母「でかけるの?」勇者「あぁ、ちょっと世界を救いに」(164)

母「また?」

勇者「ま、またってなんだよ」

母「去年いったばかりじゃない」

勇者「しゃあねえじゃん、魔王すぐ生き返るし・・・」

母「遅くなるの?」

勇者「夕飯までには帰るよ」

母「車にきをつけてね」

勇者「わかってるよ、いってきます」

プルルルル

勇者「もしもし」

王様「勇者か、ワシだよ」

勇者「おはようございます王様」

王様「いきなりですまんが、魔王が復活したぞ」

勇者「はい、今から倒しにいこうかと」

王様「なんと!流石だ勇者」

勇者(朝に魔王復活速報メールがきたしな・・・)

王様「そうかそうか、そんじゃよろしく」

ブッ

勇者「・・・最初は土下座してきたくせにあの豚」

勇者「一人はきついな」

勇者「とりあえず魔法使いにメールするか」

勇者「『今日暇?魔王討伐にいかね?』っと、送信」

勇者「・・・コンビニで立ち読みでもすっかな」

ブブブ

勇者「あ、もう返信きた」

勇者「暇人だなあいつも」

30分後

勇者「おう、やっときたか」

魔法使い「おまた・・・」

勇者・魔法使い「「なめてんのかお前!!!」」

勇者「魔王討伐だぞ!なんだそのバッチリメイク!ハイヒールはいてんじゃねえ!」

魔法使い「なんでデートなのにジャージなのよ!寝癖ついてるし!」

勇者「デート?」

魔法使い「魔王討伐?」

勇者「メールちゃんと読めよ・・・」

魔法使い「なによ、こんな時しかメールしてくれないんだから・・・」ブツブツ

勇者「なんかいったか?」

魔法使い「なーにーもー!」

魔法使い「てか、ジャージのあんたに格好云々言われたくないわ」

魔法使い「あれ、私しか呼んでないの?」

勇者「さっき戦士にもメールしたんだが、まだ返信こなくてな」

魔法使い「世界の一大事なのに」

勇者「・・・そうだな」

ブブブ

勇者「あ、きたな」

戦士『わり、これからバイトなんだ』

勇者「世界平和とバイトを天秤にかけやがった」

勇者「安くなったもんだな、世界」

勇者「8000円ってとこか」

魔法使い「?」

勇者「僧侶は携帯もってねえし」

勇者「格闘家はレストラン始めたから絶対こねえし」

勇者「踊り子はブレイクダンスに挑戦して足折ったらしいし」

勇者「遊び人は会うたびに金せびってくるからうざいし」

魔法使い「はぁ・・・」

勇者「ま、お前がいれば十分か」

魔法使い「///」

勇者「あと近所のガキもくるからよろしくな?」

魔法使い「あ゛?」

勇者「な、なんだよ・・・社会見学ってやつだよ」

子供「おまたせ!」

魔法使い「あらぁ~、待ってないわよ?」

子供「え?」

勇者「変なこというな!」

魔法使い「だってー」

勇者「それよりなんだその格好、戦争にでも行くつもりか?」

子供「え?魔王討伐にいくんでしょ?」

勇者「なんで魔王討伐に剣がいるんだよ」

子供「え?」

勇者「鎧もいらん、脱げ」

子供「え?」

勇者「それと、その荷物はなんだ」

子供「これから大冒険でしょ?着替えに食料に、その他日用雑貨・・・」

勇者「日帰りだ馬鹿野郎、おいてけ」

子供「なにがなんだか」

魔法使い「この子、きっと学校で歴史ばっかり学んでいるから」

勇者「あぁ、実態を知らないのか」

子供「・・・?」

勇者「良い社会見学になりそうだ」

子供「勇者様と魔法使いはこれから魔王討伐にいくんだよね?」

魔法使い「わ、私だけ呼び捨て!」

勇者「あぁ、そうだよ」

子供「世界を救いにいくんだよね?」

勇者「うん」

子供「なぜジャージなの?なぜ手ぶらなの?」

子供「なぜミニスカゆるふわカールハイヒールなの?」

子供「そのマツゲは魔王に捕らわれた時に隙をついて目玉を潰すための武器?」

魔法使い「あんたどういう教育受けてんのよ」

勇者「疑問に思うかもしれんが、ついてくればわかるさ」

勇者「とりあえず飯でも食うか」

魔法使い「賛成!」

子供「なにいってるの!早くしないと魔王が!世界が!」

勇者「お腹空いてちゃ力出ないし」

勇者「それに」

子供「それに?」

勇者「実は昨日からめっちゃ餃子食いたい」

子供「・・・・」

魔法使い「これがあんたの崇拝してた勇者様よ?」

魔法使い「かっこいいでしょ♪」

子供「う゛ぇ!?」

勇者「あ~、美味かったな」

子供「ご飯代ありがとう」

勇者「あぁ、気にするな」

勇者「にしても最近はあれだな、勇者ご一行割引がきく店減ったな」

魔法使い「最初は割引どころか何しても無料だったのにね」

子供「・・・なぜなの?」

勇者「ん?」

子供「勇者様は世界を救ったんだよね?」

子供「それなのに、みんなおかしいよ」

子供「はっきりいって、勇者様を敬っているように見えないし」

勇者「好奇心旺盛なボウヤだな」

子供「・・・」

勇者「ひとつだけいっておこうか」

勇者「俺は過去に23回世界を救っている」

子供「え?」

子供(23回・・・?)

魔法使い「この子お金もってるかな?」

勇者「あぁ、そんくらい俺が出すからいいよ」

子供「え、ご飯代だしてもらったばかりだし!」

子供「旅費くらい自分で出すよ!」

勇者「いいよ、電車代くらい」

子供「え?」

勇者「往復で1000円くらいだし」

子供「馬車じゃないの?船じゃないの?」

魔法使い「ゲームのやりすぎよ」

勇者「まずは名古屋方面だっけ」

魔法使い「違うわよ、いい加減覚えなさいよ」

子供「地下鉄・・・」

子供「電車代、ありがとう」

勇者「ちゃんとお礼いえて偉いぞ!」

子供「勇者様は自分の分、自分で払ってるの?」

勇者「いや、定期」

子供「定期!?」

魔法使い「王国から発行されてるのよ」

勇者「最初は顔パスだったけどな」

勇者「勇者に成り済まして無理やり通ろうとする馬鹿が増えて」

勇者「職員からクレームがきたんだよ」

魔法使い「今時って感じよね」

勇者「無精ひげ生やして通ろうとしたら警察呼ばれたギガントワロス」

ガタンゴトン ガタンゴトン

勇者「駅から30分くらい歩くから、寝てていいぞ」

子供「緊張して眠れないよ」

勇者「俺にもこんな時代があったな」

魔法使い「ふふ、懐かしいわね」

勇者「迷いの森でお前がいなくなった時は流石に焦ったわ」

子供「魔法使いに何があったの!」

魔法使い「ちょ、その話はやめなさいよ!」

勇者「こいつ、野ションして迷子になってやがんの」

魔法使い「あnjek@agjrpoh@trnsk」

\電車内ではお静かに/

勇者「怒られたぞ、落ち着け」

子供「野ションってなぁに?」

勇者「聖人君子かお前」

\終点、魔王城まえ~、お出口は左側で~す/

勇者「着くぞ、降りる用意」

子供「僕たち以外誰も乗っていない・・・」ゴクリ

勇者「こんな寂れたとこ誰もこねえよ」

魔法使い「駅が完成した当初は観光客でいっぱいだったけどね」

子供「うわ、凄い森・・・」

勇者「ここが迷いの森だ」

魔法使い「別名『死の森』」

魔法使い「魔王討伐に向かった猛者達が次々に息絶えた場所」

子供「そんな!めちゃめちゃ危険じゃん!」

勇者「まぁな」

子供「その余裕、流石勇者様・・・」

勇者「いや、今は道が整備されてるから」

魔法使い「それでも怖ければ直通の地下道もあるしね」

子供「え?」

勇者「リスとか住んでるし」

子供「なにそれかわいい」

魔法使い「3mあるけどね」

子供「僕地下道いきたいです」

子供「地下道・・・」

勇者「まぁまぁ、天気がいいんだしさ」

子供「モンスターはいないの?」

勇者「わんさかいるが、なんか電波出してこの道には近づかないようにしてるらしい」

魔法使い「まぁ、それが通じるのはレベルの低いモンスターだけだけどね」

子供「じゃあレベルの高いモンスターは」

勇者「あんな感じで、普通に出てくる」

ズン ズン ズン

子供「え?」

子供「ほわああああああああああああああああああああ」

魔法使い「あら、ドラゴンじゃない」

子供「それって戦車3台がかりでも倒せないあれじゃないんですかああああああああ」

勇者「変に詳しいなお前」

子供「モンスター図鑑見るの好きなんですぅぅわああああああああああああああ」

魔法使い「冷静に慌ててるし」

ドラゴン「グルル・・・」

子供「こっち気づいたうわああああああああああああ」

勇者「うるせえなこいつ・・・」

