P「アイドルテニス大会」 (413)

P「というわけでお前ら、事前に言っておいた通り、ちゃんとテニスの練習はしてきたか?」

春香「はい! もちろんですよプロデューサーさん!」

千早「まあ、一応は。春香に誘われて、オフの日はほぼ毎日テニスをしてました」

律子「それでプロデューサー、そろそろ詳しい説明の方をお願いできますか?」

伊織「『この日に全員参加の催し物があるから出来る限りテニスの練習をしとけ』……これくらいしか聞かされてないものね」

P「そうだな。別に隠す必要もなかったかもしれんが、サプライズは多い方がいい」

響「サプライズって?」

P「まぁ落ち着け。まずはこの社長からのメッセージを読むから」

P「『ウォッホン。えーアイドル諸君、我が765プロも君たちのおかげで随分と成長できた。本当にありがとう』」

P「『そこで、感謝と労いの意を込め、テニス大会を開催することにした。何故テニスかというと、ティンときたからだ』」

亜美「ティンときたならちかたないね」

真「まあ……社長だしね」

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テニヌになるのかな?

P「『試合はダブルスのトーナメント形式で行い、優勝したペアにはささやかなプレゼントを贈ろうと思う』」

亜美「さっすが社長~!」

あずさ「あらあら、何が貰えるのかしら~」

貴音(らぁめん! らぁめん!)

P「『そのプレゼントとは、賞金100万円!』」

響「おおーっ! 燃えてきたぞー!」

やよい「ひゃっ……! っ……! っ……!」

伊織(100万円か……これまた微妙な金額ね)

P「『それと副賞として、プロデューサー君との一日デート権! ははは、これはまあおまけみたいなもので、あくまで権利だから嫌なら拒否しても』」

P「って、何書いてるんだあの社長は。とにかく、優勝したら100万だからな! あの社長がポケットマネーからこんなに出すなんて、驚いたろ?」

皆「「…………」」

P「声も出ないか。社長のサプライズ、すごいな」

伊織「ま、まあ、副賞はどうでもいいんだけど……ちょうど100万円欲しかったところだし、本気出そうかしらね!」

雪歩「いやいや、伊織ちゃんお金持ちだよね? 私今お金なくって……だから勝ち、譲ってくれないかな? なんて」

春香「さて、プロ100万円のために、がんばるぞーっと!」

美希「あはっ、美希は今覚醒したの」

亜美「ねぇ真美、100万円取ったらどーする? PS4とか買ってもいいよね!」

真美「……え、あ、うん、そだね! 100万円……だもんね、うん」

P(みんな目の色変えてすごいやる気だなぁ。美希なんか髪の色まで変わったような気もするし)

P(まったく、金の亡者ばかりだ)ハハハ

律子「それで、ペアはどうやって決めるんですか? この人数だと一人余るような」

亜美「ん?余るって……りっちゃんもやるの?」

律子「ええ、多分。プロデューサー、私にもテニスの練習しとけって言いましたよね?」

P「ああ、律子も参加な。プロデュース業に事務業、そして時々アイドル業もやってる律子には社長も感謝してるらしいからな」

千早「でもそれなら、やはり余りが……」

P「その心配はない。少しでも公平にするため、トーナメント表に偏りが出ないよう……参加者は16人、つまりペアは8組ということになってるからな」

あずさ「16人? プロデューサーさんたちも参加するんでしょうか?」

P「違う。あくまでアイドルたちに競ってもらうということで……765プロと友好な関係にある事務所の、この子たちをゲストに呼んである」

P「というわけで、876プロの三人だ。さぁ、出てきてくれ!」

愛「よろしくお願いしまーす!」
絵理「よろしくお願いします?」
涼「よ、よろしくお願いします」

律子「ええっ!? ちょっと、聞いてないわよ涼!」

涼「だって言っちゃダメって言われてたし……」

P「これもまたサプライズの一貫だからな」

貴音「そのさぷらいずとは、それほどまでに大切なものなのでしょうか」

真「プロデューサーが反応を楽しみたいだけだよ、多分」

P「さて、ペア決めについてだが……こっちで用意したくじ引きで決めてもらう。これもまた公平にするためだ」

雪歩(あうう、真ちゃんと組もうと思ってたのに)

伊織「公平とは言うけど、どう考えても運動神経のいい真や響が有利じゃない?」

P「んー、そりゃまあそうだな。でもテニスってのは単純な運動神経だけの勝負じゃない。俺はお前ら全員に優勝の目はあると思っている」

P「読み合いによる駆け引き、練習で得た技術、そしてアイドルとして身に付けたオーラ……」

P「それら全てが、しっかりと100万円につながってくる! 誰が優勝してもおかしくはない!」

亜美「おー!!」

律子(他はともかくオーラって)

響「自分完璧だから、誰と組んでも優勝しちゃうぞー!」

春香「練習量なら真たちにだって負けてないはず……うん、大丈夫!」

P「それじゃ順番にくじを引いてってくれ」

雪歩(真ちゃんと組めますように真ちゃんと……)

やよい「ひゃくまんえん……」ボー

P「決まったようだな……」



P「チームA! 如月千早・双海亜美!!」

亜美「Aだって! AランクのA! 亜美のA! なんかメッチャいい感じっぽいね千早お姉ちゃん!」

千早「……あまりAA言わないで欲しいのだけれど」

亜美「えー」



P「チームB! 三浦あずさ・秋月涼!」

あずさ「うふふ、よろしくね、涼ちゃん」

涼「はい、よろしくお願いします」

涼(僕なんかがあずささんと組むなんて……夢子ちゃんが見てたらなんて思うかなぁ)



P「チームC! 水瀬伊織・秋月律子!」

伊織「アンタは敵に回すと厄介だと思ってたけど……これは優勝も狙えるわね、にひひっ」

律子「私もそう思ってたところよ。よろしく、伊織」

伊織(まぁほんとはやよいが良かったんだけど、ハズレではないわね)

P「チームD! 双海真美・我那覇響!」

響「がんばろうね真美! 自分完璧だし、きっとなんくるないさー!」

真美「おおっ、自信満々なひびきんマジなんくるねぇ! これは期待せざるをえませんな~」

響「えへへ、真美にも期待してるぞ。なんだかんだで運動神経いいもんな」



P「チームE! 天海春香・高槻やよい!」

やよい「春香さんっ! 私……勝ちたいです! 絶対!」

春香「うん、私もだよ。優勝しよう、やよい!」

春香(100万円はやよいに全部あげて、私は謙虚に副賞の方を頂く……なんて完璧なプランなんだろう)



P「チームF! 四条貴音・星井美希!」

美希「ねぇ貴音、優勝したらおにぎりもラーメンもハニーも全部いただけるんだよ? だから絶対負けられないの!」

貴音「ふふ、貴女がペアとは……真、面白くなりそうです」

P「チームG! 菊地真・日高愛!!」

真「へへっ、よろしく。このペアだと、ややこしい戦略とかは無しでいいよね?」

愛「はいっ! 全力で、がんばりましょーーー!!!」



P「チームH! 萩原雪歩・水谷絵理!!」

雪歩「あっ……えと、よろしくね?」

絵理「はい……よろしく、お願いします?」



P「以上だ! 試合形式は今大会オリジナルルールとして、三ゲーム先取の一セットマッチにした。タイブレークはない。要は先に三ゲーム取った方が勝ちってことだ」

P「それと対戦の組み合わせだが、この後代表者によるくじ引きで決めることにする」

律子「うーん、この中だと特に注意すべきは美希・貴音チーム辺りかしらね」

伊織「誰が相手でも負けないわよ。この伊織ちゃんがいるんだから!」

雪歩(うう、どのチームも強そう……絵理ちゃんには悪いけど、やっぱり真ちゃんと組めなかったのが残念だなぁ)

絵理(ひうぅ、雪歩さんには悪いけど……勝てる気がしない)




そしてトーナメントの組み合わせが決まった!

P「ふむ……こういう組み合わせになったか」

やよい「あうう、春香さん……」

春香「大丈夫……いっぱい練習したんだもん」

千早「春香……」

春香「あっ、千早ちゃん」

千早「そっち、いきなり強敵みたいね」

春香「うん……」

千早「もし勝ち抜けたとしても、次は恐らく彼女のチーム。決勝まで勝ち上がるのは難しいかもしれない」

千早「それでも、だからこそ……これだけは伝えておきたいの」


千早「決勝で会いましょう、春香」

春香「千早ちゃん……」


春香「お願いだからフラグやめて!」

千早「えっ?」


美希「じゃ……行こっか、貴音」

貴音「……ええ、精神統一は済ませました」

美希(ハニーのために)

貴音(らぁめんのために)

美希&貴音「「目指すは……優勝!」」


一回戦第一試合




チームE(天海春香・高槻やよい) VS チームF(星井美希・四条貴音)

ちょっと休憩
書き溜めてある分は今日中に投下したいです

>>2
テニヌになっちゃいます

チームE 【前衛】春香 【後衛】やよい
チームF  【前衛】貴音 【後衛】美希
最初のサービス権……春香

P「それじゃ、始めるぞ」

P「ザ・ベストオブワンセットマッチ! 春香、サービスプレイ!」

春香「いきます」スッ

春香「よっ!」スパコォンッ

P(おお、普通に良いサーブ)

貴音「はっ!」パコォンッ

やよい「えいっ!」パコォンッ

美希「よーし……」スッ

美希「いけーー!」ブンッ

美希「……あれ?」

P「イン!」

春香「か、空振った……?」

やよい「いぇい! 先制点でーす!」

春香(美希、もしかして……)

美希「んー、失敗しちゃったの。意外と難しいね、これ」

貴音「…………美希、失礼ですが練習は……」

美希「してないよ? ラケット持つのも初めて。こんなすごい賞品のある大会だと思ってなかったし……あっでも、ルールは覚えたから!」

貴音「なんと」

美希「ごめんね貴音。でも大丈夫」

美希「……すぐに慣れるから」

春香(これは……いける!)

P「15-0」

春香「よーし……」スッ

春香「よいしょっ!」スパコォンッ

春香(この春香さんサーブ、初心者に打てるようなサーブではないはず! 二点目は貰った!)

美希「んー……それっ!」パコッ

春香「!」

美希「あはっ、当たった」

春香「え、うそ」

やよい「でも……チャンスボールですっ!」パコォンッ

ドゥンッ

P「イン!」

春香「ナ、ナイスやよい!」

やよい「はい、でも……」

春香「うん……早目に勝負決めないと、あの成長速度はまずいかもね」

美希「むー、当たったのにダメだったの。でもなんとなくつかめてきたかな?」

貴音「美希、フォームがまるでなっていません。適当にやっても、今のように相手にちゃんすぼぉるを与えるだけですよ」

美希「そうなの?」

貴音「はい、ですから……まずは私の打ち方を良く見て、真似してみてください」

美希「うん、分かった!」

P「30-0!」

春香「やあっ!」スパコォンッ

貴音「それでは……少し本気を出しましょう」スッ

春香「!」

春香(貴音さんの纏ってる空気が―――変わった?)




貴音「『手打ち麺・やわらかめ』」




パコォンッ

ドゥーーーーン



P「……イン!」

春香「なっ……!」

やよい「あうぅ……追いつけませんでした」

春香(何今の、打球の伸び……)

美希「貴音、すごいの! イッパツで決めるなんて」

貴音「ええ、今のは必殺技です。それより美希……」

貴音「ちゃんと、見ていましたか?」

美希「……あはっ」

美希「もちろん。ばっちり見て……覚えたよ?」

春香(なんか必殺技って聞こえた。これテニスだよね?)

やよい「もっと速く……速く動かないと……」

伊織「……」

P「リターンエースなんてやるなぁ貴音。30-15!」

>>12
響は卓球の部長経験者だから強いのは分かるけど真美って何かやってた?

後、>>1はアイマステヌス物これが始めて?

春香(必殺技とかよくわかんないけど、少なくとも美希はそんなのできないよね)

春香(よーし、今度こそサービスエース!)

春香「よいしょっ……ええいっ!!」スパコォンッ

美希「貴音みたいに……こうして……」

美希「こう?」パコォンッ

春香「!!」

春香(打たれた!しかも……)

ドゥーーーン

春香(あの打球の伸び……あれは貴音さんの技じゃ……)

やよい「今度は、追い付きますー!」ダッ

トッ

春香「や、やよいナイス! なんとか返せ……」

貴音「よく、返せましたね。しかし……少々、甘いです」スッ

春香(前衛の貴音さんの……目の前……)


貴音「『湯切り落とし』」


パコォンッ


P「イン!」

>>23
初です
先人の作品も読んだことないので被ってたらすいません

春香「サイドラインギリギリに打ち込む鮮やかなボレー……今のも必殺技、なの……?」

やよい「うう、チャンスボールあげちゃいました~」

美希「うーん、それっぽいの打てたけど……貴音ほどはうまく出来なかったの」

貴音「ふふっ、一度見ただけであれだけ出来れば十分すごいですよ」

美希「そう?」

貴音「やはり美希、貴女には才能があります。見た動きをほぼ完全に模倣する才が」

貴音「この様子ならば、練習をしていないことすらも武器となり得るやもしれません。自分のフォームが出来てしまっていては、模倣の際に妨げとなります故」

美希「んー、よくわかんないけど、貴音の真似をし続ければいいんだね」

貴音「いえ、それではいけません。美希、貴女は……」

貴音「私だけでなく、これから先戦う全ての相手の模倣をするのです。それぞれの良いプレーを、どんどん、増し増しで学習してゆくのです」

美希「へえ……なんだか面白そうなの」


律子「……ほんと、厄介だわ」

伊織「そうね、トーナメントの組み合わせ……私たちがあのチームと当たるとしたら、決勝になる」

律子(決勝まで上がってきたら、その時の美希は……どんな美希で、何が出来るのかしらね)

P「30-30」


春香(次は貴音さん……あのよく伸びる打球には気を付けないと)スッ

春香「えい!」スパコォンッ

貴音「美希を成長させるためには……出し惜しみなど、していられませんね」スッ

貴音「『手打ち麺・粉落とし』」

トッ―――

春香(いきなりドロップショット!?)

やよい(伸びる打球を警戒してちょっと下がってたから、追いつかない!)

貴音「一つお教えしましょう、私の必殺技は、種類、硬さ、トッピング諸々込みで―――」

貴音「108種あります」

春香「なっ……」

美希(また、新しい技……うん、覚えた。この調子で、どんどん、どんどん……)

そして、次もみきたかチームが点を取り―――




P「ゲーム! チームF! 1-0!!」

春香「強い……」

やよい「春香さん、まだ1ゲームです! がんばりましょう!」

春香「……うん」

P「次は、えー……貴音、サービスプレイ!」

貴音「……」スッ

春香「!」

春香(なんてトスの高さ……)

貴音「『縮れ麺・月見』」タンッ

春香(ジャンプサーブ!?)

ダンッ ギュワァァン

春香「!! 跳ねた後、ぐわんぐわんに曲がって……こんなのやよい、打てな……」

やよい「えいっ!」


パコォンッ


ドゥンッ

貴音「なっ……」

春香「打て……た? しかも、リターンエース?」

やよい「うっうー! いぇい!やりましたー!」

春香「やよい、今のどうやって……」

やよい「えっと、集中して……しっかり見て、打ちましたっ!」

春香「なっ……え?」


伊織「……ふふっ」

伊織「やーっと本領発揮ってとこね、やよい」

律子「あら、何か知ってるの?」

伊織「まあ、知ってるってほどでもないんだけど……」

伊織「やよいはね、激安スーパーのタイムセールの荒波に揉まれて生きてきたのよ」

伊織「商品の値段と質を一瞬で見極める目、そしてそれを即座に掴み取る反射神経……やよいのそれは常人を超えているわ」

伊織「普段はあまりその力は出ていないようだけど、お金が絡むとこうなるってわけ」

律子「なるほど、こうなるわけね」

律子「……詳しいわね、やよいに」

伊織「……普通よ、普通」


貴音「……失礼。どうやら貴女を、少々見くびっていたようです」

P「0-15!」

律子「で……問題は、こっちよね」

伊織「ええ……そうなのよね」

春香(やよいが打てたんだもん。私にだって……)

春香「よーし……こいっ!」

貴音「……」スッ

貴音「『縮れ麺・月見』」

ドゥワンッ

春香「……」

春香「え?」

P「15-15!」

律子「……やっぱり」

やよい「うう、春香さん、ドンマイですっ。 次、がんばりましょー!」

春香「あ……うん」

春香(何、あれ。横から見ててもすごいのは伝わったけど……実際に受けてみると、段違い)

春香(ボールが地面に着いて跳ねた後、縦横無尽に曲がりくねって……気付けば目の前から消えてるなんて)

春香(やよいはあんなの、どうやって打ったの? 私には、打てそうにないよ……)

伊織「……」

貴音「さぁ……次、打ちますよ」

美希(すごいサーブ……ミキも早く打ちたいの)

貴音「ほっ」タンッ

貴音「『縮れ麺・月見』」ダンッ

やよい(またあのサーブ……でも、なんとか見える!)

やよい「えいっ!」パコォンッ

春香(すごい……やっぱりやよい、ちゃんと見て打って)

やよい「……! 春香さん! 来ます!」

春香「!」

貴音「はぁぁぁぁあああああああああ」

貴音「『極太麺・バリカタ』」バゴォン

春香(両手打ち!? 前衛の私の真正面に……)

春香「うっ、ぐっ……お、もぉっ……」グググ

春香「わぁっ!」ポンッ

愛「わっ、春香さん、なんとか弾き返しました!」

真「いや……」

トンッ―――

P「アウツ!」

真「弾かされた……かな」

春香「はぁ、はぁ……」ビリビリ

春香(レベルが―――違う)

P「30-15!」

律子「……ダメね。心が折れかかってるわ、あの子」

春香「……」

律子「このゲームは、もう……決まったわね。やよいがどれだけ頑張っても、春香がまともにレシーブ出来なければ意味がないもの」

ドゥンッ

春香(うう……)

P「40-15!」

やよい「えいっ!!」パコォンッ

P「40-30!」

ギュイインッ

春香「あっ……」

P「ゲーム!チームF!2-0!」


律子「やっぱりね。さて、こうなるとこの試合、春香たちの勝率は……」カタカタカタカタ

ッターン

律子「20%……ってとこかしら」クイッ

亜美(あ、意外と高い)

伊織(この戦況でもゼロと言い切らないあたりは律子らしいけど……厳しい状況には違いないわね)

伊織(せめて一ゲームくらい取ってみせなさいよ、アンタ達……!)

春香「……」

やよい「春香さん……」

春香「ごめんねやよい、手も足も、出なかった」

やよい「……」

やよい(春香さん、やっぱり気にしてるのかな……あうう、私、どうしたら……)

春香「やよい」

やよい「! はいっ」

春香「私のほっぺ、叩いてくれる?」

やよい「……へ? で、でも」

春香「お願い」

やよい「……」

春香「……」

やよい(春香さん……)グッ

やよい「えいっ!!」

ぺちんっ

春香「っ……」

千早(うらやましい!)ガタッ

やよい「あっ……ご、ごめんなさい春香さん、大丈夫ですかっ?」

春香「ありがとう、やよい。うん……大丈夫、目が覚めた」

春香「天海春香は、もう大丈夫だから」ニコッ

やよい「……?」

春香(ふうー……危ない危ない、あやうく全部諦めちゃうところだったよ)

春香(弱気になってどうするわた春香! 必殺技がなんだ。力の差がなんだ。そんなの……関係ないもん)

春香(私はやっぱり、諦めたくない!)

春香(たとえ勝てなくっても、最後まで頑張らないときっと後悔するから……)

春香(頑張って練習した分、全部出し切らないと、もったいないから……)

春香(そして何より―――――)



 春香『ち~は~や~ちゃん!テニスの練習しよ?』

 千早『また? 春香、確かにプロデューサーは練習しておけと言っていたけれど、少しし過ぎじゃないかしら』

 千早『暇さえあればテニスというのは、その、別に悪いとは言わないけれど……そんな毎日で、春香はいいの?』

 春香『……? いいに決まってるよ。だって――――――』



春香(私は―――)







春香(テニスが好きだから!!)

P「そんじゃ次はやよいサーブだな。やよい、準備いいか?」

やよい「は、はいっ! 頑張ります!」

美希(あはっ、やよいはどんなサーブ見せてくれるのかな)

貴音(丁寧に返すこと、まずはそれを優先しなければ……)

やよい「……」ポーン ポーン

パシッ

やよい(……春香さん……なんだか分からないけど、もう大丈夫って顔してた)

やよい(だとしたらこの一球、すーっごく大事な気がする)

やよい(このあんまり良くない流れを変えられるのは、春香さんしかいないもん。だったら私は)

やよい(力いっぱい、お手伝いしなきゃ!!)

やよい「うっうーー!!!」シュッ

やよい「『はい、ターーーーッチ』!!!」


ドゴォンッ


貴音「! なんと力強い球……」

貴音「ぐっ……」ガッ

貴音「これしき!」パコォッ

春香(基本に忠実に、来たボールに確実に合わせて……)ザッ

春香(空いてるところを狙って……打つ!)ブンッ

パコォンッ

貴音「ッ……」

美希「あっ」

貴音(私も美希も、ちょうど僅かに届かない絶妙な位置に……)

美希「うーん、ジミに普通にいいとこ打たれたの」


春香「やった……」グッ

春香「やっぱりテニスって……楽しい!」


P「15-0!」

やよい「春香さんっ!」

春香「! やよい……」

やよい「えへへ……」スッ

春香「あっ」

春香「……うん」スッ


やよい「はい、たーっち!」パンッ

春香「いえいっ!」パンッ


春香(ありがとう、やよい……私を、信じてくれて)


美希「……向こう、ミョーに盛り上がってるね。たった一点取っただけで、大げさって思うな」

貴音「油断はなりませんよ、美希。負の流れを断ち切る今の一点の重みは、先ほどまでとは違うでしょうから」

美希「そう? んー、だからなのかな」

貴音「……何か?」

美希「あのね、さっき春香が打つとき……ほんのちょっぴりだけど、キラキラしてたの」

貴音「きらきら……ですか」

 P『読み合いによる駆け引き、練習で得た技術、そして―――』

貴音「……」

貴音「もしや……」


春香(もっと続けたい。個性なんてなくたって……もっともっと、楽しみたい!)




―――トクンッ

P「やよい、サーブ」

やよい「あっ、はい!」

やよい「よーっし……」シュッ

やよい「『はい、ターーーーッチ』!!」


ドゴォンッ


美希「んー……あれとあれをこう……えいっ!」ドッ

美希「!! って、重っ……」

パカァンッ

P「アウト!」

美希「うえー、思った通りに飛ばなかったの」


律子「……あのサーブも、普通に厄介よね。やよいは本来パワープレイヤーなのかしら」

伊織「サーブに関しては、そうね。一番高い打点から全身を使って振り下ろせるように……なんだかんだで、サーブを一番特訓してたから」

伊織「もっとも、コンスタントに色んな体勢からあんなパワー出せるほど器用じゃないし、あくまでサーブ限定だけどね」

伊織「サーブは力強く、それ以外は持ち前の動体視力と反射神経で確実に捉えて返す。それがやよいのプレイスタイルよ」

律子「……やっぱり詳しいわね」

伊織「……普通よ、普通」


貴音「美希、今の打ち方は……」

美希「あっ、ごめん貴音、素直に貴音の技使っとけば良かったの」

貴音「いえ、私の技は理想的な状況とフォーム、双方揃って初めて形になるもの。故に相手の打球に合わせて、ある程度技を使い分ける必要があります」

貴音「まだ美希は私の技をそれほど多くは覚えていないでしょうし、あのやよいに対抗できるかどうかと考えると……仕方がなかったのかもしれません」

貴音「それより美希、貴女は今……何をしようとしていたのですか?」

美希「……あはっ、バレた?」

美希「実はね―――――」

やよい「どんどん、いきまーす!」シュッ


ドゴォン


貴音「……」

貴音(やはり美希、貴女はもっと上に行くべき才の持ち主)

貴音(ならばこの試合……私が全力を持って、勝利へと導きましょう!)


貴音「『奥義―――』」

やよい「!!」





貴音「『らぁめんふぇすてぃばる』」




カッ―――








貴音「……?」

春香「やあっ!」パコォンッ


P「イン!40-0!」


美希「あーっ、また微妙に届かないとこ!」

貴音「な……」

貴音「なんと……このようなことが……」

美希「? どしたの?」


律子「貴音の今の打球……奥義とか言ってたわりには普通だったわね。失敗かしら」

真「……律子、本当にそう思ってるの?」

律子「……」

律子「その可能性が一番現実的だと思った。それ以上でもそれ以下でもないわ」

真「認めたくない……ってわけか。律子らしいや」

愛「あのっ、どういうことです?」

真「えっと、つまりね」




真「―――覚醒したんだよ。春香の、オーラが」




春香(個性なんて……いらない!)ゴォォォォォォ

ドゴォン

P「ゲーム! チームE! 1-2!」

春香&やよい「「いぇい!」」パンッ


美希「……結局やよいのサーブ、返せなかったの」

貴音「仕方ありません。それより次は貴女のさーぶですが、どうしますか?」

美希「一応、春香には貴音の曲がるサーブ、やよいにはやよいの強いサーブを使ってみるつもり。なんとなく覚えたから、多分出来るって思うな」

貴音「……そうですね、では、それで」


P「プレイ!」


美希「よーっし……」シュッ

美希「くらえなの、やよい!」


ドゴォン


やよい(! あれって、私の……)

春香「……」カッ

やよい「……あれ?」


パコォンッ


美希「あっ普通に返された」

貴音「……」

貴音(今の春香には、打たせるべきではない……ですね)

貴音(ならば……)


貴音「『あっさりらぁめん・湯気通し』」


ギュンッ


貴音(この打球は急上昇し前衛の遙か上を通過し、その後急降下する……)

貴音(はず……なのですが……)


春香「はっ!」


バシィッ


P「インッ!」


春香「よーし……また決まった!」グッ

美希「前衛の真正面……どしたの貴音、調子悪い?」

貴音「いえ、私は大丈夫です、が……」

貴音「今ので確信しました。春香は『おーら』を纏っているのです」

美希「オーラ?」

貴音「ええ、彼女のおーらは近付く打球を無個性にするおーら……それによって、どのような変化であろうと、どれほどの威力であろうと、全て無に帰してしまうのです」

美希「えっなにそれずるいの。どうするの?」

貴音「現状、どうすることもできません。が……恐らく体力の消費はかなりのもののはず」

貴音「春香の体力が尽きるまで、粘るしかありません」

美希「むー……」



そして―――――――――――――――


P「ゲーム! チームE! 2-2!」

やよい「うっうー!! 春香さん、追いつきましたー!」

春香「はぁ……はぁ……」

やよい「春香……さん?」

やよい「!!」

やよい(すごい汗……)

P「さぁ、泣いても笑ってもこれが最後のゲームだ。春香、サービスプレイ!」

春香「……」

P「おーい春香、サーブ」

春香「……! あっ、はい」スッ


スパコォンッ


貴音「はぁっ!」


パコォンッ
パコォンッ
パコォンッ


美希「あっ」


ドゥンッ


P「15-0!」

貴音(やはり『普通のテニス』ということであれば、初心者である美希はどうしても不利)

貴音(ですが……そろそろ、ですね)


パコォンッ
パコォンッ

ドゥンッ


P「30-0!」


ブゥンッ


P「30-15!」


バファッ


P「30-30!」


ズキュウウウウウン


P「40-30!」



やよい「よーっし、マッチポイントですよ、春香さ……!!!」

春香「……」



クラッ




ドサッ……

やよい貴音美希「「「!!!!」」」


やよい「春香さん!」

美希「春香……倒れちゃった」

貴音「どうやら、終わりのようですね。真、見事な戦いぶりでした」

春香「……はぁ……っは…………」

P「……出しっ放し、だったからな。オーラによる体力消費、尋常じゃなかったんだろう」

P(本当に惜しかった。後ちょっとで……でも)

P(もう……ここまでだな)


やよい「春香さん! 大丈夫ですか!?」

春香「…………ょぃ……」

やよい「春香さん……」

春香「…………」ボソボソ

やよい「……!!」


P「えー、春香ダウンのため、この試合……」



やよい「待ってください!!」


P「っ!?」



やよい「このまま……」




やよい「続けさせてください!!」

P「なっ……やよい、春香はもう限界なんだ。いくらなんでもそれは……」

「まだ……」

P「!」



春香「はぁ……はぁ……っ」ヨロッ


春香「やれま、す…………!」フラフラ


貴音(立ち上がった……!)

やよい「ごめんなさい、本当は止めなきゃなのかもですけど……」

やよい「春香さん、まだやる気なんです! だから……」

やよい「続けさせてください!」


美希「……あはっ」

美希「それでこそ……ミキのライバルなの」


P「……仕方ないな」

P「これが最後だ。このポイントを取ったチームが勝ち。それでいいな?」

やよい「はいっ!!」


貴音「……美希、春香のオーラはもう消えています。つまり、必殺技も使い放題です」

美希「うん、任せて。この試合で得たミキの全部で、ズバーって華麗に勝っちゃうの」

春香(あと少し……あと少しなら……)

やよい(私が全部打つくらいの気持ちで、がんばらなきゃ!)



P(しかし一試合が妙に長い気がする。恐らく次からはもう少しテンポ良くなるだろう)

春香(まずは、サーブ……入れない、と……)スッ

春香「え、いっ!」スパコッ

春香(ダメだ、弱い……けど、なんとか)

春香(入った……よ、ね……)

春香(あとは、前に出なきゃ……)ヨロヨロ

春香(前衛、だもん……)ヨロヨロ


ヒューーーー


美希「……」

美希(あれとあれと……あと、あれをこうして……)

美希「……うんっ」

美希「こうなの!!」


パコォンッ


やよい「!!」


貴音「……お見事です、美希」


 美希『あはっ、ばれた?』

 美希『実はね……今まで覚えた技のいいとこ取りしてうまいことアレンジして、すっごく強い自分の必殺技、作っちゃおっかなーって』

 貴音『なんと……そんなことが、出来るのですか?』

 美希『多分、出来るって思うな。あともうちょっとで……』

 貴音『……』


貴音「まさか本当に……しかもこの試合中に完成させてしまうとは」


美希「名付けて、『必殺―――』」



美希「『おにぎり波!』」

やよい「なに、あのボール……!」


ドギュウウウウウウ


美希「この打球はね、ツナのように甘く!」

美希「明太子のように辛く!」

美希「梅干しのようにすっぱく!」

美希「おかかのように力強く!」

美希「昆布のように曲がるの!」


P(……言ってることはともかく、えげつないコースだ。威力も変化もすごい。さぁ、どうなる?)



やよい(あうう、よく意味が分かんないけど、つまり……)


やよい「いっぱい入ってて、お得ってことですね!!」



やよい「うっうー!!」


ダダダダ タッ


やよい「ふんぬっ!」パコォンッ


やよい「あうっ」ズザーー


伊織「飛び付いて、返した! やるじゃないやよい!」

律子(飛んでからインパクトの瞬間まで、一瞬もボールから目を離さなかった。地面が迫ってきても、全く恐れずに)

律子「……大した度胸だわ、まったく」

美希「へぇ、あれを返すなんて、ちょっとびっくりなの。それより……」

ダダダダダ

美希「今の打ち方、かっこいいね」

タッ


美希「ミキもやるの!」パコォンッ


やよい「!」

やよい(しまった、春香さんの方に―――)


春香(……ダメだ、もう……疲れて、前がよく見えないや)

春香(ラケットを前に構えるので精一杯。せめて……ボールがここに、当たりますように)



美希「……あっ」

美希(春香のラケットの、真正面……)



ドッ



美希(当たった! ボールは……?)



貴音「……」スッ


美希(貴音の方に!)

貴音「はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


やよい(両手持ち!まさか……)


貴音(今のやよいの方へ打っても、返されるかもしれない。勝利をより確実にするためには……)

貴音(あの弱々しく握られた剥き出しのラケットに当てて、弾き飛ばす!)


貴音「『極太麺・バリカタ』!!」


ドゴォンッ


やよい(あんなの、今の春香さんに受け切れな……!)

貴音(……!)


春香「……」


やよい(春香さん、倒れて……ボールを、スルー……)



ドゥンッ


やよい「あ……」



貴音「……終わり、ですね」

美希「……うん」



貴音「最後の一球。これが必ず劇的な結果になるとは、限りません」

美希「……」

貴音「スマッシュやボレーのように華々しく終わることよりも……こういった結末の方が、実際にはよくあることなのです」

貴音「片方のミスで、普通に終わる。このような結末の方が……」

美希「……ううっ」

貴音「申し訳ございません、美希。少し……力みすぎてしまいました」

美希(もっとテニス、したかったなぁ……こんなに楽しいなんて、知らなかったの)

貴音「春香、やよい……おめでとうございます」



貴音「貴女たちの…………勝利です」




P「アウト!! ゲームアンドマッチ!! ウォンバイ……」


P「チームE!!!」

 



「―――さんっ」

「―――るかさん!」

春香「ん……あれ? ここは……! 試合はっ!?」

やよい「えへへ、いぇい! やりましたっ! 私たち、勝ったんです!」

春香「へっ……ほんと?」

美希「ほんとだよ。あーあ、これでハニーとのデート、なくなっちゃったの」

春香「えと、あんまり覚えてないんだけど……特に最後」

やよい「それより、しっかり休んでくださいね! 次の試合まで、まだ時間あるしっ!」

春香「え、あ、うん……」

貴音「万全な状態で挑むことです。次の相手は、私たち以上の強敵かもしれないのですよ?」

春香「あっ……そうか、次の試合……」

やよい「はい、勝った方が私たちの相手です!」

美希「で、その試合ね、今やってるの。ちょうど一ゲーム終わったとこ」

春香「えっ」クルッ



P「ゲーム! チームG! 1-0!」


真「へへっ、やーりぃ!」

雪歩「うう……真ちゃんかっこよ強いよぅ」


美希「ミキ的に優勝候補ナンバーワンチーム。真クンのGチームが、春香たちの次の相手って思うな」

貴音「もし雪歩らが勝ち上がったとしても、そうなればあの真たち以上に強き相手ということになります。強敵には違いありませんね」

春香(これは……大変だぁ)



一回戦第二試合




チームG(菊地真・日高愛) VS チームH(萩原雪歩・水谷絵理)

とりあえずここまでです
ここから先は書き溜めてからまた後日投下します
質問、指摘等あればお願いします

>>1です。続き投下します
細かいことは気にしない方向でお願いします

チームG 【前衛】真 【後衛】愛
チームH  【前衛】雪歩 【後衛】絵理
最初のサービス権……愛
現在のゲームカウント チームG 1-0 チームH


愛「サーブしたよー!!!」

真「ナイッサーだったよ、愛! ほとんどサービスエースだったね!」

雪歩「愛ちゃんのサーブ、すっごく強かったね……」

絵理「はい……手も足も、出なかった?」

雪歩「えと、次、どっちサーブ打とうか?」

絵理「やっぱり、サーブが得意な方?」

雪歩「じゃあ私はダメかな……」

絵理「私も……」

雪歩「……」

絵理「……」

雪歩「あっ、じゃあ、私が……」

絵理「あ、はい、お願いします?」

絵理&雪歩(ダメだこれ……)

絵理(この勝負……現状で把握出来る実力から私たちが勝てる確率を脳内コンピュータによって算出すると……)カタカタカタカタ

ッターン

絵理(0%……なるほど)

P「雪歩のサーブだな? そんじゃ、プレイ!」

雪歩(力の差は歴然……だけど)

雪歩「……がんばらなきゃ!」

真「さぁ、来なよ、雪歩!」

雪歩「んっ……えいっ!」スパコォンッ

真「……!」

真(イレギュラーバウンド!?)

真「っと、たっ」

トッ

雪歩「あれ、真ちゃんもたついた?」

絵理「……チャンスボール?」

絵理(あそこ……空いてる……)

パコォンッ

愛「わー!! 追いつかないよー!!」


ドゥンッ


絵理「初得点、ぐっじょぶ……?」

雪歩「やったぁ! 絵理ちゃん、ナイス!」

絵理「雪歩さんこそ。 あのイレギュラーバウンド、狙ってやれたらすごいのに……なんて」

雪歩「へ?」


真「ミスった、ごめんね愛」

愛「いいです全然! あれは仕方ないです!」

真「まぁそうなのかなぁ。一球目からイレギュラーバウンドなんて、ついてないや」



雪歩(うーん……変な方に飛んじゃうの、私がダメダメだからだと思ってたけど……いいのかな?)


雪歩(私……いつもあんな感じなんだけど)

P「15-0」

雪歩「よーし……えいっ!」スパコォンッ

愛「……!!」

バインッ

愛「ええっ!? また!?」

愛「わーーーーーーーーっ!!!」

P「インッ!」

雪歩「やたっ、今度はサービスエース!」

絵理「またイレギュラーバウンド……ひょっとして」

絵理「雪歩さん、本当に、イレギュラーバウンドを……狙って打ってる?」

雪歩「ううん、そうじゃないんだけど……でも、なんかそうなっちゃうっていうか……」

雪歩「だから次も多分、イレギュラーバウンドかな? えへへ……」



真「……」

真「あっ、そういうことか」


P「30-0!」

雪歩「んっ……えいっ!」スパコォンッ


真「……」

真(雪歩は穴掘りのスペシャリスト。意識してるかは分からないけど、地面の特徴を本能で理解している)

真(その本能がボールに伝わり、地面の特殊なポイントを見つけ出し、イレギュラーバウンドを起こしているってわけだ)

真(だったらあのイレギュラーバウンドは偶然じゃない。次も、その次も……イレギュラーバウンドはきっと起こる)

真(普通に跳ねないと初めから分かってるんなら、いっそ先読みを捨ててしまえばいい)

真(どの方向に跳ねてもある程度対応出来る、そんな風に構えてれば、反射神経でどうとでもなる!)

バイッ

真「おっと、こっちか!」ダッ

雪歩「!」

真「よっと!」パコォンッ

雪歩(返された!)

絵理「っ……えいっ」パコォンッ

愛「たあーっ!」

ドゴォンッ

P「インッ!」


雪歩「うう……ダメだったよぅ」

絵理「雪歩さんのサーブ、イレギュラーバウンドしてたのに、あんなに簡単に対応するなんて……真さん、すごい?」

愛「真さん、すごいです!」

真「ありがとう! 愛も、よく決めたよ」

愛「そですか? えへへ」

真「それで、あのサーブの対策は、ボールが跳ねてからフットワークで対応って感じだけど……愛、出来そう?」

愛「無理ですっ!!」

真「そ、そっか。清々しいや。それじゃあ……どうする?」

愛「……あたしには、これしかないから」

愛「元気いっぱいがんばって、なんとかしますっ!!」

真「……うん?」


P「30-15!」


雪歩(真ちゃんにはもう、私のサーブ、通用しないのかなぁ……)

雪歩(でも、愛ちゃんになら!)

雪歩「ええいっ!」スパコォンッ


愛「よーし……」


愛「ええーーい!!!!!」ビュンッ



雪歩(ええっ!? 振るの早っ)



ブオンッ

P「……フォルト!!」


雪歩「えっ」


雪歩(フォルトくらい、私ダメダメだからそんなに珍しくはないけど……)

雪歩(今のコース、確実に入ってるはずだった)

雪歩(何が……起きたの?)

真「……」

真「思ってたより、とんでもない子だったみたいだね、愛」

愛「えっへへ、跳ねてからどうこうなんてあたしには出来ません。だから……」

愛「跳ねる前になんとかすれば良いんです!!」ドン


絵理「今……愛ちゃん……」



絵理「ラケットを振ったその風圧で、ボールを逸らした?」


雪歩「ありえない……そんなの……」

雪歩「えいっ!」スパコォンッ


愛「カーブしよーー!!!!」ブンッ


ブォオオオンッ


ヒュウウウウッ


ドッ



P「フォルト! ダブルフォルト!!」



雪歩「そんな……」

真「すごいなぁ、あのパワフルさ。血は争えない……ってやつなのかな?」


愛(よーっし、うまくいった!)グッ

愛(認めたくないけど、ママの特訓のおかげ……だよね)


 愛『えーーーーーーい!!!!』ブンッ

 舞『甘いわよ、愛! そんな軽いスイング、ちっとも怖くないわ!』

 愛『そ、そんなぁ……はぁ、はぁ』

 舞『もっと強く全力で振って、ボールをビビらせてやりなさい! そうすればボールの方から勝手に避けてくれるんだから!』

 舞『人が鬼に近づかないように、圧倒的な力には得てして侵入不可の領域が出来るもんなのよ』

 舞『何一つ寄せ付けない領域(ゾーン)……完成させるまで、おやつ抜きね』

 愛『うそっ!?』


愛「通用してるよ、ママ。あたしの……」

愛「『日高ゾーン』!」


雪歩「プ、プロデューサぁ~……あんなの、アリなんですか?」

P「ルール的にはなんの問題もない」

雪歩「そう……ですけど~……」


真「よし、次はボクの番だ」

真「さあ、来なよ!」

P「30-30」

雪歩「……えいっ!」スパコォンッ

バインッ

真「おっと、今度はこっちか!」

パコォンッ

雪歩(うう、やっぱり通用しない)

絵理「……」

絵理(隙がない……!)

絵理「んっ……」パコォンッ

絵理(二人の間。これでお見合いしてくれれば、なんとか?)

真「ボクが打つ!」

愛「お願いします!」

真「でぇぇぇい!!」

パコォンッ


ドゥンッ!!


絵理(……ですよねー)


P「30-40!」

雪歩「……うう」

雪歩(また……ダメだった)


P「―――――ダブルフォルト!! ゲーム!チームG! 2-0!」


真「ナイス、愛!」

愛「やりましたっ!」

真「さて、次のゲームで終わりだけど」

真(そう簡単には……終わらないよね?)


絵理「ひぅ……あと一ゲーム」

雪歩「もうすぐ終わっちゃう……早すぎるよぅ」


絵理(これは、やっぱり……勝てない?)

雪歩(このまま負けるなんて……嫌だなぁ)



絵理(今のままの自分じゃ、これが限界)

雪歩(弱いままの私じゃ、もう通用しない)




絵理(だったら……)

雪歩(強くなるためには……)






絵理(過去の強い自分に、なればいい!)

雪歩(過去の弱い自分を、捨てればいい!)





ゴォッ――――――――

真「……愛、見て」

愛「へ? ……あっ」

真「オーラだ。二人とも……覚醒したんだ」




絵理(私はEllie。誰にも負けない、ネットアイドルで―――)

絵理(オンラインテニスゲームの、全国王者!)ゴォッ


雪歩(ダメダメな自分とは、もう、さよならしなきゃ)

雪歩(狭い穴から広い宇宙へ、思い切って飛び出さなきゃ!)ゴォッ



愛「おーっ、どうします?」

真「うん。とりあえずこのままやってみよっか」

愛「わかりました!」

P「真、サービスプレイ!」

真「まずは小手調べだよ……絵理!」スパコォンッ


絵理「……」

絵理(回転数……入射角……速度……気温、風、その他諸々)

絵理(……インプット完了。そして……アウトプット)

絵理(腕の角度、力加減、ここをこうして、ここをこう?)


パコォンッ


真(! 低い、いや……)

ガッ

ポトッ

真「!?」


トンッ トン……

真(コードボール―――?)

P「0-15!」

愛「わーっ! ネットに当たってこっち側に落ちました! あんなの、届かないよー!!」

真「……偶然じゃ、なさそうだね」

P「真、サービスプレイ!」

真「まずは小手調べだよ……絵理!」スパコォンッ


絵理「……」

絵理(回転数……入射角……速度……気温、風、その他諸々)

絵理(……インプット完了。そして……アウトプット)

絵理(腕の角度、力加減、ここをこうして、ここをこう?)


パコォンッ


真(! 低い、いや……)

ガッ

ポトッ

真「!?」


トンッ トン……

真(コードボール―――?)

P「0-15!」

愛「わーっ! ネットに当たってこっち側に落ちました! あんなの、届かないよー!!」

真「……偶然じゃ、なさそうだね」

律子「……やれやれ」

律子「またオーラ、か。認めたくないけど、春香の時みたく、あれも本物みたいね」

伊織「どんなに非科学的でも、目に見える以上認めないわけにはいかないわね。それにしても、なんてコントロールなの? コードボールを明らかに狙って打ってたわ」

律子「……聞いたことがあるわ。かつてオンラインテニスゲーム界を騒がせた天才プレイヤーがいるって」

伊織「それ、関係あるの?」

律子「ええ。そのプレイヤーには、目に映る全てのものがデジタルとして頭に入り、自らの動きまでもデジタルでコントロール出来るとかなんとか」

伊織「……へ?」

律子「私にも意味が分からないけど……確かなのは、とにかく圧倒的な実力だったってこと」

律子「プレイヤー名は―――Ellie。聞き覚え、あるわよね?」

伊織「! それって絵理の……まさか」

律子「噂は本当だったのね。どうやらその能力は、ゲームだけでなく、現実でも発揮されるみたい」

律子「アイドルになってからは封印してた力が……この土壇場で引きずり出されたってとこかしら」

律子(まったく……データの取り甲斐があるわ)クイッ


絵理(私はEllie、Ellieは負けない)

絵理(全てを掌握して……試合に勝つ?)

愛「あれが絵理さんのオーラ……ですか」

真「あのオーラの内部、なんか入りたくないなぁ。なんとなくだけど、数字だらけで頭痛くなりそうだよ」

愛「あっ、あたしもそう思います! なんとなくですけど」

真「ま、入らなければいいや。さて、次は雪歩だけど……ん?」


雪歩「……」


真「……あのさぁ」

真「なに、その構え」


雪歩(今までの常識を全部捨てなきゃ……真ちゃんには、勝てない!)


愛「あ、あれで打つ気なんですかね?」

真「どうもそうらしいね。大した度胸だよ、雪歩」


真「―――グリップじゃなく、両手でフレームの部分を持つなんて、さ」


雪歩(考えてみたら、真ちゃんとこうして真っ向からぶつかるなんて、初めてかも……)

雪歩(だからこそ……中途半端には終われない!)

雪歩「勝負だよ、真ちゃんっ!」

真「……そんな構えで何が出来るのか、まったく分かんないけど」

真「それが雪歩の本気だって言うなら……」スッ

真「見せてもらうよっ!!」

スパコォンッ

涼「良いサーブ! あの構えで、どう……!!」


雪歩「はぁぁぁぁぁああっ!!!」


涼(ええっ!? グリップの底のとこ……そんなとこで打つの!?)

律子「……!」

律子「あのオーラ……回転している……?」


雪歩「『ドリラー』!!」


ギュルイイイイイイイインッ


真「!」


亜美「あんなヘンテコな構えで、返した!」

律子(ただ返しただけじゃない。ラケットをドリルに見立て、オーラによってラケットを高速回転させてる)

律子(あの威力……まともに受けたら、やばい!)

愛「返すよーーーーーー!!!!」

真「! 受けるな!愛っ!!」

愛「へ? もう遅……!!」

ドッ

愛「ぬっ……ぬぐぐ……っ!」

ギュルルルルルルルルル

愛「あれ、前に……飛ばな……っ」


ズキューーーーン


愛「……」

愛「へ?」


愛(ガットを……貫通した?)


P「0-30!」


春香「すごい……」

春香(あれが……雪歩のオーラの、威力……)

やよい「うう~、ラケット、もったいないかも~」


雪歩「はぁ、はぁ……真ちゃん!!」

真「……ん?」

雪歩「私、強くなったよ! だから……」

雪歩「だから……」



雪歩「本気で! 勝負して!!」

真「……へぇ」

真「気付いてたんだ、雪歩」


絵理「ど……どういうことですか?」

雪歩「分かるの、私。真ちゃん、全然本気出してない」

雪歩「だって真ちゃん、さっきから汗一つかいてないもん」

絵理「……えっ?」


真「……雪歩たちのためを思ってそうしてたんだけどなぁ……でもまあ、仕方ないか」

真「本気でいくしか、ないみたいだね」

愛「いいんですか?」

真「うん、雪歩も絵理も、本当に強くなった。これ以上オーラ無しで戦っても勝てそうにないし、予備のラケットも無くなっちゃうよ」

愛「そう……ですよね。さっきの、すごかったですし!」

真「でしょ? それじゃ、いっちょやろっかな」

真「雪歩!」


雪歩「! な、何!? 真ちゃん!」


真「望み通り、本気で戦うよ。けど……」

真「どっちか……怪我させちゃったら、ごめんね?」

雪歩「え?」

真「だって解放したら―――加減、出来ないから」



ゴ オ ッ !!

美希「……あはっ、流石、真クンなの」

貴音「何たるオーラの大きさ、そして密度……」

貴音(あのオーラから繰り出されるさーぶ……いったい、どれほどの……?)

春香「な……なんなのあれ……おかしいよ……」



真「ふう……流石にこの状態は疲れるなぁ。早めに、終わらせないとね」ゴゴゴ

真「さぁ……いくよっ!!」スッ


真「『まっこ』」ダッ



真「『まっこ』……」タッ




真「『りーーーーんっ』!!!!」


ドゴォォォォンッ!!!!



絵理「ッ……」

絵理(回転数……入射角……速度……気温、風、その他諸々、インプット完了。フォルトの可能性は無いため返球モードに移行)

絵理(続いて自身の身体能力から、これに対抗できる腕の角度、振る速度、腰の高さ、足幅等を算出……!?)

絵理(エラー!? 威力が大きすぎて……対抗策が見つからない!? そ、そんなわけ)

絵理(再計算! ああっ、ボールがすぐそこに……早く再計算! 早く! ボールがもう…………!!)


絵理(あ)



ドカァァァァァァァン!!!

シュウウウウウウウウウウ


P「な、なんて威力だ……手榴弾でも打ったのかと思った」

真「ふう……絵理、大丈夫かなぁ」


絵理「……」


真「あ、よかった、無事みたいだ」ホッ


絵理「……ッ」ガクガク

雪歩「え、絵理ちゃん……大丈夫?」

絵理「か、回避しなかったら……危なかった?」

雪歩「……うん、すごい威力だったね」

絵理「雪歩さん、棄権しましょう? あんなの……打てない?」

雪歩「……」

雪歩(オーラ、消えてる……よっぽど怖かったんだ。確かにすごい威力だったもんね…………でも)

雪歩「ごめんね絵理ちゃん、もう少しだけ、やらせてほしいの」

絵理「! む、無理です……どう考えても、勝てない?」

雪歩「勝てなくてもいいんだ。なんなら絵理ちゃんは隠れててもいい」

雪歩「一球でもいい。本気の真ちゃんと、勝負したいの」

雪歩「だから……お願い」

絵理「雪歩さん……」

絵理(こんなに、真剣な目で…………)

絵理(こんなの、止められるわけがない?)

絵理「……気を付けてください、雪歩さん」

雪歩「うんっ!」




P「続行……するんだな」

P「15-30!」



真「さぁ……いくよっ! 雪歩!!」

雪歩「絶対、全力でね! 真ちゃん!!」

真「『まっこまっこりーーーーーん』!!!」


ドゴォォォォォォン!!!


雪歩「……」

雪歩(真ちゃんは……かっこよくて、強くて、前向きで……私の憧れだった)

雪歩(そんな真ちゃんみたいに私もなりたいってよく思ったけど、ダメダメな私なんかじゃ無理無理って、いつもすぐ諦めてた)

雪歩(私は、どうしても自分に自信が持てなかった)

雪歩(……ねぇ、真ちゃん。私の大好きな真ちゃん)

雪歩(もし、あなたの全部に、私の全部が通用したら……)

雪歩(あなたと対等に戦えるって、示せたら……)

雪歩(私は…………)

雪歩(自分を好きに、なれるかな?)


雪歩(自信を持って、生きられるかな――――――)スッ



真「!!」

真(さっきより、さらに変な構え……)


亜美「あ、あの構えは!」

真美「知っているのか亜美」

亜美「なんか……」


亜美「たけのこニョッキっぽい!!」

雪歩「はぁあっ!」


ギュルルルルルイイイイイイ


律子「! ラ、ラケットを含む全身が……雪歩自身が、ドリルとなって回転してる!」

伊織「あれもオーラで!?」

律子「あれもオーラ!」


雪歩「真ちゃん……受け止めて!!」


雪歩「『ミスミスミスタードリドリラー』!!!」



ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



律子(とはいえ真のサーブも相当な威力……返せるの、雪歩!?)



雪歩「ッ……あぁあああ……」

雪歩「あぁああああああああああああぁぁあああああぁああああぁああああああああっ!!!!!」



ギュウウウウウウン



律子「返した!」



真「……初めてだよ、ボクのこのサーブを返したのは」

愛「さっきよりすごい回転……真さん、避けた方が!」

真「ごめん愛、こればっかりは……引けないね!」

真「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」

グルングルングルングルングルングルングルングルングルングルングルングルングルン

律子「! 真がすごい勢いで縦回転を……」


真(ガットが耐え切れないなら、フレームで打つまで!)


亜美「なるほど~! 目には目を、埴輪にはニーハオ!」

真美「回転には、回転を! ってことですかな?」



真「『自転車』!!」



バギュワァァァァァアアアアン!!!!!


絵理「ひぅっ……すごい、力と力の、ぶつかり合い?」

愛「近くにいるだけで、吹っ飛ばされそうだよー!!」



真「だぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」



ドゥグゥウウウウウウウウウン





P「……い」




P「インッ!!」




絵理(あれでも……返されるなんて)

雪歩「え……へへ……」

雪歩「やっぱ、り……真ちゃん……」

雪歩「強い……や……」クラッ


バタッ

ーーーーーーーーーーーーーーー


P「……ま、そうなるよな」

絵理「はい」コクッ

P「チームH、棄権により……勝者」

P「Gチーム!!」


愛「勝ったよーーーーーー!!!!」

真「ふぅ。雪歩、気絶しちゃったか」

真(本当にあの一球に全てを込めてたんだね、雪歩……すごかったよ)

真「……」ジーー

真「またラケット、無駄にしちゃったなぁ」

真(まさかフレームにヒビが入るなんて……本当にすごい威力だった)

真(本当に……)スゥゥ


真「楽しかったよ!!またテニスしようね、雪歩!」


雪歩「……」


真(って、聞こえないか。起きたらまた言おう)

真(アイドルとしてもテニスでも……雪歩とは良いライバルになれそうだ)

春香「勝ったのは真チーム……か」

やよい「ど、どうします? あんなサーブ、私打てないかも……」

春香「……真のオーラサーブは、私がなんとか無力化してみる。体力、持つかわかんないけどね」エヘヘ

やよい「春香さん……」

やよい(私も……頑張らないと!)

千早「調子はどう? ……春香」

春香「! 千早ちゃん」

千早「まずは一回戦突破、おめでとう。でもやっぱり次は強敵のようね」

春香「うん……でも、負けないよ! 私、絶対決勝に行くから!」

千早「……ふふっ、そうね、楽しみにしてるわ」

千早「それじゃあ私、試合行ってくるわね。次は決勝で会いましょう」クルッ

春香「千早ちゃん……だからそれフラグだよ」

春香(それにしても千早ちゃん、なんで私との決勝にあんなにこだわってるんだろう?)



千早「……」

千早(また、高槻さんに話しかけられなかった……私のバカ)シュン

千早(頭の中でどれだけ会話をシミュレーションしても、いざ、ってなるとつい話しかけやすい春香の方に……くっ)

千早(私はただ高槻さんと喋りたいだけのに……どうしてこうなるのかしら)

亜美「千早お姉ちゃんっ! はるるんとの話、終わった?」

千早「え、ええ、もういいわ」

亜美「それじゃ、行こっか!」

千早「ええ、私も……頑張るわ」



真美「ひびきん、や~っと真美たちの番だね!」

響「うん、さっきから試合見てたら、早くしたくってたまらなかったぞ!」

真美「相手は亜美と千早お姉ちゃん。運動能力的にこっちのがダンゼン有利っぽいよね~」

響「亜美と真美が同じくらいだとして、自分が千早に勝てば良いのか。そういえば自分、千早と何か勝負したのってゲロゲロキッチン以来かも」

真美「……フラッグで競り負けたんだっけ?」

響「ゆっ、油断してただけだぞ! 今やったら負けないからね!」

真美「それじゃ、あの時のセツジョク、晴らしちゃおっか!」

響「もちろんさー!」


亜美「亜美、真美といっぱい練習してたから、真美のことはよ~く分かってっかんね! ジョーホー量ではこっちが有利と見た!」

千早「……それ、向こうにも同じことが言えるんじゃ」

亜美「……あっ」

千早(成り行きとはいえ決勝を約束した以上……ここはなんとか通過したいわね)

千早(私の……音楽テニスで!)



一回戦第三試合




チームA(如月千早・双海亜美) VS チームD(双海真美・我那覇響)

今日はここまでです
こんな感じで一試合ずつ書き溜めて投下していきたいと思います
質問とかあればここに書いてくれたらそのうち出来るだけ答えます

次はいつ書くの?

>>118
ゆっくりコツコツ書き溜めて一試合溜まったら投下って感じだし特に決まってはないです
早くて三日後、遅くて一ヶ月後かなーってくらい未定
ぼんやりとしか展開考えてないからここに書かれてること(あずさワープとか)パクることもあるかもしれないです

一試合分書き溜め終わったので続き投下します
ちょっと長いです

チームA 【前衛】千早 【後衛】亜美
チームD 【前衛】響 【後衛】真美
最初のサービス権……亜美


P「ザ・ベストオブワンセットマッチ!! 亜美、サービスプレイ!」

亜美「んっふっふ~、亜美のチョーメチャイケサーブ、お見舞いしてやっかんね、真美!」

真美「だったら真美は、ハイパーミラクルレシーブで対抗してやるもんね!」

亜美「やれるもんなら……」ギュッ

亜美「やってみろぉい!!」スッ


亜美「『you往my進アターック』!!」


スパコォンッ


ドギュウンッ


響「! なんだあの跳ね方……真美の方に向かって!」

亜美「このサーブは地面に着いた後、相手の方へ一直線に進むのだ! まいったか真美!!」

タッ

亜美「!」

響「おおっ、反応した! ……っていうか」

響(分かってた……って感じの動きだな、今の)

真美「そのサーブ……」

真美「見飽きたよっ!」パコォンッ


亜美「ぐっ……そういえばそうだね」タタタッ

亜美(とりあえずひびきんは避けて……)

亜美「えいっ!」パコォンッ


響「よっと、もらったさー!」

亜美「! あれ、ひびきんそっちにいたはずじゃ……」

響「でりゃっ、ボレー!」

ビシィッ

亜美「う、やられた……」

P「0-15!」

亜美(おかしいなぁ、確かにあっちにひびきんいたと思……あれ、いる)

亜美「……えっ」


亜美「ひびきんが……二人ぃ!?」


千早「……鮮やかなステップね、我那覇さん」

響「ふふん、自分、ダンスやってるからな!」タタッ


貴音「出たようですね、沖縄県民ならば誰にでも使えるという……」

貴音「『なんくるステップ』!」ドン

美希「ふぅん、やるね響。残像が見えるほど高速で反復横跳びしてるって感じ?」


亜美「ぐぬぬ……まさか亜美が真美と二人でやっと使える分身の術を一人でやってのけるとは、やるのうひびきん」

亜美「でも、まだまだこれからだかんね!」

亜美「でりゃりゃー! 『you往my進アトゥアーーック』!!」

スパコーーン!!


響「ふふん、その技は効かないぞ!」タタッ

響(『なんくるステップ』!)


亜美「うっ、ひびきんまた二人に」


ドゥウッ


千早(片方の我那覇さんにボールは向かう……けれど)


亜美「あ! 消えた! ずっこい!」

響「こっちの自分は、なんくるないさー!」

パコォンッ


亜美「むぅ~……でも、追いつけるよっ!」タタタ

パコォンッ


響(お、速いな)


真美「真美だって!」タタタ

パコォンッ

律子「……あの双子、速いわね」

伊織「まぁ、あれだけ毎日走り回ってれば、速くもなるわよ」

律子「足が速いのはもちろん、反応速度に関しては今のところ随一といっても良さそう」

伊織「どちらかは確実に次に進む。スピード対策は必須ね」

律子「ええ、そうね。響も分身出来るほどの速さだし、この試合はスピード対決ってとこかしら」

律子「ネット際で大人しくしている、一人を除いて……ね」

律子(千早……あなたはどんなテニスをするのかしら?)


タタタッ

パコォンッ

ダッ

パコォンッ

千早(うん……うん……)


真美「ぬぇい!!」


ドゥンッ


亜美「ぐっ……」


P「0-30!」

真美「んっふっふ~、この東のスピ→ドスタ→こと真美こそが真のスピ→ドスタ→なのだよ!」

亜美「なんやて! この西のスピ→ドスタ→、亜美も負けてへんでんがな!」

響(二人とも、同じくらい速いな……でも多分自分ほどじゃないはずだぞ)

千早「……」

亜美「次、いくよん!」サッ

真美「こいっ!」

亜美「『you往my進アターック』!」

スパコォンッ

響「ふふんっ、そのサーブならさっき真美、ちゃーんと返して……!」

ドゥンッ

響「普通のサーブ!?」

響(同じモーションから、打ち分けたのか!? あのサーブ対策で動いてたら、打てないかも……!)


亜美「これで……」


パコォンッ


亜美「!」


真美「……そうくるのも、分かってたよ」

真美「だって真美ならそうしたから。考えること、そっくりみたいだね!」

亜美「むむむ~っ!」



パコォンッ
パコォンッ

パコォンッ

パコォンッ


伊織「……見たところ、亜美と真美はほぼ互角ね。千早があまり動かない分、差ができつつあるけど」

律子「ええ……」

律子(これって……)


ドゥンッ


P「ゲーム!チームD! 1-0!」


真美「ふぅ、なんとか一ゲーム取れたぁー!」

響「このままあと二ゲーム! がんばろうね真美!」


亜美「うあうあ~、一ゲーム取られちゃったよ~!」

千早「ごめんね亜美、私、あまり動かなかったから」

亜美「ホントだよ~、次からはジャコジャコ打ってってよ!」

千早「ええ、もう大丈夫」

千早「リズムは……掴んだから」

亜美「? な~んかよく分かんないけど、メッチャ頼りになるっぽいねぇ千早お姉ちゃん」

千早「ふふ、任せて亜美。次のゲームからが本番よ」


千早(さあ―――――PLAY START MUSIC!)

P「響、サービスプレイ!」

響「よーし、いっくぞー!」スッ

響「『ハム蔵サーブ』!!」

スッパァンッ


亜美「んっふっふー、どんなサーブでも、この亜美にかかれば……!」


ヂュイッ


亜美「!?」

亜美(ちょっとこれ……跳ねなさすぎっしょ!)


春香「な、なにあの低い弾道!」

やよい「あれって、ハム蔵が狭いスキマとかに潜り込むのに、似てるかもです!」

美希「なんか、打ちにくそー」


亜美「ぬぁんのっ!」


パカァンッ


愛「返しました!!!」

絵理「反応速度……すごすぎ?」

涼「でも、打ち上げちゃったね。あれじゃ……」


響「でりゃーー!!!」ダダダ

タッ

亜美「! すごい跳んだ!」



響「『ウサ江スマッシュ』!!」

響「でやぁぁぁ!!!」


ドキュウウウン


真美「やったか!?」


パコォンッ

ドゥンッ


真美「……」

響「……」


響「えっ?」


P「……イン!」


響「じ、自分のスマッシュを……」

響「平然と、返した……?」


真美「うあうあ~、眠り姫が目覚めたっぽいよ~!」

真美「今のどうやったのさ? ……千早お姉ちゃん!!」



千早「……どれだけ速い球でも、リズムを掴めば捉えられる」

千早「そう、テニスは音楽。ボールが奏でる音を聞けば、いつどこにそのボールが来るかは自ずと分かるのよ」



P「0-15!」

響「何言ってるのかよく分かんないけど……きっとマグレに決まってるぞ!!」

響「『ハム蔵サーブ』!」スパコォンッ


ヂュイッ


千早(地を這うリズム……これはクレッシェンドを意識しつつベンマルカートでファ♯ね)

千早「はっ!」


パコォンッ


響「!! ふ、普通に返した!」

真美「任せて!」ダッ


真美「たぁー!」パコォンッ


千早(返した後はラピダメンテで前へ……その際リズムを見極め……)ダッ


真美「げえっ! 読まれてる!?」


千早(アタッカ!!)


ビシィッ


P「インッ!」

ちょっと飯

響「これが千早の、音楽テニス……」

真美「付け入るスキ、なさそー……」

亜美「千早お姉ちゃん、やるぅ~!」

千早「ふふ、あなたのおかげよ。一ゲーム目、一人であそこまで粘ってくれなかったら私もリズムを掴むのに専念出来なかったわ」

亜美「そ、そう? えっへへ……」ポリポリ


そして……


パコォンッ
パコォンッ
スパカァンッ トゥッ


P「―――――ゲーム! チームA! 1-1!」


亜美「よっしゃあ!! やったね千早お姉ちゃん!」

千早「ええ、これで同点ね!」

千早「……このコートはもう、私の楽譜の上よ」


響「なんか全部読まれてる気がするぞ……音って、そんなに大事なのか?」

真美「……!」

真美「そ~~うだっ」ニッ

P「千早、サービスプレイ!」

響「頑張れ真美、千早がどんなサーブしてきても、なんとか対応するんだぞ!」

真美「……んー」

真美「な~んか、やる気出ないなぁ」

響「えっ!?」



亜美「……真美、何考えてるんだろ」

千早「気にしたらダメよ、亜美。今のあなたのパートナーは私なんだから」

千早「やる気が出てないならありがたいわ。こちらの勝つ確率が上がるんだから」

亜美「そーだけどさ……嫌な予感」

亜美「今の真美、いつもイタズラする時と同じ顔してる」

千早「……?」


響「やる気出ないって、どういうことだ!? 頑張らなきゃ、負けちゃ……」

真美「だってさ、やっぱこーゆー試合って応援とかないと盛り上がらないっしょ?」

真美「こんなに静かだと真美のモチモチベーコン落ちっぱなしだよ~」

響「モチベーション、のことか?」

真美「そうそう、だからさ……あいぽーん!!」


愛「……へ?」



真美「応援、頼むねー! もちろん真美たちだけじゃ不公平だから……どっちのチームも、全力で!」

千早「なっ……」

愛「応援ですか? んー、わかりましたっ」

千早「待って日高さん、それは……」


愛「フレーーーーッ!!! フレーーーーッ!!!」

雪歩「!」ビクッ

絵理「あ、起きた?」

雪歩「な、なになに!? 真ちゃんは!?」

愛「どっちも、頑張ってくださーーーーーい!!!! わーーーーーーーっ!!!」

涼(愛ちゃんうるさい)


千早「くっ……これでは」

真美「ほらほら千早お姉ちゃん、早くサーブ打って!」

千早「……」

千早(落ち着いて……集中すれば、きっと……)

千早「はぁっ!」スパコォンッ


真美「おっ、サーブは普通っぽいね」パコォンッ

パコォンッ
パコォンッ


愛「わーーーーーーーっ!!! 頑張れーーーーーー!!!!!」


千早(……やはりこれでは、ボールの音がよく聞こえない)


響「『ネコ吉ビーム』!!」


ドゥンッ


P「インッ!」

P「0-15!」


千早「……真美、やってくれたわね……!」

愛「わーーー!!! 響さんすごいです!! 千早さんたちも、もっと頑張れー!!!」

真美「ん~? なぁに千早お姉ちゃん、聞こえないよ?」

響「はは……まさか外野を使うなんて、すごいこと思いついたな」

真美「ルール的には何の問題もないもんね。そんじゃ、あいぽんが応援続けてくれてるうちに、畳み掛けますか!」

響「だなっ!」


亜美「千早お姉ちゃん……大丈夫?」

千早「ええ、大丈夫よ」

千早(慣れれば良い、それだけのこと。雑音も全部含めた、このステージに)

千早(それにはまだ少し時間がかかりそうだけれど……間に合わせてみせる!)


パコォンッ
パコォンッ

P「0-30!」

パコォンッ

P「15-30」

パコォンッ

P「15-40!」

千早(……よしっ)

パコォンッ


P「30-40!」


千早「……だいぶ、慣れてきた」

真美(あいぽん効果も、この辺まで……かな)

響「なんか千早、また動き良くなったな。でもあと一本決めればゲームカウント2-1! すごく有利になるし……このまま逃げ切るぞ!」

真美「うん! リョーカイだよ、ひびきん!」

千早(ここは確実に一点、取っておきたいところ。次に繋げるために、絶対……)

千早「亜美、ここが正念場よ。死ぬ気で一点、返しましょう」

亜美「おっけー! 簡単には終わらせないよっ!」

亜美「亜美今、楽しいんだ。真美とも、ひびきんとも、千早お姉ちゃんとも……最近忙しくてあんまし遊べないし」

千早「……亜美」

亜美「だからこうやって一緒にテニス出来る時間、ギリギリまで全力全開で楽しまないと損っしょ!」

亜美(真美……見したげるよ! 今亜美の中にある、ホワホワしたなんかを……)


亜美(亜美の新しい力を!!)


千早「ふふ……いくわよ!!」スッ


スパコォンッ



響「決めてやるさー!!」


響「『ブタ太ストレート』!!」


ブヒョーン!!

千早「!」

千早(猪突猛進って感じの単純な打球だけど、速い! ここに来てこんな技を出してくるなんて……追いつけるかしら)

千早「行ったわよ!亜……!!」クルッ

亜美「おっけー!」

亜美(どんなボールも、拾いまくってやっかんね!)

千早「あ……あれは……」

千早(亜美の足元に……星型のオーラ!?)



亜美(亜美のこの……『スケ→トスタ→』で!)



スイーーーッ



響「速っ!! 人間の移動速度じゃないぞ!!」

P(なるほど、オーラをそう使うか)

春香「カービィのワープスターみたい……オーラにはあんな使い方もあるんだ!」


亜美「それっ!」パコォンッ


亜美(これならどこにボールが来ても拾える! 拾い続ければ、負けない!!)

響「厄介だな……真美、そっち行っ……!!」


真美「……」トクン


響(なんだあれ? オーラとは別の……何かを、纏ってる?)


涼「……あれって」

律子「ええ、普通はペア間で起こるものなんだけどね……」

律子「流石は双子ってやつか。まさか敵同士で……」


律子「同調(シンクロ)、するなんてね」


真美(亜美の全部が、真美には分かる。ありがと、亜美っ)

亜美(ずっこいよ真美~、そんな方法で……)

真美(んっふっふ~、勝てばよかろうだもんね~)



真美(今の真美には、分かる。オーラの出し方も、使い方も)



真美(真美は亜美と一緒に……成長する!!)



スイーーーッ

千早「! 真美まで、亜美と同じ……」

亜美「大丈夫だよ千早お姉ちゃん! 亜美が拾い続ければ、負けないから!」


真美「それは……」


真美「どうかなっ!!」ビュンッ


パコォンッ


亜美「! 高速で前に進みながら……」

真美「亜美の時はひびきんの速い球だったし、拾うので精一杯だったっしょ?」

真美「これが『スピード』の本来の使い方! 重さを乗せて力を込める!」


真美「スピードこそ!! パワーなのだ!!」



亜美「拾わなきゃ……っぐ……」


亜美「っぎゃぁぁぁぁっ!」バシィンッ


千早(弾かれた!!)



