姫「世界の半分をお前にやろう」ドラゴン「お断りします」 (9)

~ 辺境のダンジョン ~

姫「さて、ここに今朝の新聞がある。読みたまえ」

ドラゴン「おまいに渡す前に読んだがな」

姫「なら話が早い、ここに書かれている内容によれば
  『人質交渉決裂、姫様無残にも魔王軍の手にかかり死亡』
  となっている」

ドラゴン「せやな」

姫「わたし生きてるよな?」

ドラゴン「はい」

姫「そしてもう一つの新聞、これは魔王側の新聞だ
  『かわいいモモンジャの八つ子誕生!』
  もはやわたしの話題ですらない」

ドラゴン「うぃ」

姫「ここから推測するに、
  人間側はわたしが死んだ者として扱ったほうがお得
  魔王側はわたしなんて無かったものとして扱ったほうがお得
  という雰囲気がにじみ出ている、気がする」

ドラゴン「ぶっちゃけ、姫様をさらったのって魔王様の思いつきで戦略とかないし。
     人間側の枢機院も幼い第二皇女を擁立して傀儡政権作りたいから死んだことにしときたいという、ね」

姫「というわけで、わたしは世間に不貞寝を決め込むことにした」

ドラゴン「どうぞおやすみなさい」

姫「わたしはわたしの王国を創る」

ドラゴン「壮大やね」

姫「まず手始めに、お前の名前で魔王軍に謀反の決別書を届けておいた」

ドラゴン「なにしてくれてんのテメエッ!?」

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~ 一週間後 ~

老魔導師「ごはん……まだかいのぅ」

スライム「げぶる、げぶる」

アルパカ「クワーッ! クワーッ!!」

姫「これぞ我が軍団」

ドラゴン「イベントすら用意されず白骨死体となって道端に転がる未来しか見えねえ」

姫「なに、お前がいたらそれなりに何とかなる」

ドラゴン「ああ、悲しき門番。下級役職よ。
     話も聞いてもらえず即惨殺おkな謀反人になりさがるとは」

姫「どんまい、いいことあるさパルプンテ、パルプンテ」

ドラゴン「とりあえず俺に運があるなら目の前の憎たらしい女に流星が降り注ぐだろうなあ」

姫「しかし旗揚げしたし、居城が欲しいな。パパ買って、お父さんが娘にしてあげられる最後のお仕事」

ドラゴン「あんたのパパさんが君を死亡扱いで通した理由が垣間見える」

姫「よし、近場の城を奪おう。ついでに財宝と民もぶんどろう」

ドラゴン「アンタ本当に姫か?」

~ 死王の城 ~

死王「静寂なる庭園、枯れ果てた大地、腐敗の凍土。
   ああ、麗しき我が箱庭よ」

メイド「我が王よ、謀反を企てた竜の討伐命令が出ておりますが?」

死王「捨て置けい、我は死者の王。魔王の指図は受けん。
   ましてやたかが謀反を企てた竜風情に軍を狩り出すことなど……まったく」

スケルトン「死王様!! 敵襲であります!!」

死王「……なんだと?」

メイド「敵の勢力はどこか!?」

スケルトン「そ、それが……」

老魔導師「キック!」

がしゃーん!

スケルトン「ぐはーッ!?」

死王「!?」

アルパカ「キック!!」

どごーん!

メイド「がはーッ!?」

死王「ッ!!??」

姫「キック!!!」

どんがらがっしゃーん!!!

死王「キックの鬼だーッ!!」

姫「さて、城を渡すか命を渡すか、好きなほうを選べ。他の選択肢は無い」

死王「貴様! 人間風情がいきがりおって!」

姫「キック!」

ごすっ

死王「おふう!?」

姫「さて、城を渡すか命を渡すか、好きなほうを選べ。他の選択肢は無い」

死王「な、なめるなよ? 我も死者の王、これしきのローキックくらい……」

姫「キック!!」

べきっ

死王「ごふぅ!?」

姫「さて、城を渡すか命を渡すか、好きなほうを選べ。他の選択肢は無い」

死王「あ、ちょっ……いや、まじで……ひざにキテる、ひざにキテるからこれ」

姫「キック!!!」

がすっ

死王「ああん!?」

姫「さて、城を渡すか命を渡すか、好きなほうを選べ。他の選択肢は無い」

死王「あの……、その……、城のほうで、お願いします……」

姫「キック!!!!」

べこっ

死王「狙いは命一択ッ!?」

ドラゴン「泣きながら逃げていったな、死王さん」

姫「上に立つ者ほど身体を使わず不摂生な生活を送っている。
  城壁をドラゴンによって乗り越えられ、玉座まで侵入された時点で勝敗は決していたのだ」

ドラゴン「ふん、それでこいつらどうする?」

メイドとスケルトン「ひぃッ!?」

姫「そうだな。お前たち、
  『さて、命を渡すか命を渡すか、好きなほうを選べ。他の選択肢は無い』」

スケルトン「ご無体な!?」

メイド「命をお渡ししますご主人さま!」

姫「よし、そっちの骨は?」

骨「うっ、お渡ししま……ってリネームされてるぅ!?
  飼っている犬に近所のクソガキが勝手に名前付けてた時くらいの屈辱ぅ!?」

姫「がんばれベス! 負けるなベス! ボビーが側溝からお前の彼女を狙っているぞ!」

ベス「もうわけわかんねぇよ! ボビーって誰だよ!!」

姫「よし、領地も手に入れたし内政に励むか」

ドラゴン「あたりは見渡す限りの荒野ですがな」

姫「まずは近隣諸国に戦争をふっかけて人攫いを繰り返し、奴隷を揃えて労働力を確保だ」

ドラゴン「内政はどこいった?」

姫「奴隷といっても九公一民の精神で税を課し、後は何も束縛しない素敵な奴隷ライフを提供する。
  これにより、最適な法が奴隷間で自然発生する試みだ」

ドラゴン「すげえ、搾取だけしといて放置とか悪意しか感じない」

メイド「あの、お手紙が届きました」

ドラゴン「うん? 誰からだ?」

メイド「えっと、差出人は『真魔王』とか」

ドラゴン「真魔王だあ?」

姫「ほう? 貸してみろ? ……ふむふむ」

ドラゴン「なんて書いてある?」

姫「城よこせ、首よこせ」

ドラゴン「お前と同じ思考回路の持ち主か、どうする?」

姫「歓迎しよう、そして気を許したところで後ろからズドン、身包みを剥いでポイでコンプリートだ」

ドラゴン「いつもの君で安心した」

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