結衣「明日があるさ」 (34)

結あか、地の文多めです。
それでもよければご覧下さい。
次から始まります。

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ーーー
「ごめんね、待たせちゃったかな?」
「そんな事ないよ、それより急ぐぞ」
短く会話を交わすと、私達は通学路を急ぎ足で歩き始めた。

「あれ…京子ちゃんとちなつちゃんは?」
目の前の少女…赤座あかりはここにいない2人を探し、キョロキョロと辺りを見回す。

「あの2人なら先に行っちゃったよ」
「そっかぁ…あかりがお寝坊さんだから仕方ないよね。」
俯いたその顔は寂しげで、なのになぜかとても可愛らしかった。

「結衣ちゃんも先に行っててよかったのに」
「そしたら、あかりがひとりになっちゃうだろ…」
呟くような小さな声で、あかりに答える。

適当にはぐらかしてもよかったのだが、寂しそうなあかりの顔を見るとつい本音がこぼれた。


「えへへ、結衣ちゃんあかりの事待っててくれてありがとう!」
花が咲いたように笑うあかり。
その笑顔が眩しくて、恥ずかしくて。

「い、いいから行くぞ!」
「わー!置いてかないでよー!」
つい恥ずかしくなって走り出した私を、慌てて追いかけてくる。
そんなあかりだから、いつからか私は恋心を抱いていた。

だが、この気持ちを本人や他の誰かに打ち明ける勇気はまだ無い。
私が臆病なうちは、こんなやり取りで十分だ。
明日があるさ。
また、明日がある。
そう自分自身に言い聞かせるのであった。


ーーー
「おーおー、降ってるねー」
「ですねぇ、朝はあんなに晴れてたのに…」
ちなつちゃんの言うとおり、朝は雲一つない晴天だった。
天気予報でも雨は降らないと言っていたが、所詮は予報なのであまり気にしていなかったが。

「はぁ、走るしかないなー…」
「ふっふっふっ、私はこんな事もあろうかと置き傘を用意していたのだ!」

「それただ持って帰るのを忘れてた傘だろ」
「結衣は厳しいなー、そんな厳しい結衣は傘に入れてやんないからな!」

「はいはい」
もともと入れる気もなかっただろ、と心の中で突っ込みながら折り畳み傘を広げる。

「結衣先輩!私結衣先輩と入り…」
「ちなつちゃんは私の傘に入るのー!!」
そんなやり取りの末、京子が無理矢理ちなつちゃんと腕を組んで雨の中に消えていった。
ちなつちゃんは最後まで抵抗してたが、まんざらでもなさそうだった。


そう言えばあかりはどうしているのだろう。
ちなつちゃんは日直の仕事が長引いている、と言っていたが流石にもう終わっているだろうと思い、あかりを探してみる。

ごらく部に来ていなかったのでまだ学内にいると思ったが、下駄箱に靴がなかった。
準備の良いあかりのことだから、きっと折り畳み傘でも持ってきていたのだろう。

そう思って私も帰ろうとした時、学校の入口に赤いお団子が見えた。

「あかり…まだ残ってたのか…」
誰に言うでも無く呟く。
あかりの手に、傘は握られていなかった。
あかりはまだ私に気付いていない。

声をかけ、自分の傘に入るように言えば相合傘で帰ることが出来る。
そんな事を考えると、傘を持つ手に自然と力が入る。
心臓がうるさい、それになんだかじんわりと汗ばんできた。

心を落ち着かせ、あかりの元へ行こうとした時。
「あれ?あかりちゃんどしたの?」
「赤座さんも傘をお忘れでしたの?」

私はなぜか隠れていた。
あの2人は確かあかりのクラスメイトで生徒会の大室さんと古谷さん…だったか。

「あ、櫻子ちゃんに向日葵ちゃん。そうなんだよぉ、今朝は晴れてたし天気予報でもお日様マークがあったから…」

「じゃあ私の傘貸してあげる!」
「ええ!?櫻子ちゃんはどうやって帰るの!?」
「私が傘を持ってますから、心配無用ですわ」

「そっかぁ。それじゃあ、悪いけど傘借りるね。ありがとう櫻子ちゃん」

そこまで聞いて、私は走り出し、敗北感を味わいながら家に帰った。
大室さんが羨ましかった。
同時に恨めしかった。
あのタイミングで出てこなければ、なんて考えてしまう私自身も許せなかった。