P「ゲーム! チームD! 2-1!」


真美「亜美の良いとこ、全部貰って……」

真美「真美は! 亜美を超える!!」

千早(次のゲームを取られたら……負ける)

亜美「千早お姉ちゃん、ごめんね」

千早「亜美は悪くないわ。オーラ、出せるようになったのね。おめでとう」

亜美「うん……」

千早(……)

千早(でも……このままじゃ……)


響「真美、サーブ、頼んだぞ!」

真美「うんっ、このゲームで決めちゃお、ひびきん!」


P「プレイ!」


真美「いっくよー!!」スッ



パコォンッ


パコォンッ

パコォンッ
パコォンッ

真美「とりゃー!!」

P「15-0!」


亜美「なんのっ!!」

P「15-15!」


響「えぇいっ!!」

P「30-15!」


亜美「っだぁぁあ!!」

P「30-30!」


響「これで……どうだ!」

響「『ネコ吉バズーカ』!!」

千早「くっ……返す!」

バキュウウウウン


千早(あっ……)


カランッ

P「40-30!!」


響「っしゃああああ!!」

真美「あと一点!!」


千早「くっ」

千早(やっと……この音楽に慣れたのに……)

千早(リズムを分かっていても……体がついていかないなんて……)

亜美「うう……もう後がないよ」

千早(さっきと同じ点差……ただ違うのは、今回の場合)

千早(あと一点取られたら、負けるということ)

千早(もう、策は尽きた。私の音楽テニスにも、限界が見えた。これで終わり……なのかしら)


千早(……)


 『私、絶対決勝に行くから!』
 『次は決勝で会いましょう』


千早(…………)



千早(……ッ)





千早(終われない!!)カッ



ゴォッ



真美「これで終わりだよっ!」スッ

真美「ミラクルサーブ!!」スパコォンッ






ゴンッ

P「……フォルト!」


千早「……」


真美「なっ……」

真美「なに、その壁……」


響「ネットの上に、光る壁が……まるでネットそのものが5mくらい高くなったみたいだぞ」

響「あれ……オーラなのか?」


律子「千早まで、オーラを……」

伊織「はぁ……まるでオーラのバーゲンセールね」


千早「体がついていけないなら……いっそ動かなければいい」

千早「そっちのボールがこっちに来なければ、私が動く必要はないもの」

真美「な、なにそれ!?」

千早「負けたくない。負けられない。そう思ったら、途端に力が私の中に湧いてきたわ」

千早「『約束の壁』……破れるものなら、破ってみなさい!」


真美「うっ……」

真美(オーラで作った、ボールを弾き返す壁……あんなの、どうすればいいのさ!?)

亜美「すごいよ千早お姉ちゃん! これならいけるっぽいよ!」

千早「ええ……っ」


真美(とにかく、ここでダブルフォルトはダメ。流れがサイアクになっちゃう)

真美「だったら……」スッ

律子(アンダーサーブ!)


真美「無理にでも壁、超えるしかないっしょ!!」


パカァンッ


響「超えたっ!」グッ


亜美「……ま、それしかないよねぇ、真美」

真美「……」

千早「絶好のチャンスボールをありがとう、真美」


真美「……うう」


千早「そんなサーブを打たせただけでも、壁を作った価値はあったわ。これだけ余裕があれば……最高の球を打てる!」


千早(一見レガートに見える我那覇さんと真美の動きだけれど、要所要所ではメノ・ヴィヴオ)

千早(息継ぎの無いオーケストラなんて、ない。流れを見極めれば、隙は見えてくる)

千早(アンダンテ・カンタービレ……ここに打てば、確実!)


千早「アタッカ!!」


バコォンッ

響「!」

真美「絶妙な位置に……お願いっ、届け!!」ダッ


響「ぐっ……」ダッ

響(この位置、真美は間に合わないな。自分はギリ間に合うか?)タタタ

響(でも……)タタタ


千早「……ふふっ」ニッ


響(オーラの壁、作り直してる……なんて切り換えの速さだ)タタタ

響(あの位置からじゃ、角度的に壁を超えるのは難しい……どうする?)タタタ


響(……決まってる)タタタ


響「これしかない!」タッ


真美「! ボールに飛び付いて……」



響「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」バッ


パコォンッ


響「『ブーメランヘビ香』!!」ズザーー



シャーーーーッ


千早「! 壁を避け、審判台の下を通って……こんな技まで!」

亜美「任せて! 亜美が拾う!!」

亜美「てりゃああああああっ!!!」

パコォンッ


響「う、やっぱ追いつかれるか……って、なぁっ!?」


ビュンッ


律子「! 一瞬で響の横を……あれは」

響(ほ、ほとんど見えなかった……なんて速さだ)

伊織「亜美ったら、やるじゃないの。さっきまで自分を乗せて移動に使ってた星みたいなオーラに……」

伊織「今度は……ボールを乗せて、攻撃に使うなんてね」


亜美「はぁ、はぁ……」

亜美「いっけー!! 『ストレ→トスタ→』!!」


響「ッ……真美! 頼む!!」



真美「……任せて!」


スイーッ

やよい「あっ、真美も星オーラで……追いついた!」

真美「でぇぇぇぇええええええいっ!!!」


亜美「追い付くのは、分かってたよ。シンクロしてるもん。でも……」


千早「……」スッ


響「! 千早、また壁を……」

響(あの壁、ただ出しとくだけじゃなく、自分たちの打つ時には消してるんだよな。当たり前だけど、ちょくちょく消したり出したりってけっこう大変そうだぞ)


亜美「真美が教えてくれたんだよ! スピードはパワー!! この亜美のフルパワーアタックを返すのもメッチャキツいし……」

亜美「ただ返すだけじゃなくって、千早お姉ちゃんの壁まで越えなきゃならないなんて、真美には無理ゲーっしょ!!」


真美「ぬうう……おも……!!!」


ギュルルルルルルル


響「がんばれ……」


響「がんばれ、真美ーー!!!!」

真美「がぁあっ!!」

ピカッ―――――


伊織「うっ、眩し……」

律子「力みすぎてオーラが漏れたのかしら。あれはかなり体力を消耗したでしょうね」

律子「でも……」


パカァンッ


千早「……!」

亜美「千早お姉ちゃん! 上!!」

千早「驚いたわ……本当に亜美のあれほどの威力の打球を、壁を越えるほど打ち上げてみせるなんてね」スッ


真美「……っはぁ、はぁ」

真美(もう……限界かも……)


響「! 千早、壁を解除したぞ……?」


千早「こっちも絶え間ないオーラの移動で疲れたわ。後一ゲーム戦う体力も無い。だったら……」

千早(『arcadia』!!)


律子「オーラを足に集中させて……飛んだ!!」


千早「悪いけれど……KOさせてもらうわ」


貴音「今度は腕におーらを! 流れるように、まるで音楽を奏でるようなおーら移動術……なんと美しきものでしょう」

美希「千早さん……すごいの」


千早「全て燃えて、灰になれ!!」




千早「『inferno』!!!!」

響(まずい、あのオーラ……自分たちを狙って……)






―――――――スカッ





千早「……」

千早「?」

千早(ボールが……消えた?)


真美「……たしかに」

真美「亜美の球、すっごく強かった。あんなの、とてもじゃないけど打ち上げるなんて無理ゲーだったよ」

真美「だから……普通に、そんなヘボヘボの球を返すので、精一杯だった」スッ


亜美「!!」


コロッ……

亜美(あれ……いつの間に、こっちのコートにボールが落ちて……)

亜美(そういえば、シンクロ、解けてる……断ち切られた? いつの間に? ……!!)

亜美「まさか……」

真美「……んっふっふ~、その通りだよ、亜美君」

亜美(打ち上げたボールは、オーラで作った……偽物!?)

真美「けっこーキツい賭けだったけど……成功してよかった」

真美「ごめんね亜美。これで終わりだよ」

亜美「……そんな裏ワザ、全然思いつかなかった。亜美たち双子なのに、どこで差がついたのかな?」

真美「楽しみたい一心で戦ってた亜美より、勝ちたい、優勝したいって思いは真美の方がずっと強かったもんね~!」

亜美「ええー! 亜美だってPS4チョー欲しいのに~」

真美(……だって真美には、PS4なんかより、ずっと欲しいものがあるんだもん)


真美「この勝負、真美たちの……」


真美「勝ちだねっ!!」ニカッ



P(まったく、無茶するよ。オーラで目隠ししてる間にあんな仕込み……俺でなきゃ見逃してたね)




P「ゲームアンドマッチ! ウォンバイ……チームD!! 3-1!!」

響「勝った……のか?」

真美「うん、やったねひびきん!」

愛「おめでとうございまーーーーーす!!!!! はぁ、はぁ……お、応援、疲れました」

真美「あいぽん、お疲れ。これは三人の勝利だよ~」

愛「へ?」


亜美「んーーーっ!! 悔しいっ!! 真美! 帰ったらテニスやろ! シングルス!!」

真美「リョーカイ亜美! 近くのテニスコート空いてたらいいね~」

千早「……」

千早(負けて……しまった……)


春香「千早ちゃんっ」

千早「! 春香……ごめんなさい、約束……守れなかった」

春香「え? いいよそんなの。それより、すごかったよ、千早ちゃんのテニス」

千早「……ありがとう、でも……」

春香「ね、やよい」

やよい「はい! 千早さん、かっこよかったかなーって」

千早「!!」パァァ

やよい「よかったら、今度テニス教えてほしいなー、なんて」エヘヘ

千早「も、もももちろん!! 私でよければいつでもどこでも」

やよい「うっうー! ありがとうございます!!」

春香「ふふっ、千早ちゃんったら」

春香「……」

春香(千早ちゃんの分も……がんばるからね!)

P「さて、次は一回戦最後の試合だが……」

P「あずささんが来ない」

律子「……」

伊織「……」

涼「……」

伊織「ずっといないと思ったら……」

律子「涼、なんで側に付いててあげなかったのよ」

涼「ええっ、だって、トイレに行くって言うし……ねぇ?」

律子「……プロデューサー、これ、私たちの不戦勝でいいですか?」

P「うーん……」

どたぷーん

涼「! あ、あれは……!!」

伊織「へぇ、まさか自力で戻って来るなんて……って、え!?」

P(これは…………)



あずさ「お待たせしました~」ゴゴゴ


律子「あずささん……いったい、どこで何をしてきたんです?」

伊織「まったく、派手な登場じゃない。まさか初めから」


伊織「オーラを纏ってくるなんて……ね」

あずさ「うふふ、さぁ……始めましょうか」




一回戦第四試合




チームB(三浦あずさ・秋月涼) VS チームC(水瀬伊織・秋月律子)

というわけで、今日はここまでです
一週間以内にはなんとか次の試合を投下出来るようにしたいです
ゆっくり頑張ってなんとか完走目指したいと思います

続き投下します
途中計算式とか出てきますが全部適当です
作中ではすごい頭の良いこと言ってるってことにしてくれればOKです

チームB 【前衛】あずさ 【後衛】涼
チームD 【前衛】伊織 【後衛】律子
最初のサービス権……あずさ


P「ザ・ベストオブワンセットマッチ! あずささん、サービスプレイ!」


あずさ「それじゃあ行きますよ~、律子さん」

律子「……」

律子(あずささんが纏ってるオーラ……その力は未知数)

律子(まずはよく観察しないと!)

あずさ「そ~れっ」

スパコォンッ

律子(ボールの回転、威力、ともに問題なし)

律子「こんなのなら……」ザッ


フッ


律子「!?」

律子(あれ……ボール、どこに……?)


ダンッ


P「インッ! 15-0!」


あずさ「やったっ! いきなりサービスエースね~」

涼「すごいです、あずささん!」


律子「なっ……!」

伊織「今、ボールが……瞬間移動した……?」

律子「……へえ」クイッ

律子(面白いじゃない!)

あずさ「どんどんいくわよ~」

伊織「……」

伊織(瞬間移動……それがあのオーラの効果ってワケね。対策は今のところ思いつかない)

伊織(少し下がってみようかしら)

あずさ「そ~、れ!」スパコォンッ

伊織「……!」

フッ

伊織「そっち!」ダッ

伊織「……ッ」

伊織(遠い……っ)


ドゥンッ


P「インッ! 30-0!」


伊織(やっぱり、ワープしてから動いても間に合わない、か)

律子「……」

律子(よく見てみると、ボールにオーラを纏わせているのね。どういう仕組みなのかしら)

律子(あーもう、オーラのことなんてちっとも分かんない。私、使えないし)

律子(それでも……観察するしか、ない)

律子(観察すれば、きっと見えるはずだから)


あずさ「次、いきまーす」

スパコォンッ

律子(どうせ間に合わない。なら……)

伊織「……!」

伊織(律子、あの構え……打つ気が無い!?)

フッ

ドゥンッ

P「インッ! ……40-0!」

律子「……なるほど」

伊織「ちょっと律子、どういうつもり!?」

律子「現状じゃ、返せる確率は12%未満。ならいっそ打とうとせず観察に徹した方が効率的だと判断したまでよ」

伊織「なっ……アンタまさか、このゲーム捨てる気じゃ」

律子「……」

律子「三回、見たわ」

伊織「……?」

律子「どんな動きにもきっと法則はある。二回じゃ流石にわからないけど、三回見れば大幅に絞り込める」

伊織「まさか、もう分かったの?」

律子「次の動き次第ってのもあるけど……恐らく」

律子「e^ix+底辺×高さ÷2+alog|ysinh(bc+θ)|、そしてそれにミゥーラの法則を適用させ、アレをしてコレをそうしたもの」

律子「それがあのサーブの法則よ」

伊織「……ほんとだ、計算してみると確かに今のところそうなってるわね」

律子「まだ確信じゃないけど、次はそれを信じて打ってみて」

伊織「ん、分かったわ」

伊織(律子が導き出した計算式……無駄にはしない!)


スパコォンッ

フッ

伊織「あれっ」

ドゥンッ


P「ゲーム!チームB! 1-0!」

伊織「計算、違ってたじゃない! やっぱり三回見ただけじゃ……」

律子「あれじゃない、なら(上底+下底)の方向で……? いえ、それも違う」ブツブツ

律子「おかしいわね、こんなはずじゃ……今の打球、さっきまでの三球から考えられるどの法則からも外れていた」

あずさ「あの~、一つ、いいかしら?」

律子「……なんでしょう」

あずさ「私のサーブ、よく迷子になっちゃいますけれど、多分、法則なんて無いんだと思います」

律子「そ、そんなわけがっ……!」

あずさ「だって、ボールに込めたのは私のオーラなんですよ? 恥ずかしいですけれど、ボールの迷子は、私の迷子と同じなんです」

あずさ「これまでの私の迷子に、法則なんてありましたか?」

律子「ぐっ……ない、ですね、多分。あったら苦労してませんよ、いつも」

あずさ「でしょう? こんなの、自慢でもなんでもないんですけれど……うふふっ」

あずさ「自分でもわからないんですよね~。ボールがどこに行ってしまうのか」

律子「そんな……」

律子(法則がないなんて、考えたくなかった)

律子(もし本当にそうなら、分析が武器の私には……)

律子(あずささんのサーブを―――返せない)

律子「……」

伊織「律子」

律子「! な、なに?」

伊織「この後三ゲーム、全部取るわよ。もうあずさにサーブを打たせなければいいんでしょ?」

律子「あっ……そうね。そうよね、うん」

律子(何を弱気になってるのよ私は! 大丈夫、まだ終わっちゃいない)

律子「伊織、サーブ任せたわよ」

伊織「任せなさい! 一ゲーム差くらい、すぐに取り返しちゃうんだから!」

P「伊織、サービスプレイ!」

伊織「いくわよ、涼!」

伊織(さっきのゲームはあずさ無双だったし、涼は今のところ何もしてない)

伊織(律子の従姉妹ってことくらいしか知らないけど……どんなプレイスタイルなのかしら)

伊織「たぁっ!」

スパコォンッ

涼「やぁっ!」

パコォンッ

伊織(まあ、普通にうまい……ってとこね)

律子(やっぱり涼はこの程度……)スッ

律子「甘いっ!」

パコォォンッ!

涼「……!」

バイインッ

涼(イレギュラーバウンド! 届かない……)

ドゥンッ

涼「っ……狙ってやった? 律子姉ちゃん」

律子「当然よ。雪歩の試合で、高確率でイレギュラーバウンドが起きるポイントのデータは大体収集できたわ」

涼「……」

律子「データは嘘をつかない……だから私はこれまで、集めたデータに応えるためのコントロールだけを集中して鍛えてきたのよ」

律子(大丈夫……私のデータは、ちゃんと通用する)

P「15-0!」

伊織「さ、次はあずさね」

あずさ「ええ、優しくお願いね」

伊織(あずさのあの瞬間移動ボールは、あずさが直接ボールにオーラを込めない限り使えないはず)

伊織(流石にレシーブする一瞬でそれほどのオーラを込められるとは考えにくいわね。なら……)

伊織(大丈夫!)

伊織「やあぁっ!!」

スパコォンッ

あずさ「……うふふ」

伊織「!」

伊織(あずさのオーラの形状が、ドーム状に……?)




シュンッ

バッ


伊織「!!?」


ドゥンッ


P「フォルト!!」

伊織「そんな……馬鹿げてる」

伊織「なんで私の球が! 瞬間移動して、外に出てるのよ!!」

あずさ「ボールに込めるだけが、私のオーラの使い方じゃないのよ~」

あずさ「私のオーラの膜に触れたボールは、オーラの外側に瞬間移動する」

あずさ「『ラブリ・ラビリンス』……どんな打球も、サービスコート内には辿り着けないわよ?」

伊織(そんなの……無茶苦茶じゃない!)

P「―――フォルト! ダブルフォルト!」

伊織「っ……」

伊織「あり得ない、こんなの、絶対……!」


真「うーん、やっぱりあずささん、すごいや」

真「愛や千早の風圧とか壁によるサーブ封じなら、ボクもパワーでなんとか突破出来ると思うんだけど……あれはどうしようもないかも」

愛「オーラの中に入ったら、一瞬で外に出ちゃってますもんね。あれはあたしも、流石に……」

真「うん、今のところ、無敵って言っても良いかもね。でもあずささん
、大丈夫なのかなぁ」

愛「なにがです?」

真「あんなにすごいオーラを、ずっと放出しっぱなしなんだよなぁ。普通に考えたら―――ね」

愛「……あっ!」


律子(普通に考えたら―――そのうち、絶対スタミナが切れる。そこに、勝機はある)

律子(春香や雪歩はオーラの使いすぎで倒れた。そのことから、オーラの使用にはかなりの体力を要すると考えられる)

律子(あれだけオーラを出してて、倒れないはずがない。と、思うんだけど……)


あずさ「……」ニコッ


律子(どういうことかしら……全く疲れた様子を見せないわね)


伊織(とにかく、点を取らないと……)

パコォンッ
パコォンッ

律子「そこっ!」

涼「うっ」

P「30-15!」

伊織「……」

ドゥンッ

P「……ダブルフォルト! 30-30!」

伊織(あずさ対策は思い付かないけど、幸い涼は大したことない)

伊織(このまま点を取り合って時間を稼いで、あずさのオーラが尽きるのを待つしかないわね)

律子「……」

律子(大丈夫、涼には負けてない。大丈夫、大丈夫……)

涼「ふぅー、みんな強いなぁ」

あずさ「涼ちゃん、ゆっくりいきましょうね」ニコッ

涼「あ、はい……ありがとうございます」

涼(あずささん、気を遣ってくれてるのかな? 僕、まるで役立たずだからなぁ)

涼(でも、仕方ないよね。どうせ僕なんか、律子姉ちゃんに勝てるわけないし)

涼(仕方ない……よね)

あずさ「あらあら、そんなに暗い顔してたら、可愛い顔が台無しよ?」

涼「……えっ、してました? 暗い顔」

あずさ「女の子なんだから、もっと笑って! ほ~ら、ね?」

涼「あっ……はい」

涼「………………」

あずさ「……?」


涼(女の子、か)

涼(…………僕は)

涼(このままで……いいのか……?)

伊織「いくわよ!」シュッ


涼「…………」

涼(いつからだろう……女の子でいることに、違和感を覚えなくなったのは)

涼(いつからだろう……色々なことを、ま、いっか、って受け入れるようになったのは)


伊織「はぁっ!!」スパコォンッ


涼(今の僕は女の子だから弱くたって仕方ない? 律子姉ちゃんにはどうせ何やっても敵わないから仕方ない?)


涼(……違うだろ)


ゴゥッ

伊織「!」


涼(男である自分を封じ込めて……心まで女々しく染まっていって……)


ダッ


涼(僕の目指してるものは……)


ピカッ―――――



涼「こんなんじゃ、ないだろ!!」




パコォンッ!




律子(狙いはあずささんのスタミナ切れ……恐らく伊織も同じように考えている)タタタッ

律子(そのためには、涼がレシーブの時は、確実に取っていかないと……)ザッ

律子「!?」


律子(なにこ、れ……ボールが……輝いて……!?)

律子(まぶしっ……見えなっ…………!!)


ドゥンッ

P「30-40!」

伊織「なっ……」

律子「っ……あれは」

律子「涼、あんたオーラを……!」


愛「えっえっ、今涼さん何したんですか? 見逃したよーーーー!!!」

絵理「多分……オーラの全てを光エネルギーに変えて、ボールを輝かせた?」

絵理「強くキラキラ光るボールは、視界を白く染め上げる」

絵理(何も見えない輝きの世界……ダズリングワールド?)


涼「……っはは」

涼「出来るんだ……僕にも、こんなテニス……」


伊織「……ッ」

伊織「なんなの、さっきのあのボール」

伊織「このスーパーアイドル伊織ちゃんより輝こうなんて……」


伊織「良い度胸してるじゃない!」

律子(次、取られたらこのゲームも終わり。でもあずささんには普通のサーブは通じない)

律子(これは、もう……)

伊織「終わり……だなんて考えてないでしょうね、律子」

律子「!」

伊織「しっかりなさいよ。なんたってこの私の担当プロデューサーなんだから」

伊織「こんな状況、この伊織ちゃんにとってはなんてことないってことくらい、バッチリ分かってるはずでしょう?」

律子「伊織……」

伊織「にひひっ、任せときなさい。オーラとかそういうのは全部私のためにあるってのを、見せてあげるわ」

伊織(そうよ、私はアイドル。スーパーアイドル。きっと私が一番……だから)

伊織「さっさと出なさいよ!! オーラ!!」


伊織「はぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」


ゴォォォォォォ


律子「! オーラ! 本当に……」


伊織「やってやるわよ!!」シュッ



スパコォンッ

ビューーーーーン


涼(いくらオーラを扱えるようになったからって、あずささんのアレを打ち破るのは無理なはず)

あずさ(どんな変化も威力も、私のオーラの前には無意味。どうくるのかしら?)


伊織「あずさのオーラは確かにそこそこすごいわ。けど私と比べると、ちょーっと分が悪いかもね」



ブオオオオオオッ



あずさ「!」

あずさ(私のオーラが……ボールに吸い寄せられて……?)


伊織「邪魔なオーラは、取り込んで自分のものにしてしまえばいいだけ」


伊織「全世界のキラメキは! 私のものなのよ!」


ドゥンッ


律子「入った!」

律子(やっと見えた光明……相手のオーラを自分のものにする伊織のオーラ、これを計算に入れればきっと……)


パコォンッ



律子「……えっ」



フッ


ドゥンッ

P「……インッ! ゲーム! チームB! 2-0!」

伊織「そんなっ……」

あずさ「すごいわ、伊織ちゃん! 私のオーラを突破するなんて」

あずさ「私、あのオーラを使えるようになってから……」

あずさ「初めて……レシーブしたわ~」ニコッ

律子「ははっ……どこまで上を行くのよ、あずささんは……」

伊織「……ドーム状のオーラを奪ったとはいえ、それでようやくサーブが入るようになっただけ。返されることを考えてなかったわけじゃなかった」

伊織「でも……レシーブでも瞬間移動ボールを打てるなんて、思わないじゃない!」

あずさ「インパクトの瞬間、思い切って伊織ちゃん以上の量のオーラを込めてみたのよ~」

あずさ「結構オーラ使っちゃったけど、なんとか支配権は乗っとれたみたい」

律子(あずささんの瞬間移動ボール……あれは時間をかけてボールにオーラを込められるサーブ限定という前提で考えてた)

律子(これじゃデータ、練り直しだなぁ……はぁ)

律子(だいたい……どういうわけなのよ)チラッ

律子「……あずささん、正直に答えてもらえますか?」

あずさ「何かしら?」

律子「それだけオーラを消費して……スタミナは残り何%くらいですか? 大体でいいですから」

伊織「ちょっ、そんな直球な……それじゃ私たちの作戦が」

あずさ「そうねぇ、だいたいだけれど……」

あずさ「あと……85%、くらいかしら?」

伊織「!?」

律子(……やっぱり、たっぷり残ってる……か)

律子(スタミナ切れ狙い……諦めた方が良いかも)

伊織「あずさ……まさかアンタがそこまでの体力バカだったとはね」

あずさ「バカだなんて、伊織ちゃん、ひど~い。別に私も、そこまで体力に自信があるわけじゃないのよ?」

あずさ「でも私、試合が始まるまでって思って、さっきまでちょっとお散歩していたの」

あずさ「その時、色んなところを歩いているうちに、たっぷりオーラとかパワーを頂いたみたいで……」

あずさ「体力が、っていうより、オーラの絶対量が増えたって感じかしら? とにかく、そんな感じだから……」

あずさ「スタミナ切れは、多分無いと思うわよ?」

伊織「わ……わけが分からない」

P(あずささん、まさか……やけにオーラに満ちていると思ったら)

P(さっきまで……『パワースポット』を、巡っていたというのか?)

あずさ「それじゃあ涼ちゃん、サーブ、ほどほどに頑張ってね」

涼「はい、頑張ります」

涼「やぁぁぁぁあっ!!!」シュッ

スパコォンッ


伊織(! 悩んでる暇はなさそうね)

伊織「律子! 行ったわよ!」

伊織(とにかく今は涼のサーブ。考えるべきは)


ピカーーーーーーッ


伊織(あの光る球の対策……!)



パコォンッ

涼「……えっ」

ドゥンッ

P「インッ!」

あずさ「あらあら」

涼「そんな……見えてないはずなのに、返された?」

伊織「律子……?」

律子「……」クイッ

律子「見えたわ、涼……あなたのボール」


ザッ


律子「伊織、私の指示に付いて来て」

律子「まずはこのゲーム! 絶対頂くわよ!!」

伊織「律子……」

伊織(分かってる。例えこのゲームを取っても、その先はかなり厳しいってこと)

伊織(でも、それでも最後まで諦めないなんて……まったく、泥臭いわね)

伊織(ま……そういうの、嫌いじゃないけど)

伊織「……ふふっ」

伊織「オーケー、付いていくわ、律子プロデューサー!」



P「0-15!」

涼「えええいっ!!」

スパコォンッ


伊織「うっ……」

伊織(やっぱり、眩しくって見えやしない。律子はどうやって……)

律子「左に83cm、高さ54cm!」

伊織「!」

伊織(この辺……?)ブンッ

パコォンッ

伊織(当たった!)


ドゥンッ


P「インッ!」

涼「また……打たれた、の?」


伊織「えっ、今のでリターンエース?」

律子「ええ、当てさえすれば、高確率でそうなるでしょうね」

律子「……あれだけの眩しさ、見えないのは向こうだって同じのはずだもの」ニッ

伊織「ああ、それもそうね」

律子「今みたいな感じで指示を出していくから、この調子でいきましょう」

伊織「分かった。頼りにさせてもらうわ」

伊織「ところで、律子にはなんでボールの位置が分かるわけ? そのメガネ、サングラスでもなんでもないのに」

律子「そうね、私にも本当に見えてるわけではないわ。でも、予測は出来る」

律子「涼のこれまでのプレーのデータが、ボールの来る場所を教えてくれるってわけ。見えてるのも同じよ」トントン

伊織「なるほど、ね。そこまでの精密なデータ……ほんと、敵に回すと厄介だわ」

律子「ありがたく受け取ってあげるわ。褒め言葉としてね」


そして―――――


P「―――ゲーム!チームC! 1-2!」

律子(一矢……)

伊織(報いたっ!!)グッ

あずさ「あらあら、一ゲーム取られちゃったわね~」

涼「うう、ごめんなさいあずささん」

あずさ「大丈夫よ~。だって多分……」

あずさ「このゲームで……終わるから」

涼「!」

涼(あずささんがここまで自信たっぷりなんて……珍しいなぁ)


律子「……あずささん、一ゲーム取られたのにやけに余裕ね」

伊織「いつものことじゃない。あずさが落ち着いてるのなんて」

律子「そうだけど……さっきのゲーム、あと一ゲームで勝ちって状況のわりには、あまり力を入れてなかったように見えてね」

律子「まるで取られると分かってたみたいっていうか……今もそう」

律子「このゲームで終わるって、初めから知っているみたい。……そう見えるのは、私だけ?」

伊織「……」

伊織(そういえば、昨日……)

 あずさ『最近、趣味の占いの調子がすっごく良いのよ~』

伊織(……)

伊織(まさか……ね)


律子「ま、そんなこと考えるより、あずささん相手にサーブを通す方法を考えないとだけどね」

伊織「あっ、そうよ! 律子、オーラ使えないの!? 私みたいにやれば……」

律子「……使えないわ」

伊織「……そう」

律子「それでも、持たざる者なりの戦い方ってのを、見せてやろうじゃない!」

P「ゲームカウント1-2、律子、サービスプレイ!」

律子「ていっ!」スパコォンッ


涼「……!」


バインッ


涼(イレギュラーバウンド……)

律子(よし、成功)

涼「ッ……負けるかぁぁぁっ!!」ダッ


パコォンッ


あずさ「ナイスよ、涼ちゃん……!」


律子「……こっちに返す確率、87.6%」


パコォンッ


ドゥンッ

P「インッ!」


涼「うぅ~、ダメかぁ」

律子(理論的にかなり返しにくい位置に打ったのに、あれを返せるなんて……思ったよりやるわね、涼)

律子(それでもやっぱり問題は……)チラッ

あずさ「うふふっ♪」ゴゴゴ

律子(さーて……どうしたもんか)

シュンッ
バッ
ドゥンッ

P「―――ダブルフォルト! 15-15!」

律子「ぐっ……ダメ、か」

伊織「やっぱり、オーラも無しにあれをなんとかするなんて……」

律子「……」

律子(オーラの膜に触れた時、瞬間移動した後のボールは……する前よりも加速していた)

律子(ワープとは超高速移動。恐らくそのエネルギーによって……)

律子(観察……もっと、観察を……)



そして


スパコォンッ

涼「うわぁっ!」

P「30-15!」

ドゥンッ

P「ダブルフォルト! 30-30!」

伊織「たぁぁぁあっ!!」

P「40-30!」

スパコォンッ

フッ
フッ

ドゥンッ

律子「……!」

P「ダブルフォルト! デュース!」

P「アドバンテージ、チームC!」

P「デュースアゲイン!」

P「デュースアゲイン!」
P「デュースアゲイン!」

――――――――――――



 

律子「ふぅ……」


千早「すごい……またデュースね」

雪歩「あずささん相手にはやっぱりサーブ通用してないし、涼さんのレシーブで一点でも取られたら終わりなのに……二人とも、すごく粘ってるね」

真「涼のプレーは決して悪くない。イレギュラーバウンドにも対応出来てるし、むしろかなり良い動きをしてるよ」

真「それでも、律子と伊織は持てる力の全てを使ってここまで抑えてきている。すごい根性だ」



涼「はぁ、はぁ……」

涼(何をやってるんだ、僕は……)

涼(足手まといはもう、卒業するんじゃなかったのか……!?)

涼(光る球は攻略されてる。だったら、小細工は無しだ。もっと男らしく……)

涼(もっと強く……)


涼(パワーで! 勝負だ!!)クワッ


律子「はぁっ!」スパコォンッ



涼「うおおおおおおおおおおおっ!!!」

律子「!」

涼「バーニーーーーーーング!!!!!!」


バゴォンッ


涼「ぬぉああああああああああああああっ!!!!」


律子「ッ……」

律子(何あれ、完全に男の顔じゃない!)


響「おー、吹っ切れたんだな、色々」

真美「かわゆい顔して、あれじゃー女捨ててるっぽいよね~」

響「んー、捨ててるっていうか、元々……」

真美「?」

響「あ、いや、なんでもないぞ」アハハ



涼「いけぇぇぇぇぇええええええええ!!!!」


律子「ぬっ……ぐうっ……」グググ

律子(涼、アンタ、ここまで……!)


バシイッ


律子「あっ……」

律子(しまっ……ラケット、弾かれ……っ!)


トンッ




P「―――アドバンテージ、チームB!!」

伊織「そんな……っ」ガクッ

涼「よしっ!」グッ

あずさ「すごいっ。とってもかっこよかったわよ、涼……えーと……ちゃん?」

涼「えっ、あっ、あはは……」

あずさ「とにかく……あとは、私に任せて」ニコッ

律子(ここでダブルフォルトなら、私たちは負ける)

律子(勝負所ね。今まで観察したものを、全部思い出さないと)

律子(集中、集中して……何か、きっと何か……)

伊織「律子……」

伊織(私にはもう、祈るくらいしか……)


P「おーい律子、早くサーブ……」

伊織「アンタは黙ってて!!」

P「ひっ!?」


律子「……」


律子(何度か……一回のサーブで、数回ワープしたことがあった)

律子(あのドーム状のオーラの膜……あそこに触れると、ドームの外へと瞬間移動させられるけれど、飛ぶ方向は外側とは限らない)

律子(だからそのボールがまたオーラにぶつかることもある……それが連続ワープの秘密)

律子(それでも結局膜の内部には辿り着けない……だったら……)

律子「…………」

律子(あれしか、ない……か)


律子「よし……」

律子「お待たせ。さぁ……勝負よ、あずささん!!」

あずさ「ええ、よろしくお願いします~」

あずさ(なんだか、悪いわね~。律子さん、すごく本気みたい)

あずさ(勝つのはこっちだって……分かってるのに)

伊織(どうするつもりなのかしら、律子……)

律子「……あずささん。あなたのそのオーラの膜による強制瞬間移動には、法則があります」

あずさ「あら、そうなんですか?」

律子「ええ、サーブの時のようにボールの内部にオーラを込めた場合と比べると、いくらか優しい仕様になっているみたいです」

律子「どこに打てばどこにワープするのか……まだ完璧ではありませんが、ほとんど把握出来ました」

あずさ「そう、それなら……分かったでしょう?」

あずさ「どこに打っても、サービスコート内には決してワープしない……って」

律子「……はい」

伊織「! じゃあ……」

律子「それでも、勝ちます」

伊織「!?」

あずさ「うふふ、面白いですね~。どうやって勝つのかしら」

律子「どうやって勝つか。その方法は……」

律子(成功確率は30%未満……それでも、賭けるしかない)

律子(最終到達地点から逆算して……うん、多分あそこで合ってる。あとは少しもずれないように……)

律子「その目で、確かめてください!」シュッ

律子(打つ!!)

律子「たぁっ!!」スパコォンッ

伊織(普通のサーブ! あれじゃあ……)

あずさ「……ふふっ」


シュンッ

バッ


伊織「ああっ、やっぱりワープし……」

伊織「て……?」


シュンッ
バッ

シュンッ
バッ

伊織「瞬間移動したボールが、またオーラにぶつかって瞬間移動……」

伊織「それを何度も繰り返してる……?」

あずさ(何が目的……なの?)

シュンッ バッ
シュンッ バッ
シュンッバッ
シュンバッ
シュバッ
シュババッ
シュシュシュシュシュシュババババババ


伊織「ちょっと! だんだん早くなってない!?」

律子「ワープを繰り返し、ボールは……加速する」

あずさ(大丈夫……どれだけ威力が上がっても、入らなければ……)

涼(ここでダブルフォルトで終わり……か)

涼(僕、少しは男らしくなれたかなぁ……ふふっ)

涼(もし優勝したら、夢子ちゃんに何かプレゼントしようかな)

涼(そうだ、ラケットをプレゼントしよう。それで一緒にテニスでもして……)


律子「加速を繰り返した後は、勢いそのまま……三、二、一」

律子(飛び出せ!)


律子「……ばんっ」


バシュンッ


あずさ(ようやく外側に……!!)

あずさ「しまった、狙いは……」




あずさ「涼ちゃん!! 避けて!」




涼「……へっ?」



伊織「なるほど……えっげつないこと考えるわね、律子」

律子「ふう……どうにか、計算通りに動いてくれたわね」

律子「ごめんね涼。アンタが相手じゃなかったら、こんな手を使おうと思えなかった」

律子「じゃあねっ♪」ニコッ


あずさ(加速に加速を重ねて、とんでもない威力になったアレをくらったら……!!)



涼(速すぎ……避けられ……!!)

涼「ぎゃ……」



涼「ぎゃおおおおおおおおおん!!!!」



チュドーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!

