相良宗介「とてもやさしいパンツァー・フォー」 (879)

大洗女子学園 生徒会室

桃「馬鹿げている!!」

柚子「桃ちゃん……」

杏「落ち着け、かわしまぁ」

桃「ですが、会長!! これでは約束が違います!! 私たちは何のために戦車道をやってきたのか……!!」

杏「向こうの言い分はこうだ。『優勝したら統廃合の話を白紙にするという約束はしていない。ただ考慮はすると言っただけ』って」

桃「詭弁です!! 今から学園艦教育局に乗り込みましょう!!」

杏「私たちがギャーギャーいっても、事態は変わんないって」

桃「学園のこともありますが、こんな結果では西住の努力はどうなるのですか!!」

柚子「西住さんが一番頑張ってたもんね」

桃「西住に申し訳が立たない……」

杏「……あいつに頼んでみっかぁ。少し癪だけどな」

桃「あいつ?」

杏「陣代高校のかいちょー」

柚子「えぇ!? あの人にですか!?」

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陣代高校 生徒会室

蓮「お電話です」

敦信「誰かな。性質の悪いセールスや会議の申し出なら美樹原君の判断で断ってくれて構わないが」

蓮「学園艦『大洗女子学園』の会長さんからです」

敦信「ほう。予想外だな。代わろう」

蓮「どうぞ」

杏『もっしもーし、角谷杏ぅ』

敦信「久しぶりだね、角谷君。まさか、君から連絡をもらえるとは思わなかったよ。最後に会ったのは、いつだったかな」

杏『去年の高校自治連絡会じゃない?』

敦信「君が議長を務めると言って大揉めした会のことだね。思い出した」

杏『林水だって退かなかったじゃん』

敦信「そうだったかな。忘れてしまった」

杏『ま、そんなことはどーでもいいんだよね』

敦信「だろうね。君が意味のない電話をするとは思えない」

杏『察しがいいねぇ。実はそっちの噂が偶然、私の耳に入っちゃってさぁ。その確認をしたいんだ』

敦信「噂? なんのことかな」

杏『万年一回戦負けだったラグビー部が強豪の硝子山高校に圧勝したってやつ』

敦信「事実だ。非公式ではあるがね」

杏『ふぅん。ま、別に疑ってたわけじゃないんだけど』

敦信「なるほど。誰がラグビー部を指揮したのかを知りたかったわけか」

杏『理由は分かる?』

敦信「大洗女子学園は今年度の戦車道大会優勝校だ。有能な指揮官が欲しいわけでもあるまい」

杏『それがあるんだよねぇ』

敦信「話が見えてこないな。はっきり言いたまえ。君らしくもない」

杏『大洗女子学園が統廃合されそうになっていた話は知ってる?』

敦信「ああ。歴史ある学園艦ではあるが、生徒数の減少、また目立った実績もないという理由で廃校へ進んでいたはずだ」

杏『あと、維持費の問題ね』

敦信「しかし、目立った実績は今年、生まれた。戦車道全国大会優勝という輝かしい実績がね」

杏『それだけじゃ納得しなかったみたいだねぇ』

敦信「そういうことか。一度決定したことを覆すためには優勝の二文字では足りなかったか。残念だ」

杏『その決定を覆す手伝いをしてほしいんだよね』

敦信「……君が文部科学省に突きつけた条件とは何だね?」

杏『さっすが、林水。もう私の言いたいことは分かったか』

敦信「現状では戦車道以外での実績は作れない。部活動でも細やかな活動に留まっているようだからね」

杏『大洗女子学園の統廃合を白紙にする条件、それは戦車道オールスターチームに勝つこと。で、どう?』

敦信「ほう。その相手は?」

杏『黒森峰にプラウダに、聖グロリアーナ、サンダース。どう。いいっしょ』

敦信「全て君の対戦相手だったチームからか。何か意図でもあるのか」

杏『単に頼みやすいってだけだけどね』

敦信「各校から1輌ずつ選出か」

杏『そう。5対5のガチバトル。その条件なら問題ないって言わせる』

敦信「全てはこれからなのに、既に実現しているかのようだな。流石は学園艦を統べる者だ。そうでなくては務まらないか」

杏『褒めてもなーんもでないよ。手伝ってくれたら、干し芋ぐらいはあげるけど』

敦信「その報酬なら、こちらも喜んで協力させてもらおう。まずはその条件を相手に呑ませるところからか」

杏『そこまで林水に甘える気はないって。やってほしいことは、一つだけだからねぇ』

大洗女子学園 生徒会室

杏「おっけぇ。んじゃ、よろしくぅ」

桃「話はまとまったのですか」

杏「ああ。これから私は話をつけてくるけどな」

桃「それなら私も一緒に」

杏「いいから、いいから。河嶋と小山はこの件を西住ちゃんだけに伝えて」

桃「西住だけですか?」

杏「あんまり言いふらして変な噂が流れても嫌だからね」

桃「分かりました」

杏「それじゃ、行ってくるよ」

柚子「はいっ。会長、お気をつけて」

杏「うん」

柚子「私たちもいこっか、桃ちゃん」

桃「桃ちゃんと呼ぶなっ!」

桃(会長はどう話をつけるつもりなんだ……?)

教室

沙織「それでね、このお店の人にナンパされちゃったんだぁ。もー、どうしよー」

みほ「そうなの!?」

華「沙織さん。あれはそういった類のものではなく、沙織さんがどの洋服を買おうか悩んでいたからでは?」

沙織「でもでも! あれは多分、私情も挟まってたと思うもん!!」

みほ「あはは……」

桃「西住はいるか」

みほ「あ、はい。どうしたんですか?」

桃「話がある」

みほ「分かりました」

沙織「あのー、私と華は?」

桃「西住だけで良い」

柚子「ごめんね。楽しく話していたみたいなのに」

華「いえ、気にしないでください」

桃「話はすぐに終わる」

廊下

優花里「ふっふふーん」

優花里(良い雑誌が手に入りましたぁ。西住殿も喜んでくれるでしょうか)

優花里「おや?」


みほ「お話ってなんですか」

桃「実はな……」


優花里(なにやら重大なお話をされているみたいですね……)


みほ「えぇぇ!?」

桃「静かにしろ」


優花里(こ、これはかなりの事件ですか……。あの西住殿の様子では……)

優花里(もう少し聞いていたいけどいわば将校同士での密談ですし、これ以上盗み聞きはいけません!)

優花里(でも……気にもなりますし……。あぁー!! どうしたらいいのですかー!! 西住どのー!!)


柚子(あれ、秋山さんが頭を抱えてる……。どうしたんだろう……)

みほ「統廃合はなくなったんじゃ……」

桃「私たちもそう思っていた。しかし、当局はどうしてもこの学園艦を失くしたいらしい」

みほ「そんな……みんな、あんなにがんばったのに……」

桃「会長も想いは同じだ。既に動き出している」

みほ「何をするつもりなんですか」

桃「悔しいことだが、この学園の存在を認めさせるには戦車道しかない。戦車道で全国大会優勝以外の箔をつけるしかないんだ」

みほ「大会以外でどうするんですか」

桃「戦車道国際大会強化選手に選ばれた者のみで固めたチームと我々大洗チームが対戦し、勝利する」

みほ「な……!?」

桃「無論、連盟にも頼み込み公認試合ということにする。戦車道全日本オールスターチームに勝利できれば来年度の生徒数も確実に増える」

みほ「優勝しただけでも増えそうな気がしますけど」

桃「何度も言うが、優勝だけではダメなんだ。それ以上の成果が欲しい」

みほ「オールスターってことは、お姉ちゃんも……」

桃「西住まほだけでなく、聖グロリアーナやサンダース、そしてプラウダからも参加予定だ」

みほ「いくらなんでも戦力に差がありますし、各校とも一度私たちと試合をしています。データを取られた状態では、圧倒的に不利としか言えません」

桃「不利な状況は大会時から同じだ。それを私たちは覆し、優勝した」

みほ「弱小校だからという相手の油断も多分にあった大会当時とは違います」

桃「それでもやるんだ。学園を守るために」

みほ「……」

柚子「ダメかな? こんなことを頼めるのは西住さんしかいないの」

みほ「でも、私たちで各校のエースを相手にするなんて……」

桃「お前が不安になるのもわかる。お前に全てを負担させてしまっているのも承知の上だ。だからこそ、今回は会長が助っ人を用意してくれている」

みほ「助っ人?」

柚子「なんでも弱小だったラグビー部をとっても強くさせた教官がいるらしいの」

みほ「それは蝶野さんではないんですか」

桃「蝶野教官はどちらかと言えば中立だ。大会のときも我々に直接的指導をしてくれた回数は数えるほどだっただろう」

柚子「あくまでも蝶野一等陸尉は特別講師だったから」

桃「その所為で、西住には大きな荷を、いや、全ての荷を背負わせたといってもいい」

みほ「そんなことはありません。生徒会のみなさんだって、私の知らないところでたくさん苦労していたはずです」

桃「我々のことなどどうでもいい。全ては西住の双肩にかかっていたのだからな。そして、今回もまたお前に全てを任そうとしている。だからこその助っ人要請だ」

柚子「その人と西住さんが一緒なら、きっと短期間でもっと強くなれるって会長が言ってるんだけど……」

みほ「いくらなんでも、お姉ちゃんやケイさんが一緒のチームと試合なんて……」

桃「……頼む、西住。他には誰にも頼れないんだ」

みほ「や、やめてください。優勝したのだって、私だけの力じゃない。みんながいたからこそなんです」

桃「頼む」

みほ「……」

柚子「西住さん、おねがいっ」

みほ「私は……」

優花里「あ、あの!! それはずるいと思います!!」

みほ「優花里さん!?」

桃「お前、話を聞いていたのか」

優花里「勝手に盗聴したことは謝ります!! でも、お二人は卑怯ではないでしょうか!!」

桃「なんだと」

優花里「西住殿にかかる重圧は私などでは測り知れません……。隊長を務めない、試合に参加しないという選択肢があってもいいと思います!!」

みほ「優花里さん……」

桃「それだと学園を守れない!! 秋山、お前はこの学園から卒業できなくなってもいいのか!!」

優花里「それは嫌です!! 私だって断固として、この大洗を死守したいです!!」

桃「ならば、西住の協力は必要不可欠だ」

優花里「そんなことはありません」

桃「西住を抜いてもオールスターチームに勝てるというのか」

優花里「勝ち負けの問題ではありません。学園が無くなるかどうかの責任を西住殿一人に背負わせたくないだけです」

桃「お前……」

柚子「やめてよぉ、桃ちゃん。秋山さんの言い分は当然だと思うけど」

桃「しかしだな」

優花里「西住殿が参加したくないというのであれば、私たちで戦えばいいだけの話です」

桃「それで勝てなければ、西住が非難を浴びるかもしれないんだぞ」

優花里「そんなこと、絶対にさせません!! 許しもしません!! 立派に指揮官として戦ってくれた西住殿を悪く言うなんてあってはならないことですから!!!」

みほ「……」

桃「……わかった。西住、すぐに返答が欲しいわけではない。ただ、私たちカメさんチームは参加を決めている。あんこうチームから何名が出るかは教えてほしい。以上だ」

みほ「あ……河嶋さん……」

柚子「西住さん。無理強いはしたくないけど、できれば……また……隊長として……」

桃「柚子、こい」

柚子「う、うん。そ、それじゃ」

みほ「はい……」

優花里「西住殿」

みほ「優花里さん……私……」

優花里「西住殿が決めてください。誰も強制なんてしません」

みほ「ありがとう。けど、私もこの学園は守りたいから」

優花里「わかっていますよぉ。だからって隊長として試合に臨むことはありません。試合は楽しんでこそです」

みほ「うん……」

優花里「西住殿……。そ、それはそうと、見てくださいっ、西住殿。この雑誌が手に入りましたよ」

みほ「あ、これってアーム・スレイブのことがよく載ってるやつだ」

優花里「おぉー!! 西住殿!! やはり知っていたのですね!! では、このアーム・スレイブマンスリーも!?」

みほ「あ、ああ、うん。知ってる、知ってる。優花里さんって戦車だけじゃないんだね」

優花里「はぁぁ……まさか、この書物の存在を知っているなんてぇぇ……。私、戦車はもちろん一番大好きなのですが、こうしたASにも目は通しています!」

陣代高校 生徒会室

敦信「すまないね、急に呼び出してしまって」

宗介「いえ。会長閣下のご命令とあれば、授業中であろうと招集に応じます」

かなめ「応じなくていい」

敦信「相良君、千鳥君。学園艦の存在は知っているね」

宗介「はっ。来るべき国際化社会ために広い視野を持ち大きく世界に羽ばたく人材の育成と、生徒の自主独立心を養い高度な学生自治を行うために造船された巨大艦船のことです」

敦信「その通り。流石だね」

宗介「恐縮です」

かなめ「たしか重厚長大産業が世界不況で落ち込んで、それらを助けるってことで教育と連携したのも学園艦が普及した理由でしたっけ」

敦信「うむ。この陣代高校も一時は学園艦になる話もあったが、今は見送られている。とはいえ、近い将来はそうなることだろう」

蓮「現代では中高の殆どが海上になっていますからね」

敦信「時代のうねりには逆らえないということだろう」

かなめ「意味がわかりません……」

宗介「その学園艦がどうかされたのですか」

敦信「知人から連絡があってね。協力してほしいことがあるらしいのだよ」

かなめ「協力ってなんです?」

敦信「応援要請は大洗女子学園の会長からだ。名前は角谷杏。彼女とはちょっとした知り合いでね」

かなめ「その学校知ってます。戦車道の大会で優勝したところですよね」

敦信「それも戦車道を復活させたその年にだ。これは高校戦車道史でも異例のことだった」

宗介「千鳥、せんしゃどうとはなんだ?」

かなめ「軍事オタクのソースケが知らないの?」

宗介「ああ、聞いたことがない」

敦信「華道、茶道に並ぶ乙女の嗜み。それが戦車道だ。戦車を用いた武道と思ってくれて構わない」

宗介「戦車を使ったスポーツということですか」

かなめ「世界中で愛されてるスポーツなんだけど、知らないの?」

宗介「千鳥は戦車道の経験があるのか?」

かなめ「あたしはないわよ。そういう堅苦しいのは苦手だしね」

敦信「美樹原君は経験者だったかな」

蓮「齧った程度です。人に言えるほど研鑽を積んでもいません」

かなめ「お蓮さんは似合いそうよね」

敦信「その大洗女子学園が今、廃校の危機に瀕している」

かなめ「えぇ? そうなんですか」

敦信「そうなのだよ。戦車道の全国大会を制した学園が、だ」

宗介「それは何故ですか」

敦信「学園艦には莫大な維持費がかかる。生徒数が減少すれば、その維持費を賄うことができなくなる。簡単な理屈だ」

蓮「大洗女子学園の入学者が年々減り続けているのは事実です」

敦信「そこで会長である角谷君は一念発起し、戦車道を復活させ、大会で優勝すれば廃校は白紙にしてほしいという条件を出した」

かなめ「すごい……」

宗介「巨大艦船を守るために戦車で戦うとは、見上げた兵士だな」

敦信「しかし、彼女の努力もむなしく、廃校の話は順調に進んでいる。来年度には大洗の学園艦は幽霊船の仲間入りだ」

かなめ「どうしてですか? きちんと結果を出したのに」

敦信「学園艦が一つ無くなるだけで、財政が大幅に改善されるからだろう。大洗も県立だからね」

宗介「よくわかりませんが、血反吐を吐きながらも結果を出した兵士に対し、上層部が約束を反故にしたということですか」

敦信「端的に言えばそうなる」

宗介「その角谷という人物も無念でしょうね」

敦信「常人ならばそこで膝を折り、泣き寝入りすることだろう。しかし、角谷君は違う」

かなめ「もう行動を起こしているということですか」

敦信「我々への応援要請もその一つだ」

宗介「屈強な精神力を有している。まさに一流の兵士だな」

かなめ「まぁ、普通なら心もぽっきり折れちゃって諦めちゃうわよね」

宗介「最大の戦果もあげた直後なら尚更だ。並の人間にはまずできんことだ」

かなめ「確かに」

敦信「彼女はこれから上層部へと掛け合うつもりのようだ。廃校を撤回する条件を叩き付ける気でいる」

かなめ「その条件ってなんですか」

敦信「戦車道国際大会強化選手に選抜されたオールスターチームに大洗の現戦力で勝利することだ」

蓮「出場参加予定校は黒森峰、プラウダ、聖グロリアーナ、サンダースとあります」

かなめ「どこも優勝候補だったところじゃないですか!?」

敦信「故にオールスターだ。試合は5対5の殲滅戦を想定しているそうだ」

蓮「黒森峰からは2輌、他は1輌ずつで参加させるとのことです」

かなめ「そんなの勝ち目はあるんですか?」

敦信「ないとは言わないが、とても厳しいものだろう。そもそも所有している戦車に差がある」

かなめ「だったら、無理なんじゃ……」

敦信「しかし、圧倒的に不利な試合を戦術で勝ち進んだのが大洗女子学園だ」

かなめ「あれはテレビで見ててもよかったですからね」

敦信「判官贔屓と言われたらそれまでだが、大洗を応援していた者は多かったと聞く」

宗介「優秀な指揮官がいるようですね」

かなめ「噂では隊長が凄腕だってことだけど」

敦信「西住みほ。彼女はまさに大洗の英雄だろう」

かなめ「そうそう! 西住さんよ! あの子が弱小校を優勝に導いたんだってみんなが言ってましたよ」

敦信「ふっ……」

かなめ「なにか?」

敦信「いや。なんでもない」

宗介「お言葉ですが有能な指揮官がいるのならば、自分たちが手を貸すことはかえって足を引っ張ることになり兼ねません」

敦信「それだけでは無理だと角谷君は考えている。そこで陣代高校ラグビー部を生まれ変わらせた指揮官を助っ人に欲しいと頼まれたわけだ」

かなめ「はぁ!? ど、どういうことですかぁ!?」

敦信「角谷君が欲しいのは戦術ではなく、短期間で勝利を呼び込むことができる心の強さだ」

宗介「なるほど」

かなめ「なるほどじゃない!! あんた、またあんなことをさせる気なの!? しかも女の子に!!」

宗介「それを向こうが望んでいるのならば仕方ない」

かなめ「やめい!!」パシーン!!!!

宗介「割と痛いぞ」

かなめ「やかましい!! あれはまだ男子だからよかったけど、あんなことを女の子にさせたら死んじゃうわよ!!!」

宗介「それはおかしい。ラグビー部も言っていたはずだ。今は男女平等。女らしく男らしくというのが――」

かなめ「そういうことじゃない!!!」スパーン!!!!

敦信「落ち着きたまえ、千鳥君」

かなめ「林水先輩!! 頼まれたのかなんだか知りませんけど!! こいつにだけは指揮させちゃダメですって!!」

敦信「心配かね?」

かなめ「心配っていうか、絶対になんかやらかしますよ!! この戦争ボケは!!」

宗介「酷い言われようだな」

かなめ「日頃の行いが悪い所為よ!」

敦信「では、千鳥君も大洗女子学園へ留学するといい」

かなめ「へ?」

敦信「留学だよ。国内留学だ。しばらくの間、滞在することになるだろうから単位も大洗でもらっておくといい」

かなめ「な、なんで!?」

敦信「無理にとは言わない。しかし、相良君のことが心配ならば、ついていくといい」

かなめ「う……」

宗介「会長閣下。自分の単位はどこで受け取ればよろしいでしょうか」

敦信「心配はいらない。君も短期留学ということにしておく」

かなめ「女子校にですか!?」

敦信「教官として赴くわけだから、何も不思議なことではない」

かなめ「それは分からなくもないですけど」

宗介「問題ありません。敵地侵入の際に女装することもありますので」

かなめ「え……」

敦信「そこまですることはないよ。相良君はあくまでも戦車道の特別講師だからね」

宗介「了解です」

教室

宗介「……」ペラッ

かなめ「ねえ、ソースケ。ホントに受ける気?」

宗介「当然だ。会長閣下の命令だからな。断る理由もない」

かなめ「でも、海の上よ?」

宗介「問題ない。むしろ、俺にとっては好都合だ」

かなめ「なんで?」

宗介「ダナンとの合流がスムーズになる」

かなめ「はぁ……そうですかぁ……」

信二「あれ、相良君。何を読んでるの?」

宗介「戦車道に関する書物だ」

信二「どうして?」

宗介「色々あってな」

信二「へぇー。でも、それって入門書だよね? もしかして戦車道のことあまり知らないの?」

宗介「無知と言っていい。存在すら30分前まで知らなかったからな」

信二「そうなんだ。相良君が知らないって意外だなぁ」

宗介「風間は知っているのか?」

信二「うん。よく見てるよ」

宗介「よければ教えてくれ」

信二「何から知りたいの?」

宗介「そうだな。ルールから知っておきたい」

信二「うん。いいよ。まず使える戦車は戦車は終戦までに戦線で活躍または設計が完了し試作されていた車両と、それらに搭載される予定だった部材を使用した車両のみなんだ」

宗介「なに? そのような旧型で行うのか」

信二「そう。でも、その時代の戦車って結構個性的だし、いいかなって僕は思うけど」

宗介「そうか? 旧型では制限も多いと思うが」

信二「戦車道は戦争じゃなくてスポーツだからね。見て楽しむ分には多少不便な戦車のほうがいいんだよ」

宗介「そういうものか」

かなめ「……」

恭子「相良君と風間君、なんか盛り上がってるね。いつものミリタリー談義?」

かなめ「ま、そんなとこ」

>>48
信二「うん。いいよ。まず使える戦車は戦車は終戦までに戦線で活躍または設計が完了し試作されていた車両と、それらに搭載される予定だった部材を使用した車両のみなんだ」

信二「うん。いいよ。まず使える戦車は終戦までに戦線で活躍または設計が完了し試作されていた車両と、それらに搭載される予定だった部材を使用した車両のみなんだ」

信二「――こんなところかな」

宗介「うむ。よくわかった。礼を言う」

信二「そんな、気にしないでよ」

宗介「いや、風間の知識にはいつも感心している」

信二「やだなぁ」

恭子「おっ。戦車道だ。この武部さんって可愛いよね。一度でいいから生で見たいなぁ」

かなめ「あたしは西住さんがいいと思うけどな」

信二「プラウダ高校の副隊長も美人で綺麗な人だよ。あと黒森峰の逸見エリカって人もいいよね」

恭子「あ、うん」

宗介「風間は戦車のことだけでなく、その搭乗者についても博識なのか。そこまで知識を溜め込むとは、流石だな」

かなめ「風間君って、戦車道の選手の写真とか集めてるの?」

信二「も、もちろんだよ。確かに戦車のことも好きだけど、綺麗な人が多いんだから」

恭子「戦車道を見てる動機が不純……」

信二「選手みたさに見てる人は多いんだよ! ホントに!!」

宗介「ふむ。搭乗者の情報は戦闘において役に立つからな。癖などが分かっていれば尚良い。有利にことを運ぶことができる」

信二「常盤さんだって武部さんを生で見たいって今、言ったじゃないか!」

恭子「私はそこまで真剣に戦車道をみてないし」

宗介「俺も見てみたいものだな」

かなめ「え!?」

恭子「あれ、相良くんって武部さんみたいな人がタイプなの?」

かなめ「えぇ!?」

宗介「無論、その武部という人物も含まれている」

かなめ「ソースケってこういう子がいいんだ……」

恭子「ガンバレ! カナちゃん!」

かなめ「なにがよ!?」

宗介「風間。大洗女子学園の詳細なデータはあるか?」

信二「相良君にとって詳細なデータになるかどうかは分からないけど、こういうのがあるよ」

宗介「これは?」

信二「戦車道の専門書。大洗の選手のことも写真付きで載ってるよ」

かなめ(武部沙織さん、か。今更こんな可愛い感じにはなれないわよね、あたし……)

大洗女子学園 教室

沙織「へっくしゅん!!」

華「風邪ですか?」

沙織「これはあれだね。私のことを噂している男の人がいるんだよ。やだもー」

華「そうなのですか?」

沙織「そうに決まってるよぉ。読者モデルとしてこの前デビューしちゃったしねっ」

華「あれは戦車道優勝校へのインタビューで写真を掲載されただけではありませんでしたか?」

沙織「モデルになったのはホントだもんっ」

みほ「ただいま」

華「おかえりなさい」

優花里「どうも、武部殿、五十鈴殿」

沙織「いらっしゃい、ゆかりん」

華「みほさん、河嶋さんのどういったお話をされたのですか」

沙織「それ気になってたんだー、おしえておしえて」

みほ「あー……うー……えーと……」

>>65
華「みほさん、河嶋さんのどういったお話をされたのですか」

華「みほさん、河嶋さんとはどういったお話をされたのですか」

優花里「あの、その話は……」

沙織「なになにー、私たちには秘密なのー?」

みほ「その……あの……」

華「みほさん」

みほ「じ、実は……」

華「言わなくて結構です」

みほ「え……」

華「それより、今日も放課後に練習を行うでしょうか?」

みほ「華さん……」

沙織「うんうん。優勝したからって練習を怠ったら駄目だよね。目指せ二連覇!!」

みほ「沙織さん……」

華「そうです。わたくし、もう一度優勝の気持ちよさを体感したいです」

沙織「いいよねー。あー、でもでも、二連覇しちゃったら今度こそ日本中から男の人が私に群がっちゃうかもー。そうなったらどーしよー」

優花里「それは確かに大変であります。では、そのときは僭越ながら私が武部殿をお守りします!!」

みほ「みんな……」

華「話したくなったときで構いません。いつまでもお待ちしていますから」

沙織「乙女には秘密が付きものだもんね」

優花里「意味が違うような……」

みほ「……今から麻子さんを呼びに行こう」

沙織「なんで?」

みほ「まだみんなに話す勇気はないけど、でも、沙織さんたちには話しておかないといけない気がするから」

華「……」

優花里「いいのですか、西住殿」

みほ「戦車道を選択するときだって、背中を押してくれたのは沙織さんと華さんだった」

みほ「怖くて震えているときに勇気づけてくれたのは優花里さんと麻子さんだった」

みほ「……だから、話しておきたい」

優花里「そ、そんなぁ、勇気づけたなんて……。私のほうこそ西住殿には感謝しかできません!! あのように貴重な体験をさせてもらったのですから!!」

華「分かりました。冷泉さんをお呼びしましょう」

沙織「ちょっと待ってて。麻子に電話するよ」

みほ「麻子さんには倉庫にくるように伝えて。そこで全部話すから」

>>68
みほ「戦車道を選択するときだって、背中を押してくれたのは沙織さんと華さんだった」

みほ「迷っているときに背中を押してくれたのは沙織さんと華さんだった」

倉庫

沙織「えぇぇぇぇ!?」

華「本当のことなのですね」

みほ「うん」

麻子「廃校は免れないのか。残念だな」

沙織「なんで他人事なのよー!!」

麻子「そんなわけないだろう」

優花里「生徒会のみなさんも憤慨しているようでした」

華「戦車道オールスターチームに勝利すれば、今度こそ廃校は撤回されるのですね」

みほ「それもまだ分からない。会長が話をするみたいだけど……」

沙織「どうすればいいのよー!!」

麻子「会長が話をつけさえすれば簡単だ。オールスターチームに勝てばいいだけだろ」

沙織「簡単に言わないでよ!!」

麻子「負ければ終わりなんだ。なら、勝つしかない」

優花里「れ、冷泉殿、もしかしてかなり怒っていますか?」

麻子「別に。事実を言っただけだ」

沙織「(麻子、完全にキレてるよ)」

優花里「(流石、冷泉殿でありますね。怒り方もクールです)」

沙織「(そこが怖いところなんだけどね)」

華「事態は把握しました。みほさんは参加されるのですか?」

みほ「それは……」

麻子「五十鈴さん。西住さんがこうして話してくれたのは、多少なりとも迷いがあるからじゃないか?」

沙織「みぽりん、迷ってるの?」

みほ「迷っているというより……」

華「怖いのですね」

みほ「……」

麻子「無理もないな。西住さんがまた隊長となって大洗の指揮を執るとなれば、重責だ。しかも今度の相手はエースしかいないチーム。負けるのが普通の試合で勝たなくていけない」

優花里「ですから、今回の試合、無理して参加しなくてもいいと私は思います。隊長と臨むにはあまりにも重い一戦になりますから」

沙織「そうだよね。廃校のことも途中まで内緒にしてくれていたから、ある程度は肩の力も抜けてたもんね。まぁ、準決勝と決勝は知ってたから緊張してたけど」

華「相手が相手ですし、準決勝、決勝以上の重圧になりますね」

みほ「けど、ここで私が逃げたら……」

沙織「逃げてないよ、みぽりん」

優花里「そうです! 西住殿は私たちのために戦ってくれたではありませんか!!」

華「ここでみほさんが隊長にならなくても、いえ、戦車に乗らなくても誰も責めはしません」

麻子「もし西住さんを悪くいう奴がいるのなら、沙織がこらしめてくれるだろう。往復ビンタで」

沙織「もー任せてといてよ! こうしてビシバシやるから!!!」ブンブンッ

優花里「すごい手さばき!! これはおたふく風邪のようになるのは必至です!!!」

みほ「……でも、みんなはきっと戦車に乗るよね」

華「そうですね」

みほ「だったら……」

麻子「西住さんは、みんなが乗るから戦車に乗るのか」

みほ「え……」

麻子「何度も言う。西住さんが不参加を決めても、誰にも文句なんて言わせない」

沙織「そーだよー。みぽりんは一度この学園艦を救ってるんだよ!! それだけで十分だって!! もう一回守ることない!!」

みほ「……」

麻子「会長も西住さんにそうした責任を負わせたくないから、教官を呼んだのだろう」

優花里「河嶋殿はそう言っていましたね」

麻子「幸い、Ⅳ号戦車は4人でも動かせる」

優花里「パフォーマンスの低下は若干ありますが、問題はありません」

華「ええ。ですから、みほさん」

みほ「え?」

華「みほさんの意志で決めてください。みんなが参加するから、参加する。そうしたことでは決めないでください」

みほ「私は……」

華「その場の流れで決めていいことでは決してありません」

沙織「ゆっくり考えてよ。ねっ」

みほ「いいのかな。もう少しだけ、悩んでも」

麻子「構わない。ゆっくり悩んでほしい」

優花里「西住殿の決断に私たちは従います。大会のときだって、そうでした」

沙織「うんっ。みぽりんのしたいようにしたらいいの。そのあとのことは考えなくていいからね」

みほ「……ありがとう」

放課後 生徒会室

杏「たっだいまー」

桃「おかえりなさい、会長」

柚子「どうでした?」

杏「ふっふーん。これ」ペラッ

桃「これは……!」

柚子「誓約書ですか」

杏「そう。戦車道連盟にも連絡して、許可もらってきた。オールスターチームに勝てば今度こそ廃校の件は白紙に戻してくれるってさ」

桃「ありがとうございます、会長」

柚子「でも、どうやって相手を納得させたんですか?」

杏「んー? 戦車道が盛り上がっていいじゃーんって言ったら、確かにーって賛同してくれただけ」

柚子「えぇ……」

桃「では、これより戦車道受講者を招集します」

柚子「会長、みんなには正直に話しますか?」

杏「そーだな……どうしよっかなぁ……」

グラウンド

桃「よく聞け!! 二ヶ月後に我々、大洗女子学園は全日本選抜チームと試合を行うことになった!!」

あや「それって、どういう意味ですかー?」

桃「黒森峰、プラウダ、聖グロリアーナ、サンダース大付属の混成チームと試合をするということだ」

優希「えぇー? そんなの勝てるんですかぁ?」

ねこにゃー「エキシビジョンってやつかなぁ」

ももがー「それなら楽しんで試合ができるなり」

妙子「勝ち負けじゃなくて、ショーって感じですか」

桃「たとえショーとしても試合だ!! 絶対に勝つぞ!!!」

典子「任せてください!! 根性で勝ちます!!」

カエサル「エキシビジョンはやはり豪華でなくてはならないな。例えるなら、ハンニバル・バルカとスキピオが手を組むといったところか」

エルヴィン「いや、それを言うならハンス・ウルリッヒ・ルーデルとレフ・リボービチ・シェスタコフが共闘するレベルだな」

左衛門佐「豊臣秀吉と柴田勝家!」

おりょう「土方歳三と坂本龍馬ぜよ」

カエサル・エルヴィン。左衛門佐「「それだぁ!!」」

>>68
華「分かりました。冷泉さんをお呼びしましょう」

華「分かりました。麻子さんをお呼びしましょう」

>>77
カエサル・エルヴィン。左衛門佐「「それだぁ!!」」

カエサル・エルヴィン・左衛門佐「「それだぁ!!」」

優花里「(会長はみなさんに話さないつもりのようでありますね)」

沙織「(やっぱり秘密にしておくのかな?)」

優花里「(ショックを受ける人も多いかもしれませんからね。黙っておくほうが得策かもしれません)」

麻子「(どうだろうな)」

華「(秋山さんの言う通りだと思います。わざわざ話すことではありません)」

みほ「……」

杏「私の顔になんかついてる?」

みほ「い、いえ! なんでもありません!!」

桃「二ヶ月後の特別試合開催に伴い、新しい教官をお呼びしている。二日後には大洗に到着する予定だ」

梓「教官って西住隊長がいればいいんじゃないですか?」

桃「西住の戦術、戦略は各校の隊長に研究し尽されているといってもいい。勝つためには全く新しい発想が必要になる」

カエサル「大洗に新しい風を呼ぶということか」

おりょう「文明開化の音がするぜよ」

左衛門佐「そう?」

あゆみ「どんな人なんですかー?」

杏「かっこいい教官がくっから」

沙織「かっこいい教官なんですか!?」

優花里「蝶野教官のようなかっこいい女性士官ということではないですか?」

沙織「ぶぅー。またそれぇ?」

柚子「今度は正真正銘、男性です」

沙織「マジ!?」

杏「うん。最弱の高校をたった一週間で最強にした凄腕の教官だから」

麻子「鬼軍曹か何かか」

華「厳格な殿方なのでしょうか?」

みどり子「風紀にも厳しい人に違いないわ。冷泉さんにとっては良い教官になるんじゃない?」

麻子「そういうそど子は一日で音を上げるんじゃないか?」

みどり子「貴方と一緒にしないでよ!! あとそど子って呼ばないで!!」

沙織「多少厳しくてもかっこいいなら問題なし!!」

優花里「何事も慣れです!! それにどんなに辛い訓練を課せられても、西住殿と一緒なら私は乗り越えられます!!」

みほ「だ、大丈夫かな……」

陣代高校 生徒会室

敦信「ついに明日だね。準備はできているかな」

宗介「問題ありません」

敦信「頼もしいね。指導方針も既に出来上がっているということか」

宗介「肯定です。ラグビー部のような成果をご期待ください、会長閣下」

かなめ「それだけはやっちゃダメっていってんでしょうが!!!」

敦信「そこは千鳥君の判断に任せるよ。相良君がやりすぎないように監督したまえ」

かなめ「言われなくてもやりますよ」

宗介「君に迷惑をかけるつもりはないのだが」

かなめ「どの口がいうわけ?」

敦信「全ての手配は済んでいる。あとのことは大洗の会長、角谷君の指示に従ってくれ」

宗介「了解です」

かなめ「はぁーい」

敦信「頼むよ。相良君、千鳥君」

宗介「会長閣下のご期待に応えるため、尽力いたします。それでは失礼します」

かなめ「ソースケ、大洗のみなさんをどんなふうに指導するの?」

宗介「まずは風間から入手した情報が正しいかどうかを確かめる。話はそれからだ」

かなめ「情報って?」

宗介「指揮官の務めは能力の把握から始まるのが常だ」

かなめ「どう把握すんのよ」

宗介「気にするな。俺に考えがある」

かなめ「だから!! それを詳しく話せっていってんのよ!!!」

蓮「あのお二人なら信頼できますね」

敦信「うむ。大幅な戦力向上とまではいかないが、対戦相手にとって相良君はイレギュラーだ。そこに勝機を見出すことが必ずできる」

蓮「試合の日が楽しみですね」

敦信「……そろそろ私も出かけるか」

蓮「どちらへ?」

敦信「なに、野暮用だよ」

蓮「分かりました。お気をつけて」

敦信「ありがとう」

廊下

かなめ「いい? 絶対にマオさんのなんとか手帳とかは使わないこと」

宗介「了解した」

かなめ「あと、おかしな武器やトラップもなし」

宗介「俺はおかしな武器もトラップも使わない」

かなめ「ほんとにぃ?」

宗介「ああ。俺を信じてくれ、千鳥」

かなめ「うぅん……。まぁ、そこまで言い切るなら信じてあげてもいいけど」

宗介「感謝する」

かなめ「ふ、ふん。でも、完全に信じたわけじゃないからね!!」

宗介「そうか」

かなめ「そうよ。ちょっとでもおかしなことしたら、またこれで引っ叩くからね!!」

宗介「肝に銘じておく。それより千鳥、明日は俺と共に大洗女子学園まで行こう。大佐殿にも話は通してある」

かなめ「は? なんでそこでテッサが出てくるわけ?」

宗介「学園艦は海の上にあるからだ」

デ・ダナン 艦内

マデューカス「艦長、これが作業予定表になります」

テッサ「ありがとう。今回もかなり詰め込んでいますね」

マデューカス「ダナンのことを鑑みれば、致し方ないことかと」

テッサ「それもそうですね。この子はデリケートですから」

マデューカス「では、この日程通りドッグ入りになりますな」

テッサ「いえ、全項目12時間遅れることになります」

マデューカス「何故ですか?」

テッサ「これから日本へ向かうことになったからです」

マデューカス「いつ決まったのですか?」

テッサ「先ほど、サガラ軍曹から連絡がありました。特別任務のために巨大艦船に潜入することになったそうです」

マデューカス「そのような任務など私は聞いておりませんが」

テッサ「とにかく、これより日本へ向かいます。いいですね」

マデューカス「ア、アイ、マム」

テッサ「よろしい」

カリーニン「大佐殿」

テッサ「カリーニンさん。どうかされましたか?」

カリーニン「いえ。この度の急な予定変更にお付き合い頂いたこと、感謝いたします」

テッサ「気にしないでください。丁度、作戦行動も終わって落ち着いていましたし」

カリーニン「そう言っていただけると助かります」

テッサ「サガラさん、大変そうですね」

カリーニン「気遣いは不要です。軍曹ならば、どのような状況からでも這い上がることができるはずです」

テッサ「戦車道の指導官を任されて、陣代高校から大洗女子学園に短期留学だなんて……。留学はいいけど、女子校というのが……」

カリーニン「それこそ心配することなどありません。あの軍曹なのですから女子校への潜入など造作もないことかと」

テッサ「ですね。サガラさん、ですもんね」

カリーニン「それにしてもミスリルに属する者が戦車道に関わるとは、思いもよりませんでした」

テッサ「ええ。とはいえ、全く関係がないわけではありませんから、いつかはこうなると思っていました」

カリーニン「そうですか」

テッサ「間接的とはいえ、戦車道に関われたことは嬉しくなりますけどね」

カリーニン「同感です」

クルツ「なぁなぁ、ソースケの野郎が女子校に行くって話、聞いたか?」

マオ「ああ、さっきテッサから聞いた。戦車道ってやつに参加するんだろ」

クルツ「くぅ~、いいよなぁ、ソースケばっかり。戦車道といやぁ、可愛いガールズがパンツァーで可憐に戦場を駆けるんだぜ?」

マオ「乙女の嗜みだからねぇ」

クルツ「ここは天才狙撃手であるクルツ・ウェーバーも手を貸すしかないんじゃないか。砲手の子にも色々といい子が揃ってるしなぁ。デッヘッヘッヘ」

マオ「はいはい。さっさと報告書を作りな。遅れたら三日間、メシ抜きだからね」

クルツ「へいへい」

マオ「あ、ベン。ちょっと」

クルーゾー「なんだ?」

マオ「ソースケのことは聞いてる? あいつを迎えにいって、大洗の学園艦に届けたらしばらくは合流できないってさ」

クルーゾー「ああ。戦車道だったか。軍曹には似つかわしくないものだな」

マオ「戦闘とスポーツの違いが分かっていればなんとでもなるとは思うけどねぇ」

クルーゾー「分かっていると思うのか?」

マオ「ぜんっぜん」

クルーゾー「ミスリルの名に泥を塗ることにならなければいいが」

数時間後 ダナン 艦内

マデューカス「サガラ軍曹とチドリカナメの乗艦が完了しました」

テッサ「結構。おかえりなさい、サガラさん。ようこそ、カナメさん」

宗介「ご足労いただき、ありがとうございます、大佐殿」

かなめ「やっほー、テッサ。まさかこのダナンで学園艦まで送ってもらえるなんてね。ありがと」

テッサ「いえ。ただの学園艦への旅行ならこんな代行サービスはしませんが、戦車道が関係していることなら話は別です」

かなめ「え?」

テッサ「サガラ軍曹」

宗介「はっ」

テッサ「私たちにお手伝いできることがなんでも言ってください」

宗介「了解です」

マデューカス「出来うる限りは自力でどうにかするようにな」

宗介「はっ! ただ、自分に課せられた任務は大洗の者たちを勝利させることであります。そのために準備しなければならないものがいくつかあります」

テッサ「遠慮なく言ってください。すぐに手配しますからね」

かなめ(テッサって戦車道に思い入れでもあるのかしら……)

マデューカス「戦車を用意してほしいのかね」

宗介「いえ! 大洗は現戦力で勝利しなければなりません!」

テッサ「つまり新しく戦車を用意することはできない、ということですか」

宗介「肯定です。また選手の追加も不可能とあります」

テッサ「なるほど。大洗のみなさんが勝利できる可能性は残されているのですか」

宗介「まだ未知数です。明日、各人の能力を調査し、適切な戦略を練るつもりです」

テッサ「その調査に必要なものがあるということですか?」

宗介「はい。殆どは自前で用意しました」

クルツ「おーい、ソースケぇ。お前の荷物、ぜーんぶ積んでおいたぜぇ」

宗介「すまないな、クルツ」

クルツ「俺を雑用で使いやがって、ちゃんとわかってんだろうな」

宗介「心配するな。選手の写真を撮って来たらいいのだろう」

クルツ「たのむぜぇ」

かなめ「また、このスケベガイジンは……」

マデューカス「恥ずかしいとは思わんのか、全く……」

テッサ「結構な大荷物ですね。このコンテナには何が……」

宗介「能力調査のために不可欠な装備一式が入っています」

テッサ「調査に? そのようなものをどこで入手したのですか」

宗介「知人に頼み、素材をかき集めただけです」

テッサ「あんまり、危険なことはしないでくださいね」

宗介「了解しました」

テッサ「私たちが用意できるものはもうないのですか?」

宗介「はい。残りは現地調達も可能なものばかりです。大佐殿の手を煩わせるまでもありません」

テッサ「そうですか……残念です……」

マデューカス「艦長。本人がこういっているのですから、いいではありませんか。軍曹は新兵ではないのですから、この程度のことは一人でどうにかできますでしょう。そうだな、軍曹?」

宗介「はっ!! 中佐殿の言うことに間違いはありません!!!」

マデューカス「ということです。艦長は休暇をおとりになってください」

テッサ「そうですねぇ……」

かなめ「あのー、それより部屋に案内してほしいんですけどぉ」

マデューカス「これは失礼、ミズ・チドリ。案内いたしましょう。どうぞ、こちらへ」

格納庫

宗介「シミュレーションを開始しろ」

アル『ラジャ』

マオ「んー? ソースケ、なにやってんの?」

宗介「大洗女子学園と選抜チームとのシミュレートを行っている。事前に知り得た戦闘データでだが」

マオ「ふぅん。勝てそうなの?」

アル『アヒルさんチーム、目標車輌と接触。交戦を開始します』

マオ「相手はティーガー?」

宗介「VI号戦車ティーガーⅠだな」

マオ「戦車道のルール上ではこれが最強クラスの戦車なのよね」

宗介「そうだな。相手の隊長車になるのはまず間違いないだろう」

マオ「大洗にはまともにやりあえるのがあるわけ?」

アル『アヒルさんチーム、行動不能。カメさんチーム、KV-2と交戦開始。戦力差は明らかです』

マオ「ダメじゃないの。ソースケ、悪いことは言わないからテッサも連れて行けば?」

宗介「そういうわけにはいかん。中佐殿には自力で解決するように言われたからな。それにこれはあくまでもデータ上のシミュレートでしかない」

艦長室

かなめ「来たわよ、テッサ」

テッサ「どうぞ、おかけになってください」

かなめ「あたしに話ってなに?」

テッサ「聡明なカナメさんのことですから、薄々は感づいているのではないですか?」

かなめ「テッサが戦車道に対してどうして熱心なのかはちょっと疑問だけど」

テッサ「正解です。実はいうと私が大洗に出向いて直接指揮をしたいぐらいなんです」

かなめ「何かあるわけ?」

テッサ「そうですね。一言でいえば戦車道は私たちの希望なのです」

かなめ「もしかして、ミスリルが戦車道連盟のスポンサーとか言わないわよね」

テッサ「うふふ。似たようなものかもしれませんね」

かなめ「マジでいってるわけ?」

テッサ「大戦当時、非力な女性でも戦車を用いれば戦場にでることができるため、戦車に乗る女性兵士が急速に増えました」

かなめ「それが理由で今でも戦車乗りに女性が多いってのは知ってるけど」

テッサ「そうです。実際、戦車が日本に輸入された際、男性には人気がありませんでした。そのため、女性騎兵隊へ優先的に戦車が配備されたのです」

かなめ「昔は戦車に乗れるってだけでモテにモテたとかいうわよね」

テッサ「事実、戦車に乗れるということは一流の証のようなものでしたからね」

かなめ「んで、それがテッサとなにかあるの?」

テッサ「最近のことなんです。戦車道が安全なスポーツという認識になったのは」

かなめ「そうなの? 戦車を使うんだし、結構危ないスポーツな気もするけど」

テッサ「昔ほどではありません。無論、どのようなスポーツにも相応のリスクは存在しますが、戦車道はその中でもかなり危険でした」

テッサ「戦車道がスポーツとしての形を取り始めたとき、砲弾は全て戦車の装甲を貫通しないように設計されていましたが、それでも事故は高い確率で起こりました」

テッサ「最悪の場合、搭乗者が全員死亡するときもあったそうです」

かなめ「嘘でしょ? そんなに危ないのに、なんで今も人気があるのよ」

テッサ「歴史的にも戦車は女性を惹きつけるものがあったからでしょうね。大洗女子学園で戦車道が盛んだったのもそうした理由からだと思います」

かなめ「そういえば、大洗って今年から復活したのよね」

テッサ「最後に戦車道が行われたのは二十年以上前になります」

かなめ「どうしてなくなったのか、知ってるの?」

テッサ「一応、私の部下が潜入するところですから、調べてあります。学園側の説明では選手人口の低下としていますが、本当の理由は別にあります」

かなめ「もしかして、誰かが事故で亡くなった、とか?」

テッサ「練習中の事故で複数人が死亡してしまった」

かなめ「……」

テッサ「ティーガーやパンターなどの車輌は売り払い、戦車道を完全に断ち切ったというアピールを周囲にしたそうです」

かなめ「そうしないとPTAとがうるさかったんでしょうね」

テッサ「学園のイメージ悪化を防ぐ目的もあったと思いますが、結果的には入学者の減少に繋がっているように思います」

かなめ「女子校で人気の戦車道が選べないなら、仕方ないかもね」

テッサ「まぁ、完全に断ち切ることはできなかったようですが、それはいいでしょう。ともかく、戦車道は極めて危険な武道だと言わざるを得なかったわけです」

かなめ「それで、最近は安全になったのね」

テッサ「15年前から徐々に戦車は強化されていき、10年前にとある特殊コーティング技術が突然確立しました」

かなめ「ああ。それがあるから実弾撃っても、絶対に抜けないんだっけ。……って、もしかして」

テッサ「その通りです。ミスリルの中にそのコーティング技術の開発に携わっている者がいます」

かなめ「テッサのこと?」

テッサ「残念ですが違います。研究施設で保護した人の知識です」

かなめ「そういう裏があったんだ」

テッサ「それは私たちに新しい道を示してくれました。故に希望なんです」

翌日 大洗町 港

かなめ「ありがとう、クルツくん。ここまで船で送ってくれて」

クルツ「隊長命令だ。気にすんなよ」

宗介「また連絡する」

クルツ「おう。写真データは逐一送信してくれよ」

宗介「ああ。ただし、機密情報を含む場合は暗号化する。そのときは独力で解析してくれ」

クルツ「メンドーなことすんなよな、ったく」

かなめ「大体、女子校で機密情報とかあるわけ……?」

クルツ「んで、あそこにあるバカでかい艦船が学園艦ってやつか。生で見るのは初めてだな」

宗介「大洗の学園艦はまだ規模が小さいほうだがな」

「聖グロリアーナとかと比べられると、困っちゃうけどねぇ」

宗介「誰だ」

杏「やぁやぁ、私は大洗女子学園生徒会会長、角谷杏。よろしくぅ」

かなめ「どうも。ええと、短期留学生の千鳥かなめです」

宗介「自分は陣代高校安全保障問題担当・生徒会長補佐官の相良宗介です! 林水会長閣下の命により、本日より戦術アドバイザーとして大洗女子学園に派遣されました!」

杏「まさか海からくるとはねぇ。学園艦に接舷してくれたらよかったのに」

宗介「それは――」

クルツ「悪いね。こっちにもそれなりの事情があるんだよ、杏」

杏「そうなの?」

クルツ「おっと、自己紹介が遅れたな。俺はクルツ・ウェーバー。クルツくんって呼んでくれても構わないぜ」

杏「じゃあ、クルツくんも林水とは知り合いなの?」

クルツ「ま、そんなところだ」

かなめ「違うでしょ!! この人は、ここまで送ってくれた、船の運転手で、何も関係ありませんから」

クルツ「ひでぇなぁ、カナメ。俺がいなきゃ、ここまでこれなかったんだぜ?」

宗介「それはない。クルツがいなくとも、俺の操縦で問題なかったはずだ」

クルツ「そういうことは言うんじゃねえよ」

杏「ま、話に聞いてるのは千鳥ちゃんと相良くんだけだからねぇ。部屋の用意はしてないよ」

クルツ「かまわねえさ。杏の部屋で寝起きすればいいだけだからな」

桃「おい、貴様!! 会長に近づくな!!」

柚子「桃ちゃん、おさえておさえて」

クルツ「お? そっちのお嬢さんたちも紹介してくれるかい?」

杏「うん。こっちが河嶋。こっちが小山」

クルツ「よろしく!」

柚子「どうも、初めまして。小山柚子です」

桃「軟派な男だな」

柚子「桃ちゃん」

桃「ふんっ」

杏「それじゃ、学園艦に案内するよー。ついてきて」

クルツ「はいはーい。いっきまーす」

かなめ「ちょっと!!」

宗介「クルツ。お前は戻れ。俺たちを送り届けるまでがお前の任務のはずだ」

クルツ「ここまでの労力を考えれば、報酬ぐらいあってもいいんじゃねえか?」

かなめ「あのねぇ……」

杏「まぁまぁ、千鳥ちゃん。こっちは別に気にしないから」

かなめ「そう? 大変なことになっても責任もてないわよ」

大洗 学園艦

かなめ「すっごーい。ホントに船の上に街があるのね」

桃「中学、高校共に9000人ずつの18000人の女生徒が艦上・艦内に居住しながら通学している」

かなめ「そうなの。すごいわね」

柚子「大洗の学園艦には生徒の家族等の居住者もいて、全体で3万人程が暮らしています」

かなめ「3万人も!?」

クルツ「すげぇな。俺も学園艦で生活してみたかったぜ」

杏「今からでも移住できるけどね」

クルツ「退役後はここに住むか」

桃「退役?」

柚子「ウェーバーさんは軍人さんなんですか?」

宗介「会長閣下」

杏「んー?」

宗介「艦内の見学は後ほどするとして、先に案内してほしいところがあるのですが」

杏「どこに行きたいの? 今ならリクエストにいくらでもこたえるよー」

大洗女子学園

杏「じゃーん。ここが我らの大洗女子学園だよー」

かなめ「明日からここに通うことになるわけね」

宗介「中々、壮観だな。敷地面積はかなり広いがセキュリティは万全なのか?」

桃「学園艦は海の上にいることが殆どだ。海上ほど安全な場所もない」

宗介「甘いな。テロリストはどこにでも存在する。生徒としてこの校舎に潜入していてもなんら不思議ではない」

柚子「そ、そうなんですか?」

宗介「現代において陸だろうが海だろうが、安全な場所などない」

かなめ「こいつのことは気にしないでください」

杏「あはは。面白いねぇ。気に入ったよ」

クルツ「俺のことも気に入ってほしいもんだけどな」

杏「それはまだ早いんじゃない?」

桃「会長。ウェーバーの話に耳を傾けないでください」

クルツ「ひでぇぜ、モモちゃん」

桃「桃ちゃんっていうな!!!」

宗介「会長閣下。西住みほは向こうにいるのでしょうか」

杏「うん。多分、戦車のメンテを手伝ってると思う」

宗介「了解しました。行ってまいります」

かなめ「ちょっと!! ソースケ!!」

宗介「心配するな。挨拶するだけだ」

かなめ「あ、あいさつって……」

桃「相良は真面目そうだな」

柚子「うん。教官っぽいよね」

クルツ「で、カナメはどうするよ」

かなめ「あたしは、できれば校舎内を見てみたいけど」

クルツ「そういうわけだ。案内してくれるかい、杏」

杏「いいよー。どうせするつもりだったしねぇ」

桃「馴れ馴れしいやつだな」

かなめ「ごめんね。クルツくんって遠慮しないから」

柚子「いえいえ。こちらこそ、桃ちゃんが色々と失礼なことを言ってしまってすみません」

倉庫

ナカジマ「すみません。西住さんにまで手伝わせて」

みほ「いえ。いつも自動車部のみなさんばかりに任せてしまっていますから。それに……」

ナカジマ「今度のエキシビジョン戦のことを気にしてるんですか?」

みほ「はい。この戦車たちで、戦い抜くしかないですから」

ナカジマ「任せてくださいよ。整備は常にカンペキにしておきますから」

みほ「ありがとうございます」

ナカジマ「こっちだってすごく充実した毎日ですよ。お礼を言うのはむしろ私たちのほうです。優勝のお手伝いができて、とても嬉しかったですし」

みほ「そんな。自動車部には最初からお世話になっていました。お礼なんてとんでもないです」

宗介「ここか」

ナカジマ「誰だろう? お客さんかな」

みほ「あの、どちら様ですか?」

宗介「本日より戦車道戦術アドバイザーとして大洗女子学園に赴任した、相良宗介だ」

みほ「あ、貴方が……。はじめまして、私は――」

宗介「西住隊長だな。知っている。隣にいるのは、レオポンさんチーム車長、ナカジマだ」

ナカジマ「どうも」

宗介「Ⅳ号戦車H型の整備をしていたのか」

ナカジマ「はい。あ、といってもこの子はH型に似せてるだけなんですけどね」

みほ「会長が言っていた教官さん、なんですよね」

宗介「肯定だ。明日からよろしく頼む」

みほ「こちらこそ、お願いします」

宗介「とはいえ、早速大洗の戦力、戦術を見てみたいが、可能だろうか」

みほ「い、今からですか?」

ナカジマ「みんな呼べばすぐに来てくれるとは思いますけど」

宗介「可能な限りで構わない。招集してくれ」

みほ「わ、わかりました」

ナカジマ「やっぱり教官ってすぐに実戦を見てみたいものなんですか? 蝶野さんもいきなり実戦訓練してましたし」

宗介「当然だ。個々の能力を把握しなければ、正しく調練できないからな」

みほ「もしもし、沙織さん? あの、今から倉庫にこれるかな? うん、教官の相良さんが今、きてて……」

沙織『今いるの!? いく! 絶対、いく!! ちょっと待ってて!!』

桂利奈「新しい先生ってどんな人かなー?」

優希「優しい人ならいいけどぉ」

あゆみ「先生じゃなくて教官なんでしょ?」

あや「教官って響きだとなんか怖そうだよね」

妙子「コーチなら、なんか熱血って感じがする」

忍「うん。わかる」

沙織「かっこいい人なら多少怖くてもいいかなぁ」

優花里「武部殿はそればかりですね」

沙織「いいじゃない。生徒と教官の恋って、きっと燃え上がるとおもうんだー」

優花里「よくわかりません……」

華「あそこにおられるのが、教官の殿方ではないですか?」

沙織「お!? よーし! ここは第一印象が大事だよね! はじめましてー、武部沙織です! 得意な料理は――」

宗介「全員、揃ったか!!!」

沙織「ひっ」ビクッ

典子「はい!! アヒルさんチーム!! 全員集合しています!!!」

宗介「戦車道戦術アドバイザーの相良宗介だ!! 会長閣下の命により、本日よりここへ赴任した!!」

沙織「なんかイメージとちがうぅ……」

みどり子「理想通りの教官ね」

モヨ子「学園の風紀が乱れる心配もなさそう」

カエサル「生徒会の三人がいないようだが?」

みほ「会長たちは今、留学生の案内中みたいで」

おりょう「留学生とな。黒船来航ぜよ?」

みほ「そういうのじゃないとおもいますけど」

優花里「教官! 今から何をするのでしょうか!」

宗介「無理を言ってお前たちに集まってもらったのは、能力を知りたいからだ」

華「能力、ですか」

宗介「そうだ。大洗の戦力データは知っているが、やはりこの目で確かめたいことも多くある」

麻子「ふぅん。で、どうすればいいんだ」

宗介「全員、これより戦車に乗り、俺が指定したポイントへ移動してもらう」

沙織「それだけなんですか?」

宗介「それだけだと? 指定地点への移動は戦略においては基本だ。武部、お前が通信手として指示した地点に友軍が現れなければどうする?」

沙織「それは、とっても困ります」

宗介「だろう。指定ポイントまではなんとしても生き残らなければならない。それが、兵士の務めだ」

エルヴィン「しかし、発令した作戦の結果を予測して、さらにその先のことまで計画をつくろうとするのはナンセンスであるとも三傑の一人もいっている」

沙織「なにそれ?」

宗介「なるほど。松本の言うこともわかる。だが、目の前の任務も達成できない者にはその計画すら練ることはできないぞ」

沙織「わかっちゃうの!?」

エルヴィン「教官!! 私は松本ではない!! エルヴィンだ!! ソウルネームで呼んでほしい!!」

宗介「なんだ、そのソウルネームとは」

エルヴィン「魂の名前だ」

おりょう「私たちにはソウルネームがあるぜよ」

左衛門佐「本名で呼ばれるのは慣れていないんだ」

カエサル「親しみを込めて、これからはソウルネームで呼んでくれ」

宗介「よくわからん。お前たちのことはここに書かれている名前で呼ぶ。いいな、鈴木」

カエサル「ぐっ……。教官がそういうなら……」

宗介「では、全員戦車に乗ってくれ」

優花里「了解です!!」

沙織「うぅー、相良さんってなんかこわそー」

華「そうですか? 確かに厳格そうではありますが、魅力的な人だとは思いますよ」

沙織「華って相良さんみたいな人がタイプなの?」

華「そういうわけではないのですが」

麻子「さっさと乗るぞ」

沙織「はいはい。わかったわよぉ」

みほ「……」

優花里「西住殿。どうかしましたか?」

みほ「この地点、最初の練習試合で通ったところだなぁって思って」

優花里「そういえばそうですね。あの橋のところです」

みほ「ここまで行くにはこの道を通ることになるけど……」

優花里「木々が多い、細道ですよね。私たちもいきなり死角から砲撃を受けました。なつかしいですぅ」

みほ(見通しがあまりよくない道……。相良さんは能力を見たいと言っていたのに、私たちへの指示は指定ポイントに移動しろとだけ……。何かありそう……)

Ⅳ号戦車内

宗介『俺の声は聞こえるな?』

みほ「感度良好です」

宗介『各員、準備はいいか』

ねこにゃー『いつでもいけます』

典子『アヒルチーム!! 問題ありません!!!』

みほ「はい」

宗介『では、移動開始!!』

みほ「パンツァー・フォー!」

麻子「ほいっ」

沙織「みなさん。注意して進んでください。何があるかわかりませんから」

エルヴィン『了解した』

妙子『何があるかって、どういうことですか?』

みほ「ただ目標地点に移動するだけでは私たちの能力を測ることはできません。なので、十分に警戒して進みましょう」

みどり子『そういうことね。カモさん、了解しました』

学園艦 艦橋

かなめ「いいながめー」

杏「ここからなら、学園艦を一望できるからねぇ」

かなめ「あ、戦車が動いてる」

杏「あれって西住ちゃんの呼び出しの件?」

桃「はい。恐らくそうでしょう」

かなめ「呼び出しって?」

柚子「つい先ほど西住さんから連絡があったんです。相良さんが全員を集めて欲しいと言っていたみたいで」

かなめ「ああ。能力をみるとかって言ってたけど」

杏「なら、あれはそのテストか。おー、みんながんばってるぅ」

クルツ「テストねぇ……」

かなめ「なんか嫌な予感がするんだけど……」

クルツ「同感だ。五秒後には爆発が起こりそうだぜ」

桃「爆発? 実戦訓練ではないと西住は言っていた。そのようなことは起こらな――」


ドォォォォン!!!!