子供「でもかっこいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

ドラゴン「・・・」

ズン ズン ズン

子供「あれ、いっちゃった」

勇者「俺たちもいくぞ」

魔法使い「レベルの高いモンスターはね、それだけ経験と知恵があるの」

魔法使い「後は、いわなくてもわかるわよね?」

子供「凄い!腐っても勇者なんですね!」

勇者「あれ?いつ俺腐ったの?」

魔法使い「さぁ」

魔法使い「それより足が痛いわ」

勇者「ハイヒールなんて履くからだよ」

勇者「ちなみにドラゴンよりリスの方が強い」

子供「え?」

勇者「高速でカリカリしてくる」

子供「結構遠い・・・」

勇者「魔王の城が人里近くにあったらおかしいだろ」

子供「専用の駅作っておいてそれはないよぉ」

魔法使い「文句が多いとおいてくわよ」

子供「ごめんなさい」

勇者「喧嘩するなって・・・ほら、見えてきた」

子供「うわ、なにあの物々しい雰囲気の城は」

子供「コウモリとんでるし」

魔法使い「夢壊して悪いけど、あれ全部鳩よ?」

子供「え?」

子供「あぁ、よく見ると糞だらけ・・・」

勇者「物々しいよな」

魔法使い「物々しいってどういう意味だっけ」

勇者「さぁ、俺たち中卒だし」

子供「え?」

勇者「着いたな」

子供「うわ、でっかい門」

魔法使い「何度見ても凄いわね、この門」

子供「どうするの!鍵もってるの!」

勇者「え?」

子供「あ、パンチとか魔法でぶっ壊すのか!すごい!!!」

勇者「普通にインターフォン押すけど・・・」

子供「え?」

魔法使い「物騒ねあんた・・・」

子供「なんで僕が異常みたいになってるの?」

ピンポーン ピンポーン

『はーい』

勇者「勇者ですけど」

『あ、今あけまーす』

ゴゴゴゴゴ

子供「自動開閉・・・」

魔法使い「いい加減夢捨てる覚悟できた?」

子供「まだ・・・きっと・・・」

勇者「さっさと入るぞ」

子供「うわぁ、一面お花畑だし・・・」

ガチャ

魔女王「いらっしゃい」

勇者「ども」

魔王子「ママー、だれー?」

魔女王「勇者さんと、魔法使いさんよ」

魔王子「あー!こんちわー!」

魔法使い「こんにちわ」

子供「・・・・」

勇者「今日はもう一人連れがいるんです」

魔女王「あら、かわいい子ね」

魔女王「今お茶出しますから、あがって」

勇者「いつもすみません」

子供「夢でも見てるの?」

なんという会社員勇者SS

魔法使い「おいしい紅茶♪」

魔女王「うふふ♪」

子供(敵陣の真っ只中でおもてなしを受けてる・・・)

魔王子「チョコレートケーキきらいなのー?」

子供「いや、好きだけど・・・」

魔王子「それより向こうで遊ぼうよー!」

子供「え、でも」

勇者「遊んでこいよ」

魔王子「いくよー!」グイッ

子供「ちょっと、まってよ」

魔法使い「いいわね、子供は無邪気で」

勇者「あぁ・・・」

魔女王「いつもすみません」

勇者「こちらこそ・・・」

ガチャっ

魔王「戻ったぞ」

魔女王「おかえりなさい」

勇者「よう」

魔法使い「こんにちわ」

魔王「勇者に魔法使いではないか!久しいのう」

勇者「三ヶ月ぶりくらいじゃん」

魔王「がはは!最近どうだ?」

勇者「半分ニートみたいな生活だからな、変わりねえよ」

魔法使い「まったく、もう」

まさか博打で勝負とか言わないよね…!?