P「……えー」

P(大どんでん返し、だな)

P「秋月涼、試合続行不可能により、勝者―――」

P「Cチーム!」


律子「やったぁっ」ギュッ

伊織(データテニスが厄介ってのもあるけど、この勝つためには手段を選ばない感じ……)

伊織(やっぱ敵に回したくないわね、律子は)

あずさ「ふう……負けたわ、律子さん」

律子「あずささんごめんなさい、あなたを利用するようなことを……ああでもしなきゃ、勝てなかったから」

あずさ「良いのよ~。まさかオーラ無しでやられちゃうなんて、やっぱり律子さんって、とっても頭良いんですね~」

あずさ「これからもプロデュース、よろしくお願いしますね」

律子「はいっ、そりゃもう、全力でやりますよ! あずささんほどのオーラなら、トップアイドルも夢じゃないです!」

あずさ「あらあら、嬉しいわ~」

あずさ(……こういう、ことだったのね)

あずさ(試合前に占ったら、四ゲーム目に決着がつく、って出たから)

あずさ(二ゲーム取った時点で、もう勝ちって思っちゃったけど、まさかこんなことに……)

あずさ(ほんと、テニスって、何が起こるか分からないわ~)フフ


亜美「いやぁ……ゲキテキな結末でしたなぁ」

真美「まさかの涼ちんKO! だもんね~」

亜美「それにしても涼ちんこうなっちゃうなんて、大丈夫かな?」

真美「涼ちんこわれちゃってないかな?」

亜美「鬼軍曹、恐るべし……真美、次頑張ってね」

真美「う、うん……お、鬼退治は犬とか飼ってるひびきんがいれば大丈夫っしょー」


P「んー……よし」

P「みんな、集合!」

春香「どうしたんですか、プロデューサーさん」

愛「次はあたしたちの試合ですよね?」

P「ああ、だがその前に話しておこうと思ってな」

P「とりあえず一旦状況を整理するぞ」

P「準決勝は計二試合。第一試合は、春香とやよいのチームEと、真と愛ちゃんのチームGの対決だ」

春香「真、愛ちゃん、負けないからね!」

愛「あたしだって、負けませんよー!!」

やよい「あ、それなら、引き分けかもっ!」

真「あはは、結果はどうなるか分からないけど、良い試合にしようね!」

P「第二試合は、響と真美のチームDと、伊織と律子のチームCの試合になる」

伊織「律子、データはちゃんと取れてる?」

律子「ええ、この相手に関しては特に……ね」

真美「策士コンビかぁ……ひびきんおっちょこちょいだから騙されないように気を付けてよー?」

響「うがー!自分、頭は悪くない方なんだぞ!多分!」

律子「ところでプロデューサー、話というのは……決勝のことですよね?」

P「お、察しがいいな」

P「一回戦を見て分かったが、やはりアイドル同士の試合はオーラの多用により想像以上に体力を消費することになる」

P「これまで通りのペースでやっていくと、決勝戦は準決勝の直後―――チームCかチームDは、連戦ということになる」

真美「うええっ!? そんなの無理っしょ! 今だってまだ体力回復し切ってないのに、連戦って……」

P「ああ、どうしても不利になる。準決勝の時点で少しは差もあるが、流石に連戦は避けたいところだろう」

P「そこで、だ。対等で最高の試合にするため、決勝戦は後日、日を改めて行うことにする」

愛「!」

P「準決勝を勝ち上がった四名は、その日までたっぷりと特訓しても良いし、ひたすら体を休めてもいい。万全な状態で試合に臨んで欲しい」

響「ふむふむ、で、それをなんで今言うんだ? 準決勝が終わってからでも……」

伊織「バカね、決まってるじゃない」

伊織「この準決勝、体力を温存する必要は無い……ってことでしょう?」

P「そういうことだ」ニッ

P「それじゃあ、始めようか。準決勝、第一試合を」

春香「……ごくり」

千早「がんばってね、春香も……高槻さんも!」

やよい「はいっ! 行ってきます!」


真「愛、プロデューサーの話、ちゃんと聞いた?」

愛「もちろんです! あたしにとって、すごく有利になったみたいですね!」

真「これなら愛も、全力で戦えるんだよね?」

愛「はいっ! 任せてください!!」


愛(やめ方分かんないから、オーラ出したら倒れるまで出しっぱなしなんだよね、あたし)

愛(だから一回戦では、力を……)


愛(セーブしてたよーーーーーー!!!!)



準決勝第一試合




チームE(天海春香・高槻やよい) VS チームG(菊地真・日高愛)

今日の分終わりです
また一試合ずつ書き溜めて投下しようと思います
意見、質問あれば書いといてください
ではまた

結構間空いちゃいましたが続き投下します
ゆっくりやっていきます

チームE 【前衛】春香 【後衛】やよい
チームD 【前衛】愛 【後衛】真
最初のサービス権……真


P「ザ・ベストオブワンセットマッチ! 真、サービスプレイ!」

愛「真さーん! 頑張ってください!!」

やよい「い、いきなり真さんですか」

やよい「雪歩さんとの試合で見せたあのサーブ、すごかったし……うう、打つの大変かなーって」

春香(大丈夫、真も流石にやよいにあのサーブは使ってこない……はず)

真「春香」

春香「?」

真「やよい、守ってあげなよ」

春香「……えっ」


真「はぁぁぁぁぁぁぁあああああああっ!!!!!!」


ゴ オ ッ


春香「いっ、いきなり……!」

やよい「全開ですか~~!?」


真「いくよっ!」ダッ



『まっこまっこりーーーん!!』



ドゴォッ!

春香「うっ……やばい!」

春香(やよいは、私が守る!)

ゴオッ


カッ―――――――


やよい(! 普通のサーブ……)

やよい「春香さん、ありがとうございます!!」


パコォンッ


真(なるほど……無個性のオーラ、こりゃ本物だ)

やよい(この軌道、ベースラインギリギリ! うまく打てたかもっ!)


愛(この位置なら……いける!)グッ

愛「いっけぇぇぇぇえええっ!!!」


ブンッ


やよい「!」

春香(ボールに追い風を送って……!!)


ドゥンッ


P「……アウト!!」

愛「やりました! アウトですっ!!!」

真「ナイス、愛! その調子!」


春香「うーん、やっぱり、一筋縄ではいかないみたい」

やよい「あうう、もうちょっと手前に打ってたら良かったんでしょうか?」

春香「そう……だね。あとサイドラインも意識して……なんだかコートが狭められた気分。やり辛いなぁ」

やよい「あの風を無視できるくらい、ガーッて球を打てたら良いんですけど……」

春香「……ま、悩んでも仕方ない! 切り替えて、次いこ次!」

やよい「はいっ!」


P「15-0」


真「さぁ、次は春香だ!」シュッ


春香(相変わらず、すごいオーラ……)


真「『まっこまっこりーーーん!!』」


ドゴォッ

春香(来る!)

やよい「……!」

やよい(もしかして……)

春香(まともに受けたらまずいだろうし、オーラ広げて普通の打球にして……)

カッ―――――

春香(ッ……やっぱこれ、疲れるなぁ)

春香「たあっ!」

パコォンッ

真「よっと!」パコォンッ

やよい「えいっ!」パコォンッ


パコォンッ
パコォンッ
パコォンッ


真「そこだっ!」

ドゥンッ

春香「う」


P「30-0!」


春香「はぁ、はぁ……」

春香(どうしよう……すごそうな球は私のオーラで普通にしてるのに……普通のテニスにしてるのに……)

春香(真……普通に、私たちよりうまい……!)


やよい「春香さん!」

春香「?」

やよい「……」ヒソヒソ

春香「……!」

真「さ、次行くよ、次!」ゴォッ

やよい「……」

真「『まっこまっこりーーーん』!!!」


ドゴォッ


やよい「いきますっ!!」ダッ

春香「……」


真「……!?」

真「春香がオーラを……使っていない!?」


雪歩「もっもしかしてやよいちゃん、真ちゃんのあのサーブと真っ向勝負するつもり!?」

亜美「いやいや、流石にそれは無理っしょー」

真美「うあうあ~、こんなのやよいっちを見捨てるようなもんだよはるるん~!」


やよい「はぁぁぁぁぁっ!!」ゴォッ


絵理「あっ……あれって、オーラ?」

千早「……さっき私が軽く教えたの。基本だけだけれど」

真美「なら納得」

亜美「ふむふむ、試合前から習得はしてたけど、さっきははるるんの無個性オーラに包まれてたから使えなかったわけですな」

千早(春香がオーラを消したのはこのため? それでもやっぱりまだ高槻さんのオーラは小さすぎる。真の全力サーブを返せるとはとても……)


やよい「えいっ!!!」パコォッ


ドゥンッ


愛「あっ……」



P「30-15!!」

春香「ナイス、やよい!」

やよい「いぇい! やりました!」


千早「えっ……え?」

亜美「ま、まさかまこちんのまこまこりんサーブを返すなんて……千早お姉ちゃん、どーやってやよいっちをあそこまで育て上げたのさ?」

千早「わ、私はオーラの基本を教えただけで……なにがなんだか」

伊織「……!」

伊織「なるほど……そういうことね。真も、ちょっとは考えてるじゃない」

真美「どゆこといおりん」

伊織「つまりね、真は初めっから全力サーブなんて打ってなかったのよ」

真美「へ?」

伊織「まず、これは律子が教えてくれたんだけど、絵理や雪歩に使った真のすごいサーブの仕組みはね」

伊織「インパクトの瞬間に大量のオーラをボールの中心に込めることで、着弾時に小規模な爆発を起こす。それがあの威力に繋がる……って感じなんだけど」

伊織「当然そんなことをすると真も体力をかなり使う。だからあの技は決め手以外には無闇に使えないものだって考えられるわけ」

亜美「ほうほう」

伊織「そんな技を、無効化されると分かっていて連発していたのはどう考えても不自然だったんだけど……そのワケがやっと分かったわ」

伊織「真はあのサーブを使うフリをしていただけだったのよ。春香にオーラを使わせるためにね」

千早「……! 狙いは、春香のスタミナ切れ……ってこと?」

伊織「多分ね。あずさじゃあるまいし、常にオーラを使い続けていれば限界はくる。実際春香、一度倒れてるしね」

伊織「もっとも……その作戦も、やよいが見破ったみたいだけど」

雪歩(スタミナ切れ……本当にそれが狙いなのかなぁ)

律子「……」


春香「やよい、真があのサーブを使ってないってよく分かったね」ヒソヒソ

やよい「えへへ、目には自信があるんです」ヒソヒソ

やよい「あのボールからは、さっきの試合の時みたいなオーラが見えませんでした!」ヒソヒソ


真「くっそー! やよい、ボクの全力サーブを返すなんて、やるじゃないか!」

真「でも、春香はオーラで身を守ることをオススメするよ?なにせボクの全力サーブだからね!」


春香「……え?」

春香(もしかして真、まだ芝居を続ける気なの? いやいやそれは……でも真ならあるいは)

春香(……よし!)

春香(打ってくるのが普通のサーブだって分かってるんなら、わざわざオーラを使う必要もない)

春香(もう倒れるわけにはいかない。オーラは温存しとかないと!)グッ

真「それっ!!」ゴォッ

真「『まっこまっこりーーーん』!!!」

ドゴォォォォォォォッ!!!!

春香「よーし……」

春香(すごそうに見えるけど、普通のサーブ……なんだよね)

やよい「……!!」


やよい「春香さん!オーラを!!」


春香「えっ……」

やよい「今度は……ほんとのやつです!!」

真「……ふふ」ニヤッ

真「油断したね、春香」

春香(しまった、間に合わ―――――)


ドカァァァァァァァァァァァアアン!!!!!!



やよい「は……」


やよい「はるかさぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」


律子「……全力のサーブを、そうじゃないと思わせることで無個性化させずに通す」

律子「やっぱり、これが狙いか……スタミナ切れ狙いなんて、真らしくないわよね」

律子(結局はパワーで勝ちにくる。はぁ……圧倒的なパワーに、私のデータは通用するのかなぁ……)

愛「真さん、今の……」

真「ボールにオーラを込めなくても、普通にオーラを解放してるだけで十分疲れるんだ。スタミナ切れ狙いなんてつまらない作戦のために、技を使うフリなんて出来ないよ」

真「全部、この一発を決めるため。タイミング、ばっちりだったみたいだね」

愛「すごいです真さん!」

真「本気で勝ちにいくよ!! 春香!!」

ガシャアッ

千早「! 何か飛んで……これって」

千早「春香の……ラケット?」

千早(まさか弾き飛ばされて、ここまで……?)



シュウウウウウウウウ


やよい(砂煙が、晴れて……!)

春香「……」

やよい「春香さん! だ、大丈夫ですか!?」

春香「う……ん……」プルプル

やよい「……!」

やよい(腕が……ぷるぷるしてれぅ……)


真「うん、狙い通りだ」

真「流石に体は狙わないよ。でも、ラケットで受けるだけでも、十分すぎるほど効果は出てるだろ?」

真「今の春香はもう、腕が痺れてラケットをまともに握ることも出来ないだろうね」

真「そうなったら君のオーラによる『普通のテニス』でも―――勝ち目はないと思うよ」

春香「……」プルプル

春香(オーラ……ちょっとだけしか間に合わなかった……)プルプル

P「……40-15」

千早「春香、ラケット」スッ

春香「……うん」プルプル

千早(春香……)


真「さて……続きだ」

スパコォンッ

パコォンッ
パコォンッ

春香「あっ」ポロッ

ドゥンッ


春香(こんな腕じゃ……まともにラケットを持つこともできない……!)


P「―――ゲーム!チームG! 1-0!!」

やよい「春香さん……」

やよい「……」

やよい(こうなったら、私がサーブで全部決めて……)

やよい(春香さんの腕、たーっぷり休ませないと!!)

P「次のサーブは……やよいか」

やよい「……いきます!」ゴォッ

P(お、何かを決意したからかさっきよりオーラ量が増えた。でも……うーん)

やよい(サーブは得意です! さらにオーラもこめて……)

やよい「うっうー!! 『はい、ターッチ』!!!」


ドゴォンッ


真「!」

真「これは……」グググ

真「強烈だなぁ!」パコォンッ

やよい「!」


ポスッ


P「ネット!」

真「ありゃ」

愛「ドンマイです、真さん!」

真「うん、次は完璧に返す!」


やよい(危なかった……オーラを使わずに、私の全力のサーブをあそこまで……やっぱり真さん、すごいです)


P「15-0!」

やよい「まだまだいきます! うっうー!!『はい、ターッチ』!!!」

ドゴォンッ


千早(オーラの移動、うまく出来てるわね。高槻さん飲み込みが早いわ。かわいいし)

千早(でも……なにかしら、この感じ。もやもやするような……)


愛「カーブしよーーーーー!!!!!」ブンッ


ブオッ


愛(……! 曲げきれない!)


ドゥンッ


P「イン! 30-0!」

春香「いい調子だよ、やよい!」

やよい「はいっ!」


真「うーん、やっぱオーラサーブに対してオーラ無しじゃキツイのかなぁ。やよいのサーブ、元々結構パワフルだったからなぁ」

愛「真さんすみません、あたし……やっぱりオーラを使った方が?」

真「いいや、まだ早い。大丈夫だよ愛。無理にフォルトを狙わずに、返せばいいんだ」

真「返すだけなら、キミほどのパワーがあればどうとでもなるはず。そして返しさえすれば……春香は打てない」

愛「? ……はい!」



春香「……」ビリビリ

春香(やよいのサーブだけじゃ、多分勝てないよね。でも……私の腕……)

やよい「『はい、ターッチ』!!」


ドゴォンッ


真「さて……」スッ

真(一回打ったし、慣れた!)

真「そらっ!!」

パコォンッ


雪歩「返した!」


やよい「! しまった……春香さん!」


春香(きた……!)



ドゥンッ


春香「……ッ」


P「―――30-15!」


やよい(春香さん……やっぱり)

春香(ダメだ、動かない……こんな腕で、どうしろと……)


愛「あっ、そっか!!分かったよーーー!!!!」

愛「春香さんは腕がしびれて返せないから、春香さんの方に返すだけで点を取れるってことですね! 真さん!!」

真「う、うん。さっき言ったけどね」

真「雪歩との試合で気付いたんだ。何よりも失礼なのは、全力を出さないこと。相手を舐めてかかることなんだ、って」

真「春香は腕が痺れていて打てないだろうからやよいの方に打ってあげよう……なんて、真剣に戦ってる相手に対する侮辱だよ」

真「だから今のボクは本気だよ。一番勝てると思う方法で、真剣に勝ちにいく!!」

真「それで良いよね!? 春香!! やよい!!」


やよい(うう、出来たらちょっとくらい手加減してほしいかもです……)

春香(雪歩、余計なことを気付かせちゃって……)

やよい(オーラを込めて力いっぱい打ったサーブが、オーラを纏ってもない真さんに返されて……ちょっと自信無くしちゃったかも)

やよい(でも、諦めません!!)

やよい「愛ちゃん行くよっ!! 『はい、ターッチ』!!」

ドゴォッ


愛「返すだけ、返すだけなら……いけるっ!」

愛「えーーーーーーーーーい!!!!!」


パコァッ


愛「ッ……返したよーーー!!!」


やよい「そんなっ!」

春香「うっ」

春香(また私のとこに……)


ドゥンッ


愛「やったー!!!!」


P「30-30!」


やよい(あうう、やっぱり春香さんが打てないままだと、ちょっとだめかも~)

やよい(何かできることは……)

やよい「! そうだ!」

春香「?」

やよい「春香さんっ!」スッ

春香「えっ」

春香(その構え……なんで今)

春香(ハイタッチを……?)

やよい「はい、たーっち!」

春香「え、あ、うん」プルプル

パンッ

春香「うぐぅっ!!!」ズキィッ

やよい「いえいっ!」

やよい「……治りましたか!?」

春香「……へ?」

やよい「えへへ、思い出したんです。足が痺れた時、思いっきり地面をダーンって踏んでみたら逆に治ったりすることありますよね?」

やよい「だから春香さんの腕も、それで治るかなーって」

春香「や……やよい、あのね……ん?」

やよい「春香さん、さっきからずっと辛そうで……いてもたってもいられなくって!」

やよい「でも私にできるの、これくらいしかなくって……その分、治りますようにって願いとオーラ、いっぱい込めたんです」

春香「……うん」グッ

やよい「私だけじゃやっぱり勝てません。春香さんの力が必要だから……だから……」

やよい「お願いします、春香さん……元気になってください……」

春香「やよい……」

やよい「……って、ちょっと勝手だったかな……ごめんなさい春香さん、でもっ、私……」グスッ

春香「ありがとう」

春香「―――届いたよ、ちゃんと」

やよい「春香さんっ」パァァ

やよい(よかった、治っちゃいました!)

やよい「えへへ、もうこっちのもんですよ! 『はい、ターッチ』!!」

ドゴォッ

真「ハイタッチしてたみたいだけど、気合でも入れてたのかな? ま、何をしようと、春香の腕の痺れはそんなに早く治るものじゃない」

真「強がっても、春香には打てっこないよ!!」

パコォンッ

やよい「うっ、普通に打たれました」

真「もうやよいのサーブにも慣れた。はっきり言っちゃうけど、やよい……」

真「キミのオーラは、優しすぎる」

やよい「!」

真「そんなオーラ、込めたところで大して変わんないよ。元々そこそこ強いサーブだったから誤魔化せてたけど……やよいのオーラは、戦いには向いてない」

やよい「うう……」

やよい(悔しいけど、言い返せないです……)

真「さて、狙い通り春香の方に打てた。これでまた一点……」


パコォンッ


ドゥンッ


真&愛「!!?」


春香「……うん」


春香「打てた!」

P「フューゥ……40-30!」

真「そんな……ボクのあのサーブをまともに受けて、こんなに早く復活するなんて」

愛「しかもなんだか、今までより打球のキレも良くなってるよーな……」

春香「やよい、次いこう。まだまだ、あの強いサーブいけるよね?」

やよい「は、はい!!」

やよい(やった! やっぱり春香さん、腕のビリビリ治ったんだ!)ニコッ

春香「……」

やよい「うっうーー!!あと一本ですー!!」

やよい「やる気いっぱいの~~~~っ!! 『はい、ターッチ!!』」


ドゴォッ


真「! ここにきて威力が上がって……愛、返すんだ! とにかく、返せば……」

愛「はいっ!!」ブンッ

愛「ッ……」グググ


パコッ


愛「返したよーーーー!!!」


真(ちょっと弱い返球になったけど……春香のさっきのがマグレなら……)

真(……いや、何考えてるんだ)


タタタッ


春香「チャンスボール、いただきっ!!」


パコォンッ


真「ぐっ……!」

真(マグレなわけ、ないだろ……!!)


P「インッ!!」


P「ゲーム!チームE! 1-1!」

やよい「一ゲーム、取りましたー!!」スッ

春香「いぇい!!」パンッ

真「どうなってるの? 春香、なんで腕の痺れ、治って……」

春香「ふふ、やよいが治してくれたんだ」

やよい「そうなんです! 痺れてるときは、あえてバーンってしょうげきをあたえることによってかがく的に治っちゃうんですよ!」ドヤァ

真「そ、そうだったのか……」ゴクリ

春香「ううん、違うよ。私の腕を治したのは……」

春香「やよい、あなたの『オーラ』なんだよ?」

やよい「……へ?」

真「……! はぁー、そういうわけ」

真「やけに優しいオーラだとは思ってたけど、そういう効果があったなんてね」

やよい「どっ、どういうことですか?」

春香「やよい、あなたのオーラの真骨頂は、パートナーに……対象に力を与えることだったの」

春香「せっかく教えてくれた千早ちゃんには悪いけど、単純に打球の威力を上げるための使い方には向いてないみたい。癒して、活気づける。それがやよいの『応援』のオーラ」

春香「そのオーラのおかげで私の腕は治ったし、それどころかより強くなれたの」

春香「やよい、本当にありがとうっ!」ニコッ

やよい「……そ」

やよい「そんな力が……私に……」

やよい「……えへへ」

やよい(それって、すっごく嬉しいかもっ!)

春香「さぁ、愛ちゃん! 次はあなたのサーブだよ!」

春香「やよいのお陰で体力まで回復できたみたい。私もどんどんオーラ使ってくからね!!」

愛「……真さん」

真「うん、ボクも多分同じことを考えてたよ」

真「流れはあっちにある。こっちももう体力なんて考えずに、一気に二ゲーム取りに行った方が良さそうだ」

真「だから……出番だよ、愛。君の本気を見せてほしい」

真「一度使えば出しっ放しなんだよね? 最短で二ゲーム、キツイかもしれないけど……いけそう?」

愛「えへへ」ニッ

愛「大丈夫ですっ!!!!!!!」



  ゴ  ワ  ッ

春香「なっ!?」

やよい「はわっ!!」

春香「こっ、こここれ愛ちゃんのオーラ!?」

やよい「あうう、凄すぎます~」

春香(まるで化け物だよ……次のサーブ、やよい大丈夫かなぁ)

春香「やよい、私が愛ちゃんのサーブを『無個性』にするからね!」

やよい「はい! ありがとうございます!」


真「まったく、なんてオーラ量だよ。これ、ひょっとするとボクより……」

真「って、あれ?」


愛「……」シュウウウウ


真「愛……?」


愛「…………」

愛「ははっ」


シュッ



やよい「! くる……!」



愛「っはぁ!!」

ゴオッ



ブォォォォオオオオオオオンッ


春香「! なんて荒々しい球……」

春香(『無個性のオーラ』!)


カッ――――――


ブォォォッ


春香「……ッ! そんなっ」

春香(個性を……消しきれない!!)


やよい「えええええいっ!!!!」ガッ

やよい「んむっ、んむむむむ……ッ」グググ


やよい「ああっ!!」


バシュィィイン

P「15-0!」

やよい「あうう、ラケット弾かれちゃいました……」

春香「ごめんやよい……無個性に、出来なかった……」


真「春香のオーラで消せる個性、限界あるのか……」

真「いや、今はそれより」チラッ

愛「……」ゴォォォォォォ

真(まずいな、オーラに飲まれて意識を乗っ取られてる。莫大なオーラに、愛の精神が、体が、負けちゃってるんだ)

真「愛、落ち着いて……」

愛「ひゃはぁッ!!!」シュッ


ブォォォォオォオオオオオン!!!!!


やよい「! 春香さん、気を付けて……」

春香「うん! 今度こそ……」スッ


カッ―――――


ド ゥ ワ ッ


春香(! やっぱり、消し切れな……!!)


ギュルルルルル


バッ


春香(ちょっ……わたっ、私の方にむか)


ドゴォッ!!!


春香「ッう……」

春香「げふっ」


愛「ひゃっはあああ!!!!」グッ

やよい「春香さん!!」


真「愛! なんて乱暴なプレイをするんだ!!」

愛「あははははっ!!!!」

真(ダメだ、聞こえてない……!)

やよい「春香さん……大丈夫ですか?」シュウウウウ

春香「ん……んぅ、ありがと、やよい」

春香「やよいのオーラでなんとか回復できたみたい」

やよい「あの愛ちゃん、おかしいです! プロデューサー、あれって、良いんですか?」

P「アイドルの腹に思いっ切りボールぶつけるのは感心しないが、ルール的には問題ないな」

やよい「あうう……」


伊織「テニスって、なんなのよ……!」

律子「多分こんな感じではなかったとは思うわ」


春香(……性格が変わっちゃったことより何より、今の愛ちゃんは強い)

春香(私のオーラでも無に出来ないほどの力強い個性……あんなの、どうすればいいの?)

春香(無個性になってくれない強い相手に、無個性が勝つ方法……そんなの、あるわけがないよ)

春香(勝ちたい。勝ってプロデューサーさんとデートしたい。なのに勝てない。それは私に……)


春香(個性が……無いから……)


春香(……あはは……やっぱり、欲しいなぁ……個性)

春香(あれくらい強くなれたら……きっと、もっと楽しいんだろうなあ……テニス)

春香(なんて、ワガママだよね。無個性なりに戦うって決めたのに、勝手なこと……)

春香(でも……)




――――――個性が欲しいか?




春香「!?」


春香「だ……誰!?」

やよい「? どうしたんですか春香さん」

春香(あ、れ……私以外には、聞こえてない?)


――――――個性が欲しいかと聞いている


春香「えっ、あっ、えと……」


愛「っへぁああああっははっ!!!」

ブォォォォオォオオオオオン!!!!


やよい「!!」

やよい「わわっ」サッ


ドゥンッ


P「イン!」


春香「! やよい!!」

やよい「ご、ごめんなさい~、避けちゃいました」

春香「う、うん……」

春香(やよいの動体視力がすごいからなんとか避けられたけど……もし当たってたら、今の……)

春香(危なかっ……た……)


――――――個性が欲しいだろう


春香「……」

春香(今のままの私じゃ……やよいを守れない)

春香(はは……考えるまでも無いじゃない)

春香(私は…………)


春香「…………欲しいよ」

やよい「? 春香さん……?」


春香「愛ちゃんや真に勝てるくらい強い個性……やよいを守れるくらい強い個性……」

春香「欲しくて欲しくて、たまらない。形振りなんて構ってられない。誰だかしらないけど……お願い」


春香「私にっ! 個性をっ!!!!」


やよい(だ……誰と話してるんでしょう?)アワアワ


――――――承知した


――――――吸収した個性エネルギーを今、解放する!!!



春香「……!!!」



ゴオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!

千早「なっ……何、あの春香のオーラ!」

美希「あはっ、春香すっごくキラキラしてるの」

P(あいつまさか今、オーラの声を……?)

P「っと、40-0!」



愛「あははははははははっ!!!!!!」ゴォッ

ブォォォォオォオオオオオン!!!!!!!!


やよい「! 春香さん、来ます!」

春香「……うん!」スッ

春香(『力』の個性―――ラケットを振り抜く力を、腕に!!)

春香「はぁぁぁぁっ!!!!」


バゴォォンッ!!!


ドゥンッ


春香「……よしっ!」グッ


真「なっ……!!」

愛「ほーっ? ……あはっ」

真(まさかアレを返すなんて……)

真「すごいよ! 春香!!」

やよい「うっうー!! 春香さん、すごいです!」

春香「えへへ……ありがと」

春香(私のオーラ……個性を消してたんじゃなくて、吸収してたんだ……)

春香(皆の個性がエネルギーになって……私の中で今、弾けてる)

春香(すごいよこれ……どんどんどんどん、力が溢れてくる……!!)

春香「愛ちゃん! 真!! まだまだこのゲーム、これからだよ!!」

千早「すごい……あれが本当にあの春香なの……?」

真「本当にやるなぁ、春香。でも……」


P「……アウト! ゲーム、チームG! 2-1!」


真「このゲームは、もう終わってるけどね」

春香「のヮの」

千早(春香だった)

真(でも、今のゲームはこっちが取ったとはいえ……)チラッ

愛「っははははははァー!!」

春香「サーブいくよ!」ゴォォォォ

真(オーラに人格を乗っ取られながらも莫大なパワーを持つ愛。その愛のサーブを返すほどの強烈な個性を持つ春香)

真(参るねまったく。試合がめちゃくちゃだよ)

真(ちょっとこのままじゃ、まずいかもなぁ)


春香(個性エネルギーを、力に……)ムキムキ

春香「はぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!」


ドゴォォォォン!!!!


律子「! なんてすごいパワー……こっちにまで伝わってくるわ」ビリビリ

真(……耐えてくれよボクの体)

真(こうなったらもう、アレをやるしかない!!)

真「だぁぁぁぁぁ!!!!!!」

真(菊地流十門遁甲、『第九夜門』―――開!)


ゴ  ウ  ッ


雪歩「! 黒いオーラ……?」

真「だーーんっ!!」


バゴォンッ!!!

春香「! 返された!」

やよい「はわっ! こっちにきます~!!」

春香「……任せて!」

春香(やよいは私が守る!!)

春香(『速度』の個性で急いで近付き……)ダッ

やよい「! 春香さん!!」

春香(そのエネルギーを『力』の個性に変えて)キュッ

春香(打つ!!)

春香「えーーい!!!」

ゴッ

春香「むぐ、むぐぐ……」グググ

春香(重い……!!)


真「無駄だよ、春香。全身の毛穴を開くことで一時的にものすごい力を発揮している今のボクは」

真「―――キミのオーラを凌駕する」


春香(や、ばい、よぅ……ラケット、弾かれ……)グググ

ガシッ

春香「!」

やよい「私も一緒ですっ! 返しましょう!!」ギュッ

春香「やよい……」グググ

春香(すごい……やよいのオーラが、私を強くしてくれる……!)

春香「やあああああああああああっ!!!!!」


バゴォォォオオオオン!!!!!


真「なっ!?」


伊織「返した!」

絵理「ボール……愛ちゃんの方に!」

愛「あっはははははははははははは!!!!!」ダッ

真「ぐっ……愛! 打って!!」

愛「はぁあっ!!!!」


ドギュンッ!!!!



絵理「返した!」

あずさ「なんだか愛ちゃん、サーブの時より強くなってるわね~」


春香「アレも返されるなんて……」

春香「って、私の顔を狙って!?」

愛「あはははははははは!!!!!」

真(……破壊を楽しんじゃってるよ、あの子)

真(愛……本当の君は、これで満足なのかな?)


春香(やばっ……反応、遅れ……)


ガッ


春香「……!!」

やよい「うっ、ぐっ……」グググ

春香「やよい!」


伊織「やよいが反応した!」

律子「流石の動体視力ね。けど……」


やよい(パワーが……足りません~……!!)グググ


真(やよいのパワーじゃ、流石にこれは返せないはず……)


春香(……個性……吸収出来るんなら)

春香(その逆も……!!)

春香「『力』の個性! 受け取って!」バッ


やよい「はわっ! 急に力が……!!」

やよい「ふんぬっ!!」


バゴォォンッ!!!


愛「!」

真「今のも、返すか……!!」

真(春香もやよいも、オーラ量じゃボクたちに負けてるはずなのに……なんで……)

やよい「はぁ、はぁ……私たち、負けません!!」

春香「個人の力じゃ、真にも愛ちゃんにも勝てないかもしれない。けど……」

春香「二人なら! 勝てる!!」

真「!!」

真(一人では出来ないこと……仲間となら出来ること……)

真「ふふっ」


真(そうか、簡単なことだった)

真(一人と一人で戦ってるボク達と、二人で戦ってるキミ達……どちらが良いかなんて、明らかだ)

真(―――燃えてきた!)


真「最高だよ! 二人とも!!」


ドゴォォオオン!

バギャアアアアン!!

ドッカァァァァァアアン!!!!


雪歩「すごい……なんてパワフルなラリーなの?」

貴音「両者とも一歩も引かぬ、力と力による強力な打ち合い……これが決勝戦だとしてもおかしくないほどです」

亜美「まだはるるんのサービスゲーム一発目っしょ!? こんなの一ゲームもたないんじゃ……」

千早「……もたなくても、良いんじゃ無いかしら」

千早「それぞれがその一球で終わらせるつもりで、一球一球全力で打っている」

千早「だからこそ、こんなにすごい打ち合いになっているのよ」

真美「ゲームカウント2-1なんて、もう飾りっぽいね」

響「最後に立ってた方が勝者。分かりやすくて、自分好きだぞ!」

美希「……すごいの」ボソッ

美希「こんな試合を、いつかミキも……!」


真「はぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!!」


春香「はああああああああああああああああああああ!!!!!」



バゴォォンッ!!!


ボゴォォォォォンッ!!!

愛(ん……)

愛(あたし、何して……体が勝手に……)


やよい「うっうーー!!!!!」

愛「あっははっ!!!」


愛(そっか、オーラさんに……どいてろって、言われて……それで……)


真「うりゃりゃーー!!!!」

やよい「お願いしますっ!」

春香「うん!!!」


愛(ああ……楽しそー……汗だくで、全力で……)


真「くっそう……何度本気で終わらせにいっても、終わらないや!!」

真「なんて楽しいんだ!!」


愛(みんな、すっごく強い……あたしのオーラさんも、同じくらい……)

愛(もう、あたしの入れる世界じゃ、ないのかも……)

愛(……やっぱりあのオーラ、あたしじゃなくて……日高のオーラ、ってことなのかなぁ)

愛(みんなが求めているのは、ママの血で……あたしなんかじゃ……)


真「―――愛!!!」

愛「!」


真「おいでよ!! テニス、楽しいよ!!!」

春香「愛ちゃん!」

やよい「みーんなで、やりましょう!!」


真「自分のオーラなんかに負けるな! 愛らしく、元気と勢いで抑え込んじゃえ!!」


愛(みなさん……)

愛(……ふふっ)

愛(ごめんなさいオーラさん、あたし……テニスしたい)

愛(だって、呼んでくれてるんだもん……すっごい日高のオーラじゃなくって、あんまりすごくないあたしの方を……だからあたし)

愛(日高愛として!! このステージに立ちたい!!)


愛「だあああああああああああーーー!!!!!!!!」


ブアッカォーーーーーン!!!!!


真「! 愛!!」

春香「今までで一番、良いストローク……やよい!」

やよい「はいっ!!」


春香&やよい「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」ダッ


真「暴れて分散していたオーラを抑え込むことで、無駄のない力の使い方が出来ている……」

真(自分を乗り越えたんだね、愛!)



愛「いっけぇぇえええええええええっ!!!!!!」


春香「やあっ!!!!」


ブォンッ


真(! オーラで作った爪で、愛ちゃんのショットの個性を大幅に削り取った!!)

真「こんなことも出来るのか……!!」


やよい(そろそろ、溜まってきたかなーって!!)

やよい「いきますっ!!」ダッ

やよい「うっ……うーーーーー!!!!!!!」ブンッ


カッ―――


真「! これは……」

P(……俺でなきゃ見逃してたが、やよいはこのラリー中で最初に打った時、ボールの内部にオーラを潜ませていた)

P(最初は小さい種のようだが、傷付く度に自己を応援、回復、活性化し、より強くなってゆくそのオーラは……強いラリーが続けば続くほど輝きを増す)

P(そして最後にやよい自身のオーラにより起爆させれば……最高に力強い、キラキラでメキメキの打球が完成する!)

P「……こいつはすごいぞ」


やよい「『キラメキラリー』、です!!」



ドキューーーーーーーーーーーーン!!!!!



真「なんてパワーだ……」




真「いいね!!」





グルングルングルングルングルングルングルングルン



雪歩「! あの縦回転は……」

雪歩(あの黒いオーラを纏った状態であんな無茶な技を使って、大丈夫なの!?)


愛「お手伝いします!!!」ブンッ



ブオオオオオオオオウッ!!!!


