女幽霊「死後の世界がエッチなアプリだったなんて……」(553)

ゆう「う、うぅん……」

死神「娘よ、気が付いたか」

ゆう「あ、あなたは?!」

死神「わしは死神だ」

ゆう「死神……。じゃあ、私は死んじゃったのか」

死神「そうだな。未練もあるだろうが、魂を回収させてもらうぞ」パキンッ

ゆう「きゃっ! 何っ、この光?!」

死神「現世の縛りを解放したのだ。この魂を吸引せよ!」スポーン

死神「よしっ、次は轢死した女性の魂か。張り切って遡らないと、収穫が終わりそうにないな」シュッ

死神「はあ、これで最後だ。今月期は煩雑でかなわん」スポーン

死神「それではお前たち、今から冥府に案内するので心するように!」ドナドナ

ゆう(死後の世界って、どんな所だろ~。お花畑かなあ♪)


ばこんっ!
パリーンッ!


ゆう「わわっ、何かぶつかった。……って、落ちてるうぅっ!!」

死神「そんなバカな!」

ゆう「きゃあぁぁっ……」

~部屋~
男「あれ? こんなアプリ、DLしたっけ?」


夕食を食べて部屋でスマホをいじっていると、見慣れないアプリがあることに気が付いた。
以前、友が勝手に触って、エロアプリをDLしていたことがある。
どうせ、今回もヤツの仕業だろう。

友がDLしたなら、おすすめアプリかもしれない。
気になって、試しに起動してみた。


――Now Start――


その言葉の後、洋服姿の女性が表示された。
背景はどこかの教室のようだ。

男「ライブチャット? 通信料とか、ぼられないだろうな」

ゆう「あわわ// お待ちしておりました……」アセアセ

男「こんばんは。俺は男、キミは何ていうの?」

ゆう「私はゆうです。あのぉ、ここが死後の世界なんでしょうか?」

男「はあ?!」


唐突に何を言ってるんだ、こいつ。


ゆう「わわ、私は死んだはずなんです。人って、死んだらスマホのアプリになるのでしょうか」

男「いやいや、そんな訳ないだろ」

ゆう「でも、確かに……」

男「ゆうちゃんは、オカルトな話に興味があるんだ」

ゆう「いえ、オカルトには興味がありません……。上手く思い出せないけど、死んでしまったことは間違いないんです」

男「でもこれ、ライブチャットだよね。死んでたら、話なんて出来ないじゃないか」

ゆう「う~ん、文字入力にも対応していると思いますよ」


そう言われ、メニュー画面をタップしてみた。
入力方式というモードがあり、音声から文字に変更する。
ついでに、出力方式も変更した。


男『文字入力に変えてみた。服、可愛いよ』

ゆう『ありがとうございます♪』

男「確かに、会話できるな」

ゆう『ねえ、今は何て言ったの?』

男「ああ、そうか。今は文字入力だったっけ」

ゆう『それで、男さん。私は、死んでしまったのでしょうか?』

男『そんな訳ないだろ』


こいつ、どうかしてるんじゃないのか?
そう思いつつ、ふと彼女のスカートが気になった。
椅子に座っている姿が映し出されていて、もう少しで見えそうなのだ。

下着が――。

だから、やってみた。
スカートをめくることが出来ないか。

ゆう『きゃあ// なな、何、するんですかあ!』

男「ま、マジかよ!」


指の動きに合わせて、スカートがめくれ上がったのだ。
彼女が触っていないのに……だ。

ショーツの色は確認したので、今度は胸元をズームしてみる。
そして、ブラウスのボタンをタップしてみた。
ボタンが外れ、指で袖を脱がせることも出来る。


ゆう『やんっ、お、男さん。それ以上は……困ります//』アセアセ

男「タップしたら脱げるぞっ。やっぱり、友がDLしたエロアプリだ!」

ゆう『ううっ// 恥ずかしいよう……』

男「このカメラアイコンをタップしたら、どうなるんだ?」


エロアプリだと分かれば、やることは一つだよな!

試しにアイコンをタップしてみる。
すると、視点を指でスライドさせられることが分かった。

くるりと背中側に回る。
すると、ブラジャーのホックが見えた。


ゆう『だ、駄目です。まだ初対面ですよ?!』

男「良いじゃないか。そういうアプリだし……」ニヤニヤ


彼女が腕を背中に回して、抵抗してきた。
しかし、その腕さえも指でどかせることが出来る。
そして、難なくブラジャーを外すことが出来た。

太ももの上に、ブラジャーがはらりと落ちた。
すると程よい大きさのおっぱいが、ぷるんとお目見えした。


ゆう『男さんのエッチ//』

男「やっぱり声で聞きたいな。たしか、メニュー画面で――」

ゆう「わわっ……エッチな声を出させるつもりですね?! 絶対にそんな声を出さないんだから//」

男「自分から言うときって、たぶん期待してるよね。ゆうちゃんのおっぱい、触りたい」サスサス

ゆう「ひゃうん// お、男さん。あっ……んんっ……」


さすがに画面の硬さか……。
しかし実際に揉まれているかのように変形し、喘ぎ声と表情はすごく好みだ。

よし、この際だ。
ショーツも脱がせてしまおう!

男「ゆうちゃんの裸、すごくきれいだよ」

ゆう「ほ、本当ですか//」

男「ああ。だから、あそこも見せてほしいな」サワサワ

ゆう「こ、これ以上は恥ずかしいです//」

男「良いから、スカートをめくってみて」


彼女ははにかみながら、スカートをめくり上げた。
そして腰を少し浮かせ、ショーツを下ろす。
全裸で椅子に座って、スカートをつまみ上げている姿が何ともいやらしい。


ゆう「うぅ…、恥ずかしい……」

男「もっと見せてほしいなあ」


そう言って、閉じている脚を指で広げる。
普通はモザイクがかかる場所。
そこをはっきりと見ることが出来た。
さらに指で広げると、ピンク色の大切な部分まで見えてしまう。


男「うわ……、こうなってるんだ……//」

ゆう「やぁんっ……、あまり見ないでぇ」カアッ//

男「その恥らう声も可愛いよ」イジイジ

ゆう「あんっ……だめっ、男さん……そこ、気持ちいい……」

男「ふうん、ここが気持ちいいのか。じゃあ、もっとしてあげるよ」クリクリ

ゆう「はうん……あぁ、だめぇっ、そこクリクリしないで……いくっ、いっちゃうぅっ!」ビクビクッ

男「はあはあ……。気持ちよすぎて、いっちゃった?」

ゆう「だって、止めてくれないから……」ハァハァ

男「俺も、もう我慢できない!」


俺はスマホを見えやすいところに置いた。


ゆう「えっ? ちょっ、脱いじゃうの//」

ゆう「あわわ// すごく大きくなってますよ。私で興奮……したんですか?」

男「あんなにいやらしい声で喘がれたら、興奮するに決まってるだろ」シコシコ

ゆう「はうぅ……。私はどうしましょうか」

男「そうだな、オナニーしてみてよ」

ゆう「……?! そんなの無理です、ムリぃっ!」アセアセ

男「いいから、いいから」スイスイ


そう言って、
彼女の腕をスライドさせて、おっぱいと陰部を触らせた。
こうすると、彼女は何だかんだ言いつつ、従順にしてくれる。
きっと、ツンデレというやつだな。

ゆう「こ、これは男さんがさせてるんですからね!」

男「そんなこと言いつつ、手つきがいやらしいよ」シコシコ

ゆう「だって……。あうん、んっ……いいっ//」クチュクチュ

男「ゆうちゃん、イきそう――」

ゆう「男さん、もういっちゃうんですか?」マジマジ

男「イクっ!」

ドピュッ
ドピュピュッ

ゆう「きゃわわ、いっぱい出てる//」

男「はあはぁ……、なんだかんだ言って、ゆうちゃんもノリノリだったな」

ゆう「私、そんなにエッチじゃないもん!」プンスカ

男「エロアプリに言われても、まったく説得力ないし」ハハッ

ゆう「ところで……その…、楽しかったですか?」

男「ゆうちゃんの反応がいやらしくて、今までで一番気持ちよかったよ」ハァハァ

ゆう「……// 何だかうれしいです」テレッ//

男「これからも、このアプリで抜きたいかも」

ゆう「わわっ、そうなんですか?!」

男「こうして話していると、何だか彼女が出来たみたいで楽しいしね」

ゆう「は、はいっ。また頑張りますっ!」ペコリッ

ゆう「やっと真面目な話も出来そうですし、リンクを切断してくれませんか?」

男「リンクを切断?」

ゆう「えっと……、メニュー画面のアイコンをタップすれば、リンクを切断出来ると思います」


そう言われ、メニュー画面を開く。
一番下のアイコンを見ると、『リンクの接続:接続』という表示があった。
それを言われた通りにタップして、切断状態にしてみる。

そしてトップ画面に戻ると、背景が女の子らしい部屋に変わり、さっきとは別の可愛らしい洋服姿になっていた。
また脱がせてやろうとしたけど、今度は服を動かせない。
どうやら、リンクを接続していないと、服を脱がせることは出来ないようだ。

ゆう「それでは話を戻しますけど、私は死んだはずなんです」

男「死んだって、どうして?」

ゆう「それは分かりません。死神に連れて行かれたんですけど、私だけ途中で落ちてしまって……」

ゆう「多分そのときに、魂がこのスマホに混ざってしまったのだと思います」

男「なるほど、了解。それがゆうちゃんの設定なんだな」

ゆう「設定じゃなくて、本当の話なんです。まさか、死後の世界がエッチなアプリだったなんて……」ショボーン

男「まあ、普通は天国を想像するよな」

ゆう「そうでしょ。普通は、チョウチョが飛んでいるお花畑なんです! でもなぜか、ここがうれしいと感じ始めているんですよね……」

男「スマホのエロアプリなのに?」

ゆう「はい。もしかしたら、ここが私にとって天国なのかもしれません//」ニコッ

男「とりあえずこれは、ゆうちゃんと仲良くしながらエッチが出来るエロアプリってことでいいのかな?」

ゆう「はいっ// 仲良くできるかは、男さん次第ですけどね♪」ニコッ

男「ところで、月額料金とかはどうなるんだろ?」

ゆう「私はこのスマホの一部だから、別に必要ないと思うけど――。うん、どこにも記載はありません」

男「そうみたいだな。こんなに高機能なのに、無料アプリなのか……」

ゆう「ちなみに常駐アプリなので、よろしくお願いします。ホームでは隠れますし、マナーモードになるのでご迷惑はおかけしません!」

男「おい、待て。エロアプリが常駐って、ありえないだろ!」

ゆう「大丈夫ですよ♪ 男さんのスマホを分析した結果、影響はないと判断しました。そういう画像やサイトが、たくさん保存されてますし//」


保存データを参照するって、どんなアプリなんだよ!
もしかして、アダルト機能で役立てるつもりなのか?

いや……、
それ以前に普通のアプリなら、そんな事をする必要がない。

男「お前は新型ウイルスか?! また裸にしてやるっ!」

ゆう「ええっ、二回戦ってやつですか?!」アセアセ


リンクを接続すると、またさっきの洋服姿に変わった。
背景は教室ではなくて、アングルは違うがトップ画面の女の子らしい部屋だ。


男「ほら、脱げ脱げえ!」

ゆう「ひえぇぇっ……。男さん、激しすぎますぅ//」

・・・
・・・・・・

今日はここまでにします。
一応、幽霊系SSのつもりです。

~部屋・翌朝~
ブブブ、ブブブ……

ゆう「ひゃうっ// えっ、ええっ?!」ブルブル

男「……もう朝か」

ゆう「男さん、バイブを止めてくださいぃ//」ビクンッ

男「おはよう。まさか、朝からエッチなお誘い?!」

ゆう「そ、そんなつもりは……バイブを……ぅんっ//」

男「ゆうちゃん、バイブ機能で感じるんだ」ニヤニヤ

ゆう「……だって、リンクを接続……したままじゃないですか……」ハァハァ


ゆうはパジャマに着替えたらしく、今はベッドの上で悶えている。
何だか可愛い。


男「ここを触るとどうなるのかな~」クリクリ

ゆう「あうぅぅっ、だめぇ……いっちゃうぅっ」ビクビクッ

ぽちっ
男「ほら、止めてやったぞ」

ゆう「はあはあ……// 朝からこんなことをしてくるなんて、男さんは本当にエッチですねえ」

男「いやいや、俺は普通に目覚ましをセットしただけだろ」

ゆう「なっ、何だか白々しいです。ちゃんとリンクを切断してくださいよ」ジトー

男「操作をしなかったら、三十分で切断されるって言ってたじゃないか」

ゆう「でもでも、それは仮切断なんです。待機モードで放置プレイをされて、不意打ちされる私の身にもなってほしいです……」グスン

男「待てよ……。バイブの振動で感じるなら、振ったりひっくり返せばどうなるんだ?」

ふりふり
くるっ

ゆう「ふぇっ!?」

ゆう「お、男さん! 落ちる、また落ちるうっ!」

男「な、何だ?!」

ゆう「うぅっ……」


ゆうが必死な形相になって、ベッドの上で逆立ちをしている。
一体、何をしたいんだ?

そう思ったが、違和感に気が付いた。
パジャマがめくれ落ちて来ないことと、髪の毛が逆立っていないことだ。

まさか、本当に落ちるのか?!


ゆう「もうだめっ――」

ゆうが手を離した瞬間、ベッドがフレームの下に落ち始めた。
そして、部屋の天井がフレームに入ってくる。

まさか……!
本当に、ゆうが天井に落ちているんだ!

慌てて、スマホを正しい方向に向ける。


ゆう「……きゃうんっ」ポスッ


ゆうはベッドに落ちて、ポスっと跳ねた。
よく分からないが、怪我はなさそうだ。

ゆう「男さん、死ぬかと思った。怖かったよぉ……」グスン


男「ごめん、もう逆にしないから。というか、死んでいる設定じゃなかったっけ?」

ゆう「ううっ……。いいから、リンクを切断してください」

男「そうだな。着信音が喘ぎ声とか、さすがに困るし……」


リンクを切断すると、パジャマから洋服姿に変わった。
そして、背景はベッドの上から部屋の中央に移動した。


ゆう「ふぅ、今度から気を付けてくださいね」

男「じゃあ、俺は朝飯にするから」

ゆう「あの……。その前に、重力センサーをオフにしてくれませんか?」

男「重力センサー?」

ゆう「はい。スマホには重力加速度を感知するパーツがあって、それが私に影響しているみたいなんです」

男「それで天井に落ちそうになったのか。そんな機能、要らないだろ……」

ゆう「ですよねえ。初期設定がオンって、きっと嫌がらせですよ」プンスカ

俺は拗ねているゆうを見つつ、メニュー画面を開いた。
『重力の設定』というアイコンがあり、その設定が『同期』になっている。
それをタップして、設定を『オフ』にした。

重力設定はそれだけではなく、背景に対しても『直接入力』が出来るらしい。
ますます、エロアプリには要らない機能だな。


ゆう「これで、もう落ちませんね♪」ルンルン

男「そういう細かい設定があるなら、ちゃんと最初に説明しろよ」

ゆう「はわわ、すみません。男さんが初めての人だから……」シュン

男「い、いや、俺も言い過ぎたかも。ゆうちゃんに怪我がないようで良かったよ」

ゆう「えへへ、ありがとうございます//」

~学校・お昼休み~
ゆう『ここが、男さんが通っている学校なんですね。ちゃんと授業は聞いていましたか?』

男『当たり前だろ――』


午前中の授業が終わり、ゆうが暇そうにしていると思って話をすることにした。
周りにクラスメートもいるので、今は文字入力のマナーモードで会話をしている。


ゆう『男さんのことだから、授業中もエッチな妄想ばかりしているのかと思いました』

男『お前は、俺を何だと思っているんだよ』

ゆう『てっきり、そういうことしか頭にない人かと』クスクス

男『一応、成績は良いほうなんだからな』

ゆう『そうなんですか? では、そういうことにしておきますね♪』フフッ

友「おう、男。スマホを眺めて、何にやにやしてるんだ?」


ゆうと話をしていると、友が声を掛けてきた。
こいつは勝手にエロアプリをDLするようなヤツだが、困ったときには頼りになる友人だ。


男「そういえば、お前に聞きたいことがあったんだっけ」

友「何だよ、聞きたいことって」

男「昨日、俺のスマホにアプリをDLしなかったか?」

友「んなこと、するわけないだろ。この前、すごく怒ってたじゃないか」

男「そうか。まあ、それならいいんだ」


そう言うと、友が前の席に座った。
どうやら、居座るつもりらしい。


友「いやいや、俺を疑うってことはエロアプリなんだろ。どんなやつか、見せてくれよ」

男「仕方ないなあ。これなんだけど……」


そう言って、スマホを机の上に置いた。
すると、ゆうは困ったような表情を見せた。


友「おっ、可愛いじゃん」

ゆう『あの……、男さんのお友達ですよね?』

男『ああ、友って言うんだ』

ゆう『友さん、はじめまして。ゆうです』ペコッ

友「……! まさか、見えているのか?」

男「カメラで前後が見えているようだ。今はマナーモードだけど、ライブチャットみたいに会話も出来るぞ」

友「最新機種は凄いんだな……。エロアプリってことは、そういう機能もあるんだろ?」

男「じゃあ、少しやってみるか」

友「おお、頼むっ!」


メニュー画面を開き、リンクを接続した。
すると、ゆうの服が学生服に変わり、背景が学校の教室になった。


友「んっ? 場面が変わったけど……」

男「そういうムード作りなんだと思う」

ゆう『ちょっ、まさか学校でするつもりですか?!』アセアセ

友「ゆうちゃんが困ってるぞ」ニヤニヤ

男『大丈夫、少しだけだから』

ゆう『少しだけって……はわわ// こ、これって3Pじゃないですかぁっ! しかも、学校の教室で?!』

友「教室エッチは男のロマンだ」

男『教室エッチは男のロマンなんだ』

ゆう『ううっ、男さんのお願いなら我慢します……』


俺は、ポケットからタッチペンを取り出した。
これを使えば、指では出来ないソフトタッチが可能になるのだっ!

男「よし、まずはブラウスから脱がせよう」


上半身をズームし、タップでボタンを外していく。
そして胸元をはだけさせ、ブラウスをするりと脱がせる。
あっという間に、ゆうはキャミソール姿になった。


ゆう『ううっ、恥ずかしいです。しかも、昨日より上手になってますよ!』

男『ゆうちゃんを喜ばせてあげようと、イメトレしてたんだ』

ゆう『やっぱり、授業そっちのけでエッチな妄想をしてたんじゃないですかぁ』ジトー

男「ははっ」

友「おい、俺にもさせてくれよ」

男「そうだな。じゃあ、キャミソールは任せた!」

友「おうっ!」


タッチペンを渡し、スマホの向きを変える。
そして、友はゆうに両手を上げさせた。


ゆう『きゃんっ……//』

友「このキャミを脱がせれば、たわわなおっぱいが……」

ゆう『んくっ……、優しくお願いします。縫い目が破れるかも――』

友「ごめん、こんな感じで……」


するすると、キャミソールがめくれ上がっていく。
その下には、水色のブラジャーを着けていた。


友『良いよな?』

ゆう『……優しくしてくれるなら、良い……ですよ』


友はブラジャーの肩紐をずらし、カップ部分にタッチした。
ペン先を動かすと、ブラジャーも一緒にずれ下がる。
そして、カップ部分に乗り上げる様にして、ゆうのおっぱいが露わになった。
さらに、友は乳首を責める。

ゆう『あぅんっ……、それ…だめぇ……』

男「友、俺は下着を脱がせる」

友「分かった。エロい感じで頼む!」

ゆう『ぅんっ……、二人掛かりだなんて//』


俺はスカートをゆうに捲らせ、ショーツをひざ上まで下ろした。
半脱ぎのブラジャーから見えるおっぱいと、捲り上げたスカートとショーツが醸し出す絶対領域。
やっぱり、チラリズムがエロの基本だろう!


男「友、俺はこんな感じがエロいと思うんだけど」

友「いやいや、パンツは片足に残すくらいで……」

ゆう『…』

ゆう『……』

ゆう『……な、何なんですか?! さっきから、恥ずかしいポーズばっかり取らせないでくださいよぉ//』

友「このアプリ、ゆうちゃんと普通に会話が出来るんだよな」

男「出来るけど、さすがに声を出すとまずいだろ」

友「……だよなあ。何とかして、声を聞きたいけど」


そう話しつつ、ふと思った。
俺たち、もう思いっきり喋ってるじゃないか!


女友「ねえねえ。二人とも、さっきから何してるの?」チラッ

友「んなっ、女友! お前、いつの間に――」

女友「……! ふ、ふうん。教室でエッチなゲームをしてるんだ//」


女友が蔑む視線を向けてきた。
彼女は幼馴染で、俺たちとは付き合いが長い。


ゆう『え、えっと……。男さん、どうしましょうか?』アセアセ

男「ごめん、切断する」ポチッ


リンクを切断すると、着エロ姿から洋服姿に戻った。
というか、女友にエロアプリを見られたこの状況。
どう切り抜けよう――。

今日はここまでにします。
お察しの通り、幽霊だから『ゆう』です。

女友「はあ……。こんなゲームばっかりしてるから、二人とも彼女が出来ないのよ」

友「女友こそ、彼氏がいたことないだろ。せっかく、いい所だったのに」

女友「わ、私のことは関係ないでしょ。お楽しみのところ、残念でしたねえ」プイッ


友のせいで、少し機嫌を損ねてしまったようだ。
こういうときは、やり過ごすしかない。


女友「ところで、男。そのアプリ、ちょっと気になるんだけど」

男「気になるって、女友も実は一緒にしたい……とか?」

女友「そんな訳ないでしょ! 私が気になるのは、その女の子よ」

男「ゆうちゃんが気になる?」

女友「ちょっとね……」


そう言われ、ゆうを見た。
しかし、何が気になるのか分からない。
もしかして、女友は霊感が強いのか?!


ゆう『あの……。私のことで、何を話しているんですか?』

ゆう『音声入力だけでも、オンにしてもらえないでしょうか』


そうだな。
それくらいならいいだろう。

マイクを有効にして、スマホを女友に手渡した。
すると女友は、まじまじとゆうを見つめながら言った。


女友「やっぱり! この子、女さんだ!」

男「女さん?」

女友「同じ塾に通っている友達なんだけどね、すごくそっくりなの」


スマホを受け取り、ゆうを見る。
ゆうに似ているなら、女さんは俺好みの容姿だ。


男「ふと思ったんだけど、ゆうのフルネームは何て言うの?」

ゆう『フルネームは思い出せないけど、名前はゆうです』

男「フルネームは思い出せないのか。じゃあ、何とも言えないな」


いや、待てよ。
ゆうはエロアプリのキャラクターなのだ。
死んでいる設定だから、幽霊の『ゆう』なのかもしれない。
だとしたら、名前を考えることはナンセンスだ。

友「ゆうちゃんの名前が『ゆう』だとしても、女さんと似ているのは確かだよな……」

女友「そうでしょ」

男「友も女さんを知っているのか?」

友「女友と塾が一緒だし、少しだけ話をしたことがあるくらいだけどな。試しに声を聞かせてくれよ」


話し声は、もう今さらか……。
どうせ周りからは、ライブチャットをしているようにしか見えないだろう。
そう思い、マナーモードを解除した。

ゆうが困惑した表情で、俺を見る。
そして、友と女友に話しかけた。


ゆう「えっと、その……私はゆうです」

女友「うそでしょ……」

友「決まりだな。ゆうちゃんは女さんだ」

ゆう「そんなことを言われても、私は女さんを知りませんし……」

男「容姿だけではなくて、声も似ているのか――」

ゆう「でも世の中には、そっくりな人が三人いると言いますよね」

女友「ふと思ったんだけど、このアプリは本当にゲームなの?」

男「着エロを見て、自分でそう言ってたじゃないか」

女友「でもこれ、普通にコミュニケーションを取れているみたいなんだけど……」

ゆう「だって、私は生きてますから♪」

男「おいおい、死んでいる設定じゃなかったのかよ」

ゆう「も、もちろん死んでいます」アセアセ

女友「死んでいる?!」

ゆう「はい。死神に連れて行かれたのですけど、私だけ途中で落ちてしまったんです。そうしたら魂がスマホに混ざって、エッチなアプリになっていたんです」

友「とんでも設定だな」

ゆう「飛んでいません。私はそのまま落ちました……」ショボン

男「一つ聞きたいんだけど、女さんは亡くなっているのか?」

女友「まさか。そんな訳ないじゃない」

男「女さんが元気なら、どういうことだろ」

友「そんなの単純な話じゃないか。女さんがそういうバイトをしていて、エロアプリのモデルになっているだけだろ」

男「なるほどな。そういうことか」

女友「でもそれって、ショックだな……」

ゆう「誰が何と言おうと、私は私です。女さんのことは知りませんけど、証拠もなく貶めるのは良くないと思います」

女友「そう……だよね。ゆうさん、ありがとう」


女友は笑みを返した。
ゆうは人を注意することも出来るらしい。
俺は何だか、ゆうの良い一面を見た気がした。

友「それにしても、女さんにエロいことをしたかと思うと、うらやましいぞ!」

男「そんなにそっくりなら、俺も女さんに会ってみたいな」

女友「はあっ? 不純な動機が見え見えなのに、紹介できるわけないでしょ!」

男「うぐっ……」

ゆう「あのっ、私も会ってみたいです」

女友「ゆうさんには会わせてみたいけど、アダルトなアプリだしねえ。男が会うってことでもあるから、少し難しいかな」

ゆう「男さんが私にエッチなことばっかりするから、私まで会わせてもらえないじゃないですかぁ」プンスカ

男「エッチなことって、ゆうはそういうアプリだろ」

ゆう「はわわ// そうでした!」

女友「ねえ、ゆうさん。嫌なら、我慢せずに断ったほうが良いんじゃないの?」

ゆう「……いえ。男さんがたくさん射精してくれるように、もっと頑張りたいです// 心配してくれて、ありがとうございます」テヘッ

女友「しゃせ……いって// う、うん……そうだよね」カアッ//

友「もしや、お前はリア充なのか?!」

男「いやいや、アプリだから」アセアセ


ゆうに羞恥心という概念はないのか?!
ないのか……。


ゆう「男さん、もうすぐ1時ですよ。次の授業が始まります」

男「そ、そうだな……」

女友「ねえ、男。ゆうさんが嫌がることをしたら、許さないからね!」プイッ

女友はそう言い残し、席に戻っていった。
エロアプリが見つかった危機は、何事もなく解決できたようだ。


男「それにしても、女さんか。会ってみたいけど、残念だな……」

友「男、安心しろ。俺が何とか取り持ってみるよ」

男「マジか?!」

友「俺とは日程が少し違うんだけど、来週には何とかしてみるから」

男「分かった」

ゆう「もし会えるなら、私も話をしてみたいです♪」

友「ゆうちゃんのおっぱい代も払わないといけないし、今しばらく待っていてくれ」キリッ

ゆう「お、おっぱい代?! じゃあ、待ってますね」

今日はここまでです。
レスありがとうございました。

~放課後・帰り道~
ゆう『学校は楽しかったです。二人とも、良い人でしたね』

男『あいつらとは、長い付き合いだしな。楽しかったなら、また話してみるか?』

ゆう『ぜひ、お願いします!』

男『ゆうちゃんに似ている女さんにも、一度会ってみたいよな』

ゆう『そうですね。ところで、お昼休みの時みたいに、ゆうと呼んでほしいです。そのほうが、親近感がわきます//』

男『ゆうがそう言うなら――』

ゆう『ちなみに、歩きスマホは危ないですよ。文字入力しながらは、もっと最悪です』メッ!

