【咲-Saki-】豊音「京太郎君!お手紙だよー!」京太郎「2通目だな」 (608)

・何番煎じかわからない京太郎ss
・非安価でただただ>>1が書いていくだけです
・京太郎と咲達の女の子が文通をしていたら?という話になります。
・書く予定が確定している人 豊音 エイスリン 洋榎 恭子 淡 あと…臨海から1人
 途中で安価取って書いたりします。
 つまり>>1の気力とモチベが続く限りは書き続けます。
 確定してなくても書くかもしれないよー

前スレ
郵便配達員「須賀さんお手紙が届いてます」京太郎「はーい」
郵便配達員「須賀さんお手紙が届いてます」京太郎「はーい」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1432560464/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1439767471

<少女に外の世界を……>


「えへへ~♪」


静かに進む新幹線の中、椅子に座っても見上げるほどの身長を持つ女性が居た。

長い艶やかな黒髪に黒い帽子、黒い服と全身が黒尽くめで影を連想させる服装である。

その女性……姉帯豊音は、鬼灯のように赤い赤い瞳を爛々と輝かせて嬉しそうに外を見ていた。


「豊音機嫌いいね」

「うん、大会が楽しみ!それと……」


声をかけたのは、豊音の隣に座っている胡桃だ。

胡桃は、高い身長の豊音とは逆に小さく小学生と言っても通じるぐらいの子だ。

そんな胡桃は、行儀良くそれでも自分自身も楽しそうにしている。


「京太郎君に会えるから♪」

「……お友達?」

「ダレ?」

「だるい」

「何々、何のお話?」


豊音の前に座っていた外国からの留学生エイスリン、その隣に座っていたダルそうにしている女性の白望、

後ろから顔を覗かせた塞、それぞれが豊音の口から出た名前に興味を示した。

豊音は、前までとある封鎖的な村で生活をしていたと聞いていた。

同年代の友達も居らず、1人ぼっちでTVばかりを見ていたとの事だったので、豊音の口から出た名前に首を傾げるのだった。




「ンー……カレシ?」


それぞれがどう聞こうかと悩んでいるとエイスリンが持っていたボードに男女が手を繋いでいる絵を書いて見せた。

律儀にもハートマークまで書かれている。

その絵を見ながら豊音は妄想する、自分と京太郎が手を繋いで楽しそうにデートする場面を………。


「えへへ~♪」


最後まで考えて嬉しそうに両手を頬に当て体をくねらせた。

豊音の反応を見てエイスリンの言葉もあながち間違いじゃないと3人は悟った。


「それでその子とは、どんな出会いだったの?それとどんな子?」

「えっとね……出会ったのは小さい頃に1回と村を出る前の1回の2回だけなんだ」

「意外に会ってないね、村の子じゃないんだ」


塞と胡桃は豊音の言葉に驚いた。

たった2回会っただけで豊音を落すとは、一体どんな男子なのだろうか?

……いや、豊音がチョロイだけかもしれない。











「へっくし!」

「犬、風邪か?」

「冷房効きすぎですかね?」

「たぶんお腹出して寝てたからだよ」


ホテルの通路を4人の男女が歩いていた。

男1人に女性3人のハーレム状態だが甘い雰囲気は皆無だった。

歩いているとたった一人の男性である京太郎がくしゃみをする。

それを清澄の1年生トリオの優希がツッコミ、和が心配し、咲が茶化した。


「それは、お前だろ」

「なんで知ってるの!?」


京太郎は咲に返事を返す。

咲は、目を見開き驚き少しばかり大きな声を出した。

このポンコツ幼馴染は本当にお腹を出して寝ていたらしい。

慌て始める咲に若干呆れていると部長に頼まれていた物を思い出す。


「和……咲を頼む!」

「お任せ下さい」


京太郎は、和に縋るような視線を向けた後、名残惜しそうな演技をして離れていく。

それに悪乗りしたのかしてないのか和はぐっと親指を立て京太郎に応えた。


「京ちゃん!?」

「何処行くんだじぇ?」

「部長に頼まれたもん買って来るわ」


咲と優希にひらひらと手を振り、外へと歩いていく。

外へ出ると夏特有の暑い空気がむわっと京太郎に押し寄せる。

冷房が効いたホテル内部に居たせいで余計に暑く感じた。

熱気に少しばかり顔を顰めるも京太郎は言われた物を買う為に熱いアスファルトの上に一歩足を踏み入れた。

そういえば、あの少女と出会ったのもこのような暑い夏だったと思い出しながら。






『始まりましたぁぁぁぁーーー!!!今年のイ・ン・ター・ハァイ!!』

『こーこちゃん!!台本と違うよね!?』


何やら選手よりテンションが高い館内放送を聞きながら京太郎達は、談笑しつつホテルへと戻る。

緊張したと言わんばかりに一息つく久にそれを介護するまこの先輩コンビ、1年生3人娘は恒子アナウンサーの

放送に熱を移されたのか胸躍らせ楽しそうに談笑していた。

そんな5人を京太郎は羨ましそうに誇らしそうに後ろから見ている。


(しょうがねーよな、予選落ちだし)


春から始めたばかりの初心者である京太郎は、残念ながら予選落ちだった。

次回に期待しつつ今回は、思いっきり応援をしようとも思った。


「京太郎君?」

「え?」


ホテルに戻る為に皆で歩いていると声をかけられた。

聞き覚えのある声に京太郎は立ち止まり其方を向いた。

其処には、全身黒ずくめの長身の女性……姉帯豊音が立っていた。


「京太郎君っ!」

「わっと!?」


会えるとは思っていたが初日から会えるとは思わず唖然と立ち尽くす京太郎に豊音はダッと駆け出し抱きついた。

京太郎も身長は高い方であるが豊音と比べるとかなりの差があった。

勿論京太郎の方が身長は低い、京太郎は身長差により豊音の胸に顔を包まれる形となった。

嬉しいやら気持ち良いやら苦しいやらでモガクが豊音は嬉しさのあまりに京太郎の行動に気づいていなかった。


「ちょっと!豊音!その子、息できてないよ!」

「離れて!離れて!」

「ダルいな」

「京ちゃん!大丈夫?」

「……う~ん、助けた方がいいのかしら?」

「助けんしゃい」


後ろから色んな人の声を聞きながら京太郎の意識は暗く塗りつぶされていく。

意識を失う最後に前にもこんな事があったと思いだしながら京太郎は静かに意識を手放した。







「どうする?」

「そうは言っても村の掟じゃ、出すのは無理じゃ」

「それでものぉ……せめて同年代の子が居れば」

「年寄りばかりで無理じゃの」


村の一室で老人達が何やら話し込んでいる。

話の内容は今1人で外で遊んでいる女の子の話だ。

この村には面倒な掟が昔からあった。

その掟のせいで1人の娘が犠牲になっており、それに大して嘆くも誰も行動に移さない。

皆が皆、掟を破るのが怖いのだ。


「そうだ、須賀の家の孫が着てたろ」

「会わせても直ぐに帰るぞ?」


1人の老人が須賀の爺様の家に来ている同じ年ぐらいの孫を思い出した。

それと同時に須賀の爺様と呼ばれたお爺ちゃんも自分の家に夏休みの間だけ来ている孫を思い出す。


「それでも遊ばせないよりましじゃろ」

「外に行きたいとかいわなければええがの」

「そんときはそんときじゃの」


ある程度まとまると老人達は立ち上がり散っていく。


「豊音ちゃんや」

「なーに?」


須賀の爺さんが外で遊んでいた少女へと声をかけた。

その少女は黒い髪を腰まで伸ばし黒い服に黒い帽子と真っ黒だった。

少女は名前を呼ばれ不思議そうにパッチリとした目を何度も瞬いた。

その目はヘビを連想させるかのような赤い目であった。


「ウチに来てる孫と遊べば良い」

「本当!?」

「あぁ…」

「遊ぶー!」


自分と同い年位である子と遊べるということで豊音は喜び杖をつき歩く老人に着いて行った。




「京!おるかー!」

「なに?居るけどさ」


京太郎がする事もなく暇をしていると呼ばれる。

なんだろうかと思うも暇を潰せればいいかと思い玄関へと歩いていく。


「この子と遊んでやれ」

「誰?」

               .. -―━━―-...
            ..:::´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`::..
             /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
         /::::::::::::/::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.

          /::::::::::::/::::/:: |:::::::::::l::::::|::::::|::::::::::::::::::.
.          ′::::::::/l::/l:::/|:::::::::::l::::::|::::::|:::::|:::::::::::::.
        |::::::::::/、l/`l/ {:::::::::::|\{\:|::::リ:::::|__::::|

        |::::::::; 〃⌒ヾ ‘::::::::::{〃⌒ヾ∨::::: } }::|
        |::::::::l 乂___丿 ∨::::::乂__,丿 |::::::::|_,ノ::|

        |::::::::} ,,,,     \::::::::. ,,, |::::::::l:::::: |
        |:::::八      、  , \::::::.  八::::リ:::::: |
        |:::::l::个:....__/⌒i    \::イ:リ::::/::::::::::::.
        |:l:::l::::|::::l:::{   厂 Χ/∧:{/::::/:::l:::|::::::::.

        |:l:::l::::|::::l:/ ̄`ヾ襾/ /.:.:.∧::::/ : :l:::|:::::::::|
        |:l:::l::::|:::/:.:.:.:.:./V^^V:.:.:.:.:.:.:l:∧: : l:::|:::::::l:|

「………」


爺さんの後ろから自分より身長が高い子がチラっと此方を見ている。

小学……6年ぐらいだろうか?

その子は怯えながらも期待に満ちた瞳で此方を見ていた。


「……僕は須賀 京太郎。君は?」

「…よね……姉帯…豊音だよー」


名前を教え手を差し伸べてみるとおそるおそるだが、手を取り自己紹介をしてくれた。


「よろしくな、豊音」

「………うん!京太郎君!」


これが2人の出会い………最初の1回だ。



一回の投下で終わらせると言ったな
アレは嘘だ……ごめんなさい、丁度良いので続き書いてないけど建てちゃった
たぶん……夜辺りには?
感想やらあれば励みになります、ただ無理には感想書かんでええからね
後、前の手紙スレより短いものになるかと

それじゃのー

乙ん

乙です
妄想してクネクネしてる豊音想像してこっちが悶えた

乙です
豊音かわいいよ豊音

やったー豊音採用されてたー
ちょー嬉しいよー前スレでステマした甲斐があったよー

>>7 続き

「どうやって遊ぼうな」

「虫取りとか魚取りとか山の中も楽しいよー?」


祖父は畑仕事があるのか鍬を担ぎ家を出て行った。

なんとも放任主義な爺さんだなと思いつつも前にちょこんと座っている豊音と会話をする。


「魚もいるの?」

「うん!川とか冷たくてちょー気持ちいいよー」

「泳げる?」

「あまり深いところとか流れが激しいと駄目だけどあるよー」

「うんじゃそこ行こう!」

「うん!」


この出会いは京太郎にとっても朗報だった。

コンビニ所か24時間やってるお店もない、こんな所で何をして遊べばいいか判らなかったのだ。

ここに来てから数日経つが日頃寝たり本を読んだりと暇でしょうがなかった。

2人は意気揚々と出かけ川へと遊びに行く。


「うわっ冷たい!」

「………」


川にやってきて京太郎は早速とばかりに手を川に入れてみる。

体が熱いせいか川が異常に思えるほど冷たかった。

暫くの間、川を手で堪能すると途中で貰ったスイカを流れないように石で囲み川に入れた。


「何してんの?」

「………うん」


Tシャツを脱ぎ履いて来た水着一丁になり、豊音を探すと豊音は岩の後ろに隠れていた。

一体何の儀式だろうかと思いつつ声をかけると頬を赤く染めながらおずおずと影から出てきた。


「………」

「……うー水着を人に見せるの初めてだから、変……変じゃない?」


豊音は学校の指定のスクール水着を着ていた。

それでも色気が出るのは何故だろうか?

たぶん、豊音の平均より高い身長とスタイルの良さ、将来美人になると判っているほど整っている顔のせいだろう。

京太郎は暫しの間、ボーと熱に浮かされたように豊音を見る。



    /:::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::ヽ
   /::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::',

   /::::::::::::::::::∧:::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::',
   {:::::::::::::{i::::ハヽ:::::::::::ヽ:ヽ_::::::::::::ハ:::::::',
   |::::::::::::ハ::(__ヽヽ:::::::::::V \::::::::ハ:::::::ヘ
   {:::::::::::ハY´  ヽ \::::::::::\__ィ::::::::ヘ::::::ハ
.   V:::::::ゝ ゝ_ノ   ヽ:ヽ:::::::\:::川:ヘ::::::ハ
   V::::::ハ (__ノ     ヽ:、`ヽ三ミ:\:::ヽ::::ヽ
    V:::::ハ         `  /:/\::\:::\:ヽ
     i::::ii:ヽi      ⊂つ  (:(ィ:::::ヽ:::)::::::ヽ:\
    V:jj:::::j:>..._     /ヽ{::::i::/:/::::\:::\:ヽ


「やっぱり変かな」

「っ………いや、可愛いと思う、うん、可愛いよ」


黙ったままの京太郎に豊音が泣き出してしまった。

京太郎ははっと意識を取り戻すと慌てるように本音を言った。

そして笑顔になっていく豊音とは反対に京太郎は顔を真っ赤にさせ視線を逸らした。

京太郎は小学3年生……異性を意識し少しずつ男女に分かれて行動し始める年頃だ。

前までは褒めるのも簡単にできたのに今は少々ハードルが高かった。


「ほ、ほら!遊ぼうぜ」

「うん!」


話を逸らすように京太郎はもう一度手を差し伸べ、それを豊音は取った。

























「美味い」

「美味しいねー」

「よぉ遊んだの」


あれから日が暮れるまで2人は川で遊びスイカを持って京太郎の家に戻ると祖父と祖母に出迎えられた。

冷えたスイカを渡し切って貰うと二人して縁側に座って食べた。

日が暮れた為か風が吹きチリーンと風鈴を鳴らした。


「豊音ちゃんも食べていきなさい」

「でも…」

「家には電話してあるよ」

「うん!」


夕飯時、帰ろうとする豊音に祖母は声をかけ、机の一角に座らせた。

京太郎もそれには歓迎だ。

たった一日だが、豊音の事が気に入ったのだ。

結局その日は豊音は泊まっていった。

一緒にお風呂に入り、話をし、一緒にTVを見て、気づいたら一緒に布団で寝ていた。

2人はそれからも最後の夏だといわんばかりに満喫していく。

川、山、原っぱに出向き。

ダンボールで滑ったり、虫取りをしてみたり、釣りもしてみた。

夜になればどちらかの家で夕食を食べ、嫌々ながらの宿題をやって眠りに就く。


楽しい日々は短くも楽しいものであった。

そんなある日、京太郎は違和感を覚える出来事にいくつかあった。

少しばかり小学生にはきつい大人の事情、それを垣間見たのだ。


「うんじゃ今度はこっち行こう!」

「………」


今日も今日で村を探索していると豊音がぴたりと止まった。

手を繋いでいたせいで京太郎は前へ転びそうになる。


「どうかしたのか?」

「此処から先はいけないよー」

「へ?なんで」


豊音は目を見開き何かに怯えるように後ずさった。

今までに見たことない豊音だ。


「お地蔵様より先にはいけないの」

「お地蔵様?」


京太郎は豊音の視線の先を見てみる。

そこには確かにお地蔵様が道の端に鎮座していた。

しっかりと手入れがしてあるのか汚れはないが古いせいで所々欠けている。



「ごめんね、ごめんね」

「な、泣くなよ……なら別の所で遊ぼうぜ」

「……うん」


泣き出してしまった豊音の手を引いて京太郎は踵を返す。

歩いている最中にもう一度だけ後ろを向いた。

そこにはなんてことはない道だけが先へ先へと続いているだけだった。








「なぁ爺ちゃん」

「なんだ」


夕飯時珍しく豊音は家に帰り家族団らんとなった。

その時に京太郎は昼間の事を聞いてみることにした。


「豊音がお地蔵様から先にいけないって言ってたけどなんかあるの?」

「……掟だ」

「おきて…ってなに?」

「約束事じゃな」

「………誰の?」

「豊音と村のじゃ。あの子はこの村から出れない、いや出させない」

「なんだそれ!」


祖父の断言とも言える強い言葉に京太郎は憤慨し机に箸を叩き付ける。

だが、祖父は気にも返さない。

子供の癇癪だ怖いものか、それに………。


「これ以上言うなら家に帰すぞ」

「うっ………」


怒っていた京太郎もこれには黙りこむ。

結局の所、今現在の京太郎に出来る事は夏休みの間、豊音と遊んでやる事だけだった。

笑顔で楽しそうにする豊音の顔を見るも京太郎はごくたまに考え込む。

豊音はこれでいいのかと……何か出来る事は無いのかと……。











「京太郎君!!」

「泣くなよ」


そうこうしていると夏も終わりに近づき京太郎が帰る日になった。

豊音はずっと京太郎が居ると思っていたのか大泣きだ。

今も泣いて京太郎に抱きついている。

本当は悲しいのだが、豊音の泣きっぷりに呆れ涙が出てこない。


「これ……」

「なぁにこれ」

「手紙」

「手紙?」


夏休み間、考えに考えて思いついたのがこれだった。

頭に手紙をポンと当てると豊音はそれを不思議な物でも見るような目で見つめる。

豊音が呆けている間にチラっと祖父を見るも何も言ってこない。

どうやらこれは許してくれるらしい。


「手紙……手紙……ぶんつう?」

「うん、豊音がよければ」

「………うん!いっぱい書くよー!」

「…お小遣いで足りる範囲でお願い」


嬉しそうに手紙を掴み笑っている豊音を見てまぁいいかと京太郎は思った。

届いたら届いた分自分も手紙を出そうと心に誓う。


それから6年もの間、京太郎は村へ行けなかった。

毎年毎年会えると思ってたため、些か消沈もした。

祖父が京太郎を来る事を拒んだのだ。

これ以上豊音に外の世界を見せたくなかったのだろうと京太郎は推測した。







「………」

「京ちゃん!京ちゃん!」


昔の思い出を夢見ていると言うのに少々やかましい声に起された。

ボーと目を開けると文字の一覧が最初に目に入る。

あぁ…そういえば、調べ物の途中で眠くなり原っぱで寝ていたんだった。


「よっす」

「もう!本は日差し避けじゃないんだよ!痛んじゃうよ!」

「そうだなー……咲」


中学1年の頃から何だかんだ一緒のクラスで腐れ縁の幼馴染だ。


「相変わらず古い本読んでるね」

「海外ミステリーばっか読んでるお前に言われたくないな」


確かにと咲は苦笑し本を受取ると中身を読み勧めていく。


「……山女?」

「そそ、山女または山姫って言う昔からある伝承だな」

「えっと……東北付近に出る妖怪なんだ。なんでこんなものを?」

「ちょっと気になることがあってなー」

「ふ~ん……」


暫しの間、咲が座り込み読み始めるがすぐに眉をひそめ本を返してくる。

中の言語や文字が古い為読めないのだろう。


「読めない」

「だろうな、あはははは」

「それより!夏休み予定ある?」

「あー……ごめん、予定がっつりあるわ」

「そうなんだ」


中学生の最後の夏休みを一緒にと思ったが上手くはいかないようだ。

少々残念に思うものの高校も一緒なのでよしとしようと気持ちを切り替える。


「お腹空いたし何か食べにいくか」

「京ちゃんの奢り?」

「馬鹿いえ、俺の懐事情知ってるだろ」

「いつもカツカツだよね」

「おう!」


2人は立ち上がり歩きだした。


-豊音side-

「わぁー!今週も手紙が来たよー!」


週に1度来るか来ないかの郵便配達員から手紙を受取った。

何時も通りの色の便箋で何枚かの写真も添えられている。

週に1度来る京太郎からの手紙だ。


「……楽しそうだな~」


手紙の内容は学校の事や行事、趣味の話など1週間の出来事がしっかりと書き込まれている。

もう何年も会えていない男の子。

自分の初めての友達の男の子。

自分に初めて外を教えてくれた男の子。

自分に初めて2人で遊ぶ楽しさを教えてくれた男の子。

自分の初めての………初めての………。


         /:::::/::::::::::::::://!:::::::::::::::::::::::::!::::::::::∨∧
.       /:::::/::::::/:/:::// l::::::::::::::::l:::::|::|::::l::::::::∨∧
.         /:::::/::::::/:/:::/   l::::::::::::::::l:::::ト|::::|::::::::::∨∧
      .′::′::/:/,l:::|-‐ l::::::::::::::::lヽ:||::|:::::::::::::l::::::|
      |::|:::|::::::l/´ l:::|   ∨ ::::::::::l !||∧:::l:::::::l::::::|
      |::|:::|::::::|  八|___`ヽ∨:::::::::l ノ'_ノ'__ リリ:::::リ:::::リ
      |::|:::|::::::| ,,ィ て心ヽ ∨::::∧/て心∨:::::/::::::{
      |::|::」:::::〃 {_ リ   l∨:::∧__リ':::::::∧::::::|

      |::|(_|:::::l て  )~     }/∨::∧-'/::::/::::|::::::|
      |::|:::::::::ヘ  l /````   ' \:::∨/`∧八:::::
      |::l:::::::::l込. |l            /∧::\/::∧:::ヽ|
      |::l:::::::::|::::介o。.   ~ー~ーl/ .∧::::∨::∧::::::\
      |::l:::::::::l::/:::|:::::::::≧=----=≦:/::::}::::::}:/:::∧--- \

.       ノリ::::::::リヘ三三三三三三三三三ヲ三厂 ̄ \   \
    / /:::::::/ \`≪三三三三三三≫'彡イ/    / \   \

そこまで思うと涙が出てきた。

会いたい……もう一度だけでも会いたい。

自分が会いに行けばればいいのだが、村の外に踏み出す勇気がない。

昔から出てはいけないと厳しく言いつけられ一歩でも出ようとしてるところを見つかれば鬼のような形相で怒られた。

恐怖が畏怖が豊音をここに縛り付ける。


「会いたい……会いたいよー」


机に倒れこむと写真が散らばった。

暫くの間、泣くも手紙の続きを読まなければと思い読んでいく。


「あっ……」


手紙を読んでいくと最後に……。


-村の外に出たくないか-


と書かれている。


「私は……私は……っ」


村の人が怒る様子が容易に思い浮かぶ、それでも豊音の思いは一つだった。

新しい便箋を出すと豊音は返事を書きはじめるのだった。





京太郎(岩手の山女の伝承か、これだろうな)


カタンコトンと音と振動を鳴らしながら電車は進んでいく。

時期は7月末夏休みに入り学生が自由を満喫する時期に京太郎は祖父の家へと向かう。

村の地図も見つけた、ルートも何回も見直した、お小遣いを貯め必要な物も揃えた。

今年の夏が勝負だろう。

京太郎は豊音から届いた手紙をもう一度読みつつ思考する。

豊音の手紙の最後には一言出たいと書かれていた。

京太郎は今年の夏、豊音を攫う。


>>9-17
おつありん

>>13
可愛いよねー!
豊音は合いそうだ!

>>15-16
長身で可愛いってのも珍しいなと思う

>>18
嬉しいのはわかるけどステマとかはやめてね
逆に萎えちゃう……。

あと一回の投下で豊音は終わり

お話的にはこんな長さでやっていきます
長過ぎても駄目だからね

それじゃのー

乙です
京太郎ちょーがんばれ

乙ですー

最初の方で、村人達も何とかしようと言う気持ちが多少はあるようですので
豊音を攫っていく京太郎を、全力で逃がすくらいはしそうですよね……京太郎の中の人繋がりでw

おつよー

世紀の大泥棒になるんやで!

中二病コンビか

乙です

京太郎「……村人くん、俺を全力で逃がせ!」
って、目が光るシーン想像しちゃった
村人はきっと柑橘類を栽培してる

京ちゃんの母さんが憑依した薄幸の少女出そう

>>30
ステマってのはものの例えなんよ
ただ前スレアンケートあったろ?それに答えた結果採用されたから良かったなって、それだけなんよ
気を悪くしたなら謝るよ…

>>38
なーる
ステマ言うから露骨なアピールしてたのかと思った
そういうことなら気にしてないよー
ただステマとかっていいイメージないから気をつけてね

だが>>1のスレの手紙と小ネタで豊音を村から連れ出す京太郎が見たいって書いたは私だ

ということは>>38は前スレ>>767かそれ以外豊音はないし

乙です
豊音ちょーかわいいよー

スレタイの豊音につられたついでに前スレも読んでみたけど面白かったぜー
前スレのタイトルで勝手にホモssだと勘違いしていた自分を殴りたい

>>31-33 >>35 >>39 >>43
おつありん

>>31
頑張ります!超頑張ります

>>32
罪の意識はあります
あるだけですが

>>33
感動もんやった
何回視てもええな

>>34
せやな!

>>36
そういえば役的に京太郎はそうだね
蜜柑畑で幸せそうな最後を送るんやね

>>37
どの作品やったけか

>>42
あなた様だったか
ちなみにこれ書く切欠もあなたです

>>43
ありがとなー!
可愛い子を常に書ける様になりたい

>>45
やっぱり判りにくいかな
雑談スレでも紹介されんかったという……


ちなみに皆さんはどの話が好きだったろうか?
あっ豊音のラストは火曜日あたり投下します

雑談スレを気にするのやめてくれや
あそこで書きたくないんだよ…
あそこを作者が読んでるのが分かれば分かるほど荒らしは喜ぶし

>>47
了解
そういやこんなことあったなと思っただけなんだ
すまんね 

全部おもしろかったけど怜のが一番好きかな?

変にシリアスだったりするとなんだかね
手紙ってことてほのぼのを期待して開いたから


>>50-63
照が意外に人気かね?
ちなみに自分は姫子ですねー
ヘタやけど佐賀弁書いてて楽しいわ

>>62
ありゃ、そりゃすまんかったね
豊音もシリアスだわ
エイちゃんと淡と洋榎はほんわかだからそっち見てくれるといいな!
恭子はわからん、臨海の1人はドシリアスになるわ

豊音 ボチボチ投下していく
まだ完成してないから 書き次第になる模様

>>29 続き


「おや、一人旅かい?」

「っ!」


地図を見ているとお婆さんに声をかけられた。

集中していたこともあり気配に気づけず驚いてビクっと体を震わせた。

おそるおそる相手を見ると老婦が1人前に座っていた。

その人は後ろで髪を縛り片目にモノクルを嵌めていた。


「おや、すまないね」

「いえ、大丈夫です」


見ていた地図をさりげなく隠した。

暫しの間、老婦と会話していると目的の駅へと到着する。


「それじゃこれで」

「……上手くいくことを祈ってるよ」

「はい?」


席を立つとそんな事を言われた。

目的を話した訳はないはずなのだが……何者なのだろうか。

気になる女性であったが時間もない、京太郎は少しばかり振り返りながら駅に降り立った。





「ここらへんのはずなんだけどな」


あれから少しばかり駅周辺を探索してから京太郎は地図とコンパスを片手に山の中を歩く。

豊音を連れ出すと決め手から色々考えると問題がいくつも浮上した。


「あった……怖いな」


暫く歩くと目的地へと辿り着いた。

山の壁にポッカリと空いた洞窟だ。

あの村は意外に厳重に見張られている。

思い出せば夏休みの時に所かしこに村人の目があったのを思い出せた。

昔は3方向に村を出ることが出来たが、今では1つの道しか機能していない。

豊音を連れ出すにはそこの道を通らなければいけないのだがしっかりと夜見張りを立てていた。

ご苦労な事だ。


「……この中を歩くのか」


それでなんとか出来ないかと資料を漁っていると1つだけ道を見つけた。

北の山から隣の街へと山の中を洞窟が通っている。

かなり昔に封鎖されたらしいが、もし今も通れるようならそこから連れ出せるかもしれない。

今回は隣町から村へと侵入を試みる事にした。

ライト付きのヘルメットを被り長袖を着て軍手をはめると洞窟へと進入する。

だが、準備万端で歩こうとするも足が止まってしまった。

明かりも通さないただの暗闇に知らず知らずのうちに足が竦む。


「………ふぅ、行くか」


未だに怖い気持ちはあるがそれ以上に成長した豊音に会いたかった。

京太郎は深い闇の中へと足を踏み込んでいくのであった。






「ここにも付けとくか」


ある程度歩くと突き出た岩に赤い布を結びつける。

これで次回豊音と通るさいは迷わずいけるだろう。

歩いていると コツン コツン と暗闇の中京太郎の靴音が響き渡る。

時折水が滴る音意外はこの音しか聞こえない。


「頭がおかしくなりそうだ」


音もなく、普段より狭い視覚の中、何処まで続くか判らない同じような道をひたすら進む。

思ってたよりきついものだ。

それでも後ろを振り向かずに足を進めると遠くに光が見えた。


「やっ……とか」


なんとか搾り出した声を耳にしながら京太郎は眼を傷めないようにゆっくりゆっくりと焦らず歩く。

洞窟の入り口には注連縄が張られその前には一尊のお地蔵様が前に立っていた。

京太郎はそのお地蔵様に一度だけ手を合わせると歩きだし森から出る。


「懐かしいな」


お昼から洞窟に入っていたが外へと出ると既に夕暮れであった。

京太郎の視線の先にはオレンジ色の光に当てられた、懐かしい村が姿を現す。












「…ん、やっぱり見回りもしてるのか」


夜までそこで待機し双眼鏡で山の上から覗いていると家の明かり意外に複数の明かりがあちらこちらへと動いている。

なんとも面倒な事だ。

それと同時に1人の女の子を不幸にする掟が大事なのかと思い手に力が入った。


「21時……右方向、…もう1人は上に行くのか」


時計を見ながら京太郎は動きを地図に書き込んでいく。

早く豊音に会いたい気持ちはもちろんある。

だが、それ以上に今回の事は失敗できない大事なことだ。


「絶対に連れ出してやる」


京太郎の夜はこれからだ。







-豊音side-


「ふふ~ん♪」


自分の部屋で豊音は嬉しそうにカレンダーを数える。

手紙に書いてあった日にちまで残り2日ほどだ。

あれから1日経つたびにカレンダーに丸をつけ楽しみにしている。

外の世界を見れる嬉しさもあるが、それ以上に手紙でしか会えなかった京太郎に会えるのが嬉しい。

どんな風に成長したのだろうか、自分の事が判るだろうか、身長の高い子は好きではないだろうか。

様々な事が胸を過ぎっていく。


「ちょー楽しみだよー」


豊音は笑顔でベッドに寝転び、京太郎が迎えに来るの夢見て眠りに付く。











-京太郎side-



「こっち行って……こっちか?」


朝になり、昔遊んだ川原で京太郎は岩を背にし地図を広げる。


「わかんねー……わっかんねー」


暫くし、あまりの複雑さに京太郎はため息をついておにぎりに齧りつく。

頭の中で何度もシミュレーションするが面倒過ぎた。


「………今日の夜も調べて明日の夜決行だな」


ご馳走様でしたと手を合わせ京太郎は疲れたとばかりに足だけを水につけ寝転んだ。

夏の暑い日差しと足元から伝わる水の冷たさを感じながら夜通し使っていた頭を休ませる。

今夜も徹夜だなと軽く笑い、大きな欠伸を1つして眠りに付いた。












-豊音side-

「~♪」


田舎の道を豊音は嬉しそうに歩いていく。

今日寝れば明日の夜には京太郎と会える。

そう思うだけで胸が張り裂けそうになるほど鼓動が胸を打つ、だがそれは嫌なものではない。

むしろドクンドクンと胸を叩く音が心地良いほどだ。


「あるかな。ないかな?」


鼻歌を歌いながら歩いていると目的地に辿り着く、川原に辿り着いた豊音は辺りを見渡し目的の物を探した。

数分間探し回ると不自然に二つ重なっている石を見つける。

少しばかり大きな石を両手で除けるとそこには一通の手紙が挟まっていた。


「あった」


それを見つけ目を輝かせながら逸る気持ちを抑えながら開き始める。


「ふんふん……明日決行かー……楽しみだよー」


内容を読み豊音は嬉しそうに手紙を抱きしめた。

バレないように決行日まで会わないようにして正解だと思った。

手紙だけでこんな気持ちになるのだ、本人会っていたら明日まで隠し通せそうにない。

豊音は暫くの間、川原でゆったりと時が流れるのを楽しんだ。






-京太郎side-


「よし…行くか」


あれから頑張り何度も見直し穴を見つけた。

たまたま……偶然に1つだけ針の穴を通すかのように見つからない道があったのだ。






「ここだな、変わんないな」


夜道を注意し歩き、京太郎は豊音の家の前までやってくる。

豊音の家は記憶より少しだけ煤けたぐらいで代わり映えがなかった。


(緊張する)


足音を立てないように豊音の部屋の窓下まで来ると胸を押さえる。

豊音はどのような子に育ったか、今の自分を見て嫌われないか、色んなことが脳裏を過ぎる。


「いくか」


数分ほどその場所で座り込むと気合をいれて窓を軽く静かに叩いた。

コンコンと窓を叩く音が聞こえた後、中から人の気配がし動き出す。

その音は少しばかり大きかったが影響はないだろう。


「京太郎君?」

「豊音か?」


窓がそろりそろりと開きひょっこりと女性が顔を出す。

自分の名前を呼ぶ彼女を窓の下から見上げた。

見上げた先では豊音が真っ赤な目で下に居た京太郎を捕らえていた。

暫しの間、時が止まったかのように動きを止める、心なしか息まで止まった気がした。



「お、お久しぶり」

「うん、うん」


取り合えず、こうしててもしょうがないので当たり障りのない言葉を伝えるが、豊音は頷くだけでじーと見つめ続けて来る。

どこかおかしな所があっただろうかと慌てて立ち退き自分を見下ろしてみる。

服が少しばかり汚れているが何処もおかしくない、なら顔だろうかと手で振れ撫でるも自分ではわからなかった。


「京太郎君っ!!」

「うおっ!?」


そうこうしていると豊音の目の端に涙が溜まっていき京太郎に駆け寄ると思いっきり抱きしめた。

抱きしめた際、身長差ゆえに丁度顔の位置に豊音の胸が来るのはご愛嬌だろう。


「ちょっ!まった、タンマ!タンマ!」

「京太郎君!京太郎君っ!」


豊音は女性のわりは力が強く京太郎でさえ自分の力で抜け出せないほどで抱きしめられる。

胸の柔らかさと息苦しさと豊音の匂いが重なり京太郎を遠い所へと連れて行こうとする。

暫しの間抵抗を続けるも次第に力が弱まり腕がだらーんと下に落ちた。


「あれ、京太郎君?」

「………」


ある程度満足したのか放して見ると京太郎は青い顔で力なくダラーんと体を豊音に預けるのだった。



「天国へ行くかと思った」

「ご、ごめんね」


あれからなんとか息を吹き替えし、改めてお互いに向き合う。

京太郎から見た豊音はモデルのような子だと感想を抱く。

自分より高い身長に艶やかな長い髪の毛、目も切れ目で美人さんだ。

頬を少しばかり赤く染まったのは先ほどの件だけではないだろう。


「……き、綺麗になったな」

「本当?」

「うっ…」


京太郎の言葉に豊音は嬉しそうにはにかみ少しばかり背を縮めて京太郎を見上げる。

豊音の行動によって京太郎は顔をますます赤くした。


「それと……可愛いいです」

「やった♪京太郎君もちょーかっこいいよー♪」

「そっか」

(良かった…豊音の好みっぽいな)

(良かったよー京太郎君に可愛いって言ってもらえたよー)


お互いに胸内でほっとしもう一度顔を見合わせるとニヘラと顔を崩し2人は笑った。


「それじゃ行こうか、お姫様?」

「!」

「うん、私を連れて行って。王子様」


手を恭しく豊音に出すと豊音もくすくすと笑い手をぎゅっと握り返した。

そして2人は暗い夜道を走り出すのであった。


「ここ?」

「うん、ここからしかなかった」


京太郎と豊音は村をあっちこっち歩き、洞窟の入り口へと辿り着く。

そこには前に通った時と同じように洞窟が口を開けている。


「怖い?」

「怖く無いと…いいたいけど、怖いかな」


握っている手から微かに震えが伝わってくる。

京太郎でさえ通った時怖かったのだ、ムリもないと京太郎は思う。

それでもここから逃げるにはここしかない。


京太郎は隠していた荷物を取り出すと準備を始める。

前に通った時と同じような格好をして豊音にもヘルメットを渡した。

豊音はそれを興味津々で見て行く。


「探検隊みたい!」

「あはは、ある意味そうかもな」

(いちいち可愛いな!チクショー!)


