宗介「超高校級の……軍事マニアだ……」苗木「え?」 (261)

---希望ヶ峰学園・体育館---


苗木「ま、まにあ……?」


宗介「そうだ……俺は……ただの、マニアだ」プルプル

宗介「各国の使用しているAS<アームスレイブ>や銃器などの……ぐっ……知識では負けない」ギギギ


不二咲「AS……の、マニア?」


宗介「マニア。そう、ただのマニアだ……」ブツブツ


苗木「あ、ああっ……AS、ASね。そういう才能があるんだ……」

苗木(相良クン、なんで悔しそうに震えているんだろう……?)
苗木(ひたすら「しろうと、しろうと」って呟いてる……)

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ダンロンとフルメタです
フルメタ原作準拠で

ここでのフルメタの時期はだいたい踊るVMXが終わった辺りだと思います
双方の時系列とか色々細かい時期考えるとややこしくなるので適当な感じで

妄想です

苗木「……っていうか」

苗木「えっと、確か……あれ、なんだっけ?ASって」


桑田「知るかよ。ミリオタがハマってる事なんてよ」

大和田「テメー、マジに言ってんのか?このご時世ASを知らねーなんてよ」

桑田「は……?え?なんだよ、そんなに有名なのか?」


江ノ島「あー……うん、ASね」


苗木「江ノ島さん、知ってるの?」


江ノ島「確かアレじゃね?アームスレイブっつったらさあ」

江ノ島「戦争で使われてる人型の強襲兵器じゃん?最強の陸戦兵器とかなんとか」

江ノ島「地形対応がヤバいらしいね。時速100kmとか怖すぎっつーかなんつーか」

江ノ島「アタシが知ってるのはせいぜいそこらの軍で実戦配備されてるサベージとかそういう主力機くらいだけどさ」

江ノ島「最近テレビとかでやってんじゃん?」


苗木「サベージ……ね。たしかに、なんとなく聞いた事はあるかも」

宗介「Rk-91,92"サベージ"……ソ連の開発したASだな」

宗介「立ち位置こそ旧式の機体だが、持ち前のとにかく壊れずとことん無理がきく強みが気に入られているのだろう」

宗介「初投入からかなり時間が経っているというのに、未だに世界の戦場で主力機として普及している」


十神「アームスレイブ……すなわち"armored mobile master-slave system"」

十神「局地戦争の主力として用いられている人型強襲機兵だ」

十神「俺の財閥でも一部の開発に携わっているが……相良とやらが、あんな殺人兵器のどこに魅力を感じるのか理解できんな」


宗介「……」


十神「フン……もっとも、一番理解できないのは」

十神「頭の悪そうなそこの女がASについてそこまで知っている事だが」


江ノ島「はっ?……あぁ、まあ」

江ノ島「えーと、TVで見た話だから偶然覚えてたんじゃね?知らねーけど」


宗介「……」

((この江ノ島とかいう奴の目……))
((超高校級の【ギャル】と言ったか……読者モデル……?))

苗木「えっと、じゃあ次はそこの……えっと、名前は……」


???「えっ!?わた、私ですか!?」

宗介「……」


苗木「そうそう、そこの君……ごめんね。僕、事前にある程度入学者の事は調べてたんだけど君は」

苗木「自己紹介、してもらえるかな」


???「え、ええ……そうですよね」

???「調べられるはず、ありませんし……」


宗介「……」

((調べてもHITしない?当然だ))
((なぜなら、彼女は……))


苗木「?」


???「あ、そうですね、では……」






???「私は、【超高校級の化学者】テレサ・マンティッサといいます」

テッサ「そうね、私のことは『テッサ』と呼んでください!」


((【ミスリル】の大佐なのだからな))

・・・


苗木「化学者テッサさん……か。うん、分かった」

テッサ「『さん』を付けると読みづらくなるから、ほんとにテッサでいいですよ!」


苗木「あはは、ごめん。じゃ、そうさせてもらおうかな」

苗木「テッサ……ね。珍しい名前だけど、日本の子じゃ……」


テッサ「?」


苗木「あはは、ないよね」

苗木(綺麗なアッシュブロンドの髪、染めてる感じでもないし、地毛なんだろうな)
苗木(それにしても、なんだろう、不思議な瞳だな。灰色なんて)
苗木(カラコン……ってわけでもなさそうだ。なんだか吸いこまれそうな……)


桑田「おい苗木、何固まってんだ?」


苗木「えっ!」

苗木「あ、いや、ごめん、なんだか不思議な雰囲気だったからつい」


舞園「ふ~~ん?」ズイッ

舞園「……見とれてたわけですか」


苗木「うわっ!ま、舞園さん……!」

苗木「ち、違うよ……いや、違わないけど、別に、そんな変な意味じゃ」


舞園「ふーん、そうか、そうなんですねぇ」

舞園「よーく分かりました」


苗木「舞園さん、ちょっとほんt―――」



霧切「そこまでよ」

霧切「自己紹介がすんだのなら、本題へ入りましょう」


宗介「本題……その通りだ」

テッサ「なぜ、【こんな事】になっているのか」


苗木「こんな事……」


十神「玄関ホールには厳重な扉。そこかしこの監視カメラ」

十神「お前たちも見ただろう。各教室の窓に打ちつけてあった鉄板」

十神「誰が……なんのために、こんな事を」

十神「明らかに異常な事態だ」

宗介「その通りだ。打ちつけられた鉄板を取り外そうと試みたが、人力では不可能だ」

宗介「ネジで完璧に固定されている。ASなどの高馬力な手段を用いなければ剥がれないだろう」


桑田「本当かよ?単にお前が非力だったんじゃねーのか?」

桑田「見た感じ、まあ、そこのブーデーよかはマシそうだけどさ」

山田「……ぁぃゃ、お恥ずかしい。照れますな」


桑田「一体何に照れてんだよ……。まいいや。とにかく、筋肉なんて俺とか石丸とそう変わらないように見えるぜ」


宗介「……そう思うなら仕方ないが、確かに俺は試行できる全ての手を尽くした」


桑田「いや、ネジ相手に『全ての手』ってなんだよ……」


大神「相良の言う通りだ」

大神「我は先程教室で目覚めた時、相良が鉄板を外そうとしているところを見たからな」

大神「共にネジを回そうとしたが、まるで動かん。奴の言う通り、なにか道具が必要だ」


桑田「げっ、お前が出張っても無理なのか……」

テッサ「無理ですね。少なくとも正攻法……解錠用の【キー】以外では開きません」

テッサ「鉄扉周囲にいくつかのアクセス用端末と思しき機器があったので少し覗いてみましたが……ダメでした」

テッサ「私はシステムを理解できるだけで、ハッキングの実行となると残念ながら専門外なので詳しくは分かりませんが……」

テッサ「現状、正面から脱出というのは不可能です。それだけは分かりました」


不二咲「そこまで……」

苗木「そうなんだ……」


大和田「おい、テッサ。おめー化学者って言ってたのに、随分機械に詳しそうじゃねえかよ?」

大和田「化学者なんて目立ちそうな才能なのに、苗木が言うには、検索してもHITしないときたもんだ」

大和田「まさか、嘘ついてるんじゃねーよな?」


宗介「……」チラ

江ノ島「!」


テッサ「え?あはは、いや、まさかそんな!」

テッサ「趣味ですよ。趣味。ちょっとパソコン関係に興味があって、一時期ハマってたんです」


不二咲「そ、そんなことないよテッサ……ちゃん。
    私も少しだけアクセスしてみたけど、……趣味でそこまで理解できるなんて」


テッサ「ありがとう。でも不二咲さんには及びそうにないわ」

テッサ「分からない事があれば訊くかも」


不二咲「!」

不二咲「うん、なんでも聞いてよ!ちゃんと学べばかなり高いレベルまで理解できるはず!」

テッサ「ふふ、心強い友達ができたわ」





葉隠「ていうか!」


テッサ「?」


葉隠「みんな脱出の事ばっかり考えてるけどよ、そんなしけた顔するなよ」

葉隠「これはきっと、学校側のオリエンテーションの一環かなにかだべ!」


桑田「おいおい、いくら変わった学校だからってこんな事するかよ?普通よー」

大和田「全くだ。何を根拠に言っていやがる?」


葉隠「俺の占いがそう言ってるべ!」

葉隠「俺の占いは三割当たる!」


「ふざけんな!」
「こんな状況であり得るかよ」ワイワイ
「しかも三割って」
「冗談にもなりませんわ」ガヤガヤ

宗介「……大佐殿」ヒソヒソ


テッサ「サガラさん……。彼はああ言っていますが」

宗介「はい。何かがあったと考えるのが妥当でしょう」

テッサ「皆が一様に、校門をくぐった瞬間に気を失ったと言っています」

宗介「隙など無かったはずです。しかし、事実昏倒してしまった」

宗介「問題は、気を失った前後の記憶が曖昧であることです」


テッサ「なにか……手を加えられたかしら」


宗介「制服の内側に隠しておいたグロック19……拳銃が奪われたようです。ホルスターごと消えている」

宗介「そして、通信用の小型無線も……大佐殿の無線はどうですか」


テッサ(【大佐殿】……か)

テッサ「無線はなくなっています。……その他にも、作戦に用いる物のほとんどが」

テッサ「基地どころか、母艦のTDD<トゥアハー・デ・ダナン>にも連絡が取れませんね」


宗介「……状況を把握する必要があります」

宗介「何が起こるか分りません。これは勘ですが―――」


宗介「殺意……少し違うかもしれませんが、それに似た雰囲気を感じます」


テッサ「……」

テッサ「戦士の勘を信じます。護衛をお願いしますね」


宗介「ありがとうございます。自分のそばを、離れないでください」

宗介「……そして大佐殿」

宗介「しばらく様子をみますが……戦闘になるかもしれない」

((彼女を護衛しながら潜入する任務とだけ考えていたが……))
((それ以上の何かが、起こっているようだ))
((江ノ島とかいう女も何かおかしい))
((外からの介入ができるかどうか分からないが、とにかく現状把握を早い所済ませなくては))

宗介「大佐殿」


テッサ「サガラさん、任務中は……テッサと呼んでください。約束でしょ?」


宗介「……すみません」

宗介「それでは……テッサ」


テッサ「はい、なんでしょうかサガラさん」


宗介「気を失った前後の記憶が曖昧である事から、何らかの手で記憶を操作されている可能性がある」

宗介「今日までの経緯を整理したい」


テッサ「そうですね……」チラッ


「大神さん、校舎の中にプールがあるらしいんだけどどこかな?」ワイワイ
「さてな、我は知らぬが……この状況ではな」
「苗木くんの好みってテッサみたいな子なの?」ガヤガヤ
「えっ!?ちょ、ちょっと待ってよそんないきなり……」


テッサ「時間はまだありそうですね。実はわたしも同じく記憶が曖昧で不安だったの」

宗介「……やはり裏がありそうだ」

テッサ「ええ……とにかく、始めましょう」

・・・


テッサ「……」ヒソヒソ

宗介「……、……?」ヒソヒソ



霧切「……」
霧切(あの二人、何か様子が変ね……何が起こっているかは分からないけど、調べてみる必要がありそうだわ)


江ノ島「サガラ……ソウスケ……」ボソボソ


霧切「……?」


江ノ島「ソウスキー、セガール……」


霧切「……」

霧切(相良宗介……テレサ・マンティッサ……江ノ島盾子……)
霧切(何かが、ありそうね)


・・
・・・
・・・・
・・・・・



■宗介たちの感覚における1週間前■

---ミスリル・メリダ島基地---


宗介「護衛任務……。自分が、でありますか?」


テッサ「そうです。そして、サガラさんにしか遂行できない非常に重要なものです」


宗介「……自分にしか」

テッサ「ええ、詳しい理由はあとで話しますが、今は内容について」


宗介「はっ」

宗介「……その、護衛の対象は一体?」

テッサ「対象……それは」





テッサ「私、テレサ・テスタロッサです」


宗介「!」

宗介「大佐殿の護衛……!?」


テッサ「【希望ヶ峰学園】」

テッサ「その名を、どこかで聞いた事はありますか?」


宗介「申し訳ありません、大佐殿……希望ヶ峰学園、ですか」

宗介「それについては、自分は何も」


テッサ「いえ、いいんです。まだ東京で暮らし始めてそこまで経っていないですしね」

宗介「はっ、申し訳ありません」


テッサ「【スペシャリスト】……とでも言うのでしょうか」

宗介「?」


テッサ「全国から、何かしらの分野において突出した能力を持つ高校生」

テッサ「【希望】の象徴だと捉えているそうですが……ともかくその高校生たちを集め、養成する施設だそうです」

テッサ「超高校級の人材を育成し、未来を成功へと導く」

テッサ「そうですね。例を挙げてみましょうか」

テッサ「今期の入学生の中には、こんな人物がいるそうですよ」

テッサ「超高校級の【御曹司】」

テッサ「超高校級の【野球選手】」

テッサ「そして、超高校級の―――」


宗介「……」


テッサ「【軍人】」

宗介「!」


テッサ「超高校級の軍人に関しては情報掲示板では確認できず、
    ミスリル情報部でやっと手に入れた情報のひとひらしかありませんが―――」

テッサ「誰でも閲覧できる掲示板に載っているのはいわば表の顔……。
    裏では公表できないものもあると、そういうことですね」

テッサ「その【軍人】についても、存在だけしか把握ができませんでした。名前や生年月日、実績も不明です」

テッサ「他にも、突出した様々な天才たちを磨くため、圧倒的なスケールをもって日本のトップに君臨している」

テッサ「それが、希望ヶ峰学園。政府公認の、超特権的な存在です」


宗介「そのような施設が……」

テッサ「ええ、実在するんです」

宗介「しかし……」

テッサ「しかし?」


宗介「……」

((彼女自らが出向く理由は……))

宗介「いえ、任務内容を確認してからにしましょう」


テッサ「そうですか。では内容の説明をします」

テッサ「実行チームとして私とSRT相良軍曹を」

テッサ「外部からの介入はできないレベルですので、最低限の通信端末と武器のみを携帯して潜入します」


宗介「大佐殿と自分のみ、ですか……」

((なぜそこまで危険な試みを……?))


テッサ「考えている事は分かるわ。それも話します」

テッサ「希望ヶ峰学園はその名目こそ学校という事ですが、その実内部では非常に高度な技術を駆使して人材の育成をしています」

テッサ「その性質柄、情報取り扱いの緻密さでいえば国家機密に準じるレベルで統制されているわ」

宗介「国家機密……そこまでの規模で?」


テッサ「ええ、驚くのも無理はないわね。ただの人材育成施設がそこまでの扱いをされているのは世界的にも類を見ませんし」

テッサ「そのぶん、一般の常識はまるで通じない場所です」

テッサ「学園内でどのように教育が行われているかまるで分からない程なんです。
    大勢で急に押しかけようものなら一瞬ではじかれておしまいよ」

テッサ「ならばどうすればよいか」


宗介「学園に気付かれる事なく潜入する」


テッサ「その通りです。学園は高度な情報の取り扱いをしているものですから、情報部をもってしても私たち2名しか送りこめないようです」

テッサ「そのため、今回、ミスリルの作戦部・西太平洋戦隊から2名の実行支援班は選抜されました」

テッサ「作戦目的は【世界の軍事的発展阻止】」


宗介「!」


テッサ「……作戦の要を掴みましたか」


宗介「つまり……大佐殿、こうですか」

宗介「世界の軍事発展を阻止するため……いずれ芽を出すであろう【技術の種】が集まっている施設」

宗介「通常では堅牢な情報の壁により掴めない内部を自分と大佐殿で潜入することで視察し」

宗介「危険な【種】を発見し次第……【人道的保護】をする。と」


テッサ「その通りです。……即ち」

テッサ「サガラさんが東京都立陣代学園に裏口入学した時と同じように、希望ヶ峰学園に潜入します」

テッサ「但し、今回はカナメさんとは違う点がいくつかあります」


宗介「……?」


テッサ「ひとつ。保護対象はウィスパードではありません」

テッサ「現状確認されているウィスパードは、未覚醒の潜在的な者も含めて数十人程度」

テッサ「ミスリルで確認したウィスパードには全てなにかしらの形で監視がついていますし、
    今回の希望ヶ峰学園にウィスパードがいるとは考えられませんが……」

テッサ「もともとウィスパードにも得意な分野が一人一人にあります」

テッサ「今回の保護対象はそれよりも狭い分野ではありますが、長けた部分を見ればウィスパードにも劣らない存在ばかり」

テッサ「まだ入学者全員の内情を見ていないので断言はできません、しかし」

テッサ「サガラさんには、あるいはその全員を保護してもらうことになるかもしれません。これはふたつめですね」


宗介「全員を……!」

宗介「ミスリルは……そこまで危険を感じているのか」


テッサ「ええ、ごめんなさい……」

テッサ「みっつめ。……わたしの存在です」


テッサ「陣代高校ではカナメさんという作戦目的の保護だけで済みましたが、今回はそこに、私が加わります」


宗介「やはり」

宗介「やはり大佐殿が出動するのは危険です。簡単に侵入できない事は分かりましたが、この時期に大佐殿を外へ出すのは……」

宗介「アマルガムはあなたを渇望しています。嗅ぎつかれた場合、厳しい戦いになる」

テッサ「承知の上です。危険な種は私たちウィスパードにしか判断できない」

テッサ「私が出なければいけない理由はそれです」

テッサ(今回の任務にあたって、なんだか胸騒ぎがするというのも理由のひとつだけど……それは言えないわね)


テッサ「それに……サガラさんが、守ってくれるでしょう?」

宗介「……」

宗介「それは……そうですが」


テッサ「ごめんなさい。今のは意地悪ね」


・・・


テッサ「それと、作戦の性質上、任務期間が長くなる可能性があります」

テッサ「その間は、TDDの指揮をマデューカス中佐に任せる事になりますね」

テッサ「普段サガラさんが就いているカナメさん護衛の任務については、
    SRTのヤン伍長、そしてPRTのウー上等兵に後継してもらいます」

テッサ「通常のサガラさん不在時はPRTにやってもらう仕事なのですが、今回はケースがケースという事でSRTに出動してもらうことになりました」


宗介「そう……ですか」

((ヤンがいるなら問題はない、な))
((問題はないはずだ、なのに……))
((千鳥……))


テッサ「不安、ですか?」


宗介「!」

宗介「いえ、そんな事は」


テッサ「……いいんですよ、分かってますから」


テッサ「その、ごめんなさい。こんなタイミングで」

テッサ「この前も、あんな事があったばかりなのに」

テッサ「嫌な女って思われても仕方がないわ。……事実、私はこうやって任務を言い渡して―――」


宗介「大佐殿」


テッサ「……はい」


宗介「何も悪い事などありません。これは任務です」

宗介「あなたが心配されるような事は、決してない」

宗介「ミスリルのオンライン会議の時、アミット将軍の前ではああ言いましたが」

宗介「これまでと変わりません。必要ならなんだってやる。いずれ仲間に危険が及ぶ種です。命を賭ける」

宗介「高校への潜入です。自分にしかできないのでしょう」


テッサ「……ええ」

テッサ「サガラさん、ありがとう。……お願いします」


宗介「……イエス・マム」

・・・・・

---メリダ島基地・AS格納庫---

宗介「アル。任務が入った」

宗介「ASを用いない潜入任務だ。よってしばらくお前は待機となる」

宗介「緊急事態になればお前を使う事になるかもしれないが、その可能性は薄い」


アル≪軍曹殿≫

宗介「なんだ」


アル≪任務については了解しました。ですが……≫

アル≪私を、ここに置き去りにしないで下さい≫


宗介「……無理な相談だ。言っただろう、ASは今回使わない」

宗介「それに、任務が終われば戻って来るんだ」


アル≪……了解≫


宗介「なぜそんな事を言った?」


アル≪予感です≫

アル≪軍曹殿と、お別れしなければならないという予感です≫


宗介「AIのお前が予感などというものを感じるのか……」

宗介「まあいい、なら安心しろ。そんな事にはならない」

宗介「またすぐに、戻って来るさ」


アル≪了解≫


宗介「……」


・・・・・


・・・・・
・・・・
・・・
・・



---希望ヶ峰学園・体育館---



宗介「~~~、大体、こんなところでしょうか」

テッサ「そうですね、やっぱり気を失った以前の記憶ははっきりとしているわ」

宗介「やはり弄られているようだ。校舎の入り口にあれだけ大がかりな鉄扉があれば印象が残っているはず」

宗介「しかしまったく覚えていない」


((アルの奴……))

((アルが予感していた別れとはこの事なのか?))

テッサ「それに、あの扉を用意しようとするならかなりの時間を要するでしょう」

テッサ「人間が昏倒している僅かな時間にやってのける事など不可能と言いきれます」


宗介「……」


テッサ「この状態はよくない……私たちが思っている以上に時間が流れてしまっているようね」

テッサ「基地にはマデューカスさんとカリーニン少佐がいてくれるから大丈夫だとは思いますが……」

テッサ「それにしたって、至急戻らなければならない状況です、なんとか打破しましょう」


宗介「アイ・マム」

宗介「……今は他の者達も困惑しているようです。ここはまず一旦離れて施設の調査をした方が―――」




<<あー、あー、マイクテス、マイクテス>>

<<大丈夫?聞こえてるよね?それじゃ、ただいまより入学式を執り行います>>




苗木「!」

宗介「……?」

「ほら見ろ、やっぱり学園なりの歓迎だべ!」ザワザワ
「おい、マジにこれがオリエンテーションだってのか?」
「だとしたら笑えねーぜ」ガヤガヤ
「しっ!静かにしてよ聞こえない!」


テッサ「いえ……」

霧切「違うわ。舞台の方を見て」



「「「……!」」」


---体育館・舞台側---


・・・
・・



☆ピョーン☆


モノクマ「ハイどーも!希望ヶ峰学園の学園長モノクマです!よろしくね?」ピョーィ



「「……?」」


苗木「は?」

大和田「なんだあいつ」


・・・


モノクマ「あら?あらら?どうしたのオマエラ?あっけにとられちゃった?」ピョンコピョンコ


モノクマ「ま、いいや。時間も押してるし、式を始めちゃうね。起立!礼!」ピョ~ン


ピョンコピョンコ
苗木「クマのぬいぐるみ……?」

ピョーン
桑田「『ピョーィ』……じゃ、ねーよ!おいクマ!どっから現れやがった!」

ピョーイ
桑田「てか学園長って……一体どういう…………」

ピョン
桑田「……」


ピョロリン☆



桑田「やたら飛び跳ねてんじゃねーーーーっ!話聞けよあほーーっ!」

モノクマ「え?ボクの?これ?これが気になってるの?」ピョーィ

モノクマ「いやー、だってだって、仕方ないんだもん。女の子だもん!」



十神「……話にならん」

大和田「バカにしてんのか?」


宗介「……」


モノクマ「いや、だってさー」

モノクマ「……うぷぷ」

モノクマ「そこの彼が、ずーーっと、殺気をバンバン放ちながらこっち見てるんだもの」

モノクマ「これって、うぷぷ。仕方ないよね?動き回らないと、何されちゃうか、分からないんだから」


モノクマ「ねえ?軍事【マニア】の相良宗介クン?」



苗木「……え、相良、クン?」



宗介「……」



宗介「……くだらん」

宗介「……早く始めるんだな、その開会式とやらを」



モノクマ「いやはや、ジョークの通じないカタブツってのは本当につまらないものだねえ」

モノクマ「まいいや。マニアは本物の殺気の放ち方までもをマスターしてるって事で、相良クンのすごさが分かったね!」

モノクマ「こほん。さて、余興も終わったことですから、早速開会式をはじめまーす」


・・・


モノクマ「オマエラ一人一人にある特別な才能、それは世界の希望に他なりませんっ」

モノクマ「オマエラを外の世界で危険と隣り合わせの暮らしをさせていては、それは即ち希望の危機へと繋がるのです!」

モノクマ「そこで、オマエラ未来の希望を保護するため、オマエラにはこの学園内でず~~~っと共同生活を――――――」





・・・・・
・・・・
・・・
・・



モノクマ「―――というわけで、コロシアイ学園生活を楽しんでもらいます!」




宗介「……」

テッサ「……」

苗木「……あ……あ」


苗木「そんな、僕たちにコロシアイをさせて……?」

苗木「そんな、僕たちにコロシアイをさせて……?」

苗木「コロシアイをしなければ……このまま一生出られない……!?」

苗木「はぁっ……そんな、はぁっ……バカな……」


「「……」」ザワザワ


江ノ島「……」

江ノ島「な、苗木……く」

江ノ島「……」


苗木「え、江ノ島さん……?ごめん、ちょっと、びっくりして」

苗木「心配してくれてありがとう……大丈夫、大丈夫だから……」


江ノ島「……っは……?あ、アタシ別に」

江ノ島「……」


ピョーィ


モノクマ「んんん?どうしたの?江ノ島サン?」ズイッ

モノクマ「なになに?苗木クンが気になってるの??どうしたのかな??」


江ノ島「!……は、は?なに?なんでアタシに絡んでくるんだよ」

江ノ島「てか、マジで、その……どういう意味だよ、アンタ、学園長?だっけ、ふざけてんの……?」

葉隠「う、嘘だろ、オリエンテーションじゃ……?」

十神「フン……」


桑田「おい!『楽しんでもらいます!』じゃねーよ!」

石丸「学園長殿!レクリエーションにしては少々度が過ぎるのでは……!」




ダッ

大和田「おう、このヌイグルミ野郎、ふざけた事言ってたらマジでひねりつぶしてやるぞ!?」


モノクマ「ん?」


大和田「モノクマだかなんだか知らねーがよ!!」ガッ

大和田「寝言抜かしてんじゃぁねーぞっ!」


モノクマ「わわっ!掴まないで!」

大和田「うるせえ!そんなに寝言言いてえってんなら!」ギギギ…

大和田「寝かしつけてやるぜーーーっ!!」ギギギ…


モノクマ「うわーーっ!学園長への暴力行為は、校則違反だよーーーっ!!」


大和田「知るかよっ!」







モノクマ「……」

大和田「あん?いきなり黙りやがってなんだ?」

大和田「へっ。マジに寝ちまったのか?」


宗介「……」

宗介「……!」

霧切「!」


モノクマ「……」ピー……ピー……ピー

モノクマ「……」ピー…ピー…ピー

モノクマ「……」ピー ピー ピー


宗介「!」

((これはっ……!))


