李衣菜「あらしのよるに」 (72)

※みくりーなをイチャつかせたいだけのSS第2弾です。

※そういうの苦手な人は閲覧注意です。

※拙作、みく「みくりーなはBL?」もよろしくお願いします。時系列としてはちょっと前のお話ですが、これから読んでも全く問題ないです。





李衣菜宅 19時過ぎ


李衣菜「はい……はい……そうです。…………分かりました。じゃあお願いします。……はい、お疲れ様です」(ガチャ

みく「はい、李衣菜ちゃん、バスタオル」

李衣菜「あぁ、うん。ありがと」(フキフキ

みく「Pちゃん、何て?」

李衣菜「暴風警報が解除されるまでそっちで待機してくれ、だって。実質明日まで待機だろうね、これじゃ」

みく「まぁもう外出れるような天気じゃないよね……」

李衣菜「だねー、ビニール傘も金具がイカレてひっくり返っちゃうほど風強いし」

みく「それにこんな強い雨のコンボとなれば、もうどうしようもないにゃ」


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李衣菜「…………」

みく「……ん?」

李衣菜「…………」(ウズウズ

みく「……今手ぶらで外出て雨風に打たれたらロックな感じが味わえるかも、とか考えてたでしょ」

李衣菜「は、はぁ!? 別にそんなこと考えてないし!」

みく「本当に?」

李衣菜「…………ダメ?」

みく「ダメに決まってるでしょ! ここに来るまでにもう散々濡れたのもう忘れたの!? 鳥頭かにゃ!」

李衣菜「ま、またそれとこれとは違うじゃん! ていうかさらっと酷いこと言ってない?」

みく「とにかく、これ以上変なこと言わないの! 分かったなら返事」

李衣菜「はいはーい」

みく「(本当に分かってるのかにゃ……?)」

李衣菜「にしても、まさか急に速度上がるわ進路逸れるわで東京直撃するなんて、都合悪いなぁホント」

みく「午前中は雨すら降ってなかったのにね」

李衣菜「電車が運転見合わすくらいだからよっぽどなんだろうね。今日中に再開するか難しいとか言ってたし」

みく「遅延ならまだしも運休はどうしようもないにゃ」

李衣菜「でも遅延の末に電車止まった所が私ん家の最寄り駅で助かったよ、ホント」

みく「不幸中の幸いってヤツにゃ。……でも、急に押しかけちゃってよかったの?」

李衣菜「え? いやいや、流石に駅に放置してタクシーで帰れとは言えないでしょ。しかもめっちゃ混んでたし」

みく「まぁ、それもそうだけど……」

李衣菜「あ、お母さんやお父さんのことなら心配しなくて大丈夫だから。一応みくちゃんのこと知ってるし、一泊くらい全然オッケーだよ」

みく「そのご両親さんが見当たらないっぽいけど、どこにいるのかにゃ?」

李衣菜「ん? ウチ共働きだからさ。と言っても多分八時過ぎには帰ってくるんじゃないかな」

みく「帰ってくるって……電車使わないくらい、仕事場は近い所なのかにゃ?」

李衣菜「…………」

みく「…………」

李衣菜「…………あー……」

prrrr……prrrr……

みく「あ、電話」

おっ、前の見てたよ

――電話中――


李衣菜「……うん、分かった。それじゃ」(ガチャ

みく「ご両親の方?」

李衣菜「うん。お母さんから」

みく「何となく結果は読めてるけど、一応聞いておくにゃ」

李衣菜「今日は職場に泊まるだって……」

みく「お父さんも?」

李衣菜「はい……」



>>6
ありがとうございます。今回前より長いですが、お楽しみいただけたら幸いです。

みく「…………」

