り金置いてきな。死体が持っててもしょうがないだろ。生きて帰ってきたら返してやるよ」

勇者「有り金は流石に無理だけど……金貨を一枚置いてくよ。だから、馬の事と酒を頼む。戻ってきたらお釣りをもらうから」

女店主「ホント、男ってのはアホな生き物だね! 一度決めたら曲げやしない。ああもう、用意してやるから待ってな。ただし、絶対に戻ってくるんだよ!」ゴソゴソ

勇者「助かるよ、ありがとう」

ー 街道 ー


勇者「……いい人だったな、あのおかみさんは。結局、酒も干し肉も用意してくれたし、本気で心配してくれてた」

馬「」バルルッ


パカラッ、パカラッ、パカラッ


勇者「相棒、もしもの時は、お前だけは必ず逃がすからな。その時は遠慮なく町まで戻ってくれよ。頼んだぞ」

馬「」ブルル


パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ


勇者「見えてきた、あそこだ。こうして眺めるのも十五年振りだよな。騎士団長の馬に乗せられて、最後に見た景色そのままだ」


パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ


勇者「今だからわかるけど、あの山、相当大きかったんだな。かなり広いし」

勇者「今じゃ誰も登る人がいなくなったって聞いてるけど、道はまだ残ってるだろうか……。もしも残ってなかったら、相棒は連れて行けないからな……」

勇者「藪が繁っててもいいから、道自体は残ってて欲しいんだが……」

馬「」ブルル


パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ……

ー 勇者の生まれ故郷

 奇妙な魔物が出現する山

       麓付近、山道 ー


勇者「良かった……。少し尾根が繁ってるけど、まだ道は残ってる。これなら、相棒も一緒にいける」

馬「」カッポ、カッポ


ガサガサ……ザザザ、ガサガサ……


勇者「!」チャキッ (剣を構える)

馬「」バルルルッ


ガサガサ……ガサガサ…………


勇者「行ったか……?」

勇者「気配は消えてるけど……」

勇者「しかし、不気味だな……。普通、魔物はすぐに襲ってくるもんなんだが……」

勇者「そりゃ、闇雲に襲われるよりはずっとマシだけど……」

勇者「狙われてる様で、気持ち悪いのも確かだ……。狩りの準備をされてるみたいで不安になる……」

ー 山道、山の中腹辺り ー


メキメキッ、ボキッ!! (木の折れる音)


勇者「近いっ! 魔物か!?」チャキッ

馬「」バルルルッ!!


ノソッ……

氷ゾウガメ「シューッ……」(全長31メートル)

【奇妙な魔物・タイプ亀】
『体力 :5279
 攻撃力: 673
 防御力:9091
 魔力 :1241
 素早さ:  53』



勇者「!!??」

氷ゾウガメ「…………」チラッ


勇者「何だ、このバカでかい亀は!? これでも魔物なのか!?」サッ (剣を構える)

馬「」バルルッ!!


氷ゾウガメ「…………」ジィーッ


勇者「ぐっ! やる気か!?」


氷ゾウガメ「…………」

氷ゾウガメ「」ノッシ、ノッシ…… (無視して去っていく)


メキッ、ボキッ!! (木がなぎ倒されていく)


ノッシ、ノッシ…………



勇者「……何もせずに去っていった」フゥ

勇者「しかし、何でこんな山の中に巨大亀が……」

勇者「しかも、襲って来なかった……。一体、何だったんだ、あれは……」

ー 山道。頂上近く ー


ガサッ、ガサササッ


トゲ持ち大蛇「シュルルルッ……」(全長28メートル)

【奇妙な魔物・タイプ蛇】
『体力 :18036
 攻撃力: 6797
 防御力: 3814
 魔力 : 3420
 素早さ: 4513』


勇者「」ビクッ!!

馬「」ヒヒーン!!



トゲ持ち大蛇「…………」ジィーッ


勇者「く、来るのか……!!」チャキッ


トゲ持ち大蛇「…………」

トゲ持ち大蛇「シュルルルッ……」ウネウネ


ウネウネ……ウネウネ…………



勇者「また去っていったか……」フゥーッ

馬「」バルル……

勇者「それにしても、本当に見た事のない魔物ばかりだな……。しかも、それが大量にいる」

勇者「これなら、誰もこの山を登ろうとしないっていうのは納得だ。あまりに心臓に悪い……」ハァ

勇者「とはいえ、これまで一度も襲われてないっていうのが不思議だな……。ここの魔物は大人しいのか……?」


シギャアアアアアッ!!

グギャッッ!! ギギャーーーーッッ!!


勇者「」ビクッ!!

馬「」ヒヒーン!!


勇者「いや、そんな事はないか……。さっきの大蛇が、向こうで巨大なネズミを襲って食べてる……」ドキドキ

勇者「魔物だけを餌としてるのか……? まあ、あれだけ巨大だと、人間一人程度じゃ物足りないだろうが……」

勇者「何にせよ、この山は少しおかしい……。どうしてこんな風に変わってしまったんだ……」


勇者「もうすぐ、俺が住んでた村だけど……。これじゃ、もう誰も住んでる訳がないよな……」

馬「」カッポ、カッポ……

ー 山奥の村、近く ー


勇者「見えた……! あそこだ……!!」

勇者「村だ! 村の柵がある!! 変わってない!!」

勇者「どこも荒らされてなんかない!! 柵が破られてもいない!!」

勇者「みんな、まだあそこに住んでるのか!! 全員、無事なのか!!」

勇者「とにかく確かめに行くぞ、相棒!!」タンッ

馬「」ヒヒーン


パカラッ、パカラッ、パカラッ


と、その時!!



ガサッ!! ガサササッ!!


キメラ「グオオオッ!!」ダダッ

【合成魔獣・獅子タイプ】
『体力 :451
 攻撃力:129
 防御力: 77
 魔力 : 74
 素早さ: 50』



勇者「あれはキメラ!!? こんなところにまで、いたのか!?」

勇者「しかも、まずい!! 一直線に村を襲おうとしてる!! くそっ!!」

キメラ「グルルルッ!!」ダダダッ


勇者「まずい!! キメラの攻撃力なら、あんな木で出来た柵なんて一撃だ!!」サッ (馬から飛び降りる)

勇者「相棒は逃げろっ!! こいつは俺がやる!!」ガチャッ (魔法銃を構える)



ガタッガタッ (木の柵から音がする)

ガラッ


村人「何だべ、騒がしいな……」ノソッ



勇者「!!」

勇者「人がいたのか!! でも駄目だ! 逃げてくれ!! 襲われるぞ!!」



キメラ「グオオオッ!!」ダダダッ



勇者「やめろおおおおおっ!!!」

村人「ん?」

キメラ「グオオオッ!!」ダンッ (飛び掛かる)


村人「ほいさ」ドゴッ!!


ズゴガラグワバキボキメキガッキーン!!!!


キメラ「グボオホギグゲゴアギアグゲゴガアアアアアッッッ!!!!」ドーンッ!!!
体力:451→0


勇者「」




村人「さっきから騒いでたのはこの魔物かい、ったく。人騒がせな」

【山奥の村人】
『体力 :774万
 攻撃力:561万
 防御力:359万
 魔力 :   0
 素早さ:428万』



勇者「村人TUEEEEEEEEEEEEEE!!!」

 

ここまで

えぇ・・・

ドカベンの岩鬼みたいな音がした

正直に言う
村人TUEEEEは予想外

死んだな

これは予想外です
乙でした

村人強すぎるwwww

ワロタw

ここに来て衝撃の展開

勇者の仲間たちが一万に届かないのにな

ナンテコッタ

竜がいるかもしれない場所に居を構え続けてるんだからなるほどそうなるよね、多分

村人二、三人いれば魔王と互角に戦えるんじゃないか?

ここで修行しよう

ライフコッド現象か
てか仲間すら普通に弱い部類やん…

修行相手にすらならなそう

もう勇者一行いらねえ・・・

異界の四天王クラスかよ…

村人総出で行けば魔王軍もドラゴンもいなくなるな。

投下前
読者「勇者YOEEEEEEEE!!」

投下後
読者「仲間YOEEEEEEEE!!」

竜が村人の格好してるんだろう?俺は詳しいんだ!

乙!
予想外すぎてワロタww

竜が化けてるかもしれない

これ勇者は王国に行かないで村で修行してたら本物?の勇者になれたな。

キメラ程度なら倒せるのねwwとか思ってたらステ見て
「えぇええええぇぇぇぇっ!!??!?」って声に出してしまったわ

勇者 普通 幼少の頃に村を出たので普通の実力
仲間 強い 少し経ってから村を出たのでそこそこ強くなっている、人間界では最強クラス
村人 鬼強 魔境と化した村で生活し続けたのでくっそ強い、魔王軍クラスなら相手にならない
魔王 カンスト ???

もしや魔王この村の出身なんじゃねえだろうな!

DQ6かw
ずしおうまると互角に戦える謎の村人www

これはいいスレタイ詐欺

初期悟空がサイヤ人編の仲間と一緒にフリーザやセルと戦うような絶望感だな

もう先の展開が読めないよ…

ドラクエとFFの技を使いこなす農家を彷彿させるな…

強い事はいい事だ

よく考えたらこのキメラよく村までたどり着いたな、勇者と同じで周りから石ころ扱いされたからか?餌にすらならんと……。

村人「ん?」


勇者「あ、あの……! えっと、その、俺は決して怪しい者じゃなくて……!!」アセアセ


村人「あー!」

勇者「」ビクッ!!


村人「おめえ、もしかして『勇者(名前)』じゃねえか? 昔の面影残ってっし、なーんか今日帰ってくるみたいな約束してたみてえだし」

勇者「あ、はい……! 俺、『勇者(名前)』です!」

村人「懐かすいなあ! おらだよ、おら! 覚えてねえのか?」

勇者「え、いえ、あの……! す、すみません!」

村人「何だ、忘れちまっただか。まあ、おめえもあん時は子供だったからなあ」

勇者「は、はい! すみません!」

村人「別に謝る事ねえべ。おらはあれだよ、おめえん家の三軒隣に住んでたやつだよ。小さい頃にベーゴマとか教えてやったべ?」

勇者「ベーゴマ……。え!? もしかして、竹トンボとかよく作ってくれたおじさん!?」

村人「そうそう。ははっ。思い出したか。いやー、忘れられてなくて良かったっぺ」

勇者「いや、忘れるとかそういうんじゃなくてさ……。何かだって、前と変わりすぎてるから……」

村人「?」

勇者(めちゃくちゃ体つきが良くなってるなんて言えない……)

村人「しっかし、おめえもずいぶんデッかくなったよなあ。ここ出てった時はただのやんちゃなガキだったのに、今じゃこんな立派な大人になって」

勇者「ああ、うん……。まあ、色々と努力したし……それなりの経験も積んできたからさ……」

村人「何かいかにも高級な剣士っぽい格好してっけど、もしかして賞金稼ぎにでもなったのか?」

勇者「ああ、いや、これは……。ちょっと前まで王都で騎士隊長やってたから」

村人「うおおっ! それ、本当か! 騎士様飛び越えて、騎士隊長様にか! おめえ、凄いな!! 強いんだなあ!!」

勇者「え……?」

村人「そういや、おめえは子供の時から『勇者になる、勇者になる』ってずっと言ってたもんなあ。それが今や騎士隊長様とは。いやあ、無茶苦茶強くなったんだろうなあ。きっと、おらなんかもう話にならないんだろうなあ」シミジミ

勇者「え゛」

村人「あ、でも、ちょっと前まではってどういう意味だべ? まさか、騎士隊長を辞めたって訳じゃないんだろ?」

勇者「いや、あの……」オロオロ

村人「ん? どうしたべ?」

勇者「ゆ、勇者に……」(小声)

村人「あ? 聞こえねえって。どしたんだべ?」

勇者「勇者に……選ばれて……」

村人「うおおおおっっ!! 凄えな、本当だべか!? 勇者様に!?」

勇者「……いや、あの、でも! た、大した事ないから! たまたま選ばれたっていうか、偶然選ばれたっていうか、ま、間違いで選ばれた的な!!」

村人「なーに謙遜してんだべか! そんじゃ何か! 女神様の神託があったって事か! てーしたもんだな! おめえがあの伝説の勇者様か!」

勇者「いや、本当に凄くないから! 大した事ないから!」アセアセ

村人「これもう、大ニュースだべな! まっさか、本当におめえが勇者様になってるだなんてな!」

勇者「いや、ニュースでも何でもないから! 俺なんか本当に選ばれただけっぽいし! 大して強くないし!」

村人「はっはっは! 強い奴ほどそういうんだべなあ! まさか、こんなところでそんなお決まりの台詞が聞けるだなんて思わなかったべ!」

勇者「いや、本当だから! そんな強くないんだって、俺!」

村人「こりゃあれだ、村長とかにも早速報告しねえとな」スタスタ

勇者「ちょ、待って待って! おじさん、待って!!」ガシッ (服を掴む)

村人「おーい、村長ー!! それにみんなー!! 伝説の勇者様が来たぞー!!」スタスタ

勇者「ちょおおおっ!!!」ズルズル

ー 村長の家 ー


村長「ああ、懐かしいのう。あの本を借りに来てた鼻たれ坊主が、本当に勇者様になっておるとは……」シミジミ

【山奥の村長】
『体力 :536万
 攻撃力:221万
 防御力:209万
 魔力 :348万
 素早さ:217万』


神父「まったくですなあ……。陛下から頂いた証明手形も本物……。いやはや、驚きましたよ」シミジミ

【山奥の神父】
『体力 :599万
 攻撃力:207万
 防御力:311万
 魔力 :475万
 素早さ:184万』


村長の奥さん「本当にねえ、立派になって」シミジミ

【山奥の村長の妻】
『体力 :487万
 攻撃力:218万
 防御力:265万
 魔力 :331万
 素早さ:189万』


女村人B「なんかもう、嬉しいわあ。オバサン、涙出てきちゃう」グスンッ

【山奥の女村人】
『体力 :842万
 攻撃力:694万
 防御力:716万
 魔力 :328万
 素早さ:652万』



勇者(全員、雰囲気がヤバい……!)ガクガク

村長「しかし、こうして見ると流石は勇者様じゃなあ。まず、体から溢れ出る雰囲気からして違うからのう」

神父「ええ、本当に。よくぞここまで凛々しくなりまして……」

村長の奥さん「乗ってきた馬も、凄かったわよねえ……。毛づやも良くて、張りがあって。さぞかし名馬なんでしょうねえ」

女村人B「本当にね、あんな小さくてやんちゃだった子がこんな立派になってね」グスンッ


勇者(今すぐ逃げ出したい……)ガクガク

村長「ああ、そうじゃ。ばーさん、お茶と菓子を。勇者様に何も出さんとは失礼じゃぞ」

村長の奥さん「ああ、そうですね。あんまりにも懐かしくてついね……。すぐに用意するわ」ソソクサ


勇者「いえ……お構い無く……」ガクガク


神父「しかし、あの子達の言う事は本当に正しかったんですね……。美しい友情です」ウンウン

女村人B「そうね。みんな、勇者は必ず来るって自信を持って言ってたものねえ」グスッ

勇者「!?」

勇者「あ、あの……! その『みんな』って言うのは、もしかして!」

神父「ええ、そうですよ。あなたが子供の頃に仲良く遊んでいた、あの五人です」ニッコリ

女村人B「みんなもね、村からはもう何年も前に出て行ったんだけどね。でも、ついこの間、帰ってきて」

村長「そうじゃったなあ。それで揃って、近い内に『勇者(名前)』がここに来るはずだからと言ってな。しかも、伝説の勇者になって帰って来ると」

勇者「みんなが……!」


村長の奥さん「ええ、そうなのよ」テクテク

村長の奥さん「私らはね。その時、ろくに信じてなかったんだけど……。だって伝説の勇者様でしょ? いくらなんでもねえって……。でも、ほんにその通りになって……」

村長の奥さん「あ、これ、お待たせしたわね。お茶と草餅。どちらも私が作ったのよ。口に合うかわからないけど」ソッ

勇者「あ、ありがとうございます」ペコッ

ガリバー旅行記の小人の国の次に辿り着くのが巨人の国だったよね………村人は巨人じゃないけどさ、うん

勇者「そうか……。もうみんな来てたんだ……!」

女村人B「嬉しいわよねえ。良い話だわあ……。あらやだ、また涙が。最近、めっきり涙もろくなって駄目ね……」グスッ

勇者「なら、すみませんけど、俺もすぐにみんなの所に行きます! いる場所はわかってるんで!」

村長の奥さん「あらそう? でも、せめてお茶だけでも飲んでったら? 折角用意したんだし、ね?」

勇者「あ、そうですよね、すみません! 頂きます!」パクッ、モグモグ

勇者「美味い! この草餅、凄く美味しいですね!」


タラッタラッタッター♪
【勇者の体力が19上がった!!
 勇者の攻撃力が16上がった!!
 勇者の防御力が18上がった!!
 勇者の魔力が20上がった!!
 勇者の素早さが18上がった!!】


村長の奥さん「そう? 隠し味に裏の畑で取れた種をすり潰して入れてるの。そのせいかしらね」


勇者「いや、本当に美味いです。初めて食べる味です、これ!」ゴクッ

勇者「わ、このお茶も清みきった味で美味しい!」


タラッタラッタッター♪
【勇者の体力が11上がった!!
 勇者の攻撃力が8上がった!!
 勇者の防御力が9上がった!!
 勇者の魔力が8上がった!!
 勇者の素早さが7上がった!!】


村長の奥さん「そっちもやっぱり種をすり潰したやつをブレンドして、少しだけ入れてあるの。腐るほど収穫出来るものだから、他の料理とかでも色々使ってるのよ」

神父「そういえば、あなたがいた時にはこの種はなかったものでしたね。今じゃこの村では香辛料や薬味の代わりとして当たり前の様に使われてるんですが」

勇者「いや、これ、凄く良いものですよ。何て言うか、力が湧いてくる感じで」

村長「こんなものが良いのかのう? わしらにはわからんがなあ……」

勇者「それじゃあ、すみませんが、俺はこれで行きます! ご馳走さまでした!」

勇者「また後で、改めて挨拶に来るので!」


村長「そうじゃな、再開を楽しんできなさい」

村長の奥さん「気を付けてね」

神父「積もる話もあるでしょうし、私たちの事は気にせず、ゆっくりしてくると良いでしょう」

女村人B「戻ってきたら、後であたしん家に来なよ。ご馳走するからね」


勇者「はい! それじゃ、また!」クルッ

ガチャッ、タタタタッ……



村長「若いのう……。羨ましいわい」シミジミ

村長の奥さん「ほんにねえ……」シミジミ

神父「しかし、良い子に育ってくれました……。精悍で、礼儀正しく、心の清い子です……」

女村人B「本当にねえ。イタズラしたり柵をこっそり抜け出したりとかで、毎日、村中を走り回ってたのが嘘みたいだねえ……」グスッ

ー 村の外れ近く ー


タッタッタ……


勇者「最初、どうなる事かと思ったけど……」


タッタッタ……


勇者「そりゃ、かなり驚いたし怖かったけど、やっぱりみんな良い人ばかりだった」


タッタッタ……


勇者「それに強い! 俺は、自分では強い方だと思ってたけど、それこそ井の中の蛙だったんだな。知らず知らず天狗になりかけてたんだ」


タッタッタ……


勇者「どうやってあれだけ強くなったのかわからないけど、でも、ここでその教えを乞えば、俺もきっと! もっと強くなれる!」


タッタッタ……


勇者「最初、気後れしたのが恥ずかしい。俺は勇者じゃないか! 勇者はいつでもどんな時でも諦めない、常に前向きに生きないと!」


タッタッタ……


勇者「みんなの為にも! 仲間の為にも! 俺は精一杯強くならないと駄目なんだ! それでこそ勇者なんだから!」


タッタッタ……


勇者「見えてきた! ここを曲がって通り過ぎれば、あの木が正面に……! 正面に……。正面に……?」


タッ……タッ……タ……


勇者「ない!? 折れてる!?」


切り株「」…………

ここまで

やはりステータスアップの種が特産品だったか……

しばらくここでゆっくりしていこう

そりゃ常日頃から幸せの種を使ってりゃ強くもなるわ

炎の四天王より強いおばちゃんェ

勇者は先に旅にでたから恩恵が少ない
仲間たちは後から旅に出たからある程度恩恵を受けてる
ってわけかww

ドーピングしなくちゃ(使命感

一人だけドーピングなしって考えるとやっぱ勇者すげーわ

[ピザ]になりそう

[ピザ]ほど強い村か…

これ山の魔物もちょいちょい種食ってるから強いんじゃ…

しかし村人はここまで強くなったというのに目は節穴なんだろうか
言葉通りなら、勇者の力量を全く見抜けていないようだが……

乙!
そりゃあ毎日ステUPの種食ってりゃ強くなるわな

>>464
自分らと同じレベルの人しかいないから逆に特別に思ったんじゃね

凄くなくても久しぶりに帰ってきた若者を褒めちぎるのが故郷のあったかさ

どんなに基礎能力強くても村人Aなんだぞ

徴兵したい…したくない?
1人1人が一騎当千の村人の軍隊とかマジロマン

この村ではステUPの種を毎日食べている、当然沢山食べる人ほど恩恵を受けやすいはず、つまり一番強い人がこの村て一番大食いということに。

おばちゃんどれだけ食ってんだ?畑仕事をしてるおじさん達よりも強いって、てかもしや住み着いた竜もこの種食いたくて住み着いたんじゃないだろな?本当にいたらだけど。

魔王が種が特産の村の攻略失敗しまくるssを思い出した

しかし、この種ステータスアップの仕方が半端無いな
全部が上がるし、上がり方も下手すりゃ2桁上昇とかヤバすぎるだろ

ディスガイアで20,30上がろうがよくわからんだろ?
種なんてそんなもんだ

すり潰してブレンドしてるって言ってるし、多分全種の種を五個とか十個とか分まとめて摂取してんだよ……てか待て!皆帰って来たって大賢者どうなった!気になってたがどうなった!

命のストックぐらい持ってないと大賢者は名乗れないさ

どこの大英雄だよ……


死の淵からの奇跡的レベルアップより上昇値高いじゃねぇか!ww
仲間の極端に低いステータスは食わず嫌いなのかねコレ

普通に職業選択の代償やろ
ずっと村人やっていれば…

すまん村人より弱い勇者おる?

この風呂敷どうオチがつくんだか…

ここで、話は一旦、600年前にまで遡る……




ー 魔界、奥深くの山小屋 ー


魔老師「どうしても行くのか、小僧……」

魔王「ええ、師匠。失礼ながら、もう貴方から学ぶ事は何もない」

魔老師「ちいとばかし、強くなった程度ですぐに自惚れおって……。ワシから見れば、お前など半人前にもなりきれておらんぞ」

魔王「なら……試されますか? 師匠殺しの汚名を受けるのは本意ではないですが……」ゴゴゴゴゴ……

魔老師「この老体で、今更若いお前とやる気はないわい……。ワシが半人前だと言うておるのは、その血気盛んなところだ。お前は覇気が強すぎる……」

魔王「覇気があるのは結構、ないよりは遥かに良いかと」

魔老師「バカタレ。明鏡止水の心こそ、武の本質じゃ。結局、お前はワシから何も学んでおらんではないか……」

魔王「そうやって魔族らしからぬ妙な境地を悟ったせいで、魔界を統一出来る程の腕を持ちながらも振るわず、無為に腐らせ、今ではただの老いた一魔族へと変貌してしまったのが師匠でしょう」

魔老師「水が低きに流れるが如く、普通の一生を普通に生きただけじゃ。それが当たり前の事じゃろうが」

魔王「生憎、私と師匠とでは、『普通』に差がありすぎるようで。師匠の終着点が、私にとっては出発点ですから」

魔老師「魔界を統一する気か……。下らぬ事を」

魔王「覇道を歩むつもりです」

魔老師「だから、下らぬと言っておる。世俗にまみれおって……」

魔老師「お前には期待しておったんじゃがな……。だが、ワシの目が曇っておったようじゃ……。腕ばかりが強くなって、心はまるで子供のままじゃ……」

魔王「ならば、それで結構。子供の夢が世界征服で何が悪いのか」

魔老師「…………」

魔王「師匠、私はその内魔界を統一し、ひいては神界、竜界まで統一しましょう。果ては伝説の中の異界まで!」


※注釈
竜界=人間界
魔族からしたら、人間は元から眼中にない


魔老師「戦乱を広げて何になる……。愚か者めが……」

魔王「その愚か者がこの世で唯一無二の覇者となる様、とくとご覧あれ」

魔老師「…………」


魔王「では、私はこれで。もう会う事もないでしょうが、残りの余生をどうか御自愛下さい」クルッ

魔王「」スタスタ……


魔老師「跳ねっ返りが……。実に嘆かわしいわい……」

250年前




ー 魔界。魔王城、玉座の間 ー


魔学者「此度は、魔界の統一、おめでとうございます」

魔王「よい。堅苦しい挨拶は好きではない。それよりもこの忙しい時期にお前を呼び出したのには当然理由がある。早速本題に入るぞ」

魔学者「はっ。何でございましょう」

魔王「今、お前たちが研究している合成魔獣だ。これまで十年以上研究資金を出してきたが、その間に、成果はどれだけ出した」

魔学者「つい先日、御報告申し上げた通り、眠り獅子と二股ヘビの掛け合わせが成功し、『キメラ』というまったく新しい魔獣が生まれました」

魔王「そうだな。十年かけてあの程度だ。戦力にすらならん」

魔学者「ですが、新しい魔獣を生み出すのに成功しただけでも、これは記録的な大進歩です。これからこの研究を続けていけば、魔王様が望む、強力な魔獣が続々と生まれてくる事でしょう」

魔王「魔学者……。何を勘違いしている? これだけわかりやすく言っても自覚がないようだから説明してやる。今のお前は単なる無駄飯食らいだと、余は言っているのだ」

魔学者「い、いえ、ですが! 研究というものは時間がかかるものでして! そこは十年などではなく、百年二百年という長い目で見て頂かないと!」

魔王「言い訳無用。合成魔獣の研究は今日をもって取り止めとする。これ以上は続ける価値がない」

魔学者「っ!!」

魔王「代わりに、別の研究をしろ。神界・竜界・魔界を繋ぐ、通称『次元の扉』についてだ。これを解析して、移動条件を調べあげろ」

魔王「現状だと、運任せでしか移動出来ないからな。それでは、軍を送る事など不可能だ。そこを何とかしろ」

魔学者「軍……ですか?」

魔王「三界を制覇するのが、余の望みだ。これ以上、説明は不要であろう」

魔学者「……か、かしこまりました。研究員全員にその様に伝えておきます……」

魔王「うむ」

ー 魔界、辺境の集落 ー


牛鬼「ヴォォォ。ヴォム、ヴァリリィ」(全長16メートル)

ベヒーモス「ヴルルルル。ヴォルルルフ」(全長23メートル)

(立ち話)


魔老師「」テクテク

魔老師「そうか……。あやつ、本当に魔界を掌握しおったか……」

魔老師「そして、次は神界や竜界にまで戦争を仕掛ける準備をしておるとは……」

魔老師「全て師たるワシの責任か……。だが、この老いぼれ、最早何も出来ぬわ……」

魔老師「歳を重ねるごとに弱くなっていくのがわかるからのう……。今や、全盛期の三分の一程度か……」

魔老師「もう魔界には未練もない。無為に死んでいく同胞も見とうない……。どこか静かなところで暮らしたいわ……」


魔老師「どこか、静かに死ねる場所を……」スタスタ……

15年前



ー 竜界(人間界)。山奥の村 ー


少年B「…………」ブンッ、ブンッ (素振り)

少年B「」ハァ……

少年B「やっぱりあいつがいねえと物足りねえな……」ショボン

少女A「うん……」

少女C「言わなくてもわかってるってば、そんなの! でも、もういないんだから仕方ないじゃない!」

少女E「やめよう。またケンカになっちゃうよ……。『勇者(名前)』が出て行っちゃってから、まだ一週間も経ってないのに……。こんなんじゃ、きっと『勇者(名前)』もがっかりするよ……」

少年D「ならさ……これからみんなでちょっと冒険の旅に出ない? 練習みたいな感じで」

少女E「冒険の旅って……?」

少年D「柵の外に出るんだよ。抜け穴見つけたからさ。ちょっとだけ。夕飯が出来る前までの間だけでも」

少女A「だ、だけど、柵の外に出たら怒られちゃうよ……」

少年B「いや、俺は行くぞ! こうなったら魔物をギッタンギッタンにしてやる!」ブンッ、ブンッ

少女C「あたしも行く! やる事なくてつまんないし!」

少女E「みんなが行くなら……。私も行く」

少女A「え、みんな行っちゃうの……? じゃ、じゃあ、あの……わたしも行く……」

少年B「よしっ! そんじゃあ行くか! みんなで冒険の練習だ!」

少年D「決まりだね。それじゃあ、みんなこっちに来て。見つかったらまずいから、こっそりだよ」

少女C「うん!」

ー 村の外 ー


少年B「なんか、すっごいドキドキするな」

少女A「う、うん……」ドキドキ

少女C「あたし、初めて村の外に出た。しかもこんなに遠くまで」

少女E「私も……。でも、結構、普通……」キョロキョロ

少年D「そりゃそうだよ。でも、魔物が時々出るから気を付けてね。スライムぐらいならどうにかなると思うけど、一角ウサギとか一つ目オオカミとか出たら、すぐに逃げるから」

少年B「んなもん、俺の剣で倒してやるってんだ。どっからでもかかって来い!」ブンッ

少女E「あ……。あそこ、見て。変な洞穴があるよ」

少年D「ホントだ! 中に入ってみる?」

少女C「うん! 入ろうよ! 探検、探検!」

少女A「で、でも、中は真っ暗だよ。怖いし、やめとこうよ……」オドオド

少年D「一応、ランプ持ってきてるよ。これで照らしながら進めば大丈夫だと思う」

少年B「だな! 俺は行くぜ! 中に魔物がいてもやっつけてやる!」


ガタッ!!! ガタゴト!! (洞窟の奥から物音)


少年B「」ビクッ!!
少女A「きゃあ!」
少女C「ま、魔物がいるの!?」
少年B「みんな、落ち着いて!」
少女E「う、うう……」ビクビク


カツーンッ、カツーンッ……

魔老師(魔物)「やれやれ……」ヒョコッ



「うぎゃああああああっ!! 出たああああああっ!!」


老師(タイプ・悪魔)「おいおい、そこの人間の子供ら。ちいと静かにしてくれんかのう……。ワシは悪さする気はないんでな……」


「しゃべったあああああああっっ!!!」


魔老師「ああ、そうか……。この辺は人語を喋る魔物がおらんからのう……。そう珍しくはないんじゃが……」

魔老師「のう、子供ら……。さっきも言った通り、ワシは悪さもしなければ、お前さん達に危害を加える気もない……。じゃから、退治とか言わず、そっとしといてくれんか……?」