モノクマ「……」ピーーー



宗介「放せ!爆発物だ!」

霧切「あぶない!投げて!」

大和田「あん?」

モノクマ「……」ピーッピーッ

大和田「……?」


宗介「くっ!」ダッ


テッサ「サガラさん!?」


モノクマ「……」ピーッッ!


大和田「ッ!?――――」

大和田「なんだてめぇ相良ッ?」



宗介「っ!」


ガンッ

大和田「ッ!?」

モノクマ「……」ピーーーーーーーッ!!



苗木「蹴った!?」

朝日奈「相良なにしてんの!?」

葉隠「どうかしちまったのか!?」



宗介「全員伏せろ!頭を腕で守れ!」ダッ



朝日奈「え!?な、なにいってん―――」

桑田「……!!よく見ろおめーら!
   違う、相良が蹴ったのは大和田じゃねー!」

大神「迷いがなかった……モノクマの方を宙へ飛ばしたのか」



モノクマ「……」ピーーーーーーーー……

ピー…………………


「「「……ッ!!」」」」


           \KaBoooooooooom!!!/

           ;人;;从;;;;:人;;:.`)

         ;;:(´⌒;人;;从;;;;:人;;:.`)"
         (´⌒;:⌒`~;;从;;人;;;⌒`;
       ゙;`(´⌒;;:⌒∵⌒`);(´∴人;;ノ`/
     ' (´:(´;⌒;从;;人;;;⌒`)⌒;;从;;ノ;;

     ゙;"(´⌒;(´∴人;;ノ;⌒`)⌒;(´∴;ノ;
   ~ (´⌒;;:(´⌒;人;;从;;;;:人;;:.`)";:(´⌒`);
     ;: (´⌒;;:(´⌒;人;;从;;;;:人;;:.`)";:
       ;;⌒`);";⌒`)`)从;;ノ;;;;ノ;`)








腐川「ひええっ!」

霧切「……っ!」

山田「ぎょえええええっ!」

十神「くっ!」



宗介「テッサ!」ガバッ

テッサ「……っっ」



・・・

大和田「……ば、爆発……しただと……!?」

江ノ島「冗談でしょ」

苗木「なんだよ、これ……!」



プスプス……プス……


不二咲「うわ、真っ黒焦げだ……」

不二咲「ヌイグルミ、死んじゃったのかな」


宗介「硝煙がまだ消えていない、あまり近づくな」

宗介「その煙の粉塵が目に入ると悪くなるぞ……」


テッサ「サガラさん……あの、サガラさん」ヒソヒソ


宗介「はっ、大佐殿、お怪我はありませんか」ヒソヒソ


テッサ「あの、もういいので、えと、大丈夫ですので……」

テッサ「その、こう……抱きつかれてると動きづらいのですが」


宗介「……」

宗介「はっ」

宗介「……大佐殿、できるだけ目を開かないようにして安全な隅のほうまで移動ください」


テッサ「はい」
テッサ(……ずるいわ、急にあんなこと!)

セレス「まあ……ひどい煙ですこと、目に……なんだか染みますわ」

朝日奈「けほっ、けほっ、なんだか変なニオイ……いたた」


宗介「他の者もだ!落ちつくまで避難していろ!」


・・・・
・・・
・・



モノクマ「やあみんな!」ピョーィ


宗介「!……」


モノクマ「?」

モノクマ「あれ?あれれ?」

モノクマ「みんなどうしたのかな?そんな端っこに縮こまって」


「ひいい……また出てきた……ひいい……」
「クソッ!腐川離れろッ!!」ワイワイ
「ひぎいいい……いやあああ……」
「舞園さん大丈夫!?」ガヤガヤ
「うん……ちょっと挫いたみたい……」
「二次なら最高に興奮するシチュですな」ワイワイ
「テメーは黙ってろ!」


モノクマ「……楽しそうクマね」

テッサ「……」

テッサ「モノクマ……と、言っていたわね」

霧切「……」


モノクマ「やだ、そんなに見つめないでよ照れちゃうでしょ」

モノクマ「もう分かっただろうけど、これはジョークなんかじゃないし、
     オマエラを解放なんてしないよ!なんとかして帰らなきゃって思ってるだろうけど……」

モノクマ「うぷぷぷ……帰る必要なんてないよね?うぷぷぷぷ……」


テッサ「どういう、意味で言っているのかしらね?」

霧切「……」

霧切「テッサ 相良くんを見て 調査を終えたみたいよ」

テッサ「! サガラさん」






宗介「……なるほど」

宗介「爆弾を内蔵したヌイグルミにはストックがある訳か」

宗介「爆発してしまった先程のモノクマの内部を見た限り、特別な機材を使っている様子がなかった」

宗介「ほとんどが、爆風と熱で黒焦げになり床に貼りついたワタだけだった」

宗介「あるいは、その特別な機材には熱に弱い素材をつかって、爆発の熱で全て融けてしまうよう細工してあるのかもしれないが」


モノクマ「は?何一人で喋ってるの?」

宗介「……モノクマは、後何体用意してある?」


モノクマ「言うわけないだろー!それはもう大量に控えているなんて言うわけないだろー!」

モノクマ「……」

モノクマ「あっ///」


宗介「黙れ」

((全ての個体を破壊するのは難しそうだ))
((やはり遠隔で操作している者を探し出すしかないようだな))


モノクマ「とにかく~!」

モノクマ「今回は警告で済んだけど、次から校則違反をした者はこんなものじゃ済まないからね!ぷんぷん!」


宗介「待て。まだ帰るな。貴様はどこにいる」


モノクマ「は?何言ってるの?」


宗介「モノクマを遠隔で操作している人物がいるはずだ。どこにいる。どこから見ている。監視カメラもそいつが設置したものか」

宗介「さらにいえば、所属は何処だ。アマルガムである事は確かだろう?どういうつもりなんだ」

モノクマ「クマー。モノクマはモノクマクマよ?余るガム?なにそれ?余るほど不味いの?」


宗介「黙れ。おとなしく答えろ」

モノクマ「黙ればいいのか答えればいいのか分からないクマね」


宗介「答えろ」

モノクマ「だーかーらー!モノクマはモノクマなの!そんな人物いないっての!」


宗介「……ならば用は無い。帰れ」


モノクマ「学園長のこのぼくに酷い言い草だなあ」

モノクマ「まいいや。……そこで縮こまってるみんなもよく分かっただろうしね!」


「「「……」」」

宗介「!……」


モノクマ「軍事【マニア】の……うぷぷ。相良クンは、やっぱりマニアの鑑ですね!」

モノクマ「アラーム音だけで爆弾であることを察したり、即座に判断しぼくを蹴り飛ばせる肉体と反応の良さ!」

モノクマ「それに、火薬の発火による硝煙が人体に与える影響まで熟知しており完璧です!」

モノクマ「本当にただの軍事マニアなのか怪しいくらいですねえ。まあ、それだけですけど!」

モノクマ「それでは皆さん、よい絶望学園生活を!」ピョーイ


江ノ島「いった……の、かな」

朝日奈「みたいだね……」

大神「さて……これから我らはどうするべきか」

江ノ島「……」スタスタ

朝日奈「ええっ、ちょ、ちょっと待ってよ!一人でどっかに行くのは危なくない!?」


江ノ島「え……?」

江ノ島「あっ、……そ、そーだよね!や、やっぱ今はあぶねー感じだよな!」

宗介「……」


不二咲「江ノ島さん大丈夫?なんだか顔色が悪いけど」

江ノ島「大丈夫大丈夫!……マジ勘弁してよって感じだわーマジ
    てかケータイ無くなってんじゃんもーどうしようかなーヤバくない?」

不二咲「そ、そう」

セレス「あらあら。心配する必要などなかったみたいですわね」

・・・
・・

---体育館・舞台側---


苗木「よし、相良クン そっち側を持ってくれるかな。一緒に持ちあげて動かそう」

宗介「……いや、これくらいなら俺だけで十分だ
   苗木は体育館席を調べてくれ」

苗木「えっ、でもこの机重そうだけ―――」


宗介「……っ」




ドシン


宗介「ふむ、何もおかしな点は見受けられない……か」

苗木「すごい……軽々やっちゃうんだね」


桑田「ヒューッ! 割とやるもんだな」

桑田「さっきも言ったけど、やっぱ人並み以上の筋肉なんてないように見えるけどなー」

苗木「あ、桑田クン。と、それと大和田クンだね」

大和田「おう。体育館前部屋はざっと調べてきたぜ」

大和田「多少の飾りモンが並べられてただけで、特におかしいものはなかったな」

大和田「ま、てめーらが見た通り、凶器になりそうなモンはいくらでもあったがよ」

桑田「ああ……。ったくよー、それにしたってひどいもんだぜ」


苗木「?」

桑田「体育館周りは力仕事になりそうだから、男子メンバーが調査を引き受ける。って話になったはずだろ?」

苗木「うん、そうだね……それで?」

桑田「いや、『それで?』じゃねーよ! 十神だよトガミ!」

苗木「ああ、十神クンね……ひとりで出て行っちゃったよね」

大和田「チッ、見下したような言い方しやがってアイツ……」

大和田「なにが『一人でやらせてもらう。いつ襲われるか分らないからな』だ!」

苗木「まあまあ大和田クン、こんな状況だし、普通じゃいられないのも仕方ないよ……」

苗木「でも、ほら、こうやって、少なくとも僕たちは協力して調査してるわけだし―――」


宗介「話しているところすまないが、俺の気になる場所は全て調べた」

宗介「というわけで、俺は余所へ移らせてもらう」


苗木「……」

桑田「……」

大和田「……あん」


山田「どうやらその【僕たち】から、一人減ったようですなデュフ」

桑田「うっせえよブーデー」


苗木「……じゃあ、まあ、そのなんだ」

苗木「僕たちも校舎の調査にいこうか」




・・・
・・

数時間後


---希望ヶ峰学園 食堂---


石丸「それでは!只今より第一回定例報告会を開催するッ!起立 礼!」タッ

ビシッ

葉隠「やってんのお前だけだべ」

葉隠「……」

朝日奈「いや……」


宗介「」ビシッ


桑田「例外は一人いるみてーだけどな」

苗木「あはは」



・・・
・・




石丸「ふむ、これで全員が報告をしたな!?」

舞園「ええ、そうみたいですね……でも」

石丸「舞園くん!なにか気になる事があったら言いたまえ!」

舞園「ええっと」

舞園「その……みんなは報告したけど、彼は、まだ」


十神「……」

石丸「……ふう。十神くん、君は本当になにも報告はないのか?」


十神「フン 貴様らに話すような事はないな」

十神「第一、殺人を企んでいる奴がいるかもしれない中でよくペラペラと喋るものだ」

十神「バカを通り過ぎて……フフ、お笑いだな」

十神「今喋った情報を利用されて、いざ襲われるその時まで信頼だの協調性だのを謳うつもりか?」

十神「せいぜい仲良くやっているんだな。俺は部屋に戻らせてもらうぞ」


十神「結局……」

十神「俺の知らない情報は出てこなかったしな フン」


朝日奈「ひ、ひどい!利用するためだけに同席してたわけ!?」ガタッ

大神「まて朝日奈よ」

朝日奈「放して!こんなの許せないよ!!」


大神「落ちつけ。頭の切れる奴の事だ。我らを煽ってその様子を見ているのだ。
   我を失い怒っては、今日の報告会も意味が無くなる」

大神「我らは我らにできる事をするのみ」

朝日奈「さくらちゃん……」

朝日奈「……うん、そうだねさくらちゃ」



石丸「大神君っっっ!!!!」



葉隠「~~~~ッ!?」キーン

桑田「だーっ!うるせえ!突然叫ぶなよ!」

セレス「勘弁して欲しいですわね」



石丸「君は素晴らしい!感動した!!!」


大神「……当然の事を言ったまでだ」

石丸「当然の事を当然とばかりに発言できる者は当然素晴らしい!」

石丸「皆も彼女の言ったように、状況に振りまわされる事のないように日々を過ごそう!!」


不二咲「は、はあ……日々を?」

大和田「その日々とやらをどう暮らしていくのかを話してたんだろ……ったくよぉ」

大和田「……つーか、今日はこんな感じでいいんじゃねえのか 俺は部屋に帰るぜ」ガタッ

大和田「じゃあな」


苗木「えっ!ちょ、ちょっと待ってよ大和田クン!まだ明日何をするか決めてないよ!?」

大和田「分かんねえ奴だな苗木テメーもよお」

大和田「今日これ以上話したって何もきまんねーし何も分からねえよ」

大和田「それに、朝ここに集まるってのは分かってるしな」

大和田「もう時間も遅いしよ 今回はテキトーでいいだろ?」

大和田「俺は行くぜ」

セレス「わたくしも失礼しますわ。あんまり寝るのが遅くなると毒ですから」

山田「あ!」

山田「僕も新しい作品のプロットを考えなくてはなりませんのでな」

山田「失礼しますぞ」

・・・
・・


不二咲「行っちゃったね」

苗木「大和田クンたち……」

石丸「ううむ、困った者たちだ」


宗介「しかし」


苗木「?」


宗介「大和田の言っていたことは事実だ」

宗介「というより、もう十分なほど方針は定まっている」

宗介「毎日朝と晩に食堂に集まるという定例会 そして、その日何か気付いた事があればそこで報告するという二つだ」

宗介「これだけ決まっていれば問題ない」

宗介「それに、明日以降モノクマが何もしてこないとは限らない。
   下手に集団行動を強制すれば、奴が介入してきて何らかの軋轢を生む可能性もある」


石丸「……ぐ、ぐぐぐ……」

石丸「……くっ、確かに」

石丸「僕は依然……何か協力し合えるテーマを探るべきだとは思うが、相良君の意見にも一理ある」

石丸「……すまない 風紀委員としていささか性急だったかもしれない」

石丸「……」





テッサ「サガラさんの意見に付けくわえてもいいかしら」

苗木「テッサ?」


テッサ「今日は大変な事が次々に起こりました」

テッサ「コロシアイに、監禁」

テッサ「希望ヶ峰学園の入学式へ来たつもりなのに、こんな事になって……」

テッサ「取り乱して、自室に籠ってしまってもおかしくない状況だというのに、誰ひとりとしてそうはならなかったわ」

テッサ「本当に、みんな卓越した精神力を持っていると思います。これは、心の底から出た偽りない本音よ」


宗介「……テッサ」


テッサ「でも、だからこそ、みんなには一度落ちついて一人になれる空間が必要じゃないかしら」

テッサ「サガラさんが言っていたように、この状況で誰かといると些細な事でも大ごとに発展してしまうかもしれない」

テッサ「混乱している今の私たちじゃ、下手をすると勢いで間違いを犯してしまうかもしれないでしょう?」

テッサ「冷静になって、各々が現状を整理することが、今できる最善の手だと、私は思います」


「「「……」」」


テッサ「不安になってしまうのは仕方ありません」

テッサ「でも、ここまで強い皆さんが一堂に会しているんです」

テッサ「希望は、断たれてはいないわ」

テッサ「みんなはどうかしら?希望は、もうない?」


苗木「希望……か」

テッサ「ええ。あの……モノクマ?だったかしら、こう言っていましたよね」

テッサ「『うぷぷ~!絶望の学園生活を楽しんでね!うぷぷ~うぷぷのぷ~☆』みたいな事を」

テッサ「私からすれば、それこそ全くお笑いね」

テッサ「一人一人が未来を担う大きな希望なのよ?その希望が、今こうやって、現状打破の糸口を探ろうと同じ方向を向いている」

テッサ「焦る必要も、諦める必要もない。 私たちに出来るペースで出来ることをやればいいんです!」

テッサ「超高校級の天才でしょう?絶望が霞むほどの大きな可能性を、私たちは秘めているんですから!」

テッサ「コロシアイなんて、する必要はないわ。させるもんですか」

テッサ「私たちにまずできる対抗手段は、モノクマの思い通りにならない事です!」

テッサ「クマさん人形なんかに、踊らされてはダメよ?」


「「「……」」」


朝日奈「テッサ……」

朝日奈「なんだかわたし、焦ってたかも」

朝日奈「そうだよね……こんな事になっちゃって、皆混乱してるはずだし」

朝日奈「あ~~~~あ! そう思ったら急にうずうずしてきちゃった」

朝日奈「うん。いっつも私、難しい事考える時は体を動かして答えを出してきたんだよね」

朝日奈「明日は体育館で一日時間使っちゃおうかなー」


大神「フ……我も付き合おう これからの生活では体が鈍りそうなのでな」

大神「修行は我も続けたいと思う」


朝日奈「よしっ!じゃあ決まりね!」

朝日奈「……テッサ、本当にありがとう」

朝日奈「みんなも。また明日! 私たちもう部屋に戻るよ」




不二咲「テッサ ごめんね。私も……その、おかしかったのかも」

不二咲「時間に焦ってたから、正門ゲートの端末ぜんぶは見れてなかったし、何かヒントを見落としてるかもしれないよね」

不二咲「うん、……うん!まだ何も分かってないんだから、不安に、ならなくたって!」

不二咲「テッサっていう友達も……できたし」


テッサ「ええ。不二咲さんには、教えてもらわなきゃいけない事がたくさんあるもの。ね?」


不二咲「そうだね!……みんな、私も帰るね。おやすみ」




桑田「あー なんだ」

桑田「よく見てみるとテッサちゃんってかなりカワイイな」

桑田「……」

桑田「やっぱ なんでもね 寝るわ じゃあなおめーら おやすみ舞園ちゃん☆」



テッサ「……」

宗介「……」チラ

テッサ「……」

宗介「……」

テッサ「……なんですかその目は」

宗介「はっ!!なんでもありませんっ!」ビシィッ!

テッサ「こら!」

宗介「あ……」
((しまった。つい反射で背筋が伸びてしまった))



霧切「テッサ」

テッサ「なんでしょう?」

霧切「さっきの話。大したものね。みんな顔色が変わったわ」

霧切「ありがとう。と言っておくわね 混乱の内に誰かが変な気を起こさないか不安だったの」


テッサ「いえ、そんな大したことは」

テッサ「みんな大事なクラスメイトなんですから。誰にもコロシアイなんてさせませんよ」


霧切「……不思議ね」

霧切「さっきの話だって、希望がある根拠も糸口の可能性も、
   なにひとつ確証のある事なんて言い触れてないのに、みんなの気持ちを明らかに動かした」

霧切「言葉の外に含まれる説得力というのかしら?人をその気にさせる力……」

霧切「本当にただの化学者なの?なんだかそうは思えないわ」

テッサ「本当ですよ?化学者です。すごいんですから。ふふ♪」


霧切「……そう。まあいいわ」

霧切「私も戻る事にするわね」



葉隠「うーん テッサっちの話はよくわかったけどよ」

テッサ「はい、なんですか?」

葉隠「いや、なんつーかなー」

葉隠「俺の占いによるとやばい奴がいるんだよなあ……」


テッサ「はあ。そうですか。なら別に言わなくていいですから、そのまま胸にしまっておいてくだ」


葉隠「ズバリ!それは江ノ島っちだべ!!」

江ノ島「はっ!?アタシ!?」


テッサ「ああ……どうして、こう……こうなるのか」


舞園「江ノ島さん こんなこと信じる必要なんか無いですよ」

舞園「ふふ……私には分かっちゃうんですよ 江ノ島さん」

舞園「何がやばいとかじゃなくて、
   江ノ島さんは私たちに隠している事があるんですよ それできっと占いに出てしまったんです」


江ノ島「は?え?なにそれ いきなりどうしたん?」

江ノ島「マジ……ありえないんだけど」

江ノ島「や やめてよ。……テッサもさっき言ったじゃん。変な軋轢生むとかなんとかサ」


宗介「……」
((周りの人間も気付き始めたか……?))

舞園「ふふふ……それは」

舞園「言い当ててみせましょう……分かっちゃうんですよ 私には……ふふ」

舞園「私、エスパーですから」



宗介「」ゴクリ

苗木「」ゴクリ

江ノ島「」ゴクリ




舞園「……それはズバリ!恋煩いです!!」





宗介「……」

宗介「は?」

苗木「え?」

テッサ「恋、煩い?」


江ノ島「恋煩い……?」

江ノ島「やめてよ……そういう変なのは」

江ノ島「あー。今のでなんかどっと疲れたわ」

江ノ島「アタシもう帰るわ んじゃまた明日 あーマジ参るっての……」


舞園「逃がしませんよ江ノ島さん!
   私が相談に乗ります乗りますとも誰ですか誰に恋してるんですか分かるんですよ分かっちゃうんです!」


江ノ島「もー!ついてくんなよー!」ダッ


舞園「ふふ そうはいきませんて!女の絆はこうやって深まるものですよ!」

舞園「と、いうことで私も戻りますね。みなさんおやすみなさい」


舞園「待って下さーーー…ーーー……ー……い」

テッサ「嵐のように去って行きましたね」

苗木「舞園さん、あんな感じの人だったんだ……」

葉隠「女ってな怖いもんなんだな」

葉隠「占いには確かにそうでてるんだけどなー……」

葉隠「まいいや。あとは寝てから考えるべ」


宗介「恋煩いだと」
((いいや違う……))



腐川「わ、わたしは……動かされたりはしないわ……」

腐川「テッサ……あんたの言ってる事……まるで根拠もないし……!」

腐川「ひっ!……そんな目で見ないで……同調圧力なんてゴミよ……!」

腐川「ひぎいいいっ!……その汚物を見る目をやめろっていってんのよ……あんたのは詭弁だって……ひいっ!」


テッサ「腐川さん、わたし別にそんな見方なんて」


腐川「分かってるんだから……魂胆は。こういう空気にして、だんだん私たちを洗脳しようっていうんでしょ!?」

腐川「負けないわ……私は負けない。大体、どうして何も起こさずに解決できるなんて思えるのよ!?」

腐川「結局、モノクマに飼いならされてコロシアイをするか、あんたに脳を洗われるかなのね……もうどうしようもないわ」

苗木「腐川さん……」

苗木「たしかに明確なカギはないかもしれない、だけど、テッサの言っているのはそういうことじゃなくて……」

苗木「その……なんていうか、もっとオーガニック的な何かなんだよ こう、なんて言えばいいのか」


腐川「ほ、ほら……そうやって断言できないところが洗脳の証拠よ!」

腐川「ふ、ふふ……やっぱり十神君についていこう……ふふ」


テッサ「仕方ないでしょう。根拠を示さずに話しただけですし、誰かがこう言ってくる事はわかっていました」

テッサ「……この状況で信じてもらえるか分かりませんが、伝えることはしておきます」


テッサ「私たちには希望に足るほどの謎が残っているんですよ」


腐川「!?」

石丸「それは本当かねテッサくん!?」


テッサ「ええ。本当ですとも」

テッサ「……申し訳ありませんが、内容は言えません。ですが、みなさんにとって有利な事である事は確かです」


腐川「で、出た……!こういう状況だからってハッタリ……!」


テッサ「いえ、本当に本当なんですよ?」

テッサ「ただ……ほら、【あれ】がいるでしょう?」


宗介「……モノクマ、か」

腐川「……」

石丸「監視されているのだったな……」

苗木「重要を極める情報は、簡単には言えない、か……」

腐川「フン……まだ、あんたを信じたわけじゃないから……」

腐川「ただ、モノクマよりはマシってだけね……」

腐川「寝るわ……今日は何も考えたくない……」



石丸「僕も、今日はここで失礼する」


石丸「失礼する、が。その前に……」


石丸「テッサ君 僕は君の事を勘違いしていたようだ!」

石丸「君には化学者に留まらない大きな能力があるぞ!」


テッサ「?」


石丸「皆の混乱をものともせず、ハッキリと発言することのできる力!」

石丸「さらに、その発言で皆の心を動かし、団結へと導くカリスマ!!」

石丸「これはもはや疑いようがないッ!!」


石丸「まさに理想の風紀委員だ!」

石丸「どうか、この僕の右腕となり、希望ヶ峰学園の風紀改善に向けて尽力してくれまいか!?」


テッサ「え、ええ……?」

テッサ「副委員長ですか。お話は嬉しいですけど……」


石丸「君は、この腕章に恥じぬ諸々の力すべてを持っている!!」

石丸「どうかッ!!!頼むッ!」ビシィィッ!