豊音は嬉しそうに楽しそうにヘルメットを被る。

そんな様子を見て京太郎は別の意味で胸が痛くなってきた。


「行くか」

「………うん」


だが、それも束の間手を握り歩き出そうとすると豊音はお地蔵様の前で止まってしまう。

昔からあった壁の一種だ、恐怖と村人によって定められた鎖と言っても良い。

それを越えると思うと豊音の体を恐怖が縛り足を止めてしまう。


「………何があっても離さないからさ」

「え?」

「この手は何があっても離さないし、ずっと豊音を守っていくからさ」

「………」

「この時だけ、この瞬間だけほんの少しの勇気を俺にくれ」

「………」


京太郎の真剣な声と真剣な眼差しに豊音は暫しの間見惚れた。

そして……。


「わかったよーずっとずっとよろしくね?」

「あぁ!」


もう恐怖はない、彼がずっとずっと隣に居てくれると言ってくれたから

豊音は自分の意思で初めてお地蔵様の先へと足を踏み出した





「……案外なんでもなかった」

「そういうものじゃないかな?」


京太郎がライトを照らしながら赤い布を頼りに歩いていると後ろからそんな事が聞こえてくる。

自分を縛っていた物があっさりと千切れ豊音も困惑気味だ。

今まで律儀に守ってきた事はなんだったのだろうとさえ思えてくる。


「……そういえば、なんでおじいちゃん達は私を閉じ込めて居たんだろう」

「………」


ある程度歩くと豊音が不思議そうにそんな事を呟いた。

豊音にとっては会話の繋ぎ程度のものだったのだろう。

だが、京太郎には違った。

握っている豊音の手を少しばかりぎゅっと握り締め無言で歩いていく。

そんな京太郎の様子に豊音は京太郎が訳を知っていることを理解した。


「私は知りたいな、京太郎君」

「………はぁ」


豊音は立ち止まると前を歩く京太郎にそう呟いた。

暫くして京太郎がため息をついた。

なるべくなら教えたくなかったのだが、豊音には知る権利がある。

京太郎はまだまだ続く洞窟の先を見ながら豊音に話すことにした。


「はじまりはずっと昔だ」

「昔?」

「この村は土に栄養もなく作物が育ちにくかったんだ」

「……でも今はいっぱい取れてるよ?」

「それが掟に繋がる……豊音は山姫って知ってる?」

「山姫?」

「そう……ここらに伝わる妖怪の一種だ」






昔々の話、ここいらの村は飢餓に困っていた。

作物が育たない上に冬になると脅威的な寒さに見舞われる。

それに困った村人が旅の途中の坊さんに相談を持ちかけるとある提案をされた。


「ここいらには大層な力をもった山姫がおりまする」

「その山姫の力を借りればよい」

「どうやって借りれば」


坊さんに言われた通り、ここいらには時折山姫が出る。

昔から男を攫い食い物にしていて恐れられていた。


「山姫を村にいれた同時に四方にお地蔵様を設置しなさい」

「なるほど」


村人達は藁にも縋る思いで坊さんに言われたとおりに事を運ぶ。

暫くの間、男を山に居れず山姫を飢えさせ 機会を見て1人の若者を村の中央に1人にした。

数日の間、そのような事をしていると山姫が耐え切れず村へと降りてくる。

それを隠れて見ていた村人達はこれ幸いと四方にお地蔵様を設置した。


それから数日のうちに効果が出てきて見る見るうちに作物が育っていった。

村人はそれにおおいに喜び笑いあった。

だが、その喜びも山姫の怒りを買ったことで消沈する。

若者を喰らい満足し外へと出ようとして出れなかった、その事に憤怒した山姫が暴れ回ったのだ。



これには村人もほどほど困った、これでは餓死の前に山姫に食い殺されてしまうと……。

そこで当時の村長は山姫へと提案をした。

年に一度男を差し出すので怒りを納めてくれと……。

山姫はその答えに暫しの間考え、承諾した。

このまま村人を全員食い散らかしても自分は外へと出ることは出来ない。

なら安定した生活が送れる方がいいだろうと考えたのだ。


「これがこの村に伝わるお話」

「…私は妖怪じゃないよー?」


京太郎の言葉を聞いて豊音は不思議そうに首を傾げる。

確かに今の話を聞けば豊音にはまったくもって関係ない話だ。


「続きがあるんだ」

「続き?」


そういって京太郎は自分が調べた話の続きを口にしていく。




それから何十年もの間、世代を繋いでいき山姫と問題なく村人達は過ごしていった。

だが、問題も同時に起きてきた。

男が足りなくなってきたのだ。

年に1度男を差し出すというのは思ったより大変であった。

このままでは男が居なくなり村が終わってしまうと話題に上がり、何度も何度も話し合いを進めていく。

だが、幾ら話そうが良い案は出てこない。

困りに困ったとき、ある若者がぽつりと零した。


「山姫様の力だけ貰えないだろうか」


それを聞いて案が思い浮かんだのは当時の村長だ。

村長はすぐさま村を出ると有名なお寺でお札を貰って帰って来た。

そして山姫を呼び出すとその札で自分の娘を柱に使い封印した。


『オノレ…!オノレ!ユルサヌ!ユルサヌ!』


山姫は抵抗できずに恨み言を残し娘の中へと封印される。

それから村には平和だけが残り何年もの間、平穏が訪れた。

けど同時に今の掟を産む結末ともなった。


暫くすると村長の娘が身ごもり1人の女の子を産んだ。

その子は可愛らしく、すくすく成長していくと誰よりも高い身長の子へと成長した。

最初は山姫の再来だと覚えた村人だったが、思いのほか何も起きず、その子の話題もなくなる。

だが、そこから悪夢は始まっていた。

暫く経つと怪奇が起こる様になったのだ。


若い男が身長が高い女性を目撃するようになった。

その女性は白い服を着て帽子を被り、ある言葉を呟いて行く。


『ぽぽぽぽっぽぽぽ………ぽぽぽぽぽ』


なんとも不気味な声だろうか、行き成りやってきたよそ者に警戒を抱いて眠った若者は次の日には殺された。

これにはほどほど村人も参った。

どうしてこうなったのかと思いなおしていると1つ思い浮かんだ。

あの娘のことだ、あの娘こそ原因だと村人は思い殺してしまった。

それでも怪奇は止まらない、止まる所かまた村の1人が身長を高い子を産んだ。

それが何度も繰り替えされ、ほどほど困った村人は若い者を隣村へと住居させた。

若い男性しか襲わないので隔離することにしたのだ。

それ以来身長が高い子が生まれるとこの村で一生を終えさせるという掟が生まれた。

この中で封印していればこの村だけで話が済むと思ったからだ。





「それが掟の始まり」

「私出ても良かったのかな」

「平気だと思う、だってたぶんあの怪奇は………」


京太郎は豊音の呟いた言葉に自分の考えた憶測を話そうと口を開く。


「あれ?」

「え?」


だが、その時タイミングよくライトの灯りが弱まった。

辛うじて前が見える程度のライトに京太郎は苛立ちと不安が募っていく。


「だ、大丈夫かな?」

「……今更引き返せない」


不安がる豊音を心配させないように手を握り返すと京太郎達は歩き出す。

頼りないライトのせいか2人の間には静寂が包む、会話もなく2人はただただ…歩く。


(……そういえば、これに似た話あったな)


会話もなく歩いていると前に伝承を調べていて読んだものを思い出した。


(黄泉比良坂だっけか)


イザナギは決して振り返ってはならぬといわれたイザナミのことを振り返ってしまったため

死後の醜い姿を見られたイザナミが激怒し、イザナギはこの坂をイザナミに追われながら駆け抜けることになった

そして、イザナギにより黄泉の道への通路である黄泉比良坂は閉じられてしまうのである。

この話に似ているなと思いながら京太郎が歩いていると嫌な気持ちになってくる。

後ろに居るのは本当に豊音だろうかと一瞬思ってしまった。

暗い道で頼りないライトで歩いていく、不安が増した。


「豊音……着いて来てるよな?」

「………うん」

『ぽぽぽ』

「………」


豊音の言葉を聞いたと同時に何か聞こえたような気がした。

京太郎はそれを気のせいだと思い顔を振り前へと進んでいく。


「………」


『ぽぽぽぽっ……ぽぽぽぽ』


歩くたびにあの声が聞こえてくる。

京太郎だけが聞こえてるのだろうか、豊音は反応しない。

声は次第に大きくなり、京太郎は気付かぬうちに汗を大量にかき出した。

手が滑りたまに離してしまいそうになる。


(落ち着け……俺、あんな話をしたからだ)


何度も深呼吸をしては歩くといった行動を繰り返すも後ろに居るはずの豊音は何も言ってこない。


「……豊音、居るんだよな?」








ぽぽぽぽっ          ぽぽぽぽぽぽぽぽぽ


         ぽぽぽぽぽぽぽ


 ぽぽぽぽ ぽぽぽぽっ……ぽぽぽぽぽ





ぽぽぽぽ                ぽぽぽぽぽぽぽ








京太郎の耳元であの声が聞こえた。

さしもの京太郎もこれには驚き声を上げる。

本当に豊音を連れているのか、本当にこのまま連れ出して良いのか、そのような事も思う。


「………」


足が止まり、手がどんどんと滑り落ちていく。

だが、京太郎はそれを握り返そうとしない。


「………」




                     ... -――――- ..
                  ....:::´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`::....
                    /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
              /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\

                 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
              /:::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
                /::::::/::::::::::::/::://:::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::: i
            |::://:::::::::`/:::、  |::::::::::::::: '|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
            |//:::::::::/l:/ \|:::::::::::::/|:::: |::::::::::::::::::::::::::::::::|
              /::::::::::://^芹ミ、|::::::::::{  ':::::::|:::: l::::::::::::::::l::::::/
           /i::::::::::/_ //刈ハ〉:::::::::: | --':::::|:::: l::::::::::::::::|:::/

          /:::l:::::: / ´^乂少 八:::::::: |   ':::|:::: l::::::::::::::::l:/
          /:::::::::l :::::′、、、、    ∨:::::|ア芹ミ:{\l::::::::::::::::l′
        /:::::::|::::::::::::::.       /  ∨::|i J少'ノ /:::::::::::::::i|
.       /:::::::: |:::::::::::i:∧     __    ':::|`¨ 、  イ:::::/::l:::::::リ
..     /::::::::::::|:::::::::::|::::/:.、  〈    V   ':| 、、 ∠ノ::::/::: l:::::/
    /ニ二ニ八::::::::::|:/::::/\  ー‐ '    i イ::::::::::/:::::::|::/
   /ニニニニ/\::::「~_/    ―――=≦::::|:::::::::::::::::::::l/
  /ニニニニ/::ニ::/ヽ{{       /::::::::/::::::::: |:::::::::::::::::::::|
/}ニニニニニニ\:二:′  \    ∧{::::: i::::::::::: |:::::::::::::::::::::|
二|ニニニニ:/┌― {      \__/   〉、:i::::::::::: |:::::::::::::::::::::|
ニニニニニ/エ|ニニニ:{__ ┬'^~〈    /二/ ̄`ヽ!:::::::::::::::::::::!


『京太郎君?』



「……っ!」


京太郎の手は寸での所で豊音の手を握り返す。


(大丈夫だ!俺は離さない)


何馬鹿な事をしているんだと自分を叱責し歩き出す。

その手にはしっかりと豊音の手を掴んで……。






「出れた?」

「……本当に?」


暫くするといつの間にか洞窟が終わっていた。

後ろを振り向けばキョトンとしている豊音が目に入る。

やはり先ほどのことは幻聴だったのだろう。


「わーー!!綺麗だよー!!」

「ははは………」


洞窟を出ると豊音は走り出し下に見える初めて見た街並みを嬉しそうに見下ろす。

そんな光景に京太郎は疲れたのか腰を下ろし見守った。

その時だった……。


『ありがとう』

「!」


そんな声が聞こえ、豊音に似たような人が微笑み何処かへと歩いて行くのが目に入る。

その顔は今の豊音のように嬉しそうで悪意とはかけ離れた存在だった。

                     ???

               .. -―━━―-...
            ..:::´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`::..
             /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
         /::::::::::::/::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.

          /::::::::::::/::::/:: |:::::::::::l::::::|::::::|::::::::::::::::::.
.          ′::::::::/l::/l:::/|:::::::::::l::::::|::::::|:::::|:::::::::::::.
        |::::::::::/、l/`l/ {:::::::::::|\{\:|::::リ:::::|__::::|

        |::::::::; 〃⌒ヾ ‘::::::::::{〃⌒ヾ∨::::: } }::|
        |::::::::l 乂___丿 ∨::::::乂__,丿 |::::::::|_,ノ::|

        |::::::::} ,,,,     \::::::::. ,,, |::::::::l:::::: |
        |:::::八      、  , \::::::.  八::::リ:::::: |
        |:::::l::个:....__/⌒i    \::イ:リ::::/::::::::::::.
        |:l:::l::::|::::l:::{   厂 Χ/∧:{/::::/:::l:::|::::::::.

        |:l:::l::::|::::l:/ ̄`ヾ襾/ /.:.:.∧::::/ : :l:::|:::::::::|
        |:l:::l::::|:::/:.:.:.:.:./V^^V:.:.:.:.:.:.:l:∧: : l:::|:::::::l:|


「そういえば…怪奇が大丈夫ってなんでなの?」

「あぁ…たぶん、外に連れて行って欲しかったんだと思ったからさ」

「外に?」

「うん、若い人は外へ行く確立が大きいだろ?」

「だから憑いて行こうとしたんだ、だけど怯えるばかりで外へ行こうとしないから祟ったんじゃないかなって」

「なるほど」


豊音は気になっていた話の続きを聞いて満足そうに頷く。

先ほどの声を聞く限り京太郎の考えは当たっていたのだろう。

京太郎はバタリと倒れこむと満点の星空を見上げる。

本当に今回の事は疲れた。


「……何してんの?」

「……一緒に星を見てるの、ちょー楽しいよー」


そういていると隣に豊音がやってきて一緒に寝始める。

豊音の居場所はここだといわんばかり京太郎に抱きつき二人はすぐに眠ってしまった。





「まったく…私が頼み込んでも駄目だったのに」

「うるさい、豊音もお前みたいな婆さんに連れて行かれるよりあっちのがいいだろ」


村の一軒屋に村人達が集まり会議をしている。

その中でモノクルを嵌めた女性が村長の男と話しこんでいる。

あの電車で京太郎が会った女性だ。


「それじゃあの子は預かるよ」

「そうしろ……謝っといてくれ」

「帰って来た時に自分でいいな」

「ふん」


そう言ってモノクルの女性は外へと出て行った。


「あんなに家の前でイチャつきおってからに」

「あっはっは、大変だったな!」

「隠れてる身にもなって欲しいわ」


村人達はお互いに笑い酒に溺れ、若い2人を祝福するのだった。





「って話かな」

「……しょうがないな、今回ばかりはあっちを応援してもいいよ?」

「あははは」


インターハイの会場を京太郎と咲が歩く。

時は準々決勝、まさかのまさか…清澄は豊音が居る宮守とぶつかってしまった。


「どっちも応援するよ」

「優柔不断」

「ひっでー……それと豊音は強いぞ?」

「初心者の京ちゃんに言われても」

「生意気な」

「やめてー!」


折角注意しているというのにこの幼馴染はと京太郎は咲の頬を引っ張る。





「それじゃ行って来るよー」

「うん、あっ待って!」

「うん?」


豊音がお気に入りの帽子を被りなおし歩こうとすると止められた。

何かなと思い宮守の大事な友達に視線を向けると手紙を渡された。


「え?」

「あの話聞いてから私達も豊音に手紙を書いたの」

「初めて真剣に書いた!」

「タノシカッタ、アトデヨンデ」

「だる……くは、なかった」


それぞれが自分の好きな色を選んで書いた手紙を受取ると豊音は涙する。


「あー!泣かない!試合なのに!」

「はぁ……泣かせたの私達だけどね」

「ちょー!嬉しいよー」

「あわわわ」

「イタイ!」


豊音は喜び皆を抱きしめる。

外に出て初めての友達は皆良い人だ。


「勝って来るよ!」

『任せた!』


豊音は4人に見送られ外へと出る。



「よろしくねー♪」

「よろしくな」

「あらあら、強敵ね。お手柔らかに」

「……よろしくお願いします」


4人が席に座り戦いが始まった。


(やっぱりちょー強いよー)


席に座って打っているとやはり強いなと思った。

特に前の清澄……山に咲き誇る花は脅威しかない。


(でも負けないよー)


だが、負ける気はない。

こちらだって山の名を預かる者なのだから


「ポン!」

「鳴いた?」

「チー!!」

「これは……」

「最後にポン!」

「………(京ちゃんの言う通りだった!)」


豊音は3回鳴くと裸単騎で3人を相手にする。

そして一言自身満々に言った。

/二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ニ=-
/二二二二二二二二二二二二二二ニ=-----┬――=ニ二二二二二二二二二ニ)
二二二二二二ニニ=--┬=7´:::::::::::::::::::::::|\:::::::::|::::::::::\:::::::::::∨二二二二二二/
二二二>'"´:::::: : |::|:::|!::|、 :::::::::::::::::::::::::. __':::::::|:::::::::::::::::::::::::::::∨二ニニニ二>'"
二>'´:: |::::::::::::::::: |::|:::| ‘:::| '::::::::::::::::::::::::::::.  ':::::|\:::|::::::::::::::::::::::∨ ̄ ̄
'´ ::::::::::: |::::::::::::::::: |::|:::|´‘::|_ '::::::::::::::::::::::::: :.  ':: |  }ハ:::::::::::|::::::::::::|

::::::::::::::::!::::::::::::::: |::|:::| 八{  '::::::::::::::::::::::::::::.  lノ  !::::::: |::::::::::::|
!::::::::::::::::‘::::::::::::::::::|::|:人  \人::\:::::::::::::::::::. ___,  |:::::::::::::::::::::八
|::::::::::::::::::∨:::::::::::∧{    _ \l\::::::::::::::X㍍ミx, |:::|:::/::::::::::/

|::::::::::::::::::::∨:::::::::::∧ x≦㌻⌒`     \::::::::::::\、、、 |:::|/::::::::::イ
|::::::::::::::::::::::∨:::::::::::∧´             、\::::::::::::\ノ::厶::::::::::!
|::::::::::::::::::::::/∨::::::::: ∧  、、、、        \l\:::::`<::::::::::::::::: |
!::::::::::::::::: 八 ∨::::::::::∧、               /\:::::\::::::::::: |
::::::::::::::::::::::::::\∨::::::::::∧\  ┌―    つ  |::://`丶::\::::: |
::::::::::::::::::::::::::::::::::∨::::::::::∧: \ `¨¨¨¨ ´     |/イ::::::::::::::::::\:|
::::::::::::::::::::::::::::::::::: ∨::::::::::∧\\         ,.' :::|::::::::::::::::::::::::\
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\:::::::::∧`|::::|  __,..'´ :::::::::::::::::::::::|:::::::::|:::::|

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/\::::::::||ノ     |\::::::::::::::::::::::::l:::::|:::::::::|:::::|
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /  ∨:::l、|'      |_ノ\::::::::::::::::: l:::::|:::::::::|:: 八
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/.   |:::::||>‐ 、 /\  \ :::::::::: l:::::|:::::::::|:/



『ぼっちじゃないよ~♪』


京太郎が居て宮守の皆が居る、豊音の顔は誰よりも輝いていた。


<手紙シリーズ 豊音編 カンッ>


豊音終わりじゃー!

この子の話はホラー風味になるな

それじゃ次でお会いしましょう

それじゃのー

ちょうかわいいよー
後日談も是非

いつかキャップも見たいなあ
あわあわ期待

乙です
や京豊N1!

>>94
先になるだろうけど玄やはるる辺りも見てみたい

乙です
豊音が幸せになってよかったよー

豊音かわいいよ豊音

>>95
その辺りやキャップ見たいわ

やはり豊音には笑顔が似合うと思う

>>97
キャップも良さそうね



「ねぇ…私と打ってよ」

「え?」

「あなた1年生でしょ?」

「生意気な」


とある学校のとある部室で長い金髪を揺らめかせながら入りたての一年生が三年生に喧嘩を売った。

喧嘩といっても殴る蹴るではない、ここは麻雀部で彼女達は雀士だ、売られた喧嘩は麻雀で買った。






「これでお終い、強豪って聞いてたから期待してたのに」

「嘘でしょ!」

「ナニコレ!」

「あぁ……ぁぁぁぁぁあ」


時間が過ぎればお灸を据えようとしていた三年生が皆して恐れ少女を見ていた。

少女はそれに対しても気にせずつまらなそうに呟いただけだ。


「やっぱり宮永照かな、打つなら」

「悪いがそれはムリだ」

「あんた……誰?」


願望を声に出すと後ろから声をかけられた。

振り向くと何処かで見たことがある女性が立っている。


「あーあー……宮永照の横に居た人」

「……横に居た人」


流石にこれには怒りが湧いたのか目の前の女性は口元を引きつかせた。


「まぁ……いい、照と戦うのは無理だ。大星淡」

「へー私の名前知ってんだ?」


名前を呼ばれたことで淡の心が戦闘体勢に入る。


「今すぐに戦いたいんだけど」

「駄目だ」

「ケチっ」

「戦いたいならランキングで上位を取れ」

「ランキング?」


目の前に立っている女性、菫の言葉に淡は初めて聞いた言葉だと言わんばかりに首を傾げた。

それを見て菫はため息をついた。


「冊子を渡されたろ」

「読むわけないじゃん!」

「こいつは……」


思った以上の問題児に菫は頭が痛くなってきた。


「ふ~ん、ランキングで勝ち上がればいいんだ。楽勝だね」

「待て……何処へ行く」

「ランキング戦もまだやらないんでしょ?」

「宮永照と戦えないならここに居る意味ないから帰る」

「おい!!」


菫の言葉を虚しく、淡は我関せずと荷物を持つと歩いて出て行ってしまった。


「……あぁ……!照でも頭痛いのに!」

「頑張れ部長!」


淡が去った後には頭を抱える菫が居たとか。



「………」


淡は鼻歌を歌いながら機嫌よく帰り道を歩く。

優雅に楽しそうに……だ。

暫くして寮が見えてくると心なしか足が速くなってくる。


「………っ!!」


最後には優雅さなどなく走り出した!

勢いのまま自室の扉を開けると用意されている自分のベッドにダイブをする!


「あわーーん!!!!」


そして手足をバタつかせて思いっきり鳴いた……失礼、泣いた。


「初日からなにやってんの私!!!」


ガバっと顔を上げると目がぐるぐると回り混乱している。

昔から大星淡はこうなのだ。

心の中では小心者、だが人前に立つと緊張ででかい態度を取ってしまう。

どちらも知っている者からしたら二重人格かと思うぐらいだ。


「どうしよ、どうしよ、苛められたら!……絶対嫌われてるじゃん!」


あぁぁぁぁと呻り声を上げ淡は頭を両手で押さえベッドを転げ回る。

そうしていれば勿論……下に落ちるのが摂理だ。


「あわ!!」

「うぅ……もうやだ、学校行きたくない」


下に落ちて淡は涙目だ。

そんな淡の上にひらひらと何かが落ちてきた。


「あわーん!……助けてー!!京太郎!!!」


その落ちてきた手紙を見て淡は本当の自分を唯一知る人物である、文通相手の名前を呼んだ。



「へっくし!風邪引いたか……いや、淡だな」


丁度その時、どの部活に入るか決めていた少年がくしゃみをしたとか。


<手紙シリーズ 大星淡編 近日開始>



>>93
期待しててなー砂糖吐かせるわ

>>94
……預言者?
キャップもええな!
すきやで!

>>95
玄は仲良くなる要素しかないよね!

>>96
全てのヒロインは幸せになります!
します!

>>97
なにこの可愛い子!
キャップ人気やね!

>>98
あれほど癒される笑顔はない!

少しばかり 次の子を投下

この子です

あわあわしてきた

や京淡NO1!

あわいい

乙です

乙です
ちょーよかったよー
豊音は守りたくなるね

あわあわも期待してます

豊音は可愛いし淡はあわいいし、
期待!


豊音編は伝承・ホラー要素も交えててすげえ雰囲気あった

乙です
話の長さはこれぐらいがいい感じかな
咏編は他のキャラが入ってきて長過ぎた

追いついた乙乙あわいい
正直豊音編のポポポで寒気と鳥肌立って動悸がヤバかったッス


>>103-104 >>106  >>114
あわあわしてくれ!
あわいい……いい響きだよね

>>105
やー!
自分は好きな組み合わせ多くて決められんね

>>107 >>108 >>111-114
おつありん

>>108 >>109-110
可愛くて守りたい最強だね
期待ありがとなー

>>111
ありがと、加えたは良い物のどうかなと思ったけど評判良さそうで良かった

>>113
だね、咏ちゃんは犠牲になったのだ
取り合えずあれは反省しています

>>114
尺八様は読んで後悔した作品ですね
東北暮らしだしアク皿とかの目撃情報もあったりで怖い。

書ける所まで投下しやす

>>101 続き

「やっぱり麻雀部かな」


くしゃみをした後、京太郎は1つのポスターを眺めた。

淡に付き合って麻雀をしているのでやり方は判る、高校に上がってからはハンドボール以外の事に挑戦したかった

事もあり京太郎はすぐさま、麻雀部の部室を確認すると歩き出した。


「はーい」

「失礼します」


旧校舎の大きな扉を叩くと中から女性の声が聞こえてきた。

中に入ると広い部屋の真ん中に麻雀卓があり、そこには既に4人の女性が座っている。


「ちょっと待てってね」

「部室内見て回っても?」

「いいわよー何もないけどね」


先ほど京太郎が入る際に許可を出した声の主が振り返りながら答えてくれた。

何処と無く聞いたことがある声だと思っていたが、まさか議会長である竹井久だったのには軽く驚いた。

議会長だけでも大変だろうに麻雀部に所属しているという事は、だいぶ麻雀が好きなのだろう。


京太郎は、許可を貰い部室内を見ていく、所々埃があったり何故かベッドが置いてあったりと不思議な部室であった。

時間も時間なので部員は麻雀卓に付いている4人だけだろう、4人だけにしては大きいなとも思った。

結局すぐにやることがなくなり京太郎は麻雀を見ることにした。



最初見たのは桃色髪の女の子だ、もちろん胸に釣られた訳ではない…ない。


京太郎(……最強設定のNPCみたい)

和「………リーチ」


桃色髪の女性の麻雀を見て思ったのはそんなことだった。

暫く見てから次にちっこい何かを食べている女の子の後ろにつく。


京太郎(こいつは……淡っぽいな)

優希「…もぐもぐ」


顔も知らない文通相手であって麻雀の師匠とも言える大星淡に似ていると思った。

特に効率も考えず感覚だけで打っている。


京太郎(次はっと……癖ないな)

まこ「………」


眼鏡をかけた先輩ぽい人の後ろについた。

この人は先に見た2人と比べてえらく地味だ。

特に癖もなく普通の麻雀に見える、強いて言えばデジタルに近い感じか。


久「次は私か存分に見なさい♪」

京太郎「はぁ……」


最後に久の打ち方を見てみるとなんとも困る打ち方であった。

非効率的な打ち方の癖に和了っている。

京太郎は勘でこの中で一番苦手な人だという印象を受けた。


久「ふー終わったし、自己紹介ね。私はここの部長をやっている竹井久」

まこ「ワシは2年生の染谷まこじゃ」

優希「1年生でさっき入った片岡優希だじぇ」

久「そして……」


久がなにやら含みを込めた目線で嬉しそうに最後の1人を見た。

その女性は先ほどの勝負で思うところがあったのか此方を見ず捨て牌と配牌を見ている。


久「ごほん」

和「あぁ、すみません。同じく1年生の原村和です」

京太郎「1年生の須賀京太郎です、よろしく」


京太郎はにこやかに笑い手を出すも和は握らずふいっと視線を麻雀卓に戻す。

それを見て少し残念に思い、振られた手をブラブラと振った。


久「それであなたって男性よね?」

京太郎「男性ぽい顔してると思うんですが」


久の言葉に京太郎は自分の顔をペタペタと触り始める。

さすがに女性にはムリがあった。


久「あ~……後1人で団体出れるのよ」

京太郎「なるほど」


久の言葉に納得しながらも麻雀の大会には団体戦もあるのかと思ってたりする。

京太郎は淡とネトマで打つ程度で大会に出たこともなければ本物に触った事もなかった。

それでも入ろうと思ったのは試してみたい気持ちと淡との会話で盛り上がればと思った為だ。


久「それで須賀君の実力は?」

京太郎「友達とネトマを毎日やる程度ですね。実際に触るのは初めてです」

まこ「ほー…珍しいな」

優希「ならのどっちとか知ってるか?」

京太郎「誰それ」

和「………」


優希に言われた人を頭の中で考えるもそんな人に覚えが無い。

不思議そうに首を傾げると久達に訝しげな視線を向けられていることに気付いた。




久「ネトマやってるのに知らないの?」

京太郎「ネトマで有名な人ですか?」

優希「ネトマ界で伝説と呼ばれるほど有名なんだじぇ!」

京太郎「へー……俺友達としか打たないんで知りませんでした」

久「ますます珍しい子ね」


京太郎の言葉に久はどう扱えばいいのかと困った表情をした。

麻雀をしてるのに牌に触れた事も無ければ他人と打ったこともない。

異様な少年である。


久「まぁ……打ってれば判るか、それじゃ須賀君の初めてを貰いましょうか」

京太郎「残念ながら最初の子は決めているので」


久の冗談に京太郎も乗りつつ麻雀卓の前に立つ。

軽く卓に触り牌にも触れると心が早鐘のように鳴り響く。

ここまで胸が鳴ったのは何時以来だろうか、淡に初めて手紙を出すときか、はたまた初めてハンドボールの試合に出たときか。

どちらにしろこれから麻雀とは長い付き合いになりそうだと京太郎は思った。








京太郎「~♪」


あれか何局打ってみてその日は解散となった。

初めて触った事もあり挙動がおかしなことになったが慣れれば楽しいだろうとも思った。

機嫌よく家に帰ってくるとリビングに置いてある食パンを口に咥えた。


母親「もうご飯になるわよ?」

京太郎「ふへーい」


台所で料理を作っている母親に注意をされつつも机の上に置いてある、チラシや手紙を手に取り読み漁る。

暫く目を通しているとお目当ての物を見つける。


京太郎「やっふぁい今日か」


もう片方手で口にパンを押し込むと嬉しそうに手紙を一通だけ取り部屋へと戻る。

鞄を適当にベッドに放り投げると自分自身もまたベッドに座り手紙を開け読み始める。

そこには可愛らしい文字で一週間の出来事が書かれていた。

とは言っても既に音声会話で伝えられている事が書かれているだけだ。


京太郎「アイツ大丈夫なのかね」


読み終えると心配そうに手紙を撫でる。

文通友達の淡は極度の緊張癖を持っていた。

文通をしているせいか自分の前では、問題ないのだが他人だと駄目らしい。

小学生の頃や中学生の頃は親しい友達が出来なくて嘆いた事もあった。

心配な事もあり、同じ高校に行ってみたかったのだが、物理的にも金銭的にもムリだったので諦めた。


京太郎「取り合えず…今日辺り来るだろうな」


手紙を丁寧に仕舞うと京太郎は腰を上げお風呂へと歩き出した。



京太郎「あぁ…やっぱりか」


夕食もお風呂も終え、ペットのカピパラを構っていたらPCから音が聞こえてくる。

京太郎は立ち上がるとヘッドセットを付け音声を入れた。


淡『京太郎ー!』

京太郎「はいはい」


入れるとすぐに淡の声が聞こえてくる。

相変わらず淡の声には悲惨さが伝わってくる。


京太郎「取り合えず……麻雀すっか」

淡『……うん』


何時も通りに部屋を作り淡が入ってくるの待つ。

数秒ほど待っていると直ぐに見られたアバターが入ってきた。

そして直ぐに部屋を閉めNPCを混ぜ麻雀を開始する。


京太郎「たまには人いれね?」

淡『ムリ!』

京太郎「顔が見えなくてもムリか」

淡『絶対チャット欄で酷い事いいそうになる!』

京太郎「……俺は実際に会った事ないから、わかんねーけどどんだけだよ」

淡『今日なんか先輩に喧嘩売ったんだよ!?』

京太郎「わーお」


配られた配牌を見つつ京太郎はどれを切るかを考える。

決めた牌を選択すると自動的に河に出された、それを見送りつつチャット欄を見てみると泣いている顔文字が書いてあった。

チャット欄----------------------------------------------

スタフィー:。・°°・(((p(≧□≦)q)))・°°・。アワーン!!

