上条「本当にただの高校生です」 (123)

まぁ右手は幻想殺しなんだけどね

(前に書いたののリメイク、書き溜めはなし)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1438528278

読んだ事あるよ、主人公補正が無いんだよな

上条(ただファミレスで飯食ってただけだったのに)

上条(怖い人達に絡まれて、挙句の果てに追い回されて、そのうえ今度は)

御坂「なんで逃げるのよ、あんた」

上条(学園都市最強のLevel5に絡まれる始末)

上条「不幸だ」

御坂「勝負しなさいよー!」

上条「うわああああああああ!!」

>>2 ありがとう

―回想―

上条(うわ、あのこ絡まれちゃってるよ)

上条(でも俺が手を出しに行っても絶対負けるし、とりあえずアンチスキルに連絡を……)

不良たち「あばばばばばばば!!」

上条「おっつ!あぶね!」パキーン

御坂「……?」

上条(いけね、目が合っちまった。あの子めっちゃ強ぇじゃんか)

御坂「ねぇ、ちょっとあんた」

上条(無視しよっと)

御坂「ちょっ!逃げんな!」

―今―

上条「ちょっと待とうよ!ね!?俺なんかしたっけ!?ねぇ!」

御坂「するしないじゃなくて、勝負しなさいって言ってるのよ!」

上条「わかった!君あの時の子でしょ!でもしょうがないじゃんか!しかも君超強いじゃんか!」

御坂「その私の攻撃を消したあんたはなんなのよ!」

上条「ちょ!お願い!なんでもするからやめてくれよ!」

御坂「なんでもしてくれるなら勝負をしなさい……よっ!!」バリバリ

上条「あぎゃあああああああああ!!」

御坂「……あれ?」

上条「おっ……がっ……ぶふっ」

御坂「嘘でしょ?」

御坂「ぐすっ……ねぇ、起きて、お願い……」

上条「……あぁ、ごっほ」

御坂「あ……よかった、ホント」ポロポロ

上条「君さ……本当に何考えてるの……やめてって…言ったよね?俺さ」

御坂「はい……」

上寿「知ってるよ、君のこと。……Level5の御坂美琴……でしょ?」

御坂「なんで……」

上条「あの後友達に話したら、多分そうだって……。能力と容姿的に」

上条「なに?学園都市の最強って、弱い者いじめをして…上に立った奴ら……なの?がっかりさせんなよ……」

御坂「すいません。本当に」

上条「……言い過ぎたよ。でももうやめてね、こういうの」

御坂「はい……」

上条「喋れるようにもなってきたし、もういいよ。帰る」

御坂「あの……お家まで送ります」

上条「いいよ、別に。家くらい一人で帰れる」

御坂「でも……」

上条「ホントいいから。ていうかやめてくれ」

御坂「……わかりました」

御坂「あの、すいません」

上条「なに、まだなにか?」

御坂「あの日、なんで私の電撃を……」

上条「あぁ、あれはこの右手がね」

御坂「右手?」

上条「あぁ、どういう原理かはわからんけど、どうやら異能の力ならなんでも打ち消せるらしいんだ」

御坂「え、それじゃあさっきのもその右手を使って消せば……」

上条「えーっとさ、君はLevel0がLevel5の速度に反応して、さらにそれに手を当てられると思う?」

御坂「……」

上条「右手がそうなだけなんだ。だからこの前はたまたま防いだだけで、俺の身体能力や反応速度は全てが一般人とそう大差ないんだよ。
   だからそんな自分で狙ってやるとか絶対無理」

御坂「なるほど」

上条「わかった?じゃあ俺もう行くから」

御坂「すいませんでした」

上条「いいって。俺は自分の不幸を呪うから」

上条(翌日、朝起きて布団を干そうとベランダに出ると)

禁書「やぁ」

上条(銀髪の美少女シスターが引っかかっていた)

禁書「お腹、空いてるんだ。何か食べさせてくれると嬉しいな」

上条(よくわかんないけど)

上条「…とりあえず、部屋入る?」

禁書「ありがとうなんだよ!」ノソノソ

上条(日本語は通じるようだ。外国人ぽいのに)

上条「今お湯沸かすよ、カップ麺知ってる?ヌードル」

禁書「知ってるよ。しおあじがいいな」

上条「すまん。うちにはみそととんこつしかないんだ」

禁書「じゃあどっちでもいいんだよ」

上条「はいよ。その辺座っててね」

禁書「うん!」

上条(歯を磨きながらボケっとそのシスター(コスプレしてるだけかもしれないが、まぁそれはそれでいい)を見ていたが、どうやら彼女の
   頭はカップ麺でいっぱいのようだ。その仕草はけっこうかわいい)

禁書「まだかな?」

上条「もうちょいだ。お湯は入れたから三分待ってくれ」

禁書「はいなんだよ!」

上条(やがて時間が経ち、彼女にそれを伝えるとフォークをカップに突き刺して麺を頬張っていた)

禁書「おいしい!」

上条(カップ麺一つでこの表情を見れたと思えば、まぁ随分と安い買い物だったと思う)

禁書「ふぅ、おいしかった……」

上条「そんなにか」

禁書「うん!ごちそうさま。それじゃ、さようなら」

上条「あ、一個聞いていい?」

禁書「なぁに?」

上条「どうやってそこまで登ってきたの」

禁書「違うよ。落ちてきたの」

上条「……はぁ?」

禁書「それじゃあね」

上条「お、おう」

上条(……なんだったんだ?)

上条(ふぅ、つかれた。補習なんて一生したくないよ)

ガタンガタン

上条(ん?なんだ?うちの前から音が)

禁書「あ……嫌だ……」

上条「……は?」

神裂「誰です?」

上条「いや、そこ、うち…だから」

神裂「……失礼しました。ご迷惑を」

上条「いや、そうじゃないでしょ」

神裂「はい?」

上条「はいじゃないが」

神裂「だから……何をしているのですか?」

上条「通報ですよ。人んちの前でチャンバラごっこはやめてもらいたいので」

神裂「ごっこ?」

上条「それが本物だったらもっと問題ですよ」

ステイル「神裂、何をもたついているんだい?」

上条(また変なのがきたよ)

神裂「いえ、あの…」

ステイル「見られたのかい?それよりなぜインデックスはこんなところに」

上条(いんでっくす?目次?)

ステイル「まぁいい、見られたからにはここで」

上条「ちょっ!待てよ!おい!」

ステイル「遺言かい?まぁそれくらいなら聞いてやろう」

上条「お前らひょっとしてバカか?」

ステイル「……なんだと?」

上条「さっきから黙って聞いてればなんなんだよ!つーかここ最近マジでついてねぇよ!この野郎!」

神裂「お…落ち着きなさい」

上条「落ち着けだと?ふざけんじゃないよ!それに俺はわざわざ男子寮の、それも人の部屋の前でまだ14.5歳の女の子リンチするような
   奴らよりは落ち着いてるってんだよ!バーカ!」

上条「そもそも何考えてるんだ!?あんたらの国じゃ通用したかもしれんけどここは日本なんだよ!どこでもあんたらの自分ルールが通用すると
   思ってんじゃねぇぞ!まずは事情を説明しろよ!」

ステイル「神裂……」

神裂(何も言い返せない)

上条(とりあえずこの赤髪よりは話の通じそうな女の人のほうに事情を聴くことにした)

