千早「夏、入道雲、制服、甘酸っぱい恋」

春香「あー」

千早「分かってくれたかしら？」

春香「うん。言いたいことはとっても。だけど……」

千早「何かしら？」

春香「トップアイドルのお仕事って感じがするんだけど……」

千早「望まない者に果実は与えられないのよ、春香」

春香「ああ…私には歌しか無い、って言ってた千早ちゃんはもういないんだね……」

千早「大丈夫よ。最後に『青春の味、カルピスウォーター』と言っておけば大丈夫よ」

春香「何が大丈夫かは聞かないでおくよ、もう……」

千早「私は後輩の女の子。春香はみんなの憧れのプリンス。いいわね？」

春香「え、何が？」

千早「春香？…春香？ふふっ…春香？」

春香「一回呼べば分かるよ……」

千早「配役ですよ、配役！」

春香「マネ？いまの私のマネだよね？」

千早「それじゃあ、始めましょう」

春香「あ、はい……」

『千早選曲のそれっぽいBGM』

千早「せ、先輩！」

春香「如月じゃん、どうした？」

千早「先輩、これ……」

春香「お、サンキュー」ｺﾞｸｺﾞｸ

千早(つ、伝えなきゃ…今日こそ私の気持ちを伝えなきゃ…来週の花火大会に先輩と一緒に行くんだもん！そうよ！行くんだもん！)

春香「……」ｺﾞｸｺﾞｸ

千早(でも…でもやっぱり恥ずかしい…私は無理…だけどっ！いま伝えないと一生後悔すると思うから！そんな人生いやだから！)

春香「……」ｺﾞｸｺﾞｸ

千早(ああ、でも！私には勇気がっ！足りないっ！助けて入道雲！私に、私に勇気

『青春の味、カルピスウォーター』

春香「長い！千早ちゃん長い！」

千早「何かしら？」

春香「CMって30秒なんだよ？心の声長すぎだから」

千早「そんな簡単に伝えられるなら、夏休み前に伝えているわ！」

春香「えっ、そういうヤツ！？」

千早「だけど春香のいうことも一理あるかもしれないわ」

春香「たぶんだけど、私に百里あると思うよ……」

千早「簡潔さが大事なのね！行くわよ春香！」

春香「あ、うん……」

『千早選曲のそれっぽいBGM』

千早「先輩、付き合って下さい！」

春香「あ、え？えっと…はい」

千早「……」

春香「……」

千早「……」

春香「……」

千早「……」

春香「……」

千早「……」

春香「……」

千早「……」ｺﾞｸｺﾞｸ

『青春の味、カルピスウォーター』

春香「ゴール早すぎだよ！」

千早「何かしら？」

春香「ぜんぜん甘酸っぱさが無いよね？ただのカップル成立だよね？」

千早「私、こんな風には振る舞えないから……」ｺﾞｸｺﾞｸ

春香「うん、千早ちゃんの願望をCMに乗せるのと話ながらカルピスウォーター飲むのは止めようね」

千早「やっぱり美味しいわ、カルピスウォーター」

春香「そうだね、美味しいね。それじゃあ帰るね？おウチまで2時間かかるから、私」

千早「次よ」

春香「だよね……」

『千早選曲のそれっぽいBGM』

千早「先輩っ…！」

春香「お、如月じゃん。どした？」

千早「私には弟がいました」

春香「ストーップ！はいストーップ！」

千早「何かしら？」

春香「うーんとねー。えーっとー」

千早「はっきり言ってちょうだい」

春香「絶対重いよね？重い話になるよね？夏っぽくないよね？BGMとも合ってないよね？あとねあとね、千早ちゃんのことだよね？個人的なアレコレだよね？ねっ？」

千早「…ごめんなさい……」ｸﾞｽｯ

春香「えっ、あっ、ごめん、ごめん千早ちゃん、泣かないで、泣かないで千早ちゃん、私が」

千早「次よ」

春香「ヴぁい！」

『千早選曲のそれっぽいBGM』

千早「夏がくーれば思い出すー」

春香「お、如月じゃん。なに歌ってんの？」

千早「はるかな尾瀬ー 遠い空ー」

春香「はは。懐かしい歌だな。でも、夏って感じ」

千早「ふふふふーふふ ふふふふふーん」

春香「ん？」

千早「ふふふふふふーん ふふふふふーん」

春香「……」

千早「水芭蕉の花がー」

春香「千早ちゃん？ちーはーやーちゃんっ！」

千早「何かしら？」

春香「なんで歌詞が曖昧な曲選んだの？歌姫だよね？私には歌しか無かったんだよね？」

千早「咲いていーる」

春香「ズルいよね。そういうのズルいよね」

千早「ふふっ」

春香「うん、えっとね、私が男で千早ちゃんも男だったらグーでいってるよね。ガツンってね」

千早「気がすんだかしら？次よ」

春香「どうぞ……」

千早「なーつがすーぎー かーぜあざみー」

春香「待って待って待って。千早ちゃん待って」

千早「何かしら？」

春香「そこはそれっぽいBGMだよね？なんで千早ちゃんか歌っちゃったの？」

千早「名曲だもの。フラコーラスで歌えるわ」

春香「そうだけど！そうだけど！！！」

千早「ちなみに『風あざみ』というのは井上陽水さんの造語よ。すごいわ」

春香「うん、えっと…えっとね…なんて言えばいいんだろ…なんて言えばいいんだろっ！」

千早「次よ」

春香「なんて言えばいいんだろぉ！！！」

『千早選曲のそれっぽいBGM』

千早「先輩っ！」

春香「お、如月じゃん」

千早「部活お疲れさまですっ！はい、コレ！」

春香「お、サンキュー」ｺﾞｸｺﾞｸ

千早「…でもそんなの関係ねぇ！」ﾊﾞｯﾊﾞｯ

春香「ウゴォフッ！待って…ｹﾞﾎｹﾞﾎ…千早ちゃんストーップ！」

千早「でもそんなの関係…何かしら？」

春香「古い！ネタが！なんで飲んでるときにやるの！これCMだよね！」

千早「一度に言わないでちょうだい」

春香「古い！ネタが！」

千早「思い出してしまったのだから仕方ないわ」

春香「なんで飲んでるときにやるの！」

千早「吹くかなって。それだけよ」

春香「これCMだよね！」

千早「そうね。良いCMにしたいわ。次よ」

春香「でもそんなの」

千早「それは面白くないと思うわ」

春香「ごめん……」

『千早選曲のそれっぽいBGM』

千早「せーんーぱいっ！」

春香「お、如月じゃん」

千早「部活お疲れさまですっ！はいコレ！」

春香「お、サンキュー」ｺﾞｸｺﾞｸ

千早「もうすぐ大会ですね」

春香「うん。…如月？」

千早「はい」

春香「大会が終わったら俺と……」

千早「はい？」

春香「いや、だから、大会が終わったら俺と……」

千早「だから、大会が終わったらなんですか？」

春香「いや、俺とさ」

千早「いや、ですから、先輩となんなんですか？」

春香「だーかーらっ！今度の大会が終わったら俺と

『青春の味、カルピスウォーター』

春香「察しが悪すぎるよぉぉぉ！！！」

千早「何かしら？」

春香「分かるでしょ？分かるよね！あのシチュエーションであの流れならぜったい間違いないよね！」

千早「女心と秋の空よ」

春香「夏でしょ！入道雲がどうとかって話だったよね！」

千早「そんなに大きな声を出すと喉を痛めるわよ？はい、コレ」

春香「あ…ありがとう」ｺﾞｸｺﾞｸ

千早「青春の味」

春香「カルピスウォーター。やっぱり美味しいね。えへへ」

千早「それは森永のコーラスウォーターよ」

春香「ヴぁい！」

千早「真夏の水分補給はカルピスウォーターで！」


お し ま い