敏恵「ストライクウィッチーズ……じゃないの?」 (934)

ストライクウィッチーズ世界のssです


下記スレ↓ の私設定を拝借した3次創作的なものをまったり投下していきます

【ストライクウィッチーズ】私「501統合航空戦闘団」【オリジナルウィッチ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441545211/))


※舞台は45年時(アニメ2期頃)、501ではありません

※一部を除きほぼ全ての登場人物が創作キャラなので注意

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1447492531

 



――――人類の脅威とか、世界を救うとか




「……ぅぁあぁああ゛あぁ゛あああ゛あっ!!!」


『――ぃ! 工藤そぅ…~ッ……答しろ! 直ぐ……脱しッ…ッ……』



そういうのに興味は無かったし、…対岸の火消しで命を落とすなんて絶対嫌だった



「――…っはぁ……はっ…、……はぁっ…!」


『ば…馬鹿な! あぃ‥~ッ……りで倒し…ッ…のか!?』


「…はっ……はぁ゛………ひゅ…、…っはぁ…!」



なのにあたしは覚えてしまった


あの夜以来、喉がよく乾くから――



「……っあふ…、……っは……はぁっっ…!!」




――――だから鼬は刃を構え、飢える妖怪になった










『――…おい、起きろ』



…………あれ?



『まったく、仕方の無い…』



……なんか聞き覚えのある声が――



『おら起きろ、いたちっ!』



いだっ!? いだだだーっ!!


~~~~~~~~~~~~





敏恵「んぃ゛……、いぃっ……ひぁゃひゃ!?」

小園「ようやく応えたか。世話の焼ける」

 


 ストライクウィッチーズ ~月影の構え太刀~


 

 
【プロローグ】


敏恵「ぅぃぃ……やめ、やめへよ園ひゃ~ん…」ジタジタ

小園「口はいいからさっさと目を開けろ、阿呆」ペシ

敏恵「~っ……ひぃ…酷いですよ、もぉ…」ムクリ

小園「私が優しいうちに起きればそうはならない」

敏恵「なに言ってるんですかもぅ。……ていうか外見てくださいよ、まだ明るいじゃないですかぁ…」

小園「だからわざわざ起こしに来てやったんだ。いいから早く着替えろ、出掛けるぞ?」

敏恵「でかける? ……どこにですか?」

小園「ベルギガだ」

 
敏恵「へ…? ベルギガって確か、欧州ですよ?? ……しかもけっこう前線」

小園「今朝お前の援戦派遣を受け入れる先がようやく決まった。 カールスラントの夜間戦闘航空団だ」

敏恵「えっ!? あの話本気だったんですか!?」

小園「何を今更、冗談な訳ないだろ。魔法力が尽きるまでお前は此処で毎晩フラつくつもりか?」

敏恵「……だってあたし、テストウィッチだもん。園さんの手伝いしてるじゃん…」

小園「盛り歳のウィッチには勿体無い仕事でもある。…いつまでも持て余すなと上に睨まれてるんでな」

敏恵「ぅ…! …ごめんなさい園さん、あたしのせいで」

小園「いい、私もお前に言うような話ではなかった。すまないな」

敏恵「……」

 
小園「…ともかく決定は覆らない。今から軍港へ向かうぞ?」ガラ

敏恵「でも、そんな急な…」

小園「つべこべ言うのは後にしろ、ほら荷造り急げ」ゴソゴソ

敏恵「あぁっ、ちょっと! あたしのズボン勝手に漁らないでくださいよぉ!?」

小園「ならさっさと動け、出航に遅刻する」

敏恵「…わ、わかりましたよ。もぉ…」ノソノソ

小園「一種服を忘れるなよ、向こうはまだ寒い」

敏恵「はいはい、知ってますよ」ヨイショ

 
小園「……」

敏恵「ふぁ…ぁあ~~……むぐ…。やっぱりまだ眠い…」

小園「……工藤、よく聞け」

敏恵「は~い、今度はなんですか?」ゴソゴソ

小園「今の欧州は5年前と違う」

敏恵「…?」

小園「しかしこちらもそれは然りだ。私の見立てでは、もうあの時の二の舞にはならないと踏んでいる」

敏恵「!」ピタ

 
小園「我々がこれまでやってきた事、…お前という存在が通用するか“そこ”で試せ」スッ

敏恵「…………」チラ

小園「ほらどうした? 資料だ、受け取れ」

敏恵「…はい」オズオズ

小園「向こうへ着くまでに最低限目は通しておけよ?」

敏恵「……これ、誰ですか?」ピラ

小園「お前がこれらか厄介する、第四飛行隊の隊長だ」

敏恵「ふ~ん……美人さんですね?」ジー

小園「軍事にことさら興味の無いお前は知らないだろうが、有名人だぞ? そんな紙切れ一枚で相当値が張る」

何処のクロス?

>>10
すみません、クロスではなく創作キャラクターです
要所にメモ程度の捕捉を付けるようにします

 
敏恵「…というか経費で落とせたんですか? このブロマイド」

小園「いや、勿論お前の給料からだ」

敏恵「ちょっ!?」ガーーンッ

小園「だからそれはくれてやる」

敏恵「また勝手に、本当やめて下さいよぉ」ガク

小園「彼女の夜間撃墜数はカールスラントでも随一。世界でも最高峰と言われるナイトウィッチだ」

敏恵「…………(ナイトウィッチ、ねぇ…)」

小園「現地で学ぶ相手の顔くらい、覚えておけ」

 
敏恵「……園さん。あたし、正直行きたくないですよ」

小園「ん?」ピク

敏恵「今のあたしがいるのは園さんのおかげです。だから、夜間専従だって今までやってきました」

小園「……」

敏恵「でも、あたし本当は――」

小園「安心しろ、工藤。私も同行してやる」

敏恵「……」

小園「私の為に報いてくれると言うなら、これもそうだと思えばいい」クル

敏恵「…園さん」

小園「先に行って待つ、とにかく支度を急げ。……眠り足りなければ移動中に寝かせてやる」スタスタ


バタン


敏恵「……」

敏恵「夜間戦闘航空団、か…」

 
登場人物メモ


・工藤敏江(くどう としえ)

扶桑皇国海軍大尉、17歳の夜間専従航空歩兵
(※概要設定については>>1記の引用先スレを参照のこと)

明るく人見知りをしない気質。自称「普通の女の子」


・小園里葉(こぞの さとは)

扶桑皇国海軍佐官の元ウィッチ、25歳

工藤の新米時代からの上司、海軍愛称は園さん。
現在は国産ストライカーユニットの開発にも携わっている偉い人

とりあえずここまでで一息

※注意※

連投すみません、ちなみに>>1記述の“私設定”というのは 私(わたくし)設定 という意味です。
引用先スレは>>1によるものではなく、他者様の内容ですのであしからず

 
【第一話 着任】


―1945年―

ベルギガ領 サン・トロン基地



ハイデマリー「…………」カキカキ



コンコンッ

『隊長ー! いますかー?』



ハイデマリー「! …はい。空いてますからどうぞ」コト



『……返事が聞こえないなぁ?』



ハイデマリー「ぁ、すみませんっ……あの――」


『まいいや、開けますよー?』


ガチャ


エステル「あ、やっぱりここにいましたね?」スタスタ

ハイデマリー「…はぃ」

 
エステル「もぉー、隊長はホントに真面目なんだから。机にばっかり座ってるとせっかくの綺麗なお尻が型崩れしちゃいますよ?」

ハイデマリー「そ、そんなことは…」

エステル「いーえっ! 形変わっちゃいます! 私の友達はそれで骨盤歪んだんですから!」

ハイデマリー「ぇ…ぁ、ぃぇ……そっちじゃなくて… //」

エステル「偶にはレストタイムにも顔出してくださいよね? ルーツィア先輩がちょっと煙いですけど」

ハイデマリー「……はい。こっちの仕事が済んでいるときは是非」

エステル「そんなの片付く訳ないですよ、毎日毎日報告書を細かーーく書いてるんですから! 隊長は頑張りすぎです」

ハイデマリー「……」

 
エステル「…て、すみません。お説教しに来たんじゃないんだった――」

エステル「はい、これどうぞ? ハルテちゃんが作ったマジパンです」コト

ハイデマリー「わぁ…! ……ありがとうございます」

エステル「無くなっちゃったらまだありますから、こっちにも来てくださいね?」

ハイデマリー「はい。…頂きます」ハム

ハイデマリー「(ぁ、シナモン…!)……美味しい」

エステル「ですよねー? 流石ハルテさん、味の上品さに育ちを感じますね」

ハイデマリー「ぁむ……~」モグモク

>>22訂正


エステル「…て、すみません。お説教しに来たんじゃないんだった――」

エステル「はい、これどうぞ? ハルテちゃんが作ったマジパンです」コト

ハイデマリー「わぁ…! ……ありがとうございます」

エステル「無くなっちゃったらまだありますから、こっちにも来てくださいね?」

ハイデマリー「はい。…頂きます」ハム


ハイデマリー「(ぁ、シナモン…!)……美味しい」

エステル「ですよねー? 流石ハルテちゃん、味の上品さに育ちを感じますね」

ハイデマリー「ぁむ……~」モグモク

 
エステル「――ん? あっ、そういえば隊長!?」

ハイデマリー「~…はい! …~ッンク……なんですか?」

エステル「アレって確か今日ですよね?」

ハイデマリー「…? アレ、というのは?」

エステル「扶桑のウィッチですよ! 今日ここに来るんですよね!?」

ハイデマリー「ぁ、援戦武官の事ですね? はい、随行の方ともうすぐこちらに到着する予定です」

エステル「うっわぁ……ホントに来るんだ」ウゲー

ハイデマリー「エステル少尉? …どうかしたんですか?」

 
エステル「いや、うん…。……私、他国のウィッチって初めてなんです。なんか不安で…」

ハイデマリー「…そうだったんですか」

エステル「ていうか、そもそも私達はカールスラント空軍の飛行隊ですよ? 連合の統合戦闘団でもないのになんで外国人が入隊するんですかっ!?」ズイッ

ハイデマリー「ぃぇ、あの…入隊する訳ではなくて…。扶桑海軍との共同戦線という形に――」

エステル「それなら扶桑の“部隊”が“戦地”で一緒になるのが普通じゃないですか! なんで扶桑人がうちの基地に配属されるんです!?」ズイズイッ

ハイデマリー「ぇ、えっとそれは……ぁの…」タジ


――コンコンッ


ハイデマリー「!」

エステル「!?」

 

『…失礼、扶桑海軍の者です。 御約束の時間通りにお伺いしたのですが、出直した方がよろしいでしょうか?』


ハイデマリー「ぁ、い…ぃぇ! お待ちしてました、開いてますのでど――」ガタ


『…ほら、シーンてしちゃいましたよ? 空気読んでくださいってば』

『うるさい。お前にだけは言われたくない』


ハイデマリー「ぅ……(また聞こえてない…)」

エステル「~ッ! 開いてますからさっさとどうぞーーっ!!!」

ハイデマリー「!? …しょ、少尉…!」


『……怒ってますよ?』

『黙れ。ほら行くぞ、ビシッとしろ』

 

ガチャ


小園「失礼します」

敏恵「……」


エステル「っ~…(どっち? どっちの巨乳だ!? ……ていうかどっちも巨乳じゃん!ちくしょう!!)」グヌヌ

ハイデマリー「…エステル少尉。退室しなくても結構ですからその、失礼だけは…」オロオロ


小園「御初に目にかかります。私は扶桑海軍大佐、小園里葉です。此奴を無事連行するために同行した次第」

敏恵「…変な事言わないで下さいよ」

 
ハイデマリー「お待ちしておりました小園大佐、初めまして。…カールスラント空軍第一夜間戦闘航空団第四飛行隊長を務めます、ハイデマリー・ヴァルプルガ・シュナウファー大尉です」スタスタ

小園「! ああよかった、やはり君の方か。いやいや、てっきり…――」チラ

エステル「…!」ピクッ

小園「御会い出来て大変光栄ですシュナウファー大尉。貴嬢の武功は扶桑の地にも轟いてますよ」ス

ハイデマリー「…恐縮、です //」ニギ

敏恵(写真通り綺麗な雰囲気の人だなぁ。 …ハイデマリーさん……マリー…、……マリ! マリさんにしよう)


小園「いやそれにしても流石、勲に劣らない貫禄をお持ちだ。 かなり御若い隊長殿と聞いてましたが、これではうちの工藤が幼児に見えてしまう」ハハハ

敏恵「! ゃ…ちょっといい加減にして下さいよ園さん!?」

エステル「…~~っ!!(こぉんのおばさん……私の方がお子様に見えてたって言うのね~~っ!!?)」ムカムカ

ハイデマリー(ぅ、エステルさんやめて…)

 
ハイデマリー「ぁ…あのところで小園大佐! よろしければ、そちらの方の御紹介を…?」

小園「ん? おっと、申し訳ない。そうでしたね」


敏恵「……」

小園「おい工藤、挨拶しろ」

敏恵「……~」ツーン

小園「今更何恥ずかしがってる、しっかりやれ!」

敏恵「……園さんが変なことばっかり言うから…」ムス

小園「文句は後で聞く、ほら急げいたち!!」バシッ

敏恵「……了解」

エステル(ん?? イタチ…? どこかで聞いたような――)

 
敏恵「扶桑海軍大尉、…工藤敏恵です。此度は御多忙の中迎えていただき、誠に感謝いたします」

エステル(――ッ!!?)

敏恵「恐縮ながら、援戦武官としてこれから貴隊にお世話になりますので――」

敏恵「…どうぞ、よろしくお願いいたします」ペコ

ハイデマリー「はい、ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、これからよろしくお願いします工藤大尉」

小園「はぁ~…。そうやってお前はちゃんとやれる奴なんだから、言われる前に出来るようになれ」

敏恵「……だからそういうの、恥ずかしいですからやめてって――」

エステル「あ、あのっ!!」

ハイデマリー「!?」ビクッ

小園「ん?」

敏恵「…?」

 
エステル「ほ、ホントに工藤……敏恵…なんですか!?」


敏恵「…………」

エステル「っ…」






敏恵「……ぇ? あっ、あたし?」

小園「私が工藤敏恵でどうする。お前だ、お前」

エステル「……」ポカーン


敏恵「えと…はい。 そうですよ、工藤敏恵です。よろしく」ペコ

エステル「…えっ、ぇ…ホントに!? あの工藤敏恵!?」ガーン

ハイデマリー「エステル少尉、少し落ち着いて…(いきなり呼び捨てたらダメ…)」

 
敏恵「…?? どの工藤かは知りませんが、確かにそれは私の姓名だけど?」

エステル「ビ、ビ……ビフレスト作戦の!? なんで今頃…!?」

敏恵「はい?」

小園「…ああ、そういう事か――」スタスタ


小園「失礼、お嬢ちゃん?」ニコ

エステル「!?(“お嬢ちゃん”!!?)」

小園「こいつは昔欧州でも転戦した経験がある。君の御期待通り、ナイトウィッチの工藤敏恵だよ」

エステル「ッ~~!!」

ハイデマリー「……ぁ、そういえばまだ名前は隊内周知を出してなかった! …すみません少尉」

敏恵「…? 園さん、この子なんで驚いてるの?」ネェネェ?

小園「自覚のないお前に行っても無駄だ」

 
エステル「…ッ……ま、マジ…? ホントにこの巨乳が“夜の女王〈ヘリン ディア ナハト〉”…!?」ワナワナ

敏恵「あ、あはは…。やっぱり驚かれちゃいましたね、これ? //」タユン

小園「乳房の話じゃない、手を下ろせ阿呆」


エステル「たたた、隊長!! どうするんですか!? よりにもよって夜の女王なんかうちに入れてぇーっ!!」ガバッ

ハイデマリー「ぇ…? ですから、援戦武官として一緒に――」

エステル「ちっがいますよぉー!! そうじゃなくてぇ~~!!」クワッ

ハイデマリー「ひっ…!?」ビクッ

エステル「あっ…! す、すみません隊長! …もう凄みませんから、そんなに怯えないで下さい?」

ハイデマリー「っ……」

 
小園「……あ~、ちょっとお嬢ちゃん。いいかな?」


エステル「!!」カチンッ


小園「そちらで多少の連絡不足も有ったみたいだし…君が戸惑う気持ちもわかる、うん。だから今の内に聞きたい事があれば私が答えよう」

エステル「ッ……もぉ~し訳ありませんが大佐殿!?」ギロ

小園「ぉ、おお? …どうした?」

エステル「自分は誇り高きカールスラント空軍“第一夜戦四隊”のエステル・バルシュミーデ少尉! 今年で隊長の2つ歳上であ、り、ま、すっ!!」

敏恵(エステル……可愛い名前だなぁ)

小園「お、おぉ…これは失礼少尉殿。ははは…」アセアセ

エステル「む~~!」

ハイデマリー(お願い少尉、それ以上はもうやめてぇ…)ハラハラ

 
エステル「…ふんっ! それで? どうして女王様がここに来たんですかぁ?」ジト

小園「ん、オホンッ! …それはだな、色々と込み入った事情はあるんだが――」



ハイデマリー「……」

エステル「……」ジロー



小園「…まぁ掻い摘んでだが、ざっくばらんに話そう(シュナウファー大尉以外に用件はないんだが…まあいいか。あの子なんだかおっかないし)」ハァ

敏恵「園さん?」

 
小園「……実はこの工藤大尉はナイトウィッチにしては少し特異でね。こちらの立場としては、今後どういった形で活躍させるべきかを実戦地で判断したいのですよ」

エステル「…?」

ハイデマリー「特異…と仰いますと?」

小園「いやいや申し訳ないね? 全てを明かしてしまうとせっかくの受け入れを拒否されかねんと思ったもので」ハハハ

ハイデマリー「はあ…?」

エステル「…いやだからっ、その特別なことっていったいなんなんですか!?」ムガー

小園「ん? ああ、そうだったな」

エステル「…ったくもぅ」ムス

敏恵(なんかぷりぷりしてて可愛いなぁエステルちゃん。背もちっちゃいし)

 
小園「まあ優秀な貴君等の前でお恥ずかしい限りなんだが」フゥー

小園「実を言うとこの工藤大尉は――」




小園「…魔導針が使えない」




エステル「!?」

ハイデマリー「……。ぇ…??」

小園「夜間航空歩兵として必須魔法、大前提の能力が無い」

エステル「ぇ…えっ、ホントに…!??」

小園「本当だ、全く無い。からっきしだ」

敏恵「ちょっと園さん、強調しないで下さいよ…」

 
ハイデマリー「…ですが大佐? 工藤大尉はこれまでナイトウィッチとしてご活躍された筈。レーダーを使わずに夜間の哨戒もされたのですか?」

小園「勿論。…但しこいつの場合、それは所謂“警邏”ではない」

敏恵「……」

エステル「どういうこと?」

小園「夜間とは言っても専門はもっぱら戦闘の方。だから航路巡回を繰り返し、接敵した手当たり次第をその場で追い詰め殲滅する」

エステル「!」

ハイデマリー「……」

小園「夜の衛兵と言うより寧ろ番兵。それがこいつ単独に期待出来る哨戒任務、でしょうかね?」

敏恵「……」

エステル(あの撤退戦の殿で夜間撃墜しまくった、超危ないナイトヒッターって噂だけど……そういうことだったの!?)

 
ハイデマリー「…それで私達夜間飛行隊に協力して頂けるとお考えになったのですか?」

小園「……まあ、そういう事です。下手物とはいえ実力は私が保証しますよ。こういうタイプのウィッチは稀有ですから、是非お好きに使ってみてください」

敏恵「あのー、あたし貴方の教え子ですけど? 言いたい放題過ぎですってば」

ハイデマリー「……」

小園「上手くやれば必ず戦力として役立ちましょう、索敵と援護を担える仲間がいれば最も効率よく生きる。貴君の様な優秀な者達と戦える事はこいつにとっても有益なのです」

ハイデマリー「……。理解しました」

小園「…少尉殿は、これでいいかな?」ニコ

エステル「! …ま…まぁ、とりあえず」プイ

 
小園「ん、では私はこれで失礼させていただきますよ」

敏恵「へ…? あれ、園さん帰っちゃうんですか!?」

小園「月光の後継開発に呼ばれてるんだ。遣欧対象はお前だけだしな、私は国に戻る」

敏恵「えっ!? あたし知らないですよそんなの!」

小園「我慢しろ、お守りはしばらくお預けだ。お前もいい加減自立しなきゃな?」

敏恵「っ! …それ逆じゃないですか。あたしが園さんの面倒みてるんですよ、酔っ払って迷惑かけないように~?」

小園「……すまない大尉、そういう訳なので私はもう行かせて頂く。何かあれば悪いが追って連絡して欲しい」クル

敏恵(逃げた!)ガーン

ハイデマリー「ぁ、はい。…有難うございました」

 
小園「…という訳で、後は暫く頑張れ工藤」ポンポン

敏恵「ちょっと園さ――」


小園「わかってるな? …出来るだけ諸刃は抜くなよ」ヒソ

敏恵「!」


小園「……ではな、いたち」スタスタ


――バタン



敏恵「……はぁ~ぁ…(付いて来るって言ったのに、騙された…)」ガク

ハイデマリー「工藤大尉」

敏恵「! あ、はい?」

ハイデマリー「……」モジ

敏恵「?」

ハイデマリー「ようこそ、夜間第四飛行隊へ。その…――」

ハイデマリー「…貴方のお越しを、歓迎します」

敏恵「…!」

 
敏恵「……はは。ありがとうございます、“隊長”?」ニッコリ

ハイデマリー「! ……はぃ… //」

敏恵「ふふ(よかった、とりあえず隊長さんはいい人そうだなぁ)」

エステル「ちょっとぉ~!」ズカズカ

敏恵「わっ!」ドキッ

エステル「気安く隊長とか呼ばないでくれませんかぁ? 隊長は私達の隊長なんですから~!」

敏恵「ぁ……そっか、そうだね?」

エステル「そうよ! …まぁ、もう決まった事ですし? 階級は一応私が下なので大人しく認めますけど――」フン


エステル「ここは私達カールスラント人の飛行隊ですからね!?」ビシィ






エステル「…てあれ!? いないし!」キョロキョロ

エステル「!」




敏恵「――あたし正式には隊員じゃないからなんて呼べばいいかな? 階級とかは一緒だよね?」アクシュ アクシュ

ハイデマリー「ぁ…、えっと……工藤大尉の呼びたい様にして頂いて結構です」

敏恵「本当!? じゃあマリって呼んでもいい? あたしのことも大尉じゃなくて友達みたいに呼んでいいよ、扶桑海軍では皆そうだから」

ハイデマリー「は、はぃ…。じゃあ……く、工藤…さん //」モジ

敏恵「…もしかして遠慮してる? 敏恵でもいいよ? 敬語も要らないし」ジー

ハイデマリー「ぃ、ぃぇ…そんな… ///」オド


エステル「~~ッ!!? ゴラァーーーっ!!!」

 
登場人物メモ


 ハイデマリー・W・シュナウファー(Heidemarie W Schnaufer)

※原作キャラクター※
(基本的な情報は原作関連資料を参照のこと)

【当SS内の設定】
45年現在、所属の第一夜間戦闘航空団の第四飛行隊での隊長を務める。夜間撃墜数100機前なのでまだ大尉。
佐官へ昇進の前段階として分隊指揮・運営経験を積むため、一時本部を離れて現在の位置に置かれている。


 エステル・バルシュミーデ(Esther Ballschmiede)

帝政カールスラント空軍少尉、第一夜間戦闘航空団第四飛行隊所属17歳のナイトウィッチ。
夜型生活のせいなのか、歳の割にいろいろと発育が悪い。

郷土愛と負けん気が強く、凄むとけっこう怖い。チビなのに

ちょっと休憩

 
廊下


ハイデマリー「…あの、工藤さん」スタスタ

敏恵「ん、なに?」スタスタ

ハイデマリー「今までいた所では、その…他にナイトウィッチはいらっしゃらなかったんですか?」

敏恵「あー…、うん。 やっぱり数少ないみたいだね夜間専従って? でも扶桑は大陸領土もそれなりに平和だし、毎晩適当に飛んでるだけだから楽だったよ?」

ハイデマリー「ぁ、いえ。そういう意味ではなくて…」

敏恵「んー?」

エステル「――貴方一人じゃナイトウィッチの役目になんないでしょってことを言ってるんですよ(隊長に近すぎだっての!)」ズイ

敏恵「おっとと!? ……え、そう?」

 
エステル「レーダーが使えないのに!! 夜間の空飛んで、いったいなにすんのって事です!」

敏恵「…? いや、だから適当に飛んで――」

エステル「それじゃあんたがいる意味ないでしょー!?」ムガー

ハイデマリー「ッ…!」ビクッ

敏恵「…て言われても、任務だったし。あたしもそう思うけどね?」

エステル「…あ~もう、未だに信じられない。これが噂の夜の女王なの…?」ガク

敏恵「なに夜の女王って? 誰のこと?」

エステル「……貴方のことですけど。なんか違う気がしてきた…」

 
ハイデマリー「あのエステル少尉? 私もその夜の女王と言うのは知りません。工藤大尉の事なんですか?」

敏恵「へ? あたしの事なの?」

エステル「ぁ、そっか。隊長は知らなかったんですねあの噂」

ハイデマリー「噂…ですか?」

エステル「もう古いっていうか…皆忘れてるような話なんですけど、一時期ナイトウィッチの中でちょっと流行った話がありまして」

ハイデマリー「……」

敏恵「へぇ~」

エステル「…貴方の事ですからね? 工藤敏恵大尉殿」ジト

敏恵「は、はい…ごめんなさぃ。えっと…それで、どんな話なの?」

 
エステル「……5年前のビフレスト作戦。東から押し寄せるネウロイの猛侵略を防ぎきれずに大規模な撤退作戦を余儀なくされたんですけど――…って、知ってますよね。いたんだし」

ハイデマリー「…工藤さん、東欧州撤退戦に参加されていたんですか!?」

敏恵「え? うん。成り行きというか、撤収が間に合わなくてね? その頃は扶桑の遣欧航空分隊にいたから」

エステル「じゃあリバウみたいに結構前線にいたんでしょうね? ベルリンの東部とかですかぁ~?」

敏恵「…すごい! 詳しいね!?」

エステル「だーかーら、噂になってたんですってば!!」プンスカ

ハイデマリー「ぉ、落ち着いてエステル少尉…」

 
エステル「はぁ~……。その最悪の撤退戦で沢山の人達が亡くなったけど、生存率が1番低かった東部地域の逃げ遅れた民間人や水際防衛に付いた兵士にも奇跡的に生存者はいたんです」

ハイデマリー「……」

敏恵「……。…そうなんだ」

エステル「で、その助かった軍人達の話には決まって同じウィッチが出てくるんですって」

ハイデマリー「それが、工藤大尉?」

エステル「必死に逃げてる時だし、そのウィッチが登場するのは夜だったみたいですから名前はもちろん、顔とかその辺は誰も分からなかったみたいですけどね? そのせいもあって変にいわく付きになったんです」

ハイデマリー「…でも、少尉は工藤さんを知っていたんですよね?」

敏恵「……あ、確かに!」

エステル「! ぁ、あたしは調べましたから! だって扶桑じゃそんな隠れた話でもないんでしょ!?」アセアセ

敏恵「…まあ、うん。ウィッチっていうか、私がいたウィッチ分隊が任務に就いてたっていうだけだし」

 
エステル「噂なんだから適当に誇張されてるんですよ。続けますけどいいですか?」

敏恵「はい、どうぞ」

エステル「オホンッ……それで、遭遇した人の話によると――」


エステル「…押し寄せる敵の波から逃げるしかない地獄みたいな闇の中で、そのウィッチはネウロイをひたすら撃墜していたんです。……恐怖の夜空を、まるで自分の庭かの様にぃ~――」オドロオドロ


ハイデマリー「……」ゴクリ




エステル「…飛び続けていたんですーッ!!」クワッ

ハイデマリー「ッ!?」ビクッ

敏恵「なんかもう怪談みたいになってない?」

 
エステル「ふぅ~…。んそれで当時は“夜の女王”なんて噂されて、国内のナイトウィッチ達の間では眉唾な話として有名になったんです」

ハイデマリー「そ…そうなんですね…」ドキドキ

エステル「ちなみに夜の女王は結局死んだとか、幽霊だったとか、実はウィトゲンシュタイン第五司令だったとか色々オチはありますけどね~!」

敏恵「……ところでさ? もう廊下行き止まりなんだけど、ここが休憩室なの?」

ハイデマリー「ぁ…! すみません、通り過ぎてしまいました…」

エステル「……」

 
食堂(兼レストスペース)


ハルテ「~♪」

ルーツィア「……」


ハルテ「~~♪」

ルーツィア「……ったく…」

ハルテ「? …どうしましたルーツィアさん?」

ルーツィア「エステルのやつ、またシュナウファーの邪魔してるな…」

ハルテ「あー、確かに戻ってきませんねぇ?」

ルーツィア「……」

ハルテ「いいじゃないですか? エステル少尉は優しいですから、隊長さんのこと心配してるんですよ」

 
ルーツィア「…………はぁ…」クシャ

ハルテ「ぁ、様子見に行くんですか?」

ルーツィア「ああ」ガタ

ハルテ「でしたら私が行ってきますから、ルーツィアさんは座っててください」

ルーツィア「…いや、いい。自分で動かないと身体が鈍る」

ハルテ「そうですか?」

ルーツィア「ああ。……っと」ヨロ

ハルテ「お手伝いしましょうか?」

 
ルーツィア「平気だ。…悪いけど窓、もういいよ」

ハルテ「はい、でも風が気持ちいいのでもう少し開けておきます」

ルーツィア「…そう」


『――まぁ暇な時は自室かここに集まってますねー』


ハルテ「!」

ルーツィア「…身体。鈍っちゃいそうですね?」

ハルテ「……」ドスン



――スタスタスタ


エステル「あ、やっぱり2人ともまだいた!」

ハイデマリー「…どうぞ、工藤さん」

敏恵「お邪魔しまぁす…」


ハルテ「? 隊長さんに、…お客さん?」

ルーツィア「誰だ…?」

 
ハイデマリー「お休み中のところすみませんルーツィア曹長、ハルテ少尉。少しお時間いいですか?」

ハルテ「はい」

ルーツィア「…ん」

ハイデマリー「ありがとうございます。…こちら、扶桑皇国から来られた援戦武官の工藤敏恵大尉です」

敏恵「えっと…、扶桑海軍の工藤敏恵です!」ピシ


ルーツィア「……ああ、そういえば今日か」

ハルテ「うっかりしていましたね?」

ルーツィア「結構前に聞いたきりだったしな」

エステル「私はちゃんと憶えてましたよー!」ヘヘン

 
ハイデマリー「連絡不足になってすみません。…あの、本日から工藤大尉も皆さんと一緒にこの基地で過ごされます」


ハルテ「人数が増えて賑やかになりそうですね?」ニコ

ルーツィア「……煩いのはエステルだけでいい」

エステル「ちょ! 可愛い後輩に向かってなんてこと言うんですか!?」


ハイデマリー「工藤さん? 左の方がルーツィア・リリー・ピッケンハーゲン曹長、右の方がハルテ・ヴァイゼンボルン少尉です」

敏恵「…不束者ですがよろしく、お願いします」ペコ

ハルテ「はい、こちらこそよろしくお願いします工藤大尉」

ルーツィア「ん…座ったままで申し訳ないけど、よろしく」

敏恵「あ、いえ! 全然構いませんから、寛いでてください…!」

 
エステル「ふふん! ルーツィア先輩はこの中で1番のベテランナイトウィッチなんですからね? 階級が上だからって失礼働いたりしたらダメですよ!?」

敏恵「は、はぁ…」

ルーツィア「そいつの言う事は無視していいよ大尉、軍務に必要なら遠慮なんていらない」シュボッ

ハルテ「…ルーツィアさん、灰皿変えてきましょうか?」

ルーツィア「あぁ、ごめんね。お願い」フゥ~

エステル「ほら、ご覧の通り謙遜奥ゆかしい人だからって甘えすぎちゃ駄目ですからね?」

敏恵「……ぅ、うん…」

 
ハイデマリー「ルーツィア曹長。デュッケ少佐はまだ戻ってきていないですか?」

ルーツィア「ええ、見ていませんね。……恐らく買い出しもしてから戻るつもりでしょう」

ハイデマリー「そうですか…」

敏恵「…誰か出掛けてるの?」

ハイデマリー「ぁ、はい。あと一人、副隊長を務めていただいている方が」

エステル「副隊長はいっつも忙しいですからねぇ? けどあの人の場合は特別ですから、隊長も合わせて働きすぎる必要ないんですよ?」

ハイデマリー「ぃぇ、そんな事は…」

ルーツィア「……エステル」

エステル「? はい、なんですか先輩?」

 
ルーツィア「時間だ。行くぞ」クシャ

ルーツィア「……っと」ヨロ

敏恵(…!)

エステル「あ、はーい! …それじゃ隊長、哨戒行ってきますけど――」

エステル「噂のヒットウィッチも来たんですから今日くらいゆっくりして、私の代わりに話聞いておいてください!」ヒソヒソ

ハイデマリー「は、はぃ…」

ルーツィア「お前は人のお節介する前に自分の任務だろ? ……大尉、申し訳ないが通るよ」

敏恵「ぁ、はい! ごめんなさい」ササッ

 
エステル「…別に忘れてたわけじゃないですってばぁ!?」スタスタ

ルーツィア「ああ、そうかい」トンッ トン


敏恵「……(あの人…?)」

ハルテ「――工藤大尉?」ヒョコ

敏恵「! へぁ、はい」

ハルテ「お腹、空いてませんか?」ニコ

敏恵「え?」

ハルテ「大したものではありませんが、丁度お茶の用意も出てますので。…宜しければいかがですか?」

敏恵「ぁ…う、うん。 ありがとう」

 
ハルテ「隊長もせっかくですからどうぞ? マジパンもまだありますし」

ハイデマリー「! ぃ、ぃぇでも…私はまだ…」

敏恵「…マリも迷惑じゃなければ一緒しない?」

ハイデマリー「ぁ…その、迷惑という事は決して…!」

敏恵「よかった! それじゃあ貰っちゃってもいいかな?」

ハルテ「はい。お二人分のお茶、淹れますね?」ニコ

ハイデマリー「……では、お言葉に甘えて… 」

敏恵「んっふふ♪ あたし、欧州のパンも結構好きなんだよねぇ~!」








――――あの日から、あたしの新しい生活は始まった。


正直不本意な転属ではあったけど、そんな事は大して気にもせず新しい出会いに亡羊してた。


だって、ここから扶桑に帰れるまでの出来事が生涯忘れられなくなるなんて



……その時のあたしはまだ、知る訳もなかったから

 

 

第二話:生活 に続く

 

こんな形で毎回まとまった量を上げたいと考えてます
(本編更新はあくまで不定期を前提に、毎週~隔週を目標に努めます)

※地の分がほぼ無い所謂台本形式なので、捕捉やメモの書き込みは都度入れていくべきか少し悩んでます。煩雑で読み辛い様であればwikiの活用も検討してますので

改めて見返したら既に表記揺れや原作設定との誤差が出てますが、訂正はせずに出来るだけ辻褄を合わせて行くゾ(・×・)

 


【第二話 生活】



―夕方―


サン・トロン基地 格納庫



ルーツィア「……ん?」チラ

エステル「どうしました先輩?」


ルーツィア「…搬入か」

エステル「あー、大尉“様”の機材ですねぇ?」

ルーツィア「……重そうだな、あれ」ジー

エステル「ぉお? 扶桑の機関砲ですかね?」

ルーツィア(他には……確か99式ってやつと、大型弾倉? …てことは無改造の20ミリ、それとあの巨砲か。重火力タイプだな)……あんなに担いで、決戦でもする気?」

 
ルーツィア(他には……確か99式ってやつと、大型弾倉? …てことは無改造の20ミリ、それとあの巨砲か。重火力タイプだな)……あんなに担いで、決戦でもする気?」

エステル「ふん! 扶桑の大尉様は戦闘専門でいらっしゃるみたいですからねっ!?」プイッ

ルーツィア「は…?」

エステル「なんと魔導針が使えないんですってぇ~? 信じらんないですよね?」

ルーツィア「……。…それでナイトウィッチ?」

エステル「まったく、ナメすぎですよね!? ルーツィア先輩もそう思うでしょ?」


ルーツィア「……」


エステル「?」

 
ルーツィア「……お前さ」

エステル「はい」

ルーツィア「…あいつ嫌いなの?」

エステル「! いえ、別にそんな事ないですよ!」

ルーツィア「だったら少し言葉を選べ。…もう行くぞ?」トトッ

エステル「あ! 待ってくださいよぉ!?」

 
食堂


敏恵「…ねえ、そういえばさ?」モグモグ

ハイデマリー「?」

ハルテ「はい、なんでしょう?」カチャ

敏恵「さっきの曹長さん、杖ついてたけど怪我してるの?」

ハイデマリー「!」

敏恵「ここの任務ってやっぱり危ないこと多かったりするのかな? あたしちょっと不安になっちゃってるかも」

ハイデマリー「いえ工藤さん! ぁの…ルーツィア曹長は…」アセアセ

 
ハルテ「心配いりませんよ大尉さん? ルーツィアさんの右足はここへ来る前からだったそうなので」

敏恵「あ…そうなの?」

ハルテ「はい、昔の戦闘で膝下から先を失ってしまわれたみたいです」

敏恵「!?」

ハイデマリー「あのっ少尉…!?」オロオロ


敏恵「……ご、ごめん。まさかそんな事聞くつもりじゃ…」

ハルテ「いいえ、ご本人もタブー扱いされる事を嫌っていますから。変に気を使うと怒られちゃいますよ?」ニコ

敏恵「そ、そうなんだ…」

ハルテ「はい。でも不便な事もありますので、普段の生活では私やエステルさんがよくお節介しちゃいますが」

敏恵「へぇー」

 
ハルテ「口数は少ないですけど気さくな方ですよ? …任務外では自室で運動しているかここによくいるので、気になるのでしたら聞いてみてください」

敏恵「ぁ、いや。それは遠慮しようかな…」

ハルテ「そうですか? ハッキリ言われる方が好きだとルーツィアさんも仰っていましたから、大丈夫だと思いますよ?」

敏恵「ぅ、う~ん……まあ。じゃあそのうち…」ズズー

ハイデマリー「…ルーツィア曹長は一見すると少し怖いですけど、良い方だと私も思います」

ハルテ「ふふ、なら隊長も是非ご本人に言ってあげて下さい」ニコ

ハイデマリー「……は、はぃ… //」

 
敏恵「……。というかマリさ?」カチャ

ハイデマリー「ぁ、はい。なんですか工藤さん?」

敏恵「マリって皆に敬語使ってるっていうか…そんな感じなの? ハルテちゃんは少尉で、年も下なのに」

ハイデマリー「ぇ…?」

敏恵「……あれ? だってハルテちゃん、さっき15って言ってたよね?」

ハルテ「えっと、はい。そうなんですが――」

敏恵「ほら? あたし達の方がお姉さんだよ?」


ハイデマリー「……」

敏恵「?」


ハイデマリー「……工藤さん。私も、今年で16ですけど…?」

敏恵「えっ」

 
ハイデマリー「……ぁの、すみません…」

敏恵「…………。ぇ…?」チラ

ハルテ「はい、同い年です。といっても隊長さんは少し前にお誕生日を迎えましたが」ニコ

敏恵「……」

ハイデマリー「工藤、さん…?」

敏恵「これで16歳……」ジー

ハイデマリー「ど…どこを見つめてるんですか…? ///」モジ

敏恵「また視力落ちたかなぁ? あたしと同じか年上にしか見えなかったんだけど…~」ジロジロ

ハイデマリー「ぁ、ぁの…! ///」

ハルテ「ふふ」ニコニコ

 

基地内 一室


ハイデマリー「…ここが工藤さんの部屋になります」

敏恵「わぁ…! いい部屋、しかも個室!」キョロキョロ

ハイデマリー「体裁としては私達がお預かりするという形になるので。来賓待遇ですから」

敏恵「え、他の人達は個室じゃないの?」

ハイデマリー「ぁ、いえ。今は人数も少ないので、エステル少尉とルーツィア曹長以外のウィッチは全員個室です。男性基地員の皆さんにも専用の宿舎があります」

敏恵「…その2人は同室なんだ??」

ハイデマリー「はい。エステルさんがここへ配属された時に希望して以来、一緒の部屋です」

敏恵「へぇー」

 
ハイデマリー「必要な物は用意したつもりなんですけど、なにか足りない物があれば言ってください」

敏恵「うん、ありがとねマリ!」

ハイデマリー「…! そ、それでは私はこれで… //」ササ


パタン


敏恵「……? なんか不味いこといっちゃったかな?」

 
敏恵「まいいや。…はぁ~ー」スタスタ

敏恵「……ここまで来るの疲れたぁ…」バフッ


敏恵「……」


敏恵(今日からここで過ごすのか…)