勇者「どこいってたんだ?」

魔王「ちょっとモンスター達の様子を見にのう」

魔女王「どうでした?」

魔王「我輩のいう事をきいて大人しくしているようじゃ」

勇者「あぁ、それで・・・」

魔王「どうかしたか?」

勇者「いいや、なんでも」

魔王「今日は二人か、ほかのメンバーの顔も見たかったが」

魔法使い「みんな忙しいみたい」

魔王「これも時代の流れか・・・さびしいのう」

勇者「・・・・」

勇者「あ、これ手土産」

魔王「おう、すまんな」

魔法使い「あんたいつの間に」

勇者「手ぶらじゃまずいしな、駅で」

魔王「なんじゃ、魔王クッキーではないか」

勇者「売店でやたらプッシュされてたからな」

魔王「糞まずいんじゃよ、これ」

支援

魔王「城外を散歩していたら、久しぶりに昔の事を思い出したわい」

勇者「昔?」

魔王「ぬしらが初めてワシの目の前に現れた日じゃよ」

魔法使い「懐かしいわね」

勇者「城に着くまでに5回も迷いの森にチャレンジしたんだぜ?」

魔王「がはは!簡単に城に来られては敵わんからのう」

魔女王「確か、城に着いてから格闘家さんが城門を蹴破ったのよねぇ」

魔王「せっかく悪魔の洞窟に鍵を隠したのに・・・」

勇者「お前そういう小細工好きだったよな」

魔王「やる事なかったしのう」

魔女王「おかげで子供が出来ちゃったわよ」

魔法使い「やだもう///」

勇者「お前が恥ずかしがるのかよ」

魔王「では…」

勇者「そうだな。そろそろ戦うか。」

子供「! つ、ついに戦うの!?もう、なごみまくっててそんな展開ないと思ってた!」

魔法使い「よく見てなさい。これが、いまの魔王との戦い方よ。」

子供「え…」

子供「スマフォ出した!?」

勇者「Twitterのフォロワー数で勝負だ!」

魔王「わしは、5358960じゃ!!」

なんと

魔王「最初のバトルは燃えたわい」

勇者「あぁ、命の駆け引きだったな」

魔法使い「ほんと、死ぬかと思ったわよ」

勇者「実際遊び人は死んだしな」

魔王「遊び人・・・あやつがヨーヨーで攻撃してきた時は目を疑ったわい」

勇者「いや、あれ意外といてえんだよ」

魔法使い「なんであんたが攻撃くらってるのよ」

勇者「『伏せろ』とかいって脛を攻撃された」

魔王「それで後半足ひきずっておったのか」

勇者「段々腹立ってきた」

勇者「ついイラッときてうっかり遊び人をやっちまったぜ☆」

魔王「2回目のバトルも燃えたのう」

勇者「あぁ」

魔王「3回目も燃えたのう」

魔法使い「そうね」

魔王「4回目でなにか違和感を覚えたのう」

勇者「あぁ」

魔王「5回目からぬしらのパーティが減っていったのう」

魔法使い「それでも勝ったけどね」

魔王「10回を超えてから我輩の攻撃は当たらなくなったのう」

勇者「そうだったな」

魔王「休戦してレベル確認したらぬしら150を超えておったのう」

魔王「我輩は90なのに」

勇者「もうすぐ200だ」

魔王「卑怯者」

魔王(その頃じゃのう・・・戦う事を放棄したのは)

魔王「我輩が城にいる間にぬしらは鍛えとるんじゃろ?」

勇者「そんな感じだ」

魔王「卑怯じゃ、卑怯じゃ」

魔法使い「魔王も鍛えればいいじゃない」

魔王「相手がおらん」

魔王「ぬしら以外の人間は弱すぎる、部下も弱すぎる」

魔王「ぬしらは強すぎる、戦うと死ぬ」

勇者「奥さんがいるじゃん(笑)」

魔王「妻は我輩より強い」

勇者「ちょ」

魔法使い(相手を倒さないとレベル上がらないしね・・・)

魔女王「あなた、なにか余計な事いわなかった?」

魔王「な、なんでもござらんよ」

勇者「喋り方変だぞ」

魔法使い(強いんじゃなくて、尻にひかれてるだけでしょ)

