姉「妹って、いつもにこにこして気持ち悪い」妹「……」ニコ (63)

姉妹百合
思いつくまま


姉「……妹、あんたなんでいつもそんなへらへらしてんの」

妹「……」ニコ

姉「あんたももう高校生でしょ? 愛想笑いじゃ、友だちできないよ」

妹「うん」ニコ

姉「……ま、好きなようにしなよ。私、仕事行ってくるわ」

ガチャ
バタン

妹「行ってらっしゃい」ニコ

トタトタ

父「妹、どうした?」

妹「ううん」ニコ

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妹の高校


妹の友人(妹友)「妹、おはようー」

妹「おはよう」ニコ

妹友「うお、今日も眩しい笑顔だねえ」

妹「そうかな」

妹友「うん。なんか、心が癒される」

妹「ありがとう」ニコ

妹友「はうんッ」

妹「変な反応」クスクス


タタタタッ


妹の先輩「おはよう」

妹「……おはようございます」ニコ

妹友「おはようございますー」

妹の先輩「妹はいつも笑顔だねえ。良きかな良きかな」

妹「ありがとうございます」ニコ

父「妹っっ!!膣内に射精すぞっっ!!!!!!」

妹「……」ニコ

妹の先輩「じゃ、放課後部活で」

妹「……はい」ニコ

タタタタッ

妹友「あれ、なんか部活入ってたっけ?」

妹「ううん」

妹友「なに、カツアゲ?」

妹「違うの。ちょっと、進路のことで聞きたいことがあってね、大したことじゃないんだけど」

妹友「ふーん……でもあの宝塚みたいな人といつ知り合ったのさ」

妹「言ってなかったっけ。中学の時の先輩なの」

妹友「初耳。あ、でも確かに同じ所だ」

妹「そうなの」ニコ

お昼休み


妹友「お弁当お弁当……今日は、何かな……」

パカッ

妹友「ひい!」

妹「どうしたの?」

妹友「ご飯しかない。なんの嫌がらせでしょうか」

妹「それにしても厚みがあうような」

妹友「まさか」

ホジホジ

妹友「ご飯の下におかずが……」

妹「その下にもご飯が……」

妹友「……」

妹「……」ニコ

5限目


妹友「……ごぐぐ……すぴゅー……」

妹「……友、起きて」ニコ

ユサユサ

妹友「……ふにゅ」

妹「……」

先生「……」

妹「あ」ニコ

先生「……妹友!」

スコンッ

妹友「はぐッ」

放課後

妹「先に帰ってていいよ」

妹友「え、待ってる待ってる。帰宅部の暇さお舐めになんなよ」

妹「……」クスクス

妹友「図書館で寝てるから、終わったら起こしてー」

ウイーン

妹友「ほな」フリフリ

ウイーン

妹「うん」ニコ

テクテク

妹「……」

クルッ

とある部室

カチャ
キイ――

先輩「お、妹」

妹「すいません。ちょっと、遅れてしまって」

先輩「いいよ。あれ、笑顔」

妹「あ……ごめんなさい」ニコ

先輩「私と付き合いたいなら、ずっと笑顔でいろっていったね? 覚えてるかな?」

妹「はい」ニコ

先輩「その小さい脳に言い聞かせたはずなんだけどな」

いったん眠いのでここまで

グニ

妹「いた……い」

先輩「まだ、口、伸びるよね?」

グイ――

妹「もぉ……むッ……り」

先輩「笑って」ニコ

妹「……ッ」ニコ

先輩「指定した条件も守れないなら、始めから好きなんて言わないで欲しいね。それとも、私がこんな性格でもう愛想尽きちゃったかい?」

妹「好きです……私、先輩が好きです」ニコ

先輩「あははッ。妹の笑顔、好きだよ」

妹「……」

先輩「私が高校卒業するまで、ぜひ頑張って欲しいね」

妹「はい」ニコ

先輩「ああ、そう言えば姉先輩は元気にしてる?」

妹「姉ですか?」

先輩「そう、姉先輩」

妹「元気です」

先輩「それはなにより。中学以来、連絡をめっきりしてないのでね」

妹「仲、良かったですもんね」

先輩「そうだね……」ニコ

ポンッ

先輩「そうだ、もう一つ交際の条件を追加しよう」

妹「……え」

先輩「姉先輩の笑った写真を撮ってきてくれるかい」

妹「な、なんでですか」