~~~~~~~~~~~~~~~~


小園『――お前もいい加減自立しなきゃな?』


小園『わかってるな? …出来るだけ諸刃は抜くなよ』


~~~~~~~~~~~~~~~~



敏恵「…園さんが一緒じゃないなんて、新米の時以来かなぁ」


敏恵「……」



敏恵「ん…、荷解きしよう…」ムク

 
敏恵「…………ん? あれ――」ゴソ


敏恵「…あっ!? ちょっとぉ、紐緩んでるし!」ガーン

敏恵「ッ~(服とか破れてたらどうしようっ!!)」ゴソゴソ




敏恵「――…、よかった! 流石に鞘からは抜けてない」


敏恵「こっちは湿気が少ないおかげかな? 助かった~…」ホッ


敏恵「…………」


敏恵「……諸刃、か」

 
敏恵「……」スラァ


敏恵「……っ…」

敏恵「(今日からこっちで夜飛ぶんだよね? …また、欧州のネウロイと――)…はぁ……はっ…ふっ~」フィィ・・・ン




敏恵「――っ!?」ハッ



敏恵「…駄目っ!」チンッ


敏恵「がまん……我慢、しなくちゃ…!」


敏恵「……」ハァ ハァ


敏恵「っ…」

敏恵「み、水…! 水が飲みたいっ…」

 

食堂(台所)


ハルテ「~♪」フキフキ

敏恵「ハルテちゃん…」ヨロ

ハルテ「? ぁ、大尉さん。どうしました?」

敏恵「こ、コップ……使っていいかな…?」

ハルテ「グラスですか? 勿論いいですよ」カチャ


ハルテ「はい、どうぞ。洗いたてです♪」

敏恵「ぁ、ありがとう…」

 
敏恵「っ…」クイ ジャー


ハルテ「?」

敏恵「ん…っ……」ゴックゴク

ハルテ「…言って頂ければ、またお茶淹れますよ?」

敏恵「~っ…! んぐっ!!?」ビクッ

ハルテ「?」

敏恵「ゴフッ……ぷあっ゛!? んがっ…はぁ……」バシャ

ハルテ「だ、大丈夫ですか大尉さん…?」

 
敏恵「わ、忘れてた…こっちの水道って……硬水ッ!!」ゼーハー

ハルテ「…? ぁ、そういえば扶桑は軟水でしたっけ?」


敏恵「しまったぁ……。水筒とっくに空なのに…」ガクー

ハルテ「あのぉ? 軟質のお水が飲みたいんですか?」

敏恵「…………うん」

ハルテ「えっと、なら確か……ミネラルウォーターでしたら水道水よりは大分柔らかいかと思いますけど?」

敏恵「!! あるのっ!?」

ハルテ「はい。非常用で確かここに――」ガパ

 
ハルテ「…あ! ありました」ゴトン

敏恵「も、貰ってもいいかな!? 非常に飲みたいんだけど!!」

ハルテ「いいですよ、どうぞ」

敏恵「ありがとう! っぐぐ…!!」グイィィイ

ハルテ「ぁあ待ってください!? それは栓抜きがないと開きませんよ!」

 
――――
――



敏恵「ふぅー……はぁ…。 結構おいしい…」ホッコリ

ハルテ「大尉さん、お水が好きなんですね?」

敏恵「うん。本当にこれだけは…昔からね」

ハルテ「でしたら残った分はそのまま持って行ってください」

敏恵「いいの?」

ハルテ「はい。ガラス容器はリサイクル品なので、空いたら返してくださいね?」ニコ

敏恵「……ありがとうハルテちゃん! あ~もぅ、大好きになりそう~♪」ジーン

 
ハルテ「ふふ、いえいえ。…これから夕ご飯も作りますから、飲み過ぎには注意してください」

敏恵「! ・・・えっ、ハルテちゃんが作るの!?」

ハルテ「はい。そうですけど、どうかしましたか?」

敏恵「だってさっきからずっとここに立ってて……今も洗い物してたんでしょ? これからご飯も作るの??」

ハルテ「そうですよ? 私のお仕事です♪」

敏恵「…………ほぁ~!(本当、出来た子!)」

ハルテ「ふふふ、というより実は半分趣味みたいな感じなんですけどね」クス

敏恵「…洗い物と料理が?」

ハルテ「洗い物は流石に…、使った人が片付けるだけですから」

敏恵(当たり前みたいに言ってるけど凄い偉いよ、それ)

 
ハルテ「お料理はついでですけど。実は私、お菓子作りが好きなんです」

敏恵「あ~、そっちか!」

ハルテ「時間があるときはここをお借りして作ったものを、皆さんに差し入れてるんです」

敏恵「…確かにさっき食べたマジパンだっけ? あれ美味しかったよ(パンじゃなくてびっくりしたけど)」

ハルテ「ふふ、ありがとうございます。外国の方のお口にも合ってよかったです」

敏恵「でも毎日料理当番じゃ大変じゃない? みんなで交代すればいいのに」

ハルテ「他の方にやっていただくと皆さんそれぞれ時間の都合も変わりますから、私が引き受けることである程度自由にここを使わせて頂いてるんです」

敏恵「…なるほど、のびのびと気ままにキッチンを使えるって事か」

ハルテ「はい、そんな感じです♪」

 
敏恵「う~ん、凄い。その趣味への熱意…」ムムム

ハルテ「楽しいですよ? 大尉さんはお料理とか嫌いですか?」

敏恵「嫌いってわけじゃないけど…んー、面倒くさいかな? あたしは食べる方が大好きだったし //」テヘヘ

ハルテ「…今は、違うんですか?」

敏恵「一応今も好きなんだけど、夜間専従に所属変わってからちょっと前まで食欲あんまり無くってさ」

ハルテ「そうなんですか。…生活習慣が変わったせいかもしれませんね?」

敏恵「お陰で結構痩せちゃったよ。最近はまた食べられるようになったからいいけど」ハァ

 
敏恵「お陰で結構痩せちゃったよ。最近はまた食べられるようになったからいいけど」ハァ

ハルテ「ふふ、羨ましいです。私は作ったお菓子を全部食べたりなんてすると大変です」

ハルテ「…でも、ついつい摘んじゃいますけどね♪」

敏恵「えー? そんなこと言って、ハルテちゃんも細いよ? ご飯よそってあげたくなるくらい」

ハルテ「(…?)ここで作るお菓子は砂糖を極力使っていませんから」

敏恵「?」

ハルテ「皆さんはいつも美味しいって食べて下さいますけど、私の趣味に付き合わせてしまっているので」

敏恵「…皆太っちゃうってこと?」

ハルテ「個人的にも勿論ですけど、あまり体重が増えてしまうと航空ウィッチとして問題も出てきますから」

 
ハルテ「ですから私のお菓子は香りや風味を工夫して、なるべくヘルシーなものを作るんです」

敏恵「はー…(よくよく考えてるんだ)」キョトン

ハルテ「やりがいもあって楽しいですよ?」

敏恵「……ん~でもそうなんだよねぇ? あたしも小さい頃はけっこう太っててさぁ」

ハルテ「…そうなんですか!?」

敏恵「うん。自分が空飛べるって判って軍学校に編入してみたら、“そんなんでストライカーに足が入るかーっ! 重くて飛べんわっ!!”て怒られちゃったの」

ハルテ「わぁ…」

敏恵「それであたしだけ特別しごかれたっけなぁ…。毎日測定させられてやんなっちゃった」ハハ

ハルテ「……こわいですね」

 
敏恵「体重なんて生きてて気にしたことなかったから本当、初めて後悔したよ」

ハルテ「はは…」

敏恵「でも痩せてみるとこの辺の肉付きは残っちゃったんだよね? 本当、こいつが軽くならないせいで悩んだなぁ」タユン タユン

ハルテ「……」

敏恵「まーでもこうしてなんとかなってるし! なんか褒められるから一回太っちゃうのもいいかもよ?」

ハルテ「…そ、そうですね(エステルさんが聞いたら怒っちゃうだろうなぁ…)」


敏恵「あっ! というかごめんね!? 忙しいのに横で邪魔しちゃって!」

ハルテ「あぁ、いえそんな。気にしないでください、お話しできて私も嬉しいですから」

敏恵「(ぅ…どこまで健気なのこの子!?)えっと……だったら私も手伝う!」

ハルテ「えっ?」

敏恵「こう見えてあたしもお米炊く自信あるからさ、研ぐよ!?」キリ

ハルテ「……その、すみません。今日のメニューにライスは無いので…」

 
――――
――



ハルテ「大尉さん、お野菜切れました?」

敏恵「……ごめん、まだ…」

ハルテ「いいですよ、ご自身のペースでお願いします。お怪我だけには気をつけて下さいね?」

敏恵「ぅ、うん…(これ、むしろ足引っ張ってるかも…)」グイグイ


ハルテ「そういえば…! …あの、大尉さん?」

敏恵「ん、ん? なぁに…っ?」グググ…

ハルテ「先程、ナイトウィッチに転科された様な事を仰っていましたけど……それ以前はどうされていたんですか?」

敏恵「んっ…えぇっとねぇ……~っしょと!」ドスッ

ハルテ「あ、カボチャは皮が滑るので慎重にお願いします。指がなくなっちゃいますよ?」

敏恵「えっ、ぁはい…。失礼しました…(けっこう厳しぃ)」

ハルテ「いいえ」ニコ

 
敏恵「――えっとそれで、なんだっけ? ……あぁ、ナイトウィッチになる前だっけ?」

ハルテ「はい」

敏恵「…あたしは元々海軍の爆撃航空歩兵隊にいたの。でも、あんまりやる気でなくて他へ移ったんだ」ヨイショ

ハルテ「そんな簡単に所属替えが出来たんですか?」

敏恵「当時はそれなりに模範生してたからね? 我儘通すために」ザクッ ザク

ハルテ「はあ…、そういうものなんですね」

敏恵「ハルテちゃんみたいな本当の良い子じゃ気づかない所かも?」

ハルテ「そ、そんな事ありません…! 私だって我儘ですよ? 小さい頃はお父さんをよく困らせてました」

敏恵(なにそれ可愛い)ガーン

 
敏恵「…まぁいいや。それで偵察航空歩兵を志願したんだけど、そしたら欧州派遣組の陸上偵察員になっちゃったんだよねぇ」

ハルテ「それで夜間偵察任務に?」

敏恵「ん? あーまだまだ、その時は昼任務だったよ」

ハルテ「…? 不思議ですね?」

敏恵「へ、なにが?」

ハルテ「工藤大尉を偵察ウィッチに採用されたのは索敵の才をお持ちだからな筈だと思いますけど、夜間任務の前に基礎研修を積んで頂くつもりだったのでしょうか?」

敏恵「…?」


敏恵「……ぁ!」

 
ハルテ「私達みたいなナイトウィッチは魔法力が発現した時点で夜間専従が決まってしまうので、大尉さんの様な経歴は珍しいですよね?」

敏恵「……ハルテちゃん」カタ

ハルテ「…? はい?」

敏恵「これ、言っておかないといけない事だと思うんだけどさ?」ジッ

ハルテ「はい」

敏恵「…あたし、魔導針全然使えないの」

ハルテ「あ、そうなんですか?」

敏恵「うん、そうなの」

ハルテ「……」

敏恵「…なんか、迷惑かけたらごめんね?」



ハルテ「…………あれ、魔導針が…? …ぇ、使えないんですか!?」

敏恵「ぅ、うん」

 
ハルテ「でも、大尉さんはナイトウィッチですよね?」

敏恵「……はい、一応…」

ハルテ「……どうして転科されたんですか??」

敏恵「うん、まぁ…実はあたしも希望してなった訳じゃないんだけど――」ポリポリ

敏恵「…たまたま夜間戦闘でネウロイ倒したら、隊長やってた人にそうしろって言われちゃって」

ハルテ「……それだけ、ですか??」

敏恵「あたしも夜は眠いし嫌だったんだけど、それから国に帰るまでその分隊もずっと夜間任務だったのよ。…それで戻れなくなっちゃって」

ハルテ「…? それは、お身体がですか?」

敏恵「うん、そうだねぇ…。なんとか生き残って帰ったし、一応活躍もしたからって事で特進とか褒美とかあたしの知らないうちに話が進んでたし」

 
ハルテ「はあ…! 確かに、魔導針無しで夜間の歴戦を積まれたのは凄いと思います」

敏恵「その後は正式にナイトウィッチになっちゃって、ずーっと大陸領土の暮らし。ろくに田舎にも帰ってないや」

ハルテ「……ご苦労、されたんですね…」

敏恵「あはは、そんな事ないよ! こうしてハルテちゃんとも会えたし、夜空だって空には変わりないしね?」

ハルテ「…私でお手伝いできる事があれば遠慮なくおっしゃってくださいね、大尉さん!」

敏恵「え? ぅ、うん…ありがとう。じゃあ切った野菜、こんな感じでいいか見てくれる?」

ちょっと休憩

 
―数時間後―


エステル「あ~、お腹すいた!」スタスタ

ルーツィア「……?」トンッ



敏恵「もぐもぐ……~! ふぁ、おふかれひゃむえふ」



エステル「……」

ルーツィア「……」


――――
――



敏恵「んは~~! ご馳走様でした!」

ルーツィア「……」

エステル「……あ~らまぁよくお食べになりましたね…?」ジト

敏恵「えへへ、最近食欲が出てきたからつい //」

ルーツィア「…一緒に食べ始めたハルテは私らと交代、後に来たシュナウファーが仕事に戻ってもまだ食ってたのか。……よっぽど好きなんだな」

 
エステル「そういう問題じゃないですよ先輩。副隊長の分がなくなっちゃったじゃないですか」

敏恵「えっ? ……あっ!! ごめんあたし、すっかり忘れて――」

ルーツィア「いいよ。どうせうちの副隊長は外食だ、…普通に食ったって一人分余る」

敏恵「…なんだ、食べてきちゃうんですか?」

エステル「副隊長は帰りが遅くなると出先で済ませてくるんですよ。で、夕食は次の日の朝食にするんです」

敏恵「ちょっ!? ならやっぱり残しておかないと不味いんじゃ…!?」アセ

ルーツィア「平気だよ、無いなら無いであの人は自分で作る。そこまで小さくない」

敏恵「……ごめんなさい副隊長さん、美味しかったです…」シュン

エステル「あ、貴方ねぇ…」

 
ルーツィア「……それより大尉、こいつは平気か?」ス

敏恵「へ? いえあたしは、結構です」ブンブン

ルーツィア「そうじゃなくて、…煙」

敏恵「あ、あぁ…はい。どうぞ。気にしませんから」

ルーツィア「ん…悪いね」シュボ

敏恵(なんか、やっぱりちょっと怖いなぁこの人)

ルーツィア「………フゥー…」プカァ~

敏恵「…!(あれ、甘い匂い? …意外とかわいいの吸ってる!)」ピク

 
エステル「――ていうか大尉、そんなに大食いで太らないんですか?」

敏恵「ん? あーまたその話か」

エステル「は…?」

敏恵「ううん、なんでもない。気にしないで?」

エステル「? …そんなに食べてたら体重制限なんてすぐ超えると思うんですけど~? ……もしかしてその巨乳に全部行ってるんじゃ…っ??」ジトー

ルーツィア「んな訳あるか」

敏恵「あはは、これ縮まないからそれだと困っちゃうなぁ!」

エステル「っ~!!」ギロッ

敏恵「ひっ!? な、なに…??」ビク

ルーツィア「…やめろエステル」

 
敏恵「…? ……??」

ルーツィア「フゥー…。…食った分動けばいいだけだろ。 私も放っておいたらすぐ太るし」

エステル「ルーツィア先輩はまた別じゃないですか!」

ルーツィア「大尉もやる事やってんだよ。だからシュナウファーもこいつも大尉なんだろ?」

エステル「ぐぬ…っ!」

敏恵「いや、ごめんなさい。あたし固有魔法使った後はそんな食べなくて……今日ぐらい食べてた頃は普通にぽちゃぽちゃでしたよ?」

エステル「は? なにそれズルい」イラ

ルーツィア「……ふーん、そういやレーダー探査の魔法じゃないんだってな?」

 
敏恵「はい。えっと、超夜間視力って言うみたいです」

エステル「……一応、夜間専能力なのね。ダイエット魔法」

ルーツィア「意外だな…? てっきり強化か念動系かと思った(あの装備どうやって担ぐんだ…?)」プカ~

敏恵「あっ運動能力とかも少し上ったりはするんですけど、そう名乗れって園さ――…上官に言われて」

エステル「超夜間視力ねぇ…? 目が利くなら、確かに戦闘くらいは出来ますかね?」

ルーツィア「…まぁな。 シュナウファーに近いんだろ」フゥー

敏恵「? マリも夜間視能力なの?」

エステル「勿論それだけじゃないですけどね!? 隊長は自分で制御できないくらい小さい頃から魔法の素質を持ってて、それで目を痛めちゃった程なんですからっ!」

敏恵「!?」

ルーツィア「エステル」

 
エステル「! ぁ…すみません先輩…」

ルーツィア「私はいいけど、他人の傷を不用意に話すな」

エステル「……すみません…」

敏恵「……」

ルーツィア「大尉、悪いが今のはオフレコだ」

敏恵「は、はぃ…」




――…スタスタ


ハイデマリー「…工藤さん、ちょっといいですか?」

敏恵「!!?」ギクッ

 
ルーツィア「…?」

エステル「ぁ! た、隊長…!」


ハイデマリー「エステル少尉とルーツィア曹長も、哨戒お疲れ様です」

ルーツィア「ん…、異常はありませんでした」フゥー

敏恵「ぅぁ…あぁあのっ…! あたしはなんにも聞いてないからっ!! ほんとにっ!」アワアワ

ハイデマリー「…? はい?」

ルーツィア(……この子、嘘が下手くそだな)

 
ハイデマリー「えっと…、なんのことですか?」

ルーツィア「なんでもないよ。…うちの隊長が野郎に大人気だからって、取引目的で写真なんか撮ったらシバいてライン川に流すって話しただけです」プカァ~

ハイデマリー「えっ」

敏恵「えっ」

エステル「……あ、私もそれ賛成」




ルーツィア「…フゥ~……。冗談ですよ、隊長」

ハイデマリー「は、はぁ…?」ポカーン


敏恵(なんか今のも本気っぽく聞こえたんだけど……本当怖いんだけどこの人!?)ゾワゾワ

 
ルーツィア「で、…大尉に用事? 丁度今食べ終わってるけど」

ハイデマリー「ぁ、ぇ…ええ。はい」


ハイデマリー「…工藤さん。今夜の3番哨戒に私と一緒に出てもらいたいので、2400時にハンガーへ来てもらえますか?」

敏恵「今日の24時?」

ハイデマリー「はい。…お疲れの様でしたら、明日でもいいので」

敏恵「ううん、大丈夫。いいよ」

エステル「――ん゛!」ジトッ

敏恵「…じゃなくて、了解。であります」

 
ルーツィア「……予報は?」

ハイデマリー「はい。今日明日のうちなら比較的安全の筈ですから」

ルーツィア「…だとさ、よかったな?」

敏恵「へ?」

エステル「隊長の優しさに感謝しなさいって事ですよ」

ルーツィア「……まぁ、うちのボスにスパルタはまだ早いか」

エステル「なに言ってるんですか先輩、隊長は優しい所も魅力なんですからっ!」

ルーツィア「お前と違ってチンピラ呼ばわりされてないしな」プカ~

エステル「な!? 先輩に言われたくないですよ! 私は第一夜空四隊の“できる女”ですっ!」ムー

ルーツィア「…フゥ~……。フッ……まぁ、いつかはな」

エステル「ちょっと先輩!?」ガーン


敏恵「……」

ハイデマリー「…よかったです。少尉達も工藤さんの事歓迎してくれているみたいで」

敏恵「ぁー、うん。そう…なのかな? ……嬉しいなぁ…」

 

―深夜 24:00―


格納庫


敏恵「あのー、すみません。発進ユニットの高さもう少し上がりませんか? 私、発進時の固定解放したら少し沈むので」

整備兵「はっ、了解しました」


敏恵「…ごめんねマリ、もう少し待っててもらえるかな?」

ハイデマリー「はい。……ずいぶん重装備なんですね…?」

敏恵「うん。まぁ私は、戦いに行くために夜飛んでるような感じだから」

ハイデマリー「……」

敏恵「マリこそ、あんなに大きなカノン砲持ってるじゃん。 あたしのより長そう!」

 
ハイデマリー「ぁ、いえあれはMKではなくMGなので……一応正式には機関銃なんです」

敏恵「へぇー、そんな長いのに? 不思議ー」スル

ハイデマリー「?」

敏恵「ん…っと。……脱いだのここに掛けといて平気かな?」ポイ

ハイデマリー「…あの、ベルギガの夜は結構寒いですよ?」

敏恵「うん、本当そうだねぇ? 扶桑と同じで四季があるらしいけど、全然春っぽくないし――」バサ

ハイデマリー「…??」

敏恵「夜間飛行なんて、流石に着替えないとやってられないよ」ヨイショ

ハイデマリー「ぁ…!(そういう事…)」

敏恵「……ん、ホック留めむつかしいな…」クイクイ

 
ハイデマリー「……」

敏恵「? どうしたのマリ? 扶桑海軍の1種服珍しい?」

ハイデマリー「ぁ、はい。その……白が黒になったので…」

敏恵「ふふ~ん♪ …どう、シックでしょ?」キメ

ハイデマリー「はい、よく似合っていると思います」

敏恵「本当に? ありがと!」ニコ

ハイデマリー「ッ…… //」

敏恵「実はこれね、特注なんだ! 生地が魔法繊維製なの」

ハイデマリー「ぇ…! それ、全部ですか?」

 
敏恵「そうそう。園さんが“飛ぶ時はこれを着ろ”って渡すからプレゼントかと思ったら、しっかりあたしの給料からお金出てたんだよ? 酷くない?」

ハイデマリー「…そ、そうですね。それだけ生地が多いと、相当高価だと思いますし」

敏恵「もぉ~本当そう、高過ぎて参ったよ! ……でも夜空で着てると暖かいし軽いしで意外と動きやすいんだよねぇ」

ハイデマリー「……きっと小園大佐は、工藤さんを大切に思われているんです」

敏恵「!? そ、それは……ぅん。色々と配慮してくれてるのはなんとなく分かってるけどさ… //」ポリポリ

ハイデマリー「大佐は工藤さんが大切なんですよ」

敏恵「っ……ぉ、面白がってあまり恥ずかしいこと言うのは止めてよマリ? //」


『工藤大尉ー! 発進ユニット、調整終わりましたっ!』


敏恵「!」

ハイデマリー「…そろそろ行きましょうか、工藤さん」

敏恵「……そうだね。よし、それじゃあ――」


敏恵「よっ…と!」タンッ


スポッ


敏恵「……飛ぶよ月光。魔導エンジン、始動!」フィィィン ピョコ
 

 
[解説メモ]


・敏恵の装備

工藤敏恵のストライカーは“月光”。
遣欧偵察員時代に知り合った小園隊長に試造機を渡されてからの愛脚。(帰国、夜間転科後はテストウィッチとして型式を変えながらも履き続けている)

銃器類は20ミリ機銃一門、30ミリ機関砲一門、魔法繊維製防衣、そして扶桑刀一振りに各種弾薬と、単独夜間戦の勝利を想定するオールレンジかつ重火力な仕様。
全て担ぐと普通なら重すぎて飛べないか、航空性能が犠牲になる。

敏恵が循環魔法(ウィッチの保護強化や銃の反動制御など、体内や接触物に魔法力を流動させる)の才に優れている事と、彼女の履くストライカーの性能のおかげで実現したと言える装備である。


・月光一一型甲

45年現在、敏恵が履く夜間型ストライカーユニット。
扶桑の“○○式○○脚”という命名基準が本機以降変わっているので“月光”は愛称ではなく正式名称である。

扶桑海軍が“扶桑海事変(原作設定参照)”における夜間襲撃の被害を受けて、より夜間任務に最適化したストライカーの開発を始めた事をきっかけに誕生した。
開発監督者の1人に小園里葉がいる。

ナイトウィッチに課せられる長時間及び高高度の飛行や重搭載の可能性を追求した結果、紙の様な脆さになってしまった。
敏恵の愛脚は空偵型から専用の改造を施したワンオフ仕様で、魔導エンジンも特別試造。小園やりたい放題である

 

・九九式20mm二号三型機銃

扶桑の航空機関銃。反動が強いため13mm口径に改造した者が一般的に使われている。

敏恵は30ミリ機銃の弾帯も装備するため、三型のドラム式大型弾倉を携帯している。


・十八試30mm機銃(試造三号)

大型ネウロイ撃墜用に開発された機銃、というより機“砲”。徹甲弾や焼夷弾等、弾種もいろいろある
扶桑では発射速度を上げた二号型を敏恵は使っていたが、更に改良を加えた実験器を持たされた。


・魔法繊維製扶桑海軍第一種士官衣(非制服)

小園が敏恵の給料を使って勝手に特注した戦闘服。白でなく黒色の一種服を模したのも小園チョイス
ウィッチ達の“ズボン”と同じ魔法繊維製で戦闘環境下でも簡単には破れず、ネウロイの破片等から身を守る為に敏恵へ支給された。

前開きはボタンとホック止めの両方で出来る仕様なので安心だ(小園談)。

当然の事ながら軍非公認なので、式祭等の場では着れない。階級章も付いていない

 

野外 上空



――ブゥゥウン


ハイデマリー「……レーダー、目視…全方敵影なし。国境哨戒へ移動開始…」ボソ

敏恵「……」

ハイデマリー「工藤さん、これから東の国境へ向かいま――」チラ

敏恵「…………」

ハイデマリー「…あの、工藤さん?」

敏恵「――ぇ…ぁ、なに?」

ハイデマリー「緊張、していますか? 出撃前と少し様子が…」

 
敏恵「ううん、そんなことないよ。大丈夫!」

ハイデマリー「……そうですか」

敏恵「ごめんね、ちょっと考えごとしてたから」

ハイデマリー「考え事ですか?」

敏恵「うん。…誰かと一緒に飛ぶなんて、久々だなぁ~って」

ハイデマリー「!」


敏恵「扶桑に戻ってから園さんはウィッチ辞めちゃったし、夜間専従のテストウィッチなんてあの辺じゃあたしだけだったし――」

敏恵「…それでかれこれ4年間、空で独りだったかな~。楽で良かったんだけど」シミジミ

ハイデマリー「……ょ、4年もですか…!?」

 
敏恵「うん。月光の部隊配備に付いてったこともあったんだけどさ、なんかその時はあたしだけ飛ばせてもらえなかったんだよねぇ」ムス

ハイデマリー「……」

敏恵「“お前が飛べば色々と台無しになる<モノマネ>”とか言われてさ、酷くない!? 毎日訓練させといて!」

ハイデマリー「……フフ」クス

敏恵「あっ! マリ笑った?」

ハイデマリー「! ぃ…いえ、すみません」オド


敏恵「……可愛い!」

ハイデマリー「ぇ…?」

 
敏恵「へぇ~! なんだ、よかったぁ」ニコ

ハイデマリー「工藤さん…??」

敏恵「マリ、会ってからずっと真面目な顔と困った顔しかしてなかったから。あたしのこと苦手なのかなって、ちょっと不安だったんだよね」

ハイデマリー「!? ぃ、いえそんな…! ぁのっ……それは、誤解で――」

敏恵「んふふ、ほら♪」


ハイデマリー「ッ…!!」ガーン




ハイデマリー「…………すみ…ません」シュン

敏恵「あっ…あぁごめん!! 意地悪のつもりで言ったんじゃないの! 本当ごめんねっ!?」アセアセ

 
ハイデマリー「……。……?」チラ

敏恵「えっと今のは…あのね? あたしはただ、マリが笑ってくれてホッとしたっていうかさ――」ポリポリ

敏恵「…軍とかウィッチとかそういうの関係なく、女友達として仲良くなりたいなって思ってるからで」


ハイデマリー「! ///」ドキッ


敏恵「…あはは」

ハイデマリー「…………」

敏恵「ぁ~……やっぱりダメ、なのかな?」

 
ハイデマリー「…~っ」

敏恵「……ぅえっと、その…。ご、ごめんね? やっぱりなんでも――」

ハイデマリー「…く……工藤さんっ!」

敏恵「!?」



ハイデマリー「……」ゴクッ

敏恵「……」



ハイデマリー「……ぁ、あの…!!」

敏恵「…ぅ、うん」

ハイデマリー「…っ、その…… //」モジ

敏恵「……うん」

ハイデマリー「…私も……です //」

敏恵「……。うん?」

 
ハイデマリー「私も……御友人に…。私でよろしければ、是非… ///」ゴニョゴニョ

敏恵「…!?」

ハイデマリー「…… //」

敏恵「…………本当、マリって可愛いんだ」

ハイデマリー「ぇ…!? ///」

敏恵「…えへへ、よかった! あたし達、これから友達だよ!」

ハイデマリー「…! は、はぃ……よろしく…お願いします //」

敏恵「そんな畏まらないでいいよ! ほらほら、“敏恵ちゃんよろしくー”て言って言って?」

ハイデマリー「えっ!? …ぁ、あの……そういうのはまだ……恥ずかしぃので… ///」フィィン


敏恵(あれ、アンテナが真っ赤になった…? なにそれ可愛い!)


ハイデマリー「――それに……その、…今は任務中ですから……ぁ、でも嫌とぃぅわけではなくて… ////」チカチカ

 

ベルギガ東国境


敏恵「……ライン川だ」

ハイデマリー「はい、こちらと“あちら”を隔てる境界です。この川を越えてしまえば、その先はカールスラントです」

敏恵「カールスラント…」

ハイデマリー「……」

敏恵「…この先って今どうなってるのかな?」

ハイデマリー「流域から10キロ程までなら飛行物体の探査は出来ますが、…その先はわかりません」

敏恵「じゅ、10キロも…!?」

 
ハイデマリー「奪還号令がかかる時までこの境界を護るのが私達の任務になります。 …工藤さん、少し集中しますね?」

敏恵「あ、うん。どうぞどうぞ」



ハイデマリー「…………」フィィィン

敏恵「……」

ハイデマリー「……上空、敵影なし」ボソ

敏恵(なんか、見てるこっちが緊張する…)ソワソワ



ハイデマリー「お待たせしました工藤さん、これから河流に沿って南下します」

敏恵「うん、了解。…今の感じでパトロールしていくの?」

ハイデマリー「いえ、国境巡回の場合は出来るだけ目視による索敵も行います。その後は雲の上まで高度を上げて、戻りながらもう一度」

 
敏恵「へぇー……レーダーあるのに目視もするんだ?」

ハイデマリー「はい。飛行物体とは別に、地上型等のネウロイが境界付近に集まっていないか確認します」

敏恵「…でも地上のネウロイは渡ってこれないよね?」

ハイデマリー「はい。ですがネウロイに絶対はありませんので……不審や見慣れない様子がないかの確認は必要です」

敏恵「なるほど…(そっか、自分の国だもんね?)」

ハイデマリー「工藤さんは魔導針を持っていないということですので…えっと……戦闘に備えていただく他に、目視での警戒をして頂ければ」

敏恵「ぅ、うん。わかりました…(完全に扱い困ってるよねこれ? 園さん、あたしに何やらせたいのーっ!?)」

ハイデマリー「…それでは、行きましょう」ブゥゥン

敏恵「(でもまぁ、やるしかない感じか)…りょうかーい!」ブゥゥン

 
――――
――



――ブゥゥウン


ハイデマリー「……沿岸第二地点、数カ所の倒壊樹木とネウロイの動跡確認。 その他上空共に異常なし…」

敏恵「~?(ぇ、どの辺…??)」キョロキョロ

ハイデマリー「…工藤さん」

敏恵「えぇっと、はい! なにぃ?」

ハイデマリー「私に見落としがあれば遠慮なく仰ってください。 哨戒時間が押してしまって、少しペースを上げてますから」

敏恵「ぁ、ぁ~…うん(ダメだ、このままじゃあたしいる意味ないや。マリの方が全然視えてる…)」

 
ハイデマリー「…………」フィィィン


敏恵「(たしかマリも夜間視能力の魔法使えるんだよね?)…ねえ、マリ?」

ハイデマリー「はい、なにか視えましたか?」

敏恵「あっいや、そうじゃなくて普通に質問なんだけどさ」

ハイデマリー「ぁ、すみません。…なんでしょう?」

敏恵「…マリって今、夜間視能力の魔法使ってるの?」

ハイデマリー「…? はい、夜ですから」

敏恵「……」ンー

ハイデマリー「あの、どうかしましたか?」

 
敏恵「……後で具合悪くなったりってしない?」

ハイデマリー「ぇ…? ……ぃ、いえ。このくらいでしたら、特には」

敏恵「……そっかぁ」

ハイデマリー「??」

敏恵「(やっぱり、あたしだけなのかな?)…うん、ありがとマリ。邪魔してごめんね」

ハイデマリー「ぁ…大丈夫です、多少の会話しながらでも平気ですから」

敏恵「えーっ!? そんな訳ないでしょ? だって上も下も索敵してるのに!」

ハイデマリー「ぃぇ…でも、皆さんが思っている程難しいことでは…」

敏恵「うっそうそ! 実は今どっちかサボってるでしょ~?」ウリウリ

ハイデマリー「そ、そんなことは…――」








――――新しい場所で仲間になった友達。


彼女はとてもシャイだけど真面目で優しくて、これから続く生活にあたしはちょっと期待し始めてた。



でも、その時のあたしはまだ何も知らない。……だから彼女に、親近感さえ感じてしまったんだ。

 

 

第二話:遭遇 に続く

 

間違えた…

 

第三話:遭遇 に続く

 

 
[解説メモ]


・『ネウロイに絶対はありませんので』

水を避ける傾向にあるネウロイが飛行以外の手段で渡河をするのは無理なのでは、という敏恵の問いに対するハイデマリーの答え。
若くも戦歴豊富な彼女が真顔で言う説得力に敏恵も思わず「なるほど…」である。

実際ネウロイとの戦争において既知の情報のみが正しくある保障などなく、人類は争う相手について知らない事の方が圧倒的に多い。


・敏恵の過去(其の一)

元々農家生まれの工藤敏恵は自家製の美味しいお米とお天道様が好きだった。
それなりに活発ではあったがあまりによく食べよく寝る(夜もきっちり寝まくった)生活をしたので、肥満体形の幼少時代を過ごしていた。

だが後に魔法力の保有が判明し、ウィッチになる訓練を受けた際に担当教官に怒鳴られ、シバかれ、かわいがられ減量に成功。
出る所の肉だけしっかり残った結果、現在のわがままボディを得るに至っている。

なんとか今夜には三話更新予定です

 

 【第三話 遭遇】



敏恵の部屋


敏恵「……~むにゃ…zz」


敏恵「ん~…ゃ……これみかんじゃ……zz」モゾ

敏恵「……~…」



敏恵「ッッ…!」ビクッ



敏恵「っ……んぁ…?」パチ

敏恵「…………」


敏恵「……なんだ夢か。よかったぁ…」

 
食堂


敏恵「――でそのおにぎりを食べたらさ? 中の具が蜜柑だったの、しかも薄皮ごと! 怖~って思ったらそこで目が覚めちゃった」パクパク ムシャムシャ

ハルテ「クス、…可笑しいですね?」

エステル「……ごめん、私はぜんっぜん意味わかんない」

ルーツィア「…フゥー……」


敏恵「いやいやだって、おにぎりに蜜柑入れるんだよ!? ごはんにマーマレードジャム乗せたって美味しくないでしょ? 海苔の佃煮じゃあるまいし……はむっ」モグ

エステル「だから意味わかりませんってば!」

ルーツィア「……。ツクダニか…(グロいくせにそこそこ美味いよなぁ?)」プカ~

 
エステル「というか、夢の中でも食事してるんですか貴方は…」

敏恵「…ん~、でも“蜜柑おにぎり”を食事って言いたくはないなぁ」ムシャムシャ

エステル「それはもういいですからっ! いい加減食べ終わったらどうですか!?」ズイ

敏恵「あ、いいよ。あたしも自分の片しておくから」

エステル「~~、そういう事じゃなくて…」ガク

敏恵「?」


ルーツィア「……フゥー…。こいつは大尉が気になってんだよ」

エステル「!!」ギクッ

敏恵「えっ?」

 
ルーツィア「…まぁ。少し鬱陶しいかもしれないけど、付き合ってやってくれないかな?」

ハルテ「ふふ、エステルさんは勉強熱心な方ですから」ニコ

敏恵「??」

エステル「ちょ…!? な、なに言ってんの2人とも!? べつに私、気にしてなんかいないし!」アワアワ

敏恵(ぇ…! 気になるって……付き合ってくれって、まさか――)モヤモヤ


敏恵「………… //」カァ


エステル「あ~もぅ、調子狂う…。それもこれも大尉がヘンテコなせいですからね!?」

敏恵「ぇ、エステルちゃん」

エステル「…なんですかぁ?」ジト

敏恵「……ぁの、ごめん…。あたし、女の子同士って初めてだからちょっと……その…すぐに返事とかは… ///」モジモジ

エステル「違うっつってんでしょ!! 変な勘違いすんなーッ!!!」バンッ




ハイデマリー「――あの……皆さん。聞こえていますか…?」ポツーン

 
ハルテ「! ぁ、隊長さん!」

ルーツィア「…? ああ、いたんですね」

ハイデマリー「……。…はい、少し前から」ショボーン

ハルテ「も、申し訳ありません。連絡ですか?」

ハイデマリー「……はぃ」

ルーツィア「すみませんね騒がしくて、……今黙らせますから」クシャ

ハルテ「…ルーツィアさん、手加減はしてくださいよ?」

 
エステル「――ほらっ、もういいでしょ!? お終いにしてください!」グイ

敏恵「あぁっ!! 待って! じゃあ最後にその卵を…」

エステル「なに言ってんですか!? 駄目で――」

ルーツィア「おら、お前等」グリ

エステル「!? いだだだっ!」ビクゥ

敏恵「!」

ハルテ「…大尉さん、お箸は一度置いた方がいいですよ? 隊長さんから連絡事項です」ヒソヒソ

敏恵「へ…? あっ、マリ! いつの間に??」

ハイデマリー「……」

 
――――
――



ハイデマリー「…という訳なので、本日から新しく工藤大尉を加えた哨戒シフトになります」

ルーツィア「(“問題無し”って判断か。探査魔法は使えないらしいけど、シュナウファーが見誤る可能性は低いな)……ん、了解」

敏恵「あのぉ…? あたし、本当に大丈夫かな? 魔導針使えないんだけど…」

ハイデマリー「大丈夫ですよ工藤さん。工藤さんは私達とロッテを組んで頂きますから」

敏恵「ぁ…そ、そうなんだ(…それってあたしが加わった意味あるのかな?)」

エステル「……ま、隊長が決めた事なら私は従いますけど」

ハルテ「はい」

 
ハイデマリー「代わりに他の皆さんは工藤大尉とのロッテを除いて、単機での出撃が基本になります。それに合わせて第一哨戒の回数を少し増やしますので」

エステル「…先輩と組めなくなっちゃうのかぁ」

ルーツィア「ん、そうだな」

敏恵「ねえ、今のどういうこと? “第一”なのにやらない時もあるの??」

ハイデマリー「はい。この隊は元々三交代に時間を分けて哨戒任務を行っていたんですけど…現在は人員不足のため、同エリアの昼間飛行隊と活動時間の重なる夕方の第一哨戒は頻度を落としているんです」

敏恵「へぇ~、夕方も…」

エステル「つい昨日、私達が行ってたじゃないですか。憶えてないんですかまったく!」

ルーツィア「お前も忘れてただろ」

 
ハイデマリー「工藤さんのロッテは昨晩と同じ第三哨戒を集中して飛んで頂きます。それ以外の場合は今まで通りに私が担当しますので――」


敏恵「……マリは最後が好きなのかな? なんかあたしが取っちゃったみたいで複雑」ヒソヒソ

ハルテ「ふふ、違いますよ大尉さん? その時間帯は軍が最も不活発になるので、私達にとって一番大事な所なんです」

敏恵「…ぁ~、なるほど!」

ハイデマリー「取り急いで今週のスケジュールを配布しておきます。始めは変化が多いので、すみませんが注意してください」ピラ

エステル「了解しましたー。はい先輩」

ルーツィア「ん…」

 
敏恵「……(本当にあたし深夜ばっかりだ…!)」

ハルテ「私と大尉さんがご一緒になるのはもうちょっと先ですね?」

敏恵「うん、みたいだね(…取り敢えずいろんな人と取っ替え引っ替え組む感じかぁ)」ジー


敏恵「――? て…、あれ? マリとはどこも一緒になってないじゃん」

ハイデマリー「ぇ?」

エステル「…あのですねぇ? 隊長の話をちゃんと聞いてましたか~?」ハァ

敏恵「??」

エステル「隊長は世界でい~~っちばん強いナイトウィッチなんですよ!? ロッテ組んで出る必要なんてないんですっ!」

敏恵「はあ…?(確かに昨晩のあたし、完全に“いるだけ”だったけど…)」

 
ルーツィア「……世界一かどうかは別として、この中じゃ哨戒中戦闘に入っても一番心配いらないだろな。むしろ付いて行く奴の技量が問題になる」

敏恵「…なるほど(本当にあたし要らないじゃん…)」

ハイデマリー「ぃ、いえっ! そんなことは無いですから…!?」オド

エステル「まあとにかく、大尉はお強いそうですから? 期待させてもらいますよ」ヘン

ルーツィア「……そうだな、せいぜい勉強しろよ」

エステル「ムッ! もぅ先輩、意地悪いですよ!?」

ハルテ「ふふ」クス


敏恵(……園さん。マリから学べって言われても、これじゃ無理そうです)

 
[解説メモ]


・蜜柑おにぎり

夜空四隊に転属後の初夢で敏恵に襲った悲劇。
>>1は食べた事が無いので、本当は美味しいのかもしれないが…)

余談であるが“扶桑のサムライ”こと坂本美緒少佐の旧友である若本徹子中尉が、扶桑海軍第12航空隊北郷部隊に所属していた際に隊長お手製の蜜柑おにぎりを食べて涙目になったらしい(※ストライクウィッチーズ零 1937 扶桑海事変)


・夜空四隊のタイムスケジュール

ナイトウィッチの活動は名前の通り夜型。夜間に任務を遂行し、朝に就寝する。
夜空四隊の就寝時間は第三哨戒が終わる明け方頃、7~8時間ほど寝て昼過ぎに起床となる。

なので1日の食事は 昼食 → 夕食 → 夜食 の三食となり、第三哨戒へ出るウィッチは直前に夜食を取るか携帯食を夜空でパクつく。
だが一部、基地で夜食を食べてなお哨戒中に軽食をモグモグしているヘンテコ大尉もいるらしい(※エステル談)

 

基地 野外



敏恵「ん~、流石北緯50度。まだまだ空は明るいなぁ」ノビー


エステル「……それで?」

敏恵「え? なーにエステルちゃん?」

エステル「これから何するつもりなんですか? “食後にちょっと~”とか言って、気になったから付いて来ましたけど」

敏恵「ん? んー…とりあえず、場所探しかな」

エステル「はい?」

敏恵「ここでもいいんだけど、ちょっと座りたいし――」キョロキョロ

敏恵「…あ、エステルちゃん。この基地でどこか景色がいい所とかある?」

エステル「……?? ぃゃ、まぁ…ありますけど」

 

基地 監視塔



敏恵「わあ…! 高いっ!」

エステル「……そりゃ監視塔ですからね(能天気な人って、なんか高い所好きよね…)」


兵卒「……ぁ、あの…?」ポカーン

エステル「ああ、気にしないでください。この人の面倒は私がみますから」

兵卒「は、はあ…?」

 
エステル「…あ、というか副隊長は? いないの?」

兵卒「ぇ? ああ、はい。特別准佐はたしか本部へ出ております」

エステル「そうなんだ。…昼食にもいなかったけど、相変わらず忙しいのね」

敏恵「わは~~! 空が近い♪」ピョン ピョン


タユン タユン


兵卒「!?(ぉ、おぉ…!!)」ジー

エステル「……気にすんなっつってんでしょ」ギロ

兵卒「ッ!! し、失礼しました…っ!」

エステル「チッ…(どいつもこいつも)」イライラ

 
敏恵「ありがとうエステルちゃん、ここ気に入ったよ!」

エステル「それはよかったですねー」

敏恵「~♪」

エステル「……まったく、何がそんなに嬉しいんですか? 私達はウィッチなんだから、こんな所よりずっと高い位置を毎晩飛んでるじゃない」

敏恵「んー、そうなんだけど。あたしが好きなのはこっちなんだよねぇ」

エステル「はぁ?」

敏恵「…だってほら、見てよエステルちゃん?」

エステル「見えてますよ。空でしょ?」

敏恵「いいよねぇ~、青い空…」ホワワ~ン

エステル「……」

 
敏恵「~♪」

エステル「……でぇ?」

敏恵「ん? …なに?」

エステル「結局、ここで何するつもりなんですか?」

敏恵「?? 何もしないけど?」

エステル「は…?」

敏恵「陽が傾いちゃう前に、こうやって青空眺めてのんびり……ん~~―っ…するんだよ」ノビー

エステル「……」

敏恵「お腹もいっぱいだし! あと、それから――」サッ

敏恵「…おいしい水があればオッケー! んく…~」ゴクゴク


エステル「…………」
 

 
敏恵「~っぱぁ! 気持ちいいー♪」

エステル「…訓練とかじゃ、ないんだ……」ボソ

敏恵「ん?」チラ

エステル「……」

敏恵「どうしたの? エステルちゃんも飲む?」ス

エステル「……貴方、どうやって大尉になったのよ…」

敏恵「へ?」

 
エステル「ッ…やっぱり、才能なの? それとも家柄、コネ…?」フルフル…

敏恵「??」

エステル「……こんな事やってて立派なウィッチになれるわけない。…私なんて……ッ」ギュ

敏恵「エステル…ちゃん?」

エステル「こんな人が、私達を……っ、…貴方が夜の女王なんて――」

エステル「ッ…!!」ダッ

敏恵「えっ!? あ、ちょっと!」


タッタッタッ――



敏恵「…?? ど、どうしちゃったんだろ急に…?」

 

―深夜―


格納庫


ルーツィア「……」チラ

敏恵「……」ドヨーン


ルーツィア「……なぁ?」

敏恵「ぇ…? あ、はい」

ルーツィア「なんかあったか? 暗いぞ」プカァ~

敏恵「……」

 
ルーツィア「……フゥー…。…行きたくないか?」

敏恵「いえ、そんなことは無いです…」

ルーツィア「……。ふーん…」

敏恵「……」

ルーツィア「…ま、いいや。私と飛びたくない奴なんて珍しくないよ、これも仕事だと割り切るんだな」

敏恵「あっ、ちが…! 本当にそうじゃな――」


――ブゥゥウン


敏恵「…!」ドキッ

 

ガシャンッ


エステル「あ~もぅ、今日も戦果なしっ!」シュルル

ルーツィア「……ん、お疲れ。異常がなくて何よりだ」

エステル「ッ…こんなんじゃ、いつまでたっても変わらないですよ!」シュタ

ルーツィア「? …なにイラつてんだお前?」

エステル「別に、不機嫌なんかじゃないです!」フンッ

ルーツィア「…?」

敏恵「――…ぁ、あのエステルちゃん……お疲れー?」

エステル「!」

 
敏恵「えっと……こ、交代だね…?」

エステル「……よかったですね大尉? 今夜ものんびり楽できそうですよっ」

敏恵「!?」

エステル「ふんっ!!」プイ

敏恵「ぅ…」

エステル「先輩! トレーニング機材借りますからっ!!」

ルーツィア「…ああ、いいけど」


エステル「……」スタスタ




ルーツィア「……」チラ

敏恵「……」ショボーン

 
ルーツィア「(なるほど、そういうことか)……申し訳ないね、大尉」

敏恵「ぇ…?」

ルーツィア「あいつも悪気がある訳じゃないんだ。…と言うか、私の責任だし」

敏恵「?? あの…――」

ルーツィア「フゥー…。ここじゃなんだし、行きがけに話そうか」ポイ

敏恵「は、はあ…?(ポイ捨てしてる…)」

 

ルーツィア「さて…っと――」グイグイ

敏恵「……」

ルーツィア「…! ……チッ、もう駄目だなこいつ」

敏恵「?」

ルーツィア「…っ!」ガンッ ガンッッ

敏恵「!? ちょっ…! ちょっと何してるんで――」


ルーツィア「……よし、外れた」グイー

敏恵「!?!?」
 

 
ルーツィア「こんな物。…一端の金取るくせに、大した事ないな」ズルル

敏恵「っ…!! ぎゃぁあああ!!!」


ルーツィア「あ…?」チラ

敏恵「あ、あぁ…足がっ……!?」ワナワナ

ルーツィア「……ああ。これ義足」

敏恵「~…ぎ、ぎそ…く?」

ルーツィア「私、こっちの足無いんだよ」ポイ ドサ

敏恵「ぁ……あぁ、そうだった…(またポイ捨て…)」ドキドキ

ルーツィア「脅かして悪いね。…“長ズボン”の上からじゃ気づかないか」

 
敏恵「……ぁあの、それって…ストライカー履けるんですか?」

ルーツィア「じゃなけりゃ此処にいないよ。膝まであれば入る」タッ

敏恵(わ…、片足で直立してる! 唐傘みたい)

ルーツィア「……」ピョン


スポッ


ルーツィア「…大尉、行くぞ」フィィン ピョコ

敏恵「あっ、はい! ちょ…ちょっと待ってください!」

すみません、取り急ぎここまで

続きは明日か明後日に更新します

 

野外 上空


ルーツィア「……」ブゥゥン

敏恵「…このまま国境まで行くんですか?」

ルーツィア「ああ、基地周辺は特に問題ないからな」

敏恵(! ……いつの間に探査したんだろ!?)


ルーツィア「……なあ大尉」

敏恵「はい」

ルーツィア「…エステルの事だけど――」

敏恵「っ!」ドキッ

 
ルーツィア「何があったか察しはつくよ。……気を悪くしただろうけど、一度は許してやって欲しい」

敏恵「ぃ、ぃぇ……そんな…」

ルーツィア「……」

敏恵「あたしの方こそ、知らないうちにエステルちゃんを怒らせちゃったみたいで…」

ルーツィア「いや、違うな。…あいつが腹を立ててるのは自分にだ」

敏恵「ぇ…?」

ルーツィア「八つ当たりされたんだよ。だから、そんなに落ち込むな」

敏恵「……」



敏恵「ごめんなさい、よく…わかりません」

ルーツィア「…………」

 
敏恵「ルーツィアさん…? …あの――」

ルーツィア「大尉」

敏恵「は、はい!?」

ルーツィア「…これから言う事はここだけの話だ。いいな?」


敏恵「……」

ルーツィア「……」


敏恵「…わ、わかりました」

ルーツィア「ん、信じるからな? ……エステルは、5年前に両親を亡くてるんだよ」

敏恵「!」

 
ルーツィア「…当時のあいつは碌にマニューバすら出来ない様な訓練兵で、私の後輩だった」

敏恵「…………」

ルーツィア「ウィッチなんてのは帰る家が有ろうと無かろうと、全員故郷を離れて任務についてる。…自分の国が領土を捨てるとなれば、誰だって残してきた物の心配をするのさ」

敏恵「…カールスラントの撤退戦、ですか?」

ルーツィア「エステルの生まれは東部地域でね。…国と軍が決断した時はまだ陥落まで行ってなかったけど、実際は絶望的だったよ」

敏恵「……」

ルーツィア「……で、あいつはそれを知って勝手に飛び出してった」

敏恵「えっ!?」

 
ルーツィア「けどもう家族は死んでた。…少なくとも、“見つかった”限りはな」

敏恵(うそ…!? まさかエステルちゃんって、あの時――)

ルーツィア「奇跡的に五体満足で戻って来たけど、それ以来エステルは自分にあらゆる意味で力がない事を悔やんでる」

ルーツィア「…戦う力、部隊を動かす地位〈ちから〉。……あいつは元々真面目なやつだから、そのために努力していても自分に苛立っちまうんだ」


敏恵「……そっか。だからあんな事…」

ルーツィア「……。…ちなみに、何て言われた?」

敏恵「…えぇっと、“どうやって大尉になったの、こんな事してたら立派なウィッチにはなれない”って」

ルーツィア「そうか。……すまなかっ――」

敏恵「それと、“こんな人が夜の女王なんて”って…」

ルーツィア「!!?」ピクッ

 
敏恵「……あたし、エステルちゃんを傷つけちゃって…。そんなつもり、無かったのに…」

ルーツィア「ぉ…おい、大尉」

敏恵「ぇ…?」

ルーツィア「お前ビフレストの…? ヘリン・ディア・ナハト…なのか……!?」

敏恵「……はぃ。なんか、そうみたいです…。エステルちゃんが教えてくれました…」

ルーツィア「ッ…!!」


敏恵「……」ショボーン


ルーツィア「……チッ、なんてこった…」

敏恵「ぇ…?」

ルーツィア「大尉、少し停ろう」

敏恵「あ、はい…」

 

ブゥン…


敏恵「…?」

ルーツィア「……」ゴソ

敏恵「あの…哨戒行かなくていいんですか?」

ルーツィア「悪い。…これだけ、吸わせてくれ」

敏恵「はあ…?」

ルーツィア「…~」シュボ


ルーツィア「…フゥー……」プカ

敏恵「……」


ルーツィア「……お前の使い魔」

敏恵「えっ?」

ルーツィア「それ、イタチってやつか?」

 
敏恵「? …はい、えっと……そうです。フソウイタチです。…野生ですけど」

ルーツィア「……」プカ~

敏恵「……」

ルーツィア「……フッ、そうか。お前が…」

敏恵「??」

ルーツィア「…エステルはな、ドベから少尉まで昇ってきたんだ」

敏恵「ぇ?」

ルーツィア「あいつにとって中隊を預かれる大尉以上は憧れ――じゃ…ないな、目標なんだよ」

敏恵「……士官教育は…?」

ルーツィア「受けてないよ。“あの日”以来、私の側を離れようとしないし」

敏恵「そう、なんですか…」

 
ルーツィア「まぁ、そうだな……いくらウィッチが特別でも教育無しで佐官は不可能だろ」フゥー

ルーツィア「そういう意味じゃあ、“大尉”はあいつの目指す所そのものになっちまってる。 ……歳下で優秀なシュナウファーに固執するのも、根底はそこだ」

敏恵「そっか。あたしも大尉なのに、それっぽく見えなかったから…」

ルーツィア「……お前はまた特別だろうけどな」ボソ

敏恵「へ?」

ルーツィア「……」

敏恵「?」


ルーツィア「…………いや、今のは独り言だ」プカァ~

敏恵「は、はあ…?」ポカーン

 
ルーツィア「フゥ…。……要るかい?」スッ

敏恵「! ぁ…あたしはいいですっ」

ルーツィア「そう。…なら私も、この辺で終わりだ」グリグリ

敏恵(ストライカーで火消してるし…!?)ガーン

ルーツィア「さて、行くか。……少し喋りすぎたな」ポイ

 

―明け方―


格納庫



敏恵「……」


ルーツィア「…お疲れだ、大尉」トタ

敏恵「ぁ、はい。お疲れさまでした」

ルーツィア「流石に飛び慣れてるな? …あれだけ弛緩して夜間〈こっち〉飛ぶなんて、普通じゃビビって無理だ」

敏恵「ぅ…!? す、すみませんでした…」ドヨーン

ルーツィア「ん、いや……悪い。一応は褒めたつもりなんだけど」

敏恵「……すみません」

 
ルーツィア「ん――」シュボ

ルーツィア「~……フゥー」

敏恵「……」

ルーツィア「…なあ、私がエステルの事を話したのはべつに同情させたい訳じゃなくてさ? 誰にだって、そいつ勝手な事があるって話さ」プカ

ルーツィア「だから大尉のせいじゃない。そんなに落ち込むな」

敏恵「ルーツィアさん…」

ルーツィア「…………むしろ、私の責任なんだよ…」ボソ


敏恵「ぇ…!?」

ルーツィア「確か明日の第3はエステルとだったな? …今夜の話はオフレコだぞ、大尉。あいつの事を話したのはお前が特別だからだ」トタ…

敏恵「(特別??)ぁの、ルーツィアさ――」

ルーツィア「お前には借りがある。……また何かあったら声掛けな」ヨロヨロ




敏恵「……。借りって、なんのこと…?」

 
 
―翌日 深夜―


ライン川沿岸 上空



敏恵「……」ブゥゥン

エステル「……」


敏恵「ね、ねぇエステルちゃん?」チラ

エステル「……なんですか」

敏恵「えっと…。こ、今夜は朔〈新月〉だね?」

エステル「…。そうですね」ツーン

敏恵「……」

エステル「……」

 
敏恵「…ぁ……あ~っ! エステルちゃんのストライカーってなんて言うやつ!? あたしのは月光――」

エステル「Bf110-G4」

敏恵「て言ぅ~…」


エステル「……」


敏恵「…っ(ど、どうしよう。もう目も合わせてくれない…)」オドオド

エステル「…………」

敏恵「(何か食いついてくれそうな話題を)…そ、そういえば昨日! ルーツィアさんの義足が――」

エステル「すみませんけど大尉、今は任務に関係ない事で話しかけないでください」

敏恵「!!?」ガーーンッ

 
敏恵(き、嫌われた!? 完全に……物凄くっ!!)

エステル「…ふん」プイ

敏恵「ぅ…」

敏恵(どうしよう…。ルーツィアさんには気にするなって言われたけど、このままじゃやっぱり嫌だ)モヤモヤ


敏恵「(なんとか話を聞いて欲しい!)…エステルちゃん?」

エステル「……何か視えたんですかぁ?」

敏恵「そうじゃないの、聞いて?」

エステル「……」ムシーン

敏恵「~っ……じゃあ、あたしも…ちょっと独りごと喋るから」

エステル(私“も”って何がよ…?)イラ

 
敏恵「…あたしさ。今は大尉になんかなっちゃってるけど、それは他の偉い人達と違うっていうか……偶々なの」

エステル(…なによ、それ)イライラ

敏恵「士官教育だって園さんに面倒見てもらっただけだし……あたしなんて多分、本当だったら精々准尉とかだと思うんだ」

エステル「……」

敏恵「……5年前のカールスラントも」

エステル「!」ピクッ

敏恵「人類救護の為なんて言われたけど、本当は全然行きたくなかった。…自分の命とか、賭けたくなかったんだよね」

エステル(は?? な、何言ってるのこの人…?)

 
敏恵「――…それで着いてみたら直ぐに撤収命令が来て、よくわからない間にネウロイも来ちゃってさ」

敏恵「港の扶桑海軍もあたし達を待てなくて、なんか置いて行かれちゃったんだ」アハハ

エステル「……」

敏恵「とりあえずあたし達も逃げろって事になって、西に移動したけどその日の夜にはもう駄目だったなぁ。一応戦ったけど暗かったし、隊の人達もけっこう死んじゃった」

エステル「っ…!」

敏恵「あたし、もう本当に怖くて……銃なんてとっくに捨てて逃げてたよ。“12歳の女の子がなんでこんな目に遭わなくちゃいけないの”って悲鳴あげながら」

エステル「……」

 
敏恵「あはは、かっこ悪いでしょ? でも偶々生き残っちゃった。それで勝手に昇進とか、園さんがいろいろやって結局大尉になってこんな所にいるだけ」

敏恵「だからあたしなんて、なんでもない。…普通の女の子だよ?」


エステル「……。 でも、貴方は――」ボソ

敏恵「!」

エステル「貴方は、夜の女王なんでしょ…?」

敏恵「えっと、どう……なのかな? 確かにあそこでネウロイは倒したけど、そっちのあだ名は知らないから――」ポリポリ

敏恵「…でも多分、エステルちゃんが思ってるような感じじゃないよ。偶然固有魔法が発現したから助かっただけで、本人は泣き喚きながら色んな液漏らしてたし……あはは //」

エステル「……」

 
敏恵「扶桑に帰れるまで何度も夜間戦闘したけど、正直自分が死にたくない一心だったのかな? あんまり憶えてない事もあるくらいなんだけど……結局そういう事で、べつにあたしは誰も助けてないの」

敏恵「…だからさ、あたしなんて立派でもなんでもないんだよ? 階級なんか関係なくて、志っていうか…なんかそういうの持って頑張ってるエステルちゃんの方がずっと偉いんじゃないかな」


エステル「……。…そんな事ない」

敏恵「ぇ?」


エステル「あの時……私にネウロイを倒せる実力があれば。…もし、地位も力もあったら……私達の国を捨てる事なんてさせなかったっ…!」

敏恵「……」

エステル「お母さんも…お父さんも……っ…お婆ちゃんも、きっと死ななかった――」ギュ

エステル「……弟だって…~っ、…ぃつ…も……私がま……っまも……て…~っ」ウルッ

敏恵「エステルちゃん…」

 
エステル「っ…ぇぐ……ぅ…」フラ

敏恵「!! ぇ、エステルちゃん!? 危ない!」


ガシッ


エステル「ぅ…~っ、ぅぅ…ぅ~っ!!」

敏恵「…ごめん。ごめんね、エステルちゃん。辛いこと思い出させちゃって」

エステル「~ぁぐ…ぅぅ……っこ、こんな所で泣ぃたって…、私っ…は……っ」グシグシ

敏恵「……」

エステル「ぐ……っ、く…ぅぅ…」

敏恵(落ちそうなくらい感極まってるのに歯を食いしばって……。私なんかよりずっと凄いよ、この子)

 
敏恵「エステルちゃん、仲直りしよう? …あたし、エステルちゃんを応援したい。だからまた仲良くしたいの」


エステル「…~っ……、ごめ…なさい」ヒック


敏恵「えっ!? そ、そんな…」ガーーン

エステル「ぅぐっ…~そ、…そうじゃなくて……。…私も、冷たくして……ごめん」グス

敏恵「!!」

エステル「……」

敏恵「~~!」ジーーン




敏恵「うんっ! 全っ然へっちゃらだよぉ♪」ギューッ

エステル「むぐ…っ!? ぃ゛、いまぃ゛〈痛い〉~ッ!!」ジタジタ

敏恵「あぁ、ごめん! 銃身とか弾帯があったの忘れてた…//」

 
エステル「グスッ……ホントに貴方って、変なやつ」

敏恵「あ、あはは…。そうかな? 一応これでも普通の女の子なんだけど…」

エステル「…でも、ぁ……ぁりがとぅ…//」ヒソ

敏恵「ん、なに?」

エステル「……一応言っただけ、何でもないですからっ!///」フン

敏恵「えー? ごめん聞こえなかったよ。なになにー??」

エステル「た、大した事じゃないですから! そんな事よりほら、哨戒任務を続けま――」






『――……ー~…ー!』






エステル「!?」
 

 
敏恵「…! エステルちゃん、今の音!」

エステル「ぇ、嘘…? まさか」フィィイン




『…~ー!』




敏恵「ネウロイだよ、これ!?」

エステル「ぐ…! なんでよりにもよって、こんな時に――」

敏恵(あたしがエステルちゃんの邪魔したせいだ…。聞こえる距離ってことはもうかなり近い!)

エステル「…!? やばっ、国境越えてる!!」フィィン

 
敏恵「エステルちゃんは落ち着くまで離れてて。あたしが責任持ってやっつけるから!」

エステル「ちょ…? な、何言い出すのよっ!?」

敏恵「…あたしは戦果に興味ないから、撃墜したらエステルちゃんにあげる♪ 仲直りしてくれたお礼」ニコ


エステル「!!」

 

ネウロイ「ーー!」ビュゥウー






敏恵「! いたっ! …“差し”なら負けない!!」バッ

エステル「あ…! ちょ、ちょっと大尉!?」


ブゥゥウン――



エステル「……」


エステル「戦果は……私にあげるって…?」