Ⅳ号戦車内

優花里「うわぁ!? なんですか!?」

みほ「今の爆発音は……!?」

沙織「えーと、報告をお願いします!!」

エルヴィン『カバチーム、無事だ!!』

典子『アヒルさん、無事です!!』

ねこにゃー『アリクイ、異常ないです!』

梓『ウサギ、だいじょうぶでーす』

ナカジマ『こちらレオポン。目の前でカモさんチームが爆発しました、どうぞー』

みほ「えぇ!?」

沙織「無事ですかー!?」

みどり子『無事だけど、中はメチャクチャよ!! なにが起こったの!?』

宗介『地雷を踏んだだけだ』

麻子「地雷?」

宗介『ああ。戦場ではよくあることだ。気にせず、進め』

優花里「地雷まで用意されているのでありますか!?」

宗介『当たりまえだ。対戦車地雷ぐらい仕掛けるに決まっている』

華「本格的ですね」

沙織「本格的すぎるわよー!!」

カエサル『そもそも戦車道で地雷はアリなのか!?』

優花里「そういった爆薬の使用は禁止だったはずです、教官」

宗介『これは戦車道の試合ではない。お前たちの能力を見るためのものだ。これぐらいの仕掛けはする』

ぴよたん『そんなのアリずら!?』

宗介『この程度のトラップも回避できないのでは、先はないぞ』

沙織「中止にしよー!! 中止ー!!」

麻子「これは危険すぎる」

宗介『危険なことはない。戦車道の戦車には特殊コーティングが施されている。多少の爆撃にも耐えられるほど強固なものだ。搭乗者の身の安全は保障する』

左衛門佐『教官に保障されても……』

沙織「ど、どど、どうする、みぽりん……」

みほ「……」

宗介『どうした。怖気づいたか。ならばこの学園艦は――』

みほ「ま、待ってください!! 続けます!!」

沙織「えぇぇ!? マジ!?」

優希『いいんですかぁ?』

あや『対戦車地雷、ちょーこわいんですけどー!!』

華「相良さんは当然、全ての事情を知っていますよね」

麻子「私たちを焚き付けるために、廃校のことはどこかで言うかもしれないな。今、言おうとしたし」

みほ「会長たちが隠している以上、まだみんなに知られるわけにはいかない……」

沙織「だからって、続けなくても……」

宗介『西住、続けるのだな』

みほ「……はい。ただし、ここからはあんこうチームのみで進みます。他の車輌は撤退してください」

典子『そんなことしません!!』

エルヴィン『隊長が進むというのなら、我々も進む!!』

おりょう『それがチームぜよ』

ねこにゃー『西住さんが決めたことに、私たちは従うから。だから、進もう』

優希『桂利奈ちゃん、がんばってぇ』

桂利奈『あいぃ!!』

みほ「みんな……」

沙織「よ、よーし! そう決まったならいくっきゃないよね!!」

麻子「仕方ないな」

華「罠を目視できれば、破壊もできるのですが」

優花里「地雷を目視するのはまず不可能かと……」

みほ「みなさん、散開してください! 固まって行動していたら危険です!」

ナカジマ『了解っ』

みほ「麻子さん。早くこの森林地帯から抜け出しましょう。ここほどトラップを仕掛けやすい場所もありませんから」

麻子「わかった」

みほ「沙織さん、連絡は密に。トラップらしきものを発見次第、その地点に踏み入れないように指示を出してください」

沙織「うん!」

みほ「優花里さん、華さん。もし怪しい場所があれば、迷わず発砲してください。ただし、距離は十分にとってください」

華「分かりました。どのように小さな的にでも当ててみせます」

M3中戦車リー 車内

あや「こっちいけそう!」

優希「桂利奈ちゃん、右に曲がったら森から出れるよ」

桂利奈「おっしゃー!! 右だー!!」

梓「ちょっと待って!!」

桂利奈「なになに?」

梓「地雷を警戒して森を出ようとするのは、誰でも考えつくと思う」

あゆみ「それで?」

梓「森から抜け出すルート上に地雷が埋まってるかもしれない」

あや「ほんとだ!!」

あゆみ「それ、ありえるんじゃない?」

優希「梓、すっごーい」

桂利奈「だったら、このまま直進だー!!」

梓「これで教官の裏をかけた――」


ドォォォォォン!!!!

Ⅳ号戦車内

梓『すみません!! 地雷踏んじゃいました!!』

沙織「無事なの!?」

あや『眼鏡割れましたけど、平気でーす』

沙織「はぁ……よかったぁ……」

典子『隊長!! よくわりませんがアヒルチーム、走行不能!!!』

エルヴィン『こちらもだ!! 急に転輪が動かなくなってしまった!!』

沙織「もー! やだー!! なにがどうなってるのよー!?」

みほ「麻子さん、止まって!」

麻子「ほいっ」ガコンッ

優花里「どうしましたか?」

みほ「カバさん、転輪に何か絡まっていませんか?」

カエサル『ちょっと待ってくれ。今、確認する。これは……なんだろう……ピアノ線か……?』

優花里「そのような罠まで……」

みほ「地雷を避けようとすれば、ピアノ線で……。直進のルートにも抜けるルートにも罠がある……。この罠の配置……」

麻子「囮が必要になるな」

優花里「トラップ解除要員がいるというこですか」

みほ「ここを抜けるなら、それしかないかもしれない」

沙織「ホントに?」

華「ですが、その方法では1輌しか目標地点にはたどり着けません」

ねこにゃー『西住さん。囮役なら、任せて』

ホシノ『レオポンも力かすよー』

みほ「……いえ。そんなことはさせません」

麻子「負けを認めるか?」

華「相良さんは私たちが負けを認めたときに、廃校のことを口にしそうですけど……

優花里「西住殿、どうしますか」

みほ「沙織さん、会長に連絡を取ってください」

沙織「会長に?」

華「生徒会のみなさんは参加されていませんが……」

みほ「確認したいことがあるんです。お願いします」

学園艦 艦橋

かなめ「あの……バカはぁ……!!!」

クルツ「あーあ、やっちまったぁ」

桃「なんだ!! なにが起こっている!!」

杏「うっひょー。みんなーがんばれー」

柚子「そんな他人事みたいに……」

かなめ「止めなきゃ!!」

クルツ「待て待て。地雷原に裸足で突っ込むつもりか?」

かなめ「でも!! このままじゃ西住さんたちが!!」

クルツ「にしても、ソースケの奴、いつの間にあれだけの罠を仕掛けやがったんだ?」

かなめ「え?」

クルツ「学園艦はずっと海の上にいたわけだ。潜入するには海からか空からしかねえ。でも、ソースケは今回先行してない」

かなめ「罠を仕掛けられるとしたら、私たちと別れてからってことになるけど……」

杏「ん? もしもーし。どしたの、武部ちゃん。今、テスト中じゃないの?」

沙織『確認したいんですけど、相良さんっていつ学園艦に着いたのですか?』

Ⅳ号戦車内

沙織「相良さん、2時間前に大洗の港に着いたんだって」

みほ「2時間……。罠を仕掛けるには時間が足りないはず……」

優花里「事前に学園艦に忍び込んでいた可能性はないですか」

みほ「それならもっと遠くに目標地点を設定すると思う。橋のところなんて中途半端な場所にはしないんじゃないかな」

麻子「トラップを仕掛けた場所は密集しているのかもしれないな」

華「では、そこさえ避ければ突破は可能ですね」

みほ「トラップの予測設置個所は目標地点近辺に絞ります。あんこうチームはこのまま直進。アリクイさん、レオポンさんは後退し、逆側から向かってください」

ねこにゃー『いいの?』

みほ「構いません。お願いします」

ナカジマ『任せてください』

麻子「ポルシェティーガーに足場が不安定な道を走らせる理由はないからな」

みほ「行きましょう」

優花里「必ず走破してみせます!!」

華「やはり罠は見えないのでしょうか? 撃ち落とす自信はあるのですが」

グラウンド

宗介「どうやら、気が付いたようだな。流石だ」

かなめ「ふんっ!!」パシーンッ!!!!

宗介「痛いじゃないか」

かなめ「何やってんのよ……あんたぁ……」

宗介「大洗の戦力チェックだ。武装だけで戦力は測れないからな。各人の能力も――」

かなめ「おかしな武器やトラップは使わないって言ってたじゃない!!!」

宗介「肯定だ。だから、曲射銃身や対戦車犬などは用いていない」

かなめ「は……?」

宗介「対戦車戦術としては有効なものだけを選んでいる。なにもおかしくはない」

かなめ「そーいうことじゃないのよー!!!」

クルツ「ソースケがこういうやつだってのはカナメがよくしってるだろ」

かなめ「そ、そうだけど……」

宗介「さて、俺も行くか」

かなめ「どこによ!? 待ちなさい!! ソースケ!!」

倉庫

梓「西住隊長、大丈夫かなぁ」

みどり子「テストで地雷まで用意するなんて校則違反よ!」

カエサル「あの教官、戦車道のルールを知っているのか」

おりょう「怪しいぜよ」

エルヴィン「会長が呼んだなら確かな筋からだろう。その心配はないと思うが」

妙子「キャプテン、キャプテン」

典子「どうしたの」

妙子「これ倉庫にありましたっけ」

典子「これは……?」

忍「ボン太くんですよ。知りませんか?」

典子「バボちゃんしか知らない」

宗介「すまない。道を開けてくれ」

あけび「あ、教官。このボン太くんって……」

宗介「俺の私物だ。そして、これから使用する」

かなめ「ソースケってば!!」

宗介「千鳥、君はここにいてくれ」

かなめ「そ、それ……ボン太くんじゃない……」

おりょう「ボン太くんを使用するって、どういうことぜよ」

宗介「見ていれば分かる。――ハッチ閉鎖。バイラテラル角3.5」

『ラジャ』

ボン太くん「ふもっふぅ」

カエサル「ボン太くんだ!!」

あけび「かわいー!」

かなめ「ソースケ!! やめなさい!! おねがいだから、やめてー!!」

ボン太くん「ふも、ふもも、ふもるる」

かなめ「だれもあんたの心配なんかしてないわよ!!!」

左衛門佐「で、あなたは?」

かなめ「あ、私は留学生の千鳥かなめっていいます」

桂利奈「留学生ってボン太くんとはなせるんだー。すごいなぁ。私も留学生になりたいなぁ」

Ⅳ号戦車内

ナカジマ『今のところ順調です』

沙織「分かりました。なんとかいけそうだね、みぽりん」

みほ「うん。もうすぐ目標地点です。最後まで油断しないでください」

優花里「これでテストは合格ですね」

麻子「そうだな」

ねこにゃー『西住さん!』

みほ「猫田さん?」

ねこにゃー『ボン太くんが――』

みほ「え? どうしたんですか? 猫田さん!」

沙織「応答してください!」

『ふももっ』

沙織「ふももってなに!?」

みほ「ナカジマさん、聞こえますか!?」

ナカジマ『はいはーい。なんでしょうか』

みほ「アリクイさんの支援に向かってください。何かが起こっているようです」

ナカジマ『了解。でも、無理そうです』

みほ「え?」

ホシノ『ドリフトで振り落せ!!』

ツチヤ『自動車部の腕の見せどころ!!』

『ふもっふ!!』

スズキ『可愛いくせになんて動きだ!』

優花里「一体、何が起こっているのですか!?」

華「ボン太くんと言えば遊園地のマスコットキャラクターではないですか」

麻子「マスコットがいきなり現れるなんて、地雷以上の恐怖だな」

みほ「ナカジマさん! 無理だけはしないでください!!」

『ふも、ふもも』

沙織「え!? レオポンさん!! 応答してください!!」

『ふもー、ふもも、ふもっふ』

優花里「なんだか、底知れない怖さがあります!!」

沙織「みんなと交信できなくなったよ、みぽりん」

麻子「残っているのは私たちだけみたいだな」

みほ「……」

華「ボン太くんがここにいて、2輌を走行不能にしたということですか」

優花里「どんなボン太くんなのですか。大戦時の戦車とはいえ、それに勝つなんてAS並かそれ以上の戦闘力がなければ無理ですよぉ」

みほ「麻子さん!! 後退!!」

麻子「よっ」ガコン

ガンッ!!

沙織「きゃぁ!? なになに!? こんどはなにー!?」

華「前方にボン太くんがいます」

沙織「でたの!?」

みほ「……相良さん、ですか?」

宗介『肯定だ。行くぞ、西住。俺を突破できれば、目標地点に到達できる』

優花里「教官! 何故、ここまでするのですか!?」

宗介『君たちならこの程度のことは遂行できると考えている。しかし、できないのなら、君たちに、いや大洗に未来はない』

麻子「あのボン太くんに教官が……」

沙織「ますます、イメージとちがうぅ」

華「でも、親しくなれそうです」

優花里「ギャップがすごいですね」

みほ「……」

宗介『どうした、西住。やめるか』

みほ「――華さん、発砲してください! 麻子さん、後退!! 走ってきたルートに沿ってください!!」

麻子「やってやる」

華「一撃で仕留めます」カチッ

宗介『無駄だ!!』

みほ「はやい……!」

優花里「あの機動性! どうやれば命中するのですか!」

華「くっ。あのように動き回られては……」

宗介『それで終わりか!! こちらから行くぞ!!』

みほ「とにかく距離をとります!!」

ボン太くん「ふももももー!!!」

みほ「ボン太くんが近づいてきてる!」

麻子「振り切れないぞ」

優花里「このままでは張り付かれてしまいます!」

みほ「そうなれば終わりです。振り落すことは多分不可能ですから」

麻子「自動車部の操縦でも無理だったみたいだしな」

優花里「装填完了!」

華「もう一撃……!!」

ドォォン

ボン太くん「ふもっふ!!」ババッ

華「ダメですね。正面からでは弾道を見切られています」

沙織「この至近距離で主砲を回避するってありえなくない!?」

ボン太くん「ふも、ふもも、ふもる!」

みほ「優花里さん! 煙幕用意してください!!」

優花里「モクモク作戦ですね!! 了解でぇす!!」

ボン太くん(煙幕で後退ルートを撹乱させるつもりか。だが、それだけでは逃げられんぞ!)

ボン太くん「ふもー」

みほ「後退、するとみせかけて前進! 一撃で離脱!」

ボン太くん「ふも!?」

ボン太くん(逆に接近してくるとは!!)

みほ「うてー!」

ドォォォン!!!

ボン太くん「ふももももー!?」ゴロゴロゴロゴロ

沙織「ボン太くんが転がって行っちゃったよ!!」

華「可愛そうなことをしてしまいましたね」

優花里「すみません!」

麻子「別に謝る必要はないと思うが」

みほ「今の内に目標地点へ向かいます!!」

麻子「了解」

ボン太くん(くぅ……。やってくれる。そうでなくてはいけないが)

みほ「麻子さん、ボン太くんが通った道を進んでください。そこには間違いなく、トラップはありません」

麻子「仕掛けた本人が仕掛けに嵌ることはないだろうからな」

優花里「後方よりボン太くんが接近中!」

ボン太くん「ふもももも!!!」

華「撃ちますか?」

みほ「このまま進みます! 全速前進を維持してください!」

沙織「無視していいの?」

みほ「ボン太くんの撃破は考えません」

優花里「目標地点への到達が最優先ですからね」

みほ「ここを抜けさえすればゴールは目前です。なんとか耐えましょう」

ボン太くん「ふも!!」ジャキン!!

優花里「西住殿!! ボン太くんが何かを構えました!!」

みほ「あれは……」

優花里「カールグスタフです!!」

ボン太くん「ふもっふ!!!」ドォォン!!

みほ「ぐっ……!? 麻子さん!!」

麻子「まだ走れる」

優花里「ちょ、直撃はしませんでしたね」

沙織「はやくいこー!! 麻子ー!!」

麻子「急かすな。これ以上、速度は出ない」

華「ボン太くんの位置は?」

みほ「えーと……」

沙織「みぽりん、ゆかりん。危ないから顔ださないでよぉ」

みほ「でも、こうしていないと――」

ボン太くん「ふもっふ」チャカ

みほ「え……」

優花里「ボン太くん!? 既に戦車に張り付いていたのですか!?」

ボン太くん「ふも、ふもも、ふもっふ、ふもっふ」

みほ「こ、降参しろって言っているんですか……?」

優花里「教官! 銃を突きつけるなんてやりすぎです!!」

華「そうはいきません!!」カチッ

ドォォン!!!

ボン太くん「ふも!?」

みほ「麻子さん! 急停止!!」

麻子「砲撃と急ブレーキの反動なら、流石に落ちるだろ」グッ

ボン太くん「ふもー!?」ゴロゴロゴロ

優花里「ボン太くんの落下を確認!!」

沙織「今がチャンスだよ! いっそげー!!」

ボン太くん(簡単にはいかんぞ!)

ボン太くん「ふもっ!!」ジャキン!!

みほ「今度はRPG!?」

優花里「冷泉殿!!」

麻子「行くしかない。当たらないことを祈って」

沙織「いやー!!」

ボン太くん(ぶちぬけぇぇ!!!)ドォォォン!!!!

……ドォォォン……

みほ「うっ……うぅ……」

沙織「ど、どうなったの……?」

麻子「Ⅳ号は動かないな」

優花里「目標地点には辿りついているのですか」

華「どうでしょうか……」

宗介『あんこうチーム、聞こえるか』

みほ「あ、はい」

宗介『よくやったな。砲身部分が目標エリアに到達している。任務達成だ』

みほ「そ、それでいいんですか?」

宗介『もし俺を狙っていれば間に合っていなかった。素晴らしい判断だな、西住』

みほ「あ、あはは……」

宗介『アマチュアたちをまとめ上げ、優勝に導いたその手腕は本物のようだ』

みほ「私は別に」

かなめ『こらぁ!!! ソースケぇ!!! すぐにもどってきなさい!!!』

倉庫

かなめ「あんた!! 初対面の女の子たちになんてことしてんのよ!!! あぶないでしょーが!!!」

宗介「戦車はどのような攻撃にも耐えられるように設計させれている。あの程度で怪我はしない」

かなめ「するわよ!!! 爆発の衝撃とかで!!!」

みほ「はぁ……」

杏「西住ちゃぁん、また随分な格好だねぇ」

みほ「そうですね……」

沙織「色んなところよごれちゃったぁ」

クルツ「悪かったな。あのバカ、手加減って言葉を知らないんだ」

沙織「え!? あ、ああ、はい、で、でも、たのしかったです」

クルツ「そうかい? このお詫びをしたいんだけど、あとでお茶でもどうだい?」

沙織「え、えぇ……えーと……そんなぁ……急にいわれても……どうしようかなぁ……」モジモジ

クルツ(こりゃ、いけるぜぇ。ぐっふっふっふ)

かなめ「そこ!! なにやってんの!!」

杏「で、相良くん。能力査定のほうはどうだった?」

宗介「はっ。西住が隊長してチームを牽引するのであれば、勝率は決して低くないと思われます」

みほ「え……」

杏「だってさ」

みほ「……」

宗介「あの機転、そして度胸と気迫。西住には兵士として重要なものが全て揃っている」

優花里「あの、教官。西住殿が隊長を務めるかどうかは、まだ決まっていません」

優希「えぇー、そうなんですかぁ?」

宗介「しかし、西住以外に隊長を任せられるものは……」

華「みほさんの意志を尊重したいと思っています」

麻子「西住さんは一度、学園艦を救ってくれたんだ。他の人が隊長をしてもいいはず」

カエサル「なるほど。後進を育てるために隊長の座を譲るというわけか」

みどり子「そうなると、必然的にウサギさんチームの誰かってことになるけど」

あや「だったら、梓だよね」

あゆみ「おー、大出世じゃん」

梓「えぇー!? そんな、私が隊長なんて無理です! むりむり!」

沙織「あはは。みぽりんも最初はむりむりって言ってたっけ」

梓「私なんてまだまだですから」

宗介「澤では勝利は不可能だ。お前たち、勝ちたくないのか」

おりょう「もちろん勝ちたいぜよ。でも、今回はそこまで気張る必要もないはず」

ねこにゃー「エキシビジョンだから、お客さんを楽しませることができればそれでいいと思う」

ナカジマ「私も、そう思いますね。なんなら、チーム構成を変えちゃってもいいかもしれませんし」

ホシノ「それ、面白そう」

典子「八九式は私たちにしか操縦できません!!」

妙子「八九式はバレーボール部が運転します!!」

宗介「……」

みほ「相良さん、あの……」

杏「ねえ、ちょっと休憩にしない? 相良くんも西住ちゃんも疲れたでしょ。生徒会室でお茶と干し芋だしてあげる」

クルツ「いいねぇ。いこういこう。君も一緒にいくよな」

沙織「は、はい、いきます!」

麻子「沙織、名前も知らない人にホイホイついていくな」

生徒会室

柚子「どうぞ。粗茶ですけど」

かなめ「ありがとうございます」

杏「んじゃ、軽く自己紹介からしてもらおっかなぁ」

クルツ「俺はクルツ・ウェーバー。二人をここまで送り届けた、運転手だ。よろしく」

沙織「クルツさんですね! 私、武部沙織っていいます!」

クルツ「沙織か。良い名前だな」

沙織「そんなぁ……」モジモジ

華「あまり沙織さんをからかわないでください」

クルツ「どうしてからかう必要があるんだよ。俺はいつだって真剣だ」

沙織「おぉぉ……どーしよー……」

杏「クルツくんはこのあとすぐに帰っちゃうけどね」

沙織「えぇー!?」

かなめ「えーと、あたしは千鳥かなめ。明日からこっちでお世話になります」

みほ「はい。よろしくお願いします」

宗介「会長閣下。ご質問があります」

杏「んー、どうぞ」

宗介「大洗女子学園が廃校になることは機密事項なのですか」

杏「みんなに話すことはないかなって考えてる」

宗介「何故ですか。我々が窮地に立たされていることを自覚してもらわなければなりません。危機感のない今のままでは敗北は必至です」

杏「……」

桃「会長にも考えがある。それに口出しはしないでもらう。相良は戦術アドバイザーとしての役目を全うしてくれたらそれでいい」

宗介「その考えとやらを聞かせてはもらえませんか」

杏「危機感を抱かせることも時には重要だ。けど、みんなには楽しんでほしいんだよね」

宗介「意味が分かりません。廃校になるかどうかの瀬戸際です。楽しんでいる余裕などありません」

柚子「それはそうなんですけど……」

優花里「お言葉ですが教官! 私たちは今までもそうして試合に臨んできました!」

麻子「そして勝った」

華「西住さんと会長の方針は間違ってはいないはずです」

宗介「勝ち負けは二の次、楽しめれば後悔はしない。そういうことか」

優花里「肯定であります!」

クルツ「ふぅん」

かなめ「いいと思うな。スポーツってそういうもんだしね」

宗介「廃校になろうとも楽しむことを優先するのか」

沙織「そう言われちゃうと、困るんだけどなぁ」

桃「それの何が悪い」

宗介「いや。あとがないと判明すれば、緊張状態に陥り、本来の能力を発揮できない者は存在する。あえて全てを伝えないというのもわかる」

桃「そういうことだ」

宗介「大会の記録はすべて見せてもらった。決勝戦まで全員は勝たなければならない理由を知らなかったのか」

桃「いや……」

華「準決勝のときに会長の口から真実は語られました」

宗介「だろうな」

麻子「どういう意味だ」

宗介「プラウダ戦の後半から全員の気迫は比べ物にならかった。不退転の決意は映像記録からでも十分に伝わったぞ」

みほ「……」

桃「あのときとはまた状況が違うんだ」

柚子「みんな、廃校はなくなったって思っています。それなのにまた廃校になるかもしれないなんて、言えば……」

クルツ「けどよ、選手たちには伝えていたほうがよくないか」

かなめ「うん。もし、負けて廃校が決定しちゃったら、それこそ知っている人たちが責められちゃうかも」

優花里「うっ……」

みほ「でも、秘密にしているわけではないです。河嶋さんは私に口止めをしませんでしたから」

桃「西住は不用意に言いふらすことはないことぐらい、分かっているからな」

杏「伝えてもあんこうチームぐらいなのは予想できたしねぇ」

宗介「では、自分が伝えても問題はありませんか」

杏「そうだなぁ」

桃「相良。余計なことはするな」

宗介「箝口令を敷かないのであれば、誰が告げてもいいはずだ」

かなめ「ソースケ、やめなさいってば」

宗介「大洗の士気はとても高い。事実を告げることでメリットはあってもデメリットはない」

桃「今日きたばかりの者になにがわかる。私たちだって、悩み、迷っているんだ」

宗介「それは違うな」

桃「なに?」

宗介「今日来た者にでも、それぐらいのことは分かる、ということだ」

桃「……」

宗介「会長閣下。貴方の考えを聞かせてください」

杏「廃校の件はまだ言わない方向で」

クルツ「いいのか?」

杏「相良くんや千鳥ちゃんが喋っても、何も咎めないよ。これはあくまでもお願いだからね」

かなめ「チームのことを想っての判断、なんですね」

杏「そうだな」

みほ「会長……」

宗介「了解しました。会長閣下の方針に従います」

杏「ありがとね。んじゃ、相良くんを宿舎まで案内してあげて」

柚子「はい。こちらです」

宗介「助かる」

廊下

宗介「会長閣下は何を恐れている」

柚子「え?」

宗介「言っても構わないが、極力言わないでくれ。などという言い方では、まるで誰かが伝えることを望んでいるかのようだ」

かなめ「うん。自分からは言いたくないのかもね」

クルツ「押し潰れそうになってるのは、みほだけじゃねえってこったな」

かなめ「そっか……。あの優勝で白紙にできなかったんだもんね……」

柚子「その件に関しては会長に非はありません」

宗介「会長閣下に落ち度があるとするのならば、契約をしっかりしていなかったというところぐらいだ。しかしそれで責めることは誰もしないはずだ」

柚子「あのときはそれでいけるって思ったんです」

クルツ「最高の結果だったのに、目的は達成できてないんだよな。どんなやつでも弱気になっちまうだろ」

宗介「その程度では動じないと林水会長閣下は角谷会長閣下のことを高く評価していたようだが」

かなめ「いくら屈強な心をもっていても、あんまりな結末だもの」

宗介「……」

柚子「と、とにかく、ついてきてください」

生徒会室

桃「会長。相良の言っていたことは気にしなくても良いかと」

杏「……」

みほ「そうです。話しにくいこともありますから」

杏「西住ちゃんに廃校のことを言わなかったのは、廃校を理由に協力なんてしてほしくなかったからだ」

華「薄々は気が付いていました。みほさんに戦車道を受講させたとき、かなり強引ではありましたが、廃校のことだけは話していませんでしたものね」

杏「でも、別の訳もあったりするんだよねぇ」

麻子「別?」

桃「会長。それは私が提案したことです」

沙織「なんのこと?」

桃「試合で勝ち進めば強豪校との試合に必ずなる。そのとき、全員が簡単に諦めてしまう可能性はあった」

杏「実際、プラウダ戦のときはみんなして「来年がんばろー」ってなっていたしな」

優花里「もしかして、士気が下がったときに廃校を切り出そうとしていたのですか」

杏「そう。意地悪だと思われてもいい。卑怯だと言われても仕方ない。でも、私は恨まれたって守りたかった。この学園艦をね」

みほ「では、今回も最後の最後まで隠すつもりなんですか?」

杏「……」

麻子「どうした?」

杏「言わなくても勝てる。私はそう信じてるよ。だって、こっちには西住ちゃんがいるんだしね」

みほ「わ、わたしは……」

杏「ああ、そっか。まだ参加するかどうか決めてないんだよね。いやー、ごめんごめん」

みほ「その……」

杏「いいんだよ、西住ちゃん。参加は自由だから」

麻子「何故だ」

杏「ん?」

麻子「殆ど強制で戦車道を受講させたのに、今回はいいのか」

杏「武部ちゃんや秋山ちゃんも言ってたらしいけど、西住ちゃんは大役を果たしてくれたんだ。もう辛い思いはさせたくないんだよね」

桃「よく働いてくれたくれたのは事実だからな。強制などはしない」

みほ「でも……」

杏「いいから、いいから。ありがとね、西住ちゃん。よく考えて決めてよ」

みほ「は、はい」

>>167
桃「よく働いてくれたくれたのは事実だからな。強制などはしない」

桃「よく働いてくれたのは事実だからな。強制などはしない」

杏「今日のところは解散にしよっか。明日からは相良くんの訓練で大変なことになるから、よくやすんどいてよぉ」

優花里「了解です」

華「それでは、さようなら」

沙織「お疲れさまでした」

麻子「さよなら」

みほ「また、明日」

桃「――会長。正直、私も疑問です。詳細も決定した今、皆には伝えるべきではないかと」

杏「……」

桃「千鳥かなめも言っていました。隠していれば、発覚したときに会長が批難されると」

杏「いいんじゃない?」

桃「なにを……!」

杏「諦めたらそこで終わりだ、なんてこと西住ちゃんも言っていたけどさ。どうにもならなくない。選択肢すら与えてもらえない。掴めるチャンスすら現れない」

桃「会長……?」

杏「まず何をすればいいのか、わかんないな」

桃「何かあったのですか?」

学園艦 マンション

かなめ「ここの一室を自由にしていいんですか?」

柚子「はい。ここも学生寮ですから」

かなめ「はー。そうなんだ」

柚子「それでは何かあったら、すぐに連絡をください」

かなめ「ありがとうございます」

クルツ「それじゃ、俺は帰ろうかね」

宗介「中佐殿に叱責を受けることになるな」

クルツ「大丈夫だ。その辺の言い訳もちゃんと考えてある。それよりソースケ、写真たのむぜ」

宗介「心配するな」

かなめ「でも、どうして写真なの?」

クルツ「戦車道選手は人気があるからな」

かなめ「売る気……?」

クルツ「幸せのお裾わけだ。金儲けは考えちゃいねえよ」

宗介「抜け目のないやつだな。お前の交友関係が広がっていくのがよくわかる」

クルツ「相手の喜ぶものを用意する。取引の基本だろ」

宗介「そうだな」

クルツ「よろしくなぁ、ソースケぇ」

かなめ「ただのスケベ目的かと思ったら、ちゃんとした理由があったのね」

宗介「現代の戦争は情報がものいう。それが傭兵ともなれば尚更だ。情報なしに戦地へ赴けば、寿命を無駄に削ることになる」

かなめ「よくわかんないけど、そういうものなんだ」

かなめ(テッサも大洗のことは調べてるって言ってたっけ)

宗介「千鳥。君は明日から学園内で勉学に勤しむのだな?」

かなめ「うん。こっちで単位とらなきゃいけないし」

宗介「そうか。俺がいなくても平気か」

かなめ「平気よ。あんたはあんたで教官しなきゃいけないんでしょ」

宗介「ああ。どのような訓練を課せばいいのか、悩んでいる」

かなめ「試合までは2ヶ月もあるんだし、ラグビー部みたいなスパルタは絶対に禁止だからね」

宗介「甘いぞ。期間は60日もない。加えて短期間で彼女たちを鍛えるのは至難の業だ」

かなめ「どうしてよ? みんなやる気もあるし、技術もそこそこあるし、教えやすいんじゃないの?」

宗介「西住の教えが彼女らの技術基盤になっているのは間違いない。そこに俺の入り込む余地は存在していない」

かなめ「西住さんの邪魔はしたくないってこと?」

宗介「1から教えるか、ある程度の能力を身につけた者に教えるかの違いだ」

かなめ「何も知らない相手に叩き込むほうが楽ってのは聞いたことあるけど」

宗介「そういうことだ。今の状態が彼女たちにとってベストならば、そこを崩すわけにはいかん。勝利することがより困難になる」

かなめ「ソースケって、意外と考えてるのね」

宗介「故に頭を抱える問題だ。ここからどのように訓練を行えば、彼女たちの能力を伸ばせるのか」

かなめ「技術的なことは西住さんに任せるほうがいいなら、残るは基礎的なことよね」

宗介「基礎か」

かなめ「林水先輩は強い心がほしいんだーなんて言ってたじゃない」

宗介「マオの手帳が使えないのでは、強靭な精神力を形成するには時間がかかってしまう」

かなめ「別の方法を考えればいいじゃない」

宗介「ふむ……」

かなめ「それじゃ、あたしはもう部屋にいくわ。疲れちゃったし」

宗介「了解した。ゆっくり休んでくれ」

アイスクリームショップ

麻子「さつまいもアイス」

華「わたくしは3段でお願いします」

優花里「相良教官のテストは中々ハードでしたね」

沙織「あれは理不尽っていうんだよ。顔はいいんだけど、強引な男の人ってダメだよね」

麻子「ウェーバーさんはいいのか」

沙織「クルツさんは優しそうじゃない。もう一度、来てくれないかなぁ」

麻子「そうか。もう何も言わない」

沙織「どういう意味!?」

優花里「西住殿は相良教官のことどう思いますか?」

みほ「え? うん、悪い人じゃないよね」

沙織「なになに、みぽりんって相良さんみたいな人がタイプ?」

みほ「そ、そういうことじゃないからっ」

華「3段アイスですっ。見てください。カラフルで綺麗ですよね」

沙織「落とさないでよ、華」

優花里「でも、西住殿が惹かれるのも無理はありません。相良教官は軍人然としていましたから」

みほ「い、いや、ホントに違うんだけど……」

華「でも、相良さんはわたくしたちと同年齢ですよね?」

麻子「陣代高校の2年生らしいな」

沙織「なんかその高校、聞いたことある」

優花里「陣代高校といえば先日、新聞記事になっていたと記憶しています。なんでも弱小ラグビー部が強豪校に勝利したとかで」

みほ「そうなんだ」

沙織「あー、それかも。というか陣代高校って陸にあるんだよね」

華「今では珍しくなりつつある学校ですね」

麻子「そのラグビー部と相良さんには何か関係でもあるのか」

沙織「どうして?」

麻子「特別に教官として呼ばれたということは、何かしらの実績があると考えるのが自然だろう」

優花里「見事な推理です、冷泉殿。確かに相良教官とラグビー部の勝利は繋がっていそうです」

華「もし、勝利に導いたのが相良さんだとしたら、指導力は折紙付きということになります」

みほ(相良さんか……。本当にすごい人なら大洗を救ってくれるかも……)

通学路

沙織「はー、明日からちょっと不安だよねー。相良さんについていけるかなぁ」

麻子「朝が早くなければなんでもいい」

優花里「天才の余裕でありますね」

沙織「あ、でもさ、練習は今まで通り、みぽりんが見てくれるんだよね?」

みほ「え? どうなんだろう。相良さんがいるなら、私が教えなくても……」

華「それでは困ります」

優花里「はい。私も西住殿にご指導を賜りたいです」

みほ「そう言ってくれるのは嬉しいけど、教官として来てくれた相良さんに失礼じゃないかな」

麻子「相良さんと西住さんの二人で教えてくれたらいい」

優花里「正直なところ、相良教官は戦車道についてはあまり詳しくないかもしれません。でも、あの戦闘技術を学べばきっと我々の力になります」

沙織「つまり、みんながボン太くんになって戦車に乗れば最強ってことだね」

華「あの着ぐるみをきて戦車に搭乗できますか?」

みほ「あはは……」

麻子「冗談はさておき、相良さんも西住さんの能力は早々に認めてくれていたのだから、譲るところは譲ってくれるはずだ。西住さんは今まで通りでいいと思う」

優花里「冷泉殿の言う通りです。明日からもよろしくお願いします」

みほ「だけど、私はまだ試合に出るかどうかも決めてないのに」

華「構いません。今のみほさんは指導者であって、隊長という立場からは離れているのですから」

みほ「うん……」

沙織「そんな顔しないのっ。みぽりんはあれだよ、縁の下の力持ち的なポジションにいればいいんだからね」

麻子「そうだ。朝練以外ならきちんと参加もする」

沙織「朝練にもきちんと参加しなさいよ!!」

優花里「低血圧は改善されていないのですか」

麻子「多少はしたが、やはり朝は辛い」

沙織「もー。また遅刻が増えちゃってもしらないから」

華「麻子さんはもうそんな心配いりませんよね」

みほ「……」

沙織「みぽりん?」

みほ「……あ、私、こっちだから。それじゃ、また明日ね」

沙織「うんっ。バイバーイ、みっぽりーんっ」

ダナン 艦内

テッサ「そうですか。カナメさんとサガラ軍曹は無事、学園艦へ到着しましたか」

クルツ「俺が送って行ってやったんだぜ。傷一つつくかよ」

マオ「しばらくは任務もないし、ダナンは改修作業でドッグ入りだし、暇になっちゃったわね」

テッサ「何が言いたいの?」

マオ「その気になれば学園艦にいけるんじゃない?」

マデューカス「何を言ってる。お前たちに休暇を与えた覚えはないぞ」

クルツ「たまにはいいんじゃないっすかね」

マデューカス「ふざけるな、軍曹。我々は要請があれば、すぐに動かねばならないのだぞ」

クルツ「ヘイヘイ。要請があればね」

テッサ「そんなに退屈なら、一つだけ命令しちゃおうかしら」

クルツ「なに?」

テッサ「いいですよね、ウェーバー軍曹?」

クルツ「内容によるぜ?」

テッサ「簡単な任務です。メリッサと一緒に調べてほしいことがあるだけですから」

翌日 大洗女子学園 校門

かなめ「うぅー……」

宗介「どうした。体調が優れないのか」

かなめ「ただの寝不足よ。気にしないで」

宗介「そうか」

みどり子「おはようございます。相良さん、千鳥さん」

かなめ「おはようございます。ええと……」

みどり子「私は――」

宗介「園みどり子。大洗女子学園3年、風紀委員だ」

みどり子「よ、よく知ってますね」

宗介「戦車道メンバーの名前と顔は把握している」

かなめ「園先輩って呼んだほうがいいですね」

みどり子「普通はそう呼ぶのよね……」

かなめ「え?」

みどり子「いえ、こっちの話です。衣服の乱れもないようだし、通っていいですよ」

かなめ「風紀委員か。納得。身だしなみから真面目そうだもんね」

宗介「あの鋭い眼光。優れた視力で不審者かどうかを見極めているのだな」

かなめ「そんなわけないでしょうが」

桂利奈「あー! 留学生の千鳥さんだー!」

あや「おはよーございまーす」

かなめ「あら、おはよう。みんな、鞄を持ってないみたいだけど……」

あゆみ「朝練してたんです。私たちの日課みたいなものですけど」

かなめ「戦車道の?」

優希「もちろんですよぉ」

梓「私たち、重戦車キラーを目指していますから」

かなめ「なんか凄そうね、それ」

桂利奈「すごいことなんですよー」

宗介「……」

紗希「……」

宗介(この女子生徒は丸山紗希だったな。まったく隙がない……よく訓練されているようだ……。西住の能力の高さが窺える)

かなめ「あたし、まだみんなの顔と名前が一致しないから、よかったらあとで自己紹介してくれない?」

梓「はい! いつでもします!」

あや「私は大野あやでーす」

あゆみ「私は山郷あゆみです」

桂利奈「わたしは――」

かなめ「ストップ! ストップ! 一度には覚えられないから! あとでゆっくりとしてくれると嬉しい」

優希「今でもいいと思いますけどぉ」

かなめ「ほら、あたしたちはこれから職員室に顔出さないといけないし」

梓「ああ、すみません。呼び止めてしまって」

桂利奈「千鳥さん! あとでボン太くんと話すコツを教えてください!」

かなめ「えぇ?」

桂利奈「私もボン太くんとおしゃべりしたいんです!」

かなめ「あれはね……」

宗介「千鳥。そろそろ時間だ。急がねば始業に間に合わなくなる」

かなめ「そうね。ごめんね、みんな。あとでまたゆっくり話しましょう。それじゃ」

廊下

かなめ「みんな可愛いわね。良い子たちだし、仲良くできそう」

宗介「うむ。純粋な者たちほど技能を吸収しやすい。ウサギさんチームは皆、化ける可能性があるな」

かなめ「そういうことを言ってんじゃないんだけど」

桃「相良、千鳥。待っていた」

杏「おはよー。よく眠れた?」

宗介「はっ! 立派な居住地を与えてくださり、感謝しています!」

かなめ「おはようございます。ぼちぼちってとこです」

杏「そりゃ、よかった。千鳥ちゃんはこれから職員室にいってもらうとして、相良くんはどうしよっか」

宗介「自分は会長閣下の指示に従うよう言われています」

杏「じゃあ、戦車道の授業が始まるまでは生徒会室でゆっくりしておいてよ」

宗介「できれば、その時間を利用して各戦車をこの目で見ておきたいのですが、よろしいでしょうか」

杏「熱心だねぇ。いいよ」

宗介「感謝いたします!」

杏「千鳥ちゃん、ついてきて」

かなめ「あたしも戦車道を受講するってことでいいんですか」

桃「いや。他の科目でも構わない。選択は個人の自由だ」

杏「でも、できれば選んでほしいよね。相良くんもいるんだし」

かなめ「あいつの監視役は必要ではありますけどね」

杏「それだけ?」

かなめ「はい?」

杏「付き合ってるんじゃないの?」

かなめ「な、ななな!! なんでそうなるんですか!! そんなことありえませんから!!」

杏「あれ? そうなんだ」

桃「林水会長からは、千鳥が相良とどうしても一緒に行きたいと言っているという説明を受けたが」

かなめ「それは林水先輩の冗談ですよ!! 冗談!! うはははは!!」

杏「ま、それはおいといてだ。どうする、千鳥ちゃん。今すぐ決めなきゃいけないってわけでもないけど」

桃「二ヶ月という期限がある以上、早期決断が望ましい」

かなめ「そうですね。それじゃ、今日中には決めます」

杏「おっけー。それでいいよ」

グラウンド

宗介「八九式……。特殊なコーティングがされていなければ、一撃で破壊され、搭乗者は全員爆死するな」

典子「バレー部! ファイトー!!」

妙子「おー!!」

典子「バレーボールは友達だ!!」

あけび「怖くないよ!」

忍「それなんでしたっけ?」

宗介「始業前にランニングとは気合が入っているな」

典子「あ! 相良教官!! おはようございます!!」

妙子・あけび・忍「「おはようございます!!」」

典子「なにをしていたんですか?」

宗介「八九式は元来、対戦車戦闘能力に難がある。何故これを選んだ?」

典子「私たちが断崖絶壁で見つけたからです!」

妙子「割と命がけでした」

宗介「苦難を乗り越えて手にしたものか。なるほど。それだけ思い入れも強いのか」

典子「この子は確かに弱いです。零距離スパイクを撃っても相手戦車の装甲を貫けないときだってあります」

宗介「だろうな」

妙子「でも、この子だからなんとかなった試合もあったんです」

宗介「プラウダ戦のことだな」

忍「よくご存じですね」

宗介「あの試合、俺個人としては最も気迫に満ちていたと思う。八九式があの状況下で逃げ切ったのも頷けるほどにな」

典子「プラウダ戦はまさに気合と根性のみでしたから!!!」

あけび「他の試合ではほんの少し頭を使っていますけど」

宗介「機体の性能差を埋めたのは、気合と根性ということか」

典子「はい!!」

忍「気合と根性で負けていたら、もう全部で負けることになりますから!!」

あけび「そこだけはブロックしたいんです!!」

妙子「そこだけしかないみたいに聞こえるけど、いいの?」

宗介「西住は技術面ばかりでなく、精神面の強化すら抜かりがないのか……」

宗介(ますます俺の出る幕がないように思えてくる。角谷会長閣下は何を思って、応援要請を出した。指揮官に恵まれたチームだというのに、謎だ)

教室

かなめ「陣代高校から来ました、千鳥かなめです。よろしくお願いします」

沙織「よろしくー!」

華「どうぞ、千鳥さん。こちらの席が空いていますよ」

かなめ「どうも」

みほ「同じクラスなんて、驚きました」

かなめ「あたしもよ。秋山さんと冷泉さんは違うクラスなんだ」

沙織「うん。でもでも、お昼休みとかはみんなで一緒にご飯食べるよ」

かなめ「やっぱり、普段から仲がいいのね」

華「はい。戦車道は戦車に対する知識だけでなく、わたくしたちの絆をも深めてくれたのです」

かなめ「そういうのを聞くと、あたしも戦車道をやりたくなっちゃうわね」

沙織「一緒にやろーよ、戦車道。今以上に可愛くなれちゃうかもしれないよっ」

かなめ「えー? そう? 武部さんには負けると思うけど」

沙織「私のことは沙織って呼んで。そのほうが友達って感じするし」

かなめ「うん。沙織、これからよろしくね」

華「わたくしのことも華とお呼びください」

みほ「あ、私も名前で結構ですから」

かなめ「ありがと、華、みほ」

華「では、わたくしもかなめさんとお呼びしますね」

かなめ「そのほうがあたしも嬉しいわ。……よし、決めた。戦車道、受講する」

みほ「簡単に決めちゃっていいんですか」

かなめ「いいのよ。戦車道に興味あるし、アイツのことも見張ってないといけないから」

沙織「アイツって?」

かなめ「ソースケよ、ソースケ。あたしはいわば、監視役でついてきたんだから」

華「まぁ、そうなのですか?」

みほ「監視って、相良さんは何か問題行動を起こすことが?」

かなめ「毎日毎日、問題行動よ」

沙織「例えばどんなことするの?」

かなめ「学校で爆発音が聞こえたら、間違いなくソースケの――」


ドォォォォォン!!!!!

沙織「な、なになに!?」

みほ「爆発音みたいだけど……」

沙織「爆発!? どこで!?」

みほ「うーん……」

華「相良さんが仕掛けた地雷の撤去作業をしているのではありませんか?」

かなめ「あのバカは!!」ダダダッ

みほ「あ、かなめさん!」

沙織「私たちも行こう!!」

華「ですね」

みほ「いいの? もう授業、始まっちゃうけど……」

沙織「いいの。友達のピンチに駆けつける。これ、乙女の条件だよ」

みほ「……うん。そうだね。行かないと」

華「はいっ」

みほ「爆発音は演習場の方角から聞こえた気がする」

沙織「よーし! かなめを追いかけちゃおう! それが無理なら、演習場までパンツァー・フォー!」

演習場

宗介「よし」

かなめ「じゃない!!!」パシーン!!!

宗介「痛いぞ、千鳥」

かなめ「やかましい!! あんた初日からなにやってんの!?」

宗介「見ての通りだ。地雷の撤去作業を行っていた。昨日、西住に設置個所を見破られてしまったために、地中に無数の地雷が埋まっている。早急に撤去しなければ危険だ」

かなめ「あんたが蒔いた地雷でしょうが!!!」

宗介「だからこそ、こうして撤去を……」

みほ「うわぁ……すごいことになってる……」

沙織「これ、全部相良さんがやったの……」

宗介「肯定だ。今、この場所は非常に危険だ。下がっていてくれ」

みほ「マーキング作業をしていないみたいですけど、設置個所は覚えているんですか?」

宗介「そんなことをすれば安全地帯を敵に知らせることになる」

華「相良さんもどこに設置したのかは正確に覚えてはいないということですか」

宗介「残念ながらな。時間的に猶予がなかったために、細かくは記憶していない。だが、設置範囲は把握している。撤去作業にはそれほど時間はかからないはずだ。安心してくれ」

かなめ「こいつはぁ……!!」

宗介「地雷程度では戦車を破壊することはできないが、練習の邪魔になることは間違いない。責任をもって除去する」

みほ「は、はぁ」

華「相良さんは怖くないのですか?」

宗介「俺は専門家だ。問題ない」

みほ「スペシャリストって……」

かなめ「はいはい。そこまで。ソースケ、地雷の撤去作業はもう少し時間を考えなさい。今は授業中なのよ」

宗介「そうか。撤去時の爆発音が勉学を阻害するのか」

かなめ「そうそう」

宗介「了解した。時間を改めよう」

かなめ「分かればよろしい。ほら、いったいった」

宗介「迷惑をかけたな、西住」

みほ「い、いえ」

宗介「ではな」

みほ「はい。戦車道の授業では、よろしくお願いします」

かなめ「ああいうことが毎日あるのよ」

沙織「いわゆる、ワイルド系ってこと?」

華「あれが野性的な男性、というわけですか」

みほ「違うと思うな」

かなめ「全然、違うから」

『ピンポンパンポーン、生徒会からのお知らせぇ』

かなめ「角谷先輩?」

『今の爆発は戦車道の新しい特訓のための準備だから、気にせずに授業に集中してくれてオッケーだよー。以上、生徒会からでしたぁ。ポンパンパンポーン』

沙織「そんなことで誤魔化せるのかなぁ」

華「会長が戦車道の特訓だというのなら、誰も疑わないと思います」

かなめ「どうして?」

みほ「会長って昔から色々と派手なことをするのが好きみたいで」

かなめ「あぁ……」

沙織「誰も出てこないし、落ち着いちゃったのは確かだね」

かなめ(角谷先輩って、林水先輩と同類の匂いがするわね……)

生徒会室

杏「これでよしっと」

柚子「あの、相良さんってかなりの危険人物なのでは……?」

桃「今更だな。陣代高校では器物破損、授業妨害の常習犯だ」

柚子「そ、そんな人だったの!?」

杏「うん」

柚子「どうして、そのような人を教官に選んだんですか?」

桃「弱小のラグビー部を生まれ変わらせた実績があるからだ」

柚子「それだけなんですか」

杏「……」

桃「会長?」

杏「相良くんのことは林水から色々ときいた。結構、面白い話があったよ」

柚子「面白い話の中に、学園を救えそうなものがあったとかですか」

杏「そうだな。もし、新しい道を作るなら、ああいう人が一人はいないと困るんだよねぇ」

桃(会長……。我々に何を隠しているのですか)

昼休み 食堂

優花里「もうびっくりですよ。私のクラスもどよめいていました」

かなめ「ごめんね、優花里。あとでまたソースケは叱っておくから」

麻子「会長の放送ですぐに収まったから、別に叱らなくても良いと思う」

かなめ「それはそれで問題があるような」

華「相良さんが大洗にいる間は、爆発音が度々聞こえてきそうですね」

沙織「学園艦は大きいし、多少の爆発ぐらいじゃ沈没しないって」

みほ「誰もそこを心配してないと思う」

かなめ「みんな、アイツが迷惑をかけたなら、すぐにあたしに言ってね」

優花里「千鳥殿は相良教官とどのような関係なのですか?」

かなめ「え?」

麻子「ここまでついてきたのにはそれなりに理由がありそうだが」

かなめ「ないない。ソースケにはブレーキ役がいるってだけ。世話係を押し付けられたの。いわば、あたしは被害者よ」

華「傍から見ている限りでは、夫婦のように仲睦まじく映りますよ」

かなめ「ないない!! それだけはぜぇーったい、ない!!」

宗介「奇遇だな、千鳥」

かなめ「ソースケもお昼ご飯?」

宗介「新たな居住区の食料事情を把握するのも重要なことだからな。食えないものが並んでいれば、食料の輸入を考えなくてはならない」

かなめ「あのね。こんな立派な学園艦で今にも腐りそうな野菜とかあると思ってるわけ?」

宗介「水が体に合わないだけで戦う前に死ぬ者がいる。注意して然るべきだ」

かなめ「はぁ……」

優花里「相良教官!!」ガタッ

かなめ「お、いったれいったれ。この大洗女子学園は平和だって」

優花里「素晴らしいです!! 戦争のプロは兵站を語り、戦争の素人は戦略を語るという格言もあるように、大事なのは補給、つまりは食料も含まれます!!」

宗介「うむ。その通りだ」

優花里「そこを重要視するなんてまさに相良教官はプロフェッショナルです!!」

宗介「理解している秋山も一流といえる。あんこうチームの一員だけあって、戦闘のプロが集まっているようだな。感心するぞ」

かなめ「優花里って、こういう人なんだ……」

みほ「はい……」

かなめ「ソースケと気が合いそうね……」

優花里「では! こちらも購読されているのですか!?」

宗介「毎号目を通している。ASに関する資料としては高水準を保っているからな」

優花里「おぉぉ!!! まさか西住殿以外にこの書籍の存在を知っている人がいるなんて!!! 感動ですぅ!!」

宗介「秋山の知識量も相当だ。君は風間とも良い関係を築くことができるだろうな」

沙織「なんか別世界が広がってるよ」

華「楽しそうですわ」

かなめ「はぁ……。大丈夫かしら。優花里が毒されないか、心配」

麻子「安心しろ。手遅れだ」

みほ「……」

かなめ「みほ? なにぼーっとしてるの?」

みほ「え? ああ、その、相良さんって、自衛隊の人なのかなって……」

かなめ「あー、いや、軍事オタクなだけだから! な、なんでそう思うの?」

みほ「いえ、私の実家に相良さんみたいな自衛隊員が良く出入りしていたのでそうかなって」

かなめ「あんなやつが出入りする家って、なんか嫌……。というか、なんで自衛隊が出入りするの?」

みほ「えと、お母さんの知り合いに、多くて……」

かなめ「お母さんが自衛隊にいたとか?」

みほ「あ、その……」

宗介「西住流は卓越した戦車戦術を有し、教えを乞う者が後を絶たないと聞く」

みほ「え……」

宗介「軍関係者にも西住しほを崇拝する者は少なくないはずだ」

みほ「……」

かなめ「西住流って、なによ」

宗介「戦車道の流派だ。その中でも最も由緒があるとされる」

かなめ「へぇ、それじゃあ、みほは家元ってやつなの?」

みほ「私は、もう勘当されちゃってて……」

沙織「そ、その話はもういいから! 早くたべちゃおー!! 次は戦車道の授業だし! 準備に時間がかかっちゃうし!!」

優花里「そうですね!!」

かなめ「あちゃ……。触れちゃいけない話題だったんだ……。ごめん」

みほ「いえ、そんな。気にしないでください」

宗介「……」

華「ごちそうさまでした。では、グラウンドへ参りましょうか」

麻子「そうだな」

優花里「五十鈴殿は相変わらずの健啖ぶりですね」

沙織「なんで太らないんだろう。不公平よね」

かなめ「大盛ごはんにトンカツ、それからうどんだもんね。どこに入ってんだか」

宗介「西住」

みほ「は、はい」

宗介「まだ決めていないのか」

みほ「隊長のことですか?」

宗介「お前の指揮力なくして、勝利はない。それはお前自身が強く感じているはずだ」

みほ「……」

宗介「何に怯えている」

みほ「……すみません。でも、練習には参加します」

宗介「答えになっていないぞ」

みほ「着替えなきゃいけないので、先に行きます。ごめんなさい」

グラウンド

桃「全員、集まったな。これより、戦車道の授業を開始する。今日から相良教官が我々の指導をしてくれることになった」

宗介「……」

あや「なんか軍服着てるけど」

桂利奈「かっこいい! 映画にでてくる軍曹みたい!」

あゆみ「教官って感じがする」

カエサル「新たな指揮官ということか」

おりょう「山縣有朋のように大洗の父と呼ばれる日がくるかもしれないぜよ」

左衛門佐「それなら島津義弘のように鬼相良と言われたほうがいいかもしれない」

エルヴィン「あの雰囲気なら、ラインハルト・シェアのように鉄仮面というあだ名がついても様になる」

カエサル「いや、助っ人としてここへ来たのなら、クィントゥス・ファビウス・マクシムスのように大洗の盾と呼ばれることになるはず」

エルヴィン・おりょう・左衛門佐「「それだぁ!!!」」

桃「静かに!! では、会長、どうぞ」

杏「あいよ。みんなー、相良くんの言うことをよーくきくように。ビシビシ厳しくやってもらうように言ってるから、覚悟しておいて損はないね」

ねこにゃー「き、厳しいの……? こわいなぁ……」

杏「相良くんからは何かある?」

宗介「はっ。では改めて。これより二ヶ月の間、君たちを指導することになった相良宗介だ。特訓を開始する前に一つだけ聞かせてほしい」

かなめ(何を言うつもり……?)