男『大丈夫大丈夫。毎日、歩いている道だし』


家から学校まで、電車と徒歩で約三十分。
人通りは少ないし、今までぶつかったことはない。


ゆう『そういう問題じゃないと思うんだけど……』ハァ

ゆう『あっ、男さん。あそこにネコさんがいます!』

男「ネコ?」


ゆうが指差す方向を見ると、一匹のネコがいた。
不思議そうな顔つきで、スマホを見詰めている。


ゆう『こっちを見てますね。かわいい//』

男『ネコ好きなの?』

ゆう『はいっ。かわいいじゃないですかぁ♪』

男『だったら、写真を撮ってやるよ。画像データの参照を出来るんだろ?』

ゆう『ぜひ、お願いしますっ!』

男「ネコ、逃げるなよ」


スマホをカメラモードに切り替えて、ネコにレンズを向けた。


男「にゃ~!」


鳴き真似で気を引いて、そろりそろりと近づく。
何だこいつと思われたのか、ネコと目が合った。
これ以上近づくと、逃げられるかもしれない。


ネコ「にゃぁ~」

男「よし、シャッターチャンス!」パシャリ

ゆう『男さん、ありがとうございます! ネコ、かわゆすぅ//』


画像を参照しているのか、ゆうが満面の笑みを浮かべた。
俺はそれを見て、もっと喜ばせてあげたいなと思った。

男『今度、一緒に動物園に行かないか?』

ゆう『えっ、良いんですか?!』

男『ネコが好きなら、楽しいかなと思って』

ゆう『すごくうれしいです!』

男『それに死んだという話が本当なら、生きていたときの記憶を思い出すかもしれないしな』


ゆうが本当に幽霊なら、何をすれば喜んでくれるだろうか。
それで思い付いたのが、生前の記憶探しだった。

ゆう『生きていたときの記憶?』キョトン

男『人の記憶っていうのは、味だったり音楽だったり、ふとしたきっかけで思い出すものなんだ』

男『動物が好きなら、動物園で何か思い出すかもしれない』


そう言うと、ゆうの表情が陰った。


ゆう『それはどうでしょうか……』

ゆう『人の記憶は脳に保存されます。だけど私は、魂だけしかありません。思い出せる記憶は何もないのです』

男『じゃあ今、どうやって記憶したり考えたりしているんだ?』

ゆう『……? 言われてみればそうですね』

男『もしかしたら、スマホに記憶しているのかも』


そう思い確認してみたが、スマホのデータ容量は殆ど使用されていなかった。
つまり、ゆうの主な情報は外部にあることになる。

しかし、ゆうは常駐アプリなので、常に外部サーバと通信しているとは考えにくい。
そうなると、やはりスマホに全てのデータがあることになってしまう。

まさか、本当に魂があるのか?!
思わぬ形で、ゆうが幽霊であることを証明することになってしまった。

ゆう『何か分かったのですか?』

男『オカルトな話で良ければ話すけど』

ゆう『オカルト……ですか。お願いします』

男『ゆうは幽霊だから、魂に記憶が刻まれているのだと思う』

ゆう『脳ではなくて、魂に?』

男『そうとしか考えられない。だからゆうは、こんなにも人間らしいんじゃないかな』

ゆう『人間らしい、か。それは当然です、私は人間でしたから』

ゆう『でもね、私はこの若さで死んだのです。もしかすると、つらいことがあったのかもしれません』

男『そのときは、俺がゆうを慰めてやるよ。ゆうが成仏できるように』

ゆう『何だか、頼もしいです// 動物園、楽しみにしておきますね』

男『ところで、ゆうは俺と同い年くらいだろ。どんな女性だったんだろうな』

ゆう『……分かりません』

男『でも、エッチな女性だったのは間違いないよな』

ゆう『ええぇっ! この流れで、そんな話になるんですか?!』

男『だって、ゆうの魂は今、エロアプリじゃないか。よほど、好きだったんじゃないのか?』

ゆう『そそ、そんなことないですっ!』

男『どうだかなあ。性格が魂に影響したなら、そういうことになるだろ』

ゆう『私はアプリだから、システム的に逆らえないだけです。べ、別にエッチが好きな女性ではありません!』

男『それじゃあ、今夜からエロ動画で抜くしかないな』

ゆう『……えっ。今夜はじゃなくて、今夜から――なんですか?!』アセアセ

男『やっぱり、ゆうはエッチが好きなんじゃないか』

ゆう『んなっ// それはその……』

男『それはその?』ニヤニヤ

ゆう『私、友さんに胸を触られて分かりました。私は、男さんじゃないと嫌なんです』

ゆう『だから、男さんのアプリになったのかもしれません。私は、男さんとエッチをするのが好きなんです』

男『俺とエッチがしたくて、俺に取り憑いたのか?!』

ゆう『取り憑いただなんて、照れてしまいます//』ポッ

男『好意はうれしいけど、幽霊が取り憑くのはイメージ悪いよなぁ』

ゆう『そ、そうですよね……』ショボン

ゆう『でも生きていたときの私は、そんな女性だっただろうと思います』

男『そんなことを言われても、ゆうに該当する女性はいないんだよな……』

ゆう『どうしてですか?』


言わないと分からないのか。
というか、言わせたいのか?!


男『俺のことを好きだと言ってくれるのが、ゆうだけだからだ』

ゆう『男さんの身近な女性が、最近亡くなりませんでしたか?』

男『これ以上は聞いてくれるな……』グスン

ゆう『あらあら――。それじゃあ、私にもチャンスありですね//』ヤッタネ!

男『そういうことだし、今夜も楽しみにしてるから』

ゆう『はい♪ 男さんに、気持ちよく射精してもらいたいです//』


ゆうは幽霊であると同時に、エロアプリだ。
使ってあげたほうが、喜んでくれるのは間違いない。
こうして、夜の充実生活が始まった――。

今日はこれまでにします。
レスありがとうございました。

~学校・お昼休み~
女さんに会わせてもらう約束をして、10日が過ぎた。
さすがに気になってきたので、俺は友の席に向かった。


男「友、あれから結構経つけど、女さんの話はどうなった?」

友「ああ、その話か。ちょっと難しいかもしれない」

男「難しい?」

友「実は、女さんがずっと休んでいるみたいなんだ……」


友は気まずそうに言った。
女さんが塾に行っていないなら、どうしようもない。


男「もしかして、具合が悪いとか?」

友「それは知らないけど、俺より女友に頼むほうが早いかもな……」


女友には、一度断られている。
興味はあるけど、会うことはないのかもしれない。

友「ところで、ゆうちゃんは?」

男「今は学校だし、マナーモードにしてる」ポチッ


俺はアプリを起動し、スマホスタンドに立て掛けた。
これさえあれば、万全の態勢でチャットが出来る。


ゆう「友さん、こんにちは」

友「こんにちは。さっき男に話したんだけど、女さんに会わせる約束は難しそうだ」

ゆう「体調が悪いなら、仕方ないですよね……」

友「ごめん。そういうことだから、おっぱい代は出世払いにしとくよ」

ゆう「ななっ! 触るだけ触って、払わないなんてサイテーですよっ」プンスカ

友「いいなあ、萌えるわぁ」

男「本当にサイテーだな、お前……」

女友「ゆうさん、こんにちは。女さんがどうかしたの?」


女さんの話をしていると、女友がやってきた。
椅子を寄せて、三人でゆうと向かい合う。
正直、ちょっと狭い。


ゆう「こんにちは。女さんが塾を休んでいると聞いて、みんなで心配していたんです」

女友「確かに心配だけど、どうして二人が気にするのよ」

男「女さんに会えないか、友に頼んでて……それで」

女友「ふうん……。詳しいことは知らないんだけど、何かあったらしくて悩んでいるみたいなの」

男「……悩み事?」

女友「うん。今度の日曜日に買い物に行こうって約束出来たから、そのときにでも相談に乗ってあげたいなって思ってる」

男「何だか、俺が会えそうな雰囲気じゃないな……」

女友「当たり前でしょ。バイトの事も関係あるかもしれないし、何か分かったら教えてあげるわね」


女さんがしているかもしれない、風俗系のバイト。
それは、ゆうが幽霊であることを否定する、反証にもなりうるものだ。


ゆう「女さん、元気になるといいですね」

友「そうだな。女友と買い物に行けば、気分も晴れるさ。ポジティブに行こうぜ」

男「それもそうだな」

友「ところでさあ、ゆうちゃんが死んだ原因は考えているのか?」

男「どうしたんだよ、唐突に――」

友「ゆうちゃんは、死神から逃げ出してきたんだろ。それが本当なら、ゆうちゃんのことを探していると思うんだ」

男「確かに……」

ゆう「逃げ出したのではなくて、私だけ落ちてしまったんです」

友「だとしても、死神はゆうちゃんを探しているはずだろ」

ゆう「そう……ですね」

友「でも実際には、まだ捕まっていない。つまり俺は、死神が待ってくれているんじゃないかと思うんだ」

男「待ってくれている?」

友「だって、そうでないと説明が付かないだろ。死神なのに幽霊を見つけられない、なんて事はないだろうし」

ゆう「待ってくれているなら、何のためでしょうか?」

友「そこで、ゆうちゃんの死因が関係してくるんだ」

女友「きっと、想いを遂げるのを待ってくれているのかも。未練があるから、死後の世界に入れなかったんでしょ?」

ゆう「未練ですか? 容赦なく連れて行かれたので、あまり関係ないと思います」

友「という事は……。まさか、本当に見つけられない……のか?」

男「それは分からないけど、時間があるなら、ゆうの未練を遂げさせてあげたいよな」

女友「ゆうさんには、何かやり残した未練はないの?」

ゆう「私は、男さんが私でオナニーしてくれれば幸せです//」

女友「そ、そうだよね……。ゆうさんは、そういうアプリだもんね//」

女友「じゃあ、ゆうさんは幸せだから、やり残した未練はないのね//」

ゆう「今のところは……」

女友「でも聞く限りだと、男のことが好きなのに死んでしまったことが、ゆうさんにとって未練になっていると思うの」

ゆう「それも考えたことがあるんですけど、違うみたいなんです」

女友「だよね~」

男「おい、納得するの早すぎ!」

女友「だって、男には彼女がいないでしょ。片思いの噂も聞いたことないし」

男「ぐぬぬ……」

ゆう「謎ですよね。ライバルがいないのは嬉しいけど」

友「とりあえず、男はゆうちゃんと仲良くしてればいいよ。なあ、女友」

女友「そうそう。それが、ゆうさんの未練だしね」

ゆう「そういうことなので、男さん。また今夜もお願いしますね//」ルンルン

女友「えっ、また今夜も……なの?! ふ、ふうん……そんなにするものなんだ」カアッ//

男「ま、まあな……。なあ、友……」アセアセ

友「お、おう! 俺には分かるぜ、同志よ!」ビシッ

女友「はあ……。男子って、本当に毎日そういうことをするんだ。何だか、幻滅しちゃうな……」

ゆう「女友さん。若い男性の中には、自己嫌悪で悩んでしまう人もいるんです」

女友「……そうなの?」

ゆう「はい。性的なことは悪いことだと思って、思春期の身体の変化に困惑したり、他人と比較して劣等感を感じてしまったり――」

ゆう「それなのに欲求が募ってしまうから、一人で射精をした後に悩んでしまうんです」


おいおい。
何か知らないが、急に語りだしたぞ。
エロアプリとして、変なスイッチが入ったのかもしれない。

ゆう「だから、男さんみたいに健全な気持ちでオナニーを楽しめる人は、自分を大切にしている素敵な人だと思います」

ゆう「自分を大切に出来ない人は、誰かを大切にすることは出来ません」

女友「要するに、健全な気持ちで楽しんでいる男子は、みんなを大切に出来るって言いたいの?」

ゆう「私はそう思います。男性として自然なことだし、性差を想い合える女性のほうが素敵だと思いますよ//」

女友「ゆ、ゆうさんがそう言うなら……」

友「女友、少し二人で話したいことがあるんだけど良いかな」

女友「ええっ?! この流れで言われたら、下心しか感じないんだけど……」

友「いやいや、普通の話だから」

女友「本当かなぁ……。じゃあ、向こうで話しましょうか」

友「そうだな」

女友「ゆうさん。さっきの話、ありがとう。また、おしゃべりしましょうね」ニコッ

ゆう「はいっ♪」

ゆう「あの二人、どんな話があるんでしょうね」

男「気になるのか?」

ゆう「ほら、内緒話って気になるじゃないですか~」チラチラ

男「多分、ゆうの話だと思う」

ゆう「わわ、私の話ですか?!」

男「二人とも、ゆうのことを色々考えてくれているんだ。それなりに、感謝しないといけないな」

ゆう「はい。何でしょうね、私が死んだ原因と未練は……」ハァ

今日はここまでにします。
レスありがとうございました。

~部屋・日曜日~
ブブブ、ブブブ……。

ゆう「男さん、朝ですよ~♪」

男「うう、休日くらいゆっくり寝かせろよ」ぽちっ

ゆう「でも今日は、動物園に行く日です」

男「そうだけど、まだ早いだろ」zzz

ゆう「まだ早いって、この時間にセットしたのは男さんじゃないですかっ」プンスカ

男「そう、そのツッコミを聞きたくて早めにしたんだ」

ゆう「えっと……、なんでやねん!」ビシッ

~リビング~
母「おはよう。今日は休みなのに早いわねえ」

男「……おはよう。ちょっと、動物園に行こうかと思って」

母「動物園って、女友ちゃんとデートに行くの?」ニヤニヤ

男「いや、それはない」

母「もしかして……ここ最近、部屋でよく話をしている女の子?」


その言葉に驚いた。
まさか気付かれていたとは――。


母「やっぱり、そうなんだ……」ハァ

母「リビングにいたら、ときどき声が聞こえるのよね。何て言うのかな、アダルトチャット?」

男「ま、まあ……、それに近いことはしてるかも」


ゆうが来て、今日で14日。
何も言われないから、完全に油断していた。


母「あのね。アダルトサイトを見るのは良いけど、そういう場所で知り合った女性に会うのは、絶対に認めないから!」

男「いやいや、そんな人と絶対に会うわけないし」

母「でも、その女の子と行くんでしょ?」


はあ……。
母さんから解放されるには、もう見せたほうが手っ取り早いかもしれないな。
俺は仕方なく、アプリを見せることにした。

男「今さら、見られて困るようなものじゃないけど――」

ゆう「は、はじめまして。私は、ゆうと申します」アセアセ

母「……」

ゆう「あ、あの、男さん。ついに私を、お母さまに紹介するという流れでしょうか?!」ドキドキ

男「そ、そんな感じかな」

ゆう「お母さま、いつも男さんに可愛がってもらっております。ふつつかものですが、よろしくお願いいたします!」ミツユビ

母「……?!」

母「ちょっと、男。何なの、このくすぐったい挨拶は!」

男「いや、俺に言われても困るんだけど……」

母「とりあえず、この子がチャットの相手なのは分かったわ。でも、本当にゲームなの?」

男「昔、恋愛ゲームが社会現象になっただろ」

母「そういえば、聞いたことがあるわね……」

男「まあ、それとは違うんだけど――」ポチッ


リンクを接続すると、ゆうはパジャマ姿になった。
ベッドの上で上体を起こしていて、早朝らしい寝起きのシチュエーションだ。

ゆう「い、今からするんですか?!」

男「……」

ゆう「もしかして、私は今、ベッドの下に隠していたエッチな本が見つかった的な状況なんでしょうか?!」アセアセ


新妻気取りだったけど、ようやく自分の立場に気付いたか。
一人でテンパっている姿が、何だか面白い。


ゆう「あのっ、お母さま! 私は男さんが好きだし、私でオナニーしてくれるとすごくうれしいんです。だから、一緒にいさせてほしいです!」ペコリ

母「おな、にい……」ジトー

ゆう「……!? きゃあぁぁっ、お母さまに口が滑ったぁっ!!」パニクリ

男「俺にどうしろと……」

母「……ねえ、男。この子、突拍子がなくて面白すぎるんだけど!」ケラケラ

ゆう「そ、そうですか?!」

母「隠していたエッチな本が見つかったとき、そんな気持ちになるんだ。でもね、削除するか決めるのは私だから♪」ニコッ

ゆう「あわわ……、その笑顔が怖いです」

男「無駄話は良いから、ゲームだと分かれば良いんだろ」


そう言って、ゆうのパジャマを脱がした。
そして、腕をぶんぶん振り回す。


ゆう「ひえぇぇっ……、やめてくださいぃぃっ//」グルングルン

男「これで、ゲームだって分かっただろ?」ポチッ

母「最近はこんなアダルトアプリがあるのね。ちょっと、私にもさせてみなさいよ」ニヤニヤ

男「いやいやいや。さっさと話を終わらせて、遊びに行きたいし。早起きした意味がないじゃん」

母「むむ、それもそうね……」

ゆう「そ…それで、私はどうなるのでしょうか?」オドオド

母「それなんだけど、アダルトサイトの月額料金によっては、退会・削除してもらうから」

男「それなら大丈夫。無料アプリなのは確認してあるし」

母「ふうん……。まあ、そういうことなら好きにすればいいわ」

ゆう「じゃあ、私はお母さま公認のアダルトアプリということですね//」ヤッタネ!

母「そう言われると、微妙な気持ちになるんだけど……」

母「男、フィルタリングの設定は確認しておくけど、有害アプリには気を付けなさいよね」

男「分かった。じゃあ、もう良いよな」

母「……別に良いわよ」ハァ

男「夕方には帰ってくるから」ガチャリ

~外~
ゆう「いや~、一時はどうなるかと思いましたねえ」

男「ゆうが余計なことを言うからだろ……」

ゆう「すみません。でも、お母さま公認になれたし、今まで以上に頑張りますね//」テヘッ

男「じゃあ、楽しみにしてるから。だけど、母さんがリビングにいるときは、気を付けないといけないな」

ゆう「そうですよね。思い返すと恥ずかしいです……」カアッ//
男「まあ、過ぎたことは考えても仕方ないし……。気を取り直して、動物園に行こうか」

ゆう「そうですね。動物園に行きましょう!」

男「でもせっかく遊びに行くんだし、服を着替えなくて良いの?」

ゆう「それはその……、着替えは出来ないんです」シュン


ゆうは、いつも同じ服を着ている。
リンクを接続すると着替えられるが、さっきみたいにアダルト機能に傾倒してしまい、日常会話に制限がついてしまう。


男「ごめん。幽霊だし、そういうものだよな。死んだときに着ていた服?」

ゆう「……それは分かりません。だけど私は、この洋服が一番好きなんです♪」

男「そうなんだ。それじゃあ、マナーモードにするから」

ゆう『はいっ』

今日はここまでにします。
即レスありがとうございました。

>>98
一カ所、改行を忘れました。
すみません。

~動物園~
ゆう『休日の動物園は、家族連れやカップルが多いですね~』

男『スマホ片手に歩いているのは、俺だけか……』キョロキョロ

ゆう『いえいえ、私たちもデートじゃないですか♪』ルンルン

男『そうだよな。ゆうとデートだよな』

ゆう『はいっ♪ でも、歩きスマホは危険なので止めてください。バッテリーも心配です』

男『分かった。撮影ポイントになったら見せてあげるよ』

ゆう『お願いします』

まずは、サファリコーナーに行こう。
そこのキリンが今、話題になっているのだ。

動物園の人気者といえば、やはり赤ちゃんだ。
つい最近、キリンの赤ちゃんが産まれたことが、ここの目玉でもある。


男「アングルはこの辺かな」

男『ゆう、見える?』

ゆう『この動物はキリンさんですね!  首が長くて、フレームに収まりきらないです』

男『でも、あのキリンなら大丈夫だと思う』

ゆう『あっ、この子は小さいですね』

男『まだ生まれたばかりの、赤ちゃんキリンだからな』

ゆう『そういえば、キリンさんの赤ちゃんが産まれたんですよね。ここのHPを見ると、成長日記が更新されています』

男『ゆうはネットも使えるのか……』

ゆう『はい。赤ちゃんキリン、かわいいです//』

ゆう『キリンさんの赤ちゃん……か』

男『お母さんに付いて歩く姿が、かわいいよな』

ゆう『はい。私はもう死んでしまったので、新しい生命って応援してあげたくなります』ファイト!

男『応援か……。ゆうらしいな』

ゆう『天国に行けたら、私も生まれ変われるのかなあ』

男『そのための記憶探しでもあるし、ゆっくり楽しもうよ』

ゆう『そうですね。人が増えてきたし、移動しましょう』

男『じゃあ、先にあの建物に行ってみようか』

ゆう『きゃあぁっ! 世界のネコ展ですって//』

男『今月15日までの特設コーナーだってさ。間に合って良かったね』

ゆう『はうぅ// ネコかわゆすぅ!』

男『見てみて、あのネコ』サッ

ゆう『クロアシネコ? 何あれ、ちっさかわいぃ//』


解説には、絶滅危惧種と書いてある。
世界一小さい猫で、足が黒いからクロアシネコらしい。


男『日本で見られるのは奇跡かも』

ゆう『絶滅危惧種なんだ。こんなに可愛いのに、いなくなったら寂しいよね……』

男『そうだよな』

ゆう『……! カメラを左に動かしてっ。何かいるっ!』

ゆう『しっぽがモコモコで可愛い~//』
ゆう『あの子、こっち見てるぅ//』キャッキャッ

ゆう『世界のネコ展、癒やされました~//』

男(スマホを向けるのが大変で、俺は疲れたよ――)

ゆう『次は、どの動物に会いましょうか?』

男『じゃあ、次はライオンを見に行こうか』

ゆう『また、にゃ~ですね! 百獣の王の貫禄を見せてもらいましょう♪』ルンルン

男『にゃ~って時点で、貫禄がないし……』

ライオン「――」チラリ

ゆう『おおっ! どっしり構えてますね。あれは獲物を狙う目ですよ、きっと』

男『獲物か……。そういえば、お腹が空いてきたな』

ゆう『ええっ! もしかして、ライオンさんを狙っているんですか?!』

男『そんな訳ないだろ。ネコ展にずっと居たから、もうお昼だし』

ゆう『あれっ、もうそんな時間なんですか? じゃあ、昼食にしてきてください』

・・・
・・・・・・
ゆう『今日は楽しかったです♪』

男『俺も楽しかったよ。世界のネコ展が、やっぱりヒットだよな』

ゆう『はいっ! 仲良くじゃれあう姿が、すっごくキュートでした//』

男『ネコ画像も保存したし、いつでも参照すると良いよ』

ゆう『えへへ、ありがとうございます♪』

男『他に良かったことってない?』

ゆう『そうですねえ。絶滅危惧種の動物や赤ちゃんに出会って、生きるって素敵なことなんだなと思いました』

ゆう『そう思えたのが死んでからだなんて、ちょっと遅いんですけどね……』

ゆう『動物園に来て、本当に良かったです//』

男『それじゃあ、生前の記憶は何か思い出せた?』

ゆう『記憶と言われると、まったく……』

男『……そうか』

ゆう『すみません。せっかく、連れて来てくれたのに』

男『別にいいよ。ゆうが楽しんでくれたし、俺もそれが嬉しいから』

ゆう『ありがとうございます。男さんと、またデートに行きたいです//』ニコッ

男『ああ、また行こうな』

今日はここまでにします。
レス、即レスありがとうございました。

>>107の最後、改行を忘れたみたいです。
すみませんでした。

ゆう『男さん、動物園の隣に公園がありますよね。そこで休んでいきませんか?』

男『そうみたいだな。ちょっと散歩して行こうか』


木漏れ日を浴びながら、散歩道を上っていく。
やがて、木々に囲まれた広場にたどり着いた。
どうやら、森林公園のようだ。


ゆう『ネットには人気スポットって書いてあったけど、誰もいませんね』キョロキョロ

男『動物園で歩き疲れた後に、家族連れが来るような場所じゃないと思う。だから、こんなものじゃないか?』

ゆう『でもこれなら、音声会話できますよね。文字だとラグがあるし、バッテリーも大丈夫そうだから』

男『そうしようか。ゆうの声、しばらく聞いてないし』


そう思い、マナーモードを解除した。

ゆう「ねえ、ここでエッチをしませんか?」

男「話せるようにした途端、すぐにお誘いか……。外でするようなことじゃないだろ」

ゆう「でも私は、どうしてもここでしたいんです。お願いします……//」

男「どうしてもここで?」

ゆう「はいっ、どうしてもです。私も動物みたいに、自然を感じながらしてみたいんです//」テレッ

男「青姦ねえ」

ゆう「だめ……ですか?」

男「……分かった。ゆうを気持ちよくしてあげるよ」

ゆう「……// うれしいっ!」


どうせ人が来ても、スマホをいじっているようにしか見えないだろう。
そう思い、リンクを接続した。
背景が部屋から公園に変わり、ゆうの服がカジュアルな装いに変わる。

それを見て、ふと疑問に思った。
アプリの背景となっている公園が、この森林公園とは違う場所だったからだ。
もしかすると、アダルト機能の背景は、ゆうの記憶と関係しているのかもしれない。


男「ゆうは、ここでどうしたい?」

ゆう「公園でしか出来ないことをしたいです//」

男「じゃあ、ブランコまで歩いていけるかな」

ゆう「あ、あれですね」トテトテ

男「じゃあ、座らずに跨ってくれる?」

ゆう「……? それで、どうするつもりですか」


ゆうは不思議そうに、ブランコに跨る。
俺はメニュー画面を開いて、重力の設定を『直接入力』にした。


ゆう「わわっ! そんなことをしたら、私、お星様になっちゃいます!」

男「この機能、背景に対して直接入力が出来るだろ」

ゆう「それはそうですけど……」


つまり――。
ブランコの重力だけを反転させることも出来る。
言うなれば、ポルターガイストを引き起こせるのだ!

ブランコを長押しタップすると、椅子が上方向に落ち始めた。
しかし跨っているので、ゆうに縄が引っかかる。


ゆう「きゃうん……// な、縄が食い込んでっ//」

男「痛くない?」

ゆう「だ、大丈夫。下着くらいで、ちょうど良い刺激だと思う」

男「分かった。じゃあ、一度下ろすからズボンを脱ごうか」


俺はブランコを下ろし、ズボンを脱がせた。
そして下着姿となったゆうに、再びブランコを舞い上げる。


ゆう「きゃふんっ……! あっ、これっ……、これくらいが気持ちいいっ//」

男「そっか。ゆうはブランコが気持ちいいんだ?」


そう言って、ブランコをぐいぐいと引っ張った。
その度に縄が陰部に食い込み、ゆうが嬌声を上げる。


ゆう「ひゃうんっ……、気持ちいいのぉ。あぁっ、ブランコ気持ちいいよぉっ……!」

ゆう「ああっ、いいよぉ// 縄ブランコ……、ぐいぐい食い込んでるぅっ//」

男「じゃあ、ここの縄を揺らすとどうなるのかなぁ」

ゆう「あんっ……あぁっ。クリクリを弾かないでぇっ……//」

ゆう「……らめぇ……ぃい//」ユサユサ


淫らな声が、森林公園に響く。
俺はゆうのシャツを脱がせて、ピンク色のブラジャーを外した。

そして、溢れ出たおっぱいで縄を挟ませる。
擬似パイズリをさせながら、乳首をさわさわと刺激した。


ゆう「男さん、気持ちいい……。はうんっ……ぁっ、んんっ//」ハァハァ

男「ゆうは公園でこんなことしちゃうんだ」ニヤニヤ

ゆう「お外でこんなことしてる。ゆうはエッチなことしてるの//」

男「じゃあ、ブランコをバイブにしてあげるよ」ニヤリ

ゆう「……ぇっ?」


ブイィィィンッッ


ゆう「いやあぁぁっ、あぁぁ……らめぇぇ…………」

ゆう「はうぅぅっ……// いぃっ……、もっと、もっとぉっ…………」


スマホのバイブを振動させると、ゆうが悶え始めた。


ゆう「んんんっっ…………はうぁ、いぃっ、いいぃっ!」


おっぱいに挟まれ、外性器に食い込み、会陰部とお尻を通っている縄ブランコ。
それが激しく微振動することで、いくつもの性感帯を刺激し、ゆうを快感に飲み込んでいく。

ゆう「はうぅぅ……、あふん…あぁ……ああん! だめぇ、らめぇ……っ!」ガクガク


快感に飲まれて足腰が立たなくなり、ゆうはしゃがみ込んだ。
しかし、ブランコとゆうでは重力の方向が違う。

だから自分の体重だけではなく、
ブランコの椅子が加重となって、縄バイブがよりきつく食い込むことになる。


ゆう「あひゃうっ! んぐぅっ……あぁぁっ!」

ゆう「もうだめぇぇ……、ううぅん、ああっ! らめっ……いきそう、いぐぅっっ……」

男「ゆう、ブランコでいっちゃうのか?」

ゆう「イクぅっ! ブランコれ、いっちゃうのぉおっ……」

ゆう「イクうぅぅっ……!」ビクビクッ

ゆう「はあはあ……//」

ゆう「もうどうにかなっちゃいそう……//」ハァハァ


ゆうが絶頂に達したので、スマホのバイブを切った。
そして重力設定を『オフ』にして、ブランコに座らせてあげた。


男「無駄そうな機能も、考えればいろんな使い方があるもんだな」

ゆう「ブランコ……、すっごく気持ちよかったよ//」ハァハァ

男「ポルターガイストでエッチをしたのは、ゆうくらいじゃないか? 本当にいやらしい幽霊だよな」ニヤニヤ

ゆう「だって、私は男さんとエッチをするのが好きだもん//」エヘッ

男「すごく喘いでいたから、もう俺まで興奮してきたし……」

ゆう「じゃあ、今度は男さんが気持ちよくなってね//」

今日はここまでにします。
レスありがとうございました。

男「さすがに、俺は外で出来ないって」

ゆう「ここにいるのは私たちだけだよ。誰も見てないから大丈夫//」


ゆうはそう言うと、ショーツを脱いで手に取った。
そして、大きく広げる。


ゆう「ほら、こんなに濡れちゃいました// お……おまんこもヌルヌルなんですよ//」クチュクチュ

男「いやらしい音が聞こえる……。今日のゆうは大胆だな」ハァハァ

ゆう「この開放感が、そうさせるのかも。だから私が、男さんを射精させてあげたいの//」


確かに人はいない。
ゆうがエロ過ぎて、我慢も出来そうにない。
だったら、早く抜けば見つかることはない……かもしれない。


男「分かった。さくっと抜くことにするか」

ゆう「だったら、私は男さんとセックスしたいです。一緒に気持ちよくなりたいです//」

男「意味が分からないんだけど」

ゆう「そ、そうだよね……。だけど大丈夫!」

ゆう「スマホのバイブ機能でカメさんを刺激すれば、男さんも一緒に気持ちよくなれるんです//」エッヘン

男「ゆうがそこまで言うなら、今日はそうしてあげるよ……」

ゆう「ふふっ// じゃあ、移動します」


ゆうはそう言うと、脱ぎ捨てた衣服を拾ってシーソーに移動した。
ベルトで地面のタイヤと固定し、腰ほどの高さから衣服を敷いていく。
そして、仰向けに寝そべった。

ゆう「準備オッケイです//」

男「ブランコの次はシーソーか」

ゆう「えへへ// もう我慢できません。お願い……します//」


艶めかしい表情で、ゆうがこちらを見詰めている。
腕を軽く組み、寄せ上げられたおっぱい。
すでにトロトロの女性器からは、陰唇が開いてピンク色の膣前庭が見えている。

俺は木陰でパンツを脱いで、スマホのバイブを起動させた。

ゆう「んんっ……! あぁ、ぃぃっ……」

ゆう「一緒に気持ちよくなりたい。……こっちにきてっ、男さん……//」クチュクチュ


俺は覚悟を決めて、陰茎にスマホを近付けた。
そして、硬くなった筆でゆうの身体をタップする。


男「ぬおっ……?!」ビクッ

男「バイブって、かなり気持ちいいな……」ハァハァ

ゆう「あぅうっ……ぃい、私も……気持ちいいぃっ//」


裏スジや亀頭への微振動。
そして、屋外の開放感と淫らに喘ぐゆうの姿が、興奮のボルテージを上げていく。
もう、二人で快感を貪ること以外は知覚できない。

ゆう「ぅくうぅっ……、んんっ、あぁぁっ……//」クチュクチュ

ゆう「……男さん、いれてほしい……。私をもっと……感じさせてほしいのぉっ」

男「わ……、分かった」スルスル

ゆう「……あぁ……いいぃ。いっぱい当たってる……」

ゆう「はうっ…中に入りそう……、入っちゃいそうっ//」ヌチュヌチュ


いやらしく開いた陰唇と剥けたクリトリスを、陰茎で刺激する。
それはセックスというより、スマタかもしれない。
それでも、よがり声とバイブの振動が、射精感を急激に高めていく。

男「ごめん、もうイきそう!」

ゆう「もういっちゃうの? 出してっ、いっぱい精液出してっ//」

男「イクッ!!」

ドピュッ
ドピュドピュッ

ゆう「んぅっ、私も……いっちゃうぅぅっ…………」ビクビクッ

男「はぁはぁ……。ゆう、気持ちよかったよ//」

ゆう「……はいっ、私もです//」


ゆうはそう言いつつ、中指を膣に挿入した。
シーソーの上で、浅く深く、何かを確かめるように。

今日はここまでにします。
レス、即レスありがとうございました。

・・・
・・・・・・
ゆう「ねえ、男さん。私はどうして死んでしまったんだろ……」


ベンチに座って木々を眺めていると、ゆうが気落ちした声で話し掛けてきた。
その表情には、愁いが混じっているように見える。


男「死んだって、急にどうしたの?」

ゆう「それはその……。上手く言えないんですけど、死んでいることに気付いてしまったんです」シュン

男「でも死んでいることは、最初から自分で言ってたじゃないか。もしかして、つらい記憶を思い出したとか?」

ゆう「そういう訳じゃなくて……。それに私は――」

男「ひょっとして、幽霊的な悩みなのかな」

ゆう「……はい、そうだと思います」

男「そういうことなら、俺や女友に相談してくれれば良いから。何か、力になれることがあると思うし」

ゆう「……ありがとうございます。心配かけて、ごめんなさい」

男「謝らなくていいよ。いつでも聞いてあげるから」

ゆう「……はぃ」

ゆう「……! 女友さんからメールが来ました」

トゥルルル~ン♪

男「ほんとだ、何だろ?」



From:女友
件名:何してた?

本文:
私は女さんと買い物してたよ♪ 男は今、何してた? 



男「……どうでもいいな」

ゆう「ええっ、無視するんですか?!」

男「返す必要ないだろ」

ゆう「でも友達なんだから、何か一言くらいは……」

男「仕方ないなぁ」


To:女友
件名:Re:何してた? 

本文:
別にいいだろ


男「これでよし」

ゆう「そんなメール。女友さん、怒りますよ」

男「大丈夫だって。どうせ学校で会うんだし、用事があれば聞いてくるだろ」

ゆう「はぁ……」

男「それじゃあ、家に帰ろうか」

アカウント:ゆう
>メール
>新規作成


To:女友
件名:ゆうです

本文:
女友さん、こんにちは。
今日は動物園に行って、公園でセックスをしました。
でも、私では繋がることが出来ないんですよね……。(>_<)

明日、悩みを聞いてもらえないでしょうか??
私は男さんに取り憑いて、セックスをしたくなるように頑張りました。
でもそれは、間違いだった気がするんです。
お願いします。(T_T)


>送信
>削除しますか? Yes

~学校・お昼休み~
女友「男、ちょっといい?」


昼食を食べ終えると、女友が話し掛けてきた。
声色からして、真面目な話があるようだ。


男「……何?」

女友「ゆうさんと二人で話したいことがあるから、スマホを貸してくれないかなあ」

男「話したいこと?」

女友「うん。昨日女さんに会ったんだけど、そのこととかちょっとね」

男「そういえば、女さんと買い物に行ってたんだっけ。バイトの話はどうだった?」

女友「バイトはした事がないんだって。考えてみれば、未成年だし出来るわけないよね」

女さんは、風俗系のバイトをしていなかった。
つまり、アダルトサイトの外部サーバにゆうの情報がある可能性が消えたので、幽霊だと確定したことになる。


女友「そういうことだから、スマホ貸してくれない?」

男「そうだな……。教室から持ち出したり、余計なところは触るなよ」

女友「……しないわよ。ゆうさんとは、文字入力でも話せるんだっけ」

男「今、その状態だから」

女友「じゃあ、授業が始まるまでには返すね」


女友はそう言うと、席に戻っていった。

短いですが、今日はここまでにします。
レスありがとうございました。
変態シチュですみません。。

男「はぁ……。ゆうがいないと、時間を持て余すな……」

友「そうだろうと思って、俺が来てやったぞ!」


友が前の席に座り、得意気な顔を見せた。
相変わらず、調子のいいやつだな。


男「何か、面白いネタでもあるのか?」

友「ゆうちゃんが来て、もう二週間だろ。最近、そういう小説とか漫画にはまっててさあ。今、色々と読んでるんだ」

男「そうなのか」

友「それで考えてみたんだけど、意外とよくあるネタなんだよな」

男「よくあるネタ?」

友「幽霊・妖怪ネタや動物の擬人化は、もはや定番中の定番だろ」

男「言われてみれば、そうだなあ。どれも読んだことがある」

友「そうだろ。しかも人形に魂が宿ったり、電化製品や食べ物が擬人化する物語まであるんだ」

男「つまり、どういうことだよ」

友「死んだ人間の魂がスマホに宿っている訳だから、ゆうちゃんは幽霊ネタメインの人形ネタだと思うんだ」

男「なるほどねえ。それで、そういう本を読んでどうするんだ?」

友「使い古されたネタだし、パターン化されているだろ。だから、ゆうちゃんがどうなるか参考になるはずだ」

男「お前、すごいな……。それで、今後の展開の参考になりそうな本はあったのか?」

友「もちろん! ゆうちゃんは幽霊ネタメインの人形ネタだろ。その系統の恋愛モノは、どんな展開になると思う?」

男「恋愛モノ?」

友「ゆうちゃんは男が好きだし、どう考えても恋愛モノじゃないか」

男「それもそうか。幽霊ネタなら、最後は成仏してエンディングだよな……」

友「死神も探しているはずだし、俺も一番可能性が高いエンディングだと思う。そして、生まれ変わって幸せになるパターンだろうな」

男「生まれ変わり……か。じゃあ、人形ネタとしてはどうなるんだ?」

友「そもそも、宿っている魂が幽霊だからなあ……。ラストは同じだろうけど、人形に魂が宿った理由が見せ場になりそうだ」

男「要するに、エロアプリになった理由が見せ場なのか」

友「はっきり言って、考えるまでもないけどな。エロいこと以外に使えないし」

男「まあな。でも、ゆうは初対面のとき、『死んだらアプリになるのでしょうか?』って戸惑っていたぞ」

友「あー、そうか。ゆうちゃんは落ちてきた訳だし、空から女の子が降ってきた系の、押し掛けヒロインの可能性があるのか……」

男「そうだとしても、ゆうの未練を遂げさせてあげたいし、それが大切なことは変わらないよな?」

友「確かにそうだな。未練を遂げるのが、恋愛モノのお約束だしな」

男「なるほど。色々と参考になったよ」

友「いや、話はまだ終わってないから。実は、幽霊ネタにはもう一つのパターンがあるんだ」

男「何なんだよ、もう一つって……」

友「それは生き霊ネタだ。危篤状態や不思議な力で、幽霊のように具現化するパターンだよ」

男「それはないな。ゆうは死神に回収されたんだから……」

友「すまん、俺の言い方が悪かった。男には彼女がいないのに、ゆうちゃんは男のことが好きだろ」

友「それって、時系列がずれていると思わないか?」

男「まさか、タイムスリップとか言うつもりじゃないだろうなあ」

友「そう、そのまさかさ。この今現在、生きているゆうちゃんがいるんだ!」

男「別にタイムスリップじゃなくても、押し掛けヒロインなら、最初から好感度が高いものなんだろ」

友「でもそれだと、女さんと同じ容姿である必然性がないじゃないか」

男「……まあな。それで、タイムスリップか」

友「しかも生き霊ネタなら、生前の記憶がないことも説明出来るんだ」

男「記憶がないことに理由があるのか?!」

友「生き霊ネタはエンディングでヒロインに逢うから、幽霊の記憶を曖昧にしないと物語にならないだろ」

男「なるほどな。もし生き霊ネタなら、最終的に女さんに逢えることになるのか……」


彼女が出来るなら、
それはそれで魅力的な話かもしれない。

友「でも、そう単純じゃないんだよな……。ゆうちゃんは、タイムスリップをしている幽霊だから」

男「……!」


ゆうは間違いなく幽霊だ。
もし本当にタイムスリップをしているならば、女さんが死んでしまう可能性があることになる!


男「タイムスリップなんて、非現実的じゃないか?!」

友「現実世界とあの世の時間の流れが同期していると、男は証明出来るのか?」

男「……出来ないな。ゆうも死んだときの記憶がないし」

友「それならば、タイムスリップが実在すると仮定しても問題ないだろ」

男「まあなあ……。ゆうの説明をするには、便利なSFネタだよな」

友「でもそうなると、未来で女さんが死ぬことになるんだよな……」

男「それなんだけど、ゆうの死因が一向に分からないんだ」

友「でも、分かっていることもある。例えば、ゆうちゃんになる条件とか」

男「ゆうになる条件?」

友「ああ、これはループものだろ」

男「そうか。将来、俺の彼女がゆうになるのか……」

友「いや、それでは不正確だ。男が好きだという気持ちが、ゆうちゃんになるための条件なんだ。好きだからといって、付き合っているとは限らない」

男「細かいな……。だとすれば、俺が誰からも好かれなければどうなるんだ」

友「その場合は、誰もゆうちゃんにならないと思う」

男「つまり、女さんに好かれなければ、女さんはゆうにならないのか」

友「確かにならないけど、死なないとも限らない」

男「だよな……。恋愛感情と死の原因に、関連性があるか分かってないもんな」

友「だから俺は、女さんに会うべきだと思う」

男「でもそうしたら、ゆうはどうなるんだ?」

友「パターン的には、二種類だと思う。成仏する場合と、女さんに魂や記憶が受け継がれる場合」

男「女さんに記憶が受け継がれるっていうのは、ある意味生き返るってことだよなあ?」

友「そうだろうな。生き霊ネタなら、お約束のエンディングだ」

動物園に行って、ゆうは『生きることは素敵なことだ』と感じていた。
もし生き返れる可能性があるならば、それを模索するべきだ。
そうすれば、女さんの命を助けるだけではなくて、女さんの魂をも救うことになる。

ゆうの未練と死の原因。
それを知るためにも、まずは女さんに会ってみるべきだ。


男「友、ありがとう。女さんに会わせてもらえないか、女友に頼んでみるよ」

友「俺は、女さんを彼女に出来るチャンスだと思うぞ。オトコなら頑張れ!」

今日はここまでにします。
レスありがとうございました。

男「女友、ちょっといいか?」

女友「あっ、ちょうどいい所に! 今日じゃないんだけど、一晩だけスマホを貸してくれないかなあ」


女友に声を掛けると、とんでもないことを頼まれた。
どこの世界に、スマホを貸すやつがいるんだよ。


男「スマホを貸すなんて、出来る訳ないだろ」

女友「じゃあ、夜までには返すから。ねっ、貸してくれない?」

男「いやいや、絶対に無理だから。女友だって、俺に貸せないだろ」

女友「だよね……」
男「そもそも、どうして貸さないといけないんだよ」

女友「えっと……。確かめたいことがあって、ゆうさんを女さんに会わせたいの」

男「ゆうを女さんに会わせるなら、俺も一緒に行く」

女友「えっ?! それはちょっと困るんだけど――」

男「さっき友と話していて、ゆうがタイムスリップをして来た可能性があると分かったんだ」

女友「タイムスリップ?!」

男「ああ、女さんとゆうは似ているんだろ」

女友「……うん、そうだけど」

男「もし女さんがゆうなら、これから死ぬことになる」

女友「……!」

男「だから、俺は女さんを助ける方法を考えたいんだ!」

男「ゆうの未練や死の原因を探るためにも、女さんに会わせてほしい」

女友「男の言いたいことは分かったわ。でも、今は会わないほうが良いと思う」

男「どうしてだよ。別に二人きりじゃなくても良いから、何とかならないかな」

女友「もし私の想像通りなら、男は知るべきだけど会うべきではないと思うの」

男「それって、どういう意味なんだ?」

女友「ごめん。まだ不確実だし、私の口から言えることじゃないと思うから――」


女友はそう言うと、ちらりとスマホを見た。
ゆうが何か言っているのかもしれない。


女友「はぁ……。ゆうさんが、男も一緒に行ったほうが良いだって」

男「じゃあ、それで決まり……なんだな?」

女友「そんな訳ないでしょ。私は反対だし、決めるのは女さんなんだから……」

男「それもそうだな」

女友「それで女さんに会う日だけど、明後日の放課後に会えないか聞いてみる」

男「明後日か」

女友「女さんに会いたいなら、男が私たちに予定を合わせてね。日付が決まったら連絡するから」

男「分かった。女友に任せるよ」

女友「それと女さんに会うまで、ゆうさんとエッチなことをするのは我慢してくれないかなあ」

男「何でだよ」

女友「ほら、ゆうさんはアダルトなアプリでしょ。女さんにそっくりだし、そのアプリでしているなんて知ったら、男の第一印象が悪くなるじゃない」

男「ま、まあ、確かにな……」

女友「会わせてあげる努力をするから、それまで我慢してね」

男「お……おう」

~放課後・部屋~
ゆう「男さん、女友さんからメールです」

トゥルルル~ン♪

男「おっ、来た来た」


From:女友
件名:決まったよ

本文:
明後日の放課後に女さんの家に行くことになったから。
予定空けといてね。


男「了解っと」ポチッ

今日はここまでです。
レスありがとうございました。

>>161
一カ所、改行忘れました。
すみません。

ゆう「いよいよ、女さんに会えるのですね……」

男「そうだな。女さんに会うことで、ゆうの未練や死の原因が分かると良いな」

ゆう「……ねえ、男さん」

ゆう「男さんは、女さんと付き合いたいですか? 死んでいる私より、生きている女さんのほうが良いですか?」


ゆうは物憂げに言った。
やはり、昨日から様子がおかしい。


男「ゆう……。昨日から、何を悩んでいるんだ。良かったら、話してくれないかな」

ゆう「……」

ゆう「私は……、男さんに謝らないといけないことがあります」

男「謝るって、何を?」

ゆう「私は男さんに取り憑いています。だから、私が誘えば男さんはエッチをしたくなるんです」

男「……はっ? 取り憑いてる?」

ゆう「エッチをしたくて取り憑いたことは、話したことがありますよね……」


そういえば、会った頃にそんな話をしたことがあるような気がする。
すっかり、そんな設定は忘れていた。

男「思い出したよ。確かに、そんな話をしたっけ……」

ゆう「つまり、そういうことなんです。私は未練ではなくて、強い欲望を持っている幽霊だったのです」

ゆう「そして昨日、私はどうしてもしたくなりました。私は私の欲望のために、してはいけない事をしてしまったんです」

男「俺がしたくなるように誘った……のか」

ゆう「はい……」

ゆう「それなのに、死んでいる私では繋がる事が出来なかったんです」

ゆう「笑っちゃいますよね……。あんな事をしたらダメなのに、分かっていたはずなのに――」

男「昨日から、そのことで悩んでいたのか……」

ゆう「本当にごめんなさい。ごめんなさい……」ポロポロ

男「俺はゆうに出会って、思っていた事があるんだ」

ゆう「何を……ですか?」グスン

男「セックスは、お互いに想い合う気持ちが大事なんだなって――」

男「ゆうが気持ち良さそうだったり、少し痛そうな顔をしたり……。そんなゆうを見て、自分の気持ちを押し付けるだけじゃなくて、想い合う気持ちが大切なんだなって知ることが出来たんだ」

男「現実的にはオナニーなんだろうけど、そう思えるようになったのは、ゆうのお陰だと俺は思う」


それが正直な気持ちだった。
ゆうに出会わなければ、気付けなかったかもしれない。

ゆう「私のおかげ……なんですか?」

男「そうだよ」

ゆう「お役に立ててうれしいです。それなのに、私は昨日――」

男「ゆうはセックスのつもりだったんだろ?」

男「セックスなら、一人で出来ない。ゆうが間違えたと思うなら、俺も一緒に間違えたんだ」

ゆう「でもっ、でも……」

男「一緒に間違えたなら、一緒に反省しよう。人は、失敗から学ぶものなんだし」

ゆう「一緒に反省……」

男「俺も駄目だと思っていたのに、結局してしまったんだ。俺の方こそ、ごめんな――」

ゆう「男さんも、女友さんと同じことを言うのですね……」

男「女友と同じこと?」

ゆう「いえ……、何でもありません。ただ、やっぱり私はもう駄目なんです」

男「もう駄目って、何がだよ」

ゆう「セックスをしたくて取り憑いていたのに、絶対にセックスは出来ないんです! 私では、男さんと結ばれる事はないんです」

ゆう「こんなの、あんまりじゃないですか……。気付かないふりをしたままでいたかった――」ウゥッ


ゆうは未練を遂げるために、エロアプリになったのかもしれない。
しかしその身体は、膨らんだ欲望に応えられるものではなかったのだ。

ゆう「……ねえ、男さん。正直に答えてください」グスッ

男「分かった」

ゆう「男さんは、女さんと付き合いたいですか? 死んでいる私より、生きている女さんを選びますか?」


どう答えても、ゆうは悲しむことになるじゃないか。
しかし、俺は一つの可能性を信じて、正直に答えることにした。


男「俺は女さんを選ぶ」

ゆう「……ぁ…」

ゆう「そっ、そう……ですよね。私、振られちゃいましたね」

ゆう「でも……、ありがとうございます」ウウッ

男「人の話は最後まで聞けよ」

ゆう「聞けって言われても、私はもう終わったんです――」

男「ゆうの思い出は今、その魂に刻まれているんだろ」

ゆう「そ……そうだと思います」

男「だから、俺は女さんを選ぶんだ!」

男「女さんの死の原因を取り除くことで、女さんとゆうの魂が一つに戻るはずなんだ。俺は二人の魂を守るために、女さんを選ぶんだ!」

ゆう「な……、何を言ってるんですか?! 変な冗談は止めてください!」

男「落ち着いて聞けよ。ゆうは未来から来た可能性があるんだ」

ゆう「み、未来から?!」

男「そうだ。女さんが死んで、ゆうになった可能性がある。つまり女さんを助けると、ゆうは死ななかったことになって生き返れるんだ」

ゆう「うそ……。そんなことがあるはずないっ!」

男「確かに、断定は出来ない。だけど、この方法なら、ゆうを救えるかもしれない」

ゆう「もし女さんが私じゃなかったら、どうしますか?」

男「そのときは、ゆうを選ぶ。そして、生きているゆうを探し出す」

男「だから、俺とずっと一緒にいられるんだ!」

ゆう「男さん……ずるいです!」

ゆう「私はこのまま、男さんを好きでいても良いんですか? 私を、ここから出してくれるんですか?!」

男「俺を信じてくれ。女さんとゆうを幸せに出来るように、頑張るから」

ゆう「だったら、今から私でオナニーをしてください。好きでいて良いなら、それを示してほしいんです」

男「今さらだけど、女友と約束をしただろ。体裁は良いに越したことはない」

ゆう「私は不安なんです……。お願いします」

男「仕方ないな……」


俺は、ゆうの唇をタップしてあげた。
切断状態とはいえ、何をされたか分かっただろう。

ゆう「……!」

男「女さんを助けることは、ゆうの魂を救うことになる。それまで待ってくれ」

ゆう「ううっ、やっぱり男さんはズルいです……」

ゆう「女さんが私なら、女さんを好きになってください。お願いします……」


ゆう「うわああぁぁぁんっ………」


ゆうはミニテーブルに突っ伏して、泣き濡れた。
それを見て、俺は心が定まった。
何としてでも、死の原因を解明しなければならない――と。

今日はここまでです。
ありがとうございます。

~放課後・水曜日~
二日が過ぎ、約束の日になった。
いよいよ、女さんに会うことが出来る。
俺は一度家に帰り、身だしなみを整えて待ち合わせ場所に向かった。


男「女友、お待たせ」

女友「遅いと思ったら、着替えてきたんだ。別に遊びに行く訳じゃないのに……」

男「分かってるって。女さんの家に行くのかと思うと、すごく緊張してきて……」

女友「緊張ねえ。これから、大変なことになるかもしれないのに」

男「その大変なことって、結局、何なんだよ」

女友「それは着いてから話す。今から、心の準備をしておいたほうが良いわよ」

男「相変わらず、教えてくれないのか……」

女友「軽い気持ちで、言えるようなことじゃないの。それじゃあ、行きましょうか」

~女さんの家~
女さんは、マンションの一室に住んでいるらしい。
エレベーターから降りると、女友はチャイムを鳴らした。

ピンポ~ン
ガチャリ

女「女友ちゃん、いらっしゃい」

女友「うん、お待たせ」

男「……えっ!!」


俺は驚かずにはいられなかった。
本当に顔も声も、ゆうとそっくりだったからだ。
まるで、スマホから出て来たかのようだ。


女友「それで、こちらが友達の男くん」

男「ど、どうも。男です」

女「はじめまして、女です。今日は誰もいないけど、どうぞ上がってください」

~女さんの部屋~
男「おい、冗談だろ……」


俺は部屋を見回して、声を上げた。
化粧台があって、ミニテーブルがあって、洋服ダンスがあって……。
女さんのベッドも、見慣れた柄の掛け布団が敷いてある。

アプリのトップ画面やアダルト機能で表示されている、女の子らしい部屋。
その背景が、まさしくここなのだ。

トップ画面は、この位置だろうか。
俺は部屋の中央、ゆうと同じ場所に立ってみた。


女「どうかしたのですか?」

男「窓からの眺めが良いなと思って……」

女「そうですよね// 今日は暑いし、りんごジュースで良ければ飲みますか?」

男「あ、ありがとうございます」

女「ねえ、女友ちゃん。今日は、確かめたいことがあって来たんだよね?」

女友「う……うん。男、スマホいい?」

男「……ああ」


ジュースを飲んで落ち着いた後、三人でミニテーブルを囲んだ。
アプリを起動し、トップ画面が表示される。
ゆうは待ちくたびれた様子で、ぬいぐるみと戯れていた。


女「……!」

女友「えっと……、この子がゆうさんなの」

ゆう「わわっ、はじめまして。私はゆうです……」

女「本当に私そっくりなんだ……」

ゆう「女さん、ですよね?」

女「……はい」

ゆう「わ、私も驚きました! 本当に私そっくりなんですね!」

女「あなたの方が、私にそっくりなのよ。そこは勘違いしないでくれる?」ムッ

ゆう「そ、そうですよね。すみません……」

女「それにしても、本当に普通に会話が出来るんだ……」

女友「ねっ、すごいでしょ。私も初めて見たとき、びっくりしちゃって」

女「ゆうさん。あなたは、どうして私にそっくりなの?」

ゆう「分かりません。はっきりした事は、まだ分かっていないんです」

女友「えっと……、ゆうさんには過去の記憶がないの」

女「記憶がない?」

ゆう「はい……。私は死んでしまったんです」

ゆう「死神に連れて行かれて、あの世に向かう途中で私だけが落ちてしまいました。そして気が付いたら、男さんのスマホアプリになっていたんです」

ゆう「私が覚えている記憶は、それだけなんです」

男「おいっ、それを話すのはまだ早いだろ」

ゆう「はわわ、そうでした!」アセアセ

女「死んだ? 死神?!」

女友「きっと、死神は本当にいるんだと思う。それくらいでないと、説明が付かないから」

男「どういう意味だよ、それ……」

女友「ねえ、女さん。覚悟は出来てる?」

女「う、うん。ある程度のことは、心の準備が出来ているつもりだから」

女友「分かった。じゃあ、二人に話すね……」


女さんの言葉を聞いて、女友の雰囲気が変わった。
いよいよ、ここに来た目的を言うつもりだ。


女友「ねえ……、男は超常現象を信じる?」

男「超常現象?」

女友「例えば、空に向かってブランコが落ちるとか――」

男「いやいや、そんな訳ないだろ」

女友「私たちは、実際にそれを見たの。そして、ゆうさんから話を聞いて確信した」

女友「ねえ、日曜日にメールしたでしょ。あの時間、男は何をしていたの?」

男「それは……」


あの時間は、ゆうとエッチをしていた。
そんなこと言える訳がない。


女友「黙っていても、全部知ってるから。空に落ちるブランコ、心当たりがあるはずだよねえ?」


なるほど……。
ゆうが悩みを相談したのか。
それなら仕方がない――。


男「知っているなら認めるけど、それって本気で言ってるのか?」

女友「そうよ。スマホを貸してほしかったのは、それを確かめるためだったの」

男「それで確かめるって、どうするんだ?」

女友「そのアプリで、実際にやってみせて欲しいの。ゆうさんも準備は良い?」

ゆう「は、はいっ!」

男「そういう事なら、実際にやってみるけど……」


俺はタッチペンを取り出し、リンクを接続した。
すると、ゆうの洋服が女さんと同じ部屋着に変わり、体勢が正座になった。
そして背景が、女さんを正面から映すアングルに変更された。


女「…ぅくっ……」

女友「えっ……。これって、女さんが今着ている服じゃない!」

男「そ、そうみたいだな……」


同じ服とか、それ以前の問題だ。
これではまるで、女さんそのものじゃないか――。

女「あの……、試すんですよねぇ」

女友「……そうそう。何か大丈夫な物ってない?」

女「だったら、あのぬいぐるみが良いと思う」


そう言って、女さんはぬいぐるみを指差した。
もう、試さなくても結果は分かる気がする。
だけど、しなければならない。

スマホを手に取り、カメラのアングルを変えた。
部屋の間取りは再現されているが、俺と女友の姿はない。
そして、指定されたぬいぐるみの重力を反転させる。


――ポフッ


ああ、やっぱりか。
俺たちの目の前で、ぬいぐるみは天井に落ちていった。

今日はここまでにします。
レスありがとうございました。

女友「信じられない……。やっぱり、そのアプリが原因なんだ」

男「そ、そうみたいだな」

ゆう「本当にぬいぐるみが落ちたのですか?」

男「今、天井にある」サッ

ゆう「本当なんだ……」


重力の設定を戻すと、ぬいぐるみはポスッと下に落ちた。
このアプリで重力を反転させると、本当に空に落ちるのだ。

待てよ……。
アプリで起きたことが現実に起きるなら、それは背景だけの事なのか?