~~~~~~~~~~~~~~~~


『どうしてですかっ!? 先輩!!』


『……気にすんな、元々こうするつもりだったんだ』


~~~~~~~~~~~~~~~~



エステル「ッッ!! そんなの……冗談じゃないわよっ!!」ブゥゥンッ

 
――――
――



敏恵「よぉ~し、定時連絡の前に終わらせるよ!」ジャキ


ダダダッ ダンッ



ネウロイ「ッ…!」ベキ




敏恵「(よし、先手取った!)ふふん♪ 止まった所をすかさず徹こ――」


ネウロイ「~~ー!」ギュゥウンッ


敏恵「わっ!?」ビクッ



ビュンッ――



敏恵「……ぇ、なんで…?? 20ミリだよ!?」キョロ




ネウロイ「――…」シュゥゥ…




敏恵(なにあれ…!? 欧州の新型って、あんなに再生速いの!?)

 
ネウロイ「――!!」ギラッ


ビィィイイイーー


敏恵「ひゃ!!?」ササッ

敏恵「っ~……!(あ、危ない…。面食らってて一瞬死んだかと思った)」ドキドキ



ネウロイ「~…」



敏恵「こんのっ!! 強いならもっと強そうな格好してよ!」ドフドフドフ



ネウロイ「ーー!」ヒュン ヒュン



敏恵「くっ…三号軽くなったけど、照準がいまいち!」ドフドフ



ネウロイ「……」ヒラ

  
ネウロイ「~!」ビビィー



敏恵「~あぁんもう!(月明かりがないと簡単に中てるのは難しいか。…なら――)」ブゥゥン


敏恵「遠慮しないからねっ!?」ダダダッ



ネウロイ「ー……」ビュゥウン



敏恵(ぎりぎり視える! 三号の“癖”を照準修正して――)グ

敏恵「ッ…!」ドォンッ




ネウロイ「!?」


バゴォォオオォオン――
 

 
敏恵「ぃえいっ! あたしの勝ち」ドヤ


敏恵「――…て、あら?」




ネウロイA「……」シュゥゥ…

ネウロイB「……」ゥゥ…




敏恵「……えぇっと…、つまりどういう事…??」



ネウロイA「ーー!!」

ネウロイB「ー~、ー!」


ヒュゥンッ ビュンッッ



敏恵「!?」


ネウロイA「~ッ!」ズォオッ


敏恵「ぇ…!(はや――)」



ネウロイB「――ーー!!」ビィーーッ



敏恵「!? くっ…!!」ブゥゥンッ
 

 
敏恵「~さっきのダメージはどうしたのよ!?」ダダダンッ



ネウロイB「……」ヒュンッ


ネウロイA「ーー!」ビビィーー



敏恵「つ゛ッッ!?」パァァ

敏恵(不味い、シールド出しちゃうなんて…! 変な軌道で飛ぶうえに連携まで取られてるし)



ネウロイB「…~ー!」ギラッ



敏恵「! やばっ…、止まってるとハマっちゃう!」ワタワタ

 

ブゥゥウンッ――


敏恵「…攻め返さなきゃ、ここからっ!!」バッ


グワンッ


敏恵(宙返りとバンクで敵を確認……そのまま得た速度で、今度はあたしが追っかける!!)



敏恵「……!?(あれ? い、いない…!? あたしを追ってた筈――)」






ネウロイA「――…」ズォォッ

ネウロイB「~ー!」

敏恵「ぅ…! なんで後ろに!?」ドキッッ


ネウロイA B「「ッッ~!」」ギラ


ビィィイーー


敏恵「きゃあッ!!」パァッ

 
ネウロイA「……」

ネウロイB「……」


ビュンッッ――



敏恵「~っ…。ま、また加速した…!?」ガーン

敏恵(駄目だ、あんなのじゃ朔夜だと暗すぎて上手く視認できない! …園さんの言った通り、5年前と全然違う!)



敏恵「……」ゴクリ


敏恵(これ、死なない自信無いかも。…ちょっとだけ使うしか――)


『大尉ーーッ!!』


敏恵「…!」

 
エステル「よかった、流石に生きてる!」ブゥゥン

敏恵「エステルちゃん来ちゃったの!? こっちは危ないって――」

エステル「~ッ…なんで勝手な事するんですかっ!!」

敏恵「ぇ…?」

エステル「頼んでもいなのに、皆みんな勝手に! …これ以上私を惨めにしないで下さいっ!!」

敏恵「……?? ぃ、いや…そういうつもりじゃなくて」

エステル「私は自分の実力で、貴方達に追いつくんですから!! 大尉は余計な事しないで下さい!」バッ

敏恵「あっ!! エステルちゃん、駄目だってば!? 独りじゃあのネウロイは絶対危ないから!!」


ブゥゥウン――




敏恵「っ…こうなったら、もう迷ってられない! ……ごめん園さん!!」

 
――





エステル「見た事ないやつね? …私の国の領土で勝手に繁殖してんじゃないっつの!」ブゥゥン

エステル(周りに他の反応は無い。劣勢でも、小型2体だけなら十分やってみせるわよ!)フィィン



ネウロイA「!」

ネウロイB「!」



エステル「こっち来い馬鹿!! 大尉じゃなくて私と戦え! 沢山餌やるわよっ!!」ダダダン



ネウロイA「ッ…!?」バキャ


ネウロイB「~、ーー!」ビュゥンッ

 
エステル(レーダー探査の感度も抜群、月明かりが無くてもいけるわ!)


エステル「…そこぉ!」ダァンッ



ネウロイB「……!」ヒュン

ネウロイB「ーッ!」ビィーー



エステル「フン! 速いじゃない――」サッ




ネウロイA「……」ズォォッ


エステル「…でも、全部バレてるっつの!!」


ネウロイA「~ー!」ビーッ

エステル「ふっ――」グルン






エステル「でぃ!!」ダダダッ


ネウロイA「…ッ ッ」ベギッ バキィィン
 

 
エステル「~どんなもんよ! たった2機程度じゃ私は囲いきれない――」


エステル「わ…ょ……。…?」ピク






ネウロイC「……」シュゥゥ…

ネウロイD「……」ゥゥ…

ネウロイE「……」

ネウロイF「……」




エステル「ッ…な、なんなの……これ!?」ゾワ

 

ネウロイB「ーッ!」ビィィーッ


エステル「!?」サッ



ネウロイC「~~!」ビーッ


エステル「ふぐっ…!?」パァァ



ネウロイD E「「――~ー!!」」ビビーーッ



エステル「!! くっそ――」ブゥゥン

ネウロイF「……~」ズォォッ


エステル「ッッ…!!」ビクッッ
 

 

ネウロイF「~~!」ギラッ


エステル「ぁ…(やられ――――)」






――ドォオンッ



ヒュッッ



ネウロイF「ッ…」メギャ


エステル「…………ぇ?」
 

 

――ドフドフドフッドフドフドフッ ドォンッッ


ネウロイC~E「「「ッッ……ッ…!?」」」バギィイン



エステル「なっ…!? ……??」ポカーン




――ブゥゥウン


敏恵「大丈夫!? エステルちゃん!」

エステル「た、大尉…?」

敏恵「怪我してない? 危ないから下がってて」

エステル「……!?? ど、どうして…?(月明かりもなくて…魔導針だってないのに、あんな遠くから――)」


エステル「…ぁ!!(夜間視能力!?)」

 
敏恵「交代しよ。ここはあたしが掃除するから」フィィィン

エステル「なっ…何言ってんのよ!? そういうのいらないって――」

敏恵「有難迷惑だったらごめんね。…でもエステルちゃんの為に、少しは大尉らしい所見せるよ?」ニコ

エステル「ちょ、ちょっと――」

敏恵「いい、エステルちゃん? 単独で戦闘を“仕掛ける”なら、守ったら駄目だよ。全部終わるまでずっと……ずーっと押し続ければ負けないから」

エステル「だからっ! 私の話を聞――」

敏恵「大丈夫、……もう勝てるから」キッ



ネウロイG~N「「「……」」」シュゥウ…



エステル「!?!? あのネウロイ、また増えて…!!」

敏恵「…壊しても増えるなら、壊し続けて黙らせるっ!」ブゥゥンッ

エステル「あっ! ちょ、大尉ッ!?」

 
――





――ビュゥウン


敏恵「……」フィィィイン




ネウロイG~N「「「…~~」」」ギラッ


ネウロイG~N「「「ーー!!」」」ビビビィィーーッ




敏恵「!(…全部、あたらない)」


――ヒュンヒュン ヒュオンッ


敏恵「(やっぱり。たいして攻撃精度は良くないんだ)……ごめんね、もうビックリしないよ!」ドフドフ




ネウロイG H「「ッ…!」」ベギャァ


ネウロイI~N「「「!? …~~!」」」ビュンッ
 

 
敏恵「…この数でまた連携する気? 残念だけどあたしはもう逃げないし、全部視えてるんだよ~……っね!!」ドゥンッ ドムッ



ネウロイI「ッ…」バリィン

ネウロイJ「~ッ…ッッ」ゴジャァッ



敏恵「ほら! そっちの狙撃手君も!!」ドフドフドフッ



ネウロイK「ッ… 」バギィ

ネウロイL「ッッ… 」メギャ

ネウロイM「…ッ 」バリィンッ




――ビュンッッ


ネウロイN「――……ッ!」ズォオッ

敏恵「!」

 
 
ネウロイN「ッ~ー!!」ギラッ




――グワンッッ



ネウロイN「……? …??」






敏恵「はい後ろ取った! 連携、繋がってないよ?」

ネウロイN「!?」

敏恵「…んふふ、さっきのお返し♪」ドフドフッ

ネウロイN「ッ……ッ…ッ!!」ベギッ バギン


敏恵「……よし、今のうちに本体やっつけよう!」

 
敏恵(破片から再生するって事はこのネウロイ達にコアは無い筈。最初に分かれた片方が隠れてるなら、この隙にあたし達のどっちかを…)フィィィン


敏恵「…………――」ジー

敏恵「! ほらいたっ!」






エステル「……す、すごぃ…!(あの時となんとなく違う気もするけど、これが……夜の女王…!?)」


ネウロイB「――…」ビュゥゥン






敏恵「エステルちゃーーーーんッ!!! そこ動かないでぇーーーー!!」
 

 
エステル「………ぇ…?」






敏恵(“これ以上”の魔法は要らない、的は捉えてる! …全部あててコアごと粉々にすればっ!!)


敏恵「ッ!!」ドフドフッ ドゥムッ






エステル「はっ!? ちょ――」


バギバギバギィイン


エステル「っ…!!?」ビクッ


――バギャァオンッ ガギィンッッ



エステル「~……。…………?」チラ

ネウロイB「 」ボロ

エステル「!? ひ…っ!」ビクッ

 
ネウロイB「」パラパラパラ…


エステル「……!? …???」ドキドキ



――ブゥウウン


敏恵「はぁ~…ふぅ~~……。エステルちゃん、破片危ないよ?」

エステル「ぁ…ぇ……? ちょ、ちょっと今の…??」

敏恵「うん、今のが本体っぽいね? あっちの小さいのも全部消えたよ」

エステル「そ…そそ、そうじゃなくてっ!!」ズイィ

敏恵「わ!? どうしたの?」ヨロ

 
エステル「仲間に向かって何するんですかっ!? 貴方は!!」

敏恵「…? ち、違う違う! ネウロイ狙ったんだよ!?」

エステル「あんな遠くから! ほんのちょっとズレたら私に直撃するでしょ!? 30ミリ口径の徹甲弾がっ!!!」

敏恵「ぇ…あぁ、いや! ほら、だから“動かないでね”って言った――」アセアセ

エステル「そういう問題じゃないでしょーーがっ!!?」ムカー

敏恵「ご、ごめんごめん…。戦果はエステルちゃんにあげるから、機嫌直して?」ネ?

エステル「いらないわよっ! この馬鹿大尉!!」プイ

敏恵「ぅ…(折角仲直りできたのに、また――)」フィィィン


敏恵「!」
 

 
敏恵「ぁ…! …嘘、どうしよう」フィィン

エステル「? こ、今度は何よ…?」ジト

敏恵「…魔法が止まらない」

エステル「はあ?」

敏恵「不味い、なんとか抑えなくちゃ…」フィィィン

エステル「……いいじゃないですかべつに? 残りの哨戒で役立つんですから、使えばいいじゃない」

敏恵「ん、んー……でも園さんにも止められてるしなぁ…」

エステル「なんでですか?」

 
敏恵「あたしさ、これ使うと後引いちゃうみたいで…。元気出なくなるから控えてたんだけど」フィィィン

エステル「……へぇ、そういうのってあるんですね? 初めて聞きましたけど」

敏恵「うん……やたら喉も乾いて来るし…。 使ってるときは気分爽快なのに」

エステル「はあ…? じゃあ今も気分爽快なんですか?」

敏恵「まぁ、うん。 もう向こうの地平線までバッチリ視えてるよ」クイ

エステル「ぇ!? ……いや、それは嘘でしょ」

敏恵「本当だってば。…ほら、丁度ネウロイがこっちに飛んできてる」




敏恵(――~て、あれ? …ネウロイ!?)

 
エステル「あっはは! ほら嘘、残念でした! この周辺にそんな飛行物体はいませんから~?」

エステル「だいいち、一晩にそう続けてネウロイが出るわけ――」

敏恵「エステルちゃん避けて!!」ガッ

エステル「えぶッ!?」



――ヒュォォオオンッッ



エステル「~~っ……ぃ、いきなりなにすんのよ!?」

敏恵「くっ…、この!」ドォンッ



ゴォッッン

『…~……~ーッ!』
 

 
エステル「えっ、…なに? なになにっ!?」

敏恵「(……直撃狙ったはずなのに、中でコアが動いてる? そんなのもいるんだ…)まだ生きてる、来るよエステルちゃん!?」フィィィン

エステル「は?? 来るって何がよ?」キョロキョロ




――ビュォオオンッ


???「 ・ ・ ……~」シュゥゥ…




エステル「ネウロイ…!?? ぅ、嘘!! なんでッ!?(私の探査魔法だとそんなの――)」

敏恵(どうせ魔法抑えられないし、……こうなったらもう…思う存分やるっ!!)フィィィイン




???「~~」ピカッ


???「…… ・ ・ ・  」スゥー




敏恵「!」

 
エステル「き、消えた…ッ!?」

敏恵「……。…大丈夫、川の向こうへ逃げちゃったみたい」

エステル「は??」

敏恵「何も撃ってこないで突進してきたけど、いったいなんだったんだろ…? あのネウロイ」

エステル「ちょ……大尉、今の視えてたんですか…?」

敏恵「ん? うん」

エステル「“うん”って…」


敏恵「……(今のネウロイ、一瞬で距離を詰めてきた。…やっぱり刀も持っておかなきゃ危ないかも)」ギュッ

エステル「――!!」モゾ

 
エステル「て、ていうか大尉! いい加減離して下さいってば!? 胸の脂肪が窮屈です!」ジタジタ

敏恵「ぇ? ああ、ごめんね!? …可愛くてついギュッてしちゃった」

エステル「…!?///」


エステル「なな……なによそれ!? 舐めてるんですかっ!! /////」カァァ

敏恵「えぇ!? ち、違うよエステルちゃん! ただその、…小っちゃくて抱えやすいから――」

エステル「完全に馬鹿にしてんじゃないのよッ!!?」










野外周辺 地上


???「……お姉様、対象が領土内から侵入のネウロイを撃墜しました。偵察資料にあった新型のひとつです」

『へぇ、…扶桑のデバイサーも中々優秀みたいねぇ?』ガザ

 
???「それから、その後にもう一機現れたのですが…」

『あら、二体も?』

???「…恐らく、例の“XX”かと」

『…………』

???「そちらはまた領内へ逃げた様ですが、どうしますか?」

『……引き上げなさい』

???「ですがお姉様」

『消えたなら今はいいわ、必要以上の情報は得たから撤収よ』

???「…了解」






――――人は誰しも、過去を持って生きてる。

あたし達もそれぞれの記憶に翻弄され、時には励まされながらも、これからの為に営みを始めようとしてた。


でも、そうやって進んだあたしの未来も……結局は過去に繋がっているだけなのかもしれない。

 

 

第四話:昼間 に続く

 

話が多少なり動く所までなんとか早めに上げました
書き溜めに追いついてしまったので次回更新は遅れると思います

※sswikiを試験的に利用してみました。簡単なあらすじや設定・補足情報等をちょこちょこまとめています

 

【第四話 昼間】



―早朝―

敏恵の部屋


敏恵「……」


チュンチュン――…


敏恵「……駄目だ、やっぱり眠れない…」モゾ



敏恵「……」ムクリ


敏恵「はぁ…」カタ

敏恵「…! ……水筒、空だし」



敏恵「…………」


敏恵「……はぁ…」

 

食堂



敏恵「……あった、水」ガパ


敏恵「ぃしょ…」ゴト

敏恵「……」



~~~~~~~~~~~~~~~~

ハルテ『軟質のお水が飲みたいんですか?』

ハルテ『ならミネラルウォーターでしたら――……非常用に』

~~~~~~~~~~~~~~~~



敏恵(非常用の備蓄、あたしが吞み潰してる…)


敏恵「……ごめんハルテちゃん。ちゃんと後で買い足しておくから――」ギュ

敏恵「んんっ……~~!」グイグイー

 
敏恵「~~…っくぁ! ……はぁ…はぁ。…手じゃ空かない」

敏恵「栓抜き。……栓抜き、どこだろ?」


敏恵「っ………、んっ…(駄目だ、喉が渇いて気持ち悪い…! ……もう水道でも!!)」ガバ


ジャ~ー


敏恵「~んぐ……ん…――」ガブガブ


敏恵「…………ッ!! がぇっ!? ぶふっ…!!」

敏恵「ッッ…ゲホ! ……ケホッ…」ゴホゴホ

 
敏恵「~~、はっ……はぁ…。…やっぱり喉通る感じがなんか、慣れない」ゼェ ハァ


敏恵「…………」

敏恵「はぁ…(気力が出ない。…まだ寝れそうにないのに)」



敏恵「……」



チュンチュン…


敏恵「ぅ…(眩しいな…)」


敏恵「……でも、折角起きてるし。行ってみようかな…」

 

格納庫



敏恵「……」


敏恵「……駄目だ、やっぱり飛ぶ気になんないな…」


敏恵「…。…~」チャポ

敏恵「んく……んっ…」ゴクゴクゴク


敏恵「はぁ~…。 ……もうなくなっちゃった」ガク



『――こら、誰? そんな所でなにやってるの』


敏恵「!」

 
オクタヴィア「て……あら? 本当に誰?」スタスタ


敏恵「……ぇ、えっと…?」

オクタヴィア「……? …先に自己紹介がいるかしら。初対面みたいだし」

敏恵「ぁ…は、はい。まあ…」

オクタヴィア「失礼しちゃったわね? あたしはオクタヴィア・デュッケ。ここの副隊長をやらせてもらってるわ」

敏恵「! 副隊長…さん!?」ビクッ

オクタヴィア「あら、驚いてる。可愛い」クス

敏恵「あのっ…ご、ごめんなさい! あたし工藤敏恵で来た――…じゃなくてっ、えっと……援戦武官で一昨日から~」アセアセ

オクタヴィア「まあ、貴方が扶桑からの? …まさかと思ったけど、扶桑の子って身長も胸も結構あるのね?」

敏恵「ぇ…?」

 
オクタヴィア「うふふ、はじめまして工藤大尉。挨拶が遅れちゃったけど、よろしく?」スッ

敏恵「……は、はぃ。どうも(今のでちゃんと通じたんだ…?)」ニギ

オクタヴィア「それはそうと、こんな所でどうしたの? 確か第三哨戒を終えた後よね?」

敏恵「はい。その……あまり寝付けなくて。なんとなく、ここに」

オクタヴィア「あらあら、…きっと戦闘の興奮がまだ抜けないのね?(初心みたいで愛嬌あるわぁ)」ウフフ

敏恵「えっ? どうして知ってるんですか…!?」

オクタヴィア「どうしてって、あたしが副隊長だからよ? 朝一で哨戒記録をチェックするのも日課なの」

敏恵「…そうなんですか」

 
オクタヴィア「ここの皆とも仲良くやれているって、隊長からも聞いてるわ。あの子と“お友達”になったんですって?」

敏恵「あ、はい。そうです」

オクタヴィア「……いいわねぇ~…」

敏恵「へ?」

オクタヴィア「羨ましいわぁ…」ウットリ

敏恵「はあ…??(なんか、よくわからない人だなぁ)」

オクタヴィア「付き合い下手のあの子を一晩でどうやって落とし込んだのかしら、……うふふふ」

敏恵「!?(な、なんなの急にーっ!?)」ゾク

 
オクタヴィア「――…ぁ、ごめんなさい。つい独りで捗っちゃったわ」

敏恵「な、何がですか…?」

オクタヴィア「……知りたい?」ニコ

敏恵「! ぃ、いえ! やっぱりいいです…」

オクタヴィア「うふふ、初心ね♪」

敏恵「……(この人、初対面のルーツィアさんより絡みづらい…)」タジ


オクタヴィア「そういえば。 …さっきから少し気になっていたんだけど、そのボトルってうちのかしら?」

敏恵「え? ぁ、これは~…はい。ハルテちゃんに教えてもらって」

オクタヴィア「お菓子ちゃんに? …けどそれ、確か非常時用のミネラルウォーターだったと思うけど」

 
敏恵「あっ、えっと…! その、あたし硬水がちょっと苦手なのでそれで――」

オクタヴィア「硬水? ……あぁ、そういう事なのね」

敏恵「はい。でも、ごめんなさい。…その時に貰ったのはもう空っぽで、これはさっき勝手に……取りました」

オクタヴィア「あら」

敏恵「それで……栓抜きが見つからなかったから、この辺の工具を使って開けて…飲みました」ボソ

オクタヴィア「……。知っていてやったの?」

敏恵「す、すみません…」


オクタヴィア「……」

敏恵「……」
 

 
オクタヴィア「工藤大尉、こっちへ来て立ちなさい」

敏恵「ぅ…! …了解(いきなり怒られ――)」スタ



オクタヴィア「ん…~」チュ

敏恵「!!?」




オクタヴィア「――…はい、お仕置き♪ もうそういう事しちゃ駄目よ?」ウフフ

敏恵「ッ…!? ぃ…??? ~~~~!?!? /////」ササッ

オクタヴィア「あらあら、どうしたの? ネウロイみたいな声出して」

敏恵「…あぁ、あのっ!? 今ッ……な、なんでっ! ちゅ、ちゅ…っ!? ////」ワナワナ

オクタヴィア「あらやだ! “チュウ”だなんて、本当に可愛いわねぇ?」

敏恵「~~!?////(い、意味わからない!? 意味がわからないよこの人ーーっ!!)」ガーーン

 
オクタヴィア「少しは気付けになったかしら? なんだか元気ない雰囲気だったから」

敏恵「ぅ~…。そ、そりゃビックリは……しましたけど… //」オド

敏恵「急にちゅ――……き、キスするなんてぇ…」

オクタヴィア「リベリオンでは挨拶らしいわ」

敏恵「…ここはベルギガじゃないですか」

オクタヴィア「あら、ベルギガにだってチークキスの文化はあるわよ?」

敏恵「……ぅ~っ」モジモジ

 
オクタヴィア「それから、勝手に飛ぶのも本当は駄目よ? 気をつけてね」

敏恵「それは…! ……す、すみません(バレてるし…)」

オクタヴィア「貴方はまだ来たばかりだから、ここでの初めては必ず基地の誰かに言うこと。融通を利かすのはそれからね?」

敏恵「……」コク


オクタヴィア「…うふふ、躾はこれくらいにして。それじゃあここからは改めて親睦を深めましょう♪」ニコ

敏恵「ぇ、ぁ…はい」

オクタヴィア「そうねぇ? 良ければ少しお出掛けしましょうか」

敏恵「はい? ……外出ですか?」

 
オクタヴィア「ええ。眠れないのよね? 折角だからお話しもしてみたいし、ベルギガの街はまだ歩いたこと無いでしょ?」

敏恵「…嬉しいですけど、でもいいんですか? なんか副隊長さんは凄い忙しいみたいに聞きましたけど…」

オクタヴィア「あらあら、エステルちゃんかしら? 大袈裟なんだから」

オクタヴィア「心配しないで? 丁度外出の用事もあるし、貴方が飲んだ水も買い足さなくちゃいけないから」

敏恵「ぅ…! た、たしかにそうですよね…」ギク

オクタヴィア「今日はあたしが連れて出るから、細かい手続きは気にしないでいいわ。…少し早いけど行きましょうか」

 

野外



ブォォーン~――


オクタヴィア「今日は雲ひとつなくて気持ちいいわねぇ。お出掛け日和かしら」

敏恵「は、はぃ……っ…」

オクタヴィア「あら、あんまり嬉しそうじゃないのね? 苦い顔してるわ」チラ

敏恵「…ぃぇ、その~お天気は好きなんですけど。…眩しくて……」

オクタヴィア「? …まだそんなに陽は高くないけど」

敏恵「昨日、固有魔法使っちゃったから…ちょっと…」

 
敏恵「昨日、固有魔法使っちゃったから…ちょっと…」

オクタヴィア「(固有魔法? 確か資料には夜間視力ってあったかしら)……そうだったの。なんだか余計な事しちゃったかしらね」

敏恵「いえ、そんなことはないです。…~っ」

オクタヴィア「……なら、進路を変更しましょ」ガッ

敏恵「えっ」


ギュルルルッッ


敏恵「んぃッ!!?」ヨロ

オクタヴィア「郊外で済ますつもりだったけど、あそこの方が良さそうね。ついでに美味しいものでもご馳走するわ」

敏恵「あ、あのっ! 用事があるんじゃ…!?」

オクタヴィア「帰りがけで平気。少し距離あるから飛ばすわよ?」

敏恵「ちょ…っ!」


ブォォーーンッ

 

ブリュッセル市



オクタヴィア「――ええ、はい。なのでお伺いできるのは午後になるかと思います」

オクタヴィア「……。…いえこちらこそ、直前になってすみません。…………ええ、はい。失礼しますわ」ブツ


敏恵「はぁ~ー…! 基地の周りと全然違う。眩しくてよく視えないけど流石首都、都会だ」キョロキョロ

オクタヴィア「…さてと。スケジュールの調整は無事に済んだから、早速行きましょうか」

敏恵「へ? 早速って……これから何処に行くんですか?」

オクタヴィア「うふふ、とってもいい所よ♪」

敏恵「いい所?? ……ぁ、ご飯ですか?」

オクタヴィア「んー、それも後で行くけど違うわ」

敏恵「はあ…? じゃあどこに?」

オクタヴィア「“ギャルリー・サン・チュベール”、欧州最古のショッピング街よ。…さ、ついてらっしゃい?」グイ

敏恵「わ! あ、あの…!?」ヨロ

オクタヴィア「眩しくて危ないから、手繋いでいきましょう。うふふ」

 
――――
――



――カラン カラン~


オクタヴィア「たしかこの店だったわね」

敏恵「……? 眼鏡屋…?」


店員(お、カールスラントの軍人と……東洋人か)



店員「いらっしゃいませ、本日は何をお探しでしょうか?」

オクタヴィア「ごきげんよう紳士さん、オーナーはいるかしら?」

店員「え? ……大変失礼ですが、どのようなご用件で」

オクタヴィア「安心して、こんな格好でもプライベートだから。買ったのはあたしじゃないけど、一応リピーターなのよ?」

店員「……左様でございましたか。大変失礼致しました」

 
オクタヴィア「“サラ・デュッケ”と言ってもらえれば分かるわ。遮光アイウェアの一等品を出してと伝えて頂戴?」

店員「か、かしこまりました…」



敏恵「…おぉ~(こうやって飾ってあると眼鏡もなんか凄く貴重な骨董にみえる…!)」マジマジ

オクタヴィア「――あら、…それが気に入ったの?」スタスタ

敏恵「へっ?」

オクタヴィア「なら、かけてみましょうか」ヒョイ

敏恵「え?? いやあの、あたしは――」

オクタヴィア「いいから、遠慮しなくていいのよ?」

敏恵「は、はあ…?」

オクタヴィア「はぁい。……あら、似合ってるじゃない♪」

敏恵「……そ、そうですか?」

 
オクタヴィア「けどこれは遮光グラスじゃないから、すぐには持ち帰れないわねぇ? 他も見てみましょうか」

敏恵「?? あ、あのオクタヴィアさん!?」

オクタヴィア「ん? やっぱりこれがいいの?」

敏恵「あ、いや違くて……! あたし、ここに何しに来たのか分かってないんですけど…?」

オクタヴィア「あら!」ピク

敏恵「……」

オクタヴィア「…うふふ、ごめんなさい。つい置いてけぼりにしちゃったわね?」クス

敏恵(な、何が可笑しいんだろう…??)

 
オクタヴィア「大尉、陽の光を眩しがっていたでしょう? だから先ずは、その可愛い目を保護してあげなくちゃ駄目よ」

敏恵「……つまり、あたしのサングラスを?」

オクタヴィア「そうよ♪ 郊外で探すよりもここの方が品揃えは良いし、早いじゃない?」

敏恵「…ぃ、いやでも急にそんな!? 別に今日ちょっと外出するってだけで――」

オクタヴィア「はい、チャック」ピト

敏恵「ぉむ…!? //」ビクッ


オクタヴィア「……別に今日限りを凌ぐ為じゃないわ。夜間視魔法の制御が上手くいかない間は、持っていた方がいいわよ?」

敏恵「ぇ…!!」

 
オクタヴィア「うふふ、“眼”を使う魔法は特に難しいわよね?」

敏恵「……」

オクタヴィア「あたしもそうだから、だいたい分かるわ」

敏恵「そうなんですか? …あれ? でもナイトウィッチじゃ…??」

オクタヴィア「いいえ、貴方と同じで魔導針は使えないわ。でもあたしはナイトウィッチではないのよ?」

敏恵「…!(知ってるんだ、あたしが下手物な事…!?)」

オクタヴィア「あたしの固有魔法は遠方注視の能力でね、この瞼の裏にあるの。…ほら――」パチクリ


オクタヴィア「……」フィィィン

敏恵「っ!!?」


オクタヴィア「あらあら、そんなに驚いちゃって。 もしかして魔眼を見るのは初めて?」スッ

敏恵「~っ……は、はぃ…(ビックリした…、両目が鈍く光っててなんか怖いし)」ドキドキ

 
オクタヴィア「あらそうなの? 扶桑海軍にはあの坂本美緒少佐もいるのに」

敏恵「あ、えっと~。あたし、もっさ――…坂本さんとは殆ど面識なくて」

オクタヴィア「…それじゃあ、彼女がどうして眼帯をしているかも知らないのね?」

敏恵「? …はい、まぁ(そういえばそんなのしてたっけ…?)」

オクタヴィア「高度な魔法技術の行使にはそれなりに“集中する”必要があるじゃない? けどあたし達は航空戦闘の最中だったり、状況に応じた迅速な制御が出来なくちゃいけない。…それを自分の精神力だけで行うのは中々に難しいわ」

オクタヴィア「だから魔法を制御する集中を制御する為の補助装置として、彼女は片目を塞ぐのよ」チョンチョン

敏恵「集中する為の、補助…?」

オクタヴィア「そうよ。ずっと目を開けた状態で“さあ、魔眼使うぞー!”ってするよりも、“目を開けたら魔眼を使う”みたいな条件付けの方がメリハリついて集中しやすいの」

 
オクタヴィア「身体が学習してしまえば条件のオン・オフで発動から抑制までコントロール出来るから、難しい精神制御をする負担もなくなるわ。…坂本少佐の眼帯以外にも例えば、うちの空軍少将なんかはスコープを覗いたりするわね?」

敏恵「……じゃあオクタヴィアさんも、何か補助装置を持ってるんですか?」

オクタヴィア「うふふ、あたしは特に“物”は用意してないわ。けど条件付けはさっき言った通りよ」

敏恵「?」

オクタヴィア「“目を開けたら魔眼を使う”。……あたしは見ての通り普段が細目だから、見開いた時に集中する様にしているのよ?」

敏恵「…あぁ~! なるほど、瞼の裏にあるってそういう意味で言ったんですね!?」

オクタヴィア「アイテムを無くす心配も、制御に手も使わないから便利よ。…ほら♪」ギラン

敏恵「!! わ、わかりましたから! あんまり見せないでくださいっ…!」タジ

 
オクタヴィア「…うふふ。魔眼に限らなくても条件付けによる制御は魔法を的確に操るコツのひとつだから、貴方も何か補助装置を使えば、眩しい思いもしなくなるかもしれないわね?」

敏恵(…そっか! 自分じゃ全然気づいてなかったけど、もしかして昨日は刀を抜いてないから止め時が――)

オクタヴィア「例えば、…このサングラスなんてどうかしら?」ヒョイ

敏恵「え?」

オクタヴィア「そぉれ」クイ

敏恵「きゃ!」

オクタヴィア「……んー、ちょっと大き過ぎかしら。顔小さいのね?」

敏恵「あ、あの…」

オクタヴィア「ふふ♪ 難しい話はこれくらいにして、とりあえず選んじゃいましょ?」

敏恵「……(いつの間にか、結局あたしのサングラス買う流れに――)」


『大変お待たせしました、サラ・デュッケ様』
 

 
オクタヴィア「あら、ごきげんようオーナーさん。景気はいかがかしら?」

店主「お陰様で、どうにか続けさせて頂いております。…その後はいかがでしたでしょうか? 調整が必要であればご遠慮なく申し付けください」

オクタヴィア「ありがとう。あの子も特に不便なく使っている様子だわ」

店主「それはまた結構な事でございます。……それで本日は、遮光の品をお求めでいらっしゃるとか」

オクタヴィア「ええ」チラ

店主「?」チラ



敏恵「ん~むむ……。まあ折角だし、買っちゃってもいいんだけどさぁ…(なんか、全部高そうな数字じゃない? フランって何円だろ??)」ジロジロ



店主「……お連れ様でいらっしゃいますか?」

オクタヴィア「今回はあの子のアイウェアを繕いたいの。直ぐ着けて出掛けるから、フレームからのオーダーは要らないわ」

店主「かしこまりました。一等の品を用意しましたので、あちらへどうぞ」

オクタヴィア「期待するわ。…大尉ちゃん、こっちにいらっしゃい?」

 
――――
――



敏恵「わぁ~! これすっごぉ…!」

店主「そちらはプラチナとカラーダイヤをあしらえた物です。丁番のパーツから全て手作りで――」ベラベラ

敏恵「ダイヤモンド!? ……初めて見た、これがあの…」オォー!

オクタヴィア「うふふ、そっちはプラチナ。 カラーダイヤはこの青よ?」

敏恵「!? そ、そうなんですか……あはは //」

オクタヴィア「でもどうかしら。確かに高級ではあるけど、少し派手ねぇ?」

敏恵「これなんかまっ金々ですよ。……うわ、重い!?」


オクタヴィア「…いまひとつ品に欠けるわね。これじゃ成金趣味だわ」

敏恵「ていうか、あたしこんなの買えるお金ないですからね? オクタヴィアさん」チラ

 
オクタヴィア「もう少し洗練されたデザインはないのかしら? 宝飾をくっ付けた物じゃなくて」

店主「でしたら、先日ガリアの職人から仕入れた品が――」グイ


店主「……こちらでございます」コト

敏恵「…今度は普通な感じだ」

オクタヴィア「あら、素敵じゃない」

店主「全体的にシャープなデザインですが、曲部の仕上げが柔らかい印象を出して優しいシルエットに収まっております」

敏恵「……よく分かんないけど、確かになんとなく凝ってそうな感じ…?」ジー

オクタヴィア「テンプルの彫刻がさり気なくて良いわねぇ」

敏恵「? …あっ、本当だ! 可愛い!」

 
オクタヴィア「大尉、ちょっとかけてみて頂戴?」

敏恵「え? あ、はい。それじゃあ…」スチャ

オクタヴィア「あらあら、良いじゃない!」

敏恵「……そ、そうですか? //」エヘヘ

オクタヴィア「グラスの色も濃すぎないし、貴方の素朴な感じにとても似合っているわ」

敏恵「ぇ、えへへ…。私も見たいなぁ ///」

店主「失礼しました、ミラーをどうぞ」ゴト



敏恵「……ぉー…! これがあたし…(い、いいかも…)」ゴクリ

オクタヴィア(うふふ、少し色気が出る感じがたまらないわぁ)

 
敏恵「………………」

店主「……いかがでしょうか工藤様?」

敏恵「……。ちなみにこれ、その……扶桑の円だといくらするんですか?」

店主「円でございますか? …現金のお支払いはフラン以外承れませんが、換算するなら――」カキカキ

敏恵「っ…」


店主「現相場で、これほどかと」スッ

敏恵「ぶっ!!?」ガタッ


オクタヴィア「あら、大丈夫?」

敏恵「ちょ…嘘!? 高いっ!!」ガーーン

 
オクタヴィア「そうなの? ……ちょっと、ベルギガ・フランに戻して頂戴」

店主「かしこまりました。フランですと……こちらです」

オクタヴィア「……なんだ、一等品にしては相場通りじゃない」

店主「はい、勿論でございます」


敏恵「こ、こんなに眼鏡ってお金掛かるの!? でも同級生の裕子ちゃんとか上杉君の家もそんなお金持ちには見えな――」アワアワ


オクタヴィア「はいはい、落ち着いて。 お店で騒いじゃ駄目よ?」ピト

敏恵「ぃんっ!? //」ムグ

 
オクタヴィア「……それ、気に入っちゃったかしら?」

敏恵「ぇ…? えっと、まぁ……はい。でも、もうちょっと安――」

オクタヴィア「じゃあこれ、頂くわ」

店主「ありがとございます」

敏恵「!!?」

オクタヴィア「……」ピラ

敏恵「ちょ、ちょっと待って!? 勝手に決めないでください! あたし、こんな高い物買うお金なんて持ってないですよ!?」

オクタヴィア「ふふ、さっきから何言ってるの? そんな心配しなくていいわ」カキカキ

敏恵「は…?」

 
オクタヴィア「はい、小切手でもいいのよね?」

店主「勿論でございます」

オクタヴィア「サイズは丁度ぴったりみたいだし、調整はいいかしらね? 包もいらないから、チップはこれで我慢して頂戴」スッ

店主「いえ、とんでもございません」

敏恵「…………?」ポカーン

オクタヴィア「さ、行きましょう大尉ちゃん? テラスで美味しいワッフルが食べられるレストランがあるの」ガタ

敏恵「ぇ? ぁの…えっ?? でもこれ、お金…」オロオロ

オクタヴィア「何言ってるの? それはもう払ったじゃない。さあさあ、朝食まだだからお腹空いたわ」グイー

敏恵「えっ? えぇ??」ヨロヨロ


店主「ありがとうございました」

 
市内 レストラン


オープンテラス



オクタヴィア「♪」カチャ

敏恵「……」


オクタヴィア「…? もう食べないの? 食欲ない?」

敏恵「ぁ、いえ。……そのぉ、これ本当にいいんですか?」

オクタヴィア「迷惑だったかしら?」

敏恵「そ、そんな事はないですけど…。こんな高価な物いきなり貰っちゃって、ビックリしたというか……いつもなら給料から引かれてるし」

オクタヴィア「気にしないで。独りだと使い切る時間もないし、こんな時代にお金を貯め込む趣味もないわ」

敏恵「はあ……そ、そうですか(羨ましい…)」

 
オクタヴィア「あたしが好きでやっている事だから、遠慮なく貰って頂戴。友好の挨拶代わりよ?」ニコ

敏恵「…じゃあ、お言葉に甘えて。ありがとうございます」ニヘヘ

オクタヴィア「うふふ、素直な子は好きよ♪ マリーちゃんは結局自分で払っちゃったし」

敏恵「? …マリーちゃんってマリ――…じゃなくて、隊長の事ですか?」カチャカチャ

オクタヴィア「ええ。前にデートに誘ったんだけど、もう少し甘えて欲しかったわぁ」

敏恵「で、デートって…。そんな、男の子じゃないんですから」パク

オクタヴィア「あら、そんなことないわ」

敏恵「…?」モグモグ




オクタヴィア「あたし、バイセクシュアルよ?」

敏恵「ゴフッッ!?」
 

 
オクタヴィア「あらあら、大丈夫? そんなに慌てて食べたら消化に良くないわ」

敏恵「ケホッ……ケホ…! ばっ…バイって、両性あぃ……ッケホ!?」

オクタヴィア「ええ、だから女の子も大好きなの♪」ウフフ

敏恵(な、何言ってんのこの人…!?!?)ケホケホ