李衣菜「…………」

みく「――へっくちゅん!」

李衣菜「……えっと、とりあえず、お風呂入る? 服、結構濡れてるだろうし」

みく「え? あ、でも李衣菜ちゃんも……」

李衣菜「え?」

みく「?」

李衣菜「……あー! あー、そういうことなら、別に気にしないでいいよ。ここは私ん家なんだから、遠慮しないで先に行った行った」

みく「? なら……うん、お言葉に甘えさせてもらうにゃ」

みくside 1


風呂場

みく「にゃぁ…………」(チャポン

みく「思ってたより体冷えてたから熱いお湯が気持ち良いにゃ……」

みく「ふにゃぁ…………」

みく「……いよいよ風が強くなってきてる……さっきから外からすごい風の音がするにゃ」

みく「(それにしても、李衣菜ちゃんのご両親が帰ってこないとなると、今日の夜は李衣菜ちゃんと二人だけ……)」

みく「……………………」

みく「……いやいやいやいや!」

みく「(何考えてるにゃ、みくは。別に何も気に揉むことなんてないにゃ)」

みく「そもそも考えてみれば、二人で泊まるのなんて寮のみくの部屋でそれこそ何回も……)」

みく「…………」

みく「(……改めて思い返すと李衣菜ちゃん、みくの部屋に泊まりに来すぎな気が――)」

李衣菜「みくちゃん?」(コンコン

みく「ひゃわっ!?」

李衣菜「あぁ、ゴメン。驚かせちゃった?」(ドア越し

みく「い、いや、大丈夫にゃ。どうかしたの?」

李衣菜「バスタオルと着替え、洗濯機の上に置いておくから」

みく「ありがとにゃ。助かるにゃ」

李衣菜「あー、それとついでに濡れた服は全部洗濯機放り込んどくねー」

みく「うん――うん? え? ちょ、ちょっと待って!」

李衣菜「…………」

みく「り、李衣菜ちゃん!?」

李衣菜「な、何? もう全部洗濯機入れちゃったけど」

みく「~~~っ! も、もういいにゃ! さっさと向こう行くにゃ!」

李衣菜「はぁ!?」

みく「いいから!」

李衣菜「何なのさ、いきなり待てだのあっち行けだの……」(ブツブツ

みく「……………………」

みく「(ぁぁぁ~下着見られたにゃあ……)」(ブクブクブク

みく「(いつもならシンプルな白い下着にゃのに、何で今日に限って……)」

みく「(今日に限ってピンクのフリフリが満載のやつを……)」

みく「…………デリカシーなさすぎにゃ、李衣菜ちゃん……」

李衣菜side 1


リビング

李衣菜「エアコンのリモコンは……っと、あったあった」(ピッ

李衣菜「あー寒……さっとバスタオルで拭いただけじゃやっぱ冷えるなぁ……」

李衣菜「パーカーだけでも抜いどこ」(ヌギヌギ

李衣菜「…………」

李衣菜「(うぅ……恥ずかしすぎる……)」

李衣菜「(あれどう考えても、私も服濡れてるから先に入らなくていいの? って意味で言ってたよね……)」

李衣菜「(完全に一緒にお風呂入るかどうかって意味かと思っちゃったじゃん……)」

李衣菜「はぁ……」

李衣菜「(流石に家のお風呂で二人入るのはないわ。狭すぎ)」

李衣菜「(ま、まぁでもみくちゃんがよければ別にこっちだって嫌ってわけじゃ――)」

李衣菜「じゃなくて!」

李衣菜「……はぁ」

李衣菜「頭冷やしに本当に外出ようかな……」

李衣菜「あ、そうだ。みくちゃんに着替え用意しとかなきゃ」

李衣菜「えっと……まぁ適当でいっか。私とみくちゃんほとんどサイズ一緒だし」

脱衣所

李衣菜「よいっしょっ、と」

李衣菜「みくちゃん?」(コンコン

みく「ひゃわっ!?」