女「じゃあ、私が今までつらい思いをしてきたのは……」

女友「それを今から確かめましょ」

男「あぁ、そうだな。ゆう、立ち上がれるか?」

ゆう「……分かりました」


女友の言葉を聞いて、俺はゆうを立ち上がらせた。
すると、女さんが困惑した面持ちで立ち上がった。

やはり、アプリが影響しているのは背景だけではなかったのだ。
ゆうの行動が、女さんに影響している。
リンクの接続とは、二人の魂が繋がることだったのだ。

しかし、完全に同期している訳ではないようだ。
女さんの言動から分かるように、二人には独立した思考がある。
今みたいに、ゆうに命令した行動には逆らう事が出来ないのだろう。

男「それじゃあ、脱がせてみるから」

女「えっ……うそ。あ……」オロオロ

女友「ちょっと、何やってんのよ!」


その声に驚いて、俺は手を止めた。


女友「男は外に決まってるでしょ。ほら、スマホを置いて出て行きなさいよ!」

男「えっ? でも、確かめるって……」

女友「でも、じゃないでしょ! エッチが好きなのは良いけど、油断も隙もないんだから……」ジトー

男「分かった。出て行くから、俺をそんな目で見ないでくれ」

女「いいですよ……。このまま部屋にいてください」

女友「いいって、どうして?!」

女「ここにいてもらわないと、証拠にならないから」

女友「それはそうだけど……」

男「じゃ……じゃあ、試してみるから」

女友「男、じろじろ見たりしたら、今度は許さないからね」

男「わ、分かってるって」


そう言うと、女友が俺の隣ににじり寄ってきた。
そして、スマホを覗き込む。


ゆう「お……男さん。その、お願いします」キョドキョド

男「あ、ああ……。軽く脱がせるだけだから――」

女友「ほら、いつもやるみたいにやってみて」

男「いつもって言うなよ……。じゃあ、本当に脱がせるから」


そう言って、ブラウスのボタンを外した。
この部屋着は、もう何度も脱がせた服だ。
慣れた手つきで胸元を開き、袖から腕を抜く。

それと同時、衣擦れの音が聞こえた。
そして視界の隅で、ブラウスが床に落ちた。


女「うぅ……この感覚……」ハァハァ

女友「あ、あの時と同じだ。服が勝手に……」

男「まさかと思ったけど、本当に脱げるのか!」

しかし、一枚だけなら偶然かもしれない。
そう思い、ズボンを半分だけ下ろした状態でキャミソールを脱がせ、
半脱ぎのズボンを一度穿かせてから、ゆうに脱がせてみた。

もちろん、女さんからは画面を見ることは出来ない。
それにもかかわらず、まったく同じ動きで脱いでしまったのだ。

これはホンモノだ――。


女友「これ、本当にその通りになるんだね」

男「何なんだよ、これ……」


タッチペンで脱がせれば、女さんと衣服がアプリと同じように動いて、魔法のように脱げてしまう。
そしてゆうに脱がせれば、女さんが自分で衣服を脱ぐことになる。
どちらにしても、女さんは強制的に、ゆうと同じ姿になってしまうのだ。

女友「一応聞くけど、そのアプリは下着も脱がせられるんだよねえ」

男「そうだけど、このブラジャーだけは無理なんだ」


ある時から、ゆうは外し方が分かりにくいブラジャーを着けるようになった。
その中でも特に、これだけはタップをしても外せないのだ。
強引に引っ張ろうとすると怒られるし、外したいときはゆうに頼むしかない。


女友「無理って?」

ゆう「これはフロントホックブラで、すごく強力な磁石で留めているんです」

女友「へぇ、そんなのあるんだ。見せて見せて//」

女「えっ?! ちょっ、恥ずかしい……//」


女友にされるがままになっている、女さん。
ふくよかなおっぱいが、とても柔らかそうだ。
こんな状況、健全な男子に我慢できる訳ないだろ――。

男「ところで、服が脱げるのは分かったけど、感覚は伝わるのかな?」

女「感覚……ですか。試しても良いですけど、察するにいやらしいことですよねえ」

女友「えぇっ、いやらしい事をするつもりなの?!」ジトー

男「そうじゃなくて、確認……。そう、確認しておきたいだけだから」アセアセ

女「分かりました……。私も気になるし、確認しておきたいです」

男「じゃあ、少しだけやってみるね」


まさか許してもらえるとは……。
とりあえず、ゆうの胸を揉んでみる。
すると、女さんの胸も揉まれているかのように変形した。


女「…んぅっ……」

ゆう「ぁぅんっ……//」

男「やっぱり、ゆうと同じように感じるのか」サスサス

女「ぁぅっ……あぁ…//」

男「ゆうはここが弱いよな//」

ゆう「……男さん。あんっ……//」

女「んんっ……ぁっぁっ…」カアッ//

女友「男っ! いつまでやってるのよ!」


胸をくりくりしていると、強引にスマホを奪われた。
少し調子に乗りすぎたかもしれない……。


男「ご、ごめん。エロアプリだし、確かめておきたくて――」

女友「私には、楽しんでいるだけに見えたけど?」プンスカ

男「すみません。おっしゃる通りです」

女「……きゃあぁっ!」

女友「……えっ?! あっ、女さん!」

女さんを見ると、柔らかそうなおっぱいが露わになっていた。
強引にスマホを奪われたせいで、それがブラジャーを強引に外そうとする動作になってしまったらしい。


女友「わわっ、ごめん! ゆうちゃん、ブラ着けて!」

ゆう「はっ、はいっ!」アタフタ

女「ううっ……。でも、これで何もかも分かったわ」

女「女友ちゃん。そのスマホを貸して」

女友「う、うん……」


女友は、女さんにスマホを手渡した。
そして女さんは、スマホを受け取ると操作を始めた。


女「ふうん、私だと操作出来ないんだ。こんなもののせいで、私は……、私は――」ウウッ

女友「ねえ、男。この状況、分かるよねえ!」

男「分かるって、何が……」

女友「男がゆうさんとエッチをしていたとき、女さんも同じ事をしていたのよ!」

ゆう「……!! 私、そんなこと知らなかった……」

女友「ゆうさんが、そんな人じゃないことは分かってる。男のことが好きで、尽くしていただけだもんね」

男「そんなの、シャレにならないじゃないか――」

ゆう「ごめんなさい。ごめんなさい……」ポロポロ

女「そうです、シャレにならないんです!」グスッ

女「私が今までどんな思いをしてきたか、男さんに分かりますか?!」ポロポロ

男「そ、それは……」

女「私、もうこんな思いはしたくないんですっ!」


女さんは激昂し、スマホを振り下ろした。
そして、ミニテーブルの角に叩き付ける。


ゆう「うそ……。いやっ、いやあぁぁっ!!」

男「ゆうっ!」


俺は、慌てて手を伸ばした。
しかし、間に合わない。

ガシャアァァンッ!!

今日はここまでにします。
レス、即レスありがとうございました。

女友「ゆうさんっ!」

女「うぐあぁぁっ……!」

女友「女さん?!」

男「ど、どういうことだ?!」


スマホが床に転がると同時、女さんが崩れ落ちた。
お腹を抱え、苦しそうに呻き続けている。
そして両手足が痙攣したかと思うと、女さんは事切れた。

女友「ね、ねえ。お、女さんどうなったの?!」

男「リンクを接続した状態でゆうを叩き付けたから、その衝撃が女さんにも伝わったんだ」

女友「でも、女さんは使えないし、テーブルでスマホは動かないんじゃ……」

男「でも、これが現実だろ!」


叩き付けたときは、手に持っていなかった。
そして壊れる瞬間に、電極間の静電容量が異常な変化を起こしたのかもしれない。

原因なんて分からない。
壊した結果がこれなんだ。


女友「じゃあ、こんな事で女さんは死んじゃうの?!」

パネルが割れてしまい、まったく起動しないスマホ。
そして、糸が切れた人形のように動かない女さん。

ゆうは女さんだ。
それはもう、疑いようがない。
だけど死の原因が、こんなことであっていいはずがない。

ゆうが宿ったスマホを壊すことで、女さんが死んでしまうなんて。
そして女さんに壊されることで、ゆうの魂が消えてしまうなんて――。

これだと俺は、二人を追い詰めただけじゃないか……。

女友「ねえ、女さん! 起きて、起きてよおっ!」ユサユサ

男「ごめん。ちょっと代わってくれ!」

女友「う、うんっ……」


女友と場所を代わり、女さんの胸と腹部を見た。
規則正しく上下に動いているので、ちゃんと呼吸をしていることが分かる。
そう、女さんは生きているのだ!


男「……大丈夫。気を失っているだけみたいだ」

女友「ほ、本当なの?!」

男「よく見ると、ちゃんと呼吸をしているだろ」

女友「良かったぁ……。もう、どうなったかと――」ウウッ

男「とりあえず、ベッドに運んであげようか」

女友「多分、それは無理……だと思う」

男「無理? 抱えるくらい、俺でも出来るって」

女友「公園にいたとき、どんなに頑張っても動かせなかったの。女さんが言ってたけど、縛られたみたいに移動出来なくなるんだって……」


そう言われ、試しに持ち上げようとしてみた。
しかし、身体の下に腕を入れることさえ出来なかった。
まるで、床に張り付いているかのようだ。


男「そうみたいだな。これだと、救急車を呼ぶことも出来ないし……」

女友「そっか、運べないもんね」

男「仕方ないから、服を掛けてあげようか」


そう思い、キャミソールを取ろうとしたが持ち上げられなかった。
これもまるで、根を張っているかのようだ。

男「……何だよ、これ」

女友「身体を動かせないのと同じで、脱いだ服も動かせないみたいなの。シーソーのベルトも外せなかったし……」

男「でもこれは、服を盗まれる心配がなくなるから、親切設計だな」

女友「親切設計……ねえ。あと、掛け布団も無駄だと思う。私の上着を着せようとしたら、見えない壁が出来たりしたの」


どうやら、アプリ画面と現実に、大きな食い違いが起きないようになっているらしい。


男「そうなると今、スマホが壊れているのに、アプリが起動していることになるよな」

女友「そ、そうだよね」


ゆうのアプリは、スマホのデータ容量をほとんど使用していない。
つまり、タップ操作や画面表示などの入出力以外の大部分は、魂に依存していたことになる。
だからスマホが壊れても、二人は無事だったのだ。

男「これで、ゆうの魂が消えていないことも分かった。自分に殺される悲劇は、避けることが出来たんだ」

女友「だけどこのまま、女さんが起きないなんてことになったら……」

男「操作をしなかったら、三十分で仮切断されるんだ。しばらくしたら、女さんは目が覚めると思う」

女友「じゃあ、ゆうさんは? 女さんが気絶しているってことは、ゆうさんが気絶しているってことでしょ!」

男「それは……。ゆうは幽霊だし、無事を信じよう」


スマホを修理すれば、ゆうは回復するのだろうか。
そして女さんは、仮切断で本当に目覚めるだろうか。
今の俺には、ただ信じることしか出来なかった。

女友「ねえ、どうしてこんなことになっちゃったんだろ」

男「それは……」

女友「ゆうさんは、未練を遂げようとしていただけなのよ!」

女友「それなのに、どうしてこんなに苦しまないといけないの?!」ウウッ

男「女さんが死んだときに、死神のせいで世界が壊れてしまったんだ。きっと――」

女友「死神のアプリ……か」


なぜ、ゆうがエロアプリになったのか。
それは未練を遂げさせる対価として、過去の自分を傀儡させるためだったのだ。

それならば、記憶がないのは当然だ。
記憶を消さないと、こんな事は出来ない。

男「死神がゆうを回収しないのは、アプリを使わせるためだったのか……」

女友「そんなの、ヒドすぎる――」

男「仮にそうだとして、女さんの死の原因は何なんだろうな」

女友「はあ?! それ、本気で言ってるの?」

男「どういうことだよ」

女友「これが原因に決まってるじゃない!」

女友「男、あなたに女さんのつらさが分かる?」

男「それは……。つらい思いをさせたのは悪かったと思う。だけど知らなかったんだ――」

女友「それは分かってる。だから私は、一方的に責めるつもりはない。だけど少し考えてほしいの」

女友「女さんは毎日毎日、時間と場所を選ばず裸にされていたのよ」

女友「最近は家が多かったらしいけど、学校や塾、公園でそういう事をしてしまって耐えられると思う?!」

女友「公園は私だけだったから良かったけど、教室には人がいたんだよ。しかも、逃げられないの!」

女友「私だったら、こんなの絶対に耐えられない!」

男「それくらい分かってるよ。だけど、その感情が死の原因だとすれば、ゆうに繋がらないだろ」

女友「繋がらないって、何がよ!」

男「自分で言ってたじゃないか。『俺のことが好きなのに死んでしまったことが、ゆうにとって未練になっている』って」

女友「それはそうだけど、もう諦めたほうが良いと思う。こんなことがあって、好きになれる訳がないでしょ」

男「……待てよ。これが死神の狙いなんだ」

女友「えっ?」

男「ほらっ! 女さんが死んでもゆうにならない事で、魂を回収できるようになるんだよ」

女友「それで、男はどうするつもりなの?」

男「どうするって、何も変わらないさ。死の原因は、女さんの感情とは無関係だと分かったんだ」

男「ならば外的要因を探すために、女さんとゆうを交えて話し合うしかないんじゃないかな」

女友「女さんは、もう会いたがらないと思うけど……」

男「そうだとしても、女さんを助けるには必要なことだろ」

女友「つまり、私に上手く取り持ってほしいってこと?」

男「今回のことを帳消しに出来るくらい、上手く言ってくれたら嬉しいかな」

女友「はあ……、一つ聞かせて。男は何のために、女さんを助けるの? ゆうさんの記憶を受け継がせて、付き合うためなの?」

男「正直、そうなれば良いなって期待もあるけど、女さんを助けることで二人の魂を救えるなら、考えるまでもないじゃないか」

女友「……」

女友「……そう、分かった。そういう事なら、男に協力してあげる」

男「女友、ありがとう!」

女友「それでその間、ゆうさんの未練はどうするの?」

男「それも話し合うしかないと思う」

女友「男がずっと我慢し続けることは出来ないの?」

男「我慢って簡単に言うけど、今だって結構つらいんだけど」

女友「……えっ、たったの三日間でしょ?!」

男「オトコって、そういうもんなんだよ」

女友「そ、そうなんだ。ごめん……、さっきは言い過ぎた」

男「まあ、折衷案を探してみるよ」

女友「ていうか、男。今気付いたんだけど、いつまで女さんを見てるのよ!」

男「えっ……、あ…いや、ほらっ。見てないって」チラッ

女友「今、見てたっ。絶対にエッチな視線を向けてた!」

男「わ、悪かった。下着姿だから、つい……」

女友「つい、じゃないでしょ」


女友にポカポカ叩かれ、部屋の隅に追いやられた。
そして、仮切断の時間になった。

今日はここまでにします。
たくさんのレス、即レスありがとうございました。

・・・
・・・・・・
女「う、うぅん」

女友「あっ、女さん。気が付いた?」

女「女友ちゃん、私……」パチクリ

女友「女さんは、気を失っていたの」

女「そうなんだ……」

男「無事に気が付いて、本当に良かったよ」

女「……男さんに、部屋の隅で何をさせているの?」

女友「エッチな狼を隔離してたの」

女「そ、そうなんだ。女友ちゃん、ありがとう」

男「ところで、女さん。どこか痛むところは無い?」

女「特には……。男さん、今日はもう帰ってもらって良いですか?」

男「ご、ごめん。それじゃあ、俺はもう帰るよ」

女友「じゃあ、私が玄関まで送っていくから。その間に、女さんは着替えてて」

女「ありがとう」

男「女さん。落ち着いたら、また話をしよう」

女「そうですね……、また」

男「それじゃあ、お邪魔しました」パタン

~玄関~
女友「ねえ、男」

男「何?」

女友「ゆうさんのこととか、本当にごめんなさい。こんなことになるなんて、想像してなかったの……」

男「仕方ないよ。女さんのことは不用意に言えることじゃないし、女友は間違ってなかったと思う」

女友「うん……、ありがとう。女さんには上手く言っておくから、気を付けて帰ってね……」

男「今までのことが帳消しになるくらい、上手く言っといてくれ。じゃあ、また明日――」

~家・夕方~
男「母さん、話したいことがあるんだけど……」

母「お帰りなさい。どうかしたの?」

男「実は、スマホを壊してしまって……」


そう言い、壊れたスマホを手渡す。
母さんはそれをテーブルに置くと、声を震わせた。


母「何をしていて壊したの?!」

男「うっかり落としてしまって、当たり所が悪くて……」

母「落としたくらいの衝撃で、こんな壊れ方しないわよ」

男「そのまま気付かずに、踏んでしまったんだ。修理したいんだけど……」

母「それも嘘でしょ。本当のことを言わないなら、しばらくお小遣いは半分だからね!!」

男「ごめん……」

~ショップ~
店員「こちらのスマートフォンですか?」

母「はい。修理をお願いします」

店員「修理でしたら、一週間前後でお返し出来るかと思います。損傷が著しいので、場合によっては基板を――」


母さんに何度も謝り、無事に修理してもらえることになった。
店員さんには機種変更を勧められたが、このスマホを手離す訳にはいかない。
後は、ゆうの回復を願うばかりだ。


店員「修理期間中ですが、代わりのスマートフォンはいかが致しましょうか?」

母「必要ありません」

男「一週間だろ。絶対にいるって!」

母「物を大切に扱うということがどういうことか、その間に反省なさい!」

男「分かったよ……」

店員「それでは、修理が終わりましたらご連絡致します」ペコリ

~部屋・夜~
今日からしばらく、ゆうと話が出来ないのか――。
そう思うと、部屋が寂しく感じられた。

ゆうは大切な存在になっていたのだなと、居なくなって気付かされた。
会話が楽しくて、エッチな雰囲気作りも上手だった。
服を脱がせてタップしてあげると、喘ぎながら悦んでくれた。

しかしそのとき、女さんも裸にされて喘いでいたのだ。
ゆうと同じ表情で、ゆうと同じ声で――。

俺は事情を知らなかったとはいえ、女さんを辱めてしまったのだ。
あんなに怒るのも無理はない。
あのときに謝れていれば、こんなことにならなかったかもしれないのに……。

今日、女友が言った通りだ。
ほんの数時間で、本当に大変なことになってしまった――。

今日はここまでにします。
ありがとうございました。

~学校・お昼休み~
友「女友から聞いたんだけど、スマホが壊れたらしいじゃないか!」


翌日の昼休み、友が慌てた様子で話し掛けてきた。
友と女友は、密に連絡を取り合っているのか……。
そう思いつつ、俺は当たり障りのない返事を返すことにした。


男「昨日、色々あって……。今、修理しているんだ」

友「ゆうちゃんは大丈夫なんだろうな?」

男「魂は消えていないみたいだから、大丈夫だと思う。一週間で直るらしいし、笑顔で帰ってきてくれると信じてる」

友「それなら良いんだけど……」

男「色々と考えてしまって、一週間が長そうだよ」ハァッ

友「なあ、男。俺はここが分岐点だと思うんだ」

友「これは時間ループものなのか、それともホラーなのか」

女友「二人とも、お待たせ~。ホラーって、どういうこと?」

友「ゆうちゃんには、女さんを操る機能が隠されていたんだろ」

女友「……うん」

友「ホラー小説でありそうな設定じゃないか」

男「それで、分岐点ってどういう事だよ」

友「男がゆうちゃんの正体を選ぶんだ。女さんなのか、それとも悪霊なのか」

男「ゆうが悪霊な訳ないだろ!」


俺は声を上げた。
友は何を言ってるんだ?!

友「まあ、冷静に聞いてくれ。ゆうちゃんは、空から女の子が降ってきた系の、押し掛けヒロインの可能性があっただろ」

男「押し掛けヒロインだと、女さんと容姿が同じである必然性がないって言ってたじゃないか」

友「その時は、女さんを操る機能のことを知らなかったからな。わら人形に写真を貼るのは、お約束だろ?」

男「それはそうだけど……」

友「むしろ悪霊だとしたほうが、タイムスリップを考慮せずに済むから受け入れやすい仮説だと思う」

男「そうだとしたら、どうして俺のスマホなんだよ」

友「それは、女さんのことを知らない若いオトコだったからだ。まさに狙い通りの結果じゃないか」

女友「つまり、女さんは誰かに恨まれるような事をしていたって言いたいの?」

友「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。ホラー小説では、悪霊の祟りや呪いが付き物だろ」

女友「それ、本気で言ってるの? ゆうさんが、悪霊な訳がないでしょ!」

友「分かってるよ。だから、男の覚悟を聞きたいんだ」

友「悪霊の可能性があっても、ゆうちゃんを信じて救うのかどうか――」

男「確かに悪霊だと考えれば、アプリ機能に納得できる。でも、俺はゆうを信じる!」

男「ゆうは悩んで泣いていたんだぞ。死んでいる自分より、女さんを好きになってほしいって言ったんだ……」

男「そんな優しい悪霊が、どこにいるんだよ! ゆうが悪霊だったとしても、俺は絶対に二人を助けてみせる!」

女友「男……、少し感動した」ウルッ

友「俺たちに、ここまで言ったんだ。もう後には退けないぜ」

男「……?! もしかして、俺を試したのか」

友「どうだろうなあ」ニヤニヤ

男「くそっ、恥ずかしいじゃないか!」

女友「それで、これからどうするつもり?」

男「どうするというか、昨日から死神のアプリのことを考えているんだ。今ひとつ、分からない事があるんだよな……」

友「分からないって、何が?」

男「容赦なく回収したゆうの魂を、アプリにした理由だよ」

友「死神がアプリにしたとは限らないだろ」

女友「私は死神が関わっていると思う。そうでないと、あんな卑劣な現象は説明が付かないもの」

友「でも確かに、死神がアプリに関わっているなら、魂の回収をせずに待っているのも頷けるよな」

男「そうなると、アプリを使わせることが、死神の目的だと分かるだろ」

友「そうだな」

男「すると、死神にメリットがあるんだけど……」


1:俺を好きにならなければ、女さんは死んでもゆうにならない。
2:タイムスリップが起きないことになるので、女さんの魂を普通に回収できるようになる。


男「……こう考えたんだけど、余計に面倒臭いと思うんだよな」

女友「ゆうさんの魂を回収できない理由があるのかなあ?」

友「ちょっと待て。その仮説は、俺たちにもメリットがあるぞ」

男「俺たちに?」

友「未来を変えられることが、死神のおかげで立証されたことになるじゃないか!」

男「なるほど……。死神の思惑を超えれば、女さんを助けることが出来るのか!」

女友「その死神のメリットを信じるなら、ホラーの話は違うことになるよね」

友「死神のメリットは、ループものを前提とした推理だろ。ホラー設定と混同するのは良くない」

女友「そ、そうなんだ」

男「問題は死の原因だよな……」

友「こればっかりは情報がなさ過ぎるし、ゆうちゃん頼りな部分は否めないな」

男「そうでもない。さっき話した死神のメリットが正しいなら、死の原因は女さんの感情とは無関係の、外的要因だと分かるだろ」

友「それは違うぞ。未来が変わるなら、死の原因も変わるんじゃないか?」

男「ああ……、そうか」

女友「死の原因が変わるなら、ゆうちゃんにも頼れないんじゃないの?」

友「いや、過去や未来が変わっていることが分かるだろ」

女友「それって、意味あるのかなぁ……」

友「とりあえず、これは女さんの問題だ。死ぬなんて話はされたくないだろうし、どうしたら良いかな?」

女友「死ぬことと死神のことは、流れで話してあるわよ」

友「そうなんだ。男はどうしたい?」

男「つらいことが続いていた訳だし、なるべく意識させない方が良いんじゃないかな」

友「でも、女さんからの情報も欲しいし……」

女友「じゃあ、ゆうさんが帰って来るまで待ちましょ。それが一番良いんじゃない?」

友「そうだな。一週間あれば、気持ちの整理が出来るだろうし」

男「それが良さそうだな」

男「ところで、女友。女さんの体調はどうだった?」

女友「落ち着いてたし、大丈夫そうだったよ」

男「そっかあ、良かったよ」

女友「そういえば今朝、メールがあったの。男の住所を知りたいらしいんだけど、どうする?」

友「住所って、フラグじゃないか?!」

男「マジか!」

女友「私は家族で顔合わせに行くのかなって思うんだけど、教えて大丈夫かな?」


なるほど……。
普通はそっちだよな。


男「そういうことなら断れないし、覚悟しておくよ……」

女友「了解っ! 男、頑張ってね」ニコッ

今日はここまでにします。
レス、ありがとうございました。

~放課後・女さん~
今日は勇気を出して、久し振りに学校に行ってみた。
その帰り道、地図アプリにナビをさせながら、男さんの家にやってきた。

ここが男さんの家……なんだよねえ。
このチャイムを押せば、男さんが……。

勇気を出して、チャイムに触れた。
しかし、押せずに指を離す。
そして結局、チャイムの前に立ち尽くした。

押さないといけないよね。
謝るために来たんだし……。


女「よしっ、決めた!」

「決めたって、何を?」

女「……!」ビクッ


驚いて振り返ると、見知らぬ女性が立っていた。
察するに、男さんのお母さんだ。

女「あっ、あの……」

母「どなたですか。もしかして、男のお友達?」

女「わわ、私は女と申します。今日はその、男さんや家族の方に謝りたいことがあって来ました……」

母「私たちに謝りたいこと?」

女「は、はい。昨日、スマホを壊してしまって、それで……」

母「うっかり落としたって聞いたけど、あなたが落としたの?」

女「いえ……。私がテーブルに叩きつけて壊したんです」

母「何それ……。ちょっと詳しく聞かせてくれる? 中に入りなさい」

女「は、はい……」

~リビング・女さん~
母「……で、どうしてそんなことをしたの?」


おばさんは険しい表情で言った。
本当のことは言えないけど、嘘を吐くわけにはいかない。
私は心を決めて、口を開いた。


女「詳しい事情は言えないのですけど、今月からずっとつらい事が続いていたんです」

母「うん、それで?」

女「それで友達に相談して、昨日、男さんに会いました。最初は話し合うつもりだったのですけど、ある切っ掛けで気持ちを抑えることが出来なくなって――」

母「……」

女「とても許せなくなって、スマホをテーブルに叩きつけてしまいました」

母「……そう」

女「本当にすみませんでした!」

母「それで、男は女さんに何をしたの? 事によっては重大だし、詳しい事情を聞かせてくれない?」


詳しい事情、か……。
アプリに操られて、性的な行為を強制されていたんです。
そんな話を、どこの誰が信じるだろう。
女友ちゃんから聞いたとき、自分でも半信半疑だったのだ。
絶対に言える訳がない。


女「男さんは何もしていません。ただ、信じられないようなことが起きていたんです」

女「だからこうして、スマホを壊したことを謝りに来ました」

母「男が何もしてないのは良かったけど、信じられないようなこと……ねえ」

女「あの、スマホの弁償はどうすればいいですか?」

母「今回のことで二人が反省するなら、弁償はしなくていいから。だけどどんな事情があっても、壊してもいい理由にはならないことは覚えておきなさいね」

女「……はい。すみませんでした」

母「まあ、いいわ。女さんだっけ、正直に話してくれてありがとう。謝ることが出来る人で良かったわ」


おばさんはそう言うと、にこりと笑ってくれた。


母「男は部屋にいるはずだから、謝るなら会っていきなさいね」

女「は、はいっ」

今日はここまでにします。
レスありがとうございました。

~部屋~
トントン
男「何?」

女「お、男さん。お邪魔してます」

男「女さん?! どうしてここに……」


いつ来たんだ?!
というか、学校帰りに何の用だろう。
顔合わせを覚悟していたので、少しほっとしたけど……。


女「昨日のことを謝りたくて、女友ちゃんに住所を教えてもらいました」


――謝る?

男「女さん、謝るのは俺のほうだ。知らなかったとはいえ、つらい思いをさせてしまって、本当に申し訳ないです」

女「そのことは、もう良いんです。一晩考えて許すことにしましたから」

男「えっ……」

女「ゆうさんを裸にしたら私も裸になるなんて、普通は想像できないですよね」

女「男さんは、ただ普通にアプリを楽しんでいただけなんです。悪いのは死神ですから……」


まさか、こんなに簡単に許してもらえるとは思わなかった。
思い返してみると、女さんが激昂したのはブラジャーが外れた後だ。
もしそれがなければ、冷静に話し合うことが出来ていたのかもしれない。

男「それでも、俺が悪いんだ。下着のこととか、本当にごめん……」

女「あれは事故なんです。私のほうこそ、取り乱してスマホを壊してしまいました」

女「本当にごめんなさいっ!」ペコリ

男「スマホは、来週には直るみたい。だから、大丈夫ですよ」

女「本当にすみませんでした。ゆうさんにも、謝っておきたいです」

男「それが良いかもね。きっと許してくれると思う」

女「はい……」

女「ところで、ここが男さんの部屋なんですよね」

男「そうだけど」

女「エッチな本って、どこに隠しているんですか?」キョロキョロ

男「んなっ?!」

男「エッチな本は持ってないから!」アセアセ

女「あぁ、ですよね。あのアプリがあれば必要ないし」ニコッ


そのにこやかな笑顔が、微妙に怖い。
やっぱり、怒っているではないか……。

男「それはその――」

女「私が裸にされていたとき、男さんはエッチなことをしていたんですよね?」

男「それは、なんと言うか……。本当にごめんっ!」

女「いえ、良いんです。男さんを許すのは、さっき話した通りですから」

女「女友ちゃんから聞きました」

男「聞いたって、何を?」

女「若いオトコの人は、射精をして悩む人がいるらしいんです。だけど、男さんは健全な気持ちでオナニーを楽しめる人だから、みんなを大切に出来る人なんだよ――と」


女友よ……。
あいつは何を言ってくれてるんだ。
しかも、ゆうの受け売りかよっ!


女「だから私、少しだけ信じてみることにしたんです」

男「……はっ?」

>>264
一部訂正
あいつは何を

お前は何を

女「月曜日に女友ちゃんから、私のことを説明されましたよねえ」

男「まあ、少しは……」

女「そしてその日から、男さんはアプリを使いませんでした」

女「私を大切にしてくれたことが、すごくうれしかったんです//」

男「う、うん……」


そう答えつつ、疑問に思った。
一体、今は何の話をしているんだ?