愛「『愛ゾーン』!!!」


春香「! 向かい風でやよいの打球の球威を落とすと同時に……」


真(ボクにとっては追い風になる! ありがとう、愛!!)


真「でりゃああああああ!!!!」




真「『自転車』ァ!!!!」

バチバチバチバチッ


キュイイイイイイイイイイイイン




チュドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!!!!






律子「ぐっ……爆風で、前が見えない……ボールは!?」






ポトッ



律子「……は」





律子「半分に割れて、両方のコートに……この場合どっちの」

亜美「りっちゃんりっちゃん、どっちの得点とか、関係ないっぽいよ?」

律子「え? ……あ」


真「……」

愛「……」

やよい「……」

春香「……」



律子「四人とも……倒れてる……!?」



P(危ない危ない、俺でなきゃ審判台ごと吹き飛ばされてたよ)

P「っと、この場合どうしようか」

P「せめて誰か一人でも立ってたら、そっちの勝ちで良いんだが……みんな燃え尽きちまったか?」


絵理「四人の体力データ、解析すると……」

絵理「立ち上がる体力なんて、誰にも残ってない?」

絵理(本当に全力同士の戦いだったんだ……やっぱり芸能界って、怖い)


春香(ダメ……もう、立てない……)

やよい(足に力、入らないです……)

真「……」チラッ


真(愛……意識を失ってる……)

真(っはは……こんなに楽しそうな顔で気絶する人、そうそういないよ……)

P「よし、じゃあ今から最初に立ちあがれた人のチームの勝利とする!」

真(……)

真(さて……)


ムクッ


P「!」


亜美「誰か、立ち上がろうとしてる……」

真美「あれって……」


雪歩「……」

雪歩「真……ちゃん……」


真(……)

真(ふーっ……ここまでが限界、かな)

真(でも、勝者を見届けるには……十分だ)


雪歩(うつ伏せで肘をついて、頑張って顔を上げてる……真ちゃん……)

雪歩(お疲れ様……本当に、かっこよかったよ……!)




千早「春香!!」




春香「はぁ……はぁ……」スクッ



千早「立った! 春香が立った!!」キャッキャ

伊織「落ち着きなさいって」

あずさ(なんだか、懐かしいネタね~)

真(見てたよ……やよいが最後の力を振り絞って、オーラで春香を回復させたんだね)

真(最終的にはやっぱりチームとしての力で……団結の力で、勝っちゃうんだもんなぁ……へへっ、敵わないや)


真「……春香」


春香「……?」フラフラ


真「楽しい試合を……」




真「ありが……とう…………」クラッ



ガクッ


春香「……はぁ、はぁ…………」


春香「こちらこそだよ……真…………」




P「勝者!! チームE!!!」




亜美「ブラボー……! ブラボゥオゥオゥ……!!」パチパチパチパチ

真美「良い試合だった……! 掛け値無しに……!!」パチパチパチパチ




涼「……」ポカーン

涼「なんだこれ……」

律子「あ、涼起きてたのね」

涼「律子姉ちゃん……僕、ほんとに起きてるのかな? テニスの試合でこんな結末って……なんか変な夢を見てる気分なんだけど」

律子「そうね……きっと夢よ。もしもあなたが気絶したのが私のせいだと思ってるならそれも夢」

涼「そうなんだ……あはは……」

響「~~~~~~~~ッ!!! 我慢できないっ!」バッ

響「プロデューサー!!」

P「! おう、響」

響「自分、今の試合見てうずうずしてきたぞ! 早く次の試合しよう! ねっ!」

P「ん、ああ、そうだな」

真美「んもーひびきん、急ぎすぎっしょ→」

真美「そのセリフ、真美の方が言いたかったのにさ~!」

P(二人とも、テンションは最高のようだな)

律子「……私みたいなプレイスタイルが本領を発揮するのは、二戦目以降」

律子「何故なら一回戦で見てる分、試合前からある程度のデータは揃っているから。その情報量で体力の差をどれだけ補えるかがポイントね」

伊織「あの二人はスピードタイプよね。結局、対策は大丈夫なの?」

律子「ええ、もちろん」

伊織「そ。なら……信じるわ」

伊織(……やよい)

伊織(アンタがここまで強くなるなんて、正直思ってなかった)

伊織(だから私がこんなことを思うようになるなんて、考えてもなかった)

伊織(親友として……アンタと本気で戦いたいなんて、ね)


響「お、決勝でやよいと戦いたいなんて顔してるな、伊織」

伊織「! なっ……別にそんなっ」

響「悪いけど、やよいとやるのは自分だぞ。自分だってやよい好きだし」

響「この試合に負ける気もしないし、ね!」

律子(……響チームと千早チームの試合には、一つ大きな違和感があった)

真美「よーっし、ひびきん、本気でいこーね!」

響「オッケー!! 自分たちなら、この試合も、次の試合も……」

律子(身体能力がトップクラスに高いはずの響が……どう考えても『使える』側の人間である響が……)


律子(オーラを……使っていなかった)


響「なんくるないさーー!!」




準決勝第二試合




チームD(我那覇響・双海真美) VS チームC(水瀬伊織・秋月律子)

今日はここまでです
なんか一試合がどんどん長くなってる気がする
最初に自分の中で決めたルールは続けていきたいと思ってましたが、「一試合ずつ書き溜めて投下」って形式が結構キツくなってきたので次からはもっと細かく区切るかもしれんです

一試合分なんとか溜まったので投下します

チームD 響・真美
チームC 伊織・律子
最初のサービス権……伊織

P「ザ・ベストオブワンセットマッチ!伊織、サービスプレイ!」


律子(……違和感といえば、このテニス大会)

律子(硬式テニスなのに前衛後衛を固定してやってたような気がするけど……)

律子(完全に気のせいね)


伊織「さて……いくわよ、真美!!」

真美「んっふっふ~、どんな球でも打ち返してくれよう!」

伊織「やれるもんなら……」ゴォッ

真美(! オーラだ)

伊織「やってみなさいっ!!」


スパコォンッ


真美(いおりんのあのオーラ、たしかオーラを奪っちゃうんだよね)

真美(でもでも、人のオーラを吸収しなければ威力そのものはそこまでじゃないっぽいし、オーラ使わずに普通に打てばいっか!)

真美「そうれ!」

パコォンッ!!

真美「どーだっ! いおりんのサーブなんて、おみそしるにタコスだかんね!」

律子「それを言うなら恐るるに足らず、でしょ」

伊織(これでいい。オーラを使わせない抑止力として機能してくれれば、それで十分)

伊織(……今は、ね)

伊織「いったわよ、律子!」

律子「ええ、任せて」

律子(データは既にある程度揃ってる。計算も……問題ない)

律子「ここっ!!」パコォンッ


響「!」

響(うまいとこついてくるなぁ。でも、自分なら……)クルッ

律子(少し下がって打ちにくる確率、100%)

響「追いつけるぞ!」タッ


パコォンッ

律子「―――こっちに打つ確率、96%」サッ

響(! 読んでたのか!?)



律子(真美と響は二人ともネットからある程度離れている。ここまでは計算通り)

律子(普通のドロップショットじゃ決められないだろうけど……)


律子「はぁ!!」

パコォンッ

律子(いけっ!)



ガッ

ポトッ


真美「!?」

響「コードボール!」

真美「追い付けない……っ!」

律子(オーラ解放状態の絵理ほどじゃないけど、私もコントロールには自信がある。コードボール狙い、成功確率は7割超ってとこね)

律子(響は反復横とびみたいなステップにより分身を作れるほど「横」の動きに強い。卓球のそれに近いからかしら)

律子(でも、横の動きと縦の動きは全然違う。だったらこれには追いつけないでしょ)

響「……うぅ」


響「なんか、勘違いされてるみたいだなぁ……」


ギュインッ


律子「!!」

律子(いつの間に……前に……!?)



貴音「響の常人のそれを遥かに超えた横移動術……あれを見れば、このように考えるのが普通なのかもしれません」

貴音「『響は横の動きに強い。しかし縦の動きはそうとは限らないのではないか』……と」

貴音「何の根拠も無く、そうであればと希望を込め、縋るようにそう信じるのです」

貴音「……甘いですよ、律子嬢。その甘さ、ちょこらぁめんに匹敵します」


律子(あり得ない……コードボールに、追いついて……)



響「自分、いつも行ってるのに。自分は完璧なんだって」キュッ

響「完璧ってことは、弱点なんてないってことなのに」スッ


響「なんで信じてくれないのー!? もー!!」


パコォンッ



貴音「縦の移動術『縮地法』と、横の移動術『なんくるステップ』……これにより響は、コートの何処にでも現れる」

貴音「それをサポートするのは、響以上の反応速度、オーラによる圧倒的な機動力を持つ双海真美」

貴音「恐らく彼女たちは、今大会において最も隙の無いチームと言えるでしょう」



ドゥンッ


P「0-15!」

真美「ひびきんすっごー!! どーやったの今の!?」

響「っへへーん、すごいだろ? 今のはここをこうこうこうしてギュイーンて……」

真美「へぇー、わかんない!」

律子「……」

伊織「律子……」

律子「問題ないわ。データは常に更新されるもの。これからよ、これから」

律子「大丈夫、伊織のオーラを計算に入れればまだ十分に勝ちの目はあるし……うん、大丈夫」

伊織「……私、アンタを信じてるわ」

律子「そう、ありがと」

伊織「アンタは、どうなの?」

律子「貴女のことなら、信じてるに決まってるじゃない。オーラを奪う伊織のオーラがあれば、相手も下手にオーラなんて使えないし、時に決定打にも……」

伊織「そうじゃなくって……」

響「よしこい、伊織! バシーンって返してやるぞ!」

律子「ほら、早くサーブ打たないと」

伊織「……そうね」

伊織「響! 勝つのは私たちだからね!!」


スパコォンッ

響「いっくぞー!!! 『ヘビ香ショット』!!」

パコォンッ


ギュインッ

伊織「! バギーホイップショット!?」

伊織(これって、どう……)

律子「左よ!」

伊織「!」


パコォンッ


響「へーえ、返したか!」

伊織(律子の指示、頼りになるわ)

律子(響の動きから、どんな球がくるのかある程度の予測は出来るようになってきた)

律子(でも……)


響「よっと」ザッ

伊織(当たり前のように、ベストポジションに……!)

響「『ブタ太ストレート』!!」


ドゥンッ


P「30-0!」

律子(やっぱり隙が無さすぎる。このままじゃどうしても抜けないわね)

律子(まだ足りない……データを、もっと……)


パコォンッ
パコォンッ

真美「おらおらおらぁーー!」

響「よっ、ほいっと!」

伊織「ぐっ……」

律子「……」

ドゥンッ

―――
――





P「……ゲーム!チームD!1-0!!」


律子(ふう、結局ストレート、か)

律子(でも……収穫はあった)クイッ

真美「じゃ、次は真美のサーブだねっ!」

響「いっけー真美! この調子でストレートで勝っちゃうぞー!」

真美「いっくよー!」

真美「『YOU往MY進アターック』!」


スパコォンッ


律子(亜美のサーブ。やっぱり真美も使えたか……でも!)

律子「そのサーブなら……」スッ

律子「分析済みよっ!!」

パコォンッ


響「いったぞ真美!」

真美「おっけ……おおっ?」

真美「……りゃあっ!」


パコォンッ


パスッ


P「ネット! 0-15!」

真美「あっ」

響「ありゃっ」

真美「うあうあ~、ごめんねひびきん、なんか打ちにくくって!」

響「いいっていいって、どんまいさー!」


伊織「……データは揃った、ってわけ?」

律子「ええ、まあね」

律子「私にとって、真美はもう―――スケスケよ」

伊織「真美のスピード、反応速度は確かに一級品だけど……人間である以上、どのコースの球ももれなく返せるなんてことがあるわけがない」

伊織「体の重心、動きの癖……それらによって生まれる隙、つまり『反応しにくいポイント』が必ず存在する」

伊織「真美のそれを見つけてそこを狙った……そうよね? 律子」

律子「ええ、その通りよ」

律子「そこを見つけるには真美に関する膨大なデータ量が必要になるけど、真美に関しては比較的データを集めやすかったわ」

律子「だって真美は―――ほとんど、亜美と同じだから」

伊織「同じ? 顔は確かに見分けつかない時もあるけど……」

律子「それだけじゃなく、体の構造、体型、運動能力なんかの基本スペックはほぼ一致してるわ。一緒に同じような練習をしてきたんでしょうね、プレイスタイルもかなり似ている」

律子「だからこそ、さっきの試合で取れた亜美のデータを、真美の分析に役立たせることができる」

伊織「ふーん、実質他の約二倍のデータ量をいただけたってわけね」

律子「もちろん、違いはいくつもある。基本的に癖は左右逆だったりするしね。けどその辺の若干のデータの不具合も、さっきのラリーで調節済み」

律子「だから今の私にはわかるの。どこに打てば真美は打てないのか……本人以上に理解してる」

伊織「……へぇ」


真美「サーブ、打っていいー?」

律子「ごめんなさい、大丈夫よ」

真美「そいじゃ、いくよいおりん!」

真美「『YOU往MY進アタック』!」


スパコォンッ


伊織「……」

 律子『あのサーブが来たら……』

伊織(こう動いて……こう!)キュッ


パコォンッ!!


真美「うあうあ~、真美のサーブ、もう完全攻略されてるっぽいよ~」

響「なんくるないさー! えいっ!」

パコォンッ


律子「……」タタタッ

響(! やっぱ先読みして……)

律子(今、真美の反応できない場所は……)

律子「ここ!」

パコォンッ


真美「!」

真美(まただ! すごいゼツミョーに打ちにくいとこ……)

真美「もーっ!!」

パカッ


伊織「! 超チャンスボール……」

伊織「ええーい!」

ビシィッ


P「インッ!」

律子「ナイスボレー、伊織!」

伊織「当然よ、にひひっ」

響「どうしたんだ? 調子悪いのか、真美」

真美「……」

真美(りっちゃん、完全に狙ってるよね……真美の、打ちづらいとこ……)

真美(もうりっちゃんには、真美の全部、バレバレってことなの……?)

真美(だったら真美には、どうしようもないっしょ……)


亜美「真美……」

亜美(亜美だったらあのコース、多分打てるのに……)


真美(こういう時……)

真美(亜美なら、どうするかな……)


P「0-30!」

真美(サーブは攻略されてる。なら……)

真美「……『YOU往MY進、アターック』!」シュッ


スパコォンッ


律子「と思わせて普通のサーブでくる確率……」ザッ

律子「100%」


パコォンッ


真美「うっ、ばれた」

伊織「読み合いで勝てる相手じゃないわよ」

響「真美ー! そっちいったぞー! がんばれーー!!」

律子(無理よ、今私が打ったのは真美の最も苦手な……)


亜美「真美ーーー!!!!」


真美「……!」



カッ――――――



パコォンッ!!


律子「!?」


ドゥンッ


P「インッ」

響「おー、今度は綺麗に返したなっ! 得意なコースだった?」

律子「そんな……今のは、真美にとって最も打ちづらいコースのはずじゃ……」

真美「……そだね」

真美「たしかに、なんか色々お見通しっぽいし、真美じゃちょっとりっちゃんには通用しないかも」




真美「――――――――なら亜美でいくよ」



律子「!?」

律子(まさか……!!)チラッ


亜美「……」

律子「オーラ……じゃない、あれは……」

律子「同調(シンクロ)……コート外の亜美と!?」


P(ただのシンクロじゃないな。あれ、完全同調(フルシンクロ)だ)

P(意思疎通とかの次元じゃない。今の真美は亜美でもあり、亜美は真美でもある)

P(テニスには観戦者との同調禁止なんてルールはない。うまくルールの盲点をついたな、真美!)


律子「今の真美は亜美……と、考えれば、今のはむしろ得意なコース……ね」

律子「なら次は亜美の苦手なコースを……いやでもそれは真美に……」


真美「んっふっふ~、どったのりっちゃん」

真美「試合、続けようよ!」

律子「……ぐっ」

律子(落ち着くのよ私。まだこっちがリードしてる)

律子(とりあえずあのサーブの仕組みは頭にあるんだし、伊織に指示を出さないと……)

P「15-30!」

真美「よーし、『YOU往MY進アターック』!」

スパコォンッ

伊織(体に向かってくるサーブか、普通のサーブか……ここは)

律子「今度も普通のサーブ」
律子?「じゃない方よ!!」

伊織「!?」ブンッ

P「イン! 30-30!」

伊織「普通の……サーブ……?」

真美「あははー、いおりん空振ったー! りっちゃんのモノマネ、似てたー?」

伊織「な……真美!?」

律子(そうか、真美にはこれが……くぅぅ、これじゃせっかくデータを持っていても、まともに指示を出せないじゃない……!)

伊織(ちょっと律子の指示を信用しすぎてたわね。真美……やってくれるじゃないの)ピキピキ

響「どんどん行くぞー!」

律子(……やばい)


パコーンッ
パコーンッ

真美「『ストレ→トスタ→』!!!」

ドゥンッ

P「40-30!」


律子(やばい……っ!!)


パコォンッ
パコォーーンッ

パカッ


律子「! しまっ……」

響「上がったぞ! 真美!!」


真美「まっかせて!」ビュンッ


伊織「!? 星形のオーラに乗って、あんなに高く……」


真美「『シュ→ティングスタ→』!!!」


ドゴォォォォン!!!


伊織「う……」

律子(これは……)


律子(―――勝てない)




P「ゲーム! チームD! 2-0!!」

真美「いぇーい! 二ゲーム目ゲットー! ひびきん、はいたーっち!」スッ

響「よーし、この調子で一気に終わらせるぞー!」スッ

パァンッ


律子「……」

伊織「ッ……次よ、律子。切り替えていきましょう」

律子「……」

律子「切り替えて……どうするの?」

伊織「……えっ?」

律子「……たとえ気持ちはすぐに切り替えられても、データはそうはいかない。積み重ねたものが崩れてしまえば、その分だけ更に時間が必要」

律子「今の真美は真美であり、亜美でもあり、そのどちらでもない。弱点を補い合った、まったく新しい強プレイヤー」

律子「新しくデータを取るにしても、もう一ゲームも落とせない状況でデータ収集に専念できるわけもないし……実質、もう私のデータは通じないと見て良さそうね」

律子「ふふ……データ無しで、オーラの無い私なんかが、オーラ持ちのアイドルたち相手にどう戦えってのよ」

律子「これじゃあ……とても……」

伊織「……律子、アンタ信じてないの?」

律子「貴女の力を信じてるからこそ、不甲斐ない自分に腹が立つのよ。伊織ほどのオーラの持ち主のペアでありながら、それを全く生かせないなんて……」

伊織「だから……そうじゃなくて……ああもう……!」

律子「……?」

伊織「アンタは……!」



伊織「アンタ自身を、信じてるのかって聞いてるの!!」



律子「!」


律子(私……自身を……?)

伊織「まったく律子ったら、他人のことは結構しっかり理解してるのに、自分のこととなると途端にダメダメなんだから」

律子「だっ……そ、そんなことないわよ! 自己分析だってちゃんと……」

伊織「出来てるつもりなんだろうけど、無意識に過小評価しちゃってんのよ律子は。それもかなり」

律子「なっ……」

伊織「まぁ、その理由は分からなくもないわ。気付いてないというより、気付くことを避けてるっていうのかしら。律子は元々プロデューサー志望だしね」

伊織「律子、アンタは……アイドルとしての自分の魅力に、気付こうとしていない。プロデューサーに徹するために」

律子「……何……言ってる、の……? 私は、ただの……プロデューサーで……」

伊織「アンタがどう思ってるかはともかく、アンタにもまだ熱狂的なファンがいることを忘れないでよね」

伊織「そりゃ私と比べると全然だけど、アンタだって立派なアイドルなのよ。誰かに憧れられて、誰かに夢を与えてる。プロデューサーになってからも、ずっと、ずっと……だから」


伊織「信じなさいよ、律子!! 律子だって輝ける!! みんなみたいに、いっぱいいっぱいキラキラできる!!」



伊織「オーラだって、使えるんだって!!!」



律子「伊織……」


伊織「……伝えたいことはそれだけ。サーブ、ミスるんじゃないわよ」スタスタ

律子「……」

P「プレイ!」

律子「…………」

律子(オーラは、芸能界で活躍する『表』側の人間に発現する、存在感、魅力、迫力、個性などの集合体。アイドルであることの―――最大の証明)

律子(プロデューサーや事務員みたいな『裏』側の人間は縁のないもの。だから私にオーラが使えるはずがない)

律子(そう……思ってた)


真美「さぁ来いりっちゃん! 真美もう負けないかんね!!」


律子(でも……)

 伊織『信じなさいよ、律子!! 律子だって輝ける!! みんなみたいに、いっぱいいっぱいキラキラできる!!』

律子(私は伊織を信じてる。その伊織が、私にだって輝けると言ってくれた)

律子(だったら……信じないわけにはいかない、か)



律子「……今日だけだからね、今日だけ……うん」

真美「? 何言って」

律子「……」スゥゥゥ




律子「破ァッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




ゴオオオオオオッ



真美「! オーラ!?」

伊織(まったく……遅いのよ)フフッ

響「へへっ、そう来なくちゃな! 待ってたぞ、律子!!」


律子「……出来ちゃったんだから仕方ないわね。やってやろうじゃないの。ええ、やりますとも」

律子「吹っ切れたわ。今から私は単なるプロデューサーじゃなく……」


律子「アイドル秋月律子として、このステージに立つ!!!」

真美「へ、へぇ……ちょ、ちょっとびっくりしたけど、たった今オーラ使えるようになったりっちゃんに何が出来るのさ!」

真美「真美のがオーラについては先輩なんだかんね! 負けるわけがないっしょ!!」

絵理「……フラグ?」


律子「いくわよ!!」


P(……たまげた。律子のやつ、すごいオーラ量だ)

P(今まで必死に抑え込んできたんだろうな。本当はアイドルもやりたいって気持ちを、アイドルとしてのオーラを……プロデューサーとして生きるために、必死で……)

P(それを一気に解放した律子は強いぞ。これはもしかしたら……もしかするかもな)

律子「はぁぁぁぁああ!!!!!」


スパコォンッ!!!



ビュンッ

ビュビュンッ

ビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュンッ



真美「うえぇっ!?」


真美(ボールが……いっぱい!?)

真美「わーーーっ!! 回避っ!!」ダッ


ドゥドゥドゥドゥドゥドゥンッ


P「インッ! 15-0!」


伊織「……やっぱ敵に回したくないわね、律子は」

響「まさかここまでなんて……ちょっとびっくりだぞ」

律子「……ふぅ」

真美「い……」

真美「今のなに!? りっちゃん! チョーいっぱいボールあったように見えたんだけど!」

律子「ああ、オーラで偽のボールを作ったのよ。真美もさっきの試合の最後、やったでしょ?」

真美「真美にはあんないっぱい無理だよ! それにメッチャリアルだったし、一つ一つに実体も……」

律子「ボールのデータは、十分頭に入ってる。オーラによる具現化に大切なのはイメージ。色や形を全て完璧に再現するくらい、わけないわ」

真美「わけないわけないよ!! あんなのどーやって打てば良いのさ!?」

響「真美、落ち着け」ザッ

真美「! ひびきん」

響「―――自分が打ってみせる」

真美「おおっ……」

律子「……へぇ」


律子「やってみなさい!」スパコォンッ


ビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュンッ


響(自分には分かる。色も形も本物そっくりでも……)クンクン

響「本物のボールは、匂いで分かるさー!!」

真美「なるほど!」

響「これだー!!」

パコォンッ

P(当たりだ。でも……)

響「うぎゃー!!」

ドドドドドドドッ

真美「ひ、ひびきーーーん!!!」

P(偽のボール、避けることは考えてなかったみたいだな)

響(うぐっ……ボールは……?)チラッ

伊織「もらったわ!」サッ

真美「いおりん!」

伊織(現役じゃない律子が、あんなにも輝いてアイドルやってるのに)

伊織(この伊織ちゃんが遅れをとるなんてこと……あるわけがないわよね!!)ピカーーーー


真美「まぶしっ……」

律子(今日一の光……これは!)

律子「集めなさい、伊織!」

律子「光を!! 一点に!!!」

伊織(光を一点に……まさに今)

伊織(私がやろうとしてたことじゃない!!)

伊織「くらいなさい!!! これが私の……」


伊織「『レーザービーム』!!!」パコォンッ



ギュンッ



ドゥッ

真美「えっ」


P「イン! 30-0!」

真美(反応……できなかっ、た……)

伊織「はぁ、はぁ……」


伊織「にひひっ♪」ニコッ

律子「伊織、ナイスだったわよ!」スッ

伊織「ま、律子に負けてられないからね!」パンッ


雪歩「伊織ちゃんって、あんなに速い球打てたんだ……」

あずさ「そうねぇ~。私との試合じゃ、あんなに速い球打たなかったと思うのだけれど」

絵理「伊織さん……オーラを集約させた?」

雪歩「? どういうこと?」

絵理「ええと……光のオーラを分散させずに一方向にのみ集中して放つことが出来れば、通常の何倍の速度の球を打つことができます」

絵理「つまり……」

あずさ「つまり……?」

絵理「伊織さんのレーザービームは……すごく速い?」

千早(見たまんまね)


律子「……テニスは人と人との戦いだけど、局面を切り取ってみれば常に人とボールとのやり取り」

律子「だから私たちが分身したり高速移動したりしなくても、響の分身や真美の高速移動に対抗できる」

律子「ボールを分身させたり、高速にしたりすれば、ね」

真美「ぐぬぬ……やりおる」

響「それより真美、次レシーブ、ちゃんと打てるか?」

真美「え? うわぁっ!! 忘れてた~!」

真美「ど、どうしよ~、ひびきんを痛め付けた鬼軍曹の酢パスタサーブが真美を襲う~っ!!」

伊織「スパルタでしょ」

律子「スパルタじゃないわよ」

響「落ち着け真美、よく聞くんだ。自分、怪我してないだろ?」

真美「えっ? ……あれ、ほんとだ。あんなにボールぶつかったのに、ガンジョーだね」

響「そうじゃないぞ。あのボール、当たっても意外と痛くないんだ。ちょっとびっくりするくらいさー」

響「だから当たるの覚悟で打ちにいっても大丈夫だぞ!」

真美「そーなの? うーん、でも、そもそもどれが本物か真美には分かんないんだけど」

響「結局、最初に律子が持ってるのが本物なんだよね。だったらそれから目を離さなければいいんじゃないか?」

真美「あ、そっか! うん、やってみる!」

律子(流石に攻略され始めるか……でも)

律子(問題ない)


律子「いくわよ!」シュッ

律子「はぁっ!!」スパコォンッ



ビュンッ



ビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュンッ


真美(見える、本物はあれ……だけど)

真美(やっぱ怖すぎだよ~!! 他の球無視して集中して打つなんて……でも)

真美(当てるだけなら!!)

真美「らあああああっ!!!」スッ


パコッ

響「よしっ! よく当てたぞ!!」


ドドドドドドドッ

真美「んぎゃーー!!!!」

真美(なんでこんな目に……でも思ったより痛くない!!)


伊織「もらったわ!!」


真美「ひびきん! レーザービームくるよ!!」

響「うん、任せて!」

響「真美の覚悟、無駄にはしないぞ!!」タッ

響(なんくるステップ!!)

シュンシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュン


響「さぁ」
響「いっぱい」
響「増えたぞ!」
響「どこに」
響「打たれても」
響「返してやる!」


伊織「多っ……」

律子「構わないわ! そのままクロス!!」

伊織「OK!」


伊織「『レーザービーム』!!」パコォンッ


ギュンッ

響「速いな……けど!」

響「なんとか、打てる位置さー!!」


ドッ



響「……!?」

響(重っ……!)グググ


律子「……忘れたのかしら? 伊織のオーラは、オーラを吸収して強くなる」

真美「……!」

真美(そういえば、大量のりっちゃんの偽ボール……)

真美(真美に当たって跳ね返って……その後……)

律子「無駄使いは嫌いなの。サーブに使ったオーラも、出来ることなら再利用する」

律子「それが私のやり方だから」

響(計算したのか!? オーラで作ったボールを真美に当てて跳ね返らせて、伊織のレーザービームの軌道に乗せて……)グググ

響(大量に吸収させ、成長させるまで……全部!! 計算だってのか!?)グググ


響「負け……ないさー!!!」



パコッ

律子(響のパワーだと、なんとか前に飛ばせても……)


トンッ トントン……


律子(ネットまでは、届かない……計算通りね)クイッ


P「40-0!」



響「……」ジーーー

響(……うん)

P(アイドルとして輝きながら、プロデューサーとしてアイドルを輝かせる……これぞ律子だ)

P(どちらかに絞る必要なんて、ないよな)

涼「すごい……あの響さんと真美ちゃん相手に、ここまで……」

絵理「圧倒、してる?」

あずさ「ふふ、このまま勝っちゃうんじゃないかしら~」

美希「……」

美希(響……笑ってる?)


律子「ナイスストロークね、伊織」

伊織「ええ、律子もフォローありがと」

伊織「このゲームはもうもらったようなものね。この勢いでガンガンいきましょ」

律子「そうね。最後まで気を抜くんじゃないわよ!」

伊織「当然! フルスロットル、飛ばしていくわよ! にひひっ♪」



響「ふぅ……やるなぁ、チームC。自分がパワー負けするなんて」

真美「でもでも、次のゲームはひびきんのサーブだよね? なんくるないっしょ!」

響「……ん? なに言ってるんだ?」

真美「え、何って……あのね、なんくるないっていうのは沖縄の方言で」

響「いやそれは知ってるって! 自分をなんだと思ってるんだ!」

響「そこじゃなくてさ、次のゲームは……って話」

真美「? それがどーしたの?」

響「次のゲームなんて……」



響「こないぞ?」

 


そして――――――――――――



P「……ゲ」





P「ゲームアンドマッチ!ウォンバイ、チームD! ……ゲームカウント」




P「3-0!」




律子「はぁ……はぁ……」

律子(40-0から、逆転された……?)

伊織「あり得ない……あんなの、反則じゃないの……」



真美「これがひびきんのオーラ……」

真美(これってもしかして、真美たち、最大の優勝候補なんじゃ……)

響「ふー、やーっと自分のテニスが出来た!」

響「よーしよし、戻ってこーい」


ビュンッ

パシッ


響「よく出来たな、えらいぞ!」


響「―――ボル太郎!」


律子(こんなの……)

律子(誰にも……勝てるわけがないじゃない……!!)



―――――――――――――――





P「いやー、今日は楽しかった! みんなすごくアイドルしてたぞ! いい傾向だ!」

P「決勝で戦うのは春香とやよいのチームEと、響と真美のチームD。一ヶ月後、ここで行う! それじゃ、今日はこれで……」


P「解散!!」

ここまでです
次は多分決勝戦開始前くらいまでの軽い投下になるかと思います

気付けばかなり間隔空いてしまったけど続き投下します
スポーツものにはよくある修行編的なやつです

数日後―――――




~春香~


パコーーンッ
パコーーンッ


春香「えいっ!!」

パコォンッ

千早「♪~」タタタッ

千早「……そこ!」

ビシイッ!

ドゥンッ

春香「うっ、やられた」

千早「ふぅ……そろそろ、少し休憩しましょう」

春香「そうだね。疲れちゃった」




千早「……」ゴクゴク

千早「んっ……」キュッ

春香「……」

千早「高槻さんとは、練習しないの?」

春香「あ……うん、今は。伊織がね、やよいを鍛えるって連れてっちゃったんだ」

春香「やよいと私……同じ練習をするより、まずはそれぞれの武器や足りないものを見つけて、そこを鍛えるべきだって」

千早「なるほど、それもそうね。チームワークは大切だけれど……それだけじゃ、現状あのチームDに勝てるとは思えない」

春香「うっ、はっきり言われた」

千早「春香相手に気を使っても仕方ないもの。実際、そう思ってるんでしょう?」

春香「……うん」

春香「試合、ビデオで何度も見たよ。特に響ちゃん……本当に強かった」

春香「ずっと考えてるの。どうすればあのチームに勝てるのか……何を鍛えれば良いのか……」

春香「私は今、何をすべきなんだろう……って」

千早「……春香の武器は『個性』の吸収、そしてそれをエネルギーに変えて使うこと」

千早「個性を何かに与えるにも自分の強化に使うにも、試合中いかに相手の個性エネルギーを吸収出来るかが鍵となる」

千早「まずは我那覇さんのあの技……アレをどう攻略するか、ね」

春香「うん、響ちゃんのあの能力、対策しなきゃだよね」

春香「でも……それだけじゃ多分ダメ」

千早「?」

春香「この一ヶ月っていう与えられた期間……ただただぼーっと過ごしてくれるような人じゃないよね、響ちゃんって」

春香「少なくとも決勝までには、もっとすごい何かを身につけてくる。そんな気がするんだ」

千早「あれより……もっと?」

春香「うん。優勝するには、その響ちゃんに勝たなきゃダメ。今の私の頭の中の響ちゃんより、もっと強くなった響ちゃんにだよ」

春香「それでね、そのために必要な何かが、よく分からなくって……うう、どうしよう」

千早「春香……」

千早(私は我那覇さんのあの技を対策しようとするだけで気が遠くなりそうなのに……春香は更にその先を見ていたのね)

千早(この子、どこまで上を目指して……というか)

千早(どれだけプロデューサーとデートしたいのよ、春香……)


???「必要な何か……それは必殺技だ」ザッ


千早「!」

春香「この声は……」

???「見届けたくなってね、春香たちがどこまでいけるのか」

???「もしかしたら『あの技』も修得出来るかもしれない……微力ながら、協力しにきたよ」

春香(仕事入ってたはずなのに……早めに終わらせてきてくれたんだ)


春香「ありがとう……」

春香「ーーー真!!」

真「へへっ、一緒に頑張ろう、春香!」


真(『パーフェクトサン』……春香なら、きっと―――)

~やよい~


やよい「す……」

やよい「すごいですーーー!!!」

伊織「水瀬家の地下に偶然あったこの全自動テニス特訓施設。やよい、好きに使いなさい」

やよい「ほんとに良いの? 伊織ちゃん」

伊織「ええ、どうせ今は誰も使ってないしね」

伊織「その代わり、絶対勝つのよ! 本当に完璧な響なんて、いじりがいがなくてつまんないし」

伊織「鼻っ柱、へし折ってやりなさい!」

やよい「うん。響さん、それに真美もすっごく強いけど……」

やよい「私も負けないくらい強くなる!! だから見ててね、伊織ちゃん」

伊織「ええ、その意気よ!」


伊織「……」

伊織(アンタはもう十分強いわよ……やよい……)


 やよい『はわっ! どうしよう、いつものテニスコート空いてない……』

 やよい『ねぇ伊織ちゃん、近くに他に特訓出来るようなとこ、あるかな?』

 伊織『そういえば水瀬家の地下にテニス特訓施設が……あ、ダメ。やっぱ無し』

 やよい『ええっ、どうして?』

 伊織『特訓内容が鬼畜すぎるらしいのよ。危険だから使わない方が良いって新堂が言ってたわ。相当ハードなんでしょうね』

 伊織『下手したら怪我とかしちゃうかもしれないわ。体壊したら元も子もないし、やっぱり安全に……』

 やよい『伊織ちゃん! そこ、使わせて!!』

 伊織『!? アンタねぇ、話聞いて……』

 やよい『私、強くなりたい。普通の練習じゃ、多分ダメかなーって』

 やよい『優勝したら100万円だもん。中途半端な気持ちで目指していい金額じゃないし、出来ることがあるならなんだってするつもり!』

 伊織『で、でも……』

 やよい『えへへ、大丈夫。もし怪我しても、よっぽどじゃなかったら私のオーラで治せるしっ!』

 やよい『だから……お願い。連れてって、その特訓施設』

 やよい『行かないときっと、後悔しちゃうから……』

伊織(リスクを恐れて前進なんて出来ない。やよいは自分でそれに気付いて、前に進もうとしてる)

伊織(やよいにもしものことがあったらって、逃げ腰で考えてた私とは大違い。自分が情けないわ)

伊織(やよいならきっと、どんな特訓メニューだってこなせる。どこまでも強くなれる。だから私は……)

伊織(全力で、やよいを信じる!!)

