男「お、幼なじみ……」 幼なじみ「…………」(56)

男「その……あんまり落ち込むなよ」

幼なじみ「ん……」

男「おまえ一人のせいで負けたわけじゃないんだからさ……」

幼なじみ「…………」

幼なじみ「みんなもそう言ってくれたけど……でも……」

男「うん……」

幼なじみ「わたしがあそこでミスしなきゃ、勝ててたよ……」

男「それは……」

幼なじみ「わたし以外はみんな絶好調だったのに……キャプテンがこんなじゃね……」

男「そんな事……」

幼なじみ「男もごめんね、わざわざ見に来てくれたのに」

男「いや、俺は好きで来てるだけだからさ……」

幼なじみ「最後の大会なのに、みっともないとこ見せちゃったね……」

男「幼なじみ……」

幼なじみ「ん……それじゃ、みんなが呼んでるから」

男「あ、ああ……」

幼なじみ「多分このあとみんなでご飯食べて帰るから……」

男「ん、先帰ってるよ」

幼なじみ「うん……それじゃ、今日はほんとにごめんね」タタタ

男「…………」

なんの大会なんだろうか
支援

男「はー……」スタスタ

男(落ち込んでたな……幼なじみ)

男(まあ……当然だよな……)

男(あんな顔……見たくないんだけどな……)

翌日

幼友「あ、幼なじみちゃん、おはよー」

幼なじみ「ん、おはよー」

幼友「いやー、この間さー」ペチャクチャ

幼なじみ「あはは、そうなんだー」

男「…………」

男(パッと見はいつも通りだけど……どっかボーッとしてるというか……)

男(意気消沈……ではないんだけどな……力抜けてる)

男(大丈夫……じゃなさそうだな)

昼休み

幼なじみ「…………」

男「幼なじみ」

幼なじみ「…………」

男「おーい」

幼なじみ「え?なに男?」

男「いや、ボーッとしてるからさ……弁当食べないのか?」

幼なじみ「た、食べるよ食べる」パクパク

男「大丈夫か?」

幼なじみ「ちょっと考え事してただけだってば、大丈夫大丈夫」

男「…………」

部活後輩「え?幼なじみ先輩ですか?」

男「うん」

部活後輩「うーん、たしかに大会終わった後は、泣いて泣いて大変でしたけど……」

男「やっぱりか……」

部活後輩「でも、アタシたちで必死になぐさめて、『来年はアタシたちが全国必ずいきます!』って約束したら、やっと泣き止んでくれたんですけど……」

男「うーん……」

部活後輩「その後はいつもの幼なじみ先輩でしたけど……やっぱりまだ泣いたりしてるんですか?」

男「泣いてはいないんだけどな……」

男「うーん……」

男(多分……悔しいとかじゃなくて……)

男(ずっとがんばってきたものが終わって、しかも成果が出ずに終わって、力が入らないんだな……)

男(泣かれるよりいいかもだけど……やっぱり明るい幼なじみのほうがいいな……)

男(どうにかしないとだな……)

深夜 男家

男「んん……」モゾモゾ

男「トイレ……」

男「ふわああ……」

ガチャ

男「うー、さむさむ」

男「用も足し終わったし、早く布団に……お?」

男「幼なじみの部屋……まだ電気ついてる……」

男「こんな時間なのに……」

男「よっと」ヒョイ

男「ベランダづたいとか……昔はよくこれで幼なじみの部屋に行ってたな」

男「おーい、起きてるのか?」コンコン

男「…………」

男「起きてるかー?幼なじみー」コンコン

カラッ

男「あ、開いてる……」

男「幼なじみー?」

幼なじみ「ん……」

男「こいつ……布団もかけないで……」

男(今度はベッドの上でボーッとしてて、そのまま寝たのか?)

