【IF】もしもカネキの心が折れていたら【東京喰種SS】 (98)

キャラ崩壊、設定改変がありますが初心者ということで暖かく見守ってください
reの内容はないです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1452687414

ヒデ「……なあカネキ。お前いつまでこんな生活するんだ?」

カネキ「はぁ?」

ヒデ「だから、いつまでこんなふざけた生活するかって話だよ」

カネキ「何でお前が俺の生活にいちいち口出すんだよ。俺がどうしようが勝手だろうが」

ヒデ「あのなぁ……。俺はお前のこと心配してるんだぞ? 確かにお前がケンカ強いのは知ってるけどよ」

カネキ「だったらいいじゃねえか」

ヒデ「お前ニュース見てるか?」

カネキ「テレビなんて見ねえよ」

ヒデ「最近、このあたりでグールが暴れてるらしいんだよ。路地裏ほっつき歩いていると襲われるかもしれねえんだぞ?」

カネキ「はぁ? グール? なんだそりゃ」

ヒデ「おい……いや、もういいわ。お前がこんなこと言って更生するなら、苦労なんてしないだろうし」

カネキ「意味わかんねえこと言ってるとマジでぶっ殺すからな」ズズッ

ヒデ「……と言う割にはお前、読書とか喫茶店とか静かなの好きだよな」

カネキ「うまいもんはうまい。面白いもんは面白い。それの何が悪いんだよ」

ヒデ「否定する気はねえよ」

ヒデ(遊びでこいつに国語のセンターやらせてみたら満点とるしな……)

カネキ「うめぇ……」ズズッ

ヒデ「おっと……俺講義の時間だからそろそろ行かねえと」

カネキ「そうかよ。じゃあ俺もいくわ」ゴクゴク

カネキ「ごちそーさん」ゴトッ

ヒデ「えーと財布財布……」ゴソゴソ

カネキ「いいよ。俺がやっとく」

ヒデ「お、サンキュー! 今度埋め合わせするわ!」

カネキ「ほい。釣りはいらねーわ」つ一万円

トーカ「え? で、でも……」

カネキ「細かいのねーし。面倒だからいーわ」

カランカラン、バタン

トーカ「あ、ありがとうございました……」

トーカ(なんだアイツ。白髪にピアスって……。ホストかよ)

カネキ(あの店……『あんていく』か。また行くかな)

リゼ「うふふ……ああ、おいしい」グチャグチャ

カネキ「ん……? なんだありゃ」

リゼ「あらぁ?」

カネキ「……おい、口の周りにケチャップついてんぞ」

リゼ「うふふ、ケチャップに見える?」

カネキ「んじゃトマトソースか」

リゼ「あら、ジョークがお上手ね。それにかなりのイケメンじゃない♪」

カネキ「……ああ、わかった。お前、グールとかいうやつだろ」

リゼ「正解、よ!」ビュン!

カネキ「高っ」

リゼ(今日はラッキーだわ。二人も味わえるなん――――)

カネキ「どらぁ!」ブン!

リゼ「てぇ⁉」バコォ!

リゼ「痛いわね……」

カネキ「んだよ。大したことねえな。ヒデのやつ、こんなのにビビってたのかよ」

リゼ「ふふ、油断したわ。今度こそ――――」

カネキ「ごちゃごちゃうっせえぞ!」ズドォン!

リゼ「はぁ⁉」フワッ

カネキ「軽すぎだろ……。蹴りで吹っ飛ぶとか人間と同じじゃん。あとその眼ってコンタクト?」

リゼ「くっ……とことんバカにしてくれるわね」

カネキ「弱いのが悪いんだよ。こけおどしも大概にしろよ」

リゼ「いいわ。アイツみたいなやり方は気に入らないけど……」ズズ・・・

カネキ「おー今度はびっくりショーか?」

リゼ「あなたは嬲りながらゆっくりと食べてあげるわ!」グォオ!

カネキ「やれるもんならやってみろよ、雑魚が」

――――十分後

リゼ「ぜぇ……ぜぇ……」ガクッ

カネキ「なんだよ。もう終わりか?」

リゼ(なんで……なんで攻撃が当たらないのよ⁉)

カネキ「あー、攻撃なんて当たるわけないだろ」

リゼ「……どういう意味かしら」

カネキ「俺を見下して遊んでるヤツの攻撃が当たるわけない。……お前、ケンカしたことねえだろ?」

リゼ「……」

カネキ「まあいいや。なんか飽きた」スタスタ

リゼ「……るな」

カネキ「あ?」

リゼ「舐めるなぁぁぁぁああああああああ!」ガバァ!

カネキ「チッ……面倒くせえ――――⁉」

鉄骨軍団「」ヒューン

リゼ「⁉ ぎゃああああああああ!!」ズドーン!

カネキ「がぁぁぁぁああああ!!」ゴロゴロ

リゼ「あ……が……」ピクピク

カネキ「鉄骨直撃で生きてるとか……化け物は、本当だったか」フラフラ

カネキ(あーやべ……よけるときに骨やったな。もう動けねえわ)ガクッ

カネキ「本当……つまんねえ人生だった」ドサッ

リゼ「な、んで……アンタが……」ガクッ



「急げ、移植の準備をするんだ!」

「し、しかし拒否反応の可能性が……」

「検査はいらん! 今すぐ行わなければ間に合わん!」

「……わかりました!」


カネキ(なんだ……俺、生きてるのか? 声が、聞こえる――――)

リゼ『私の力を使いなさい。あなたと私が合わされば無敵よ?』

カネキ(うっせえな……もう、好きにしろ。今、眠い、んだ……)スゥー・・・

リゼ『契約成立、ね。よろしく、カネキ君♥』

カネキ「……」

田所「カネキさーん。……ああ、またこんなに残して。これじゃあケガの治りが遅れちゃいますよ?」

カネキ「……おい。これ何で作ってるんだよ。腐ってるんじゃねえのか?」

田所「そんなこと言わないで下さいよ。ちゃんとした方法で作ってますよ」

カネキ「……あっそ。じゃあもういらねーわ」

田所「はぁ……」


嘉納「カネキ君、調子はどうかね」スタスタ

カネキ「さあな。少なくともてめえらか俺のどっちかが味覚音痴ってことははっきりしてるぞ」

嘉納「ふむ……事故の後遺症で味覚障害が出ているのかもしれない。一応、当面の薬は出しておこう」

カネキ「……」

嘉納「それと、カネキ君。君が望むなら今日にでも退院できるが……もう少し様子を見るかね」

カネキ「いらねえ。こんな場所さっさとおさらばしたかったしな」

嘉納「……そうかい。では早速準備しよう」ニコッ

カネキ「…………ああ」

カネキ(……あの医者、何となく気に入らねえ)スタスタ

ヒデ「あ、おいカネキ!」タタタ

カネキ「ああ? お前なんでこんなとこいんの?」

ヒデ「いや、お見舞いに来てやったんだよ」

カネキ「余計なお世話だ、ボケ」

ヒデ「まぁまぁ。そういわずに、な? ほら、お前の好きな牛丼大盛り三杯買ってきてやったんだからよ」

カネキ「…………ああ、サンキューな」

ヒデ「? なんかあったのか?」

カネキ「何でだよ」

ヒデ「いや、いつもならもっと喜ぶからさ」

カネキ「気分じゃねえだけだ。家帰ってから食うわ」

ヒデ「そうか。じゃあ俺は大学戻るわ。じゃあな!」タタ

カネキ「……クンクン」

カネキ「臭っ!」

牛丼三人衆「」

カネキ「……マジでどうするかな、これ。腹減ってるのに食いたくねえし」

カネキ「……顔でも洗うか」ヒョコヒョコ

鏡「」ヒダリメギョロギョロ

カネキ「……なんだこりゃ」ペタ

カネキ「気持ち悪いなぁ……いや、待てよ。確かあの女も似たような感じだったな。両目だったけど」

カネキ「……試してみるか」



――――路地裏

カネキ「はぁ……はぁ……!」タタタッ

カネキ「すげえ! すげえぞ! マジで体がグールになってやがる! これなら俺は……」ギョロ

ニシキ「あ? なんだお前」

カネキ「……あん?」

ニシキ「ったく、お前もかよ。ここは俺の喰い場だって言ってんだろ」ズズ・・・

カネキ「……」ニヤッ

カネキ「喰い場だかなんだか知らないけどちょうどいいわ。……お前で力試しだ」クビコキッ

ニシキ「お前……なんで片目だけ赫眼なんだよ」

カネキ「まあ、いいじゃねえかそんなこと。こっちにも事情があるんだよ」

ニシキ「そうか……よっ!」ダン!