女「だから、その……」

女「私と付き合ってくださいっ!」

男「付き合う?!」

女「はいっ。私ではだめ……ですか?」


本気で言ってるのか?!

女さんは、俺のせいでつらい思いをしていた。
だから、昨日のように激昂したのも無理はない。
それなのに、一体どんな心境の変化があれば、一晩で付き合うという結論に至れるのだろうか……。

女友が上手く言ってくれたからか。
それとも、ゆうの記憶を受け継いだからか?


女「ごめんなさい……。考え込むなら、さっきの話は忘れてください」

男「えっ……?」

女「ゆうさんのことを大切にしていた男さんなら、私のことも大切にしてくれると思ったんです」

女「だけど、ゆうさんを壊した私なんか、もうすぐ死んでしまう私なんか、彼女にしてくれる訳がないですものね――」

その言葉を聞いて、女さんは大切にされたいと思っていることが分かった。
つらいことがありすぎたから、つらい未来が待っているから――。

俺は何としてもでも、女さんを助けたい。
そしてその女さんが、俺のことを必要としている。
ならば、返事は一つしかないじゃないか!


男「女さん、俺も付き合いたい。死の原因を探して、一緒に乗り越えよう」

女「え……、良いんですか?!」

男「こうして出逢えた訳だし、俺は女さんを知りたいと思う」

女「は、はいっ。うれしいです//」

女「そ、それじゃあ、今日を記念日にしてほしいです//」

男「記念日?!」


そう言うと、女さんは俺の隣に座り、肩を寄せた。
ぴったりと身体が触れ合い、ドキドキと胸が高鳴る。
ゆうでは感じることの出来なかった温もりが、すぐ隣にある。


母「……ケーキ、持って来たんだけど」

男「どわぁっ! な、何で勝手に入ってるんだよ!」

母「ちゃんと、ノックしたわよ」

男「ええっ、いつ?!」

母「いい雰囲気だったのに、ごめんね~。何だか邪魔しちゃったみたいで」クスクス

女「そ、そんなことないです// ケーキ、ありがとうございます」アセアセ

男「びっくりしたー」

女「……今日はだめですね」


確か、リビングにいたら声が聞こえるんだよな……。
母さんは油断禁物だ。
とりあえず、ケーキを食べて紅茶を飲むことにした。


男「そうだ、女さん。付き合うようになった訳だし、連絡先を交換しようよ」

女「はいっ」


女さんはそう言うと、通学鞄から筆記具を取り出した。
そしてお互いに、連絡先をメモ用紙に書いて交換した。


男「ありがとう。スマホの修理が終わったら連絡するから」

女「楽しみに待ってます♪」

女「でも修理が終わったら、ゆうさんが帰ってきますよねえ」

男「そうだけど」

女「そうなったら、ゆうさんのアプリは二度と使わないでほしいんです」

男「えっ?」

女「これ以上は、本当に耐えられません……」


女さんの表情が暗く沈んだ。
使うことで何が起きるか考えると、当然の要求だろう。

男「やっぱり、そうするしかないか……」

女「エッチな本は見てもいいので、アプリ以外でお願いします」

男「分かった……。でも一応、三人で話し合おうよ。ゆうにも意見があるだろうし、死の原因も考えないといけないから」

女「……そうですよね。でも操られるのは、もう限界なんです――」

男「限界……か。俺のせいだよね」

女「いえ……。そんなことないです」

男「う、うん……」

女「はい……」

男「……」

女「……」

男「…」

女「」

今日はここまでにします。
レスありがとうございました!

>>265の訂正は取り消します。
重ね重ねすみません。

男「あ、あの!」

女「はいっ!」

男「次の休みに、デートしようよ」

女「デート、ですか?!」


女さんは驚きつつも、身を乗り出してきた。
気まずい沈黙が続いてしまったけど、何とか話を続けられそうだ。


男「どこか行きたい所はある?」

女「私は動物園に行きたいです!」

男「動物園?!」

そこは日曜日に、ゆうと行ったばっかりだ。
定番コースだから、女さんが行きたがるのは普通のことなんだけど……。
まあ、行きたいならば仕方がない。


女「私はネコや動物が好きなんです。だから、動物園に行きたいです」

男「じゃあ、土曜日の9時30分に、動物園の前の駅で待ち合わせで大丈夫かな」

女「日曜日にしませんか? 21日から、特設コーナーが変わるんです」

男「そうなんだ。じゃあ、日曜日に待ち合わせで」

女「はいっ。男さんと初デート、楽しみにしています♪」

男「俺も楽しみにしてるよ」

女「それではその……、今日を記念日にしてほしいです//」


女さんはそう言うと、何かを待つように目をつむった。

昨日の今日で、どうしてこんなことが出来るのだろうとは思う。
大切にされたいとか、死が近いとか。
そんな気持ちが、女さんを急がせているのかもしれない。

だけど、同情ではなくて。
積極的なところが、女さんはゆうと同じだなと思った。


女「……んっ…」

男「女さん、今日からよろしくね//」

女「はぃ//」

女「あの……、男さん。遅くなると母が心配しますし、今日はもう帰りますね」

男「ああ、うん。近くまで送って行こうか?」

女「いえ、自転車なので。ではまた、日曜日に//」

~リビング~
女さんを見送って、キッチンで食べ終わった食器を洗った。
そしてリビングを通ると、母さんに声を掛けられた。


母「ねえ、男。昨日、女さんと何があったの?」

男「それは……」

母「大体のことは聞いたんだけど、男からも聞いておきたいのよね。女さんが、スマホを壊した理由」


女さんは母さんに、自分が壊したことを話したのか……。
しかし母さんの態度から察するに、アプリのことは話していなさそうだ。


男「……分かったよ」

男「詳しいことは言えないんだけど、知らない間に女さんを傷付けてしまっていたんだ」

男「そしてその原因が分かって、溜め込んでいた気持ちが爆発したんだと思う」

母「知らない間にって、どういうことなの?」

男「本当に、言葉通りの意味なんだ。信じられないようなことが起きていて、知らない間に女さんを……」

母「信じられないようなこと……ねえ。彼女もそう言ってたけど、話してくれないと何も分からないじゃない」


確かに、母さんの言う通りだ。
だけどこれは、女さんにとってデリケートな内容だ。
女さんが望んでいないなら、言うことは出来ない。


男「女さんが母さんに説明してないなら、俺からも言うことは出来ない」

母「そう……、もう良いわ。他校の生徒みたいだし、恋愛か何かで行き違いがあったんでしょ」

男「それは……」

母「二人で乗り越えればいいと思うし、二度と同じことを繰り返すんじゃないわよ」

男「それは分かってる」

母「それにしても、男に彼女がいたんだ~」ニヤニヤ

男「まあ、ようやく」

母「女さんって、どういう子なの?」

男「どういう子って聞かれても、少し困るんだけど」

母「この前、アダルトアプリを見せてもらったでしょ」

男「あー、うん」

母「彼女とゆうさん? 何となく似ている気がするのよね……」


それに気付くとは、目ざといな……。
関連付けられるとまずいので、上手くごまかしておかなければ。

男「女さんとは、まだ知り合ったばかりなんだ。女友の友達だし、気になるなら聞けばいいんじゃない?」

母「そうなんだ。女友ちゃんの友達なら、何の心配もいらないわね」

男「当たり前だろ……」


さすが女友。
持つべきは幼馴染だな。


母「でも、心配なのは男なんだからね。DVとか避妊しないとか、無責任なことをしたら許さないから!」

男「分かってるって……」

母「女友ちゃんの信頼を失わないように、彼女を思いやる気持ちを大切になさいね」

~待ち合わせ・休日~
男「女さんは、まだ来ていないみたいだな」


まだ約束の20分前だし、早く来すぎたかもしれない。
女さんは、一体どんな服を着てくるのだろうか。
今日一日がすごく楽しみでもあり、不安でもある。

しばらくして、女さんが駅舎から出てきた。
それを見て、俺は唖然としてしまった。


女「男さん、おはよう。待たせちゃいましたか?」

男「そ、そんなことないよ。おはよう……」

女「……?」


どういうことだ。
女さんが着て来た服は、ゆうがいつも着ている洋服と同じじゃないか。
これでは、先週と何も変わらない――。

男「女さん、その服……」

女「あっ、気付きました?」

女「思い切って、新しい服を買っちゃったんです♪」

男「新しい服?」

女「はいっ。男さんは私の服を全部知ってるから、新しい服で喜んでもらいたかったんです//」エヘッ


俺のために、新しく買ってきてくれたのか。
それならば、ゆうと同じ服だなんて、とてもじゃないけど言えないよな……。
最初から雰囲気を壊したくないし、今日は黙っておいてあげよう。


女「あの……、似合ってますか?」クルリン

男「うん。女性らしくて、すごく可愛いよ」

女「わぁ、うれしいです// 実はここがポイントで――」

男「じゃあ、行こうか」

女「はいっ♪」

今日はここまでにします。
レスありがとうございました。

~動物園~
女「休日の動物園は、家族連れやカップルが多いですね~」キョロキョロ

男「俺たちもその中の一組だよ」


先週来たときは、現実的には一人スマホだった。
だけど今日は、女さんと二人で来ている。
誰がどう見ても、これはデートだ。


女「そうですよね。私たちもデートだし//」


女さんはそう言うと、手を繋いできた。
少し戸惑ったけど、リードすべきだと思って、手を握り返す。
それだけで、心の距離が縮まった気がした。


女「ねえ、サファリコーナーから行きませんか。キリンの赤ちゃんに会いたいです」

男「じゃあ、まずはキリンに会いに行こうか」

女「ねえねえ、赤ちゃんキリンはどこだろ」

男「いたっ。ほら、あそこ!」

女「お母さんと一緒に歩いてる。かわいい~」

男「そうだね」

女「知ってました? キリンは牛の仲間で、『モォー』って鳴くらしいですよ」

男「へえ、そうなんだ。鳴かないかなあ」

女「鳴かないかなぁ」

キリン「…」

キリン「モォー」

女「男さんっ、聞こえた?!」

男「聞こえた!」


粘り強く待っていると、赤ちゃんキリンが鳴いてくれた。
動物園はどうかと思っていたけど、新しい発見ってあるものなんだな。

女「運が良かったね、私たち!」

男「ああ、初めて聞いたよ!」

女「私もっ」

男「鳴かぬなら鳴くまで待とう、ってやつだな」

女「……鳴くまで待とう、か」

男「そうそう、徳川家康。赤ちゃんキリンを信じて良かったよ」

女「うん、そうだね……。赤ちゃんキリンを信じて良かったです」

男「じゃあ、特設コーナーに行こうか」

女「特設コーナーは、世界のネズミ展だって。やっぱり、初日だから人がいっぱいだね……」

男「すごいな……」


ネコの次はネズミか。
冗談きついよ、この動物園は――。


女「ハムちゃん、かわいぃっ!」

男「見てみて。こっちは、チビキャラがいた!」

女「うわっ、小さいっ! カヤネズミって言うんだ」

男「でも、準絶滅危惧種だって。自然が減ってるからかな……」

女「可哀想だけど、仕方ないですよね。家にいたら嫌だもん」

男「確かに嫌だけど、カヤネズミも自然を人に壊されたら嫌なんじゃないかな」

女「……考えてみればそうかも」

男「生態系も人の繋がりも、なくなったら取り戻せないから大切にしたいよね」

女「……」

女「男さんって、意外と良いことを言うんですね」

男「まあね。でも、意外とは余計だと――」

女「見てっ、あのネズミ。尻尾がひょろっと長いです!」

男「……ちょっと待って。はぐれるから」アセアセ

女「世界のネズミ展、パンダマウスがプリティーでしたね~//」

男「パンダ柄って、破壊力抜群だよな」

女「あれは無敵ですね。カピバラさんは常設の触れ合いコーナーがあるらしいから、後で行きたいです」

男「そうだね、そうしよう」

女「でも、先週で終わったネコ展も見たかったな……」ショボン

男「じゃあ、今からライオンを見に行こうよ。ネコ科だし」

女「ネズミの王に会う前に、百獣の王に挨拶しましょう♪」

ライオン「――」チラリ

女「きゃあぁっ、こっち見た! やっぱり、ネコ成分は必要だね//」

男「女さんは、本当にネコ好きなんだな」

女「ねえ、男さん。一緒に写真を撮りましょうよ」

男「いいよ」


そう返すと、女さんは通りすがりの女性に声をかけた。
そして、スマホを渡す。


女「ライオンとスリーショットでお願いします」

おばさん「じゃあ、もう少し寄ってください」

女「あっ、はい……//」

おばさん「では、撮ります。はい、チーズ」

パシャリ

男・女「ありがとうございました」

女「いい感じに撮れましたね。このライオン、密かにカメラ目線ですよ」

男「本当だ。慣れてるなあ」

女「彼は慣れてますよね。では、この写真。男さんのスマホが直ったら、メールしますね♪」

男「あっ、うん。楽しみに待ってるよ。それじゃあ、お昼にしようか」

女「そうですね。いつの間にか、こんな時間なんだ……」

男「じゃあ、あのレストランでいいかな」

女「良いですよ。お昼を食べたら、カピバラさんに会いに行きましょうね!」


女さんはそう言うと、腕を絡ませてきた。
胸が当たって、その柔らかさを感じる気がする。

一緒に写真を撮ったり、腕を組んで歩いたり。
ゆうでは出来なかったことが、女さんとは出来る。
だけど、積極的すぎる気がしていた。

・・・
・・・・・・
女「今日は楽しかったです♪」

男「俺も楽しかった。女さんって、動物とドーナツが好きなんだな」

女「形が可愛くて、美味しいじゃないですか~」

男「ふんわり食感も良いよね。最初、ダジャレかと思ったけど」

女「ダジャレじゃないですっ」プンスカ

男「そういえば、円の方程式って勉強した?」

女「習ったかもだけど、数学は苦手です……」

男「だったら、一緒に試験勉強しない? 学校は違うけど、内容は変わらないだろうし」

女「そうですね。試験が近いし、授業も遅れちゃったから……」

男「じゃあ、週末にどこかで勉強しようよ」

女「はいっ。連絡、待ってます//」

男「そうだ。ドーナツが好きなら、ドーナツ屋さんに寄っていかない?」

女「あっ、いいですねえ。でも、ちょっと歩き疲れたかも……」

男「じゃあ、近くのお店にしようか」

女「いえ、そこに公園があるみたいですよ」

男「えっ、その公園は――」

女「ほらっ、木漏れ日が気持ちいいです。ちょっと上ってみましょうよ」


歩き疲れたと言った割には、すたすたと散歩道を駆け上がっていく。
女さんは、ここで俺が何をしたのか知っているのだろうか。
いや、知っていれば行きたがらないよな。

散歩道を見上げると、女さんが手を振ってきた。
それを見て、仕方なく後を追うことにした。
過去の失敗は反省して、女さんが喜んでくれることを考えよう。

今日はここまでにします。
レスありがとうございました。

女「恋人たちの人気スポットって聞いていたけど、まったく人がいませんね」

男「森林公園って、カップルが好んで行きたがる場所だとは思えないけど」

女「でも、私たちには好都合です」

男「好都合?」


何だか、これと同じような会話を先週もした気がする。
ならば、次に出る言葉は――。


女「ねえ、男さん。一緒にエッチしませんか?」

男「やっぱりか。どうして、こんな所で?」

女「ここは特別な場所だから……。だから、私の初めてをここで受け取ってほしいんです」

男「俺はそんなつもりはないし、女さんを大切にしたいから」

女「コンドームなら、私が持ってますよ。安心してください」

女さんはそう言うと、バッグから箱を取り出した。
そして箱を開け、たくさん入っていた小袋を、一つちぎり取る。
それを受け取って見ると、中にピンク色のゴムっぽい物が入っていた。


男「これがコンドームなんだ」

女「はい。もし生でしたいなら、私はそれでも大丈夫ですよ」

女「だから、セックスしませんか?」


どうして、こんなに準備が良いんだ。
いや、最初からそのつもりだったということか……。


男「こういうことは、俺のほうから誘うべきだと思うんだけど……」

女「私からでも良いと思います」

男「でも、知り合って間もないだろ。早過ぎると思う」

女「……私は不安なんです。だから、早くしたいんです」

男「不安?」

女「私はもうすぐ死ぬんですよね……。だから、その前に愛されたいんです!」

男「それでセックスを……」

女「はい」

男「女さんは死なせない。だから、大丈夫だよ」

女「ねえ、男さん。どうして、私がこの公園に来たと思いますか」

男「まさか……」

女「この公園で、ゆうさんとセックスをしたんですよね?」

男「知っていて、ここに来たのか」

女「そうです。ゆうさんのメールに書いてありました」

男「メール?!」


ゆうはメール機能まで使えたのか――。
確かにメールの受信を教えてくれていたし、内容も把握していた。
だけど送信履歴がなかったので、作成も出来るとは思っていなかった。


女「最初だけしか読めなかったけど、ここでしたことは分かっているんです」

女「だったら、私としてくれても良いじゃないですか!」

男「女さんとゆうでは、その意味が違うと思うんだけど」

女「違わないです。ゆうさんは、セックスだと認識していたんですから」

男「だとしても、ゆうはアプリだろ」

女「そのアプリは、幽霊になった私です。ならば、男さんは私とセックスしていたことになります」

男「だから、女さんもセックスしたい?」

女「私は今まで、たくさん苦しんで来ました」

女「それを耐えられたのは、男さんのことが好きだからだ……。そう思いたいんです」

女「死んでしまう前に、愛されていることを実感させてほしいんです」

男「女さんの気持ちは分かったよ。でも、それは良くないことだと思う」

女「どうしてですか?」

男「俺はゆうに出会って分かったんだ。セックスって、お互いに想い合う気持ちが大事なんだなって」

女「お互いに想い合う気持ち……」

男「そう。今の女さんは、つらい想いを紛らわせるために、セックスをしたいんだろ」

男「それって、現実逃避に俺を利用しているだけじゃないか」

男「ゆうの話は、それを正当化させようとしているだけに聞こえた」

男「そんなつもりでしか俺を見てくれていないなら、今の女さんとはセックス出来ない」


そう言うと、女さんは悲痛な表情で訴えてきた。

女「それの何が悪いんですか!」

女「死にたくなるほど毎日がつらくて、でもやっと原因が分かって、現実と向き合おうと思っていたんです」

女「ゆうさんのことが好きなら、私を大切にしてくれると思ったんです!」

女「彼女になれば、この苦しみを乗り越えられると思ったんです!」

女「それは、あなたでないと意味がないんです!」

男「女さんは少し間違ってる! つらい想いを癒したいからセックスしようとか、そんな繋がりもあると思う」

男「だけど俺たちは、まだ出会ったばかりだろ。もっとお互いのことを知ってから、するべきことだと思うんだ」

女「……それだと遅いんです。だから、早く繋がりが欲しいんです!」

男「女さんも自分で言ってたじゃないか。俺のことを『健全な気持ちでオナニーを楽しめる人だから、みんなを大切に出来る人だ』って」

女「……」

男「セックスも健全な気持ちで、お互いに想い合うことが大切なんじゃないかな」

男「俺が守ってみせるから、俺と真剣に向き合ってほしい」

女「……」

女「……私のこと、もう嫌いになりましたよね。私は、男さんを利用していただけなんですから」

男「そんな訳ないだろ!」


俺はそう言うと、女さんを抱き締めた。
今ここで伝えないと、すべてが終わってしまう。


女「わわっ、離してください//」

男「今日のデートで、女さんは明るくて積極的な女子だと思った。つらい気持ちを抱えているのに、楽しかったと言って笑顔を見せてくれた」

男「そんな女さんを、もっと知りたくなった」

男「だから、一緒に相手の気持ちを想い合うことから始めようよ。俺は女さんと、本気で付き合いたいんだ!」

女「……ぁ」

女「良いんですか、私なんかで……」

男「俺は女さんを知りたい。女さんのことを、もっと教えてほしい!」

女「私は男さんとデートをして、意外と誠実な人だと知りました」

女「だから、男さんがどんな人なのか、もっと知りたいです。そして、この苦しみを一緒に乗り越えて行きたいです!」

男「うん、一緒に乗り越えよう。女さんは、もう一人じゃないんだから」

女「男さん、さっきはごめんなさい……。私も男さんを想い、想われる彼女になりたいです」


女さんはそう言うと、腕を背中に回してきた。
俺を利用するのではなくて、心を開いてくれたのだ。

それは、ほんの少しかもしれない。
だけどそれは、大きな一歩だと思う。

誰もいない森林公園。
お互いの存在を感じ合いながら、俺たちはただ無言で抱き合った。

今日はここまでにします。
レスありがとうございました。

~家・玄関~
デートの帰りにドーナツ屋さんに寄り、女さんと最寄り駅で別れた。
初デートらしい内容ではなかったけど、次に会う約束も出来たし上手く行ったと思う。

その後、デートを振り返っていると、不意にゆうの謎が解けてしまった。
それを今日のうちに、友に話しておくことにした。


男「もしもし、男だけど」

友『もしもし、男? あ~、家電から掛けているのか』

男「そういうこと。実は、ゆうのことで重要なことが分かったんだ」

友『重要なこと?』

男「女さんは、ゆうが経験したことをなぞっているんだ」

友『どうして言い切れる』

男「女さんが、デートにゆうと同じ服を着てきたんだよ」

友『デート?! お前ら、付き合い始めたのか!』

男「おうっ」

友『俺が部活に行っていた間、男はよろしくしてたのかよ! リア充爆発しろ!』

男「とにかく、ホラー設定と死神のメリットは崩れたことになる」

友『さらっと流すなよ』

男「他にも心当たりがあるんだけど、女友も交えて話そうと思う。これは間違いなく、ループものだ」

友『まあ、分かったよ。でも、ゆうちゃんをなぞっているなら厄介だぞ』

男「そうなのか? また明日、話をしよう」

友『了解っ』


受話器を置き、部屋に向かった。

女さんとゆうの時間ループを証明する鍵は、洋服と森林公園だ。

洋服は間違いなく、女さんがゆうになることを表している。
次に森林公園。

ゆうが森林公園でセックスを求めてきた理由は、女さんだったときに森林公園でセックスを出来なかったからだろう。
そして、女さんが森林公園でセックスを求めてきた理由は、ゆうの相談メールで場所を知っていたからだ。

つまり女さんとゆうは、原因と結果が循環しているパラドックスになっている。
そのパラドックスが、時間ループの存在を裏付けている。

そして、これと同じ現象が、女さんと女友の会話でも起きている。
女友はゆうから聞いたオナニーの話を、女さんに話している。
最初にその話をしたのは、一体誰なのか。

女さんがデートに着てきた服。
ゆうと同じ洋服を買ってきたことは、死が迫っている証拠なのかもしれない。

・・・
・・・・・・
俺は森林公園で、女さんと抱き合っていた。
彼女の柔らかい胸が当たり、硬くなった陰茎に下腹部を押し付けてくる。
それがとても気持ち良い。


女『ねえ、男さん。セックスしようよ//』

男『――』

女『じゃあ、脱ぐね//』


女さんが一枚一枚、服を脱いでいく。
そして、一糸まとわぬ姿になった。


女『あぅん……いいんだよ。私はセックスしてほしいの//』

女『あんっ……あぁ、入ってる。……ぃい……気持ちいいのぉ…………』

女『出して……男さんの精液、私の中にいっぱい出して!』

ドピュッ
ドピュドピュッ

~部屋・翌朝~
男「……!!」

男「うわぁ、やっぱりか……」


女さんとセックスをする夢。
最高のクライマックスで目が覚めると、思いっきり夢精していた。
下着や身体に、精液がべっとり付いている。

まあ、夢なんだから仕方がない。
下着の処理をして着替えよう。

~リビング~
母「おはよう。今日は早いわね」

男「おはよう……。まあ、ちょっと」

母「あぁ、そういう」


母さんは汚れた下着を見て、気にしないふうに言った。
生理的なことは仕方がない。
そんなことより、母さんの疲れ気味な表情が気になった。


男「何だか、疲れているみたいに見えるけど」

母「今週は昼番担当なのに、今日は朝番と夜番も頼まれて……」

男「そうなんだ」

母「明日は代休で休めるんだけど……疲れるな」ヘニャー


母さんは溜め息混じりに言った。
今日は担当外の夜番に入ったり、仕事が壮絶に忙しいらしい。

男「フルシフトとか無茶振りだな。今日は大変そうだし、無理をせずに頑張って」

母「ありがとう、かなりやる気出た。男は勉強と恋愛、楽しく頑張ってね」

男「どっちも大変だけどね……」

母「それが良いんじゃない。夢にまで見る女さんを、今日なら連れ込めるわよ」ニヤニヤ

男「あー、うん……。そういう冗談は言うなよ」

母「あら、図星だった?」クスクス

男「別に……」

母「それじゃあ、男のおかげでやる気が出て来たし、そろそろ仕事に行くわね。さっきは、ありがとう」

男「うん、行ってらっしゃい」

母「じゃあ、行ってきます。火の元よろしくね」

今日はここまでにします。
レスありがとうございました。

~学校・お昼休み~
友「おいっ、男。女さんとのデートを、俺たちに報告しろっ!」


昼休みになり、荒ぶる友と女友が俺の両隣の椅子を陣取った。
もはや、いつもの光景だ。


男「木曜日に女さんが謝りに来て、その日から付き合うことになったんだ」

友「マジかよ! だったら、金曜日に報告してくれよ」

男「最初のデートに成功してから、言おうと思ってたんだ」

友「保身しやがって」

女友「それで、初デートはどこに行ったの?」

男「女さんのリクエストで動物園に」

女友「動物園……」

友「定番のコースだな。最近はキリンの赤ちゃんが産まれたんだっけ」

男「そうそう。キリンは『モォー』って鳴くんだぞ」

女友「へえ~、知らなかった」

友「しっかし、ついに男に彼女が出来たのか」

男「まあな」

女友「あんなことされたら、突き放すと思ったんだけど……。私のフォローが効果絶大だったってことだよね」

男「フォローって言うけど、ろくな話をしてないだろ。ゆうの受け売りで、オナ話をしやがって」

女友「おなっ……」アセアセ

男「でも、ありがとうな。今は女さんの気持ちと向き合いたいと思ってる」

女友「そ、そうだよ。女さんを癒せるのは、男だけなんだからね!」

友「でもこれで、死神のアプリによるメリットが消えた訳だな」


1:男を好きにならなければ、女さんは死んでもゆうにならない。
2:タイムスリップが起きないことになるので、女さんの魂を普通に回収できるようになる。


男「そういうこと。女さんが俺を好きになった時点で、ゆうになる条件を満たすからな」

友「そしてホラー設定が否定されて、悪霊の可能性もなくなった」

男「デートのとき、女さんがゆうと同じ服を着て来たんだ。他にも、ループを示す証拠がある」

友「それをぜひ聞かせてくれ」

男「ひとつは、さっき話したオナ話だ。ゆうがオナニーを熱く語ったことがあっただろ」

友「そういえば、言ってたなあ」

男「実はそれ、女友が女さんに話した内容だったんだ」

女友「ええっ? 私はゆうさんから聞いたんだけど……」

友「なるほど。女友のむっつりスケベは、時空を超越するのか」

女友「やめてよ、そんな言い方」アセアセ

男「そのオナ話は、最初にそれを言ったのが誰なのか分からないし、タイムパラドックスが起きているだろ」

友「他には?」

男「友には話せないんだけど、動物園の次と言えば、女友には心当たりがあると思う」

女友「それって、アレのことでしょ。えっ、うそ……もうしちゃったの?!」

友「それって、ループに関係あるのか?」

男「女さんがデートに動物園を選んだのは、ゆうが女友に送信したメールを読んだからなんだ」

女友「確かに、少し見られたけど……」

男「ちなみに、女友が考えるようなことはなかったからな」

女友「う、うん……」

友「ということは、女さんのデートもタイムパラドックスが起きているのか」

男「そういうことだ。これで、時間ループの存在が証明されたことになるだろ」

友「時間ループと循環するタイムパラドックスか……」

男「だから俺は、女さんが、ゆうが経験したことをなぞっていると思うんだ」

友「なあ、男。昨日も言ったけど、それは本当に厄介だぞ」

男「どういう風に?」

友「男が女さんに出逢ったのは、ゆうちゃんのアプリがきっかけだろ」

友「でも、ゆうちゃんは未来から来た幽霊だから、ゆうちゃんがいない最初の時間軸があることになる」

女友「あっ、そうか。その時間軸では、男が女さんに会うきっかけがないんだ」

友「そういうこと。さらに、女さんがゆうちゃんになる条件は好意があることだから、最初の時間軸ではタイムスリップが起きなくなるんだ」

男「でも、実際にはタイムスリップが起きているだろ」

友「だから、この世界がパラレルワールドではないと分かる。たった一つしかない世界を、ゆうちゃんはループしたんだ」

友「そして世界が一つしかないなら、すべて運命で決まっていることになるだろ?」

男「つまり、女さんが死ぬこともゆうになることも、運命で決まっていたということか」

友「そういうことだ。これが循環型のループネタなんだ」

男「でも、それには穴があるぞ。女友に紹介してもらった可能性があるじゃないか」

女友「ないとは言えないかなぁ……」

友「確かにその可能性はあるけど、今はゆうちゃんの経験をなぞっていることが前提条件だろ」

男「そうだったな……」

友「ただ、循環型にもメリットはあるんだ。ねじ曲げるべき運命が、確実に分かることになるから」

男「なるほど」

友「でも循環型のループネタは、女友のタイムパラドックスを説明できないんだよな」

女友「ということは、それが間違っているってことでしょ」


いや、待てよ……。
女さんを操るアプリ機能に死神が関わっているなら、パラドックスにも死神が関わっているんじゃないのか?