太郎:ご丁寧にどうも



---------------------------------------------------------


京太郎「そういえばさ」

淡『なーに?』

「ポンッ!」

京太郎「俺も麻雀部入ったぜ」

淡『あわっ!?』

「ロンッ!」

京太郎「それ貰いな」

淡『あわ~ん!ひどいよ』

京太郎「勝手に油断したお前が悪い」

淡『う~……それで入ってどうだった?』

京太郎「そうだなー……負けたな」


淡の言葉を聞いて京太郎は素直に言った。

部室で打ったは良い物の惨敗と言ってもいいほどだった。

慣れてない事もあり、久からは表情に出てると指摘もされた。


淡『う~ん、京太郎も強いと思うんだけど』

京太郎「お前意外と打ったことなかったし、あんなもんだろ」

淡『そっか、えへへ』

京太郎「嬉しそうだな」

淡『京太郎が大会に出てインターハイに来れば会えるなって』

京太郎「それもそうだな」

淡『いつか会えると良いな』

京太郎「……3年間あるんだ1度くらい目指すか」

淡『本当?』

京太郎「あぁ…俺も淡に会ってみたいしな」

淡『………』

京太郎「……淡?」


会話をしていると突如淡の声が途切れた。

不思議そうにしていると声が返ってきた。


淡『私も………私も会いたいな』

京太郎「……そうだな、絶対いつか会おうぜ」

淡『うん♪』



京太郎「それはそうと淡」

淡『今度はなーに?』

京太郎「こうして話してるのに手紙を書くってどうなんだ?」


京太郎は前から疑問に思っていたことを口にする。

こうして話をしているのだから手紙は必要ないと思っていた。

だが、淡からしたら違うらしい。


淡『手紙ってね、手間かかるよね』

京太郎「そうだな」

淡『でもさ、それがいいんだ』

京太郎「うん?」

淡『その手間がさ自分の為にしてくれたことだと思うとすっごく嬉しいの』

京太郎「………」

淡『それに言葉や行動では伝わらない事が伝わってきて幸せな気持ちになる』

淡『だから私は京太郎の手紙が大好きなんだ』


京太郎は無言で淡の言葉に聞き入る。

そういえば最初出したときは本当に楽しみで幸せで……そんな気持ちを何故忘れていたのだろうか。


淡『……それでも続けるの嫌?』

京太郎「……そこまで言われていえる訳ないだろ」

淡『えへへ……卑怯かな?』

京太郎「そんな事は無い、きっちりと俺の気持ちを込めて送ってやるか、待ってろよ」

淡『うん!』


2人は笑い合い、手紙が届くのを楽しみにしながら眠りに就いた。

あわいいんだけどもう既に砂糖吐きそう

今日はここまで!
>>124
常にこれが続くんだけど……むしろ序の口やで?

それじゃのー

乙ー
あわいい

乙!
まだ、このくらいでは砂糖は吐かない!

あわいい

乙あわ
何か顔がニヤけるくらいあまあまですな

乙です
あわいいこれがギャップ萌えか

乙。安定の和さんの好感度……彼は何もやってないじゃないか(同情)

砂糖が、砂糖が(口から)逆流する!?(あわああああ

まだこのぐらいでは砂糖吐かんよ・・・(ポタポタ・・・)

おつー
久々に覗いたらあわあわがあわあわしててあわいいから豊音ちょーかわいいよーの余韻が吹き飛んだ


>>126-138
おつありん

>>128
吐かぬか

>>129-130
あわいい

>>131
他の子は結構シリアスだしねー
なんであぁなったんだろうね?

>>133
敬語淡…衝撃的だった
本編でも使うときは使ってるけどね

>>134-135
別段嫌ってるわけでもなく久の非効率的な打ち方にムスーとしてるだけです

>>136 >>137
なにやらいろいろとやばい状況に……

>>138
あー……すぐに投下しちゃたしね

軽く投下

>>123 続き

「淡」

「ん~なに?」


部室でのんびりと雑誌を読んでいると声をかけられる。

特に気にする事なく視線を上げると菫と目があった。


「お前は虎姫に入ることになった、それとレギュラー入りだな」

「あわ?」


何を言われたのか判らない。

淡の心情はそれ一択だった。


「他の虎姫も紹介するから着いてこい」

「え…まじ?」

「まじだ」

「そ、そっか、まぁ私なら当たり前だよね!」

「お前の自信はどこから来るんだ」


淡が胸を張り答えると菫は呆れた視線を向けてくる。

どうやら胸のうちに秘めた動揺には気付かれていないようだ。


「こっちだ、これから部室ではなく虎姫専用の部屋に来い」

「はーい!」
(なんで!?私一年生だよ!!なんでレギュラー!?!?)

菫の後ろを陽気に着いていく。

正直レギュラー入りとは勘弁してほしかったりもする。

淡が白糸台に入ったのは別に大会に出たいわけではない。

自分と同じ実力者と麻雀を楽しく打てるかと思い入っただけなのだ。


「1年生で抜擢されるのも珍しいと思うだろ?」

「そうだねーこれも私の実力のお蔭かな」
(まじ勘弁!)

「先生も渋っていたんだが照の推薦もあってな」

「……テルーの推薦なら仕方がないね!」
(うわーうわー照先輩なにやってんの!?)

菫の言葉に淡は冷や汗だらだらになっていく。

数日前にランキング戦で上位に上がり照と戦わせた貰った事があった。

勿論敵う筈もなく負けたのだが京太郎以外では久々に対等に戦えて楽しかった。

それだけで終われば言いのだが、あれ以来何かと照が淡を可愛がってくるのである。

自分みたいな生意気な相手の何処を気に入ったのか全く持って理解できない。






「連れて来たぞ」

「お帰り、こんにちは、淡」

「てるーお久々!」
(挨拶が……普通の挨拶がしたい)

「この子が噂の子か」

「噂?」

「生意気な後輩」

「へー」
(ごめんなさい!)

「暴虐武人」

「負け犬の遠吠えだね!」
(うわーうわー)

『一番言われてるのが宮永照の後継者』

「むー後継者じゃなくて越えるの!」
(いやーー!!)


虎姫のプライベートルームで淡の心の叫びが木霊した。






「リーチ!!」

「うへーこれで3連続」

「なるほど、宮永先輩の後継者…納得です」

「甘いな、狙わせてもらうぞ!」

「…」


照の目の前で4人が麻雀を打っていた。

練習だというのに気迫はすごく、さながら大会のようだった。

そんな4人の中でも異質なのが淡だ。

既に3連続もダブルリーチをかましている。


(大星淡か)


今年入ってきた後輩で自分の後継者とも呼ばれている女の子。

最初は噂で知った、何でも先輩相手でも敬語を使わず生意気な子だと、曰く化け物だとも聞いた。

確かにその噂は正しかった、淡はすぐに頭角を表し上級生をものともせず倒していく。

気付いたときには自分達と同じ所まで辿り着いていたのには驚いた。


(蓋を開けて見たらウサギだったけど)


照魔境で覗いた彼女の本心は小心者の小動物のようだった。

何処となく妹の咲に似ていてついつい構ってしまうのもしょうがない。


(今のままだと敵ばかり作るし、傍に置いといた方がいいよね)


尭深に入れてもらったお茶を飲みつつ照はお菓子を頬張るのだった。












「はふー………」


お風呂から上がり髪の毛を丁寧に手入れをする。

正直面倒な上に興味もなかったのだが京太郎とお揃いの色と知ってからは大事にしている。

昔は嫌で嫌で堪らなかった髪の色も好きな人と一緒だと知れば輝いて見えた。


「金髪とか珍しいのに……これは運命だね」


手入れを終え鏡でしっかりと確認し頷いた。

それが終わると机の上に置いておいた楽しみを開ける。

勿論京太郎からの手紙だ。


「ふふふ……♪」


手で何度か手紙を撫で頬を緩ませた。

最初は間違いだった。

京太郎から間違って手紙が届いたのが始まりだ。

そのままにしていても良かったのだが、間違いですよと手紙を書いて送ったら返事が届いた。

後はその繰り返しだ、次第に心惹かれいった。

手紙を受取って胸が跳ねたように動き、声を聞けば胸が鳴り幸せで溢れていく。

十年ちょっとと短い人生だが、一番幸せな時だ。

姿も知らない手紙と声でのやり取りの相手だが、早く会ってみたいとも思う。


(会って……会って……会ったら?)


ふと会った時の事を考える。

最初は挨拶して改めて自己紹介して……それからそれから……。


(一杯お話して……触れ合って……笑いあって)


会った時の事を思うだけで頬が緩み嬉しくなる。

淡はむふーと頬を思いっきり緩めニッコリと笑った。


「会って最初に伝えるのはこれかな……京太郎、大好き」


深く深くベッドに沈み込み大事な手紙を抱きしめ会える日を思い想い、淡い恋心を育ていく。

短いけどこれにて!
書きたいものも多い!絵も描きたい!病院行かなきゃ!仕事がー!

あと散歩にも行きたい、雨やまないかなー

それじゃの

あわいい乙です
やはりテルーにはバレてたか

乙です
あわいい

乙です
あわいあわいい

乙です
内面分かってると微笑ましいものを見る目になるあわいい

ごふっ(あまりの可愛さに口内で砂糖爆発

乙!
内心、プルプル震えながら虚勢張ってる淡はあわいい!!

あわいも可愛いがテルーの気配りにほっこりした

あわいい

しっかりお姉ちゃんしてる照もいいよね!
ポンコツもポンコツでかわいげがあるけど

照魔境を覗くとそこには金色のウサギがプルプル震えてた
保護確定

怜かなぁ

うぼぼぼ……書き直し中
まだかかります

ええよええよー


>>146-151 >>153
おつありん

>>146
ばれてます。1人ぐらいいないとね

>>147 >>148 >>155
あわいい!

>>150
外面だけだと生意気なだね
それはそれで可愛い!

>>152
その砂糖は何処から湧いてきた!?

>>153
既にいっぱいいっぱい

>>154 >>156
気配りできるテルもええよね
お姉ちゃんって感じで

>>157
むしろお持ち帰り!!

>>158
この手紙シリーズって怜の誕生日って事でss書いたのが始まりなんよね
思い出深いわー

>>160-163
すまんかったー!


投下するわ

甘さは今回ないなー



「参ったなー」

「参ったのはこっちなんだけど」

「………」


全国大会の会場で頭を抱える。

そんな京太郎を冷ややかな目で2人の女子生徒が見えていた。

事の始まりは、会場に着いてからだ。


地区予選を3位でなんとか通り抜け全国大会に来るも淡との連絡手段を考えてなかったのだ。

京太郎も淡も会えると喜び勇んだの束の間、既に準決勝手前だというに会えていない。

今も白糸台の控え室に行こうとして捕まっている。


「淡の友達なんで」

「監督とかに通すな言われてるから」

「大事な時期、何かあっても困る」


2人の白糸台の生徒が通路を塞ぎ通してくれない。

無理矢理通る事もできるがそれで警備員を呼ばれても困る。

自分だけならいいが部長達まで巻き込むのはいただけない。



「君が女性だったらまだいいんだけどね」

「男性と会ってスキャンダルとか困る」

「どうすっか」


淡との連絡手段は手紙とPCでのやり取りだけだ。

勿論、手紙は出しても寮に届くだけでホテル泊まりの淡は知りもしない。

PCも家に置きっぱなしだ、携帯番号もなければメールアドレスも教えあってない。

残された手段は、直接会うと限られてしまったのだがそれもままならぬようだ。


「一旦、諦めます」

「ずっと諦めて」

「諦めてー」


しょうがなく踵を返し用意されている控え室へと戻る。

こうなったら事情を話して部長達に言い案を貰うしかない、途中で差し入れの飲み物を買って戻っていった。






「……行ったね」

「たね」

「いいなーいいなー、あれだけ想われてて」

「うらやまし」

『出会いが欲しいな』


残った2人がぼやいてたりもする。









「……ということなんです」

「なるほど……なるほど」


控え室に戻ると早速飲み物を渡し、相談してみた。

した時にからかわれたが真剣な表情で見つめると部長も顔を正してくれた。

真剣を理解してくれたのだろう。


「とはいってもねー」

「難しいのぉ」

「そうですよね」


先輩の2人は顔を見合わせ、一息ついた。

やはりそう簡単にはいかないようだ。


「う~ん、あぁ……そうだ」

「何かありましたか?」


暫くの間、3人で考えていると部長がポンと手を叩いた。

何か思いついたらしい。


「ホテルの場所は判ってるし、手紙でも出せばいいじゃない」

「手紙を?」

「ファンレターとかなら届くかも?」

「大会後に渡されないのかの」

「生徒に頼み込めばいいのよ、間違っても監督に渡しちゃ駄目よ?」

「……なるほど」


部長の提案を頭の中で実行してみる。

一種の賭けになるがやってみる価値はあった。



「早速手紙の内容を……『決まったー!なんとなんと!白糸台が2位で通過で……』えっ……」


内容を考えようと思った時、流していたテレビからそんな言葉が流れてきた。

白糸台が2位で通過?……淡が……?

急いでテレビに齧り付き、アナウンサーが読み上げる内容を頭に詰め込む。


「やばい事になった……」

「凄いわねー白糸台が2位とか…阿知賀強敵ね」


後ろでそんな事を言う部長がいたが、それはどうでもいい。

問題は淡のほうだ。

レギュラー入りで嘆き、地区大会でもあわあわと目を回していた淡。

先輩達のリードのお蔭で本選を楽しんでいたが今回の事はあいつには……。


「……手紙の内容は考えたの?」

「しっかりと考えないといけなくなりました」


すぐさま部屋を出ると自分のホテルへと急ぐ、少しでも早く手紙を届けないといけなくなった。


(だー…!直接会えればいいのに!)


落ち込んでいるであろう淡を思い駆けだす。








「………嘘、裏が乗らない?」

『決まったー!1位は阿知賀でななななんと!白糸台が2位で通過だ!!』


頭の中が真っ白になっていく。

言動こそ舐めていたが手加減したつもりはない、本気の全力で挑んだ結果2位になってしまった。


(私が………私が………照先輩達の頑張りを?)


ぎゅーと胸が締め付けられ徐々に徐々に理解する。

照達の3年間に自分が泥を塗ったのだと……。


「あ、ありがとうございました」


それでもなんとか立ち上がり控え室へと歩く。

一歩一歩歩くたびに心の中で何かがガラガラと崩れ落ちていく。

なんとか控え室前まで歩き、扉の前で止まる。

このままじゃ駄目だと……自分に楽しんでもらおうと頑張っていた照達に申し訳ない。





「てるー!ごめん、2位になっちゃった!」
(――――――)


「ん、通過できたから問題ない」

「そうだな、今回のは私達のせいでもあるしな」

「耳が痛い」

「お茶だすね?」


顔を作り中に入ると皆が優しく出迎えてくれた。

それが更に心に刺さる、今の自分はしっかりと演じて入れるだろうか。


「えへへ……決勝戦では負けないから!」
(―――――――)

(ごめんね、淡)


声にならない心の嘆きを受け照は俯く、負担をかけてしまったと……。















「………うぅ、ぐすん」


食事を終えお風呂に入り自室のベッドに倒れこむ。

そして枕を抱きしめ泣いた。

不安、恐怖、情けなさ……全てが淡を押しつぶす。


「明日が怖いよ……京太郎」


誰も聞いてないだろうが呟かずにはいられない。

一番会いたい人の名前を呼ぶもその人は居らず、未だに会えない。


「きつい……心がきつい」


目を瞑りぎゅっと枕を抱きしめ、淡は底しらない深い深い闇の中に己の身を置いた。

この夜淡が眠る事はなかった。




-京太郎side-



「これしかないよな」


白糸台が泊まっているホテルに到着した。

中々に豪華で少しばかり入りにくいが淡の為だと自分を叱責し足を踏み入れる。

中には様々な人があちらこちらへと動いており人が多い。

それでも辺りを見渡していると探していた人物を見つけた。


「こんばんは」

「げっ……」「はろ~」


今日通路で通せんぼをしていた2人だ。

挨拶をすると1人には嫌な顔をされ、もう1人は暢気に挨拶を返された。


「お願いがあって来ました」

「淡には会わせることはできないぞ」

「ぞー」

「判っています……だからこれを……」


そう言って懐から一通の手紙を取り出す。

そして渡そうとして手が止まる。

本当にこの手紙でいいのだろうか? そんな事が脳内を過ぎる。

京太郎の手にある手紙は所々煤けていて古いものだとわかる。

手紙の中でも最も古いもので何よりも大事な手紙だ。

できれれば手放したくない。



(……それでも今の淡にはこれが必要だよな)


目を瞑り考え込み……覚悟は決まった。

目を開け愛おしそうに人撫でし手紙を差し出した。


「これを……淡に届けてください。お願いします」

「………」


腰を折って頼み込む。

その場だけ異様な静けさが残る。

暫くの間、その姿勢で待っていると手紙が手から抜ける感覚があった。


「しょうがないなー」「ないねー」


受取ってもらえた。


「ありがとうございます!」

「そんな顔されちゃね」

「大事な物なんだね」


京太郎の思いはしっかりと伝わったようだ。

後はこの手紙の内容を淡がしっかりと判ってくれるかが心配だがこればかりは天に祈るしかない。

今すぐにでも会いたい気持ちを押し込めホテルを後にした。







「それじゃ渡しに……」「なんだそれは」

「あっ……」


手に持った手紙を届けようとして誰かに取られた。

白糸台の2人は聞き覚えのある声に体が固まる。

ゆっくりと後ろを振り向けばそこには監督が立っている。

監督は訝しげに手紙を嘗め回すように見ていた。


「きょうたろう……あわい?」

「えーと……その、ファンレターを……」

「どこがだ、なんだこの子供が書いた文字は汚いし」

「大事な物で……」

「今のあいつに落ち込まれても困るし、こんな物渡せるか」

「あっ……」


監督はそのまま手紙をゴミ箱に押し込むように入れてしまった。

その行動に何か言いたそうにするも睨まれ声にでない。

体が恐縮し動けもしない。


「ほら、さっさと行け」

「……はい」「はい」


2人は肩を落としトボトボと歩き部屋へと戻っていった。

それを最後まで見届けてからゴミ箱を一瞥し監督も部屋に戻る。

淡達には明日頑張ってもらわなければいけない。

こんな所で三連覇を逃されても困るのだ。







「届いたかな」 「……京太郎」 「わわわっ!手紙ない!」「回収されたのかな?」


残念ながら手紙-想い-は届かない。




それぞれが不安な夜を過ごし……未来ない、明日がやってくる絶望だけが残る中、それでも……。



「主将なんです?それ」

「何があろうと絶対に届けなアカンものや」


希望も同時にあった。


と言うところでここまで
次で淡はお終い 自分が書くと絶対シリアス入る……何故だ。

それじゃのー

「始まったな」

「………」

「………」


控え室で一言言われ意識が浮上する。

はっと顔を上げれば備え付けられていたモニターからは歓声や各放送局のアナウンサーの声が聴こえて来る。

遂に始まったのだ……今年の夏の王者を決める戦いが。


「……外の空気吸ってくる」

「判った……時間には気をつけろよ」

「大丈夫だって!私が遅刻するわけないじゃん!」

「………」

「その目はやめてほしい~なー……」


そんな事を言ってみると菫に訝しげな目で見られた。

朝起きれなくて部活に遅刻した事が何度か合ったので信じてないのだろう。

菫の視線から逃げるようにそそくさと立ち去る。






「………」


トイレにつくと用もたさずにボーと個室に引き篭もる。

此処にいても歓声が聞こえてきた。

誰かが大きな和了でもしたのだろう。


(……どうしよう、熱が湧いてこない)


ボーと天井を見ながらそんな事を思った。

あれから麻雀が楽しくない。

今だって怖さや不安などが付きまとい一向に心が晴れ渡らない。

まるで分厚い雲に覆われたかのようだ。


「………京太郎、なんで会いに来てくれないの?」


ここの会場に居る事は知っている。

既に何日も経っているのに何の音沙汰もない。

モニターとかで自分の事は知っているはずだ。

自分の姿が好みに合わなかったのだろうか?

それとも他に………。

一番会いたくて、一番喋りたくて、一番一番大好きな人-王子様-は未だに姿を見せない。






「………っ!!」

「ちょっとキミ!?」


通路を走っていると警備員の人に声をかけられる。

それでも足を止めない、止められない。


(何処だ!何処だ!淡!!)


時間は巻き戻り、大会直前の時。

昨日手紙を預けたがそれでもやはり会いたいと言う気持ちは変わらない。

思い立ったが吉日といったもんが勝ちでもう一度だけ会いに行ってみた。

会いに行くと露骨に落ち込んでいるあの2人のが居たので聞いてみると……。


『ごめんなさい!!監督に見つかっちゃって!』

『えっ?』

『手紙捨てられちゃった』

『っ!!』


二人の言葉に怒りがふつふつと湧いてきた。

手を握りぎゅっと拳を作り震わす。

それでもそれでも歯を食いしばり耐えた。

この2人を信じたのは自分であり、捨てられたのも自分の責任だろう。


『……淡に会いたいんですけど』

『怒らないの?』

『2人を信じて渡したのは俺です。責任も俺にあります』

『『………』』


京太郎の言葉に2人は唖然とした。

正直怒鳴られると思っていた、殴られると思っていた。

それを受け入れるつもりでもいたのだ。

それなのに……この少年は……。


『淡は?』

『それがね……始まる前に外の空気吸いに行ってそのまま…』

『戻ってきてないね』

『あいつは……』

『白糸台の人達で探してるんだけど』

『……まだ見つかってない」

『!!』


そんな話をしていると二人の後ろから新たな声が聞こえた。

正面から見ていた京太郎にはその人が鮮明に見える。

赤い髪を肩口で切りそろえ、白いワンピース型の制服を着こなしている少女―――宮永照だ。




『……ひぃー!み、宮永先輩これは!!』

『構わない』

『あれ?』


頭を抱え2人は身構えたが照の言葉に不思議がる。

他校の生徒に淡が戻ってきてない事を教えたのだ、怒られると思ったのだが。


『照さん、お久しぶりです』

『うん、お久しぶり京ちゃん』


照にキッチリとお辞儀をすると声をかけてくれた。

こうして会うのは何年ぶり以来だろうか、正直忘れられてると思っていたが覚えていてくれたらしい。


『ごめんね、京ちゃん。私じゃ支えきれなかった』

『いえ……しっかりと支えてましたよ。淡の手紙にお姉ちゃんみたいな人が出来たって書かれてましたし』

『お姉ちゃん……そっか、そっか』


京太郎の言葉に照は複雑そうにそれでいて嬉しそうにはにかんだ。


『他の白糸台の人にも淡の情報を京ちゃんに流すように伝えるから淡の事よろしくね?』

『はい!』


照の言葉に頷き走り出す。



「くそっ!!何処だ」


様々な所につけられたモニターを見ると既に副将戦が始まっている。

早く見つけないと淡が不戦勝となり、立場が更に窮屈なものへとなってしまう。


(手紙が届いていたら)


息を整える為に立ち止まるとそんな事を思ってしまう。

あの手紙は京太郎が初めて受取った物だ。

前に淡と手紙について話した時に思い出したのだ。

あれを渡せば淡も判ってくれると思ったのだが……。


「ちくしょー……」

「お困りのようやな」

「えっ?」


息を整え終わり悔しそうに呟くと後ろから声をかけられる。

ふと振り向くと其処には、見たことがある人が立っていた。


「今度はちゃんと渡さなアカンで」

「これって……なんで」


その人……愛宕洋榎から差し出されたのはあの手紙だ。

震える手で受け取り確認するもやはりそうだ。


「想いが篭った手紙は何が何でも届かなあかんやろ?」

「………ありがとうございます!!」

「あと2Fのトイレに入ってくの見た奥から2番目や、頑張りな。ほなな~」


そう言って洋榎は手を振ると後ろを向いて歩いていく。

時間も惜しい中、京太郎は見えなくなるまで彼女に頭を下げ続けた。



「………」


ボーと何をするでもなく天井を見つめ続けた。

先ほど放送が鳴り、副将戦があと少しで終わることを告げた。

大将戦に出るにはそろそろ動かないといけないのだが、体はまったく動いてくれなかった。


「……入ってます」


コンコンとドアが鳴った。

元気のない声で相手を断った、まだ自分は出る気ないようだ。


「その声……ようやく会えたな」

「京太郎?」


ドアの向こうの声を聞いて顔をあげた。

一番聞きたかった声が聞こえてきたのだ。


「ここ女子トイレだよ?」

「照さんに見張ってもらってる。てかお前がこんな所に篭ってるから入らざる終えなくなったぞ」

「………」

「………やっぱり怖いか?」

「うん、怖い。すっごく怖い」

「お前臆病だもんな」

「うん」


先ほどまで冷え切っていた心が今はポカポカと暖かい。

声を聞くだけでここまで変わるなんて………京太郎は魔法使いなのだろうか?


「忘れる前に渡しとくわ」

「何を?」

「今のお前に最も必要な特効薬」


どうやら京太郎は医者だったようだ。

大人しく待っていると突如頭に痛みが走った。


「いった~い」

「あ……わりぃ、手紙の角が当たったみたいだな」


地味に痛みが走り涙目になる。

頭を押さえながら地面に目を向けると一通の手紙が落ちていた。

その手紙は何処か懐かしく見覚えのある物だった。



「これって……」

「お前から貰った最初の手紙」

「………取っておいてくれたんだ」


今度は別の意味で涙が出てきた。

ぐしぐしと顔を拭きとり、おそるおそる手紙を開け中身を確認してみる。

子供の頃の自分も文字が目に入り、少しばかり照れてしまった。


「………京太郎、どうしてこれを?」

「前に言ってたろ、手紙は手間がかかるって、それでも自分の為に手間をかけてくれるのが嬉しいって」

「うん」


覚えている。

前にチャットした時に出た言葉だ。


「その時さ……思い出したんだよ」

「………」

「最初に手紙を出す時、本当に怖くて不安で………それでいて何か始まりそうなドキドキがあってさ」

「………」

「麻雀も同じじゃないかなって最初は皆怖くて、不安で、それでいて楽しみで」

「うん……うん!」

「その時の気持ちを思い出して欲しかった。負けるとか怖いとかじゃなくてさ」

「全力で楽しめよ、全力で楽しんだお前を責める奴はいないよ」

「そっかな?」

「そうだよ、いたとしても俺が守ってやる!今度は近くで……」


立ち上がり、コツンと御でこをドアにぶつける。

この外に私の大事な人がいるのだ。

そう思うだけで心が熱く、軽くなる。


「それじゃ、そろそろいくわ」

「………京太郎?」

「次ぎ会う時は大会が終わった後だ」

「京太郎!!!」


そのことを聞いてドアを開け外へと飛び出る。

だが、既にそこには誰もいなかった。

あれは夢だろうか………自分が良い様に考えた妄想だろうか。

いや、夢でも妄想でもない、自分の手には手紙がしっかりと握られているのだから……。


「………行かなきゃ」


洗面台の鏡で自分の姿を確認し外へと出る。

もう迷いはない、何より京太郎にもう一度会わなければいけないのだ。






「………」

「………」

「………」


淡達が去った後、他の個室の扉が開き3人の人が出てきた。

それぞれがお互いの顔を見ると無言で頷き洗面台へと移動した。

そして………。


「「「場所を考えてよ!!」」」


咲、ネリー、穏乃は甘酸っぱい雰囲気に当てられゲンナリとした。







「あーあー………楽しそうに打ちやがって」


ロビーに設置された小さなモニター見て京太郎は呟く。

小さな箱の中では今まで以上に楽しそうに打つ淡の姿が映っている。


「こりゃ……俺が戦犯かな」


これで白糸台が勝てば、部長達に合わせる顔がないなーと思いつつも淡を応援してしまう。


「………会えるの楽しみにしてるよ」


『さぁ、ラスト!!全力でいくよ!』

「ははは……本当に楽しそうだ」


それを暫く眺めた後、その場を去る。

試合の結果どうであれ迎えに行かなければいけない。


「さて……何処へ行こうかな」


京太郎は頭の中で何処へ一緒に出かけようかと考えていく。






「大星選手一言お願いします!!」

「えーと………」


試合が終わり扉を開けると眩しい光に包まれマイクを向けられる。


(一言……一言……)


向けられたマイクを見ながら暫くの間、考え1つだけ思いついた。


「京太郎ーー!!!愛してる♪」


元気な声と飛びっきりの笑顔と本当の気持ちを込めて叫んだ。



<手紙シリーズ 淡編 カンっ!>

淡編終わりー!

お待たせさせてすみませんでしたー!
淡編は京太郎と淡が会わずに終わりとなります
会うのは、アフターかね

大阪組は好きですね 一番好きなキャラが多くいるので
ただ、洋榎が淡編に出てきたのは次の書く話が彼女だからです

さー無人島のほう終わらして洋榎も書かなければ それじゃのー

あわあわしました
ちゃちゃのんのファンやめます

俺も愛してる!

あわあわイェーイ!!

おつでしたー!

ネキ可愛いぞー!(やっぱ淡は天真爛漫って感じが良いねぇ)

小心者ってのがバレて散々弄られる展開をアフターに期待していいんですよね

すげえあわいかった。ブラックコーヒーに砂糖がいらないなー
え?次は面白い顔の方が手紙で飯テロされるって?

飯テロより下仁田ネギの画像送って困惑させたい

あわあわくそかわいい

乙ー
咲穏乃ネリーに笑って穏乃とネリーの手紙も見たくなったw

乙です

乙です
試合前に酷い精神攻撃ww
平行世界で反撃やなw


急に出てきた愛宕ネキにインパクトもってかれた感はある

……監督が邪魔したのに監督の望む通りになったぽいのがなんか納得行かない。あわあわと京太郎がいい感じなだけに……

おつー
あわいかった!



内心ウサギなあわあわ可愛い
ポンコツじゃない保護者てるてる凛々しい
ボケモードじゃない愛宕ネキ漢前


試合直前に女子トイレで精神攻撃受けた対戦者…うん、ご愁傷さまとしか
特に咲はチームメイトの幼馴染みのあれは色んな意味で恥ずかしいだろうなあ


>>199
なんでじゃ!?
そういえば、ちゃちゃのんも楽しそう

>>200
ぃえーい!愛してるぅー!

>>201
あわあわイェーイ!

>>202
ネキかっこ……可愛い!
せやな、やっぱり天真爛漫が彼女やね
書いてて思った

>>203
もちろん、アフターで書くよ

>>204
ブラックコーヒーが甘かったです
俺はこれを何回も読み直さないといけないんだぜ

>>205
飯テロってどこ発祥だっけか、読んだのに忘れたな

>>206
可愛いよね!

>>207
せやなー………穏乃はちょっぴり切ない、ネリーはドシリアスやね

>>208
ありがとなー

>>209
それぞれがやらかすのか

>>210
それはすまんかった
目立ち過ぎたね


>>211

<インタビュー>

記者「大星さん、聞きたいことがあるのですが」

淡「何ですか?」

記者「決め手になったのは?」

淡「京太郎!」

記者「………えっと、なら誰にこの気持ちを伝え……」

淡「京太郎!!」

記者「………大星さんが決め手にはなったと思いますが、大星さん的には」

淡「京太郎!と先輩達!」

記者「………あのー、監督とかは」

淡「菫先輩!監督って居ましたっけ?」

菫「そりゃ………えーと」
(淡が敬語使ってる)

尭深「………名前なんでしたっけ?」

誠子「あーあー……ん~?」

照「知らない」

淡「あわー………知らないらしいです」

記者「はぁ………」

こんな感じじゃね?

>>212-214
あわいい!

>>215
咲キャラは嫌いな子いないので書きやすいです
誰も彼も気に入ってもらえると嬉しいですね

報告ですがー!すみません!洋榎延期で!!
どうしてかと言いますと書きたい子が出来ちゃって………
次の更新は9月24日になります!
書きたい理由と誰か判るよね!

それじゃのー

おつおつー

乙です
あわいいアホの子あわいい

> どうしてかと言いますと書きたい子が出来ちゃって………
誰だ?!