伊織「始めるわよ、やよい!」

やよい「うん!」

やよい「……で、何をしたらいいの?」

伊織「この施設は全自動式らしいわ。中心にあるスタートボタンを押して、あとは機械の指示に従えば良いみたい」

やよい「見つけたっ。よーし……」タタタッ

やよい「えいっ」

ポチッ

ウィーーーン ウィーーーン

機械音声『コノ トレーニングルーム ハ ヒトリヨウ デス』

機械音声『ブガイシャ ハ スミヤカニ タイシュツ ネガイマス』

伊織「あっ、と。それじゃあ頑張ってねやよい」スタスタ

やよい「うん、頑張る!! また後でね、伊織ちゃん!!」

伊織(近くで見守ることも出来ないのね……)スタスタ

伊織(大丈夫……やよいは大丈夫…………)スタスタ

伊織「……ん?」チラッ

伊織(これって……これまでにここを使った人の……記録……?)

伊織「何よこれ、最後までこなせた人、一人しかいないじゃな……って、え!?」


『最終スコア 98000』


伊織(これって、あの……? なんで……?)




『日高 舞』

~真美~

P「二人ともお疲れ~。収録、バッチリだったな!」

亜美「うんうん、トークもキレッキレだったねー!」

P「ははは、ギリギリのネタもいくつかあってヒヤヒヤしたけどな。二人らしさが出てて良かったと思うぞ」

真美「ねぇ兄ちゃん、この後時間ある?」

P「ん? そうだな。予定より早く終わったし、少しくらいなら……それがどうかしたのか?」

真美「じゃあさ、テニスしない?」

P「え?」

亜美「おっ、いいねー! ほら、近くに丁度テニスコートあるし、やろやろー!」

P「いや、まあ良いけど……俺でいいのか?」

真美「いいのいいのっ! そいじゃ、早速ゴー!!」

真美(……試合まで一ヶ月くらい。このままじゃ真美、ひびきんの足手まといだよ。優勝出来たとしても、そんなんじゃ気持ち良く賞品受け取れないっしょ)

真美(だったら強くなった方が良いよね。強くなるには、強い人と試合するのが一番!)

真美(兄ちゃん、あんなすごい試合の中でもずっと冷静に審判してたし、ミスジャッジもなかった。亜美との試合での真美のオーラのトリックも見逃さなかったし、多分かなり出来る人と見た!)

真美(んっふっふ~、強くなる近道、見つけたっぽいよ! 超スピードでジャコジャコ強くなっちゃうかも!)

亜美「ねーねー兄ちゃん、二対一でやってもいい?」

真美「って亜美、それは流石に……」

P「ああ、いいぞ。どうせ大して変わらないだろうから」

真美「!?」

P「やれやれ……久しぶりだな、テニスなんて」



P「後悔しても、知らないぞ?」

―――――――――――――――



真美「……」

P「ふぅ……終わり、だな」

真美「…………こっ」




真美「後悔したよーーーーーーー!!!!!!」

亜美「真美うるさっ!」

真美「弱すぎだよ兄ちゃん!! 漂わせてた強キャラ臭はなんだったの!? 芳香剤でも使ってたの!?」

真美「詐欺だよ! 強キャラ詐欺だよ~!!」

P「はぁ、はぁ……当たり前、だろ……俺、プロデューサーなんだから……」

P「アイドルたちみたいにキラキラしてないし……見る目はあっても、お、俺自身はオーラとか使えるわけじゃないから……うぷっ」

P「ゔぉおぇぇっ、疲れた……スポーツなんて、久しぶりすぎて……やっぱ見る専でいいな……ううっ」

真美(なんかすごい損した気分……こうしてる間にも、みんなどんどん強くなって……)

P「はぁ、はぁ…………ふぅ。しかし……」

P「二人とも……息、ピッタリだな」

真美「……え?」

亜美「当たり前っしょー!亜美たちは、マリアナ海溝のいっちばん下に掘ったゆきぴょんの穴よりもふかいふかーい絆で結ばれてんだかんね!」

P「だよな。その歳にして完全同調が出来るアイドルなんて、世界のどこを探しても他にいないだろう。双子ならではのお前たちの絆……本当にすごいと思う」

P「俺はそれがお前たちの最大の武器だと見てる」

真美「真美たちの……」

亜美「絆が……?」

P「ああ。いいかお前ら、同調にはまだ先がある。決勝まで一ヶ月もあるし、その間により絆を深めれば、同調をもっと極めることが出来るだろう」

真美「絆を深めるって、どーやって?」

P「そうだな……旅行にでも行ってきたらどうだ?」

真美「旅行?」

P「お前たちはちょうどこれから数日オフの予定だ。先々でもテニスの特訓は出来るだろうし、絆を深めるには旅が一番ってな」

亜美「なるほどー、強化旅行ってやつですな。なんかメッチャ楽しそ~! 真美、どこ行く?」

真美「うーん……」

P「あぁ、旅先は決めても意味ないかもな。その旅行――――――」



P「あずささんに、同行してもらうから」


真美「……へ?」

~響~


響「はっ!」スパコーンッ

響「よっと!!」パコォンッ


パコーンッ
パコーンッ
パコーンッ

パコーンパコーンパコーンパコーンパコパコパコパコパコパコ


響(ここで……こう!)バッ

ビュンッ

響「……うんうん、良い感じ! 最短記録じゃないか? これ!」

???「このような時間に、壁打ちですか?」

響「!」ビクッ

響「い……いたのか? 貴音」

貴音「ふふっ、今来ました」

貴音「響、やはりあなたは強いですね。決勝には残るべくして残ったと、私は思います」

響「えへへ、まあね! でも、言っちゃなんだけど、その決勝の相手、春香とやよいってのはちょっと予想外だったぞ」

貴音「あの真を真っ向から打ち破り、ここまで来たのです。実力は確かでしょう」

響「だよなぁ。でも、それでも自分は……」

響「貴音が負けたのが、ちょっと信じられないぞ」

貴音「……私が、ですか」

響「だって貴音、オーラ使えるだろ? 貴音のオーラすごい強いのに、なんで使わなかったんだ? もし使ってたら……」

貴音「……美希が、見ていたからです」

響「へ?」

貴音「知っての通り、私のオーラは、食エネルギーを力とします」

貴音「私は際限なく使えると言っても過言ではありませんが……常人が使えば胃に穴が空いたような空腹感に襲われ、倒れてしまうやもしれません」

貴音「もし美希がそれを模倣してしまえば、どうなってしまうことか……そう考えると、気軽には使えませんでした」

響「オーラを模倣って……美希の見て覚える力ってそんなにすごいのか?」

貴音「未知数であったが故に、可能性を考えずにはいられなかったのです。そして私はオーラを出来る限り封印して戦うことにしたのですが……」

貴音「結果、私の失敗で負けてしまいました。美希には申し訳ないと思っております」

響「らしくないミスだったよなー、アウトなんて」

貴音「……言い訳になるかもしれませんが、あの時、一瞬春香のオーラが見えた気がします」

響「? 春香のオーラと貴音のアウトと、なんの関係があるんだ?」

貴音「分かりません。ですが響も、気を付けた方が良いかと」

響「うーん……貴音が言うんなら、そうなんだろうなぁ」

貴音「……少し、座りましょうか」

響「うん」

貴音「……今宵は、月が綺麗ですね」

響「ホントだ。満月だなー」

貴音「……」

貴音「響……」

響「ん?」

貴音「優勝……したいですか?」

響「優勝? もちろんしたいぞ! いや、するつもりさー!」

貴音「そうですか。でしたら……より強くならねばなりませんね」

響「貴音は、今のままじゃダメだと思う?」

貴音「はい、恐らく。春香もやよいも、今の貴女を超えた強さを身につけてくるでしょう」

貴音「彼女たちに勝つには、更なる扉を開かねばならない……そのような気がします」

響「そっか……じゃ、自分も頑張らないとな!」

響「『しつけ』にかかる時間も、ちょっとずつだけど短縮できてる。自分、完璧だけど、成長する完璧だからな!」

響「誰にも負けないぞー! 負けたら悔しいし、勝ったら嬉しいし!」

貴音「ふふ、真、羨ましいほどの向上心です」

貴音「そうそう、もうすぐここにもう一人来ます。彼女こそが、響の真の力の扉を開く鍵となる存在。必ずや貴女を強くしてくれるでしょう」

響「? それって、誰? 自分を強くしてくれるって、ものすごい実力者なのか?」

貴音「はい、美希です」

響「ふぅん……え、美希?」

貴音「ええ、星井美希です」

貴音「今ならはっきりと言えます。彼女は…………」


貴音「765プロ一の、天才です」

~春香~

春香「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」

ゴォォォォォォォォォォォォォ

千早「まだまだ! もっとオーラに、波長を合わせるのよ!」


真(まずはオーラを大きくする特訓。これは千早の得意分野だ)

真(千早がネットの上に巨大な壁を作った時は、素直に驚いたよ。あんなのボクにも出来ないかも)

真(形を整えたり色々するのは後だ。大きいオーラを保てるようにならないと……あの技は成功しない)




~やよい~

ビュンビュンビュンビュンッ

やよい「やっ! えいっ! たー!」

パコォンッ パコォンッ パコォンッ

やよい「……!」


ドゴォォォッ!!


やよい「あううっ!!」ズザーー

やよい「う……!」

やよい(止まらな……)

ドゴォッ

ドドドドドドドッ!!!

やよい「う……ぁあ……」クラッ


やよい「…………ッ」ギリッ


ダンッ


やよい「まだまだぁ!!!!」

~真美~

亜美「ちょっ、待ってあずさお姉ちゃん! ここどこ!?」

あずさ「あ、あら~?」

真美「うあうあ~! メッチャ迷子なりまくりだよ~!! これじゃ特訓なんてできないよ~っ!!」

あずさ「どうしましょう~……せっかくだし、そこの壁で壁打ちでもしてみる?」

亜美「んもー……ちかたないね」

あずさ(ここがどこかは分からないけれど……どういう場所かは、わかる)

あずさ(やっぱりテニスのことを考えていたら、こういうところに来ちゃうのかしらね~、私)

あずさ(パワースポットって言うのかしら。大地に刻まれた伝説のアイドルたちのオーラが、二人に溶け込んでいくのが分かる。そしてそれが二人のオーラの同調を深めているのも……)

真美「亜美! これは真美たちがしっかりしなきゃだね!」

亜美「うんうん、亜美たちで協力してあずさお姉ちゃんを保護しなきゃ!」

あずさ(なんだか分からないけれど、二人の絆も高まってるみたい。うふふ、成長が楽しみね)

あずさ(頑張ってね、真美ちゃん。私の占いによると、決勝戦で勝敗を決するカギとなるのは……)

あずさ(真美ちゃん……あなたなのよ?)



~響~

美希「ごめん貴音、遅れちゃったの」

貴音「美希、もしや寝ていたのですか?」

美希「んーん、スタッフのミスで仕事が長引いちゃって……有り得ないって思うな」

響「……ねぇ貴音、何のために美希を?」

貴音「もちろん、テニスをするためですよ」

貴音「さぁ、響、美希。シングルスをするのです」

響「でもさ、天才っていっても美希ってほぼ初心者だし、流石に自分が負けるわけ」

美希「それじゃ、いくよ?」

響「ん?」

カッ――――――

ゴオオオオオオオオオオオオオオッ

響「! オーラ!?」

美希「みんなの試合……見てたよ、ずっと」

美希「ずっとずっと……見て、覚えて、見て、覚えて……!」

美希「やってみたくて、ウズウズしてたの! あはっ!」

P「……」

P「決勝まで後15日……か」

社長「どうかね? 皆の様子は」

P「あ、社長。ええ、順調そのものですよ」

P「あいつら、みるみる強くなっていっています」

P「やよいは伊織の家の特訓施設に通いつめているらしく、日に日にたくましくなっていっているのが分かります」

P「真美は亜美と一緒にパワースポットを巡ることで亜美との同調を高め、その極みに着実に近づいています」

P「響は元々恐らく一番の実力者でありながら、貴音、美希と特訓して更に実力を付けているようですし」

P「春香は何やらすごい技を修得しようとしているようです。第一段階はクリアした、とかなんとか」

P「もちろん、それぞれが力を付けてからは、ペアでの調整もすると言っていました」

社長「ふむふむ、いやまったく、決勝が楽しみだよ」

P「決勝には社長も見に来るんですか?」

社長「うむ、行かせて貰うよ。社運もかかっていることだからね」

P「? どういうことですか」

社長「いやぁ実はだね、優勝したペアは、テニスアイドルとしてガンガン売り出していくつもりなのだよ」

P「テニスアイドル、ですか」

社長「世はまさに大テニス時代。テニスが出来るアイドルはありとあやゆる番組に引っ張りだこだ」

社長「我が765プロもその流れに乗らない手はない。しかし中途半端な実力をテレビで見せても、むしろ逆効果だろう」

社長「そこで、テニスが特に出来る数名を選出して、その子達に社運を託そうと考えたわけだ。目指すはトップアイドル、なのだよ」

P「なるほど、優勝賞金にと社長自ら百万円も出したのは、アイドルたちを本気にさせて、ガッポガッポ稼ぐための先行投資だったというわけですか」

社長「いや、それは本当にこれまでの感謝の気持ちで……嫌な言い方をするねキミは。とにかく、決勝までレッスンや仕事は極力減らして、テニスに集中させてくれたまえ」

社長「彼女たちならきっと、最高のプレイヤーになってくれることだろう」

P「ええ、俺が保証します」

P(みんな……がんばれよ!)

決勝まで 13日


春香「やぁぁぁぁあ!!!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


千早「すごい……ここまで大きく……」

真「さぁ、ここからだよ!」

春香「はぁぁぁぁぁ……っ」


シュルルルルルルル……ル…………


パァンッ

春香「ううっ!」ドテッ

千早「ああっ、また……」

真(……そろそろかな)

真(あ、来た)

春香「いたた、難しいなぁ……膨らませたオーラを回転によって球体に留めるなんて」

千早「相当繊細なオーラコントロールが必要だものね」

真「この回転が大事なんだ。これが出来ないと、あの技は完成しない」

真「というわけで……そのスペシャリストに来てもらったよ」チラッ

春香「?」クルッ

春香「!」

真「なんとかしてスケジュールを調整して、今日から特訓に協力してくれることになったんだ」

真「四人いればダブルス型式の練習も出来るし、それに……」

真「オーラの回転に関しては、彼女の右に出るものはいないと思うよ」

真「ねっ……」


真「雪歩!」


雪歩「そ、そんなすごい人じゃないよう……でも」

雪歩「出来るだけ頑張って手伝うから、よろしくね?」

雪歩(真ちゃんの頼みとなると、断れないなぁ、私……)


春香「雪歩まで手伝ってくれるなんて……ありがとう!」

春香(これは……負けられないなぁ)

決勝まで 10日


貴音「ゲームアンドマッチ、うぉんばい響。ゲームカウント―――」

貴音「6-4、です」


美希「むー、また負けちゃった」

響「はぁ、はぁ……自分、完璧だからな!」

響(やるたびにどんどん成長してくな……この美希に勝ち続けるには、自分も同じくらい成長し続けなきゃいけない)

響(結構大変だぞ、これ……でも)

響(負けないっ!!)

響「もう一回!」

美希「分かったの!」


貴音「……」

貴音(やはりこの二人の才は本物……まこと、嬉しい限りです)

貴音(向上心のある天才は、細麺よりもよく伸びるもの)

貴音(この様子では、隠れた牙が露わになる日もそう遠くないと思われます)

貴音(響……極めるのです、全てを。そうすれば―――)


貴音(更なる高みへと……歩を進めることが出来るでしょう)


響「どりゃあああっ!!!」

美希「ええええええいっ!!!」


貴音「……ふふっ」

貴音(トップに立てば、世界を広く見下ろせる。月を近くで見上げられる)

貴音(いつの日か、皆で上り詰めたいものです)


美希「そこなの!!」パコォンッ

響「うぎゃー!」

決勝まで 8日


やよい「……」

ビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュンビュン


やよい「……」カッ


バババババババババッ

ドゥンッ!!

やよい「……」


ガタガタガタ
ウィーーーン


カチャ



バシュウウウウウウウウウウウウウウン


やよい「……」タタタッ

ダンッ


バゴォォォォンッ!!


やよい「……」


バシュッ

やよい「!」クルッ

スッ

パコォォォンッ


ドガァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!


やよい「……」



やよい「……よしっ!」

決勝まで 7日


亜美「か~えりみち~かえりみち~♪ な~がい~の~い~や~だ~♪」スタスタ

真美「いやー、それにしてもさ、あずさお姉ちゃんと旅行して以来、なんか真美たちメッチャ強くなった気がしない?」スタスタ

亜美「ん、気がするっていうか、実際そうっしょ! やってる感じ全然違うもん!」スタスタ

真美「練習も欠かしてないし、これなら絶対ひびきんの足引っ張んないよね?」スタスタ

亜美「うんうん、文句なしの優勝っしょー! ……いいなぁ優勝、亜美も欲しかったよ~」スタスタ

真美「んっふっふ~、大丈夫! 協力してくれてるし、賞金は真美たちのキョーユー財産にするから亜美も……」スタスタ

亜美「んもー、そっちじゃなくって……」スタスタ

亜美「兄ちゃんとのデート権の方だよ! 亜美もラブラブデートしたかった~!」スタスタ

真美「……」スタ..

真美「え?」ピタッ

亜美「なになにどったの、真美いらないの? だったら亜美に」

真美「い、いるいる! っていうか、亜美、兄ちゃんのこと……」

亜美「好きだよ? あったりまえじゃん! でもさ、いつも兄ちゃん忙しいし……デートなんて、簡単にはできないもん」

真美「そう……なんだ……」

亜美「……? 真美?」

真美「…………」


真美(そっか……そうだよね……真美だけじゃなくて……はるるんだっていおりんだって、他のみんなも…………亜美だって…………)

真美(だったら……兄ちゃんは…………)


真美「……」

クルッ

ダッ

亜美「! ちょっ、どこ行くのさ!?」

真美「……特訓!!」タタタッ

亜美「うええっ!? 今したとこっしょ!? それに早く帰んないとパパとママに怒られ……」

真美「メッチャ謝れば、なんとかなるっしょ!!」タタタッ

亜美「ええー……」

真美(勝ちたい…………勝ちたい!!)

真美(優勝して……真美は…………!!)

亜美「…………仕方ありませんなぁ」ポリポリ

亜美「亜美も付き合うよっ!」ダッ

真美「! いいの!?」

亜美「トーゼンっしょ! 練習する時も帰る時も怒られる時も、いつもいっしょだかんね!」

真美(亜美……)

真美「……よぉーし! コートまで走って行くよ!」

亜美「おっけー! 双海ロケット、発射~!!」

決勝まで 5日


ウィーーン

伊織「! やよい……良かった、怪我は無いわね」

やよい「伊織ちゃん、ありがとう。ここでの特訓は今日でもう終わりにするね」

やよい「春香さんと、ダブルスの調整もしなきゃだしっ!」

伊織「そう……なんというか、いつも見てると気付きにくかったけど……改めて見ると、逞しくなったじゃない」

やよい「そうかな? えへへ」

伊織「で、結局最後までこなせたの? 地獄の特訓」

やよい「うん、なんとか! ボロボロになっても、負けるかーって、オーラと根性でがんばって!」

伊織「へぇ……」チラッ

伊織「!!」

やよい「どうしたの? 伊織ちゃん」

伊織「いえ……本当に、お疲れ様。やよい、今のアンタは最強よ。私が認める」

やよい「本当!? うっうー! 伊織ちゃんにそう言ってもらえると、とっても嬉しいかなーって!」

やよい「じゃあこのまま春香さんのところに行って来まーす!! 伊織ちゃん、ばいばーい!」

伊織「ええ、行ってらっしゃい」

伊織「……」

伊織(諦めない根性……やよいのそれをナメてたわ)

伊織「やよい……アンタが、No.1よ」




『最終スコア 102500』



『高槻やよい』

 

やよい「春香さーん!」タタタッ

春香「はぁ、はぁ……! やよい!」

やよい「みなさん、おはようございまーす!」ガルーン

真「おはようやよい。 へぇ、強くなったね! 見ただけで分かるくらいだよ」

やよい「はい! みなぎってきちゃって、伊織ちゃんの家からここまで走って来ちゃいました!」

千早「それでも息一つ切らしてないなんて……すごいわ、高槻さん!」

やよい「えへへ、ありがとうございまーす! いーっぱい鍛えましたから!」

春香「まっちょちょんって呼んでいい?」

やよい「なんでですか!?」

やよい「……って、あれ、私、汗かいてる。あうう、鍛え方が足りなかったのかなぁ」

雪歩「汗は多分、暑さのせいじゃないかな。春香ちゃん、特訓中だし」

やよい「そういえば暑いですねー。これ、春香さんが?」

真「そうだよ。春香の必殺技、まだ未完成だけど」

春香「ごめんね、やよいが来るまでには完成させたかったんだけど、ちょっと無理だった」

春香「あとは最終段階だけなんだけど、これがなかなか難しくって……あはは」

やよい(よく見たら、黒コゲになったボールがあちこちに落ちてる)

やよい(気温までこんなに変えちゃうなんて……どんな技なんだろう)

やよい(わかんないけど、春香さんすっごくすごいかも!)

千早「とにかく、時間がないわ。ここからは高槻さんも加わって、練習あるのみよ」

やよい「うっうー! 春香さんの必殺技、私も手伝いますー!」

春香「うん、ありがとう」

春香(必殺技にばかり時間かけてられない……やよいとの連携もばっちりにしなきゃ)

春香(……よし)

春香(頑張ろう!!)

決勝まで 3日


亜美「おねーちゃんたち、付き合ってくれてありがとねー!」

真美「また会ったらよろよろ~!」

涼「はぁ、はぁ……う、うん、またね」

絵理「……できれば?」


亜美「さてさて、今日からはひびきんとのペア練習だね。強くなった真美の力を見せるのだー!」スタスタ

真美「今、お姫ちんとミキミキと練習してるんだって。なんか妖精っぽい三人組だねっ」スタスタ

亜美「ひびきんたちのコートまで走ってく?」スタスタ

真美「時間のムダっしょ」スタスタ

亜美「だよねー」ピタッ


ゴオオオオッ


亜美真美「「『ス→パ→スケ→トスタ→』!!」」


ビュンッ!!


ゴオオオオーーーーーーーッ


涼「もう見えなくなっちゃった…………あの二人、あんなに強くなってるなんて」

絵理「二対一でも負けちゃうなんて……ちょっと、びっくりかも」

涼「二対一って言えるのかなぁ、あれ」

絵理「うーん……微妙?」



亜美「それにしても、こうやってオーラに乗って空飛べるようになるなんて、アイドルなりたての頃は思わなかったよねぇ」ビューーーン

真美「いやー、アイドルのすごさを実感しますなぁ」ビューーーン

亜美「到着ッ!」シュタッ

真美「いたいた、ひびきんたち試合中だ」シュタッ



響「はぁっ、ッく、らぁっ!!」パコォンッ

美希「あはっ、そこなの!!」パコォンッ

響「だぁぁぁぁぁあああ!!」パコォッ

響(まずいぞ……美希のマッチポイント、とうとうここまで……)


美希「これで……終わりなの!!」


美希「『100倍おにぎり波』!!」


バキューーーーーーーーーーン


響(自分……負けるのか……?)

響(いやだ…………)


貴音(窮地に陥った時、人は真の力を発揮する)

貴音(この時を待っていました。さぁ響……)

貴音(扉を、開くのです!!)


――――――ガチャ


響「……う」


ギィィィィィィ―――――――――


響「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」


カッ――――――――――――――――




―――――――――――――――――――――――――――――――――




貴音「……終わりです。またしても、響の勝利でしたね」

美希「はぁ、はぁ……勝てそうだったのに……あんなのって、ないの」

真美「ひびき~~ん! 何今の! なんなのなのなの!」

響「あ……真美」

響(今の……自分…………)

貴音「おめでとうございます、響」

貴音「扉は……開かれました」

響「…………ははっ」

そして――――――


P「天候にも恵まれ、絶好のテニス日和だな」

社長「今日は私も見に来たよ。審判は引き続き、プロデューサー君にしてもらうからね」

P「しかしみんなすっかり洗練された顔付きになったな……立派なアイドルだよ、お前たちは」

春香「……」

やよい「……」

響「……」

真美「……」

社長「知っての通り、優勝したペアには賞金100万円が与えられる。それと一応、副賞も」

社長「優勝目指して、存分に奮闘してくれたまえ!!」

春香(ここまできたら、絶対負けたくない)

やよい(これまでの特訓を、自分の体を、信じるだけかなーって)

響(二人とも、良い目してる。でも、なんくるないさー!)

真美(優勝して……真美は……!)


P(俺は忘れないからな、今日のこの試合(ステージ)を……)


P「さぁ……いよいよ」



P「決勝戦だ!」





決勝




チームE(天海春香・高槻やよい) VS チームD(我那覇響・双海真美)

今日はここまでです
決勝戦は二回に分けるかもしれないです
なんかあんまりテニスっぽくなくなってる気がする

遅くなりましたが続き投下します

チームE 春香・やよい
チームD 響・真美
最初のサービス権……響

P「ザ・ベストオブワンセットマッチ!響、サービスプレイ!」


伊織「始まったわね、最後の試合」

律子「ええ。伊織、どっちが勝つと思う?」

伊織「そんなのやよいに決まってるじゃない。あんなに頑張ったんだもの」

律子「……まぁ、貴女はそう言うでしょうね。贔屓目で見るのも仕方ないと思うわ」

伊織「贔屓なんかじゃないわよ! じゃあ律子はどう思ってるの?」

律子「私は誰の特訓に付き合ったわけでもないし、どちらかを応援するつもりもない。あくまで公平な立場の人間として言うけど……」

律子「やっぱり、響たちチームDが断然有利と見てるわ」

伊織「……理由は?」

律子「貴女も知ってるでしょ、響のあの力を」

律子「40-0で私たちがリード。そんな圧倒的不利な状況から、響は……」

律子「動くことすらせず、簡単に逆転してみせた」

伊織「……」

律子「あの時響はこう言ってたわ。『しつけは終わった』、って」

律子「あの力を最初から使わなかったのは、恐らくそのしつけとやらに時間がかかるからでしょうね。でもそれが完了したら、響は……」

律子「誰にも手が付けられないほどの、圧倒的強者となる」

律子「ああなってしまえば、力もスピードも関係ない。響に勝つのはかなり難しくなるでしょうね」

伊織「だったら、その前に終わらせれば良いだけよ」

律子「それが出来ればもちろんそれで良いんだろうけど……そうはいかないでしょうね。結局のところ、対策は必要不可欠よ」

伊織「……」

律子「でも……もしあれに対抗出来るとしたら、春香たちの勝利の芽も十分にある。だから私の分析で響達が勝つ確率は……7割5分、ってとこね」

伊織「なるほどね……」

伊織(響対策、ちゃんと考えてるんでしょうね……春香……)

やよい「……」ゴクリ

響「……うん、そうだな、じゃあキミはボル乃と名付けよう」

やよい(響さん、何をブツブツ言ってるんだろ……)

春香「響ー、サーブ打たないのー?」

響「あぁ、ゴメンゴメン。それじゃ、いっくぞーー!!!」スッ

響「よっ!」スパコォンッ


ビューーン


やよい(あれ……決勝戦最初のサーブ、思ったより普通……っていうか、弱い?)

やよい「こんなの……止まって見えます!!」

響「―――ボル乃」

やよい「えいっ!」

パコォンッ!!


春香「良い音!」

真美「……んっふっふー」

やよい(手応え、いい感じかも!)



響「『伏せ』」クイッ



ギュイッ


やよい「えっ……?」

やよい(私が打ったボールが……ネットの手前で急降下して…………)


パスッ


P「ネット!」



律子「なっ……!!」

伊織「嘘でしょ……もう!?」

律子(いくらなんでも、早すぎる!)

やよい「いきなり、ですか」

春香(ボールが響の指示で自在に動く……準決勝の最後に見たのと同じだ)

春香(しつけはもう終わった……ってことなの? 響……)


響「ふっふっふー、みんな驚いてる驚いてる」

響「春香! やよい! 先手は貰ったぞ!!」

響「自分の『ペットボール』……攻略できるか!?」


春香「……」

春香「してみせるっ!!」

春香(私たちの一ヶ月……簡単には終わらせない!)

響「ふふっ、そうこなくっちゃね」

響「いくぞ春香!!」スッ

響「っさー!!!」スパコォンッ


春香「……」

春香(響ちゃんはボールを自在に操れる……そんなことができるのは、オーラか何かをボールに仕込んでるから?)

春香(もしそうだとしたら……)

春香「はぁっ!!」ゴォォッ


ブオンッ


雪歩「出た! 春香ちゃんの、個性を奪うオーラ!」

あずさ「オーラがボールを包み込んだ。個性を失ったボールは、どうなるのかしらね~」


春香(これなら……)


響「『おすわり』」


春香「えいっ!」ブンッ


コロ……


春香「!」スカッ


やよい(空振り……!)

春香(ボールが一切跳ねないで、その場に留まった!?)

春香(響ちゃんの命令が―――ボールに通じてる!)


響「個性を消しても全然意味ないぞ。むしろやりやすいくらいさー」

響「真っ白な紙ほど、描きやすいもんだからな!」

やよい「???」

春香「……なるほど、じゃあ」

春香「秘密は声の方に……ってことだよね?」

響「!」

やよい「秘密は……声の方……???」

響「よく分かったな春香! 正解だぞ!」

真美「ひびきん、バラしちゃっていいの?」

響「……! せ、正解じゃないかもしれないかもだぞ」

やよい「春香さん、どういうことですか!?」

春香「ボールに何か仕掛けがあったとしたら、私の力で個性を消した時点でダメになるはず。でもそうはならなかった」

春香「だったらボールに『指示』を出してる響の声の方に秘密があるんじゃないか、って思ったんだけど……当たりみたい」

春香「多分声に混ぜたオーラとかでボールを操ってるんじゃないかな?なーんて」

響「なんでそこまで分か……はっ!」

春香「やっぱり」ニコッ

真美「ひびきん、もう喋んない方がいいっぽいよ……」

響「ぐっ……でも、秘密が分かったところで、攻略なんてできないぞ!」

響「今までに自分のこれを攻略出来たのは美希だけだ。もう自分の勝ちは決まったようなもんさ!」

春香「……やよい」

やよい「! はい!」

春香「『ペットボール』の攻略法、思い付いたかも。でもそれにはまだ……個性が足りない」

春香「ちょっとで良いんだ。集中する時間、作れないかな?」

やよい「……! わかりました。春香さん、次はそれに集中しててください」

やよい「ちょっとなら多分、なんとかなります!」

春香「うん、お願い。任せたよ!」

P「30-0!」

春香「……」ゴォォォ

響「? 春香、目閉じて何かしてるけど……次のレシーバー、やよいだよね?」

真美「さてははるるん、何か企んでますな~? ひびきん! さっさとやっちゃった方が良いっぽいよ!」

響「だな。やよい!! 次いくぞ!!」

やよい「はいっ! かかってきてください!」

やよい(なんだかよく分からないけど、声にオーラを込めてボールを操ってるんなら……)

やよい(その声をなんとかすれば―――)

響「ほいっ!」スパコォンッ

やよい「……」スゥゥゥ

響(悪いけど、このゲームは全部自分のサービスエースさ!)

響「ボル乃、おす―――」

やよい「うっううううううううううううーー!!!!!!!!!」

響「!!」

やよい「ううううううううううううう!!!!!!!」


パコォンッ

ビュンッ


伊織「返した! ネット越えたわよ!!」

律子「な、なんて強引な……」



響(自分の声を声でかき消したのか!? ちょっとびっくりしたけど、まだボールは地面に着いてない)

響(このまま向こうのコートに返してやるぞ!)

響「ボル乃、ハ―――」

やよい「ううううううううううう!!!!!!!!!!!」

響「ハウ―――」

やよい「うううううああああああああああああああああああ!!!!!」

響(出しっぱなし……だって!?)



ダンッ


美希「うぇえ、やよいうるさいの。耳がキーンってなるの」ビリビリ

伊織「876プロの元気担当が愛なら、うちのそれはやよい。本領発揮ってやつよ!」ビリビリ


響(その場しのぎにもほどがあるぞ、その対策……こんなの続けてたら)

響(アイドルとして大切な喉……潰れちゃうぞ!)

やよい(喉が潰れるのは流石に困るけど……このラリーの間だけなら、叫び続けられる。あとは春香さんがきっと―――――)

やよい「ああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

響「うぐっ……これじゃ声、届かないっ」

真美「真美が打つねっ!」ダッ

やよい「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

真美「いやー、大声でひびきんの『ペットボール』を封じるなんて、やよいっちもやりますな~」

真美「でもでも、真美のこのチョーすごい必殺技を見たら、黙らざるをえなくなるかんね!」ゴォッ

真美「いっくよー!」スッ


真美「『スプライトスタ→』!!」


バコォンッ


ギュイーーン

律子(球にまとわせたあの星型のオーラ……振動してる?)


春香「……」ゴォォ

千早「! 春香の方に!」

真美「んっふっふ~、狙うなら当然、隙だらけな方っしょ!」


真美(弾けろっ!)


パァンッ!!


ビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュッ!!!!


律子「オーラが弾けて……大量のボールになった!?」


真美「りっちゃんのやつのマネだよっ! でもでも、ギリギリで弾けて増える分、こっちのが反応し辛いっぽいよ~」

千早「春香、危な……!」


春香「……」ゴォォ


千早(全然……動じてない)


やよい「はあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」ダッ


律子「! すごい速さでやよいが前に!」

伊織「スピードも、一ヶ月前とは違うのよ」

真美「スピードは認めるけどさ、やよいっち、はるるんの盾にでもなるつもり?」

真美「そのオーラ、全部実体あるし……当たったら痛いよ?」

やよい「うっうー!!!!!!!」スッ



ババババババババババババババッ
ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!


真美「うえっ!? 全部返した!?」

やよい「うううううあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


やよい(春香さんの邪魔は――――――させません!!)

シュウウウウ……


律子「真美がオーラで作ったボール、やよいの強打で形を保てなくなって消えたわね」

真美(うぐぐ……本物のボールは……!)

ビュンッ

真美「ひびきん! そっちいった!」

響「……」

やよい(命令はさせません!!)

やよい「うううううううああああああああああああああああああ!!!!!!!」

ビューーーーン

真美「危ないひびきん! ガンメン直撃コースだよ~!!」

響(ギリギリまで……ギリギリまで引きつけて……!)

ビューーーーーーン

やよい「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

真美(ぶつか……!)



響「『待て』」




ピタッ


やよい「あああああああっ!」

やよい「…………あぅ」


律子「ボ……ボールが」

律子「空中で……止まった……?」


響「ふう……やよいの大声の中でも、これだけ近くからならなんとか伝わってくれるみたいだな」


響「ボル乃、ラインの外まで……『GO』!」


ビュンッ

ドッ


P「アウト! 40-0!」

響「やよい、お前のやってることはただのその場しのぎだぞ。悪いけどそんなんじゃ、完璧な対策とは言えない」

響「あと一点でこのゲームも終わり。このままストレートで勝っちゃうぞ!」

やよい「はぁ、はぁ……けほっ」

やよい(完璧な対策の方は……心配ないかなーって)チラッ


春香「…………」

春香「よしっ」

響「じゃ、このままこのゲーム終わらせるぞ!」

真美「やっちゃえー! ひびきーん!!」

響「やってやるさー!!!」スッ

春香「……」ゴォッ



亜美「そーいえばミキミキ、普通にひびきんと打ち合ってたけど、どーやってあのペットボール封じてたの?」

美希「ん? 同じだよ、春香と」

亜美「えっ? でも個性消してもムダなんでしょ?」

貴音「そうですね……そもそも響のオーラは、声に混ぜてボールへと伝え、ボールを内部から支配するもの」

貴音「ただし個性あるボールを操るのはなかなか困難なこと。だから響はこれまでの試合では、時間をかけて『しつけ』をしていたのです」

貴音「『しつけ』とは、ラケットを通して何度も触れ合うことで、ボールを響色に染め、ボールそのものの主張を抑え込む行為」

貴音「初めから個性が存在しないのであるならば、響のオーラによる操作はより容易くはずです」

亜美「だよねー? だったらはるるんのオーラじゃ……」

貴音「ええ、個性を消してもむしろ逆効果かと」

美希「そうだよ。だからミキ、春香のオーラを使ったの。がんばって思い出して……春香とおんなじ、個性を操るオーラを、作ったの」

亜美「?」

貴音(個性を……操る……?)