宗介「次の試合、全員、勝つ気でいるか」

カエサル「当然だ。優勝校としての誇りが我々にはある!! あの優勝旗に誓って、勝利する!!」

梓「相手がオールスターでも、絶対に勝ちます!!」

みどり子「エキシビジョンなら負けてもいい、なんていう校則はないもの」

ねこにゃー「や、やれるだけのことはやりますっ」

典子「スポーツマンシップに則り、勝ちます!!」

杏「……」

みほ「……」

宗介「よぉく分かった。そこまで勝利を渇望するのであれば、妥協は一切しない。弱音を吐くものは容赦なく切り捨てていくぞ、いいな!!!」

エルヴィン「望むところだ!!」

桂利奈「やってやるぅ!!!」

かなめ(みんな、本当に戦車道が好きなんだ……。軽い気持ちでいたら、失礼ね)

宗介「会長閣下。これより、自分の考案した特訓メニューに沿って、彼女たちを鍛えます」

杏「いいよ。てか、そこに私も含んでよね」

宗介「勿論です。西住もしばらくは俺の指示に従ってもらうが、構わないな?」

みほ「はい。よろしくお願いします」

宗介「いいか!! 俺の特訓に最後までついてこれた者に戦場へ立つ権利を与えてやる!!!」

優花里「選抜のための訓練ということでありますか!」

宗介「肯定だ。来たる日に向け、出場者を絞らなければならない。そして、千鳥」

かなめ「なに?」

宗介「無論、君にも出場のチャンスはある」

かなめ「えぇぇ!? なんでよ!?」

宗介「君は戦車道を受講することを決意し、この場にいるはずだ。生半可な気持ちで受講を決めたのか」

かなめ「違うわ。私はみんなと一緒に戦車道をするって決めたの。だから、ここにいる。その試合だって、出られるなら、出てやるわ」

みほ「かなめさん……」

宗介「それでいい。――これより特別訓練を開始する!!! まずはパンツァーファウストを担いで校庭を30周!!! いくぞ!!!」

かなめ「いけるかぁ!!!」

典子「ランニングは毎日やっているんだ!! アヒルさんチームがここで躓くわけにはいかない!!」ダダダッ

妙子「体力で負けたら!!」

忍「誇れるところはない!!」

あけび「寂しいけど!! ホントのことだから!!」

優花里「千鳥殿、どうして先ほどの訓練を止めたのですか?」

かなめ「あんなもんを背負って走れるわけないでしょ」

優花里「しかし、ハイポートよりかはまだ優しいと思うますよ」

沙織「はぁ……はぁ……。ハ、ハイポートってなぁに?」

麻子「小銃を45度の角度で固定したまま走る訓練だな」

沙織「うぇー、なにそれぇ」

華「普通に走るより刺激的ですけど」

みほ「そ、そうかな? あれって、体力の消耗はもちろんだけど、腕への負担が想像以上なんだけど……」

宗介「トロトロ走るんじゃない!!! 口を動かす前に足を動かせ!!!」

希美「こ、これはつらいのよ……」

ももがー「こんな訓練、はじめてなりぃ……」

杏「えっほ、えっほ」

桃「はぁ……ひぃ……こ、こんな訓練で……試合にか、かてるのか……」

ナカジマ「車で走りたいなぁ」

ツチヤ「そのほうが楽しいよね」

杏「文句いわなーい。わざわざ遠いところから来てくれたんだから。それに体力づくりは基本中の基本だ」

柚子「そうかもしれませんけど……」

桃「は、はしる……だけで……勝てるのなら……いくらでも……はしりますけど……はぁ……はぁ……」

杏「今は言われた通りにしておけ、河嶋ぁ。相良くんは無駄なことはしないだろうし」

桃「し、信じていい、のですね……はぁ……ふぅ……」

杏「うんっ」

桃「わ、かりました……全力で……はしります……!!」

柚子「無理しないで、桃ちゃん」

宗介「……」カキカキ

優花里「(相良教官、何かチェックしていますね。みなさんの体力を数値にしているのでしょうか?)」

みほ「(どうだろう。それだけなら、もっと楽に測れそうだけど……)」

麻子「ゴールっと」

宗介「冷泉がトップか。流石だな」

麻子「走るだけだからな」

典子「うおぉぉぉぉ!!!!! 今何周目か忘れたぁぁぁぁ!!!!」ダダダダッ

宗介「磯部!!! 何周したかは自分で数えておけ!!! ペナルティとしてあと5周追加だ!!!」

典子「あと5周なら覚えていられます!!! ありがとうございます!!!」

妙子「私たちも一緒に走ります!!」

典子「みんな!」

あけび「私たちも何周か忘れましたから!!」

忍「あと5周! がんばりましょう! キャプテン!」

典子「よし! バレー部!! ファイトー!!!」

妙子・あけび・忍「「ファイ! おー!!」」

宗介「アヒルさんチームはやはり他チームよりも精神面で秀でている」

優花里「ゴール!! 30周、走り切りました!!!」

宗介「終わった者から休んでよし!! ただし、次のトレーニングは予定通りに始める!! 終了が遅れれば休憩の時間がなくなるぞ!!!」

かなめ「はぁ、はぁ、やっと、終わったぁ」

宗介「意外だな。千鳥が秋山よりも遅いとは、意外だな」

かなめ「運動には自信あったんだけどね。基礎体力はみんなあるのね」

宗介「でなければ戦車を長時間動かすことは不可能だからな」

かなめ「え? なら、どうして……」

みほ「これで、終わり」

優花里「西住殿、お疲れ様です。どうぞ、このタオルで汗を拭いてください」

みほ「ありがとう、優花里さん」

優花里「いいんですよぉ」

宗介「……」

みほ「あ、あの、何か?」

宗介「いや、なんでもない」

沙織「げほ……つかれたぁ……」

ねこにゃー「ボクも……もうだめぇ……」

宗介「この後も訓練は続く。この程度で音を上げるな」

>>230
宗介「意外だな。千鳥が秋山よりも遅いとは、意外だな」

宗介「意外だな。千鳥が秋山よりも遅いとは」

華「はぁ……はぁ……はぁ……」

宗介「五十鈴で最後だ」

華「も、申し訳ありません……」

宗介「次の訓練は5分後だ。いけるな」

華「も、もちろんです」

宗介「よし」

沙織「ちょっとスパルタすぎない? 私、優しい人じゃないとダメなんだけど」

優花里「あれは相良教官の本気度を表しているのです。愛のムチですよ」

沙織「なら、もう少し優しくぶってほしいなぁ……」

麻子「これを毎日やるんだろうな」

沙織「えー? やだもー」

華「毎日続けていれば、2週間ぐらいで慣れるといいます。次の試合に勝つためにも、やりましょう」

みほ(基礎体力をつけても、今度の試合には……)

宗介「西住、思うことがあれば言ってみろ」

みほ「え!? いえ、そんな!」

杏「いいじゃん、いってみぃ」

みほ「私は相良さんの指示に従います」

宗介「そうか。では、次の特訓に入るぞ。全員、戦車に乗り込め!!」

桂利奈「あいぃ!」

あゆみ「りょうかーい」

宗介「あとのことは西住に任せる」

みほ「どういうことですか?」

宗介「言葉通りだ。それとも、従うことができない理由でもあるのか」

みほ「いえ、でも、相良さんは戦術アドバイザーとして……」

宗介「戦術に関しては君のほうが優れていると俺は考えている。より優れたものが指示を出したほうが良いとは思わないか」

みほ「は、はい」

宗介「では、いけ」

杏「教官がそういうなら、仕方ないね。西住ちゃん、おねがいっ」

みほ「……分かりました。みなさん、これより私が指揮を執ります」

優花里「了解であります!!」

かなめ「あたしは、どうしたら……」

ねこにゃー「あ、あの、千鳥さん」

かなめ「ん? えーと、猫田さんよね?」

ねこにゃー「よかったら、ボクたちのチームに入らない?」

ぴよたん「装填手になってくれると嬉しい」

ももがー「お願いします!」

かなめ「いいの? 全くの素人だけど」

ねこにゃー「みんな最初は初心者だし、ボクたちもリアルの戦車に乗ったのはつい最近のことだから」

かなめ「そう。それじゃ、よろしくね」

ねこにゃー「こちらこそ」

ぴよたん「やったー、これで三式中戦車のパフォーマンスがあがるぅ」

ももがー「これなら負けないなり」

桃「相良のやつ、自分が戦術アドバイザーとして呼ばれていることを忘れているのか」

杏「これがベストな戦術なんじゃない? 相良くんにとってはね」

宗介「何をやっている!! 既に10秒オーバーしているぞ!!! あと5秒で用意ができなければその場で腕立て伏せ50回だ!!!」

Ⅳ号戦車内

沙織「いそげー、麻子ぉ。腕立て伏せはしたくないぃ」

麻子「そうだな」

優花里「私は個人的に毎日筋トレをしているので、大丈夫です!!」

沙織「腕が太くなっちゃうよ?」

優花里「望むところです!!」

華「基礎トレーニングは相良さんで、戦車技能はいつも通り西住さんが指導してくれるのですね」

みほ「そう、みたい」

沙織「よかったぁ。やっぱり、みぽりんに教えてほしいからねぇ」

麻子「相良さんがどうこうというより、私たちは西住さんのやり方に慣れてしまっているからな」

優花里「西住殿、相良教官のように私たちのことも扱いてください」

沙織「えぇー。それは遠慮したいし、みぽりんっぽくないぃ」

華「いつもの西住さんがいいですよね」

みほ「そう言ってもらえると、嬉しいな」

みほ「――パンツァー・フォー!!」

陣代高校 生徒会室

敦信「ふむ。なるほど」

蓮「どうかされたのですか?」

敦信「これを見てほしい。学園艦教育局からの回答だ」

蓮「これは……」

敦信「伝手を頼りに、大洗女子学園廃校及び廃艦に関することを調べ、そして当局に詰問してみたのだよ」

蓮「戻ってきた回答がここに書かれていることなのですね」

敦信「そうだ。約3万人の住人、そしてそこに含まれる1万8000人の生徒の未来は、A4一枚にまとめられてしまっている」

蓮「これでは、大洗女子学園は……」

敦信「角谷君がどう考えているのかは分からないが、このままでは間違いなく大洗女子学園は廃校ということで片がついてしまうのだろう」

蓮「そんな……」

敦信「内側からの改革は不可能を意味している」

蓮「何かお考えはあるのでしょう?」

敦信「私にできることはすべて終わっている。あとは相良君と千鳥君に任せるしかない」

蓮「そうですか……。お二人なら、きっと救ってくれるはずです」

ダナン 艦内

カリーニン「基地に戻った際、例の早期警戒システムのテストを行いたいのですが」

テッサ「構いませんよ。ダナンの改修作業のついでにやっちゃいましょう」

カリーニン「許可を頂き、ありがとうございます」

テッサ「いえいえ」

カリーニン「ところで、大佐殿。あの一件についての進捗状況はどうなっているのでしょうか」

テッサ「報告はまだ届いていないですね。数日中には届くと思いますけど……。それがなにか?」

カリーニン「いえ。私も高い関心を持っているだけです。他意はありません」

テッサ「カリーニンさんはどう思いますか? この度の一件を」

カリーニン「武器を用いた平和の祭典、それが戦車道だと私は考えています」

テッサ「私もです。故にコーティング技術の開発者は、全ての知識をそこに注ぎ込んだ。誰にも教えず、情報を一切漏らさず、ただスポーツのためだけに技術を活かした」

カリーニン「大洗女子学園の廃校については、彼の者の想いに水を差す結果になるでしょう」

テッサ「優勝校が消えてしまえば、築き上げた文化がどうなるか、分かっていないのでしょうか」

カリーニン「机上の書類に目を通すだけの人間が存在するなら難しいかもしれません。その者にとって紙に書かれた数字と文言が全てですから」

テッサ「そうですか。……ミスリルというより私個人の我儘だけど、関わってしまった以上は大洗女子学園を潰させるわけにいきませんね」

>>229
宗介「磯部!!! 何周したかは自分で数えておけ!!! ペナルティとしてあと5周追加だ!!!」

宗介「磯辺!!! 何周したかは自分で数えておけ!!! ペナルティとしてあと5周追加だ!!!」

大洗女子学園 グラウンド

宗介「本日はここまでとする!!」

「「ありがとうございました」」

沙織「はぁー、おわったぁ」

麻子「最初が違うだけで、あとはいつも通りだったな」

優花里「ええ。昨日、あれだけのことがあったので、もっと苛烈な特訓を想像していたのですが」

華「初日ということもあるのではないですか?」

麻子「考えられるな」

みほ「相良はずっと何かを調べていたみたいだけど……」

沙織「えぇー、やだぁ。スリーサイズとか測られてたら、どーしよー」

麻子「バスト82、ウエスト56、ヒップ84」

沙織「きゃー、はずかしいー」

みほ「それ私の!!」

宗介「西住、楽しんでいるところ悪いが話がある」

みほ「あ、は、はい」

>>253
みほ「相良はずっと何かを調べていたみたいだけど……」

みほ「相良さんはずっと何かを調べていたみたいだけど……」

かなめ「つかれたぁ……」

ぴよたん「ありがとう、千鳥さん」

かなめ「装填するのもかなり大変よね」

ねこにゃー「でも、千鳥さんの装填、初心者とは思えないほど速かった」

ももがー「きっと、腕力が人よりあるなり」

かなめ「女の子としては喜んでいいことじゃないけどね」

ねこにゃー「千鳥さんがいれば今度の試合にも出られるかもしれない」

ももがー「絶対、出たい!」

かなめ「やっぱり同じチームでもライバル意識ってあるのね」

ねこにゃー「ボクたちはみんなを抜きたいなんて、思ってない」

かなめ「どういうこと?」

ぴよたん「決勝戦、すぐにゲームオーバーになったから……」

かなめ「あ……」

かなめ(そういえば、開始すぐにやられた大洗のチームって、アリクイさんだったような……)

ねこにゃー「だから、次の試合では西住さんの、ううん、みんなの力になりたい。どうしても」

かなめ「そういうこと。大洗のために役に立ちたいってことなのね」

ねこにゃー「そのためにも。千鳥さんの協力は必要不可欠だから!!」

かなめ「わ、わかってる!! わかってるわよ!!」

ねこにゃー「あぁ、すみません。と、とにかくボクたちの力になってください」

かなめ「あたしでよければ、いつでも力になってあげるわ」

ねこにゃー「う、嬉しい……」

ももがー「お礼にネトゲで使えるアイテムを贈呈する!」

ぴよたん「リアルマネーにもなるほどのレアアイテムをどうぞ」

かなめ「ネトゲとかしないから」

ももがー「ネトゲは楽しいなり!」

ぴよたん「絶対にやったほうがいい!」

かなめ「そんなこと言われても……」

ねこにゃー「そうだ。あとで千鳥さんがアリクイさんチームに正式に加入したことを西住さんに伝えておかないと」

かなめ「あれ? そういえばソースケの姿が見えないわね」

ももがー「さっき、倉庫へ入っていくのを見たけど」

倉庫

みほ「なんでしょうか?」

宗介「本日、俺が調べていたことが気になっているだろう」

みほ「え、あ、はい、それは……」

宗介「指揮官としては当然の疑問点だろう。部下を調査されて気分が良いわけないからな」

みほ「みんなは部下じゃありません。友達であり、仲間です」

宗介「そうか。では、訂正する。仲間を調査されては気分もよくないだろう」

みほ「……」

宗介「これを見てほしい」

みほ「ノートパソコン……?」

宗介「俺が見ていたのは昨日に引き続き、各人の能力だ。ただし、今日より重視するのは意志の強さだ」

みほ「意志の……。それは与えられた任務を最後までやり切れるかどうか、ということですか」

宗介「肯定だ。お前たちはただの女子高校生に過ぎない。苦行や苦難からはすぐに逃げ出す可能性もある。そういったものを炙り出すために少々酷な訓練を与えるつもりでいる」

みほ「ずっと、練習前にランニングをするつもりなんですか」

宗介「最終的には技能訓練に入る前に、この学園艦を2周させる。無論、パンツァーファウストを担いでだ」

みほ「そ、それは無理です! むりむり!」

宗介「しかし、選抜者を決めなくてはならない。そういった振るい落としも必要になる」

みほ「みんなは、今までも辛いことや、逃げ出したい状況であっても、正面から戦ってくれました」

宗介「……」

みほ「そのような振るい落としは、意味がありません。きっと、みんな相良さんの特訓についてくるはずです」

宗介「アル、聞こえるか」

アル『肯定』

みほ「え……? パソコンが喋った……?」

宗介「詳細は説明できないが、今このPCはとあるところと繋がっている」

みほ「あ、ああ。ネット電話ですか。びっくりしたぁ」

宗介「アル。今回、入力した大洗の選手データを基に、シミュレーションを行ってくれ」

アル『ラジャ』

みほ「一体、何を……」

アル『結果を報告します。大洗女子学園が戦車道オールスターチームに勝てる可能性は、5パーセント程度でしょう」

みほ「な……」

宗介「理由は?」

アル『様々な要因がありますが、最大の原因は西住殿の不在にあります』

宗介「なるほど。では、西住が指揮を執った場合、どうなる」

アル『西住殿が隊長を務めるのであれば勝率は50パーセントになります』

宗介「だ、そうだ。迷いは消えたな」

みほ「ちょ、ちょっと待ってください! いきなりなんですか!?」

宗介「なにがだ」

みほ「そんなこと急に言われても、私は……」

アル『西住殿。貴女にはチームを導くだけの力があります。ご自身を信じてください』

みほ「あ、あなたは一体誰なんですか!?」

アル『私のことはアルとお呼びください、西住殿』

みほ「そうじゃなくて……」

宗介「では、明日から隊長として皆を指導してくれ」

みほ「あの!! それは……」

宗介「お前が怯える理由はなんだ? 優勝校の長がそんなことでは、大洗を守ることなど不可能だ」

かなめ「あ、いたいた。ソース――」

ねこにゃー「ちょっとまって」ギュッ

かなめ「むぐ!?」

ねこにゃー「なんか大事そうな話をしてるみたいだから」

かなめ「むぐぅ……」


みほ「……大洗の現戦力でオールスターチームに勝つことが条件なんです」

宗介「勝つ自信がないのか」

アル『心配ありません。西住殿はその程度の逆境など、物ともしないでしょう』

宗介「戦車性能の差は看過し難い問題だが、これまでもお前はそれを打ち破ってきたはずだ」

アル『私もそのように聞き及んでいます、西住殿』

みほ「勝つ方法は、あるかもしれません。いえ、あります。でも……でも……」

アル『分かりました。西住殿は勝つためのプロセスに疑問を抱いているのですね』

宗介「どういうことだ?」

アル『大洗の現戦力で勝利を得るためには、様々な策を弄さねばなりません。奇襲、伏撃、間諜、またそれらに属する作戦を行使したくないでしょう』

宗介「相手の無線を傍受することもか」

アル『肯定』

宗介「お前には聞いていない。どうなんだ、西住」

みほ「はい。他にも、たとえば2輌を囮に使えば一時的にでも有利になり、陣形を崩すこともできるはずです。相手にこちらの意図を読まれなければの話ですけど」

宗介「お前はそういった作戦を実行したくはない、ということか」

みほ「大洗に来て、やっと見つけたんです。私の戦車道を。西住流には頼らなくてもいい、私だけの道を」

宗介「しかし、次の試合ではそういったことをしない限り、勝利することは困難だ」

みほ「だからこそ、迷っているんです。私が隊長として指揮を執ったとき、私は……西住流のやり方を……」

宗介「大洗を守りたくないのか」

みほ「守りたい、です」

アル『軍曹殿。時間を頂ければ、私が大洗女子学園を勝利に導く戦力を組み立てますが』

宗介「そうだな。アル、頼めるか。ただし、西住を戦力としては考えないようにしてくれ」

アル『ラジャ』

みほ「あの、相良さん……」

宗介「お前の言い分は分かった。俺も無理強いはしない。まだ時間はある。決断したときはすぐに知らせてくれ。以上だ」

>>264
アル『軍曹殿。時間を頂ければ、私が大洗女子学園を勝利に導く戦力を組み立てますが』

アル『軍曹殿。時間を頂ければ、私が大洗女子学園を勝利に導く戦略を組み立てますが』

ねこにゃー「相良さん、行っちゃった……」

かなめ「……」


みほ「どうしよう……どうしたら……」

アル『西住殿、まだそこにおられますか?』

みほ「あ、はい」

アル『私は貴方達のことを数値でしか知りません。これでは適当な戦略を組むことは不可能でしょう』

みほ「そうなんですか?」

アル『はい。最適化させるため、西住殿にご協力を要請したいのですが』

みほ「なんでしょうか?」

アル『大洗のみなさんを紹介してください』

みほ「はい?」

アル『大洗のみなさんを私に紹介してください』

みほ「えっと……それぐらいなら……」

アル『感謝いたします、西住殿』

みほ(この人、相良さんとはどういう関係なのかな……?)

グラウンド

かなめ「ソースケ!」

宗介「千鳥か。どうした」

かなめ「最初から、西住さんがあの理由で迷っていたのは、気が付いていたんじゃないの?」

宗介「何故そう思う?」

かなめ「あんた、西住流のことも調べてるみたいだったし。その西住流のやり方はよくわかんないけど、みほは卑怯な手とか使いそうにないもの」

宗介「戦車道大会で西住が使った戦術は各車輌に最大限の役目を与えていた。誰一人として捨て駒にしない、そういう戦術を多用していた。そのため、非効率な面もあった」

宗介「対して西住流の戦術は、敵戦力を殲滅することに徹した戦略を組む。その際生まれる犠牲も戦略の一部にすることで、効率的に相手を撃破することができる」

かなめ「それって……」

宗介「西住流は完璧だ。戦術、戦略としては微塵の隙もない。飽く迄もスポーツの流派ではあるが、十分に実戦にも使える」

かなめ「ただ、みほはそれが嫌だったのよね」

宗介「そのようだな。大会時に西住がそうした戦術を用いなかったのが何よりの証拠だ」

かなめ「けど、今回はそうもいかない……」

宗介「相手が悪すぎるからな。隊長が非情な決断を下さねば、大洗は終わりだ」

かなめ「……どうにか、ならないの?」

宗介「俺がどうにかできる範疇ではない。これは西住の問題だ」

かなめ「そうかもしれないけど……」

宗介「だが、西住は言った。学園艦を守りたい、と。その言葉に嘘はないと俺は判断した」

宗介「それにだ。西住はプラウダ戦のときに非情な戦術を使っている。逃げ場がなくれば使わざるを得ないことは本人も理解しているはずだ」

かなめ「プラウダ戦って準決勝?」

宗介「ああ。あれはカメさんチームを――」

杏「あれは、私が提案したことなんだよねぇ。西住ちゃんは最後まで反対してたぐらいだしな」

宗介「会長閣下」

かなめ「角谷先輩、帰ったんじゃ……」

杏「西住ちゃんが教官に呼び出されたら、心配にもなるって」

宗介「……」

杏「なんかいいたそうだねぇ」

宗介「いえ。なんでもありません」

杏「そう」

かなめ「あの、今の話は本当なんですか? みほは反対してたって……」

杏「うん。あのとき、西住ちゃんは全員で突破することを考えていた。もちろんフラッグ車を守る陣形ではあったけどね」

かなめ「そうそう。そんな感じだった。長い中断がありましたよね」

杏「突破後、二手に分かれてうちのフラッグ車を守るチームと、相手のフラッグ車を叩くチームに分かれる作戦を取ろうとしていた」

杏「で、そのときに私は言ったんだ。それじゃあ、勝てないんじゃない?ってね」

宗介「同感です。戦力差に大きさ差があった準決勝で、その作戦は悪手です。敵フラッグ車を早期発見することが前提条件であることから成功率は低かったと思われます」

杏「そゆこと。だから、カメさんチームで相手を撹乱させることを提案した。砲撃の腕には多少、自信があったしね」

宗介「会長閣下が砲撃手として作戦に参加されたのは準決勝途中からだと記憶しています」

杏「そうそう。それまでは河嶋がやってたんだ」

かなめ「どうして初めから砲撃手をしなかったんですか?」

杏「秘密兵器っぽくてかっこいいから!」

かなめ「そ、そんな理由で……?」

杏「うんっ」

宗介「会長閣下。貴方が戦車道経験者であったという記録は残されていません。少なくとも4月当時では素人だったはずです」

杏「……」

宗介「並々ならぬ努力をされたとしか考えられません」

桃「相良、そこまでにしろ」

柚子「ごめんなさい、相良さん。もう言わないであげてください」

宗介「何故だ。俺は謙遜する会長閣下に称賛を――」

桃「いいから、それ以上の詮索はするな」

杏「まぁまぁ、河嶋」

桃「しかし、会長。そのことを公には……」

杏「相良くん、よく調べてるみたいだねぇ」

宗介「お褒めに預かり、光栄です」

杏「私の努力なんて、大したことない。西住ちゃんの苦労や苦悩に比べればな」

宗介「決して、そのようなことは」

杏「私にできることは、それぐらいしかなかったんだ。そして、今も同じだ」

かなめ「先輩……?」

杏「よろしく頼むよ、相良くん、千鳥ちゃん。期待してっから」

宗介「はっ。ご期待に応えられるよう、尽力いたします!」

杏「ありがとね。じゃ、そういうことだから、西住ちゃんに変な期待をしないほうがいいよぉ。たとえ負けそうになったって、西住ちゃんは仲間を見捨てない子だから」

宗介「理解できんな。戦場ならば、西住の行為は仲間を無駄死にさせるときさえある」

かなめ「そういう性格だから、みんなも戦車道が好きなのかもね。というか、テッサもそうじゃない?」

宗介「……」

かなめ「テッサだって、誰一人見捨てようとはしないでしょ? たくさん悩んで、苦しんで、最善の指示を出す。違う?」

宗介「……違わない」

かなめ「傭兵部隊と戦車道の違いはあるけど、同じ隊長で、みんなに好かれてる理由は、あまり変わらないとあたしは思うな」

宗介「そうだな」

かなめ「だから、あんたも最後の最後まで西住ちゃんをサポートしてあげて」

宗介「了解した。俺は戦術アドバイザーだからな」

かなめ「よろしい」

宗介「ふむ……」

かなめ「どうしたの?」

宗介「俺だけでは難しいかもしれんな。いや、しかし……どうしたら……」

かなめ「何で悩んでるの?」

宗介「中佐殿に自力で解決するようにと言われているために、本部に協力を仰げない。参った……」

>>270
宗介「同感です。戦力差に大きさ差があった準決勝で、その作戦は悪手です。敵フラッグ車を早期発見することが前提条件であることから成功率は低かったと思われます」

宗介「同感です。戦力に大きな差があった準決勝で、その作戦は悪手です。敵フラッグ車を早期発見することが前提条件であることから成功率は低かったと思われます」

倉庫

沙織「みぽりーん、お風呂いこーよー」

カエサル「隊長、裸の付き合いも大事だ」

みほ「あ、みんな……」

アル『大洗のみなさんですか?』

優花里「おぉ!? なんでありますか!?」

あや「パソコンが喋ってる!」

麻子「ネット電話じゃないのか」

華「では、こちらの姿は見えているのでしょうか?」

アル『私にはみなさんの姿は見えません。音声のみです』

おりょう「一体、パソコンの向こうにいるのは誰ぜよ」

みほ「相良さんのお友達みたいなんですけど」

優花里「相良教官のご友人ならば、自己紹介しておかなくてはいけませんね。私は大洗女子学園普通二科2年C組、秋山優花里です!!」

アル『私のことはアルとお呼びください、秋山殿』

優花里「はい! よろしくお願いいたします、アル殿!』

カエサル「私はカエサルだ」

おりょう「おりょうぜよ」

エルヴィン「エルヴィンと呼んでくれ」

左衛門佐「左衛門佐でござる」

アル『記憶しました』

麻子「機械のような喋り方だな」

華「そうですか? 声に温もりを感じますから、機械ではないと思いますが」

カエサル「もしアルさんがAIか何かというならびっくりするけど」

左衛門佐「豊臣秀吉の髭は付け髭だったぐらいの驚きだな」

おりょう「上野戦争で40人ほどを率いていたのに後ろを見たら誰もいなかったときぐらいの驚きはあるぜよ」

エルヴィン「ジョン・マルコム・ソープ・フレミング・チャーチルがドイツ軍下士官を弓矢で倒したという記録ぐらいの衝撃だな」

カエサル「古代ローマ市内にはわずか1797軒しか家がなかったということを知ったときの衝撃にも勝るとも劣らないな」

アル『フェルディナンド・マゼラン本人は世界一周をしていなかったぐらいの驚きはあります』

カエサル・おりょう・エルヴィン・左衛門佐「「それだぁぁ!!!」」

アル『恐縮です』

麻子「機械ではなさそうだな。すまない」

アル『いえ。気分は害しておりません。お気になさらず、冷泉殿』

沙織「で、アルさんはみぽりんと何してたの?」

アル『会話です』

沙織「そりゃ、そうだろうけど」

アル『私は相良軍曹殿より、大洗女子学園を勝利へと導くための戦略を組むように命じられました。そのため、西住殿に相談していたところです』

華「どのような?」

アル『現在の私は貴方達のことを数値でしか知りません。例えば、磯辺殿』

典子「はい!!」

アル『貴方を数値として見た場合、能力としては低いと言わざるを得ないのです』

典子「あぁ……」ガクッ

妙子「キャプテン!」

あけび「そんなことはっきり言わなくてもいいじゃないですか!」

アル『ですが、相良軍曹殿は磯辺殿のことを高く評価しています』

典子「本当ですか!?」

アル『故に私は理解が不足していると判断しています。数値だけで測ることのできない能力が人間にはあるように思えます』

典子「当然です!! 人間は根性でどうにかなることが多いですから!!」

アル『根性、とは?』

典子「劣勢に立たされても、根性さえあれば逆転できたり!」

忍「八九式でマウスを相手にしても根性で押し勝ったり!!」

妙子「戦車の中から押しても意味ないけど」

アル『理解不能。根性にはそれだけの力があるのですか』

典子「そうです!!」

アル『軍曹殿が磯辺殿を評価しているのは、その根性の数値が高いからなのでしょう』

カエサル「実際、私たちの中で最もガッツがあるのはアヒルさんチームだからな」

梓「それは間違いないと思います」

アル『やはり、まだまだ分からないことが多いようですね。この度のデータは後に活かせることができそうです』

みほ「データ……?」

アル『西住殿。もう少しみなさんと会話をしておきたいのですが、よろしいですか?』

みほ「あ、はい。いくらでもどうぞ」

>>268
かなめ「最初から、西住さんがあの理由で迷っていたのは、気が付いていたんじゃないの?」

かなめ「最初から、みほがあの理由で迷っていたのは、気が付いていたんじゃないの?」

>>272
かなめ「だから、あんたも最後の最後まで西住ちゃんをサポートしてあげて」

かなめ「だから、あんたも最後の最後までみほをサポートしてあげて」

グラウンド

かなめ「なにを始める気?」

宗介「こういうことは早めに手を打っておく必要がある」

かなめ「その無線機で誰と話すのよ」

宗介「決まっている。――こちらウルズ7。応答せよ」

クルツ『なんだぁ。何かあったか?』

宗介「肯定だ。応援が欲しい状態に陥りそうだ」

クルツ『どういうこった』

宗介「西住抜きで大洗を勝利させなければならない可能性が出てきた」

クルツ『みほは優勝の立役者だろ。なんでスタメンに選ばれないんだよ』

宗介「西住本人が戦場に立つ覚悟がないからだ」

クルツ『そりゃ、仕方ねえな。で、俺にしてほしいことでもあるのか』

宗介「西住を抜いた現戦力ではとても俺一人では勝利させることは困難を極める」

クルツ『俺にコーチでもさせるつもりか? 初日からそんな調子で大丈夫かよ』

宗介「勝率を1%でも上げる。それが戦術アドバイザーとしての責務だと俺は考えている」

クルツ『俺としてはそっちに飛んでいきたいぐらいだけどな』

宗介「いつ頃、来ることができる」

クルツ『すぐには無理だな。今、マオと一緒に我らが隊長からの任務をこなしているところだからよ」

宗介「大佐殿の?」

クルツ『だから、早くても三週間後ぐらいになる。それでいいなら、行ってやるよ』

宗介「それでいい。ミスリルの任務が最優先だ」

クルツ『いや、これはミスリルってより、テッサ個人の願いっぽいな』

宗介「任務の内容は言えるか?」

クルツ『大洗の調査だ』

宗介「大洗の?」

かなめ「クルツくん」

クルツ『お、カナメが傍にいるのか。相変わらずだな、二人は』

かなめ「どういう意味かはまた今度聞くわ。それは置いといて、テッサは前に大洗のことを調べたって言ってたわよ」

クルツ『調べきれないこともあるだろ。例えば、金の流れかたとかな』

かなめ「お金……?」

クルツ『一つの街が海の上を漂ってんだぜ。そりゃ、相応の金は動くだろ』

かなめ「まぁ、ね」

宗介「大佐殿がそのことを気にする理由が分からんな。学園艦の金の出どころなどお前が動くまでもないはずだ」

クルツ『そう思うだろ? でも、テッサが俺とマオを動かしたってことはだ。何かあるんだろ』

かなめ「何かって?」

クルツ『今現在、分かってるのは過去に戦車を売り払った相手と、学園艦が廃艦になったあとの処理についてだ』

宗介「そこまで具体的に話は進んでいるのか」

クルツ『物が物だけにな』

宗介「まるで何年も前から決まっていたようだな」

かなめ「……!」

クルツ『ソースケ、良い勘してるぜ』

かなめ「けど、大洗の廃校って今年決定とかじゃなかった?」

クルツ『生徒数の減少で前から廃艦候補には上がってたらしい。でも、不思議な話だよな。だって、今年の入学者はちゃんといるんだぜ?』

宗介「通常であるならば廃校が決定したときに入学者の受け入れは中止となり、在校生の卒業まで残るはず」

かなめ「言われてみればそうよね……。今年度に決まって、来年度には廃校なんて急すぎるわ……」

クルツ『みほだって廃校が決定してからの転校生だ。廃校になるっていってるところが転入を受け入れるか、フツー?』

かなめ「卒業するために1年通うってことならまだしも、みほは2年生だしね」

宗介「不自然だな」

クルツ『テッサもそこが気になって仕方ないんだろ」

宗介「それで、廃艦後の扱いはどうなっている?」

クルツ『学園艦は解体。そのあと、戦車の接収が行われるらしいな』

宗介「何故だ」

クルツ『そこはこれからだ』

かなめ「戦車、だけ?」

クルツ『みたいだな』

かなめ「……」

宗介「クルツ、何か分かれば俺にも連絡をくれ」

クルツ『了解。報酬、忘れるなよ』

宗介「分かっている。写真だな」

クルツ『楽しみにしてるぜぇ。またな』

宗介「どうやら、裏がありそうだな」

かなめ「……」

宗介「どうした、千鳥?」

かなめ「え? ああ、うん。戦車だけをってのが気になってね」

宗介「恐らく、大佐殿も同じところで引っかかっているはずだ」

かなめ(戦車のコーティングにウィスパードの知識が詰まってることに関係しているなら……)

宗介「あとのことはクルツたちに任せて、俺たちは与えられた任務もこなすか」

かなめ「そうね。ここで考えたって、答えは出ないもの。あたしも装填手としてバリバリやるわよ」

宗介「その意気だ。君なら短期間で良い装填手になることができるはずだ」

かなめ「はいはい。ありがと。そういえば、みんなどこかしら?」

宗介「俺は会長閣下に謁見するつもりだが、千鳥はどうする?」

かなめ「あたしは……。猫田さんたちとちょっと話してみようかな。同じチームなら色々と知っておかないといけないし」

宗介「なるほど。仲間の欠点や長所を探るのは必要なことだからな」

かなめ「違うわよ! あぁ、いや、似たようなもんなのかしら……うーん……?」

宗介「ではな、千鳥」

倉庫

かなめ(猫田さんはまだいるかしら?)

ねこにゃー「おぉぉ!! まさか、あのアルさんがアルさんだったなんて!」

かなめ(何かしら?)

アル『肯定。私もねこにゃー殿と直接会話することができ、嬉しく思います』

みほ「知ってるんですか?」

ぴよたん「ネトゲの戦車ゲーで、激ヤバレアアイテムばっかりを所持していた猛者がいたんです!」

ももがー「ネトゲ界では神と呼ばれる一人なり!!」

ねこにゃー「それがアルさん!!」

みほ「アルさんってすごいんだ」

アル『恐縮です。私はただ知識を得るために様々な場所へアクセスしているだけなのですが』

沙織「ネット好きなんですか?」

アル『肯定。時間のあるときはインターネットで知識を蓄えています』

かなめ「随分と楽しそうね」

優花里「今、相良教官のご友人と話をしていたところです。猫田殿とお知り合いだったということで、盛り上がっていました」

かなめ「アイツの友人!?」

かなめ(クルツくんのことかしら? マオさんかも……)

アル『そろそろ時間です。申し訳ありませんが、退席させていただきます』

桂利奈「えー? もうですかー?」

アル『またの機会にゴジラやウルトラマンについて語り合いましょう、阪口殿』

桂利奈「ぜったいですよぉ!」

アル『約束します。それでは』

華「切れたようですね」

麻子「面白い人だったな」

優花里「ええ。相良教官にも勝るとも劣らない軍事知識量! 流石、教官のご友人ですね!!」

かなめ(誰だったんだろう……。あとでソースケにでも聞いてみるか)

かなめ「猫田さん、ちょっといい?」

ねこにゃー「なんですか?」

かなめ「アリクイさんチームでお茶でもどうかなって」

ねこにゃー「おぉ、う、うん! 是非!」

かなめ「そういうわけだから、先に帰るわね」

みほ「はい。また明日もよろしくお願いします」

沙織「またねー、かなめー!」

華「お疲れさまでした」

かなめ「うん。いきましょ、猫田さん」

ねこにゃー「は、はい」

ももがー「ネトゲ仲間以外と、初めてのお茶会なり!」

ぴよたん「これが女子会ってやつ」

ねこにゃー「オフ会以外にしたことないから、緊張する……」

かなめ「えぇ……なんでよ……」

華「なんだか、かなめさんがアリクイさんチームを引っ張っている気がしてきますね」

麻子「委員長のような風格があるからな。リーダーに慣れているように見える」

優花里「陣代高校では副会長を務めていたと聞きましたよ。実際、人の前に立つことは慣れているのでしょう」

沙織「そうなの!? すごーい!」

みほ(千鳥さんみたいに自然と馴染んでいける人って羨ましい……)

生徒会室

杏「どうかした?」

宗介「はっ。会長閣下に確認したいことがあります」

杏「ん? なに?」

宗介「自分はここへ戦術アドバイザーとして呼ばれました。しかし、自分がここにいる理由はないように思えます」

杏「どうして?」

宗介「西住が隊長として優れているからです。有能な指揮官が一人いれば、自分は隊員らの技術向上の邪魔にしかなりません」

宗介「林水会長閣下が言っていた精神面強化のためというのも疑問が残ります。彼女たちは皆、気迫に満ち溢れています。自分が鍛えるまでもありません」

杏「ありがと。そこまで褒めてくれると、なんだか嬉しくなるね」

宗介「自分は何故、呼ばれたのでしょうか」

杏「……相良くんは、手の打ちようがないって状況に陥ったとき、どうする?」

宗介「それが戦場であると想定するのなら、任務よりも生還することを模索します。生還こそが最大の任務です」

杏「そうだな。誰だって死にたくない。けど、手持ちの武器じゃ対処できない。死ぬしかない。そんな場合なら?」

宗介「新たな兵器を探すか、友軍に支援を要請します」

杏「そ。相良くんは大洗にとって、未知の新しい武器みたいな存在になってほしいんだよね」

宗介「どういう意味でしょうか」

杏「西住ちゃんのことは他校に研究されてる。そこで相良くんの戦術を盛り込むことで、相手の裏をかけるかもしれない」

宗介「自分の戦術を西住に与えたところで相手の裏をかけるとは思いません」

宗介「黒森峰の西住まほ、プラウダのカチューシャ、サンダースのケイ、聖グロリアーナのダージリンが参加予定ならば尚更です」

杏「そんなことないんじゃない?」

宗介「自分は試合記録も拝見しました。まずサンダースのケイ隊長は優れた指揮能力を有しています。実際、大洗は一回戦で敗北していてもおかしくありませんでした」

杏「ま、そうだな。ケイがフェアプレイを好む性格じゃなきゃ、やられてた」

宗介「戦車道に関していえば素人の自分が、ケイを始めとする名将に勝つ見込みはありません。そのことは会長閣下も承知しているはずです」

杏「……」

宗介「聞かせてはいただけませんか」

杏「……」

宗介「会長閣下。何を隠しているのですか」

杏「――絶対に勝てないんだ。このままじゃね」

宗介「……」

杏「きっと西住ちゃんも薄々は感づいてると思う。西住ちゃんの覚悟が決まらないのも、原因はそれだよ。多分ね」

宗介「西住の迷いは西住流のやり方を貫くかどうかだと言っていました」

杏「おー、そうなの。でも、それだけじゃないような気がして仕方ないけどねぇ」

宗介「……」

杏「学園艦が無くなるかどうかの瀬戸際なら、西住ちゃんは勝つ方法をきちんと見つけてくれる」

杏「たとえそれが、仲間を犠牲にするような作戦でもね。プラウダ戦のときだって、反対はしてたけど、最後には私の提案を受け入れてくれた」

杏「皆に廃校の話を切り出したところで、士気は下がらない。むしろ上がる。みんなは率先して囮役を買って出てくれる。それは私も西住ちゃんも分かってることだ」

宗介「では、西住が隊長を務めることに躊躇っているのは……」

杏「勝つ方法を選べないからじゃないかなぁ」

宗介「よくわかりません」

杏「西住流のやり方を否定して優勝した。だから、西住流のやり方では戦いたくない。それも本心に違いない」

杏「更に西住流のやり方で勝利して丸く収まるかっていえば、そうじゃない。むしろ勝っちゃうと一番問題なんだよねぇ」

宗介「何故ですか」

杏「戦車道の世界大会に出場するオールスターチームが優勝したとはいえ弱小校に負けるなんてことになれば、どうなると思う?」

宗介「称賛を浴びることでしょう」

杏「大洗の人たちからはね。でも、それが国レベルだと事情は違ってくる」

宗介「国……?」

杏「日本の戦車道レベルが低いってことを全世界に流すようなもんだからねぇ」

宗介「む……」

杏「日本は今、世界大会が行われるってことで戦車道に力を入れてる。その矢先、オールスターチームが負ければ、戦車道の注目度や人気の低下に繋がる」

宗介「だから、勝利することは許されないということですか」

杏「自分のポリシー捻じ曲げて勝ったとしても世間から非難される可能性がある。踏ん切りがつかないのも、当然だよね」

宗介「なにより、否定したはずの西住流が最強であることを証明してしまうことにもなる」

杏「そういうこと。だから、西住ちゃんは戦いたくないんだと思うよ。隊長として、オールスターを相手にはね」

宗介(となれば、俺がここへ呼ばれた本当の理由は……)

宗介「理解しました」

杏「そう? いやぁ、話が早くて助かるよ」

宗介「自分は最後の保険ということですね」

杏「……学園を守るためなんだ」

宗介「心を失くした殺人兵器にするには一週間もあれば可能です。ご安心ください」

杏「最後の最後、崖っぷちに立たされたときは、お願いね」

二子玉川の悪夢再び……!?

転勤した教師(贈り主)曰く、非常に希少な『ダイクウマリュウキングガイ』(実際にはサザエ)
かなめは「美味しそうだったから」壺焼きにして食べた

桃「会長。お電話です」

杏「誰から?」

桃「いつもの相手です」

杏「はいよ。代わる」

桃「すみません」

宗介「誰からの電話だ?」

柚子「最近、多いんです。戦車を売ってくれっていう電話が……」

宗介「戦車を? 廃艦になった場合、戦車は接収させる予定だというのは聞いたが、売却の話もあるのか」

桃「戦車に施されたコーティング技術が戦車道以外で利用されたことはない。そのため、民間軍事会社などからは戦車を買い取りたいという声が後を絶たない」

宗介「……」

柚子「特に廃校になるところや、戦車道の授業を廃止にする学校には頻繁にそういった話が来るらしいです」

宗介「それは戦車道の戦車を軍事利用する、ということか。それとも特殊コーティングのほうか」

桃「それは分からない。ただ戦車自体を利用するとは考えにくいが」

宗介「大戦時の戦車だからな。やはり、目的はコーティング技術のほうか」

柚子「開発者の意向で軍事利用は全面禁止になってはいるんですけど、どうしても欲しい人はいるみたいですね」

宗介「俺たちの部隊にもあのコーティング技術はないからな」

桃「俺たちの部隊?」

柚子「相良さんってどこかに……?」

宗介「いや、なんでもない」

杏「話、おわったよー。いやぁ、しつこい相手だったねぇ」

桃「申し訳ありません、会長。私ではどうにも……」

杏「今回の相手はなんか嫌な感じだったしな。私も危うく相手のペースに呑まれそうになったよ。ヤバかったね」

柚子「大洗からコーティング技術が漏えいしたなんてなったら、大問題ですもんね」

宗介「……」

杏「相良くんはどうする? 暇ならあんこう鍋をいご馳走してあげてもいいけど」

宗介「お心遣い感謝いたします。誠に申し訳ありませんが、色々と準備したいこともありますので」

杏「そっか。うん、わかった」

宗介「失礼いたします」

杏「また、明日ねぇ」

宗介「はっ!」

アイスクリームショップ

華「はぁ、美味しいです」

麻子「五十鈴さんはいつも3段だな」

華「はいっ。麻子さんもおひとつどうですか?」

麻子「いただく」

みほ「……」

優花里「西住殿?」

みほ「え? な、なに?」

優花里「いえ、なんだか深刻な顔をしていらしたので……」

みほ「ごめんなさい。心配させちゃって」

優花里「そんなぁ。いいんですよぉ」

みほ(こんな中途半端な気持ちのままじゃ、いけない。それは分かっているのに……)

沙織「おっほぉ!」

麻子「なんだ、沙織。いきなり奇声を出すな」

沙織「あ、あそこ! あそこ! すっごくカッコいい人がいるぅ!! みてみて!! ほら、あの隅のテーブル!! 芸能人かなぁ! モデルかなぁ!」

華「沙織さん、ご迷惑になりますから」

沙織「けどけどぉ」

麻子「あの人か……。まぁ、確かに」

優花里「美形でありますね」

沙織「ほらほら、みぽりんも見てみてよぉ」

みほ「えーと……?」


レナード「……」


みほ「わっ……ホントだ……」

沙織「ね? あれは見惚れちゃうよねぇ」

麻子「日本人には見えないな」

優花里「航行中の学園艦に乗り合わせての旅行でしょうか」


レナード「……」

みほ(目が、あった……? 気のせい、かな)

レナード「ふっ……」

沙織「おぉ!? なんか、こっちにくるよ!!」

華「……嫌な臭いがします」

麻子「え?」

レナード「僕に何か御用かな」

沙織「えぇぇ!? いや、その、すみません!! ジロジロみちゃって!!」

優花里「申し訳ありません。学園艦では見かけない方でしたので……つい……」

レナード「不審に思われても仕方ないね。僕は先日、この学園艦に初めて乗艦したんだ。乗艦という表現が正しいのかは分からないけど」

麻子「ふぅん」

優花里「旅行で大洗に?」

レナード「そうならこんな格好はしていないよ。僕がここに来たのはビジネスのためさ」

沙織「へぇ、そうなんですかぁ。あの、どんな仕事を……?」

レナード「そうだね。世界をよくするために僕は働いているつもりさ」

沙織「わかったぁ! NPO法人とかで働いているんですね!!」

みほ「い、いや、NPOはちがうような……」

レナード「ははは。そんなところかもね。残念ながら、日本に属する組織ではないけど」

沙織「そうなんですかぁ、それは残念ですね」

レナード「――西住みほ、だね?」

みほ「え……」

沙織「なになに!? みぽりん!! どういう関係なの!?」

みほ「し、知らない! 知らない!」

レナード「君たちのことはよく知っているよ。大洗の戦車道チームは今や世界的にも有名になっている」

優花里「そうなのですか!?」

沙織「えー!? なら、日本の人だけじゃなく、海外からもあたしを求めて……!」

麻子「何故そうなる」

レナード「世界中から求められているのは、まず間違いないだろうね。この大洗は」

沙織「ほらほら! やっぱり!」

華「それはどのような意味を含んでいるのでしょうか」

みほ「華さん……?」

レナード「今の僕が語っても信じてくれそうにないようだけど、教えて欲しいかい?」

華「いえ、結構ですわ」

レナード「だろうね。君は素敵だ。僕の想い人には劣るけど」

華「その方とわたくしを比べないでください。その人に失礼です」

レナード「そうだね。失言だった。お詫びにアイスでもどうかな。勿論、僕がご馳走するよ」

華「わたくしは既に3段のアイスを購入しています。これ以上、必要ありません」

レナード「そうか。悪かったね。それでは」

みほ「あ、はい」

レナード「また、会える日を願っているよ」

沙織「おまちしてまぁす!!」

華「……」

優花里「五十鈴殿? あの人に何か思うところでも?」

華「わたくし、あの人を好きにはなれそうにありません」

麻子「五十鈴さんがそういうのは珍しいな」

華「沙織さん。今後、あの方を見かけても絶対に近づかないでください。お願いします」

沙織「う、うん。華がそこまでいうなら……」

麻子「仕事のためだと言ってたが……」

優花里「学園艦は一つの街ですからね。様々な職種の人がいても不思議ではありません」

みほ「もしかしたら、学園艦の調査に来たんじゃないかな」

華「なにを調査するのですか」

みほ「学園艦が解体されたあとの行き先は、大体自衛隊だってきいたことあるから」

優花里「私も聞いたことがあります。空母として使う民間軍事企業もあると」

みほ「だから、さっきの人はそういう関係の……」

沙織「もー、やめー!」

みほ「な……」

沙織「大洗の学園艦はこれからも残るの!! だって、私たちが勝っちゃうんだから!!」

華「そうですね。そのような話はわたくしたちには何も関係がありません」

麻子「うむ」

みほ「そう……だね……」

沙織「さ、かえろっ。また明日も戦車のるぞー、おー! はい、みぽりんも一緒に! おー!!」

みほ「お、おー……」

街中

ももがー「また明日ー!」

ぴよたん「ありがとー、千鳥さーん!!」

かなめ「またねー!! 猫田さんはこっちなのよね」

ねこにゃー「うん。途中まで一緒に行こう……」

かなめ「そうね」

ねこにゃー「千鳥さん、今日はとっても楽しかった」

かなめ「あたしも。やっぱり、同じ釜の飯を食べるってのが大事なのよね。こういうところからチームワークは生まれると思うの」

ねこにゃー「ボクもそう思う。決勝戦の前夜もボクたち、三人で串カツを食べたし」

かなめ「いいわねぇ。それじゃ、次の試合前もみんなでカツを食べしょっ」

ねこにゃー「うんうん。賛成」

「楽しそうだね」

かなめ「……!」

レナード「まさか君がここにいるとは思わなかったよ。これも運命かな」

ねこにゃー「だ、だれ……?」

かなめ「なんで、あんたがここにいるのよ」

レナード「ビジネスのためさ。仕事がなければ、このまま君を連れ去っているところなんだけどね」

かなめ「ふざけないで!!」

レナード「僕は至って真面目だよ」

ねこにゃー「あ、あの……」

レナード「なにかな」

ねこにゃー「ち、千鳥さんが困ってる、みたいだし、その……」

レナード「警戒することはない。彼女とは友達だよ。今はね」

かなめ「アンタと友達になるぐらいなら、恥ずかしい恰好で街中を踊りまわったほうがまだマシよ」

レナード「いいね。そんな君も見てみたいよ」

かなめ「ヘンタイ! どっかいって!! いや、この学園艦から出て行きなさいよ!!」

レナード「言われなくてもそのつもりさ。ここに立ち寄ったのはただの気まぐれに過ぎない。入手できるなら、よかったけど断られてしまったからね」

かなめ「何をよ」

レナード「そこの君と深い関係にあるもの、かな」

ねこにゃー「ボ、ボクですか……? ネ、ネトゲのレアアイテム、とか?」

レナード「そういうことにしておこうか」

かなめ「相変わらずね」

レナード「もうしばらくはここに滞在するのかい?」

かなめ「明日にでも帰るわ。ここにいたら、またアンタの顔を見ることになりそうだもの」

レナード「陣代高校へ戻っても結果は変わらないと思うよ」

かなめ「うるさい!! 目障りよ!!」

レナード「じゃ、また」

ねこにゃー「千鳥さん、あの人と何かあったの?」

かなめ「色々ね。とにかく、アイツのことはだいっきらいなの」

ねこにゃー「痴情の縺れ的な……?」

かなめ「ちっがうわよ!!!」

ねこにゃー「ひっ」ビクッ

かなめ「ああ、ごめん。とりあえず、猫田さんもアイツにだけは気を付けてね」

ねこにゃー「うん、わかった。でもボク、チャット以外でうまくしゃべれないから、大丈夫だと思う」

かなめ「何をもって大丈夫なのかわからないけど……」

大洗女子学園 倉庫

カリーニン『――了解した。こちらでも手配しておこう』

宗介「ご協力、ありがとうございます」

カリーニン『気にするな。そちらはどうだ』

宗介「はっ。目立った問題は今のところ起こってはいません。千鳥も状況を楽しんでいるようです」

カリーニン『軍曹』

宗介「はっ」

カリーニン『プラウダ高校は旧ソ連由来の名を掲げているな』

宗介「はっ。そのようです。使用する車両もソ連で使われていたもので編成されているのが特徴です」

カリーニン『そうか』

宗介「それがなにか?」

カリーニン『いや、もし機会があるのならボルシチを――』

かなめ「ソースケ!! まだいる!?」

宗介「千鳥? 君はアリクイさんチームとの会食に出かけたのではなかったか」

かなめ「ア、アイツが……いるの……。この、学園艦に……」

メリダ島基地

マデューカス「テスタロッサ艦長。サガラ軍曹より緊急要請がありました」

テッサ「なんでしょうか」

マデューカス「アマルガムの幹部が学園艦にいると。以前、チドリカナメと接触した者です」

テッサ「……」

マデューカス「報告通りであるならば、その者は……」

テッサ「レナード・テスタロッサ、ですね」

マデューカス「はい」

テッサ「例の調査結果は?」

マデューカス「まだ上がってはいません」

テッサ「そうですか。引き続き調査のほうはお願いするとして、まずは大洗学園艦の警護を行わなくてはいけませんね」

マデューカス「サガラ軍曹には学園艦内の消毒をさせているところです。今のところ危険物は発見させていないようですが」

テッサ「結構。こちらからも数名、学園艦に派遣させましょう」

マデューカス「アイ、マム」

テッサ(大洗女子学園の不自然な廃校は、外部からの手が伸びてきていたのね……)

>>334
マデューカス「サガラ軍曹には学園艦内の消毒をさせているところです。今のところ危険物は発見させていないようですが」

マデューカス「サガラ軍曹には学園艦内の消毒をさせているところです。今のところ危険物は見つかっていないようですが」

大洗 学園艦 寮

かなめ「ねえ、ソースケ。このままで大丈夫なの?」

宗介「問題ない。既に対処済みだ」

かなめ「もし、みんなに何かあったら……」

宗介「そんなことは起こり得ない。信じてくれ」

かなめ「……うん」

宗介「君のことも陰から警護してたのだ。騒ぎを大きくせずにこの学園艦を守ってみせる」

かなめ「……」

宗介「なんだ、その目は」

かなめ「陰から守ってくれてたこと、あったっけ?」

宗介「常に守っていた」

かなめ「もういい……。もしテロリストがいるなんて、わかったら大パニックになるぐらいは分かってるわよね」

宗介「肯定だ。心配するな」

かなめ「信じるわよ、ソースケ」

宗介「了解した」

数日後 大洗女子学園

典子「今日も特訓だー!!!」

妙子・あけび・忍「「おぉー!!!」」

典子「まずは軽くランニング!! 学園の周りを50周!!!」

妙子「はい!!」

あけび「どんどん走る距離が増えてるぅ」

忍「これもバレー部存続のためよ!」

典子「いくぞー!!」

カチンッ

典子「……?」

妙子「キャプテン? どうしたんですか?」

典子「なんか踏んだ」

あけび「なにかって?」

忍「何もありませんけど」

典子「じゃあ、大丈夫か。しゅっぱ――」

駐輪場

あや「おっはよー」

桂利奈「おはよー! 今日も戦車道の練習、がんばろー!」

あゆみ「そういえば相良先生って、あんまり戦車のこと教えてくれないよね」

優希「戦車道のルールを知らないっていってたけど」

梓「普段は西住先輩が教えてくれるし、相良さんはどういう立場なんだろう」

あや「コーチって感じもしないもんね」

あゆみ「ものすごい走らされるだけだよね」

紗希「……」

桂利奈「どうしたの?」

紗希「ここ、なにかある」

梓「なにかって?」

あや「んー? 糸みたいなのがあるね。足が引っかかると危ないし、切っておいたよくない?」

あゆみ「そうだよね。きろっか」

あや「えいっ」プツンッ

生徒会室

杏「干し芋がおいしい」モグモグ

桃「会長。お茶を淹れました。どうぞ」

杏「あんがと」

桃「良い天気ですね」

杏「平和だねぇ」

桃「相良も問題行動が目立つという報告を受けていたので心配していましたが、赴任初日を除けば特に何もありませんね」

杏「千鳥ちゃんが一緒だからじゃない?」

桃「この学園艦が無くなるかもしれないなんて、実感がなくなりそうです」

杏「河嶋は騒がしいほうがいいの?」

桃「いえ、決して」

杏「私は多少ドッカンドッカンなってても、いいけ――」

ドォォォォン!!!! ドォォォォン!!!!

桃「なんだ!? 今の爆発は!?」

杏「いくぞぉ、かわしまぁー」

校門

みどり子「しっかりして!!」

典子「うぅ……あしが……あしが……」

みどり子「足がどうしたの、磯辺さん!!」

典子「足をくじいたぁ……」ガクッ

妙子・あけび・忍「「キャプテェェェン!!!」」

みどり子「大丈夫なの!?」

かなめ「なによこれぇ!?」

みほ「何があったんですか?」

華「花火でしょうか」

優花里「ずるいですぅ! 戦車の練習なら、みんなでやりましょう!!」

麻子「いや、どうみても何かが爆発した――」

ドォォォン!!!

沙織「キャー!! やだもー!!」

かなめ「今度は駐輪場のほうよ!!」

駐輪場

みほ「大丈夫ですか!!」

梓「にしずみ、せんぱぁい……」

みほ「澤さん!」

あや「いたぁい……眼鏡、われたぁ……」

桂利奈「びっくりしたぁ」

あゆみ「あー!? 制服がこげたー!!」

紗希「……」

優希「ごほっ……さいあくぅ……」

優花里「怪我はない? これで拭いて」

優希「秋山先輩、ありがとうございます。このハンカチ、洗ってかえしますね」

優花里「いいから、いいから」

みほ「こんなこと、誰が……」

かなめ「誰がって……アイツしかいないでしょう……!!」

みほ「相良さん、ですか?」

グラウンド

宗介「参った」

かなめ「なにやってのよ!!!」スパーンッ!!!!

みほ「か、かなめさん……そのハリセン、どこから……」

宗介「中々痛いぞ」

かなめ「うるさい!! あんた地雷とか手榴弾とかをいたるところに仕掛けたでしょう!?」

宗介「肯定だ。今、この学園艦は危険に晒されているからな」

かなめ「だからって、仕掛けていいもんと悪いものがあるでしょーが!!!」

杏「まぁまぁ、千鳥ちゃん」

かなめ「角谷先輩からも言ってください!!」

杏「相良くん、なんでこんなことしちゃうかなぁ」

桃「幸い、重度の負傷者がいなかったらよかったものの、万が一があればどうするつもりだ!!」

宗介「この学園艦の警備システムについては最初から疑問だった。言ったはずだ。海の上にいようと安全ではないと。俺はそれを身をもって知ってほしいと思い――」

かなめ「屁理屈いうなぁー!!!」パーンッ!!!!

