コナン「怪盗キッドとの熱愛スクープをでっち上げられて困ってる」 (252)

・『名探偵コナン』82巻に収録されている「怪盗キッドVS京極真」以降の話です

・ギャグよりの事件ものです

・マジキチではありません

 マ ジ キ チ で は あ り ま せ ん
 大事なことなので(ry


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――帝丹小学校・正門前――

インタビュアーA「コナンく~ん、日売TVです~」

インタビュアーB「MHKです。ちょっと話を聞かせてくれるかな~」

警備員「授業時間中に困りますよ! お引き取り下さい!!」

インタビュアーC「今は業間休みだから良いでしょ? コナン君を呼んで下さいよ」

警備員「ダメです! お引き取りを!!」

校長「すみませんが、児童のプライバシーもありますので。取材はお断りさせて頂きます」

カメラマンA「こっちだって報道の自由があるんです!」

カメラマンB「早くコナン君を連れてきて下さい!」

ワイワイガヤガヤ…

――帝丹小学校・1年B組――

元太「うわぁ~、今日もたくさん来てるぜ」

光彦「警備員のおじさんや校長先生が何度もお断りしてるのに、中々帰ってくれませんねぇ……」

歩美「全く、も~! しつこいんだから!!」プンプン

コナン「悪ぃな……オレのせいで、外で遊べなくなっちまって」

光彦「コナン君が気にすることじゃありませんよ!」

元太「そーだぞ、コナン!」

歩美「うんうん! コナン君は悪くないよ!」

コナン「オメーら……」ジーン

歩美「だって悪いのは、キッドさんだもん!」

光彦「コナン君を閉じ込めた上、いやらしい悪戯までしようとするなんて!」

元太「許せねーよな!!」

コナン「いや……それはあいつが、オレに付けられた防犯ベルトのロックを解除しようとしただけで」

コナン「あいつに妙な趣味はねーって、何度も言ってんだろ……」

サイテーダヨナー、ネー、マッタクデス!

灰原「……聞いてないわよ、あの子達」

コナン「ハァ……」ガックリ

灰原「それにしても、マスコミって本当にしつこいわね」バサ…

『怪盗キッドはキッドキラーにぞっこん!? 二人きりで密室に2時間の謎』

灰原「この三文記事が真実かもしれないって思ってる人が、それだけ多いってことかしら」フフッ

コナン「おい、灰原……オメー、この状況を面白がってるだろ」

灰原「あら、ダメだった?」クス…

コナン「たりめーだ!!」

灰原「そんなカリカリしてたら、キッドに出し抜かれちゃうわよ? 平成のホームズさん」

コナン「フン……今回ばかりは、それは難しいだろうぜ」

コナン「あの鉄狸も破った奴が、この電子ロックを二時間かかっても外せなかったから」

コナン「宝石は、今もオレの身体に巻き付いたままなんだぞ?」

コナン「おかげで、次郎吉さんの屋敷……しかも鉄狸の中で寝泊まりさせられるし」

コナン「こんな状態じゃ、風呂入るのにも気を遣うったらありゃしねー」

灰原「え……お風呂の時は外すんじゃないの?」パチクリ

コナン「オレの入浴中に偽物とすり替えられるかもしれないからって、外してくれねーんだよ」

灰原「それはご愁傷様」

灰原「……ま、せいぜい貴方ごと攫われて、これ以上騒ぎが大きくないようにするのね」

コナン「わーってるって。……ったく、何でこんなことに……」ハァ…

(タイトルコール)

バァン!!

コナン「怪盗キッドとイランの至宝(前編)!」

コナン(話は3日前に遡る……)

コナン(発端は、園子の叔父・鈴木次郎吉が、ある宝石を入手したことだった――――)



~回想・3日前・毛利探偵事務所~

コナン「え~? また次郎吉さんが?」

園子「そーなの! キッド様をおびき寄せるビッグジュエルを用意したから、あんたに協力してくれって」

コナン「懲りないね、あの人……」

小五郎「ったく……金持ちの考えてることは、さっぱり分からねーなぁ」

蘭「明日の朝刊に、また挑戦状を載せてもらうの?」

園子「それがねぇ、おじ様が挑戦状の広告を出そうと思った矢先に、キッド様から予告状が来たのよ」

コナン「へぇ……キッドって、随分と耳が早いんだね」

園子「おじ様は、広告費を出す必要がなくなってラッキーだって、喜んでたけどね」

コナン(ハハッ……その程度の金を惜しむような性格じゃねーだろ、あの爺さん)

蘭「それで、今度はどんな宝石なの?」

園子「ピンクダイヤよ。『ダルヤーイェ・ヌール』って名前が付いてるの」

コナン「えっ!? それって、イランの国宝級の品じゃない!」ギョッ

小五郎「オイオイ……そんなもん、日本に持って来ちまって大丈夫なのか?」

園子「大丈夫だから、こうやって話を持ってきたんじゃないの」アハハー

園子「何でも、ISISがテヘランの地下金庫から宝石を盗んで、闇ルートで売却した後」

園子「行方不明になってたのを、鈴木財閥と取引のある宝石ブローカーが偶然見つけて」

園子「それを聞きつけたおじ様が、すごい大金を積んだんですって」

蘭「でもその宝石、盗まれたものでしょ? 盗品を買い取るのはダメなんじゃ……」

園子「うん。当然、イラン政府も盗品であることを理由に、返還を求めたそうなんだけど」

園子「『テロ組織が好き勝手に暴れ回るような地に、この至宝を置いてはおけぬわ!』って」

園子「おじ様が向こうの反対を押し切っちゃったらしいわ」

蘭「えぇ~!? そんな強引な!」

コナン(ハハハ……あの爺さんらしいぜ)

園子「ま、心配しなくて良いよ。国際問題にはならないから」

蘭・小五郎「「え?」」

園子「イラン側も自国の警備体制に不安があるのは事実だし」

園子「治安が安定するまで、我が鈴木財閥の厳重なセキュリティの下、宝石を預かるだけってことで」

園子「イラン政府や日本政府、外務省とも話は付いてるの♪」

園子「おじ様の積んだ大金は、現地で頑強な警備システムを作ったり」

園子「優秀な警備員を育てるための資金にするんだって」

蘭「ふーん……なら良いけど」

コナン(政府と直接交渉とは……さすが天下の鈴木財閥だな)

小五郎「で、どれぐらいすげー宝石なんだ? その……ダルマ何ちゃらってのは」

蘭「もう、お父さんったら。『ダルヤーイェ・ヌール』ぐらい、ちゃんと言いなさいよ」

小五郎「……フン」

コナン「『ダルヤーイェ・ヌール』っていうのは、世界最大のピンクダイヤモンドだよ」

コナン「古いインドの言葉で“光の海”って意味があって」

コナン「イランの王様が即位する時、王冠の飾りとして使われたんだって」

小五郎「ほぉ~、よく知ってるな」

コナン「こ、こないだBSで宝石の特集番組をやってたから……」

園子「色の付いたダイヤは、その色によっても価値が変わるんだけど」

園子「『ダルヤーイェ・ヌール』のようなピンクは、一番レアな部類なの」

園子「すっごく透明感のあるキレイな色で、大きさも182カラットあるのよ」

小五郎「なるほど。キッドを釣るには最適なエサってわけか」

蘭「でも、そんな大切な宝石をエサにしちゃって良いの?」

蘭「もしキッドに盗られちゃったりしたら、それこそ国際問題じゃ……」

園子「大丈夫、大丈夫♪ そうならないように、このガキンチョにも警護をお願いするんじゃない」

園子「中森警部は相変わらずアテになりそうにないしね~」

コナン(いや……だからって小学生のオレに警護を頼むのもどーよ?)

コナン「それで? 次郎吉さん、今回はどんな作戦を考えてるの?」

園子「私もまだ教えてもらってないのよ」

園子「『それは小童がここへ来てからのお楽しみじゃ!』って、はぐらかされちゃったわ」

コナン(…………何か、すっげー嫌な予感がする)

~1時間後・鈴木次郎吉邸~

園子「ハァイ、おじ様。ちゃんとガキンチョ連れてきたわよ~」

次郎吉「おぉ、小童! よう来たのぉ!」

コナン「こ……こんにちは」

蘭「お邪魔します」

小五郎「ったく……何でオレまで」ブツブツ

蘭「文句言わないの。ちゃんと依頼料は園子が小切手で持ってきてくれたでしょ?」

次郎吉「毛利探偵。わざわざ来てもらって、すまんかったな」

次郎吉「中森警部が、小童を呼ぶなら汝らも同伴させろとうるさくてのぉ……」

中森「当たり前だ。夜更けにガキを一人でウロチョロさせるわけにはいかんだろうが」

蘭「中森警部……来るの早いですね」

中森「さっき警視庁にも、キッドの奴から予告状が届いたんだよ」

中森「今夜21時、『ダルヤーイェ・ヌール』を頂きに参上します……とな」

コナン「え、それだけ? 何か暗号とか謎めいた言葉とか、そういうのは?」

中森「今回は無かったな。何ならお前も見るか?」ピラッ

コナン「うん」

コナン(予告状はこの一枚だけ……二重になってたら中森警部が気付くはずだな)

コナン(果物の匂いもしねーから、あぶり出しの線もナシ)クンクン

コナン(……光に透かしても、ブラックライトで照らしても、何もねーな)カチ

コナン(あんニャロ……オレが絡むって分かってんのに、何の細工もしてねーとか手抜きすぎだろ!)

コナン「……チッ」

蘭・小五郎・中森「「「え?」」」

コナン「あ、ううん。何でもないよ。見せてくれて、ありがと♪」スッ

中森「あ……あぁ」

次郎吉「では、今回の宝石の警備について、別室で説明するとしようかのぉ」

次郎吉「応接室に、人数分の紅茶と茶菓子を頼む」

メイドA「かしこまりました」

~次郎吉邸・応接室~

…カツカツカツ、ガチャ

後藤「失礼します」パタン

次郎吉「おぉ、ご苦労」

次郎吉「これが今回の奴の獲物……『ダルヤーイェ・ヌール』じゃよ」ガコ…パカ

蘭「うわぁ~、キレイ!」

コナン「ホントに透き通ってて、桜みたいなピンク色だね。すごいや」

次郎吉「ほほぉ。この宝石の素晴らしさが分かるか、小童」

コナン(……あれ? 宝石が、ベルトみたいなものにくっついてる?)


タタッ…

ルパン(犬)「ワン、ワンッ!」バッ

コナン「わっ……ルパン、元気だった?」

ルパン(犬)「キュ~ン♪」ペロペロ

コナン「あははっ、くすぐったいよ~」

次郎吉「これ、ルパン。少し落ち着かんか」

ルパン(犬)「キュゥ……」ハッハッハッ

蘭「フフッ……ルパン君、本当にコナン君に懐いてるわね」

園子「ほーんと」

次郎吉「先日、小童が帰った時なぞ、見送り用の窓に貼り付いてのぉ。しばらく離れんかったわい」

蘭「そうなんですか……」

園子「何か動物には好かれるのよね~、このガキンチョ」

中森「……そろそろ本題に入りたいんだが、構わんか?」

蘭「あ、はい……」

次郎吉「今回の策は、至ってシンプルじゃ」

次郎吉「バージョンアップした鉄狸の中に、小童と宝石を一緒に入れ、彼奴を迎え撃つ」

蘭・園子・小五郎「「「ええっ!?」」」

次郎吉「中森警部。鉄狸のある部屋の警備は、必要最小限に抑えてくれるかの?」

中森「何ィ!?」

次郎吉「キッドにとっては、おぬしの部下の機動隊員より、この小童の方が数段手強い相手……」

次郎吉「極力人数を減らし、搦め手を使えぬようにしておくんじゃよ」

中森「だが、それだとキッドに武器を使われたら、小僧一人には任せておけんぞ?」

次郎吉「大丈夫じゃ。彼奴は滅多なことでは手荒なマネは使わん」

次郎吉「武器と言っても、トランプ銃やスタンガンがせいぜいじゃろう」

次郎吉「それに、怪盗紳士を名乗る以上」

次郎吉「彼奴は小童に傷一つ負わさず宝石を奪う術を模索するはずじゃからのぉ」

コナン「ねぇ。何でボクまで鉄狸に入る必要があるの……?」

次郎吉「あぁ、それは……」パチン

後藤「……」コクッ

スタスタスタ

コナン「?」

後藤「失礼」ガシッ!

コナン「え゛!?」

ゴソゴソ…バサッ

コナン「え、ち、ちょっと! どうして服を脱がされなきゃいけないの!?」アワアワ

園子「ちょっ……えぇぇっ?」

蘭「なっ……!!」(////)

小五郎「お、おい、あんた!」ギョッ

中森「一体何を!?」

コナン「あっ、サスペンダー取らないで!」

後藤「ジッとしていて下さい」カチャカチャ…ポイッ

コナン「そんなこと言ったって……ズボンが落ちちゃうってば~!」ヒィー

蘭「や、やめてください! いくらコナン君が男の子だからって、人前で脱がせるなんて!」

次郎吉「心配いらぬよ。脱いでもらうのは上半身だけじゃ」

蘭「そういう問題じゃなくて! 何のためにこんなことを!!」

次郎吉「それはのぉ……」カチャカチャ

コナン「は?」

ガシャン!!

次郎吉「こうやって小童に宝石を取り付け、守らせるためじゃ」

園子「……何なの、コレ?」

次郎吉「鈴木財閥が総力を挙げて開発した、特殊防犯ベルトじゃよ」

コナン「あの~……素肌に金属の器具が当たって、ちょっと冷たいんだけど」

次郎吉「すまんが、今夜の予告時間まで我慢してくれぃ」

コナン(ふ~ん……かなり特殊な電子ロックだな。初めて見るタイプだ)チラッ

コナン(しかし京極さんの一件の後だから、まさかオレに宝石を持たせるつもりじゃねーかと思ってたが)

コナン(この爺さん、ホントにやるとは……)ガックリ

次郎吉「このベルトは、専用の解除キーが無ければ、外すことはできん」チャリ

次郎吉「キーはこれ一つのみ。この鍵をメーカーに直接持ち込んでオーダーせねば、複製もできぬ」

次郎吉「以前とは比べものにならんほどのバージョンアップを施した鉄狸と、このベルト」

次郎吉「そして、この小童が揃えば、正に無敵というわけじゃ」アッアッア

コナン(なるほど? 感覚としては、細めの腹巻きって感じだな……普通に生活する分には問題なさそうだ)

コナン(キーを差し込む穴は、左の脇腹か)

次郎吉「小童。もう服を着ても構わんぞ」

コナン「……は~い」ゴソゴソ…

コナン(しかし、まさか蘭の目の前で脱がされるとはなぁ……最悪だ……)ハァ…

紺野刑事(以下、紺野)「あ、あの~、中森警部」

中森「何だ?」

紺野「鉄狸の中に入るのはコナン君だけで、本当に大丈夫でしょうか?」

紺野「機動隊員の精鋭も数名一緒の方が、コナン君も宝石も安全では……」

中森「仕方ないだろう……ここはあの爺さんの私有地だ」

中森「オレ達警察は、警備させてくれと頼み込んで入らせてもらっている立場だからな」

中森「あの部屋には小僧以外入れるなというなら、そうするしかあるまい」

紺野「はぁ……」

中森「おい、爺さん。鉄狸のある部屋はそっちに任せるが」

中森「部屋や屋敷の中、その周辺については、警察で仕切らせてもらうぞ」

次郎吉「あぁ、構わぬぞ。存分にやってくれい」

次郎吉「さぁて。大した準備時間も無いのに予告状を寄越した彼奴がどう出るか」

次郎吉「待つとするかのぉ……」ニヤリ


ギィィィィィィィ――――、バタンッ!!