誕生日、祝わずにはいられないな

9月24日というとキャップ編か?楽しみ

乙ー

マホ編とか書いて欲しい


>>218-221 >>226
おつありん

>>219
どこか抜けてる子って可愛いよね

>>222-224
池田ァァァ!!祝えよ

>>225
ですです

キャップですね

>>227
マホかー………手紙の送り主は、励ましてくれる王子様。
実際の京太郎は、少しばかりお子様扱いしてくる先輩……。
喧嘩をしつつも惹かれて、王子様と京太郎の間に苦悩して……。

って所まで考えて放棄した。

更新は、22~23時ごろ?
今日と明日を使い美穂子を終わらせます
ではでは

『――――』


神社の境内で1人の少年が泣いている。

膝が赤くなり血が出ている、どうやら転んでしまったようだ。

周りには誰もいなく、少年以外には人の影すらなかった。


『……転んじゃったのね、ちょっと染みるけど我慢してね?』

『………うん』


どのぐらい泣いていたのだろうか。

気付けば目の前には少年と同じ金髪の少女が居た。

その少女は、自分も座り込むと視線を合わせにこやかに笑った。


『………』

『どうかしたの?』


少女は、頬を染めた少年を不思議そうに見つめた。


『その目………』

『あっ………』


少女は慌て目を隠す。

今度は少年が不思議に思う番だった。

足の痛みを忘れ首を傾げる。


『きれいなのになんでかくすの?』

『えっ………』

『やっぱりきれいだ』

『本当に………?』

『うん』

『……ありがとう』

『どういたしまして?』


ただ思った事を言っただけなのに何故かお礼を言われた。

とりあえずお礼されたので返したが、お礼言うのは自分の方だと少年は思った。

同時にまだお礼を言って無いと思い返すと足を見ると膝には少女の物であろう花柄の絆創膏が張ってあった。

不思議なもので先ほどまで痛かった痛みが今はない。


『ありがとう、お姉ちゃん』

『こ、こちらこそ』

『なんでお姉ちゃんが?』

『………瞳を褒められたの初めてなの』

『えーっ、こんなにきれいなのに』

『うぅ………』


既に少年の褒め殺しに少女は顔を真っ赤にさせた。

まるで茹蛸のようだ。


『あ………あのね、もしよかったら私と――――』


「………」

「京太郎ーー!!起きなさーーーい!!」


大きな声が聞こえ意識が浮上した。

懐かしい夢を見て良い気分だったのが台無しだ。

それでも普段よりは気分がよく、起き上がるのも苦痛ではなかった。


「起きてるよーー!!」


起き上がるとすぐに声を出し下の階に居るであろう母親に返した。

本来なら近所迷惑になるであろう声もここなら問題はないだろう。

家の大きさの関係上届かないはずだ。


「………ふぁ~」


目を擦り、欠伸をすると着替え、鞄を持って下へと降りる。

その際に机の上に置かれた便箋を自然に手にとって鞄に仕舞った。



――――――――
――――――
――――




「いってきまーす!」


食事を終えるといい時間帯になっていた。

すぐさま鞄を持ち外へと飛び出す。

少し慌てすぎかもしれないが、ゆとりあった方がいいだろう。


「今日はあるかなー」


そして、歩きながら澄み渡る空を見上げポツリと呟いた。





「京ちゃん、今日は部活お休み?」

「んっ、部長に言っといてくれ」

「判った」


長い退屈な授業も終わり、放課後になるとトコトコと咲が寄ってくる。

今日の部活の事を聞いてくるが咲も心得ているのか欲しい言葉を返してくれた。

それにしてもよく今日だと判ったものだ。


「さすがに何年も傍に居れば判るよ」

「………そんなに解りやすいか?」

「うん、それじゃ私は部活に出るから」

「頑張れよー」

「京ちゃんも頑張らないといけないんだけどね」

「うぐっ」

「それじゃねー!」

「おーう」


咲の言葉に胸を押さえる仕草をすると軽く笑ってくれた。

手を振り去っていく咲に手を振り返し、自分も足を踏み出す。

なんとなく今日手紙が届いていると思ったのだ。。


(ははは………何十回と続けている事なのに未だにドキドキする)


歩きながら今から行く所を想像すると胸が破裂しそうなぐらいに鼓動する。

小学生の頃から行なっている行為だが、未だに慣れない。

毎回毎回が新鮮である。



「~♪」


途中で買ったコロッケを食いつつ歩いていると見覚えある鳥居が見えてきた。

その鳥居は所々欠けていてボロボロだ。

京太郎は、その鳥居を潜ると境内へと足を踏み込んでいく。


「………あった、あった」


真ん中にポツンとあった小さな小さな本殿の前のお賽銭箱の下に一通の手紙が置いてあった。

それを拾い上げると後ろを見て名前を確認する。

うん………間違いがない、自分宛の手紙だ。


「とっ………いけない、忘れる所だった」


手紙をすぐに開けようとしてある事を思い出す。

慌ててポケットに手を入れると5円玉を取り出しお賽銭箱へと投げ入れた。

そして衣服を整え、背筋を伸ばし、二拝・二拍手・一拝を行なった。

内容は、手紙を預かってくれていた事への感謝の気持ちだ。


子供の頃からずっとこの方法でやり取りしていたが、時に風に飛ばされ、誰かに拾われ、届かない時が何回かあった。

そんな時は決まってお参りをした。

すると何故か相手に手紙が届くのだ。

今では、何もない時も感謝を込めお参りを欠かさない。


「さてと………」


本殿の隅っこに座り、早速手紙を開け読み始める。

中身は、今日あった事、嬉しかった事、失敗してしまった事……様々な事が想いが綴られている。

それを一文字、一文字、大事に、愛おしく思いながら読み続けた。


「やるか!」


暫く読んだ後、京太郎は袖を捲くり気合をいれ境内を掃除していく。

誰も管理してないのか何時も汚れているのでお礼がてらやっている行いだ。

文通相手もそうしているようで前来たときよりも綺麗になっている。

手紙を置きに来た時に掃除をしていったのだろう。


「これぐらいでいいか」


彼女では出来ない力仕事を終え、少し早いが帰宅する。

ここは家からは少しばかり遠く、早めに帰らなければいけない。

最後に本殿にもう一度一礼し帰宅した。



「あった」


京太郎が去って数分後に一人の女性が境内へと足を踏み入れた。

その女性、美穂子は京太郎がしたようにお賽銭箱の下を覗き、手紙を手に取り優しく手紙を撫でると微笑んだ。


「にゃー!キャプテン、何処ですか?」

「ふふふ…華菜ったら」


自分を呼ぶ聞こえてきてクスクスと笑いながらも京太郎同様に神様に感謝し頭下げ、その場を後にした。


「こっちよ、華菜」

「良かった、行き成りいなくなるので心配しました!」

「ごめんなさいね」

「いえいえ、それじゃ帰りましょうか!」

「そうね」


辺りを見渡せば既に夕暮れに包まれている。

もうすぐ日が完全に山へ消え夜がやってくるであろう。

美穂子は、華菜と一緒に家へと歩き出す。


「何かキャプテン嬉しそうですね」

「そ、そうかしら」


華菜に指摘され、頬がカッーと赤く染まっていく。

既に心も手紙へと向いており、はしたないと思いつつも今此処で手紙を開いて読みたいぐらいだ。


「………好きな人でも出来ましたか?」

「ふへ?」


いきなりの事で反応が出来ず、呆けて仕舞った。

そんな美穂子を見て華菜は確信するとニマ~と嫌な笑みを浮かべる。


「キャプテンにも春が来ましたか」

「そ、そんなことは………そんなことは………」


華菜の言葉に反論しようとしたが言葉が出てこない。

言葉にしては、いけないような気がしたのだ。




(よかったし)


恥ずかしげに呻っている美穂子を見て、華菜は内心喜んだ。

誰よりも頼りになって、誰よりも頑張っている女の子、それが華菜から見た福路美穂子だ。

尊敬に値する人だと思う、だがその分、誰かの為に自分を犠牲にするような人でもある。

そんな美穂子がしっかりと青春を送っていると判ってほっとした。


(まぁ………キャプテンを泣かす様な奴ならギッタンギタンにしてやるし)

「………華菜?」

「何でもないです!それよりキャプテンあっちにクレープ売ってました!食べましょう!」

「もう、華菜ったら」

「えへへ」


少しばかりからかい過ぎたと思い、わざと話を逸らす。

チラっと後ろを向くとあからさまにほっとする美穂子が見えた。


「良かった、良かった」

「どうかしたの?」

「なんでもないです」


2人は仲良く歩き、その後も会話を重ねていった。


あの手紙を受取ってから、数日後ただただ今の思いを控え室で叫んだ。


「負けたーー!!!」

「ご愁傷様」

「まぁ………初めて数ヶ月ならね」

「普通のことだじぇ」

「私は結構行きましたけどね」

「和とは、また別じゃろ」


初めての大会に勇んで出たものの、予選落ちだった。

悲しいといえば悲しいが、今はこんなものかとも思っている。

あと2年もあるのだ、その間に強くなりリベンジをしようと心に誓った。


「あっ、いたっ!」

「部長?」

「むぐっ」


来年に向け燃えているとと久が声をあげ指を押さえた。

他の皆も驚き其方を向くと指から少しだけ血が流れ落ちた。


「だ、大丈夫ですか?」

「紙で切っちゃった」

「あぁ………絆創膏持ってますよ」

「ありがとう」


どうやら資料を見ていて指を切ったようだ。


(指を加えている部長は何とも………こう、色気が………といけない、いけない)


「わっと!?」

「何やってんの京ちゃん」

「あはは………」


そんな事を思っているとポケットから出した絆創膏を机に巻き散らかしてしまった。

少しばかり恥ずかしくそそくさと絆創膏を仕舞っていく。


(えっと………あら、これだけ違うわね)


久は呆れながらも取り合えず、机に散らばる絆創膏の中から1つを選び抜き取る。

その絆創膏は、他の無地の物と違い花柄模様の可愛らしい物であった。

男性の京太郎が持っている物としては合わないなと思いつつ、これにした。



(あれ………あれがない!?)


絆創膏を仕舞っていると大事な物が無い事に気づいた。

何度探しても見当たらず冷や汗が出てくる。

必死に大事なお守りを探していると久が声をかけてきた。


「それにしても須賀君も可愛いものを……「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」…ひぅ!?」


久のほうを向くと今まさに絆創膏のシールを引き剥がそうとしている久が目に入った。

絆創膏は、花柄の可愛らしい物で京太郎が探していた物でもある。


「び、びっくりした」

「あぶねー!あぶね!部長、すみませんがこれは駄目です!」

「そ、そうなの?」


間一髪、久から取り返した絆創膏を見ると何処も剥がれておらず問題なさそうだ。

そのことにほっとしつつ今度は無くさないように大事に仕舞った。


「ふぅ………良かった、部長こっちを………」

「じーー」

「じーーだじぇ」

「じぃー」

「じー」

「……ワシも?ご、ごほん、じ、じぃー」

「………」


好奇心旺盛な4人の瞳が此方に向けられていた。

ご丁寧にも効果音も口に出している。



「え~と………長くなりますよ?」

『聞かせて』

「あはは………」


ガックリと肩を落とし自分の思い出を話始める。


「えっとですね、昔……子供の頃に母親の付き添いで風越のほうへと出向きまして」

「風越?」

「えぇ、友達が住んでるらしく、付いていったは良いものの子供には暇すぎました」


そう言って目を瞑った。

瞑った先の暗闇に昨日のことかのように鮮明な記憶が映される。


「そこで周りを探索しに出かけたのですが、迷子になっちゃって」

「子供ですしね」

「咲ちゃんみたいだじぇ!」

「えぇ~私はそんなにひどくないよ」

『ひどいよ』

「み、皆して」


今度は京太郎ではなく咲がガックリと肩を落す番であった。


「ごほん、それで歩きつかれて転んで……何処かの神社の境内で遂に座り込んで泣いてしまいまして」


「………」



「そんなときでしたね、あの人と会ったのは」



『どうかしたの?』



「その人は自分より1~2歳ほど上の女の子で自分を手当てしてくれて」



『痛いの痛いの飛んでけ~これでもう大丈夫』



「帰り道まで教えてくれて」



『離れないように手を繋いで行きましょ?』



「それで………この花柄のは、その時の手当てに使われた絆創膏と同じものなんですよ」

「なるほどな」

「使わなくて良かったですね。部長」

「まったくね」

「一応文通してるので関係は続いてるのですが、それ以来会ってないんですよね」


そう言いながら頭を何度か掻き困ったような表情を浮かべた。

なんとく泣き出しそうな、情けなさそうなそんな表情だ。





「会わないの?」

「会って………関係が壊れるのが怖くて」

「情けない………とは言えんの」

「大事なことですしね」


京太郎の言葉にまこと和が賛同してくれた。

ヘタれと思われるかもしれないが京太郎にとっては大事なことだ。

出来ればもう一度会う時は相手の心に残るような形で会ってみたい。


「それで!どんな子なの?」

「名前はみほっちゃん」

「あだ名?」

「あぁ、ずっとそれで名前を書いてたから本当の名前は知らない」


今更ながら本名は何ですか、なんて聞けやしない。


「他には?」

「俺と同じ金髪でと言っても俺より綺麗で細かったですね」

「………」

「あとは特徴的なのは目ですね」

「目………ですか?」

「そそ、片目が青でオッドアイっていったっけ?すっごい綺麗だった」

「よくも1回会っただけでそこまで覚えてるわね」


久は少々呆れながらも感心したかのように頷いた。



「忘れられない記憶ですし」

「なるほどね」

「ん~………その人ってこんな人だじぇ?」

「へ?」


少しばかりしんみりとした雰囲気になっていると優希が声をかけ、本を見せてくる。

タイトルには、期待の高校生雀士と書かれており、『風越女子キャプテン 福路美穂子』と書かれていた。

中身を見て確認すると確かに京太郎の言った特徴と一致している女性が写っていた。


「………この人って」

「あーあー………そっか、風越の人に似てるのね」


会場の入り口で見た風越の人が載っている。

あの時は、初めての大会で緊張していた為、気付かなかったが確かに今言われれば似ていた。


「………」

「京ちゃーん?」

「駄目ね」

「駄目ですね」

「駄目駄目だじぇ」


何度か京太郎の名前を咲が呼ぶも反応せず、ひたすら雑誌を食い見るように止まっている。

目の前で手を振っても身じろぎ1つしない。


「どうします?」

「ほっといてもいいでしょ」


和の声に久はため息を付いて答えた。

この調子なら何を言っても無駄だろう。


(そういえば、思い出したけど………前にあの子の瞳褒めた事あったわね)


京太郎の思い出と雑誌の美穂子を見て久は思い出す。

前の大会の時に彼女にそのような事を言ったのを………確かあの時、あの子は……。


『ありがとうございます』


何かを思い出すように、何処か懐かしいものを見るような表情をしていた。

あれはきっとこの事なのだろうと密かに思った。



――――――――
――――――
――――


「落ち着いた?」

「落ち着いた」


あれから暫くし、ようやく京太郎が復帰した。

優に10分以上も見続けていたので少々心配したが問題なさそうだ。


「美穂子………みほっちゃん。そっか………この人か」

「かも知れないって所だけどね」

「うっ………」

「さっさと会って来なさいよ」


夢心地の京太郎の頭を久が何度か小突いた。

先ほどから表情豊かに変えて行く京太郎を弄っていると楽しさすら覚えてくる。


「ま、まだ心の準備が」

「はぁ~……そろそろ試合が始まるんじゃが」

「そうだった」

「京太郎………風越のキャプテンを倒しても泣くなよ」

「あ~そっか……俺は優希と彼女どっちを応援すれば!?」


時間を見れば、既に試合間近になってしまっていた。

優希に言われた言葉でこれから風越と戦う事を思い出し苦悩する。

大事な仲間達と大事な人かも知れない人、どちらを応援すればと頭を抱えた。


「あっち応援してもいいじょ?」

「え?」

「その代わり!後でタコス奢れよな!」

「………優希」

「まぁ………!私は負けないけどな!行ってくるじぇ!!」


落ち込んでいた京太郎の肩を叩き優希は颯爽と駆け出す。

その背は、普段の彼女と違い大きく見えた。




「―――でその結果がこれね?」

「………ぷしゅ~」

「おーい、タコス買って来たぞ」


数十分後、控え室に戻ってきた優希は、口から煙を出していた。

最初こそ調子が良かったが、後半になり美穂子が本気をだしたのだ。


「うう~………」

「大丈夫か!優希!」

「た……たこすを」

「ここに!」


倒れかけた優希を抱き起こすと京太郎は言われたとおりにタコスを持ってくる。


「あと………あのお姉さんのお弁当美味かったじぇ」

「………」


タコスを渡そうとした手が止まった。

そして………。


「あーー!!私のタコス!!」

「うるさい!俺も食いたかったのに!!」


タコスを自分の口へと入れる。

優希が慌てて取り返そうと起き上がるも既にタコスは口の中だ。


「あー!あー!!」

「ちくしょー!食いたかった!」

「なにしとるんじゃ」

「ほっといてもいいかと」

「あはは……それにしても福路さん強かったですね」

「そりゃー個人戦1位だしね?」


「タコスー!!」

「お弁当!!」


なんとも緊張感のない控え室となった。



――――――――
――――――
――――



『ツモ!これで私の勝ちだね!』

「………」


控え室のモニターの中で最後の局が終わった。

試合が終わり全国へ行く勝者が決まったのだ。


「やった!!」

「流石咲ちゃんだじぇ!」

「あー………夢じゃない?」

「みたいですね」

「………まじか」


喜び、驚き、嬉しがり、お互いがお互いに抱き合い感情をあらわにした。

そんな中、1人だけ何とも言えない気分になった人がいる。

京太郎だ。

純粋に皆が勝ってくれた事は嬉しい、だが彼女が落ち込んでいると思うと何とも言えない気持ちになった。


「咲を迎えにいきましょうか!」

「おぅだじぇ!」

「あれ?」

「あなたはこっち」


皆と一緒に駆け出そうとしてたら、久に体の向きを変えられた。

何事かと驚き久の顔を見るとにんまりと笑っていた。


「ほら、行って来なさい」

「勝った学校の部員が慰めに行くのはどうなんでしょうか・」

「まぁ………たぶん、大丈夫じゃろ」

「にゃはは、振られんなよ!」

「えーと………行けと?」


言いたい放題に言って来る4人を見ると全員が頷く。

どうやら自分は会いに行かなければいけないようだ。

京太郎は、暫しの間考えるも4人に頭を下げると駆け出した。


『青春ですね(ね)』

今日はここまで続きは今日の夜辺りにでも次で終わる予定です。

ちなみにまだ半分ですね

それではこれにて

忘れてた、みほっちゃんお誕生日おめでとー!



「キャプテン!!!」

「泣かないで華菜」


(で、でれねー!)


あれから駆け巡り、風越を見つけたまでは良かった。

だが、丁度決勝戦で戦った池田華菜と言う人を慰めている最中でとてもじゃないが出るに出れない。

壁越しからチラっと見ても落ち込んでいる風には見えず、自分の役目などなさそうだ。


(帰るか)


流石にこの雰囲気をぶち壊してまで会いたいとは思えない。

踵を返しその場を後にすることにした。


(………でもこのまま帰ったら怒られるよな)


こっちに送ってくれた4人を思い出し、どうしようかと悩む。

京太郎自身何かしたいところだが、自分の出番はなさそうだ。

ある程度歩き、呻っていると、ある物が目に入った。


「あぁ………これがあったか」


ポツンと置いてあったポストを見て思い出した。

自分にはこれがあったと………。




「ごめんなさい、少し離れるわね」

「にゃー……どうかしましたか?」

「少しおトイレに……」

「あーあー行ってらっしゃいです」


聞いた華菜は、ばつが悪そうに視線を逸らした。

先ほどまで泣いていた華菜も普段通りに戻って、ひと段落すると少しばかり気が緩んだらしい。


「!!」


皆に断り入れ離れるて、トイレに向かっていると何かを蹴っ飛ばしてしまった。

それは丁度曲がり角に置いてあった為、見えず足に当たってしまったようだ。

オロオロしつつも慌てて確認すると缶ジュースのようだ。


「なんでこんな所に?」


転がっているジュースを手に取ると中身が入っているのか重かった。

驚いたせいで胸がドキドキと鳴り響いている。


「あら?」


落ち着かせる為に何度か深呼吸しているとあるものに気付いた。

それは、丁度缶を蹴っ飛ばした所にポツンと置いてある。

改めて手に取ると何処にでもあるような便箋だ。


(誰のかしら?)


缶ジュースと一緒に置き忘れて行ったのだろうかと思いつつ後ろを確認してみる。

名前が書いてあったら送り届けてあげようと思った。


「えっ………?」


だが、名前を見た瞬間体が固まった。

両目を見開き大きく開くと信じられないとばかりに瞬いた。


-みほっちゃんへ京太郎より-


手紙にはそう書かれていた。

みほっちゃんと言う名前にも京太郎と言う名前にも覚えがある。

自分にとって大事な事で大切な人なのだがら………。




「あれ………キャプテン機嫌いいですね?」

「そうかしら♪」


美穂子の帰りを待っていると機嫌良さそうに戻ってきた。

トイレに行って機嫌がよくなるとは、そこまで我慢をさせてしまったのだろうか?


(ん~………)


訝しげに美穂子を見ると頬を赤く染め、嬉しそうに幸せそうな雰囲気をだしている。

行く前は、こんな感じではなかったはずだ。


(………あ~?)


なんとなく察し、華菜はどう切り出そうかと迷いつつも口にした。


「キャ、キャップ」

「どうかしたの?」

「食物繊維とるといいらしいです」

「へ?」


何か大きな勘違いをされたとか、この後華菜に事情を聞いて大慌てで否定する美穂子がいました。




「ヘタレ」

「ヘタレ」

「ヘタレ」

「ヘタレ」

「京ちゃん、ヘタレたの?」

「あんたらしつこいな!」


手紙を置いて帰ってきた京太郎は、暫くヘタレと呼ばれたとか。




――――――――
――――――
――――



「よろしくお願いしますね」

「しかしこうやって4校が揃うと圧巻だな」

「まぁ、そこまで硬くならずに行きましょう」

「まずは枕投げからですわ!」

「それは夜ね?」


合宿所に4校の代表が揃い、顔を合わせていく。

大会後、久の呼びかけもあり全国へ向けて、あるいは来年に向けてのステップアップをしようと集まった。

選ばれた合宿所では、あちらこちらに各高校のメンバーが居て思い思いの事を楽しんでいる。


(………)


そんな様子に美穂子は、微笑ましく見ていたが居ないと判りながらも彼の事を探す。

あの時、大会会場で手紙を受取った後、ドキドキと胸を高鳴らせて待っていたが何も起きなかった。

大会があってから特に進展する事もなく、今まで通りの日常が待っていた。

少々拍子抜けだ。

手紙にも大会会場の事が一切書かれてなく、触れられてもいない。

思わず頬を膨らませてバシバシと枕を叩いたのは悪くないはずだ。


(………はぁ)


思わずため息が出てしまった。

久達と仲良くなって自分の文通相手が清澄に居る事は判った。

しかも久と同じ部活に居るとまで判ったのに運が悪いのか未だに会えない。




『え゛まだ会ってないの?』

『会ってないです』


『………須賀君、さっきお使いにいかせちゃって』

『う゛ー………時間が』


『………今日は早退で』

『泣いてもいいでしょうか?』


とこんな調子で清澄に用事が会ってもいないのだ。

こんなことになるなら会いましょうと手紙で書いておけば良かったと後悔もしてくる。


「流石に男性は、連れてこれなかったわ」

「………久が悪いわけじゃないわ」

「なんだ、会いたい人でも居たのか」

「恋話ですの!?」


美穂子の表情を見て久が気付き、謝罪をしていると他の2人も興味津々に乗ってきた。

あぁ………なんとも騒がしい事、それでも今の美穂子には少しばかり、ありがたかった。

この騒がしさで自分の憂鬱な気分も晴れるかも知れない。

美穂子は、苦笑しつつ2人の会話を右から横へと流していった。


(いつか会えるかしら)


なんとくそんな事を思い空を見上げる。

空は、あの時と同じような綺麗な夕方であった。



美穂子が空を見上げている頃、京太郎は家でのんびりしていた。


『ニュースをお伝えします』

(今頃咲達は、何やってるだろう)


家のリビングでのんびりとしながらそんな事を考える。

男性と言うことで合宿に参加出来なかった為、暇でしょうがない。


「美味しいものでも食べてるかなーみほっちゃんに会いたかった!!」

『長野県―――の神社が火事で―――』

「………は?」


ぼんやりしていると何か重要な事が流れたような気がした。

ぎこちなく視線をTVへ向ければ、見覚えのある境内が写っている。

違うところと言えば、真ん中にあるはずの本殿が崩れ落ちているぐらいだ。


『雷が本殿に落ちたと見られ………』

「出かけてくる!!!」


財布を掴むと母親に声をかけ駆け出す。

後ろで声が聞こえた気がしたが構っている場合ではない。

息が上がるのも無視し全力で駆けて行く。


(こんなことがあってたまるか!!俺はまだ、あの人に会えてないんだ!!)


「すごいわねー」 「もともとボロかったしね」「神主いなかったしね」

「あっ………」


走りに走り、日が完全に傾いた頃、お目当ての場所へと辿り着いた。

そこには野次馬がわんさかと固まり、鳥居の奥を覗いている。

あちらかこちらにはパトカーや消防車等が止まっており、関係者が忙しそうに走り回っていた。


「嘘だ、嘘だ」


ふらふらとそんな事を呟きながら野次馬を掻き分け目の前へと辿り着く。


「あぁ………」


鳥居の奥に見える光景を見て何とも言えない声が漏れた。

そこには、懐かしい風景も見慣れた風景もなく、ただただ真っ黒に焦げ落ちた本殿が鎮座していた。

火は既に消化されたのか見えないが、今だに煙が燻り周りを消防隊員が調べ周っていた。


「………」

『私と友達になってくれませんか?』


呆然と立ち尽くす京太郎の脳裏に美穂子の言葉と姿が思い浮かぶ。

だがその姿もすぐに燃えるように無くなり消えていった。


――――――――
――――――
――――

終わらんかった

明日には終わる……かも知れない

それじゃのー

おつー

こんなことって...

乙です
なんでや明日終わるて言ったやろ?(明日の更新楽しみにしてます

今回も良かった
続き楽しみにしています


「ただいま帰りました」

「お帰り、美穂子楽しかった?」

「えぇ、とても楽しかったです」

「それは良かったわね」


久達と旅館でのんびりと過ごすのも楽しかったが、やはり家は特別だ。

帰ってきたという気持ちが強まり、ほっとする。


合宿は楽しく実りのあるものであった。

久達に相談して京太郎と会う算段をつけれた事が一番大きいだろう。


「………」


美穂子は、リビングで携帯を片手に思い悩む。

連絡先は聞いている、華菜に入れてもらいもした。

問題は………。


(どうやって連絡すればいいのかしら?)


自分が使い方を知らないことだろう。

暫く携帯と睨めっこし、逆に見てみたり裏返したり、怖がりながらボタンも押してみる。


(判らないわね)


努力むなしく、うんともすんとも言わない。

ほどほどに困ってしまった。



「なにしてるのよ」

「どうやって連絡すれば………」

「相変わらずね」


携帯と睨めっこを続ける我子を見て苦笑した。

誰に似たのか、本当に機械関係に弱い子だ。


「あぁ………そういえばね」

「?」


美穂子の顔を見て思い出したことがあった。

この様子だと知らないのだろう。

少し酷だがこれだけは伝えないといけない。


「あなたが入り浸ってる神社ね。火事で燃えちゃったのよ」

「え?」


一体何を言っているのだろうか?

神社が燃えた………火事で………何時?


「あなたが合宿に行った日の夕方にね」

「っ!!!」

「あっ美穂子!!」


こうなるだろうから、連絡をしなかったのだ。

美穂子は、携帯を握り締め駆け出してしまった。


「ただいま~と美穂子の奴どうしたんだ?」


美穂子の代わりの夫が入って来る。

美穂子とすれ違ったのだろう、何時もの美穂子がしないような行動に少々驚いていた。



「ほら、あの子の思い出の所が」

「あぁ……って雨降り出してきたのに大丈夫か?」

「あとで迎えに行きましょうか」

「そうだな」



「っ!」


顔に幾つ物水滴が当たっては弾ける。

既に空は曇り、容赦なく雨を降らす。

服が重くなり、動きづらくなるが構わなかった。

今はただただ、早くあの場所へと走っていく。

信じられない、信じたくない、あの場所が………あの場所がなくなったなんて……。


「あうっ」


視界が悪い中、得意でない運動をしていた為か転んでしまった。

足が痛み、頬が痛い、服も汚れた。

それでも足を止められない。


「はぁ………はぁ………」


なんとか走り続けると鳥居が見えた。

あと少しであの場所へ………。









既に走る体力もないのかよろよろと歩く。

冷たい雨が体の熱を容赦なく奪っていった。

それでも美穂子は歩く。


「あぁ………」


そして最後には足が止まり崩れ落ちるように膝をついた。

顔は下を向き、ただただ力なく項垂れた。

既に起き上がる力もなく、ただただ雨に紛れ涙が溢れ出す。


「――――っ、――――っ」


美穂子の泣き声は、雨にかき消され誰にも届かない。

ただただあるのは、真っ黒に焼け落ちた本殿だった物だけだった。





「………」

「……ぐすっ」


ひたすら涙枯れるまで泣いていると自分の周りだけ雨に当たってないことに気付く。


「はぁ~………良かった、あの日からずっと待ってて本当に良かった」

「………」


後ろから男性の声が聞こえた。

顔を上げ上を見てみればその人が自分の上に傘を差してくれていた。

その男性は何処かで見たことあるような人で……。


「怪我してますね」

「なんで………」

「あの時とは逆だ」


そう言って彼はしゃがみ込み、目線を合わせるとハンカチで美穂子の顔のドロを拭いてくれた。

そしてポケットから何処かで見たことある絆創膏を取り出して怪我をしてる場所へと張った。


「なんといいますか、怪我の功名と言うんですかね」

「………怪我の?」

「えぇ、本殿が燃えて、思い出の場所がなくなって……逆に腹が据わりました」

「………」

「次は必ず会おうって」

「何度も会いに行ったのよ?」

「すみません、勇気がなくて」

「ずっとずっと会いたくて」

「お待たせしました」


今度は別の意味で涙が溢れてきた。

ゆっくりゆっくりと震える手で彼の頬を触る。

そこにはしっかりと実体があって、本物だと判った。


「それでですね。本殿もなくなってしまったので代わりの文通方法を考えました」

「他の方法?」


京太郎は頬に当てられた手に自分の手を重ねた。

その手はとても冷たく、どれだけ待ち望んでいたかを実感させてくれる。


「その方法はですね………」


今度は、この手を冷たくしないようにと誓った。













時は過ぎ6月の梅雨も空け暑い日が続く。

清澄の麻雀部の部室では、久がだらんと腕と下に伸ばしぐったりとしていた。

どうやら熱さでやられたようだ。


「そういえば………火事があった神社あったじゃない?」


ぐったりとしている久と違い真面目に部活に励んでいると久が唐突に声をかけてきた。


「いきなりなんじゃ」


まこの問いかけに反応せずに更に言葉を続けた。


「あそこの神社ってね―――」


――――――――
――――――
――――



「ごめんなさい、待ちました?」

「いえ、そんなには」


古ぼけた鳥居の前で待っていると時間前に美穂子がやってきた。

携帯を取り出し見てみると約束の時間の10分前だ。

お互いにだいぶ早いなと思い苦笑しつつも会えたことが嬉しく感じる。


「それじゃ………」

「交換ね」


そう言って2人はお互いに手紙を取り出し、交換した。

神社が燃えてしまい手紙の置き場がなくなった為、新たな手紙の受け渡しを考えた。

それは、お互いに会って渡す方法だった。


「………」

「………」


手紙を受取ると2人は顔を真っ赤にさせてチラチラとお互いを見ている。

本来ならここでお別れでお終い。

だが、手紙を受け渡すだけでは物足りない、勿体無いと思ったが言葉に出ない。

気恥ずかしさが、お互いの体を支配し動かないのだ。


「………すーはー、んっ、美穂子さん!」

「は、はい!」


最初に動いたのは京太郎だ。

あの事があってからなるべく自分から動くようにしている。

何度か息を整えると美穂子をしっかりと見据え、少し大きな声で名前を呼んだ。

目の前の美穂子は、顔を真っ赤にさせながらもしっかりと-両目-で京太郎を見つめる。

その瞳は期待に揺れていた。



「ど、どど何処かに行きません………か………」

「………」


勇気を出したは、良いが何とも見っとも無い声になってしまった。

最初の言葉でどもり、最後のほうは声が小さくなっていく。

なさけないがらもこれが今の精一杯だ。

それでもしっかりと美穂子に手を差し出し、頭を下げた。


「………」

「………」


沈黙が痛い、飽きられただろうか?