李衣菜「あぁ、ゴメン。驚かせちゃった?」

みく「い、いや、大丈夫にゃ。どうしたのかにゃ?」

李衣菜「バスタオルと着替え、洗濯機の上に置いておくから」

みく「ありがとにゃ。助かるにゃ」

李衣菜「あー、それとついでに濡れた服は全部洗濯機放り込んどくねー」

みく「うんーーうん? え? ちょ、ちょっと待つにゃ!」

李衣菜「…………」

李衣菜「(え、何この下着)」

みく「り、李衣菜ちゃん!?」

李衣菜「な、何? もう全部洗濯機入れちゃったけど?」

みく「~~~っ! も、もういいにゃ! さっさと向こう行くにゃ!」

李衣菜「はぁ!?」

みく「いいから!」

李衣菜「何なのさ、いきなり待てだのあっち行けだの……」(ブツブツ

李衣菜「…………」

李衣菜「(はぁ~ビックリした)」

李衣菜「(ピンクでフリフリじゃん。上も下も)」

李衣菜「(意外、ってほどのもんじゃないけど……)」

李衣菜「(あんな可愛い下着つけることもあるんだ、みくちゃん……)」(ドキドキ

みくside 2


リビング

みく「…………」

Tシャツ『I'LL FUCKING KILL YOU』

みく「なんちゅう服着せてくれるのにゃ、李衣菜ちゃんは」

みく「高1のみくでもヤバいこと書いてあるのが分かるにゃ」

みく「どうせそれっぽい英字プリントのTシャツ着るのがロックだとか思ってそうだにゃ」

みく「ちょっと流石にアイドル的にこんなの持ってたら問題にゃ」

みく「あとで注意しておかないと……」

みく「…………」

みく「…………」(ソワソワ

みく「(……落ち着かないにゃ。李衣菜はお風呂入っちゃったし)」

みく「(何だかんだでみく、李衣菜ちゃんの家にお邪魔するの初めてなんだよね……)」

みく「(勝手にうろうろするのもアレだし、ソファーに座ってることくらいしかすることないにゃ)」

みく「(つけてるテレビもさっきから台風のことしかやってないし)」

みく「(って……あれ? 向こうの椅子にかかってるのって、李衣菜ちゃんが羽織ってたパーカー……)」

みく「(もう、水吸ってるからこんなとこ置いてたら乾かないにゃ)」

みく「(……手に取ったはいいけど、どこか掛けるようなところは――)」

みく「…………」

みく「(……さっきまで李衣菜ちゃんが羽織ってた服……)」

みく「(李衣菜ちゃんの……)」

みく「…………」(ぎゅ

みく「…………」(キョロキョロ

みく「……………………」(スンスン

みく「――はっ! い、いい今みくは何を――」

みく「(み、見られてないよね? 李衣菜ちゃんまだお風呂だよね?)」

みく「……はぁ~」

みく「……本当、何してるのにゃ、みくは」

李衣菜side 2


風呂場

李衣菜「はぁぁぁぁ~~~」(チャポン

李衣菜「疲れた…………」

李衣菜「(まさか家に二人っきりになっちゃうとは)」

李衣菜「(二人で泊まること自体はもう慣れっこだけど……)」

李衣菜「(自分の家ってだけでなんか変な気分になっちゃうなぁ)」

李衣菜「(新鮮っていうか、ちょっと恥ずかしいかも……)」

李衣菜「(考えてみれば、寮と違って完全に私達以外誰もいないんだよね。当たり前だけど)」

李衣菜「(私達以外……)」

李衣菜「…………」

李衣菜「(……いやいや、だから何なのさ)」

李衣菜「(別にみくちゃんと二人きりになったところで、寮でのそれと変わらないし)」

李衣菜「(変に意識する必要なんてこれっぽっちも……)」

李衣菜「これっぽっちも――」

ビューッ!

ガタガタガタッ!