今日はここまでです
書き溜めできたらまた投下します

>>21を一部訂正

× 次郎吉「大丈夫じゃ。彼奴は滅多なことでは手荒なマネは使わん」

○ 次郎吉「大丈夫じゃ。彼奴は滅多なことでは手荒なマネはせん」

>>8を一部訂正

× コナン(発端は、園子の叔父・鈴木次郎吉が、ある宝石を入手したことだった――――)

○ コナン(そもそもの発端は、園子の伯父・鈴木次郎吉が、ある宝石を入手したことだった――――)

ガシャン、バタ――――ン!!


~次郎吉邸・鉄狸の部屋~

次郎吉「見よ! これがバージョンアップした鉄狸じゃ!」

次郎吉「一昨日、ようやく全ての改良が終わってのぉ」

次郎吉「昨日『ダルヤーイェ・ヌール』をスイス銀行の貸金庫からここへ運び込み、保管しておったんじゃ」

蘭「うわぁ……」

中森「こりゃまた……」

小五郎「……すげーな」

コナン(さっすが世界有数の大財閥……改造も派手だねぇ)

園子「おじ様、ちょっとやりすぎじゃない?」

次郎吉「何を言うておる。キッド相手では、まだまだ足りぬぐらいじゃわい」

次郎吉「従来のダイヤル錠は、全て解錠番号を変えておるし」

次郎吉「それとは別に、最新鋭の電子ロックも三つ仕掛けてある」

次郎吉「彼奴がこの両方を突破するだけでも、かなり時間が掛かるじゃろうのぉ」

コナン「こっちの解除キーも、一つずつしかないの?」

次郎吉「無論」チャリ

次郎吉「中にはトイレも完備しておる。小童が便意を催しても、いちいち外に出なくとも大丈夫じゃ」

コナン「そ、そう……」

中森「爺さん。小僧にはちゃんと晩飯を食わせてから、その中に入れてくれよ」

次郎吉「分かっとるわい」

園子「おじ様。私達も一緒に食べて良いでしょ?」

次郎吉「あぁ、もちろんじゃ。今夜のメインは、A5ランクの但馬牛じゃぞ」

小五郎「おぉ、マジか? 久々にステーキが食えるぜ♪」ヒャッホウ

蘭「お、お父さん……」

コナン「……相変わらずだね、おじさん」

蘭「……うん」ハァ…

~午後7時・ダイニング~

メイドA「どうぞ」コト

小五郎「おぉ~! こりゃすげぇ!」

次郎吉「さぁ、存分に食べると良いぞ。特に小童はのぉ」

コナン「う……うん」

コナン(防犯ベルトで腹が締め付けられてるから、あんまり食欲わかねーな……)

コナン(でも食っとかねーと、キッドが来るまで持たねーし)

コナン(残しそうなら、おっちゃんに食ってもらお……)パク

小五郎「うんめぇ~!!」モグモグ

園子「このステーキ、柔らかいね」

蘭「ホント! それに、肉汁たっぷり♪」パク

次郎吉「まだまだあるからのぉ。追加は遠慮無く頼んでくれ」

コナン「ねぇ、中森警部は?」

次郎吉「屋敷周辺の警備体制の最終チェックをしに行くと言っておったぞ」

コナン「ふーん……」パク

小五郎「おかわり~!」

蘭「もう、お父さん! 少しは遠慮して!!」

コナン(ホント、どーしよーもねー親父……)

メイドA「坊や。パンやスープのおかわりはどう?」

コナン「あ……それはいいです。コーヒー淹れてくれますか?」

メイドA「はい」

コポコポ…

蘭「あれ? コナン君、もう良いの?」

小五郎「お前、せっかくのステーキなのに、半分しか食ってねーじゃねーか」

コナン「ボクの分、だいぶボリュームがあったから……」ハハハ…

小五郎「ったく……皿を寄越せ。残りはオレが食っちまうから」

コナン「は~い」ヒョイ

メイドA「コーヒー、どうぞ」カチャ

コナン「ありがとう」

コナン(ん? これは、ブラックコーヒー!)ハッ!

コナン(あのメイド……小学生相手に、砂糖やミルクが必要か聞かなかったってことは)

コナン(オレがそんなものを使わないと、最初から知ってたってこと……)

コナン(まさか、あのメイド……キッドの変装か?)

メイドA「旦那様。コーヒーと紅茶、どちらになさいますか?」

次郎吉「ワシは紅茶にしてくれ。いつものように、砂糖は少しで良い」

メイドA「かしこまりました」

コナン(……でも、ここで仕掛けてくるつもりは無ぇみてーだな)

蘭「コナン君、どうしたの? 急に怖い顔して」

コナン「え……あ、ううん。何でもないよ」

メイドA「…………」チラ

ザワザワザワ…

小五郎「ん? ……おい。何か、外が騒がしくねーか?」

コナン「え?」

…バタバタバタバタ

ガチャッ!!

後藤「お食事中、失礼します!!」

次郎吉「何じゃ、騒々しい!」

後藤「屋敷の周辺に、野次馬とマスコミが押し寄せています!」

次郎吉「何ィ!?」ガタッ

次郎吉「此度の件は、キッドの予告状が早々に届いておったし」

次郎吉「『宝石が日本にあると宣伝するようなマネは止めてほしい』と、イラン政府からも通達が来ておったから」

次郎吉「マスコミには公表せぬ方向だったはずじゃ!」

後藤「し、しかし既に……」

ピッ

『日売TVアナウンサーの山本です。私はただいま、鈴木次郎吉氏の屋敷の前に来ています!』

『ご覧下さい! 周辺にこの押し寄せた、群衆を!』

『既に一部では、キッドコールが起こり始めています!』

キッド! キッド! キッド! キッド!

『キッドの予告時間は午後9時ちょうど!』

『果たして怪盗キッドは、改良された大金庫・鉄狸をどのように攻略するつもりなのでしょうか?』

『そしてキッドキラーこと、江戸川コナン君との対決の行方は!?』

『日売TVが総力を挙げて、この後、完全生中継でお送りします!』

次郎吉「何と……」

園子「ちょっと……他のTV局も、続々と中継を始めてるじゃないの」ポチポチ


…バタバタバタバタ、バターン!!

中森「おい、爺さん! マスコミが来るとは、一体どういうことだ!!」

次郎吉「ワシらも今し方、知ったところじゃよ」

中森「何だとぉ!? じゃあ、情報源はあんたじゃないのか……」

コナン「キッドがマスコミに情報をリークしたんじゃない?」

コナン「屋敷の周りに野次馬がいた方が、逃げる時に紛れ込みやすいからね」

次郎吉「うぬぅ……」

中森「おのれ、キッドめ!」

コナン(とは言ったものの……妙だな)

コナン(あのメイドが、本当にキッドの変装なら)

コナン(奴本人は、さっきまでずっとオレ達の傍をウロチョロしてたことになる)

コナン(しかし、奴には隠れて何かを弄ったり、どこかへ通信したりしてる様子はなかった)

コナン(手下を使って、マスコミに情報をリークさせた可能性が一番高いが……)

コナン(誰か別の協力者がいるってことも考えられるな)

コナン(気になるのは、それだけじゃない……)

コナン(奴が今回の犯行を行うことをマスコミにも知らせたかったなら)

コナン(次郎吉さん、警察、そしてマスコミ各社に同時に予告状が届くよう手配するはずだ)

コナン(なのに何故キッドは最初、次郎吉さんだけに予告状を送ったんだ?)

コナン(それと、今回の件を公にしないよう、イラン政府から通達が来たっていうのは)

コナン(園子が話していた事情を考えれば、理解はできるが……)

コナン(それなら、最初からそういう約束で次郎吉さんに宝石を預かってもらうよう、話を付けておけば良い話だ)

コナン(新聞に挑戦状の広告を載せられると、宝石の所在が知られる以外にも)

コナン(イラン側にとって不利益なことがあるってのか?)

コナン(あと、予告が今夜ってのも急すぎる)

コナン(これまで見てきた奴の手口からすると、奴は入念に現場を下見をした上で犯行に及ぶはず……)

コナン(一昨日改良が終わったばかりの鉄狸の下調べを、既に済ませてるとは考えにくい)

コナン(何か、犯行が今夜じゃなきゃいけない理由でもあるんだろうか……)

コナン(今回の奴の行動は、腑に落ちねーことだらけだな)

コナン(キッド……オメーは一体、何を考えてるんだ?)チラ

メイドA「………………」フッ


(暗転)

園子「ネクストコナンズヒ――――ント!」

コナン「ボイスレコーダー!」


(ショートコント)

園子「次回、ガキンチョの貞操危うし!?」

コナン「だから違うって!」

園子「え、そうなの? ……つまんない」ボソッ

コナン「オイ……」

今回はここまでです
前後編で終わるつもりだったのですが
細かい修正を入れていたら前・中・後の三部作になりそうです…
中編・後編は書き溜めでき次第、また投下します

>>26を一部訂正

× 中森「部屋や屋敷の中、その周辺については、警察で仕切らせてもらうぞ」

○ 中森「他の部屋や廊下、屋敷の周辺については、警察で仕切らせてもらうぞ」

まだ書き溜め・修正の途中なので今日はこれだけ失礼しますm(_ _)m

(タイトルコール)

バァン!!

コナン「怪盗キッドとイランの至宝(中編)!」

~午後8時半・鉄狸の部屋の前~

次郎吉「中から開ける方法は覚えたな?」

コナン「うん!」

次郎吉「では、小童。頼んだぞ」

中森「無茶はしなくて良いからな。危ないと思ったら、すぐ逃げるんだぞ」

コナン「大丈夫だよ。必ず宝石は守るから」

次郎吉「うむ」

中森「……フン」

ルパン(犬)「キュ~ン……」

後藤「では、中へどうぞ」

コナン「は~い」

ルパン(犬)「!」ピク

ルパン(犬)「グルルル……」

コナン「ルパン?」

次郎吉「どうしたんじゃ、急に」

パリーン…


メイドA「キャアァァァッ!」


コナン・中森・次郎吉・後藤「「「「!?」」」」


バキッ!!

機動隊員E「ぐぁっ!!」ドサッ

カツ、カツ、カツ、カツ……ザッ

機動隊員A「な、何だ、貴様ら!!」

コナン(黒いターバンに、黒い戦闘服の男……三人も!?)

コナン(チッ……目出し帽で人相を分からなくしてやがる)

謎の男A「…………」ヒュオッ

ゴスッ!!

機動隊員A「ぐ……っ」ガク…

次郎吉「おのれ、何奴じゃ!」

ルパン(犬)「ガウッ!」グルルル…

次郎吉「ルパン、引っ込んでおれ!」

後藤「相談役! 危険です、下がって!」

謎の男B・C「「……」」ダダッ

身を屈めて猛然と迫る男達に、後藤が回し蹴りを繰り出す!

後藤「フン!」

ガッ! ドゴッ! バキィッ!!

コナン(すっげぇ……後藤さん、二対一で善戦してる)

謎の男C「……」ギラッ

コナン(あれは……サバイバルナイフ!?)

シャシャッ!!

後藤「チッ……!」ツゥ…

謎の男C「……」ニィィ

次郎吉「後藤!」

後藤「掠っただけです! 相談役、逃げて下さい!!」

中森「彼の言う通りだ! 爺さん、さっさと安全な場所へ逃げろ!」

中森「小僧、お前は鉄狸の中へ逃げ込め!!」

コナン「わ……分かった!」ダダッ

謎の男A「……」タンッ! ヒョイ…スタッ!!

男は身を翻し、次郎吉の目の前に降り立つ

次郎吉「ぬぅっ!?」

謎の男A「……」ギラッ

コナン(あいつもナイフを……!)

中森「爺さん! ……くそっ、発砲はしたくないが、やむを得ん!」

中森「動くな!」ジャキッ!!

謎の男B「……」タッ

コナン「中森警部、危ない!」

中森「なっ……!」

一瞬で間を詰めた男の蹴りが、中森警部の拳銃をはじき飛ばす

バキッ!!……カラカラ

中森「……チッ」

後藤「警部! ……くそっ!!」シャッ!

謎の男C「……」シャシャッ!

次郎吉「……三人とも、かなりの手練のようじゃのぉ」

コナン「うん……」

ジリ…

謎の男A「……ジジィ。鍵を寄越せ」

次郎吉「何じゃと!?」

謎の男A「その小僧に付けた、ベルトの鍵を寄越せと言ってる」

コナン(変声機で声色を変えてるのか……?)

次郎吉「断る!」

謎の男A「ならば仕方ない……」ダダッ

後藤「相談役! ……うぉっ!」

謎の男C「……」シャシャシャッ!!

謎の男A「死ね!」シャッ!!

ガッ!

謎の男A「……何!?」

次郎吉「むぅっ?」

一同の視線の先には、ナイフの刃を蹴り飛ばす蘭の姿が。

コナン「蘭姉ちゃん!」

蘭「せぃやぁぁっ!!」ヒュッ

ドゴォン!!

蘭の胴廻し回転蹴りが廊下の壁に炸裂!

蘭「……あ!?」

しかし、そこには男の姿はない

蘭(躱された……!)


…タタタタタ

園子「蘭! おじ様!」

小五郎「おい、大丈夫か!」

中森「お前ら……別室で待機してろと言ったはずだぞ!」

小五郎「か弱いメイドの悲鳴を聞いて、ジッとしてられるわけねーだろ!」

謎の男A「フン……」ジャキッ

蘭・小五郎・中森・後藤「「「「!」」」」

園子「ヒッ!」

コナン(しまった、中森警部の銃を……!)

ドギューン!!

園子「キャアッ!」

蘭「園子、大丈夫?」

園子「う、うん……弾は外れたから」

コナン(くそっ! 他の機動隊員はどうしたんだ?)

謎の男A「小僧。こっちへ来い」チャキッ

コナン「え?」

謎の男A「さっきはわざと外したが、今度は本当に死人が出るぞ?」

コナン「!」

コナン「……ボクがそっちに行ったら、誰も殺さないって約束してくれる?」

謎の男A「あぁ、もちろん」ニヤッ

コナン「分かった」

カツ、カツ、カツ、カツ…

蘭「コナン君……!」

コナン「大丈夫だよ、蘭姉ちゃん」

謎の男B「……」グイッ

コナン「わ……っ」

謎の男Bがコナンを捕まえる


ジャキ

謎の男A「ジジィ。こいつの命が惜しければ、鍵を寄越すんだ」

次郎吉「……仕方あるまい。命には代えられん」チャリ

謎の男A「おっと、それ以上近付くな。そこから鍵を投げるんだ」

次郎吉「分かった」ポイッ

パシュッ! カッ!!

コナン(……トランプ銃!?)

次郎吉「何っ?」

謎の男A「チッ! 廊下の陰に潜んでやがったか!」ドギュン、ドギュン!!

カァン!!

謎の男A「しまった!」

コナン(解除キーに弾が当たっちまった……!)


チャリーン

蘭「あ……」

次郎吉「ぬぅ……まずいぞ。鍵穴に差し込む部分が完全にひん曲がっておるわい」

小五郎「それじゃ、その鍵はもう使えねーのか?」

コナン(マジかよ……)

謎の男A「……フン。なら構わん。この小僧ごと宝石はもらっていく」

蘭「待って、コナン君を連れて行かないで!」

謎の男A「心配するな、小僧は後で返してやる。……ただし!」

ドギュン!!

謎の男A「貴様らが俺達を追ってくるというなら、命の保証はできんぞ」

中森「く……っ!!」

謎の男A「じゃあな」

タタタタタタ…

コナン(屋敷の中の機動隊員が眠らされてる……! 即効性の催眠ガスを使ったのか)

コナン(麻酔銃とサッカーボールで対処できるのは二人まで……だが、こいつらは三人)

コナン(かなりの戦闘訓練を積んだ奴らみてーだし、下手に抵抗しねー方が良いな)

~2階の客室~

ドサッ

コナン「わぁっ!」

謎の男A「小僧。おとなしく両手を挙げろ」チャキッ

コナン「…………」スッ

謎の男A「良い子だ。……おい」

謎の男B「……」コクッ

グイ…バサッ

コナン「!」

コナン(また脱がされるのか……)

カチャカチャ…ポイッ

謎の男A「念のため、小僧の両手を縛っておけ」

謎の男C「……」コクッ

キュッキュッ

コナン(身体の前で縛られてるだけ、まだマシだな)

謎の男A「ほぉ……それが『ダルヤーイェ・ヌール』か。素晴らしい」

謎の男A「おい、ベルトは外せそうか?」

謎の男B「……」フルフル

謎の男A「宝石だけ取り外すことは?」

謎の男B「…………」フルフル

謎の男A「フッ……メンバーじゃ一番の腕のお前に外せないんじゃしょうがないな、最終手段だ」

コナン「何?」

謎の男A「そのベルトは、あのジジィが特別に開発させたもの……当然、発信器も内蔵されてるはずだ」

謎の男A「本当はベルトだけ頂いて宝石を外し、お前も生きて帰してやるつもりだったが」

謎の男A「正攻法じゃベルトも宝石も外せないとなると……物理的に外すしかねーだろ?」ニィィ

謎の男A「幸い、ここにはこんなモンも飾りで置いてあることだし」ガコン

コナン「斧……って、おい!?」

謎の男A「お前ら、小僧を抑えろ」

謎の男B・C「「……」」ガシッ

コナン「く……っ!」

謎の男A「恨むなら、そのベルトをお前に着けたジジィを恨むんだな」

男はゆっくりと斧を振り上げ、残酷な笑みを浮かべる

コナン(……殺られる!)

ガシャン! パリーン!!

謎の男A「何っ!?」

ボン、ボンッ!!

謎の男A「うっ!」

コナン(煙幕!?)

謎の男B・C「「……!」」ゴホゴホ

コナン(よし、今の内に……!)タタッ

逃げようとしたコナンを、何者かが優しく抱き上げる

ヒョイ

コナン「え?」

メイドA(キッド声)「ケガはねーか、名探偵」

コナン「やっぱりオメーかよ。しかもまた女装……」

メイドA(キッド声)「似合うだろ?」ケケケ

謎の男A「おのれ、キッド!」

メイドA(キッド声)「おっと、そうはいかねーぜ!」

ボンッ!!

謎の男A「待て! ……くそっ!」

~鉄狸の部屋~

パタン…

メイドA(キッド声)「ほいっと」スタッ

コナン「サンキュ……助かったぜ」

メイドA(キッド声)「服は拾ってこれなかったけど、寒くねーか?」

コナン「あぁ、平気だ」

コナン「それより、蘭達がいなかったけど……まさか……」

メイドA(キッド声)「あのお嬢さん達なら、今頃オレが警察無線で連絡した奴らの居場所へ直行してるだろうぜ」

コナン「しかしよー……オメー、いるなら最初から奴らの妨害すりゃいいのに」

メイドA(キッド声)「仕方ねーだろ」ムッ

メイドA(キッド声)「眠らされた機動隊員一人一人に、気付け薬を嗅がせて回ってたんだから」

メイドA(キッド声)「オレともう一人で手分けしたとはいえ、結構な人数で苦労したんだぞ?」

コナン「ハハハ……そりゃ大変だったな」

コナン「で、警察にあいつらを追わせて、オメーはこの宝石を盗み出すって算段か」

メイドA(キッド声)「大正解♪」バサッ!!

白いマントを翻し、変装を解くキッド

キッド「まぁ今回ばかりは、次郎吉の爺さんに感謝してんだ」

キッド「その宝石をイランの地下金庫まで盗みに行く余裕は、さすがに無かったからな」

コナン「わざわざ日本に運んできてくれて、ラッキーだったってわけか」

キッド「あぁ」

キッド「それじゃ……こいつを開けるとするかぁ」カチャカチャカチャ…

コナン「おい。宝石はオレが持ってんのに、何でこいつを……?」

キッド「この中に入れておきたいモノがあるんだ」カチャ…カチャカチャ

キッド「改良されたせいで、下にあった隙間が無くなっちまってるからな」チキチキチキ…

コナン「オメーがまたメイドに変装して、ここに潜り込んでた理由は?」

キッド「――――聞かなくても分かってるって顔してるぜ、名探偵」カチャカチャ

コナン「じゃあやっぱり、最初、次郎吉さんに予告状を送ったのはオメーじゃねーんだな?」

キッド「あぁ。爺さんの所へ送られた予告状は、さっき襲ってきた奴らが書いたやつさ」

キッド「今までの偽物と同じく、オレに罪をなすりつけようと思ったんだろうぜ」チキチキ…

コナン「あいつら、何者だ?」

キッド「アラビア半島を中心に活動してる、宝石専門の窃盗団だよ」カチ、チキチキ、チキ

キッド「オレと同じ様に、ビッグジュエルを狙うことが多くてな」

キッド「宝石を盗んでは闇で捌いて、大もうけしてるんだ」

キッド「メンバーには、ISISとは別のイスラム系武装組織に所属してた奴もいるらしいから」

キッド「武器はそっち方面のルートを使って入手してんだろーぜ」

コナン「…………そういう情報をオメーが知ってるってことは」

コナン「奴らの犯行だと分かる事件が、他にも色々あったんだな?」

キッド「あぁ。盗みに入った現場には、いつも血の付いた短剣を残していくのが特徴だそうだ」チキチキチキ

キッド「目当ての宝石を盗むためなら、一家惨殺も厭わねー連中さ」

キッド「実際、お前もあやうく真っ二つにされるところだったし」カチャカチャ、カチ…

コナン「………………」

キッド「だからこの家と毛利探偵事務所を盗聴して、爺さんとお前らの動向を掴み」

キッド「警視庁に予告状を送って、中森警部をここへ呼び寄せたんだ」カチャ…カチャ

コナン「手下を使ってマスコミと野次馬を呼んだのは、万一の時の保険か?」

キッド「そ。オレ以外にも宝石を狙う奴がいるって、警察や報道機関が認識するだけでも」

キッド「今後の対応は随分と違ってくるだろうからな」チキチキ…

コナン「当然、奴らも動きにくくなる……か」

キッド「そゆこと♪」

キッド「よし、開いた!」ガコン!!

グイィィィン…

コナン「最新鋭の電子ロックも形無しだな……」

コナン「つーか、前よりずっと早く開けたんじゃねーのか?」

キッド「元々こいつの下調べは、ほとんど済んでたも同然だったからな」

キッド「あの爺さんが、またオレに挑戦状を叩き付けようと鉄狸を改良してるって情報は掴んでたし」

キッド「問題は、お前に付けられた防犯ベルトの方さ」

キッド「そっちはまだメーカーのデータベースにハッキングして、鍵の形状を調べてる途中だったんだ」

キッド「奴らが妙な動きをしてるってんで、慌てて作業を中断して、屋敷に潜入するハメになったからな」

コナン「ふ~ん……」

キッド「まぁ、無駄話はこの辺にして……と」ポイッ……カラカラ

コナン(ボイスレコーダー……中に入れたかったモノって、あれのことか?)

ガコ…ウィィィィン、ガシャ――ン!!

キッド「これでOKだ」

コナン「おい。そろそろこの手首の縄を外せよ」

キッド「悪ぃけど、もうちょっとだけ我慢してくれ」

コナン「はぁ?」

キッド「そんじゃ、行くか」ヒョイ

コナン「えっ……おい、行くってどこへ!?」

キッド「まぁ良いから、良いから♪」

タタタタタ…

~1分後・鉄狸の部屋~

パタン

謎の男A(俺の読みが正しければ、奴はここに逃げ込んだはず……)

謎の男B・C「「……」」チラ


~鉄狸内部~

ピッ

コナン(レコーダー)「離せ! このコソ泥!!」

キッド(レコーダー)「ジッとしてな」


~鉄狸の部屋~

謎の男C「……!」

謎の男A「やはりな……どうだ? 破れるか?」

謎の男B「……」フルフル

謎の男A「チッ……仕方ない。奴が出てきたところを狙うか」

謎の男A「向かいの部屋に潜んで、キッドが出てくるのを待つぞ」

謎の男B・C「「……」」コクッ

~廊下~

…バタバタバタバタ

謎の男B「……」ピク

謎の男A「ん?」

機動隊員B「動くな!」ジャキッ!

機動隊員C「両手を挙げろ!!」 ガチッ!

謎の男A「くそっ……催眠ガスの効き目が、思ったより弱かったのか?」

謎の男B・C「「……」」チラ

謎の男A「一度撤退するぞ。相手がこの人数では厳しい」

謎の男B・C「「……」」コクッ

機動隊員B「逃げたぞ! 追え――――っ!!」

…バタバタバタバタ

中森「いたか!?」ザッ

機動隊員C「警部! 奴らが屋敷の北側へ逃走しました!」

中森「動ける者は、奴らの追跡を頼む! オレと紺野は、あの宝石と小僧を保護する!」

機動隊員C「はっ!」

バタバタバタバタ…

キッド(レコーダー)『宝石は頂いてくぜ?』

コナン(レコーダー)『待て!』

中森「……! キッドめ、鉄狸の中か!!」

…バタバタバタバタ

蘭「中森警部! コナン君は?」

小五郎「キッドの奴も現れたってホントか!?」

園子「や……やっと追いついた」ゼェハァ

次郎吉「中森警部、彼奴と小童は?」

中森「あいつらなら、ここだ」コンコン

蘭「……!」

蘭「コナン君、聞こえる? コナン君!」

中森「爺さん、鉄狸を開けてくれ!」

次郎吉「分かった、少し待たれぃ。……ルパン」

ルパン(犬)「ワンッ!」ハッハッハッ

シュルリ

園子「蘭、下がって」

蘭「うん……」

次郎吉「え~、最初に開けるダイヤルは……」カチャカチャ

~2分経過~

次郎吉「よし、開いたぞ」ガコン!!

グイィィィン…

中森「キッド、観念しろ! ……って、あれ!?」

小五郎「おい、誰もいねーぞ?」

蘭「見て! 中にボイスレコーダーが……」

中森「くっそ~、キッドめ! こいつを利用して、自分達が中にいると思わせてたのか!!」ギリッ

中森「紺野、あの男達の追跡に加わってない連中を集めろ!」

中森「もう一度、この屋敷の中を徹底的に探す!!」

紺野「はいっ!」

中森「まだ例の奴らが逃げ回ってる可能性の高い屋敷の北側は、オレが行く」

中森「紺野は西側だ。お前は、東側を頼む」

機動隊員D「はっ!」

小五郎「じゃあオレ達は、南側を手分けして探すぞ!」

蘭「うん!」

園子「分かった!」

中森「くれぐれも無茶はするなよ!」

バタバタバタバタ…

機動隊員D「……お任せ下さい」カチ

機動隊員D「ぼっちゃま。こちらは問題ありません」

キッド『あぁ。こっちも順調だ』

機動隊員D「では、後は手筈通りに……」


ギィィィィィィィ――――、バタンッ!!

ガシャン、バタ――――ン!!


~次郎吉の私室~

パタン…カチャ

キッド「えーと、確か防犯ロックの制御パネルが……おっ、あった。こいつだ」

コナン(電気も付けずに探し当てるとは……さすが怪盗、夜目は利くな)

ピッピッピッピッ…ピッ…ピピピッ

キッド「これで良し」

コナン(次郎吉さんの入力してたパスワードを、一瞬で書き換えやがった……)

キッド「ん? ……あぁ、この部屋は前にルパン君を救出する件で潜入した時、調べさせてもらったからな」

キッド「こういう防犯システムは把握してあるんだよ」

コナン「……なるほどな」

キッド「さてと……これで邪魔は入らねーし、オレも自分の仕事をさせてもらおうかな」フフン

コナン「えっ?」

キッドは軽々とコナンを抱き上げる

キッド「まずはその危険な靴を脱ごうか、名探偵」ゴソゴソ…ポイッ

コナン「お、おい!?」

キッド「そんじゃ、ベッドにおねんねしようなー」パッ

コナン「うわぁっ!」ボフッ!!

コナン「……テメー、人をモノみたいに落とすんじゃねーよ!」

キッド「でけー声出すなって。警察ならともかく、例の窃盗団に見つかったら厄介だぞ」シーッ

キッド「奴らもまだ屋敷の中を逃げ回ってるみてーだからな」

コナン「……!!」グッ


カツ、カツ、カツ…ギシ…

コナン「へ?」

キッド「おとなしくしてろよ、名探偵」

コナン「お、おい……何するつもりだよ」ジリジリ

キッド「何って……この状況ですることなんざ、一つしかねーだろ?」

コナン「なっ……まさか!」ギョッ

コナン「ちょ、ちょっと待て!!」

キッド「待たねーよ」ガシッ

コナン「くっ!」

コナン(ちくしょう……この体格差じゃ、本気で抑えられたら動けねー!)グググ…

キッドはニヤリと笑い、懐からマジック用のロープを取り出す

キッド「悪ぃけど、両手首を頭の上に固定させてもらうぜ」キュッキュッ

キッド「……よし。しばらくこのままの状態で我慢してくれ」

コナン「やっ……やめろ、キッド!」ジタバタ

キッド「おい、暴れるなよ」

コナン「嫌だ! 離せぇ!」

キッド「騒ぐなっつってんだろ。ったく……」シュルリ

キッド「行儀の悪い口は、スカーフで塞いどくか」キュッ

コナン「んー、んん――――っ!」

キッド「大丈夫だ。お前がジッとしててくれりゃあ、すぐ終わるから……」ギシ…

コナン「んん……っ!」

今回はここまでです
Bパートの半ばという中途半端なところですみません
次は火曜の夜に続きを投下予定です

~次郎吉の私室の前~

キッド『良い子だから……な?』

コナン『んーっ、んんーっ』

機動隊員D「……」フッ

カツ、カツ、カツ、カツ…

機動隊員D(これぐらい離れていれば、二人の声も拾われないで済みますな)ピッ

機動隊員D「……こちら、静野。屋敷の東側には、キッドの姿はありません」

紺野『コナン君も見当たりませんか?』

機動隊員D「残念ながら……」

紺野『分かりました。では西側の捜索を手伝ってください』

機動隊員D「了解」ピッ

機動隊員D(では、ごゆっくり……ぼっちゃま)フフッ

カツ、カツ、カツ、カツ…

~次郎吉の私室・ベッドの上~

ギシ…

コナン「ん、ぅ……っ」ビクッ

キッド「おい、あんまり動くなよ」

コナン「……」ジト…

コナン(オメーの髪の毛とモノクルの飾りが素肌に当たって、くすぐってーんだよ!)キッ

キッド「…………」ジー

キッド「ふ~ん、なるほどね……」

キッド(鍵穴に解除キーを差し込んで、横の小さなパネルで暗証番号を入力するタイプか)

キッド(暗証番号の方は何となく予測が付くから……)

キッド(まずは、この解除キーの部分をどうにかしねーとな)

キッド「とりあえず、一番原始的な方法でいくかぁ」チャリ…

コナン(オイオイ……鍵を使うタイプとはいえ、電子ロックをピッキングで!?)

キッド「何だよ、その『本当にできるのかよ』って顔は……」

キッド「こういうハイテクな鍵でも、意外とアナログな手段で開けられるもんだぜ?」

コナン(いや……そんな方法使うの、たぶんオメーだけだから)

キッド「それじゃ、ちょっと失礼♪」ギシ

コナン「……んっ」

コナン(鍵穴を覗き込むためとはいえ、のし掛かられるとさすがに重いんだが……)

カチャ、カチャカチャ…カチ

キッド(今夜は曇り空で、月が出てねーからな。パンドラかどうか確認もできやしねぇ……)

キッド(とりあえず、このベルトだけでも外しておかねーと)

キッド「しっかし、こっちが思ってた以上に鍵穴が小さいんだよなぁ……」カチャカチャ

コナン「……っ!」ピクン

コナン(くそ~……やっぱ、くすぐったくて我慢できねー!)モゾモゾ

キッド「おい……ジッとしててくれなきゃ作業が進まねーだろうが」

コナン(んなこと言ったって……)

キッド「そういや、さっきは何か勘違いしてたみたいだから言っとくけどよ」

キッド「オレはお前を襲う気なんてねーぞ?」

コナン(……分かってるよ、バーロォ! オレが妙な早とちりしちまっただけだろーが!)ジロッ

キッド「お前をここへ連れてきたのは、この状態で作業するのがベストだと思ったからさ」

キッド「ずっと立ったままより、寝転がってた方がお前も楽だろ?」カチ、カチャカチャ

キッド「まぁ鉄狸の中でこいつの鍵を外しても良かったんだが、あそこはかなり寒いからな……」カチ

キッド「それに、オレが鍵を外すまで、お前には上半身裸でいてもらわなきゃならねーし」

キッド「お前に風邪を引かせちまうのはマズイだろうと思ってよ」カチャ、カチャ…

コナン(……フン。変なところで気を遣う奴……って!?)

コナン「んんっ」ビクッ

コナン(……この癖っ毛、どうにかしてくれ~)

キッド「ったく……せっかく上手くいったと思ったのに、やり直しじゃねーか」

コナン(うるせー、バカキッド!)

~午後10時半・次郎吉邸・応接室~

ピピッ

機動隊員C『申し訳ありません、警部……』

機動隊員C『屋敷の外に逃げた奴らを、応援に来た者達と追跡しましたが……見失いました』

中森「構わん、ご苦労だった。ケガ人の手当を頼む」

機動隊員C『はっ』

ピッ

…バタバタバタバタ

中森「小僧はいたか?」

蘭「ダメです、どこにもいません」

中森「お前達の方は?」

機動隊員D「ダメでした」

紺野「私もです」

小五郎「クソッ!」

蘭(コナン君……どこにいるの?)

紺野「中森警部。これだけ探しても見つからないとなると」

紺野「キッドはコナン君を連れて、既に屋敷の外に逃げたのでは……」

機動隊員D(何とかごまかせそうですな……)ホッ


…バタバタバタバタ

機動隊員B「中森警部! 次郎吉氏の部屋から、何やら怪しい声が聞こえます!」

中森「何っ!?」

機動隊員D(……!)

中森「すぐに案内しろ!」

機動隊員B「こちらです!」

蘭「コナン君……!」

園子「あ、蘭! 待って!」

バタバタバタバタ…

カチ

機動隊員D「……ぼっちゃま。見つかったようです」

キッド『了解。ジイちゃんは撤収してくれ』

機動隊員D「分かりました」

短めになってしまいましたが、今回はここまでです
またしても中編Bパートの途中で申し訳ない…
次は木曜か金曜の夜に続きを投下予定です

~次郎吉の私室の前~

…バタバタバタバタ

機動隊員B「この部屋です」

コナン『んっ……』

キッド『だから動くなって!』

中森「……キッド、やはりここにいたか!」

蘭「コナン君、大丈夫!?」

園子「キッド様!」タタタ…

~次郎吉の私室・ベッドの上~

園子『キッド様~、ここを開けて!』ドンドンドン

コナン(やっと来たのか……)

キッド「ヤベ……さっさと終わらせねーと」カチャカチャ…

コナン「ん……っ」ピクン

キッド「だーっ、もう! ジッとしてろ!」

コナン「んーっ」ブンブン

コナン「フゥ……」プハッ

コナン「おい。まだ外せねーのかよ」コソ…

キッド「お前がゴソゴソ動くからだろーが」イラッ

コナン「フン……そいつは悪かったな」

コナン「つーかわざわざ電子ロックを解除しなくても、ベルトの布地部分を切れば良いんじゃねーのか?」

キッド「そんなお手軽な方法で外せるなら、とっくにそうしてるよ」カチャカチャ

キッド「でも残念ながら、こいつはそこまでヤワな素材じゃねーんでな」

コナン「マジか……元々は何に使うやつなんだ?」

キッド「JAXA特製の、国産宇宙服用の生地だよ」カチ、カチ…

キッド「スペースデブリによる損傷を防ぐために、強靱で、なおかつ衝撃吸収にも優れてるやつさ」

キッド「あいつらの持ってるサバイバルナイフなんかじゃ、切り込みすら入らねーぜ」

コナン「なるほどな……でも、奴らもベルトを切って外そうとしなかったってことは……」

キッド「あぁ。あいつらも、その情報を知ってるってこったな」

キッド「たぶん、JAXAのメインシステムにハッキングしたんだろ。オレみてーにさ」

コナン「……」フム

キッド(さて。こいつが考え込んで、おとなしくしてる間に……と)カチャカチャカチャ

~次郎吉の私室の前~

次郎吉「中森警部、園子。ロックを解除するから退いてくれぃ」

中森「あ、あぁ……すまん」

コナン『ちょっ……テメー、どこ触ってやがる!』

キッド『わざとじゃねーよ! 暴れるなって!』

一同「!?」

蘭「……な、中で一体何が……?」

ピッピッピッ…ピピピッ

次郎吉「ぬぅっ? パスワードが変えられておる……!」

中森「何ィ!?」

紺野「キッドの仕業でしょうか?」

次郎吉「そう考えるのが妥当じゃな」

機動隊員B「鈴木相談役。カメラなど、何か室内の様子が分かるものはありませんか?」

次郎吉「おぉ、そうじゃ! 後藤、タブレット端末を」

後藤「はい」スッ

小五郎「それで一体何を?」

次郎吉「こいつを使えば、部屋の中に設置してある防犯カメラの映像が見えるんじゃ」ピコピコ

蘭「一般の家庭にもありますよね、そういうの」

次郎吉「うむ。しかしこれは映像のみで、音声までは拾えぬがな……」

次郎吉「よし、これで見られるぞ」ピッ

園子「どれどれ? ……って、ちょっと!?」

小五郎「オイオイ!?」

中森「こ……これは!?」ギョッ

タブレットに映し出されたのは、ベッドに縛りつけられたコナンと、その上に覆い被さるキッドの姿……。

蘭「コナン君!?」

園子「ま、まさか……まさか、キッド様……」ワナワナ

~園子の妄想~

キッド『名探偵が好きです!』

コナン『えっ……いきなり何を……!?』ギョッ

キッド『いきなりじゃありません。初めて会った時から、ずっと好きだったんです』

コナン『……ねぇ。ボクをからかってんの?』

キッド『からかってなどいませんよ。この気持ちには、嘘偽りはありません』

キッド『性別も歳も関係ないと、思ってしまったんです……』

コナン『……悪いけど、ボク、男から告白されても……』タジタジ

キッド『そうですか……なら仕方ありませんねぇ』

キッド『怪盗らしく、貴方の初体験を盗ませてもらいましょうか』ドサッ

コナン『ちょっ……何するの!? 離して!』

キッド『愛しています、名探偵……私だけのものになって下さい』ギシ…

コナン『キッド、やめっ……あ、んっ……』(////)

~妄想終了~

園子「い……嫌ぁぁぁぁ!」

蘭「そ、園子!?」ギョッ

園子「キッド様がショタコンの変態なんて、そんなの嫌ぁっ!!」

園子「キッド様、キッド様――――っ!!」ドンドン! ドンドン!



~次郎吉の私室・ベッドの上~

園子『襲うならガキンチョじゃなくて、私にして――――っ!!』ドンドンドン!

蘭『ちょっと園子! 落ち着いて!!』

キッド「…………何かオレ、すんげー誤解されてる気がするんだけど」

コナン(ったく、園子の奴……)

~次郎吉の私室の前~

『ERROR』ピピピッ

次郎吉「ぬぅ……やはり室内の制御パネルでなくば、パスワードの設定は変えられぬか」

蘭「……次郎吉さん、どいてください。園子も下がって」

園子「へ……」ピタ

次郎吉「何をする気じゃ?」

園子「……あ!」ハッ

園子「おじ様、早く下がって! 危ないわよ!」

次郎吉「お、おぉ……」スッ

蘭「……」フゥー…

ザッ!!

蘭「ハァッ!」バキィッ!!

次郎吉「おぉ、でかしたぞ!」

蘭「コナン君!」タタッ

~次郎吉の私室~

蘭「コナン君、大丈夫? ……って、ちょっと! 何て格好なの!?」(////)

コナン・キッド「「え?」」キョトン

キッド「おい……何でお前、パンツ一丁なんだよ? 半ズボン履いてたはずだろ」

コナン「あ、いけね……防犯ベルトがあるからって、ボール射出ベルトを少し緩めた状態にしてたし」

コナン「窃盗団に上半身裸にされたせいでサスペンダーも無ぇから」

コナン「くすぐったくて身を捩ってる内に、ズボンが足元までずり落ちてたのか」

中森「キ、キッド……お前、宝石を狙うだけでは飽きたらず、小僧の貞操まで……!」ワナワナ

園子「やっぱりキッド様、ショタコンでホモだったのねっ!?」

キッド「ちっが――――うっ!!」(涙目)

蘭「許さない……」

キッド「へ?」

蘭「……許さないわよ、怪盗キッド!」ザッ

キッド「いや、だから誤解だって!」

蘭「問答無用!!」ヒュオッ

キッド「うわっ!」バッ

キッド「名探偵、止めてくれよ!」

コナン「縛られた状態で、どうやって止めろって?」

キッド「チッ、そうだ! ロープを解いてやるの忘れてた!!」


キッドはトランプ銃で、コナンを拘束しているロープを狙う

パシュッ…カッ!! ブチッ

コナン「はぁ~、やっと自由になった……」ムク…

キッド「しみじみと言ってねーで、助けろよ!」

コナン「悪ぃが、オレには無理だ」

キッド「鬼――――――っ!!」シャッ

コナン(今の内に、ズボンを履いとこ……)モゾモゾ

蘭「ちょこまかと……待ちなさい!」ゴスッ!!

キッド「そう言われて待つ奴ぁいねーよ!」ヒョイッ

蘭「コナン君がお婿に行けなくなったら、どうしてくれるの!?」ガッ!!

キッド「その時はお嬢さんが貰ってやりゃあ良いじゃねーか!」ザザッ

蘭「私には新一がいるのよ、ふざけないで!」ドカッ!!

コナン(オレがその新一なんだけど……)

小五郎「……」ムッ

次郎吉「ワ、ワシの寝室が……」トホホ…

キッド(くそっ……一旦退くしかねーか!)

ボンッ!

コナン「わっ!」

コナン(また煙幕を……!)ゴホゴホ

蘭「キッド!」ケホッ

キッド「悪いが、今宵は退散させて頂きますよ」

キッド「これ以上部屋をメチャクチャにして、可愛いメイドさん達の手を煩わせるのも嫌なんでね」

蘭「えっ?」ピタ

蘭「あ゛…………」サーッ

キッド「では皆さん、月明かりの下でまたお会いしましょう♪」バサッ

キッドは窓からハンググライダーで逃走する

中森「待て、キッド!」

中森「紺野! 屋敷の外にいる連中と一緒に追跡だ!!」ダダッ

紺野「はいっ!」タタタ…

蘭「ご、ごめんなさい、次郎吉さん!」ペコペコ

コナン(すっげぇ……ベッドに付いてた木の装飾が粉々だ)

次郎吉「…………まぁ、今宵はワシも客間で休めば済むことじゃ。気にするな」フゥ…

蘭「あのぉ……弁償は……」

次郎吉「構わん。ちょうど、部屋の模様替えをしようと思っておったところでのぉ」

次郎吉「業者を呼ぶ良い口実ができたわい」アッアッア

蘭「はぁ……本当に、すみませんでした」

小五郎「ったく、オメーは……周りの状況にも目をやれよ」

小五郎「爺さんが太っ腹だったから良かったものの……」

蘭「ごめんなさい……」シュン…

カサ

園子「あら? 何かしら……」ピラッ

次郎吉「これは、キッドの新たな予告状……!」

コナン「何て書いてあるの?」

次郎吉「『3日後の夜、21時に改めて宝石を頂きに参ります』……か」

小五郎「ま、奴らしいな」フン

次郎吉「上等じゃ! 3日後が楽しみじゃわい」

小五郎「……おい、小僧。どこに行く?」

コナン「え? あぁ……あの男の人達に脱がされた服を取りに……」

蘭「あ、そうだった! ごめんね、コナン君……すっかり忘れてたわ」

蘭「どこに置いてきたか、覚えてる?」

コナン「んーとね。西側の客間のどこかだったと思うんだけど……」

小五郎「なら、オレが取ってきてやるから」スタスタ

小五郎「オメーらは温かいものでも飲んで、おとなしく待ってろ」ガチャ…バタン

コナン・蘭「「はぁい……」」

~午後11時15分・次郎吉邸・応接室~

中森「……小僧。本っっ当に、キッドに妙なことをされてはいないんだな?」

コナン「されてないよ」

中森「本当に本当だな!?」

コナン(どこまで疑り深いんだよ……)