カネキ「……遅」ドゴォ!

ニシキ「がはっ……」ドサッ

カネキ「あれ、腹パン一発でダメになんの? あの女はもうちょい頑張ってたけど。……ああ、こっちのパワーが上がってんのか」プラプラ

ニシキ「ぐ……っ、くそ……!」クルッ

カネキ「何逃げてんだよ!」ボゴォ

ニシキ「ぐはぁ! あ……き、み……」ガクッ

カネキ「は? ……マジで、死んだ?」

カネキ「……弱っ。グールつってもこんなもんか。なーんか拍子抜けだな」コキッ

カネキ「……腹減った。別の場所で人間でも襲うか」


「待ちな」

カネキ「……あ?」

トーカ「それ、アンタがやったの?」

カネキ「お前……あの喫茶店の店員じゃねえか。こんな場所にいるとあぶねえぞ」

トーカ「心配しなくとも、私もグールだから。それよりも質問に答えろ」ギョロ

カネキ「そう怒るなって。まあ俺がやったんだけどね。あ、もしかしてコイツの仲間だった?」

トーカ「まさか。むしろ敵対してるくらいだよ。そいつ、私たちが取り決めたルールに逆らってたし」

カネキ「ルール、ねえ。……喰い場とか言ってたあれのことか」

トーカ「……で、アンタはどうなの? 今ならこっちのルールに従うっていう選択肢もあるわけだけど」

カネキ「あー……」

トーカ「……さっさと答えろ。私は気が短いんだよ」バキッ

カネキ「じゃあ一つ質問」

トーカ「……何?」

カネキ「お前、コイツより強い?」ゲシ

ニシキ「」ビクッ

トーカ「試してみる?」

カネキ「ああ、頼むわ」ニィッ

トーカ「だったら、遠慮なく」ズォオ・・・

カネキ(なんだあれ……羽か?)

トーカ「おらぁ!」シュバ!

カネキ「おお?」バシィ!

カネキ「やるじゃねえか。お前、速いな」ギリギリ

トーカ「……っ(コイツ、なんて力だ。びくともしない……)」ギリギリ

カネキ「けど、それだけだな!」クル、ズドォ!

トーカ「くっ……」ヨロヨロ

カネキ「ほら、早く本気出せよ。じゃないとそこに転がってるヤツみたいになるぞ?」

トーカ「……舐めんなぁ!」ズドドド!

カネキ「うおおおお⁉」グサグサグサグサ!

トーカ「はぁ……はぁ……クソ、どんだけ響くんだよ。アイツの蹴り」ガクッ

カネキ「いやぁ、驚いたわ」ムクッ

トーカ「⁉ そんな……」

カネキ「グールってそんなことできんだな。しかも種類いろいろ、と……。いやサンキューサンキュー。これで何となくわかってきた」

カネキ「あ、どうせだからもう一つ頼みあるんだけど」

トーカ「好き勝手いうな。お前の言うこと聞く義理なんざねえよ」

カネキ「まあそういうなって。お前がさっき言ってた元締めのとこに連れてけよ」

トーカ「はあ……? なんでまた急に」

カネキ「いや、俺グールのことよくわかんねえし。まあ死にたいってならそれでもいいけど」

トーカ「クソ……わかったよ」フラフラ

カネキ「おっけ。肩かすわ」ガシッ

トーカ「……蹴り飛ばしたヤツがよく言うよ」

カネキ「だから貸すんだろうが。ほら、どっちだ?」

トーカ「そっち」

――――あんていく

芳村「ふむ……では君がニシキ君を」

カネキ「そんなことどうでもいいだろうが」モグモグ

芳村「よくないよ。彼のような若者を失うのは悲しいことだ。……できることなら説得したかったのだが」

カネキ「あーはいはい。すいませんすいません」ガツガツ

トーカ「てめぇ……さっきから肉ばっか食ってるけどな。もう少し店長の話聞けよ!」

カネキ「いいだろうが。腹減ってんだよ」

トーカ「……その肉だってただで手に入るわけじゃねえんだぞ」

芳村「まあまあトーカちゃん。……それよりカネキ君。見ての通りここではグールに人間の肉を分けることもしている。ここの肉は自殺者のものがほとんどだ。比較的罪を少なくすることもかなう。君にはその対価としてここで働いてもらいたい。ニシキ君への謝罪も込めてね。……どうかな?」

カネキ「あー……」

トーカ「おい、何か言えよ」

カネキ「いや、俺そんなつもりで来たんじゃねえよ」

芳村「……どういう意味かな?」

カネキ「いや、ここら辺の元締めならそいつより強いヤツいると思ってさ。暇つぶしになるかと思ってきたんだよ。……爺さん、相当やれるだろ? 今すぐにでも戦いてえんだよ。力試しにな」

トーカ(コイツ……本物の屑だ)イラッ

芳村「ふむ……残念だが私は見ての通りしがない喫茶店の老店主だ。君のような若者と戦う力などないよ」

カネキ「……腰の重い爺だ。まあそれならいいや。帰る」ガタッ

芳村「待ちたまえ」

カネキ「なんだよ」

芳村「本当に我々に協力する気はないのかね」

カネキ「俺は群れるのが一番嫌いなんだよ」

ガチャ、バタン

芳村「……」

トーカ「て、店長……?」

芳村「いや、何でもない。ここは私がやっておくからトーカちゃんはもう部屋に戻りなさい」ニコッ

トーカ「は、はい」

――――二週間後

亜門「真戸さん、聞きましたか? 例の話」

真戸「ああ、もちろんさ。ここ最近、この二十区でグール、人間を問わない無差別事件が続いているそうじゃないか」

亜門「ええ。……大食いが息をひそめて数日。また活動を始めたということでしょうか」

真戸「いや、別のグールだ。資料を鑑みるに大食いには若く容姿の整った男を狙うという傾向があった。だが、今回は近くにいたから狙うという完全に通り魔的な犯行だ。同じとは思えない」

亜門「なるほど……」

真戸「だが亜門君。我々は予定通りフエグチを追う。その過程でその『通り魔』さんに出会ったら、その時はその時だ」

亜門「……はい!」

トーカ「店長!」

芳村「うん?」

トーカ「いいんですか? あの白髪ピアス……やりたい放題ですよ⁉」

芳村「確かに彼が暴れ始めてから白鳩が増員されたという情報もあるね」

トーカ「だったら……!」

芳村「トーカちゃん。確かにここで彼を敵と決めつけるのはたやすい。だが、グールの世界で彼のように暴れまわる者は少なくない。彼のような人物こそ改心させてこそ、共存の道が開かれるというものじゃないかい?」

トーカ「……それはそうかもしれませんが」

芳村「それにあまりに目に余るようなら私が直接話をつけるよ。……一対一でね」

トーカ「……わかりました。仕事に戻ります」

芳村「うん、そうしなさい」

トーカ「……はぁ」

カヤ「トーカちゃん。また例の彼のことを店長と話したの?」

トーカ「はい」

古間「芳村さんはああ見えていろいろ考えてるからね。僕たちが言わなくてもちゃんと対策は打ってるはずさ」

トーカ「……私もそうだとは思いますけど」

カヤ「何か不安なの?」

トーカ「……アイツの目」

カヤ「目?」

トーカ「今まで会ったどんなグールとも違ったんです。なんていうか……その、うまく説明はできないんですけど」

カヤ「……そう。もしかすると彼には他人には理解できない傷があるのかもね。それを理解すれば、分かり合えるのかも」

トーカ「……そう、ですかね」

古間「なーに、そんなに難しく考えることはないさ。いざとなればこの‘魔猿’と呼ばれた僕がいるんだからね」フフン

カヤ「はいはい。それはわかったから仕事に戻りましょうね」

古間「了解」

トーカ(……違う。アイツが抱えてるものはそんなものじゃない。……そんな、ありきたりなものじゃ……)ギュッ

今日はここまで。


もうアニメから一年か……

これ逆に心が折れてないパターンじゃね
折れてたからこそ記憶捏造してたんだし

>>25 確かにタイトルはミスチョイスでしたね。もしカネキがやさぐれていたら、とかのほうがよかったかも。一応、母子家庭だからIFとしてはそっちのほうが現実味ありますし