少年B「だだだだだだって、じじ爺さんは、ま、魔物じゃないか! そんなのウソだ!!」ブルブル


魔老師「そうじゃのう。確かにもう七千年ぐらいは、魔物やっとるがのう……」

魔老師「じゃが、嘘はつかんぞ……。ワシは魔物の中でもちょっと変わっとるんじゃ。そこまで攻撃衝動にかられる事はないしのう……」

魔老師「それにな。ここの山はな……。ええ、山なんじゃ……。色々旅したが、ここほど魔力が満ちておって、じゃが静かで落ち着いておる山はどこにもなかった……」

魔老師「多分、ここの地中の奥深くにでっかい魔石でも眠っとるんじゃろうなあ……。ここだけきっと特別なんじゃて……」

魔老師「じゃから、ワシは死ぬならこの山で死にたいんじゃ……。多分もう十年か二十年の命じゃからのう……」

魔老師「子供ら……。見逃してくれんか? あんまり騒がれると、ワシはこの山から出ていかなければならなくなる……。それは嫌なんじゃて……」


少年D「こ、こう言ってるけど……ど、どうしよう?」アセアセ

少女E「う、嘘ついてるかもしれないよ。簡単に信じちゃ良くないよ」

少女A「ううん……。わたし、わかるよ。このお爺ちゃん、ウソなんかついてない。本当の事だって信じる……」

少女C「う……。少女Aがそう言うなら……ホントかもね」

少年B「少女A、ウソを見破るの得意だもんな……」

少年D「そうだね。何故か『勇者(名前)』の嘘だけは見破れなかったけど……。それ以外だとこれまで外した事なかったし……」

ー しばらく後 ー


少女A「へえ……。お爺ちゃん、元は『まかい』とかいうところに住んでたんだ」

魔老師「ああ、じゃがのう……。とある事があって、嫌気がさしてしもうてのう……。それで長い間、色々なところを旅してな……」

魔老師「それで、ようやっと見つけた落ち着ける場所がこの山だったんじゃ……」

魔老師「とある事については、詳しくは言えんが……。お前さんらには本当に迷惑かけたわい……」

魔老師「悪かったなあ……。謝って済む事じゃあないが、どうか許しておくれ……」ペコッ

少年D「?」

少年B「そんな事よりもさ、爺ちゃん! 魔族なら爺ちゃんも強いんじゃないか? いっちょ、俺と勝負してみないか!」サッ (木剣を構える)

魔老師「勝負か……。若いもんは元気があってええのう……。それに、お前さんはキラキラしたええ目をしておる。ワシの若い頃によう似とるわ……」シミジミ

少年B「げっ! 爺ちゃんにかよ! それはやだなあ」

少女E「」クスクス

魔老師「まあ、ええぞ。こういうのも久しぶりじゃからなあ……。どこからでもかかって来るとええ……」

少年B「どっからでもって、爺ちゃん、武器もないし座ったままじゃないか! これじゃ勝負になんないだろ!」

魔老師「ふぉっふぉっふぉっ、武器ならここにあるぞい」ソッ

少年B「!? 俺の木剣!?」

少女C「すごーい! いつのまに少年Bから取ったの!?」

少年D「全然気が付かなかった……」

魔老師「ワシとお前さんらでは、それぐらい差があるという事じゃ。勝負になるには二千年は早いかのう」

少年B「うぐぐぐぐっ……」

少女C「なら、お爺ちゃん! あたしとも勝負だ!」ビシッ (拳を構える)

魔老師「もうついとるぞい」

少女C「ふえああああああっ!!」ゴロゴロ

少女A「ああっ! 少女Cちゃんが転がってく!!」

少年B「爺ちゃんTUEEEEEEEEEEEEEE!!!」


魔老師「ふぉっふぉっふぉっ」

【魔闘錬清流・開祖】
『体力 :332万
 攻撃力:274万
 防御力:286万
 魔力 :245万
 素早さ:319万』

少年B「なあ、爺ちゃん! 爺ちゃんスゲー強いし、良かったら、俺らに稽古をつけてくれないか!」

少年D「あ、それいいかも。僕ら、強くなりたいんです。大きくなったら、みんなで魔王を倒しに行くって約束をしてるから!」

魔老師「ほうほう……。あのバカ魔王をか……。ああ、そりゃええかもな。うん、ええ事じゃ」

少女A「……? お爺ちゃん、魔物なのに、魔王は嫌いなの?」

魔老師「そりゃもう、嫌いじゃわい。あやつはとんでもない大バカ者じゃて。せめて魔界の統一までにとどめておけば良かったものをなあ……」

魔老師「煙のないところに、わざわざ火を起こしおって……。その為にどれだけ無駄な犠牲が流れた事か……」

少女C「うん……。あたしも魔王は大っ嫌い! あいつのせいで、みんな困ってるんだから! 人だって一杯死んでるし!」

少女E「柵を作ってその中で暮らす事になってるのも、魔王のせい……。町に行けば、読んだ事のない本とか一杯あるのに、滅多に行けないし……」

少女A「『勇者(名前)』にずっと会えなくなったのも……魔王のせい。魔物がいなかったら、きっと普通に旅して会いに行けるのに……」グスッ

魔老師「そうじゃなあ……。例えどれだけ強くなろうとも、その強さに溺れて周りを傷付ける様な事だけは絶対にしてはいかん……。優しい心を持つ者こそが、真の強さを持つ者じゃ」

魔老師「それに、修業だけでなく、勉学もせねばならん……。知識は人の器量を大きくする。物語は人の心を育てる……」

魔老師「それらも一生懸命勉強すると言うのなら……お前さんらに教えてやってもええぞ」

魔老師「強さとは、どういうものかをな……」


少年B「じゃあ!」

少女C「稽古をつけてくれるの!」

魔老師「ああ、ええとも……。いつか、本当に強くなって、それで魔王を倒すといい……。そして、世界に平和をもたらしとくれ……」

少年D「やった!」

少女E「ありがとね、お爺ちゃん!」

魔老師「代わりにワシの事は内緒じゃぞ……。魔物と仲良しになっとったら、きっと村のもんが誤解するからのう……」

少女A「うん! 大丈夫だよ。絶対に内緒にする」

ー 翌日 ー


魔老師「村の者には見つからんよう、ちゃんと出てきたかの?」

少年B「もちろん!」
少女A「大丈夫」
少年D「平気だよ」
少女E「」コクッ
少女C「まっかせて!」

魔老師「それでは、まずはこれからじゃな。ほれ」スッ

『少年少女はクワとスキを手に入れた!』

少女A「……?」

少年B「爺ちゃん、これ何だよ? 畑でも作るってのか?」

魔老師「うむ。まずは体力作りからじゃ……。畑を耕してこれを植えるのじゃぞ」スッ

『少年少女は、体力の種・力の種・守りの種・魔力の種・素早さの種を手に入れた!』

少女E「これ、何の種……?」

魔老師「ワシお気に入りの植物の種じゃ。茎や実は苦くて食えんが、種が美味でのう……。滅多にない貴重品じゃぞ」

魔老師「普通は栽培出来る様な代物じゃないんじゃが……長年かけてちょっと品種改良してやってな。種もかなり取れる様にしてやったわい。ここの土地はええ土地じゃから、きっと良い種が幾つも取れるじゃろ……」

少女A「じゃあ、まずはお爺ちゃんのお手伝いって事?」

少年D「授業料みたいな感じかな……。うん。ただで教えてもらうのも気が引けるし、やろうか」

少女C「だね! お爺ちゃんにも喜んでもらいたいし!」

少女E「がんばる……」

少年B「うしっ! 早速取りかかるぞ!」


魔老師「うんうん……。ほんにええ子揃いじゃなあ」ホロリ

爺TUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!

それから、五人の修業の日々が始まる……



魔老師「ほい、ほい。剣というものはじゃな、腕で振るのではなく、心で振るものじゃぞ」ペシッ、ペシッ

少年B「意味がわかんねえよ、爺ちゃん! あと、痛い! 痛いって!」


魔老師「お前さんは優しい良い心を持っておるな……。ならば、魔法なんぞに頼ろうとするな。慈悲の心こそが、真の回復魔法に通じる道じゃぞ」

少女A「????」


魔老師「ふぉっふぉっふぉっ。体を鍛えるなんぞ無意味じゃて。武道を極めようとするなら、まずは自然の声に耳を傾けてみ。筋力など不要になってくるぞい」ポーイッ

少女C「ふぎゃあああああっ!!」ヒューン


魔老師「まずは魔法ではなく、魔力そのものを出す事から始めようかの。これが出来れば、大体どんな魔法でも習得出来るようになるからの」

少年D「魔法じゃなくて……魔力??」


魔老師「お前さんは商人を目指すのか。なら、何よりも知識じゃろうて。昔話とか、偉人伝とか、民話とかそこらから始めて、果ては数学、経済学、帝王学、法学、経営学、生物学、科学、化学、魔法学、魔導学、まあそんなところを教えてやろうかの」

少女E「」

案の定、途中で村の人達に見つかってしまったが……



少女A「やめて! このお爺ちゃんは良い魔族なの! 悪い事なんてしないの!」

少女C「そうだよ! 爺ちゃん、何もしてないじゃないか!」

少年B「それに、爺ちゃんをここから追い出そうって言うなら、俺らも村から出てくぞ!」

少年D「父さん母さん、話だけでも聞いてよ!」

少女E「お爺ちゃんの話をちゃんと聞けばわかるから! ね!」



村人A「むう……。村長……どうする?」

村長「……とりあえず、子供らが向こう側についとるからな。催眠とかそんな類いかもしれんが、話だけでも聞くしかなかろう」

神父「……ですが、もしもその途中で子供らに何かした時は」

村人B「俺らも鎌とか持ってからな。八つ裂きにしてやるべ!」

村人C「覚悟しとけよ!」


魔老師「わかっとる……。それより、後で子供らを責めんでやっとくれよ。ワシが秘密にしといて欲しいと頼んだ事じゃからな……」

少年B「爺ちゃんは悪くない! それに、爺ちゃん、スゴい強いんだからな!」

少女A「わたしたちも……勝手に外に出てごめんなさい。だから、お爺ちゃんを追い出すのはやめて……」グシュッ

少女E「お願い……」ペコッ

少年D「お爺さんは良い魔族なんだよ! それは本当だから!」

少女C「悪い事したのはあたしらだけ! 信じて!」



村長「……とりあえず、子供らがああ言っとる事だし、危害を加えない事だけは約束しよう。じゃから、子供らがこっちに戻ってくるよう説得してくれんか? 話はそれから聞くから……」

魔老師「もっともじゃな……。心配かけさせて、申し訳ないのう……。さ、お前たちは向こうにお行き……」

なんでこんな良い師匠が居たのに賢者はかませになってしまったのか……

賢者は復活してからが本番だよ(適当)

子供たちの熱意もあり、紆余曲折の末、徐々に村人からの信頼を得ていく魔老師……



村長「話はわかった。じゃが、全部を信用した訳ではない。あんたが悪い魔物じゃないと、ワシらが信じるまでは、逐一、見張らさせてもらうが構わんか?」

魔老師「よいとも……。監視されて困る様な事はしておらんからのう……」


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村人C「爺さん……。突然、すまねえ。実は、うちの嫁さんが変な病気になっちまったんだ……」グシュッ

村人C「神父様も手に負えねえって……。あんた、子供らから聞いたけど魔法も凄いんだろ……? お願いだから、治せなくてもいいから、診てもらえるだけ診てもらえねえかな……」ポロポロ

魔老師「ええとも、ええとも。気功と魔法を修めたワシに治せん病気などないぞ……。安心するがええ」


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村人D「うわ! きょ、巨大な魔物が村のすぐ近くに!!」

魔老師「やれやれ……。軍からはぐれた魔物が迷い込んできよったのかのう……。ほいさと」ドゴオオオオオオオオン!!!

村人D「うおおおおおおおおっ!!! 爺さんTUEEEEEEEEEEEEEE!!!」


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村人E「今年は雨が降らねえな……。このままじゃ、凶作になっちまう……」

魔老師「雨は無理じゃが、水なら魔法でいくらでも出せるぞ。ほれ」ドボドボドボドボドボドボドボ

村人E「爺さんSUGEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」


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村人F「へえ、こりゃうめえな爺さん! この種、おらも育てたいから、少し貰ってもええだか?」

魔老師「ああ、ええぞ。子供らが育ててくれとるし、何よりここの土地は収穫が段違いだからのう……。腐るほどあるから、好きなだけ持ってくとええ」


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村人G「爺さん、良かったら子供たちだけじゃなく、おら達にも武術ってもんを教えてくれねえだか? 最近、やけに畑仕事が早く済むから時間が余ってんだべよ」

魔老師「ええとも、ええとも。習いたい者はいくらでも来るがええ。ただし、強さに溺れる事のないよう、他の事も一緒に教えていくからな……。強さと腕力自慢を履き違えるでないぞ……」


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そして、魔老師と初めて出会ってから五年が過ぎたある日……



少女E(16歳)「それじゃあ、これで」

魔老師(7842歳)「うむ……。この五年でよくぞあれだけの学問を学んだわい……。物覚えが良すぎて、逆にワシが困ったほどじゃからな……」

少女E「代わりに、武術や魔法の方はまるで才能がなかったですけどね。みんなから置いてかれるばかりで」

少年B(16歳)「ホント、お前はそっちの才能はなかったよな。毎回一人だけ、別メニューだったし」

少女E「うるさいわね! 代わりに学問じゃ毎回別メニューだったでしょ!」

少女A(14歳)「結局、あの種まで品種改良しちゃったもんね、少女Eちゃん。おかげでもっと美味しくなったし」

少年B(15歳)「頭が良いっていうのも立派な才能だよね。僕にもその才能を少し分けて欲しかったって思うもんなあ」

少女C(15歳)「でも、本当に行っちゃうんだね。また、寂しくなるなぁ……」

少女E「もう16歳だしね。それに、武術とかじゃ勇者の役には立てないってはっきりしちゃったし。ここでない才能を伸ばそうとするより、別の事で私は役に立とうと思って」

魔老師「そうじゃな……。旅するには資金が不可欠じゃ……。それに、情報とかも。これは馬鹿に出来んぞ。むしろ、一番重要な事かもしれん」

少女E「私もそう思います。だから、これからはガンガンお金を稼いで、十年後には勇者がびっくりするぐらいの大金持ちになってやろうかなって」

魔老師「うむうむ……。それも良い事じゃて……。頑張るんじゃぞ。たまには帰って来いよ……」

少女E「はい! 行ってきます!」

更に五年後……



魔老師「」ゴホッ、ゴホッ

魔老師「お前たち……。よくぞこれまで五年間、真面目に修業をした……」

魔老師「ワシから教える事は……もう何もない……」

魔老師「これからは……自分達で修業をしていくと良い……。世界を見て……己を知って……そして五年後に……」ゴホッ、ゴホッ

魔老師「幼い頃の約束通り……勇者と共に旅立ち……魔王を倒してくるのじゃ……」

魔老師「驕るな……負けるな……そして、大きく世界へと羽ばたいて来い……」ゴホッ、ゴホッ

魔老師「我が愛する弟子たちよ……」


少年B「はいっ! 師匠!!」グスッ

少女A「お爺ちゃんも……体に気を付けてね……。無茶しちゃ駄目だよ……」グシュッ、ヒック

少女C「あたし達、次に会った時はもっともっと強くなってるから!!」グスッ

少年D「先生も……どうかお元気で……」ポロポロ


魔老師「ふぉっふぉっふぉっ……。そうじゃなあ……。お前たちが戻ってくるまでは……絶対に生きておるからな……」ゴホッ、ゴホッ

魔老師「しっかり……強くなって帰って来いよ……」


「はいっ!!!」

 

ー 下山後。山の麓辺り ー



少年B「それじゃあ、俺は手始めに東の国に行く。向こうは今、荒んでるって聞くからな。修業の身としては丁度いい」

少女A「わたしは北の国に行くね。向こうはいつも水不足に困ってるって聞くから」

少年D「僕は西の国に。向こうは珍しい本が沢山あるって話だからね」

少女C「あたしは船に乗って世界中を回ってみる」


少年B「だけど、忘れるなよ」

少女A「うん。少女Eちゃんみたいに、一年に一回は必ず山奥の村に帰ってきて……」

少年D「先生の様子を見に行く」

少女C「何かあったらすぐに連絡出来るよう、今の居場所を村長に教えておく事! 大丈夫だよな!」


「それじゃあ、またな! お互い強くなろうな!」

「うん!」

 

しばらく後……


ー 東の国、地方の町 ー



役人「ふざけんなっ!! とっとと税金を納めやがれ!!」

商人「で、ですが、これだけ高くてはとても支払いなど……!」

役人「なら、代わりにてめえんとこの商品を貰ってくぞ! それしか方法がないからな!」ガタッ、ドサッ

商人「お、お止め下さい! それを取られては売る物が無くなって生活出来なくなってしまいます!」

役人「黙れ!」ドゲシッ

商人「ぐはっ!」ドサッ

役人「何なら、てめえんとこの嫁や娘を売り飛ばしてもいいんだぜ! それをされたくなかったら、大人しくしてろ!」チャキッ (剣を抜く)

商人「ひ、ひぃっ!!」

役人「しっかし、しけたもんしかねえな。ろくな物がありゃしねえ」ゴサッ、ゴトゴト、バリンッ

商人「あ、ああああああああっ!!」ポロポロ



少年B「これは酷いな……。想像以上だ……」

少年B「重税に、厳し過ぎる法律。なのに、逆に役人は威張り散らして、権力をかさに着てやりたい放題だ……」

少年B「こんなの、見過ごしておけるか! 俺がこの国を変えてやる!!」

ー 北の国、小さな村 ー



少女A「はい、どうぞ。お水です。川を潤しておきますね」ドポドポドポドポ

村人A「おおっ! ありがたや、ありがたや……。これで田んぼに水が張れます。今年は何とか生きていける……」

少女A「そう、良かった。でも、ここら辺一帯には井戸とかないんですか? どこも水不足だって聞きましたけど……」

村人B「あるにはあるんだがねえ……。すぐに干からびちまうんだ。乾燥した地域だし、雨がろくに降らねえんでな……」

少女A「そうなんですか……」

村人C「昔はもっと雨が降ったもんなんだがなあ……。女神様の力が弱くなったかもしんなくてな……。魔王が出てきてからは本当に雨が少なくなっちまった……」

少女A「女神様の力が弱まって……」


「おーいっ!! 大変だあぁぁっ!!」


村人A「何だ、どうした!?」


村人D「」ハァハァ、ハァハァ

村人D「む、村の近くにりりり竜が出ただっ!! そんで、旅の娘が今、そこにっっ!!」


村人A「!!?」
村人B「竜が!?」
村人C「なしてこんなとこに!?」


少女A「!!」タタタタタッ

村人D「あ、ちょっとあんた、どこさ行くだ!!」

少女A「その子を助けに行くっ!!」タタタタタッ


村人D「む、無茶だ!! 絶対殺されるぞっ!!」

ー 西の国、貴族の屋敷 ー



少年D「凄い……。王都でもないのに、これだけの書物があるなんて……」

少年D「しかも、魔法関連の書物ばかりだ。あ、こっちには魔導書が。こっちは魔物関連のが」バサッ、ドサッ

貴族「お気に召したかね、魔法使い殿?」

少年D「ええ、とても。ありがとうございます。助かります」

貴族「いやいや、礼など要らぬよ。我が領地に現れた魔物を無償で倒してもらったのだからな。こんな物で済むならお安いご用だ」

少年D「とんでもない。ここの図書室は金貨100枚以上の価値がありますよ。こちらは、貴族様が集められたのですか?」

貴族「いや、先代の先代が古書好きでな。私ではないし、私には価値がさっぱりわからんよ。書いてある文字すら読めんからな」

少年D「ほとんどが古代文字ですからね。しかし、素晴らしいです。しばらく滞在して、ここの本を読ませてもらう事は出来ますか?」

貴族「構わんよ。好きなだけいるといい。部屋も用意させておこう」

少年D「ありがとうございます!」

貴族「それでは、私はこれで失礼するよ。食事の時間になったら、メイドを遣わそう。それではな」クルッ、スタスタ

バタンッ……


少年D「助かるなあ。ありがたい話だ」

少年D「読みたいものばかりだからな。この魔物大全集とか、他にも魔導関連の書物が一杯」ゴソゴソ

ザザッ、バサッ (積み上げていた本が落ちる)

少年D「っと、いけない。貴重な書物だっていうのに」ササッ

少年D「ん……これは?」

少年D「異界移動の儀……? 昔、先生から異界の事は伝説として聞いてたけど、本当に異界なんてあるのかな……? あるのならここにも行ってみたいものだけど……」ペラッ、ペラッ……

ー 南の国、海上 ー


船員「大変です、船長!! 向こうから海賊船が!!」

船員「あれは、疾風の海賊団の旗です!! まずい!!」


ワー、キャー、タスケテー!!


船長「舵を西に取れぃぃっ!! 逃げるぞ! 全速前進!! 」

船長「それと、客を落ち着かせろ!! 邪魔だから、船室にでも全員ぶちこんどけ!!」

少女C「うるさいわよ! ったく! 海賊船一隻ぐらいで騒がないで!」バタンッ!!

船長「おい、何だお前は! 邪魔だから向こうに」

少女C「聞きなさいっ!!!」ビリリッ

船長「」ビクッ!!

船員「」ビクッ!!

少女C「命令は変更! 舵を正面に!! 海賊船を逆に叩き潰すわよ!!」

船長「ア、アイサー!!」

船員「アイサー!!」


少女C「まったく……。そういえば、うちの国は海の魔物が比較的少ないから、一番海賊が多い海域だったっけ」

少女C「まあ、丁度いいわ。これも何かの縁よ。折角だから、海賊達をこの海から根こそぎ葬ってやろうじゃないの」

少女C「海賊を狩る海賊といったところね。名前を変えて、この海で一暴れしてやるわ!」

ー 西の国、研究所 ー


少女E「とうとう立てたわ、私専用の特別研究所」

少女E「苦節、十年……。ようやく私の道が見えてきたわね」

少女E「商売の方は軌道に乗ったし、各支店長にある程度任せても大丈夫だし……」

少女E「ここで、思う存分研究出来るわ!」

少女E「そして、私が子供の頃からずっと考えてた『あれ』を現実のものにするの!」

少女E「魔結晶をたっぷり買えるだけのお金も今から貯金しておいて、五年後には『あれ』も完成させる!」

少女E「それで初めて、私は世界を救う勇者の仲間だと胸を張って言えるんだから!」

ここまで
流石にそろそろ、わかる人には展開バレしてるだろうから、今回だけはネタバレ的な書き込みは控えてもらえるとありがたい

ネタ振りにしか聞こえない


勇者の間の悪さよ…

まさか魔王と同門とは奇縁だな


盛り上がってきたな

乙!

前振り長くてクソだわ

全盛期の三分の一から更に二百年程経ってこの強さ、全盛期は魔王と同じカンストクラスか、爺さん強いな。

乙乙

GEE3、アンタのしわざか……

才能(勇者)を努力(修行とドーピング)で上回る話か

努力…?

環境の重要さを教えてくれるSS

>>498の訂正

魔老師「お前たち……。よくぞこれまで五年間、真面目に修業をした……」

魔老師「お前たち……。よくぞこれまで十年間、真面目に修業をした……」

そして、現在……

勇者が山奥の村に訪れる五日前の事……





ー 東の国、王宮 ー



兵士A「名剣士様、ご来訪ーーーっ!!」


バタンッ! (玉座の間の大扉が開かれる)


兵士B「」ビシッ (敬礼)
兵士C「」ビシッ (敬礼)
兵士D「」ビシッ (敬礼)
兵士E「」ビシッ (敬礼)

兵士F「」ビシッ (敬礼)
兵士G「」ビシッ (敬礼)
兵士H「」ビシッ (敬礼)
兵士I「」ビシッ (敬礼)


部屋の左右に並ぶ屈強な兵士たち

彼等は全員、歴戦の強者であり、その顔には大小の傷が武勲代わりに刻まれ、そのたたずまいには一分の隙もなかった

そんな彼等にして、自然と敬意を払わせてしまう男
それこそが部屋の中央、豪華な敷物の上をゆっくりと歩き、玉座へと近付いていく彼

即ち、名剣士である


名剣士「お久し振りでございます、陛下」

名剣士「いえ、ここではあえてこう言わせて頂きましょう。無礼の程をお許しを」


名剣士「お久し振りです、師匠」


剣聖「ははっ。そうだな。やっぱりお前はそういう言い方のがしっくり来るな」

剣聖「しかし、相変わらずの厚かましさで安心したぞ。俺はお前を弟子にとった覚えなんかないんだが、いつの間にか師匠呼ばわりしやがって」

名剣士「心の師匠ですよ。それに多少は稽古をつけてもらいましたからね」

剣聖「勝手な事を。剣のいろはも教えた覚えはないんだがな」

名剣士「いの字ぐらいまでは教わったと自負してますよ。しかし、相変わらず軽いですね、師匠は。その甲冑を着こなしている身なりといい、とても国王様になられたとは思えない」

剣聖「こっちのが落ち着くんだよ。そう言うな。元は革命軍のリーダーだったのが、いきなり国王だとかに祭り上げられて一番戸惑ってるのは俺だからな」

名剣士「統率力や指揮能力とか考えれば当然ですよ。あと、その呆れるぐらいの強さもですけどね。俺は師匠に剣をかすらせた事すらないですから」

剣聖「剣の強さなんて、革命を行う上であまり必要なかったがな。クーデター起こそうってんじゃないんだ。国民の意識の改革から始めないと」

名剣士「実際、クーデターなら一日で終わってたでしょ、師匠は」

剣聖「で、何が変わるんだ? 血にまみれた独裁者が新しく誕生するだけだろ。そんなのは願い下げだ。政権が変わるのが大事なんじゃない、国民の意識が変わるのが大事なんだよ」

名剣士「わかってます。ただ、従うだけでは操り人形と同じだって。師匠の師匠の教えですよね。もう耳にタコなんで」

剣聖「俺にとっては血肉だ。師匠の教えがなければ、俺は今のこの強さも平和も手に入らなかった」

名剣士「尊敬されてるってのはよくわかってますよ。それよりも……」

名剣士「多分、師匠の耳にも既に入ってますよね? 勇者が現れたって話」

剣聖「ああ、知ってる。その為に無理を言って、しばらくこの国を留守にする事を議会にねじ込んだからな。準備はもう整ってる」

名剣士「なら、わざわざ来なくても良かったですかね。師匠が動けなくて困ってるといけないと思って、何か助け船を出そうかと急いで来たんですけど」

剣聖「悪いな、気持ちだけもらっとく」

名剣士「残念ですよ。逆に恩を売る機会だと思ったのに」

剣聖「そういう奴だ、お前は。妙なところだけ俺に似てやがる」

名剣士「まあ、唯一の弟子なんでね。師匠譲りですよ、それは」

剣聖「だから、弟子にした覚えはないぞ」

名剣士「師匠と俺は元革命軍のリーダーと副リーダーじゃないですか。その時、政治やら剣術やら色々教わったし、言ってみればもう師弟みたいなもんですよ」

剣聖「強引過ぎるな。まあいい。それよりも名剣士、暇ならこれからちょっと付き合え。丁度今から旅立つつもりだったんだ。折角だから見送りをしていけ」

名剣士「もちろん、お付き合いします。久々に師匠の勇姿も見たいですしね」

ー 大廊下 ー


名剣士「しかし、驚きましたよ。本当に師匠の言っていた通りになるなんて……」テクテク

剣聖「当たり前だ。ガキの頃から、俺は『勇者(名前)』にたった一回でも勝った事がないんだからな」テクテク

名剣士「そこらは正直、話し半分に聞いてたんですけどね。師匠に勝てる人間がいるなんて想像がつかなかったんで……」

名剣士「でも、師匠より強いってんなら、間違いなく世界を救う勇者に選ばれるでしょうし、実際そうなってますから。そりゃ流石に信じますよ」

剣聖「だから、俺の話した事は嘘や間違いじゃなかっただろ。今じゃ、あいつがどれだけ強くなってるか、俺にも想像がつかないしな」

剣聖「正直、剣の道はもう極めたと内心では思ってたんだが、とんだ驕りだった。俺もまだまだ修業不足だな。勇者に選ばれたあいつは、きっと俺よりも遥かに強くなってるだろうから」

名剣士「にしちゃあ、嬉しそうですよね、師匠」

剣聖「当たり前だ。子供の頃からの夢がようやく叶うんだぞ」

名剣士「っと、話してたらもう着いちゃいましたか、厩舎に」

剣聖「ああ、見送りはここまででいい。さ、行こうか、相棒」


天馬「」ヒヒーン!!

剣聖「それじゃあな! 魔王を倒したら戻ってくる! 城の奴等にも宜しく伝えといてくれ!」ヒラリ

天馬「」ブルル


名剣士「ご武運を!」


剣聖「ああ、それじゃ行くぞ、相棒!」タンッ

天馬「」バッサ、バッサ (天に舞い上がってく)





名剣士「……しかし、相変わらずカッケーな、師匠は」

名剣士「天騎士の鎧に名剣デュランダルと伝説剣エクスカリバー、そしてペガサス……。神話に出てくる英雄そのものだ。勇者でないのが不思議なくらいだぜ……」

ー 東の国、上空 ー



剣聖「さて、お前の速度なら山奥の村まで20分ぐらいで着くだろう。十五年前の約束を果たしに行くぞ!」

天馬「」バッサ、バッサ


剣聖「しかし、最近は政務ばかりで実戦は久し振りだからな。腕が鈍ってないといいが……」


剣聖「む……」

天馬「」バッサ、バッサ


剣聖「……珍しいな。こんなところで大型の魔物に出会うなんて」




焔鳥「SIGYAAAAAA!!!」バッサ、バッサ (全長41メートル)




剣聖「どれ、肩慣らしといくか」チャキッ


「飛剣! メ ル ト ス ラ ッ シ ュ ッ !!」


ザシュッ!!!!



焔鳥「シィ……ギィ…………」 (真っ二つ)


ヒューン……ドグシャッ!!!



剣聖「弱すぎて試し切りにもならんか。ちっ」

【天下無双の剣聖】
『体力 :9999億
 攻撃力:9999億
 防御力:9999億
 魔力 :9999億
 素早さ:9999億』

特殊技能:魔法剣
    :剛剣
    :柔剣
    :飛剣
    :聖剣
    :暗黒剣
    :暗殺剣
    :二刀流
    :無刀流
    :居合

ええええええっ!?