「はぁ…」
また次がある。
だけど、次の雨の日は、絶対。

SUKIYAKIの人の方か
期待


ーーー
帰り道、気付いた時には私はあかりを後ろから付けていた。
第三者から見れば立派なストーカーだが、この際気にしない。

ごらく部で特に何をするでもなく、だらだらと過ごした後、別れ際に
「また明日」
と、あかりに言われてからあかりと離れるのが無性に嫌になった。
もっとあかりといたい、遊びたい、傍に居たい。

なら家に遊びにでも行けばいいじゃないかと、京子あたりに言われそうだが、あかりを恋愛対象として見るようになってから恥ずかしくて言い出せずにいる。

「あかりちゃん」
「うわぁ!!びっくりした…さ、櫻子ちゃんのお姉ちゃん!?」

「覚えててくれんだ、今帰るところ?」
なにやらあかりが美人なお姉さんに話かけられているようだ。
それに、お互いやけに親しそうだ。


そんな光景を見ているとなんだか、胸が、痛くなる。
刺されるような、締め付けられるような。

「そうですよぉ。櫻子のお姉ちゃんもですか?」
「撫子でいいよ。私は夕飯の買い物、今日の当番は櫻子なんだけどいつまでたっても宿題が終わらないから」

痛みが限界になり、逃げるように走り去った。
恋人でもないのに、こんな感情をむけて、あかりが知ったらどんな顔をするだろう。
気持ち悪いと思われるだろうか。
軽蔑されるだろうか。

「クソッ…!」
私の頬を伝った涙の理由を、私は知らなかった。
悔しいのか、怒っているのか、悲しんでいるのか。
明日は、もうないかも知れない。

>>6
ごめんなさい別人です


ーーー
その日の夜、私は電話の前で立ち尽くしていた。
あかりの家に電話して、あかりと遊ぶ約束をする。
たったこれだけの事だ、なんともない。

なんとも無いのだから、頼むから、震えないでくれよ、私の指。

「情けないなぁ」
嘲るように、自分に言い放つ。
いつから私はこんなにも弱くなったのだろう。

小さい時はあかりや京子を守っていたのに。
おやびんはいつから弱虫になったのだろう。

「はぁ…」



「…あかりぃ」


恋とはこんなにも苦しいことだったのか。
ここのところ寝ても覚めても、頭の中はあかりのことでいっぱいだった。

苦しいと言えばあの帰り道。

美人なお姉さん。
はにかむあかり。

あかりの笑顔は見慣れているはずなのに。
あかりが微笑んだ名前も知らないお姉さんに、嫉妬していた。

嫉妬。

その感情を認めると、京子やちなつちゃんにも妬みの炎が燃え上がる。
もちろん私にもあかりは微笑んでくれる。

だが、それではダメなのだ。

あかりを自分だけのあかりにしたい…。



そんな狂気に満ちた思考を張り巡らせていると、ふと我に返った。
さらさらの赤毛、大きな潤んだ瞳、艶やかな唇、慈愛に満ちた性格。
こんな子を周りが放っておくはずがないのだ。


もし、もしあかりが他の誰かのものになった時、私は耐えられるのだろうか。

耐えられるはずがない。
きっと私は発狂してしまうのではないだろうか。

あかりに不名誉な効果音をつけた時も、無意識のうちにあかりを周囲の目から消させて、独り占めしたかったのでは。


「あかりが、取られる…」


そんな事は絶対にあってはならない。
取られる、と言う言い方は正しくないが、今はそんな事はどうでもいい。

脳が体を突き動かす。
さっきまで震えていた指先は驚くほど力強くアドレス帳のボタンを押し、画面に映し出された赤座あかりの文字を迷いなく選択した。

1コール、出ない。

2コール、出ない。

3コール、出な…
「もしもし?」
「こんばんは、あかり。私だよ。あのさ、次の日曜…」

>>12
すまん誤解を招いた
坂本九の方の明日があるさってこと

ーーー
「結衣ちゃんと2人で遊びに行くのってなんだか久しぶりだなぁ」
「確かに、最近はいつも京子やちなつちゃんが一緒にいたし、久しぶりだな。」
あかりはえへへ、と楽しそうに笑っている。

電話を掛けたあの夜の力強さはどこへやら、指がまた小さく震えていた。
その震えを悟られないように、ポケットに手を隠し、歩を進める。

しばらく歩き、目的地の前で止まるとあかりがわぁ、と声を出した。

「すっごくおしゃれなお店だねぇ!」
「だろ?最近オープンしたばっかりで中も綺麗なんだよ」
いらっしゃいませ、と店員の声を聞きながら入店した喫茶店。
中学生が来るには少々場違いかもしれない、そんな雰囲気を漂わせている。