それでは開始

カネキ「……誰だ」

月山「これは失礼。僕は月山習。巷では‘美食家’なんて呼ばれている」

カネキ「ふーん……それでその月山さんが何の用?」

月山「実はここ最近、このあたりで暴れまわっているグールがいるという話を聞いてね。独自に調べていたんだ。……君のことなんだろう?」

カネキ「そうなんじゃねえの」

月山「……ところで君は今夜のdinnerは済ませたかい?」

カネキ「いや、まだだけど」

月山「それは都合がいい! ぜひとも君を月山家の晩餐に招待したいんだが……どうだい?」

カネキ「……わかった」

月山「そうと決まれば早速行こうじゃないか!」ピョンピョン

カネキ(うぜえ……)

月山「ああ……そういえば君の名を聞いてなかったね。よかったら教えてくれないかい?」

カネキ「……金木。金木研だ」

月山「わかった。カネキ君、今から僕たちは友人だ」

カネキ「……友人、ねえ」

――――月山邸

月山「時にカネキ君。君は食事に対して嗜好などはあるかい?」

カネキ「別にねえよ。人間なんてどいつも同じような味だろ。腹ふくれればそれで十分だ」

月山「ノンノンノン! それじゃあダメだ。食事とは我々グールに与えられた唯一の娯楽! たとえどんな不安と恐怖の中にあったとしても、食事のときだけは安心して優雅にあるべきなんだ!!」

カネキ「……ふーん」

月山「とは言っても、これは一朝一夕に理解しきれるものでもない。これは僕もまだ道半ばだ。ましてや今までそういう環境を与えられなかった君には難しすぎる。そこで、だ……。今夜、君には特別なdinnerを用意した!」パチン

貴未「んーっ! んーっ!」バタバタ

カネキ「この女か?」

月山「そう! なんと彼女は少し前までグールと男女の関係にまで及んでいた! ……もっとも永遠の愛を約束したはずのboyfriendはすでに死んでしまったようだがね」

カネキ「ふーん」

月山「グールと肉体関係まで持った人間は珍しい! これこそ未知なる珍味! 新たなharmonyだと思わないかね⁉」

カネキ「……てかなんでそんな詳しいんだよ」

月山「何……優しい顔して近づいたら彼女はあっさりと心を許してきたよ。いやはや、女性とはなんとあさましいことか」

カネキ「あさましい、ねえ……」

月山「さあ、カネキ君! 君はどこから食したい⁉ 君に一口目は譲ろう! どこにする⁉ 弾力のある眼球、脂肪のつまった乳房、油の滴るほどの太もも! どこでもいいさ!」

カネキ「ふーん……」チラッ

貴未「んーっ! んーっ!」ブルブル

カネキ「……それじゃあ俺は――――」ニヤッ

――――
――


月山「ふぅ……なかなか楽しい食事だったよ。普段は一人でも食べることのほうが多いのだがね」フキフキ

カネキ「ふーん。つーかいちいち食材用意するとかお前の使用人も大変だな」ゲフゥ

月山「下品だよカネキ君。……まあ時には苦労をさせることもあるからね。本当に助かってはいるけどね」

貴未だったもの「」

月山「ふふ……フルコースは久しぶりだった。君には非常にセンスのようなものを感じるよ」

カネキ「そりゃどうも」

月山「カネキ君。実は僕はグールレストランなるものに入会していてね。ぜひとも君を招待したいんだが……どうかな?」

カネキ「ああ、いいぜ」

月山「そう言ってくれると信じていたよ。……日取りが決まったら僕のほうから連絡を入れる。レストランは会員の紹介がなければ入会できない仕組みだからね」

カネキ「……なるほど、な」



月山「それじゃあカネキ君。名残惜しいがまた今度」

カネキ「ああ」クルッ、スタスタ

月山(くくく……覚えたよ。君の香り)

カネキ(……月山、か)ニヤッ

カネキ(……)スタスタ



ヒナミ「お母さん! いやだよ!」

リョーコ「ヒナミ、大丈夫よ。お母さん、後で必ず追いつくから」

ヒナミ「ひっぐ……ぐす……わかった。約束だからね、お母さん!」タタタタ


カネキ「おっと」サッ

カネキ「……なんだあのガキ」



真戸「くく……屑が親子ごっこか。気に入らんな」

亜門「……」グッ

真戸「いい、亜門君。ここは私がやろう」

亜門「わかりました」

真戸「くく……」カチッ、ブゥン・・・・・・

リョーコ「そ、そんな……それは……」

真戸「そうだ。お前の愛する夫の赫子から作ったクインケだぁ!」ビュン!

リョーコ「ひっ……」ガキィ!

真戸「どうしたぁ⁉ それだけの赫子が見掛け倒しじゃないか!」

カネキ「――――おい」


真戸「ん?」

リョーコ「え?」

カネキ「道の真ん中でギャーギャーうるせえ。お前らが邪魔で道通れねえだろうが」

リョーコ「え、え……?」

真戸「……これは失礼しました。しかし見ての通り今危険な状況でして。できることなら別の安全な道を通っていただきたいのですが」

カネキ「遠回りになるだろうが」

亜門「……民間人の安全のためですので」

カネキ「チッ……要するにこの道が安全になればいいのか?」

真戸「……ええ、もちろん」

カネキ「だったら……こうすりゃあ解決だなぁ!」ズドォ!

リョーコ「ひぃ、あ……」メリメリ・・・

カネキ「あ」グチャ

リョーコ「ヒナ、ミ……」ピクピク、ガク・・・

亜門「な――――」

真戸「ほお」

カネキ「ほらよ。これでいいだろ」ポイ

リョーコ「」ドサ

亜門「……仲間じゃなかったのか?」

カネキ「知るかよ。そんな女」

真戸「まあ亜門君。そのあたりの詮索は後にしようじゃないか。今重要なのはヤツもグールであるということだ」

亜門「……はい!」ジャキン!

カネキ「……なんだそれ」

真戸「クインケだよ。貴様らグールの赫子から作るものだ。……楽しみだ。お前の赫子がどんなクインケになるのかなぁ!」

カネキ「……あー、別のときにしろよ。今そういう気分じゃねえから」

真戸「何……?」

カネキ「そのなんたらいう武器だってそこに転がってるやつから作ればいいだろうが」スタスタ

亜門「待て!」

真戸「亜門君、放っておきなさい。ここでヤツを泳がせておけばどんな獲物が釣れるかもわからん」

亜門「……しかし、それでは被害が」

真戸「街で白髪に金色のピアスをする人間などそういるまい。あれだけ目立つ格好をしていればすぐに見つけられる。それよりも屑の遺体を運ぶことのほうが重要だ」ニヤッ

亜門「……わかりました」

ヒナミ「はぁ……はぁ……きゃあ!」ドテッ

トーカ「ヒナミ? 大丈夫?」タタ

ヒナミ「お姉ちゃん……お母さんが、お母さんが!」

トーカ「!」

ヒナミ「ヒナミ、どうしたらいいかわからなくて……」ポロポロ

トーカ「……わかった。とりあえずあんていくに戻ろう。今その場所に行っても危険だから」

ヒナミ「……うん」



――――あんていく

芳村「そうか……リョーコさんが」

トーカ「はい。おそらく捜査官に……」

芳村「わかった。トーカちゃんはヒナミちゃんの近くにできるだけいてあげてほしい」

トーカ「わかりました」

ガチャ、バタン

芳村「……」

カヤ「店長? どうされたんですか?」

芳村「……最近、彼のことをよく考える。今もそうだ。トーカちゃんから話を聞いたとき、なぜか彼の顔が真っ先に浮かんだ」

カヤ「……」

芳村「私は……私は、何か重大な過ちをしたのではないか。そう思えて仕方ないんだ。そしてそれは、もう取返しのつかないことなのではないか、とね」

カヤ「店長……店長はいつも最善を尽くしています。そんなこと起こりようがありません」

芳村「……だといいのだがね」



トーカ「ヒナミ、入るよ」ガチャ

ヒナミ「」ポケー

トーカ「ヒナミ……」

トーカ(許さない……。リョーコさんを殺したヤツを私は絶対に……!)