みほ「お、落ち着いてください!」

生徒会室

柚子「負傷者10名、眼鏡1個が破損。被害報告は以上です」

桃「相良。お前は戦術アドバイザーなんだぞ。学園の警備まで頼んだ覚えはない」

宗介「思いのほか騒ぎになったのは謝罪する。しかし、手遅れになってからでは遅いんだぞ」

桃「この大洗にテロリストでも来るというのか、お前は」

柚子「よく桃ちゃんが授業中に妄想してるやつだね。授業中にいきなりテロリストがきたー、とか」

桃「そんな妄想してないっ!!!」

かなめ「すみません!! あとでちゃんと言い聞かせておきますから!!!」

みほ「あ、あの」

杏「なに、西住ちゃぁん」

みほ「仕掛けられていた地雷や手榴弾はとても人を殺傷するようなものではなかった気がします。音と煙だけは派手でしたけど」

かなめ「え……」

柚子「確かに負傷者といってもみなさんはごく浅い擦り傷程度で、傷は残らないということです」

杏「駐輪場で爆発したのに、自転車が汚れはしても壊れてないっていうのは変だしねぇ」

みほ「相良さんは本当に私たちに危機意識を持ってほしかっただけなんじゃないですか?」

桃「西住、それは相良のことを買いかぶりすぎだ」

かなめ「そうよ、みほ。この戦争ボケはこういうやり方しか知らないのよ」

みほ「でも……」

杏「私も西住ちゃんの意見に賛同しちゃおっかなぁ」

桃「会長まで、何を言っているのですか」

杏「たった二時間程度で演習地のいたるところに地雷や罠を仕掛けられる相良くんが、殺傷能力皆無の罠を仕掛けた理由は他にないだろうし」

かなめ「それは……えーと……」

杏「この学園艦が狙われてるのは、事実だしな」

かなめ「……!」

宗介(まさか、会長閣下は気が付いているのか)

みほ「狙われているんですか?」

杏「学園艦や戦車を欲しがる連中から売ってくれーって電話がよく来るんだよねぇ。ぜぇーんぶ断ってるけど」

みほ「その人たちが直接的な嫌がらせをしてきたことがあるんですか?」

杏「今んとこはないね」

みほ「相良さんは何か知っていますか?」

宗介「俺から言えることは何もない」

みほ「……」

杏「まぁ、他の生徒が危ない目にあっちゃうのはNGだね。相良くん、気持ちは嬉しいけど控えめにしてくれる?」

宗介「はっ。了解しました」

杏「よし。んじゃ、また授業でね」

宗介「はっ」

桃「それだけですか!?」

杏「いいじゃん。相良くんは善意でやってくれたんだから」

桃「だからって学園内を侵害していかれては……」

柚子「善意のトレスパスだね」

杏「お、いいねぇ。なんかのフレーズにつかえそう」

桃「はぁ……」

みほ「あの、相良さん。言えることはないって、言えないと解釈してもいいんですか?」

宗介「どのように解釈しようと、それは西住の自由だ」

みほ「分かりました……」

倉庫

カエサル「結局、怪我をした人も大したことはなかったと聞いたけど」

エルヴィン「ああ。ウサギさんチームは全員爆発に巻き込まれたらしいが、見ての通りピンピンしている」

あゆみ「ボン太くん、まだあるんだ」

桂利奈「そういえば結局、千鳥さんにボン太くんとお話しする方法聞けてないなぁ」

あや「これで相良先生って戦車と戦ったんだよね」

紗希「……」ツンツン

梓「こら、相良さんのなんだから勝手に触らない」

モヨ子「全部、相良さんの仕業らしいですね」

希美「そうなの? あの人、真面目そうだったのに」

おりょう「ただの悪戯だったぜよ?」

左衛門佐「そうでもないらしい。西住隊長の話では、避難訓練の一種だったとか」

カエサル「避難訓練で地雷を使うのか」

エルヴィン「実戦向きの避難訓練だったということか」

おりょう「実戦すぎるぜよ」

あけび「キャプテン、足は大丈夫ですか」

典子「うん。もう平気だ」

妙子「よかったぁ」

忍「爆発で足を痛めたんじゃなくて、驚いた拍子に足がグキっとなったんですよね」

典子「そうそう。あんな大きな音が足元から聞こえてきたら誰だってびっくりするし」

みどり子「相良さんは何を思ってあんなものを仕掛けたのかしら。あんなの校則違反よ」

麻子「避難訓練の一種だろ。左衛門佐さんがそう言ってた」

みどり子「それなら事前に通達して、何時から行うのかを明確にしておくべきよ」

麻子「突然やるから避難訓練になるんだ」

みどり子「それは分かってるけど、せめて風紀委員には話を通しておいてほしいっていってるの」

優花里「避難訓練だとしても、何故このタイミングで行ったのかは気になりますね」

沙織「戦術アドバイザーって避難訓練の指導とかもするの?」

優花里「相良教官はあくまでも戦車道のアドバイザーですからね。避難訓練を企画、実行する立場の人ではないと思うのですが」

桃「教員というわけでもありませんものね」

優花里「今日でなくてはいけない理由でもあったのでしょうか?」

>>362
桃「教員というわけでもありませんものね」

華「教員というわけでもありませんものね」

ホシノ「気になるなら本人に聞けばいいんじゃない?」

宗介「全員、集合しているな」

沙織「はぁーい」

宗介「では、校庭60周から始めろ」

おりょう「了解ぜよ」

桂利奈「がんばるぞー!!」

左衛門佐「数日で10周も増えていることに誰も突っ込まないでござる……」

優花里「あの! 相良教官! 発言、よろしいでしょうか!!」

宗介「許可する」

優花里「今朝の爆発、避難訓練だと聞きましたが、何か脅威目標でも近づいてきているのでしょうか!?」

宗介「下士官が気にすることはない。以上だ」

優花里「はっ!! 失礼しました!!」

沙織「ゆかりん!? それで納得するの!?」

宗介「訓練は既に始まっているぞ!! さっさと走れ!!!」

麻子「メンドーだな」

典子「いくぞー!!」

宗介「磯辺!」

典子「はい、なんですか?」

宗介「足は大丈夫なのか」

典子「はい。もう平気です! この通りです!!」

宗介「そうか。すまなかった。お前の負傷は俺の責任だ」

典子「いえ、地雷に気が付けなかった私が悪いんです」

妙子「そうなんですか?」

宗介「磯辺には期待している。頼むぞ」

典子「はい!! 頑張ります!!」

華「アヒルさんチームは選抜されそうですね」

沙織「アルさんが相良さんはアヒルさんチームのことを高く評価してるとか言ってたしね。ん? もしかして相良さんって典子のことが……!」

かなめ「でも、あいつは沙織のことが気になるって言ってたわよ?」

沙織「えぇ!? モテ期きちゃった!? どーしよー!」

かなめ「沙織は可愛いもんね……」

みほ(きっと相良さんは磯辺さんみたいに真っ直ぐで迷いのない人が好きなんだろうな……)

みほ(磯辺さんに比べて、私は……)

ねこにゃー「あの、西住さん」

みほ「どうしたの、猫田さん?」

ねこにゃー「相良さんのことなんだけど……」

みほ「なにかな」

ねこにゃー「相良さんが学園の周辺に罠を仕掛けたのって、その、あの人が原因なんじゃないかな……」

みほ「あの人って?」

ねこにゃー「長い銀髪の男の人が千鳥さんの前に現れたの」

みほ「……!」

ねこにゃー「黙っていようか迷ったんだけど、相良さんが爆弾まで仕掛けるってことは……もしかしたら千鳥さんが危ないのかもしれないし……」

みほ「私も同じ人を見た。それで話しかけられて……」

ねこにゃー「西住さんも? な、なにかあるのかな、その人……?」

みほ「とにかく、かなめさんはみんなには黙ってるみたいだし、このことは私たちだけの秘密にしよう。教えてくれてありがとう、猫田さん」

ねこにゃー「うん。西住さんがそういうなら、秘密にする」

演習地

みほ「では、戦術練習に移ります。各車、準備してください」

梓「はい!」タタタッ

ナカジマ「はいはーい」

かなめ「今日も砲弾、いれまくっちゃうわよ!!」

ももがー「目指せ! 行進間射撃命中率100パーセント!!」

ぴよたん「がんばるずら!」

ねこにゃー「うんっ。目標だけは高くないと、みんなの力になれない」

かなめ「燃えてるわねぇ。あたしも気合入れ直さないと」

ねこにゃー「……」

かなめ「ほら、何ぼーっとしてるの。いつものお願い、車長さん」

ねこにゃー「あ、う、うん。パンツァー……」

ももがー・ぴよたん・かなめ「「フォー!!!」」

宗介「千鳥も随分、馴染んできたな。アリクイさんチームに問題はない。あとは……」

杏「西住ちゃん、試合に出てくれると思う?」

宗介「分かりません。ただ西住の悩みはごく個人的なことであり、組織には関係のないことです」

杏「そう?」

宗介「はい。部隊を統率する長としては三流です」

杏「なかなか手厳しいね、相良くん」

宗介「申し訳ありません」

杏「いや、いいんだ。傍から見ればそう映っちゃうだろうし」

宗介「このチームは西住が引率しているためか、皆が優しすぎる。個々がチームを支えている」

杏「それは悪いこと?」

宗介「いえ。しかし、時としてその優しさが命取りになることもあります。戦場では仲間を切り捨てる覚悟も必要です」

宗介「この学園も己の信念も仲間も守りたいなど、虫の良い話です」

杏「そういう隊長がいてよかった。私はそう思う」

宗介「自分もこのチームは恵まれていると思います。無能な指揮官の下で命を削る者たちが見れば、垂涎するほどに」

杏「あんがと。それじゃ、練習に行ってくるよ」

宗介「お気をつけて」

杏「うん」

別の日 陣代高校 生徒会室

敦信「ここまで足を運んでくれたことに感謝する。君のことはダージリンと呼んだほうがいいのかな」

ダージリン「ええ。その名のほうが落ち着きます」

敦信「早速だが、大洗の件については聞いているだろうか」

ダージリン「はい。一週間ほど前、角谷さんから試合の申し込みがありましたわ」

敦信「返答は?」

ダージリン「もちろん、快諾いたしました。前回の親善試合で約束もいたしましたから。また公式戦で戦いましょうと」

敦信「なるほど。今回は戦車道連盟公認試合。故に快諾した、と」

ダージリン「いいえ。非公認でも快諾はしました。大洗との再戦を願っていたところですの」

敦信「君たちが勝てば、大洗は廃校になる」

ダージリン「……」

敦信「それはどう考えている?」

ダージリン「残念です。とても」

敦信「それだけかな」

ダージリン「他に何か欲しい言葉でもありますの? であれば、言ってください。わたくしもその言葉をご用意いたしますわ」

敦信「手を抜くつもりはない、ということか」

ダージリン「こんな格言を知っているでしょうか。――全ての人間が平等である一つの場所がある。死ぬときである。その場合、彼らはすべてゼロである」

敦信「……」

ダージリン「貴方のやろうとしていることは想像がつきますわ。林水敦信さんの辣腕はわたくしの耳にも届いているほどですもの」

敦信「それは光栄だね」

ダージリン「わたくしをここへ呼んだのも、次の試合で――」

敦信「なんとしても勝ってほしいのだよ」

ダージリン「……はい?」

敦信「聞こえなかったかね。オールスターチームにはなんとしても勝利してもらいたい。我が陣代高校も微力ながら協力させてもらう」

蓮「物資が必要であれば仰ってください。全てご用意させていただきます」

ダージリン「林水さん。貴方は角谷さんと友人関係にあると聞きましたが」

敦信「だからといって、友好的ではない」

ダージリン「何をお考えで?」

まほ「――失礼する。到着が少しばかり遅れてしまった」

ダージリン「まほさんまで……」

敦信「わざわざ遠いところから、誠にすまない。西住まほ君」

まほ「黒森峰に直接来たのは貴方のほうからだ。次はこちらから出向くのが礼儀というものよ」

敦信「噂通りの人物だね。確かに私は黒森峰まで出向きはしたが、そのときに君とは顔も合せていないというのに」

まほ「逸見エリカが応対した。それで十分よ」

敦信「君のような淑女がいると、戦車道の評判も上がることだろう。まさに日本を代表する選手だ」

まほ「用件は例の試合のことらしいけれど」

敦信「今、ダージリン君にも話をしていたところだよ。次の試合、どんな手を使ってでも、君たちには勝利してほしい。そのための協力はいくらでもする。とね」

まほ「本当に?」

ダージリン「ええ。今のところは」

まほ「……」

敦信「プラウダのカチューシャ君とサンダース大付属のケイ君にも声をかけたのだが、どうやら都合が悪いようだ」

ダージリン「頭を下げにきたの間違いでしょう」

まほ「貴方は、私たちが本気で試合に臨まない。そんな心配をしているのか」

敦信「何故そう思う?」

まほ「勝利してほしいという言葉に、それ以外の意味は含まれない」

ダージリン「ご安心を。オールスターが負けては世界に対して顔向けできなくなりますもの」

敦信「ダージリン君は言ったね。私と角谷君が友人関係にあると。それは君たちにも言えることだ」

ダージリン「……」

敦信「西住君に至っては、相手校に可愛い妹がいる。我々が真っ先に疑うのも無理はないだろう」

まほ「心外だ。相手が妹だろうと、敵ならば撃ち落とすのみ」

敦信「それが西住流ということか」

まほ「そうだ」

敦信「よくわかった。試合を楽しみにしている」

まほ「話はこれで終わり?」

敦信「もう一つ、ある」

ダージリン「なんでしょう」

敦信「大洗女子学園が廃校になったあとの話だよ」

まほ「なに?」

敦信「世界を巻き込むほどの大事件になるかもしれない案件だ。よく聞いてほしい」

ダージリン「大げさですわね。話が長くなるなら紅茶を淹れましょうか」

倉庫

アル『アルベルト・ケッセルリンクはどうでしょうか』

カエサル「いや、アルギュロスで」

おりょう「アーネスト・サトウぜよ」

左衛門在「あ、鮎川清長!」

エルヴィン「よし。アルバート・エルンストでどうだろうか」

カエサル・おりょう・左衛門佐「「それだぁ!!!」」

アル『ラジャ。私のソウルネームはアルバート・エルンストで登録いたします』

エルヴィン「アルさんと呼ぶより、アルバートと呼んだほうがしっくりくるな」

おりょう「くるぜよ」

宗介「アル。何をしている」

アル『……』

宗介「聞こえないのか」

アル『私のことはアルバートとお呼びください、軍曹殿』

宗介「おまえ……!」

カエサル「まぁまぁ、相良教官。これはアルさんからお願いされたことなんだ」

宗介「アルから?」

アル『肯定。ソウルネームで呼び合うカエサル殿たちに興味を持ち、私にもソウルネームなるものを頂けないかと提案してみました』

左衛門佐「結果、アルバートになった」

宗介「いつからここまで友好関係を築いていたのだ。お前には必要のないことだろう」

アル『いいえ。これは必要なことです』

宗介「理由を言え」

アル『私に課せられた任務は大洗女子学園を勝利に導く戦術を組み立てることです。そのために選手のことを知らなければなりません』

アル『データ上の数値だけでは人間のことを測ることは不可能であることを私は学習しています。軍曹が高く評価されている選手にも数値以上の何かがあるはず。私はそれを知りたいのです。どうか許可を』

宗介「許可も何も勝手に選手たちと話しているのだろう」

アル『肯定』

宗介「……了解した。ただし、そこまでしたからには完璧な戦術を組み立てろ。いいな、アル」

アル『……』

宗介「アルバート」

アル『ラジャ』

カエサル「よし、アルバート。我々が考案した戦術もきいてほしい」

アル『どうぞ』

おりょう「まずは――」

宗介(アルまで手懐けられてしまうとは。カバさんチーム、侮れん)

優花里「相良きょうかーん!!」

宗介「どうした、秋山」

優花里「あ、あの、あそこに置いてあったボン太くんなのですが……!」

宗介「それがなんだ」

優花里「その、一年生の子が着てみたいと言い出して、中を開けたところ……」

宗介「開けたのか」

優花里「はい……すみません……中を見てしまいました……」

桂利奈「なんだこれー!?」

あゆみ「なんか着ぐるみって感じじゃなーい」

梓「こら!! 勝手に触らない!!」

紗希「これ、AS……」

優花里「まさか中がこんなことになっていたなんて、思わなくて。これって、その、機密では?」

宗介「問題ない。着たければ着ても構わない」

桂利奈「いいんですか!?」

あや「わーい、きちゃお、きちゃおー」

梓「なんか高価そうなんですけど」

宗介「確かに高価ではあるが、君たちが触れた程度で壊れるほど脆弱ではない」

桂利奈「どーやってうごかすのーこれー?」

宗介「教えてやろう」

優花里「ぜひ!!!」

優希「おねがいしまぁす」

紗希「……」

かなめ「なんだかんだ、みんなソースケを受け入れてるのよね……」

華「よろしいのですか? 相良さんの傍にいなくても」

かなめ「いいわよ、別に」

桃「恋人だろうに」

かなめ「ちがうってば!!」

柚子「そんなに否定しなくても。相良さんが寂しがりますよ」

かなめ「ホントに違うんだってば!!!」

沙織「相良さんって私に一目ぼれしちゃったんじゃないのぉ?」

麻子「いつそんな話が出たんだ」

みほ「……」

杏「いい感じにまとまってきたんじゃない? 千鳥ちゃんと相良くんが入っても、みんな仲良くしてるし、上手く回ってる」

みほ「あ、会長。そうですね」

杏「決まった?」

みほ「……」

杏「大洗の隊長として試合に出場する。そして西住流を駆使して戦う。勝てば西住流が更に評価されるも、日本の戦車道人気は低下するかもしれない。負ければ学園艦は廃艦」

みほ「世間は大洗の勝利を期待すると思います。でも……」

杏「西住ちゃんのお母さんに迷惑をかけちゃうかもしれないな。色んな人と繋がってるなら尚更ね」

みほ「お母さんが責任を取らされることになるかもしれないって考えると……」

杏「だよねぇ。難しいか……」

>>288
宗介「西住を抜いた現戦力ではとても俺一人では勝利させることは困難を極める」

宗介「西住を抜いた現戦力を俺一人で率いて勝利させることは困難を極める」

>>379
ダージリン「頭を下げにきたの間違いでしょう」

ダージリン「頭を下げてきたの間違いでしょう」

メリダ島基地

クルツ「これが調査報告書ッス」

テッサ「ご苦労様、二人とも」

クルツ「大したことはなかったぜ。マオも一緒だったしな」

テッサ「なるほど……」ペラッ

マオ「生徒数の減少を理由に学園艦を廃艦させる動きが活発になったのはここ数年の話ね。それも学長や生徒会役員にも伝えず、水面下で進んでいたみたい」

クルツ「廃校が決定しても新入生や転校生を受け入れてた理由はそこだな。学園の運営側と学園艦を管理するところが繋がってなかったわけだ」

テッサ「高度な学生自治を行うために造船されたのが学園艦だというのに。これでは大洗女子学園生徒会の自治権に対する侵害に他ならないわ」

マオ「そんなの建前よ。子どもに大きな玩具握らせて暴れられたら、大人の責任になるんだから。けれど、更に深く掘っていくと汚い大人の事情が見えてくるわけ」

テッサ「戦車接収及び学園艦の解体について……」

クルツ「書類上ではどちらも規定通り即廃棄処分になるが、裏では既にオークションが始まってたぜ」

テッサ「そのオークションに参加している企業も見たことがある組織ばかりですね」

マオ「いくつかはうちらともやりあってるわね。それに万国の軍事企業が席についている」

クルツ「戦車のコーティング技術には国を動かせるぐらいの金が動いてる。それを今更生徒が死にもの狂いの練習の末、戦車道日本一を勝ち取ってもキャンセルはできないってこったな」

テッサ「アマルガムがこのオークションに絡んでいる可能性はありますか?」

マオ「そこまでは調べられなかったわ。ま、どこかでつながってるでしょ」

テッサ「でしょうね」

テッサ(そうでなければ、あの人が学園艦にいるはずがないもの)

クルツ「大洗女子学園の廃校は規定事項。今度の試合の勝敗に関わらず、海の底だろうな。かわいそうに。サオリはどこにいっちまうのか。俺が優しく抱きしめてやりてぇ」

マオ「なんらかの妨害工作もあるかもしれないし、びっくりするような屁理屈で廃艦の流れを作るんじゃない」

テッサ「サガラさんが大洗女子学園へ留学して26日目。動きがあるとすればそろそろですね」

クルツ「俺はソースケにコーチを頼まれてるから、明日には学園艦に行かせてもらうぜ」

テッサ「構いません。最初から二人には学園艦へ行ってもらう予定でしたから」

マオ「あたしも?」

テッサ「あと、クルーゾーさんにもお願いしてあります」

クルツ「うへぇ。中尉もかよ」

マオ「了解。でも、あれだけの艦船を少人数で護衛するの? いくらAS込みでも死角はできるわよ」

テッサ「心配いりません。カリーニンさんも尽力してくれているようですので」

マオ「少佐の協力があるなら、心配いらないわね」

テッサ「新しい警戒システムのテストも無事に終了しました。あとは実践だけです」

大洗女子学園 倉庫

ホシノ「こっちは終わったよ」

ナカジマ「それじゃ、次行ってみようか」

スズキ「オッケー。ヘッツァーの整備始めるよー」

宗介「お前たち、まだ整備をしていたのか」

ツチヤ「相良さんこそ、どうしたんです?」

宗介「夜間巡回を行っていたところだ」

ナカジマ「巡回って学園のですか?」

宗介「いや、学園艦全域だ。やはり警備システムに穴があるようだからな」

ナカジマ「まぁ、学園艦を襲ってくるような人たちはいないですからね」

宗介「甘いな。そうした油断は危険だ。いつ何時、この学園艦が戦争の道具にされるか分からない以上、常に警戒はしておくべきだ」

ナカジマ「そんなもんですか」

宗介「仮にだ。この戦車が強奪されたらどうする。どこかの紛争地域へ輸送され、兵器として運用されてしまうかもしれないのだぞ」

ナカジマ「それは困りますね。私たちの大事な仲間を兵器として使われたら悲しいです」

宗介「仲間?」

ナカジマ「はい。レオポンだけじゃなく、ここにいる子たちはみんな、仲間です」

宗介「兵器が仲間か」

ナカマジ「これは私たちだけじゃなくて、戦車道メンバー全員が想っていることです」

ホシノ「特にアヒルさんチームはすごいよね」

スズキ「宴会のときに八九式を弄ったらすっごく怒ってたもんね」

ツチヤ「あれは怖かったよねぇ。結構、ホンキだったし」

ナカジマ「それだけ磯辺さんたちは戦車のことが好きになったってことでしょ」

宗介「そうか。戦車が仲間か」

ナカジマ「おかしいですかね」

宗介「……いや。そんなことはない」

アル『はい。ナカジマ殿は正論を述べているようにしか聞こえません』

宗介「勝手に話に入ってくるな」

ナカジマ「アルさんもいつまでネット電話しているんですか」

アル『アルバートです』

宗介「もういい。通信を終了する」

>>401
宗介「そうか。戦車が仲間か」

宗介「そうか」

宗介「お前たちも無理はするな。試合も近いのだからな」

ナカジマ「あと一ヶ月なんですよね。そろそろ選抜チームとか決まってたりするんですか」

宗介「まだ何も言えん。お前たちの能力に関して把握してきたところだ」

ナカジマ「発表までドキドキしちゃいますね」

宗介「戦いたいか」

ホシノ「滅多にない試合だしね」

ツチヤ「やるよー。自動車部の誇りをかけて」

スズキ「みんなで一緒に戦車道がしたいってだけですけど」

宗介「良いチームだな」

ナカジマ「じゃなきゃ、優勝なんてできませんから」

宗介「その通りだ。引き続き整備を進めておいてくれ」

ナカジマ「了解しました。相良さんもほどほどにしてくださいね」

宗介「分かっている。教官の俺が過労で倒れては示しがつかないからな」

ナカジマ「あはは、そうですね。では、また明日」

宗介「ああ」

寮 千鳥の部屋

かなめ「うん。こっちは楽しくやってるわよ」

恭子『そっかぁ。相良君もカナちゃんもいないから、こっちは寂しいよ』

かなめ「そんなこといって。平和な学園生活を送れてよかったじゃない」

恭子『平和すぎるっていうのもつまんないね』

かなめ「あ、あんたねぇ、ソースケに毒されてんじゃないの」

恭子『えへへ。そうなのかな。でもね、寂しいのは本当だよ』

かなめ「あと一ヶ月で終わりよ。すぐにそっちが騒がしくなるわ」

恭子『応援、絶対にいくからね』

かなめ「あたしは試合に出れないかもしれないわよ?」

恭子『でも、カナちゃんの友達が試合に出るんでしょ? なら、応援しなきゃ』

かなめ「恭子……」

恭子『がんばってね。こんなことしか言えないけど』

かなめ「ううん。嬉しい。ありがとね」

恭子『おやすみ、カナちゃんっ』

翌日 生徒会室

桃「会長、お連れしました」

杏「やぁやぁ、クルツくん」

クルツ「久しぶりだな、アンズ」

杏「射撃コーチをしてくれるって話だけど」

クルツ「俺に任せてくれ。一流スナイパーの腕、みせてやるぜ」

柚子「スナイパー!?」

桃「相良はどういう組織に属しているんだ」

杏「じゃ、お願い」

クルツ「仰せのままに」

クルツ(女子校かぁ。いい匂いだなぁ)

桃「会長」

杏「まかせる」

桃「はっ」

柚子「え? え? 桃ちゃん? どこにいくの?」

通学路

かなめ「今日こそ、装填時間を0.5秒縮めてやるわ」

宗介「千鳥、少し待ってくれ」

かなめ「なによ」

宗介「あと30秒で合流できるはずだ」

かなめ「誰と?」

マオ「――おっはよ、カナメ」

かなめ「マオさん!? どうしてここに!?」

マオ「艦長命令よ」

宗介「例のシステムは?」

マオ「昨夜のうちに整えたわ。角谷会長の許可も得てね。おかげで一睡もしてないのよねぇ」

宗介「今日はゆっくり休んでくれ」

マオ「そうさせてもらうわ。あと、清掃員に扮したベンもいるから、挨拶ぐらいはしときなさいよ」

宗介「了解した」

かなめ(かなり大事になってきてる……。みほたち、気づいてないかしら……)

学園内 廊下

クルーゾー「……」ゴシゴシ

紗希「……」

梓「ほら、早くしないと遅刻するよ」

紗希「……」

クルーゾー「……」ゴシゴシ

梓「あの人が気になるの?」

紗希「……」コクッ

梓「確かに見たことのない清掃員さんだけど……」

クルーゾー「何か?」

梓「あ、お、おはようございます」

クルーゾー「おはよう」

紗希「……」

クルーゾー「くっ……」

クルーゾー(この少女、なんて純粋な目をしている……。全てを見透かされているかのようだ……!)

クルツ「ハッハー、これはこれは清掃員のクルーゾー殿じゃないですかぁ」

クルーゾー「貴様のことなど、知らんな」

クルツ「おや、そうかい?」

梓「相良さんと一緒にいた……」

クルツ「よろしく、アズサちゃん。今日からコーチとして赴任した。俺のことはクルツくんって呼んでくれ」

梓「は、はぁ」

クルーゾー「仮にも上官と下士官がそのように気安い関係でいいのか」

クルツ「あぁ?」

クルーゾー「ある程度の信頼を築いたあとならばまだしも、初日からそれでは舐められることになり、貴様の後ろを誰も追いはしないだろう」

クルツ「おいおい、一清掃員が口だしかぁ?」

クルーゾー「私は当たり前のことを述べただけだが」

クルツ「いってくれんじゃねえかよ」

クルーゾー「貴様から受けた惨苦、死んでも忘れることはできん!!」

クルツ「あのアニメのことまだ根にもってんのかよ。大人になれよ」

クルーゾー「貴様がいうなぁ!!!」

バァン!!! ガンッ!!!

沙織「なになに?」

華「騒がしいですわ」

麻子「朝から元気だな……」

梓「や、やめてくださぁぁい!!」

優花里「澤殿です!」

みほ「行ってみよう!」

クルツ「――おらよ!!」バァン!!

クルーゾー「無駄だ!!」ガンッ

クルツ「ちっ。銃やナイフよりデッキブラシを振り回したほうがいいんじゃねえか?」

クルーゾー「お前にはこれで十分ということだ!!」ブンッ!!!!

クルツ「こんにゃろぉ!!」

沙織「クルツさん!!」

クルツ「お! サオリ――」

クルーゾー「敵を前にして視線を外すとはな!!! ウェーバー!!!」

みほ「ふっ!」カンッ!!

麻子「えいっ」カンッ!!!

クルーゾー「な……!!」

みほ「あ、あの、やめてください」

クルーゾー(二人がかりで一撃とはいえ止められてしまうとは……。それも力で正面から受け止めるではなく、挟むようにして……。これが日本の柔術か)

クルツ(女子高生が中尉のブラシをブラシで受けやがったぞ。どんな身体能力だよ)

麻子「朝からうるさい。ケンカなら外でやってくれ」

クルーゾー「失礼した。神聖な学び舎で醜態をさらしてしまうとは……」

みほ「クルツさんとはお知り合いなんですか?」

クルーゾー「いや。今日が初対面だ。なのに威嚇されてしまい、この有様だ。面目ない」

みほ「そうなんですか……」

梓「とてもそうは見えなかったけど……」

クルツ「サオリ、お前の手で癒してくれないか。俺の傷と心の病をよ」

沙織「わ、わわ、私でよければ!!」

華「沙織さん……」

クルーゾー「では、次の現場に向かう」

優花里「お疲れ様です!」

クルツ「はやく、いっちまえ」

沙織「またクルツさんと会えるなんて」

クルツ「もはや、運命だな」

沙織「私もそう思います!」

華「クルツさん。真剣にお付き合いするというのなら構いません。ですが、もし沙織さんを誑かし、殿方としての責務を果たさないのであれば……」

クルツ「な、なんだ?」

華「わたくしは、貴方のことを末代まで恨みます」

クルツ「……!?」

華「沙織さんのことは真剣なのですか? 生涯、沙織さんを守り続けるとここで約束ができますか?」

沙織「ちょ!? は、華!? なんか色々と話が飛んでない!?」

優花里「五十鈴殿、怖すぎます!!」

クルツ「わ、わかった。分かった。まぁ、あれだ、いい友達でいようぜ」

沙織「友達!?」

華「よかったですわ」

沙織「よくなーい!!」

麻子「五十鈴さんが傍にいれば沙織が騙される心配はなさそうだな」

沙織「えー!? どーいういみよー!!」

優花里「実はいうと武部殿のことは私も不安でした」

沙織「ゆかりんまでぇ!?」

みほ「あはは……」

ねこにゃー「おはよう、西住さん」

みほ「おはよう」

ねこにゃー「なんだか、知らない人が増えてるね」

みほ「うん。そうだね」

ねこにゃー「……あの銀髪の人と関係あるのかな」

みほ「なんとも言えないけど、もしそうならそれだけかなめさんが特別な人っていうことになるけど……」

ねこにゃー「そ、それはないか。ちょっとネットをしてると陰謀論とか信じやすくなって……」

みほ「あ、ああ、なるほど。うん、流石にそんなことはないと思うな

グラウンド

クルツ「砲手はこっちに集まってくれぇ。俺が直接、手取り足取り教えてあげるぜぇ。ククク……」

あけび「よろしくお願いします!!」

杏「よろー」

左衛門佐「そろそろ次の段階へ進みたいと思っていたところでござる」

あゆみ「クルツくんってかっこいいよね」

あや「うんうん」

希美「私はあまり……」

みどり子「軟派な男性はね」

ホシノ「そうかな。根は真面目なんじゃない。プロ意識とか高そう」

ぴよたん「プロなんだ」

クルツ(サオリはダメだったが、こりゃあ入れ食いだな。一か月もありゃぁ、全員と……)

華「……」

クルツ「……!?」ビクッ

華「よろしく、お願いします。あんこうチーム砲手、五十鈴華です」

クルツ「お、おう」

華「うふふ。頼りにしています」

クルツ(く、くそ……マオとは違ったやりにくさが……!!)

宗介「あれなら問題ない」

かなめ「そう?」

みほ「私たちはどうしましょうか」

宗介「いつも通りのメニューをこなしてくれ」

みほ「分かりました」

かなめ「みほ……」

宗介「どうした、チドリ」

かなめ「どんどん元気がなくなってる気がして……」

宗介「そうだな。そろそろ決断しなければならないか」

かなめ「決断って?」

宗介「今、この学園艦にはマオがいる」

かなめ「ま、まさか……」

放課後 倉庫

桂利奈「ボン太くんで次の試合の宣伝するってどうかな?」

優希「あ、面白そう」

みどり子「やめなさい。これって相良さんの私物なんでしょ」

梓「一応、誰が動かしてもいいって言われてはいるんですけど」

優花里「見れば見るほど、ASですね」

紗希「……」コクッ

みほ「……」

かなめ「みほっ」

みほ「え、あ、かなめさん」

かなめ「これからお風呂でもどう?」

みほ「うん。行こうかな」

沙織「みーんなでいこー!」

かなめ「クルツくんは……いないか……」キョロキョロ

みほ「クルツさんがどうかしたんですか?」

生徒会室

杏「んじゃ、相良くん。発表してくれる?」

宗介「はっ。現状のままであれば、あんこうチーム、アヒルさんチーム、レオポンさんチーム、ウサギさんチーム、そして……」

杏「……」

宗介「カバさんチームで試合に臨むことになるでしょう」

杏「そう」

桃「何故だ」

宗介「なんだ、河嶋」

桃「何故、我々が選ばれない」

柚子「桃ちゃん……」

宗介「この一か月で評価した結果だ。それにこれは決定ではなく、中間発表だ。不満があるのなら残りの期間で挽回すればいい」

桃「しかし!!」

杏「やめろ、かわしまぁ。相良くんが選んだチームなら勝てる可能性が最も高い。そうだな?」

宗介「肯定であります」

杏「それなら文句はないよ。引き続き、よろしくね」

桃「会長、よろしいのですか」

杏「なんで?」

桃「貴方は……!」

杏「ストップ。それ以上言うと、あんこう踊りしてもらうよ」

桃「……」

宗介「カメさんチームを選ばなかった理由は、お前たちの精神部分によるところが大きい」

桃「精神面? そんなことで選んだのか」

宗介「肯定だ。はっきりいえば、あんこうチーム以外、見るべきところはそこしかない」

桃「なんだと……!!」

宗介「個々の能力は別にして、総合的な能力だけを見れば優勝できたことが奇跡といえるほど、大洗女子学園は弱い」

柚子「それを言われると……」

宗介「何故、優勝できたのか。それは西住の采配、全員の士気の高さ、そして相手の慢心。それらが重なり、優勝という結果を出した。俺はそう分析している」

桃「皆の努力は考えないのか」

宗介「全員が会長閣下のような努力をしたというのなら話は別だが、そうではないだろう」

桃「そ、れは……」

宗介「誰よりも早く起床し、そして誰よりも遅く就寝する。学園艦の全生徒を統括する立場である会長閣下は常に多忙だ」

宗介「そんな中でも時間を見つけては砲撃技術を高めるため、特訓を繰り返したことは想像するまでもない」

宗介「そして、それは今も尚、続けている」

杏「やめー。そんな話はいいから」

宗介「失礼しました」

桃「それだけ分かっているなら、何故選ばない。カメさんチームを選ばずとも、会長だけはどこかのチームに入れるべきだ」

宗介「今からチームメンバーの入れ替えを行うなど愚策の極みだ。チーム能力を下げることになるぞ」

桃「そんなことにはならない!」

宗介「普段から全員とコミュニケーションが取れているからか? それは違う。たとえ数か月といえど、チーム内で築きあげたものがある。それを崩せば全体の能力は下がる」

桃「まだ時間はある!!」

宗介「1から始めるよりも5を6にするほうが勝率は上がる」

柚子「やめて、桃ちゃん」

宗介「それと何か勘違いしているようだが、技術面だけを見ればカメさんチームを選抜したほうがいいだろう」

桃「ならば、何故!」

宗介「お前たちは、既に諦めていないか?」

桃「なに……!?」

宗介「俺にはそう映る」

桃「そんなわけない!! 私たちはこの学園を守りたいんだ!!! 誰よりも!!!」

宗介「……」

桃「はぁ……そんなわけ……はぁ……」

杏「当たってるかもなぁ」

柚子「会長!?」

桃「何を言うのですか!!」

杏「二人もなんとなーく、思ってたんじゃない? あれ? 会長、やる気なくない?みたいに」

桃「とんでもありません!! 現に貴方は今まで通り、寝る間も惜しんで練習を……!!」

柚子「戦車道ショップにある筐体ゲーム、毎日プレイしてるじゃないですか。あれで砲手としての技術を高めていたんですよね」

杏「そうだな。練習だけは真面目にした。でも、それは自分を誤魔化すためだったのかもね」

宗介「やはり試合には勝てそうにないですか」

杏「いや。勝っても負けても、学園艦は残りそうにない」

桃「そんなバカな!! 会長は今度こそ約束を取り付けたはずです!! 誓約書もここにあります!!! 勝てば学園艦は残るんです!!」

杏「無理な気がするんだ。なんでかはわかんないけど」

桃「会長がそのように弱気でどうするのですか」

柚子「そうです。いつもみたいにヨユーヨユーって言ってください」

杏「……」

桃「今日は、これで帰ります」

杏「おつかれぇ」

柚子「お疲れさまでした……」

杏「また明日ねぇ」

宗介「――会長閣下。それは直感ですか」

杏「いや。言われたよ。そんなことをしても無駄だって」

宗介「……」

杏「イベントとしては面白いから戦車道連盟公認の試合にできるけど、結果は絶対に変わらないってね」

宗介「なるほど。では、この誓約書も」

杏「ただの紙切れだね。河嶋と小山を安心させたかっただけ。けど、もう隠せない。どうしても表情や態度に出るし、私の気持ちぐらいは正直に言っておきたかった」

宗介「それでもまだこうして準備を進めているのは、奇跡を信じているということですか」

杏「諦めた人間には奇跡なんて起きないからね」

宗介「では、諦めてはいないと」

杏「可能性はゼロじゃない。けど、もう私たちにできることはないんだよね。試合に勝つことは絶対条件だけど」

宗介「試合に勝ち、学園艦教育局の連中を押し黙らせることはできないのですね」

杏「勝ったところで難癖つけられる。戦車道の人気が落ちたーとか、選手人口がへるぅとか」

宗介「なるほど。理由はどうにでもなると」

杏「そ。だから、無理かなぁって思う」

宗介「では、自分を使いますか」

杏「……」

宗介「最後の切り札として、存分に役目を全うします」

杏「そうだな……」

宗介「選手の心、廃校の案件、戦車道の既成概念。その全てを破壊してみます」

杏「……」

宗介「会長閣下。ご決断を」

杏「分かってる。だから、私は相良くんを呼んだんだ。でも……」

大浴場

沙織「はぁー、きもちいー」

華「疲れが取れますね」

麻子「ぐぅ……」

かなめ「いやぁー、何度入っても飽きないわねぇ」

優花里「ですね。このあとはサウナにもはいりましょう」

かなめ「あー、そうしたいけどサウナはやめとくわ。このあと猫田さんたちとミーティングする予定だから」

優花里「ミーティング、ですか」

かなめ「戦車に乗れなくてもできる練習ってあるじゃない?」

優花里「おぉ!! なるほど!! 千鳥殿は熱心でありますね!!」

かなめ「いや、ド素人が試合に出ようと思ったらそれぐらいのことはしないとね。焼石に水かもしれないけど」

優花里「そんなことはありません!! そうした小さな努力が必ず実を結ぶのです!!」

かなめ「よね! 成せばなる!!」

優花里「その通りです!!!」

みほ「……」ブクブク

かなめ「ねえ、みほ?」

みほ「あ、はい」

かなめ「あたしね。きっと勝てると思うの。みんなで戦えば」

みほ「……」

かなめ「だって、これだけみんなが一致団結してるって中々ないことよ。きっと日本中探しても大洗以上にチームワークが良いところなんてないわよ」

沙織「私もそうおもうー」

華「同感です」

優花里「我々の絆はメルカバMk.4並に厚いですからね!!」

麻子「おー……ぐぅ……」

かなめ「だから、大丈夫よ。負けるなんてありえないわ。たとえみほがいなくても、みんなみほの戦車道で戦ってきたんだしね。ソースケが邪魔させしなければ、なんとかなるって」

みほ「決められないんです」

かなめ「え?」

みほ「私は学園を守りたい。みんなといたこの場所が大好きだから。でも、決められないんです」

かなめ「それはどうして?」

みほ「それは――」

>>423
かなめ「だから、大丈夫よ。負けるなんてありえないわ。たとえみほがいなくても、みんなみほの戦車道で戦ってきたんだしね。ソースケが邪魔させしなければ、なんとかなるって」

かなめ「だから、大丈夫よ。負けるなんてありえないわ。たとえみほがいなくても、みんなみほの戦車道で戦ってきたんだしね。ソースケが邪魔さえしなければ、なんとかなるって」

脱衣所

クルツ「クックック。男湯がねえから、ここを使うしかねえんだよなぁ。これは仕方ねえことだ」

クルツ「ソースケのことだから、こういう写真は撮ってねえだろうし……」

クルツ「んじゃ、桃源郷を拝んでみますか」


みほ『次の試合に勝ってしまうと、お母さんにもお姉ちゃんにも大洗のみんなにも迷惑がかかるかもしれない。それに私は自分の戦車道を貫けないかもしれない』


クルツ(西住流っていえば、軍部にも結構な門下生がいるって話だしなぁ。そこの娘がなんかやれば、色んな圧力がかかるかもしれないな)


『戦うことでみんなが批難されるかもしれない。どんなバッシングがあるか、分からない。このまま戦わないほうが良いのかもしれない』

『そんなことを考えると、決められないんです。怖いんです』


クルツ「……」


『嫌な思い出を残して卒業することになったら……』


クルツ「なんか萎えちまったな。戻る――」


カチンッ

大浴場

『ギャァァァアア!!!!』

優花里「なんですか!?」

華「なんでしょう?」

沙織「みてくる!」テテテッ

みほ「ごめんなさい」

かなめ「優しいのね、みほは」

みほ「私はただ臆病なだけで……」

麻子「西住さんはそれでいい」

みほ「麻子さん……」

麻子「西住さんだからこその悩みだ。私なら何も考えずに学園を守ることだけを考えていただろう」

みほ「いえ、そんな……」

麻子「決めないという決断も、私は受け入れる」

みほ「ごめんなさい……」

沙織「なにもなかったよー」テテテッ

華「みほさん、わたくしたちの心配は不要ですわ」

優花里「そうです。前にも言った通り、西住殿の悪口なんて絶対に言わせませんし、私たちに何かしらの罵声が飛んできても気にしません!」

沙織「そーそー。乙女にゴシップは付き物だしね。気にしちゃキリがないもん」

かなめ「いや、それは違うでしょ」

麻子「私たちだけでなく、他のメンバーも同じことを言うと思う」

みほ「うん……」

かなめ「おっと。もうそろそろ行かなきゃ。ごめんね」

優花里「いえ。また一緒に入浴しましょう」

かなめ「もっちろん」

華「さようなら、かなめさん」

みほ「また明日」

かなめ「ええ。明日もよろしく!」

みほ「ふぅ……」

沙織「今日はどこよっていこっか?」

麻子「アイスがいい」

アイスクリームショップ

マオ「どうやら警戒システムは上手く作動してくれたみたいねぇ。脱衣所のネズミが一匹駆除できたわ」

華「あの、よろしいでしょうか」

マオ「あら、いらっしゃいませ」

華「バニラとさつまいもとチョコレートでお願いします」

マオ「よく食べるわねぇ」

華「はいっ。アイス、大好きなんですっ」

麻子「いつもの店員ではないな」

沙織「新人さんかな」

優花里「西住殿はどうしますか?」

みほ「……」

優花里「西住殿?」

みほ「外……」

優花里「え? あ、あの人は……」


レナード「……」

マオ「はい、どうぞ」

優花里「あ、ありがとうございます」

マオ「カッコいい男でもいたわけぇ?」

優花里「そういうことではないのですが」

みほ「銀色の髪をした、男の人で……」

マオ「なに?」

みほ「前に話しかけられたので、気になって」

沙織「みぽりん、あの人に惚れちゃった?」

みほ「そ、そうじゃなくて!!」

優花里「なんかショックですぅ……」

みほ「ちがうの! というか、なんでショックなの!?」

マオ「どっちに行った?」

みほ「え?」

マオ「早く言う!」

みほ「む、向こうです! 出入り口を出て右のほうへ行きました!!」

マオ「ありがと!」

みほ「あの、お会計は!」

マオ「あたしの奢りー! ゆっくり食べて!!」

沙織「いいんですかー!?」

マオ「いいから、いいから! ――ウルズ2より各位、これより最重要人物を追う」

華「なんだったのでしょうか……」

沙織「あの店員さんの元カレとかかなぁ」

麻子「そんな風には見えないが……」

優花里「店を空にしていいのでしょうか」

華「泥棒が入ってしまいますよね」

みほ「かなめさんと関係あるのかな……?」

沙織「なんで?」

みほ「あ、ううん。なんでもない!!」

沙織「そう?」

みほ(もし猫田さんの言っていることが当たっているなら……)

学園内

宗介「ウルズ7、了解。ただちに応援へ向かう」

クルーゾー『いや、ウルズ7はチドリカナメの護衛に専念しろ』

宗介「了解」

クルツ「おーいってぇ……。いきなり床が抜けるってどういうトラップだよ」

宗介「酷い格好だな、クルツ」

クルツ「色々あってな」

宗介「そうか。俺はこれよりチドリの下へ急ぐ」

クルツ「はいよ。しっかり守ってやんな。俺はマオのところにいくからよ」

宗介「気を付けろ。何が起こるか分からんぞ」

クルツ「おめえも気を付けろよ」

宗介「分かっている」

クルツ「んじゃ、いくとしますかぁ」

宗介「ウルズ7、移動を開始する」

クルツ「こちらウルズ6、ウルズ2のサポートにはいるぜぇ」

寮 ねこにゃーの部屋

かなめ「つまり、ここでこういくと、黒森峰は森を突っ切ってくるってことね」

ももがー「多分」

ぴよたん「それなら、川から攻めるのは?」

ねこにゃー「遠回りになっちゃうけど、裏をかける――」

バンッ!!!

ねこにゃー「ひっ!?」ビクッ

かなめ「誰!?」

宗介「チドリ!! 無事か!!」

かなめ「いきなり土足で上がり込んでこないでよ!!」

ももがー「びっくりしたなりぃ」

ぴよたん「テロリストが襲ってきたかとおもったぁ」

宗介「ウルズ7より各位へ、護衛対象者チドリカナメは無事だ」

かなめ「いいから靴ぬげー!!!」

ねこにゃー「あの、説明してくれると嬉しいんだけど……」

宗介「問題ない。君たちはミーティングを進めてくれ」

ねこにゃー「えぇぇ」

かなめ「ちょっと、ソースケ」

宗介「なんだ」

かなめ「(なんかあったのね?)」

宗介「(肯定だ。だが、心配するな。既に各員配置についている)」

かなめ「(私はいいけど、猫田さんたちにだけは迷惑かけないでよ)」

宗介「(了解した)」

ぴよたん「なんで二人でこそこそ話してるの?」

かなめ「え? ああ、いや、気にしないで。うは、うはははは」

ももがー「気になるぅ」

ねこにゃー「千鳥さんが気にするなって言ってるんだし、いいと思うけど」

ぴよたん「そうずら?」

かなめ「ありがとう、猫田さん」

ねこにゃー「だ、誰にだって話したくないことはあるから……」



マオ「こちらウルズ2、目標をロストしました。申し訳ありません」

カリーニン『了解。警戒態勢を維持しろ』

マオ「了解」

クルツ『姐さん、どうする。艦橋まで上がって全域を見張るか?』

クルーゾー『勝手なことはするな』

クルツ『わぁーってるよ』

マオ「てっきりカナメのところへ移動したと思ったけど……」

クルーゾー『西住みほの目撃情報だったな。人違いという可能性はないか』

マオ「銀髪の男をどう見間違うの」

クルツ『コスプレしてたとか、あったりするんじゃねえか』

マオ「バカなことを言わないで。周囲の警戒レベルを引き上げる。いいわね、ベン」

クルーゾー『了解だ』

クルツ『こっちも了解』

マオ(にしてもどこに消えた……? あたしたちの追跡を撒くなんて……)

公園

みほ「はぁ……」

みほ(どうしたらいいんだろう……。このままみんなに甘えて良いはずがない……。けど……)

「戦車道の流派、西住流。その権力は軍上層部を動かせるほどと聞く」

みほ「え……」

レナード「久しぶりだね」

みほ「あ、はい……」

レナード「君も大変だったんだろうね。自宅を出入りする兵士に恐怖感を抱いたことはなかったかい」

みほ「え、あの、どうして、そんなことを……」

レナード「西住みほ。その名前で検索すればいくらでも情報は手に入る。君は有名人だからね」

みほ「は、はぁ」

レナード「君の母親、西住まほは更に著名な人物だ。軍内部で知らない者はいないとまで言われているね」

みほ「そう、ですね」

レナード「皆が彼女に戦車戦術について教えを乞う。いや、西住家にと言ったほうがいいか。それだけ由緒ある家柄なんだよね」

みほ「……」

>>435
レナード「君の母親、西住まほは更に著名な人物だ。軍内部で知らない者はいないとまで言われているね」

レナード「君の母親、西住しほは更に著名な人物だ。軍内部で知らない者はいないとまで言われているね」

レナード「このまま試合を行い、万が一、大洗が勝利してしまえば、その影響がどのような波紋となって広がっていくのか、想像はつくだろう」

みほ「……」

レナード「戦車道出身の軍人は多い。上層部にも数人いる。戦車道の選手人口低下について最も憂いているのが、そのあたりの愚か者だ」

みほ「お、おろかものって……」

レナード「無駄に権力を持った者たちは自分の思い通りにならない駒は容赦なく切り捨てる。責任も押し付け、己の手は綺麗なままで」

レナード「大洗が勝利した場合、西住家にも相応の圧力がかかる。現在の門下生が軒並み去っていくこともありえる」

レナード「教えを乞う者も激減する恐れがある。大変なことだね。しかし、そんなこと、君には関係がないはずだ」

みほ「あの、いきなりなんですか?」

レナード「君はどうして悩むんだい?」

みほ「え……」

レナード「母親に裏切られた君が、どうして母親を想うのか僕には分からないな」

みほ「別に、裏切られたわけじゃないです。むしろ、私が悪くて」

レナード「君は親に捨てられた。十分な裏切りだ」

みほ「ち、違います」

レナード「西住しほに義理立てする理由は、君にはないはずだ。戦えばいい。君のやりたいようにやればいい」

みほ「なにを……いって……」

レナード「赤の他人を気遣い、躊躇う必要なんてない」

みほ「そんなこと……」

レナード「とても優しいんだね。捨てられても、そうして悩めるなんて」

みほ「あなたの、目的はなんですか……」

レナード「皆には心残りがないようにしてほしいだけさ。もうこの学園艦を見ることはなくなるだろうからね」

みほ「え……」

レナード「勝敗は関係ない。この学園艦は廃艦になる。そして戦車も闇の市場へ出荷される」

みほ「どう、いうことですか……」

レナード「戦車に使われている特殊コーティング技術を欲する人が急増しているからね。戦車を保持する学園艦が犠牲になるのは仕方のないことなんだよ」

みほ「わかりません……」

レナード「ここの次はアンツィオ高校かな」

みほ「やめてください!!」

レナード「僕が怖いかい?」

みほ「はぁ……はぁ……。あなたは、誰なんですか……」

レナード「……僕が手を貸してあげてもいいんだけどね」

みほ「手を……」

レナード「特殊コーティングを施した戦車を一台貰えるなら、この学園艦を救ってあげてもいい」

みほ「お、お断りします」

レナード「何故かな」

みほ「戦車は大切なチームメイトなんです。誰にも渡せません」

レナード「学園艦が無くなろうとしているのに?」

みほ「はい……」

レナード「同じことを言われたよ。ここの生徒会長さんに」

みほ「会長……」

レナード「教育局の決定を覆すのは無理だと伝えても、いい返事をくれなかった。最後まで諦めないと言っていた」

みほ「そ、そうです。次の試合に勝てさえすれば……!」

レナード「どうにもならない」

みほ「……!」

レナード「気が付いているはずだ。この濁流を止めることはできない。綺麗な手に札束でも握らせない限りはね」

みほ「そんなことは……」

レナード「僕がその肩代わりをすると言っているんだ。悪い話ではないはず」

みほ「で、ですから、戦車はわ、渡せません」

レナード「それは困ったね。ここで交渉が成立しないと、こちらも手段を変えるしかない」

みほ「え……」

レナード「僕の目的には不要だけど、あれば便利だからね」

みほ「便利って……」

レナード「たとえば、特殊コーティングをASに流用するなんてこともできるはずさ」

みほ「ASに!? そんなことをしたら!!」

レナード「各地で戦争が激化する。そして技術を漏洩させた西住みほの母親は吊るし上げられる」

みほ「ど、どうしてお母さんが!?」

レナード「僕が君だけは守ってあげるよ。いいじゃないか。子を捨てた母親なんて、生きる価値もない」

みほ「あ、あなたは……普通じゃない……」

レナード「そうだね。僕は普通じゃない」

みほ(逃げなきゃ……!!)

レナード「そう上手くいかないよ。彼女を捕えろ」

アラストル「ラージャ」ガシッ

みほ「な……!?」

レナード「もう少し時間が必要だね」

みほ(これ……AS……!?)

レナード「君と僕は同じ境遇なんだよ」

みほ「お、なじ……?」

レナード「分かり合えるはずさ。きっと僕の考えにも君は同調してくれる。共感してくれる」

みほ「くっ……うっ……」

レナード「そして君の才能を僕のために――」

ボン太くん「ふもっふー!!!!」バァン!!!!

アラストル「……!」

みほ「あ……!」

レナード「あれは……」

ボン太くん「ふも!! ふもも!! ふもっふー!!」

アラストル「脅威レベル、計測不能」

レナード「ただの着ぐるみではなさそうだが」

ボン太くん「ふも! ふもも!!」

みほ「相良さん、ですか?」

ボン太くん「ふも!!」

みほ「に、逃げてもいいんですか?」

ボン太くん「ふもも! ふもる!!」

みほ「ありがとうございます!」

アラストル「標的が逃走。どうしますか」

レナード「目の前の玩具を先に駆除したほうがよさそうだ」

アラストル「ラージャ」

ボン太くん「ふも……」

アラストル「……」ダダダッ

ボン太くん「ふもももー!!!!」テテテッ

アラストル「目標を追撃します」



クルツ「今、銃声が聞こえなかったか?」

クルーゾー『こちらでは捉えていない』

マオ『あたしの位置からは聞こえた。丁度、2時の方向』

クルツ「ってことは、公園だな。先に行くぜ」

マオ『ウルズ2も急行する!』

宗介『何があった』

クルツ「どうやら相手の狙いはカナメじゃなかったみたいだ!!」

宗介『なんだと』

マオ『でも、この学園艦で他に狙われるってなると、戦車ぐらいじゃないの』

クルツ「戦車がこんな街中にあるのかよ!」

クルーゾー『とにかく急げ!! この学園艦で事が起きれば我々の面子は丸つぶれだ!! ウルズ7はそのまま待機だ!!』

宗介『了解』

クルツ「だから艦橋で見張ってたほうがよかったんだよ!!」

マオ『はいはい! 悪かったわね!! あんたの才能を潰しちゃって!!』

寮 ねこにゃーの部屋

宗介「ふむ……」

かなめ「ねえ、どうしたのよ」

宗介「例の人物が現れた」

かなめ「ど、どこに!?」

宗介「行方を追っていたが見失った。そして今、町中で銃声が聞こえたらしい」

かなめ「それ……」

宗介「落ち着け。俺はここにいる」

ねこにゃー「あ、あの、それ……銀色の髪の……?」

宗介「肯定だ。猫田はチドリと一緒に見たんだったな」

ねこにゃー「うん。あと、西住さんも……」

宗介「なに!?」

かなめ「ど、どういうこと?」

ねこにゃー「西住さんも話しかけられたって、言ってたから……」

宗介「くっ……チドリと猫田以外に接触していたものがいるのか……! では、奴の狙いは西住か……!!」

ねこにゃー「西住さんが、どうしたの……」

宗介「少し待て。こちらウルズ7。応答してくれ」

クルツ『おう、どうした』

宗介「奴は千鳥だけでなく西住とも接触していたようだ」

マオ『カナメじゃないなら、ミホね』

クルツ『おいおい、そんなの聞いてねえぞ!!』

宗介「俺も今知ったところだ」

クルーゾー『了解した。各員、西住みほを捜索、保護しろ!』

マオ『ウルズ2、了解!』

クルツ『ウルズ6、了解だぁ!!』

クルーゾー『サガラ軍曹、お前も捜索に加われ』

宗介「了解。――千鳥、ここで待っていてくれ」

かなめ「みほは? みほは大丈夫なんでしょうね」

宗介「必ず保護する。問題ない」

かなめ「お、おねがいよ」

宗介「お前たちは絶対にここを動くな。いいな」

ねこにゃー「あ、相良さん……」

かなめ「……」

ももがー「なにがなんだか……」

ぴよたん「西住さんになにかあったずら?」

かなめ「分からないわ……」

ねこにゃー「ボクが……言わなかったから……」

かなめ「え?」

ねこにゃー「ボクが相良さんにちゃんと伝えてれば……」

かなめ「ちょ、ちょっと待って。猫田さんが気にすることじゃないって」

ねこにゃー「でも、あの銀髪の男の人って、危ない人なんじゃないの?」

かなめ「そ、れは……」

ねこにゃー「相良さんが地雷仕掛けたりしたのって、そういうことなんじゃないの……」

かなめ「えっと……」

ねこにゃー「探さなきゃ……。ボクの所為で西住さんが……」

かなめ「ダメよ!!」

ねこにゃー「け、けど……」

かなめ「今、外には出ないで。お願い」

ねこにゃー「……」

かなめ「貴方の所為じゃないわ。悪いのは全部、アイツなのよ」

ねこにゃー「みんなで探したほうが、いい」

かなめ「こ……」

かなめ(殺されるかもしれない、なんて……言ってもいいの……。そんなことを言えば……)

ももがー「私もいくなり!!」

ぴよたん「私も!!」

ねこにゃー「み、みんなで行こう!」

かなめ「ダメったらダメ!!!」

ねこにゃー「千鳥さん……」

かなめ「お願い。行かないで。お願いだから」

ねこにゃー「……ごめんなさい。やっぱり、西住さんが心配だから、探してくる」



みほ「はぁ……はぁ……はぁ……」

みほ「どこまで、逃げれば……」

みほ(交番……? ううん、相手はAS……。小型のASが実用化されてるなんて聞いたことがなかったけど、あれは間違いなくASだった……。お巡りさんじゃ、太刀打ちできない……)

みほ(だったら、戦車……。戦車なら……)

レナード「戦車なら勝てるかもしれない」

みほ「……!」

レナード「君ならそう考えるだろうね」

みほ「あ……あぁ……」

レナード「怯えることはないよ。君に危害を加えるつもりはないからね」

みほ「くっ……!」

アラストル「標的を確保します」

みほ「な……」

ボン太くん「ふももももも!!!!」バァン!!!!

アラストル「高脅威目標と認定」

クルツ「こっちだ!! 近いぜ!!」

マオ「っと! 奇遇じゃない」

クルツ「方角は間違いないみたいだな」

マオ「次は――」

バァン!!!

クルツ「ビンゴだ!!」

マオ「この路地にいるはず!」

みほ「はぁ……はぁ……はぁ……」

クルツ「ミホ!!」

みほ「クルツ、さん!?」

クルツ「何があった」

みほ「それが……よく……」

ボン太くん「ふもー!!!」

アラストル「迎撃開始」

クルツ「な、なんだありゃあ! おい、ソースケ!! こんなときにふざけてんじゃねえぞ!!」

ボン太くん「ふもー!! ふもふー!!」ガキィィン!!!

アラストル「……」ガキィィン!!!

マオ「なんだ、あれ……」

みほ「小型のASみたいなんですけど」

クルツ「んなもん、できるわけ……」

マオ「とにかくミホを保護するよ」

クルツ「そうだな。おい、ソースケ!! そいつのことは任せるぞ!!」

ボン太くん「ふもー!! ふももももー!!!」

アラストル「……」ガンッ!!!!

ボン太くん「ふもぉぉ!!!」

アラストル「標的を確保します」

マオ「ちぃ! ソースケ、その玩具はあとで没収だよ!!」

クルツ「上等がこらぁ!!! かかってきやがれ!!」

アラストル「追撃、開始」

みほ「くる……!」

クルツ「が……!?」

マオ「クルツ!!」

アラストル「……」ゴォッ

マオ「ずっ……!?」

アラストル「……」

みほ「そ、そんな……」

アラストル「標的を確保します」

みほ「だ、誰か……」

ねこにゃー「西住さん!!」

みほ「猫田さん!?」

ねこにゃー「こっち!!」ギュッ

みほ「わわ……」

アラストル「……」

レナード「もう少しだけ時間がある。追跡だ」

アラストル「ラージャ」

宗介「これは……!」

クルツ「くそ……」

クルーゾー「誰にやられた」

マオ「わかんない。小型のASみたいな……やつが……」

クルーゾー「どのような相手なのだ」

宗介「誰だ?」

ボン太くん「ふも……」

宗介「お前か」

ボン太くん「ふもふも」

宗介「そうか。千鳥のために……。感謝する」

ボン太くん「ふも……」

宗介「仲間だから、か」

ボン太くん「ふもっ!!!」

宗介「了解!! 西住の救出に向かう!!」

クルーゾー「待て!! この着ぐるみ、誰が……」

大洗女子学園

みほ「ここまで来ちゃったけど、大丈夫かな」

ねこにゃー「この時間なら、誰もいないと思うし、早く戦車に……」

みほ「でも、猫田さん、どうして……」

ねこにゃー「ボ、ボクだって、西住さんの役に立ちたくて……試合じゃ……何もできなかったし……」

みほ「猫田さん……」

ねこにゃー「だからね、今度の試合も絶対に出たいんだ。出て、西住さんと一緒に――」

レナード「君では足手まといになると思うけどね」

ねこにゃー「え……」

アラストル「……」ドゴォッ

ねこにゃー「はっ……ぁ……!?」

みほ「猫田さん!!!」

ねこにゃー「あ……あぁ……ぁ……」

みほ「猫田さん!! 猫田さん!!」

レナード「死にはしないよ。しばらく動けなくなるだろうけど」

みほ「猫田さん!!」

ねこにゃー「あ……に……ぃ……ず……み……」

みほ「猫田さん!!!」

レナード「彼女は次の試合でも役には立てない。居ても居なくても変わらないはずさ」

みほ「どうして……こんな……!!」

レナード「一緒に来てくれないかい?」

みほ「……!」

レナード「僕の話を聞けば、君の価値観は変わる。この愚かな世界を変えようと思えるだろう」

みほ「……っ」

レナード「そして協力してくれるなら、この僕が学園艦は守ってあげよう。次の試合もきちんと盛り上げるよ」

ボン太くん「ふもー!!!」

レナード「またか」

アラストル「撃破します」

ボン太くん「ふもも!!!」ジャキン!!!

レナード「何度やっても無駄だよ」

ボン太くん「ふもっふー!!!」ドォン!!!!

アラストル「……!!」

レナード「先ほどと動きが違う……。中身が変わったのか」

クルーゾー「残念ながら、中の人などいない」

レナード「なるほど。形勢が変わったかな」

クルーゾー「どうやら、そのようだな」

レナード「分は悪いね。今日のところは諦めるとしようか」

クルーゾー「逃げられると思っているのか」

レナード「西住みほ、そして特殊コーティング技術はまたの機会にするよ」

アラストル「退却します」

ボン太くん「ふも!!!」

レナード「さよなら」

アラストル「……」カチッ

クルーゾー「まさか――」


ドォォォォン!!!!