それとも………。


「あっ………」

「はい、喜んで」


手に暖かな感触が伝わり、手に当たった熱が京太郎の体を巡り廻る。

バっと顔を上げ美穂子を見れば、嬉しそうに微笑んでいた。


「あはは………」

「うふふ………」


なんだろうか、たったこれだけのことなのにとても、とっても嬉しい。

離さない様にしっかりとお互いに手を繋ぎ直すと道に添って歩き出す。


「こっちに良さそうなカフェが在りました」

「曲がり角を曲がった所かしら」

「知ってました?」

「気になってたけど1人では、入れなくて………」

「なら丁度良かったです」


手を繋ぎ去っていく二人を古ぼけた鳥居が見送る。

これからは、ここ(神社)がなくてもやっていけるだろう。


『あそこの神社って………-縁結びの神様なのよね-』


空は快晴、今日も天気よく2人で出かけるのに持って来いだ。


<手紙シリーズ 美穂子編 カンッ>



少し早足気味になったかねーと思いつつお終い

もっと文章構成を上手く纏めたい物です

>>273-277
おつありん

>>277
すまんかった!
小ネタも書きたかったんや

>>278
毎回こんなんですまんなー
次はもっと上手く書きたい

そして………何故か洋榎でなく穏乃の話が半分ほど出来てるという
なんやろねー髪型似てるからしょうがないねー

それじゃのー


すばらです

おつー
胸も似てるし仕方ないね

乙です
なんかすごく久々に正統派って感じのだった気がする
正統派じゃないのも勿論好きだけど

すばらすぎる
是非是非後日談を

続き待ってます

おつー

神の雷か……

>>288-294 >>297
おつありん!

>>292
せ、せやな

>>294
前の2人奇抜だしねー

>>295
流石にそろそろ後日談を消化するべきか

>>296
たぶん月間ぐらいなペースかもです

>>298
天光満つる処に我はあり、黄泉の門開く処に汝あり、出でよ神の雷…インディグネイション!!

ちょいと予告ー!


   _
.  { ヽ

.  八
    :. ’
     ヘ ::.
    r‐、ヘ. ヽ
  ,-マ ,廴__ \                        γ==‐
  入. \ーュ、 ̄`ヽ                  ム - : : `
  { \_ く.| ̄`  V                    ´: : : : : : : ` 、: \
.  `寸‐二八    ト、            /: : : :/: : : : : : : : : \: \
    \   ヽ   // 勹ュ          ′ : : /: : : : /: : : :,ィ: : : ヽ: :\
     ヽ__   // /./二\         /|: :\/:/: : :/ : : : / ハ: : : : :ヘ: : :` ー-_- __
       `寸ニ/ノ /二二ハ.     |λ:!: ,l:/: :\|: i: ;.イ / | : : : : : ヾー- 、: : : ` 、-- _‐-、
        守三ヲ二二二入      lハ:|:ハト、i: |_|ヽ: | |/ ||: :|:ト、:\  ` 、: : : ヽ  `ヾ、
         マ二二二二二ニヽュ_  V´.|:l ,ィ示心ト、ハ| -┼|: :|:| |トヽー-- \: : : \   `
.            `寺二二二二二ヘ\八 ハヘ. 弋_ツ   ヽン芯ムイ:./|: | j! ヾ.    \: : : \
.              `寸二二二二ヽニマ.迅ヘハ ""    .辷ツ/|_j厶レ'二≧、ヾ     ヽ: : : ハ
                   ` 二二二二{ニ.ハ、ヾ、| Y`ー、_ '  ∧:|二/ムァ‐ 、二ヽ\、    }: : : |
                   \二二ニ./ニヘヽ.|ト、`ー_'_ ィニ∧、〈 { / / /ヽニ{       ノ: : :/
                   \二/二二二リ「} ̄二ニ/ニ/ニ.ヾ、>ニュ{_ム}‐'    _/: : /
                   |_/二二二二 ||二二ニレニ.厶ィ´ }:|        ー―‐z/
                   |二二二二二ニ||二二ニ厂    リ
                   |二二二二二ニ||二二./
                   |二二二二二ニ||二ニ./
                   λ二二二二ニ ||ニニ./
                  ハ.}二二二二ニ/'二 /\
                  二二二二二./'二 /ト、ニヽ
                   |二二二二二.{{二ニノ ヾュニ}
                    |二二二二二.ハヤ二二二ノタ
                     |二 「l二二二二ヾ二ニ/.,イ
                     |二 |.|二二二二ニ}} /./ '
                八二l」二二二二_ム' /   ト、

                  }二二≦==‐rヘ´     .|ヾュ、

私は山が好き、お爺ちゃんとの思い出の場所だから……。
長野に合宿に来た際に登った山で1つの出会いがあった。

『私が好きな景色を好きな人に見て貰いたいと思うのは我侭かな』

たった一夜の出会い、一番高い所でのお話。

『一番高い所で―』 -高鴨穏乃-





       /: : :______/ / : : : : : / /: /  |: : : : : :|ヽ: : : : :ヽ\
       /: ''7´: : ∧: : :/:/ : : : : : /  ∨ /   :|: : : : .:.: ||',: : : : :‘,\
      ,'/ /: : : : |: :\:||: : : :/   /Χ    : : : : / || ',: : : : : ‘,: :
    (:(  /: : : : : |: >┘|: : :.:/ _,,x====ミ \ ′ : //  :リ ': : : : : :.|ヽ |
     \/_: : : /: : _: :∧: : |⌒ん::::::l |    /: : /厶斗<| : : : | ト | |、
.      / ̄: : : / : / |: :|V\|  | {::::: リ  ,厶イ  宍ミ、  |: : : : :| |: |∧ヽ
     /: : : :.:.:八: 圦 |: :|:     乂_少'        ん::l|\./|: : : : :| |ノ  ': i
.    /: : : : : : : :.:\(ヽ|: :|   //////          | {:::リ  {/: : : :./l/    }ノ
   / : : : : : : : : : / \|: :|ヘ                 ヒ少 _/ : : :/ノ  _/
  /: : : : : : : : : :./ __.|: :「`,>、   l⌒    、   //// TTТヽ\
/: : : : : : : : : : :/    |: :|Y \ ., 乂    \      ||:|  ) )
: : : : : : : : : :.:〃     八::l |   \≧x._ ‐---‐'     ,.ィ: |:| /
: : : : : : : : :/{___      | |  /     \ニニ===ニ二    :|:|
: : : : : : / ̄          |  ′      ', ) /\´ ̄\:|:|
: : : : /_           ∨       ├{ { 、 }    /:/
: :/{    \         /|        | ノ }/  T   /|
間違いから起きた手紙のやり取り、恋に恋し、手紙に恋し、その人を好きになった。

でも、うちは自分を隠し相手に嘘をついている。

『なぁ……うちと勝負せーへん?』

例え好きな人に嫌われようと貫かなければ、いけないことがある。

『本当の私、偽者の私』 -愛宕洋榎-




 /::::/::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::、
/::::/::::/´:::::::::::/::::::::;;;::::::::;;;;zー-、::::::::::::::::ヘ
,::´:::::::/:::::::::::::, ':::::,z≠:;;z"´    ヘ、:::::ヘ::::::::i
_,,:::::/:::::::::::::/::::/_//- 、      i:|:::::::l::::::::l

〈:::/:::::::::::::/::::/ ´ '´    `ヽ      |},::::::l;i::::::|
ヾイ:::::::::::,イ::::/,z≠=x、ヽ、      ,リヘ:::l:l:::::::}
/ {:::::::::::,;':::,',,イ,イ丁ハ ヾ゙      ヾ、 i:;l::!:::::リ

i .|:::::::::::::::::i.l;{ {叮ィツ        -‐  `ヾリ::::::i
ヘl:::::::::::::::::l  ヾー'        ≦ミx、 /:;'::::::,'
::i|:::::::::::::::::l             ,イハリ !} /::,イ::::/
::イ::::::::::::,::::!             、.ト叨' ノ/::,;':::::, '
::i|:::::::::::::l!::|             ´ `" './::/:::/
/:|:::::::::::,!:::|   , -― - 、    /::/:/

:::i::::::::::;イ:::|ヽ.  !、   /     ,.:'::::/
;イ::::::::/:i::::l ゙:::ヽ、 ` "´  ,,..::≦:::::;'
シ::::::ツ`ン:/   ゙/::::,`:<";´::::::::::::::/
;;:/,〆ツヽ、/、イ::::::/;'::::::::,:::::::::/

z=≠''".   \.ヾ-''"::::::::::;ツ::::; '
`.、     /"|'´|:::::;;;;;;;/:::/
  ヽ  _ノ、 `i lニz=≠"´
   `"´ \ヘ,,ト、iヾ、
.        ,> ノ ! i
 ,    ,〆 ,i,\ /

./    // ,イ,'iヘ、ヘ
/    i {_ノ/| ||.ヾツ
     "''´ i| |! |
昔から続いていた手紙の相手は、好きな後輩で……。

彼が言うほど優秀ではないけれど、ここで決めなければ自分を一生許せない。

『挫けへん!あいつに見せなアカン背中があるんや!』

少女は、準決勝で意地を張り続ける、何かを残す為に―。

『凡人はなく』 -末原恭子-

                     _..  -‐……‐-  .._
                  ´             `丶、
                /                 、   \\
                            \  `、 ヽ
               /,     i    i、       `、  `、
           //   i  |    「\ \       ゙,   ゙, ;:.
.           .:'/ ,   i   |j     `、-‐…‐-ミ.゙.   Wハ
        / ,′,′ i   圦    、 ゙;:、   iハ :   【_Vハ
.           ´ ;      /\   \ }iハハj止_ハ;   Г)、}
       /   :;  ; i  ij jⅩ   `  ‐-- ,㌢゙⌒¨ ,′  Г  \
     {{   ; iiⅱ jⅣ     __    ″    /   ;     \
.     \   !iⅱi{ {い.:\  ,㌢⌒         /    ,゙    ;:.. `、
         ‘リ从W辷} }::} #             .゙     /     ;゙;::. ゙,
              》'´ ノ人__        _,ノ  ;     / ,!  }ii ; }}  }
              ,´ ,   厂}込、       .:;  .::/ ,;゙| ,ハj   /
             ,゙ /   .::/. :√ ` ._;ァ=‐‐ ´! : ;゙_jWル1 },゙ /
         /  ; .゙i; .:::/{ : :{い ''7「    Vv  ,:.  :{ }トミ」|__/イ}
        {ノ ;; ii ;:::;゙{_V゛   ;; |     Vv/^゙:、 ゙、]     ̄ミメ、
         i ‘i八{::i{'ヤ ;、  ii |     ,氷   \`      ハ
         U ! \〈   ゙,  ⅱ|   /⌒^\  `  ‐- }   ハ
          __     /` ‐- }i 从|__/_____\/    ノ/  ,ハ    xzx_
       i毯i二二二二二二二二二|亠亠亠亠亠亠|二二二二二二二二二爬i

       |[|「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄]           「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||]|
       | || | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ===========  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| || |

       | || |                     . +∽o,            | || |
       | || |              o∽*o。     .+°     ゚%        | || |
       | || |           +゜     %。...。゚       $          | || |
.      _」乢j」__       ゜           ゚$゚         ∮         _」ユL|
     , '´_.. ..__,ノ         ;                 ∮      <´_..   .._\
.    / '´ _..  ``>        $.                 ∫       <_..   .._ `、
.   {  '´     .._>       ゚                     °        ど    __   }
.    !   ´  __,ノ                        .゜          と___    }
       イ]「「|         ゚。                .             |`Tハ  /
.      \__| || |            ゚+                .             | || l/

       Lこ二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ごノ
平仮名、片仮名、漢字……日本語は難しい、それでも彼女は学び続ける。
海岸で拾った一通の手紙、可愛らしい絵が書かれた大事な物。

『ツタエタイ、コトガアル!』

絵では伝わらない、文字でも伝わらない、あなたと同じ言葉で伝えたい。

『The only neat thing to do』 -エイスリン・ウィッシュアート -




.      /{_ . : : : : : : : : : : : : : :ヽ: : : :ヽ: : :_: ハ
     /  _/ニ=- : :| .:.:.:.|: : : : : : : : ‐=ニ _
.     ′´.:.∧__.: .:. .:.|.:.:-┼…‐- : |: : : : :| : . `ヽ
      |:i|.: .:.|´ {. :| .:.:.:.ト、: : |\: : : : :| . : : .:| : : : : |
      |:i|.: .:.| _ヽト、: : | _\|_`ヽハイ . : : .:| : : : : |
      |八: .:{乍i苅ミ\{ '乍r苅¨ア | .: .: ..:| : : : :.,
      |\弋cソ     弋cソ '  | .: .: ..:| .: .: :,′
      |: : :.「´.:.:. ,      .:.:.:..   | .: .: ..:! .: .:.,′
      |:. :.i:.            | . : : ,′. :/

      |: :.从  r───┐    ,′.: /. .:.:./ 
      |: :. :込、 ヽ    ノ    / . : /. .:/  
      人: :. :\丶、`¨¨´   イ . ,:イ /
      ト、 \: : :ヾノ>-‐ァf´ /:{ :/.:.:|人
.    ト、 |: :`ー=≫彡'. : : : /'∧ i : :\__|_》>イ. イ_____
.    |.:.:`¨¨: : : : : : : : : :./| {{  { : : : : : : : : ¨¨´:. :ノ    厂`ヽ
    \: : : : : : : : : : : :/ l| ゞ=ヘ:. :. :. :. :. : : : :/     /`ヽ  i
文通の相手は、ハイテンション!TVの中もラジオの中も常に同じだ。

そんな彼女に会える日がやってきた、たった1日の思い出話。

『えへへ~♪ごめんね、お仕事で』

彼女のテンションも高ければ仕事のテンションも高い、東西南北、彼女に会う為に駆け抜ける。

『Run!RUn!!RUN!!!』 -福与恒子-





           「 ̄`ヽ-―‐---、__

           {:.. ,..-f( ))-、       ̄}
              广}___クーく.___{ ̄`ヽ ..:::/
          / ,..-‐r:r―┬r::r--、  }!V、_
          /7'..:::i::|^!...:::i:| |:ヒjハi::ヽ|! ヾヽ
           {ハ:::::::f':n:i、:::::{"{::n:ヾi:::.:|!  }!'^゙
           |丶弋ツ `゙ 弋;ツ}::::.|!  }!
            |:::|:i| "  '_   " .!::::.{! o|!、
             |、::|ハ:.,、  、ノ ,..ィ:ノ::リ;》=《i ゙、
         /.:ヽハ!:r‐` T"´  !イ':":.:.:.:.:\i!
       r:<>、.:.:.:.:.:.ト--、   ,..-/:.:.:,:イス) >_>、
      ζ√ーァ\:.:.:.ヽ     /:fィ_トrJ しイ.,>イ
        ∀  ! `Zf┬‐-≧ーイ:.:r'´       |_)i::}
      / .,.:彡ミy' /_,.-< ̄`ヽ::::..       !::、:::i!
      <  ̄  ノ''"   ...::::..... ::::::::.   ,.ィ:::::i!:::|
     ,.へ  / ........:::::::::::: ::::.   ::: ,:<_,.ノ::::::|:i::|
     `>'"           ::::: :::..:/  \:::::|::i:|
     ∠.._________;:.-'"´  __,.イ:::::|::::i!
       /  `ー┬‐;--------―irイヽ、|::::!:::i:|
       / 「 ̄ `ニY⌒r―''" ̄ ̄i .i! | i ヽ!::/::::|:|
生きる為に全てを捨ててきた、あるいは売ってきた。

それでも1つの手紙入りの小瓶は手離せない。

『ネリーは、勝ち続けなきゃいけないの』

一方的に受取っただけの手紙、文通とは言えないけどこれを書いた人に会って見たい。

『運命の歯車』 -ネリー・ヴィルサラーゼ-



              ―=ミ:....
                 \\
              ――=}: : ヽ__

.       __    /: : : : : : : : : : :/: : : : . .
.    /: : \  /: : :/: : : : : : : :/:: : : : : : :\
   //⌒ヽ: : Y: : :/ : : : : : : :/7:r ヘ: : \ : : :.

   //――|:.: :|:: :/: : : : : : / .::/   ∨: : \ : :.
 /:: : : : :/: /: :.′: : : :/_  ;/  ´ ̄∨: : : : : :.
./: : :{:: :/: : /|: : : : : :x云ミ、/   x=ミ ∨:|: :ハ:.:|
′: : ∨: : : / : :| : : i{ r':c::;l゙     イr'c:;!ヽ:.:|: :| |:.|
{: : : : : ヽ : {  |:.:|:: :/ ∨)ソ    ,  ∨)ソノ i |: ; :.:!
.∨: : : : : : 八 リ从{             ∧:|/  リ
 ∨:: : : : :}:.:.| |: :|、 、     , 、    ム|:.|
.  〉: : : : /: :.| |: :| ヾ:\        ..  //
 /:.:.: :/:.:.: :| 乂{  V: :>  __  イ:|  //
./:: :/ |: : :/     イ: : : |    |: : ト
: /   j : /      ムイ|   / ̄>―――- 、
:{    //           ,く7 /   /        \
一週間だけ家にホームステイしてた男の子、未だに手紙のやり取りを続けてきた。

だけど、私と君は違うから赤い海から帰って来て理解した。

『手紙はこれでおしまいだ』

彼女は赤い海で泡になり消えていく、その手を引っ張り挙げるのは誰だろうか?

『赤い海の人魚姫』 -獅子原爽-






               __
           , : . : . : . : . : . : . : . : . . ,
        , : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : .,
       /: . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : . : \
     /: . : . : . : . : . : . : . : .x: . : . : . : . : . : . : . : . ,
    , : . : . : . : ./. : . : . : . : ./ \へ. : . :\: . : . : . : .,

    /: . : . : . :.:/: . : . : . : . :/    \ヾ` 、ヾ、: . : . : . ,
   . : . : . : . : ,'. : . : . : ./:.:/      `   ーヘ: . : . : . ヘ
    ,: . : . : . : . : . : . : . /:.:/          ,.ィ' V: . : . :ヘ:ヘ
    {: . : . : . ,'. : . : . : 7」:,'--、       ィ'"   V: . : . :ハヾ、
    : . : . : . : . : . : . :7 {:ソ              V: . : . ハ ヾ、               _
   , . : . : 7. : . : . : , {,'           ,。x=ュ、Y: . : . :.}  ヘ             /.ノ   ,.,
    : . : . , : . :{: . :., ,斗==x、      イ´ ハ }`,': . : . :.:.i   ',           , '  '  / .ノ
    ,. : . : . : . i!: ..イ´ん'.  ハ `       r’:::. }  ハ: .ヘ: . : ,     マヽ      ,   , ' ./ /
    ,: . : .{: . : .',: ..{.ヽ V .:::. }         乂ュノ  ハ: . :.',. : リ     マ ヘ   / ., ./ /
    ヘ: . :.',. : . : . :iヽ  ` - '            ,: . : . : . 7      , ヽ_/   ` ’ ./
     V: . : . : . ヽ{: ..ヘ          ’     川: . : }:/       ,  ',     .ム、
     ヽ: . :\: . : . : . : 、       _  ‐ァ    人: . : . ソ          }   Y   / ノ ,
       、: . :.:\: . : . : ハ    ‘  -     /: .:..\: . ヽ        ハ     / / ノ
        、: . : . ヘ: . : . : }-  _      ィ - -== __ヽ: . \     ヘ',    ‘¨ゝ- '/ヽ
         ): . : . :}: . : .ノハ   ̄  ¨  .i!マ;::;:;:;:;:;:;:;:;:;〃7-、:ヘ     ヾ\    イノ=7
         ハ: . : . :i!: ..// ハ        ` マ:;:;:;:;:;:;:;:;:7:;7ニニ\     }ニ`≦-=≦ニ7,
       /: . : . : .//:;:;:{           }:;:;:;:;:;:;:;:7:;7ニニニニへ     ∧、ニニニニニニノ=ヽ
       {: . : . : /:;:;:;:;:;:;:;ム         ,イi!:;:;:;:;:;:;:7:;7ニニニニ}ニニへ、 ヽ,ニ≧ー-'ニニニ}
       \: . : {:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ム- -- 、  ´ 」:;:;:;:;:;:7:;7ニニニニ}ニニニニニ≧。ヘ\ニニニニニニ{、

     /=、\: ヽ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ム_  --   ̄!:;:;:;:;〃/ニニニニニi!ニニニニニニニヽニ:\ニニニニニハ
両親が離婚した時、心が荒れきった時、重圧に潰されそうになった時、決まって届く手紙がある。
同じ高校に居るはずなのにまったく姿を見せない彼を最後の想いを胸に待ち続ける。

『悪待ちも駄目かしらねー』

彼女は、卒業式に校門の前で待ち続ける。

『竹井久の長い1日』 -竹井久-



     \ー―――‐`         }
       \         --- 、 __ノ_⌒ヽ
      /⌒    /     /    Y^ ,
    ー=≠       /           |   ',
.   /     /      / /         \_
   /     /     / / /        /      Y´
.  /  / /   / _/_/イ_/,  、__/ ∧
  | /./ /   /´/|/´-l/   // /`^ヘ |   | l|
 八{ /  j/ ll ∧ :|芹苧豕 /l/苧豕, ∧|   | l|
   / イ / Ν/-、| | 乂_ソ}/   ヒソノ∧八 リノ

.     {  | \、_jノ        、   ,   ∨
     \八  厂〕ト       _  人  i|\)
        )/(\ノ/}>   ´ イi:i:ト、)ノ /

            (\\\   爪 i:i:i:i:i:|∧
         ⊂ニ=---、__〉\:i:i:i:|  \
         /:i:i⊂ニニヽ \{\ |:i:i:i|   } ̄ |
.         /:i:i:i:i:i:iノ  {   \_,|:i:i:i:\     |
       / ̄て二...__......_   `゙<:i:i\  ノ
        |      ∨:i:i:i:i:i:> .     ̄ ̄ `ヽ
        |      ∨:i:i:i:i:i:i:i:i:i:> .        ',
.       /|      ∨:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i> ..    }
      /       /:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i/i:|  ̄ ̄
     {        }:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i/:i:i:i:i0└┐___
.      \      ∨:i:i:-=彡:i:i:i:i:i:i:i:i:i/:i:|:i:i:i:i:i:
.         `ト――┬く:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:/i:i:i:|:i:i:i:i:i:
.        |    |  \:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i/|:i:i:i:i:i:
だるい、だるい、だるくない。

何をするにもだるだるな私だけど、手紙だけは別の物。

『』

何かが変わる訳でもなく、だらだらといつもどおりの日々が続いていく。

『怠慢な日々』 -小瀬川白望-


                         ___

                       ´       `丶、
                   /             \   /\
                   .:: :: :: :: / :: :: :: /:: :: :: :: ::\ :: :>'´   |__
                    /:: :: :/:: :: :: :: / / :: :: :: |:: :: :: ::く     │
                //:: ::/:: :: |:: ::/|:: :: :: :: |: | :: :: :: ::.〈_  __/

                  i : : :: :: :: 八\ |│:: :: ::|/|::..:/|:: :: :ヤ ⌒\
                  |:| :: ::|::|: |≫‐ミト|:: :: :: j斗|七|:: :: ::.|    〉
                  |八:: ::..|Y ん゚い 八:: ::N≫ーミ|:: :: ::.|   /
                   / :\:从弋:::ツ  \| ん゚いノ:: ::/:リ   〉
                     / :: :: ::(| 、、、   ,  弋:::ツ7イイ\/
                  / :: :: :: :从            、、、/_ノ:│
                ;: : | :: :: :: | \  (  )    イ:: ::.:|│
                 |: 八ト、 ::.:| _,,〕ト  _,,... <:: :: :: ::人|
                 |/∠⌒\]I⌒∀   厶イ::/]/
              xz‐=ニマ  \┃ ∧   \〕く_
           〈/_   ̄\_ ┃   ー-、 ‐リ  ニ=┰x
          ___/  `ヽ ∨^〉|┃   マ⌒∨    ┃|∧
         /   〈_ノ }__ノ //|┃    , /       |│
.         / 〈  │ }ー   マ  / i|┃    ∨       ┃|   \
       \ ヽ、{ _λ    `≪__i|╋━━__厶__━-   ┃|    \
         ー宀ー'^ー=ミ  `ヽ ̄ ̄  V7⌒ニ=ー╋|/

                 |个ーァ'’     爪    / ̄
                 [ノ          { |ハ  〈\
マホはいつも失敗ばかり、そんな私を慰めてくれる王子様。

高校の先輩は、マホを子供扱いしてくる嫌な先輩。

『………先輩?』

いつも見守ってくれてたのは誰だろうか。

『君が傍にいるだけで……』 -夢乃マホ-



※順番は特に関係なし、途中で内容が変わる場合も御座います。
 人も増えるかも、ネタが思い浮かび次第に。


出張疲れた、取り合えず書く予定の人達
他の人はネタが思い浮かび次第かな
それにしても全員書き終えるのにどのぐらい掛かるだろうか

それでは今日はこれで ではではー

来週から後番なんで、そん時に更新いたします

<負けない事、投げ出さない事、逃げ出さない事……>

「だぁー負けたー!」

「………ふふふ、私達に勝つなんて甘いじぇ」

「……優希4位じゃないですか」

「あははは………」


いつもどおりの部活、清澄の1年生組みが仲良く今日も麻雀をしている。

そんな様子を部長である久は首を傾げ見ていた。


「どうした」

「疑問に思ってねー」


隣に居た、まこが久の様子に気付き声をかける。

先ほどから首を仕切りに傾げているのが気になったのだ。


「須賀君だけどね」

「京太郎か?」


どうやら先ほどから視線を向けている相手は、唯一の男性である京太郎のようだ。

まこも気になり様子を見るも特にいつもどおりで変わりない。


「何を……」

「よくやめないなーとね」

「うん?」

「須賀君、部活に入ってから1位取った事ないのよねー」

「それは………」


始めた時からとってあるスコアを見てみると確かに1位を取った事がない。

大体が3~4位で極たまに2位を取るぐらいだ。

確かに1位を取った事がない。


「いくら初心者だって言っても普通つまらないじゃない」

「まーのぉ……運も大きく絡む競技であるしの」

「それでも『いつもどおり』諦めず咲達に立ち向かってる」

「………」

「あの精神力の強さは何なのかしら?」


それだけ伝えると久は、また京太郎の観察を続ける。

なんと言うか、不思議と言うか不気味と言うか何を考えているか判らない相手なのだ。

ある意味で4人の中で一番の異質とも言えた。



-京太郎side-

「さー!次だじぇ!」

「今度は負けません」

「うん、楽しもう」

(………あぁ、いつもどおりにひでぇな)


優希が元気よくサイコロを回し、親を決めていく。

親も決まり、配牌を自分の前で揃えると目を瞑り一息ついてから開けた。

そこには、春から見なれている配牌が鎮座している。


 一萬 七萬 七萬 九萬 七筒 九筒 一索 二索 四索 七索 九索 西 白


これには苦笑しか出てこない。

まともに打って和了には大きな運が必要だろう。

プロなら技術で安い相手に振込み、または降りる事が出来るのだろうが初心者である自分には荷が重い。

しょうがなく、他の人が捨てた配以外を捨て安配を確保していく。

まぁ……振り込まない代わりに和了も出来ないのだが。


(やれることだけやるだけだ)


気を取り直し思考する、決して諦める事はない。

何があろうと酷い運でも投げ出さなければ、逃げ出さなければ、きっと道はあるのだ。


-京太郎side out-


-和side-


(やりにくい)


京太郎の捨てた配を見て、顔を見て、目を見てそんな事を思った。

最初は、自分の胸を見てだらしない顔をする京太郎が嫌いであった。

初心者という事で甘く見ていたが変な打ち方には文句を言いそうなほどに。


「うぅ……こないじぇ」

「少しは……考えて打てって」

「なにぉー!」

「ほれほれ、お前の番だ」

「あぁ……来ない」

「どんな待ちしてんだよ」


優希と仲良さげに話す彼は苦しさなどと皆無な表情をしている。

捨て配と思考の長さを見るに4人の中で一番苦しいであろう立場なのにそんな表情も見せない。


(あぁ……まただ)


そんな京太郎を見ているとやはりあの人と被る。

中学の先輩で決して諦めずいつもポジティブなあの人に……。


「和ちゃん?」

「あ……ごめんなさい」

「珍しいな和が麻雀の最中にぼーとするなんて」


咲に声を掛けられ思考を戻す。

どうやら自分の番が回ってきていたようだ。

慌てず、騒がず、何時もの様に最初から決めていた配を捨てる。


「うぅ……テンパイ」

「テンパイ」

「ノーテンだなぁ」

「ノーテンです」


結局の所、リーチをしていた優希は上がれずその局は流れた。


(本当に……本当に……)


配牌を確認しつつ京太郎に視線を向け、唇をぎゅっと噛み、湧き上がる感情を抑える。

京太郎と打つたびにあの人が脳裏を過ぎるのは何故だろうか。

あの人と違うと判っているのに懐かしくて涙が出そうになった。


-和side out-


-京太郎side-

「ふぅ……酷いな」


部活も終わり、家に帰ると笑いつつベットに倒れこんだ。

今日の対局を思い出し苦笑しつつため息を出す。

今回も1位を取れず結局の所いい所なしだった。


「あぁ……擦れる、心が擦れる」


ガリガリと心が削れ、麻雀への想いが薄れそうになった。

それでも踏みとどまっているのは、あの人のお蔭だろう。

最初のうちは楽しかった、負けても楽しいと思えた。

だが、今は麻雀と言う競技を少し知り、苦痛へと変わる。

3~4位では駄目だ、2位でも負けだ。

1位を取らなければ負けと同じなのだと、理解したのだから……。


「それでも……きっと続けていけば」


体を少しだけ起こし、机の上の手紙を掴むと広げ始める。

其処には、可愛らしい文字で書かれており、最後には大きな大きな文字で


『諦めないこと!!!』


と書かれている。

どんなに崖ッぶちでも駄目になりそうな時でも自分の行く道を仕事を成すべき事を貫く。

きっと信じて信じて裏切られて、報われなくともきっと何かが残る筈だと、誰かの役に立ったと……そう信じて。

文通相手である『花田 煌』に教えられたことを心に刻み今日も前を向いた。
 

-京太郎side out-



-煌side-

「捨て駒的にレギュラー入りとか、花田ん奴悲しむやろな」

「しょうがなかよ」

「………」


煌はぼーと空を眺め、トンネルの下を歩く2人の会話を聞き続ける。

聞かなければ良かった、レギュラーになれた嬉しさを手紙に書こうと思い、景色のいい所に来たのが間違いだった。

ぎゅっと胸が締め付けられ痛いほど程鼓動が鳴る胸を手でぎゅっと抑え込む。

上を向いていた顔は自然と下へと落ちていき、項垂れた。


(きついですね……これはきつい)


挫けそうになり、涙も出そうになる。

それでも自分が折れないのは一人ではないからだろう。

何度か深呼吸を繰り返すと顔を上げ、微笑んだ。


(なんてことはないですね、誰かの役に立てることほど素晴らしいことはないのですから)


そして心の底からそう思った。


「どうであれ、レギュラーになれた事には変わりないですしね」


先ほどの哀しみもなんのその自分にやれる事をやるだけだ。

そう思いなおし、手紙の続きを考え始める。

既に自分の心は文通相手である『須賀 京太郎』に向いた。


(今思えば、長い付き合いですね)


日が暮れるまで手紙の下書きをしているとそんな事を思う。

思えば、小学校からの付き合いでずっとずっと手紙を書いている。

ある意味で一番親しく、一番長い付き合いだろう。

時に支えあえ、時に励ましあい、時に叱りあい、今こうして同じ時間を共有している。

今現在の自分を作りあげたのは京太郎との絆だと自信を持って言えた。


「さぁ!頑張りますよ!!」


そこまで考え微笑むと、立ち上がり大きく両手を挙げ大声をあげた。

そして、荷物を手に取り下へ降りると道を駆け抜ける。

京太郎も頑張っているのだ、後ろを振り向くことはあれど戻る事はない。

ただただ前へ前へと進んで行く。

夏はすぐそこ、初めての大会が待っているのだ。


-煌side out-


-優希side-


「まさか須賀君がね~」

「いやぁ、抜けれるとは思わなかったです」


タコスを食べながら会話に耳を傾けると京太郎の話題のようだ。

話の内容的に県大会個人戦の話だろう。

京太郎は意外にも意外に粘り続け、3位で通過した。

特に見所もなければ派手な和了も無い。

ひたすら耐えて耐えて耐え抜いた我慢の麻雀と言っていい物だ。


(ん~……やっぱり似てるじぇ)