――――数日後

月山「カネキ君! 待っていたよ!」

カネキ「ああ。で、俺はどうすればいい?」

月山「とりあえず店員が案内することになっているから。あとでまた会おう」

カネキ「わかった」スタスタ

月山「あとで、ね」ニヤッ



店員A「こちらでございます」

カネキ「ん」ガタッ

店員A「コーヒーをお飲みになりますか?」

カネキ「じゃあ頼むわ」」

カネキ(んなもん飲んだらゲロ吐くだろうが。ケンカ売ってんのかコイツ)

店員A「……どうぞ」スッ

カネキ「……」ゴクゴク

カネキ「うまい……」

店員A「ありがとうございます」ペコ

カネキ(なるほど。グールもコーヒーは飲めるってわけか。水以外全滅だったのにわけわかんねえ生き物だな)

店員A「それでは準備が整ったらお呼びいたします」ペコッ

ガチャ、バタン

カネキ「……暇だ」

ウィーン、ズドドドド・・・・・・

カネキ「ああ? なんだこりゃ」



ワァァアアアアアアアア! ピューピュー!
バチバチン!

カネキ(なんだよ、眩しいしうるせえな)


月山『レディースアンドジェントルメン! 今宵、私は特別な食材を用意しました! ……グールです!』

ザワザワ、グール? グールハチョット・・・

月山『ええ、ええ……皆さんのおっしゃる通りグールなど雑味ばかりで食べられたものではない! ……しかし、私は彼の香りを間近で体感し、確信しました! 彼こそが真の珍味であると!!』

ホウ・・・、ソコマデイウノナラ・・・ タシカニミタメハイイデスワ

月山『無論、毒見役は私が自ら務めます! 責任を取る覚悟もある! そのことをお伝えしたうえで……いざ、賞味!!』

ギャアアア! オイハヤクイケ、オイツカレルゾ ヤメローシニタクナーイ!
ヒィイイ! グフッ・・・ アイエエエエ!

マダムA「早く逃げません――――」

カネキ「どこに行くんだよ」グサッ

マダムA「――――と」ドサッ

カネキ「……これで全員か」

マダムA「」

その他の会員「「「「」」」」


パチパチパチパチ・・・

月山「great! 素晴らしい! それでこそ僕の見込んだ男だ!」

カネキ「おいおい。いいのかよ。次はお前の番だぞ」

月山「それはどうかな? それだけ動き回っては血の巡りも速まっているだろう。そろそろ……」ジャキン!

カネキ「――⁉」ガクッ

月山「コーヒーに仕込んでいた薬の効果が来るころあいだね」ニヤッ

カネキ「月山ぁ……!」ガクガク

月山「それじゃあゆっくりと味わうとしよう。……未知なる美食に、感謝!」ダン!

カネキ(……来い来い来い来い。赫子来い!)ズズ・・・

月山「む……⁉」

カネキ「あがぁぁああああ!!」グバァ!

月山「な、何だこれは……まるで九尾じゃないか⁉」

カネキ「は、はは……やべえこれ。めちゃくちゃ力湧いてくるぞ」ウネウネ

月山(鱗赫……『彼女』のものは触手のようだったが、これはもう別次元――――)

カネキ「……ぁぁああああああああ!!」ズドドドド!!

月山「ぬ、ぐぅ……⁉」ギャリギャリ!

月山(尾の数が多すぎる! これでは――――)

カネキ「隙だらけなんだよぉおおおお!」グサグサグサ!

月山「がぁぁああああ!」ドガーン!

カネキ「はぁ……はぁ……。これが、グールの本当の力」ニヤァ


月山「いけないなぁ……これは、治すのに、時間が……」フラフラ

カネキ「まだ生きてるかよ。つくづくグールってのは化け物だな」

月山「カネキ君、後生だ……一口、一口だけ――――ぐふっ」ドサッ

カネキ「……誰がてめえに喰わせるかよ」スタスタ

今日はここまで


原作のカネキって母親が幼いときに死んで、叔母からネグレクトあってるのに頑張ってて偉かったと思うんだ。
もしグールと無縁だったらそれなりの生活送れてたと思うんだ

おつ

しかし喰種になってからの方が人間関係…喰種関係? 潤ってると言うね

結構おもしろい

>>42 確かにヒデしか友達いないし……それはそれで寂しい人生になりそう

>>44 ありがとうございます


それでは開始

――――翌日 グールレストラン

亜門「これだけの数が……」

真戸「まさに一網打尽だな」

亜門「『美食家』までやられているとは……いったい誰が」

真戸「くく……そんなことわかりきっているじゃないか。ヤツだよ」

亜門「白髪のグール……」

真戸「ここまでやったんだ。レートはSS~で確定だろう。いやはや、とんでもない化け物が現れたものだ」

亜門「『隻眼』以来ですね……」

真戸「……ああ、そうだな」

亜門「す、すいません。『隻眼』は……」

真戸「そんなことでいちいち目くじら立てたりせんよ。……むしろ武者震いを覚えるほどだ」

亜門「……その時は俺も、戦います」

真戸「期待しているよ、亜門くん」

――――あんていく

ヒデ「しかしこうしてお前と会うのも久しぶりだな。お前、退院した後何してたんだよ」ズズッ

カネキ「別に、いつも通りだ」ゴクッ

ヒデ「……そうか」

カネキ「なんだよ。言いたいことあるなら言えよ」

ヒデ「いや、何でもねえよ。ただ……」

カネキ「ただ?」

ヒデ「俺ってお前にとって何なのかなって思ってさ」

カネキ「はあ? いきなりキモイこと言うなよ」

ヒデ「俺は真面目だよ。お前、自分から俺に何か話したことあるか?」

カネキ「……ねえな」

ヒデ「もう小学校からの付き合いだってのに、俺はお前の本音を一度も聞いたことない。何を思って、考えて……行動するのか」

カネキ「互いにな」

ヒデ(カネキ……お前はやっぱり)

ヒデ「……じゃあな、カネキ」

カネキ「ああ」


カネキ「……で、俺に何の用だ?」

四方「……気づいていたか」スッ

カネキ「今気づいた」

四方「そうか。……話がある。ついて来い」

カネキ「ふーん……乗った」ニヤッ



――――Helter Skelter

イトリ「おお? 君が噂のカネキチ君? かなりいい男じゃないのー」

カネキ「何で名前知ってんだよ」

イトリ「私、そういうの詳しいから」

カネキ「……あっそ」

イトリ「そんなことより、カネキチ私みたいな女どう思う?」

カネキ「悪ぃけど俺は女には辟易してるんだよ」

イトリ「……ちぇ」

カネキ「……で、アンタら俺に何の用?」

イトリ「助言、してあげようと思ったんだけど」

カネキ「助言?」

イトリ「そう。カネキチ……はっきり言って人間からもグールからも相当目つけられてる。このままだとやばいよ」

カネキ「はぁ?」

イトリ「ああ、もちろんカネキチの強さは知ってるよ。こう見えても情報屋としてはそこそこ腕に自信あるし。……まあ、確かに強いは強いけど最強ではないってのが妥当な評価かな。それはカネキチもわかってるよね」