テッサ「ええ~~~最敬礼……?」

宗介「残念だが 石丸」ズイッ

宗介「彼女は他の仕事で忙しい 副委員長には俺がなる 諦めろ」


石丸「……相良君が……?」

石丸「悪いが君では話にならない 彼女の意思が大事なのだどいてくれ」

石丸「テッサ君!どうだろうか!?」


テッサ「ええ……」

テッサ「えっと 私、風紀委員になったら髪を切らなくちゃいけないわ」

テッサ「それは嫌だから ごめんなさい」


石丸「……絶対、か?」


テッサ「申し訳ないけれど」


石丸「……」

石丸「そうか……仕方、あるまいな……」



石丸「……」

石丸「っく」ダッ

石丸「ぅぅぅっぉぉぉおおおおおおおおおおおそれではお休み諸君ん…んんん……んん……」


苗木「去っていったね」

テッサ「去って行きましたね。……彼には悪い事をしたかしら」



宗介「副委員長には俺がなろう……」

宗介「仕方ないからな……明日から忙しい日になりそうだ……」

苗木「ポスト狙ってたの!?」
苗木(ワクワクしてるよね、これ相良クン多分)



宗介「まずはあの腕章からだな……」

苗木(やっぱすごい乗り気!)


・・・
・・



テッサ「正直、他のみんなからも腐川さんのような反応がもっと来ると思ったんですけどね」


苗木「うん、……普通なら、そうなのかもしれないけど」

苗木「みんな、希望が欲しかったんじゃないかな」

苗木「僕だって、テッサが話してくれて胸がとても軽くなった気がするんだ」

苗木「もちろん、モノクマっていう存在が心に重くのしかかってきてはいるんだけど」

苗木「それでも、そんな中でも希望があるっていうだけで、本当に楽になったよ」

苗木「改めてテッサ。本当にありがとう」

苗木「僕、自分の長所っていったら他の人より少し前向きっていうのしかないから」

苗木「そんな僕が負けちゃだめだよね。ありがとう」


テッサ「いえいえ。本音しか言ってませんから」


宗介「……テッサ」

宗介「俺からも、言わせて欲しい」


テッサ「サガラさん?」


宗介「君は本当に強い」

宗介「やはり君には、大勢を纏める力があるんだ」

宗介「君と一緒にいれて 俺は幸運に思う」

宗介「改めて ありがとう」


テッサ「サガラさん……私も、そう思ってもらえてうれしいわ」

テッサ「……これからも、よろしくお願いしますね?」


苗木「そうだよ!これから、誰も欠けることなんてないんだ!」

苗木「こんな学園に囚われてるけど、やっぱりみんな超高校級の天才なんだよ」


・・・
・・



苗木「じゃ、僕はもう帰るね」

苗木「ええっと……」

苗木「二人は……」


宗介・テッサ「「……?」」


苗木「あ、いや、なんでもない」

苗木「じゃあ、失礼しまーす。おやすみ」



苗木「……ごゆっくりと」ボソッ


テッサ「!!」

宗介「?」





テッサ「もう!露骨もいいところだわ!」

宗介「しかし大佐殿、今は我々だけで話せる時間は貴重です」


テッサ「ええ、そうね……それは確かにそうなんですけど」

テッサ「……ああ、そうよその通りだわ。私いつまで違う事を考えているのかしら」

宗介「体育館の一件から、作戦についての話ができていません」


宗介「コロシアイ学園生活……ばかげているにも程がある発想だ」

テッサ「今回のこれに関してだけは、まるで分かりませんね」

テッサ「とりあえずのところは、生徒達を鼓舞させることはできたと思うけれど、いつまでも続くとも思えないし」

テッサ「いくらアマルガムが情報の操作を得意としているとはいえ、
    ここまでの規模で事を起こせば嫌でも目立つのは分かるはず」

テッサ「彼らがそうまでして欲しい何かがここにあるとは思えないんです」

テッサ「私が見たところ、生徒達の中に危険な【種】なんてありませんし」

テッサ「例外として不二咲さんは、少し……アマルガムにとって魅力的かもしれないけれど」

宗介「そこまでですか」

テッサ「ええ。正直驚いたわ。情報処理能力で言えばメリッサ顔負けね」

テッサ「新しく独自のシステムを構築するのにも長けている」

宗介「……」

テッサ「だとしても、本当にやり口が不可解でならないわ。技術が欲しいなら私と彼女を攫えばいいだけなのに」

テッサ「なぜ一度昏倒させたときそのまま持っていかなかったのか」

テッサ「私たちを庭に放し、様子を見て楽しんでいるようで不気味だわ」

宗介「我々だけでなく、他の生徒までを巻き込んで監禁するという行為……」

宗介「目的は、我々だけではないのでしょうか」


テッサ「そう考えてみたのだけど、考えにくいわ」

テッサ「アマルガムには十分な技術と力があるのだから、
    その天井を越えられるウィスパード以外に欲しいものなんてそれこそ資金くらいのはず」

テッサ「アマルガムの真なる目的……いずれ、話す時は来るでしょうが……とにかく」

テッサ「そういった観点から見て、せいぜい不二咲さんくらいしか有用な人材はいないと思うのですが」


宗介「……」

宗介「では、腐川たちに話した【希望に足る謎】とは?」


テッサ「ああ、それですね……それはそのまま、
    アマルガムがなぜこの手をとったのかという謎の事です。 もちろん皆には説明できるはずがありません」

テッサ「だから、希望の根拠について徹底的に問い詰められると厳しいものがあるんです」

テッサ「幸い、モノクマというパイプを通じて彼らとコンタクトをとれますから、
    生徒達から不満が出てくるまでに目的をはっきりとさせましょう」

テッサ「……当面の方針はそれで行くしかありませんね。ここで問題になってくるのが、【ルール】の性質でしょうか」


宗介「コロシアイですか」


テッサ「ええ。この状況ですし、いさかいが起きやすい事は想像に難くありません」

テッサ「混乱の中に誤りを犯してしまう者も現れないとはいいきれません」

テッサ「方針を基盤にして、作戦に付けくわえましょう。【誰一人として死者は出さないように】」

テッサ「不透明とはいえ、私たちが中心の事件には間違いないわ。こんな事で若者の命が奪われてはなりません」

テッサ「それも、極力私たちの正体を明かさないようにやるべきね」


宗介「……アイ・マム」

宗介「それで、大佐殿 ひとつ疑問があるのですが」

テッサ「あなたに答えられる範疇であれば」


宗介「……ありがとうございます」

((異常事態なだけに、俺に知る資格がないとは言われないだろうが))

宗介「学園内に囚われた、我々を含めて10数人の高校生は把握しました」

宗介「しかし、その中には、基地で説明を受けた時に出てきた【奴】がいません」


テッサ「ごめんなさい。私も、それについてはまだ謎のままなの」

テッサ「超高校級の【軍人】……」

テッサ「どこかで隠れているのでしょうか。それにしては、モノクマもそれについて触れようとしなかった」

テッサ「一般には出回っていない情報だから、私たちが知らないと思っているのかしら」

テッサ「そういえば、【軍人】用の個室も用意されていませんでしたね」


宗介「……それについても、これから探っていく必要があります」

宗介「肩書きを見るに……コロシアイに踏み切る可能性も捨てきれない」


テッサ「そうね……サガラさん」

テッサ「想像していた以上の状況になってしまいましたが、よろしくおねがいします」

テッサ「私も、できるだけ早い内に基地に戻れるよう調査を進めます」

テッサ「アマルガムの主力部隊が今何をしているかも把握できていませんから、世界の動向が気になります」


宗介「アイ・マム」

・・・
・・



テッサ「それじゃあ、もう夜時間も近いですし部屋に戻りましょうか」

テッサ「それではごきげんよう。また明日」


宗介「大佐殿 言い忘れていた事があります」


テッサ「?」


宗介「江ノ島盾子 超高校級の【ギャル】……」

宗介「奴の目を見ましたか」


テッサ「江ノ島さん? 彼女?」

テッサ「ええ……特に、おかしい所はないように感じられましたが」

テッサ「江ノ島さんがどうかしたのですか?」


宗介「……」

宗介「これは……自分の勘でしかありませんが」

宗介「奴は危険です」


テッサ「危険……?」

テッサ「サガラさん 詳しく話してくれますか」


宗介「はい」

宗介「今日、奴と会ってから、……何度か、感じたのですが」

宗介「【人の命に無関心】な……目を」


テッサ「……どうしました?」

宗介「苦しみのない、そう、人間の生命について否定も肯定もしない」

宗介「ちょうど……東京へ行く前の自分のような」

宗介「忌まわしい……。息をするように人を[ピーーー]……ある意味での一貫性……矛盾の無い……」

宗介「美しいだと……え?ばかげている」


テッサ「サガラさん……?」

テッサ「落ちついてサガラさん」


宗介「大丈夫です大佐殿 問題ありません」

宗介「ただ、江ノ島……奴が、その気になればなんでもする意思を持っている事は間違いない」

宗介「近づかない方が、良い」


テッサ「サガラさん……」

テッサ「その、でもサガラさん」

テッサ「モノクマがコロシアイの説明をしていた時や、さっきの恋煩い云々の時は、普通の女の子のようでしたけど」


宗介「その通りです。自分も、そこが不可解です」

宗介「何かと何かの間で揺れ動いているように……不安定なんです」

宗介「自分は、……千鳥に会うまでは、まさにそのような存在でした」

宗介「自分のあるべき姿……殺人聖者。
   それと、自分のありたい姿……それらに挟まれていたんです」

宗介「奴が、何と何に挟まれているかは奴自身にしか分かりませんが」

宗介「なんにしろ、些細な事で実行に踏み切りかねない……不安定即ち危険な状態です」


テッサ「……わかりました」

テッサ「できるだけ彼女には気を付けますが、サガラさんも」

テッサ「大丈夫、私がいますから、落ちつく時間も与えられていますから。どうか怖がらないで」


宗介「問題ありません」

((怖がっている……?それは違う))

((過去の自分などに、恐れはしない……))

((ガウルンの定義が何だと言うのだ。俺は怖くなんてない))

((なのに……なんだこのざわめきは))

((……俺は、何か大事な事を見落としているのか?))

宗介「問題ありません……自分は……」


テッサ「そんなことありません。今自分がどうなっているか分かりますか?」

テッサ「ひどい汗。一体何をそんなに恐れて」


宗介「!」

宗介「……」

宗介「いや、何も、問題は……ありません。少し暑いのかもしれない」

宗介「ご心配をおかけして、申し訳ありません」

宗介「自分が、必ず皆を守ります」

宗介「江ノ島が……!変な気を起こそうと……!」






宗介「……」

宗介「!」

宗介「っ!?」ガタッ

テッサ「?」

テッサ「どうかしましたか?」


宗介「誰だ……!」

宗介「出てこい」


・・・


テッサ「!」

宗介「お前は……!」



・・・
・・




苗木「ご、ごめん……部屋に一つミネラルウォーターを置いておきたくって」

苗木「それで、食堂に来ればあると思って来たんだけど……ごめん」

苗木「べ、べつに、変な話を聞いた訳じゃないし、僕、そんな……」



宗介「……」

((話を聞かれた?小声で話していたのだから大丈夫なはずだ))
((いや、最後の方は俺も興奮していた……声が大きくなっていたかも))
((モノクマには江ノ島の件、気付かれたか。それより苗木はどこまで知った?))
((俺達の立場は知られてしまったか?どうするべきだ))
((モノクマは俺とテッサの立場を知っているはずだが皆はどうだ?気付いたか?))
((苗木がもしこれで気付いたのなら、漏らされては計画が全て崩れてしまう どうすればいい))
((口止めをするか。だがこの状況でどうやって?逆に不信感を煽りまずい事になりかねない))
((最悪だ。SRTがやるようなミスじゃない。警戒を怠っていた。最悪だ。どうする))


テッサ「苗木さん!」


苗木「え……な、なに?」


テッサ「今話していた事を聞いたのですから、どうせです。あなたも彼女には気を付けてください」

テッサ「江ノ島さんはこの状況に陥ってひどく混乱している可能性があるわ」

テッサ「彼がさっき皆にそれを言わなかったのは、誤って内容を受け取り、いらぬ不安を抱く人がいるかもしれないからです」

テッサ「そして、その話を私にのみ打ち明けたのは、先程の私の話を聞いて、私を信頼に足る存在だと踏んだからだそうです」

テッサ「そうですよね?サガラさん?」


宗介「……」

宗介「その通りだ。警戒を促すつもりではあったが、大勢に言うのは危険だと感じた」

宗介「苗木、お前も気を付けろ。それだけだ」


苗木「……わかった」

苗木「じゃあ、ミネラルウォーターを取りに、調理室へ行ってくるよ?」


・・・
・・



苗木「それじゃ、水も手に入ったし帰るよ。おやすみ」


テッサ「おやすみなさい」


宗介「ああ」


・・・
・・



テッサ「行きましたね」

宗介「……」


テッサ「サガラさん?」

テッサ「大丈夫ですか?サガラさん」


宗介「大佐殿、本当に……申し訳ありませんでした……」

宗介「自分だけでなく作戦全体にまで危険が及びかねないミスを……」

宗介「SRTとして許されないミスでした……処分はいかなるものでも受け」


テッサ「処分は無事に帰ってからです」

テッサ「今は、これからやるべき事を考えなさい」

テッサ「明日以降、こうやって話せる時間が無くなるわけじゃないでしょう」

テッサ「それに、電子生徒手帳には≪学園についての調査は自由≫とあります」

テッサ「当然敵は私たちの身分を分かった上でやっているのでしょうし、分からない事があればいくらでも話し合えばいい」

テッサ「以上ですが、何か質問はありますか?」


宗介「……いえ」


テッサ「なら、今日はここまでです。部屋に戻りましょう?」

テッサ「おやすみなさいサガラさん」


宗介「……はい。失礼します」

テッサ「……」

テッサ(カナメさん……)

テッサ(あなたなら、今、彼にどうしたのかしら)

テッサ(私には、こうすることしかできない。こうすることしか許されていない)

テッサ(あなたが、時々どうしようもなく羨ましくなるわ)


・・・
・・



---希望ヶ峰学園・苗木の個室---

苗木「……っ……っ……ん」

苗木「っぷは」

苗木「……この水おいしいな」


ドサッ


苗木「……ベッドも、特におかしいところはない。至って普通だ」

苗木「このまま、寝よう……」


・・・
・・



苗木(江ノ島さんが……か)

苗木(危険だって?……殺人を犯しかねない?)

苗木(僕には、そうは思えないな)

苗木(みんなが自己紹介した時もフツウだったし)

苗木(そりゃあ、確かに【ギャル】だから、少し軽そうに見えてしまうかもしれないけど)

苗木(でも……あの時、僕は見たんだ 彼女の目を。モノクマが現れた入学式の時に)

苗木(……そう、怯えのような何かだった)

苗木(相良クンとテッサには悪いけど、僕は彼女を疑うなんてことはできない)

苗木(うん、だって、一度もちゃんと話し合った事もないのに決めつけるなんておかしいよ!)



苗木「明日、江ノ島さんと話し合ってみよう」

・・・・・
・・・・
・・・
・・


翌日

---食堂---

石丸「よしっ!時は来たッ!」

石丸「それでは諸君!朝食会を始めようではないかッ!!」

石丸「ここから始まる今日一日、全身全霊をかけ過ごそうッ!!!」

石丸「い た だ き ま す ッ!!!」


朝日奈「おー!」

桑田「あーうっさいうっさい。普通に始めてくれよ」

腐川「くっ……ね、寝起きにこんな響く声を聞かされるなんて」


宗介「私語は慎め」


苗木「……?」

苗木「あっ!?」

テッサ「まあ……!」


宗介「……」ビシィッ


苗木「風紀の腕章……相良クン、いつの間に」

テッサ「結局サガラさんが副委員長に?」


宗介「肯定だ。石丸委員長のスペアを使っている」


苗木(やっぱり乗り気じゃないか!)

苗木(すごい誇らしげ!)




葉隠「よっしゃ、朝飯も食ったし、購買部にでも行くべ!」

葉隠「じゃあな、みんなー」ガタ


朝日奈「さくらちゃん、私たちもいこ!」

大神「ウム。体育館であったな」

大神「皆の者 それではな」


石丸「みんな忘れないように!次の集合は夜7時だぞ!!」

宗介「次の集合は1900だ!!」


不二咲「次の集合は7時か……」

桑田「ったりーなあ」


宗介「返事!」


不二咲「!!」

不二咲「さ、Sir Yes Sir!!」

不二咲「……あれ、なんか言葉が口をついて」

不二咲「恐ろしいな……なんでだろ」


テッサ「サガラさん、すっかり副官のつもりなんですね……」

苗木「ほんとだね。でも、まあ割と合ってるかも?」

石丸「……相良君」

石丸「昨日の夜、僕は失礼な事言った。許してほしい」

石丸「相良君では話にならないとな……しかし、実際はそんなことはなかった」

石丸「君は風紀委員の鑑だった!!よし!風紀が乱れていないかパトロールへ行こうじゃないか相良君!!」


宗介「はっ!」



「しかし、具体的にはどのような事を?」
「まずは校舎内の各部屋を見回って学校生活に相応しくないものが無いか点検だ!」
「はっ!」ビシィッ
「そしてその次はみんなの生活を視察し、風紀が乱れている者には適切な指導をする!」
「はっ!」ビシィッ
「これからの集合に遅れる者が出ないよう、遅刻者チェックも行うぞ!」
「はっ!」ビシィッ
「よし行こう!出発だ!」
「はっ!」ビシィッ


テッサ「……」

テッサ(気のせいかしら……案外真剣にやってるの?)

江ノ島「……」スタスタ


苗木(江ノ島さんがひとりで出て行ったぞ)

苗木(よし、昨日の話をきくために付いて行こう)

苗木(相良クンたちには悪いけど……でも放っておけないから!)ダッ


・・・
・・


---江ノ島の個室前---

江ノ島「……」テクテク


苗木「江ノ島さん!」


江ノ島「……」

江ノ島「ふぅ……」

江ノ島「苗木くん、か……」ボソッ





江ノ島「んー?誰かアタシ呼んだ?」クルッ

江ノ島「ああ、苗木じゃん。どしたん?」


苗木「いや、ごめん。はぁ、呼びとめちゃって」

苗木「これから、はぁ、はぁ……、どこか行く予定とか、ある?」


江ノ島「いや、特にないけど……」

江ノ島「ていうか、苗木あんためっちゃ疲れてるじゃん。走ってたの?」

苗木「うん。ちょっと、ね。出てく江ノ島さんが見えたから、急いで追いかけてきたんだ」

苗木「それにしても、江ノ島さん歩くの早いね。すごい……ふう」


江ノ島「……アタシを、ね」

江ノ島「それで?何か用?」


苗木「いや、ちょっと話でも。って思ってさ」

苗木「どうかな?」


江ノ島「はぁ?話って……何を話す事があんのさ」

江ノ島「うーん、まあ暇は暇だしいいんだけどさ」


苗木「ありがとう!」

江ノ島「いいって別にそんな」





江ノ島「それで、何が聞きたいわけ?」

苗木「ああ、いや、ちょっと待って ここで立ち話ってのもあれだしさ」

苗木「どこか座って話せるところ……」

江ノ島「座って話せる所なら食堂とか?」


江ノ島「どうすんのよ、あそこに戻んの?」

苗木「あ~……」

苗木「食堂はまだ人がいるから……」

苗木(特にテッサがいるのはまずいな……どうしよう)


苗木「あ、そうだ」

苗木「僕の部屋っていうのはどうかな?」

江ノ島「え、苗木の?」

江ノ島「……アタシを?入れるの?」


苗木「え?……あっ!」

苗木「そっか、ごめん。まずいよね、こんな時に二人で個室に入るのは」

苗木「ごめん、僕別にそういう気はないんだけどやめておこ」


江ノ島「いいよ、苗木の部屋で」

苗木「えっ、ほんと!?」

江ノ島「なんでウソつくわけ」


苗木「あ、いやごめん。あはは。そっか、ありがとう」

苗木「……あー。じゃあ、行こうか」


---苗木の個室---


苗木「江ノ島さんはそこに座ってて。何か出せるものが無いか見てくるから」

江ノ島「いや、別に気にしなくていいって」

江ノ島「それより、いいのー苗木?アタシみたいのを部屋に入れちゃってさ」


苗木「?」

苗木「何かまずいかな?」

苗木「……っと。うわ、飲み物は水しかないや」

苗木「あとは、なんだかよく分らない缶詰……だけかあ」

苗木「うーん、何か分からないものを出すのもまずいよね?」


江ノ島「は?なにそれ、苗木それちょっと見せてみなよ」





江ノ島「うっわ。これってレーションじゃん……しかもアメリカの」

江ノ島「なに?こんなんどうやって手に入れたわけ?」


苗木「え、レーションだったんだ……それ」

苗木「購買部にあったモノモノマシーンで手に入れたんだ」

苗木「もう、モノクマのやつ。ガチャになんて物を入れてるんだよ」


江ノ島「ていうか、これCかよ……Dもあるし」

江ノ島「めっちゃレトロなもの詰め込んでんだね、あのガチャ?っていうの?」

江ノ島「アタシがもらうならDにしとこうかな……」

江ノ島「味が無いって言われてるけど、アタシから言わせればこれで十分だし」

江ノ島「なによりチョコレートっていうのが魅力だね。チョコってだけでヤバいっしょフツー」


苗木「あはは。食堂に他の食べ物がいくらでもあるのにレーションなんて冗談でしょ」

苗木「それにしても、えらくレーションに詳しそうだね。
   僕なんてレーションって単語を知ってるだけで、どんな種類があるかなんてまるで知らないもの。
   相良クンなら分かったかもしれないけどさ」