~~~~~~~~~~~~~~~~


オクタヴィア『――驚いてる。可愛い』


オクタヴィア『うふふ、初心ね♪』


オクタヴィア『眩しくて危ないから、手繋いでいきましょ』ニギ


オクタヴィア『素直な子は好きよ♪』



オクタヴィア『ん…~』チュ



~~~~~~~~~~~~~~~~



敏恵「――――!!」ドキィッッ


敏恵「…っ~~!? /////」カァァ

オクタヴィア「あらやだ! 赤くなっちゃって、本当可愛いわねぇ?」

敏恵「ぁ……ぁあの、こっ…これってまさか……あたしのことも…!?? ///」ワナワナ

オクタヴィア「うふふ、心配しないで? 付き合ってくれるなら歓迎するけど、“マジョリティ”にもちゃんと理解があるから。強引な事はしないわ」

敏恵「ぁの…、えっと…… ///」

オクタヴィア「仲良くしましょ♪」ニコ

敏恵(ひ、ひぇぇ…)ゾワワ

 

―昼時―


ベルギガ 郊外



敏恵「……」ドヨーン


敏恵(結局言われるがままにお世話になってしまった…。よく考えたらあたし、この国のお金持ってないし)ガク

敏恵「……でも、本当にいいのかな? というか…大丈夫なのかな、あたしの……貞操とか //」


――スタスタスタ


オクタヴィア「お待たせ」

敏恵「!」ビクッ

オクタヴィア「ここは風が強いから“敏恵ちゃん”も来ればよかったのに。肌寒くなってない?」ドサ

敏恵「い、いえ……日光浴好きなので…。副隊長さんの仕事を、邪魔しちゃうし…」

 
オクタヴィア「……つれないわねぇ?」

敏恵「ぅ…」

オクタヴィア「副隊長だなんて、今更いいわよ。オフの時はサラって呼んで?」

敏恵「さ……サラさん、ですか…?」

オクタヴィア「そう、オクタヴィア・サラ・デュッケ。…“オクタヴィア”は婚約者が予約済みだけど、こっちならまだ空いてるわよ?」ウフフ

敏恵(ぁ、なんだ。ちゃんと彼氏もいるんだ…――)ホッ


敏恵「…!? って、だからあたしはその…そういう気はっ!///」ブンブンブン

オクタヴィア「うふふ、冗談よ♪ タヴィアでいいわ」

敏恵「(うぐ…、完全にからかわれてる)~……タヴィアさん、あたし疲れました」ガクー

オクタヴィア「あらあら、それじゃあ急いで戻りましょうか」

敏恵「はぃ…。……ぁ、いえ。やっぱり安全運転でお願いします…」

すみません、遅くなってしまったので続きはまた明日に

 

サン・トロン基地

食堂


エステル「ふわ…ぁ~」テクテク

ルーツィア「……しっかりしろ、躓くぞ」

エステル「~むぐ…。仕方ないじゃないですかぁ、昨晩の哨戒ホント疲れたんですから」

ルーツィア「――…ん?」

エステル「ふわぁ~~――……んあ?」



敏恵「…………」グデー



ルーツィア「……。…そんなにキツかったのか?」

エステル「ほらぁ、だから言ったじゃないですか~」

ハルテ「――ぁ、おはようございます。もうすぐお食事できますから」パタパタ

 
ルーツィア「なあ……あいつ大丈夫か? 負傷してそうなノリだけど」

ハルテ「あ、大尉さんはそのぉ…。今朝、副隊長さんとお出掛けされたみたいで」



ルーツィア「……」

エステル「……」



ルーツィア「…ああ、それでか」

エステル「納得ね…」

敏恵「ぅぅ……なんで誰も教えてくれなかったの…?」ゲッソリ

ルーツィア「いや、まぁ…………悪い」シュボ

エステル「あの能天気な大尉をいきなりこんなにするなんて、流石副隊長」

ハルテ「ぁ、あの! ですが副隊長さんは悪い人では無いですよ!? その…ちょっと個性的な方ですけど――」

敏恵「ぅぅ…」


――スタスタ


ハイデマリー「おはようございます、皆さん」

オクタヴィア「おはよう♪ なんだか全員揃うのは久しぶりね?」

敏恵「ッ!!」ビクッ

 
エステル「ツヤツヤですね、副隊長…」

オクタヴィア「うふふ、分かっちゃった?」

ルーツィア「……少佐、大尉も“健常者”なんですから手加減くらいしてやってください」

オクタヴィア「相変わらず意地悪ねルーちゃんは。そんなこと言っちゃ駄目よ?」ホッペ ツン

ルーツィア「……」

オクタヴィア「それからあたしは少佐じゃなくて“特別准佐官”だから。准佐か、もしくはサラって呼んで頂戴?」プニプニ

ルーツィア「……申し訳ありませんね、少佐殿」ペシッ

オクタヴィア「まあ、照れ屋さん」ウフフ

ルーツィア「…………」

 
エステル「…ていうか“准佐”なんて階級、普通無いですから呼び辛いだけです」

オクタヴィア「そう? ならエステルちゃんはお姉様って呼んでいいのよ?」

エステル「……。了解しましたー、副隊長殿ー」シラ

オクタヴィア「あらあら、2人揃って可愛いわ」ニコニコ

ルーツィア「……席つくか、エステル」

エステル「はーい」スタスタ




ハイデマリー「…だ、大丈夫ですか? 工藤さん」オズオズ

敏恵「ぅぅ……マリぃ…」

 
ハイデマリー「その…、デュッケ少佐から聞きましたけど――」

敏恵「外国って怖いよぉ~…」ガバ

ハイデマリー「ぇ…! ぁのっ、工藤さん!? ///」ドキッ

敏恵「ぅぅ…」シクシク

ハイデマリー「ッ…わ、私からも遠慮するようお願いしてみますから…ぇと……元気出してください ///」

敏恵「~っ……ありがとぉ、マリぃ~」ギュー

ハイデマリー「ぁ、ぁの… ////」モジモジ




オクタヴィア「あらぁ、いいわねぇ~♪」ギラギラ

ハルテ「……准佐さん。目、見開いちゃってますから」ドウドウ

 
――――
――



敏恵「――ふぇ? あたひ、今日やひゅみ?」モグモグ

エステル「……だから、連絡時は手止めなさいってば」ジト

敏恵「~ンゴクッ、…もしかして昨夜ネウロイが出たから?」

ハイデマリー「はい。念の為に今晩の第三哨戒は私が、第一哨戒はデュッケ少佐に出ていただきます」

オクタヴィア「第二はお菓子ちゃんとルーちゃんに任せるわ。よろしくね?」

ハルテ「ぁ、はい」

ルーツィア「……了解」プカ~

エステル「ちょっと待って! 私も休みですか!?」

オクタヴィア「ん~。敏恵ちゃんはあたしのせいで寝てないし、今日は改めてゆっくりした方がいいわ」

敏恵「は、はあ…」

エステル「いや、だから私は――」

ルーツィア「お前も疲れ引き摺ってるんだろ? …おとなしく休んどけ」

 
エステル「むー……ならトレーニング機材借りますからね?」

ルーツィア「フゥー~…。断る、今夜は私が使うんだ」

エステル「哨戒中ならいいじゃないですかー!?」

ルーツィア「駄目だ。……連続で使い続けると痛む」プカー

エステル「え~ッ!? 先輩のケチ!」

ルーツィア「言ってろ…」

ハイデマリー「2人とも、喧嘩は…」オロオロ


オクタヴィア「…そうだわルーちゃん? これ受け取って来たから、哨戒後にでも試してみたらどう?」ドス

ルーツィア「?」

敏恵「あ、それ帰りに寄ってた所の…?」

 
オクタヴィア「予定より早く出来たって昨日連絡があったの」

ルーツィア「……ああ、これですか。ありがとうございます」ガサガサ

オクタヴィア「あら、ここで開けちゃうの?」

ルーツィア「ええ。…丁度今のが駄目になりかけてるんで」ゴソゴソ

エステル「やっと出来たんですか? これで寸法間違ってたら私文句言ってきますよ!」

ハイデマリー「ゃ、やめてエステル少尉…」


敏恵「? ……ねぇ、ルーツィアさん何買ったのかな?」

ハルテ「新しい義足です。腕のいい技師さんがいるらしいので、前に注文をしたんですよ」

 
オクタヴィア「どれどれ? なんだか凄い物らしいから、あたしも楽しみだわ」スタスタ

ルーツィア「…! ………なんだこれ?」ゴソソ

オクタヴィア「あら」

ハイデマリー「?」

敏恵「お~…! 本物みたい!?」

ハルテ「わぁ…!」


エステル「ちょっとこれ、装飾義肢じゃないの!? …あぁんのハゲおっさん~――」ガタッ

ハイデマリー「しょ、少尉!?」ビクッ

オクタヴィア「はい待ちなさい、早とちりしちゃ駄目よ?」グイッ

エステル「ふぎゅ!?」ボフ

 
オクタヴィア「ルーちゃん、間接部をよく見て」ギュー

エステル「ちょ…は、話してください副隊長!?」ジタジタ

ルーツィア「? ……ぁ、稼働するのか」グイー

ハルテ「ちゃんと機能的な義足みたいですね?」

ハイデマリー「でも形とかも、とても足っぽいですし…」

敏恵「…なんか人形みたい!」

ルーツィア「……。まあ、見てくれなんかべつにいい…」ゴト

敏恵(あ、でも丁寧に置いてる)

>>293訂正

話して → 放して

 
ルーツィア「ん…、~~」グイグイ ズルー


ルーツィア「……さて」ポイ

ハルテ「持っていましょうか?」

ルーツィア「いい、自分でやるから」


ルーツィア「……――」グッ


ルーツィア「!」


ルーツィア「……凄いな、ピッタリだ(しかもなんか、柔らかい…?)」

オクタヴィア「何か特殊な物らしくて、柔軟な綿素材が入っているらしいわよ?」ナデナデ

エステル「勝手に頭撫でないでくださいってば!?」

 
ルーツィア「へぇ…。締め付けは……これか」パチン パチン

オクタヴィア「慣れれば手を突かなくても足だけで立てるらしいわ。それから急ぎ足くらいなら大丈夫だそうよ」

エステル「!! マジ!?」

ハイデマリー「頑丈なんですね…!?」

ルーツィア「いや、剛性だけでそうはなら――」ヨロ



ルーツィア「…っとと」スク


ルーツィア「……? …!?」

敏恵「わ! 本当に起立した!?」

ハルテ「よく出来てますね!」パチパチ

 
エステル「……な、なんだ。凄いじゃんあのおっさん…!」ポカーン

オクタヴィア「うふふ。ちなみに使い込まれて馴染むまで、早歩きは危ないから駄目らしいわ」ナデナデ

ルーツィア「…………」

ハイデマリー「よかったですね、ルーツィア曹長」

ルーツィア「……ちょっと慣らしてくる」ヨタヨタ

ハイデマリー「えっ?」


ルーツィア「……――」ヨタヨタヨタ

 
エステル「あ! 先輩、靴!? ッ…て、いつまでやってるんですか副隊長!」ジタジタ

オクタヴィア「あら、ごめんなさい♪ はいどうぞ?」パッ

エステル「んもうっ! …待ってください先輩! まだ長ズボンと靴履いてないですよー!?」スタタッ



ハイデマリー「……」

敏恵「……ねぇマリ?」

ハイデマリー「ぁ、はい。なんですか?」

敏恵「ルーツィアさん、実は相当喜んでた感じだよね?」

ハイデマリー「……えっと、そ…そうかもしれないですね」

敏恵「ん~……結構ああいうのではしゃぐタイプなんだ? なるほど…」フムフム

ハルテ「ふふ」クス

オクタヴィア「あ~…、ルーちゃんってば可愛いわぁ♪」






――――こうして4年ぶりの団体生活は賑やかに滑り出し、あたしに少しだけ年相応な日常を取り戻してくれた。


でも……あたしが踏み入ってしまった世界は容赦なく、忘れかけていたあたしをまた呼び出すことになる。


その時まで、この懐かしい日々は精一杯の輝きを放っていた。



まるで悔いを残さないとするかのように……
 

 

第五話:任務 に続く

 

とりあえず主要なキャラクターはこの6名で揃いました
次の更新も不定期です

 
【幕間小譚 ~暗黙のタブー~ 】


―敏恵が来た最初の夜―


サン・トロン基地 格納庫出口



エステル「…………」フィィィン




『――本当、マリって可愛いんだ』

『ぇ…!?』

『…えへへ、よかった! あたし達、これから友達だよ!』

『は、はぃ……よろしく…お願いします』

『そんな畏まらないでいいよ! ほらほら、敏恵ちゃんよろしくーて言って言って?』

『えっ!? …ぁ、あの……そういうのはまだ……恥ずかしぃので――』




エステル「……あんの大尉めぇ~っ! 私達の隊長に何ちょっかいだしてんのよ…っ!!」グヌヌ

 
エステル「~っ…………」フィィン

エステル「…!? んなっ…! 何触ってんのよ馬鹿!?」ヤキモキ


「――あらあら、いいわねぇ♪ いったいどこを触ったのかしら?」


エステル「全然良くないわよっ! あの大尉、任務中だってのにナイトウィッチの魔導針を――…。……ぇ?」チラ

オクタヴィア「まあ! やだ、いきなりそんなフェティシズムを!? …あたしも聴きたいから周波数教えて頂戴!」ササッ

エステル「ふ、副隊長!? こんな所で何やってんですか!?」

オクタヴィア「何って、副隊長として新人ちゃんがどんな子かチェックしに来たのよぉ?」ウフフ

エステル「……ぃ、いきなり現れないでくださいよ」

 
オクタヴィア「ほらほら細かい事はいいから、その可愛いアンテナを触るとどうなっちゃうのかあたしにも聞かせて頂戴?」サワサワ

エステル「んゃ……ちょっ…やめてくださいってば! ノイズが――」


「やめるのはお前もだ」グリ


エステル「!? いづぁだだだっ!!?」ビクゥ

ルーツィア「ったく、…お前はどうしてそう行動が振り切るんだ」

ハルテ「エステルさん、流石に盗聴は良くありませんよ?」

エステル「~……な、何で皆してここに…」サスサス

ルーツィア「あれだけ大尉の事意識してて、バレないわけないだろ」

エステル「うぐっ…!」ギクッ

 
オクタヴィア「そうよエステルちゃん、情報はちゃんと隊内で共有しなきゃ駄目よ? だから早く周波数を教えて頂戴」

ルーツィア「…少佐もです。そのラジオ叩き壊しますよ?」

エステル「副隊長さん、ルーツィアさんが怒ってしまう前に諦めてください。お願いします」

オクタヴィア「……もぅ、残念ねぇ」

ルーツィア「…はぁ、何で私が貴方の面倒まで見なきゃならないんだ」シュボ

オクタヴィア「あら? あたしもう“アガリ”かかってるんだから、ルーちゃんの介護がないと駄目なのぉ~♪」ダキ

ルーツィア「…チッ、うるせぇ……」グイィィ

オクタヴィア「やん、もぅ」

ハルテ「る、ルーツィアさん抑えてくださぃ…。一応副隊長さんですから…」

 
オクタヴィア「! …んふふ~♪ そうやって庇ってくれるのはお菓子ちゃんだけだわぁ!」ダキッ スリスリ

ハルテ「ぁぅぅ…、も…もしかしてお酒飲んでますか准佐さん…っ? //」


ルーツィア「はぁ~ー……。素面がまともならまだ助かるんだけどな」プカァ

エステル「また寝酒失敗したの副隊長…?」

ルーツィア「ほら、お前もとにかく戻るぞ。暇なら私のトレーニング手伝え」グイ

エステル「あぁそんな!? 待ってください先輩! だってあのセクハラ大尉が――」

ルーツィア「少佐を越える“ヤバさ”だったら私がシメるから安心しろ。行くぞ」グリ

エステル「いだだだっ!? わ、わかりました! わかりましたから背中のツボ押さないでください~!!」






オクタヴィア「ん~ふふ、お菓子ちゃ~ん♪」スリスリスリ

ハルテ「ぁ、あの准佐…さん……っ…? 私達も戻りま…ぁぅ……! ///」

 
~ 一方 ~


――ブゥゥン


敏恵「へぇー、掴んだりは出来ないんだねこれ?」サワサワ

ハイデマリー「は、はぃ…。その…、可視化した魔法力みたいな物なので //」

敏恵「ふーん…(ストライカーのプロレラみたいな感じなのかな?)」サワサワ

ハイデマリー「っ…ぁ……あの、工藤さん…! あまり触られると…っ」

敏恵「え? …あ、ごめん! まさか痛かったりするの!?」

ハイデマリー「ぃ、ぃぇ…。神経は通っていないですけど、感知にその……ノイズが入ってくるので…少し、その… ///」

敏恵「? …その??」サワ

ハイデマリー「ぁ…っ //」ピク


敏恵「……」

ハイデマリー「~… //」


敏恵「(もしかして、くすぐったいのかな?)……とりゃ!」ツンツン

ハイデマリー「んっ…!? ……く、工藤さん…待ってくださ――」

敏恵(先っぽとかで感じ変わったりして?)ツンツンツン

ハイデマリー「っ……ぅ…、ぁの……探査がぅまくでき――ッ…ぁ! ///」フィン フィン




【暗黙のタブー、終】

 

【幕間小譚 ~JFWコネクション!~ 】



サン・トロン基地 食堂


敏恵「あむ、~~」モグモグ

ハルテ「どうぞ、隊長さん」カタ

ハイデマリー「有難うございます」


エステル「……え? でもレーダーあるし、指揮官は後ろにいなきゃ」

オクタヴィア「それは役割に沿った、あくまで相対的な話よ? 夜だったら仕方ないけど、レーダー魔法だけに頼らないでちゃんと目でも見なくちゃいけないわ」

ルーツィア「…フゥ~……」プカ~

 
敏恵「…ん!? これ甘ーい!」

ハルテ「あ、はい。偶にはいいかなと思いまして、お砂糖を思い切って使ってみました」

ハイデマリー「とても美味しいです、少尉」


ルーツィア「! …………少尉、私にもひとつ」チョイチョイ

ハルテ「あ、はい! …でもお煙草は?」

ルーツィア「いい、もう消す」グシャクシャ

 
敏恵「んー♪ やっぱりこれくらい甘い方がお茶が美味しい!」

ハイデマリー「ぁ、でも私はいつもの様な香高い物も好きです」

敏恵「…またまたぁ、マリってば大人ぶっちゃって! 本当16歳女子とは思えない“お姉さん”っぷりなんだから~!」

ハイデマリー「そ、そうですか…?」



ルーツィア(あらあら、敏恵ちゃんったらまだまだねぇ? マリーちゃんはそういう所がいいんじゃない)ウフフ

エステル「~~っ!! ちょっと大尉! もう少し静かにお茶してください!! 気が散って勉強できませんっ!!」バンッ

 
敏恵「ん? あ、ごめんエステルちゃん。でもこれ、本当においしいよ?」

エステル「…そんなのは分かってますよ。とにかくもうちょっとだけでいいんで、ボリューム落としてください!副隊長に時間取ってもらうの大変なんですから」ムスー

敏恵「えへへ、了解」

オクタヴィア「あら残念、あたしは見ていて楽しかったのに」

ルーツィア「……よそ見してないで、真面目にみてやってください」



――





敏恵「んー…でもこうやってハルテちゃんの気合入ったおやつは食べれるし、統合航空団に行かされなくてよかったかも。…ぁむ」モグ

ハイデマリー「?」

エステル「! ……はい?」チラ

ハルテ「…統合って、第501とか統合戦闘航空団の事ですか?」

敏恵「え? あ、うん。そうそう。なんか任務とか大変そうなやつ」

 
ルーツィア「……大尉、JFWに参加する話でもあったのか?」

敏恵「えーっと、なんて言うか…。ここに来る事もあたしの上司が勝手に決めたんだけど、最初は統合――…そのJFW?にあたしを入れたかったらしいんです。……はむ!」モグモグ

ハイデマリー「…それは、知りませんでした!」

オクタヴィア「あたしは大佐から伺ったわねぇ、その話。…たしか506よね?」

エステル「はっ?? あそこに!?」

敏恵「番号は忘れちゃいましたけど、多分それ。ノーベルウィッチーズ」


ルーツィア「……“ノーブル”な」

敏恵「そ、そうそれ! ノーブルウィッチーズ… ///」カァ

 
オクタヴィア「あそこは流石に無理よねぇ? そもそも貴族じゃないと認められないし、結果的に分裂して内輪が揉めてるから…敏恵ちゃん的には行けなくて正解だったかもしれないわね?」

ハイデマリー「…ですが、どうして小園大佐はそれを知っていて工藤さんを?」

オクタヴィア「扶桑は貴族〈華族〉本家出身で出せるウィッチがいなかったらしいわ。それでも、万が一に扶桑ウィッチの枠があるなら押し込みたかったんですって?」

エステル「そんな無茶な…」

オクタヴィア「ディジョン基地B部隊もあるし、行けなくはないと思ったのかしらね?」

敏恵「その前に扶桑の上の人に断わられてましたけどねー」






ハイデマリー(工藤さんがもしセダンの506に所属したら、…ウィトゲンシュタイン大尉と工藤さん?)


ハイデマリー「…………」モヤモヤ


ハイデマリー「想像が着かない…」ボソ

 
敏恵「…というかあたしの家ってただの米農家ですから。百姓ですから」

オクタヴィア「あら、お米貴族?」ウフフ

ルーツィア「……何言ってんすか」


エステル「でもでも、確かにJFWにはちょっと憧るわ。…統合編成はアレだけど」

ハルテ「“第501”の影響で、選ばれれば一躍有名人ですもんね?」

ルーツィア「…縁の無い話だな。柄じゃない」

エステル「む! もしかしてそれ私も入ってます…?」ジト

オクタヴィア「うふふ、そんな事無いわよ? ルーちゃんもエステルちゃんも負けないくらい可愛いわ♪」

ハイデマリー「あの少佐…、そういうのはあまり関係無いのでは…」

敏恵(……マリ偉いなぁ。ちゃんとタヴィアさんの相手してあげてる)モグモグ

 
エステル「~…た、確かにバルクホルン大尉やハルトマン中尉もいるし! 501みたいな“昼間の”最強集団に私なんかお呼びじゃないですけど――」グヌヌ

ルーツィア(……シュナウファー率いるウチの小さなプライドだな。つっても向こうはあのオラーシャ人がいるけど)シュボ

エステル「でも間違いでもいいから入って、コネとか作ったら凄い出世して……後から自分の中身が付いて来るかもしれないしっ!!」ムンッ

ルーツィア「…おい、強さの話はどこ行った?」

オクタヴィア「あらあらエステルちゃん、階級だけじゃ中身は空っぽよ?」ウフフ

ハルテ「…エステルさんの仰った話は流石に難しいと思いますけど、縁を辿っていけば意外とそういったコネクションは得られるかもしれませんね?」

敏恵(ハルテちゃんも真面目に応えるなぁ…。いい子)ゴクゴク

 
エステル「! ……そっか、うちには隊長もいるし…!」

ハイデマリー「? ぇ、私…ですか?」

エステル「そうですよ! ここにはミーナ中佐の独立部隊だって来てたんだし、隊長はあの3人とはもはや同僚ですもんっ!」

ハイデマリー「は、はぃ……まぁ…」


敏恵「…? そうなの?」チラ

ハルテ「はい。第501のヴィルケ中佐にバルクホルン大尉とハルトマン中尉、それから最新鋭実験部隊のヘルマ・レンナルツ少尉がここを訪れたそうです」

敏恵「……“そうです”?」

オクタヴィア「ちょっと前に配置換えで面倒があってね? この部隊も拠点の一時移転とかで巻き込まれちゃって、その時あたし達は別の場所にいたの」

オクタヴィア「いろいろ問題もあってネウロイを一機逃がしちゃったんだけど、責任感じたマリーちゃんが夜な夜な捜索してたら“幽霊騒ぎ”にまでなって焦ったわ」ウフフ

敏恵「はあ…?(すっごい笑顔ですけど??)」

 
>>326訂正



 
エステル「! ……そっか、うちには隊長もいるし…!」

ハイデマリー「? ぇ、私…ですか?」

エステル「そうですよ! ここにはミーナ中佐の独立部隊だって来てたんだし、隊長はあの3人とはもはや同僚ですもんっ!」

ハイデマリー「は、はぃ……まぁ…」


敏恵「…? そうなの?」チラ

ハルテ「はい。第501のヴィルケ中佐にバルクホルン大尉とハルトマン中尉、それから最新鋭実験部隊のヘルマ・レンナルツ曹長がここを訪れたそうです」

敏恵「……“そうです”?」

オクタヴィア「ちょっと前に配置換えで面倒があってね? この部隊も拠点の一時移転とかで巻き込まれちゃって、その時あたし達は別の場所にいたの」

オクタヴィア「いろいろ問題もあってネウロイを一機逃がしちゃったんだけど、責任感じたマリーちゃんが夜な夜な捜索してたら“幽霊騒ぎ”にまでなって焦ったわ」ウフフ

敏恵「はあ…?(すっごい笑顔ですけど??)」

 
オクタヴィア「きっと健康的で素敵なSラインなのねぇ。敏恵ちゃんとの縁で是非仲良くなりたかったわぁ~」

ハルテ「准佐さん、恐れ知らずですね…」

敏恵「あはは、本当にね」

オクタヴィア「――あ、そうだわ! ねぇ敏恵ちゃん敏恵ちゃん!?」ポンポン

敏恵「! …はい。なんでしょう?(まずっ…、タヴィアさん興奮してきちゃったよ…)」

オクタヴィア「あの子! 宮藤芳佳ちゃんはお友達じゃないの?」

敏恵「宮藤さんですか? えっと、ごめんなさい。流石にあの子が出てきた頃にはあたし、大陸で缶詰だったんで…」ポリポリ

 
ハルテ「そうですよね。宮藤軍曹さんって確かスカウトされて直ぐ501に配属されたみたいですから、御自国での軍務経験は殆ど無いかと」


オクタヴィア「…………」

敏恵(あ、目に見えて残念そう)


オクタヴィア「……写真だけでも、ないかしら? 出来れば生フィルムで」

敏恵「いや、ありませんよ…。会った事すらないんですから」

オクタヴィア「………そぅ。残念…ね…」シュン

敏恵(…あれ? 何であたしが罪悪感持たなきゃいけないんだろう?)

 
ハルテ「まあまあ、副隊長さんはヴィルケ中佐達とお知り合いじゃないですか」

オクタヴィア「…ハルテちゃん、これは探求心だから枯れる事は無いのよ」

敏恵「もう、なんのこっちゃ…」ガク

エステル「――そっか、そっちのルートもあったわね!! 副隊長―ッ!」ズイー

ハイデマリー「あぁ、少尉……デュッケ少佐にまで迷惑かけてちゃ駄目…」オロオロ

ルーツィア「…そっちのコネには手を出すなエステル、代わりに何失うかわかったもんじゃない」グイ





――お茶会は盛り上がったけど、エステルちゃんの勉強は殆ど進みませんでした。



【JFWコネクション!、終】

本編更新はもう少しお待ちください

うわぁ、1レス抜けてグダグダになってる……

後半纏めて投稿しなおします

>>327の後

 
エステル「隊長! 次機会があったら、私と先輩も仲間に入れてください!」

ルーツィア「私はいい。交ぜんな」プカァ~

エステル「駄目ですよ、先輩も一緒じゃなきゃ!」

ハイデマリー「ぃ、ぃぇ……私の一存でそういった事は…」タジタジ



オクタヴィア「そういえば、敏恵ちゃんは坂本美緒少佐との面識はあまり無いのよね?」

敏恵「ん? はい、偶々一回挨拶したぐらいですよ」

ハルテ「……坂本少佐って、やっぱり怖い方なんですか?」

敏恵「んー…どうだろ? 愛想は良かった気がする。……ぁ、背筋が凄い綺麗だったかな!」

オクタヴィア「きっと健康的で素敵なSラインなのねぇ。敏恵ちゃんとの縁で是非仲良くなりたかったわぁ~」

ハルテ「准佐さん、恐れ知らずですね…」

敏恵「あはは、本当にね」

オクタヴィア「――あ、そうだわ! ねぇ敏恵ちゃん敏恵ちゃん!?」ポンポン

敏恵「! …はい。なんでしょう?(まずっ…、タヴィアさん興奮してきちゃったよ…)」

オクタヴィア「あの子! 宮藤芳佳ちゃんはお友達じゃないの?」

敏恵「宮藤さんですか? えっと、ごめんなさい。流石にあの子が出てきた頃にはあたし、大陸で缶詰だったんで…」ポリポリ

ハルテ「そうですよね。宮藤軍曹さんって確かスカウトされて直ぐ501に配属されたみたいですから、御自国での軍務経験は殆ど無いかと」


オクタヴィア「…………」

敏恵(あ、目に見えて残念そう)


オクタヴィア「……写真だけでも、ないかしら? 出来れば生フィルムで」

敏恵「いや、ありませんよ…。会った事すらないんですから」

オクタヴィア「………そぅ。残念…ね…」シュン

敏恵(…あれ? 何であたしが罪悪感持たなきゃいけないんだろう?)

ハルテ「まあまあ、副隊長さんはヴィルケ中佐達とお知り合いじゃないですか」

オクタヴィア「…ハルテちゃん、これは探求心だから枯れる事は無いのよ」

敏恵「もう、なんのこっちゃ…」ガク

エステル「――そっか、そっちのルートもあったわね!! 副隊長―ッ!」ズイー

ハイデマリー「あぁ、少尉……デュッケ少佐にまで迷惑かけてちゃ駄目…」オロオロ

ルーツィア「…そっちのコネには手を出すなエステル、代わりに何失うかわかったもんじゃない」グイ





――お茶会は盛り上がったけど、エステルちゃんの勉強は殆ど進みませんでした。



【JFWコネクション!、終】

 

【第五話 任務】



ベルギガ王国サン・トロン市に基地を構えるNJG1“夜空四隊”にあたしがお邪魔してから、何だかんだでそれなりの時が過ぎた。


ここの哨戒任務やタヴィアさんの不思議な性格にもすっかり慣れ、マリ達とも変わらず仲良し。

カールスラント領との国境に出てくるネウロイも弱い小型が偶に飛んでくるくらいで結構平和――……て言うと誤解はあるかもしれない。


……つまりはそこそこ楽しんだ退屈な日常をあたしは満喫し始めたんだけど、そうそう遊んでもいられないらしく、ウィッチとか軍人としての面倒はやっぱり舞い込んで来たのだ――――






―昼過ぎ―

サン・トロン基地 上空


エステル「くっ…! なんで振り切れないの!?」ブゥゥン


敏恵「……」ダンッ ダダン



ビシビシビシッ


エステル「ッ!? ふぎゃあんっ!!//」ビクッ



敏恵「……ふぅ」


ルーツィア「ん…勝負あり、大尉の勝ちだ」ブゥゥン

 
エステル「~~ッ! ちょっと大尉!? どこ狙ってんですか、変態!!」

敏恵「えっ?? だって昨日ストライカーに中てたら、掃除が大変だって言うから――」ブゥゥン

エステル「だからって何で全弾お尻なのよ!? ……ちょ、ちょっとインクが入りそうだったじゃないっ!」プンプン

敏恵「……? 何処に?」

ルーツィア「…フッ、オレンジの糞が出るかもな」プカ~

敏恵「えっ」

エステル「出なーーい!! 絶対出しませんからっ!!! 入りそうになっただけで、ズボンの中にはあんまり入ってないから!!」ムガー

ルーツィア「……フゥ~…。まぁそうれはそうとエステル、そろそろ一矢報いてみせろよ」

エステル「ぅぐ…! そ…そんなこと言ったって、この人マジで強いんですょ…」

敏恵「?」

 
ルーツィア「そんなのは見てれば分かる。私が言ってんのは、お前が力を出し切れてないって事。…お前の実力ならちゃんと勝負になる筈だ」

エステル「……慰めはいいです。これでも一応全力でやってますから…」シュン

敏恵「エステルちゃんアレだよ、もっとこう…攻める感じ! 基本的には逃げないで前進しよう!」グッ

エステル「前進…?」

敏恵「そう!」

ルーツィア「“そう!”じゃねぇ、変な事教えんな」グリ

敏恵「んぎゅっ!?」ビクッ

ルーツィア「エステル。大尉の突貫スタイルは特殊だから覚えなくていいぞ?」

敏恵「ぃ、いたた…」サスサス

 
ルーツィア「…飛行も射撃も少し考えてやり過ぎだ。全部遅いし、思い切りも無い」

エステル「!? で、でも訓練は一回々々ちゃんと考えろって先輩が言ったんじゃないですか!」アセアセ

ルーツィア「それは意味が違うだろ。迷ってアタフタしただけじゃ勝っても負けても無駄だ」

ルーツィア「…それに航空戦術ってのは情報と経験から即断するもんだって言ってるだろ? いちいちその場で会議なんか開くな」プカ~

敏恵(ルーツィアさん、珍しくいっぱい喋ってる…。なんだかんだ言ってエステルちゃんの事だとやっぱり熱心だよねぇ?)

エステル「ぐ…ぬぬ……、でも…!」

ルーツィア「……フゥー…。あのな、お前はこいつに勝つためにウィッチやってるんじゃないだろ?」

エステル「っ…」

敏恵「あたし?」ポケ

エステル「でも先輩! 私はあの時――」

ルーツィア「気持ちは分かるけど、そう執着し過ぎるな。お前はお前だ」

エステル「……」


敏恵「…? ……??(なんか、急に話についていけなくなった?)」

 
ルーツィア「私の見た感じだと、大尉もあの時とかなり違う。…“夜の女王”なんてもういないんだよ」

エステル「…………」

敏恵「エステルちゃんどうしたの? なんか急に元気ないけど……もしかしてお尻怪我しちゃった?」

ルーツィア「今お前の目の前にいるのは扶桑の工藤敏恵大尉だ。…確かに変な奴だけど、べつにそれだけ。私やお前とそう違わないよ」

敏恵(……あれ? なんか今、サラッと酷い事言われた!?)

ルーツィア「あまり硬く構えんな、いつも通りやればいい」

エステル「……わかりましたょ…」

ルーツィア「ん、よし。…じゃあ見てな?」ポイ

 
敏恵「……ふわ…ぁ~――」ノビー

ルーツィア「大尉」

敏恵「ぁむっ!? は、はい! …何ですか?」

ルーツィア「次は私と一戦やらないか?」

敏恵「ぇ?」

ルーツィア「……余程退屈だったのか知らないけど、まだ余裕あるんだろ? なんなら私が眠気を吹っ飛ばしてやるよ…」ジー

敏恵「っ…!?(ちょ、ルーツィアさん怒ってる…?? なんで!?)」タジ



――ガザッ


オクタヴィア『3人とも、ちょっと訓練中断してくれる?』ガザザ


敏恵「!」

ルーツィア「……ん、なんです?」

 
オクタヴィア『ウィッチ全員徴収よ。空軍本部から指令があったから緊急ブリーフィングを行うわ』

ルーツィア「ブリーフィング? ……出撃ですか?」

オクタヴィア『直ぐじゃないから安心して。…それからルーちゃん、吸い殻を空から投げ捨てちゃ駄目よ?』

ルーツィア「……。…了解(覗かれてたか…)」チッ





作戦室


敏恵「――えっ? この近くでネウロイが!?」

ハイデマリー「はい。昨日、ここから南東にあるリエージュ市の工業地帯で地上型ネウロイが労働者の方々を襲う事件がありました」

敏恵「お、襲ったって…」

ルーツィア「……」

エステル「それ、大丈夫だったんですか…?」

ハイデマリー「早朝だった事もあり人は少なかった様です。……ですが残念ながら、逃げ遅れた方々も…」

ハルテ「!」

 
オクタヴィア「瘴気も纏ってたみたいだから、出現時に側にいた人達はひとたまりも無かったみたい。けどそこまで強力じゃなかったらしいから、駆けつけた連合軍の攻撃で駆逐は出来たそうよ」

ルーツィア「……それだけ近かったって事は目の前に降って出たんですか?」

敏恵「上から? …落ちてきたの??」

ハイデマリー「いえ。この件の詳細はまだわかりませんが、実は以前からよく似た事例がシャルルロワ市でも確認されていました。…それによれば、敵が空から直接降りてきた事は無いそうです」


敏恵「シャルルルァ? ……ベルギガの都市?」ヒソ

エステル「シャルルロワですよ。ここから南西でブリュッセルの南。普段は私達の管轄外です」ジト


ハルテ「でもどうして…? 夜間の国境防衛はしていたのに、少なくとも中央へ突破されたなんて話は…」

ルーツィア「……それに飛べないネウロイが今更海や川を越えるのも変だな。ネーデルランドからは私らの網にかかるし、来るならガリアからだろ」

オクタヴィア「――て、同じ事をこの前言ったら御姫〈プリン〉ちゃんに怒られちゃったわ。“ディジョンが抜かれるならまだしも、妾達を掻い潜る訳がない”って」ウフ

 
ハイデマリー「実際にガリア中部と北部国境近辺においても、飛行型の襲来はあっても陸上型の侵攻を確認したという情報はありません」

敏恵「ふーん。回り込まれたとかは? 西からさ」

オクタヴィア「そうだとしても出処が不明になっちゃうのよねぇ。ヒスパニオに敵母胎は無いし、有るとしたらヴェネツィアの新しい巣だけど…こっちは寧ろ注目度が高い分半端な監視態勢ではないのよ。地中海の支部からも否定的な回答をもらってるわ」

敏恵「…そうなんですか(いつになく真面目なタヴィアさん…!)」

ハイデマリー「はい。それに迂回ルートをとればパ・ド・カレー等の各基地拠点とも接触する筈ですが、そちらも音沙汰はありません」

エステル「……つまり、ホントに湧いて出たってこと?」

ハルテ「でも、確かにそうですよね…? “中央都市の連続怪事件”は私も記事で読みましたけど、断続的にしかも複数が発見されずに内陸へ辿り着くのは…私も難しいと思います」

ルーツィア「……連合の防衛網は揃って間抜け揃いってことになるな。~」シュボ

エステル「ん~…、リベリオンが黙ってなさそうですね。ていうかそれだと私達も間抜けじゃないですか!?」

敏恵「?」

 
オクタヴィア「まぁとにかく、うちの軍本部も一連の事にはメスを入れていたわ。近頃あたしの出張が続いてたのも…敏恵ちゃんを受け入れたのも、ここのところの動きは全部その影響よ?」

敏恵「へぇ~、そうだったんですか!」

オクタヴィア「ええ。小園大佐の打診に賛同したのも実はあたし。 …本部は自分達の軍務に非がない事を証明しておくために、防衛拠点の強化と事件の調査を行っている最中なの」

ハルテ「…じゃあ、作戦指令が出たという事は」

ルーツィア「何かわかったんですね? 隊長」フゥー

ハイデマリー「いえ、それが……作戦参加の指令ではありません」

 
エステル「?」

敏恵「……!! もしかして、あたしに帰れとか!?」

ハイデマリー「えっ?? ぁ、いえ…! そうではなくて――」アセアセ

オクタヴィア「ルーちゃんが半分正解よ。軍本部もそれなりに掴んだ物はあるけど、まだ発生元の核心までは至ってないわ」

ルーツィア「……」プカァ~

エステル「…じゃあまだ調査中って事? 私達に何をしろって言うんですか?」

オクタヴィア「だ・か・ら♪ 調査よ、調査!」

ハルテ「調査?」

 
敏恵「(つまり使いパシリ…?)…それって、あたし達の仕事なの?」

ハイデマリー「はい。軍本部の見解はやはり陸路ではなく、母船を伴った空路からの侵入によるものだと判断したそうです」

敏恵「…? いやさ、でもどこから?」

オクタヴィア「それが分からないから困ってるみたいなのよねぇ。…日中の監視はしてたけど、結局事件は起きちゃったし」

ルーツィア「……。…なるほど、だからウチにってことか」

敏恵「?? どういうこと?」

ハルテ「……つまり“夜が怪しい”ってことですよね?」

敏恵「あっ、そういうこと!」ポン

 
エステル「…いっつも説明が回りくど過ぎますよ。長いです」

オクタヴィア「うふふ、わかりやすいでしょ?」ニコ

敏恵「ぁ、タヴィアさん? 多分そういう事じゃなくて…、エステルちゃんズボン汚れたままだから早くシャワーに行きたいんだと思います」

オクタヴィア「あら!? …やらしいわねぇ、いったい何をしてたのかしら~♪」

エステル「何言ってんですかっ!!! ペイント弾ですよ!!」

オクタヴィア「うふふ」

ルーツィア「……つーか、あんた視てただろ」ジト




ハイデマリー「…………」

ハルテ「…あ、あの皆さん! えっと、話が逸れちゃってますよ!? その…隊長さんが困ってますから…!」アセアセ

 
――――
――



オクタヴィア「…そういう訳で、あたし達でリエージュ上空の夜間調査を行う事になりました」ヒリヒリ

敏恵「…は、はぃ(ルーツィアさん、副隊長にも容赦ないんだぁ…)」

エステル「な、なんで私までやられるのょ…」ヒリヒリ

ルーツィア「フゥー~…。いいから黙って聞け」


ハイデマリー「ぇぇと……今晩2200時から魔導レーダーと夜間視による捜索を明け方まで行います。時間が長いので人員を交代して、交代後の帰路は東を迂回して国境の哨戒を片道でいいのでお願いします」

敏恵「夜間視……てことは、あたしも絶対“魔法”使わなきゃ駄目?」

ハルテ「…そう、なるんですかね?」チラ

ルーツィア「そりゃな」

エステル「当たり前じゃない」

敏恵「……そっかぁ…」

 
ハイデマリー「心配いりません、工藤さん」

敏恵「ん?」

オクタヴィア「本部があてにしたいのはマリーちゃんの探査能力と私達2人の“眼”だから。…あたしもそれなりには魔眼夜間視の訓練積んでるのよ?」

エステル「…副隊長。それ、私達かなりショックなんですけど」

敏恵「はあ…? じゃあ、いつもの感じでいいんですか?」

オクタヴィア「必要に応じてね。あたし達は皆をあてにさせてもらうわ♪」

ハイデマリー「工藤さんの固有魔法は反動がある様なので、無暗な使用は強制したくありません。……安心してください」コク

敏恵「う、うん……ありがとう(マリ優しい! …タヴィアさんは少し下心が見えるけど)」

 
ルーツィア「ん、…任務内容は了解した。時間までは待機ですか?」

ハイデマリー「はい――…ぁ、いえ。念の為陽が落ちる前に状況を確認しますので、これから私かデュッケ少佐が現場に向かいます」

オクタヴィア「あ、そうそう! マリーちゃん、それなんだけど――」

ハイデマリー「? はい」

オクタヴィア「上にはあたしが行けって言われてるんだけど、多分マリーちゃんのレーダーで様子見た方がいいと思うの。あたしの遠方注視も地平線の先までは無理だから、念を入れるなら貴方が行ったほうがいいわ」

敏恵(いいなぁ……外出)


ハイデマリー「はい、わかりました。……でしたら、ぁの…すみませんが誰か――」

オクタヴィア「そうね。わかってるわ」

敏恵「?」

 
オクタヴィア「…誰か、今からマリーちゃんとお出掛けしたい人~?」

エステル「! じゃあ私が――」



敏恵「はいはいはぁーーいっ! あたし行きたい!!」バッ

エステル「!?」



ルーツィア「……んじゃ、大尉だな」フ~

ハルテ「そうですね」

エステル「!?!?」

 
オクタヴィア「はい、それじゃあ敏恵ちゃん。頼むわね?」

敏恵「やった~! 昼間の外出だ!」

エステル「ちょ、ちょっとーー!? あたしも手上げましたってば!!」

ハルテ「ぇ、エステルさん! …でも、いいんですか?」

エステル「何がよ!? 隊長のサポートならこのエステル・バルシュミーデの方が、運転だって――」

ルーツィア「あのな、…そのケツで一日いる気か?」

エステル「えっ? …………ぁ!」ギクッ

オクタヴィア「流石にかぶれてきちゃうわよぉエステルちゃん? それともあたしにお薬塗って欲しいのかしら?」ウフフフ

ルーツィア「マジでやめてくれ、少佐」

 
エステル「ぅ……ぐ、ぐぬぬ…。でも、また大尉と隊長が…!」ギリギリ

ルーツィア「諦めろ。次はやり返せるよう訓練しとけ」

ハルテ「ぇ、えと……エステルさんの好きなお菓子作りますから。元気出してください?」



オクタヴィア「じゃあ悪いけど頼んだわマリーちゃん。あたしは夜に向けた装備の手配と他の雑調整をしておくから」

ハイデマリー「はい。ありがとうございます」

敏恵「~♪ 久々にあのオシャレサングラスかけようかな~!」ウキウキ

 

基地野外



敏恵「――って…これまさか、あたしが運転するの!?」ガーン

ハイデマリー「えっ?」


敏恵「えっ…だって、……あれ?? マリは運転できないの?」

ハイデマリー「ぁ、はい。なので市外へ出る場合は必ず誰かと……。……すみません」

敏恵「……。…本当に?」

ハイデマリー「は、はぃ…。すみません…」ショボーン

敏恵「!! あっ、いやいや! 別に謝らなくていいんだけど――」アセアセ

敏恵「…マリってその、隊長…だしさ? なんか勝手に、運転くらい当たり前に出来るものなのかと…」



ハイデマリー「……」

敏恵「……」



ハイデマリー「ぁの、工藤さん? …もしかして、工藤さんも運転が?」

敏恵「ぅ…! だ、だってあたし海軍だよ? ボート漕ぐのは自信あるけどこんな……なんか棒をガチャガチャやったり、ペダル3つも踏んだりするのは…」


ハイデマリー「……」

敏恵「……」



ハイデマリー「…すみません。私もその、陸軍ではなくて……車はどうしても…」

敏恵「ぅ、うん…。そうだったね……ごめん」ガク

 

南東方面 上空



――ブゥゥウン


敏恵「結局ストライカーで移動になっちゃったね…」

ハイデマリー「…はい」

敏恵「ごめんねマリ? あたしまた一緒にいる意味なくて」アハハ…

ハイデマリー「……そんなことないですよ。工藤さん」チラ

敏恵「え?」チラ


ハイデマリー「だって、友達ですから」

敏恵「!」


ハイデマリー「…あの? …どうか、しましたか?」

敏恵「……ううん! なんか嬉しくなっちゃって! ありがと、マリ?」ニッ

ハイデマリー「ぁ…! ……はぃ //」

敏恵「よ~し! 目指すはシャルルルロワ! 2人で空中散歩だぁー!」オー!

ハイデマリー「あ、いえ…工藤さん。 これから向かうのはリエージュです(それから“ル”がひとつ多い…)」

※周辺舞台の位置概要(参考:Google.2016)

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira098475.jpg


 

リエージュ市 採石場


敏恵「…なんか“漢の現場”って感じだ~!」スタスタ

ハイデマリー「リエージュを含む川や谷沿いの地域はワロンと呼ばれる工業地帯で、欧州で最初の産業革命が起こった場所でもあるそうです」

敏恵「へぇ~。……あ、綺麗な石みっけ!」ヒョイ

ハイデマリー「これら鉱床の恩恵を受けた、主に製鉄等の産業によってベルギガ王国は大きな富を築いていました」

敏恵「(タヴィアさんもマリも色々詳しいなぁ)…でもその割にこの辺とかの郊外は意外と寂しくない? ブリュッセルは賑やかだったけど」ポイ

ハイデマリー「はい。この国もガリアと同じく、ネウロイの侵攻によって一度崩落していますから」

敏恵「…ぁ、そっか」

ハイデマリー「奪還領地は崩壊した環境からの再生も大変ですが、何よりも人口の不足が問題になっています。陥落時に亡くなられた方々も少なくありませんが、避難した難民が奪還地に戻ろうとしない事が深刻です」

敏恵「……。それは、なんでなんだろ?」

ハイデマリー「そうですね…、取り返したとはいえ未だ戦火は側にある訳ですから。戻りたくても不安で踏み切れない方々が多いのかもしれません」

 
敏恵「……んー」ムムー

ハイデマリー「…? どうかしましたか?」

敏恵「――でもさ、出て行った人たちもべつに戻りたくはないんじゃない?」

ハイデマリー「えっ」ピク

敏恵「なんて言うか……住んだって不便な事ばっかなんだし、今更また大移動ってのも。面倒なんじゃないかな?」

ハイデマリー「……工藤…さん?」

敏恵「マリが言った事も仕方ないよねぇ。 一度災難に遭ってるのに、また同じ状況にってのは流石に嫌だよ」ウンウン


ハイデマリー「!」


敏恵「ね?」チラ

ハイデマリー「…………」

敏恵「…あれ? マリ?」

ハイデマリー「そう、かもしれませんね…。……一度奪われた物はもう、元の様には戻せないのかもしれません。例え取り返す事が出来たとしても…」

敏恵「ぇ? ……ごめん、あたし何か悪いこと言っちゃった?」ポカン

ハイデマリー「いえ、…大丈夫です。工藤さんの意見も正直でもっともだと思います」

敏恵「ぅ、うん(…?)」

 
ハイデマリー「ですが、それでも戻った方々は自国の再興を目指して奮闘しています。残されたこの鉱床資源を頼りに」

敏恵「…まー、戦争が多いと鉄がよく売れるらしいもんね?」

ハイデマリー「この国の製鉄産業は豊かさを得る為も勿論ですが、きっと欧州の平和を願う想いもあるんだと私は思います――」ギュ

敏恵(…? どういうことだろ??)

ハイデマリー「……なので、この都市を襲ったネウロイの出所は掴まないといけません」フィィン ピョコ

敏恵「……」

ハイデマリー「工藤さん、私は少し周辺を探査します。 工藤さんは現場に何某かの痕跡や不審な物がないか見てもらえますか?」

敏恵「あ、うん。わかった!」

ハイデマリー「……」フィィィン

 
――――
――



敏恵「のぅ!?」ヨロ


敏恵「……っとと。 危ない、今転んだら下まで真っ逆さまだ…」

敏恵「…ほぉ~、でもここなら景色もいいねぇ!(高い所楽しい!)」キョロキョロ

敏恵(えーっと、痕跡……痕跡かぁ…)


敏恵「……」フムフム


敏恵「ネウロイが暴れた感じは残ってるよね?」

 
敏恵「……ん? …あ、でも待った! これって――」


敏恵「……」キョロキョロ


敏恵(ここで暴れた跡“しか”ない? …なるほどぉ、これは確かに怪事件)

敏恵「とぉ、言うことは……地面の中に何かあるのかな? でもマリの話だと空から来るかもって事らしいけど…」ザッザッ


敏恵「――…お!」


敏恵「これ、…黒曜石?」ヒョイ

???「…」

敏恵「……ん~…?」

 
――



ハイデマリー「……」フィィン


ハイデマリー(空中には特に怪しい反応は無し。ストライカーを脱ぐ前に上空で探査した時と変わる様子も無い)

ハイデマリー「…後は、地上の反応を上手く感じ分けないと――」


ハイデマリー「っ…これは……? …!?」フィンッ


「マリー!」


ハイデマリー「!」

敏恵「…ざっと見廻ってみたけど、外からやって来たって感じはなさそうだよ?」スタタ

ハイデマリー「工藤さん…?」

敏恵「それと、関係ないんだけど…ほら見て! 黒曜石拾っちゃった、縄文土器とかのやつ!」ス

???「…」

ハイデマリー「!? ……まさか!」

 
敏恵「あはは! ビックリするでしょ? かなり大きいよこれ~!」

ハイデマリー「く、工藤さん危ないっ! それ今すぐ捨ててください!!」

敏恵「えーなになに? 危なくないよ、ほら角が取れて丸いから手斬る心配ないし」コン コンッ


???「ッ…――」ピク


ハイデマリー「違います工藤さん! その黒い物体からネウロイの反応が…っ!!」

敏恵「へ…?」


???「~~」モゾモゾ




ネウロイ「……キィ!」

敏恵「 」
 

 
敏恵「ぎゃあぁああ!!!」ブン

ハイデマリー「工藤さん!」


ネウロイ「~ッ」ボテ


ハイデマリー「大丈夫ですか!?」

敏恵「はぁ…ひぃ……、ぅ…うん。流石にあのサイズのダンゴムシには、驚いた…!」ドキドキ

ハイデマリー「ぃぇ、あの…虫ではなくネウロイです」

敏恵「えっ! 嘘!!?」ガーン

ハイデマリー「はい――」サッ

ハイデマリー「……間違いありません!」チャキ

敏恵「!」

 

ネウロイ「~~」



敏恵「……」

ハイデマリー「……」グ

敏恵「う、撃たないの?」

ハイデマリー「…あの小さなネウロイがここの破壊跡を残せたとは考えられません。少し様子を見てみます」



ネウロイ「~ッ……キィ…!」ヨジヨジ

ネウロイ「…~~」



敏恵「……」ゴクリ…

ハイデマリー「……」

 

ネウロイ「~……」ボリ ペキュ



敏恵「…ねえ? あれ、なんか……食べてない?」

ハイデマリー「……はい」



ネウロイ「ッ……ッッ…~」ムクムクムク



ハイデマリー「!?」

敏恵「わ! ちょっと大きくなった!?」

 

ネウロイ「ギ……ギ゙ュ…」ボリボリ



敏恵「石食べて、成長してる? …あれ、今のうちに撃った方がいいんじゃない!?」

ハイデマリー「っ…!」グッ


パァンッ――


ネウロイ「」バリィンッ



ハイデマリー「……はぁ」ス

敏恵「お、お見事!(拳銃でもネウロイって倒せるんだ…)」

 
ハイデマリー「工藤さん、お怪我はありませんか?」

敏恵「うん、大丈夫。ありがとう」

ハイデマリー「…驚きました、まさかネウロイを拾って来るなんて」

敏恵「あ、あぁ~……うん。…あたしもまさかネウロイが転がってるとは思わなくて、あはは //」ポリポリ

ハイデマリー「いったい何処で見つけたんですか?」

敏恵「えっとね、たしか……あそこ。あの崖っぽくなった所の上」チョイ

ハイデマリー「!? あんな足場の悪い所まで…?」

敏恵「平気へーき!これで杖ついてたし、意外といけるもんだよ」トントンッ

 
ハイデマリー「…もしかして、その棒はこの為に持って来ていたんですか??」

敏恵「えっ? いやいや、そんな訳ないよ」

ハイデマリー「あ、そうなんですか…」

敏恵「ん?」

ハイデマリー「えっ」


敏恵「……(あれ、まさか本気で言ったの?)」

ハイデマリー「…?」


敏恵「…マリ、あのさ? これ何だか分かる?」

ハイデマリー「ぇ? ………木製の――」ジー

ハイデマリー「…ぁ! 木刀、ですよね!?」

敏恵「!」

 
ハイデマリー「ごめんなさい工藤さん。実はその……私、今までそうだと気づきませんでした…///」モジ

敏恵「……ぷっ、あっはは! 惜しい惜しい!」

ハイデマリー「!? ど、どうしたんですか…? ///」

敏恵「実はこれ、本物の扶桑刀!」ドヤァ

ハイデマリー「…? ぇ…??」

敏恵「白鞘って言ってね? まぁ、確かに外国の人は見る機会ないのかな」

ハイデマリー「…ぇっと、でも……ツバ…でしたっけ? そういうのは…?」

敏恵「あー、うん……拵〈こしらえ〉はお金掛かっちゃうからな~。本当はやらなきゃいけないんだけど――」

敏恵「園さんが“凡職には絶対出すな”って言うから、面倒になっちゃって……結局そのまま。へへ… //」

ハイデマリー「は、はあ…? そう…なんですか」ポカーン

敏恵「刀身見る? かっこいいんだよぉ~! けっこう凄い物みたいでさ、前に帰国した時に恩賜で――」ムッフフ~



バゴォオオォオンッッ



敏恵「ッ…!!? な、何!?」

ハイデマリー「!」

 

ガラガラガコォ…


ネウロイ「ー~ーー!!」


敏恵「ネウロイ…っ!? ちょっ、嘘でしょ!!」

ハイデマリー「……地上型! という事は、このネウロイが――」

ネウロイ「ーッッ!」ズンズンズン


ビュン


敏恵「わっ!?」ササッ

 
ハイデマリー「くっ…!」パァン パァン

ネウロイ「~…!」バキィ

ハイデマリー「工藤さん! 一度離れましょう!」

敏恵「わ、わかった…!」ダッ



ネウロイ「ッ…~……」




敏恵「っぜは…! 何でいきなり、こんな大きいのが!?」ザッ

ハイデマリー「……目測2~3メートル、それに破損した装甲が再生しない。本部の情報と一致します…!」

敏恵「えぇ? つまりアイツが怪事件のネウロイ!? それじゃあ空からじゃなくて、地面に埋まってたってこと?」

ハイデマリー「いえ。敵が出てきた場所は採掘用のトンネルが通っていた筈なので、そこに潜んでいた可能性もあります」

敏恵「いやでも、あの図体でトンネルに入る訳ないよ!?」

ハイデマリー「…だから、出てきたのかもしれません」

敏恵「えぇ? どういうこと!?」

 

ネウロイ「…ッー!」ズンズンズン




ハイデマリー「詳しい検討は後にしましょう! とにかく装備を取りに行かないと…、携帯銃だけでは不利です」

敏恵「う、うん……でもストライカー脱いだ場所って――」


ネウロイ「…! ~…」ズンズン


敏恵「…あれの向こう側だよね?」

ハイデマリー「……。…はぃ」

ネウロイ「゛~~!!」


――ビュッ ブンッッ


敏恵「っ…危な!?」バッ

ハイデマリー「!」タッ

 

ネウロイ「ー! ーー゛!!」


敏恵「~っ……このカマキリ君、かなり興奮してるみたいなんだけど!? …さてはオス?」

ハイデマリー(通信装置もユニットと一緒。後方は足場の悪い鉱山――)ゴクリ

ハイデマリー「(この状況で格闘戦だけはやっちゃいけない…!!)工藤さん! 私が囮になりますから、その間に突破してください!」

敏恵「えっ! マリ!?」

ハイデマリー「すみません、急いでください! 私も陸上の立ち回りにはあまり自信がないので…!」ダッ

敏恵「あっ! ちょっと待って!? あたしそんなの賛成してない!!」

 
――

 

ネウロイ「~~ー!! ッー!」ズンズン


ハイデマリ「ぅ…!?(思ったより足が速い!)」タッタッタッ

ネウロイ「~!」

ハイデマリー「っ…!」パァン

ネウロイ「ッ…!?」ベキッ


ハイデマリー(…よし)ダッ

 

ネウロイ「……~…、ーーッ!!!」ズンズンズン


ハイデマリー「はぁ……っは……、…ぜはっ…(自分の足で逃げるのがこんなに辛いなんて…!)」タッタッタッ

ネウロイ「ー~!!」

ハイデマリー「…くっ!」パァン

ネウロイ「ーー!」バッ


ギィンッ――


ハイデマリー「!!(防いだ…!?)」

ネウロイ「――゛ー!!」ヒュッッ

ハイデマリー「ぐ…!(危ない!)ダッ


ガゴォオッッ


ハイデマリー「――…ッ゙!!」ズシャァ

 

ハイデマリー「――…ッ゛!!」ズシャァ


ネウロイ「~……」

ハイデマリー「ぅ…ぐ……(ち、近い…! 逃げるか迎撃をしないと――)」ヨロ

ネウロイ「…~~、ーー゛ーッ!!!」グワッ

ハイデマリー「!」




敏恵「待ったぁあああああーーっ!!!」



ひゅーーん


ネウロイ「…!」コツン

ハイデマリー「ぇ?」


敏恵「マリに怪我させたらエステルちゃんとタヴィアさんに殺されるよ、デカマキリ! あたしが相手だ!」

 

ネウロイ「……」グル

ハイデマリー「く、工藤さん!? 何してるんですか…!!?」



敏恵「マリを信じない訳じゃないけど、間に合わなそうだから。…こっちの方が早いよ!」スラァ



ハイデマリー「駄目です工藤さんっ!! いくらウィッチでも、増幅ユニット無しでネウロイと戦うのは危険です!」

ハイデマリー「ましてや刀〈ソード〉でなんて……、逃げてくださいっ!!」




敏恵「……心配しないで、マリ」クルッ …パシ!


ネウロイ「ー! ゛~ー!!」ズンズンズン


敏恵「あたしも剣術なんて殆ど知らないけど、“これ”なら倒せると思うから――」フィィィン

ネウロイ「~ッーー!」

敏恵「大丈夫!」バッ




ハイデマリー「工藤さん…ッ!!」

 

 

サン・トロン基地 格納庫



ルーツィア「……」テクテク


ルーツィア「――…ん?」




オクタヴィア「……」

ルーツィア「手伝いましょうか?」テクテク

オクタヴィア「? あら、ルーちゃん。お散歩かしら?」

ルーツィア「……まあ、そんな所です。義足〈あし〉慣らし」

オクタヴィア「ふふ、調子良いみたいね?」

ルーツィア「まだ走れませんがね…」スッ

オクタヴィア「あ、ハンガーで火は駄目よ。弾薬が出てるんだから」

ルーツィア「! …了解」ゴソ

オクタヴィア「気を付けてね?」

 
ルーツィア「……それはそうと、何かありました?」

オクタヴィア「ん?」

ルーツィア「仕事だけはクソ速い少佐が、珍しく黙って突っ立ってたもんで」ニヤ

オクタヴィア「やだ、褒めてるのぉそれ?」

ルーツィア「…………いいえ」

オクタヴィア「あらあら♪」

ルーツィア「……で、何考えてたんですか?」

オクタヴィア「うふふ、ちょっとね。今夜の任務に必要な装備を確認してたんだけど、敏恵ちゃんの弾薬に足りない所があるよのねぇ…」

ルーツィア「? …補給不足ですか?」

オクタヴィア「と言うより、ちょっと変なのよこれ。見る?」クイ

ルーツィア「…?(扶桑からの支給品リスト?)」ジー

 
ルーツィア「……。べつに……弾薬は潤沢じゃないすか」

オクタヴィア「そっちじゃなくて、30ミリ機砲の弾種が足りなくなぁい?」

ルーツィア「? ………ん、照明弾が無いな」ジー

オクタヴィア「受け入れ承諾時に目を通した際にも少し引っ掛かってはいたんだけど、追加発注のリストにも無いみたいなのよねぇ」

ルーツィア「…そもそも存在してないんじゃないすか?」

オクタヴィア「技術的にそれはあり得ないわよ。曳光弾まで用意できるのに、夜間装備の弾薬に照明弾が付かないのは不自然だわ」

ルーツィア「ん……いや、あの大尉には要らないってことでしょ。シュナウファーと同じで」

オクタヴィア「…夜間視の能力?」

ルーツィア「ええ。強い光源は邪魔になるんだと思いますけど」

オクタヴィア「……」

ルーツィア「だから少佐もサングラス買ってやったんだろ…?」

 
オクタヴィア「……それなんだけど、実はちょっと引っ掛かってるのよね」

ルーツィア「…?」

オクタヴィア「夜間視の魔法で光が飽和するのは分かるんだけど、どうして敏恵ちゃんは魔法を使った後もそうなのかしら?」

オクタヴィア「前にあの子、あたしに“固有魔法を使った後だから眩しい”って言ったの。…これってよく考えたら腑に落ちないわよ?」

ルーツィア「制御が下手なんだろ、自分で言ってましたよ。だから使い過ぎんなって上官に釘刺されてるって」

オクタヴィア「(……)…それはそれで、また矛盾する話だわ」

ルーツィア「……やけに拘りますね? 気になるなら本人に聞けばどうです?」

オクタヴィア「…………」

ルーツィア「……聞いてんすか?」

 
オクタヴィア「ねぇルーちゃん? あの子って確かビフレストの、噂の子よね?」

ルーツィア「! …ええ。流石に知ってましたか」

オクタヴィア「あたしは見た事無いけど、5年前と比べてどうかしら彼女?」

ルーツィア「どうって、……私もあんな状況でハッキリ観察したわけでもないですからね…」ス

オクタヴィア「煙草、駄目よ」サッ

ルーツィア「ん? ああ、すみません。……ただ、そうだな…――」ゴソ

ルーツィア「私の持ってた印象とは変わってるな。…飛行訓練を見た感じじゃ、わりと大人しいっつうか」

オクタヴィア「そうなの?」

ルーツィア「本人は特攻スタイルを重視してる言いぶりだけど、実際はなかなか堅実で上手いもんでしたね。……“あいつ”の印象は何て言うか…もっとデタラメで、危ないっつうか。……ヤバいイメージでした」

オクタヴィア「……ん~」


ルーツィア「まぁ昔の話だし、現実はあの大尉が本当ですから。…私の記憶なんてあてにしないでください」

オクタヴィア「…………」

ルーツィア「…ちょっと外で吸ってきます。手が要るなら呼んでください」テクテク

オクタヴィア「……。…ええ」

 

リエージュ市 採石場


ネウロイ「ッー!」ブンッ

敏恵「(右…!)ふっ!」サッ

ネウロイ「ーー!」ビュッッ

敏恵「(左から!)――…だっ!」タンッ


ネウロイ「ー! ーー!!」


敏恵(…よし、自分の足でも避けられる!)ザッ




ハイデマリー「(っ……ここから撃つと誤射する可能性が…)工藤さん!! 止めてください! 離れてくださいっ!!」
 

 
敏恵(コアは視えない、攻撃を掻い潜って適当に突き刺せば…)チャ

ネウロイ「~ー!!」ビュン

敏恵「…!(振り下ろしてきた――)」

敏恵「(飛び込めッ!!)やぁああっ!!」ダッ


――ガッ…


敏恵「!? あぎゅっ!」ドテッ

ネウロイ「……」

敏恵「ぃ…つぅ……~っ」ヨロ

ネウロイ「…、ーー!!」グワッ



ハイデマリー「(まずい!!)駄目! 工藤さん逃げてぇーッ!!」






――ダダダッ ダァンッ
 

※すみません、>>385微訂正


敏恵(コアは視えない、攻撃を掻い潜って適当に突き刺せば…)フィィィイン

ネウロイ「~ー!!」ビュン

敏恵「…!(振り下ろしてきた――)」

敏恵「(飛び込めッ!!)やぁああっ!!」ダッ


――ガッ…


敏恵「!? あぎゅっ!」ドテッ

ネウロイ「……」

敏恵「ぃ…つぅ……~っ」ヨロ

ネウロイ「…、ーー!!」グワッ



ハイデマリー「(まずい!!)駄目! 工藤さん逃げてぇーッ!!」








――ダダダダンッ
 

 
ネウロイ「ッ…!?!」ベキィ ベギッ

敏恵「!! ……ぃいまぁああ――」バッ


敏恵「だっ!!」


ザグッッ


ネウロイ「!」

敏恵「ふんッッ…!!」フィイィィン


ネウロイ「 」ビカッ


バァァアアンッッ


パラパラ…
 

 
敏恵「~っ、……はぁ…。ドジしたぁ(まさかあんなタイミングで躓くなんて…)」ヘナ


ハイデマリー「――く、工藤さん!」タッタッタッ


敏恵「ぁ、マリ。…大丈夫?」

ハイデマリー「私は平気です、そんなことより工藤さんこそ怪我はありませんか!?」

敏恵「あぁ、うん。…今は痛くないけど、多分なんともないと思う」ムク

ハイデマリー「……どうしてあんな無茶を…」


敏恵「んしょ…っと。あはは……いやぁ、ありがとねマリ? 転んだ時にネウロイ止めてくれて助かったよ」

ハイデマリー「えっ? …ぃぇ、私は撃っていませんけど…?」

敏恵「へ? ……あれ?? だってさっき、敵の背中を――」



「大丈夫ですかー!」



敏恵「ぉ…?」チラ

ハイデマリー「!」

 

――ブゥゥウン


???「出張手当は無くても来て良かったー! まさか本当にネウロイが出てたなんて」フワッ


敏恵(……ウィッチ? というか、扶桑陸軍の服だ!)

ハイデマリー「ぁ…! 貴方は、黒田中尉…!?」

敏恵「黒田中尉? マリの知り合い?」



邦佳「どうも、お久しぶりです大尉さん。お2人とも怪我とかしてないですか?」ピシ

 

 

第六話:渇感 に続く

 

黒田中尉の名前間違えてしまった…

邦佳じゃなくて那佳でしたね

 
登場人物メモ


 黒田那佳(くろだ くにか)

※原作キャラクター※
(“ノーブルウィッチーズ 第506統合戦闘航空団”シリーズ:角川スニーカー文庫)

扶桑皇国陸軍中尉、連合軍第506統合戦闘航空団A部隊所属のウィッチ。

旧大名・黒田侯爵家の分家の出身、だがプチ守銭奴。
明るく元気なお調子者で、扶桑海事変末期から航空戦歴を持つ実力者。

 
[解説メモ]


・リエージュ

ベルギガ東部の工業都市。
18世紀に国家の独立後、欧州初の大規模製鉄生産が行われた主要工業地のひとつ。
鉱山の開坑自体は最古17世紀からあり、ブリタニアの産業革命はここで採掘された資源を利用して大陸植民地に伝えられたとされる。

ちなみに、ローカルグルメの“リエージュワッフル”は扶桑人が呼ぶベルギガワッフルの元祖だっりする。


・シャルルロワ

リエージュと同じくワロン工業地帯の一角。
首都に近いせいかリエージュより経済が盛んで、製鉄の他にガラス等の工業も発展している様子。


・中央都市の連続怪事件

シャルルロワが地上型のネウロイによって急襲された事件で、市内の工業地区を中心に複数回起きた。
何処からともなく突然ネウロイが現れるため、無警戒だった被害地の度重なるダメージは深刻な物になっていた。

易々と防衛地域への侵入を許してしまっている連合軍(及びカールスラント軍)はこの事実を重く捉えている。

 

【第六話 渇感】



リエージュ市 採石場


ハイデマリー「危ない所を助けていただき有難うございました、黒田中尉」

那佳「いえいえ、あの状況を見て助けるのは当たり前ですし。偶然でも間に合って良かったです」


敏恵「……? …――」

敏恵「…そっか!この人がさっきネウロイ撃ってくれたんだ?」


那佳「あ、はい。えっと……はじめまして、第506統合戦闘航空団所属の黒田那佳です!」ペコ

敏恵「506!? ノーベ――…ノーブルウィッチーズ?」

那佳「はい、それです」

敏恵「……おぉ…!(藤色の装衣…て事はやっぱり! 華族のお嬢さんなんだ、この子!)」ジー

 
ハイデマリー「ですが、ガリア防衛が任務の506がどうしてこちらに…?」

那佳「あ、それはこっちの隊長の指示で」

ハイデマリー「…グリュンネ少佐が?」

那佳「はい。御両親の出身がベルギガとガリアだそうなので、…私情じゃないって本人は言ってましたけど」

ハイデマリー「そうですか…」

那佳「元々今回のことで任務もあったんですけど、昨日この場所でも起きたから哨戒のついでに様子見に行かされたんです。手当なしで」

敏恵「“今回のこと”…?」

ハイデマリー「……シャルルロワの連続怪事件ですね? そちらにも何方かが?」

那佳「はい。今はヴィスコンティ大尉が」

敏恵(誰?)

那佳「今日の夜にはウィトゲンシュタイン大尉が行くみたいですけど」

ハイデマリー「! …あの人が」

敏恵「どの人?」

 
ハイデマリー(要地にウィトゲンシュタイン大尉を配置したからリエージュには私達を…、夜間に絞った二面戦略? でも506の連合軍とカールスラント空軍本部では命令系統が違うのに……)モヤ

敏恵「マリ? どうかした?」

ハイデマリー「……黒田中尉。この地の警戒は今夜から私達の隊が預かる事になっているのですが、そういった話は聞いていませんか?」

那佳「え、そうなんですか? 私は聞いてませんけど……グリュンネ少佐なら知ってるのかな?」

ハイデマリー「……」

那佳「そうだ! ネウロイ出た報告もしないといけないし、ちょっと聞いてみますね――」ゴソ


那佳「…? ……あれ? んん…?」ゴソゴソ

敏恵「?」


那佳「…………しまった、通信機置いて来ちゃったみたい…」

敏恵「あー…、あるよねぇそういう事」

ハイデマリー「ぁ、でしたら私達のを使ってください。それと…よければ私からもグリュンネ少佐に直接伺いたい事がありますので、御報告の後で変わっていただけませんか?」

 
――――
――



ハイデマリー「……はい。……ぁ、いえ…こちらこそ中尉の助けのおかげで…。…………はい、実はそのことで――」




敏恵「……(やっぱりマリは忙しそうだなぁー……って、完全に金魚の糞みたいだけどいいのかなあたし?)」ポツーン

那佳「ここって――」

敏恵「ぇ?」チラ

那佳「…ここって採石場なんですよね?」

敏恵「あ、うん。そうだね」

那佳「……。金〈きん〉とか、出るんですかね…?」

敏恵「金?? …いや、どうだろ? 製鉄の為に採ってるみたいだし、昔からあるみたいだから……あとは蒸気動力の燃料とかじゃない?」

那佳「炭かぁ……じゃあ、ダイヤモンドなら…?」

敏恵「えぇ…(何言ってるのこの子??)」

那佳「この辺のちょっと綺麗な石とか、お金になったりしないかな…~?」ヒョイ

 
敏恵「……――って、そうだ。そういえば名前聞いておいて自分の挨拶はしてなかったよね? あたし」

那佳「え? あ、そういえば…そうでしたね」ゴソ

敏恵「そっかそっか。…それじゃあ改めてだけど、あたしは扶桑海軍の工藤敏恵。一応大尉だけど階級負けしてるから気軽に、よろしくね那ちゃん?」

那佳「はい、よろしくおねがいしま――……ん? 工藤…敏恵さん?(どこかで聞いたような名前かも…??)」

敏恵「?」

那佳「――ぁ……思い出した。たしか海軍の“鎌鼬”?」ボソ

敏恵「!!」ギクッ

 
那佳「? ――あっ! まさか私、いきなり失礼なこと言っちゃいましたか!?」

敏恵「…そ、その呼び方はちょっと……」

那佳「うわぁ、ごめんなさい! その、独り言のつもりだったんですけど…!」

敏恵「う、うん。まあ…別にいいんだけど――」ハァ

敏恵「…それ、妖怪の名前だし。せめて“いたち”って言って欲しいかなぁ…」

那佳「す、すみませんでした…。33戦隊にいた頃に噂を聞いたことがあったので」

敏恵「……それ、扶桑陸軍?」

那佳「…はい、私の原隊です。その時は紅海の方に派遣されてましたけど」

 
敏恵「ぅぐ…っ、陸軍のしかも国の外の人にまで知られてたなんて――」ガーン

敏恵「…はぁ~。確かに新米の頃は先輩や同期にも“いたち”とか“ いたっちゃん”って呼ばれてたけどさぁ、いつの間にこんな子にまで妖怪認定されてたのあたし? 普通の女の子なのにぃ…」ガク

那佳「いえ妖怪と言うか、私が聞いたのは普通の英雄譚みたいな話ですけど。そんなに気に止む事なんですか?」

敏恵「……それはそれで、誤解がある気がする…」

那佳「けど確かカールスラントの夜間撤退戦で戦果をあげて、それで皇家の人に褒められたんですよね?」

敏恵「うん、まあ…。感謝されたのは園さんなんだけど(あたし入院してたし)」

那佳「海軍の小園里葉少佐ですか?」

敏恵「ぇ? あぁ、うん。今は大佐」

那佳「へぇ…!」

敏恵「園さんが少佐になった時にあたしも一緒に特進して、……多分その時に名前も妖怪に進化して全世界でデビューしたのかも…」ショボーン

那佳「え、えーっと~――」アハハ…

 
那佳「…あっ、そうだ! 御礼金とか貰えなかったんですか!? 皇家からご褒美とか!」

敏恵「お金…? あたしには一銭もなかったよ」

那佳「えぇ~っ! そんな!?」

敏恵「(何で那ちゃんが残念がるの…?)一応、恩賜って事でこれだけ貰ったけど」クイ

那佳「? それってさっきの刀…」

敏恵「“飯綱権現”って言うんだって」

那佳「へぇー。…でも白木の鞘って保管用ですよね? なんだか映画で見るヤクザ屋みたい」

敏恵「え? そ、そうかな…?」


那佳「はい。大尉、色眼鏡も賭けてるし。ちょっと強面っぽくないですか?」

敏恵「そんな!? このサングラス可愛いアイテムの筈なのに、まさかヤクザファッションになっちゃうなんて…!?」ガガーーン


敏恵「ぅぅ……自分では穴拭智子さんみたいな大人女子をイメージしてたのに(いったいどこを間違えたんだろ…?)」

那佳「! “扶桑海ノ閃光”ですね? 私も観ましたよ!」


――スタスタスタ


ハイデマリー「お待たせしました」

那佳「あ、お疲れ様です。通信機有難うございました」

 
ハイデマリー「いえ。 私達は上空警邏の後サン・トロン基地に戻りますが、黒田中尉はどうされますか?」

那佳「私も、少佐達で話がついたなら取り敢えずは帰っちゃっていいみたいです。多分今度は西の方に行かされそうですけど」

ハイデマリー「…シャルルロワですか」

敏恵「――マリ~っ!」ガバ

ハイデマリー「ひゃ!? …ど、どうしました工藤さん??」

敏恵「あたしって厳ついかな!? 柄悪く見える!?」シクシク

ハイデマリー「えっ? あの…??」

敏恵「~~っ!?」ジー

ハイデマリー「ぇ、えぇと――」