「奥の席に行こうか」
「うん!」
人目に付きづらい奥の席へあかりを誘導すると、早速オーダーを取りに来た店員の為、メニューを開く。
とりあえず、私はいちごのショートケーキと、ブラックコーヒー。

「じゃあ、あかりも同じで」
かしこまりました、と店員が引っ込んでいく。


「あかり、ブラックなんて飲めるの?」
「うーん…わかんないけど、結衣ちゃんとお揃いがいいなって思ったから。」
恥ずかしそうに、はにかむあかり。
ああ、なんて可愛いんだ。

そう思うと同時に、今からこの小さな天使に言わんとする言葉を頭の中で繰り返す。
そう、たった、ひとこと。

「好きです」

と。

よし、大丈夫だ。
あとは店員がケーキを持ってきて、コーヒーも持ってきて、それで


「え…?」



「ん?」
「結衣ちゃん…今なんて…」


今?
私は喋ってないはずだ。
あかりには何が聞こえたのだろう。

「どうしたんだ、あかり?」
「だって、すごく真剣な顔で、好きですって……」



やってしまった。

全てぶち壊しだ。

まさか、まさか口に出ていたなんて。

「いや、あの、あ、あ、あれはな?だから、ほら、」
全身の血液が顔に集まるのが分かる。
おそらく、京子が見ればゆでダコだと騒ぎ立てるだろう。

冷静になろうとすればするほど空回りし、何を言いたいのかすら分からなくなってくる。
口が回らず、頭が回らず。

だが、目だけはしっかりあかりを見ていた。
自身の髪の毛より赤く染まった顔、今にも泣き出しそうな目、小刻みに震える身体。
一つ一つが、愛おしかった。


「ねえ、結衣ちゃん。」
「な、なんだい、あかり」
震える声であかりは言った。


「もういっかい、聞かせて…?」


顔の血液がさっと引いていった。

ここで、ここが、一番の頑張り所だ。

一生分の勇気を出し切って構わないと思った。


「わ、わたしは!」

言え、言うんだ、船見結衣。
「っ……!」

「赤座あかりが、大好きだっ!」


喫茶店で半ば怒鳴り散らすように叫んでいた。
もうこうなったら怖いものなんてない。

「あ、えっと、あかりも、結衣のことすきだよぉ…?」
「そうじゃない!」
「!!」
あかりの体が飛び上がる。
あかりの好きは京子やちなつちゃんにも向けられているソレと同じはずだ。


「1回しか、言わないからな」
「う、うん…」

「私と、付き合ってくれ。」

言ってやった。
結果はどうなるか分からないが、とにかく自分に良くやったと言ってやりたい。

「あ、あのね、結衣ちゃん、よく聞いてね…?」
「あ、あ、あかりは、まだ、付き合うとかそういうのわからないよぉ…」

振られた。

見事な玉砕である。
次の日からどんな顔して会えばいいんだ。
など、考えている時。

「お、落ち込まないで!まだ続きがあるから!」
「つづきぃ……?」
ダメだ、涙が止まらない。
声も震えている、ボロボロだ。
こんな状態の私にあかりはまだ追い打ちをかけるのか、と卑屈になりながらも聞いてみることにした。

「うん…だから、結衣ちゃんがあかりに、教えてくれる……?」
なんで振られた私が教えなきゃいけないんだ、と口を開こうとした瞬間。

「ん…!?」

私の口は、あかりの口で塞がれていた。
あかりは唇を離すと恥ずかしそうに俯いていた。

「なんで……振られたんじゃないのか私……?」
なぜ、どうして、なにがあった、といろいろ聞きたいことが沢山あったが最初に出たのはその言葉だった。


「ひっどーい!あかり結衣ちゃんの事振ってないもん!」
「ちゃんと、すきって言ったもん…」

「……友達として、じゃなかったのか…?」
「それ以上言っちゃだめ!!」
あかりは顔を真っ赤にして怒っている。
だが、確認しなければいけない。

「でも、付き合い方を教えてくれって……」
「あ、あれは…結衣ちゃんと付き合うって何すればいいかわからなかったから……教えてもらおうと思って…」

「じゃあ、告白の返事は…」

「あ、あかりでよかったら…よろしくお願いします…」

今にも消えそうな声で、他人行儀にも程がある言い方だったが、私は確かに聞いた。

「あかりじゃなきゃダメなんだ。こちらこそよろしく」

なんとも無難な返答で、私の一世一代の告白は幕を閉じたのであった。
その後2人でショッピングや映画館に足を運んだが全く覚えていない。
しかし、二人で歩いた確かな証拠として、このプリクラがある。