李衣菜「っ!?」(ビクッ

李衣菜「か、風……? お、驚かさないでよね、もう……」

李衣菜「…………」

李衣菜「外、一晩中こんな感じなのかな」

李衣菜「……ちょっと怖いかも……」

李衣菜「(……はぁ)」

李衣菜「(よかった……みくちゃんが泊まることになって……)」

李衣菜「…………!?」

李衣菜「わ、わわ私今何を……!?」

李衣菜「べ、別に本当は私そんなつもりじゃないし。大体みくちゃんの方が怖がりだし。そうだよ、怖がりなみくちゃんのために私が……」

李衣菜「…………」

李衣菜「何に言い訳してんだろ、私……」

李衣菜「虚しい……」

リビング 


みく「…………」(チラチラ

李衣菜「…………」(そわそわ

みく「…………」(そわそわ

李衣菜「…………」(チラチラ

みくりーな「あの――」

みくりーな「っ……」

みく「な、何の用かにゃ? 李衣菜ちゃん」

李衣菜「み、みくちゃんこそ何?」

みく「みくは、その、別に大したことじゃないにゃ。だから李衣菜ちゃんからどうぞ?」

李衣菜「じゃあ私も大したことじゃないからみくちゃんから話していいよ」

みく「じゃあってどういうことにゃ! じゃあって!」

李衣菜「大したことないって言ってんじゃん!」

みく「それを最初に言ったのはみくでしょ!」

李衣菜「だから何なの!?」

みく「ぐぬぬ……」

李衣菜「むむむ……」

みくりーな「」(ぐ~

みく「…………」

李衣菜「…………なんか食べる?」

みく「……賛成にゃ」

キッチン


みく「と言っても今からだと買い物にも行けないにゃ」

李衣菜「冷蔵庫の中に何かあったかな……」

みく「んー、わりと色々入ってるから夕飯くらい適当に作れそう、かな」

李衣菜「そうだなぁ……お、カレールー発見。カレーでも作る?」

みく「みくは構わないにゃ」

李衣菜「よし、それでいこっか。ちなみに、冷凍室にシーフードミックスがあるんだけど」

みく「……李衣菜ちゃん?」(ゴゴゴゴゴゴ

李衣菜「う、嘘嘘! 冗談だってば……あはは……」

みく「もう……」


李衣菜「じゃあ私が野菜切るよ。みくちゃん皮剥くのやってくれる? はい、ピーラー」

みく「分かったにゃ」

李衣菜「包丁とまな板は……っと」

みく「――はい。出来たにゃ」

李衣菜「サンキュ。まな板の上に置いといて」

みく「了解にゃ」

李衣菜「さーて、いっちょやりますか」(トントントントン

みく「っ!? ちょ、李衣菜ちゃん!?」

李衣菜「んー? どしたの?」

みく「どしたの? じゃないにゃ! 手! 包丁持ってない方の手! そんな添え方じゃ危ないにゃ! 添える手は猫の手って教わらなかったのにゃ!?」

李衣菜「えー、切れればいいじゃん」

みく「よーくーなーい! 来週にゲロゲロキッチンの収録控えてるのに、そんなので臨むのはみくが許さないにゃ。それに曲がりなりにもギターやってるんだから、指先は大事にしなきゃ駄目でしょ」