男「まだ寒いし、このままじゃ風邪ひくよな……」

男「幼なじみ、起きろ」ユサユサ

幼なじみ「んん……」

男「……しかたない」

ヒョイ

男(うわ、こいつ軽っ)

男「よっ、と」

男「布団をかけて……」パサ

男「よし」

幼なじみ「ん、んん……」モゾモゾ

男「あ……」

幼なじみ「あれ……男……?」

男「お、おう、おはよ」

幼なじみ「なんでわたしの部屋に……ふわああ……」

男「こんな時間なのに電気つけっぱだったからな、様子見に来たらおまえ寝ちゃってて」

幼なじみ「あ……そっか……」

支援
早く続きオナシャス

男「窓も開けたままだったぞ。そこは真剣に気を付けろよ」

幼なじみ「ん、わかった」

男「それにしてもめずらしいな、いつもしっかりしてる幼なじみがこんな……」

幼なじみ「…………」

幼なじみ「最近ね、なんていうか……すぐボーッとしちゃうんだよね」

男「ん……」

男(まあ……目に見えて明らかだったしな)

幼なじみ「きちんと授業聞かなきゃ、って思っても、10分と持たずにボーッとしちゃって……」

男「…………」

幼なじみ「ほとんどの事に集中できない……というより、何してても勝手にボーッとしちゃうというか」

男「…………」

男(やっぱりか……)

男(やる気満々でがんばってた事が終わってしまって、気が抜けてるんだな)