先輩「断るの?」

妹「そういうわけじゃ」

先輩「理由を聞いて、意図を吟味して、結局受けるならばさ、聞く必要ない質問だね?」

妹「はい……」

先輩「ほら、笑って」ニコ

妹「……」ニコ

先輩「明日、持ってきておくれよ。待っているからね」

妹「……」ニコ

帰り道


妹友「妹、コンビニでアイス買ってかえろー」

妹「いいよ」ニコ

妹友「パピコ半分こしようよ!」

妹「うん」ニコ

妹友「なんかいいことあった?」

妹「どうして?」

妹友「だって、朝の二倍笑顔だよ」

妹「そうなんだ」

妹友「うん」

ウイーン
ピロピロリン

妹「あ」

妹友「あれ、妹友のお姉さんだ。こんちは」

姉「こんにちは。今帰り?」

妹友「そうです」

妹「うん」ニコ

姉「ふーん……」チラ

妹「……」ニコ

妹友「あ、その雑誌買われるんですか? やっぱ、カジュアル系似合うなって思ってたんですよ」

姉「あんまり可愛いの苦手だからね」

妹友「でも、今着てるスーツもいいですね」

姉「肩が凝って仕方ないけど、褒められるのは悪くないかな」ニコ

妹友「……」

妹「どうしたの?」

妹友「いや、やっぱり姉妹だなって」

姉「?」

妹友「笑顔がすごく似てる。可愛い」

姉「ありがとう……」


妹の家


ガチャ

妹「……ただいま」

姉「ただいま」

父「あ、二人ともちょうど良かった。お父さんこれから町内会に行かなくちゃいけないんだ。お父さん帰るまで家にいてくれ」

姉「はいはい」

父「お夕飯、机の上の好きなように食べてな。冷蔵庫にお刺身入ってるから。えっと、それと」

姉「うん。洗濯物入れといて、新聞縛っておけばいいんだよね。お父さん、時間、大丈夫?」

父「あ、大変大変。お姉ちゃん、あと任せたぞ」

バタバタ

妹「お祭りとかあったけ」

姉「ゴミ出しのマナーが悪いからって、臨時で集まるんだって」

妹「そうなんだ」

姉「あんたも、後で縛るの手伝いなよ」

妹「うん」ニコ

姉「……」

姉「お父さんいない時は、私がグチグチ言われるんだから。やれ、ゴミの縛り方がなってない。これだから男親はとか。雑だとか」

妹「そんなこと言われるの?」

姉「そうだよ。だから、ゴミ袋に班の番号書けばいいのに。それも流れるし、話し合って何が解決するんだか」

妹「うち、綺麗に出してるよね」

姉「お父さんがへらへらしてるから、勘違いされるし、付け込まれるの。ま、ずぼらそうに見えたんじゃない」

妹「そうなんだ……」

姉「あー、疲れた。私、もう寝るから」

妹「え、ご飯は?」

姉「今日はしんどすぎて食べる気起きない」

トタトタ

妹「……お姉ちゃん」ニコ

姉「なに」

妹「あの、中学の時に宝塚っぽい人と仲良かったでしょ?」

姉「……あー、後輩ね。確か今あんたと同じ高校だっけ?」

妹「実は、その人に、お姉ちゃんの笑顔の写真を頼まれたの……」

姉「……は?」

妹「一枚だけ……」ニコ

姉「一枚だけって……いや、いやいや」

妹「いや?」

姉「うん」

妹「……」ニコ

姉「笑っても、無理なものは無理」

妹「どうしたら、撮ってくれる?」

姉「どうしたらって、あんた」

妹「……」グッ

姉「あんた、もしかして、あいつのこと好きなの?」

妹「……ッ」カア

姉「……冗談でしょ」ボソ

妹「お姉ちゃん、あの」

姉「確かに、中性的だけどあいつ女じゃん。どこがいいのあんなの」

妹「顔……」

姉「かおぉ?」

妹「引っ張ってくれるところとか、私を変えてくれそうなとことか……」もにょもにょ

姉「はーん……そういうわけか。あんたが中学から変な理由」

妹「……」ドキッ

姉「だから、あのウジウジ子がニコニコし始めたわけか」

妹「笑顔が好きだって言われて……好きなら、私もって」

姉「……笑ってるのがいいとは限らないんだから」ボソ

妹「お姉ちゃんが、もし……ホントに嫌なら」

姉「……諦める?」

妹「うん」シュン

姉「そんなあからさまに落ち込まないでよ。私が悪いみたいでしょ」

