敏恵「今度こそ、ストライクウィッチーズ!」 (296)

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447492531/
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1472955154/

↑の続き


概要は→ http://ss.vip2ch.com/jmp/1447492531

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1494166609

 
 ■一応で大雑把な前説■

幼い頃に大空を飛ぶことへ憧れ航空ウィッチとなった工藤敏恵は、転戦転属の末1945年の春、援戦武官として欧州ベルギガ領サン・トロン基地のカールスラント軍第一夜間航空団第四飛行隊指揮下に配属された。
かつて「夜の女王」、「扶桑海軍の鎌鼬」と噂されたナイトウィッチの実力を活かし戦果を上げる敏恵だったが、自身が持つ能力と過去の秘密を知り挫折してしまう。
その後規格外の特異型ネウロイ“リーパー”討伐作戦において危機に瀕した仲間を救うため、敏恵は真のウィッチとして改めて夜空を飛ぶ覚悟と共に見事リーパーを撃墜するが、負傷により戦線を離れ帰国の末に療養生活を余儀なくされてしまった。


それから幾月の時が過ぎ、ネウロイと争う最前戦地の欧州では、新たな事変と共に人類の英雄部隊が再び集結していたのであった――
 

 

ストライクウィッチーズ the 3rd like ~彗撃の明かり~

 

 
【第一話 再始動】



―1945年 9月―


ガリア共和国東部


ハイデマリー「…ミーナ中佐、今、カールスラント国境付近に新たなネウロイの兆しありと報告を受けました」 フィィン

ミーナ「聞いたわね皆。新たな脅威に対し、我々がなすべきことはただひとつ――」


ミーナ「ここに501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズを再結成します!」

ハイデマリー「!」



シャーリー「お!」

ルッキーニ「やたー♪」

バルクホルン「ん、了解だ!」

 
エイラ「今さら驚かないけど、急だなマッタク」

サーニャ「嫌なのエイラ…?」

エイラ「えっ? ぁイヤ、そうじゃないぞ!?」

ペリーヌ「…エイラさん達は相変わらずの様ですわね」

芳佳「501再結成…! じゃあ、私もまたみんなと飛べるんですか!?」

リーネ「そうだよ芳佳ちゃん! また一緒にいられるんだよ!?」




ハイデマリー「……あの、ミーナ中佐? 今の発言は本当なのですか?」ブゥゥン

ミーナ「ええ本気よ。宮藤さんの復活は流石に驚いたけど、こうなる事に備えた根回しもしてあるから、少し準備不足ではあっても多分なんとかなるわ」

ハイデマリー(す、凄い…。いつの間に、一体どうやって…??)

ミーナ「ハイデマリーさん、貴方達も私の当面指揮下として一先ずは付いてきてくれると助かるわ」

ハイデマリー「え? ぁ、はい。ですが空軍司令部がどう言ってくるかは……あの、私は一度本部へ戻る必要があるかと」

ミーナ「勿論その通りね。だから少なくとも道中はまだ一緒よ」

ハイデマリー「ぇ…?」


――ガザッ


美緒『中佐、取り敢えずこれからどうするつもりだ? どこに腰を落ち着ける?』ザザ

ハイデマリー(――! 扶桑海軍の坂本少佐…)

 
ミーナ「…私の部隊がいるサン・トロン基地へ向かうわ。そこを拠点にまず色々調整する事になるわね」

ハイデマリー「!」

美緒『うむ、やはりそうか』

ミーナ「これから近くにある統合軍指揮下の拠点を頼って、明日一番でベルギガを目指しましょう。補給と整備をして1日あれば着ける筈」

美緒『了解した。ならば話は降りてからだな?』

ミーナ「ええ、とにかく付いて来て」

ミーナ「…501部隊いいかしら、皆聞こえてる? 我々はこのままディジョンの航空基地に移動します!」

『『了解』』ガザ


ハイデマリー「“ディジョン基地”……ということは、まさか506B部隊ですか?」

ミーナ「そうよ。あそこなら色々と都合が良いんだけど、いきなりこの人数で押し掛けるのは流石に気がひけるわね」

ハイデマリー「……」

ミーナ「…悪いけどハイデマリーさん、短波通信でディジョン基地に連絡を繋いでくれないかしら? 到着してしまう前になんとか話をつけてみるわ」

ハイデマリー「ぁ、はい…」

 
ガリア共和国 ディジョン

506JFW B部隊基地


静夏「うわぁ…! ここが第506統合戦闘航空団、あのノーブルウィッチーズの…!!」

ペリーヌ「服部さん、念のためこちらの基地でその言い方は控えなさい」

静夏「え?」

ルッキーニ「お腹すいた~」

エイラ「オー、結構ハンガー広いな?」

シャーリー「ここってリベリオンのウィッチだけなんだよな? たしかカール大尉もどっかに…?」キョロ

エーリカ「ふわぁ~。久々に頑張ったら眠くなってきた」

サーニャ「私も少し、眠いです…」

 
ルッキーニ「…ねえねえ、ごはんってどうなってんのー? みんなでなんか食べるのかな?」クイクイ

シャーリー「え? あーうん、かもな。今日はここに泊まるみたいだけど…その辺どうなんだバルクホルン?」チラ

バルクホルン「いや私も正直ここへ来た事には面食らっているが、とにかくミーナと話してくる。だからお前達は大人しくしていろ、決して恥をさらすなよ」

シャーリー「あいよ」


ルッキーニ「ん~……じゃ久々にリーネのおっぱい触って待ってよ」ヒシ

リーネ「ひゃあ!?」ビクッ

芳佳「!? び、ビックリした…! ルッキーニちゃん!?」

ルッキーニ「おぉ~リーネまた大きくなってるようなぁ~?」モミモミ

リーネ「ゃ、やめてぇ!? ///」


バルクホルン「こら!! 行動を謹めと言ったばかりだろうがっ!!」

シャーリー「あはは、駄目だこりゃ」


ギャーギャー




ジーナ「……」

ミーナ「言いたい事はよく分かりますプレディ中佐。本当にごめんなさい」

ハイデマリー「……」

 
ジーナ「いや、ん…まあ苦労は私もよく解ります。想像より凄そうですが」

ミーナ「ええ。でも良い子達ですよ」

ジーナ「…それはなにより」


基地員「――失礼します隊長。設備が全く足りず、予備を入れても501ウィッチの方々のストライカーをほぼ収容できません」ザッ

ジーナ「…………困ったな」

ミーナ「あっ、それは気にしないでください! 場所だけでも貸して頂ければ我々のストライカーは隅に並べて置きますから」

ジーナ「…いや、それだと燃料補給や他の整備が儘ならないでしょう。明日にはまたここからベルギガまで遠乗りするのに、うちの所為で何かあっても困りますから」

ジーナ「――と言う訳で、私達のも一時的に退かしていい。501部隊のストライカーを収容し今日中に補給整備を頼む」チョイチョイ

基地員「は! 了解しました!」

ミーナ「…申し訳ないわ」

ジーナ「いいえ、これが最も合理的です。万が一にネウロイが出たら501部隊に出撃て頂く事になってしまうかもしれませんが」フッ

ミーナ「……。解りました、任せてください」ウフフ

ハイデマリー(この指揮官も強かな人だ。506B部隊長、ジーナ・プレディ中佐…)

 
ジーナ「よろしく頼みます。…では到着早々で申し訳ないですが、場所を移して詳しい話を伺いましょう。“こちら”の面子は取り敢えず揃っていますから」

ハイデマリー「…?」

ミーナ「ええ」


――スタタッ


バルクホルン「ミーナ。挨拶中に悪いんだが、当面のスケジュールだけでも先に説明してくれないか? 皆落ち着けなくて約何名かの勝手者達が非常に厄介だぞ」タタ

ミーナ「トゥルーデ、丁度いいわ。貴方も一緒に来て」

バルクホルン「…? いや、何の話だ?」

ミーナ「これからの話よ。大尉にも絶対いてもらわないと」

バルクホルン「それは構わないが、しかし今私まで離れたらあいつ等が何をしでかすか――」

ミーナ「坂本少佐が来てくれるから大丈夫よ。…ハイデマリー少佐も、同席してくれる?」

ハイデマリー「え? ぁ…はい。分かりました」

ジーナ「……。それではこちらへ」

 

ジーナの執務室



ハインリーケ「遅いぞ中佐! 出迎えるだけに何時までかかっておるのだ」ムス


ジーナ「無茶言わないで欲しい、いきなり戦闘脚12対も収容する準備は難しいさ」

ミーナ「……」

バルクホルン「な…! ウィトゲンシュタイン少佐?」

ハイデマリー(どうしてここに!?)

ハインリーケ「――む! その皮肉はまさかわらわの分も入っているのではあるまいな?」ジト

ジーナ「いいや。君と我々のストライカーは整備から外して横たえてあるから」

ハインリーケ「なんじゃと!? それではわらわがこの後帰れないではないか!」

ジーナ「明日に501部隊が出てから補給作業をして夜になってしまうが、少佐なら問題ないだろう? 今日は501と一緒に泊まっていくといい」

ハインリーケ「こ、ここに?? わらわがか!?」ガーンッ

 
ジーナ「グリュンネ少佐には私から後の連絡ついでに話しておく」

ハインリーケ「いや待て、そんな話などっ…! 食事などはどうなると言うのだ!?」

ジーナ「生憎こっちに一流シェフはいないが、そうだな……人数も多いから外でBBQなどいかがです?」チラ

ハイデマリー「えっ? ぁ、ぇぇと…」オド

ハインリーケ「反対じゃ! 例の卑俗な立食会だろう!? わらわは嫌じゃ!」


ミーナ「えぇっと、ごめんなさい? その辺はまた後にして、先に本題を話してもよろしいかしら」

ハインリーケ「む…!」

ジーナ「…そうでしたね、失礼」

バルクホルン「?」

 
ミーナ「さて、じゃあ改めてそちらは貴方がた2人ですね?」

ジーナ「ええ。B部隊指揮官とA部隊の戦闘隊長です」

ハインリーケ「ぅ、うむ…。わらわは代理で来た訳じゃがな。A部隊〈こちら〉の指揮官は今日一連のネウロイ騒動でまだ離れる訳にもいかぬ」

バルクホルン「いや本当にそうだぞ。母艦は我々が倒しはしたが、セダンは大丈夫なのか…?」

ハインリーケ「それは心配要らぬ。ライン川を越えてきたネウロイは掃討済で、今は警戒中なだけじゃ」

ミーナ「…貴方達も大変な時にわざわざ来てくれて感謝するわ、ウィトゲンシュタイン少佐」

ハインリーケ「よい中佐。“上からの話”についてはわらわもグリュンネ少佐から聞いて、それ故に飛んできた」

ジーナ「……で、そちらは3人?」

ミーナ「そうです。501は私と、戦闘隊長を務めるバルクホルン大尉――」

バルクホルン「!? ぇ…?」ピク

ミーナ「それから、現在一時的に部隊合併している第一夜間戦闘航空団司令のハイデマリー少佐。彼女も今回の件で配置される予定の部隊長として同席してもらいました」

ハイデマリー「…? ……??」

 
ハインリーケ「…そういうことであったか、501は相変わらず人材贔屓されておるようじゃ。ナイトウィッチの中でもこのわらわに並ぶ傑物のシュナウファー少佐まで独占する気ではあるまいな?」

ミーナ「あら、そう言う貴方も506でしょ?」

ハインリーケ「それはそれじゃ。他のJFWに恨まれても知らぬぞ?」

ミーナ「うふふ」ニコ

ハインリーケ「……ふん。噂通り、食えぬ人物のようじゃ…」ボソ


ハイデマリー「ぁ、あのミーナ中佐? “今回の件で”というのはいったい…?」オズオズ

ミーナ「! そうね、ごめんなさい。まだ詳しく説明していなかったわね――」

ミーナ「…私達がこれから担う任務、その大目標になると思う戦略について、彼女達とは直接話しておきたかったのよ。その為に此処へ寄らせてもらったの」

ハイデマリー「ぇ…?」

ジーナ「まあ我々506の任務は始めからそうなんですが……これまで防衛一辺倒でしたからね」

ハインリーケ「ふむ、だがようやくと言ったところじゃな。腕が鳴る!」グ

 
バルクホルン「それは…!! まさかライン川を越えるのか!?」

ハイデマリー「!」

ミーナ「ええ。つい先日の話だけど、東部方面の準備も整ったらしいわ。このまま進めば恐らく数月後には、兼ねてからの号令が統合軍を通じてかけられる筈よ」

バルクホルン「そ、そうか…いよいよ…!」

ハイデマリー(カールスラント領土の、奪還!?)ゴクリ…


ミーナ「最高司令部からも最優先攻略対象としてこれから各方面に積極的な作戦指示がされる筈よ。…管轄の西部方面は勿論、東部戦線とも連携を測った大規模なものになるわ」

ジーナ「……。ひとついいですか、中佐?」

ミーナ「はい。何でしょう?」

ジーナ「これは個人的な興味なんですが、何故そこまで詳しいので?」

ハインリーケ「…ふむ、確かに釈然とせぬな。ここ幾日のうろたえた状況にも拘らず、気づけば501を再編成したそなたが今わらわ達を先導しておる」

ミーナ「それは邪推よウィトゲンシュタイン少佐。偶々こういう風に事態が動いたというだけで」

 
バルクホルン「…まさかミーナ、これを狙っていたのか? だとしたら何故私は今まで何も知らなかったんだ?」

ミーナ「想定していたというだけで、全てが急だったからよ。だから断片情報だけを話すべきではなかったし時間もなかったの。ごめんなさい」

ハイデマリー「……」

ミーナ「今回越境してきたネウロイの件も、そしてストライクウィッチーズ全員があの場に集ったのも偶然だったわ。だけどタイミングは良かったのよ」

バルクホルン「そうか。まあ、今この場で我々が揉める訳にもいかないな…」

ミーナ「ええ、ベルギガへ戻ってから全部聞くわ」


ジーナ「…しかしワンマンフットワークにしては的確過ぎる。上の情報に関して中佐はよほど信頼できる“筋”をお持ちですか?」

ミーナ「……この件は、そうですね。疎開以来のカールスラントが積極的に働きかけている事ですし、統合軍を通しても動きは多かったようですから」

ハイデマリー(エステル少尉達が入った南東の特殊統合戦隊も多分そのひとつ…?)モヤ

 
ハインリーケ「おい、あまりに突くと藪蛇になるかもしれぬぞ?」

ジーナ「君の場合はな。少佐」

ハインリーケ「だから、そなたの所為でわらわまで妙な目を付けられるのは嫌なのじゃ!」


ミーナ「……」

バルクホルン「ミーナ、意外と黒いイメージを持たれているんだな?」

ハイデマリー(ば、バルクホルン大尉…)



ミーナ「ま、まあそれはいいとして――」コホン

ミーナ「…ともかく今後の動きが大きくなるに伴って情報系統も複雑になってくるでしょう。同じく前例のない規模で」

ジーナ「複合ネットワーキングですか。大なり小なり今更、という感もあるが…」

ハインリーケ「しかし中継ひとつで齟齬もコストも増える。慣れぬのなら尚更じゃな」

バルクホルン「その手の歪が致命的になると?」

ハインリーケ「うむ、そういう話なのじゃろ? 人類〈われわ達〉がこれからやろうとしておる件が万一にも破算となれば、影響は大きかろう」

 
ジーナ「カールスラント領土云々という以上の問題なのは確か、か…」

ミーナ「ええ。大局的、政治的なレベルの杞憂もあるんでしょうけど、なにより私達現場の指揮においても堅実な連携が必須だと思うわ」

ジーナ「独自で?」

ミーナ「…そこに固執する気は無いけど、あくまでネウロイに勝つために、直接の繋がりは確保しておくべきじゃないでしょうか? これまでの戦いを踏まえても、ネウロイ相手に後手にまわり過ぎる恐れは捨てきれません」

ハインリーケ「まあ、ネウロイの敵地に飛び込むのじゃからな。面倒が湧いてくるのは有り得るであろう」

ジーナ「…分かりました中佐。こちらも貴方の考えを念頭に置いて上から情報を待ちましょう。…少佐?」チラ

ハインリーケ「うむ、わらわもよいぞ。こちらの指揮官も異はなかろう」コク

ミーナ「ありがとう、グリュンネ少佐にもよろしく伝えて下さい。この先については私達がベルギガに戻ってから、また改めて連絡します」


ジーナ「了解。……では親睦会の準備をさせるとしよう。大した場所でもないが、休んで行ってください」

バルクホルン「あ、いや我々も手伝う! 迷惑ばかりかける訳にはいかないぞミーナ?」

ミーナ「ええ、そうね。…中佐、どうかお気遣いなく。折角ですから全員でやりましょう」

ハインリーケ「わらわはやらぬぞ」

ハイデマリー「……」

 

―同日 夜―


ディジョン基地 野外


シャーリー「おーい! まだこっち空いてるから肉くれないかー?」ジュゥゥ

ジーナ「悪いねイェーガー大尉。ビフテキの手際もスピーディーだとは知らなかった」

シャーリー「急に押しかけて飯まで貰うんですから、そりゃ手伝いますよ…っと! はいどーぞ」

ジーナ「ありがとう。基地の部屋は空けておくから、いつでも歓迎するよ?」

シャーリー「あはは! それはどーも」


マリアン「…ほら、食べな。落とさないように気を付けろよ?」

ルッキーニ「んにゃ♪ ありがとー!」

カーラ「わーお、“ミセス”マリアンやっさし~!」ニヤニヤ

マリアン「なっ!? ふ、ふざけんなカーラ! //」

ハインリーケ「おいカール大尉、わらわにもじゃ。肉はミディアム、切り分けてな?」

マリアン「……おナイフとおフォークは1人1対までだけど平気であそばせますか、姫さまは?」フン

ハインリーケ「!? なんじゃと…? #」ピキ

バルクホルン「おいおい、何をいきなり喧嘩してるんだあの2人は?」

エーリカ「素直じゃないリベリオン人とカルールスラント人、ちょうど誰かさん達にそっくりだねー」ニシシ

バルクホルン「…? 誰だの話だ?」

 
美緒「遠慮するな、どんどん食え服部! 身体作りには肉食だぞ?」ヒョイヒョイ ヒョイ

静夏「は、はいっ!(ぅぅ…そろそろお腹が…)」

芳佳「静夏ちゃん、危なくなったら言ってね? ドクターストップかけるから」

リーネ(そうなる前に止めてあげるべきなんじゃ…?)

エイラ「何やってんだコレ? 大食いハラスメントか?」スタスタ

ペリーヌ「いえ。服部さんの初戦果を祝福していた筈なのですけど、いつの間にかですわね」


ミーナ「…坂本少佐、ちょっといい?」トントン

美緒「――む? おお中佐、どうした」

ミーナ「お楽しみの所悪いけど来てくれる? 話があるわ」

美緒「うむ、承知した。…すまんなお前達、少し外す」

芳佳「あ、はーい。いってらっしゃい」

静夏(た、助かった…!)ゲプ

リーネ(よかったね服部さん)ホッ

シャーリー「こっち肉足りてるかー?」スタスタ

ルッキーニ「ねぇシャーリー! とうもろこしは焼かないのー?」ステテ



<ワイワイワイ…




ハイデマリー「……」


サーニャ「…あの」スス

ハイデマリー「!」

サーニャ「こ、こんにちは… //」

ハイデマリー「リトヴャク中尉?」

 
サーニャ「その……まだちゃんと、直接お会いしてから挨拶をしていなかったので…」

ハイデマリー「ぁ…!そう、でしたね? えぇと…どうぞ、座りますか?」

サーニャ「はい」イソイソ

ハイデマリー「……」


サーニャ「改めて、あの……サーニャ・リトヴャクです」

ハイデマリー「はい。…ハイデマリー・シュナウファーです」

サーニャ「……な、なんだか…交信で話すよりも緊張します //」

ハイデマリー「そうですね。私も、凄く分かります。なんというか…全然違いますね?」

サーニャ「はい」


ハイデマリー「……」

サーニャ「……」
 

 
ハイデマリー「…サーニャ中尉」ス

サーニャ「ぇ?」

ハイデマリー「あの、握手を…しませんか?」

サーニャ「ぁ、はい」スス


にぎ…


ハイデマリー「これで、きっともう大丈夫です。照れくさくありません」

サーニャ「…? //」

ハイデマリー「フフ、すみません。これはその…、友人の受け売りなんです」

サーニャ「……。お友達の?」

 
ハイデマリー「とても気さくで明るい人なんです。…初めて会った時に私もいきなり手を取られて、私は躊躇う暇もありませんでしたけど」

サーニャ「じゃあ、その人の事を思い出していたんですか?」

ハイデマリー「ぁ…はい。……その方や、他の友人達ともこうして夜間の外に集って過ごしたことがあります。それで少し、懐かしくなって」

サーニャ「夜間飛行隊の人達…?」

ハイデマリー「ええ。…今は、皆さん離ればなれになっていますが」

サーニャ「……」

ハイデマリー「……」


サーニャ「会えると思います」

ハイデマリー「ぇ…?」チラ

サーニャ「平和になってから、会いに行けますよ」

ハイデマリー「……そうですね」

サーニャ「はい」


――トタタッ


エイラ「サーニャ、なんだよもー。そっち行ってたのか」

サーニャ「ぁ、エイラ」

 
ハイデマリー「ユーティライネン中尉。 …こんにちは」ペコ

エイラ「お、ハイデマリー少佐もいンのか。じゃあ3人でこれ食べよう! 今あっちから持ってきたんだ」ジャーン!

ハイデマリー「えっ、ぃぇ! でも私が頂いてしまったら…」

エイラ「エンリョすんなってー? なくなったらまた取りに行けばイイんだから。まだまだ肉あったぞ?」

サーニャ「…あれ? でもエイラ、確か飲み物取りにいったんじゃ…?」

エイラ「――……ア!? しまった、ゴメン! ちょっと待っててくれ!?」ダッ

サーニャ「あ、待ってエイラ! 私も行くわ。1人じゃ3人分も――」スク


トタタタ――…



ハイデマリー「……」


ハイデマリー(なんだかこういうの、本当に懐かしい)クス

ハイデマリー(工藤さんは今頃、どうしているだろう…?)