李衣菜「曲がりなりにもって……あぁもういいからそっちはそっちで仕事してよ。私お腹空いたー」

みく「むぅ……気を付けてよ、本当に」

李衣菜「はーい」

みく「…………」(むきむき

李衣菜「…………」(トントン

みく「…………はい。玉ねぎにゃ」

李衣菜「ん。…………っ! 痛っ!」

みく「あっ! もう、言わんこっちゃない……」

李衣菜「み、みくちゃんがしつこく言うから気になって集中出来なかったの!」

みく「はいはい、余計なこと言ってないで切った所見せて。ほら」

李衣菜「あっ――」

みく「あちゃー、深くはないけど軽くスパッといっちゃてる……全く、仕方ないんだから――」(はむっ

李衣菜「!?!?!?!?!?!?」

みく「……………………」

李衣菜「え、えーっと…………?////」

みく「…………////」(ボッ

李衣菜「あのー……みく、さん?」

みく「――に゛ゃあああああああああ! な、何を、みくに何をやらせるのにゃ!」

李衣菜「は、はぁ!? 咥えてきたのはそっちでしょ!?」

みく「だ、だって手元にティッシュがなかったから……」

李衣菜「だからって咄嗟に咥えるとか――」

みく「ああああああああ忘れるにゃ! 今の無し! 無しにゃ!」

李衣菜「は、はぁ……」

みく「ほら! さっさとバンドエイド取ってくるにゃ! みくは場所分かんないにゃ!」

李衣菜「はいはい……」

李衣菜「…………」

李衣菜「(うぅ……ドキドキが治まんない……)」

李衣菜「(不意打ちすぎるでしょ、あんなの……)」

李衣菜「(……次怪我したら、また――)」

李衣菜「(っ! 馬鹿なこと考えてないで、料理に集中しないと。とりあえず、バンドエイドどこ仕舞ってたっけ……)」

リビング


みくりーな「ごちそうさまでした」

みく「ふぅ……お腹いっぱいにゃ」

李衣菜「作りすぎたかと思ったけど、何だかんだで全部食べちゃったなぁ」

みく「確かに……これはちょっと、明日のレッスンはキツ目にやる必要がありそうにゃ……」

李衣菜「えー、大丈夫でしょこれくらい」

みく「その油断が命取りなの! みく達はアイドルなんだから、スタイルの維持には人一倍気を付けないと!」

李衣菜「はいはい分かりましたー……でも今はやることないし、まだ時間早いけど眠くなってきたなぁ……ふぁ~~ぁ……」

みく「食べてすぐ寝たら牛になるにゃ」

李衣菜「もー、お母さんみたいなこと言わないで」

みく「くくっ、口調からして早速牛になってるにゃ」

李衣菜「ぐっ……」

みく「でもまぁ、実際特にすることないから暇なのは同意にゃ。テレビも台風の特番まで組み始めてるし」

李衣菜「数十年に一度の大雨だって。結構ヤバそうだね」

みく「でもまだここは暴風域に入ってないなんて、もう外は滝みたいな雨が降ってるのにこれ以上どうなるっていうのにゃ……」

李衣菜「風もハンパないねー雨戸全部閉めたから大丈夫と思うけど」

みく「確かに何か飛んできそうな勢いにゃ」

李衣菜「ふぁ……ふぁ~~ぁ……」

みく「李衣菜ちゃん。女の子がみっともないにゃ、そんな大きく口開けてあくびして」

李衣菜「だって眠いんだからしょうがないじゃん……」(グデー

みく「ああもう、ソファーで寝たら風邪引いちゃうでしょ。本当に寝るんなら自分の部屋に行くにゃ」

李衣菜「あーい…………?」


みく「? どうかしたかにゃ?」

李衣菜「いや……なーんか忘れてる気がするんだよね。と言っても何か忘れ物をしてきたっていう感じじゃなくて」

みく「まぁ頑張って寝るまでに思い出すにゃ。まぁ、李衣菜ちゃんが寝るんならみくもそうしようかな。まだ九時過ぎだけど、どうせ明日はいつもより早起きして寮に帰って学校行く準備しないと――」

李衣菜「あーっ!!!」

みく「っ!? び、びっくりした……急に大声出すなんて心臓に悪いにゃ!」

李衣菜「宿題!」

みく「……は?」

李衣菜「明日提出の数学の宿題! まだ一個もやってない!」

みく「はぁ……それは寝る前に思い出せてよかったにゃ。ならみくは寝るからお布団貸し――」

李衣菜「前川さん」(ガシッ

みく「……このみくの腕を掴む手は何かにゃ?」

李衣菜「折り入って頼みたいことがあるんですけど」

みく「宿題手伝ってくれって頼み以外なら受け付けてあげる」

李衣菜「……ふぇぇ」

みく「ああああもう分かったからそんな情けない顔やめるにゃ。……全く、学年一つしたのみくに教わるなんて恥ずかしくないの?」

李衣菜「だって実際みくちゃんの方が勉強出来るし……数学なんて高校入った途端意味分からなさすぎなんだよー。それにさ、前宿題見てもらった時も、先生よりみくちゃんの方が教え方上手だったし」

みく「そ、そうなの?」

李衣菜「うん、マジでマジで」

みく「ふ、ふぅん……まぁ、そこまで言うんなら? 別に手伝ってあげないこともないにゃ」

李衣菜「(ちょろい)」

李衣菜の部屋


みく「…………」

李衣菜「……あ゛ー、わ゛がんな゛い゛ー」(ゴロゴロ

みく「はいはい……どこ?」

李衣菜「ここ。ベクトルの問題。このあたり授業で聞いててもホントさっぱり。今のところ数学で一番意味不明」

みく「ベクトルね……みくも習ったばっかりだからちょっと心許ないけど……うん、これくらいなら大丈夫にゃ」

李衣菜「マジで? 流石前川みく様……」

みく「やめるにゃ気色悪い……まずAB、AC、ADのベクトルを求めるでしょ? そこからADのベクトルをベクトルAB、ACを使って――」

李衣菜「ふむふむ……」

三十分後


李衣菜「やっと終わった……」

みく「……補習用の宿題まであったなんて聞いてなかったんだけど?」

李衣菜「う、嘘は言ってないでしょ! それも明日提出だったの!」

みく「おかげでもう十時前にゃ」

李衣菜「はいはいご迷惑かけてすいませんでしたー。じゃあベッドの横に布団敷くから、ちょっと脇に寄ってくれていい?」

みく「ん。分かっ――」

ピカッ!

ピシャーン!!!