貴音「……!」

貴音(そういう……ことですか)



響「それっ!」スパコォンッ


春香「はぁっ!!」

ヴォォンッ

響「だから個性消してもムダだからね! ボル乃、『お座り』!!」




ドゥンッ




響「!?」

響(お座りって言ったのに……跳ねた!?)

春香「よっ!」

パコォンッ


響「ふ……『伏せ』!!」


ビュンッ


響「なっ……」

響(自分の言うこと、聞いてくれない……なんで!?)


春香「『ペットボール』……破れたり!」

貴音(春香はオーラにより個性を奪うだけではなく、それで得た個性エネルギーを別な形で使うことができる)

貴音(準決勝時点では、個性エネルギーを春香自身ややよいの力に変換してばかりだったので気づきませんでしたが……そういうことですか)

貴音(『ボールに新たな個性を与える』ことも……考えれば出来て当然ですね)

貴音(……あの試合の最後、何故私のボールがアウトになったのか、今ようやく分かりました)

貴音(無意識の中、春香の勝利への執念が僅かに残った体力をオーラへと変え、ボールに『伸びる』個性を与えて飛距離を伸ばし、コートの外へ押し出したのでしょう)

貴音(そしてボールに個性を与えられるのなら……『言うことを聞かない』個性を与えることもまた、不可能ではない)

貴音(……今の響のオーラは、元々ボールに備わっている程度の個性ならば無視できるほどの支配力を持ちますが)

貴音(響のオーラの支配力を上回る個性を込められたのなら、話は別)

貴音(どれほどの個性エネルギーが必要なのかは分かりませんが……確かなのは今、春香は……)

貴音(見事にそれを、やってのけた!)


響「春香……」


響「そうでなくっちゃな!!」


パコーーンッ

パコーーン

パッコォーン

ビシッ

ドゥンッ―――――――――



P「ゲーム! チームD! 1-0!」


律子「流石にあの点差はひっくり返せなかったわね。でも……」

伊織「ええ、サービスエース四連続で終わるのとこれじゃ、一ゲームの内容が全然違うわ!」

やよい「一ゲーム取られちゃったのは悔しいですけど……でも、やりましたね!」

春香「うん! ボールにありったけの個性を注いだし、これで響ちゃんの『ペットボール』は封じた」

春香「次のゲームからが本番だよ!」

真美「一ゲーム取ったけど、まだまだ油断出来ないっぽいね」

響「うん、そーだね。それにしても、思ってたより早く攻略されたなぁ」

響「ねぇ春香、ボル乃に個性を込めて自分の言うことを聞かない子にしたってのは分かったけど……それだけの個性、どうやって集めたんだ?」

春香「……世界は個性に満ちてるんだよ、響ちゃん」

真美(何言ってんだはるるん)

春香「例えばそこに落ちてる石にだって、一つ一つに個性はある。ちょっとオーラを広げてみれば、そこにはたくさんの個性がある」

響「……ふむふむ」

春香「私ね、この一ヶ月で、身体能力こそあんまり伸びなかったけど……オーラの扱いはすごく上手くなったんだよ?」

春香「今の私なら本気で集中すれば空間の塵からだって個性を抽出出来る。集中する時間さえあれば、何処からでも個性を集められる」

春香「つまりはね……やよいが時間を稼いでくれたおかげで、私は個性をたっぷり集められたってこと! ありがと、やよい」ニコッ

やよい「えへへ……はい!」

響「いやいや……」

響(簡単に言うけど……そんな繊細な作業、本当にそれに没頭してないと出来ないんじゃないか?)

響(あの時春香は目を閉じてた。個性を集めようと、オーラのコントロールにかなり集中してたんだ)

響(それこそボールが自分に直撃しそうになっても気付かないくらいに……それなのに春香はそれをやってのけた)

響(やよいを信じてたからだ……! やよいなら集中するだけの時間を稼いでくれる。自分に向かうボールも全部打ち返してくれる、って)

響(なんて信頼関係だ……あそこまで人を信じられるか? 普通)

響(そういうの……なんか…………)


真美「……ひびきん?」

響「ん……あ、次、やよいのサーブだな。しまっていくぞ!」

真美「うん!」

やよい「じゃ、サーブいきまーす!」

春香「頑張れ、やよい!」

真美(さて、やよいっちのサーブかぁ。まこちんとかほどではないけど、結構パワーあるっぽかったよね)

真美(ま、なんとかなるっしょ!)

やよい「うっうーー!!」

やよい(フレーフレー頑張れ―――)ゴォッ


やよい(私の上腕筋っ!!)


ムキッ

ムキムキッ


真美「!?」

真美「やよいっちの腕が……ムキムキに!?」

千早(これ、最初に見た時気絶しそうになったわ)

律子「『応援』のオーラによる活性化……自分の筋肉の増強まで出来たの!?」

伊織「らしいわ。やよいのオーラは攻撃タイプじゃないと思ってたけど、使い方次第では攻撃的にもなり得るってわけ」

伊織「ちなみにオーラの効果が切れたらそれなりに元に戻るからアイドルとしては大丈夫よ、ギリギリ」

律子「そう……ギリギリなところね。しかしオーラであそこまで……」

伊織(……ま、オーラだけじゃここまではならないけどね。さぁやよい、見せつけてやりなさい……鍛えた筋肉を!!)




やよい「はい!!!」スッ


やよい「たーーーーっち!!!!」



ドゴォォォォォォン!!!!!

真美「ぐっ……『スタ→シ→ルド』!」スッ

千早(星型のオーラで防ぐつもりかしら。でも……)


パリィィィンッ!!!


真美「!」


やよい「その程度じゃ、止まりません!」

真美(それでも、ちょっとは弱まってくれたっしょ!)

真美「どりゃあ!!」ブンッ


バシィィィッ


真美「えっ……」

真美(ラケット、弾かれ……)



カラァンッ……



やよい「これが……『ぱわー』の力です!」


P「15-0!」


春香「よっし!」

響「なんてパワーだ……素人だったら腕持ってかれてたかも」


伊織「やっぱりやよいのサーブはすごいわ。サーブに全体重、全パワーを込めて打つ術を心得てるもの」

伊織「ここまでの筋力を得て、ようやくその真価が発揮されたわね」


真美「……やるねー」ビリビリ

亜美「……」

やよい「次は響さんですっ!!」


やよい「はい!!」スッ

やよい「たーーーーっち!!!!」


ドゴォオォオォオオオン!!!!




響「真美には打てなかったけど……自分は完璧だから、打てないはずないさー!」

響「『ペットボール』を封じられても、元々自分には多彩な技がある! どんな球にも対応できるんだぞ!」

響「相手のパワーをそのまま返す必殺技『オウ助返し』……これで決めてやるからねっ!」

真美「ひびきん、説明はフラ……」

響「なんくるないさーー!!」



バゴォォォォンッ!!!!



響「うぎゃー!!」

真美「やっぱし……」


P「30-0!」


やよい「うっうー!」

春香「いいよやよい! もう一本!」

千早「高槻さんが止まらないわ!」


律子「……一回戦は千早と亜美。その次は私と伊織」

律子「あからさまなパワータイプと当たってなかったから気付けなかったけど……」

律子「このチーム……ひょっとして、パワーが弱点?」


真美「……」

響「うう……いけると思ったのに」

真美(……亜美)

亜美(分かってる。エマージェンシーだもんね)

亜美(じゃ……)


亜美(入るよ)


フラッ

あずさ「!」スッ

ガシッ

亜美「……」

あずさ「……あらあら」

あずさ(奥の手、もう使っちゃうのね~)


やよい「このままどんどん、点取っちゃいまーす!」

やよい「はいっ!!!」


やよい「たぁーーーーっち!!!!!!!」



ドゴォオォオォオオオン



真美「……」パチッ

真美「いくよ……亜美!」



真美「てりゃあああああああああああああああああああ!!!!!」



バゴォォォォンッ

やよい「はわっ!」

美希「返したの!」

真美「……んっふっふー」


やよい「あうう、さっきは打てなかったのに……」スッ

やよい「……」チラッ

やよい(あそこ!)

やよい「たー!」


バゴォォン!!


伊織「うまい!」

律子(見事に隙をついたわね。動体視力を活かして、隙間を見付け出し……!?)


真美「遅いよ」サッ


やよい「!?」


バドゥンッ!!!



P「……イン! 30-15!」

春香「なっ……!」


律子「な、なんてえげつない角度のボレー……いや、それよりも」

律子(真美のスピード、以前よりかなり上がってる)

律子(パワーだってそう。さっきは打てなかったサーブをこうも簡単に……)


P(……やっぱり、俺の目は正しかった。この日までに身に付けてきたか)

P(究極の同調……『一体同調(フュージョンシンクロ)』を……!)

美希「ねぇあずさ、亜美、入っちゃったの?」

あずさ「ええ、そうみたいね~」

あずさ「『一体同調』をすると亜美ちゃんと真美ちゃんの力が完全に合わさって、全ての身体能力が何倍にも跳ね上がる」

あずさ「その分だけ体にかかる負担も何倍にもなるんだけど……その状態で最後まで戦う覚悟、決めたのね、亜美ちゃん真美ちゃん」


響「やったな! えっと……真美?」

真美「ううん、今の真美は亜美といっしょだかんね。真美の『真』と亜美の『美』で……」

真美「真美って呼んで!」

響「……ん?」

真美「ん?」


美希「……合体したら意識ってどうなっちゃうんだろーって思ってたけど」

貴音「どうやら、あれは真美のようですね」

あずさ「事前に決めてたらしいわよ~。『これは真美の試合なんだから、意識は真美が持つべきっしょ~!』って」

貴音「なるほど、それならば納得です」


やよい「真美、あんなに強くなったんだ……」

春香「強くなったのはやよいだって同じ、でしょ?」

やよい「あっ……はい!」

春香「大丈夫。やよいのサーブ、すごい威力だもん」

春香「真美に打たれても、響ちゃんが打てない限りこのゲームは大丈夫だよ!」

春香(……だよね?)


響「しっかし……これは自分、なんとかして打たなきゃな。どうしよっかなー」

真美「迷うことなんかないっしょひびきん。あの状態にならないと、今のやよいっちには通用しないよ」

響「……やっぱり? もうちょっと温存しときたかったけど、仕方ないか」

響「こうなったら……アレしかないよね!」

真美「うんうん、そうだよ!」




真美&響「「ーーーーーーーオーバーマスターしかない!!」」

やよい&春香「「!」」

やよい「春香さん……」

春香「うん……気を付けて、やよい。何かするつもりみたい」


響「『ペットボール』だけが自分のオーラの使い方じゃない」

響「自分の本当の力、見せてあげるさー!!」


響「さぁ……『強くなれ』!!」



響「『自分』!!!」



ゴオオオォォォォォォッ!!!!



春香「なっ……!」

春香(なにこれ、分かる。響ちゃん……格段に強くなった!)

やよい「ううっ……負けませんー!!!」



やよい「はいっ!!」スッ

やよい「たーーーーーっち!!!!!」


ドゴォォォォォォォォォォォォン!!!!!



響「今度は決めるぞ」スゥッ



響「『オウ助返し』」



ドゴォォォォォォォォォォォォン!!!!!

やよい「!」

やよい(私のサーブの威力を、そのまま……!)


春香「任せて!」

ブォッ


絵理(オーラの力で個性を奪った。でも……)


春香(成長した私のオーラでも完全には奪い切れなかった……けど、これでこの球の『ものすごい威力』は無くなった。今なら私にもなんとか打てる!)

春香「えぇい!!!」


パコーンッ


響(……個性を奪うことに集中すると、個性を使うことにまでは手が回らないんだな)

響(返せたからって、そんな普通の打球じゃ、今の自分にとっては……)


響「チャンスボールにしかならないぞ!!」


響「『ヘビ香ショット』!!」


ビュンッ


パスッ


P「30-30!」


春香「うっ……」


律子「高速で曲がったボールがネットの裏側に……すごいカーブね」



響「自分の『命令』のオーラは、ボールだけじゃなくて自分自身も操れるんだ」

響「『強くなれ』って命令したら、体はちゃんと応えてくれる。無理やりだけど、普段の自分の限界をかなり超えた力で戦えるし、極めた技も更に強くなる」

響「これが自分の『オーバーマスター』だ! 消費するオーラはすごいけど、ここまできたら最後まで気合いで乗り切ってやるさー!」

春香「オーバーマスター……これが響ちゃんの、奥の手……」

響「ごめんね。自分、良い試合にしようとか考えてないから!」

響「自分は勝ちたい、負けたくない! それだけさ! だから決勝戦なのに3-0で終ーわり、ってなっても、文句言わないでよ!」

春香(真美の『一体同調』もだけど……こうも純粋に強くなられると、対策どうこうの話じゃない)

春香(小手先じゃなく、こっちも純粋に強くならなきゃ、きっと……対抗できない)

やよい(このゲーム取られちゃったら、二ゲーム差。そうなったらちょっと、まずいかなーって)

やよい(なんとか……なんとかしなきゃ!)

やよい「いきます!!」

やよい「うっうーー!!!!」ダンッ


真美「おっ?」

涼「飛んだ!」

愛「すっごく高い!!」

律子「やよいが……ジャンプサーブ?」


やよい(あんまり慣れてないけど、こうした方がきっとぱわーが出るはず!)

やよい「すかいはい!!!」


やよい「たーーーーーーっち!!!!」


ガルーーーンッ



ドォォォンッ!


伊織「ばか……」

伊織(せっかく頑張ってモノにした打ち方、変えてどうすんのよ……!)


真美「ダメだよやよいっち~、慣れてないのにそういう打ち方しちゃ」


真美「ジャンプ打ちってのはね……こうするんだよっ!!」ダンッ




真美「『シュ→ティングスタ→』!!」

ドギュウウウウン!!!!



やよい「あっ……」


P「30-40!」


律子「やよいが慣れないジャンプサーブをしたことで無駄に高く跳ねたボール……確実に決めてきたわね」

伊織「やよい……今のは失策ね」


やよい「ご……ごめんなさい春香さん、私、焦っちゃって……」

春香「気持ちは分かるけど、無理にサーブで決めようとしなくてもいいんだよ?」

春香「サーブは一人だけど、その後はほら、私だっているんだし! 返されたって、二人いればなんとかなるよ!」

やよい「! ……はい!」

響「……」



やよい「よーし、いきますっ! はい、たーーーーっち!!!」


ドゴォォォォォォォォォォン!!!!


響「なんとかなる……か」グッ

千早(! あの構え……まるでチーターみたい)


ビュンッ



響「『ねこ吉レーザー』」バッ


春香(まずはオーラで捉え……)


ズキュウウウウウウン

春香「……」


春香「え?」クルッ


P「―――イン! ゲーム!チームD! 2-0!」

やよい「うう~、二ゲーム目、取られちゃいました……」

春香「なっ……」

春香(何……今の球速……)


響「春香……『なんとかする』じゃなくて、『なんとかなる』なんだな」

春香「……?」

響「自分でなんとか出来ないんなら、あんまりそういうこと言わない方がいいんじゃないか?」

響「一人でも戦える、それが本当の強さなんだから」

春香「……えっ」

やよい「響さん……?」

響「……」

真美「ひびきん?」

響「うん?」

真美「どったの? ダブルスなのに、一人でも戦えるとかなんとか……」

響「ああ……自分、完璧だからな! 誰にも頼らなくても、誰にも負けないって言いたかったんだ!」

真美「んー? ……そっか。ひびきん、強いもんね」

響「うんうん! だからさ、任せてよ! 絶対、優勝するぞー!」

真美「おーっ!!」


響「…………」


 ???『王者とは!』


響(―――なんなんだろ……この記憶)

響(記憶にない……遠い記憶)



春香「あと一ゲーム取られたら負け……かぁ」

やよい「なんだか、毎試合こんな感じな気がします……」

春香「あはは、一ヶ月特訓したのに、結局こうなっちゃうんだね」

やよい「響さんも真美も、一ヶ月前よりずーっと強くなってます。やっぱり向こうも、いっぱい特訓したんですね」

春香「うん……そうだね」

春香「…………」

春香「ねぇ……やよい」

やよい「なんですかー?」

春香「優勝したらさ……どうしたい?」

やよい「やっぱり、牛肉とか買って、家族みんなで食べたいかなーって」

やよい「いつも弟たちには我慢してもらってるから……たまには、贅沢させてあげたいんです」

やよい「あとは、お父さんに任せます。お父さん、いつもお金が足りないみたいだから……」

春香「そっか……やよいは良い子だなぁ」

やよい「春香さんは?」

春香「……私は」

春香「プロデューサーさんと、デートしたい」

やよい「お金よりも、そっちなんですか?」

春香「そうだよ? だってプロデューサーさんいつも忙しいし、丸一日デートなんてこんな時でもないと出来ないんだもん」

やよい「あはは……春香さん、本当にプロデューサーのこと好きなんですね」

春香「うん……優勝目指す理由がそれってちょっとしょうもないって思うかもしれないけど、結構本気なんだよ?」

やよい「はい……伝わってきます、すごく」

春香「……」

やよい「……」

やよい「勝ちたい……ですね」

春香「うん……ここまで来たんだもん」

春香「私たち、さ……シングルスだったら、多分負けてたよね。ここまで来られたのは、ダブルスだからだと思う」

やよい「協力して、信頼し合ってきたからこそ、勝てたんですよね。わたし、春香さんとペアで、本当に良かったです!」

春香「えへへ、私も」

春香「……この一ヶ月、いっぱい特訓してきたよね。私はオーラの扱いを、やよいは身体能力を」

やよい「そうですねー。それも全部……この試合に勝つため、です」

春香「そうだよね。この……『ダブルスの』試合に」

やよい「はい……そうですね」

やよい「……春香さん」

春香「うん」

やよい「今の私たちなら、きっと……今まで以上のダブルスが出来るんじゃないかなーって、思うんです」

春香「ふふ、私もそう思ってた」


春香「……やろっか、やよい。正真正銘、特訓の成果を発揮させよう」

春香「二人で……ね!」

やよい「はい!」





―――――――――ゴオォッ!!!

P「!」

P(あの光……あれは…………)


美希「なにあれ、春香とやよいが、オーラで結ばれて……同調?」

律子「同調、なのかしら。亜美真美のとは大分違うみたいだけど」

真「あの二人は……亜美と真美みたいに心が通じ合ってるわけじゃない。弱点も違えば武器も違うし、優勝を目指す理由も違う」

真「けど、同じ目標のためにひたすらまっすぐ突き進んで来た。ダブルスとしてはこれ以上ないくらい、最高のペアだ」

真「ボクにはあのオーラが、二人を結ぶ絆に見えるよ」

雪歩(真ちゃん、なんかかっこいい……)


響「……ふーん」

響「そうくるんだね、春香」


真美「何をしてこようと、真美は負けないよ」

真美(兄ちゃんは……渡さない!)



春香「いくよ、やよい!」

やよい「いきましょう、春香さん!」


P(あれは…………!)




P(なんだ?)






春香&やよい「『団結』!!!」

今日の分終わりです
次で多分完結です
見てね

続き投下します

P(春香とやよいのペアは、試合を重ねるごとにどんどん息が合っていっていた)

P(同調出来るようになるのも時間の問題だろうとは思っていたが……しかし)

P(なんなんだこれ……同調じゃ……ない…………?)



真美「なんかよく分かんないけど、真美たちの同調の真似? 全っ然似てないよ!」

真美「偽者じゃ、本物の『一体同調』状態の真美のサーブは……」シュッ


真美「打てっこないかんねっ!」


スパコォォンッ


律子「! あのコース……どう見てもサービスライン越えるわよね」

愛「フォルトだよーーー!!!!」

あずさ「……と、思うでしょう?」


真美(いけっ!)


ギュインッ


涼「……サーブと同時に星型のオーラも飛ばして、回り込ませる」


ヴィンッ!!


やよい「!」


絵理「大きくオーバーするかのように思えたボールは、回り込んだ流星に跳ね返され……」


ドゥンッ


涼「自分の後ろから、サービスコート内に着弾する。これ、何度もやられたよね」

絵理「うん。あんなの、普通……打てない?」


真美「『リタ→ンスタ→』!!」

真(ほんと、驚かされるなぁ。こんなの初見じゃきっとボクにも打てない)

真(なのにやよいは……いや)


真(やよいたちは――――打つ気満々、って顔してる)ニッ



やよい(フレーフレー、頑張れ、私の足!!)

春香(やよいに……『スピード』の個性を!)


ビュンッ


やよい「たぁーーーーっ!!!!!」

ブンッ



パコォンッ!!



真美「うそっ!?」

響「後ろから追い付いた!?」

真美「しかも……速っ!」


ドゥンッ


P「イン! 0-15!」


伊織「アレに追いつけるほどのスピードをそのまま打球に乗せて打ったんだもの。そりゃ速いでしょうよ」

雪歩「しかも、ボールの進行と同じ方向に打ったってことは、真美ちゃんのサーブの勢いもそのまま利用したことになるよね」

雪歩「でもそんなスピード、どうやって……?」

律子「……」


真美(今のスピード、真美より速かったかも)

真美(なんで? なんであんなに速く……)



真美「……負けないよっ!!」

真美「いくよはるるん!」

真美(あれじゃダメなら……もっと!)

真美(今度は反応出来ないくらい、ハチャメチャにする!)


真美「だぁぁぁぁぁぁぁああああああああああっ!!!」ゴォォッ



ビュビュビュビュビューーーーーッ


絵理「! 星のオーラを、いっぱい……散りばめた?」

千早「まるでプラネタリウムね」


真美「『黎明』!!」


パコォンッ


春香「!」


ヴィンッ

ヴィンッ
ヴィンッ
ヴィンヴィンッ
ヴィンヴィンヴィンヴィンヴィンヴィンッ


真美「『スターライン』!!」



涼「ボ……ボールが星から星へ、四方八方に跳ね返されながら加速して……」

愛「目で追えないよーーーーーー!!!」


ヴィンヴィンヴィンヴィンヴィンヴィンヴィンヴィン

春香「……」


真美(今だ!)


真美「いっけぇぇぇええええええええ!!!!!」

春香「……」チラッ


ビュンッ!!

春香「そこっ!」ダッ


パコォンッ


真美「んなっ……!」

千早「返した!」

雪歩「あんなにあっさり……」


響(今、春香……完全に、目で追えてたな)

響「自分が打つぞ!」

響(確かめてみるか、今二人の間に何が起きてるのか)


響「『ブタ太ストレート』!!」


バゴォォンッ!!


涼「わっ……なんてパワー」

響(『オーバーマスター』状態のこれ、打てるか?)


春香(力の個性を、私に……)

やよい(フレーフレー頑張れ、春香さんの右腕!)


ムキムキムキッ


響「!」

千早「は、春香の腕が高槻さんみたい……いいえ、それ以上に……!」


春香「はぁああああああ!!!!」


ドゴオオオオオオオン!!!!



伊織「返したっ!」


真美(打たなきゃ……)ダッ


ギュイイイイイン!!


真美「うぉあぁぁぁああ……!」グググ


真美「うあーー!!!!!」パァン

響「……なるほどなー」


P「30-0!」

律子「そういうことね、春香……それが『団結』……か」

涼「ん、どういうこと? 律子姉ちゃん」

律子「あの二人、それぞれのオーラを繋いで一体化させてるのよ」

涼「オーラを……繋ぐ?」

律子「ええ。オーラで繋がっているなら、離れていてもそれを通して春香からやよいに『個性』を与えたり、やよいが春香を『応援』したり出来る」

律子「そうすることで、互いに最大限の強化をして打つことが出来るってわけ」

涼「なるほど、それは強力だね」

絵理「……多分、それだけじゃ……ない?」

涼「え?」

律子「ご明察。オーラを繋ぐことによる利点は他にもあるわ」

律子「春香は個性をオーラ内で自在に移動させられる。つまり、『奪う』や『与える』と言うより、『流動』させられるのよ、個性を」

涼「……どう違うの?」

律子「オーラによって個性を奪い、それを個性エネルギーに変換し、そのエネルギーを力やスピードみたいな『新たな個性』に変換して使う、ってのが春香のプレイスタイルなんだけど」

律子「その『変換』の作業を省略して個性をそのまま移動させることで、それに使う時間も体力も大幅に削減できるのよ」

涼「ああ、なるほど!」

律子「つまり今のあの状態なら、春香の洗練されたオーラコントロールを、やよいのものすごい動体視力や身体能力を、瞬時に片方に集めることが出来るってわけ」

律子「言うなれば疑似的な亜美真美の『一体同調』ね。テニスは同時に打つことは無いから、その時その時で打つ方に個性を移せばある程度は実現できるわ」

律子「あの二人にはこんな奥の手があったのね、伊織」

伊織「……知らないわ、私、これ」

律子「……え?」

伊織「『団結』なんて、知らない。見るのも初めてだし、やよいからも聞いてない」

伊織「隠してたわけじゃない。多分あれ……この場で編み出したのよ」

律子「この場で……ですって?」

伊織「私も今驚いてるわ。あの二人、まさかここまで……」

伊織「第一、オーラを繋いで一体化させるですって? 普通なら、やってみてもオーラが反発し合うか片方に支配されて終わりよ」

伊織「よっぽどオーラ同士が馴染まないとそんなの出来るわけがない。なのに……」


春香「この調子でいこう、やよい!」

やよい「はい!」


伊織「あの二人は……この土壇場で……」

響「……」

響(春香もやよいも…………真美も……まったくもう、全然分かってないぞ)

響(ダブルスだろうとなんだろうと、王者は常に一人。王者は孤独。王者は孤高)

響(一人で全部出来てこそ完璧なんだ。補われるのは、そこに穴があるからなんだぞ)

響(他人に頼らなきゃならないような力なんて……強いわけがないんだ)

響(本当なら……この試合も……)


真美「ごめんねひびきん、次は決めるよ!」

響「……あ、うん。大丈夫、なんくるないさー!」

真美「うんっ!」

響「……」




真美「でやぁー!!!」



パコォォォン


パコォンッ

パコォンッ

パコォンッ


P「30-15!」

P「40-15!」

P「40-30!」



律子「真美はちょっとキツそうだけど……響はあの状態の二人にも決して引けを取ってないわね」

真「響はほとんど完璧だからなぁ。総合力で言えばここにいる誰よりも強いよ」

あずさ「……」


真美(ひびきんはやっばすごいよ。でも真美だって……いや……)




真美「真美たちだって!!」

パコォンッ

パコォンッ

パコォーンッ


律子(ある程度はラリーも続くようになってきたわね。でも……)


やよい「うっうーー!!!」



ドゴォォォォォォン!!!!!!



涼「強烈っ!」

貴音「力の個性と自己の応援による筋力強化……見事です」

響「っと……真美のとこか」キキーッ


律子(このパワフルな打球、さっきから真美は打てていない。真美のところが事実上の『穴』になってしまっている)

律子(さぁ……どうするの? 真美)



真美「いくよ、亜美っ!!」



真美「―――いっしょに、打とう!!!!」

亜美『おっけー!!』


律子「!?」

伊織「え……えっ!?」チラッ


あずさ「あらあら……」

亜美「……」


伊織(亜美はこっちであずさが支えてる。なら……)

伊織(あのコートにいる亜美は……!?)


律子「……オーラ…………でしょうね、あれも」

 律子『オーラによる具現化に大切なのはイメージ』

律子(……想像力という点で言えば、亜美真美ほど具現化向きな人もいないわね)

律子(なるほど、そうきたか。真美のオーラで―――亜美を具現化するとはね)


真美(亜美と真美はお互いスミズミまで知り尽くした深~い関係だもん)

真美(だから亜美のイメージなら、完全に実体化させられる!)

真美「今度は、返す!!」


亜美真美「『トゥインクルジェミー』!!」ブンッ


春香(! 二人同時に……)



ドゥーーーーーーーーーン!!!

真美「やった……!」


春香(二人同時に打って威力二倍……単純な計算だけど、タイミングを完全に合わせないとそんなのとても実現できない)

春香「やるね、真美。でも……」


春香「ちょっと遅かったみたいだね!」


やよい(そろそろ、溜まってきたかなーって)グッ


バチバチバチ……!


真美「あっ……!」

響「そっか、やよいにはこれが……」


律子「……“種”、やっぱり仕込んでたのね」

伊織「ラリーが続き、傷付くたびに自己応援で強くなるオーラ」

伊織「それを起爆させた時の威力なのすごさは、真戦ラストを見れば誰もが認めるでしょ」

伊織「しかも今回は春香のオーラコントロールを受け継いでる分、更に強くなってるはずよ」


真美(せっかく……返したのに……)



カッ―――――――――



やよい「『キラメキラリー』!!!」


ドキューーーーーーーーーーーン!!!!


真美「あ……うあ……」

響「どいて! 真美!」バッ

真美「わっ、ひびきん!?」



響「っぐ……」グググ

響(くそっ……ここまでの威力になられちゃ……)

響「うぎゃーーー!!!!」



ドゥンッ


P「―――ゲーム! チームE! 1-2!」

春香「ぃよっし!」

やよい「いぇい!」


真美「うう……」

響「……」


美希「あの響たちを相手にここにきて一ゲーム取るなんて、春香たちもなかなかやるの」

美希「流石この美希を倒したチームなだけはあるって思うな、うんうん」

千早「感心するのは早いんじゃない?美希」

美希「あ、千早さん。どゆこと?」

千早「春香たち、少なくともあと一ゲームは確実に取るだろうから」

美希「? あと一ゲームって……次のゲーム?」

美希「たしか春香のサーブだよね。なんかあるの?」

千早「ええ、春香の……必殺技がね」

伊織「!」

伊織「もしかして、やよいも終盤手伝ってたっていう、アレ?」

伊織「結局最後まで完成しなかったって聞いたんだけど」

千早「ええ、未完成よ」

伊織「ちょっと、そんな中途半端なので大丈夫なわけ? 完成してもないものを本番で使うなんて……」

千早「未完成だけれど……真、雪歩、私、そしてやよいの誰も返せないサーブなら打てるわ」

伊織「……え?」

伊織「アンタや雪歩はともかく……あの真ややよいも、返せない……ですって?」

千早「そうよ。それが、春香がこの一ヶ月全てを費やした必殺技ーーー」



春香「……」トーン トーン

パシッ


春香「見せてあげるよ……私の」




春香「『パーフェクトサン』!!」

響(パーフェクトサン……? 直訳で、えと、完璧さん……?)

響(この自分を前にして『完璧』を名乗るなんて、片腹痛いぞ)

響(自分こそが完璧なんだ。そうじゃなきゃ……ダメなんだ)

響「やっぱり、この試合……負けられない」

響「……」チラッ

真美「……」



春香「ふぅ……」


 千早『オーラを増大させるコツは、「想い」と「膨らむイメージ」よ。頭の中の小さな風船に、想いの空気を吹き込むイメージね』

 春香『想い、って?』

 千早『私の場合、決勝に行くという春香との約束。それを守らなきゃって想いがオーラを膨らませた』

 千早『春香にだって、譲れないものはあるでしょう? その想いをオーラに込めて、膨らませるのよ』

 千早『膨らむイメージに関しては、いつも皆やってると思うけど、胸が、こう……ね? 妄想ってわけじゃないけれど、ほら、するでしょ? そういう想像』

 春香『うん……え? ん、まぁ……やってみるね!』



春香(プロデューサーさんとデートしたい……皆の協力を無駄にしたくない……)


春香(最後まで、このテニスを、全力で―――――楽しみたい!!)




ゴオオオオオオオオッ!!!

律子「!」

律子「なんなの……あの、巨大なオーラ」


春香「……」


 雪歩『えっと……なんというか、ドリルをイメージするの』

 雪歩『作るのは球体みたいだけど、回転に関してはまず、円錐のイメージが大事だと私は思ってて、それで……』

 雪歩『とにかく、広いところから段々狭まって収束してく回転というか……それを応用して……あうう、わ、分かりにくくてごめんなさい~!』

 春香『わっ、雪歩、コートに穴掘っちゃだめだって!』


春香(……オーラを……回転させる!)


ギュルルルルルルルルルイイイッ


貴音「なんと……オーラが回転し……留まり……」

貴音「球体に……!!」



春香(そして……!)


 真『熱の個性、それをボールに込める前に……ボールそのものが強くなくちゃ話にならない。耐えられないからね』

 真『春香、手、出して』グッ

 春香『ん、こう?』グッ

 真『だーんっ!』シュッ

 春香『わっ』コツン

 真『……今の感覚を、忘れないで。さ、やってみよう!』


春香(……結局よく分からなかったけど、真から託されたもの、それは……)


春香(誰にも負けない、染まらない―――強い、黒!!)



ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

真美「! まこちんみたいな、黒いオーラ……!」


やよい(『応援』します、春香さん)ゴォッ

やよい(全力、ぶつけちゃってください!!)


春香「さぁ……いくよ!」

春香「これが!! 私の!!!」ダッ



春香「私たちの!!!!」ビュンッ




春香「『パーフェクトサン』!!!」




バオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!




真美「!」


メラメラメラメラメラメラメラメラ


真美(これ……やばい!)


真美(ってか熱い!!!)


真美(ボールを囲むバカでかいオーラが熱く燃えてて……こんなの……)


真美「……ッ!」サッ



ドゥンッ


P「インッ! 15-0!」



真美「……」タラリ

ジュウウウウウウウ


真美(近付くこともキツいっぽいよ……!)

P(ふむ……オーラそのものに熱の個性を込めた、か。ボールの周りをそれで囲ってしまえば、近付くこともままならんだろう)

P(あれほどの強大な熱、一部分にしか込められなかったかもしれんが、回転によって全範囲に行き渡らせてるってわけか)

P(あの技の欠点は集中してゆっくりと時間をかけてオーラ操作をしなきゃならんとこだが、サーブならそこは問題ない)

P(なるほど、確かにサーブとしては、これは……完璧な必殺技だ)


真美「うあうあ~、ひびきん! あの技チョーやばいっぽいよ! あんなの……」

響「真美」

響「ちょっと……黙っててくれるか?」

真美「え……」


響(……熱、厄介だな。だったら……こうして……)


真美「……」



やよい(春香さんの体力、回復して……と)

春香(ふう……やっぱりすごい体力使うけど……やよいのスタミナ、すごいなぁ。尽きる気がしないよ)


春香「……響ちゃん!!」

響「!」

春香「私のこの技は、皆で協力して出来た技」

春香「一人じゃなく、皆で完璧! それが私たちの力なの! だから……」

春香「響ちゃんは一人でも完璧なのかもしれないけど……私は一人じゃダメダメかもしれないけど……」

春香「私たちは負けない! 勝負だよ、響ちゃん!!!」


響「……ふぅん」

響「望むところさ!!」

春香「『パーフェクトサン』!!」


バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!


響「はぁっ!!」

ゴオオオオオオッ


律子「! 響、オーラで自分をコーティングして……」


響(こういうの、あんまりやったことないけど……どんなに熱くたって、完璧な自分なら耐えられる! 耐えてみせるさー!)


響「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

ボシュッ


律子「オーラの中に……入った!!」


響「ッ……!?」メラメラ


響(中は……なんて熱さなんだ……オーラのコーティングも、もう……限界が……)

響「ぐっ」バッ


美希「あ、響出てきた」


ドゥンッ


P「インッ! 30-0!」


律子「あの響でも打てないなんて……」


響「はぁ、はぁ…………くそっ」

響(コーティングしてもあの熱さだなんて……あれじゃまともにラケットも握れないぞ)

響(自分は……負けちゃう、のか……?)


響(嫌だ…………!)



貴音「……」

貴音「そろそろ、ですね」



春香(よし……よしっ!!)

春香「どんどん、いくよー!」

やよい「おー!」


真美「……」

真美(あんなの……打てるの……?)

真美(やばい……)

春香「『パーフェクトサン』!!」


バオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!