 
――



ミーナ「――それで、どうだったかしら? 大丈夫そうなら貴方に直ぐ行ってほしいんだけど」ヒソ

美緒「…いやその件なんだが、やはり先約済みだ。どうやら太平洋方面の新設機動艦隊らしい」

ミーナ「そう、やっぱり…。残念ね」

美緒「どうする? 直接説得してみてもいいが聞かんと思うぞ、あいつはリバウの頃から頑なだったからな」

ミーナ「いいわ、貴方がそう言うなら本当に無理でしょうし。他を探すしかないわね…」

美緒「妹の方はどうなんだ? 近しい物を持っていると言ってただろう?」

ミーナ「それこそ絶対に無理よ。向こうの隊長もよく知ってるけど彼女が認める訳ないし、これから特に連携しようとする相手に不義なこともしたくないわ」

美緒「そうか。…しかしお前の望む条件でなお新規の人材を探すとなると、これはもう無謀かもしれんぞ?」ハグッ

ミーナ「そんなのっ……勿論妥協する余地は残してるわ。変に揉めないで確保できるならそれを優先したいけど、これに関しては単純な戦力補強とは違うじゃない?」

美緒「んん、まあな」モグモグ

 
ミーナ「はぁ……流石に、諦めざるを得ないかしら」ガックリ

美緒「……。なあ中佐」カチャ

ミーナ「なに?」

美緒「やはりどうしても、必要なのか?」

ミーナ「ええ、出来ることなら。多分今回はネウロイの巣や大型目標をひとつ破壊して終わり、という訳にはいかない筈だから」

美緒「…そうか」

ミーナ「美緒…? べつに貴方を責めるつもりなんてないのよ? 当てつけた話に感じてるかもしれないけど、私は――」

美緒「いや、それは構わないんだが。うむ……それならば、私にひとつ考えがある」

ミーナ「…?」

美緒「……」

ミーナ「どうかしたの??」

 
美緒「…………実はな? 人材候補として、まあ…唯一心当たりがあるにはある」

ミーナ「えっ! 本当に!?」

美緒「ああ、限定的だが“能力”もある。現状手隙と言っていいかも微妙なんだが、宮藤が復帰しているなら呼べるかもしれん」

ミーナ「…どういうこと? 扶桑海軍の知り合い?」

美緒「妙な縁だがな。とにかくミーナの方で他にないならば其奴を当たるしかあるまい。今のうちから話を通し、可能という事であればお前に報告できると思うが?」チラ

ミーナ「……わかったわ。ならなるべく早目にお願い」コク

>>21
カルールスラント → カールスラント

誰だの話だ → 誰の話だ

 

―1ヶ月後―


ベルギガ王国

サン・トロン基地


美緒「――施設班の方も概ね順調だ。資材も足りて残り数週程で形にはなるだろう」

ミーナ「そう、順調みたいね。予定より随分早いわ」

美緒「私が尻を叩いているからな、遅くはならん」

ミーナ「それは貴重な情報をどうもありがとう少佐。手抜き工事が起きる前にお酒でも配らないと駄目そうね」

美緒「はっはっは、手厳しいな! …順調といえば、あれの到着はどうだ?」

ミーナ「ええ、それも予定通りよ。今朝パ・ド・カレーから連絡があって――」チラ

ミーナ「…そうね、私もそろそろ出迎えに行かないと危ないかしら」

美緒「よし、なら行くか」

 
ミーナ「けどちょっと待って、これだけ先に処理しちゃうから」

美緒「何言ってる、遅刻するんじゃないのか? 後でも出来るだろう」

ミーナ「全然追いつかないのよ。…はい少佐も、これ貴方が始めたんだから片付けて頂戴」バサ

美緒「なに? いやしかし、その書類は施工後でも問題な――」

ミーナ「溜め込んじゃ駄目。私のデスクがいつまでも片付かないし、ほらそっち持って行って、こっち片付けるうちに貴方も少し減らすのよ?」

美緒「む、むぅ…。藪蛇だったか」


――コンコン


ミーナ「! どうぞ、入って」


ハイデマリー「あの…失礼しますミーナ中佐。シュナウファー少佐、戻りました」ガチャ

ミーナ「ハイデマリーさん、お帰りなさい」

 
美緒「出張戻りか、ご苦労だな少佐」

ハイデマリー「ぁ、はい。ご無沙汰してます坂本少佐」スタスタ

ミーナ「それで、空軍本部はどうだったかしら? 貴方を抱え込む事について何か言われた?」

ハイデマリー「いえ、当面については概ね承認すると。統合軍司令部との調整も行われて、吸収ではなく501の指揮下として配置可能になりました」

ミーナ「…よかったわ。ありがとう少佐、改めてよろしくお願いね」

ハイデマリー「はい」


美緒「となると、残すはあと1人だな」

ミーナ「そうね。ハイデマリーさんも間に合ってよかった」

ハイデマリー「…? 補充員を迎え入れたんですか?」

美緒「私はもう頭数から抜けている故にな。中佐の備えだ」

ミーナ「丁度もうすぐで到着する筈だから、よければ貴方も出迎えてくれないかしら?」ウフフ

ハイデマリー「ぁ、はい…? わかりました」

ミーナ「私達も後で出るから先に行ってて? バルクホルン大尉も滑走路で待機してるから」

 
――――
――



ハイデマリー「…お疲れ様です大尉」スス

バルクホルン「! ハイデマリー少佐、戻っていたのか(いきなりでビックリした…)」

ハイデマリー「はい、少し前に」


バルクホルン「ハルトマンの奴は大丈夫だったか?」

ハイデマリー「ぁ、はい。それは勿論、とても上手な運転でした」

バルクホルン「…いやそれよりも朝起きなかったり、道中で寄り道や無駄な買い物に誘われたりと迷惑したんじゃないか?」

ハイデマリー「ぃ、いえ…。そんなことは……ないです」モジ

バルクホルン「安心してくれ少佐、証人は保護される。そうなるだろう事は初めから分かっていた」

ハイデマリー「……。すみません…」

 
バルクホルン「はぁ…私が随行できればよかったんだが、車の運転はあいつの領分だ」

ハイデマリー「…でも大尉の立場を考えれば、私の都合で基地を離れて頂くのは無理ですよね?」

バルクホルン「確かにそれはそうだか――…いや、もういいな。終わった事で色々言うのも馬鹿らしい」ガク

ハイデマリー「……」

バルクホルン「愚痴を聞かせてすまない。ここで暫く待ち惚けて、少し退屈していたんだ」

ハイデマリー「大丈夫です。私もミーナ中佐に勧められて転任者の方を待ちに来ました」

バルクホルン「そうなのか? ミーナや私は責任者だが、どうしてハイデマリー少佐まで?」

ハイデマリー「それは私にもよく分かりませんが…」

バルクホルン「?」

 
ハイデマリー「…あの、どういった方が来られるのか聞いてますか?」

バルクホルン「ああ。極秘事項の扱いでまだ私も詳細は知らないんだが、どうやら坂本少佐の代役らしい」

ハイデマリー「坂本少佐の…? でも501の戦闘隊長は大尉が引き継いだ筈では?」

バルクホルン「いや、どうもそれとは別の意味だ。今の我々はもう少佐の“魔眼”に頼れないから恐らく――」

ハイデマリー「…! では、ネウロイのコアを特定できるウィッチが?」

バルクホルン「そういう事だろう。同じく扶桑海軍の大尉だと聞いてる」

ハイデマリー「…! ぇ――」ドキッ

バルクホルン「ん? ……お、あれか? ようやく来たな」


――タッタッタ


ミーナ「はっ…はぁ……! ほら、間に合ったわ…?」トタタ

美緒「全力疾走のうえにぎりぎりだろう、これで示しが付くか…?」タタッ

 
バルクホルン「遅かったなミーナ。襟が乱れてるぞ?」

ミーナ「はぁ…はぁ…っ、管制聞こえる…? ……ええそうよ、着陸許可するからっ…誘導してあげて」ゼェ ハァ

ハイデマリー「あのミーナ中佐? ここへ来るウィッチというのは――」

ミーナ「ま、まって…ごめんなさぃ……。息が、上がっちゃって…っ」ガク

美緒「はっはっは! どうした中佐、机に座してばかりで体力不足ではないか?」

ミーナ(貴方が異常なのよ…。あんなに速いスピードで持つわけないじゃない…)ハァ フゥ

ハイデマリー「……」

バルクホルン「それにしても態々輸送機で来るとは。一体何を積んでるんだ?」

美緒「ん? ああ、それは補給物資運搬の名目で飛んでいるからだ。…帳尻合わせには手を焼いた」

 

――ゴォォォオォ


オォォ…




しーん……



ハイデマリー「……」

バルクホルン「……」

美緒「出て来ないな?」

ミーナ「そ、そうね…?」



『――呆けてないでさっさと行かんか!』

『んぬぁ!? ちょ、危ない! 寝起きなのに押さないでくださいってば~!?』



ハイデマリー「…!」



――ガヂャゴ


敏恵「もぉー、園さんせっかちだよ。歳だね」ノソリ

小園「五月蝿い。早くタラップをおろせ」



ハイデマリー「!!?」

 

敏恵「よっと! うはぁ戻ってきた~♪」バンザーイ


ハイデマリー「ぁ…っ…? く、工藤……さん…??」ワナワナ


敏恵「んぅ? …………えっ」ピクッ



敏恵「あーーっ!!! ま、マリ!?」




――――1945年秋。

工藤敏恵は三度目の遣欧にて統合軍第501統合戦闘航空団“ストライクウィッチーズ”へ参加。


航空ウィッチとして、再び戦地を飛ぶことになる。
 

 

第二話:五○一 に続く

 

今回も完全マイペースで進行
適度にのんびり頑張ります…

 
カールスラント奪還のために再び結成された第501統合戦闘航空団、“ストライクウィッチーズ”部隊。


指揮官のミーナ・ヴィルケは部隊の再編において、エクスウィッチとなった坂本美緒が抜けた穴を危惧していた。

苦慮の末、坂本の提案により療養中であった工藤敏恵大尉が急遽徴集されることとなった――――

 
【第二話 五○一】



==============


―1月程前―


扶桑皇国 某所



小園「――いや、ですからそうではなく、向こうの技術者とも話が取れているのです」


小園「…………。ええ、どうぞ確認して下さい。担当将校も既に御承知の筈です」

小園「……は? いえ間違いなく送付してますから、そんなものそちらで探して下さい」

小園「とにかく早急に宜しくお願いします、こちらの予定は変えませんので!」ガジャン



小園「…ったく、嫌になる。皇国にとっては寧ろ有益だろうが #」ギシ…

小園「私を嫌っている輩がいるな? …くそ、月光の開発を提案した時から毎度この――」


ジリリィーン ジリリリーンッ
 

 
小園「……。チッ…」カチャリ

小園「はぁ…、小園だ」


小園「――! あ、御無沙汰してます北郷さん…!!」ギク


小園「…いえっ、今のはべつに! 何事もありませんから」

小園「それよりも、どうしたのですか突然?」



小園「……? ええ、はい。…………――」



小園「――……えっ!! そ、それは本当なのですかっ!?」ガタッ

 

 

―その数日後―


鎌倉 明石

宮藤診療所


芳子「さて、終わったよ。お腹の傷跡を見せてごらん?」

敏恵「……zz」

芳子「ん?」

敏恵「~むん……zz…」スヤスヤ


芳子「こら」ズボ

敏恵「でょ゛…!?」ビクッ


芳子「どうだい? 目が醒めるツボだよ」

敏恵「~~゛!? にゃ…にゃにをっ…??」ピクピク

芳子「明るいうちから惰眠は禁止」

 
敏恵「んぐ、痛つぅ……。だって芳子さんの治癒魔法、眠くなるくらい気持ちいいんですもん…」サスサス

芳子「我慢をし。規則正しい生活習慣が必要だってもう何度も言っている筈だよ?」

敏恵「分かってるんですけど……ほら、あたしナイトウィッチで5年間ずっと真逆の生活してたから…」

芳子「なら12年は普通の生活だったろ? 自分を甘やかすんじゃないの。ほら身体を起こして、お腹見せてごらんな?」

敏恵「ふぁ~~い。んしょ…」ノソリ

芳子「はい捲る」

敏恵「うい」グイー


芳子「……んー…」

敏恵「芳子さん、この跡ってやっぱり残っちゃいます?」

芳子「そうだねぇ……、だけどもよく塞いでる。施術した療師は優秀だよ」

敏恵「ぅぅ…でも変な色だし、ちょっと恥ずかしいなぁこれ」

芳子「まだ新しいからねぇ、毒でも出ない限りは大丈夫」

敏恵「ちょ…!? 怖いこと言わないでくださいよぉ!」ガーン

 
芳子「まあ、万が一おかしく感じる事があれば隠さずに言うんだよ?」ス

敏恵「……え、なに?? まさか本当に何か害あるの…?」

芳子「万が一だよ。念の為」ポワワァ

敏恵「んぁふ!? くすぐったい…! //」モジ


芳子「――…はい、いいよ。後は寝る前ね」シュルル

敏恵「はい、ありがとうございまーす」

芳子「ふぅ……やれやれ、私も歳だね。腕が重くなっちゃって」

敏恵「あ、芳子さん! じゃああたしが揉んであげます!」

芳子「いいよべつに。今日も魔法使う訓練するんだろう?」

敏恵「壕行くのめんどくさいから今はいいや、暗くなってから庭でやる! だから芳子さんも一緒にのんびりしましょうよ? お肩も叩きますから」ハシ

芳子「……仕方ないねぇ。それじゃあ、午後の患者さんが来るまでお願いしようか」

敏恵「んふふ~♪ とか言って本当は嬉しいんでしょ? また芳佳ちゃんがいなくて寂しいくせに~」クイクイ

芳子「生意気を言うねぇ? 女は待つことに強くなくちゃあ、やっていけないよ」

敏恵「お、おぉ…! 含蓄ありそうな台詞……なんかかっこいい!」




清佳「――お母さん、ちょっと…」トタタ

敏恵「ぁ、清佳さん」

芳子「どうしたんだい?」

清佳「それが……今、海軍の小園さんがお見えになって…」

敏恵「えっ、園さんが??」

 
――――
――



芳子「……」

清佳「……」

小園「……」


敏恵(な、なんだろう? なんか真面目な雰囲気が凄いんだけど…? お茶にすら手を伸ばせない…)モヤ



小園「突然お訪ねした不躾をお詫び致します。秋本療師、宮藤夫人」

芳子「……。顔を上げてください、小園大佐」

小園「…はい」スス

 
芳子「こうして貴方に直接お会いするのは、そこの敏恵ちゃんを治療する話をお持ちになった時以来ですか」

敏恵(芳子さんの表情も厳しい、何故?)

小園「はい。無理な要望を聞き入れて頂いた件については、感謝しております」

芳子「…恐らく、今度もそういうご要件で来られたんじゃありませんか?」

小園「…………そうです」

芳子「……」

敏恵「??」

芳子「遥々兵庫からご足労してこられた方を無下にお返しする訳にもいきません。…率直に、お聞かせください」

小園「情け痛み入ります。では率直に――」


小園「…工藤を欧州へ戻すため、引き取りに参りました」


敏恵「!」

清佳「それは…」

 
芳子「申し訳ありませんが無理です。その子の念動魔法の疑似投薬障害は完全に消えた訳じゃありません、今止めてしまったら元に戻ってしまいます」

小園「その旨については北郷中佐より私も診断結果を伝え聞いております」

芳子「でしたら、どうかご理解ください。治療を台無しにすることを療師として認めるなど、到底できる筈もありません」

小園「勿論承知しています。故にひとつ、こちらからの提案を含めたうえで復帰の可否をお伺いしたい」

芳子「?」

清佳「提案…?」

小園「はい。…工藤大尉へ参加要請のあった“第三次501部隊”の構成員には、宮藤芳佳少尉がおります」

芳子「!」

清佳「そんな…!? まさか!」

敏恵「え、なんで芳佳ちゃんが? ていうかあたしが501って、本当に??」

 
小園「娘さんはヘルウェティア連邦へご留学に向かう道中で突発的なネウロイ侵攻に巻き込まれましたが、その過程で魔法力を取り戻しそのまま復帰しています。じきにこちらへの知らせもある事でしょう」

清佳「あの子ったら、また戦争に…!?」

敏恵(清佳さん…)

芳子「……そうですか。あの子の魔法力が」

小園「ええ。ですから此処に居ずともお孫さんが付いている事で、工藤の復帰もどうにか可能ではありませんか?」

敏恵(お、おお? なるほど!)


芳子「……」

小園「如何でしょう? 私も此奴に無謀を強いるのなら絶対に行かせません。故に正直な答えを頂きたい」

芳子「……。敏恵ちゃん?」

敏恵「! んぁ、はい!」

芳子「小園大佐がこう仰ってくれているけど、どうする?」

清佳「ちょっとお母さん…!」

 
敏恵「ぁ、あたしは――」

芳子「……」ジ


敏恵「ぅ…」チラ

小園「工藤、お前が聞かれてるんだ。ちゃんと答えろ」コク


敏恵「っ……ごめんなさい芳子さん、清佳さん。あたし行きたい!」

芳子「……」

清佳「ど、どうして? その身体でまた戦争になんて行ったらご両親は心配するよ…? 折角帰って来たのに、まだ顔も合わせていないんでしょ?」

敏恵「はい。でもあたし…自分以外の何かの為になるのがウィッチだって、それがようやく解ったばかりなんです!」

小園「……」

敏恵「それを気付かせてくれた友達が向こうにいて、それでなんていうか……今度こそあたしも本当の、その子達と同じウィッチに成りたいんです!」キリ

 
芳子「そうかい、分かった」ハァ

清佳「ぉ、お母さん…!」

小園「! では、つまり?」

芳子「いくつか注意もありすが、どうにかなることには、なりますよ」

小園「…ご協力有難うございます」ペコ


敏恵「――! ということは、まさかあたし…?」

小園「ん、再出発だ。欧州へ行くぞ」

敏恵「~~! や、やったぁー!!」

 
―その翌日―


横須賀軍港


敏恵「これで3度目かぁ。横須賀から出発するのは最初の時以来だ」

敏恵「…“コテイべぇかりぃ”のシベリアとお別れするのは残念だけど、ベルギガのワッフルにまた会えるし、上々だよね! あむっ、~~」モグモグ


小園「喉元過ぎればと言うのか……昨日大層な決意を語った締まり顔はどこへ行った?」スタスタ

敏恵「ふぉ? ぞのひゃん!」

小園「それ全部食うなよ? 後で私も味見する」

 
敏恵「~ングッ、芳子さん達と何話してたんですか?」

小園「向こうへ着くまでの注意やお前の容体に関する事項諸々だ」

敏恵「容体…。容体かぁ…」

小園「ここ数日は魔法を使うようになったそうだな?」

敏恵「はい、芳子さんにも許可貰えたんで。もう魔法使っても勝手に麻薬出てないっぽいですよ?」

小園「いや、それは秋本氏の療法による抑制が効いているからだ。完治したわけではない」

敏恵「はあ…? でも“渇き”も全然ないし」

小園「あの地域は環境も良いそうだからな。穏やかで精神も落ち着く……確かに身体の事を思えばあそこに居続けるのが最もだろう。私も本当はお前を労わりたい」

敏恵「……」

小園「しかしお前が望むのなら今度こそ私は尊重する。…約束だ、もう謀るものか」

敏恵「…うん。ありがとう園さん」

 
小園「――という訳でこれから長くておよそ一月半、お前は一切魔法禁止だ。いいな?」

敏恵「ん?? えっ、どうしてそうなるの…?」ポケ

小園「言っただろ、お前の好調は一時的なものだ。治療を受けられない移動中はかなり危ない」

敏恵「……ま、また渇いてきちゃうってこと…?」

小園「これまで抑えてきた効果も期待できるが、現状で一月半は流石に厳しいそうだ。後々禁断症状が現れ万が一にでも無意識に“魔導投薬〈マギードース〉”を行えば復帰は即取り消す」

敏恵「!? ぁやそッ、そんなこと言ったって…っ!!」アセ


小園「だから、私も航行をなるだけ急がせる。…お前はこれでも使って忍んでくれ」ゴソ

敏恵「…! ぞ、園さんこれ!?」

小園「フッ、懐かしいだろ? 大陸領土にいた頃、落ち着かん時に吸わせていたやつと同じ銘柄だ」

 
敏恵「……。これ嫌ですよ」ジト

小園「まあ、そう言わないでくれ。私も面白がって勧めている気など――」

敏恵「どうせならマヤ産のシガリロがいい! 紙巻になってる葉巻みたいなやつ、アレの方が美味しかった!」

小園「…………そういう意味か。いやそれより、お前向こうでも吸ったのか?」

敏恵「え!? ぇぇ、まぁ…一回だけ」ギク

小園「そうか。…まあいい」

敏恵「本当に一回だけですからね!? 止むに止まれぬというかっ、付き合いというか、慰めてもらった時で…!!」

小園「分かった分かった。取り敢えずそれは直ぐ仕舞っておけ、療師先生がこっちに来る。良い顔はされんぞ?」

敏恵「!? おとと…!」ササッ

 
芳子「敏恵ちゃん」テクテク

清佳「……」

敏恵「は、はい!? ゃべつに、なんでもないですよ~!?」キョド

小園(阿呆が…)


芳子「欧州へ着いたらこれを、あの子に渡しておくれ」ス

敏恵「ぇ? あ、はい」カサ

小園「不躾かと思いますが、それは…?」

清佳「娘が工藤さんの治療を行う際に必要な言及を書き留めてあります」

 
芳子「敏恵ちゃんは大尉だけど、患者としては芳佳の言うことをちゃんと聞きなさい?」ポン

敏恵「…はい! 了解先生!」ビシ

芳子「いいかい? 自分だけでどうにか出来るなんて、決して考えないことだよ?」

敏恵「うん、わかってますって。色々ありがとうございます、芳子さん!」

清佳「工藤さん。娘に何かあった時はどうか、力になってあげてください」

敏恵「はい、そりゃもう勿論! 清佳さん達には本当に優しくしてもらって沢山恩がありますから、無事に帰れるよう絶対あたしが護ります!!」

小園「(いやお前は彼女の世話になる方だぞ…)……では、そろそろ出港しますので」

 
――



敏恵「…あぁ、見えなくなっちゃった」

小園「……。これでもう後には引けないぞ、工藤」

敏恵「ん? まあ、そうですね」

小園「本当にいいんだな?」

敏恵「…今更何言ってるんですか。今回はあたしが決めた事ですよ?」

小園「フッ、そうか…。そうだな」クル


スタスタスタ…――




敏恵「……さて。目指すはまたサン・トロン基地、今度は501部隊か…」フゥー


敏恵(マリの隊はどこに行ったんだろ…? 偶然、どこかで会えたりするかな?)

敏恵「…もしそうなったら嬉しいけど、まあ流石に無いね?」ハハ


――――


――



 

 
==============

―現在―


敏恵「――うわぁ~~!! まさかいきなり会えるなんて!? すっごい!!」ニギ

ハイデマリー「ぁ……えっ…??」オロロ

敏恵「ここ501の基地になったって聞いたからさ!? マリがまだいるなんて思ってなかったよ! もう本当にびっくり!」ブンブン



バルクホルン「…なんだ?? ハイデマリー少佐の知り合いだったのか?」

ミーナ「ええ。少し前まで彼女の夜間飛行隊に援戦派遣されていたのよ」

美緒「ほう? そこまでは知らなかったが、縁があるのかもしれんな」

 

小園「――失礼諸君? 工藤敏恵の監督官、扶桑皇国海軍の小園だ」


ミーナ「はじめまして小園大佐。第501統合戦闘航空団司令官、ミーナ・ヴィルケ中佐です」ス

小園「……。ん、出迎え感謝する」ニギ

ミーナ「こちらは当部隊戦闘隊長のバルクホルン大尉と――」

小園「坂本美緒、か」

美緒「直接お会いするのは初めてですね、大佐殿」

小園「他人行儀は止めろ。我々は皇国海軍同士、互いに“軍神の後輩”だろう? 坂本よ」

美緒「承知しました、小園さん。宜しくお願いします」ス

小園「……ああ」プイ

美緒「?」

 
小園「ヴィルケ中佐。工藤の招請には本人も望む所なので応じさせてもらったが、その為の諸条件は解しているだろうな?」

ミーナ「ええ、問題ありません」

小園「…君には、私からあれを預かる責任を十二分に認識して欲しいんだが」

ミーナ「工藤大尉の状態についてはよく理解してるつもりです、大佐。既に宮藤少尉ともよく打ち合わせていますし」


バルクホルン「?? …少佐、いったい何の話だ?」ヒソ

美緒「後で内々に詳しい話もあるだろうが、工藤大尉の固有魔法や魔導麻薬症に関する事情だ」ヒソヒソ

バルクホルン「“魔導麻薬症”? なんだそれは…?」

美緒「すまんが一から説明すると長くなる。今は割愛させてくれ」

 
小園「“つもり”では困るんだが、…仕方ない。くれぐれも宜しく頼みますよ」

ミーナ「はい。最善を努めます」

小園「……しかし、それにしても――」チラ

ミーナ「?」

小園「まさか彼女まで集めているとは恐れ入った。うちの工藤も入れて夜間戦術班でも組むつもりか?」

ミーナ「それはどうでしょう? 戦略に関わる事項は軍機に触れかねないので」ウフフ

小園(はぐらかすとは、まさか図星か?)