コナン「本当だってば……」ゲッソリ

コナン「キッドは女の人が大好きだって、警部も知ってるじゃない」

中森「それはそうだが……」

次郎吉「中森警部、もう良かろう……これ以上、小童に嫌なことを思い出させてやるでない」

中森「あ、あぁ……そうだな」

中森「じゃあ明日、例の男達に連れ去られてからのことを調書にまとめたいから」

中森「学校が終わってから、警視庁に来てもらえるか?」

コナン「はーい」

ガチャ

紺野「中森警部、ちょっとよろしいですか?」

中森「あぁ、今行く」スタスタ

紺野「……キッドに逃げられたからって、コナン君に八つ当たりしなかったでしょうね?」

中森「誰がそんな大人げないことをするか」フン

紺野「なら良いですけど。それで……どうでした? コナン君の様子……」コソ…

中森「普段と変わりないように見えるが……かえってそれが怪しく思えてな」ヒソヒソ

紺野「あ、警部もそう思います?」

中森「オレもって……他にも同じ考えの奴がいるのか?」

紺野「毛利探偵ですよ」

紺野「コナン君は、自分の身に起こった出来事を現実だと認めたくないから」

紺野「敢えていつも通りにふるまうことで」

紺野「キッドのセクハラを無かったことにしようとしてるんじゃないかって……」

中森「セクハラなんて軽いモンじゃないだろう」

中森「ありゃどう見ても強制わいせつ……いや、強姦未遂だぞ?」

紺野「ですよねぇ……と言っても、コナン君は男の子ですから強姦罪は成立しませんけど」

中森「んなモンは、法の解釈の問題だろうが」

紺野「……まぁ、今は何ともないかもしれませんが……」

中森「時間が経つにつれて、何か精神的な症状が出てくるかもしれんな……」チラッ

中森警部と紺野は、コナンに気遣わしげな視線を送る……。

コナン「えぇ~!? このベルトの鍵、新しいのが届くまで2週間もかかるの!?」

蘭「じゃあそれまで、コナン君はずっと防犯ベルトをしたままってことですか?」

次郎吉「うむ」

小五郎「たかが鍵を作り直すだけで、何でそんなに時間がかかるんだ?」

次郎吉「あの鍵は、今回のキッド対策で用意した特注品じゃからな」

次郎吉「メーカーに直接鍵を持ち込んで頼まねば、複製もできぬと言ったじゃろう?」

次郎吉「複製なら3日もあれば十分なんじゃが、もう一度新たに作るとなるとのぉ……」

次郎吉「そういうわけで、小童。すまんが、しばらく我が家で寝泊まりしてくれるか?」

コナン「え……ま、まさか」

次郎吉「うむ。キッドはともかく、あの輩はかなり危険なようじゃからのぉ」

次郎吉「襲撃に備えて、鉄狸の中に寝床を用意する」

コナン(やっぱ、そーなるか……)

次郎吉「まぁ、案ずるな。あのベルトに付けたパネルは完全防水じゃ」

次郎吉「小童が風呂に入っても、全く問題は無いぞ」

コナン「あ、そう……」

次郎吉「今宵はもう遅い。園子や毛利探偵達も、泊まっていってくれぃ」

小五郎「……ま、今から帰るのも面倒だしな」

蘭「そだね……」

園子「それじゃ、着替えを用意させるから。ちょっと待ってて」

蘭「ありがと、園子」

~午後11時45分・次郎吉邸の正門前~

中森「今回は我々警察や毛利探偵の適切な対応で、宝石は何とか守ることができた。しかし……」

中森「まさかキッドが小僧に妙なマネをするとは……」ブツブツ

インタビュアーA「えっ! どういうことですか!?」

インタビュアーB「その話、詳しく聞かせて下さい!」

中森「あ~、いや。今のは気にせんでくれ」

中森「キッドは3日後、改めて『ダルヤーイェ・ヌール』を盗みに来ると、予告状を残していった」

中森「当日は我々も、万全の警備体制で臨むつもりだ」

インタビュアーA「はぁ……」

中森「では、オレはこれで」スタスタ

インタビュアーA「あ、ちょっと! 中森警部!」

インタビュアーB「もう少し、お話を……」

バタン! ブロロォ…

カメラマンA「くそっ……何があったってんだ?」

カメラマンB「屋敷の使用人に聞こうにも、ここに雇われてるのは口が固い奴ばっかりだからなぁ……」

紺野(さて……私も茶木警視に報告しに、本庁へ戻らないと)コソ…

カメラマンC「あ……捜査二課の方ですよね」

紺野「!」ピタ

カメラマンB「キッドとコナン君に何かあったようですが、聞いてませんか?」

紺野「……………………」チラッ

紺野「この話、私が言ったことは内緒にしてくれます?」

インタビュアーA・B「「もちろん!」」

紺野「実は…………」ゴニョゴニョゴニョ…

マスコミ各社「「「ええぇ――――――っ!?」」」

~その翌朝・午前7時・次郎吉邸のダイニング~

小五郎「おぉ~、朝飯も豪華だな♪」

蘭「お父さん……」

コナン「……蘭姉ちゃん、もう諦めようよ」

蘭「ハァ……」

ガチャッ

園子「おっはよー」

蘭「あ、園子。おはよ」

次郎吉「昨夜はよく眠れたかの? 小童」

コナン「ま……まぁね」アハハ…

コナン(鉄狸の中、結構寒かったけどな……)

コナン(毛布が無かったら、マジで風邪引くところだったぜ)

園子「早く食べよ。蘭やガキンチョは、一度学校の用意をしに戻らなきゃいけないでしょ」

蘭「うん。いただきます」

コナン「いただきま~す」

コナン(ま、解除キーができあがるまでの我慢だ……)

…バタバタバタバタ

ガチャッ!!

後藤「お食事中、失礼します!」

次郎吉「何じゃ、昨夜に続いて騒々しい!」

後藤「相談役。昨日のキッドのことが、新聞に載っていまして……」

次郎吉「それがどうした? 彼奴の動向は、常に世間の注目の的」

次郎吉「このワシの偉業を押しのけてまで、新聞の一面を飾るほどじゃぞ?」

次郎吉「別に珍しくもあるまいて」

後藤「それはそうなんですが……とにかく、見て下さい」ガサ

次郎吉「むぅ?」パラ…

次郎吉「……こ、これは!?」ガタッ

次郎吉「何じゃ、この記事は!」バサッ

コナン・蘭・小五郎・園子「「「「えっ……」」」」

『怪盗キッドはキッドキラーにぞっこん!? 二人きりで密室に2時間の謎』

『現場に居合わせた捜査関係者は語る! 「キッドがコナン君をベッドに押し倒して……」』

園子「これって、昨日のおじ様の部屋でのこと?」

小五郎「おい……あのことは小僧やキッドが変な噂を立てられねーようにって」

小五郎「口止めしたはずじゃなかったのか!?」

蘭「一体、誰が……」

コナン(業界じゃ一、二を争う全国紙のトップでコレかよ……)

コナン(…………ぜってー関西やロスにも伝わってるよな、このニュース)ガックリ…


~回想終了~

――帝丹小学校・1年B組――

コナン(この報道は、すぐに警察側も知るところとなり)

コナン(白馬警視総監は、小学校で授業中だったオレの所へ、わざわざ茶木警視を寄越して謝罪してくれた)

コナン(警視もすっげー怒ってて、情報を漏らした奴を厳正に処分するって言ってたな)

コナン(たぶん、オレが名誉毀損でそいつを訴えないようにするためでもあるんだろうけど……)

コナン(オレはとしては、警察側からマスコミ各社に「今回の件は事実と全く異なっている」と伝え)

コナン(訂正記事を載せるよう働きかけてほしかったのだが……)

コナン(中森警部を始めとする捜査関係者は、未だにキッドが俺を襲おうとしたと思っているらしく)

コナン(オレのささやかな頼み事は聞いてもらえそうもない……)

コナン(そして……キッドがオレに熱烈な片想いをしているという誤解も、一向に解けないままだ)

コナン(マスコミは、オレがキッドの愛を受け入れるかどうかに一番の関心を寄せていて)

コナン(オレに直接取材しようと、連日、ああやって小学校まで押しかけている……)

コナン(オレとしちゃあ、いっそのこと、カメラの前で事実を全部ぶちまけてやりてーんだけど)

コナン(現状じゃ「火消しに必死になってんじゃねーか」って)

コナン(かえって誤解されちまう可能性の方が高ぇからな~)ムゥ…


ガラッ

小林先生「みんな、そろそろ業間休みも終わるわよ。授業の準備をしてちょうだい」

児童達「は~い」

光彦「ボク達も座りましょうか」

歩美「そうだね」

元太「ちぇっ、次は国語かよ~」

灰原「……」チラ

コナン「ん?」

灰原「……」フイ

コナン(何だ? 灰原の奴……)

コナン(そういや、さっき灰原には「風呂でも防犯ベルトを外してくれない」って話したけど)

コナン(ホントは「外せねー」と言った方が正しいんだよな、コレ……)

コナン(……まぁ、キッドの予告は今夜だ)

コナン(キッドがこのベルトを外すのが先か、新しい解除キーが届くのが先か……)

コナン(おそらく前者だろうとは思うけどよ……そう簡単に盗ませてやるつもりは無いぜ)

キーンコーンカーンコーン…

――放課後・帝丹小学校・正門前――

バイバーイ! ウン、マタネー!

光彦「昼までとはうってかわって、静かですねぇ……」

歩美「お昼休みに、お巡りさん達がマスコミの人を追い払ってくれたんだよ。歩美、見てたもん」

元太「へぇ~、そうだったのか」

灰原「じゃ、私達は先に帰るわ。貴方は迎えが来るんでしょ?」

コナン「あぁ。次郎吉さんが、ボディガードの後藤さんを寄越してくれるんだ」

コナン「もう少ししたら、蘭と園子も授業が終わるから」

コナン「帝丹高校経由で次郎吉さんの屋敷に行くことになると思うぜ」

灰原「そう。なら心配ないわね」

光彦「それでは、ボク達はお先に失礼します!」

歩美「バイバイ、コナン君♪」

元太「また明日な!」

コナン「おう」

元太「よーし、博士ん家でゲームしようぜー!」ダダッ

歩美・光彦「「賛成~」」タタタ…

灰原「ちょっと、貴方達。待ちなさいよ……」スタスタ

探偵団と灰原を見送ったコナンは、正門に寄りかかる。

コナン「ハァ……」

コナン(あいつらはお気楽で良いよなぁ~……)


prrrr…prrrr…

コナン「ん?」

ピッ

コナン「もしもし?」

後藤『後藤です。あと2分ほどで帝丹小に着きますので』

コナン「あ、はい。正門の所で待ってるから」

後藤『分かりました』

ピッ

コナン(さて……キッドは今夜、どんな手で来るかな?)


キィィィィ…ギュイィィィン

一台の車が、猛然とコナンに迫る……!

コナン「!?」

キキィッ!! ガチャ

謎の男A「動くな」ジャキッ

コナン「!」ハッ

コナン(こいつ……あの時の!)

女子児童A「何あれ!?」キャアァァッ

女子児童B「先生! 変な人がー!!」バタバタバタ…

謎の男A「周りの奴らにケガをさせたくなければ、おとなしく車に乗れ」

コナン「く…………っ!」

(暗転)

キッド「ネクストコナンズヒ――――ント!」

コナン「大使館!」

(ショートコント)

キッド「しかしお前、よく誘拐されてんなぁ」

コナン「えーっと。確か、6回目?」

キッド「……多すぎだろ」

今回はここまでです…やっと中編が終わりました(汗)
後編も書き溜めでき次第投下します
キッドはどこを触ってコナンを怒らせたのか…それはご想像にお任せしますw

>>127を一部訂正。一人称が統一できてませんでしたm(_ _)m

× コナン(中森警部を始めとする捜査関係者は、未だにキッドが俺を襲おうとしたと思っているらしく)

○ コナン(中森警部を始めとする捜査関係者は、未だにキッドがオレを襲おうとしたと思っているらしく)

(タイトルコール)

バァン!!

コナン「怪盗キッドとイランの至宝(後編)!」

――午後三時半・次郎吉邸・応接室――

イラン大使「相談役……今夜は大丈夫なんでしょうね?」

次郎吉「案ずるな。今宵は小童の身の安全を確保するためにも、相応の備えをしておるでのぉ」

イラン大使「はぁ……」

prrrr…prrrr…

次郎吉「むぅ? ……出ても構わぬかの?」

イラン大使「どうぞ」

ピッ

次郎吉「ワシじゃ」

後藤『大変です、相談役!』

次郎吉「後藤か。どうした?」

後藤『実は…………』

ガタッ!!

次郎吉「何じゃと!? 小童が、何者かに攫われた!?」

イラン大使「……えぇっ!?」

後藤『私がもうすぐ着くと連絡した直後、黒い乗用車が正門前に滑り込んできて』

後藤『乗っていた男に拳銃を突きつけられ、付いてくるように脅されたようです』

後藤『数人の女子児童が、現場を目撃していました』

次郎吉「警察には通報したのか?」

後藤『それは児童から知らせを受けた学校側が、既に……』

次郎吉「ならば、お前は毛利探偵とその娘に、このことを知らせに行け」

次郎吉「ワシは防犯ベルトの発信器で、小童の行方が追えるか確かめてくる」

後藤『分かりました』

ピッ

イラン大使「そ、相談役。宝石は……『ダルヤーイェ・ヌール』は、無事なんでしょうね!?」

次郎吉「分からぬ。だが今は、それどころでは無くなってしまったわぃ」

イラン大使「それどころって……アレは我が国の宝なんですよ!?」

次郎吉「バカモン! 宝石なぞ、所詮はただの石ころに過ぎん!」

次郎吉「いくら価値があろうとも、人の命には代えられぬわ!」

イラン大使「ヒッ!」ビクッ

…パタパタパタパタ

ガチャッ!

メイドB「旦那様、警察の方がお見えです!」

次郎吉「うむ。今行く」スタスタ…

次郎吉「…………」ピタリ

次郎吉「大使よ……此度の件、ワシが計算を誤ったことは謝罪しておこう」

イラン大使「は?」

次郎吉「ワシがかの宝石を小童に託したのは、あやつが必ず守り抜くと見越していたからじゃ」

次郎吉「しかし……それは相手が怪盗キッドなら、の話」

次郎吉「小童を攫ったのは、おそらく屋敷に侵入してきた三人組の輩……噂では、殺人も厭わぬと聞く」

次郎吉「宝石を奪われるだけで済むなら、御の字というものじゃ……」

イラン大使「相談役……」

メイドB「旦那様、お早く」

次郎吉「あぁ」

パタン

ちょびっとだけになってしまいましたが、今回はここまでですm(_ _)m
修正が済み次第、続きを投下していきます

>>116を一部訂正。ドアは蘭に破壊されてましたね…(汗)

× 小五郎「オメーらは温かいものでも飲んで、おとなしく待ってろ」ガチャ…バタン

○ 小五郎「オメーらは温かいものでも飲んで、おとなしく待ってろ」

――イラン大使の車中――

prrrr…prrrr…

ピッ

謎の男A『何だ』

イラン大使「こ、子供を誘拐とは、一体どういうことだ!」

イラン大使「前回のこともそうだが、もっと穏便に済ませてくれと言ったはずだぞ!」

謎の男A『フン。ガキを一人攫ったぐらいで、そんなに狼狽えなくても良いだろう?』

謎の男A『それとも、今更怖じ気づいたのか?』

謎の男A『俺達に泣きついてきたのは、お前ら政府の方だってのによ』ククッ

イラン大使「そ……それは……」

謎の男A『まぁ良い。お前もさっさと戻って来いよ』

謎の男A『色々相談しなきゃならねーこともあるしなぁ』

イラン大使「……分かった。ただし、子供には危害を加えるな。絶対にだ!」

謎の男A『分かってるって』チッ

――午後四時半・次郎吉邸・コンピュータールーム――

次郎吉「何ィ!? 小童がいるのは、イラン大使館じゃと!?」

研究員「はい。発信器の反応と、この地図を照らし合わせると……間違いないかと」

中森「……小僧を攫った奴らが逃げ込んだ先が、たまたま大使館だったとは思えんな」

小五郎「じゃあイランの大使と、あの窃盗団はグルだったってのか!?」

次郎吉「そのようじゃのぉ……すっかり騙されたわい」

小五郎「何で大使が、裏で窃盗団と手を結んでるんだ!? おかしいだろ!」

中森「そいつはオレ達にも分からんよ」

中森「窃盗団の奴らをとっ捕まえて聞くのが一番早そうなんだが……」

目暮「……大使館の敷地内は治外法権だ。我々警察でも、迂闊に手出しできんぞ」

小五郎「くそっ! 面倒な場所に逃げ込みやがって……!」

蘭「コナン君……」

園子「蘭、大丈夫? 真っ青だよ」

目暮「ワシは本庁と外務省にも協力を頼んでくる」

目暮「高木と佐藤を置いていくから、何かあったら彼らを通じて連絡してくれ」

小五郎「分かりました」

中森「頼むぞ、目暮」

――同時刻・江古田高校・正門前――

prrrr…prrrr…

快斗「ん? 電話か……誰からだ?」


『着 信 : 白 馬 探』


快斗「……ゲッ!!」

快斗(出たくねーけど……出ないとずっと鳴らされ続けるよな~)