妹「ご、ごめん」ニコ

姉「笑う所じゃないし……はあ、分かった。これ以上あんたの人格いじくられても困るし」

妹「ほ、ほんと? ありがとう、お姉ちゃん」ニコ

姉「一枚だけだから」

妹「うん……」

姉「……」

妹「ちょっと、待ってね」

ゴソ

姉「……」

妹「はい、笑って」



姉「……」ニコ

パシャ

妹「……?」ドキっ

ちょっとここまで
続きは夕方以降

姉「もういい?」

妹「う、うん」

姉「ていうか、なんで私の写真?」

妹「さあ」

姉「変なことに使わないでって言っておいてよ」

妹「うん」

姉「じゃ、もう寝るね」

妹「おやすみ」

トントントン――

妹「……?」

翌日

妹の高校


妹「先輩、これ」

ペラ

先輩「素晴らしい。姉先輩だ、お変わりないね」ニコ

妹「あの……」

先輩「笑顔は?」

妹「あ」ニコ

先輩「なに……ああ、その顔はどうして姉の写真なんか欲しがるんだろうって顔だね」

妹「……」

先輩「言ったよね? 私は、人の笑顔が好きなんだって。当時ね、私は君のお姉さんの笑顔が大好きだったのさ」

妹「笑顔……」

先輩「だから、君の笑顔も好きだよ」ニコ

妹「そ、それって……」

先輩「背丈や髪型や口の形だって違うし、君の性格はお姉さんと正反対だけど……笑った顔はとても似ているからね」

妹「私、姉の変わり……なんですか」ニコ

先輩「君は君だよ。君は、お姉さんよりきっと色々な笑顔を見せてくれるだろうなって思ったんだ。あの人が見せてくれなかった笑顔を」

妹「……」

先輩「想い人に裏切られた最悪の気分を裏に秘めた、まさに、今みたいな笑顔とかね」ニコ

妹「……」ニコ

先輩「ひどい人間だと思う? 仕方ない。そういう性癖なんだ。悪く思わないで、割り切って欲しいな」

妹「先輩、私のことどう想ってるんですか……」

先輩「え? ああ、笑顔は、好きだよ」

妹「……」ニコ

先輩「んー、姉先輩って、やっぱり可愛いなあ」

チュッ

妹「……」ニコ

ガタッ

先輩「どうした?」

妹「……」ニコ

クルッ
タタタタッ

屋上

妹「はあッ……はあッ」

ガシャンッ

妹「……はあッ」


――ああ、笑顔は、好きだよ


妹「……ッ」ブンブン

妹「……」ニコ

プルルル
ピッ

妹「はい……」

妹友『あ、もしもし! 今、どこよー。今日は一緒に帰らんべ?』

妹「うん……ごめん。おなか痛くて、先に帰ったの」

妹友『まじか。大丈夫?』

妹「薬飲んだら、だいぶましになった」

妹友『当分、アイス禁止だねえ』

妹「それは、困るよ……ふふ」

妹友『ま、お大事に』

妹「うん……」ニコ

ピッ

妹「……」ニコ

妹の家

ガチャ

妹「……」

妹(誰も帰ってないみたい)

妹「……」

トタトタ

姉の部屋


ガチャ

姉「……スー」

妹「……あれ」

姉「……スー」

妹「寝てる……スーツのまんまじゃしわになるよ……」

姉「うー……ん」

妹「……」ビク

トタトタ

ガラッ

妹「お姉ちゃんの、アルバム……」

パラパラ

妹「あんまり気にしてなかったけど、お姉ちゃんってそう言えばいつも笑顔だった……お父さんもお姉ちゃんもいつも笑顔」

パラパラ

妹「この写真も、この写真も……私、笑ってない」

パラ

妹「……」ニコ

妹「……そう言えば、先輩に笑顔が好きって言われて……一番最初に参考にしたのってお姉ちゃんだった」

妹「私……私の笑顔って何……? 私、本当に、私の顔で笑ってるのかな……」

ちょっとここまで
また、二時間後くらいに

姉「……ん、だれ……」

妹「……ッ」

パタンッ
ガタガタ

タタタッ

姉「……んん」

ゴロン

家の外

ガチャ
バタン

近所のおばちゃん「こんにちは」

妹「こんにちは……」ニコ

近所のおばちゃん「おでかけ?」

妹「はい……」ニコ

近所のおばちゃん「寒いから、気を付けてね」ニコ

妹「ありがとうございます……」

妹(……)