苗木「もしかして、今のギャル界ってそういうブームがきてるの?」


江ノ島「……あー」

江ノ島「……えっと」

江ノ島「……」




江ノ島「うん。そうだね。そんなカンジ」

苗木「そうなんだ!あはは、なんだかおかしいね」

苗木「モデルの世界を生き抜く戦士達。って感じかな!」


江ノ島「あはは……うん。そだね……」


苗木「でも、最先端を行く江ノ島さんにとったら仕方ない話だよね」

苗木「よし、僕も男だ。協力しよう」

苗木「このレーション、二つとも江ノ島さんにあげるよ!」


江ノ島「はい。うん……ありがとう」


苗木「これを食べて、無事にモデル戦争を生き抜いてね」

江ノ島「もう苗木、冗談きついってホント!」

苗木「ごめん、あんまり意外だったからつい」

苗木「……でも、本気でもあるよ。江ノ島さんは生き抜かなきゃならないんだ」


江ノ島「ん……」


苗木「いや、正確に言うと、江ノ島さん『も』だね」

苗木「みんなで無事に脱出するんだ」

苗木「死んじゃったら全部おわりでしょ だから、江ノ島さんも僕も、みんなみんな死んじゃだめなんだ」


江ノ島「苗木……」


苗木「……なんてね。ちょっとかっこつけすぎかな」

苗木「昨日のテッサに影響されたのかもね」


江ノ島「……」

江ノ島「……いや、それは苗木自身が、元から持ってる強さだと思うよ」


苗木「そうかな?ありがとう江ノ島さん」

苗木「よーし。……じゃあ、約束だ。ぜったいみんなで生きて帰ろう」

苗木「絶対だからね」


江ノ島「……ああ。そうだね」

江ノ島「みんなで、生きて……ね」

・・・
・・



苗木「ごめんね。結局水しか出せなくて」

江ノ島「だから本当にいいんだって、気にしないでよ」

苗木「レーション、おいしく食べてあげてね」

江ノ島「もー、その話はいいでしょ?」

苗木「あはは。ごめんごめん」





苗木「それで、本題、についてなんだけど」

江ノ島「うん」

苗木「本当、入学式のつもりで来たのに、こんなことになって……」

苗木「きっとみんな、不安なところは少しはあるよね」


江ノ島「んー。まあそうだね」

江ノ島「でも、昨日のテッサの話で考え直したんじゃなかったっけ?」


苗木「うん、そうなんだ」

苗木「そうなんだけど……」

苗木「その、どうしても。一つだけ……気になる所があって」


江ノ島「気になる所?」


苗木「うん。そうなんだ」

苗木「それは……その」

苗木「なんていうかな……」


江ノ島「?」

苗木「ごめん……」

苗木「実は、その……気になるっていうのは、江ノ島さんについてなんだけど」


江ノ島「は?アタシ?」

江ノ島「……え、それってどういう意味?」


苗木「失礼だったら謝るよ。……でも、やっぱりどうしても気になる事があるんだ」

苗木「僕、昨日江ノ島さんを見てて思ったんだ」

苗木「【何かに怯えている】んじゃないか……ってね」


江ノ島「……」

江ノ島「……え?それが本気で気になってるわけ?」

江ノ島「はぁー。今更それとかマジありえねー……そんなの当たり前じゃん」

江ノ島「モノクマが、アタシらにコロシアイさせようっつーんだろ?」

江ノ島「怯えないはずねーし……いつ襲われるか分かんないのに」


苗木「……」

苗木「違うんじゃないかな江ノ島さん」


江ノ島「……何が違うっていうんだよ」


苗木「もし、本当に江ノ島さんが他人の殺意に怯えているなら、僕の部屋に来るはずないだろ?」

苗木「昨日から今日までのたった1日しか一緒に過ごしてないけど、
   その間、一人でいる江ノ島さんは怯えているそぶりなんか見せてなかったよ」

苗木「他にも何人かそういう人はいたけどね。とにかく、その怯えじゃないと思うんだけど、どうかな」


江ノ島「……わけわかんない」

江ノ島「怯えてるとか、怯えてるそぶりはなかったとかさ」

江ノ島「何が言いたいわけ?」


苗木「ごめん。僕自身よく分かってないのかも」

苗木「昨日、モノクマがさ、コロシアイの説明をしたでしょ?」

苗木「その時、僕はひどく混乱して、過呼吸気味になっちゃってさ」

苗木「みんなも似たようなものだったよ。各々が驚いて、状況が呑み込めなくて、不安になって」

苗木「モノクマの話が信じられなくて、大和田クンなんてつかみかかってたよね」


江ノ島「ああ、そうだったね」

江ノ島「……で?」


苗木「そんな中、一人だけ、僕に声をかけてくれた人がいた」

苗木「心配をかけてしまった。そう思って、僕はすぐ立ち直ろうと思ってその人の目を見たんだ」

苗木「そしたら、なんていうか……その人の方が、僕よりよっぽど怯えてたんだよ」

苗木「でも、モノクマや状況に怯えていたんじゃない」




苗木「僕に、怯えていたんだ」



苗木「ずっと見つめられてて、モノクマが喋り始めるまでずっとそのままだった」


江ノ島「……」

江ノ島「……それで?」


苗木「その次は、昨日の夜だった」

苗木「みんなで集まって報告会をしたよね」

苗木「十神クンや大和田クンが帰ってしまった後、テッサが僕たちを元気づけてくれた」

苗木「そして彼女の話も終わって、皆がそれぞれ部屋に戻ろうとした時、江ノ島さんの目がまた変わった」


江ノ島「……ふん」

江ノ島「何?アタシは一切表情を変えちゃダメって言いたいの?」

江ノ島「ふざけんじゃねーよ……っての」

苗木「その時は、舞園さんに怯えていたよね」

苗木「君の事を見透かしているって言った彼女に、ね」


江ノ島「……」

江ノ島「……」

江ノ島「な、なんだよ」


苗木「僕、江ノ島さんに怯えられるようなこと、したかな?」

苗木「舞園さんにだって。昨日初めて会ったはずなのに、どうしてそうも僕たちを恐れているの?」

苗木「僕たちは江ノ島さんを知らない。だけど、もしかして、どこかで会った事があるのかな?」


苗木「ねえ。僕たち、もしかして何か大事な事を見落としているんじゃない?」

苗木「……見落としているものがあるなら、教えてほしい」


苗木「仲間でしょ?僕たち」


江ノ島「……」

江ノ島「……な」




江ノ島「何が悪いっていうんだよ……」


苗木「江ノ島さん?」


江ノ島「あ、アタシは……そんな、別に……何も、何もねーよ」

江ノ島「そんなに、さあ……あたしの中を……見透かして」

江ノ島「仲間……仲間とか、言って、さ」

江ノ島「なんなの……仲間って……こんな、わたし、なのに……」

江ノ島「あ、……あたしは……わ」ガタッ





江ノ島「帰る」ダッ



苗木「江ノ島さん!?」

苗木「くっ!」

苗木「……しまった」


苗木(最低だ……僕って。こんな事も気付かなかった)

苗木(よく考えもせずに……触れちゃいけない所だったんだ……)

苗木(彼女のプライベートな部分を、なんの配慮もせず荒らしたんだ)

苗木(そもそも、それが本当に重要な事かもわかってないのに……)

苗木(テッサの言う通り、ただ彼女がナーバスになっていただけだったのかもしれないのに……!)

苗木(謝らなくちゃ……ああ、出て行くつもりだ、出口の方へ)


苗木「江ノ島さん、ごめ―――」


江ノ島「付いてこないで!」


苗木「……っ!」

江ノ島「……!」



苗木「江ノ島さん!」

苗木(またあの時の目だ……僕に、怯えてる……)

苗木(でも……これは触れちゃいけない事だったんだ……僕は)


苗木「違うんだ江ノ島さん!僕、謝らなくちゃいけないんだ!」


江ノ島「ほんとに……これ以上構わないで」



江ノ島「私の……私の名前は江ノ島盾子」

江ノ島「身長は169cmで、体重は44kg……超高校級のギャル」



江ノ島「誕生日は【12月24日】……全部合ってるでしょう……どうして」ブツブツ...



苗木「……江ノ島、さん?」


江ノ島「……私何か間違えたのかな」

江ノ島「何が問題?怯えたらアウト?」

江ノ島「……どうすればいいの 私は」

江ノ島「訳が、分からないよ」

江ノ島「どうして……苗木くん……あなたはいつも」


苗木「……ごめん。本当にごめん」


江ノ島?「ちがう」
江ノ島?(謝らなきゃいけないのは……本当は)

江ノ島「っ」ダッ


苗木「あっ!ま、待ってよ江ノ島さん!」ダッ

江ノ島「お願いだから……もう許して……!」


苗木「……違うんだ……これ……忘れ物」

苗木「あげるって、言ってたから……」





江ノ島「これは……」

江ノ島「……」

江ノ島「……~~~~ッ!!」




江ノ島「アタシ……こんなもの、食わねーよ……」

江ノ島「食べないんだよ……【こんなの】……きっと」


苗木「っ!……」


・・・
・・



---希望ヶ峰学園・苗木の個室前---


苗木「レーション……受け取ってくれなかったな」

苗木「モデル界……」

苗木「Cレーション……Dレーション。だっけ……」

苗木「……」


苗木「ごめんね、江ノ島さん……ごめんね、相良くん、テッサ……」

苗木「最低だ……僕って」

苗木「でも……」

苗木(逃げちゃダメだ)

本当に申し訳ない テキストは作り終わってるけどいかんせん時間がかかりすぎた
続きは明日全部やります

現状半分の少し手前くらいです

・・・・・
・・・・
・・・
・・



---希望ヶ峰学園・???---


???「……」

???「マジで、ほんっっっっとに残姉残念だわ……」

???「このままやってたらその内バレかねないんですけど」


???「ああああああああああっ!!絶望的すぎっ!!!」

???「マジに出来が悪いんだよあいつ!!!」

???「あーーーあ、こうなったら……予定より早くなっちゃうけど」


???「うぷぷぷ……仕方ないよね。……もっと絶望的な事になるんだろうな」

???「……」



・・
・・・


???「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

???「……なにこのプラン」

???「うぷぷ……」



???「絶望的すぎ……!!」

???「最高……いや、最低……?」

???「うぷぷ……うぷぷぷ……」

・・・
・・



---希望ヶ峰学園・食堂---



霧切「……」


腐川「……」ペラリ

腐川「……」ペラリ





テッサ「あら。サガラさん、帰って来たのですか?」

宗介「肯定だ。夕食会までは自由行動だそうだ」

宗介「ただし、その間も風紀委員としての自覚を持った振る舞いをせよ。とのことだ」

テッサ「あらあら。しっかり風紀委員ですね」


宗介「石丸委員長はなかなかできる」

宗介「規律に一切の妥協を許さない、完璧な風紀委員長だ」

宗介「ぜひ……陣代高校にも、来てもらいたいものだ」

宗介「陣代高校にも……」


テッサ「サガラさん……」

テッサ(きっとサガラさんも、カナメさんの事がずっと気になっているはず)

テッサ(もちろん私だってそうだけど、ヤン伍長が守ってくれているのよ)

テッサ(いざとなればメリダ基地も頼れるのだから、大丈夫だと自分に言い聞かせるしかない)

テッサ(それより、私が不安になっている事をサガラさんに感じさせてはいけないわ)

テッサ(……)

テッサ(カナメさんなら、こういう時に彼を元気づけてあげられるのかしら)

テッサ(私じゃ……だめなのよね。クリスマスの時に、その希望は断たれてしまったのだから)


宗介「テッサ。どうかしたのか?」


テッサ「え?ご、ごめんなさい。やだ。心配かけさせたわ」


宗介「いや、そういうわけではないが……」

宗介「俺の顔をそんなに見つめられては気になるというものだ」

宗介「なにか大事な話をしたいというなら、この食堂は今でも何人かいるので……外に出るか?」


霧切「……」


腐川「……」ペラ

腐川「……」ペラ



テッサ(大事な話……作戦の事ね)

テッサ「いえ。そういう訳じゃありません、心配しないで」



テッサ「ちょっと部屋から食べられるものを取ってこようと思ったんです」

テッサ「いったん戻りますね」


宗介「……?」

宗介「そうか。では俺も行こう」


テッサ「は?」

テッサ「……いや、ごめんなさいサガラさん?」

テッサ「私の部屋に飲み物と食べ物を取りに行くだけですから」


宗介「モノクマが仕掛けてくるやもしれない」


テッサ「結構ですから、ほんと結構」

テッサ「ほんと、大丈夫ですから」ダッ

テッサ「すぐそこなんですし!」


宗介「テッサ!」

宗介「ダメだ!君が無闇に走っては!」





テッサ「へ?」ガッ


テッサ「……っきゃ!」


ドテッ


テッサ「……っいたた」

テッサ「な、何も無い所で転ぶなんて……」


宗介「テッサ!」ダッ

宗介「大丈夫か?手を貸そう」


テッサ「え、ええ、ありがとうサガラさん」

テッサ「ほんとに……ごめんなさい」

テッサ「あっ……」


宗介「大佐殿」ヒソ


テッサ「ひゃ、ひゃいっ!?」ドキ

テッサ「な、なんですか?」ドキドキ


宗介「……」

宗介「……久しぶりの、ですね」ヒソ

テッサ「!」


テッサ「……もう!」

テッサ「ひどい人ね!」




腐川「何も無い……所なのに……」

腐川「よく、あ、あそこまで見事に転べるわね……」


霧切「そうね、華麗ですらあったわ」

霧切「これを言葉で表現するとしたら……」


霧切「【ずるべたーん!】ね!」


腐川「え、そ、それは……」

腐川「ひどすぎる……物を書いた事のない奴の意見だわ……」

腐川「あれを表現するのであれば、例えば、【滑稽なまでの」


霧切「それは違うわ!!」


腐川「!」


霧切「【ずるべたーん!】ね!」


腐川「!」


テッサ「あなた達分かってやってるでしょ!」

テッサ「すぐ近くにいるんだからやめてくださーい!!」

・・・
・・


宗介「そろそろ14時か」

テッサ「そうですね……」

宗介「……俺も何か食糧を手に入れてこよう」


テッサ「あ、それでしたら私のを分けてあげましょうか?」

テッサ「えっと……これ。カロリーメイトですね。ちょっと食べかけですけど」

宗介「カロリーメイト……!!」

テッサ「あと水もありますよ。喉、かわいちゃいますもんね」

テッサ「どうです?」


宗介「……いや、しかしそれではテッサの分が減ってしまう」

宗介「問題ない。購買部に置いてある物を買ってくる」


テッサ「ふーん……それじゃあ、30分かかりますね?」


宗介「!」


テッサ「分かってるんですよお……?モノクマが用意したものだから信用できず、
    購買部の物を飲み食いする時は一口だけ齧って、30分もかけて安全かどうかの吟味をしている事」


宗介「!!」

宗介「よく……知っているな」

宗介「それくらいの警戒は、普段からやっている……問題ない」


テッサ「ふふふ……更に知っていますよお……風紀委員の活動中は飲食禁止なんですよね?」

テッサ「朝食をとってから、なにも口にしていない事」


宗介「!!!」

宗介「……確かに、そうだが」

宗介「そうだが。それは関係ない。テッサのものを奪うなど」


テッサ「いえいえ。私は今さっき部屋から持ってきたパンをいくつか頂いたので平気ですよ?」

テッサ「しかも食べかけですし、モノクマの云々も心配する必要がありません」


宗介「く……しかし」


テッサ「ほらほら、見て下さいサガラさん。こんなところにカロリーメイトのパッケージがありますよ。ほらほら」

テッサ「どうですか?」


テッサ「……だめです?」


宗介「……」


テッサ「ね?」


宗介「……くっ」

宗介「ありがたく、いただこう」


テッサ「♪」




腐川「……ちっ」ペラ



テッサ「ね?特に問題はないでしょう?」


宗介「ああ、君が一度食べて、その後何も問題がないようだから、そうなんだろうな」

宗介「水も、ありがとう」

宗介「………っ……っ……っ……」

宗介「っ。はぁ」トン


テッサ「まあ。半分以上残ってたのに一気ですか」

テッサ「よほど喉が渇いてたんですね?ね?良かったですね?」


宗介「……ありがとう。正直……助かった」


テッサ「ふふ……いいんですよ」

テッサ「カナメさんには、秘密にしておいてあげますから……ふふ」ヒソ



宗介「……」

宗介「問題ない……問題ないはずだ」

((千鳥……怒るだろうか))



腐川「……ちっ」ペラ

腐川「……ちっ」




宗介「……」

宗介「?」


テッサ「どうしました?」


宗介「いや、……江ノ島が食堂前を玄関ホールの方へ走っていっただけだ」

宗介「顔は見えなかったのであまり様子は伺えなかった」


霧切「私の座っている場所からは角度で表情が少し見えたけど……」

霧切「……気になるわ」


宗介「どういうことだ霧切」


霧切「……」
霧切(この二人を信じて大丈夫かしら)

霧切「……ひどく、憔悴しているようだったわ」



「「!!」」

霧切「私は彼女を追……」



<<皆さん、こんにちは。モノクマです>>

<<各々が良いアフタヌ~ンを過ごしていると思いますが、ただいまより緊急集会を始めま~す>>

<<至急,全員体育館へ集まってくださ~い!!>>

<<うぷぷぷ……素敵なお知らせが待っていますよ!!>>



宗介「モノクマか……」

テッサ「素敵なプレゼント……不気味ね」

霧切「それじゃ、私は行くわ」

腐川「ど、どうせ……ロクなものじゃないわ……モノクマは……」



宗介「テッサ、行こう」

テッサ「はい!」

---希望ヶ峰学園・体育館---


「さくらちゃん、私たち大丈夫なのかな」ワイワイ
「分からぬ……だが従う他あるまい」
「そうだべ!素敵って言ってたのは、きっと解放のお知らせだべ!」ガヤガヤ
「はっ。そうだといーがよ」
「静かにしてくださる?モノクマが話し始めても聞こえないと困りますわ」ワイワイ
「素敵なお知らせ……ってなんだろう。苗木くん」
「なんだろうね」ガヤガヤ


宗介「全員集まっているようだな」

テッサ「ええ。私たちは最後というわけね」

霧切「江ノ島さんもいるわ」


江ノ島「……」


宗介「……」

テッサ「霧切さんの言った通りね。誰から見ても異常な雰囲気だわ」

テッサ「何かあったのかしら……様子がおかしい」

宗介「テッサ、霧切……今奴には近づかない方がいい。何をするか分らないからな」


テッサ「サガラさん……?」


宗介「俺が奴のすぐ隣に立っておく。これからもそうすることにする」

宗介「何か気を起こしたらすぐに取り押さえられるようにな」


霧切「……」

霧切「相良君、あなたやっぱりおかしいわ」

霧切「一体何者なの?ただの軍事マニアに思えない」


テッサ「……」

宗介「……」

霧切「テッサも。あなた達、まるでここに来る前から知り合いだったみたい」

霧切「時折、誰にも聞こえないような小声で話をしているのはなぜ?」


テッサ「……集会とやらが終わったら話してあげましょう」

宗介「テッサ?」

テッサ「問題ありません」

宗介「そうなのか?」

宗介「……それより江ノ島だ」

宗介「じゃあな また後で落ち合おう」


スタ
スタ


テッサ「行っちゃったわ」


・・・
・・



苗木「江ノ島さん……やっぱり怒ってるんだろうな……」

苗木「あれからずっと伏せ目がちだし……」

苗木「目も、合わせてくれないし」

苗木「あのあとすぐ放送が入ったから、勢いでレーション持って来ちゃったよ……」

苗木(ちゃんと、謝らないとな)


舞園「苗木くん……?なんだか様子が変ですよ?」

舞園「大丈夫ですか?体調が悪いなら、医務室へ運んでもらった方がいいのでは?」

舞園「その……。なんで持ってきてるのか知りませんけど、缶詰は、置いておいて」


苗木「え?あ、あぁ。そういうわけじゃないんだ」

苗木「ありがとう……ごめんね、心配かけちゃって。この缶詰はちょっと大事なんだ」


舞園「そ、そうなんですか……」

舞園「でも、何かあったら相談してくださいね」

舞園「同じ中学だったんですし、何かと話せる事は多いでしょう?」

舞園「それになにより、私は助手なんですから!」


苗木「ありがとう、舞園さん」

苗木「心から……頼りにしてるよ」

舞園「頼りにされました。がんばりますよ~!」


苗木「あはは」

苗木(彼女にも……あるのだろうか)

苗木(あるんだろうな……だれにでも、触れられたくない過去や、自分の心)

苗木(僕は……無神経だ)


<<全員揃ったようだね!それじゃあ始めようか!>>

<<ただいまより、緊急集会を始めます!>>


「「「!!」」」


モノクマ「起立!」

モノクマ「礼!」



・・・


モノクマ「時間がないからね、今日はパパパっとやるよ!」

モノクマ「昨日1日、君たちを観察してたんだけどね、
     やっぱり君たちには決定的な物が欠けている事に気がついたんだ」


十神「欠陥、だと?」


モノクマ「そうだよ、十神くん?」

モノクマ「なんだかよく分らないけどさ~。
     昨日、テッサとかいう子が、希望について臭い演説をしたせいで、確実に結束が高まっちゃったんだよね!」


大和田「あ?そうなのか?」

セレス「……わたくし達が帰ったあとの話のようですわね」


モノクマ「そう!そうなのよ」

モノクマ「本当はもう少し観察するつもりだったけど、テスタロッサさんのせいで少し早い実施になっちゃったんだ」

モノクマ「まあ、どんな事にもアクシデントはつきものですから、全然構わないんですけどね!」

モノクマ「それでは、君たちに欠けている―――」


霧切「待ちなさい!」

モノクマ「ん?」

モノクマ「どうしたの霧切さん?」

霧切「あなた、いま【テスタロッサ】と、そう言ったわね?」

霧切「テスタロッサ……私たちは知らないわ。それは誰?」


モノクマ「……?」

モノクマ「てすた、ろっさ……?」

モノクマ「……ああ!」

モノクマ「そうかそうか、ごめんね!テスタロッサじゃなかったね!」

モノクマ「テレサ・マンティッサ だったね!」

モノクマ「いや、失敬失敬」


霧切「間違えたというの?」


テッサ(……メンタルを削ぐつもりか知らないけれど、モノクマも随分回りくどいことをするのね)


モノクマ「そう。それで、そのマンティッサさんが皆を結束に導いたので~」

モノクマ「君たちに決定的に欠けている動―――」


江ノ島「ちょっと待てよ!」


モノクマ「……あぁ?なに?」

モノクマ「何度も同じ所で遮られると腹が立つんですけど!」


江ノ島「ちょっと待てよ、え?は?おかしくない?」


モノクマ「なにがおかしいっていうの?残念な江ノ島さん?」

モノクマ「あーもうあんたに江ノ島って言うのも嫌だけど」ボソ


江ノ島「……え?なにそれ、どういうこと?」

江ノ島(おかしい。確か予定では3日は様子を見るというものだったはず)

江ノ島(まだ1日しか経っていないし、テレサ・テスタロッサが団結を固めたといっても強いものではないし)

江ノ島(どうしてこんな早いタイミングで……?)

江ノ島(もしかして、計画が押しているというの?)

江ノ島(盾子ちゃん、どうして知らせてくれなかったの)

江ノ島(どうすればいいの?)


江ノ島「ふ、ふざけんなよ……!これ以上付き合ってられねーっつーの」

江ノ島「ありえねーよ……あんたに耳を貸したらおかしくなるのが目に見えてるっつーの……!」


モノクマ「……じゃあ、ボクのいう事に従いたくないってこと?」


江ノ島「……!」

江ノ島「そ、そうだよ!」


江ノ島(盾子ちゃん、そういうことなの?)

江ノ島(生徒側を装うためにちょっとぼやいただけなのに、そんなに切りこんでくるというのは)

江ノ島(本来は最初の事件後に行うはずだった、私の【見せしめ】をここでやるの?)

江ノ島(どうしてこのタイミングで?なんで私はそのことを知らないの?)

江ノ島(……でも、やるしかないんだよね?)

江ノ島(やるよ?私、やるからね?)


モノクマ「学園長として見過ごせない発言だよ!」

モノクマ「他のみんなも見ているんだ!」

モノクマ「ここでその意見を聞いてしまうとボクの沽券にかかわるよ!」

モノクマ「どうしても自分のその意見を貫きとおしたいというなら!」


ピョーン


腐川「ひいっ!舞台から降りてきた……!」


モノクマ「このボクを倒してからやるんだなーーーーーっ!!!」


トテトテ
 トテトテ





江ノ島(盾子ちゃん……やるよ!?)




ガスゥッ



江ノ島「はい。どう?これで満足?」

江ノ島「あんたの言う通り倒してやったけど―――」



モノクマ「……言ったよね」

モノクマ「学園長である僕への暴力行為は校則違反だって」

モノクマ「警告までしたはずだよ?」

モノクマ「……」

江ノ島「……は?だから何よ」




モノクマ「そっちこそ満足?」



江ノ島「……?」

江ノ島(あれ?おかしくない?)