カネキ「……、」

イトリ「無言は肯定と受け取るよ。そしてここからは私個人としての助言」

カネキ「今まではなんだったんだよ」

イトリ「グール社会を憂う情報屋。ここからは……女として、かな。私、カネキチみたいな男の子に弱いのかも」

カネキ「……で? どうしろっての?」

イトリ「『あんていく』を頼りなさい。他の組織ははっきり言ってカネキチを敵だとしか思ってない。レストランの件でその警戒が最高潮に高まってる」

四方「もしそうする気があるなら今からでも遅くはない。俺が店長にとりつごう」

カネキ「お前もあの店の回し者かよ……」

イトリ「どうする、カネキチ?」

カネキ「……あー、やめとくわ」

イトリ「……本気?」

カネキ「ああ。だって考えてもみろよ。強いヤツと戦えるなんてゾクゾクするだろ? そっちのほうが暇しないですみそうだ」ニヤッ

イトリ「……そう。なら止めない! 今夜はお姉さんが血酒一本サービスしちゃう!」

ウタ「本当に?」

イトリ「アンタはちゃんと払いなさいよっ!」



四方「……金木研、だったな」

カネキ「あ?」

四方「お前……自分が何やっているか理解しているか?」

カネキ「……ああ、理解してるさ。痛いほどにな」

四方「そうか。……ならいい」ゴクッ


イトリ「ほら、カネキチも飲んで飲んで!」

カネキ「……なかなかいけるな」

イトリ「でしょー? うちのはモノが違うのよ! ほらもう一杯!」

ア、コラウタ! ナンノコトカナー? ・・・ガクシュウシナイナオマエハ
オイイトリ、モウイッポンサービスシロヨ ッタクシカタナイナー

イトリ「カネキチー」ギュウ

カネキ「……暑苦しいんだよ」バシッ

イトリ「むー意地悪ぅ~」

カネキ「うぜぇ……」

ウタ「まあまあ、カネキ君ももうちょっと相手してあげて、ね?」

カネキ「はぁ?」

ウタ「ほら、四方君もいくよ」ガタッ

四方「……ああ」ガタッ

カネキ「あ、おい!」

ガチャ、バタン

イトリ「ほれー座って座って」

カネキ(あいつら……次会ったらぶち殺す)ギリッ

イトリ「カネキチはさ」

カネキ「……」

イトリ「カネキチは今自分がなんで生きてると思う?」

カネキ「哲学の話なら他当たれ」

イトリ「そうじゃないよ。私、知ってるんだよね。カネキチの身体が手術受けてからグールになってるってこと」

カネキ「……何?」

イトリ「カネキチだってわかってたんでしょ? あの手術……もっと言えば事故すらも恣意的なものだって:

カネキ「……だったらなんだ」

イトリ「カネキチって半分幸運で半分不運だと思う。……カネキチにとっては楽。だってグールであることを受け入れれば自分に狂気の仮面をつけられるから。でも、その先には何もない。いつかそのことを思い知らされるのが怖くて君はこうやって目立ち続けてる」

カネキ「……」

イトリ「殺して、奪って、食いつくして……それは確かに模範的なグールな生き方。でもそんなことをするグールはほとんどいない。だって、できないから。それは理想にすぎないから。力があってもどれだけのグールがそうするか……」

カネキ「お前、さっきから何の話をしてる?」

イトリ「私はね」ズイッ

イトリ「……私は、今自分が感じているものを大切にしたいだけ。明日死ぬかもしれないのが私たちグールなんだから」

カネキ「……」ゴクッ

イトリ「女に辟易するカネキチの気持ち、わかるよ。女なんて何かにしがみついてでしか自分を肯定できない。自分自身で価値をつくりあげられない。……退屈だよね、そんな女ばっかりで」

カネキ「……」

イトリ「でも私は違う。それはわかるよね?」

カネキ「……かもな」

イトリ「……奥で飲みなおそっか、ケン」

カネキ「……ああ」

――――翌朝

イトリ「う、うーん……」モゾモゾ

カネキ「……」バサッ

イトリ「おはよう、ケン……」

カネキ「……」

イトリ「もう行くの?」

カネキ「用はもう済んだだろ?」

イトリ「……うん」

カネキ「じゃあな」

ガチャ、バタン

イトリ(……全然体が動かない)ボー・・・



カネキ「……さーてと。何するかな」


「待って!」


カネキ「あん?」

トーカ「……アンタに、話がある」

カネキ「……話?」

トーカ「そう。……アンタに、協力してほしいの。『箱もち』の捜査官を……殺すのに」

カネキ「はぁ? なんで俺が――――」

カネキ(待てよ……)ニヤッ

カネキ「その話、詳しく聞かせろ」

トーカ「……」コクッ



――――カネキの部屋

カネキ「どうした? はいれよ」

トーカ「……平気で女を部屋に連れ込むとかアンタやっぱおかしいよ」

カネキ「俺のところに来るってことはどうせ店の連中には秘密なんだろ? だったらここが一番安全だろ」

トーカ「確かに……」

カネキ「で、具体的にどうするんだよ」

トーカ「……私が捜査官に偽情報を流しておいた。私は一回仮面つけて白鳩と戦ってる。だから、あいつらは十中八九のってくる。そしてあいつらは二人組だ……だから、」

カネキ「俺とお前で頭数はそろうって話か」

トーカ「……ああ」

カネキ「……まあそれはいいんだけどさ」

トーカ「なんだよ?」

カネキ「お前、強いの?」

トーカ「そこらのヤツよりはできるよ」

カネキ「ふーん……じゃあ俺が今までやってきたことはどうなるの?」

トーカ「それは別の話。……ただ、今回の件が終わるまで私は見なかったことにする」

カネキ「オッケー。それで日取りは」

トーカ「……明日の夜九時。場所は――――」


トーカ(ヒナミ……リョーコさんの敵は私がとるからね)

真戸「ふむ……この目撃情報」

亜門「どうかしたんですか?」

真戸「私のクインケが使いにくい地形だな」

亜門「……罠、でしょうか」

真戸「その可能性は大いにある。第一、ガキ一人がいつまでもこんな場所で生活できるとは思えん」

亜門「では……」

真戸「……いや、ここは相手の誘いにのろうじゃないか」

亜門「わかりました。全力でサポートします」

真戸「ああ、頼むよ亜門君」

真戸(目には目を……こちらも仕掛けるとしようか)ニヤッ

――――水路

ヒナミ「お母、さん……」ギュウ

「感動の再会……喜んでもらえたかね?」

ヒナミ「だ、誰……?」ビクッ

真戸「くく……私を罠にはめるなど百年早い。私が今までにどれだけ屑を手にかけてきたと思っている?」

ヒナミ「ひっ……」

真戸「ラビットはどこかね?」

ヒナミ「ら、らび……?」

真戸「ラビットだよ。大方偽情報を流したのはヤツだろう? その母親の仇をとるために……屑がこぞって友情ごっことは。虫唾が走るよ」


「ああ、全くだな」


真戸「……待っていたよ。お前が来るのをな」

亜門「白髪……!」


カネキ「本当に……虫唾が走る」

真戸「ちょうどいい。いいことを教えてやろう。お前の母親を殺したのは我々ではない! そこにいる屑のせいだ!! それも、ただ邪魔だからという理由でなぁ!!」

ヒナミ「――――」

真戸「そしてこれが――――」ジャキン!

真戸「お前の母親だぁぁああああああああ!!」ブォォン!

ヒナミ「いやぁぁああああああああ!!」



トーカ(ヒナミ……頼む、間に合って!)

亜門「――はぁ!」ブン!

カネキ「はははは! いいなぁ、それ! グールを殺すためにグールを利用するなんて……人間らしくていいじゃねえか!」

真戸「ふ……こちらも仮面すらつけないお前の度胸に感心するよ!」ブン!

カネキ「おっと」サッ

真戸「くく……さすがに一筋縄ではいかんか」

カネキ「遊んでないで本気出せよ。……じゃないと、殺すぞ」ギョロ

真戸「ん⁉」

亜門「あれは……隻眼⁉」

真戸「ほう……隻眼とな。だが『ヤツ』ではないな。ヤツは右目だったはずだ」

亜門「白髪は左目……まさか隻眼が二体以上いるとは」

真戸「面白い! なおさらコレクションにしたくなった……こちらも本気で行くぞ、亜門君!」ガチャ、ジャキン!