数時間後――

妹の家

姉「……すー」

コンコン
ガチャ

父「姉ちゃん、妹ちゃんご飯に……するぞー」

姉「ふが……」ぱち

父「あれ、妹ちゃん帰ってないの? 姉ちゃん知らない?」

姉「ちゃんづけで呼ばないでよ……ふわあ」

父「夕飯前にどこに行ったんだ」

姉「え、帰ってないの?」

姉(……さっき、いたような気がしたけど)

父「友だちの家じゃないのか? 姉ちゃん、連絡してみて」

姉「ちゃんづけで呼ばないで」

父「はいはい」

姉「……」

プルル――

姉「……」

『お掛けになった電話番号は――』

姉「あれ」

父「出ない?」

姉「んー……」

父「ま、まさか誘拐……」

姉「なわけ。妹も手間かけさせるんだから……えっと、妹友は……」

プルル――

姉「……」

ピッ

妹友『もしもし……姉さん? 珍しいですね』

姉「うちの妹、そっち行ってない?」

妹友『え? 帰ってないんですか? お腹痛いって、先に家に帰るって言ってたんですけど』

姉「へ? あ、ああそうなんだ」

妹友『あの、なにかあったんですか』

姉「ううん、ごめんなんでもない。夜遊びしてるだけみたい」

妹友『妹が? あはは……そんなことないですよ』

姉「わかんないよー?」

妹友『妹が、どうしてどこの部活にも入らず帰宅部してるか知ってます?』

姉「聞いたことないけど……」

妹友『私も聞いたことないです』

姉「なんじゃそりゃ」

妹友『だから、もしかしてって、感じなんですけど……』

姉「うん」

妹友『なんかいつも外で無理して笑ってる気がして……家の中が、一番落ち着けるんじゃないかなって』

姉「……」

妹友『わっかんないですけど……』

姉「や、ありがとう」

妹友『私も、連絡してみます』

姉「よろしく」

ピッ

父「な、なんて?」

姉「友だちの家だった。今日は、泊まるって」

父「き、聞いてないぞ」

姉「言ってないって」

父「え、ええッ」

姉「ご飯冷めちゃうし、食べよ」

父「……ああ」シュン

姉「……」

父「最近、妹ちゃんも姉ちゃんも冷たいからお父さん寂しい」

姉「まあまあ」

ポンポン

父「姉ちゃんは高校卒業して働き始めてから、なんだかすっかりおばさんに」

姉「ちょっと。落ち着いたってことでしょ。私は、無理するの止めただけだよ」

父「姉ちゃん、なにか……」

姉「……私が、お母さんの代わりになんなきゃって思ってさ、中学生くらいからなんかがむしゃらに頑張ってたよ」

父「……」

姉「とにかく、みんなが病気しないようにとか、お父さんが会社クビになっても私が働けばいいやとか、勉強が得意な妹は大学まで行かせてあげたいとか……」

父「姉ちゃん……」

姉「みんな、笑顔で元気に過ごせれたらって。ま、でもしんどかった。勝手にこうしなきゃって決めて、勝手にしんどくなってたの。だから、止めた」

父「姉ちゃんは、よく頑張ってたよ。ちょっとくらい休んでも大丈夫だ」

姉「うん、だから今は自分と妹のことだけ考えるようにしてるから。お父さんは、安心して働いてよ」

父「……姉ちゃん」

姉「あと、ちゃんづけ禁止ね……」

父「姉……」シュン

夕飯後――

姉「ちょっと、コンビニ行ってくるから。バイク借りるよ」

父「んー」

姉「……しょ」

姉(……着信なしか)

トントン
ガチャ

姉「……」

バタン

姉(青臭いこと言っちゃたわ……お父さん、半泣きだったし)

姉(なんであんななよっちいの、お母さんは好きになったんだろ)

姉(そして、うちの妹はどこに行ったのか……)