ピッ

快斗「もしもし?」

白馬『やぁ、しばらくだね。元気そうで何よりだ』

快斗「何の用だよ」

白馬『日本での報道は一通りチェックしてみたが、すごい書かれようだね』

白馬『こちらの新聞でも、「怪盗キッドに小児性愛者疑惑が浮上」と大々的に報じられているよ』

快斗「あ、そ……」

白馬『で、真相はどうなんだい? 君に小児性愛の嗜好があるなど、ボクには到底信じがたいんだが』

快斗「だ~か~らぁ~。オレは怪盗キッドじゃねーって言ってんだろ! いい加減しつけーぞ!!」

白馬『……なるほど。やはり誤解されただけか』フフッ

白馬『しかしねぇ、黒羽君』

白馬『ロックを外すためとはいえ、子供を半裸にして縛り付けた上、ベッドに押し倒すなんて』

白馬『そういう誤解をされても仕方ない体勢だったと思うよ』

快斗「押し倒してねーし! あいつを裸にして縛ったのもオレじゃねー!!」

白馬『今度からは、その辺ももう少し気を配った方が良いんじゃないのかい?』

快斗「人の話聞けよ!!」イライラ

白馬『今回の件では、コナン君も随分と迷惑してるだろうからね』

快斗「フン……」

快斗(言われなくても分かってるっつーの!)ケッ

快斗「白馬。お前、そんな嫌みを言うために、わざわざロンドンから国際電話かけてきたのかよ?」

白馬『嫌みとは心外だな。ボクはボクなりに、君とコナン君のことを心配してるだけだよ』

白馬『あんな報道で君達があらぬ誤解をされたままなのは、ボクも気分が悪いからね』

白馬『父と中森警部には、一応ボクからも話してみるよ』

快斗「へーへー。そりゃどーも……と」ピ、ピ、ピ

白馬『黒羽君? どうしたんだい?』

快斗「悪ぃ、キャッチホンだ。切るぞ」

白馬『あ……ちょっと待ちたまえ、黒羽く』プツッ

――ロンドン――

ツー…ツー…

白馬「……全く。例の窃盗団についての情報を教えようと思ったのに」ピッ

白馬(まぁ……黒羽君のことだ。きっと上手くやるだろう……)

――江古田高校・正門前――

ピッ

快斗「ジイちゃんか?」

寺井『はい。ぼっちゃま、例の窃盗団が動きました』

寺井『下校途中のあの少年を攫い、イラン大使館に逃げ込んだようです』

快斗「何っ!?」

寺井『――――どうなさいますか?』

快斗「ジイちゃん、今から言うものをすぐに揃えて、いつもの場所に来てくれ!」

寺井『分かりました!』

快斗(間に合ってくれよ……!)ダダッ

――同時刻・阿笠博士の家――

灰原「探偵団バッジの反応からすると……江戸川君が連れて行かれたのは、イラン大使館ね」

元太「そこに悪い奴がいるんだな!」

光彦「すぐに警察に連絡して、ボク達もコナン君を助けに行きましょう!」

歩美「博士、車出して!」

阿笠「い、いや……それは……」

歩美「早くしないと、コナン君が殺されちゃうよ!」

元太「迷ってる暇なんてねーぞ!」

阿笠「………………君達の気持ちは分かるんじゃがのぉ」

灰原「無理なのよ。私達はおろか、警察も手は出せないわ」

元太「えぇっ!?」

光彦「何でですか!?」

灰原「外国の大使館や領事館は、外国の領土と同じ扱いを受けるものなの」

灰原「つまり、日本の警察が勝手に入ることは許されない場所なのよ」

阿笠「たとえそれが、コナン君を助け出すためであってもじゃ……」

歩美「そんな……!」

元太「じゃあ、悪い奴も捕まえられねーのか!?」

阿笠「大使館側が、犯人の引き渡しに応じない限りは無理じゃ」

灰原「たぶん警察も、鈴木財閥の相談役と一緒に頭を悩ませてるところでしょうよ」

灰原「どうやったら、大使館の中に入る口実を作れるかってね……」

今回はここまでです
何とか今週中には完結できるかと思います…

――イラン大使館・二階の角部屋――

謎の男A「ほら、さっさと入れ」グイッ

コナン「うわっ!」ドタッ

ポロ…カラーン

謎の男B「……?」ヒョイ

コナン「あ……」ハッ

コナン(探偵団バッジが……!)

謎の男A「何だ、そりゃあ……ピンバッジか?」

謎の男B「……」カチ

ピーピー、ピーピー

ピッ

歩美『コナン君? 大丈夫なの!?』

元太『コナン、聞こえるか!?』

光彦『無事なら、返事して下さい!』

謎の男A「…………なるほど。トランシーバー機能が付いてんのか」

歩美・光彦・元太『『『えっ……』』』

グシャッ!!

――阿笠博士の家――

ザザ、ザー…ピッ

灰原「……これで、こちらから連絡するオプションは無くなったわね」

光彦「最悪です……」ガックリ

光彦「ボク達、コナン君を助けようと焦るあまり、かえって彼を窮地に追い込んでしまいました……」

元太「ど、どうしたら良いんだよぉ……」

歩美「哀ちゃん……博士ぇ……」グス…

博士「落ち着くんじゃ。これ以上焦ったら、状況は悪くなる一方じゃぞ」

灰原「どのみち今回の件は、私達の手には負えない問題よ」

灰原「ここか鈴木さんの所で、待つことしかできないわ」

元太「でも、警察だってアテにならねーんだろ!? どうやってコナンを助けるんだよ!!」

灰原「だから落ち着きなさい、小嶋君」

灰原「確かに今の状況じゃ、警察が大使館に突入するのは無理よ」

灰原「でも…………“彼”なら可能だわ」

灰原「きっと中森警部の動きから、この騒ぎを察知してるはずでしょうしね」

歩美「え?」

元太「カレーの出前を届けるふりして、大使館に入るのか?」

光彦「元太君……カレーじゃなくて、“彼”ですよ」ゲンナリ

博士「あ、哀君……まさか……」

灰原「ええ」コクッ

灰原「あのハートフルな泥棒さんに、江戸川君ごと宝石を盗み出してもらうのよ」

灰原「江戸川君を大使館の敷地外へ連れ出してくれさえすれば、警察が動いても何の問題もないわ」

歩美・光彦・元太「「「!」」」

灰原(まぁ……予告時間まで工藤君が生きてるかは、分からないけどね)

――イラン大使館・二階の角部屋――

謎の男A「このスマホも預かっとくぜ。しかし2台持ちとは……最近のガキは贅沢だな」

コナン「……スマホは壊さないの?」

謎の男A「あぁ。最新機種のやつをぶっ壊すなんて勿体ないことはしねーよ」

謎の男A「データを抜いて売り捌けば、小遣い程度にはなるからな」

謎の男A「キッドの予告時間まで、ここでおとなしくしてろ」

ギィィ…バタン!! カチ

カツ、カツ、カツ、カツ…

コナン「……行ったか」

タタッ

コナン(くそっ! やっぱ、オートロックかよ……)ガチャガチャ

チラ

コナン(あの窓ガラスの厚さ……防弾ガラスだな)

コナン(この扉も木製に見えるけど、中には金属がはめ込まれてる……)コンコン

コナン(まさか在日大使館に、こんな設備の部屋があるとはな。テロリストの襲撃に備えてんのか)


キョロキョロ

コナン「ん?」

キラッ

コナン(隠しカメラ……この部屋、奴らに見張られてるってわけか)

コナン(でも、音声まで拾われてるかは分からねーな……)

コナン(今はおとなしくして、脱出の機会を窺うしか無い……か)


…カツ、カツ、カツ

コナン「ん?」

コナン(……奴らが戻ってきたのか?)

ガチ、カチャ…

イラン大使「良かった……無事だったんだね」ホッ

パタン

コナン「おじさん、誰?」キョトン

コナン(まさか、この人……)

イラン大使「本国からここに派遣されてる、大使だよ。ゴメンね、こんな目に遭わせて……」

コナン「あ……待って、おじさん。この部屋、隠しカメラがあるんだ」

コナン「おじさんがここに来てるのが悪い人達にバレたら、まずいんじゃ……」

イラン大使「大丈夫だよ。おじさん、こう見えても機械に色々詳しくてね」

イラン大使「悪い人達のパソコンに少し細工をして、そこのカメラの映像を見られなくしてきたんだ」

コナン「そう……」

コナン「……ねぇ。おじさんも、悪い人達の仲間だったの?」

イラン大使「それは……」

イラン大使「……………………」ギュッ

コナン「おじさん?」

イラン大使「……ここまで奴らの悪事に協力してきて、今更逃げられるわけがないか」フッ

コナン「え……?」

イラン大使「これまでのことも、今回の件も……おじさんの国の、色んな事情が絡んでるんだよ」

コナン(色んな事情……ね)

コナン「あのさ……それって、もしかして――――」

今回はここまでです
明日の夜にラストまでいきます

修正作業がまだ終わってないので残りの投下を明日に延期します
申し訳ありませんm(_ _)m

――午後五時半・次郎吉邸・コンピュータールーム――

prrrr…prrrr…

中森「ん?」

『着 信 : 白 馬 探』

中森「ったく……また面倒な相手から」ブツブツ

ピッ

中森「もしもし、白馬君か? こんな時に何の用だね」

蘭「白馬君……?」

園子「白馬って……誰よ、それ?」

蘭「あぁ……園子は会ったこと無かったね」

高木「警視総監の息子さんで、工藤君や世良さんと同じ、高校生探偵だよ」

蘭「私やお父さん、コナン君とは、前に山奥の館で起きた事件で知り合ったの」(※原作30巻参照)

佐藤「でも彼、今はまたロンドンに行ってるって聞いたけど……」

白馬『実は少し、耳に入れておいてほしい情報がありましてね』

中森「情報だと?」

白馬『ええ。例の窃盗団の件なんですが……興味深いことが分かったんですよ』

中森「……すまんが、今はそれどころじゃないんだ。後にしてくれ」

白馬『何かあったんですか?』

中森「爺さんが宝石を預けていたあの小僧が、何者かに誘拐された」

白馬『コナン君が!?』

中森「発信器の反応を追ったところ、どうやらイラン大使館に連れ込まれたらしい」

白馬『なるほど……それなら尚のこと、ボクの話を聞いて下さい。中森警部』

中森「何?」

次郎吉「……中森警部。電話を皆にも聞こえるようにしてくれるかの?」

中森「あ……あぁ、分かった」

ピッ

白馬『最初にハッキリ言っておきますが……彼らの目的は、宝石でもコナン君の命でもありません』

次郎吉「何じゃと!?」

園子「じゃあ、一体何でガキンチョを攫ったの?」

白馬『彼らの真の狙い……それは、おそらく――――』


ギィィィィィィィ――――、バタンッ!!

ガシャン、バタ――――ン!!


――イラン大使館・二階の角部屋――

コナン「『ダルヤーイェ・ヌール』を取り付けた、この防犯ベルト……」

コナン「これこそが、あの人達の欲しかったものなんでしょ?」

イラン大使「え……っ」

コナン「このベルトに使われてるのは、JAXAが新たに開発した特別な素材……」

コナン「これを日本国外に流出させるために、おじさんは窃盗団に手を貸していた……違う?」キラーン

イラン大使「……!」

――次郎吉邸・コンピュータールーム――

小五郎「何でそんなもんを、窃盗団が欲しがるんだ?」

白馬『いえ……例の窃盗団ではなく、ISISが欲しがっているのでしょう』

白馬『ベルトの現物からデータを解析し、軍事転用するためにね』

一同「!!」

佐藤「…………まさか、そのために……わざと宝石を日本へ?」

高木「えっ……どういうことですか?」

白馬『闇で売り捌かれた宝石を、鈴木財閥の関係者が見つけ』

白馬『それを聞きつけた相談役が、半ば強引に日本へと持ち帰った……』

白馬『この全てが、最初から仕組まれた罠だったということですよ』

白馬『相談役は、怪盗キッドを目の仇にしていることで知られています』

白馬『もちろん、金に糸目をつけない防犯対策をした上で、キッドに挑戦状を叩き付けることも……』

白馬『今回、相談役が用意させたのは、JAXAの国産宇宙服用の生地で作った防犯ベルト……』

白馬『これまで宇宙服はアメリカに頼りきりだった日本が、国の威信を賭けて開発したものですからね』

白馬『重要機密の塊と言っても過言ではありません』

白馬『今こうしている間にも、多くの産業スパイが虎視眈々と狙っている代物です』

白馬『JAXAのメインシステムからハッキングしたデータだけでも、相当な値で取引されるでしょうが』

白馬『やはり現物ほどの値は付かないはず……』

――イラン大使館・二階の角部屋――

コナン「そんな大切なものを、ボクみたいな子供が、何十億もする宝石と一緒に持ってるんだから」

コナン「窃盗団が狙わない手は無いよね……」

イラン大使「あぁ。日本の人達は、とても平和な暮らしをしているから……」

イラン大使「生活をもっと便利にしよう、もっと豊かにしようと開発された技術が」

イラン大使「悪いことに使われてしまうなんて、まず思わない……」フッ

イラン大使「だから相談役が鉄狸の改良とベルトの用意ができてすぐに、奴らが偽の予告状を送ったのさ」

イラン大使「一刻も早く、ベルトを国外に持ち出すためにね……」

コナン「最初、マスコミに予告状の件を伏せさせたのは、防犯ベルトのことを報道させないため?」

イラン大使「そうさ。狙いは宝石ではなく、ベルトの方だと感づかれないようにと思って……」

――次郎吉邸・コンピュータールーム――

小五郎「……しかし、ISISとあの窃盗団、それにイランの大使はどこで繋がってんだ?」

白馬『黒……いえ、コナン君から聞いたと思いますが』

白馬『窃盗団にはイスラム系武装組織の元メンバーもいますから』

白馬『その人脈を使えば、ISISとの接触も容易だったはずです』

中森「なるほどな……」


小五郎「じゃあ、大使の方は?」

白馬『外務省の記録によると、今のイラン大使は、2年ほど前に着任してすぐ』

白馬『本国の治安の悪化を理由に、家族を呼び寄せていましたが』

白馬『半年前、現地の親戚が病気で倒れたので介護させるという名目で、帰国させています』

中森「身内を人質に取られたか……」

次郎吉「そこは同情に値するのぉ」フゥ…

小五郎「…………」

すみません、あまりに眠いので一旦切ります…orz
昼過ぎには投下再開できるかと…

私用で投下が遅れて申し訳ない…
それでは最後まで行きます!