幼なじみ「ん、とにかく、これじゃよくないね」

男「あ、ああ」

幼なじみ「起こしてくれてありがと。これからはこんな事ないように気を付けるね」

男「ああ……」

幼なじみ「それじゃ、おやすm」

男「お、幼なじみ!」

幼なじみ「ん?」

男「あ……」

幼なじみ「どうしたの?」

男「えーっと……」

幼なじみ「?なによ?」

男「あの、さ……」

男「よければ……話をしないか?」

幼なじみ「話って……なんの?」

男「なんのっていうか……他愛もない雑談だ」

幼なじみ「今から?」

男「うん……朝まで」

幼なじみ「え?」

幼なじみ「朝までって……たしかに明日は休みだけど、でも……」

男「あ、なんか用事あったりとかか?」

幼なじみ「そうじゃない……けど……」

男「なら、ぜひお願いしたいんだ」

幼なじみ「……しかたないなぁ」

俺自身も、どうしてそんな事をしたのかわからない

けど、幼なじみがまだふっ切れてないって事がわかったから、どうにかしたいと思ったんだ

でも、何かを用意してたわけでもないから、とにかく話そうと思った

それも、直接的にふっ切れてない事についてではなく、何気ない雑談で、幼なじみの事を助けれれば……と思って

だから、一晩かけて、いろんな事を幼なじみと話したかった

そして、俺と幼なじみはいろんな事を話した

最初は当然というか、学校の話題になった

男友と幼友の事、教師達の事

俺はまだ彼女いない歴=年齢だとか、幼なじみは実は一回告白された事があるとか

その時幼なじみは断ったらしいので、幼なじみも彼氏いない歴=年齢なのだが、完璧に負けた気分だった

そして、学校の話題が尽きると、自然に昔の、子供の時の話になった

楽しみにまってた
支援(o゚▽゚)o

幼なじみ「小学生の時ね」

男「ん?」

幼なじみ「体育の授業でバスケした時、男が言ったんだよね」

男「ああ……」

幼なじみ「『幼なじみちゃんすごーい!』って」

男「覚えてるよ」

幼なじみ「『絶対バスケうまくなるよ!』って。それでわたし、バスケ部入ったんだよね」

男「うん……」

幼なじみ「それで、バスケ自体楽しかったし、がんばって練習して、まあ県大会優勝とかもしたよね」

男「うん……」

幼なじみ「大事な試合は必ず見に来てくれたよね、男」

男「当然だ」

幼なじみ「それに、わたし達が勝つたびに喜んでくれてさ」

男「…………」

幼なじみ「わたし、それがすごく嬉しかった……男がわたし達ががんばった結果を見て、喜んでくれる事が……」

男「…………」

幼なじみ「……よりによって最後の大会で、喜んでもらうことはできなかったけど……」

男「…………」

幼なじみ「……ごめんね、暗くしちゃって」

男「そんな事、ないよ」

幼なじみ「え……?」

男「おまえの言う通り、大事な試合は必ず見に行ってた……けど」

男「負けたのは、今回が初めてなわけじゃないだろ?」

幼なじみ「…………」

男「幼なじみ、おまえはいつもすごかったよ」

男「けど、だからっていつも勝てるわけじゃない」

男「それが、たまたま今回に表れたってだけだ」

幼なじみ「…………」

男「いつも勝てるわけじゃない。負けたり勝ったりしてた、当然だよな」

幼なじみ「…………」

男「けど、幼なじみ」

男「おまえは勝った時も、負けた時も、すごかったぞ」

幼なじみ「…………!」

男「勝てなかった時はあったけど、すごくなかった時はなかった」

幼なじみ「男……」

男「それに、最後じゃないだろ?」

幼なじみ「え……?」

男「大学でもバスケ、続ける気なんだろ?」

幼なじみ「……うん」

男「なら、俺も同じ大学に行って、今までと同じように大事な試合は必ず見に行くから」

幼なじみ「…………!」

男「それで今までと同じように、勝っても負けてもすごい幼なじみを見て、喜ぶから」

幼なじみ「男……」

幼なじみ「…………」

幼なじみ「実はね……」

男「ん?」

幼なじみ「せっかくなぐさめてくれたみんなに悪いと思って黙ってたけど……考えちゃうんだよね」

幼なじみ「『やっぱりわたしがあそこでミスしなきゃ勝ててたのにな』って」

男「…………」

幼なじみ「そんなモヤモヤがあって、考えちゃって、それでも解決しなくてボーッとしちゃってたんだ」

男「そうか……」

幼なじみ「でもね……」

幼なじみ「今、男が言ってくれた言葉を聞いて……すっきりした」

男「ん……」

幼なじみ「わたし、これからもバスケ、がんばれそうだよ」

男「そうか……よかった」

幼なじみ「うん……ありがと、男」

ピーッピーッ

幼なじみ「あ……」

男「どうした?」

幼なじみ「ヒーター止まっちゃった……壊れたのかな」

男「まだ寒いし、俺の部屋に移動するか?」

幼なじみ「んー……いいよ、ちょっとまって」ゴソゴソ

男(あ、考えてみれば、幼なじみがふっ切れたならもう話す必要は……)

男(いや、朝までってこっちから言ったしな。それに、そんなの関係なく、もっと話していたい)

幼なじみ「んしょ」ズル

男「毛布?」

幼なじみ「これにくるまってれば寒くないでしょ?」

男「だな」

男(おいおいおい)

男(なんで一枚の毛布に二人一緒にくるまってんだ……!)

幼なじみ「ん……」

男(肩が触れあうくらい近い……それにすげーいいにおい……)

男(なぐさめるのに必死で意識しなかったけど……パジャマ姿も久しぶりに見るな)

男(しかも当然の事だが……昔と違ってきちんと女の子の体に成長して……)ドキドキ

幼なじみ「……男?」

男「え!?な、なんだ?」

幼なじみ「えっちな事考えてたでしょ?」

男「い、いやいやいや!そんな事は!」

幼なじみ「バレバレだよ」

男「くっ……」

幼なじみ「もう……しょうがないんだから」スッ

男「え?」

チュッ

幼なじみ「ふふ」

男「なっ……!」カアアー!

幼なじみ「顔真っ赤だよ?」クスクス

男「お、おまっ……」カアアー!

幼なじみ「ほっぺにちゅーくらい、小さいころやってたじゃない」クスクス

男「そっ、それとは全然ちがっ……」カアアー!

幼なじみ「ふふ、まあ正直に言うと……」

幼なじみ「男があんまりかっこいい事言うから、意地悪したくなったのが半分」

男「おまえ……俺は真剣にだな」

幼なじみ「わたしも真剣だよ」

男「え?」

幼なじみ「真剣に男のことが好きだよ」

男「!!」

幼なじみ「いっつもそばにいてくれて……わたしを大切にしてくれるから、大好き」

男「あ……」

幼なじみ「男は……どうなのかな?」ズイッ

男「ち、近いって……」

幼なじみ「返事が欲しいの」

男「……わかったよ」

幼なじみ「うん……」

男「まず行動で示すから……目つぶれ」

幼なじみ「ん……」スッ

男「…………」スッ

チュッ

男「ん……」

幼なじみ「んん……」

男「…………」スッ

幼なじみ「えへへ……」

幼なじみ「ファーストキス、奪われちゃった」

男「ほっぺはとられたけど……やっぱり最初は男からしたいからな」

幼なじみ「ん……」

幼なじみ「okって事でいいんだよね?」

男「当然」

幼なじみ「これからは恋人同士、だね」

男「ああ」

幼なじみ「ふふ……」

男「支えるよ、ずっと……」

幼なじみ「うん……ありがと」

幼なじみ「大好きだよ、男」


おわり

読んでくれた人ありがとう



乙乙



乙!



素晴らしい

これが真のss、ショートショートってものなんだよ!
乙なんだよ!

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