むぐむぐとタコスを頬張り、かつての先輩を思い出す。

いつでもポジティブで見ている人を安心させる大きな背中、それが京太郎と被る。


「優希…?」

「ん~何だじぇ」

「花田先輩へ挨拶をしませんか?」

「ん、行くか」


ポケーと考えているとのどちゃんがそんな提案をしてくる。

脳内で考えていたら会いたくなり、丁度良かった。


「時間的に………準決勝前ですかね」

「んっ……そのときが丁度いいな。犬!タコス作れ!」

「ん?足りなかったか?」

「お世話になった先輩に差し入れだじぇ」

「………差し入れを俺が作るのはどうなんだ?」

「どうなんでしょうか」


名案だと思い口にしたのだが2人に微妙な顔をされた。

こんなに美味しいのだからきっと喜ぶと思うのだけど……何がいけないのか。


「解せぬ」

「何がだ、何が」


頭を軽くコツかれ体が揺れる。


「それで先輩って大会に出るのか?」

「えぇ、新道寺の先鋒で……」

「花田煌先輩だじぇ!」

「………」

「新道寺……強豪ね」


のどちゃんの呟きを私が受取り話すと部長が顎に手をあて考え始める。

どうせ、部長のことだから対策とかどんな人とか考えているのだろう。


「………優希、差し入れ作ってやる」

「ほへ……どんな風の吹き回しだじぇ」

「その代わり、届けて欲しい物がある」

「???」


先ほどまで嫌そうな表情をしていた京太郎がそんな事を言ってくる。

何を考えているか判らずじーと見つめているとカバンから一通の手紙を差し出してきた。


「……ラブレターか?」

「……そんなもんかな」

「えぇ!?京ちゃん優希ちゃんの事が……」

「なわけあるか!煌さんに渡してくれって意味だよ」


手紙を光に当て見ていると何やら騒がしくなってくる。

何を勘違いしたのか咲ちゃんがあわあわと慌てている。


「花田先輩と知り合いで?」

「あぁ……小学校からね」

「意外に長いのぉ」

「低学年の時にお世話になりまして文通をずっと……」

「これを渡せばいいんだじぇ?」

「あぁ……頼む」


ひらひらと手紙を振って確認すると頷いた。



「会いに行かないのか?」

「……試合が終わったら会いに行く」

「ロマンチックねぇ」

「そんなことないと思いますけど……」


疑問に思った事を口にするとそんな事を言われた。

意味が判らないでいると部長にからかわれていた。

ロマンチックと言っているが何がどうロマンチックかが判らない。

試合前と後、どっちも会えばいいと思うのだが何か考えがあるのだろう。


「5人分な!」

「もちろん!」

「高級なのな」

「出来る限り……」

「なら渡してやるじぇ、但し試合終わったら会えよ」

「………あぁ」


それだけ聞いて満足し手紙をのどちゃんに渡す。


「私ですか?」

「私だと絶対に忘れるじぇ」


私の言葉にのどちゃんも頷き手紙を受取る。

そこで納得されるのも誠に遺憾なのだが……。


-優希side out-

煌誕生日やったおめでとう

そして最後までは時間が無く書けなかった模様。

明日書くよ、明日……うん。

そしてタイトルにもなった歌は煌によく似合うと思う。

それじゃのー

手紙ーもうちょいお待ちをー
後半書いたけどすばら先輩一色で京太郎いなくなった……どこいった京太郎ぇ

-煌side-

「花田先輩!」

「おろ?和に優希?」


準決勝の朝、会場へと向かっていると声を掛けられた。

どことなく聞き覚えのある声に振り向けばそこには中学校時代の後輩が並んで手を振っていた。

部長達に許可を得てから近づくとにっこりと笑い手を握った。


「久しぶりですね!!」

「花田先輩は……元気ですね」

「えぇ、元気です!」


両手で和の手を取りぶんぶんと振っていると何やら含みのある言い方をされた。

よく判らないので暫くの間、じっと言葉を待ってみる。


「……えっと、その」

「のどちゃんは、先輩がチャンピオンにボコボコにされたのを気にしてるんだじぇ」

「あぁ……そんなこともありましたね」

「そんなこと……」


優希が代わりに言ってくれたらしい。

言われてようやく合点がいった。

特に気にして無いと伝えると和ががっくりと肩を落す。


「???」

「あぁ……いえ、先輩はそんな人だったなと」

「全力でぶつかって自分の仕事を全うするだけですし」

「相変わらずだじぇ」


指を顎に持っていき、思っている事を伝える。

どれだけ負けようが勝てなかろうが真っ直ぐぶつかっていくだけなのだ。


「そうだ、これ先輩に」

「手紙……ですか?」

「うちの犬からだじぇ」

「犬が手紙を書く時代になりましたか……」

「優希ったら……」


手紙を受取り関心し太陽に翳してみる。

どこかで見たことある文字なのだが……犬なのに器用なことだ。


「須賀 京太郎君って知ってます?」

「……京太郎君からでしたかっ!!すばらです!!!」

(髪の毛が動いてる)


京太郎君の名前が出てきて心が喜びで震える。

……実の所、京太郎君の名前が出てこないか期待してたのだが。

まさか手紙をくれるとは思わなかった。



「~♪」

「早速読んでるじぇ」

「……どんな内容ですかね?」


内容を読んでいると後ろからひょっこりと2人が顔を出す。

流石に気になったのだろう。

こんな所で読んだ自分も悪いし、見られて困る内容でないので二人にも見せる。


「……これだけ?」

「………現状報告と見守ってるしか書いてないじぇ」


2人は読んで微妙な表情をした。


「物足りないですね」

「こう、もっと熱烈な『応援しています!!』『俺がついています!』とか」

「見守っていますだけって……」

「これでいいのです、十分ですよ」


確かに一般的に言えば物足りないかもしれない。

でも自分達はこれで十分なのだ。


「さて……時間なので」

「頑張って下さい」

「もちろん!全力ですよ!」

「応援してるじぇ」

「ありがとう!行ってきます!!」


2人に見送られ会場へと急ぐ、時計を見れば時間も時間なので直接会場に出向いた方がいいだろう。

手紙を大事にポケットに仕舞い会場を歩く。


既に他の人が通った後なのだろう、集まっていた記者の人達が話し合ってる声が聞こえる。


(さてさて……ここを開ければ始まるのですね)


大きな扉を前に一呼吸置いて落ち着かせる。

扉にかけた手が震えている。

和と優希の手前あんな事を言ったが自分とて人間だ。

緊張もするし怖いとも思う。

そう……怖いのだ。


(何も出来ず、姫子達の枷になるのが怖い)


自分が負けて恥を晒そうが構わない。

それが次へと繋がるなら喜んで犠牲になろう。

だが……だけど……。


(相手はチャンピオン、前も手も足も出ませんでしたからね)


そこまで考え、頭を軽く振るう。

今ここで考え込んでも仕方が無い。

バンッと気合をいれ扉を開け、中に入る。


「皆さんお揃いですね!!真打は後から登場するって!!」

「ごほごほ、元気やな」

「これが私なので」

「………」

「いける、大丈夫、いける」


気合をいれ、入っていくと既に他の3人が着ていた。

待たせてしまったようだ、悪い事をしてしまった。


「まぁ……揃ったし、始めよか」

「……ん」


卓に置いてある4つの牌を捲り親を決めていく。


(うっ……宮永さんの隣ですか)


席に座り、運の無さに泣きそうだ。

それでもなってしまったのはしょうがない。

こればかりはどうしようもない。


(頑張るだけです!!)


元気よく気合をいれ、最初の一打を河へと捨てた。










「ツモ2000・4000」

(っ~~~!いきなり一発ですか)


最初の局は園城寺さんに取られた。

流石はエースと呼ばれる事もあり、実力がすごい。


(宮永さん相手に先制、いやはや尻込みせず立ち向かう……実にすばらです!!)


点数を取られた物の素直に賞賛した。

自分はこういった人が好きだ、相手が誰であろう果敢に攻め諦めず立ち向かう見ていて気持ちがいい人が。


(そろそろ私も動きませんと)


自分の手牌を覗き、どう動こうか思考する。

次に繋げる為に点数を多く残したい。

出来れば+ならなお良しだ。


「ロン……1000点」

「は、はい」

「ありゃりゃ……」


そう思っていたのだが、早々に宮永さんに和了れてしまった。

安い手であるが、今までの宮永さんの動きを鑑みるにこれから点数が跳ね上がるのだろう。

本当に厄介な相手である。

1度に大きな点数を取られるのも困るが、徐々に点数を上げ追いかけられるのはもっと困るし、怖い。

恐怖と焦りが生み出され、自分のプレイングを出来なくなっていく。


(そして…1つのミスが更なるミスを生んでの破滅)

「リーチ」


そうこうしていると千里山がリーチをかける。

この人もこの人で色々とおかしな人だ。

リーチをすればまず一発で和了、運や技術といったものとは到底思えない。



(これはまた一発ですかね)


出来れば振りたくないので安牌を捨てたいところ、しかし残念ながら手牌に安牌はない。

どうしようかと悩んでいると宮永さんが安牌意外を捨ててくれた。

その牌は自分も持っている為、通る事が判りほっとする。


(安牌なくて困ってたんですよね、助け舟♪)

「合わせ打ち!」

「ポン」

「えっ…?」


なんとも不思議な鳴き方だ。

自分が捨てた牌を鳴き返しの一発消し。

相手の手牌が判って無いと出来ない芸当に些か困惑してしまう。

だが、悩んでいても困惑していてもしょうがない、できる限り当たらないように考え牌を切った。


「ロン 1300」

「はい」

(ん~……逆に和了返しましたね)


園城寺さんがツモる筈だった牌は阿知賀へ、たぶんあれが和了牌なのだろう。

リーチしている為、園城寺さんがツモ切り、それを宮永さんが討ち取る。

一発を消しての振込ませ、狙ってやったのか、たまたまか。

どちらにせよ普通ではない。





(まぁ……そう上手くいきませんよねー!!)


あれからも局が進むが進むにつれ半泣き状態だ。

和了、和了って阻止しても次に連荘されていく。

千里山と協力してるというのにこれだ。


「ごほごほ………」

「………」

(他の二人もやばそうですね)


1人は顔を青くし、もう1人は戦という気配が感じられない。

もはや、宮永照の独壇場だ。

今だって……。


「ロン」

「あぁぁぁぁぁ……」


素晴らしくない。

前半の最後で最後でこの振込み―――。

前半戦が終了し、そのまま卓へと項垂れる。

-煌side out-


-3人side-

「………」

「………」

「………」


大きなモニターのついた会場で3人は卓に項垂れている煌を静かに見守る。

いや、優希だけが暢気にタコスを口に頬張っていた。


「ここでもタコスってどうなんだ?」

「美味いからしょうがない」

「マナー違反ですからね」


京太郎と和に注意され、優希はしぶしぶと箱へと収めた。

若干名残惜しそうに視線を向けるも二人に睨まれしょうがなく諦めた。

普通なら応援している人がへこんでいるのを見て悲壮感が漂うのだが、3人の間に悲壮感はなかった。


「心配しませんね」

「和こそ」

「まぁー花田先輩だしなー」

「だな(そうですね)」


優希の言葉に2人は頷きのんびりとモニターを見始めた。

結局の所、煌の事を信じているのだ。

-3人side out-


-新道寺side-

「………」

「………」

「……ちゅー」

「………」


所代わって新道寺、こちらも無言でモニターを眺めている。

そこにはやはり悲壮感はない。

今の所、一番点数を削られ大変な状況にも関わらずのんびりとしていた。


「動かないね」

「うん」

「行かなくていいの?」

「花田やし」

「だな」

「………ちゅー」

「そっか」


結局の所、そこに集約された。

別に冷たいわけではない、ここで行って慰めれば煌が気にしてしまうと思ってのことだ。

なにより、行かなくても自分で立ち上がると信じているから――。

この1年間で煌という人物はいやなほどに理解できた。


-新道寺side out-




-照side-

「行って来る」

「あぁ……そうだ、そういえば」

「何?」


時間になり扉に手を掛けると菫が不思議そうに納得してないような表情をしている。

何か気になることでもあるのだろうか。


「なんで最後新道寺を狙った?」

「和了れたから和了った」

「そうでなくてな……あの場面ならチャンスが幾らでもあっただろう」

「そうかもね」

「なら……千里山を狙っても良かったんじゃ?」

「………」

「あっちの方が手強いだろう」


菫の言葉に納得した。

確かに脅えている阿知賀や技術的に低い新道寺より千里山のエースを潰す。

そちらの方が効率いいだろう……だが。



「菫……それは違う」

「何がだ?」

「ここで潰さないといけないのは『花田煌』」

「……うん?」

「それじゃ行って来る」


不思議そうに首を傾げる菫に声をかける。

たぶん、技術面で見ている菫には判らないだろう。


「来ましたねー!」

(あぁ……やっぱり)


扉を開け席に着くと先ほどまでへこんでいた筈の彼女が復活している。

強がりではない、無理をしているわけでもない。

目は死んでおらず、強気に此方を見てくる。

やっぱり、一番厄介な相手は――――彼女だ。


「はぁ……頑張らないとな」

「ふふふ……まだ後半戦ですからね」

「………そうだよね」


熱意が諦めない気持ちは伝染する。

気分が悪そうな千里山の人もさっきまで意気消沈していた阿知賀にも火が灯った。

さきほど消した筈なのに……。


「さぁ……始めましょうか!!」


やっぱり私は彼女-花田煌-が苦手だ。


-照side out-

今日はここまでー休みの間に仕上げたいなー
……仕事が溜まってるから処理しないとyばいのだけど

それじゃのー

待ってる

無人島で遅番だって書いてたから期待してたけどやっぱり忙しくて厳しいのかな?
まあゆっくり気長に待ちましょう。
あ、自分の体調優先でお願いします

>>371 >>372
あー明日辺りには更新して煌終わるわ
筆が乗らないと一気に書ききれない人間なもんで時間掛かる時は掛かっちゃってごめんなー

-京太郎side-

「そういえば」

「ん?」

「花田先輩とはどうやってお知り合いに?」

「あぁ……」


和に煌さんとの出会いの話を聞かれどう言おうか口ごもる。

別に言いたくない思い出ではない、むしろ聞いてほしいぐらいだ。

だが、あまりに語ることが多くどれを話せばと思い悩んでしまう。


「最初は……小学低学年の時のイベントかな」

「小学校の?」

「イベントとの時に1年生の子を案内する係りあるだろ」

「あー手を繋いで体育館とかに移動する奴か……確かにあったじぇ」


自分の言葉に2人は懐かしみふっと微笑む。

どうやら2人の学校でもあった事のようだ。


「もしかしてその相手が?」

「そそ、煌さんだった」


『花田煌です!よろしくお願いします!』

『よ、よろしく……』


ふと最初の挨拶を思い出し、苦笑しつつも懐かしむ。

彼女は元気が良く、面倒見がいいのか緊張していた俺に何度も話しかけてくれた。

話をしていたのは俺達だけだったのでよく覚えている。


「それからイベントがあるごとに縁があったのかちょくちょく会ってな」

「なるほど」

「4年生ぐらいからかな……同じ麻雀クラブに入ってよく遊ぶようになったのは」

「珍しいじぇ、大体その時ぐらいって男女分かれる時期なのに」

「ホントにな、あの頃は特に気にせず、いつもあの人の後ろを着いて回っていたような気がする」

「ひな鳥と親鳥ですかね」

「だな」


和の言葉に素直に頷き、モニターを見る。

モニターの中では相変わらずチャンピオンが派手に上がり続けている。

なんとか煌さんと千里山の人が抑え込むも遅らせるぐらいが精一杯のようだ。


「あれ……」

「なんですか?」「なんだじぇ」


モニターを見ているとふと脳裏に何かが掠める。

何か前にも似たような光景を見たような気がするのだ。

あれは何時だったか……暫しの間、腕を組み考え込む。


「あぁ……そうだ、あの時か」

「???」

「煌さんと咲のお姉さんって戦った事があったなと」

「まじで?」

「まじだ」


何か既視感のようなものを感じると思っていたが思い出すとスッキリとした。

小学5年生の頃、隣小学校の麻雀クラブの子達と交流試合のようなものをしたことがあった。

その時に確かにあの2人は戦っているのだ。


「リベンジ……ということになるんでしょうかね」

「そうなるのかね」

「その時はどうなったんだじぇ?」

「確か……皆飛ばされてたな」


優希の言葉に腕組みをしつつ思い出す。

確か容赦なく3人が飛ばされ、阿鼻叫喚となっていた筈だ。

そのことを2人に告げると二人は顔を引きつらせポツリと呟いた。


「流石、咲ちゃんのお姉ちゃんだじぇ」

「宮永家ってそんな感じの人達でいっぱいなんですかね」

「なんともいえねーな」


3人の脳裏に楽しげに相手を飛ばし楽しんでいる咲が見える。

まぁ、実際の咲はそんな事をしないのだが、イメージの問題だ。


「でも……あの出来事からだったかな、煌さんの意識が変わったのは」

「意識が変わった?」

「昔の煌さんは今みたいにポジティブじゃなかったし」

「うわっ……まったく想像できないじぇ」

「だよなー……でも昔は明るい普通の女の子って感じで挫ける事もあったし、拗ねる事もあった、泣く事もあれば落ち込むこともある。
 
 あの人の中で何かが変わったのはあの時の出来事が原因だと俺は思ってるよ」


それだけ呟くと3人で静かにモニターを見入る。

あの時、何があったのかは後ろで応援していた俺は知らない。

何度か聞いた事があったが、いつも笑顔でかわされ聞けたことがない。

いつか……いつかあの人の口から聞ける事があるのだろうか。


-京太郎side out-


-煌side-

(いやはや……参りましたね)


たらりと汗が頬を伝い顎から下へと落ちていく。

今現在の状況はひじょーーに悪い。

園城寺さんは顔を真っ青にしており、具合が悪そうで、松実さんは顔を俯かせて涙目だ。

お世辞にも良い状況とはいえない、なにしろ私自身点数を結構取られてしまっているのだから。

このまま行けば誰かが飛び、試合が終わってしまうのもありえてくる。


(それだけはいただけませんね)


小学校の時の二の舞は避けたいところだ。


(それにしても懐かしいですね)


目を細め、そんなことを思う。

宮永照との戦いはこれで『3度目』である。

今回と前回の対戦、そして小学校6年生の時だ。

今でも良く覚えている、いや……忘れられるわけ無いのだ。

だってあれは―――。




『………』

『ひっく……えぐっ』

『もうやだー!麻雀しない!』


自分の対面の子と隣の子がわんわんと泣いている。

私自身泣きたいほどであったが、それをなんとか堪え口を閉ざす。

圧倒的だった、自分との才能の違いを見せられ、自分に才能がないのだと自覚さえさせられた。


『ありがとうございました』

『……あっ、ありぃ』


対戦相手であった他校の生徒は、それだけ言うと走るように去ってしまう。

何度もつっかえながらも返事を返そうとするも無理だった。

最後の方は聞き取れないほどに小さくなり消えていく、声を出したら泣いてしまいそうで出せなかった。


『……煌ちゃん』

『京……太郎くんですか』


呆然とし座っていると声を後ろからかけられる。

その声は良く知っている声だ。

2年生の時からの付き合いで今では一番一緒に居る時が長い少年。

呼ばれ後ろを向いて、息を呑んだ。

彼の表情は、今にも泣き出しそうで目の端に涙を溜めている。


あぁ――泣かないで下さい

あなたが泣いていると私も泣きそうになるから


あぁ――悲しまないで下さい

あなたが悲しんでいると私も悲しくなるから


あぁ――そうか、私が泣きそうだから、あなたも泣きそうなんですね


ほら――もう大丈夫ですよ、私は笑っていますから


あの時、京太郎君の泣きそうな顔を見て理解した。

表情とは、その人の心を映す鏡なのだと、私が泣きそうな表情をしていたから彼も泣きそうな表情をしているのだと。

表情は他の人に移っていくのだ。

京太郎君が泣いているは見たくない。

だから、私は笑うことにした、どんな状況でも楽しく行こうと――大事な事をあなたから教わったのですよ?


(――見ていますか、京太郎君。私は今――)





                     『物凄く楽しんでいます!!』





意識をもう一度卓へと移す。

点数的には絶望に近い状況だ。

それでも自分に課せられた仕事を真っ当する為に動く事にしよう。


「ポン!」


1回鳴き


「もう1個ポン!!」


2回鳴き


「さらにポン!!!」


3回鳴く


「っ!!ツモ!!」


安手と判っていつつも何回も鳴き通し、千里山のサポートに成功する。

たとえどれだけ強かろうと牌が回ってこなければ手を進めることは不可能だ。


(ごめん、その牌わからんかったわ)

(いいってことですよ……大変すばらでした)


こちらに申し訳なさそうにする園城寺さんに微笑む、すると彼女は目をパチパチとさせ軽く微笑んだ。

お互いに笑いあい、次へと進んでいく。

彼女は諦めていない、もう大丈夫だろう、さて……残りは彼女だけだ。

前へと向き、体面に座っている彼女、松実さんを見ると彼女は目に涙を溜め、自分の牌しか見ていない。

どうにか彼女にも立ってもらわなければいけない。


「最後ですか」

「っ!!」


宮永照のラス親、当然の如く和了続け続行していくのだろう。

手元にある牌を整理しつつぼやくように呟く、するとやっと此方を見てくれた。

じっと見てくる彼女にここ一番の笑顔を見せる。

別に無理矢理作っているわけではない、本当の心の底からの笑顔だ。


「あっ」


その笑顔に釣られてか少しばかり彼女が声を漏らした。

上手く伝わっただろうか、否絶対に伝わる筈だ。


(まだ終わってませんよ、松見さん)

「リーチ」


そんなことを思いつつ牌を切っていくとリーチをかけられる。

既にだいぶ点数を稼いでいるはずだが、まったくもって容赦ないようだ。

リーチし出された点棒を見つつ私は思考する。


(ここで誰かが飛ばされて私が2位になる確率と皆に頑張ってもらって勝ち抜く確立)


二つの考えを思い浮かべるもどっちがいいかなんて私にはわからない。


(判らないなら!自分の納得できるほう!!誰も飛ばさせない!!!)


前の時は本当の意味で何も出来ずに皆と一緒に飛ばされた。

泣きそうな表情で牌を捨てていき、ただただ搾取される存在であった。

だが、今は違う、あの時とは違い成長しているのだ。


「ポンっ!」


リーチかけましたね?


「さらにポン!」

「っ!」


悪いけど牌は握らせない、阿知賀から出た牌をすぐさま鳴く。

あなたの後に座ってしまったものですから、これぐらいはさせてもらいます。


「リーチっ!」

(あぁ……初めて河にドラがでました、すばらです)


鳴いた後に更に一巡し阿知賀から出されたドラを見て微笑む。

一体あれを出す為にどれだけの物を捨てなければいけなかったのか、私には想像できない。

だけど、彼女も諦めて無いと判りとてもとても嬉しく思う。


「ロンっ!!」


あぁ……終わった、長い長い対決であった。

最後の最後に大きな手で宮永さんが討ち取られる。

彼女が稼いだ点数に比べたら些細なものだろう。

それでもこれは皆で作り上げたもので何事にも代えられない素晴らしい結晶だ。


(あぁ……楽しかった)


椅子に深く深く座り込み目を瞑った。


あれから園城寺さんが倒れるという事件があり、ドダバタとした終わりになってしまった。

彼女が気になるも部外者である私が出るのも可笑しなことでしょうがなく控え室へと戻る。


「………」


一息つきながら長い廊下を1人で歩く。

楽しくはあったが流石に疲れてしまった。

少しばかしぼーとする頭を振るいつつ歩いていると前に人影が見える。


「………」

「………」


久々に見る彼の姿に疲れが吹き飛び嬉しさがこみ上げる。

どうやらしっかりと私を見ていてくれたようだ。

頬を緩ませながらも足を止めずに歩きつつけ彼の隣を通り抜ける。

その際にお互いに手を出し合いパチンと叩き合い手を合わせた。


-あとは任せましたよ-

-お疲れ様でした、次は俺の番です-


何も言わずともお互いに気持ちが伝わってくる。

京太郎君は、そのまま此方を振り向かず足を前と進めていく。

明日には彼の戦い-個人戦-が始まる、ゆっくりと喋るのはすべてが終わった後でもいいだろう。

自信満々に歩く彼の背中を見えなくなるまで見続けた。



「………まぁ綺麗に終わるのは漫画ぐらいですよね」

「うぅ……」


夕暮れ時の公園で京太郎が芝生の上に寝転がり腕で顔を隠す。

そんな京太郎の横で煌が苦笑しつつ手に持っていたスマホである項目を検索している。

暫くすると目的の物が見つかったのだろう、手を止めその項目をじっと見続ける。


全国大会 男子個人戦結果発表

101位……
102位……
103位……長野 清澄高校1年生 須賀 京太郎


つまりはこういうことだ。

意気揚々と大会に出るも結果はご覧の通りである。

あれだけかっこつけたにも関わらずこの結果、恥ずかしいやら情けないやらで顔向けが出来ないでいる。


「いえいえ、最初の年でここまで来てるのですからすばらな結果でしょう」

「そうですかね」

「そうですよ、私なんて1年生の時はレギュラーですらなかったですし」


寝転がる京太郎の頭を優しくポンポンと何度か叩き撫でる。

140人近く居る中でこの順位ならだいぶ健闘したほうと言える。

暫くの間、何度か撫でているとようやく京太郎が顔を出した。


「それで……楽しかったですか?」

「……楽しかったですよ、皆強いし手強いし」

「それはよかったです」


拗ねるように口に出す彼を見てもう一度煌は微笑んだ。

彼の表情が本当に楽しかったと告げているようで此方も嬉しくなる。


「……今年の冬にはそちらに戻ります」

「本当に?!!」

「わっと、本当です。えっと……その、ですので……」

「………」


これから言う事が少しばかり恥ずかしく頬を赤らめ視線をあちらこちらに飛ばしながらも言葉を続ける。


「い、一緒に麻雀の勉強しましょうか」

「はい!」


手紙は忘れないでくださいね?

勿論、忘れませんよ

今度は此方から書きます

楽しみにしています


些細な事だけどそれがとても嬉しく幸せに感じる。

2人はお互いに笑いあい、今日もまた前を向いて歩いていく。


カンッ!

ほぼ煌一色……聖人?いえ聖母です

それじゃのー

<自分らしさ、自分の速さ-才能->

「……勝てないか」


優勝杯を持ち嬉しそうに笑っている咲達を見てそう思ってしまった。

何をどうやっても勝てない、勝てなかった。

掌を証明に翳し透かして見るも太陽と違い手は透けなかった。


「駄目だなー嫉妬しちまう」


もう一度咲達に視線を送るとそんな感情を抱く。

仲間なのに友達なのに嫉妬が湧き上がりぎゅっと手を握り締める。

咲達は全国団体で1位を取った、今まで傍で見ていただけにどれだけ大変かも判っている。

それなのに……自分は一体何をしているのだろうか。


「なんで……俺は……」


出そうな涙が零れないように上を見上げる。

証明のライトが眩しく目に刺激した。

幾ら手を伸ばしても咲達が持っているものに届かなくて、奪えなくて……。







「あ~……またか」


目を覚ますとオレンジ色に広がる空が見える。

むくりと体を起こし何をしていたのかを思い出すために辺りを見渡す。

川に沿って流れるように生える原っぱ、に寝そべっていた。

あぁ……思い出した、部活をさぼって寝ていたんだ。


「帰るか」


出てくる欠伸を噛み殺し手を伸ばし体をほぐす。

暫くそんなことを続けた後、立ち上がり帰宅する。


(……これで一週間、部活も麻雀もやってねぇーな)


夏大会以来、あの夢を見続け麻雀への意欲をなくしてしまった。

もとより才能もないのだ、潮時かも知れない。

これ以上伸ばし続けても部長達に迷惑をかけるだけだろう。


「やめるか」


その一言を出すと心にモヤっとするものが出てくる。

諦めたくない、投げ出したくない、あいつらともっと……もっと……。


「っ!!」


苦しいほどに泣きそうになり胸をぎゅっと押さえる。

力強く服を握るもまったくと言って良いほど楽にならない。

判っているのだ、投げ出したところで後悔しか残らないと、踏ん張る時なのだと。

それでも――踏ん張り方も壁の乗り越え方も判らないならどうすればいいのだろう。




「叔父様?」


コンコンと襖を叩き、中を覗くも部屋には誰もいない。

夕飯になっても降りて来ない祖父を呼びに来たのだが何処へ行ったのだろうか。

部屋の電気は着いているので外出はしてないのだろう。


「まったく……あれ?」


しょうがなく少しの間、部屋で待とうと思い辺りを見渡すとある物が目に入る。

それは机の上に置いてある紙だ。

なんとなしに手にとって目を向けてみると手紙のようだ。

そういえば、祖父に文通をしていると聞いたことがあるのを思い出す。

これがその相手からの手紙なのだろう。


「……読める」


本当はこういうのはしてはいけないのだろう。

それでも中身が気になり読み進めていく。

意外にも手紙の中の文字は、高校生の私でも読めるようなものであった。

祖父の文通相手だから同じ年齢の人で文字も読めないほどの達筆だと思っていただけに拍子抜けだ。


「……あっ」


興味が少し出で中身を読み進める。

そして、手紙の内容から目を離せなくなった。


-才能がない人はどうすればいいのだろうか-


-諦めるしかないのだろうか-


-麻雀をやめるべきでしょうか-



内容は自分自身が最近まで悩んでいたことで……今も胸の内に秘められている事だ。

あの人-祖父-の孫なのに県大会では良い成績を残せなくて。

本当の才能ある人達にぶつかって才能のなさに嘆き哀しみ恨んで妬んで……。


「まったく……人の手紙を勝手に読むんじぇねーよ」

「……叔父様」


ベランダでタバコを吸っていたのだろう。

気付けば祖父がタバコを口に咥え傍に立っていた。


「……叔父様は、どう返事を返されるんですかっ」

「………」


手に力が入り手紙をぎゅと握る。

私の言葉は、叫びは祖父に届いただろうか、気付けば縋るような視線を向けていた。

誰よりも強く、誰よりも尊敬され、誰よりも華々しい活躍をしてきた、自慢の祖父。

その人の言葉を受ければ、この悩みも解決するかもしれない。


「……教えない」

「っ!!」


だが、返事は無情にもなく、手紙を取り上げられる。

祖父の言葉に涙が出て来て悲しくなってくる。

見捨てられたようで……お手上げだと言われた様で……。


「……そう、ですか。ご飯なので早めに降りて着て下さい」


それだけを言って私は逃げ出すかのように部屋を出た。







「まったく、若い奴等は揃いも揃ってどうして同じ悩みを持つかね」


走り去る孫娘を見て、そんな感想を抱く。

いや……自分にもあのような悩みを持った時があったものだとも思い出し苦笑した。


「ご飯は……今日は食い遅れるな」


そのままタバコを灰皿に押し付けるように消すと机から筆と紙を取り出し手紙を綴っていく。






「……ただいまー」

「最近早いわねー」

「………そうだな」


学校も終わり、咲から逃げるように駆け出し家に帰る。

家に帰ると何も知らない母親が暢気そうにそんな事を聞いてくる。

それに少しばかり言葉に詰まりながらも返事をすると手を洗う為に台所へと向かう。


「そういえば……」

「なに?」

「手紙届いてるわよ」

「あぁ…」


手をタオルで拭いて机に視線を向けると確かにいくつかのチラシの上に手紙が置かれている。

それを受取るとその場で開いた。

前の手紙は見っとも無く愚痴ばかりを書いてしまっていたので内容が気になったのだ。


「その人とも長い付き合いね」

「そうだね」


手紙を開いていると母親にそんな事を言われた。

そういえばそうだ、彼此10年近くの間、続けているだろうか。

思えば長い付き合いになったものだ。


「あちらさんはお孫さんいらっしゃるんだっけ?」

「そそ」


中々開かない手紙に悪戦苦闘しつつ思いだす。

この手紙を始めたのは5歳の時だ、公民館でやっていた麻雀教室の体験会か何かで知り合った爺さんとの文通だ。

根気良く教えてくれて中々に強面な人でありながらも親しみやすく、すぐに懐いた。

あちらも孫みたいに思ってくれたのかよくしてくれたものだ。


-お前はずいぶん楽しそうに麻雀を打つな-


「………」

「京太郎?」

「なんでもない」


昔の事を思い出し、あの人に言われた事を少しだけ思い出す。

少し……少し、今の自分が惨めになった。


「中身はっと……」


ようやく開け、中身を取り出し綺麗に折りたたまれた手紙を広げた。

そして中身を読み進めていく。


「あっ……」

「どうかしたの?」

「……っ!!出かけてくる!!」

「どこに?」

「学校っ!!!」


中身を読み進め、体に衝撃が走る。

その衝動に流されるまま家を出て走り出す。

目的地は学校だ。


(―――たいっ!!)


全速力と言っていいほど力強く足を進める。

手をぎゅっと握ったせいで手紙を握りつぶしてしまうも気にする余裕はなかった。



『まったく、くだらない事で悩みやがって』


走る、走る。


『上を見続けるから落ちるんだ』


息が苦しくなる。


『たまには下も見て見ろよ、意外とチャンスは落ちているものだ』


全力で走っているせいで汗が吹き出る。


『それでも掴み取れなかったら他の奴に譲ってやれ、諦めろと言ってる訳じゃない』


学校の校門を走り抜けると幾人かの生徒に見られた、だがそんなのは関係ない。


『手を鳴らしておめでとうって言って祝福をしてやればいい、次は負けないぞって』


旧校舎の扉を開き中へと入る。


『才能ない奴とある奴の差なんて歩く早さ意外にないんだ』


限界を過ぎている体で階段を登る。


『投げ出さなければ、歩みを止めなければ――』


最上階へと登り部室の扉を力いっぱいに開く。


『結局行き着く所は皆一緒だぜ?京太郎』



「きょ、京ちゃん?」

「っ……はぁはぁ」



荒い息を吐きつつ中央へと視線を向ければ咲達が卓に座っている。

咲や和達の驚く姿が目に入る、だがそれによりも――。

それよりもっ!!


「麻雀がしたい!!!」


大きな声でそれだけを言い切る。

全力で走り続けたせいで足がふらつく、それでも一歩一歩、歩みを止めずに前へと歩く。


「後でお説教ね」

「そうじゃの」

「っ!!」


歩いていくと座っていた元部長が椅子から立ち席を譲ってくれた。

そこに座るとしっかりと自分の相手を見る。

隣に和と優希、対面には――咲が座っている。

誰かが口を開こうとするも途中で止め手を動かし始めた。

咲が手をこちらへと差し出している。


「京ちゃん、サイコロを回して」

「あぁ!!」


差し出された手に沿ってスイッチを押すと中央のサイコロがカランコロンと心地よい音を鳴らした。



「っ……!!」


走る、走る。

会場内を走り続け、止まると辺りを見渡す。

暫くして探している人が居ないと判ると更に走り出す。

中には一生懸命走る私に不思議そうに視線を送る人もいるが答えている暇は無い。

あの人に会って……聞かなければいけないのだ。


『そういえば……だ、俺の文通相手だが秋の大会に出るらしい』

『え?』

『どうやら吹っ切れたらしい、お前はどうするんだ?数絵』


あぁ、まったくもって叔父様は意地悪だ。

あの時、私に答えなかったのは教えなかったのは自分で聞いてみろと言うことだったのだ。

同じ悩みを持つ同士、年齢も近い者同士、でと言うことらしい。


『どうせなら若い男の方がお前も嬉しいだろう』


回りくどすぎる人だ!本当に!


「っ……はぁ、いた!!」

「え?」


息切れをしつつ目的の人物を見つけ、声をだす。

あちらも此方の声に気付いたのだろう。

驚いた表情でありながらも近づいて来る私を静かに見守ってくれた。


「わっ、私の……名前は、南浦数絵だ」

「あなたが……俺は須賀京太郎です」


息を整えながら手を彼へと差し出す。

私の名前を聞いて暫しの間、驚くも納得したのか手を差し出しお互いに握手する。


-君に聞きたいことがあるんだ-

-奇遇ですね。俺もあなたに伝えたい事があるんです-


1人は苦しそうにしながらも強い目で見据え

もう1人は優しげな微笑でそれを受け入れた

この2人の出会いが2人に何をもたらすかは判らない

ただ1つ言えることは、この2人はこの先も自分の速さで焦らず進んでいく事だろう


手紙シリーズ ショートストーリ 南浦編 カンッ!

短いけど数絵ちゃん
ばら○もん 読んだら書きたくなった
自分もあんな言葉が出てくる大人になっていきたい

それじゃのー

乙です
数絵のセリフで南浦プロの事「叔父様」って呼んでるけど「お爺様」の誤字だよね

>>415
ありゃ、本当だ 適当に変換よろしく
こういう時直せんのは痛いな
そのうちまとめて修繕してどっかに移すかな


「ん……」


鳥の声が聞こえてきて私の意識は浮上した。

ボーとする頭を起こし寝ぼけ眼で辺りを見渡す。


「あぁ……そっか」


暫く辺りを眺め、私は納得し声を零した。

その声は誰かが聞く事もなく深々とする木々の中に吸い込まれるように消えていく。

ただただ聞こえてくるのは微かな風で揺れる木の葉の擦れる音だけだ。


「ん~~~~~~っ」


それに耳を傾けつつ立ち上がるとぎゅーと上に背伸びをした。

体全体に力が入り力を抜くと、とても気持ちいいダルさが体を支配する。

ほっと一息つくと少しばかり歩き、崖から遠い山々を静かに見てる。


(………)


そうしていると山の中に静かに溶け込む自分が自覚できる。

深い深く、明かりもない暗い山の底、その中に溶け込もうとすると恐ろしくもあり、ものすごく落ち着いた。

人の力では、どうにもならないような圧倒的な力を感じつつ私はそこで眠りに就く………。


「……っと!いけない!いけない!」


また眠りそうになり慌てて自分を山の底から意識を押し戻す。

忘れる前に何時ものアレをしておかなければいけない。


「~♪」


私は自分のカバンから手馴れた動きで荷物を取り出し、準備を始める。

そしてもう一度崖から山々を見つつシャッターをパチリと切った。

色んな角度から山の写真を数枚ほど撮り続ける。


(こんなもんかな)


ある程度取り終わり、中身を確認し満足げに頷いた。

これで手紙に付ける物が出来た。

それからはいつもどおりに山を駆け巡り堪能し家に帰る。

あぁ………やっぱり、私は山が好きだ。


「ただいま~!」

「お帰りなさい」


家に帰ると手を洗い、ご飯を待つ。

食事を終えるとお風呂に入り、テレビを少し見て自分の部屋へと向かう。

机に座ると引き出しから便箋を数枚取り出して手紙を書き始める。



「出来た」


何度何度も読み直し可笑しな点がないかを確認していく。

読み終えた手紙は、まさに自分を全面に出したような手紙である。

見る人が見れば小学生かと言われそうだ。

それでもこれを受取ってくれる人達はこれがいいと、穏乃らしくて好きだと言ってくれる。


「えへへ~♪」


写真と共に2通の手紙を仕舞うと幸せそうに眠りに就く。


(おやすみなさい)





「――――」

「あっ、お爺ちゃん!!」

「穏乃か、今から山に登るがお前も行くか?」

「うん!」


あぁ………これは夢だと判った。

小さな頃の自分が祖父に手を引かれ楽しそうに山を登っていく。

遠目から見ても私は本当に嬉しそうだった。


小さな頃から山に魅入られて、山に魅入った。

山に入るだけでテンションが上がり、鬱々とした気持ちが飛んでいってしまう。

そして………何よりも好きだったのが………祖父の笑顔だ。


私のお爺ちゃんは、ガンコ親父を素で行くような人だった。

誰に対してもぶっきらぼう、返事をしてもあぁ…とか、おぅ……とかしか言わず大体無口である。

家にいる時も外にいる時も仕事の時も笑顔を見たことさえない。

そんなお爺ちゃんに最初私は恐怖を抱いていた。

仏頂面のお爺ちゃんを怖がり、あまり近寄りもしない。


でも今となっては判る。

おじいちゃんはただただ不器用なだっただけなのだと………。

それが判ったのが、祖父と山に登った時だ。

家にいる時と違い祖父は楽しげに嬉しそうに私に色々と教えてくれた。

顔を綻ばせて、あれは………、これは………と教えてくれる。

そんな意外な一面を持った祖父が好きになった。


「………ふぁ~」


何とも懐かしい夢を見たものだ。

ぐぐーと手を伸ばし起き上がると手紙を2通取って歩き出す。

途中の襖に一通の手紙を差し入れ置いておく。

一緒に山を登っていたお爺ちゃんだったが、私が小学校の高学年に上がる頃には足腰を痛め、山を登れなくなってしまった。

日々を過ごすお爺ちゃんは、何処か悲しげで憂いを帯びていた。

如何にかしてあげたいと思うものの私の頭ではどうにもならなかった。

だから彼に頼ってみたのだ、憧達と違い一度も会った事ない『彼-親友-』に……


「相変わらずかな」


ぼふんと音が鳴るほどの勢いでベットに飛び込む、

その際にベットがギシっと嫌な音を立てるが何時もの事なので気にしない。

ベットが壊れるかどうかより、京太郎の意識は目線の先にある手紙に夢中になっていた。

少しの間、手に持っていた手紙を光に通し透かしたり等して眺めた後、丁寧に丁寧に開け始める。

勿論、寝たままの体勢でだ。


「ふむ、おー……やっぱりあった」


手紙を開けると中から便箋と一枚の写真が出てくる。

写真のほうが、先に見えないように開けた時に後ろが見えるようにしている徹底振りだ。

そんな手紙の主の心気遣いに「成長したな」と少しばかり親心が湧いてきた。


「さてさて……はは、相変わらず山を駆けてるのか」


写真を横に置くと便箋を広げ中を読んでいく。

中の便箋には、いつものように山を駆けた事、親友に怒られた事、お爺ちゃんの事、麻雀の事……。

いつも通りの内容が綴られている。

それを愛おしく読み続け、目を通し脳内に心に刻んでいく。


「紅葉の季節か」


全てを読み終えた後、しめに写真を手に取り覗き込む。

そこには、赤、茶、緑と様々な色に飾られている山々が写りこんでいる。


「上手くなったな」


綺麗に撮れている写真を眺め、そんな感想を抱く。

最初なんかは、ボケてたりピントがズレてたり、光が映り込んだりと散々な出来映えであった。

それが今では、心を惹き付けるほどの写真を撮れるまでになっていた。


「………結構上達するもんだな」


穏乃の上達具合には舌を巻く思いである。


(最初は、あんなだったのにな)


そう思い、写真と手紙を胸にゆっくりと目蓋を閉じた。


-助けて!!-


「………なんだこの手紙」


いつもどおりに文通相手から手紙が届いたが文面が安定してない。

大慌てで書いたようなありさまで解読に些か時間がかかってしまった。

ようするに山登りが出来なくなって寂しそうなお爺ちゃんを慰めたいという所だろうか、


「う~ん、どうしよ」


出来れば助けてあげたいが自分自身小学生だ。

特に良い案も思い浮かばず、手紙を前に呻り続ける。


「わかんないし、後でいいか。うん」


少しばかり考えるも直ぐに諦め、手紙を置くと外へと出る。

外は眩いほどの太陽の光を俺に浴びせては、家に帰れと訴えているようだ。

それでも母親に貰った麦藁帽子を盾に元気に走っていく。

走るたびに母親に持たされた水筒が、ガシャンガシャンと揺れ体を何度か叩く、


「いたっ!」


それでも気にせず走り続け、目的地に着くと運が良かったのか目的の物を見つけた。

すぐさま手に持っていた網を振りかぶり、えいっと声を出し振るい採取していく。


「おぉ~……なんだろ」


捕まえた虫をしげしげと眺め、何の種類かを考える。

暫くの間、じっと見るも全くもって検討つかず諦めた。


「えっと、こうかな」



潰さないように片手で押さえ見えやすくするともう片方の手でカメラのボタンを押す。

暫くし、ジーと音が鳴り、バシャっと写真が取れる。

写真を取ると虫をそのまま放し、次の獲物を探し始める。

何故カメラでわざわざ取っているかと言われれば、母親のせいと言うべきか、夏休みの宿題のせいと言うべきか。

夏休みに入り、自由研究を定番である昆虫採取にしようと決めた。

楽しみながら虫を捕まえ、意気揚々と家に帰ると母親に絶叫された。

捨てなさいと!言われるも宿題なのでそういうことにも行かず途方に暮れた時、父親が1つのカメラをくれたのだ。


『捕まえた虫をこれに撮れば良い』

『いいの?』

『あぁ…少々古いから大事に使いなさい』

『わかった!』


というやり取りがあり、カメラを抱え今日も走り回る。


「ふぅ……こんなもんでいいか」


辺りを駆け回り、今日も幾度もカメラを撮り続ける。

気付けば、辺りは夕暮れとなり、眩しいほどに輝いていた太陽も疲れたかのように山々へと沈んでいく。

少しばかり、その光景に目を取られじっと見続けた。


「あっ……そっか、撮ればいいんだ」


ふと見続けた時に思い浮かび、カメラを構え山と夕陽を撮ってみる。

少しばかり反射が眩しかったが、なんとか撮る事に成功し満足げに頷く。

早速とばかりに家に帰り、親に写真の現像を頼むと手紙を書き始める。

内容は、お爺ちゃんを元気付ける為の作戦だ。

数日後に渡された写真の一枚を手紙に入れるとそのまま、穏乃へと送る。


「これで喜んでくれればいいな」


そんな思いを手紙に篭め、友人の祖父が元気になるように願うのだった。






(懐かしい夢を見た)


目を変えれば行く場か時間が経過していた。

少しばかり寝てしまっていたらしい、寝ぼけ眼で起き上がると写真を眺める。。

穏乃が楽しそうに山の話を書くので山に多少の興味はある。

だが、いざ登ろうと思うと躊躇してしまい、中々そんな機会はやってこなかった。


「行ってみるかな」


時期的にも丁度良く、もしかしたら穏乃に会えるかも知れないなと思いふっと笑った。



今日はここまで 次で終わるように頑張ります
後番終わるまでには投下……すると思う
それではまた

正月中には書くっす


『すごいな』 『綺麗ね』 『あっち行こうぜ』

「………」


何時もなら誰も居ない、散歩道。

すれ違ってもお年寄りかジョギングしている人かのどちらかしか会わない様な道だ。

それなのに今は、時期のせいもあり観光客で埋め尽くすほどに賑わっている。


そんな通いなれた、それでいて何時もとは違う道を穏乃は無言で駆ける。

駆けると言っても人の隙間を縫うように移動しているので若干面倒そうだ。


「はぁ……」


ある程度抜けると深いため息を吐く。

地元が活気づくのは良いことだ、それを穏乃も理解している。

それでもこうやって少しばかり残念な気持ちを味わうのは嫌だと思う。


「何ため息ついてるのよ」

「あれ、憧?」

「よっす、電話以来ね」


声を掛けられ振り向けば、いつの間にか親友の憧が傍に立っていた。

こうやって直接会うのは久々で懐かしさが沸き起こる。

気付けば手を取りぶんぶんと振り回し、憧は迷惑そうな顔をした。


「それで何でため息なんてついてたのよ」

「あ~……聞かれてたか」

「バッチリ。阿知賀で麻雀出来るか今更不安がってるの?」

「それはないね!」

「………何処から来るかな。その自信」


憧は呆れたかのようにため息をついた。

あれだけ電話で阿知賀で麻雀を打つのは難しいと言ったのにこれだ。

今も胸を張り、自信満々に腕を組んでいる。


「それじゃ、なんでため息をついてるのよ」

「えっとね。ほら人がいっぱいでしょ」

「そりゃ、紅葉の時期だしね」

「それが悲しいなって」

「何……人に好きな山を取られて悲しいの?」


子供っぽいなと思いつつも思いついたことを投げかけてみるもどうも違うらしい。

穏乃はゆっくりと横に首を振った。


「そうじゃないんだ」

「うん?」

「えっとね。ここに居る人が『紅葉の季節』にしか来ないのが悲しいなって」

「……なるほど」


穏乃の言葉を聞いて憧は神妙に頷き納得した。

いつもいつも暇さえあれば山に通っている穏乃にしたらこの時期にしか来ない人達に思うところがあるのだろう。


「春になれば綺麗な桜を咲かせて、夏になれば壮大な緑色になって……」

「………」

「秋になれば実り豊かに紅葉する。そして……冬になれば年を越す為に真っ白に静かに静かに眠りに就く」

「………」

「それを全て見てこその『山』だと思うんだ」

「……はぁ」


大体の人は、春と秋、この二つの時期にしか山に顔を出さない。

たった二つの時期しか山を見ていないのが堪らなく惜しく、悲しく思える。

それが穏乃の思いである。

そんな穏乃に憧は深い深いため息をついた、どうやら穏乃は勘違いをしているらしい。


「そればかりはしょうがないわよ」

「そうかな?」

「大勢の人は、『山』が好きで来るんじゃなくて『紅葉』が好きで見に来るのよ」

「………え?」


勘違いを正すべく憧は口火を切る。

人々は、山を好きで見に来るのではないのだ。

春になれば桜が咲き『花見』を楽しみ、夏になれば避暑地として『涼しさ』を楽しみ、

秋になれば紅葉した『美しい光景』を楽しみ、冬になれば『スポーツ』を楽しむ為に山に来る。

結局の所、大勢の人にとって『山』は付属品でしかない。

穏乃みたいに純粋に山が好きな人など滅多に居ないのだ。

「………」

「………アンタみたいな子は中々居ないわよ」

「……そっか。そうなんだ」

「そうよ」


憧の言葉に穏乃は静かに頷きぼんやりと人々を眺め始める。

少しばかりきつめかと思ったが、穏乃には理解してもらいたかった。

穏乃の事はよく知っている。

もしも憧がここで教えなかったら、穏乃は山を好きになってもらう為に何かしら行動するだろう。

それは無駄に終わる可能性が高く、酷い言葉を投げられるかも知れない。

結局の所、穏乃に傷ついて欲しくない、彼女には元気に山を駆けていて欲しいと願って……。


「それでも……さ」

「………」

「それでも色んな人に……私が好きな景色を好きな人に見て貰いたいと思うのは我侭かな?」

「………」


穏乃の言葉に憧は内心ため息をつく。

忘れていた、忘れていた。

穏乃はこういう奴だったと……。


「とびっきりの我侭ね!」

「え~~~……そこはもうちょっと」


考えるのが面倒になり、心に思った事を素直に口に出す。

それに対して穏乃は、なんともいえないような表情を返した。


「まぁ……いいんじゃない?」

「え?」

「そういう我侭も……私は嫌いじゃないわ」

「憧……なら今度……「山登りは嫌ね」なんで!?」

「足がこれ以上むちむちになったら嫌だもの」

「カモシカみたいで良いと思うんだけどな」


残念そうに人の太股を見てくる穏乃を追い払うように憧は手を振る。

褒められたのは嬉しいが、これ以上は困るのだ。

なんと言われようとも山は登らない。


「それで何をする気?……ここで演説でも始めたら縁切るからね」

「う゛っ」


一番やりそうな事で尚且つ、効果がなさそうな事を上げると穏乃は視線を逸らし始める。

それを見て言って良かったと安堵する、本当にするつもりだったらしい。

そんな憧の前で図星をつかれた穏乃はこうでもないと、あぁでもないと慌てふためく


「写真でいいじゃない」

「写真?」

「いつも携帯で撮って送ってくるじゃない。あれ私は好きよ?」

「そうなの?」

「うん」


助け舟を出す為に素直に頷き、携帯を取り出し画像を見せる。

待ち受けになっているそれは確かに穏乃が撮り憧に送ったものであった。


「……えへへ」

「なによ……だらしない顔をして」

「頑張る!!」

「ちょっ………」


嬉しそうな笑みを浮かべ大きな声で何かを宣言をする。

大きな声に周りの人々が何事かと覗き込むかのように視線を向けてきて些か恥ずかしくなった。

そんな視線にも前に居る穏乃は気にせず、なにやら気合をいれるとそのまま飛び出し山の中へと消えていった。


「やれやれ、行っちゃったし」


山に消えていく穏乃を憧は呆れながらも何処か嬉しそうに見送るのであった。








「……あれ?」


どのぐらい走ったのであろうか、周りに居た人も登山を楽しんでいた人の影もなくなり周りは無人となる。

普段なら道から外れ山の奥の奥なのでそれが当たり前なのだが、今日ばかりは違った。

どうやら自分より先に来た人が居るようだ。

その人は、遠くに見える山々をぼーと眺めて居る。


「……こんにちは」

「!」


驚かさないように少し遠目から声を掛けるとその人物はゆっくりと振り向き驚いたように目を見開かせた。

帽子から零れる金色に輝く髪が眩しく顔は若い、少しばかり身長が高いが穏乃と同じ位の年だろう。

お互いに年近い人がこんな山奥に居るとは思わず物珍しさからかじろじろと眺めあう。


「えっと……こんにちは」

「うん」


取り合えず、青年が声を掛けてきたので挨拶を交わす。

その後、二人は暫しの間、何を話そうかと悩み沈黙を保つのであった。

残りは明日ー明日には終わらしたいっすね
ラストは考えてあるので後少しなんや
それではまた

すんません、気分が最低値まで落ち込み何も書く気にならんです
なんだろなー……なんだろなー……
取り合えず気持ちが盛り返したら書きます
それではー……

移す時はしっかりと報告しますよー
とりあえずは……穏乃書かないと……。

只今10%程度……花粉症酷くなければ今週中に出します。
花粉症だと頭がぼーとして嫌になりますね。
眠くなる……。

ふは~……残り40%程度、明日か明後日には出せます。
それまでお待ちを!

すいません!
もう暫くかかります!
書くの遅くて+約束破ってごめんなさい。

【穏乃side】

「………」

「………」


挨拶も終わり、お互いにじろじろと確認し合う。

本来であれば、失礼に値する行為だろうが今だけは許された。

この男の人はこんな所で何をしているのだろうかと、装備や服装を確認していく。

山の深く、人が来ないような所で何をと不思議に思った。

頂上に行く道から、かなり離れており、大変怪しかったのだ。


「あーと……」

「………」


じーと穏乃が見ていると少年が、困ったような表情で頬を掻いた。

自分が怪しいと分かっているらしい。


「迷子?」

「……実は」


じっと見て、穏乃は悪い人ではないと何となく思った。

根拠はないがそう思ったのだ。


「なんでこんな所で?」

「あははは……山で泊まれるような所ないかなと……調子こいたら」


聞いてみればそんな答えが返ってくる。

なんとも無茶をする人だと穏乃は内心思った。


「山を舐めない方がいいよ?」

「あぁ……こうも簡単に迷うとは……すみません」

「うん、よし!」


腰に手を当て怒れば、素直に頭を下げる。

自分が迂闊だったと認識をしっかりとしているらしい。


「嫌じゃないの?」

「何が?」

「小さい子に怒られるの」

「真剣だって分かるしね。それに、どう考えても俺の方が悪いし」


少年の言葉に穏乃は『同じ年ぐらいなのに立派だな』と思った。

しっかりと謝れる事は良いことだと。


「そうなんだ。それじゃ、付いて来て? 元の道まで送るから」

「お願いします」


穏乃は声を掛け、前を先導する。

このまま放置するわけにも行かない。

「……結構歩きなれてるね」

「庭みたいなものだからね」


苦戦する少年とは違い、穏乃はアスファルトの道を歩くように軽快に足を進める。

十年近く通い詰めた山なので、庭の様な感覚だ。


「はぁ……結構足疲れるな」

「使わない筋肉も使うから!」


ある程度歩けば、少しばかり整えられた道へと出る。

少年は、その道を見てほっとしたような表情をして、近くの木にもたれ掛かった。


「ここを道なりに降りれば下山出来るから」

「そっか、ありがとう」


少年は人の良い笑みを浮かべ頭を下げた。


「いいよ、いいよ。困ったときはお互い様だし」

「あはははは……ならついでにもう一つだけ、いいか?」

「うん?」


少し照れながらも答えれば、少年が気まずげに頬を掻いた。


「山で泊まれる所ないかな?」


こんな目に会っても、まだ山に用事があるらしい。

呆れたとかより不思議に思い、少年の言葉に穏乃は首を傾げる。


「時間がないんだ」

「時間?」


聞き返せば少年は深く深く頷いた。


「俺は過ちを犯したかもしれない。それを知る為に山を知らなければいけないんだ」


少年の真剣表情に穏乃は何も言えず、ただただ言葉を待つ。


「一日しかこっちに居られない。それで全てを知れないと思う。だけど、頼む! 一日だけでも山を知りたいんだ!」


少年は両手を合わせ必死に懇願してくる。

それを見て穏乃は困りどうしようかと悩む。

泊まれる所は幾つか知っているのだ。

少年の荷物にはテントもあるので問題はないだろう。

ただ……。


「えっと……年って幾つ?」

「十四」

あぁーと声を出し更に困った。

予想通りの答えに穏乃は、少ない頭を回転させる。

流石に自分と同い年位の人を山で泊まらせるわけにはいかない。

少なからず、穏乃にも責任が及ぶ為だ、この少年に何か有れば家族にも迷惑をかけてしまう。


「うぅ~~……」

「やっぱり無理か……」


腕を組み考え込んでいると、少年ががっくりと肩を落とした。



「どうして、そんなに山に執着するの?」

「……文通してる相手が居るんだけど」


穏乃が聞けば、そう少年が口にする。
少年の言葉にドキっと胸が跳ねた。


「その子が山が好きでな、少しだけ気になってさ」

「………」

「それと――これはいいか」


穏乃は、少年の言葉に口を開け驚いた。

今の話は自分の話の様な気がしてならない。

だが、違うかも知れない。


「その子って――」


聞けば一発で分かることなのだが、何故か穏乃の口からそれが出てこなかった。

何かが、穏乃を留めてしまった。


「どうした?」

「なんでもない……分かった、なら付いて来て?」

「泊まれる所、あるのか?」

「うん」

「そっか、ありがとう」


頭の中でこれからの事を考えつつ案内を買って出る。

このまま放置しても勝手にまた山に戻りそうだと思った。


「いけるかな……多分」

「色々とごめんな」


少年をお供に山を登って行く。








山登りは順調で時折、少年に合わせ休憩を入れながら登っていった。


「こういうのもいいかな」

「うん?」

「誰かと登るの久々だから」


歩いていれば、自然と声が出た。

その声に自分自身が楽しんでる事を初めて気付いた。

良く考えれば、お爺ちゃん以外と登るは初めてで、それ以来の出来事であった。


「ふぅ……これが山か」

「一部だけどね?」

「……そうか」


そんな事を思いつつ、進んでいると少年が息を整えつつ辺りを見渡す。



「はぁ……人少ないな」

「頂上から少し外れてるし、ここに来る人は今の時期いないんじゃないかな」

「………」


飛び跳ねるように足を進めながら先を進む。

まだ、目的地まで距離があり、だいぶ急がなければいけない。


「ほらほら、急がないと」

「はぁ……また歩くのか」


楽しげに進めば、後ろから大きなため息が聴こえてきた。





「とうちゃ~くっ!」

「はぁ……はぁ……ここかー……」


それから暫く歩き、目的に到着する。

少しばかり広がった所へと出た。

自分もまた、よく泊まる場所で安全を比較的確保できている場所だ。


「ここがそうなのか?」

「うん、広いし、近くに川も流れてる。上流に近いから川が溢れても問題ないしね。人も来ない」

「そっか、本当にありがとな」

「それじゃ、ぱぱっと準備しちゃおうか」

「うん?」


下ろされた荷物からテント一式を取り出し、準備を始めれば、少年が不思議そうに首を傾げた。

それを見て逆に不思議そうに首を傾げてみる。


「……流石に準備まで手伝って貰うわけには」

「流石にただで寝ようとは思わないし」

「うん?」

「うん?」


お互いに首を傾げあう。


「……君も泊まるの?」

「流石に山に慣れてない人を一人で泊まらす訳にはいかないよ」

「………」


少年は無言になり、穏乃とテントを交互に何度見た後、自分を納得させるようにため息をついた。


「よろしくお願いします」

「うん! それじゃ組み立てようか」

「おぅ!」


最後には頭を下げ、テントを立てるのに加わった。


「へぇ~組み立てるの上手いね」

「へへ、家の庭で何度も練習したからな」


テントを組み手立ててると、素人とは思えない手つきに驚いた。

山慣れしてないので此方もと思ったのだが、慣れた手つきで組み上げていく。



「出来た!」

「やっぱり庭と違うな」


暫くし、完成されたテントを見て二人で満足気に頷いた。

お互いにハイタッチして喜びを分かち合う。


「飲み水はあるんだっけ?」

「おう、持って来てるから水はいいかな」

「なら……焚き火の薪集めかな」

「渇いたの集めればいいんだよな」

「うん」


荷物をテントに置くと、二人で予定を立て薪を集めだす。

なるべくお互いが見える範囲で薪を集め、仕度をする。


「何してるんだ?」

「火が飛び散らないように穴掘ってるの」

「へー……」

「木が近いからね。後は石でかこってお終い!」


薪を集めたら釜戸を作り、準備を終える。

終える頃には空も暗くなり、辺りに闇が降りてきた。

丁度いいので穴に薪を入れ、適当な紙を入れ火をつける。

火をくべれば、直ぐに燃え、辺りをぼんやりとした光が照らす。


「………」

「………」


それを二人して少しばかりぼんやりと眺めた。

暖かい火が心地よく、疲れもあり、うとうとと眠りを誘われた。


「おっとっと……ご飯にしよっか」

「ふぁ~……そうだな、この時の為に色々と買ってきたし」


眠気を払うようにぐぐっと背伸びをして、おなかを擦る。

時間的にも丁度良いので少年が持ってきた、食料を火に当て食べる事にした。



「なんでだろうな」

「なにが?」


木に差した肉を頬張りつつ、穏乃が聞いた。


「ただ、肉を焼いてるだけなのに美味しいなって」

「………」


少年の言葉に穏乃は無言で上を向いて、横を向いて、真っ直ぐ男性を見つめた。


「山が調味料になってるのかもね」

「山が……か、これも山の魅力か」


少年は楽しそうに笑うも、次第に言葉数が少なくなり、苦笑へと変わる。

何故、そんなにも苦しそうな顔をするのか聞こうとするも言葉が出ない。

なんと声を掛ければいいのかが分からなかった。


「うん、美味い」

「美味いな」


故に、二人はお互いに誤魔化すように食事に齧り付いた。


「本当にいいのか?」

「問題ない、問題なし!」


食事を終え、火を消すとテントの中へと戻る。

テントの中にあったライトをつけ、二人で互いの事を話し合っていた。

寝袋は少年が使い、毛布を穏乃が借りた。

最初は、少年が毛布を使うといったが、これを断る。

慣れている穏乃なら毛布でも寝れるのだ。

逆に寝なれてない少年が寝袋を使った方がいいだろうと判断した。


「あー……なるほど、寝にくいな」

「だろうね、最初は違和感が強いと思うよ」


横になり、少年が苦笑した。

それに合わせて穏乃がカラカラと楽しげに笑う。


「私は最初、寝れなかったんだよね」

「そうなのか?」

「うん」


そう言って、穏乃は目を瞑り昔を思い出す。

初めて山に泊まった時は、興奮と恐怖で寝れなかったなと懐かしんだ。


「そういえば――」

「なに?」

「あー……、朝日って見れる?」

「朝日?」

「そう、朝日……頂上から見ると綺麗なんだろ?」


そう聞かれて、何度か目にしている光景を思い出す。

確かにあれは、素晴らしく綺麗な光景だ。


「見たいの?」

「見たい、それが今回の目的の一つだし」

「ん~……見たいなら案内するけど、暗い中歩くし、朝早いよ?」

「構わない、どうしても見たいんだ」

「分かった」


真剣な声色に思わず頷く。

この自分と同い年の少年は、一体何を思い、何が目的でここに来たのだろうか。

『過ちをしたかも知れない』『山を知りたい』『山が好きな文通相手がいる』

この少年の目的で知れたのはこの三つだけだ。


「………」

「すー……」


暫く考えるも胸にモヤモヤした物が降りてきて不安に駆られた。


(たぶん……この人が京太郎だよね)


未だに名前を教えあっていない。

普段なら真っ先に聞くはずなのに、今回ばかりは躊躇してしまった。

何故と聞かれると穏乃自身、よく分かっていない。

だけど勘が鳴り響いてるのだ。

名前を聞いたらきっと――。

次第に瞼が落ちてきて深い深い眠りへと導かれ、穏乃は眠りに入った。


【京太郎side】


『すごい、景色です!』

「………」


テレビに映っているナレーターが山の上で興奮したかのように荒い声を上げる。

何処にでもある山から見える街を見下ろし、嬉しそうに笑っていた。

その笑いに釣られてか、会場にいた他の芸能人もカメラ越しの景色に感嘆の声を上げた。


「………」


それを暇つぶし程度に京太郎はリビングのソファーに座り見ていた。

こういった番組は似ているものばかりなのでいい加減飽きたのだが、それでもぼーと見つめる。


『綺麗ですね!』

『ボクも見たことあるんですけど……絶景ですよ』


よくあるようなコメントが流れるのを聞きながら、カピーをブラッシングする。


『こういったのは―――ですよ!』


聞き流している時に一人の芸能人のコメントが耳に入った。

なんてことはない、どこでも聞きそうなコメントであった。

それでも、それでも、あの時の京太郎には心に来るコメントであった。

ブラシを止め、真剣な表情でテレビへと視線を移し、そのコメントに対する反応を見守る。


『やっぱり、そうなんですか!』

『そうですよね!私も自分の足で――』


其処まで思い出し、京太郎は体を誰かに揺すられるのを感じ、目が覚めた。



「起きた?」

「あぁ……おはよう」

「おはよう」


目を開ければ、ライトの眩しい光と共に少女の顔が映りこむ。

そうだ、ここは――


「ん~~、体痛い」

「ははは、動かせば良くなるよ」


寝袋から体を起こし、調子を確かめる。

慣れないせいか、あちら此方が痛んだ。


「はい、朝ごはん」

「ども……って俺の持ってきたパンだな」

「うん!」


ふぁっと大きな欠伸をしていると少女にパンを渡された。

それを受取り袋を空け、口に放り込み噛んだ。

暫く噛んでいると、外に出ていた少女がコップを両手に持って入ってくる。


「はい、あったかいよ!」

「ありがとう、助かる」


口の中の水分をパンに吸われていたので助かった。

渡された飲み物を冷ましながら、ずずっと飲む。


(熱い、熱いけど……ほっとする)


熱過ぎないかと思われた飲み物も秋の朝には、丁度良く体が暖まる。

暫くパンを食べ、飲み終えると服を着込み、軽く片づけをする。

片づけをして外に出れば、少女が焚き火を消して地面に埋めていた。


「これでよし」

「埋めたのか?」

「ある程度はね。きっちり灰にして、冷まして取れるだけ袋にいれて元通りにして完了」


少女の言葉を聞きながら、釜戸の部分を見れば、確かに元通りになっている。

何処からどう見ても其処で焚き火をしていたと分からなかった。


「それじゃ行こうか」

「真っ暗だな」

「このぐらいじゃないと……」


ライトを付けると少女が先頭を歩きだす。

それを荷物を背負いなおし、自分もまたライトを付け後を歩く。

歩く速度は昨日とは違い、ゆっくりゆっくりと足元を確認していく遅い物であった。


(真っ暗で先が見えない)


注意を払っているせいか、最初の時と比べて会話はない。

時折、少女が後ろを向いてしっかりと付いてきているか確かめている。

その時に『大丈夫?』と声を掛けられる程度だ。

その為か、意識がどうしても周りへと向いてしまう。


(明かりが有ってもこれか)


寒いせいか、息が荒く上がる。

白い息を吐きながら、ライトを森の奥へと差し込むも奥まで見えない。

何処まで何処まで真っ暗な闇に身が竦んだ。


「……電気消してみる?」

「!」


そんな事を思っていると声が掛かる。

何時の間にか足が止まってしまったのか、少女が此方を向いて待っていた。


「電気を?」

「うん、山を知りたいんでしょ? ならこれも」


そう言って、少女が持っていたライトを消した。

少女がライトを消せば、少女の上半身が消え、足しか見えなくなる。


「………」


京太郎は、足を見ながら、暫し悩むも自分もまたライトを消した。

パチンとライトが消えると襲ってくるのは暗い暗い闇だ。

何処までも暗く、冷たい。


(目が慣れない)