上条「……で、あんたたちはいったい何者なんです?」

神裂「私たちは、魔術師です」

上条「魔術…ですか」

神裂「はい」

上条「ふーん。まぁ超能力があるくらいだし、魔法があってもおかしくはないけどさ」

神裂「随分物わかりがいいんですね」

上条「別に普通ですよ。で、なんでその魔術師がそのシスターに切りかかってたんですか?」

神裂「それは……」

上条「……聞き方を変えます。あなたはその子を[ピーーー]気だったんですか?そして、それだとしたらなんでその子は切られてな
   いんですか?」

神裂「それは違います。私には確実に彼女は切れないとわかっていたのです」

上条「どういうことです?」

神裂「彼女が着ている衣服は、通称"歩く教会"というものでして、それはいかなる干渉も受け付けないんです」

上条「たとえ魔法だとしても?」

神裂「はい、絶対に」

上条「ふーん」

上条「そんなすごいもので守らなければならないほど、彼女は魔術師にとって重要な人なんですね」

神裂「えぇ」

上条「そのいんでっくす……というのもそういう意味ですか?」

神裂「はい。彼女はその名の通り何冊もの魔道書を所有しているのです」

上条「書庫の鍵かなにかでしょうか」

神裂「いえ、それは……」

禁書「違うよ、それは私の頭の中にあるんだよ」

上条「頭の中?パスワードとか?」

禁書「違うよ、読んだんだよ。10万3000冊の魔道書をね」

上条「それを全部覚えてるってこと?」

禁書「うん、そうだよ」

上条「ははっ、まさか」

ステイル「……」

神裂「……」

禁書「……」

上条「……」

上条「マジなの?」

上条「まぁ、それが本当だとしても、なんでそれがそのインデックスを斬る理由になるんですか」

ステイル「そこまでにしておいたらどうだい?」

上条「なんだよ」

ステイル「冥途の土産にしては重いだろう?そろそろ君にかまっている時間もないんだ」

上条「ちっと黙っててくれないか。話がややこしくなる」

ステイル「貴様…っ!Fortis931!」

神裂「ステイル!」

ステイル「なんだい?そろそろ僕は黙って聞いているだけにも飽きてきたところなんだよ。それに彼には少し熱めの灸を据えたほうが
     いいと思うけどね」

上条「……殺そうとしてない。でも斬った。その理由を聞かせてもらいたい」

神裂「……実は、彼女はその10万3000冊の魔道所のせいで、私たちが手を施さないと死んでしまうのです」

ステイル「神裂!」

神裂「しょうがありません。このまま彼が何も知らないままでいる方が話がまとまりません」

上条「つまり、その処置をするための保護をしようと思ったと。そういうことですか?」

神裂「はい、なので見逃して頂けませんか?ここであなたが静かにしてくれれば、少なくとも今まで通りにすることができます」

神裂「あなたも……私、たちも……」

上条(今の間はなんだ)

気が向いたらまた書きに来ます
おつかれした

上条「ちなみに処置っていうのは、やはり記憶に関することですよね」

神裂「はい、彼女の脳はその膨大な記憶量によって脳の70%を使ってしまっているのです。なので完全記憶能力を持つ彼女の
   記憶を周期的に、その魔道書以外の記憶を消さなければ、彼女は死んでしまうのです……」

上条「ふむ」

上条(まぁ、それは嘘だろうな。完全記憶能力っていうか、それなら世界中の完全記憶能力の人間が早死にすることになる。聞いたこと
   ねぇよ、そんなの)

神裂「なので…ここは見逃していただけないでしょうか」

上条「まぁ、そうですね。それが一番楽だと思います」

神裂「それでは……」

上条「でも一つ、いいですか?」

神裂「なんでしょうか」

上条「あなたは、彼女がカップ麺を食べる姿を、見たことがありますか?」

神裂「どういうことです?」

上条「いや、カップ麺じゃなくてもいいんですけどね。とりあえず彼女がご飯を食べるその表情を、見たことがありますか?」

神裂「いえ……もう何年も」

上条(何年もってことは……やっぱりか。こいつら三人、もともと友達同士だったんだろう。さっきの間に違和感があったが、
   そういう意味か)

上条「俺は、あの表情を見ることができただけで、彼女に出会ったことに感謝できる」

上条「そんな彼女が、これからもずっと、生きている間ずっと追いかけ回され、その上に、そのたびに忘れた痛みや恐怖を
   何度も味わうことになるなんて、俺には許せない」

神裂「……じゃああなたのような素人に、いったい何ができるというのですか?私たちは何年も何年も……もうそれ以外に道は
   ないとわかっているんです。だからっ」

上条「俺は、少なくともあなたたちが知らないことを一つ知っていて、そしてそれを壊せるかも知れない力も持っている」

神裂「……なんですか?それは」

上条「まず、第一に人は記憶の圧迫なんかでは死なない。これは絶対にだ」

ステイル「んなっ」

神裂「そんなバカな!」

上条「あんたら、魔法の勉強もいいけど、少しは普通の勉強もしたほうがいいよ。この世界に何人完全記憶能力を持ってる 
   がいると思ってんだ。そいつらは魔道書なんて読んでないとしても、一年で脳の残りの30%を使うんだとしたら三年と半
   年で死ぬことになるんだぞ」

ステイル「嘘だっ!神裂!今日昨日会った奴がこぼすような戯言には耳を貸す必要はない!」

上条「ステイル…だっけ?」

ステイル「気安く呼ぶな!」

上条「信じる信じないじゃねぇ。もはや今から俺がやろうとしていることはギャンブルなんだ。だからお前がしなきゃいけねぇ
   のは伸るか反るかなんだよ」

ステイル「ぐっ……」

神裂「それで…もう一つの力、というのは」

上条「あぁ、それはこの右手のことなんですが、まぁ実際に見せた方が早いです、この右手になにか魔法を飛ばしてみてください」

ステイル「それじゃあ僕が」

上条「あ、間違えても他のところに当てるなよ?死ぬからな」

ステイル「あ、あぁ……せやっ!」ゴウッ

上条「つっ…」パキーン

ステイル「なんと……」

上条「まぁ、こんな感じでさ。異能の力なら全部打ち消せるんだ」

神裂「つまり、その右手で呪いに触れれば」

上条「まぁ、なんとかなるかも知れないってことです」

禁書「ねぇ」

上寿「うん?どうした?」

禁書「私ね、やってほしいな」

ステイル「……」

上条「いいのか?ここまで言っておいてあれだけど、多分相当に危ないぞ」

禁書「うん、いいの。話聞いて、神裂とステイルがなんで私を追っかけるのかわかったの。だからもう怖くないよ」

神裂「……っ、インデックス?」

禁書「なぁに?」

神裂「できれば私のことを、火織と呼んでいただけませんか?」

禁書「わかったよ、火織」

神裂「はい……」ポロポロ

上条「……ステイル、ここから数ブロック行った先に広間がある。そこで落ち合おう」

ステイル「君は?」

上条「ちっと準備をな、またあとで会おう。それと」

ステイル「……?」

上条「変な噂が立つ、早く俺の部屋の前から彼女たちをどけてくれ」

ステイル「……すまなかった」

休憩、また夜に

メール欄にsaga入れないの?
入れた方が良いよ

>>32 ありがろん

上条「さてと、やりましょうか」

神裂「えぇ」

ステイル「その呪いとやらに、何かあてはあるのかい?」

上条「あぁ、だがとりあえずインデックスにはこれに着替えてもらいたい」

禁書「これは……体操服?」

上条「そうだ、その服、歩く教会が魔法の産物んら、俺が右手で触った瞬間に吹き飛ぶからな。だから普通の服に着替えてくれ」

禁書「わかったんだよ」ノソノソ

神裂「それで、あてというのは」

上条「それなんですが、あなたたちが何年も付き添って見つけられないってことは少なくとも体表ではないでしょう。だから体内
   を探します」

神裂「なるほど」

上条「一発目でヒットすればいいんですけどね」

神裂「……」

上条「まぁそういうことです。必要悪の教会がそこまでサドではないことを願いましょう」

神裂「えぇ」

禁書「終わったんだよ」

上条「おう、お疲れ……ステイル、どうした」

ステイル「いや、なんでもない」

上条「……そうか。まぁいい、始めようか」

上条「ところで神裂さん、一つお願いが」

神裂「なんでしょうか」

上条「その歩く教会、いかなるものも絶対に防ぎきるんですよね?」

神裂「はい。そうですが」

上条「わかりました、それならそれをずっと持っていてください」

上条「インデックス、口をあけてくれ」

禁書「あーん」

上条「手は消毒してある。許してくれな」

禁書「……」コクリ

上条(いざ……)

ステイル「どうだい?」

上条「まぁ落ち着け……っと、これか」パキーン

禁書「はぅっ……うぁああっ!!」

上条「うおっ」

神裂「どうしたんです!?」

上条「……どうもこうも、見たままさ」

禁書「―警告、第三章第二節~」

上条(これは…出しゃばらなきゃよかった。死ぬかもしれない)




ステイル「おい!ぼさっとしていないで早く右手を前に出せ」

上条「はっはい!」

禁書「これより、聖ジョージの聖域を発動、侵入者を排除します」

上条「うわああああああ!!こええええええええ!!」パキーン

神裂「大丈夫ですか!?」

上条「大丈夫じゃないから!早くその歩く教会を!」

神裂「…lはいっ!」バサッ

上条「……ふぅ、助かった」

神裂「しかし、いくら歩く教会とはいえ、このままでは」

上条「いや、策はある」

神裂「えっ?」

上条「さっき、インデックスは俺への特定武器を形成するといっていた。つまりこのまま歩く強化で防いでいれば……」

禁書「目標の排除の失敗。目標の変更を開始、目標を歩く教会へと変更しました。これより目標の歩く教会への特定武器を
   発動します。2秒1秒、攻撃を開始します」

上条「きたっ!今だ!ステイル!」

ステイル「わかっている!吸血殺しの紅十字!」ゴォッ!

禁書「くっ……」

上条「神裂さん!どいてくれ!」


神裂「はいっ!」

上条「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」パキーン

禁書「―警、こく。最終……章、第零…致命的な……再生…不可能……」

上条「よっしゃ……頭脳の勝利ってやつだぜ……」





神裂「……っ!」

ステイル「まっ……!」

上条(おっと、なんか降ってきてるよ)

上条(これは防げませんよ。だって上条さん、正真正銘の普通の高校生ですもの。無理言うなって)

上条(でも、さ)

上条当麻は泣いていた。舞い降りた一枚の羽根に、どうしてか自分の終わりを確信したからだ。だが、悲しかったの
それのせいではなかった。こんな時に最後に思い浮かんだのは、あの時のインデックスの顔だった。

上条(もっとうまいもん、食わせてたらどんな顔してたんだろ)

一枚の羽根が彼の頭に舞い落ち、そしてそれは彼の体を大きく振動させた。
そしてそれから、上条当麻が動くことはなかった
 

×  ×  ×

上条(なんでだろう、無性にラーメンが食べたい。しかもカップ麺)

上条(気づいたら病院だったし、なんだってんだ全く)

ガラッ

上条「……?」

禁書「……っ」

上条「えーっと、病室、間違えてませんか?」

禁書「ううん、間違えてないよ」

上条「そうですか」

禁書「うん……」グスッ

上条(なんだろ、すごく辛そうな顔をしてるけど)

禁書「なんでもないんだ、ごめんさい。私は帰るんだよ」

上条「あ、はい。お疲れ様です」

ガラッ

上条「……何だったんだ?」

ガラッ

冥途返し「少し、いいかな」

上条「はい、先生」

冥途返し「具合はどうだい?」

上条「どうと言われましても、何8が起こったかもわからないのに何とも言えませんよ」

冥途返し「確かに、言われてみればその通りだね」

上条「……さっき、女の子が一人来ました。あの子は僕の知り合いだったのでしょうか」

冥途返し「そうらしいね、僕が来た時も病室の前で泣いていたよ」

上条「そうですか、ひどいこと言っちゃいましたかね」

冥途返し「一つ、伝言を預かったよ」

上条「伝言?」

冥途返し「『あなたと食べたラーメンの味は、絶対に忘れない』だってさ」

上条「……」ツー

冥途返し「覚えているのかい?」

上条「先生も維持が悪いですね。そんなわけないじゃないですか」

冥途返し「でも、泣いているじゃないか」

上条「えぇ、でも、なんでかはわからないです」

冥途返し「……失礼するよ、ゆっくり休みたまえ」

上条当麻は本当に普通の少年だった。ヒーローに憧れた幼い気持ちも、それは大人になるにつれいつの間にか
消えていたし、自分の身の安全を考えずに人のために行動することだって、滅多になかった。自分が不幸であ
ることは理解は出来ても受け止めることは出来ないでいた。疫病神だと言われ続け、自分の周りから人が離れ、
なぜ俺だけがと、いつだってそう思っていた。
そんなある日、出会った一人の少女が見せたその表情は、いったいどれだけ彼の心の光になったのだろう。
普通の少年が、見たことも聞いたこともないような未知の力を信じ、そしてそれを出し抜くための知恵と勇気
を振り絞って。その結果に彼はどれだけ絶望したのだろうか。

……だが、今となっては、そんな絶望の心すら、彼は忘れてしまっているのだ。

お疲れさまです、寝る

上条(病院から帰ると、玄関の前に体操着が置いてあった。なんでだよ)

上条(まぁ、それはさておき。とりあえず、家に居てもなにもないし、外に出てみたのだが)

御坂「この前はすいませんでした!」

上条「……」

上条(俺は謎の美少女に謝られていた)

上条「あー……俺多分それ許した…よね?」

御坂「はい、まぁそうなんですけど……」

上条(でかした、俺)

御坂「それでもやっぱり、私納得できなくて」

上条「…じゃあどうしたら納得できるわけ?それってなんていうの?いわゆる気持ちの押しつけってやつじゃないのかな」

御坂「あぅ……」

上条「……こうしよう。今俺暇なんだ。だからその暇潰しに付き合ってよ」

御坂「そんなことでいいんですか?」

上条「他になにがあるんだよ。いちいち食い下がらないでよ。話がややこしくなる」

御坂「わ、わかりました」

上条「まぁ、とりあえず座ろうよ」

御坂「そうですね」

上条「…えーっと、学校ではなんて呼ばれてるの?君」

御坂「え……えっと……」ボソボソ

上条「ん?すまんよく聞こえなかった」

御坂「お…おねぇさま、とか」

上条「……俺もそれで呼べばいいの?」

御坂「違います!ていうかあたしの趣味とかじゃないですしなんでそうなのかあたし自身わかってないし!」

上条「はぁ?」

御坂「そこんとこ!勘違いしないでください!」

上条「わ、わかった。落ち着け。じゃあなんて呼べばいいのさ」

御坂「普通に御坂でいいですよ」

上条「わかった」

上条(まぁそんなに深い仲ではなかったみたいだな。てかおねえさまって。お嬢様かなにかなのか?)

御坂「えっと、先輩…ですよね?」

上条「あ?あぁ、そうだな、多分。でも呼び方はなんでもいいよ。上条とか」

御坂「じゃあ上条先輩ってことで。いいですよね?」

上条「お……おう」

上条(なんだ?このこ。すげぇかわいい)

上条「まぁじゃお近づきの印ってことで、ジュースでも飲もうよ」

御坂「じゃあ私が」

上条「いや、俺そこまでビンボーじゃないから、大丈夫」

御坂「……でも」

上条「あのさ、君は確かに学校ではおねえさまなのかもしれないけどさ、少なくとも俺の前では後輩なんだから、
   甘えろとは言わないけど俺のやることを止めないでよ」

御坂「そ、そうですか」

上条「それと、さっきからずっと下向いてるし。辛いならもう帰っても大丈夫だよ。気にしないで」

御坂「…うぅっ」グスッ

上条「…えっ?待って、大丈夫?なんで?」

御坂「だっえぇ…先輩がぁ…」ポロポロ

上条「ごめん!謝る!謝るから!」

御坂「そうじゃあくてぇ……あたしっはぁ…謝りたかったのにぃ……それにあたし、前に先輩に会った時から自分が
   ……す、ごく子供だって…おもって…ぇぅ」エグエグ

上条「わかった!じゃあ好きにしていいから!いうこと聞くから泣かないでよ!」

御坂「またそうやってぇ…」

上条「いや、うん。ほら、大丈夫だから」

御坂「なにがですかぁ…」

上条「ほら、まだだって中学生…だよね?常盤台の制服着てるし。それで周りからさ、ほら。慕われたりしてるうちに
   ハリきっちゃって、いつの間にか戻れないところまで来てた、みたいなさ」

御坂「うん…」

上条「それでたまたま俺みたいな性格悪いのにたまたま縁があっちゃったもんだから、調子狂っちゃったんだよ。君は。
   別に俺は子ども扱いしてるんじゃなくてさ、なんていうの?鈍感?ってやつなの自分でわかってるから。それで
   そう思わせちゃったのかもしれないけど」

御坂「はい…」ズズ

上条「だから御坂は全然悪くないよ。それで俺も悪くない。どっちも悪くないんだから、どっちかがなにかしなきゃいけ
   ない理由なんてないだろ?」

御坂「そ、そうですね」

上条「だからいいよ。一緒にジュース買って飲もうよ。ね?」

御坂「うん。そうします」

上条「ほら見てみなよ。このジュース。牡蠣抹茶だってさ。ありえねぇだろって。なぁ?」ケラケラ

御坂「は、はい。そうですね」フフッ

上条(よかった。笑ってくれた)

御坂「あたし、上条先輩みたいな人に会ったの初めてです」

上条「はぁ?いや、俺めちゃくちゃ普通の学生だけど」

御坂「…なんていうか、あたしって尊敬はされてるって思うともあるけど、やっぱり敵視されることのほうが
   多いし」

上条「…常盤台の超電磁砲」

御坂「そう、それです。それがあたしなの」

上条(やっぱり。ということはLevel5か。しかも三位の)

御坂「だから今まで勝負を挑んでくる奴はたくさんいたし、そんな奴らはみんなやっつけたけど。でも」

上条「うん?」

御坂「上条先輩みたいに暴力なんて使わないで言葉だけで言われるのって、全然慣れてなくて」

上条「いや、ごめん」

御坂「ううん。いいの。学園都市は確かに能力の実力が大事かもしれないけど、だからこそ先輩みたいな人も
   必要なんだって、あたし、そう思います」

上条「買いかぶりすぎだよ。別に何もたいしたことはしてない」

御坂「いえ、そんなことは」

白井「おっねぇいさまああああああん!!」

上条「おっごぉ!」ドガッ

休憩、また夜に

御坂「黒子、あんた……」

白井「おねぇさまぁん。黒子おいていったい何をなさっていたんですの?」

上条「いってぇ、なんなんだよ、まったく」

白井「あら、こちらの殿方は一体誰ですの?」ジト

上条「別に誰でもねぇよ。おーいてぇ」

御坂「大丈夫ですか?」

上条「まぁ、なんとか」

白井「そんなことよりおねぇさま。ここで一体何を」

上条「……いいや、帰る。じゃあね」

御坂「あ……」

白井「あら、そうですの。ごきげんよう」

御坂「あんた……」

白井「はぁい!おねぇさま!?」

御坂「いい……っ。黒子、これからはちゃんと!しっかり挨拶をして普通にしていてね?」

白井「は…はいですの……」

白井(語気は優しいのに表情が今までのどの時よりも怖いですの……)

上条(なかなかにクレイジーな奴だった。できればあまり関わりたくはない)

パキーン

上条「ん?」

一方「あァ?」バシャッ

上条「あ、すいません。洋服が……」

一方「……?」

一方(どォなってやがるンだァ?)

上条「あの、すいません。このハンカチ使ってください」

一方「あァ?…いらねェよ。今更拭いたって元に戻るわきゃねェンだ」

上条「…そうですか」

一方「テメェ……いや、なンでもねェ」

上条「……?」

一方「まァいい、目障りだからとっとと失せろ」

上条「本当にすいません。それじゃあ」

上条「……」

上条(こわっ。髪の毛真っ白ですげぇ人だったな)


上条「…あれ、御坂?」

妹「はい?」

上条「さっきまで公園にいたじゃん。どうしてここにいんのよ」

妹「私は最初からここに居ましたが、と、ミサカはお答えします」

上条「いや…え?てかそのゴーグル」

妹「もしかして、あなたはおねえさまと私を同一人物だと勘違いしているのでは?」

上条「え?妹……なの?」

妹「はい。初めまして。ミサカはおねぇさまの妹です」

上条「あぁ、これはご丁寧にどうも。上条当麻です」

妹「…ところで、なにかご用件はありますか?」

上条「あ?いや、ない、けど」

妹「そうですか。それでは私は失礼します。また」

上条「お、おう。また」

上条(ねぇちゃんとはえらい性格の違いだな)

上条(学校に行く。補習もする。どっちもやらなきゃあいけないのが学生のつらいところ……って、あれ)

妹「……」

上条「なにして…御坂の妹…だよな。なぁ」

妹「……」

上条「おい、無視なんて趣味がわるい。昼前に会ったばっかりだろ?こんな裏道で寝てたら」

上条(本当は見た瞬間気づいていいた)

上条「おい、冗談だよな?おい!」

上条(御坂の妹はもとっくに……)

上条「おい!誰か!救急車を呼んでくれ!誰かいねぇのかよ!おいってば!」

上条「人が…人が死んでるんだよおおおおおおおおおおお!」

上条(アンチスキルを呼ぼうとケータイ電話を取り出したが、あの路地には圏外だった。なんとか通報しようと大通りに出て改めて
   アンチスキルを呼んだのだが)

アンチスキル「何もないじゃないか」

上条「いや、本当にあったんですって!!」

アンチスキル「いや、でも」

上条「本当に…人が…」

アンチスキル「…これからはもっとよく見てから通報するように」

上条「……はい、すいません」

上条(なんだ?白昼夢でも見たってのか?いや、でもあれは間違いなく)

妹「確かに、私は死亡していましたよ。ただし、別の個体ですが」

上条「……っ!?は?」

妹「数時間ぶりですね、こんばんわ」

上条「いや、え?待ってよ」

妹「別に私はあなたを置いていこうとはしていませんが、とミサカはため息交じりに答えます」

上条「……死んでたって、どういう意味だ?それに別の個体って」

妹「妹達、です。とミサカはお答えします」

上条「いや、だからわかるように説明しろって。しすたーずとか言われてもわかんねぇっての」

妹「はぁ」

妹「ですから、今朝あなと接触したのはこのミサカ10032号です。ですが、すでに私たち妹達は記憶を共有しています
  ので、あなたのことはどの個体も知っています」

上条「……クローンってことなのか?」

妹「えぇ。ですから10032号がこうなることは実験上わかっていたことですので、何も問題はありません」

上条「いや、問題しかないだろ」

妹「…あなたを実験に巻き込んでしまったことは申し訳なく思っております」

上条「そうじゃねぇだろって!」

妹「何がですか?」

上条「だって、だってよ……」

妹「実験です。仕方ありません。むしろある意味ミサカ達はこうなるために生まれてきていますから」

上条「……」

妹「それでは失礼します。また」

上条(実験ってなんなんだよ。御坂の妹を何人も作って殺さなきゃならない実験って、そうしたらそういう状況になるんだ?)

上条当麻はいくら考えてもわからなかった。御坂の妹、妹達は確かに10032号だと言っていた。ということはあの実験は10032回目のこと
だということが予想できるし、だとすればもう御坂の妹は

上条(すでに10032人も殺されているってことだろ?いくらなんでもあり得ないだろ。少なくとも普通じゃ)

10032回もの殺人がこの学園都市で見逃されるはずがない。いくら警備員のザル警備でもそこまで見逃されるはずがない。だとすれば。

上条(この殺人は学園都市に黙認されてる。あり得ないが、そうとしか考えられない)

上条(クローン、実験、隠蔽。Level5の御坂美琴がオリジナルである必要。それはどうしてだ?なんであいつなんだ?なにか理由が……)

考えるうちに、いつの間にか上条は学区を二つも跨いでしまっていた。

上条「あれ、いつの間にかこんなところまで……あれ」

御坂「あ、上条先輩」

上条「御坂……」

上条(御坂は知っているのか?あの実験のこと。……いや、知っているに決まっているだろう。クローンのオリジナルが御坂ならDNAマップ
   が必要なはずなんだ)

御坂「今朝は、すいませんでした」

上条「いや、いいんだ。そんなことは」

御坂「そんなことって、急に蹴られたのにそれで片づけちゃうんですね」フフ

上条(なんで笑っていられるんだ。なんで……)

