阿笠「できたぞ!光彦君を殺したくなるスイッチじゃ!」 (33)

コナン「は?」

阿笠「このスイッチを押した者は光彦君を殺したくなってしまうのじゃ!」

コナン「おい博士、何言ってんだ?」

阿笠「どうじゃすごいじゃろ?世紀の大発明じゃ!」

コナン「ふざけてんじゃねえぞ!人を殺す機械なんか作ってんじゃねえよ!」

阿笠「…………。」

コナン「聞いてんのか!?」

阿笠「……すまん、つい出来心で……。」

コナン「出来心で光彦を殺すのか!?」

阿笠「……申し訳ない、わしは科学者失格じゃ……。」

コナン「このスイッチは俺が預かっておく。下手に扱って作動しちまったらまずいからな。」

阿笠「そうじゃな、頼む。」


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コナン(とりあえず俺の家に隠しておくか。)

昴「おや、コナン君。」

コナン「あっ、昴さん。」

昴「今日は一人かい?」

コナン「うん、そうだよ。」

コナン(そうだ、昴さんに頼んで隠してもらうか。)

昴「何か御用かな?と言っても、ここは君の家だから用が無くてもおかしくはないがな。」

コナン「うん、実はね、このスイッチを昴さんに預かってもらおうと思って。」

昴「スイッチ?」

コナン「これなんだけど・・・。」

昴「見たところ普通のスイッチのようだが・・・。」

コナン「あっ!絶対に押さないでね!」

昴「?」

コナン「絶対に押さないで。そしてどこかに隠しておいてほしいんだ。」

昴「ほー。」

コナン「お願いできるかな?」

昴「いいだろう。」

昴(押すなと言われると押したくなるのが人情というもの。)

昴(押したい……しかし彼があれほどまでに強く言うということは、なにか恐ろしいものなのだろう……。)

昴(…………。)

昴(いや、押してほしくないなら他人に頼まず自分で隠すはず……。)

昴(大したものでもないのだろう。なら押しても問題はない。)

昴(押すか。)ポチッ

昴(……何だ、何も起きないじゃないか。)

昴(おっと、そろそろ夕食の準備をしないとな。それと博士にお裾分けをしないと。)



~~~数時間後~~~



昴「すいません、阿笠博士。」

阿笠「いやいいんじゃよ。作りすぎてしまうことは誰にでもある。」

灰原「またカレーを作りすぎたの?」

昴「ええ、なぜかいつも、ね。」

灰原「……まあいいけど。」

歩美「あーーー!昴さんだ!」

元太「何だよお前、また飯作りすぎたのか?」

昴「ああ、迷惑だったかい?」

元太「しゃあねえな!また俺が食ってやるよ!」

昴「ありがとう!」

光彦「こんにちは!昴さん!」

昴「!!!!!」

バシャー!

元太「あああああ!カレーがああああああ!!!!」

昴「ごめん!手が滑ってしまって!」

歩美「もう少しで光彦君にかかるところだったよ!」

光彦「本当ですよ!びっくりしましたよ!」

昴「ごめん!」

コナン「珍しいね、昴さんがこんなミスをするなんて。」

昴「そうだね、もしかしたら風邪でも引いたかな?」

コナン(今、光彦に向かって投げたように見えたが……、気のせいか?)

昴(何だ今の感覚は……。この子を見た瞬間、今までに感じたことの無い感情が……。)

昴(これは……殺意?)

昴(いや、殺したくなる理由なんて何もないはず……。)

昴(だが実際湧いているこの感情は……間違いなく……。)

阿笠「気にすることは無い。それが本来の人の姿なんじゃ。」

昴「!?」

阿笠「どれだけ完璧な人間でもどこかにマイナスな要素を持っているものじゃ。」

昴「…………阿笠博士。」

阿笠(たまにはカレーをこぼすことぐらいあるじゃろう。)

昴「ありがとうございます。自分の感じるままに動いてみようと思います。」

阿笠「ん?そっ、そうか。頑張りなさい。」

昴「はい。」

~~~数日後~~~



歩美「おはよう!」

コナン「おっす!」

元太「あれ?光彦はどうした?」

灰原「彼なら確か今日は日直だから、早めに行っているんじゃないかしら。」

元太「へえ、真面目だな。」

コナン「お前が不真面目なんだよ。」

歩美「でも光彦君は本当に真面目だよ。朝教室の掃除してるんだって。」

灰原「あら、偉いわね。」

コナン「何だって!?それは本当か!?」

歩美「うん、本当だよ。どうしたの?」

コナン「こうしちゃいられねえ!先行ってるぞ!」

元太「おっおい、コナン!」

灰原「どうしたのかしら?」

コナン(まずい!光彦が朝掃除をするということは間違いなくロッカーの中を見ることになる!)