~~~~~~~~~~~~~~~~

ルーツィア『あ? …なに見てんだお前』ジロ


エステル『ごらぁ!! 今チビって言った奴誰だーっ!』クワッ

~~~~~~~~~~~~~~~~



ハイデマリー「――…そんなことは、ないと思いますよ?」

敏恵「! 本当!?」

 
ハイデマリー「は、はい……私はそう…思いますけど」

敏恵「じゃああたし、大人女子かな!? //」ハァ ハァ

ハイデマリー「!? ぉ、大人女子ですか…?」

敏恵「そうっ! “巴御前”みたいな! ///」ズイィイ

ハイデマリー「っ…ぁの、工藤さん!? その…ちょっ……落ち着いて…くださぃ///」モゾ


ムニムニン


那佳「わぁ…すごい(大きい胸同士が押しくら饅頭してる…)」

敏恵「やっぱり陸軍みたいな可愛い服じゃないと駄目かな!? ねえ!? ///」ハァハァ

ハイデマリー「い、ぃぇ……そんなことは…っ、ぁの… ///」


那佳「……確かに。ある意味これは大人の女だ…」

 

サン・トロン基地


作戦室


敏恵「――んく…ん……~」ゴクゴク

オクタヴィア「…そういうことだったのね」

ハイデマリー「はい」

敏恵「~…っぷは! ……ぇ、どういうこと??」


オクタヴィア「怪事件の秘密。内地にネウロイが湧いて出る仕組みよ、敏恵ちゃん」

ハイデマリー「…採石場で工藤さんが拾ったネウロイと同じ物が、何処かから運ばれて来たということです」

敏恵「!」

オクタヴィア「その小さなネウロイが鉱石を摂取する事で成長するなら……成熟した、或いはその過程の姿こそが怪事件のネウロイだったと考えるのが妥当だわ」

オクタヴィア「それぞれ鉄鉱資源の豊富な場所が被害地な事も重要で、餌場にされていたってことでしょうね」

敏恵「……つまりイネムシ!」

ハイデマリー「虫…ですか?」

敏恵「あ、いや虫的な輪郭だったから。イメージ的につい」

 
オクタヴィア「ん~、その虫はよく分からない例えだけど。敏恵ちゃん的に言えば…元気な作物を育てる為の適切な土壌ってことかしら♪」ウフフ

敏恵「なるほど! そういうことですね!?」

ハイデマリー(……返って分かりにくいような…)


オクタヴィア「ただ、そうすると問題はここからで――」

オクタヴィア「解決の為にはその種を蒔いてる母船型を止めなくちゃいけないわよねぇ」

ハイデマリー「……」

敏恵「…タヴィアさん。それって籾撒きですか、田植えの方ですか!?」キリ

オクタヴィア「えっ? えぇっと~、……好きな方で良いわよぉ♪」ニコ

ハイデマリー「あの、そろそろ比喩で表現するのは止めませんか?」

 
オクタヴィア「うふふ、ごめんなさいマリーちゃん。…それでどうする? このまま夜は予定通りかしら」

ハイデマリー「……いえ、グリュンネ少佐を通じて連合本部にも情報を共有して頂いてます。なのでこちらも空軍本部へ連絡して判断を仰いでみようかと」

オクタヴィア「ん、わかったわ。お願いね隊長さん」

ハイデマリー「はい。それではお先に失礼します」スタスタ


ガチャ パタン


オクタヴィア「……」

敏恵「……あ、じゃーあたしも一旦部屋に戻りま~す」スタ

オクタヴィア「敏恵ちゃん、ちょっと待ちなさい」

敏恵「――? はい」クル

オクタヴィア「貴方、身体は大丈夫? 無理してないかしら」

敏恵「…何がですか?」

オクタヴィア「太腿、…切れてるわよ」

敏恵「え? ……あ、本当だ! うわぁ~足もか」

 
オクタヴィア「……」

敏恵「ここも破片でやっちゃったのかなぁ、顔しか守ってなかったし」サスサス

オクタヴィア「未手当のままならちゃんと消毒した方がいいわ。もう固まってるみたいだけど傷口もちゃんと洗いなさいね?」

敏恵「はーい、わかりました。それじゃあ身体洗っちゃおうかな?」

オクタヴィア「…それから、気分の方はどう? 固有魔法を使ったみたいだけど」

敏恵「あ、はい。今の所はしゃっきりハツラツです!」

オクタヴィア「そう。でも日中に超夜間視力を使っても平気だったのね」

敏恵「はい、なんとか! タヴィアさんに買って貰ったサングラスのおかげです、えへへ」クイ

オクタヴィア「……。気に入ってくれてるのは嬉しいけど、室内でも掛けるのはお行儀悪いかもしれないわねぇ」

 
敏恵「え? あ、ごめんなさい! でも、電気とかまだちょっと眩しいので。それで掛けてるんです」

オクタヴィア「あらあら、そうだったのね? ……それなら、仕方ないわね」

敏恵「んぐん~……、…ありゃ? 水筒空になっちゃった」フリフリ

敏恵「タヴィアさん。もうあたしも失礼していいですか?」

オクタヴィア「ええ。お疲れ様」

敏恵「は~い!」スタスタ


ガチャ パタン



オクタヴィア「…………」
 

一旦休憩
ぼちぼちと投下していきます

 

食堂


ハルテ「~♪」マゼマゼ

敏恵「ハルテちゃんご機嫌だね」

ハルテ「あ、大尉さん! お帰りなさい」

敏恵「ただいま。いや~、石の山を歩き回ったりして結構疲れちゃった」ガパ

ハルテ「ふふ、お疲れ様です。シャワー上がりですか?」

敏恵「ん~ん、それはこれから。先に水の補充を」ゴト

ハルテ「そうですか。身体が火照っている様に見えたので、てっきりシャワー後かと」

敏恵「あはは、まあ暑いからさぁ。汗かいちゃうよね」

 
ハルテ「そうですか? もう陽も沈みましたし、涼しくて過ごしやすいと思いますけど…」

敏恵「んぐ……~ん…」ゴクゴク

ハルテ「……大尉さん?」チラ

敏恵「~っはぁ。……あ、ごめん。何?」

ハルテ「…大丈夫ですか? 今日は随分飲んでるみたいですけど…暑がっていますし、もしかしてお風邪をひいているんじゃ?」

敏恵「そう? あたし全然元気だよ。 扶桑にいた頃はこれぐらい普通に飲んでたし、汗もドバドバかいてたから」

ハルテ「そ、そうですか」

敏恵「うん」

ハルテ「…もうしばらくしたら御夕飯もありますから、あまり飲み過ぎないでくださいね?」

敏恵「ん、了解。ありがとう!」

 

―同日 20:00時―

作戦室


オクタヴィア「はい、皆いいかしら?」

エステル「いいですけど、ていうか何で緊急徴収なのよ」ポリポリ

ルーツィア「…エステル、掻き過ぎると悪化するぞ」

敏恵(エステルちゃんのお尻、結局かぶれちゃったんだ…)

ハルテ「調査任務のシフトが決まったんですか?」

ハイデマリー「いえ、実は空軍本部から作戦命令が下りました。東部国境警戒の人員を除いた4名全員でリエージュ採掘場上空へ向かいます」

ハルテ「え?」

ルーツィア「……どういう事だ?」

オクタヴィア「マリーちゃん達が現地でネウロイの種を見つけたのよ」

エステル「種? なんですかそれ」

 
敏恵「幼虫――…じゃなくて幼体、みたいな? このぐらいに丸まってたのをあたしが拾ったんです」クイー

ルーツィア「拾ったのか…」

敏恵「はい。なんと素手で拾っちゃいました」

エステル「……なにやってんですか」ジト

敏恵「いや、だってその時は黒曜石だと思って…。丸くて目立ってたし」

エステル「あ、あのねぇ……河原の石じゃないんだから。どう考えたって不自然でしょうが!」

敏恵「でもつるつるで可愛い感じだったから、つい」

エステル「磨いてもいない唯の石が光沢あるわけないでしょ!?」

 
ハルテ「えぇと…それで、その小さなネウロイが作戦の目標になるという事でしょうか?」

オクタヴィア「いいえ。そのネウロイは現場の鉱石を摂取して急速に成長をするから、直接的に脅威となるのはその後よ」

ルーツィア「……つまりはそのでかくなったのが怪事件で暴れた奴らか」

ハイデマリー「はい。そのネウロイにもリエージュで遭遇しました」

エステル「! …出たんですか!?」

敏恵「一応倒したけどね。コアも持ってなくて、地面で躰振り回すくらいしか出来ないみたいだから“ストライカーと武装があれば”全然怖くないと思う。ね、マリ?」

ハイデマリー「そ、そうですね…。私達はとてもハラハラしましたけど…」


ハルテ「…? コアが無い個体なんですか?」

オクタヴィア「敏恵ちゃんが言うにはね。旧世代みたいな例も無くはないけど、普通に考えたらそうじゃないわ」

ルーツィア「……母機か」ボソ

 
ハルテ「母機、ですか?」

ルーツィア「ああ。つまりコアを持った母機がその種だか幼虫なりをバラ撒いてて、結局の所そいつが元凶だった――」シュボ

ルーツィア「……フゥー…。…だろ、隊長?」プカ

ハイデマリー「はい。恐らくは」

エステル「…てことはその親ネウロイを撃墜する任務に移ったってわけ?」ムムー

オクタヴィア「大正解♪」

敏恵「……あ、そういう事なんだ?」

 
オクタヴィア「便宜的に、種を蒔いてるネウロイを“バウアー〈農夫〉”と呼ぶけど――」

オクタヴィア「バウアーの活動は夜間航空型というのが本部の見立て。…だから次の出現に絞って一早く元を叩くつもりね」

ハイデマリー「理由は不明ですが母船型だと思われるそのネウロイは防衛探査網を掻い潜って移動するので、この作戦はベルギガとガリアの全鉱山空域で同時に行われます。その中で私達は引き続いてリエージュ市を任されました」

エステル「……話は分かりますけど、だからって今夜直ぐは急過ぎるでしょ」

オクタヴィア「うふふ、連合との共同作戦になったから仕方ないわね。上はどうしても先んじたいみたいだから」ニコ


ルーツィア「……?(なんだ? 一連の力の入れようといい、うちの軍は内々で終わらせたかったのか?)」

エステル「連合絡みになっちゃったんですか…。 随分話が大きくなったわね」

ハルテ「でも、作戦の規模を考えると当然かもしれませんね?」

 
オクタヴィア「まあ…この展開はブリタニアの連合指令部から出たんでしょうけどねぇ。グリュンネ少佐に話を通した時点でこうなる流れは決まっていたわ」

ハイデマリー「あの……もしかして私の行動は軽率でしたでしょうか…?」

オクタヴィア「あら、そんなことないわよ。マリーちゃんの判断は間違っていないわ、自信を持って?」ポン

敏恵「うん、よくわかんないけどマリは隊長頑張ってると思うよ。 大丈夫!」ウンウン

ハイデマリー「は、はい」


エステル「――え? ちょっと、グリュンネ少佐って……506の名誉隊長じゃないですか!?」ガーン

ルーツィア「…まさか来てたの?」

ハイデマリー「ぁ、いえ。現場には黒田中尉が派遣されていて、その際に情報交換を…――」

敏恵「中央の都市にもウィッチが行ってるんだって。あの何だっけ? 確か…この前ハルテちゃんが教えてくれたあのザイント・ウィ~……なんとかって人」ゴクゴク

 
ハルテ「?? ……もしかしてザイン・ウィトゲンシュタイン第一司令さんの事ですか?」

敏恵「そう、それ!」

オクタヴィア「あら! 御姫ちゃんがシャルルロワに付くの?」

ルーツィア「あの人まで出てきたのか……」フゥ~

敏恵「? 何、そんなすごい事なの?」

エステル「第一司令は今や506A部隊の戦闘隊長で、ガリア防衛の実質的な現場指揮官ですよ? 管轄外に飛んでくるなんて普通ありえないですから」

オクタヴィア「……ん~、でも確かに手堅いかしらねぇ? ヤマを張った中では一番出現率が高いからセダンの506Aを使うのは有りだわ、御姫ちゃんなら夜間任務の信頼性も高いでしょうし」

エステル「私達の隊長の方が上ですけどね!!」ヘヘン!

ルーツィア「他人の功で威張るな」

 
ハイデマリー「えぇと……とにかく私達は作戦時刻までにシュバルム編隊でリエージュ上空にて待機しなければなりません。残りの一組は緊急時の駆けつけに備えつつ国境哨戒を行ってください」

オクタヴィア「…そういえば時間もあまり無いし、人選を決めちゃいましょうか?」

ハイデマリー「はい」


オクタヴィア「それじゃあ総指揮はあたし達と、戦闘指揮はマリーちゃんが執るからそれぞれに付くウィングマン〈僚機〉が2人ね」

敏恵「一緒に指揮するのに2人では組まないんですか?」

オクタヴィア「あたしの腕だとそれはちょっと荷が重いのよねぇ。…隊長、メンバーの基準はあるかしら?」

ハイデマリー「そうですね……索敵は私が担いますので、やはり戦力重視でしょうか」

オクタヴィア「わかったわ。じゃあルーちゃんを貴方に付けて、あたしには魔導針が使える2人のどちらかって所ね」

ルーツィア「…!」ピク

ハイデマリー「?」

 
敏恵(お! ということは、あたしは楽な方? やったー)

エステル「あ~あ、また先輩ですかぁー? ズルい」ムス

ハルテ「ふふ」


ルーツィア「……いや、待った少佐。私でも構わないけど大尉はいいのか?」

オクタヴィア「!」

敏恵「ん?」

オクタヴィア「……敏恵ちゃんはまだ日が浅いから、現状はルーちゃんの方がいいわ」

ルーツィア「(? らしくない事言ってんな)…けどこういう時の為に援戦武官を迎えたんでしょう? 実力選考なら大尉のがいいんじゃないすか?」

エステル「た、確かに…」

オクタヴィア「……。けど…」

ハルテ「准佐さん?」

敏恵「??」

 
ハイデマリー「…心配いりません少佐。工藤大尉とのペアは哨戒でも経験済みですし、場合によっては私が援護になって合わせる事もできると思いますから」


エステル(むぐぐ…! なんか隊長と肩を並べてるみたいな感じに聞こえて羨ましいっ!!)グヌ

ハルテ(…あ、エステルさん。大尉さんに嫉妬していますね)チラ


ハイデマリー「それと昼間のように地上型ネウロイやその幼態が残っている可能性もありので、爆撃航空歩兵隊の経験で対地機動にも少なからず長けている工藤大尉は助けになると思います」

敏恵「あのーマリ? あたし、そこ嫌になってすぐやめた人なんだけどぉ…」オズオズ

 
オクタヴィア「……」

ハイデマリー「?」

ルーツィア「……」


オクタヴィア「(そうね。あたしの邪推よりも、この子達の理屈の方が最もね)…敏恵ちゃん、やれるかしら?」

敏恵「へ? あー…まぁ、はい(結局楽はできなかったかぁ)」

オクタヴィア「わかったわ。それじゃあ、あとは――」

ルーツィア「私とエステルは哨戒に就きます。こっちに出ないとも限らないし」

エステル「私もですか!?」ギクッ

ルーツィア「今日はな。…お前イップス気味だからやめとけ」

エステル「むぅぅ…別にそんなじゃないですって」

ハイデマリー「でしたらハルテ少尉と工藤大尉は私達と出撃ですね」

ハルテ「りょ、了解しました!」

敏恵「…はーい」

 

食堂


敏恵「ふぅ~…」ゴト

敏恵「……よし、水筒満たん。これで一応大丈夫か…」クテ


敏恵「…………」


敏恵(まずっ、なんか急に疲れてきちゃってるかも…)

敏恵「ふは……あのとき随分強く魔法使ったからかなぁ? 最近調子良かったのに」


「…工藤さん」


敏恵「! あ、マリ。…ごめん、流台使う?」

ハイデマリー「ぃぇ、大丈夫です。……その、まだハンガーに来てなかったのでどうかされたのかと」スタスタ

敏恵「…ごめん、出撃だよね。今から行くから」ヨロ

ハイデマリー「……。大丈夫ですか? なんだかあまり元気の無い様子に見えますけど…もしかして固有魔法の反動ですか?」

敏恵「うん、まぁ……ちょっとね」

 
ハイデマリー「あの、…もし無理を感じる様でしたら休んでも大丈夫ですから」

敏恵「ううん、大丈夫。…飛ぶくらい平気だから」

ハイデマリー「ですが、戦闘になる可能性もありますし。また工藤さんに危険を――」ス



敏恵「っ…大丈夫だってばッ!!」

ハイデマリー「!?」ビクッ



敏恵「~……いいから、すぐ行くから」

ハイデマリー「……ぁ…あの、…その…――」

敏恵「…?」チラ

ハイデマリー「す…っ……すみません…」

敏恵「ぇ…!?」

 
ハイデマリー「私、友じ――……隊長として工藤さんを心配したつもりなのに、返って不快にさせてしまって……すみませんでした…」

敏恵「!! ぁ、いゃ違…違うっ! 今のは違うの!」アセアセ

ハイデマリー「ッ……」ウル

敏恵「あぁもー、ダメだ。ちょっと待っててマリ!」タッタッタッ

ハイデマリー「く、工藤…さん?」



パチ……


ハイデマリー「!」


敏恵「っ…はぁ…………ふ~ー――」フィィィン


ハイデマリー「(どうして電気を?)ぁ、あの…?」

 
敏恵「…よしと。 お待たせ」スタスタ

ハイデマリー「ぇ?」

敏恵「ごめん、ちょっと魔法のせいで疲れてただけだから」

ハイデマリー「……」

敏恵「えぇっと~…心配してくれてたんだよね? ありがとう、あたし怒ってなんかないよ。嫌な言い方して本当ごめん」オズオズ

ハイデマリー「ぃ、いえ…。ですが工藤さん、やっぱりリエージュでの反動が…」グシ

敏恵「ちょっとだけね? ストライカーも無かったし思いっきり魔法力込めちゃって。…あはは、園さんにバレたら怒られるかも」

ハイデマリー「……」

敏恵「でもああしないとマリが危なかったんだし……うん、しょうがないよね! うんうん」

ハイデマリー「工藤さん、やっぱり今夜は休ん――」



スタタタッ


エステル「いた! …ちょっと大尉逹! こんな所で何やってるんですか!?」ザッ

 
敏恵「? あ、エステルちゃん! 眩しいから電気つけないで!?」ビシ

エステル「はぁ? ……何でもいいですけど、副隊長達ずっと待ってますよ!」

エステル「行かないなら私が出撃ちゃいますからね! 隊長も、もうその人は放っておいて早く行きましょう?」プンプン

敏恵「あぁ待って、あたし出撃るからーっ! 行こうマリ?」グイ

ハイデマリー「あっ、でも工藤さん…!?」

敏恵「マズいマズい、タヴィアさんにまた変なお仕置きされちゃ――…うっ!? 廊下眩しいっ!?」


タッタッタッ



エステル「……まったく、ホントにイメージ崩れるわね。ていうか扶桑の軍ってあんな弛んでても大丈夫な訳?」フンス

エステル「はぁ~…(ウチの隊長は特別優しいからって、甘えていい理由にはならないんだからっ!)」


エステル「……」


エステル「…? ん!? (ちょっと待った! あの2人、こんな所で暗くして何やってたの…??)」


エステル「…………」モヤモヤ



エステル「!!」ハッ



エステル「…あんのスチャラカ!! まさか隊長に“手出す”気だったのね!? 副隊長より危険度高いじゃないっ!!!」ダッ

 

格納庫


エステル「ゴラァーッ、“変態”尉!! 私と変わりなさいよぉー!!」

ルーツィア「……帰ってくるなり何騒いでんだお前?」

エステル「隊長だめーー!! その女は危険ですーっ!!」

ルーツィア「…隊長、時間ないからさっさと出た方がいいですよ」



ハイデマリー「は、はあ…?」

敏恵「……“変”大尉ってあたしの事かな?」

ハルテ「ぇ、え~っと…」アハハ…

オクタヴィア「うふふ。ルーちゃんの言う通り、遅れちゃうから行きましょ♪(嫉妬するエステルちゃんも十分素質あるのよねぇ~?)」

ハイデマリー「はい。…ルーツィアさん、そちらは宜しくお願いします」

 
ルーツィア「ん、了解」

エステル「了解できませんっ!! 騙されちゃダメです隊長ー!?」

ルーツィア「……」グリ

エステル「いだっ!?」ビクゥ

ルーツィア「…こちら了解だ。行きな」



敏恵「エステルちゃん元気だなぁ」

ハルテ「そ、そうですね(大尉さんが来てから特にですよー…)」

オクタヴィア「はい、じゃあ出撃するわよ」

 

リエージュ市 上空


――ブゥゥウン


ハイデマリー「……」

敏恵「……」


ハイデマリー(工藤さん大丈夫かな? 少し前に話してからずっと黙っているけど…)チラ

敏恵(…っ……なんか…なんだろう? モヤモヤする)フィィン

ハイデマリー「……」

敏恵(調子いいはずなのに全然気分良くない…。……夜だから? 早く帰りたいのかなあたし??)

ハイデマリー「工藤さん」

敏恵(なんか……前にもこんな事あったような…? ……そうだ。あの時は園さん…あたし引っ張って……空で……夜で………ネウロイ…、…ネウロイ……ネウロ――)

ハイデマリー「あの、工藤さん。聞こえてますか?」チョン

 
敏恵「んぅあ!? …ふぇ、園さん! もう終わりっ!?」キョロキョロ

ハイデマリー「??」

敏恵「…………。 ぁ、マリ…?」

ハイデマリー「はい、そうです。…あの、どうかしましたか?」

敏恵「…?? 夢…? えっ、あたし寝てたの!?」

ハイデマリー「ぇ…!?」

敏恵「ぅ~そんな筈は…。全然眠くもないのに」ウーン



ハイデマリー「…あの、やっぱり具合が――」

敏恵「ん?」チラ

ハイデマリー「!」ビク


ハイデマリー「……ぃ、ぃぇ…。すみません…」

敏恵「?」

 
敏恵「……!(あ、もしかして台所での事気にさせちゃってる!?)」


ハイデマリー「……」

敏恵「大丈夫だよマリ。 ちょっと虫の居所がイマイチなだけだからさ」

敏恵「基地での事はあたしが悪かったんだからそんな何回も謝らなくていいって。隊長として心配してくれてるんでしょ? ありがとう」ニコ

ハイデマリー「ぁ! ……違います、工藤さん」

敏恵「えっ?」

ハイデマリー「…隊長だから、とかではなく。工藤さんは私の……友人ですから」

敏恵(マリ…!)

 
ハイデマリー「大切にしなければと、考えていたので…」

敏恵「……へへ、なんか恥ずかしいな。そんなに大事にされちゃうと //」

敏恵「でも嬉しいよ、ありがとうマリ! 何かあったらあたしはマリに相談する。 ……友達だもんね?」ニッ

ハイデマリー「! …はい! //」

敏恵「でも今は本当に何でもないよ? ちょっと気持ちがいまいちなだけだから。反省しまっす!」ヘヘ


――ガザザッ


オクタヴィア『聞こえるマリーちゃん達? こちら“アツアツお菓子ちゃんカップル”』

ハルテ『ぁぅぅ…、結局その名前使うんですね……』

敏恵「?」

ハイデマリー「! …こちらシュナウファー大尉。聞こえています」サッ

オクタヴィア『そろそろ正子を過ぎるわ。こっちは今の所何もないけど、そっちはどう?』

ハイデマリー「はい。こちらもネウロイらしき飛行隊は捉えていません」

敏恵「例のカマキリ君も出てこないですよ?」

オクタヴィア『わかったわ。なら一度合流して、お夜食でも取りましょうか』

ハイデマリー「了解」

 
――――
――



オクタヴィア「皆大丈夫? 食べ辛ければ交代で下へ降りてもいいけど」

ハイデマリー「ぁ、…私とハルテ少尉は問題ないですけど――」チラ



敏恵「ハルテちゃん、もっと沢山ちょうだい? ドバっと」アーン

ハルテ「い、いいんですか?」

敏恵「平気へーき、ちょっとずつだと飲んだ気がしないんだよね」

ハルテ「…わかりました。ではいきますよ?」グイ

敏恵「ぁんっく……~んぐ…んぐ」ガブガブ



オクタヴィア「そういえば敏恵ちゃんは両手塞がってたわね…(なんだかちょっと良い絵だわぁ)」モヤモヤ

 
敏恵「~……っぷぇ。はぁ~おいしぃ…」ホッコリ

ハルテ「大尉さん、お口拭きますよ?」

敏恵「んん…~むんぐ……。ありがとうハルテちゃん」

ハルテ「いえ」ゴソ

ハルテ「…はい、携帯食もどうぞ?」ス

敏恵「あ、夜食はいいや」

ハルテ「え? 食べないんですか?」

敏恵「うん、お腹空いてないし」

ハルテ「…そうですか?」

 
敏恵「よかったらハルテちゃんがあたしの分も食べていいよ?」

ハルテ「(! 大尉さんが食事に無頓着なんて珍しい)……私はもう十分ですから、一応取っておきますね?」

敏恵「うん、ありがとー」


オクタヴィア「あぁ~、いいわねぇ♪ あたしも敏恵ちゃんを餌付けしたいわぁ」ブゥゥン

ハイデマリー「しょ、少佐それは……」ブゥゥン

敏恵「――…ふぅ~~っと! よぉし、ネウロイ来こーいっ!」ジャキンッ

ハルテ「ふふ」クス

オクタヴィア「あらあら、やる気満々ね敏恵ちゃん?」

敏恵「はい、なんだかうずうずしてきちゃって! …ごめんハルテちゃん、もう一回水もらえる?」

ハルテ「え? またですか?」

 
敏恵「うん、やっぱちょっと足りなかったみたい」

ハルテ「わかりました。えっと…ちょっと待ってくださいね?」ゴソゴソ

オクタヴィア「あ、敏恵ちゃん? 今度はあたしが飲ませてあげるわよぉ? なんなら口移しなんてどうかしら♪」ウフフ

ハイデマリー「デュッケ少佐…」

敏恵「さぁーネウロイ! 早く来なさーいっ! あたしの30ミリで――」ジャキーーン






――ヒュゥンッッ




ゴシャァッッ


敏恵「ぇぐぉっ…!??」ガク


ハルテ「!!?」ビクッ

ハイデマリー「!! 工藤さん!?」

 
敏恵「えっ…は…?? なに今の――」



敏恵「……て、えぇ!!?30ミリの砲身が…!?」ギョッ

オクタヴィア「落下物…!? 上からだわ、3人とも気を付けて!!」サッ

ハイデマリー「ッ…!」フィィィン

ハルテ「ぅ、上!?」フィィン


オクタヴィア「敏恵ちゃん、怪我してない!?」

敏恵「うぅ……右腕が上手く上がんない…っ! 変な風になったかも…――」ググ

敏恵(…ん?)


パラ… パララ…


敏恵「あれ、この破片…?」

 
敏恵(…ん?)


パラ… パララ…


敏恵「あれ、この破片…?」

オクタヴィア「――衝撃の勢いで肩をやられてるわね…。痛みは無い? 取り敢えず機砲は投棄しちゃいなさい」

敏恵「タヴィアさん、ネウロイ! ネウロイの種ですこれ!?」

オクタヴィア「ぇ?」

敏恵「あたしの銃に当たって死にましたけど、破片が…ほら!」

オクタヴィア「!! これは…――」

オクタヴィア「……大尉、少尉!! バウアーが今私達の上にいるわっ!」


ハルテ「えっ!? え、でも…??」

ハイデマリー「っ……どこにも飛行物体の反応がありません!」フィィイン

 
オクタヴィア「!? …そんな筈は――」ギロ フィィィン


オクタヴィア「!!」


オクタヴィア「危ないッ!! 2人ともシールドを張ってっ!」パァアッ

ハイデマリー「!」

ハルテ「!?」



ヒュゥゥンッ

ヒュゥゥ――



バリンッ バリィンッ



オクタヴィア「ぐっ…!!」

ハルテ「きゃっ!?」パァァ

ハイデマリー「! こ、これは…!?」

 
敏恵「やっぱり…上に何かいる! ……ネウロイ」ゴクリ…

オクタヴィア(っ……他の位置から弾道投射だとしてもマリーちゃんの探査範囲の中に居ない訳ないわ。それに接触したネウロイの種が粉々になるこの勢い、上に居る筈なら――)

オクタヴィア「…!! まさか、敵の位置は…!?」ハッ


ハイデマリー「――皆さん、一先ずここから離脱します! 一度落下物を避けてから高度を上げましょう!」

オクタヴィア「待って大尉! 敵は真上にいるわっ!!」

ハルテ「ぇ…?」

オクタヴィア「この種は恐らく“電離層の上から”撒かれている筈よ!」

ハイデマリー「!?」

オクタヴィア「だから短波長は届かないわ!! バウアーは外寄りの大気層を移動していたの!」

 
ハルテ「中間圏から外ですか…!? そ、そんな!」

ハイデマリー「ぐっ…、もしそうなら私達では迎撃のしようが…!」

オクタヴィア「いいえ、これは私達を狙った攻撃じゃないわ! 蒔いた種が壊れない高度まで必ず降りてくる筈……そこが仕留めるチャンスよ!」

敏恵(…ネウロイ。 やっぱりいる……ネウロイだ!!)

オクタヴィア「敏恵ちゃん平気? 貴方もシールドを――」チラ

敏恵「いる…あそこに、……視える…」フィィィン

オクタヴィア「…大尉? どうしたの?」

敏恵「きた……きた…、……ふふ…」ニッ

オクタヴィア「!??」


敏恵「~……あそこだぁ!!」バッ

オクタヴィア「痛っ!? …ちょ、ちょっと工藤大尉!!」

 


ハイデマリー「~……!(高度5万メートル付近から高速の反応が! 本当に…!?)」フィィィン

ハルテ「! …隊長さん!」

ハイデマリー「はいっ、ネウロイが下りて来てます! 減速してますが、かなりの落――」



ブゥゥウウウンッッ


敏恵「――…ふぁはっ……!! はぁっ……はっ…!!」

ハイデマリー「!?」


ビュゥゥゥウッ――



ハルテ「……ぇ?」

ハイデマリー(工藤さん…!?)

オクタヴィア「――工藤大尉、何してるの!? 戻りなさいッ!!」ブゥゥン

 
ハイデマリー「デュッケ少佐! あのっ、今の工藤さんは…!?」

オクタヴィア「あの子、独りで突っ込んだで行ったわ! あのままじゃ危険よ!!」

ハルテ「えっ!?」

オクタヴィア「真っ直ぐ敵に向かって、下手をすると衝突しかねないわ!!」

ハイデマリー「!?(ストライカーで上れる高度が1万幾つ。あのネウロイはもう――)」フィィン


ハイデマリー「(…! 3万まで落ちてる!?)っ……工藤さん!」ブゥゥン


ハルテ「あっ! 隊長さん!」

オクタヴィア「少尉ついて来て! シュナウファー大尉を援護してネウロイを止めるわ!!」

ハルテ「は、ははいっ!!」

 
――――
――



敏恵「……来い…、こいこいこい来い!」


――ガザッ


ハイデマリー『工藤さん応答してください! ネウロイは下りてきてますが落下速度が早いです! 不用意に向かって行――』

敏恵「ふっ…、はは!!」ビュゥウン

オクタヴィア『っ、スピードの飛ばし方が滅茶苦茶だわ。……落ち着いて工藤大尉、早く回避軌道をとりなさい! そのままだと衝突さ――』

敏恵「ネウロォイ!! あたしはここだぁ!」ダダダッ








ネウロイ・バウアー「………~」ゴゴォォ
 

 
ハルテ『危ない大尉さん! ぶつかります!』

ハイデマリー『く、工藤さん!! シールドを…ッ――』

敏恵「はっ…ふぅ……!!」ダダダダダッ






バウアー「ッ…!」ベギベキン


バウアー「~…」



ゴォォォオオオッ――





敏恵「――…ふはっ……はぁ、……来い!」ゾクゾクゾク



ォォオオオオッッ



敏恵「ふぅ…ッ!!」グィン




ズォ オ オオォォ ン …――
 

 

オクタヴィア「!? な、なんて子なの! あの高さで!?」

ハルテ「わ、私は見えないですけど…大尉さんの反応はまだあります! 避けられたのでしょうか…?」フィィィン

ハイデマリー(文字通りの紙一重! …昼間の時と似てる)

オクタヴィア「――て、感心してる場合じゃないわね…。 敵が工藤大尉に反応して止まったわ」

ハイデマリー「……行きましょう。あの高度なら届きます」

オクタヴィア「ええ、敏恵ちゃんをあのまま孤立させる訳にはいかないわ。けどこれ以上は戦闘限界を超えるから注意して!」








敏恵「――っふは」ブゥゥウン


敏恵「……そっか、やっぱりコアは上面の方だ」



バウアー「……~」シュゥゥ…
 

 
敏恵(30ミリがあったらこれで終わってたけど、まさか無抵抗で終わらないよね?)ジャキ

敏恵「…ほら、早くしなよ!」ダダン



バウアー「ッ…!!」ガギィ ガッ



敏恵「ねェ、ほらぁっ!」ダダダダダッ



バウアー「ッッ…、~~ー!!」ギラッ



敏恵「!」



ビビィィィイーー




敏恵「あは…!!」ブゥゥウン



バウアー「ー! ~ー!!」ビィィーム



敏恵「わは! …ふぅっ……!」ヒュン ヒュン



バウアー「ッ~……、ーー!! ー~ー!!」ビガァッッ



ビビビビビビーーーーッ



敏恵「はっ……っふは…!」ブゥゥウン ヒュッ ヒュン


敏恵「――ひゅ……っづぁあ!!」ダダダンッ ダダダダダッッ



バウアー「ッ!!? …ッ…ーッッ!!」ベギベギベギベギ
 

 
バウアー「…~……」シュゥゥ…




敏恵「――っはぁ、ふぅー…」ブゥゥン


敏恵「……へへ、結構硬いんだね?」ゾクゾク




バウアー「…………。……~~~」ブワァ


ゴォォオオオ――




敏恵「は?」




オオオォォオォォォ…




敏恵(…うそ、まさか逃げる気?)


敏恵「チッ……待てっッ!!!」ブゥゥンッ

 
――




バウアー「~…」ゴォォ






敏恵「ッ…」ブゥゥウン
 

 

バウアー「……」ゴォォォ




敏恵「~……ッぐ……っはぁ…(もうすぐで追いつ――)」


敏恵「!?」グンッ

 

バウアー「…………」ゴォォオ








敏恵(?? 上昇速度が落ちてる…!? 空気が薄くて推力が――)


敏恵「…くっ、ならこれも捨てる! これも……邪魔!!」ポイポイ



敏恵(今更逃がすかっ! もういい、……もう“これ”で刺す!!)スラァ


――


 


バウアー「……」ゴォォォ



ビュンッッ



バウアー「…?」



バウアー「…………」


バウアー「…~――」


敏恵「――ぁぁあああああっ゛っ!!!」ブゥゥウンッッ


バウアー「!!?」

 
敏恵「逃げるなァ!!」ズォオオオ


ズン゛ッッ


バウアー「ッ……!」

敏恵「ふあ゛……ッ…んぅぅぅううううぅう!!!」フィィィ

バウアー「――!!?」


敏恵「ぅぅうっ…、はぁああああーーっ!!!」ィィインッッ


バウアー「~ッ……!?」ビカ



バウアー「 」



バァァアアンッッ

 

 
――――
――



ハイデマリー「工藤さん、お独りで…!」ブゥゥン

ハルテ「い、今のは魔法力でしょうか? あんなネウロイの倒し方、始めて見ました!」

ハイデマリー(ヘリン・ディア・ナハト……あれが小園大佐の仰っていた、工藤さんの戦闘…?)

オクタヴィア「……」



ブゥゥゥン…


敏恵「――はぁ…ふぅ~ー……、はぁ…」フヨフヨ

オクタヴィア「……やったわね大尉、お疲れ様。けど結果はどうあれ貴方のとった行動は褒められたものじゃないわよ」

オクタヴィア「仮に性能に差があったとしても、そのストライカーだってレシプロ機なら高高度は殆ど行動限界に近い筈。それなのに銃火器を放り出して……無茶な独断専行をとった事は反省しなさい」

敏恵「……。…つぎ」ボソ

ハイデマリー(! …工藤さん?)

 
オクタヴィア「…敏恵ちゃん、悪いけどあたし怒ってるの。万一命を落とす様な――」

ハイデマリー「ぁ、待ってください少佐! 大尉の様子が何か……おかしいです」

オクタヴィア「えっ?」


ハルテ「…あの、大尉さん? 大丈夫ですか?」サス

敏恵「!」ピク

ハルテ「どこかお怪我を――」

敏恵「ぅわッッ!?」バッ

ハルテ「きゃっ!!」

オクタヴィア「!?」

ハイデマリー「な…!? く、工藤さんッ!」

敏恵「はぁ…ふ……っ! …………、…ぁ…あれ…??」キョトン

 
オクタヴィア「ちょっ…少尉! 大丈夫!?」

ハルテ「は、はい。 ビックリしました…」ギュ

敏恵「……ハルテちゃん、…タヴィアさん?」

ハイデマリー「く…工藤さん、落ち着いてください!」オロオロ

敏恵「マリ…? …………ぁ、そっか。あたし…――」


ハイデマリー「…? あの、大丈夫ですか?」ス

敏恵「? あ、うん。ごめん、ちょっと夢中になっちゃってたみたい」エヘ

ハイデマリー「……?」

敏恵「えっと、さっきのが種蒔きネウロイでいいんだよね? とりあえずはこれで一件落着?」

ハイデマリー「…ぃ、いえ。まだ全てではありませんが――」

ハイデマリー「……一先ず基地に戻りましょう、工藤さん」






――――こうしてベルギガを襲った一連の怪事件は、原因になったネウロイを倒した事で無事収束へと向かって行った。

なんだか色々と慌ただしかった1日で、帰った後はあたしも疲れてぐったりだった気がする。変な風にしちゃった右肩も暫く痛かったし…。


まあ、でも本当の……あたしがベルギガに来てからの本当の痛みが、このもっと後に待っていたんだよね…。

 

 

第七話:炊飯 に続く

 

 
[解説メモ]


・敏恵の戦闘技術

工藤敏恵が現在の重装備による火力戦術に習熟したのは遣欧から帰国後である。
それ以前は戦歴もなく半端な爆撃降下と基礎をかじった程度のひよっこで、帰国後に小園の立ち上げた飛行隊に入りテストウィッチの任務と並行して訓練と教育を受けていた。

接近戦術においては、昔観た“扶桑海ノ閃光”の影響で扶桑刀の所持に変な愛着がある様子…。
主演(というか本人役)の穴拭智子の様に華麗な航空剣舞になんとなく憧れているが、剣術経験はこれっぽっちも無い。


・敏恵の扶桑刀戦術

上記の通り、敏恵は正しい刀の振るい方をろくに知らない故にその扱いは我流。
内容としては「逆手に構えた太刀をストライカーの突進力でネウロイに突き刺し、そこから自分の魔法力を叩き込んで破壊する」……これだけである。やっている事は同国陸軍の角丸美佐中尉の“金剛力”に近い。
と言うより、もはや剣技ではない。豊富な魔法力と念動系魔法の才能に頼った力技である。


・恩賜の扶桑刀

工藤敏恵の持つ扶桑刀。朴木の鞘には“武功抜群”と記されている。
5年前の遣欧から帰国した際「齢僅かながら絶望的戦地に命を賭し、皇国外交上の軍事的貢献を果たした」として(カールスラントは陥落してしまったのだが)皇家から賜った物。
中世前期の戦巫女“飯綱使い”由来の一振りとして当時信濃国の某社殿内に奉納されていた物が廻りまわって、流れ流れて帝に奉られたとされている。
茎(なかご)には“飯綱権現(いづなごんげん)”と銘打たれており、飯綱使いが己の使役魔と通力を宿したという謂れだが真偽は不明。
由緒故に霊剣ならぬ霊刀に部類されているが特に神的な力などは一切無い。しかし魔法力の伝わりは非常に良く、奇しくも敏恵との相性は抜群。

ちなみに白鞘とは刀身を保管する為の物で、侠客よろしくそのままの刀を戦闘使用する事はありえない。
通常ならば割れない鞘、鍔、すっぽ抜けない柄を最低限“拵(こしらえ)”るべきなのだが、敏恵は適当に補強して白鞘のままで使っている…。
見る人が見れば絶対に怒られるであろう。

 
[解説メモ]


・ネウロイ “バウアー”

ベルギガに現れた特異母船型ネウロイで、中央都市連続怪事件の真因。サイズは中型程度

魔導短波を反射する電離層上層(熱圏以上)を移動することができ、ウィッチのレーダー探査魔法を掻い潜っていた。
自ら直接侵略活動ををする事は少なく、小型のネウロイを地上に投下する。その際、放ったネウロイが落下のエネルギーで自壊しない高度まで降りてくる。


種(Samen von Neuroi)
ネウロイ・バウアーから放たれる地上型ネウロイ。母船型にとっての子機、又は分離個体に位置する。

バウアーによって撒かれる時点では手のひら大のサイズで脆弱だが、地上の鉱物や地中の土類金属を摂取することで急激に成長し、最終的には3メートル以上程の怪物になる。
コアを持つ親機とは違い自己再生(金属摂取による再構築は可能)やビーム能力を持たず、ネウロイとして相対的には劣弱。纏う瘴気も薄く、魔法力の無い通常兵器でもある程度通用してしまう。
しかし特性上「種」として撒かれる数が多いため、一般人には勿論、大半の成長を許してしまうと軍隊にとっても脅威で非常に厄介な存在。
軍の情報ではバウアーとセットで見られているが、本体と付属体の関係ではなくそれぞれ独立した個体なので親機のコアを破壊しても種のネウロイは消滅しない。

すみませんが今後も更新は不定期です。sswikiも随時編集中
本編はこれで大体半分くらい

 

【第七話 炊飯】



サン・トロン基地

とある一室


敏恵「…………」ゴローン


敏恵「……ふわ…ぁ~~。 …退屈」

敏恵(営倉入りしてから今何日経ったんだっけなぁ…? そろそろ一週間過ぎたんじゃないの~?)


カツ…カツ カツ――


敏恵「! おっとマズい…!」ガバッ


ガチャ


ルーツィア「…起きてるか?」

敏恵「は、はーい! 勿論です!」ササ

 
ルーツィア「……」チラ


敏恵「――て…なんだ、ルーツィアさんかぁ。もうその義足ばっちりですね、なんかしっかりした足音だったからてっきり」


ルーツィア「……“なんだ”じゃないだろ。ベッドで横になってたの丸わかりだからな?」

敏恵「うっ、ごめんなさぁい…。此処やる事ないし、備え付けてあるからつい」

ルーツィア「ここは元々飛行場の施設だから。…もし本物の懲罰房があったら臭くて薄いマットに粗末な便所付きだ」スタスタ

敏恵「それもう牢屋じゃないですか…」

ルーツィア「休むだけなら不自由しない。便器は灰皿になるし、3日もすれば出られる」

敏恵(なんか詳しい感じだけど、やっぱり体験談なんだろうか…?)

ルーツィア「とにかくさ、一応懲罰くらってんだから反省した様子でいないと後が面倒だぞ。……ほら、食事」ズイ

敏恵「お、ありがとうございます♪」

 
ルーツィア「ん。…じゃあな」スタスタ

敏恵「――あ! ルーツィアさん!」

ルーツィア「…? なに、先トイレ?」クル

敏恵「いえ、あのー…。この前のネウロイがばら撒いた地上型の掃討ってまだ…?」

ルーツィア「…ああ、リエージュはだいたい終わった。シャルルロワも済んでるけど、あそこはまだ警戒が続いてるってよ」

ルーツィア「ただ……バウアーだったか? あのネウロイがお前達とやり合う前に南下もしてたらしくて、ガリア中部の山岳地もゴタついてるってよ」

敏恵「へぇー」

ルーツィア「まぁ私らには関係ないけどな――」クル

ルーツィア「…大尉、ここから出たらエステルの自慢話が待ってるから覚悟しとけよ? 作戦に立会えなかった鬱憤で随分と“後始末”したからな」

敏恵「あはは…了解でぇーす」


ルーツィア「……」スタスタ


パタン
 

 

敏恵「……」


敏恵「そっか~…。じゃあこれで、事件は解決かぁ」カタ

敏恵(今回のこと園さんにバレるのかなぁ? 一応本丸のネウロイは倒したけど、そこからタヴィアさんに怒られてあたしはずっと営倉入りだし…)ガタッ

敏恵「…………というか、懲罰終わったらどうしよう。あれ以来会ってないしなぁ…」ヨッコイショ


敏恵「……」イタダキマース


敏恵(このご飯も、多分ハルテちゃんが作ってくれたんだよね…?)

敏恵「……」カチャカチャ



敏恵(なんか、心苦しい…)モグ
 

 

廊下



ルーツィア「……」スタスタ





~~~~~~~~~~~~~~~~

ルーツィア『は…? 大尉がハルテを??』

オクタヴィア『戦闘後で興奮…というか、少し混乱していたみたいなのよね。近寄ったお菓子ちゃんに驚いて、振り払った拍子に握っていた刀が彼女の腕を浅く切ってしまったの』

ルーツィア『……』

オクタヴィア『故意ではなかったけど、あの子の不注意で味方を負傷させたわ』

ルーツィア『フレンドリーファイア〈同士討ち〉か、…それで重懲罰に?』

オクタヴィア『軍法会議は無しにしても、物事に是非がある以上戒める事は必須よ。マリーちゃんにも納得してもらってるわ』

ルーツィア『……』

オクタヴィア『…勘違いしないでルーちゃん。あたしだって敏恵ちゃんは好きよ?』

ルーツィア『聞いてませんよ』

オクタヴィア『でもね、これはあたしの役目なの。なあなあで後悔しないためにも誰かがやらなきゃいけない事なのよ』

 
ルーツィア『……。それ、ツィーラー中尉の――』

オクタヴィア『!』


オクタヴィア『ルーちゃん、エルヴィーラはもう…少佐よ』

ルーツィア『ん……いや、すみません。この話は止めますか』

オクタヴィア『べつにいいわよ貴方とあたしだけなら。じゃないと話してないわ』

ルーツィア『……』


オクタヴィア『……なんだか敏恵ちゃんを見ているとね? 彼女の事が時々重なるのよ』

ルーツィア『? …似てたんですか?』

オクタヴィア『いいえ。彼女はもっと目元がシャープだったし、背もあたしより小さくて胸もお尻も程良かったわ』

ルーツィア『………ああ、そう』

オクタヴィア『ただちょっと、心配なのよ。なんとなく……無垢に見えるあの子がね』

ルーツィア『…?』

オクタヴィア『……』

ルーツィア『それって――……それで何か勘繰ってたんすか?』

オクタヴィア『うふふ、文字通り勘よ。だからもうお終い、程々にしておきましょ』

~~~~~~~~~~~~~~~~




ルーツィア(何か裏があるってのか、あいつに…?)


ルーツィア「……いや、アレはどう見ても天然――」


「せんぱーい!」


ルーツィア「ん…?」

 

タッタッタッ


エステル「先輩、見てください先輩!!」


ルーツィア「…なんだ?」

エステル「新聞ですよ新聞!」バザッ

ルーツィア「…? あ、昨日の夕刊お前が持ってたのかよ。ったく…」

エステル「そうじゃなくて!? ほらここ、ここです!」

ルーツィア「あー? ……ん、これお前じゃん」

エステル「んもぉ、リアクション薄いですって!? リエージュの陸上型ネウロイ大掃討のナイトウィッチ、エステル・バルシュミーデの初独占記事ですよっ!」

ルーツィア(枠小せえ……しかも下段紙面)


エステル「ふふーん! 実はこの前の戦闘後にインタビュー受けちゃいまして~、私もついに名が売れちゃう感じですかねぇ♪」

ルーツィア「(戦地にまで来たのか、面倒だなあのブン屋)…つうかこれシュナウファーに話通したのか? バウアーと作戦に関する情報秘匿は上に厳命されてんだろ」

エステル「!? そ、それはー……勿論。ちゃんと許可取りましたよぉ…?」

ルーツィア「おいコラ、こっち見ろエステル」

 
エステル「だ、だ大丈夫ですって! その辺は聞かれても誤魔化しましたから…!」

ルーツィア「(やっぱ勝手に受けたんだな。それで新聞隠してたのか)……まあ、確かにこの内容って事は向こうも結局諦めたんだな」バサ

エステル「んん!? ちょっと先輩、それ私の記事が妥協案ってことですか?」

ルーツィア「…んなこと無い。やったなエステル」ポン

エステル「むぅ、なんか腑に落ちないんですけど」ムス

ルーツィア「何だ、喜んでやってるだろ?」

エステル「どこがですか!? ……ふんっ、今に見ててください? この調子でどんどん上に行って、先輩に絶対いい暮らしさせてあげますから!」

ルーツィア「…!」

エステル「引退後も安全な生活を約束しますよ、なんならメイドも付けてあげますから!」

ルーツィア(こいつと同じで、少佐も色々と引き摺ってんだろな…――)

ルーツィア「(まあ、人の事なんか言えねぇか)……お節介は間に合ってる」スタスタ

エステル「あっ、先輩どこ行くんですか? 新聞返してください!」


ルーツィア「隊長に見せに行く。…その後でじっくり読ませてもらうから」


エステル「ちょ、それはっ…!! 待って先輩ー!?」

 

執務室


小園『……成る程』

ハイデマリー「……」


小園『…私の部下が酷く迷惑をかけてしまった。大変申し訳ないシュナウファー大尉』

ハイデマリー「ぃぇ…」

小園『負傷した隊員の容体は?』

ハイデマリー「そこまで深刻な怪我ではありません。少し出血はしましたが、こちらの医療処置で既に完治しています」

小園『そうですか、それは良かった』

ハイデマリー「それで小園大佐、あの……工藤大尉に何が起きたのでしょうか?」

小園『ふむ…。と言うと?』

ハイデマリー「…とても“唯の不注意で起きた事”ではないと思いますので。作戦中の大尉も普段と比べて様子が変だと感じましたし」

 
小園『んー……そうだな。それはあいつの癖だ』

ハイデマリー「癖…?」

小園『どう説明したものかな、…例えば人によっては車の運転や賭博行為に興じて性格が変わるなんて話は君も聞くだろう?』

ハイデマリー「は、はあ…?」

小園『簡単に言えばそれと同類だ。工藤はとりわけネウロイとの戦闘で興奮し過ぎるきらいがある』

小園『君の話では、同日の昼間にもストライカーを履かずに地上型ネウロイと討ち合ったという話だが、その時の緊張も引き摺り混乱してしまったのだろうな』

ハイデマリー「……そうですか」

小園『私がこれまで彼奴を半ば囲っていたのも、実を言えば“チーム”という環境下で問題になるのを憂慮した故だ』

小園『長いことテストウィッチの身分に置いて指導を尽くしてはみたが……しかしまぁ、今ひとつだったか』


ハイデマリー「……(前にエステル少尉から聞いた噂話、危険なナイトヒッターというのは――)」

小園『…ん? ああ申し訳ない大尉、結果的に貴君らを試しに使う真似になった事は謝罪したい』

 
ハイデマリー「ぁ、いえ! それは……そういう旨は理解できますし、工藤大尉の為でもあると…初めにお聞きしましたから」

小園『そうですか、いや御理解頂いて有難い。いかに勇猛な奴とてそれ限りでは大成に届くまいだろうから――』


小園『…もし君の様な者がパートナーに成ってくれるなら、安心できる』

ハイデマリー「……」


小園『ははっ! 私が飛べれば良いのだが、こんな“出涸らし”ではもう足すら引っ張れない。本当に参るよ』

ハイデマリー「ぃ、いえ。そんな…」

小園『ふぅ……とにかく連絡が貰えてこちらも助かった。そちらの件に関してはまだ国内に情報が来ていないものでね』

小園『工藤の扱いでは今後とも苦労をかけるかもしれないが、どうか引き続きお願いしたい』

ハイデマリー「……はい、了解しました」

小園『よろしく頼む。では失礼』

ハイデマリー「はい。失礼します」


カチャン…




ハイデマリー「(やっぱり、私が止めるべきだったんだ)…これで二度目」ボソ


ハイデマリー「っ…――」

ハイデマリー「……。……」チラ


ハイデマリー(今日で工藤さんの謹慎は終わる。……このまま、私に隊長なんて――)ギュ

 
 
―翌日―




オクタヴィア「はい、これで懲罰はお終いよ」

敏恵「はぁ~~、ようやくトイレ以外の所にも行ける」


オクタヴィア「敏恵ちゃん。もし次があったらこの程度で済ませられないから、十分注意して頂戴?」

敏恵「あ、はい。すみませんでした…」

オクタヴィア「んふ♪ なんなら仕上げに“気持ち良い折檻(♀)”なんて――」

敏恵「ひぇ…!? ///」

ルーツィア「仕上げなくていい」グイ

エステル「職権乱用〈パワハラ〉で上にチクりますよ…?」ジト

オクタヴィア「あら、やぁね? 冗談よ~」ウフフ

 
敏恵「うへぇ……、アブノーマルが初体験なんて絶対いや…。……ぁ、初めてじゃなくてもやだ…」

エステル「大尉も、相変わらずすっ呆けてるわね」ハァ

ルーツィア「安心したか?」

エステル「な、何でですか!? べつに心配してた訳でもないですしっ!//」

ルーツィア「ふ……」シュボ

敏恵「……エステルちゃん」ニギ

エステル「は?」

敏恵「心配かけてごめんね?」ジーン

エステル「ちょっ…!? だから、心配してないっ!!///」

ルーツィア「……ふぅー…」プカ

 
敏恵「ずっとタヴィアさんとルーツィアさんしか来てくれなかったから、嫌われちゃったのかと思ったよ~」

エステル「はい? いやいや、なんでそうなんのよ」

ルーツィア「…エステルは地上ネウロイの片付けに時間使ってたんだよ。前に言っただろ?」

エステル「そうですよ、まったく。 隊長はシャルルロワにまで駆り出されて、ハルテちゃんは魔法治療を受けに通院してたんですから。様子見に来る時間も無かっただけです」

敏恵「えっ、ハルテちゃんが…!?」ドキッ


ルーツィア「おい、エステル」チッ

エステル「あ…! いや通院って言っても数日だけで、とっくに治ってますから!」

敏恵「……」

ルーツィア「…ふぅ~……。つうか、ここで話してないで行きましょうか。飯」

オクタヴィア「そうね、そうしましょう。お菓子ちゃんも待ってるわ」

敏恵「ぇ…?」

分割すみません、続きは連休中にまた

 
食堂


敏恵「ぅ~、気まずい…」グイー

ルーツィア「……あのさ、義足〈あし〉悪くするから止めてくれ」

敏恵「だって、エステルちゃんの後ろだとハミ出ちゃうんです…」コソコソ

エステル「ちょっと、誰がチビだって? あ?」

オクタヴィア「ならあたしにくっ付いてもいいのよ♪」

敏恵「……それは遠慮します」

オクタヴィア「あら、惜しいわぁ」

エステル「ていうか、べつに怒ってないですってば。ほら、大丈夫だから行きますよ!」

敏恵「ぅぅ…」コソコソ

ルーツィア「チッ、歩きにくい――」ヨタヨタ

 
ハルテ「…あ、皆さん! お食事出来てますよ」

オクタヴィア「ご苦労様お菓子ちゃん。マリーちゃんはまだ本部だから後になるわ」

ハルテ「はい、わかりました。……それで大尉さんは?」

ルーツィア「こっち」

ハルテ「?」


敏恵「……」モゾ

エステル「なーもう! デカい胸してるくせに肝が小さ過ぎ!! いつまで隠れてんですか!?」グイー

敏恵「ぅぐ…っ~……!」ギューー

ルーツィア「いっ゛!? おい、マジでコケるから止めろ!」



ハルテ「…? あの、何をしてるんですか?」ポカーン

オクタヴィア「うふふ。怪我させちゃった事、大尉“も”気にしてるのよ」ニコ

ハルテ「!」

 
敏恵「やっぱりあたし、一度部屋に――」モゾ

ハルテ「大尉さん?」ヒョコ

敏恵「!!」ビク

ハルテ「…お帰りなさい、また一緒に頑張りましょう」ニコ

敏恵「……! ハルテちゃん…」

ハルテ「お腹空いてませんか? よろしければ、大尉さんに食べて頂きたいものがあるので……一緒に食べましょう?」

敏恵「…………ぅん。うん゛…!」ホロリ


エステル「ほら、だから余計な心配だって言ったじゃない」ハァ

 
――――
――



敏恵「はー……」ポケー

エステル「ちょっと、今度はどうしたんですか? 抜け殻みたいになって」

敏恵「ぇ? あ、あはは……なんか安心したら呆けてきちゃって」

エステル「なーに言ってんですか。それじゃ普段は呆けてない事になりますよ?」

ルーツィア「……ふっ、今の上手いな」

敏恵「えぇ~、ひどい。私が阿保だって言うの?」

ルーツィア「ん、意外に察しがいい」

エステル「――てまあ、そんな事はどうでもいいや。それより大尉、私が貴方のいない間でどれだけの戦果を挙げたと思いますかぁ?」ニマ

敏恵「…? 何の話?」

エステル「んっふふ~ん! 実はですね、なんと――」



ハルテ「皆さんごめんなさい、お待たせしましたー!」ゴロゴロ

敏恵「あっ! ご飯きた!」

エステル「てちょっと!? 聞きなさいよ!!」

>>499訂正

『――まだ本部だから後になるわ』→『――予定通り向こうで済ますらしいわ』

 
オクタヴィア「お菓子ちゃん、ワゴンで大丈夫?」

ルーツィア「今更だけど手伝う?」

ハルテ「いえ、平気ですから。折角のなので自分でお出ししたいです」

敏恵「…なになに? どんな食事が出てくるの?」

ハルテ「えっと…大尉さん。その、上手にできたかどうか分かりませんが……これ――」スス


コトッ


敏恵「!!」


敏恵「こ、これって…!」ジー



ホカホカ



敏恵「……お米、白飯ーーッ!?」

ハルテ「はい。……一応」モジ
 

 
敏恵「ハルテちゃん炊いてくれたの!?」

ハルテ「はい。えっと……扶桑のレシピどころかお米も“ミルヒライス”くらいでしか使った経験がないので、自信は無いんですけど――」

ハルテ「私のせいで謹慎されてしまった大尉さんに、少しでも喜んでいただけないかと思いまして…」モジ

敏恵「……」

ハルテ「……ぁ、あの…あまり美味しくなかったら――」

敏恵「ハルテちゃん」

ハルテ「ぇ…は、はい?」

敏恵「最高!!」ダキッ

ハルテ「きゃ!?//」

敏恵「本当、なんて良い子なんだろう! 大好き!!」ギュー

ハルテ「よ、喜んでもらえてよかったです…///」



エステル「あーあ、ホント現金っていうかもう完全に餌付けですよね?」

ルーツィア「ふぅ~ー……。まあ、ハルテがいい奴なのは当たってるけどな」プカ~

 

格納庫



敏恵「ん~……」モヤモヤ


整備兵「……?」チラ


敏恵「…んー」


整備兵(えーっと、援戦武官のウィッチ大尉がこちらをじっと見ている…。いったいなんだ?)カチャカチャ

敏恵「…………」

整備兵「……」チラ

敏恵「ぅむむ~~…」ウデクミ


タユユンッ


整備兵「(…!! お、落ち着かないっ……目の毒だ ///)ぇぇ…あの、大尉殿?」

敏恵「ん?」

整備兵「ぃ、いかがされましたか?」

 
敏恵「……」

整備兵「あ、もしかしてこっちの装備をご覧になっていましたか? これは予備の扶桑五式で、壊れた十八試30ミリ機銃は御国にお返しされましたよ」

敏恵「…うん。いや、あのさ?」

整備兵「? は、はい…?」

敏恵「整備兵さんもやっぱりカールスラント人だよね?」

整備兵「え? はい、そうでありますが」

敏恵「……ご飯、炊いたことある?」

整備兵「は?」


ブブーーーーッ


敏恵「!」


『管制連絡、シュナウファー大尉帰投。繰り返す、ウィッチ帰投! ハンガー内の人員は安全注意』


敏恵「……マリだ!」

 
――



ガシャン


ハイデマリー「ふぅ……」シュルル


敏恵「マリー!」トタタ

ハイデマリー「? …工藤さん!」

敏恵「おかえり! というか、久しぶり!」

ハイデマリー「あ、はい。……えっと、私が言っていいのかわかりませんが、その――」オド

ハイデマリー「…謹慎お疲れ様でした。おかえりなさい」

敏恵「なはは…、ただいまぁ。ごめんね、面倒かけちゃって」

ハイデマリー「いえ、そんな(…よかった、いつもの工藤さんみたい)」

 
敏恵「……それでさ、あたしお願いがあってマリが帰って来るの待ってたんだけど」

ハイデマリー「?」





執務室


小園『――…は?』

敏恵「お米です、お米! あたしの実家に連絡して、新米の余りを送ってくれるように言ってください!」

小園『いや、知らん。そんな事より工藤、十八試三号が酷い状態で先日送られてきたぞ? 貴様どういう使い方を――』

敏恵「無視しないでーー!! お願い園さーんっ!」ムガー

ハイデマリー「!?」ビクッ

 
小園『っ……。わ、わかったわかった。私の方で受け取ってから、こっちで速達させる。それで文句無いな?』

敏恵「はい! ありがとう園さん、それじゃ――」

小園『ておい、待て工藤!』

敏恵「…なんですか? とりあえず、もうお願いは無いですけど」

小園『阿呆、上司を小間使って勝手に切ろうとするな。丁度私もお前に言っておきたい事がある』

敏恵「はあ…? なんですか?」

小園『……。…いや』

敏恵「?」

小園『その前に、工藤。今お前独りか?』

敏恵「いいえ、マリが隣にいますよ。通信借りました」チラ

ハイデマリー「?」

 
小園『“マリ”? シュナウファー大尉か?』

敏恵「あ、そうそう」

小園『……ふむ、そうか。わかった』

敏恵「何がですか?」

小園『工藤、お前先日の一件で諸刃を抜いたらしいな?』

敏恵「!」ギク

小園『そっちでネウロイと打ち合ったのは何度だ? 魔法はどれだけ使った?』

敏恵「あの園さんっ、それは――」アタフタ

小園『余計な事は言うな、いたち。質問にのみ答えろ』

敏恵「……結構、戦ってますよ。夜間視も、哨戒で偶に使ってます」

小園『……』

敏恵「……」

 
小園『成る程、いくらか訓練の成果はある様だ。ならばいい』

小園『だがもう少し自分を律しろ。チーム戦術を学べ、その為の今だ……わかるな?』

敏恵「……はーい」

小園『よし。米は最速で届けてやる、ついでに醤油と甘味もな。そろそろ恋しいだろう?』

敏恵「! わ、やった♪」

小園『発注を受けている弾薬はもう暫くかかると隣の隊長に伝えておけ。十八試は暫く返せんから五式で代用しろ』

敏恵『…あ、園さん? 三号の照準、少し変でしたよ? 銃身の精度甘いかも」

小園『ん、わかった伝えておく。…ではな、しっかりやれ』

敏恵「りょうかーい」


プツ……


敏恵「マリ、園さんが弾薬の支給もう少しかかるって」カチャン

ハイデマリー「そうですか。わかりました」

 
敏恵「よし、取り敢えず最初の問題は解決したね」

ハイデマリー「……あの、工藤さん? お米でしたら、確かまだここに十分有ったような…」

敏恵「いや、うん。確かに同じ短粒米っぽかったんだけど、一応ね」

ハイデマリー「??」

敏恵「えーっと、実はお昼にハルテちゃんが白飯を炊いてくれたんだ」

ハイデマリー「あ、そうなんですか?」

敏恵「うん、あたしの為にって。すごく嬉しかったよ」

ハイデマリー「……そうですか。よかったですね」ニコ

敏恵「…でもね、そのぉ……う~ん――」

ハイデマリー「?」

敏恵「ここだけの話、ちょっと思ってたのと違ったんだよね…」

ハイデマリー「違う?」

 
敏恵「いや! 勿論美味しかったんだけどさ? なんていうか、アレは多分カレーライスとかとろろ飯とか……混ぜご飯向きだと思う」ムムム

敏恵「そう…真の白飯は添え物なんかじゃなくて、主役っ! 炊き立てはそれだけで2膳はいけるし、塩むすびも最高!!」キリッ

ハイデマリー「はあ…?」ポカーン

敏恵「だからあたしが今日のお礼に御馳走する! 皆に本当の白飯の美味しさを知ってもらうために!」グッ

ハイデマリー「そ、そうですか…」

敏恵「あっ! 誤解しないでね!? そのっ…ハルテちゃんの作ってくれたご飯が不味かったとか、そういう事じゃ全然ないから!」

ハイデマリー「え? あ、はい。まあ…」

敏恵「えぇと……お米の手配は終わったから~――」


敏恵「よし、それじゃあ次! 行こうマリ」ニギ

ハイデマリー「!? あ、あの……えっ??」ヨロ

 
食堂


敏恵「よしよし、ハルテちゃんは哨戒でいないね。今のうちに台所借りよう」

ハイデマリー「……あの工藤さん、いったい何をするつもりなんですか?」

敏恵「うん、ちょっと試したい事があって――」ガパ

敏恵「昼間のご飯、水道水で炊いたんじゃないかなーと思ってさ?」キョロキョロ

ハイデマリー「?」

敏恵「もしかしたら硬水だと炊き上がりも硬くなるんじゃないかと思うの。……あ、これかな米櫃?」

ハイデマリー「…なるほど」

敏恵「~~ぃしょっと! 勘なんだけどね。やった事ないし」

 
ハイデマリー「ではこれから硬水で作ってみるんですか?」

敏恵「んーん。炊飯した物は自分で片付けるから、どうせならあたし好みの方を試してみる」ゴソゴソ

ハイデマリー「工藤さんの?」

敏恵「そ! 出来ればだけど、ふっくらもちもちで――」ゴト


敏恵「もぐもぐ甘~いご飯!」



――――
――




敏恵「よぉーし、先ずは研ぐよ!」キリ

ハイデマリー「はい」


敏恵「一応ここも軟水でね、勿体ないけど」ザバー

ハイデマリー「……」

敏恵「で、手早くやさしめに研ぐ」シャコシャコ

ハイデマリー「……」

敏恵「2~3回繰り返して、水がそこそこ透明になれば十分。いつまでもやってるとお米が糠臭くなっちゃうから」

ハイデマリー「…………」


敏恵「そしてお米に吸わせる水を淹れる。この量はかなり重要だから慎重にぃ~」トプトプ

ハイデマリー(そういえば、私はどうしてここに立っているんだろう…?)モヤ

 
敏恵「そしたら炊く前に、このまま少し置くっと」フキフキ

ハイデマリー「あの、工藤さん?」

敏恵「ん? なに?」

ハイデマリー「私も何かその、お手伝いしましょうか?」

敏恵「あ、じゃあ薪を一緒に――…ってここガスコンロか」

敏恵「ん~~、後は火加減いじるくらいだから……。平気かな、ありがとう!」

ハイデマリー「そ、そうですか…」

敏恵「マリは味見してくれれば大丈夫だから、そこで見てて!」

ハイデマリー「(あ、そういう事で付き添ってるんですね)……はい、わかりました」

 

―20分後―


敏恵「はじめちょろちょろなかぱっぱ~♪」グツグツ


敏恵「――…ん、そろそろ火を落とそう」カチカチ

ハイデマリー「残りは待つだけですか?」

敏恵「ううん、蒸らすのはまだ。弱火のまま後数十分くらいかな」

敏恵「でもやり過ぎると焦げ付いちゃうから、目は離せないんだよねぇ…」ジー

ハイデマリー「……? ですが工藤さん、蓋をしたままで中の様子が分かるんですか?」

敏恵「慣れてるから一応はねー。蒸気の出方でなんとなく」

ハイデマリー「へぇ…! 凄いんですね?」

 
敏恵「実家では小さい時からやらされてたし、園さんは下手だから、面倒だけどあたしの仕事だったんだ」ジー

ハイデマリー「そうだったんですか」

敏恵「うん」

ハイデマリー「……」

敏恵「……」ジー


グツ… グツグツ…


ハイデマリー「……」

敏恵「~♪」



ハイデマリー「……」