ガチャ
ブルンブルン――
ブロロロ――

姉(……たぶん、夕方に一回部屋に戻ってきてたんだ)

姉(妹が行きそうな所とか、分かんないしな)

姉(とりあえず、コンビニでも行くか)

ブロロロ――

コンビニ


ウイーン
ピロピロリン

店員「シャーセー」

姉「……」きょろきょろ

「あ、先輩!」

姉「ん?」

姉の後輩(妹の先輩)「姉先輩! こんな所で会えるなんて、なんて幸運でしょうか」ニコ

姉「あ……」

姉の後輩「今、妹さんと同じ高校なんですよって、知っていらっしゃいますよね」

姉「あんた、やっぱり、あのヅカ子か」

ヅカ子「ヅカ子って、それ……中学の時の仇名じゃないですかッ。いやだなあ、お恥ずかしい」

姉「相変わらず、キラッキラしてること」

ヅカ子「姉先輩こそ、お変わりなく愛らしいお美しい」

姉「それ、本気で言ってんのかしら」ニコ

ヅカ子「っもちろん!」ニコ

姉(このバカテンションお化けは……)

ヅカ子「このコンビニにはよく来られるんですよね。妹さんから伺っていましたよ」

姉「そうだけど。あー、思い出した。あんた、なんで私の写真なんか欲しかったの?」

ヅカ子「え、私、姉先輩のこと好きだったんですよ。あ、今もですけど。今も、ですけど」

姉「ふーん」

ヅカ子「……反応が薄いのも、心に沁みますね」

姉「キチガイか……?」ニコ

ヅカ子「うッ、それ。その蔑むような微笑み! 欲しかった!」


ザワッ


姉「声、大きいんですけど」

ゴスッ

ヅカ子「うッ……」

姉「あんたがそんなんだと、妹は渡せれないわ」

ヅカ子「妹さん? ああ、可愛いですよね。笑った所なんか特に」

姉「あいつ、あんたのこと好きだってさ」

ヅカ子「知ってますよ」

姉「へえ」

ヅカ子「私も嫌いじゃないです。いつもニコニコ。まるで、中学の頃のあなたを見ているようだ」

姉「じゃあ、もう付き合ってるの」

ヅカ子「何言ってるんですか、嫌だなあ。私は、今も、姉先輩が好きですよ」

姉「私は、あんたのこと嫌いだけど」ニコ

ヅカ子「やっぱり、そう仰られると思っていましたよ。残念ですけどね。ああ、だから、私はいつまでもあなたのことを追いかけざるおえないんですよ」

姉「今は、あんたのことに構ってられない。それより、妹見なかった? 家に帰ってないの」

ヅカ子「そうなんですか?」ギクッ

姉「……その、反応。何を隠してる?」

ヅカ子「……はっは」

姉「早く言わないと、あんたのタマ潰すよ」

ヅカ子「やだなあ、着いてないですよ……?」

―――
――


ヅカ子「というわけなんですが」

姉「全面的に、お前が悪いわッ」

グリグリ

ヅカ子「い、いた、いたいッ」

姉「あんたが、そんな特殊な嗜好の持ち主だとは薄々は気が付いていたわ」

ヅカ子「これは、持って生まれたものですから、変えようがないのです」

姉「妹は、私とは違う。あんたのそれに対応できるような子じゃない。見たら、分かるでしょ」

ヅカ子「……確かに、違いましたね。でも、痛みや苦しみさえ全て笑顔に変えることのできる素敵な子だ」

姉「意味合いが違うし、お前が言うな」ニコ

グリグリ

ヅカ子「はうん……」

姉「妹のこと、好きになれないなら、もう近づかないで」

ヅカ子「……そうですね。結局、好きになれなかったし、もう何もしませんよ。私は、あなたしかいなかったようです」

姉「……残念だけど、今、他の人の面倒見る余裕ないから」

ヅカ子「と、申しますと?」

姉「妹のこと以外、今は考えられない」

ヅカ子「……」

姉「じゃ」

タタタタッ

ヅカ子「……」

ヅカ子(今、大胆かつ大胆なセリフを耳にしたような……)