亜門「はい!」ダッ

カネキ(面倒だな……あっちのノッポが微妙な間合いを保って白髪が遠距離から間隙をつこうとしてくる。だったら……)チラッ

カネキ(この地形……使えるな)ズズ・・・

亜門「はぁ!」ブン!

カネキ「よっと!」シュバッ!

真戸「もらったぁ!」ブン!

カネキ「当たらねえよ!」ヒュン

亜門(柱や壁を高速で移動してるのか……! これでは真戸さんのクインケが使えない!)

真戸「く……ちょこまかと――――」


「――――後ろ、だよ」


真戸「な――」

グサァ!

真戸「あ、が……バカな……」ドサッ

亜門「真戸さん……。貴様ぁぁぁぁああああああああ!」ダン!

カネキ「こいつがいなきゃお前なんか雑魚だよ」ガキィ!

亜門「ぐっ……!」ゴロゴロ

カネキ(面倒だな……あっちのノッポが微妙な間合いを保って白髪が遠距離から間隙をつこうとしてくる。だったら……)チラッ

カネキ(この地形……使えるな)ズズ・・・

亜門「はぁ!」ブン!

カネキ「よっと!」シュバッ!

真戸「もらったぁ!」ブン!

カネキ「当たらねえよ!」ヒュン

亜門(柱や壁を高速で移動してるのか……! これでは真戸さんのクインケが使えない!)

真戸「く……ちょこまかと――――」


「――――後ろ、だよ」


真戸「な――」

グサァ!

真戸「あ、が……バカな……」ドサッ

亜門「真戸さん……。貴様ぁぁぁぁああああああああ!」ダン!

カネキ「こいつがいなきゃお前なんか雑魚だよ」ガキィ!

亜門「ぐっ……!」ゴロゴロ

亜門(クインケが……これでは、もう――――)

真戸「まだ、だ……まだ――――」

亜門「そうだ……グール捜査官は、手足がもがれようとも戦う!」

カネキ「……うざ」グチュウ!

真戸「ぐふっ……」プラーン

カネキ「あのさぁ……弱いくせにやめろよ。そういうの」

亜門「真戸、さん……」

カネキ「……で、どうする? なんか萎えてきたしやめてもいいけど」

亜門(俺は、俺は――――)

トーカ「――――ヒナミ!」

ヒナミ「お姉ちゃん……?」

トーカ「ヒナミ、大丈夫だった?」

ヒナミ「う、うん……」


カネキ「……」

亜門「」

真戸「」


トーカ「アンタがやったの?」

カネキ「……ああ」

トーカ「……そう。ありがとう、これでリョーコさんも」

ヒナミ「――――違う」

トーカ「え?」

ヒナミ「……本当なんですか。お母さんを殺したのはあなただって話、本当なんですか」

カネキ「そうらしいな。若く見えたから娘がいるとは思わなかったけど」

ヒナミ「何で……何でお母さんを殺したんですか?」

カネキ「道の真ん中にへたりこんで邪魔だったからだよ」

トーカ「テメェ……本気で言ってんのか⁉」

カネキ「だってそれしか理由なかったし」

トーカ「ふざけんな……リョーコさんが殺されたのは、お前の気まぐれだったってのか⁉」

カネキ「いや、気まぐれではない。あそこにいたのがお前でも同じことしただろうし。誰でも一緒だよ」

トーカ「同じことだ! アンタにわかる……? リョーコさんが今までどんな思いで生きてきたか! 残されるヤツの痛みが……アンタにわかんのかよ!」

カネキ「――知るか」

トーカ「は……?」

カネキ「何で俺がいちいちお前らの気持ちを汲み取らなきゃならないんだ。……そんなに憐れんでほしいなら教会で祈ってろよ」

ヒナミ「……て」

カネキ「あ?」

ヒナミ「お母さんを、返して」ズズ・・・

トーカ「ヒナミ……それ」

カネキ「へえ……」

ヒナミ「お母さんを、返せぇぇぇぇええええええええ!!」ズドォ!

ズドドドドドドドド!!

カネキ「ぐっ……やるじゃねえか。こっちもやる気出てきたぞぉ!」ズズズズ!

トーカ(二人ともなんて赫子……! 入り込む隙がない!)


ヒナミ「ぁぁああああああああああああああ!!」バキィ! ズドォ! ドゴォン!!

カネキ「っ、らああああああああ!」ズシュウ!

ヒナミ「――――」ガシィ!

カネキ(な――――貫かれた赫子を囮に俺の赫子を……っ⁉)フワッ

カネキ「がぁぁああああああああ!」ドゴォン!

ヒナミ「はぁ……はぁ……」ガクッ

トーカ「……すごい」

カネキ「やるなぁ……おい」フラフラ

トーカ「……っ」ザッ

カネキ「お前はどいてろよ。用があるのはそこのガキだ」

ヒナミ「……ぅ」ガクッ

カネキ「エネルギー切れか? まあいいや。今日は引き分けだな。実力じゃ俺のが下だ。……だから次に会う時までお互い強くなっておこうぜ? ……じゃないと殺すからな。お前の母親みたいに」

ヒナミ「……」ギロッ

カネキ「ああ……いいな。その敵意むき出しの目がいい。そっちのほうがこっちもやる気出るわ。……じゃあな。お互い死なないようにしておこうぜ、その時までな」ニヤッ

トーカ「待て!」

カネキ「ああ、お前のコーヒー飲めないのは少し残念かもな」シュバッ

トーカ「アイツ……!」

ヒナミ「……ねえ、お姉ちゃん。あの人、名前なんていうの?」

トーカ「え?」

ヒナミ「教えて」

トーカ「……カネキ、だったかな」

ヒナミ「ありがとうお姉ちゃん」ニコッ

トーカ「」ゾクッ

トーカ(――――あれ以来ヒナミは人が変わってしまった)

ヒナミ「ただいまー」

トーカ「ヒナミ……こんな時間までどこ行ってたの?」

ヒナミ「あ、お姉ちゃん! ごめんね?」ギュウ

トーカ「……」ナデナデ

ヒナミ「えへへー」

トーカ(……ヒナミは私によく甘えるようになった。笑顔だって見せてくれる。でも、ヒナミは誰のいうことも聞かなくなった。……時々、アイツと姿が被る。無理をしているのはわかっているのに、私はヒナミに何もしてあげられない)

ヒナミ「お姉ちゃん、ヒナミ先に寝るね。お休み」

トーカ「お休みヒナミ」

トーカ(ヒナミはきっとリョーコさんの復讐をしようとしてる。今のヒナミはそのことしか考えていない。でも、その目的を失ったらヒナミは……)


ヒナミ「……」ニヤァ


トーカ(お父さん……私は、どうすれば)

今日はここまで


思ったんだけどヒデって交友広いのかな。意外と友達がカネキしかいなさそう

おつ

ヒデにとって「信頼できる親友」はカネキしかいないんじゃないかと思う

色々批判されてる√Aだけど、最終話のヒデの胸の内を語るところは名シーンだわ


ちくしょう。性格と口調がこれで最初から髪白いせいか、ある学園都市第1位のイメージが頭から離れん…声全く違うのに

>>70 確かにあのシーンだけは原作を超えていたと思います。……作者の脚本そのものは悪くなかったといいますが。人気漫画なんだから尺を決めすぎないほうがいいのに……お金の問題ですかね


>>71 確かにw
   とあるは唯一買い続けているラノベですねー。中二もあそこまでいくと逆に面白いです


それでは開始

――――十一区

タタラ「アヤト」

アヤト「はい」

タタラ「以前に話した‘金木研’だが……お前に任せる。ヤモリとニコを念のためにつける」

アヤト「……場所は」

タタラ「正確な情報はないが、二十区を中心に活動しているようだ」

アヤト(……二十区、か)