どのぐらい経ったか分からないが、幾ら待っても目が慣れない。

家などで電気を消すと暫くすれば、目が慣れ少しは見えてくるものだ。

だけどそれは、完璧な暗闇ではないから見えるのだ。

何処からか少しの光があり、その光で見えている。

しかし、ここは文明がない森の中……星の光さえ、枝木に遮られ届かない。

故に幾ら待っても目が慣れず、真っ暗なままだ。



「―――」


黙ったまま、暫く固まっていると光が灯った。

少女がライトを付けたらしい。


「どうだった?」

「怖い」


ライトを付けた少女が一言聞いてきたので素直に答えた。

怖い、怖かった、自分が立っているのか、歩いているのかさえ分からず。

ただただ、闇中に放り込まれていた。

誰かに見られているような感覚さえ、起こり、不安、恐怖を感じた。


「山は……いい所だけじゃないんだ」

「………」

「慣れるとさ、山が怖い所だってのも忘れちゃう」

「………」

「もしも、今後山を登る事があったら、今の事を忘れないで」

「あぁ……」

「よしっ!さーいこう!」


言葉を言い切ると元気に少女は歩き出す。

それに付いてくようにライトを付けると歩き出した。


「………」


その途中で何となく後ろを振り向けば、まったく道が見えない真っ暗闇であった。





「到着! はぁ……何時来ても寒いな」

「確かに寒いな!」


暫く歩き頂上へと付いた。

頂上へ付くと冷たい風に煽られ身が別の意味で竦んだ。

辺りを見渡せば、少しばかり明るくなった所で他にも人が何人か居た。


「人もそれなりに居るんだな」

「まぁ……私達は獣道から来たしね」


森の中を通っていたので分からなかったが、それなりに人が登っていたらしい。


「ほら、もうすぐだよ」

「あぁ……」


少女に急かされ、光が差してくる方向を見る。

其方を見れば、山々の間から眩しいほどの光が差し込み、目を強く打った。

あまりの眩しさに、目を細め、少しばかり腕を使い光を遮る。


「―――」

「これが、最高の景色。暗い中歩いて、恐怖に疲労に打ち勝って見れる『絶景』」


少女の声が聴こえたが、何も言い返せない。

それほどに目の前の光景に打たれた。

眩いほどの光の柱を、真っ青な空へと写し、山々の間から溢れんばかりの巨大な体を惜しみなく出している。

いつもは頭の上に見える太陽が真っ直ぐ、正面にあるのは圧巻の一言であった。

あまりの美しい光景に感動するほど実が震える。

そして――それと同時に自分の罪を認識した。



「泣いてるの?」

「あぁ……やっぱり、俺は……」


少女の声に自分が泣いてる事に気付く。

腕で顔を拭き涙を取るも、すぐに新しいのが湧き出てくる。

手で掬ってソレを見て、また太陽を見る。


「感動……ってわけじゃないよね」

「あぁ……あぁ……」


泣いていると少女に驚かれた。

俺は言わないといけない。

自分が何故此処に来たのかを

自分は謝らなければ行けない酷い事を提案していたと


「俺に文通相手が居るって話したろ?」

「うん」


真っ直ぐ太陽を見て話を始める。


「その子には山が好きなお爺ちゃんが居てさ」

「……うん」

「いつも楽しそうに『一緒に登った!』って手紙に書かれてる位仲良しだった」

「……うん」


静かに言葉を出していけば、少女は静かに返事をしてくれる。


「ある時……そのお爺さんが足腰を悪くして山を登れなくなったんだ」

「……」

「山が登れなくなった、お爺さんを悲しませないように何か無いかって助けを求められた」

「……う、ん」

「その時、俺は写真で景色を撮って手紙を出せば良いと提案したんだっ」


あの時は、名案と思っていた。

後から思い出しても、我ながら流石だと思っていた。

しかしだ――あの時、テレビ番組のコメントを聴くまでの間だ。


「少し前にテレビで山を登った人がコメントをしてた」

「……」

「その人は『カメラ越しでも綺麗ですが、この景色は登ってきた人しか味わえません!』って」


何処の番組でも口にする謳い文句。

またそれかと思うも今なら分かる。

この気持ちを知る為に山へと来たのだ。

苦労して、恐怖して、疲労が溜まっても足を動かし、登り切った後に見れる景色は本当に綺麗だ。


「お爺さんはっ……何度この景色を見ただろうっ!」

「っ!」


もはや、吐き出すように叫ぶように口にする。


「自分の足で登って最高の景色を見てっ! それで山を登れなくなって!」

「あぁ……」

「そんな人に写真を撮って見せる? そんな事をしたらどう思うか、考えてなかったんだっ!」


これが自分の罪、最近になってようやく思い知った罪だ。

山が好きで登れなくなった人に、山の写真を見せる。

一体、どれだけの思いを募らせてしまっただろうか。


『もう一度登りたい』

『もう一度あの景色を見たい』

『もう一度……もう一度……』


自分自身が考えてもこれだけの事が思い浮かぶ。

穏乃手紙にはお爺さんが再び山に登ったとは書かれていない。

つまりは、それほどまでに足腰が悪いのだろう。

そう――二度と登れないほどに。

なのにだ……自分は、自分は――


「ごめんな、穏乃」

「っ……」


全て言い切って、隣の少女の名前を呼ぶ。

名前を聞いてはいないが、誰かは分かっていた。


【穏乃side】

「……京太郎のせいじゃないよ。それに……さ、お爺ちゃんはそう思ってないかも知れないし」

「………」


隣で泣き続ける京太郎へと声を掛ける。

声を掛けるもそれは本心ではない。

京太郎は自分の罪と言ったが、そうではない、これは自分の罪だ。

昔から分かっていた。

京太郎と違い、自分はお爺ちゃんと山を登った人だ。

だから、お爺ちゃんに写真を見せればどう思うかも知っていた。

それでも……それでも写真を撮り続けていた。

何故と聞かれたら居なくなって欲しくなかったから。

山を登れなくなったお爺ちゃんが今にも消えそうで、怖かった。

だから京太郎の案を受け入れた。

お爺ちゃんの気持ちを知っていても

憎んでくれてもいい、それで生きてくれるなら

怒ってくれてもいい、それで居なくならないでくれるのなら

そう思って手紙を出し続けた。

今思えば、手紙を出していたのは、実際に顔を合わせるのが怖いからだったんだ。

そして、その怖さが京太郎をお爺ちゃんを傷つけてしまった。

もう――潮時なのかも知れない。









「………帰ろうか」

「………あぁ」


暫く二人で朝日を眺め、その場を後にする。

そろそろ時期なのかも知れない。

下山してる最中は、お互いに無言だった。

初めて会った文通相手に色々と話そうと思うも、言葉に出来ない。

何か言おうとしても先ほどのことで頭がいっぱいだった。


「それじゃ……俺は帰るよ」

「……うん」


気付けば、駅の前まで来ていた。

結局何も話せず、何も言えず。


「あのさ、穏乃」

「うん?」


そう思っていると京太郎から声が掛かる。


「やっぱり、俺も会いに……」

「それは駄目、最初に私が会う、会って話すんだ。そして謝るの」

「………」

「最初は私じゃなきゃ駄目」


今まで考えていたことを口にする。


「京太郎が其処まで考えてくれてただけで十分だから」

「………」


無理矢理、笑みを浮かべ言えば納得してなさそうな顔をしてくる。


「……分かった。ならさ、手紙。書くから穏乃も書けよ?」

「うん」

「なるべく多いと嬉しい」

「う゛……」


いつも手紙を送っても便箋一枚の短い物になってしまう。

こればかりはしょうがないと視線を逸らせば、頭に暖かい手が乗っかる。


「またな、穏乃」

「うん! また!」


最後に京太郎は笑顔で別れを告げた。


「よし!」


背中を見えなくなるまで見送ると気合をいれ頬を叩く。

これから本当の本番だ。

気合を入れると、家へと駆け出した。



「ただいまー!」

「穏乃! また連絡もせず!」

「ごめん! あとで!」


扉を開け、家に入るとお母さんから怒られた。

何時もなら、しっかりと聞くのだが、今回ばかりは優先しければいけない事があるので走る。 


「こらー! 廊下を走らない!」

「ごめんなさい!」


後ろから聞こえてくる声に謝りつつも、真っ直ぐお爺ちゃんの部屋へと走る。

走ればすぐに扉の前に到着した。


「っ!」


すぐに開けようとするも手が震えて止まった。

私はお爺ちゃんが大好きだ。

大好きだから、嫌われても生きていて欲しいと思っていた。

けど……やっぱり、嫌われてたらと思うと怖い。


『ごめんな、穏乃』

「………ふぅ」


そんな事を考えていると、頭に泣いていた京太郎の顔が思い浮かんだ。

深く息をすれば、今度はすんなりと扉が開いた。



「……穏乃か?」

「うん」


扉を開けば、縁側にお爺ちゃんが座っていた。

此方に背を向けているので表情は見えない。


「また山に泊まったのか」

「うん」

「本当に好きだな、穏乃は」


お爺ちゃんの軽く笑う声に涙が溢れそうになる。

それでもぐっと堪え、足を進める。


「隣さん…座っていい?」

「あぁ、好きにしろ」


こうしてお爺ちゃんと話すのは何年ぶりだろうか。

そんな事を思いつつも、隣に腰掛け、視線を同じ方向へと向ける。

其処には、先ほど自分達が登っていた山が見えた。


「今日はどうした?」

「謝りたいと思って」


言った、言ってしまった。

これでもう後戻りは出来ない。


「………」

「お爺ちゃん、ごめんね。写真送りつけて」


山から目を離さず、じっと言葉を待つ。


「っ!」


暫くすると、頭に手が置かれた。

驚き、ぎゅっと目を瞑ってしまう。


「怒ってないわい、馬鹿孫」

「……怒ってないの?」


お爺ちゃんの言葉に驚き目を開ける。

見れば、其処には呆れたような表情をしているお爺ちゃんが居た。


「でもでも……酷い事をしてたし」

「まぁ……最初は遠からずって所か、思いもした」

「う゛……ごめんなさい」


お爺ちゃんの言葉にもう一度謝る。


「もうよいて、その代わり……一つしてもらいたいことがあってな」

「してもらいたいこと?」

「頼めるか?」

「……うん!」


軽く笑うお爺ちゃんに何度も頷く。


「実は―――」




「……手紙が着てる」


山から戻って気の抜けたような生活を送ってると、手紙が届いた。

待ちに待った穏乃からの手紙だ。

あれから一体どうなったのだろうか……。

気になって気になって仕方なかった。

許されたんだろうか、それとも――


「よしっ!」


震える手から手紙を外し、頬を叩き気合を入れる。

そして手紙を慎重に開け、中を取り出した。


「あっ」


気合を入れても手が震えたままで、中身の一部を床に落としてしまう。

それを慌てて拾い上げる。


「写真?」


落としたのは一枚の写真だ。

裏返しに落ちた写真を広い、無意識に表側を開き見た。


「………ふふ」


そして写真を見て、笑顔を零す。

写真の中であの日見た朝焼けをバックに二人の人物が映っていた。

一人は、穏乃だ。

元気いっぱいな笑顔で此方にピースをしている。

そして、もう一人は杖をついている老人だ。

厳つい顔で怖い雰囲気ながらも楽しげな笑みを浮かべていた。


写真を暫く眺めた後、二枚の便箋を開き心軽く中身を読んで思った。

『また、あの山に行きたいな』

と今度は一人でも二人でもなく、三人で――。

この日を境に京太郎は、もう一人と文通を始めることとなった。


【穏乃の手紙 カンッ!】

長い間、放置すみませんでした!
とりあえず、穏乃は終了、正直甘い部分も有るなと思います。
長く開けると駄目ですね。
今度は一度に全部書き上げて投稿したいな……。
あとハーメルンへの移動の件ですが、もうちょっと考えますのでそれまでこっちでやります。
あと咏ちゃんはリベンジしたい。
今度は他の人を出さずに……
それではー!

あと四月から安価始めます。
たぶん『ポケモン』のやつ


『うぅ……全然駄目駄目です』


誰も居ない夕焼けの部室

そこで一人で嘆く

それで何が変わるわけでもない そのはずであった


『……忘れ物?』


たまたま、見つけた一つの便箋

それを手にとって何気なく後ろを見た


マホへ


『私ですか?』


一つの便箋、あて先しか書かれていない 誰かの手紙――












『君が傍にいるだけで……』










【マホside】

季節は春、マホは高校生になりました。

高校生になり、春の特有の暖かさ、それを旧校舎の一番高い部屋で万遍に受ける。

ずっと夢見た場所でこれからの生活が始まる……物凄く嬉しい。


「……嬉しそうだね、マホ」

「はい! ようやく先輩達と一緒になれました!」

「そうかー……私は憂鬱だよ」


風を受けていれば、親友のムロちゃん――室橋裕子ちゃんが後ろに立っていました。

一緒になれたことを喜びましたが、ムロちゃんは違うみたい。

今まで迷惑を掛けていた分……やはり……。

そう思い悲しくなる。


「あぁ……違くて……ほらほら、泣かない」

「うぅー……マホは高校生ですっ。泣いてません!」


我慢しようとしても表情が顔に出てしまいハンカチで顔を拭かれた。

大人になったと思ったけど、まだまだらしい。


「ぐすん……それじゃ、なんで?」

「あー……」


では悲しげな顔をの理由は何だろうかと聞いてみた。

そうすれば、何処か罰悪そうに頬を指で掻き視線を逸らした。

そちらを見れば、そこには棚があり幾つかのトロフィーが飾られている。

そこには先輩達……和先輩達の活躍の証があった。


「私だって麻雀の腕前に自信はある……けどなー」

「何か問題が?」

「手強い後輩がいっぱい入ってくる……憂鬱だ」

「へ?」


この時は、思いもしなかった。

和先輩達と一緒の部活になって浮かれていたんだと思う。

だから――




「それ、ロン! 8000!」

「ひぅ!?」


「ツモ! 2000・4000」

「あわわわ」


「むむむ……ロンです!」

「いや……それ、役なし」

「あぁ!?」



「……しょぼーん」

「そうなるよね。 まぁ……前よりはチョンボも少ないし成長してるって」


結局、ほとんど勝つことも出来なかった。

咲先輩や和先輩達は当たり前として、同じく新入生として入って来た子達が強い。

咲先輩と同じくオカルトを持つ子は勿論、和先輩のような技術が高い子、優希先輩のように運が強い子。

様々な子が居て、マホはほとんど埋もれてしまった。


「やれやれ……この中で這い上がるのはキツイな」

「はいあがる?」

「そうだよ……目指せ、レギュラー!」


不思議に思い聞いてみれば先ほどの憂鬱がなんとやら、ムロちゃんはマホの背をバンバンと叩いてきて痛い。

最初こそ嘆いていたムロちゃんですが、今は目が燃えています。

どうやら心に火が灯ったみたいです。


「ほらほらマホも!」

「お、おー!」


最後には、釣られて一緒に腕を上げて皆に笑われました。


【マホside out】


【京太郎side】

「どうすっかな」


お風呂から上がり、部屋で一つの封筒を見つめる。

咲達に止められていたけど、区切りがいいと思った。


「……」


『残り一年だけだし……ね?』

「一年かー……」


ふと咲の言葉を思い出し、大きくため息を付いた。

たかが一年、されど一年……その一年が俺には大きく負担としてのしかかるのだ。

二年の夏が終わってから、あの時からずっと考えていた事。


あの日から、ずっと抱え込んでいた疲労、既に限界であった。

心が重い、部活に行く足が重く感じられる。

何が楽しいかさえ分からなくなり、今は本もネトマ……部活の最中でさえ麻雀を打ってない。

部室に行っても麻雀を打たず、ただただ雑用に没頭する。

それだけを行う毎日だ。


「きついな……厳しいな……」


頭の中でぐるぐると思考が回り、いつしかそんなことを呟いていた。

そんなことを呟いても何かが変わる訳でもない。

変わるとしたら……自分から動くしかないのだから――

そんなことを思って目を閉じた。


【京太郎side out】

短いけどのんびりとやっていきます。

最初の頃みたいに集中して700行以上書けんなー……

それでは、また

【京太郎side】

「結局こうなるんだよなー」


一人で呟き、ジュースの缶を袋に押し込め立ち上がる。

あれから一ヶ月経った今も麻雀部に所属していた。

何度も咲達に退部届けを渡そうとするも何かが引き止めるのだ。


(いや……引き止めるのが何か分かってるけど)


雑貨品の入った袋を両手で持ち上げ、部室へと足を進めながらそんな事を思った。

何度も通った道を歩いて階段を登っていき踊り場までくれば、賑やかな声が聴こえて来た。

前までならここまで届かなかった笑い声が、部員が増えると同時に聞こえてくるようになった。


「ただいま」

「おかりなさい」

「おぅ、こっち頼む」


扉を押し開けて中に入ると和が気付き、袋を持ってくれる。

一番軽い荷物を渡し、片付けながらも辺りを見渡した。


「なにやってんだ?」


雑用をしていれば何時も一年生が寄ってくるのだが、今日ばかりは違った。

誰も寄って来ず、一つの席を囲んで何やら興奮をしていた。


「咲さんが打ってます」

「あー……なるほどな」


不思議に思い聞いてみると答えが返ってきた。


「しかし……」

「今日の相手は、優希とムロなんです」

「本気か」

「はい、本気出してます」


咲が麻雀を打つのは何時もの事、それなのにここまで集まるのかと思ってれば和が更に答えてくれた。

その言葉に納得が出来た。

咲自体はいつも打つが、それはある程度のゆとりがある対局だ。

勝ち負けを気にせず、気軽に打つ麻雀。

それが普段の咲の麻雀……しかし今は違う。

自分同等の力を持つ二人を相手に本気で勝つつもりで打ってるのだろう。

「……ってあれ?」

「どうしました?」

「咲と優希とムロ」

「はい」

「そして……和」

「はい、和ですよ?」


指を折り一人一人名前を読み上げる。

最後に部活の中でも実力のある和の名前を呼ぶ。

そうすれば、和は指を頬に当て首を傾げた。


「かわいっ、じゃなかった。 和がここにってことは……誰が?」

「あぁ……最後の一人は……」


『あわわわ』


聞き覚えのある声が聴こえてきて眉を細める。

その声は何やら泣きそうな声で悲痛な叫びにも聴こえた。


「……マホ?」

「……はい、マホです」

「まじで……マホ?」

「はい、マホですね」


再度和に確認してみるも予想通りの答えが返ってきた。

何でよりによってマホなのだろうかと頭が痛くなってくる。


「なんでさ……」

「マホしか名乗り挙げなくて」

「あぁ……なるほどな」

『カンッ! もう一個カンッ!』

『はわー!』

「……大丈夫かよ」

「これも経験です」


聴こえてくる声に不安しか残らなかった。

夢乃マホ――和と優希の後輩でムロの幼馴染。

今年入って来た一年生だが、交流事態は昔っからあった。


『マ、マホも!』

『あっ』

「あー……始まったか」

「お得意のですね」


そんな事を考えていれば、どよめきが聴こえてくる。

きっとマホのオカルトが発動したのだろう。

そう……マホもまたオカルトを持っていた。

そのオカルトは――



『カンッ! 嶺上開花』


相手のオカルトを一局の間だけ使用出来るオカルトだ。



「……何と言うか勿体無いよな」

「何がです?」


どよめきが歓声になるのを聞きながら買ってきた物を整理し、マホの事を考える。

最初は自分同様の初心者かと思っていた。

しかし、竹井部長が連れて来て咲と戦わせた時違うと落胆したものだ。

彼女は自分と違い『才能』があった。

故に――


「マホのこと……あいつのオカルトって一局しか持たないだろ?」

「そうですね……それ以上無理に使うと弱くなりますからね」


その『才能』が足枷になってるのが勿体無いと思った。


「……でも伸ばそうとしてもどうするべきか」

「……」


オカルトは原理が分かってないからオカルト。

そのオカルトを伸ばそうと考えてもどうにも答えが出てこないのだろう。


「……マネできるってことはさ」

「はい?」

「相手をしっかりと見てるってことだよな」


ふと……考えていた事を何となく話して見る。

もしも、もしも自分にそのオカルトがあったらどうするだろうと考えた事があった。

その考えを和に参考程度に話をしてみた。


「相手の事をしっかりと見てるなら、知識と経験さえ叩き込めば振り込まない鉄壁の守りになるんじゃないかな?」


モノマネをすると言うのは、簡単そうで難しい。

相手の言動に癖、表情に好みに思考……全てを理解して初めて相手になりえるのだ。

それが出来るのがマホの強み。

オカルトを強化するのでなく、オカルトを使う部分を別の方向に強化する。


「ってな感じだと、どうだろ」

「……」


的な話をしてみれば、和は腕を組み考え始めた。

そんな和を暫く眺めるも直ぐに気を取り直す。

既に麻雀を辞めた身、そんな奴の意見なんかと思ったのだ。


「いいですね、いけるかも」

「……まじで?」

「はい! ということで先輩としてマホを導いてあげてください」


手を軽く叩き、にこやかに笑う和を見て目を細める。

妙に乗り気だと思ったら、まだ俺に麻雀をやらせるのを諦めてないらしい。


「やんねーよ、俺は打たない」

「打たなくてもいいです、麻雀を辞めてもいいです。でも、せめて――何か残しませんか?」

「……残す?」

「はい、ここに『須賀 京太郎』が居たと言う証を」


和の言葉に声が出ず、ただただ見詰め合う。

須賀 京太郎が居た証――


(……そういえば、何にも残せてないんだな)


その言葉を聞いてゆっくりと辺りを見渡す。

周りには和達が残した数々のトロフィーや盾が残っている。

勿論、その中に俺の物は一つもない。


「……指導ぐらいならいいと思いますけど?」

「……つってもなー、俺マホに嫌われてるぜ?」

「前に喧嘩してましたね」

「そそ、俺が言っても絶対やらないって」


少しやる気になるも直ぐに問題にぶつかった。

前にマホと大喧嘩したことがあり、そのせいで声を掛けると威嚇される。


「原因は……」

「……『麻雀を続けても無駄』『無駄じゃない』っていう」

「あぁ……マホは京太郎くんが打てること知ってますからね」

「そそ……辞めたのは不満らしい」

「それならば……打てば」

「打たない」


確かに喧嘩の原因が原因なので打てば直ぐに収まる。

しかし、もう打つ気はさらさらない。

そのことを伝えれば、和は少し何かを考えてから自分のカバンを漁り始めた。


「それじゃ……これで」

「……便箋?」


和がカバンから持ってきたのは可愛らしい便箋だった。


「手紙なら……京太郎君だとバレずに伝えられると思います」

「……」


受取った便箋を凝視しどうしようかと悩むんだ。

【京太郎side out】

おつありんす~

今日はここまで、のんびりですまんね!
それじゃのー

マホ編 書き直し中。
上の見て手紙出るの遅いなと展開的にどうなんだろうと思い手直し中っす。
もう一度最初からかも、ごめんな。


『うぅ……全然駄目駄目です』


誰も居ない夕焼けの部室

そこで一人で嘆く

それで何が変わるわけでもない そのはずであった


『……忘れ物?』


たまたま、見つけた一つの便箋

それを手にとって何気なく後ろを見た


マホへ


『私ですか?』


一つの便箋、あて先しか書かれていない 誰かの手紙――


「ふぁー!」


春の清澄の部室、その一角で一人の少女が奇声を上げた。


「奇声を上げないの」

「だ、だって!」


友人である室橋裕子の言葉を受けて奇声を上げたマホは更に抗議の声を上げた。

上げるも友人も同じく自分が奇声を上げた原因の一人だと気付き、マホは抗議の声を唸り声に変える。

勿論そんなことをしても現状が変わるはずもなく、むしろ同席していた二人にも笑われてしまった。


そのことにマホは気付き、顔を真っ赤にさせ俯く。

俯けば、其処には自分の手牌があり、一向聴といった所であった。

自分のその手牌を見てから他の三人を見る。


一人目の京太郎は既にリーチしており、二人目のムロも追いかけリーチ。

最後の一人である宮永咲は相変わらず槓で鳴いている。

既に二回鳴き、三回目をポンしているので此方もテンパイと思っていいだろう。

そのことがマホに重圧を掛け手を鈍らせた。


「ほらほら、急げよー」

「むむむ」

「もう京ちゃん! 煽らないの」

「はいはい」


対面の京太郎がマホを煽り、咲がそんな京太郎の諌めた。

先輩である京太郎にマホは少しばかり闘志を燃やす。

軽く煽られ怒りのせいか、はたまた京太郎には負けたくないと言った気持ちが沸き起こり頭を逆に冷静にさせた。


「すー……」

「お?」

「あれ?」

「うん? どうかしたか?」


冷静になった頭でマホ息を静かに吸い込み、能力を発動させた。

マホは昔から憧れる人が多かった。

どんな苦境に立たされても負けない花田煌。

どんな状況でも冷静に対応する原村和。

どんな場面でも明るく乗り切る片岡優希。

どんな相手でも自分を崩さず勝ち切る宮永咲。

そして……


憧れが強いほど、その人になりたいと思いその思いが能力を生んだ。

マホの能力は相手の模範。

一局のみ他の人の能力の使用が可能となるコピー能力、その使用を行なった。

そんなマホの空気の変わりように咲とムロは気付き、声を上げた。

逆に咲達みたいにオカルト能力を持たない京太郎は二人の反応に不思議そうに首を傾げるばかりだ。


「――」


しかし、マホの今回使用した能力はコピーではなかった。

今を乗り切るにはコピー能力ではいけないと考えたのだ。

点数を減らさないように避けきるのが大事なのだとマホは判断する。


元よりマホは永遠の初心者と言われるほどの麻雀下手。

模範と言う能力に力を使い果たしているのか、注意力がなかった。

故に守りに弱く、よく振込みやチョンボなどをしている。


そんなマホであったが、今は違った。

軽く右手を下へと下ろし、ポケットに入れてある小さく折りたたんだ物をゆっくりと撫でた。

撫でれば、其処から冷たい感触が伝わっていき頭を冷静にさせていく。


『これ』

「……」

「……」

「おー」


冷静になった頭で当たらない牌を捨てた。

捨てた牌を三人が見るも誰も声を上げない。

当たり牌ではなかったので上げる事が出来なかった。


その事にほっとし、頭の中に描いていた『宮永咲』の手牌を消す。

マホが行なったのは模範による相手の思考のトレース。

相手を真似するというのは、相手を深く理解していると言い切れる。


相手の癖、思考、捨て牌の偏り、状況判断。

そういったことを把握しなければ模範なんて出来ないのだ。

そのことを「とある人」に言われ気付き、何度か練習を行なった所、これが成功した。

攻撃一遍のマホが防御も行なえるようになり、勝率が上がる。


何より、これを行なうと相手を手牌を完璧に読み切れる為集中力散漫なマホでも防御が可能となった。

それが何よりもありがたい。


「京ちゃん、それロン!」

「うげ……」


結局その局はリーチしていた京太郎が避けれず、そのまま咲の餌食となり終わった。

点数的言えば、咲が一位でマホは二位。

しかし、この結果はインターハイの大会で大いに役立つだろうとマホは喜んだ。

インターハイの団体に置いて点数を稼ぐのも大事だが、点数を守りきり次に渡すという役割も大事だ。

その点、今のマホは防御も出来いざって時は相手の模範して攻めたり、動揺を誘う事が出来た。


「負けたー!」

「ふふ、マホより下ですね」

「くっ」


先ほど煽ってきたお返しとばかりに先輩であり、先ほどの局で四位であった京太郎をからかう。

からかえば、机に項垂れていた京太郎が顔を起しマホの頭を嫌がらせとばかりに撫で回す。


「やー!」

「はっはっは」


髪が乱れ、騒げば京太郎は満足そうに離れていく。

きっと他の人の代わりに雑用をこなしにいったのだろうなと思い、感謝しこの髪の毛の恨みをどうするかなとマホは悩む。

悩むも結局は感謝の割合が強く、何か言うでもなく、明日も麻雀に誘い勝とうと腕を上げて気合を入れた。


「気合はいってんね」

「ムロちゃん!」

「わぷっ……まったく、成長したかと思えば」

「えへへ」


親友でもあるムロに声をかけられマホは喜びそのまま抱きつく。

抱きつけばムロは驚くもすぐに微笑み、先ほどぐちゃぐちゃにされた髪の毛を撫でて治す。


「初日はどうなるかと思ったけど……このまま行けばレギュラーいけるかもね」

「うん! そうなったら皆と一緒に出れます!」

「……あー、私は頑張らないと」


話題となったのは現在も行なわれているレギュラーの座を競う部活内の大会だ。

黒板に描かれたスコアコードを見てマホは嬉しそうに笑う。

初日こそ落ちに落ちていたマホであったが、今現在はかなり勝率が上がっていた。


相手に振り込まず、逆に絡め相手を喰らう。

新しい能力の使い方でそういったことが使用可能となり調子が良かった。


「調子いいけど……先ほどの対応といい何かあった?」

「えっと……」


休憩時間中ということで会話を続けていれば、先ほどの話しとなる。

数日前までのマホと違った事がムロは気になってしょうがない。

幾ら教えても、本人が覚えようとしてもいざって時にチョンボや振り込むマホ。

故に永遠の初心者……それがマホであった。

そんなマホの成長に天変地異かとムロは大げさに驚きながら、聞いてみる。


「えへへ……この手紙のお蔭です」

「てがみぃ~?」


ポケットから取り出したのは一つの便箋。

少々可愛らしい感じの物でお気楽なマホには似合うなと思った。


「読ましてー」

「はい」


マホから手紙を受取るとそれを下から上まで舐めるように見ていく。


-泣きながらも頑張ってる君へ-

初めまして――


「……」


手紙を読み通し、ムロは眉を顰めた。

確かに手紙の中には的確なアドバイスが載っている。

しかし、少々臭いと言うか何処か演じている風に見えて奇妙な手紙に見えた。

怪しいなと思い無言でマホを見つめる。


マホはその「何処から持ってきた」的な親友の視線に気付き、頬を染めながらも口を開く。


「えっと……初日に負け込んで落ち込んで」

「あぁ……あれは酷かった」


その言葉に『マホはだめだめですぅ』とか言って泣きべそをかきながら項垂れていたマホを思い出す。

憧れの先輩達との最後の大会、それに参加しようと張り切っていたために落ち込みも凄かった。


ムロとマホが初めて知った清澄は二年前の事。

咲達が入部して大暴れする少し前の清澄。

その時に元部長である竹井久に誘われて出会ったのが始まりだ。

あの時は風越や龍門渕と言った有名高校に囲まれていたため、人気もそれほどでもなかった。

しかし、二年前の団体優勝と言う記録を打ち出してからは長野で麻雀をするなら風越か清澄となってしまっている。

その為、ギリギリの人数であった清澄は溢れんばかりの人を抱え込む大きな麻雀部となった。


そうなってしまえば二人を待ち構えるのはレギュラー争いと言うなの戦い。

入れば一緒に楽に戦えると思っていたマホには思いもしなかったことであった。


「それで落ち込みながらも一人で残って記録を見ていたら……」

「見ていたら?」

「扉にこの手紙が挟まっていました!」

「へー」


その言葉を聞いて、改めて手紙を読み進める。

この手紙を書いた人物を探る。

便箋を見るに女子かと思ったが、字が汚い。

最初こそ優希かとムロは思ったが、今や部長となり部を率いる彼女が幾ら元後輩とはいえ贔屓するだろうかと悩む。

何よりこの手紙に書かれた理論は考え込まれたものであり、感覚で打つ優希とは違う。

それにより同じく感覚打ちの咲も違うこととなる。


なら次は和と考えるもそれも直ぐに否定することとなった。

彼女は優希よりこういった事に関してはドライだ。

何より彼女はこれほどに字は汚くなかった。


そうなるとこの手紙の人物は誰だろうとムロは考え込む。

一人一人後輩や同級生を思い浮かべるも一致しない。


「京ちゃん、珍しいね。レギュラー争いに参加するなんて」

「あー……最後の大会だしな。俺も参加してみたかったんだ」

「……」


そんなことを考えていれば、休憩中の咲と雑用をこなす京太郎の声が聴こえて来た。

その声にムロは、はっとし気付く。


可愛らしい便箋に目を取られていたが、この手紙は京太郎が出したのではと思ったのだ。

京太郎はこの部活で唯一の男性部員であった。

唯一な為レギュラー争いと無縁であり、咲、和、優希と言う怪物を相手に三年間やってきた人物。

何よりマホとも知り合いであり、落ち込んでいるマホのためにこういった手紙も書くのではと判断した。


「……ありえるか」

「何がですか?」

「あー……何でもない」

「?」

「ところで……どうするの?」

「どう?」

「お礼の手紙とか……そういうの」

「書きます!」

「そうかー」


そこまで考え、マホには告げず流した。

手紙を見るに彼自身は告げたくないのだろうと判断したためだ。


二人の関係は微妙な関係と言えた。

京太郎はオカルト能力も強い運もなく、地味な成績しか残せていない。

マホはオカルト能力を持ちながらも活かせなく落ち込み気味な成績だ。

そんな二人だからこそ、何処か互いに親しい感じを醸し出していた。

先ほどの京太郎の煽りやからかいも親愛の証と部活内では見ている。


そんなを彼がマホを押し上げる形で何かをしようとしている。

ムロはそんな気持ちを少しばかり感じ、見守る事にした。

この結末に少しばかり興味が沸いたのもある。


「頑張りな」

「はい! ……何を頑張れば?」

「いろいろと」

「はぁ……」


少し楽しげに笑う親友にマホは首を傾げる。

傾げるもすぐにどんなお礼を書こうかと思いを馳せた。


「ほらほら、休憩も終わるし次に集中しないと」

「はわっ!?」

「ここで負けたら手紙の人にも失礼だぞ」

「そ、そそそうでした!」


慌てて自分の席に着くマホを見てムロは大きく溜息を付き、京太郎へと視線を向けた。

そこには先ほどの麻雀に熱を上げていた人物とは思えないほど雑用をしている彼がいる。

二年になりムロが麻雀部に入った頃には京太郎はあまり打たなくなっていた。

そんな京太郎であったが、今年になり積極的に活動するようになっている。


「どうなるやら」


最後の年で何やら大きく動きそうだとムロは思い、結末を思い苦笑した。

取り合えずここまでー 前のはマホの影薄い+手紙要素ない!
ってことで書き直しっす。
……もう少しこっちに身を砕きます。
ではー

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom