【ゆるゆり】結衣「おひるねゆにばーす」 (22)

こんばんは。
ゆるゆりの結京SSを書きました。

すっごく短いんですが、その分沢山の想いを凝縮しました。
楽しんで頂けると嬉しいです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1447672188

目を開けると、目の前が真っ赤だった。

──ああ、ゲームしながら寝ちゃったのか。

まだぼんやりとした頭が、少しずつ今自分がいる状況を理解する。


少し冷えたつま先を毛布に包み直すと、じんわりと暖かくなった。

毛布からはみ出した肩も少し冷えているが、敢えてそのままにする。

まだ少しふわふわする身体を少し動かし、目の前に広がる赤色に鼻先を擦り付ける。

昨日洗ったばかりのそれは太陽の匂いに満たされていて、寝起きの頭いっぱいに心地良い暖かさをくれた。

「んー……」

背中にくすぐったさを覚えたのか、赤色の主は向こうを向いたまま、ぴくりと身体を揺らす。

受け入れてくれている安心感がくすぐったくて、自然と口元が綻んだ。

何語ともつかない寝言を漏らすそいつに、邪魔してごめんな、という気持ちを込めて上になっている左腕を巻きつける。

少し柔らかいお腹を撫でながら、さっきよりもほんの少しだけ強く、背中に頬を押し付ける。

暖かい体温が頬を温め、自分と同じ匂いがふわりと鼻腔をくすぐった。

互いの優しい匂いと気持ちが入り混じるこの瞬間が、私は好きだ。

きっと、こいつは気付いているんだろうと思う。
私が毎度、こうしている事を。


でもこいつは、気付いていないふりをする。

私も、気付かれていないふりをする。


互いに悪く思っていない事なんて分かっているし、今更それについて話しても、照れ臭くなるだけだから。

ふと、こいつを少しだけ困らせたくて、少しだけ背中に頬擦りをしてみる。

ふふ、どうだ。
私が何を考えてるか、分からないだろ。

くすぐったいか? 恥ずかしいか?

……私もだ。

「んぅ……ゆいー……?」

声の主はそう言い、ゆっくりと私の方に寝返りを打った、ふりをする。
私は同じ方向に転がって避ける。

こういう事には慣れてないもんな。
狸寝入りなんてしても、私には分かるんだからな。

照れ屋さんめ。
まぁ、そこが可愛いんだけどさ。

「んー……?」

目を閉じたまま、赤い着ぐるみパジャマからはみ出した手を気怠そうに動かす。

自分の安眠を脅かした犯人を捜しているようだ。

つん。

手の平を指先でつついてやると、ぴくりと指先を動かして反応する。

つん。


……つん。

きゅ。

あちゃ、捕まっちゃったか。

タイミングずらしたのになぁ。

苦笑しながら、柔らかく握られた手の中から指を引き抜いた。


考えてみれば悪戯を咎められたようなもの。
ばつが悪い筈なのに、嫌な気分じゃない。

もっとも何もしてこなければ、それはそれで続きを楽しむつもりだったのだけど。

だらりと伸ばした四肢はそのままに、少し長いまつ毛同士が、ゆっくりと離れていく。

そいつは天井を向いたまま、ぼんやりと口を開いた。

「ゆい……どこー……?」


なんだ、やっぱり起きてたんじゃないか。

とぼけるならもっと上手くとぼければいいのに。

私がいる場所なんて大体見当はついてるくせに、わざと聞いてくるのが可愛くて、思わず口元が緩んでしまう。

そこまでして私から来て欲しいのか。
まったくしょうがないな。


ここにいるよ、という返事の代わりに、再び指先を手の平に乗せる。

私よりも少し小さく細い指先が、私の指の側面をすりすりとなぞった。

ふふ、くすぐったいよ。

そいつは再び寝返りをうち、身体ごとこっちを向く。

半分開かれた目と、私の目がお互いをぼんやりと見つめ合う。


「どうかしたか?」

「……んーん、なんでも」

「そっか」

「ん」


まだ少し眠そうな優しい笑顔と、少し照れくさい笑顔がお互いを認め合い、再びどちらからともなく目を閉じる。

私の頭を優しく引き寄せ、髪に鼻を埋めると、再びすぅすぅと寝息をかき始めた。

どうせ、寝てなんていないくせに。


私はそれを咎める事なく受け入れる。

「ゆいー」

「ん」

「好きだよ」

「知ってる」

「へへ」


少しずつその気になり始めた冬がくれた、心地良い時間だった。

おしまいです。

ほんと短くて、スレッド無駄遣いして申し訳ないです。

ちなみにこの後は二人がちゅっちゅし出すわけなんですが、雰囲気壊れるので脳内補完でお願いします。

ありがとうございました。

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