江ノ島(確か、ここで落とし穴があいて地下牢に落ちるはず)

江ノ島(どうして地面が開かないの……?)

江ノ島(盾子ちゃん……?なんだか様子が)





モノクマ「召喚魔法を発動するよ!」




「「「!?」」」




モノクマ「助けて!!グングニルの槍~~~!!!」




江ノ島「え」

江ノ島(え?なに?どういうことなの?)

江ノ島(グングニルの槍?)

江ノ島(確か、校則違反者がいた場合に使われる処刑方法)

江ノ島(8本の槍が違反者目がけて発射される……)




江ノ島(え?私?)

ドヒュウッ
ドヒュゥッ





「「「!!」」」


宗介「!!」

テッサ「槍が……!!」

苗木「江ノ島さん!!!」




江ノ島(本当に私を狙っているの?)

江ノ島(……だめだ、この槍の本数と軌道)

江ノ島(とても避けきれないよ……)

江ノ島(盾子ちゃん……私)



江ノ島(死んじゃうよ?)







宗介「ーーーー……!!!」


テッサ「ーーー……!!!」




江ノ島(セガール……相良くんが、私に飛び込んできてる)

江ノ島(タックルして吹き飛ばすことで、助けようとしてくれてるのかな。間に合わないけど)

江ノ島(昨日からずっと、私を疑ってたのは知ってるよ)

江ノ島(当然だよね。私、人殺しなんだから。セガールなら分かっちゃうよね)

江ノ島(なのに、助けようとするんだ)

江ノ島(同じ傭兵団だったあの頃から、セガールは本当に変わったね)



江ノ島(でも、私、落とし穴を反射で避けてしまわないように意識してたから……さすがにもう間に合わないね)

江ノ島(盾子ちゃんは、それを分かった上でやったんだね)

江ノ島(さすが盾子ちゃん。手も足もでないや)

江ノ島(目的は分からないけど、これでいいから、こうしてるんだよね)

江ノ島(じゃあ、私は受け入れるしかないよね)

江ノ島(盾子ちゃんを世界でただ一人理解してあげられるのは私なんだから)

江ノ島(命くらい、盾子ちゃんのためなら―――)





苗木「江ノ島さんっ!!!」




江ノ島「……」

江ノ島「あ」


江ノ島(そうか、私の事か)

江ノ島(苗木くん……苗木くん)

江ノ島(苗木くんはいつだって変わらないね)

江ノ島(優しくて、誰かを見捨てる事なんて絶対しない)

江ノ島(さっきは嫌な事言ってごめんね)

江ノ島(思った以上に、苗木君に見透かされていたから……ごめんね)

江ノ島(……嬉しくても、喜んじゃダメだから……私はあなたを騙してるから……)

江ノ島(仲間だって言われて……飛び上がるほど嬉しかった……だけどはじめから仲間じゃないから)

江ノ島(疑われたっていうのは、私のやるべき仕事ができてなかったって事だから……)

江ノ島(そういうことだよね……盾子ちゃん)

江ノ島(もう、私はいらないんだよね)

江ノ島(うん、もういいよ。最後に見るのが苗木くんっていうのだけで、なんとなく幸せなんだ)



ガタンッ


江ノ島「?」

江ノ島(苗木君の足元から、何か音が?)

江ノ島(なに?あれ)

江ノ島(銀の……)

江ノ島(あれは……)

江ノ島(缶詰……?)

■■■■■■■■

苗木『これを食べて、無事にモデル戦争を生き抜いてね』

江ノ島「もう苗木、冗談きついってホント!」

苗木『ごめんね。あんまり意外だったからつい』


苗木『……でも、本気でもあるよ。江ノ島さんは生き抜かなきゃならないんだ』

江ノ島「ん……」


苗木『いや、正確に言うと、江ノ島さん「も」だね』

苗木『みんなで無事に脱出するんだ』

苗木『死んじゃったら全部おわりだ だから、江ノ島さんも僕も、みんなみんな死んじゃだめなんだ』

■■■■■■■■

■■■■■■■■

苗木「よーし。……じゃあ、約束だ。ぜったいみんなで生きて帰ろう」

苗木「絶対だからね」


江ノ島「……ああ。そうだね」

江ノ島「みんなで、生きて……ね」

■■■■■■■■



江ノ島(……)

江ノ島(……レーション)

江ノ島(約束、してたけど)

江ノ島(約束、してたのに……)





江ノ島(……もう、だめだけど)

江ノ島(だめだろうけど)

江ノ島(盾子ちゃん)

江ノ島(私、ごめんね……私、ごめんなさい)

江ノ島(……苗木君、わたし、やっぱり―――)





宗介「っっ!!」


((間に合わないか……ッ!?))

((槍を全て命中させずに突き飛ばすのは不可能だ))

((この8本の槍の、急所に刺さりそうなものだけを避けられれば……!))

((……間に合わないのか!!))



テッサ「あ……っ」

テッサ(駄目っ!狙いが正確すぎてっ……!!)

……ザワ
 ……ザワ

テッサ(……?)

ザワ……ザワ……


テッサ「!」

テッサ(待って……この感覚……!?)



テッサ(うそ……そんな!……あり得ないっ!!!)



江ノ島(……苗木君、わたし―――)





江ノ島(―――生きたい)









モノクマ「!?」
















---希望ヶ峰学園・体育館---


モノクマ「―――……?」

モノクマ「……」


モノクマ「嘘、だろ?」

モノクマ「は?なに?なんで……?」


モノクマ「お姉ちゃんが……は?嘘」

モノクマ「どうしてこのタイミングで……?」




戦刃「……っ」ドサッ

バサッ



朝日奈「や……!」

朝日奈「やった!相良が上手く突き飛ばしたんだね!!」

石丸「奇跡だ……槍をかわせた」


霧切「……」

霧切「うまく乗り切ったのはいいけれど……【あれ】はいったい」

桑田「そうだぜおめーら……わかってんだろ?なんだよあれ……」


舞園「江ノ島さんの髪が……!?」

朝日奈「!」



戦刃「……」




宗介「……ハァッ……ハァッ……ハァッ……」

宗介「くっ……!」ガクッ


舞園「相良くん!?大丈夫ですか!?」

宗介「問題ない……肩に一本もらっただけだ」

石丸「問題ないわけがないだろう相良君!」


宗介「心配するな、まだ動く」

宗介「そんなことより……」

((バカな、そんなバカな))

((ウィッグだと……?奴は、江ノ島盾子ではなかったのか))

((そして、奴はなんなんだ……なぜ俺は江ノ島ではない奴を知っている))

((訳が分からない、どうして奴がここにいるんだ……!?))


((戦刃むくろ……!!))

テッサ「……」





テッサ「そう……だったのね」

テッサ「信じがたいけれど……」



大神「皆よ静まれ!今はとにかく相良の手当てだ」

大神「江ノ島の件については訳が分からぬ。だが、とにかく怪我はなんとかせねばな」

大神「我が二人を連れて行こう」

戦刃「いや……あたしは、平気だから」


朝日奈「なに言ってんの!思いっ切りタックルされちゃったんだから、どこが痛んでてもおかしくないでしょ!?」

大神「うむ。それに、落ちついて話を聞きたい。共にこい」

大神「……あと、何人か付いてきてくれぬか。手当の手助けをできるものだ」


朝日奈「私が行く!」

苗木「……!僕も!」



大神「モノクマよ。お前は集会と言っていたが、手当のために中止だ。よいか?」



モノクマ「……ああ……保健室?……あそこね……まあ……いいや……かってにいけば?」


・・・
・・

---希望ヶ峰学園・???---


???「はぁっ……はぁっ……」

???「どうして?……こんなタイミングに……どうして」

???「絶望的すぎんだろ……この展開」

???「お姉ちゃん」

???「……っ」



ヒソヒソヒソ……
 ヒソヒソヒソ……



???「……あ」

???「あぁああああぁ……きた……またきた……」

???「うるさい……うるさい……気持ち悪い……うううあああ」


ヒソヒソヒソ……


???「ああああああ゛ぁぁぁぁ゛ぁぁああ゛あぁぁぁぁぁああ!!」

???「いい加減にしろ゛おおおおおぉぉぉおおっ!!!」


・・
・・・

十数分後

---希望ヶ峰学園・保健室---


宗介「ぐっ……」

朝日奈「ちょっと相良!あんまり動いちゃダメだって!」

大神「相良よ、焦る気持ちも分かるが、今は大人しくしておけ」

苗木「相良クン!」

テッサ「そうですサガラさん、落ちついて」



宗介「違う……違うんだテッサ」

宗介「俺の怪我は問題ない。貫通はしてないし、動脈も傷ついていない」

宗介「朝日奈と大神に適切な処置はしてもらった。俺の体は問題ないんだ」

宗介「問題は……江ノ島なんだ」


テッサ「江ノ島さん……」

テッサ(あの時、サガラさんからタックルを受けて吹き飛ばされたときに、ウィッグも飛ばされて彼女の素顔が明らかになったわ)

テッサ(みんなで体育館を出たあと、保健室へ連れて行く予定だったけど、彼女は頑なに拒否して自室に戻っていった)


宗介「そうだ、最初から感じていた江ノ島の違和感とはこの事だったんだ」

宗介「ずっと、江ノ島が殺人を決意したのだと思い込んでいた」

宗介「だが、違った……俺が感じたそれは、奴の体にしみ込んだ、取りようのない性というものだったんだ」

宗介「俺も、よく知っている奴だった!……うかつだった。素顔を見るまで思い出さなかったなんて」





宗介「そう……」

宗介「奴は、江ノ島盾子じゃない……」


「「!?」」




朝日奈「は!?」

大神「なん、だと」

苗木「な、なにを言ってるの相良クン」

霧切「江ノ島盾子ではない……?」

霧切「彼女が、身分を偽っていたという事?」


宗介「……俺は、奴を知っている」

((ウィッグが外れた瞬間、思いだした……あの顔を))

宗介「奴は……」

((いや))



朝日奈「【奴は】……?どうしたの?」


宗介「……」

((言ってしまえば、後には戻れなくなる……。少なくとも、身分を隠し続ける事は不可能に))


テッサ「……いいでしょう」

テッサ「本当は、このまま全て終わるまで隠し続けておくはずでしたが、場合が場合です」


宗介「テッサ……?」


テッサ「いいんですサガラさん」

テッサ「それに、彼女の件は一刻を争う」

テッサ「霧切さん、そして皆さん。全てをお話ししましょう」


霧切「……やはり、あなた達二人には何かがあったのね」


テッサ「ええ、ごめんなさい」

テッサ「実は、私たち二人は―――」


<<皆さんこんにちは。モノクマです>>

<<集会を終えた直後ではありますが、今すぐ、視聴覚室に集合してください>>

<<予定では徐々にお知らせするつもりだったけど、予定変更で~す>>


テッサ「!」

霧切「また予定変更……?」

霧切「モノクマは、相当焦っているようね。さっきからまだ1時間も経っていないというのに」

朝日奈「行くしか……ないよね。逆らったら、さっきみたいな」

大神「朝日奈よ。怯えるな。我がそうはさせぬ」

朝日奈「さくらちゃん……ありがとう」

霧切「テッサ、今の話はまた後で聞かせてくれる?」


テッサ「……はい」


宗介「……」

((行かなくては))

宗介「つっ……!」

苗木「相良クン、大丈夫?」

宗介「問題ない……っ」

宗介「……」

((戦刃……なぜお前がこんなところに))

・・・
・・


---希望ヶ峰学園・視聴覚室---


戦刃「盾子ちゃん、ごめんね……ごめんね」

戦刃「きっと……計画を勘違いしちゃって、怒らせちゃったんだよね」

戦刃「気付けなくて、ごめんね」

戦刃「今まで、分かってあげられなくてごめんね」


モノクマ「それで?」

モノクマ「放送がもう入ってて、いつ誰が入って来るか分からないこの状況で、
     ボクの正体がバレてしまうかもしれないリスクを犯してまで話しかけてきた理由は?」

モノクマ「それを言いたかっただけ?」


戦刃「ううん、違うよ……」

戦刃「今、外では……世界では、全てが荒廃しつつあるんだよね」

戦刃「そして、その裏では、【アマルガム】が動いている」


モノクマ「うぷぷ……そうだよ」

モノクマ「そして、希望の生徒達がコロシアイをしている様を見せつけて、さらに絶望させるんだよ」

モノクマ「……その、予定だったけどね お姉ちゃんのせいで台無しだよね」

モノクマ「戦刃むくろの存在が明らかになってしまった以上、もうコロシアイゲームはできないからさあ」

モノクマ「さっきの放送、いくらお姉ちゃんでも何をするかは分かるよね」


戦刃「……」


モノクマ「そう!」


モノクマ「希望に縋ろうとするあいつらに、全てを明かして絶望に直面させてやるんだよ!!」


モノクマ「記憶を消されている事を知ったら、どんな顔するんだろう……うぷぷ……うぷぷ……」

戦刃「盾子ちゃん」


モノクマ「あ?なに?」

モノクマ「生徒全員が揃ったら投票タイムの準備するんだから、話は早めにすませてよね」

モノクマ「さっきは、死んで退場って事になってたんだから」


戦刃「そう……」

戦刃「ごめんね、計画を狂わせて……」

戦刃「盾子ちゃん、私、さっき考えたんだけどね」


モノクマ「なにさ」


戦刃「私……世界を変えるよ」

戦刃「アマルガムについていく」

戦刃「そして、盾子ちゃんを、救うことにしたんだ」

戦刃「だから、準備ができたら学園を出る」


モノクマ「……は?」

戦刃「盾子ちゃんの計画には、もう出れないんだ」


モノクマ「……」

モノクマ「え?なんて?」


戦刃「盾子ちゃんを、救うんだよ」


戦刃「アマルガムの活動の目的は、世界の書き換えなんだよね?」

戦刃「……ごめんね。勝手に。盾子ちゃんが通信でアマルガムの幹部と話してるの、聞いちゃったんだ」

戦刃「【相良宗介とテレサ・テスタロッサの両名を学園に閉じ込めておく事】が、彼らの要求」

戦刃「……見返りは、その二人が世界を知ったときの【絶望】。ひいてはそれを見ているミスリルたち全体の絶望」

戦刃「それがあの二人をここに閉じ込めた理由。こうだよね?」


モノクマ「……ふーん、盗み聞きしてたんだ?」

モノクマ「サイッテーだな。マジで」


戦刃「……ごめんね。そんなつもりは、なかったんだけど」

戦刃「アマルガムの目的は、世界を書き換えることなんだよね?」

戦刃「詳しくは分からなかったけど、
   世界のバグを抱えた人たちを修正することで、今までに起こったおかしな事がなかったことになるんだよね」

戦刃「それってもしかしたら、死んだ人だって生き返る事も可能かもしれないってことでしょう?」






戦刃「それって……もしかしたら、誰かが、絶望にとりつかれる事もなくなるかもしれないってことでしょう?」


戦刃「……それだけで十分。それだけが全てだよ」

戦刃「世界を変えてでも、やり遂げて見せる」

戦刃「ごめんね、盾子ちゃんを一人にして」

戦刃「だけど、これが盾子ちゃんのためだから」

戦刃「盾子ちゃんを、本当に理解してあげられるのは私だけなんだから」


モノクマ「……え、」

モノクマ「ちょっと待って、それ、本気で言ってるの?」


戦刃「本気だよ」

戦刃「だから安心して。セガールとテッサはこのままにして、私だけ出してくれればいい」

戦刃「アマルガムから言われてるんだよね?
   あの二人は計画の邪魔になるからここに釘づけにしておいてくれって」

戦刃「そうしてくれれば、私はアマルガムについていって、世界の書き換えを成功させる」


モノクマ「……何アタシに命令してるわけ?」

モノクマ「てかさー、目的忘れたっていうんじゃないよね?」


戦刃「忘れてないよ」

戦刃「でも……盾子ちゃんに本当に必要なのは絶望なんかじゃないと思うんだ」

戦刃「全部やり直そうよ。盾子ちゃん、新しい世界にしようよ」

戦刃「もう苦しむこともない、絶望なんてすることのない世界に」



戦刃「そしたら、【彼】ともきっとまた会えるよ……。ね?そうしようよ」


モノクマ「……は?」

モノクマ「……っ」


戦刃「……盾子ちゃん?」

モノクマ「……ぷ……」

モノクマ「……ぷぷ」


戦刃「盾子ちゃんどうしたの?」


モノクマ「うぷぷ……あまりの絶望に笑ってるんだよ」

モノクマ「ぶひゃー。こりゃ笑わずにはいられないよね!」


<ガチャ


苗木「保健室からは近い部屋だから、やっぱり誰もいない……ん」

苗木「あ……江ノ島さん」

苗木(じゃ、なかったんだっけ……)

霧切「モノクマも、もういるのね」


モノクマ「うぷぷぷぷ」

モノクマ「うふ、うふふ」

モノクマ「……」


宗介「なんだこいつは」

宗介「笑っているのか」


モノクマ「あーーーーーーーーーはっはっはっはっは!!!」


テッサ「!?」


モノクマ「あははははーーー!!」

モノクマ「うひゃ、うひゃひゃ!!」

モノクマ「わは、わはははーーーーーーっ!!!!」

モノクマ「うぷぷぷぷ、ぷふーーーっ!!!」

モノクマ「ひぃーっ、ひぃーっ」

モノクマ「……ずずっ」

モノクマ「うぷぷぷぷ……ぷぷ」


戦刃「……」




モノクマ「はぁーっ、はぁーっ」

モノクマ「いや、最高だった」

モノクマ「面白い事をいうね戦刃さん!」


戦刃「面白い?」


モノクマ「うん、そう。面白かった!」

モノクマ「ふーっ……」

モノクマ「」チラッ


舞園「な、苗木くん……一体なにが起こったんですか」

苗木「僕も分からないんだ舞園さん……」

苗木「放送のあと入ってきたら、壊れたみたいに笑ってるモノクマが……」

桑田「正直、頭がどうにかしたんじゃねーかと思ったぜ」

苗木「……う、うん」

舞園「……やっぱり何かが?」

朝日奈「私たちが入って来た時には江ノ島さんとモノクマだけだったけど」

大神「……一体何が」


モノクマ「うん、みんな集まりつつあるね」

モノクマ「それじゃあ、全員集合したらまた来るよ!」

モノクマ「それじゃあまたね戦刃さん!あとみんなも」


霧切「待ちなさい!」


モノクマ「?」


霧切「あなた、いま【戦刃さん】と言ったわね。さっきも言っていたわ」

霧切「そこにいる、女子によ」

霧切「さっきまで江ノ島盾子として扱っていたのに、どういうことなの」

霧切「その人について詳しく説明しなさい」


モノクマ「えー」

モノクマ「ボクが喋るのはめんどくさいから本人から聞けば?」

モノクマ「うぷぷ……苗木クンも、そう思うよね?」


苗木「な、なんだよ……どうして僕にふってくるんだ」


モノクマ「だってさ、集会の前、苗木クンは言ったよね?」

モノクマ「【仲間でしょ?僕たち】ってさ」

モノクマ「うぷぷ……仲間っていうんなら本人から聞いた方がいいでしょ」


戦刃「……っ」

モノクマ「もうどうせ全部明かすんだから 自分で言えよ」

モノクマ「好きなだけ言えばいいじゃん。【仲間】を騙してた事をさ……」ボソ

戦刃「っ!」


モノクマ「じゃあね!」



朝日奈「行ったね」

大神「全て明かす。と言っていたな」

朝日奈「うん……どうして閉じ込められているのか、教えてくれるのかな」

大神「さてな、だが、我らにとって必要な情報ではあるだろうな」


戦刃「……」


霧切「戦刃さん……だったかしら」

霧切「さっきあんなことがあったばかりで申し訳ないのだけど、話せるかしら」

霧切「ゆっくりでいいわ。時間はあるから……」


戦刃「ごめんね……時間は、もうないの」


霧切「?」

霧切「どういうこと?」


戦刃「私の名前は……戦刃むくろ」

戦刃「あなたたち希望の高校生に紛れて、コロシアイをさせるのが私の役目」

戦刃「最初の事件が起こったら、モノクマへの暴力行為を働いた見せしめとして地下牢へ落とされて、表からは退場する」

戦刃「……その予定だった」

戦刃「だから、私は江ノ島盾子じゃない。ギャルなんかじゃない」

戦刃「超高校級の、【軍人】……あなたたちを、騙してた」


霧切「……」



苗木「え……嘘だろ」

苗木「じゃあ、何……?」

苗木「さっき、僕の部屋で話した時も、それまでだって……ずっと、僕たちを監視してたっていうこと?」


戦刃「うん……ごめんね」


苗木「は、はは」

苗木「冗談きついよ江ノ島さん……」

苗木「どうせ、モノクマにそそのかされて嘘をつかされてるんだろ」


戦刃「……本当のことだよ」


苗木「は、はは……」

苗木「……」


戦刃「……私の正体は、あなたたちをここに閉じ込めた黒幕」

戦刃「間違いなく、真実」


宗介「……」

テッサ「あなたが?」


戦刃「そう」


宗介「ムクロ……なぜ、貴様が」

宗介「俺達と同じ立場だと思わせ、その裏で全てを見ていたというのか……?」


戦刃「セガール……」

戦刃「ごめんなさい」

戦刃「私は、ずっとあなた達を騙してきた」

戦刃「もうすぐここに全員集まったら、皆の求めている全てが明らかになる」

戦刃「きっと、絶望する」

戦刃「すべては、その絶望のために」

戦刃「ルートは変わったけれど、目的はそれだけだった」


宗介「バカな……貴様のような人間が、どうして」

宗介「傭兵は?……やめたのか」

戦刃「この世界に生きていれば、よくあることだよ……」


テッサ「サガラさん」

テッサ「もしかして、彼女を知っているというのは、傭兵時代の?」


宗介「……」

宗介「肯定です……かつては共に戦っていたのですが、
   自分がカリーニン少佐に拾われてミスリルに入るのと同じ頃、【フェンリル】に加入した軍人です」


テッサ「!!」

テッサ「【フェンリル】……傭兵集団ね。この世界では知らない者はいないレベルよ」


宗介「失念していた……。よく考えれば、超高校級の軍人と言われれば間違いなくムクロしかいない」

宗介「戦場に生きていたにも関わらず、その体には傷一つつけていなかった」

宗介「……こういうことだったのか」



苗木「ちょ、ちょっとまって相良クン!」

苗木「話が飛び過ぎてて……僕たちにも分かるように話してよ」

苗木「江ノ島さんが、傭兵だって?」

苗木「騙してきたって……?それに、相良クンの傭兵時代?」

苗木「だめだ、混乱してきた……相良クンはただのマニアだろ?」

苗木「どうしてそんな事を知っているの?」


戦刃「それは……」

宗介「……大佐殿、もう、いいでしょうか」

テッサ「ええ、さっき保健室でも話すつもりでしたから」


宗介「苗木」


苗木「なに……?」

苗木「変な話なら、やめてよ」

苗木「相良クンは、軍事マニアで、江ノ島さんは、カリスマギャルだろ?」

苗木「テッサが大佐殿だって?なにかのジョーク?」

苗木「ちょっと、モノクマにそそのかされておかしくなってるだけだよね?」


霧切「苗木くん……聞きましょう」

舞園「あなた達は、一体……?」





宗介「俺達は、軍人だ」

もし見てる人がいたら本当に本当に申し訳ない
思いのほか投稿に時間がかかってしまったので明日に回します

書き込みとかしてくれた人とかいるのに、本当にすいません

苗木「……そんな」

苗木「軍事マニアって言ってたのは?」


宗介「裏口入学するための、肩書きだ」

宗介「希望ヶ峰学園そのものを、騙すためのな」

テッサ「私たち傭兵部隊の当初の目的は、希望ヶ峰学園から起こるであろう世界の軍事発展を阻止する事」

テッサ「それにあたる生徒がいなかった場合は、引くつもりでしたが」

宗介「お前たち超高校級の天才は、その道に生きるプロをも凌駕する」

宗介「何かの機に触れて、軍事の革命が起こるかもしれない」

宗介「だから、そうなる前に、学園を騙して潜入したのだ」


苗木「……」



霧切「その話が本当だとして」

霧切「軍事の発展に寄与しそうな人物がいた場合、その人をどうするつもりだったの」


テッサ「……人道的、保護を」


霧切「保護?」

テッサ「その人が他組織に高価値だと判断された場合、利用のために狙われてしまうかもしれません」

テッサ「なので、私たちの組織で護衛をつける等の保護をするのです」

テッサ「通常であれば諜報員を使い、極秘裏に保護の要不要を決めるのですが……」


霧切「……なるほど。ここは希望ヶ峰学園だから」

テッサ「その通りです。外部で確認できる情報はごくわずか。直接目で見て、接してみるしか手はなかったんです」


宗介「これが全てだ、苗木」

苗木「……そうだったのか」

テッサ「ですが、それはあくまで当初の目的でした」

テッサ「学園内に閉じ込められ、コロシアイを強要させられる……この状況では、作戦の遂行もままなりません」

テッサ「そこで、エージェントのサガラさんには全員の命を守ってもらう事にしています」

テッサ「事実、さっきサガラさんが何もしなければ戦刃さんは槍に貫かれていた」


戦刃「……」


宗介「……」

宗介「騙していた事には変わりはないが、分かってもらえるだろうか」

宗介「正体を隠していたのは、俺が戦闘のプロである事を知らせれば、
   お前たちが恐怖してしまうかもしれない。それを懸念したためだ」

宗介「疑念を抱くのは分かる。だが今は信じてくれ」

宗介「ここを出たら、お前たちを平和な環境に戻すと約束する」


「「……」」





苗木「……」

苗木「……話してくれて、ありがとう」


宗介「!」

テッサ「苗木くん!」

苗木「ごめん……疑ったりして」

苗木「今、僕焦ってるみたいで……その、本当に」

苗木「さっき戦刃さん、を、助けてくれたのも本当だし……」

苗木「ごめん……信じる。ありがとう」



朝日奈「わたしは……正直、その……
    今の話を聞いて、相良たちが怖いって思った」


テッサ「……っ」


朝日奈「だけど!」

朝日奈「テッサの言う通り、
    相良が私たちを助けようとしているのは本当っぽいし、信じるしか……ないよね」

大神「昨日から、身のこなしが只人のそれではないとは思っていたが、まさかそのような事情があったとはな」

大神「一度手合わせをしてみたいものだ……ふ、学園をでてからな」


テッサ「!ありがとう……みんな」



・・
・・・

葉隠「ってことは、警察が俺達を助けてくれるってことだべ!よっしゃーー!」

桑田「あいつの運動神経、そういうことだったのかよ」


宗介「一応言っておくが、警察ではないぞ」

((皆が受け入れてくれたのは幸運だった。抵抗があってもおかしくない場だったからな))