――イラン大使館・二階の角部屋――

イラン大使「しかし驚いたよ……小学生の君に、そこまで見抜かれるなんて」

コナン「おじさんの国が、今すごく大変なのはTVでもやってたからさ」

コナン「シリアとの国境近くに拠点を置いたISISが、急速に勢力を拡大してるんでしょ?」

コナン「元々そんなに政情が安定してなかった国だったし、テロ組織が横行し始めたことで」

コナン「周りの国へ避難したり、亡命したりする人が後を絶たないって聞いたよ」

イラン大使「……あぁ、そうさ」

イラン大使「だから税金……国を動かしていくためのお金を払ってくれる人が、すごく減ってしまったんだ」

イラン大使「残った国民も、生活が苦しくて税金が払えないという人が多くてね」

イラン大使「そこをISISにつけ込まれてしまって……」

イラン大使「民衆の一部はISISを支持する側に回り、とうとう……」

コナン「政府の役人の中に、テロリストと仲良くしようって人達が現れたんだね?」

イラン大使「あぁ。ISISは役人とコネを作って、政府が自分達の言いなりになるように作り替えるつもりなんだ」

コナン「イスラム法の統治に基づく国を作るために……ってやつ?」

イラン大使「……坊や、難しい言葉を知ってるね」

コナン「そ、それもTVで見たんだよ」ギク

コナン「前に、外国人ジャーナリストを人質にして、お金を取ろうとした事件があったじゃない」

イラン大使「そうか……そうだったね」

コナン「でもISISが理想とする国を作るためには、お金も人も、たくさん必要になるよね?」

イラン大使「うん……その資金を稼ぐために、ISISと仲良くなった政府の人達が」

イラン大使「他のアラブ諸国が秘密にしてることをコッソリ調べたり」

イラン大使「日本を始めとする先進諸国で新しく開発された技術を盗んだりして」

イラン大使「裏で取引する商売をするようになったんだ……」

――次郎吉邸・コンピュータールーム――

中森「じゃあ、あの窃盗団はイラン政府の内通者達の手先として動いてるってことか……」

白馬『ええ。今回の件も、おそらく内通者の依頼だったんでしょう』

白馬『ICPOの調書によると、盗みに入られたのは、軍や政府でそれなりの地位にある人の家ばかり……』

白馬『現場からは、宝石だけでなく、パソコンやUSBといった情報端末の類がごっそり無くなっていたそうです』

高木「……ということは」

佐藤「一家惨殺は、金目の物目当ての強盗殺人と思わせるためのカムフラージュだったのね」

小五郎「何て奴らだ……!」ギリッ

白馬『しかし……あの窃盗団にも、誤算があった』

次郎吉「誤算じゃと?」

白馬『相談役がベルトに付けた、特殊な電子ロックですよ』

白馬『あれを解除しない限り、窃盗団はベルトも宝石も手に入れることはできない……』

白馬『最初は斧でコナン君の身体を切断して、ベルトを外そうとしたようですが』

白馬『その方法だと、ベルトの生地が彼の血で汚損してしまいますからね』

白馬『できるだけ傷や汚れを付けない方法を模索した彼らは』

白馬『キッドの解錠技術でロックを外させて、宝石ごとベルトを横取りすることにした……』

白馬『用済みになったコナン君とキッドは、その後で始末するつもりなんでしょう』

高木「……白馬君は、コナン君がまだ生きてると?」

蘭「……!」ビクッ

佐藤「高木君! 蘭ちゃん達の前で、そんな聞き方……」

高木「あ、すみません……」

白馬『ええ。奴らは、キッドに「コナン君の命を助けたければロックを外せ」と迫るつもりなんですよ』

白馬『そうなれば、キッドは確実に断れないでしょうからね』

白馬『だから、それまでコナン君は生かされていると思います。五体満足かは分かりませんが……』

蘭「そんな……」

園子「ガキンチョ……」

白馬『コナン君の行方を追うのに使った発信器は、暗証番号を入力するパネルに仕込んでいるんでしょう?』

次郎吉「うむ……」

白馬『後はそれさえ外せば、奴らの勝ちというわけです』

白馬『日本の最先端技術も、宝石も……もう戻っては来ないでしょう』

白馬『もちろん、彼らの命もね……』

――イラン大使館・二階の角部屋――

コナン「おじさんは、悪いことに手を貸すのは嫌なんだね?」

イラン大使「あぁ……もう疲れちゃったんだ。人質に取られた家族を心配するのも」

イラン大使「あちこちから機密情報を盗んでは、スパイを通じて本国に送るのも……」

イラン大使「それにね……おじさんにも子供がいるんだ。坊やと同じぐらいの歳の娘が……」

コナン「…………」

イラン大使「坊やの家族がどれだけ心配してるかと思うと……もう耐えられない」

イラン大使「これ以上、坊やを危険な目に遭わせたくないんだ。おじさんが、ここから逃がしてあげる」

コナン「でも……それじゃ、おじさんや家族の人が危ないんじゃ……」

イラン大使「大丈夫だよ。坊やは何も心配しなくていい」

イラン大使「部屋の鍵はおじさんも持ってるから。ちょっと待ってね」カチカチ

カチャ…キィィ……

コナン「……誰もいない?」ヒソ…

キョロキョロ

イラン大使「うん。今の内に、向こうの階段を使って、裏口から外へ出るんだ。良いね?」

コナン「ありがとう、おじさん」

コソ…

謎の男A「何をしている?」

コナン「!」ハッ

イラン大使「あっ……いや、その……」アタフタ

イラン大使「お……お腹が空いてるようだったから、何か食べさせてあげようと思って」

イラン大使「も、もうすぐ夕飯時だろう?」

謎の男A「あぁ。そういや、そんな時間だった……な!」バキッ!!

イラン大使「ぐふっ……!」ガクッ

コナン「おじさん!」

謎の男A「騒ぐな、小僧」ジャキッ

コナン「……!」

謎の男A「同じ映像ばかり流れてたんで、妙だと思って様子を見に来たら……案の定だったぜ」

謎の男A「おい。こいつは別の部屋に放り込んどけ」

謎の男B・C「「……」」コクッ

謎の男A「小僧。お前はあの部屋に戻るんだ」

コナン「…………分かった。だから、おじさんや家族の人達は殺さないで」

謎の男A「あぁ。お前が良い子にしてればな」

――イラン大使館・二階の角部屋の窓――

キラッ

鳩「……」クルッポー

――イラン大使館付近・寺井の車の中――

快斗「……ったく。いちいち推理披露してねーで、さっさと逃げりゃ良かったのに」

寺井「ぼっちゃま。見取り図と、鳩に付けたカメラの映像からすると」

寺井「あの少年が軟禁されているのは、二階の西側に位置する角部屋だと思われます」

快斗「そっか。……階段やエレベーターからは少し離れてるな」

寺井「しかし、ぼっちゃま……どうやって鳩にあの少年を識別させたのですか?」

快斗「今回偵察に使った鳩は、メモリーズエッグの一件でケガしたところを」

快斗「名探偵に助けてもらった奴なんだ」(※劇場版第3作『世紀末の魔術師』参照)

快斗「あいつにとって、名探偵は命の恩人だからな。きっと覚えてるだろうと思ってよ」

寺井「そうでしたか……」

快斗「そんじゃ、オレは中に潜入してくるから」

快斗「ついでに派手な騒ぎを起こして、警察が突入する理由を作る。通報は頼むぜ、ジイちゃん」

寺井「お任せ下さい。……お気を付けて、ぼっちゃま」

快斗「あぁ」ガチャ…バタン!!

タタタ…

――イラン大使館・二階の物置部屋――

ドサッ

イラン大使「う……っ」

謎の男B・C「「……」」キィィ…

イラン大使「ま、待て! 待ってくれ!!」

バタン!! ガチ!

カツ、カツ、カツ、カツ…

イラン大使「くそっ……あの子だけは助けたかったのに……!」ズル…

イラン大使「一体どうしたら……」

イラン大使「……ん?」

大使の目に入ったのは、部屋の片隅に置かれた灯油のポリタンク……。

イラン大使(これは……!)

――二階の角部屋――

コナン(……窓も扉も、子供の力じゃビクともしねーか)グググ…

コナン「くそっ!」ハァ…ハァ…

コナン(こんな狭い室内だと、爆風をモロに食らっちまうから花火ボールは使えねーし)

コナン(かといって、普通のボールでも威力が足りねー)

コナン(さて、どうすっかな……)

――午後七時・イラン大使館・二階の廊下――

女性職員「ねえ、そこの貴方」

大使館職員「あ、はい……何でしょう」

女性職員「大使を見なかった? 夕食のお時間なのに、どこにもいらっしゃらなくて」

大使館職員「さぁ……ボクも夕方から見てないんですよ」

女性職員「そう……どこかへお出かけになるなんて、聞いてないわよね?」

大使館職員「ええ」

女性職員「見かけたら、私に知らせてちょうだい。明日の予定の打ち合わせもあるし」

大使館職員「分かりました」

カツ、カツ、カツ、カツ…

大使館職員(よし……内部の状況はおおよそ把握できたな)

大使館職員(けど、名探偵が閉じ込められてる部屋に見張りも付けねーとは……)

大使館職員(オートロックで完全防弾設備の部屋だからって、油断してんのか?)



――二階の客間の外――

コソ…

大使館職員(ここだな……奴らが拠点にしてるのは)

大使館職員(お、隙間が空いてる。ラッキー♪)

――二階の客間――

謎の男B「……」

謎の男A「ん? あのガキ、何をやってやがる……」

大きなモニターに、窓を破ろうとするコナンの姿が映し出される。



――二階の客間の外――

大使館職員(……防弾ガラスが花瓶で割れるわけねーだろ)

大使館職員(まぁ……名探偵も、まだ自力での脱出を諦めてないってことか)

大使館職員(ん? 待てよ。さっき花瓶が割れる音が聞こえなかったよな)

大使館職員(つーこたぁ、あのカメラは映像のみ……)フム

大使館職員(…………出たとこ勝負で、やってみっか)

――二階の配電室――

カタン…

大使館職員(オートロックが解除できなくなるから、館内の電気を落とすのはまずい……)

大使館職員(この通信機能抑止装置をフル出力で使えば)

大使館職員(あのカメラに映像が送られるのを止めることは可能なはずだ)

大使館職員(オレとジイちゃんの通信もできなくなるのが難点だけど、そんな面倒なことも起きねぇだろ……)

カチ

――二階の客間――

ザザー、ザー…プツッ

謎の男B「……!?」ガタッ

謎の男A「ん? 急にどうしたんだ?」

チラ

謎の男A「ここの接続が悪いわけでも無さそうだな……おい、ちょっとカメラ本体の方を見てこい」

謎の男C「……」コクッ

ガチャ…バタン!

――二階の廊下――

謎の男C「……」スタスタ

シュタッ

大使館職員「へへっ♪」

謎の男C「!?」

大使館職員「はい、おやすみ~♪」プシュー

謎の男C「……」ガクッ

大使館職員(こいつは縛り上げて、トイレの個室の中に……と)キュッキュッ…ズルズル



――男子トイレ・個室内――

大使館職員「フゥ……」

大使館職員(さて……捕らわれの姫君を助けに行くか)

――二階の物置――

イラン大使(……この灯油を使って火事を起こせば)

イラン大使(日本の警察や消防が敷地内に入っても、人命救助のためだと言い張れる)

イラン大使(だが私やあいつらはともかく……あの子や他の職員が無事に逃げられるか……)

イラン大使(しかし、このまま何もしないでいるよりは……!)ガシッ

バシャ、バシャッ!

――二階の角部屋――

カチャ…

コナン「?」ハッ

コナン(誰だ……!?)

大使館職員(キッド声)「よぉ」

コナン「キッド!?」ギョッ

大使館職員(キッド声)「静かにしろよ」シー

コナン「……」コクッ

パタン

大使館職員(キッド声)「無事で良かった。あのお嬢さん達も心配してるぜ」バサッ

マントを翻し、変装を解くキッド。

コナン「オメー、何でここに……」

キッド「来ちゃいけねーのかよ?」

コナン「いや……そういうわけじゃねーけど」

キッド「……もしかして例の記事でオレが怒って、ここには来ねーとでも思ってたのか?」

コナン「…………少しだけな」

キッド「お前が嘘の証言をして、あんな記事を書かせたんなら、そうしたかもしれねーけどよ」

キッド「アレは違うだろうが。まぁ、良い迷惑だったのは確かだがな……」ブツブツ

キッド「何が悲しくて男に……しかも小学生のガキに手を出そうとしたド変態扱いされなきゃなんねーんだか」

キッド「おかげで『ファン止めます』宣言する女の子が後を絶たねーし」

キッド「ネットでも、ペドフィリアだの何だのって散々叩かれるし……」ハァ…

コナン「いや……性癖云々はともかく、そんなふざけた格好で泥棒なんざやってる時点で十分変態だろ」

キッド「うっせーな、この衣装はオレの趣味じゃねーよ!」

コナン「ふーん……じゃあ誰の趣味なんだ?」

キッド「そ……それは……」グッ

コナン「――――“初代”か?」

キッド「お前には関係ねーだろ。つーか何だよ、“初代”って」プイッ

コナン「オレが本当にこの姿だった時……」

コナン「10年前に会った怪盗キッドとオメーは、同一人物じゃねーだろ」(※原作55巻参照)

キッド「……言い切るねぇ。根拠はあんのか?」

コナン「オメーが“初代”と同一人物なら、覚えてるはずだぜ」

コナン「あの時、オレの父さんに宛てた手紙に何て書いたか」

キッド「え……手紙?」ハッ

キッド(しまった……!)

コナン「その辺は“初代”から何も聞いてねーんだな。“二代目”さんよぉ」フフン

キッド「…………」チッ

キッド(親父が工藤優作とライバルだったのは知ってたけど、名探偵にも会ったことがあるとは……)

キッド(ジイちゃんだって、そんなことは一切……)

キッド(いや……もしかして、ジイちゃんも知らなかったのか?)

キッド「……それはさておき、さっさと逃げるぞ。奴らに見つかると、また厄介だ」

コナン「そーだな」

コナン「あ……ついでに、このベルト外してくんねぇ?」ポロン

コナン「ずっと着けたままだから、痒くなってきちまってよー……」ポリポリ

キッド「そうしたいのは山々だが、今は時間が……」

キラッ

キッド「あ……」

キッド(雲の間から、月が……!)

コナン「キッド?」

キッド「待て、名探偵。そのまま動くな」

コナン「お、おぅ……」

キッド「…………」ジー

キッド(ダメだ……これもパンドラは入ってねぇ)ハァ…

コナン「……こいつも目当ての宝石じゃねーのか?」

キッド「あぁ。もう良いぜ」

コナン「へいへい……」ゴソゴソ

――二階の客間――

謎の男A「チッ……あいつ、どこをほっつき歩いてやがる」

謎の男B「……!?」ピク

謎の男A「ん? ……何だ、この臭いは?」

モクモク

謎の男A(煙……!?)

――二階の角部屋――

コナン「それじゃ、ひとまず脱出するか」

キッド「おう……」

コナン・キッド「「ん?」」クンクン

コナン「この臭い……」

キッド「……灯油か!?」ガチャッ!

ゴォォォ…

コナン・キッド「「!!」」

コナン「あの部屋が火元か!」

キッド「あそこは確か……物置部屋だ!」

コナン「!」ハッ

コナン(まさか、この火事…………)

コナン「……大使のおじさん!」ダダッ

キッド「おい!? ……ったく、一人で火の海に飛び込むなよ!」タタタ…

ジリリリリリリ…

カジダ!! キャー! ダレカー!!