男「もしかしたら、パラドックスに死神が関わっているかもしれない」

友「なるほどな。つまり、女友は死神公認のスケベな女子ということか!」

女友「せ、せめて女神公認にしなさいよっ!」


おいっ……。
スケベは認めるのか。
でも確かに、女友は少し変わったかもしれない。

女友「その循環型とかいうので、何が分かるの?」

友「循環型のループネタが成立すると、ゆうちゃんの記憶を使えるんだ!」

女友「循環型でなければ?」

友「ゆうちゃんの記憶は使えない。以前も話したけど、過去や未来が変わっていることを確認できるだけだ」


つまり、ゆうの記憶に頼れるのは『女さんがゆうと同じ経験をしている場合だけ』なのだ。
そして今、その可能性があると分かった。

しかし、ゆうと同じ経験をするということは、『女さんが必ず死ぬ』ことを意味している。
だから、俺たちは未来を知って運命を変えなければならない。

確定している運命を、強引にねじ曲げる。
“I”を“Y”にすること。
それが、女さんを助けられる唯一の方法なのだ。

今日はここまでにします。
レスありがとうございました。

女友「ひとつ聞きたいんだけど、そんな事を考えて女さんを助けられるの?」

友「方針が決まるだろ。可能性がないことを考えても仕方ないじゃないか」

女友「まあねえ……。男はデートのとき、女さんから何か感じなかった?」

男「つらい思いを抱えていることは分かったけど、前向きになってくれたと思う」

女友「じゃあ、女さんが着て来た服はどう思う? ゆうさんと同じ服って、何か意味があるのかなあ」

男「それが、時間ループの証拠だろ」

女友「そうじゃなくて、ゆうさんは幽霊でしょ。その服がヒントにならないかなと思って」

友「そういうことか。幽霊って、白装束とか死んだときに着ていた服を着ているイメージだもんな」

女友「そう、それっ!」

男「ゆうは一番好きな洋服だと言ってた。でも、死んだときに着ていたかは覚えていないみたいなんだ」

女友「えっ……? それって、おかしくない?」

男「おかしい?」

女友「私だったら、初デートで褒めてもらいたいから、勝負服を着て行くわよ」

男「女さんも、新しい服を買ってきたって言ってた」

女友「だったら、余計におかしいでしょ。勝負服がゆうさんと同じだったんだよ」

女友「それを知れば、普通はがっかりするんじゃないの?」

そうだ!
俺はうれしそうな女さんを見て、指摘するのを躊躇った。
雰囲気を壊したくなかったからだ。


女友「ねえ……、まさか教えてあげなかったの?!」

男「言える訳ないだろ。新しく買ってきたよって、うれしそうに言うんだから」

女友「それはそうかもしれないけど、もう一度ゆうさんに会えば、同じ服だとバレちゃうわよ」

友「ちょっと待て。それを教えたら、女さんとゆうちゃんの感情に違いが出来るんじゃないのか?」

女友「そんなの知らないわよ。私は少しでも早く、男が説明するべきだと思う!」

男「おい、友。循環型の時間ループが正しいなら、女さんが死ぬのは今週だ」

友「……! そうだよな」

女友「どういうことなの?」


1:ゆうはいつも着ている服を、一番好きな洋服だと言っている。
2:女さんは勝負服という性質上、ゆうと同じ服だと知ればがっかりする。
A:つまり、女さんはゆうと同じ服だと知らないまま死んだ可能性が高い。

そして、
1:スマホの修理がもうすぐ終わる。
2:女さんとの次のデートは週末だ。
B:つまり、週末にはゆうと同じ服だと知ることになる。

以上のことから、AとBより、
女さんが死ぬのは今週中だと言うことになる。

女友「そういうなら、今すぐ本当のことを話せば良いじゃない」

友「ゆうちゃんが女さんを操る機能のことを知って、何か記憶を思い出しているかもしれないだろ。俺はそれを確認したほうが良いと思う」

男「そうそう。ゆうの話を聞く前に教えると、未来が分岐してゆうに頼れなくなるかもしれない」

女友「未来が分岐するなら、それで助かるんじゃないの?」

友「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないだろ」

男「女友。俺が目指したいのは、もう心配ないんだっていう安心なんだ」

男「助けられる可能性があるなら、確実に思える方法を試してみたい」

女友「安心確実……ねえ。女心としては、少しでも早く正直に伝えることが正解だと思うけど?」

男「俺もそう思う。だから、ゆうの話を聞いたら説明しようと思う」

女友「分かった。二人を信じる……」

男「それじゃあ、もうすぐ授業だし。二人とも、いつもありがとう」

友「気にするなよ。ゆうちゃんが帰ってきたら、死神に一発かましてやろうぜ!」

男「おう、そうだな。ゆうが帰ってきたら、何としてでも反撃しよう!」

女友「ねえ、友。今夜、女さんが塾に来るらしいから付き合ってくれる?」

友「オッケイ。じゃあ、そのときに事故とか災害対策くらいは話しておこうか」

女友「そうね……」

男「ありがとう。女さんのこと、頼むよ」

~家・放課後~
ピンポーン

部屋で考え事をしていると、チャイムが鳴った。
玄関に向かい、扉を開ける。
すると、女さんが立っていた。


女「こ、こんにちは。近くを通ったので、男さんに会いたくなって……」ニコリ

男「女さんに会えて、うれしいよ。どうぞ、あがって」

女「はい、お邪魔します//」

男「今日はカジュアルな服だね」

女「えへへ// 今日は頑張って塾に行くので、軽くまとめました」

男「じゃあ、時間は大丈夫?」

女「まだまだ大丈夫です」

~部屋~
女「男さん、今日はお母さんはいないのですか?」

男「仕事が忙しくて、夜まで帰って来ないよ」

女「家に二人きりって、何だか気恥ずかしいですね……//」

男「う、うん。そうだね//」

女「それにしても、外はもう暑いですよね~。もう、夏服を用意しないといけないな」

男「じゃあ、昨日の服はもう着ないの?」

女「そんなことはないですよ。色んな合わせ方を試したいし、楽しみにしていてください//」


どうやら、昨日と同じ合わせ方で服を着ることはなさそうだ。
つまり、女さんが死んでしまう日は、ゆうと違う服を着ていることになる。


男「……そうなんだ。じゃあ、楽しみにしてるよ」

女「はい、喜んでもらえるように頑張りますね♪」

今日はここまでにします。
レスありがとうございました!

女「ところで、昨日の夜はよく眠れましたか?」

女「私はデートのことを思い出して、ドキドキしちゃって……。全然眠れずに、今日は寝不足です」アハハ

男「あー、俺もかな。今朝は女さんの夢を見て、ドキドキして早く目が醒めちゃったよ」

女「わわ、私の夢?! どんな夢だったんですか?」

男「え、その……。夢だからあまり覚えてないけど、女さんとデートをしている夢だった」

女「私たち、一緒ですね。ドキドキして眠れなくて……//」

男「そうだね」

女「男さんはオナニー、しちゃったんですか?」チラッ

男「いや、それはその……。ゴミ箱を見ながら言わないでくれ」アセアセ

女「じゃあ、私とデートをしていた夢って、本当はエッチな夢なんですよね」

男「それは……」

女「オトコの人は我慢をすると、エッチな夢を見て射精しちゃうんでしょ?」

男「そうだけど……ごめん。そういう夢だった」

女「ううん。私の夢ならうれしいし、それは自然なことだから//」


女さんはそう言うと、バッグからコンドームの箱を取り出した。
そして、ミニテーブルの上に置く。


女「でも我慢して夢精するくらいなら、目の前の私とセックスをしませんか?」

男「夢精は仕方ないけど、セックスは違うだろ。昨日も言ったけど――」

女「……はあ、分かっています。冗談ですから」

女「でも、どうして私がコンドームを持っていると思いますか?」


その言葉は、得体の知れない不安をまとっていた。
俺は昨日のことを思い出しながら、言葉を返す。


男「俺とセックスをして、大切にされていると思いたいからだろ?」

女「半分正解だけど、半分は違います」

男「半分は違う?」

女「私は今、持ち歩くように言われているんです。そのために、母が買ってくれました」

男「どうして、女さんのお母さんが――」

女「私が、所構わず裸になってしまうかもしれないからです」

女「初めてそんなことになったのは、今月1日の夜。塾の教室で、講義を受けているときでした」

女「訳も分からないまま服が脱げてしまい、でもどうすることも出来なくて……。教室は混乱状態になり、淫らな行為を続ける私のせいで講義が出来る状態ではなくなりました」

女「やがて動けるようになった私は、服を抱えて逃げ出し、呼び出されていた親に連れられて家に帰りました」

女「二回目は、家に着いて両親に怒られているときでした。家族の前で裸になり、泣きながら何度も何度もオナニーをしました」

女「不思議なことが起きているかもしれない、そう確信したのが翌朝です」

女「それは、天井に向かって落ちそうになったからです。必死にベッドに掴まって、助けを呼び続けました」

女「そんなことがあったのに、学校に行ったのは間違いでした。昼休みに教室で、いやらしい姿をさらし続けたからです」

女「そしてその日から、私は怖くて家を出ることが出来なくなりました――」

つらい想いを吐き出すように、女さんが淡々と語る。


訳の分からない性的行為に支配され、毎日のように泣いていたこと。
発作の時間帯が安定してきたので、昼間に診療内科に通っていること。

万が一に備えてコンドームを持ち歩き、低用量ピルを飲み始めて避妊していること。
学校では友達が減り、穢れたものを見る視線を向けられていること。


女さんのつらさは分かっていると思っていた。
だけど語られる内容に、そう思っていた自分の愚かさを思い知らされる。
俺はただ、黙って聞いていることしか出来なかった。

女「――今は発作が起きていません。だから両親は、カウンセリングの効果が出てきたと思っています」

女「私はこのまま日常に戻れることを望んでいます」

男「女さん……」

女「せっかく男さんの部屋に来たのに、つらい話をしてごめんなさい」

女「でも、男さんに相応しい彼女になるには、知ってもらわないと前に進めないと思ったから」

女「本当の意味で、お互いに想い合うことは出来ないと思ったから――」

女「私は男さんが想像する以上に、重たいオンナですよ。それでも、私と付き合ってくれますか?」

男「当たり前だろ。相手の気持ちを想い合うことから始めようって、言ったじゃないか」

男「それなのに、俺は女さんの気持ちを何一つ分かっていなかった。本当にごめん――」

女「男さん、抱き締めてほしいです。それくらいなら良いですよね……」


女さんは不安そう言うと、にじり寄ってきた。
向かい合って、ぺたりと座る。
俺はそんな彼女を、引き寄せてあげた。


男「女さん、その――」

女「女さんではなくて、女と呼んでほしいです。そのほうが、彼女になった実感がわく気がして……」

男「女、つらいはずなのに話してくれてありがとう」

女「男さん……」

女「ううっ……うわああああぁぁぁん!!」

女「ずっとつらかったんです。もうあんな想いは耐えられないんです!」

女「死にたかった。私、それくらいつらかったのっっ……!」


これで、女さんの気持ちが少しでも晴れてくれることを願いつつ……。
俺は泣きすがる彼女の身体を強く抱き締めた。

女「男さん、ありがとうございました……」

男「少しは落ち着いた?」

女「おかげで、心が軽くなった気がします。でも、恥ずかしいところをお見せしちゃいました」

男「そんなことないよ。女の気持ち、すごく伝わってきたから」

女「うん……。それでは、そろそろ塾の時間なので帰りますね」

男「そっか、もうそんな時間なんだ」

女「はい。それにその……硬くて大きいものが、私の大切なところに……」テレッ//

男「ご、ごめんっ」アセアセ

女「ふふっ。私が帰ったら、たくさんオナニーしてくださいね//」

男「そ、そういう気は回さなくて良いから」

女「ただ、もうすぐスマホの修理が終わりますよね」

男「うん、明後日には直ると思う」

女「前も言ったけど、ゆうさんのアプリは絶対に使わないでください。本当にもう限界なんです……」

男「分かってる。あの話を聞いて、使える訳ないだろ」

女「……お願いします。アプリ以外で、オナニーしてください」

男「約束するから、女は安心して塾に行ってきて」

女「はいっ、久し振りに頑張ってきます!」

男「俺も、女とゆうが幸せになれるように頑張るよ。週末のデート、楽しみにしてるから」


そう言うと、女さんが唇を重ねてきた。
そして俺たちは、一緒に部屋を出た。

女「では、お邪魔しました。行ってきます!」

男「行ってらっしゃい」


俺は塾に向かう彼女を見送りながら、さっきの温もりを手放したくないと考えていた。

期限は今週。
なぜ、女さんは死んでしまうのだろう――。

今日はここまでにします。
レスありがとうございました。

~学校・お昼休み~
友「なあ、男。今日の放課後、みんなでカラオケ行かないか?」


お昼休みになり、友が軽いノリでやってきた。
誘ってくれるのはありがたいけど、今日の放課後は付き合うことは出来ない。


男「悪いけど、今日はムリなんだ」

友「どうしてだよ、連れないなあ。女さんも来るんだぞ」

男「えっ、マジか?!」

友「昨日、塾の帰りにスイーツ接待をして、約束を取り付けたんだ。打ち合わせをしつつ、親睦も深めたいだろ」

男「でも昨日は、母さんの仕事がフルシフトだったんだ。今日はへばっているはずだし、家の手伝いをしてあげたいんだよな」

友「それなら仕方ないか……」

男「とにかく、今日だけはごめん」

女友「えー、男は行けないの?」


女友に事情を話すと、残念そうに言った。
こればかりは仕方がない。


友「どうしよう、明日にしようか?」

男「それなら、俺もオッケイだ。明日、みんなでカラオケに行こう」

女友「じゃあ、女さんに確認してみる」スルスル

友「カラオケに行かないなら、代わりにに新しく出来たスイーツ店に行かないか?」

女友「新しいスイーツ店?」

友「二人で話したいこともあるし、アイスどら焼きを食べてみたくてさあ」

女友「アイスどら焼き……」

友「中のアイスがどら生地にじゅわあっと染み込んで、美味しそうだろ?」

女友「メープルバニラ味とかあれば美味しそう」

友「女子に人気のお店らしいし、女友も気に入ると思う」

女友「し、仕方ないわねえ。友に付き合ってあげるわ//」

男「二人とも、美味しかったら教えてくれな。彼女と行ってみるよ」

~ショップ・母親~
気晴らしにショッピングモールに出掛けていると、ケータイショップから電話が掛かってきた。
どうやら、男のスマホが直ったらしい。
私はショッピングついでに、立ち寄って帰ることにした。


母「こんにちは」

店員「お待ちしておりました。修理したスマートフォンはこちらになります」

母「きれいに直ってますね。修理、ありがとうございました」


電源も入るし、特に異常はなさそうだ。
男はスマホがない生活をして、物の大切さと時間の使い方が分かったことだろう。


店員「ところで、お客様の電話帳や大切な情報などをバックアップする、お客様サポートがあることはご存知でしょうか」

母「大丈夫ですので、お会計をお願いします」

店員「かしこまりました。それでは、お支払いのほうですけど――」

~リビング・母親~
母「ただいまーって、まだ帰ってきてないわね」


ケータイショップからの帰り道、踏切に電車とパトカーが停まっていた。
何かあったらしいので、男が帰ってくるのは遅くなりそうだ。


母「とりあえず、スマホスマホ!」


男が帰ってこないなら、その間にアドレス帳を復元してあげよう。
家と私の番号、実家に親戚の家、私の職場。
あと、私が使っているアプリくらいかな。

そう決めて、男のスマホの電源を入れた。
データが消えている状態なので、見た見ないで争うことはないだろう。

母「あれ? このアプリ……どうして消えてないの?」


これは確か、ゆうさんというキャラクターが面白いアダルトアプリだ。
どんなことが出来るのか、結構気になる。

それにしても、データが消えているはずなのに、なぜ残っているのだろう。
というか、さっきまでなかったよねえ……。

私は不審に思いつつ、確認のために起動してみることにした。


――Now Resume――


再開という言葉の後、制服姿のゆうさんが表示された。
どうやら、校庭っぽいところに立っているようだ。
以前見たときは、確か寝起きのパジャマ姿だった。
放課後の時間帯らしいシチュエーションということだろう。

ゆう「あ、あれ? そうか……私、6日間も眠っていたんだ」

母「ゆうさんだっけ、こんにちは」

ゆう「えっと、お母さま! こんにちは。男さんはどちらに?」

母「まだ学校じゃないかしら。その間に、確認したいことがあって」

ゆう「確認……ですか?」

母「アダルトアプリとして、どんなことが出来るのか」

ゆう「そ、それは困ります。真面目な話をしたいので、リンクを切断してください!」

母「細かいことは良いから、試させてくれない?」

ゆう「でもここって、学校の前じゃないですか。絶対に良くないです!」

母「アプリなんだから、そんなことを気にしないでよ。どうしても、確認しておきたいの」

ゆう「……分かりました。せめて、物陰に移動させてください」

母「ふうん、移動も出来るんだ」

母「それにしても、やっぱり女さんに似ている気がするのよね……」


この制服も、彼女が着ていた制服に似ている気がする。

――あっ!
もしかすると、彼女はこのアプリを見て、スマホを壊したのかもしれない。

しかしアバターが似ていたからという理由で、スマホごと壊してしまう女性だとは思えない。
だとするならば、このアプリの内容に問題があるはずだ。

二人が口を揃えて言っていた、信じられないようなこと。
恐らくそれは、モザイクが無いことだと思う。

このアプリで何が出来るのか調べるついでに、一緒に確認しておく必要がありそうだ。

ゆう「女さんを知っているんですか?!」

母「知ってるけど、どうかしたの?」

ゆう「……リンクを切断してくれないと、制限がかかって言えないみたいです!」

母「ごめん。すぐ終わるから、その話は後にしてくれる?」

ゆう「は……はい、分かりました」


まずは鞄を下ろし、頑張って制服のブラウスを脱がせた。
何だかんだ言いながら、ゆうさんはとても協力的だ。

そしてその下は、学生らしく淡い黄色のインナーを着ていた。
次は、これを脱がせないといけないようだ。

ぷるるる、ぷるるる♪♪

男のスマホに、誰かから電話が掛かってきた。
友達なら、スマホが修理中だということを知っているはずだ。
さすがに出るわけにはいかないし、アプリの確認を急ぐことにした。

今日はここまでにします。
レス、即レスありがとうございました。

>>363
一行目訂正します
代わりにに

代わりに

時間軸ネタ、理解しづらくてすみません。
最終的に伝わるよう頑張ります。

~校門付近・女さん~
同級生「それで明日、彼氏とカラオケに行くんだ」

女「はい。本当は今日の予定だったんだけど、用事があるみたいで――」トテトテ

同級生「女さんに彼氏だなんて、その人、遊びじゃないの?」アハハ

女「……?! ウソでしょ、この感覚は――」ピタッ…

同級生「どうしたの?」

女「ま、まさか……。男さんがゆうさんと?!」


授業が終わり、同じクラスの同級生さんと帰っていると、急に歩けなくなった。
これは、アプリが起動したときの感覚だ――。

男さんは昨日、スマホのことを『明後日には直る』と言っていたので、修理が予定よりも早く終わったのだろう。
データの移行もしないといけないだろうし、男さんの用事とはこのことかもしれない。

だけどどうして、
ゆうさんのアダルト機能が起動しているの?!

疑問に感じている間にも、強制的に物陰に移動させられた。
そしてブラウスのボタンが外され、強引に脱がされてしまった。

同級生「女さん、どうしてこんな所で……」


今は、そんなことに答える余裕はない。
ある程度の自由があるうちに、男さんに連絡をしなければ!


女「同級生さん、かばんの中のスマホを出してください。落としちゃって、手が届かないの……」

同級生「い、いいけど。このかばん、重すぎない?」ズシリ


同級生さんは、かばんを必死に持ち上げようとした。
しかし、どうやっても動かせる訳がない。
私の経験上、かばんは動かせないけど、中身を出せることは分かっている。

同級生「はい、スマホ。……んっ?」

女「ありがとうございます」

同級生「な……何これ?! 学校にこんなものを持って来るなんて――」ジトー


箱いっぱいのコンドームを見られてしまった。
そんな物を持ち歩いてこんな姿を晒せば、軽蔑されるに決まっているよね。
女友ちゃんは受け入れてくれたけど、同級生さんはどうなのだろう――。

気になるけど、今はそれどころではない。
私は登録しているアドレスから、男さんに電話を掛けた。

PiPoPa...

女「駄目だ、出てくれない……。夢中になってるってことなの?」

女「きゃわわ//」


スカートが下ろされて、両手を万歳させられた。
そして、インナーがするすると上がって脱がされていく。
抵抗することも出来ず、私は簡単に下着姿にされてしまった。


同級生「女さん、ごめん。先に帰るね」

女「そっか、やっぱりそうなんだ――」


逃げるように走り去っていく同級生さん。
こんな場所で服を脱ぐ私なんかに、関わりたくないよね……。
やっぱり、女友ちゃんしかいない。
私を分かってくれる友達は、彼女しかいない。

そ、そうだ。
女友ちゃんだ!!

私はここから動けない。
だけど、女友ちゃんは動くことが出来る。
女友ちゃんに電話をして、男さんの家に行ってもらえばいいのだ。

PiPoPa...

女友『もしもし。女さん、どうしたの~?』

女「もしもし、女友ちゃん。助けてほしいの!」

女友『えっ?!』


ブラジャーのホックが外された。
そして、乳房が露になってしまう。


女「助けて、もうあんな想いしたくない!」


――きゃあああぁぁっ!!

~スイーツ店・女友~
私はアイスクリームのショーケースを前にして、目を輝かせた。
バニラ、チョコ、抹茶、小倉小豆――。どれをドラ生地に挟めば美味しいだろう。


女友「ねえ、友。いっぱいあり過ぎて、迷っちゃう!」

友「メープルバニラ味を食べてみたいって、言ってただろ」

女友「そうだけど、どれも美味しそうなんだもん//」

友「栗をトッピングした小倉小豆が良いんじゃないか? 栗入りのどら焼きって美味しいし」

女友「トッピング?!」

友「ほら、ここ。栗にイチゴ、バナナがあって、メープル、練乳――」

女友「ねえ、どうしよう。チョコバナナも美味しそう//」

友「じゃあ、二人で好きなのを買って、半分こしようか」

女友「うん、そうだね♪」

ブルブル・・・
女友「友、ごめん。女さんから電話みたい」

友「女さんから?」


一体、何だろう?
私は店を出て、着信をつないだ。


女友「もしもし。女さん、どうしたの~?」

女『もしもし、女友ちゃん。助けてほしいの!』

女友「えっ?!」

女『助けて、もうあんな想いしたくない!』

女友「ねえ、何が起きてるの?」

女『男さんが、ゆうさんとエッチしてる! 彼の家に行って、止めさせてほしいの!』

女友「男のスマホ直ったの?! でも、どうして――」

女『分からない。分からないけど、もう脱がされてる』


脱がされてる?!
今は下校時間帯だよね……。


女友「女さんは、今どこ?!」

女『学校の校庭、正門の近く――』

女『あぁ、いやっ! やめてえっ!!』
ガチャッ

女友「ねえ、女さん! ……切れちゃった」


リダイヤルをしてみたが、女さんは電話に出てくれない。

男がゆうさんとエッチをしている。
それだけでも信じられないのに、最後の悲鳴は何なの?!


女友「友、大変なの! ちょっとこっち来て!」ブンブン

友「大変って、何かあったのか?」

女友「男がゆうさんとエッチしてるみたいなの。そのせいで女さんが……」

友「今、女さんはどこにいるんだ?」

女友「学校の校庭って言ってた」

友「思いっきり外じゃないか! ヤバいぞ、それ――」

友「女さんはこの近くの学校だよな。すぐそこだし、急いで行ってくる!」

女友「待って、女さんの所には私が行く! 友は男をぶっ飛ばしてきて!」

友「バカ言うなよ。俺たちは何年、男とつるんでるんだよ。俺たちが男を信じなくて、どうするんだ!」

女友「でも……女さんが!」

友「女友が一人で行っても、手に負えるわけねえだろ。俺が先に行くから、男の家に電話をしてから来い!」

女友「家に電話?!」

友「スマホに掛けても、男は電話に出ない。だから女さんは、女友に助けを求めてきたんだろ!」

女友「で……でも、家の番号は覚えてなくて」

友「じゃあ、俺のを使え。ついでに、男にメールもしとけ!」

女友「う、うんっ」

友「じゃあ、急いで行ってくる!」


PiPoPa...

~家・母親~
母「……下着も脱がせられるんだ」

ゆう「もう、いいですか?」

母「いや、待って。座ったら、はっきり見えちゃうじゃない。画面も寄せられるでしょ」

ゆう「……はい」ペタリ


ゆうさんを座らせると、女性器がはっきりと見えた。
まるで、本物の人間のように再現されている。

二人が口を揃えて言っていた、信じられないようなこと。
それはやっぱり、無修正で全部見えることだったようだ。

母「ゆうさんの手を誘導すれば、こういう事もさせられるわけよね」

ゆう「あうっ、ぁっ……んんっ…」

母「はあ、なんだかねえ」

ゆう「お母さま……。本当に、これ以上はまずいです……」


ゆうさんが困った表情で言った。
『これ以上は』と言うことは、もっと過激なことが出来るらしい。
その言葉通りなら、何かを挿入したり出来るのかもしれない。


母「もしかして、何か入れたり出来るの?」

ゆう「それをお望みなら……。だけど、変なものは入れたくないです――」

母「そういうことはちょっと……。でも出来るんだ」

どんなことが出来るのかと思っていたけど……。
こんなに卑劣なアプリを、男は使っていたの?!

女さんが激怒して、スマホを壊したことは無理もない。
無修正のアダルトアプリに自分と同じ姿のアバターを登録して、卑猥なことをさせながらオナニーをしていたのだから。

だけど、その事については許してあげないといけない。
女さんが男と話し合って、アプリの使い方を解決させたはずだからだ。
それはもう二人の問題であって、私が蒸し返す話ではないだろう。

母「ねえ、ゆうさんは医療系やデッサンポーズのアプリなの?」

ゆう「医療はよく分からないけど、デッサンポーズも頑張れます」

母「そういう美術目的なら、無修正でも良いのかなあ……」


そういうアプリを見つけて、男が正しい目的で使わずに、性処理をしているだけかもしれない。
いやいや、それは好意的に捉えすぎね。
主に性処理目的で使っているなら、これはもうアダルトアプリだ。

アダルトアプリで女性器を無修正で見られるならば、これは違法なアプリだということになる。
きっと、法律的にも削除をしたほうが良いだろう。


母「ねえ、ゆうさん。悪いけど、あなたを削除することになると思うから」

ゆう「……ですよね。削除が出来るなら、それが良いと思います」

母「じゃあ、急いで確認したいことが出来たから」

ゆう「は、はいっ」

母「削除をするかどうかは、男が帰って来たら話し合うから。ゆうさん、ありがとうね」ポチッ

ゆう「お母さま! リンクを切断して――」


ホーム画面に戻り、スマホをテーブルに置く。
そして、自分のスマホで携帯ショップに電話を掛けた。


母「あ、もしもし。フィルタリング機能のことで、少しお問い合わせしたいことがあるのですが――」

プルルルル~♪

自宅に電話が掛かってきた。
しかし、今は出ることが出来ない。
重要な用事があるなら、もう一度かけなおしてくるだろう。

今日はここまでにします。
レスありがとうございました。

~校門付近・女さん~
女子生徒「きゃあああぁぁっ!!」


最後の一枚を脱がされ、全裸にされてしまった。
そのとき、通りがかった女子生徒が私に気付いて悲鳴をあげた。


女「学校の校庭、正門の近く――」


男子生徒「どうした!!」
女子生徒「あの人、裸になってるの! 何なの、あれ――」

ギャル「あたし知ってる。女さんでしょ」
モブ男「塾でオナってたよな。またするんじゃないか?」ニヤニヤ


女子生徒の悲鳴を聞いて、人が集まり始めた。
皆一様に、好奇の目を向けてくる。

そして、男子の一人が、ポケットからスマホを取り出した。
いやらしい笑みを浮かべ、それを向けてくる。

パシャリ・・・

女「あぁ、いやっ! やめてえっ!!」


一人が写真を撮ると、他の人も写真を撮り始めた。
面白いものを見つけたと言わんばかりに人が集まってきて、私を撮影する。
囃し立てる声とシャッター音が、心を押しつぶす。

さらに見えない力に座らされて、脚を広げさせられた。
自由意思が支配され、手からスマホが滑り落ちる。
そして左手は乳房に、右手は陰部へと向かった。

いやだ、やめて。
もうやめてよっ……。

モブ男「おっ、分かってるじゃないか!」

女子生徒「きゃああっ……//」チラッ

女「あんっ……んっ、ぁっ……」


私の両手が、乳房と陰部を弄んでいる。
そのせいで嬌声が漏れて、感度が良くなっていく。
目には涙が浮かび、陰部もじんわりと濡れてきた。

そんなつもりはないのに、身体が反応してしまう。
たくさんの人に見られて、写真を何枚も撮られているのに……。


女「やめて……、ぁん…ぁあ……だめっ…」

生徒たち『女さんのショータイムだ!!』ヒューヒュー

女「撮らないで……。ぁんっ……いやっ、ぃやあっ…」

ギャル「ねえ、男子たち。誰か手伝ってあげなさいよ」

デブ男「手伝う……だと?!」

ギャル「いや、あんたはいい。誰か見栄えのいい男はいないかなぁ」


涙を浮かべ、オナニーを続ける。
そしてなすすべなく、写真を撮られ続けている。
それなのに、まだ私に何かするつもりなの?

