千早「weepin in the rain」 (62)

ssとしては初作品です

・表題に『千早』とあるが、内容はPの一人称語り
・とある歌が元ネタ。独自解釈、内容いじりあり
・地の文・キャラ崩壊注意


Zero/ ◆VnQqj7hYj1Uuの代行

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1428127595

作者です。

代行ありがとうございました。
お騒がせしてすいません。

では、投稿していきます。

「……雨、か」

天気予報の通り、降り出した夕立。持っていた傘を開く。

事務所へと続く道を歩きながら、俺はぼんやりと雨が降る街を眺めていた。

降り出した雨は止む気配がなく、ジメッとした空気が街を覆っている。

「たしかあの日も、こんな感じに雨が降っていたっけ」

「……」

当時、俺はとある少女をプロデュースしていた。

名前は如月 千早……俺が初めて担当したアイドルであり、とても高い歌唱力を持つ少女だった。

最初、彼女は不愛想でそっけない態度しか取ってくれなかったが、時間とともにその冷たさは消え、俺に甘えてくれるようになっていた。

深く信頼し合っていた俺たちは、お互いに支え合って過ごしてきた。

二人でならトップアイドルも夢じゃない。……そう、思っていたほどだった。

--だけど。

いつからだろう。

これまで快進撃を続けていたはずの千早が、伸び悩むようになったのは。

いつからだろう。

千早にはもう、俺の力なんて必要ないんじゃないか、と思い始めたのは。

いつからだろう。

俺が、千早の足枷になっているような気がしてならなかったのは。

そして、あの日……

あの日も今日のように、雨が降っていた。

「プロデューサー、話って何ですか?」

降りしきる雨の中に浮かぶ、まるで蛍の光のように輝く千早の瞳。

そんなぼんやりとした光ですら、俺には眩しくて。

自分の才能の無さが情けなくて、才能が溢れる千早に嫉妬してしまう。

--悪いのはすべて、不甲斐ない俺なのに。

「……千早」

「俺はもう、千早にはついていけないよ」

「えっ……?」

だから俺は、夜で、しかも雨にも関わらず千早を呼び出して、別れを切り出した。

千早には、俺なんかよりもっとふさわしい人がいる。

千早にはもう俺は必要ないんだ……

俺は、足枷にしかなれないから。

「な、何を言うんですか・・これじゃまるで……」

「多分、千早が考えている通りで間違いないと思う。これは別れ話だ」

「っ……」

しばらくの間お互いに言葉もなく、向かい合って見つめ合うばかり。

降っている雨の中、俺たちはただ立ち尽くすだけだった。

切り出してしまった話は、もう取り消せない。

ましてや、こんな話なら。

「なぜです・・私に悪いところがあるなら直します!だからそんなこと」

「いや、逆だよ」

「逆……?」

「俺はもう、足手纏いにしかなれない。俺よりも頼りになるような人に頼んだ方が、千早のためだ」

「違う……違います!私がここまで来ることができたのは、冷たくて生意気だった私を支えてくれたプロデューサーがいたから……」

「じゃあ、最近千早が伸び悩んでいるのはなんなんだ?」

「それはっ……!」

千早の目に涙が浮かんだ。

見ていて辛くなったが、これも千早のためだと思い直し、俺は落ち着き直して話し続けた。

「俺じゃもう、千早には釣り合わないんだよ」

「だからもう……」

「嫌っ……!嫌です!」

千早は目に涙を浮かべながら、俺にしがみ付いて来た。

千早の行動からは、『俺から離れたくない』……そんな意思が感じられた。

彼女の寂しさを感じたからか、俺はその腕を振りほどくこともできず、ただ彼女の瞳を見つめ続けることしかできなかった。

「そんなこと言わないで下さい!私には、あなたが必要なんです!」

「これからずっと、二人で頑張っていこうって言ってくれたじゃないですか!」

「私をちゃんと見てくれる人がいる、そう思って、私本当に嬉しかったんですよ・・」

「約束したのに……!」

涙で顔がぐちゃぐちゃになった千早は、俺の胸に顔をうずめる。

止まらない嗚咽。

蛍のように輝く目から溢れ続ける涙。

でも……今の俺には、どうすることもできない。

「お願い、します……私を、見捨てないで下さい……」





「私を……ひとりにしないでっ……」

それだけ言うと、千早はその場で泣き崩れた。

--俺たちは、あまりにもお互いを傷つけすぎた。

全ての原因は、俺にある。

どうすれば俺はあの時、千早の辛さや苦しみを癒すことができたのだろう?

今更言ったことを取り消すことはできない。

でも今の俺の力じゃ、千早をトップイドルにはできない。

俺はもう、彼女を支えてあげることはできない……。

辛くて、苦しくて。俺の目からも、涙が溢れた。

降り続く雨の中、俺たちはひたすら涙を流し続けた。

千早の目に映る雨粒もまた、光り輝く蛍のようで。

涙という姿で、瞳の中の蛍が飛び立っていくように見えた。

--まるで、俺たちの絆や信頼、愛情なんかが流れていってしまうような……そんな気がした。

ただ俺は千早をトップにしてやりたかっただけなのに。千早を心から大切に思っていたのに。

……なんでこうならなければならなかったんだろう。

俺にもっと力があれば。

俺がもっと強ければ。

「くそっ……」

自分自身が憎くてたまらなかった。

でも、千早には俺と違って才能がある。

千早はこんな所で消えるような奴じゃない。

だからこそ、俺は。






--彼女から、手を、離そう。




千早は、俺から自由になるべきだ。

そうすることが、彼女のためなんだ。

そうすることが……



大好きなお前のためだったんだよ、千早。





俺は涙を流しながらも、泣き崩れたままの千早をなんとか車に乗せて、家まで送った。

俺は最低だ。いくら恨んでくれても構わない。そう、彼女に言い聞かせて。


車内では話すこともなく、お互いに終始無言を貫いていた。

「……ありがとう、ございました」

「ああ……じゃあ、おやすみ」

「はい……おやすみなさい、プロデューサー」

喋ったのは、千早が住むマンションに辿り着いた時に言った、その短い会話だけだった。

俺は、あの雨の夜の出来事を忘れることはないだろう。

いや、忘れてはいけないんだ……あの涙も、千早のことも。

今でもまだ、あの時の光景は心に焼き付いている。

涙を流し続ける千早のことも。ただぼんやりとその光景を見つめ続けるだけだった俺のことも。

信頼し合って、お互いに支え合ってきた日々も。

全ての思い出が、俺の頭から離れない。






雨、蛍、そして千早……





この三つが、今も、まだ……

キリがいいので、少し離れますね。

少し休んだら、また投稿を再開します。

寝てました…

お待たせしました(?)、投稿再開です。

楽しかった日々が、以前にはあった。

当時を思い出して、今でも自分以外に誰もいないはずの部屋の隅々に、千早の面影を見ることがある。

「まだ、引きずっているんだよな……」

正直、異常だ。もしかしたら俺の精神は病んでしまっているのかもしれない。

千早に別れを告げた次の日、俺は社長に千早の担当を外れたいと申し出た。

「……如月君の担当を外れたい、ということかね?」

「はい。……もう、俺じゃあいつをトップにしてやれないので」

「確かに最近如月君は伸び悩みつつあるようだが……私はキミの責任ではないと思うよ」

「……いや、俺が不甲斐ないせいで、千早はまだくすぶったままなんです。全ては俺の責任です」

「誰だってスランプというものはあるものだよ。少し考え直してはどうかな」

「……」

「決意は変わらない、ということか。仕方ない、一旦キミには如月君の担当を外れてもらうことにしよう。律子君に掛け合ってみるよ」

「ただ、如月君はまだ高校生、大人とも子供とも言えない微妙で繊細な時期だ。彼女を壊してしまうことは許されない。いいね?」

「いつでも、如月君の担当に戻れるようにはしておくよ。戻りたくなったら、また声をかけてくれたまえ」

こうして、俺は千早の担当を外れた。社長には本当に、頭が上がらない。

「……『二人でトップアイドルを取る』って約束、破ることになっちゃったな」

『トップに立つ』という幸せは、俺たちでは掴むことができなかった。

事務所のみんなに、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

特に千早には……謝っても謝りきれない。

そして、今。

降り止まない雨の中。気づけば、また俺は涙を流していた。

「涙……?まだ、残っていたんだな」

流しきったと思っていた涙は、俺の頬を伝い続ける。

今、千早はアイドルとしての活動を続けられてはいるが、ランクも伸びず、気を抜けば降格もありえそうな状況だ。

それに……俺との距離は遠ざかってしまっていて、ぎこちない会話しか交わすことができなくなってしまった。

もう一度俺がプロデュースしてやりたい。時々、異常なほどそう思うこともある。

まだ、心残りがあるのだろう。

もう、彼女とのことは諦めたはずなのに。

……どんなに足掻いても、思い出をぬぐい去ることはできない。

ほとんど無意識に歩き続けていたらしい。雨が降り始めてから、もうかなりの時間が経っていた。

気がつくと、俺はとある場所にいた。

「……ここは」

そこは、とある建物の前の交差点だった。

忘れもしない、この場所。……そう、千早に別れを告げた場所だったのだ。

一歩踏み出そうとしたが、なぜか足が前に出ない。

まるで、ここにあるたくさんの思い出が、俺を引き止めているかのように。

目の前で、信号が変わっていく。

もう先に進むべきなのに、前に進めない。

信号は、そんな俺の心の中を表しているように見えた。

千早とのことはきっぱり諦めて、次に進みたい。

でも、千早への未練が先に進ませてくれない。

涙という形で、未だ溢れてくる心残り。

俺は、千早のことを忘れない。

ーーいや、『忘れられない』。

元ネタ…というか、原曲部分はここで終わりです。
このssはまだ続きますが…。

何度も抜けて申し訳ないですが、少しお風呂に入ってきます。

いいお湯だった

再開します。

「ただいま戻りました」

「あ……お帰りなさい、プロデューサーさん」

事務所に到着した。音無さんが俺を出迎えてくれる。

俺は自分の椅子を事務机から出し、音無さんの隣に座る。

「どうしたんですか?なんだかいつも以上に疲れ切ったような顔してますよ?」

「いや、大したことじゃ」

「千早ちゃんのことですね?」

「!」

……図星だ。これが女の勘、って奴なのかもしれない。

「鋭いですね……当たりです」

「今のプロデューサーさんを見てたら、誰でも分かりますよ。千早ちゃんから担当を外れたあの日から、ずっとこうですもん」

「・・……はは、まだ引きずってるんだなぁ、俺」

情けないな、ずっとそんな顔してたのか、俺。

「千早ちゃんも、日に日に落ち込んでいくばかりですし……もう一度担当してあげたほうがいいと思うんですけど……」

「……それはできません。俺じゃ、あいつをトップに導くことはできませんから。それに、律子なら上手くやってくれるでしょうし」



バチン!



「……え?」

いきなり立ち上がった音無さんに、思い切り顔を叩かれた。

「何勝手に決め付けているんですか!あなたのその勝手な思い込みで、どれだけ千早ちゃんが傷ついたか……!」

「でも実際、千早は先に進めていなかったじゃ」

「社長がおっしゃっていた言葉を忘れたんですか・・」



『誰だってスランプというものはあるものだよ?』



「スランプ……?」

「そうです!もしかしたらスランプなだけかもしれない、とは思わなかったんですか?」

「たかが数回の失敗で凹んでるなんてカッコ悪いです!どうしてもっと千早ちゃんを信じてあげられなかったんですか・・」

「それに……スランプを乗り越えてこそ、本当のアイドルマスターじゃないですか!」

・がまだ痛む。音無さん、本気でやったな……

でも、俺がやったことを考えれば当然か。

「……ありがとうございます。おかげで、目が覚めました」

「いえいえ……って私ったら、何てことをっ……!ごめんなさい!」

「悪かったのは俺ですから。今の一発、かなり効きましたよ」

「本当にごめんなさい……!な、何か冷やすもの持ってきますね!」

そう言うと、音無さんはパタパタと音を立てて給湯室の方へ走って行った。

少しミスしていまいました…

>>43

・→・

で脳内変換宜しくお願いします。

どうやら『ほお』の文字が反映されないようですね。

『ほお』で脳内変換お願いします。

音無さんにきつい一発を頂いて、ようやく目が覚めたような気がした。

トップアイドルを目指すのは、容易なことではない。伸び悩むのも当たり前だ。

いくら千早のように才能があっても、スランプくらいはあるだろう。

それを解消してやるのが、プロデューサーの役目じゃないか。

自分自身の才能の無さは、努力で埋めればいい。



……彼女に見合うだけの実力を、必ず手に入れてみせる。

「……千早の家に行かなきゃ」

俺の頭には、それ以外のことはなかった。

音無さんには悪いが、すぐに行かなければならない。

そして、傘をさしている余裕もない。

「……行ってきます」

土砂降りの中、俺は事務所を出て走り出した。

ずぶ濡れになりながらも、千早の家にたどり着く。

震える手で、俺はインターホンを押した。

《はい》

「千早……俺だ」

《!》

ガチャッ、とインターホンを置く音がする。その後すぐに廊下を走る音と、鍵が開けられる音がした。

「プロデューサー……!ずぶ濡れじゃないですか!」

「大丈夫だよ、そんなことはどうでもいい」

「どうでもよくないです!お風呂沸かしますから、上がって下さい!」

断る時間は与えられず、無理やり家に入れられてしまった。

促されるままに風呂場に入る。

とりあえず風呂場で濡れた服を脱ぎ、わずかに扉を開けて脱衣所の所に服を投げる。

その後シャワーを浴びた後温かいお湯に浸かり、とりあえず俺は一息ついた。

冷たい感じもあったけれど、千早はやっぱり気が利くいい子だな。

そんな彼女を突き放すような真似をしてしまうなんて……俺はプロデューサー失格だ。

「きちんと、謝らないと」

決意を固め直して、俺は風呂場を出た。

洗面所には、ハンガーに吊るされたシャツとスーツがあった。ご丁寧に下着もかけられている。

風呂場を出たタイミングで、リビングから少しうわずった千早の声が聞こえて来る。

「ふ、服、乾かしておきました。ドライヤーだから、まだ湿ってますけど」

着ていた物が全てかけられていた、ということは下着なんかも乾かしてくれたらしい。

素早くまだ乾ききっていない服に身を包み、千早がいるリビングに向かう。

「ありがとう。わざわざごめんな」

「いえ、プロデューサーにはお世話になって……あ」

千早はそう言うと、悲しそうな表情を浮かべて顔を背けてしまった。あの日のことが頭によぎったらしい。

「……それで、何しに来たんですか?」

少しして、千早は暗い表情のままぼそりと呟いた。

「実は、言いたいことがあってな」

「土砂降りの中、傘もささずに走ってきてまで言いたいこと、ですか」

「……ああ」

「すまなかった、千早」

俺は床に手をついて頭を下げた。いわゆる、土下座というやつだ。

「なっ……頭を上げて下さい!」

「それはできない。それだけのことを、俺はした」

固まっている千早に構わず、俺は話し続ける。

「許してくれるとは思ってない。でも、謝らなくちゃいけない。そう思って来たんだ」

「前も言った通り、いくらでも俺を恨んでくれ。悪かったのはすべて俺だ」

「俺に力がなかったから、俺は千早の担当を外れた」

「……でも、俺は千早のことを忘れられない。他の誰とでもない、千早とトップを目指したいんだ!」



「半年……半年待ってくれ!きっと、千早に釣り合うだけのプロデューサーになってみせる!」

「今更何を言ってるんだ、って感じだけど……もう一度だけお前をプロデュースさせてくれ……!」

「……バカ」



震えるかすかな声で、千早はそう言った。

「断れる訳……無いじゃないですか……!」

「私には、あなたが必要なんですからっ……!」

「本当に辛くて、悲しかったんですからね……!」

そう言いながら、千早はボロボロと涙をこぼしていた。

フローリングの床に、こぼれ落ちた涙が小さな水たまりを作り出す。

「……本当にすまなかった」

俺は立ち上がり、そう呟く。


その瞬間、千早は俺に駆け寄って来て俺に抱きついた。

そのまま彼女は、俺の胸に顔をうずめる。

そしてそのまま、こう言った。

「私はまだ、プロデューサーを許せません」

「だから……」








「……私が許すまで、ずっと私の側にいて下さいね?」

完結です。半年後とかは書かなくていいですよね……?
元ネタは分からなくても大丈夫かと思います。

色々とご迷惑をおかけして、すいませんでした。
次スレはこんなことにならなければいいのですが……。
書くとすれば、次スレは貴音メインの長編になるかと思います。


こんな駄文にお付き合いしていただいた皆様に、最大級の感謝を。

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