ー 中央国、大聖堂

  離れの特別礼拝堂

  最奥の間 巨大部屋 ー



ギギギギギギィィ…… (魔力でコーティングした鋼鉄製の扉が開かれる)


女「……ようやく。ようやく、お会い出来ました」

女「お久し振りでございます、女です」ペコッ……

女「今日は特別な知らせを持って参りました」

女「この世で唯一無二、世界にただ一人だけの特別なお方」

女「竜に愛されし聖女様……」



聖女「わ、久し振りだね、女ちゃん。懐かしいなあ」


その言葉とほぼ同時に、彼女のすぐ横に座っていた二匹の生物が低いうなり声を出しながら顔を上げた……

三界における最強の孤立種族ーードラゴンである


天海竜『グルルルッ……』(全長38メートル)
地海竜『ギルルルッ……』(全長38メートル)

【双子の竜族】(二匹の平均値)
『体力 :736万
 攻撃力:424万
 防御力:408万
 魔力 :357万
 素早さ:280万』

いつから名剣士が少年Bと(ry

聖女「少し痩せたんじゃない? 大丈夫? 元気にしてた?」

女「はい、体は健康そのものです。それもこれも全て女神様の加護の賜物です。聖女様こそ、お元気そうで何よりです」

聖女「もう、相変わらず固いなあ、女ちゃんは。もっとフレンドリーでいいって言ってるのに」

天海竜『…………』ジロッ
地海竜『…………』ギロッ

聖女「あ、ダメだよ、ドラリンにドラポン。この子はわたしの友達。攻撃したら、めっ、だからね」

天海竜『…………』コクッ
地海竜『…………』コクッ

聖女「うん。いい子たちだね。よしよし」ナデナデ

天海竜『ぐるるっ……』(ご満悦)
地海竜『ぎるるっ……』(ご満悦)


女「聖女様も初めてお会いした時から少しも変わっておられないようで安心しました……。あの時も聖女様はそうやって、竜をまるで赤子の様に大人しくさせてしまわれて……」

聖女「もう五年も前の話だっけ? そういえば女ちゃん、あの時、竜に襲われかけてたよね」

女「はい。そこを聖女様に助けて頂きました。まるで奇跡を見ているかのようでした」

聖女「大袈裟だよ。竜は元々大人しい種族なんだから、きちんと話せばわかってくれるもの。こっちに悪意とか恐怖がなければ平気よ」

女「それを言えるのは、世界で唯一、聖女様だけですよ。正直、私は今でも竜は怖いですし……」

聖女「そうなの? こんなに可愛いのにね」ナデナデ

天海竜『ぐるるるるっ……』(ご満悦)
地海竜『ぎるるるるっ……』(ご満悦)


女(猫みたいな鳴き声を出してる……)

聖女「それで、今日はどうしたの? 何か特別な報せがあるって言ってたけど」

女「はい。吉報です。聖女様が前に話しておられた勇者様が現れたのです。名前も確認しましたが、以前お聞きしていた通り勇者様ご本人で間違いありません」

聖女「ああ、うん、知ってるよ。女神様から直接聞いたから」

女「そうですか。直接お伝えを受けるとは、流石は聖女様です。もしも知らなかったら、どうしてもお伝えしなければと、ここまで来たものですから」

聖女「わざわざありがとうね。ここに来るのも大変だったんじゃない? 忍び込んで来たの?」

女「いえ、色々ありまして、教会に復職する事になりました。不本意ではありますが、その内、また枢機卿に任命されるようです」

聖女「あ、戻っちゃうんだ。女ちゃんはそのまま教会とは縁を切ってた方が良かったと思うんだけど……」

女「申し訳ありません。こちらにも事情がありまして……。聖女様のお耳汚しとなる様な事なので、詳しくは申し上げませんが……」

聖女「うーん……。でも、気になる。教えてくれない?」

女「いえ、いくら聖女様と言えどもこればかりは……。しばらくの辛抱だと割り切りますし、あまりに長くなるようなら、その内、自分で何とか致します」

聖女「そうは言ってもなあ……。女ちゃんも困ってるみたいだし……」

聖女「悪いけど、ちょっとだけごめんね」

女「?」

聖女「」パアアッ (後光が差す)

女「!?」

聖女「ふうん……。勇者の事で脅されちゃったんだ」

女「わ、わかるのですか!?」

聖女「うん。何となくだけど。でも、それなら平気だよ。私も一緒に行くし、何なら各地の教会に勇者は本物だって伝えるよう、天使さんを派遣してもいいし」

女「……て、天使様??」

聖女「うん。お話は聞いてたよね? いざという時はお願いしていい?」


ピカーッ (目映い光が部屋中を照らす)

天使A「心得ました」フワッ

天使B「全ては聖女様のお心のままに」バサッ

天使C「御安心を……」フワリッ

【聖女の世話役】(三天使の平均値)
『体力 :516万
 攻撃力:272万
 防御力:296万
 聖力 :264万
 素早さ:224万』



女「て、天使様が降臨を……!!!」

女「け、結界は……大丈夫なのですか? この部屋には聖魔含めて最強の結界がかけられていたはずですが……」

女「唯一、通過出来る場所が、あの外側からしか開かない頑丈な扉だけだというのに……」

聖女「結界なら、この前ドラリン達が遊んでいる時にパリンッて割れちゃったみたい」

女「」

聖女「どっちにしろ、あの程度の結界じゃ、天使さんには意味ないけどね」

女「そ、そうですか……。流石は天使様……」

聖女「私自身も、前からこっそり抜け出して色々なところに行ってたりしてたし」

女「」

聖女「そもそもドラリン達なら、あの扉自体、壊すの簡単だと思うよ」

女「」

女「な、ならば何故、聖女様はこの様な軟禁生活を受け入れられてるのですか」

女「私はてっきり、聖女様は封印されていて身動きが取れないからだと……。しかし、その気になればここからいつでも出られるというのに、何故!」

聖女「それは、ここの場所が聖地だけあって、みんなの信仰や祈りが世界中から集まってくるからだよ」

聖女「今、女神様が魔王によって封印されてるらしくって。だから私が女神様の代わりに、この場所でそれを祝福や加護に変えて与えてるの」

女「で、では、聖女様は今や実質的に女神様と同じ……。私の加護も聖女様が……」ガクガク、ガタガタ

聖女「うん。天使さんに頼まれてその代わりをしてるだけなんだけどね。私は力を貸してるだけで、細かい事は天使さんが全部やってくれてるよ」

女「そ、そうですか……。さ、流石は聖女様……」ガクガク

聖女「急にどうしたの? 震えてるけど? 寒いの?」

女「あ、い、いえ……。多少驚いてしまったので……」ガクガク

聖女「驚く程大した事はしてないよ。きっと女ちゃんでも出来るから。試してみる?」

女「ムリムリムリムリムリムリ、恐れ多いです! 私ごときではとてもとても!!」ブルブル

聖女「そんな謙遜しなくてもいいのに」

女「いえいえいえいえいえいえ!! 絶対ムリですから!! 無茶ぶりやめて下さい!!!」ガクガク

聖女「でも、気軽に動けないと不便な時もあるからなあ。今回もどうしようかなって考えてたところだし」

女「そ、それはそうでしょうね……。勇者様のお供をすると言うのならかなり長い間、ここを空ける事になりますし……」ガクガク

聖女「そうなんだよね。二・三日ぐらいならいなくなっても平気なんだけど、何ヵ月も空けると世界中の加護とか祝福が少なくなっちゃうだろうから、みんな困ると思うし……」

女「は、はい……。そうでなくとも聖女様は教会のシンボル的なところありますし……。聖女様が行方知れずになったとなれば、世界中の者が悲しむはずです」

女「それに、竜に愛されてる聖女様の存在があるからこそ、教会は絶大的な信頼を得ています。最強の武力を有している事にもなるので、大きな顔が出来ている訳ですし……。きっと教会も聖女様の旅立ちを認めないでしょうね……」

聖女「言い方全然違うけど、何か教皇さんも似たような事を言ってたね。あの人の陰湿なやり方は嫌いなの、わたし。だから、女ちゃんがやってる事は応援してたよ」

女「で、では、聖女様も今の教会の方針を快く思ってはいないと……!」

聖女「うん。わたしはここから長い間離れられなくなっちゃったし、わたしが教会の事を悪く言うときっと女神様への信仰自体が弱くなっちゃうからね。そのせいで何も出来なかったんだけど」

聖女「だから、信仰を下げずに教会に反旗を翻している女ちゃんにはいつも感謝してたよ」

女「なら、私はすぐさま、以前の様に教会から袂を分かちます! まだ枢機卿になるという発表はされてませんし!」

聖女「そう? ありがとね。でも、その前にやっぱり女ちゃん、わたしの代わりに祝福や加護をみんなに与えてくれない?」

女「だからそれはムリですって!! 聖女様たっての頼みなので断りたくはないのですが、ムリなんです!!」ガクガク

聖女「そんな事ないよ。結構簡単な事だし」

女「世界規模の加護や祝福を簡単とか言われても困ります!!」ガクガク

聖女「女ちゃんなら才能あるし大丈夫だと思うんだ。一度試してみればわかるから。わたしの聖力を少しだけ女ちゃんにも貸すしね。はい」パアアッ

女「あ、あああああああああああああああああああっっ!!!///」ビクンッ!

『女のパラメータが上がった!!』

【教会を破門された女】
『体力 :6254
 攻撃力:   1
 防御力:9999
 魔力 :8870
 素早さ:4209』
     ↓
【聖女の祝福を受けし女】
『体力 :7289万
 攻撃力:    1
 防御力:8753万
 聖力 :9999万
 素早さ:5047万』


聖女「それで、この地に送られてきてる祈りや信仰を女ちゃんに受け渡して」パアアッ

女「ふああああああっ!!///」ビクンッ!!!


聖女「ね? 平気でしょ?」

女「え、あ、はい……。大丈夫……みたいですね……」パアアッ (後光が差す)


聖女「それじゃ、お願いしてもいい? 細かい事は天使さんがやってくれるから」

天使A「ええ。私どもに万事お任せを……」ペコッ

女「は、はい!!」ビクッ


聖女「あと、念の為にドラポンを護衛に残しておくから。頼んだよ、ドラポン。女ちゃんを守ってあげるんだよ」

地海竜『グルルルッ!!』フンスッ

女「」ビクッ!!

インフレが止まらねえ!

聖女「それじゃ行ってくるから。悪いけど、しばらくお願いね」

女「は、はいっ!! 聖女様からの頼みであれば、この命尽きるまでここでお待ちしております!!」

聖女「大袈裟だよ。でも、出来るだけ早く帰ってこられるように頑張るね」

女「はいっ!!」

聖女「魔王を倒して女神様の封印が解けたら、わたしもこの場所から自由に動けるようになるし、そうなったら、この教会の事も何とかしよう。女ちゃんと一緒なら良い方向に変えていけると思うし」ニコッ

女「あ、ありがとうございますっ! 聖女様!!」

聖女「それじゃ行こうか、ドラリン。よいしょっと」ピョン(竜の背に乗る)

天海竜『グルルルッ!!』フンスッ


女「」ビクッ

聖女「魔王を倒したらすぐに戻ってくるから。どれだけかかるかわからないけど、女ちゃん、それまでドラポンと一緒に仲良くしててね」

地海竜『ぎるる』コクコク

女「は、はい!!」


聖女「じゃあ、行こっか。わたしの行く先を阻む物よ、一時、その力を消したまえ」パァァッ

(壁がぐにゃりと曲がり、巨大な穴が開く)


女「なにあのまほう……。わたししらない……」


聖女「進む先は山奥の村だよ。飛んで!」

天海竜『グルルルッ!!』バッサ、バッサ



ヒューン……!!!



女「はや!」


ウニョニョ……


女「あ、かべがもとにもどってく……。すごい……」

ー 中央国、上空 ー


聖女「やっぱり空飛ぶのって気持ちいいよね」

天海竜『グルルルッ』バッサ、バッサ


聖女「それにしても、勇者、どんな風に変わってるかな? きっとスゴく強くなってるよね」

天海竜『グルルルッ!』バッサ、バッサ


聖女「だよね! あと、スゴくカッコよくなってるかもしれないね。昔からカッコ良かったし」

天海竜『グルルルッ!』バッサ、バッサ


聖女「え? 前? あ、魔物だね。悪霊系かな……?」





闇死霊「竜……!? た、退避……!!」フワリッ




天海竜『グルルルッッッ!!』バッサ、バッサ!!!

聖女「あ、いいよ。私がやるから」

聖女「闇より生まれし亡者よ、闇へと消え去りなさい」パァァ




闇死霊「あ、ああああっ……!!!」ビキキィィィ


パリンッ…… (消滅)




聖女「さ、行こう。十五年振りに勇者に会いに! 楽しみだね!」

天海竜『グルルルッ!!』バッサ、バッサ!!

【竜に愛されし聖女】
『体力 :9999億
 攻撃力:9999億
 防御力:9999億
 聖力 :9999億
 素早さ:9999億』

特殊技能:奇跡

ー 南の海、凪の海賊団、アジト前 ー


女船長「大船長ーーーーっ!!!」ダダダダダッ


バキイッ!! ズゴーンッ!! ガッシャーン!!!

男船長A「ぐぼおらげほぐふげふわっっっ!!!」ビューン!!

【格闘王】
『体力 :7574
 攻撃力:8329
 防御力:6811
 魔力 :  36
 素早さ:6025』

女船長「!!?」


「大船長!! 考え直しぎゃぐいあぐげごぼがぎふあっっ!!!」

バリーィン!! ズガッシャーン!!

男船長B「が、ぐふっ…………」ドサッ

【三番艦隊、隊長】
『体力 :6597
 攻撃力:7134
 防御力:5468
 魔力 :   0
 素早さ:7256』


女船長「お、遅かったか、ちくしょう!!」

ー アジト内 ー


ガチャッ!!!

女船長「大船長っっ!!」


女闘神「ああ、女船長、お帰り。悪いけど、今、ちょっと立て込んでてね」

副船長「がふっ……!!!」ドサッ……

【四海の小覇王】
『体力 :8187
 攻撃力:8255
 防御力:8436
 魔力 : 291
 素早さ:5923』


女船長「副船長までっ!!!」

女船長「やっぱり、この海賊団を抜ける気なんですか、大船長!!」


女闘神「そ。ひょっとしてあんたまで止めに来たの?」

女闘神「もしそうで、そこのみんなみたいに実力行使で止めようとするってんなら、床とキスする覚悟はしときなよ」



男船長C「」(気絶)
女船長D「」(気絶)
男船長E「」(気絶)
男船長F「」(気絶)
男船長G「」(気絶)
女船長H「」(気絶)
男船長I「」(気絶)


女船長「わ、私を除いた十番隊の船長全員が、もう……!!」

女闘神「だから、最初に言っておいたのにさ。子供の時からの約束があるから、あいつが伝説の勇者になって現れたら、あたしは海賊稼業をすっぱりやめるって」


女船長「確かにそりゃ聞きましたよ!! でも、本当にその幼馴染みが約束通り勇者になって旅立つなんて、誰も思わないじゃないですか!!」

女船長「それに、大船長はもう世間じゃ海賊王だって言われてるんですよ!! この海賊団がここまでデカクなったのだって、大船長が率いていたからで!!」

女船長「大船長はこの海賊団の竜骨なんですよ!! 屋台骨なんです!! 今更抜けるって言われたら、そりゃ何としてでも止めますよ!!」


女闘神「それこそ勝手な言い分だね。あたしは初めから全員に言ってあるんだし、それでいいって話だったんだから」

女闘神「で、いざその時が来たら、納得出来ないからってムリヤリ捕まえようとしてくるなんてね。そりゃあたしだって反撃するよ」


女船長「大船長が抜けたら、その後、私らはどうしろってんですか! 解散しろって言うんですか!?」

女船長「こんだけデカイ海賊団まとめれるの、大船長だけなんですよ!! でなきゃ隊長同士で争いが起こりますって!!」


女闘神「ま、それについてはあたしも困るからね。だから、しばらくは副船長に任せる事にした。これ、一応委任状。あんたはその補佐にしといたから」ピラッ

女船長「ちょっ! 勝手ですって、そんなの!!」

女闘神「いいでしょ、別に。ずっとって訳じゃないんだし。魔王倒したらまた帰ってくるから、それまでの間だけだしさ」

女船長「それ、いつになるんすか!! 無理ですよ、私らじゃそんなに長い期間もたないですって!!」

女闘神「なら、お互い武闘家らしく、拳でケリつけよっか?」スッ

女船長「っ!!! そ、そっちも無理です……!! 大船長に勝てる訳ないじゃないですか!!」ガタガタ

女闘神「ま、あんた達もそこそこ強くなった訳だし、平気だってば。もう、ここらじゃ敵なしぐらいの強さにはなってるはずだし」

女闘神「それに、海賊稼業もそろそろ潮時だったからね。これからは貿易でやっていこうかって話になってたし、あたしはあまり必要ないでしょ」

女船長「必要あります!! 大船長がいなかったら、私ら誰から経営学とか学ぶんですか!! ずぶの素人揃いなんすよ!!」

女闘神「そっちも、あたしが昔使ってた教本置いといたから、自分たちで学びなよ。小麦とかのあまり価格変動が起きないもの扱って堅実にやってけば、大こけはしないはずだから」

女闘神「ただし! 商売とかせずに、あたしがいない間に勝手に先祖がえりして、もしも商船の略奪を始めるようなら……」

女闘神「その時は容赦なく潰すから、それだけは忘れないようにしなよ」ゴゴゴゴゴ……

女船長「っ!!」ビクッ!!


女闘神「って事で、他の隊長達にも起きたらそう伝えといて。それじゃあね」ダンッ (窓から近くの大岩まで大ジャンプ)


女闘神「」ピィィーッ (指笛)



ヒューン……

鳳凰「」バッサ、バッサ (全長56メートル)

【神の使い】
『体力 :551万
 攻撃力:246万
 防御力:219万
 魔力 :336万
 素早さ:304万』




女船長「!!!???」



女闘神「さ、行こっか! 目指すは山奥の村!! 勇者と合流するよ!!」スタンッ (乗る)

鳳凰「シギャアアアアアアッ!!」ビリビリッ



バッサ、バッサ、バッサ……



女船長「っ……。け、結局、止めるどころか、一歩も動けなかった……」ヘナヘナ

女船長「大船長……。いつの間にあんな怪物手懐けたんだ……」

女船長「やっぱ化物だわ、あの人…………」ハァ……

ー 南の国、上空 ー


女闘神「にしても、大変な騒ぎになっちゃったな。この五年の間にちょっと組織をデカくし過ぎたかも」

鳳凰「」バッサ、バッサ


女闘神「しっかし、楽しみだな。本当に勇者に選ばれちゃったし、あいつ。どれだけ強くなってるんだろ」

鳳凰「」バッサ、バッサ


女闘神「ま、伝説の勇者だし、それぐらい強くなってもらわないと困るか。ふふっ」

鳳凰「シギャアアアアッ!!」バッサ、バッサ


女闘神「ん、ああ……。下にちょっと強そうな魔物がいるね。女船長だけじゃ多分あれはキツいかな。他の面子は今気絶してるし、あたしが片付けておくか」





クラーケン「URYYYYYYY!!?」ビクッ (全長39メートル)




女闘神「行くよっ!!」ギュイイーン


「 烈 火 降 破 弾 !!!」(気功弾)



ズガッバキッガッシャーーーーーーーン!!!

クラーケン「GYUAAAAAAAAAA!!!」ドギャボギアガギ!!!


ゴボゴボゴボ…… (撃沈)




女闘神「よしっ! それじゃ、十五年前の約束を果たしに行こっか!!」

【武を極めし女闘神】
『体力 :9999億
 攻撃力:9999億
 防御力:9999億
 魔力 :9999億
 素早さ:9999億』

特殊技能:魔法拳
    :硬気功
    :柔気功
    :軽気功
    :外気功
    :秘孔
    :合気
    :消力
    :忍術
    :暗殺拳
    :殺意の波動

ー 異界、中央巨大塔、最上階 ー


カツーン、カツーン……

魔王「さて、ここまで来てようやく真魔王と御対面という訳なのだが……」

側近「」チャキッ (剣を構える)

魔王「しかし、お前がこの世界の魔王とはな。その姿、意外としか言えないぞ」


侍女「?」

侍女「お前、誰だ。いきなり訪ねて来て無礼だろ」


魔王「無礼はそちらであろう。招かれざる客ではあるが、余は魔界から来た魔王だぞ。礼儀を知っているのならば、それなりの態度を持って遇せよ」


侍女「お前が魔界の王?」

侍女「嘘だな、お前、弱すぎる。論外だ」


魔王「ほう。ならば試してみるか……?」ゴゴゴゴゴ……


侍女「断る、面倒だ。客でないなら排除するだけ」ビュンッ!!

侍女「はいっ!!」ドゴオオオオオオオオンンンンッッッ!!!


ズガゴラギングワンバキンドグガッシャーーーーン!!!

魔王「ごぶげらがぎぐれごがぶぎがりごぼほあああああっっっ!!!!!」メキョ、バキッ、ガッシャーン!!!

側近「魔王様ぁぁぁぁーーーー!!!」



侍女「お前は見逃してやる。さっさと去れ」

側近「ぐっ、うおああぁっっ!!! ま、魔王様ぁぁぁっっ!!!」ダダダダダッ


侍女「とんだ無礼な奴らだ。あんなの、御主人様に会わせる価値もない」

【真魔王の式神】
『体力 :2000億
 攻撃力:2000億
 防御力:2000億
 魔力 :2000億
 素早さ:2000億』

侍女「」ペタペタ、ヌリヌリ (魔王が吹き飛んで壊れた壁の修復中)


真魔王「おーい、侍女ー。さっき、何か大きな音がしたけど、何かあったのかい?」テクテク

侍女「変な奴ら来たから、追い出した」

真魔王「そうか。そりゃありがとう。いつも、御苦労様」

侍女「他愛ない。もっと誉めろ」フンスッ

真魔王「わかったよ。君は偉い、よくやってくれてる」

侍女「それほどでもない」フンスッ

真魔王「そっか。ああ、それとしばらく僕は出掛けてくるから、その間、留守番を頼んだよ」テクテク

侍女「何だ? 御主人様、どっか行くのか?」

真魔王「人間界に里帰りだよ。幼馴染みが勇者に選ばれたからね。だから、これから僕も一緒に魔王を倒す旅に出てくるのさ」

侍女「魔王か。きっと恐ろしく強いんだろうな。御主人様、大丈夫か?」

真魔王「どうだろうね……。とんでもないぐらいの強さだって話だし……。何せ三年間、僕の先生の元で修行しただけで、先生が戦わずして負けを認めたらしいからね……。正直なところ、僕の実力では叶わないだろうなって思ってる」

真魔王「でも、勇者の他にも僕には強い仲間達が一杯いるからね。皆で力を合わせて戦えばきっと何とかなるよ。どれぐらいかかるかわからないけど、必ず魔王を倒して帰ってくるから」ニコッ

侍女「それでも心配だ。私、留守番で平気か? 手伝うぞ?」

真魔王「大丈夫だよ、ありがとう。それに、僕は不老不死の秘法を会得してるしね。最悪でも、死ぬ事はないよ」

侍女「そうか。でも、やはり心配だ。気を付けろ」

真魔王「わかってる。それじゃ、ちょっと行ってくるから」スッ


真魔王「時空の扉を開けたまえ、我が目指すは人間界なり……」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


真魔王「じゃあ、留守番頼んだよ」フッ…… (消える)




侍女「行ったか」

侍女「無事に帰ってこいよ、御主人様。私はそれまで待ってるからな」

ー 竜界(人間界)、妖魔の森すぐ近く ー


フッ……

真魔王「ん……。到着っと。ここは妖魔の森近くかな」

真魔王「おや……」



大賢者「」…… (骸)


真魔王「魔物にでもやられたのか……。だけど、亡くなってからそう時間が経ってる訳でもないみたいだ……」

真魔王「これなら……」スタスタ


真魔王「蘇生魔法。この者の魂を冥界から呼び戻したまえ……」パァァッ……

大賢者「っ……」ビクリッ……


真魔王「うん。甦ったな。あとは……」

真魔王「召喚魔法。我の魔力を贄としてその姿を現したまえ……。左より、守護の雷神」パァァッ

ズゴゴゴゴゴゴ……

トール「……我を呼びし者、何用だ」

真魔王「陰陽術。我との契約を結びし者、我の前に姿を見せよ……。右より、姿麗しき霊獣」ピカッ

ズゴゴゴゴゴゴ……

九尾の狐「……何じゃ、昼寝しとったところを呼び出しおって」


真魔王「我が名をもって命じる。トールはこの者を葬った魔物に、裁きの鉄槌を」

真魔王「九尾の狐はこの者を安全な場所に移して、回復するまで面倒を見てくれ」


トール「容易い願いだ……。叶えよう」

【古の雷神】
『体力 :624万
 攻撃力:482万
 防御力:376万
 魔力 :153万
 素早さ:219万』


九尾の狐「やれやれ……。その程度の事で妾を呼び出しおってのう……」

【傾国の美狐】
『体力 :377万
 攻撃力:213万
 防御力:159万
 魔力 :582万
 素早さ:252万』

トール「出でよ、ミョルニル!」ズンッ


※注釈
ミョルニルは鎚の名前。名称は古ノルド語で「粉砕するもの」
決して壊れない。投げても的を外さずに再び戻ってくる


トール「ふんっ!!!」ブンッ (ぶん投げ)


ヒューン……





「UGIYUAAAAAAAAAA!!!」 (断末魔)




九尾の狐「どれ、では運んでやるか」パクッ、グイッ (口でくわえる)

大賢者「う……」ズルッ


九尾の狐「面倒じゃが、妾の屋敷で世話してやる。感謝するんじゃな」ピョーンッ

大賢者「こ、これは……ゆ、夢…………?」


ピョン、ピョーンッ……



真魔王「これで良しと」

真魔王「それじゃあ、僕も行くとしようかな。今から勇者に会うのが楽しみだ」ニコッ

【異界に君臨せし真魔王】
『体力 :9999億
 攻撃力:9999億
 防御力:9999億
 魔力 :9999億
 素早さ:9999億』

特殊技能:多重魔法
    :合成魔法
    :召喚魔法
    :陰陽術
    :回復・蘇生魔法
    :時魔法
    :時空魔法
    :移動魔法
    :即死魔法
    :魔力錬成術


真魔王「山奥の村まで! 移動魔法!」ヒュンッ……

ー 西の国、専用研究所 ー


女大富豪「いよいよね。これで魔結晶は全部そこのエネルギータンクに入り終わったわ」

秘書「はい。しかし、膨大な数でしたな……」ゼェゼェ

女大富豪「そうね。でも、フルパワーでずっと動かそうとするなら、きっとこれぐらいは必要よ」


女大富豪「子供の頃、絵本やおとぎ話を聞いて、私はずっと思い描いてたの」

女大富豪「私は体を動かすのが得意じゃない。だから」

女大富豪「私の代わりとなって戦ってくれる、ゴーレムの様な存在が欲しいって」

女大富豪「そして、私は苦労の末に魔導鉄の開発に成功した。これは偶然じゃないと私は確信したのよ」

女大富豪「運命の女神が、私にこれを造れと、ずっと囁いていたのよ!」

女大富豪「魔結晶をエネルギーとして動き、魔導鉄と魔力回路によって自在に可動する、人が生み出したる神たる存在!」

女大富豪「この、『魔導機神、ウイングフリーダムゴーレム』をね!!」


魔導機神「」…… (全長19メートル・人型)

【最終決戦兵器・魔導機神ウイングフリーダムゴーレム】
『耐久力:9999億
 火力 :9999億
 装甲 :9999億
 運動性:9999億
 持続力:9999億』

武装:近接防御機関砲×2門
  :高エネルギー魔力出力砲×8門
  :魔力ソード×2
  :魔導シールド
  :対巨大魔獣用、大型魔力凝縮出力砲×2
  :魔導レールガン×6門
  :遠隔操作型、魔力出力小型砲台×32機
  :大型魔導弾バズーカ×2
  :光の翼(背面超大型魔力ソード)

女大富豪「装甲は魔力コーティングを六重に施した強化魔導鉄。ちゃちな魔法や剣じゃ傷一つつかない仕様」

女大富豪「そして、魔導回路を計七十万箇所、ありとあらゆる部位に張り巡らせているから、どんな複雑な動きも可能」

女大富豪「エネルギーとして魔結晶三千万個を使用しているから、圧倒的な高火力、驚く程の運動性、途中でエネルギーが尽きる事もまずないわ」

女大富豪「操作法も魔力を流してイメージするだけ。それだけで自分の手足の様に動く」

女大富豪「そして、私の魔力のみで動くようにしてある特別専用機体!」

女大富豪「これが、私の十五年の結晶! 世界で唯一無二の、最強の操縦型ゴーレムよ!」ババンッ


魔導機神「」…… (全長19メートル)

この二段オチは凄すぎますね

秘書「相変わらず圧巻ですな……このゴーレムは。試運転の段階で山を一つ、跡形もなく吹き飛ばしましたし……」

女大富豪「それぐらいの強さでなきゃ困るわよ。私の仲間はみんなその程度の事なら軽く出来るし」

秘書「はあ……」

女大富豪「で、勇者はきっともっと強くなってるだろうから、これでようやく私も勇者の仲間を名乗れる程度ね。多分これでも一番弱いわよ」

秘書「……あなたの話を聞いてると、むしろ仲間や勇者の方が魔王よりもよっぽど怪物の様に思えるのですが……」

女大富豪「ううん。魔王なんて、きっともっともっと化物なんだから。私の師匠の全盛期よりも強かったらしいし。未だに師匠に及ばない私達にとっては、もう想像出来ないぐらいの強さよ」

秘書「そうですか……」

女大富豪「さ、無駄話はここまでよ。約束の日までまだ何日かあるけど、早く行って悪い事はないんだし」ピョン (魔導機神のコクピットまで一足跳び)

秘書「……しかし、命がけの旅に出られるというのに、楽しそうですね。まるで、子供が遊び場に飛び出して行く様な感じで……」

女大富豪「ええ。正直、ワクワクしてるもの。待ちきれない感じよ。だってこれまでずっと十五年間も待ったんだから!」


秘書「左様ですか……。いえ、それは結構な事なのですが、決して浮かれて油断なさらないように」

女大富豪「ええ、わかってる。それじゃあ、研究所の扉を開けて。そこのスイッチよ」ガコッ、ウィーン…… (コクピットの中に乗り込む)

秘書「はい」ポチッ


ガガガガガガガガガ…… (研究所の壁が動き出し、ゆっくりと上に開いていく)


『ふふっ! 魔導機神ウイングフリーダム、出るわ!!』

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


ドシュンッッッ!!! (発進)



ブワッッ!!! (爆風)




秘書「行ってしまわれたか……」

秘書「願わくば、あの方に勝利の二文字を……」

ー 西の国、上空 ー


ビュインッッ!!!


女大富豪『快適ね、空の旅は! 反応も上々、スラスターの具合も良好!』 (コクピット内)

魔導機神「」ドギュッッ!!!


女大富豪『何度乗っても、鳥になった気分ね! これだけ速い鳥は魔獣でもそうはいないだろうけど!!』

魔導機神「」ドギュッッ!!!



ピコーン、ピコーン……

女大富豪『ん、魔導レーダーに反応。識別、大型の魔獣・昆虫タイプ』

女大富豪『ここら辺では見ない魔物ね。これだけ大きいと流石に放置しとく訳にもいかないか。町が壊されちゃうだろうし』


女大富豪『じゃあ行くわよ! 戦闘準備! エネルギーチャージ!』ガコッ

魔導機神「」ググッ (構える)

女大富豪『照準、29キロ先の大型魔獣! バスターライフル、セット!!』

魔導機神「」ジャキッ (高速飛行しながら、大型魔力凝縮出力砲を装備)


女大富豪『発射っっーーーーーー!!!!』

魔導機神「」ガチッ!!!




ドギュウウウウウウウンンッッ!!!



ー 29キロ先、上空 ー



琥珀蝶「」バッサ、バッサ (全長34メートル)


琥珀蝶「」バッサ、バッサ


琥珀蝶「」バッサ、バッサ



キラーンッ!!!


琥珀蝶「?」


チュゴゴゴゴゴゴゴオオオオオンンンンンン!!!!





琥珀蝶「!!!!!!」ジュワッ…… (消滅)





 

女大富豪『レーダーから反応消失!』

魔導機神「」ドギュッッ!!!


女大富豪『バスターライフルを使う程でもなかったかもね。加減がまだイマイチわからないのよね』

魔導機神「」ガコッ、ジャキンッ (大型魔力凝縮出力砲をしまう)


女大富豪『ま、旅をしていけば、その内慣れるわよね。今は気にしないでおこ』

魔導機神「」ドギュッッ!!! (高速移動)





女大富豪『あ、山奥の村が見えた。早い早い。もう着いたのね』

魔導機神「」ドギュッッ!!!



女大富豪『逆噴射して減速! 降下するわよ!』

魔導機神「」ドシュゥッッ……



女大富豪『あの約束の木のすぐ横に降りる! 着地用意!』

魔導機神「」ヒューーンッ……


女大富豪『着陸っ!!』

魔導機神「」ドシンッ!!!

メキャッ!! ボキッ!!

約束の木「」グラッッ!! ドサッッ!!



女大富豪『あああああ!!! 折れたあああああああ!!!!』

ここまで
展開バレ終わったし、雑談はお好きに
もう後の展開は早いね

もうわかんねぇなこれ

「次回、感動の最終回!」でもおかしくないな

勇者に救いを…

どうやってオチつけんだこれwwww
そして女船長とか大賢者とかはドーピングなしであのステータスかよ

勇者YOEEEEEEEEEEE!!!!!

敵不在じゃねえか!

もう魔王は居ないんだよなぁ

政治的にも全員チートクラスだな……

面白かった

末期のネトゲやな…

魔王がいつの間にか倒されてるんですがそれは……

倒すべき敵がもういないな……

そこには天馬と竜と鳳凰と真魔王と巨大ロボットが!!

悪い夢だなこれは

このリハクの眼をもってしても、このオチは見抜けなかったとかなんとか

この作者天才だろ

いいミスリードだった

勇者が勇者である要素皆無だな

勇者よっわ!