コナン(あそこには灰原と歩美の体操服が隠してあるのに、勘の良い光彦なら見つけちまうかもしれねえ!)

コナン(あいつが気付く前になんとかしねえと!)

コナン(俺の地位が!名誉が!すべてが崩壊する!)

~~~学校~~~

光彦「さて、日直の仕事は終わりましたし、最後に掃除をしますかね。」

光彦「やっぱり気持ちのいい教室で授業を受けたいですからね。」

光彦「さてと、ほうきほうきっと……。」

パリン!

光彦「へっ!?何ですか!?」

光彦「ガラスが、割れてる?一体どうして……。」

光彦「外からボールでも飛んできたんでしょうか?」

光彦「窓際には何もないみたいですね……。」

昴(…………。)

コナン(いた!光彦だ!よかった、まだ掃除はしてないみたいだな!)

コナン(あれ、窓が割れてる?まさか……。)

光彦「あっ、コナン君!」

コナン「光彦、これは一体どういうことだ?」

光彦「それが僕にもさっぱり分からないんです。」

コナン「詳しく聞かせてく……!!」

光彦「どうしました?」

コナン(光彦の体にレーザーポイントが……まさか狙撃!?)

昴(眠れ光彦……永遠にな……。)

ピュン!

コナン「危ない光彦!くらえ!」

光彦「えっ!?どぶぁっ!!!」

パリン! パリン!

コナン「危ないところだった。もう少しで光彦が撃たれるところだった。」

コナン「しかし一体誰が……。」

コナン「まあいい、誰かが来ないうちに体操服を何とかしないとな。」

光彦「うっ、ううう……。」

コナン「…………そうだ!!!」

~~~数十分後~~~



光彦「うん、ううん……。」

コナン「光彦!気が付いたか!」

光彦「あれ、コナン君、確か僕はコナン君にサッカーボールをぶつけられて、それで……。」

元太「何寝ぼけてんだ。それよりケガはないのか?」

光彦「ケガ?」

灰原「この教室の有り様で、あなた一人だけが倒れていたのよ。」

光彦「この有り様って……えええっ!!!何ですかこれは!!!」

光彦「教室がめちゃくちゃじゃあないですか!」

歩美「誰がこんなひどいことしたんだろう。」

コナン「大丈夫だよ、みんなで片付けよう。」

歩美「うん、窓は割れちゃってて寒いけどね。」

元太「よし、掃除だ掃除だ!あれ?」

コナン「どうした元太?」

元太「誰かの体操服がロッカーの中にあるんだよ。誰のだ?」

灰原「ちょっとまさか……。」

元太「歩美と灰原のだ!」

歩美「ちょっと!何で私と哀ちゃんの体操服がそんなところにあるのよ!」

児童「もしかして光彦が盗んだんじゃねえか?」

光彦「え?何ですか?まさか僕を疑っているんですか?」

児童「昨日までは無かったんだから朝一番に来たお前が盗ったに決まってる!」

光彦「そんな、僕はやってません!」

コナン「そうだ!光彦がそんなことするわけねえだろ!証拠もねえのに決めつけるな!」

光彦「コナン君……。」

コナン(それにしても誰が光彦を狙撃しようとしたんだ?)

昴(…………。)

昴(……流石だな。あれだけ暴れられればこちらも下手に撃つことはできない。)

昴(対象が彼だけだと知っていたのか……、それとも……。)

昴(まあいい、また次の機会にするとしよう。)