((千鳥の時と同じ……やはり、超高校級に相応しい精神力を持っている))




((これで、残す問題はひとつ……ムクロだ))

戦刃「……セガール。これからどうするつもりなの」


宗介「決まっている。ここから脱出し部隊へ戻る、それだけだ」

宗介「……ただしムクロ。貴様は拘束させてもらうがな」

宗介「決めるのは上だ……」


戦刃「残念だけど、不可能だよ」

戦刃「私はここを出る。それも一人で」



戦刃「アマルガムは、もう計画を実行に移そうとしているから」



戦刃「やっと気付いたんだ。私が成し遂げるべき事はアマルガムと一致している」

戦刃「テッサとセガールは、ここで見てて。きっと、優しい世界に変えるから」

戦刃「そう、今は……ここで。ごめんね」


テッサ「!!」

テッサ「まって戦刃さん、あなた……!?」


宗介「ムクロ、どういうことだ!」

宗介「ムクロは、現段階ではアマルガムと繋がっていない……?」

宗介「それに、アマルガムの計画とは?実行とは……!」

宗介「くそっ!俺達がここに閉じ込められている間に奴らが動いたのか!」


テッサ「戦刃さん、あなたは、アマルガムに共感してしまったというの!?」


戦刃「……」

十神「おい、俺が来るまでの間に何が合ったか説明しろ」

朝日奈「いや……色々ありすぎて説明できないよ……整理できてない……」

十神「チッ、使い物にならんな……おい霧切!説明しろ」

霧切「……」

腐川「ちょ、ちょっと!十神君が話しかけてるでしょ!返事しなさいよ!」

霧切「まだ、全てが掴めていないのよ」

霧切「ただ、モノクマは全てを明かすと言ったわ。そして、私たちはそれに絶望するそうよ」

十神「なに……!?」


戦刃「全員、集まったみたいだね」

戦刃「もうすぐ、モノクマがやってくる」

戦刃「皆は、きっと絶望すると思う」

戦刃「だけど安心して……すぐに、綺麗な世界になるから」

戦刃「こんなことに、ならなくてもいい世界に」

戦刃「……じゃあ、ね」

戦刃「……」クルッ

戦刃(わたしは、行くから)




モノクマ「ボクはもうきてるよ!!」ピョーン

戦刃「!」



苗木「うわあっ!現れた!」

モノクマ「なんだとー?」

モノクマ「人を化け物みたいに言うなー!」

セレス「人ではありませんけどね」

戦刃「じゃあ……後は、任せたよ。行ってくるからね」


モノクマ「うぷぷ……そう焦らなくてもいいじゃない」

モノクマ「みんなが真相を知った時にどんな表情をするのか」

モノクマ「それを見てからでも、遅くないんじゃないの?」


戦刃「……」

戦刃「ごめんね 急いでるから」


モノクマ「……」


戦刃「それじゃ」


モノクマ「ねーえ?イクサバサン?」

戦刃「……。なに……?」

モノクマ「わかってるんだよ?……うぷぷ」


戦刃「何を言って―――」


モノクマ「見たくないんだろ」


戦刃「――っ!!」

戦刃「ち、違う……!そんなことない!」

戦刃「私は、ほんとに……急いでて!」

戦刃「私は……」


モノクマ「気付いてないとでも思った?」

モノクマ「知ってるんだよ?うぷぷ」

モノクマ「お姉ちゃんはね~……」


戦刃「やめて……盾子ちゃん」

戦刃「そんなことない……!」


モノクマ「逃げなくてもいいじゃん~うぷぷ」

モノクマ「知ってる。って言ってるんだよ」

モノクマ「……」



モノクマ「……お姉ちゃんはぁ、みんなの事が、ホントはだぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~い好きなこと!!」


戦刃「!!」

戦刃「……っ」

戦刃「そんな事ない……盾子ちゃん、どうしてそんな意地悪をするの……?」

戦刃「行かせてよ……分かってるでしょ」

戦刃「アマルガムについていけば、全部解決するんだよ……っ!?」


モノクマ「そうだよねえ……大好きで、大好きで大好きで!」

モノクマ「大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで!」


戦刃「っ」


モノクマ「大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで!」

モノクマ「どんなものにも代えられないほど愛している!!」

モノクマ「人生で、戦場での冷たい命のやりとりしかしてこなかったお姉ちゃんが、
     二年間もハートフルな世界に浸れば、そうなるのも当然だよねえ」

モノクマ「そんな、愛してやまないみんなが……絶望に愕然とする」

モノクマ「ああ~~~~……なんと甘美な絶望か」


戦刃「……はぁっ、はぁっ」


モノクマ「お姉ちゃんはさ」

モノクマ「そんな様が……見たくないんだろ?」

モノクマ「だから、絶望しかけた苗木の目に怯えた」


戦刃「やめて……!」





ザワザワ...
 ザワザワ...


「おい、聞いたかよ」
「冗談じゃないわ……!」
「ど、どうせハッタリだべ!」
「こんな状況でハッタリなんてかますと思って?」
「あ、あ……!」


モノクマ「ん?」

モノクマ「ありゃ、なんかざわついてるね」


苗木「と……!当然だろう……!」

テッサ「たしかに、あなた言ったわ……!」

テッサ「【二年】……ですって!?」


モノクマ「……んあー」

モノクマ「そうだよ。二年間。二年間、アタシたちはクラスメイトやってたんだよ」


宗介「なんだと……」

苗木「い、意味が分からない!」

苗木「いい加減にしろモノクマ!そうやって、意味の分からない事ばかり言って!!」


モノクマ「あーめんどくさ」

モノクマ「それを教えてやるために呼んだんじゃん」


「「「!?」」」


戦刃「……みんな」

モノクマ「はいどーぞ皆さん!これが全てを明らかにするDVDです!」


ドサッ


宗介「段ボール……あの中に入っているのか」


モノクマ「皆さん一人一人に用意してますから、
     自分の名前が書いてある席に座って、正面のモニタで映像を再生してね!」

モノクマ「ちゃんと、最後まで見るんだよ……?うぷぷ」

桑田「お、おい……ふざけんなよ」

桑田「今度こそ、やべえ感じじゃねえかよ」

桑田「おい、二年って……マジなのか?」


ドンッ


十神「どけっ!!」

十神「どれだ……!?俺用のDVDは!」

十神「ふざけるな、二年、二年だと!?」

十神「見てやる、ああ見てやるさ!真相とやらを!」

十神「クソッ!!」


舞園「わ、わたしも……!」

舞園「はやく見ないと……!」


「どけ!俺のをよこせ!」
「僕のはどれですかな!?」
「どけテメーら!!オレのが先だろ!!」
「あった!これだ……!」
「二年……二年……」


宗介「大佐殿……奴の言っている事が真実だとすれば」

テッサ「信じられない……はやく、今すぐTDDにもどらなければ……!!」

テッサ「今も、アマルガムが動いているかもしれない……。
    この件とアマルガムが繋がっていないとしても……!」


宗介「昨日目覚めた時の違和感……」

((まるで、何日も眠っていたかのような感覚……))

((記憶を弄られた脳のギャップだと思っていた))

((だが、その感覚は何かの勘違いなどではなかった……?))


宗介「【実際に2年間もの記憶を飛ばしていた】のか……!」

テッサ「あり得ない……。一時的な記憶の喪失を誘導するとしても、
    ここまで正確に狙った部分のみを取り除くなんて!」



モノクマ「あり得ないなんてあり得ないよね?うぷぷ……」

モノクマ「そもそもさあ、ASを見てみなよ。あんな殺しの兵器を作れちゃうほうがあり得ないんだよ?」

モノクマ「【オマエラの存在が一番あり得ない】だろ!」


宗介「黙れ……!」

((わざわざ指示通りに動いたり、言葉を交わす必要など、ない))

((だが……。事実、何がどうあっても世界の状況を俺たちは知りたい))

((TDDは……ミスリルは、アマルガムはどうなっている))

((千鳥は……!))


・・・
・・


モノクマ「やっと動く気になったみたいだね相良クン」


宗介「黙れ……」


・・・
・・



モノクマ「全員、自分用のブースに入ったようだね」

モノクマ「うぷぷ……今頃どのへんかなあ?一年目の学校生活のとこらへんかなあ?」

モノクマ「お姉ちゃんはどうおもう?うぷぷ」


戦刃「……はやくいかせて!」


モノクマ「……はぁー。白ける」

モノクマ「考えろよ!行かせるわけないっしょーフツー!」

モノクマ「あのさー……さっきは忘れてないとか抜かしてたけどさ」

モノクマ「やっぱ忘れてんだろ?お姉ちゃんさ」

モノクマ「……アタシらは何なのかを。言ってみなよほら」


戦刃「……それは」

戦刃「超高校級の……【絶望】」


モノクマ「はっはーーーー!」

モノクマ「なんだ、忘れてなかったのか!」

モノクマ「……じゃあ、どうして逃げようとするのかな?」

モノクマ「マジ……今のお姉ちゃん絶望的に臭いよ」

モノクマ「いや、もともと臭かったけどさ」

モノクマ「くさやもかくやってレベルで臭い」


戦刃「……」


モノクマ「かーーーー!だんまりかよ!クセーッ!」

モノクマ「じゃあ、端的に言ってやるけどさあ」

モノクマ「絶望の片棒担いでるくせに……絶望から逃げんなよ」

モノクマ「こっちは分かってんだよ?お姉ちゃん?」




モノクマ「お姉ちゃんが、絶望なんて指先ほども愛していない事なんてさあ!!」

モノクマ「……変な話、それが最高の絶望だけどな」


戦刃「!!」

戦刃「そんな事……ないよ、盾子ちゃん」

戦刃「私はただ、盾子ちゃんの望むようにやってきただけ」


モノクマ「ハッハーーそうだよ!その通り!」

モノクマ「今まではそうだったね!」

モノクマ「考えることを停止して言われた事だけをやる!」

モノクマ「思考を介したら絶望でおかしくなっちゃうもんね!」

モノクマ「残念ってもんじゃねー!なんて楽な仕事だよ!」

モノクマ「希望も絶望も抱く事がない。都合がいいよね」


戦刃「……」

モノクマ「まるで機械じゃん!クールだねー」

モノクマ「血の通っていない動く兵器……まるでASだあ、お姉ちゃん?」

モノクマ「人間サイズのASだよそれこそ」

モノクマ「仕事だけは的確にやってそれ以外は何もしない!
     よかったよそれで!残念なお姉ちゃんではあったけど!」

モノクマ「それでよかったんだ!アタシの計画に支障はないから!」


モノクマ「……苗木に絡まれるまではね」


戦刃「……苗木、くん」


モノクマ「どんだけ好きなのか知らないけどさあ」

モノクマ「部屋に連れ込まれてテンション上がってんじゃねーーよ!」

モノクマ「フツーのギャルがレーションとか知ってるかよ!クソ残念だわ!そんなん相良だけでいいだろ!」

モノクマ「見てるこっちが臭すぎて吐きそうだったわ」


戦刃「ごめんなさい……」


モノクマ「仲間とか言われて……何照れてんの」

モノクマ「あと一言でも余計な事言えばバレそうな状況だったからさ……ぱぱっとやっちゃおうと思ったわけよ」


戦刃「……ごめんなさい。ごめんね盾子ちゃん」




戦刃「だけど……どうしても」

戦刃「お姉ちゃんに任せて、おねがい盾子ちゃん」

戦刃「もう、これ以上みんなを絶望させてもどうにもならないよ」


モノクマ「……」

モノクマ「……」


戦刃「……?」

モノクマ「……」

戦刃「盾子ちゃん?」



モノクマ「……」

モノクマ「……あっ、そっか」


戦刃「?」


モノクマ「……そっか、そうだよね」

モノクマ「気が変わった」


戦刃「え?」


モノクマ「いいよ 行っちゃえば?」


戦刃「盾子ちゃん、いいの!?」


モノクマ「だめに決まってるっしょ」

モノクマ「うぷぷ……だからいいんだよ 行っちゃえば」


戦刃「ど、どういうこと」





モノクマ「絶望してるんだよ!!」

モノクマ「……ぁぁぁ」


盾子「!」

最後の一行ミス


×盾子「!」  →  ○戦刃「!」

モノクマ「はぁぁぁ……最高……!」

モノクマ「お姉ちゃんに……まさかお姉ちゃんに裏切られるなんて……最高すぎ……」


戦刃「盾子ちゃん」

戦刃「わたし、裏切ってなんか……」

戦刃「それに、私は、正しい事だって信じてる……!」


モノクマ「自覚のない所も絶望……!」

モノクマ「はぁっ……はぁっ……最高……!」


戦刃「……」

戦刃「大丈夫、もうすぐ絶望なんか無い世界が待ってるから」


モノクマ「ほら もういいよ」

モノクマ「マジ目ざわりだから 行けよ」

モノクマ「希望なんかないのに、あるように思ってる残念なお姉ちゃん」

モノクマ「さようなら」


戦刃「……盾子ちゃん」

戦刃「さようならじゃないよ。また会えるから」

戦刃「ありがとう……行くね」


ダッ


モノクマ「行った」

モノクマ「うぷぷ……うぷぷぷ」




モノクマ「もう……会えないのに……うぷぷ」

・・・
・・



---視聴覚室・宗介のブース---


カチッ


宗介「……」


ガタッ


モノクマ「お?」

モノクマ「一番最初に再生を終えたのは相良クンか!」

モノクマ「うぷぷ。どうだった……?絶望だよね!」


宗介「出鱈目だ……偽造された映像だ……!」


モノクマ「残念ながら本当だよ。嘘偽りは一切含まれておりません」


宗介「……真実だというのか」

宗介「貴様と同じ顔の仮面をつけている集団が、暴れ回っている映像があった」

宗介「今も……学園の外では、暴徒たちが町を荒らしているのか」


モノクマ「そうだね。校舎の入り口に大きなゲートがあったでしょ?」

モノクマ「あれはね、学園生が外の暴徒から身を守る為に自分で作ったものなんだよ」

モノクマ「っていうか、その辺についても全部DVDに入っていたよね?」

モノクマ「うぷぷ、信じられないっていう事かな?うぷぷぷ……」


宗介「陣代高校は……?東京の街は……?」


モノクマ「お察しの通りです」


宗介「記憶は……本当に、二年前から丸ごと消えているのか」


モノクマ「もちろん。僕がやったんだよ」

宗介「なぜだ……なぜ俺たちはシェルターなどに入った……」


モノクマ「戦刃むくろは強かった」


宗介「……」

((何の話だ))


モノクマ「白兵戦はもちろん、ASに乗らせても一流の腕だったんだよね」

モノクマ「アマルガムが、ついついなぜかちょっかいを出してしまいたくなるほどにね」


宗介「アマルガムが……だと」


モノクマ「不思議だよねえ。世界にも一流パイロットってだけならたくさんいるのに、彼らは戦刃むくろだけを欲しがったんだよ」

モノクマ「うぷぷ……なんでかは分からないんだけどね?うぷぷ」

モノクマ「まあよく分かんないけど、その内分かるんじゃない?……ぷ」

モノクマ「あ、そういえば」


宗介「……」


モノクマ「今さっきね、戦刃さんは自らアマルガムのもとへ旅立ったよ」

モノクマ「なんか臭いこと言ってたけど、すごい必死だったから逃がしてあげちゃった」


宗介「……」

宗介「貴様、何をしたか分かっているのか……!」


モノクマ「分かってるよだから絶望してるんじゃない」

モノクマ「っていうかそんなに睨んでもさあ、な~~~んの威嚇にもならないの。知ってるよね?」

宗介「黙れ」



モノクマ「うぷぷ……さっきから震えが止まらないよ」

モノクマ「最高……このために生まれてきたのかな」


宗介「貴様……」

宗介「……しかし、ムクロがアマルガムに求められていたというだけでは理由になっていないぞ」

宗介「かつては共に戦った仲でも、気がつけば銃を向けなければならない相手になっていたという事など、戦場で生きていればよくある話だ」

宗介「なぜ、ムクロとアマルガムの関係が俺たちとかかわってくる」


モノクマ「うぷぷ、やっぱりそこが気になるよね」

モノクマ「そう……二年という年月は、いらぬ絆を生んでしまった……悲しい物語だね」

モノクマ「君たちは、アマルガムに目を付けられた戦刃さんを放っておけなかった」

モノクマ「利用されてしまう前にと、何度も自分たちと来るように説得していたんだよ」

モノクマ「だけど、戦刃さんはそれをよしとしない。うぷぷ、当然だよね。彼女は【絶望】の一人だったんだから」

モノクマ「そしてある日ついに、君とテッサが学校を離れなければならない日がきてしまう」

・・・・・
・・・・
・・・
・・



???日前





【緊急事態:諜報部より伝達。メリダ島基地周辺に不審な機影が集結しつつある模様。恐らくアマルガムの実行部隊と思われる】

【敵作戦規模は不明。ゲーボ9と合流し、至急基地へ戻られよ】

【エンジェルはSRTウルズ9と東京陣代高校にて通常生活を続けていたが、先の絶望一党事件によりメリダ島基地にてTDD戦隊と合流】

【よって、現状ミスリル西太平洋戦隊の全戦力・全人物がメリダ島基地に集結】

【敵作戦規模は不明。ゲーボ9と合流し、至急基地へ戻られよ】




---希望ヶ峰学園周辺・並木道---


宗介「……大佐殿、もう少しで合流地点です」

テッサ「はぁっ……はぁっ……ええ、そうね……!」

宗介「あとほんの少しの辛抱です。今は走ってください」

テッサ「ええ……そうね……はぁっ、はぁっ……」

・・・
・・



---合流地点---


宗介「ウルズ7からゲーボ9へ、合流地点へ到着した。アンスズは無事だ」

宗介「アンスズは無事だ。合流地点へ到着した。以上通信終了!」


テッサ「急いで基地へ戻らなくてはなりませんね……ゲーボ9がヘリでここに到着するまで後どれくらいですか?」


宗介「予定時刻は今より15分後になります。周囲に敵がいては危険です。少し身を隠せる場所を探しましょう」

テッサ「……15分、ですか」

宗介「……?」



宗介「……!」

宗介「ムクロの事ですか」

テッサ「……お見通しというわけね」

テッサ「でも、いいんです。気にしないで。今はリスクを負うべき場面ではない、それは分かっているから」

テッサ(彼女……戦刃さんも一緒に連れて行きたい……確信は持てないけれど)

テッサ(彼女も、あるいは【狙われる人間かもしれない】から……。私の勘違いであればいいけど)

テッサ(データには無かった……なのに、彼女からはかすかに【感じる】……)


テッサ「いえ、……それは今は忘れておきましょう」


宗介「大佐殿……?」

宗介「15分後の到着……」


テッサ「……サガラさん?」

宗介「大佐殿をここで待たせるわけにはいきません……」

宗介「もし、本気でムクロに最後の説得を試みるのであれば、ここから学園まで大佐殿もご一緒に走ってもらう事になります」

テッサ「サガラさん……!?」


宗介「あなたが何を考えているのかは分からない……ですが、それは恐らく重要な事のはずです」

宗介「合流に支障はありません。2分で走れば問題ない」


テッサ「そんな、ここから正門へ回って入れば10分はかかります!」

テッサ「往復にすれば、合流時間を過ぎてしまう」


宗介「ここから近い場所に裏のルートを作ってあります。そこを通れば間に合う」

テッサ「裏ルート……?学園の周囲は高い塀で囲まれているのでは」

宗介「本来は学園内から脱出する予定で作ったのですが、緊急用の抜け道を用意してあります」

テッサ「サガラさん、いつの間にそんなこと……」

宗介「入学してすぐにですが……大佐殿、話すのであれば、あとでヘリの中で話しましょう」

宗介「ムクロを連れ出す説得をやるならば一分一秒が惜しい」


テッサ「ええ、そうね……ありがとうございますサガラさん」

テッサ「行きましょう」

宗介「はっ。……先程より少しスピードをあげます。気を付けてください」

・・・
・・



テッサ「はぁっ……はぁっ……」

テッサ「っく……うぅ、ふぅ……」

宗介「大佐殿、想定より時間が経過しています。お疲れのところ申し訳ありませんが……」

テッサ「ええ、分かっています……急ぎましょう」

テッサ「足を引っ張ってごめんなさい……ここへ来るまでだって、何度も転んでしまって」

宗介「いえ。とにかく行きましょう。校舎の入り口はこちらです」




---希望ヶ峰学園・校舎前---




テッサ「……!?」

宗介「なんだ、このゲートは……」

テッサ「校舎を間違えた事もありませんし、正真正銘いつも通っていた校舎のはずです」

宗介「……訳が分からない。何かが起こっているのか?」

テッサ「ここ最近は基地への報告ばかりで学校に来れていませんでしたからね……」

テッサ「【例の事件】の影響が悪化して、防弾扉を用意したのかも」

宗介「それにしても重厚すぎる作りだが……いや、言っていても仕方がない」

宗介「行きましょう。ムクロをそこまでして連れて行きたい理由……」

宗介「……申し訳ありません、出過ぎた疑問です」

テッサ「……あなたには知る権利があるわ」

テッサ「上手くいけば、ヘリで話しましょう」

宗介「……アイ・マム」

・・・
・・




---希望ヶ峰学園・校舎内---


テッサ「戦刃さんは、この時間体育館にいるはず……」

宗介「……」





---体育館---


テッサ「戦刃さん!いますか!?」

宗介「……?」





宗介「大佐殿!待って下さい、様子がおかしい」

テッサ「……?」

宗介「そしてムクロはいないようです……もう時間がない、ここの雰囲気はまずい、出なければ……」


((なんだこの雰囲気は……))

((誰もいない……はずだ。この場所には))

((だが明らかに何らかの意志が働いている……殺意?違う、悪意でもない))

((俺はこの感覚を味わった事がある……傭兵時代だ))

((ただ空虚で……中身のない、ただ動くだけの、ただ標的を狙うだけの……そこに生命はないかのような))

((確か、これは味方だったはずだ……だが))


((そう……今回は、あの時とは違う……。
  今回は、俺たちが……狙われているんだ))

((これは……この感覚を持たせる奴は……!))