――――二十区

ヒデ「捜査官二名の殉職……『白髪のグール』による仕業か」

ヒデ(カネキ……何やってんだよ、お前)ギリッ

ヒナミ「……」スゥー・・・ハァ

ヒナミ「北北西758メートル。うん、今日もばっちり匂ってる」

ヒナミ(逃がさないからね、『お兄ちゃん』)

ヒナミ「ん、あれは……」



ニコ「んふふ……楽しみね。金木研……どんな子かしら」

アヤト「いかれてるのは間違いねえな」

ヤモリ「んー……多分、めちゃくちゃでかいね」

アヤト(お前がそれいうのかよ)


「ねえねえお兄さんたち」


アヤト「!」

ヤモリ「……誰、お前」

ニコ「あらあら……かわいいお嬢ちゃん♪」

ヒナミ「お兄さんたち……金木研を捜してるんだよね」

アヤト「……ああ(というかコイツいつの間に近づいた? 全然気づかなかったぞ)

ヒナミ「私、居場所知ってるから案内してあげられるよ?」



ヤモリ「ふーん……どうする?」

ニコ「ほかに当てもないしいいんじゃないかしら?」

アヤト「……そうだな」

ヒナミ「じゃあこっちだよ! ちゃんとついてきてね!」

アヤト(なんだコイツ……気味悪いな)

ヒナミ「……」ニヤァ



ヒナミ「ねえねえお兄さん」トコトコ

アヤト「俺か?」

ヒナミ「うん。もしかしてお兄さんってお姉ちゃんか妹さんがいない?」

アヤト「……姉がいる。なんでわかった」

ヒナミ「やっぱり! においが似てたもん!」

アヤト「匂いねえ……。あのクソ姉貴の知り合いか?」

ヒナミ「クソなんて言わないでよ……お姉ちゃんはとっても優しいよ?」

アヤト「……甘いだけだ、あんな奴」

ヒナミ「ふーん……。あ、ついたよ!」

ヤモリ「廃工場……二十区はこんな場所が放置されてるんだ」

ヒナミ「多分、ほかのグールがいても奪うと思うな。お兄ちゃんはそういうこと平気でやるから」

アヤト「(お兄ちゃん?)そうか。……お前、名前は?」

ヒナミ「笛口ヒナミです! ……じゃあ私はもう行くね! ばいばい!」タタッ

アヤト(何だったんだアイツ……)クルッ

アヤト「⁉」バッ

シーン・・・

ヤモリ「アヤト君? どうかした?」

アヤト「……なんでもない(消えた……?)」

ニコ「ささ、早く行きましょう? 待ちきれないわ~」

ガラガラガラ・・・

カネキ「……誰だお前ら」

アヤト「……‘アオギリの樹’って言ってもわからねえか」

カネキ「青森の樹?」

アヤト「アオギリだ。リンゴは関係ねえ」

カネキ「そこは金木町だろうが。苗字つながりで」

アヤト「……そんな場所知らねえよ」

ヤモリ「アヤト君。太宰治の出身地くらい知っておこうよ」

ニコ「そうよそうよ」

アヤト(うざっ)

アヤト「そんなことはどうでもいいんだよ。とにかくついて来るのか来ないのかはっきりしろ」

ヤモリ「まあ……ついてこないって言っても来てもらうけどねぇ?」バキッ

ニコ「ふふ……」

カネキ「あー……じゃあついてくわ」

アヤト「……思ったより素直だな。てっきり逆らってくるかと思ってたぜ」

ヤモリ「まあ、身の程をわきまえてるんじゃないの?」

カネキ「お前らが弱すぎるからだよ。……俺は強いヤツと戦いたいだけだ」

ヤモリ「……ふーん。僕も結構強いけど、試してみる?」

カネキ「生憎、雑魚に用はねえんだよ。使い走りは言われたことだけやっておけ」

ヤモリ「……」ビキッ

ニコ「ヤモリ……そう怒らなくても、楽しみはあるでしょ? ね?」

ヤモリ「……ああ、そうだな。それにコイツ……あんまりいたぶり甲斐なさそうだし」

カネキ「それにしてもよく俺の居場所がわかったな」

アヤト「……ガキが案内してくれたんだよ」

カネキ「ガキ……?」

アヤト「ああ、こんくらいの女だった」カタヨリヒクイクライ

カネキ「なるほどね……」

アヤト「知り合いじゃねえのか?」

カネキ「知り合いっていうか俺がそいつの親殺したんだよ」

ニコ「あらっ」

ヤモリ「ふーん。君もなかなかの屑だね……見た目通り」

カネキ「そうか?」

ヤモリ「ああ……匂いだけじゃなくて中身までアイツみたいだ」

カネキ(アイツ?)

――――‘アオギリの樹’アジト

アヤト「タタラさん、連れてきました」

タタラ「そうか……そいつが」ジロッ

カネキ「……なんだよ」

タタラ「お前の目的はなんだ?」

カネキ「目的?」

タタラ「そうだ。人からグールに変えられながら、その異常を何事でもないように受け入れたお前の目的を聞きたい」

カネキ「……ねえな」

タタラ「何?」

カネキ「俺はお前らみたいに何かするのにいちいち建前なんか作らない。そうしたいからそうする。それは気分で決まるもんだ。……何か問題あるか?」

タタラ「……いいだろう。ならお前に一仕事任せる。もうすぐこのアジトにCCGが攻めてくる。そいつらの殲滅だ」

カネキ「ああ、いいぜ。戦いってのは飽きない。……強い奴がいなくて暇してたところなんだ」

タタラ「……詳しいことはアヤトから聞いておけ。俺はまだやることがあるんでな」クルッ

アヤト「……お前、いかれてるな」

カネキ「はぁ? 何がだよ」

アヤト「人間から見てグールなんてのは等しく化け物だ。だがお前は人間のままでも十分化け物だよ」

カネキ「鬼に金棒ってか? 別に俺は自分に正直だっただけだよ。なのにどいつおこいつも俺に後ろ指をさしやがるから気に入らねえ。結局、あいつらは俺に嫉妬してただけなんだよ」

アヤト「……」

カネキ「そんなことより作戦を教えろよ。あのタタラってやつの言ってたことだけじゃ全然わかんねえ」

アヤト「……俺たちがここでCCGを引き付けている間に別動隊がコクリアを襲撃する」

カネキ「なるほど、ねぇ……」ニヤッ

アヤト「?」

カネキ「なかなか面白いことになりそうだ」

――――CCG本部

丸手『いいかお前らぁ! この作戦に俺たちCCGのメンツがかかってる! 死ぬ気で成功させろよぉ!』


篠原「相変わらず煽るなぁ、マル」

黒磐「うむ」

篠原「それにしても……この作戦には真戸も亜門も参加したかっただろうな。アイツらがいれば……」

黒磐「……うむ」

篠原(それにしてもジューゾーのやつ遅いな。また迷子か?)

――――
――


ジューゾー「おやおや……道に迷ってしまいました。困りましたねえ……」ウーン

グチュ・・・

ジューゾー「おや……変な音がしますねぇ?」


ヒナミ「……誰?」

「」ピクピク・・・

ジューゾー「あれれー……人が、死んでるですぅー……」ニタァ

ヒナミ「……お兄さん。匂いがする」

ジューゾー「?」

ヒナミ「人間なのに、とても血生くて、いとおしい匂い。あなた‘も’狂っている。……私と同じように」ズズ・・・

ジューゾー「おお? すごい赫子ですねぇー。僕、ドキドキしてきたですぅ」チャキン!

ヒナミ「……それは。お兄さんも捜査官なんだ。だったら、ここで――――死んで!」ギュオン!

ジューゾー「あはは!」ヒュン!

ヒナミ「っ!」サッ

ジューゾー「囮ですよぉ!」ガバァ

ヒナミ「――――」



トーカ「あれは……ヒナミ?」

ジューゾー「くぅ……惜しかったですねー」

ヒナミ(……クインケは大したことないけど、動きが読めない。捜査官はこんな人ばかりなのかな)スンスン

ヒナミ(この匂い……お姉ちゃんが近くにいる?)