勇者「そうそう、お前の速報が開発されたぞ」

魔王「なんの話じゃ」

勇者「お前が復活するとメールがくるの」

魔女王「まぁ!」

魔法使い「いつもは魔道師の駅までの定期的な巡回で魔王の復活が判明するけど」

魔法使い「魔王の気配を察知する機械が作られたの」

勇者「これからは復活した瞬間に察知できるらしい」

魔王「そうなのか」

魔王「早すぎるから、おかしいと思ったんじゃ」

魔女王「家族で過ごす時間もグッと減ってしまうのね」

勇者「・・・」

魔王の目的がいまだ不明瞭な件


ペチャクチャ~~~~・・・・


魔王「む、ぬしらそろそろ帰る時間ではないか?」

勇者「もうそんな時間か」

魔法使い「早いわね」

\キャハハハ/

魔王「王子の笑い声がするわい」

魔女王「本当ね」

勇者「あいつを連れてきてよかったかも」

魔王「おかげで自然にお別れができそうじゃわい」

魔女王「毎回泣きついて、大変で・・・」

勇者「・・・・」

魔法使い「・・・・」

魔王「表に出ようか」

勇者「・・・魔女王さん、預けていた鎧と剣を出していただけますか」

魔女王「はい、あなたの剣です」

魔女王「手入れしておきましたから、切れ味は落ちていないはずです」

勇者「・・・・」スチャ

魔王「さぁ、やれぃ」

勇者「同じように命を奪うのなら、せめて、昔のように戦いたい」

魔王「わかっておるじゃろ、もうレベルが違いすぎるんじゃ」

魔法使い「私がやろうか?」

勇者「・・・いや、大丈夫だ」

魔王「いつもすまんのう」

勇者「次はいつ会える?」

魔王「何度いわせる、我輩にもそればかりはわからんのじゃ」

魔王「・・・世話をかけるが、家族をたのむ」

魔王「感謝するぞ、落ちぶれた魔王相手に今でも勇者として向きおうてくれる事」
魔王「そして、我輩との約束を守ってくれる事に」

勇者「またな、魔王」

ズバッ


自分ではもう相手にならないと悟った時

魔王は勇者にある頼みごとをした

「自分は大人しく殺されるから、家族を守ってくれ」

プライドの高い魔王が初めて人間に頭を下げた

自分の望みを命令以外の方法で伝えた瞬間だった

最初は罠かと思った

無視をして魔王を殺した

魔女王と魔王子は魔法使いの必死の説得により殺さなかった

魔王は復活をする毎に同じ頼みごとをした

魔女王と魔王子はその度にやつれていった

勇者は、勇者である前に人間だった

16回目の復活の時、彼らの間に契約が交わされた

勇者にはひとつの得もない

だが、血の通った契約だった

勇者により迷いの森への一切の進入が禁じられたのは、その翌日だった

魔女王「お疲れ様でした」

勇者「・・・なんといったらいいか」

魔女王「大丈夫です」

勇者「俺はいつもいつも、あんたたちから家族を奪って」

魔女王「大丈夫ですから」

勇者「唯の悪人なのに、勇者ヅラして、友達ヅラして」

魔女王「わかっていますから、落ち着いて」

勇者「・・・・」

勇者「いつもの様に、国王からお金が入ったら食料をお持ちします」

魔女王「いつもありがとう」

勇者「俺には、そのくらいしか出来ませんから・・・」

魔法使い「勇者・・・・」

魔女王「胸をはって、あなたは正しい行いをしているのですから」

勇者「あなたはいいんですか?夫が目の前で何度も何度も殺されている現状を」

魔女王「いいわけないでしょう」

勇者「・・・・」

魔女王「でも仕方がないんです、夫が生きているだけでご迷惑をかける事に」

魔女王「それに、あなたの震える手をみては何もいえませんよ」

魔女王「ほかに方法がないのでしょう」

勇者「でも、いつ魔王が復活しなくなるのかわからない」

魔女王「大丈夫、あの人が私達を捨てていなくなるわけありませんから」

魔女王「すぐに帰ってきてくれます」

魔女王「それに、あの人毎回帰り方を変えるから面白いのよ?」

魔女王「玄関い大きいダンボール用意してその中に隠れたり」

魔女王「何事もなかったかのようにリビングでコーヒー飲んでたり」

魔女王「ロッカーに隠れてて、知らずに鍵かけた事もあったわ」クスッ

勇者「・・・・」

魔女王「ごめんなさい」

魔女王「でも、本当に私達は大丈夫だから」

魔女王「きっといつの日か、王子が成長して全人類をムシケラのごとく殺す日がくるから」

魔法使い(色々と笑えない)