御坂「……どうしたんです?」

上条「いや、なんでも」

御坂「そうですか」

上条「…なぁ、御坂」

御坂「なんですか?」

上条「ちょっと気になってさ、今朝の話」

御坂「今朝…ですか?」

上条「うん、君の後輩が来る前の、そんなことはって言葉、あれどう続ける予定だったの?」

御坂「あぁ、あれは別にたいしたことじゃなくて、えっと」

上条「まぁ別に流れだったから忘れててもおかしくないよ、変なこと聞いてごめん」

御坂「いえ……でも、もし先輩に能力があったらって気になっちゃって」

上条「俺に?……考えたこともなかったけど、少なくともこの性格にはなってなかったんじゃないかな」

御坂「どうしてですか?」

上条「……だって、それなら能力でのし上がろうと思うに決まってるし、こんな使えない右手ぶら下げてるくらいなら
   テレキネシスの一つでも覚えたかったよ」

御坂「なんか、また余計なこと聞いちゃいましたかね」

上条「そんなに気にする必要はないよ。でも」

御坂「……?」

上条「俺はこれでよかったと思ってる。無駄に背伸びさせられるくらいなら、このままでいれることが幸せなのかなって、最近
   思うよ」

御坂「先輩らしいですね」

上条「……君は、Level5になれて、幸せだった?」

御坂「…幸せでしたよ。努力が実ったんだって、そう実感できましたし、面倒事も増えたけど、それでも私は……」

上条「じゃあ、なんで俺みたいなのが必要だって、そう思ったの?」

御坂「え…」

上条「努力が実って、現に君はこの学園都市の頂点にいる。そんな君が俺をうらやむ理由が俺には分からない」

御坂「それは、ただ」

上条「泣いてしまったことが悔しかったから、俺を肯定するための理由を作ったんじゃないか」

御坂「違います!そうじゃなくて!」

上条「君は欲しがったんだよ。でももうそうでいないことが分かってしまっている。なにかあったんじゃないのか?努力が、今までの
   自分が否定されることが」

御坂「やめてください」

上条「一人で解決できないことが分かってしまってるんだ。君は。俺が君に初めて言った言葉を、覚えているか?」

御坂「やめてよ……」

上条「Level5ってのは、弱い者いじめして上に立った奴なのか?って、もしかして君だって」

御坂「やめてって!言ってるでしょ!」

上条「……いいよ、今度はやめろなんて言わない。好きなだけやるといい」

御坂「うっ……うわああああああああああああ!!」バリバリバリ

上条「……ごっ、ぼふっ」

御坂「違う!違う違う違う!!私はまだやれるわ!昨日今日会ってまだ私のことなんて知らないのに!勝手なこと言わないで!」

上条「…………………言う…さ」

御坂「っ!?」

上条「もう、嫌なんだ…」

御坂「なにがよ!」

――――――――

『なんでもないんだ、ごめんさい―』

――――――――


上条「普通って、一体……なにが普通…なのかが、わからない…んだ」

御坂「え…」

普通に暮らすことを望んだ。普通で平和で、俺の周りはみんな笑っていて、学校に帰りはファミレスに寄ってお喋りして、
そんな日々が、ただ欲しかった。
俺だって御坂と同じだ。誰かに肯定してほしかった。俺の普通が本当に普通であることを。本当はみんな寂しくて切なくて、
毎晩悲しい夢を見ることが普通なんだと。
でも違う。そうじゃなかった。じゃあ普通って何だ?何が普通なんだ?悪を見過ごすことは普通か?違う。逃げることは普通
か?違う。女の子が泣いているのは普通なのか?違う、違うに決まっている!
だったら、だったら俺の普通は……

上条「助けたいんだ。もう、泣いてほしく……ないんだ」

御坂「……」

上条「君にとっての……普通は…俺にとって…普通じゃない。でも俺の普通は……君は肯定する…だろ?」

御坂「それは…そう、ですけど」

上条「だったら、君の普通が……俺の普通になってもいいはずだ。だって、知って、それが普通なら俺だって」ドサッ

御坂「…先輩」

上条「御坂…誰にいじめられたんだ。俺がやっつけて……やる。御坂だって、そうして…きたんだ。普通…だろ?」

御坂「か…あ、うぅ」

上条「今だ、今が御坂が甘える時で、俺ががんばるときなんだよ。だから、任せろ。俺も、俺を御坂に任せるから」

御坂「……助けて。…助けて……ください……」

上条「大丈夫だ。それが普通なんだ」

休憩、そのまま寝ちゃうかも

上条(学園都市最強のLevel5、そのさらに頂点に君臨する第一位、通称アクセラレータ。そいつを前人未到のLevel6へと成長させる
   ための実験。その実験用のモルモットがミサカの妹だというわけなようだ)

上条(御坂がまだLevel5じゃない頃に、人を助けるためという理由で提供したDNAマップが、まさかLevel5になることで実験用に使用
   されるとは、いったいどんな皮肉だろうか)

上条(御坂に場所を聞き出し,俺がそこにたどり着いたとき、今まさに実験の開始が告げられるというシーンだったのだが)

上条「あ、あなたは」

一方「あァ?テメェ……」

妹「あの、ここは」

一方「この場合実験ってのはどォなっちまうンだァ?」

上条(なんとか近づいて、したこともない喧嘩をするのか?いや違う。俺は俺らしく、俺の方法でやるんだ)

上条「ちょっと時間をもらいたいんですが」

一方「なンで俺がテメェみたいな三下のために時間を割かなきゃいけねェンですかァ?」

上条「……お願いです。知りたいんです。この学園都市の頂点の人がどんな人間なのかを」

一方「テメェがそれ知ってどォすっるってンだよ」

上条「…言葉を返すようですが、あなたはさらに上に上がって、どうするつもりなんですか?

一方「いい度胸してンなァ、オマエ、誰と話してンのかわかってンのかァ?」

上条「えぇ、わかってる。死ぬかもしれないのだってわかってます。でも」

一方「……?」

上条「それでも知りたいんです。最強の人ですら、人に従う理由を」

一方「……ンだと?」

上条「どんな気持ちですか?人を殺すのって。躊躇いとか、戸惑いとか…もうすでになくなっていますか?そして、もう躊躇い
   も戸惑いもなくなってしまった心を作らせたあなたのバックの人間に、あなたはどう思っていますか?」

一方「……意図が読めねェなァ。なんで出しゃばってまで死に急いでンだァ?死にてェんなら楽にしてやるぜェ」

上条「プライドって、厄介ですね」

一方「あァ?」

上条「俺にはわかりません。なぜ質問に答えようとしないのか。俺の後輩もそうでした。なぜそうまでして自分を認めたくない
   んですか?目を瞑って、そこから逃げて、じゃあ逃げた先に強さがあるんですか?あなたは、そうして今まで強くなってきた
   んですか?」

一方「いい加減にしておけよ、三下ァ」

上条「違いうはずです。昔はそうできたはずなんです。地を這って、辛酸をなめて、その結果が今なんです。でもあなたは、人を
   殺すためにそうなったんですか?だとすれば」

一方「テメェ!ぶっ殺す!!」

上条「…っ」ビクッ

一方通行は上条の顔面を鷲掴みにした。

一方「俺の能力、知ってんだろォ?ならこれからどォなるかわかるだろォなァ」

上条「あなたは、殺すことで逃げているんだ」

一方「まだ減らず口を……っ」

上条は目を逸らさなかった。上条はここで逃げることに、自分の終わることをを確信したからだ。だが目を逸らさなかった
理由は他にもあった。ここで目を逸らすことで、それは一方通行が人を傷つけることを肯定してしまうことになると
思ったからだ。

上条「ちょっと時間をください。話をさせてもらえませんか?」

一方「……ちっ」バッ

上条「…ありがとうございます」

一方「テメェは少し待ってろ」

妹「は……はい。わかりました」

一方「テメェ、誰の差し金だァ?」

上条「違いますよ、俺はあなたと話したかったんです。こんなタイミングになっちゃったのは、今じゃないとあなたの居場所
   がわからないからです」

一方「信憑性がねェなァ」

上条「……俺は、羨ましかったんです」

一方「あ?」

上条「強いって、どんな気持ちですか?今この質問に答えられるのは、この学園都市ではあなただけなんです。だからどうしても
   聞きたくて」

一方「……テメェは、集ってくる蚊を一匹ずつプチプチ殺そうと思うか?」

上条「いえ、その場を理由がなければその場を離れます」

一方「俺も、今そういう気分なンだよ

上条「……」

一方「俺に集ってくる奴らが一体何考えてるかなンて知らねェけどよ、そろそろ鬱陶しいンだ、そいつらが。だから計画に乗った。
   それだけの話だ。」

上条「それで、本当に敵がいなくなると思ってるんですか?」

一方「ちげェってのか」

上条「今度はそれよりももっと鬱陶しい虫が集まってくるだけです。あなたがその強さを発揮するような相手は、絶対に来ません」

一方「知ったような口訊くじゃねェか」

上条「えぇ、後輩がそう言っていたものですから」

一方「はン」

上条「でも、またあなたは俺の質問に答えていません」

一方「……強い、ねェ」

一方「殺人鬼にいまさらそンなこと訊いて、まともな返事が返ってくると思ってんのかァ?」

上条「えぇ、思ってますよ」

一方「めでてェ奴だ」

上条「いえ、ちゃんとした理由があります」

一方「あァ?」

上条「あなたは、自分に敵意のない人間には手を出さない」

一方「何言ってンだ?テメェ」

上条「俺があなたのコーヒーをこぼしたとき、あなたは俺を殺していません。だからあなたには話が通じると思った。これじゃダメ
   ですか?」

一方「こじつけもいいところだ」

上条「けど、筋は通っている。なにより、俺は俺とあなたを信じたんです」

一方「きもちわりィ、それにさっきテメェを殺そうと思ったぜェ」

上条「でも、死んでない。死んでないんですよ。一方通行」

一方「……俺と同じ境遇の奴ってのは、この世にいねェンだ。わかるか?」

上条「……」

一方「最強ってのは、予想以上に達成感なンてなかった。ただ、勝手に周りの連中が俺が一位だって決めてよォ、それで俺が最強って
   ことになっちゃいるが」

上条「はい」

一方「もしかしたらよ、テメェのほうが強ェかもしれねェ。だって計算上そうなってるだけでよォ、本当にそうなのか、たまにわから
   なくなるときが、昔は俺にもあった」

上条「アクセラレータ……」

寝る、誤字脱字すいません、お疲れ様です

一方「なァ、三下。戦うってどういうことだなンだ?」

上条「それは……」

一方「どうして俺が人を殺すことは殺人になる?仮にそこのモルモットが俺を殺せたとしたら、それは殺しってことになるのか?」

一方「ちげェ、そうはならねェンだ。誰でもいい。もし誰かが俺を殺したとしたら、それは悪とされるのか?どうなンだ?」

一方「俺がやられたとしたら、じゃあそいつが一位になったとしたら、今度はそいつが人をぶっ殺したとき、それは俺を殺した
   時と同じなのか?ちげェ。ちげェんだ。そうはならねェんだ。三下ァ」

一方「あのなァ、三下ァ。教えてやるよ」

上条「……」ゴクリ

一方「一番強ぇ奴はなァ、勝つことが当たり前になってるからよォ、勝ってそこから俺がどうしたって事しか見られねェんだよ。勝った
   ことが称えられるのは自分より強えェ奴がいるときだけなンだよ」

一方「王ってのはいつだって悪訳なんだよ。例えいいことをしたとしても、それは王として当たり前。だが悪ィことするとそれが
   下の反感を買うンだよ」

一方「だから、俺は諦めたンだよ。一番になることと、誰かのためになることは絶対に両立しねぇ。ンならよォ。俺が、俺を……
   俺だけでも認めてやらねェと、終わっちまうだろォが。テメェがいう過去のダセェあがきをよ、俺だけでも認めてやらねェと、
   じゃァ誰が俺が一番強えェって認めてやれンだよ!!あァ!?」

上条「アクセラレータ……」

大事なとこでミスってしまった。もうワンテイクください。

一方「なァ、三下。戦うってどういうことだなンだ?」

上条「それは……」

一方「どうして俺が人を殺すことは殺人になる?仮にそこのモルモットが俺を殺せたとしたら、それは殺しってことになるのか?」

一方「ちげェ、そうはならねェンだ。誰でもいい。もし誰かが俺を殺したとしたら、それは悪とされるのか?どうなンだ?」

一方「俺がやられたとしたら、じゃあそいつが一位になったとしたら、今度はそいつが人をぶっ殺したとき、それは俺を殺した
   時と同じなのか?ちげェ。ちげェんだ。そうはならねェんだ。三下ァ」

一方「あのなァ、三下ァ。教えてやるよ」

上条「……」ゴクリ

一方「一番強ぇ奴はなァ、勝つことが当たり前になってるからよォ、勝ってそこから俺がどうしたって事しか見られねェんだよ。勝った
   ことが称えられるのは自分より強えェ奴がいるときだけなンだよ」

一方「王ってのはいつだって悪役なんだよ。例えいいことをしたとしても、それは王として当たり前。だが悪ィことするとそれが
   下の反感を買うンだよ」

一方「だから、俺は諦めたンだよ。一番になることと、誰かのためになることは絶対に両立しねぇ。ンならよォ。俺が、俺を……
   俺だけでも認めてやらねェと、終わっちまうだろォが。テメェがいう過去のダセェあがきをよ、俺だけでも認めてやらねェと、
   じゃァ誰が俺が一番強えェって認めてやれンだよ!!あァ!?」

上条「……認めるのは、何も強さだけじゃないよ」

一方「テメェふざけんなよ!最底辺の屑が何この俺様に力を語ってんだァ!?弱えェ奴は毟られて当然だ!だがその弱えェ奴らはテメェ
   で勝ち取ろうともしねェでは強えェ奴に求めやがる!ふざけてんじゃねェぞ三下ァ……。悔しさも味わうことも知らねェ、孤独と
   戦いもしねェ!そんなモンを俺は心の底から許せねぇ、それでいて暇つぶし程度に最強に挑もうだと?舐めるんじゃねェぞ!
   俺はなァ!……俺は……」

一方「……テメェには、もう少し早く会えればよかったって、今思った」

上条「待て!まだ話は!」

一方「さァ、始めンぞ。ストレッチくらいはしたンだろうなァ」

妹「は…はい」

一方「さァ、今日も殺すぞ。俺は、テメェを」

妹「そ……っ、それでは、現時刻をもって、第10033回目の実験を……」

上条「まだ俺の話は終わってねぇぞ!アクセラレータ!」

パキーン

一方「……どォなってやがる」

上条「なぁ?まだ遅くねぇよ!アクセラレータ!なんで遅ぇって決めつけちゃうんだよ!」

一方「耳元でキャンキャンうるせぇよ!っつーかなんだよその右手はよ!なんで俺をつかンでるンだよ!」

上条「知ってるじゃねぇかよ!孤独と戦ったって、今自分の口でそういったじゃねぇか!」

一方「……っ」

上条「俺は心が痛いよ。まるで俺の話を聞いているみたいだった。決して共感できたわけじゃない。けどさぁ、知ってるんだ。俺も、
   お前の痛みを」

一方「そんなわけねェだろうが!なんでテメェが知ってるんだよ!」

上条「最弱の気持ちも考えたこともねぇくせに!知ったような口訊いてんじゃねぇよ!」

一方「……!!」

上条「確かに最強であることを強制されるのは辛いって、俺にはそんな気持ち絶対に知ることはないと思うよ」

上条「でもさぁ。そうじゃねぇだろ?アクセラレータ。お前にだって、まだ知らないことがあるって、今わかったじゃないか。
   ならさぁ、それならまだ決めつけるのは早いんじゃないかなぁ。まだ世界にはお前を知ろうとして、知ったことを理解
   しようとする人間が現れるんじゃないかなぁ……」ポロポロ

一方「テメェ、何泣いて……」

上条「俺はさぁ、逃しちゃったんだよ。この世界で初めて俺を理解してくれたんだと、今やっと理解できたんだ。でも遅かった。
   彼女はもうここにはいないし、もう絶対に会うことは、出来ないんだって、そう思うんだよ」

上条「伸ばせばすぐそこにあったんだ。なんで……なんで俺は掴まなかったんだ。なぁ、アクセラレータ……教えてくれ。俺バカ
   だからさ、毎日補習受けてるようなバカだからさぁ!部屋の番号間違えてるだなんて、なんでそんなこと言っちゃったのか、
   ずっと悩んでるんだよ!」

一方「……」

上条「気持ち悪いよな?知らねぇって思うよな?でも、なぜかお前にだけはわかってもらえる気がしてるんだよ。お互い知ってること
   は、互いに知らないことだってはっきり理解できる。俺はお前には分かってもらえるって、そう思ってんだ」

上条「だから逃して欲しくねぇんだよ。アクセラレータ。お前には掴んでほしいんだ。だから、自分から人を遠ざけるために強くなる
   のは、もうやめようぜ。今度は、どうしたら他人に強くなれるかを教えてやろうぜ。俺、手伝うからさ。頼むよ」

上条「もう、俺は自分を嫌いになるのは嫌だ……」

一方「俺がテメェと似てる……か」

一方「……おィ」

妹「はい、なんでしょうか」

一方「俺は足くじいて転んだ拍子に額ぶち抜かれた。そォだな?」

妹「……!?」

一方「こいつ言ってることがメチャクチャだぜ。まずテメェはもうそいつに会うことを諦めてンのに俺には諦めンなって。……ったく
   よォ」

一方「なァ、三下ァ」

上条「……なんだ?アクセラレータ」

一方「最弱って、誰が決めてンだ?」

上条「それは……」

一方「諦めてンじゃねェよ。誰がテメェを弱ェって決めたンだ?……少なくとも、テメェは学園都市の最強に勝った男だ。面上げろよ。
   なァ。テメェのせいでやること増えたンだぜ?こっちはよォ」

上条「それって……。じゃあ」

一方「オマエは頑張ったよ。オマエは本当に頑張った。――だからイイ加減楽になれ……俺も、そォするからよ」

上条(それから数日後、とある路地裏で出会ったミサカの妹は、確かに10032号だと俺に言った。それはつまり、あの日以来
   ミサカの妹が死んでいないってことだよな。日本語おかしいけどさ)

上条(御坂は、ことの全てを妹から聞いたようだった。耳を疑ったと言っていたが、それでも安心したような表情をして、俺に
   ありがとうと言った。俺は別に何もしてないんだけどな)

上条(アクセラレータには、あの夜から会ってない。でもわかるんだ。あいつはあいつで、何か道を見つけたんだって、そう思う
   んだ)

上条(しかし、今日はいい朝だ。こんなにすがすがしい朝は、一体いつ以来だろ。……まぁ病院で起きた日からそんな日はなかった
   けどさ)

上条(そうだな、布団でも干そう)

上条「よっこらせっと……ん?」

禁書「…やぁ」

上条「なっ……なんで。なんで君が」

禁書「……お腹、空いてるんだ。何か食べさせてくれると嬉しいな」

上条「…とりあえず、部屋入る?」ポロポロ

禁書「ありがとうなんだよ!」ノソノソ

上条「今お湯沸かすよ、カップ麺知ってる?ヌードル」

禁書「知ってるよ。しおあじがいいな」

上条「あぁ、わかった。俺もそうしようかな」

禁書「……まだかな?」

上条「もうちょいだ。お湯は入れたから三分待ってくれ」

禁書「はいなんだよ!」

上条(やがて時間が経ち、彼女にそれを伝えるとフォークをカップに突き刺して麺を頬張っていた)

禁書「おいしい!」

上条(彼女が残した伝言の意味を、俺は訊くことはしなかった。だって、わかったんだ。訊かなくても、彼女の表情を見たらさ)

禁書「もう、追っかけられることはない。あなたのおかげだよ」

上条「……俺が何かしたの?」

禁書「たくさんしてくれたよ。魔術師と戦ってくれた。ラーメンを作ってくれた。……ねぇ」

上条「なんだ?」

禁書「自己紹介しなくちゃね。私はインデックス」

上条「いんでっくす?……俺は、上条当麻だ」

禁書「そっか。……ねぇ、とうま」

上条「ん?どうした?」

禁書「インデックスは、とうまのことが大好きなんだよ?」








おしまい、多分一方通行のスピンオフをそのうち書くけど今日は寝る。おやすみ

今日もいつもと同じ日常だった。道を歩けばスキルアウトに絡まれ、最強の力をわざわざ発揮しなければならず、どこに
いくあてもなく彷徨って、また寝るだけの部屋に戻る。退屈で退屈で、ただ、それだけだった。
……彼自身が変わっても、どうしようもなく退屈な毎日は終わる姿を見せず、まるで闇の奥に閉じ込められたように、ただ
その赤い瞳をそのさらに奥へと向けて、自分の今を見つめていた。。
意識してしまった罪は、もう二度と自分から離れることはない。彼は明らかに悪意を持って襲ってくるその贖罪の念を、最強
の力を持ってしても跳ね返すことができないことを理解した。いや、正確には跳ね返る相手も自分であることを理解してしまったのだ。

一方(俺が逃げる道が殺すことなら、じゃァ戦う道は生かすことなのか?くだらねェ。メチャクチャじゃねェか)

あの少年に言われたことは、確かに一方通行の心に響いている。だがどうだろう。逃げることをやめた今が、戦っていることになる
のだろうか。一方通行にはそれがひどく幼稚な解釈にしか思えなかった。

一方(手を伸ばせばそこにあった……か)

一方通行は立ち止まり、四角く切り取られた何もない空に手を伸ばす。

一方(伸ばしても、届かねェモンはどうすんだよ。三下)

握った手には、かつて殺した彼女たちの血がこびり付いている。洗っても落とすことのできない血が、これこそが一方通行の罪だ。

一方「見えねェよ。何も見えねェンだよ……)

握りしめた拳をコンクリートの壁に叩き付けた。鈍く響いた音に歯ぎしりをする。脆い。なんて脆いのかと、一方通行は思わず笑みを
こぼしてしまった。

一方「なァにやってンだろォなァ……・俺は」

だらりと下げたその拳からは、一度も見たことのない、今までになんでも流してきた血が流れていた。

禁書「痛くないの?その右手」

一方「あァ?誰だオマエ」

禁書「おまえじゃないよ。インデックスだよ。……それよりも、手からたくさん血が出てる」

一方「いいんだよ。治してねェだけだ」

禁書「自分で治せるの?」

一方「あァ。多分な」

禁書「すごいね。どういう仕組みなのかな。魔法名は?」

一方「……」

一方(なンだこいつ、魔法とか言っちゃってるが相当に痛ェガキなんじゃねェだろォな)

姫神「どうしたの?」

禁書「秋沙。あのね?この人が」

一方「……よそでやってろ」

禁書「あ!待つんだよ!ねーえ!」

その場から離れながらも、一方通行は音を反射することはしなかった。なぜだか彼女に、どこかあの少年と近いモノを感じた
からだ。

一方(……そういえば、飯を食ってねェ。コンビニにでも寄るか)

いつの間にか背後から聞こえていた声は喧騒に消えていた。こうなってしまえばもう能力を使わない理由はない。一方通行は
またいつものように能力を自動反射に設定し、それを展開する。
しばらく歩き続けていると、どこか違和感を感じ始めていた。

一方「……なんだァ?こいつら」

あたりを見渡すと、どの人も一様に同じ方向へ歩いているのがわかった。一方通行は皆が向かうその方向へと目を向ける。すると
そこには一つのビルが建っている。『三沢塾』、そう看板には書いてあった。

一方「さっきのガキ……」

その中に、先ほど出会ったインデックスと名乗る少女の姿があった。しかし、

禁書「離すんだよ!離せ!こらーっ!」

一方「誘拐……でもされてんのかァ?」

一方(……少なくとも普通じゃねェンだ。行くか」

ただいま、待たせてすんません

一方「……なンだァ、こりゃ」

異様な空間だった。あれだけ多くの人間がこの建物へ向かっていたはずなのに、その中のロビーには人がおらず、その上に

一方(血の匂いだな)

人の気配はあるのに、その姿を確認することができない。これはまるで……

一方(魔法ってわけか?全くギャグにもなってねェってンだよ)

…突然、一方通行の反射の能力が発動する。見ることのできない気配の中に、どうやら本物があったようだが、その正体は。

一方「…オマエ、ここはでパーティーでもやってたのか?」

甲冑の男「   」

外国の言葉だった。

一方通行「すげェ量の血だな。ポッキリ逝っちまった骨が肺を突き破ってやがる」

甲冑の男「   」

一方「……血は止めてやる。そのあとはオマエでやれ」

そういうと、一方通行は甲冑の腹部を引き剥がし、傷口に指を入れた。

甲冑の男「ウグヴォオオオオオオオ!」

一方「黙れ。無くなりそうな気力をテメェから減らしてンじゃねェよ」

血流の操作が終わると、傷口からドクドクと流れていた血の噴水は止まっている。

一方「……じゃあな」

甲冑の男「   」

指を指しながら男は何かを呟いた。一方通行もそれに釣られ振り返る。

一方「ン……これは、いよいよ本当に信じなきゃいけねェのかァ?魔法ってやつをよ」

先ほどまで誰も居なかったはずのロビーにはいくつもの『半透明』の人影が、まるで何もなかったかのように笑いあっている。

甲冑の男「……   」

一方「あン?」

甲冑の男は何かのファイルを一方通行に手渡そうと手を伸ばしていた。

一方「死にぞこないが。無理すんなよ」

悪態を付きつつもそのファイルを受け取った。

甲冑の男「…ア……リガ…トウ」

一方「助かったわけじゃねェんだ。礼を言うのは角違いだぜ」

一方通行は踵を返してその先の階段へ向かう。ファイルを開きその中を確認するとこの建物の地図と、男の写真、そして

一方「この女、さっきのガキといた……」

黒の長髪に巫女装束を纏った少女だ。その写真と一緒にクリップで止まっているレジュメを読むと『吸血殺し』や『錬金術師』
など、まさにファンタジーに出てくるような言葉が並んでいる。

一方「さァ、面白くなってきたじゃねェか」

制服の少女「あああああああああああ!」

一方「…?」

× × ×

ステイル「……まさか、生きているとはね」

甲冑「あぁ、俺もびっくりだ。どんな術式かは知らんが、一人の少年が血を止めてくれたんだ」

ステイル「どういうことだ?なぜこっちの世界に魔術を知らない人間が入ってこれるんだ」

甲冑「どうだか。だが、彼が入り口から入ってくるとき、少しだが結界が歪んでいた」

ステイル「歪む?」

甲冑「そうだ。それにその歪み方もまた独特でな。少年を中心に外側へ広がっているような、そんな様子だった」

ステイル「…それは、まだこの中にいるのかい?」

甲冑「あぁ、それにもう例の部屋に着いていてもおかしくはないだろう」

ステイル「ファイルを渡したのか?」

甲冑「俺が死んでいても回収されていただろう。その手間を省いただけさ」

ステイル「部外者に……全く、面倒を起こしてくれる。」

甲冑「だが一般人ではない。少なくとも魔術以外の力でここに入ってこれるんだ」

ステイル「…一度君を外に運ぶ。僕が動くのはそれからだ」

甲冑「へへ。すまんね。どうも」

ステイル(どういうことだ……。上条当麻の他にそんなことができる人間がこの街にはいるということか……?)

× × ×

一方「なんだってんだ?この光はよ」

反射はできる。事実一方通行のからだにその球体は当たっていないのだから、それは間違っていない。だが

一方(解析が追い付かねェ。横へずらして自爆させるのが精一杯だ」

少女が叫びだしたと思えば、それは波紋のように周りへと広がっていき、次々と生徒たちが奇声をあげた。それが終わった
と思うと、次にはその体は地面へと倒れ込み、後に残ったのは光の球体だった。

一方「……汗。マジかよオイ」

冷や汗、しかし、これは恐怖の産物ではなく、今までに感じたことのない初めて緊張感からだ。
そう、一方通行は、今を楽しんでいるのだ。

一方(さて、この地図の印の場所に何かあるってんなら、この扉の奥のはずだが)

扉の取っ手に触れると、反射が発動した。何かが仕掛けられている。

一方「もう通用しねェよ。さっき散々似たようなモン見てんだからな」

パリンと、何かが割れるような音がする。ノブを捻ると、何の抵抗もなく開いた。一方通行が扉を開くと、そこには

一方「……また会ったな」

禁書「あ、右手はもう大丈夫なのかな」

一方「なんで俺の心配だよ。まずテメェの立場だろ」

姫神「……誰」

一方「別に名乗るほど偉ェもんじゃねェ。気にすんな」

姫神「そう。ここは危ない。早く出たほうがいい」

一方「怪物でも出るのかァ?」

姫神「それに等しい。危険」

禁書「というか、なんで扉が開いたのかな」

姫神「……あ」

一方(呑気な奴らだなァ、おィ)

アウレオルス「貴様、何をしている」

一方「……今更真打登場ってわけか」

アウレオルス「見たところ、魔術師ではないようだが」

一方「俺にァまだ魔法があるかどうかもわかってねェのに、それの使い手にされちゃたまんねェってんだよ」

アウレオルス「減らず口を」

一方「まぁいい、あんまりいい場所じゃねェのはさっきそこの巫女が教えてくれたからよ、帰らせてもらうぜ」

アウレオルス「それは結構、ただし……」

一方「……あァ?」

突然壁から特大サイズの窯が出現し、それは勢いをつけて一方通行を切り裂こうと向かう。

禁書「危ない!」

一方「無駄だっての、やめとけ」

確かにそれは一方通行に当たったはずだった。しかし

アウレオルス「なるほど、只者ではないようだ」

その刃はアウレオルスの横を飛んで、その後ろの壁に突き刺さっている。

一方「悪いこと言わねェから、退いておけ」

アウレオルス「舐められたものだ」

一方「まァ、テメェはもう殺されても文句言うんじゃねぇぞ」

アウレオルス「リメン――マグナ!」

一方「だかっ……ぐあっ」

間に合わなかった。当たることを防ぐことすら間に合わなかったのだ。一方通行は人生において、初めて攻撃を食らった。

一方「ぐっ……テメェ」

アウレオルス「どうした、まだ一発しか当たっておらんぞ」

一方「ちっ……ラァッ!」

その場にあったテーブルや椅子をアウレオルスに叩き付けるが、その攻撃はどうしてか当たっていない。

一方「なっ……」

アウレオルス「途中で言葉が止まってしまったな。帰るのは貴様だけでいい。必然。そこの二人はここへ残る」

一方「拉致ってそのままペットにでもするつもりかァ?趣味悪いってんだよ」

アウレオルス「失笑。貴様にはわかるまい。禁書目録は再び私のもとに戻ったのだ。錬金術を手にした私のな」

一方「再び?」

アウレオルス「必然、連れて行こうものなら私は貴様を始末する。それだけだ」

一方「やれるもんならやって」

アウレオルス「暗器の銃よ。人間の動体視力を上回る速度にて、射出せよ」

一方「みろ……ぶごっ………っげっは!」

アウレオルス「やはり、貴様は自分で確認することが出来なければ跳ね返すことは出来ないみたいだな」

一方(なぜだァ……なぜ解析できねェ…)

アウレオルス「必然、貴様の負け。諦めろ」

一方「黙れ、クソが」

アウレオルス「貴様、死ぬぞ」

一方「誰が決めてンだ、三下ァ」

アウレオルス「……む」

一方「舐めンなよ、クソが」

アウレオルス「失笑。これで死ね」

アウレオルスは一方通行を打ち抜いた銃を、更に十つ召喚する。そして

アウレオルス「目的は殺傷、その銃弾をもって貫け」

一方「……っ!」

一方(最強か…。俺が最強なのって、すげェせめェ世界の中だけだったのかよ。そりゃ本当に笑えるな。クソが)

禁書「ダメっ!避けて!!」

姫神「あっ……」

一方(けどよ、あと何発か見れば)

アウレオルス「必然。死亡」

一方「見えるはずなんだ。耐えろよォ……っ!」

ドスドスっと、鈍い音を響かせて、一方通行の体に弾丸が降り注ぐ。十発の弾丸は、全てが確実に、一方通行を目掛けて
飛んだ。

一方「ごっ……がっ…」

アウレオルス「脆い」

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