うっそだろお前wwwwww
>>121
名剣士を女船長が知らなかったのが伏線だったのか
しっかしどうやって終わるんだこれ

もうお話的には終わってるんだよなあ

さすがにこの流れは想像してなかった、全く思いつかんかったわ、そして魔王と勇者に幸あれ。
しかし一番すごかったのは大賢者だなこれ、女船長とか名剣士とかは多少なりとも手ほどきを受けてのパラだし、女も女神の加護とか一応あるだろうし、五人や師匠の誰とも交流なしであのパラって事は普通の人間達の間なら伝説級だろ。

もう一段上のオチがあったとは

女神様いらないね

>>577
そりゃ調子にものりますわwwwwww

賢者かませとか言って悪かったなモブだったわ

名剣士が俺よりも師匠と師匠の師匠の方が強いって言ってて違和感あったがまさかのオチ
とりあえず大富豪が土下座する展開なのは確定的に明らかだ

勇者「くそっ。スライムの攻撃すらもう避けられなくなってる……」ハァハァ、ゼェゼェ

勇者・・・

女神はどうして勇者に祝福を与えたんだろう
まさか単にいやがらせのためではあるまい……ないよね?

>>584 ヒント それぞれの打倒魔王の旅立ちの条件

これ勇者に加護を付けたの聖女になるのでは?
自分で女神の代理してるって言ってたし。

勇者弱いの知ってるだろ。

仲間が集まったし後は消化試合だな!

最初から読むとフラグがよくわかるwww

>>586 !
勇者の事を全く気に掛けてなかったか
全てを知ってプークスクスの可能性もあるのか……

これはひどい…(褒め言葉

乙!
コンボイ司令のオチよりも酷いとは思わなんだ

雑魚に加護与える勢いでミスで多目にあげてたとか?

勇者がそんなに雑魚だと思わず気づかなかったとか?

いや勇者を勇者にしないと仲間たちも魔王討伐に行こうとしないわけで勇者が弱かろうが勇者に指名するだけでこの面子が全員仲間になるならこの勇者以外誰を勇者に指名すれば良いんだよ

既に魔王いないけど勇者以外の誰か一人でもよくね?

これでタイトルの回収か

確かにそうだけど仲間は勇者が自分たちの中で最強で尚且つ魔王は全員で何年もかかって倒すような強大な敵だと認識しているからな
仲間の誰かを選んだ場合俺よりも勇者に相応しい奴がいるとか言い出してややこしくなりそうじゃね?

こんな展開になるとは思わなかった
仲間TUEEEEEEEEEEEEEE!!

この後、勇者以外の仲間がケンカになり、それを収めるのが勇者とかで、勇者はまとめ役で指揮官としては有能かもしれん

みんな脳筋ならその展開もありそうだけどその辺含めて叩き込まれててみんな立派なリーダーやってる人格者っぽいんだよなぁ

それより一番の問題は仲間が腕試ししようぜとか言い出した場合だな
勇者だと牽制の風圧だけで即死しかねないぞ

仲間「またワンパンで終わっちまった」

勇者「仲間TUEEEEEEEEEEEEEE!!」

死んでも真魔王いるから大丈夫だし(震え声)

正直、草生えまくった

既に完結したかのような雰囲気で草

いつから勇者が勇者だと錯覚していた?

これだけ強いとちょっとした動作でも天変地異、自然災害レベルの大惨事になりそうなんだけど
ジャンプのトリコの八王みたいなもんになる

それと、勇者の神託は女神だけの能力で、聖女はそれ以外の仕事を肩代わりしてるんじゃないかな

勇者(; ω ;)

だ、大丈夫!
きっと裏魔王とか極魔王とか超絶魔王とかが居るはず…

大賢者の才能が凄まじいレベルなんだが

あれ?でもこれ、よく見ると女神を封じた魔王って別にいるんじゃね?女神が弱ってるのは事実だし、鳳凰とか天使とか神クラスの使いレベルが竜と同じくらいだからそれよりちょっと強い程度のあの魔王じゃ、女神を封じれない気がするし。

ゴーレムから溢れ出るスパロボ感wwwwwwww

インフレが清々しすぎて気持ちいい

魔族の基本値が人間に比べて高いのは食生活のせいではなかろうか?

いや騙された、見事としか言えない

単位が違うことに笑うしかない

ー 異界の最果て ー


側近「ま、魔王様ぁぁぁ!! 魔王様は何処に!!」キョロキョロ

側近「吹き飛ばされた方角からして、絶対こちらの方向にいるはずなのに! 最果てまで来ても一向に見つからない……!」

側近「一体、どこへ……!! 『闇の衣』を纏っている魔王様がやられるはずがない! あの方は絶対に生きておられる!!」



側近「魔王様ぁぁぁ!! 私の声が聞こえておられたら、どうかお返事を!! 魔王様ぁぁぁ!!」




「っ…………」




側近「!!」

側近「今、藪の中から、気配が……!! 声が……!!」


側近「魔王様! そちらにお出でなのですか!!」ダダダッ




魔王「ぁ……がっ……」ビクッ、ビクッ
残り体力:1

死神鳥A「カァァァ!! カァァァ!!」ツンツン
死神鳥B「カァァァ!! カァァァ!!」ツンツン
死神鳥C「カァァァ!! カァァァ!!」ツンツン
死神鳥D「カァァァ!! カァァァ!!」ツンツン
死神鳥E「カァァァ!! カァァァ!!」ツンツン
死神鳥F「カァァァ!! カァァァ!!」ツンツン
死神鳥G「カァァァ!! カァァァ!!」ツンツン
死神鳥H「カァァァ!! カァァァ!!」ツンツン



側近「ま、魔王様ぁぁぁぁぁーーーー!!!!!」

側近「このクソ鳥どもがっっ!! 魔王様に近付くな!!!」ジャキッ、ズバッ!!! (剣で払う)


死神鳥A「ガアアッ!!」バササッ (退避)
死神鳥B「ガアアッ!!」バササッ (退避)
死神鳥C「ガアアッ!!」バササッ (退避)
死神鳥D「ガアアッ!!」バササッ (退避)
死神鳥E「ガアアッ!!」バササッ (退避)
死神鳥F「ガアアッ!!」バササッ (退避)
死神鳥G「ガアアッ!!」バササッ (退避)
死神鳥H「ガアアッ!!」バササッ (退避)




魔王「っ……ぁっ……」ビクッ、ビクッ (瀕死)
『残り体力:1』


側近「おいたわしや、魔王様!! この様な無惨な姿に……!!」グスッ

側近「魔王様の盾となるべき私がついていながら、なんたる失態……!! 全てこの私の責任!!」ポロポロ

側近「今すぐお助け致します! 私の全魔力をお受け取り下さい!! これで魔王様は回復を!!」パァァァァッ!!!
『残り魔力:497万→0』


魔王「っ……! うぐっ……!!」ビクンッ!!!
『残り体力:1→62万』


側近「良かった……。持ち直されたか……。傷もふさがっていく……」グスッ

ー 数時間後、湖のほとり ー


魔王「うっ……」パチリ……

側近「魔王様、気が付かれましたか!」


魔王「ここは……」

側近「異界でございます! どこかは正確にはわかりませんが、かなり端の方かと!」


魔王「余は……何故……ここにこうして寝て……」

側近「そ、それは……。非常に申し上げにくい事なのですが……」


魔王「いや……良い。……思い出した」

側近「…………」


魔王「余は……負けたのだな……。この世界の魔王に……」

側近「はい……」


魔王「その辺りの記憶がいまいち戻って来ぬが……。余はどう負けたのだ……?」

側近「……ほとんど一瞬の事だったので、私にもわかりません。……気が付けば魔王様が吹き飛ばされていました」

魔王「そうか……。一瞬か……。一撃で余はやられたのか……」

側近「…………」

魔王「倒れていた時に……夢を見たのだ」

側近「……?」


魔王「夜に見る夢の方だ……。その夢の中では……余がまだ王にもなっておらぬ頃だった……。魔界を旅して……強くなって……」

魔王「もうこの魔界に敵はおらぬと思った頃……。師匠に出会い……そして今の様に一撃でやられた……」

魔王「実際は違うのだがな……。現実では……師匠は余を軽くあしらっただけで……手傷一つ負わせる事なく余に勝ったのだから……」

側近「…………」

魔王「その時の師匠と余ではそれだけの差があった……。だからこそ……こんな夢を見たのであろう……」

側近「……左様ですか」

魔王「そして、余はその夢の中で師匠に何か言われた……。覚えてはおらぬが、師匠は何と言っていたのか……」

魔王「困ったような……呆れたような……それでいて優しい顔をしていたが……」

側近「…………」

側近「魔王様……」

魔王「何だ……?」

側近「最終的には……魔王様は師匠を超えられたのですから。今度もまた……同じ事になると私は信じております」

魔王「そうだな……。余もそのつもりだ」

側近「一度の敗北など、取るに足りません。また研鑽を積まれ、次に会った時に雪辱を晴らせば宜しいかと」

魔王「わかっておる……案じるな。余は同じ相手に二度も負けはせぬ」

側近「はっ! それでこそ魔王様!! 我が主様です!!」

魔王「ならば……そろそろ行くか」ムクッ

側近「いえ! まだ休まれた方が! 御体調は万全とは言えません!」

魔王「構わぬ。話してる内に、感覚もずいぶんと戻ってきたからな。それに、手と足さえ動けば問題ない」

側近「ですが、まだ御養生なされるべきです!」

魔王「いや、時間の無駄だ。それに、再戦をしに行こうという訳ではないぞ。一時、魔王城へと戻る事とする。出直しだ」

側近「そうですか……それならば……」

魔王「異界に来たのは無駄足となってしまったが、新たな目標が出来たのだ。決して悪い気分ではない。凱旋は出来ぬが、それは次回の楽しみに取っておこう」

側近「はっ!」

魔王「それと、御苦労であったな、側近。倒れている間、余をずっと守っていたのであろう。この有り様を見ればお前がどれほど奮戦したか手に取るようにわかる」

側近「いえ、これしきの事は……」
『残り体力:26万』




烈火オオカミ「」…… (骸)
凍結鳥A「」…… (骸)
凍結鳥B「」…… (骸)
四手の怪奇サル「」…… (骸)
暗黒ゾウA「」…… (骸)
暗黒ゾウB「」…… (骸)
暗黒ゾウC「」…… (骸)
巨大キラーアントA「」…… (骸)
巨大キラーアントB「」…… (骸)
灼熱ムカデ「」…… (骸)
鋼鉄イノシシ「」…… (骸)
鬼ゾンビ「」…… (骸)
死神の鎧A「」…… (骸)
死神の鎧B「」…… (骸)
死神の鎧C「」…… (骸)

側近「それよりも、魔王様……」

魔王「何だ」

側近「魔王城へ戻りましたら、どうか私を処罰して下さい。どの様な処分でもお受け致します」

魔王「意味がわからぬな」

側近「私は魔王様の盾となるべき存在です。それが、あの時は何も出来ず、魔王様をみすみす危機に追いやりました。処罰を受けて当然の事でございます」

魔王「下らぬな。余はこうして生きているし、お前の働きがなければどうなっていたかはわからぬ。誉める理由はあれど、処罰する理由はない」

側近「いえ、あの時、私が魔王様の身代わりとなって死ぬべきでした。それこそが盾たる私の役目。それを全う出来なかったのは全て私の責任でございます。どうか、ご処罰を」

魔王「ならば、側近には次の事を命じる。心して聞け」

側近「はっ」

魔王「お前はこれから先、寿命以外で死ぬ事を許さぬ。その上で、生涯をかけて余の盾たる役目を全うせよ」

側近「……!」

魔王「良いな。それがお前への罰だ。余の許しなく勝手に冥界に行く事は許さぬ」

側近「はっ!! 必ずや!!」ポロポロ……

ー 同時刻、山奥の村 ー


約束の木「」…… (倒壊)



聖女「…………」

剣聖「…………」

女闘神「…………」

真魔王「…………」

女大富豪「ご、ごめんなさい……」シュン

真魔王「……折っちゃたんだ」

女大富豪「わ、わざとじゃないの……。ゴーレムで着陸した時に、当たっちゃって……」シュン

女闘神「何て言ったらいいか……。どうしような、これ……」

剣聖「……聖女、お前の奇跡で何とかならないか? これじゃ、勇者が戻ってきた時に悲しむぞ」

聖女「わかってる。そう思って、今、木さんにお願いしてるんだけど……」ソッ (木に手で触れる)


約束の木「」…… ピカーッ(光り輝く)


聖女「もう寿命が近いからって……。どうせ近い内に枯れるなら、治さずにこのままがいいって言ってるから……」シュン

剣聖「そうか……。それならもう仕方がないか……」

女闘神「真魔王、あんたでも無理? 時魔法とかで時間戻して何とかなんないの?」

真魔王「そこまで魔法は万能じゃないからね……。時の加速は出来ても、逆行は出来ないよ。そこら辺は女大富豪の方が詳しいよね?」

女大富豪「うん……。因果律に逆らう様な魔法は存在しないの……。それが出来たら歴史が目茶苦茶になっちゃうし……」


※注釈
因果律。原因があるから結果があるのであって、その逆は有り得ないという考え


女闘神「じゃあもう、どうしようもないって事か……」ハァ……

聖女「しょうがないよね……。勇者が来たら、訳を話して謝ろう。女大富豪ちゃんもわざとじゃないんだし、きっと許してくれると思うよ」

剣聖「そうだな。あいつは優しかったし、それに、器量も人一倍大きかった。きっと、許してくれるはずだ」

真魔王「そうだね。勇者なら間違いなく大丈夫だと思う」

聖女「木さんもごめんね……。女大富豪ちゃんを許してあげてね」ソッ


約束の木「」…… ピカーッ(光り輝く)


聖女「うん……そっか。大丈夫だって。気にしないでって言ってる。良かったね、女大富豪ちゃん」

女大富豪「うん……。ごめんなさい、それと今まで私達を見守ってくれてありがとね」

剣聖「最期は俺が見取る。また、苗木が生えて成長出来るように……」スッ


「聖剣技! メ サ イ ア !!」

スパッッ!!!


切り株「」……



女闘神「この倒れた木の方は、切って牧場の柵として使おうか。柵が結構壊れるって言ってたから、きっと牧場のおっちゃんも喜ぶだろ」ヒョイッ (重量2t)

聖女「そうだね。それがいいね」

女大富豪「あ、じゃあ、それは私がやる!」

真魔王「ううん。みんなでやろう。牧場のおじさんには昔から全員お世話になってるし、恩返しだと思ってさ」

剣聖「良い事言うな、真魔王。よっしゃ、なら全員で張り切って行くか!」



「おーっ!!」


 

ー そして、それから五日経った現在 ー


切り株「」……


勇者「…………」(茫然自失)



勇者「何で……切り株になって……」

勇者「皆とここで約束したのに……」

勇者「また……この木の下で会おうって……」


勇者「みんなは……じゃあ、どこに……」



ドッッッッゴーーーーーンンッッ!!!



勇者「」ビクッ!!!


勇者「な、何だ、今の音は!!」チャキッ (剣を構える)

勇者「まさか、またキメラが襲ってきたのか!?」

勇者「向こうの方から聞こえてきたな!! 村の外か!!」ダダダッ


ダンッ (柵を飛び越える)

 

ー 外にある特設訓練場 ー



女闘神「どーだっ! あたしがこの一年で編み出した最強奥義は!」


剣聖「痛てて……。参るな……。俺じゃなかったら死んでたぞ、これ……」


女大富豪「相変わらずだよね。二人とも強い強い。もう動きが目で追えないもん。羨ましい」

聖女「でも、剣聖って、もしかしてちょっと弱くなった? さっきから女闘神ちゃんに押されっぱなしだし」

真魔王「そういえば、今は国王様になってたんだっけ。革命が大詰めの時だったし、修行する時間はあまりなかったんじゃないかな?」


剣聖「まあ、確かに修行する時間は減ったかもしれないが、それを負けの言い訳にするつもりはないぞ。純粋に、俺の実力不足だ」

女闘神「違う! あたしが強くなったんだ!」


聖女「どっちだろうね、真魔王。ふふっ」

真魔王「なんかこういうやり取り、毎年の様に聞いてるからなあ。何だかんだで仲が良いんだよね、あの二人」

女大富豪「でも、恋愛関係とかにはならなさそうなのがね。なんか親友って感じだし」


アハハッ、ソーダネ、ハハハッ






ー 300メートル離れた地点 ー


勇者「確か、ここらから音が……」ダダタッ……

勇者「あ……」

勇者「あそこにいる五人って、まさか……」

女闘神「ん……?」ピクッ

剣聖「…………」ピクッ


聖女「二人とも、どうしたの?」


剣聖「いや、何か向こうから見られてる気配がな……」クルッ

女闘神「うん。殺気とかないし、気にする程じゃないんだけどさ……スライムかな?」クルッ




勇者「あ……こっちに気付いた……?」

勇者「行こう……!」タタタッ




女闘神「あ……ちょっとみんな、見て! 向こう!」

剣聖「あれはもしかして……!」


聖女「え?」クルッ
真魔王「どうしたの?」クルッ
女大富豪「?」クルッ


聖女「あ! あの格好……!」

真魔王「それに、その顔……!」

女大富豪「ひょっとして……!」



「「「「「勇者……!?」」」」」







勇者「」タッタッタ……

勇者「うん……。みんな……だよね?」



「勇者ぁっ!! 久し振り!!!」

「うん!! 久し振り、みんな!!!」




「会いたかったっ!!! 十五年振りっっ!!!」


 

勇者「みんな、変わったね! 少しだけ面影が残ってるけど!」

剣聖「そうか? 自分じゃ全然わかんないけどな!」

女闘神「あたしら、そんなに変わった?」

勇者「うん! みんな、何か凛々しくなったっていうか、格好良くなってる! あと、女の子達は綺麗になって!」

聖女「ゆ、勇者、いつからそんな御世辞覚えたの、もう//」

真魔王「流石、王都で長く過ごしてただけはあるね。そうやって、何人の女の子を口説いたんだい?」

勇者「いや、本当だって! 嘘なんかついてないよ! 全員、本当に立派になったし、美男美女になってる!」

聖女「で、でも、勇者も立派になってるよ!// 何かもう、見た目からして伝説の勇者って風格出てるもん!」

女大富豪「何せ勇者は、王都で騎士隊長就任の最年少記録出してるぐらいだもんね。私は色んな町を回ってたから、噂で活躍は何回も聞いてるよ。自分の事みたいに誇らしくってさ」

勇者「ありがとう。そう言われると素直に嬉しいよ。でも、みんなとの約束があったから、俺は今日まで頑張ってこれたんだよ。だから、みんなのおかげだよ!」

真魔王「そういうとこ、変わらないね、勇者は。僕はそれが嬉しいよ」

聖女「うん……。優しくて素直で、思いやりがあって明るい勇者のまま……。わたしもなんか嬉しくなっちゃう」

剣聖「そうだな。お前が変わってなくて本当に良かった」

女大富豪「そして、約束通り、世界でたった一人の勇者に選ばれて……」

女闘神「こうして、ここに帰ってきてくれた!!」



「勇者、おめでとう!! 子供の頃からの夢が叶って!!!」

「ありがとう、みんなっ!!」


女闘神「にしても、ホントにびっくりしたよ! 振り向いたらいきなり勇者がいるんだもん!」

剣聖「俺たち、勇者が来たらすぐに駆けつけようって思ってたのに、完全に虚をつかれたからな!」

勇者「そうだったんだ、何かごめん。いきなりで」

聖女「ううん。逆に感心したよ。ね、みんな?」

真魔王「そうだね。剣聖と女闘神の二人にまったく気付かれないって相当なものだからさ」

女大富豪「だよね。それだけ強さとか覇気を隠してたって事でしょ? なかなか出来る事じゃないよね」

勇者「……隠す?」

剣聖「まったくだな。勇者が来たら闘気とかですぐにわかると思ったんだけどな。悔しいというより流石だぜ」

女闘神「ね。そういうの欠片も感じなかったもんね。あれだけ近付くまで気付かせないってスゴいよ。あたしらでも、あそこまで力を抑える事出来ないもん」

勇者「??」

聖女「ね、勇者はもう村長さんとかに会った? きっとみんな喜ぶと思うよ」

真魔王「そうだね。神父さんとか、あと隣のおじさんおばさんとかも。勇者の事を気にしてたからさ」

勇者「あ、うん。会ったよ。一応、挨拶は済ませた。それよりもさ」

女闘神「?」

勇者「十五年前に約束したあの木が伐られてたんだけど……。あれ、一体何があったの?」

女大富豪「あ……」

聖女「あ、あの、ごめんね。悪気はなかったの……」

真魔王「あれ、女大富豪がはずみで折っちゃったんだよ……」

勇者「……え? はずみで?? え??」

女闘神「お、怒らないで聞いてくれよ、勇者。女大富豪もそんなつもりはなかったんだから。折ろうとして折った訳じゃないんだ」

剣聖「ちょっと勢いがつきすぎて、ぶつかったみたいでな……。事故なんだよ」

勇者「ぶつかってあの大木が折れるの????」

女大富豪「あ、あの、ごめんなさい! だから、勇者、怒らないで! 落ち着いて!」

勇者「いや……怒ってはないけど……。ただ、状況がよくわからないから……」

聖女「あ、そうだよね。勇者は何も知らないんだから、そうなるよね。ちゃんと順番に説明するね」

真魔王「えっと……まず、女大富豪がゴーレムを造ったんだよ」

勇者「!?」

剣聖「それで、そのゴーレムに乗ってここまで来たんだが、約束の木の下に着陸したら勢いがつきすぎたみたいでな」

勇者「着陸……??」

女闘神「で、元々あの木自体が寿命近くて脆かったみたいなんだよ。だから、ボキリと」

勇者「ボキリ!?」

女大富豪「ご、ごめんね……。聖女でも、真魔王でも、治せないらしくって……。だから……」

勇者「治す????」

女闘神「とにかくさ、女大富豪には悪気はなかったんだよ。本人も反省してるしさ、許してやってくれよ」

聖女「ね、勇者、お願い。残念だろうし、悲しいのはわかるけど、もうどうしようもなかったの」

剣聖「大切な思い出の場所だもんな、気持ちはわかる。だけど、な? 俺達からも謝るからさ」

勇者「あ、いや……大丈夫だよ……。いまいち理由がよくわからないけど、怒ってはないから。何か事情があったなら、もう仕方ないと思うし……」

真魔王「良かった……。それ聞いて安心したよ」

女大富豪「本当にごめんね、勇者……。その分、冒険の旅で頑張るから……」シュン

勇者「ううん、大丈夫。もう気にしてないから。こうしてまたみんなに会えた事だけで十分嬉しいし」

聖女「良かった。やっぱり勇者は勇者だね……。優しい」

剣聖「ああ、そうだな。快く許してくれたし」

女闘神「ホントだよ! あんたは変わらずいいやつだ!」

勇者「そんな、やめてよ。照れるよ」


ハハハッ、アハハッ

勇者「それよりもさ、女大富豪。さっき言ってたよね。冒険の旅って」

勇者「それって、ひょっとして……」

女大富豪「あ、そうだね。まだ全員言ってなかったっけ」

聖女「私たちもね、子供の時の約束、ちゃんと果たしてるよ」ニコッ

剣聖「そう。俺は戦士に!」

女闘神「あたしは武闘家に!」

真魔王「僕は魔法使い」

女大富豪「私は商人に!」

聖女「そして、わたしは僧侶になってるの」


勇者「本当に!? 凄いや!! みんな覚えててくれたんだ! 約束を果たしてくれたんだ!!」


「もちろん!!」


「だって、このみんなで魔王を倒すって決めたんだから!!!」


勇者「うんっ!!!」

ー 神界、封印の牢獄内 ー


女神「……良かった。無事に勇者は約束の場所へと辿り着けましたね……」

【慈愛と運命の女神】
『体力 :853万
 攻撃力:772万
 防御力:914万
 聖力 :ーーーー(人々の信仰で変動する)
 素早さ:649万』


大天使「はい……。どうにか無事に仲間たちと合流出来たようです」

【神界の三大天使】
『体力 :628万
 攻撃力:305万
 防御力:573万
 聖力 :421万
 素早さ:347万』


女神「これで私の役目はほぼ終わりました……」

女神「後はしばし待ちましょう……。彼らが魔王を倒してくれるのを……」

大天使「はい……」

大天使「しかし……肝心の勇者が心配ですね。実力差に心を抉られなければ良いのですが……」

女神「……ですが、あの者以外に勇者は務まりません。恐らく、辛い現実と向き合う事になるでしょうが、耐え忍んでもらう以外に方法は……」

大天使「やはり、いっその事……仲間の誰かを勇者に任命した方が良かったのでは……」

女神「その様な空気を読めない事が出来るはずありません……」

大天使「…………」


女神「あの者たちは世界を滅ぼす力を持っているのですよ……。あまりの強さに私の運命の干渉すら効果がありません……」

女神「あの山に張られていた特殊な結界のせいで、あの者たちの存在に気が付くのが遅すぎたのです……」

女神「十五年前の約束通り、あの者を勇者にしなかったら、一体何が起きるか最早私にも予測がつきません……。もしも、それがきっかけで仲違いを始めたらと思うと……」

女神「ただの喧嘩が三界全てを滅ぼす大戦争に発展する可能性もあるのです……。他の者を勇者になど、出来るはずがありません……」

女神「その為に神託も、十五年後に合わせて五年近くも待ったのです……。本来ならば、あの者たちは五年前にはもう、一人で魔王を倒す実力を十分身に付けていたというのに……」

大天使「ですが、その五年のせいで、更に恐ろしいぐらいの差がつきましたが……」

女神「才能がありすぎたのです、あの五人は……」ハァ……


女神「人間にも魔族にも竜にも神にも、みな強さの限界というものがあるのです……。しかし、良き師と環境に恵まれたのでしょう……。あの四人はその限界を何回も何十回も越えてしまい……」

女神「一人だけ武術や魔法の才能がなかった子も、知力でそれを補って……」

女神「最早、私達に出来るのは、あの五人が喧嘩をしないよう、ただ祈る事だけです……」シュン


大天使「誰に祈れば良いのでしょうかね……私達は……」

女神「五人のまとめ役をしてくれる勇者に……。喧嘩を未然に防げる可能性があるとしたら彼だけでしょう……」

女神「この世界を滅びの道へと進ませないようにしてくれる事を彼に祈りましょう……」

大天使「真逆の立場なんですね、私達は……」

ここまで

乙、これはひどい

ああ女神様……
たとえ焼け石に水でも5年頑張って勇者の運命に干渉しまくって限界超えさせてあげていれば……

え、既にやった?

主人公が一番才能がなくて環境にも恵まれないとか

(合流しちゃったらもう運命干渉のチャンス)ないやん
相棒の馬に望み託すしかない

友情努力勝利じゃなくて、才能環境師匠努力覚醒限界突破だな

もう女神は勇者に一生添い遂げて
償わないといけないと思います

勇者が世界の命運を握ってるとか王道だなあ

ある程度未来予測できるなら勇者にブレンド種か魔老師との接触機会を与える運命線を辿らせるべきだったと思う……なかったんだろうな。分かってる

>>646
・子供の頃に修行できなかったからどうにもならない
・武術の才、魔法の才、それらがなくても補う知力、全てがないからどうにもならない

単純計算山奥の村人達の1/3くらいのステにしかならなさそう

乙。

勇者ってスライム位の気なんだね。

DQのスライムみたいな話だけど実際は、水辺だと倒すのほぼ無理な強敵なんだけどね。

物理無効、属性攻撃半減位だ。

乙!
この五人は存在その者がチートだから勇者に女神の加護(チート)与えても意味ねーな

>>648
言いたい事はわからんでもないがお前の言う実際ってどこの話だよ

しかし胃が痛い展開だ

これ、勇者は姫と結婚するしか無いな
王道だと幼馴染と、だけどこいつらと結婚しても子供出来る気しないってかその前段階で勇者の勇者が死にそう

まあプラトニックな関係ならいけるか

聖女や女闘神、女大富豪を幼馴染みと言ってるのかもしらんが
団長の娘ちゃんの方がよっぽど(表記的にも)幼馴染みだから

しかしこれでも勇者は後世に残るほどの英雄になったわけだ
某漫画でもいってただろ勇者とは勇気のあるもの真の勇気は打算なきものって

>>648
ステータスを見る限り、一般的なスライムよりは遥かに強かろう
しかし9999億パワーの仲間たちにとっては100と10の違いなんて比べようにも比べられない

相対的にみると自分(四人とゴーレム一体)の力を1としたら
勇者が0.0000000001、スライムが0.0000000001だからな

最後の最後まで誰も気づかない可能性もあるし
5人の力を勇者一つに束ねたスーパー勇者人神(ゴッド)の可能性も(ry

聖女が力分けただけで結構強めの女が魔王・女神以上になっちゃう連中だからな
勇者の心が折れないと良いけど

女神の悩みがもう魔王どころではなかった

やはり空気を読んでの神託だったか、つまり勇者は元々勇者ではなかったと言うことか……何とも言えんこの……煮え切らない何だ?

勇者「僕が勇者になれたのはみんなのおかげだ」

女神「あなたが勇者になれたのはみんなのおかげです」

突然の土砂崩れが両親を奪いさえしなければ、勇者も一緒に魔老師の教えを受けられたはずだ

つまり戦犯山肌

環境も師匠もなくあそこまで強い賢者がやっぱスゴい
過去だと勇者は才能ある五人に色々勝ててたみたいだし女神の加護付きとはいえ僧侶以外で回復魔法使えるようになったりと土台はありそうだが
さてどうなるか

こんな胃が痛くなるSS本当は読みたくないけどついつい読んでしまう…

これって五人がこんなに強くならなければ、てか師匠があの山にこなかったら、大賢者が神託受けてたパターンあるのかな?どう考えても素の人間なら最強だろうし。

>>650
ドラクエ以外の本来のスライムだろ

「実際」なんて言葉は自分も違和感だったわ
初出とかならまだ分かるけど物語的にはウィザードリィやハイドライドよろしく弱キャラなんやろ

まあ勇者も村人程度には強くなれるだろう
限界突破と覚醒繰り返せる位存在自体がぶっこわれてないとそれ以上は無理っぽいし

勇者って何なんだろうね。優しさって時に残酷なんだと実感させられたよ。

>>644 それをした場合聖女が天界に攻め入る可能性が……

>>294
もうここの女神の神託の台詞とか完全に魔王の事じゃない感がスゴいな

負けないで(魔王にとは言ってない)

魔王はついで

何で魔王討伐PTに真魔王がいるんですかね……

ドラクエ4やクロノトリガーのパーティにも魔王がいただろ

ピーちゃんは魔王じゃなくてピーちゃんだから

真魔王≠魔王
なにも問題はない

ー 山奥の村 ー


勇者「それじゃあ、みんな。今日はゆっくり休んで明日から冒険の旅に出ようか。みんなの話とかも聞きたいし」

聖女「そうだね。わたしたちも勇者の話を聞きたいから」

剣聖「ああ、じゃあ一旦村に戻るか」

真魔王「あ、待って。その前に先生に報告しに行こうよ。ここからすぐ近くだし」

女闘神「そうだな。勇者が来たって、師匠に報告しに行くか」

女大富豪「賛成!」


勇者「先生? 師匠?」

真魔王「うん。僕たち五人の先生だよ。勇者が王都に行ってから、しばらくしてからかな? 偶然会ってさ」

聖女「魔族だったから最初は驚いたんだけど、とってもいいお爺ちゃんだったの」

勇者「魔族!?」

女大富豪「あ、魔族って言っても、誤解しないでね! 先生は魔族の中でも特別で、優しくて穏やかな人だったから」

剣聖「ああ、魔王の事も悲しんでた。元は魔王の師匠だったんだが、魔王がああなったのも自分の責任だって嘆いてたし」

勇者「魔王の……師匠!?」

女闘神「それぐらい強かったんだよ。だけど、本当に良い爺ちゃんだった。村の人たちとも仲良くなってさ! ホントだから!」

真魔王「うん。村長とか神父様とか他の人にも聞いてもらえばわかるよ。先生は特別だって絶対に言ってくれるから」

勇者「……そうなんだ。みんながそう言うなら、それを信じるけど……」

聖女「うん。お爺ちゃんはいい人。勇者もそこは信じて。魔族だからって偏見を持たないでね。良い魔族の人だっているんだから」

勇者「うん。わかった。大丈夫だよ。偏見は持たない。安心して」

女大富豪「良かった。勇者に誤解されたら困るから」

真魔王「うん、信じてもらえて良かったよ」

女闘神「それで、話を元に戻すけど、その師匠がメチャクチャ強かったんだよ。だから、あたしら全員弟子入りしたんだ」

聖女「わたしたちだけじゃなくて、村のみんなもだよ。護身術を教えてもらったの」

勇者「え!」

女大富豪「急にどうしたの、勇者?」

勇者「あ、いや、なんか村の人たち、メチャクチャ強くなってたから……。ひょっとしてって……」

剣聖「ああ、そういえば、前に比べればみんな強くなったよな」

真魔王「そうだね、特に『女村人B(名前)』さんとか、かなりのものじゃないかな? 先生も筋がいいって誉めてたし」

勇者「それで……。そうか……」

聖女「お爺ちゃん、教え方もスゴい上手だったんだよ」

剣聖「最初、レベルが違いすぎて何を言ってるのか全然わからなかったけどな」


ダヨネー、ホントダヨー、アハハッ


勇者(そんな強い人がこの山にいるんだ! なら、俺も教えを乞えば、きっと今より強くなれる! なんかやる気出てきたぞ!)