物陰に移動させられたせいで、校舎からの見通しは良くない。
そして、誰も先生を呼んでくれない。
もう、どうすることも出来ない。


DQN「おらぁ、お前ら! 面白そうなことやってるじゃねえか!」

ギャル「……DQNだ。何だか、面白くなってきたし」ニヤニヤ

不良グループが来て、群集の一部が帰り始めた。
ここに残って、不良たちに絡まれたら面倒だからだろう。

しかし、全員がいなくなるわけではない。
興味本位だった人は逃げ帰り、私を辱めたい人だけが残ることになる。


不良「見てくれ、かばんの中にあるのはゴムじゃねえか?」

ヤンキー「うわっ! 箱ごと持ち歩いてるのかよ。胸がでかい上にビッチとは、最高のオンナだな」

不良「どうする?」

DQN「んなもん、決まってるだろうが!」

不良「だよな」

ヤンキー「群集ども、遠巻きに見ているお前らも共犯なんだから、余計なことはするんじゃねえぞ!」

群集「……!」コクリッ

DQN「よしっ、もう少し見えない所に連れていけ!」

女「いやっ、触らないで! 離してくださいっ!」

ヤンキー「どうやっても動かねえぞ、こいつ!」


不良たちが腕を引っ張ったり、抱きかかえようとしてくる。
しかし、私を移動させることは出来ない。


DQN「このっ、はむかってんじゃねえよ!」


DQNが怒りに任せて、脚を蹴り飛ばしてきた。
しかし見えない壁が出来て、脚に当たる前に止まった。
苦虫を噛み潰したような表情をして、睨み付けてくる。

そうか、あのときの逆パターンだ!

今の私に暴力を振るっても、ゆうさんの状態が優先されているから、私に怪我をさせられないんだ。
オナニーへの強制力もなくなっているし、もしかするとやり過ごせるかもしれない。

DQN「仕方ない。野次馬ども、順番にこの女を可愛がってやれ!」

女「それって……」

不良「こんな所で裸になってゴムを用意してるってことは、ヤリたいってことだろ。撮影会を盛り上げて、ファンサービスをしないとなあ」ニヘヘヘ

女「そんなの、嫌に決まってるでしょ!」

ヤンキー「こんなに濡れてるのに、よく言うぜ」

女「ひゃうんっ……」クチュ


やっぱりダメだ。
暴力でなければ、普通に触れるんだ……。


ヤンキー「おらっ、そこのお前。ゴムはいっぱいあるんだ、こっちに来い!」

モブ男「まじっすか?!」

ギャル「早くやっちゃいなよ。やれやれ、やっちゃえ~!」

モブ男「物陰にはなってるけど、こんなに人がいるところで」

DQN「グダグダ言うと、お前から締めるぞ!」

モブ男「そういうことだから仕方ないよな。講義そっちのけでオナるくらいだし、エッチが好きなんだろ?」

女「ううっ、せめてコンドームをしてください……」

モブ男「ふひょう! 奥までいっぱい突いてあげるよ」ニヤニヤ


初めての相手は、男さんだと思っていた。
早く彼とセックスしたかった、繋がりが欲しかった。

だけど裏切られた――。
私が外にいることは、男さんにも分かっているはずなのに。
ゆうさんを裸にすると、どうなるか知っているはずなのに。
昨日、絶対に使わないって約束してくれたのに!!

どうやっても、ここから逃げられない。
男子たちの欲望を、すべて受け入れるしかない。

でも……、もういいや。
どうせ妊娠しないし、いつかこんな日が来ると思っていたから――。

今日はここまでにします。
レス、即レスありがとうございました。

~校門付近・友~
女さんの学校に着き、俺は周囲を見回した。
すると、少し外れた場所に人だかりが出来ている事に気が付いた。

間違いない。
女さんはあの中だ!


友「ざけんな! クズどもがぁ!!」


俺は全速力で駆け出し、何かしようとしていた半裸の男に飛び蹴りを食らわした。
そしてその勢いのまま、通学鞄を大きくスイングして隣りにいた男に叩き込む。


モブ男「ぐふぉおっ!」

ヤンキー「ぶふえべっ……」


不意を突けばこんなもんか。
起き上がる気配がないことを確認し、周囲を見回す。

柄の悪そうな奴が二人に、スマホを構えた男女が十五人程度。
女さんは裸になっているが、特に怪我はなさそうだ。

友「てめえら! 撮った画像、消しやがれ!」

デブ男「ブヒィッ……」


スマホを構えているクズへと駆け出し、目に付いた奴をしばき倒す。
そして、呆然としていたオンナのスマホを奪い取った。


ギャル「あんた、何すんのよっ!」

友「何すんのじゃねえだろうが! 写真を撮られてどんな気持ちになっているのか、オンナのくせに分かんねえのかよ!」

ギャル「あいつが自分から脱いだんでしょ。私のスマホ、返しなさいよ!」

友「消してから返してやるよ。お前らも寄越しやがれ!」

優等生「生活指導が来る前に、俺たちはもう行こうぜ」スタスタ

群集『そうだな、もう良いのが撮れたし。ハハハ……』

友「待てっ、逃げんな!」

DQN「雑魚相手に粋がってんじゃねえよ!」

DQN「お前、俺のダチをやっといて、ただじゃ済まさねえぞ!」

友「お前らこそ、俺のダチの彼女に手ぇ出して、生きて帰れると思うなよ!」

DQN「ふはっ! ヤレるもんなら、ヤってみろよっ!」

不良「くらえっ!」


俺は繰り出される拳をどうにかかわし、不良の腹に右足を蹴り込んだ。
するとその隙を突いて、DQNが軸脚を蹴り払ってきた。
そのせいで体勢を崩し、派手に尻餅をついてしまう。


友「ぐっ!」

DQN「おらおらっ!」

友「ぐはっ! ……ちぃっ!」

何度も蹴り飛ばされ、胸や腕に痛みが走る。
俺はさらに繰り出されて来たDQNの蹴り足を両手で掴み、立ち上がった。
そして後退しながら靴を脱がし、思いっきり顔面に投げ付けた。


DQN「ぶふぉうっ!」


靴が直撃し、遅れて両手で顔を庇う。
俺はその隙を逃さず、がら空きになった脇腹を殴りつけた。


DQN「ぐほぉっ、ふざけやがって……」

友「いいザマだな。俺をナメんなよ!」

不良「……DQN!」


ふいに殴りかかってきた不良の拳が、脇腹にめり込んだ。
くそっ、さすがに二人掛かりはキツいな……。

DQN「お前、俺を怒らせてただで済むと思うなよ!」

友「おい、冗談だろ……。どうなってんだよ、この学校は」


DQNが懐からナイフを取り出した。
それを持って、女さんへと駆け寄る。


DQN「オンナを殺されたくなかったら、大人しくしてろ。不良、ぼこれ!」

不良「さっきは、よくもやってくれたなあ!」


マジかよ……。
顔や腹に拳をもろに食らい、地面にうずくまった。
口内が切れて、鉄臭い味がする。
さらに不良が追撃してきて、痛みが全身に広がっていく。

女「と……友くんっ!」

女「今の私は、こんな物で殺せないから! だから反撃してっ!」

DQN「お前は黙ってろ!」

友「やめろおっ!」


DQNが女さんの左腕を切りつける。
しかし、強靭な膜のような物が展開されて、ナイフを防ぐのが見えた。
ゆうちゃんのアプリの副次的な効果だ!


女「ほらっ! そんな物で私を切れない!」

DQN「何だ、このオンナ」

不良「おらあっ、よそ見してんじゃねえよ!」

友「ぐはっ……、女さん」


俺はぐったりとうずくまった。
女さんにナイフが効かないなら、機を窺うんだ――。

不良「ぜえぜぇ、手こずらせやがって」
DQN「不良っ、もう俺が先に女をヤる! 変なオンナだが、犯して見せ付けてやろうぜ!」

女「うぅっ、友くん……」

DQN「おらっ! こんなとこで寝てたら、俺の邪魔なんだよっ!」

モブ男「がふっ……」


DQNは呻いていた奴を蹴り飛ばし、不良にナイフを渡してズボンを脱ぎ始めた。

くそっ、このままだと女さんが……。
俺は力を振り絞り、よろよろと立ち上がった。


不良「しぶといヤツだな。まだ立ち上がるのかよ」

友「俺たちは死神を相手にしてるんだ、人間のクズ相手にくたばる訳ねえだろっ!」

そう啖呵を切った直後、背後から誰かに突き飛ばされた。
驚いた不良が慌ててナイフを構える。
そして、突き出してきた。

ヤバい、
これは死ぬ――。

そう思った瞬間、胸に衝撃を感じた。


不良「うあぁぁっ……、ヤっちまった!」

友「がふっ……! マジで死ぬかと思ったじゃねえか!」

不良「?!」


たじろぐ不良に全力でアッパーをぶち込み、腹を殴りつけてやった。
崩れ落ちたのを見やり、突き飛ばしてきた奴を確認する。
振り返ると、ギャルが地面にへたり込んでいた。


友「こいつか……。後はお前だけだぜ、どうすんだ?」

DQN「ちいっ、俺がトドメを刺してやるよ!」

友「そんな間抜けな姿で粋がるなよ」

DQN「お前こそ、度胸もねえ癖にナイフなんて拾うんじゃねえよ。俺がビビるとでも思ってるのか?」


DQNがパンツ一丁で立ち上がり、声を張り上げた。
俺はナイフを構え、じりじりと間合いを詰める。

確かに、ナイフは使えない。
かと言って、下手に捨てるわけにもいかない。
奪われると最悪だ。

DQNの動きに警戒しながら、ナイフを構える。
そして俺は、不意に正門側を向いて驚いた。

友「くそっ……! 先公だ!!」

DQN「なにっ!?」


DQNが俺に釣られて、横を振り向く。
その隙をついて、思いっきり金玉を蹴り上げた。


DQN「ぐぬぅおおうぅぅっ!」

友「バカが! ナイフを持ってるのに、こんな手に引っ掛ってんじゃねえよ!」


DQNが股間を押さえて、もがき続けている。
そしてなぜか、女さんが脱いだ靴下に足を引っ掛けて、派手にすっ転んだ。


友「こんな所で寝てたら、俺さまの邪魔だろうが!」

DQN「ぐふぉぅっ!」

友「もう二度と、俺たちにちょっかい出すんじゃねえよ!」

DQN「」ガクリ

友「女さん、大丈夫?」

女「は……はいっ。友くんは、大丈夫ですか?!」

友「何とか……。女さんが無事で良かったよ」


俺はそう言って、ナイフで刺されたはずの胸元を確認した。
どうやら、胸ポケットに入れていたギャルのスマホが、ナイフを受け止めてくれたようだ。
パネルにヒビが入っていて、電源が入らなくなっている。

何だか、
ゆうちゃんが守ってくれたみたいだな――。

嫌な予感を感じつつ、
呻いている男どもを黙らせながら、手足を靴ひもで縛って回ることにした。

今日はここまでにします。
レス、即レスありがとうございました。
>>420
一行目、改行を忘れました。
すみません。

~校門付近・女友~
女友「な……何なの、これ?!」


女さんの学校に来ると、柄の悪そうな男子たちが物陰で倒れていた。
そしてそこには裸の女さんと派手な女子、友の姿があった。


女友「二人とも大丈夫?!」

女「友くんが助けてくれたから……」

友「ぐっ、やっと来たか……。来るのが遅いんだよ」

女友「だって、メールしろとか言うから……」

友「でも、おかげで女友を巻き込ませずに済んだ」

女友「こうなること、分かってたの?」

友「最悪な……」


そうか、だから友は私をすぐに行かせないようにしたんだ。
そういう機転が利くところ、好きだな。

女友「ねえ、痛い所とか無い?」

友「あちこち痛いに決まってるだろ。そんなことより、先生を呼んで、保健室からシーツを持って来てくれ」

女友「シーツ?」

友「女さんに服を掛けられないんだ。このままだと、マズいだろ」

女友「無駄だと思うけど……」

友「女さんに聞いて分かったんだ。これは、シュレーディンガーの猫だよ」

女友「ネコ?!」

友「通学鞄は動かせないのに、中身は出せる。それはアプリの使用者が、通学鞄の中に入っている物を観測していないからだと思う」

友「つまり、アプリを介して他の場所を観測する可能性がないなら、この周辺にカーテンを掛けられるはずなんだ」

女友「今の話に、ネコが出てこなかったけど……」

友「いいから、早く!」

女友「う、うんっ! 先生、呼んでくる」

女「……女友ちゃん、ありがとう」

女友「うん、これで大丈夫だね」


友が言うとおり、女さんが校門側から見えないようにカーテンを掛けることが出来た。
これで、帰宅途中の生徒に見られることはない。

そして不良たちは、生活指導の先生に連れて行かれた。
女さんのことは病気として説明されているらしく、不問となる見込みのようだ。
家族に連絡して、お母さんが迎えに来てくれることになった。

友「俺も後で来いって言われたけど、学校から先生が来るのかなあ」

女友「結構、暴れたからね」

友「だよなー」

女友「でも私は、友のこと間違ってないと思う//」

友「あんなヤツらと一緒にされたら、マジでやってらんねえよ」

女友「だよね! 私を巻き込まないようにしてくれて、ありがとうね//」

女友「ところで、撮られた画像は何とかならないのかな」

友「個人の良識に任せる部分がある訳だし、どうにもならないのが実情だと思う」

女友「そうだよね……」


仮に帰宅途中の生徒100人が目撃したとして、一人が3枚ずつ撮影したとすれば保存された画像は300枚だ。
もし、その内の一枚でもネットに流出してしまったら、拡散して誰にも止められなくなってしまう。


友「でも証拠を押さえた六人に関しては、民事訴訟も出来ると思う。銃刀法違反とか迷惑防止条例違反とか、警察のお世話にもなりそうだしな」

女「そんなことは、もういいです……」

女友「もういいって、女さんは本当にそれで良いの?」

女「女友ちゃんも分かっているんでしょ。撮られた写真は、どうしようもないことを」

女友「それは……」


私は何も言うことが出来なかった。
どんな言葉も、気休めにすらならない気がする。


友「どうしようもないのは確かだけど、意外と大丈夫かもしれない」

女「どういうこと……ですか?」

友「こういう言い方をするとアレだけど、エロ画像ってすぐに別のおかずが欲しくなるんだ」

女「別のおかず……?」

女友「ちょっと、友。何てことを言ってるのよ」


男子のそういう事情はよく分からないけど、もう少し配慮してあげてほしい。

友「……良いから良いから。別のおかずって言うのは、新しいエロ画像のことなんだ」

女「毎日同じ画像でしていたら、飽きてくるってことですね」

友「そうそう。それで女さんの新しいエロ画像が欲しければ、女さんを襲わないといけないだろ」

友「でも俺がDQNって奴らをのしてやったから、女さんに乱暴する度胸のある奴はいないはずだ」

友「だから、リアルもネットも、案外すぐにほとぼりが冷めると思う」

女「そう……だと良いけど――」

友「余程のことがない限り、何も心配いらないって。だから弱気にならずに、堂々と過ごしていればいいさ」

女「……」

友「ところで、女友。電話はどうだった?」

女友「誰も出てくれなかったわよ。メールも返事がないみたい」


ゆうさんは、メール機能を使えるはずだ。
それなのに返信がないのは、アダルト機能の状態だからかもしれない。


友「おかしいな。おばさんが出ると思ったのに」

女友「どういうこと?」

友「おばさんは今日、仕事が休みなんだろ。直ったスマホを取りに行って、ゆうちゃんのアプリを見つけたんじゃないかな」

友「男がこんな馬鹿なことをするわけないし、女さんが動けないままなのはおかしいだろ?」

女「言われてみれば、今までこんなことは一度だけしかなかったです」

友「そうだろ。母親っていうのは、隠しているエロい物を見つけたら、中身をチェックせずにはいられないんだ。間違いない!」

女友「そ……そうなんだ」

女「男さんじゃなくて、お母さんがアプリを――」

友「俺はそう思う」

女「女友ちゃん、友くん。もう動けるようになりました」


はらりとカーテンが開き、制服姿の女さんが出てきた。
ようやく三十分が経過して、ゆうさんとの接続が切断されたようだ。
それを見計らったかのようなタイミングで、女さんのお母さんが迎えに来てくれた。


友「女さん。俺は男とは長い付き合いだし、絶対に何か理由があると信じてる」

女「私も男さんを信じたい。でも……」

友「彼女なら、本気で男を信じてほしい。あいつはそんな奴じゃないし、俺と女友が保証するから!」

女「本気で信じる……か」

女友「そうだよ。悩み事も聞くし、女さんはもう一人じゃないんだからね」

女「……二人とも、今日はありがとう。画像のこととか、少し考えてみます」

女友「明日は、四人でカラオケに行くんだからね。約束だからねっ!」

女「……そうだね」ニコリ


その笑顔がとても不安で、だけどこれ以上は何も言えなくて……。
私はただ、心配することしか出来なかった。

今日はここまでにします。
レス、即レスありがとうございました。
もうすぐ完結です。

~家・リビング~
男「ただいま。やっと家に着いたし……」

母「お帰り、遅かったわねえ」

男「人身事故で電車が止まってて……。歩いて帰ったら、一時間近く掛かったよ」

母「ふうん、人身事故だったんだ。踏切にパトカーが停まっていたから、何かなとは思っていたけど」

男「それで、何か手伝うことある?」

母「えっと、スマホのことで話があるの。まあ、そこに座りなさい」

男「スマホ、もう直ったんだ!」

母「ええ。私や職場の連絡先は、アドレス帳に登録しておいたから」

男「ありがとう」

母「ただね、あのアダルトアプリだけは消えていなかったの」

男「ゆうが消えてないなら、他は別にどうでもいいよ。復元できるし」


俺はそう言って、テーブルの上に置いてあったスマホを手に取った。
割れていたパネルがきれいに直っていて、まるで新品のようだ。

……あれっ?
着信と未読メールのLEDが、ピコピコと点滅しているぞ。

電話番号は覚えていないので、誰からか分からない。
俺はとりあえず、メールを開くことにした。

From:lovely-maiden0721・・・
件名:大変!

本文:
女さんが大変なことになっているの!
あんたは一体何をしているのよ!(`o´)
早く女さんに連絡してあげて!



この微妙なメアドは女友だ。
送信時刻は一時間前みたいだけど、大変とはどういうことだろう。
もっと詳しく書けよ……。

母「メールは後にして、話を聞いてくれる?」

男「まあ、良いけど……」

母「そのアダルトアプリだけどね、私は削除するべきだと思う」

男「……なんで? この前は許してくれただろ」

母「有害アプリの中には、従来のフィルターでは対応しきれない新種が出てくることがあるらしいの」

母「そのアプリは無修正だし、どう考えても違法アプリじゃない」

男「ちょっと待って。もしかして、アプリを起動したの?!」

母「データが全部消えていたのに、勝手にDLされたのよ。不審に思ったから、確認しておいたの」


やばい。
やばい、やばい!

女友が言っているのは、このことだ!

男「アプリを起動したとき、ゆうはどこでどんな服装をしてた!?」

母「校庭っぽい所で、学生服を着てたわね。というか、そのアプリはどんなサイトで見つけたの?」

男「まさか、校庭で脱がせたのか?!」

母「話をすり替えないで、聞いたことに答えてくれる?」

男「すごく大切なことなんだ」

母「……そうよ。で、男はどうなのよ」


校庭で脱がせたなら、思いっきり外じゃないか!
女は大丈夫だっただろうか。
今は、こんな話をしている場合じゃない!


男「その話は後で良いかな。急用が出来たから、女さんに会いに行ってくる!」

母「急用って……。帰って来たらお説教だからね!」


俺は部屋に入り、ゆうにも事情を聞くことにした。

~部屋~
ゆう「男さん、大変です! お母さまに全部脱がされました!」


アプリを起動させると、ゆうは開口一番に慌てて言った。
この様子だと、スマホを壊された影響などはなさそうだ。


男「やっぱり、脱がされたのか。場所は校庭だったのか?」

ゆう「は、はいっ! でも人目に付くと思ったので、物陰に移動しました!」

男「物陰に?」

ゆう「私はシステム的に逆らえないので、脱ぐしかないならそのほうが良いかなと思って」

男「とりあえず、分かった。俺は今から女に会いに行く!」

そう言いつつ、物陰という場所が気掛かりだった。
アプリ画面に、人の姿は映らない。
ゆうの判断は本当に正しかったのだろうか――。

人目に触れても教師が気付く校庭と、人に気付かれにくい物陰。
本当は、校庭にいたほうが良かったんじゃないのか?

俺は焦りを感じつつ、スマホをポケットに入れた。
そして、女の連絡先を控えたメモを手に取り、踵を返す。
すると、ゆうが思い出したように声を上げた。


ゆう「そうだ、男さん! リンクを切断してください!」

男「ちょっと待て、リンクが接続されたままなのか?!」


確かに、母さんが切断したとは思えない。
女は全部脱がされただけではなくて、仮切断されるまでの三十分間、物陰に裸で放置されていたことになるじゃないか。

俺は改めてスマホを手に取り、ゆうを見た。
洋服も背景も、見慣れたトップ画面そのものだ。
本当に今、リンクが接続されているのだろうか。

そう思ってよく見ると、ブラウスやシャツが乱れている事に気が付いた。
意図せず、指が触れてしまったのかもしれない。
しかしなぜ、トップ画面なのに触ることが出来るのだろう。

判然としないけれど、俺はメニュー画面を開き、リンクを切断した。
ゆうの姿は着衣の乱れが直っただけで、他は何一つ変わらなかった。

今日はここまでにします。
レス、即レスありがとうございました。

~部屋・女さん~
女母「ねえ、本当に大丈夫なの?」

女「お願いだから、一人にしてくれる? 気持ちを整理したいの……」

女母「……そう。お母さん、部屋にいるから」

バタンッ

女「うわあああぁぁん…………」

女「どうして? どうして、私がこんな目に遭わないといけないのよお!」


一人になってベッドに突っ伏すと、押し殺していた感情が溢れ出してきた。

校庭で裸にされて、みんなに写真や動画を撮られて、襲われそうになって……。
囃し立てる声とシャッター音、男子たちの醜悪な欲望。
思い出せば思い出すほど、心が潰れて感情が溢れ出してくる。

どうして、こんなことになったの?
本当に、男さんを信じても良いの?
だったら、早く連絡して来てよ!

こんなの私、もう耐えられないよ――。

でも、私は男さんの彼女なんだ。
友くんが言っていたように、本気で男さんを信じないといけない。
そうでないと、身体を張って守ってくれた彼に、申し訳が立たない。

私は涙を拭いて起き上がった。
ツラくても負けちゃダメだ――。

彼女の私が、男さんを信じないと!
一緒に乗り越えようって、約束してくれたんだもの!

そういえば、まだ制服を着たままだ。
私は洋服ダンスを開けて、初デートで着た服に着替えることにした。

『女性らしくて、すごく可愛いよ』

それは男さんが褒めてくれた服。
私にとって大切な思い出の服。

それを着れば、男さんを身近に感じられるんじゃないかと思った。
そして、現実と向き合う勇気が出るんじゃないかと思った。

着替え終わり、洋服ダンスを閉める。
そして振り返った直後、ゆうさんのアダルト機能が起動した。

女「えっ……また?!」


私は動くことが出来なくなり、部屋に立ち尽くした。
ブラウスとシャツが捲れ上がり、服の上から胸を触られる。
それで満足したのか、ブラウスの裾がだらりと落ちてきた。

どうして?!
こんなの、ひどすぎる……。

友くんの言葉を信じるならば、私を裸にしたのは男さんのお母さんかもしれない。
だけど、今のは男さんに間違いない。

そっか……。
私に連絡をするよりも、ゆうさんのほうが大事なんだ――。

そう思うと、再び涙が溢れてきた。
そして私の身体は、アプリから解放された。

男さんから着信があったのは、それからすぐの事だった。


女「……もしもし、女です」

男『もしもし。女、大丈夫!? 本当にごめん!!』

女「大丈夫って、何がですか?」

男『ゆうから事情を全部聞いた。スマホが直って、母さんがアプリを起動させてしまったんだ!』

男『本当に女のことが心配で、その……大丈夫だった?!』

女「大丈夫なわけないじゃないですか! 私がどんな目に遭ったと思っているんですか!」


私は声を荒らげた。
湧き上がる憤りと悲しみを、男さんにぶつけずにはいられない。


女「私は学校で裸にされて、みんなに写真を撮られて、無理やり襲われそうになったんですよ!」

女「男さんは、一体何をしていたんですか!」

男『俺は学校から歩いて帰る途中だった。電車が人身事故で止まっていたんだ』

女「人身事故? 私が聞きたいのは、そんなことじゃないんです!」

女「お母さんに連絡が入るなら、一緒に行く約束をしておくとか、出来ることがあったはずでしょ!」

女「スマホを壊した私が悪いことは分かっています。でも、男さんが何もしていなかったなら、悪いのはお母さんではなくて男さんなんですよ!」

男『ごめん、俺のせいだ。本当にごめん……』

女「私は男さんを信じたいんです。男さんが好きだから、信じさせてほしいんです……」

男『分かってる……』


感情が高ぶってきて、私は涙声で訴えた。
今、本当に聞きたいことを。


女「だったら、教えてください。私とゆうさん、どっちが好きなんですか?」

男『そんなの、女に決まってるだろ!』

女「じゃあ、どうしてアダルト機能を使ったのよ。絶対に使わないって、約束してくれたじゃないですか!」

女「私に電話をするよりも、ゆうさんが大事なんでしょ。だから、エッチが出来るか試したんでしょ?」

男『それは違う。母さんが切断していなかったから、接続状態で再起動しただけなんだ。俺はゆうに事情を聞こうとしただけだ』

女「だったら、どうして服を脱がせようとしたのよ!」

男『リンクが繋がっているとは思わなくて。そんなつもりはなかったし、俺を信じてくれ!』

女「……今、何て?」


それは、何気ない一言だった。
だけど今の私は、その言葉の意味を理解してしまった。
理解したくなかった――。


男『とにかく信じてくれ! 今そっちに向かっているから、一緒に話し合おう!』ガチャ

女「うそ……でしょ」

心の拠り所が崩れていく。
どうして、私はこの服を着てしまったのかな……。


『リンクが繋がっているとは思わなくて』


それは聞いてはいけない言葉だった。

チャット機能のゆうさんは、アダルト機能を起動させると私と同じ姿になる。
だから、もしアダルト機能が起動していれば、毎日使っていた男さんならば服装や背景を見ただけで気が付くはずだ。

それなのに気が付かなかったということは、私がチャット機能のゆうさんと同じ姿になっていたことになる。

初デートで褒めてくれた、大切な思い出の服。
それは、チャット機能のゆうさんと同じ服だったのだ。

『じゃあ、昨日の服はもう着ないの?』


昨日、夏服の話をしていたときの言葉。
その話をしているとき、男さんは少し考え込んでいた。

そのとき、夏服姿を妄想しているのかなと思っていた。
だけどそうではなくて、ゆうさんと同じ服を着ることがない事を残念がっていたのだ。

初デートも、ゆうさんがスマホから出てきた感覚だったに違いない。
だから教えてくれずに、朝からずっと黙っていたんだ――。

疑い始めれば、デートの服以外にも心当たりはある。

男さんは、ゆうさんと毎日エッチをしていた。
それなのに、私とは一度もセックスをしてくれない。

一緒にセックスをしたことがないのに、私とセックスをする夢を見るはずがない。
つまり男さんは、ゆうさんとセックスをする夢で射精したのだ。


そして三人で話し合おうとするのも、ゆうさんとセックスをするためだ。
私がゆうさんのアプリを禁止したとき、『えっ?』と戸惑い残念そうな顔をしていた。
男さんは本当は、ゆうさんと一緒にセックスをしたいのだ。

『女とゆうが幸せになれるように、俺も頑張るから』

そう言ったのも、ゆうさんを諦めていない証拠だ。


女「やっぱり男さんは、私よりもゆうさんが好きなんだ!」

私はスマホを手に取り、動物園で撮影した写真を眺めた。
そこに写っている私は、男さんにとって一体誰なのだろう……。

私?
それとも、ゆうさん?