――イラン大使館付近――

通行人A「何だ? あの煙……」

通行人B「……うわ、すげー燃えてんじゃねーか! おい、消防に電話!」

通行人A「あ……あぁ!」ピッ

通行人A「もしもし、消防ですか! 火事です! 場所は……」

ザワザワザワ…


寺井「快斗ぼっちゃま……!」

――イラン大使館・二階の物置――

ゴォォォ…

イラン大使「うっ!」ゴホゴホ

イラン大使(私の人生もここまでか……最後に一目、家族に会いたかったが……)フッ…

コナン『おい、早く開けろ!』

キッド『わーってるよ、もう少し……よっしゃ!』カチ

イラン大使「……?」ゲホゲホ

ガチャッ

コナン「おじさん! ……うわっ!!」ゴォッ

イラン大使「……坊や!?」

コナン「おじさん、早くこっちに!」

イラン大使「え……」

コナン「急がないと、天井が崩れちゃうよ!!」

ミシ…ミシ…

イラン大使「……う、うわぁぁぁ!!」ダダダダ

ガラガラ…ドォン!!

――二階の廊下・階段前――

イラン大使「ハァ……ハァ……」

コナン「危なかったね、おじさん」

イラン大使「あ……ありがとう。助けるつもりが、助けられちゃったね」

キッド「名探偵。お前は大使と一緒に逃げろ。オレは取り残された人がいないか見てくる」

コナン「待てよ、それならオレも行く」

キッド「ったく……しゃーねーなぁ。言っても聞かねーし……」

コナン「おじさんは、他の職員の人とすぐに避難して」

イラン大使「あ……あぁ」

キッド「大使。ついでと言っちゃ何ですが、一つ頼みがあります」

イラン大使「頼み?」

キッド「そこのトイレに、窃盗団のメンバーの一人を閉じ込めてあるんです。一緒に連れてってくれません?」

イラン大使「……分かった。そのまま警察に引き渡しておくよ」

キッド「お願いします」

コナン「それじゃ、行くぞ!」

キッド「だから、一人で先に行くんじゃねーって!」

――二階の客間――

謎の男B「……っ!」ゴホゴホ

謎の男A「チッ! 仕方ねぇ、職員に混じって避難するぞ!」

謎の男B「……」コクッ

ガチャッ! タタタタ…

――次郎吉邸・コンピュータールーム――

中森「何っ? イラン大使館で火災だと!?」

目暮『あぁ。消防から連絡があった。今、現地に多数の消防車が向かっているそうだ』

中森「分かった。オレもすぐに行く!」

ピッ

蘭「中森警部! 私達も行きます!」

中森「…………」フゥ

中森「……分かった。だが、危ないマネはしないでくれよ」

蘭「はい」

小五郎「蘭……」

――イラン大使館付近・阿笠の車の中――

ブロロォ…

元太「なぁ……何か消防車のサイレンの音、すごくねぇ?」

光彦「この近くで、火事があったんでしょうか?」

歩美「あ! 煙が見えるよ!!」

光彦「えっ?」

元太「どこだよ……暗くてよく分かんねーぞ!」

歩美「ねぇ、哀ちゃん。イランの大使館って、あっちの方だったよね!?」

阿笠「……まさか、大使館が燃えておるのか!?」

灰原(工藤君……!)

――イラン大使館・二階の廊下――

女性職員「うぅ……っ」ゲホゲホ、コホッ

コナン「お姉さん、大丈夫!?」

女性職員(子供……?)ハァ…ハァ…

女性職員「坊や、どこの子? どうしてここに……?」

コナン「それは後で。おい、キッド!」

キッド「へいへい、わーってるよ。人使い荒いな、お前……」

女性職員「か……怪盗キッド!?」ギョッ

キッド「立てますか? 早く逃げましょう」

女性職員「え、えぇ……」(////)

コナン「他には、もう誰もいない?」

女性職員「いないと思うけど……あ!」

キッド「どうしました?」

女性職員「一階の図書室に、司書の子がいるかもしれないわ」

女性職員「あそこは奥まったところにあるから、非常口まで少し遠いの」

コナン「ボク、見てくる!」

キッド「おい、だから一人で行くなって! ……ったく、あんニャロ」

女性職員「ど……どうしましょう」オロオロ

キッド(とりあえず、この人を避難させるのが先だな……)

キッド「あの坊やは私に任せて下さい。さぁ、こっちへ!」

女性職員「は、はい!」

タタタ…

――イラン大使館前――

消防士A「もっと放水を増やせ!」

消防士B「はい!」

ガヤガヤワイワイ…



謎の男A「フゥ……何とか逃げられたか」

謎の男B「……」チラ

謎の男A「火事で騒いでる内に、ずらかるぞ」コソ…



…ファンファンファンファン キキィッ!! ガチャ、バタン!

中森「生存者の確認が最優先だ! ケガ人を運ぶのを手伝え!!」

機動隊員C「はい!」ダダッ

女性職員「大使!」

イラン大使「やぁ、無事だったか」

女性職員「ええ。今のところ、安否の分からない者はいません」

イラン大使「そうか……良かった」

女性職員「あら……その方は?」

イラン大使「我々の母国を脅かす、テロリストの仲間だよ」ヨイショ

女性職員「えっ!?」

目暮「……大使。こんな時にとは思いますが……」

イラン大使「ええ、分かっています。あ……その前に、この男の確保をお願いします」

目暮「高木、佐藤」

高木・佐藤「「はい!」」

イラン大使「それと……そこの逃げようとしている二人の身柄も、確保して下さい」

謎の男A・B「「!?」」ビクッ

イラン大使「彼らも窃盗団のメンバーですので」

謎の男A「貴様、裏切るつもりか!」

イラン大使「……何と言われようと、私は金輪際、お前達に協力する気は無い」

中森「周囲は固めてある。逃げられんぞ」

機動隊員C「両手を挙げろ! 抵抗すれば撃つ!」ジャキン

謎の男A「く……っ!」



次郎吉「これにて一件落着じゃな」

小五郎「あぁ」

蘭「あ、あの……コナン君は?」

イラン大使「え? あぁ……あの坊やなら、取り残された人を助けに行ったよ。キッドと一緒に」

中森「……何だとぉ!?」

――イラン大使館・一階・図書室――

コナン「誰か居ませんか~?」ゲホゲホ

コナン「……どうやら、取り越し苦労で済んだみてーだな……」ホッ

ミシ…バキバキッ!

ドォン! ゴォォォ…

コナン「……しまった、炎に囲まれちまった!」

部屋の中を、黒い煙が覆い尽くしていく……。

コナン「う……っ」ゲホゲホ

コナン(やべぇ、息が……苦しい……!)



――イラン大使館・一階の廊下――

キッド(くそっ……思った以上に火の回りが早い! 急いで脱出しねーとヤバいぞ!!) タタタ…

―― 一階の図書室 ――

コナン(ちくしょう……身体が思うように動かねぇ)ゲホッゴホッ

コナン(ここで死ぬわけにはいかねー。蘭が……蘭がオレの帰りを待ってるんだ……!)

…タタタ

キッド「名探偵!」ザッ

コナン「……キッド?」ハァハァ

キッド「ったく、無茶しやがって……行くぞ!」ヒョイッ

タタタタタ…

メキメキッ! バキッ!! ゴォォォ…

――イラン大使館前――

蘭「コナン君……コナン君!」

小五郎「お、おい……止めろ、蘭!」ガシッ

蘭「離して、お父さん!」

小五郎「中に入ったら、お前まで焼け死んじまうぞ!!」

蘭「……でも!」

女性職員「あ、危ない! 崩れるわ!」

ガラガラ…ドォン!! パキッ

園子「ガキンチョ……キッド様……」

歩美・光彦「「コナン君……」」

元太「あいつ、無事だよな……?」

次郎吉「キッドと共に、逃げおおせていれば良いが……」

阿笠(新一……!)

灰原(……何やってるの、工藤君。早く出てきなさいよ!)

――イラン大使館横・茂みの中――

ガサガサ…

キッド(フゥ……危なかった。一歩間違えたら、二人仲良く黒焦げだったな)

キッド(このスーツも、JAXAが開発した新素材で作っといて良かったぜ……)

キッド(400度ぐらいまでなら、何とか耐えられるからな。炎の中を通り抜けるのも一瞬だったし)

キッド(まぁ……青子に似てるあのお嬢さんを泣かせずに済んで、何よりだ)フッ

キッド(…………ん?)

キッド「名探偵……?」

コナン「……」グッタリ

キッド「おい、しっかりしろ! 名探偵!!」

――イラン大使館前――

カメラマンA「……?」ピク

カメラマンA(今の声は……何だ?)

――イラン大使館横・茂みの中――

キッド「名探偵! ……くそっ! 脈はあるけど、ほとんど呼吸してねぇ」

キッド「このままじゃ、脳に十分な酸素が行かなくなっちまう……!」

キッド(――――――躊躇ってる場合じゃねーな)

キッド「……」スゥー

キッドはコナンの気道を確保して、人工呼吸を施す。

キッド「……」フゥー

スゥー…フゥー…スゥー…フゥー…スゥー…フゥー…

コナン「……っ」ピク

キッド(お。呼吸が戻った)

コナン「う……」ゲホゲホ…コホッ

キッド「気が付いたか?」

コナン「……キッド」ハァ…ハァ…

キッド「大使館の職員は、全員逃げて無事だぜ。あの窃盗団もお縄になったし」

コナン「そっか……」

キッド「おい、無理に身体を起こそうとすんなよ。良いから寝てろ」

コナン「悪ぃ…………助けてくれて……サンキュ、な……」カクン

コナン「……」スースー

キッド(ったく……寝てたら、ただのガキなんだけどな~)バサッ

キッドは再びマントを翻し、救急隊員に変装する。

――大使館前――

救急隊員A「ケガ人は、もういませんか?」

…ガサガサ

救急隊員B「待って下さい! まだこの子が……」

蘭「……コナン君!」

一同「!!」

蘭「どこにいたんですか?」

救急隊員B「そこの茂みの中に、寝かされていました」

蘭「そうですか……良かった、無事で」

救急隊員B「煙を吸ったみたいで、呼吸が安定してないようです。早く病院に」

救急隊員A「おい、ストレッチャーだ!」

救急隊員C「はい!」バタバタ

救急隊員A「坊やの保護者の方……で、よろしいですね? 貴方も一緒に来て下さい」

蘭「はい」

ワイワイガヤガヤ…

救急隊員B(……早く元気になれよ、名探偵)



――大使館横・茂みの中――

ガサ…

カメラマンA(何か…………すげー写真が撮れちまったな)ニヤリ

――2時間後・米花総合病院の病室――

コナン「……ん……」

蘭「コナン君!」

歩美「大丈夫?」

コナン「みんな…………ここは?」

小五郎「病院だ。前に撃たれた時、入院したのと同じ所だよ」

元太「どこも痛いところは無ぇか?」

コナン「あぁ……大丈夫だ」ムク…

光彦「苦しいとか、気分が悪いとかは?」

コナン「それもねーよ。ありがとな、心配してくれて」

園子「ガキンチョ」

コナン「何? 園子姉ちゃん」

園子「これ、なーんだ?」チャリ

コナン「え……それって、まさか」

園子「ええ。防犯ベルトの解除キーよ」

園子「おじ様がメーカーに直談判して、急ピッチで作らせたの。さっき届いたんだ」

コナン「随分早いね。2週間後って聞いてたのに」

園子「メーカーの職人さんには、不眠不休で頑張ってもらったんだってさ」アハハ…

園子「というわけで、ベルト外してあげるから。服、脱ぎなさい」

コナン「はーい」ゴソゴソ


カチ、カシャン!!

園子「えっと。暗証番号は……」ピ、ピ、ピ…ピロリーン♪

園子「よし! もう大丈夫よ」パコ

コナン(……やっと自由になったぜ)フゥ

蘭「良かったね、コナン君」

コナン「うん!」ニコッ

…バタバタバタバタ

一同「?」

ガラッ!!

阿笠「た、大変じゃ! 新……いや、コナン君!」ハァハァ

蘭「どうしたんですか? そんなに慌てて……」

灰原「これを見て。今日の事件のことが書かれた号外よ」スッ

ガサ

蘭「……そんな変なことが書かれるような事件だったかしら?」

園子「ん~? ……ちょ、ちょっと!」

蘭「あっ!」

小五郎「げっ!」

歩美・光彦・元太「「「ええっ!?」」」

コナン「……何が書いてあるの?」

灰原「もう一部あるから。見て」ハイ


『激撮! 怪盗キッドとコナン君の熱烈キスシーン!!』

『やはり秘密の恋人同士か!?』


コナン「……ええぇぇぇっ!? 何だよ、コレ!!」

歩美「コナン君、キッドさんとキスしたの!?」

コナン「はぁっ!? ちげーよ!! ……あ、でも」

コナン(そーいやあの時、何か唇に触れてたような……)

歩美「やっぱりしたの!?」

コナン「い、いやホントに違うって! キスじゃなくて人工呼吸だよっ!!」アタフタ

コナン「火事で煙を吸って、ちゃんと息ができなくなってたから……」

灰原「……状況からすると、それが真相で間違いないんでしょうけど」

灰原「世間は信じてくれると思う?」

コナン「……いや、全然……」

阿笠「それにしても、上手く加工してある写真じゃのぉ……」

阿笠「人工呼吸なら、吹き込んだ息が漏れないように、キッドがコナン君の鼻を軽く摘んどるはずなんじゃが」

阿笠「それをキレイに消して、マウス・トゥ・マウスの部分をクローズアップしておるわぃ」

コナン「もう捏造ってレベルじゃねーかよ……この記事」ハァ…

――翌日・帝丹小学校・1年B組(エピローグ)――

ワイワイガヤガヤ…

元太「なぁ……マスコミの数、前より増えてんじゃねぇ?」

光彦「ええ。倍ぐらいいるんじゃないですか?」

歩美「もう~! しつこ~い!」プンプン

コナン「さすがに今回は警察に頼んで、訂正記事を載せてもらったってのに……」ハァ…

コナン「あの取材攻勢は、一体いつまで続くんだよ……」

灰原「……当分、我慢するしかないわね」

灰原「実際はキスじゃなかったけど、貴方と怪盗さんの唇が接触しちゃったのは事実なんだし」

コナン「灰原、オメーなぁ……せっかく人が忘れようとしてんのに……」

灰原「ま、その内にマスコミも飽きて他のネタを追っかけるわよ」

灰原「人の噂も七十五日って言うでしょ」

コナン「長ぇよ……」ガックリ



――江古田高校――

白馬『あの……黒羽君……誤報もここまで来ると、ボクも何とフォローして良いか分からないんだが』

快斗「……もう何も言うな。頼むから……」チーン





【 完 】

以上で完結です
「よかれと思ってやったことが、思わぬ事態を招いてしまう」
「本人から真相を聞いても、周囲はそれを胡散臭く感じてしまい、中々信じてくれない」
というのをやってみたかったんです
何かズレてしまったような気もしますが…(^_^;)
ここまでお付き合い下さいまして、本当にありがとうございました

おまけ


歩美・光彦・元太「「「ネクストコナンズヒ――――ント!」」」

コナン「相棒!」


(ショートコント)

右京「次回作は、我々と再び共演です」

神戸「まだ僕がいた頃の話ですね」

小野田「僕も出るよ」

たまき「私も♪」

コナン「あの……主役はオレと杉下警部なんだけど」


今度こそ本当に【 完 】

一つ書き忘れたことがありましたので補足
このssを思いついたきっかけは3D短編「星影の魔術師」を見たことです
(JAXAの技術云々はその辺からです)
プラネタリウムとかで上映されてるやつなので、知ってる人は少ないかもしれませんが…

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年04月23日 (木) 17:30:59   ID: r2c1hGy2

がんばってー

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