美緒「うむ……しかし元々戦友であるなら、確かに効果的編成が組めるかもしれん。互い仲も良い様子だしな!」

バルクホルン「いや、あまりそうは見えない…。ハイデマリー少佐の方は困惑しているぞ?」

ミーナ(あ、あらあら…。もしかして少し意地悪だったかしら?)




敏恵「ねえねえ、なんでここにいたの!? あっ、まさかマリも501のメンバーに呼ばれたとか!?」

ハイデマリー「く、工藤……さっ…??」
 

 
敏恵「…? う、うん。見ての通りあたしだけど――……マリ?」フイフイ

ハイデマリー「…~~」ヨロ

敏恵「わっ!! ちょ!?」


ハイデマリー「~ぅ……」ペタン

敏恵「え、えぇ!?? どうしたのいきなり? 貧血!?」

ハイデマリー「っ…」サッ

敏恵「!?」


――タタッ


バルクホルン「どうしたハイデマリー少佐!?」

美緒「おい大丈夫か? …む、泣いている?」グイ

小園「……到着早々お前は――っ…くそ、何をしでかしたんだまったく! 勘弁しろ… #」チッ

敏恵「ぬぇっ!? ち、違う!! ちょっと話し掛けただけで、あたしはべつに何も…!?」アタフタ

ミーナ「あの、ちょっと待って! 多分誤解が起きてるから、全員落ち着きましょう?」

 
――――
――



ハイデマリー「……はぁ…」

敏恵「もう話しかけても平気?」

ハイデマリー「あ! ぇ…そのっ…」オド

敏恵「…いいよ? 落ち着くまで待ってる」


ハイデマリー「す、すみません…ぁの…。まだきちんと把握できなくて――」モジ

ハイデマリー「……本当に、工藤さんがまた目の前にいることが…」

敏恵「えー? なんでさ?」クス

ハイデマリー「それは…。……だって工藤さんはいつだって、何でも突然でしたから」

敏恵「……」

ハイデマリー「っ…あんな別れ方をして。無事だって知らせも聞きましたけど、でもっ……あんな手紙も出しまけど! 心配しないでいるのは、無理です…」

敏恵「…そうだね、ごめん。そう言われちゃうと確かに、あたしまた自分勝手にマリを困らせちゃったな」

ハイデマリー「ぁいえ、そういう意味では… //」

>>69訂正

出しまけど → 出しましたけど

 
敏恵「――でもさ! あたしも手紙の返事出したじゃん? ちゃんと近況書いてあったよね?」

ハイデマリー「えっ」

敏恵「……? あれ、読んだでしょ?」

ハイデマリー「いえ…? 届いてませんが」

敏恵「へ? 本当に!?」

ハイデマリー「は、はい…」

敏恵「?? えぇ…、まさか検閲で止まったのかな? 普通の事しか書いてないのに」

ハイデマリー「……」


敏恵「ん~なんでだろ? やっぱりまだ筆記体の英字汚かったかなぁ、練習したんだけど…?」モヤモヤ

ハイデマリー「工藤さん」

敏恵「ん? あ、ごめん。なに?」

ハイデマリー「お身体はもう、大丈夫なんですか?」

敏恵「…うん、平気だよ。魔導麻薬症の方はまだ治療中だけど、あのネウロイにやられた所はもうバッチリ」

ハイデマリー「そうですか。よかった…」

敏恵「ついでに盲腸も取っちゃった! 穴空いてたし、虫垂炎の心配もなくて一石二鳥だよ!」ドヤャ!

ハイデマリー「…ふふ //」クス

敏恵「ぁ! えへへ…、やった。久しぶりにマリの笑顔」

 
小園「――再開の挨拶は済んだか、ご両仁?」スタスタ

ミーナ「邪魔しちゃって悪いけど、取り敢えずこっちの用事に先ず付き合って貰えるかしら?」

敏恵「あ、すみません。えっと…?」

ミーナ「貴方を徴集した“ストライクウィッチーズ”隊長、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐よ」ス

敏恵「はい、どうも。…よろしくお願いしますヴィルケ中佐」ニギ

ミーナ「ミーナで構わないわ。ようこそ工藤大尉」

美緒「…私の自己紹介はいらんな、工藤?」

敏恵「えーっと、もっさ――…坂本さんは確か戦闘隊長」

美緒「もう違う。後任はこいつだ」クイ

バルクホルン「カールスラント空軍大尉、ゲルトルート・バルクホルンだ。ここは一部風紀が緩いが、決して甘くはないぞ?」ズイ

敏恵「はあ…? はい、よろしくお願いします」ペコ


バルクホルン「……」ジー

敏恵「?」ポケ


バルクホルン「はぁ、服部軍曹とは違ったか(なんとなく“あいつら側”っぽい雰囲気だ)」ガク

敏恵「??」

 
ミーナ「それじゃあ、補充員も揃った所で少しミーティングをしましょう。トゥルーデ? 悪いけど…」

バルクホルン「全員徴収だな、了解」

美緒「手伝うぞバルクホルン。放送設備は今点検中の筈だ」

ミーナ「工藤さんも他のウィッチーズに紹介するから、荷物は持ったまま付いてきて?」

敏恵「分かりました。行こ、マリ」

ハイデマリー「はい」

小園「…待てシュナウファー」

ハイデマリー「!」

 
小園「君には話がある。少し残れ」

ハイデマリー「……」

敏恵「なにを園さん? マリも行かなきゃいけなん――」

ミーナ「いいのよ工藤さん」サッ

敏恵「じゃぅ…?」

ミーナ「ハイデマリーさん。先に済めば貴方も作戦室に来て頂戴?」

ハイデマリー「は、はい」

小園「ヴィルケ中佐、私はこの後月光の整備指導と再調整をする。整備士達を借りるぞ?」

ミーナ「許可します、機材搬入は案内に従って下さい。…さあ、それじゃあ行くわよ?」

敏恵「…はぁい。園さーん! 変なこと言わないで下さいよー?」



小園「阿呆、さっさと行け!」

ハイデマリー(小園大佐…この人とは通信で口論をして以来で、気まずい)モヤ

 
小園「…さて大尉――いや、もう少佐だったな。失礼」

ハイデマリー「ぁ、いえ」

小園「……」

ハイデマリー「それであの、お話というのは…?」

小園「工藤について頼みたい事がある」

ハイデマリー「!」

小園「と…いうかだな、あいつの為に君には話しておく。注意して聞いてくれ」

ハイデマリー「いったい何を…?」

 
小園「……現状、工藤の魔導麻薬症は秋本もとい宮藤一家の治癒魔法によってその異常を抑制している」

ハイデマリー「“宮藤”…? では宮藤少尉も? 工藤さんはまだ治療中と仰っていましたが、まさか宮藤少尉がいるから――」

小園「黙って聞け」

ハイデマリー「っ! す、すみません…」オド


小園「…だがいかに強力な魔法とて記憶や心までは癒せない。故にあいつの精神は無防備だ、私の“呪縛”も今はもう無いんでな」

ハイデマリー「……」

小園「今度こそあいつは己の意思で戦いに来た、そこは心配いらん。…但しそれ故に、どうにも危うい」

ハイデマリー「“危うい”…?」

小園「そうだ。やはりかつてのPTSDが装いを変え、垣間見えているような気がしてならない」

ハイデマリー「!?」

 
小園「今の工藤がネウロイと相対し実戦を繰り返すことは、恐らくあいつ自身の覚悟を超えた困難になるだろう。…私が抱くその懸念を、君にも共有させておく」

ハイデマリー「待って下さい。では、大佐は工藤さんを止めないのですか?」

小園「…! チッ…此の期に及んで今更、私があいつの希望に口を挟めるわけないだろ」

ハイデマリー「ですが、貴方も本当は――」

小園「おい! いつかの再現は勘弁てくれ、お前とまた言い争う気はない。無駄だ」

ハイデマリー「ぅ…」タジ


小園「…とにかく、此処でのあいつを宜しく頼む」

ハイデマリー「は、はい…。ですが何故私に?」

小園「……。経験上、腐れた縁というやつは馬鹿に出来んのだ」プイ

ハイデマリー「?」

 
小園「私は“お前達”を好きにはなれんが、君が工藤にとって心置ける存在ならば仕方ない。何よりの助けになる」

ハイデマリー「ぃぇ、そんなことは――」

小園「有るぞ。そして君はあいつを想いやれる奴だ、少なくとも私よりは余程」

ハイデマリー「……」

小園「…………この際に白状してしまうが、今となっては君に感謝もしてる」

ハイデマリー「!」

小園「先の遣欧であいつの力になってくれた事、…礼を言う」

ハイデマリー「……私だけではありませんよ? 隊の仲間全員が工藤さんを支えたんです。なによりそれは、工藤さんが私達を支えてくれたからです」

小園「フッ、まったく…。10代そこらの小娘が言う台詞ではないな?」チラ

ハイデマリー「ぇ? ぁ、すみません…」

小園「まあ、あの阿呆にも君くらいが調度いいのかもしれない。とにかく頼んだぞ? 話は以上だ」

ハイデマリー「……」

 

作戦室


ハイデマリー「……」ガチャ

ハイデマリー(工藤さん、挨拶中だ…)ソロリ ソロリ



敏恵「――こく海軍大尉の工藤敏恵です、精一杯に励みますのでよろしくお願いします」ペコリ

ミーナ「はい、ありがとう。…工藤大尉はナイトウィッチとして単独戦果を上げてきた他に、欧州撤退の殿も経験している実力者です。服部さんに加えて彼女も新たにウィッチーズの一員になるから、全員仲良くしてあげてね?」


ルッキーニ「おぉー! シャーリー、アレみて!?」

シャーリー「ん? あー…確かに、リーネ以来の逸材だなありゃ。後で確かめるか?」

ルッキーニ「もっちろーん!」

バルクホルン「おい、うるさいぞお前達」

ペリーヌ「ここへ来て扶桑のウィッチが一気に増えましたわね…」

エイラ「まあイイんじゃないか? サーニャの負担が減るし、夜間任務できるヤツは歓迎だ」


敏恵(なんだろう…なんか、思ってたより和やか雰囲気で嬉しい! 案外恐い所かと覚悟してたけど)ホッ

 
ミーナ「因みに、工藤大尉には諸事情による母国療養を中断して来てもらっています。勿論彼女の戦線復帰はしっかり検討されたうえでの判断だけど、念の為航空任務への参加はもう少し後になるわ」

敏恵「ぇ…?」

ミーナ「司令本部から新たな作戦指示を待つ間、服部軍曹は工藤大尉と共に引き続き“待機”。坂本少佐がいてくれる間はその監督下に置きます」

静夏「了解であります!」キビッ

敏恵(あ、あれあれ? どういうこと…??)


ミーナ「それでリーネさんとペリーヌさんは昼間の哨戒任務に復帰。…宮藤さんも戦闘出撃は許可するけど、打ち合わせた通り“衛生担当”を重視して頂戴ね?」

芳佳「はい、分かりました!」

ペリーヌ「返事はよろしいですけど、いざという時はまた無茶をしそうですわね?」ボソ

リーネ「ぺ、ペリーヌさん…(確かに否定できないけども…)」

ミーナ「はい、それじゃあこれで連絡はおしまい。解散」ニコ

 
――



敏恵「……」

敏恵(えーっと、取り敢えずどうしよう? 荷物を置きに――…あ、でも部屋割りわかんないや??)モヤモヤ


「うにゃ!」

――ムンズッ


敏恵「わっ!! な、なに!?」ドキッ

ルッキーニ「うじゅあー! おっきぃー♪」ワシワシ

シャーリー「どうだルッキーニ?」スタスタ

ルッキーニ「すごいよコレ!? シャーリーと同じくらいのおっぱい!」

シャーリー「おお、マジで? いや~まいったなぁ」

 
ルッキーニ「ん~~……でもやっぱり、シャーリーのが一番かな」モミモミ

シャーリー「あはは、そりゃどーも」

敏恵「…あのー、もしもし? これって挨拶か何かなのかな? //」モゾ

ルッキーニ「そだよ!」

敏恵「へ、へえ…? 初めて知ったけど、これは恥ずかしい…。どこの国のだろ?」

シャーリー「いや違うっつうか、こいつ特有の挨拶みたいなもんなんだ。大目に見てやってくれ」

敏恵「え? はあ、なるほど…?(タヴィアさんと似たような事か)」


シャーリー「あたしはシャーロット・イェーガー、リベリオン陸軍大尉だ。シャーリーでいいよ?」ス

敏恵「あ、うん。よろしくシャーリー」ニギ

ルッキーニ「あたしはフランチェスカ・ルッキーニ、ロマーニャ空軍少尉だよ!」

敏恵「はは…、凄い元気だね? よろしくルッキーニちゃん」

 
芳佳「敏恵さーん!」ステテ

敏恵「芳佳ちゃん、暫くぶり。お医者さん留学は辞めちゃったの?」

芳佳「あ、えっと、それはうやむやというか……延期です!」

シャーリー「行く前から休学なんてワルだよなー宮藤?」アハハ

ルッキーニ「サボタ~ジュ!」

芳佳「あはは…。それより、まさかこんな形でまた会うとは思いませんでしたよ! ミーナ中佐から話は聞いてますけど、本当に大丈夫なんですか?」

敏恵「んまぁ、一応は。…復活した芳佳ちゃん頼みになっちゃうから、迷惑かけるけどごめんね?」

 
芳佳「はい、それは平気ですけど。お婆ちゃんと同じ事が出来るかは…」

敏恵「ん、それは多分大丈夫! えぇと――」ゴソゴソ


敏恵「…これ、芳子さん達から預かったよ」ハイ

芳佳「手紙…? ありがとうございます!」

敏恵「清佳さん結構心配してたから、電報でも直ぐ宛てた方がいいかも」

シャーリー「…なんだなんだ? 2人は結構知った仲なのか?」

敏恵「え? うん、ここに来る前は芳佳ちゃん家の診療所でお世話になってたから。一緒に薪拾いした仲だよ♪」ブイ

 
ルッキーニ「としえ病気だったの?」

敏恵「んー、ちょっとした怪我とかね? もう治ってるけど」

芳佳「……」


――スタスタ


エイラ「やっぱあの後でナンかあったのか?」

敏恵「?」

サーニャ「…あの、こんにちは。サーニャ・リトヴャクです」スタスタ

敏恵「さーにゃりとびゃくさん? ……あっ!! 前にマリ達が交信した時の、あのリトヴャク中尉!?」

サーニャ「はい。その、はじめまして」ペコ

敏恵(わぉ…、確かにブロマイドとかで見たことあるかも! あたし本当に有名人の巣窟に来たんだなぁ)

 
エイラ「やっぱアノ時の大尉か、名前も同じだったしなー」

敏恵「?? ということは、貴方が…?」

エイラ「サーニャの僚機、エイラ・イルマタル・ユーティライネンだ!」ドヤッ


敏恵「たしか芳佳ちゃんともっさんのこと“間が抜けてる”って言ってた…」

芳佳「!?」

シャーリー「へぇー?」ニヤ

エイラ「ッ゛!? つ、つまんないコト憶えてんな……アレは流れっていうか、冗談みたいなモンじゃないか」ギク

サーニャ「エイラ…」ジト

芳佳「エイラさん! 私間抜けなんかじゃありませんってば!?」

シャーリー「少佐にばれたらヤバいなエイラ?」ニヤニヤ

ルッキーニ「悪口よくない」

エイラ「ムァア、違う!! その話はもういいだろー!? //」

まだ観ている人いたらすみません。正直書きあぐねてます

 
エイラ「~…そんなことより、あの日の後にこの基地でナニかあったのか? 隊のウィッチが一気にいなくなって、オマエも扶桑に戻っちゃったんだろ?」

敏恵「あー、まあね。結局ウィトゲンシュタインさんの言ってた人達が来てさ、厄介なネウロイの撃墜任務を受けて――」ポリポリ

敏恵「それであたしは負傷して送還されちゃったんだ。その後で他の皆も離れた事情は詳しくないけどね?」

エイラ「ほーん…。よく分かンないけど大変だったってコトか」

敏恵「そんな感じ」ウンウン

シャーリー「どんな感じだっての」

サーニャ「……」

 
エイラ「マ、とりあえずよろしくなー。ハイデマリー少佐やオマエはこの辺詳しいと思うからアテにさせてもらうぞ?」

敏恵「うん。ワッフルとか美味しいお店は任せて!」

ルッキーニ「やたー♪ いこいこー!」

エイラ「イヤそういうコトじゃないんだけど、…まあソッチも興味あるな(サーニャと2人で行きたい…)」

シャーリー「あはは、そういや工藤大尉はここにいたんだもんな? じゃあ基地の案内はいらないか」

敏恵「まあね。…あ、でも部屋割り知らない! というか結構人多いけど、宿舎とか今どうなってるの?」

シャーリー「2人ずつで相部屋だけど?」

敏恵「ぅ…やっぱりか。とほほ」ガク

エイラ「贅沢言うなよなー」

 

敏恵&???の部屋


敏恵「ん~、懐かしいなぁ」ドサ

敏恵(ここは確か……前は誰のだったかな? あたしが居た部屋と殆ど変わらないや)ウロウロ


敏恵「…はは、タンスも同じ! この足がほっそいやつで――」ガコ


敏恵「!」



敏恵「わぉ、これは…――」ゴソ


敏恵「真っ白……おズボンかな?」ピラリ

敏恵(やっぱりズボン、…私と相部屋する人のか。これは失敬)

 
敏恵「……。でも待って? この洒落っ気控えめな純白ズボン、見覚えあるような…?」ミョイーン ミョイーーン


――ガチャコ


ハイデマリー「…?」


敏恵「!?」バッ

ハイデマリー「あ、工藤さん」

敏恵(お、おぅふ…。そっか、マリのだったか…!)

ハイデマリー「…荷解きでしたら手伝いますよ? 私も出戻りの荷物整理がありますので」

敏恵「や、あのこれは何というか…。ごめん、不可抗力なの!」

ハイデマリー「?」

 
――



敏恵「それにしてもマリと相部屋だなんて、これまた凄い偶然だね?(ズボン漁ったことは内緒にしておこう…)」

ハイデマリー「そうでもないですよ。私も工藤さんもナイトウィッチですから、共通の居住環境で括られるのは合理的です」

敏恵「…そっか。エイラもサーニャさんと同じ部屋だとか言ってたし」

ハイデマリー「はい。ユーティライネン中尉は厳密に専従員ではないそうですけど、501ではずっとリトヴャク中尉と夜間任務に従事されていますから」

敏恵「へぇ、なるほど。…やっぱりお熱なのかな?」

ハイデマリー「“お熱”、ですか?」

敏恵「うん。なんかルーツィアさんにくっ付いて行く時のエステルちゃんに似てる感じしない? あの2人も相部屋だったし」

ハイデマリー「…ふふ、そうかもしれませんね?」クス

 
敏恵「ん、よし…と! 取り敢えず整理は出来たかな。こっちの棚、本当に全部使ってもいいの?」

ハイデマリー「はい、私の物は十分しまえていますから」

敏恵「分かった、ありがと! んー、それじゃあ後は…――」キョロキョロ


敏恵「――? ああ、寝床が無いじゃん。布団用意しなきゃ」

ハイデマリー「! ぁ、それは…」

敏恵「ねえマリ? 敷布団って――…いや待った、ここって土足だよ。床に布団なんて敷けなくない…?」モヤモヤ

ハイデマリー「…工藤さん。それなんですけど、実は二段ベッドの供給がまだ足りていないそうなんです」

敏恵「? あ、そうなの??」

ハイデマリー「はい。それについて先程ミーナ中佐にお伺いしたんですけど、何かの事情で施設改修予算がひっ迫しているからと…」

 
敏恵「えぇ…? そんなに変わった風に感じないけどなぁ?」

ハイデマリー「そ、そうですね。私も今日戻ったばかりですが、正直今の所はあまり…」

敏恵「501って意外と貧乏なのかな?」

ハイデマリー「それはないと思いますけど…。ミーナ中佐の政治手腕なら限られた予算内でも適切に運用できる筈です」

敏恵「……でも実際に今寝床が1人分間に合ってない、と」

ハイデマリー「ぅ…! は、はい。信じられませんが」


敏恵「まあ、無いものは仕方ないか。大人の事情はどうにもできないし、現実を見るとしよう」

ハイデマリー「ですがどうしましょうか、工藤さん?」

敏恵「それはもう、ひとつしかないよ? あたしもマリも立ったまま寝る程器用なわけないし――」スタスタ

ハイデマリー「…?」

 
敏恵「ちょっとベッド〈そこ〉、横になってみてくれない?」

ハイデマリー「ぇ? あ、はい」



ハイデマリー「……こう、ですか?」

敏恵「うん、もう少し端に寄れる?」チョイチョイ

ハイデマリー「? …この位ですか?」ヨジ

敏恵「そうそういい感じ! …よし、それじゃあたしも――」

ハイデマリー「!?」


敏恵「いしょ…っと! どう、やっぱり狭いかな?」

ハイデマリー「ぁ、あの!? これはつまり… //」

敏恵「ん? うん。無理矢理だけどこんな感じで、一緒に使うしかないよね?」

ハイデマリー「……」

敏恵「……。やっぱり嫌だ?」

ハイデマリー「………… //」

敏恵「マリ? ねえ、聞いてる?」



――――かくして工藤敏恵と彼女を加えた501部隊、その新たな幕が開くのであった。
 

 

第三話:不一致 に続く

 

 
【幕間小譚 ~阿吽の安寧~】


―ある日の早朝―


敏恵&ハイデマリー部屋



ハイデマリー「……」パタン



ハイデマリー「……」ソロソロリ


敏恵「zz…」スヤスヤ

ハイデマリー「……」

敏恵「むん…~……zz」

ハイデマリー(あと2時間…)チラ

 
――――

――





敏恵「zz…」

ハイデマリー(あと1時間)
 

 
――




敏恵「んん……たまごゃき…~zz…」ムニャムニャ

ハイデマリー(…10分前。そろそろ――)ス


ハイデマリー「工藤さん、朝です」ポンポン

敏恵「んみゃぅ……むぁだ食べててもぃいんじゃ…?」

ハイデマリー「ぃぇ、あの…。それは夢ですから、起きましょう工藤さん」ユサユサ

敏恵「~~……、ん~…?」ノソリ

ハイデマリー「おはようございます」

敏恵「…………。ん……おはよぅ…」ボヤァ

 
ハイデマリー「そろそろ、7時ですよ?」

敏恵「ん、ん~~…っと! はぁー、起きなきゃ」

ハイデマリー「お水は要りますか?」

敏恵「あ、うん。有難うマリ、布団直したら飲むから置いといて?」ノソノソ

ハイデマリー「…工藤さん、気遣いをしなくても私は平気ですから」

敏恵「え、駄目だよ。だってあたしの後で寝るんじゃ、シーツくらい代えないと嫌でしょ?」

ハイデマリー「! いえ、その…」

敏恵「ちょっと待ってね? さっと直して着替えたらすぐ出て行くから」イソイソ

ハイデマリー「……」

 