ヅカ子「ん? ……あ、また、振られてしまったのか……はっは」

姉妹の母校の中学前


ブロロロ――

姉「……さむ」

姉「中学……とか。まさかね……まさか」キョロ

妹「……」チョコン

姉「……」

キキイ!
ガタタッ

妹「?!」ビクッ

姉「……あんた」

妹「……お姉ちゃん」

姉「……」

妹「どうしたの」ニコ

ガチャン

姉「夕飯、食べないの」

妹「夕飯? あ、そっか……ごめんなさい」

姉「冷めたら、不味いよ。お父さんの料理、さらに不味いよ」

妹「そうだね……」ニコ

姉「後ろ乗りなよ。風邪引くよ」

妹「うん……」

スクッ
パンパン

姉「こんな正門で、よく警備員に見つかんなかったね」

妹「確かに……運、良かったのかも」

姉「これ、上着持ってきたから」

パサッ

妹「ありがとう」

もぞもぞ

姉「……」

妹「……」

姉「乗らないの?」

妹「何も、聞かないの?」

姉「どうせ、めんどくさいことでしょ。聞かない」

妹「……そっか」ニコ

姉「乗りな」

妹「いや……」

姉「……は?」

妹「お姉ちゃんの後ろはいや」

姉「意味が分かりませんが。じゃ、あんたが運転すれば」

妹「運転なんて、できないよ」

姉「……妹!」

妹「……ッ」ビク

姉「言いたいことがあるなら、はっきり言え!」

妹「……ッ」ニコ

姉「あんた、私にまで笑ってどうすんの!? 頭、大丈夫? 今、笑う所じゃないでしょ!?」

妹「……じゃあ、私、今……どうしたら……ッいいの?」ジワッ

姉「……」

妹「どなら……ないでッ……よぉ」ジワッ

姉「妹……」

妹「こわいよ……ッ……おっきいこえで……こわいッ」ツー

姉「わ、悪かったわよ怒鳴って……」ポリポリ

妹「お姉ちゃん……こわいッ……うッ……うええッ……」ポタポタ

ゴシゴシ

姉「げッ……」キョロ

妹「ひッ……やだッもお……お姉ちゃん、嫌い……」ポタポタ

姉「私だって、あんたのこと嫌いだし」

妹「……」ピタ

姉「?」

妹「お姉ちゃんが……嫌いって……言ったぁ……うああああッ……あああッ」ポタポタ

姉「あ、あんた何自分のこと棚にあげて……」

妹「……もお、やだ……笑うのやだ……ッ」

姉「あのヅカ子の言うことなんて真に受けるから……はあ」

妹「なんで、知ってるの……でも、笑ってないと……先輩、喜んでくれないッ……」ポロポロ

姉「あんな奴のために頑張らなくていいよ。てか、笑顔なんて、人のためにするもんじゃない」

妹「ッ……え」ポタポタ

姉「自分のためにするもんだよ。嬉しかったり、楽しかったり、そうやって自分の気持ちのためにすればいいんだって。習わなかった?」

妹「そんなッ……のッ……ならわないよ……」

姉「じゃ、今から覚えておいて」ニコ

妹「今の笑顔は……」

姉「言わない」

妹「……」ウルッ

姉「泣くなって……たく、一度しか言わないからね。……あんたを安心させたいって私の気持ちを表現するため。それだけ。はい終了。分かった?」

妹「わか……んない」

姉「……もお、しらん」カアッ

妹「……恋敵に……励まされたぁ……」ズズッ

姉「誰が、恋敵だ……だいたいヅカ子なんかより、私の方がよっぽどありでしょ」

妹「……」キョトン

姉「……無反応やめ」

妹「……でもッ……お姉ちゃんとは……キス……できな……」カアッ

姉「ちょ、ちょっと言いながら我に帰っていかないでよ。こっちが恥ずかしいわ」

妹「お姉ちゃん……」

姉「……なに」

妹「あの……もしかして……私の事……好き?」

姉「……ッ」ボンッ

妹「……うそ」

姉「……うッ」カアッ

妹「……お姉ちゃん、もしかして、私と……キス……できるの?」カアッ

姉「……待って、何その質問」

妹「私と……セック」ドキドキ

姉「うわああ! ちょっと!」

妹・姉「「……」」ゴクッ

姉「……やめなよ……もおッ」カアッ

クルッ

妹(お姉ちゃんが……すごく、うろたえてる)

姉「……帰るよ。失恋パーティーでもするか」

妹(……変なの、悲しいのが……消えてってる……どこかに流れてく)