昴(今度はスペシャルゲストを連れてくるかな。楽しみにしていてくれよ……恋人さん……。)

~~~阿笠邸~~~



コナン「じゃあ光彦はしばらくここに泊まらせよう。」

灰原「本当なの?円谷君が命を狙われてるって。」

コナン「ああ、今朝の状況から見て、まず間違いない。」

阿笠「おーい、新一。」

コナン「おう、博士、光彦の具合はどうだ?」

阿笠「ああ、ベッドでぐっすり寝ておるよ。」

コナン「ならいい。とりあえず光彦はしばらく外に出すな。」

灰原「そうね、すぐ近くに彼を狙っている人がいるかもしれないし。」

コナン「ああ、それに……。」

阿笠「どうした?」

コナン「光彦が日直で朝早く学校に来たところを狙われただろ?」

灰原「ええ。」

コナン「もしかしたら犯人は身近な人間なのかもしれないと思ってな。」

阿笠「冗談じゃろう!そんな危険な人間が彼の近くにおるはずがない!」

灰原「もしかして……。」

コナン「いや、奴らはこんな回りくどいことしねえよ。」

灰原「ならいいけど。」

コナン「それじゃあ俺は捜査に行ってくる。」

灰原「私も行くわ。」

コナン「おい、これは遊びじゃねえんだぞ。」

灰原「分かってるわよ。でも私も円谷君の力になりたいの。」

コナン「分かったよ。じゃあ俺は狙撃場所を調べるから、お前は教室を調べてくれ。」

阿笠「二人とも、くれぐれも気を付けるんじゃぞ。」