~~~~~~~~~~~~~~~~

敏恵『っ…大丈夫だってばッ!!』

ハイデマリー『!?』ビクッ

~~~~~~~~~~~~~~~~



ハイデマリー「ッ…」ギュ

 

敏恵「~~♪」

ハイデマリー「あの、…工藤さんっ」


敏恵「~ん、何?」チラ

ハイデマリー「……バウアー討伐作戦の、ことですが…」

敏恵「うん」

ハイデマリー「……すみませんでした」

敏恵「……。うん?」ポケ

ハイデマリー「私の責任です…」

敏恵「えーっと?? ごめんマリ、いきなり何の話?」

 
ハイデマリー「私の判断ミスでトラブルを生んでしまって、……工藤さんとハルテ少尉にも危険な目に」

敏恵「えっ」

ハイデマリー「私がきちんと止めるべきでした。ブリーフィングでデュッケ少佐が提案した配置の方が正しかったんです…」

敏恵「……」


ハイデマリー「……私が、もっとしっかりと考えていれば――」

敏恵「いやいや、ちょっと待った」グイ

ハイデマリー「!」

 
敏恵「あのさ、多分、あー……あれでしょ? あたしがハルテちゃん怪我させちゃった事を言ってるんでしょ?」

ハイデマリー「……」

敏恵「よく分かんないけど、それでなんでマリが思い詰めちゃうの? 全然関係ないのに、あたしのミスじゃん」

ハイデマリー「ぃぇ、…違うんです」

敏恵「え、違うの??」

ハイデマリー「……」

敏恵「…? マリ、どうしたの?」

 
ハイデマリー「私は――…っ、私が隊長役として力不足なんです…!」

敏恵「へ…?(??)」

ハイデマリー「だから、今回も…っ」


敏恵「……ぁゃ、いやいやいや! 話が見えないって!? ちょっとこっち見て、マリ!」ガシッ

ハイデマリー「ぁ…!」ピク


敏恵「あのさ? あたしはマリが失敗してるなんて思った事、まだ一度も無いよ」

ハイデマリー「でも、私は…」

敏恵(むむ。慎ましい様で意外と強情だな、マリ)グヌヌ

ハイデマリー「っ…」

敏恵「“私は”…何? もうこの際だから聞かせて。なんで――」ジッ

ハイデマリー「ぅ……わたしにっ…は…」ウル

敏恵「なんでそんな、泣きそうな顔をするの?」

 
――




ハイデマリー「……」ショボーン



――スタスタスタ


敏恵「ふぃ~、取り敢えず白飯の方はもう放置で大丈夫っと!」ドカッ

敏恵「さてと。それじゃあ――」キュポ


トクトクトク…


敏恵「はい、マリ。水飲もう?」コト

ハイデマリー「有難うございます…」

敏恵「あたし好みの硬度だけどね。でも、優しくて飲みやすいよ」

 
ハイデマリー「ん…、ん……」ゴク


敏恵「どう? 落ち着いた?」

ハイデマリー「……はぃ」

敏恵「もービックリしたよ? 本当に涙出ちゃうんだから」

ハイデマリー「す、すみませんでした… //」

敏恵「……それでさっきの続き、聞いてもいいのかな? なんでマリはそんなに自分の責任だと思うの?」

ハイデマリー「……。それは、私の能力が及んでいないからです…」

敏恵「えー、そうかな?」

ハイデマリー「そうです。…この基地に来る前も、私のせいでネウロイを内地に逃がしましたし」

 
敏恵「あ、それ前にタヴィアさんが言ってた話? 拠点を一時的に変えてたとかって」

ハイデマリー「…正確に言えばそうですが、ガリアとベルギガの侵略地が解放されて先に入ったのが前の基地でした。その後、サン・トロン基地にいた部隊がアドリア海域の防衛へ移転した後に、私達が…」

敏恵「ふーん。たしかマリはタヴィアさん達と別行動してたんだっけ?」ゴクゴク

ハイデマリー「……はい。私の判断ミスでした、だから…」

敏恵「自分で決着つけようとしたんだ? 幽霊退治」

ハイデマリー「……」

敏恵「あれ、“幽霊騒ぎ”ってそういう事じゃないんだっけ?」

 
敏恵「――ま、いいや。でもとにかく、そのネウロイは見つけて倒せたんでしょ? なら結果的には良いじゃん」

ハイデマリー「…ですが。それはミーナ中佐達がいたからで、私の力ではありません」

敏恵「えぇ? いや、うーん……べつにそこは気にするとこかなぁ?」

ハイデマリー「ミーナ中佐には、独りで対処しようとしたことの誤りを指摘されました。結局私の判断は間違い続きだったんです…」

ハイデマリー「今回のリエージュでの件も、教訓を生かしたつもりが……反って工藤さん達に無理をさせてしまって――」

敏恵「んん~……? ねえちょっと待って、それ多分違うよ」

ハイデマリー「ぇ…?」

 
敏恵「そのなんとか中佐の言った意味ってさ、そうじゃなくて――」ビシ

敏恵「…そうやって独りで責任を背負おうとするのが、駄目って事なんじゃないの?」

ハイデマリー「!!」


敏恵「まあ隊長とか指揮官だとかなんて、あたしも全然わからないよ? うん」ヘラ

敏恵「でも限度があると思わない? 普通に考えてあたし達って十代の女の子なんだし、そんな何でも求められたって困るよね」アハハ

ハイデマリー「……工藤さん…」

敏恵「マリはさ、もうちょっと気楽っていうか…我儘になっても平気だと思うよ。あたしだったらそうする」ニッ

ハイデマリー「……」

 
敏恵「多分、こうやって誰かに打ち明ける事も無かったんだよね? マリは頑張り屋で偉いから」

ハイデマリー「…ぅ、……ごめんなさ…っ…」サッ

敏恵「あっ! ぃ、いや泣かないでよ!? いいの、いんだよマリ!? あたしはほら…その、友達じゃん!?」アセアセ

ハイデマリー「~っ、…はぃ……。……はい…っ」グスッ

敏恵「えぇっと、とにかくね? この前の任務はべつに気にする事なんて無いし、あたし平気だから。ね?」

ハイデマリー「……~っ…」コクコク

敏恵「ほ、ほらほら! 大事な眼鏡が汚れちゃうから、もう終わりにしよう!? …というか、こんな所ルーツィアさん達に見られたら怒られそうな気がする!」

ハイデマリー「~……す、すみま…っ。…少し、感きっ……極まって…」

敏恵「う、うん。いいよ、落ち着いて? よしよし大丈夫、誰も見てないから」サスサス

敏恵(――…て、本当に誰も居ないよね!? またあたしが何かやったとか、変な勘違いされるっ!)キョロキョロ

 
ハイデマリー「……」

敏恵「…マリ、取り敢えずハンカチ。それから水も飲みな?」ス

ハイデマリー「はい。すみません…」

敏恵「もういいって。……ちょっと待ってて、今元気の出るもの持ってくるからさ!」ガタ


タッタッタッ――




ハイデマリー「……」



< ウンウン、ヨクタケテルー



ハイデマリー「…………」



< ゲッ!! シマッターー! シャモジガナーイ!?



ハイデマリー「…?」
 

 

――スタタタ


敏恵「おっまたせぇ♪」

ハイデマリー「…!」

敏恵「さあ、ご賞味! 敏恵ちゃん式の炊き立て白飯、茶碗(っぽい器)一善!!」ドンッ

ハイデマリー「……」

敏恵「特別に真ん中の一番おいしい所だけをよそったよ! 食べてみて?」

ハイデマリー「…は、はい」

敏恵「♪」

 
ハイデマリー「……あの、工藤さん」

敏恵「? どうかした?」

ハイデマリー「その…、この“箸”ってどのように使えば…?」

敏恵「あ、あー! ごめん、そうだよね? あはは!」


敏恵「えーっと、それじゃあねぇ……ちょっと貸して?」

ハイデマリー「…?」

敏恵「あたしが口に入れてあげよう、……っと」ハシ

ハイデマリー「えっ」

 
敏恵「はい、マリ? あーん」ス

ハイデマリー「ぁ、いえ工藤さん!? べつにその、自分で食べますから…! フォークでも持ってくれば――」

敏恵「いいよ、面倒だし。フォークスプーンだとご飯ねっちゃうかもしれないから、箸で食べるのが一番おいしんだよ!」

ハイデマリー「で、ですが…。少し気恥ずかしい様な… ///」

敏恵「大丈夫! 喉まで突っ込んだりしないから」

ハイデマリー「ぃ、いえ。そういう心配ではなくて…」

敏恵「ほら、早くしないと冷めちゃう! 急いで、マリ!?」ズイ

ハイデマリー「ぅ… //」

 
敏恵「口開けて? あーん」

ハイデマリー「…ぁ、……ぁ~ //」

敏恵「よいしょ!」

ハイデマリー「ん…… ///」ハム


ハイデマリー「…んぐ……、ん…」モグ

敏恵「どうかな…?」


ハイデマリー「~…ンクッ。……なんだか、ふっくらとしていて美味しいです」

敏恵「やった!! 上手くいった!」

 
敏恵「むっふふ…。それじゃ、あたしも早速ぅ~」ゴクリ…

ハイデマリー「え、工藤さん!? でもその箸は、今私が汚してしま――」


敏恵「はむっ!」バク

ハイデマリー「ぁ!」


敏恵「ん…? にゃんぃ〈なに〉?」モグモグ

ハイデマリー「……ぃ、ぃぇ… //」

敏恵「…? あむ、~」モグ

 
ハイデマリー「……」

敏恵「んー! ひゃっぱりこりぇだ、ふひょう人は白めひっ!」

ハイデマリー「…ふふ」クス



ハイデマリー「……工藤さん」

敏恵「むぐ?」

ハイデマリー「有難うございます」

敏恵「……」

ハイデマリー「自分がどういれば良いのか、少しだけわかった気がします。……楽になれたと、思います」

敏恵「…うん。やったね?」ニッ

ハイデマリー「はい…!」


敏恵(ん、やっぱりマリーはこっちの方が可愛いよね!)パク

 
敏恵「う~ん、それにしても我ながら上手く炊けたなぁ。でもやっぱり甘みが薄い……んにゃむ」モグ

ハイデマリー「そうなんですか? 十分美味しかったですけど」

敏恵「ムグムグ…。粒も小ひゃいし、ひゃっはり米の差かなー?」

ハイデマリー「…ご実家からの仕送り、暫くかかりますね」

敏恵「~ングッ、まあね。でも届いたら、皆に最高の扶桑ご飯と箸の作法を教えてあげるよぉー!」ムンッ

ハイデマリー「はい」クス

 

―後日―



敏恵「――さあっ、皆ご賞味! 扶桑出身、敏恵ちゃん白飯です!!」


ルーツィア「……なあ、これってつまり“火が通っただけのイモか肉をそのまま食う”みたいなもんだろ?」ジト

オクタヴィア「素材の味って事ね♪」ウフフ

エステル「はぁ~、こんな事の為にわざわざ食べにくい棒きれ(お箸)の使い方練習させられた訳…?」ワキワキ

ハルテ「わあ…、粒が大きいですね!? 艶もあって綺麗です!」


敏恵「……。お願い、みんな食べてみてぇ…」

ハイデマリー「あ、あの皆さん!? 本当に美味しかったですし、ちゃんと夕食は別に外注してありますから…!」

 
ルーツィア「…まあ、じゃあ……食うか」カチャ

オクタヴィア「そうね。敏恵ちゃんの愛情ライス、いただきましょう♡」

エステル「ちょっと副隊長、食べる気なくなること言わないでください」

ハルテ「頂きます」ペコ


敏恵「……なんかハルテちゃん以外のリアクションが…」ドヨーン

ハイデマリー「ぁ、あはは…。ぇと、それでは私達も試食しましょうか? 工藤さん」



パクッ

もぐもぐ……
 

 
ルーツィア「! ……ふーん…」モグモグ

ハルテ「わ! 凄い弾力…!」

エステル「…なるほど、扶桑人ってこういうのがいいのね」パクパク

オクタヴィア「あ~、敏恵ちゃんの初心な愛が伝わるわぁ~♪」

ルーツィア「……どの辺にすか?」


ハイデマリー「本当だ、この前より違う…!」

敏恵「……。ん~…?」モグ

 
敏恵(なんか、まだ納得いかない…。やっぱり今一つだなぁ? 輸送中に味悪くしちゃったのかな?)

ハイデマリー「工藤さんの言った通り、とても美味しいです」

敏恵「ん? ん、うん…。でしょ?」

ハイデマリー「はい。これが工藤さんの故郷の味なんですね?」

敏恵「ま、まぁね~! そりゃウチの米だもん、あはは…」

ハイデマリー「ふふ」ニコ

敏恵「――ッ! //」ピクッ


ハイデマリー「…? どうかしましたか?」

敏恵「ぁ…、ううんっ! なんでもない!」

ハイデマリー「?」


敏恵(……まあ、これはこれでいっか)






――――何某かでも穏やかだと思えた日々。


その姿を疑うよりも、この時のあたしは隣に座る友人の笑顔が増えた事に……ちょっぴり喜んでたりしたんだ。

 

第八話:星夜 に続く

 

 

【幕間小譚 ~プレミアム・サイン~】



―とある日中―

野外


ブォォーン~――


敏恵「~♪ ジープの中で寝る作戦、大成功でした!」

オクタヴィア「…身体を壊しちゃうから、もうやっちゃ駄目よ?」

敏恵「はーい」

オクタヴィア「もぅ、お出掛けしたいんだったら言ってくれればよかったのに。ちゃんと休暇を取ってデート出来たのに、生憎今日は無理よ?」

敏恵「でも首都まで行くんですよね?」ウキウキ

オクタヴィア「お仕事でね。うちのベルギガ駐留部隊を束ねるエリア本部があるのよ」

 
オクタヴィア「お仕事でね。うちのベルギガ駐留部隊を束ねるエリア本部があるのよ」

敏恵「へぇ…。通信とかじゃ駄目なの?」

オクタヴィア「組織も中層以上は色々あるのよねぇ。少ない機会も大事にしないと、……よいしょ!」グイン


ギャギャギャギャッ――


敏恵「おぅっ!?」ドカッ

オクタヴィア「ごめんね、急ぐから。その素敵な胸が揺れるわよ」

敏恵「(…相変わらず荒い運転!)い、いつもこうなんですか…?」イタタ

オクタヴィア「移動時間の短縮は基本ね。それでも今日は屋台に寄る暇も無さそうなの」

オクタヴィア「悪いけど敏恵ちゃんを返しに戻る時間も惜しいわ。ごめんね」

敏恵「あ、それならあたしは適当な所で降ろしてくれればいいです。出来れば銀行の近くで」

 
オクタヴィア「あら、銀行? どうして?」

敏恵「口座を作るんです! ベルギガ王国〈がいこく〉でもあたしの身分なら一応作れるみたいだから」

オクタヴィア「…そういうこと。そこへ扶桑海軍からの給与を入れてもらうのね?」

敏恵「はい! そろそろ自分で自由に買い物したいですし、エステルちゃんに借りてるお金も返さないと」

オクタヴィア「あら、水臭いわよ敏恵ちゃん? あたしとデートすればお金なんて出してあげるのに」

敏恵「ぇ…ッ!? ぁいや、それはちょっと…」

オクタヴィア「うふふ、照れなくていいのよ? 相変わらず初心ねぇ♡」

敏恵「……」

 

―数時間後―


ブリュッセル市 ショッピング街



敏恵「んぐんむ…、~~」モグモグ


敏恵「んん!? ……流石1粒25銭のチョコ、凄すぎる…」

敏恵(どうしよう、これ何個か持って帰りたい。でも――)チャリ…

敏恵「ひいふう~…………うっ、もうお金が少ない!? まだワッフル食べてないのに…」


「敏恵ちゃ〜ん♡」


敏恵「!」

オクタヴィア「迎えに来たわよ」スタスタ

敏恵「タヴィアさん? あれ、でも待ち合わせは…」

 
オクタヴィア「ちょっと早く終わらせてきたわ、あまり楽しい会食でもなかったし」

敏恵「はあ、そうなんですか。…というか、なんであたしのいる場所わかったんですか?」

オクタヴィア「屋台も無いのに街道で食べ歩く姿は目立つわ。ほら、皆見てるわよぉ?」

敏恵「…? ぁ… //」

オクタヴィア「不躾に写真を撮ってたカメラは、見かけただけフィルムを没収したから安心していいわよ♪」ニコ

敏恵「えっ、なんですかそれ…!?」ゾワ

オクタヴィア「大丈夫よ、検閲(敏恵ちゃんの盗撮写真を堪能)したらちゃんと(お気に入り以外は)破棄するから心配しないで?」ウフフ

敏恵「……。…あの、それ念の為あたしも立会わせてください」

オクタヴィア「うふふ、ダ〜メ♡」ピト

敏恵「ムグ…//(カメラマンよりこの人の方がよっぽど危ないと思う)」

 
オクタヴィア「ところで、口座は開設できたのかしら?」

敏恵「あ、はい。なんとか」

オクタヴィア「そう。…それじゃあ、残りの用事を済ませてから帰りましょう? いらっしゃい」






あやし気な店


敏恵「タヴィアさん、ここ何ですか…?」

オクタヴィア「うふふ、秘密の穴場よ」

敏恵「秘密の穴…(まさか下ネタじゃないよね? …一応逃げる心構えしておこう)」ゴクリ

 
オクタヴィア「ここは足元見てくるけど質は随一なのよねぇ。敏恵ちゃんも少し観て行ったらどうかしら?」

敏恵「…??」キョロキョロ

敏恵「――! ぁ、これって…!」




髭店主「いらっしゃい、ヴィオラ」

オクタヴィア「ごきげんよう。掘り出し物はあるかしら?」スタスタ

髭店主「惜しかったな。N.E.カタヤイネンの“ラッキーショット”が昨日入ったが、直ぐ売れちまった」ボリボリ

オクタヴィア「あら、残念。けどレプリカはお断りよ」

髭店主「いんや、本物」

オクタヴィア「!!」カッ

髭店主「金に困ったフリーか犬が流したんだろなぁ。あんたが好きそうな感じのオフショットだったよ」

オクタヴィア「……ちょっと、どうして売っちゃったのよ…?」ギラリ

 
髭店主「青筋立てんなや? こっちだって商売やってんだ、あんたが最近来ねえから稼ぎも寂しくてね」

オクタヴィア「…………」

髭店主「今日何枚か持ってったら、次は取っておいてやるよ」ボリボリ

オクタヴィア「……いいわ、けど覚書きさせるわよ。この商売上手」

髭店主「なら手間賃込みで3枚以上だ、さっさと選びな」

オクタヴィア「はいはい、言われなくても買いに来たのよ」フイ





敏恵「おぉ……、こんなにブロマイドが…」ジー


オクタヴィア「――…敏恵ちゃんはこういう場所は初めて?」スタスタ

敏恵「え? あ、はい。本屋とかで売ってるのは知ってますけど、これだけ売ってる店なんてあるんですね?」

 
オクタヴィア「そういう“普通の所”にあるのはオフィシャルショットのレプリカだけだから、美味しい画は少ないのよねぇ」キョロキョロ

敏恵「はあ…?」

オクタヴィア「ほら、例えばこれね?」ヒョイ


敏恵「…? あっ、この子!」

オクタヴィア「うふふ、可愛いでしょ? 506Aの黒田那佳ちゃんは最近人気なのよ!」

敏恵(へぇー、リエージュで会ったあの子が…。確かに可愛い、なんかエプロンしてるし)マジマジ

オクタヴィア「こんな写真も当然オフィシャルのプロモーションだとありえないわ、なにより表情が自然で最高よぉ!」

敏恵「……でもこれって、基地の中っぽくないですか? こんなの誰がどうやって…」

 
オクタヴィア「これは多分セダン基地ね。前にフォレ・ドリオンで行われた506のAB合同模擬戦の後の様子よ」

敏恵「…? ふ~ん」

オクタヴィア「御姫ちゃんがムキになって催しを滅茶苦茶にしちゃったから、報道陣を含めた全員に黒田中尉と一緒に作ったデザートを振舞ったんだわぁ。そこで記者が撮ったワンショットね、羨ましい…♡」ウットリ

敏恵(えっ、なんか詳しすぎる。怖い…)ヒキ

オクタヴィア「……!? やだこれ、ちょっとまって…?」ピラ

敏恵「ど、どうしたんですか?」

オクタヴィア「…これレプリカかと思ったら、“生”だわ!?」

敏恵「は?」

 
オクタヴィア「ほら! 少し古い、乾いた血の後がある。たしかこの直後に起こった爆破事故のせいね」

敏恵「え゛っ(なにそれ、こわい! …怖い怖いっ!!)」

オクタヴィア「よく考えたら、こんなマニアックなショットの複製なんて普通無いわよね。…だけどプロの取材にインスタントカメラなんて使うかしら? あ、でも基地入場時に撮影機材は預かられた筈だから……そうね、それでサブ機を隠し持って撮ったんだわ。彼等ならやりかねない、うん、間違いなくこれは本物…――」ブツブツ


オクタヴィア「……うふふ、やったわ! これ買いましょ♪」

敏恵「…………(駄目だ、久々に本気で付いて行けない…。タヴィアさんの闇が深い)」ゲッソリ

オクタヴィア「敏恵ちゃんもジープに隠れていたし、今日はツイてる気がするわ――」ムー

オクタヴィア「…ちょっと待ってて? あと2枚、集中して選んでくるわ」

敏恵「ぁ、はあ…。……はい、ごゆっくり」


スタスタスタ――



敏恵「……おそろしいなぁ。あの人もう大人なのに」


敏恵(まあ…タヴィアさんが終わるまで暇だし、買う気ないけどあたしも少し見て廻ろうかな?)

 
――――
――



敏恵「流石にあたしでも分かる様な有名人ばっかだなぁ。…まあ、写真がお金になるくらいだから当然か」

敏恵「う~ん…(でもこういうのって知り合いがないかつい探しちゃうよねぇー。園さんとかないのかな?)」ジロジロ


敏恵「――…? あっ、これ!?」ピラ




敏恵「おぉぉ……! “巴御前”だ…」



敏恵「……」ジー




敏恵「…………」ジーー

 

 
敏恵(ど、どうしよう。ちょっと欲しい //)ピラ


敏恵「――あ、なんだ。意外と安い…(なんか複雑な気分)」

敏恵「でも、これぐらいなら残ってるお金で多分買える…」



敏恵「っ……」ゴクリ



――





敏恵「こ、これを」ス

髭店主「……」

敏恵「…ください!」


髭店主「……」ボリボリ

敏恵「っ… //」ドキドキ
 

 
髭店主「…うちは現金のみだ。ツケはねえ」

敏恵「ぁ、はい。ちょっと待って――」ゴソゴソ


ジャラッ チャリン…


敏恵「……くださいっ!」ムフー

髭店主「10サンチーム足りねえよ、お嬢ちゃん」

敏恵「えっ」


髭店主「意味わかんねえか? 補助硬貨1枚足らない」

敏恵「ちょ、うそっ!? えぇ…!?」チャリチャリ

敏恵「――……ぅ、本当だ…」

髭店主「それじゃ売れねえよ」

 
敏恵「~っ、お願いおじさん! まけて!?」

髭店主「一切駄目だ、そいつは得意客にも許してねえ」

敏恵「うぅ~~、本当に足元見てくる……そこをなんとかっ!」

髭店主「…ここから西へ行った路地に質屋がある。出直しな」ボリボリ


敏恵「むぐぐ…(く、悔しいぃ~~!! 最悪、扶桑のでもいいから小銭ないかー!?)」ゴソゴソゴソ



敏恵(――…ん! 裏ポケットに何か紙が入ってる?)ピク
 

 
敏恵「(やった、お札だ!)…じゃあ、これで!!」バンッ

髭店主「あぁ? ……!! て、ぉ…おいこれ――」ギョ


敏恵(…ん? あれ、お金じゃない。マリの写真じゃん??)


髭店主「“サン・トロンの幻影”じゃねえかっ!?」ガビーーンッ

敏恵「? いや、友達の写真だけど…(そういえば、前に園さんに貰ってから上着に入れっぱなしだったっけ)」

髭店主「し、しかも今ちょっと見えたぞ……まさか――」サッ

敏恵「あっ! ちょっと返して!?」

髭店主「…間違いねえ。裏のこいつはっ……ほ、本物のサインだ!!?」ジロジロ

敏恵「えっ、ちょ……なんでそんな事わかるの…??(この汚いおじさんも色々怖すぎる)」ヒキヒキ

 
髭店主「あ、あんた! こいつを何処で!?」

敏恵「いや、どこって……知り合いに貰って」タジ

髭店主「貰っただと!? サイン入りをか!!?」

敏恵「ひっ…! ぅぇぇ? えと、サインは確か…??」モヤモヤ