―その夜―


ベルギガ上空


サーニャ「――じゃあ、工藤大尉の起床時間を待ってから寝ているんですか?」ブゥゥン

ハイデマリー「はい。多段ベッドもそのうちに来ると思いますので、工藤さんが昼型で待機中の間はどうにか…」

サーニャ「…眠くなりませんか?」

ハイデマリー「ぃぇそのっ…2人で使う訳にもいきませんし、大分早目に起こしてしまうというのも――」

サーニャ「……」

ハイデマリー「私が邪魔に入ってしまうのは工藤さんも、やっぱり窮屈でしょうし… //」フィンフィン

サーニャ「それは…、どうなんだろう?」ボソ

ハイデマリー「ぇ?」

サーニャ「ぁ、ごめんなさい…! 今のはちょっと、独り言のつもりだったんですけど――」アセ

サーニャ「…でも、私も基地に戻って眠いまま偶にエイラのベッドに入ってしまう時があるんです。それで迷惑かけてるって前に謝ったら――」



~~~~~~~~~~~~~~~~

エイラ「いやホントに気にすンなって?」

サーニャ「でもエイラ寝てるのに、私が入って来たら邪魔でしょ?」

エイラ「!! ッ……違うンだサーニャ」ショボン…

サーニャ「ぇ?」

エイラ「サーニャが優しいのは解ってるけど、そ…そんな風に思わないでくれよォ…」

~~~~~~~~~~~~~~~~



サーニャ「――という感じで、反って悲しませてしまった事があります」

ハイデマリー「……」

 
サーニャ「だから私は、なんというか……信じるようにしています」

ハイデマリー「信じる、ですか…?」

サーニャ「エイラや仲間の皆さんがしてくれるのと同じ様に、私も家族みたいに想っていいんだと。その関係というか……そういう答え方を教わった気がします」

ハイデマリー「!」

サーニャ「…優しくされるのは、きっと我慢させてしまう事だと思っていました。でも、そうじゃない場合も有るみたいすよ?」

ハイデマリー「……」

サーニャ「ぁ…す、すみません。なんだか偉そうな事言って私…」

ハイデマリー「!? いぃえ、そんな事ありません! …とても参考になりました、有難うございます」

 

敏恵&ハイデマリー部屋


ハイデマリー「……」

敏恵「zz…」スヤスヤ


ハイデマリー(前から工藤さんには力をもらってばかりで、せめて私も返せる様に振る舞うつもりだった)

ハイデマリー(こんな事でも、こうする方が工藤さんだって助かる筈だと思ってたけど…)ジー

敏恵「~……zz」モゾ

ハイデマリー(何も言わないのに、昨日もその前も、端に寄ったまま寝てる…)



~~~~~~~~~~~~~~~~


『――マリはもうちょっと我儘になって平気だよ。あたしはほら…その、友達じゃん!』


『――きっと我慢させてしまう事だと思っていましたけど、そうじゃない場合も有るみたいすよ?』


~~~~~~~~~~~~~~~~



ハイデマリー「……。ん…分かりました」

 
――



ハイデマリー「……」←着替えた


敏恵「zz…」

ハイデマリー(では、失礼します)ソーット


ハイデマリー「ん、と…」モゾゾ

敏恵「~にゃむ……まだたべるぅ…zz」

ハイデマリー「クス…。おやすみなさい、工藤さん」










―数時間後―


美緒「数日目でもう遅刻とは大した度胸だな、私の訓練はそんなにも緩いか…?」ニヤリ

敏恵「えっとそのー……ごめんなさい。むしろその逆というか、起きられなくて…」

美緒「弁解不要!! 2人で走ってこい、今日は倍だ!」バシィッ

静夏「えっ!? 自分もですか!??」ガーン

敏恵(あぁ……マリに頼りきってたから、完全に寝坊してしまった…)


【阿吽の安寧、終】

 
[ざっくり!工藤敏恵メモ]

 其の一:概要なぐり書


扶桑皇国海軍のナイトウィッチ。かつての戦果は欧州で「Herrin der Nacht(夜の女王)」、母国海軍で「鎌鼬」の噂を生んだ。

小園里葉当時中佐が特設した「夜間航空審査部独立派遣飛行隊」唯一の現役ウィッチとして原隊所属。大陸東端の扶桑領にて約5年間の夜間単独専従を経験。


愛機は夜間戦闘脚“月光”シリーズ。試造型から縁があり、小園の元でテストウィッチ役も兼ねて履き続けている。

固有魔法は暗所視限定で発動する通称“超夜間視力”。赤外線波長を捉える独自感覚によって明確な夜間視やネウロイのコアを判別することができるが、明るい環境下では無理。


数か月前までカールスラント空軍への援戦武官としてハイデマリーの指揮する夜間飛行部隊に参加していた(前作:月影の構え太刀)。

もうすぐ18歳のわがままボディ。お水とお米が大好き!



……などなど、他にもありますが是非>>1記載の前スレやwiki等を読んでください。長いけど是非に!

 
 其の二:ハイデマリーとの関係


サン・トロン基地で共に幾カ月を過ごした仲。

敏恵から誘い友達宣言。“マリ”とあだ名して呼び、敏恵にとって欧州で一番の友人となっている。

ナイトウィッチとして特段内向的だったハイデマリーにとっても、ただ同年代の友として寄り添われ苦楽を打ち明け合えた相手として、敏恵を大事に思っている(前作参照)。

 

母国で療養を行っていた扶桑海軍の工藤敏恵は、第三次“ストライクウィッチーズ”に新参するため再びベルギガ領サン・トロン基地へと渡ってきた。


かつてを共に過ごした友人ハイデマリー・W・シュナウファー少佐との再会も叶い、ウィッチとしての再出発に発揮揚々と意気込む敏恵。

しかし、それは今の彼女にとって想像以上に困難な道となるのであった――――
 

 
【第三話 不一致】


サン・トロン基地

ハンガー


『北東襲来のネウロイ群殲滅が確認されました、スクランブル解除。出撃したウィッチの帰投に備えて整備班は――』


敏恵「…うそぉ、もう倒しちゃったの!? 全部??」

小園「実績ある連中だからな、それぐらいやるだろ」カチャカチャ

敏恵「でも中型3機もいたんでしょ? こっちもえーっと…4人くらいしか出撃てないのに!」

小園「……」カチャカチャ

敏恵「というか速過ぎない?? あの辺まで普通に飛んでも今着けばいいくらいだし!」

小園「っ… #」イラ


敏恵「あ、でも向こうも近づいて来てたんだよね? いやそれにしたって凄い、3機も――」

小園「ええい燥ぐな阿呆!!」

 
敏恵「ちょ、何怒ってるんですか園さん?」

小園「…怒ってなどいない。お前だって大陸ネウロイの1機や2機など、朝飯前に討ってきただろうが。大袈裟に感心するな」

敏恵「でも欧州〈こっち〉の飛行型は結構強いんですよ? ライン川越えて偶に変なのも来るし」

小園「だからどうした、お前も負けていない。…ほらいいぞ、さっさとエンジン回してみろ」

敏恵「(“負け”って園さん…)…ん、じゃいきまーす」フィィン


ゴォォオォオ――


小園「もう少し回転上がるか? 無理はするな」

敏恵「あいあい」フィィィン


小園「ふむ…。よし止めろ」


――オォォ…
 

 
小園「問題ないな。月光改の最適化は完了だ」

敏恵「なんか変わったんですかこれ?」

小園「以前にホルテン姉妹がこのストライカーを弄ったのだろう? 悔しいが有益な個所は残して改修してやった」カチャカチャ

敏恵「へぇ…? そういえば確かに、お尻にはビリッとこない」

小園「魔法力の増幅比は調整してある。まったく、安全制御まで除外してフルマッピングするなど正気ではない。お前をユニット諸共壊す気だったのか?」バチムッ

敏恵「あの人かなり危ないですもん、姉の方。あたし苦手です」

小園「…あれが得意な奴などいない。気に病むだけ損だ」ヨッコラセ


小園「――よし、もう脱いでいいぞ?」

敏恵「ん~…、もうちょっと早く済んでればあたしも出撃れたのにー」

小園「阿呆、誰が許可した。さっさと降りろ」

敏恵「……はぁい」シュルル

 
敏恵「もう、本当納得いかないですよ? 人の事呼んでおいて“待機”なんて!」トタッ

小園「…ここへ着いてまだ宮藤芳佳の治癒を受け始めた矢先だ。少なくとも今日の所ならば流石に私も止めるぞ?」

敏恵「違いますよ! だってなんか、哨戒にも行けないで、今更新米の子と訓練受けろって言うんですよ!?」

小園「気持ちは解るが急くな、いたち。連中も本番までには必ずお前を使う筈だ。…早々にこの地の哨戒など出来た所で、大した変わりもないぞ?」

敏恵「そんなことっ…!? 誰かの為に戦えるなら警邏だからとか関係ない!!」ズイ

小園「……」


敏恵「だってあたし、その為に来たのに! 今度こそ本当のウィッチにならなくちゃ!?」

小園「はぁ……分かった落ち着け。確かにそうだな、すまなかった」ポン

敏恵「んむぅ…」

 
小園「なら私からもお前の希望はよく言い伝えておく。だがそのうえで定められた事には従え、いいな?」

敏恵「……」ムスー

小園「おい腐るな、私の目を見ろ。真面目な話だ――」ペチペチ


小園「ここの奴らは決して馬鹿でも無能でもない。ちゃんと意味がある、信じろ」ジ

敏恵「……」

小園「私はお前の我儘を聞いてやれるが、しかし軍組織とは本来こういうものだ。…私や、あの菊井だってその中で折り合いをつけていたんだぞ?」

敏恵(! 菊さん…)ザワ

小園「お前もウィッチとして自立するんだろう? であれば、解るな?」

 
敏恵「……はぁい」

小園「ん、よしよし。賢明だ」カイグリ

敏恵「ちょ…園さん! あたしもう子供じゃないんですけど?」

小園「フッ、まあそう言うな。ちゃんと聞き分けの駄賃もやる」ゴソ

敏恵「む! だから――」


小園「ほら、受け取れ」ス

敏恵「!」


敏恵「…これって??」

小園「お前の太刀だ。一応は回収されていて私が預かっていた」

敏恵「え、これ……まさか“飯綱権現”!?」

小園「ああ。打ち直しても最早脇差だがな」

敏恵「うわぁ~! なにこれ可愛い!!」マジマジ

 
小園「立派に拵えてあるから今度は部屋にでも飾っておくといい。恩賜の宝刀を二度もネウロイに食わせたとなればいよいよ恥晒しだ」

敏恵「あ、まさか御上様にバレてる…?」ギク

小園「口外できる訳ないだろ、預けた人間にも言っていない。…鍛冶師と刀工には銘を読まれているだろうが」

敏恵「ぅ……飯綱巫女の祟りがあるかも」

小園「阿呆。そんなもの迷信だ」

敏恵(だ、大丈夫かな?)ゴクリ


小園「まあ綺麗に拵えてやったんだ、巫女の使い魔とやらも精々安らかだろう」フッ

敏恵「ごめんなさい御飯綱様、後で“ポンポンするやつ”沢山やってあげますから…」ナデナデ

小園「やめろ阿呆」

 
小園「……さて、ここでの役は終えた。私ほもう発つぞ」

敏恵「へ? なんで、園さん居てくれないんですか?」ポカン

小園「ああ、それはもう私の領分ではない。次の予定もあるんでな」

敏恵「えぇ~~!? 冷たいっ!」

小園「ふん、甘ったれが。さっさと自立しろ」クル

敏恵「むぅ~…」

小園「……。気張れ工藤」

敏恵「!」


小園「お前ならやれる。…やってみせろ」スタスタ



敏恵「……はいっ! あたし頑張りますからー!! ありがとう園さーん!」

 
[ざっくり!解説メモ]


 扶桑刀“飯綱権現”

5年前のカールスラント撤退戦下の働きによって敏恵に与えられた恩賜の刀。中世前期の戦巫女“飯綱使い”由来の一振りらしい。
拵もせず独自で補強した白鞘のまま愛用していたが、特異型某ネウロイとの決戦で切っ先の半分は“取り砕かれ”てしまった。(前作参照)

小園の伝手によって残った刀身を小太刀(と短刀の間くらい)として打ち直し、ついに拵も施された!


 刀にポンポンするやつ

打粉〈うちこ〉をかける作業のこと。手入れ手順のひとつ
下拭いを行った後に白くて丸いあれでポンポンしてから上拭い――……詳しくは割愛するのでググろう!

ただ、間違っても徒に“ポンポン”をすればそれで良い訳ではない。

 
滑走路


小園「……坂本か」スタスタ


美緒「御疲れ様です」ペコ

小園「…ふん、私の去り際にお前とはな?」ジロ

美緒「中佐は別件で見送り出来ませんので、私が引き受けました」

小園「そんな物を頼んだ覚えはない」プイ

美緒「!」

 
小園「…察しているか知らんが、私意あって私はお前が特段に好かない。勝手無礼は承知しているからさっさと出て行く」

美緒「……」

小園「ではな」スタスタ




美緒「――…舞鶴にいた頃」

小園「…?」ピタ


美緒「北郷先生から聞いた事を憶えています。かつて共に飛び、我々後続にも倣って欲しいと仰っていた、扶桑ウィッチの話です」

小園「!」

美緒「私は先生が語ったその者を、今でも尊敬しております」


小園「……」


美緒「……」

 
小園「…お前は船でも漕いでいたのか?」

美緒「は?」

小園「1人ではない、2人だ。そのウィッチを語るには外せない相棒がいるのだよ、阿呆め」

美緒「し、失礼しました…」

小園「ふん、だがしかしそんな世辞はどうでもいいさ。どう語った所でお前の言う“其奴”はもはや敬える人間でもない」

美緒「……」

小園「…………。工藤の面倒を見るなら、宜しく頼む」ボソ

美緒「はい」



小園「――…ぃゃ、やはり心配だな」クル

美緒「?」

小園「本当はお前にまで頼りたくなどないんだが……一応、必要十分な情報は与えておくか」

 
[ざっくり!人物メモ]


 小園里葉

海軍大佐の元ウィッチ、25歳。工藤の新米時代からの上司
扶桑初の夜間戦闘脚“月光”シリーズの開発を推進、監督する人物。

現役最盛期の頃は使命感と自信に溢れる優秀なウィッチであったが、舞鶴在籍時に慕っていた北郷章香に左遷されたという誤解とその後扶桑海事変での北郷部隊の活躍によって、激しい挫折を感じると伴に歪んだ向上心を持ってしまう。
皮肉にも同じ階級まで上り詰めた後で北郷との誤解は解けたが、その成果の為に工藤敏恵を“魔導麻薬症”に貶める結果となった。(前作:幕間余話)

尊敬する先輩と関係修復はしているものの、世間で脚光を浴びたり天才・スーパーエースなどと呼称されるウィッチには嫉妬混じりの嫌悪感を示すもよう。
敏恵はそれを「園さんの英雄〈ヒーロー〉コンプレックス」と呼ぶが、超怒られるので本人には絶対言わない。

 

芳佳&静夏の部屋


芳佳「わぁ、綺麗な色ですね!」ポワァァ

敏恵「んっふふ~♪ そうでしょ?」

静夏「合口拵ですね? とても凝ったつくりで青漆〈せいしつ:緑色〉塗りが凄く素敵です」

敏恵「そうそう! 竹筒みたいで可愛いでしょ?」

芳佳「あ、私知ってます。“たけみつ”って言うんですよね?」

静夏「…いえ、それは全然違います(鈍らを模した拵なんて縁起悪過ぎる…)」

 
敏恵「えへへ、月光履いたあたしは差し詰め“かぐや姫”ってことかな? 園さん珍しく良いセンスじゃ~ん」ニヤニヤ

静夏(“園さん”? )ピク



静夏(ぞの……? 月光…――)モヤモヤモヤ



静夏「――…!! まさか、海軍の小園里葉大佐ですか!?」ガガーン

敏恵「ふぃ!? な、何が…?」ビク

静夏「そ、それ…つい先ほど頂いた物だと仰っていましたが、小園大佐に!?」

敏恵「? うん、そうだけど」

芳佳「静夏ちゃん? その小園さんって人がどうかしたの?」ポァァ

静夏「どうかしたって、“救国世代”の大物ですよ!?」

芳佳「??」

静夏「扶桑海事変の本当北方防衛では凄くすごい活躍をして、この欧州でも恩賜の実績を残されている! そして扶桑初の夜間戦闘脚開発を推進し、実現した方ですよ!? 知らないんですか!?」アセアセ

芳佳「ぅ、うん。ごめんなさい」

敏恵「はは、それ園さんが聞いたら喜びそう(欧州のは殆どあたしだけど)」

>>131誤字訂正

本当北方防衛 → 本島北方防衛

 
静夏「こうしてはいられません! 父上の名を汚さぬよう、私も海軍ウィッチの端くれとして、恐れ多いですが御挨拶申し上げないと!」スクッ

敏恵「あ、でも園さんもう行っちゃったよー?」

静夏「な…!?」ズコ

芳佳「扶桑に戻ったんですか?」ポワァァ

敏恵「と思うけどー……わかんない。なんか用事があるみたいなこと言ってたかな」


静夏「――…ん、コホン! 仕方がありません。御挨拶はまた次にします //」イソイソ

敏恵「あたしから何か言っておこうか?」

静夏「い、いえそれは…。機会が有れば自分でやりますので」

敏恵「遠慮しなくてもいんだけどなぁ」

 
静夏「…それよりも工藤大尉、そろそろ向かわなくては坂本少佐の訓練に遅れそうです」

敏恵「ありゃ、もうそんななの! …芳佳ちゃん?」チラ

芳佳「ぁはい、そうですね。今日の治癒魔法はこのくらいで十分だと思います」シュルル

敏恵「ありがとね。んし…っとぉ!」ノソリ

芳佳「お腹の傷跡の方はまた夜に診ますね?」

敏恵「うん、よろしく! じゃあ行きたくないけど、行こうか服部ちゃん?」

静夏「了解であります」

 
[ざっくり!解説メモ]


 救国世代のウィッチ

扶桑海事変が起きた1937~38年に最盛期を迎えたウィッチのこと。
当時の二十歳から下は十五歳、と結構に幅が広くてあやふやである。

実際には“軍神”北郷章香や“扶桑海の巴御前”こと穴拭智子など戦時を代表したヒーロー達を基準に、いつしか世間の女子学生達が括って呼んでいるだけのこと。
一応、該当するウィッチとして江藤敏子、黒江綾香、加藤武子、加東圭子など。

 
基地野外


美緒「さて、今日は工藤が新たに加わったという事でお前達の練度を測った訳だが――」

敏恵「……(まさか落水試験までさせられるとは…)」ビッショリ

美緒「先ず服部、満点はやれんが概ね良く出来ていたぞ? 任務参加へ移る前段階としてこれからは演習を詰めていく」

静夏「はいっ! 有難うございます!」キビッ

敏恵(おぉ服部ちゃん……もっさんに褒められてる! 海兵校の選良生って本当だったんだ)


美緒「…そして、工藤」チラ

敏恵「――! へぃ!?」ギクッ


美緒「お前も申し分ない。体力面にやや不安は残るが、基礎を含めた必要技能は高い水準で習得済みだな」

敏恵「(ぉ…? おおっ!!)ぇ、えっへへ~、どうもー //」

静夏(流石、小園大佐の子飼いと噂だった“海軍の鎌鼬”…!)チラ

 
美緒「…少し魔法力を使ったが麻薬症〈ちょうし〉はどうだ? 飛べそうか?」

敏恵「はい! すこぶるオッケー、異常ないです!」ブイ

美緒「そうか」

敏恵(ふふん♪ これならあたしも直ぐ任務に出撃られるね! とりあえず夜間哨戒かな?)ワクワク

美緒「……。よし、では今日の残りは2人で模擬演習だ。明日からも後半は実践的な訓練を中心にやっていくぞ?」

敏恵「えっ」

静夏「了解!」

美緒「ではハンガーへ移る、駆け足!!」

静夏「はい!!」ダッ


敏恵「…? ちょ……??」

美緒「どうした大尉、後輩に遅れるな。さあ走れ」

敏恵「いやあのっ…ま、待ってくださいもっさん!?」

 
美緒「何だ? やはり飛ぶのは無理か?」

敏恵「そんな事ないですし!! あたし訓練なんか必要ないですよッ!?」ズイ

美緒「……」

敏恵「さっきの試験でもう分かったんでしょ!? 素人じゃないんだし、501のウィッチとして働けますってば!」

美緒「…本当にそうか?」

敏恵「は!? な、なん…??」


美緒「お前を実戦に出して、本当に平気なんだな? 工藤大尉」

敏恵「ッ…!! ば、馬鹿にしてます? これでもあたし5年間単機で戦ってたし、最近はこの辺のネウロイも倒しましたけど…? #」

美緒「知っている」

敏恵「それじゃあなんで?? まさか部下の訓練相手させる為に呼んだんですか!?」

美緒「勿論違う。落ち着け」

敏恵「だったら坂本さんこそ落ち着いて考えてくださいよ!? あたしはウィッチとして、今度こそ、守るためにここへ来てるんです!! #」クワ


美緒「……」

敏恵「っ~~!」グヌヌー


美緒「…はぁ。よし分かった、そこまで言うなら示してみろ」

 

ハンガー



――ガション


敏恵「へへ、久々の飛行だ!」フィィン ピョコ


静夏(あれが夜間特化型戦闘脚、月光…)チラ チラ

美緒「準備は良いかお前達?」

敏恵「この機銃って13ミリですよね? あたしの九十九式と十八試三号は?」

美緒「模擬弾すら無い物を使えるか。塗料弾丸の用意があるのはその模擬戦銃だけだ」

敏恵「そっか…了解。じゃあこれ、もう一丁使っちゃおう」ハシ

静夏「えっ! 片手で扱うつもりですか!?」

敏恵「? うん、あたし放出〈シールド〉の魔法制御は下手だけど循環〈こういうの〉は得意なんだよね」ジャッ

敏恵「身体強くしたり、反動制御なら負けないよー? 昼間でだってナイトウィッチのお姉さんは強いんだから!」ニヘヘ

静夏「は、はあ…?」

 
敏恵「…で、坂本さーん! 服部ちゃん倒したら認めてくれるんですよね?」

静夏「!? えぇっ……わ、私と工藤大尉で一騎打ちですか!?」ガビンッ

美緒「違う、そんな訳ない。服部はお前の味方だ」

敏恵「…? 味方って、じゃあ誰と模擬戦するの??」

美緒「待っていろ、お前を測るに相応しい相手がもう直ぐ来る」


――スタスタスタ


バルクホルン「すまない、待たせたか少佐?」

敏恵「…!」

静夏「!!?」


美緒「いや平気だ。急に呼んですまないな」

バルクホルン「私は構わないがミーナはぼやいていたぞ? また勝手に何か始めるのか、と」

 
美緒「わっはっはっ! 施設予算を使い込んだ件ですっかり信用を失ってしまったな」

バルクホルン「…いや少佐、私も笑い事ではないと思う。大浴場は確かに有難いが――」

美緒「まあそれについては後で聞く。こちらの準備は出来ているからお前もストライカーを履いてくれ」

バルクホルン「ああ、まあ……そうだな(誤魔化された?)」


敏恵「あのー、もっさん? まさかあたしの相手は…」

美緒「うむ、そいつだ。手強いぞ?」

バルクホルン「ハイデマリー少佐から実力は聞いている。よろしく工藤大尉」トタ

敏恵「おぉー…501の戦闘隊長さんと模擬戦…!」

静夏(む、無茶だっ!! あのハルトマン中尉に次ぐ世界トップエースの一人ですよ!?)ゴクリ

 
バルクホルン「さてと…。ハルトマン以外とやるのは久々だな」フィィィン ピョコ


バルクホルン「――…ん? 私の機銃が一つ足りないようだが」

美緒「ああ、それはさっき“隣の奴”に取られたぞ?」

バルクホルン「なに?」チラ

敏恵「え?? …あ! これ戦闘隊長さんの分だったんですか!? 横にあったからつい…!」アタフタ

バルクホルン「……なるほどそうか。ナイトウィッチは重火力が好ましいからな、お前も両手持ちをするのか?」

敏恵「えぇと、まあ…はい。でもこれ返します、ごめんなさい」

美緒「いやそいつはくれてやれバルクホルン。ハンデも必要だ」

敏恵(…っ! は??)カチン

バルクホルン「いいだろう、私は構わない」

敏恵(な、なにくそぉ~!? こうなったら絶対に勝ってやるっ!!)

美緒「よし、では始めるぞ? 両陣営出撃!」

 
――――
――




基地上空



――ブゥゥウンッ


敏恵「くっ…!! いまいち上手くいかない、もうずっと攻めてるのに…!」ダダダッ

静夏「工藤大尉、やはりバルクホルン隊長はわざと追われているのでは? 逃げに徹しられては普通に追い込むのは難しいかと思います!」゙

敏恵「違う! そんなのじゃなくてっ……出来る筈なの! あたしに任せて!!」

静夏「す、すみません…」






バルクホルン「――……少佐の言った通りだな。“ちぐはぐ”というか、確かに酷い」ブゥゥン

バルクホルン(だが実際それでも油断できない腕だ。…いったい“夜の女王”とやらはどれだけ高いレベルだったのか――)


美緒『大尉、聞こえるか?』ガザ


バルクホルン「…! ああ、聞こえてる。この調子なら向こうの弾切れまでやれるがどうする?」

美緒『いやもう十分だ。終わらせていい』

バルクホルン「そうか。……了解した」

 
――



静夏「――…進言します工藤大尉!! 二手になりましょう!」ブゥゥン

敏恵「えっ!? や、でも服部ちゃんは…!」

静夏「大尉達の戦いに私如きが出しゃばる気はありません! しかし囮くらいはやらせてください、出来ます!」

敏恵「……わ、分かった。気を遣わせてごめん!」

静夏「とんでもありません! 自分がこのまま追いますから、大尉は――」


敏恵「――…!? 服部ちゃん、マニューバッ!!」クワッ


静夏「ぇ? …えっ、戦闘隊長が消えた!?」




ダダダダンッ



静夏「!?」ベシャシャ

敏恵「服部ちゃ――」



~~~~~~~~~~~~~~~~

『あかんっっ! 皆逃げぇ!!』

『菊井ぃいーーッ!!!』

~~~~~~~~~~~~~~~~



敏恵「――っ゛…!!」ゾクッ

 
静夏「な…?? これは!」



――ビュゥウォン


バルクホルン「すまないな軍曹」ブゥゥン


静夏「ぅ、後ろに!? そんな…! まさかマニューバ機動をしながら、狙い撃つなんて!?」

美緒『服部軍曹被弾確認。速やかに戻れ』ガザザ

静夏「っ……申し訳ありません大尉。離脱します…」ブゥゥン

敏恵「服部ちゃん…!」


バルクホルン「さて。そろそろこちらも攻めるぞ工藤大尉、覚悟はいいか?」


敏恵「くぅっ…! な、なにくそぉー!!」


――――
――

 

ハンガー


敏恵「…………」ベッチョリ

静夏「ぁ、あの工藤大尉…」


バルクホルン「――用事は済んだことだし、私はもう戻るぞ少佐」トタ

美緒「ああ、助かった。せっかくだから所見でも話してくれるか?」

バルクホルン「…いや、私から言うことは何もない」スタスタ


敏恵「……」

 
美緒「どうだ、気は済んだか?」

敏恵「納得いかない。さっきのは何ていうか、偶々調子が出せなかっただけだし」

美緒「……成る程、そう取るか」

敏恵「療養で離れてて、数カ月ぶりでいきなりだったからそれで。…あんまり思ったように出来なくて」

美緒「だから苛立つと?」

敏恵「それは……まあ、他にも色々…」モゴ

美緒(やれやれ、これは師弟揃いに嫌われてしまったか?)

敏恵「……」


美緒「服部」チラ

静夏「は、はい! 何でありましょうか!?」ビク

美緒「すまんが先に外せ。今日はもう休んでいい」

静夏「はあ…? はい、了解しました」ソソクサ

 
美緒「ふむ、まあしかしこういう結果だ工藤大尉。まだお前を出撃すわけにはいかない」

敏恵「でも…」

美緒「悔しいだろうが今直ぐは無理だ、許可できん。お前も自身が万全でない事は実感したんだろ?」スタスタ

敏恵「ぅ…」ギク

美緒「お前の言う通り、最終的には501の戦力として加わるさ。その為に中佐はお前を呼んだんだ――」ツン


美緒「…だが逸るな? 部隊の本格的な動きまではまだ時間がある。その間にお前は“お前”に追いつかねばならん」


敏恵「えっ、あたしが……あたしに??」

美緒「そうだ」

敏恵「そ、それってどういう…?」

美緒「具体的な話は短くないからまた今度だ。…取り敢えず、体中の塗料が乾ききる前に洗い流しておけ」

敏恵「……」

一旦ここまで

ぼちぼち……ぼちぼち… φ(-×-;)

 

廊下


敏恵「はぁもう、やるせない…」テクテク


敏恵(そりゃあ確かに負けは負けだし、いい所も全然なかった。ハンデまであって、2対1なのに――)

敏恵(よりにもよって“また”あたしは、あんなっ……あんなにあっさり!!)


敏恵「ッ……違う! あんなのじゃないんだ、あたしは! もっとこう…上手くやれるのに…」グヌ


敏恵「…………。はぁ…」

敏恵(こんなんじゃエステルちゃんに笑われちゃうな。明日もう一回頼み込んで、なんとか本領発揮しないと――)



『えー! じゃあそのネウロイをやっつけないとずっとコノ調子なのかー!?』



敏恵「…! ネウロイ?」ピク

 
『やけに嫌そうだなエイラ、何か不満があるのか?』


敏恵(この部屋…? マリの執務室だったけど、今は501の隊長さんが使ってるのかな?)

敏恵(何の話してるんだろ? ちょっと気になる…)ソー




執務室


エイラ「不満っていうか、つまりソイツをワタシ達に“丸投げ”するってコトなんだろー?」

バルクホルン「夜間に出没しているという情報なんだから当然だろ。お前は今何を聞いていた?」

シャーリー「いや、まあ何となく意味はわかるけどさ。エイラ言い方がね…」チラ

ミーナ「うふふ、こっちを見なくても心配ないわよシャーリーさん?」ニコ

シャーリー「えぁ、はい。すみません」アハハ…

ハイデマリー「……」

 
ミーナ「エイラさんの主張は理解してるわ。サーニャさんの負担を気遣ってくれているのよね?」

バルクホルン「…ああ、そういう意味だったのか。まったく相変わらずなんだな?」

エイラ「な、なンだよ大尉… //」タジ

ミーナ「確かに標的が決まっているならたとえ夜でも専門外の人員を割くわ。今までもそうだったわね?」

シャーリー「ですね」

ミーナ「だけど今回は貴方達だけで先ず対応してみて欲しいの。2人にハイデマリー少佐まで加われば相当な危険もない筈だし、今後の為に“夜間チーム”の運用目処は確かめないといけないわ」


ハイデマリー(ミーナ中佐はやっぱり、工藤さんの固有魔法について把握してる。きっとその為に――)モヤモヤ

ミーナ「だから今夜は3人揃って情報にあった空域を哨戒して頂戴。諸々を考慮して現場指揮は少佐に任せるから」

ハイデマリー「……」

ミーナ「頼むわねハイデマリーさん?」チラ

ハイデマリー「ぇ? ぁ、はい。…了解しました」コク

エイラ「んん…。しょうがナイなー」





廊下


敏恵「――ほうほう、今夜の哨戒でネウロイを…?(というかマリ起きてるし)」

敏恵(でもこれはちょっと、チャンスかも! いいこと聞いた!)


敏恵「…よし。となったら、どうにかしてあたしも出撃ないと!」トタタ

 
―その夜―

ハンガー


ハイデマリー「……」ガション

エイラ「ちゃんと眠れたかサーニャ?」

サーニャ「うん、大丈夫。エイラも無理しないでね?」

エイラ「ワタシは平気だって!サーニャがいるのに調子悪くなんてならないさ」

サーニャ「…ハイデマリーさんも、よろしくお願いします」

ハイデマリー「ぁ、はい。こちらこそ」

サーニャ「ふふ…♪ サン・トロン基地コントロール、夜間発進路の確認をお願いします」

『了解! 滑走進路および上昇空域クリア、風は――』ガザ

エイラ(ネウロイ撃墜任務だっていうのにナンか、やけに上機嫌じゃないかサーニャ? …まさかハイデマリー少佐がいるからか!?)モヤモヤモヤ

 
ハイデマリー(ミーナ中佐の仰った意味。これから敵地を攻める局面で“工藤さんの夜間視”に頼る戦略も想定しているという事…)

ハイデマリー(そして私が“その時”の指揮を執るかもしれない)



~~~~~~~~~~~~~~~~

小園『今度こそあいつは己の意思で戦いに来た。…但しそれ故にどうにも危うい』

小園『…私が抱くその懸念を、君にも共有させておく』

~~~~~~~~~~~~~~~~



ハイデマリー「……」



ウィィ… ガゴォン


ハイデマリー「?」ピク


整備兵「13番、発進ユニットオーケー! ウェポン重いが下げ過ぎるなよ?」

ハイデマリー「…あの、すみません?」

整備兵「え? あっ失礼しました少佐殿、お邪魔でありましたか」

ハイデマリー「あ、ぃぇ! それはいいんですけど、どうして工藤大尉のユニットを…?」

 
整備兵「はっ! これは訓練飛行用に点検と準備をしておくよう、坂本少佐の御指示との連絡を受けまして」

ハイデマリー「…こんな時間に、ですか??」

整備兵「明日の早朝にお使いになるそうで、弾薬装填も済ませて今のうちに出しておけと」

ハイデマリー「……。その連絡、誰から聞い――」


ガザザ

エイラ『アレ、いないぞ? …オーイ、ハイデマリー少佐! まだ発進してないのかー?』


ハイデマリー「!」

エイラ『どうしたんだ? ナンかトラブルかー?』

サーニャ『あの、大丈夫ですか…?』

 
ハイデマリー「ぃ、いえすみません! 問題ありませんので、今から出ます…!」ガシャコ


ゴォォォ――

ブゥゥウン――…




整備兵「……よし。後は夜番に任せて、もう寝るか」


整備兵(しかしあの大尉殿にまたお会いするとは、俺も運が良いのか悪いのか……つい下心でこんな時間まで働いてしまった。明日早朝当番なのに)ムッツリ



――タッタッタッ


敏恵「お疲れ整備兵さん!」ポン

整備兵「ん? えっ…!」


敏恵「そい!」ダッ スポ

 
整備兵「大尉殿!?」

敏恵「よし、今マリが出たばっかだからまだ発進路安全だよね」フィィン ピョコ

整備兵「…いやあの、ちょっと? 何をしてるんですか大尉??」

敏恵「ぇ? あ、あー……ごめんなさい。坂本さんの命令っていうの、実は嘘です」テキパキ

整備兵「は?」

敏恵「騙して本当すみません。でもあたし、どうしても行かなきゃいけないの!!」ジャギンッ

整備兵「……ぁいえ、はい。お気をつけて…」タジ


敏恵「うん、どうもありがとう」ジッ

整備兵(――! //)ドキィ



敏恵「~うしっ! さあ行くよ月光、ネウロイを倒さなきゃ」


敏恵「…発進!!」


ガジャンッ


ブゥゥウウン――
 

 

ベルギガ領上空


エイラ「取り敢えずライン川まで直行する感じなのか?」

ハイデマリー「はい、サン・トロン周辺の警戒は基地に任せて先ずは急ぎましょう。なるべく余力を保った状態で敵を探します」

サーニャ「了解」



「おぉーーい、待って~~!」



ハイデマリー「…!」

サーニャ「?」


――ブゥゥウン


敏恵「ふぃ~よかった! 見失ったかと思った」

ハイデマリー「工藤さん!?」

 
エイラ「オイオイ、なんで大尉まで? 聞いてないぞー」

サーニャ「…えっと、管制に確認してみます。随行指示が出ていたのかも」ス

敏恵「あっ!! 駄目、待って!?」

サーニャ「ぇ?」

エイラ「なんだよ? 基地に連絡させると都合が悪いのかー?」

敏恵「その、それは~…えぇー……なんというか、あのぉ…――」

ハイデマリー「…自己判断で出撃したんですね? 恐らくどこかで今夜の任務を知ったから」

サーニャ「それって、つまり…」

エイラ「まあ命令違反だな。工藤大尉はまだ待機指示だって中佐も言ってたぞ」

敏恵「ぅ…!!」ギク

 
ハイデマリー「……」

敏恵「だ、大丈夫! 芳佳ちゃんのおかげで身体は平気だから、心配ないよ!?」

ハイデマリー「ですが…」


エイラ「――まあ、しょうがないな」ヤレヤレ

サーニャ「エイラ?」

エイラ「べつにイイんじゃないか? 戦力多いなら楽だし、クドー大尉は夜間専門のキャリアもあるから足手まといにはなんないだろ」

敏恵「お…! うんうん、その通り!」

エイラ「どうするハイデマリー少佐? 一応指揮官の判断に任せるけど、ワタシ達が一緒なら平気だと思うし、さっさと任務終わらせた方がイイんじゃないか?」

サーニャ(エイラってば、まさか引き返すのが面倒だとか思ってないよね…?)ジー

 
ハイデマリー「…………分かりました。ではとにかく哨戒はこのまま、続けましょう」

敏恵「本当に!? やった!」


ハイデマリー(小園大佐やミーナ中佐達が危惧している工藤さんの“何か”…――)

敏恵「ありがとうマリ!」ニッ

ハイデマリー「は、はい(――こうなったらいっそ、直接確かめた方がいいのかもしれない。ただ闇雲な不安を思うよりは…)」

 
――――
――



敏恵「――じゃあ巣じゃなくて、ライン川の近くで何かが…?」

ハイデマリー「はい。506のウィトゲンシュタイン少佐が不審なネウロイの痕跡を確認しています」

ハイデマリー「…恐らくここ最近昼間に頻出していた飛行型らしき群はそのネウロイが要になっていると、ミーナ中佐はそう考えているようです」

敏恵「“らしき”って?」

エイラ「足の生えてるヤツがいたんだ。ワタシも昨日出撃して何体か見たぞ?」

敏恵「えっなにそれ、飛んでるのに脚付いてるの?」

サーニャ「……。つまり地上型のネウロイだったという事ですか?」

ハイデマリー「可能性はあると思います。実際に形だけでなく変質をも実現するネウロイがいる話は“聞いた”ことがあります」


敏恵(…マリが言ってるの、前に戦ったネウロイ・リーパーのことかな? やっぱり緘口令で――)



~~~~~~~~~~~~~~~~

 ――ズブリッ

『ッごぎゅ!? ゥぅ゛…!!』

~~~~~~~~~~~~~~~~



敏恵「!?」ゾワッッ


敏恵「…? ……??」

 
エイラ「まーとにかく、ソイツをなんとかしないとダメなんだってコトらしい」

ハイデマリー「はい。セダン基地からの情報によると、ガリアでも国境対岸の森林倒木が北〈ベルギガ〉側を中心に発見されたそうです」

サーニャ「…地上型のネウロイが進行した跡ですよね?」

エイラ「ソー言われてみると確かに、この辺の沿岸も向こう側だけやけに荒れてたよなー? 侵略地だからそんなモンだと思ってたけど」

ハイデマリー「いえ、501の皆さんが来る最近までは繁茂したままでした。占領地内で最も外れの沿岸部は地上荒廃もまだ消極的な筈なんです」

エイラ「てことは中佐の読み通り、やっぱナンかいるのか? メンドクサイナー」

サーニャ「エイラ、大事なことだから」

エイラ「ウン、わかってるけどさァ。夜にコソコソ企むなんて手のかかる敵だよな~マッタク」


敏恵「…………」

 
ハイデマリー「……工藤さん?」

敏恵「…! ん、なに?」

ハイデマリー「大丈夫ですか?」

敏恵「え? 何が?」

ハイデマリー「いえその、急に黙っていたので」

敏恵「ぁ…うん、ごめん。久しぶりだからちょっと緊張してきちゃって」

ハイデマリー「……」

敏恵「でも大丈夫、あたしが絶対そのネウロイやっつけるから。任せて」

ハイデマリー「ぃ、いえ。べつにそういう心配では…」

敏恵「……」

ハイデマリー「(工藤さん…?)ぁ、あの――」



ハイデマリー「!」フィン フィン

 

 
サーニャ「…! 飛行体の反応です」フィィン

敏恵「!?」

エイラ「お、ホントにでた! ネウロイか?」

サーニャ「うん、周辺空域で他のフライトプランは特にないわ」

ハイデマリー「方向およそ1時。…距離から推測してほぼライン川の上空かその先ですから、間違いありません」

敏恵「マリ、上下はどっち!?」

ハイデマリー「ぇ…? あ、高度はかなり低い位置です。ただ――」

敏恵「下だね? ありがとう!!」バッ

ハイデマリー「あっ、駄目です工藤さん! 待ってください!?」


ブゥゥウンッ――



エイラ「…オイなんだよクドー大尉、突然はりきり出したぞ? 結構好戦的なヤツなんだな」

ハイデマリー「……ぃ、ぃぇ。“もう”そんな事ない筈ですが…」

エイラ「ヘ?」

サーニャ「――! この反応…!」フィィン

エイラ「ン?」

サーニャ「ハイデマリーさん、私達も」チラ

ハイデマリー「…はい、そうですね。直ぐ追いましょう!」


ブゥゥウン――



エイラ「あ、ナンだよオイ! 待ってくれよサーニャ~!?」

 

ベルギガ=カールスラント国境

ライン川上空



――ブゥウウン


敏恵「はぁ……ふぅ…。見えた、あれだ」~フワ






ネウロイ「……」ゴゥン ゴゥン






敏恵「結構遠いなぁ。これ以上行くと敵地侵入〈ごはっと〉か…」ジー

敏恵(でも超夜間視力は冴えてる。相変わらずはっきり見えるし、小さいけどコアも――)


敏恵「――…! ちょ、えっ!? なにあれ下に沢山いる…!!」
 

 

「「「…………」」」ゾロゾロゾロ


ネウロイ「…~~」ペカー


「ッ…!?」ズズズ


ネウロイ「~~~~」


「…ー! ~~!」フヨフヨ






敏恵「むぉ、おお…! 一個浮いた!? 昇ってる!」ガーンッ

敏恵(なるほど、ああやって“夜なべ”された兵隊達が日中に突破して来てたんだ)


敏恵「…よし! だったら先ずあいつのコアを撃ち抜けばいいよね!?」グィ

敏恵「この十八試三号機銃の特性30ミリ魔導徹甲弾なら届く。遠くてもこれ位なら、余裕で狙える!」ガジョンッ





ネウロイ「~~~~」





敏恵「…すぅ……はぁー…、すぅ……」ドキドキ
 

 


ネウロイ「~~~~」





敏恵「はぁ………すぅ、はぁ…。んっ…」ゴクリ

敏恵(…食らえネウロイ、あたしが絶対退治する!)グッ


敏恵(――今度こそ、先にッ…!!)ガチィ



ドォォウンッッ



ヒュゥゥゥンッ――



敏恵「…! 外れた!?」

 
敏恵「ぐっ……何やってんのあたし!! ちゃんと狙え!」ガチ


ドフッ ドォオンッ



ヒュゥ ヒュゥウウン――



敏恵「!!? …~~ッ!! く、くそ! なんで!? #」ドフドフドフドフッ






ネウロイ「~~――」スカ スカ

ネウロイ「…? ……!」


ネウロイ「ーー! ~ー!」ゴゥン ゴウン

 

 

敏恵「こ、こっちに来る…! 気付かれた!?」ビク





ネウロイ「…ー~~」ゴゴォォ…





敏恵「ッ…!?」ゾワッ


敏恵「く、来るな!! このぉ!」ドフドフドフ

敏恵「中れっ…! あたれぇえッ!!」ドフドフドフドフ




ネウロイ「~~、ー…」スカ スカ スカ

 

 

敏恵「――ぅ…! た、弾切れ!?」カシュ カシュ


敏恵「ど…ぇ、えぇと……っ! 弾帯を――」アセアセ


~ズルッ


敏恵「あっ!」


ヒュゥ~~……↓


敏恵「~ッ゛……ぅぅ、くぅ…!!(き、九十九式機銃――)」アタフタ





ネウロイ「……。ーー!」ギラ



ビイィィーーッッ



敏恵「ひゃあっ!!?」バジュゥン


敏恵(ぶ、武器が…! ネウロイのビームが、あぁ…ぁたしの横を!?)ザワザワザワ

 

ネウロイ「……」ゴゴゴォ…




敏恵「――ッッ…!!!」ゾワワッ

敏恵「うっ…なんで、こんなに。あたし、こんな筈じゃ…!?」ワナワナ



『――…工藤さん!』ガザザ


ドォオンッ



ネウロイ「ッッ! …!?」バギィン




ハイデマリー「大丈夫ですか工藤さん!?」ブゥゥンッ

敏恵「……ま…、マリ…!」

エイラ「たくー、大尉が全速力で行くから追うの大変だったぞ? ていうかどういう状況だコレ?」ブゥゥン

 
サーニャ「前方、迫って来る未確認飛行型1体。他に複数の動体反応が対岸数キロ地点にいるわ」ブゥゥン

エイラ「そっちは地上型か? 川の向こうじゃ手が出せないな」

ハイデマリー「…ユーティライネン中尉は飛行型ネウロイを陽動、対岸の群から十分に孤立させて、サーニャ中尉の火力で動きを止めてください!」

サーニャ「了解。エイラ」コク

エイラ「オウ! そんじゃ、やるか~」ブゥゥン



ハイデマリー「ふぅ…。突然先行して、どうかしたんで――」ス

ハイデマリー「!?」

敏恵「……ご、ごめんマリ。あたし…っ」ガクガク

ハイデマリー(装備が殆ど無くなって――…いやそれより、明らかに様子が変!)

 
ハイデマリー「…大丈夫ですよ工藤さん。無理はしないで、さがっていて下さい」

敏恵「!」


~~~~~~~~~~~~~~~~


『――大丈夫やで、いたっちゃん! 心配無用や』


『あかんっっ! 皆逃げぇ!!』


~~~~~~~~~~~~~~~~



敏恵「っ……だ、だめ。……駄目だょ、マリ…?」ハシ


ハイデマリー「ぇ?」

敏恵「だっ…“大丈夫”じゃない…。 あたしは、もぅ……逃げなくて平気なの…!」ワナワナ

ハイデマリー「ですが、あの――」

敏恵「だって、もう違うんだよ!? あたしはやれるんだから!! な、何度も何体もッ……憶えてるんだから!!」

ハイデマリー「…く、工藤さん?? いったい何の話を…?」

 
敏恵「ぁ、そうだ! まだ奥の手が――」ゴソソ

敏恵「銃弾は終わっちゃったけど、この小太刀があるから!」

ハイデマリー「それは…! まさかまたネウロイに突き立てて魔法力を流す気ですか!?」


敏恵「これなら外すもんか……これならッ!!」ブゥゥンッ



ハイデマリー「待って、危険過ぎます! 今の工藤さんでは――」

 

――




ネウロイ「ーー!」ゴゥン ゴゥン


ビビィーーッ



エイラ「おっと! 危ないな」ヒョイ

エイラ「…そろそろイイんじゃないか? サーニャ~!」

サーニャ『うん、離れてエイラ』ガザ



バシュシュゥウウゥウ――


ネウロイ「ーッ…ッッ゛…~!!」ドゴォォア



サーニャ『全弾命中。ネウロイが怯んだわ』

エイラ「でも意外と頑丈だな? コアは吹き飛ばなかったのか」

サーニャ『…私の残弾で残りの装甲を剥がしてみるから、エイラがコアを』

エイラ「エ? イイけど、失敗したらサーニャ危なくないか!?」

サーニャ『一発は残すから大丈夫。まだハイデマリーさん達がいるし、撃ったら直ぐ下がるわ』

エイラ「ン……分かった。じゃあ今のうちに――」


ハイデマリー『爆撃待って下さい!』ガザザ
 

 
エイラ「オ…? どうしたハイデマリー少佐?」

ハイデマリー『工藤大尉がその……っ…』

エイラ「??」

サーニャ『ハイデマリーさん?』

ハイデマリー『と、とにかく大尉がもう敵に向かってしまって…。私が止めるのでお二人は援護をお願いします!』


エイラ「……ナンダヨもー。やっぱり好戦的なんじゃないか、クドー大尉」ヤレヤレ

サーニャ『…でもエイラ、私達も言われた通り援護しなきゃ。もうネウロイが動き出すわ』

 
――



――ビュォオオォンッ


敏恵「この為に戻って来たんだ、やらなきゃ…!!」ビュォォ





ネウロイ「…!」

ネウロイ「~ー」ゴゥン ゴゴォ…





敏恵「!?」ゾワ


敏恵(っ…恐い筈ない、もう昔の事だ! 今まで通りネウロイを倒すだけ!!)




ネウロイ「ーー!」ギラ


ビィーーシュゥウッッ



敏恵「――!! どぅぃ゛…!!!」パァアッ


ズズンッ


敏恵「ぐッ…!」

 
敏恵(ど、どうして…?? ビームが避けられない!?)~ヨロ

敏恵(…なんで? どぅしようぁたし、このまっ……このままじゃ、また!!!)ザワザワ


敏恵「――…はっ、はぁ……!!」チラ




ネウロイ「…~」ギラリッ




敏恵「ぅぅ…!」

敏恵(守らなきゃ、まもらなきゃまもらなきゃまもらなきゃ――)グワグワ グワン




ネウロイ「ーー!!」カッ



ビビィイイーーーーッッ



敏恵「ま、まも…――」

 

――ビュゥウウンッッ


ハイデマリー「工藤さん、私の後ろに!!」バッ

敏恵「…!?」


パアアァッッン


ハイデマリー(あ、危なかった…! やっぱり今の工藤さんは何かおかしい)


敏恵「……ぁ、ぁあっ…」ワナワナワナ


~~~~~~~~~~~~~~~~


『――皆逃げぇ!!』バッ



『菊井ぃいーーッ!!!』




ジ ュ オォ ン ッ ッ



~~~~~~~~~~~~~~~~



敏恵「ぅ゛うぅ……~っ、ぁああぁあ゛!?!?」ガバッ

ハイデマリー「――!」

敏恵「~ゃ、やめて!!」

ハイデマリー「ぇ…!?」

敏恵「いぃやだ、マリッ!!!」


ハイデマリー「く、工藤…さん??」ザワ
 

 

第四話:傷の錘 に続く

 

 

ウィッチとして復帰をしたものの、航空任務参加を許可されない工藤敏恵は夜間ネウロイ討伐への無断出撃を強行した。


国境付近で暗躍するネウロイのもとへ逸早く辿り着く敏恵だが、かつての様な実力を発揮できず、万事休すに陥る。

すんでの所でハイデマリーの魔法シールドに助けられるが、追い詰められていた敏恵はその光景を過去と重ねて錯乱してしまうのであった――――
 

 
【第四話 傷の錘】



敏恵「いやだっ!! マリ、まりぃぃいッ!!!」


ハイデマリー「工藤さん!! どうしたんですか工藤さん!?」

敏恵「ぁあっ……あぁぁ…ッ……~~」シュルル

ハイデマリー「!?」

敏恵「~…」フラッ

ハイデマリー「わっ!! あ、あの…!?」ダキッ


敏恵「…・・ 」


ハイデマリー「えっ…? ぇ、工藤さん??」

敏恵「 」

 

――ブゥゥウンッ


エイラ「2人ともナニやってんだよ? 危ないじゃないか」

サーニャ「…! 工藤大尉!?」


エイラ「――ちょ!? 大尉やられちゃったのか!?」

ハイデマリー「い、いえ! 攻撃は私が防いだんですけど、突然気を失って…!」オロオロ

エイラ「ハァ?? な、ナンで…?」

ハイデマリー「わた、私にもわかりません!!」

サーニャ「ハイデマリーさん、落ち着いて…」

敏恵「 」

ハイデマリー「っ…工藤さん! しっかりしてください、工藤さん!?」

 


ネウロイ「……~」ギラッ





エイラ「――!」キュピン


エイラ「危ね!!」バッ


ビィィイイーーーーッ


パァァアンッ


エイラ「クッ……久々シールド張ったけど、アイツのビーム重いな…!」

サーニャ「――! 不味いわエイラ、対岸〈むこう〉側のネウロイもこっちに来はじめてる」フィィィン

エイラ「ゥ…、例の地上型か!? もうナン体か飛べるようにしてあったのか!」

サーニャ「そうだと思う。残りの群も沿岸際から狙われるとここも危ないかもしれない」

エイラ「どうする指揮官! 今のウチ先にアイツをやっつけるか!?」




ネウロイ「……」ゴゥン ゴゥン
 

 
ハイデマリー「…て、撤退します」

エイラ「え、ナンだって!? 放置すンのか!?」ガーン

サーニャ「エイラ、従いましょう? 大尉を抱えてハイデマリー少佐も戦えないわ」

エイラ「イヤでも…今ならワタシとサーニャで倒せるだろ?」

サーニャ「エイラ!」

エイラ「!? さ、サーニャ…?」タジ

サーニャ(ハイデマリーさんは工藤大尉が心配なの。仲間の救助を優先しなきゃ)フルフル

 
エイラ「……わ、ワカッタ。じゃあ撤退だな」

ハイデマリー「すみません、ユーティライネン中尉…」

エイラ「気にすンなって、それより早く大尉を連れて逃げよう。その後どうするかは中佐達に任せればイイさ!」

ハイデマリー「はい。……ではすみませんが、工藤さんをお願いします」グイ

エイラ「エ? ぁ、ウン。いいけど…」ヨイセ ヨイセ


ハイデマリー「…殿は私が、あの飛行型を牽制します。ユーティライネン中尉は工藤さんを連れて安全圏まで離脱してください!」キリ

エイラ「お、オウ…」

ハイデマリー「サーニャさん、私の砲撃を合図に対岸一帯にフリーガーハマーを! その後はユーティライネン中尉に付いて警戒護衛をお願いします!」グ…ジャギン

サーニャ「了解」

ハイデマリー「では、いきますッ!!」



ドォオオンッ――――

 

 

――――


――

 

 
―翌日―

サン・トロン基地


ミーナ「……」

美緒「ふむ…」

ハイデマリー「も、申し訳ありませんでした。全部私の責任です…」


シャーリー「あー…いやまあ気にしないでさ? 大した事じゃないって、ですよね中佐?」

バルクホルン「責任云々についての話で無責任な擁護をするな、シャーリー」ジト

シャーリー「ぐっ! ……そりゃ悪かったね」プイ

ミーナ「……。両大尉は退室していいわ」

シャーリー「ん?」

バルクホルン「なに? どうしてだミーナ?」

ミーナ「いいから、喧嘩は外でやりなさい」ジロ

バルクホルン「!?」

シャーリー(…やばい。なんか中佐、マジで機嫌悪い?)ギクリ

 
美緒「……お前達ちょっと来い」スタスタ


ミーナ「坂本少佐!」


美緒「解っている中佐。直ぐ戻る」

バルクホルン「…?」

美緒「出ろ、2人とも」グイ

シャーリー「あ、あの~…??」ヨロヨロ


ガチャ

バタン



ハイデマリー「……」


ミーナ「…ごめんなさいね」

ハイデマリー「!」

ミーナ「貴方に苦労を強いてしまって。…まさか工藤大尉がそんな無茶をするなんて」

ハイデマリー「ミーナ中佐?」

ミーナ「美緒の危惧した通りだわ…」ボソ

ハイデマリー「ぇ…?」

 

――ガチャ


美緒「……」パタム


ミーナ「…2人には何て言ったの?」

美緒「うむ。工藤の名誉の為、まだ全ては聞かせられんとな」スタスタ

ミーナ「ありがとう少佐。でも反って意味深ね、それだと」

美緒「怒気で誤魔化そうとしたお前が言うな。少し余裕を持て」

ミーナ「……ごめんなさい」

美緒「フッ…いや、個人的に私もまだ役立てる分には構わんがな?」

ハイデマリー(坂本少佐?)チラ

美緒(お前も、あまり気に病むな。察してやってくれ)クイ

ハイデマリー(…! はい)コク

 
ミーナ「えぇと、それでハイデマリーさん? 小園大佐が貴方に伝えた話というのは…」

ハイデマリー「あ、はい。その……“工藤さんのPTSDが再発しているかもしれない”と」

美緒「なに、心傷障害だと?」

ハイデマリー「…原因になった出来事については聞いてませんが、工藤さんは元々ネウロイに対して強い恐怖心があったと思います」


~~~~~~~~~~~~~~~~

敏恵『あたしはネウロイなんかと戦えない!! 怖くて、本当に怖くて嫌だったのにッ…!』

敏恵『――こんな所もう離れて、家に帰りたい…』



小園『工藤には暗示をかけていた。あいつの抱えたトラウマを取り除き、戦える動機を与えてやった』

小園『ああしてやらねば――…奴が抱える恐怖体験を取っ払ってやる術が最善だったんだ』

~~~~~~~~~~~~~~~~



ハイデマリー「……小園大佐がマインドコントロールによって、その恐怖心を強制的に抑えていたそうです」

美緒「それは、流石に初耳だ…」

 
ミーナ「誰かさんが教示した薬物強化兵士〈よこしまな〉プロジェクトの転用ね…。マインドコントロールと言うより厳密には暗示と洗脳だった筈よ」

美緒「詳しいな中佐?」

ミーナ「…前にハイデマリーさんから相談された時に、ちょっとね?」

ミーナ「昔当時の“新薬強壮剤”試験で偶発した魔導麻薬症のウィッチ、そのリスクをどうにか利用しようと考案された手段よ。そもそもの段階で当然破綻した計画みたいだけど」

ハイデマリー「……」

ミーナ(あの元帥直下のホルテン中佐なら、その辺り知らなくなかったでしょうし…)


美緒「そんな話があったとはな」

ミーナ「ただ、工藤大尉が“夜の女王”になってしまったのは不幸な偶然でしょうね」

ミーナ「あの頃は軍用メタンフェタミンに対する危機意識もまだ薄かったし、…きっと大佐も状況に迫られて投与した結果だったんだと思うわ」

美緒「…成る程。その状況とやらに陥った一時で心的外傷を負ったのか」

美緒(流石にそこまでの事情は聞かされていない。大佐は私を快く思ってないから無理ないが――)チラ


ハイデマリー「……」


美緒(“そっち”の解決は彼女に託した、という訳か)

 
ミーナ「施した処置の善悪は別にして、大佐は工藤大尉が暗示から脱却したことでまたトラウマに晒される影響を危惧していたんだわ」

ハイデマリー「で、ですがそれは既に克服した筈なんです! 魔導麻薬症の副作用も治癒魔法で抑えられているのに、どうしてあんな事に…!?」

ミーナ「…いいえ、残念だけど多分克服はできてない。だから過剰防衛に走ったんだわ」

ハイデマリー「!? 過剰、防衛…?」

ミーナ「一口にPTSDと言っても、それによって引き起こされる行動は“逃げる”だけじゃないのよ」

美緒「まあ、そうらしいな。根幹症状として不安、回避、そして追体験であるというのは聞いた事あるが」

ミーナ「ええ、だけどあらゆるケースにおいてそこから先は様々――」

ミーナ「…彼女には実績と経験、つまり自信が有り得たから、トラウマに対して“積極的な”回避症状が出たのね」

ハイデマリー「そ、そんな違います!? そういうのではなくて……工藤さんは自分で打ち勝って、それで戦う意思を決めたんです!」

美緒「……」

 
ミーナ「ハイデマリーさんがそう言うならそれも真実かもしれないわね。でもその使命感のいくらかはPTSDによる脅迫よ」

ミーナ「ネウロイの討伐に固執して勝手に出撃したのもそう。…貴方も昨夜現場で何か感じたんじゃない? 恐らく普通ではなかったでしょうから」

ハイデマリー「ぅ…! そ、それは――」タジ

ミーナ「……」

ハイデマリー「――…………。はぃ」

ミーナ「はぁ…、参ったわね」ガク

ハイデマリー「……」ショボン


美緒「よせ中佐、我々が呼んだんだぞ?」

ハイデマリー「! 坂本少佐…」

美緒「私が名を挙げ、お前が決めた。今の工藤をどう扱ってやるかは我々の責任だ」

ミーナ「……ええ。だから困ってるの」ハァ

 
美緒「ふむ…。よし分かった、中佐は少し休め」

ミーナ「え? ちょっと――」

美緒「工藤大尉は私が様子を見てみる。報告するまで気にするな」スタスタ


美緒「取り敢えずこの場はもういい、少佐。出よう」ポン

ハイデマリー「…? あ、あの」オド

美緒「心配するな。行くぞ」

ハイデマリー「は、はい…」テクテク


ミーナ「……」


美緒「いいな中佐? 我々に任せて一息つけろ」ピシ

ハイデマリー「…失礼、します」ペコ


ガチャ


パタム…――



ミーナ「……。はぁ…もぅ」ギシ

ミーナ(私、そんなに余裕なくしてるかしら…?)

 
廊下


――パタム


美緒「…さて。私はこれから工藤と話そうと思うんだが、シュナウファー少佐はどうする?」

ハイデマリー「ぁ…、……えっと…」

美緒「ん、いや無理に答える必要はない。すまないな」

ハイデマリー「……」

美緒「お前も少なからず参ってるんだろう? 一先ず落ち着き、頭を整理してから動いてみるといい」

ハイデマリー「すみません…」

美緒「中佐の様子については大目に見てやってくれ。あいつも色々まあ、背負っているんだ」

ハイデマリー「…はい、それは十分理解しています。責任ある御立場ですし、きっと私なんかよりも苦心されている筈です」

美緒「……。優しいな、少佐は」

ハイデマリー「ぃ、ぃぇ。そんな…」


美緒「――だが、優しさだけでは足りない時もある」

ハイデマリー「ぇ?」

 
美緒「ついさっき私がミーナにしたように、厳しく切る事も必要だ。優しく在るのなら尚更な?」

ハイデマリー「……ですが、それは…」シュン

美緒「フッ、どうした“友”なのだろう? 勇気を持て」ス

ハイデマリー「! 坂本少佐…」

美緒「お前のやり方でいい、友を信じて打つかってみろ!」バシィ

ハイデマリー「ぁぅ!?」ビクッ


美緒「はっはっはっ! 私も工藤〈あいつ〉をきっちり扱いて来る、残りは頼むぞ少佐!」スタスタ


ハイデマリー「……。…………」サスサス

また少し空きます(・×・)

 

敏恵&ハイデマリー部屋



美緒「おい工藤、いるか?」ガチャコ


敏恵「……」


美緒「とっくに起床だ、目を覚ませ」テクテク

敏恵「……。嫌だ…」モゴ

美緒「起きているな? 布団から出ろ、ちょっと来い」

敏恵「…ご飯は後でいいです」モゴゴ

美緒「いいから速く出ろ」

敏恵「っ~~…あたしは、ナイトウィッチなんですぅ~… #」モゾモゾ

美緒「……」

敏恵「こんなんじゃ……こんな筈じゃなかったのに~~ッ…! ##」モゾモゾモゾ

美緒(鬱ぎ込んだ訳ではなく悔しさか。シュナウファーの言う通り決意は確かなようだ、これなら望みも有るか?)


敏恵「~……」

美緒「……」

敏恵「…………やっぱりお腹空いた」モゴモゴ

美緒(謎の図太さは有るな…)

 
美緒「食事は後だ。どの道もう片付いてるだろう」

敏恵「……。なにそれ、酷すぎる…」バサ

美緒「自業自得だ馬鹿者。昨日の続きを話すからついて来い、外へ出るぞ」

敏恵「えぇ……~寝癖直してからじゃダメですか?」ムクリ

美緒「顔を洗って水でも飲め」

敏恵「ぅ~…」






基地 野外


敏恵「……」ホケー


美緒「ほれ、少しはシャキッとしろ」ペチペチッ

敏恵「ぃぷっ! ちょ…ほっぺ叩かないでくださいよぉ!?」

美緒「呆けてる場合か、お前に差し迫ってる問題なんだぞ?」

敏恵「む、んぅ…」サスサス

 
美緒「昨夜起きた件は私も聞いた。お前が何をしでかしたかも含めてな?」

敏恵「!? ゃあの、それはそのっ…!」アタフタ

美緒「…まあそこに関しては、今はいい」

敏恵「――…え、いいの?」

美緒「後で別の奴に叱ってもらえ。それより私の話は戦術の、お前の歪〈いびつ〉についてだ」

敏恵「昨日の? ……確か“あたしがあたしに追いつかないといけない”ってやつ?」

美緒「そうだ。今のお前は三位〈さんみ〉の均衡が著しく崩れている。その所為で存在する二人の己にお前は振り回されてるんだ」

敏恵「は? …??」ポケ

美緒「本来ならばそれは“理想と現実”という形で現れたりする。私も新米の頃は経験したし、教官を務めた折にもよく見た」

美緒「つまり身体も技術も付いて行かないんだ。みな理想は有れどもそれらの研鑚にはどうしたって時間が要るからな?」

 
敏恵「……えぇっと、結局坂本さん、やっぱりあたしは実力不足って言いたいんですか?」ポリポリ

美緒「いいや違う。お前の練度は昨日の試験と、なによりお前が自負する通り実績がその確かさを裏付けているだろう」

美緒「――にも拘わらず、その実力が発揮できないのは身体や技術以外に重要なもう一つ……精神面の遅れが原因だ」ビシ

敏恵「!! せ、精神ん…!?」ガビーン

美緒「そうだ」

敏恵「……もっと根性出せってぇー…ことですか??」

美緒「そんな事なら一々説明しなくとも、この竹刀でお前の尻を引っ叩けばいいだけなんだがな?」ス

敏恵「――ひ!?」ビク


敏恵「いやだっ!」トタタッ



美緒「…。だから“違う”という意味だ、戻って来い」

 
――



美緒「…昨日やった模擬戦を憶えているか? 工藤」

敏恵「あ、はい。一応」←戻って来た


美緒「あの時お前は調子が出せないと言ったが、それは無理もない事だ」

敏恵「?」

美緒「お前の言う本調子の姿とは誰だ? 海軍の鎌鼬――…いや、夜の女王としてネウロイを討ち周っていたお前か?」

敏恵「えっ」

美緒「ならばその頃と比べ、今のお前が何を変えたか分かるか? …それが歪を生む根元になったものだ」


敏恵「……? ………~」モヤモヤ


敏恵「――!! あっ、えぇ…!?」ハッ

美緒「分かったか?」

敏恵「まさか…、魔導麻薬症〈マギードジング〉!?」

美緒「うむ。そうだ」

 
敏恵「で、でもちょっと待って!? 確かにそのっ…アレのおかげで強くなってたみたいですけど――」ズイ

敏恵「だけどあたし、具合悪くなるからって魔法を抑えて戦ったりもしてたけど、こんなの一度もッ…!?」

美緒「私もお前の患っている奇病について詳しい訳ではないが、恐らく自分の意志で止めるのは無理だったのだろう」ドウドウ


美緒「起伏はあれど基本的にお前は魔導麻薬の影響を受け続けていた筈だ。常に魔法力を行使する戦闘ともなれば、その時の集中力諸々はおよそ尋常ではないな」

敏恵「っ…!」

美緒「…とはいえ身を亡ぼす疾患だ、“今の”お前の方が間違いなく正しい。そこは勘違いするな?」

敏恵「わ、分かってますよ。大丈夫です」

美緒「そうか、ならいいが……こうして歪が出たという事は、今の治療で完全抑制は出来ているんだろう。良かったな?」

敏恵「え? まぁ、はい。…でもあたし、どうすればいいんですか?」

美緒「うむ。まさにそれが本題だ、よく聞け」スタスタ

敏恵「……」

 
美緒「いいか? あらゆる所作を極める為には相応の身体能力と技術、そして精神の力が不可欠だ」ザッ

敏恵「…! ぇ!?」

美緒「動くな? …シッッ!!」ブンッ



ビュッッッ――


――ピタ…


敏恵「いッ!!?」

美緒「心と技と体、この三位によって揺るぎのない完成度が保てる」スス


敏恵「……~あぁ、危な…?!?」ヨロ~ ドテッ

美緒「はっはっはっ! いや驚かせてすまんな? だが万が一にもミスはない」

敏恵「~~ッ!?(眉間て人中〈きゅうしょ〉だよね…? 全然笑えないから!!)」ガーン

 
美緒「この芸自体に意味はないが…解るか工藤? 要は今のが、かつてのお前だ」

敏恵「…? えっとつまり、その心技体がなんか…ばっちりだったってこと??」ノソノソ

美緒「ああ。但し外道ではあったがな」

美緒「本来ならば経験と共に培うべき心の強さ、それをお前は自身の麻薬効果で代用していたんだろう。…そしてその欺瞞を取り払った結果が今だ」ビッ

敏恵「……」

美緒「頭の中にはかつて熟していたイメージが有れど、まるで上手くいかない。だから焦り、力む――」

美緒「そうしてお前の考える本調子から益々遠ざかり、終いには有り得んような失敗。…昨夜も大凡こんな感じだったろう?」

敏恵(すご…、本当にお見通しなの?? なんかちょっと怖い…)

 
美緒「どうだ、違うか?」

敏恵「えぇ、まあ。…そうです」グヌ

美緒「ふむ…そうか。やはりな」


美緒(難儀な奴だ。PTSDの件も相まって激烈なストレスだったろう、気絶で身を守れたのは幸いだな)ジー

敏恵「っ……坂本さん! 今のあたしにできることを教えてください!!」

美緒(しかしこうしてなお正気を支えるのは工藤の意志だ。何かは知らんが、こいつ自身の戦う決意は本物か。…これは小園さんやシュナウファーを信じるべきだぞミーナ?)

敏恵「何かあるんでしょっ!? だってここに呼ばれたんだから!!」ズイッ

美緒「その通りだが落ち着け。これから話す」

敏恵「さっきもそう言った! 回りくどいっ!! 園さんはもっと短いのに!!」

美緒「昨日はそれで反発しただろ。大佐は“工藤はよく口答えする”と仰っていたぞ?」

敏恵「そ、それは! ~んだって園さん、理由とか聞かないと説明してくれないんだもん…」

美緒「だから順序立てて説明しているだろ?」


敏恵「……そ、そっか。ごめんなさい」

美緒(小園さんの言う通り、不思議と愛嬌はあれど軍属向きではないな? 滅茶苦茶な奴だ)フッ

 
美緒「…まあはっきり言ってお前の置かれている状況は非常に特殊で厄介だが、それ故に救いも有る。安心しろ」

敏恵「! 本当に!?」

美緒「ああ。よくあるジレンマと違い、お前の歪は精神面の遅れが主だ。つまり三位のうち技と体の練度はかつてのお前に程近い」

敏恵「ぉ? おぉ…??」

美緒「所謂“身体は記憶している”ということだ。だからこそ今の状況に陥っている、解るな?」

敏恵「ほー……つまり?」モヤ


美緒「……。はぁ、やれやれ」

敏恵「あ、もっさん! 阿保って言わないでくださいよ!?」


美緒「…要するに、お前の考える“実力”は八割がた発揮できる。そういうことだ」

敏恵「!! ……えっ、でも八割だけ!?」

美緒「集中力や判断力、思い切る決定力等は運動神経や技量の向上にも影響する。そもそもに魔導麻薬の作用でお前は動体視力や反射神経すらも底上げしていたそうだな?」

敏恵「えぇっと…難しい話は憶えてないですけど、多分…?」

美緒「正確無比の砲撃や、正面のビームを紙一重で躱しながらの肉薄という妙技はもう流石に厳しいだろう。特に後者の難易度は尋常でないから止めておけ。私の経験則だが、半端なうちは危険なだけだ」

敏恵「ぅ…、そうですか。魔法力の流し込みは決め手にしてたんだけどなぁ…」ニギニギ

 
美緒「戦い方――…というよりお前は考え方を変えてみろ、工藤」

敏恵「へ?」

美緒「今のお前が熟せる戦術と己の在り方を正しく理解すれば、本当の実力もまた正しく発揮できる」ポン

美緒「――そしてその為に私はお前を指導するんだ」

敏恵「!」

美緒「いいな、もう愚図るなよ?」


敏恵「…はいっ、よく分かりました!」グッ


美緒「うむ、よし。……これで残る問題はあと一つか」

敏恵「――えっ、まだ何かあるんですか!?」ガーン

美緒「残念だが有る。しかし私の役はお前の訓練指導だ、それは後で教えてやろう」

敏恵「な、なに!? 気になる!」

美緒「…さて訓練だ! 昼過ぎまでに形にするぞ、気合入れろ?」

敏恵「待ってもっさん!? 気になるってば!」

美緒「時間無いぞ! ハンガーへ駆け足!!」ビシッ

敏恵「いや聞いて!?」

今日はここまで φ(・×・)

 

芳佳&静夏の部屋


リーネ「そんなに大変な事情が…」

芳佳「でも良かったじゃないですか! ちゃんと復帰できるって事ですよね?」ポワァァ

敏恵「うん、まぁそうだけ――んぁ…!」ヘニャリ


敏恵「ぃ芳佳ちゃん? なんかちょっと、魔法力重くなってきた…//」

芳佳「えっ、あれ? …少し長くやり過ぎちゃったかも」シュルル

敏恵「ぁふっ… //」

芳佳「ご、ごめんなさい敏恵さん!? また時間空けてからやりますから、先にお腹の傷跡を診ていいですか?」

敏恵「~ぅん。でも今のは今ので気持ちよかったかも…」ヨッコラショ

 
リーネ「……あの、ところで工藤大尉?」

敏恵「んー?」クイー

リーネ「私も今のお話を聞いちゃって、大丈夫なんですか…? 偶々ここに居ただけなのに…」

敏恵「えぇ? あー…うん、べつにいいよ。隠して居辛くなったら嫌だし」ハイ オナカ

リーネ「……」


芳佳「――えっとそれで、訓練の方は上手くいったんですか?」ポワワァ

敏恵「うん。改めて“カン”は掴めそうだし、調子は出てきたかなぁ」

芳佳「そうですか、よかったですね!」

敏恵「……。ん…」

リーネ「?」

 
芳佳「どうかしましたか?」

敏恵「あ、いや。…ネウロイの前でも同じように出来るのかなって」

芳佳「ぇ?」

リーネ(…!)


敏恵「――ぁ、あはは! なんてちょっとか弱いふりしてみたけど、どう? 乙女過ぎた?」ケロ

芳佳「…? よく分かりませんけど、前向きな方が敏恵さんらいですよ」ポワァァ

敏恵「はは…。……まぁ、そうだね」

リーネ(工藤大尉…)

 
芳佳「ん~…なんだろ、また急に腫れてる?(もう癒合してるけど、ばい菌が触れて炎症したのかな?)」シュルル


芳佳「――ちょっと、医務室から消毒薬とか借りてきます」スク

敏恵「ぇ? ぁぁ、うん」

芳佳「すぐ戻りますから、ちょっと待っててください」トテテ



ガチャ―― パタム



敏恵「…? あれ、今芳佳ちゃん何て言ってた??」ポケ

リーネ「……」


敏恵「まいいか。……ふぅ」クテ




~~~~~~~~~~~~~~~~

敏恵『トラウマって…!』

美緒『何があったかは無理に話さなくていい。それをお前の心が錘としてしまっている』

敏恵『……そっか。あの時の、菊さんのこと…』

美緒『もう自分でも解っていると思うが、ネウロイを意識したお前は到底平静を保てていない。まして実物と対峙した結果が昨夜の様だ』

敏恵『っ…』

美緒『致し方無いうえ過酷だと私も思う。だがそれでもお前が志を遂げたいのならこの訓練だけでなく、“それ”を越えろ』

~~~~~~~~~~~~~~~~





敏恵「……」

 
リーネ「あの…?」オズ

敏恵「! ぁごめん、今何か言った?」

リーネ「は、はぃ。……私なんかが、余計なことかもしれませんけど――」

リーネ「その……きっと大丈夫ですっ!」ムン

敏恵「…?」


リーネ「私も実戦で上手く出来なくて、ずっと独りで悩んでいました。でも芳佳ちゃんのおかげで乗り越えられたんです」

リーネ「なので、その…誰かと一緒だからできることもあると思うので、諦めない方がいいです!」クワッ

敏恵「!?」ビク

 
リーネ「――ぁ…す、すみません! 生意気なこと言って…」オド

敏恵「ぁや……ううん、励ましてくれたんだよね? ありがとう」

リーネ「ぃぇ、そんな…」


敏恵「へへ、リネットさん優しい。あたし元気になっちゃった!」

リーネ「そ、そうですか// それは…良かったです、大尉」ペコ

敏恵「あっ! もうそんな遠慮しなくていいから!? 階級なんて関係なく普通に呼んで?」

リーネ「ぇ? はい。…それじゃあ、私も“リーネ”で大丈夫ですから」

敏恵「おぉ、本当に!?」

リーネ「はい」

敏恵「わーお、やった! リーネと友達になった!」

リーネ「あはは…」




芳佳「ごめんなさぁい、お待たせしま――」ガチャコ

芳佳「…!(なんか敏恵さん盛り上がってる、リーネちゃんと仲良くなったのかな?)」

リーネちゃんをちょい出しつつ今日はここまで(・×・)

 

敏恵&ハイデマリー部屋



ハイデマリー「~…、ん…」ノソリ


ハイデマリー(…結局、眠ってしまった)スチャ

ハイデマリー「――! ぇ、もうこんな時間…?」


ハイデマリー「……」


ハイデマリー(こんな寝てる場合じゃないのに、私…)モヤ


ハイデマリー「……。ヴァルトラウト中佐が来たあの時は“皆さん”がいてくれた」

ハイデマリー(だけどもう、今回は私独りで工藤さんを…――)


~~~~~~~~~~~~~~~~

エステル『偶にはガツンと言ってやれば良いんですよ』

~~

美緒『優しさだけでは足りない時もある。頼むぞ』

~~~~~~~~~~~~~~~~



ハイデマリー「…どうすれば――」



『~…はぁ、さてと』



ハイデマリー「!」ピク
 

 

『マリ、まだ寝てるかな?』


ハイデマリー「ぁ…! ぅ…ぇと――」アタフタ



ガチャコ


敏恵「お?」ソロリ ソロリ


ハイデマリー「……」

敏恵「これは…?」

ハイデマリー(わ、私はいったい何をしてるんだろう!? こんな逃げる真似ばかりして…!)

敏恵「……。んー…」ジー

ハイデマリー「っ… //」


 
敏恵「……」ツンツン

ハイデマリー「ッ! //」ビクッ

敏恵「…?」ホッペプニ~

ハイデマリー「ッ…、っ… //」モゾ


敏恵「ふむふむ…。やっぱり」

ハイデマリー「……」


敏恵「マリ、普通に起きてるよね?」

ハイデマリー「……はぃ」モゴ

敏恵「そのぉ、なんか、気まずいのは解るんだけどさ? …メガネ掛けたままだし、それだと直ぐバレるよ?」

ハイデマリー「ぅ… ///」

 
――



ハイデマリー「……」


敏恵「――マリ♪ 着替えなくていいの?」トサ

ハイデマリー「……」

敏恵「あー…じゃあ、お腹空かない? 何かつまみに行こっか!」

ハイデマリー「……」

敏恵「えっと…まぁ、もし面倒臭いならあたしが此処に持って来よ――」


ハイデマリー「……」

敏恵「――……。ん、んん……(ダメか、やっぱ昨日のこと気にしてる…)」ムグ


ハイデマリー「…工藤さん」チラリ

敏恵「! ぅ、うん。…なに?」

ハイデマリー「私は、工藤さんのことがちゃんと知りたいです」

敏恵「ぇ?」

ハイデマリー「……教えてくれますか? 私に」ジ

 
敏恵「ぁ…う、うん。勿論いいよ?」

ハイデマリー「なら聞かせてください。5年前のカールスラントで何があったんですか?」

敏恵「!」

ハイデマリー「何が貴方を、傷つけてしまったんですか?」


敏恵「……そ、その話かぁ…」

ハイデマリー「……。すみませんでした、やっぱり――」

敏恵「あ! ぃいいって、大丈夫だから!? ちゃんと教える!」オロオロ

ハイデマリー「……」

 
敏恵「はぁ……あれだよね? 何で昨日みたいになっちゃったかマリも聞いたんでしょ?」

ハイデマリー「はい。中佐達から伺いました」

敏恵「そっか。…いやぁ参っちゃうね、今更トラウマで戦えないなんてさ」

ハイデマリー「工藤さん…」

敏恵「…………。初めてネウロイに襲われた時、庇ってくれた先輩が死んだんだ」

ハイデマリー「!?」


敏恵「あたしの目の前でね、眩しい筋が遮った瞬間その中で――」

敏恵「何て言うのかな……影みたいな、塵みたいな姿が確かに見えた。…気がしたの」

ハイデマリー「……」

 
敏恵「まるで何も無かったみたいに消えちゃってさ。全然意味が解らなくて、信じたくなかったんだけど――」

敏恵「…菊さんは死んだ、消し飛んだんだって園さんに怒鳴られて。もう無理だった」

ハイデマリー「それは…っ、残酷ですね…」

敏恵「べつに園さんは悪くないよ。とにかくネウロイをどうにかしなくちゃいけなかったし、隊長だったんだから」

ハイデマリー「そうかもしれませんが、でも…」

敏恵「…菊井さんは園さんの親友なの。本当はあたしなんかよりずっとショックだったと思う」

ハイデマリー「!」

 
敏恵「そんなに一緒じゃなかったけど、あたしも菊さん好きだった。明るい人で優しくて、ネウロイが来たあの時も、怯えるあたしを園さんと励ましてくれてた」

敏恵「っ……あの時、先にあたし達を庇ったから! だからあたしは…!!」ギリ

ハイデマリー「…負い目を、感じているんですね?」

敏恵「――……。うん、多分それもある…。でも何よりもう嫌だった」

敏恵「友達とか、あたしの側にいて欲しい人があんな風に……いなくなるなんて」ジワ


ハイデマリー(工藤さん…。だからリーパーの時も、それで貴方は昨夜――)


ニギ…


ハイデマリー「!」

敏恵「~ッ、ごめんねマリ…。あたし…っ……今度は自分でなんとかしたかったのッ…!」ポロポロ

ハイデマリー「……」

敏恵「だって出来ると思ったからッ……~っ…そうじゃないと、あたし…~ぇぐ……~ッ」

ハイデマリー「…解りますよ工藤さん、どうか安心してください」

 
敏恵「ぅ…ぅうっ……」エグエグ

ハイデマリー「工藤さんの本音をやっと聞くことができました。…だから――」

ハイデマリー「今度こそ私も、貴方の力になりますから」

敏恵「~ぇうッ、……まりぃ…」

ハイデマリー「さあ、涙を拭って。よく聞いてください」

敏恵「っ…、……ぅ…ぅん。うん…」グシ


ハイデマリー「……。っ… //」

敏恵「…?」グス

ハイデマリー「工藤さん」スス


ヒシ…


敏恵「!」

ハイデマリー「貴方は、その……。わ、我儘です」ギュ

敏恵「ぇ…!?」

ハイデマリー「とても親切なのに、自分勝手で…。どうして周りを置いて行ってしまうんですか?」

敏恵「ま、マリ…」

 
ハイデマリー「私も工藤さんと戦います。私が貴方の側にいるんです」

ハイデマリー「――…だから少しくらい、我慢もしてください」

敏恵「……」

ハイデマリー「……」ヒシシ



敏恵「…………ん、分かった。ごめんねマリ」

ハイデマリー「約束です。もう絶対、“独り”にならないで…。一緒に乗り越えましょう」

敏恵「うん…」

 
ハイデマリー「――…いきなり驚かせてすみませんでした」スス

敏恵「へへ…ぃゃ、こんなに温かく叱られたのは初めてだし… //」

ハイデマリー「工藤さんは厳しくされるの嫌なんですよね? 私も強く言うのは苦手ですから」

敏恵「ぁはは、その通り……。でも今回の上官命令には文句言えないね」ポリポリ


ハイデマリー「…! 違いますよ工藤さん?」

敏恵「え?」

ハイデマリー「“軍とかウィッチとかそういうの関係なく、女友達として”…ですよ?」

敏恵「…? あっ!」

ハイデマリー「憶えていますか?」

敏恵「……えっへへ、参っちゃうなぁ。あたしの台詞 //」

ハイデマリー「いいえ、“私達の”です。独り占めしない約束ですよ?」ニコ

敏恵「でゅ…!? な、なにもぉ~! 急に遠慮なくなっちゃってマリってば~!」

ハイデマリー「ふふ」クス

 
敏恵「むむむ、楽しそうにしちゃってぇ…。~そりゃ!」フニュ

ハイデマリー「ふゃ! ひょ……く、くどぅひゃ…!? ///」


敏恵「笑顔がまだ硬いよ? ほぐしてあげる、それそれ!」ムニムニ

ハイデマリー「ぁぅ…す、すみまぇんでしっ……ゃめてく… ///」

敏恵「お~何ですか~? よく聞こえませんよぉ?」ウリウリ





廊下 部屋前


エイラ(な、なにイチャついてンだよアイツら…)フィィン ←未来予知で覗き見

サーニャ「工藤大尉はどうエイラ? 入っても平気そう?」

エイラ「……」チラ

サーニャ「?」

エイラ(サーニャ…)ジー

サーニャ「??」

エイラ「ぐっ…!(ぅ羨ましくナイ、羨ましくなンかナイぞ!! #)」ミシミシミシ

サーニャ「ぁ、エイラ!? ドアノブが…」

 
[ざっくり!解説メモ]


 未来予知の応用

エイラ・ユーティライネンの固有魔法“未来予知”はその直後の行動によって予知した未来を避ける事が出来る。
>>242で中尉が行った覗き行為はこれの応用で、以下の仕組みで“ドアを開けた後”の景色を透視した。

ドアを開けようとする → 未来予知 → ドアを開けない(未来回避)


 菊井

敏恵が初遣欧で配属された航空戦隊で知り合ったウィッチ、当時19歳で故人。
小園里葉とは腐れ縁で訓練生時代からの仲。同い年にも拘らず多感な時期にあった彼女の女房役を務めた。

扶桑がネウロイ侵略から逃れてなお戦う道を選ぶ小園に付き添い欧州へ行くが、カールスラント撤退戦下にネウロイのビームを諸に浴びて消滅、死亡した。
遺体は残らなかったが、母国実家のある兵庫加西郡某所の家墓にて先祖と一緒に供養されている(家系長男ではないが遺族の意向にて)。

 
執務室


ミーナ「――待ちなさい。それ本気で言ってるの?」


敏恵「勿論です! この辺には偶にやって来るけど、昨日の“でか輪っか”もやっぱり普通のネウロイじゃない」

敏恵「カールスラントや大陸扶桑でもそうでしたけど、ああいうの放っておくと絶対ろくな事になりません! さっさと倒した方がいいです」

ミーナ「ええ、その点については私も同意見よ。残念ながら日中の哨戒に捕まらなかった以上、今夜改めて夜間討伐任務を組むわ」

ミーナ「…だけど工藤大尉? 貴方がそれに参加したいと言うのはちょっと、どうかしらね?」

バルクホルン「……」チラ

シャーリー(うん。流石にあたし等は何も言えない)フイフイ

美緒(ふむ…)

 
ミーナ「大尉は自分が昨晩何をしたか理解してる?」

敏恵「ばっちりしてます!」

ミーナ「……。なのに直ぐまた同じ“危険”を犯したい、そういう認識でいい?」ジト

ハイデマリー「ミーナ中佐、あの――」オズ

敏恵「自分で言うよマリ、大丈夫だから」スッ

ハイデマリー「工藤さん…」

ミーナ「……」

敏恵「仰りたいことは本当に解ってます、隊長さん。だから今度こそあたしも役に立って、それで責任を取ります!」

ミーナ「…それは貴方が決められる事じゃないわ」

敏恵「はい、だからお願いします! やらせてくださいっ!!」バッ


シャーリー(おーおー…。なんかメチャクチャだけどガッツあるなぁ)

バルクホルン(少佐といい宮藤といい、扶桑海軍は何というか……まさか服部も実はこうなのか?)モヤ

 
ミーナ「…今度は徒な逸りじゃないというのは解ったわ。でも現実貴方にはもう少し、時間が必要な気がするけど?」

敏恵「そうかもしれません。だけどここで逃げたら……昨日の後悔を晴らさないとあたし、変われない気がする!!」

ミーナ「それは自分の為ってことよね?」

敏恵「っ…! そ、そうです。あたしと、あたしの大事な人の為――」チラ

ハイデマリー「!」

敏恵「それからこの隊の一員として認められる為に。…隊長さんだってそれが望みでしょ?」


シャーリー(中佐相手に開き直ったなぁ…)

バルクホルン(しかし繕うよりはよっぽど信頼できる。後はミーナがどう判断するか)

 
ミーナ「……。坂本少佐、意見を聞かせて」

美緒「そうだな、戦術面での問題は少ない。元々の練度に申し分は無いので今朝からの訓練だけでも十分出来る様にはした」

美緒「後は本人の“心”次第だが、こればかりはやってみない事には分からんな?」チラ

ミーナ「…つまり?」

美緒「いずれ出撃す気なら、今やろうと同じ事だ。準備が万全だろうと結局は最初に壁を越えねばならん」

美緒「つまり挑戦を躊躇う限り工藤は“肥やし”のままだぞ、中佐?」ニッ

ミーナ「……」

 
敏恵「…? ぇ、ちょっと待ってもっさん? 今あたしのことウンチに例え――」オズ

ミーナ「工藤大尉」

敏恵「――! ぁ、はっ、はい!? すみません!」シャキッ

ミーナ「私は何よりこの隊の命を預かる身として、間違った判断を下す訳にはいかない」

敏恵「……」


ミーナ「責任どうこうを気にする必要は無いわ。但し今夜、貴方にやれるのね?」ジィ


敏恵「それはー…まあ、まだ無理そうですけど」ポリポリ

ミーナ「――ぇ!? …??」

敏恵「でもマリと、みんなと一緒なら絶対できますから! やりますっ!」グッ

ミーナ「……」

敏恵「ね? マリ」チラ

ハイデマリー「はい、そうですね」コク

ハイデマリー「…ミーナ中佐、坂本少佐。工藤大尉はもう大丈夫です。私達で乗り越えますから」

美緒(ふむ、これは…。正直どうかと思っていたが小園さんの目論見は当たったか?)

 
ミーナ「…なるほど、分かったわ。いいでしょう」

敏恵「!」


ミーナ「夜間チームにライン沿岸国境に潜伏する特異型ネウロイへの攻撃を命じます」

ミーナ「ハイデマリー少佐は今夜2300時にリトヴャク中尉以下“3名”全員を率いて出撃しなさい。作戦および現場指揮は任せるわ」

ハイデマリー「…はい! 了解しました」

敏恵「お、おぉー!! 有難うございますミーナさん! やっぱりいい人だったんだ!?」ヤター!

