東方拳闘祭【トウホウパンチアウト】 (19)

とある幻想郷の居酒屋では、一人の悪霊が昼間から酔い潰れていた…

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1427731208

彼女の名は魅魔、元は名の知れたボクサーだった。
彼女は升を手に取り、なみなみと注がれた酒をぐっと飲み干し、ダンと音をたてて升を台に置いた。

魅魔「…もう一杯…」

「魅魔さん…もう五杯目ですよ…そろそろ止めた方が…」

魅魔「うるさい、口答えしないで一杯注ぎな…酒のつまみも持ってくるんだよ…」

魅魔が顔を真っ赤にしながら言ったとき…

「んだと!?このアマ!」

店の奥から男の怒鳴り声が聞こえた…

声のした方を見てみると、二人の男が一人の少女を取り囲んでいた。

魅魔「ったく…こんなところで喧嘩かい…」

魅魔は呆れた顔で言った。

と次の瞬間、少女が自分を取り囲んでいる男の一人の腹をドガッと殴った。

「あぐっ」

腹を殴られた男は、短くうめくと、ドタッと崩れ込んだ。

「ヤロウ!」

もう一人の男が殴りかかってきたが、少女はそれを軽やかによけ、お返しとばかりに、男の顎に強烈なアッパーをお見舞いした。

「ぐへっ」

そのまま男がパタリと倒れると、少女は店の出入り口から外に出ていった。

「くそっ!逃げやがったぞ!」

「待ちやがれ!」

男達は立ち上がると、殴られた箇所を押さえながら店を出ていった。

魅魔「…」

ケンカの一部始終を見ていた魅魔は驚いた顔をしていたが、立ち上がって店の出入り口に向かった。

「魅魔さん!お勘定は!?」

魅魔「ツケといてくんな…」

「はぁ…はぁ…」

男達を殴った少女は森まで逃げると、地べたに腰を下ろし、息を整えていた。

すると、少女の近くの木から、魅魔がヌッと姿を表した。

「あっ…」

魅魔を見た少女は慌てて逃げ出そうとした。

魅魔「安心しな、別にあんたを捕まえてどうしようって訳じゃあ無いさ」

魅魔がそう言うと、安心したのか、少女は再び地べたに腰を下ろした。

魅魔「あんた、名前は?」

魔理シ小「魔理シ小…霧雨魔理シ小だ…」

魅魔「あたしは、魅魔。元はボクサーだったんだ」

そう言うと、魅魔は魔理シ小にスッと手をさしのべ…

魅魔「あたしと頂点を取ってみないか?」

魔理シ小「…は?」

数分後、魅魔は魔理シ小を連れて、ジムへ行った。

魅魔「ここが、あたしのジムだ。設備もしっかりしているし、あんたは今日からここでボクシングのトレーニングをするんだ。心配すんな、あたしがあんたを王者に導いてやる」

魔理シ小「…本気でそう思っているのか?私がボクシングの王者なんて…」

魅魔「あたしは、店であんたのパンチを見たときビビッと来たんだよ。酔いもぶっ飛んじまうぐらいにね」

魅魔はニコッと笑って言った。

魅魔「こう見えても私は元GBA(幻想郷・ボクシング・アソシエーション)だったんだ。見る目はあるんだぞ?」

魔理シ小「そんな人がなんで昼間から酒に溺れてたんだぜ?」

魅魔「…王座を目前に怪我をして引退したんだ。それがあまりにも無念だったから、ジムをやって若い奴等を育てて、そいつを王座につかせようとしたんだが、良い人材に恵まれなくてな…全てを諦めかけていたのさ…」

そこまで言うと、魅魔はグッと魔理シ小に寄った。

魅魔「そこであんたを見かけた訳だ!あんたは原石だ!あたしが一番強い宝石にしてやる!」

魔理シ小「…ま、まぁ…暇だから付き合ってやっても…いいぜ?」

魅魔「そうかい!ありがとう!」

次の日から、魔理シ小は魅魔の指導のもと、ボクサーになるトレーニングを積んでいった。その内容はどれも辛い物だったが、魔理シ小は泣き言一つ言わず、自身に課せられたトレーニングをこなしていった。そしてトレーニングを始めて数ヵ月後、魔理シ小はGBAの選手に認定された…

数日後、魔理シ小のもとに一通の手紙がきた。それは数日後に行われる、魔理シ小の初試合の対戦相手の詳細が書かれた物だった。

魔理シ小「多々良小傘…唐傘お化けか…」

魅魔に手紙を手渡された魔理シ小が、そう呟いた。

魔理シ小「命連寺ジム所属…1勝99敗1KO!?こんな奴が私の初試合の対戦相手かよ!?」

魅魔「まぁ、ウォーミングアップには調度良い相手だろう、さぁ今日の練習を始めるよ」

魔理シ小「お、おう…」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom