男「軍人募集……」(16)

男「スラム街にまでこんなビラばら撒くとは……軍隊も終わりだな。」

妹「ねぇねぇ、お兄ちゃんお腹空いたよぉ……」

男「はいはい。ちょっと待ってろよ。」

男「………」

面接官「剣術の経験は?」

男「無いです。」

面接官「魔術の経験は?」

男「無いです。」

面接官「……志望の動機は?」

男「……」

男「妹の為に。」

男「おぉ、友。久しぶり。」

友「てめぇ、久しぶりじゃねぇよ! 軍隊に志望したって本当か!?」

男「……」

友「……なん、でだよっ!」

男「……」

男「ごめんな……」

北外れの村 ノスーユ

男「……」

女「……軍の人?」

男「あぁ、一応……」

女「またこの村には生贄が送られて来たわけね。」

男「生贄? ……どう言う事だ?」

女「その身なりを見れば分かるわ。お金にでも困って軍隊に志望したんでしょう?」

女「私たちの要請に軍はあなた達みたいな役立たずを派遣するのよ。だから生贄。」

男「……」

女「あなたは死ぬわ。ここの危険度は20。」

女「逃げても良いわよ? その代わりにまた新しい生贄が来るだけだし。」

女「……なんとかなるとも思ってないしね。」

ノスーユ 村長の家

村長「あなたが軍の……」

男「……」

村長「……一応説明を。女。」

女「……さっきも言ったけどこの村の危険度は20。危険度は分かるわよね?」

男「……王宮内が0。スラム街が5。下級魔族の住処が10……だったか。」

女「えぇ。この村の近くに中級魔族の住処があるみたいでね。」

男「それを……」

女「そう。それをなんとかして欲しいの。」

村長「この家の隣に空家がある。そこを自由に使うと良い。」

男「え、あ、はい。」

女「この村にある道具屋もほぼ壊滅状態。あまり良い物は期待しないでね。」

男「……」

ノスーユ 男の家

男「っとと……って蜘蛛の巣。」

男「こりゃあひでぇなぁ……掃除しないと……」

男「でも、まぁ、掃除する必要もないか。死ぬだろうし……」

男「……駄目だ駄目だ。妹の為にも俺は死ねない。」

青年「妹さんがいるの?」

男「うおっ!」

青年「あぁ、ごめん。驚かせたかな?」

男「お前、あ、いや、あなたは?」

青年「いや、そんなに硬くならなくても良いよ。僕は青年。君は?」

男「男だ。宜しく。」

青年「うん、宜しく頼むよ。」

男「……」

青年「……女に酷いこと言われただろう?」

男「え?」

青年「気にしないでやってくれ。みんな魔族に襲われて参ってるんだ。」

男「……君の傷も魔族に?」

青年「え? あぁ、これ? ……そうだよ。」

青年「……男、君はなんで軍隊に志望したんだい?」

男「え?」

青年「君がここに来た理由だよ。」

男「……妹に飯を食わせてやる為に……かな?」

青年「そう……」

男「……」

青年「君を殺す必要は無いみたいで良かったよ。」

男「!?」

青年「いや、そう身構えなくても良いよ。」

青年「いつも軍から来る生贄は仕事もしない役立たずだからね。君は……大丈夫そうだ。」

男「……」

青年「剣術の経験は?」

男「……無い。」

青年「まぁ、そうだろうね。あ、別に気にしなくても良いよ。」

男「でも、俺は役に立てないぞ……?」

青年「良い。僕が君に剣を教えよう。」

男「え……」

青年「これでもこんな村で生きているんだ。」

青年「それなりに剣の腕はある。」

男「いや、そ、それは嬉しいけど……」

青年「遠慮することはないよ。君には死んで欲しくない。」
男「……」

男「頼むよ。」

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