女勇者「さあ魔王、人間を滅ぼそうよ」魔王「何を言っているんだ貴様は」 (1000)

女勇者「何ももなにも言ったとおりだよ、さあ人間を滅ぼそう」

魔王「側近、女勇者が錯乱しているのだが」

側近「見たところ錯乱魔法の類の痕跡は見られませんが」

女勇者「何言ってるの?僕は正気で健全な勇者だよ?」

魔王「正気で健全な勇者はそんなこと言わないと思うぞ」

側近「女勇者さん、人間に何かされたんですか?」

女勇者「…実は僕は貧しい村の出で、勇者に選ばれる前は酷い虐待と餓えに苦しめられて…」

魔王「…そうだったのか」

側近「…それは、同情しますが…全ての人間が悪いわk」

女勇者「なんてことは一切ないんだけどね」アハハ


魔王「…」

側近「…」 

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1438598471

側近「では何故?」

女勇者「理由?必要あるかな」

魔王「無いのか」

女勇者「それよりほら!早く魔物たち集合させてよ。ああ、楽しみだな」ワクワク

魔王「何故我が貴様の言うことに従う必要がある」

女勇者「だって魔王僕に負けたよね?」

魔王「ぐ…」

女勇者「側近、魔王に勝った人が次の魔王になるんだよね?」

側近「ええ、その魔王様も前魔王様のご子息とはいえ親殺しによって魔王の座を得ました」

魔王「親殺し言うな、きちんと蘇らせたわ」

女勇者「なら僕が次期魔王になっても道理は通るよね?」ニヤリ

魔王「通るわけあるか!」

側近「一理ありますね」

魔王「え」

女勇者「」ニコニコ

魔王「いや通らない!貴様は人間であって魔物ではないだろ」

女勇者「それもそうか…なら魔王の妃になればいいよね」

魔王「駄目だと言っているに。そもそも我は人型の魔物ですらないではないか」

女勇者「後ろ足で立って前足は物を掴める手になってて頭は上についている。人型じゃん」

魔王「人の定義が広すぎるわ」

女勇者「むしろ人間に似てないのがいい!魔王のその爬虫類の鱗もとげの生えた尻尾も角の生えたワニのような顔も普段はたたんでいる竜の羽も巨大な鉤爪と牙も魔王の見た目がすごい好き!!」

魔王「側近…この勇者怖い」

側近「まあ魔物と人間の交わりぐらいよくあることですよ。フェティズムってやつです」

女勇者「さあ魔王、僕を妃として迎え入れてよ」

側近「そういえば前魔王を性奴隷にした魔王も存在しましたよ。もちろん血縁関係はありませんが」

魔王「何故それを今言う!?」

女勇者「じゃあまずは触手プレイでも。腕触手化魔法で…」

魔王「待て待て待て!人間を滅ぼすとかいう話はどうした!」

女勇者「あ、そうだった」

側近(話し逸らしたましたね…残念です)

女勇者「じゃあまずは…」

魔王「説明」

女勇者「何の?理由なんて無いよ」

魔王「だったら何故最初からそう言わず勇者として我を倒した」

女勇者「どっちが力が上か示しておきたくて」ニンマリ

魔王「…」

女勇者「そして王様に魔王を殺したことを報告して」

魔王「平和協定だと言っていたのは嘘だったのか」

女勇者「嘘だよ、平和協定のせいで魔物たち鬱憤が溜まっているでしょ。人間のほうも魔王が殺されてから数年、そろそろ緊張が解けて平和ボケしているし」

女勇者「油断している人間に力が有り余っている魔物、きっと楽しいだろうなあ、きっと」

女勇者「興奮しない!?10年以上、ずっと信頼していた勇者がいきなり掌返して襲ってくる。しかも死んだはずの魔王が生きていたなんて!」

女勇者「一体どれほど失望と絶望をしてくれるんだろう。ああ、たまらないよ、たまらない。魔王、僕は今日のこの日をずっっっっと十何年も待ち望んでいた!」

女勇者「さあ、人間を滅ぼそうよ!!」



魔王(やばい、マジだこいつ)

側近「…魔王様、どうするんですか?」

側近「…魔王様、どうするんですか?」

魔王「…ふう。側近、我々は何だ?」

側近「魔物、そしてあなたはその凶皇です」

魔王「そうだな、我々は魔物だ」


魔王「人間の敵だ」


女勇者「ふふ、やっぱりあなたは僕の魔王だ」

魔王「そうと決まれば側近、魔王城を人間界に浮上させるぞ。魔導師を集めろ」

女勇者「違う」

魔王「何がだ?」

女勇者「いつもと同じ場所じゃダメだよ、あそこ目立たないもん」

魔王「…そういう問題か?」

女勇者「そういう問題だよ」

側近「ではどこが適切なんですか?」

女勇者「世界樹、知っているでしょ?」

魔王「知っているがあそこには人間の村があるぞ」

女勇者「惨殺で。小さな村だし簡単でしょ」

側近「無駄な殺害ですね」

女勇者「魔物がそんなの気にするとは思わなかったよ」

魔王「まさかの認識の違いだ」

女勇者「まあほら惨殺しちゃえ!」

女勇者「そして世界樹を中心に魔王の牙城を築き上げ!魔界のオーラで包み込んで世界の中心を暗黒に染めちゃおう」

女勇者「あ、人間の骨を尖らせて装飾に使えば"牙"城っぽくなるかな?文字通り」

魔王「面白くない」

側近「むしろ怖いですが、魔物としては満点な発想です」

魔王「こいつ人間だぞ」

側近「さきほどからそれが疑問に思えてきました」

女勇者「さて世界樹下の村を滅ぼしに行こう」

魔王「魔物たちにやらせるのではなかったのか?」

側近「士気を高めるにはまず城を建てるべきですから」

魔王「なるほど、それまでは我々だけでやるほうが良いのか」

女勇者「そういうこと、じゃあ行ってくるね」

魔王「おい待て、一人で行く気か?」

女勇者「え?うん。充分でしょ」

魔王「いや、我も行く。ここから人間界に行くと世界樹までは距離があるだろう」

側近「では私も!」

魔王「側近は魔導師を集めて説明しておいてくれ」

側近「何故ですか!二人きりがいいんですか!デートですか!」

女勇者「デートだよ!邪魔しないで!」

魔王「デートではない、そういう気も無い」

側近「えー」

女勇者「えー」

魔王「いいから魔王の言うことを聞け貴様ら」

人間界:狂気の草原

人間界でほぼ唯一、魔界と繋がるゲートのある場所
ここら一帯は魔界の瘴気に触れ、穢れた地として知られている
普通の人間ですら耐性が無ければ狂気に溺れてしまい、知性の低い動物は魔物へと変化する呪われた地ともなっている


女勇者「なるほどね、ここからじゃ世界樹までは遠いや」

魔王「さて、飛ぶぞ」

バサァア


巨大な皮膜の羽が空へと大きく開く


女勇者「ま、魔王。何でお姫様抱っこ?///」

魔王「仮初にも我は王だ。どうすれば喜ぶかどうかぐらい分かる」

女勇者「…よく女たらしとか言われない?///」

魔王「したのはお前が初めてだよ」

女勇者「っ…///」

女勇者「…何か負けた気分///」

魔王「しっかり捕まっていろ」

女勇者「うん///」ギュ

世界樹麓、リアテの村(特産物:世界樹の葉・雫・根)


女勇者「ああ、至福の飛行時間だった…///」

魔王「それは良かった。では始めようか」

女勇者「さっきの飛行をもっと味わいたい。のでちゃちゃっと終わらせちゃおう」

魔王「え」

女勇者「フィガリア・フレク・アクリアビリオ・エクレオリアンク…超級光魔法グレスビアディアンガ!」


星々、そして空に浮かぶ狂気的な形をした月が閃光を放つ。それは全ての家屋、村内の小動物へと無慈悲に降り注いだ


女勇者「いや、詠唱無しのほうが早くて良かったかな?まあいいか。ねえ魔王、終わったよ?」

魔王「…生存者は」

女勇者「いるとしたら卓越した冒険者か防御魔法に長けた人だろうね。この不意打ちじゃ無理だろうけど」

魔王「これは酷い」

女勇者「ねえ魔王、御褒美頂戴。キスがいい」

魔王「王はむやみにキスなどしない。妃もな」

女勇者「ぐ…上手くかわされた」

魔王「それより生存者がいないかを見よう」

女勇者「いないとおもうけどな」
―――――
―――

赤ん坊「おぎゃあ、おぎゃあ」

魔王「…母は強いな。死して尚、自らの身と魂を触媒として防御魔法を託すなど…」

女勇者「そうだね、あわれだよ」

魔王「女勇者、この赤ん坊は近くの国n」


グシャ


魔王「おま…何をして」


女勇者「ん?殺しちゃいけなかった?人間は育てても奴隷として意味を成さないって側近から聞いけど…」

魔王「…何とも思わないのか?」

女勇者「何が?」


人間の赤ん坊を踏み殺し、返り血を浴びた女勇者は
星に照らされて美しく、狂気的な月の下に、いたって普通の表情を湛えていた

その後、世界樹は魔界の瘴気に侵された
世界中に溢れていた新鮮で神聖な空気は絶たれ、魔界の瘴気が薄く混じった汚れた空気が流れることになる

世界樹近くの村や町は全滅、全て死人か魔物に成り果てている

すぐに禁域に指定され、多くの人間、そして小動物までもが本能的に恐れるようになった


そこで何が起こっているのか、世界樹に何が起こったのか。各地の王達は懸念し、やがて調査の手を広げる

フィエリア王国王城、玉座の間


王「騎士団長、危険な旅路であるのは分かっている。しかしどの国も恐れて尻込みしておる。誰かがやらねばいかんのだ」

団長「誰かがやらなければならないというのなら私が示しましょう。一人が行けば後に続く者も現れます」

王様「これは命令だ。決して無理はせず生きて帰って来い。大事なのは情報を持ち帰ることだ」

団長「承知いたしました。わが隊は一人も欠けることなく帰還することを誓います」

王様「頼んだぞ。情報を持ち帰るのみと言えど世界の命運を握った行動だ」

団長「肝に銘じます。偉大な王よ」

王様「武運を祈るぞ、わが自慢の騎士よ」

魔王城(世界樹在住)


魔王「諸君、平和というくだらない安寧の中よく耐え切ってくれた」

魔王「辛かったろう、戦いの快楽を自ら押さえ込み、無理やり平和に馴染もうとしたのだろう」

魔王「しかしもうよい、もう枷を解き放とう」

魔王「退屈と鬱憤を、押し込めた怒りを、再びだ!我々の時代が再び来よう!」

魔王「戦いの歓喜に身を震わせる日々よ!殺戮の快楽、心地良き悲鳴の反響、全てを思い出し、欲せ!欲望のままに食らい尽くそう!」

魔王「我が同胞たちよ、歓喜の日々来たれりだ!」


それは人類における歴史上、最悪にして最凶の戦争。殺戮の日々の始まりとなった


女勇者「…ふふ」

フィエリア王国名誉騎士団

「団長、もうすぐですね」

団長「ああ、気を引き締めろよ。時期に"穢れた地"だ」

「元々は世界樹の恩恵を受けた聖地だったのに…どうしてこんなことに」

団長「分からない。魔物どもにそんな知恵があったかどうかは知らないが、聖地が冒されたことによる人の気の滅入りはここまでだったとは」

「団長、せめて我々は狂気に飲まれないようにしないと」

団長「ああ。我々が希望の光となるのだからな。この暗黒の地においても、我々が歩いた道が光となる」

「団長、光という言葉好きですね」

団長「俺の唯一の道標だ。覚えておけ、いつ何時たりとも、光は我らを照らす」

フィエリア王国、玉座の間

王様「大臣よ。私は不安で不安で仕方ない」

大臣「そうですね、騎士団の皆が無事で帰還すると良いのですが」

王様「そうではない!何故…」

大臣「何がでしょうか?」

王様「何故…この非常事態に勇者はいない?」

大臣「…それは、既に事態の収集に動いているからでは?」

王様「違う、どの国に伝令を送っても返事はどれも同じ『我々も探している。見つけたら一報お願いする』だ」

王様「彼女は、どこだ」

今日はここまで
狂気的な少女少年と厨二成分と人外成分悪落ち等々入り混じったニッチな需要のSSではありますがどうもよろしく

オマケ

側近「魔王様、何故告白を最初は断ったのにすぐ「お姫様抱っこ」などという形で『OK』を返したんですか?」

魔王「最初は驚いたからな。冷静になって考えてみた。あそこまで言ってくれるのだ、悪い気はしなかった」

側近「もう少し悩んでも良かったのでは?」

魔王「王たるものああいう大事なことは先延ばしも保留もダメだ。出来るだけ早く決めて最期まで突き通すべきだよ」

側近「それならば口で言えば良いのでは。わざわざあんな臭いやりかたでもって…」

魔王「臭いとは何だ臭いとは」

本編


魔王「…来たか」

女勇者「来た?人間達?」

魔王「ああ、大人数のようだ」

女勇者「分かるの?」

魔王「我らの領地(魔界の瘴気に侵された大地)に人間が入り込むと少し歪が生じる」

女勇者「大人数となると…ようやく国が騎士団を派遣してきたかな。魔王、見に行こうよ」

魔王「ああ」

暗黒世界樹、頂上

女勇者「…高すぎて見えない」

魔王「すまない、人間の目には遠かったか」

女勇者「いや見える見える!充分見えるよ」

魔王「無理するな、見誤った我が悪い」

女勇者「…うう」

魔王「飛ぶぞ、再び掴まれ」

王国名誉騎士団


団長「穢れた地…これほどまでか」


足を踏み入れただけで気が重くなる。足の一歩一歩が妙に遅く、時間が泥のようにボタボタと流れる


「団長!あれを!」

団長「…何だ、あの光景は…」


ズオオオ、ズォオオオ


形容しがたい音と共に肉の津波が迫り来る。やがてその正体を知るその時、彼らが駆られた感情は…


団長「魔物の群れだ!」

「あんな数見たことありません…」

団長「撤退だ、撤退しろ。めいr―

女勇者「わーお、圧倒的」

魔王「初めて見るだろう?物量が物量を押し潰していく様は」

女勇者「うん、希望も絶望も感じないで何が起こったのかわからないまま死んでいく」
女勇者「それもまた素敵な殺戮かなあ」

魔王「そろそろ魔王城に戻ろうか」

女勇者「いや、僕だけ少し近くに下ろして」

魔王「ん?どうかしたか」

女勇者「近くで見たい。一人で」

何も見えない、見えるのは迫りくる濁流のような腐りきった肉体の数々
斬る、斬る、斬る
いつまで続くとも知れない"死"の中で叫び続けた


団長「マルク!リアード!エイジア!誰でもいい!応えてくれ」


途切れることなく押し寄せるアンデット系魔物の群れに、ついに息が途切れかかる


団長「…光、よ」


一筋の光は信じるものに、常に近くにあるはず。そう信じ、ここまできた


団長「光よおおおお!」


最期の力を振り絞って放った剣の衝撃波が闇を引き裂いた
魔物の濁流を切り開き、ようやく光が入り込む


「団長!」


そして聞こえてきたのは、懐かしき"少女"の声

団長「…君は」

女勇者「久しぶり団長。ぼ…私のこと、覚えている?」

団長「女勇者ちゃん、君も…事態の収拾に」

女勇者「そう見える?」


団長「…」

正直なところ、見えなかった。彼女の吸い込まれそうな暗い瞳は何も映さず、ただ妄信的な何かを見据えていた


女勇者「皆、戻って。魔王妃からの命令」

アンデットたちがゾロゾロとどこかへ去ってゆく、新たな仲間を増やして


団長「君は…何者になってしまったんだ。何があった」

女勇者「さすが、察しがいいね。でも間違っている」
女勇者「何も変わっちゃいないよ。僕は僕、思想も何も最初から全て」

団長「帰ってくるんだ、光の中へ」

再び剣を構える団長。迷いはなかった。洗脳であればいい、そうでなかった場合は…覚悟できている


女勇者「ここが光だよ。僕にとってどこよりも輝いている」

そう言い、闇を仰ぐ女勇者

女勇者「魔王には圧勝したんだけど
     そのあとなんか魔法で動きを制限されたり何だりで
     孕ませレイプされて
     魔王でしかイけない体にされて
     性奴隷にされて
     でも魔王が僕に惚れたりなんだりで
     結局妃となるかと言われて
     僕も魔王が一緒じゃなきゃ生きていけなくなったから
     二つ返事で了解したり何だり」

団長「な…なんて酷いことを…こんないたいけな少女に」

女勇者「まあそういうわけで、僕は魔王の妃についた。人間なんてもうどうでもいいの、魔王さえいれば」



---------------------------------------------------

魔王「なんか今どっかで我の名を理不尽且つ都合よく使われている気がする」

側近「断定できるレベルで怪しい人物がいますね。というか絶対彼女ですね」

女勇者「初めて会ったとき、あなたに命を救われたね。あの時以来、ずっとあなたは私の憧れだった」

女勇者「僕は、そんな団長に敬意を表して、剣で戦おう。正々堂々」

その辺に落ちていた騎士の剣を拾う


団長「私は手加減しないぞ」チャキ

女勇者「ふふ、ふふふふふ」


心底楽しそうに笑う女勇者

拾ったボロボロの剣といえど勇者だ、踏み込みは深く、正確に致命箇所を狙ってくる


団長「魔王の妃に何の価値がある!君は誇り高い人間だろ」

女勇者「ふふふっ、人間、人間ね。だからこそ価値がある!そしてそれもいずれ消える!」
女勇者「人間という言葉ごと!」

女勇者「ねえ、聞かせてよ!勇者が本気で殺しにかかってくる恐怖を!死んでいたと思った魔王が生きていた絶望を!」

団長「絶望も恐怖もない、私にあるものは、いつだって光のみだ!」


団長の剣が光る


団長「私の魔力を吸い尽くせ!輝きの剣よ!」


ゴオオオォォォォオオオ

「女勇者」

女勇者「あ、魔王」

団長「」ゾワッ


魔王がその場に現れた瞬間、団長の心は言い知れぬ不安に押しつぶされ、光を絶望が包み込んだ


魔王「遅いと思ったが、そいつは生き残っていたのか。てっきりすぐにでも殺していると思ったが」

女勇者「ごめん、ちょっと遊び過ぎちゃった。今終わらせるよ」
女勇者「団長、ごめんね。正々堂々ってのはもう終わりで」


団長「…お前はもう勇者などではない」


女勇者「そうかもね。詠唱省略、さよなら」


その瞬間団長の体は文字通り"弾けとんだ"


団長「…地獄へ…おち…ろ」


女勇者「光を信じたものの最後の言葉がこれか、なんか残念だよ」
女勇者「そっちへ行ったとき、その言葉を道標に進むよ」

女勇者「ねえ魔王、心配してくれたの?」

魔王「一応な」ナデナデ

女勇者「えへへ、嬉しい///」

魔王「しかし、良かったのか?けっこう仲良さそうだったが」

女勇者「んー、命の恩人にして僕の心の師匠かな」

魔王「…」

女勇者「でもあれと話すより魔王との時間のほうが僕にとっては大事だもん」

魔王「そうだな、側近に妃としての振る舞いをお前に教えさせよう。その時間に使うほうが有意義か」

女勇者「ごめん僕用事を思い出した」

魔王「逃がすか」ガシッ

女勇者「いやー、勉強嫌いいいい」

・・・何故自分は生きている

手を確かめる。ある

足も体もきちんと思ったとおりの人間の形だ

私は、生きている

何でもいい、義務を…果たさなければ


団長「王様…報告に…向かい…ます」

今日はここまで
萌えといちゃいちゃが足りない

オマケ

側近「実は魔王とはただのシステムであり今の魔王様も元は雑魚魔物と同等だったんですよ。前魔王のご子息とはいえただのリザードマンです」

女勇者「へー」

側近「前魔王を殺すことによって魔王に相応しい力、相応しい姿、相応しい知恵が得られるのです」

側近「そしてそれは極端なことを言ってしまえば、人間やただの小動物でも魔王になるチャンスがあるということです。魔物以外の前例はありませんがただのスライムがなったことはあります」

女勇者「スライムが魔王を殺せたことのほうが謎だね」

側近「魔王を殺しても魔王となるのを拒むことも出来ます。その場合は魔王が自然に誕生するまで人間界に魔物は長居できません。魔界の瘴気も人間界を侵すことはできなくなります」

女勇者「それが『勇者が魔王を倒して後の平和』っていうことだね」

側近「ええ、そして自然に魔王が誕生するのは何百年、長いと何千年かかるそうです」

側近「人間界に侵略しようとする魔王は稀です。今の魔王様は自然に生まれた魔王から数えて7代目の魔王です」

女勇者「以上、本編には出ないであろう設定でした」


オマケここまで

側近「魔王様、『王たるもの保留はしない』なんてかっこつけてましたが本当は保留したらヤンデレになるかと思ってのことじゃないんですか?」

魔王「そ、そんなわけないだろう。我がヤンデレごとき恐れるとでも思うか!?」

側近「…ホントですか?」

魔王「無論だ」

側近「そうですか。ところで女勇者さんですが、ただいま魔王様の自室を掃除なされているようですよ?」

魔王「何で!?鍵はまだ渡していないはずだぞ!」

側近「『掃除してあげたい』とおっしゃられていたので。鍵渡しました」ニッコリ


魔王「・・・やばい」


側近「どうしました?顔面蒼白ですよ」

魔王「側近、わざとだな?」

側近「なんのことでしょう。お相手ができたのだから卑猥な本は処分するよう助言しましたよ?」

魔王「女勇者違う!王にだって性欲はあるんだああああ!」ダッシュ


自室に向かって走る魔王


側近「…さて、早くご子息ができてほしいものですね」

魔王の自室


女勇者「『美しいラインを見よ!ラミア娘の腰つき100選』、『翼の美しさ、尾羽とお尻のエロさ。ハーピー娘の魅力』………魔王」

魔王「やめろ!そんな憐れな目つきをするな!まだ怒られたほうがマシだった!」

女勇者「さて、これどうしてほしい?」

魔王「…………ステテイイデス」

女勇者「とっておいてほしい?」

魔王「…王たるもの不純はダメだ、お前がいることだしもう必要ない」

女勇者「その言葉が嬉しいからこれの処分はしないでおくよ。ただしこっちの巨乳特集は処分ね」

魔王(あ、やはり気にしていたのか)

フィエリア王国、王城


王様「王国名誉騎士団団長、よくぞ無事に戻ってくれた」

団長「…大きな犠牲を払いました。皆…死に絶えました」

王様「そうだな、後で弔おう。名誉のある戦死として家族に伝える」

王様「しかし、今必要なのは情報だ。団長、何を見た。全て話せ」


団長「…絶望」

王様「…魔王が生きており勇者が寝返った…か。確かに絶望的な状況だ」

団長「しかし王様、どんな絶望の中でも」

王様「光はあると?彼女は歴史上最強の勇者だった。それが魔王と手を組んだ今どういう状況にあるか分からないわけではないであろう」

団長「あります!常に光は我らの元に」

団長「王よ!いつの世も魔王がいれば勇者が現れる。すぐに勇者を、新しい勇者を探すのです」

団長「何が史上最強の勇者だ。それを越える強さを持った勇者が現れないとは限りません!」

王様「良くぞ言った。騎士団長、そなたの言葉はいつも照らしてくれるものとなる」

団長「では…これで私の…義務は…あなたへの恩は返しました」

団長「さよならです」

王様「おい、何をしている!」


団長は剣を大きく振り上げた。逆手に持ち、自分の腹に向けて

しかし剣は腹に突き刺さることはなかった

団長を闇の魔力が包み込み、瞬く間にアンデッド系の魔物へと変貌する


近衛兵「王様を守れ!」


近衛兵達が王と団長であった魔物との合間に入る


王様「…邪悪な魔法によってアンデッド系の魔物へと変化させられたか」

王様「近衛兵たち、手を出さないでくれ。わたしがやる」

今日はここまで
少ない上になんか内容が微妙だ。すまん

近衛兵「危険です王様!」

王様「危険でも構わぬ、ここまで忠義に尽くしてくれたのだ。介錯ぐらいしてやらねばならないだろう」


王様「団長、誇り高き我が忠信、我が友よ。今までご苦労だった」


玉座の手すり部分に隠されていた細い剣を引き抜きながら一気に間合いに入り込む


王様「安らかに眠ってくれ」

団長「ガアアアアッ!」

王様「!?」


ずっと動かなかった団長がいきなり腕を振り上げて殴りかかる

とっさに後ろに飛び退き回避するが、その膂力によって床には穴が開いてしまう


近衛兵「たかがアンデッドがこのような力を持つのか!?」

近衛兵長「王様!やはり我々にも加勢の許可を」

王様「その必要はない」


王様の右腕が光を放つ、魔力の光を


王様「剣士として死なせてやれなかったことを許してくれ。せめて、人として終わりを迎えるがよい。浄化魔法」


生ける屍となった魔物を人へ戻す暖かな魔力が部屋全体を包み込んだ

その後に残ったのは、もはや人の形をしていないバラバラの肉塊のみであった

オマケ

女勇者「団長にかけた魔法は僕オリジナルの魔法なのだ」

女勇者「強い意思によって耐えている間は人の形を保っていられるけど少しでも気を抜いた瞬間アンデッドになる」

女勇者「しかもアンデッドになっている間も人間の意識は保っている。保っているだけで行動は破壊と殺戮一択だけどね」

女勇者「人間の意識を保っているのに行動は魔物、殺したくなんてないのに自分の手で殺してしまう。殺されてしまう。そんな素敵な魔物化の魔法なんだよ」

魔王「…えげつない」

女勇者「そうでもないよ。あの王様ならきっと最期に全てを労って殺してくれるよ。意識まで魔物化したらその労いの言葉を聞けないもの、ほらけっこう人情的な魔物化魔法」

側近「普通人間の王様ってそんなに強いイメージしませんが」

女勇者「あの王様はけっこう勉強が趣味なんだよ。魔法も剣技も全部自分で学びに行ってたとか」


オマケここまで

側近「少し気になったんですけど"勇者"とはどういうシステムなんですか?強ければなれるってわけでもないでしょうし」

女勇者「人間を守る女神っていうのがいてね。その女神様が選んでいるらしいよ」

魔王「こんな性格に難あり…ではなく人間の敵になる者を勇者に選ぶとはずいぶんいい加減な女神様だな」

女勇者「だ、ダメだよ。そんなこと言ったらバチが当たるよ」

魔王「ふ、バチに魔王に恐れると?」

女勇者「女神様の怒りに触れると男は男に襲われ続ける呪いにかかるらしいよ!」

魔王「」

側近「女神様腐女子なんですか」

女勇者「女は男性化して男に襲われ続けるらしいよ」

側近「やはり腐女子じゃないですか」

魔王「もういい、聞きたくない」

フィエリア王国、王城

王様「…"彼"を丁重に弔ってやれ。家族には私が説明する、我が友は忠義の徒にして素晴らしき英雄だったと」

王様「兵長、今すぐ占い師を連れて来てくれ。すぐにだ」

近衛兵長「は、はい!」
―――――
―――

王様「占い師、女神様にお伺いを立ててくれ。真の勇者について」

占い師「はい」

数日後


「…太陽がおっきくってさ、今にも落っこちてきそうだ」

戦士「お前いつも同じこと言っているな」

「初めて言ったよ。いつもより一番おっきくってさ、今にも落っこちてきそうなんだ」
「一週間後にはきっと落ちてくる」

戦士「一週間前も言っていたぜ。ほら、飯食えよ」

「…おっきくておっきくて、今にも落ちてくる。太陽」

戦士「なんでお前はそんなにも変なんだよ。歴代のを見てもお前ほどおかしいのはいないぜ、勇者」

勇者「本当に、僕より前の勇者はまともなのかな…皆、きっと…」

戦士「ないない、お前が特別おかしいんだ」


勇者「…太陽がおっきくってさ、今にも落っこちてきそうだよ。今にも」

今日はここまで
すくねえ…

オマケ

本編で説明しなさそうな設定
魔界

突然魔王によって開かれたゲートにより人間界と繋がった
異次元の平行世界であるとも遠い他の星とも言われている謎の世界
ゲートの開き方と「人間を滅ぼせ」という遺言は伝えられているが何故当時の魔王がそれをしたのかは不明

大陸などの形は人間界と似通っており、場所によっては完璧に同じである
しかし夜見える空には人間界で観測できる星座は一つとしてない

人間界の学者と魔界の学者はそれぞれ別の事実を掴んでおり、両者が歩み寄ればあるいは真実に辿り付けるのかもしれない


"魔界の瘴気"と人間が呼ぶ魔力を含んだ大気に満ちており、人間界の生き物が入り込むと精神を並外れて強く保つことができないかぎり魔物化する
それを耐えられるのが勇者とその仲間に必要とされる能力であり、もしくは女神が与えた恩恵なのだろうか


オマケここまで

女勇者「そっきーん、もう勉強やだー」

側近「妃になりたいなら頑張ってくださいです。それとも魔王様を教えたスパルタウルスさんに習いますか?」
側近「決して逃げ出すことの出来ない異空間で、覚えるまで永遠にちょっと間違っただけで半殺しにされますよ」

女勇者「何それ怖い…魔王ってそんなに苦労してたんだ」

側近「そうでもしなければ前魔王を倒せるまでにはなれないのですよ。死をも越える特訓を限界を越えて続けるのです」

女勇者「まあ僕は魔王を倒すつもりもないし訓練するまでもなく魔王を倒せる強さあるしー」

側近「逃がしません。話はそれましたが妃になるための勉強ですから関係ないですし」

女勇者「いやー、魔王たすけてー」

<魔王たすけてー

魔王「聞こえない聞こえない、我は魔王だ。心を鬼にすることぐらい容易いはずだ」ブツブツ

魔王「というか魔だからそんな感情無いんだ存在しないんだ」ブツブツ

<え、待って待って

魔王「・・・?」

<ちょっと、そんなの聞いてないよ

魔王「…」

<え、そ、そんな格好するの?は、恥ずかしい…


魔王「…!」ガタ


魔王「…何をやっているんだ我は…」

女勇者「頭に本乗っけて両腕と片足上げて…かっこ悪すぎてもはや恥ずかしいよ…」

側近「そのままあらぶる鷹のポーズをしてください」

女勇者「絶対関係ないよねそれ!表情が楽しんでるよ!?」

側近「そんなことありませんバランス感覚を鍛えるのです」ニヤニヤ

女勇者「絶対楽しんでるよー」

<ほらほらきちんとやりきれば魔王様に褒められますよ。きっと頭ナデナデされてキスしてもらえますよ
<やります!魔王からのご褒美ほしい!

魔王「…勝手に人の名前使うな。あいつ後で減給してやろうか」

魔王「…暇だ、とても暇だ」

メイド「暇なら掃除でもしますか?」

魔王「仕事サボって王になすり付けようとすんな」

女勇者「ようやく終わった!まおーう、頑張ったから褒めてー」


女勇者「…あれ、いない?」

メイド長「人間界の魔物の領地にした場所の視察に行きましたよ」

女勇者「」

女勇者「…側近、絶対ご褒美貰えるって言ってたよね?100%」

側近「あ、私これから有給使って午後半休するんで」

女勇者「逃がすか!究極爆破まh」

側近「待って待って私死んじゃう!」

女勇者「生き返らせてあげるから一度死ね!」

側近「命をもっと重く考えてください!」

側近「…あの、そろそろ三途の川も見飽きたんですけど」

女勇者「うん、じゃあもういいかな。どうだった?新たな世界を垣間見た気分は」

側近「三途の川の向こうの花畑ってこの世には無い花で満たされているんですね。初めて知りました」

女勇者「あはは、有意義な旅行だったんね」

側近「女勇者さんの鬼畜」

女勇者「魔王に言わないでね?」

側近(既に察しているから逃げたんじゃ…)

人間界、某所

魔王「さてはて、今頃仲良くなっているといいが…仲良く殺しあうぐらいにはなっていると希望を持っておこう」

魔王「…希望、なのか?希望と呼んでいいのか?それ」

魔王「…ま、いいか」


魔王「そろそろ戻らなくてはな。生き抜きも長すぎてはいけないだろう」

魔王「た…ただいま」

女勇者「魔王ー!側近に虐められた!」ギュー

側近「言ったもん勝ちですか!私が虐められていたと言っても過言ではありませんよ魔王様!」

魔王「女勇者、側近も我の大切な部下だ。あまりやりすぎるな」

女勇者「はーい」

側近「最初から魔王様がそう言ってくだされば…」

魔王「…それは、すまんかった」

女勇者「ねえねえ、僕は?」

魔王「うん、お前は大切な妃だよ」

女勇者「嬉しい///」

側近(今のって少しでも選択肢間違えたらアウトなやつですよね。さすが魔王様)

勇者「戦士」

戦士「何だ?」

勇者「戦士の血が飲んでみたい」

戦士「ぶっ!…何がどうしてそうなった」

勇者「前会った魔物が戦士の血は美味しそうだって言ってたから」

戦士「それは魔物だけだからな、人間は共食いする生き物じゃない」

勇者「やってみないことには分からない、噛ませて」

戦士「飲めるレベルの血を出すまで噛むつもりか!?」

土日いっぱいかけると思ってたけど誘惑が多くて全然書けなかったや
これからも土日は全然書けないと思うが平日は頑張るのでゆるしてくりゃれ

てなわけで続きを書くのだ

勇者「…全然出ない」

戦士「…諦めてくれてよかった、ああ痛てえ」

まさかマジで力いっぱい噛まれるとは…こいつがそんなに顎の力強くなくてよかった


勇者「どっからなら血ぃ飲みやすいの?」

戦士「…そんなに飲みたいか」

勇者「うん」

戦士「…」

まあこれ以上噛まれるのも嫌だし切り傷程度なら薬草で治せるからいいか
そう思い、指に剣先で小さな傷をつける


戦士「ほら」

勇者「わぁい」パク

勇者「~♪」ジュプ…ジュル…ンプ

戦士「…」

何故俺はショタっ子にこんなにも美味しそうに指を咥えられ噛まれしゃぶられているんだろう

戦士(…といっても見捨てられるわけないんだよなあ)


勇者「…不味い」

戦士「だろうな、何故最後の最後まで美味しそうにしてた」

勇者「…いつか美味しい血が出るかと思った」

戦士「出るわけあるか!」


…出血多量か。ちょっと痺れてきた

じいや「心配じゃ。王様、本当にあの人選でよいと思いますか?」

王様「女神様の託宣だ。問題無いだろう」

じいや「そうではなくですな…」

王様「戦士のことか?そっちは勇者以上に問題無い」

王様「"孤児院の悲劇"程度の狂気に飲まれる男ではない、あの男なら守ってくれるだろう。あの子も、自分自身も」

魔界・星空の丘


女勇者「うわあ、綺麗」

魔王「ここは不思議な磁場と魔力が混ざり合っている関係で視界情報が歪んでいる」
魔王「だからこれらは全て現実であり幻覚だ」


そう説明する魔王に流星がぶつかったように見えた

ここは常に星が降り注ぐ小高い丘、流星群が夜となく昼となく舞い、そして散る
その美しさは魔界でも指折りのスポットだ
※他のカップル(もちろん魔物)は魔王が睨んだので残らず逃げました


女勇者「こんなところに魔王と二人でいられるなんて幸せだなあ」

魔王「その幸せは人間全てを滅ぼす価値があるものか?」

女勇者「比べる意味もないね。今はただこの美しい星の世界を魔王と堪能したい」

人間界

勇者「夜の空は嫌い」

戦士「何でだ?星が輝いていて綺麗じゃないか。こんな星空の海、そうそう見られないぜ」

勇者「深く深く、落ちていってしまいそうなんだ。見ていると、吸い込まれそうだ」

戦士「…またか」

勇者「暗い暗い、暗澹たる夜空、ボクを食べようと誘っている…迫ってくる。太陽は食べられちゃったのかな」

戦士「明日になればまた顔を出す。変な心配すんな」



勇者「君も、虚空の夜空を眺めているのかな」

女勇者「もちろん」



魔王「ん?どうした?」

女勇者「何でもないよ」

魔王「もう少しいるか?」

女勇者「そうだね、もう少しだけ」

人間界:魔王城

女勇者「ただいまー」

魔王「今戻ったぞ」

側近「魔王様、お帰りなさい」

魔王「異変はあるか?」

側近「いえ、何も」

女勇者「ならこっちから動こう!」

魔王「といってもつまらないぞ、簡単に制圧できてしまう」

女勇者「いや、もうじき楽しくなってくるよ。楽しめるさ」

今日はここまで

早朝です

テントの外から人の気配が沢山します。初めて見る人です

テントの外に出たボクを見て何かを言っています


何を言っているかは分かりませんが、きっと敵でしょう。敵なんでしょう


勇者「朝は気持ちいいな」

山賊A「いい身なりしてんじゃないか。王国の服、けっこう金目のものもっていそうだ」

山賊B「さあ荷物も服も全部置いていってもらおうか。そうしたら命だけは助けてやるよ。裸でな」

山賊C「いや見ろよ可愛い顔してんじゃねえか。いっそのこと食っちまおうか」

山賊A「どっちにしろ、抵抗するなと言うことだぜ。ぼっちゃんよお」

勇者「…朝は気持ちいいな」

山賊A「あ?」


山賊の一人目が倒れる。次いで噴出す暖かい血


勇者「」スゥ


勇者は息を吸う、そして鳥たちが一斉にその場から逃げ出す前に全てが片付いた
何十人もの山賊はいまやただの肉塊の山に

戦士と似たような形の生き物を動かなくさせるのは簡単です。呼吸を整えて剣を振ればそれだけです

でももしかしたら動かないふりをしているだけかもしれません

念のため武器を持っている危ない腕を全て切り離しておきましょう


それでも蹴ってくるかもしれません、追いかけてくるかもしれません。脚も取っておきます


噛み付いてくるかもしれません。頭も取り去ります


細胞から再生するかもしれません。潰します。潰します。潰します


戦士「勇者!」

勇者「………あ、戦士だ」

一足、いや全然間に合わなかった

全て、起こってしまった
…バカなやつらだ。せっかく鉢合わせしない様に遠回りして来たってのに


戦士「…もういい、充分だ」

勇者「戦士が言うなら大丈夫だね。これは、魔物?」

戦士「…………そうだ」

勇者「でも、供養したい。このままなんてかわいそうだよ…」


勇者は本当に泣きそうな顔で言った。自分で殺しておきながら。自分が襲われておきながら


そして再び切って潰してを続ける勇者
ばらばらにしたほうが大地の栄養になり易いと勇者は言った


この子供に悪意は無い、なればこそ悪意の無い邪悪が一番恐ろしいと王様は俺に話した

―――――
―――

戦士「孤児院の問題児。ですか?」

王様「…皮肉なものじゃ。あの子がまさか勇者とは、しかし女神様の託宣じゃ」

戦士「彼は、その子は何をしたのですか?」

王様「…何もしていない。誰にも危害を加えたことは決してない。しかし…あの子は回りに悪影響を及ぼす」
王様「あの子と仲の良くなった子は全て狂気を抱き、やがて殺人鬼となってしまったのだ。一つの例外も無く」

戦士「…それがその子のせいだという証拠はあるのですか?」

王様「無い。無いのが問題じゃ。皆、理由も無きままに笑いながら、もしくは泣きながら人を殺すようになる」

戦士「…俺は、俺は決してそうなりませんよ。絶対に」

王様「もちろんじゃ。そのためにそなたをわし自ら選び出したのだからの」


王様「しかし、覚えておいてくれ。勇者の内の悪意無き邪悪を、自覚なき狂気を」


戦士「…護ってみせます」

今日はここまで
勇者方面のエピソードだけで終えてしまった…

もしかしたら明日の朝も書くかも。起きられて時間あったら

兵長「王様!ご報告申し上げます」

王様「どうした?」

兵長「魔物の群れ、いえ軍勢が攻めてきました」

王様「来てしまったか…この時のために用意はしておいた。全員に伝達、全力で相手してやれ」

兵長「この命に代えても王城は死守して見せます」

王様「いや、いい。むしろ通せ、彼女だけはここに導け」

勇者「…」

戦士「勇者?」


勇者がいきなり立ち止まった。いつものようにどこを見ているか曖昧な目つきではなくどこかを睨んでいるように


勇者「戦士…国に戻ろう」

戦士「え?」

勇者「いいから、早く戻ろう」

戦士「どうした?」

今日書く気力が全然沸いてこない
すまん。明日書く

魔王「悲鳴の音響、死の香り、破壊、殺戮。今宵滾るは本能と快楽、迸るは血と咆哮」

女勇者「行こうか皆。一斉開戦だよ」


ドラゴンが咆哮をあげ、王城から鐘が鳴る。今回は一方的な殺戮では終わらなさそうだ


魔王「人も気づいているな」

女勇者「もちろんだよ、王城から常に見張りが目を光らせているからとっくに気づいていただろうね」

魔物たちが家々を破壊し、人を引きずり出し、弄び、千切り、食らう


「魔王が死んで平和になった」と信じていた人間達は今どのような心境なのだろう
ただただ上がる悲鳴からは詳しく感じ取れることは出来ない

出来れば捕まえて一人一人聞き出したい


絶望してくれていたら嬉しいな

大爆発
大気中の魔力が凝縮しいっきに放散された暴虐の炎が生き残った命と建物とを飲み込んでいく

崩れる瓦礫が吹き飛び、その向こう側から巨大な火の玉がいくつも重なり飛んでくる


女勇者(超級火炎球呪文、しかもあの大きさ。いるね)


現れたのは同じ服装に同じ装備の人間たちが十数名
決して多い数ではない、しかし


女勇者「フィエリア聖導師団。実在したんだ」


伝説と謳われた狂気の少数精鋭
噂では産まれてすぐ、魔力を高める道具を体に埋め込まれ過酷過ぎる訓練を強いられ続けていたとか


女勇者「しかし魔法だけがとりえの連中だね」

聖導師団が声も無く杖を振り上げ、詠唱省略の究極魔法を放つ


魔王「超越究極級の爆破呪文、町ごと我らを消し炭にする気か」

女勇者「王様としてどう思う?魔王は」

魔王「民を巻き込むなど王としては失格だ。しかし兵を犠牲にしてでも何よりも厄介な敵を排除するのは戦の将としては良い手と言えよう」

女勇者「ま、僕たちを排除するには足りないけどね」


ゴーレムの一団が息を吸う
聖導師団の放った魔法が全て吸い込まれた


魔王「魔物だって進化する。人間が使う魔力ごときでは追いつけぬよ」


聖導師団に動揺が走る。しかしすかさず次の魔法を放つ

無論、それは全て無駄に終わった

女勇者「魔王、じゃあここは任せたよ」

魔王「ん?どこへ行く。あまり離れては…」

女勇者「あはは、心配してくれるの?嬉しいけど今はごめんね」


女勇者「しなきゃいけないことがあるからさ」


ニヤリと口角をあげて邪悪な笑みを浮かべる女勇者
その笑みからは「邪魔するな」とすら読み取れる


女勇者「そういうわけで、また後でね」

魔王「ふう、つまらないほうを任せてくれるな」
魔王「まあいい、せっかく我が出向いたんだ。聖導師団ども、魔法吸収無しで闘いをしようか」

魔王「一方的にはしないよう気をつけてやる」

聖導師団長「待て、ここは一歩もとおs」

女勇者「邪魔」

聖導師団『っ!』


聖導師団が揃えて究極流星団招来呪文を放つ

遠空が満天の星空と変わり、次いで豪雨のように隕石が降り注ぐ


女勇者「」ス

女勇者「特技"魔法誘導"」


女勇者に当たる軌道の隕石は全て逸れ、どこかへと飛んでいった
聖導師団へ当てなかったのは特に理由など無い。邪魔だからただ逸らしただけなのだ

ゴーレム軍団は吸い込み、魔王はあえて全てを食らった

魔王「どれ、子供時代を思い出して、前線に一人で立ってみようか」


魔物たちはその言葉を聞いて別々の方向へと散っていく

しかし聖導師団は目標を魔王から逸らす事は出来なかった

「魔王」という名だから、ではない。その魔物の王が発する気配、邪悪で凶悪で強大な力


彼らは強者であるが故に、魔法に焚けたものであるが故に解る
更なる強者の力を

ここでなんとしても倒さなければいけないという本能にも似た決意を呼び起こす存在


それは女勇者からもした。だが彼らは魔王を標的に絞った

魔王さえ倒せば女勇者は洗脳から解けるかもしれないと、一縷の望みをもって


魔王「まずは定番といこうか」

魔王「これは超究極級ではない、初級火炎呪文だ」

ゴォオオオオオオ


太陽が落ちてきた。もしくは地獄の業火が召喚されたのか

それは、全ての希望を焼き尽くす炎

魔王「何を怖気づいている?我と戦うんだ、これほどの覚悟はしておいてもらわねば」

魔王(種明かしをすれば初級とはいえ自分の魔力と大気中の魔力濃度を調整しただけだがな)


魔王「さあ、燃え盛る炎の中へ!」


業火が降り注ぐ

聖導師団「ぎぐあぁぁぁあああ」

魔王「どうした」

魔王「どうした?地獄の業火はこれほどぬるくはないぞ!」


断絶的に悲鳴が吹きすさぶ中、魔王の顔が少し陰る


「魔法消去」

悲鳴と業火が消える。魔王の魔法、並みの魔力では打ち消せるわけがない

煙の中にあったものに死体はない。たった一人が生き残っていた


魔王「ほう」ニヤリ

魔王「仲間の命を魔力に変換したか!魔物ですら禁呪とする邪悪な術に手を出したか」


魔王「これは楽しい闘いになりそうだな」

聖導師団長「ぬかせ。仲間の命は必ず無駄にはしない!」

女勇者「いやあ良い悲鳴だなあ」


魔王がなにかしている間に王城目指して歩く女勇者


女勇者「悲鳴と血の雨を見ながら歩くのは傘に当たる雨粒の音を聞くような心地良さがあるな、安らぐー」

女勇者「でもそろそろ減ってきたし人も全滅しかけてきたのかな。終戦ももうすぐかあ」


王城の入り口へ辿り着く


女勇者「あれ?兵もいないし閉ざされていない。歓迎パーティでも開いて待ってくれているのかなー♪」


ルンルン気分で女勇者は門をくぐる


女勇者「今会いに行きます…ふふっ」

今日はここまで
魔王と女勇者どっちから書こうか思案

女勇者が魔王を裏切って血みどろ展開とかじゃなく
イチャイチャしててくれればなんでもいいです

>>139
流石にその二人の仲は血みどろにはならないから大丈夫
そういう展開は好きではないので

女勇者「懐かしいなあこの城」


自分が育った王城を眺めてまわる。戦場の音がいまだ聞こえる中ここだけは別世界のようだ


女勇者「でも過去にお別れしなくちゃね」


どこから崩そうか、それとも一気に燃やしてしまおうか爆破しようかウキウキ気分で考える


「…女勇者よ」

女勇者「あ、王様!」


そこは王城の広間、王が悲しげな顔をして佇んでいた


王「何故、何故人間を裏切った」

搾り出すように、吐き捨てるように問いかける王


女勇者「理由?理由ねぇ…うーん、特に無いんだよね」

王「そんなわけが!そんなわけがないだろ!」
王「何も理由が無く殺戮をしているというのか!」

女勇者「うん」


何のためらいも無く、何の邪気も無い満面の笑みを浮かべて肯定する女勇者

王「私をも…裏切るというのか。娘よ」


その言葉を聞いて女勇者ははっとする仕草をした
そして柔らかく微笑み、ウンウンと頷く


女勇者「…確かにあなたは僕の、いえ私の大切な育ての親です」

女勇者「両親も無く捨てられていた私を救い、ここまで育ててくれた。私にとっては本当の親のような存在です」

女勇者「実子である王子と同じくらいの愛情を注いでくれた。私の一番幸せな思い出です」


女勇者「王様、いえお父様。愛しておりました」

王様「…」


王様は懐疑的な視線をなおも女勇者へ向ける。更正したなどとは微塵も思ってない、そういう表情だ


女勇者「だからかな、この国を最初に落とそうと思ったのは」

女勇者「私は、僕はきっと、あなたを殺すことで過去へ決別をつけたいんだと思う」

女勇者「考えればあったね。理由」

女勇者「さて、王様?墓は古墳が好み?ピラミッドでも立てる?それとも質素に逆十時ですます?」


王様「…ふぅ」

王様「女勇者よ、我は最低な王だ」

女勇者「うん?」

王様「既にこの国を捨てる覚悟はできている」

王様「一部の国民を受け入れてくれる国を見つけ、生き残るべき人を選び送った」

王様「それを気取られないように一部の国民には何も話さず"囮"にした」

女勇者「わお」

王様「私は王としては失格なのだ。しかし、しかしせめて…父として」

王様「そなたの父として最後の努めは全うしたい!」


女勇者「え、え!?」


大広間の壁の垂れ幕が破れ、その奥から砲身が見える

壁に、天井に、テーブルに床にありとあらゆるところから砲身をもった機械が顔を出した


女勇者「魔力機動高圧縮エネルギー砲!?」


遠い異国の国で見たことがある。機械という不思議な仕掛けと魔法を組み合わせた魔動機械
その中でも特に強力な兵器、物理的防御を全て溶かすほどのエネルギーと魔法防御さえ簡単に破る圧縮された魔力の塊を断続的に発射するもの

そんなのが、何百台も


王様「我が愛娘よ。そなたを正しい道に導くことができなかったせめてものお詫びじゃ」

王様「地獄まで付き添おう」


王様はこの大広間を丸ごと地獄への門と化するつもりなのだ

今日は一旦中断
もしかしたら今日中に復活するかもしれないけどとりあえず明日

魔王「仲間まで犠牲にしてたった一人で魔の王に挑む。まさに英雄に値する男だ、こちらも真摯に応えねばなるまい」

魔王「さあ始めよう、血沸き肉踊るとはいかんが最高の一時となろう。英雄よ」

聖導師団長「英雄にはまだ早い。貴様を倒してようやくスタート地点だ」

魔王「ならば全力でかかってこい!我の命の最奥に刃を突き立たせて見せよ!そのためには"決死"ですらまだぬるいぞ!」


魔王「超絶級斬撃魔法グランディリアエスピリアール!」


魔王の手の先から巨大なエネルギーの刃が伸びる


聖導師団長「…」


聖導師団長は避けようともしなかった

聖導師団長「魔法封印」

魔王「なっ!?」


魔王の魔法が収縮、やがて消える


魔王「…初級火炎魔法…は、ははは。我が、我が魔法を封じられるだと?わはははは」


いつぶりだろうか、魔王が魔封じを食らうなど

魔王の巨大な魔力を全て封じる。仲間の命を変換して得た魔力とはいえそこまでの魔力を持つか
一人ひとりの魔力もかなり大きいものだったに違いない、相手が魔王でなければ魔法だけで勝負は決まっていた


聖導師団長「魔王、滅べ。究極雷撃魔法」

魔王「ふ、はははは…最高だよ、まったく」

天罰とすら言える神の雷が魔王へと降り注ぐ


魔王「貴様は今魔王をも超える魔力を手に我に立ち向かった」

魔王「その力、ただの人の身でそこまで辿り着いたことに賞讃と敬意を表そう」


ドガァァアアン


魔王「ぐ…ぅ」フシュルルゥ


避けようともせず雷に当たる魔王
ここでやらねばとばかりに畳み掛ける聖導師団長


聖導師団長「究極火炎魔法!究極爆破魔法!」

聖導師団長「超越級、超・破壊魔法」

魔王「魔法で遊べるのはここまでだ」パシュッ


尻尾が宙を切って聖導師団長の魔法を全てかき消してしまう


魔王「人間でこの姿を見たのは女勇者ぐらいなものだ。変に嫉妬してしまうかもな」


人の格好は消え去り、その幻の皮の下に見えたのは爬虫類の鱗
巨大な鉤爪の手足に太く長いうねる尻尾
目の多く通常より遥かに大きく避けた口、見るものをぞっとさせる異形の姿

それが魔王の真の姿だ


魔王「まあ、誇りに思うが良い。勇者と同じ位に上り詰めるまであと少しだ」


口を大きく開けて笑う異形の魔物


聖導師団長「…それは光栄だな。そのまま追い越してしまおうか。魔法強化、魔法強化、魔法強化」

聖導師団長「無限弾光閃光永久掃射呪文。全てを滅せよ。降り注げ!」

おつやで
変身後の魔王の外見としてはDQの竜王みたいなの想像すればいいかね

>>158
どっちかっつーとデルトラクエストのブラール
http://i.imgur.com/qo3eREw.jpg
こいつの頭に目を大量につけて羽でもつけた感じ。顔はもう少しワニっぽく

魔王の種族はドラゴンっていうよりリザードマンに近い

魔王が足を動かす


魔王「言っただろう?魔法で遊べるのはここまでだ」


全てを破壊する光魔法の豪雨が降り注ぐ中心地へ魔王は跳んだ
その間に降り注いだものを全て避けながら


両の腕の鉤詰めが宙を裂き、尻尾がうねる

そして魔法は全て消え去った


聖導師団長「非物質破壊効果!?」

魔王「正確には破壊ではない、消失だ。さあ、ここからは肉弾戦の時間だ」
魔王「存分に、楽しもうか」

聖導師団長が放った魔法は簡単に打ち消せるものじゃない
それも重ね掛けで魔法強化したのだ。いくら非物質を消失させる効果があるとはいえ何故こうも簡単に打ち消せたのか

答えは簡単だ、『魔王だから』それだけの答えなのだ


聖導師団長「楽しむ、だと…貴様にとっては!この殺し合いですら遊びだと言うのか!手を抜いていると!」

魔王「一生は短い、人間より長く生きる魔物ですらそう思う。だからこそ楽しむのだよ、しかし遊びでも全力でやらねば楽しめぬ
例え一瞬で終わろうと、我は全力で殺しにかかろう」


それを話す間にも聖導師団長の攻撃はマシンガンのように飛んでくる。しかし全て魔王には届かない
全て消される

魔王が真の姿を現した瞬間、彼の勝利できる可能性はもはや微塵も残っていなかった
だが彼は負けるとは思っていない

意地では無い

フィエリア聖導師団
彼らは生まれてすぐ戸籍を消され、暗闇の中で永遠に訓練され続けていた
勝つためのあらゆる手を叩き込まれ、負ける要素を徹底的に廃された

彼らに"負け"などという言葉は存在しない。どんな状況だろうと勝機を探ることだけを体中に叩き込まれていた



この絶望的な戦いの中ですら、勝機を手繰る

どんな状況でも考えをやめない、止めない、絶対に揺るぎない勝利のために


魔王「ォ゙ォ゙オ゙ォ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙!!」


ゴガガガガガガ

聖導師団長「っー!」


魔王が咆哮をあげる
辛うじて生き残っていた周りの建物が崩壊し、聖導師団長の鼓膜が破れた。魔法ではない、単純な空気の振動のみで、だ

一瞬心臓の鼓動が止まったがすぐに聖導師団長は気を取り戻す

魔王が飛びかかってくるのが見える

その凶悪な鉤爪が宙を裂き、大地が割れ巨大な峡谷となる

避けられたのは奇跡か、神の慈悲か


聖導師団長「アクセル!」

それは攻撃魔法ではない、補助魔法でもない


-アクセル-

それは思考を加速させる魔法
早く動けるわけではない、周りが遅く見えるわけではない

ただただ早く多く考えられる。それだけだ

一瞬でもいい、少しでも多く聖導師団長は多くを考えた

自分の全ての知識を総動員して、かじった程度の知識でもいい。勝利へ、勝利へ!


それは簡単に出来ることではない
魔王の猛攻を避けながら考える。遅く見えるわけではない、一分の一の速さで、深く考えを巡らせながら目の前に見えるものを見極めて避ける

早い思考と普通の動きをする体、そのズレはとても大きい

聖導師団長「エンチャント-効果付与-物理破壊」
聖導師団長「エンチャント-効果付与-範囲拡大」


聖堂師団長が手を振ると瓦礫が破壊される、魔王が始めて危険を察知して「避ける」ことをした


いける、もっと、もっと強い魔法を、効果のある術を


魔王「そうだ!我の心の臓まで抉りに来い!人間に限界などはまだまだ見えぬはずだ!
戦いの中で進化するんだ、そうしてこそ魔王を殺せる!」

聖導師団長「まぉぉおお!」


聖導師団長の両の腕にエネルギーが集中する。魔法を越えた高次元の力、聖なる破魔の力


魔王「無駄だ!」


鉤爪が聖導師団長の両腕ごとエネルギーを破壊する


聖導師団長は遙かなる思考の果てに伝説上の力に手をかけた
そしてそれでも尚高みに手を伸ばす、手が無くなろうとかまわない

まだ魔王に届く気がしない、魔王を倒せる次元へ手を伸ばそうと喘ぐ


聖導師団長「…み、つ…けた!」

その一帯の空気の流れが変わった

自我を持ったかのように蠢き、全てが魔王に向けて攻撃を始めた


魔王「こ…これはっぁ!」


それは誰もが夢見、誰もが手がかりすら掴めなかった術

大気中に満ちる魔翌力全てをそのまま操り魔法に変える術

自分の魔翌力も使わず、何の道具・媒体も使わず


無制限に、無尽蔵に、代価も無くラグすらなく思ったまま魔翌力をそのまま使える



聖導師団長「覚悟しろ、魔王」


そのどれもが、魔王の非物質消失効果をもつ体でも打ち消せない濃い魔翌力でもって
如何なる歴史でも類を見ないほど強力な攻撃魔法を無限に形成した

今日はここまで。次は明後日
まさにドラゴンっていうかっこよさより魔王としてはもっと怪物的なデザインの方が好き
ドラクエの魔王ならオルゴデミーラが見た目的にも魔王としての活動的にも好き(オネエ形態はどうでもいいです)

まさか一番sagaが必要な場面で間違ってsageを入れてしまうとはなあ…

聖導師団長「覚悟しろ、魔王!」


最強ランクと言っても良い魔法がほぼ無数に魔王に襲い掛かる


魔王「これは…いける…か?」

聖導師団長「無理だな、諦めて滅びろ!」


神域級火炎魔法が魔王の鱗を焼き尽くす
斬撃が何千もの致命的な傷を魔王に与える
雷撃が、氷が、浄化の光が、ありとあらゆる魔法が魔王を殺しにかかった


魔王「お、おぉぉぉオオオオオオオオ!!」


そして、魔王の体だったものがボロボロと崩れ落ちる

勇者「戦士!早く」

戦士「おい、何なんだよ」


勇者に手を引かれて走る戦士

勇者がこんなにも一点を見つめてまともな表情をするなんて初めてだ


勇者「早くして。早くしないと…太陽が食べられちゃう」

戦士「は?」


前言撤回、全然まともじゃなかった

戦士「…何だよ…あれ」


遥か前方、フィエリア王国の方角から黒い靄、いや

"闇"だ

闇が立ち上り、空を食らいながら広がり続ける


勇者「…人間じゃダメだ…僕がやらなきゃ」

戦士「勇者!?」

フィエリア王国


聖導師団長「な、何なんだ…」

魔王「ふはははは。久々の体だ」


魔王の体は影、いや闇そのものだった

どこまでも暗く、体と大気との境目すら曖昧な体からは常に"闇"が放出され続けている


魔王「この"姿"は自分で意識的にスイッチすることはできないのだよ」

魔王「"魔王"の"名"に受け継がれるこれは一定の攻撃を受けることで発動する世界を破壊する最後の手段」


魔王「世界を終わらせる破壊因子、崩壊の闇だ」


唖然と膝を折った聖導師団長の真上で太陽が完全に食われた

魔王「どうした?一般人に過ぎない貴様がもう少しで"勇者"の足元に達せるまできたんだ
    今までしてきたその努力をもう少ししてみるがいい」

聖導師団長「…」


聖導師団長は呆然としたわけではない。今尚頭を回転させていた

しかしその先に見えたものは魔王を妥当できる方法ではない、遥か昔の御伽噺

人間、竜、エルフ、様々な種族が共存していた神話のような古代文明

その文明が存在した証拠はある

しかし何故歴史ではなく「御伽噺」なのか

それは唯一残された当時の文献、歴史を描いた本の最後の一文


「太陽を食らう怪物至り、神は死に、全てが終わり行く」


その嘘臭い文章が最後だ。文明の名残はもうどこにも無い

うさんくさい、ありえない、馬鹿馬鹿しい


そう言って歴史学者たちが否定した。ただ一種、勇者、それと旅した者たちが肯定した歴史

聖導師団長は今真実を悟った

その怪物、今目の前にいる存在

闇に生まれ、闇を受け継ぎ、闇を生み出し、闇で覆いつくす、邪悪なる存在

かつて文明を滅ぼした、そして今永い刻を超え再び世界を食らおうとする悪魔


聖導師団長「…化け物…怪物…邪神!お前はっ、いったい何なんだ!」


魔王「魔王、だよ」

聖導師団長「邪神…め…」

魔王「魔王だと言っているだろう」


聖導師団長が恐怖への防衛本能のみで発動した神域級攻撃・防御魔法は全て発動しかけた瞬間に闇に飲まれ消えてゆく


魔王「邪神など買いかぶりすぎだ。我など人間の女の子に負けるか弱い存在だよ」

聖導師団長「あああああああ!!!」


聖導師団長の両手足が闇に捕らわれた


魔王「そういえば我が貴様をこう長々と生かしておいたか。本当のところを言っていたかな?」


その声はもはや闇全体から聞こえる

魔王「至極単純でありふれた理由だ。"魔王"の名に受け継がれし特性」

魔王「強い者を食らえばそれだけ強くなれる」


魔王「ハハハ、よくぞその強さまで辿り着いた!"勇者"クラスまで熟成させた強さの人間だ、どれだけ高みへゆけるだろう」

魔王「何故尚も強くなろうとするか?それが魔王の本能なのだ」


上機嫌に一人話を続ける魔王


魔王「女勇者を食らうことはできないからな。代わりを作ることができて嬉しいぞ。
あいつに比べれば全然だがそれでも他の人間に比べれば上物も上物だ!」

魔王「さあ、あいつの真似でもして一つ」


魔王「どうだ?魔王を妥当しようとして逆に魔王の力を更に高める結果になった感想は?
貴様の努力はむしろ人間を追い込む結果になっただけだ。絶望したか?」


魔王「ハハハハハ!」

魔王「さて、時間をかけただけはあったな」

回復魔法を自身にかける。外殻が再生成され、元の魔王の姿に戻る


魔王「少しハイになりすぎたな。らしくない」


魔王「…ん」



魔王「…いるな」


自らを脅かす可能性のある存在、はっきりと感じ取っていた

未熟ながらも恐ろしい"勇者"の感覚

フィエリア王国王城


王様「私は王としては失格なのだ。しかし、しかしせめて…父として」

王様「そなたの父として最後の努めは全うしたい!」

女勇者「魔力機動高圧縮エネルギー砲!?」


王様「我が愛娘よ。そなたを正しい道に導くことができなかったせめてものお詫びじゃ」

王様「地獄まで付き添おう」


遠い異国の魔法と科学を掛け合わせた兵器、それがすべて起動する

女勇者を殺すべく、人類の敵を破壊するべく


女勇者「…地獄、どんなところなのかな。ねえ、お父様」

女勇者「…地獄、どんなところなのかな。ねえ、お父様」

王様「どんなところだろうとこの父がついている。案ずるな」


部屋が超濃縮魔動光子力レーザーに満たされる

普通の生物どころがどんな魔物、化け物、神域級の怪物だろうと絶命てしまう空間へと変貌した


王様「うがあ…ぁっ…ぁぁぁあああ」


全身が外から中から焼ける痛みに気が狂いそうになる
しかしその身を焦がす痛みも苦しみも全て娘を正しく育てることができなかった自分への罰だと受け止める

これで罪を清算できるとは思っていない、しかしせめて娘を浄化できるのなら

娘を…殺せる…のなら

王様「な…ぁ…」

自分がドロドロに解けていく気絶するほどの痛みと苦しみの中見た光景

女勇者に触れる寸前でレーザーが全て異空間に飲まれるようにねじれて消える


そのなかで女勇者は残念そうな顔をして佇んでいた


女勇者「ねえ王様、どんな気持t―


そこで王様の生涯は閉じた。何も出来なかった。そう心に傷をつけたまま

女勇者「…勝手に死なないでよ、もう」

女勇者「あなたをこの手で殺すことで私の過去を清算できると思ったのに」

女勇者「まあいいか。僕は僕だ」


女勇者「…もう細胞の一片も残っていないし再生魔法も使えないよね。あーあ」


女勇者「まおー…早く帰ろ」


城から出て一目振り替えり
跡形もなく砂塵にした

女勇者「うふふ…いーいこと考えちゃったあ。七転び八起きだものね」

女勇者「…さて、あっちはどうするかなあ…まだ会わせるわけには…」
―――――
―――

魔王合流

女勇者「まおー!」ダダダッ

魔王「おお、女勇者」

女勇者「まおー…」ギュゥ


魔王に飛び掛り、飛びつき抱きつき顔をうずめる


魔王「いきなりどうした?何か、嫌なことでもあったか?」

女勇者「魔王っ魔王」クンクン

魔王「ああ、そっちか…」

女勇者「魔王大好きー、この爬虫類特有の生臭さと雄臭さが入り混じった感じがたまらないよ///」ハァハァ、クンカクンカ

魔王「心にグサリと来ること言うのやめてくれないか?今すぐ体洗いたくなってくる」

女勇者「じゃあ先帰ってシャワーでも浴びていたら?僕はちょっとすることがあるからさ」

魔王「そうか…?まあいいが」

女勇者「じゃあまた後でね」チュ


魔王はワープ魔法で帰っていった


女勇者「さて」

女勇者「やっぱり炎はきれいだよね」


フィエリア王国全体を高温の炎が包み込む

これで隠れていた者は全て死に絶えるだろうな、地下にいたとしても高熱で蒸し焼きになるだろう


女勇者「ふふ、隠れて難を逃れたと思ったら死ぬ。きっとじわじわと焼かれて」
女勇者「熱いだろうなー、苦しいだろうなー、絶望するかなー」

女勇者「あちちち、喉渇いた」

女勇者「かーえろ」

国から少し離れたところで、二人の少年少女がすれ違った

すれ違う際に目は合わせず、互いに先を見つめたまま

背を向けて一瞬足を止め


勇者「真っ赤だね、何もかも、君すらも」

女勇者「そういう君は真っ白だね、真っ白で、真っ黒だ」



背を向けたまま腰の剣に手を添え…

互いに疑問の余地も無く相手を"勇者"と理解する
まるで最初からわかっていたように、そしてそれはそのとおりだったのだろう

失った自分の半身を見つけたような、そんな感覚すらあった


勇者「君は、強いの?」

女勇者「君と比べると、どうだろうね」


腰の剣を抜きながら振り返る

カキン!と強い金属音がして互いの剣を弾いた

女勇者「どうする?ここで決着でもつける?」

勇者「…よく、わからない」

勇者「けど」


勇者「手を抜くつもりは、無い」

女勇者「いいよ、全力でやろうか」


二人とも手を抜いたいたわけではない。全力で殺そうとしているわけでもない

それはまるでスポーツ。本気で切りかかる刃をはじき、避ける
端から一般人が見れば高度な斬り合い、ギリギリの殺し合いに見えるだろう

しかし実際はルールを決めた全力の遊びにしか過ぎない

女勇者が何よりも優先するものは魔王に他ならない

しかし女勇者の心は何よりも安らいでいる。ずっと失っていた半身に出会えたような、安心感
ずっと求めていた最大最高の好敵手と剣を交えている高揚感

そしてそれは勇者もあった
戦士の前では決して見せることの無い、戦闘への興奮と狂気を湛えた笑み


勇者「一つ、聞ききたいことがある」カキン

女勇者「何かな?」キン


勇者「君は何で"勇者"をしていたの?何のために"勇者"をしていたの?」

女勇者「っ」


その言葉に放心した。それは瞬きの半分ほども無いほんの一瞬の戦意喪失
しかし卓越した戦士においては致命的の一瞬でもある

隙を見逃さず取りに来る勇者
首を捻って寸でのところで避ける


女勇者「危ない危ない、狙ったね?」

自然と笑みが零れた。本能が危機を感じたのは久々だ

勇者「教えて、ほしい」


女勇者「何のために…そんなものは無かった。守りたいものも、守るべきものも、何も無かったから」

女勇者「でも、『何で』それだけははっきりしていた。"勇者"だから。それだけだったよ」

勇者「それ…だけ」


今度は勇者が放心した。しかし呆けた目はどこを見ているかわからないのに体が機敏に動いて女勇者の攻撃をガードする


女勇者「次は君に聞こう。何で?何のために?答えなよ。現役勇者」

勇者「ボク…は…わからない…何で勇者なのか」

女勇者「何も考える必要は無いよ。ただ"勇者に選ばれた"それでいいじゃない?」

勇者「違う…欲しい…理由が…欲しいよ」

女勇者「じゃあ、何のために"勇者"をしているの?」
女勇者「理由なんてどこかに必ずあるものだよ。気づいていないだけで」


勇者「…何の、ために…」


先ほどから勇者は防戦一方だ。いくら動きが良くても女勇者なら本気で行けばそのまま決着をつけにいけるだろう
しかし今は倒すことが女勇者の目的ではない

目的は引きずり出すことだ…


勇者「何の…誰の、ために…」


勇者「………戦士」

女勇者「それが答えだよっ!」


ガキィイン


大きな金属音とともに勇者が跳ばされた


勇者「…戦士」


血に濡れていない緑の原の上に寝転がされたまま晴れた空を見て呟く


女勇者「羨ましいなぁ。僕が"勇者"だったころ…誰かのために戦ったことなんて一度も無かった」
女勇者「どこまでも似ている私たちの唯一の相違点」

女勇者「絶対見失わないでね。"それ"を」

―――――
―――

戦士「勇者!探したぞ!こんなところでなにやっているんだよぉ!」


勇者を見つけたら安堵か目じりに汗が浮かんできやがったが無視して駆け寄る
良かった、誰かを殺した様子も怪我してる様子もない


勇者「空が…青いよ…戦士…どこまでも、晴れているんだ。どこまでも、果てまでも」

戦士「ん?いや…向こうに黒い雲が…ってあれ煙じゃねえか!フィエリア王国か!勇者!寝てないで行くぞ!」

勇者「…青い」

戦士「いや黒いって!もしかしたら赤いかも!炎かも!早くいかねえと!起きろよ!」

魔王城


女勇者「ただいまー」

魔王「待て、いいから待て、なんでタックルの構えなんだ」

女勇者「受け止めて!」

魔王「違う!体勢が違う!それはどう見ても攻撃の構えだ!」

女勇者「構うもんかー」

魔王「うあああああ!」


側近(微笑ましいですねえ)

魔王「うああああぁぉおおおお!」

突進してきた勇者に足払いをかけ体重と力で無理やり女勇者の体勢を変えて抱きかかえる


魔王「はぁ…はぁ…まったく…強引な…お姫様だ…はぁ」

女勇者「~っ」キュゥゥン

女勇者「そ、そんな嬉しいこと言われたら僕…♡///」


魔王(しまった、自分で言ってすごい恥ずかしい)

側近(うわぁ…うわぁ…)

女勇者「魔王…♡///」


恍惚としている女勇者と青ざめた約二名の異様な空間である

数日後

女勇者「砂糖でできた町が見たい!」

魔王「…は?」

側近「ああ、紅茶にお砂糖必要ですか?今持ってきますね」

女勇者「そうじゃないよ!僕砂糖でできた町を見てみたい。あ、あと水飴とかも使って」

女勇者「きっと綺麗だろうなあ」ホワァン

魔王「…そうか?」

女勇者「魔王、僕を疑うの?」

魔王「疑っている信じているというか…想像できん」

側近「できませんね」

魔王「大体お前、人間に絶望を味わわせたいんじゃなかったのか?」

女勇者「一つぐらいいいじゃん。町なんて掃いて捨てるほどあるよ?」

側近「もはやそこまでいくとかわいそうになってきます」

魔王「魔物ですら奪う命一つ一つに意識を向けているぞ」


女勇者「今は芸術の秋!廃墟を芸術に仕立てて何が悪い!」

魔王「廃墟を狙うのか?町一つの廃墟なぞ…」

女勇者「作るんだよ。廃墟を」ニッコリ

側近「あ(察し)」

魔王「…ふう」

魔王「どうせなら石化のほうが魔物がやりました感があるじゃないか」

女勇者「そうかなあ、僕はあれぬるいと思うんだよねえ」

側近「石化がぬるい?」


女勇者「そう!クトゥルフ神話の邪神ガタノソア様だって石化させる」

女勇者「でもあの石化は一つだけ生身のまま残すの」

女勇者「脳、を」


女勇者「脳以外全部石化したらどうなるか。硬くなる体、空腹感や喉の渇きを感じても何もできない」
女勇者「雨風に体を削られ鋭い痛みを覚えても動けない!でも脳だけは生きているから何も対策できないまま苦しみを味わうの」

女勇者「なんという気が狂ったほうがマシなほどの恐怖、不死身の呪いで永遠にそうしていなければならない絶望感」

女勇者「考えだけは動く。思考もできるし痛みも苦しみも生理も全て感じたまま立ち尽くして動けない。痒みすら我慢」

女勇者「永遠に!それが永遠に!」


女勇者「どうせ石化させるならそこまでやらなきゃ!いや砂糖化でもそうしよう!」

女勇者「でも人は水飴のほうがいいかなあ。水飴の中に浮かぶ生きた脳みそ。きっといい光景なの」

女勇者「ねえ魔王!そう思うよね!」

魔王「え?お、おう?…」

魔王(し、しまった、言ってしまった)

女勇者「ということで魔道士たちにそういう呪文を開発させておいてね」

側近「またポカーンとした顔が見られそうですね」

魔王「ははは、我は女勇者が来てからというものの驚きっぱなしだよ」

女勇者「どういう意味かな?」

魔王「もちろんこんなに可愛い子が妃になってくれたことから始まり魔王の妃として申し分ない凶悪さを見せ付けたりなんなり」

女勇者「」ニコニコ

魔王「女勇者がこんなに器量良しだとは思わなかったな、うん」

側近(む、無理がありますよ魔王様)

女勇者「魔王、もっと言って!」

魔王「え」

ある日


側近「魔王様!」

魔王「な、何だ」

側近「何やっているんですか?」

魔王「うむ…女勇者を喜ばせようと思って恋言でも言おうと思ったのだがうまく思いつかなくてな」

側近「…だからと言って少女マンガ読んでも臭いセリフしか出てきませんよ」

魔王「いや、それで問題無い」

女勇者「僕臭いセリフ好きだよ。言ってっ、言ってっ」

魔王「ほらな?」

側近「…そうですね。はい」

魔王「世界一愛しているよ。全てを敵に回そうと」

女勇者「きゅぅぅん~っ♡」ゾクゾク

側近「私の前でやらないでください!こっちが恥ずかしくなります!///」

女勇者「…邪魔するの?」ジィ

側近「ごめんなさい!その暗い瞳を向けるのやめてください!怖いです」

魔王「で、どうした?」ナデナデ

女勇者「ん~♪」スリスリ

側近「…挑戦者といいますか…まあ乗り込んできました」

魔王「ほう、今時魔王の座に挑戦しようとする魔物がいるとは…」

側近「いえ、人間です」

魔王「っ」

女勇者「…へぇ」

魔王(あの国にいたとき強大な気を"2つ"感じた。そのどちらかかと考えるのが自然か)

女勇者「もしかして、勇者くん…」

側近「いえ、女性です」


魔王&女勇者「…えっ?」


側近(最近反応が似通ってきましたね)

側近「どうします?」

女勇者「総動員で返り討ち!」

魔王「いやいや、きちんと会って魔王として対峙してやらねば」

女勇者「僕より大事?」

魔王「お前のほうが大事だ。しかし、悪いがそれが礼儀だ」

女勇者「…むぅ」

魔王「まあ少し我慢してくれ」ナデナデ

魔王「そういうわけだ。王座を模した決闘場へ誘導しろ。我は玉座に座して待とう」

女勇者「そこ…僕と魔王が戦った場所…」

魔王「使ってなかった大広間があったな!そこへ変更だ!」

側近「…はいはい、分かりましたよ」

魔王「女勇者、悪いが我一人でやる。待っていてくれ」

女勇者「何で?」

魔王「それが礼儀だ」

女勇者「よくわからないなあ」

大広間

魔王「ほら、さっさとセッティングしろ。魔王っぽく飾り付けろ」

「魔王っぽくってなんすか魔王っぽくって!」

魔王「とにかく邪悪っぽくにだ」ドヤ

「ふわふわしすぎっすよ!」

女勇者「じゃあ壁を血で塗りたくって人間の臓物と骨で飾り付ければいいんじゃないかな!かな!」

魔王「怖いわ!」

女勇者「…魔王なのにそんなのが怖いの?」

魔王「…ち、違う。趣味が悪い。怖いんじゃない、趣味が悪いんだ。魔王というかサイコ野郎の部屋じゃないか。絶対嫌だぞ」

女勇者「…そうかなあ」

側近「魔王様、挑戦者が四天王の二人を破りました」

魔王「そうか。ではこんなものでいいか。貴様ら、解散だ」

女勇者「じゃあ四天王を破った後の最後の砦として僕が!」

魔王「ダメだ、お前は手加減もせず殺してしまうだろう」

女勇者「え、四天王って手加減しているの?」

魔王「挑戦者を返り討ちにするための四天王ではなく我に挑戦する資格があるかどうかを見極めるための四天王だ」

女勇者「僕g」

魔王「ダーメ、ぜったい瞬殺してしまうだろうが」

女勇者「」ショボーン

―――――
―――

女騎士「魔王!我が剣に背負いし業と我が背負いし人々の悲しみが貴様を断ち切るだろう!」


女勇者(別室から盗撮盗聴)「あの女僕の魔王に好き勝手言いやがって!!!」
側近「どうどう、どうせ魔王様が倒しますよ」


女騎士「悪は断ち切られねばならぬ!この女騎士が断ち切ってくれる!」

魔王(人間体)「ふむ、人間が威勢の良いことだ」

魔王「我が魔道に刃向かいし人間、精々喚くが良い。今に呻くことすらできなくなるからな」

魔王「さあ、来るがいい。矮小な人の身でどこまでやれるか見てやろう」


女勇者「ああ、あれ僕に言ってもらった言葉なのに、にぃぃぃい」ギリギリギリ
側近(代々受け継がれる常套文句だと言ったら殺されそうです…)

―――――
―――

魔王「くっくっく、中々善戦したではないか。楽しめたぞ」

女騎士「く…あと少しだったのに…」

魔王「では貴様の勇気と努力に敬意を称し、我が直々に殺してくれr―

女勇者「ちょっと待ったあ!」

魔王「げっ…女勇者…」

女騎士「何故ただの女の子がこんなところに?」


側近「ちょ…ばか!」

女勇者「魔王!何嘘ついているの!善戦どころか魔王の方が手抜いていたじゃん」

魔王「い、いやそれは言っては…」

女勇者「回復魔法使ってないしそもそも最弱形態だし」

女騎士「最弱…形態…」

女勇者「魔王はあと2回変身残しているよ!(魔物形態・闇形態)」

女騎士「そ…そんな」

女勇者「そして、誰が、ただの女の子、だって…?」

側近(逃げて!人間さん逃げてください!死ぬより酷い目に!)

女騎士「え?いやどう見てもあなた…」

側近(ーーーーーーっっっ!!!!)

女勇者「僕、魔王妃なんだよね…」ピクピク

女騎士「無理しないで!一緒にこんなところ逃げ出しましょう。絶対あなたを家に届けてあげるから」

女勇者「…はぁ?」

女騎士「魔王!こんなか弱い女の子を攫って無理やり妃にしようなんてなんて外道!」

側近(も、もうその辺にしておいて)

女勇者「か弱い…外道…」

女騎士「こんな…こんなクズが敵の将だったなんて…見そこなったぞ」

女勇者「」ブチッ

側近(ああ、もうダメですね。あーめん)

女勇者「側近、僕専用の剣」

側近「はい。私はちょっと席を外します」

魔王「ま、待て側近。我を置いていくな」

側近「半分は魔王様の責任です。何とか勇者様を止めてください」

魔王「無理」

側近「では責任持って最期まで見届けるように」

魔王「」


女勇者「さて、女騎士さん?僕と一騎打ちの決闘でもしない?」

女騎士「何?」

女勇者「僕に勝てたらここから生きて帰れるよう魔王に頼んでみるから」

魔王(あーやだやだ、頼むから断って逃げてくれ)

女騎士「何を言う!君は魔王に無理やらされているんだろう?」


女勇者「…」ギロ

魔王「え…あ、あ…あぁ、女騎士が勝ったらお…この子も一緒に開放して一緒に生きて帰させてやろう(棒)」

女勇者「」コクコク


女騎士「そうか…分かった。必ず君をつれて帰ろう」

女騎士「大丈夫だ。君に怪我はさせない。心配したまえ」

魔王(…目を背けたい)

女勇者「…ど、どこまでも馬鹿にしやがって」

女騎士「怪我をさせず勝つ…簡単なことか」

女勇者「」スッ

女騎士「?…~っ!」


女騎士の左腕が細切れになった


女騎士「な…あ…」

女勇者「どうした?僕に勝つのは簡単だったんじゃなかったの?」

女騎士「バカな…見えなかった」

女勇者「僕の動きを目で追える"人間"なんてそうそういないよ」


女勇者「覚悟しなよ」


魔王「しょ、勝負あり!女騎士はもう戦意喪失―

女騎士「何を言う!腕一つが何だ!絶対にその子を連れて帰る!魔王の洗脳なんか打ち負かしてやる!」

魔王「」

女騎士「行くぞ!この私が洗脳を解いて―

女勇者「喋っている暇があると思う?」


女騎士「~っっ!」


空中に跳ね上げられ、一瞬で残った手足を切り捨てられる


女勇者「魔王、リョナの気ある?」

魔王「無い!あってたまるか!」

女勇者「そう、じゃあ見ないほうがいいね」

魔王「やめろおおおおお!」


女騎士の近くに暗い空間が現れ、そこから四本の、錆びれた不衛生な鉄パイプが出現した


ゴリッ、ゴリュゴリュ


女騎士「あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!」

女勇者「あはは、女の子がそんな獣みたいな下品な声をあげるのはどうかと思うよ?」

魔王(メンタルの修行したい)

女勇者「四肢に錆びついた鉄パイプを刺してもあまりオブジェ感無いね」

女騎士「」ビクン...ビクン

魔王「…ひぇぇ」

女勇者「魔王を誑かそうとした罪、身に染みてね?」

魔王「誑かされてないから!そいつの目的全然違うから!」

女勇者「…そうだっ!」

魔王「女勇者!」

女勇者「え?」

魔王「そいつを生かして帰せ」

女勇者「何で?」

魔王「何でもだ!これは命令だ」

女勇者「魔王の命令…///」キュン

女勇者「うん、わかったよぉ///」トロォ

魔王(ふう、これでこれ以上酷い目には合わないだろう)

魔王「では我は席を外す。そいつはできるだけ早く解放して人間界に帰しておけよ」

女勇者「うん、生かして返せばいいんだね…///」

女騎士「くっ…」

女勇者「ふふ…今の魔王の言葉聞いて安心した?大丈夫だよ。僕も魔王の命令は絶対聞くからさ」

女騎士「怖がっているとでも、思ったか」

女勇者「ふふふ、君の思っていることは分かっているよ
     生きている以上後で薬草やら魔法やらで回復すればどれほど大怪我しても大丈夫。でしょ?」

女騎士「…だったら、何だ」

女勇者「一箇所だけなら回復魔法でも回復できないようにできるやり方もあるんだよ」

女騎士「…」

女勇者「ふふふふふ、どこにやろうかなあ」

女勇者「そうだ、まずはオークの肉便器にさせようか!」

女騎士「やっ、やだっ!それだけは嫌だ!いっそ殺せ!」

女勇者「くふふ、望み通りの反応ありがとう」

側近「女勇者さん、オークをなんだと思っているんですか…」

女勇者「え?くっころ要員でしょ?」

側近「魔王様も嘆きますね…で、本当にやるんですか?」

女勇者「んー、オーク相手とはいえ気持ちよくさせるのはなんか違うよねー」

女騎士「ふぅ、ふざけんな!あいつら相手で気持ち良くなんて―

女勇者「うるさい。その鉄パイプま○こに突っ込んで…あ、いいこと考えた」

側近(またロクでもないことを…)

女騎士「やだぁっ、あいつらにヤられるぐらいなら死んだほうがましだあああ!!」

女勇者「ねえ、君さ、彼氏とか結婚を誓った人いる?」

女騎士「何でそんなこと言わなきゃならない」

女勇者「言わなきゃ君の故郷滅ぼすよ。嘘ついても分かるから」

女勇者「大丈夫、いたとしてもその彼氏を殺したりなんかしないから、さ」

女騎士「…いる」

女勇者「いる?」

女騎士「…」コク


怯えた顔をして頷く女騎士
それを見て女勇者は邪悪に口の端を歪める


女勇者「決めた。君から奪うものは手でも足でもない」

女勇者「君の、女としての悦びだよ」


女騎士「っっっ!」

サキュバス(♀)

そのままサキュバスなのだが僧侶であり、敬謙な修道女
淫魔である自分の性(さが)を押し殺してまで神に仕え、極力淫らなことはしないよう自制している

修道女として旅をしていたが誰からも淫魔としてしか見られず修道女らしいことをできず落ち込んでいたところに勇者と出会う

その後勇者と供に旅をしつつ修道女としての務めを全うしたいと考えている

教会にいたとき以来修道女として見てくれたのは勇者が初めて


常識人枠
非、戦闘員



サキュバス「実際的には性的興奮、生き物の快楽と興奮をから生まれるエネルギーが主食であり一緒に食すことが重要です
精液や愛液だけを食べてもあまり満たされないのです!///」

サキュバス「よく誤解されますが私たちサキュバスは淫乱ではありません!///」

勇者「え」

サキュバス「相手を淫乱にさせ無ければ意味がありません!逆なのですよ!///」

サキュバス「サキュバスの女性器は中で分岐して栄養として取り込む器官と子宮に繋がる部分があります///」

勇者「へー」

サキュバス「小さいころから母親に相手を興奮させる術、快楽の坩堝へ叩き堕とす術などを叩きこまれるのです///
そのため最初の相手は父親か兄弟がほとんどです///」

勇者「」

サキュバス「サキュバス族の間では処女卒業は子宮に精子を受け入れて初めて認められます。それ以外は全てただの食事です///
そういう意味では私は処女です!///」

勇者「」ホッ

サキュバス「サキュバスの体液は基本的に媚薬ではなく快楽と興奮を長引かせるものです。ここもよく誤解されています///」

サキュバス「次のテストに出ますからね!ミサの日までに暗記してきなさい!///」

ゾンビ(♀)

ロリ巨乳な少女の死体が自然にゾンビとして生まれ変わった(?)モンスター娘

勇者のことをお兄ちゃんと慕うが生まれたばかりなので言葉も知識もまだ全然無い

安価で色々なことを教えてあげてほしい

非戦闘要員

ワイバーン(♀)

種族としてはワイバーン娘、人外娘の属性として言えばドラゴン娘

体中、腹と顔以外は爬虫類特有の緑色の鱗で覆われ、背には二本の腺の模様と棘が生えている
ボーイッシュな顔つきに燃えるような赤い瞳と髪、そして小ぶりの角、口をあけると牙が鋭く光る

羽はドラゴン特有の皮膜の翼であり、外枠に棘がついている

元気で勝気で素直、可愛いと言われると破壊力のある尻尾をぶんぶん振り回す

いつだって自信満々ですぐドヤ顔したり「がおー!」と吼える。そこがまた可愛い

炎と爪、尻尾で戦える戦闘要員

うげっ、長く間違えた。嘘だろ

女勇者「決めた。君から奪うものは手でも足でもない」

女勇者「君の、女としての悦びだよ」


女騎士「っっっ!」


女騎士「嫌だ!お願い、お願いします。それだけは、それだけはしないでええ」

女勇者「あはは、いいねえ、その絶望に満ちた表情。ま、痛みはあるけど我慢しないで叫んでね?」


女騎士の膣にズブリと錆びついた鉄パイプを捻じ込む

ゴリュゴリュと音がしそうな手応えとともに空間を劈く悲鳴と真っ赤な鮮血がほとばしる


女騎士「あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙っ゙っ゙っ゙っ゙!!!」


女勇者「あははっ、ねえ?どう?バージンをおちんちんですらないこんな汚い棒に奪われる気分は」

女勇者「ってそんなに叫んでいるんじゃ聞こえないかな」

側近「心地いい悲鳴ですね」

女勇者「さてサイレント魔法で女騎士の叫び声消してっと…」

側近「む…久しぶりの快音なのに…」

女勇者「なら前線に出ればいいのに」

側近「側近に任命されましたからねえ。魔王様が戦場に出ていても部屋の掃除やら魔王様の仕事の整理やらで行けないんですよ」

女勇者「側近も大変だねえ」

側近「じゃあ声聞かせてくださいよ。同情するなら」

女勇者「ごめんね。大事なことの」


女勇者「ねえ、聞いて女騎士ちゃん?」

女騎士「」ビクンビクン

女勇者「ま、いいか。今から君にある呪いをかける」


女勇者「君は一生セックスしても気持ち良さを感じられない。痛みばっかり」

女勇者「生まれる子供は醜い奇形だけ。嫌悪感を抱かずにはいられない怪物のみ。どう頑張っても数日ですぐ死ぬ」

女勇者「あと君はセックスしたら相手に呪いがかかって一か月ぐらいで何の前触れもなく死ぬ」

女勇者「もちろんこの記憶は消しておくけどね。魔王に挑みに行くという目的も消して、帰ってすぐに彼氏と結婚することを強く頭に洗脳しておくよ」

女勇者「その代わり君の体の怪我も欠損も全て治してあげよう」

女勇者「じゃ、彼氏と楽しい結婚生活を祈ってるよ。いやあ、僕って優しいなあ。自分にシビれちゃうね」

女勇者「いやあ、全部やるのに時間かかったなあ」

側近「これだけ複雑な呪いをかけるのに10分かからないのは短いどころの騒ぎではないのですが…」

女勇者「じゃあこいつ故郷の町に置きに行こうか。浮浪者がいる路地裏にでも裸でポイって」

側近「あれだけしてさらにレイプさせる気ですか…」

女勇者「『私…汚されちゃったの…こんな私でも、愛してくれる?』『ああ、どんな君でも愛せる。君ならばね』」

女勇者「なんて展開いいじゃん!まあその後奇形の子供しか産まない妻に絶望するんだけどさ」

側近「一か月で死ぬのでは子供見れないじゃないですか」

女勇者「あ、じゃあ…『子供作るのを諦めたら』にしよう。えーと、ちょっと難しい呪いになるなあ」

~その後~

魔王「側近、女勇者はきちんとあいつを帰したのか?」

側近「ええ、回復魔法までかけて怖い記憶と魔王様へ挑む心を洗脳で消してきちんと故郷の町へ帰しましたよ」

魔王「うむ、それなら良い。女勇者、我の命令が聞けて偉かったぞ」ナデナデ

女勇者「えへへ、魔王の命令なら絶対に聞くよ///」ギュー

魔王「偉い偉い」ナデナデ


魔王「時に側近、何かスッキリしたような顔してないか?」

側近「そうですか?」ニッコリ

魔王「我は少し修行の旅に出る」

女勇者「僕も付いていく!」

魔王「ダメだ」

女勇者「そんなっ!?」

魔王「これは精神鍛錬のための修行なのだ。お前と一緒にいたら癒されてしまうから精神鍛錬にはならぬだろう?」

女勇者「え?そう?僕と一緒にいたら癒される?」

魔王「ああ、お前は我を癒してくれる唯一の存在だからな」ナデナデ

女勇者「癒し…唯一…えへへ///」

側近「魔王様、人前で恥ずかしいセリフ言うのやめてくれませんか?」

魔王「何だ?お前も言ってほしいのか?」

女勇者「」ギロリ

側近「私が殺されてしまうので冗談でも言わないでください」

女勇者「ねー魔王、暇だよ―」

側近「魔王様ならついさっき出て行ったじゃないですか」

女勇者「あ、そうだこれ側近だ」

側近「たった数十分会えてないだけでどれだけ病んでるんですか」

女勇者「まおー…」

側近「これは魔王様だけではなく女勇者さんの精神鍛錬にもなりそうですね」

女勇者「暇だなー人間虐殺して全員に絶望を与えたいなー」

側近「その危険思想どうにかしましょうよー」

女勇者「側近だってしたいでしょ?」

側近「私は悲鳴が聞ければそれでいいんです。ということで悲鳴を録音したものを聞きに行ってきます」ダッ

女勇者「許さんっ」ガシッ

側近「何でですかー」

女勇者「側近だけ満たされようなんて許さないよー。魔王の声を録音したのは無いの?」

側近「ありません。私の趣味で録音したものばかりです」

女勇者「それは魔王のことは好きじゃないってこと?あんなに素敵なのに」

側近「好きって言ったらそれはそれで酷い目に遭うじゃないですか!私が!」

その後


女勇者「いい?魔王の姿そっくりに化けるんだよ。筋肉一つまでそっくりにね」

変身系魔物「こう?」

女勇者「声もっと低く。かっこよくね」

側近「アウトですよ!!」

女勇者「え?なに?まだ何もさせてないよ?」

側近「何させる気だったんですか!」

女勇者「ナn―

側近「ダメです!逆に魔王様を裏切る行為じゃないですか!彼氏がいないから代わりになんて浮気の第一歩ですよ」

女勇者「はっ…まさか側近に教えられるとは…」

側近「女勇者さんってどこか抜けてますよね。本当に」

女勇者「まおー、寂しいよぉ」

側近「あの、うるさいです。そろそろしつこいです」

女勇者「だってえ、声に出さないと猶更寂しくなるもん」

側近「だったら一人で部屋に篭って言っててくれませんか?」

女勇者「ここ僕の部屋」

側近「魔王様の部屋です」

女勇者「つまり僕の部屋でしょ?」

側近「別に用意してありませから!」

女勇者「妻が夫と同室で何が悪い!」

側近「えー…」

女勇者「そういう側近は何で魔王の部屋にいるのさ」

側近「女勇者さんは見張っておかないとやばいようなので」

女勇者「そ、そんなことないよ!」

側近「さっきなにしでかそうとしたか魔王様に報告してもよいのですよ?」

女勇者「うぐ……あ、僕バレンタインのチョコ作りでもしてこようかな」

側近「あ、ちょっと!どこに逃げるんですか!」

調理場

女勇者「というわけではい出ていけー」

調理長(8本腕の多腕娘)「いえいえ、そういうわけには行きません。そこの調理台の一つをどうぞ」

女勇者「はーい」

側近「本当にただのチョコつくりですか?」

女勇者「うん。魔物の口に合わせた味付けはするけどそれ以外は普通のチョコだよ」

側近「…」

女勇者「あれ?何で疑いの目を向けられているの?」

女勇者「髪の毛は基本だよね♪細かく切っt」

側近「何の基本ですか何の!」

女勇者「知らない?人間のバレンタインのチョコ作りはこうするんだよ?」

側近「よくは知らないのですかそれが間違いということだけは分かります!」

女勇者「あとちょろっと血も混ぜて。あ、僕のあい…」

側近「ちょっと!他の方たちがドン引いてますよ!魔物が人間にドン引くってかなりの異常事態ですよ!」

女勇者「異国の文化を見ると面喰ったりするよね。よくあるよくある」

側近「どう考えてもそれとは違います」

女勇者「よしっ、出来た―」

側近「…禍々しいですね」

女勇者「魔王用だからね。可愛らしいものにするのは合わないでしょ」

側近「それ以上の何かがありますよねこれ、禍々しいというかもはやおぞましいですよ」

女勇者「早く帰ってこないかなー」ウフフフ

時は遡り"毒蜘蛛の巨大洞窟"


魔王「アラクネ、いるか?」

アラクネ「うふふふ、私の巣へようこそ。わざわざ食べられに来たの?」

魔王「冗談はよせ。貴様に無礼という概念はないのか」

アラクネ「やーねー、上から目線。お城では人間の女の子に下に扱われているく・せ・に♪」

魔王「ぐうっ、何故それをっ!…いや、そんなことないぞ、そこまで酷くない!」

アラクネ「うふふ、私の子供たちはどこにでも潜んでいるのよ?あ、今頃浮気しているんじゃないかって疑っているわね」

魔王「っっっ!!か、帰らなくては!」

アラクネ「冗談よ」

アラクネ「で、何の用なの?苦手なお姉さんのところにわざわざ来るなんて」

魔王「…貴様に頼むのは一番嫌なのだが、むしろ嫌だからというか…まあ、精神鍛錬がしたくてな」

アラクネ「あは♡この私にそれを頼むとはいい度胸ねえ。心壊れても知らないわよぉ」

魔王「…良い鍛錬になりそうだ」


そうしている内にアラクネに糸で丁寧にぐるぐる巻きにされる

何故かそれだけでもう観念してしまいそうになる

アラクネ「修行内容はとっても簡単よ。私の幻覚に耐えきる。それだけ」

魔王「ほう、楽勝だな」

アラクネ「そう言ったやつは大抵子供たちの餌になってるわ」クスクス

魔王「」

アラクネ「私の毒は直接脳の恐怖を感じる部分に働きかける。魔物にだって恐怖心はあるのよ?」

魔王「…ああ、知ってる」

アラクネ「ま、生半可なものじゃない恐怖を与えることになるわ。ま、頑張って」


アラクネ「じゃ、首筋出して。…そう、あむ♪」カプ

アラクネ「さて終わったけど」

魔王「」

アラクネ「おーい?」

魔王「」

アラクネ「死んだかwwww」

魔王「生きとるわ!笑うな!」

魔王「…この世にあのような恐怖があったとはな…」

アラクネ「この世じゃなくてあなたの脳内だけどね」

魔王「しかし!これで怖いものなどない!ふぅははは!」

アラクネ「良かったじゃない。これでお別れだと思うと寂しいわあ」

魔王「ふあはははは…ははは…はは」

アラクネ「ん?」

魔王「…魔王ともあろう我が人間の小娘に恐れをなして修行など…」

アラクネ「誰も賢者モードなるまでやれなんて言ってないわよ」

魔王「いや、むしろ我にはあ奴が必要なのだ…今すぐ帰らなくては…会いたい…」フラフラ


アラクネ「あれ?もしかして失敗してる?心壊れてない?これ。あれ?ちょ、ちょっと!」

アラクネ「…はい、目覚めていいわよ」

魔王「はっ!我はいったい…妙な夢を見ていたような」

アラクネ「ええ、夢よ。多分おそらくきっともしかしてその通りかもしれないわ」

魔王「…はぁ?」

アラクネ「まあ修行は終わりよ。大丈夫。治しておいたから」

魔王「治しておいた!?何をした!何があったんだ!」

アラクネ「…何もナカッタワ」

魔王「おい何だその反応!目が泳いでいるぞ!」

魔王城

女勇者「側近、魔王はいつ帰ってくるの?」グイグイ

側近「知りませんよー、身体揺らさないでくださいー」ガクガク

女勇者「定期的に魔王に触れないと禁断症状が-」

側近「何の病気ですかそれ!」

女勇者「急性魔王成分不足症」

側近「…」

女勇者「ごめん、冗談だからその『どうしようもないなこいつ』みたいな目つき止めてよ」

側近「あ、流石に冗談でしたか。良かった」

女勇者「でも魔王に触れたいのはそうだよー」

側近「いい加減静かに待ちましょうよー」

女勇者「魔王ってどこに行ってるの?」

側近「修行って言っていたじゃないですか」

女勇者「修行場所だよ修行場所」

側近「…答えられません」

女勇者「修行ってのは誰かとするの?」

側近「…答えません」

女勇者「それくらい答えようよー」

側近「何が琴線に触れるのか分からないので」

女勇者「へ?何の琴線?」

側近「ノーコメントです」


側近(年上の美人女性と修行なんて口が裂けても言えませんよ…言ったら被害甚大です。おー怖)

調べたら「琴線に触れる」って感動するとかプラスの感情のみの意味なんだね
怒りとか喜びとかプラスマイナス全部含めて感情を動かすポイントに触れてしまうって意味かと思ってたわ

続ける

女勇者「教えてくれないかな?」

側近「ダメです」

女勇者「…分かった」

側近「良かった、分かってくれましたか」

女勇者「取引しよ― 側近「拒否します!!」

女勇者「最後まで言わせてすらくれない…」

側近「当たり前です。大体私にどんなメリットがあろうと魔王様の側近です、この忠誠心を揺るがすことなど…」

女勇者「人間の悲鳴が好きなんだよね?」

側近「………それは」

女勇者「側近、今から人間を虐殺しに行くよ。側近も付いておいでよ。その後で教えてくれればいいからさ♪」

側近「いや…それは…しかし…」

女勇者「好きなんでしょ?聞きたいでしょ?」ズイッ

側近「ちょっ、近いです近いです。録音してあるのありますし」

女勇者「録音なんて聞き飽きたでしょ?同じのばっかり」

女勇者「どうせなら生で聞きたくない?逃げ惑う人間たち、恐怖と痛み・怒りと悲しみ・さまざまな感情が入り混じった悲鳴だよ」

女勇者「きっとそれは甘美で、耳に心地よい素敵な響きだよ」


側近「…」ゴクリ

人間界

大きな城下町を見下ろせる山の頂上


女勇者「うわぁ、大きな町だね。これからあれ全てが消えるんだよ。楽しみ―」

側近「来てしまった…」

女勇者「でもさ、側近だって魔物なんだし欲望に素直になってもいいんじゃない」

側近「しかし魔王様は今(多分)頑張ってメンタルの訓練をしているというのに」

女勇者「魔王は王だから欲望も抑えて威厳を保つ必要があるんだよ。じゃなきゃ毎晩僕を性的に襲ってもおかしくないもん!」

側近「最後のは女勇者さんの一方的な欲望ですよね。いくら女同士だからってそんな堂々と言われても困るのでが」

側近「…部屋にはメイド長さんを置いてきましたし…」

女勇者「そうそう。だから少しぐらい開けていても大丈夫だよ」

側近「そう…ですよね」

女勇者「じゃあ?」

側近「やっちゃいましょうか!」

女勇者「いえーい!」

女勇者「ところで側近ここから見聞き出来る?」

側近「ええ、きちんと聞こえますし壁に隠れていない部分の人間は見えますよ」

女勇者「うん、それならいいね。ここから攻撃しても」

側近「女勇者さんは大丈夫なんですか?」

女勇者「僕も聞こえるし見えるよ。ほら、あそこの宿屋の前でショタっ子同士がじゃんけんしてる」

側近「……一応聞きますけど女勇者さん人間ですよね?」

女勇者「うん?家系図見ても純粋な人間の血筋だよ?」

側近「…」

女勇者「呪文ってさ、詠唱が長ければ長いものほど強力になるんだよね」

側近「ええ、知ってますよ?」

女勇者「上級魔法使いになるとその詠唱も省略できるんだけどさ、試してみたくならない?」

側近「何をですか?」


女勇者「僕や魔王、そして歴史上どんな大魔法使いですら省略できず数分もの長い詠唱を必要とする魔法」


側近「…何する気なんですかいったい」

女勇者「んふふ…昔読んだ魔導書に記されていた禁呪♪」

女勇者≪我、最後の者にして耳傾ける虚空に語りかけよう≫


≪狂気に満ちた暗澹たる外宇宙、広大な深淵の底より響く嬌声≫

≪闇より深く光より眩く、混沌とした永劫の彼方より来たれり来訪者≫

≪絶なる世界、地獄めいた悪鬼の集い、悪夢の羅列と幽鬼どもの跳梁跋扈≫

≪悠久より続く無窮の歳月、暗黒の闇に異界より幻妖夢が囁きかける≫

≪病的に膨れ上がりし不気味なる星々よ、遥か上空にて嘲笑う睨めつける狂気じみた月よ≫

≪さあ、門を開けり≫


≪今、海より害凶は誕生を始む≫

≪雑草覆う黄金塔≫

≪太古の逸陸≫

≪大地裂け、極光狂舞し乱れ落ちたり≫

≪人造りし震撼する砦の上に≫

≪また、気紛れの形成せし粗方を≫

≪混沌の痴神、地上塵芥を一掃せしに参られよ≫


女勇者「禁呪≪混沌の来訪≫」

「ギャァアアアア」「ヒィイイイイ」「゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア」゙

側近「ふむ、ふむふむ」

女勇者「満足?」

側近「良き悲鳴です。しかし混乱だけですか?」

女勇者「そんなわけないじゃん。禁呪だよ?」

側近「国単位の広範囲の人間全てに最も恐ろしいものを見せて混乱させ殺し合いをさせる魔法は十分禁呪に値すると思いますが」

女勇者「ないない、そんなの禁呪レベルじゃないって」

女勇者「本番はここからなんだからさ」

~魔王城~

魔王「ただいま。魔物が王の帰還であるぞ」

メイド長「あ、おかえりなさいませ魔王様」

魔王「…おいメイド長、何故我の部屋の、それもソファに寝そべってポテチなぞ食っているのだ」

メイド長「魔王様の部屋のおそうじ終わったので。休憩中でございます」ポリポリ

魔王「掃除したそばから汚してどうする!カス零すな!ソファで指拭くな!」

メイド長「大丈夫です。後でまた掃除するんで」

魔王「そういう問題じゃない!というかあの二人は…」


魔王「………二人は、女勇者と側近はどこだ」


自分の顔が引きつるのが分かる
ヤバイ、ヤバイ


メイド長「ああ、つい数分前人間界に用事があると言って出て行かれましたが」


魔王「ーーーっっっ!!!」

~再び女勇者たち~

女勇者「ほら、始まるよ」

側近「え?…ヒッ」


地面から壁から、人の毛穴から、黒い触手がうじゅるうじゅると生え出してきた

うねり、表面が脈打ち、ねばつく不快臭を漂わすそれは男女ともに生理的嫌悪を呼び起こさせるには十分なグロテスクさをもっていた
魔物ですら引くぐらいに

それが町を覆い尽くさんとばかりに


「やだ、やだあぁああああ!」「ゴボッぉ゙ぉ゙お゙お゙お゙お」「いぎぃいぃぃいい」


狂気じみた叫び声が冒涜的な光景の中に響き渡る
触手と言えばエロを思い浮かべる人も多いだろう

しかしこの地獄めいた光景をみるとそれが酷い誤解だと思えてしまうだろう


側近「あ、あれこっちまで来ないでしょうね…」

女勇者「大丈夫だいじょうぶ、何?怖いの?」

側近「気持ち悪いというか、吐き気がします」

女勇者「さあ、ついに終焉だよ。混沌の招来、災厄の来訪、彼の者の降臨だ」


天辺に禍々しい渦が現れ、その真ん中に巨大でおぞましい"目"が無数にビッシリと


女勇者「千の貌を持つ神、這いよる混沌、邪神ニャルラトホテプの一部だよ」

側近「…SAN値テロやめてくれません?」

女勇者「まあまあ、もう終盤なんだから悲鳴を存分に楽しもうよ」

側近「まあそれは楽しいですが」

女勇者「録音してる?」

側近「当たり前ですね」

側近「女勇者さんこれだけの力があれば簡単に世界滅ぼせますよね」

女勇者「まあアザトホートでも召喚しすれば宇宙ごと一瞬で消し飛ばせるけどね。しかも知ってさえいれば誰でもできる」

女勇者「でもそうしたら魔王まで死んじゃうし。流石の僕も宇宙ごと無くなったら生きて生きようないしね」

側近「人間だけを滅ぼすこともできますよね」

女勇者「うん。でも魔王に止められているんだよねー。僕はもっとヤりたいのに」

側近「…」

女勇者「あ、魔王。そうだよ側近。約束だよ、魔王がどこに行ったか教えて♪」

側近(…しまった、楽しくてすっかり忘れていました)

側近「えと…簡単に言えばですね。アラクネ族の女性に修行をつけてもらっています」

女勇者「…へえ」

側近「そんな暗い瞳をしないでください。大丈夫ですよ」

女勇者「…何が?」

側近「魔王様はその方のことを嫌っています」

女勇者「本当?」

側近「ええ。嫌いな人が師匠になっているからこそ精神の修行になると言っていました」

女勇者「んー、じゃあ大丈夫だね。うん、魔王と側近を信じるよ」

側近「」ホ





女勇者「…シンジタカラネ?」

側近「」ゾクッ

~魔王城~

女勇者「たっだいまー」

側近「ただいまですー」

魔王「…おう、どこに行っていた。というか何をしていた」

側近「そr」

女勇者「人間の国一つ滅ぼしてたー」

魔王「」

魔王(参った、いや参った。最悪の想像が当たっていたか)

魔王(魔物は人間を殺し食らうことに至上の喜びを感じる。だから一気に人間を滅ぼしてはいけないのだ)

魔王(生かさず殺さず家畜のようにが大事なのだ…しかし)


女勇者「」ニコニコ


魔王(しかし女勇者を否定したらどうなるか分かったものではない。主に我が)

魔王「女勇者」ガシッ

女勇者「わ、な、何…魔王///」

魔王「」ギュ

女勇者「ひゃ、へ?な何…って///」


女勇者を抱きしめて耳元に口を近づける


魔王「女勇者、貴様は我の物だ。勝手な行動をせず我にだけ従い、我の言うことだけを聞け」

女勇者「あにゃぁ…はい、魔王しゃまぁぁ…///」ポォー


蕩けた顔で魔王に抱きついたまま体重を預ける女勇者


魔王(どうだ側近!これならば女勇者を傷つけることなくむしろ喜ばせつつ大人しくさせられるぞ)

側近(とか考えているんでしょうね魔王様は…しかしそれ)


側近(女勇者さんのヤンデレ度を高めるだけですよ!導火線に着いた火を消しつつ中身の火薬を大量に増やすような所業ですから!)


女勇者「えへへ…魔王の…ものぉ…えへへへ///」

側近「魔王様、少々お耳を」

魔王「ん?」

側近「チキンレースは楽しいですか?」

魔王「…?何の話だ?」


女勇者「ぅへへへへ///」

~幕間~

>>346の呪文詠唱文
最初の一行はH.P.ラヴクラフトの短編小説「ニャルラトホテプ」より

「今、海より害凶は誕生を始む」
からの7行は長篇詩「ユゴス星より」の内の一つ「ニャルラトホテプ」より

女勇者「魔王、これ!」つチョコのような何か

魔王「…なんだこのおぞましいもの」

側近「ですよねー」

女勇者「もう、チョコレートだよチョコレート」

魔王「…すまん、今何がなんだって?」

女勇者「だから、これは、チョコ、なの、バレンタインチョコレート!」

魔王「……これが、チョコ…だと」

魔王「味見はしたのか?」

女勇者「味見したら減るじゃん。全部魔王に食べてほしかったんだもん」

魔王「…」


魔王(くそっ、闇形態を自由にスイッチで切れば口の中を闇にしてこのゲテモノを消し去れるのに)

魔王「まあ、せっかく作ってもらったものを無下にはできないからなあ。食うよ」

女勇者「味わって食べてね♪」

魔王(味わって…か)


魔王「…酷い味だ」

女勇者「そんなっ!?」

魔王「料理長に学んで来い。お前の美味しい手料理をずっと待っている」

女勇者「魔王…うん分かった!僕頑張るよ」

側近(押し付けましたね…)

女勇者「魔王!魔王!ついに出来たんだよ!」

魔王「出来た?…料理が上達したのか?」

女勇者「違う違う。町を砂糖や水飴に変えちゃう魔法!魔法開発部の皆に感謝しないとねー、うふふふ」

魔王「…本当毎度毎度無茶ぶりに良く応えてくれるものだ。今度褒美を特別にくれてやるとするか」

魔王(料理であって欲しかった)



女勇者「ふふふ、どう使おうかなあ。どこに使おうかなあ」

女勇者「この町とかいいかなあ。どう思う?魔王」

魔王「…よーわからん」

女勇者「ほらほら、あれとか。この町ザウディーとかいう有名な芸術的建築家が丸々設計したらしくて建物がちょーすごいんだよー」

魔王「ちょー…」


女勇者「あのチャベルで結婚式とかあげてみたいとかも思ったなあ…」

魔王「今もそう思うか?」

女勇者「んー、今は魔界の式場がいいかなぁ。魔王、考えておいてね」

魔王「そうだな、考えておかなければ」

女勇者「あとこの町雪がよく降って綺麗に見えるんだよ」

魔王「ほう、それは良いな」

女勇者「じゃ、始めようか」

魔王「…やっぱりやるんだな」

女勇者「やるよー」

女勇者≪アメアメワタアメ=チョコレート、アマーイマシュマロケーキニマカロン≫

女勇者≪ゼンブゼンブオイシクアマク、キレイデカワイイオカシタチ≫

女勇者≪全部お菓子になっちゃえ♪≫



魔王「あぁ…あぁ…」

―――――
―――


その日はとてもウキウキしていた

昨日ついに彼女に告白したんだ

彼女は俺の申し出に顔を赤らめながらyesを返してくれた

胸が高鳴る。まだ一時間もあるが早めに着くに越したことはないだろう

ああ、こんなにも待つのが楽しいなんて思いはしなかった

彼女とは甘酸っぱい関係が始まるのか
それとも最初からエロいことを…いや、エロなんてまだ無くていい。今はただ彼女と過ごせればそれで俺は幸せだ

…ん?空から綺麗に輝く粉が降ってきた。ああ、なんか俺たちを祝福しているようだ…甘い匂いがする

「きゃぁぁあああああ」

…っ、何だ、あれ

周りの人間が次々と透き通った色つきのガラス細工のようになって固まっている

逃げなきゃまずい。そう思ったがもう遅かった

「何だよ、なんだよこれ!」


自分の足が既に"そう"なっていた

痛い。蟻が足を齧る。既に人間の身体ではないのに痛みは今までと同じに感じる

何だよ、何だよこれ…そのまま固まっちまうのか。動けないなんて…永遠に動けないなんて

嫌だ、嫌だあぁああ!!


脳裏に彼女の姿が浮かぶ。最後に…会いたかった、一度ぐらい抱きしめたかった…会いたかった…

―キャァアアアア―
―いやぁあああ―
―助けて、助けて!―
―いやだ、動かない、動かない―
―いぎぁぁああああ折れたぁああああ―
―美味しい、僕の手が美味しいよ。あはははは―

魔王「…すごいことになっているな」

女勇者「そうだね、側近もつれてきてあげれば良かったかな」

魔王「最近仲良いな」

女勇者「嫉妬しちゃう?」

魔王「そうだな、少し妬けるぞ」

女勇者「嬉しいなあ。うふふ、大丈夫だよ。僕は魔王一筋だから♡」
女勇者「レズの気も無いしねー」

訂正

―キャァアアアア―
―いやぁあああ―
―助けて、助けて!―
―いやだ、動かない、動かない―
―いぎぁぁああああ折れたぁああああ―
―美味しい、僕の手が美味しいよ。あはははは―

魔王「…すごいことになっているな」

女勇者「そうだね、側近もつれてきてあげれば良かったかな」

魔王「最近仲良いな」

女勇者「嫉妬しちゃう?」

魔王「そうだな、少し妬けるぞ」

女勇者「嬉しいなあ。うふふ、大丈夫だよ。僕は魔王一筋だから♡」
女勇者「レズの気も無いしねー」

女勇者「あー、可哀想。蟻にガジガジされちゃってるよ」

魔王「痛みは感じ続けるんだったか?」

女勇者「そうそう。蟻にかじられる程度じゃ痛みで気絶なんてのもできないだろうしずっと続くだろうねえ」
女勇者「失血死もしないし心臓もないから脳が削られるまでだねえ。下手したら脳みそだけになっちゃったりして」

魔王「脳だけになったら死ぬのか?」

女勇者「魔法は全部にかかってるから脳だけが残っても生きてるし感覚も感情もあるだろうねえ。見聞きは出来ないだろうけど」


近くで蟻にたかられている少年に近づく

女勇者「君はまだ耳があるから聞こえるよね?そういうわけで脳まで蟻が到達するか発狂するまで絶望を楽しんでね」


魔王「他にやれる人がいないから我がつっこんでおくぞ。そんなの楽しめるわけないだろ。怖いわ」

女勇者「まあ永遠じゃないしけっこう有情なほうでしょ
     元ネタのガタノソア様の呪いは脳以外石だからね。雨風で削られるのを待つより飴が腐るか虫に食い散らかされるほうが圧倒的に早いでしょ」

魔王「どっちも御免こうむる」

個人的にはドラクエ7の村ごと石にされたほうがキツかった
生前の記憶を主人公に見せた後砕けちったやつが特に…

一家屋内

女勇者「うわーお、見て見て魔王。この女の子脱いでいる途中だよ。ストリップの一場面だー」

魔王「見ていいものか」

女勇者「僕が許すよ」

魔王「それこそ何故だ」

女勇者「むしろ舐めちゃう?飴だからきっと美味しいよ」

魔王「もっと絵面が悪いわ!」

女勇者「じゃあこうやって腕を折って」ボギャ

女勇者「はい、どうぞ食べて」

魔王「お、おう…お、イチゴ味」

女勇者「このカップル見つめあったまま飴になってるよ。やーんロマンチックー」

魔王「ロマンチックではないが」

女勇者「だって永遠…じゃないけど崩れさるまで見つめあっていられるんだよ
     こんなに近くにいるのに、目の前にいるのに、声も届かない。触れることもできない。ああ、なんて切なく淡い恋物語」

魔王「手を繋いだままだから触れることは出来ているな」

女勇者「じゃあこの両手折っちゃおうか」ボギャァ

魔王「おい、泣いてるぞ」

女勇者「そんなわけないじゃん。目の辺りが解けてきたんじゃない?」

魔王「…あまり考えないようにしよう。…これはメロン味か」ポリポリ

女勇者「セックス中に繋がったまま飴になったらどうなんだろ?快感は永続するのかな?」

魔王「さあな。というかこの魔法考えたのはお前だろ」

女勇者「考えたのは僕でも生み出したのは魔法開発部の皆だし」

魔王「それもそうか…まさかこのカップルも引き離すとか言わないよな?」

女勇者「んー?しっかり結合しているしめんどいね。お幸せに―」

魔王「この町の住人すべてにとって幸せなんてとっくの過去なんだが」

女勇者「そろそろ暗くなっちゃったねえ」

魔王「そうだな。帰るか?」

女勇者「ん、ちょっとまってこの町に魔法をかけるから」

魔王「?」

女勇者「こんな芸術品すぐに解かしちゃうのもったいないじゃん。数か月は虫にも食い散らかされないようにね」

魔王「このまま数か月以上か、哀れだ…」

女勇者「魔王も魔王なら人間を虐げることに快感を覚えようよ!」

魔王「我のやりかたではないわ!」

~魔王城オムニバス~

女勇者「側近そこどいてぇぇ」ギギギギ

側近「ダメです、今魔王様はお仕事中。女勇者さんであってもここは通しません」

女勇者「僕の邪魔をするなら殺すよ?」

側近「どうぞ。どうせすぐ生き返ります。それより魔王様が魔王様たる仕事をできなければ魔王ではなくなるんですよ?
    ニートな魔王と魔王してる魔王どっちがいいんですか?」

女勇者「む、むむむむ…」

女勇者「せ、せめて見学を…」

側近「ダメです。暴走しかねないので」

~魔王城オムニバスその②~

魔王「エクイア国の侵略は完璧か、よろしいよろしい」

「エウリカ国は手こずっているようです」

魔王「オーガー部隊を向かわせよう」

「ミスティアリ国が傭兵を募集しているようです」

魔王「蠢く鎧と人間に化けるのが得意な舞台を潜り込ませろ」

「それと…最近エリア9の魔物たちが」

魔王「我だってきちんと魔王らしい仕事しているんだぞ」ボソッ

「え?何でしょう?」

魔王「あ、いや貴様に言ったわけではない」

魔王「だいたい、魔物とはだいたい策を立てることは向いてないんだ」

女勇者「へー」

魔王「従って、魔王に必要なのはエグさや残虐さじゃなくて策を立てる頭とカリスマ性なのだ」

女勇者「ふーん」

魔王「なので我は魔王だ。ヘタレでも日和見でもない」

女勇者「…で、それを僕に言って何がしたいの?」

魔王「そろそろ魔王(笑)みたいな呼ばれ方はしたくないのだ」orz

女勇者「無理じゃない?」

魔王「即答するな!貴様も我が好きならことあるごとに『流石魔王様』とか言え!」

女勇者「そういうキャラじゃないしー、僕のほうが強さもエグさも優しさも美しさもカリスマ性も何もかも勝っているもんね」ケラケラ

魔王「…はぁ…」

人間界
三日月の丘

魔王「ほぉ…いい場所だな」

女勇者「でしょ?ここは…思い出の場所なんだ」

魔王「思い出?」

女勇者「僕の…"初めて"の場所なんだ」

魔王「!?!?!?」

女勇者「って魔王、何ものすごい動揺しているの?」

魔王「え、いや、だっておま…は、はじ、初めてって…」あたふた

女勇者「ふふ、何想像してるの?そんな変なことじゃないよ」


遠い目をして空を見つめる


女勇者「ここはね、僕の始まりの地、僕が初めて人間を裏切って、バラバラに殺した場所なんだ」

魔王「あ、ああ…そういうことか」


魔王「ん?変なことじゃない?」

女勇者「え?何も変なところないよね?」

女勇者「戦士…」

魔王「…?」

女勇者「名前は忘れたけどね。戦士だった」

女勇者「多分、いい人だったよ。悪が許せない曲がったこと大嫌いな正義感溢れる暑苦しい馬鹿」

魔王「なるほど、正反対だ」

女勇者「そう、心を殺して無理に正義なんかを執行していた僕…いや、私とは正反対な奴だったよ」

魔王「その頃から既にそうだったのか」

女勇者「原因は無いよ。昔からずっとそうだった。裏切りたくて、殺したくて、殺し、たく、て」

女勇者「だからある意味勇者に選ばれたときは嬉しかったよ」

女勇者「合法的に殺しまくれると思ったんだけどねー」

女勇者「でも仲間は皆正義感強くてさあ、人殺しなんて許してくれないの」

魔王「そりゃそうだ」

女勇者「悪人でもだよ!信じられない。『人間は人間の法で裁くべきだ』なんていい子ぶっちゃってさー」

魔王「魔物では足りなかったのか?」

女勇者「何か"違った"んだよね。魔物をいくら殺しても殺しても違和感がぬぐえなかったんだ」

女勇者「なのに殺したいって気持ちばかり強くなって、強くなって、次第に、収まり効かなくなってきた」


女勇者「人間を、殺したいって」

女勇者「そんな中でも一番性格の違う戦士が私に告白してきた」

女勇者「せっかく"僕"を殺して"私"を作ったのにさ、なのにあいつはぐいぐい僕の中を見ようとしてきて」

女勇者「我慢できなかった。でも"私"を演じるためには、それに応じるしかなかった」

女勇者「いつだったかあいつは言ったよ。どんな僕だとしても受け止めてやるなんて」

女勇者「そのとき思ったの。だったら全部、全部僕を受け止めてもらおうって。僕の欲望も狂気も、みんな、みんな」

女勇者「それからは楽しかったなあ。せいいっぱい戦士と恋人ごっこ繰り広げてさあ」

女勇者「最初は嫌だったけど最後に思いっきり裏切ってやれると思うとわくわくしたよ。倒すのを楽しみにドミノを並べている感じでさ」

魔王「相手が憐れだ」

女勇者「あはは、僕は楽しかったよ」

女勇者「それでね、ずっと続けて、あいつも舞い上がって完全にその気になっちゃってさ、丁度この場所でキスを迫ってきたんだ」


女勇者「そして、僕は初めて人を殺した」


女勇者「目を閉じたときに思いっきり腹を蹴り上げて、倒れたところを踏みつけて、本当は大嫌いだと、精一杯の罵りとけなしをかけて」

女勇者「今思い出してもゾクゾクするよ。あの絶望した顔、今まで信じていた『好き』が完全に瓦解して信じられないって言う顔」

女勇者「泣きながら『何で』を繰り返してさ、笑えたよ」

女勇者「もう楽しかった、最高だった。剣で引き裂いて、悲鳴をめいっぱい堪能して、内臓を引きずり出して」


女勇者「殺して、殺して、殺しつくした」



女勇者「………」



女勇者「…今もこの地面の下に埋まっているんじゃないかな」トントン

次スレやってもいいんだけどそうしたら本当にやめ時が分からなくなってしまう
いっそ次スレで異世界侵攻編でもやろうかと考えているけど1パターン化しそうでちょい悩み中

今のところ>>1000までやったら一旦終えてまたちょっと設定と性格変えて女勇者と魔王が世界征服する話を書こうと思っている

女勇者「ここはそんな大切な思い出の場所なんだ」

魔王「それ、良い思い出となる話じゃないよな」

女勇者「え?とっても良い思い出だよ?」

魔王「」

女勇者「この出来事のおかげで今の僕があるんだもん
     いつか世界そのものを、人類そのものを盛大に裏切ってやりたいって。あれのおかげで思えるようになったんだ」

女勇者「裏切ることの楽しさを知ることができた。人間を殺すことの快感を教えてくれた。最高の思い出だよ」

魔王「…そ、そうか」



魔王「良い三日月だな」

女勇者「魔力の流れによって三日月じゃなくても三日月に見えるという不思議なデートスポットの一つなんだよ」

魔王「デートスポット?」

女勇者「うん、普段は結構人がいるんだよ」

魔王「それにしては誰もいないが」

女勇者「…何でだろうねー偶然じゃないかなー」

魔王(…そうだな、きっと偶然だ。うん、そう思っておこう)

女勇者「ねえ魔王、キスして」

魔王「ん?ここでか?」

女勇者「うん、ここで。この思い出の場所で。魔王との思い出も作りたい」

魔王「元彼を殺した場所でキスか…」

女勇者「元彼じゃないよ。彼氏だなんて思ったこともないもん」

魔王「そういう問題ではない」

女勇者「…ダメ?」

魔王「……いいが」

女勇者「やった、じゃあ」

魔王「あぁ」


目を瞑る女勇者にキスをする


女勇者「ん…んちゅ、んぅ…」


女勇者(戦士、見てる?僕は今キスをしているよ。君なんかとはしなかったキスを)
女勇者(魔王と一緒にいるととても幸せなの。戦士なんかといた時よりずっと…ずっと…)

女勇者(ねえ、戦士)

勇者「ねえ、戦士」

戦士「ん?何だ」

勇者「今日は太陽が笑ってる」

戦士「感情豊かなお天道様だな」

勇者「今日ってバレンタインだっけ」

戦士「いや、大分前たぞ」

勇者「バレンタインって何?」

戦士「知らずに言ったのかよ」

勇者「何?」

勇者「好きな人にチョコをあげる日」

戦士「知ってんじゃねえか」

勇者「戦士、あげる」

戦士「ぶっ!」

勇者「どしたの?顔が赤」

戦士「言っておくぞ。バレンタインは好きな人にあげる日だ」

勇者「戦士大好き」

戦士「がぁっ!ち、違う!男じゃなくて女にあげろ」

勇者「女より戦士のほうが好き」

戦士「そういう言い方やめろ!」

戦士「いいか、バレンタインの上げる対象の『好き』は『愛』のほうだ」

勇者「愛?」

戦士「そう。友人同士の好きとかでは無いんだ」

勇者「愛…って何?ねえ、戦士…愛、僕に愛を教えてよ…」

戦士「いやいやいや、無理、俺には無理、荷が重すぎる!」

勇者「…?」

魔王「ホワイトデーだな」

側近「そうですね。女勇者さんに渡しますか?」

魔王「それはもちろんだ。側近、クッキーの作り方でも教えてくれないか?」

側近「ええ。お菓子作り程度なら」

女勇者「僕はクッキーいらないかなあ」

魔王「だぁっ!いつの間に!?」

女勇者「そっきーん?魔王と二人きりでお菓子作りなんて妬けちゃうなあ」

側近「そ、それじゃ魔王様、わたくしめは半日有給取るんで!」

魔王「逃がすか!」

側近「ひぃ」

女勇者「大丈夫大丈夫、ただの冗談だよ」

魔王「」ホッ

側近「」ホッ

魔王「というか貴様、せっかくの好意をいらないとはどういうことだ。泣くぞ」

女勇者「魔王の泣き顔見たい…」ニタァ

魔王「」ゾッ

女勇者「や、やだなあ、また冗談だって、冗談」

魔王「そ、そうか冗談か…」

女勇者「僕クッキーよりデートしたいな」

魔王「まあ、それもいいが…」

女勇者「人間虐殺デート!」

魔王「何だその物騒すぎるデートは!」

女勇者「え?魔物なら日常茶飯事でしょ?」

魔王「なわけあるか!」

魔王「デートということは…二人きりか?」

女勇者「もちろん!」

魔王「無論簡単に落とせるようなところは」

女勇者「ダメ。僕たち二人が全力出して充分手ごたえがあるところで!」

魔王「無茶言うな」

女勇者「じゃあせめて僕たちが全力出しても半日は持つところがいい」

魔王「むしろハードル上がっているぞ!」

女勇者「探せばあると思うんだけどなあ」

魔王「該当無し。検索条件を指定し直せ」

女勇者「じゃあもういいよ…瞬殺にならなきゃ」

魔王「楽しみたいなら手加減しろ。特に広範囲呪文は自重しておいた方がいい」

女勇者「召喚魔法は?」

魔王「もっとダメだ!何召喚する気だ」

女勇者「宇宙の中心、原初の混沌の中核で沸騰し続ける盲目白痴の神。とか?」

魔王「やめろ。頼むからやめろ」

魔王「分かった…少し考えるから待っていてくれ」

女勇者「何で?」

魔王「各地を管理している上級魔物と連絡取る必要あるからな」

魔王「まあ、期待して剣でも磨いていろ」

女勇者「…うん、そういうなら期待して待っているよ!」

魔王「さて、どうするかな…」

側近「あんまり人間殺しすぎるのもまずいんですよね?」

魔王「そこはまあ、一定数残っていればいくらでも増えるだろ」

側近「あまり絶望させすぎると子を残すことさえしなくなりますよ」

魔王「洗脳すれば良かろう。そのために落とすは国の中核のみだ」

側近「王都のみ、ですか」

魔王「それも王都のみで充分手ごたえがある場所か…たった二人とはいえキツいな…」

側近「エリア9のフェルディナンド公国はどうでしょう?」

魔王「強いのか?」

側近「魔物たちの統治が未だ届いていない地です。もしかして、と」

魔王「ほう…そうだな、ちょっと攻め落としてみるか」

側近「行ってらっしゃいませ。せいぜい楽しんできてくださいな」

魔王「そういう時は『お気をつけて』ではないのか?」

側近「お二人なら気を付ける必要などないでしょう」

魔王「確かにな」

魔王「ということで決まったぞ」

女勇者「あの国かあ…強いのかなあ?」

魔王「知らないのか?」

女勇者「超秘密主義国家でさ。勇者一向と言えど深くまで入らせてもらえなかったんだよね」

魔王「それはもしかして…」

女勇者「うん、フィエリア国ぐらいの秘密部隊がいるといいなあ」

魔王「とても楽しそうだな」

女勇者「もちろん!」

フェルディナンド公国付近

女勇者「本当にここらへん魔物いないね」

魔王「この国を襲いに向かわせた魔物が次々消息を絶っている」

女勇者「おぉ!それは面白そうだね!どれだけ強い人間たちがいることか」

魔王「…これは」

女勇者「どうしたの?」

魔王「対魔物用結界だ。しかもかなり高レベルな」

女勇者「へえ…僕のかつての仲間の賢者が低レベルですら高度な魔術の知識が必要って言ってたけど」

魔王「ああ、この国にはかなり高度な魔術師がいると考えていいな」

女勇者「魔王大丈夫?」

魔王「当たり前だ。魔王を舐めるでない」

女勇者「舐めたい。ペロペロしたい」

魔王「そういう意味ではない」

魔王「では行くぞ」ザッ

女勇者「はー、いだだっだだだだあだ!」バリバリバリ


結界の中に入ると全身を打つ痛みが襲ってきたのですぐにそこから離れた


女勇者「な?え?あれ?これ魔物用じゃなかったの!?」

魔王「どう見てもそのはずなのだが…おかしいな」

女勇者「」ス

女勇者「ぎゃあぁああああ!」バリバリ!

女勇者「ふぇぇ、何これえ」

魔王「ううむ…何度調べても純粋な魔物にしか反応しないようになっているが…?」

女勇者「僕は人間だよ。魔王が大好きで魔物より人間を虐殺したい願望がすごく強いだけの正常で健全で勇者な人間だよ」

魔王「…」

女勇者「え、何その疑わしげな目」

魔王「ちょっとその眼を見せろ」顎クイ

女勇者「…はぃ///」ドキドキ


魔王「ふうむ。瞳に魔物の網膜パターンは混じってない」

魔王「気配もオーラも魔力パターンも人間のものだし」


魔王「血も舐めていいか?」

女勇者「う、うん、魔王になら全てを差し出せるよぉ///」ハァハァ


自分の指の腹をかみ切って出した血を魔王が舐める


魔王「うむ。人間そのものだ…謎だ。とても謎だ」

女勇者「?」

女勇者「」ワナワナ

魔王「おい?女勇者?」


女勇者≪外宇宙の深淵、混沌の最奥≫


魔王「おい!女勇者!」


女勇者≪我は今永劫の者を通して語りかける≫

≪邪神の中の邪神、原初の混沌の只中狂気の神殿の玉座にて座する盲目白痴の魔皇アザトホートよ我が呼びかけにこ≫

魔王「やめんか!一瞬で宇宙諸共滅ぼしかねないやつを呼ぼうとするな!我も死ぬわ!」

女勇者「はっ、それは嫌だ!」

魔王「ふう…心臓に悪いわ」

女勇者「くぅーっ、むかつく!」

魔王「そんなにか?」

女勇者「そんなにだよ。まさか僕に突破できないバリアがあるなんて!魔王にも疑われるし」

魔王「疑ったというかなんというか」

女勇者「だからこの国は滅ぼすんだよ」

女勇者≪生ける炎クトゥグァよ…≫

魔王「だからことあるごとに邪神呼ぼうとすんな!グレード下がったとはいえ邪神は邪神だ!」

女勇者「じゃあどうするの?これ」

魔王「ちょっとどいていろ」

女勇者「う、うん…」


魔王が右腕を振る。それだけでバリアは消え去った


女勇者「あ、非物質破壊効果…」

魔王「そういうことだ。これで行けるな」

女勇者「魔王すごい!」

魔王「くっくっく、惚れ直したか」

女勇者「うん!初めて僕より実力が上な部分を見たよ!誰でも長所はあるもんだね!」

魔王「」

魔王「拗ねた。帰る。修行してくる」

女勇者「わわ、ちょっとまって」

魔王「んむ?」


チュ


女勇者「僕に勝てたご褒美♪」

女勇者「これが欲しかったんでしょ?」

魔王「」


魔王「違うわ―!!」

女勇者「…あれえ?」

魔王「もういい、我が女勇者に勝てないことは十分分かっておる…はあ」

女勇者「無理に強くあろうとしなくても十分強いしかっこいいのに」

魔王「魔王として、男としてのプライドというものがあってだな…」

女勇者「…じゃあ、僕をリードしてよ」


手を魔王に向かって伸ばす


魔王「…ああ」

その手を取って歩き出す


魔王「国を落とすぞ」

女勇者「うん」

兵士「王様、バリアが破られました!」

王「ふむ。また穴が開いたか。すぐに術師に修繕させよ。それと穴を開けた魔物が近くにいるやもしr」

兵士「いえ、それが、バリアがすべて一瞬にして消え去って」


「消え去った?」
「全てだって?」
「あの巨大結界が?」
「どれだけ時間と苦労を掛けて張ったと思ってんだ」


王「まさか…」


近くの国のいくつかが一夜で消えた話を思い出す

心臓が早鐘を打つ。眩暈と吐き気がする

今気づいた。国を包み込む暗雲のような邪悪すぎる気配


王「…まさ、か」

女勇者「ああ、たのっしぃなあ。僕今最高に無邪気な顔してると思うよ♪」

そんなことを言いながら逃げる人々を切り殺す女勇者

魔王「無邪気…無邪気、か…?」


女勇者「剣が肉を裂き、骨を割る、血飛沫よ舞え、悲鳴よ歌え!僕は死骸の山を築く!」


まあ、楽しそうではある

魔王(まあ、遊ばせておこう。今に兵士たちも来るだろう)

女勇者「ねえ、魔王はつまらなくないの?殺さなくて」

魔王「我は弱い奴を倒しても楽しめぬ。もっと骨のある奴が来るまでお前の楽しそうな顔を見ているさ」

女勇者「そ?じゃあ僕だけ楽しんでるねー。楽しいよぉ」


ズチャ、ズチャ、ズチャと既に肉塊になった元人間を踏みつけながらこの上ない笑顔を見せる女勇者

王城

兵士「王様!東の地区で大量殺戮が確認されたと」

王「くっ…そんなまさか、来たのか」

兵士「来た、とは?魔物ですか?」

王「魔物ならまだマシだ!この最悪の気配が分からぬのか!」


こんな気配は感じたことが無い
昔幹部の魔物を見たことがあったがこれに比べれば蚊が刺す程度のものだ

これほどまでに凶悪で邪悪な気配、恐ろしい。こみ上げてきた吐き気を抑えきれない


王「魔王クラスでもきたというのか…」

女勇者「ねえ魔王、そういえば何で魔力とオーラを隠しているの?」

魔王「当たり前だ。戦士ならともかく、我が気配を解放したら人間が絶望でショック死する」

女勇者「それで完全に消し去っているんだ」

魔王「ああ、逆に言えば我はただの人間としか見られぬだろうな」

女勇者「僕としてはその人間姿嫌いなんだけどなあ。魔物姿の方が何百倍もかっこいいよぉ」

魔王「では聞くぞ。あの姿をそこら辺のどうでもいい人間に見られてもいいのか?」

女勇者「…やだ。あの姿は僕が独り占めしたいもん!」ギュー

魔王「…独り占めはさすがに不可能だぞ」

一時期ヘタレだなんだと言われていたわr…魔王様の株が上がっているようで我は満足だぞ

兵士長「王様、念のため偵察隊を派遣しました。出来るなら殲滅するようにと」

王「ダメだ!今すぐ呼び戻せ!」

兵士長「え?」

王「相手の力量も見極めずに突っ込む奴があるかバカもの!」

兵士長「王様はその敵を知っていると?」

王「違う…しかしこの気配、たった一つだが巨大で恐ろしい気配だ。ただの偵察隊が勝てるはずもない」

兵士長「なっ…分かりました」


連絡用水晶を取り刺す


兵士長「アルフ、聞こえるか」

『はい隊長、目標を発見しました…いえ、少女と青年です。もしかしたら逃げ遅れたのかもしれません、保護します』

アルフ「もしかしたら逃げ遅れたのかもしれません、保護します」


女勇者「魔王、来たようだよ」

魔王「ああ。どれ」
ようやく剣を引き抜く魔王

アルフ「助けに…き、た…」

女勇者「分かるよね?殺したのは僕たちだよ」
血に塗れた剣を偵察隊に向ける


魔王「今すぐ我らをやらぬと被害は増えるばかりだぞ?」


兵士長は水晶を通じ、アルフに今すぐ戻ってこいと伝える。しかし届かない、聞いていない

アルフ「いいだろう。殺しはしない。牢で罪を償ってもらおう」

女勇者「ふふ、ふふふ」

魔王「相手の力量も計れぬというのは不憫だな」

アルフ「数の暴力というのはあまり好きではないが、そこまでやってしまった以上仕方ない」

アルフ「全力でかかれ!押さえつけろ!」

魔王「どうする?」

女勇者「魔王、どうぞ?」

魔王「では」


襲い掛かってきた5人を魔王が一太刀に切り伏せる

その後ろから女勇者がアルフに切りかかる


アルフ「っ!」

女勇者「あはっ、どうしたの?動きが固いよ?」

わざとアルフの身体に当てず反撃を誘う。しかし


アルフ「よくも仲間を!」ヒュン

女勇者「…遅い剣」

兵士長「アルフ!戻ってこい!頼む!おいアルフ、応答しろ!アルフ!」


『判断ミスだったかな、僕一人で全員を相手取ればまだ楽しめたかもしれなかった』

逃げ回る音と共にアルフの短い悲鳴が聞こえた


兵士長「アルフ!応答しろアルフレッドォォオオオ!」


兵士長「…そんな…アルフ…」


確かに最高とは言えない腕だったかもしれない

しかし彼は間違いなくこの国の上級戦士であった。偵察隊とはいえ選りすぐりの兵士だったのに…

そんな彼が敵の特徴を報告する間もなく瞬殺されるなど…


王「…兵士長…その…」

兵士長「…そんな」


―ツ…―

水晶に再び魔力反応が戻る


兵士長「あ、アルフ……か…?」





『今から王城に向かうよ。戦闘準備して待っていてね』




その一言の後、水晶が砕け散る音と共に通信は途絶えた

魔王「怒っているのか?」

女勇者「機嫌が悪いの。何あのおっそい剣、やる気ないならとっととくたばれっての」

魔王(普通の人間からしたら達人級のはずだが…)

女勇者「もう、期待して損した」

魔王「…よしよし。機嫌治せ、な?」ナデナデ

女勇者「うん、分かった。ありがとう、魔王、僕ちょっと元気出たよ」

魔王「うむうむ、笑顔のお前は可愛い」

女勇者「じゃあ!景気づけに一発」

魔王「え」

女勇者≪全てを滅ぼす大いなる災厄よ!≫

女勇者≪狂気なる御力を添え、天より降り注げ!≫

女勇者≪滅帝皇(メテオ)≫

女勇者「あはははは、世界が焼ける!空から降り注ぐ大いなる災厄が命を絶やす!悲鳴と絶望が全てを塗りつぶす!」

魔王「………我の計画が…計算が…」


国は丸ごと滅んだ


女勇者「大丈夫だよ?デザートは、王城はとってある」


魔王「そういう問題じゃないんだがなあ…」

魔王(城を落として主を無くした民を生かさず殺さずで家畜化する計画がパーだな、はあ)

王城


兵士長「王様!今すぐお逃げください!」

王様「うつけもの!王たるものが逃げ出すなぞ―」

兵士長「王だからこそです!王無きして民はあらず!あなたさえいればこの国は…まだ存在できるのです!
      どこかに潜み、機をうかがうのです!」

王様「っ…」



ドガァァァアアアンン



世界が揺れた。そう思うほどの揺れが襲い来る


「あぁ…あぁぁぁぁぁ」


誰かの絶望した声が場内に響く

窓の外を見ると、世界が滅びる様が見えた

城門が爆発魔法で打ち破られた

炎が蛇のようにのたうちながら全通路を飲み込んでゆく


全てを灰とした後に生き物は唯の二人

すなわち、女勇者と魔王だ


女勇者「人が焼け焦げる匂い、素敵」

魔王(鼻が曲がる…)

玉座の間


女勇者「はろー、パーティホストの皆様方」

兵士長「貴様ら等招待した覚えはない!」

兵士「…本当に、人間だったなんて…あんなことができるやつらが」

女勇者「ふふ、そう見える?」

兵士長「」ゾッ


女勇者「さて、僕たちは」

魔王「何者であろう?」


兵士長「き、貴様らが何者なのかなど関係無い!今すぐ叩ききってくれる」チャキ

女勇者「」ニヤリ

女勇者「魔王、真なる姿を見せてあげて」

魔王「ふむ、では」


ズォォオオオオ


兵士たちの目に見えて、その場の空気が変わる

魔王から出る闇の瘴気が大気中を穢す

おぞましい…どこまでも深く、どこまでも恐ろしいその姿


魔王・魔物体


兵士たちの心は絶望に塗りつぶされ。その瞬間、彼らは心身共に


粉々になった





兵士長(大丈夫…王よ…あなたさえ生きていてくだされば…)

兵士(我々は…喜んで…足止めにでも、生贄にでもなりましょう…)




王は隠し通路をひたすらに走っていた

生き残らなければ

生き残らなければ


あそこまで皆がやってくれたのだ。生き残らなければ全てが無に帰す

それだけは、やってはいけない

王「あ…あぁ…」ガクガク

女勇者「うふふ、どう?今の気分どう?今どんな気持ち?」

女勇者「貴方の国はもうどこにもない。人も、建物も、土地も、すべて燃やし尽くした。燃やし尽くした!」

女勇者「貴女はきっと全てを託されて逃げ出したんでしょ?不名誉な"逃亡"という手を使ってまで」


女勇者「でも、それも全てここで終わり。もう詰みだよ。全てを背負った貴方はここで全てを絶やす」


王「うわ…ぁ、ぁぁぁぁぁぁあああああああああ!」

女勇者「それが冥途の土産だよ。打ち砕かれた希望の残りカスと膨大な絶望を抱いて堕ちろ」

ズシャ、ブシャァアア

ボギャ、ブヂュ、グチュ、ズチュ、ドシャァ

ブシュゥ、ドシュッ、グシュ

ギリ、ギリリ、ミチミチ…ミチミチ、ブッチィ・・・

ブチブチ、ブチ

ズチュ、ズチュ、ブチュ


「あはははははは!」



とある国にて


王「…最近、昔のことをよく思い出すんだ」

王子「…は?」

王「昔のお前は勤勉だったな。何でも学び、何でも覚えた」

王「しかし今のお前は自堕落に時間を浪費するだけだ」

王子「ちっ、説教かよクソオヤジ」

王「そんなに説教が嫌か、そんなに王になるのが嫌か」

王子「どっちもごめんだね。俺は王になんかならずに一生遊び歩いてやる」


王「…勘当だ」

王子「なっ!」

王「王になどなりたくないのだろう?金は大量にくれてやる。出て行け。今すぐ消えろ。この大陸から出て二度と近づくな」


王子「…そうかい」

王子「そうかいそうかい!分かったよクソオヤジ。金は貰ってやる!二度とこんな国帰ってくるか!」

バタン!


じいや「良いのですか?王様」

王様「…最近、良く昔のことを思い出すんだ」

王様「わしの子供時代。何もしなくても大人になると思っていた」

王様「少年時代、好きなことをしてすごし、父王に逆らい、ちょうど王子と同じく反抗期だった」

王様「即位したとき、この国を幸せにしようと心に決めた」

王様「あの子が生まれたとき、立派な王になってほしい、それでも自由に育ってほしいと悩みながら妃と一緒に育てた」

王様「そして今…未来が見えるんだ」


王様「近い将来、果てしない厄災がやってくる」

王様「全てを飲み込む巨大な邪神…それがやってくるんだ」

じいや「そんな大きな魔物が…」

王様「そうだ…そんな気がするんだ」

じいや「大丈夫ですよ王様、ただの気のせいです…」

王様「そうだろうか…しかし…」ガクガク

じいや(王様…こんなに震えて。まるで、悪夢を見た子供のように…)

王様「どんなに恐れても…わしは王だ…顔であらねば、それに、何も確かではないのだ」

王様「唯の妄想で…国民全てを非難させることはできない、不安がらせることは出来ない」


王様(王子…絶対に戻ってくるな…お願い、お願いだから)


王様「女神よ…息子と、我がアリクトア国の未来に…光を…安寧を…」

×非難
○避難

後日・魔王城


魔王「強くなりたい」

側近「どうしたんですか?わざわざ女勇者さんがいないことを念入りに確認してまでそんな呟きを」

魔王「女勇者より強くなりたいんだ」

側近「無理でしょう」

魔王「そんな即答しなくても」

側近「いいですか?例え話をしましょう。魔王様は既にレベル100です。人間を一晩で全滅させるなら60で充分です」

側近「女勇者さんは1万です。レベルカンストしている魔王様じゃどんなに努力しても届きませんよ」ヤレヤレ

側近「オーケー?」

魔王「………………………く…ぅ…」

魔王「しかし!」

側近「初めて会ったとき瞬殺されましたよね?」

魔王「あれからフィエリア聖堂師団長とか取り込んで強くなったはずじゃ」

側近「あんな雑魚取り込んだところでレベル1も上がりませんよ」

魔王「確かに雑魚だったが…」

側近「だいたい、女勇者さんより強くなってどうする気ですか?」

魔王「男として情けないではないか!魔王以前に!」

側近「…くだらね。…です」

魔王「本音を言うな…はーあ、いっそのこと禁断の力にでも手を出してみようかな…」


女勇者「えっ!?何それ何それ!」

魔王「うわぁっ!どっから出てきた!」

魔王「えと…それは…」

女勇者「うん、禁断の力って」

側近「おとぎ話です!御伽噺です!遥かなる太古の永劫なる過去の彼方に存在した伝説の幻の力の宝玉に封印されたる禁断の力を手に入れられるとか言う不確かで不確実で不確定な話です」

女勇者「そうなの?魔王?存在しない伝説?」

魔王「そ」

女勇者「まさか、僕に、嘘は、つ か な い よ ね 」

魔王「…………誰も手を出してはいけないという禁断の力がとある場所に眠っているんだ
    それを手にしたものは恐ろしい力を手に入れられるが、共にその"存在"に試されるという」

魔王「そしてその存在に乗っ取られるか、死ぬか、力を完全にモノにするか。3つに一つだそうだ」

側近「何で言っちゃうんですか!」

魔王「…すまん」


女勇者「今すぐ案内して!」

魔王「……………ダメだ。禁断の力は封印しておくべきものなのだ」

女勇者「…魔王」

魔王「………………」

側近(ま、魔王様!打ち勝つのです!その恐怖に!)

エロ・グロSSは新天地に追放されるらしいけどこのSSは大丈夫だろうか

基本エロ無しで書いているけど一部アウトな気が…

王様グチャグチャは音だけだからまだしも女騎士のシーンがちょっとアウトくさい?

まあもしかしたらそっちに強制的に飛ばされるかもしれないということはご了承ください

魔王「…側近、我は…ゴールしても良いだろうか」

側近「だめですぅぅううう!」

魔王「だめだ、笑顔の女勇者に見つめられると(怖くて)隠し事などできない」

女勇者「そうだよね、僕の笑顔は可愛いものね、この可愛さにほだされちゃうよね」


側近(何故でしょう。会話にズレがあるような?)


魔王「…すまん、場所は」

女勇者「うんうん」

~弥終(いやはて)の洞穴~


女勇者「絶望を呼べー♪ 虚しさに酔い兵達が舞う♪」



側近「…歌まで歌ってご機嫌ですねえ…」

魔王「あれを封印しておくのは我が魔王家の使命だったはずなのだが」

側近「良かったですね、使命から解放されて」

魔王「なぜこうなった!」

側近「あなたのせいです!1から100まで!」


女勇者「魔王、はやくはやくー」

女勇者「何にも出てこないねえ」

魔王「普通たくさんのモンスターが犇めき合っているはずなのだが」

側近「女勇者様の力を恐れて出てこない…あ、後魔王様の力も恐れているのでしょう」

魔王「おい、今我のことを忘れていなかったか」

側近「何言っているのですか、魔王様も魔物や大抵の人間に比べればめちゃめちゃ強いですよ。はい」



側近「女勇者さんに比べたら霞んでしまうだけで」

魔王「…禁断の力…」

側近「やめておきましょう」

女勇者「おお、これが件の扉だね。この先に…禁断の力が」


魔王「ああ…ついにここまで来てしまったのか」

側近「ご自分のせいなのですからそんなに震えないでくださいよ」

魔王「貴様ももう少し責任持つとか止めるとかしろ」

側近「そんな義務はありませんしそんな度胸もありません」


女勇者「さーて、景気よくいってみよー爆破魔法!」

チュドーン

魔王「神聖な封印の扉を吹っ飛ばすなぁああ!」

このSS速報VIPはエロ・グロ完全禁止にしてエロ・グロあり板
http://ex14.vip2ch.com/news4ssr/index.html
に隔離するって話らしい

現行スレは強制的にそっちに移動させられる

その場合このページにはリダイレクトやら誘導URLやら張られるらしい
もしかしたら專ブラではリダイレクトされないかもとかも聞いたけど


どにかくこのスレがスレ一覧から消えたらそうなったことを疑って向こうを覗きに行ってみてくれ

魔王「あぁ…美術的にも美しかった術式が文様が書かれた扉が…」

側近「もったいないですねえ」


女勇者「…見つけた、これが…禁断の力…」


そのどこまでも続くかのような広大な部屋には一つの銀河が形作られていた

旋回する暗黒星雲…吹きすさぶ原初の混沌…その狂気じみた光景の中心にそれはあった


惑星のような巨大な圧縮されたエネルギー。それが禁断の力の正体だ


魔王「すごいな…これがそうなのか」

側近「すいません、私外に出てます」

女勇者「どうしたの?」

魔王「側近には刺激が強すぎるのだろう。これほどまでに巨大なエネルギーだ」

女勇者「ああ…これが…僕のものに…」

魔王「放っておく気はないのか?」

女勇者「あるわけないじゃん」

女勇者「さあ…」


女勇者「僕のものになりなよ」


ゴウ!


巨大なエネルギーが女勇者に襲いかかかる

魔王「女勇者!」

女勇者「え?何?」

魔王「…は、ははは」


既に女勇者はそれを飼い慣らしているかのように指先で回し、自分の中に入れたり出したりを繰り返していた


女勇者「ねー、試されるんじゃなかったの?」

魔王「…さ、流石女勇者だな。試されるまでも無かったということだろう」ナデナデ

女勇者「むう、物足りないなあ」

側近「終わったんですか?」

女勇者「うん!」

魔王「ああ、終わってしまったよ」

女勇者「ふふ、うっとりするくらいの巨大なエネルギー」

側近「一体何に使うやら…」

女勇者「そりゃもちろん…うふふ」

―――――
―――

魔王の部屋にて

女勇者「使いたい使いたい使いたぃぃいいいい!!」

魔王「だめだ、無意味に使うんじゃない。駄々を捏ねるな」

女勇者「せっかく手に入れた力だよー、使いたいよー」

魔王「世界滅びるからやめろ、お願いだから」

女勇者「じゃあせめて無駄打ちしたい」

魔王「何がせめてなのか分からんが空に打てよ?」

女勇者「うん?空ならいいの?」

魔王「それなら被害もでまい」

女勇者「うん、わかったよ」

女勇者「試し打ちだし呪文詠唱もいらないよね」

魔王「そうだな」

魔王(あったら怖いし)

女勇者「すー…てーい★」



▽女勇者は破滅の波動を空に打った

▽満天の星空が暗黒に変わった


魔王「…は…?」

女勇者「すごい!星々をぶっ壊した!」

魔王「…天文学を学んでいなくて良かったと思ったのは初めてだ」


学んでいたならとんでもない範囲の攻撃力に恐怖していたかもしれない


側近「魔王様、邪神の手綱なんて扱えるんですか?」

魔王「邪神ではない。人間だ。辛うじて人間だ」

女勇者「すごーい!僕すごーい」

※女勇者が取り込んだのは時間と空間の神ヨグ=ソトホートの欠片です

側近「魔王様、報告に上がりました」

魔王「ん?何のだ?」

側近「魔王様に対する意識調査です」

魔王「ああ、そうか。ご苦労、聞かせてくれ」


魔王とは血によって受け継がれるものではなく、前魔王を倒したものが時期魔王になる

そのため、そういった考えを持った魔物がいないかどうかの意識調査をたまにしているのだ


魔王(といっても我は性格・強さ共に全魔物に支持されているからする必要は特に無いのだがな)

側近「支持率が急激に下がっています」


魔王「…は?」

側近「皆さん本能的に魔王様より女勇者さんの方が遥かに強いことに気づいているようでして」

魔王「あれか…あの禁断の力のせいか…」

側近「いえ、それよりずっと前から」

魔王「」


側近「まあ、下剋上をしようという思想を持っている方は一切見当たらないので大丈夫だと思いますよ」

魔王「ちなみにその支持率は無くても下剋上をする気が無い理由は」

側近「  『魔王妃様に生き地獄を味わわされる…』ガクガクブルブル  だそうです」

魔王「…だろうな」

数日後

魔王「我は少し留守にする」

女勇者「僕も行く!」

魔王「ダメだ」

女勇者「何で!僕も付いて行きたい」

魔王「王妃は強さよりも良き伴侶であることのほうが大切だ」

魔王「そして良き伴侶とは旦那が待っていてくれと言えば無事を祈って待っていてくれるものだ」

魔王「お前は、もちろん良き伴侶でいてくれるな?」ギュ

女勇者「は、はい…旦那様♡///」ギュ


側近「おやおや」ニヤニヤ


魔王「では、留守を頼むぞ。女勇者、そして側近」

女勇者「はい…♡」トローン

側近「承りました。魔王様」

魔王「さて、ここだな」


人間界の中でも指折りの巨大な森

ここは聖地とされ、人間が近寄ることは滅多に無い


それもそのはず


魔王「くく」


巨大な闇の力が"それ"を隠す結界を打ち破る

その先に見えたのは


魔王「妖精の国」

邪悪なる魔物の王が聖なる妖精の地を歩くのはそれだけで穢れを振りまいているにも等しく、すぐに気づかれる


「我々は貴様を歓迎しない。即刻立ち去れ、魔王」

魔王「邪険にするな。我々は同じ"王"ではないか、対等の立場で話したまえ」

魔王「妖精王」

妖精王「魔王如きが何しに来た」

魔王「要求は一つ。我が軍門に下れ」

妖精王「承諾するとでも思うなら貴方は愚王のようだ」

魔王「くく、まさか。話だけで纏まるとは思っておらぬよ」

妖精王「ならばわしを人質にでもとるか?卑怯な奴だ。それこそ王のすることではない」

魔王「それも違う」

魔王「貴様らの性格はよく分かっておる。気高く誇り高く、そして合理的」

魔王「例え人質に取ったところで誰も動こうとはしまい
    見せしめに殺したところで個体数が減るだけで全滅するまで座して待つのだろう?」

妖精王「ふん、よく分かっておるではないか。全滅させる気が無いなら帰れ」


魔王「く、くくく。ただ成功するかもわからない話し合いするためだけに魔王直々に来たと思っているのか?」

妖精王「何…?」


魔王「ダークフェアリーは知っておろう?」

妖精王「魔の力に魅入られ、強さを求めて闇に溺れた忌まわしき元同族よ」

魔王「ふ、今から貴様ら全てを強制的にダークフェアリーに変える」

妖精王「っ!…まおっぉおおおおお!」


妖精特有の魔力を使わない自然の魔法が魔王に襲い掛かる

しかし魔族の王たる魔王に効くはずがない

魔王からあふれ出した闇の魔力が妖精の国全体に広がり、瞬く間に包み込み…そして


魔王「くははは、我は魔王なるぞ」

魔王「万物を穢す闇に生きる魔族を束ねる魔なるものの王にして、邪悪なりし巨悪の存在」

魔王「生ける災厄が来たからにはタダで済むはずが無かろう?」


すぐにこの聖なる森は有数の邪悪な魔の森として人間に避けられることになるだろう

全体に満ち満ちていた神聖な気配は邪悪に染まり、加護を受けていた森の生き物たちが騒ぎ立てる


"森の王"と呼ばれる巨大な狼が復讐とばかりに魔王に襲い掛かる


魔王「相手を見てから噛み付くがいい。犬如きが」

が、それも次の瞬間には魔物として新たなる生を受ける


魔王の足元からは毒の花が芽吹き、闇の瘴気を吹き出す

魔王城


女勇者「さて側近!」

側近「…な、何でしょう…?」

女勇者「人間の町を滅ぼしに行こう!」
―――――
―――

回想

魔王「女勇者が人間を虐殺したいとか言い出したらこのリストから選んで誘導してくれ」

側近「今回は用意がいいですね」

魔王「今回は?…まさか我が知らぬ内に町を滅ぼしたり」

側近「してません」

魔王「そうか、なら頼む」

―――
―――――
側近「いいですよ、それではちょうどいい場所があるので」

女勇者「え?どこどこ?」

アリクトア国

側近「この国ですね」

女勇者「ぶっつぶしていいの?」

側近「そうなります。ただし」

女勇者「ただし?」

側近「全員生きて確保すること」

女勇者「やだ」

側近「ですよねー」

側近「なら全員生き返らせればいいんですよ。殺してから」

女勇者「えーMPもったいないー」

側近「時間の神の力を取り込んだと聞きましたが?」

女勇者「あ、そうか」ポン

側近「で?始めるんですか?」

女勇者「もちろん。手始めに精神攻撃でいこうか!」

側近「またSAN値テロを…」

女勇者「大丈夫大丈夫、今回は呪文詠唱無しだから」

側近「…」

女勇者「さあ、"素敵な悪夢を 甘美な絶望を おぞましき痛みを"」

側近「やっぱり呪文詠唱はあるんじゃないですか」

女勇者「え?たった三言の短い詠唱じゃ問題無いよね?」

側近「…あ、はいそうですか。あなたがそう言うならそうなのでしょうね」

キャァァアア

イヤァァアアア

ギャァァァアア

側近「あぁ…心地好い悲鳴です」

女勇者「側近ちゃん、よだれよだれ」

側近「は」ゴシゴシ

側近「ところで、これは幻覚ですか?」

女勇者「そうそう。無数の虫が穴という穴、口や鼻や耳や毛穴から終わることなく入り込んでくる幻覚」

側近「地味におぞましい幻覚ですね…」

女勇者「次に自分の好きな人に一番言われたら嫌なことを叫ばれ続けながら手足を無理やり引きちぎられて殺される幻覚を見る
     好きな人が居なかったら親に」

側近「それはもしかして女勇者さんオリジナルの…」

女勇者「その通り!よくわかったね」

側近「そりゃ…絶望増し増しな内容ですし」

側近「9割ぐらい倒れましたよ」

女勇者「精神が焼き切れちゃったみたいだね」

側近「では生き返らせてください」

女勇者「はいはーい」

側近「ちなみに記憶は」

女勇者「もちろんそのままだよ。さっき見た幻覚も」

側近「あんなのを見た記憶を抱えて生きていかなきゃいけないなんて…」

女勇者「素敵でしょ?」

側近「自分のことではないので素敵ですね!」

今日はここまで

女勇者「飽きた!帰ろう」

側近「可哀想な人々…」

女勇者「あ、全員生きて捕獲だっけ?」

側近「覚えていたんですね。意外です」

女勇者「魔王の命令は順守するよ」

側近「ダウトです!」

女勇者「連れ去るだけなら簡単だよ。広大範囲空間転移術式展開」

側近「またすごい魔法を…」

女勇者「でも僕の爪痕は残しておこ」


女勇者≪狂気に満ちたるこの世界≫

≪滅びの光、安らぎの闇≫

≪何もかもをも飲み込み滅ぼしたまへ≫

女勇者≪破滅魔法"滅び"≫


天空におぞましく濃い瘴気の闇と何よりも眩く輝く光が混ざり、混沌を形成し

すさまじい音と共に国に降り注いだ

女勇者「さ、今度こそかーえろ」

女勇者「ただいまー、魔王はー?」

魔王「いるぞ」

女勇者「抱きしめてー」

魔王「いい子にしていたか?」

女勇者「うん!」

側近「…一応、ですが言いつけは守っておられました」

魔王「ならよい。ほら、ここへこい」

女勇者「はーい」


座る魔王の膝の上に座る

女勇者「ああ、魔王の鉤爪付きの手で撫でられるのさいこー」

魔王「傷ついても知らぬぞ」ナデナデ

女勇者「えへへ、魔王に傷つけられるなら喜んで~」ニマニマ

魔王「ふふ、しようの無い奴だ」ナデナデ


側近(こうしているとほのぼのイチャラブカップルなんですけどね…)


女勇者「ねえねえ魔王、次はどの国の人間を大量虐殺する?」

魔王「そうだなぁ…」


側近(…うん、ほのぼのイチャラブカップルですね)

その夜

王子「…帰ってきたぜクソ親父」


数年前クソ親父に勘当されてからずっと海外に逃げて暮らしてきた

苦しかった、惨めな乞食のような真似までして生に食らいつき
お人好しな貴族に拾われるまで地を這いつくばるようにして生きてきた

なんとか使用人の身から成り上がり、ご主人様の交友関係を利用して人脈を増やしていった


たった数年、それだけであれほどの軍勢を引き連れるようになったと親父が知ったらどう言うだろう

もうすぐアクトリア国が見えてくるはずだ

この立派になった身なりを見せてやろう。この貴族指定騎士の紋章を見せてやろう

アリクトア国?

>>669
うわぁ間違えたー

王子「………は?」


一面に広がるのはただの廃墟

無事に残っている建物は無く、どれもが無残に破壊されている


王子「…間違ったかな、ありえないよな…流石に」


一部は巨大な穴が開き、地面が抉られていた


王子「…戦争…でもこんなになるものか?何が…あったんだ」


それでも違うと。この国はアリクトア国ではないと…信じていた



「ようこそアリクトア国へ」


その看板を見るまでは


王子「あ、あぁ…ぁぁあああ」


ここは…本当に…

王子「何で…何が、何があった…」

王子「知らなきゃ…調べなきゃ…」


ふらふらと立ち上がり、周辺諸国へ調査しに行くことを決めた

絶対に突き止めてやる

絶対に…絶対に…


王子「許さない…」


絶対に仇を取る

―――――
―――

女勇者「魔王~♪」ゴロゴロ

魔王の膝の上で猫なで声を上げながら甘える女勇者とそれを撫でる魔王


側近(仕事を言いだしづらい雰囲気です…)

側近「あの、まお―

女勇者「」ギロ

側近「…」

側近「あの」

女勇者「…魔王~」

魔王「はいはい。存分に甘えて良いぞ」ナデナデ

側近「しょうがないですね。また後で来ます」

魔王「いや、良い。話せ」

女勇者「え~、仕事なんていいよ~」

魔王「いいわけあるか。貴様も我の妃になる気ならそういうところはきちんとせねば」ナデナデ

側近「撫でながら言っても説得力は皆無ですからね」

女勇者「そういうところも好きだよぉ~」

側近「じゃあもう話しちゃいますよ」

女勇者「」ギロ

側近「睨んでもダメです」

女勇者「え~」

魔王「『え~』じゃない」ナデナデ

女勇者「魔王の手気持ちいい~」

側近「…」

側近「~と、そんなところです」

魔王「手こずっている人間の地域や国がまだある。か」

側近「世界はまだまだ広いですからね。私たちが関知していないところがあっても不思議ではありません」

魔王「女勇者は…」

側近(当然滅ぼしに行こうとか…)

女勇者「今は気分じゃないなあ」

魔王「!?」

側近「え」

女勇者「なにさあ、その反応。僕がいつでも滅びを望んでいる破壊思考だと?」

側近「違うんですか?」

魔王「違うのか」

女勇者「」カプ

魔王「噛むなっ」

女勇者「」チューチュー

魔王「吸うなっ」

女勇者「側近にも…」ジィ

側近「え、私にも甘噛みするんですか?」

女勇者「そんなところ、そんなところ」シュィィイイイイ

側近「だったら何で魔力練ってるんですか!」

魔王「殺すなよ」

側近「注意ではなく止めてくださいよ!」

女勇者「滅んでしまえっ!!」ゴォォオオオ

側近「やっぱり破壊思考じゃないですか!」


「ぎゃぁぁああああ」

側近「けほっ…そろそろ"死"に耐性ができそうです…」

女勇者「そしたら生物としての進化だよ。やったね」

側近「やったねじゃないですよ!」

魔王「仲がいいな」

側近「殺されてるんですけど!?仲が良いとは言えませんよ!!」

女勇者「僕たち仲良しだよ?ねー」ギュゥ

側近「ねーじゃないですっ!」

―――――
―――

魔王「そうか。そんな時期か。くく」

女勇者「何々?」

魔王「祭りだ!」

女勇者「おお~」

側近「収穫祭です。女勇者さんも是非に」

女勇者「収穫祭かー、さぞ平和で盛り上がってる祭なんだろうな」

魔王「まあそうだな」

側近「魔王城中心で開かれる祭りでは最大の規模だな」

女勇者「へえ」

側近「はい。では準備に勤しみましょう」パン

女勇者「がんばれー」

魔王「貴様もだぞ」

女勇者「え」

側近「王と妃が率先しないでどうするんですか。主催者なんですから」

女勇者「めんどくさーい」

魔王「これも王と伴侶の務めだ。分かってくれ女勇者」ギュ

女勇者「っ///」

女勇者「も、もうしょうがないなぁ。伴侶としてしっかりしなきゃなぁ///」

女勇者「とりあえず臓物を飾り付けようかっ!」

魔王「なんでそうなるっ!」

女勇者「魔界のお祭りだよ?魔王城でのお祭りだよ!臓物と人間の頭がい骨で飾り付けないで何するってのさ!」

魔王「それはもはや偏見だ!」

女勇者「禍々しくいこうよ!」

魔王「分かっているのか!収穫祭だぞ!収・穫・祭!」

女勇者「だから人間という獲物の収穫を祝ってさ」

魔王「しかし、しかしだなぁ…」

側近(あ、揺らいでる)

女勇者「ねえ魔王、僕の提案はダメなの?」ウワメヅカイ

魔王「…………」

側近「魔王様、我を強く保ってください。ほら頑張って」

女勇者「魔王ぅ…」

魔王「…ぐ、ぬぬ…」

側近(あ、この流れ、何かデジャヴ…)

魔王「…分かった」

側近「ストップ!ストップ!」

女勇者「ちぇ…」

魔王「しかし…しかしだな…」

女勇者「そうそう。僕のお願いだもんねー?」スリスリ

側近「魔王様?」

魔王「ぐ…ぅ…板挟み…」

側近「悩むところじゃないでしょう!」

女勇者「悩む必要なんてないよ?まーおう」ギュ

魔王「…良い匂いがする」ギュ

女勇者「わっ…えへへ、そうかなぁ///」

側近(堕とされましたね)

魔王「よし決めた」

女勇者「流石魔王!」

側近「魔王様…」ジィ

魔王「2択で城内アンケート取ってくる!これなら後腐れなく―

女勇者「がぅっ」ガプ

魔王「あだっ、何故噛む!」

側近「そういうのを優柔不断って言うんですよ!」

魔王「やめろ、お前、王に対してビンタをかます体勢をとるんじゃない」

側近「教育係として久々の指導です!」

~その後~

魔王「女勇者の案が採用されてしまった…」

女勇者「皆わかってるねえ」ウンウン

魔王「何故だ…何故皆血に飢えているんだ」

側近「魔物の性(さが)ですかねえ」

魔王「問題はその魔物の性を女勇者の方が強く持っていることだ」

側近「魔王様にそれが弱いのも問題ですね」

女勇者「その分を僕が補うからいいよね♪」

魔王「補って余りあるわ!」

魔王「で、本当にやるのか…?」

女勇者「もち♪」

魔王「…」

側近「そんな縋るような目で見られてもダメですよ。アンケートまで取ったのに中止じゃ王として立つ瀬がありません」

魔王「…だな、人間牧場(占領した国)から取り寄せてこい」

女勇者「却下!」

魔王「…え?」

女勇者「どうせなら狩って来よう!今すぐ!」

魔王「」

魔王「か、狩ってくる…とは…」

女勇者「もちろん人間だよ?」

魔王「…我と貴様でか?」

女勇者「いや、どうせなら魔物軍隊で行こう!」

魔王「皆を巻き込む気か」

側近「むしろ喜ぶかもしれませんよ?」

魔王「せっかくの祭が…」

女勇者「いいじゃん血祭りでも!悲鳴もいっぱい聞けるよ!」

魔王「よくないわ!」

側近「いいですね!私も同行します!」

魔王「側近!?」

女勇者「残虐に残酷に破壊と殺戮を尽くしたいかぁああ!」

「うぉぉぉおお!」

女勇者「人間どもの悲鳴と血を味わいたいかぁああ!」

「おっぉおおお!」

女勇者「殺しつくせぇ!破壊しつくせ!我らが魔物の恐ろしさを刻みつけてやるのだぁああああ!」

「ぎゃおぉぉおおおお!」

女勇者「人狩り行こうぜぇぇええ!」

「ひゃっはぁぁあああああっっっっっ!」

魔王「………皆乗り気だ」

側近「そりゃそうでしょうねっ!」ワクワク

今回の更新はここまで
魔王様次回から本気出す

~移動中~

側近「悲鳴っ、血飛沫っ、楽しみですね~」

側近「そういえば前線に出るのなんていつぶりかってな話ですから。ああ、早く味わいたいです」ワクワク


魔王「……側近が地味に何か怖い…」

女勇者「魔物が人間を殺すのに興奮するのは当たり前だと思うよっ」

魔王「そうだとしても貴様が興奮してるのはおかしい!人間だろ」

女勇者「僕だよ?おかしい?」

魔王「………我が誤っていた。うむ」

魔王「いやいや待て待て待て!」

女勇者「何?」

魔王「やっぱりおかしい!人間だろ!」

女勇者「何を今さら」ケラケラ

魔王「本当何故そんな狂気に染まってしまったんだ…」

女勇者「何度も言ってるじゃん。きっかけはあっても原因なんて無いんだよ」

魔王「しかしなぁ…納得いかん」

女勇者「あ、もしかして魔王って性善説とか信じちゃってるの?魔王の癖に」

魔王「癖にとは何だ癖にとは。我だってこう見えて根は優しいんだぞ」

女勇者「『こう見えて』?」

側近「魔王が『優しい』は困りものなのですが」

側近「だいたいですね、部下に優しいのは良い事です。そこは否定しません」

魔王「そうだろ?」

側近「しかし人間に甘いのは困りものです!」

魔王「いや我はしっかり作戦を立てて人間界に侵略部隊を侵攻させてきたぞ。女勇者が来る前から」


側近「それは魔王城に篭ってデスクに座って指示していたからできたことです」

魔王「問題があるか?」

~回想~

「魔王様ー、最近英雄視されてた魔物ハンター倒してたっすよー」

魔王「ほう、すごいじゃないか。報告共々ご苦労」

「すげえっしょ!そしてこれっす!そいつの生首!ちょっとグロいっすけど」

魔王「」ビクッ

魔王「う、うむ。追って褒美をよこそう。帰って良いぞ」

「あれ?何でこっち向いてくれないんすか?得物見てくだせえよ!」

魔王「あ、ああ。充分わかった。その魔物ハンターだな。うむ。確認した。下がって良いぞ。下がれ」

「何で見てくれないんすか?ほらほら、この首っすよ」

魔王「ぅわっ、回り込んでくるな」

「あれ、もしかしてグr―

側近「魔王様はお忙しいのです!速攻下がりなさい」

「あ、側近様いらしてたんですか」

側近「今来たんですよ!ほら早く」

~回想終わり~


女勇者「…情けない」

魔王「グハッ!」

側近「私が魔王様の威厳のために隠すのにどれだけ苦労したか、分かってくれます?」

女勇者「うんうん、同情するよ」

側近「まぁ結局バレいたんですけどね。指示や統率力、あと部下への気配りの良さがあるからなんとか王と認められているような状況でした」

魔王「そ、そうだろ?グロ耐性が無くても王としては問題n―


側近「ちなみに"魔"王としての威厳は全くありませんでした」

魔王「グハァアッ!」


女勇者「よしよし、魔王には僕がついているからね」

魔王「女勇者…」

女勇者「僕が立派な"魔王"に育ててあげるから。強制的に。グロ耐性ぐらいすぐにつくよ。今 日 中 に で も」ニッコリ

魔王(…今すぐ帰りたい。王座に座って指示だけ出していたい)

女勇者「さーて着いた」

側近「?…まだ町の影すら見えませんが」

魔王「近づきすぎて気取られるのが嫌なのだろう?」

女勇者「そうそう。ここでちょこっと士気を高めていこうと思ってね。いいでしょ?魔王」

魔王「うむ。良い考えだ」


くるりと魔物群に向き直る

彼らは皆一様に胸躍らせ、ざわついていた


女勇者「皆!今日はお祭りだよ!」

魔王「本来ならただの収穫祭であったが今宵は少し趣向が違う」

女勇者「さあさ人間を狩りつくせ!その血と肉を以って祭りのメインとしようじゃないかー!」

魔王「ここに祭とその前座の開催を宣言する!」


『うぉぉぉおおおおおっっっ!!!』

側近「魔王様けっこう乗り気じゃないですか」

魔王「将としてそこはきちんとせねばと思ってな。というかここまで来たらにg…後には退けぬ」

側近「良いお覚悟です」


女勇者「ではここで、僕が最初の一撃を放ちまーすっ♪」

『~』ザワザワ

女勇者「大丈夫、大丈夫。皆の楽しみは取っておくよ。そんな一気に殺したりしないから」

側近「この距離からですか?」

女勇者「問題無い、問題無い」


女勇者「たまには白魔法行くよーっ」


魔王「白魔法…だと…」

側近「え、使えるんですか?」

女勇者「やだなあ、僕が使えないわけないじゃない。勇者にしか使えない魔法だよ?」

魔王「猶更使えるかどうか疑問なんだが」

女勇者「え、何で?」

側近「何でって…そりゃぁ‥」

魔王「…我の知ってる白魔法はあんな"ものすごく"ないぞ」

側近「…私の知ってる白魔法ってもっと大人しくて回復とか護りとか聖域創造とかそういうのなんですけど」

女勇者「二人とも何言ってるの?あれが僕の白魔法だよ」


得意げな顔でそういう女勇者と変に納得する二人


魔王「"僕の"か…」

側近「…そういうことでしたか…」


遥か遠方。ターゲットに定めた国の上空に女神の姿を模した巨大な白き魔力の塊が破滅の光を放っているのが見える

慈愛に満ちた表情で

歌うように口を動かし

踊るように身を動かし


やがて女神を模したそれは巨大な"光"そのものとなって降り注いだ


女勇者「ね?僕だって勇者なんだから使えないわけないんだよ白魔法」

魔王「え、ああ…うん…」

側近「あ、はい…」

今日はここまで
今度は近く数日中に
出来れば明日

白(白紙にする)

女勇者「さ、皆。行こうか!人間たちが驚いている間に畳み掛けるよーっ!」

『ぐっぉぉおおおっっ!』

側近「悲鳴っ、悲鳴っ♪」ワクワク


魔王「…もうツッコむまい」



『…』

魔王「おい、誰もいないぞ」

女勇者「やっちゃった」テヘペロ


『ぎゃおーっ!ぐおーっ!ごぉーっ!』ブー、ブー


女勇者「ごめんごめん。今すぐ時間巻き戻して全員甦らせるから
    この世の全ての痛みを合わせてもまだ足りない程の痛みで死んだ白魔法の記憶は残したまま」

魔王「だからそれのどこが白魔法なんだ」


側近「早く生き返らせてくださいよー」

「うわぁぁああああ」

「ぎゃぁぁああああ」

「ひぃっ、ぎぃぃぃぁぁああああ」


側近「ああ、これ。この悲鳴、良い。実に良いですぅ」ゾクゾク

女勇者「あはは、側近ちゃんエロい顔してるぅ」

側近「そりゃこんな良質な悲鳴聞いていたら顔も蕩けますよぉ♡///」


恍惚に愉悦を浮かべて耳から来る快感に身を悶えさせる側近

魔物たちは舌舐めずりをしながら人間を狩る。片っ端から笑いながら狩りつくしていく


女勇者「さて僕たちは国の中心地まで行こうか?此処は皆に譲って」

魔王「中心地に行ったからといって強い奴と出会えるかは別だぞ」

女勇者「まあ、その時はその時で一方的に滅される絶望を味わわせられるからいいじゃない」

王城

王「くっ…何がっ、何が起こっているっ!誰か説明しろ!」

「魔物の群れが攻め込んでいます!」

王「そんなことは知っているっ!」ダンッ

『』ビクッ

王「何故誰も止められぬ。何故我が国が攻められる!我が何をしたというのだ!!」


今度は誰も何も言わない。答えようがない

王は今まで我儘に、ただただ自分のことだけを考えて生きてきた

その過程でどれだけ国民が苦しんできたのだろう

しかし誰も意見ができなかった。この国王は、拷問と処刑が大好きなのだ


だから、誰もが思った


(いっそのこと、国ごとリセットされてしまえ)





王「極刑だ…全員…磔にして…拷問の限りを尽くしてやる」ブツブツ

「ほ、報告します!アリカの町が…ぜ、全滅しました」

「町民は!?」

「それが…その…皆…」

王「町民なぞどうでもいいっ!それより、兵を…兵を王城に固めるのだ」


(国民より自分の身の心配かよ)


誰もが舌打ちをしたい気分だろう

王は取り乱し、今にも手当たり次第に拷問にかけそうなぐらいに荒れていた

女勇者「普通の人間しかいないねえ」

魔王「そうだな。平和ボケでもしていたのか兵士や戦士が見当たらん」

「た、頼む…助けてくれ」

女勇者「やだ♪」

「ひぃっ…」

女勇者「ねー魔王、グロ耐性付けたいんでしょ?」

魔王「………いらない」

女勇者「このままじゃいつになっても部下と僕に舐められっぱなしだよ?」

魔王「どっちにしろ貴様には勝てる気がしないのだが…」

女勇者「そりゃもう僕サイキョーだからね」

魔王(反論したいのだが出来ない…)


女勇者「じゃあこの人間を使ってグロ耐性つけよう」

「い゙や゙だ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」

女勇者「さあキュ○ピーの三分グロッキングの時間だよ♪」

魔王「グロッキングって何だ」

「いやぁぁああだずげっでぇぇええええ」

女勇者「魔王、そんな嫌な顔しちゃダメだよ。ほら側近ちゃんを見習って」

魔王「あれはそういう種族だ。悲鳴と恐怖の感情を食らう魔族」

女勇者「だったら前線に送ってあげればいいのに」

魔王「それは尤もだが全体的に能力を考えると側近が一番合ってる」

女勇者「へー、でもまぁそれとこれはどうでもいいからね。さっさとグロ耐性を獲得しようじゃない」

魔王「…しなくてもよくないか?」

女勇者「僕の大好きな魔王には完璧であってほしいからね」

魔王「……我の考える完璧にグロ耐性は必要ないのだが」

女勇者「じゃあまずこの五月蠅い声帯を潰そうか♪」ブチュ

「」ゴポッ

女勇者「はい初級、腕の断面」

魔王「しょ、しょきゅ…初級、か、うん…」

女勇者「はい次に目ん玉を引き抜いてみよっかー!」ブチュッ

魔王「っ…ま、まあ目玉程度…」

女勇者「顔の皮を剥いでみて」ベリリッ

魔王「…おう」

女勇者「頭は後回しに腹を引き裂いて内臓引きずり出してほらほら腸って意外に長いんだよ~」

魔王「  」

女勇者「」パン

手を鳴らす女勇者

魔王「はっ、寝てないぞ。気絶してないぞ」

女勇者「よし次行こー」

魔王「ま、待った」

女勇者「何?」

魔王「」ズォォオオ

女勇者「」キュンッ


魔王が完全に魔物姿になった


魔王「ふう。グロ耐性なら今のでついたぞ…おい女勇者、何をしている」

女勇者「そりゃこんな素敵な姿見せられたら抱きついて頬ずりもしちゃうよぉ♡///」クンカクンカ

魔王「…まあ、これでもうグロ耐性つける修行なぞする必要は無くなったな」

女勇者「ええ、そうかなあ?」

魔王「何?」

女勇者「だって、魔王その姿になったら性格変わるし」

女勇者「実は元々その姿ならグロ耐性つくってことだったり…」

魔王「」ギク

魔王「ふ、ふん。何を馬鹿な」


近くにある家を破壊し、その中から泣く赤子を引きずり出して引き裂く


女勇者「赤ちゃん殺すなんてえっぐーい」

魔王「貴様に言われたくはないな。それに、これからもっとエグイことをするのだろう?」ニタァ


牙を見せて巨大な鰐の口で嗤う


女勇者「魔王は本当に半魔姿と完全な魔物姿で性格が変わるよね」

魔王「ふ、どちらのほうが好みだ?」

女勇者「魔王は魔王。どっちも好きだよ。愛している」ギュ

魔王「では我もその愛に応えるとしよう」ナデナデ

女勇者「ん…鉤爪の付いた大きな手で撫でられるの…好きぃ♡///」


イチャつく二人の背後で轟々と音を立てて派手に炎が吹き上がり、瓦礫と血しぶき、そして肉体が花火のように打ちあがる

王城の外で派手な戦闘の音…いや破壊と殺戮の音が響き近づいてくる


王「…」ガタガタガタガタ

王「早く…早く何とかして来い。でなければ全員殺すぞ。早く行け!!」ガチガチガチガチ


(殺されたら守れるもんも守れねえよ)

(どっちしろ俺たちゃ捨て駒よ)


アルト「王様、私も」

王「だ、ダメだ。お前はここにいろ」

アルト「失礼ながら王様、私は自らの腕に自信があります。どうか加勢させてください」

王「バカものっ!お前はこの国一の戦士だ。私も認めている!だからこそ最期まで私の傍にいろ!他の兵が皆死のうと私を守る最後の盾となるのだ!」

アルト「……分かりました。王様…」

女勇者「わーお、いっぱい出てきたよー」

魔王「ふむ」

女勇者「あれ?なんで半魔の姿に戻ったの?」

魔王「我は魔王だ。普通の人間が見たら恐怖に狂ってしまう」

女勇者「全然怖くないから忘れていたよ!」

魔王「もっと違う言い方があるだろう…」

魔王「さて」

女勇者「怖気づいてないでかかってきなよ」

『っ、かかれっ!かかれえぇっ!全身全霊をかけて倒すのだ!』

女勇者「どうしたの?既に軽く絶望してるけど」

魔王「ふっ戦力差が分かっているのだろう。賢明なことだ」

女勇者「それでも愚鈍なる王を守るために命を捨てなければならない。可哀想だね」クスクス

女勇者「雑魚には用は無いんだよ。だ・か・ら♪」


踊るように剣を振り、瞬く間に全滅させる


魔王「楽しまなくていいのか?」

女勇者「いいのいいの。それに、圧倒的な力を見せつけたかったからね。ふふ」


女勇者「絶望してもらうために」

今日はここまで

王「」ガクガクガク

「あ、あの…王様…」

王「う、うるさい。なんだ。何なんだあれは…私の…私の…兵士たちが…」ガクガク

「お、王様‥お気を確かに」

王「うるさい!とっとと倒して来い!」

「しかし…」

王「うるさい!私に意見するな!私を守れ!あいつらを殺せ!じゃなきゃ全員拷問してやるぅぅ!!」

女勇者「さ、そろそろいい感じに絶望してるだろうし、いこっか」

魔王「ああ。魔王として王に引導を渡してやるとしよう」


手を繋いで城内へと入る
―――――
―――

「これ以上は絶対に進ませない!」

魔王「邪魔だ」


一瞬にして兵は全滅

その奥にて引きこもる王は水晶でそれを全て見ている。見て…恐れに身を震わせている

女勇者「さーて、初めまして王様ー」

王「…魔物め、ここが貴様らの…ゴク…貴様らの死に場所だ」

魔王「ほう?その大口に根拠はあるのだろうな?」

女勇者「瞬殺なんてつまらないからねー」

王「莫迦め!やれアルト!」


アルト「は。貴様らに殺されたすべての者の恨み、全てをぶつけてやろう」

王「アルトは我が国最強の戦士!貴様ら等瞬殺よ!」


女勇者「本当に!?」キラキラ

魔王(余計なことを言ったな)

女勇者「ふふふ、最強…最強かぁ…楽しみぃ~」

アルト「楽しみだと?これまで散々人を殺してきて…楽しんでいた、だと!」

女勇者「いや?これまでは全然楽しくなかったよ?むしろこのために楽しみを取っておいたんだよ」


女勇者「僕はこの国の人間をたくさん殺した。僕の率いた魔王軍はまだまだずっと殺していく」

女勇者「殺した。もう誰も帰ってこない。君は救えたはずの命を全て!ここに残っていたせいで殺されたんだよ!僕によって!君のせいで!」

女勇者「ねえ、怒る?見せてよ。君の怒りを!絶望的なまでの怒りを!!」




魔王(魔王軍の筆頭は我のはずなのだが…)

アルト「いいたいことは、それだけか?」

女勇者「うん!満足!」

アルト「そんな挑発に乗るわけがないだろう。怒っていないわけがないだろう」


アルト「私の怒りは、静かに、この胸の奥で燃え上がっている」


女勇者「良い眼だね。僕を打ち倒そうとする意志が見えるよ」


女勇者「その意思、へし折って絶望に染め上げてあげるぅ」

アルト「死ねとも殺すとも言わん。打倒する!」

今日はここまで
あ、戦闘シーンとか真面目に書く気ないっす

女勇者「ふふ、じゃ、始めよう」スラッ

アルト「なんと…なんと禍々しい剣だ…」

女勇者「おかしいなぁ?勇者にしか使えない聖なる剣のはずなんだけど」

アルト「狂人め…」スラァ

女勇者「すごい、二刀流!」

アルト「それだけではないぞ」カカッ


踵を床に二度打ち鳴らすと鎧と各所から刃が飛び出る


女勇者「すごいすごい!弱者の勝つための術!素敵だよ!」

アルト「弱者が勝つための?違うな、強者が勝利を確実にするための武器だ」

女勇者「ふふ、ふふふふ」

王「アルト、そ奴らは生け捕りにしろ。拷問せねば気が済まぬわ」

魔王(ほう?)


アルト「申し訳ありません王様。それは…難しい、いえ、無理でしょう。こ奴らは、彼らは、強すぎます」

王「私の命令でもか!五体満足が無理なら抵抗できぬように四肢をもいで達磨にしてしまえ!」

アルト「それも無理でしょう。殺す気でないとこちらが殺されます。命を懸けて、死ぬ気で挑んでも、相打ち覚悟でも、どうか」

女勇者「それでも全く足りないね。殺す気じゃなくて"殺すのを楽しむ"つもりで来なよ」

アルト「そのような外道に堕ちるつもりだけは毛頭無いっ!」


アルトが跳ぶ

一気に女勇者の懐に入り、鎧さえ着ていない無防備な腹を一太刀に

アルト(掻っ捌くっ!)


女勇者「…ふぅ」


それは、落胆の一息


女勇者「ふふ…」

そして、また笑む

女勇者「残念。戦いにはならなかったね」


女勇者の一撃はただ一突き、鎧も貫いて確実に肺に穴を開けた


アルト「あ…かは…ヒュー、ヒュー」

女勇者「ふふふ、どう?呼吸ができなくなった感想は?いくら吸い込んでも呼吸は出来ないよ。血もドビュドビュ出て…その苦しみの中死んでいく」

アルト「まだ…ヒューだ!王を…護…るっ!」


ふらついた身体で剣を握って女勇者に立ち向かう

勝てぬと分かっていながら。絶望を抱きながら。信念だけで。意志だけで


女勇者「戦いにはならないけど、玩具にはなってくれるのかな?」

アルト「だま…れ…」

王(ダメだ。勝てない…もう終わりだ)

王(せめて、せめて私が逃げる時間を稼ぐのだ。まだ死ぬな。死んではいけない。私はまだ逃げてないぞ)

王「」ダッ


魔王「どこへ行く」

王「」ビクウゥゥゥッッッッ!!!!

魔王「」ギロ


魔王が王を睨みつける。"魔王の気配"を"少しだけ"出して

だが、それだけで


王は一歩も動けなくなった


王(  )

魔王「ふん。部下を置いて逃げるなどそれでも王か」

女勇者「あはっ♡」シュパッ

アルト「っ…っっっっ!!!!」

女勇者「どう?絶望的でしょ!手足がいっぺんに切り落とされて!達磨状態っ!それでどうやって王様を護る?護れないっ!守れるわけがないっ」

アルト「っ…は…ぁ…り…あ…」

女勇者「ふふっ、言葉で詠唱しないと魔法も唱えられないんだ?憐れー」

アルト「っ…こ……ろ…s―

女勇者「…あーあ、こと切れちゃった。じゃあ再生っ、と」


アルト「―っ!わ、私、は…っ」


アルトの脳裏に今しがた殺された記憶がこびりついている


女勇者「じゃ―

女勇者「―もう一回死のっか」


アルト「―っさまぁぁあああっっっ!!!」

女勇者「はい残念っ」シュバッ


アルト「っがぁぁああっっっ」


アルトの身体が鎧ごと模様を描いて切り開かれる


女勇者「上手にやったでしょ?ショック死させずに腹を捌いて。こうやって腸を引き出すの♪」

アルト「ぁ゙あ゙あ゙っ゙っ゙、あ゙あ゙あ゙っ゙っ゙!!」


魔王(女勇者はすごい良い笑顔でやっている。女勇者の笑顔は可愛い。笑顔を見よう。顔だけ見ておこう。他の部分は一切見ないようにしよう)

―――――
―――

女勇者「あははっ、気絶しちゃった?じゃあまた再生して―もう一回死のっか」ブチブチ、ブチュゥッ、ボキボキィ

アルト「も…や…がっ、ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙っ゙っ゙ぅ゙っ゙」


王「ひ、ひぃぃぃぃ゙ぃ゙ぃ゙い゙い゙い゙い゙い゙」

魔王「お、こっちも意識が戻ったようだぞ」

女勇者「あ、そう?良い絶望の悲鳴だね。じゃあこいつは用済みとして。さようなら」


アルト「…


ようやく、十何回も生死を繰り返した彼にようやく永久の安寧が与えられた


王(私も…私も…殺される…殺される…)

王「嫌だ…」


王「嫌だ嫌だ嫌だ!死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないぃぃぃいいいぃぃぃぃいいいいっっっっっ!!!!」 

女勇者「うふふふふ、どう?絶望してる?ナウ?自分が一番と信じる最強の部下が無残になすすべもなく殺されて、逃げられない逃げられない」

女勇者「そしてあなたも死ぬ。あのようにして」


女勇者「うふふふふふふ」

王「ぁぁぁああああああ」

魔王「待て女勇者」

女勇者「え?何?」

魔王「こ奴は愚王にせよ仮にも王。魔王である我が首を刎ねてやるのがせめてもの礼儀だろう」

女勇者「えー、ざんねーん。でも魔王がそう言うならー」


王「嫌だぁぁぁああ死にたくないっ、死にたくないよぉぉぉっっ」

魔王「見苦しい。王ならば潔く受け入れよ。敗軍の将の定め、将の役目だ。追わねばならぬ責務よ」

王「やめろっ、やめてくれ、やめてください。助けてくださいっっ、お゙ね゙がい゙じま゙ずぅ゙ぅ゙ぅ゙」ボロボロ


醜く涙を流しながらも土下座をする王

魔王(本当に、見苦しい)


王「頼む…貴様らは魔物だろう?この国の人間を全て差し出す。だから私だけは、助けてくれ…」

魔王「何?」ピク

王「そうだ。この国の人間を全て残らず差し出す。絶対に一人も隠さない。だから、だから」

魔王「自分が助かるために自らの国の民を差し出す…だと?」

王「そうそう。殺しても食っても一生こき使っても構わない」

魔王「………」

王「何が足りない!この国だけじゃ人間が足りないというのか。何だったら他の国に忍び込む手筈だって整えてもいい。この国の王である私の紹介なら調べられることなく入り込ませてやれる」

魔王「ふざけるなっ!!」

王「」ビクゥッ

魔王「魔物と人間であれど王に変わりは無い!王は民のためにある!それが民を差し出すだと!自分が助かるためだけに!!」

王「…」

魔王「貴様のような奴など王どころか愚王ですらない!」ゴゴゴゴゴゴ

王「…………」ガクガクガクガク


魔王「ふんっ、もはや殺す気すら失せたわ」


王(殺す気が失せた!?ならば私は生きて解放される?助かった…)

王(助かった助かった助かった助かった助かった助かった、助かったぁぁぁあああああ!!!!)

王(そう、今すぐ逃げよう。他の国に助けを求めよう)


王(いや、他の国に「この国に雑魚だけど賞金になる魔物がいる」とでも言おう。それでそいつらに夢中になっている間にもっと遠くに逃げよう)


王(助かった。良かった…助かったよぉぉぉ)


魔王「女勇者、その愚者を好きにしていいぞ」

女勇者「本当?やったー」

王「」


王「……………え」

今日はここまで

女勇者「魔王。素敵なプレゼントをありがとう!」

魔王「プレゼント…か?」


王の脳裏に先ほどのアルトの凄惨な姿が焼き付いてこびりついて離れない

「敵だから殺す」ではなく殺すのを楽しみ、また生き返らせては楽しんで殺す


王(そんなの嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ)

王「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁぁああああ」

魔王「ふん」

王「頼む…頼む……………奴隷になる!あなた方に一生尽くす!だから!だから殺さないでくれっっ」

魔王「女勇者、貴様の奴隷になってくれるらしいぞ」

女勇者「本当に?嬉しいなぁ」

王「え、ちが…」


女勇者「四肢が無くなるまで手足の先からすりおろしてあげるよ。魔法でその痛みが永遠に続くようにしてさ」

女勇者「痛みが引くことも傷が塞がることも永遠に無い。魔王城に帰ったら色んな魔物に拷問や凌辱虐殺されるだろうなぁ」

女勇者「それでも死ねないよ。何があっても死ねない。時間の神の力でバラバラにされても君の体はすぐに元通り。達磨状態だけどね♪」

女勇者「もちろん精神崩壊しても心閉ざしてもすぐに時間の神の力で元に戻るからね。発狂することも心身喪失することも。眠ることすら許さない」

女勇者「まあたまには四肢を再生させて楽しむかもだけどね」

女勇者「一人が飽きても他の魔物がやって何百人も何千人も…ふふふ、永遠に終わらないね」

王「ぁ…ぁあ…ぁぁっぁ…」

王「………てくれ」

王「殺してくれぇぇぇえええ。一思いに首撥ねてくれぇぇえええ!!!」

女勇者「言われなくても何度も殺してあげるよ♪」

王「違うっ違う。魔王!魔王様。私はどうしようもない人間だ。愚王だ。だがそれでも王だろう?王であるあなた様に殺されたい!そのまま永遠に眠らせてくれ」

魔王「我は貴様を王とは認めん。我の知るところではないわ」

女勇者「ふふ、じゃあ四肢をすりおろすところからね」

王「うわぁっぁぁぁぁああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙、あ、ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」

魔王「ふん、最初の『死にたくない』という望みは叶えてやったぞ。死んでも死ねぬこととなろう」(目を逸らしながら)

――――――――――――
――――――――
―――――
――

魔王「そろそろ帰るぞ」

女勇者「はーい、じゃあこの肉塊を達磨にまで再生してうるさいから喉潰して連れて帰ろうか。魔法で引き摺って」

女勇者「ふふ。性奴隷ならぬ拷問奴隷?なんか違うかな?ま、いっか」

女勇者「側近ちゃんにいいお土産ができたなぁ」

―――――
――

側近「どうもみなさん、側近レクチャーです。またの名を『本編に絡められないけど説明したいことを説明するメタコーナー』」


側近「人間の王は例外あれど基本血筋によって決まり、生まれたころから王になることが決定しています」

側近「そのため子供のころから権力と兵に守られて危険など全くなく育ちます。例外はあれ」

側近「親がまともに王としての教育を施せばまともな王になるでしょうが、好き勝手に甘やかして育てれば我儘で傲慢な王になるのでしょう」

側近「そういう場合は大抵、国の経済・秩序等の管理は王に任せず大臣や専門の役職などがやっているため猶更"そういう王"になってしまうのでしょうね」


側近「一方、魔王は前王を倒して初めて魔王となることができます」

側近「しかし魔王となるメリットはあまりなく、むしろ常に命を狙われかねない危険、魔族全体をまとめる激務等々辛いことの方が多いです」

側近「ならば何故魔王という制度が続いているのか?それは"魔物"という種族全体が王を求めるのです」

側近「烏合の衆に見えてその実、王が無ければ機能しない。王に依存した種族なのです」

側近「そのために勇者が魔王を倒すと自然に魔王が現れるまで人間に平和が訪れるわけです」


側近「次に、魔物が魔王を倒して新たな魔王となろうとする理由ですが、それは主に二種類」

側近「1つは、前王が魔王から引退する年齢になった時」

側近「2つめは、現魔王が魔王にふさわしくない。こいつに任せたら魔族が滅ぶと魔族全体が思ったとき」


側近「恐れるべきは2つめ。王としての器・カリスマ性・血気盛んな魔族を纏める軍将の才能。それらが無いとすぐに魔王の座を狙われることでしょう」


側近「だからこそ魔王様は"王"として出来上がってるわけです。そうでない魔王は淘汰されますからね」



側近「現魔王様は正直なところ器とカリスマ性は抜群なのですが魔王にしては残虐性にかけると不満に思う魔物もいました」

側近「それ以外が完璧だったので魔王の座は狙われませんでしたがもしかしたら……ありえたかも、ですね」


側近「しかし今は女勇者さんが妃として残虐性の部分を補ってくれています……残虐性に極振りされてますしね」

側近「ですが女勇者さんが単独で魔王となったとしても王の器が全くないしカリスマ性も残虐さ故以外にありませんし、魔王としてはダメでしょう」


側近「互いに足りない分を補い合う。本当に、あの二人は二人でようやく完成された"魔王"なのです」


側近「おや、どうやらお戻りになられたようなのでこれにて」

魔王「魔王の帰還なるぞー」

女勇者「たっだいまー」


魔王と女勇者を筆頭に魔物の大群が人間を大量に引き摺って帰ってきた


側近「おかえりなさいませ、皆様」

女勇者「あれ?側近ちゃんも前線に出たんじゃ?」

側近「祭の飾り付けや用意、料理の下準備等々色々支持しなければいけないので。お先に戻らせていただきました」

魔王「それはご苦労。後でほうb─

女勇者「そうだ!側近ちゃんにお土産があるんだよ」

側近「何でしょうか?」

女勇者「はいこれ。死なない人間一体(さっきの王)。これでいつでも新鮮な悲鳴が聞けるよ」

側近「まあ!何と素敵なお土産でしょう!」

女勇者「はい魔法のスイッチ。一度押せば声帯が元に戻ってもう一度押せば喉が潰れる(物理)から好きな時に悲鳴を聞いてそれ以外では黙らせていられるよ」

側近「…素敵、素敵です女勇者さんっ!!」

女勇者「そんなに喜んでもらえると嬉しいよ」

側近「そりゃ喜ぶに決まってますよ!こんなに私の好感度を上げてどうするつもりですか!もうマックスです!いますぐレズったっていいですよ!」

女勇者「あはは、それは遠慮しておこうかな…」


魔王(二人だけの世界に入りおった…我には入り込めない世界だ…色々な意味で)

―――――
―――



女勇者「これからの魔族の繁栄と今年の収穫を祝って収穫祭ばんざーいっ!かんぱーいっ!」


『イェェェエェエエエエイ!!!』


巨大なツリーにはまだ血の滴る人間の頭部が釣り下げられ、魔法によって延命させられて悲鳴と呻きを上げている

テーブルの上には生きた人間が腹を掻っ捌かれて中身を魔物たちが食らっている

肉がそのままぶち込まれた人間スープ、人間と魔界の木の実で焼いたパイ


どの飾りつけも美しく輝き、どの料理も芳しい匂いを風が運び、女勇者の鼻をくすぐる


魔王「祭りだ祭だー!」

女勇者「今日は無礼講だよーグッビグッビプハーっ!」


女勇者「まおー、この生血のワインおいひーねー」

魔王「人間の生血から作ったものなのだが…まあ良いか。我も70年物の人間ワインを………脳みそと目玉浮いてる」

女勇者「気にしにゃい気にしたら絶望だー」

魔王「意味わからん。もう酔ってるのか」

女勇者「にひひー、酔いつぶれなきゃいいのだー、オーバーロード2期はよー」

魔王「何の話…いや、もう酔って自分でも何言ってるか分かって無いのだろうな」

―――――
―――

女勇者「んにゃぁ…世界が回るぅぅ」

魔王「ついに酔いつぶれたか」

女勇者「魔王がいっぱい…幸せすぎて、しわわせぇ♡///」

魔王「はいはい、寝室に運ぶぞ」

女勇者「お姫様抱っこぉ♡しわわへぇ♡///」

魔王「お姫様…というか妃だがな。我の愛しい妃だよ」



魔王「…しまった、我も酔っているな、かなり」

女勇者「んひぇひぇ…僕も、魔王らい好きぃ♡…///」

―――――
―――

側近「おや、見ないと思ったら…二人ともよくお眠りで」

側近「抱き合って寝るなんて。とても仲の良いことで微笑ましい限りです」

側近「さて、私はまだ眠くも無いので」


側近「あの新しいおもちゃで遊びますか。せっかくもらったものです」

側近「ふふ、うふふふふふふ」

側近「私としたことが。自然に笑みがこぼれてしまいます」ウキウキ

今日はここまで
側近が"玩具"で遊ぶシーンは描写しませぬ

オーバーロードやHELLSINGみたいな主人公が敵に絶望を与えるアニメが大好きです
リゼロみたいな主人公が絶望することが多いアニメも大好きです

別の日

女勇者「側近ちゃん、魔王の首の太さって正確に分かる?」

側近「太さですか?すいません。それはちょっと…自分で抱きついて確かめてみては?」

女勇者「んー、悟られたくはないからなぁ。まあ、適当でいいかな。少し長めにして…」

側近「?」

自室に誰もいないことを確認する


女勇者「さて、誰もいないことを確認したし」

女勇者「魔王へのプレゼント手作りマフラー作りなのだ」

女勇者「ふふふ。魔王の喜ぶ顔を考えるとそれだけで幸せになっちしゃうなぁ」ニマニマ


女勇者「さてまずは僕の髪の毛を一本」プチ

女勇者「そしてこれを成長魔法でかなり伸ばして」

女勇者「その伸ばした一本を切って二本に、またそれを成長させて」

女勇者「これを繰り返せば長いマフラーを編むのに十分な長さの毛糸が出来上がる」


女勇者「ああ、喜ぶ姿が目に浮かぶよぉ///」恍惚

女勇者「僕も一応女の子。編み物ぐらい心得ているもんね」ドヤッ

女勇者「…誰に向かってドヤっているんだろう…深夜のノリは怖いね。ふぁぁ…」

女勇者「いやいや、寝ちゃダメだよ。手編みマフラーと言ったら徹夜に夜鍋だよね」


女勇者「んんー、髪の毛そのままじゃマフラーにしては肌触り悪いなぁ」

女勇者「うん、魔法で本物の毛糸っぽくしよう」

女勇者「あ、中に僕の血と愛液を混ぜと置くのも忘れちゃダメだよね」

次の日

女勇者「まーおう♪」ギュー

魔王「わっ…女勇者、おはような」ナデナデ

女勇者「これ魔王にプレゼント」

魔王「?…ああ、手編みのマフラーか。まさか女勇者が作ったのか?」

女勇者「もちろん。誰からのアドバイスも受けず聞かずに作ったよ」エヘン

魔王「」チラ

側近「ええ。女勇者さんがアドバイスを仰ぐとすれば私でしょうし何も聞いてきませんでしたね」

魔王「これは意外だな…(材質も普通っぽいのが特に)」

側近「意外ですね…(絶対に普通の材質で作るはずがないのですが…)」


女勇者「んふふー♪」

魔王「ではさっそく付けさせてもらおう」

側近「…」

女勇者「」ワクワク

魔王「うむ。長さも十分。肌触りも申し分ない」

側近「!?」

女勇者「やったぁ。魔王、寒い日は肌身離さずずっとつけていてね」

魔王「うむ。そうしよう」

女勇者「特に僕がいないときほど絶対に離さないでね」

魔王「う、うむ?…うむ。それほど、心込めて作ってくれたということだな」ナデナデ

女勇者「えへへ。そういうことだよ。魔王、大好き♡」

魔王「ありがとう。我も好きだぞ」チュ

女勇者「わ、わわわ…嬉しいよぉ♡///」ギュゥ

女勇者「ん…ふぁ…ぁ」

魔王「眠いのか?」

女勇者「えへへ…ちょっと始めたら止まらなくなってそのまま徹夜しちゃって…」

魔王「身体に悪いぞ。体調が悪くなっても魔法で治せるという考えはあまりしないほうがいい」

女勇者「そう、だね…魔王、添い寝…してくれる?」

魔王「しかし…その…書類が…仕事が詰まっていてだな…」

女勇者「どうせ魔王なんか仕事してもしなくても一緒だよ」

魔王「いや、それは無い。絶対無い。なあ側近?」

側近「こっちに振って来ないでください。私の身のために」

魔王「」


魔王「と、とにかく仕事があるので我は寝られん。寝るなら一人で…」

女勇者「僕と仕事とどっちが好きなの?」

魔王「…分かった。添い寝しよう」

女勇者「」ニッコリ

側近(…いつぞやかメンタルの修行に出た成果は皆無だったんですね、魔王様)

今日はここまで

ベッド

女勇者「半魔じゃなくて完全な魔王の姿になってよう」

魔王「あの姿になると"魔王のオーラ"が隠しきれないから魔物ですら怯える者がいる。本当にすまないのだが勘弁してほしい」

女勇者「だとしてもここに魔物は来ないんじゃない?魔王の寝室なんだから」

魔王「それもそうか。では」ゴォォォォオオ


完全な魔物形態になる


女勇者「うん…この姿…この姿が大好きなんだよぉ♡///」

魔王「物好きな奴だ」ナデナデ

女勇者「何を今更~♡」ギュゥ

魔王「確かに今更だが…」

女勇者「ああ魔王…魔王の爬虫類系の匂い…ゾクゾクする気配…逞しい体…全部、全部たまらないよぉ♡///」hshsペロペロ

魔王「舐めるな舐めるな。というか逆に眠れなくなってないか?」

女勇者「魔王、その大きな口で僕を噛んでもいいんだよ?///」

魔王「しないしない。だが」チュ

女勇者「ん…んちゅ…ん…ちゅぅ♡…ぷは…///」

魔王「これで我慢して寝ろ」

女勇者「うん…///」カァァ

―――――
―――

魔王「ようやく寝たか」ナデナデ

女勇者「ん…ま、お…」

魔王「こうしていると可愛いだけなんだがな」ナデナデ

女勇者「あの人間…絶望…させ…ムニャムニャ…内臓…ぐちゃぐちゃに…ニャムニャム」

魔王「……」

魔王(聞かなかったことにしよう)

魔王(寝たはいいが離れられん…起きた時我がいないとどうなるかわかったもんじゃないし…ううむ)

魔王「しょうがない。起きるまで我も寝るとするか」
―――――
―――

側近「あらあら…二人とも仲良く寝ちゃって。これはこれは…」

側近「お仕事がまたまた積まれますね。私は知りませんが」


側近「さて、暇なこの時間は"玩具"であそんでいるとしましょう」ワクワク

女勇者「んん…ふぁ…」

魔王「ん、起きたか?」ナデナデ

女勇者「うん、添い寝してくれてありがとう」チュ

魔王「くく。貴様の頼みだからな」

女勇者「ところでお仕事大丈夫?」

魔王「」ハッ

側近「はい大量に積まれております」

魔王「んなぁっ!?」

女勇者「頑張れー」

側近「女勇者さんも妃としてのお勉強をしましょうか」ニッコリ

女勇者「お断りしますっ!」

側近「逃がしませんっ!!」

女勇者「いやーっ」

その夜

女勇者「マフラーに使ったやりかたって他にも応用できるんじゃないかな…」

女勇者「例えば…っ」ザクッ

女勇者「いったーっ。回復魔法」パァー

女勇者「そしてこの肉に増殖魔法をかけて。これを繰り返せば…けっこう痛いけど…」

女勇者「魔王も人間の肉を美味しく食べられる魔物だし…♡///」

調理場

女勇者「頼もー」

料理長「…また珍妙なものを作る気で?」

女勇者「違う違う。単純な肉料理。材料は自前だけどね」

料理長「…見たところ何の異常も無い人肉ですね。ふむ、では焼き加減と味付けを教えましょう」

女勇者「お願いします」

料理長(すごく真面目な表情…)
料理長「分かりました。精一杯監督させていただきます」

女勇者「まおー」

魔王「どこに行ってたんだ?」

女勇者「ごめんね?ちょっと料理してた」

魔王「りょ…料理…」

魔王(以前とんでもないゲテモノを食わされたような…)


料理長「大丈夫ですよ魔王様。今回は私監修の元美味しく作らせたので」

魔王「確かにすごく良い匂いがする…これは、肉料理か。人肉の」

女勇者「そうそう。僕の人肉料理。ぜひ魔王だけに食べてほしいな♡」

側近「私はダメなんですか…」

女勇者「ごめんね?初めての僕の肉料理だから魔王だけに食べてほしいんだ」

魔王「ではいただくとしよう」あむ


魔王「うむ。すごく美味しい」

女勇者「本当!?やったぁ。僕のを美味しいって…僕の料理が魔王に取り込まれて…魔王の一部に…うふふふふ♡///」

魔王「料理一つで大げさな。でも美味しく作れるようになったのは偉いぞ」ナデナデ

女勇者「えへへ♡ありがとう///」

女勇者「よーく味わって食べてね。よーく噛んで食べてね」

魔王「そんな母みたいな忠告しなくてものどに詰まらせたりしないぞ。いただきます」アム

魔王「」モグモグ


女勇者(僕の肉が魔王の口の中に…噛まれて…僕の肉汁が溢れて舌の上に絡まる。その後喉の奥に流れていく)

女勇者(僕の肉は何度も噛まれ、咀嚼され、噛み切られて原型を留めず細かくなって、魔王の唾液と絡められて飲まれる)

女勇者(胃の中で魔王の体液に包まれながら溶かされ…栄養にされて…魔王に吸収されて…魔王の一部に…)


女勇者(最高だよぉぉ♡♡///)


魔王(あんなに悦んで…それほど心を込めて作ってくれたんだな。男冥利に尽きるというやつだ)モグモグ


側近(何故私だけ真実を悟ることができてしまうのでしょう)

側近(むしろあの性格と発言と恍惚に満ちた顔を結びつけて推測できない魔王様が羨ましいです)

今回の更新はここまで


女勇者「今回紹介した自肉の料理はあくまで一般的な一例。人肉食の夫や彼がいる皆も試してみてね♪」

女勇者「痛みを愛に変換できない人は自分の肉をそぎ落とす時に痛みを麻痺させる魔法を使うといいよ」

女勇者「上級者は料理後の肉と自分の神経をリンクさせるといいよ。愛する彼に身を捧げ、食べられる悦び。それを直接感じられるもの♡」

女勇者「ファンタジーだからこそできる愛しかた。人外と人間だからできる愛され方。人外×人間というジャンルは偉大だよね」

ヤバイ、生命の危険がないように、そしてちゃんと美味しく食べられるように出来てるならありかもしれんとか思えちまった

構成を寝るというかどのイベントをどんな順番でやろうか考えるから次は間が開くかもしれないしすぐ更新再開するかもしれない
ちょっと風呂敷広げすぎたりやりたいイベントもあるから2レス目に行くかも

>>868
十二分に素質がおありのようで

女勇者「魔王、美味しい?美味しい?」

魔王「ああ、何度も言うがとても美味しいよ」ナデナデ

女勇者「うふふ。嬉しい…魔王、もっと僕の料理が美味しくなるように頑張るよ!」

魔王「そうしてくれると我も嬉しいぞ」

女勇者「ふふふ、僕の料理をもっともっと美味しくして僕以外の肉料理が食べれなくしてあげるよぉ♡」

魔王「肉料理以外にも野菜とか魚とか色々レパートリー増してくれよ」

女勇者「分かってるよ。バランスは大事だもんね」

魔王「ああ、バランス等は料理長に聞くといい」


女勇者(肉はともかく野菜はどうしようかなぁ。人間の肉片や体液を肥料に育てられるのかな?魚は僕の肉を細かく切って餌にしよう)


女勇者「いつか僕のフルコースを作るからね♪」

魔王「ああ、お前がフルコースを作れる日を楽しみにしているよ」ナデナデ

たった1レスだけだけど前回書き忘れたのを書いて今日はこれだけ



~次回予告~

女勇者「"私"じゃない"僕"が望んだ全てがここに在る!」

魔王「こい、勇者。矮小な人の身でどこまでやれるか見てやろう」



次回、エピソード零

~エピソード零~

女僧侶「ついにここまで来たんですね」

女魔法使い「途中で死んだ戦士の仇はとってやるぜ」

女僧侶「長い道のりでしたね。それも今日で終わります」

女勇者「…」

女魔法使い「どうしたんだ?女勇者」

女勇者「…んー、二人はさ…この戦いを、どう思って来た?」

女魔法使い「正義のための戦いだぜ!」

女僧侶「人の世に平和をもたらすための戦いです」

女勇者「なるほど…ね」

女魔法使い「お前はどうなんだ?」

女勇者「私も二人と同じだよ」ニッコリ


女勇者「だけど」グサッ


女魔法使い「…え…?」

女僧侶「お、女勇者さん何を…」


女勇者の剣が女魔法使いの腹を貫いていた

女勇者「女魔法使いちゃんは本気出されたらド派手な戦いになっちゃうからね。その前に」

女魔法使い「な…てめ、ぇ…かはぁっ」

女勇者「こうやって内臓をグリグリってすると痛みで魔法も唱えられないでしょ。このまま殺してあげるね」

女魔法使い「が…ぁぁぁ…やめ…て…お…ゆぅ…おねが…ぃ」

女勇者「あはは。いいね。その痛みに悶える顔。君の死に顔にはふさわしいよ」

女魔法使い「女僧侶!今すぐこいつをこr―ガハッ」



女魔法使い「」



女僧侶「ぁ…な…何で…何、で…」ガクガク

女勇者「クス、次は君だよ?」

女僧侶「何で…何で!女勇者さんを返してください!!」

女勇者「うーん?違うよ。私は私。いや、これが本当の僕」

女僧侶「…」ガクガク

女勇者「ずっと思ってたの!ずっとずぅっと一緒に旅してきた仲間をいきなり裏切ったらどれだけ素敵な顔を見せてくれるだろうって」

女勇者「女僧侶ちゃん、今すごくいい顔してるよ。ねえ、どう?今どんな気持ち?絶望してる?それともまだ考えがまとまらない?」

女僧侶「違う…違う…女勇者さんは…こんな…」

女勇者「はは、いいねえ。その信じられないって感じの顔。素敵な絶望顔だよぉ」

女僧侶「まさか…まさか、戦士さんも…あなたが…」

女勇者「皆僕のことを勘違いしすぎなんだよ。特にあいつは…」

女僧侶「あんなに仲良かったのに…」

女勇者「当たり前じゃん。全部、演技だよ!今日この時のための!」グサッ

女僧侶「あぁぁあああ!」

女勇者「どう?膝の骨を割られる気分は?」バキバキ

女僧侶「いだいいだいいだっぁぅぅぅいぃぃぃぃ」

女勇者「あは♪いい悲鳴。いい顔。でももういいよ。死んで」


柔らかい腹を掻っ捌き、内臓を引きずり出して辺りにばらまく


女勇者「命は巡る。やがてその辺の魔物に食われるんじゃないかな」


女僧侶「」


女勇者「今に人間全てそっちに送るから待っていてね」

女勇者「全世界を裏切って敵に回す。その時どれだけ大きな絶望が世界を包むんだろう…ふふふ」

歩を進める

魔王城の中を、雑魚を蹴散らしながら。血に染め、口元に笑みを浮かべて

魔王を殺し、僕が次の魔王になる


そして全世界の人間を裏切って絶望に叩き落とす


最初から魔王も魔物も眼中にない。ただ"魔王を倒した勇者"その事実が必要だ

それほど強い勇者が敵となって世界中に牙を剥いたらどれだけ絶望してくれるだろう


女勇者「ああ、楽しみ♪」

―――――
―――

「我こそは四天王その1!」

女勇者「邪魔っ」

「ぐあー」
―――――
―――

「さっきのは我ら四天王でも最弱。我は二人目n―

女勇者「魔物を絶望させるのは興味無ーいの」ズバァ

「ぎゃー」

側近「魔王様、勇者が四天王を次々破っています」

魔王「そうか。ふふ、楽しみだな」ゴゴゴゴゴ

側近「あの…それが」

魔王「どうした?」

側近「なんかテキトーなんです…」

魔王「…は?」

側近「やる気無さそうに一振りで四天王を倒してるというか…なんかそんな感じで」

魔王「?良く知らんが我が戦うことには変わりないだろ」

側近「まあ、そうですが…なんか釈然としないというか」

魔王「貴様は何も心配せずともいい。勇者は我が倒す」


魔王「さあ、早く来い勇者」ペロリ

女勇者「さて、ここが魔王の部屋かな」ギィィ


魔王「よく来たな、勇者」

女勇者「…えっと、君は誰?」

魔王「そうか、貴様は我を知らぬか。我こそ全魔物が王、永久を支配し闇に包む邪なるものの王。魔王よ」

女勇者「でも見た目人間じゃん」

魔王「我の真の姿はそれだけで恐怖を与えるのでな。まずはこの姿で小手調べよ」


女勇者「………へぇ、僕も舐められたもんだね」


魔王「」ゾクゥ

魔王(何だ今のは、全身の産毛が逆立つような感じ…体の芯が一瞬震えたぞ)

魔王「」ゴク


魔王「ふ、人間が威勢の良いことだ」

魔王「我が魔道に刃向かいし人間、精々喚くが良い。今に呻くことすらできなくなるからな」

魔王「さあ、来るがいい。矮小な人の身でどこまでやれるか見てやろう」

女勇者「クス、クスクスクス」

女勇者「どこまでやれるか?見たい?見たいぃぃ?」


女勇者「見せてあげるよ。どこまでも底無しな僕の力を!」ゴゴゴゴゴ

魔王「いくぞゆうs―」

魔王「」カハッ


魔王の首筋に白刃が突き刺さり、血しぶきが当たりにまき散る

それを抜き取り、右腕を切り落とす


女勇者「四肢と全身の皮を剥いで真っ赤な達磨にしてあげるよぉっ」

魔王(な、何だ…何なんだ…攻撃が、全く出来ない…する隙が与えられない…)


魔王「ぐ、ぐぉぉぉぉお」ゴォッォオオオ

女勇者「お?」


魔王の体を闇が包み、人の皮がボロボロと零れ落ちる

女勇者はそれを一歩引いて楽しみに見守った

今日はここまで

女僧侶はリョナろうかと思ったけど途中で飽きた
リョナってその気になった時じゃないと書けないんだよねぇ

魔王「…」フシュゥゥ


闇が晴れた時、そこには半魔の魔王がいた


女勇者「なーんだ、まだ本気出してくれないんd―

魔王「ぐる゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」

女勇者「っ」ビリビリ


女勇者(すごい…僕が…震えた…身を裂くような殺気、どの魔物とも…人間なんかとも違う…)

女勇者「…すごぃ…」キュン


魔王(渾身の威嚇。全く動じずか、それどころか笑っているだと)


女勇者「半魔でそれなんて…すごい、今に…今、今すぐ!本気を引きずり出してあげるよぉっ!」

女勇者「あははははっ、魔王っ!」

子供が大人にじゃれるような笑顔を魔王に向ける


剣が床に擦られ、ギギギィと火花を散らして振り上げられる


魔王「来るかぁっ!」


魔王の腕も振り上げられ、視えざる魔力が女僧侶の剣と交わり、その軌道を逸らす


女勇者「あは♪」ズバァッ

魔王「!?」


いつの間にか魔王の脇腹にナイフが突き刺さっている

それに驚いた一瞬未満の隙を突いて再び剣を振る

魔王の体が大きく抉られ、血飛沫が飛び散る


女勇者「まだだよねぇ?」

魔王の血を顔面に浴びて尚狂気じみた笑顔を浮かべる女勇者


魔王「無論まだだぁっ!!」


呪文も無しに練られた魔力が爆裂魔法になって女勇者に降りかかる


女勇者「すごいっ、こんな大きな魔力も見たこと無いよぉ」

魔王「…自動自己回復だと!?」

女勇者「あはは、まさか本当に使うことになるとは思わなかったよ」


女勇者(すごい、すごい!ぞくぞくするよぉっ!!)

女勇者「あはは、魔王っ、まおぉぉぉぉっ!!」

魔王「ぐぉっぉおおっっ!」


再び魔王の体が崩れていく


女勇者「さあ、第三形態を見せてもらうよぉっ!」

魔王「くくく、あぁ、本当にやりおる。こんな簡単にこの姿を引きずり出した者は勇者とてそうはいないだろう」

女勇者「」キュン


女勇者「…かっこ、いぃ」

大きな恐竜のような体、棘の付いた太くてかっこいい尻尾、大きな鉤爪の付いた手
爬虫類のような全身の鱗に鰐のような顔と牙、瞳孔が縦に入った真っ赤な眼、角

"かっこいい"それ以外出てこない

全身がゾクゾクする。先ほどよりも大きく長く続く感覚

心臓が跳ね、体が熱くなる


ああ、これが"恋"というものなのかな…


"彼"が欲しくてたまらない。このゾクゾクする感覚を全て独り占めしたい

永遠に"これ"を感じていたくてたまらない


女勇者「欲しぃ…」ペロリ


魔王「何を、笑っている?」

女勇者「笑わずにはいられないよぉ。こんな…こんな素敵な戦いができるんだからぁ///」

魔王「くくっ、そうだな。これほどの強敵と戦える、我も運命に感謝しよう」


女勇者(僕と同じ想いなんだ…嬉しいなぁ)

女僧侶生きていたのか…然り気無く剣装備して二人の戦いに参加してやがる

>>910
し、しまった!予測変換のせいでミスった!

女勇者「さあ始めよう!本番はこっからだよぉっ!」

魔王「いいだろう!魔王を本気にさせたその力を認め、我も全力を尽くそう!」


言い終らぬうちに魔王は女勇者に飛びかかり、巨大な顎で噛み付く

身体をありえない方向に折り曲げて避け、その顎下から剣を突き刺す


だがその剣は突き刺さることなく、延びてきた尻尾により弾かれる

尻尾はうねり、鞭となりて女勇者を弾き飛ばす

それも女勇者には大したダメージとはならず、地面を蹴ってすぐに反動をつけて向かってくる


女勇者「わおっ」


今まで使ってきた剣が簡単に牙でへし折られる


魔王「ふんっ、そのようなヤワな鋼じゃ完全な魔物体となった我の鱗は貫けぬぞ!」

女勇者「あぁ…素敵、だったら…これを使うとするよぉ」


滅多に使わない、使う気も無かったその剣に手をかける


魔王「」ゾクゥ


それを使わせてはいけない。本能の身でそう感じ取り、魔王は女勇者に猛攻を浴びせる

全魔力を消費せんが程の攻撃魔法の猛嵐


魔王「させるかぁぁあああ!!」

女勇者「そう!それだよ!僕はずっと望んでいたんだ!きっとこのためだけにここにきた!"私"じゃない"僕"が望んだ全てがここに在る!」


その敵意も、殺意も、僕に向けて欲しい!だから、そのために


全力を出す!!

魔王「っ、相殺しただと!?」

女勇者「そう驚きながらさらに攻撃加えてくるのは流石だねっ!」

女勇者「でももう遅いんだよっ」


剣はあっさり抜かれる

魔王の目から見ても美しいと息をのむ程に、人間離れた美麗な細工の剣


だがその使い手は、あまりにも邪悪な笑みを浮かべている


魔王(あれが運命の女神に託されたという剣か)

絶対に使わせてはならない。破壊しなければならない

そう確信しながら鉤爪を、尻尾を、魔法を、全て使って攻撃する


しかし女勇者はそれを軽ろやかに、踊る様に避け、いなし


歌うように詠唱を始めた

女勇者≪我こそは女勇者、運命の女神に選ばれ加護を受けし者≫

≪闇を照らし光の中に、邪を払いて聖なる解放を≫

≪我と女神の御名において命ずる≫

≪リ・ヴィエレント・キール≫

魔王「っ!これはっ…」

女勇者「最初で最後だよ」


魔王の鉤爪が女勇者を貫いた


女勇者「がはっ…これが、死ぬほどの痛み…か…ぁぁ♡」

魔王(…違う、これは回復じゃない。身代わりだ)

魔王「貴様、まさか…"やった"のか!」


自らの守護精霊を、女神に与えられた精霊全てを元々の任から解放して道具のように"使う"一生に一度しか使えない禁呪


女勇者「あははっ、そうだよ!だから最初で最後!あなたに殺されたい!あなたになら、殺されてもいい!僕の全てを!死すらも!!捧げたい!」

魔王「何をたわけたことを。守護精霊を使い切ることが貴様の目的だろう!」

女勇者「はははっ!正解っ!」

魔王「ならばこれは戯れの時間というわけか!」


女勇者「」ニタァ

女勇者「見せてあげるよ!勇者だけに許された究極の魔術を」


目に見える程濃くなった魔力が部屋の中で渦巻き、勇者の周りに立体的な陣を描く


魔王「すごいな、これは…いいだろう!」


その中に魔王が飛び込む、鉤爪でもって魔力を掻き消し、鱗が弾く


女勇者「すごいっ!非物質破壊効果!」

魔王「魔物体の我に魔法は通じぬ!」ズバァッ

女勇者「ぐっ、ふぅっ…」


女勇者「ロック…解除」ニタァ

魔王「…」ゴクリ


今も尚魔王は本能的に"それ"を発動させてはならないと確信している

だが、好奇心がそれを見たいと望んでしまった


そして、始まる


魔王「…なんと…なんということか」

少し震えた声で、しかし楽しそうな声でそう呟く


女勇者「ふふ、すごいよねぇ…」


ウットリとした声と顔で見つめる女勇者の目線の先、女神から与えられた剣

"奇跡"と呼ばれる女神の聖なる魔力も、守護精霊も失われた剣は女勇者の欲望に従いて周りにある闇の魔力を吸い尽くしていく


女勇者「守護精霊も女神の加護も僕にとっては足枷にしかならない!僕の求めていたものはこれなんだから!」ズォォオオ


魔王「聖なる剣を闇堕ちさせたというのか」


先ほどまで魔物が触れたらそれだけで蒸発してしまいそうな聖なる力で満たされていた剣は、純粋な闇の剣となってしまった

息を飲むほどに美しい装飾の女神の剣でありながら、その刃はもはや光すら吸い込まれそうな深淵の闇色に染まっている


"勇者"にしか使えない"闇"の剣

なんともおぞましい矛盾なのか


そしてそれを産み出した女勇者は異例、いや異形と称するしかないだろう

女勇者「じゃあ試しに一発」スパッ


壁に向かって剣を振ると闇の衝撃波が放たれた

それはとてつもない衝撃と共に部屋全体を揺るがし、バリアの破片が散らばる


魔王「神話級の戦いでも耐えられるようにバリア張ったつもりなのだがな」

女勇者「ふふ、外でやる?」

魔王「確かにここは我らの戦いには狭すぎるようだ」


女勇者(我"ら"…ふふ)


部屋内が歪んでいき、全ての方向に延びていく

やがてどの方向をも果てが見えなくなるほど広がった


魔王「さあ、仕切り直そう。ここが最終決戦場だ」


最終決戦にふさわしく背景に尖った岩山やら溶岩の海やら吹き上げる火山などが創られゆく


女勇者「いい趣向じゃん。行くよ!まおぉぉおおおお!」

魔王「こい、ゆうしゃぁぁああああ!」


グォォオオオオ!!!

魔力が轟音を立てて様々に変容し、変化し、ぶつかりゆく

女神の剣から闇の衝撃波が無数に放たれる

魔王は一つとて受けまいと必死に避けていく


それは純粋な闇の力。闇は他の何物でも防げず、魔王の非物質破壊効果でも打ち消すことは出来ない

同じ闇属性ですらより強く大きな闇に飲まれるしかない。そしてどっちが強く大きいか判断できない魔王ではない

闇を相殺できるのは聖なる光の力のみ。本来ならばそれが勇者のとるべき戦法。だからこれは


魔王「勇者のする戦い方ではないな!」

女勇者「僕を普通の勇者と一緒にしてもらっちゃ困るよぉ!」


空に満点の星空が浮かび上がる。それらは瞬時に眩い光となり、火球となり、幾千万の神級業火魔法となって女勇者に降り注ぐ


女勇者「あはははっ、魔王には魔法が通用しないのに一方的に魔法攻撃してくるなんて卑怯じゃない?」

その業火は全て女勇者の剣に吸い込まれるように一点に集まり、真っ二つに引き裂かれて轟音の大爆発を背後で起こす


魔王「まだまだ全然余裕そうではないか!」

地面を蹴って女勇者に飛びかかる魔王

巨大な手が女勇者を捻り潰そうと迫りくる。ギリギリで避け、剣で切り裂こうとすると鉤爪で弾かれる


女勇者(ああ素敵…でもこの体格差で近接戦は剣があってもきついかな)

そう考え剣を短く持とうとした女勇者と魔王の間に魔力が集まり、凝縮する


女勇者(爆破魔法っ!?)


跳んで後ろに下がるとそれを見越していたようにそこにも魔力が集まっていた


魔王「さあ食らうがいい!吹き飛べぇっ!!!」

女勇者「ああ、もう素敵すぎるよぉっ♡///」

女勇者「―ーっ!」


前後からの超新星爆発を思わせるほどの巨大なエネルギーの膨張と解放は女勇者を上空に吹き飛ばした

そのバラバラになりかねないダメージは瞬時に回復する


女勇者よりも高く飛び上がった魔王が体を捻り、凶暴な棘の付いた尻尾が叩き付けられる


女勇者「がはっ―っ」ブンッ

魔王「ぐぁっ、なっ!?」


地面に落ちる前に剣を振り、闇の衝撃波が魔王の尻尾を切り落とした

超重力魔法が落ちる女勇者に更に落下時のダメージを与えんと降り注ぐ


魔王「潰してやろう!」

女勇者「無駄だよぉっ」


自分の真横に爆発魔法を起こし、重力過多範囲内から抜け出る


女勇者≪来たれ我が傀儡、使役精霊よ≫

魔王「それのどこか使役精霊だ!」


女勇者が召喚したのは黒い体、山羊の頭、真っ赤な燃える三眼、無数の触手を生やした山ほど巨大な怪物

だがそいつが何かをする前、顕現して一瞬の身じろぎしかできない内に魔王の攻撃魔法で粉微塵にはじけ飛ぶ


魔王「!?」


粉々にはじけ飛ばした肉片全てがそのまま魔王に向かって一斉に突き刺さる。これは本来の性質じゃない

明らかに使役主である女勇者が何か手を加えた仕様だ。倒されること前提の使い方。もはや生贄のような使い方


魔王(使役精霊を何という使い方するんだ)

女勇者「あはは、面白い使い方でしょっ!」


驚愕の戦い方、人間ではありえない動き、そして中級程度の魔物なら怯えそうなほど邪悪な笑み


魔王(なんと…なんとも、素敵じゃないか)


魔王も、女勇者同様に楽しんでいた

二人は共に昂ぶり、その心は同調する


まるで見世物のようにド派手に魔法と魔法がぶつかり合い、踊る様に近接戦をし、笑い声をあげていた


女勇者の猛攻の内についに魔王の体に女神の剣によって大きな切り傷ができた

魔王「ぐぅっ!?」

女勇者「あはっ、隙もーらいっ♡」グチュゥ


その傷の中に腕ごと剣を捻じ込んだ


魔王「ぐ、ぐぐ…ぐぁぁああああっっ!!!」


ブチィッ


内側から肉を引きちぎる


女勇者「はははは、まだかぁ」


ブオォッォオォォオオオオオ


その傷口から闇が吹き上がる

元の肉体はボロボロと崩れ去り、闇が魔王の形となる


魔王「素晴らしい!素晴らしいぞ勇者!とても楽しい戦いだ。ああ、心躍る。なんとも心躍るものだ!ああ、ゾクゾクする」

女勇者「うん、うん!本当に素晴らしいよ!ああ…あぁ♡」

魔王「これが我の最終形態だ!見事打ち滅ぼして見せろ!」

女勇者「そうさせてもらうよぉ♡」


魔王の闇と女勇者の剣が混じりあい、打ち合う


それは勇者と魔王の戦いでも、光と闇の戦いでも無い


もはやただの"闇"と"闇"の食らい合いだ

今日はここまで

魔王が体を捻る度に闇が刃と鞭になり女勇者に襲いかかる


女勇者「あははっ、さいっこうだよっ♡」ガキンキンキン


その全てを剣一つで弾く女勇者

女勇者「ぁぁ、もう素敵だよっ、こんなに強くて、こんなにかっこいい、僕はきっとあなたに会うためにここに来た!あなたに会うためにここまで来たんだぁっ!」

魔王「ふはははっ、そんなに褒めてくれるな。魔王と言えどもこそばゆい」ズォォオッ


闇がぱっくりと口を開けて女勇者に襲い掛かる


女勇者「ぐぅぁっ、ぁはははっ!」

左腕を大きく抉られるも笑いながら剣を突き立てる


魔王「あぐっぁっ!まさかっ」

魔王(移動し続けるコアを正確に貫くとはっ)


女勇者「あはは、捕らえたぁっ」ザクッ、ズザッ、ザッ、ズザァッ

魔王「闇を捕らえた気になるかッ!」

女勇者「逃がさないよぉっ!」ズバァッ

魔王「なんとっ!」

女勇者「おっと?」

捕まえていたはずの輪郭がぼけ、手からすり抜けていく

闇の中から様々な魔物が生み出され、女勇者に猛攻を浴びせる


女勇者「僕に物量戦は無意味だよっ」

その全てを一太刀に切り伏せていく

女勇者「!?」


強大な闇のエネルギーが全く予期しない方向から遅いくる

いや、予期しなかったのではない。意識が向かないように捻じ曲げられていたのだ


女勇者(そんなことできるんだ、すごいなぁ///)

女勇者「んあっ、あ゙ぁ゙っ゙っ゙っ゙」


避けきれずに"闇"に脇腹を抉られる


女勇者「でも見っけたよぉっ」

大怪我を負っても尚女勇者の動きは鈍くならず、自動回復しながらその一転に跳ぶ


魔王「よく分かったなっ!流石だっ」

女勇者「当たり前じゃん♡」ズォゥ


女神の剣からあふれ出した"闇"が女勇者を鎧のように包む

闇そのものと化した魔王に対抗する女勇者の闇武装


女勇者「ふんっ!」

魔王の顔を殴りつけ、腹に蹴りを加える


魔王「がぁっ、どりゃぁっ!」


巨大なかぎ爪が女勇者の体を貫く

地面を蹴って無理やり爪を引き抜いて瞬時に回復、女神の剣で魔王に切りかかる

魔王の切り傷から"闇"が吹き上がり、槍となって女勇者に襲い掛かる


女勇者(あぁ…強い…絶望的な強さ、おぞましい力…僕に釣り合う…僕が釣り合う…)

女勇者(間違いない…あなたが僕のパートナーだ♡)

女勇者(僕は魔王に会うために今まで旅をしていたんだ♡)


女勇者(だから…それを認めさせるために、魔王を僕の物にするために)


女勇者「倒す!殺す!圧倒的な差を見せつけてトドメを差すっ!!」


魔王「っ!?」


魔王の目には今まで楽しんでいた女勇者が突然化け物染みた殺意をむき出しにしたように見えた

魔王「ぅぉぉおおっっ!!!!」


濃い闇の瘴気を分厚い盾にする魔王


だが女神の剣は一発でそれを砕いた


そして



女勇者「最高の戦いだったよ!」


ズバァッ


魔王は声も上げずに細切れとなる

最初から勝負はついていた。最初から女勇者は勝つことができた。容易に。しようとすれば一撃で

―――――
―――

側近「あ、お目覚めになられたのですか魔王様」

魔王「…何故、我は生きている。確かに死んだはずだが」

女勇者「生きてるからいいじゃない」ニッコリ

魔王「っっ!?」ビクゥッ


魔王「な、何故貴様がここに!」

女勇者「えへへー」ギュゥ

魔王「引っ付くな!抱きつくな!」

女勇者「この爬虫類みたいな匂い大好きぃ♡」クンカクンカ

魔王「嗅ぐなぁっ!」


側近「まあまあ、命の恩人ですよ」

魔王「我はこ奴に殺されたんだぞ。命の恩人も何もあったもんじゃない」


魔王「そもそも何故我を生き返らせた?」

女勇者「もちろん。平和のためだよ。人間と和平を組んでほしいの。人間の王様にはもう話通しておいたからね」

魔王「早すぎだろ」

側近「いつの間に」



女勇者(ふふふ。もちろん嘘だけどね。人間界には後で『魔王は死んだ』と伝えておこう)

女勇者(ああ、楽しみだな。こんなに強い魔王と女勇者が手を組んで人間を一気に裏切る。しかも魔王は死んだと思われていた)

女勇者(人間たちはどれほど絶望してくれるだろう…ふふ、ふふふふふふ)


女勇者(でもまだ様子見…人間を滅ぼそうって魔王に持ちかけるのが楽しみだなぁ)


女勇者「ねえ、魔王。これからよろしくね♪」

魔王「え…え?」



その後「さあ魔王、人間を滅ぼそうよ」と女勇者が言うまで女勇者は魔王城に無理やり住み着き、一方的にいちゃついたという


―――――
―――

魔王「っっっっ!!!!」ガバァッ

女勇者「おはよう、魔王」ギュー


魔王「…夢、だったか」

女勇者「夢?」

魔王「貴様と出会った日の夢だ」

女勇者「わあ、すごい奇遇。僕も魔王と出会った時のことを夢に見たんだよぉ」ギュゥ

女勇者「やっぱり僕たち繋がっているんだね血の色の糸的なあれで///」

魔王「"赤い糸"な」

魔王(女勇者の場合意図的に我に夢を共有させることぐらいできそうではあるが…)


魔王(しかし、初めてあの日のことを思い出したな。もしかしたら我はあの頃から女勇者に知らず知らずに惹かれていたのかもな)ナデナデ

女勇者「ゎ…な、何…ま、魔王からだなんて…珍しい…じゃん///」

魔王「まあ少し気分でな。まだ眠いので側近が来るまで一緒に二度寝だ」ギュゥ

女勇者「う…うん///」

今回の更新分はここまで

次スレはRに建てて魔王と一線超えさせようと思ってみたりみなかったり
如何でしょう

女勇者「バーレンターイン♪バーレンターイン♪」


魔王「なあ側近、女勇者がさっきから不吉な呪文を呟きながら歩き回っているのだが…」

側近「呪文じゃないですよ。人間界の催事らしいです」

魔王「祭事?儀式詠唱か…怖ヒ」

側近「違います」

女勇者「美味しいチョコレートを期待していてね♪」

魔王「…ま、まあ、うん、最近料理上手になってきてるし…あぁ」

女勇者「うふふふ…」


側近(味見させられたくないですね…)

側近「私は書類整理でもやってきます」

調理場

料理長「言われたとおりの材料を集めてきましたよ」

女勇者「うん、ありがとう」

女勇者「さてさてチョコ作り~」



「いやあ前回の肉料理といいあの人もまともになったもんだよなぁ」

「この間も普通の料理を料理長から学んでいたしな」

「いいことじゃないか」


女勇者「よっと」ザク

女勇者「回復魔法」パー


『 』

2レスだけだけどここまで

「いやいやいや!何やってるんですか!」

女勇者「ん?材料の採取」

「自分の肉をチョコレートに混ぜますか!?というか肉をチョコに混ぜるのはどうかと思いますよ!」

女勇者「へーきへーき、ほら変異魔法」


血の滴る新鮮な肉がイチゴジャムの滴るチョコレートに変異する


『    』


女勇者「あと髪の毛もー」プチ

女勇者「ふんふふー、美味しくなぁれ~」



「お、おい…止めなくていいのか」

「だ、大丈夫だろ。変異魔法使ってるし」


女勇者「魔王喜んでくれるよね~♪」

女勇者「ふんふっふふー魔王ラブ―♡」


側近「女勇者さん頑張っているようですね」

「あれは頑張っているとは言いません。暴走と言います」

側近「まあ、魔王様に美味しく味わってほしいという気持ちは本物ですし、そこは美しいと思いますよ」

「なんであんな黒魔術師染みたことやってるのにそんな平常でいられるんですか…?」

側近「他人事ですので♪」

側近(魔王様なら最悪生の人肉も食べられますし。食べようとしないだけで)

女勇者「かんせー」

側近「ずいぶん張り切ってましたね」

女勇者「R18のための布石だよー」

側近「そういうこと言わないでください」

女勇者「まあまあ、愛は本物だから。このチョコには僕の愛がたっぷり詰まってるからね!」

側近「愛…ですか…」

今日はここまで
もうすぐスレ移動するわけだし念のため酉つけとく

女勇者「ねえねえ魔王?」

魔王「何だ?」

女勇者「はい、ハッピーバレンタイン♪」

魔王「ああ、そんな行事あったな」

女勇者「酷いよ魔王、せっかく作ったのに」

魔王「ふふ、冗談だよ…ではいただこうか」

女勇者「よーく味わって食べてね。僕の愛を♡」




側近(ネタバレしたくなるのは何故でしょうか…ぶっちゃけ魔王様の反応が見てみたい)

魔王「うむ。すごく美味しいぞ。上達したじゃないか」ナデナデ

女勇者「えへへ、嬉しい♪」

側近(い、言いたい…言ってしまいたい…)ウズウズ

女勇者「」ギロリ

側近「ヒゥッ」

魔王「どうした?側近」

側近「な、ナンデモナイデス…」

―――――
―――

女勇者「ねえ魔王ホワイトデーって知ってる?」

魔王「去年したではないか」

女勇者「うん、僕も今年は」

魔王「今年こそはお菓子でお返しをと思っているんだが」

女勇者「え?また大きな国を滅ぼしていいって?」

魔王「言ってない!言ってないぞ!!」

女勇者「流石魔王、僕のもっとも喜ぶことを心得てるね」

魔王「普通にホワイトデーさせろ!」

女勇者「二人で真っ赤に染め上げようね!」

魔王「ホワイトと言っているだろがぁ!!」

今日はここまで

ちょっと諸事情で酉変える
誘導はします

その頃

勇者「戦士ー、あっちからすごく甘ーい匂いがするよ~?」

戦士「ん?そんな匂いするか?」

勇者「するするー、あっちだよ~」

戦士「お、おい待てって」

勇者「あっち、あっちー」


戦士(勇者は無邪気だ。無邪気すぎるが故に怖い、一時も目を離さないようにしないと…またどんな悲劇があるか…)


勇者「町だよ!お菓子の町!」

戦士「……は?」

戦士「うわっ、なんだこれ。お菓子で町が作ってある!すげえ」

勇者「これこれー」

戦士「人間か、妙に生々しいな」

勇者「でもほら、ここに[ご自由にお食べください]って」

戦士「名前も書いてあるなユミル・シャルティリア…誰だか知ってるか?」

勇者「…世界を食らう災厄、真っ黒い太陽、魔に堕ちた光」

戦士「……また始まった」

今日はここまで

次は次スレにて
女勇者「さあ魔王、人間を滅ぼそうよ」魔王「何を言っているんだ貴様は」2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1489415083/)


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