みほ「……」

クルーゾー「自爆か……?」

宗介「いえ。何かを爆発させただけでしょう」

クルーゾー「好き放題してくれたものだな」

宗介「西住。無事か」

みほ「猫田、さん……が……」

宗介「猫田、しっかりしろ」

ねこにゃー「……」

クルーゾー「すぐに搬送するぞ」

宗介「了解です」

みほ「……」

宗介「西住……」

クルーゾー「軍曹、搬送は任せる。後処理はこちらでしておく」

宗介「お願いします、中尉殿」

みほ「猫田さん……が……」

メリダ島基地

マデューカス「緊急連絡がありました。大洗学園艦内にて、銃撃戦が発生。民間人一名が負傷しました」

テッサ「準備を」

マデューカス「アイ、マム」

テッサ「絶対に……許さない……」

カリーニン「大佐殿」

テッサ「なんでしょう」

カリーニン「出航準備は整っています」

テッサ「結構。参りましょう、大洗女子学園に」

カリーニン「はっ」

マデューカス「最悪の結果になってしまいましたな」

テッサ「こちらのミスだわ。カナメさんばかりを気にしていた所為でこんなことに……」

カリーニン「学園艦に張り巡らせた警戒システムも改善の余地があります。申し訳ありません」

テッサ「全ては到着してからにしましょう」

マデューカス「そうですな」

病室

ねこにゃー「……」

かなめ「猫田さんは?」

宗介「命に別状はないが全治二ヶ月の重傷だ」

かなめ「そんな……」

みほ「……」

かなめ「みほ……」

宗介「猫田は暴漢に襲われた」

かなめ「は?」

宗介「そういうことにしてくれ」

かなめ「テッサの命令?」

宗介「肯定だ」

かなめ「わかった……」

みほ「……私は、わかりません……」

宗介「西住には説明しておこう。お前はもう無関係ではないからな」

宗介「――話せることは以上だ。質問してくれても構わないが、話せないことも多い。そこは了承してほしい」

みほ「かなめさんが……狙われていて……でも、私が……」

宗介「落ち着け、西住。すまない。一度に話しすぎたな」

みほ「……」

かなめ「みほは……」

宗介「ウィスパードではない。もしそうなら大佐殿が早期に動いているはずだ」

かなめ「そっか……」

みほ「……」

ねこにゃー「う……ぅ……」

みほ「猫田さん!?」

ねこにゃー「にし、ずみ……さん……」

みほ「よかった……」

ねこにゃー「西住さん、怪我は……ない……?」

みほ「ない……ないよ……だいじょうぶ……」

ねこにゃー「そう……ボク……はじめて……西住さんの役に立てたね……うれしい……」

みほ「猫田……さん……」

ねこにゃー「こんどの……試合も……ボク、がんばるから……ね……」

みほ「うん……がんばろう……みんなで……」

ねこにゃー「がんばる……よ……ボク……」

かなめ「……っ」

宗介「千鳥。あとは任せる」

かなめ「ソースケ……あの……」

宗介「君が気を落とすことはない。俺の指示を無視した猫田にも問題はある」

かなめ「そんな言い方!!」

宗介「……すまない」

かなめ「……」

宗介「全て俺の責任だ」

かなめ「そんなこと……。私だって、猫田さんを力づくで止めていれば……」

宗介「すまない」

かなめ「ソースケ……」

廊下

宗介「……」

クルーゾー「軍曹」

宗介「……」

クルーゾー「熱くなるな」

宗介「それは無理です」

クルーゾー「目を曇らせることになるぞ」

宗介「……」

クルーゾー「少し頭を冷やしてこい」

宗介「了解」

クルーゾー「それと明日にはダナンがここへ到着する」

宗介「……」

クルーゾー「学園艦の警備は盤石になる。相手も簡単には手は出せん」

宗介「もう手遅れです」

クルーゾー「そうだな。軽率な発言だった」

病院 出入り口

杏「相良くん」

宗介「会長閣下……。申し訳ありません。自分がついていながら……」

杏「西住ちゃんは?」

宗介「無事です。今は猫田に付き添っています」

杏「そっか。酷いやつもいるもんだねぇ」

宗介「……」

杏「気にしなくていいよ。相良くんは西住ちゃんを守ってくれたんだから」

宗介「はっ」

杏「ありがとね。相良くんがいてくれてよかったよ」

宗介「お褒めに預かり、光栄です」

杏「それじゃ」

宗介「はっ」

宗介「……」

宗介「くっ……」

病室

杏「どう?」

みほ「今、眠ったところです」

ねこにゃー「すぅ……すぅ……」

かなめ「……」

杏「西住ちゃん。試合のことなんだけど」

みほ「今、猫田さん以外のことは考えられません……」

杏「試合、やめようか」

みほ「え……?」

かなめ「先輩?」

杏「事情はよくわかんないけど、今度の試合が関係してる可能性もあるわけだしな」

かなめ「でも、それだと、廃艦に」

杏「大事な生徒がこんな目に遭ってまで続けたいとは思わない」

かなめ「いいんですか」

杏「うんっ。今から各校に断りの連絡いれないとね。いやぁ、まいったねぇ。こっちから頼んでおいて、どう断ろっかなぁ」

みほ「……」

かなめ「角谷先輩……」

杏「それじゃ、ねこちゃんのこと、よろしくね」

かなめ「もう行くんですか」

杏「忙しくなるからな」

かなめ「そう……」

みほ「あの」

杏「なに?」

みほ「……いえ、なんでもありません……」

杏「なんかあったら、すぐに連絡してよぉ。とんでくっから」

みほ「はい」

杏「ばいばーい」

かなめ「なんか、ノリが軽いわね……」

みほ「……」

かなめ(なんて声をかければ……。みほ……)

病院 出入り口

宗介「……」

沙織「相良さん!!」

宗介「1029号室だ」

沙織「ありがとう!」

優花里「待ってください、武部殿!!」

華「失礼します」

宗介「……」

麻子「相良さん、猫田さんは無事なのか」

宗介「命に別状はない」

麻子「相良さんが助けてくれたと聞いた。感謝する」

宗介「猫田は救えなかった。そのような言葉は不要だ」

麻子「もし困ったことがあればなんでも言って欲しい。この礼は必ずする」

宗介「了解した」

麻子「それじゃ」

病室

ねこにゃー「……」

ももがー「ねこにゃー……」

ぴよたん「どうしてこんな酷い……」

優花里「犯人の手掛かりは?」

桃「それが目撃情報がなくてな。日が落ちていた所為もあるだろうが」

華「防犯カメラなどを使えばわかるのでは?」

柚子「今、解析中みたいだから、そのあたりは警察に任せるしかありません」

みほ「……」

沙織「みほ」

みほ「沙織、さん……」

沙織「ごめんね。みほが怖い目にあってたのに、すぐに駆けつけられなくて」

みほ「大丈夫。もう、大丈夫だよ」

沙織「ごめん……」ギュッ

みほ「沙織さん……ありがとう……」

大洗女子学園 生徒会室

杏「――ってなわけで、試合は中止にけってーい。悪いけど、今回のイベントはなしってことで」

カチューシャ『ミホーシャはどうしたのよ』

杏「お見舞い中。落ち着いたら、また連絡するよ」

カチューシャ『違うわ。ミホーシャはどういってるのかを聞いているの』

杏「反対はしなかったけど」

カチューシャ『貴女も、いいのね。戦わずに負けることを選ぶのね』

杏「……」

カチューシャ『え? なによ。カチューシャに指図しないで! あ、ちょっと!!』

杏「どうしたの?」

敦信『私だ、角谷君』

杏「林水……。なんでプラウダ高校にいんの」

敦信『カチューシャ君にお願いしたいことがあってね。いや、私のことはどうでもいい』

カチューシャ『ちょっと!! 受話器を返しなさいよ!! まだ話は終わってないんだから!!!』

敦信『試合を中止するという話、どこまで本気なのかな』

杏「学園艦内で戦車道選手が襲われた。最近は不穏な電話も多かったし、事件と試合の関連性が分からない以上、中止を選択する。ごく自然なことだと思うけどねぇ」

敦信『いい逃げ道ができて、安心しているのか』

杏「……」

敦信『勝敗に関わらず、廃艦になることは最初から分かっていただろうに。何故今更そのような言い訳をして背を向ける」

杏「……」

敦信『教育局に乗り込む前に私へ応援を頼んだために、退くに退けなくなった。廃校になることを皆に告げられず、敗戦を願っていた。それとも……』

杏「それ以上、言わないでくれる?」

敦信『奇跡を信じることができなくなったか』

杏「私は、まだ諦めてない」

敦信『相良君を使い、別の試合を企画するのか』

杏「それしか、ないなら」

敦信『陣代高校ラグビー部はあれ以来、練習試合の申し込みすら受けてくれなくなってね。ラグビー部員も他の生徒から恐れられている』

杏「そうみたいだな」

敦信『西住君はもちろん、一年生チームの子たちまで畏怖の対象にさせてしまうが、構わないのか』

杏「初めから、それぐらいの覚悟はあったよ。学園を守るためならな」

敦信『その覚悟があるのなら、試合を中止にする必要はない。このまま予定通りに進め給え』

杏「ねこちゃんが回復してくれなきゃ、応援にすら呼べないじゃん」

敦信『全員で守ることに拘るか』

杏「悪い?」

敦信『どちらにせよ、廃艦は免れない。思い出作りのために全員で試合会場へ行きたい。そういう解釈でいいのかな』

杏「どう解釈してくれてもいいけど」

敦信『全員での思い出作りなら、相良君は不要だ。人格を崩壊させるなど本末転倒と言える』

杏「そうだな」

敦信『去年の君はそんなに弱弱しくなかったはずだ』

杏「……」

敦信『自治連絡会のとき、議長をさせろと私に食い下がり続けた君なら、中止にするなどという選択はしなかっただろう』

杏「そうかねぇ」

敦信『学園艦の学生自治が脅かされている。君はそう切り出し、演説を始めた』

杏「忘れたんじゃなかったの?」

敦信『自治連絡会の内容は忘れた。しかし、入学者の減衰により、学園艦の統廃合が水面下で進められていることを熱弁する君の姿は目に焼き付いている』

杏「私は忘れたな」

敦信『近く学園艦の廃艦が相次ぐと、君は予言していたね。そのために数々のイベントを君は企画し、実行してきた』

敦信『仮装大会、夏の水かけ祭り、泥んこプロレス大会。どれも大洗学園艦を巻き込んでの大規模イベントだった』

杏「どこまで知ってんの」

敦信『その全ては学園を盛り上げ、入学者を得ようとする君の努力に他ならない』

杏「……」

敦信『1年で生徒会長という重役を自ら選んだのも、学園艦の存続を願っていたからではないのかね』

杏「ああ……」

敦信『3年間。君は辛い業務をこなし、大洗女子学園を宣伝し続けてきた。それでもなお、現実はまだ君には冷たかった』

杏「そうだな。結局、廃校になるんだもんな」

敦信『戦車道による学園存続案。君にとっては最後の切り札だったのだろう』

杏「そこまで調べたの? やるねぇ」

敦信『なに。知り合いの伝手を借りただけだ。大洗女子学園が戦車道を取り止めたその当時の生徒会長が考え、脈々と受け継がれてきた』

杏「そうだ。そのときの会長のことなんて顔も知らないけど、生徒が減少することを見越していたってのはすごいよねぇ」

敦信『凄惨な事故が風化した今なら戦車道を復活させたところで批判するものもいない。角谷君の判断は間違ってはいなかったが、遅すぎたかもしれない』

杏「売れ残りの戦車も実際は復活時に必要だからと隠されてたものだったしな。断崖絶壁にかくしてあったり、池の底に沈めてたり、駐車場でオブジェになってたり、色々だけど」

敦信『生徒会長の座に就く者は全て、学園艦の存続という重大な使命が課せられていたわけだ』

杏「みんなの想いだけじゃない。ここを卒業していった人たちの願いだって、私は背負ってる。簡単に諦めることなんてできない」

敦信『では、相良君に頼み、皆を殺人機械にするといい。想像以上の成果を保証しよう』

杏「もう、分かってるくせに」

敦信『自分では決断できないか』

杏「できるなら、初日に相良君をけしかけてる」

敦信『相良君が従順な人物だとは思っていなかったのか』

杏「噂が噂だけに、いうこと聞かない子だと思ってた。けど、すっごいいい子だった。私の言うことは素直に聞いてくれるし、西住ちゃんたちのことは褒めてくれる」

杏「何より、このチームは良いチームだから自分は不必要です、なーんてことも言ってくれた。すごく、嬉しかったよ」

敦信『相良君は勘違いされやすいが、とても純粋だ。私も一目置いている』

杏「だから、相良君は私に決断を迫った。本当に自分が鍛え直してもいいのかって」

敦信『当然だ。彼には伝えておいたからね。角谷君の指示に従うように、と』

杏「余計なことして。まいっちゃうだろ」

敦信『君が期待していた奇跡である、相良君の暴走行為は最初から封じさせてもらったよ。そのような勝利では君自身が納得しないと私は思ったのでね』

杏「邪魔ばっかりだな、林水は」

敦信『そうかな。これでもエールを送っているつもりなのだが』

杏「良い性格してるね」

敦信『もう一度、よく考えたほうが良い。君が捧げた3年間をここで終わらせるには、実に惜しい』

杏「それは私が決めることだ」

敦信『……わかった。近日中に大洗へ寄ろうと思っている。そのときにまた話そう』

杏「私としては遠慮したいけどねぇ」

敦信『すまないね、カチューシャ君』

カチューシャ『全くよ。――ねえ』

杏「なんだい?」

カチューシャ『カチューシャなら、やるわ。もし試合を中止にさせようとするやつが出てきてもしょくせいしてやるだけよ。それで、試合もやる』

カチューシャ『試合に出られなかった選手の帰ってくる場所を守るのだって、隊長の務めだもの』

杏「すごいな、カチューシャは」

カチューシャ『全然、すごくなんてないわ。長っていうのは、それだけの責任があるってだけよ』

杏「長、か」

黒森峰女学園

エリカ「隊長。サンダースのケイからお電話です」

まほ「ありがとう。――私だ」

ケイ『イエーイ、まほー。エンジョイしてるー?』

まほ「そうね。充実はしている」

ケイ『それはいいことね。私もエブリデーがハッピーよ!』

まほ「用件は?」

ケイ『今度のオールスター戦、中止にしたいって連絡もらった?』

まほ「ああ」

ケイ『まほはどうするの?』

まほ「黒森峰女学園の判断に任せる」

ケイ『ノンノン。まほ自身は試合、したくないの?』

まほ「……」

ケイ『私はプレイしたいわ。絶対、エキサイティングな試合になるもの』

まほ「同感よ。しかし、事態は深刻のはず」

ケイ『あの事件と試合ってなんか関係あるわけ?』

まほ「分からないから、中止なのだろう」

ケイ『私はアンジーがビビっちゃっただけだと思うんだけど』

まほ「学園艦の全生徒を統括する立場ならば、何もおかしな判断ではない」

ケイ『もとより、戦う気なんてなかったのかもね。みほだってあまり気のりはしてないって話だったし』

まほ「え?」

ケイ『なに、知らなかったの?』

まほ「そのような話は……」

ケイ『中止の件を聞いたとき、すぐアンジーに聞いたわ。みほはどういってるのって。そしたら、反対はしなかったんだってさ』

まほ「みほが……」

ケイ『隊長として試合に出るかどうか分からない、それ以前に選手として出場するのかも未定だったらしいわ』

まほ「どうして?」

ケイ『そこまでは言ってくれなかったわ。トップシークレットなのかもね』

まほ「感謝する、ケイ」

ケイ『ノープログレム! なんの感謝かはよくわかんないけど!』

>>481
ケイ『ノープログレム! なんの感謝かはよくわかんないけど!』

ケイ『ノープロブレム! なんの感謝かはよくわかんないけど!』

翌日 大洗女子学園 正門

みどり子「なによこれ! めちゃくちゃじゃない!!」

モヨ子「昨日、ここで爆発があったみたいなのよ、そど子」

みどり子「こんなことをするのは……」

宗介「俺だ」

みどり子「なにをやっているのよ!! 地雷も爆弾も校則違反よ!!」

宗介「修繕はしておく」

みどり子「全く!」

希美「そど子。今日、猫田さんのお見舞いにはいく?」

みどり子「当たり前でしょ」

かなめ「ソースケ、よかったの?」

宗介「問題ない。彼女たちに要らぬ恐怖を与えることもない」

かなめ「地雷とかトラップとか仕掛けておいたから、ソースケの仕業で片付いちゃうのよね……。結果的にはよかったのかしら」

宗介「俺は会長閣下のところへ行くが、千鳥はこのまま教室へ向かうか?」

かなめ「うん。そうする。またあとでね」

教室

かなめ「おはよう」

華「おはようございます」

かなめ「みほは……」

沙織「今日は欠席するって」

かなめ「そう……」

華「それと今、緊急会議が行われているようです」

かなめ「会議?」

沙織「学園艦の役員を集めた会議。寄港させて臨時休校にするかどうかを話し合ってるんだって」

かなめ「あんな事件があったから、仕方ないか。みんな怖がるわよね」

華「わたくしは犯人への恐怖よりも憤りのほうが勝っています」

かなめ「華の胆の座り方は尋常じゃないのね」

沙織「怖いもの知らずってだけ」

かなめ「休校ってことなら戦車道の授業も中止よね」

沙織「それどころか次の試合だって中止なんでしょ? あーあ、どうなっちゃうんだろう。学園艦、無くなったりしないよね」

華「わたくしは猫田さんのほうが心配ですわ」

沙織「そんなの私だって心配だよ。でもさ、一番怖いのって猫田さんが元気になったときに学園艦が無くなってるときじゃないかな」

華「あ……」

沙織「やっと退院してもさ、帰る場所がなきゃ、嫌だよ」

かなめ「そうね」

沙織「私、この学園艦を失くしたくない」

華「皆さんの気持ちは同じです。けれど……」

沙織「会長、なんで中止なんてしちゃうんだろう」

かなめ「……」

華「かなめさん?」

かなめ「え? な、なに?」

華「いえ、何か思いつめた顔をしているような気がしたので……」

かなめ「そ、そう? あたしはいつも通りよ! うは、うははは!」

『ピンポンパンポーン。戦車道受講者は今から生徒会室にくるよーに。会長からのおしらせでしたー。ポンパンパンポーン』

沙織「な、なんだろう……」

生徒会室

桃「全員、揃ったな」

優花里「あの、お話しとは……」

杏「次のエキシビジョンを中止にすることで話は進んでる。ま、このままいけば中止にはなる」

カエサル「致し方ないか」

梓「猫田先輩がいなきゃ、試合をする意味もないですから」

杏「そう言ってくれてありがとう。でも、もう一つ、重大なお知らせがある」

典子「なんでしょうか」

柚子「えっと……」

杏「いいから、小山。これは私が説明しなきゃいけないんだ」

みどり子「言いにくいことなんですか」

杏「大洗女子学園は、次の対戦車道オールスター戦で勝利できなきゃ、廃校になる」

あや「はい?」

ナカジマ「廃校って、私たちが優勝したから白紙になったんですよね?」

杏「いいや。なってなかったんだよねぇ、それが。だから、毎日練習をしていたわけだ。戦術アドバイザーの相良くんまで呼んでね」

倉庫

宗介(今頃、会長閣下は全員に伝えている頃か……)

テッサ「サガラさん」

宗介「大佐殿」

テッサ「遅くなりました」

宗介「申し訳ありません。自分がついていながら……」

テッサ「気にしないでください。私のミスでもありますから」

宗介「決してそのようなことは」

テッサ「角谷杏さんは?」

宗介「生徒会室にいるはずです」

テッサ「案内、していただけますか」

宗介「はっ」

テッサ「また貴方を辛い目に遭わせてしまった……。本当にごめんなさい」

宗介「戦地で仲間が負傷することは日常茶飯事です。問題ありません」

テッサ「サガラさん……」

典子「どういうことですか!!!」

梓「納得できません!!」

エルヴィン「会長、どうしてそのことをすぐに言ってくれなかった!!」

桃「鎮まれ! これにはわけが……」

杏「みんなの怒りはごもっともだよ。まずは謝る。今まで黙っていて、ごめん」

あや「う……」

あゆみ「廃校って、本当なんですね」

杏「本当のことだ。冗談を言うために頭は下げない」

エルヴィン「謝罪は不要だ。何故、説明してくれなかったのか答えて欲しい」

おりょう「廃校の件が片付いていなかったということを告げれば、私たちの士気が下がると考えたから、か」

左衛門佐「そんなことでさがらんでござる」

桂利奈「そうですよぉ!! びっくりはしますけど、逆に燃えます!!」

杏「言えなかった最大の理由はそこなんだ。みんながやる気になることが分かってたから、言えなかった」

カエサル「それは何故?」

杏「……勝っても負けても、廃校になる」

優花里「そ、そのような話は聞いていません!!」

優希「どうしてなんですかぁ? 勝てばいいんじゃないんですか」

麻子「勝てば日本の戦車道に傷をつけることになるから、何らかの嫌がらせはあるだけじゃなかったのか」

杏「その嫌がらせで廃校に追い込む気なんだろうねぇ」

華「そんなのに屈する必要はありません」

優花里「そうです!! 勝てば官軍!! 勝利さえすれば、誰にも文句は言わせません!!」

沙織「猫田さんが復活したら、また試合したらいいじゃないですか!」

杏「……」

桃「静かにしろ!! いいか!! これは政治も絡む問題なんだ!! スポーツの勝敗で左右することではないんだ!! それを理解しろ!!」

優花里「理解はできても納得はできません!!」

麻子「抗う方法はいくらでもあるだろう」

華「このまま泣き寝入りするのですか!」

沙織「そんなのいやだー!」

桃「黙れ!!! 誰が一番苦汁をなめているのか分からないのか!!!」

柚子「桃ちゃん……」

桃「誰よりも努力をした者がどうして報われないんだ!! 答えてみろ!!」

優花里「な……」

桃「誰よりも学園艦を愛していた人がどうしていつも苦しまなくてはならないんだ!!!」

華「……」

桃「学園にいるすべての人を心配しているのにどうしてそのことが評価されないんだ!!!」

杏「河嶋、もういい」

桃「よくありません!! 何故なのですか!! 何故、会長はそう冷静でいられるのですか!!! 学園艦がなくなるんですよ!?」

杏「……」

桃「仕方ないで納得できるのですか!? 楽しいことがたくさんあった、ここがなくなるんですよ!? 可愛がっていた後輩たちはここを卒業できないんですよ!?」

杏「分かってる」

桃「どうして!! どうして廃校になるのですか!! 私は嫌です!! このまま諦めたくなんてありません!! 試合をしましょう!! 今からでも遅くはありません!!」

杏「ごめん、河嶋」

桃「もう一度……もう一度だけ……チャンスをください……」

杏「最初から、チャンスなんて誰もくれなかったんだ。だから私も奇跡が起きるのを待ってた。けど、それも起きなさそうだ。相良くんが、とってもいい人だったからなぁ」

かなめ「ソースケが……?」

桃「いやだぁ……いやだよぉ……がんばってきたのに……いままで……大洗で育ってきて……ここが私の故郷なのに……なくなるなんて……」

柚子「桃ちゃん……」

優花里「私も、大洗で生まれ育った身です。学園艦が無くなるなんて、考えたくもありません」

華「猫田さんが事件に巻き込まれたことを口実にして、試合は中止にする。周囲にはそう説明したほうが反感はないでしょうね」

麻子「猫田さんを襲った犯人だけが恨まれ、裏工作をしていた教育局に矛先は向かないだろうな」

杏「一応言っとくけど、犯人が試合を妨害するためだったのかはわかんないよ。それにアリクイさんチームは選抜チームでもなかったしねぇ。もし襲うなら選抜チームの誰かのはずだ」

沙織「選抜はもう決まってたんですか」

杏「殆ど決まってたかな」

麻子「だったら、猫田さんは本当に通り魔に襲われたというだけなのか」

杏「そういうことになるね。ま、オールスターチームに勝ったあとはどうなったかわかんないけど」

カエサル「勝利を掴んでも相手に約束を守る気がなければそれは徒労か」

おりょう「約束を、守らぬものは、お仕置きだ」

エルヴィン「その一句通りだ。けど、相手が大きすぎて私たちではお仕置きもできない」

典子「大洗でもう一度バレーボールをしたいのに!! もう一度、みんなで戦車道をしたいのに!! 根性でどうにかならないんですか!! 会長!!!」

杏「バレー部復活の手伝い、ちゃんとできなくて悪いね、磯辺ちゃん。ホント、私の力不足だな。ごめん」

典子「そんなこと言わないでください!」

妙子「どんなに辛いときでも笑っていた会長はどこにいったんですか!!」

あけび「私たちならやれます!!」

忍「大洗の廃校は必ずブロックしますから!! だから……!!」

杏「どうしたら、私たちの学校を守れるのかな」

典子「え……」

杏「誰か、教えてほしい」

カエサル「……」

杏「誰でもいい。教えてよ。教えてくれたら、干し芋1年分あげる。それで、教えてもらったことは絶対に実行する。どんなことだってやる覚悟はあるんだ」

杏「だから、教えてよ。学校を守る方法をさ。お願い……だから……」

みどり子「……」

梓「……」

かなめ(きっと角谷先輩は今までにいろんなことを試してきたのよね。それでも結果は変わらなかった……)

かなめ(林水先輩は角谷先輩のことを強い人だって言ってたけど……本当は普通の……)

杏「まもりたいんだ……だいすきな……この場所を……まもりたい……」

柚子「――会長、みんなは教室に戻りました」

杏「みっともないところ、見せちゃったな」

柚子「いえ……」

杏「これでスッキリした。今までありがとう、小山、河嶋。私の我儘にずっと付き合ってくれて、感謝してる」

桃「やめてください」

柚子「そうですよ。私も桃ちゃんも会長のことが、いえ、この大洗のことが大好きだっただけです」

桃「私だって会長と想いは同じです。この学園を失くしたくない一心でどんなことにも取り組んできました」

杏「うん。知ってる」

桃「だから……あきらめるなんてこと……したくは……」

杏「ないよな。けど、どうしようもない。相良くんと千鳥ちゃんまで巻き込んだけど、都合のいい奇跡は起きなかった」

柚子「相良さんと千鳥さんに何か期待をしていたんですよね? どんなことですか」

杏「それは相良くんがみんなを殺人マシーンに――」

宗介「失礼します、会長閣下」

テッサ「初めまして、角谷杏さん」

杏「初めまして。なんて呼べばいい?」

テッサ「私はテレサ・テスタロッサです。テッサとお呼びください」

杏「分かった。で、テッサちゃんは相良くんのなに? 恋人?」

テッサ「そんなぁ……そういう関係では……」モジモジ

宗介「大佐殿、その、本題に……」

テッサ「そ、そうですね。角谷さん、貴方にお願いしたいことがあります」

杏「なんでもいってみぃ」

テッサ「――試合を中止にはしないでください」

杏「……」

桃「どこの誰かは知らないが、会長は……!」

テッサ「承知しています。この学園艦が置かれている状況。そして、艦内にて発生した事件。その全てを」

桃「ならば、部外者は黙っていてくれ。これは大洗女子学園の問題なんだ」

テッサ「いいえ。世界すらも飲み込む問題です」

桃「どういう意味だ」

テッサ「戦車道が安全なスポーツとして認知された理由はご存知ですか」

柚子「それは勿論、あの特殊コーティングのおかげです。あれがない時代は死亡事故もあったぐらいですから」

テッサ「そのコーティング技術は軍事利用されないよう、配慮がなされてきました。技術が漏洩しないようにあらゆる手が尽くされています」

桃「当然だ。あの技術が戦争に使われたらどうなるか」

テッサ「その通りです。ですから、貴方達には学園艦を守ってほしいのです」

杏「テッサちゃんは廃艦後のことも知ってそうだね」

テッサ「おおよその見当はつきます。戦車の行方にも心当たりがありますので」

桃「貴方は何者なんだ」

テッサ「正義の味方、とだけ言っておきます」

桃「ふざけるな!」

杏「まぁまぁ、河嶋。落ち着け」

桃「この状況下でこんなふざけたことを言われたら、誰だって声を荒げたくなります!!」

杏「相良くんもその正義の味方の一員だったの?」

宗介「肯定です」

柚子「相良さんまで……」

杏「テッサちゃんの考えはわかる。わかるけどさ、どうしても無理なんだよねぇ。学園艦を守る方法がもうないんだ」

テッサ「試合に勝利してください。そうすれば学園艦は守ることができます」

桃「何を言っている!! それができないから会長は苦しんでいるのに!!!」

杏「どうしてそう言い切れるの?」

テッサ「私たちを信じてください」

柚子「え……?」

テッサ「詳細を説明するわけにはいきませんが。貴方達が試合に勝ちさえすれば、学園艦を残すことができるのです」

杏「テッサちゃんがどうにかしてくれるってこと?」

テッサ「はい」

桃「そんなことができるなら、今すぐやってみせてくれ」

テッサ「無理です。誓約書にはオールスターチームに現戦力で勝利することと書かれていますので」

杏「これのこと?」ペラッ

テッサ「そうです」

杏「これ、ただの紙切れなんだけどな」

テッサ「私には希望に見えますが」

杏「希望……」

テッサ「角谷さんが額を床にこすりつけながら懇願したものです。ただの紙切れになんて、絶対にさせません」

柚子「それって……!」

杏「どこでそんなことを知ったの?」

テッサ「少し調べればわかることです」

桃「会長、そんなことまでしていたのですか……」

杏「勝たないと、いけないんだな」

テッサ「ええ。簡単なことでしょう。貴方たちが一度下した相手が一纏めにされただけのチームですから」

杏「ちょっと考えさせて」

テッサ「構いませんよ。でも、すぐに決断したほうがいいでしょうね。相手が強行策に出ればどうすることもできなくなりますから」

杏「分かった」

桃「会長。いきなり現れた人間のいうことを信じるのですか」

杏「相良くん」

宗介「はっ」

杏「テッサちゃんは信頼できるの?」

宗介「この方ほど信頼できる人間はこの世界にいないと断言できます」

杏「ふぅん。そうなんだ」

柚子「どうするんですか?」

杏「テッサちゃんのことは信頼できない。でも、相良くんのことは信頼できる。だから、テッサちゃんのことは信じてもいいかもしれない」

桃「しかし! 猫田のこともあります!!」

杏「だからこそ、考える時間が必要なんだ。これが奇跡の始まりなのか見極めるためにもな」

テッサ「奇跡は起こすものですから、大洗のみなさんが動かない限り、起きることはないでしょう」

杏「ああ。その通りだね」

テッサ「では、これで。ああ、忘れていました」

杏「なぁに?」

テッサ「この学園艦の警備システムを更に強化させておきます。今後、あのような事件も、暴漢も現れることはないでしょう。現れたとしても、被害がでることはまずありません」

杏「この前、相良くんが連れてきた警備会社のメリッサちゃんと同業ってことか」

テッサ「そういうことです」

杏「ありがと。じゃ、試合にのことは早めに決めるよ」

テッサ「そうしてください。それでは」

宗介「失礼しました」

杏「またねー」

廊下

宗介「大佐殿。廃校を撤回する手段をお持ちなのですね」

テッサ「はい。ウェーバー軍曹とマオ曹長に調査してもらった結果、色々と使える情報がありますので」

宗介「では、試合をするまでもなく学園艦を救うことができるでは?」

テッサ「私たち、ミスリルの目的は戦車に使われているコーティング技術の漏洩を防ぐことにあります。学園艦を救う義理はどこにもありません」

宗介「……」

テッサ「学園艦を守る条件は角谷さんが出したものです。そこは守っていただきます」

宗介「大洗女子学園が敗北した場合はどうなるのですか」

テッサ「私たちが戦車を接収します」

宗介「なるほど……」

テッサ「その際、小規模ながらも戦闘が発生するでしょう。そのときはお願いしますね」

宗介「了解しました」

テッサ「私のことを冷徹だと思いますか」

宗介「いいえ。ミスリルが表立って学園艦を守ろうとすれば、様々な組織に狙われかねません。もしアマルガムの他にもこの学園艦が目をつけられることがあれば、ひとたまりもないでしょう」

テッサ「はい。私たちだけではこの学園艦を警護しきれませんから。故に相手に約束を守らせることが、私たちにできる限界のお手伝いです」

病室

ねこにゃー「……」

みほ(試合は中止……。それでよかったのかも。こんな気持ちで戦車になんて……乗れなかった……)

みほ(沙織さんたちは、どうなんだろう……)

ももがー「西住さん。そろそろ寮に戻ったほうが……」

みほ「大丈夫。今は猫田さんの傍にいたいから」

ぴよたん「でも、昨日から食事もしてないのに……」

みほ「……」

ももがー「明日、またきてくれたら嬉しい」

みほ「……わかりました。では、今日は帰ります」

ぴよたん「うん。ねこにゃーのこと、ありがとう」

ももがー「助かったなり」

みほ「ううん。私が勝手に……」

ももがー「ゆっくり休んでほしいなり」

みほ「ありがとう……」

病院 出入り口

みほ「みんなはまだ学校にいるのかな……」

みほ「連絡、してみよう……。あ、電源、切ってたんだった」ピッ

みほ「あれ、留守番電話……? 誰だろう」ピッ

『みほ。話したいことがある。連絡を待っている』

みほ(お姉ちゃん……)

みほ「……」ピッ

まほ『もしもし』

みほ「あの、ごめん。病院にいたから電源を切っていて……」

まほ『いいの。今、代わる』

みほ「代わる……誰に……?」

しほ『みほ。久しぶりね』

みほ「おか……あさん……」

しほ『まほから話は聞いているわ。次の試合、出場を躊躇っているそうね』

みほ「あ、の、そもそも試合が……中止に……」

しほ『そのようなことは聞いていません。出場を躊躇っていることは事実なのでしょう』

みほ「は、はい……」

しほ『それは何故?』

みほ「……」

しほ『大方、私やまほに迷惑がかかると考えていたのでしょうね』

みほ「だ、だって……お母さんは色んな人とお付き合いがあるし……もしも、大洗が勝つようなことがあれば……」

しほ『それは勝つ自信があるということなのね』

みほ「えっと、そうじゃなくて……あの……」

しほ『オールスターチームを相手に随分と余裕があるようね、みほ』

みほ「だ、だから、万が一の話で……」

しほ『――貴方はもう、西住の人間ではないのよ』

みほ「……!」

――子を捨てた母親なんて、生きる価値もない。

みほ「わ、たし……」

しほ『貴方は昔からそうだった。相手のことを考えるあまり、一つ一つの物事に迷いがあった。後押しがなければ、自分一人で前へ進もうとはしなかった』

みほ「お母さん……」

しほ『なのに貴方は迷いなく、他人を救いに行き、黒森峰に泥をつけた』

みほ「ごめん、なさい……」

しほ『そして全国大会でも、貴方には迷いがなかった』

みほ「え……」

しほ『見つけたのでしょう。自身の戦車道を。今更、何を迷うことがあるのです』

みほ「……」

しほ『西住流は何があっても前へ進む流派。そう教えたはず。立ち止まることは許されない』

みほ「あの……」

しほ『貴方はもう西住の人間ではない。貴方は、西住みほ。戦車道を歩む、一人の人間』

しほ『私たちのことは気にしなくても結構です。まほに勝てるというなら、証明なさい。貴方の戦車道で』

みほ「わたし……わたし……!」

まほ『みほ。今回の試合は中止になっても構わない。けれど、必ず試合はしましょう。大洗女子学園の存続をかけて』

みほ「うっ……おねえ……ちゃん……」

まほ『私は逃げない。だから、みほも逃げ出さないで。みほともう一度戦える日を楽しみにしている』

病室

ねこにゃー「……」

ももがー「まだ起きそうにないね……」

ぴよたん「すぐよくなるって」

ももがー「うん……」

みほ「――あの、すみません」

ももがー「西住さん?」

ぴよたん「帰ったんじゃあ……」

みほ「これから会長と話をしてきます」

ぴよたん「なんの?」

みほ「試合の中止を取り消してほしいって」

ももがー「え……」

みほ「そして、この大洗を守るために勝ちます」

ぴよたん「急にどうしたの?」

みほ「私は怖がっていました。誰かに迷惑がかかることを。ずっと怖がって、決められなくて……。私が迷っていなければ、猫田さんだって、きっとこんな目には遭っていなかった……」

ももがー「西住さんの所為じゃない!」

ぴよたん「そうそう!!」

みほ「あんなところに一人でいたのは、気持ちの整理ができていなかったから。だから、巻き込まれた。みんなに迷惑をかけてしまったんです」

みほ「ずっとそうでした。みんなに支えられていました。迷ったときは背中を押してもらいました。私の戦車道を一緒に進んでくれました」

みほ「なのに、私は迷ったんです。みんなに甘えて、見失っていたんです。ごめんなさい」

ももがー「そ、そんなこと言われても……」

ぴよたん「西住さん、気にしないで」

みほ「私の気持ちは最初から決まっていました。学園艦を守りたい。みんなとの思い出をなくしたくない」

みほ「ここだけが猫田さんを笑顔で迎えることができる場所なんです」

ももがー「うん。私もそう思うよ」

みほ「私は戦います。今ここで逃げたら、もう取り戻せないと思うから」

ぴよたん「西住さん……」

ねこにゃー「――だったら、早く会長のところに・・・いったほうが……いいよ……」

みほ「猫田さん……」

ねこにゃー「ボクが治るのを待っていたら……学園艦がどうなるかわからない……。だから、はやく行って、西住さん……ここにいても意味がないから……」

みほ「ごめんなさい。猫田さん」

ねこにゃー「いいの……ボク、ここで応援してるから……」

みほ「絶対に守るから。猫田さんの帰ってくる場所を」

ねこにゃー「うん……おねがい……」

みほ「行ってきます」

ねこにゃー「にし、ずみさん……」

みほ「……」

ねこにゃー「がんばって」

みほ「はい」

ももがー「行っちゃったなり」

ねこにゃー「二人も行ったほうがいいよ。練習したらきっと試合に……」

ぴよたん「車長がいなきゃ、戦車をうごかせないずら」

ももがー「千鳥さんには申し訳ないけど、アリクイさんチームは欠場決定なりっ。そのかわり、死ぬ気で応援!」

ぴよたん「さんせー!」

ねこにゃー「ありがとう……うれしい……」

大洗女子学園 倉庫

マデューカス「酷い有様だな」

クルツ「すんませんね」

マオ「申し訳ありません。最重要人物を取り逃がしたばかりか、民間人にまで被害が及んでしまいました。全ては私たちの責任です」

クルーゾー「いえ。これはチームリーダーである自分の責任です」

マオ「ちょっと。それ、かっこいいと思ってるわけ」

クルツ「いいじゃね。責任を全部請け負ってくれるっていってんだからよ」

マオ「バカ」

マデューカス「本気で言っているのか、軍曹」

クルツ「ふんっ」

マデューカス「今回の一件は、我々の責任だ。私も艦長もそう考えている」

クルーゾー「ミスリルの、ということですか」

マデューカス「学園艦及び戦車道選手の安全は何よりも優先させる。己の命よりもだ。分かったな」

クルーゾー「はっ!!」

マデューカス「よろしい。これより、作戦を伝える」

正門

カリーニン「話は終わりましたか」

テッサ「ええ。マデューカスさんは?」

カリーニン「今しがた戦車格納庫へ向かいました。そこで各員に作戦を伝えるようです」

宗介「作戦とはなんでしょうか」

テッサ「そうですね。サガラさんにも伝えておかないといけませんね」

カリーニン「これより暫くは我々も常駐し、この学園艦を警護する」

宗介「大佐殿もですか」

テッサ「はい。西住さんと猫田さんが被害に遭われてしまったのは、こちらの不手際ですから。影ながらになってしまいますが、襲い掛かる脅威を私たちでなんとかしないといけません」

カリーニン「大洗学園艦は既に廃艦手続きが進んでいる。戦車に至ってはオークション売却の運びとなる」

テッサ「試合中止の一報が各所に届いた段階で、急速に事は動き始めています」

宗介「早急に試合中止の取り消しを伝えねばならないのですね」

カリーニン「しかし、このタイミングで中止要請の無効を求めると問題が発生する。戦車を欲する企業、組織からの反発は容易に予測できる」

テッサ「勝手なことばかりをいう人が多くて困りますね。許可もなく、皆さんの戦車を売買しておいて」

カリーニン「同感です。しかし、金の動きばかりを目で追う者たちに兵士の心を説いても意味はないでしょう」

宗介「他の学園艦については?」

カリーニン「相応数の人員を割いている。だが、狙うのならばこの学園艦だろう」

テッサ「もうすぐ売られてしまうし、戦車が何者かによって強奪されても、世間はあまり気を向けないでしょうからね」

宗介「奴らならば、手段を選ぶことをなく、実行するのではないでしょうか。現に西住が襲われました」

カリーニン「特殊コーティング技術について、私はもちろんのこと大佐殿も詳細を知っているわけではない。そのような代物を扱うためには相当な時間を要する」

テッサ「即時にASやそのほかの兵器に流用できるのなら、彼らもそうするでしょう。ですが、今まで目立った動きをみせなかったのは、扱える自信がないからだと考えています」

カリーニン「強襲し戦車を奪ったとしても技術応用ができなければ、無駄な弾と戦力を失うばかりか、手がかりを残すことにも繋がる」

テッサ「暴れてくれるならこちらとしても楽ではありますからね。探す手間も省けます。でも、そこまで向こうも愚かではないでしょう」

宗介「今はまだ水面下で計画を進めている段階、ということですか」

カリーニン「油断はできんがな。西住みほが直接狙われた要因は不明だが、戦車を手に入れる一環であったのは間違いないはずだ」

テッサ「表に出てくることのなかった人物が顔を見せたのなら、コーティング技術の転用ができるようになった可能性も捨てきれませんから」

カリーニン「いつかは全国にある学園艦が襲われるという事態にもなりかねません」

テッサ「ですから、彼らに教えて差し上げましょう。学園艦を屈服させるには高くつくということを」

宗介「了解です」

カリーニン「まず戦車を簡単に渡さぬよう、試合は計画通りに行ってもらう。大洗が勝利することができれば、我々が文部科学省教育局に掛け合うつもりだ。それが最も穏便に済む」

倉庫

マデューカス「大洗が敗北を喫した場合、武力を行使し、戦車を守ることになるだろう」

クルーゾー「我々が奪うのですか」

マデューカス「敵の手に渡すよりはマシだ。それに恨まれても構わないだろう」

マオ(もうミホと猫田って子が酷い目にあっちゃってるしね)

クルツ「そんなことしたら、相手も黙っちゃいないんじゃないッスかね」

マデューカス「百も承知だ。奴らのことだ。ミスリルが関わっているとなれば、試合中に襲い掛かってくることもあるだろう」

マオ「試合中って……」

クルツ「5輌対5輌の試合にくるなら、10輌も手にはいっちゃうわけだ」

マデューカス「それだけの素材があれば、当分困ることもなかろう」

クルーゾー「そのような事態だけは避けねばなりません」

マデューカス「できるな」

クルーゾー「汚名は自身の技能で返上いたします」

マオ「借りは帰さないとね」

クルツ「いっちょやりますかぁ。沙織がいるところをこれ以上、めちゃくちゃにされたくもねえしな」

>>516
マオ「借りは帰さないとね」

マオ「借りは返さないとね」

正門

テッサ「作戦概要は以上です。何か質問はありますか」

宗介「いえ。ありません」

カリーニン「大佐殿、私はこれよりマデューカス中佐と再度警戒システムのチェックを行います」

テッサ「よろしくお願いします」

宗介「カリーニン少佐、自分も協力します」

テッサ「待ってください、サガラさん。貴方には重大な任務があるはずです」

宗介「現在、優先するべき命令は受けておりませんが……」

テッサ「今の肩書は?」

宗介「自分は……」

テッサ「ミスリルに属する一人の兵士ですか。それとも陣代高校のゴミ係でしょうか」

宗介「ネカティブ。自分は大洗女子学園戦車道戦術アドバイザーです」

テッサ「ですよね。サガラさんは大洗の皆さんを勝利に導いてあげてください」

宗介「……」

テッサ「何か心配事でもあるのですか?」

宗介「大洗女子学園が勝利するためには西住が隊長を務めることが絶対条件です。ですが、今の西住は戦える状態とはいえません。もとより、西住は迷っていました」

テッサ「あのようなことがあったばかりでは、仕方ないかもしれませんね……」

宗介「方法があるとするならば、マオの新兵訓練法ぐらいです。彼女たちをキリングマシーン化させるほかありません」

テッサ「……いえ。どうやら、そんなことはしなくてもよさそうですね」

宗介「は?」

テッサ「向こうです」

宗介「向こう……?」


みほ「……」


宗介「西住か」

テッサ「彼女のほうからこちらに歩いてきている。覚悟あってのことでしょう」

みほ「あ、相良さん。隣にいるのは……?」

宗介「猫田を看ていなくていいのか」

みほ「私が今やるべきことは、猫田さんの傍にいることではありませんでした」

宗介「では、なんだ?」

みほ「戦車道、やります」

宗介「十数時間で見違えたな」

みほ「もう守られるのは嫌なんです。誰かに甘えて、流されて、自分の気持ちに嘘をつくのはやめます」

みほ「私は、西住流の西住みほではありません。大洗女子学園の西住みほなんです」

宗介「そうか」

みほ「大事な場所を守ります。戦車道の人気が落ちてしまうことよりも、みんなの思い出を、みんなで戦ったこの場所を、守りたいんです」

宗介「お前なら問題ない。自身が信じる道を行けばいい」

みほ「ありがとうございます。相良さんも協力、お願いします」

宗介「俺にできることは限られている」

みほ「そんなことはありません。相良さんがいなければ、きっと私は……」

テッサ「レナード・テスタロッサに拉致され、この場にいなかったかもしれませんね」

みほ「あなたは……」

テッサ「私はテレサ・テスタロッサといいます。貴方を襲い、猫田さんに大怪我を負わせた男は私の実兄です」

みほ「……」

テッサ「私の所為ではないなんて言いません。許してほしいなどと乞うことはいたしません。怒りも恨みも全て私にぶつけてください」

みほ「テスタロッサさんは相良さんの……」

宗介「隊長だ」

みほ「話してくれたミスリルっていう、傭兵部隊の……?」

宗介「肯定だ」

みほ「……」

テッサ「嘘ではありません。16歳の小娘ですが、一部隊の長を務めています」

みほ「わ、私より年下なんですか!?」

テッサ「そういうことになりますね」

みほ「なんだか、信じられませんけど、相良さんがそんなウソをいうわけもないし……」

テッサ「西住さん。どのような謝罪も意味はないでしょう。何か私にできることがあれば、言ってください」

みほ「気にしないでください。猫田さんに怪我をさせたのは、貴方ではないんですから」

テッサ「でも……」

みほ「相良さんのお友達なら、かなめさんともお友達なんですよね」

テッサ「え、ええ……」

みほ「だったら、その、私とも友達になってくれると、嬉しいですけど……ダメですか……?」

テッサ「私と……友達に……?」

みほ「はい。よ、よろしくお願いします!」

テッサ「いいのですか?」

みほ「はいっ」

テッサ「ありがとう、西住さん」ギュッ

みほ「いえ! こちらこそ!」

テッサ「貴方のように優しい人ばかりなら、私やかなめさんも普通の学生生活が送れたかもしれませんね……」

みほ「え?」

テッサ「いえ、こちらの話です。忘れてください」

みほ「あ、はい」

テッサ「私のことはテッサとお呼びください、ミホさん」

みほ「はいっ。では、私は会長に伝えないといけないので、行きます」

テッサ「足止めさせてごめんなさい」

みほ「私のほうこそ、すみません」

テッサ「次はゆっくりお話ししましょう」

みほ「失礼します」

テッサ「いい人ですね、とても」

宗介「はい。故に今まで戦う決意ができなかったのだと思います」

テッサ「無理もないわ。みんなのことを心配しそうだもの。少数の犠牲にすら目をつぶることができない。隊長としては失格でしょうね」

宗介「そんなことはありません」

テッサ「どうしてですか?」

宗介「大佐殿は、いえ、テッサは自分が知る中で最高の司令官です」

テッサ「……ホント?」

宗介「肯定です」

テッサ「ふふっ。ありがとうございます。お世辞でも、とっても嬉しいです」

宗介「世辞ではありません。自分の本心です」

テッサ「……大洗のこと、お任せします。西住さんを支えてあげてくださいね」

宗介「了解です。大佐殿もお気をつけて」

テッサ「はい。こちらのことは心配いりません。大船に乗った気でいてください」

宗介「自分はいつもその船に乗艦しています。問題ありません」

生徒会室

杏「奇跡……。私はずっと奇跡に頼ってきたな。情けないね」

桃「あらゆる手を尽くし、それでも手が届かないなら、奇跡に頼るしかありません」

柚子「努力した人だからこそ、そうした奇跡が起こるんじゃないんですか」

桃「そうです。会長は奇跡を願うしかないところにまでいつも追い込まれていたではありませんか」

杏「一つぐらい、自分の力で手に入れたいかな」

桃「会長はいつだって努力されて……」

みほ「――あの!」

柚子「え?」

桃「ん?」

杏「西住ちゃん?」

みほ「私! 戦車道、やります!! 隊長、がんばります!! だから、だから……!!」

杏「……」

みほ「みんなで勝ちましょう! 次の試合、絶対に勝ちましょう!」

桃「に、しずみ……」

教室

沙織「華、病院いくよね」

華「勿論ですわ。花束はわたくしが用意いたします」

沙織「ありがと。猫田さんも喜ぶね」

華「みほさんは猫田さんの傍にいるのでしょうか……」

沙織「みぽりんって、すっごく優しいからね。何時間でもいてくれそう。私が風邪とかひいたら、治るまで一緒にいてくれたりしてぇ」

華「きっと、居てくれます」

沙織「じゃ、いこっか」

華「はい。麻子さんと秋山さんもお誘いして――」

『ピンポンパンポーン、生徒会からのおしらせぇ』

沙織「またぁ?」

華「なんでしょうか」

『どーぞ、西住ちゃん』

『で、でも、これは……やりすぎのような……』

『大事なことだから。西住ちゃんから説明してほしいんだ』

『すー……はー……。に、西住みほです!! みなさん!! 突然ごめんなさい! 聞いてほしいことがあります!!』

華「みほさん?」

沙織「なになに? なんでみぽりんが放送を……?」

『この大洗女子学園は来年度で廃校になってしまうかもしれません』

華「……」

沙織「みぽりん……」

『もうすぐ行われる戦車道の大洗女子学園対オールスター戦で大洗女子学園が負ければ、この学園艦は無くなってしまいます』

優花里「武部殿! 五十鈴殿! この放送……!!」

華「お静かに」

優花里「はぅ!? す、すみません……」

『けれど、勝つことがあれば再燃しかかっていた戦車道に水を差してしまうことになります。西住家の人間がそんなことをしてしまうことでお母さんとお姉ちゃんに迷惑がかかるかもしれない』

『何より、勝つためには自分の戦車道を曲げなくてはいけない。そう考えると、私は選手として出場するべきではないのかもしれないと、悩みました。いえ、試合をしたくないとすら思いました』

麻子「沙織」

沙織「あ、麻子。今、起きたの?」

麻子「西住さんの声がしたから、飛び起きた」

体育館

『そんな中で、私たちの大事な仲間であり、友達である猫田さんが事件に巻き込まれて大怪我をしました。事件と試合との関係性も分からないので、試合中止ということで決定しかけました』

典子「……」

『私は無意識に安心してしまったのかもしれません。もう戦わなくてもいい。悩まなくてもいい。試合なんてしている場合じゃないから』

『猫田さんの心配をしていればいい。そんなことを心のどこかで思っていたかもしれません』

妙子「西住先輩……」

『私は弱いんです。優しくなんてありません。ただ臆病で、引っ込み思案で、自分からは何もできなくて……』

『友達の作りかただってわかりませんでした。一人でいるのが怖いのに、手を伸ばしてくれる誰かをずっと待っていただけなんです』

あけび「先輩、そんなことないのに……」

忍「自分自身でそう感じていたんじゃない?」

『みんなが離れていくのが怖かった。だから戦車に乗りました。友達が庇ってくれたから、戦車道を受講しました』

『最初は本当に嫌でした。戦車に乗りたくない気持ちのほうが大きかったと思います』

『でも、みんなといるのが楽しくなって……ずっとずっと、みんなと一緒にいたいって思えるようになって……』

『だから、逃げ出した戦車道にもう一度だけ向き合おうって、決めたはずでした』

典子「……」

食堂

『苦労して優勝してもなお、廃校をかけた試合があると言われて、心が折れてしまったのかもしれません。私は家族や将来の戦車道と自分の心配をしてしまったんです』

梓「先輩、そんなこと一言も……」

優希「言えなかったんじゃないかな。隊長の弱い部分を見せたくないとか」

『きっとそれも弱い自分を隠すための言い訳だったんです。本当は学園艦を守りたいって感じていたはずなのに。怖いことから逃げ出そうとしてしまいました』

あや「西住先輩、悩んでたんだ……色んなことで……」

あゆみ「全然、気が付かなかった……」

あや「私も……」

梓「私だって……」

紗希「……」

優希「ホント、バカだなぁ、みんなぁ」

桂利奈「えぇー!? 優希ちゃんはきがついてたのー!?」

優希「ちがうよぉ。私も含めて、みんな、バカじゃん」

梓「うん。ダメだよね。先輩が苦しんでいることに、誰も気が付けなかったなんて……」

桂利奈「あいぃ……」

倉庫

『けど、私はもう逃げません。戦います。自分の戦車道を信じて、戦います』

『だから、みなさん……こんな弱い私でも……信じて、くれますか……』

『諦めかけた、私を……もう一度だけ……』

カエサル「よし。このマイクを使おう」

エルヴィン「それでは隊長に私たちの声は届かない。無線機を使うぞ」

おりょう「西住隊長が受信できなければ意味がないぜよ。ここは手旗信号で」

左衛門佐「外を見ていなければ伝えようがないでござる。ここは狼煙で」

アル『西住殿のところに直接駆けつけるのが最も効率的かつ確実かと』

カエサル・エルヴィン・おりょう・左衛門佐「「それだぁぁ!!!」」ダダダダッ

ナカジマ「私たちもいこっか」

ホシノ「うんっ」

ツチヤ「隊長に言わないとね」

スズキ「そうだね。そういうこと、言ったことなかったよね」

アル『みなさん、お気をつけて』

廊下

典子「うおぉぉぉぉぉ!!!!」ダダダダッ

みどり子「ちょっと!! 廊下は走らない!! 校則違反よ!!!」

モヨ子「でも走りたくなる気持ちもわかるのよ、そど子」

希美「私たちもこうしてはいられないのよ、そど子」

みどり子「だからって走っていいわけないじゃない!!」

かなめ「――園先輩!」

みどり子「千鳥さん?」

かなめ「急がなきゃ、みほに言いたいことみんなに言われちゃいますよ」

みどり子「う……うぅぅ……」

かなめ「いきましょ!」

みどり子「あーもー!!! 校則違反なんだからぁぁ!!!」ダダダダッ

かなめ「よっしゃー! はしれー!!」

麻子「そど子が荒れてるな」

優花里「我々も急ぎましょう! 西住殿のところへ!!」

学園艦 艦内

『みんなを守りたい。この学園艦を守りたい。でも、私じゃ無理なんです。みんないないと、何もできないんです』

カリーニン「この放送はどこから流れている」

テッサ「生徒会室、でしょうか」

マデューカス「艦長。警戒システムの設定を多少変更してもよろしいでしょうか」

テッサ「いいですよ」

マデューカス「感謝します」

テッサ「ふふっ。マデューカスさんって優しいんですね」

マデューカス「いえ。緊急時には艦内全域放送が可能でなくてはなりませんからな。そのテストです」

テッサ「はいはい、りょーかいです」

マデューカス「本当です。他意はありません」

テッサ「いいから、早くしてください」

マデューカス「アイアイ、マム」

カリーニン「届くといいですね」

テッサ「届きますよ。ミスリルが誇る、警戒システムなんですから。艦の隅っこにいたって、声は届きます」

病室

ももがー「なにか食べるなり?」

ねこにゃー「大丈夫。ありがとう」

『――みんながいないと、私は戦車に乗ることもできなかったんです』

ぴよたん「この声って……」

『もう背中を押してもらうのは、やめます! これからは私がみんなを支えたい! 私がみんなに勇気を分けたい!!』

『みんなから苦しいことを、辛いことを、分けてもらいたい!! 私は……私は……!!』

『私は大洗女子学園を愛しています!! みんなが大好きなんです!! みんなと一緒に歩く戦車道が一番楽しいんです!!!』

ねこにゃー「おぉぉ……西住さんに……こくられた……」

ももがー「それはちょっと違うような……」

『だから!! 信じて欲しいんです!! 未熟で弱虫で臆病な私だけど、その気持ちだけは本当です!!!』

ぴよたん「私たちだって!!」

『私たちはバレーボールを愛しています!!! でも、それ以上に大洗女子学園を愛しています!!! 戦車道を愛しています!!! 西住隊長を愛しています!!!』

『キャプテーン!! ガンホー!! ガンホー!! ガンホー!!!』

『ちょ……!? 磯辺さん!?』

グラウンド

沙織『ちょっとまってよ!! みぽりんのことを一番愛してるのは私なんだからぁ!!』

優花里『いえ!! 敬愛の深さならば、この秋山優花里、誰にも譲りません!!!』

華『わたくしも、みほさんのことはだーいすきですわ』

麻子『私……は……まぁ……すき、かな……』

クルツ「なんだこりゃ」

マオ「部下に愛される隊長ってのは、やっぱりいいわね」

クルーゾー「……」

クルツ「見てみろよ。中尉の表情。呆れかえってんぜ」

クルーゾー「ユ……す……らしい……」

クルツ「は?」

クルーゾー「あ、いや。なんでない」

クルツ「ユ……なんだって?」

クルーゾー「なんでもないと言っている。哨戒任務だ。行くぞ」

クルツ「言ったことぐらい教えてくれてもいいだろ、ったく」

生徒会室

カエサル「気持ちは西住隊長と常に同じだと思っている!!」

エルヴィン「勝利の美酒は皆で分かち合わなくては上手く酔えない」

おりょう「私たちは未成年ぜよ」

梓「先輩だけにいろんなことを任せて、すみません!!」

桂利奈「オールスターチームなんてぶっ飛ばしてやりましょう!!」

みほ「みんな……」

みどり子「西住さんは弱くなんてない。もっと自信をもって」

ナカジマ「勇気ならいつも分けてもらっています」

みほ「ありがとう……みんな……」

杏「みんな、やるんだよね」

沙織「とーぜん!」

華「大洗を守れるのは、私たちだけです」

優花里「全員で、戦いましょう」

麻子「西住さんは隊長。ただそれだけだ。西住さんを頼るんじゃなく、信じればいい。西住さんだけじゃない。沙織のことも五十鈴さんのことも秋山さんのことも、戦車道チームを信じている」

杏「おっし。んじゃ、景気づけにアレでもやっちゃうか」

桃「あれというと」

柚子「あれのことでしょうか?」

杏「かわしまぁ。BGMスタンバイ」

桃「本気ですか!?」

杏「大洗といえばあれだからな」

桃「わ、わかりました……」

柚子「えぇー!?」

杏「西住ちゃん」

みほ「はい」

杏「ありがとう。あと、ごめんね。最初から最後まで見ず知らずの学校のために心をすり減らして、大変だったよね。感謝してもしたりない。なんてお礼を言っていいかもわかんないよ」

みほ「会長も、いえ、会長のほうこそ辛かったはずです」

杏「ま、そうだな」

みほ「ふふっ」

杏「あはは。おーし!! おどるぞー!!!」

――アアアン アン♪ アアアン アン♪ アアアン アアアン アン アン アン♪

杏「あの子会いたやあの海越えてぇ」

優花里「あたまの灯はあーいのあかっし!」

おりょう「燃やして、焦がして、ゆーらゆら」

紗希「もやして、こがして、ゆーらゆら」

沙織「なんでこーなるのよー!」

華「いいではありませんか。誰にも見られていませんし」

麻子「いや、千鳥さんが見てるが」

みほ「こっち来て、アンアン! 逃げないで、アンアン!」

典子「波にゆられて、アンアンアン!」

かなめ「……」

宗介「千鳥」

かなめ「あ、ソースケ」

宗介「千鳥は参加しなくていいのか?」

かなめ「あれに参加する勇気は分けてほしくないわね……」

陣代高校 生徒会室

敦信「そうか。試合の中止は取り消しか」

まほ『連絡があった。他の学校へもその通達は既に届いているはず』

敦信「角谷君よりも君からの連絡が先とは、驚いたよ」

まほ『貴方もこの一件には深く関わっている。伝えないわけにはいかない』

敦信「律儀だね」

まほ『それと例のことも話は順調に進んでいる』

敦信「どの戦車を選ぶのかは、聞くまでもないかな」

まほ『それを知ってどうするというの』

敦信「ただの好奇心だよ。気になったことは追及するのが性分でね」

まほ『そのうちに分かることよ』

敦信「妹の戦車を――」

まほ『失礼する』

敦信「切られてしまったか。西住まほ君はやはり、戦車道日本代表にふさわしい淑女だ。美樹原君と気が合うだろう」

蓮「まぁ、では一度お話ししてみたいですね」

大洗女子学園 倉庫

みほ「疲れた……」

宗介「素晴らしいダンスだったぞ」

みほ「そ、そうですか?」

宗介「大洗では伝統のダンスらしいな」

みほ「え、ええ……」

宗介「それはさておき、試合まで時間がない。どうするつもりだ」

みほ「……今までとやることは変わりません。変えなくてもいいと思います。相良さんはどう思いますか?」

宗介「同感だ。日頃の訓練風景を見る限りは改善の余地などない。強いていうなら、厳しさがない」

みほ「厳しさ、ですか」

宗介「背水の陣であっても普段厳しさがないゆえに、追い込まれてもどこかゆとりがあるように思える。それが戦車道にとって良いことなのかは俺には判断できん」

みほ「河嶋さん以外で声を荒げるような人がいないから、そう見えちゃうのかも……」

宗介「だが河嶋も的確な指示を出せていないことは自覚している。訓練中に口を挟むこともない」

みほ「そうなると、怒る人っていないんですよね」

宗介「西住による戦車前進時の掛け声もとても優しいからな。指揮官の声は耳を劈くぐらいが普通なのだが」

みほ「すみません」

宗介「いや、指揮官として三流でも指導者としては一流だ。その方針でこのチームはまとまっている。問題ない」

みほ「あのボン太くんで訓練したら、効果ありますか」

宗介「ボン太部隊を仮想オールスターチームにして、模擬戦闘をしてみるか」

みほ「あまり意味がなさそうですね……。可愛いですけど」

宗介「そうか。残念だ。データ収集に役立ちそうだったのだが」

みほ「そうだ! あのときは、ありがとうございました」

宗介「何の話だ」

みほ「ボン太くんで助けに来てくれたのって、相良さんですよね」

宗介「肯定だ」

みほ「あの公園で助けにくてくれなかったら……私……」

宗介「公園? なんのことだ。君の救出を行ったのは学園の敷地内だ」

みほ「でも、公園でボン太くんが……」

宗介「それは俺ではない。君を最初に助けたのは――」

かなめ「ソースケー、テッサが病院まできてってさー」

病室

ねこにゃー「みんな、今頃は練習してるんだろうな」

「すみません。少しいいでしょうか」

ねこにゃー「は、はい?」

テッサ「失礼します」

ねこにゃー「あ……え……?」

マデューカス「決して怪しい者ではありません。警戒しなくとも結構です」

ねこにゃー「おぉぉ……」

マデューカス「ですから……」

テッサ「マデューカスさんは外にいてください」

マデューカス「しかし、艦長」

テッサ「むぅ」

マデューカス「うぅむ……。外に出ています……」

テッサ「ごめんなさい、猫田さん。急に押しかけてしまって。私はテレサ・テスタロッサといいます」

ねこにゃー「ボク、ねこにゃーです」

テッサ「あ、あら? えっと、猫田さん、では?」

ねこにゃー「ええと、本名はそうなんですけど、ねこにゃーなんです」

テッサ「そ、そうなのですか。では、ねこにゃーさんとお呼びしたほうがいいのかしら?」

ねこにゃー「どっちでもいいです」

テッサ「は、はぁ……。で、では、ねこにゃーさんでいいですか」

ねこにゃー「どうぞ」

テッサ「この度の事、陳謝致します」

ねこにゃー「え? どういうこと?」

テッサ「貴方が怪我をしてしまった原因の一端は私にあります」

ねこにゃー「確かにテスタロッサさんとあの男の人の髪の色とか、雰囲気とか似てるけど……」

テッサ「その男は、私の兄なんです」

ねこにゃー「お兄さんが……? どうして西住さんを……?」

テッサ「それはまだよくわかっていません。ごめんなさい」

ねこにゃー「そうなんだ……。西住さんにはそのこと、話したの?」

テッサ「はい。でも、ミホさんは私のことを友達だと言ってくれました。あの人が皆さんから慕われているのがよくわかります」

ねこにゃー「ボクも西住さんのこと、大好きだから……」

テッサ「そうでしょうね。私ですらファンになりそうです」

ねこにゃー「テスタロッサさん」

テッサ「はい」

ねこにゃー「ボクとも、リア友になってくれると、う、うれしいな」

テッサ「りあとも、とは?」

ねこにゃー「リアルの友達のこと」

テッサ「ねこにゃーさんまで、私のことを受け入れてくれるのですか」

ねこにゃー「あの怖い人と家族だったのは驚いたけど、貴方はあの男の人とは違うから」

テッサ「ミホさんと理由が同じですね」

ねこにゃー「そ、そうなんだ。なんだか、照れる……」

テッサ「絶対に守ります」

ねこにゃー「え?」

テッサ「またお見舞いにきてもいいですか?」

ねこにゃー「いつでもきて。待ってるから」

マデューカス「艦長。二人が到着しました」

テッサ「そうですか」

ねこにゃー「二人?」

テッサ「貴方のお友達です」

かなめ「猫田さん、具合はどう?」

宗介「顔色は優れている。問題はないようだな」

ねこにゃー「千鳥さん、相良さん」

テッサ「貴方にも話しておきたい、いえ、話しておくべきでしょう」

ねこにゃー「な、なんのこと?」

テッサ「私たちの正体についてです」

ねこにゃー「正体……」

テッサ「重大な機密を今から説明します」

宗介「西住も既に知っている。猫田だけに話すわけではない」

ねこにゃー「ボクと西住さんだけが知っていることなの?」

テッサ「お二人の胸に留めておいていただけると助かります。私たちは一応、極秘の傭兵部隊なので」

グラウンド

クルツ「はぁーい、ガールズたち。今日もクルツくんの射撃講座を始めちゃうぞぉ」

あや「おねがいしまーす!」

あゆみ「クルツさんだー」

クルツ「うんうん。一年生は素直でいいねぇ」

左衛門佐「たのもー」

あけび「今日もご指導のほど、よろしくお願いします!」

クルツ「真面目な子もいいぜ」

みどり子「射撃の腕は確かなのよね」

希美「講座を受けたほうがいいの?」

みどり子「試合に出られるかはわからないけど、ここで受けておかないと後悔するような気がする」

クルツ「絶対に損はさせねえさ。話を聞くだけでも、全然違ってくる」

華「では、清聴いたしますわ」

クルツ「華は、あれだ、別に聞かなくても十分……」

華「いいえ。聞きます。ウェーバーさん、どうかご教授ください」

優花里「砲手組が羨ましいです。訓練時の姿を見る限り、ウェーバー殿は間違いなく一流のスナイパーでありますからね」

沙織「私たちはどうするの?」

みほ「ええと、相良さんからは何も指示を受けていないし、今まで通りに――」

マオ「ちょっと待ちな」

麻子「貴方は……」

優花里「アイス屋さんにいた店員さんですね」

マオ「あたしはメリッサ・マオ。実はソースケと知り合いでね。あんたたちの指導を任された」

みほ「指導?」

マオ「とはいっても、あたしもソースケと同じで戦術に関して口を挟む気はない。ミホがいれば十分だからね」

みほ「わ、私は、そんな」

カエサル「では、どのようなことを?」

マオ「ソースケは学園の周りを走らせていたらしいけど、正直なところそれだけじゃあんたたちの心は鍛えられない」

おりょう「どうするぜよ」

マオ「ここにある丸太を抱えて、学園の周りを50周。はい、スタート」

沙織「やだもー。そんなの無理に決まってるじゃないですかぁ」

マオ「あたしはやれといったんだけど?」

沙織「だから、そんな大きいのを抱えて走れるわけが――」

マオ「やりな。糞虫共」

沙織「え……」

マオ「あんたたちは勝ちたいんじゃないのかい!! ええ!!」

桂利奈「ひぃ!?」

カエサル「勝ちたいに決まっている!!」

マオ「学園艦を守りたいって言葉は嘘だったのかい!?」

エルヴィン「嘘ではない!!」

マオ「なら、それを証明してみせな!! ほら、丸太を担げ!! この糞ビッチ共!!」

沙織「えぇー!!」

麻子「沙織は男と付き合ったことすらないのにな」

沙織「麻子もじゃん!!!」

マオ「この程度のことからも逃げ出すようなら、あんたらはただ男にヤラれてガキを生むだけのつまんないメス犬だよ!!!」

みほ(そういえば相良さん、最終的にはこれぐらい厳しいことをさせるって言っていたような……。本気だったんだ……)

かなめ「今更だけど、猫田さんにまで全部話してよかったの?」

テッサ「ミホさん同様、ねこにゃーさんはあの人の顔を見てしまっている。いつ、何時、また同じ恐怖を味わうかわかりません」

かなめ「そうね。知らない間に、知らない奴に命を狙われるのは、嫌だもんね。あと変な奴に付き纏われるのもね」

宗介「問題ない。不審者は全て捕縛する」

かなめ「あんたのことを言ってるんだけど」

テッサ「あとは私たちがねこにゃーさんのことを全力で守る。シンプルなことです」

かなめ「猫田さん、ううん、この学園艦が残る限りは、みんなを守ってくれるの?」

テッサ「勿論です。ミスリルの名に懸けて、お約束します」

かなめ「ありがとう。これで少しは安心ね」

宗介「あとは学園艦を存続させるため、決戦までに特訓を繰り返すだけだな」

テッサ「そうでした。サガラさんは先に戻ってくださってもいいんですよ?」

宗介「問題ありません。今頃、マオが自分の代わりを務めているはずです」

テッサ「メリッサが?」

宗介「本日よりマオと自分が西住らを補強していきます。我々でかけている部分を強化してやれば、負ける要素は皆無となり、大洗女子学園は無敵のチームと化します」

かなめ「しまった……! ソースケがマオさんに任せる気満々だったの忘れてた……!! 急いで戻らなきゃ!!!」

グラウンド

かなめ「みんなー!! 無事――」

マオ「ちんたら、ちんたら走るんじゃないよ!!! この蛆虫が!!」

沙織「ひぃ……ひぃ……」

優花里「これは流石の私でも……きつい……です……」

妙子「あぁ……」ガクッ

典子「近藤!! 止まるな!!」

妙子「キャ、キャプ……」

マオ「誰が休んでいいと言った」

妙子「ひっ……」

マオ「あんたのバレーボール魂なんて、所詮はそんなもんだったってこったね」

妙子「そ、そんなことは……」

マオ「お前みたいな出来損ないは男に媚びればいいんだよ。そのでかい尻を振っていれば、向こうから寄ってくるよ。よかったね」

妙子「うぅ……」

マオ「プライドも根性もなけりゃあ体を売って生きていきな。金と恥垢がたくさん溜められる。あんたにお似合いの楽で惨めな人生だ。そうしな、このアバズレ」

典子「近藤の悪口をいうなー!!!」

マオ「ふんっ」ゲシッ

典子「うわ!?」

マオ「こんな根性なしを庇う必要はない。こんな女が腐ったやつが戦場にいても、男を慰めるのためにしか働けない」

典子「そんなこと……!!」

妙子「やめてください!! キャプテン!!」

典子「でも! これ以上、近藤のことを悪く言われたくない!!」

妙子「キャプテン……」

マオ「庇われたくないならガッツを見せな!!」

妙子「そーれそれそれそれー!!!」ダダダッ

典子「うおぉぉぉぉぉ!!!!」

テッサ「……」

かなめ「おそかった……」

宗介「マオ。流石だな。今の大洗に欠けていた部分を見事に補っている」

マオ「これぐらいのことはしないとね。憎まれ役ってのが不在だったみたいだし」

かなめ「ちょっとマオさん!! みんないい子なんだから、変なことをしないでくださいよ!!」

マオ「いい子だからこそ、心を鬼にする。優しさは躊躇いを生み、情けを与える。そういうことをしていれば、学園艦は守れないんじゃない?」

かなめ「いや、だからって……」

テッサ「メリッサ……」

マオ「これはミスリルとは関係ないから、いくら艦長の命令でも聞けないわよ」

テッサ「もう……なにも言いません……」

マオ「安心して。ソースケみたいに加減なしにはしないから。心を失くすまではしないわ」

かなめ「ホントに……?」

宗介「もとより士気が高い彼女たちにそこまで求めるつもりはない」

かなめ「頼むわよ……」

マオ「そこ!!! ペースが落ちてる!! 嫌ならやめてもいいんだよ!!! 家に戻ってパソコンの前で股間をまさぐってな!!!」

ももがー「そ、そんなこと……してなぁい……」

ぴよたん「してても、してるとはいえなぁい……」

かなめ「え……」

マオ「何、驚いてるのよ、カナメ。アリクイさんチームまで参加してるのが不思議?」

かなめ「だって……」

杏「ねこちゃんが戻ってきたときに、サボってたなんて言いたくはなんじゃない?」

かなめ「角谷先輩……。けど、猫田さんは……」

杏「諦めたくないから、奇跡を信じたいんだよ。誰だってな」

マオ「あんたも走りな」

杏「はいはーい」

マオ「全く。要領が無駄に良い奴は困るわ」

かなめ「丸太、まだある?」

マオ「そこに」

かなめ「よっ……と……」

宗介「千鳥、参加するなら泣き言はなしだ。その覚悟はあるか」

かなめ「あるわよ。バカにしないで」

マオ「よかったわねー!! アバズレがもう一匹増えたわよー!!!」

みほ「かなめさん……はぁ……はぁ……無理に……参加する、ことは……はぁ……」

かなめ「あたしだって、大洗女子学園戦車道のメンバーなんだから。同じ特訓をしたいじゃない」

マオ「あたしはあんたたちを憎み軽蔑しているっ! あたしの仕事はあんたたちの中からマ●●●●●カーを見つけ出して、切り捨てる事だ!」

マオ「パパの●●●がシーツのシミになり、ママの●●に残ったカスがあんたたちだ!」

テッサ「聞くに堪えません……」

宗介「これも必要なことです」

テッサ「本当ですか?」

宗介「肯定です」

テッサ「うーん……」

マオ「――あんたたちのボーイフレンドはその砲弾だ! その砲弾を立派な●●●だと思って、とことこん綺麗にしてやりな!!!」

優希「こわれちゃうかもぉ」

梓「こら! そんなこと言っちゃダメ!!」

みほ「間違ってる……色んなことが間違ってるよぉ……」

マオ「このあとは隊長の言うことをよく聞くように!! ミホ、戦車戦術は任せるから」

みほ「ここから私なんですか!?」

宗介「間違いなく、強いチームになれます」

テッサ「だと、いいんですが……」

聖グロリアーナ女学園 会議室

カチューシャ「おかわり」

オレンジペコ「はい。すこしお待ちください」

ケイ「これベリーグッドな味ね」

ダージリン「ありがとうございます」

エリカ「あの、そろそろ進めませんか」

カチューシャ「私たちが組めばどこにも負けないわよ」

まほ「だからこそ、作戦は決めておくべきだ」

カチューシャ「なによ。私に――」

まほ「……」

カチューシャ「そ、そうね。作戦は決めないとね」

ダージリン「流石、まほさんですわね。眼力だけで抑え込むとは」

まほ(そんなつもりは一切なかったのに)

ケイ「試合の日も迫ってきてるし、私たちにしかできない、オールスター・オペレーションを考えましょ」

アリサ「とはいえ5輌だけでは派手な作戦はできませんね」

ノンナ「派手な作戦とは無線傍受のようなものでしょうか?」

アリサ「ぅぐっ……」

ナオミ「あの作戦は禁止になっている」

ケイ「アンフェアな戦いはしないわ。そうよね、アリサ」

アリサ「い、いえす、あむ」

ダージリン「確実に勝てる作戦はありますが」

ケイ「それはなに?」

ダージリン「無論、浸透強襲戦術です。大洗の戦力ではこちらの装甲を簡単には抜けませんもの」

ノンナ「全車両で各個撃破、とういうわけですね」

ダージリン「ええ。純粋な力の差はどのような戦術も意味を成しません」

オレンジペコ「たとえ小さな斧でも、数百度これを打てば堅い樫の木も切り倒せる。という言葉が……」

ダージリン「……」ズズッ

ケイ「フェアと言えばフェアだけどね」

まほ「例の件もある。それを踏まえて作戦は決めたほうがいい」

カチューシャ「ああ、あの話ね。林水から聞いてるけど、ルール上問題はないの?」

まほ「違反ということは書かれていない。戦車道精神に反するものでもないはずよ」

カチューシャ「あっそ。なら、いいけど」

ケイ「踏まえるってなると、私としてはタイマンがいいわね。1輌と1輌が激しく砲身をぶつけあう。サイコーにエキサイティングよ!!」

アリサ「アンツィオと大洗がそれをしていましたね」

ケイ「そうそう! それ! あれは見ててスパークしちゃったわ!」

ナオミ「戦車戦術とは呼べませんけど」

ケイ「それがいいんじゃない!」

カチューシャ「ケイにはついていけないわ。ねえ、ノンナ?」

ノンナ「私は素晴らしいと思いますが」

カチューシャ「えぇ!? どうしてよ!?」

ダージリン「わたくしは構いませんことよ。一度、大洗のみなさんを下していますし」

アッサム「追い込まれてはいましたが」

ダージリン「……」ズズッ

ケイ「結局、どうするの? 私の作戦でゴーしちゃう?」

まほ「そうだな……」

別の日 大洗女子学園 倉庫

宗介「どうだ、アル」

アル『……』

宗介「俺は答えろと言っている」

カエサル「アルバート。相良教官が困っている。答えてあげてくれないか」

アル『ラジャ。サガラ軍曹殿、ご質問をどうぞ』

宗介「……大洗を勝利させる戦術は決まったか」

アル『肯定。既に西住殿と綿密なシミュレーションを行い、いくつもの戦術を考案してあります』

宗介「では、試合に出場するメンバーを決めるとするか。いいな、西住」

みほ「はい」

宗介「俺とマオ、そしてアル、西住のチーム評価を総合し、高評価チームを選出する」

杏「んー」

桃「相良。分かっているな。もし私たちのチームを選ばなければ……!!」

杏「河嶋ぁ、そんなこというな。私たちが出る出ないよりも、大洗の勝利が最優先なんだから」

桃「しかし、それでは会長の想いが……」

杏「そんなのねこちゃんのほうが何倍も悔しいって」

桃「……っ」

杏「ごめんね、相良くん。続きをどーぞ」

宗介「はっ。では、発表します。まず、あんこうチーム。隊長車を務めてもらう」

みほ「はい」

宗介「次、カバさんチーム。トップクラスの安定力は必要になる。いけるな」

カエサル「任せてくれ」

宗介「アヒルさんチーム」

典子「私ですか!?」

宗介「肯定だ。お前たちのガッツに期待している」

典子「分かりました!! バレー部魂、みせてやります!!」

宗介「ウサギさんチーム」

梓「はいっ」

宗介「澤、お前が次代の戦車道チームを率いる者だと信じている。頼むぞ」

梓「私にできることなら、どんなに危険なことでも成功させてみせます」

宗介「最後は……」

柚子「中間発表通りなら……」

桃「レオポンか……」

宗介「カメさんチーム」

杏「……」

柚子「いいんですか!?」

宗介「ああ。問題ない」

杏「勝率は下がってない?」

宗介「レオポンさんチームを選出するよりも、会長閣下が出場されたほうが勝利する可能性は上がります」

杏「それはどうして?」

宗介「会長閣下が再起したからです」

杏「それだけで決めちゃっていいの? 私、調子にのっちゃうよ」

宗介「会長閣下がこの程度のことで舞い上がり、自惚れることなどありえないと自分が考えています。むしろ、更に自分を磨こうとわずかな時間でも努力させるはず」

杏「そこまでいわれちゃったら、やるしかないねぇ。相良くん、ありがとね」

宗介「礼は結構です。分析結果を発表しているにすぎません」

みどり子「冷泉さん」

麻子「なんだ、そど子」

みどり子「名前は略さないで。試合、ちゃんとやるのよ」

麻子「する」

みどり子「学校がなくなったら、貴方の遅刻データを消した意味がなくなっちゃうんだから」

麻子「そうだな」

みどり子「試合に出る人しか守れないのよ。その自覚を――」

麻子「違う」

みどり子「何が違うの?」

麻子「そど子の応援がなければ、勝てる試合も勝てなくなる」

みどり子「ふ、ふん。応援ぐらいするわよ」

麻子「みんなで守ろう。この学園を」

みどり子「ええ。そうよね。みんなで守らないと」

麻子「だから、次の試合に勝ったら、新たに増えた遅刻と欠席回数の消去を頼む」

みどり子「あーもー!! なんで貴方はいつも通りなの!?」

ナカジマ「レオポンが外れちゃうのは予想外だったなぁ。私たちの戦車を使ってくれてもよかったのに」

アル『それは違います、ナカジマ殿』

ナカジマ「どういうことですか?」

アル『確かにポルシェティーガーを使用したほうが単純な戦力は上昇するでしょう。しかし、あの期待を自動車部員以外に扱えるとは考えられません』

アル『走行中に故障の兆しが現れた場合、あなた方の技術力でなければ修理不能です』

ホシノ「それもそっか。レオポン、すぐ愚図るし」

アル『ただ、私としても疑問の残る選抜ではありましたが』

ナカジマ「疑問ですか?」

宗介「アル、余計なことを話している時間はない。すぐに作戦会議を始める」

アル『……』

おりょう「アルバート、協力してほしいぜよ」

アル『ラジャ。ミーティングを開始しましょう』

宗介「いつまで続けるつもりだ……」

かなめ「ねえ、ソースケ。ちょっとだけ抜けてもいい? 行きたいところがあるんだけど」

宗介「少し時間をくれ。俺が目的地まで送る」

かなめ「ありがとう。けど、今すぐに行きたいの。クルツくんかマオさんじゃ、ダメ?」

宗介「猫田のところへ行くのか」

かなめ「うん」

杏「千鳥ちゃん。私があとで行くから、いいよ」

かなめ「けど、あたしだってチームメイトだし、あたしの口から言いたいんです」

杏「辛いよ?」

かなめ「分かってます。けど、そんなの角谷先輩だって同じです」

ぴよたん「私もついていきます」

ももがー「三人いれば十分なり」

杏「んじゃ、任せよっかな」

かなめ「ありがとうございます。それじゃ、ソースケ。またあとでね」

宗介「了解した。気を付けてくれ」

かなめ「ええ」

杏「よかったのかな」

みほ「会長……」

華「かなめさんは、猫田さんに今決まったことを伝えにいったのですね」

優花里「そうでしょうね」

華「覚悟の上だったことでも、現実に突きつけられると……」

優花里「猫田殿、大丈夫なのでしょうか……」

沙織「大丈夫だってぇ。みんなで守るっていうのがテーマなんだし」

優花里「いや、しかし……」

華「沙織さん。分かっていても、苦しいものも、辛いものも、受け入れたくないことも、ありますわ」

沙織「そんなの知ってるもん。だからって、みんなで心配したって前に進めないじゃない。もうやるしかないんだから」

麻子「沙織の言う通りだ。猫田さんだって、私たちと一緒に戦ってくれる。決して試合に出ることができないからと捨て鉢な行動をとることなどしないだろ」

沙織「私たちのすることは猫田さんの心配じゃなくて、猫田さんが帰ってくるところを死守することでしょ」

華「そうですね。その通りでですわ」

優花里「申し訳ありません、武部殿。私も気持ちを切り替えます」

沙織「そうそう。乙女に必要なのは切り替えることなのよ。失恋していつまでもクヨクヨしてたら新しい恋愛だってできないんだしね」

優花里「その例えはよくわかりません」

沙織「とにかくやるっきゃないってこと!」

みほ「沙織さん」

沙織「ほらほら、みぽりん。パパッと作戦きめちゃおう。必勝パターンでお願いねっ」

みほ「ごめんなさい」

沙織「な、なにが?」

みほ「私も猫田さんのこと、とても心配してる」

沙織「いや、別に謝らなくても……」

みほ「沙織さんだって今すぐ病院にいって、看てあげたいって沙織さんは考えてる」

沙織「私……は……」

みほ「でも、今はここにいてほしい。沙織さんには居てもらわないと、私が困るから。だから、ごめんなさい」

沙織「……」

みほ「でも、沙織さん。本当に我慢ができなくなったら言ってほしい。その時は私も一緒に行くから」

沙織「今すぐ言ってもいいの?」

みほ「もちろん」

沙織「ふふっ。ありがと、みぽりん。ちょっとだけ楽になれたかも。さ、ミーティングしよ。そのあとはまた戦車に乗らなきゃね」

みほ「うんっ。――それではミーティングを始めます。みなさん、集合してください」

デ・ダナン 艦内

カリーニン「情報部からの報告です。予定通りに試合が行われることになったことで、様々な組織が動きだしたようです」

テッサ「労せず手に入るはずだった特殊技術が日延べしてしまったからでしょうか」

カリーニン「恐らくは」

マデューカス「気の短い連中ですな」

テッサ「それだけの技術であるとも言えますけどね」

カリーニン「彼らを焦らせる要因がもう一つあるようです」

テッサ「それは?」

カリーニン「当日の試合にルールが一つだけ加えられました」

テッサ「フラッグ戦になったとかですか?」

カリーニン「いえ。殲滅戦に変わりはありません。ですが、撃破した戦車を受け取ることができるという項目が増える予定のようです」

テッサ「それって……」

カリーニン「所有権は戦果を挙げた学校に委ねられるということになります。戦車道に鹵獲など似つかわしくないと私も思いますが、現況においては好都合かと」

マデューカス「万が一の場合、我々で強奪する手間がなくなりましたな、艦長。しかし、誰がそんな酔狂な規定を設けたのでしょうか」

テッサ「礼節を重んじる戦車道なのだから、戦車道連盟の人たちが思いつくとは考えにくいし……」

陣代高校 生徒会室

蓮「お電話です。黒森峰の西住まほさんからです」

敦信「ありがとう。――私だ」

まほ『どうやら正式に採用されるようね』

敦信「面白いルールだろう。それに戦場では鹵獲はよくある話だよ』

まほ『戦車道は戦争ではない』

敦信「承知している。だが、まほ君とて、妹が愛用している戦車が実際の戦で使用されることは心外ではないのかな」

まほ『このルール、大洗には?』

敦信「今のところ当日まで知らせるつもりはない。一種のサプライズだ」

まほ『戦車を失くすのは、仲間を失くすことと同義よ。それを伝えないなんて……』

敦信「伝えたところで同じことだ。戦車を取られるということは学園艦、いや、彼女たちの故郷が沈んでしまうことを意味しているのだからね」

まほ『……』

敦信「君の信念に反するというのなら、伝えてくれても結構だ。秘密にしておくことで益があるとするなら、情報の拡散を防ぐためぐらいだからね」

まほ『このルールが当日までに公にされると困るというの』

敦信「大洗の事件が何を引き金にして発生したものか判明しない以上、余計な情報は流さないほうが得策だと思うのだが、どうだろうか」

サンダース大学付属高校  会議室

まほ「ああ。わかった。では、貴方の言う通りにしよう。それでいい。また連絡する」

エリカ「あの男、戦車道連盟に強いつながりでもあるのでしょうか」

まほ「分からない。けれど、今更、林水会長の案に反対する理由はないわ」

エリカ「まぁ、私たちも鹵獲ルールが採用される前提で話を進めていましたからね」

まほ「採用されなければ、いや、採用させなければならなかった。戦車道をここまで安全なスポーツへと変えてくれた人のためにも」

ダージリン「見たこともない人のためにここまでするとは。感心致しますわ」

まほ「私たちがこうして身の危険を感じることなく戦車に乗れるのは、その人のおかげよ。多大な恩があると言ってもいい。だからこそ、貴女もその頭を下げたはず」

ダージリン「何のことかしら。さっぱりわかりませんわ」

ノンナ「カチューシャまでああしたことをするとは思いませんでした。全ては大洗の人たちのためでしょうか」

カチューシャ「そんなこといわないで。私はただ、たまには低い位置からの景色を見たかったのよ」

アリサ「いつも低いじゃない」

カチューシャ「うるさいわよ!! しょくせいされたいの!!」

ケイ「さぁて、今日は試合当日のイベントを決めるよ! オッケー?」

オレンジペコ「まずアンツィオ高校の全面協力により会場には立食コーナーが設けられることが決まっています。あとは――」

大洗女子学園 倉庫

みほ「作戦概要は以上です。何か質問はありますか」

典子「ありません。その作戦を成功させるために練習あるのみです」

カエサル「私からもない。西住隊長と相良教官が考案した作戦で構わない」

宗介「いや、俺は何も考えてはいない。アルが下地となる戦術を作成し、西住が戦略を組み立てた」

みほ「アルさんのものをそのまま採用してもよかったんですけど……」

優花里「アルバート殿の作戦はそれだけ完璧だったのですね」

華「みほさんが練らなくても良かったということでしょうか」

アル『推奨できません。西住殿の戦略なくして、大洗に勝利はないでしょう』

みほ「そんなことは……」

沙織「あるんだよ。ね、アルさん」

アル『肯定』

宗介(アルバートでなければ反応しないのではなかったのか……)

杏「じゃ、そろそろ解散にしよっか。行きたいところもあるしねぇ」

梓「そうでした! 私たちも猫田先輩のお見舞いに行きたいです!」

病院 廊下

かなめ「それじゃ、少し待ってて」

クルツ「おう。ゆっくりしてこい」

かなめ「うん」

ももがー「ねこにゃー、はいるなりー」

クルツ「……」

マオ「どうしたの。仲間の死を伝えるときみたいな顔になってたけど」

クルツ「そうかい? そんなつもりはなかったんだけどな」

マオ「誰も死ぬはずのない平和なスポーツをしているだけの女の子をこうしたことに巻き込んじゃったから?」

クルツ「そりゃあ、思うところはある。あのとき、ミホと一緒に離脱してりゃあ、結果は変わっていたかもしれねえ」

マオ「らしくない後悔ってこと」

クルツ「いや、反省さ。次に繋げるためのな」

マオ「そう。アンタらしいわ」

クルツ「反省した俺は強いぜぇ。今度、女の子たちが襲われたら大暴れしてやるからな」

マオ「頼もしいやら、情けないやら。けど、そのときはあたしも便乗させてもらうわ」

病室

かなめ「ごめん、起こしちゃった?」

ねこにゃー「ううん。平気。今日はどうしたの?」

ももがー「あの……」

ぴよたん「……」

ねこにゃー「なに?」

かなめ「今日、選抜チームが決まったの」

ねこにゃー「そう、なんだ」

かなめ「出場するのは、あんこう、カメさん、アヒルさん、カバさん、ウサギさん。残念だけど、アリクイさんは……」

ねこにゃー「そっか。そうだよね。車長のボクが動けないんじゃ、無理だよね」

ももがー「さ、最初から欠場は決定してたなり」

ぴよたん「そうそう。当たり前の結果乙って感じー」

ねこにゃー「うんうん」

かなめ「そ、そうよね! 分かってたことよね! うは、うはははは!」

ねこにゃー「でも……ボクたち……もうゲームオーバーになっちゃったんだ……」

ももがー「……」

ねこにゃー「ごめんなさい、千鳥さん。ボクの所為で……」

かなめ「何言ってるのよ。あたしはこの二か月間、すっごく楽しかったのよ。お礼を言うのは私のほうよ」

ねこにゃー「あんなに練習したのに……無駄に……」

かなめ「無駄なんかじゃないわ!」

ねこにゃー「けど……」

かなめ「貴方達と仲良くなれたことを無駄だったなんて、言わないで」

ねこにゃー「ごめんなさい……」

ぴよたん「また次があるずら」

ねこにゃー「ボク……西住さんと……みんなと一緒に……戦車道したかった……」

ももがー「またできるなり……できるから……」

ぴよたん「私だって……みんなと……試合……したかった……」

ねこにゃー「千鳥さん……ごめんなさい……」

かなめ「やめて。お願いだから……やめて……」

ねこにゃー「うぅ……う……うぅ……みんなの……役に……立ちたい……たちたい……」

廊下

みほ「……」

宗介「どうする、西住。入るのか」

みほ「いえ。今日は戻ります」

杏「そのほうがよさそうだねぇ」

梓「私たちってとても重たいものを背負っていたんですね……」

クルツ「このでかい学園艦だぜぇ? そりゃ重いだろ」

マオ「バカ」

優花里「猫田殿だけではありません。きっとみなさんが感じていることだと思います」

桃「全員で戦うと言われても、簡単には割り切れないからな」

みほ「マオさん、相良さん。明日もよろしくお願いします」

マオ「ついてこれない奴はたとえミホでも切り捨てるからね」

みほ「はい」

マオ「なーんかつまんないわね。いくら煽っても意味がないぐらい、士気が高いし」

宗介「それが大洗の最大の武器だからな」

マオ「あんたがずっと走らせていたからじゃないの」

宗介「あの程度のことはアヒルさんチームが毎朝行っていた。精神面の強さは元より備わっていたものだ」

クルツ「だから、ああいう理由で悔しがれるんだろ。な、サオリ?」

沙織「そう思います!」

麻子「調子がいいな」

柚子「さ、みんな、戻りましょう」

優希「わかりましたぁ」

あゆみ「これからどっかに集まってプチミーティングしない?」

あや「おぉ。いいかも」

みどり子「気持ちはわかるけど、早めに寮へ戻りなさい」

宗介「西住」

みほ「はい」

宗介「お前は試合のことだけを考えていればいい。他のことは俺たちが対処する。誰にもお前たちの邪魔はさせん。約束する」

みほ「ありがとうございます」

クルツ「俺が送っていくぜ。レディたちだけじゃ、夜道は危ないからな」

マオ「クルツはここにいな。ミホたちはあたしが送ってく」

クルツ「そりゃないぜ」

沙織「私もクルツさんに送ってほしいような」

華「いけません」

沙織「ひっ」ビクッ

優花里「では、お願いします、マオ教官」

マオ「カナメたちのこと、よろしくねー」

宗介「了解した」

クルツ「ったく、マオのやつ。勝手に仕切りやがって」

宗介「クルツ、例の写真だが」

クルツ「お。どうなってんだ? ちゃんと集めてるのか?」

宗介「この中に記録されている。持って帰るか」

クルツ「今すぐ欲しい訳じゃねえし、もう少し集めておいてくれ。俺が直接動くとマオのやつがうるせえからよ」

宗介「そうか。では引き続き収集しておく」

クルツ「頼むぜ。ぐっふっふっふ」

宗介「どんな状況でもお前は変わらんな」

クルツ「褒めてもなにもでねえぜ」

かなめ「あれ、ソースケ。来てたんだ」

宗介「ミーティングの内容は聞いておくか?」

かなめ「あ、うん。またあとで聞かせて」

クルツ「ねこにゃーちゃんは?」

かなめ「今はそっとしておこうかなって」

クルツ「それしかねえか」

かなめ「あのさ、ダナンで猫田さんを看てもらうってことは……?」

クルツ「あの子を看たのはミスリルの医療班だぜ?」

かなめ「え、そうなの?」

クルツ「相手が相手だけに、何されてるかわかんねえからな」

かなめ「それでもすぐには治らないのね……」

宗介「今すぐに全治したとしても、アリクイさんチームを選抜する予定は当初からなかった。すまないが、諦めてくれ」

かなめ「別に試合に出してほしいなんていうつもりはないわよ。ただ、このままだと猫田さんは応援にだって……」

クルツ「テレビ越しで声援を送るんじゃ、納得しねえか」

かなめ「猫田さんの気持ちも考えてよ」

クルツ「つっても、まともに歩けもしないんじゃな」

宗介「いや、彼女の努力次第で応援程度ならできるはずだ」

クルツ「いくらなんでも怪我人にまで無茶させるのはどうだ?」

宗介「猫田の負傷は俺の責任だ。出来うる限りの支援はする。しかし、本人の意思が弱ければ何もできない」

かなめ「努力ってどういうことをさせるの?」

宗介「僅かでもいい。足を動かせればどうにかなる」

クルツ「お前、ASにでも乗せる気かよ」

宗介「アシスト機能を使えば、歩行程度なら可能だろう」

クルツ「そのASはどっから持ってくるんだよ。優しいうちの隊長でも、流石に無理だぜ」

宗介「大佐殿に頼む気はない。今、この大洗にある」

かなめ「それって……」

宗介「千鳥、猫田に聞いてみてくれ。西住たちへ自身の声を直接届けたいのか。それとも、ここで全員の勝利を祈るのか」

かなめ「答えは分かり切ってるけど、一応、聞いてみるわ」

クルツ「女にも容赦ねえな」

宗介「戦おうとする者に女も子どもも関係ない。戦場に立つものは皆、戦士でなくてはならない」

クルツ「かてぇ考え方だな」

カリーニン『こちらパース1。ウルズ6、ウルズ7。応答しろ』

宗介「こちらウルズ7」

クルツ「はいよぉ、ウルズ6」

カリーニン『2300時にダナンにてブリーフィングを行う。遅れずに来い。以上だ』

宗介「了解」

クルツ「一方的だな、おい」

宗介「少佐からの指示だ。無視はできん」

クルツ「んなこたぁわかってるよ。俺は先に行くぜ。お前はカナメをきちんと送り届けてからこいよ」

宗介「そのつもりだ」

クルツ「んじゃな」

宗介「ああ」

宗介(このタイミングでブリーフィングか……内容は恐らく……)



優花里「明日もまたあの地獄のウォーミングアップがあるのですね」

マオ「あの程度で地獄なんて言ってるようじゃあ、海兵にはなれないけどね」

優花里「マオ教官は軍人なのですか?」

マオ「ま、色々とあるのよ。大人にはね」

沙織「かっこいい! 私もマオさんみたいな魅惑的な大人の女になりたぁい」

華「水兵さんはあれ以上のことを強いられるのですか?」

マオ「まず食事は48時間に一回でしょ」

華「無理ですわ。わたくし、耐えられそうにありません」

麻子「そこまで追い込まれたら、心が壊れるな」

マオ「本来の目的はまさにそれだから」

麻子「え?」

マオ「あんたたちには必要なかったみたいだけど」

優花里「では、どのようなときに海兵仕込みの訓練が必要だったのでしょうか」

マオ「学園艦のことを聞いて、全部を投げ出したとき。少なくともソースケはそう考えていたはずよ」

沙織「そんなことで止めたりしないよね?」

華「わたくしたちはみほさんから全てを聞いたとき、戦うことを即決しました」

麻子「迷いはなかった」

マオ「ミホは違ったんでしょ?」

優花里「西住殿は立場とかその諸々の事情がありましたから!」

みほ「いいの、優花里さん。今はもう、迷ってないよ」

マオ「顔みりゃ分かるわ。アイスクリームショップで見たときとはまるで違うもの」

麻子「そういえばそちらの仕事はいいのか」

マオ「うん。あんたたちを扱くほうが楽しいからねぇ」

優花里「うぅ……なんだか、恐ろしいです……」

みほ(本当なら私たちの見えないところで学園艦の警護をする予定だったんだろうな……)

マオ「っと、ちょっと失礼。――こちらメリッサ・マオ」

優花里「誰でしょうか?」

沙織「彼氏じゃない?」

麻子「恋人とインターカムで話す人なんているのか?」

沙織「いるかもしれないじゃない。ほら、アマチュア無線で連絡しあう人だっているんだし」

優花里「割と特殊な部類ではないでしょうか」

マオ「了解。――おまたせ。さ、行きましょ」

優花里「何かあったのですか?」

マオ「ちょっとね。夜の用事ができちゃったのよ」

沙織「そ、それって!!」

マオ「ふふん。サオリにはちょっと早いかしらね」

沙織「おぉぉぉ!! やだもー!」

みほ「なんで興奮してるの?」

優花里「分かりません」

華「沙織さんたら……」

麻子「急がなくていいのか」

マオ「子どもが寝静まってからじゃないと、始められないわ」

沙織「マオさん! それ以上は想像しちゃうからダメだって! みぽりんとかゆかりんが穢れちゃう!!」

みほ「ど、どうして……?」

優花里「――それでは、おやすみなさい!!」

マオ「はぁーい、戸締りはきちんとしなさいよー」

優花里「了解でぇす!!」

みほ「おやすみ、優花里さん」

優花里「はい!!」

マオ「さて、最後はミホね」

みほ「私まですみません」

マオ「いいのよ。こうなったのはあたしたちが学園艦に関わった所為でもあるんだから」

みほ「相良さんが大洗に来たのも、その、ミスリルの……?」

マオ「アイツが来た切っ掛けにミスリルは関与してないわ。全くの偶然。けど、いつかはこうなっていたかもね」

みほ「戦車に使われている特殊装甲材がミスリルと関係があると聞きました」

マオ「ソースケから?」

みほ「はい。大まかなことだけですけど」

マオ「どんな砲撃でも爆撃でも搭乗者を保護する装甲なんだから欲しいやつは大金をはたくし、時には人だって殺す。それだけのモノなのよ」

みほ「私とお姉ちゃんもお母さんからずっと聞かされていました。あの技術だけは守らないといけないって」

マオ「ミホの母親って、確か戦車道の……」

みほ「西住流師範、西住しほです」

マオ「どんなことを言われて育てられたわけ?」

みほ「あの装甲は戦車道の選手を守るためだけにあるのではない。世界を守るためにある。と」

マオ「なんか大げさな言い回しね」

みほ「私もそう思って、聞いたことがあります。世界を守るってどういうことかを」

マオ「なんて言ってた?」

みほ「お母さんは装甲材を作った人と知り合いだったそうで、その人が言ったらしいです。世界から兵器は消えない。でも争いは消せる。この戦車道があればって」

マオ「知り合い……」

みほ「お母さんはその人にはとても感謝していました。安全性が大幅に向上したことで戦車道選手人口の減少に歯止めをかけることができましたし」

マオ「その開発者とミホの母親ってただの知り合いなの?」

みほ「そこまでは……。私はまだ6歳ぐらいだったので、その人のこともよく覚えていなくて」

マオ「ちょっとまって。ミホ、開発者と会ったことがあるわけ?」

みほ「多分。私の実家ではいろんな人が出入りしていましたし、その中にいたと思いますけど……」

マオ「中々興味深い話ね。もう少し詳しく教えてもらえる?」

デ・ダナン 艦内

カリーニン「情報部の報告によれば、10日後に行われる戦車道の試合に合せ、様々な組織が足並みを揃え動き出しているとある」

宗介「戦車を奪うためですか」

カリーニン「肯定だ。試合会場は戦車道の聖地である東富士演習場。狩場としては最高の場所になる」

クルツ「流石にこっちから茶々いれて、会場を変更させたほうがいいんじゃねえか?」

テッサ「その考えもありました。しかし、我々にとって警護に適した場所へと急遽変更になったら相手が警戒し、現れない可能性もあります」

カリーニン「こちらの意図に感づき、予定を変更されると厄介になる。奴らが浮足立っている今こそ、絶好の機会だ」

テッサ「一度、冷静にさせてしまえば、余計な時間を与えることになります。その間にコーティング技術の応用も実現してしまうかもしれない。そして、世界中の学園艦が標的になってしまう」

テッサ「装甲材が出回り、ASやその他兵器へ流用されることがあれば、戦火は世界を飲み込んでしまいます」

宗介「戦車を狙う輩を一網打尽にするには、試合当日しかないということですか」

テッサ「確かに危険です。大勢の民間人を巻き込むことになる可能性もあります。しかし、今ここで決断しなければ甚大な被害が予想されます」

カリーニン「お前たちが守るものは一隻の艦船ではない」

クルツ「世界、か。正義の味方らしいじゃねえか」

テッサ「遣り甲斐があるでしょう」

クルーゾー「はっ。この任務に参加でき、光栄であります」

マオ「遅れて申し訳ありません」

カリーニン「何があった」

マオ「はっ。ニシズミミホの母親であるニジズミシホと特殊コーティング技術開発者に繋がりがあることが判明しました」

マデューカス「まさか。あの者は艦長とすら接触を極端に避けていたのだぞ」

マオ「どうもそれが西住流の大ファンだったらしく、ニシズミシホだけは例外みたいですね。何度か西住邸を出入りしていたこともあったそうです」

クルツ「ファン?」

マオ「初めてみた戦車道の試合では、ミホの母親が隊長を務めていたみたい。そこで一目ぼれして、戦車道のために尽力したってわけよ」

テッサ「その話は少しだけですが聞いたことがあります。でも、まさか西住さんの母親が関わっていたなんて……」

マオ「当時はまだ大洗での大事故が尾を引いていて、選手人口は右肩下がりだったけど、突然現れたコーティング開発者によって救われた」

宗介「西住しほと開発者は友好関係を築いたわけか」

マオ「マホとミホも開発者のことは尊敬しているってさ。マホに関しては崇拝に近いものがあるとか。母親の影響でしょうけど」

テッサ「ミホさんが狙われた理由が見えてきましたね」

マデューカス「母親ならば何らかの情報を持っていてもおかしくないですな」

宗介「それだけの理由で西住と猫田が……」

カリーニン「試合当日は戦車だけでなく、ニシズミミホも狙われる可能性が高いな」

テッサ「本命はその母親なのでしょうけど……」

カリーニン「多くの権力者と内通しているニシズミシホに対して、容易に手は出せないでしょう」

テッサ「何より、相手側には確信がないのかもしれませんね。つまらない理由で日本やアメリカに追われたくもないでしょうし」

マデューカス「あの者はミスリルの中でも最高機密です。我々ですら日本人と関わっていたと知らなかったのですから、外部が情報を持っているとは考えにくい」

宗介「それでも西住は狙われました」

クルツ「ま、とりあえず娘を誘拐したら話す機会ぐらいは設けてくれるだろうからな」

マオ「本人じゃなくて本人にとって大切なものから手をつけるなんてね」

宗介「交渉においては常套手段だが、相手が悪かったな」

テッサ「そうですね。存分に後悔させてあげましょう。みなさん、手加減は抜きです。いいですね」

マデューカス「アイアイ、マム」

カリーニン「了解です」

クルーゾー「乙女の園には指一本触れさせません」

マオ「いっちょ、派手にいきますか」

クルツ「やられた分はきっちり返すぜ。な、ソースケ」

宗介「ああ。相手が誰であろうと、西住達が歩む戦車道に立ち塞がるというのなら、俺たちが排除する。徹底的にな」

>>575
アル『確かにポルシェティーガーを使用したほうが単純な戦力は上昇するでしょう。しかし、あの期待を自動車部員以外に扱えるとは考えられません』

アル『確かにポルシェティーガーを使用したほうが単純な戦力は上昇するでしょう。しかし、あの機体を自動車部員以外に扱えるとは考えられません』

>>569
アリサ「い、いえす、あむ」

アリサ「い、いえす、まむ」

数日後 大洗女子学園 グラウンド

あゆみ「やっちまえー!!」ダダダッ

あや「ぶっこわせー!!!」ダダダッ

桂利奈「ぶっころせー!!!」ダダダッ

優花里「イヤッホー!!! サイコーだぜぇ!!!」ダダダッ

宗介「試合前にして仕上がってきたな」

マオ「これぐらい気合はありゃあ、十分でしょ。よし、残り1往復で終了だ!! メスブタ共!!!」

典子「もう終わりですか!?」

妙子「私たち、まだいけます!!」

カエサル「丸太を二つ抱えて走ってもいいぐらいだ」

マオ「こらこら。明日は本番でしょうが。体はしっかり休めときな。努力と無茶をはき違えるのは新兵の悪いところよ」

麻子「一理ある」

沙織「麻子は寝たいだけでしょ」

麻子「いや、それだけではない。どうせ、あれをするだろ」

宗介「あれとはなんだ? 敵情視察なら必要ないだろう。相手の戦闘データは既に全員の頭に叩き込まれているはずだ」

麻子「それはない」

みほ「なんだろう……」

華「わかりました。トンカツを食べることです」

みほ「あぁ、そっか」

杏「いいねぇ。またあの店にいこっか、河嶋、小山」

柚子「いいですね。いつもサービスしてくれますし」

桃「ボリュームが少し多いのが気になるが……」

杏「私はカツカレーにしよっかなぁ」

宗介「験担きか」

マオ「分かるわ。私も飲むならビールじゃなきゃ嫌だし」

優花里「教官は験担ぎやジンクスは信じないのでしょうか」

宗介「いや。そんなことはない。当人のモチベーションにもかかわってくることだからな」

みほ「だったら、今度はみんなで食べませんか」

かなめ「猫田さんも一緒に?」

みほ「はい。今回はそうしたいんです。どうしても」

ももがー「西住さん、ありがとう」

ぴよたん「私たちもそうしたいって思ってたところ!」

みほ「よかったです」

宗介「西住。確認しておきたい」

みほ「なんですか?」

宗介「その行為は己の惰弱から来るものか」

みほ「え……」

かなめ「ソースケ! 何言ってるのよ!! みほはみんなと景気づけに食べようって言っただけじゃない!!」

宗介「敗戦を想定し、最後の思い出を作っておきたいという下らない考えがあるのなら、俺はここで西住をなんとしても止める」

沙織「相良さん、それは言い過ぎ!!」

華「そうですわ。今のみほさんは薄志弱行とは到底言えません」

みほ「……」

宗介「俺は西住に聞いている」

みほ「……みんなとの思い出は作っておきたいです」

優花里「に、西住殿……」

みほ「最後になるから」

かなめ「ちょっと……みほ……」

カエサル「……」

梓「先輩……」

みどり子「そういうこと、言わないでよ!!」

ナカジマ「悲しくなります」

みほ「――みんなで、試合前日にご飯を食べるなんて、最後になるから」

杏「……」

柚子「私たちのことを……」

みほ「来年度には卒業してしまう人もいます。だから、ほんのわずかでも一緒にいたい。1日でも、ううん、1秒でも多くの思い出を、この大洗に残したい」

みほ「そう思うのは、ダメなことですか」

沙織「ぜーんぜん、ダメじゃないよー!! みぽりーん!!」

優花里「私もコンマ1秒でも長く、西住殿、いえ、みなさんと戦車に乗っていたいです!!!」

マオ「愚問だったんじゃない?」

宗介「そのようだな。この面子に憂慮することは何一つ残っていないことが今、確認できた。何も問題ない」

かなめ「そうと決まれば、みんなでカツを買いに行きましょ!! トンカツ屋までパンツァー・フォー!!」

ももがー「おぉー!!」

桃「そうだな。私たちは数か月で……」

杏「居なくなるからこそ、残したい。だから、私は三年間、会長をしたんだ」

柚子「私もですよ、会長。失くしたくないから会長の傍にいたんです」

桃「広報として役に立てたかはわかりませんが、精一杯してきたつもりです」

杏「ここまで来たんだ。奇跡にでもなんでも頼って、徹底抗戦してやるぞ」

柚子「はいっ」

桃「恥もや外聞はありません。ただ、勝つだけです」

杏「ま、実力でなんとかなるなら、そうしたいけどな」

優花里「生徒会のみなさんも気迫に満ち溢れていますね」

かなめ「ほらー、早くいくわよー!!」

みほ「待ってくださーい」

マオ「ソースケもいってきたら。哨戒任務は代わってあげるわ」

宗介「すまない。では、甘えるとしよう」

病院 廊下

柚子「勢いで買ってきてしまいましたけど、トンカツの持ち込みってアリなんでしょうか」

杏「いいんじゃない?」

柚子「そんなテキトーな……」

宗介「爆薬や火器を持ち込んでいるわけではない。誰も咎めることはないはずだ」

かなめ「小山先輩が気にしてるのはそういうことじゃなくて……」

みほ「お見舞いに果物をもってくるのはよくあるけどけど、トンカツってどうなんだろう」

華「わたくしは嬉しいですわ」

沙織「華が喜ぶからオッケーにはならないと思うけど」

優花里「あの、あそこにいるのって、猫田殿では?」

麻子「なに?」


ねこにゃー「はぁ……ふぅ……くっ……」


カエサル「もうリハビリを始めているのか」

おりょう「早すぎるぜよ。しばらくは安静にしてないといけなかったはず」

宗介「猫田も戦い続けている。試合に出場できないからとベッドの上で同情を引こうとはしてない」

宗介「自分の不幸に酔い、くだを巻くこともしない。猫田は、お前たちと共に戦場に立つことを目指している」

梓「そこまで……」

カエサル「自分の発言を撤回しよう。私たちの中で最もガッツがあるのは、猫田さんだ」

エルヴィン「間違いないな」

左衛門佐「まさに侍でござる」

かなめ「猫田さーん」

ねこにゃー「あ……みんな……」

ももがー「大丈夫?」

ぴよたん「今日はこれ持ってきたから、みんなで食べよう」

ねこにゃー「トンカツ……。うん、食べる。食べたい」

かなめ「これ、大洗では有名なところのトンカツなんでしょ? 冷めないうちに食べましょ」

桃「全員、カツを持て」

梓「ここで食べるんですか?」

みどり子「買い食い、立ち食いなんて不良よ……」

桃「では、会長、どうぞ」

杏「ん。みんなぁー、明日の試合、ぜったいにカツぞー。今日はカツをカツカツ食べて、がんカツぞー。カツぱーい」

桃「それだけですか!?」

杏「あとは西住ちゃんにしめてもらおっかなぁ」

みほ「え?」

宗介「それがいい。隊長の激励は隊の士気に強く影響する」

優花里「教官もこう言っていますし、お願いします、西住殿」

みほ「……何度も助けられました。何度も守ってもらいました。私がみんなを引っ張ってきた、とは思いません。会長を初めとする、みなさんの努力でここまで来たのだと私は思っています」

みほ「隊長として三流だったと、自分で思います。だから、明日は、いえ、今からは私が隊長として、みんなを引っ張っていきます」

みほ「だから、力を貸してください!! そして、明日は勝ちます!! いえ、カツしかないんです!!」

「「おぉぉー!!!」」

柚子「病院だから静かにしたほうがいいんじゃあ……」オロオロ

みどり子「非常識よ!!」

みほ「すみません……つい……」

典子「では、窓を開けて外に叫びましょう!! それで解決です!!」

典子「外に向かってさけべー!!! 絶対にカーッツ!!!」

妙子・あけび・忍「「ファイト、いっカーッツ!!!」」

かなめ「解決になってないってば!!」

みほ「ごめんなさい!」

華「後ほど全員で怒られましょう、みほさん」

沙織「仕方ないよね」

麻子「おばぁに見られたら、絶対に殺される」

宗介「問題ない。俺がなんとかする」チャカ

優花里「教官!! 武力での解決はいけません!!」

かなめ「そーよ!! 優花里の言う通り!!」

優花里「防音効果の高い素材を用意して、囲ってしまえばいいんですよぉ。軍が採用している吸音材や遮音シートも自分の家にあります」

宗介「流石だ、秋山。では、それを用いて病院の外壁を取り替えるぞ」

かなめ「できるわけないでしょ!?」

ねこにゃー「西住さん、ボクも応援に行くから」

みほ「え……。でも、猫田さん……無理は……」

ねこにゃー「千鳥さんがね、なんとかしてくれるって言ってくれたんだ」

みほ「かなめさんが?」

かなめ「ああ、うん。アテはあるから。ただ、猫田さん一人じゃちょっと応援できないというか、声が届かないというか、とにかく、アリクイさんチームで付き添うから心配しないで」

みほ「けど……」

ねこにゃー「居たいんだ。西住さんの傍に。みんなと同じ場所に。だから、お願いします」

ももがー「お願いします」

ぴよたん「無理はさせない」

みほ「分かりました。でも、これだけは言わせてほしい。――私たちの中に誰一人、欠けていい人なんていない」

ねこにゃー「ありがとう、西住さん」

みほ「待ってるね」

ねこにゃー「うん。遅れても、行く」

杏「試合は明日だぁー、みんなー、たのしいかー」

「「おぉー!!」」

みどり子「だから静かにしなさいってばー!!!」

モヨ子「もう何を言っても無駄なのよ、そど子」

デ・ダナン 艦内

テッサ「時間ですね。機関を始動」

マデューカス「アイ、マム。機関、始動!」

テッサ「あら? カリーニンさんは?」

マデューカス「少佐ならば、私用があるとのことで自室にいるようです。呼び出しますか」

テッサ「いえ。大丈夫です。試合開始である1000時までは」

マデューカス「そうですか」

テッサ「彼らの動きは」

マデューカス「いえ、まだ何も。現在、先行部隊が試合会場の消毒を行ってはいますが」

テッサ「戦車をお金で買えない以上、試合会場への強襲は十分に考えられます。あと20時間は厳戒態勢を維持するように伝えてください」

マデューカス「はっ」

テッサ「では、参りましょう。日本、駿河湾へ向けて。前進、微速!!」

マデューカス「アイアイ、マム!! 前進、微速!!」

テッサ「私たちの希望をここで失うわけにはいきません」

マデューカス「はい。承知しています、艦長」

東富士演習場 会場

アンチョビ「またここへ来ることになるとは思わなかったな」

カルパッチョ「はい。これも統師が各校へ働きかけてくれたおかげですね」

アンチョビ「大洗と試合をした学校は全て参加しているのに、私たちだけ何もしないのは納得いかないからな」

カルパッチョ「そうですね。決勝戦では寝坊して応援できなかったのですから、今度こそ大洗のみなさんを応援したいですよね」

アンチョビ「そうじゃない!! ただ仲間はずれが嫌なだけだ!!」

ペパロニ「アンチョビ姐さん! この辺りでいいですかー!?」

アンチョビ「そこでいい。いや、看板が少し右に下がってるから直しておくように」

ペパロニ「はぁーい!!!」

恭子「おー、イタリア料理だー。美味しそうだね」

ペパロニ「ごめんよー。まだ準備中なんだ。もうちょっとで準備が整うから、少し待っててくれ」

恭子「はーい」

蓮「高校戦車道オールスターの試合ともなると賑やかになるのですね」

孝太郎「おぉー、あそこにいるのってカルパッチョじゃないか! やっぱ美人だよなぁー」

恭子「小野Dはああいうのがタイプなんだね」

敦信「安斎君」

アンチョビ「アンチョビと呼べ。久しぶりだな、林水」

敦信「P40の修理が間に合っていれば、君たちもオールスターチームに組み込まれていたのかもしれなかったのに、残念だ」

アンチョビ「下手な世辞はいらない。大体、修理するお金がないからな。じゃない、修理する必要がないんだ」

敦信「もし、君たちが大洗と同じ立場になったときはどうするつもりだろうか」

アンチョビ「角谷と同じ行動をとるに決まっている。私にも隊長としてのプライドがある」

敦信「戦車道を嗜む者は皆、同じか」

アンチョビ「カルパッチョやペパロニだって同じことを言う。私が卒業しても、我がアンツィオは消えない」

敦信「私もそれを願うよ。一戦車道ファンとしてね」

アンチョビ「初耳だな」

カリーニン「少しいいだろうか」

アンチョビ「誰だ?」

カリーニン「ここでレーション交換会が催されると聞いたが」

アンチョビ「レーション交換会というより、私たちの料理を出場者と観客に有料で提供するだけだ」

カリーニン「なるほど。では、この料理もここで提供しても構わないだろうか。プラウダ高校の選手には是非とも口にしてほしいと思い、持参した」

クルーゾー『こちらウルズ1。所定の位置についている。異常はない』

クルツ『こちらウルズ6。快晴で視界良好。絶好の狙撃日和だ』

マオ『目を猛禽類ばりに光らせときな。いつなんどき、相手が現れるか分からないからね』

クルツ『はいよぉ。そっちはどーだ、ソースケ』

宗介「15分、時間をくれ。用が済めば配置につく」

クルーゾー『アドバイザーとして最後の仕事か』

宗介「肯定です」

マオ『急ぎな。15分しか待たないよ』

宗介「問題ない」

恭子「あー! 相良くんだー!! ひっさしぶりー!!」

一成「ここに居たのか相良ぁ!! 貴様ぁ!! 二ヶ月もどこに姿を隠していたぁ!!」

瑞樹「大洗女子学園でしょ?」

一成「二ヶ月前に果たし状を靴箱に入れておいたというのに!!」

宗介「今は時間がない。後にしてくれ」

一成「なんだと!! ふざけるな!! ここで決着をつけてやるぞ!! 大導脈流奥義……!!!」

みほ「相良さん、試合前の最終ミーティングをしたいんですけど」

一成「邪魔だ、女!! そこをど――」

みほ「え? ああ、ごめんなさい。お邪魔でしたか?」

宗介「いや。そんなことはない。すぐに行こう」

みほ「は、はい」

一成「待て! お前は、西住みほ、か? あの西住流の」

みほ「そうですけど……?」

恭子「ホントだー!! かわいー! 写真、いいですかー!?」

信二「あ、あああ、あの!! この週刊戦車道でのコメント、感激しました!! ここにサインを!!」

みほ「ええー!?」

一成「由緒ある西住流の跡継ぎにここで会えるとは。格闘技としての部類は違えど、西住流には感銘を受けている」

宗介「椿、西住に西住流のことを訊ねても無駄だぞ。西住はもう、その流派を捨てている」

一成「バカな。姉である西住まほに全てを譲ったというのか。極意も、何もかもを」

みほ「そういうわけじゃないんですけど……いや、そういうことになるのかな……」

宗介「深い事情がある。あまり詮索はしないでくれ」

一成「貴様が知った風な口をきくな。俺は本人に聞いている」

みほ「い、いえ、相良さんは私たちの、大事なチームメイトなんです」

一成「なに……」

みほ「知った風ではないんです。私のことをちゃんと理解してくれているんです」

一成「な……!?」

恭子「そうなの!?」

宗介「そう言っても過言ではない」

瑞樹「ちょっと、かなめのことはいいわけぇ?」

恭子「カナちゃんが泣いちゃうよ!? それでいいの!?」

宗介「どういう意味だ。訳が分からん」

信二「いいなぁ、相良くん……あの西住さんと親密になれて……」

みほ「ち、ちがいます! 違います!! そういう意味じゃないんです!!」

沙織「みっぽりーん! なにしてるのー! 早くはじめよー!!」

恭子「武部さんだー! おぉー! かわいー!! 写真、とってもいいですかー?」

沙織「いいよー。かわいくとってねっ」キラッ

恭子「へー、そうなんだー。武部さんって服とか詳しいんだね」

沙織「乙女の基本だしね。常盤さんも可愛いんだし、色んなファッションに手を出してみるべきだって」

恭子「そうかなぁ」

みほ「もう仲良くなってる……」

優花里「武部殿、いいのですか。試合が迫っていますけど」

沙織「あぁ、そうだった。ごめん、常盤さん。またあとでね」

恭子「待って、それじゃあ、ケータイの番号だけでも交換しよ」

沙織「オッケー。ちょっとまってね」

華「相良さんのご友人なのですね。どうも、いつも相良さんにはお世話になっています」

孝太郎「いえいえ。俺、小野寺っていいます。初めまして」

信二「ホンモノはやっぱり違うなぁ……」

麻子「ミーティングはいいのか」

沙織「いくってばー!」

恭子「あれ? ねえねえ、カナちゃんはどこにいるの? 見当たらないけど」

宗介「千鳥は少し遅れて到着する。大事な仲間と共にな」

重大なミスを訂正

>>521
みほ「わ、私より年下なんですか!?」

みほ「わ、私と同じ歳なんですか!?」

みほ「――以上で作戦概要の確認を終わります。あとは試合に備えて各車両のチェックを怠らないようにしてください」

カエサル「了解した」

ナカジマ「整備の不安があるなら私たちに言ってくださいね」

おりょう「信頼と実績の自動車部を疑うことはないぜよ」

ホシノ「そう言わずに、疑ってかかってよ。この試合、負けるわけにはいかないんだから」

あゆみ「いつもいつも、負けられない試合をしてるよね、私たちって」

桂利奈「でもそのほうが燃えるぅ!」

優希「確かにぃ」

あや「けど、たまには楽しく戦車、乗りたいよね」

紗希「勝てば乗れるようになる」

梓「紗希の言う通りだよ。勝てばみんなで楽しく戦車のろっ」

桂利奈「あい!!」

宗介「戦術アドバイザーとして、最後に言いたいことがある」

優花里「はい。なんでしょうか、教官」

麻子「最後、か。相良さんはこの試合のために呼ばれたのだったな……」

宗介「いいか!! この一戦、お前たちに許されるのは勝利だけだ!! それ以外に必要はない!!」

宗介「日々の努力、鍛錬、その全てを出し切らなくてはならない!!」

宗介「いいか!! お前たちは一人一人が大洗を守る、戦士だ!! お前たちは命令され、それに従う兵士ではない!!」

宗介「お前たちはこれから最大の試練と戦う!! 全てを得るか、地獄へ落ちるかの瀬戸際だ!! どうだ!! 楽しいか!!!」

エルヴィン「鼓動だけで胸が破けそうなぐらいだ!!」

典子「これ以上に昂る試合はありません!! 代々木第一体育館よりも熱くさせる会場です!!!」

梓「大洗を守る戦士……。そんなかっこの良い私じゃないけど……!!」

桃「3年間。なんでもしてきたつもりだ。泥だって被った。笑われもした。だが!! すべてに耐えてきたんだ!! それは大洗が、学園艦が好きだからだ!!!」

柚子「私たちの故郷である学園艦を誰かの都合だけで無くなるのは嫌です」

杏「どんなに汚い手だって躊躇なく使ってきた。どんなものでも喜んで利用した。今更、全部に謝ってたってキリがないんだ。だから、手を汚しただけの成果をきっちり見せてやらなきゃね」

沙織「みぽりんがいて、華がいて、麻子がいれ、ゆかりんがいる、学園艦が大好きだもんね」

華「わたくしは大洗女子学園を卒業したいです。そして子々孫々と大洗での出来事を語り継いでいきたいですわ」

麻子「大好きなものが目の前で消えるのは、もうたくさんだ。あんな想いは二度としないと決めている」

優花里「私の両親は学園艦で生活しています。住み慣れた場所を離れたくないはずなんです。だからこそ、私は戦います!! 大好きな戦車で!!!」

宗介「よし!! 戦闘準備!!!」

宗介「野郎ども!!! 俺たちの特技はなんだ!!!」

妙子「バレーボールです!!!」

あけび「いや、戦車です!!!」

宗介「この試合の目的はなんだ!!!」

みほ「大洗女子学園を!! 学園艦を守ることです!!!」

宗介「俺たちは大洗女子学園を愛しているか!!!」

左衛門佐「愛している!!」

おりょう「愚問ぜよ!!」

宗介「戦車を愛しているか!!! 戦車道を愛しているか!!!」

優希・あや・あゆみ・桂利奈「「ガンホー!! ガンホー!! ガンホー!!!」」

宗介「よし、行くぞ!!!」

「「おぉー!!!!」」

みほ「あの! 点検だけはお願いします!!」

ナカジマ「あと、試合時間まで一時間はありますよー」

杏「フライングだねぇ。けど、こういうのっていいな。私は好きだなぁ」

宗介「俺にできることは、最初から何もなかったな」

みほ「いえ、相良さんがいなければ……私だけじゃなくて、学園艦がどうなっていたか……」

宗介「結果はどうあれ、猫田にまで被害が及んでしまったことは深く謝罪する」

みほ「やめてください。話を聞けば、私にも原因はあったみたいですし……」

宗介「お前は勿論、学園艦の安全はミスリルが保障する。任せてくれ」

みほ「どこかへ、行くんですか?」

宗介「言いたいことは言えたからな」

みほ「試合、見てはもらえないんですか」

宗介「俺が観戦する理由はない」

みほ「どうしてですか?」

宗介「お前たちが勝利することは分かり切っている」

みほ「相良さん……。試合が終わったら、また会いにきてください」

宗介「了解した」

みほ「気を付けてください」

宗介「問題ない。俺は専門家だ」

沙織「あれ? みぽりん、相良さんはどうしたの?」

みほ「もう観客席のほうに行っちゃったみたい。あとは任せるって」

沙織「えー? 戦術アドバイザーって試合終了までじゃないのー」

麻子「といっても相良さんよりもアルさんのほうがアドバイザーだったが」

優花里「しかし、教官の気合のこもったトレーニングの成果は身になっていますよ」

華「無駄のように見えて、無駄ではなかった。相良さんはとても素敵な教官でしたわ」

みほ「うん。私もそう思うな」

みどり子「優秀なのはいいけど、学園を爆破されちゃ、敵わないわね」

梓「西住先輩。全車両の最終チェック、完了しました」

みほ「ありがとう。それじゃあ試合までは自由時間にしましょう」

杏「かわしまぁ」

桃「はっ。飲み物ですね。すぐに手配をします」

杏「西住ちゃん」

みほ「はい?」

杏「奇跡、起こそうね」

観客席

恭子「もうすぐ試合が始まるけど、カナちゃんどこにいるんだろう」

信二「電話は?」

恭子「通じないの」

瑞樹「試合にでるかもわかんないんでしょ?」

蓮「どうなのでしょうか……」

敦信「……」


しほ「間に合ったみたいね」


信二「あ……!? あそこにいるのって……!!」

一成「西住しほか!」

恭子「あの人が西住さんの……。って、誰かが近づいてきたけど……」


レナード「初めまして」

しほ「貴方は?」

レナード「あまり長居はできないので、用件だけを伝えたい」

しほ「……」

レナード「戦車に使用されている特殊コーティング技術について知っていることを話してもらえないだろうか」

しほ「あれは戦車道を嗜む者を守護する装甲。それ以上、説明することはありません」

レナード「どのようにして精製されるのかぐらいは、知識としてあるはず」

しほ「あったとしてもその知識を第三者に与えることはありません」

レナード「殺されるとしてもかい」

しほ「戦車道に誓い、ない」

レナード「貴女に銃口を向けても口を割ることはなさそうだ。けれど、娘にならどうだろうか」

しほ「……」

レナード「試合をよく見ているといい。それでもし考えが変わったら、この通信機に呼びかけてみてほしい」

しほ「何を考えているの」

レナード「貴女にはそれだけの価値があると、判断しただけだ」

しほ「私の持つ知識が欲しいのなら、今すぐ連れ去ればいい」

レナード「そうしたいのは山々だけど、ここの警備が厳重でね。こうして数分だけ話すのが精一杯なんだ。こうしている間にも僕は身の危険を感じている」

しほ「名を名乗りなさい」

レナード「それでは、マダム。良い答えを期待しているよ」

しほ「待ちなさい」


恭子「誰だったんだろう」

信二「旦那さん、には見えなかったけど……」

敦信「……」

恭子「誰かに、似てるような、似てないような……うーん……」

一成「弟子入り志願者だろ。西住流は世界に轟く流派だからな」

瑞樹「へぇ、すごい人なんだ」

蓮「戦車道に携わる人なら、誰もが耳にする人ですから」

孝太郎「んじゃあ、西住みほって相当な有名人だったのか」

敦信「一年にして名門黒森峰で副隊長を務めていたほどの猛将だ」

恭子「そんな風には見えなかったけどなぁ……」

敦信「慈愛の猛将と言ったほうがいいかもしれないな」

蓮「ええ。そちらの異名が似合いますね」

デ・ダナン 艦内

マデューカス「試合開始まで、3分を切りました」

テッサ「動きはありませんか」

クルーゾー『ウルズ1、異常なし』

マオ『ウルズ2、何もなし』

クルツ『ウルズ6、おかしな奴らが動いてる』

テッサ「映像をこちらへ送ってください」

クルツ『了解だ』

カリーニン『こちら、パース1。会場内にて最重要人物を発見。追跡をしましたが既にロストしています』

テッサ「やはり……」

マデューカス「既に何者かと接触している可能性がありますな」

宗介『こちらウルズ7。遅くなりましたが配置につきました』

テッサ「サガラさん。事は始まっているようです。またしても貴方に負担を強いることになるかもしれません」

宗介『大佐殿。今の自分は大洗を守るために、ここにいます』

テッサ「そうでしたね。――我々はミスリルの名を冠している部隊です。そのミスリルが盾となるのなら、どのような矛にも貫かれてはなりません。絶対に」

試合会場

亜美「両チーム代表、前へ」

みほ「……」

杏「どうも、西住ちゃんのおねえさん。またよろしくぅ」

まほ「ああ」

亜美「高校戦車道全国大会優勝校対全日本高校戦車道選抜チームによる特別試合を開始します。審判長、蝶野亜美です。よろしくお願いします」

亜美「両チーム、挨拶!!」

「「よろしくお願いします!」」

亜美「戦車道史にも前例のない試合の審判を務めることができて、光栄よ。そして、それぞれに負けられない理由があることも知っているわ」

杏「いやぁ、まぁ、そっすね」

エリカ「随分と緊張感がないのね。貴方達は今回も学園艦そのものを背負っているのよ」

みほ「逸見さんたちも日本代表という大きなものを背負っています。同じのはずです」

ケイ「気負うことなんてないわ。戦車道はエンジョイしなきゃね」

ダージリン「ケイさんはもう少し、自覚をもったほうがよろしいのではなくて?」

亜美「みんなの健闘を祈るわ。では、試合開始地点に移動開始!」

Ⅳ号戦車内

沙織「始まっちゃうんだね」

華「一度、経験したこととはいえ、この感じはなれませんわ」

麻子「決勝戦とは事情が違う」

優花里「そうです。大洗存続の危機というのは変わりませんが、西住殿や会長、そして猫田殿の想いがあるんです」

沙織「勝たなきゃ。みぽりんのためにも、会長のためにも、猫田さんのためにも」

みほ「みなさん、聞いてください。相手はオールスターチームです。個々の能力が非常に高く、使用車輌だけを見ても戦力は私たちよりもはるかに上です」

みほ「はっきり言って、勝てる可能性は低いです」

みほ「けれど、絶対に勝てないわけではありません! 力を合わせれば勝てます! 私たちが負けるときは、諦めたときだけなんです!!」

典子『私たちは絶対に諦めません!!』

梓『しぶとさだけには自信があります!!』

杏『そういうことなら一度は負けちゃったね、自分に。でも、同じ相手に二度は負けないよ』

エルヴィン『怪しいところは弾丸をぶちこめ。それだけでいい』

みほ「みなさん、私を信じてくれて本当にありがとう」

みほ「――パンツァー・フォー!!!」

演習場 アーバレスト内

アル『試合開始時刻です。軍曹殿』

宗介「そのようだな」

アル『質問があるのですが。何故、レオポンさんチームを選抜しなかったのでしょうか。アヒルさんチームは能力、戦車性能から言えば、下位となります』

宗介「説明したはずだ。磯辺率いるチームはあの中で最もガッツがあるとな」

アル『その不特定で漠然とした能力は戦況を左右する要素なのでしょうか』

宗介「ラムダ・ドライバとて同じだ」

宗介「気合と根性があれば、多少の能力差は覆せる。無論、条件はあるがな』

アル『理解できません』

宗介「あとは自分で考えろ」コツンッ

クルツ『ソースケ! そっちに敵機が向かってる! こっちで狙撃はしてみるが、お前のサポートぐらいしかできねえぞ!』

宗介「了解。そのままこちらへ誘導してくれ。あとは俺がなんとかする」

アル『高脅威目標、接近』

宗介「これより先には誰も通さん。――使うぞ、アル!! ラムダ・ドライバ!!」

アル『ラジャ』

デ・ダナン 艦内

マデューカス「敵の狙いは戦車か、あるいは西住姉妹か……」

テッサ「ずっと疑問だったことがあります」

マデューカス「なんでしょうか」

テッサ「学園艦に警戒システムを導入したのにも関わらず、襲撃されてしまいました」

テッサ「ノーマークだった西住さんが狙われたから仕方ない、では片づけられない失態です」

マデューカス「相手はレポートにあったASも連れていましたからな。こちらの監視を欺く術を持っていたのかもしれません」

テッサ「だとしても、警戒システムはカリーニンさんが用意したものです。簡単に突破できるとは思えません。会場に姿を現したのも挑発以外の何物でもないでしょう」

マデューカス「我々の目なと容易く盗めることを主張しているようですな」

テッサ「アマルガムはこちらを上回る装備を有しているのか……それとも……」

マデューカス「内通者が存在するのか」

テッサ「考えたくはありませんね。もしそのような人物が存在するなら、早急に見つけないとミスリル自体が壊滅する恐れすらある」

マデューカス「調査を始めますか」

テッサ「ええ。この試合を見届けてからになりますけど」

マデューカス「どのような結果になるか。楽しみですな、艦長」

VI号戦車ティーガーI 車内

まほ「始まったか。全車、前進」

ケイ『イエース、マム!』

まほ「蝶野審判長。例の説明をお願いします」

亜美『本当にこのタイミングでよかったの?』

まほ「それが約束でしたので」

亜美『分かったわ』

ダージリン『林水さんからは開始直後に鹵獲ルールの説明をするという約束でしたの』

まほ「なるべく試合前に説明はしたくないと言ってた」

ダージリン『大洗のみなさんは驚くことでしょう。これで動揺の一つでもしてくれたら、嬉しいですわね』

まほ「あのみほがこの程度のルール追加で混乱することはありえない」

カチューシャ『どうしてそこまで信じられるの?』

まほ「私の妹だからだ」

ノンナ『なるほど』

アリサ『シスコン?』

Ⅳ号戦車内

亜美『大洗チーム。たった今、追加されたルールがあるので、説明します』

みほ「追加ルール?」

亜美『敗北したチームは、相手へ戦車5輌を譲渡するように。以上』

沙織「えぇぇぇ!?」

優花里「な、なんですか、いきなりこのルールは!?」

華「横暴すぎますわ」

典子『私たち以外に八九式を扱えるとは思えない!!』

麻子「どう思う?」

みほ「戦車道で鹵獲なんて普通は考えられないけど、蝶野さんが直接言ってきたってことは公式規定なんだろうけど」

麻子「うん。鹵獲ルールが追加されたら、私たちが負けたあとでも大洗の戦車たちの行方は明確にできる。コーティング済みの戦車がどこか遠くに売り飛ばされるよりは、マシだ」

みほ(確かにあのレナードって人が持っていくよりは、お姉ちゃんに渡したほうが遥かに良い。けど、誰がこんな規定を……)

優花里「会長は知っていたのですか?」

杏『初耳だねぇ。どこの誰かは知らないけど、私たちの仲間まで賭けさせるなんてな』

梓『私たちが負けたら戦車を手放さないといけないんですか!?』

観客席

ナカジマ「私たちの戦車を……」

みどり子「そんなのいつ決まっていたのよ!」

敦信「――1か月ほど前だ」

ナカジマ「あなたは……」

敦信「千鳥かなめ君、相良宗介君の知り合いだ。あと角谷杏君ともね」

ナカジマ「あ、初めまして。お世話になってます」

みどり子「そんなルールが追加されたなんて全然知らされてなかったわよ」

敦信「これは戦車道連盟のごく一部とオールスターチームに留めておいたほうがいい情報だった」

敦信「学園艦で起きた暴行事件がまた発生しては困るのでね」

ナカジマ「その理屈はなんとなく分かりますけど、よりにもよって戦車を賞品にしちゃうってどうなんでしょう」

敦信「負ければすべてを失う君たちにとって、戦車の行先ぐらいは安心できるところが良いと思うが」

みどり子「う……」

敦信「それとも君たちの戦友が戦場で人殺しに利用されても良かったかな」

ナカジマ「そういうことですか。生徒会のみなさんが心配していたことって」

Ⅳ号戦車内

カエサル『だが、負けなければいいだけの話だろう』

おりょう『勝つしかない私たちにとっては意味のない揺さぶりぜよ』

左衛門佐『逆に考えれば大洗にM4シャーマンやVI号戦車ティーガーが来るということ』

エルヴィン『わが軍は圧倒的だな!』

優花里「大幅戦力アップです! 二連覇も夢ではありません!!」

柚子『M4シャーマンにIS‐2、チャーチル、VI号戦車ティーガーI、ティーガーⅡ……。これはすごいよ、桃ちゃん!』

桃『そういうのは勝ってからだ!!』

杏『取らぬ狸のなんとやらだねぇ』

あや『重戦車キラーになる予定の私たちには最高の練習相手じゃん!』

あゆみ『絶対勝とう! 効率のいいが練習できる!!』

梓『練習にしか使わないの!?』

華「誰が考案したのでしょうか?」

麻子「少なくとも敵に回したくない人が考えたんだろうな」

みほ(お姉ちゃんかな……。ううん、今は別のことを考える余裕はない。試合に集中しなきゃ)

大洗学園艦

かなめ「試合はもう始まっちゃってるわね」

ももがー「千鳥さんだけでも先に行って」

ぴよたん「ねこにゃーは私たちで」

かなめ「今更それはなし。みんなで遅刻するって決めたじゃない」

ももがー「でも、千鳥さんは学校のお友達も見に来てるんじゃないの」

かなめ「だからって、チームメイトを置いてはいけないわ」

ボン太くん「ふも、ふもふ」

かなめ「どう、動けそう?」

ボン太くん「ふも」

かなめ「良かった。んじゃ、行くわよ。もうかなり遅れてるんだから、急がなきゃね」

ボン太くん「ふもも!」

ぴよたん「千鳥さん、どうしてボン太くんの言ってることがわかるの?」

かなめ「前に色々あって、これをもらってたのよ。アイツにね」

ももがー「そのインターカムで中の人と会話できるなり?」

かなめ「そんなとこね。一応、ボイスチェンジャーをオフにすることもできるみたいなんだけど……」

ボン太くん「ふも? ふもるふも」

かなめ「ああ、ボイスチェンジャーは切っちゃダメよ。全機能がダウンしちゃうから」

ボン太くん「ふもぉ」

かなめ「分かるけど、今はこうする他ないわ。猫田さんの外出許可は出てないんだしね」

ボン太くん「ふも! ふもも!! ふもっふ!!」

かなめ「うん。そうよね」

ももがー「あの、二人で盛り上がらないで」

ぴよたん「寂しい」

ボン太くん「ふも!! ふもっふ! ふももも!!」

かなめ「猫田さんの言う通り!! さー!! 出発よ!!」

ももがー「私たちもその通信機ほしいー!!」

ぴよたん「レアアイテムと交換してー!!」

かなめ「ダメだってば!! これ一つしかないんだから!!」

ボン太くん「ふももー!」

>>655
みほ「戦車道で鹵獲なんて普通は考えられないけど、蝶野さんが直接言ってきたってことは公式規定なんだろうけど」

みほ「戦車道で鹵獲なんて普通は考えられないけど、蝶野さんが直接言ってきたってことは公式規定のはず……」

東富士演習場 M9内

サベージ『……』ガキィィン!!!!

マオ「高校生の試合会場まで出張ってきて、ご苦労様!!!」

クルツ『だいじょうぶかぁ』

マオ「こっちはね! あんたは安全地帯から高みの見物ってわけ!?」

クルツ『んな、薄情な男じゃねえことは姐さんがよくしってるだろ』

ドォォォン!!!

マオ「目標とあたしの距離を考慮して狙撃しな!」

クルツ『へいへい』

クルーゾー『こちらウルズ1! ヴェノムを3機確認した!』

宗介『了解。応援へ向かう』

マオ「待ちな、ソースケ! あんたがそこを動いたら、敵がミホたちのいるところまでなだれ込む」

クルツ『問題児は大人しくしとけってよ』

宗介『了解だ。先ほどのヴェノムは既に撃破している。何かあればすぐに呼べ』

マオ「相変わらず頼もしいわね。といってもこれでヴェノムは4機以上投入されてることになる。相手も本気ってわけだ」

Ⅳ号戦車内

沙織「そろそろ決勝戦でいきなり攻撃された地点だよ」

みほ「目標は確認できません。もう少し進みます」

麻子「了解」

みほ「アヒルさんチーム」

典子『はい!』

みほ「作戦通りに行きましょう」

典子『分かりました!!』

みほ「隊列を変更します。カバさん、先行してください」

エルヴィン『先陣を切る!』

梓『西住隊長! チャーチルを確認しました!! 11時の方向です!!』

みほ「……!」


チャーチル歩兵戦車『……』


みほ「ダージリンさんだけ……?」

桃『相手は1輌だ!! 撃つか!?』

みほ「いえ、ここから撃っても意味はありません。もっと近づかないと、装甲を抜くことはできません」

桃『では、近づくぞ!!』

みほ「いや、そんなことしないでください!! 危ないですから!!」

エルヴィン『隊長!! 4時の方角にM4を発見した!!』

みほ「逆方向に1輌……」

優花里「挟撃でしょうか」

華「堂々と姿を見せたのは誘っているようにも思えます」

麻子「ティーガーとISが隠れているのが怪しいな」

みほ「M4シャーマンを狙います。隊列は崩さないようにしてください」

杏『はいよぉ』

桃『いくぞー!!!』

桂利奈『あいぃ!!!』

梓『M4が後退していきます!!』

みほ「ケイさんにしては消極的だけど……」

VI号戦車ティーガーI 車内

ケイ『みほたちがこっちへ来たわ』

まほ「カチューシャ、用意はいいか?」

カチューシャ『カチューシャに命令しないで! ノンナ!!』

ノンナ『はい』

カチューシャ『もう一度、ミホーシャに分からせてやるのよ!! カチューシャたちの大きさと強さをね!!』

まほ「ケイ。振り切れる?」

ケイ『ぜーんぜん、オッケー! ナオミの実力をまだフルに使えないのは、ちょっとバッドだけどね!』

まほ「ダージリン」

ダージリン『既に動いていますわ。ご心配なく』

まほ「了解。エリカ、ついてきて」

エリカ『はっ!』

まほ「大洗の隊列を一気に崩す」

ケイ『ヘイヘーイ! こっちよー!!』

アリサ『森林エリアに入ります。大洗の全車両、予定のコースを進んでいます』

森林エリア

ケイ「こっちだよー!!」

みほ「シャーマンを確認! 砲撃用意!!」

M3『くらえー!!!』ドォォォン!!!

ケイ「おっと。一回戦より腕あげたわね、チーム・ラビット! いいわよ!! だんだんノッてきたわー!! ナオミ!! ファイアー!!!」

M4『イエス、マム』ドォォォン!!!!

みほ「くっ……!」

ケイ「追いかけるだけじゃ、私は倒せないわよ!!」

みほ「ケイさん、楽しそう」

沙織『みぽりん! 後ろからティーガーが来てる!!』

ティーガーI『……』ゴゴゴゴッ

みほ「お姉ちゃん……」

ケイ「バックばっかり気にしててもウィンできないわ! みほ!! オッケー!?」

みほ「カバさん、カメさん! 5S地点まで移動してください! 残りはあんこうについてきてください!!」

アリサ『2輌がコースを外れます。移動ルートから予測される地点は5Sです。チャーチル、IS‐2、お願いします』

カエサル『隊長!! すぐに合流しよう!!』

杏『そう簡単にはいかなさそうだけどな』

柚子『あ、あれって……!!』

IS-2『……』ゴゴゴゴゴッ

おりょう『プラウダの戦車ぜよ』

カチューシャ『さあ!! いくわよ!!! 雪山の野兎みたいに震えなさい!!!』

ノンナ『До свидания』ドォォォン

桃『だめだー!! もうおしまいだー!!!』

左衛門佐『はやいって!!!』

エルヴィン『河嶋先輩!!! その弱音で士気がどれだけ下がると思っている!!!』

おりょう『弱気になったときは海援隊士の名前を心の中で唱えていくぜよ。すると落ち着く』

カエサル『落ち着けるのはおりょうだけだ』

柚子『桃ちゃん、後輩から総ツッコミうけてる』

杏『装填に集中しろ、かわしまぁ!! なんとかしてやるから!!』

桃『わ、わかりました!! お願いします!! 会長!!』ガコンッ

杏『準決勝ではお世話になったからな、ブリザードのノンナには』ドォォォン!!!

ノンナ『当たりはしません』

カチューシャ『当たったところで装甲は貫けないわ!! このまま進むわよ!!』

カエサル『こちら2輌!! 考えれば!! 勝てる!!』

エルヴィン『側面を狙え!!』

杏『発射!!』

ドォォォン!!!

カチューシャ『きゃぁ!?』

ノンナ『来ましたね』

ダージリン『――無事かしら、カチューシャ』

カチューシャ『遅いわよ!! まるで手負いの熊並の鈍足じゃないの!!』

ダージリン『手負いの熊ほど手に負えない、なんていうけれど』

杏『分厚いのが2輌もきちゃったかぁ……』

桃『まけだー!!』

カエサル『先輩は黙っていてくれ!! 西住隊長!! 私たちでIS-2とチャーチルを相手にする!! 許可が欲しい!!』

みほ「わかりました! でも、森は抜けてください!! 合流地点はHS地点です!! 必ず、会いましょう!!」

カエサル『了解!!』

杏『おっけー。逃げながら戦うよ』

梓『ティーガーが並んで追い込んできてます!!』

みほ「アヒルさん!! お願いします!!」

典子『任せてください!!! やるぞ!! みんなー!!!』

妙子・忍・あけび『『そーれそれそれー!!!』』

ケイ『もう1輌がコースを外れていくわね。追うわよ!!』

アリサ『相手の目標地点を割り出します』

まほ『この2輌は私とエリカに任せてくれ』

エリカ『隊長と組めば、負けはしないわ』

あや『ついてくるー!!』

優希『桂利奈ちゃん、がんばってぇ。当たっちゃだめだよ』

桂利奈『あいぃ!!』

みほ「私たちも森を抜けます!! ウサギさん、ついてきてください!!」

エリカ『そんなことを許すとでも思ってるの? ――発射』ドォォォン!!!

梓『きゃぁ!? こっちを狙ってきた!?』

あや『当たり前だけど、一発食らったら終わりだよね!?』

紗希『128mmに狙われたときよりもマシだけど』

あゆみ『ぜんぜんマシじゃないってー!!』

梓『西住隊長、どうしましょう!?』

みほ「お姉ちゃんは……」

優花里『各個撃破を狙っていますね。個々の戦車性能が上であり、尚且つ殲滅戦だからこその作戦です』

みほ「ウサギさんチーム、やれますか」

梓『いけます!!』

あや『これで成功したら重戦車キラーの称号をくださーい』

みほ「麻子さん!! 右折!!」

梓『桂利奈ちゃん!! 左折!!』

エリカ『二手に分かれる……。こっちの狙いは分かっているでしょうに』

まほ『エリカはM3を。私はⅣ号を追う』

沙織『予定の地点に到着したよ』

麻子『止まるか』

みほ「お願いします」

まほ「……」

みほ「お姉ちゃん……」

まほ「どちらだ」

みほ「……」

まほ「貴女が私たちの作戦に嵌ったのか、それとも私たちが貴女の作戦に踊らされているのか」

みほ「お姉ちゃんたちがこうして1輌ずつ撃破していこうとするのは、予想していた。とても頼りになるアドバイザーが仲間になってくれたから」

まほ「では、分かっていて散ったと」

みほ「うん」

まほ「舐められたものね」

みほ「負けないよ」

まほ「当然だ。私に負けるなど、許されない。行くぞ」

みほ・まほ「「砲撃、用意!!」」

アーバレスト内

宗介「ふっ!」

アル『目標、撃破』

クルツ『ソースケ! そっちにヴェノムが2機向かってる。こっちから撃ってもキリがねえぜ』

宗介「ヴェノムの処理は任せてくれ。そちらは頼むぞ」

クルーゾー『敵はASだけか』

マオ『コブラやヴァイパーがいないだけマシね』

クルツ『そうかぁ? ヴェノムを4機以上はやりすぎだろ』

マオ『サベージを10機……。確かに高校生のお祭りにしては豪華すぎるわね』

クルツ『って、ちょっと待て。なんでソースケのとこに向かってんのが2機だけなんだよ。中尉が見たのは3機でソースケがぶっ壊したのが1機だろ』

宗介「どこにもいないのか」

クルツ『ECSを使いやがったな』

マオ『バカ!! なんのために高台にいるんだ!!』

クルツ『中尉の援護してたら一体ぐらいは目を離しちまうだろ』

クルーゾー『なるほど。俺の所為か、軍曹』

クルツ『そうは言ってねえよ。全部、俺の責任だ』

宗介「無駄口はいらん」

テッサ『ウルズ1、ウルズ6、試合会場エリアに注視。パース1、観客席にいるニシズミシホへの警戒レベルを上げてください』

クルーゾー『了解です! しっかり視ておけ、軍曹!!』

クルツ『わかってるっつーの!!』

カリーニン『了解です』

マオ『ソースケ!!』

宗介「今、目の前にいる」

ヴェノム『……』

アル『高脅威目標、接近』

テッサ『ウルズ7、この窮地、脱することはできますね』

宗介「肯定です。10秒、時間をもらえますか」

テッサ『好き放題してください』

宗介「了解!!」

アル『ラムダ・ドライバの起動を確認』

宗介「くらえぇ!!!」

ドォォォン!!!

アル『撃破、完了』

宗介「あとは行方不明のヴェノム1機か」

マオ『クルツ! 見つかった!?』

クルツ『いや、ダメだ!!』

クルーゾー『まずいぞ。このままでは……!!』

カリーニン『ウルズ7、ニシズミミホの現在地は7S地点だ』

宗介「そこに敵機が向かっていると?」

カリーニン『母親のところへASで襲撃をかけるとは思えん。向かうとすれば戦車のほうだろう』

宗介「了解です!! 大佐殿、西住のところへ向かいます!!』

テッサ『許可はしますが、ミホさんだけには危害が及ばないようにしてください』

宗介「はっ」

アル『急行しましょう、軍曹殿』

宗介「7S地点……。森林エリアか」

>>633
沙織「みぽりんがいて、華がいて、麻子がいれ、ゆかりんがいる、学園艦が大好きだもんね」

沙織「みぽりんがいて、華がいて、麻子がいて、ゆかりんがいる、学園艦が大好きだもんね」

>>675
テッサ『許可はしますが、ミホさんだけには危害が及ばないようにしてください』

テッサ『許可はしますが、ミホさんたちだけには危害が及ばないようにしてください』

森林エリア

ドォォォン!!

まほ「つっ……」

みほ「優花里さん! 装填速度を維持してください!!」

優花里『勿論です!!』ガコンッ!!

まほ(装填手が変わったのか。装填速度が以前よりも格段に上がっている……! それに……)

みほ「華さん、移動しながらの砲撃になります。よく狙ってください」

華『はいっ』

まほ(砲撃の精度も目に見えて上昇している。一体、何があったというの)

みほ「撃てー!!」

ドォォォン!!!

まほ「相手に押されているぞ。手を緩めるな!」

みほ「このまま――」

華『何か、おかしな臭いがしませんか?』

沙織『なによ、急に。おかしな臭いって……よくわかんないけど……?』

華『いえ、塩素のような臭いが……』

麻子『塩素?』

沙織『ゆかりん、する?』

優花里『いえ、わかりません』

みほ「……?」

まほ「この臭いは……」

ヴェノム『……』

みほ「な……!」

まほ「AS? 何故、こんな場所に?」

ヴェノム『……』ジャキン

まほ「見たことのないASだが、自衛隊の新型か」

みほ(このAS……もしかして……)

みほ「お姉ちゃん!! 後退して!!」

まほ「……!?」

ヴェノム『……』ドォン!!!

観客席

信二「いきなり隊長同士の一騎打ちになるなんて」

蓮「波乱の展開ですわ」

敦信「両者共、狙っていたように見えるがな」

しほ「……」

――試合をよく見ているといい。

しほ(あの男の狙いは、特殊コーティング技術……。しかし、あれを流失させるわけには……)

恭子「な、なにあれ!!」

しほ「……!」

信二「ASみたいだけど……」

一成「どうして戦車道の試合にASが出てくるんだ」

蓮「警備員の方でしょうか」

恭子「で、でも、みほさんとまほさんの戦車を狙ってる気がするんだけど……」

しほ(あの男が……)

恭子「なんだか異様な雰囲気だけど……」

森林エリア

みほ「お姉ちゃん!!」

まほ「うっ……ん……?」

アーバレスト『無事か』

優花里「またASですか!?」

ヴェノム『……』ガキィィン!!!

アーバレスト『お前たちの狙いは分かっている。だが、そう簡単にはいかんぞ』

みほ(この声、相良さん……)

アーバレスト『はぁぁぁぁ!!!!』

ゴォォォォ!!!

まほ「ぐっ……!」

沙織「なになにー!? なにが起こったのよー!?」

アーバレスト『……』

みほ「相良さん、ですか」

アーバレスト『試合の邪魔をしたな。気にせず、続けてくれ』

まほ「実地訓練か」

アーバレスト『肯定だ。試合の日に重なってしまった。失礼』

まほ「事前に申請していたはずだが」

アーバレスト『君たちの邪魔はもうしないと約束しよう』

華「(相良さん、なのでしょうか)」

優花里「(間違いないかと)」

麻子「(ボン太くんからして怪しかったが、本当にAS乗りなのか)」

沙織「(AS乗りなんて、かっこいい!!)」

アーバレスト『ではな』

まほ「なんだったんだ……」

みほ「……また、私は守られてる」

沙織「みぽりん?」

みほ「命までかけてもらってる」

まほ「試合を続けよう」

みほ「――勝って、お礼を言わなきゃ!!」

観客席

恭子「はぁー……。なんだぁ、ただの訓練かぁ」

亜美(おかしいわね。隊の訓練予定日ではなかったはずなのに)

しほ(あのAS、まほを狙っていた。あの男はまほを脅迫の道具に使おうとしていたのか)

カリーニン「……私だ」ピッ

『貴方の差し金かな』

カリーニン「……」

『警戒システムの穴や監視の死角をこちらに流しておいて、今更邪魔をするのかい』

カリーニン「ニシズミミホ及びニシズミシホとの交渉の場は用意した。今の私が協力できるのはそこまでだと説明したはずだが」

『なるほど。確かに契約違反、というわけではないね』

カリーニン「これ以上、話すことはない。通信を終了する」

『では、また』

カリーニン「……」ピッ

カリーニン「こちら、パース1。敵はまだ潜んでいる可能性が高い。十分に警戒しろ」

宗介『ウルズ7、了解』

某所

レナード「まだ迷いがあるようだね、アンドレイ・セルゲイビッチ・カリーニン」

レナード「彼は、今は良い。だが、いずれ……」

レナード「西住しほからの連絡は期待できそうにない。子どもを捨てるような親だから、姉妹で優秀なほうを人質にされても動じない、か」

レナード「最低の母親に相応しい結末を用意しよう」ピッ

レナード「僕だ。ああ、コダールを全て投入しても構わない。ただし、ミスリルにはラムダ・ドライバ搭載機が存在している」

レナード「目的は西住姉妹の拉致と戦車の鹵獲。障害になるものは、君たちの独断で処理してくれていい」

レナード「いい知らせを期待しているよ」ピッ

レナード「さて、待つとしようか」

アラストル『……』

レナード(どこまで戦車道の試合が続けられるのか、見物だ)

レナード(みほもまほも、貴重な人材だ。手に入れられるなら、それに越したことはない)

レナード(二人なら僕の気持ちも理解してくれるはずだ)

レナード(僕たちは母親に恵まれなかった者同士なのだから……)

レナード「必ず救ってみせるよ。自分の子どもよりも機密情報を守る最低の親からね」

別地点

桃『やられるぅ!! やられるよぉぉ!! 柚子ちゃぁぁん!』

杏『小山ぁ! 何とか回り込んで!! 河嶋ぁ!! あとでナデナデしてあげるから、なきやめ!』

柚子『はいぃ!』

カチューシャ『見え透いた動きでどうにかなるとでも思ってるわけ!!』

ダージリン『脇が見えていなくてよ、カチューシャ』

カエサル『――今が好機だ!! 矢を放てー!!!』

左衛門佐『発射!!』ドォォォン!!!

ノンナ『――惜しかったですね』

おりょう『当てられなかったぜよ!』

カチューシャ『ダージリンに言われるまでもないわ』

ダージリン『それは失礼』

エルヴィン『後退だ!!』

ノンナ『Москва слезам не верит』カチッ

ドォォォォン!!!!

亜美『大洗チーム、Ⅲ号突撃砲、走行不能!!』

カエサル『バカ、な……』

左衛門佐『ここまでかぁ……』

おりょう『こんな……ところで……』

エルヴィン『すまない!! みんな!! あとは頼む!!!』

カチューシャ『ふふん。カチューシャとノンナにダージリンが加われば、黒森峰だって一捻りなの』

ダージリン『申し訳ありませんわね、大洗のみなさん。廃校は免れませんわ』

杏『私たちだけで、この2輌を相手にしなきゃいけないのか……』

柚子『に、逃げましょう、会長!!』

杏『だな。ここはてっしゅー』

カチューシャ『逃げる気!?』

ダージリン『逃がしませんわ』

桃『何故だ……!! 何故なんだ……!!』カチャッ

柚子『桃ちゃん!? 顔を出したら危ないよ!!』

杏『河嶋、装填にしゅーちゅーしろー』

桃「どうして勝たせてくれないんだ!!! 私たちには後がないんだ!!!」

オレンジペコ『何かを訴えているようですね』

ダージリン『そうですわね』ズズッ

桃「お前たちの学校は来年も再来年も残るじゃないか!! 私たちの学校は!! なくなってしまうんだ!!!」

ノンナ『……』

桃「手加減してくれてもいいはずだ!!!」

カチューシャ「――ふざけるんじゃないわよ!!!」

桃「ひっ」ビクッ

カチューシャ「手加減をしろですって!? 寝言ならシベリアの僻地で雪に埋もれながら言いなさい!!!」

カチューシャ「あんたたちの学園艦が轟沈するのは悲しいことだわ。きちんと悲しんであげてもいいわよ」

カチューシャ「でもね!! こっちだって大切な戦車を賭けてるの!!」

カチューシャ「貴方達と真剣勝負がしたいから、ここにいるのよ!!! なのに……なのに……!!!」

カチューシャ「ノンナぁ!!」

ノンナ『プラウダの誇り、いえ、戦車乗りの誇りに誓い、カチューシャに勝利を捧げます』

ダージリン『久しぶりに見ましたわね。カチューシャが本当に怒っているところを』

ヘッツァー 車内

杏「今のは河嶋が悪い。カチューシャたちに失礼だ」

桃「だって……だって……」

杏「弱気になるな。まだ負けてないんだ」

桃「でも、会長!!」

杏「言ったろ。奇跡は起こすって」ナデナデ

桃「うぅ……」

柚子「ピンチには違いはないんですけど……」

杏「予定ではこっちが先にやられるはずだったからねぇ。作戦をかえよっかぁ」

柚子「は、はい」

ドォォォン!!!

桃「ひぃぃ!!」

杏「小山、気合いれろよぉ。ウサギさんチームと合流できれば、まだ見込みはあるんだからな」

柚子「や、やってみます!」

杏「澤ちゃん、今、どこにいるのー?」

別地点

ケイ『ヘーイ!! いつまでエスケープし続けるつもりー!?』

典子『気合で逃げろー!!!』

アリサ『このルートだと、HS地点に向かっていますね』

ケイ『ふぅん。決勝戦のファイナルバトルフィールドで落ち合おうとしてるのね。中々、シャレたラストじゃない』

アリサ『隊長。まさか、そこまでついて行くつもりではありませんよね』

ケイ『オフコース。ここで仕留めるわ』

ナオミ『イエス、マム』

あけび『なんかスパイクが来そうです!! キャプテン!!』

典子『そうはいかない!!』カチャッ

ケイ『ホワット?』

典子「隊長直伝!! もくもく作戦改!!」ポイッ

アリサ『また煙幕? 芸がないわね。どうせ、それで仲間のところまで逃げる――』

八九式中戦車『そーれそれそれ!!!』ゴゴゴゴッ!!!!

ケイ『突っ込んできたじゃない!!』

ナオミ『チッ』カチッ

ドォォォン!!!

アリサ『やったの!?』

典子『レシーブ、トス!!』ガコンッ

あけび『アターック!!!』ドォォォン!!!!

アリサ『きゃぁ!?』

妙子『全然、効いてません!!』

あけび『もっと火力があれば!!』

忍『全力で逃げましょう!!』

典子『リベロ並のフットワークで!!』

ケイ『いい度胸ね』

ナオミ『あんな速度を出しながら、的確に当ててくるとは……』

ケイ『もしあれが八九式じゃなくてファイアフライなら、負けてたわね』

典子『いくぞー!! 八九式の底力を見せてやるんだー!!!』

アリサ『逃げ回るだけの囮役のくせに!!』

デ・ダナン 艦内

クルーゾー『ヴェノムを6機確認しました!!』

テッサ「ここまでの兵力を投入してくるなんて……」

マデューカス「余程、コーティング技術が欲しいようですな」

テッサ(なにより、ミスリルの警戒網を容易にすり抜けてくるなんて……疑いようがないわね……)

マデューカス「艦長、指示を」

テッサ「現時点で対抗する術は……」

宗介『自分にお任せを、大佐殿』

テッサ「サガラさん……」

宗介『自分ならヴェノム6機が相手でも問題ありません』

テッサ「いいえ。貴方一人では無理です」

宗介『しかし、ラムダ・ドライバに対抗できるのはこの機体のみです』

テッサ「これは命令です。相良軍曹はポイント03にて待機」

宗介『了解しました』

テッサ「ありがとうございます。それでは、速やかに移動してください。ウルズ1、ウルズ2、ウルズ6、これより次の作戦を伝えます」

試合会場 森林エリア

エリカ『――発射!!』

ドォォォン!!!

あゆみ『こっちにくるなー!!』ドォォン!!!

梓『優希ちゃん、カメさんチームとはあとどれくらいで合流できそう?』

優希『もうちょっとだと思うんだけどぉ』

桂利奈『もうちょっとってどれくらいー?』

優希『3分ぐらいかなぁ』

あや『あと3分もこの状況が続くの!?』

梓『カメさんチーム、状況はどうですか?』

杏『旗色悪いかなぁ。2輌に追われてるし』

梓『このまま合流すらできない可能性もありますね』

杏『あるかもねぇ。どうする、澤ちゃん』

梓『どうするって……』

杏『今は次期隊長の判断に任せるよ。相良くんも次代を率いるリーダーの力を信じてたしな』

M3中戦車リー 車内

梓「けど、私の勝手な判断で……失敗したら……」

あゆみ「そこ、心配するところじゃないって」

あや「そうそう。西住先輩も相良さんも、もしものときは梓に任せるって言ってくれたじゃん」

優希「それにぃ、失敗はしないと思うなぁ」

梓「どうして?」

優希「だってぇ、西住先輩たちが任せるって言ってくれたんだよ。失敗なんてするわけないよ」

桂利奈「ガンガンいっちゃおう!!」

紗希「私たちなら、できる」

あゆみ「私たちの夢は重戦車キラー!! でも、梓以外の目標は澤隊長と一緒の戦車に乗ることなんだから!!」

あや「ここでその目標も夢もなくしたくない!!」

梓「みんな……」

桂利奈「どうするの!?」

梓「――このままHS地点を目指します!! カメさんチームとの合流はそこに変更!!」

杏『はいよぉ。んじゃ、こっちもルート変更だね。小山ぁ、作戦変更。ぴょんぴょん作戦だ』

Ⅳ号戦車内

梓『西住隊長、すみません! 勝手に作戦を変更しました!!』

みほ「構いません。では、お願いします」

梓『はい!!』

麻子「ウサギさんチーム主導の作戦に切り替えたか」

みほ「この状況はアルさんが想定してくれたから、まだ大丈夫」

優花里「私たちの任務はここでティーガーを撃破し、皆と合流することになったのですね」

華「一騎打ちの状態を維持するのも限界です。ここで勝負を決めましょう」

優花里「向こうもいつ合流するかわかりませんからね」

麻子「では、短期決戦だな」

沙織「また決勝戦のときみたいにする?」

みほ「ううん。お姉ちゃんを倒せても、相手はまだ残っているはずだから」

麻子「捨て身は無理か」

華「もとより、まだ虚実を尽くしてもいませんわ」

みほ「そろそろ、時間です。――発射、用意!!」

森林エリア

まほ「来るか、みほ」

みほ「発射!!」ドォォン!!!

まほ「何度も同じ手は通用しない」

華『動きが読まれていますね』

優花里『即時装填です!!』

アリサ『こちら、サンダースチーム。目標車輌をロストしました』

まほ「逃げられたのか」

ケイ『ソーリー、まほ。引き続き探してみるわ』

まほ「……」

優花里『装填完了!!!』

みほ「うてー!!」

ドォォォォン!!!

まほ「後退する。サンダースチーム、敵車輌は追わなくていい。9H地点で合流しよう」

ケイ『オッケー!! 理由はあとできくわね!! ゴー!! サンダース!!!』

みほ「後退する……?」

麻子『何故だ』

みほ「アヒルさんチーム。そこからすぐに移動してください」

典子『了解です!!』

沙織『もしかして、作戦がバレちゃったの?』

みほ「かもしれない」

麻子『厄介だな』

優花里『流石、西住殿のお姉さんですね!』

麻子『褒めてどうする』

沙織『このままウサギさんチームと合流しちゃう? あぁ、でも、そうなるとティーガーとシャーマンまでHS地点に来ちゃうのかなぁ』

みほ「……ティーガーを澤さんのところへ行かせちゃいけない。倒しましょう」

華『了解ですわ』

麻子『やるしかないか』

優花里『ヒャッハー!! もえてきたぜぇ!!!』

沙織『アヒルさん、聞こえますか?』

ケイ『仕留める自信がなくなっちゃったわけ?』

まほ「大洗は各車両が散開したように見せかけて、2輌以上で行動している」

ケイ『ランデブーポイントに集まろうとしてるんじゃなくて?』

まほ「ああ。大洗の戦車は性能は我々よりも劣っている。一騎打ちなど、まず行わない」

ケイ『そうねー。んじゃ、今みほたちは――』

ドォォォン!!!

まほ「……っ」

ケイ『どうしたの、まほ』

まほ「いや、なんでもない」

Ⅳ号戦車『……』

まほ「相手が単独で追ってきただけだ」

ケイ『そっちに行くわ』

まほ「いや、そのまま向かって欲しい。万が一、私がやられたとしても主導権はこちらに残る」

ケイ『いいのね?』

まほ「すぐに追いつく」

>>701
まほ「ああ。大洗の戦車は性能は我々よりも劣っている。一騎打ちなど、まず行わない」

まほ「ああ。大洗の戦車は性能我々よりも劣っている。一騎打ちなど、まず行わない」

みほ「それ以上、先にはいかせません」

まほ「私をここで止めたとしても残りの4輌が貴方たちの味方を殲滅することになる」

みほ「……」

まほ「仲間を囮にして、相手戦力を削る作戦、というわけか」

みほ「違います。みんなが、それぞれ戦っているんです。誰も囮なんていません」

まほ「甘い考えだ」

みほ「これが、私の戦車道です」

まほ「そんなお前を、羨ましく思う」

みほ「お姉ちゃん……」

まほ「だが、勝たなくては証明できない」

みほ「分かってる。もう、私は西住流に頼らなくても大丈夫だって、ここで証明する」

みほ「お姉ちゃんにもお母さんにも!!」

まほ(出来の悪い妹と周囲に言われていたのが我慢できなくて、私はみほに厳しく接してきた。それはお母様も同じ)

まほ(けれど、それは世間の評価に過ぎなかった。こうして私の妹は立派に多くの仲間を率いている)

みほ「――うてー!!!」

アーバレスト内

宗介「戦況は?」

アル『不利です。現在、カメさんチームが窮地に陥っています。早急に支援することを推奨します』

宗介「そちらではない。俺たちのほうだ」

アル『作戦は予定通りに進んでいます』

宗介「そうか。大佐殿の言う通り、ここで待っているだけで良さそうだな」

アル『軍曹殿は気にならないのですか』

宗介「何がだ」

アル『大洗の戦況です』

宗介「今は任務が優先だ。この防衛ラインを突破されれば、学園艦だけの被害には留まらない」

アル『私は気になります』

宗介「お前のほうこそ敵の動きに集中しろ」

アル『カバさんチームが撃破されたことで作戦が変更になっているようです』

宗介「そうか」

アル『予定コースを大幅に逸脱。戦略アドバイザーとしての指示は不要ですか』

>>702
訂正できてなかった

>>701
まほ「ああ。大洗の戦車は性能は我々よりも劣っている。一騎打ちなど、まず行わない」

まほ「ああ。大洗の戦車性能は我々よりも劣っている。一騎打ちなど、まず行わない」

宗介「不要だ」

アル『説明をお願いします』

宗介「何度も言っている。戦術に関して、西住は優秀だ。一流と言ってもいい。そんな者に対して意見できるほど、俺は戦術指導者として優れているわけではない」

アル『私は今、大洗の勝利を揺るがないものにしたいと願っています。その説明では不十分です』

宗介「不安になっているのか」

アル『不安。これが不安なのでしょうか』

宗介「今、会場にいる者たちは同じ気持ちだろう。大洗が勝てるわけがない。絶望的だ、と」

アル『軍曹殿もそう考えているのですか』

宗介「ネガティブ。俺だけでなく、戦う者は逆のことを考えている」

アル『勝てる、と』

宗介「絶望すらも打ち崩す、ガッツが大洗のメンバーにはある。地獄を一度見ているのは伊達ではない」

クルーゾー『これより、作戦を開始する。各位、用意はいいか』

クルツ『おうよ』

マオ『いつでもいいわよ』

宗介「ウルズ7。問題ない」

別エリア

ドォォォォン!!!

杏『うっひょー。今のは危なかったな』

柚子『あわわわ……』

桃『援護はまだかー!!! 支援はどこだー!!!』

ダージリン『大洗とはいつも追いかけっこをしているような気がしますわね』

カチューシャ『ノンナ! よく狙って!! ここで確実にもう1輌減らしておくわよ!!』

ノンナ『侮って負けるのはもうこりごりですからね』

カチューシャ『そういうことじゃないの!! 戦略としてここで減らしておいたほうが楽でしょ!!』

ダージリン『あの敗戦が良い薬になったようですわね』

オレンジペコ『ヘッツァー、進路変更しますわ』

アッサム『サンダースチームの言う通り、行先はHS地点のようです』

ダージリン『誘われているようですわね。様子をみる?』

カチューシャ『どっちしろあそこで籠城されるほうがメンドーだわ。このまま追撃よ』

ノンナ『はい』

HS地点

梓『こちら、ウサギさんチーム! HS地点に到着しました!!』

杏『りょーかぁい。もうちょびっと待ってて』

梓『分かりました!!』

あゆみ『もうちょびっとって言われても……!!』

あや『きたー!!』

ティーガーⅡ『……』ゴゴゴゴゴッ

エリカ『ここが貴方達の墓場になるのよ』

梓『逃げよう!』

あゆみ『異議なし!!』

優希『桂利奈ちゃん、そこ右折ね』

桂利奈『あい!!』

エリカ『撃て!!』

ドォォォォン!!!

あや『ティーガー、マジ怖いんですけど!!』

森林エリア

みほ「右転回!! 全速後退!!」

麻子『ほい』

まほ「遅い。――撃て」ドォォォン

沙織『きゃぁ!?』

優花里『シュルツェンが吹き飛んだだけです!!』

まほ「榴弾、用意」

みほ(装填速度と停止射撃の精度はこちらが上。けど、視界の悪いこんな場所での行進間射撃は向こうが上……)

まほ「撃て」

ドォォォォン!!!

麻子『くっ。大木が倒れてきた』

沙織『進めないの!?』

ティーガーⅠ『……』ガコンッ

みほ「……!」

まほ「その一瞬の停止が命取りになる。残念だがここまでだ、みほ」

ゴゴゴゴ……!!!

まほ「なに?」

八九式中戦車『……』ゴゴゴゴッ

典子『全速力でつっこめー!!!!』

妙子・あけび・忍『『全力アターック!!!!!』

まほ「何を……!!」

ガギィィィン!!!

まほ(戦車で体当たり……!?)

みほ「左から回り込んで!!」

麻子『了解』

典子『どーだ!! これが私たちの気合のスパイクだ!!』

まほ「距離を取り、撃て」

典子『あっ』

ドォォォォォン!!!!

亜美『大洗チーム、八九式中戦車、走行不能!!』

まほ「あと3輌か」

典子「私たちが負けても!!!」

まほ「……」

妙子「大洗が勝ちます!!!」

あけび「絶対に!!! 勝っちゃうんです!!! だって!!! 最高の隊長がいるから!!!」

忍「西住先輩!!! お願いします!!!」

みほ「――これだけの至近距離なら!!!」

まほ「ふっ……」

みほ「撃て!!!」

華『はい!!』

ドォォォォン!!!!

亜美『――オールスターチーム、VI号戦車ティーガーI、走行不能!!』

みほ「お姉ちゃん……」

まほ「行きなさい」

みほ「はい」

まほ「怪我はないか?」

典子「はい。なんとか」

まほ「今の作戦はみほが考えたものなの?」

典子「いえ。私たちは相手戦車の気を逸らすように言われていました」

まほ「では、今の突撃は……」

典子「私たちの判断です。あのまま八九式で撃っても意味がなかったので」

まほ「みほの作戦が狂わされたことになるな」

典子「それでもここで西住隊長がやられてしまうよりはマシです」

妙子「西住先輩がいなければ、この試合、勝てませんから」

まほ「そうか」

ダージリン『ご無事ですの』

エリカ『隊長!! お怪我は!?』

まほ「心配はいらない。すまないが、あとは頼む。指揮はダージリンが執ってほしい」

ダージリン『了解ですわ』

まほ(みほ。あなたの戦車道を最後まで見せてほしい)

Ⅳ号戦車内

沙織「怪我はないですか!?」

あけび『大丈夫です!!』

忍『すみません!! 勝手なことをして!!』

妙子『お尻ペンペンでもなんでもしてください!!』

典子『すみません。けど、私たちが勝つにはこうするしかなかったと思っています』

みほ「磯辺さんたちの勇気、絶対に無駄にしません」

妙子『キャプテン!! ここはあれを!!』

典子『ああ!! やるぞー!! 隊長!! ファイトー!!!』

妙子・あけび・忍『『いっぱーつ!!!』』

みほ「……」

優花里「西住殿……」

みほ「不利な状況は変わらない。急ごう」

麻子「ああ」

沙織「うん。アヒルさんチームに、大きなものもらっちゃったしね」

観客席

ワァァァァ!!!

恭子「これ、大洗が勝っちゃうんじゃない!?」

信二「あの西住まほさんを最初に倒すなんて……! やっぱり軍神って呼ばれるだけのことはあるよ!!」

一成「だが、隊長を倒す間に2輌も失っているぞ。大丈夫なのか」

恭子「それでも勢いに乗れるはず!! がんばれー!! おおあらいー!! カナちゃんはまだかなぁ? いいところなのにぃ」

孝太郎「五十鈴さーん!! おうえんしてますよー!!」

蓮「どう思いますか?」

敦信「Ⅲ号突撃砲を序盤で失ったのは痛手かもしれないな」

ナカジマ「ウサギさんチームとカメさんチームにかかってますね」

みどり子「しっかりやりなさいよね……」

ホシノ「後ろからシャーマンが来てる」

希美「同じ場所に4輌が揃ったら……!!」

ツチヤ「万事休す、かもね」

しほ(こうなることを見越して、みほの足止めをしたのね、まほ。まさか、あなたが自分を犠牲にするなんて……)

ピピッ

カリーニン「――完成だ」

ペパロニ「お。ボルシチがでたっすか」

カリーニン「肯定だ。今回もあの味が再現できている」

ペパロニ「味見、いいっすか」

カリーニン「ああ。構わない。これは戦車道選手のために用意したものだ」

ペパロニ「わーい!! ありがとうございます!! いっただきまーす!!」

カルパッチョ「大洗は危険ですね」

アンチョビ「逃げ回ればまだ勝機はあるが、隊長車の到着までもつかどうかだな」

テッサ『カリーニンさん。そちらの様子はどうでしょうか』

カリーニン「今のところ、問題はありません」

ペパロニ「ご……うぇ……ぉぉぉ……」

テッサ『そうですか。ヴェノム6機がそちらへ移動を始めています。万が一のときは……』

カリーニン「はっ。市民の避難を最優先に行動します」

テッサ『それでは引き続き、会場内の警備をお願いします』

HS地点

杏『とうちゃくぅー!!』

柚子『みなさーん!! 早く合流しましょー!!』

桃『こちらへこい!! いや!! 私たちがそちらへ行く!! そこを動くな!!!』

梓『それ無理です!!!』

優希『動き回ってないとやられちゃいまーす』

杏『こっちも動いてないと死んじゃうんだよね。マグロみたいに』

ダージリン『大洗にとっては思い入れのある場所ですわね』

カチューシャ『それにこっちの隊長車も倒しちゃったんだから、本望でしょ』

ノンナ『大洗にとってはиз огня да в полымяですね』

杏『西住ちゃんと磯辺ちゃんが目に物見せてくれたんだ。今度はこっちが踏ん張る番だよ!!』

柚子『は、はい!! ここで、ここまでして!! 足を引っ張りたくないです!!』

桃『会長!! 装填します!! 撃って撃って撃ちまくってください!!!』ガコンッ

ダージリン『恐怖と勇気がどんなに近くに共存しているかは、敵に向かって突進する者が一番よく知っているであろう』

ノンナ『モルゲンシュルテンですね。確かにいい言葉です』

エリカ『ちょろちょろと動き回って……!!』

梓『会長たちと早く合流しなきゃ!!』

優希『現在位置はどこですかぁ?』

杏『0017!』

優希『桂利奈ちゃん、そのまま真っ直ぐね』

桂利奈『あいぃ!!!』

エリカ『隊長の仇よ!!!』ドォォン!!!

あゆみ『怒ってる、怒ってる!』

あや『このまま逃げてればなんとかなるね!』

梓『うん。西住隊長が到着してくれたら――』

ドォォォォン!!!!

梓『な……!?』

優希『え、えぇ……?』

ケイ『――言ったじゃない。バックばっかり気にしてたら、ウィンはできないってね』

亜美『大洗チーム、M3中戦車リー、走行不能!!』

Ⅳ号戦車内

梓『すみません!! ウサギチーム、行動不能です!!』

沙織「みんな、無事!?」

梓『すみません!! 勝手なことをして、勝手にやられて……! 私……! わ、たし……!!』

みほ「澤さん。ありがとう。貴方が敵を引きつけてくれたおかげで、敵隊長車を撃破することができました」

梓『にし、ずみせんぱい……』

みほ「決勝戦でも澤さんたちがヤークトを倒してくれなければ、きっと負けていました。今回もまた助けられました。だから、ありがとう」

梓『ごめんなさい……ごめ、んなさい……』

桂利奈『先輩!! がんばってください!!』

あゆみ『大洗を守ってください!!』

あや『来年もみんなで戦車に乗りたいです!!』

優希『大洗を卒業したい!』

紗希『お願いします』

みほ「大丈夫。私が守るから。みんなも、大洗も」

梓『せんぱい!! おねがいします!!』

HS地点

杏『ウサギさんまでやられちゃったかぁ』

柚子『ここにいるのって、私たちだけなんですか?』

杏『支援はなし、退路もなし。さぁて、どうする』

桃『もうむりだよぉ! ゆずちゃぁぁん!!!』

ダージリン『獅子は兎を狩るのにも全力を尽くす』

カチューシャ『面白かったわ。安心しなさい。貴方達の戦車は私たちが大切に使ってあげるから』

ノンナ『生徒も受け入れ態勢が整っていますものね』

杏『小山!! 後退!!』

柚子『はい!!』

ダージリン『動くことは抵抗の意思を見せるということ』

杏『これでどうだっ』ドォォォン!!!

ノンナ『同時に不屈の精神を持っている証明にもなります』

杏『河嶋ぁ!! 間髪入れずに装填!!! 泣いてる暇なんてうちらにはない!!』

桃『は、はいぃぃ!!』ガコンッ

ケイ『ヘーイ!! ダージリン! カチューシャ!!』

エリカ『あと2輌。勝ったも同然ね』

ダージリン「4輌が揃ってしまいましたわね」

カチューシャ「ヘッツァーを倒せば、あとはミホーシャだけになる。いくらミホーシャでも、この4輌には勝てないでしょ」

杏『名門の隊長、揃い踏みか。こうしてみるとおっかないねぇ』

柚子『何を呑気な!』

桃『奇跡なんておきないんだぁ!! うわぁぁぁん!!!』

杏『ああ。奇跡なんて起きるわけないんだ』

柚子『会長……』

杏『言ったろ、河嶋。奇跡は、起こすって』

桃『会長……しかし……この状況……』

杏『河嶋、装填だけに集中。小山、チャーチルとシャーマンの間につっこめ』

柚子『はいっ!』

杏『河嶋! 小山!! 最後まで私についてこーい!!!』

柚子・桃『『了解!!』』

観客席

一成「終わりだな。隊長車を落としたぐらいでは相手を揺さぶれなかったか」

敦信「オールスターチームはそれぞれが鍛えられた戦車乗りであり、隊長を務めている。指揮系統が乱れることもない」

ナカジマ「……」

みどり子「ここまで、なの」

カエサル「せめて、我々が戦場にいられたら!!」

妙子「大洗が……なくなる……」

恭子「どうにもならないのかな」

信二「難しいと思う。西住さんがどんなにすごくても、あの四人には……」

敦信(角谷君……。君の力でも、この巨大な壁は越えられないのか)

「ふもー!!!! ふももー!!!! ふもっふぅー!!!!」

「応援席が諦めてどうするの!! 西住さんや会長は戦っているのに!!!」

おりょう「え……?」

ボン太くん「ふも!! ふもふ!! ふもるるるー!!!!」

かなめ「もっと応援して!! 声が届かなくても、姿が見えなくても、応援しよう!!! って、ボン太くんは言ってるわよ」

恭子「カナちゃん!!」

かなめ「ごめんね、恭子。遅刻しちゃったわ」

一成「ち、千鳥じゃないか! き、奇遇だな!」

かなめ「椿くんも応援にきてくれたの? ありがとう。とっても嬉しいわ。けど、ごめんね。私、試合に出られなくて」

一成「な、なにを言っている。共に応援することに意味があるんじゃないか」

かなめ「そうよね」

左衛門佐「応援、か」

エルヴィン「声援で、この状況が一変するだろうか」

かなめ「変わらないかもしれない。でも、後悔はしないんじゃない」

カエサル「千鳥さんの言う通りだ。ここで絶望するよりはマシだ!!! 声を嗄らせ!!! 喉を潰せー!!!」

おりょう「大洗の夜明けぜよ!!!」

ナカジマ「自動車部も爆音を轟かせるよー!!!」

みどり子「風紀委員も負けていられないわ!!! この大洗の風紀は私たちが守ってきたのよ!! 理不尽な理由でその風紀を乱されてたまるもんですか!!!」

ぴよたん「がんばれー!! 西住たいちょー!!!」

ももがー「がんばるなりー!!!」

アーバレスト内

『負けないでください!!』

『ボクたちの帰り場所は大洗しかないの!!』

『先輩!! 私たちも大好きです!! 大洗が!! 戦車道が!!!』

『お願いです!! 守ってください!!』

『隊長!! 我々の想いをその砲弾に込めてくれ!!!』

宗介「ボン太くんの通信装置がオンになったままのようだな」

アル『軍曹殿』

宗介「どうした、アル」

アル『守りましょう』

宗介「……」

アル『大洗のみなさんを、必ず』

宗介「今更、なにを言っている。それが俺たちに課せられた任務だ」

アル『高脅威目標、接近』

宗介「ラムダ・ドライバ、起動」

別エリア

クルツ『このやろう!!!』バァァン!!!

クルーゾー『2機、突破された!!』

マオ『これ以上は抑えきれない!! クルツ!! そっちはどうだい!?』

クルツ『無茶言うなよな!! にゃろぉ!!』バァン!!!

ヴェノム『……』ギィィィン!!!!

クルーゾー『そちらへは行かせるな!!!』

マオ『なんとしても止めな!! クルツ!!』

クルツ『ちくしょう!! それ以上、進むんじゃねえ!!!』

ヴェノム『……』ギィィィン!!!

クルーゾー『ヴェノム全機、目標地点へと向かっていきます!!』

テッサ『結構』

ヴェノム『……』ゴォッ

クルツ『そっちに行くんじゃねえよ!! そっちは……!! そっちはなぁ……!!』

クルツ『地獄行きだぁ、バカ野郎』

テッサ『6機がそちらへ向かいました。あとはよろしくお願いします』

クルツ『必死に誘導したんだぜぇ』

宗介『分かっている』

カリーニン『やれるな、軍曹』

宗介『肯定です』

ヴェノム『……』ゴォォォ

アーバレスト『ここにいる戦車乗りたちは死力を尽くし、戦っている』

アーバレスト『故郷を救うために3年間、戦い続けた者がいる』

アーバレスト『戦友の帰る場所を失くさぬように失いかけた力を取り戻した者がいる』

アーバレスト『戦友のもとへ戻るために今も尚、足を引き摺りながらも歩む者がいる』

アーバレスト『その者たちがこの戦場にいる。俺も、お前も、ただの邪魔者でしかない』

ヴェノム『……!』ジャキン

アーバレスト『進むか。警告はした。これより、強制排除を行う』

アル『ラムダ・ドライバは問題なく起動しています。やれます、軍曹』

アーバレスト『――消え失せろぉぉぉぉ!!!』

HS地点

ケイ『ファイアー!!!』

杏『小山!!』

柚子『これならよけられます!!』

杏『狙うは履帯だ!!』ドォォン!!!

ダージリン『流石ですわね、角谷さん』

カチューシャ『あのときはよくもやってくれたわね!!』

エリカ『撃てー!!』

桃『うわぁぁぁ!! だめだぁぁ!!』ガコンッ

杏『戦車にだって土台がなきゃ乗れなかった!!!』ドォォン!!!

杏『力がないから操縦もままならなかった!!!』ドォォン!!!

杏『河嶋と小山にぜんぶやってもらってた!!』

柚子『会長……』

杏『出来損ないで役立たずの私がみんなのためにできることなんてこれっぽっちもなかった!!』ドォォン!!!!

桃『つ、次、いけます!!』ガコンッ

ダージリン『これは……!』

オレンジペコ『決勝戦より、装填の速度がかなり上がっていますわね』

ノンナ『ヘッツァーはそれなりに時間がかかるはずなのに』

ナオミ『この速度、尋常じゃない』

アリサ『どんなイカサマを使ってるのよ!!』

ケイ『アリサじゃないんだから、アンジーはそんなことしないわ』

桃『こっちだって酔狂で丸太を抱えて走っていたわけじゃない!!!』ガコンッ

杏『何度も泣いた!! 何度も諦めた!! でもそのたびにみんなの顔が浮かんできた!!』

杏『西住ちゃんを無理矢理戦車に乗せた!! ケイやチョビ子に頼み込んで射撃技術のことを聞いた!!』

杏『これでもかってぐらい、色んな人を巻き込んで迷惑かけたんだ!! 結果が欲しくて何が悪い!!』

杏『結果を出せなきゃ、大洗は守れない!!』

ドォォォン!!!!

ケイ『くっ……!?』

亜美『オールスターチーム、M4シャーマン、走行不能!!』

杏『ケイ、ごめんよ』

ケイ『強くなったわね、アンジー』

ナオミ『コーチを頼みにきたときとは全くの別人ですね』

ケイ『その成長をこうして直に感じられて、私はハッピーよ』

アリサ『隊長は人が良すぎます』

ケイ『ソーリー、アリサ。困ってる人を見ると、助ける。それが私の戦車道だから』

アリサ『知ってます。だから、貴方がいるサンダースへ来たんです』

杏『次!!』

桃『はい!!』

柚子『まずは1輌……!!』

エリカ『そう何度もチャンスは来ないわよ!』ドォォン!!!

ノンナ『Спокойной ночи』ドォォン!!!

杏『つっ……!』

柚子『逃げ道が……!』

桃『今度こそ、終わりか……』

ダージリン『その気迫、もう少し見ていたいですけれど、わたくしたちも敗れるわけにはいきませんの』

ドォォォォン!!!!!

カチューシャ『この砲撃音……!』

ダージリン『来てしまいましたわね』

エリカ『副隊長……』

杏『西住ちゃん、やっときてくれたか』

桃『おぉぉ!! 西住だ!! 西住がきた!!』

柚子『よかったぁぁ!』

ノンナ『先に仕留めておいたほうがよさそうですね』

杏『小山!!』

柚子『はい!!』

ドォォォン!!!

杏『負けないよ、カチューシャ。同じ相手に撃破されたくもないからな』

カチューシャ『ミホーシャが有効射程圏内に入るまでが勝負よ!!』

ダージリン『そうね。全車、攻撃目標、ヘッツァー』

杏『ここで西住ちゃんを待てば、なんとなるかもねぇ』

Ⅳ号戦車内

優花里「今の砲撃音で私たちが到着したことは分かってくれたと思います」

麻子「それにしても、あの状態でよくシャーマンを撃破できたな」

華「最も練習量が多かったのは会長に他なりませんから」

沙織「練習は嘘つかないもんね」

みほ「それだけじゃない。会長は誰よりも大洗のことが好きだから」

優花里「はい! 気合が違います!」

『に……み……き……るか……』

沙織「あれ、なんだろう。なんか聞こえる。えっと……」カチッ

『西住、聞こえるか』

みほ「相良さんですか?」

『君たちの邪魔はしないと言ったこと、覚えているな』

みほ「え、あ、はい」

『よし。何があっても動じるな。いいな』

みほ「……はい、わかりました」

デ・ダナン 艦内

テッサ「どうしましたか、サガラ軍曹」

宗介『5機を撃破。ですが残り1機が交戦中に後退しました』

マデューカス「どこへ向かった」

宗介『現在追跡中。恐らくHS地点かと』

テッサ(あの人が試合を見ていて、ミホさんの居場所をリアルタイムで伝えている……。けど、ここまで敵戦力を削ることができたのなら、やることは一つだけ)

テッサ「サガラ軍曹はそのまま敵機を追跡。ウェーバー軍曹」

クルツ『あいよ』

テッサ「サガラ軍曹のサポートをお願いします」

クルツ『了解』

宗介『頼むぞ、クルツ』

クルツ『最高のアシストってやつを期待してろ』

マデューカス「やれやれ。どこまで戦車道の水を差すつもりなのでしょうか」

テッサ「私たちも彼らの計画に止めを刺しましょう。マデューカスさん、準備してもらえますか」

マデューカス「アイ、マム。支度をしてまいります」

HS地点

みほ『カメさん! ポイント14に移動してください!』

杏『ほいさ』

カチューシャ『逃がさないわよ!! ノンナ!!』

ノンナ『仕留めます』カチッ

柚子『ここでやられるわけには!』

ドォォォン!!!

杏『ナイス回避運動、小山。そのまま180度転回して、にげろー』

柚子『はいっ!!』

ダージリン『逸見さん、わたくしについてきてください』

エリカ『了解』

ダージリン『カチューシャ』

カチューシャ『なによ』

ダージリン『貴方を信じているわ』

カチューシャ『私もよ。それじゃ、ピロシキー』

ヘッツァー車内

柚子「追ってくるのは1輌だけですか?」

杏「みたいだな。カチューシャだけだ」

桃「では、2輌は西住のほうへ……! 会長、西住に警告を!!」

杏「まぁまぁ、普通に考えれば挟み撃ちするために回り込んでる最中ってとこかな」

桃「む……」

柚子「となれば、このまま進めば目の前からチャーチルとティーガーが……」

杏「UターンしてIS‐2と戦うか、それとも西住ちゃんの助けを待つか」

桃「柚子、私たちの相手は後ろにいる。ここで準決勝の雪辱を晴らすときだ」

杏「雪原地帯だっただけにってことか。座布団いちまぁい」

桃「違います!! ここで挟み撃ちにあい、むざむざとやられてしまうよりは、正面からIS‐2と戦ったほうがマシなはずです」

柚子「桃ちゃんがまともなこといってる……」

桃「なんだ!! 何か文句でもあるのか!!」

柚子「その作戦、私は賛成だよ。桃ちゃん」

杏「おっし。んじゃ、はんてーん。目標、IS‐2だ」

ノンナ『私たちと戦うことにしたようですね』

カチューシャ『生意気ね。ミホーシャなしで勝てるとでも思ってるのかしら』

ノンナ『嬉しそうですね、カチューシャ』

カチューシャ『そんなことはないわよ! ヘッツァー相手に遅れだけはとっちゃだめだからね!!』

ノンナ『信頼に応えるためにも』

杏『履帯を狙っていくしかない。小山、ちょろちょろ動き回って、相手の懐に飛び込むぞ』

柚子『はい!』

桃『初撃は我々だ!!』ガコンッ

カチューシャ『ここまで来たら出し惜しみは一切なし!! ノンナ、プラウダの全てをぶけてやりなさい!!』

ノンナ『Ураааааааа!!!!!』

杏『こっからものをいうのは純粋な技量だ』

ノンナ『こうなれば戦術はもはや機能しない』

カチューシャ『砲撃、用意!!』

ノンナ『この一撃で』

杏『何度だって、当ててやる』

Ⅳ号戦車内

沙織「カメさんチームがIS‐2と交戦中だって!」

優花里「応援に向かいましょう!」

みほ「会長、IS‐2はお願いします」

杏『はいよぉ』

沙織「いいの?」

みほ「ダージリンさんが来る」

麻子「そのようだな」

華「前方にチャーチルを確認」

優花里「ティーガーもその後ろからきていますね」

麻子「先にこちらを潰しにきたか」

みほ「麻子さん、建物の外壁に沿って移動してください」

麻子「わかった」

みほ「沙織さん、探してほしいルートがあります」

沙織「なんでも言ってよ。道がなくてもつくっちゃうからっ」

チャーチル 車内

ダージリン「小道に誘い込む気ですわね」

エリカ『私が先行します』

ダージリン「いいえ。逸見さんはわたくしの合図で動いてください。それまでは待機で構いませんわ」

エリカ『相手の動きに合わせるのですか』

ダージリン「相手は2輌。ヘッツァーはIS‐2がお相手していますし、駆けつけることはできない」

ダージリン「あのみほさんを確実に撃破するためには、ルートを把握しないと」

オレンジペコ「練習試合のときのようにかき回されてしまうかもしれませんものね」

エリカ『了解。では、ここで待ちます』

ダージリン「ご不満かしら」

エリカ『決勝戦では隊長の援護に間に合わなかったので、思うところがないわけではありません』

ダージリン「貴方がこの度の試合に積極的だった理由はまほさんから聞いていますわ」

エリカ『関係ありません。これは私情を挟んでもいい一戦ではありませんから』

ダージリン「こんな格言を知ってる? 自分に打ち勝つことは勝利のうちで最大のものである。勝ちたいのでしょう、貴方は自身に」

エリカ『……』

HS地点

優花里『追尾してくるのはチャーチルのみのようですね』

みほ「やっぱり、逸見さんは来ない……」

優花里『やっぱり?』

みほ「ダージリンさんも逸見さんも堅実な人だから、きっとこちらのルートを把握してから動き出すつもりなんだと思う」

優花里『無駄に動き回っていると履帯が外れたりしますから、待機させるということですか』

みほ「うん。足回りに不安があるVI号で追い回すことはダージリンさんがさせないはず」

華『では、かならずこちらは先手を打てるというわけですか』

麻子『裏を返せば向こうは手堅い方法で来る。それを打ち崩すのはかなり辛いぞ』

沙織『みぽりん、見つけたよ。丁度いい道』

みほ「逸見さんまで動き出せば巻き返すことが一気に難しくなります。今しかチャンスはない」

麻子『沙織。ルートは』

沙織『次、右折! その次も、その次も次も右折!』

麻子『ほい』

ダージリン(あの動き、どこかで見たわね……)

アーバレスト内

アル『目標を確認。距離、1500』

宗介「こちらウルズ7。目標を捉えた。これより排除する」

テッサ『すぐ近くに西住さんたちがいます。注意してください』

宗介「了解」

アル『西住殿がチャーチルに追われているようです』

宗介「今、その情報は不要だ」

クルツ『ソースケ、一発で決めるぜ。外せばミホたちがどうなるかわかんねえからな』

宗介「分かっている。試合を中止にはさせん」

クルツ『サクっと終わらせて俺たちもポップコーン片手に観戦しようぜ』

宗介「写真も集めなければならないからな」

マオ『それ、クルツ専用の卑猥なやつ?』

クルツ『そんなんじゃねえって!! なぁ、ソースケ!?』

宗介「肯定だ。クルツが欲しているものは交渉の道具に使われるようだからな」

クルーゾー『交渉だと。乙女を写真をどのような交渉事で使うというのだ、軍曹』

クルツ『色々と、な』

クルーゾー『あとで話がある。それまで死ぬことは許さん』

クルツ『お、中尉もそういうのに興味ありか? アメリカドルで販売してやってもいいぜ』

クルーゾー『お前……!!』

テッサ『そこまでにしてください!』

マオ『これだから男ってやつは』

アル『軍曹殿』

宗介「どうした。敵の行動が変化したか」

アル『カメさんチームが追い込まれています』

宗介「何度も言う。その情報は必要ない』

アル『目標までの距離、1000』

宗介「700まで近づき、攻撃を仕掛ける』

クルツ『ウルズ6、了解。牽制させてもらうぜ』

宗介「アル、照準補正。散弾砲で貫く」

アル『ラジャ』

HS地点

ドォォォン!!!

桃『当たった!?』

柚子『まだ当たってないよ!!』

杏『履帯に当てさえすればなんとなると思ったんだけどねぇ。やっぱ、そんなに甘くないかぁ』

カチューシャ『相変わらず、しぶといわね』

ノンナ『大洗にも退けない理由があります』

カチューシャ『そんなの知ってるわよ。でもね、勝つのはカチューシャなの』

ノンナ『ですね』カチッ

ドォォォン!!

柚子『きゃぁ!?』

杏『小山、絶対に退くな。そのまま進め』

柚子『はぁい!!』

杏『河嶋。装填速度、0.1秒でもいい、速くできない?』

桃『会長にやれと言われればどんなことでもやってみせます!!!』

杏『おりゃー!』ドォォォン!!!

カチューシャ『全速後退、すぐに主砲発射!』

杏『距離を取られる前に撃つ!』カチッ

ドォォォン!!

ノンナ『меня подстрелили……!?』

カチューシャ『まだ動けるわ! ノンナ!!』

ノンナ(侮っていたわけではありませんが、相手の装填速度を考えれば……ここで仕留めないと……!)

桃『会長!!!』ガコンッ

柚子『この一撃で!!』

杏『――奇跡を起こす!』カチッ

カチューシャ『Огонь!!』

ノンナ『Уразуметно』カチッ

ドォォォン!!!

カチューシャ『はぁ……。全く、疲れちゃったわ』

杏『……どうやら、ここまでみたいだな』

Ⅳ号戦車内

亜美『大洗チーム、ヘッツァー、走行不能!!』

みほ「……!」

優花里「カメさんチームまで……」

華「わたくしたちだけになったのですね」

みほ「会長! 怪我はありませんか!?」

杏『うん。最後までごめんね、西住ちゃん』

桃『またお前たちに全てを預けてしまうんだな。情けない……本当に……』

柚子『役に立てたかな』

みほ「十分です。あとは私たちがなんとかします」

桃『我々では奇跡は起こせなかった……だが、西住……お前なら……!!』

みほ「戦車道に奇跡や偶然はありません」

杏『あはは。ってことは、練習不足だったわけだ。いやぁ、反省しないとな』

亜美『オールスターチーム、IS‐2、走行不能!!』

みほ「努力は必ず実を結びます」

チャーチル 車内

カチューシャ『やられちゃったわ』

ダージリン「そう。信じていたのに。がっかりね」ズズッ

カチューシャ『今度は油断なんてしてなかった。最初から全力でやったのよ』

オレンジペコ「カチューシャさん……」

アッサム「大洗のみなさんへ謝罪の意味も込めて、参戦したのでしたね」

ダージリン「納得はできて?」

カチューシャ『ええ。負けたわ。完敗よ。大完敗!! あー!! もー!! くやしい!! くやしい!! くやしい!!』

ノンナ『暴れないでください』

ダージリン「わたくしたちはどんな相手にも全力を尽くす。それは戦車道においての礼儀であるから。そう教えましたわね、カチューシャ」

カチューシャ『わかってるわよ』

ダージリン「その悔しさ、いずれは大きな力となる。大切にとっておきなさい」

カチューシャ『エラソーに言わないで。負けたら、しょくせいしてやるんだから』

ノンナ『Пожалуйста』

ダージリン「任されましたわ」ズズッ

観客席

恭子「あー、一緒にやられちゃったんだぁ」

ホシノ「ヘッツァーで2輌も撃破できたのは大きいけど、西住さんはあの2輌を相手にしなきゃいけないのか」

ボン太くん「ふもも……ふもー……」

かなめ「うん。そうね」

桂利奈「にゃん太くんはなんていっているんですか!?」

あや「にゃん太くんの通訳してください!!」

みどり子「にゃんたってなに?」

希美「猫田さんが中にいるからにゃん太なんじゃない?」

かなめ「ボン太くんは、なんとかこっちの声をみほに送れないかって言ってる」

カエサル「一度落とされ、退場してしまうと通信できないからな」

ナカジマ「無線もありませんからね。一瞬だけでも声援を送れたら、西住さんたちの励みになるんだろうけど」

かなめ「うーん……」

ボン太くん「ふももぉ」

かなめ「あ。いいのがあるじゃない」

Ⅳ号戦車内

桃『相打ち……だったのか……』

柚子『最低限のことはできたんだね、私たち』

杏『やればできるってね』

みほ「見ていてください、会長」

沙織「会長の3年間、絶対に無駄になんてさせないから!」

麻子「負けなければいいんだろ。楽勝だ」

華「観客席で和菓子とお茶を召し上がりながら、観戦していてください」

優花里「我々、あんこうチームが会長の意志を引き継ぎます!!」

杏『ホントに?』

みほ「はいっ」

杏『言ったよぉ。んじゃ、たのむよぉ』

桃『西住!! ファイトー!!!』

柚子『おー!!!』

杏『西住ちゃーん!! ガンバー!!』

HS地点

オレンジペコ『Ⅳ号、更に右折しますわ』

ダージリン『決勝戦でウサギさんチームが見せた戦略大作戦とやらを実行するのね』

アッサム『では、後ろに回りこんでくる……』

ダージリン『後退し、正面に出てあげましょうか』

オレンジペコ『いいのですか』

ダージリン『背後を取られるよりは良いでしょう。逸見さん』

エリカ『はい』

ダージリン『ポイント26へ移動。後、25へ』

エリカ『了解』

ダージリン『砲撃、用意』

オレンジペコ『はい』ガコンッ

ダージリン『路地を抜けたと同時に撃ちなさい』

アッサム『はい』

ダージリン「一度見せた戦術は通用しませんことよ」ズズッ

ドォォォォン!!!!

ダージリン『なぁ……!?』ガシャーン!!!

オレンジペコ『この衝撃……!』


Ⅳ号戦車『……』ゴゴゴゴッ


アッサム『Ⅳ号が後ろに……!!』

オレンジペコ『後ろに回り込んだのでは……!?』

みほ『ダージリンさんも決勝戦を見ていたんだから、同じ戦術は通用しない』

優花里『回り込んだと見せかけて、後退。練習試合でも似たようなことしましたね』

ダージリン『裏をかかれるとは……。砲塔を――』

アッサム『電柱が邪魔で回りません』

ダージリン『ふっ……』

オレンジペコ『ダージリン様、あの……』

ダージリン『新しい紅茶を淹れてくれるかし――』

ドォォォォォン!!!!

チャーチル 車内

オレンジペコ「どうぞ」

ダージリン「ありがとう」ズズッ

アッサム「あっさりとやられてしまいましたね」

ダージリン「そうね。みほさんは勿論、あんこうチームのみなさんは目に見えて成長している。わたくしたち以上にね。相手を称えましょう」

オレンジペコ「ですね」

ダージリン「さて……」ガチャ

みほ「あ……」

ダージリン「とても清々しい気分ですわ。もう一度、貴方と戦えたことを誇りに思います」

みほ「私のほうこそ」

ダージリン「けれど、もう一人、厄介な方が控えていますわよ。気をつけなさい」

みほ「逸見さん……」

ダージリン「黒森峰新旧副隊長同士の戦い。観客席でゆっくりと見せていただきます」

みほ「ありがとうございました」

ダージリン「礼をするのはまだ早いですわよ。みほさん、健闘を祈りますわ」

VI号戦車ティーガーⅡ 車内

亜美『オールスターチーム、チャーチル歩兵戦車 走行不能!!』

エリカ「なんですって!?」

ダージリン『こんな格言を知っているかしら。失敗に対する理由は400万もあるが、わびの言葉は一つたりともない』

オレンジペコ『いえ、まずは謝りましょう。すみません、逸見さん』

エリカ「もしかして……」

ダージリン『変に勘繰らないように。貴方のために落ちるなんて、屈辱でしかありませんわ』

エリカ「わかりました」

ダージリン『そこにいれば相手のほうから姿を見せてくれるはずですわ』

エリカ「了解」

ダージリン『全日本高校戦車道の全ては逸見さんの双肩にかかりました。そのことをお忘れなきよう』

エリカ「……」

ダージリン『けれど、構いませんことよ』

エリカ「え?」

ダージリン『貴方とみほさんを邪魔する輩はこの演習場にはいないのですから。お好きなようにやっても』

観客席

一成「これは大洗が勝てるんじゃないか!」

信二「勝てる! 絶対に勝てるよ!!」

エルヴィン「最後の相手はかつての盟友か」

おりょう「隊長もやりにくいかもしれないぜよ」

左衛門佐「ある意味、姉君よりもライバルでござるな」

孝太郎「なんかよくわかんねえけど、とりあえず燃える一戦なんだよな」

恭子「もう最初から激燃えだよ! がんばれー!! って、おぉぉ!」

信二「あ!? あれは……!!」

まほ「申し訳ありません。お母様。一度ならず二度までも……」

しほ「貴方が負けても、チームが勝てば全て良し。応援なさい」

まほ「え……」

しほ「自分の副隊長でしょう。それとも、諦観してしまうほど逸見エリカは無能なのかしら?」

まほ「いえ。最高の副隊長です」

しほ「なら、勝つのは貴方達、オールスターチームよ」

信二「入っていけそうにないなぁ……」

恭子「あとで写真、とらせてもらおっと」

かなめ「うん。そう、それで合わせてみて」

ボン太くん「ふも、ふももふも?」

かなめ「あー、うーん、そうよね、難しいわよね。こうなったらあたしが中に入って……」

梓「あの、千鳥さんはさっきから何を……」

かなめ「みんなの声をみほに届けるのよ。このボン太くんでね」

優希「そんなことできるんですかぁ」

桂利奈「おー!! すごーい!!」

アリサ「それってルール違反なんじゃないの」

かなめ「え? そうなの?」

アリサ「観客席側から情報を送るようなものじゃない」

ケイ「まぁまぁ、アリサ。いいじゃない。声援だけなら。無線を傍受するなら問題だけど」

アリサ「う……」

かなめ「やっぱり、ダメ?」

ケイ「いいんじゃない。私は許す」

かなめ「ケイさんから許しをもらっても……」

ケイ「んー。そうね。確かに大洗側だけが声援を送れるってのはフェアじゃないわよね」

かなめ「お。そういうことですか」

ケイ「ザッツラーイ。何事も公平にやりましょ。それなら文句はでないわ」

かなめ「そうよね。応援したいのはあたしたちだけじゃないんだよね」

ケイ「そりゃそうでしょ。ヘイ、まほー!!!」

まほ「なに?」

ケイ「エリカのこと、応援するでしょ」

まほ「ああ」

ケイ「大洗が声を届けてくれるってさ」

まほ「できるの?」

かなめ「まぁ、なんとか」

まほ「是非、お願いしたい」

かなめ「分かりました。少し待っていてください」

アーバレスト内

アル『目標まで距離、800』

宗介「そろそろだな」

かなめ『ソースケ、聞こえる?』

宗介「千鳥。何かあったのか」

かなめ『えっと、こっちの声をみほに送りたいんだけど、できる?』

宗介「なんだと」

アル『可能です。既に西住殿とは試合中に通信を行っています』

宗介「おい、アル」

カエサル『アルバートも一緒なのか』

アル『肯定』

おりょう『一緒に応援するぜよ!!』

アル『ラジャ』

宗介「勝手に話を進めるな」

かなめ『忙しい? 無理にとは言わないけど……』

宗介「いや。問題ない。やろう」

かなめ『ホント!? ありがと、ソースケ! でさ、オールスターチームのほうにも声援を送りたいんだけど……』

宗介「敵のことまで応援するのか」

かなめ『それはあたしたちじゃなくて……』

ケイ『ハロー!! ソースケ!!』

宗介「誰だ」

ケイ『サンダースの隊長、ケイ。よろしく!』

宗介「逸見エリカへ声援を送りたいというのは、君のことか」

ケイ『私だけじゃないわ。まほもトゥギャザーするって』

まほ『お願いします。伝えられるのなら、どうしてもエリカに言いたいことがあります』

宗介「……了解した。だが、すぐにはできない。こちらにも準備がある」

まほ『貴方の都合が良いときで構いません』

かなめ『よろしくね、ソースケ』

宗介「ああ」

アル『距離、700。どうしますか、軍曹殿』

HS地点

ゴゴゴゴッ

エリカ「……」

みほ「あ……」

麻子『待ち伏せか』

沙織『う、撃たれなくてよかったぁ』

優花里『撃てばこちらの意表をつけていたのに……。いえ、被弾して試合が終了していた可能性も……』

華『ダージリンさんがここで待機を命じていたのでしょうね』

エリカ「待っていたわ」

みほ「……」

エリカ「不意打ちで砲撃してもよかった。いえ、本来ならするべきだった」

みほ「どうして撃たなかったんですか」

エリカ「私が、勝つためよ」

みほ「逸見さん……」

エリカ「西住みほ。貴方に勝つためよ。誰の力も借りずに、私だけの力で」

エリカ「貴方が黒森峰を去って、私は副隊長の座に就いた。それが、どれだけ辛かったか、貴方にはわからないでしょうね」

みほ「……」

エリカ「隊長に匹敵するほどの能力を持っていた貴方の後釜の背中には耐えがたい重圧があった」

エリカ「何かと比べられもした。隊長も私なんかより貴方のほうが良かったと考えているに違いない」

みほ「それは違います! 逸見さんが優秀だから副隊長に……!!」

エリカ「うるさい!! そんな安っぽい言葉なんていらないのよ!!」

みほ「……!」

エリカ「私は憧れていた……尊敬していた……。二人を超えることはできないって、思っていた。だから、二人の傍で戦車道ができれば、それだけでよかったのに……」

みほ「……」

エリカ「貴女が去ってしまった!! 私が副隊長になった!! 隊長に認められるには西住みほを超えるしかないのよ!!」

エリカ「私が副隊長になるには、貴女を倒すしかないんです!!」

みほ「……」

エリカ「ここで貴女を倒して、私は黒森峰の副隊長になります」

みほ「逸見さん……いえ、エリカさん……」

エリカ「なんですか……」

みほ「エリカさんは本当に優秀だと思います。お姉ちゃんはよくエリカさんと私を比べていました」

エリカ「……」

みほ「私が油断していればすぐにでもエリカさんと立場を入れ替えると、お姉ちゃんはいつも言っていました」

エリカ「それが、なんですか」

みほ「逃げ出してしまった私よりも、きっとお姉ちゃんはエリカさんのほうが優秀だと思っているはずです」

エリカ「ふんっ。そんなの貴女に力があるから言えるんじゃない……」

エリカ「私は!! 納得できません!! だって、貴女が遠すぎるから!!」

みほ「……」

エリカ「ここで証明する……私は……私は……!!」

みほ「ごめんなさい」

エリカ「は……?」

みほ「私を越えようとしてくれるのは、とても嬉しいことです。エリカさんみたいに私を目指してくれるのは、一選手として幸せなことだと思います。でも……」

みほ「今日だけは越えないでください」

エリカ「な……!?」

みほ「私は貴方に勝ちます」

エリカ「越えるな……?」

みほ「はい」

エリカ「今日、何のためにここへ来たと……思っているのですか……」

みほ「……」

エリカ「勝つためなんです!!」

みほ「それはエリカさん個人が私に、ですか」

エリカ「そうですよ。それの何が悪いの。チームのため、日本代表のプライドを守るため。そんなもの、私にはありません」

エリカ「ただ、貴女と戦える場所が都合よく現れた。だから、ここにいるんです」

みほ「私はみんなの想いを背負っています。私だけの試合ではないんです」

みほ「学園のみんな。学園艦の皆さん。そして……」

みほ(ミスリルのみなさん……)

エリカ「貴方がどれだけの期待を背負っていても私には関係ありません。ダージリンさんもカチューシャさんも、それぞれに戦う理由と負けられない理由がありました」

エリカ「勝ちたい気持ちはみんなにあります!! 貴方だけじゃない!!」

みほ「知っています。だからこそ、もう一度言います。私は貴方に勝ちます」

エリカ「砲撃、用意!!」

アーバレスト内

アル『距離算出、照準補正開始』

宗介「アル」

アル『なんでしょうか、軍曹』

宗介「戦況はどうなっている」

アル『西住殿は逸見エリカと戦闘を開始しています』

宗介「そうか」

アル『どちらが勝つと思いますか』

宗介「ガッツがあるほうに決まっている」

アル『補正終了。有効射程距離内です』

宗介「やるぞ、アル」

アル『了解。邪魔はさせません』

クルツ『ウルズ6、攻撃開始だ、くらぁ』

マオ『しっかりやりな、クルツ』

宗介「――行くぞ!!」

HS地点

ティーガーⅡ『撃てー!!!』ドォォォン!!!

みほ「後退!」

エリカ『逃がすな!!』

みほ「このまま建物に沿って移動してください。あの場所まで行きます」

麻子『わかった』

エリカ『副隊長……!!』

優花里『逸見殿、気合が違いますね』

沙織『みぽりんのことあまりよく思ってなかったのかな……』

華『いいえ。そうではないとわたくしは思います』

麻子『複雑なんだろう。名門の現副隊長として』

みほ「逸見さんが私に拘るのは、私の所為。だから、ここで決着をつけなきゃ……」

エリカ『装填したら即時発射よ!! 何してるの!!』

みほ「私は自分の戦車道を見つけられた。逸見さんもきっと見つけられるはず」

エリカ『撃て!! 負けてられないのよ!! 元副隊長に!!!』

広場

みほ「止まってください」

エリカ「ここは……。決勝戦の……」

みほ「私が黒森峰の隊長に勝利した場所です」

エリカ「あんなものはただの偶然よ」

みほ「戦車道に偶然はありません」

エリカ「……!」

みほ「あの時は、ほんの少しだけ、私の想いが強かったから黒森峰に勝てた」

エリカ「想い……。そんなもので勝てるなら……!! 私はとっくに貴方を越えているわよ!!」

みほ「エリカさん……」

エリカ「だって、私は――」

ヴェノム『……』ゴゴゴッ

みほ「あれは……!」

エリカ「AS!? どうしてこんな場所に……!!」

ヴェノム『……』ジャキン

優花里『どうして何度もASが出てくるのですか!?』

沙織『なんかヤバくない!? にげよー!?』

みほ「ううん。大丈夫」

優花里『え? どうしてですか? 明らかに銃口がこちらへと向けられていますが!?』

みほ「邪魔はしないって、言ってくれたから」

麻子『相良さん、か』

華『なにか光って――』

ドォォォン!!!

エリカ「狙撃!? どこから!?」

『聞こえるか、西住』

みほ「また助けてくれたんですね」

『気にするな。これが俺の仕事だ。次は君が学園艦を守る番だ』

みほ「はい」

『できるな』

みほ「問題ありません」

アーバレスト内

アル『高脅威目標、全機撃破を確認』

テッサ『他に反応は』

クルーゾー『今のところ見受けられません』

クルツ『これだけヴェノムを投入したんだ。そろそろ打ち止めだろ』

宗介「西住、それから逸見エリカ」

みほ『は、はい?』

エリカ『誰よ、アンタ』

宗介「これから君たちに声を送る」

エリカ『声……?』

宗介「どうしても君たちに声援を送りたいと言っている。武部、上手く声を拾ってくれ」

沙織『えぇぇ。それっていいんですか』

宗介「問題ない。どうせ、双方に味方車輌はいない。武部の仕事も半減しているだろう」

沙織『そうだけどぉ』

宗介「それでは開始する。頼むぞ、アル』

Ⅳ号戦車内

沙織「ええと……」

梓『先輩!! みんなで一緒に大洗に帰りましょう!!』

桂利奈『また操縦の仕方とか教えてください!!』

典子『まだまだ学ぶことが多いんです!!』

麻子「……」

華「みなさんの声が……」

ねこにゃー『西住さん……』

みほ「猫田さん……!」

優花里「まだ動けないはずでは……」

ねこにゃー『ボク、あのときに体を張って西住さんを助けられて、本当に良かったって思ってる。ちょっとだけ鼻が高い、気分だったり……』

みほ(一番、辛い目に遭ってるのは猫田さんなのに……)

ねこにゃー『取り戻してほしい。ボクたちの学園艦……。みんなで笑いあいながら、戦車に乗りたい。もうみんなで明日の心配なんてしたくない』

杏『干し芋用意して待ってるよ、西住ちゃん。みんなで祝賀会しよう』

みほ「砲撃、用意」

VI号戦車ティーガーⅡ 車内

ケイ『ゴー!! エリカー!! ファイ!!』

ダージリン『逸見さん。やはり選びましたのね。自分に勝つことを』

エリカ「隊長もそこにいるのですか」

まほ『ああ』

エリカ「すみません。勝てる勝負をふいにしてしまいました……」

まほ『一言だけ言っておく』

エリカ「……」

まほ『勝て』

エリカ「た、いちょう……」

まほ『私たちのためでも、日本代表としてでもなく、みほに』

まほ『逃げ出した者よりエリカが劣っているわけはない』

エリカ「は、はい!!」

まほ『頑張って』

エリカ「砲撃、用意!!」

観客席

かなめ「ソースケ、ありがと」

宗介『気にするな。無線ジャックなど造作もない』

かなめ「そっちじゃなくて。みほたちを守ってくれたこと」

宗介『気が付いていたか』

かなめ「そりゃ気づくわよ。あれって香港にいた悪いASじゃない」

宗介『だが、もう全て排除した。ゆっくりと観戦していてくれ』

かなめ「うん、そうさせてもらうわ」

宗介『千鳥』

かなめ「ん?」

宗介『猫田のこと、感謝する』

かなめ「猫田さんとは友達であり戦友なんだから、助けるのはトーゼンなのよ。おわかり、軍曹殿?」

宗介『戦友か』

かなめ「結局、一度も試合はできなかったけどね」

宗介『関係ない。同じ戦車に乗り、技術を磨いた。戦友と呼ぶには十分条件を満たしている』

広場

エリカ「西住みほ!! 想いが強ければ勝てると言ったわね!!」

みほ「……」

エリカ「私がどれだけ貴方を想っていたのか、ここで見せてあげるわ!!!」

みほ(一人ぼっちだった私に手を差し伸べてくれた人がいる)

沙織『みんなー、もっと応援して! 応援!!』

華『クルツさんに教えて頂いたことを守れば、必ず当たるはず』

みほ(何も言わずに信じてついてきてくれた人がいる)

優花里『装填速度、まだまだ速められます!!』

麻子『履帯が切れても、もういいか。最後だし』

みほ(私たちのために命をかけてくれた人がいる)

かなめ『みほー!! やっちゃえー!! ドカーンと撃っちゃえー!!』

ねこにゃー『負けないで西住さん……!』

宗介『お前の気迫を見せてみろ!! 西住!!』

みほ「支えてくれたみんなのために、私は勝ちます!!」

エリカ『副隊長……副隊長……!! そう呼ばれることが嫌だった……!!』

みほ『全てをエリカさんに任せて黒森峰を去ったことは謝って済む問題じゃない』

エリカ『副隊長と呼ばれる度に私は貴方の影に怯えていた!!』

みほ『弱かった。ううん。私は今でも弱い。誰かが傍にいてくれなきゃ、前に進むことはできない』

エリカ『目指さなきゃいけなかった!! 努力しなければいけなかった!! 誰よりも強くなければいけなかった!!』

みほ『あのときは誰も助けてくれないと思い込んで、私は逃げ出してしまった。戦車から、お姉ちゃんから、エリカさんから』

エリカ『いつまで、私は貴方を追えばいいのですか!! もう嫌なんです!! 貴方を追いかけるのは!!』

みほ『強い私を演じなければいけない。前を走り続けることをやめてしまった。でも、全部間違いだった』

エリカ『決別する!! ここで!! 西住みほという影に!! 貴方が私の後ろを走ればいいのよ!!』

みほ『今度は、絶対に逃げません。追いかけてください。けれど、私の前だけは走らせません』

みほ「――麻子さん!! 回り込んで!!」

麻子『分かった』

エリカ『隊長を倒したときと同じ手で……!? 甘いわよ!!! 撃てー!!!』

みほ「撃て!!!」


ドォォォォォン!!!!

デ・ダナン 艦内

テッサ「……」

マオ『こっちもあっちも試合終了ね』

テッサ「そうですか。では、我々も速やかに撤収しましょう」

クルーゾー『了解』

クルツ『残党はいないのか』

テッサ「あれだけ派手に戦闘をすれば、どんなに間抜けな人でも逃げ出すはずです」

宗介『これで奴らに戦車を狙うことが如何に痛手か思い知らせることができた』

クルツ『ま、あんだけのヴェノムが一機にやられたんじゃなぁ』

テッサ「本時刻をもって全作戦を終了します。サガラ軍曹」

宗介『はっ』

テッサ「貴方はもうしばらく会場に残っていてください」

宗介『了解です』

テッサ「マデューカスさん、準備はできましたか?」

マデューカス『アイ、マム。今から出立いたします』

HS地点

みほ「うぅ……」

エリカ「怪我はない?」

みほ「あ、はい。大丈夫です」

エリカ「そう」

みほ「エリカさんの想いが伝わる、一撃でした」

エリカ「よく言うわ。貴女のだって、相当だったわよ」

みほ「まだ私を追いかけますか」

エリカ「当然でしょ」

みほ「けど、エリカさんにはエリカさんの戦車道を見つけてほしいんです」

エリカ「……いえ、私の戦車道は今までも、これからも変わりません」

みほ「え……」

エリカ「尊敬する貴方と隊長を越えることですから」

みほ「そうですか。ありがとう、エリカさん。戦えて良かった」

亜美『オールスターチーム、VI号戦車Ⅱ型、走行不能!! よって大洗女子学園の勝利!!!』

観客席

みどり子「やった……!! やったわ!! 西住さんたちが勝ったー!!」

ナカジマ「流石、西住さん!! ナイスドライブ!!」

ツチヤ「操縦してたのは冷泉さんだけどね」

ホシノ「そういうツッコミは野暮だって」

桃「……」

柚子「桃ちゃん!! やったよ!! 私たち、勝ったよ!!」

桃「これで……今度こそ学園艦は……無くならずに……済むのか……」

柚子「済むよ!! やったね!! 桃ちゃん!!」

桃「ふぇ……ふぇぇぇぇぇん……!!」

杏「……」

敦信「懸念は残る、か。確かにこれで当局が廃校の一件を撤回するかは分からない」

杏「林水。大洗に来るって言っておいて、全然こなかったな」

敦信「これから立ち寄るつもりだ。この資料と共にね」

杏「資料って?」

典子「やったぞー!! 西住隊長が守ってくれたんだ―!!!」

妙子「すごいです!! 凄すぎます!! 先輩たち!!」

恭子「おぉぉ!! ちょー感動したぁ!!」

信二「あの劣勢から本当に勝っちゃうなんて……」

孝太郎「すげーな! 戦車道なんて古いスポーツだと思ってたけど、こんなに面白いのかよ!」

一成「あれが西住流ってことか」

しほ「……」

まほ「お母様……」

しほ「帰ります」

まほ「待ってください。せめて、一言、なにか……」

しほ「みほは西住の者ではないのよ」

まほ「それでも……!」

しほ「私がみほと顔を合わせる理由はどこにもないわ」

まほ「お母様!」

かなめ(あれがみほのお母さん……? なんだか、冷たい人ね……)

しほ「……」ピッ

しほ「聞こえる?」

レナード『どうも、マダム。答えはでたかな』

しほ「どこの馬の骨とも分からない男に大事な娘は渡しません」

レナード『それは、特殊コーティング技術について教えてくれるということかい』

しほ「あの技術は10年前、みほと一緒に遊んでいた少女が作り上げたもの」

レナード『ミホは貴方よりも技術に深く携わっているということか』

しほ「ノートに記された無数の数式や化学式。初めて見たときは、ただの落書きとも思えたけれど、私はみほの一言でそのノートが本物であると確信した」

レナード『なんて言ったんだい。貴方が見捨てた娘は』

しほ「――これでお母さんが危ない戦車に乗らなくて済む、と」

レナード『……』

しほ「私はまほとみほを愛しています。突き放すことはあっても、見捨てることはしない」

レナード『つまり、技術のことも、娘も譲ることはできないということか』

しほ「特殊コーティングは娘の私への想いが込められている。簡単に、いえ、たとえこの身が引き裂かれようとも、渡すことはできない」

レナード『欲張りだね。でも、そんなに守れるかな』

宗介「――できる」

しほ「貴方は……」

レナード『ナイトの登場か。君はチドリカナメのことで手が塞がっていると思うけど』

宗介「これだけは言っておくぞ」

宗介「お前たちのような糞野郎どもに千鳥も西住も学園艦も戦車も、絶対に渡さん!!!」

宗介「次、猫田のような犠牲者が出れば貴様たちを地の果てまで追いかけ必ず生け捕りにしてやる!!」

宗介「そして魚雷発射管に詰めて300キロの爆薬と共に射出する!!!」

宗介「俺が八つ裂きにしてやる!! いいか、必ずだ!!!」

しほ「……」

宗介「以上だ」

レナード『なるほど。よくわかった。今回はこれで終わるとしよう。ASを一度に多く消費してしまったからね』

宗介「何機で来ようと無駄だ」

レナード『そうだね。今は見送るとしよう。大事な大仕事も控えているからね。やっと決定した、大規模な仕事がね』

宗介「大規模な仕事だと」

レナード『しっかりと、彼女を守ってあげないと、ね。では、また』

宗介「この通信機はどこで手に入れたものでしょうか?」

しほ「銀髪の男に渡されたものよ」

宗介「そうか」

宗介(この通信機から足跡を追えるほど、甘い連中ではないだろうな)

しほ「貴方があの白いASに乗っていた人なの」

宗介「それにはお答えできません」

しほ「……娘をよろしくお願いします」

宗介「はっ」

かなめ「ソースケ!」

宗介「どうした、千鳥」

かなめ「今のがみほのお母さんでしょ。なんか、あったの?」

宗介「いや、大したことはない。西住のことを頼まれただけだ」

かなめ「ふぅん。アンタが普通じゃないって感づいてるのかな」

宗介「どうだろうな。だが、西住の母親だけあってやはり只者ではなさそうだ」

しほ(あの男とみほの関係、一度調べてみるべきね……)

会場

優花里「やりましたー!!!」テテテッ

エルヴィン「グデーリアン!! 私は信じていたぞ!!」

カエサル「あの装填術、見事だったな!!」

優花里「いやぁ、あれは丸太を担いでランニングしていた成果でありますから」

おりょう「謙遜ぜよ」

左衛門佐「グデーリアンの努力の賜物でござる」

あや「かっこよかったです!! 先輩!!」

あゆみ「どーやったらあんなに動きながらでも的確に当てられるんですかぁ!?」

華「花を生けるときのように、静かで清らかな心をもつことですわ」

優希「えぇー? 全然、わかりませぇん」

紗希「わかりました」

梓「わかっちゃったの!?」

沙織「絶対、華の言いたいことはわかんないと思うけど」

紗希「分かりました」

麻子「新たに追加された欠席日数と遅刻を消してくれ、そど子ぉ」

みどり子「わ、わかったから!! くっつかないで!!」

ケイ「ナイス、ファイトだったわ」

ナカジマ「ケイさん、どうも」

カチューシャ「カチューシャたちが束になっても勝てないなんてね。ホント、貴方達は強いわ」

沙織「ありがとうございます。カチューシャさん」

ノンナ「先ほどまでずっと悔しいと叫んでいましたけど」

カチューシャ「そういうことは言わないでっていつも言ってるでしょ!!」

ノンナ「申し訳ありません」

沙織「あはは。また、機会があればお願いします」

ノンナ「喜んで」

アリサ「そんなことより、この戦車、ここで受け取る? それとも修理してから渡しましょうか」

優花里「あぁ!! そういえば!! 追加ルールのことすっかりわすれてました!!」

亜美「鹵獲ルールにより、これより大洗女子学園にはオールスターチームが使用した車輌を譲渡するわよ」

みほ「……」

エリカ「どうしたのよ」

みほ「受け取れません」

ダージリン「あら。わたくしたちの戦車ではご不満かしら。では、黒森峰からはマウスを譲渡するということで」

エリカ「どうしてそうなるんですか!!」

みほ「いえ。大事な仲間をこういうことで渡すのは、よくないと思うので……」

ダージリン「仲間、ですか」

みほ「それにこのルールは大洗が廃校になったあと、戦車がどこかへ流出しないための措置ではないんですか」

オレンジペコ「そこまで気づいていらっしゃったんですね」

みほ「私たちは故郷を守ることができました。それ以上、何も望んではいません」

カチューシャ「ふーん。後悔しないのね」

みほ「欲しくないと言えばウソになりますけど。でも、私たちは、私たちの戦車で、戦車道を続けたいんです」

ダージリン「そう。では、鹵獲ルールはなかったことにいたしましょう」

みほ「すみません」

ケイ「謝ることはないわ。私たちもみほならそういうんじゃないかって思ってたしね」

みほ「ケイさん……」

まほ「みほ。今日は楽しかった」

みほ「私もだよ」

まほ「あと、試合中に現れたASのことだけど」

みほ「あ、え、な、なに?」

まほ「あれに乗っていたのはみほの友人か?」

みほ「え、あー、えーと……」

沙織「はい!」

みほ「え?」

華「とても素晴らしい殿方ですわ」

みほ「え? え?」

優花里「あの人の考え方にはすべて共感できます!!」

麻子「教官だけに」

まほ「男の友達……。一度、詳しい話を……」

みほ「そ、そういう人じゃなくて!! 教官!! 特別教官だっただけだから!!」

宗介「西住の言っていることは本当だ。俺はこの試合のために呼ばれた戦術アドバイザー、相良宗介だ」

ケイ「お、ソースケってあなたのことなのね。ふーん、へー、結構ワイルドっぽくていいじゃない」

ダージリン「AS乗りのかたですの」

宗介「詳しくは話せないが、一応な」

カチューシャ「ASか。頭に乗ったら、眺めがいいでしょうね」

ノンナ「危ないですよ」

まほ「千鳥さんが言っていた相良宗介とは、貴方だったのか」

宗介「肯定だ。西住みほには世話になった」

かなめ「迷惑しかかけてないけどね」

みほ「そ、そんなことは……!!」

まほ「貴方が何者なのか問うつもりはない。ただ一言、礼を述べたい」

まほ「みほを守ってくれてありがとう」

みほ「お姉ちゃん……!」

かなめ(まほさんも感づいてるんだ……)

宗介「姉妹揃って、侮れんな」

恭子「わぁ、隊長さんがそろい踏みだぁ。あのー、一枚いいですかー?」

ダージリン「どうぞ」

ケイ「ビューティフルにとってね」

カチューシャ「ちょっと!! カチューシャが入ってないんじゃないの!?」

ノンナ「私が肩車をします」

恭子「逸見さんと西住さんも入って、入って」

まほ「私は……」

エリカ「隊長、ほら」

まほ「仕方ない」

恭子「はぁい、ポーズ」

ボン太くん「ふも、ふもも」

みほ「わっ、ボン太くん?」

ボン太くん「ふもも、ふも」

かなめ「とてもすごかったって猫田さんは言ってる」

みほ「猫田さん!? この中にいるの猫田さんなんですか!?」

ボン太くん「ふもっふ」

ボン太くん「ふも、ふもも、ふもるる、ふも」

かなめ「ちょっと、そういうことは直接いいなさいよ。ほら」ガバッ

ねこにゃー「あぁ……」

みほ「猫田さん、怪我は……」

ねこにゃー「ボン太くんね、すごくの。アシスト機能があって、骨折しててもなんとか動かせて……」

みほ「それで怪我が悪化したら……」

ねこにゃー「ごめん。けど、どうしてもここに来たかったんだ。ボクも大洗の一員だから」

みほ「来年もよろしくお願いします」

ねこにゃー「うんっ。こちらこそ」

かなめ「さっき言ってたことは言わなくていいの?」

ねこにゃー「それは、別に……」

かなめ「そう? いいこと言ってたじゃない」

みほ「何か言ったんですか?」

ねこにゃー「あ、こうして面と向かっては……」

かなめ「大好きな西住さんにずっとついていきたいって」

ねこにゃー「あー!?」

みほ「あ、ありがとう。嬉しいな」

ねこにゃー「千鳥さん、言わないでー!!」

かなめ「いいじゃない。気持ちを伝えるのは大事なことよ」

ねこにゃー「はずかしい……」

ぴよたん「私たちも一生ついていく!!」

ももがー「たいちょー、最高なりー!!」

みほ「あははは……」

クルーゾー「ふむ」

マオ「ベン、早くダナンに戻るよ」

クルーゾー「やはり……ユ……素晴らしい……」

クルツ「なんか言ってるなぁ」

マオ「ま、あの子たちの笑顔を見ているのは飽きないけどね」

クルツ「それもそうか。先、行ってるぜ、中尉」

クルーゾー「素晴らしい……実に……」

華「そろそろ食事の時間でしょうか」

沙織「あー、うん。お腹すいたよね」

優花里「どこかに食べにいきましょう!!」

麻子「祝賀会だな」

かなめ「いいわねー。どこいこっか」

ダージリン「あら。そういえばアンツィオ高校のみなさんが見当たりませんわね」

エリカ「食事の準備をしているはずなのですが」

恭子「向こうで屋台を出してるのはみたけど」

カチューシャ「行ってみましょ。カチューシャも何か食べたいわ」

ノンナ「そうですね」

典子「アンツィオ高校といえば、二回戦でもご馳走になったわ」

梓「あれは美味しかったですよね」

あけび「また食べれるなんて……!」

カリーニン「――戦車道選手の諸君、疲れただろう」

宗介「カ、カカカ、カリーニン少佐……!! な、なな、なにを……しているのでしょうか……!!」

カリーニン「気持ちばかりの品を用意した」

カチューシャ「ボルシチじゃないの!」キャッキャッ

ノンナ「そうですね」

カチューシュ「ふふん。カチューシャにボルシチを用意するなんて、いい度胸ね」

カリーニン「どういうことだろうか」

カチューシャ「ボルシチの味にはとってもうるさいの。あんまりな味ならひっくり返しちゃうんだから」

カリーニン「そうならないために、時間をかけ、各種具材、調味料の分量も調整した。完璧に仕上がっている」

カチューシャ「面白いじゃない。持ってきて」

カリーニン「了解した」

華「相良さんのお知り合いの方ですか」

宗介「こ、肯定だ」

優花里「では、大丈夫ですね」

沙織「私たちもご馳走になっていいんですか」

カリーニン「問題ない。50人前は用意している」

かなめ「ソースケの上官さんね。良い人そう。あたしも食べよっと」

>>807
かなめ「ソースケの上官さんね。良い人そう。あたしも食べよっと」

かなめ「ソースケの上官さんね。あたしも食べよっと」

宗介「い、いや、まて、千鳥」

かなめ「なによ」

宗介「あ、あのだな……少佐のボルシチは……その……」

かなめ「どうしたの? すごい汗よ?」

みほ「……」

まほ「みほ、気づいている?」

みほ「うん。アンチョビさんたちがいない……」

ダージリン「屋台だけはしっかりとありますわね」

ケイ「どういうこと?」

カチューシャ「ボルシチっ、ボルシチっ」

桃「うぐっ……えぐっ……」

柚子「もー、桃ちゃん。いつまでも泣いてないで、ごはん食べよ」

桃「うん……うん……」

カリーニン「――これが特製のボルシチだ。堪能してほしい」

カチューシャ「いいじゃない。見た目は合格ね」

エリカ「隊長!! あそこにアンツィオの生徒が倒れています!!」

まほ「なに……!?」

みほ「アンチョビさん!!」