女闘神「ま、そういう事でさ。師匠には村のみんな感謝してるんだ」

剣聖「俺達が束になってかかっても、きっと全盛期の師匠には叶わなかっただろうな。それぐらい強かった」

勇者「みんな、いい先生に出会えて良かったね。それで、俺も是非会って、しばらくここで学びたいんだけど、いいかな? 俺にも紹介してくれないかな」

聖女「うん……。紹介はもちろんいいんだけど……」

勇者「?」

女大富豪「学ぶのはもう……ダメなの。だって……」

真魔王「二年以上前に、病気で亡くなっちゃってね……。だから、これから行くのは先生のお墓なんだよ」


勇者「あ……」

勇者「そっか……。そうなんだ……。ごめん」

剣聖「いや、元から長くない身だったんだ……。死期が近いって、師匠も悟ってたからな……」

女大富豪「会う度にどんどんやつれていってね……。あの頃は辛かったな……」

聖女「でも、死に顔は安らかだったよ……。お爺ちゃんも満足して冥界に行ったと思う……」

女闘神「ああ、あたしたちに魔王の事を託してな……。だから、師匠の為にも、あたしらは絶対に魔王を倒さなきゃいけないんだ!」

真魔王「うん。必ず」

女大富豪「争い事が嫌いな先生でさ……。魔王の事でずっと心を痛めてたからね……」


勇者「……そっか。本当に良い先生だったんだね。会えなくて残念だよ」


剣聖「ああ、最高の師匠だった。俺達の誇りだ」

聖女「うん……。お爺ちゃんにはスゴく感謝してる」

女大富豪「私達の今があるのも、全部、先生のおかげなの」


勇者「……そっか。……俺にとっての騎士団長みたいな存在なんだ」


真魔王「勇者も……良かったらお墓まで付き合ってくれないかな。先生に紹介したいんだ。先生も勇者に会ってみたいって言ってたからさ」

勇者「うん。付き合うよ。俺も一言、挨拶をしておきたいから」

女闘神「ありがとな、勇者。じゃあ、こっちに来てくれ。案内するよ」

勇者「うん」

ー 魔老師の墓 ー


剣聖「ここだ。墓は俺達で建てたんだ」

女闘神「師匠は、静かに生きて静かに死にたいって、そういう人だったからさ。だから、死んだら墓とか建てずにこの山のどこかにひっそり埋めてくれってそう言ってたんだけど、それじゃ、あまりにも寂しいからさ……」


そこは崖の上、周りには色とりどりの花が咲き、山全体を見渡せる景観素晴らしき場所

そこに大理石で作られた十字型の小さな墓が建っていた。墓碑には名前も没した年数も書かれておらず、代わりにたった一言


『偉大なる恩師、ここに眠る』


 

勇者「村の墓地じゃないけど……魔物とかに壊されたりしないの? 大丈夫?」


聖女「わたしと真魔王で結界を張ってるから平気だよ」

真魔王「先生、ここからの景色がお気に入りだったからさ。どうしてもここに建てたかったんだ」


勇者「……そっか」

勇者「でも、結界とか凄いね……。そんな事も出来るんだ、二人とも」


聖女「それも、全部お爺ちゃんが教えてくれたから……」

真魔王「先生は何でも知ってたからね。知らない事なんかなかったんじゃないかってぐらい、色々知ってたよ」


勇者「……みんな、きっとかなり強くなったんだろうね」


女闘神「ああ。子供の頃よりもずっとな……」

女闘神「……師匠、見えるか? 伝説の勇者が今ここにいるよ。子供の頃からの約束を果たしてくれたんだ。あたしら、とうとう魔王を倒す旅に出るんだよ」

女大富豪「どこまでやれるかわからないけど……。私達、頑張るから。だから、ずっと見守っていて」

剣聖「師匠から教わった事、その集大成を全部魔王にぶつけて来るからな」

真魔王「先生の教えが正しかった事を、魔王に会って伝えてきます。そして、みんなでそれを証明したいと思います」

聖女「勇者がきっと、みんなを導いてくれるから……。だから、お爺ちゃんはわたしたちの後押しをお願い。お爺ちゃんの望んでいた平和な世界を作れるように……」


勇者「……初めまして、勇者です」

勇者「……出来れば、貴方とは生きている時にお会いしたかった。俺も教えを乞いたかったし、何よりみんなからこれだけ信頼され、慕われている貴方を一目見たかった……」

勇者「まだまだ未熟者ですが、女神様に代わって魔王を必ず倒してきます。どうかそれをここから見守っていて下さい」


魔老師の墓「」……

剣聖「……それじゃあ」

女大富豪「うん……。報告も済んだしね。村まで戻ろうか」

聖女「歩きでいいよね? 折角だし、ゆっくり勇者の話を聞きながら行きたいな」

真魔王「そうだね。王都に移ったばかりの頃の話とか、あと、それからの話とか色々。教えてよ」

勇者「結構、長くなっちゃうけどいい?」

剣聖「もちろん! 勇者の波瀾万丈な英雄譚だしな!」

女闘神「楽しみにしてたんだぜ! 聞かせてくれよ!」

勇者「うん……。じゃあ、王都に行ったばかりの頃から……」



ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー

ー 夕方、村の集会所 ー


村長「では、この村から伝説の勇者様が出た事に」

「カンパーイ!!」


カチンッ、カチンッ、カチンッ


村人A「十五年振りに帰ってきた『勇者(名前)』にー……」

「カンパーイ!!!」


カチンッ、カチンッ、カチンッ


女村人B「明日からの勇者パーティーの活躍にー……」

「カンパーイ!!!!」


カチンッ、カチンッ、カチンッ


神父「世界平和の、前祝いに」

「カンパーイ!!!!!」


カチンッ、カチンッ、カチンッ



女闘神「ははっ、すっかり全員出来上がっちまったな」

真魔王「主役もいないのに、大盛り上がりだね。村の全員が集まって来てるし」

聖女「あれ。そういえば、勇者は?」キョロキョロ

剣聖「勇者なら、挨拶に出掛けてるぞ。あいつの両親のところへな」

聖女「あ、そっか……。お墓に……」

女闘神「王都にもお墓は建ってるらしいけど、やっぱりこっちのは特別だろうからな……」

女大富豪「十五年振りに会うんだね……」

真魔王「うん……」

ー 村の墓地 ー


勇者「ただいま、父さん、母さん」ソッ (花を添える)


墓「」……


勇者「もう少し早く来るつもりだったんだけど、戻ったら村のみんなが総出で出迎えてくれてさ。改めて挨拶とかしてたら、かなり遅くなっちゃったんだ」

墓「」……


勇者「それと、これ、わかる? 王様から頂いた勇者の印だよ」スッ

墓「」……


勇者「子供の頃、父さんは無理だって言ってたけど、俺、本当に勇者になれたんだ……」

勇者「母さんは応援してくれてたよね。おかげで夢が叶ったよ……」

墓「」……

勇者「王都での生活もさ、悪くなかったよ。最初はみなしごとか田舎者とか言われて散々からかわれたけど、でも、段々とみんなと仲良くなれてさ……」

墓「」……


勇者「それで、努力して……学校の成績も、剣術や魔法も一番になってさ……」

勇者「友達も沢山出来たよ。騎士団長の子供とも仲良くなったよ。色々な思い出が一杯出来たんだ」

勇者「騎士の試験にも受かってさ。それで手柄を立てて、騎士長に抜擢されて……。その後、騎士隊長にも昇進して……」

墓「」……


勇者「今は勇者だよ……。今なら、父さん母さんに誇りを持って言えるよ」

勇者「俺を生んでくれてありがとうって……。育ててくれてありがとうって……」

墓「」……

勇者「明日から、魔王を倒す旅に出るから……。また当分会えなくなるだろうけど、心配しないでね……」

墓「」……


勇者「俺には頼もしい仲間たちがいるから。みんな、この村で良い先生に出会えたらしくって、きっと凄く強くなってるんだ」

墓「」……


勇者「俺もしばらくは、旅をしながらみんなに特訓をつけてもらおうって思ってるしね……。俺はまだまだ強くなれると思う」

墓「」……


勇者「だから、次にここに来る時には、花じゃなくて……。この世界の平和を供えにくるよ……」

墓「」……


勇者「必ず魔王を倒して帰ってくるから。それまで待っていてね、父さん、母さん……」

墓「」……

ええ話や

勇者がパーティーの誰かに軽く小突かれる瞬間が訪れませんように……

女神は勇者(名前)にひどいことしたよね?

ー 村の集会所 ー


ワイワイ、ガヤガヤ、ワイワイ、ガヤガヤ



剣聖「……そういえば、勇者だけでなく、牧場のおじさんの姿も見えないな」キョロキョロ

女大富豪「あ、うん……。誘ったんだけど、流石に遠慮するって言われたの。おじさん、ちょっと勇者に対して引け目があるからね」

聖女「勇者は別に気にしないと思うんだけど……。それでもって」

真魔王「『あの事』があるから会い辛いんだろうね。僕らに対しても、まだ秘密にしてくれって言ってたよ。魔王を倒して戻ってきたら、自分から話すつもりだからって」

女闘神「おっちゃん一人のせいじゃないとはいえ、辛い立場だろうからな……。気持ちはわかるけども……」

剣聖「まあ、こればっかりはな……。おじさんの気持ち次第だし、俺達じゃどうにもならないか……」

聖女「あ、あと、その時また『例のセリフ』言ってたよ。明日は旅立ちの日だから、こっちも魔王を倒してからになっちゃうけど」

女闘神「お、それ本当か? そりゃ気合い入れなきゃな」

真魔王「その前に、魔王を倒さないといけないんだけどね。全員無事に帰ってこられるといいんだけど……」

聖女「……大丈夫だよ、きっと」

女大富豪「そうね……。そう信じるしかないわね」

剣聖「こっちには伝説の勇者もいるしな」

女闘神「うん!」

ガチャッ

勇者「……ただいま」


聖女「あ、お帰り、勇者! もうお話は済んだの?」

勇者「……うん。終わった。伝えたい事は全部伝えてきたから」

剣聖「そうか……。なら、いいけどな」


村人C「おおっと! おーい、みんなー、伝説の勇者様が帰ってきたぞー!」

村人D「なら、乾杯すっかー! 勇者が戻ってきた事にー……」

「カンパーイ!!」


カチンッ、カチンッ、カチンッ


女村人E「勇者っ! 勇者っ!! もう一回っ!! それっ!!!」

「カンパーイ!!!」


カチンッ、カチンッ、カチンッ


勇者「えっと……」

女闘神「ま、見ての通り、村のみんなはもう完全に出来上がっちまってるからさ」

勇者が無事に帰って来れればいいけど

村人F「おーい、勇者ー! こっち来てくれ! お前も飲もうぜ、今日はしこたま飲み明かそうぜー!」フラフラ

女村人B「そうよー、勇者ー。こっち来て、こっち。おばさんにさー、色々と話聞かせてよー。ねえねえ」ヨロヨロ


真魔王「モテモテだね、流石は勇者」ニコッ

勇者「……性格悪くなった? 真魔王」


女大富豪「ま、今日はもう無理かな。おばさん、ああなるとなかなか止められないからね」

剣聖「諦めて、酒の肴になってきな。俺達とは明日も話せるからな」

聖女「二日酔いに気を付けてね、勇者」


勇者「……だね。覚悟しとく。ある意味、魔王相手にするより怖いかも」


ハハハッ、イイスギダッテ、アハハッ


ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー 



こうして、この日の夜はゆっくりと更けていく……。


故郷の温かさ、人々の希望、仲間からの信頼、そして絆、そんなものを勇者は感じ取りながら……。


心地好さと共に、時間も酒も通り過ぎていき、気が付けば深い眠りの中へと勇者は落ちていった……。





『勇者伝記』には、この夜の事がこう記されている。


勇者は仲間たちと共に笑い合い、それぞれの近況や過去の思い出話に花を咲かせ、大いにこの時間を楽しんだ。
故郷の温かさにも触れ、旅立ちの鋭気を養い、決意をより強く固めさせた。

後に勇者はこの様に述懐している。

『この夜は、自分の人生の中で二番目に最高の夜だった。仲間の頼もしさを次々と知り、ひたすら感激するばかりだった』

『良き友に、亡き父母に、生まれ故郷に、これほど感謝した日はなかった』と……。

酒の席……背中を叩いたりとか……。

酔って手加減できなかったり



だが……。

近年になって、南の国の地下遺跡から発見された一冊の書物。
勇者の自伝書とも、巧妙な偽書とも噂される『名もなき告白』には、こう記されている。


タロットカードの『愚者』同様、この時の私は何も知らない事で幸福でいられた。

私はこの夜、自分の過去を散々語りはしたものの、仲間の過去については機会を逃して聞けずにいたのだから。

また、幾つか推理の欠片となるものを与えられてはいたが、それは私の想像出来る範疇を遥かに越えるものであり、その少ない情報から真実に辿り着くのは恐らく誰でも不可能だっただろう。

聖女の名前を教会は公表していなかったし、女闘神は偽名を使っていた。真魔王は人間界では無名であったし、女大富豪は七つ星商会の方が有名過ぎて会長の名前はろくに巷に流布していなかった。

結局、私が知っていたのは、東の国の国王たる剣聖の名前だけだったが、それも同姓同名の別人だと私は初めから思い込んでいた。

この勘違いを誰が責められるだろうか。自分の幼馴染みが十五年の間に別の国の国王になっているなどと、誰が考えるだろうか。


(中略)


村人の強さから考えるに、この時点で、仲間が自分より強いであろう事は、ある程度、予想はしていた。
しかし、それはやはり『ある程度』であり、規格外な予想など私に出来るはずもなかった。


(中略)


この時点で、私の仲間達は、そうそうたる地位や肩書きを既に得ていた。
しかし、私が『伝説の勇者』という事もあり、それに比べれば大した事はないと考えていたらしく、誰もが自分からそれを言い出す事はなかった。

また、私の仲間達は、前述した師の教えにより、謙虚さを全員が身に付けており、自慢や見栄を張る様な真似は一切しなかった。
それも、私がこの事について気付くのが遅れた一つの要因となった。


(中略)


……そもそもの話をすれば、私はこの時、勇者に選ばれた事によって根本的な勘違いをしていた。
これは私が主役の物語だと心のどこかで思い込んでいたのだが、真実は一人の間抜けなピエロの話でしかなかった。

仲間と私とでは、太陽と蟻ほどの強さの差があったのだから……。
だが、この時の私はそれに全く気が付いていなかった……。




※注釈
タロットカードの『愚者』の絵柄は、上を向いてて先の崖に気付かず、幸せそうに歩いていく男という構図になっている。



記述に食い違いがある、この二つの書物……。

そのどちらが正しくて、どちらが間違っているのか。あるいは、何が真実で、何が嘘なのか。

それは、長い歴史の影に埋もれ、最早誰にも確かめようがない……。

だが、例えどちらであろうとも、『伝説の勇者』の冒険を記した書物には、ある一点のみ必ず共通している事がある。




それは、『伝説の勇者』の伝説は、この翌朝から始まるという事である……。



 

ここまで

本格的な旅立ちの前に700レスかぁ、こりゃとんでもない大作だなぁ(遠い目)。

こっからは速いぜぇ……きっとジェットコースターだ

悲しいなあ


こんなの読んだことねえよ…


ここから勇者が絶望してくのかな?

真魔王と聖女がいるから死でさえも救いには成らないという絶望
魂までも囲い込まれて終わらぬ地獄がまっていそう

これ書籍化してもいいぐらいだな

何が辛いって勇者が普通にいいやつな事なんだよなあ

>>708
くっさ

これで勇者特有の能力すらも否定されたか。
仲間にくらべ知力、体力、権力、名声全てダメとか
不憫すぎて吐き気してきた。

これの何がやばいって勇者は普通にいいヤツなのに魔王は既に倒れありとあらゆる全てが仲間に劣りその仲間が全力を出したら世界が滅ぶ勢いっていう不純に不純を重ねた勇者マジ不純

同じ不確定要素満載なら
勇者を指名しない方が不幸な人間作らないで済むんじゃなかったのかな……

でも勇者を指名しないと仲間たちがまとまらなかった可能性があるし

仲間の強さを知った瞬間の勇者も気になるけど
勇者の強さを知った瞬間の仲間の反応が気になる

仲間もいい奴だから気を使ってくれそうなのがまたな…

勇者の伝説ってもしかして最弱伝説なんじゃ…

この後ほぼ全員が深い悲しみに包まれる
これはもう確定

どう着地するかが問題

胃が痛い…キリキリする

女神しばきに行く聖女を幻視した

でも実際できる事あったはずだよね女神さま

『勇者伝記』と『名もなき告白』、『世界が終わった日』的な三冊目があってもおかしくない

>>720
>>640
囚われの身でできる限りの干渉をした結果が現状だと考えるほかない

村で飲み食いしたから多少気休め程度にステータス上がってそう

雀の涙とは言うが差と上昇量の比を考えると蚤の涙くらいでも五桁上がりそうなので何と喩えていいやら……

名もなき告白の記述と食い違っているという事は、勇者伝記ではたぶん褒め称えられてるんだろう
大丈夫大丈夫、へーきへーき(勇者の精神以外)

こいつら生まれた時からこの名前なんだよな

勇者(タカシ)

そもそも誰が書いたかだよな伝記の方は、仲間の誰かか、吟遊詩人とかなのか。
そして地下遺跡に隠したのは勇者か別人か……続きが気になるな。

勇者(としひと)

伝説の方は聖女の余計な気遣いの可能性…

凄いな、旅立ちというワクワク感MAXのイベントに悲壮感しか存在しない
今後、勇者に幸せは訪れるのだろうか……

魔王倒せれば世界平和だから…

魔王ってなんだろう

坊や それは風のざわめきだ

魔王(世界を滅ぼすとは言ってない)

真魔王の立場は

魔王の方が強いと思ってるのに真魔王を名乗ってるのがわからん

それはSSの表記上の都合だろ

勇者は自分の弱さを正直に打ち明けて仲間に鍛えてもらったらいいんじゃね?
たぶん主人公補正で急成長するやろ(適当)

ー 朝、山奥の村 ー



村長「それではな……。達者でやっていけよ」

女村人B「頑張るのよ、勇者。必ず魔王を倒してきてね」グスッ

村人A「気張ってけよ、無茶さすんなよ!」

村人C「世界を頼んだぞ、勇者ぁ! 魔王を倒してここに錦を上げて帰ってこい!」


勇者「うん!」


神父「貴方に女神様の強い御加護があらん事を……。どうか無事にここへと帰って来るのですよ」

村長「ああ、ここはお前の故郷なんじゃからな」


勇者「はい! 行ってきます! みんな、ありがとう!!」ヒラリ (騎乗)

馬「」ヒヒーン



「がんばれよー! 負けんなー!!」

「しっかりなー! 毎日、女神様に勇者の無事を祈っておくからなー!」



勇者「うんっ! ありがとう、みんなー!」

勇者「ありがとうーーー!!!」

馬「」カッポ、カッポ

ー 山道 ー


勇者「それにしても、昨日あれだけ飲んだのに、体が軽いや。二日酔いとかにもなってないし」

馬「」ヒヒーン!!


勇者「やっぱり故郷の酒は特別なのかな。料理もどれもこれも美味かったし。心なしか、相棒も今日は元気に見えるしな」

馬「」ブルルッ


勇者「皆の期待に応える為にも、これから頑張らなきゃな。お前も頼りにしてるぞ、相棒」

馬「」バルルッ!!


前日
【伝説の勇者】  【名馬】
『体力 :204 『体力 :109
 攻撃力:115  攻撃力: 16
 防御力:110  防御力:  8
 魔力 : 77  魔力 :  0
 素早さ: 87』 素早さ: 24』
         ↓
本日
【伝説の勇者】  【名馬】
『体力 :307 『体力 :196
 攻撃力:213  攻撃力: 69
 防御力:210  防御力: 65
 魔力 :175  魔力 :  0
 素早さ:192』 素早さ: 78』



剣聖「お、勇者が来たな。皆の見送りも終わったか」

女闘神「あたしらは先に行っといて正解だったね。勇者、いい表情してる」

聖女「だね。みんなから、いっぱい元気をもらったんだろうね」


勇者「お待たせ、みんな。それじゃあ、行こうか」

馬「」ヒヒーン


剣聖「ああ! みんなで力を合わせて魔王を倒すぞ!」

女闘神「ついに、旅立ちの時だね!」

聖女「うん! みんな、頑張ろうね!」

真魔王「魔王を倒しに!」

女大富豪「出発するよ!」



「おーーーーっ!!」


 

勇者「それじゃあ、とりあえず一旦下の町まで降りようか。みんな、歩きで来たんだよね? なら、俺も歩くから、相棒に皆の荷物を乗せていって」ヒラリ (下馬)

馬「」バルルッ


真魔王「あ、大丈夫だよ、勇者。気を遣わないで。みんな、移動手段はあるから」

勇者「?」

女大富豪「それよりも、勇者。これからの行動についてちょっと話しておきたい事があるの。大事な事だから、少し時間をくれる?」

勇者「あ、うん。それはもちろん。これからの魔王を倒す旅の事についてだよね?」

女大富豪「そう。私は職業柄、世界中を飛び回ってたからね。その間に、魔王を倒す為の色々な情報を集めておいたの」

女大富豪「真魔王や女闘神にも色々と協力してもらったし、もう情報に関しては誰よりも詳しいわよ。任せて」ニコッ

勇者「そうなんだ、それは凄いや。ありがとうね、女大富豪」

女大富豪「ううん。情報収集とかは私の役目だしね。で、今から集めておいた情報を話すから、勇者、よく聞いててね」

勇者「うん。お願いするよ」

女大富豪「まず、魔王を倒すには『伝説の四装備』が必要なの」

勇者「四装備?」

女大富豪「剣・兜・鎧・盾の四つ。女神様の祝福を受けた、世界で最高最強の装備。勇者の為だけに作られた武器と防具で、絶対に壊れないと言われてるの」

勇者「そんなのがあるんだ。……知らなかった」

女大富豪「それで、特にこの中で一番重要なのが、『伝説の聖剣』。どうしてかって言えば、魔王は『闇の衣』っていう魔界の秘宝を装備してるらしいから」

女大富豪「この『闇の衣』っていうのは、『不死の秘宝』と呼ばれてて、装備してる限り、決して死ぬ事はないという伝説の宝具なの」

勇者「へえ……そうなんだ。それは厄介だね……魔王は不死身なんだ」

女大富豪「うん。それで、この『闇の衣』を断ち切れるのが、さっき話した『伝説の聖剣』。これだけ」

女大富豪「女神様が、『闇の衣』を斬り裂く為に用意した、世界でたった一本しかない特殊な剣なの」

女大富豪「そして、他の三つの防具は、その力を増幅する役割を持っているわ。だから、魔王を倒す為には、この『伝説の四装備』が必ず必要なの」

勇者「じゃあ、まずはそれを集めなきゃいけないんだね」

女大富豪「うん」

女大富豪「それで、この『伝説の四装備』がどこにあるかも私は調べておいてあるから、これから一つずつ場所を言っていくね」

勇者「そうなんだ、ありがとう。助かるよ」

女大富豪「まず、伝説の聖剣だけど、これは天空城にあるの」

勇者「天空城……? 空の上にあるって事?」

女大富豪「うん。遥か上空。雲の上に建てられてるお城で、そこの最上階に伝説の聖剣が突き刺さっているっていう事だったわ」

女大富豪「これは伝説の勇者以外は抜けないっていう、そういう噂があったの」

勇者「そうなんだ……。でも、空の上なんてどうやって行ったらいいのか……」

女大富豪「うん。それで、その話を知ってる人達に色々聞いたんだけど、この世界のどこかに天馬っていう空を飛ぶ馬がいるから、その馬に乗って取りに行くんだって」

剣聖「という事で、三日前に取ってきといた。受け取ってくれ」っ伝説の聖剣

勇者「え」

『勇者は伝説の聖剣を手に入れた!!』


勇者「……あ、えと……勇者以外抜けないんじゃ」

剣聖「それは噂だろ。確かに少し固かったけど、ちょっと力を入れたら引っこ抜けたぞ。でも、傷一つなかったし、流石は聖剣だな」ハハッ

勇者「……て、天馬は」

剣聖「何年か前に、天聖山に修行に行ったんだが、その時、湖のほとりで暮らしているのを見つけてな。妙になつかれて、それ以来、愛馬にしてる。後で紹介するが、いい馬だぞ」

勇者「……そ、そうなんだ。……ありがとう」

剣聖「いや、良い剣ってのは持ち主を選ぶ。それは勇者が装備するに相応しい剣だ。正しい持ち主のところにいけて、聖剣もきっと喜んでるだろう」

勇者「……だと……いいけどね」ズシリ……

魔王が死ななかったのはそのためか

女大富豪「それで、次は伝説の兜ね。これはどこかの国の地下に迷路で出来た巨大なダンジョンがあって、その中に隠されてあるって話だったわ」

女大富豪「それで、そのダンジョンがどこにあるのかは完全に謎。唯一の手がかりは、世界中にいくつも散らばっている古代文字で書かれた石板の欠片だけ」

女大富豪「だから、まずはその石板を全部集めて、更にそこに書かれてる古代文字を解読しないといけないんだけど」

真魔王「僕の魔力でダウジングして場所を探し当てたから、四日前についでに取ってきたよ。はい」っ伝説の兜

勇者「……あ、ありがとう」

『勇者は伝説の兜を手に入れた!!』


女大富豪「それで、次は伝説の鎧。これは水中深くにある海底遺跡に眠っているという噂ね。更にそこには恐ろしい怪物がいて、鎧を守ってるって事だったけど」

女闘神「あたしが、何年か前に巣潜りしてる時に偶然見つけてな。怪物もぶっ飛ばしておいた。はい」っ伝説の鎧

勇者「……う、うん」

『勇者は伝説の鎧を手に入れた!!』


女大富豪「それで、最後。伝説の盾。これは教会の大聖堂に厳重に保管されているそうよ。手に入れるには教皇の許可が必要になるわ」

聖女「だから、わたしが三日前にドラリンと一緒に行って、もらってきたよ。はい、勇者、使って」っ伝説の盾

勇者「…………」

『勇者は伝説の盾を手に入れた!!』

聖女「ね、早速装備してみて、勇者」ワクワク

女大富豪「そうね。晴れ姿を見せてよ」ワクワク


勇者「え……。う、うん……」ガチャリ、ガチャガチャ

『勇者は装備していた騎士団の剣・鎧・具足を外した!』
『攻撃力が24下がった! 防御力が36下がった! 素早さが17上がった!』

【伝説の勇者】
『体力 :306
 攻撃力:189
 防御力:174
 魔力 :175
 素早さ:209』


勇者「で、これを……」ガチャリ、チャキッ

『勇者は伝説の剣・兜・鎧・盾を装備した!』

『攻撃力が182万上がった! 防御力が246万上がった! 素早さが6下がった!』

【伝説の勇者】
『体力 :    306
 攻撃力:1820189
 防御力:2460174
 魔力 :    175
 素早さ:    203』


勇者「…………」

女闘神「おおっ! 勇者カッケー!! メチャクチャ似合ってる!」

聖女「うん! なんかもう、伝説の勇者って感じがスゴいするよ!」

剣聖「勇者専用の最強の装備だもんな、そりゃ似合ってて当然か!」

真魔王「本当に光り輝いてるね。流石だよ!」

女大富豪「私達も、勇者の為に取ってきた甲斐があったね!」


ダヨネ、アハハッ、ハハハッ



勇者「………………」

かなしいなぁ

えぇ…(困惑)

女大富豪「それじゃ、伝説の四装備も揃ったし、次は竜の話をするわね」

勇者「……う、うん」

女大富豪「今、竜と魔物が戦争をやっているでしょ。それは知ってるかしら?」

勇者「そうなんだ……。初耳なんだけど…………」

女大富豪「あ、そう? じゃあ、簡単に説明するけど、魔王軍が魔界からやってきて、この世界を侵略し始めたのね。それで竜王軍と戦いを始めたのよ。今のところ、形勢は互角なんだけどね」

勇者「そっか…………」

女大富豪「だから、魔王を倒すには竜の力も借りた方がいいって私たちは考えたの。幸い、こっちには聖女がいるし」

勇者「…………どういう事?」

女大富豪「あれ? 勇者って聖女の事知らなかった? 聖女、竜と喋れるの。だから、竜王と交渉して協力してもらおうと思って」

勇者「!?」

聖女「それで、一昨日、実際に行ってきてお願いしてきたよ。快く引き受けてくれたから。勇者の合図で竜王さん達も一斉攻撃に移ってくれるって」

勇者「お、俺の合図で!?!?」

真魔王「そう。その合図で魔物と竜とが全面戦争に突入する事になってるから、注意してね」

勇者「!?!?!?」

剣聖「それで、今、勇者の合図とほぼ同時に俺達も魔王城に突撃したらどうだろうって話になってるんだ。そうすれば、魔王軍には混乱が生まれるから竜王軍が優位に立てるし、俺達も魔王城の敵を片付けるだけで済むからな」

真魔王「増援が後ろから来ないし、敵の動揺も誘えると思う。みんなで相談したんだけど、これが一番いい作戦じゃないかって結論になってさ。勇者もそう思わない?」

勇者「え、あの、その……」オロオロ

聖女「竜王さん達が陸で戦って注意を引いてくれる間に、わたし達はその隙を突いて空から一気に魔王城に乗り込もうっていう作戦なの。上手く行くと思うんだけど……ダメかな?」

女闘神「先に頭さえ叩いちまえば、組織ってのは一気に崩れるからさ。あたしらのターゲットは魔王一人だけに集中出来るし、悪くないと思うんだよ」

女大富豪「どう、勇者? 昨日、皆で考えたんだけど、良くない? もし、勇者が別の作戦がいいって言うなら、私達も考え直すけど……」

勇者「い、いや、他には何も思いつかないし……。作戦的にはそれでいいと思うけど……」オロオロ

女大富豪「良かった。なら、もう突撃の準備は整ってるから。後は魔王を倒しに行くだけよ!」

勇者「え」

剣聖「よし! それじゃあ、勇者も伝説の装備が整った事だし、早速行こうぜ! 魔王城に!」


「おーーーっ!!」


勇者「え、え」

普通なら凄い筈のステータスアップが全然凄く感じない…

真魔王「じゃあ、僕からお先に行くよ。飛翔魔法」フワッ

勇者「浮いた!?」

真魔王「ああ、勇者は飛翔魔法、初めて見る? こっちの世界にはない魔法だからね」

勇者「え!???」

女闘神「じゃあ、あたしらも行こっか! みんな、おいで!」ピーッ (指笛)



バッサ、バッサ、バッサ!!


天馬「」ズササッ (全長2メートル)

鳳凰「」ヒュインッ!! (全長56メートル)

天海竜「」ドシンッ!! (全長38メートル)



勇者「はいい!!!???」

馬「!!??」ヒヒーン!!



