【ゆるゆり】結衣「おひるねゆにばーす」 (22)
こんばんは。
ゆるゆりの結京SSを書きました。
すっごく短いんですが、その分沢山の想いを凝縮しました。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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目を開けると、目の前が真っ赤だった。
──ああ、ゲームしながら寝ちゃったのか。
まだぼんやりとした頭が、少しずつ今自分がいる状況を理解する。
少し冷えたつま先を毛布に包み直すと、じんわりと暖かくなった。
毛布からはみ出した肩も少し冷えているが、敢えてそのままにする。
まだ少しふわふわする身体を少し動かし、目の前に広がる赤色に鼻先を擦り付ける。
昨日洗ったばかりのそれは太陽の匂いに満たされていて、寝起きの頭いっぱいに心地良い暖かさをくれた。
「んー……」
背中にくすぐったさを覚えたのか、赤色の主は向こうを向いたまま、ぴくりと身体を揺らす。
受け入れてくれている安心感がくすぐったくて、自然と口元が綻んだ。
何語ともつかない寝言を漏らすそいつに、邪魔してごめんな、という気持ちを込めて上になっている左腕を巻きつける。
少し柔らかいお腹を撫でながら、さっきよりもほんの少しだけ強く、背中に頬を押し付ける。
暖かい体温が頬を温め、自分と同じ匂いがふわりと鼻腔をくすぐった。
互いの優しい匂いと気持ちが入り混じるこの瞬間が、私は好きだ。
きっと、こいつは気付いているんだろうと思う。
私が毎度、こうしている事を。
でもこいつは、気付いていないふりをする。
私も、気付かれていないふりをする。
互いに悪く思っていない事なんて分かっているし、今更それについて話しても、照れ臭くなるだけだから。
ふと、こいつを少しだけ困らせたくて、少しだけ背中に頬擦りをしてみる。
ふふ、どうだ。
私が何を考えてるか、分からないだろ。
くすぐったいか? 恥ずかしいか?
……私もだ。
「んぅ……ゆいー……?」
声の主はそう言い、ゆっくりと私の方に寝返りを打った、ふりをする。
私は同じ方向に転がって避ける。
こういう事には慣れてないもんな。
狸寝入りなんてしても、私には分かるんだからな。
照れ屋さんめ。
まぁ、そこが可愛いんだけどさ。
「んー……?」
目を閉じたまま、赤い着ぐるみパジャマからはみ出した手を気怠そうに動かす。
自分の安眠を脅かした犯人を捜しているようだ。
つん。
手の平を指先でつついてやると、ぴくりと指先を動かして反応する。
つん。
……つん。
きゅ。
あちゃ、捕まっちゃったか。
タイミングずらしたのになぁ。
苦笑しながら、柔らかく握られた手の中から指を引き抜いた。
考えてみれば悪戯を咎められたようなもの。
ばつが悪い筈なのに、嫌な気分じゃない。
もっとも何もしてこなければ、それはそれで続きを楽しむつもりだったのだけど。
だらりと伸ばした四肢はそのままに、少し長いまつ毛同士が、ゆっくりと離れていく。
そいつは天井を向いたまま、ぼんやりと口を開いた。
「ゆい……どこー……?」
なんだ、やっぱり起きてたんじゃないか。
とぼけるならもっと上手くとぼければいいのに。
私がいる場所なんて大体見当はついてるくせに、わざと聞いてくるのが可愛くて、思わず口元が緩んでしまう。
そこまでして私から来て欲しいのか。
まったくしょうがないな。
ここにいるよ、という返事の代わりに、再び指先を手の平に乗せる。
私よりも少し小さく細い指先が、私の指の側面をすりすりとなぞった。
ふふ、くすぐったいよ。
そいつは再び寝返りをうち、身体ごとこっちを向く。
半分開かれた目と、私の目がお互いをぼんやりと見つめ合う。
「どうかしたか?」
「……んーん、なんでも」
「そっか」
「ん」
まだ少し眠そうな優しい笑顔と、少し照れくさい笑顔がお互いを認め合い、再びどちらからともなく目を閉じる。
私の頭を優しく引き寄せ、髪に鼻を埋めると、再びすぅすぅと寝息をかき始めた。
どうせ、寝てなんていないくせに。
私はそれを咎める事なく受け入れる。
「ゆいー」
「ん」
「好きだよ」
「知ってる」
「へへ」
少しずつその気になり始めた冬がくれた、心地良い時間だった。
おしまいです。
ほんと短くて、スレッド無駄遣いして申し訳ないです。
ちなみにこの後は二人がちゅっちゅし出すわけなんですが、雰囲気壊れるので脳内補完でお願いします。
ありがとうございました。
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