姉「っくしゅん」ブル

妹「お姉ちゃん」

姉「んー……?」

妹「私……いつも笑う時に、お姉ちゃんの真似してたの」ボソ

姉「え?」

妹「お姉ちゃんの笑顔が、私の知ってる人の中で一番素敵だったからなの」

姉「……」

妹「先輩を好きになって、お姉ちゃんの真似をするようになってから、色々な人に声をかけられるようになって……嬉しかった」

姉「それは……」

妹「分かってるよ……私の本当じゃない……だって、本当の私は、いつもウジウジして……笑顔だって得意じゃなかった」

姉「じゃあ、芝居は今夜で終わりだよ」

妹「……でも……前の自分がどんなのだったかも、わからない……」ニコ

姉「……」

妹「この笑顔も、自分の笑顔か分からない……私、明日から……どんな顔すればいいのかな」ニコ

姉「……妹」

グイッ

妹「え?」

チュッ

姉「ッん……ちゅぱ」

妹「……んッ」

姉「ぷはッ……」

妹「お……ねえちゃ」トクントクン

姉「ぷッ、間抜けな顔してる」

妹「や……」

姉「それでいいんだよ。それで」

妹「……お姉ちゃん」

次の日――

妹友「……いもうとー」

妹「うん?」

妹友「……」

妹「どうしたの?」

妹友「や、なんか垢抜けた?」

妹「……うーん。そう?」


「やあ、妹」


妹「あ、ヅカ子先輩」

妹友「おお?」

ヅカ子「こ、こら、ここではその仇名は使わないでおくれよ」

妹「……あ、ごめんなさい」ニコ

ヅカ子「……うん?」ゾクゾク

妹友「……おう」ゾクゾク

妹「あ、移動教室遅れちゃうよ、いこ、妹友」

グイッ
ズルズル――

妹友「おろろ……」

妹友「いいの?」

妹「うん、いいの」

妹友「……」

妹「心配かけてごめんね」

妹友「心配をかけた自覚があるとは」

こちょこちょ

妹「やッ……あははッちょ」

妹友「ゆるさぬ」

こちょこちょ

妹「えへへッ…ぁ……ちょ――」

妹友「じゃ、アイス禁止令を解きましょうか」

妹「わーい」

妹友「……わーいって、無邪気な女よの。ま、私も言っとくか。わーい!」

キャッキャッ

妹「パピコ、半分こしようね」

妹友「うん」


キンコーンカーンコーン

姉の職場


姉「……あー、肩凝った」

同僚の女性「……お昼にしましょうか」

姉「うん」

同僚「今日は、お弁当なんです」

姉「へー、珍しいね。見せて見せて」

同僚「妹が作ってくれたんです」

姉「……妹いたんだ」

同僚「はい」

ゴソッ
シュル

同僚「……」

パカッ

同僚「……」

姉「白飯のみ……って」

同僚「ああ……」

ホジホジ

同僚「下に挟んでるんです。いいでしょう」ニコ

姉「……は、はあ」

姉(いったい、なんの意味が)



姉の家


姉「ってことがあったの。あれなに? 流行りの、おにぎらずの仲間?」

父「うちもやってみるかー」

姉・妹「「え」」

父「やっぱ、やめとくかー」シュン

姉「確かに、おかずは崩れないかも。ご飯にしっかり包まれるし」

妹「開けた時、ちょっとびっくりするけどね」

姉「そうそう。やっぱ普通。普通が一番」


就寝時


姉「妹、宿題まだ終わらないの?」

妹「うん、あとちょっと」

姉「何にそんなにてこずってるわけ」

ヒョイ

妹「あ」

姉「……数学か」

妹「わかる?」

姉「……ふう」

ポサッ

姉「お姉ちゃんは、もう寝る」

妹「お姉ちゃん、使えない……」

姉「むッ」

グイッ

姉「?」

妹「うそだよ……大好き」

姉「……や」ドキッ

妹「大好き」

姉「二度も……言うな」ドキドキッ

妹「お姉ちゃん……」ゾクッ

姉「うん?」

妹「……私、今ならセック」

姉「ちょ、ばかッ」

ガバッ

妹「もごごッ」




おわり

妹友編も書きたかったけど
力尽きました
読んでくれてありがとう

乙です
最後ガバってしたのは姉?

>>59
姉です

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