女大富豪「来なさい、ゴーレム!」サッ


ドギュッ!!! (飛行)

魔導機神「」ドガッシャンッ!!! (着陸) (全長19メートル)



勇者「はああああああああ!!!???」

馬「!!!???」ブルルルッ!!!

女闘神「勇者、驚き過ぎだって。そんなに珍しい? ほいっと」ピョンッ

鳳凰「シギャアアアッ!!」ビリビリ


真魔王「ここら辺はあんまり巨大な魔物とか霊獣がいないからじゃないの? それに、女大富豪のゴーレムは僕らもびっくりしたしさ」フワフワ


女大富豪「ていうか、びっくりしてくれなきゃつまんないってば。造るの大変だったんだから。それっと」ピョンッ

魔導機神「」ガコッ、ウィーンッ


剣聖「ま、その辺は飛びながら話せばいいだろ。そういえば、昨日は勇者の事ばかりで、俺達の事はろくに話してなかったしな。じゃ、頼んだぞ、相棒」ヒラリ

天馬「」ヒヒーン


聖女「あ、勇者のそのお馬さんは空を飛べる? 大丈夫?」ピョンッ

天海竜『グルルルッ!!』



勇者「」

馬「」

剣聖が完全に勇者の上位互換で笑う

勇者「こ、こんなの……無理だよ。俺は……皆と一緒に旅に行けない……」

聖女「え、勇者、どうしたの、急に?」オロオロ


勇者「お、俺は……あ、相棒以外、いないし……飛翔魔法とかいうのなんか……使えないから……」

勇者「だから……空も飛べないし……それに……」グスッ


聖女「あ、そうなんだ。ご、ごめんね、勇者。わたし達がちょっと無神経過ぎたね」オロオロ

剣聖「そうだよな……。昨日、苦楽を共にした馬だって話してたもんな……。空から行くって先に言っとかなかった俺たちが悪かった、許してくれ……」

女大富豪「昨日の内に言っとけば、勇者も何か考えてくれただろうからね……。私が軽率だった、ごめん」

女闘神「わ、悪い……。勇者が王都から来たって事、今まですっかり抜けててさ……。そりゃ霊獣とか連れて来るのは無理だよな……」

真魔王「普通は馬だけだよね……。僕達がちょっと常識外れになってる……。ごめんよ、勇者」


勇者「い、いや、みんなは悪くないんだ……。俺が……俺が空を飛べないのが悪いから……」グスッ

馬「」ヒヒーン!!!

女大富豪「お、落ち込まないでよ、勇者。空を飛ぶ事なんて普通出来ないんだから。飛翔魔法使えるの、私達の中でも真魔王だけなんだし」オロオロ

聖女「そ、そうだ。勇者、わたしのドラリンに乗ってく? 空を飛べないと妖魔の森を抜けるのが結構大変だから、そうした方がいいよ」

女闘神「あたしの鳳凰に乗ってってもいいぞ。二人乗りになるけど、こいつはデカイからな」

真魔王「僕の飛翔魔法の範囲を広げてもいいよ。残念だろうけど、その馬は今回置いていってさ。危険な道のりになるんだし、そっちの方がいいよ。ね、そうしよう、勇者?」

剣聖「ああ、俺の天馬も、魔王城までたどり着いたら危険だから逃げてもらうつもりだしな。みんなの言う通り、今回は置いていった方がいいと俺も思う」


勇者「そ、そりゃ……置いていくよ……。だって……もう無理だし……」


真魔王「あ、じゃあ、僕が移動魔法でその馬だけ村まで連れていくね。ちょっと待ってて」ヒュンッ (馬のすぐ側まで飛翔)

馬「!」ブルルルッ!!!

真魔王「移動魔法!」

フッ……


勇者「え、消え……!!」

聖女「それじゃ、勇者はわたしのドラリンに乗っていってちょうだい。さっきのお詫びがしたいから。ね?」スタッ (竜から降りる)

天海竜『グオオオッ!!』ビリビリ


勇者「!!」ビクッ

女闘神「んじゃ、聖女はあたしの鳳凰に乗ってくか?」

聖女「ううん。一人で行くから、大丈夫だよ。ほら」バササッ (背中から白い巨大な翼が生える)

勇者「!!??」


剣聖「凄いな……流石、聖女。初めて見たけど、それ、天使の翼か?」

聖女「うん。いつのまにか飛べる様になってたの。じゃあ、ドラリン。そういう事だから、勇者をお願いね」バサリッ、バサリッ (浮上)


天海竜『グルルッ』カプッ、ヒョイッ (くわえて背中に乗せる)

勇者「え、ちょ、あ、うわっ!!」ポイッ、ストンッ

聖女「大丈夫だよ、勇者、落ち着いて。ドラリンはいい子だから。何も心配しないで」

天海竜『グルルルルルッ!!』フンスッ

勇者「」ビクッ


フッ……

真魔王「よしっと、お待たせ。馬の事は事情を村長に話して頼んでおいたよ。安心して、勇者」スタッ

勇者「え? あ、ありがとう、でも」オロオロ


女大富豪『じゃあ、改めて出発だね! ウイングフリーダム、起動!』ガコッ

魔導機神「」ゴゴゴゴゴ…… (浮上)


剣聖「行くぞ!」

天馬「」ヒヒーン


聖女「うん!」バササッ、バササッ


真魔王「天使の翼か……。凄いね、それ。もう何でもありだね、聖女」フワッ


女闘神「それは真魔王もだろ? ま、今に始まった事じゃないけどさ。行くぞ、鳳凰!」

鳳凰「シギャアアアッ!!」バッサ、バッサ



聖女・剣聖・女闘神・真魔王・女大富豪「いざ、魔王討伐の旅へ!!!」



勇者「ま、待って! まだ……心の準」

鳳凰「シギャアアアア!!」ビリビリ


女闘神「行くよ、駆け抜けろ!!」



バササッ!! バサッ、バサッ!!!


 

ここまで

恋愛的な要素はないの?という事すら憚れるほどの展開で噴いたwwww

遊びじゃないもんな……伝説装備を手に入れるの含めて魔王討伐の旅だろなんてワガママだよな……

はじめてのおつかいに両親、祖父母が着いて来ちゃった感

素早さが見劣りして本当に魔王に当てられるのか?とかいう疑問すら湧かない絶対的安心感
勇者的には絶望感かもしれんが


聖女と一緒にドラリンの上に乗ってキャッキャウフフな旅をする
そう思っていたころがありました

>>761
でもこの茶番、暇を持て余した神々×5の遊びみたいなもんじゃん?

別に陸から行っても時間あんまり変わらないと思うんだがというかもう叩く相手の頭がないわけで…

伝説の装備を着せられてる子可哀想

勇者伝記の記述どうすんだよ!
この作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。
の一文入っちゃうじゃん!

勇者伝記に出てくる勇者がこのかわいそうな道化君とは限らないのかもしれない…(全方位疑心暗鬼)

まるで海が割られたような何もない一本道な道中だな
普通に船をこいでいたらドラマとかが色々あったはずなのに…

読むのが辛い

なんか勇者がマジでかわいそうになってきた…

普通の勇者と普通の仲間でこの話読んでみたいわ

いきなり魔王城とか勇者かわいそう

勇者を弄ぶ女神を許すな

にやけながら悲しい気持ちになった
こんなの初めてや…

かなしいなぁ…

みんなが勇者の話を聞く振りしながら全く聞いてくれなくて
胸が切ない

悲しくて怒りが込み上げるザワサワ感

こんなTUEEEE感が出てるのに悲しい気持ちになったのは生まれて初めてだ……

せつない
これもすべて女神ってやつの仕業なんだ…

もうね、飛べないって言ったあたりの勇者がかわいそうでこっちまで泣けてくるな...

仲間に魔王倒すのはまかせて、もう騎士団長の娘と結婚してひっそりと暮らしたら良いと思う

あれだよな!隠しステータスとかあって勇者は運9×∞億とかあるんだよな!(白目)

>>784
今のところ環境にも何にも恵まれず運に見放されてるんですが…

なんでや!王城の騎士隊長で団長のかわいい娘と幼馴染やろが!
……でもこの茶番が終わって、勇者が元の環境に価値を見い出せるかガチで心配やわ

この仲間なら勇者が村人より弱い事はすぐに察しそうだが知らないふりをするのかはたして

完全に力を制御し切ってると思い込んでる
絶対強者の傲慢よな……

胃潰瘍製造スレ

おつ

旅が終わった頃には精神ズタボロで笑顔しか浮かべない勇者の姿が…?

まだプークスクスされてた方が感情の逃げ場がある
もう悟りを開くしかない

そりゃこの勇者がこれ見せられたらそうなるわな、果たして旅の終わりの勇者の精神はどうなるか。
伝記の伝承が読めすぎて……多分勇者が……。

100万以上ステータス上がるとか伝説の装備はすごいなあ(白目

お前らバカか魔王と真魔王がいるんだぞ

いるんだぞ?

前やってたMMORPGを思い出した
お下がり装備渡されていきなり高難度マップへ行く上に騎乗ペットがいなくて待たせてしまったあの申し訳なさ

>>796
初期に実装されてた魔王はインフレについていけなかったわけだ…

>>796
聖境伝説かな?

よくまだついていく気が残ってたな
普通この時点で察すると思うけど勇者って肩書が引けなくしてしまったのか・・・

これはあれだろ
魔王(女神)を討伐に行くお話なんだよな?(白目)

それすらも本気にならずとも半日で終わる模様

ー 妖魔の森、北西地区

      魔王軍拠点 ー


魔軍師「魔王様が帰ってこられたのか!」

魔兵士「はっ! 昨日、時空魔法によってお戻りになり、魔王城にその姿を現されたとの事です!」


ガルーダ(鳥悪魔)「ほう。意外に早かったな」 (全長21メートル)

【北西地区担当、八大将軍の一人】
『体力 :525万
 攻撃力:319万
 防御力:250万
 魔力 :336万
 素早さ:327万』


ガルーダ「で、魔王様は異界からの援軍は連れて来られたのか?」

魔兵士「それが……手傷を負わされて、撤退された模様で……」

魔軍師「あの魔王様がか!?」

魔兵士「はっ。横に側近様がおられただけで、他には誰もいなかったそうです……」

ガルーダ「ふっ。ふはははははっ。情けない。つまりは負けて帰って来たという訳か」

魔軍師「……ガルーダ。今の発言は不敬に値するぞ。笑い事ではない。やめろ」

ガルーダ「ああ、そうとも。確かに笑い事ではない。竜界に侵略してより、早100年近く過ぎてるというのに、一向に決着がつかないままなのだからな。無駄に時間と兵が失われていってるのだぞ」

魔軍師「……だからこそ、魔王様も異界行きを決断されたのだ。今回はその結果が失敗に終わったが、現状は前と何も変わっていない」

ガルーダ「そう。前と同じだ。小競り合いの繰り返しで段々と戦力が削られていくだけだろう。消耗戦など、敵地でやる事ではない。だから、あの時、我は反対したのだ。神界の攻略のみで留めておくべきだと」

魔軍師「それについては今更だ。とにかく、士気を下げる様な事を将軍が口走るな。ただでさえ、この地区は連敗が続いてるのだ。これ以上、何か言うのであれば、将軍職の剥奪も考えるぞ」

ガルーダ「ちっ。面白くない」クルッ、スタスタ

魔軍師「待て、どこに行く」

ガルーダ「そこら辺を軽く回ってくるだけだ、今の気分で良い作戦など浮かぶはずがないからな」バサッ、バサッ!!


魔軍師「勝手な事を……」

魔兵士「…………」

魔軍師「ガルーダは最近、常にあの様な感じか」

魔兵士「はっ……。前に比べて酒と魔結晶を飲む量が増えていますし……。連敗が続いた事と、長い遠征により、厭戦感が出ているようです……」

魔軍師「将があれでは兵もそうだろうな。本来ならばあいつは強くて粘りのある優秀な指揮官なのだが……。飢えと故郷を懐かしむ気持ちだけは私でもどうしようもない」

魔兵士「……正直なところを申し上げれば、私もそろそろ魔界に帰りたく思っています」

魔軍師「しかし、今戻ればそれこそ無駄な遠征だ。領土も何も得る事なく、犠牲と出費だけ出して帰る事になる」

魔兵士「それはそうでしょうが……」

魔軍師「……あるいは、戦力がまだある内に一大決戦を挑むべきかもしれんな。今のままでは、確かに旗色が悪いし、士気も下がっていく一方だ。今後、それが良くなる可能性もほとんどないだろうからな……」

魔兵士「…………」

魔軍師「余計な事を口走った。今の事は全て忘れろ。決して口外するな」

魔兵士「は、はい……!!」

魔軍師「この後、予定を変更して私も魔王城へと戻る。魔王様から今後の事について考えをお聞きしたいからな。各方面にはそう伝えておくように」

魔兵士「はっ!」

ー 同時刻、魔王城 ー


魔王「そうか……。魔軍師は今、北西地区に出向いているのか」

側近「…………」


大魔導師「はい。留守を私めに任せて、一番旗色の悪い北西地区の守りへと向かわれました」

魔王「して、今の各方面の状況は。余が出る前と出た後で変化した事のみ挙げよ」

大魔導師「……日にちもさほど経ってはおりませんので、万事、変わりありません。以前と同じ状況でございます」

魔王「よしっ。ならば、全軍全面攻勢の用意をさせよ。本日を持って決戦の準備に入る!」

大魔導師「……!! 決戦ですか!?」

魔王「そうだ。これ以上戦いを長引かせる意味はない。何より、余はこれまで大きな勘違いをしていたからな」

大魔導師「勘違いとは、一体……」

魔王「竜王を倒し、三界を統一するのが最終目標だと余はそう考えていた。故に、これまで慎重に事を進めてきたが、それは過ちであった」

魔王「三界の統一など、余にとっては通過点に過ぎぬ。最終目標は異界を含めての四界の統一だ。故に!」

魔王「たかが竜界ごときに時間をかける必要など、皆無! 余、直々に出向いて、次の一戦で竜王を倒し、竜どもを残らず片付けてくれようぞ!」

大魔導師「!!」

魔王「大魔導師! 軍師に代わり、急ぎ、出陣の準備を整えよ! 魔軍師と各方面の将軍にも伝えよ! 次の一戦で竜王軍を蹴散らし、魔界へと凱旋するとな!」

大魔導師「は、ははーっ!」


魔王「それと、側近」

側近「はっ!」

魔王「余の盾の役目、しかと果たせよ。前に言った通り、死ぬ事は許さぬぞ」

側近「ははっ! 我が名と、既に散っていった同胞達の魂にかけて!」

ー 妖魔の森、最南端付近、上空 ー


女大富豪『……って、感じかな? 今の私達は』

魔導機神「」ドギュッ!! (飛行中)


真魔王「そうだね。これが、僕達の大体の近況だよ」ヒュンッ (飛行中)


勇者「」

天海竜『』バッサ、バッサ!!! (飛行中)


聖女「驚いた、勇者? 勇者が頑張ったのと同じで、わたしたちもみんな頑張ったんだよ」バッサ、バッサ!!! (飛行中)


剣聖「そうだな。おかげで最近ようやく、勇者の仲間だって胸を張って言えるような強さと地位になれた」

天馬「」バッサ、バッサ!!! (飛行中)


女闘神「剣聖はそうだろうけどさ。残念だけど、あたしは地位じゃ胸を張っては言えないな。海賊王とか言われてても悪名だしさ」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!! (飛行中)


真魔王「それを言うなら僕もかな。異界で魔法の開発とか研究してるだけだからね。働いてすらいないからなあ」ヒュンッ


女大富豪『というか、真魔王って働く必要ないんじゃないの? 錬金術も出来るんでしょ?』

魔導機神「」ドギュッ!!


真魔王「うん。マネーバランス崩しちゃうから、あまり使わない様にしてるけどね。異界だとお金持っていてもほとんど意味ないし」ヒュンッ


勇者「」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


女闘神「お金に価値を見出だしてないもんな。やっぱ、聖女と真魔王だけ別格かあ。聖女もこの前、石ころを宝石に変えてたしさ」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!!


聖女「お金に困ってる子供がいたからね。女神様もそれぐらいの奇跡は許してくれると思うの。自分の為に使ってる訳じゃないし」バッサ、バッサ!!!


勇者「」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!

女大富豪『でも、あれ。私からしたら、聖女の奇跡ってほとんど反則なんだけどね。多分、魔法理論とかまったく無視してるし。どれだけ調べても原理の解明とか絶対出来ないと思う』

魔導機神「」ドギュッ!!


女闘神「それを言うなら、真魔王も十分反則だけどな。今、魔法で出来ない事とかないだろ、真魔王って?」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!!


真魔王「そんな事はないよ。僕のは魔法理論に基づいてるから、聖女みたいな理論を超えた事は出来ないし」ヒュンッ

真魔王「それに、僕からしたら、誰でも使う事が出来る物を発明している女大富豪や、魔力がなくても大丈夫な気功とかを使える女闘神のがよっぽど凄いよ」ヒュンッ


剣聖「……何か、みんなの話を聞いてると、何故か俺だけ凡人みたいな気になってくるから自信を無くすんだよな。国王とは言っても、立憲君主制に移行してる最中だから、ほとんどお飾りみたいなもんだしな」

天馬「」バッサ、バッサ!!! (飛行中)


勇者「」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!

聖女「そんな事ないよ、みんなの中で一番偉くなってるのは剣聖なんだし。それに、剣の腕前じゃみんな敵わないでしょ?」バッサ、バッサ!!!


剣聖「そうだといいんだが、多分、勇者の方が強いだろうからな。剣の腕前でも勝てるかどうか」

天馬「」バッサ、バッサ!!! (飛行中)


勇者「!?」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


女闘神「というか、勇者を引き合いに出したら、あたしら全員、一番がいなくなっちゃうじゃん」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!!


勇者「!!??」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


真魔王「だよね。勇者に選ばれてる訳だから僕らより強いのは間違いないだろうしさ。何よりネームバリューがね」ヒュンッ


聖女「『伝説の勇者』だもんね。それに比べたらみんな名前負けしてるよね」クスッ



アハハッ、ホントダヨ、サスガユウシャ、ハハハッ



勇者(多分みんなより弱いとか言い出せる雰囲気じゃない……助けて)グスッ

女大富豪『しかも、あれでしょ? 勇者って魔王を倒したら、南の国のお姫様と結婚が決まってるんでしょ? そうしたら次期国王だしさ』

魔導機神「」ドギュッ!!


勇者「し、知ってたの!?」ビクッ

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


剣聖「そりゃ、女大富豪は全世界に支店を持ってるしな。そんな大ニュースを聞き逃すはずがないだろ」ハハッ

天馬「」バッサ、バッサ!!!


勇者「」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


女闘神「それ聞いた時、あたし、ちょっとショックだったんだけどね。別に勇者の事を狙ってた訳じゃないんだけど、なんかこう複雑っていうか……」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!!


聖女「わたしも残念だったなあ……。今だから言えるけど、わたし、子供の頃、勇者が好きだったもん……。でも、十五年も経ってるし、今更仕方ないけどね」バッサ、バッサ!!!


勇者「」

天海竜『』バッサ、バッサ!!!

真魔王「国の事情とか絡んでるとね。個人じゃどうしようもない面とかもあるしね。でも、勇者も乗り気みたいだし、良かったよ」ニコッ


勇者「え、乗り気!?」ビクッ

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


女大富豪『お姫様からの熱い求婚、喜んで受けたんでしょ? 今更隠さなくてもいいよ。私達も応援するって決めてるし』ニコッ

魔導機神「」ドギュッ!!!


勇者「いや、あれはでも、姫も俺もああ言わないと体面上まずいってわかってるからだし。確かに姫は美しい方だし、悪い気はしてないけど、でもあくまで儀礼的なものだし本当にどう思ってるかなんて」オロオロ

天海竜『』バッサ、バッサ!!!


女闘神「そんな、気を遣わなくてもいいって、勇者。優しさってのは時々、逆に人を傷付けるしさ。昔の話なんだし、聖女もそこまで気にしてないって」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!!


勇者「ち、ちが」

天海竜『グルルルルッ!!』ビリビリ

勇者「!!」ビクッ!!


聖女「あ、妖魔の森が見えてきたよ!」バッサ、バッサ!!!

剣聖「ああ、もうすぐ決戦の時だな。残念ながら、お喋りはここまでだ」チャキッ

天馬「」ヒヒーン!!

女闘神「腕が鳴るね! この日の為に今まで修行して来たんだし!」ポキポキ

鳳凰「」バッサ、バッサ!!!

真魔王「勇者! 魔王の所へ辿り着くまでの露払いは僕達がやるから、任せて!」ヒュンッ!!

女大富豪『勇者は魔王の事だけ考えてて! 行くわよ!』ガコッ

魔導機神「」ジャキッ (大型魔力凝縮出力砲×2門を組み合わせて構える)



女大富豪『突撃!! 決戦の狼煙を上げるわ!!』


魔導機神「」ギュイイイイーーーンン…… (エネルギーチャージ)



「ツインバスターライフルッッ!! いっけええええーーーーー!!!」ガチッ!!




チュドオオオオオオーーーーンンンッッッ!!!!




勇者「!!!!????」ビクッ!!

天海竜『グルルルルッ!!』

ー 北西地区 ー


ガルーダ「ちっ。ずいぶんと飛び回ったが、未だに腹の虫が収まらぬな」バッサ、バッサ (全長21メートル)

ガルーダ「が、戻ったらまたあの頭でっかちな軍師と下らぬ会議の続きだ」バッサ、バッサ

ガルーダ「配給品の酒と魔結晶も尽きてきた頃だし、そろそろ」


キラーン……


ガルーダ「?」



チュゴゴゴゴゴゴオオオオーーーーーーーンンンッッッ!!!!!



ガルーダ「!!!!」ジュワッ…… (消滅)



キラキラキラ…… (光)


 

魔導機神から放たれた、大型魔力凝縮出力砲。

それは世界の五分の三を占めると言われる広大な森、妖魔の森上空を一直線に切り裂いて貫き、目映いばかりの光を放ちながら彼方へと消え去っていった。


この瞬間、妖魔の森にいたありとあらゆる生物が、上を向いた。


運悪く、その直線上にいた魔物は全て光へと還元した。


老いも若きも、強きも弱きも、魔物も竜も、等しくその光り輝く未知の閃光に見いった。


そして、彼らはその数十秒後、その光が放たれた先から、飛んで向かってくる者達の存在に気付いた。


彼等こそが、伝説の勇者、その仲間たち。


魔王を倒す、最強にして最高のパーティーが、今!


この地に君臨した瞬間だった!!


 

ー 魔王城、玉座の間 ー


魔兵士「」ダダダダッ

魔兵士「も、申し上げますっ!! 南の方角から敵襲!!」

魔兵士「先程の閃光を放った者達かとっ!! また、その閃光により、北西地区のガルーダ様が巻き込まれ討死したとの事!!」


側近「ガルーダがっ!?」


魔兵士「はいっ! 更に奴等は迎撃に向かった兵士達をなぎ倒しつつ、この魔王城へ向けて進軍してきておりますっ!!」


大魔導師「何だとっ!!」

側近「っ!!」

魔兵隊長「まずい!!」


ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ!!!



城内にいた兵士達が一斉にどよめく。彼等もまた、あの光を見た者達だった。

あの瞬間、誰もが、何が起きたかは理解出来なかった。
だが、今が異常事態だという事と、その光の壮絶さだけは頭ではなく魔物の本能ではっきりと理解していた。

そして、今、この地に向かってきている者達が、自分達の理解を遥かに超えた者達であるという事は、容易に想像がつく。
だからこそ、動揺、恐慌、不安、そういったものがこの場にまるで伝染病の様に蔓延していく。

しかし!



魔王「狼狽えるなっ!!」ビリリッ


大魔導師「!」

側近「!」

魔兵隊長「!」


魔兵士たち「!!」



魔王「強い敵が来たなら、更に強い戦力で叩き潰せばいいだけの事だ! 何を恐れる事がある! お前たちは、それでも余の誇る最強の魔王軍か!」


魔王の鋭い一喝が広い玉座の間に響き渡る。これにより、玉座の間は再び元の静寂さを取り戻す。

かの者は魔王。歴代の魔族の中で最も強く、最も兵から信頼を受ける、常勝の軍神、覇王、英雄……。

その場にいる誰もが、その事をはっきりと思い出した。

側近「……失礼しました、魔王様。思わず取り乱しました。陳謝します」

魔王「構わぬ。それよりも、報告を続けよ。その者らの数は」


魔兵士「は、ははっ。竜と巨大な霊獣・神獣ペガサス・天使、あと異形の怪物が一匹いるとの事です。その背には何故か人間が乗っている模様です!」


魔王「人間……? まさか、魔軍師が前に言っていた勇者とやらか?」

側近「御冗談を。人間ごとき、仮に女神の祝福や加護を受けようとも話になりません」

魔王「が、他には思い当たる節がない……。さしずめ、余を倒す為の混成軍を編成したというところか。天使も混ざっているという事は、間違いなく女神の差し金であろう。あの女め、封印されながらまだ余計な事を……」チッ

側近「……しかし。何にしろ、数が少ないのは幸いです。少数精鋭なのでしょうが、何重にも包囲して殲滅してしまえば取るに足りません。あの光にのみ注意しておけば問題ないでしょう」

魔王「うむ。出陣の準備を整えていたのは不幸中の幸いだな。魔王城に常駐させている遊撃部隊と近衛兵はもう出られるか」


大魔導師「はい! そちらは既に整っております」


魔王「ならば、余自ら出て殲滅戦の指揮を取る。五分後には遊撃部隊と近衛兵、両軍を魔王城前に集結させよ」

側近「魔王様自らがですか……。ここは大魔導師に指揮を任せても宜しいかと思いますが……」

魔王「元々、守りは性に合わぬ。果実も、人の手から与えられるよりは、自らの手でもぎ取った方が美味かろう」スクッ

魔王「出るぞっ! 他地区まで被害が広がる前に、一気に片付ける! 急げっ!!」


側近「はっ!」

大魔導師「ははっ!!」

魔兵隊長「急げっ! 出陣だ!!」


「ははっ!!!」

 

ここまで


最近更新が楽しみで仕方ない

がんばれ魔王。パラメータが全てではないところを見せてやれ

いやマジでほんの少しでもいいから勇者に希望を見せてくれ

乙です。
でも魔王が何とかしちゃったら今度は勇者が魔王相手に何が出来るのか……。


勇者以外が魔王のHPを1にして「勇者!とどめを!!」ってやるんやろ知ってる知ってる(白目)

もう勇者のライフは0を通り越してマイナスだな

勇者と魔王、立場が違えば友と成れただろうにのう

いや勇者と魔王も圧倒的に差が…

勇者くんはなんかもう結婚できなさそう

このパーティーの誰かが読心術かなんか会得していればこんなことには…

正直勇者が自殺しても納得できてしまうくらいの状況だ
鬱とかそんなちゃちいもんじゃない、環境だけで廃人になる可能性を秘めてる


しないだろうし、したとしてもさせてもらえないだろうけど

自殺しても蘇生させられちゃうんだろうなぁ

あれ聖女ってなんとなく心読めるんじゃ

>>829 宗教家は壊れた心に入り込むのが得意だから

魔王を倒したあとは女神も倒さないといけなくなりそう

おつ

>>825>>826
勇者くんが独身術を会得しました

確かに優しさってのは時々、逆に人を傷付けるよな…

胃がITEE…いやなんでもない

>>807
未だに多分みんなのほうがって…

もしかしたらまだ自分が強いかもという思いがあるのか勇者

相手の力量すら勇者は見る力がないのか…女神さん慈悲なさ過ぎだよぉ

仲間内の会話だしな、仲間を立てつつ丸く収める言い回しみたいな感じでは?
それすらも言い出せない雰囲気と実力差があるだけで、そも力量を見定める目を持ってても人間の尺度じゃ測れん気もする。

魔王が安らかに眠るために勇者が必要なんだな(錯乱)

本編はあとどのくらい残ってるんだろう
もしも1000にギリギリ収まるかどうかって感じなら、減速した方が良さそうだけど

>>836
きっと未だに仲間が立ててくれてるから期待を裏切らないためにその可能性を信じたいんだよまだだ……まだ可能性はある、的な感じで(ただし精神をすり減らしながら)

>>836
人間、心を守るために物事の振り幅を小さく、もしくは無くそうとする心理的防衛反応があるんよ
現実逃避に近いけど本能に根ざしてる分最後の砦みたいなもんだから破られるとやばい

しかしこいつら人間の枠に入ってんのかな
商人(?)以外はちゃんと寿命あるのか?

寿命……こいつらの前では儚い言葉だ

何も倒すだけは平和への道ではあるまい

魔王が体力1になってもさ勇者の攻撃翌力よりはるかに防御が高いからダメージ1も与えれないんじゃ…

トドメすらさすことが出来ない無慈悲なインフレww

ドラクエ式なら1入る場合もあるから…(震え声)
もしかしたら伝説の武器に対魔王ダメージ+1とかついてるかもしれないし

固定値は神

ー 神界、封印の牢獄内 ー


女神「勇者達が、魔王城へと向かいましたね……」

大天使「ええ。ほとんどの過程を飛ばして、一路、魔王城へと……。もう妖魔の森上空にまで来ております」

女神「そして、未だに誰も勇者の本当の強さを知りません……」

大天使「はい」

女神「……運命の女神たる私が、この様な事を言うのは憚られますが」



「これも運命なのでしょうか……」



大天使「全ての出来事が、勇者を『伝説の勇者』たらんとせしめていますからね……」

女神「ええ……。幸運と呼ぶべきか不運と呼ぶべきか……。あるいはこれこそが本物の天運というものなのでしょうか……」

大天使「では、やはり……」

女神「ええ、この流れからすれば、そうした方が良いでしょう……」

女神「危険極まりない方法ですが、あの『計画』を実行へと移します……」

大天使「全ては世界の安定の為に、ですか」

女神「ええ……。私の最後の切り札です……」



「勇者には、強いと仲間から誤解されたままでいてもらいましょう……。その為の計画です」


真の邪悪とは……

大天使「ですが、あの『計画』は両刃の剣ではないかと……。下手すれば、逆に世界を崩壊させる可能性も十分ありますが……」

女神「それも承知の上です……。ですが、今の関係がこの先、変にこじれるかもしれない事を考えると、まだこちらの手段の方が世界崩壊の可能性は低くなるでしょう……」

女神「それに機会は今しかありません……。決断の時です」

大天使「しかし……。かなりの不安が残ります……。私達もそれにより罪深い存在となってしまいますし……」

女神「もう決めた事です……。これにより私達は引き返せない位置へと進むでしょう……。そして、勇者も同様に後戻り出来ない地点へと……」

大天使「全て、覚悟の上ですか……」

女神「ええ……。この世界の平和の為に……」



「勇者にはこのまま『伝説』となってもらいましょう」


「この先、例え何年経とうとも、この勇者を超える事が出来ないと誰からも思われる様な絶対的な存在に……」


「無理矢理にでもなってもらいます……」



大天使「我らが罪を許したまえ、勇者よ」サッ…… (十字を切る)

女神「それでは大天使は、今、聖女に代わって大聖堂にいる女に『例の連絡』を……」

大天使「はい……」

女神「私は残り最後の力を全て使って、少しの間だけ魂のみを竜界へと降臨させます……。これが私の最後の役割となるでしょう……」

大天使「勇者の元に行かれるのですね」

女神「ええ……。恐らく時間はそうありません。私が降臨し、そして勇者との会話が終わるまでには、大天使と女は全ての手筈を整えておいて下さい……」

大天使「はい……」


女神「必ず、世界中の皆に、『あの事』を伝えるように……」

大天使「わかっています……。万事つつがなく……」

ー 中央国、大聖堂内、円卓の間 ー



教皇「…………」

枢機卿A「…………」

枢機卿B「…………」

枢機卿C「…………」

枢機卿D「…………」

神殿騎士団長「…………」



教皇「騎士団長よ。未だ……女は特別大礼拝堂に立て籠ったままか」

神殿騎士団長「……申し訳ありません。信じられぬほど強力な結界が中に張ってありまして」

神殿騎士団長「また、聖女様のドラゴンが女の側についております。仮に結界を破れたとしても、我等がその場で取り押さえるのは不可能かと……」

教皇「…………」

教皇「しかし、これまで水も食事も渡しておらぬのであろう……。いかに女と言えど、そろそろ衰弱しておるのではないか」

神殿騎士団長「それが、扉ごしの会話にはきちんと受け答えをしております……。女曰く、天使様が補助してくれていると……」

枢機卿A「天使とはな……。世迷い言を……」チッ

教皇「…………」


枢機卿A「教皇貎下。今更の話ですが、あの女を教会に復帰させたのはやはり間違いだったのです」

枢機卿B「左様。聖女の逃亡の手伝い、許される事ではありません。捕まえたら魔女裁判にでもかけて処刑すべきです」

枢機卿C「今は過ぎた事を言っても仕方あるまい。それよりも、これらの事態を世間からどう隠すかについてを話し合うべきだろう。捕まえた後の事は、捕まえてから決めれば良い」

枢機卿D「だが、聖なる盾も聖女に奪われているのだぞ。こちらは勇者に渡すと言っていたから隠しようがないが、どうするつもりかね。偽物を作って誤魔化すとでも言うのか」

枢機卿A「奪われたのは神殿騎士団の責任だ。そちらで何とかしたまえ。聞けば、抵抗もせず聖女に渡したというではないか」

神殿騎士団長「それは……。ですが、竜を連れてる聖女様相手に我等が何が出来たというのです。抵抗してもしなくても結局は奪われたでしょう」

枢機卿B「それが言い訳になるか。『奇跡の鐘』・『聖女』・『伝説の盾』と、今や教会の三大シンボルの内、二つが消えているのだぞ。この事態をどうおさめるつもりだ」

枢機卿C「落ち着け。聖女に関しては、元から姿を滅多に見せていなかったのだ。そこはどうにかなる。伝説の盾も勇者に譲渡したとするしかあるまい。問題は今後の事だ。教会の威信をどう取り戻すかだろう」

枢機卿D「その前に、立てこもっている女を外に引っ張り出すのが先ではないのかね。女を人質にすれば、この後の事はどうとでもなるだろう」

枢機卿A「いや、『伝説の盾』を勇者に譲渡した事にするのであれば、先に勇者の存在を教会が認めねばなるまい。まずは急いで式典を開いて……」


教皇「頭が痛くなるな……。この事態、どこから手をつけるべきか……」ハァ

コンコン、ガチャッ!!

