男「のび太ってバカだよな。道具の使い方が全然なってねえ」(26)

友人「よう、体調はどうだ?」

男「イマイチだな……まだ頭が痛いよ」

友人「俺もさ……」

男「ところで、あっちにある図書館でドラえもんってマンガがあったから」

男「全部読んでみたんだけど──」

友人「ああ、俺も読んだよ。ヒマだったし」

男「のび太ってバカだよな」

友人「なんで?」

男「だって、ドラえもんの秘密道具の使い方が全然なってねえじゃん」

友人「そうか? アイツ、バカだけど道具の使い方に関しては天才的だろ」

男「い~や、俺だったらもっとすごい使い方ができるね」

友人「ふうん……たとえば?」

男「たとえば……『とりよせバッグ』」

男「あんなもんあったら、俺だったら絶対盗みをしまくるね」

男「家にいながら、高級なもん奪いたい放題だぜ」

男「あんな便利な道具を、忘れ物を取り寄せるだとか人を取り寄せるだとかに使うなんて」

男「もったいなさすぎだろ!」

男「あと……『フエルミラー』」

男「鏡に映した物を増やせるって道具だ」

男「作中じゃ、紙幣は逆さに映るからコピーできないっていってたけど」

男「だったら逆さにコピーされた紙幣をもう一回コピーすればいいだけの話じゃん」

男「あれがありゃニセ札……いや本物の札を作りたい放題だぜ!」

男「他にも『どこでもドア』」

男「しずちゃんの風呂に行くのに使うとか下らなすぎる!」

男「それこそ、銀行の金庫に忍び込めば、一瞬で大金持ちだ」

男「なのに、なんでアイツはやらねえんだろうな?」

男「頭おかしいんじゃねえの。ま、しょせんガキだわな」

男「それと……『スモールライト』」

男「あれがありゃどんなもんだって密輸し放題だぜ」

男「武器だって麻薬だって、なんだってよ」

男「なのに、のび太たちの使い方は自分たちを小さくするって使い方がメインだ」

男「発想がまるでなっちゃいねえ!」

男「『きせかえカメラ』なんてもんもあったな」

男「あれの真価はどんな服にも着替えさせられるところじゃなく」

男「なにも入れずにカメラで撮ったら、相手は全裸になるところにある」

男「あれがありゃ、町中でストリップショーが楽しめるぜ」

男「どんな美人も即裸……ヒヒヒヒヒ……」

男「あと……『地平線テープ』」

男「地平線しかない異空間を作る道具だが」

男「あの異空間には『どこでもドア』でも行くことができない」

男「つまり……あの異空間にはなにを捨ててもバレないってことだ」

男「凶器だろうが死体だろうがな……証拠隠滅にはバッチリよ」

男「『宇宙救命ボート』で適当な異星人をかっさらって」

男「見世物にするってのもいいかもな」

男「そこらの芸能人や珍獣より、よっぽど大ウケするはずだ」

男「きっとバカどもがどんどん金を払ってくれるぜ」

男「飽きられたら、処分してさっきの異空間に捨てちまえばいいしなぁ」

男「それと……『バリヤーポイント』と『地球破壊爆弾』がありゃ」

男「これだけで国家クラスの影響力を確保できる」

男「『熱戦銃』『ジャンボガン』あたりも持ってりゃ敵はねぇ」

男「俺の、俺による、俺のための理想国家を作ることだって夢じゃない!」

男「ふははははははははははっ!」

男「なんなら、『もしもボックス』で理想のパラレルワールドを作るのもいいかもな!」

男「魔法世界? 音のない世界? あやとり世界? ハッ、くだらねぇ!」

男「しょせんは小学生……ガキの発想よォ!」

男「俺だったらずばり、こんな世界を作り上げてやる!」

男「もしも俺が誰も逆らえない絶対最強権力者である世界になったら! ──ってな!」

男「ぶっちゃけ、今までいったどんなことだって『ソノウソホント』がありゃたやすい」

男「なにしろ、どんなウソだってホントになっちまうんだからな」

男「なのに、のび太ときたら、自分のオヤジを強くするなんてアホなことに使いやがって」

男「ったく、バカだよ! 大バカだァ!」

男「──ってなもんよ!」

男「な!? のび太ってバカだろ!?」

友人「まぁな。お前の方が秘密道具を有効活用できるかもしれないな」

友人「だけど……多分、お前みたいな心根の奴のところには」

友人「ドラえもんは来てくれないと思うんだ」

男「……まぁな。そうだよな。分かってたさ……」

ドラえもん「来たよ~!」



男&友人「え!?」

男&友人「ド、ドラえもん!?」

男「や、やったぁ! 嬉しいなぁ! どうして!?」

友人「し、信じられない……」

ドラえもん「このとおり発見しました」

ドラえもん「タイムパトロールの皆さん、あとはよろしくお願いします」

隊員A「ありがとう、ドラえもん君! おかげでスムーズに見つけ出すことができた!」

隊員B「犯罪者の行き先がこの時代だと分かったから、君に協力を仰いでよかったよ!」

ドラえもん「どういたしまして」

男「え、え、え?」

友人「ど、どういうこと?」

隊員A「ん? どうやらお前たち、事故のショックで記憶喪失になってしまったようだな」

隊員A「お前たち二人は22世紀の犯罪者なんだ」

隊員A「過去に逃げていた途中、タイムマシンをムチャクチャに運転して大破させ」

隊員A「この時代に飛ばされてしまったのよ」

隊員B「その時、記憶の大半を失ってしまったのだろう」

隊員B「その様子だと、自分たちが仲間同士だということだけは覚えているようだがな」

男「そういうことだったのか……」

友人「なるほど……」

友人(つまり、この世界には漫画の『ドラえもん』があるし)

友人(22世紀にはロボットの『ドラえもん』も生まれるってことか)

友人(なんだかややこしい話……)

隊員A「というわけで、逮捕する!」

隊員B「失った記憶については、22世紀に戻ったら治療してやる」

男「は~い」

男「ドラえもん、会えてうれしかったよ! じゃあね~!」

友人「さようなら~!」



ドラえもん「うん、さようなら~!」





おわり

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