みく「に゛ゃっ!?」

李衣菜「きゃっ!?」

ゴロゴロゴロゴロ……

みく「……か、雷だよね、今の……」

李衣菜「うん……凄い音……結構近くに落ちたっぽいね。鼓膜がまだぐわんぐわんいって――」

――プツッ

みくりーな「っっっ!?!?!?」

みく「なっ、なななななな何何何何何何!? 何で真っ暗!? 電気!? 電気何で!?」(ダキッ

李衣菜「ぎゃーーーーーーっ!!! どこ掴んでんのみくちゃん!」

みく「しししし知らないにゃそんなの! り、りり李衣菜ちゃんの家も消灯時間が夜十時なの!?」

李衣菜「何わけ分かんないこと言ってんの! 明らかに停電じゃん!」

みく「は、はぁ……停電……?」

李衣菜「もう、みくちゃんがいきなり抱きついてくるから、驚く暇なんてなくなったよ……前もそうだったけど、どんだけ怖がりなわけ?」

みく「~~~っ! そ、そういう李衣菜ちゃんこそ、みくの肩めっちゃ掴んでるんだけど!?」

李衣菜「これは、その、生理現象みたいなもので、私の意思とは関係な――」

ピカッ

みくりーな「ひっ!」(ダキッ

ピシャーン!!! 

………………ゴロゴロゴロ…………

みく「…………」

李衣菜「…………」

みく「あー……どうしてもって言うなら、みくが一緒に寝てあげなくもないにゃ」

李衣菜「はぁ!? それはこっちの台詞。夜中に一緒に寝たいって言い出しても遅いからね」

みく「それは李衣菜ちゃんでしょ!」

李衣菜「震えながら言っても説得力無いし!」

みく「むむむむむ……」

李衣菜「ぐぬぬぬぬ……」

ピカッ

みくりーな「っ!?」

………………ゴロゴロゴロ…………

みくりーな「……………………」(コクリ

みく「……ここは一つ大人になって、一時休戦しない?」

李衣菜「奇遇だね……私もそう思ってたところ……」

みく「ちょ、李衣菜ちゃんもうちょっと向こう行って。ベッドから落ちちゃう」(ゴソゴソ

李衣菜「ちゃんと一人分のスペースは確保してあげてるでしょ。贅沢言わないで。このベッドそこまで広くないんだから」

みく「ベッドから落ちたら李衣菜ちゃんのせいだからね。みく、結構寝てる間に寝返り打つし」

李衣菜「……あーもー! じゃあもうちょっとこっちに来たらいいじゃん!」(ギュッ

みく「あっ、ちょっと手、引っ張らなくても……」

李衣菜「…………」(ギュゥッ

みく「…………にゅふふ」

李衣菜「……何さ」

みく「もしかして、やっぱり李衣菜ちゃん怖いの? 寝ながらでもみくの手掴んできちゃって」

李衣菜「…………うん。怖い」

みく「ふぇ?」

李衣菜「ぶっちゃけた話、怖いに決まってるじゃん。電気つかないし、雷はひっきりなしに鳴るし、雨も風もどんどん酷くなるし、こんな日に限ってお母さんもお父さんもいないし……ははっ、今日みくちゃんが泊まりに来てくれなかったら、ちょっと精神的にヤバかったかも……」