大司教「し、失礼しますっ! 一大事です!」


枢機卿D「何だ、今は重要な会議中だぞ!」

大司教「申し訳ありません、ですがっ!!」


教皇「……どうした」


大司教「女が特別礼拝堂から出て、大聖堂へと向かっておりますっ!! 竜も一緒です!!」


教皇「!?」

枢機卿A「自分から出ただと……!!」

枢機卿B「一体、何が目的だ……!!」


大司教「そ、それが、『奇跡の鐘』を必要としているとっ!!」


神殿騎士団長「奇跡の鐘だと!? すぐ行くっ!!」スクッ

教皇「今度は何を企んでおる……あの女は!」

ー 大聖堂内、中央礼拝堂 ー


神殿騎士A「お、お引き下さい! 奇跡の鐘は神聖な聖具でございます! 例え誰であろうと、許可なくこの鐘を渡す訳には!!」


女「……お下がりなさい。私は女神様の神託により、その鐘を必要としているのです。許可など必要ありません」

地海竜『ギルルルッ!』ギロッ


神殿騎士A「うぅっ!!」ビクッ!!

神殿騎士B「で、ですが!!」

神殿騎士C「それでも、あの鐘を渡す訳には……!!」


女「……お下がりなさいと私は言いました。私の言葉は、そのまま女神様の言葉だと思いなさい」ピカーッ (後光が射す)

天使「退くが良い……。女神は鐘を必要としておられる」フワリ (降臨)


神殿騎士A「!!」

神殿騎士B「せ、聖なる光が……!!」

神殿騎士C「て、天使様まで降臨を……!!」



女「では、行きましょう。鐘を鳴らす準備を整えに……」スタスタ……

天使「はい……」フワッ



神殿騎士A「い、一体、何の為にあの鐘を……」ガクガク

神殿騎士B「普段は絶対に鳴りもしないが、鳴れば世界中に響くと言われる伝説の鐘……」ガクガク

神殿騎士C「前にあの鐘が鳴ったのは、魔王が現れた時だと聞いているぞ……。じゃあ、今度は一体何があるって言うんだ……」ガクガク

ー 同時刻、南の国

  王宮二階、バルコニー ー



姫「…………」




ー 王宮の庭 ー


騎士A「最近、姫様はよくバルコニーから外を眺めておられるな。今日もだ」

騎士B「ああ、以前はそんな事はなかったんだがな。やはり、勇者様の事が気になっておられるのだろうか」

騎士C「戻れば結婚されるという事だったからな。気にならない訳はないだろうが……」

騎士D「実際、どう思っておられるのだろうな? 姫様は勇者様の事を」

騎士A「さあな。だが、少なくとも悪くは思っておられないだろう。お嫌なら御自分の部屋にでも引き込もっておられるんじゃあないか?」

騎士A「勇者様の事が心配だから、ああして外を眺めておられると俺は思うがな」

騎士B「勇者様は美男子だし、真面目で誠実な性格をしていたからな……。姫も優しく賢いお方だからきっとお似合いの……ん?」



ピカーッ (後光が差す)


騎士A「!?」

騎士B「な、何だ!? 魔物か!?」ガチャッ (魔法銃を構える)

騎士C「いや、待て! あれは……!!」



天使「」フワリ

姫「!?」



「天使様!!?」

 

ー 同時刻、東の国、王都 ー


「はい、いらっしゃい、いらっしゃい! 安くしとくよー!」

「おっと、そこの男前な兄さん、このかんざしとか贈り物にどうだい! 女の子にあげりゃイチコロだぜ!」

「安くて美味しいリンゴだよー! 昨日、果樹園からもいできたばかりのだ! 見てよ、この色ツヤ! 美味そうだろ!」

「一つ目オオカミの毛皮あるよー! どれも上物ばかりだよー! さあ、買った買った!」


名剣士「しっかし、ちょっと留守にしてる間に王都も活気が出てきたな」スタスタ

名剣士「前は役人の怒声と、悲鳴や泣き声ばかりだったからな。陛下の政治が上手くいってる証拠だ。俺も苦労した甲斐があったってもんだ」

名剣士「それじゃあ、王都の空気も十分堪能した事だし、そろそろまた旅にでも出ようかね。今度は西の国にでも行ってみるか。何か面白い事があるかもしれないしな」スタスタ


ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ!!!


名剣士「ん? やけに騒がしいな。何だ?」



「おい、聞いたか!? 今、記念広場の真上に天使様が降臨してるらしいぞ!!」

「天使様が!? 一体、何で!?」

「いや、知らないが、何でも重大な知らせがあるとかで!!」



名剣士「天使様が……!? それに、重大な知らせ!?」

名剣士「そうと聞いちゃ行くしかないだろ! 記念広場は確か向こうか!」タタタッ

ー 同時刻。北の国、山奥の大屋敷 ー


大賢者「九尾の狐さん、九尾の狐さん」

九尾の狐「」スヤスヤ


大賢者「駄目か……。起きてくれない」ハァ

九尾の狐「」スヤスヤ


大賢者「すっかり体も回復したし、助けてもらったお礼をしたいのに……」

九尾の狐「」スヤスヤ


大賢者「ここ二日ばかり、ずっと眠りっぱなしだ。無理矢理起こそうとすると尻尾ではたかれるし……」

大賢者「危うくそれで死ぬとこだったからな……。一体、僕とどれだけ差があるんだろう……」

大賢者「本当にあの占い師のおばあさんの言う通りだったな……。上には上がいたし、世界は驚くぐらい広いや……」

大賢者「九尾の狐さん……。その世界の垣間でも良いので僕に少しだけ見させてもらえないでしょうか? 弟子入りさせてもらえないでしょうか?」

九尾の狐「」スヤスヤ


大賢者「まあ、ずっとこの調子だけどね……。僕が何を言ってもまるで起きてくれないし……」

九尾の狐「」スヤスヤ

大賢者「どうやったら起きてくれるかな……」


九尾の狐「」ピクッ

大賢者「!?」


九尾の狐「何じゃ、この予感は……?」ムクッ

大賢者「お、起きた!?」

九尾の狐「妾の第六感が強く告げておる……。じゃが、何じゃ……?」

大賢者「あ、あの、九尾の狐さん!」

九尾の狐「黙っておれ、小僧。今、妾は集中しておる」

大賢者「あ、す、すみま」

九尾の狐「向こうか。遥か北の方角じゃな……」トテトテ


ガラッ (屋敷の襖を開け放つ)


九尾の狐「一体、何が起こるというのじゃ……」(外を眺め、北の方角をじっと見つめる)

大賢者「……?」

ー 同時刻。南の国、凪の海賊団アジト ー


うみねこA「」ニャー、ニャー

うみねこB「」ニャー、ニャー



男船長A「くそっ……。まだ大船長にやられたところが痛むぜ……」ズキズキ

男船長B「全員、派手にのされたからな……」ズキズキ

副船長「束になってかかっても、結局、足止めすら出来なかったからな……。完全にやられ損だ……」ズキズキ

女船長C「大船長からしたら軽く稽古つけた様なもんでしょ、あれ……。もう別世界の人よ、あんなの……」ズキズキ

女船長「にしても、これからどうしてくかよ。手探りで貿易やってくしかないけど、不安が……」


シーン……


女船長「ん?」ピクッ

男船長A「お前も気付いたか。何だ、この雰囲気……」キョロキョロ

男船長B「何かが襲ってきたって訳じゃない……。殺気も闘気も感じられない……。だが、何だ、この違和感は……? 急に何か変わったぞ」

副船長「いや、わかった! お前ら上を見ろ!」

女船長C「上?」ツイッ


シーン……


女船長「そうか……! 何か起こったんじゃなくて……!」

男船長A「ああ、消えちまったんだ……! あれだけ空を飛んでいたうみねこが、いつのまにか! どこにもいなくなってる! 鳴き声すら聞こえなくなったぞ!」

男船長B「だけど、お前……。この島を俺達のアジトにしてからもう四年以上経ってるが、その間、一度でもうみねこの声が聞こえなくなった事ってあったか……?」

副船長「……いや、覚えてねえな。なかったはずだ」

女船長C「じゃあ、何で急に……?」

女船長「何かあったのかも……。私らの知らないところで、何か大きな事が……」

副船長「あるいは……。これから何か起こるのかもしれないぞ……」

男船長A「何が起きるってんだよ、副船長……。鳥が一斉に避難する程の何かって事だろ、それ……」

副船長「船が沈没する前にはネズミがいなくなるってのはよく聞くが……」

女船長「何なの、一体……。気味が悪い……」

ー 同時刻。西の国、農業で栄える町 ー


秘書「では、こちらの農園との専属契約はこれで全て交渉終了という事で……」

農民A「ああ、七つ星商会さんところに全部卸すだよ。いいブドウさ出来るのを期待してけろ」

秘書「ええ、宜しくお願いします」


大風車「」カタカタ、カタカタ…… (高さ12メートル)

大風車「」ピタッ……


秘書「おや……? 風が、止まった?」


農民A「そ、そんな嘘だべ! この町は風が常に吹いてる町なんだ。あの大風車が止まったとこ、俺は見た事ねえぞ」

農民B「俺もだ。生まれて初めて見ただ……。この町で風が止まる事なんかあるんだべな……」


秘書「……風が止まる。しかし、何故……」

秘書「!!」

秘書「あれは……! 風車の上に!」



天使「」フワリ…… (降臨)



農民C「て、天使様!?」

農民D「何でこったらとこに天使様が!?」



天使「皆の者、よく聞きなさい……。これより、勇者に関する事で、伝えるべき事がある」



農民A「ゆ、勇者の事で!?」

農民B「一体、なんだべさ!?」


秘書「まさか、女大富豪さん達に何かあったのでは!!」

ー 妖魔の森、南西部、上空 ー


アスタロト(悪魔)「怯むな! 奴等を生かして帰すな!! 飛べる奴等は全員殺しにかかれっ!!」バッサ、バッサ!!

【南西地区担当、八大将軍の一人】
『体力 :617万
 攻撃力:422万
 防御力:365万
 魔力 :409万
 素早さ:158万』


剣聖「雑魚は、俺の前に出てくるなっ!!」チャキッ

天馬「」ヒヒーン!!!


「魔法剛剣技!! フ レ ア ダ ウ ン ッ !!」


ズバッ!!!!



アスタロト「っ!!!!」ガフッ!!!!

ヒューーーン……ドサッッッ!!!!



剣聖「冥土の土産だ! 魔法剣の威力、冥界でとくと語るといい!」

巨大屍鳥A「グギャギャッ!!!」バササッ (全長31メートル)

巨大屍鳥B「グギャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥C「グギャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥D「グキャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥E「グギャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥F「グギャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥G「グキャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥H「グギャギャッ!!!」バササッ

巨大屍鳥I「グギャギャッ!!!」バササッ



女大富豪『ふふっ。飛んで火に入るなんとやらってやつね。この程度の数、ウイングフリーダムにとっては何の意味もないわよ! 武装展開!』ガコッ

魔導機神「」シュババババッ!! (遠隔操作型、魔力出力小型砲台×32機を背面から展開)


女大富豪『奏でなさい! 破滅のメロディ! フィンファンネル!!!』


小型砲台A「」ギュインッ、ドシュッ!! (空中を自在に移動しながら魔力レールガンを発射)

小型砲台B「」ギュインッ、ドシュッ!! (魔力レールガンを発射)

小型砲台C「」ギュインッ、ドシュッ!! (魔力レールガンを発射)


(以下略)


小型砲台Z「」ギュインッ、ドシュッ!! (魔力レールガンを発射)



巨大屍鳥A「ギッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥B「ガグッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥C「グギッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥D「ッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥E「ガッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥F「ギギッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥G「ガギッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥H「グギッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!

巨大屍鳥I「ギッッ……!!」ヒューーーン……ドサアッ!!!



女大富豪『千年後に出直して来なさい!』

集団コウモリ×4000「ギギギィッ!!!」バサササササッ!!!!



女闘神「へえ、まるで一匹の巨大なコウモリだね、気持ち悪い」

鳳凰「シギャアアアアッ!!」ビリビリッ


女闘神「でもさ、一匹一匹が話にならない弱さだよ。そんなんじゃ、あたしの足止めは出来ないね」スッ (気功破の構えを取る)



「いくぞっ!! 超 級 覇 王 真 光 弾 !!!」

女闘神「破ぁぁっっ!!」ドンッ!!


気功破「」ギュインッ!!!! (全長79メートル)



ドッゴオオオオオオオンンンンッ!!!



集団コウモリ×4000「グギィッ……!!!」ジュワッ…… (蒸発)



女闘神「武闘家、舐めんな!! 多対一でも弱点にならないのがあたしだ!!!」

地獄トンボA「……!」ブイーンッ!!!! (全長16メートル)

地獄トンボB「……!」ブイーンッ!!!!

地獄トンボC「……!」ブイーンッ!!!!

地獄トンボD「……!」ブイーンッ!!!!



真魔王「速さも強さもそれほどでもないね……。君達程度に魔力を使うのはもったいないから、少し温存させてもらうよ」ブインッ…… (魔力で長大剣を生み出す)


「魔力剣! 乱 れ 雪 月 花 !!!」


ザシュッ、ドシュッ、ズバッ、ドシュッ!!!!




地獄トンボA「……!!!」 (一刀両断)

地獄トンボB「……!!!」 (一刀両断)

地獄トンボC「……!!!」 (一刀両断)

地獄トンボD「……!!!」 (一刀両断)



真魔王「魔法使いだからって、剣が使えない訳じゃないからね。むしろ、結構得意な方なんだ」ヒュンッ (高速飛行)

グリフォン「ガギギャアアアアッ!!!」ビリビリッ (全長45メートル)

【伝説の魔獣】
『体力 :443万
 攻撃力:308万
 防御力:176万
 魔力 :292万
 素早さ:339万』



聖女「うん……。わたしもあなたに恨みはないけど、これでさよならだね」バササッ

聖女「回復魔法。この者に癒しの光を与えたまえ……」パアアッ



グリフォン「!??」

『グリフォンの体力が9999億回復した!!』

グリフォン「グッ……!! ゴッ……!!!」ガフッ!!!!

グリフォン「」ブクブク…… (気絶)

グリフォン「」グラッ、ヒューーーン……ドサアッ!!!!



聖女「わたしの回復は強すぎるの……。加減しないと、体がもたないぐらいにね……。ごめんね」バササッ

虹色蝶A「…………」バッサ、バッサ!! (全長7メートル)

虹色蝶B「…………」バッサ、バッサ!!

虹色蝶C「…………」バッサ、バッサ!!




勇者「…………」ポツーン……

天海竜『グルルッ!!』グワッ (口を開ける)


天海竜『ギャオオオッ!!』ゴオオオッ (灼熱の炎)



虹色蝶A「!!!」ジュワッ (炎焼)

虹色蝶B「!!!」ジュワッ (炎焼)

虹色蝶C「!!!」ジュワッ (炎焼)

ヒューーーン……ポトッ、ポトッ、ポトッ



勇者「…………」ポツーン……

天海竜『グルルルルッ!!』フンスッ

勇者「……俺は、一体、何の為にここにいるんだろう……?」

天海竜『グルルッ?』


勇者「いや、一人言だよ……。それにしても、お前は強いな……。さっきは守ってくれてありがとう……」

天海竜『グルルルッ』フンスッ


勇者「あ……。あれが魔王城かな……。ほら、地平線の先に微かに見えるけど……」

天海竜『グルルルッ』コクコク


勇者「あそこに魔王いるんだ……。きっと強いんだろうね……」

天海竜『グルルルッ』


勇者「でも、みんなも強いからなあ……。もう何か別世界の出来事みたいでさ……」

天海竜『グルルルッ?』

勇者「もうさ……。出来れば、俺だけ帰りたいんだけど……。やっぱり帰っちゃ駄目なのかな……?」

天海竜『グルルッ??』


勇者「いや、俺もう完全に蚊帳の外だしさ……。いらないよ、ていうか無理だよ……。俺がいなくても大丈夫っぽいし……。むしろ、足手まといだよ……」

天海竜『グルルルッ……?』


勇者「あ、でも、伝説の剣を俺が持ってたっけ……。これがないと魔王倒せないんだよね……。ひょっとして、それだけの為に連れて来られたのかな、俺……」

天海竜『グルルルッ???』


勇者「あ、いや、ごめん……。ちょっと愚痴を吐きたくなってさ……。なんか想像してたのと全然違ったから……」グスッ

天海竜『グルルルッ!』アセアセ


勇者「俺、本当に何の為にここにいるんだろうって……。さっきから何もしてないし……。何も出来ないし……。勇者だってのに、何も……」グスッ

天海竜『グルルッ! グルルルッ!!』アセアセ

ー 妖魔の森、東部 竜王のねぐら ー


竜王『ガルルッ……グルルルルッ……(勇者たちの一行が……破竹の勢いで進軍しておるな……)』

【竜族の長】
『体力 :904万
 攻撃力:818万
 防御力:796万
 魔力 :479万
 素早さ:682万』


黄龍『ギルッ……(はい)』


(以下、鳴き声省略)


竜王『それで……勇者からの合図はまだ来ておらぬのだな』

黄竜『はい。未だ……。とうに来てもおかしくはないのですが、まだ送られてきてはおりません……』

紫龍『ギリギリまで戦力を自分達に引き付けておいて、と考えているのでしょうかね』

竜王『かもしれぬな……。気遣われるのはむしろ我等の方であろうから……。あの者らなら、我等の力など必要としておらぬだろうに……』


竜王『依然、我等は待機だ……。勇者からの合図が来たら、我の命令を待たず、すぐさま魔王軍に襲いかかれ』

黄竜『はい』

竜達の心は勇者によって護られてるんだなって…

勇者が聖女に回復されたら死ぬな
かすり傷を負うことさえも許されない

ー 同時刻。魔王城前、大広場 ー


大魔導師「魔王様。遊撃部隊八千名、近衛兵一万二千名。全て出陣の準備、整いました」

魔王「遅い!」

大魔導師「も、申し訳ありません!」

魔王「奴等、既に南西部を突破し、中央付近にまで来ているというではないか。すぐに出るぞ!」

大魔導師「は、はい!」

魔王「飛べる魔物は全員、鶴翼の陣を維持しつつ余に続け! 飛べぬものは下から向かえ!」ヒュンッ (浮上)


「はっ!!」


魔王「叩き落として地上戦に持ち込む故、下の者らはとどめの用意をせよ! 指揮は側近に任せる!」

側近「ははっ!」


魔王「よいか、皆の者!! 例え敵がどれ程の強敵であろうと、余と、余の誇る軍の敵ではない!」

「はっ!!」

魔王「前後左右に加えて、空と陸から完全に包囲して殲滅戦に持ち込めば我らの勝利は約束されている! 余の指揮に従うだけでお前たちは勝利の美酒にあずかれるのだ!!」

「ははっ!!」


魔王「皆、恐れず進め! 余自ら先陣を切る!!」ヒュインッ (高速飛行)


「ははっ!! 魔王様に続けーーーーっ!!!!」



『グオオオオオオッ!!!!』×魔物20000体


 

ー 妖魔の森、中央部付近 ー


キラー女王蜂A「!!」ブイーンッ!!! (全長32メートル)

キラー女王蜂B「!!」ブイーンッ!!!



剣聖「しつこいっ!!」ズバッ!!!!

天馬「」バッサ、バッサ!!


キラー女王蜂A「!!!!」(一刀両断)




女大富豪『甘いよっ!!』ガチッ

魔導機神「」ドシュンッ!! (魔力レールガン発射)


キラー女王蜂「!!!!」(一撃死)




女闘神「ったく。強さは大した事ないんだが、数が多くて面倒だな」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!


聖女「うん。予想してたよりも多いね」バササッ


真魔王「だけど、下、見てよ! やっと暗黒湖を越えたよ!」ヒュンッ


剣聖「お、本当だな! 竜王の話によると、これでようやく半分ってとこか。流石に妖魔の森は広い!」


女大富豪『ね、なら、そろそろ! 勇者に合図を送ってもらおうよ! これまでに十分魔物を引き付けたよ、私達!』


聖女「そうだね! 竜王さん達もきっと待ってるだろうし、そろそろ来てもらいたいよね!」


女闘神「じゃあ、あたしが代表して勇者と話してくる! 皆はそのまま近寄ってくる魔物を倒しててくれ!」


剣聖「了解! 頼んだぞ!」

おもしろい

ー 仲間達からやや後方地点 ー


勇者「……なんかもう、これからどうしていいか、俺」グスッ

天海竜『グルルッ!!』アセアセ


「勇者ぁーー!!!」


勇者「」ビクッ

勇者「ぅっ……」ゴシゴシ


女闘神「よしっと、辿り着いた」

鳳凰「」バッサ、バッサ!!


勇者「ど、どうしたの、女闘神?」

女闘神「ああ、勇者。実はそろそろ合図を送ってくれないかってな」

勇者「合図?」

女闘神「ああ、竜王への一斉攻撃の合図だよ。勇者には勇者の考えがあると思うんだけど、あたしらは今が良いタイミングなんじゃないかって思ったからさ」

勇者「あ、合図ね。う、うん……。わかった、そうだよね、送るよ……。でも、どうやって送ればいいのかな……」

女闘神「何でもいいよ。女大富豪みたいに派手な事をしてくれりゃ、それで合図になるから。魔法でも気功でも剣技でも何でもいいからさ。勇者ならそれぐらい楽勝だろ?」

勇者「え」ビクッ!!

あっ……

女闘神「え、ってどうしたんだよ、勇者。やっぱ送るのはもう少し後からの方がいいのか?」

勇者「い、いや、そうじゃないんだけど……!!」アセアセ

女闘神「なら、頼んだ。流石に近寄ってくる魔物が鬱陶しいからさ。ドカンと一発、派手なのかましてくれ」

勇者「あ、あの……で、でも……」オロオロ

女闘神「勇者? 本当にどうしたんだよ? 何かまずいのか?」

勇者「そ、その……実は俺は……」グスッ

女闘神「……?」

勇者「あ、あれだけ派手な合図なんて……出来な」



ピカーッ!!! (天からの光)



勇者「!?」

女闘神「!?」



キラキラキラキラキラ……


女神「お待ちなさい、勇者よ……」 (降臨)

女神「その先を言う必要はありません……」



勇者「女神様!!?」

女闘神「!!?」

ここまで

>>839
予定だと、多分、あと五回か六回更新があるから、このスレだけじゃ終わらないんじゃないかな
次スレ突入して、それで終わる予定

どこまでも道化か…マジでこの女神勇者にひどいことしてるな


なら雑談は遠慮しなくていい感じなんだね

世界のために勇者を生贄に捧げる女神ェ…

今北産業

勇者に
神様なんて
居なかった

勇者は女神に呪われてたんだね

おつ

乙!
伝説から神話へ神話からお笑いへか……勇者

>>880
胃が痛い
キリキリ痛む
心も折れる

焦ってる天海竜がちょいかわいいな

PTメンバーが滅茶苦茶敵倒してるから勇者は経験値吸っていっぱいレベルアップしてるでしょ

竜ちゃんがかわいい…

女神というか悪魔そのもな

まあ、勇者の仲間全員が魔王や神様を遥かに超える戦闘力を持っているんだから、女神のように立ち回るしかないと思う
変に刺激して仲間割れや暴走されたら世界がほろぶから、勇者には人身御供というか生贄になってもらうしか方法が無い


女神「お待ちなさい、勇者よ……」 (降臨)

女神「その先を言う必要はありません……」

これ心情的にはおいばかやめろそれ以上言うなって意味なんだよ…

>>880
本当の
敵は
女神

勇者「い、一体、何故ここに……!」


女神「もちろん、あなたを助ける為ですよ、勇者……」


勇者「俺を……!」

女闘神「勇者を……?」


女神「あなたの悩みは全てわかっています……」

勇者「!!」


女神「仲間との力の差がありすぎて、それで躊躇っているのですよね……」

勇者「……はい」

女闘神「力の差が……? そうなのか、勇者!?」

勇者「うん……ごめん」

女闘神「!!」

勇者「本当にごめん……。今まで隠してて……。なんか言い出せなくて……」

女闘神「い、いや、あたしは別に気にしてないけど……。でも、それ本当に本当なのか……?」

勇者「うん、そうなんだ……。嘘とかじゃないよ……」


女神「ええ……。私も保証します……。勇者の言う事に嘘偽りはありません……」

女闘神「女神様までそう言うなら……本当なのか。そっか……」


勇者「うん……。悪い……。ずっと黙ってて……」

これは勘違い加速の予感、、、

女神「ですが、勇者よ……」

勇者「はい……」

女神「あなたは『選ばれし勇者』なのです……」

勇者「はい……」


女神「例えどれだけ仲間達と差があろうとも、その事をあなたが気に病む必要はありません……」

勇者「…………」

女神「あなたは、私が選んだ世界でたった一人の勇者なのです……」

勇者「はい……」

女神「自信を持って進みなさい……。あなたの仲間達も、それを気にする程、器の小さい者達ではないはずです……」

勇者「……ですが」


女闘神「いや、女神様の言う通りだ、勇者!」

勇者「え……」

女闘神「あたしはどれだけ勇者と差があっても、気にはしない! それは皆も同じはずだ!」

勇者「女闘神……。それ、本当に……?」

女闘神「ああ! 当然だろ!」

勇者「良かった……。ありがとう、女闘神……」グスッ

逆の意味なんだよな、力の差がありすぎるの意味が

勇者「俺……今までずっとその事でどうしようか悩んでて……」グスッ

勇者「ほんの少しだけど、嘘ついて誤魔化そうかとかも思ったんだ……。勇者だってのに……」グスッ

勇者「でも、それは俺が子供の頃から憧れてた勇者とは真逆の行為で……。そんな風に考えてしまった自分が情けなくて……」グスッ

勇者「だけど、皆から嫌われたり、呆れられたりするんじゃないかって風にも思えて……。だから……」ポロポロ……


女闘神「何を言ってんだよ、勇者! 泣くなよ!」

女闘神「あたしも、あたしらもそんな事で勇者の事を嫌いになる訳あるかよ! それは絶対だ! 断言出来る!」


勇者「女闘神……」ポロポロ


女闘神「むしろ、誇らしくあるぞ! それだけ勇者が強いって事なんだからな!」

勇者「え…………?」

女闘神「あたしらだって相当強くなったって思ってたんだ。でも、勇者はそれを遥かに越えてるってんなら、嬉しい限りだろ!」

勇者「あ、あれ……。女闘神……?」

女闘神「あたしらはそんな強い勇者の仲間でいられるんだ! 一生の自慢に出来る! あたしはそれが純粋に嬉しいよ!」

勇者「いや、あの、そうじゃなくて逆な」


女神「勇者よ、聞いての通りです。あなたのその強大な力の一端を、今こそ仲間達に……。そして、世界中の皆に知らしめなさい……」

勇者「え、ちょっ」

女神「その為の準備は全て整えてあります……。あなたの凄さを知らしめる用意が既に……」

勇者「!?」 

ー 中央国、大聖堂

  大礼拝同、屋根の上 ー


女「では……女神様の神託通り、今こそ『奇跡の鐘』を鳴らします」

天使「はい……。お願いします、女様……」


女「勇者様の強さ、偉大さ、凄さ……。それを世界中の皆に届ける為に……」スッ (鐘に手で触れる)



『この世に生きる全ての者よ……』

『天上からの旋律のしらべを聞きなさい……』

『この鐘の音を全世界に……』



女「」ソッ (鐘に聖力を送り込む)



カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

  カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

   カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

ー 同時刻、南の国

  王宮二階、バルコニー ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……



姫「これは……。何て美しい響き……」

姫「空から、鐘の音が……」



天使「姫よ……。勇者の帰りを待ちし姫よ……」


姫「はい。天使様……」

姫「私に何かご用がおありなのでしょうか……?」


天使「鐘が鳴りし時、世界は動く……」

天使「そなたの想い人たる勇者……。かの者が魔王を倒すであろう……」


姫「!!」

姫「勇者様が!!」


天使「そう……勇者が。かの者の力、その一端をここから眺めると良い……。もうすぐそれは起こる……」


姫「もうすぐ……」

ー 同時刻、東の国

  王都、記念広場 ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……



「鐘の音が空から……」

「まさか……これが『奇跡の鐘』!」

「天使様も降臨されてる! 間違いない!」

「だけど、一体、何が起こるんだ、これから!」


名剣士「これが奇跡の鐘かよ……。生まれて初めて聴く音色だ……。ヤバイぐらいに綺麗だな……。ついつい聞きいっちまう」

名剣士「だが、この鐘が鳴る時は、災厄か奇跡のどちらかが起こるって噂だ。一体、今回はどっちだ……?」


ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ!!



天使「皆の者よ……。怯える事はない……」

天使「この鐘は奇跡の前兆……。女神様はこう仰られた……」


『鐘が鳴りし時、北の空を見上げよ……』

『さすれば、勇者のその強さが理解出来るであろう……』



ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ!!