魔女王「もー、魔界ジョークじゃない」

勇者「・・・・」

魔女王「ごめんなさい」

まとめに載るな

勇者「剣、お返しします」

魔女王「・・・ありがとう、いつも夫を苦しませず倒してくれて」

勇者「いえ・・・そんな」

\テレレッテッテッテーン♪/

魔法使い「あ、レベルアップ」

勇者「とうとうレベルが200になっちまった」

勇者「あんたを一回倒しただけでレベルが上がるんだぜ?」

勇者「やっぱり強いよ、魔王さんよぉ・・・」

>>96
どちらの意味かわかんない
『載るなァ~』『載るな!!』

勇者「じゃぁいつもどおり、このまま帰ります」

魔女王「はい、あの子は」

魔法使い「門の前で待ってますから、伝えてくれませんか?」

魔女王「そうね、そうしましょう」

魔女王「ありがとうございました」ペコッ

勇者「・・・・」

魔法使い「・・・・」

魔女王「またあの人が復活したら、お会いしましょう」

魔女王「本当はもっと遊びにきてくれてもいいのだけれど」

勇者「それだと話の辻褄が合わないでしょう」

魔女王「・・・そうだったわね」

勇者「最後に、いいですか?」

魔女王「えぇ」

勇者「俺たちが憎いですか?」

魔女王「もちろんよ」

魔女王「四肢をズタズタひ引き裂いて、お花の養分にしたいくらい」

勇者「・・・・」

魔女王「でも、尊敬しているし感謝しているわ」

勇者「・・・・」

魔女王「次あった時、そんな敬語使ってたら許さないわよ?」

勇者「・・・人が良すぎるよ魔女王さん」

魔女王「よし!」ニカッ

勇者「魔女王さんも敬語だったじゃん」

魔女王「夫が切られる時ぐらい敬意を払わせて頂戴」

魔法使い(こんな時にもジェラシーを感じてしまう私・・・)

