にこ「部室で…」海未「その2です」 (27)

にこと付き合い始めて一週間が経ちました。

告白する前のもどかしい空気とは違い、居心地がとても良いです。

好きな人の隣で過ごすという事はこんなにも心を満たしてくれるものなんですね。

自然と口元が緩み、表情が崩れていくのが自分でも分かるぐらいです。

……にこにどう思われているのか分かりませんが。

でも、そんなことは今の私にとって些細なことで気にしません。

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「ねぇ、海未ちゃん。」

「なんでしょうか?」

「さっきからずっと笑ってるけど何かいいことでもあったの?」

おっと、気づかれていたようです。

ここは自分の気持ちを素直に話した方がいいでしょうね。

「にこと二人きりだからですよ。」

「そ、そう…。」

そう言って、身を預けるように私の方へ身体を寄せてきます。

こちらからは顔をよく見れませんが、ほんのり頬が赤く染まっていることを確認しました。

ふふっ。照れているのでしょうか?

無意識なのか、身体が固まっているような気がします。

可愛いですね。

付き合う前は私が緊張で固まっていたのに今では逆です。

固まってしまったにこの身体をもっとこちらに寄せるよう肩を抱きます。

「な、何?海未ちゃん?」

にこにとっては予期していたことではなかったらしく、予想外の事に慌てています。

このままのにこも可愛いのですが、やはり私のようにリラックスをして欲しいです。

「緊張していますか?」

「し、してない……。」

段々と小さくなっていく声は、今のにこの心情をはっきりと映し出していました。

そんなにこの様子に私の心が騒ぎ出します。

ここでにこが驚くようなことをすれば、どのような反応をみせてくれるのでしょうか。

そう思うともうブレーキはかかりません。

実行あるのみです。

にこの耳元に近づき、

「今は二人きりですよ。誰も見ていませんからもっと私に甘えてください。」

「え?あ………う、うん。」

顔を真っ赤にして俯き、さらに身体を寄せていきます。

肩に回している手からにこの体温が上がっていることを感じました。

私の小さな悪戯は成功したようです。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

あれからしばらくして、二人並んで寄り添いながら座っています。

にこは緊張が取れたのか落ち着いた表情で本を読んでいます。

今日はアイドル雑誌ではなく普通の小説のようですね。

「にこ、今日は小説ですか?」

「うん。たまにはこういうのもいいっと思って。」

正直、にこが小説を読むなんてイメージにないです。

失礼ですけどね。

それはさておき、小説の内容が気になりますね。

「今読んでいるもののジャンルというものは…。」

「これ?」

「はい。」

「えっと……。笑わない?」

笑う?なぜ内容を聞いて笑う必要があるのでしょう。

そんなにも言いたくないものなのでしょうか?

「ええ。そんなことでは笑いませんよ。」

何故か下を向き、先ほどの落ち着きがなくなりました。

どうしたのでしょう?

「……恋愛ものです。」

!?

恋愛ものですか!?

べ、別に動揺なんてしていませんよ?

でも、またどうしてそんな……。

「海未ちゃんと付き合い始めて、恋人って何をすればいいのかなって思ったら…。」

あら……。

無意識のうちに声が出ていたようです。

聞こえていましたか。

「へ、へぇ……。それで何か分かりましたか?」

何故、私は自ら踏み込んでいくのですか!?

これ、もしかしたら地雷を踏むぐらいのものですよ?

不用意すぎます、私。

……気にはなりますけど。

「そ、その……き、キス…したいな。」

……。

にこの言葉が部室に響きます。

実際、響くほど大きな声を出したという事でもなく、むしろ小さな声で。

しかし、その言葉は私の中で大きく反響しています。

「そ、そうですか。」

何とか絞り出した私の言葉が部室の空気をおかしくさせます。

無言。

私は明後日の方向へ視線を向け、にこは下を向いて動きません。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

静まり返った部室。

時間はとてつもなく流れているような気がしますが、時計の針は無情にも進みません。

にこの様子を伺ってみると……。

赤らめて口を結んでいました。

あぁ、もう!

可愛いですね!!

私の中で何かが切れる音がしました。

「にこ、してみますか?」

まずは先制です。

何故、質問をするのかは簡単なことです。

もし私の思い違いでにこが嫌がったりでもしたら……。

私は生きていけません。

でも、これをにこが断ることなどできないと思いますけどね。

「…。」

こちらの思惑通り、こくりと頷きます。

そして覚悟を決めたようで、顔を上げ紅い瞳は私の顔を映し出します。

瞳は潤んでいて、顔は赤くなり、袖を離しません。

その姿、行動に私の心は彼女一色です。

どこかしら感じる色気に思わず喉を鳴らします。

「いいですか?」

再度の確認。

にこの魅力に怯んだと言った方がいいでしょう。

また臆病な私が出てこないように念を押して聞きました。

「……うん。」

にこの頷きを合図に右手をにこの頬を捉え、触れます。

熱い…。

緊張からか、身体が上手く動きません。

「海未ちゃん……。」

にこから腰に手を回され抱き合う形になりました。

「……はい。」

そう言うと、目を閉じ顔をこちらに向け無防備、無抵抗の状態を作り上げます。

ここまでされてはもう逃げるわけにいきません。

こちらもにこを受け止め、覚悟を決めます。

そして、不意に浮かんだ言葉。

「にこ、好きですよ。」

私を待ち望んでいる小さな唇に触れました。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

初めての口づけを交わし、私とにこの視線が絡み合います。

にこの真っ赤になっている顔。

おそらく私も赤いですね。

ついにあげてしまいました。

私のファーストキス。

「にこの初めて……あげちゃった。」

にこもですか。

……。

なんだか嬉しいです。

にこの初めてが私で、私の初めてがにこで。

これからも色々な初めてを二人で共有していくのでしょうか?

そう考えると楽しみですね。

「ふふっ。」

「どうしたの?」

「なんでもありませんよ。にこの事が好きです。」

「……。」

私の胸へ顔を埋めるにこ。そして、一言。

「知ってる。」

愛しい彼女を優しく撫で、抱きしめました。

以上です
失礼します

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