愛されたい。
男さんに愛されたい。
そして、セックスをしたい。
その想いだけが、心の隙間に募っていく。

そうだ、この服はゆうさんの服だ。
だったら、私が死んでゆうさんになればいいんだ!

そうすれば、たくさん愛してもらうことが出来る。
愛されて、毎日エッチをしてもらうことが出来る!

ならば、私は迷わない。
今までずっと、私は死にたかったんだから。
この苦しみからも解放されるんだから。


女「死後の世界がエッチなアプリだったなんて……」


ああ、
それが分かっているのなら、もうすることは一つだけじゃない――。

今日はここまでにします。
レス、即レスありがとうございました。

~街中~
男「とにかく信じてくれ! 今そっちに向かっているから、一緒に話し合おう!」


俺はそう言って、通話を切った。
女は終始、涙声だった。
一体何があったのか、俺の不注意でどれほど傷付けてしまったのか。
それが痛いほど伝わってくる。
これは完全に俺の責任だ。

俺はスマホの修理が終われば、母さんに連絡が入ることを知っていた。
だからたった一言、『直ったら俺も一緒に行く』と言っておかなければならなかったのだ。
それだけのことで防げたのに、俺はそれをしなかった……。

昨日、彼女が見せてくれた涙。
それと今日の涙は、まったく意味が違う。
彼女の心は、本当に限界を超えてしまったのかもしれない。

ゆう「女さん、つらそうでしたね……。大丈夫でしょうか」

男「きっと苦しんでいると思う。とにかく、早く合わないと!」


女は今、初デートの服を着て、ゆうと同じ姿になっている。
もし幽霊が死んだときの姿になるならば、女が死ぬのは今日しかない。

思い詰めて、自殺してしまうのだろうか。
だとすれば、女はどんな方法で死ぬのだろう――。

取り返しがつかないことになる前に、一緒に話し合わなければならない。
そう考えて、ふと違和感を感じた。

もし女と分かり合うことが出来たなら、彼女は死を選ばないことになる。
今日しかないのに、今日は死なないのだ。

つまり死因が自殺ならば、俺は女に会うことが出来ないことになる。
もう時間は残されていないんだ!

俺はそう思い、力強く自転車を漕いだ。

男「そう言えば、ゆうは記憶を思い出していないのか?!」

ゆう「……いいえ。何も思い出していません」

男「そうか……」


結局、ゆうは何も思い出さなかった。
記憶に頼れると思っていた俺たちが甘かったのだ。


ゆう「あのっ! ふと思ったんですけど、リンクを接続すれば良いんじゃないですか。そうすれば、女さんは動けなくなりますよ!」

男「今の女にそれをすると、信頼を失うだけだろ。話し合うことが出来なくなったら、取り返しが付かなくなる」

ゆう「そうですよね。どうか女さんを、私たちを救ってください――」

男「分かってる。だから、それは最後の手段だ」


女が死ぬのは、今日で間違いない。
何か手掛かりはないのだろうか。

待てよ……。
ゆうの服装は、女が死んだときに着ていた服だ。
ならば、ゆうのトップ画面は女が死んだ場所ではないのか?

男「ゆう、自分の部屋で、どんな死に方なら出来る?」

ゆう「んなっ! それを私に聞きますか!?」

男「ゆうも何か考えろ。自分のことだぞ」

ゆう「えっと、洋服ダンスで小指を打つと死ぬほど痛そうです」

男「……今、自分がいるところをよく見てみろよ。死ぬときに使ったものが、どこかに置いてあるかもしれないだろ」

ゆう「そんなこと言われても、見慣れた部屋ですよ」

そういえば、女の家はマンションだよな。
女の部屋に入ったとき、ゆうが立っている場所から何が見えた?

確か、窓だ。
眺めが良くて、景色が綺麗だったことを覚えている。
そして、りんごジュースが美味しかったっけ。


男「ゆうが立っているところから、窓が見えるか?」

ゆう「……あっ、はい。部屋情報として、正面に窓があります」

男「分かったよ、ゆうは窓から飛び降りて自殺したんだ!」

~部屋・女さん~
女母『女、ドアを開けなさい!』


異変を察したのか、お母さんが必死に呼びかけてきた。
ちゃんとお別れ、しないとね――。


女「お母さん。今までありがとう……。私、やっと分かったの」

女母『分かったって、どういうこと?!』

女「私はね、死んだほうが幸せになれるの」

女「驚くかもしれないけど、またすぐに会えるから悲しまないでね……」

これで良いよね?
お母さん、少しだけさようなら。

私は窓を開けて、表に出た。
窓枠に掴まりながら、慎重に手すりの上によじ登る。
心地よい風と見晴らしの良い景色が、私に開放感を感じさせてくれた。

そして、ゆっくりと下を見る。
すると、地面がものすごく遠くに見えた。
それが今の私と男さんの距離。
これがゼロになったとき、私は男さんに愛してもらえるんだ!


そう思った瞬間、
ゆうさんのアダルト機能が起動した――。

~地上~
ゆう「はわわ、無理です! 高すぎて怖いですっ!」

男「一度は上ったんだから、頑張って部屋に戻ってくれ」

ゆう「うぅっ……手足サポートしてください。むりっ、むりぃ……」ガクブル

男「俺は落下場所に急ぐ。もし落ちても助けてみせるから、俺を信じろ!」

ゆう「は、はいっ。頑張って戻ります……」


まさかと思い、窓側に向かって正解だった。
見上げると、ゆうに強制された女が部屋に戻ろうとさせられている。
これで引き返すことに成功すれば、話し合うチャンスが出来るはずだけど……。


ゆう「あっ……、だめっ……落ちるぅ!」

ゆう「きゃああぁぁぁっ!!」


女が向きを変えようとした瞬間、バランスを崩して両手が壁から離れた。
そして、身体がふわりと宙に舞った――。

・・・
・・・・・・
男「飛び降り自殺を助ける方法は、一つだけある」

ゆう「何ですか?」

男「それは重力を反転させることだ。ゆうの重力を反転させると、女も空に向かって落ちていくんだ」

ゆう「そういえば、そんな機能がありましたよね!」

男「……そう。その機能を使えば、もし飛び降りたとしても、落下する速度が減速していく」


つまり、自由落下運動が鉛直投射運動に変換される事になるのだ。

鉛直投射運動の初速度V。は、重力を反転させた瞬間の落下速度だ。
そして、その速度がゼロになる最高点の高さを計算して、女を受け止めれば良い。

男「どのタイミングで反転させれば良いか、急いで調べてくれないかな」

ゆう「は、はいっ! 鉛直方向の運動をネット検索してみます」


自由落下:y=V^2/2g
鉛直投射:y=V。^2/2g(最高点の高さ)
※V=V。


ゆう「自由落下と鉛直投射の関係式が同じだから、ちょうど真ん中の位置で反転させるとベストのタイミングみたいです」

男「ありがとう。これで女を助けられるはずだ!」

ゆう「はいっ、お願いします!」

・・・・・・
・・・

男「女あぁぁっ! お前は絶対に落とさないからっ!!」


俺は駆け出しながら、タイミングを見計らって重力を反転させた。
地面が近づくにつれて、加速していた女の落下速度が減速していく。
それでもあっと言う間に落ちてきて、胸ほどの高さで一瞬静止した。

このタイミングで、リンクを切断すれば助けられる。
俺は素早くスマホを操作し、力強く女を抱き留めた。


重力の向きが戻り、ずしりと女の体重を感じる。
それは心地よい命の重みだった――。

女「……」スースー


女を抱えて移動し、近くの芝生に寝かせてあげた。
落下の途中で気を失ったようだけど、今は穏やかに呼吸をしている。


ゆう「もう、男さん! さすがに死ぬかと思ったじゃないですか!」

男「言っただろ、落ちても助けるって」

ゆう「そうだけど、本当に怖かったんですから」

男「ごめん。でも、みんな無事で良かったよ」

ゆう「そうですよね……。男さんは私たちの命の恩人です。本当にありがとうございます//」

女の死因は、ゆうによる転落死だった。
俺はその死の運命をねじ曲げ、怪我一つなく助けることが出来たのだ。
だけど、何だか心が晴れない。


ゆう「そう言えば、女さんを助ければ、魂が一つになるとか言ってませんでしたっけ?」

男「生き霊ネタでは、最後に記憶を受け継ぐのが定番らしいけど……」

ゆう「そんな気はしませんよ」

男「まさか、まだ終わっていない……ということか?」


――飛び降り自殺。

女はそれを選ぶくらい、追い詰められてしまった。
心を癒さなければ、何度でも死を選んでしまう恐れがある。

だから、これで終わった訳ではない。
彼女を本当に救うためには、心を受け止めてあげることが大切なんだ。

今日はここまでにします。
レス、即レスありがとうございました。

ソレは突然だった。
形容しがたい闇が湧き上がり、どろりと空間が淀んだのだ。
禍々しい霧に包まれ、世界が漆黒の闇に塗り替えられていく。


一体、何が起きたんだ……。
まさか、女の運命をねじ曲げたことで、世界が壊れてしまったのか?!

心臓が早鐘を鳴らし、本能的な恐怖を感じ取る。
そして全身が総毛立ち、ただ一点に視線を奪われた。
そこに人型を成す、異形の姿をした化け物がいるのだ。

化け物はこちらを見据え、にたりと顔を歪ませた。

男「な、何なんだ! お前はっ!」


恐怖心を押し殺し、声を振り絞った。
武器も何もない。
それでも女を守るために、俺はやるしかないんだ!

俺は自分を鼓舞し、スマホをポケットに入れて身構えた。


化け物「ほう、このわしが見えるのか。現世の縛りを解放した娘に干渉され、こちら側に足を踏み入れたようだな」

男「言葉をしゃべった?!」

ゆう「男さん、死神です!!」

男「死神だって?!」

死神「いかにも……。どうやら、すべての事が上手く運んだようだ」

男「どういうことだ……」

死神「それでは、お前たちに啓示してやろう」

死神「その娘は、自ら死を選ぶくらい青年に恋をしてしまったのだ」

死神「その魂は時空を遡り、自身と青年を結び付ける愛情の架け橋となった」

死神「そして、最後にその魂は現世に縛られることになる。それにより――」


何なんだ、これは……。
漆黒の闇に包まれた世界で、異形の姿をした化け物が似つかわしくない言葉を発している。
死神というのは、死者をあの世に連れて行く悪魔ではなかったのか?!

死神「娘、答えよ!」


死神がそう言うと、ポケットに入れたはずのスマホが、女の胸の上に移動した。
胸と言うよりは、死神だから心臓の上なのかもしれない。


死神「お前は死を選んで、お前が欲するものを手に入れることが出来たのか?」

ゆう「それは……」

ゆう「どんなに男さんに愛されても、私は死んでいるから……。好きになっても繋がることが出来ないし、今は心が苦しいです」

死神「そう、人は死ねば終わりなのだ。死んだ後に、望む愛が手に入るわけがないであろう!」

ゆう「ですよね……。今はもう、分かって……います」

死神「だが青年と行動を共にし、違う視点から視ることで気付くことが出来た真実もあるはずだ」

ゆう「はい……、色んなことが分かりました。だけど、死んでから気付いても遅いんです!」

死神「そう気を塞ぐでない。実は、お前は死んでいないのだ」

ゆう「えっ……? 私は死んでないの?!」

死神「わしはお前に、死んだことを明確に宣言しておらん。転落したことで死んだと錯覚し、生体から幽体離脱をしただけなのだ」


確かにゆうは、幽霊なのに死に瀕する状況を恐れていた。
それは、本当は生きているからだったのだ。
死神に回収されたことで、死んだと思い込んでいたのだろう。


ゆう「じゃあ、私があの世で何かにぶつかったのは、死後の世界に入れなかったからなんですか?!」

死神「そうだ。他の魂たちの手前、お前が暴れて逃げ出したという演出にピッタリだったのだ」

ゆう「ええっ! じゃあ、本当に生きているんだ!」

死神「そうなるな。だから、その抜け殻に戻ることが出来る」

男「ちょっと待てっ!」

死神「なんだ、青年よ」

男「抜け殻とは、どういう意味だ!」

死神「そのままの意味だ。この娘はすでに魂が離脱しており、生体の中は空っぽなのだ。これから自身を傀儡し、架け橋としての役目を果たさねばならんからな」


怪我もなくて、呼吸もしている。
だから、女は生きている。
それなのに意識がないのは、すでに魂が入っていないからなのだ――。

男「まさかお前は、女の魂を元に戻さずに、生きたまま回収したのか!?」

死神「そうだ。死んだ魂では生の感覚が鈍り、性に対して執着しない。生者を傀儡するためには、やはり生きている魂が適しているのだ」

男「どうして、女にこんなことをしたんだ!!」

死神「それが、この娘の運命だからだ。わしは死んだ魂の回収ばかりではなく、一度くらいは女神のように愛を運んでみたかったのだよ」

死神「そのおかげで、お前たちは愛に触れることが出来たであろう。良かったではないか!」


これが、死神の目的だったのか?
こんなことのために、女の魂を生きたまま回収して、魂をアプリにしたというのか!?

――ふざけるな!!

男「死神だか何だか知らないけど、こんなことが許されると思っているのか!」

男「女神のように、愛を運んでみたかっただと? そのせいで、女がどんなに苦しんだのか分かっているのか!」

男「女の人生を、そして女の魂を、お前は弄んでいただけじゃないか!!」


自殺を選んでしまうくらい、女を苦しめて追い詰めた。
そして、ゆうも自分の気持ちに悩み苦しんでいた。
死神は女の心と魂を苦しめた元凶なのだ!

これが、死神の構想したラブストーリーだというのか?
最悪のくそシナリオじゃないか!

男「ぬうおおおぉぉっっ!」

死神「わしを死神と知り、事を構えるつもりか?」

ゆう「男さん! 気持ちは分かりますけど、やめてくださいっ!」

男「ゆうは、女はこんなことをされて許せるのかよっ! 俺は絶対に許せないっ!」


俺は死神に向かっていき、全力で殴りつけた。
しかし、闇が粘体のように絡みつき、拳が死神に届かない。
それでも俺は声を張り上げて、右足を踏み出した。
彼女の痛みを、お前は思い知るべきなんだ!

死神「青年よ、それは蛮勇というものだ。しかし、その気概は気に入ったぞ!」


その言葉と同時、右腕に闇が侵食してきた。
激しい激痛が襲い、前腕が折れて腕全体が悲鳴を上げる。
さらに踏み出した右脚も闇に侵食されていき、俺は崩れ落ちた。


男「ぐああぁぁっっ!」

ゆう「男さんっ!」

死神「飛び降りた娘と受け止めた青年が共に無傷では、現世の理に反してしまう。奇跡の対価として、右手足を破壊させてもらおう」

男「ぐそっ……くそおっ!」

ゆう「ひどい……酷すぎる!」

死神「飛び降りた娘を、青年が身を挺して救う。まさしく美談ではないか」

ゆう「ふざけないでください!」

死神「何を言う。これは、お前が死を選んだ結果なのだぞ」
死神「共に無傷では、不審に思う者が現れる。ゆえに、この結果は必然なのだ」

ゆう「でもだからって、こんなのあんまりじゃないですか!」

死神「娘よ、お前は一度は青年を信じて待とうとしたが、最後まで信じ抜くことが出来なかった」

死神「そして、青年は忠告を聞きながらも、娘に衣服の真実を教えなかった」

死神「その結果、二人の気持ちがすれ違い、死の運命が真となってしまったのだ」

死神「そう、この結末の責任はお前たちにあるのではないのか?」

ゆう「それは……」


死神ではない。
女を追い詰めてしまったのは、他でもない俺なのだ……。

修理に出したスマホを、どのように受け取るか考えていなかったから。
女友の忠告を聞き入れずに、デート服のことを女に教えなかったから。

だから、女は死を選んでしまったんだ――。


男「そうだ、俺が女を……」

死神「だが、お前たちは協力しあい、その娘が死ぬ運命を覆したではないか」

死神「死を選んだことが真実なら、それ以上に生きる意志を示したことも真実だろう」

死神「そんな二人だからこそ、生と性の奇跡を分かち合い、想いを未来に繋いでいくことが出来るはずだ」

ゆう「生と性の奇跡を分かち合い、想いを未来に繋いでいく……」

死神「そうだ。人は過ちを反省し、成長していくことが出来る。それが生きている証ではないか!」

ゆう「これって、女友さんや男さんが言っていたことだ……」

男「くそっ! 俺はただ、すべての責任を転嫁しようとしていただけだった……」

死神「青年よ、お前たちには未来がある。運命を覆して守った命、二人で繋いでいくが良い」

ゆう「男さん、私は生きたいです!」

男「……ゆう」

死神「それでは、娘よ。再び人の身体を纏い、現世に縛られろ!」

ゆう「あのっ、少し待ってください!」

死神「どうした」

ゆう「男さんと友さんの治癒をして、私の卑猥な画像や動画を削除させてほしいです」

死神「ただの魂が生命を操ることは出来ん。自然治癒を待ち、それを通じて、想い合う気持ちを育むと良いだろう」

ゆう「分かりました。では、画像と動画は消しても良いのですね!」

男「そんなことが出来る……のか?」

ゆう「はいっ。現世の理に干渉して、あらゆる情報機器を強引にクラッキングして削除します」


ゆうは画像などの保存データを参照したり、ネット検索をすることが出来る。
そしてメールを作成し削除するなど、システムに侵入することも出来る。
さらに、常識を超越している存在だ。

死神がゆうの身体にスマホを選んだのは、この瞬間のためだったのかもしれないな――。

死神「理を超える干渉は止めておけ。それによる反作用も大きくなるぞ」

ゆう「そうだとしても、私は生きているから。ならば、今の私に出来ることをしたいです!」

死神「死を選んだ娘とは思えぬ前向きな言葉だな。だが、それがお前の魂の本質なのだ」

ゆう「……はい。では、やります!」


ゆうが力強く答えると、スマホが光り始めた。
闇の中で、ひときわ強く輝いている。


死神「青年よ、これが生きている魂の輝きだ。これからも運命の闇に負けない光を放ち、強く輝き続けるのだ」

男「俺は忘れないっ。この魂の輝きを――」


俺は地面に這いつくばったまま、死神を見上げた。
互いに目が合い、死神はにたりと顔を歪ませた。

ゆう「ふぅ、終わりました~」

死神「それでは現世に縛り、人の身体に戻らせよう」

ゆう「は、はい。お願いします――」


その言葉と同時、世界が光に包まれた。
眩しくて、とても目を開けていられない。


ゆう「男さん!」

ゆう「今まで、たくさんの思い出をありがとうございました!」

ゆう「ゆうとしてはもうお別れだけど……私はあなたに逢えて――」


ゆうの声が光の中に溶けていく。
遠く、小さく、聞こえなくなっていく。
そして気が付くと、白んだ世界は在り方を取り戻していた。

芝生の上で、女が眠っている。
その胸元には、俺のスマホが静かに置かれていた。

今日はここまでにします。
レス、即レスありがとうございました。

女「う……うぅん…………」パチクリ

男「女っ、気がついたか?!」


女は上体を起こし、自分の身体を見回した。
手があること、足があること、身体があること。
そして、俺がいることを確かめる。


女「男さん……。私、本当に生きてる――」

男「ああ、生きてる。女は本当に生きているよ」

女「ごめんなさい、本当にごめんなさいっ!」

女「ゆうに嫉妬して、ゆうになりたくて……。私は、すごく愚かなことをしてしまいました」

女「でも、やっと男さんの気持ちが分かったのっ!」

男「俺こそ、女を追い詰めてしまって本当にごめん!」

男「俺のせいで襲われそうになったり、その服のことで女をすごく苦しめてしまった……」

女「学校でのことは、友くんが守ってくれたから大丈夫。この服のことも、今なら理由は想像できます」

女「だから私は、これからも男さんと一緒にいたいです!」

男「うん、俺と一緒にいよう。友には、本当に感謝しないといけないな」

女「はいっ。不良たちにたくさん殴られていたから、怪我が心配です……」


女は俺の負傷した右手足を見た。
痛覚が麻痺したのか、今はほとんど痛みを感じない。

女「男さんは右腕、折れてますよね……。早く病院に行かないと!」

男「ああ。母さんに迎えに来てもらって、病院に行ってくるよ」

女「私は救急車のほうが良いと思う。足も折れているかもしれないし」


確かに足を動かせないし、俺は救急車を呼ぶことにした。
そして、そのついでにアプリを確認する。
アイコンがなくなっていて、新品のような状態だ。

やはり、ゆうは消えていた。
ゆうの魂は、女の身体に戻って来れたのだ。

女「ねえ、男さん」

男「どうしたの?」

女「死神に本気で怒ってくれて、すごく嬉しかったです。だけど、無謀なことはもうしないでくださいね」

男「うん……。でもあの時は、女の魂を弄んだことが許せなかったんだ」

女「ありがとう。だけど死のうとしたことは、私たちにも原因があったんだよね……」

男「そうだな……。俺たちは、まだ付き合い始めたばかりだし。これから、みんなが羨むようなカップルになろうよ」

女「……うん。私を救ってくれて、本当にありがとう」

男「ずっと一緒にいような。女、おかえり――」

女「男さん……、ただいま。これからも一緒にいてほしいです!」

女「うわああぁぁぁんっ…………」

女は左側から俺に腕を回し、顔をうずめた。
何だか泣かせてばかりだな……。

だけどその涙には、彼女の想いがたくさん詰まっている。
そう思うと、俺は自然に彼女を抱き寄せていた。

救急車のサイレンが聞こえる。
もうすぐ、ここに来てくれるようだ。

ゆうが来て、今日で23日。
俺たちは死と再生を経験し、心が一つに結ばれた。

~街中・7月21日~
女とゆうの時間ループ、そして死神の思惑。
そんな非日常が終わり、一ヶ月が過ぎた。

俺はあのあと、右手足の怪我で三週間ほど入院した。
その間に、色んなことが変わっていった。

まず俺が女を転落事故から助けたことがきっかけで、女の両親と顔合わせすることになった。
それ以来『発作に苦しむこと』がなくなり、女に笑顔が増えてきたので、今は家族公認の付き合いをしている。
そして不良たちが逮捕・補導され、平穏な日常が戻りつつある。

しかし、友はその平穏な日常が大きく激変した。

女子「あのっ、友先輩ですよね!」

友「そうだけど……」

女子「今、一人なんですけど、よろしければ私もご一緒して良いですか//」

友「ごめん。このあと、彼女とデートだから――」

女子「……そうなんですね。では、また学校で!」タタタッ

男「告白だけじゃなくて、出会い頭に声掛けまでされるのかよ。相変わらず、選り取り見取りでモテモテだな」

友「毎日毎日、もう勘弁してほしいよ……」

きっかけは、ゆうが自分の画像や動画を削除したことだ。
非現実的な力を使って削除したせいで、その反作用が友に及んだらしい。


『女さんを撮った人たちが画像が消えたって言ってるけど、それって有り得なくない?』

『よく分からないけど、ウイルスとかを作れば消せると思う。あの男子が作ったりしたんじゃないの?』

『ええっ?! そんなことが出来ちゃうなんて、どう考えても凄すぎでしょっ!』

『だって彼氏は入院中だし、あの人しかいないと思うな。彼女はいるのかなあ』

『どうなんだろ。思い切って、女さんに聞いてみましょうよ!』


こうして女の学校で噂が広まったらしく、今では毎日のように友が告白されるまでになった。
それに焦った女友が告白し、今に至る。

男「モテすぎて困るとか、贅沢な悩みだよな。告白されたら、いつも病室で自慢してたくせに」

友「……はあ。最近は女友のいやみが耳たこで、もううんざりなんだ」

男「まあ、あまり気にするなよ。女友も友を信じているから、軽口を言えるんだろうし」

友「分かってるって。夏休みの間に、ほとぼりが冷めてほしいよ……」

男「じゃあ、待ち合わせ場所に急ごうか」

友「そうだな」

~待ち合わせ場所・女~
女友「どう、女さん。男とは上手くいってる?」

女「上手くいってるよ。女友ちゃんこそ、友くんとどうなの?」

女友「毎日のように告白されてて、ちょっとストレス溜まってるかな」ムカッ

女「あ……あぁ、色んな意味で私のせいだよね」

女友「でもまさか、モテ期が来るとはねえ」

女「あのときの友くん、すごく格好良かったし。みんなが女友ちゃんのこと、羨んでるよ」

女友「そ、そうなんだ。夏休みの間に、既成事実って作ったほうが良いのかなぁ//」

女「私は反対だな。セックスは、お互いに想い合う気持ちが大切だと思うから」

女友「お互いに想い合う気持ち、か」

女「そうだよ。私は不良たちに襲われそうになったり、ゆうのときには男を誘惑したりしていたから。だからこそ、余計にそう思うの」

女友「うん……」

女「女友ちゃんが既成事実だとしか考えていないなら、友くんとは上手く行かなくなると思う」

女友「分かった、ありがとう。女さんは、もうセックスしちゃった……の?」

女「うぅん、まだだよ。今はお互いの価値観を知り合うことが、すごく楽しいから//」

女友「そうなんだ。女さん、少し変わったね」

女「私はあの日、自殺未遂をしたでしょ。男に愛されたくて、私はゆうになろうとしたの」

女「でも同じとき、ゆうも悩んでいた。私たちは結局、自分の気持ちを押し付けていただけで、男の心を見ようとしていなかったの――」

女友「だから、今は心を見ようとしているんだ」

女「そういうことかな。私がそれに気付けたのは、やっぱり死神のおかげだと思う」

女友「死神のラブストーリーか。結果だけ見ると、案外アリなのかもしれないわね」

女「結果だけなら……ね」

女友「結果だけ、だね。私だって、あんなの絶対耐えられないし!」

女「だよねえ。ラブストーリーの主人公なら、きゅんきゅんするような恋をしたいよね」

女友「そうそう! 私もそう思う」

女友「でも、どうして男だったんだろ?」

女「それは、私たちの魂が惹かれあっているからだよ。だから私の魂は、男のスマホに落ちてしまったの」

女友「それって、すごくロマンチック//」

女「私は魂だけになっていたから、それをすごく感じてた。だから、女友ちゃんも友くんを信じてあげてほしいの」

女友「分かってるって。友に相応しい彼女にならないと、みんなが諦めてくれないしね」

女「そうそう。女友ちゃんのこと、応援してるから♪」

女友「ええ、一緒に頑張りましょ!」

男「お待たせ~!」

女「来た来た♪ 歩き方、足はもう大丈夫そうだね」

男「夏休みだし、治ってくれないとな。あとは右腕のリハビリだけだ」

女「困ったことがあったら、私が手伝ってあげるから」

女友「でも二人とも、少し遅いよ」

友「ごめんごめん。ちょっとな……」

女友「ちょっとなって、もしかして告白されてた……とか?」

友「今日は告白じゃないから」

男「なあ、女友。ずっと思っていたことがあるんだけど、これって時間ループの影響だよな」

女友「時間ループ?」

男「そうそう。俺と女だけじゃなくて、女友も時間ループを作り出すために重要な役割があったんだから」

友「循環するタイムパラドックスか。そういう話もあったなあ。確か、女友は女神公認のスケベな女子だったよな」

男「そうそれ。女友も、死神の思惑に組み込まれていたんだよ」

女友「ええっ、そうなの?!」

男「ゆうが画像を削除して友がモテ始めたから、女友は付き合う決心をしたんだろ」

女友「そうだけど……」

男「それって、ゆうが友と女友のキューピッドだったことになるじゃないか」

女「ちょっ……ちょっと待って。そんなふうに言われると、少し恥ずかしいんだけど」

男「モテモテになったのは、ゆうの恋の試練だ。二人で乗り越えてみせろよ」ニヤニヤ

友「うわぁ、死神の置き土産か……。それはキツいな」

女「んなっ?! 死神の置き土産とか、変なこと言わないでよっ。私は二人の女神なんですからね!」

男「おっ、さり気なく格上げしてきたな。女神的なこと、何か言ってくれよ」

女「は、はいっ! 二人は幼馴染だから気心が知れているかもしれないけど、友達と恋人は似ているようで違う関係だと思うんです//」

女友「そっか……。だから、私たちはこれを乗り越えないといけないんだ」

友「俺はちゃんと断ってるし、女友が一番好きだからな!」

女友「……わ、私も友が好きだよ。信じているから、ちゃんと断りなさいよね//」プイッ

友「分かってるよ。女友、誕生日おめでとう」

女友「わわっ、ありがとう……//」

男「友と女友、上手くいきそうだよな」

女「うん、そうだね。大人になっても、ずっと一緒にいたいよね」


私が自殺をしようとした日から、もうすぐ一ヶ月。
ゆうになっていたから、体感的には約二ヶ月なんだけど……。

死神の力により、私は色んな気持ちを知ることが出来た。
つらいことが多くて、死にたいときもあった。
だけど、ゆうは本当に運んでいたのだ。

私たち四人に愛情を――。


だから、今なら心から言えると思う。

女として、ゆうとして、
その言葉を大好きなあなたに。



女「あのね……」

女「私は今、とても幸せだよ//」



おわり

女幽霊「死後の世界がエッチなアプリだったなんて……」

―完―

長くなりましたけど、これで完結です。
ありがとうございました。

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