ジューゾー「次はちゃんと当てますよー」

ヒナミ「……っ!」クルッ

ジューゾー「あれ? 逃げちゃうですか? ……仕方ないですねぇ。次の機会にしましょう」



ヒナミ「はぁ……はぁ……」タタッ

トーカ「ヒナミ!」

ヒナミ「! お姉ちゃん……」

トーカ「ヒナミ、さっきのは……」

ヒナミ「う、うん……捜査官に見つかっちゃって。次からはもう少し気を付けるね」エヘヘ

トーカ「……ヒナミ。無理しなくていいよ」

ヒナミ「え?」

トーカ「ヒナミ……あんていくは皆、知ってるよ。ヒナミが自分で狩りをやってるってこと」

ヒナミ「……いつから」

トーカ「もうずっと前からだよ。でも誰も何も言わないから私も黙ってた」

ヒナミ「そう、なんだ……」

トーカ「……もう、こんなことやめなよ。アイツが憎くて、復讐するためにやってたんでしょ? そんなの……何にもならないよ?」

ヒナミ「……も、……い」

トーカ「……?」

ヒナミ「お姉ちゃんは、何もわかってない!」

トーカ「」ビクッ

ヒナミ「お姉ちゃんはヒナミのこともお兄ちゃんのことも何もわかってない!」

トーカ「な、何を……」

ヒナミ「ヒナミも最初はそう考えてた。お母さんを殺したことが憎くて、憎くて……でもこうやって人間を狩っているうちに気づいたの。自分が今やってることはとても悲しいことなんだて」

トーカ「だったら……」

ヒナミ「でも……ううんだからこそヒナミはやめなかった。お姉ちゃんにはどうしてかわかる?」

トーカ「……」フルフル

ヒナミ「……きっとね、お兄ちゃんも同じ気持ちなんだよ」

トーカ「同じ……?」

ヒナミ「うん、同じ。悲しくて、寂しくて……誰かに認めてほしい、誰かに愛してほしい。でも、皆自分のことを嫌いになっちゃう。でも、誰にも何にも思われないよりは……嫌われるほうがマシだって思ってる。だから、お兄ちゃんはあんなに強いのに、あんなに悲しそうな匂いをしてる。……さっきのあの人みたいに」

トーカ「……、」

ヒナミ「そしてね、気づいたんだ。お兄ちゃんのことをわかってあげられるのはヒナミだけなんだって。この世界で唯一、ヒナミだけがお兄ちゃんを理解できる。どんなに憎んでも、それだけは変わらない。だから心の底から憎んであげるの。心の底から愛してあげるの。……それが、お兄ちゃんにとっての幸せだから」

トーカ(……狂ってる。こんなの、ヒナミじゃない)

ヒナミ「ああ、お兄ちゃん。私だけのお兄ちゃん……次に会うのが楽しみだなぁ」フフフフ

トーカ(店長に……報告しないと……)

トーカ「――――ということがあって……」

芳村「……トーカちゃんはストックホルム・シンドロームというものを知っているかね?」

トーカ「はい……。確か立てこもりを起こした犯人に人質が同調してしまう……でしたよね?」

芳村「……そう。もしかするとヒナミちゃんはそういう状態に近いのかもしれない」

トーカ「でも何で……」

芳村「おそらくカネキ君と同じような行為をしているうちに心理を相手に投影してしまったのだろう。……そういうことは、ままあるものだ」

トーカ「……」ギュッ

芳村「トーカちゃん。そんなに責任を感じる必要はない。トーカちゃんはよくやっているよ」

芳村(そう、責任は……私にある)

カネキ「……おい」グデー

アヤト「なんだよ」

カネキ「暇」

アヤト「少しは我慢できねえのか、お前」

カネキ「強いヤツと戦えるっていうから来たのに暇なんだよ」

アヤト「……基本的にCCGが動かないとどうにもなんねえよ。それにあいつらが動くのはまだ先って話だ」

カネキ「……んだよ、それ」ムクッ

アヤト「……どこに行くんだ」

カネキ「散歩」

アヤト「そうかよ」


アヤト(てかあの野郎なんで平然と俺の部屋に居座るんだよ)

エト「およよ? 君は噂のカネキ君じゃないかね?」

カネキ「……ああ、そうだよ。お前は?」

エト「私はエト。気軽にエトちゃんて呼んでね~」

カネキ「……なんかババアくせえな」

エト「は、はあ⁉ まだぴちぴちの十八だし!」

カネキ「全身に包帯ぐるぐる巻きならなんとでも言えるんだよ。俺には行き遅れのミイラに見えるがな」

エト「なっ……レディに向かって失礼だよ!」ピョンピョン

カネキ(……絶対おばさんだろ)

エト「むふーっ! 君はレディに対する態度がなってないね!」ビシッ

カネキ「そこらの男よりは経験あるっつーの」

エト「ふーん。じゃあ初体験は?」

カネキ「十四」

エト「……シチュエーションは?」

カネキ「女子高生の部屋だったかも……よく覚えてねえわ」

エト「……人数は⁉」

カネキ「いちいち数えねえよ。十人くらい?」

エト「……ぐぬぬ」

カネキ「……お前はどうなんだよ」

エト「わ、私?」

カネキ「人に下世話な話ふってとんずらこくなんてなしだろ? まあ座れよ」ポンポン

エト「私かぁ……私は……」

カネキ「なんか一つくらいねえのか」

エト「…………ぐすっ」

カネキ「あー……その、何か悪かったわ」

エト「うるしゃいうるしゃい! 処女で悪いかこのすけこまし野郎!」ポカポカ

カネキ「やっぱ行き遅れじゃねえか」

エト「うう……私だって出会いはほしいけどなかなかいい人……もといグールがいなくて」

カネキ「理想高すぎだろ。グールなんてどいつも似たようなもんじゃねえか」

エト「……そう思う?」

カネキ「ああ、間違いないね」

エト「でも私、少なくとも君は違うように見えるけどなぁ……」

カネキ「……それはそうだろ」

エト「そうじゃないよ。あなたは私たちと根本が違う。……私たちが戦うのは目的のため。達成することで何かを満たすことができるという理由で戦っている。でも、あなたは違う」

カネキ「……、」

エト「あなたの行動には意味がない。あなたの破壊は、殺戮は、……憎しみはどこにも向かわない。だから、あなたは満たされない」

カネキ「……」

エト「あなたの過去に何があったかは知らないけど……あなたは過去に対して何の評価も下せていない。だから今の自分が正しいか、間違ってるかもわからない」

カネキ「だったら何だって言うんだ。俺は――」

エト「――俺はほかの生き方なんて知らないし、お前に言われる筋合いはない、でしょ? それは正しいと思うよ。でも……正しいだけの人生なんて、この上なく詰まらないんじゃないかな。努力も、忍耐もない。それって生きてるだけ。動物と何も変わりはしない」

カネキ「じゃあどうしろってんだ」

エト「それは君自身が考えることだよ。……でも答えを出したら教えてほしいかな。君にちょっと興味あるから」クスッ

カネキ「気が向いたらな」

エト(向いたら、ね)ニヤッ

カネキ(……あんなこと言われたの。二人目だな)


ヒデ『なあお前。どうしてそんなことするんだよ。人から恨まれて何の得があるんだよ?』

カネキ『俺の勝手だろ。お前がいちいち口出しするな』

ヒデ『……怖いのか?』

カネキ『はあ?』

ヒデ『お前の母さん、死んじゃったんだってな。先生から聞いたよ。お前、自分の大切な人がいなくなるのが怖いんだろ。だけど人とのつながりがなくなることも怖いからあんなたことを……』

カネキ『……』

ヒデ『だったら……こんなに近くにいて、お前を恨まない俺はお前にとって何なんだよ……教えてくれ、カネキ』


カネキ(……本当に、イラつかせる)

今日はここまで



エトが一回一回包帯巻いてるの想像したら笑ってしまった

そして今日はセンター試験。大学生の多い東京グールの登場人物の得点が気になるところ

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