ミーナ「……」

 
美緒「フッ、いや落ち着け中佐? ああいう奴だが決して悪気はないんだ」ポン

ミーナ「…はぁ、はいはい。べつに何も言ってないでしょ?」ガク

バルクホルン「――しかし本当に平気なのか少佐? 私から見ても、昨日の模擬戦では結構危な気だったが…?」テクテク

美緒「ん? ああ、もうあの時点からは見違えてまともだぞ。今やればお前の演習にもなるかもしれないなバルクホルン?」

バルクホルン「ほう、ハンデ無しでか? それは言い過ぎじゃないか少佐?」

美緒「はっはっはっ! まあ、そのうち試してみろ」




シャーリー「ヘーイ! よかったな工藤?」ポンッ

敏恵「んへへ、ありがとシャーリー」

シャーリー「でも気を付けなよ? 2人が来る前に話してたんだけど、今のところ周辺基地からもネウロイが来たって情報はまだ無いらしいんだ」

敏恵「へ?」

ハイデマリー「…そうですか。だとするとやはり向こうは…」

シャーリー「ええ。待ち構えてそうですね」

敏恵「んん? どうして解るの??」

 
シャーリー「え? あー、だって昨晩も敵は空飛ぶ“脚つき”を作ってたんだろ?」

敏恵「うん。作ってたっていうか、地上型を飛べるようにしてた感じだけどね」

シャーリー「そいつらがまだこっちに侵攻して来ないんだよ」

敏恵「ほうほう? …??」チラ

ハイデマリー「あのネウロイ達によると疑われる最近の襲撃パターンでは、今日の日中にも表れておかしくない筈なんです」コク

敏恵「ん、んー…それが来てない。ということは…?」チラ

シャーリー「まあだから、つまり迎撃態勢とられたかもしれないってこと。向こうもまたあたし達がちょっかい出しに来るつもりで“待たれてた”ら厄介かも」

敏恵「!? なにそれ不味いじゃん!」ガーン

シャーリー「うん。だから気を付けた方がいいよって」


敏恵「えぇ……。ねえ、シャーリーも一緒に出撃ない?」

シャーリー「いや、あたし夜間はちょっとなぁ…。一応スクランブル鳴ってもすぐ行けるように寝とくよ」

敏恵「あ、うん…。なんかごめん」

ハイデマリー「――…ですがあまり憶測ばかりで悲観するのも危険です。先ずはミーナ中佐に情報を確認してからブリーフィングをしましょう」

 
 
―22:40―


格納庫


敏恵「――ん、よし!」ピッ

ハイデマリー「工藤さん、その服…!」

敏恵「へへ、そうだよ。夜空四隊の時と同じ特製一種服! もうボロいけど、やっぱこれの方が気持ち入るや」

ハイデマリー「……工藤さんのシンボルですもんね?」

敏恵「うん。これを着てた“夜の女王”は負け無しだったから、あたしもね」

ハイデマリー(工藤さん…)


整備兵「――大尉殿、出撃準備完了しました!」タタッ

敏恵「ぉ、速い。高さ調整もしたんですか?」

 
整備兵「固定解放時に沈む分ですよね? 援戦武官でいらした頃から自分がみてますから、完璧ですよ」

敏恵「んー、やっぱりマリの隊員さんは優秀! 昨日は嘘ついてごめんなさい」ペコ

整備兵「いえ、また御任せ頂き光栄ですよ。隊長(※ハイデマリー)の担当は整備士長班が譲りませんし、バルシュミーデ少尉達もいなくて暫く手持ち無沙汰でしたから」

ハイデマリー「…小園大佐のご指示もあって“月光”の整備には私の隊員を中心にした専属チームを組んでいます」

敏恵「へぇ…! ぇなに、じゃあ武器整備とかも?」

整備兵「大尉の扶桑製機銃だけこっち〈欧州〉用にイニシャライズされてませんから。持ち回りでやるより効率いいです(それに貴女よく投棄するし、壊すし…)」

敏恵「ふーん? そっかぁ」

整備兵「えぇと、それでですね大尉殿? 隊長の御指示通り五式機銃の弾薬は魔導炸榴弾を装填しましたが、支給数が少なく予備弾帯もありませんので注意して下さい」

敏恵「うん分かった。 じゃあいつもの徹甲弾も持って行こう、十八試三号は?」

整備兵「……昼間のうちに回収済みですが、案の定銃身がイッてました」

敏恵「のっ!? おぅ…」ギク

整備兵「残念ながら“また”一時返還でしょう」

敏恵「でゅぁあ不味い、園さんに怒られる…っ!!」

ハイデマリー「し、仕方ありませんよ工藤さん?」

整備兵(いや、投棄を止めればいいだけでは…)モヤ

 
敏恵「……まぁでも、とりあえずいいか。もう独りでやっつける訳じゃないし、五式の一門だけでも…」

ハイデマリー「そうですよ工藤さん?」スス

整備兵「!」

ハイデマリー「作戦通りで大丈夫ですから」サス

敏恵「…うん、だね。先ずはそこから頑張るよ」

ハイデマリー「はい。私が付いていますから、頑張りましょう」ニコ

敏恵「ん…!」ニッ


整備兵「……」マジマジ

整備兵(なんだろうか、何か凄く役得をした気がする!)

 

ベルギガ東端 某空域


エイラ「ホントに大丈夫なのかー? あんな自爆しといて、昨日の今日でさ」ブゥゥン

サーニャ「エイラ、その話はもうブリーフィングで…」

エイラ「まーそうだけどさぁ、扶桑のウィッチってなんか頑固だし。無理してるンじゃないか? 止めとくなら今のウチだぞ?」

ハイデマリー「……」

敏恵「大丈夫! 多少の無理は承知済みだから」

エイラ「イヤそういう意味じゃなくてナ…」

敏恵「それにもう分は弁えてるし、マリの作戦もあるから上手くいくよ。というかいかせる!」

エイラ「……ンー、じゃあ今夜だけは付き合ってヤルけど、気を付けろよ大尉?」

敏恵「了解りょーかい♪ ありがとうエイラ」

サーニャ「――! 敵の群れを捉えた、けどやっぱり……ハイデマリー少佐」フィン

ハイデマリー「…そうですね。皆さん一度停まって下さい」

エイラ「ン、了解」

更新していますが書き溜めている訳ではないので、あしからず

 
敏恵「なになに、どうかしたのマリ?」~フワ

ハイデマリー「……昨日より数が多いです」フィン フィン

サーニャ「展開してるみたいですが、動きはありませんね?」

ハイデマリー「やっぱり待ち構えられています」

敏恵「あー…、シャーリー達が言ってた通りかぁ」

エイラ「ナンだよ、やっかいそうだな」

ハイデマリー「いえ大丈夫です。それでもこちらの想定内である限り問題ありません」

敏恵(おぉ…頼もしさというか、凄い自信。マリも半年前とは見違えたよね)

ハイデマリー「サーニャさんとユーティライネン両中尉、それに工藤さん。…私が経験した中でも抜出る夜間戦力です。必ずやり遂げます」

サーニャ「……」

エイラ「オ、オゥそっか。ウン…(なんかすげー意気込んでるけどどうしたんだ…?)」

敏恵(あでも、もしかしてあたしの為に気負ってる? …なんだ、そういう所は相変わらずじゃん)フゥ

 
敏恵「あ~マリ? 今の台詞、元サントロンの皆が聞いたらショックかもよ?」

ハイデマリー「ぇ…? あっ、いえ!? そういうつもりで言ったつもりは無くて…!」アセ

敏恵「あはは、なんちゃって! 茶々入れてごめん」

ハイデマリー「く、工藤さん。こんな時に…」

敏恵「まあまあ、そう熱くなり過ぎずにさ? どうせこれから緊張するんだし」ゴソソ

敏恵「ん…」パク

ハイデマリー「…!? ぇ、工藤さん??」

敏恵「~~…? む、点かない。ルーツィアさんこんな上空でどうやって――」カシュカシュカシュ

エイラ「オイ大尉、ココでそんなモノ…」

サーニャ(たばこ…?)

敏恵「~……。ふぃ~~…」

 
ハイデマリー「あ、あの工藤さん!? それは…??」

敏恵「えへへ、あたしも実は吸っちゃう人だったんだ。まあ“あの魔法”なしでどうしても不安を抑える奥の手みたいな感じ?」

ハイデマリー「……」

敏恵「ふぅ~…。ごめんね、こういうのに頼ってるあたしが偉そうなこと言って」

敏恵「でもさ、なるべく落ち着いて行こうよ。“あたし”みたいに失敗したら嫌じゃん?」

ハイデマリー「工藤さん…」

敏恵「~~、ぷぃー~…!」クシャシャ

敏恵「――さてと!」ペィッ

エイラ(あ、コイツ今…)

サーニャ(ポイ捨てした)ジー

敏恵「…それじゃ、行こっか」

 
――――
――



ネウロイ「……」ゴゥンゴゥン





ハイデマリー「確認できますか工藤さん?」ブゥゥン

敏恵「…うん、群れの一番奥手に隠れてる。急所〈コア〉まではっきり視えるよ」

エイラ「ホントに分かるんだな、大尉」ホエー

サーニャ「……夜じゃないと無理なんですよね?」

敏恵「まあね。明るいとそうみたい」

エイラ「便利だけど変な固有魔法だなー?」

ハイデマリー「…では作戦通り、中尉達は目標以外への陽動と殲滅をお願いします。敵が乱れた隙に特異型は私達が」

エイラ「了解。サーニャ、正面から横へ抜けてくから援護頼む」ブゥゥン

サーニャ「うん」ブゥゥン

 
敏恵「……。エイラ達大丈夫かな、あんな大群…」

ハイデマリー「大丈夫です、お二人の能力なら十分過ぎるでしょう。恐らくその気なら彼女達だけでもこの場を攻略可能な程だと思います」

敏恵「そんなになんだ、そっか…。でも、ならそうすればいいって事じゃないんだよね?」

ハイデマリー「はい。私達の為に、“この先”の為に最初のひとつを始めましょう」

敏恵「……大事な一つ目かな?」

ハイデマリー「ええ」

敏恵「今のあたしに出来る、かな…?」

ハイデマリー「その為に来たんですから」

敏恵「……」


ハイデマリー「…怖くても平気です、工藤さん」

敏恵「!」ギク

 
ハイデマリー「私がいます。貴方と出会えて励まされた私が、ここにいますよ」

敏恵「……。マリ…」

ハイデマリー「――…フフ」クス

敏恵(…!?)

ハイデマリー「少し、お腹が空きましたね?」

敏恵「えっ??」

ハイデマリー「今度こそ無事に帰って、一緒に食事しましょうか」

敏恵「…! ぁ…はは、それいいね」

ハイデマリー「はい。とても良いです」ニコ

 
――ガザザッ

エイラ『見えてるか大尉達? 一応、引きつけは上手くいってるぞー?』

サーニャ『ハイデマリー少佐、こちらは問題ないです。目標の撃墜お願いします』


ハイデマリー「! …中尉達の陽動が上手くいきました」

敏恵「みたいだね。今なら本丸は直接狙えそう」ガジョン

ハイデマリー「始めましょう、工藤さん」

敏恵「ぅ、うん…!」

 
ハイデマリー「――…逃げながら私も昨晩経験しましたが、あのネウロイ自体の戦力は高くありません。これだけ離れていればビームの精度はかなり悪いです」

敏恵「……うん」

ハイデマリー「逆に工藤さんの装備と実力なら十分中てられる筈です」

敏恵「コア、ぶち抜くんだよね…?」

ハイデマリー「大丈夫です。危険な反撃には備えていますから、落ち着いて狙って下さい」

ハイデマリー「工藤さんは絶対に私が守ります。怖い事なんてないです」

敏恵「ぅ…! ま、マリ…?」オロロ

ハイデマリー「分かってますよ。私も決して、やられませんから」

敏恵「ん、ん…。そうだよね、うん…」


ハイデマリー「…こちらハイデマリーです。今から目標撃墜を開始します」ス


敏恵「……」ドキドキ

 

ネウロイ「~~、ー…」ゴゥンゴゥン





敏恵「っ…」フィィン

敏恵(いくぞこの…! おっかないけど、あたしは絶対乗り越えるんだ!!)ガチ゛ン


ドガァアンッッ――




ネウロイ「…?」ゴッッ

ネウロイ「!??」バァンッ




敏恵「ぅ…装甲硬いじゃん!? コアなんて全然…!」

ハイデマリー(射程が伸び過ぎて炸裂弾の食い込みが浅い!? でも外装にはちゃんと効いてる――)

ハイデマリー「良いですよ工藤さん! そのままコアを狙い続けてください!」

敏恵「ぐっ、確かに中てられたのは大進歩だけど――」

 

ネウロイ「…! ~~~~!!」ギラッッ


ビビィィーーーーッッ




敏恵「ッ…!!」ビクッ

ハイデマリー「大丈夫です! 向こうは当て推量なので数を撃ってるだけですから、怯たら駄目です!!」パァァア

敏恵「づぅぅ……解ってる、解ってるよ…。でも早く終われぇぇ…!」ドフッ ドフ




ネウロイ「ッッ、ー~ーー!!」バゴォン ゴガァァ




敏恵「っ…! ~~っ!!」ドフドフドフドフ




ネウロイ「!!?!? ッ…ッッ…!!」ボガゴガ ドゴァァッッ
 

 
ハイデマリー(照準が荒れて火力がばらけてる!? 工藤さん!)チラ

敏恵「ふぅ……はぁっ…、はっ…!」ドキドキドキ

ハイデマリー(昨日と比較すれば勿論見違えてるけど、それでもまだ――)

ハイデマリー(…私も攻撃に参加するべき? でも万が一で今の工藤さんに身を守る余裕なんて――)モヤモヤモヤ


敏恵「はぁ……ふっ…。ま、まりぃい…ッ!!」

ハイデマリー「!?」


敏恵「~ぅあ、あたしのことも信じてぇーっ!!!」

ハイデマリー「――!」

敏恵「あぁ…、あと少しだけッ! お願い!!」ゼェハァ

 
ハイデマリー「っ……すみません工藤さん! 守備は任せてください!」バッ


敏恵「~はふっ……ふぅ…!(落ち着けあたし。落ち着けば出来るんだから、落ち着けあたし!!)」ザワザワ



敏恵(コア〈あそこ〉に中てれば勝つんだ、もうすぐじゃん! あと一回ちゃんと撃てばあたしが勝つから――)


敏恵(――…死なない! もう誰も死なない!!)




~~~~~~~~~~~~~~~~

『ゃ、…死に……死にたくないっ…!! 死にたくないぃぃいぃっ!!』

~~~~~~~~~~~~~~~~





敏恵(頭では解ってるのに、あの感じがへばりついて来るっ…!)ゾワゾワゾワ
 

 
敏恵(し、心臓も脳ミソもなくなりそう…っ!! それに引き金が、固い!?)




ネウロイ「ッ…~~」ゴゴォォ




敏恵「ぎぐぐ…#(違う!! 武器じゃない!)」ギリ


敏恵「っ……あたしの指〈こころ〉が、ちょっと重いだけなんだ!! あと一撃くらいぃ!!!##」クワッ

ハイデマリー「…!?」ドキッ



敏恵(――撃ってしまえ! 乗り越えろ!! 証明するんだっ!!)ググ…


敏恵「~~~~っ! ぶ…、ぶぁかやろぉおーーっ!!!」ガヂッッ
 

 


ド ォ オ ウ ン ッ ッ ――


 

 
ネウロイ「fジhv…!?」バァアンッッ








ネウロイ「――……、…~」ギラリ

 

 
敏恵「ぅ、うぅぅ…!?」

敏恵(あ、中ったのに。コアが出ただけ…足りなぃ…)ガクガク


敏恵「……ご、ごめんマリぃいい!!! あたしもうっ、いゅ、指がっ…!!」


ジャギンッ


敏恵「!」

ハイデマリー「心配ないです工藤さん――」ズン


ハイデマリー「…私が、今この時だけは絶対、外しません!」グ…




――…


ビィィイィイイーーーーッッ



ハイデマリー「!?」

敏恵「――!! あっ…ぁあ゛ッ゛!!」バッ

 

パァアァッッン


ハイデマリー「――!? 工藤さん!」

敏恵「~っ…だ、大丈夫!! 今度こそ、あたしたちっ…」パァァ

ハイデマリー「…! はいっ、今夜は一緒に」ジャギ


ハイデマリー「――無事で帰りましょう」グ



ドォオンッッ




ネウロイ「!!!」バギィィイン

ネウロイ「~ッ … ・ ・ 」


ネウロイ「 」


バァァァンッッ

バラバララ…

 
ハイデマリー「……。こちらハイデマリーと工藤大尉です、優先目標は撃破しました」ス


――ガザザ

エイラ『ンー、丁度見てたぞ~! な、サーニャ?』

サーニャ『…こちらも国境内の異形飛行型は殲滅完了しました。カールスラント領沿岸の地上型は撤退しています』

エイラ『越境するワケにいかないし、追わなくてもイイんだろ?』

ハイデマリー「はい、作戦終了です。有り難うございました」



ハイデマリー「ふぅ……。終わりましたね?」チラ

敏恵「……」

ハイデマリー「工藤さん」

敏恵「うん…。そう、だよね…」

ハイデマリー「……」

敏恵「…あぁ~~」フヨフヨ

ハイデマリー「!」

 
~トサッ

敏恵「しんどかった…」

ハイデマリー「……お疲れ様です」サス


敏恵「ん…。でも悔しぃ、本当はあたしでやっつけられた」

ハイデマリー「ですがその後に私を守ってくれました。貴方が勝ったんですよ」

敏恵「……」

ハイデマリー「工藤さんは負けてなんていません。…そうでないと、瞬間あんなこと出来ませんから」

敏恵「…もし、引き金どころか」ボソ

ハイデマリー「ぇ?」

敏恵「瞬きひとつ動けなかったとしても、飛び出したんだと思う。…五年前〈あのとき〉もそうやってあたしの命が守られて」

ハイデマリー「……」

 
敏恵「…菊さんは死んじゃったけどあたしは、生きてる」ヒシ

敏恵「今あたしが守れた人は“いつか”みたいに、“誰か”みたいに悲しくないんだね…」

ハイデマリー「……そうですよ。瀕死の工藤さんなんてもう本当に嫌なんですから」


敏恵(そっか…。あたしはこうしたかったんだ、そんなウィッチだから――)



敏恵「ねえ、マリ?」

ハイデマリー「はい」

敏恵「…あたしってこんな身体だし、正直まだ心も全部軽くはならないけどさ」

敏恵「――それでもここから目指してみるよ。もう一度、女王さま」

ハイデマリー「…!」


敏恵「だからさ、手伝って欲しいんだ。独りじゃ挫けるかも」

ハイデマリー「…ええ、そうですね。分かりました」ポンポン

敏恵「へへ… //」

 
――――


――



 

 

―数日後―

サン・トロン基地 野外



敏恵「――それぇい!」グイー




  \ デデーンッ! /
   / ̄ ̄∨ ̄ ̄\
  /   ∧   \
 |   / \   | 
 |  /   \  |
  ヽ/| 祝 | \ノ
    |   | ・
 -。 |あ 工|・ `

   |ん 藤| 。
  ・ `|ど 敏|・ `
   |五 恵|
   |○ 復| ` 
 。 |一 帰|
   |参  | 。
  、|加  |
   |_ _|



敏恵「さあ皆さん、どんどん召し上がれ! あたしの大気解放祝いに工藤家自家製米おにぎり大盤振る舞いですよぉー!」

芳佳「具別でこっちに並べてますから、自由に取ってくださーい」

美緒「…分かったぞ服部、恐らくこう。左手だ」

静夏「な、なるほど。よし…」

リーネ「あれ、服部さん? まさかここにあったお塩全部使ったんですか…?」

 
ルッキーニ「ん~♪ トンノ〈ツナ〉おいしー!」モムモム

エーリカ「サーニャンどれにする?」

サーニャ「えっと…」

ペリーヌ「それにしてもまた凄い沢山ありますわね?」

エイラ「マー最近は涼しくなってきたし、余っても明日くらいまでは持つんだろ」パク

エイラ「――!? ブェエッッ!! な、なんだこれカライ!!?」

静夏「えっ? あ、多分それは私が握った…」

リーネ(やっぱり…)


わいわい




バルクホルン「……いくらなんでも駄目だろ、これは」

 
シャーリー「まあまあ、いいじゃん。なかなか美味いよ?」

バルクホルン「いやそういう問題じゃなく、浮かれ過ぎだ。ここは軍事基地であって我々はピクニックをしに来た訳じゃないんだぞ?」

シャーリー「なーんだよ今更それ言う? 工藤もしっかりメンバー入りしたんだし、やれるうちに浮かれとくのは寧ろOKだって」


シャーリー「――なあ少佐?」チラ

ハイデマリー「はい」コク

バルクホルン「ぐっ、まさかハイデマリー少佐までこいつに同調するとは…」


ミーナ「うふふ、けど一応理屈は通るわよトゥルーデ?」

バルクホルン「…しかしいいのかミーナ? 今回ばかりはもっと緊張感を」

ミーナ「解ってる。“川を越え始めたら”こういう事する余裕も無くなってしまうわ」

ミーナ「だから今のうちに力を抜くべきよね? 特に貴方や私なんかは、少し張りつめ過ぎるのかもしれないわ」

バルクホルン「……」

ハイデマリー(ミーナ中佐…?)

 
シャーリー「そういうこと! だからあたし等もはやく行こう、飯無くなっちゃうぞ?」グイ

バルクホルン「だ、おい!? 引っ張るな! お前は既に食べてるだろうが」

シャーリー「一個で足りる訳ないだろ? あとジュースも欲しいし」

バルクホルン「わ、分かったから責っ付くな!」




ハイデマリー(バルクホルン大尉とイェーガー大尉ってなんだか……不思議な関係性?)

ミーナ「…なんとか収まりついて本当良かった」

ハイデマリー「――ぇ?」チラ

ミーナ「工藤大尉のこと。貴方のおかげもあって間に合ったわ、有難う少佐?」

ハイデマリー「あ、はい」コク

ミーナ「!? …ふふ」

ハイデマリー「?」

 
ミーナ「貴方、また少し変わった」

ハイデマリー「そ、そう…ですか?」

ミーナ「ええ、良いと思うわ」

ハイデマリー「??」

ミーナ「…一方だけじゃなくて、あの子もまたハイデマリーさんを強くするのかしら?」




美緒「むぅ…何故だ、何を間違えた? 結局まん丸になってしまった」

シャーリー「ライスボールって言うくらいだから、丸い方が正解じゃないんですか?」

敏恵「坂本さん、それも三位のなんとかですよ。心技体のどれか駄目なんじゃないですか?」

美緒「そうか。技術は宮藤の手解きを受けたんだが…」

敏恵「じゃあ体力は間違いなくあるから、多分心構えが足りてないんですよ! もっと白米への気持ちを込めて!」

美緒「気持ち様か、つまり気合いだな? ……せぇいッッ!!」グジャッ

敏恵「えっ、ちょ…ぁあああもっさん!!? 貴重なご飯がぁーっ!!」

シャーリー「あははは! いやいや少佐?」

バルクホルン「見ていられないな。少佐、変わってくれ」

美緒「待て、今ので分かった。一度丸くなった後に三辺をこう……ふんッッ!」グチャァ

敏恵「わーーやめて!! 丸くていいから、ご飯潰さないでぇー!?」

シャーリー「あっははは!」




ミーナ「……。但しあのままそっくり影響されても困るけど(というか美緒も何やってるのよ…)」

ハイデマリー「私には無理ですよ中佐? ああいう所は工藤さんの魅力ですから」

ミーナ「そ、そう?」

ハイデマリー「はい。…皆さん、楽しそうです」クス



――――ここから時を間もなくして統合軍はカールスラント領奪還の火蓋を切る。

“夜の女王”は前線を退くまでの残りをその空で戦い、歴史に知れぬ戦果を再び積み上げることとなるが



 それは新たな彼女、“工藤敏恵”の物語である

 

ノイエ・カールスラント 某所


――…ガゴォン


ヴァルトラウト「ん~、プロトタイプとしては良くできた方よねぇ?」コンコン

レベッカ「はいお姉様、あれだけの機構がこの形に収まっているのが奇跡と感じます」

ヴァルトラウト「ふふ、頭悪いのに“腕”は器用よねぇ。さすがお猿といった所かしら」

レベッカ「…お姉様が一部でも他人の設計を受け入れるなんて、いつ以来でしょうか?」

ヴァルトラウト「貴方以外とここまでやるのは初めてよぉ? わたくしのプライドは拗ねているけど、まぁ得る物もそれなりだから仕方ないわねぇ」

レベッカ「……」

ヴァルトラウト「さぁてそれじゃあ、塗装はまだいいとして、いい加減に型名くらい決定すべきかしら? 試験機のアウトまでしちゃったのだし」

レベッカ「と仰いますと、やはり連番に加えるのでしょうか?」

ヴァルトラウト「…わたくし達の作品群に異姓のイニシャルが入るのは嫌ねぇ。それ以外ならべつに何でもいいわ」


「――名前はもう決まっている」


レベッカ「!」

ヴァルトラウト「…あらぁ? ひと月も遅刻しておいて悪びれもなく主張出来るのねぇ、大佐?」クル

小園「お前達のような輩に誠意など効果無いだろうが。それに今何でも構わないと言ったぞ」スタスタ

ヴァルトラウト「ふふ、生意気。…それでぇ? 今後これはなんて呼ばれる予定なのかしらぁ?」

小園「うむ、先日の噴流試験で閃いた。この新型戦闘脚の名は――」


小園「…“彗星”だ」



ストライクウィッチーズ the 3rd like ~彗撃の明かり~ 【完】
 

という形で区切りだけはつけさせて頂きました。
悪く言えば打ち切りですね(-×-;)

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