宗介「【ムクロ】ッ!!」

戦刃「……」

続きは本日中になんとかします
書き上がっているのは本当です

本当にすいません。本当にすいません。真剣に今日中に終わらせます
すいません

戦刃「テッサ……セガール」


テッサ「! ……戦刃さん!やっぱりここにいたのね!」

テッサ「ゆっくりと説明したいけれど、そうしている時間はないの。……ごめんなさい」

テッサ「私たちについてきて。状況については後で全てお話しします」


宗介「いや……大佐殿」


テッサ「……?」

テッサ「サガラさん?ごめんなさい、そこをどいて」

テッサ「お話をしているのに、塞ぐように立たれては困るわ」


宗介「……ムクロの様子がおかしい」

テッサ「……?」


戦刃「……」




テッサ「!」



テッサ「サガラさん、いやです……!」

テッサ「冗談はよしてください……彼女が、何かするはずが……!」


戦刃「……ッ!!」ヒュッ


テッサ「!?」


宗介「!!」


((ナイフ……ッ))

宗介「……!」ヒュッ



((やはり強い……なんという動きだ))

((上段突きからは身を屈ませて回避したが、それより低い場所まで腰を落としてまだ突き上げてくる……ッ))

((ガウルンやザイードとは……))

((比べ物にならない才能だ……!))


宗介「くっ!」カンッ

戦刃「ッ……!」


((なんとかこちらも抜けた……))

((胸のグロックに手を伸ばす時間はなかった。腰のナイフでしか抗えない))

((今ムクロが放った刺突、首を狙ってきていた))


宗介「なんのつもりだっ!」

宗介「こんな事をするつもりで来たわけではないッ!!」ヒュッ

戦刃「答える必要はない」スッ カンッ

宗介「テッサの言う事を聞けッムクロ!」

宗介「彼女は……!」

戦刃「……」


宗介「彼女はお前に何かを感じている!」ヒュッ

宗介「俺には分からないが……っ!」ヒュンッ



戦刃「……」シュッ

宗介「くっ……」


((まずい……ここで時間を食われては……!!))

((なんとしてでも連れて帰るぞ……ムクロ!!))


テッサ「ああ……!なぜこんなことに……」

戦刃「ッ!」ヒュッ

宗介「ふッ……!」


テッサ「……」

テッサ「……戦刃さん!こんな事をしている場合じゃないの!時間が……!」ダッ

宗介「!?」


戦刃「……」

宗介「大佐殿!出てきては……ッ!?」



戦刃「出てくるから……」ヒュッ

宗介「!!」

((スペツナズ・ナイフ!))

((まずい、刃が飛ぶ……!))



テッサ「きゃっ!?」

宗介「ッ!!」

・・・
・・



戦刃「……前から、セガールには思っていた事がある」


宗介「はぁっ……はぁっ……」

テッサ「サガラ……さん?」


戦刃「今の、私の攻撃……例えば、私たちが逆の立場だったとしたら、問題なくかわせていた」

戦刃「テッサも傷つける事なく、もちろん自らもノーダメージで」


宗介「……」

((それは……認める))

((戦刃なら……可能かもしれない))


戦刃「傭兵時代から、ずっと思っていた」





戦刃「―――あなたには、才能がない」


ガンッ


宗介「っ――……」

ドサッ


テッサ「サガラさんっ!」


戦刃「殺してはいない……テッサ、ごめんなさい、あなたも」


テッサ「―――っ!!」


・・・
・・



戦刃「盾子ちゃん……二人とも捕まえたよ。眠らせてある」

戦刃「うん……うん、分かった」







戦刃「記憶、奪うんだよね。……わかった」


・・・・・
・・・・
・・・
・・




---希望ヶ峰学園・現在---


宗介「そんな……バカな……」

宗介「この二年間で、そんなことになっていた……!?」

宗介「……ならば、俺達は、全てに失敗したというのか……?」


モノクマ「その通りだよ」

モノクマ「もうなんの救いもないね……うぷぷ」


宗介「……あ、あぁあ……!」


ガタッ


ガタッ


「終わりだ……もう、死ぬしかない」
「もう何も待っちゃいない……絶望しかないじゃないか」
「あ、ああ……なんてことだ……」
「うっ……うっ……ぐず、ず……ひぐっ……」
「…………」


モノクマ「他のみんなも再生が終わりつつあるね」

モノクマ「うぷ、うぷぷぷ……」

モノクマ「再生も終わって……希望も終わる」

モノクマ「あははは あーーーーーはっはっは!!」


苗木「……」

苗木「……」

苗木「ダメだ……」


モノクマ「そう。もうダメなんだよ」

モノクマ「あーあ。せっかく山場として投票タイムやろうと思ったのにさー。必要なさそうだね」



苗木「ダメなんだよ……」


モノクマ「そうそう。ダメなんだって」

苗木「ああ……ダメだろ?だって」



モノクマ「ダメダメうるさいなー。まあダメなんだけど」


苗木「そうだ……ダメなんだ!」


苗木「絶望なんかに負けちゃダメだ!!」



「「「!?」」」

葉隠「苗木っち……?」

苗木「みんな、もう映像は見たと思う」

苗木「……世界が、本当にこうなっているとしたら、大変だ」


モノクマ「『としたら』じゃないんだよ 事実そうなっているんだから」


苗木「お前は黙ってろ!」


苗木「僕は……僕のDVDには……」

苗木「カーテンもソファも引き裂かれて……家族もいなくなってしまった、僕の家が映っていた」

苗木「こんな事、考えるのは嫌だけど……帰る家は、もう無いのかもしれない」


モノクマ「無いよ。事実」


苗木「黙ってろって言っただろ!」


苗木「みんな、それぞれ……大切なものとか、守るべきものが、あると思う」

苗木「それが絶望に侵されて、今はみんなの心さえも絶望に飲みこまれようとしている」

苗木「だけど、ダメだ。絶望なんかに負けちゃダメだ!」

苗木「希望を捨てちゃダメだ……僕たちは生きている……!」

テッサ「……そうよ。みんな。もういちど目を開いて」

テッサ「苗木くんの、言う通りです!」

テッサ「これがモノクマの狙いだったのよ……!」

テッサ「私たちを絶望に陥れる事が!……ひいては世界の希望を根絶やしにする事が!」

テッサ「諦めないでください……!」

テッサ「たとえ、あなた達全員が、行き場をなくしたとしても……!」

テッサ「生きている!あなた達は生きていると言う事を忘れないで!」

テッサ「外に出れば、いくらでも生きようがあります!」


モノクマ「……やーっと面白くなってきたね」

モノクマ「じゃあ、いよいよ最高の山場を始めようか!!」

モノクマ「このために用意してあるとっておきの場があるんだ、みんなついてきてーー!!」


モノクマ「その面を絶望に塗り替える瞬間が待ち遠しいなあ」

モノクマ「うぷぷぷ。最高に『ハイ!』ってやつだあああはははははーーーっ!」

---希望ヶ峰学園・裁判場---


苗木「ここは……?」

テッサ「【このため】と言っていましたから……なにか重要な目的のある部屋なんでしょう」


桑田「おい、見ろ、誰かいるぞ!」

大和田「あん?」





???「ようこそ。待っていましたよ」

???「遂に、この時がやってきたのですね」

???「残すは投票タイムのみ……唯一無二の終焉の時です」


苗木「き、君は……!!」





苗木「……江ノ島さん!!」

テッサ「江ノ島、盾子……本物ね」

テッサ(やはり、学園に閉じ込めた黒幕は江ノ島盾子……!)

宗介「貴様が……!」


江ノ島「おおっと相良!てめーの席はこっちじゃねーぞ!そっちだ!しっしっ!」


宗介「!」

((関係あるものか……無理やり取り押さえる!))

宗介「……っ!」ダッ


江ノ島「私を!」


宗介「っ!」


江ノ島「……私を殺せば、学園からは出られなくなりますよ」

江ノ島「脱出用スイッチのありかを知っているのは私だけですから……」

江ノ島「大人しく、自分の席に戻ってください」


宗介「……くっ!」


江ノ島「よ~しっ、みんな自分の立ち位置に着いたね☆」

江ノ島「じゃーあ、絶望真っ只中のみんなに、今からやる事を説明するよ☆」

江ノ島「あのね、真実も明らかになった事だし、いよいよ総決算をしようと思うんだ☆」


苗木「総決算……?」


江ノ島「そうだ、苗木」

江ノ島「お前たち希望の象徴がコロシアイをしている場面を【視聴者】にお届けするのが、最初の目的だった」

江ノ島「だがな、私の双子の姉、戦刃むくろはやってくれたよ……苗木には違和感を看破されるし、
    邪魔になったので消えてもらおうとすれば、しぶとく生き残る」

江ノ島「残念この上ないことをやってくれた。おかげで予定は大幅に狂っちまったのさ」





テッサ(双子の姉……)

テッサ(ということは、江ノ島盾子もまた……?)

江ノ島「狂っちまったなりのシメ方が、今からやる投票タイムだ」

江ノ島「希望の象徴であるお前らと、絶望の象徴である私……どちらが制裁されるべきか決めるのさ」


霧切「教えなさい……視聴者とは……」


江ノ島「あん!?おいおいどーした霧切!?なんか声がでてねーぞ!?」

江ノ島「あっ。……ははーん、分かったぜ!」

江ノ島「あらかた、さっきの映像を見て不安に思ってんだろ!」

江ノ島「……希望ヶ峰学園の学園長のことをよ」


霧切「……そんなこと、今はどうだっていいわ」

霧切「視聴者?どういうことなの……説明して」


江ノ島「……つれないですね」

江ノ島「ですが、はい……分かりました……そこまで言うなら」

江ノ島「実は、あなた達希望ヶ峰学園の生徒15人は、
    監視カメラを通じて、電波ジャックされている世界中へ生中継されているんです……」

江ノ島「希望であるあなた達がコロシアイをしている様を見れば、わずかに希望を抱いている者もたまらず絶望してしまう事でしょう……」

江ノ島「それが目的なんです……隠れて希望をもっている外の人達を絶望させるために、世界の電波をジャックしているのです」


舞園「……うそ」

桑田「冗談じゃねえ……おい、冗談じゃねえぞ!!」


江ノ島「冗談じゃありません。マジです」

江ノ島「霧切さん、これが、視聴者についての説明です」



江ノ島「あぁ、あと……」




江ノ島「霧切仁ですが、彼は私たちによって殺されています」


霧切「!」

霧切「そう……」


江ノ島「痩せガマンは良くないよ?」

江ノ島「うぷぷ……いいね、いい顔だよ!」


霧切「……」


江ノ島「ま、いいや☆」

江ノ島「それじゃあそれじゃあ、投票タイムの詳しい説明をするよ!」

江ノ島「みんなには、希望と絶望、どちらがおしおきを受けるべきかを投票してもらいます☆」

江ノ島「あのね!ここで重要なのが、多数決じゃないっていうことなんだ!」

江ノ島「希望側がおしおきされるべきという票がひとつでもあった時点で、私の勝ちなの!」

江ノ島「そうなった時の、みんなへのおしおきの内容は~……」


葉隠「内容は?」ゴクリ




江ノ島「このまま、この学園内でず~っと生活し続けてもらう事で~~す☆」

霧切「ずっと……このまま?」

大和田「ここで暮らせって言うのかよ?」


江ノ島「その通りさ」

江ノ島「このまま、穏やかに、穏やかに老衰していってもらうんだ」

江ノ島「それが、お前たちが負けた場合のお仕置きさ」

江ノ島「私が負けた場合は、すぐにお前たちをつまみ出させてもらう」

江ノ島「映像で見てもらったように、空気も汚染され、人々は狂い争う外の世界にな」


桑田「お、おい、それって……」

山田「学園内で生きる事を選択すれば、身の安全は確保されるという事ですな」

セレス「そのようですわね。命だけを考えれば、圧倒的に安全ですわ」


江ノ島「あぁそうさ。安全は保障するぜ!」


葉隠「しかも、外は荒れ切ってるべ……」

腐川「……出たいけど、外に出たいけど!」

腐川「……どうしようもないじゃない!中に残るしか……!」


江ノ島「はっはーーーー!いいぜいいぜその顔!大好物だ!」

江ノ島「さぁさぁそろそろ時間だ!心の準備はいいか!?」

江ノ島「じゃあいくぜ!全員手元のボタンで投票―――」


テッサ「まだ早いわ!」

江ノ島「あん?」

苗木「テッサ……?」


テッサ「外が、荒れ切っていようと……暴徒と化した人々がうろついていようと」

テッサ「諦めてはいけません」


江ノ島「あーうっせーよまたソレか!」

江ノ島「希望に足る証拠もねえのに人の心が動かせると思うなよ!」


テッサ「証拠ならあります」

テッサ「私たちは、外に出ても生きて行ける」

テッサ「皆さんには話していませんでしたが、私とサガラさんには、普段拠点にしている場所があります」

テッサ「世界に放送されているので場所は言えませんが……間違いなく存在します」

テッサ「ここを出たら、私たちの基地であなたたち13人を全員保護します!」

テッサ「だから諦めないで!閉じ込められたまま、生きながらに死ぬような選択をとらないで!」


江ノ島「……諦めるしかないというのに」

江ノ島「どうして、そう希望に縋ろうとするんですか……」


葉隠「……あっ!」

葉隠「そうだべ!相良っちとテッサっちは警察だったべ!」

葉隠「ここを出れば、きっと助けてくれる!その手があったべ!!」

朝日奈「警察じゃないって言ってたでしょー」

朝日奈「……でも、そうだね、テッサがそう言ってくれるなら出てみようよ!」


江ノ島「……」

宗介「……そうだ。諦めるにははやい」

宗介「俺たちの仲間は強い。世界が混乱に巻き込まれていようと、決して負ける事などない」

宗介「大佐殿の言う事は信じろ。本当だ。あいつらなら今頃、世界を飛び回っているはずだ」

宗介「そうだ……外に出れば、俺達は俺達だけでなくなるんだ!」


江ノ島「……っはぁ」


苗木「みんな!相良クンが言ったとおりだよ!」

苗木「こんな中に閉じ込められて暮らすなんて、生きてるなんて言えないよ!」

苗木「外に出て、希望を見つける事が希望なんだ!」


江ノ島「うーん……」


苗木「誰も!お前になんて負けない!!」


桑田「そうだよ!」

大和田「応」

腐川「そ、そうよ……」

さくら「外に出なければ……修行もままならぬからな」

霧切「希望を見つけようとする事が希望……その通りかもしれないわね」


江ノ島「……」


テッサ「さあ、投票タイムといきましょう」

テッサ「あいにくだけど……」

テッサ「希望側のおしおきに流れる票を期待するのは、止めておいた方がいいわね」

宗介「そうだな」

宗介「江ノ島、始めろ。そして俺達を出すんだ」

江ノ島「……」


苗木「……おい、なんとか言ったらどうなんだ」

苗木「投票タイムなんだろ?」


江ノ島「うぷぷ」

江ノ島「うぷぷ……」


苗木「!?」

石丸「なにがおかしい!」

テッサ「……」


江ノ島「うぷぷぷ」

舞園「まさか……まだ、なにかあるというの?」

大和田「嘘だろ!」


江ノ島「嘘じゃないんです。これが」

江ノ島「ふふ……それでは、みなさん、あのモニタにご注目ください」




江ノ島「―――今から再生するのは、一年前のメリダ島基地です」


宗介「!?」

宗介「貴様……なぜ基地の名を」

テッサ「……何をした!?」


江ノ島「それをご覧いただこうというのです」


江ノ島「あ、それと一応。私は何もしていませんので。これに関しては」

江ノ島「じゃ、再生スタート☆」


・・
・・・


宗介「こ、これは!!」

テッサ「本当にメリダ島基地……!!」



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

---ミスリル・メリダ島基地---


傭兵A『くそッ!なんだってこんな時に攻めてきやがる!!』

傭兵B『こんな時だからだろ!』

傭兵C『アマルガムの奴らめッ……!完全にここを潰すつもりで来てるのか!?』


クルツ『落ちつけお前ら。匿ってるカナメに聞こえたらどうする』

クルツ『ヤンがなんとかここまで連れ帰ってくれたが……彼女はかなり憔悴しちまってるんだ。
    俺たちがそう騒ぎ立てちまうと怯えるだろ』

クルツ『それによ……アマルガムの奴らだが』

クルツ『ソースケもテッサもいねえ。そんな状況で襲ってくるんだ。潰す気に違いねえって』

クルツ『だからこそしのぎ切るんだ!二人が帰って来たときに乗っ取られてたら合わせる顔がねーだろ?』


傭兵A『そうだが……』

傭兵B『ちくしょう……だがよ、どうしてこんな時期に二人はいないんだ!?』


クルツ『ボヤいても仕方ねーさ。テッサたちは超重要別任務の真っ最中なんだからな』

クルツ『とにかく、今はやるしかねえ。おいお前ら!テッサにもう一度会いたかったら勝つしかねえぞ!』


マオ『向かってくる敵勢力の詳細が判明したわ!傾注!』

クルツ『っと……大尉がきたか』


クルーゾー『アマルガムが総攻撃をしかけてきた。予想以上の戦力だ』

クルーゾー『ベヘモスが3機、区間Gから侵攻してきている。40分以内にこの基地は射程範囲内となる』

クルーゾー『エンジェルを徹底的に守れ。いいな!!』


クルツ『お、おいおいベヘモス3機!?』

マオ『……焦んな。とにかく、作戦範囲に入る前に各地区への戦力分配を決めるわよ』

クルツ『……アー。そうだな……』


クルツ『ーーー……?』

マオ『ーーー、ーーー!』

クルーゾー『……、ーー。』


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

・・・
・・



宗介「ばか、な」

宗介「ち、千鳥……」

((千鳥も、基地にいたのか))

((巻き込まれて、いるのか))

テッサ「……」

テッサ(私たちのいない間に、アマルガムに総攻撃を……)

テッサ(しかもベヘモス3機……いままでにないほどの戦力)


江ノ島「うぷぷ。テッサは、みんなをここで匿うって言ってるんだよね?」

江ノ島「ねえ、今、メリダ島基地はどうなってると思う?ね~え~」


宗介「……」

テッサ「……」


江ノ島「おい!急に静かんなんなよ!」

江ノ島「仕方ねえな!見せてやるよ!この後ここがどうなったかをよ!!」

江ノ島「VTR!スタート!」


・・
・・・

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

---ミスリル・メリダ島基地---


『……』

『……』

『……』


『残存兵力の消滅を確認、どうぞ』

『A,B区間を制圧』

『制圧了解』

『了解 通信終了。……』

『はっ……ミスリルっつってもこんなもんか』

『高い高いM9をこんなにしちまってよー』

『……あん』


グシャ


『ひでぇこった。こいつは狙撃翌用のM9か?』

『ここまでぶっ壊れたら、パイロットもお陀仏だろうな』

『はっは。許してくれよ?恨みっこなしだぜ』


ドグシャ


『お?つづきましてなんだこいつは』

『あー。確かアレだ。最大警戒対象のASじゃんか』

『ARX……なんだっけ?アーバ……なんとか?だっけ?』

『どんなに強いASでもパイロットがいねーとこれだもんな。仕方ねーわ』


グッシャグッシャ


『ひでえひでえ。スクラップかよ』

『あんまり踏んづけたら祟られるんじゃねえの?』

『はっはーーー!傑作!ASが枕元に立ってたらそりゃ卒倒するわ!』



アル≪……サー……ジ≫



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

・・・
・・



宗介「……!」

((クルツか……!?アルも!))


テッサ「あ……」

テッサ「……!」


江ノ島「あはははっはーーーー!!」

江ノ島「いいねいいね!最高だよその面!!」

江ノ島「はーーー計画通りすぎてつまらんわ!」


江ノ島「お前らが基地に誘導することなんざ余裕で分析してたんだよ!!」

江ノ島「それを目標に皆が希望をもつことも分かってた!」

江ノ島「だからここまで引っ張って来たのさ!ははははーーーっ!!!」


朝日奈「え……どういうこと……?」

葉隠「け、警察の本庁が、潰されちまったのか?」

桑田「馬鹿かよ……規模が違っただろ警察じゃねー……それが制圧されちまったんだよ」



桑田「つまり……もう、最後の希望すら叶わないってことだろ」


腐川「は」

腐川「はは、ははははははははっ」



腐川「……もう嫌よっ!!!」


十神「……っ」

十神「……っ」


腐川「誰も助けてくれない!外にはだれもいないの!!」

腐川「最後の希望だって、結局江ノ島の掌の上だったのよ!!」

腐川「……ひぐっ、ぐず……も、もう……」

腐川「もう、この学園で一生を過ごせばいいじゃない……!」

腐川「外に出たら、ASにひねり潰される!もしそれを避けたって汚染した空気を吸って死ぬ!」

腐川「そうなるくらいなら……!ここにいた方がずっとましよ!」


江ノ島「うぷ、うぷぷぷ」


葉隠「もうだめだ……おしまいだべ……」

葉隠「こいつは……最初から希望なんて残してなかったんだ……」

葉隠「……」


不二咲「こんな事ってないよ……こんな、こんな事……」

セレス「……投票を、するのですね」


江ノ島「ああ、そうだね。もう残すものはないから、さっさと終わらせよう」

江ノ島「くく……すっかり絶望の色に染まったな。だがそれがいい」

江ノ島「さあ、行くよ。絶望のエンディングだ……!」


苗木「!」

苗木「みんな……絶望に染まっちゃだめだ……!」


江ノ島「つくづくつまんないね、苗木も」

江ノ島「ま、いいや、さっさと終わらせちゃお」

江ノ島「はい、投票タイムスタート。みんな、希望か絶望、どっちがおしおきされるべきかボタンを押してね」


苗木「希望は、僕たちの中にあるんだ……」

苗木「例え外が絶望だらけでも、何も無い世界だったとしても!」

苗木「希望は作りだせるんだ、それこそが希望だ!!」


江ノ島「あー、うるさいしクサいし、絶望的に頭悪いんだね苗木」

江ノ島「ていうか、希望希望言いすぎてさ、
    だんだんワケ分からなくなってきてない?大丈夫?言ってる事意味不明だよ?」


苗木「くそっ……!みんな、耳を貸しちゃだめだ……!」


「「「……」」」


山田「……とは言っても、事実……僕たちには、もう何も残されていないのですが」

山田「苗木誠殿こそ、もう一度よく考えるべきでは?」


舞園「苗木くん……ごめんなさい」

舞園「私だって、私だって本当は外に出たい!みんなと会いたい……!」

舞園「でも、もう会えないんだよ……アイドルだって、もうできない」

舞園「いくらやりたい事があったって、不可能なんだから仕方ないでしょう……」

舞園「苗木くん、一回、学園の中に残ることにして、それから考えようよ」

舞園「考えなしに出たって……なにもできないよ」


苗木「山田クン、舞園さん!!」


「「……」」



江ノ島「――ハイ。私判定で苗木はもう無理です」

江ノ島「何言っても無理なんだから、早くボタンを押してくれるかな」

江ノ島「制限時間は残り2分ね それまでに決まらなかったら強制で私の勝ちで」

江ノ島「はい 一分とろくじゅーう ごじゅうきゅー ごじゅうはちー」

苗木「くそ……もう、もうダメなのか……?」

苗木「くそ……!」


江ノ島「ごじゅうななー ごじゅうろくー ごじゅうごー」


宗介「……」







江ノ島「はい、一分きったよー ごじゅうきゅー ごじゅうはちー」


苗木「……」

苗木「……」

苗木「もう、だめ、なの、かな」

苗木「……」


【おしおきされるべきは?】


→【希望】

【絶望】



苗木「……だめ、か」

苗木(【希望】……を、押すしか、ない……)

苗木(のか……)

江ノ島「ごじゅうななー ごじゅうろくー ごじゅ」







宗介「―――全員止まれ!!」



「「「!?」」」


江ノ島「……あん?」

江ノ島「どうした相良」


宗介「黙れ」

宗介「おい、全員聞いているな?よく聞け!傾注!」


宗介「二つのボタンがあるが、全員かならず【絶望】を選べ!!」


葉隠「……相良っち、何言ってんだ……そんなことしたら、外の世界に放り出されちまうんだぞ」


宗介「その通りだな。それが目的だ」

宗介「全員絶望のボタンを押すんだいいな」

宗介「今から点検に回る いいか、かならず絶望を押せ!!」


腐川「なんで、あんたに……指図されなきゃいけないの」

腐川「それに、私もう決めたのよ、希望を押すわ」


宗介「知るか!絶望を押せ」

腐川「し、知るか……ってあんた……」

宗介「俺は外へ出る!外へ出なければならない!」

宗介「邪魔をするというのなら、悪いが力ずくで従わせる」


石丸「ぼ、暴力で強制させるというのか相良君!?」

石丸「ダメだ!そんな事は認められない!」


宗介「知るか、絶望を押せ!」

宗介「俺は何が何でも外へ出るぞ、いいな江ノ島!」

宗介「何がどうあってもだ!必要ならどんなことだってやるぞ」

宗介「この10数人が従わないそぶりをみせるなら、指を折ってでもやらせる」

宗介「それでも抵抗するなら気を失わせてボタンを押させる!」


江ノ島「おいおい、自分が出たいからって無理やりかあ?」

江ノ島「ハッハーー!笑わせるぜ!そりゃあ外の狂い奴と変わりねえやり方だ!」

江ノ島「あっそうだ。ちなみに、制限時間はあと45秒ね」


宗介「知るか、絶望を押せ」

宗介「関係ない無駄口を叩く前に押せ!」

宗介「俺は出るぞ、世界がどうなっていようと出る!」

宗介「ミスリルがなくなっていようと、誰もいなくなっていようと!」


霧切「相良くん、何があなたをそこまで突き動かすと言うの」

霧切「……何も無い世界で、あなたの希望になっているものはなんなの?」


宗介「希望だと?」



宗介「……霧切、それに苗木」

苗木「え?僕も……?」

霧切「……」

宗介「お前たちには悪いが、この際だから言っておく」




宗介「――俺は、希望など持っていない!!」



苗木「え……」

霧切「……なんですって?」


「「!?」」

宗介「だが、勘違いするなよ」

宗介「絶望だってそうだ、俺は持っていない」


江ノ島「苗木に続いてお前までおかしくなっちゃったわけ?」

江ノ島「制限時間あと35秒ね」


宗介「テッサやお前たちと違って、俺は超高校級の才能など持っていない!」

宗介「高校生であり軍人でもあるのは確かだ。
   だが、才能として秘めた力などこれっぽっちも無いし、戦刃ほどスマートな戦いはできない!」

宗介「俺は凡人だ。普通の人間だ!だがこうやって無様に生きている!」


苗木「……」


宗介「……それは、なぜか?」



宗介「全力で生きなければ生きていけないからだ!」

宗介「決して才能を馬鹿にしているわけではない、ただ、俺にはそれが無いから分からない!」

宗介「希望だと?絶望だと?」


宗介「そんなものに構っていられるほどの余裕はない!」


苗木「……!」

苗木「じゃ、じゃあ……今、相良クンを動かしているのは何?」


宗介「聞きたいか……?教えてやる」

宗介「今、俺にあるものはただ一つだ!」


宗介「外に出て!千鳥を助けに行く!ただそれだけだ!!」

江ノ島「千鳥……ああ、千鳥カナメね」

江ノ島「……死んでたら?」


宗介「やる事に変わりはない!千鳥を攫った奴ら……アマルガム」

宗介「アマルガムが何を企んでいるかは知らない、どうでもいい!」

宗介「ただ、奴らのやった事の報復をするだけだ!」

宗介「クルツが殺された!アルも殺された!もしかすると、千鳥だってそうかもしれない」

宗介「俺は怒っているぞ、理屈など知った事か」

宗介「徹底的に邪魔をしてやるぞ、台無しにしてやる……!
   いつまでも日陰で湿りっぽく練り上げてきたゴミのような計画など、俺が潰してやる!」

宗介「いいかこれは希望なんかじゃあないぞ!決定事項だ!俺の意志だ!」


大神「……意志」


宗介「そうだ大神!貴様の人生の目標はなんだ!そもそもあるのか?」

宗介「いや、そんなことはどうでもいい、とにかく、やりたい事があるというのならば【絶望】を押せ!」

宗介「他の奴らもだ!」

宗介「俺は戦場で生きてきて、一度と生き方を変えた事などない!」

宗介「目の前にある目標を達成する、これだけだ!」

宗介「諦めてここで湿った生き方をするというのなら容赦はしない!今すぐに関節を外される痛みを味わわせてやる!」

十神「……目標?やりたい事……?」

十神「俺は……」


宗介「十神白夜、俺はよく知っているぞ!」

宗介「第3世代ASのメイン駆動系・マッスルパッケージの多くはお前の財閥から生み出されている!」

宗介「十神財閥が無くなれば俺は困る!だから立て!諦める事は許されないぞ」

宗介「基地でデータの一覧を見た時に書いてあったぞ、帝王学だと?」

宗介「実にくだらないな。帝王であろうが、アサルトライフルを持てば普通の人間と変わらん」


十神「なんだと?」


宗介「だが、このまま学園内で不満を飲みこみ生き続けると言うのであればさらにくだらん」

宗介「財閥を誇りとしているのであれば【絶望】を押せ!そして作り直せ!」

宗介「自主的に押せなければ俺が手伝ってやる!無理やりにだがな!」


十神「……」

舞園「相良くん、でも……」

舞園「私、メンバーともう一度会いたい。だけど……生きているかどうかも分からない」


宗介「俺だって同じだ、千鳥かなめという、俺の大事な人がいる」

宗介「映像を見たか、アマルガムに攫われたんだ」

宗介「今は生きているかどうか分からない。
   北朝鮮で実験に使われた少女がいた。その子と同じように扱われ、精神が崩壊し死に至っているかもしれない」

宗介「そう考えれば、全てにおいて最悪のケースなど想像に難くない」

宗介「ミスリルは崩壊し!千鳥は死に!アマルガムの計画は着々と進んでいる!かもしれない」

宗介「だが分からない!俺は外に出て確かめるぞ」

宗介「もし死んでいたとしても変わらない。これはさっき言ったはずだ」

宗介「舞園さやか、君はこのまま泣き寝入りするのか」

宗介「こんな目にあわせた,【絶望】とかいう狂った連中を、痛い目にあわせてやりたくないのか!?」


舞園「……」

舞園「私だって、爆発しそうな怒りは持ってるよ……。
   だけど、復讐したって戻ってこないものはあるし、それをすれば向こうの人達とやってる事が同じになってしまう」


宗介「そうか。ならば泣いて寝ているがいい」

宗介「俺は兵隊だ。だからそういう見方・生き方しかできない」

宗介「君のような優しい人間はそう考えてしまうのかもしれない」

宗介「だが、そうやって眠りに落ちれば、全て解決するのか」

宗介「何が起こっていて、何を失って、何を勝ち取ったのか」

宗介「それらの何も分からないままで、君の心は納得するのか」

宗介「それで、君はそのメンバーと真に向き合えたと思えるのか?」

宗介「……相手の命を奪うだけが報復では無い。やりようはいくらだってある」




宗介「すまない。以上はあくまで軍人である俺の意見だ」

舞園「……」


宗介「今すぐ答えが出せないのであれば、外で考えてくれ。悪いが時間がない」

苗木「……相良クン」


宗介「すまないな苗木、今までお前の希望という言葉に納得したフリをしていた」

宗介「いや、もしかすると、俺自身納得した気になっていたのかもしれない」

宗介「だが、それは違った」


宗介「俺は、希望などというすぐにぐらつくような不安定な物は嫌いなんだ」

宗介「目標を失えば一瞬のうちに崩れてしまう、信頼性のない代物だ」

宗介「俺は、そういった類のものは【相棒】を除いて持たない事にしている」

宗介「その相棒も殺された。そいつの復讐もしなければならない」


苗木「うん」


宗介「苗木、お前は、自分のとりえはちょっぴり前向きなところだけだと言ったな」


苗木「うん……」


宗介「それは、全ての人間が最も欲しがっている重要なタレントだ」

宗介「その本質さえあれば、お前は生きて行ける」

宗介「……苗木は、もともと押すボタンが決まっているだろうがな」


苗木「……へへ、もちろん」

苗木「ありがとう、相良クン」


宗介「礼を言うのは俺の方だ 今まで気付かなかった俺の根本を気付かせてくれた」




宗介「もう時間がない。残念だが、まだ出る気がない奴は―――」

宗介「……っ」



朝日奈「相良、あたし……あんた達に助けられてばっかりだね」

十神「フン……俺はもとから絶望に屈してなどいないがな」

大神「この大神さくらには……正しいと信じる信念があるっ!」

不二咲「私、出るよ。決めた。出る……みんなに、明かさなきゃならないことが、あるから」

葉隠「そうだ、俺やっぱり出たいべ!」

山田「この中にいては、僕の描いた本が誰にも見てもらえませんからな。当然ですな」

桑田「あー……クソっ、ダサい理由だぜ。もう一度野球がやりたいなんてよ」

桑田「……だけどよ、相良。それで十分なんだろ?」

大和田「相良、見直したぜ」


宗介「……どうやら、少佐仕込みの近接格闘術を披露できる機会は、無くなったようだな」

宗介「大佐殿……テッサ。君も、俺と同じ事を考えているだろう?」


テッサ「無論です。ただ……」


宗介「ただ?」


テッサ「驚いちゃいました。サガラさんって、思ったより熱い人なんですね」

テッサ「それに―――」

テッサ(大事な人、か)

テッサ(私って思ったより女々しいのね……こんなに胸にひっかかるなんて)

テッサ「いえ、なんでもありません」


宗介「そうですか」





江ノ島「つまんねえ」

江ノ島「つまんねえつまんねえつまんねえ!!」

江ノ島「絶望もっ……希望もないなんて、……!」

江ノ島「なにもない……?やめろ、絶望的につまんねえよ……!」

江ノ島「残り5秒……4,3,2,1」

江ノ島「……0」







【VOTE】


【GUILTY】


-クロ は 江ノ島 盾子 に 決まりました-



江ノ島「は」

江ノ島「ははは、はは」

江ノ島「はははははは……」


江ノ島「なにこれ、なんなのこれ……」



宗介「何なのかと言われてもな」

苗木「僕たちが、勝ったんだ。それだけだ」

テッサ「私たちは外に出るわ」

テッサ「出なくてはならない、理由があるから」


桑田「チッ、なんだかクセー話になったけどよ」

桑田「外には何があって何が無いのかなんて分かんねえ」

桑田「ただ、マウンドでボール投げてーんだよ。それだけ」


霧切「まだ、世界がこうなったいきさつも知らないの」

霧切「私は知りたい。だからここに留まりたくない」

霧切「それだけ」


江ノ島「あ、アタシが、お仕置きされる……?」

江ノ島「2年間、この計画のためだけに全てを費やして来たのに……?」

江ノ島「それって……そんなのって……」

江ノ島「ああ、今からアタシ死んじゃうのね」


宗介「おしおきと言っていたな……」

宗介「なるほどこの規模の施設だ。処刑できる手段などいくらでもあるだろう」

宗介「学園から出してもらえればそれで十分だ、さっさと脱出キーを出せ」


江ノ島「う、うぷぷ……」

江ノ島「うぷぷぷ……そんなのって」

江ノ島「そんなのって!」







江ノ島「最高じゃなあああああああああい!?」


苗木「!?」


江ノ島「最高の絶望よ……これって」

江ノ島「人生をかけた計画が、たった今おじゃんになって、それから死のうっていうんだから」

江ノ島「うぷぷぷ……やっと、最高の絶望、死を体験できる……!」


苗木「……死ぬ気か!」

江ノ島「死ぬ……?もうダメなのね、最ッ高……!!」


宗介「狂ったか」

テッサ「いいえ、サガラさん」


宗介「……?」


テッサ「彼女は、最初から狂っていたのよ」

テッサ「いや、【狂わされていた】……と言うべきでしょうか」

テッサ「本物の江ノ島さん。……彼女を見ているうちに、疑念は確信になりました」


宗介「大佐殿……?何を言っているのか自分には分かりかねます」

宗介「とにかく、今は奴をどうにかしなければ」

宗介「このまま死なせれば、アマルガムに繋がる手掛かりが本当になくなってしまう」


テッサ「ええ、そうね。彼女は死なせてはならないわ」

テッサ「……なんとしてでも、全てを聞きださないと」

テッサ「世界の状況を……そして、彼女自身のことも」


ガタン
 ゴトン


江ノ島「……処刑、すたあと……!!!」


 ガタンガシャ
  ガシャン


苗木「ま、まずい!装置が起動した……!?もう彼女の処刑が始まってしまう!」

朝日奈「でもでも!処刑っていってもどうすればいいのさ!?」

大神「……これは処刑装置か?こんなものをどこから用意したというのだ……!!」


ガコンガコン


桑田「テメー、おい……この装置は」

桑田「クソがッ!!」



ガタン ピー
 ガコン


江ノ島「うぷ……うぷぷ……」

江ノ島「うぷぷ」


ガタンガタン
 キュィィィィィィィン


宗介「……完全に目が終わっている」

宗介「分かる。奴は微塵も死を躊躇ってなどいない。むしろ楽しんですらいるぞ」

霧切「……この装置、全て人を[ピーーー]目的のものね」

霧切「ハッタリではないようね」


テッサ「なんとかして止めてください!!このままでは!」


大和田「応!!行くぜ!」

石丸「僕も行こう!まだ処刑は始まっていない!きっと間に合う!」


ダダダッ
 ダダダッ


江ノ島「無駄なんだけど……うぷぷ……アホらし」

江ノ島「観客のみなさんはマウンドに入って来ちゃあ……」

江ノ島「ダメなんですよ~!!……球が飛んでっちゃうかもですよ~~!!!」


大和田「あん……!?」

石丸「……とにかく走るぞ!!」

石丸「マウンド……マウンドだと?」


ダダダッ...
  タッタッタ...


大和田「マウンドだぁ~?何言ってやがる!」

大和田「おい、もっと飛ばすぞ石丸!あの野郎とっちめんぞ!!」


石丸「ああ……!」


ゴゴゴ……ガコンガコン
 ゴゴゴ……ガコンガコン


石丸「……!?」

石丸「待ってくれ、何か音が!」

石丸「!!」





石丸(この装置群、意識して見ていなかったが、野球のフィールドを模しているのか!)

石丸「これは野球場だ!」

石丸(そしてこの音……!?)

石丸「どこから……!?」


大和田「……あ、あれは」


 ガコンガコン


大和田「ガ、ガトリング機銃……!?」

石丸「いや、ちがう……装填されているものを見てみるんだ!!」

大和田「……!!ボール……!?」


大和田「野球場みてーな装置……マウンド……」


大和田「そしてこれは……【ピッチングマシン】か!!」



石丸(だ、ダメだ……既に装填し終わっている……!)

石丸(ピッチングマシンの様式をとってはいるが、その実ガトリング銃との差異は、出てくるものが【弾】か【球】かというくらいだ!)

石丸(到底野球に用いられる規模のマシーンには見えない……むき出しの破壊目的……!!)

石丸(こんなものを一身に受ければ……!)

石丸(なにが処刑だ……悪趣味すぎる!!)


大和田「間に、あわねえのか―――」

石丸(まずい……感覚がスローモーションになってきた……!!)

石丸(感覚が引きのばされている……江ノ島盾子の……絶望によって!)



江ノ島「バッターボックス!!オレだぜ!!!」

江ノ島「ピッチャービビってるゥ!ヘイヘイヘイ!!」



ガコン……
 ガ、……



【千本ノック-Million Fungoes-】



ヒュンッ―



大和田「た、球が投げられた――」

石丸「無理だ……彼女に直撃する――」


石丸(こんなもの……彼女の足元を崩して無理矢理に倒してやるぐらいしか方法が―――)

石丸(足首を掴んで……そのままの地面スレスレで通り抜ける事など、不可能では―――)


石丸「……!」




石丸(いや……)





「ぁ……ぉ……」

「うぉ……るぁ……!」



江ノ島「……?」



石丸「そうだ……【彼】なら!」




江ノ島「……!テメー……!!」


「うぉぉぉぉぁぁぁぁるぅぁぁぁぁぁぁぁ……!!」


江ノ島「桑田ァァァァァァァァテメェェェェェエ!!」


桑田「るぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」




石丸「【超高校級の野球選手】!!!」

桑田「すッ」


カクン


江ノ島「!?」

桑田「そこをッ!動くなよテメー!!」


ズザザザ
 ザザザザッ


石丸「!」

大和田「スライディングだ!」


江ノ島「んっ……!」ジタバタ

桑田「動くなっつったろアホ!」

桑田「クソッ、アホが!」


石丸「ああっ!」

石丸(まずい、掴まらない!)

大和田「球が、もう当たるぞ……!!」


桑田「うぉぉぉぉッ―――」

江ノ島「ッ――」



ズガンッ!

ズガンッ!
 ズガンッ!


ズガガガガガガガガガッ!!


ズガンッ!
 ズガンッ!



石丸「あ……ああ……!!」


苗木「桑田……クン……!!!」



・・・
・・



ズガガガガガ……!
ズガ……ガガ……!


ズガン
 ズガン……


……

……


……



苗木「終わ、……った?」

舞園「あ、あ……」

朝日奈「桑田……!!」


葉隠「せっかく勝ったんだぞ……?俺たち……そんなの、おかしいべ……」

葉隠「ここで死んじまったら……」


十神「……」

テッサ「サガラ、さん」

テッサ「確認……を」

宗介「……」

宗介「イエス、マム……!」


ザッザッザ


宗介「……」

宗介「……」




「……っ」

「……」

「あ~……ク、」


宗介「!!」


石丸「!」



桑田「ちっ、くしょう……やっと終わったか……?」

桑田「……あん?」



「「「桑田!!」」」


桑田「……んだようっせえ……」

桑田「……なんだ?死んだ奴が生き返ったみてーな顔しやがって」



石丸「いや、全くその通りだ……桑田君」

石丸「よく、生き返った……!」


桑田「アホかてめーら……」

桑田「ホレ、相良……荷物コレだろ」ドン

桑田「なんだか知らねーが、多分脱出スイッチじゃねーの?」


江ノ島「っ……」


宗介「……これは、校舎のゲートを開くキーか」

宗介「桑田、よくやった」

宗介「超高校級の野球選手、か」


桑田「……アホらしーぜ。ただのフックスライディングなのによ」

桑田「江ノ島の野郎をスピードで捕まえねーとダメだったから、フットファーストスライディングの応用しただけだっつの」


・・・
・・



大神「ひとつ訊きたい」


桑田「ぐげっ……オーガかよ……なんだよ」

大神「我らの目的は、ここから脱出することだけだったはずだ」

大神「江ノ島との勝負に勝った今、お前が命を懸けてまで奴を守る理由はあったのか?」


桑田「……あん」


大神「奴の命を留めておきたいのはテッサと相良だけだ」

大神「大和田と石丸が飛び出したのは、人情に厚い男だからと納得できるが……」

大神「桑田、主がそうであるとは思えない 何故ああしたのだ」


桑田「ッチ……俺の場合そう思えないってどーいう意味だよ」

桑田「……ボールは人を[ピーーー]ためのモンじゃねーだろ だからやったんだよ。マジでそれだけだっつの」


大神「ほう」

朝日奈「ふ~~~ん」

朝日奈「野球嫌いって言ってなかったっけ?」

桑田「うっせ!オメーにゃ関係ねーよ」



・・
・・・



---希望ヶ峰学園・ゲート前---


不二咲「あ、あの相良君……江ノ島さん、ほんとにこれで大丈夫なの?」

宗介「ああ、あのあと、意識を絶っておいた。しばらくは目覚めないだろう」


大神「そうだな、完璧に気絶している。
   しばらくは……このまま眠っているであろう」

大神「我が、担いでおこう」


宗介「すまないな、頼んだ」

宗介「無いとは思うが突然目覚めて暴れるかもしれない。気を付けてくれ」


大神「相分かった」

大神「先程の江ノ島の身のこなしを見て思った。なかなかできる」

大神「手合わせがしてみたいと思う程にな」


宗介「そうか……それはどこか落ちつけるところでやってくれ」


葉隠「いやーーーっ!ようやく出れるべ!」

朝日奈「私なにしようかな、とりあえず最初はドーナツ屋さんへ行こうかな!」

大和田「ドーナツ屋なんて、今の環境じゃあるか分からねえぞ?」

朝日奈「無かったら、つくればいいんだよ!」

舞園「うん、そうだね」

舞園「無かったら、つくろう!」


宗介「全員揃ったな……」

宗介「桑田から受け取ったこの脱出ボタンを押せば、出られる」

苗木「うん、そうだね」

苗木「いよいよ……外の世界へ」


テッサ「外の、世界へ」

テッサ(アマルガムとの、最後の戦い……)

テッサ(まずは、世界の現状を知らなくては)

テッサ(恐らく……ミスリルはもう、ないから)

テッサ(それに、ダナンも……きっと)

テッサ「でも、私はやるわ」


宗介「……そうですね、大佐殿」

テッサ「あら、もう呼び方を戻すんですか?」

宗介「え!……あ、いや、それは」

宗介「やはり呼びなれていますから。実際、学園内でも何度かそう呼んでしまいました」

テッサ「ふふ……厳重な処分が必要ね」

テッサ「あと、昨晩の事も、忘れないように」


宗介「あ……」

宗介「アイ、マム……」


苗木「ふうん、やっぱりテッサが大佐っていうのは本当なんだね」

テッサ「ええ、そうですよ」

苗木「ははっ、テッサの顔は一つしか知らないから、なんだか実感が湧かないね」

テッサ「そんなあ!私、やる時はやるんですよ?」

宗介「その通りです」



霧切「じゃあ、ゲートを開きましょう」

宗介「ああ」


苗木「うん……!」

テッサ「ええ」


宗介「そうだな……スイッチは、今は俺がもっているわけだが」

宗介「このスイッチを押すのに相応しいのは、苗木、お前だ」


苗木「え、ぼ、僕!?」


宗介「肯定だ。最初から最後まで、江ノ島に抗い続けたお前こそが、絶望のゲートを開くのに相応しい」

宗介「……恐らく、お前がいなければ、俺たちはここまでたどり着いていないだろう」


苗木「相良クン……うん、うれしいよ ありがとう」

苗木「じゃあ、僕が押すね」


宗介「ああ……!」





((失った二年間の記憶))

((それを埋めるようにして、開いていくゲートの隙間から太陽の光が差し込んでくる))

((感覚だと、たった2日だ。たった2日))

((だというのに、心のどこかでは、随分長い間ここにいたような気がする))

((名残惜しいわけではないが、感慨深いものがあるな))

((俺はつくづくおかしくなってしまったようだ。今までならこんな感傷など抱かなかっただろう))

((もしかすると、これこそが、二年間の記憶なのかもしれない))

((脳ではなく、体や心に宿る記憶が、どれだけ大きな二年であったかを主張するようだ))






宗介「まずいな」

((本当にどうかしてしまったようだ、俺は))

((なぜか……苗木達が、本当の仲間だと思えてしまう))

((感傷的に、なりすぎている……危険だ))

テッサ「ふふ……サガラさん?」

宗介「はっ」


テッサ「もしかしたら、今、同じ事を考えていたかも」

宗介「そ、そうですか」


((もし本当にそうだとしたら……))

((テッサも、随分なポエマーだ))


テッサ「この二年が、どれだけ大きいものだったとしても」

テッサ「これから経験する、もっともっと長い時間があるんですから」

テッサ「きっと大丈夫。ね?私もずっといるんですから」


宗介「はい……」


((彼女の言う通りだ))


宗介「そうですね、これからは、もっと大きな記憶を作ればいい」


テッサ「よろしい♪」

テッサ「……さて、そろそろ全貌が見えそうですよ」

テッサ「まだ逆光で見えづらいけど……」

テッサ「私たちは、立ち止まることなんてないわ……!」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年11月02日 (日) 19:53:37   ID: 4F2Ulw9V

フルメタとダンガンロンパ好きの俺歓喜だったわ
このSSでは妹様もウィスパードってことなのかな
ミスリルと残姉がどうなったか気になるから続けてほしい

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