初デートとピンク色の文字で書かれているがプリクラの中のふたりは引きつった笑顔とぎこちない恋人繋ぎのせいでとてもデートとは思えない様子だった。

「ふふっ」
そのプリクラを机や冷蔵庫、ペンケースに貼ってニヤニヤしている私。
京子が見たらどんな反応するだろうか、明日はあかりになんと言って声をかけよう、と考えているうちに眠気が襲ってきた。

明日の事は明日、考えよう。
そう、私にはあかりとの明日があるのだから。

おわりです。
見てくださった方、ありがとうございます。
なんだかキャラ崩壊してたような気がしますので原作読み返してきます。
今度はしっかり書き溜めてから投下しようと思います。

>>13
こちらこそ誤解してすみません
なんとなく書きやすかったので九さんverにしてみた所存です

おつ


良かった

おわりと言いつつ後日談と言う名の蛇足
ちょこっとだけ投下します


ーーー
「テニスやろ」
京子のその一言で今日のごらく部の活動はテニスになった。
私も体を動かす事は嫌いではないし、日頃ゲームばかりしてスポーツらしいスポーツも体育の時間でしかしないものだから、むしろ楽しんでいた。

あかりとペアになれなかった事以外は。

「結衣先輩!がんばりましょう!愛の力で!」
「あー、うん。がんばろうね」
ちなつちゃんと京子にはまだあかりとの関係は話していない。
話していないからこそ、ちなつちゃんの好意がいつも以上に重くのしかかってくるようだった。

「よそ見は禁物だぜー!」
軽快な音が聞こえたと思った時には、ボールはすでにコート内でワンバウンドし、後ろの方まで跳ねていった。

「な、ずるいぞ京子!」
「ゲーム中にいちゃいちゃしてる方が悪いんだぞー!なーあかりー?」
「あ、あはは…でもいきなりサーブ打つのはダメだよぉ?」
「なんだよーあかりは今は私の味方だろ?」
あかりに抱きつく京子を見ていると今すぐにでも引き剥がしてやりたい衝動に駆られる。

あかりは私の恋人だから、気安く触るなと叫んでやりたい。
だが、そんな事を言えば私達幼馴染み3人の間柄が、ごらく部全体の空気がギクシャクしてしまうかもしれない。

そうなればきっとあかりは悲しい顔をするだろう。
あかりを悲しませない為にも、私が我慢するほかないだろう。
そんなことを考えながらテニスをしていると、1ゲームも取れずにゲームセット。


帰り道、あかりのことになるとここまで気が動転するのか、と心の中で呟き1人歩いていると

「結衣ちゃんっ」
ばあっと曲がり角からあかりが飛び出してきた。
驚いて目を丸くしていると、えへへとにっこり笑って
「驚いた?」
なんて可愛いことを言っている。

「あかり、家に帰ったんじゃないのか?」
「帰ったよぉ。でもね…」

「結衣ちゃんに会いたくなっちゃって…迷惑だったかなぁ?」

「…迷惑なんかじゃないよ。それより、あかりさえよかったら今晩泊まっていかない?」

「いいの?あかり、結衣ちゃんの家だいすき!」

「私のことは?」

「…だいすき、だよぉ」
私は、何回この子を好きになるのだろう。
好き、大好き、愛してる。
そんな使い古された言葉では、私の感情は表現できない。
でも。
「私も、大好きだよ」

「えへへ…じゃ行こっか」

「なぁ、あかり」

「なあに、結衣ちゃん?」

「今度は、あかりとペア組みたいな」

「それなら、明日京子ちゃんに言おうか。京子明日もテニスするんだーって言ってたし」

「そっか、また明日もあるんだな」
あかりに聞こえないように、呟く。
こうして大切な人の隣に居られる時間。
それが明日も約束された事が幸せで仕方なかった。

「明日があるさ、ふふっ」

ホントのホントにおわり。
また結衣ちゃんメインで何か書くのでよかったら見てやってください。
依頼だしてきます。


甘々で良かったよ

乙乙~
(もっとベタベタさせても)ええんやで?

いや結衣メインではなく結あかメインで書くべきなんだが

おつー
久々の結あかSSで満たされたよ…

結衣あかはいいものだ・・・

乙だが
ちなあか結京さくひま以外ゆるゆりには需要ないから他を書いた方がいいぞ?

お前もこの世のどこにも需要無いのにのうのうと生きてんじゃん偉そうにさぁ

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