名剣士「北の空……?」

名剣士「つまりは妖魔の森の方角か……。師匠達なら、もう妖魔の森に向かっててもおかしくないだろうが……」

名剣士「それと関係があるのか……?」クイッ (空を見上げる)

ー 同時刻。北の国、山奥の大屋敷 ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


大賢者「これは……!」

九尾の狐「まさか、また聴く事になろうとはな……。奇跡の鐘の音じゃ……」

大賢者「やっぱり、そうなんですね! だけど、何て美しい音色なんだ……!」

九尾の狐「奇跡の鐘には二種類の音色があるんじゃよ、小僧。この美しき音は良い事が起こる前触れの方じゃな」

大賢者「良い事ですか……! だけど、今の時点で良い事と言えば……」

九尾の狐「前回は魔王が現れた時じゃったな……。となると、今回は魔王が倒されでもするのかの……」

大賢者「まさか、あの南の国に現れたという勇者が、もう……!」

九尾の狐「ほう。その様な奴がおったのか。しかし、人間ではあの魔王を倒すのは無理じゃと思うが……」

大賢者「いえ、勇者は魔王を倒す為に女神様が選んだ人です。不可能じゃありませんよ!」

九尾の狐「なるほどの、女神が一枚噛んでおるのか。それなら可能かもしれんが……さて、どうか」

九尾の狐「何にしろ、小僧。勇者が魔王を倒すにしても、今は北の空を見ておれ。妾の予感からすると、何か起こるなら向こうの方角じゃ」

大賢者「は、はい!」

全世界巻き込み式劇場型詐欺

ー 同時刻。南の国、凪の海賊団アジト ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


男船長A「おい、今度は空から鐘の音が聞こえてきやがったぞ……!」

男船長B「こりゃ奇跡の鐘じゃねえのか!? 何かドデカイ事が起こった時に鳴るっていう伝説の!」


ザバザバザバッ!!

ザザザッ!! (水音)


副船長「マジかよ……。海、見てみろよ。今度は魚が一斉に南の方角に移動し始めてるぞ……」

女船長C「しかも、イルカとシャチが並んで泳いでるじゃないの……。周りを気にしてる余裕すら無いって事……?」


ザッバーーーンッ!!!

クジラ「」ザバザバッ



女船長「クジラまで南の方角に……。こりゃ、本格的にヤバイかもね……」

副船長「避難先が南なんだから……。当然、何か起こるとしたら北の方角か……」

男船長A「北の方角って言ったら、あれだよな……。妖魔の森があるとかいう……」

男船長B「魔王がいる場所かよ……。って事はもしかして大船長のせいか? 大船長なら速攻で乗り込んで派手にやらかしててもおかしくはねえが……」

副船長「だが、その大船長が前に言ってたぞ。あたしより勇者の方がきっと何倍も強いってな……」

女船長「じゃあ、何かよ、副船長……。今、魚や鳥が避難してるのは、大船長じゃなくて勇者の仕業だって事か?」

副船長「多分な……。流石にあの人が全力出しても、ここまで大事にゃならねえだろ……。あるとしたら、勇者か魔王のどっちかじゃねえか……」

女船長「どっちにしろ、半端ないね、きっと……」

副船長「だろうな……」

ー 同時刻。西の国、農業で栄える町 ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


天使「さあ、皆の者よ、刮目して北の空を見よ……」

天使「後にも先にもこの勇者を越える者は現れぬ……」

天使「それを自分達の目で確かめると良い……」

天使「女神様の加護と祝福を受けし勇者の力を照覧せよ……」

天使「天地も、草木も、鳥も、地を這う獣も、人も、昆虫も、何もかも……」


天使「その目に焼き付けて後世に伝えるのだ……」


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……



農民A「今から勇者様の力が……」ドキドキ

農民B「何が起こるんだっぺ……」ゴクッ

秘書「北の空か……」ジッ

ー 同時刻。妖魔の森

  東部、竜王のねぐら ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


竜王『ガルルルルッ……(女神が降臨したとはな……)』

黄龍『ギルッ……。グギギルルッ……(はい。そして、この鐘の音は恐らく奇跡の鐘……)』


(以下、鳴き声省略)


竜王『何があったか……。はたまた、これから何が起こるかは想像もつかぬが……』

紫龍『恐らく、今日、魔王軍との決着はつくのでしょうな……』

竜王『そうじゃな……。それで間違いあるまい……』

黄竜『願わくば、我等に勝利を……』

竜王『勇者とその仲間達がおる……。余程の事がない限りは我等の勝利で終わるだろう……。後はこちらにどれだけの犠牲が出るかじゃな……』


竜王『我等の数も少なくなった……。出来れば犠牲は少なくおさめたい……』

竜王『勇者と女神に期待しよう……。かの者達の力に……』

竜王『女神が何をしに現れたかはわからぬが、あの者達から目を放すな……。しかと見届けよ……』

黄竜『はい……』

ー 同時刻。魔王城近く、上空 ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


魔王「ちっ。耳障りな。これは奇跡の鐘か」ヒュンッ (飛行中)

大魔導師「いえ、魔王様、これは吉兆でございます! これこそ魔王様が今日、この世界を統一するという証! 奴等にとってのレクイエムでございましょう!」ヒュンッ (飛行中)

魔王「下らぬ事を。女神が創った玩具ごときに一々踊らされるな。余がそれを聞いて喜ぶとでも思ったか。二度とその様な事を口にするな」

大魔導師「は、ははっ! 失礼しました!」


ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ!!


魔王「見よ。案の定、軍が動揺し浮わついた。鐘一つで何を騒ぐ!」ビリリッ


シーンッ!!


魔王「一時、進軍を止めよ! 崩れた陣形を再編する!」

大魔導師「ははっ!」

魔王「しかし、余計な事を。女神め! とことんまで余の邪魔をするか!」

ー 妖魔の森、中央部、上空 ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


女大富豪『ちょっと、これって……!』

魔導機神「」キキィッ


聖女「うん……。間違いないよ……」バサッ……


真魔王「奇跡の鐘だ……」ピタッ


剣聖「勇者の元に女神様も降臨してるのか! だが、何で鐘が鳴る!?」

天馬「」バッサ、バッサ……


女大富豪『勇者に何かあったの!?』

聖女「わからないけど、きっと!」

真魔王「どういう事だろ……」

剣聖「良い事か悪い事か、どっちだ!?」

ー 仲間達からやや後方 ー


カラーン、コローン…… カラーン、コローン……

 カラーン、コローン…… カラーン、コローン……


女闘神「これ、奇跡の鐘か!?」

鳳凰「シギャアアアッ!」バッサ、バッサ……



キラキラキラキラキラ……


女神「時は来ました……」

女神「讃えなさい、誇りなさい、そして後の世にまで語り継ぎなさい……」

女神「この世に生きる全ての者よ……。今こそ伝説の勇者の力を見るのです……」



勇者「」

天海竜「グ、グルルッ!?」アセアセ

勇者「め、女神様……」ガクガク

勇者「お、俺は……こんな……無理……」ガクガク


女神「安心なさい……勇者よ。あなたは魔王城目掛けて魔法を使うだけで良いのです……」

勇者「で、ですが……」ガクガク


女神「よく聞くのです、勇者よ……。今から私があなたに最後の祝福を与えます……」

女神「それにより、あなたはこの世で恐らく最強の魔法を手にする事でしょう……」

勇者「!?」


女神「この魔法をあなたに教えるかどうかで、私は相当悩みました……。それぐらい、この魔法は強力なのです……」

女神「ですから勇者よ……。この魔法は禁忌とし、これ以降、自ら使うのを封印なさい……」

女神「今のあなたが使えばこの世界そのものを崩壊させかねない……。それほどの魔法なのです……。私の最後の切り札なのです……」

勇者「そ、そんな魔法を俺に……!」


女闘神「勇者スゲーな! そんな桁違いに強いのかよ!!」キラキラ

女神「ですので、勇者よ……。この魔法を使う時は可能な限り手加減をしなさい……」

女神「くれぐれも全力で使わない様に……。良いですね」


勇者「で、ですが……!」アセアセ


女神「では、頼みましたよ……勇者。あなたに最後の祝福を……」パァァッ……


勇者「っ!!」


『勇者は【伝説の魔法】を覚えた!!』



女神「さあ、その魔法を魔王城に……」


女闘神「勇者! 一発ぶちかましてやれ!」


女神「良いですか、勇者……。最大級の手加減をもって放つのですよ……」



勇者「そ、そんな事言われても……!」

勇者(例え伝説の魔法だって、俺が使ってもきっと仲間達には遠く及ばないだろうし……)

勇者(全力で放っても構わないんじゃ……)


勇者(でも、女神様からああまで念押しされてるから……)

勇者(あ、間を取って半分ぐらいの力で……)


勇者「」スッ (手を上にかざす)



女闘神「」ドキドキ、ワクワク

女神「」ドキドキ、ハラハラ



勇者「……伝説の魔法」


「 ミ ナ デ イ ン !!!!」

 

その瞬間、仲間達五人と勇者の力が一つになり、その全ての魔力エネルギーが、雷魔法へと還元した。

勇者だけでなく、仲間全員の魔力を増幅して放つ最強の雷魔法、ミナデイン。


大気そのものが震えた。

空全体が黒を通り越した漆黒の雷雲で埋め尽くされた。

信じられない程の轟音が世界全体を貫いた。

稲光によって世界は数瞬もの間、激しい閃光に包まれた。

それらが集約され、巨大な雷となって、信じられないほどの一撃が魔王城へと放たれた。


それは『雷』とは到底呼べない代物だった。最早、人類史上最悪最凶の天災と呼んでも良い。


稲妻の直径はおそよ30キロメートルにも及び、それがおよそ2分間、136秒もの間、一切途切れる事なく降り注ぎ続けた。

それは遥か遠くから見れば巨大な一本の大木に見えたに違いない。魔導機神が放った大型凝縮魔力出力砲の160倍以上ものエネルギーと規模がそこにはあった。


その小惑星の激突にも似た史上最大規模の『魔法』は、女神と天使達の尽力により、ほぼ世界中の人間が目にする事となった。

女神のハープにも似た音楽的な声が歌う様に全世界に奏でられ、天使達は一斉に祝福のラッパを鳴らした。


『勇者を讃えよ。これが勇者の力なり』



……目映いばかりの光が消え、北の空に見えていた巨大な光の柱がようやく見えなくなった時、人々は誰もが揃ってこう叫んだ。

ー 中央国、大聖堂 ー


神殿騎士たち「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

大司祭「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

大司教「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

枢機卿「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

教皇「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

女「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」



ー 南の国、王宮 ー


騎士たち「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

騎士団長「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

国王「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

王妃「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

姫「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」



ー 東の国、王都 ー


町人「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

商人「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

神父「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

子供「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

名剣士「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

ー 北の国、山奥、大屋敷 ー


大賢者「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

九尾の狐「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」



ー 南の国、凪の海賊団アジト ー


海賊たち「勇者SUGEEEEEEEE!!!!」

男船長A「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

男船長B「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

女船長C「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

副船長「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

女船長「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」



ー 北の国、農業で栄える町 ー


農民A「勇者SUGEEEEEEEE!!!!」

農民B「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

農民C「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」

秘書「勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!」



ー 竜王のねぐら ー


竜王『ガルルルルッ!!!!(勇者SUGEEEEEEEE!!!!)』

黄竜『ガルルルルッ!!!!(勇者SUGEEEEEEEE!!!!)』

紫竜『ガルルルルッ!!!!(勇者SUGEEEEEEEE!!!!)』

勇者SUGEEEEEEEEEE!!!!

ー 妖魔の森、中央部、上空 ー


女大富豪『勇者TUEEEEEEEEEEEEEE!!!!』

魔導機神「」ヒュイン


聖女「勇者TUEEEEEEEEEEEEEE!!!!」


真魔王「勇者TUEEEEEEEEEEEEEE!!!!」


剣聖「勇者TUEEEEEEEEEEEEEE!!!!」

天馬「」ヒヒーン!!!!


女闘神「勇者TUEEEEEEEEEEEEEE!!!!」




勇者「え、え、あれ……」オロオロ

天海竜『グルルルルルルッ!!!!』フンスッ



女神「だから思い切り手加減をなさいとあれほど……」シュン

ー 『元』魔王城付近 

  『現在』巨大クレーター

  草木一本もない焼け焦げた荒れ地 ー



『この地全体に164兆2879億ダメージ』



魔物たち「」…… (炭屑)×20000体


側近「」…… (炭屑)

大魔導師「」…… (炭屑)



魔王「」ピクッ、ビクッ……
残り体力:1

ここまで

生き残った魔王SUGEEEEEEEEEE!!!!

俺「魔王SUGEEEEEEEEEE!!!!」

勇者の剣でしか死なないのは本当だったのか

もう全てがSUGEEEEEEEE

むしろ消し炭になることすら許されずあれを受けたと思えばより地獄なのでは

天海竜かわいいなあ(白目)

勇者にミナデインの威力調節できるのか……?

威力を調節するために仲間を減らせばいいんだよ
ミナデインで

なるほど、仲間達が強過ぎるがうえの威力か…

たしかにこの力は化物全員に慕われてる勇者にしか使えないわ

今なら勝てるな

さすがに魔王だな

5人分がでかすぎて勇者の力を加減しても威力変わらねええええええええ

天海竜だけが癒しだな
女神は滅びればいいと思う

仲間が強すぎたせいで勇者が強すぎる

発射台ワロタ

仲間の力が集まり繋がって………人と人の繋がりって素敵ね(白目

勇者SUGEEEEEEEE!!!!

女神SUGEEEEEEEEEE

銃身さんSUGEEEEEEEE

これは伝説の勇者ですわ…

何度見返しても泣ける

ここまでミナデインを有効活用した作品があっただろうか

よかった、これで少しは勇者の心も救われるな。
本当に‥‥良かったのか?
副作用で弱くなりましたで、ハッピーエンドだろうな(白目)

ミナデイン出て来た瞬間の腑に落ちたというか安堵感半端ないわ

ほんとそれな

あとは力に溺れました系エンドじゃない事を祈るのみだわ

女神ごときに仲間たちを納得させる派手な事ができるのかと思ったらその手があったのか…

>>933
どのくらい力を借りるかを調節できるんじゃないのかな

>>949
1%でも約100億…

いちいち視点が全世界いくのか…正直くどいわ

いや今まで視点が全世界に行ってたのがこのtueeeeeの仕込みだろ

世界各所に天使を配置した一回限りの世界視点描写だからな

勇者TUEEEEEと思い込ませる事で仲違いを未然に防ごうという…


世界に平和が訪れた!

勇者があの一撃で砕いたのは、何も魔王城や魔王軍の一部だけではない!



ー 妖魔の森、西部 ー


ベルゼブブ(悪魔)「無理だ……。あの勇者には絶対に勝てない……」

ヤーマ(死神)「例え一生かかっても、あの勇者を超えるのは不可能だ……」

バアル(悪魔)「終わりの時が来たのか……」



ー 妖魔の森、北部 ー


アポフィス(破壊神)「自信を失った……。我はもう戦えぬ……」

カーリー(死神)「私が死を予感するとはな……。あれには勝ち目がない……」

ハデス(死神)「これで詰みだ……。全て終わったのだ」




勇者は魔王軍の戦意を! 士気を! 自信を! 根こそぎ砕き潰した!!

ー 妖魔の森、中央付近、上空 ー



女神「勇者よ……」ハァ


勇者「は、はい!」ビクッ

天海竜『グルルッ!』


女神「これでもう理解しましたね……。あの魔法は世界を滅亡させかねないと……」

勇者「は……い……」

女神「出来れば、二度と使う事のないようにして下さい……。あなたには頼れる仲間がいるのですから……」

勇者「はい……」

女神「あなたのその力は絶対的なものなのです……。故に、抑止力として存在しなさい……。あなたにはそれだけの力があります……」

勇者「抑止力、ですか……」


女神「ええ、あなたが力を使う必要はないのです……。ただ力があるというだけで、それだけで皆にとっては十分なのですから……」

女神「故に、決して、絶対に、何があろうとも、その力に溺れる事のないようにして下さい……」

女神「世界大戦を起こさない為だけに、その力を使うのです……。それを約束して下さい……。勇者よ、良いですね……」


勇者「はい……。女神様……」

女神「それでは、お願いしますね、勇者よ……」ニコッ

女神「私の力も残りわずかです……。もう神界へと戻らねばなりませんから……」


勇者「……はい。女神様のお言葉、忘れません」


女神「ええ、そうして下さい……。あなたは誠実で自然と人に好かれる性格をしています……。それはあなただけの才能です……」

女神「魔王がいなくなれば、この世界には平和が戻るでしょう……。その世界に、あなたのその才能はきっと必要とされるはずです……」

女神「伝説の勇者として……。この世界を争いのない平和な世界へと導いていって下さい……」

女神「仲間達を信頼し、尊敬し、時に引っ張り、時に諌めて、皆と仲良く協力してやっていくのですよ……」

女神「頼みましたよ、勇者……」


キラキラキラキラキラキラ……



勇者「消えていく……。神界へとお戻りになられたのか……」


勇者「ありがとうございます、女神様……。少しだけ自信を頂けました。そして、何より勇気を」

勇者「必ず、魔王を倒してみせます! そして、この世界に平和を!」

女闘神「勇者! 女神様からあんなに頼りにされてるなんてスゲーな!」

鳳凰「」バッサ、バッサ


勇者「うん。素直に嬉しいよ。それに、凄い魔法を教えてもらったし」


女闘神「だよな! あれ、スゴかったぞ! あたしもびっくりしたよ! 流石、勇者だな!」

勇者「俺も驚いたよ。まさかあそこまで威力があるなんて。女神様の言う通り、この魔法は危険だから魔王を倒したら封印しようと思う。もう使わない方が良いだろうから」

女闘神「そうだな! そっちの方が良いかもな! あんなん連発したら世界が壊れちまうだろうし!」

勇者「そうだね。そうなったら俺が魔王になるのかな? 気を付けないと」

女闘神「ははっ。勇者が魔王とか信じられないけどさ!」

ダヨネ、オレモダヨ、ハハハッ



「勇者ぁぁー!!!」



勇者「あ、皆も! わざわざ来てくれたんだ!」

女闘神「そりゃ来るって! あれだけの事があったんだし!」

女闘神「それにさ! さっきの勇者の魔法で魔物たち皆、攻撃してこなくなっちまったからな! スゲー痛快な気分だよ!」

勇者「そうだね。いつのまにか、魔物達がいなくなってる」


バッサ、バッサ!!


剣聖「おーい、勇者! 流石だな、この野郎! 何年経っても俺の遥か上を行きやがって!! スゲー嬉しいぜ!!」

天馬「」バッサ、バッサ


聖女「ホントだよ、スゴいよ、勇者! やっぱり勇者だけ昔から特別だね!!」バササッ


真魔王「だよね! 参ったよ、あんな凄い魔法見た事ないもん! 勇者はやっぱり僕たちの勇者だよ!!」ヒュンッ


女大富豪『うん!! 何かスッゴい自分の事みたいに嬉しい!! 思わず顔がにやけちゃうぐらい!! 勇者があんなに強かっただなんて!!』

魔導機神「」ドギュッ



勇者「ありがとう。でも、強いのはあの魔法だけだよ。俺自身はそうでもないんだ。他の事では、俺は皆よりもずっと劣ってると思う」


剣聖「おいおい、ここまで来て謙遜か! ったく! 叶わねえなあ、勇者には!」

聖女「勇者、慎み深いね! わたしも見習わなきゃ!」

女闘神「何せ、思いっきり手加減してあれだからな! あたしらの事は気にしなくていいってのにさ!」

真魔王「いや、気にするからこそ勇者なんだよ。昔からずっと僕たちの事を気遣ってくれてたしさ」

女大富豪「そうだよね! 引っ込み思案だった私が皆と仲良くなれたのも勇者のおかげだし!」


勇者「いや、本当なんだ。謙遜とか嘘とかじゃなくて。だからさ」


「? だから?」

勇者「前に女大富豪が説明してくれた通り、魔王は不死身だって話だよね。だから、きっとまだ生きているはず」


剣聖「だな!」

聖女「うん……。まだ魔王の悪しき気配が残ってる」

女闘神「あれで死なないとか反則だよな! 魔王のやつ!」

真魔王「というか、最悪、ノーダメージって可能性もあるからね……。『闇の衣』以外にどんな秘宝を持っているかもわからないし……」

女大富豪『十分、気を引き締めていかないとって事ね!』


勇者「うん。だから、皆! こんな情けない俺を助けて欲しい! 手伝って欲しいんだ!」

勇者「皆がいないと、魔王を倒す事なんか俺には絶対に無理だから!」

勇者「だから、もう一度お願いするよ! 俺に力を貸してくれ、みんなっ!!」



剣聖「当たり前だっ!! 任せておけ!!」

聖女「もちろんだよっ!! 全力でわたしたちも勇者を手伝うから!!」

真魔王「僕たちで勇者をしっかりと補佐するよ!!」

女闘神「っし! 改めて、気合いを入れ直そうぜ!!」

女大富豪『だね、せーのっ!!』



「魔王を倒すっ!! 約束通り、この六人でっ!!!」


【英雄譚、『伝説の勇者』より一部抜粋】


決意を新たにした勇者とその仲間達は、悠々堂々と魔王が待ち構えているであろう魔王城跡へと空から向かった。

その進撃を阻む魔物は一切存在しなかった。
竜ですら勇者からの合図があったというのに動きを見せようとはしなかったのだから。

各所にいた魔物たちは脅え震え、物陰に隠れつつ、ただ無気力な目を遠巻きから勇者一行に向けるだけだったと伝えられている。

ただし、『勇者伝記』によると、やけになった魔物達が一斉に群れとなって襲いかかったとされている。
また、各地に残る伝承によっては魔物達は揃って一目散に逃げ出したとされている場合もあり、真偽の程は定かではない。

しかし、竜が全く動かなかった時点で、戦争を起こす必要性がこの時には皆無だったのではないかという推測がされる為、魔物達が一斉に襲いかかったという『勇者伝記』の記述には疑わしいものがある。


何にせよ、この後、勇者一行はそのまま魔王城跡地へと進んでいき、そしてそこで初めて魔王と対面する事となる……。

ー 魔王城、跡地

  現、巨大クレーター ー



魔王「」…… (瀕死・気絶状態)
残り体力:1



勇者「…………」


剣聖「…………」

聖女「…………」

女闘神「…………」

真魔王「…………」

女大富豪『…………』

【古書、『勇者伝記』より一部抜粋】


勇者は魔王を見るなり強く叫んだ。それは名乗りであり、また自らの覚悟を声に出して外に出したものなり。

対して、魔王は不敵な笑みを浮かべ、妖しげな黒き魔力を全身から漂わせながら、勇者の実力不足と不運さを嘲笑し始めた。

かの伝説の魔法を受けても、その体には傷一つ無く、またその背後からは、新たに魔界から召喚された巨大な魔物が続々と現れ続けていたからだ。

これには流石の勇者も額に汗を滲ませ、自らの死を予感せざるを得なかった。

これまでの死闘により、仲間達は揃って満身創痍の体。かつ、自分の魔力と体力も若干の翳りを見せていたのだから……。

魔王「」…… (瀕死・気絶状態)



勇者「えっと…………」


剣聖「勇者……その、なんだ……」

聖女「う、うん……」

女闘神「なんつうか……あれなんだけどさ……」

真魔王「僕らも、その……。正直、この事態は予想してなかったんだけど……」

女大富豪『勇者がちょっと強すぎたんだろうね……。うん……』


勇者「正直……こういう時、どういう顔をしたらいいかわからないんだけど……」


剣聖「い、いや。俺達の事は気にせず、喜んでくれればいいからな……」

聖女「そ、そうだよ、勇者……。勇者が魔王を倒したんだもん。子供の頃からの夢が……か、叶ったんだし……」

女闘神「だ、だよな! あたしらも苦労したかいが……! あ、あったと思うしさ……」

真魔王「あ、あの……! 本当に気にしなくていいからね。ゆ、勇者一人で魔王を倒すって凄い事なんだしさ……」

女大富豪『……う、うん。ちょっと呆気なかったけど、私達も勇者を護衛してここまで来た訳だし……。魔王を倒す役には少しは立ててる……様な気がするからさ……』



勇者「な、なんか本当にごめんね、みんな……」

勇者「俺一人で魔王を倒しちゃって……」

勇者「皆には何て謝ったらいいか……」



「き、気にするなって!! 大した事じゃないからさ!!」アセアセ

剣聖「とにかく勇者! その、あれだ! ま、魔王にとどめを!」

女闘神「そ、そうだな、今の内に!」


魔王「」…… (瀕死・気絶)
残り体力:1


勇者「う、うん……。じゃあ……」チャキッ (伝説の剣を構える)


聖女「…………」

真魔王「…………」

女大富豪『…………』


勇者「さらば、魔王……。冥界へ旅立て……」ドスッ!!

魔王「!!!」ガフッ!!

『勇者は闇の衣を引き裂いた!!!』

『魔王に1のダメージ!!!』


魔王「っ! がっ!!!」ビクンッ!!!!

魔王「ぁ……。っ……」ゴフッ……


勇者「…………」


剣聖「…………」

女闘神「…………」

聖女「…………」

真魔王「…………」

女大富豪『…………』

ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー



余は夢を見た……。

長く果てない夢を……。

世界で誰よりも強い存在になるという真っ直ぐな夢を……。

魔界を統一した時、その夢は少しの間、叶った……。

神界を征服し、女神を封印した時も少しだけ叶った……。

だが、夢はあくまで夢でしかなかった……。

手に入れようとしていたものは指先からこぼれ落ち、そして余はこれまで手に入れたもの全てを失った……。

余の両目から、雫が一つ二つ落ちていった……。


「ようやく気が付いたかの、馬鹿者めが……」


気が付くと、横に師匠がいて……。

師匠は困ったような、呆れたような、それでいて優しい顔をしていた……。


「力で力を得ようなどと愚かな事じゃ……。ワシはそれを最期までお前に教えきらんかった……」

「じゃが、ワシの弟子達が……。そして、ワシの弟子達が慕う、勇者がそれを教えたじゃろうて」

「力で得たものは、更にそれより大きな力によって奪われるのじゃ……。じゃが、力以外で得たものはどれだけの力をもってしても絶対に奪えぬ……」

「信頼、絆、友愛、誇り、優しさ……。そういったものを得よ。それこそが真の強者というものじゃて……。ふぉっふぉっふぉっ」


ふと気が付くと、師匠の横には余の右腕と左腕たるルシファーと側近がいた……。

側近とルシファーはにこやかに笑っていた……。


「魔王様、次は冥界でナンバーワンとおなり下さい」

「私どもは魔王様にどこまでもついていきます」


余は静かに……。それが当然の様にうなずいた。


「行くか、二人とも。余の誇る、最強の矛と盾よ!」


「ははっ!!」
「はいっ!!」

ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー



魔王「」…… (骸)



勇者「終わったね……」


剣聖「ああ」

聖女「後は、残ってる魔王軍との戦いかな……」

女闘神「そうだな。残党狩りをしないと、まだ完全に平和が来ないだろうから……」

真魔王「殲滅戦か……。あまり気は進まないけど……」

女大富豪『竜達にも手伝ってもらって、私達も手分けして魔物を倒しに行こうか』


「待て! 勇者達よ!!」


勇者「!?」


魔軍師「」ヒュインッ、スタッ (上空から降り立つ)



勇者「魔物!!」チャキッ


魔軍師「剣を構えるな! 我等は降伏する!!」


勇者「!?」

魔軍師「繰り返す! これ以上の争いは無用!!」

魔軍師「魔王様亡き今、我等は勇者達に全面降伏するっ!! 寛大な処置を願う!!」

魔軍師「既にこちらの戦意は潰えた! 先程確認したが、これは他の八大将軍達も含めた魔王軍の総意である!!」


魔軍師「繰り返す!! 魔王軍参謀総長、魔軍師の名にて通達する!! 我等は勇者達に全面降伏するっ!!」

魔軍師「どうか寛大な処置を願う!! 我等はこれ以上、侵略する気も抵抗する気もない!!」



勇者「……降伏」

剣聖「どうする、勇者? 魔王軍が動いていない今、全面降伏は信用していいと思うが……」

聖女「うん……。嘘はついてない……。わたしが保証するよ」

女闘神「聖女が言うなら本当だな……。後はあたしらがどうするかだけど……」

女大富豪『勇者、私は受けていいと思う。殲滅戦なんて、勇者のやる事じゃないだろうし』


勇者「そうだね……。俺達まで魔王の様な振る舞いをするのはやっぱり間違っていると思う」

勇者「降伏を受けよう。大人しく軍を退いて魔界に帰ってくれるのであれば、こちらもこれ以上戦わない。魔王の遺骸も引き渡すよ」

勇者「みんなもそれでいいかな?」


剣聖「ああ、いいぞ」

聖女「うん!」

女闘神「いいよ! 勇者に任せた!」

真魔王「じゃあ、竜達にもそれを伝えてこようか。聖女、ついてきてくれる?」

聖女「うん、わかった」

女大富豪『これで、魔王軍との事は決着だね!』


魔軍師「かたじけない……。勇者達の寛容な心に感謝する」

【古書、『勇者伝記』より一部抜粋】


魔王と勇者との戦いは熾烈を極めた。

未知なる魔法の応酬が繰り広げられ、瞬きも出来ない程の斬撃が飛び交う。

既に仲間達は地に伏せ、息も絶え絶えの様子。その仲間達を守る為に勇者は一歩も退かじと奮戦す。

数万体もいた魔物達も今や残すは片手の指で足りる程度。全て勇者が葬るものなり。

この時、勇者の持つ伝説の盾は既に砕け散り。

伝説の兜も魔王の強大な魔法により跡形もなく壊れたり。

残すは鎧と剣の二つだけ。その二つも今やひびが入り、風前の灯火。

かようなまでに勇者は死闘を繰り広げ、魔王もこの強さと勢いを止められず、既に手酷い傷を負うものなり。

勇者もまた、これまでに負った手傷は幾百か。血を失い目の前が霞む。しかし、それでもその両の目には溶岩の様な熱い闘志が宿っていた。

諦めぬ者、勇者。どの様な逆境に遇おうとも、どの様な試練が与えられようとも。

この者は決して揺るがぬ。それこそが正に伝説の勇者たる証し。


その目を見て、魔王が気圧される。己の危機を感じ、魔王は最後の賭けに出た。

魔力全てを込めた一撃を食らわそうと詠唱を始める。

これを受け、勇者もまた、最後の賭けに出る。

人々に託された想い、願い、期待。その全てを背負いて剣を構え、魔王に向け渾身の一撃を食らわそうと走り出す。

魔王の最強の魔法が放たれた。

勇者はその一撃を食らいながらも、魔王に向けて剣を振る。


決着が着いた。


伝説の鎧は最後の役目を果たして砕け散り、また伝説の剣も根本から折れたり。

しかして、地上に立っていたのは勇者。

勝者は勇者。偉大なる勇者。女神様より神託を受けし、世界を救った勇者。


かの者こそ、世界で最も祝福を受けし者。最強無比の伝説の勇者なり……。

ここまで
埋まりそうになったら、次スレ立てる

※この伝記はフィクションです。(ry

魔王が完全にシシオの死に方でわろた

>というか、最悪、ノーダメージって可能性もあるからね……
毎回笑うけど今回はもうこの辺で吹いちまった

トドメのくだりがお通夜ムードじゃないか…

非情なる世界あり

勇者パーティーはみんなある意味不憫なことになったな

そもそももう勝ってたからなあ

勇者は仲間との力の差を嘆き
仲間たちは勇者との力の差(勘違い)を嘆き
すべて女神のせいだ

さすが勇者様だな

女神よりも罪が重いはずの魔老師はなんか憎めない
女神は許せない

勇者は救われたな

魔老師「馬鹿弟子を止めるために子どもたちを鍛える」
魔老師「勇者?もう村にはおらんかったから知らんのう」

女神「仲間たちの喧嘩で世界が滅びないよう勇者を選別します」
女神「勇者?どんなに弱くても伝説の勇者に仕立て上げます」

魔老師は純粋な善意で仲間を鍛え上げて
女神は世界のために勇者の心を犠牲にしたからな
その差だろ

いよいよ最後か(白目)

世界のためなら安いもんだ


ていうかもう次立てて埋めた方がいいと思う

トリップつけてないから乱立されたら判断迷う
日変わる前にスレ立てよろ

フィクション過ぎるwwww

そろそろ立てとく
一応酉付けとくか、ちょい待ってて

勇者「仲間TUEEEEEEEEEEEEEE!!」2
勇者「仲間TUEEEEEEEEEEEEEE!!」2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459487077/)

次スレ

魔翌力約1兆×4の仲間を使って164兆ダメージって、なにげに相当優秀な魔法だな

うめ

ぼし

おい

だき

ぅめ

>>1000ならみんな弱体化

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