~~~~~~~~~~~~~~~~

※回想


敏恵『ありゃ? 新しい哨戒シフト、マリと一緒だ!』

ハイデマリー『ぁ、はい。…小園大佐からご指摘を受けたので』

敏恵『へぇー、園さん偉そうだなぁ~。でも嬉しいからいっか』ウキウキ

ハイデマリー『…! ……そ、そうですね。私もその… ///』モゴモゴ


敏恵『ん~? …ねえ、そういえばさ?』

ハイデマリー『ぇ…!? あ、はい。なんですか工藤さん? //』

 
敏恵『マリの……ミドルネーム? この“W”ってなんて言うの?』

ハイデマリー『…ぇと、“ヴァルプルガ”です』

敏恵『“ヴァ”…?? それだと“V”じゃない?』

ハイデマリー『いえ、それで合っていますけど…』

敏恵『えぇ、そうなの? ちょっと略さないで書いてみてよ?』

ハイデマリー『はい』

敏恵『えっとペンと紙、かみかみぃ~…』ゴソゴソ

ハイデマリー『あ、工藤さん。ペンなら私が持っています。シフト表の裏にでも書き――』

敏恵『ん? お、あったあった。なんでこんな所にメモ用紙なんて入れてたんだろ?』ピラ


敏恵『はい、マリ! ここに書いてみて?』

ハイデマリー『……えっと、はい。わかりました』


~~~~~~~~~~~~~~~~



敏恵(――…あぁ、そっか。あの時のメモ、この写真の裏紙だったんだ?)

 
髭店主「おい。まさかあんた……」ジロ

敏恵「え…?」ビク

髭店主「ヴィオラの連れってことは、サン・トロンの幻影と親し――」

「そんな訳ないわよ」

敏恵「!?」


オクタヴィア「見ての通り、この子もウィッチだけど扶桑軍よ? あたし達の部隊が統合編成なわけないじゃない」スタスタ

髭店主「…ほ、ほんとか?」

オクタヴィア「ほら、その穴拭中尉とこの“レプリカ”2枚頂くわ。お釣りは結構」パサ

髭店主「……」

 
オクタヴィア「あとそれもこの子に返して。汚れると価値が下がっちゃうわ」パシ

髭店主「ぁ…!」

オクタヴィア「はい、敏恵ちゃん。あたしフィルムケース沢山余ってるから、今度あげるわ」ス

敏恵「あ、あのタヴィアさん??」

オクタヴィア「しっ!」ピト

敏恵「!? ///」ムグ


オクタヴィア「…アンダーグラウンドの人間に余計な事は教えちゃ駄目。利用されちゃうわよ?」ヒソヒソ

敏恵「むぐぐ…?」



オクタヴィア「――さ、行きましょう? そろそろ時間も無いわ」グイ

敏恵「あ…は、はい」ヨタヨタ




髭店主「……。ま、まいど…」ポカーン



【プレミアム・サイン、終】

 
[解説メモ]


・ウィッチのブロマイド

ウィッチ達の姿が載った小サイズの写真等。当時はプロマイドとも言われた。
各ウィッチの人気や複製・サインの有無、真贋等によって価値は様々で、物によってはとんでもない高値で取引される事も……。

敏江が持っているハイデマリーのブロマイドは本人の直筆サイン入りとなり、図らずも給料からハネられた(>>12)以上の価値となった。


・25銭のチョコ

現在の価値に換算して500円位のつもり。

※戦時中、日本円の貨幣価値はこれよりも高かったようですが、作品世界45年時の扶桑は扶桑海事変を経てネウロイからの国土侵略の危機から当面逃れています。
なので終戦直後〜翌年位の数字になんとなく寄せてみました。
付け焼刃の設定なので、物価の動き等を考慮するとおかしいかもしれません。つまりてきとう

 

【第八話 星夜】



ベルギガ領

サン・トロン基地


エステル「――はい、ノック」パサ

敏恵「うそ!?」

エステル「付け札しますか?」

敏恵「うぐぐ……エステルちゃん速すぎる」

エステル「大尉単純なんですよねぇ? 捨て札拾うだけで1セット出来るし」ヘッ

エステル「ほらほら、手札見せてくださーい?」

敏恵「むぅぅ…。だってまだルール覚えたばかりだもん」パサ

エステル「ひいふうみぃ~……、42点差ですね」

敏恵「よっ…!? えぇー、なにそれ!?」




ルーツィア「…フゥ~……」プカ

ハルテ「ルーツィアさん、灰皿交換しますね?」

ルーツィア「ん、悪い」

 
ハルテ「ぁ…! それ、第501の記事ですか?」

ルーツィア「ん? んー、…あっちにも面倒なネウロイが出たみたいだな」バサ

ハルテ「……“オラーシャのリーリヤ、高度3万メートルで巨大ネウロイを撃破”。わぁ、すごい! これ、あのサーニャ・リトヴャクさんの事ですよね?」

ルーツィア「ああ。横の女は確かスオムスの“被弾ゼロ”だったか…、相変わらずのオールスターだな」

ハルテ「高度3万なんて、一体どうやって上がったんでしょうね?」

ルーツィア「ジェットの動力だとさ」

ハルテ「ジェット…ですか??」

ルーツィア「ぁー……ノイエで開発してる次世代航空魔導機があって、そのエンジンをアタッチしてぶっ放したらしい」バサ

ハルテ「へぇー…」

 
ルーツィア「……フゥー…。まあ、色々と豊富だな彼処は」

ハルテ「要所ですからね。英雄さんが集まる部隊ですし」

ルーツィア(ジェットストライカーか…)チラ




敏恵「来た! ノック!!」

エステル「げ…!?」

敏恵「んっふっふ~! どうだ、エステルちゃん!」パサ

エステル「……て、ちょっと? 大尉これノックできませんよ? 余りが10点以下になってないじゃない」

敏恵「え? …………あっ!」

エステル「はい、お手つきは相手に25点で私の勝ち。んじゃ約束通り模擬戦付き合ってもらいますからね」

敏恵「えぇぇー!? そんなぁ!」




ルーツィア「……うちには、無いだろな」プカ~

ハルテ「はい?」


――スタスタスタ


ハイデマリー「あの、ルーツィア曹長。ちょっといいですか?」

ルーツィア「ん…?」

 
ハルテ「あ、隊長さん。お疲れ様です」

ルーツィア「何です?」クシャ

ハイデマリー「その…給与の事なんですが」

ルーツィア「給与? ……ああ、そういや月末か」

ハイデマリー「今月の支給分はどうされますか?」

ルーツィア「ん……そうだな…(そろそろ、また行ってくるか)」


ルーツィア「――じゃあ、現物で」

ハイデマリー「全額ですか?」

ルーツィア「ああ」

ハイデマリー「わかりました。…ハルテ少尉はどうしますか?」

ハルテ「あ、私も半分ほど手元に頂けますか? 先日購入した代金を支払わないといけませんので」

ハイデマリー「はい、わかりました」

ルーツィア「…ツケ払い? 意外だな」

ハルテ「いえ、品物はまだ受け取っていないので。設置して頂いた後にお支払いするんです♪」ニコ

 
ルーツィア「“設置”……?」

ハイデマリー「少尉はケーキ用の特殊オーブンを先日注文したんです」

ルーツィア「……へぇ(オーブンて…、でかそうだな。あのキッチンのどこに置くんだ?)」

ハルテ「ずっと迷っていたんですけど、もう5月になりますし。思い切って買ってしまいました!」

ルーツィア「? ……ああ、そういう洒落か」

ハルテ「ぁ、はい…えへへ。本当はずっと作ってみたかったんですけど、ちょっと思いついたので… ///」テレ

ルーツィア「フッ…、いいんじゃない? 期待してる」

ハルテ「はい、頑張りますね!」

 
ルーツィア「……つーか、そうか。もう4月末か」

ハイデマリー「夜も暖かくなってきましたね」

ルーツィア「ええ、ようやく。……~」シュボ

ハイデマリー「……」


ルーツィア「フゥ~…」スパ~

ハイデマリー「…ルーツィアさんは――」モゴ

ルーツィア「ん?」

ハイデマリー「その…、何かお祝い等されるんですか?」

ルーツィア「……“マイバウム”?」

ハイデマリー「はい。ぇと……私の故郷では健康や平和とか、そういった願い事を毎年祈っていました」

ルーツィア「…………(珍しいな、シュナウファーが積極的に雑談ふっかけてくるなんて)」

 
ハイデマリー「曹長も南部の――…確かバイエルン州の出身ですよね?」

ルーツィア「!」ピク

ルーツィア「……まあ、ピッケンハーゲン家はそこに在りましたけど」

ハイデマリー「私はバーデン=ヴュルテンベルク州なので隣ですね」

ルーツィア「……」

ハイデマリー「? ぁ、あの…――」



――…ドタドタドタ


敏恵「マリ助けてぇ~!」ガバッ

ハイデマリー「きゃ!?」ビクッ

 
エステル「こら逃げんな! 約束したでしょ!?」ドタドタ

敏恵「面倒くさい~! もう夕方だし、止めようよエステルちゃ~ん」ヒシッ

ハイデマリー「…!?? ぁ、あの――」

エステル「ふっざけんな馬鹿! 私達はナイトウィッチでしょーが!!」

敏恵「うわ~ん、今日は哨戒までごろごろしたいのに~!」

エステル「7時間も暇なんじゃないっ! いいからハンガー行きますよっ!?」

ハイデマリー「えぇと……お二人とも――」オドオド

敏恵「んもー、マリで防御!」ササッ

ハイデマリー「ぇ?」

 
エステル「何やってんのよ、ったく! …すみません隊長、そのぐうたら女捕まえてください」

ハイデマリー「ぇ??」

敏恵「マリ~、助けてぇ」

ハイデマリー「…!」オロオロ

ルーツィア「……お前ら、走り回るなら外行け」

ハルテ「つまり大尉さんが観念して訓練に行けば解決なんですね?」


ハイデマリ「ッ…」オロオロオロ

エステル「隊長!」

敏恵「マリ…」




ハイデマリ「~ッ……そ、その前にっ!!」パシッ

敏恵&エステル「!?」ビク

ルーツィア「!」

 
ハイデマリー「ぇ…エステル少尉は今月の給与、どうされますか!?」

エステル「へ…? 給与?」

ハイデマリー「はい、どうしますか?」

ルーツィア(……シュナウファーの奴、なんか変わったな…?)


エステル「ちょ、ちょっと待ってください! えっと~――」

敏恵「…………ん!? そうだ給料と言えば!」ハッ

敏恵「マリ、あたしのお金ってどうなったかな?」

ハイデマリー「あ、はい。小園大佐には連絡しましたので、今月支給分から指定の口座に入れていただけると思います」

 
敏恵「やった! よしよし、これで貧困を脱出できる」

エステル「…あっ! なら大尉、貸してる分ちゃんと返してくださいよ?」

敏恵「了解了解。今度下ろしてくるから」

エステル「頼みますよ? じゃあ隊長、私は今月分振込でいいです」

ハイデマリー「はい、わかりました」

敏恵「んふふ~ん、いつ入れてもらえるか園さんに聞いてみよう♪ ねえマリ、今度一緒に首都まで買い物行こうよ!」

エステル「んな!? ちょっとズルい! あんたまた隊長を…!」

ハイデマリー「それは……わ、私も是非行きたいですけど。でも工藤さん…」

敏恵「ん? やっぱ忙しい感じ?」

ハイデマリー「いえ、あの…。その場合、移動手段はどうしましょうか?」

敏恵「移動って、そりゃ徒歩な訳ないんだから当然基地の車で――」


敏恵「…ぁ、無理じゃん」

ハイデマリー「はい……すみません」

 
エステル「ふん、残念でしたね? 私は大尉と違って何度か出張の手伝いも――」

敏恵「えっと、じゃあ運転できる人も連れて行こうよ!」

エステル「て、ちょっと! 無視すんな!!」

敏恵(うーん……ルーツィアさんは無理だろうし、タヴィアさんは危ないし、ハルテちゃんにはご飯作って待ってて欲しいし。となると――)モヤモヤ

敏恵「…エステルちゃん、ジープのペダルに足届く?」

エステル「運転技術を聞きなさいよ!? 余裕だっつうのっ!!」ムカー

ハイデマリー「あ、あのエステル少尉……落ち着いて…!」オロオロ


ルーツィア「フゥ~ー……。…給金で耳栓でも買うか」

ハルテ「ふふ。大尉さんとエステルさん、本当に仲良しで少し寂しいです“ね?”」クス

ルーツィア「……うるさいよ少尉」チッ

 

―数日後、昼間―



オクタヴィア「はい、お給金。いつも通り適度に崩しておいたわ」

ルーツィア「ん、どうも」

オクタヴィア「…ねえルーちゃん。 少し気になっていたんだけど聞いていいかしら?」

ルーツィア「?」

オクタヴィア「義肢調整の支払いにわざわざ小銭を混ぜるのって、迷惑にはならないの?」

ルーツィア「……それ、前にも言いましたよ。買い物にも寄るんで」

オクタヴィア「そのわりには手ぶらで帰ってくるじゃない? 貴方は物欲も殆ど無いし、唯一買ってるシガレットも単数で仕入れないでしょ?」

ルーツィア「…………」

オクタヴィア「あ、もしかして性欲に使ってるのかしら? イケナイお店に――」

ルーツィア「んなわけないっつの」

 
オクタヴィア「あらぁ…、でもサービス良かった娘にチップあげるじゃない?」

ルーツィア「知りませんよ。つか、それ野郎向けの商売だろ…」

オクタヴィア「そんな事ないわよ。付き合いで行くけど、あたしも楽しめてるわ」

ルーツィア「はぁ……ったく。なんなんすか、今更」

オクタヴィア「何って、だから少し気になっただけよ?」ウフフ

ルーツィア「……。迷惑だってなら今日車使うの止めますけど」

オクタヴィア「いいえ、べつにそういう事じゃないから気にしないで? 調整のきくスケジュールだったから平気。むしろ有難いくらい♪」

ルーツィア「は…?」

オクタヴィア「うふふ、何でもないわ♡」

ルーツィア「……とりあえず、私はもう行くんで。じゃあ車借りますよ」

オクタヴィア「いってらっしゃい、よろしくねぇ?」ニコニコ

ルーツィア「…? ……」スタスタ


ガチャ

バタン


オクタヴィア「……さてと、行動予定表を元に戻しておかなきゃ」

オクタヴィア「“あの子”だったらルーちゃんもきっと連れて行っちゃうでしょうし、今からお土産話が楽しみねぇ~♪」

 

基地野外



ルーツィア「……」

敏恵「…ん~……zz」スヤスヤ


ルーツィア「…………」


敏恵「~んみゃ……、み…みたらしだんごなんてぇ……そんな…はずかし……~zz」

ルーツィア「おら、起きろ」ゲシッ

敏恵「びゅ゛…!?」ビク

 
敏恵「んん……もしかしてこのジープ、使うんですかぁ? ふわぁ~」ムクリ

ルーツィア「そうだよ。だから退け」

敏恵「~…むぐ。あれぇ、おかしいな…?」グシグシ

ルーツィア「そりゃお前だ。朝からずっといたのか?」

敏恵「…タヴィアさんは?」

ルーツィア「あ?」

敏恵「確か今日は、タヴィアさんがまた首都の偉そうな所に行くんじゃないんですか?」

ルーツィア「……お前、相乗りする気でこんな所で寝たのかよ」

敏恵「はい。実績ある作戦なんですよこれが」

ルーツィア「……」

 
敏恵「ん…っ、ん~~ー……つはぁ! こっちの口座にあたしのお金が入ってる筈なんで、引き出しに行こうかなーと」コキコキ

ルーツィア「…生憎、少佐は今日の予定キャンセルしてるぞ?」

敏恵「えっ」

ルーツィア「で、私が車〈こいつ〉使うから」

敏恵「えぇーっ!? 聞いてない!」

ルーツィア「わかったら降りな」

敏恵「そ、そんな……――あっ! でも、じゃあルーツィアさんに連ついて行きます!」

ルーツィア「……私はブリュッセル行かねえよ、降りな」

敏恵「え~、なら何処行くんですか? あたしも連れてってくださいよぉ?」

ルーツィア「……。降りろ」

 
敏恵「やですー! 体痛いおもいしてこんな所で寝たんですから、せめて日中外出だけはしたいっ!」イヤイヤ

ルーツィア「……(少佐の奴、“よろしく”ってこういう事かよ。ハメやがったな)」

敏恵「行きたい、行きた~い!」ウワーン!

ルーツィア「…………」

敏恵「大人しくしますから~! お願いお願い~~!」

ルーツィア「……ッチ、めんどくせぇ」ガク


ルーツィア「ならさっさと席空けろ」

敏恵「! あたしも行けるんですか!?」

ルーツィア「特別な。…どっかで面倒起こしても自分でケツ拭けよ?」

敏恵「やった! ……って、そういえばルーツィアさん。義足なのに車の運転出来るんですね…!?」

ルーツィア「アクセル踏むぐらい余裕だよ。いいから、早く脚退けろ」

 
[解説メモ]


・ジンラミー

ラミーから派生した二人用のトランプゲーム。ポーカーに並ぶ世界的なゲームで、1940年代に流行した。
ラミー系ゲームの中では短時間で勝負がつきルールもルールも比較的シンプルだが、実は奥深く勝ちを積むには思考を要する為、所謂“運ゲー”の類より難易度は高い。

 
ベルギガ 郊外


敏恵「特に時間もかかりませんでしたね? 足の調整」

ルーツィア「面倒が起きる前の措置だからな、そんなもんだ。……~」シュボ

敏恵「…それで、この後はどうするんですか?」

ルーツィア「……フゥー…、……どうすっかな」チラ

敏恵「?」

ルーツィア(こいつも連れて行くか、出直すか…?)

敏恵「予定無いなら銀行に行きましょうよ? 出来ればその後首都ま――」

ルーツィア「却下」

敏恵「でぃ……。ぅ…まだ最後まで言ってないのに」ショボーン

ルーツィア「……はぁ、仕方ない。行くか」

敏恵「えっ! 本当に♪」

ルーツィア「ブリュッセルじゃない。すぐそこだ」

敏恵「えー…。…何処に行くんですか? またご飯?」

ルーツィア「なんでだよ。……いいから乗れ」

敏恵「…?」

 
郊外某所


ルーツィア「……ん、着いた」

敏恵「? ここ、何ですか?」バタム

ルーツィア「知り合いがやってる、まあ……孤児院」

敏恵「ほお……?」

ルーツィア「悪いけど大尉、適当に時間潰して待っててくれ」

敏恵「え!? あー……いや、そう言われても。この辺何もわからないですけど?」

ルーツィア「……。付いて来たって面白くもないよ」

敏恵「ここに独りで居たって同じですよー」

ルーツィア(庭に誰もいねえな……中か?)スタスタ

敏恵「あ! 待ってルーツィアさん!?」

中弛みしてるけどこれもう誰も読んでないっぽいな

要らないこと言ってすみません、とりあえず続けます

 
――――
――



ワイワイ ガヤガヤ


「せんせい、みてー!」

フローラ「わぁ、かわいい飾りね? とっても上手」

「そんなの全然だよ! こっちの方がスゲー!」

「そんなことないもん! せんせい、あたしのがじょうずって言ったもん!」

フローラ「ほら、喧嘩しないの? 先生はどっちも素敵で大好きよ」


ガランガランッ ガラン


フローラ「…! 来たかしら?」

「しぇんしぇい! わたひのは? ほら、わたひのー!」グイグイ

フローラ「ごめんねアニカ、お客さんが来たみたいだからちょっと待ってて?」スク

  

ガラガラッ ガラン


敏恵(この変な紐、引っ張るとガラガラ成る…。何これ?)グイグイ



フローラ「はーい」ガチャ

敏恵「!」

フローラ「……?」

敏恵「……。なんか、凄い美人が出てきた…!?」

フローラ「え?? ……あの、どちら様でしょうか?」

敏恵「あ、えっと…こんにちはー。あたしルーツィアさんの友だ――ぶぃい゛!!?」ブニュッ

フローラ「!?」

ルーツィア「勝手に先行くな」グイ

敏恵「……ひゅみまへん」

ルーツィア「ったく」

フローラ「り…リリー?」

>>599訂正

ガラガラ成る → ガラガラ鳴る

 
ルーツィア「悪いねフローラ。今日はちょっと変なのが付いて来た」

敏恵「ぅい、いたた…。思ったより首にきたんですけど今の?」サスサス


フローラ「えぇと……お友達?」

ルーツィア「ん……まあ、ちょっと前にウチの隊に来たウィッチ」

敏恵「は、はじめまして。工藤敏恵と言います」

フローラ「ぇ! それじゃあ、この人が…?」

ルーツィア「……まあな」プイ

敏恵「?」キョトン

 
フローラ「まあ…! 嬉しい!」パァァ

ルーツィア「…なんでお前が喜んでんだ」

フローラ「ようこそ工藤敏恵さん! 私はフローラ、よろしくお願いします」ニコ

敏恵「は、はい。……あの、あたしがどうかしたんですか?」

フローラ「? …随分ご謙遜するんですね? 命の恩人なのに、立派な方」

敏恵「は??」

ルーツィア「こいつは憶えちゃいないさ。んな話止めろって」ズイ

ルーツィア「…それよりほら、先に渡しておく」スッ

敏恵「あ…!(それ、ルーツィアさんの給料袋?)」

 
フローラ「……またこんなに、本当にいいの?」

ルーツィア「今更こんなにあっても邪魔なんだよ、私は」

フローラ「リリー…、そんなこと――」

ルーツィア「……。いい加減黙って受け取ってくれ、フローラ」

フローラ「……」

ルーツィア「こいつが半額になるだけでも皆困る。…そうなんだろ?」

フローラ「ごめんなさい…」ハシ

ルーツィア「フッ…。だから謝るなよ、姉さん」ポンポン

敏恵「…? ……??」



『あっ!! リリーだ!?』

『ほんとだ!』

『わーい、リリー!』

 

ドタドタドタ


敏恵「!?」

ルーツィア「よおチビども、先生の言うこと聞いてるか?」

「リリー、まただっこしてー?」

ルーツィア「…アレは危ないから二度とやらないっつったろ。足にくるんだよ」

「ねぇリリー、たばこやめたー?」

「やめろー! やめろー!」

ルーツィア「うるせえ、目の前で吸ってやろうか?」

「りり~!」ギュー

ルーツィア「…おい、よせ。引っ張んな」グイ

「おかえり! 今日もスープ作るの、リリー?」

ルーツィア「まあな。…買い出しさせてやっから年長のガキども集めてこい」

「はーい」


ワイワイ



敏恵「おぉ……子供達に囲まれるルーツィアさん…(意外過ぎる!!)」

 
フローラ「こぉら、皆もっとお行儀よくして。お客様が来てるのよ?」

子供達「「!」」クル

敏恵「!?」


子供達「「…………」」ジー

敏恵「……ぇ、えっと。こんにちは、敏恵お姉さんだよ~☆」ニパー


子供達「「……」」



「としぇ…?」

「……とし?」

「おムネおっきい…」

「…がいこくの人だ」

「ふそうだよ、ふそう」

「……おっぱいの人だ」

「おっぱい…」


ヒソヒソヒソ――




敏恵「ぁ、あれぇ…? ///」

 
フローラ「はい皆、ご挨拶は?」

子供達「「…。こんにちはー!!」」

敏恵「ぅ、うん……みんな偉いね… //」

ルーツィア「んじゃ、ガキども借りるよ」

フローラ「ええ。あまり奮発しすぎないでね?」

ルーツィア「…それはこいつら次第だな」フッ


ルーツィア「――おし、釣りが欲しい奴は外出ろ。お遣いさせてやる」

「やった!」

「わーい!」


敏恵(なんか、恥かいちゃったな……完全に滑ったよねあたし…?)ポカーン

フローラ「…工藤さん、よろしければ中へどうぞ? お茶を出しますから」

敏恵「へ…? ぁ、はい」

 
――――
――


 
フローラ「どうぞ」コト

敏恵「あ、どうも。ありがとうございます」

フローラ「遠慮しないでいいんですよ。リリーが初めて連れて来たお客さんだもの」

敏恵「はあ、そうなんですか? ……エステルちゃんとかも来たことないのかな?」

フローラ「それって…もしかして、軍隊でリリーと一緒に暮らしている子の事?」

敏恵「え? ぁ、はい……多分。ルーツィアさんと寮室が一緒で、妹分みたいな感じの」

フローラ「ふふ、やっぱり。リリーが偶にその子の話を零すけど、そんな素敵な名前だったのね」クス

敏恵「……。あの、聞いてもいいですか?」

フローラ「ん? はい、何ですか?」

 
敏恵「フローラさんってルーツィアさんと古い知り合いなんですか?」

フローラ「ええ。リリーとは小さい時からの、いわゆる幼馴染なのかしら」

敏恵「へぇー、やっぱそういう感じなんだ。それで“真ん中の名前”で呼んでるんですか、ルーツィアさんのこと」

フローラ「?」

敏恵(確かに地元馴染みの友達って、関係ない知り合いとはなんとなく会わせ辛いよねぇ。…ルーツィアさんもああ見えて気にしたりするんだ?)ムフフ

フローラ「……んー、私達の場合は愛称と言うよりそれこそ馴染みです。あの子がルーツィア・ピッケンハーゲンになる前からもうずっと、そう呼び合っているから」

敏恵「ふーん、そうなんですかぁ。ルーツィアさんになる前から――」ズズー




敏恵「……。んん?」ピタ

 

 
フローラ「あ、お口に合いませんでした?」

敏恵「えっ? あぁいや、このお茶はべつに普通――じゃなくて! 結構なお点前ですっ、…大丈夫です!」アセアセ

フローラ「そうですか、よかった。工藤さんは見た所東国の方なので、慣れない物を出してしまったかと少し心配でした」

敏恵「あはは! やだなー、そんな事ないですよ? 扶桑にだって紅いお茶もありますから、ほうじ茶とか」

フローラ「へぇ、そうなの…!」


敏恵「――って、そうじゃなく!!」

フローラ「……? あ、ごめんなさい。今のはジョーク?」

敏恵「ち、違いますよ!?///」

 
敏恵「…話逸れちゃいましたけど、さっきのルーツィアさんのことです。“ルーツィアさんになる前から”ってどういう事なんですか?」

フローラ「ああ、そっちですか? 実は私もリリーと同じ孤児院で育ったんですよ」

敏恵「えっ……――」




敏恵「んえっ!? ルーツィアさんて、孤児だったんですか!?」ガタッ



フローラ「ええ。…もしかして、あの子から何も?」

敏恵「は、初めて聞きました…」

フローラ「……そうだったのね。ここへ連れて来るくらいだから、私はてっきり…」

 
敏恵「ていうか、それってどういう…?」オズオズ

フローラ「…“リリー”というのは私達の先生が付けたものです。それから10歳になる年にピッケンハーゲン家の養子になって、今の名前はその時に養家の希望で」

敏恵「え……えぇ…」

フローラ「あの子が先生の孤児院前で拾われたのは1歳にも満たないくらいの頃で、そのせいで身寄りも一切不詳でした。厳密に言うなら、養子縁組をしたことで初めて公に一身分を獲得したんです」

敏恵「……」

フローラ「今の立派な名前も、そういう事なんですよ?」

敏恵「……すみませんでした。あたし、なんか不躾に聞いちゃって…」

フローラ「フフ、大丈夫ですよ。リリーがここへ招待するほどの人だもの、きっと貴方になら知られてもいいと思っている筈」ニコ

敏恵「そ、そう…ですか?」

 
フローラ「でも誤解しないでね、工藤さん? 棄児だったことはリリーにとって特別辛い訳でも、悲しい訳でもないんです。幸いにもそれを理解する程の成長もしていなかったし、本人も憶えていないんですから」

敏恵「……」

フローラ「…………リリーが、私と揃って孤児院にいた頃は――」チラ

敏恵「?」チラ



< ワイワイ

< キャーキャー



フローラ「あの子供達の様によく笑っていました。…大人しい子達と屋内にいた私がこうして見る外で、リリーはいつも年上の男の子と一緒に汗だくになって」

敏恵「……。そ、想像できない…」

フローラ「その当時は身体が健常でしたから。かけっこも、喧嘩だってよく年上のお兄さんを相手にして先生を困らせて――」

敏恵「いや、そっちじゃなくて……その、にこにこ明るいルーツィアさんっていうのがちょっと…」

 
フローラ「……。今は、そうかもしれないですね。でも一時期に比べれば大分…――」

敏恵「ぇ?」

フローラ「……工藤さん。リリーは、そちらではどんな子なんですか?」

敏恵「? どんなって……う~ん、基本調子が低いっていうか……雰囲気的に始めはちょっと怖かったんですけど、話してみて優しい所もあるっていうか~――」モヤモヤ

敏恵「まあ、それがルーツィアさんなんだなって。実際おっかない時もあるんだけど、実はいい人!」

フローラ「…そうですか」

敏恵「でもあんまり表に出さない人ですよね? 基地の食堂に集まってても、黙って煙草ばっかり吸ってるし」

フローラ「それは……――」

敏恵「そんなルーツィアさんも、可愛い少女時代があったんですね? う~ん……新しい家が嫌でやさぐれちゃったのかなぁ…?」


フローラ「……いえ。きっと、それよりも少し前」

敏恵「え?」

フローラ「私達の先生が亡くなって、それ以降は少し塞ぎこむようになってしまいました」

敏恵「!」

 
フローラ「あまり自分の事を話してくれなくなったけど……それでも根は全然変わってない。あの子は“リリー”だってわかるわ」

フローラ「…フフ。少し大人になって、もう妹の様に甘えて来ることは無くなりましたけど」

敏恵「……寂しいん、ですか?」

フローラ「えっ?」

敏恵「あっ! す、すみません! ただ、ちょっと…(から元気に見えた気が…)」

フローラ「……フフ、いいんですよ? 貴方はとっても優しくて素敵な方ですね」

敏恵「へ?」

フローラ「でも大丈夫です。私には此処の子供達もいますし、例え私が立ち入れなくなっても、リリーが元気でいてくれれば」

敏恵「……。でもフローラさん? あたし達っていうか、ルーツィアさんは航空ウィッチですけど…」

フローラ「…はい、そうですね。それだけが少し――」ゴソ

敏恵「あ、それルーツィアさんの給料…?」

フローラ「…私が此処を開いて初めてリリーが来た時、あの子は“杖を突きながら”大金を置いて行きました。自分には必要ないからと言って」

敏恵「……」

 
フローラ「どんなにお金があっても、親友〈かぞく〉の命には代えられないです。リリーの仕事がどれだけ立派な事だとしても、せめて私だけは素直に喜ばないであげたい…」

敏恵(フローラさん。お節介しない風にしてるけど、本当はルーツィアさんの事すごく心配なんだ…!)

フローラ「……工藤さん、貴方には心から感謝しています」

敏恵「え…?」

フローラ「私の親友の事、本当に有難うございました」ペコ

敏恵「あ、いやいや。べつにあたしは何も?? 逆にお世話にはなってるけど、特に感謝されるような事なんて…!?」ブンブン

フローラ「…フフ。そんな風に言えるなんて、貴方は本当に素敵な方ですね? こうして直接お礼が言えてよかったです」

敏恵「は、はあ……? お礼って言われても、いったい何の――」


「しぇんしぇ! しぇんしぇい!」
 

 
フローラ「? …あら、アニカ。どうしたの? 皆とお遣いは行かないの?」

「リリーが“わたひにはまだはやい”っていった」

フローラ「そうね。でもお姉ちゃん達は一緒にいてくれなかったの?」

「みんなしゃきいっちゃったー」

フローラ「まあ、それは残念ね。……じゃあ、次の時は先生と一緒に行きましょうか?」ナデナデ

「うん! …あ、しぇんしぇ! あとね、それと――」ピョンピョン

フローラ「はいはい、聞いてるから落ち着いてアニカ?」

敏恵(う、うーん……凄い、なんか一瞬でほんわかした空気になった。小さい子が加わったからなのか、フローラさんの保母先生的な力なのか…)モヤモヤ

 
「みて! しゃっきよりいっぱいつけたの!」スイ

フローラ「わぁ、きれいにお飾り出来たわね?」

「えへへ! アニカのまいばーむ~!」


敏恵「…? あ、なにそれ可愛い」

「!!? ……としぇ…」ジー

敏恵「ん? “としぇ”??」

「としぇも、としぇもこれかわいい!?」

敏恵「えっ? あぁ、うん。可愛い鉢植えだね?(としぇって敏恵〈あたし〉か)」

フローラ「アニカ、お客さんを呼び捨てちゃ駄目でしょう? はい、ごめんなさいして?」

「あい。 としぇ、ごめなしゃい」ペコ

敏恵「あ、あはは…(駄目だこりゃ)」

 
フローラ「……アニカ? そうじゃなくて――」

「?」

敏恵「えぇっと、いいですよフローラさん? なんか可愛いし、あたしは気にしませんから」

フローラ「…ごめんなさいね?」

敏恵「いえいえ。それよりもそのー……“まいばーむ”って言うんですか? このお飾り盆栽みたいな物」

フローラ「あ、ええ。マイバウムは私とリリーが居た地域にあった、4月から5月へ移る夜の風習です。…本来は背の高い生木や柱を飾りたてて御祈りや御祝いをするんですけど――」


「しぇんしぇ! おひざにのせてー?」クイクイ

フローラ「――ん? 先生今はお姉さんとお話してるから、大人しく出来るならいいよ? おいでアニカ」

「わーい!」


フローラ「…この子達が親しんで楽しめるように、毎年鉢植えの木を使っているんです」ナデナデ

「ん~♪」

 
敏恵「……へぇー、木を飾ってお祈りかぁ。なんか七夕みたい」

フローラ「まあ…! そちらの御国にも同じ風習があるんですか?」

敏恵「こっちのは笹とか葉っぱの付いた竹なんですけどね。紙の短冊に願い事を書いて、7月7日の夜に飾ったりして――」

敏恵「…えーっとそれで、天の川とか夏の大三角形とか探しながら笹団子とかチマキを食べます♪」

フローラ「フフッ、なんだか本当に似ていますね」

敏恵「ですよね? ……なんならサン・トロン基地でもやっちゃおうか今晩。 ていうか、やらないのかな?」ムム

フローラ「そうですね。ベルギガでは少ないのかもしれないですね? カールスラントでも北や東の地域には無いと聞いた事がありますよ」

敏恵「えー……。団子食べたかった…」グデー

フローラ「ウフフ、工藤さんったら可笑しい。マイバウムにお団子は出ませんよ?」クスクス

 
――――
――



「ほいリリー、にんじん買ってきたぜ!」

ルーツィア「ん、お疲れさん。……釣りはいくら残った?」

「へへ、大漁!」ジャラ

ルーツィア「……。お前、パクって来たんじゃないよな?」

「んなわけねーじゃん! ちゃんと値切りまくったんだぜ!!」

ルーツィア「そうか、ならよし。…小遣い使う時はフローラに言えよ?」

「ありがとリリー! よっしゃー!」タッタッタッ


ルーツィア「……(もうちょいで全員戻ってくるな)」ゴソ

ルーツィア「……、~」シュボ


ルーツィア「…フゥ~……(一応、あと30分経ったら探しに行くか)」プカ


――スタスタスタ


敏恵「んっふっふ~!」ヒョコ

ルーツィア「あ…? どうした、大尉?」

 
敏恵「“リリー”さん♪」

ルーツィア「……。…………止めろ」

敏恵「いいじゃないですか~! 可愛い名前ですよ、リリーさん?」ムフフ

ルーツィア「……チッ、来なきゃよかった。…帰りにどっか寄らせてやるつもりだったけど、やっぱ止め――」

敏恵「ああっ、ごめんなさいルーツィアさん!! 拗ねないで!?」アセアセ


ルーツィア「ったく……此処のこと無意味に言いふらすなよ? 特に少佐には絶対な」

敏恵「は、はーい…」

ルーツィア「…フゥー……。……で、あいつからどこまで聞いた?」ポイ

敏恵「あっえぇと……ルーツィアさんが養子って事と、一緒にいた孤児院の先生がその…亡くなっちゃった事とか?」

ルーツィア「……」ゴソ

敏恵「あ、あの……やっぱり勝手に聞いたら駄目でしたよね? すみません…」

 
ルーツィア「ん……ぁいや、悪い。そういうのは気にしなくていい…~」シュボ

ルーツィア「フゥー…。此処まで連れて来たのは私だし」

敏恵「その、どうして内緒にしてるんですか? 気に…しないんだったら」

ルーツィア「…べつに、隠してるって訳じゃないよ。聞かれてないし、言わないだけ」

敏恵「……」

ルーツィア「フゥ~……面白くもない話さ。関係ない奴に言って得も意味もないだろ」

敏恵「まあ、それは……そうですね」

ルーツィア「でも、そうだな。…大尉が聞きたいって言うなら――」キョロキョロ

敏恵「?」

ルーツィア「…戻って来てるガキどもは?」

敏恵「え? あ、皆フローラさんの所いますよ。植木飾りの続きやってますけど」

ルーツィア「そう。………大尉、座れよ? 退屈な話してやる」

敏恵「はあ……?」

 

ルーツィア「…フゥ~」プカ

敏恵「……」


ルーツィア「昔の私はさ、とっくに消えてんだよ。…ただの“リリー”はもう死んだ」

敏恵「それって、今の御両親が名前を変えちゃったから……ですか?」

ルーツィア「それも聞いたか…」

ルーツィア「…フゥー……、名前が変わっただけじゃない。それに私の親だった人は病死した、…名前だけなのは“あいつ等”もだよ」

敏恵「ぇ…?」

ルーツィア「最初からって訳じゃなかったけどな、一応どっかで期待してたんだ。……先生が死んで自暴自棄だった私でも、やっぱ家族ごっこには絆されかけた」

敏恵「ご、ごっこて…」

ルーツィア「フッ、母親だけじゃなく父親まで揃ったのにな? 血が繋がろうが縁を結ぼうが、私を与えてくれたのは先生だけだったのさ。それ以外の奴らはガキ独りの命で遊んでる似非〈えせ〉だ」

 
敏恵「(うっ、言う事きっついなぁルーツィアさん)い…一応引き取ってくれた人達なんだし、なにもそんなに――」オズオズ

ルーツィア「……。“ルーツィア・ピッケンハーゲン”」


敏恵「んぇ??」

ルーツィア「これ、誰の名前だと思う?」

敏恵「誰って、そりゃ…………ルーツィアさん?」

ルーツィア「……」

敏恵「…ち、違うんですか? でもリリーさんって呼んだら…」

ルーツィア「今は私が借りてるけど、元々は違う奴のなんだよ」

敏恵「へ?」

ルーツィア「フゥ~…、…そいつはもう死んでるけどな。ピッケンハーゲンの本当の娘」ポイ

敏恵「!? え、えぇっ…!!?」

 
ルーツィア「養子になって1年くらい経った時にそいつの写真やら何やらを偶然見つけたんだ。珍しく留守番できた隙に、入るなって言われてた屋根裏に行ってな」

ルーツィア「…子供ながらにそっくりだと思った。最初は身に覚えのない自分の写真と勘違いしてビビったよ」

敏恵「……その娘の事って、それまでは知らなかったんですか?」

ルーツィア「ああ。あの家に義姉がいたなんて一言も聞いてないし、先生の後に孤児院を継いだOBの野郎も多分知らなかった。…つうか金までもらってる」ゴソゴソ

敏恵「ぉ、お金!?」

ルーツィア「…………これはフローラも知らない事だけど、あの家は養子縁組なんかしてないんだよ。代わりに、死亡を届けなかった娘の改名手続きが“ルーツィア・リリー”で一件だけだ。ん…~」シュボ

敏恵「?? ……ちょっと待ってください? それってなんか、良くない事のような…」

ルーツィア「フゥ~……。良し悪しなんか知らねえけど、つまり身寄りないガキの身柄が替え玉にされたって事だよ」

敏恵「えぇ……そんな、丼おかわりするみたいに…」

 
ルーツィア「私も先生を亡くしてヤバかったけど、あいつらも多分狂ってんだ。……娘に向ける愛情“らしきもの”にも初めから違和感あったし、本物のルーツィアに気づいてからは只々薄ら寒くてどうしようもない」

ルーツィア「…フゥー……。結局、あいつらの道楽でルーツィアとリリーは消えて……何だか分からない奴がここにいる」

敏恵「……」

ルーツィア「その辺を悟ってからは暫く腐って、そのうちどうでもよくなった」

ルーツィア「…んで、ある時にボコった奴が兵師団所属の保安警察員だったせいで倍返し食らった挙句にしょっ引かれた」

敏恵「ぇ…いや、待って? 色々おかしい!? 子供の時の話ですよねそれ??」

ルーツィア「12だったかそこらの時だよ。…使い魔の契約はしてなかったけど、その頃にはもう魔法力を持ってて無意識に使ってたらしい。じゃなけりゃ素人のガキがプロの軍人殴れる訳ないしな」

敏恵(ひぇぇ……たち悪い…。そもそもなんで憲兵に殴りかかる事になるの…?)ヒキ

 
ルーツィア「…フゥ~……。そこで免罪取引で軍属になれと勧誘された」

敏恵「……それで、航空ウィッチになったんですか?」

ルーツィア「ああ。シラケきった“ままごと”から出て行くいい機会だったし、もうどうだってよかったんだよ――」ポイ

ルーツィア「…なんならルーツィアとしてどっかで戦死して、名前返してやろうかと思ったくらいだ」

敏恵「そんな……あたしには信じらんないです。戦死したがるなんて…」

ルーツィア「死にたがった訳じゃないけどな。機会があればいいかってくらいで、べつに急ぐ事でもないし」

敏恵「……。じゃあもしかして、その足…」

ルーツィア「ん? ……んー、そうだな。あの時は確かに死ぬつもりだった」

敏恵(“あの時”?)

ルーツィア「…お前達が来る前にな。ネウロイの攻撃が右脚のユニットを直撃して、脱げ落ちる途中に収束した異空間が脛から先をちぎってった」

敏恵「う゛っ!! なにそれ痛い痛い…――」ゾワワ


敏恵「って、それより。ちょっとルーツィアさん?」

ルーツィア「ん?」

 
敏恵「“お前達”って……“あの時”とか、何のこと言ってるんですか?」チンプーン

ルーツィア「…………は?」

敏恵「あたし、多分それ初めて聞くと思うんですけど…?」カンプーン

ルーツィア「……大尉お前、もしかして本当に憶えてないのか…??」

敏恵「はい?」


ルーツィア「……」

敏恵「?」


ルーツィア「お前、本当にビフレストで……あの場に居たやつなのか?」

敏恵「え…?」

ルーツィア「私は激痛でろくに周り見る余裕も無かったけど、あの時、私らを助けた奴の目は憶えてる。 …正直言って、お前にいまいちヘリン・ディア・ナハトが重ならない」

敏恵「は、はあ……? 一応、カールスラント最後衛の撤退戦には巻き込まれてましたけど。夜の女王とかそれ、やっぱり人違いなんじゃないですか?」ポリポリ

ルーツィア「……。一緒に駆けつけて私の手当てをした奴が“いたち”とでかい声でそいつに指図した、それは聞いた記憶がある」

敏恵「あっ……それ多分園さん! じゃあ、あたしです」

 
敏恵「……あれぇー? でもあたし、ルーツィアさんを見た事あったの?? どの辺の時の話だろ…!?」ウムム~

ルーツィア「エステルもいたよ。横で喚いてうるさかったな」

敏恵「エステルちゃんも!? …あっでも、それならなんとなく憶えてます! 確か負傷してる人と泣いてる子が2人、地上にいたのを見下ろして…~――」モヤモヤ

敏恵「う~ん……でも、なんであんな所にエステルちゃん達が? 最終防衛で犠牲にされた人は確かみんなウィッチ以外の兵隊だったような…?」モヤモヤモヤ

ルーツィア「……前に話したろ? 東部の陥落を聞いてエステルが飛び出したって、まさにそれだよ」

敏恵「――!? ……え、でもなんでルーツィアさんまで?」

ルーツィア「エステルは夢中で出ちまったからな。辿り着いたとして、家族が居たとして、生きて帰れない自覚なんて持っちゃいなかったさ」

ルーツィア「…なら、私が代わりに死んでやってもいいかと思ってね」

敏恵「……そん――」

ルーツィア「それで追っかけて、撃たれかけてたあいつを引っ張って、足が消えて、いよいよ殺されるって所をお前に助けられちまった」

敏恵「っ……」

 
ルーツィア「…フッ、悪い。そんな顔すんなよ? 文句がある訳じゃないから」

ルーツィア「ただ……まさか死なないで済むとは思ってなかったからな。ちょっと面倒も出来ちまって」

敏恵「面倒?」

ルーツィア「違反したあいつを追って出る前に、“ピッケンハーゲンが勝手に出撃した”って吹聴したんだよ」

敏恵「ぇ…? なんで、それ逆じゃないですか」

ルーツィア「あの作戦は一般人や私達を逃がすためのもんだ。なのに無視して死にに行く奴なんて論外だろ?」

ルーツィア「仮にエステルを生きて帰せてもあいつの立場は最悪になる、だから代わってやった。…本物のルーツィアには悪いけど、どうせ死ぬ奴の名誉なんてどうでもいいしな」

敏恵(そっか…! じゃあ、ルーツィアさんが軍歴や実力の割に曹長なのってそういう訳なの!?)


ルーツィア「……けど、それが結局あいつに色々背負わせちまった。私の勝手でさ」

ルーツィア「あの時消えてりゃどんなに楽だったかな」


敏恵「……」


ルーツィア「おかげでもう、そんなあいつを残してる間は死ねなくなった。…フッ、何者でもない奴のくせにな」






敏恵「…………はあ~~、もう!」ガク

ルーツィア「!」
 

 
敏恵「マリもルーツィアさんも、頭いいのになんでそんな難しく考えるんですか?」

ルーツィア「……あ?」

敏恵「ルーツィアさんはルーツィアさん! 名前がどうとか、あーだとかこうだとか、それと自分が誰かなんて関係ないじゃないですか」

敏恵「合体とか分身して生まれ変わった訳じゃないんだし、自分は自分です! 別人になるわけないじゃないですか」

ルーツィア「……」ポカーン


敏恵「フローラさんはルーツィアさんのこと今でもリリーだって、自信満々に言ってましたよ?」

ルーツィア「フローラが…!?」

敏恵「でも当たり前です! だってルーツィアさん本人なんだから、別の人だったら怪談ですよそんなの」

ルーツィア「……お前…」

敏恵「エステルちゃんやあたし達にとってもルーツィアさんはルーツィアさん! お役所で何がどうなってようが、目の前のルーツィアさんは変わってないですよね?」

ルーツィア「……」

敏恵「――まぁ、その……足はちょっと無くなっちゃいましたけど…」ゴニョゴニョ

 
 
ルーツィア「…………プッ、クッハハ! んだよ、それ?」ケラケラ


敏恵「へ…?」


ルーツィア「フッ……たく、大尉は能天気でいい奴だ」

敏恵「む!? ルーツィアさん、それ褒めてる風の悪口ですよね!?」ジト

ルーツィア「ん、でもそうか…。そうかもな」

敏恵「? ちょっとルーツィアさん、聞いてます? あたしが阿呆なんじゃなくて、そっちがくよくよしてるだけなんですからねーっ!?」ムー

ルーツィア「ああわかった、そうだな。 私がイジけてて、お前は天才だ」

敏恵「て、適当!? も~、ルーツィアさんまで園さんみたいにぃ!」

ルーツィア「フフ、私そいつ知らねえよ」

敏恵「むむ~~っ!」グヌヌ

 
ルーツィア「…んな事より大尉?」

敏恵「な、なんですかぁ?」ムスー

ルーツィア「あの時は……ありがとな」

敏恵「!」


ルーツィア「まだろくに礼も言ってなかったから」

敏恵「……いいですって、そんな」

ルーツィア「いや…お前に救ってもらった事、おかげで感謝したくなっちまった」

敏恵「…また~、難しく考える! タヴィアさんを見習ってください、凄い変人ですけどシンプルですよ?」

ルーツィア「……シンプルつうか、あの人は欲に迷いないだけだろ。しょうもないセクハラでどうしようもねえけど」

敏恵「そ、それはあたしも苦手ですけど!/// でも欲望は生きる糧ってどっかで聞きますし、実は死にたがりのルーツィアさんももっと――」

ルーツィア「だから、死にたがりな訳じゃねえよ」

敏恵「小難しい話はもういいですっ!!」ビシッ

ルーツィア「……」

 
敏恵「とにかく! 変に考えてないで、もっとやりたい事とか楽しい事考えた方が健全ですよ!? というか普通そうなりません?」

ルーツィア「……それ、ほぼお前じゃん。食うのと寝るのと暇するのと――」

敏恵「!? ぁあたしは、だって健全ですもん!! ///」ズイ

ルーツィア「…………」

敏恵「っ……えぇっと、とにかくそんな感じです!」

ルーツィア「どんな感じだよ」


『リリー!』


敏恵「…!」

ルーツィア「ん? …おお、そういやまだ残ってたか」

 

――テテテテ


「はい、買ってきたよ?」

「きたよ!」

ルーツィア「ん、お疲れ。釣りはチビにも分けてやれよ?」

「はーい。ねぇ、わたしたち最後? ツェツィーが途中でごねて時間かかっちゃった」

「ちゃった!」

「“ちゃった”じゃないでしょー? わたしマイバウムの飾りまだ終わってないのにぃ!」

ルーツィア「…お前らで最後だよ」

敏恵「おかえり、まだ中で続きやってるよ?」

「あ、はい! お姉さんただいま、ありがとうございます。…いくよツェツィー?」

「んー! リリー!」フイフイ

「リリーも後で来てくれるから、先生にただいましに行くよ? ほら」グイ


テテテテ――



ルーツィア「……」

敏恵「…ん! あ、そうだ!」ハッ

ルーツィア「?」ゴソ

 
敏恵「ルーツィアさん!」

ルーツィア「……~」シュボ

敏恵「それならあたし達もマイバウムやりましょう!」

ルーツィア「…フゥ~……。なにが“それなら”なんだ?」プカ

敏恵「願い事を書けばルーツィアさんだって前向きになれますよ? あとは美味しい餅と団子を食べればつまんない事も考えなくなると思います!」

ルーツィア「……幾つかツッコミたいが、先ずそれのどの辺がマイバウムなんだ?」

敏恵「七夕要素も入れますから! 戻ったら短冊一緒に作りましょう?」ウキウキ

ルーツィア「(タナバタ?)…いや、だからバウム要素はどこだよ」

>>629訂正

最後衛の撤退戦 → 最前衛の撤退戦


>>630訂正

最終防衛で → 最前防衛で

 
 
―夜―



サン・トロン基地


ハルテ「~っ……」グルン グルン

ハイデマリー「――ぁ…! 少尉、早速作ってるんですね?」

ハルテ「……は、はぃ…っ」

ハイデマリー「美味しそうですね、廊下までとてもいい香りがしていました」

ハルテ「…はぃ……っ…」グルン グルン

ハイデマリー「?」

ハルテ「っ…」ググ…

ハイデマリー「……ぁ、あの…? よければ、手伝いますか?」

 
ハルテ「…ぃぇ……大丈夫でっ…す…。慣れて、きましたから…~」グググ

ハイデマリー「で、でもその……凄い汗ですけど…?」

ハルテ「……すみ、ません…隊長さん。…このお菓子は気がっ…抜けないので、集中します……~っ…」

ハイデマリー「……す、すみません」




エステル「あー、甘い匂いが気になるわ…」

オクタヴィア「ほらエステルちゃん、変なこと言ってないで問題解いて?」サワサワ

エステル「…べつに変なこと言ってないじゃない。あとお尻触んないでください」

オクタヴィア「うふふ、間違える度に深くしちゃうわよぉ?」サワサワサワ

エステル「あーもう、やめれ!!」バッ

オクタヴィア「あらあら、やあねぇ。授業料よ?」

エステル「なんでよ! ならいっそ金取りなさいよっ!?」ムガー

 
オクタヴィア「ほらほら、じゃあ代わりにエステルちゃんが手を動かしなさい? さっきから全然進んでないわ」

エステル「わ、わかってますよ…。はぁー…まったく、今日は一日中少佐のセクハラと勉強でもう頭痛い…」

オクタヴィア「ルーちゃんも敏恵ちゃんもいないから少し退屈なのよねぇ」

エステル「むぐぐ……絶対すぐ合格してやる。ていうか先輩達帰りおそくない…?」


ハイデマリー「――そうですね。夕食は要らないと連絡はありましたけど、そろそろ戻って来ないと流石に…」スタスタ

オクタヴィア「あら、マリーちゃん」

エステル「隊長、このまま深夜になったら第三哨戒どうするんですか? 大尉サボり?」

ハイデマリー「あ、はい。それもありますけど……その、少し心配で」

オクタヴィア「うふふ、まあショッピングにしては長いわよねぇ?」

エステル「大丈夫ですって。先輩なら事故る心配もないし、暴漢10人までなら余裕で返り討ちですから」

オクタヴィア「敏恵ちゃんのイケナイ身体が蛮行を引き起こしちゃうのねぇ、いやだわ~♡ あの子着痩せしないから」ギラギラ

エステル「……チッ、胸の脂肪に騙される馬鹿男なんか先輩にボコられればいいのよ…#」イライラ

ハイデマリー「……」

 

――スタスタスタ


敏恵「ただいまー」

ルーツィア「……」


オクタヴィア「あら、噂をすれば」

ハイデマリー「工藤さん、ルーツィア曹長! …お帰りなさい」

エステル「! せんぱーい、遅いですよー?」

ルーツィア「私に言うな、大尉がツリーなんか買うから」

敏恵「えぇー!? ルーツィアさんだって賛成してくれたじゃないですかぁー!?」ガーン

ルーツィア「時間かけ過ぎなんだよ。どの木だって同じだろ」

敏恵「む! だって竹も笹も売ってないんですもん、だから素直にフローラさん達の鉢植え分けて貰っておけば――」


ルーツィア「っ…!」ガッッ

敏恵「ぁい゛っ゛!?」


ルーツィア「その話止めろ」ヒソ

敏恵「~っ゛……き、今日いちばん痛いですルーツィアさん…」プルプル

ハイデマリー「…あの、工藤さん? 植木を買われたんですか?」

敏恵「あ、うん、そうそう…――」イテテ

 
敏恵「今外に置いてあるから、みんなで飾り付けしようよ?」

ハイデマリー「……。ぁ、それって…?」

オクタヴィア「あら敏恵ちゃん、マイバウムなんて知ってるの? わざわざ買って来るなんて可愛いわねぇ~」ウフフ

ルーツィア「…言っときますけど、全然可愛気ないデカさすよ?」

エステル「なになに? マイバウム? 私やった事ないんですけど、ビールとか飲むんですよね!」

ルーツィア「色々端折ってるけど、まあな。一応買ってある」

敏恵「エステルちゃん、お酒飲んだことある? ジュースも買ったけど」

エステル「私あんたより年上ッ!?」キッ

オクタヴィア「やだ、気が利くわね~♪ うふふ、今夜はハメ外しちゃおうかしら?」

ルーツィア「少佐には一瓶だけな」


敏恵「ね、マリ! 皆でやろうよ、いいでしょ?」

ハイデマリー「……はい、そうですね。折角ですから、是非お祝いしましょう」コク

 

基地 野外



敏恵「――うん、完成~!」

ハイデマリー「はい…!」

エステル「うー…疲れた。南西部の人って毎年こんな事やってたんですかぁ…?」ヘナ

オクタヴィア「ストライカーを使えたからいいけど、これ普通の人はどうやって飾り付けるのかしらね?」

ルーツィア「これでもまだ小さい方らしいすけどね。持ち帰るのクッソ苦労しましたけど」

敏恵「……そういえば、ハルテちゃんはまだかな? 何かお菓子作ってるんでしょ?」

ハイデマリー「あ、はい。恐らくそろそろ――」


『みなさーん、お待たせしましたー!』

ゴロゴロ


エステル「お疲れー、こっちはもう終わったわよ」

ルーツィア「ん、…凄いな少尉。よく出来てる…!」

ハルテ「ぃ、いえいえそんな…/// 恥ずかしいです、まだ年輪が汚くて…」テレ

 
敏恵「おー? これは……バウムクーヘン!? 凄い!!」

ハルテ「は、はい…。その、マイバウムの時期ですし……まさか基地でお祝いするなんて思いませんでしたので、なんとなく作ってみようかと… ///」

敏恵「なるほど、駄洒落…!」オー!

ハルテ「ぅ…///(真面目に納得されると恥ずかしいです…)」カァァ

エステル「大丈夫、私はハルテちゃんの味方だから。よく頑張ったわホント」ポンポン


ハイデマリー「…それじゃあ、切り分けて並べましょうか?」

オクタヴィア「そうね。お酒も早く開けたいし」

敏恵「――あっ、待って待って! まだ最後に…!」サッ

ハイデマリー「?」

 
敏恵「皆、あたしの渡した短冊に願い事は書いた?」

ハイデマリー「えぇと、はい。 …これですよね?」ペラ

敏恵「うん。あたしが全員の吊るしてくるから貸して?」

ハイデマリー「…? はい」

エステル「仕方ないわねー、覗き見ないでくださいよ?」スッ

ハルテ「…私もちゃんと書きました。どうぞ、大尉さん」ピラ

オクタヴィア「うふふ、書ききれなくて裏表使っちゃったけどいいかしら?」ピラ

 
敏恵「……うんうん、名前もちゃんと書いてあるね」マジマジ

エステル「あ、こらちょっと!? 見るなっ!」


ルーツィア「……」

敏恵「はい、ルーツィアさんも。願い事書きましたか?」

ルーツィア「……まあな」

敏恵「ちゃんと前向きなやつですよ? 彼氏欲しいとか、一生遊んで暮らしたいとか」

ルーツィア「……。ああ」

敏恵「そうですか、よかったよかった! …はい、じゃあください?」

ルーツィア「…………」

敏恵「どうしたんですかルーツィアさん? 吊るしてきますから早くください」チョイチョイ

 
ルーツィア「…いや、私がやるよ」

敏恵「え? いいですよ、べつに」

ルーツィア「いいから貸せ、私がやってくる」バッ

敏恵「あ…!」


ルーツィア「……」スタスタ




敏恵「もー、ルーツィアさんって意外と子供なんだから。鏡餅の蜜柑とか乗せたがるタイプだよね絶対」プクー

ハイデマリー「えっと…多分、違うと思います…」

オクタヴィア「あらあら、ルーちゃんってば照れ屋さんねぇ? あとでこっそり読んでみましょ♪」ウフフ

ハルテ「止めましょう准佐さん、また怒られますよ…?」

 
エステル「…ていうか、なんで願望書いた紙なんて吊るすんですか? 恥ずかしいんですけど」

敏恵「これが扶桑の七夕式だよ、エステルちゃん!」

エステル「はぁ? マイバウムじゃないの?」

敏恵「こうすれば織姫と彦星が願いを叶えてくれるんだよ!」

エステル「だ、誰よそれ…? サンタのこと言ってんの??」

敏恵「違う違う、織姫と彦星はラブラブのアベックで~…えー……なんやかんやあって、夜空の天の川にいる精霊なの!!」

エステル「……。うっさんくさ…」

オクタヴィア「あら、いい話じゃない? 素敵だわ“ラブラブのアベック”な所とか」

ハルテ「あの、むしろお話の詳細がそこくらいしかないですよ…?」

 
エステル「…なんか馬鹿正直に願い事書いちゃって損したわね」ハァー

オクタヴィア「! まさかエステルちゃん、アレが一番のお願いだったの?」

エステル「えっ」ギクッ

オクタヴィア「あらあら、そんなに気にしてたの? でも大丈夫よ? 合法ロリータって言ってね、あと数年もすればその身長とプロポーションだって引く手あま――」

エステル「んなっっ!?!? ななんで私の内容知ってんですかっ!!? 離れて書いたのに!!」

オクタヴィア「遠方注視♪」ギラン

ハルテ「じ、准佐さん! お酒もまだなんですから自重してくださいっ…」

オクタヴィア「いいのよお菓子ちゃん、貴方は年齢的にまだ大きくなるわ。心配しないで?」

ハルテ「そ、そんな事は聞いていませんよぉ~…!? ///」アワアワ

エステル「ちょっと! 私が大きくならない前提で言わないで!? まだ17なんだからっ!!」ムカー!!


ギャー ギャーッ
 

 

ハイデマリー「フフ…」クス

敏恵「――お、笑ってるねぇマリ?」


ハイデマリー「あ、すみません。つい…」

敏恵「ううん、いいのいいの! 楽しいよね?」

ハイデマリー「…はい」

敏恵「んっふっふ♪ ところで、マリの短冊さっき見ちゃったよ~?」ニヤ

ハイデマリー「!」

敏恵「あれって願い事というかお礼だよね? だってもう叶ってるみたいな感じだと思うし」

ハイデマリー「……そうですね。ですから――」チラ


ハイデマリー「出来る事なら、ずっとこのまま続いて欲しいと……そんな贅沢を願いました」



敏恵「……」

ハイデマリー「……」




敏恵「…なんか、恥ずかしいというか……ちょっとこそばゆいかも… ///」ムズムズ

ハイデマリー「す、すみません… ///」モジ

 
ハイデマリー「ぁ…ぇと、その……工藤さんは――」

敏恵「え?」

ハイデマリー「短冊にどんな願い事を、書いたんですか?」

敏恵「あたし? …んー、あたしのはね~」

ハイデマリー「……」

敏恵「あたし達の飛ぶ空が、ずっと平和で、綺麗でありますようにーって」ドヤァ

ハイデマリー「…素敵ですね」ニコ

敏恵「なーんちゃって! 本当は無病息災と金運招福、あと恋愛成就!」

ハイデマリー「クスッ……でもほら、工藤さん? 今日の空はこんなに綺麗ですよ」

 
敏恵「……あ、本当だ!? 天の川!」

ハイデマリー「工藤さんの言う通り、精霊が願いを叶えてくれたのかもしれませんね?」

敏恵「おぉー……すっごぃ…!」ジー

ハイデマリー「……」


敏恵「……ねえマリ? あたし明るい空が好きで、あんまり夜って興味なかったんだけどさ――」

ハイデマリー「?」

敏恵「こんなに綺麗なら、夜空も悪くないかもね!」ニッ

ハイデマリー「ぁ…! はい //」ニコ




「フッ…、そうだな」

ガバッ


敏恵「むおっ!?」

ハイデマリー「きゃ…!?」

ルーツィア「…お前達がいるんなら、そう悪くないかもな」ギュ

敏恵「る、ルーツィアさん!?」

 
ルーツィア「おら、乾杯するぞ? 流石に腹が減った」

敏恵「あっ、あたしも! バウムクーヘンとお酒!!」ハッ

ルーツィア「お、大尉いけんのか?」

ハイデマリー「……えっ? ですが工藤さん、私達は――」

敏恵「大丈夫だって! 毎年お正月の御祝いに甘酒ちょっと飲んだりするし、同じ感じでしょ?」

ハイデマリー「ぃ、いえ……そういう事ではなくて――」アセアセ

ルーツィア「あ…? まずはビール飲めるようになれ、ビール」

敏恵「はい、いいですよー!」イェーイ!

ハイデマリー「あ、あのっ…でも工藤さん――」






――――この時の想い出は未だに強く残ってる。

あたしがベルギガに来てから一番楽しかった頃で、嵐が起きる前の最後のイベント事だったんだから。


そして、ついにその日は……その時はやってきてしまうのだ……














オクタヴィア「敏恵ちゃんとマリーちゃんはお酒飲んじゃ駄目よ、この後第三哨戒でしょ?」

敏恵「えっ゛」

エステル「…つうかもう0時過ぎてますね? 今日、第二抜いてるから行かないとマズくないですか?」

ハルテ「あ、じゃあ大尉さん達の分は後で食べられるようにしておきますね」

ルーツィア「ん、仕方ねえな…。ここは私等だけで楽しむか」


敏恵「…………そういう、ことだったのね…」ガク

ハイデマリー「すみません…」

 

第九話:査察 に続く

 

長くなってしまいました。
本編は次話から大詰めの話に入ります

 
[解説メモ]


・ルーツィアの過去

物心がつくよりも前に孤児院へ入った彼女は、愛し育んでくれた院長先生を自身の存在と尊厳の拠り所としていた。
元々は天真で活発な性格だったが、院長を喪った後はショックから立ち直れず、半ば自棄気味に屈折してしまった。

そんな折でピッケンハーゲン夫妻からの熱狂的な申し入れがあり、引き取られた。
“ルーツィア・ピッケンハーゲン”への改名を提案されたが、彼女の猛反発により孤児名がミドルネームとして残された。

院長が遺した“リリー”という名は彼女の自尊心を守る最後の砦だったのである。


・エステルの過去(其の二)

ビフレスト作戦時に重大な軍規違反を犯したエステルだが、ルーツィアの計らいによりその咎は全て肩代わりされていた。
結果として、違反者を救い戻った事にされたエステルは評価され、本当は自分を救うために右足まで失った筈のルーツィアが“自業自得の不名誉勲章”と陰で蔑まれてしまった。
この事でエステルは特に戦果を施される事へのコンプレックスを抱えてしまう。

また、同時に一連の罪悪感(>>241参照)も増長させてしまい、以降のルーツィアに対して執着・依存気味になっている。

※この結果にはルーツィアも責任を感じており、態度には出さないが、彼女が自立できるようにと気にかけ面倒を見ている。


・敏恵の過去(其の二 ~ビフレストでの人命救助~)

カールスラントより撤退の号令がかかった当時、敏恵が所属していた航空戦隊の分隊は駐留展開直後で混乱したこともあり撤収が大幅に遅れた。
扶桑への引き揚げ艦に間に合わなかった同分隊は決死の撤退戦を余儀なくされたが、敏恵の覚醒後、小園分隊長の方針転換によりゲリラでの戦線維持の支援と逃げ遅れの救助も行っていた。

その過程の一件で、ネウロイに襲われていたルーツィアとエステルの命も救っていたのだが、3人とも助け(助けられ)た相手をよくわかっていなかった。
何故なら作戦中の行動において、敏恵の全役割は夜間航空殲滅戦闘による時間稼ぎであったためである。

撤退完了まで同分隊――主に小園以外の人間と接触しなかった事が、後に噂を作る要因となったと言える。

 

【幕間小譚~どっちの指令が好き?~】



サン・トロン基地

食堂



敏恵「……」


エステル「~……」カリカリカリ

ルーツィア「…フゥー……」

ハルテ「准佐さん、おかわり如何ですか?」

オクタヴィア「あら、ありがとう。…お菓子ちゃんも座らない? 一緒に飲みたいわ」チョンチョン


敏恵「……」

 
ハルテ「あ、はい。お夜食の準備も済んでますから……それでは、失礼しますね」カタ

オクタヴィア「うふふ、今日は報告会で色々あったから寝る前に愚痴を聞いて欲しかったのよねぇ♪」

ハルテ「え、えぇ……そういうお話ですか…?」

オクタヴィア「いいじゃない、いいじゃない? こういう日はお酒に頼ると夢見が悪いのよ~」サスサス


ルーツィア「……ん、エステル。そこ違ぇよ」

エステル「あ、やっぱり? この辺、勘で答えたんですけど」

ルーツィア「そういうのは本番以外でやんな、意味ないだろ」

エステル「はーい、すみません」



敏恵「…ねえ、皆さぁ?」

エステル「?」

ルーツィア「…?」

オクタヴィア「ん? なぁに敏恵ちゃん?」

ハルテ「ぁ、お水もう一瓶お持ちしますか?」ガタ

敏恵「あぁいや、それは大丈夫なんだけど――」サッ

敏恵「…ちょっと4人に聞きたいことがあってさ?」

エステル「なんですか? 改まって」

ルーツィア「……」

 
敏恵「うん。あのさ、前から気になってたんだけど第五夜間航空団の方の飛行隊長でザウィン……あー…ウィトゲンシュタイン? て人いるじゃん?」

エステル「はあ……まあ、いますけど?」

オクタヴィア「御姫ちゃん? 御姫ちゃんがどうかしたの? スリーサイズなら、あたしの目測で良いなら教えてあげるけど」

ハルテ「多分、違うと思いますよ…」オズオズ


ルーツィア「……で、ザイン=ウィトゲンシュタイン大尉がどうした?」

敏恵「やーその、今までも偶に名前上がったりしてたじゃないですか? だからどんな人なのかな~って思って」

エステル「どんな人か…?」

ハルテ「……ぇ、えぇとー…」

オクタヴィア「ん~、そうねぇ……」

 
敏恵「…あれ?? 皆は知り合いじゃないんですか? エステルちゃんとか色々詳しかったじゃん」

エステル「そりゃ私は知ってますけど、向こうは私なんて知りませんよ。話した事ないですもん」

ハルテ「私も流石に、まだお会い出来た事はありませんね」

敏恵「あらまー、そうなのか…」

オクタヴィア「あたしは一応顔見知りよ? 彼女がオラーシャ戦線で活躍してた頃から軍務で付き合いはあったわ」

ルーツィア「……ペテルブルクでしたっけ?」

オクタヴィア「ええ。ちょっと手の込んだ作戦があって、戦略の検討補助としてお呼ばれしたの」

エステル「あ、もしかして連続撃墜記録のやつですか!?」ウキウキ

オクタヴィア「うふふ、残念だけどその日は“24日”じゃなかったわ」


敏恵「…? どういうこと?」キョロ

ハルテ「ぁ、えと…第五司令さんが一晩で連続撃墜した記録です。確か4機と…それから6機連続だったと思いますけど、そのどちらもが24日の夜だったそうですから」

敏恵「へぇ~、一晩で6機も!? そりゃ凄い…!」

ルーツィア「ナイトウィッチには有名な話だけど、まあ……知らねえか」スパー

 
エステル「――…なんだ、じゃあ違うのか」ヘナ

オクタヴィア「けどあたしが見た時も凄かったわよ? あの子、会敵からの行動が速くて勢いあるのよねぇ。 当時は計算違いしてたわ」

エステル「…! 副隊長、その辺の事もうちょっと詳しく教えて!?」ガタッ

オクタヴィア「うふふふ♪ それと、こっそり近づいて背中を指でこう“ツィー”ってやると可愛い声で――」

エステル「んなぁーっ、そんなことはいいですから! 戦闘の話!」バンバン


敏恵「……やっぱ凄い人なんだね?」

ハルテ「はい。第五夜空の司令、NJGの隊長さんですから」

敏恵「…でもマリも第一夜空四隊の隊長で、同じくらいなんだよね?」

ハルテ「そうです。ですから私達の隊長さんも凄い方です」ニコ

敏恵「ふむふむ。なるほど、それでか…」モヤ

ハルテ「?」

 
オクタヴィア「なぁに敏恵ちゃん? 御姫ちゃんみたいな子がタイプなの? ……いいわねそれ♡」アラ~

敏恵「えっ?」

ルーツィア「また何考えてんすか、あんた」ジト

エステル「は? マジなの大尉? やめておいた方がいいですよ、大尉みたいな人は第五司令に絶対嫌われますって」

敏恵「はあ……そうなの? ぁいや、タイプとかって話はしてないけどね」フイフイ


エステル「あの人って優秀だけどその分ホント厳しいって言うか、気難しいみたいですよ? 訓練生で同期だった子があっちに行ったけど、ちょっとミスるだけで滅茶苦茶怒られるって」

敏恵「…うわぁ、恐いのか……」タジ

エステル「家柄も良いいですからねー。大尉みたいな自堕落だと多分一生懲罰房から出れませんよ?」ニヤ

敏恵「ぅぐ……た、確かに。あたし経験上鬼上官って苦手だ…」

ハルテ(自堕落の否定はしないんですね…)アハハ…

 
オクタヴィア「あら、別に恐ろしくなんてないわよ? 彼女人気だし、可愛いじゃない」

エステル「そんなのらりくらり躱せるのは副隊長だけですから」

ハルテ「あはは……、准佐さんならある意味毒気を抜かれてしまうかもしれませんね?」

エステル「いや怖いもの知らずなだけだって。常識通用しないのよ、副隊長には」

オクタヴィア「うふふ、規律と常識はまた別よ? エステルちゃんも同性愛を嗜めば分かるわ♡」

エステル「……ほら、皮肉ったって効かないし」


ルーツィア「…フゥ~……」プカ

 
敏恵「んー…、じゃあさ? マリとその人だったら、皆はどっちに付く?」

ハルテ「…? “どちらに”というのは……司令官さんとして選ぶ、という事ですか?」

敏恵「そうそう。今の感じだとエステルちゃんはマリ?」

エステル「ハンッ、そんなの勿論うちの隊長! なんてったって最強だし、私の目標だし」フフン

ハルテ「…そうですね。私も隊長さんには日頃からお世話になっていますので、もし選ぶのでしたらこちらでお役にたちたいです」

敏恵「そっかぁ」


エステル「ま、実際隊長の下でやってるんだからそうなるわよね? …副隊長はどうするかわかんないけど」ジト

オクタヴィア「ん~、そうねぇ……。今のあたしはマリーちゃんの副官が仕事だし――」

敏恵「あ、じゃあその辺は無しで考えてどうですか?」

オクタヴィア「ん、そう? それなら…――」ウーン




オクタヴィア「………………」モンモンモンモン

敏恵(お、おぉぅ……)タジ

ハルテ(准佐さん…)

エステル(すっごい真剣に悩んでるわね…)

 
オクタヴィア「――……どっちも捗りそうだけど、状況によるわね」

敏恵「じ、状況?」

オクタヴィア「寧ろ、あたしが上に跨って2人とも愛でるのばどうかしら?」ギラン

敏恵「へっ? またがる??」

エステル「…ちょっと、考えてる間に趣旨変わってるっつの」ジト



敏恵「ぇ……またエッチな話?(愛でるとか言ってるし)」チラ

ハルテ「き、気にしないでいいと思います… //」

 
敏恵「うーん、タヴィアさんは壊れたから無効だとして――」

オクタヴィア「やだ、辛辣ね♪」


敏恵「…結局は皆マリかぁ。まあ、そりゃそうだよね? あたしだって知らない人よりマリがいいし」




ルーツィア「……フゥー…。……私はザイン=ウィトゲンシュタイン大尉にする」



敏恵「え…?」

エステル「先輩!?」ガーン

オクタヴィア「あらぁ、そういえばルーちゃんの意見がまだだったわね?」

ルーツィア「……」プカ~

エステル「にゃ…どっ……なんでですか先輩っ!? なんでそっち側へ行っちゃうの!?」オロオロ

ハルテ「あのエステルさん、べつに対立とかじゃないと思いますよ…?」

 
敏恵「おぉ~、まさかの1票! やっぱりルーツィアさんなら嫌な上官も喧嘩上等ってことですか?」ウキウキ

エステル「なんで!? 絶対うちの隊長が一番じゃないですか!? 逆張りしてもお金なんて貰えないですよ先輩!!」


ルーツィア「…………。あのよ、お前らさ――」クシャ

エステル「ッ…!?」ビクッ

敏恵(…ぁ、あれ? なんか若干怒ってる?)



ルーツィア「あの人は訳もなく厳しんじゃねえんだよ。…つうかそもそも、他人だけに当たる屑とは全然違うから。あの人は何つうか……自分がそういう立場の人間だからってやつで、使命感つうか責任感みたいなのがしっかりあるんだよ。んで、能力が高いからその水準も高くて、だから私やお前らなんかには厳しく思えるだけ――」クドクド

エステル「……せ、先輩?? ちょっと――」




ルーツィア「つまり当然あの人は自分にだって同じだけ厳しいんだよ。つうか厳しくとかじゃなくて、そうあるべきだっていう自分を多分持ってんだよ。だから鬼でもなんでもなくて単に平等ってだけだ、本人はな? お前ら“気難しい”とかなんとか言ってたけど、私はすげぇと思ってる。それにあの人は尊大な様で他人をちゃんと見てるからな? ちゃんと考えてんだよ――」クドクドクド




エステル「あ、あのー…」

ハルテ「……」ポカーン

敏恵「……」ポカーン

オクタヴィア「…あらあら、なぁにこれ?」

 

ルーツィア「それからシュナウファーが夜間撃墜数ベースで最強っつうけど、実際には配属されてる戦地の状況諸々でそんなのアテになんねえだろ。…まあ私もうちの隊長は優秀だと思うし、お前らがどっちを手本にしようと関係ないけど、個人的に相対評価すんなら私はザイン=ウィトゲンシュタイン大尉が上だ。同じNJGの隊長で航空団司令っつってもシュナウファーはまだ本格的に団全体の指揮を独りで執ってる訳じゃねえし、あの人はJFWで戦闘隊長も――」

エステル「わ、分かりました先輩!! ごめんなさいっ! だからストップ!!」ガシッ



ルーツィア「!」

エステル「ほ、ホントに……私達が誤解してました、はい。だから一旦、落ち着いてください? みんなビビッて(引いて)ますから…」

ルーツィア「……? ん…?」キョロ


ハルテ「……」ポカーン

敏恵「…え、えっと……ルーツィアさんの熱意的な、えー…あれは伝わりました。…うん」

 
オクタヴィア「うふふ、大発見♪ ルーちゃんは御姫ちゃんが“本命♡大好き”なのね?」ニコニコ


ルーツィア「――ッ!! ばっ……ち、ちげぇ! ///」ダムッッ!!

ハルテ「ハッ…!」ビク


敏恵「て、照れなくても大丈夫ですよルーツィアさん…? その、まぁ~いきなり九十九式機銃みたいに喋り出したのはビックリしましたけど、熱心なファンの気持ちとかも一応、あたし分かりますし――」アハハ

ルーツィア「違うっつってんだろ!? 殺すぞッ…!! ///」ギロッ

敏恵「ぃい゛!!? ……ぅぇえと。じゃあ…と、とりあえずウィトゲンシュタインさんにも一票でぇ…」コソコソ

エステル「せ、先輩! あたしもその、第五司令いいなーって思いました…!! うん、先輩の話聞いて感心しましたから!!」アセアセ

ルーツィア「……~ッ…るさい、やめろ…。…~ //」ガバ

敏恵(あ、あらら…。あのルーツィアさんが顔を覆っちゃったよ!?)

 
オクタヴィア「それはそうと、ルーちゃんて御姫ちゃんとお友達だったのねぇ? あたしも知らなかったわ」

ルーツィア「……べつに、そういうんじゃないすから…。前に少し、からまれただけだから… //」モゴモゴ

エステル「へ、へぇー…、そんな事ありましたっけー…?」ハラハラ

オクタヴィア「ん~、よければ聞かせて? 正直言って、ちょっと興味あるわ」

敏恵(お、おぉ!? タヴィアさん、切り込むなぁ…!)ゴクリ

ハルテ「~…??(あぁ、私だけまだちょっと状況が掴めていません…)」ポケー


ルーツィア「っ…」ガタッ

オクタヴィア「あら?」

エステル「せ、先輩…?」

ルーツィア「……タバコが切れたから…部屋に戻る」スタタッ

敏恵「ぇ……あれ? でもさっき新しいの開けてませんでし――」



ルーツィア「……」スタスタスタスタ
 

 
敏恵「あー、行っちゃった…」

エステル「……」

ハルテ「…?」

オクタヴィア(あらあら、…落ち着いた時にでもまた聞いてみようかしら?)クス


ハイデマリー「――ぁ、あの…?」スタスタ


オクタヴィア「あら、マリーちゃん。お疲れ様♪」

ハイデマリー「は、はい…。デュッケ少佐もまだ起きていたんですね、お疲れ様です」

敏恵「えっ! もうそんな時間!?」

ハルテ「あ、お疲れ様です隊長さん。……じゃあ私達は準備をして直ぐ第三哨戒ですね、大尉さん?」

敏恵「ひぇ~……なんか今のルーツィアさんの流れで変に疲れたぁ…。行きたくない」ヘニャ

エステル「い、行きなさいよ……気持ちは分かるけど…」グッタリ

ハイデマリー「…?? その、さっき私もルーツィア曹長とすれ違ったのですが……何かあったんですか?」

 

エステル&ルーツィア部屋


ルーツィア「……くっそ。恥かいた…」ギシ

ルーツィア(あの人が勘違いされてたからって、なに熱噴いてんだよ…)



ルーツィア「……」



ルーツィア(…復帰後にナイトウィッチの訓練消化して正式配属の前だったか、ロンドンの空軍支部へ辞令受けに行った時に一度会った。本当にそれだけだったけど――)