みく「李衣菜ちゃん……」

李衣菜「あーあ……みくちゃんにはあんまりこういうの見せたくなかったんだけどなぁ。今日一番恥ずかし――」

みく「みくも……みくも本当は怖いにゃ」

李衣菜「みくちゃん?」

みく「さっきは意地張っちゃったけど、李衣菜ちゃんが本当のこと言ってくれたのに、みくだけ嘘吐くわけにはいかないにゃ」

李衣菜「そ、そういうつもりはなかったんだけど?」

みく「いいの。みくが勝手にそう思ってるだけだから。それに――」

李衣菜「?」

みく「言ったでしょ? 一時休戦って。だから明日の朝までは、こうして過ごすにゃ」(ギュッ

李衣菜「…………うん」

翌朝 5時半


みく「う……ん……? 朝……?」

みく「雨、止んでる……て言うかめっちゃ晴れてるにゃ。台風一過ってヤツかにゃ」

みく「李衣菜ちゃんは……」

李衣菜「すぅ……すぅ……」

みく「……結局一晩中手繋いでたにゃ」

みく「うぅ……今になって急に恥ずかしく……」

みく「……李衣菜ちゃん起きたら、全部夢の中の話にしてやろうかにゃ……」

みく「とりあえず起こそうかにゃ。まだ早いけど、勝手に出て行くのも失礼だし」

みく「李衣菜ちゃん、朝にゃ。起きるにゃ」(ユサユサ

シンデレラプロジェクトルーム お昼過ぎ


卯月「昨日、台風凄かったですよねー」

凛「うん。家の窓がずっとガタガタ震えてたから、壊れちゃうんじゃないかと思ったよ」

未央「ウチのマンションでも、飛んできた物で他の人の部屋の窓ガラスが粉砕してたりしてたよ。くわばらくわばら……」

卯月「そう言えばみくちゃん、昨日お外でラジオの収録がありましたよね。夕方から電車止まってたみたいでしたけど、大丈夫でした?」

みく「えっ? あ、あぁ……みくはあの後李衣菜ちゃんの家に避難してたにゃ。ちょうど電車止まった駅が、李衣菜ちゃん家の最寄り駅だったから」

凛「そうなの? ラッキーだったね」

未央「他の皆も結構心配してたよ。どこの駅も帰宅難民でごった返してたって聞いたし」

みく「ギリギリセーフだったにゃ。まぁあの後も停電とかあって大変だったけど……」

卯月「あっ! 私の家もでした! さぁ寝ようと思ってた時にふっと消えて、もうビックリしちゃって……」

凛「私の家は停電しなかったな。でもここは停電したってさっきプロデューサーから聞いたよ。お陰で整理中の資料が全部消えて徹夜だったって……」

未央「通りでいつも以上に目力が強いと……と、まぁこの話は置いといて。ねね、みくにゃん。りーなの家で何か進展はなかったの?」

みく「はぁ? 進展? 何のことにゃ」

未央「いやいや、最近仲の良いアスタリスクのお二人が、今度はりーなのお宅にお泊りしたことで何か進展はなかったのかと」

みく「べっ、別に何もなかったにゃ何も! あるわけないにゃ、何にも!」

凛「めっちゃ動揺してる……」

卯月「あはは……」

未央「ほらほらー今は私だけだし、他の誰にも言わないからさー」

みく「だから何にもないって言ってるにゃ――」

李衣菜「おはよー」(ガチャ

卯月「あ、李衣菜ちゃん。おはようございます」

凛「おはよ」

未央「おっはー、っとグッドタイミングで渦中の人物が!」

李衣菜「? 何の話?」

みく「何もないにゃ。って、どうしたのかにゃ、その荷物」

李衣菜「あぁ、昨日洗濯したみくちゃんの服と下g」

みく「に゛ゃあああああああああああああ!!! ストップ! どうしてそれをここに持ってくるにゃ!」

李衣菜「え、だってこういうのさっさと渡しておいた方がいいでしょ」


卯月「洗濯した服と……」

凛「今、下着って言おうとしてたよね」

未央「お……おおぅ……まさかそこまでとは……」

みく「ちがーう! そういうのじゃないにゃ!」

凛「そういうのって……?」

みく「ぐっ……ぬぬぬぬぬ……」

李衣菜「??? まぁいいや。とりあえず、これ。はい」

みく「李衣菜ちゃんのバカ! バーカ!!!」

李衣菜「なっ――折角ここまでしてあげたのに、何その言葉!」

みく「うるさーい! もっと李衣菜ちゃんはデリカシーを持つべきにゃ!」

李衣菜「はぁ!? 意味分かんない! もう怒った! 解散だね! アスタリスク解散!」

凛「あっ、また始まった……」

未央「もう風物詩ってヤツだね。やっぱり仲良しだなぁ、この二人」

卯月「ケンカするほど仲が良いって言いますしね」

みく「望むところにゃ! みくはもうソロでも十分魅力を発揮出来るんだから!」

李衣菜「私だって、もう一端のロックアイドルとしてやっていけるし!」

みくりーな「ぐぬぬぬぬ……ふんっ!」



余談だが、翌日、何事もなかったようにアスタリスクとしての仕事をするみくと李衣菜でした。

天丼オチで申し訳ない。読んでくれた方、ありがとうございました。

また一つこれでアスタリスクの尊さを広めれたらなぁと思ったり。

ではまた。


前半の「意識してドギマギ」より
後半の「無意識にイチャイチャケンカ」のほうがアスタリスクっぽくてすき

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