魔王子「お前絵うまいなー!」

子供「友達いなくて、いつも絵ばっかり描いてるから」

魔王子「王子も友達いないんだ!今日から友達だな!」

子供「・・・うん!」

魔女王「ボウヤ、そろそろ帰る時間よ?」

子供「あ、もう5時だ!」

魔王子「ちぇ、また来・・・パパは?」

魔女王「わかってるでしょ?」

魔女王「パパは旅に出たのよ、勇者さん達と」

魔王子「お別れできなかった・・・」

魔女王「すぐ帰ってくるわよ」

魔王子「いつ帰ってくるの?」

魔女王「・・・わからないわ」

魔王子「ふーん」

魔女王「泣かないのね、偉いわ」

魔王子「泣かないよ?友達の前では泣かないよ、だって王子は誇り高き魔王の子供だもん」

子供「・・・」

魔王子「はやく帰れよ!はやく!」

魔女王「こら!やめなさい」

魔王子「はやく帰って、また遊びにこいよ!絶対だぞ!」ダダダ・・・

魔女王「ごめんね、あの子ったら」

子供「いえ、大丈夫ですから」

子供「また遊びにきていいですか?」

魔女王「えぇ、いつでもいらっしゃい」ニコッ

あ、俺は透明でよろしく
あぼーんはダメよ

子供「・・・・」

勇者「おうきたか、帰るぞ」

子供「魔王さんを倒したの?」

勇者「あぁ、だから帰るんだ」

子供「魔王さんって悪い人なのかな?」

子供「魔王子は楽しいやつだし」

子供「魔女王さんは優しい人だし」

勇者「・・・さぁな」

勇者「ただ、昔人類を滅ぼそうとした事は事実だ」

勇者「それだけだ」

子供「・・・・勇者様は強いね」

勇者「あぁ、レベル200だからな」

子供「そうじゃな・・・まぁいいや」

勇者「ったく、連れて来るんじゃなかった」

魔法使い「よっぽどはしゃいだのね、疲れて寝ちゃうなんて」

子供「zzzz」

勇者「なんで俺がこいつをオンブしなきゃならんのだ」

魔法使い「私はハイヒール履いてて、足痛いし」

勇者「しらねえよ」

魔法使い「あ、リスだ」

勇者「あれのクッキー作ったほうが儲けれそうなのに」

魔法使い「あんたのお陰で観光客いないから関係ないでしょ」

勇者「それもそう、か」

勇者「しかし皮肉だよな」

勇者「魔王を倒すと報奨金がでて、そのお金であの家族は食べていける」

勇者「魔王は家族のために殺され、人類はその家族が生きるためのお金を出す」

勇者「俺は誰のために戦っているんだ?」

勇者「今は奇跡的にあの家族の正体はばれていないが」

勇者「もしばれたら、俺は誰の味方をすればいいんだ」

魔法使い「・・・そのために私が結界をはっているんじゃない」

勇者「その結界の力をいつ近代テクノロジーが上回るかもわからないんだぞ」

勇者「魔王の復活だって感知されるようになっちまった」

魔法使い「その時はあなたに着いていくわ」

勇者「魔法使い・・・」

魔法使い「それに、私の魔法はそんなにヤワじゃないわよ」

魔法使い「今にパワーアップして、復活を感知させない結界をはってみせる」

勇者「強力すぎると魔道師にばれる」

魔法使い「結界はってるのに気づかない能無しだし、大丈夫よ」

勇者「お前には感謝してるよ」

勇者「正直、こんなの俺だけでは背負いきれない」

勇者「勇者だ?笑わせるな、俺はただの人間だ」

勇者「仲間達は皆責任から逃れるように、現実を見ようともしなくなった」

勇者「責めるのがお門違いなのはわかってる、契約を交わしたのは俺だ」

勇者「それでも、愚痴りたくなる、辛すぎる」

勇者「本お前だけだよ、もう」

魔法使い「いいのよ、私は自分の好きなようにしているだけ」

勇者「・・・本当にありがとう」

魔法使い「どういたしまして」

勇者「ちょっと泣くから、むこうむいてて」

魔法使い「わかりましたよ、私の勇者様」

魔法使い「歌でもうたいましょうか?」

勇者「それはいらん」

子供「んん・・・ここは?」

勇者「お前の家の前だ、ぐっすり寝てたなこの野郎」

子供「・・・」スタッ

勇者「じゃあな」

子供「今日はありがとう!」

勇者「あぁ」

子供「僕は尊敬してるよ!勇者様のこと!」

勇者「あぁ・・・あぁ!?」

勇者「ってもういねえし」

勇者「俺は勇者なんかじゃねえ・・・」

勇者「・・・・」

勇者(もし俺が死んだら、お前があの家族を守ってくれ)

勇者「たのんだぞ、未来の勇者」ボソッ

プルルル ガチャッ

王様「勇者か」

勇者「王様、魔王を倒しました」

王様「良くやった、褒美をつかわすぞ」

ブツッ

勇者「・・・昔はパレードが開かれたのにな」

勇者「報告する相手が側近になるのも時間の問題かもしれん」

勇者「ただいまー」

母「おかえり、魔王討伐に成功したのね」

勇者「え、知ってるの?」

母「ニュースで見たわよ、10秒くらいだったけど」

勇者「あぁ」

母「人々が勇者の尊さを忘れようとも」

母「私にとってあんたは誇りだよ」

勇者「・・・・」

勇者「へ!ら、楽勝だったよ!」

勇者「らくしょー・・・だった・・・」

勇者(みんな、魔王が死ぬ事に慣れすぎている)

勇者(昔はその恐怖に支配され、純粋に平和を願っていたが)

勇者(今はただ惰性で殺してるだけじゃないか)

勇者(俺達が強くなりすぎたせいか?)

勇者(それとも、人々が冷酷になったのか?)

勇者(国民はなにも知らない、王様だって)

勇者(あの魔王が愛する心をもってる事を誰も知らない)

勇者(だが知った所でどうなる?何万人も虐殺した事実は変わらない)

勇者(だが、それは人類だって同じだろう)

勇者(自分の命を守るためとはいえ、モンスターを余りにも殺しすぎた)

勇者(結局、強いものが支配する、それだけのことなのか)

勇者(俺が王様になれば、少しは現状を変えることは出来るのだろうか)

勇者(・・・考えても無駄だ、寝よう)

翌朝

勇者「・・・ふぁー、ねむ」

勇者「もうちょっと寝るか」

ブブブ

勇者「なんだ?また魔法使いからの誘いか?」

勇者「悪いが今日はそんな気分じゃない」パカッ




『速報:魔王が復活しました』




勇者「はえーよ馬鹿!」


終わり

糞疲れた・・・
支援感謝です

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