~~~~~~~~~~~~~~

※回想


ブリタニア連邦

ロンドン某所


エステル「――北方の防衛ですね私達? 第一夜間の飛行隊ですよ!」ワクワク

ルーツィア「……どうでもいい」

エステル「何言ってるんですか先輩! あそこには最強のナイトウィッチ、あのハイデマリー大尉がいるんですから! どうでもよくなんかないですよ!?」

ルーツィア「……」

エステル「第二飛行隊に配属されてからありえない速さで撃墜数を重ねて大尉まで出世、…まだ全然若くて既に飛行隊長になろとしてる人ですよ!? このまま行けば史上最年少の航空団司令になっちゃうんじゃないかってもっぱらの噂ですから!」フンフン

ルーツィア「あっそう」

 
エステル「あぁ~どうしようぅ……どこの飛行隊に配属されるんだろ…?? もし大尉が隊長になる所だったらヤバいヤバいぃぃ~っ…」

ルーツィア「……(あータバコ吸いてぇ)」イライラ

エステル「――? あ、でも心配しなくても大丈夫ですよ先輩!」

ルーツィア「…あ?」

エステル「ハイデマリー大尉は目指す人で尊敬もしてますけど、私にとっての一番はルーツィア先輩です! 一生ついて行きますから安心してください?」


ルーツィア「……。…………」


エステル「…どうしたんですか先輩? そ、そんなに不安ですか?」

ルーツィア「ぁぁ…そうだな。……確かに不安だ」

エステル「!? ほ、ホントに大丈夫ですからね!? 私っ…先輩の恩を忘れてどっか行くなんて絶対――」アセ

ルーツィア(っ……そうじゃねえんだよ、ったく…)



―― ヒソヒソ…



ルーツィア「!」ピク

 
『――うん、多分そうだよ。だってあの足、ほら…』ヒソヒソ

『へぇ~、じゃあアレが噂の“不名誉勲章”? 正式任官されたんだ、…ていうかまだ航空ウィッチなんてやれるんだ?』ヒソヒーソ



ルーツィア(チッ、めんどくせぇな)ス

ルーツィア「……」ブンッ


バギィッッ



『――ッ…!!?』



エステル「!?? ごっ…、ごめんなさい先輩!! ホントの本当に私、先輩にさせた事忘れてなんてなくて……~っ…だ、だって……私のせいで――」オロオロ

ルーツィア「んな話いいから、エステル。ちょっと頼まれろ」

エステル「~……ぇ?」

ルーツィア「杖折れちまったから、なんか変わり探してきてくれ」

エステル「…?? ぃゃ…ううん?? 折れたって先輩、今自分で叩き折ったじゃ――」

ルーツィア「いいから頼む、ここ以外のどっかに何かしらあるだろうから探して来い」

 
エステル「は、はあ…? わ、わかりました……じゃあ、ちょっと待っててくださいね?」

ルーツィア「ん、悪いね」


タッタッタッ――


ルーツィア「…………」



『な、なに今の…? 癇癪持ちなの?』ヒソヒソ

『なんか怖い子ね? 何するか、ていうか何考えてるかわかんない感じ…』ヒーソ



ルーツィア「……フン…(エステルはわかり易くぶん殴って来るから、今のうちにどっか行け)」



『そりゃあだって、全体号令無視して飛び出しちゃうんだから。しかもビフレストの時に……本当なら普通ではないでしょ』

『…それもそうね』



ルーツィア「……」



『それにしても何でそんな事したんだか。逃がしてもらっておいて本当、酷いっていうか…』

『……自分の事しか考えてなかったんでしょ。 身の程知らずの戦功目的とか、“死体見学でもしたかった”とか――』



ルーツィア「…!!」ピキ
 

 
『――訓練だけ積んで被れちゃった“雛”には偶にある好奇心よ。まあ、愚かには違いないけど』

『…何にしても擁護不可能な感じだね』



ルーツィア「ッ…… #(吐きやがったな? クソが…!)」ギロッ



『わ…っ!? やだ、ちょっとこっち睨んでる! 聞こえてた…!?』

『げっ、…あんたが変な事言い出すから!』


ルーツィア(ざっけんなよ? ……そっち行って、ぶっとば――)ヨタヨタ






「そなたら、ここで何をしておる?」





ルーツィア「!」
 

 
「! ぇ…?」

「…!? んなっ……まさか、ウィトゲンシュタイン大尉!!」


ハインリーケ「知らぬ顔じゃな? 階級章を見るに、候補生上がりの仕官かのう」スタスタ

「は、はいっ! 自分は空軍ナイトウィッチ少尉の――」

ハインリーケ「よい、いらぬ。どうせ憶えるつもりはない」

「ッ…!?」

ハインリーケ「そんな事より、そなたらは何用でここへ来たのじゃ?」ジト

「ぇ! えっと……」

「…は、配属辞令の書類を受け取りに……これから」

ハインリーケ「ならばさっさと行くがよい。無駄話をしたければ余った時間、相応の場所ですることじゃな」

「ぅ…」

ハインリーケ「口は達者なようじゃが、わらわの目に留まりたければ行動で示してみせよ!!」カッ

「ひっ!? し、失礼しました…!!」スタタッ

「うぐぐっ……!」スタタ

 

ハインリーケ「…まったく。わざわざ北方迂回してまで来てみれば、あれ程の者達しかおらんのか」ハァ

ハインリーケ「わらわとそう歳も違わぬであろうに、自身の責務も果たさぬうちから陰口に勤しむとは」



ルーツィア「……」



ハインリーケ「――まあ、よい。……それで、そこの者」チラ



ルーツィア「!」



ハインリーケ「……」スタスタ

ルーツィア「…?」

ハインリーケ「先ずは初対面ゆえ、挨拶をせねばの――」コホン


ハインリーケ「…わらわの名はハインリーケ・プリンツェシン・ツー・ザイン・ウィトゲンシュタイン。…国は言わずともよいじゃろう? 第五夜間戦闘航空団所属の大尉じゃ」

ルーツィア「…………」


ハインリーケ「? どうした、そなたの番――」

ルーツィア「了解しました大尉殿。では自分はこれで…」ノソ

ハインリーケ「なっ!? ま、待たぬか!? 逃げるでない!」グイ

 
ルーツィア「チッ……なんすか?」

ハインリーケ「!? …“なんすか”ではなかろう」

ルーツィア「は?」

ハインリーケ「はぁ……やれやれじゃ、その様な態度だから誤解を受ける。名乗られたなら返すのが礼儀じゃぞ?」

ルーツィア「……」

ハインリーケ「そなた、ルーツィア・ピッケンハーゲン軍曹であろう?」

ルーツィア「…………一応、そうですが」プイ

 
ハインリーケ「うむ。…わらわもビフレストの“つまらぬ噂”は知っておる。夜の女王や、そなたの事もな」

ルーツィア「…。そうすか」

ハインリーケ「とりわけ気にもせぬのじゃが、せっかくの機会ゆえ聞いておきたいと思うてな。……そなたは何故に出撃したのじゃ?」



ルーツィア「……」

ハインリーケ「……」



ルーツィア「…母と、父と、弟……それから祖母」

ハインリーケ「……。ふむ、故郷に残した家族を救うためじゃな?」

ルーツィア「……」

 
ハインリーケ「なるほどの…。そなたの“言”、恐らく嘘ではなかろう――」ウンウン


ハインリーケ「じゃが、このわらわを謀るまでには至らぬな?」

ルーツィア「!」ピク


ハインリーケ「フフン、繕うても無駄じゃぞ? わらわには見当がつく、お見通しじゃ」ドヤァ

ルーツィア「っ…」

ハインリーケ「安心せい軍曹。不自由な身であろうとそなたは“持てる者”じゃ、そなた個人のやり様に口出しはせぬ――」ピシッ

ハインリーケ「…じゃが、わらわも高貴なる者として事物を見誤れぬのが義務。そして正しきは正しいと評価するのがわらわ自身のポリシーじゃ」

ルーツィア「…………何が言いたいんすか」

ハインリーケ「む、察せぬか? …仕方ないのう――」

ハインリーケ「つまりじゃな、守るべき者の為に行動をしたウィッチも……気高く無謀なそやつを守らんとしたそなたも、どちら共わらわは評価しておるという事じゃ。正当にの」

ルーツィア「…!!」

 
ハインリーケ「それだけじゃ。…そなたも自分の成した正義には誇りを持つがよい、それも持てる者としての義務じゃからの」

ルーツィア「……。あんた、確か…ウィトゲンシュタイン大尉」

ハインリーケ「? それでも構わぬが、厳密にはザイン=ウィトゲンシュタインが苗名じゃ」

ルーツィア「…………ありがとう、ございます…」ボソ

ハインリーケ「いらぬ。これは情ではないのじゃからの、二度も言わすでない」

ルーツィア「……」


ハインリーケ「ふむ…。ときにそなた、配属はもう決まっておるのか?」

ルーツィア「ええ――ぁいや、はい。……第一夜間の、飛行隊のどこかっす」

ハインリーケ「なんじゃ、“あやつ”の居るとこか? むう、惜しいのぅ…」ムス

ルーツィア「?」

 
ハインリーケ「まあ、よいか。…呼び止めてしまってすまなかったの軍曹、わらわはもう行く」

ルーツィア「ぁ……はい…」ス

ハインリーケ「うむ、よい敬礼じゃ。次は“本国”でまた会おう」ファサッ


スタスタスタ――


ルーツィア「……。ザイン=ウィトゲンシュタイン…」




『うわっ!!』

『む? …なんじゃそなた? 急に飛び出してきて危ないのう』

『えっ!! ぁ、ぃいゃ……その…ご、ごめんなさーいっ!!』




ルーツィア「…?」


――タッタッタッタ


エステル「ひぃ~、びっくりした! 今のってまさかあの“姫様”?? め、めっちゃオーラある……こんな所で本物見ちゃうなんて…!」スタタ

ルーツィア「……」

エステル「あ、先輩! 代わりになりそうな物無かったんで廃棄されてたモップ破壊してみたんですけど、これでいいですか?」

ルーツィア(私が“持てる者”か、……んなこと大真面目に言ってくれやがって)フッ

エステル「…先輩? どうしたんですかー?」


~~~~~~~~~~~~~~



ルーツィア(片足どころか、自分が誰だかすら持ってない……その辺でのたれてる奴以下の私が“持てる者”だと言いやがった。しかもエステルの本質まで見抜いて、私がやらかした事も評価できるとか正当がどうとか勝手に…――)

ルーツィア「……チッ、くそ!」ゴソ


ルーツィア「~~」シュボ

 
ルーツィア「…………フゥーー…」グデ

ルーツィア(……でも実際、あの時言われて気づいた。自分じゃ“ただ適当に死ぬつもりでやった”んだと思ってた私より、私の本心言い当てやがってあの姫様…)プカ



ルーツィア「はぁ……。なんか、先生以外で初めてなんだよな……そういう奴…」チッ


ルーツィア「~、…フゥー……」




ルーツィア「……つうか、私とエステルのやった事が噂と逆だってなんでわかったんだ? エスパーか??(“お見通しじゃ”とか言ってたし…)」

 

―その翌日―


ガリア共和國 セダン


第506JFW A部隊基地



ロザリー「――じゃあ、その人は今もカールスラント空軍のNJGに?」スタスタ

ハインリーケ「かもしれぬな。詮索なぞしておらぬから何れの飛行隊に居るかは知らぬが、あやつならば今も何所かの夜空で使命を果たしておるじゃろう」スタスタ

ロザリー「……もしかして大尉、元々その子の事を知っていたんじゃない?」

ハインリーケ「! ほぅ…流石の教養じゃな、何故わかった?」

ロザリー「だって、そんな僅かな接触でそこまで言い切るのは誰が聞いても不自然よ? 彼女の偽りを看破したのだって、初対面だったとしてもそれ以前に情報を持っていたのよね?」


ハインリーケ「さあ、どうかのう」チラ

ロザリー「……」ニコ


ハインリーケ「…ふむ、降参じゃ。その通り、わらわは元からあやつを知っておった――」

ハインリーケ「ピッケンハーゲン家は小規模ながらの資産持ちで、我がウィトゲンシュタイン家とも社交上の付き合いがあったそうじゃ。わらわより二つ程上の娘が酷く病弱だったそうじゃが、娘が危篤を迎えて暫く姿を見なくなったと父上に聞いた憶えがある」

ロザリー「…その危篤だった子供が、“ルーツィア・ピッケンハーゲン”さん?」

ハインリーケ「うむ、一人娘じゃ。あやつに“弟”などおらぬ」

 
ロザリー「それで彼女が嘘をついているとわかったのね」

ハインリーケ「まあ、ある意味嘘ではなかろう。恐らく無断出撃をした本人の代弁をとっさにしたのじゃ――」

ハインリーケ「富は豊かとて“弱き者”であったあやつが魔法力を得た。だからこそ“持てる者”として果たせねばならぬ事が、恐らくあやつにも分かっておる。……ちとへそ曲がりではあったがな」

ロザリー「……」

ハインリーケ「……なんじゃ? 急に黙りおって」

ロザリー「ウフフ、いいえ。…大尉の“いい話”、もっと聞かせて?」ニコ

ハインリーケ「む……た、たわけた事を…。そなたが誘導するからいつの間にやら、この様な昔話になったのじゃ! //」

ロザリー「フフ」

ハインリーケ「~…ょ、与太話は終いじゃ! ほれ、もう通信室に着いた! さっさと本部報告を済ましてわらわは寝る」グッ



ガチャッ




『――ていう結果になって、だからウィトギ……あー…ウィトゲンシュタインさんにもちゃんと一票入ったよ?』ガザザ

那佳「やったー!! ほらっ、だから私言ったでしょ?」

イザベル「うーん、まさか本当に槍が降るなんてね。色物を好む人って何処にでもいるんだ?」

アドリアーナ「くっそぉ…、誰だよあの姫様に入れたやつ?」

那佳「はいはい! じゃあ二人とも貯金箱〈ここ〉にかけ金お布施してください♪」ジャラジャラ

イザベル「あ、僕はこの前の勝ちでその30倍積み立ててるからチャラで」

『お、なになに? 那ちゃん勝ったの? おめでと~!』ガザ




ロザリー「…………。……」

ハインリーケ「……あやつら、人の名前で何を興じておるのじゃ…? #」ピキ


【どっちの指令が好き?、終】

 
登場人物メモ


 ハインリーケ・プリンツェシン・ツー・ザイン=ウィトゲンシュタイン(Heinrike Prinzessin Zu Sayn-Wittgenstein)

※原作キャラクター※
(“ノーブルウィッチーズ 第506統合戦闘航空団”シリーズ:角川スニーカー文庫、他)

【以下、当 S S 上 で の 設定含む】
カールスラント空軍大尉、連合軍第506統合戦闘航空団A部隊の戦闘隊長を務めるナイトウィッチ。
原隊は第五夜間戦闘航空団第四飛行隊で、同団の司令に任命されている。
カールスラントに移住した名門貴族の家系の出自で、幼い頃よりウィッチとしての使命を厳しく躾けられて育つ。
そのため正義感が強く誇り高い。弱者を守る事を使命としている。

同じナイトウィッチで戦功や歳が近いハイデマリーに対しては、ライバル心を抱きつつも陰ながら気遣い、思い遣っている。
ルーツィア(リリー)がピッケンハーゲン家の実娘でないことは知らない。
ちょっかいを出されて以来、オクタヴィアとは出来る事なら二度と関わりたくないと思っている。

小話のつもりがじっくりやってしまった
のじゃ口調はむずかしいのう……

すみません、本編一話毎の長さが伸びそうなので九話は分割で更新します

 

【第九話 査察】



1945年。人類と異形の怪物“ネウロイ”が争う中心となってる此処――欧州の各地では、これまで以上に奇怪なネウロイが確認されてたらしい。


前に大陸東端とかオラーシャで噂になった人型、ヴェネツィアを巣にした新型、この間ベルギガの夜を騒がせたネウロイ・バウアーと……。



……これから、あたし達が経験する事になる全ても、その奇怪な怪物がきっかけだったんだと思う。






―深夜―


ベルギガ上空



敏恵「……」ブゥゥン


『――成る程のう、隠密の本体を媒介して基地のエネルギーを搾取するネウロイか…』

『はい…』

ハイデマリー「……本体の破壊に伴って遠隔型の様なネウロイが消滅したのは、私達が経験したものとはまた違いますね」ブゥゥン

『マッタク大変だったぞ。基地中大混乱だし、ズボンの中に入られてモゾモゾするし……サーニャにはぶたれちゃうしな…』

『そ、それはエイラが…――』


敏恵「……」

 
『でもその状況で“締め倒す”なんて凄い! …カールスラントの軍人ってお尻も鍛えてるんですか?』

『そなたは黙っておれ。話の邪魔じゃ』

『ひ、ひどい…!』

ハイデマリー「ぃ、ぃぇ……少なくとも私は…その、そういう訓練をした覚えはないです… ///」


敏恵(うーん、ナイトウィッチの魔導針って本当に便利だなぁ。……というか、これって結構凄い面子の会話だよね…?)モヤ




『中佐のアレはまあ……特別だろ。一応素手で倒したってコトで新聞に出たけどな』

『あ、私それ読みました! “通算200機撃墜”の記事ですよね?』

ハイデマリー「私も、既読しています。本当に凄いと思います」

『…ふむ、じゃが夜間撃墜ならばわらわ達の方が断然上じゃ。そなたはもう100を超すであろう?』

『ファ!? 夜間100機だって!?』

『……すごい…!』

 
ハイデマリー「ぁ、いえっ……そんなことは…――」

『なんじゃ、未だであったか?』

敏恵「……あー、確かさっき倒したので99機目だよね? マリ」

ハイデマリー「く、工藤さん!?」オロロ

『な、ナンダヨ…。ほとんど同じじゃんか…』

『というか、さっきまでネウロイと戦ってたんですか?』

ハイデマリー「えっ、ぁ……はい」

敏恵「そうだよー、那ちゃん。ここの所なんか多くてさぁ?」

『大変ですねぇ。怪我のリスクと一緒に給料上がったりします?』

『そんなのムリダロ』

 
『……ええいっ、外野が五月蠅い! 話が進まぬわ! ナイトウィッチ以外は黙っておれ!』

『ゥ…』

『む、大尉だってハイデマリー大尉と雑談しようとしてたじゃないですか』

敏恵「あのー、あたしは一応ナイトウィッチですけど?」

『知らぬ!! そなた等は引っ込んでおれ!』

敏恵「……(怒られちゃった)」ポリポリ


『まったく、だからわらわはこんな“慣れ合い通信”などお断りじゃったというのに…――』

『す、すみません…』

『よい、リトヴャク中尉。おぬしが謝る事ではない』

ハイデマリー「……はい。その、私がお誘いしたせいですので…」

『もうよいと言うておる。話を戻すぞ?』

敏恵(…なんかマリに迷惑かけちゃいそうだから、暫く黙って聞いてよう)

 
『……先にも少し触れたが、ガリアに侵入して来るネウロイも日増しに厄介になっておる。我々の予想を外してくるというか、多様化しておる様な印象じゃ』

『あ、結構前に“対ナイトウィッチ型”なんてネウロイも出ましたよね? 通信妨害をしてきた』

『うぐ…! あの時の事は思い出しとうないが、そうじゃな…』

ハイデマリー「通信妨害? …チャフですか?」

『わからぬ。言うてしまえばビームもそうじゃが、やつら特有のテクニックじゃろうな』

ハイデマリー「……」


『中尉の話におった隠密ネウロイ、それにコアが移動する型〈タイプ〉や成層圏まで届くネウロイ。……ロマーニャ方面の“異変”も顕著であろうが、カールスラント領から襲来する敵にも同程度の変化を感じる』

ハイデマリー「…はい。それは、私達の部隊も感じています」

敏恵「……」

『“ガリア解放後の残党討伐”とて、聞いてみれば妙な話じゃ。…中尉、件のネウロイも西方の巣からだったのじゃろう?』

『ぁ、…はい。……そうです』

『アー、そういえばあったなー? 沈んでた空母と合体したヤツ』

敏恵(空母と合体!??)ガーン

 
ハイデマリー「……ですがこうして、その……とも――…友軍同士で情報共有すれば、ネウロイの多様化にもいくらか対応していけると思います」

『そうですよ、人類みんなで結束すればきっと直ぐに勝てます! 戦争も終わって報奨金もがっぽり♪』

『……ふむ。まあ、そうかもしれぬがの…』

『…なんですか大尉? 終戦できたら、それくらい貰えたって――』

『そうではない! だだのう……』

ハイデマリー「…どうかしましたか? ウィトゲンシュタイン大尉」


『いや、うむ…。我々が一致団結なぞ出来れば良いであろうが…………そなた達も、急な客人には用心することじゃ』

『……?』

ハイデマリー「? どういう、ことでしょうか…?」

 
『数日前、セダン基地に妙な連中が何やらと調べに来おった。夜間担当者として、わらわが面倒な聴取を受けさせられたのじゃが』

『聴取…?』

ハイデマリー「……何を聞かれたのですか?」

『取るに足らぬ内容じゃったが、詳細は話せぬ。こうして告げ口するのもギリギリじゃ』

ハイデマリー(それはつまり、口止め…?)

『中尉の方へは直接関わって来る事など無いであろうが、501の主要面子はカールスラント空軍のウィッチじゃからな? あの隊長であれば心配無用なのかもしれぬが、面倒には一応備えておくと良いぞ』

『……は、はい』

『…じゃがシュナウファー大尉、恐らくそなた等の所へは直訪れるかもしれぬ』

ハイデマリー「ぇ…?」

敏恵「?」

 
『査察技術部のやつらじゃ、そなたも噂は聞いておろう? 知らぬなら耳の聡い特別准佐にでも聞くがよい』

ハイデマリー「……」


『それから、工藤大尉と言ったかのう?』

敏恵「…ぬぇぃ!? あたし??」ビク

『黒田中尉同様に扶桑のウィッチは間が抜けておる様じゃから、そなたもシュナウファー大尉の足を引っ張らぬよう、精々気を付けろ』

敏恵「……えぇ…(黙ってたのに、なんか怒られた…)」

『うわ、ひっどい!? そんなの偏見ですってば!』

『事実であろう』

『……確かに。普段のミヤフジと――…少佐もある意味、間が抜けてるカモな~』

『エイラ、やめて…』


ハイデマリー「……(査察、技術部が…?)」モヤ

 

―翌晩―


サントロン基地



エステル「今日は収穫なしかぁ」スタスタ


エステル(最近やけにネウロイが出るから、単独シフトの時に堕としまくってやろうと思ったのに…! 悔しいけど大尉が一緒だといつも先に倒されちゃうんだから)ッチ

エステル(仕官昇級審査も控えてるし、戦功の方も今のうちに稼がなきゃ! 次にライン川を越える時、今度こそ私の力で戦ってみせる!)



エステル「…………」



エステル「……ていうか、領土奪還号令はいつ出るのよ。早くしてくんないと遅咲のエステル・バルシュミーデ様だって引退しちゃうっての」

 
敏恵「――あ、エステルちゃんお疲れ…」スタスタ

エステル「…! ちょっと、遅いんじゃないですか先輩達? 交代来ないから勝手に上がりましたよ」

ルーツィア「悪い。こいつのせいだ」

敏恵「むぅ……だって仕方ないじゃないですか、急に頭痛がするんですもん。気になって哨戒なんて行けませんよぉ」

エステル「……」

ルーツィア「ざけんな。今時、ガキでももっとましな愚図り方するだろ」

敏恵「ぅぅ……本当なのに。あたし孤児院の子達以下ですか…」

ルーツィア「!」

敏恵「…フローラさんならもっと優しく――」

ルーツィア「何のことだ…? #」ゲシッ

敏恵「あいだっ!?」

 
エステル「おぉ! 先輩ナイスキックです!」

ルーツィア「ん。頑丈で助かるな、この義足」

敏恵「な、なにするんですかぁ…?」サスサス

ルーツィア「いいから急ぐぞ。じゃあな、エステル」スタスタ

エステル「はい、いってらっしゃーい」



『…不用意に話すなって言っただろ?』

『ぅ~……』



エステル「……」

エステル「はぁ~、なんと言うか…(あのヘンテコ大尉にすっかり馴染んじゃった私達も、相当よね)」


エステル「…………」


エステル「ま、いいわ。さっさと夜食済ませて勉強しよ」テクテク

 

ハルテ「…あ、いました! エステルさーん?」スタタ


エステル「ん? 今度は誰――」チラ

エステル「て、ハルテちゃん? 珍しいわね夜食時なのに。もしかして後は私だけ?」

ハルテ「いえ、そうではないですが。隊長さん達が呼んでいます」

エステル「…? 私を?」

ハルテ「はい。軍本部から何方かいらっしゃっているらしくて…」

エステル「??」

 
 
執務室




『隊長ー? エステル・バルシュミーデが来ましたけど、入ってもいいですかー?』コンコン


オクタヴィア「!」

ハイデマリー「ぁ、…はい。どうぞ」


『……例によって聞こえないけど、入りますよー?』


ガチャ


エステル「失礼しまぁす。隊長が呼んでるって聞いたんですけど、何ですか?」

オクタヴィア「……」

エステル「…あれ、副隊長まで? まだ寝てなかったんですか」


???「貴方を呼んだのはこちらです、エステル・バルシュミーデ少尉」


エステル「は?」

???「……」コホン

エステル(…………ぁ、そういえば誰か来てるんだったわね)

 
???「シュナウファー大尉、少尉へ説明を」

ハイデマリー「ぇ? あ、はい…」

エステル「?」

ハイデマリー「エステル少尉、こちらは空軍戦闘脚査察技術部のレベッカ・ホルテン中尉です」

レベッカ「……」

エステル「はあ…? そうですか(夜中にご苦労だこと。ていうか、名前くらい自分で名乗りなさいよ)」

ハイデマリー「それで、その……レベッカ中尉から少尉に聞きたい事ががあるので少し――」

レベッカ「それでは困ります」


ハイデマリー「…ぇ?」キョトン

レベッカ「その言では語弊が有ります。これから行うのは質問ではありませんし、“私から”と言うのも正確ではありません」

ハイデマリー「す、すみません…」

エステル(…何この女? 私達の隊長に向かって偉そうね)

オクタヴィア「……」

 
レベッカ「バルシュミーデ少尉。我々は空軍司令部の命を受け、その役を代行するものである。従ってこれより貴君への尋問を含め、以降の我々の行動は司令本部の代行権限によりその効果を持つものである」ピラ

エステル「……。…は?」

レベッカ「貴君は私の問いに対し、嘘偽りを述べる事、また黙秘によってこれを拒否する事は処罰の対象になる旨を理解しなさい」

エステル「えっ」



レベッカ「……」

エステル「…?」



レベッカ「少尉、理解を終えたなら返事を」

エステル「いや……は? 何…??」ポカーン

 
オクタヴィア「…翻訳してあげると、その“ロボ子”ちゃんは貴方に聞きたい事があるのよ」

ハイデマリー「でゅ、デュッケ少佐…!」オロオロ

オクタヴィア「大尉、あたしは特別准佐。…あの子の前ではつまらない間違いもしない方がいいわよ」

レベッカ「……」

オクタヴィア「とりあえず少尉? ロボ子中尉の質問に答えてあげれば大丈夫よ、別に大した事じゃないわ」

エステル「はあ…? まあ、わかりました」

レベッカ「デュッケ准佐、私の呼称から全てが不適切です」

オクタヴィア「あら、だったら貴方達の大した事情をあたし達にも説明して頂戴?」

レベッカ「繰り返しますが、そういった指示は受けておりません。…これ以上は軍務遂行を妨害する意図があると考えてよろしいですか?」

オクタヴィア「……どうぞお好きに。もう黙るわ」

ハイデマリー「……」

 
レベッカ「…では答えなさい、バルシュミーデ少尉」

エステル「なによ?」ジト

レベッカ「……。正しく答えなさい、少尉」

エステル「(チッ、なんなのよこいつ)…了解。なんでありましょうかっ!」

レベッカ「…3ヶ月前、貴君が東方国境哨戒中にネウロイを発見、戦闘を行ったことを思い出しなさい」

エステル「3ヶ月前…?」

レベッカ「有極性に酷似した再生をする特異性質の個体です」

エステル「ゆうきょ……何よそれ?」

ハイデマリー「…ぁ! もしかして工藤さんとの初哨戒で出たネウロイじゃないですか?」

エステル「あー、大尉が私を殺しかけた時の奴ね。破片が再生して増えたネウロイだったけど、それが特異性質なんですか?」

レベッカ「貴方の意見も質問も求めていません。聞かれた事への回答のみしなさい」

エステル「…… #」イラ

 
レベッカ「“その戦闘の直後に別のネウロイを取り逃がした”と…この基地の哨戒記録及び、上層部への総括報告内で言及されています」パサ

エステル「別のって――……ああ、そういえばそうでしたね」

レベッカ「以降、そのネウロイを発見した事は?」

エステル「…? いや、ないですけど」

レベッカ「では哨戒報告以外でそのネウロイについて言及した事は? 基地の内部、又は外部の人間に話した事は?」

エステル「ぃ、いえ……ないです。ていうか忘れてたし、自分には何だったのかよくわかりませんでしたから」

レベッカ「よく分からなかった? ……エステル少尉、貴君はこの状況を理解していませんね」ゴソ

エステル「はい?」


レベッカ「……」チャキ

エステル「!?」
 

 
オクタヴィア「…!」

ハイデマリー「!!? 中尉――」

レベッカ「何方も動かないでください。やましい事が無いのであれば」

ハイデマリー「ッ…!? ……?」ビクッ

エステル「……ちょっと、どういう事よ?」

レベッカ「我々の尋問に対して何故嘘をつくのか。言わなければ空軍本部元帥閣下の代理権限を持って、この場で処罰します」カチ

オクタヴィア(…!)

エステル「ちょっ!? 嘘なんかついてないってば!! ゃ、ゃめ…っ!」タジ

レベッカ「ならば取り逃がしたネウロイが行き来した方角まで断定報告できたのは何故です? 貴君の魔導針がネウロイを捉えたからでしょう」

エステル「っ…???」

レベッカ「“よく分からない”等という見え透いた嘘は我々に通用しない、少尉。隠している事を全て話しなさい」

 
エステル「ちょ、ちょちょっと待って!? 本当に分からないですってばっ…! あの時発見したのは工藤大尉だし――」

レベッカ「!?」ピク

エステル「わた…じ自分のレーダーには何も反応なんてなかったですし、そいつについての報告だって大尉が…っ」

レベッカ「……工藤敏恵…扶桑海軍大尉が?」

エステル「そ、そうですよ! 私達は嘘なんかついてないんだからっ……その銃下ろしてくださぃ…!」タジタジ

レベッカ「……?? そんな、馬鹿な…」


オクタヴィア「…残念だけどここにいる全員、貴方が何言ってるのか全然分からないのよねぇ?」

レベッカ「……」

オクタヴィア「何かやましいのはあたし達じゃなくて、“逆”なのかしら?」

レベッカ「! …それはどういう意味でしょうか? デュッケ特別准佐」ジロ

オクタヴィア「うふふ、いいからそれ下ろしなさい“中尉”。恐喝はあたし達の仕事じゃないわよぉ?」

レベッカ「……」

 
ハイデマリー「ぁ、あのレベッカ中尉…? とりあえず落ち着いてはどうでしょう?」

レベッカ「……」

ハイデマリー「少なくとも私達に虚偽はありませんし、そのような物を持ち出すのはいくらなんでも非常識です…」

レベッカ「…なるほど、虚偽は無いのですか。ではその根拠は何処に?」

ハイデマリー「それは、今ここで証明はできません――」


ハイデマリ「ですが……私が隊長として、隊員の発言に責任を負いますっ…!」


レベッカ「……」

エステル「た、隊長…!」ジーン

オクタヴィア(うふふ、マリーちゃんもリーダーとして随分逞しくなったわね)

 
レベッカ「…わかりました、いいでしょう。ですが万一の場合、責任は甚大ですよ?」ス

ハイデマリー「はい」ホッ

エステル(……マジでビビった…。安全装置しっかり外して向けるなんて、この女どうかしてる!?)ヘナ


レベッカ「しかし腑に落ちませんね。工藤扶桑海軍大尉は魔導針を操ることが出来ない筈では?」

レベッカ「…それに少尉? レーダー探査を行えた筈の貴方の方が何も察知しなかったという事は、貴君の職務に怠慢があった事に他ならないでしょう。これはこれで別件として問題です」

エステル「はぁ?? ちょ、ちょっと待って!」

オクタヴィア「(ああ、そういう事ねぇ)…横からまた失礼するけど、それこそ貴方には関係無い仕事でしょ?」

レベッカ「…。確かに、それは仰る通りですね。失礼」

オクタヴィア「仮にそんな問題があれば私がとっくに処理してるわ」

レベッカ「……つまり私の見解違いであると?」

オクタヴィア「途中までは合ってたわよ? 工藤大尉は本当に魔導探査が出来ないわ」

 
レベッカ「…それなら少尉は何故?」

エステル「いや、何故って言われても……ホントに私の魔法では全く捉えてなかったんですけど?」

エステル「確か…大尉がまだネウロイいるって言ったから一応ちゃんと索敵しましたけど、それでもあれでしたから」

レベッカ「……。確認しますが――」チラ

ハイデマリー「!」ドキ

レベッカ「本当に工藤扶桑海軍大尉は魔導派によるレーダー探査が出来ないのですね?」

ハイデマリー「は、はい。…工藤大尉はナイトウィッチですけど、探査魔法は習得していない筈です」

オクタヴィア「あの子が使うのは基本的な魔法力の念動と“超夜間視力”だけよ。なんなら資料読む?」

レベッカ「夜間視で? ……そんな訳が…――」ボソ

ハイデマリー「?」

エステル「……はぁ~! あのー、これいつまで続くの…?」

 
レベッカ「…いいでしょう、一先ずこの尋問は終えます。工藤扶桑海軍大尉は現在どちらに?」

ハイデマリー「え? あ、工藤大尉は恐らくもう……~?」チラ

エステル「はい、ちょっと前に先輩とハンガー行きましたよ。今頃もう哨戒中じゃないですか?」

レベッカ「……分かりました。では、そちらはお姉様に任せる事になりますか」

オクタヴィア「!? ちょっと待ちなさい中尉、ホルテン中佐は手洗いにと出て行った筈だけど? 隊長か私の立会い無くハンガーへの侵入は――」

レベッカ「我々は戦闘脚査察技術部です。今回の軍務において、中佐にはその権限がありますので」

オクタヴィア「っ…」グヌ

ハイデマリー「デュッケ少佐…?」


オクタヴィア(最悪だわ。……ルーちゃん敏恵ちゃん、その人には気をつけて!)

 
 
格納庫




敏恵「ぅ~……やばいぃ…」トボトボ

ルーツィア「いい加減、猿芝居やめろ」テクテク

敏恵「嘘なんかじゃないですよぉ……なんか胸も痛くなってきたし…」

ルーツィア「……。乳房がきついんだろ、前外せば?」

敏恵「ち、違いますから… //」

ルーツィア「はぁ……ったく、私だって進んで行きたくなんかないよ。ここんとこ夜間出没も頻繁だし」

ルーツィア「ぶっちゃけお前の強さはシュナウファー並に助かるんだ。索敵は私がやってやるから戦闘時くらいは――……?」チラ


敏恵「ぅ~…」ヨタ

ルーツィア「おい、聞いてる? …まさかマジで調子悪いのか?」

敏恵「ルーツィアさん、あそこ…」チョイ

ルーツィア「ん?」チラ

敏恵「なんか……知らない人がいる? あたしのストライカー…」

ルーツィア「…? 誰だ、あの女?」

 

???「ふぅん、これが扶桑の夜間航空専用ユニット? …猿真似にしては、まあまあって所ね」ペタ

整備兵「ぁ、あの中佐殿。失礼ですが立入の御許可は…?」

???「はぁ? ああ、取ったわよ。貴方もう用無いから行っていいわ」

整備兵「いえしかし、我々は何も聞かされては……。念の為その、恐縮ですが確認を――」

???「うるさいわねえ? 貴方、自分が誰に口答えしてるかわかってるの?」

整備兵「!?」

???「従順なのは実に良い事だけど、仕事の邪魔だから。…消えなさい?」

整備兵「……し、失礼しました…!」タタッ



???「さてと。ゲッコウ…だったかしらね?」ゴソ

 
???「どれどれ、相変わらずの“紙飛行機”なのかしら?」ブンッ


ガンッ ガヅィンッッ

ガヅンッ ガィィンッ


???「……いやだ、もうヘコんだ? 冴えない強度だこと」



『ちょーー!!? ちょちょっと、何っやってるのーっ!?』



???「あら、何…? 騒々しいわね」


――タッタッタッタッ


敏恵「や、やめてやめて!! それ、あたしのストライカー!」ダタッ

???「…これ、貴方の航空ユニットなの?」

敏恵「へぇ…っひぃ……~。そ、そう……ぜはっ…、だからそんな…勝手にトンカチで叩かないっ……~でぇ…!」ゼーゼー

???「……。ふぅん…」

 
ルーツィア「――んおい、待てよ大尉!」トタトタ

???「!」

ルーツィア「っ……くそ、こっちは満足に走れないってのに…!」ヨロッ

???(“大尉”…? 不名誉勲章、ルーツィア・ピッケンハーゲンが一緒という事はこの東洋娘もここのウィッチ――)


???(…なら、本当に夜の女王さまなのね? “あの”)クス


敏恵「!(な、何?? なんかジロジロ見られてる…)」

???「なるほど。貴方がサトハ・コゾノのデバイサーって訳ね? 東洋人はだいたい同じだけど、確かに見た顔だわ」

敏恵「で、でばいさー?? あたしは工藤敏恵だけど――」

???「そんな名前だったかしら? まあ、どうでもいいわ」

敏恵「は…?」

ルーツィア「おい止めとけ大尉、階章見ろ」グイ

 
ルーツィア「……こいつ空軍中佐だ、めんどくさくなる前に無視して行くぞ?」ヒソヒソ

???「それに気づいて敬礼ひとつも出来ないのかしら? ピッケンハーゲン曹長」

ルーツィア「!?」


???「フッ、残念だけど耳は良いのよ?」

ルーツィア「……。失礼しました、中佐殿」

???「よく出来ました。…貴方は?」チラ

敏恵「え? ああ、はい。すみませんでした…………ていうか、誰ですか?」

???「……躾がなってないわねぇ? けどまぁ、ここまで保てているなら大したものかしら」

敏恵「?」

 
???「自己紹介してあげるわ。わたくしはヴァルトラウト・ホルテン、カールスラント空軍戦闘脚査察技術本部の人間よ」

ルーツィア「…!(“ホルテン”?)」

敏恵「はあ…? どうも、ホルテン中佐…」

ヴァルトラウト「貴方がプラナリアンとバウアーを倒したんですってね? そこのガラクタでやったのなら、なかなか上出来じゃない?」

敏恵「む…っ(“ガラクタ”!?)」

ヴァルトラウト「ん~…でも、身体もいい感じにやられちゃってるわね?」グニ

敏恵「んいっ!?」

ヴァルトラウト「毛細血管の流れが悪そう。血圧いくつかしら?」グググ

敏恵「あ、あのっ?? 目の下引っ張らないでぇ…! 乾く、かわくっ!」

ヴァルトラウト「…それから――」フニュ


ぐにぃぃいいッッ


敏恵「い゛ぃ゛っッづ!!?」

ルーツィア「!? おいッ!!」

 
ヴァルトラウト「さっきからここを気にしてる。……胸痛も慢性化してるのかしら?」ググググ

敏恵「いだだだだッ!!?!?」

ルーツィア「止めろ!!」バッ

ヴァルトラウト「んー…この手触り、その黒い軍衣は魔法繊維製ね。ふぅ~ん」サッ

ルーツィア「大尉、大丈夫か?」

敏恵「~っ……ひ、ひぃぃ…。胸が潰れるかと…」ヘナ


ヴァルトラウト「いやだ、ごめんあそばせ? つい力が入り過ぎてしまったわ」クスクス

ルーツィア「…ッチ」ジロ

ヴァルトラウト「そんな目で見ないでくれる? 御利口できたお猿さんには、ちゃんと礼を弾むわ――」ゴソ

 
ヴァルトラウト「…はい、どうぞ。取りなさい?」ス

敏恵「っ……は、はひ…?」ビクッ

ヴァルトラウト「フフ、怖がらなくていいのよ。ほんのお詫びのチョコだから」

敏恵「…………ちょ、チョコ…?」グスン

ルーツィア(…?)

ヴァルトラウト「貴方の大好物でしょう、これ? “我慢しなくていいのよ”」クス

敏恵「……ベルギガの、高いやつですか…?」ヒョイ

ルーツィア(おいおい、受け取るのかよ。とことん現金だなこいつ…)ハァ

ヴァルトラウト「フフ、そんなものよりずっと高価よ」

敏恵「グスッ…。…ふりぃぐ……“フリーガーチョコレート”…?」カサ


ルーツィア「――!!」
 

 
敏恵「……ぁ~」アーン

ルーツィア「食うな大尉!! 捨てろッ!!」バシッッ

敏恵「あっ…!」


ポテン…


ルーツィア「っ…!」グシャッ

敏恵「!? あ~ーっ!! あたしの高級チョコが……」


ヴァルトラウト「いやだ野蛮。せっかくあげたのに、貴方最低ね?」

ルーツィア「……てめぇ、何の真似だ…?」ギロ

ヴァルトラウト「おまけに口も悪い。時代が時代なら殺してるわよ?」

ルーツィア「…こっちは今にもヤル気だ。失せろ」

ヴァルトラウト「下士官風情の指図なんて当然、お断り。貴方達がさっさと仕事へ行きなさい、出撃るんでしょう?」

ルーツィア「っ…」

ヴァルトラウト「…ほら、ぶつの? 失せるの? さっさとしなさい、愚図は嫌いよ」

 
ルーツィア「……ッチ、行くぞ!」グイ

敏恵「ぁ…、えっ? あの――」ヨロヨロ


――スタスタスタ




ヴァルトラウト「……フッ。あの東洋娘、予想以上には使えそうね?」ス

ヴァルトラウト「レベッカ、応答しなさい」


ガザザッ


レベッカ『はい、お姉様』ガザ

ヴァルトラウト「プランBも有りそうよ。丁度パトロールに行くみたいだから、ちょっと見学させてもらいましょう? 直ぐに飛行艇まで来なさい」

レベッカ『承知しました。…………後ろでデュッケ特別准佐官が抗議をしていますが?』

ヴァルトラウト「無視しなさい。その女は力ずくまではしてこないわ」

続きは来週以降の予定です

>>697訂正

大陸東端 → 大陸西端

 
[解説メモ]


・ヴィルケ中佐の通算200機撃墜

カールスラント空軍ウィッチ中佐で連合軍第501統合戦闘航空団司令(ストライクウィッチーズ隊長)を務める“ミーナ・D・ヴィルケ”さん19歳は、1945年5月某日にロマーニャ第二次501基地へ侵入したネウロイを見事撃墜。
結果、通算撃墜数が200機に達し柏葉剣付騎士鉄十字章を受勲した。

ヴィルケ中佐は200機目撃墜の際にストライカーユニットはおろか携帯銃1丁すら持っておらず、なんと徒手空拳によってネウロイを破壊した(!?)

――…と主に語られるが、実際はネウロイが中佐のズボン中に侵入した所をお尻(恐らく大殿筋だと思われる)で絞め潰したのである。
何を言っているのか分からないと思うかもしれないが、きっとネウロイも何をされたのか分からなかったに違いない。

真実は『※TVアニメ「ストライクウィッチーズ2」第7話:もぞもぞするの』で確かめよう!


・ガリア解放後の残党討伐

1944年9月に501部隊がガリア共和国圏のネウロイの巣を破壊してから、国内に残存する勢力を撃破してガリアの完全開放を成し遂げ、第一次部隊解散を迎えるまでの戦い。

一時は掃討を完遂したとして501各ウィッチが原隊復帰のため準備を進めていたが、そこへブリタニア空軍の元秘密兵器ウォーロックを模したネウロイが発見されたとの情報が入る。
帰国路を行っていた501部隊は一転、“カールスラント地区へ向かう謎のネウロイ”を追撃する事になったのだが、その先にはかつてのビフレスト作戦で沈んだ“悲劇の空母”の姿があった。

※詳細はゲーム『ストライクウィッチーズ 白銀の翼』を参照のこと

>>730訂正

直ぐに飛行艇まで来なさい」 → 直ぐに輸送機まで来なさい」


海上でもないのに飛行艇はおかしかったです。失礼しました

 

ベルギガ上空



――ブゥゥウン


敏恵「……」

ルーツィア「…… #」イライラ


敏恵「あの、ルーツィアさん?」

ルーツィア「あ?」

敏恵「(うっ…、さっきの人のせいですこぶる機嫌が悪そう!)えぇと……なんでさっき、そのぉ…あたしのチョコを踏みつけちゃったのかなーと…」

ルーツィア「……」

敏恵(…やっぱり地雷だったかな? でも気になるし)

ルーツィア「お前、あんな物が好物なのか?」

敏恵「えっ?」

ルーツィア「……」

敏恵「…まあ、はい。好物ってほどじゃないですけど、チョコレートは美味しいと思いますよ?」ポカーン

 
ルーツィア「……やっぱそうだよな。ただの食い意地か」ハァ

敏恵「はい?」

ルーツィア「ナイトウィッチにタンクチョコなんか渡しやがって、あの女… #」チッ

敏恵「??」

ルーツィア「――けどさ、お前もよく知りもしない奴から貰った物なんて口にすんじゃねえよ。乞食じゃあるまいし」

敏恵「ぅぅ……なんだかよくわからないけど、ごめんなさぁい…」


ルーツィア「それより、体調は大丈夫なのか? 胸痛もするってのは…」

敏恵「え? あぁ…………はい、大丈夫です(まだちょっと辛いけど、ルーツィアさん機嫌悪いから我慢しておこう)」

ルーツィア「そう。ならいいけど、無理すんなよ」

敏恵「は、はい…」

 
ルーツィア「ネウロイも昨日出たばっかだし、今日は私に任せて適当に流しとけ」

敏恵(優しい!)


ルーツィア「――と言いたいとこだけど……悪い。一応、振舞だけはそれらしくしとけ」

敏恵「えっ」

ルーツィア「…後ろ1.075キロ、雨雲高度の上。基地からずっと付いて来やがる」フィン

敏恵「付いて来るって……な、何がですか?」

ルーツィア「管制から通知ねえってことは、さっきの“ババァ”だ。表にあった輸送機かもしれない」

敏恵「(ルーツィアさん、あの女の人の呼称がどんどん悪くなる)……でも、なんで?」

ルーツィア「知るかよ。…ただ、技術部つってもあそこは諜報と同じパイプが存在するって少佐に聞いた事がある」

敏恵「えっと…戦闘脚、査察技術部? ~」モヤ

ルーツィア「いきなり何しに来たんだか知らねえけど、念の為に体裁は繕っとく方がいい」

敏恵「……ぁ! そういえば昨日、その査察技術部があたし達の所にも来るかもしれないって聞きました」

ルーツィア「! …なんだそりゃ、シュナウファーが言ってたのか?」

 
敏恵「あ、いえ。506の人から」

ルーツィア「は?」

敏恵「セダンの基地にも来たらしいけど、なんかマズい事しちゃったんですかね? 査察されるって…」

ルーツィア「……」


敏恵「でもあたし、特に悪い事した覚えないし。園さんもちゃんと手続して派遣してくれてる筈だと思うけど…」

ルーツィア「他所の、つうか技術部が現場見て廻るの自体は特に異常でもないけどな。…お前も航空審査部なんてとこ所属なら分かるだろ?」

敏恵「まぁ…確かに。あたしはテストウィッチですけど園さんは偶に出張してた気がします。参考データの収集、とかだったかな?」

ルーツィア「ああ。どうせそんなとこだろ、名前の通り用があるのは私らじゃなくてストライカーだろうしな――」フン

ルーツィア「…とはいえあの中佐、“ホルテン”には最低限関わらない方が良さそうだ」

敏恵「へ…? どうしてですか?」

ルーツィア「どうしたもない、さっき体験しただろ。あんなのと仲良くできんのか?」

敏恵「ま、まぁ…はい。そうでしたね…」

ルーツィア「……少佐の話通り胸糞悪そうな奴だ、あいつ…」ボソ

敏恵「はい? なんですか?」

ルーツィア「…ん、なんでもない。独り言」

敏恵「?」

 
ルーツィア「まとにかく、ちょっと話つけるから。大尉は黙ってな」

敏恵「あれ、通信する気ですか? 関わらない方がいいって言ったのに」

ルーツィア「邪魔だって教えてやるだけだ。……接近する、こっちも高度上げるぞ?」ブゥゥン



――――
――




ルーツィア「……こちらNJG1第四飛行隊、哨戒飛行中のウィッチだ。後ろの飛行物体応答しろ、返答なければ撃墜対象だ」

敏恵(ルーツィアさん、絡み方が嫌悪感丸出し…)


――ガザッ


ヴァルトラウト『スコープも持たないで哨戒任務とは斬新なことね。それとも友軍の機体すら判別できないお間抜けかしら、曹長?』

ルーツィア「……こいつは失礼しました。“ユーおばさん”に誰が乗ってるかと思えば、なるほど中佐殿か」

レベッカ『! …貴方、下士官の身分でなんですか? その無礼極まる物言い――』

ヴァルトラウト『いいわレベッカ、下がりなさい』

レベッカ『……了解しました』

ルーツィア(誰だこいつ…?)

敏恵「?」

 
ヴァルトラウト『それで、何か用かしらピッケンハーゲン曹長?』

ルーツィア「それはこっちの台詞なんすけどね? 無計画にちょろつかれると哨戒の邪魔になりますから」

ヴァルトラウト『お互いにそれも仕事よ、曹長。しっかりおやりなさい?』

ルーツィア「…万が一の時は責任持てないすから、死んでもこっちは知りません」フッ

ヴァルトラウト『あらいやだ、何を言っているのかしら? 貴方達は私が乗るこの機を護る義務があるのよ?』


ルーツィア「……勝手に付いて来てふざけてんじゃねぇ #」ビキ

敏恵(うわ、ルーツィアさんまた…!)

ヴァルトラウト『口答えはいいから護衛なさい。有事の際は私が貴方達の指揮権を持ってあげるわ』

敏恵「!?」

ルーツィア「余計な世話だ。…何しに来たんだか知らねぇが邪魔だっつってんすよ? #」

ヴァルトラウト『フッ、貴方って本当に愚図ね?』

ルーツィア「あ゛…? ##」

ヴァルトラウト『貴方に対するわたしくしの言葉は全て命令なのよ? 給与を貰っているなら組織秩序には黙って従いなさい』

ルーツィア「っ…」グヌ

 
ヴァルトラウト『貴方は探査の情報も逐一報告すること。そろそろネウロイも出そうだから、そうしたら私の指示通りに動きなさい』

ルーツィア(何言ってやがる、昨日の今日でまた夜間ばっかネウロイが来るかよ)イライラ

ヴァルトラウト『ほら、返事』

ルーツィア「……了解だよ、クソが」

敏恵「る、ルーツィアさん…」


ルーツィア「…基地に連絡する。少佐やシュナウファー達もババァ探してる筈だ」

敏恵「えっと、そうですね。何の知らせも無かったですし」

ルーツィア「先ずこのムカつく状況を報告して、とりあえず今夜は――」



ルーツィア「…! ん…?」フィン フィン




敏恵「どうしました、ルーツィアさん?」

ルーツィア「…………西から越境する飛行体…!」

敏恵「えっ」

 
ルーツィア「チッ、どういうことだ…!?」

敏恵「カールスラント領からってことは、ネウロイですか!?」

ルーツィア「こっちに真っ直ぐ来てる…? あの女の言う通りにな――」

ヴァルトラウト『報告しなさいと言った筈よね? ナイトウィッチ曹長』ガザ

ルーツィア「!」

ヴァルトラウト『魔導針の発光反応で新機影を捕らえたのは分かるわ。数と距離を報告しなさい』

ルーツィア「……同高度、正面4キロ強から2つ」

敏恵(2体も!?)

ヴァルトラウト『ふぅん…? 丁度いいわねぇ』

レベッカ『お姉様、複数敵機は少々危険かと。我々は少し離れましょう』

ヴァルトラウト『なにレベッカ、怖いの? 相手は本命じゃないわ。寧ろ2対2で都合がいいじゃない』

 
敏恵「ぇ…? えぇっ! あの、逃げないんですか!?」ガーン

ヴァルトラウト『あら、やっと喋ったわねお猿さん。貴方はこの輸送機の護衛よ、私達の見える位置で戦いなさい』

敏恵「は、はい!? あたしが??」


ヴァルトラウト『曹長は敵一機を引き離して撃墜。くれぐれもこちらの邪魔をしないこと』

ルーツィア「ッ…ふざけんな!! 意味なく飛んできやがって、邪魔してんのはそっちだろッ!?」

敏恵「!?(ルーツィアさんキレた…!!)」ビクッ

ヴァルトラウト『一度で学習しなさい、指揮官命令よ。貴方は誘い出した一機を墜とすまで死んでも戻らないこと』

敏恵「ちょちょっ…待ってくださいホルモン中佐!?」アタフタ

ヴァルトラウト『わたくしは“ホルテン”よ、お猿さん?』

敏恵「護衛って、あたしそういう戦闘経験無いですしっ…! 実はその、シールド張るのも結構苦手で、それだったらルーツィアさんの方が――」

ヴァルトラウト『はぁ~~、貴方もなかなか馬鹿なのね? 疲れるわぁ…』

敏恵「っ!?」

レベッカ『くどいです工藤扶桑海軍大尉。現在この場の指揮権者は中佐に有り、そして貴殿は命令に従事するのが義務です』

敏恵「そ、そんな…」

 
敏恵「そ、そんな…」

ルーツィア「…おい指揮官様、ネウロイとの戦闘は遊びじゃねぇんだぞ? #」

ヴァルトラウト『言われるまでも無いわね。無駄口はいいから貴方はさっさと行きなさい、二機ともこっちへ来ちゃうじゃないの』

ルーツィア「…………もう知るか、勝手にしろ」チッ

ヴァルトラウト『上手くやりなさい。ちゃんと一機だけ誘導するのよ?』


ルーツィア「大尉、なるべく急いで戻る。…ヤバくなったら呼べよ?」ヒソ

敏恵「あ、はい! …でもルーツィアさん、あたし――」

ルーツィア「敵はもう直ぐそこだ、私の行く方を夜間視で確認しろ」

敏恵「えっ! 待ってルーツィアさん!?」



ブゥゥウン――



敏恵「……」