~~~数時間後~~~

ピンポーン

光彦「はい。」

新出「こんばんわ、新出医院の新出です。」

光彦「ああ、どうも。」

新出「ケガをしてるって聞いて、一度病院で診せてもらえないかな。」

光彦「えっ、でも、絶対外に出るなと言われてるんです。」

新出「でも、大きな事件に巻き込まれたんだろ?精密検査をしておいた方がいいよ。」

光彦「そうでしょうか……。」

新出「うん。」

光彦「なら、お言葉に甘えて……。」

新出「それじゃあ、僕の車に乗って。」

光彦「あの、新出医院は反対方向じゃあ……。」

新出「ああ、僕の病院じゃなくてね、知り合いの大きな病院で診てもらうんだ。」

光彦「なんだ、そういうことですか。」

新出「心配しなくても大丈夫だよ。」



~~~某港~~~

光彦「あの、ここは港ですよ?」

新出「ああ、そうだよ。」

光彦「検査をするんじゃあ……。」

新出「検査は終わったよ。」

光彦「え?」

新出「それより、あれを見てごらん。」

光彦「あれは!」

光彦「博士のビートル!」

阿笠「どういうことじゃね、新出先生!光彦君をこんなところに連れてきて!」

新出「ああ、それはですね……。」

ピュン!

阿笠「ぐああ!!」

光彦「博士!」

新出「大丈夫、死んじゃいないさ。ただ動き回られるとやっかいなんでね。」

阿笠「一体どこから……。くそ!」

新出「あまり動かない方がいい。今度は頭を撃ち抜かれるぞ。」

阿笠「お主、新出先生じゃないな!何者じゃ!」

新出「ふふふ……。」ビリリ・・・

ベルモット「驚いたわ……、言われた通り……。」

阿笠「お主は!ベルモット!」

ベルモット「私の正体を知ってるとは、流石のシルバーブレットもあなたには話しているようね。」

阿笠「ぐぬぬ……。」

ベルモット「動かないでと言ったでしょ?動くと上から狙ってる私の味方に撃たれるわ。」

阿笠「ふん!下手な鉄砲玉なんぞ当たりゃせんわい!」

ベルモット「でもあなたは動けない。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるってね。」

ベルモット「さあ、邪魔をしないでね。私はこの坊やを抹殺したいの。」

光彦「…………。」

ベルモット「ばいばい、坊や。」

光彦「どういうつもりだ、ベルモット。」

ベルモット「!?」

光彦「……どういうつもりだって……。」ビリリ・・・

コナン「聞いてんだよ。」

ベルモット「そんな!どういうこと?」

コナン「状況が理解できてねえようだな。前にも似たようなことがあっただろうが。」

ベルモット「そこまで準備をするほどのことなの!?」

コナン「うるせえぞ!」

コナン「さあ教えろ!なぜ光彦を狙う!?」

ベルモット「それはね……!?」

コナン「ん?」

光彦「はあ……はあ……。」

コナン「あいつ!予備の眼鏡で!」

光彦「何してるんですかコナン君!自分だけ危ない目に遭って!」

光彦「そんなことをされても!僕は全然嬉しくありません!」

コナン「光彦……。」

ベルモット「やっぱり、あなたの顔を見てると殺したくなるわ!!!」

コナン「何だと!!!」

阿笠「そこまでじゃ!」

パンッ!

ベルモット「ううっ!」

コナン「博士!」

阿笠「安心せえ、ただのエアガンじゃよ。とと改造しとるがな。」

ベルモット「ぐっ!」

阿笠「あばらの二、三本はいったじゃろう。さあ、もっと撃たれたくないなら手を挙げろ!」

ベルモット「ふふふ、馬鹿ね。そんなもので張り合おうとして……。」



コツ・・・コツ・・・コツ・・・



阿笠「足音?」

ベルモット「ふふふ、彼が降りてきたようね。」

阿笠「!?」

ベルモット「この老人は頼んだわよ!私はあの坊やを殺す!」

赤井「それは待ってもらおうか。」

コナン「赤井さん!」

赤井「あのそばかす坊やを殺すのは俺がやる。」

コナン「え?」

ベルモット「隙あり。」

コナン「しまった!」パシュン!

ベルモット「流石の彼もあなたが敵だと知って驚いたみたいね。」

赤井「そりゃそうだ、FBI捜査官とベルモットが組んでいる。そんな事実が受け入れられる訳がない。」

阿笠「あんた、どうして……。」

赤井「あのスイッチさ……。」

阿笠「スイッチ?」

ベルモット「あのスイッチを押したらね、この坊やの顔を見た途端に殺したくなったのよ!」

阿笠「まさか!!!」

赤井「眼鏡の坊やが悪いんだ。押すなと言って俺に預けるから。」

阿笠「この馬鹿者があああ!!!」

ベルモット「ごめんなさいね?坊や。」

光彦「ひい!!」

ベルモット「恨むなら愚かな発明をしたこの老人を恨んでちょうだい。」

光彦「うううううう!!!!」



ドゴオオン!!!



ベルモット「ぐああああああ!!!」

コナン「痛いだろ!あばらを狙ったからな!」

光彦「コナン君!」

ベルモット「どうして!?」

コナン「銃を扱うやつを敵にしてるんだぜ?肌の表面の対策をしないわけねえだろ。」

ベルモット「ふふふ……まさか……そんなことまで……してきてるなん……てね。」

コナン「なんだ、意識が飛びそうだな。」



ピュン!



コナン「……え?」

赤井「よそ見をしている暇はなかったはずだ。俺はこのそばかす坊やを殺すためには手段を択ばない。」

赤井「例え君でも、邪魔をするなら手加減しない。」

コナン「ちく……しょう……。」

赤井「あなたもだ。」ピュン!

阿笠「ぐああ!」

赤井「さあ、最後は君だ。」

光彦「ああ、コナン君……、博士……。」

赤井「やっと会えたな、愛しの愛しの……恋人さんよ……。」

光彦「コナン君!起きてください!」

コナン「光……彦……。」

赤井「無駄だ。彼に俺を倒す力などない。」

光彦「いいえ!彼なら奇跡を起こしてくれます!コナン君ですから!」

コナン(考えろ!光彦を助ける方法を!)

コナン「光彦、何か俺に言葉を……、俺に力をくれる言葉を……。」

光彦「はい!」

光彦「コナン君はすごい男です!」

光彦「歩美ちゃんも灰原さんもコナン君にはメロメロです!」

光彦「コナン君なら二人のことを任せられます!」

コナン「バーロー……任せるなんて言うんじゃねえよ……。」

光彦「コナン君は彼女たちのことをどう思っているのか不安でしたが、両想いのようなので安心しました!」

コナン「……両想い?」

光彦「コナン君でしょ?ロッカーに歩美ちゃんと灰原さんの体操服を隠したの。」

コナン「……何?」

光彦「あんなに上手く隠せるのはコナン君ぐらいですよ!」

コナン「なるほどな……。」

赤井「さあ、そろそろ終わりにしてもらおうか。」

コナン「光彦……。」

光彦「はい……。」

コナン「死ね。」

光彦「え?」



ピュン!

~~~数日後~~~

灰原「まさか体操服を盗んだのが円谷君だったなんてね。」

歩美「本当に最低!」

元太「反省してるならいくらでも謝り方はあっただろうによ。」

歩美「だからって死んじゃうことないじゃない!」

コナン「ああ、どんなにクズでも自殺だけは考えちゃあいけないんだ!」



俺たちは光彦の死から大切なことを学んだ。

だが光彦の死は無駄じゃないなんて言わない。

だってそうだろ?

死んで人の役に立つ、なんて、あっちゃいけないんだからな。



おしまい

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