真美(はるるんのサーブ、正直打てる気がしないっぽいよ……)



真美「……でも!」


真美「だからって……諦めるのは、なんか違うっしょ!!」


ゴオオオオオオオッ

ボシュッ


雪歩「真美ちゃんまで、コーティングして、響ちゃんと同じことを……!」

伊織「いやいや、無理でしょ、普通に。あの響でも無理だったのに……」


真美「うぁ……あああああっ……」メラメラ

真美(あつ……すぎ…………)メラメラ

真美(ッ……ボール、は…………?)メラメラ


ドゥンッ


真美(あ…………)



P「イン! 40-0!」


伊織「ほら見なさい」

あずさ(でも……決して引かなかった)

あずさ(心は負けてなかったわよ、真美ちゃん)


真美「うう……あちち…………ごめんね、ひびきん……打てなかった、よ……」

響「……」ゴゴゴ

真美「ひびき……ん……?」


響「ふぅー…………」ゴゴゴゴゴ

春香「さぁ、これでこのゲームは終わりだよ、響ちゃん」

春香「『パーフェクトサン』!!」

バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!


響「…………」


響(春香のこのサーブ……本当に完璧なのか……?)

響(自分よりも……? 仲間、頼ってるのに…………?)


  『王者とは常に孤独!孤高!! 仲間に頼るなど、弱さの証! ナンセンス!』

  『響ちゃん、君は一番でなければならない。故に、勝ち続けなければならない』

  『一人で……全てにだ!』


響(認めない……認めないぞ……!!)

響(自分こそが、一番……自分こそが…………)



響(王者だ!!)



響「うがああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」



カッ―――――――――




バシュッ



バドゥウウウンッ!!!!

春香「!」

やよい「!!」


P「……40-15!」


やよい「今の……って……」

真美(出た……)

響「はぁ、はぁ……」

響「どうだ!! 自分! 自分は! 自分が! 自分こそが!!」

響「『完璧』なんだ!!!!」



絵理「あの熱量に耐えられるほどのオーラコーティング……そのままリターンエースに持っていく返球力……」

絵理「あの響さん、さっきまでより、さらに……格段に…………強い?」

美希「あの姿……」

美希(あの時と、同じ……)

律子「まさか、『命令』のオーラで更に自己強化を? でも、あれ以上……」

貴音「……響のオーラは、『命令のオーラ』等では断じてありませんよ、律子嬢」

律子「……え?」

貴音「『命令』によりボールを操ったり、自己を強化することは、彼女のオーラの支配力の成せる業。力の一部に過ぎません」

貴音「響のオーラは、野獣そのもの」

貴音「全てを支配する、『百獣の王』なのです」

律子「百獣の……王?」

貴音「はい。普段はその力の大半は眠っているのですが……響が本気で『負け』を意識した時、それに抗おうという強き心が、眠れる獅子を目覚めさせるのです」

貴音「人間としては成し得ない野獣の如き運動能力を持ちながら、我を失うこともなく心は人で有り続ける」

貴音「今の響のこの力こそ、この状態こそ、響が最強たる所以。全てを制す王者の境地」

貴音「そう、その名も」



貴音「『うがの境地』!」

律子「うが……?」

貴音「はい、我を捨てず、牙を有する。有我であり、有牙なのです」

貴音「本来ならばあの境地に至るには、相当に追い詰められなければならなかったでしょう。それこそ相手側のマッチポイントになるまで……」

貴音「……しかし」チラッ

美希「?」

貴音「響は一度、その扉を開いています。開き方を体で覚えたのです」

貴音「そのおかげで、このタイミングでこの境地に至ることが出来たのでしょう」

律子「……へぇ」

貴音「さぁ、これからですよ律子嬢」

貴音「王者のテニスは!」



響「はぁ、はぁ……」

 『響ちゃん……君には王者の資質がある』

 『王者には時に、非情な判断が必要となることもある』

 『良いか? 最優先すべきものは……己の勝利だ』

響「……」

響「真美……」

真美「!」

響「次、打ってくれ……」

響「返すだけでいい……返してくれさえすれば、後は自分が……だから」

響「打ってくれ……」

響(でないと……自分…………)

真美「……」

真美「うん……」

春香「……初めてだよ、私のあのサーブを返した人は」

春香「でも、響ちゃん一人打てるようになったからって、こっちの優位は変わらないよ」

春香「これで決める!!」スッ


真美(分かってるよ……真美が足手まといってことっしょ)


春香「『パーフェクトサン』!!」


バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!


真美(真美だって……ひびきんに負けないくらい、強くなった)

真美(と……思ってたのに……)

真美「……」

真美「………………ッ」



真美「ぬおーーーーーーーーー!!!!!」



ゴオッ


律子「! なんてオーラ量」

あずさ「意地でも打ってやるぞ~、って感じね~」


真美(ダメダメ! こんなんじゃ……優勝しても意味ないよ!)

真美(ひびきんのペアだからじゃなくて、真美だから優勝出来たって思われるくらい活躍してやるって決めたんだから!)

真美(一回もこのサーブ返せないで、そのせいでゲーム取られちゃうなんて……)

真美「ぜーったい、嫌だかんね!!!!」

ボシュッ


真美「……ボール」メラメラ


真美「そこっ!!」メラメラ


ダッ

真美「うおおおおおおおっ!!!」メラメラ


ドッ――――――


真美「!」メラメラ

真美(この……ボール…………)メラメラ

真美(重っ……!!)


春香「……オーラで作られた太陽の核となるボールには、黒いオーラが込められてる」

春香「熱に耐えるためだけのオーラじゃない。普通の力じゃ打てないくらいの威力が、そこにはあるの」

春香「だから……オーラのほとんどを体のコーティングに回して、それでも防ぎきれないほどの暑さでまともにラケットを握れてない今の真美には―――」

春香「パーフェクトサンは、打てないよ」



バシィンッ



真美「――――――あ」



カラァンッ



P「ゲーム! チームE! 2-2!」


やよい「うっうー! 追いつきましたー!」

真美「あ……ぁう……」

真美(ダメだった……かぁ)

真美「うう……ごめんねひび」クルッ


真美「!」


響「…………」

真美「ひび……きん?」

響「真美……」



響「おつかれ!」



真美「……」

真美「え……?」


響「ここまでよく頑張ったな。後は自分に任せて!」

真美「えっと……どういう」

響「だからさ……」


スッ



響「真美はあっちで休んでていいぞ」

真美「!?」


真美「ちょっ……言ってる意味が」

響「自分完璧だから、一人でもなんくるないさー。安心して見守っててよ!」

真美「だかっ……え? 冗談、っしょ?」

響「冗談じゃないって。最後、自分のサーブだし、真美が絶対打たないとダメなんてことないよね? だったらそれでもいいはずでしょ?」

真美(……ダメだって…………真美は、活躍して…………ムネ張って、優勝しなきゃなのに…………)

響「あ、もちろん賞金は山分けでいいから心配しなくていいぞ?」

真美(こんなところで……終わりなんて…………そんなの…………)

真美「待ってよ……真美、まだやれるのに……なんで」

響「そうしなきゃ……」

響「勝てないかもしれない」

真美「!!」

響「真美が悪いわけじゃないんだ。でも、完璧な自分が全部打つのが一番良いに決まってる。だから……」


響「勝つために、休んでてくれ」


真美「う……あ…………」

真美(嫌だ! 真美だって最後までやりたい! ふざけるなー! こんゆなオーボーが許されてなるものかーー!!)

真美(……言いたいことが、声に、出ない)

真美(認めちゃってるもん……今んとこの失点、ほとんど真美のせいだって)

真美(だからって、こんなの………………)


真美(でも………………)


真美「う……ううっ…………」プルプル



スタ スタ スタ ……

春香「!」

真美「……」スタスタ

やよい「真美が、コートの外に……?」

春香「……なんのつもり? 響ちゃん」

響「自分はいつだって、勝つつもりさー」

やよい「流石に、二対一じゃ負けないです!」

春香「いくら強くなったからって、ちょっと私たちを舐めすぎじゃないかな?」

響「……わかってないなー、二人とも」

タタッ

タタッタッタタッ


タタタタタタタタタタタッタタッタタタタタタタタタ


春香「!」

やよい「あれは……!」

やよい「たしか、なんくるステップ……?」

春香(響ちゃんが……いっぱい……!)



響「いらないんだ、ペアなんて元々。このコートくらい、完璧な自分なら全部カバー出来るんだから」

響「舐めてる? むしろ逆だぞ。認めてるからこうするんだ」

響「自分に打てないボールはない。ここからは全部自分が打つ。つまりこれが……」

響「絶対に負けない、最強のフォーメーションさー!」


春香「……それが最強なのかは私たちには分からないけど」

やよい「でも、これだけは言えるかなーって」


真美「……っ うぅ……っ」

春香「そんなの……」



春香&やよい「「最悪のフォーメーションだよ!(です!)」」



響「……だったら、決着をつけよう」

響「自分と春香たち、どっちのやり方が正しいか」



響「この……正真正銘、最後のゲームで!!!」

ここで一旦終わりです
次こそは完結させます
よろしくお願いします

おつ
お姫ちんのオーラって結局どういう効果だったんだろ

続き投下します
完結編なだけあって無駄に長いですが出来れば最後までお付き合いください

>>353
カロリーを大量に消費してすごい面妖な球を打ちます
相手は最悪死にます

美希「……ねぇ、貴音」

貴音「なんですか? 美希」

美希「響、強くなったんだよね? ここにいる、誰よりも」

貴音「ええ。王者たる力を、確かに身に付けました」

美希「じゃあ、なんであんなに……」

美希「不安そうな顔、してるの?」

貴音「……」

貴音「それは……響が、響だからでしょう」

貴音「そう、本来の響は……そこにあるのです」

美希「……?」


やよい(どんなサーブ打ってくるか分からないけど……意地でも打たなきゃ!)

やよい「いつでもおーけーです! 響さんっ!」

響「じゃ……いくぞ」

響「よっ!」

スパコォンッ


やよい(やっぱり速……)スッ

バインッ

やよい「!?」

雪歩「イレギュラーバウンド!」

律子「当然、狙ってやってるわね」

やよい「なんのっ!」ダッ

律子「で、こっちも当然のように追いつくか……凄い勝負だわ、ほんと」

やよい(よしっ、打てる……)ブンッ

ギュワァンッ

やよい「!!」

愛「貴音さんのサーブみたいに、ぐにゃぐにゃに曲がった!!!」

やよい「ッ……うー!」クルッ


バゴォォンッ


伊織「返した!」

響「ラッキー、目の前だぞ!」

響「ま、どこに打たれても目の前だけど」フフン

春香(あの分身の術みたいなの、厄介だなぁ)

響(隙間、見えた!)

響「そこだ!」


ズキュウウウウウウウウウン!!!!


P「イン!」


やよい「うっ……!」


伊織「レーザービーム……舐めた真似してくれるじゃない」


響「見たか? 自分、一人でなんでも出来るんだぞ!」

響「これが自分のテニスだ!! あっはははー!」

春香「本当に強いね。うん」

やよい「でもまだまだ、これからですっ!」

春香「もちろん! よし、次!」

響「……」

響(なんだろ……この感じ)

響(うがーっ、惑わされるな! 自分は完璧なテニスをするだけ)

響(次は一発で決める! あいつらの心、折っちゃうぞ!)


P「15-0!」


響「くらえ! 『ハム蔵サーブ』!」


ヂュイッ


春香(普通の低弾道サーブ……跳ね際をすくい上げるように)

春香「こう!」


響「……」ニッ


春香「!!?」


響「―――『TRIAL DANCE』」

ギュルイイイイイイン


春香(なんて回転……! ボールがラケットを上って……)


ギュルイイイイン


ビュンッ

春香「くっ」サッ


P「30-0!」


響「ふっふっふ」


響「どうだ! サービスエースだぞ!! ギブアップしたくなったろ!」


春香「ごめんやよい。やられちゃった」

やよい「ドンマイです! 次いきましょう!」

春香「うん! 次のレシーブの時は私が……」


響「……」

響(なんでだ……)

響(圧倒的な力の差、見せ付けてるのに……)

響(なんであの二人……!)


春香(私とやよい、心で通じ合ってるわけじゃないけど……きっと今、同じこと考えてるよね)

やよい(私たちに出来るのは、これくらいしかないかなーって)


春香(絶対……)

やよい(最後まで……)


春香&やよい((諦めない!!))

響(強がってるだけに決まってる。完璧な自分に勝てる方法なんて、あるわけがないんだ)

響「いくぞ!」

響「『ハム蔵サーブ TRIAL DANCE』!」スパコォンッ


春香「はぁぁぁぁぁああああっ!!!」

ブオンッ


響(個性を奪うオーラ? やよいと繋がったり色々してるのに、まだそんなことする体力あるのか)

響「無駄だぞ! そんなので奪い切れる回転力じゃない!」

やよい「えいっ!!」


ギュルイイイイイイイイインッ


やよい「ううーっ!」クルッ


バシュンッ


響「! 角度を変えて、受け流した!」

春香(回転、利用させてもらったよ!)

やよい(これでどうですか、響さん!?)

響「なるほど……奪ったんじゃなく
、足したんだな。『回転』の個性を、更に」

響「でもな……それでも無駄なんだって。自分、完璧だから。そんなボールも、普通に問題なく返せるんだ」

響「何をしようと、自分にはチャンスボールにしかならないのに……」

響「分かんないかなぁ!」


響「『ブタ太ストレート』!!」


ドゴォォン!!

春香(きた……パワーショット!)

響「返せるよね? ギリギリ」

やよい「はああああぁー!!!!!」

ムキムキムキッ



ドゴォォォォォォォォン




やよい「う……ぐっ……ぅう」グググ


やよい(パワーを全部腕と足に持ってきてるのに……それでも……)


やよい「っうぁ!!」



ポーーーンッ



やよい(あ!)

春香(やばっ、上げちゃった!)



響「お遊びはここでおしまいってとこを見せてやるぞ!」ダッ


響「『うさ江スマッシュ』!」ブンッ



春香「やよい、下がって!」タタタ

やよい「は、はい!」タタタ


響(かかったな!)

響「『ワニ香バイト』!」



バシィッ

春香&やよい「「!」」


やよい(ふぇ、フェイント!?)

春香(ボールがネットに食らいつくように曲がって……!)



絵理「コードボール……!」



響「普通にスマッシュ打っても決まってたけど……自分、こういうことも出来るんだぞ?」

響「何故なら完璧だから!」


律子「これは二人の今までのすごいスピードのデータを考慮しても……届かないわね」

響(さぁ、絶望しろ! そして認めるんだ!)

響(自分が最強! 誰も自分にはかなわないんだって!)


春香「うおおおおおおおっ!!!」

響「!」

ムキムキムキッ



春香「やよい、お願い!」ブンッ

やよい「行ってきます!」


ビュンッ


響(投げた!?)

やよい「とどけーーーー!!!!」


―――トンッ トン
ゴガッ

やよい「あうっ」

ズザーーーーーーッ


響「……」タラー

P「……40-0!」



やよい「ああっ、惜しい~~っ!!!」

春香「もうっっっっちょっとだったね!!」


響(あと一点で終わりで……もうこっちの方が強いって分かってるはずなのに……なんで……)

響(なんで折れないんだ……!)


春香「大丈夫、うん、まだ負けてない」

春香「諦めないかぎり、チャンスはくる! 大事なのはやめないことと諦めないこと!」

やよい「はい! 終わるまで、絶対諦めません!!」

春香「いくよー! チームE、ファイト~~~!!」


春香&やよい「「おーーーーーーー!!!!!!」」


響(なんなの、これ……勝ってるのに……あんまり、勝ってる気がしないぞ……!)


真美「……」

真美「諦め……ない……」


真「熱いなぁ。春香もやよいも……へへっ」

真(これだよ……この感じだ……この胸に湧き上がってくる気持ちは…………)

真(何者にも負けない熱い心……完璧な、太陽……!!)

真(うん……今なら、きっと…………)


真「春香ぁ!!! やよい!!!!」




真「『太陽』を、心に!!!!」

春香&やよい「「!」」


春香「……」


 春香『未完成?』

 真『そう、パーフェクトサンにはまだ先がある』

 雪歩『ま、真ちゃんでも打てなかったあのサーブが、まだ強くなるの?』

 真『サーブとしては十分だよ。でも、サーブが全てじゃない』

 真『作り上げた太陽を心に込めるんだ。それが出来れば、パーフェクトサンは完成する』

 真『やってみて!』

 春香『う、うん……』

 春香『心に……ってあっつ!! 無理! こんなの無理だって!!』

 春香『胸焼けってか! 胸焼けってか!!』

 やよい『は、春香さん落ち着いて!』

 真『……まだ、無理か』

 春香『無理だよぉ!』グスッ

 真『でも春香、これだけは忘れないでほしい』

 真『心が本当に熱くなったら、もう一度試してみて。きっとその太陽は、春香自身も驚くほど馴染んで……』

 真『驚くほど、強くなれると思うから―――』


やよい(諦めない気持ち、負けてたまるかーって気持ちがあれば、人はどこまでだって熱くなれる)

やよい(そういうの―――)


 やよい『ッ……まだまだぁー!!!』


やよい(この一ヶ月で、たーっぷり学んだかなーって!)メラッ


春香(心が、ものすごく熱い。試合を続けるうちにだんだんと熱くなっていってたのは分かるけど……ここまで熱くなれた理由は、それだけじゃない)

春香(負けられない理由が―――)チラッ

真美「……」


春香(一つ―――増えたから)メラッ

春香「やよい、覚悟は良い?」

やよい「はい……お願いします!」


響(何をしようとしてるんだ? 心に太陽……真は一体、何を……)


春香「いくよ……」

春香「えいっ!!」ゴォッ

やよい「……」スゥゥゥ

春香「……」スゥゥゥ


春香(太陽が体に馴染む……この前試した時と、全然違う)

やよい(熱いけど、平気。なんだか太陽になったみたいかも)

春香(フグに自分の毒が効かないみたいに、太陽は自分の熱さなんて気にならない)

春香(……そういうことだったんだね)

やよい(私たち自身が太陽になる。それが本当の……)


春香&やよい「「パーフェクトサン……!!」」



ゴオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!



響「な、なんだ……!?」


絵理「……!!」ピピピ

絵理「戦闘力が……上がってる? すごい勢いで……!」


響「また……強く……どうして…………」

響「ッ……だからどうした!!」


響(あと一点で勝ちなんだ……負けるはずがない!!)

響「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」


ゴオオオオオオオオオオオオオオオッ


絵理「! 響さんも、強く……」


響「っさーーー!!!!!」



ドゴォォォォォォォン


春香「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



バゴォォォォォォン



ドゴォォォォン

バドゥゥゥゥン

ンバァァァァァァアッ!!!!



律子「す……すごい戦い……!」

伊織「もうこれ、どっちも実力はトップアイドル級なんじゃないの!?」


響(見つけた……あそこなら、届かない!)


響「でりゃあああああ!!!!!!!!!」



バシュウウウウウン!!!

春香(……このコース)

春香(アウトラインギリギリ……!!)


春香「やぁっ!!」

春香(『まっすぐ』の個性!)

ブオンッ

春香「やよいっ!!」


やよい「はい!!!!」


ムキムキムキッ



やよい「ええええええええええいっ!!!!!!!!」ブンッ


ビュウウウウウウウウウッ


ドゥンッ


響「!」

響(そんな……!)



P「―――アウト! 40-15!」

涼「い、今……」

愛「あれ、あたしの技です! 風をバーンッてやってアウトにする!」

律子「……それだけじゃなく、春香のオーラで飛距離を伸ばしたわね」

律子(パワー、スピード、テクニック……それだけじゃない。判断力や動体視力、全てが強化されている)

律子「一体なんなの……パーフェクトサンって……!」

真「……ボクの大好きな元プロテニスプレイヤーがね、言ってたんだ。『もっと熱くなれよ!』って」ザッ

真「テニスにおいて、熱さこそが強さ。だから、パーフェクトサンは最強なんだよ」

律子「意味が分からない……もっと論理的に」

真「ボクにそれ、求める?」ハハッ

律子「……いえ、なんでもないわ」

真「理屈じゃないんだ。気持ちの問題なんだよ」

真「でも……それだけで、人ってこんなにも強くなれるんだ」

真(頑張れ、春香、やよい)

真(そして……)チラッ



響「アウトライン際は避けよう。うん。同じミスはしない」

響「……いくぞ!」

ヌゴォォォォォォンッ!!!!

ルァァァァアアアッ!!!

ポーーーンッ


ガッ


ドバァッ!!


ドドドドドドドドッ


ババババババババッ



響(ッ……やっぱり、二人とも明らかにレベル上がってるぞ……)

春香「えええええええええええい!!!!!!!」


バゴォォォンッ


響「だからどこに打っても自分が……!」


ガクッ


響「ッ……」ヨロッ



響「らぁっ!!」パコォンッ



やよい(今……)


やよい「もっともっと……打ち続けましょう!!」

春香「うんっ!!!」

響(この状態で全力のなんくるステップ使い続けてると、こうなるんだな)

響(こんなの、初めてだ。とにかくすぐに決めないと)

響(決めればそれでおしまいさ! 決めれば……)

響(! よし! がっつり空いてる! あのスペースに打ち込めば……)


響「ぬあぁぁあぁあああ!!!!」



バキュウウウウウウン

ダッ


響「!」


春香「コートをよく把握してる響ちゃんなら、そこに打つよね」

響(読まれっ……いや、誘導、されたのか!?)


やよい「ここしか……ないかなーって!」


ムキムキムキッ

カッ―――――――――


響(あの技は……!)


春香「いっけぇぇぇええ!!! やよいいいいいい!!!!!!」


やよい「『キラメキラリー』、いっくよーー!!」




ドキュウウウウウウウウウウン!!!

響「うおおおおおっ!!!!」


ガッ―――――――――


響(自分は……完璧で……)グググ

響(この状態になったら、もう……打てない球なんてない)グググ


響(のに……!!)グググ


やよい「その打球には、私たちの思いがいーっぱい詰まってます!」

春香「私たちの一打一打がパワーになって、その一発に集まってるんだよ!」

やよい「一人で戦ってる響さんに……この『思い』は打てません!!」


響「ぬっ…………」ビリビリ




響「っくああああああああ!!!」




バシイイイイイッ



P「40-30!」



春香「やっ……」


春香「たぁーーーーーー!!!!!」


やよい「うっうーーー!!!! やりましたっ! 春香さんっ!!」



響(こんな……)

響(こんなはずじゃ……)

パコーーンッ

バゴォォォンッ


響「ッ……」ガクッ


ドゴォォォン

バァァァアアアン


響「ぁぐ……ッ」ギリッ



律子「……見て」

伊織「ええ」

律子「さっきまで20人はいた響の分身が……7、6、5……みるみる減っていくわ」

伊織「当然よ。あんな人間離れした動き、人間に耐えられるわけがないじゃない」

律子「まるで響の体力が尽きるまでのカウントダウンね。春香たちの体力も流石に限界に近いみたいだけど、それでも……」

律子「どちらが先に尽きるかは……火を見るより明らかね」


響「はぁ……はぁ……っ」


響「うお おおお おぉおおおおぁぁあ!!」


 『強くありたくば、孤独であることだ』


響(孤高……)


 『ともに頑張りましょう。高みを目指して……』


響(団結……)


響(自分は…………)


響「………………」


響「!!!!」



ガクッ

春香(! 響の分身が、ついに……)

やよい(消えた……!)


やよい「今ですっ!!!」


バゴォォォンッ



響(――――――あぁ)

響(…………届かないな、あのコース)

響(というか、もう―――動かないや、足)

響(情けないな……負けちゃうのか)

響(自分、完璧なんかじゃなかったんだな……)

響(真美、怒ってるかなぁ? こんなことになって)チラッ

響(あ……さっきまでそこにいたのに、いない……)

響(そりゃ、そうだよね……あんなこと言われたら、心折れて帰っちゃってもおかしくないぞ)

響(……悪いことしちゃったなぁ)

響(……)

響(春香……やよい……)


響(悔しいけど、この勝負……)ヨロッ




響(自分の……負けさ――――――)



ドサッ


 





真美「『ワンダリングスタ→』!!!!!」





響「!」


ビューーーーン




ギュルイイイイイイイイン!!!





響「なっ……!」


春香「……ははっ」ニッ

やよい「真美……!」




春香「やよい! 気を抜かないでよ!」

やよい「はい!」ダッ


やよい「ここからが本番……ですよね!!」



パコォンッ

響「ま……真美……?」

真美「んっふっふ~、真美、炊飯!!」


真美「体力満タンだし、ノンストップでいくかんね!!!」



バゴォォォンッ

チュドーーン

ドギャァァァァァァンッ



律子「えっ……どうなってるの……?」

律子(真美があの状態の二人に、対抗出来てる……?)

真「へへっ……やっぱり、あのまま大人しく終わる真美じゃないよね!」

雪歩(炊飯じゃなくて推参だよ真美ちゃん……!)


響「真美……なんで……」

真美「……そんなの、決まってんじゃん」

真美「勝ちたいから!!」ブンッ

響「!」

バゴォォォンッ


真美「真美は負けられない! 真美のためにも、亜美のためにも、あとついでにひびきんのためにも……」タタタッ


真美「兄ちゃんのためにもね!」


パコオオオオンッ


響(プロデューサーの……ため……?)


真美「一度は諦めかけたけど、全然諦めないはるるんたちを見てたら、心に響いたっていうか……」

真美「真美もメッチャ熱くなってきたんだよ!!」

メラッ

絵理「!!」


真美「真美も負けたくない! 勝ちたい! 優勝したい! ……だから、今なら言えるよ」タタタッ


真美「見てるだけなんて、絶対嫌だかんね!!! これ、ダブルスっしょ!」バゴォン

真美「ダブルスなのに、二人で一チームなのに……」


真美「なんで全然真美を頼ってくんないのさ!!! ひびきんのバカー!!!!」


響「!」

真美「もっと真美を頼ってよ! 真美を認めてよ!」


真美「仲間を!! 信じてよ!!!!!」


響「!!」

真美「どりゃーー!!!!」


ドキュウウウウウン!!!!


絵理「もしかして、真美ちゃん、今……」

真「うん……そうみたいだね」

真「太陽のサーブを真っ向から受けて……春香たちの熱い心に感化されて……」



真「真美の心にも……『パーフェクトサン』が……!!」



響「……人に」

響「頼ること……は……」

響「弱い……こと……で……?」


 春香『一人じゃなく、皆で完璧! それが私たちの力なの!』

 やよい『やりましたっ!! 春香さんっ!!』

 真美『仲間を!! 信じてよ!!!!!』



響「…………」


春香「ええええええええい!!!!!」メラメラ

やよい「やあーーーーっ!!!!」メラメラ

真美「どりゃあーーーーーー!!!!」メラメラ



響「…………」

響「……ッ」





響(違う…………!!)

響(今、こんなにも熱い戦いを繰り広げてる三人が弱者で)

響(倒れて動けず、それを見てることしかできない自分が王者……?)

響(そんなわけ、ない)

響(じゃあ……今まで自分が信じてきたものは……)



春香(響ちゃんの体力は尽きた。このラリーを制せば、私たちの勝ちは決まる……)

春香「終わらせるよ、やよい!」

やよい「はい、春香さん!」


春香「私たちの力を、全部込めて……」

やよい「全力全開、最高の打球、打っちゃいましょー!!」


メラメラメラ


ゴオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!


千早「! 太陽が、もう一度外に……」

真「心の中でより熱さを増し、限界を超えたエネルギーを持つ太陽。これを決め手に持ってくるんだね、春香たち」

愛「なんか、こっちまで熱くなっちゃいます!」


春香「いくよ真美!! これが最後の!!」

やよい「最強の!!!」




春香&やよい「「パーフェクトサン!!!!!」」




ドグォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!

雪歩「太陽のオーラを纏ったボール……あれって、サーブ限定じゃなかったんだ」

真「まあ、サーブでしか使えなかったのは、あれを生成するのに時間がかかりすぎたからだから」

千早「なるほど……洗練された心の太陽を放出することで、時間的要因は解決出来たのね」

伊織「でも、今の真美に効くの? 真美も今、パーフェクトサン状態なんでしょ?」

真「どうだろうね。表面上の熱さばかりは……それより」

真「問題は……あっちじゃないかな?」


真美(おぉう……すごい太陽が飛んできたっぽいね)

真美(でも今真美、すっごいアツアツだかんね! ちゃんとオーラでコーティングもすれば、レシーブの時みたいにはいかな……)


真美「!!」


響「……」


律子「ちょっとこれ……倒れた響の方に……」

美希「このままだと、危ないって思うな」


響(……)

響(避けるのは……無理だな)

響(もうアレを防げるほどのオーラ、残ってないし……ここまでか)

響(仕方ないか。自分が弱かったってだけの話だもんね)

響(さぁ、真美……コーティングして、打っちゃってよ)

響(今の真美なら、耐えられる。自分は負けちゃったけど……)

響(真美は…………)





真美「うあーーー!!!!!! もぉーーーーー!!!!」




ボボボボボボボッ


響「!!」


真美「いくよっ!! 亜美たち!!!」

律子「なっ……!」

涼「亜美ちゃんが、いっぱい……?」

律子「コーティングせずに、全オーラを具現化に回したですって……?」


真美(後ろにいる亜美も、左にいる亜美も、右いる亜美も、前にいる亜美も、どこにいるどんな亜美も)

真美(完璧に想像できるし、具現化できる! ずっと一緒にいたんだもん!)

真美(だから……メッチャキツいっぽい賭けだけど、付いてきてくれるよね? 亜美!)


(……んっふっふ~)

亜美(当たり前っしょ、真美! 亜美たちの絆、舐めたらあかんぜよ!)

亜美(それにひびきんを見捨てて勝っても、全ッ然意味ない……だよね!)

真美(うん! さて、ミスったら真美たちまでオダブツっぽいし、タイミングばっちし合わせないとね)

亜美(合わないわけ、ないっしょ?)

真美(……だよね!)


真美「―――――はぁぁあああああああああ!!!」


真美「太陽なんて、吹き飛ばしちゃえ!!」

亜美『巻き起こせ!! 嵐!!』



ブ ン ッ !!!!!



亜美真美「『テンペスタ→』!!!!」

真美「うおおおおおおおおおおおっ!!!!!!」

亜美『いっけええええええええええええ!!!!』


響(ラケットの風圧で、オーラを……)

響(自分の……ために……?)



真美「吹き飛べぇぇえええええええええええええ!!!!!!」




ブォオオオオオオオオオオッ


カッ――――――




真「……はは」

真「すごいや……」

雪歩「太陽のオーラが……」


千早「消えた……!!」


春香「……そうくるなんて」






春香「信じてたよ、真美」


真美「!」

真美(ボールは……生きてる……!)

あずさ「……」

あずさ「もし、響ちゃんを見捨てて普通にコーティングして打っていたら」

あずさ「勝っていたのは、真美ちゃんたちの方だったのかもしれない」

あずさ「でも、オーラの全てを使って太陽のオーラを消し飛ばした真美ちゃんに」

あずさ「あのボールを返す術は……ないわよね」

あずさ(……占いによると、勝敗を決する鍵を握るのは―――真美ちゃん)

あずさ「今の選択が……運命の分かれ道だったのかもしれないわね~」


真美(やばっ……もうオーラ、スッカラカンっぽいよ)

真美(太陽のオーラを吹き飛ばしても、中に残ってるのは黒いオーラが込められたボール)

真美(こんな状態じゃ返せないって、分かってたはずなのに……)


春香「真美にはこうするしかなかったんだよね。だってあんなこと言われても、響ちゃんは……」

やよい「仲間だもんね!」



響(……)

響(気付けば、叫んでいた)

響(ごめんなさいとか、ありがとうとか、言うべきことはいっぱいあったんだと思う)

響(でも……頭の中ぐちゃぐちゃになって、何が正しいのかよく分かんなくて)

響(自分の目からは、涙が出てきて)

響(自分の鼻からは、鼻水が出てきて)

響(自分の口から出てきたのは……この言葉だった)




響「『お願い』だ……!」ポロッ



響「勝ってくれぇ!!! 真美ぃぃぃぃぃ!!!!」ポロポロ

真美「!」

真美(ひびきんが、真美を頼ってくれた)

真美(初めて……心の底から、頼ってくれた!!)

真美「……んっふっふー」ニッ



真美「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」



ガッ――――――



律子「今の響の叫び……オーラが込められてた」

律子「『命令』のオーラなんかじゃない、人を認めた『お願い』のオーラ……体に残った分、全部声に込めて」

律子「真美に……届けた……!!」



真美「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」グググ



真美(ぐっ……うう……)ビリビリ




真美「ぬあああああああああああああああああああああああ!!!!!」




バドゥンッ


真美「ッ……けほっ」ガクッ


真美(入れっ―――――――――)






トンッ

P「……」

P(終わった……な)



真美「はぁ、はぁ……」

ゴロンッ


真美「はぁ……はぁ……」


春香「……」

春香「終わった……の?」

やよい「……」


響「…………」

響「春香……やよい……」

春香「……!」

やよい「……」

響「自分、間違ってたさー。頼ることは……信じることは、決して弱いことなんかじゃない」

響「言ったよね、決着を付けようって」

響「自分と春香たち、どっちのやり方が正しいか……って」

響「答えは、明らかだった」

響「この勝負……仲間を信じず、孤独に戦った」

響「自分の……負けさー」



「…………でも」


「自分『たち』の、大勝利さー!!」


響「!」クルッ


「……っしょ?」


真美「ひびきんっ」ニコッ


響「真美……」


響「―――うん!」グスッ




P「ゲームアンドマッチ! ウォンバイ、チームD!! 3-2!」

春香「そん……な……」

春香「負けちゃった……の?」ガクッ

やよい「悔しいです、本当に…………けど」

やよい「なんでだろ……それと同じくらい、嬉しいですっ!」ニコッ

やよい(響さん、変わってくれたみたいで……本当に良かったかなーって)

響「真美……ごめん」

響「自分、一人の方が強いと思って……一人でやらなきゃって思って、あんな酷いこと……」

響「本当にごめん!」

真美「……もー」

真美「そうだよ~! これはオシオキが必要っぽいね」

響「うう……なんでもするから、許して欲しいぞ」

真美「じゃあじゃあ!」

真美「優勝賞品は、真美が貰うね!」

響「! 100万円、全部か!? で、でも……う、うん、仕方ない、か……」

真美「ううん、そっちじゃないよ。 100万円は山分けに決まってるっしょ~」

響「え……いいの?」

真美「うん! ……でも」

真美「副賞の方は、あげないから」ニッ

響「? うん……」


亜美「……ぬぁっ!」ガバッ

あずさ「わっ」ビクッ

亜美「真美~!! おめおめ~!!!」タタタッ

真美「! 亜美~! 亜美のおかげだよ~!」ギュッ

あずさ「あらあら、亜美ちゃんったら」クスッ

あずさ(……勝敗を決する鍵を握っていたのは、紛れもなく真美ちゃんだった)

あずさ(でもその手を支えて一緒に鍵を開けたのは、他でもない響ちゃん)

あずさ(これは二人の勝利。だからこそ、きっと……意味があるのね)

貴音「響、優勝おめでとうございます」

響「貴音! うん、ありがとう」

響「……なんかさ、自分、勝ったこと以上に、大きいものを得たような気がするぞ」

響「スッキリしたんだ。頭の中のモヤモヤが飛んでっちゃったみたいで……」

響「なんていうか……自分、一人じゃないんだなーって……な、なんか恥ずかしいな。どうしちゃったんだろ、自分……」ポリポリ

貴音「……そうですか」

貴音「それは真、素晴らしきことです」ニコッ

響「そ、そう? だよねだよね!」

貴音「ふふっ……」

貴音(……響を心の奥底で孤独にしていた、何者かによる『呪縛』は、解けたようですね)

貴音(団結の力と真っ向からぶつかることで何か起きることを期待していましたが、ここまで良き結果になるとは)

貴音(……感謝しますよ、春香、やよい、そして……真美)

貴音(あなた達のお陰で、響はより強くなれることでしょう)


真「うーん……良い試合だったなぁ」

雪歩「春香ちゃんたち負けて残念だね、真ちゃん」

真「うん。でも実はどっちに勝ってほしいって言うより、ボクはとにかくこういう熱い試合が見たかったんだ」

真「だから今、春香たちには悪いけど最高の気分なんだ! よーし、ボクも鍛えに鍛えて、すぐ追いついてみせるからね!」

真「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」ダッ

雪歩「ま、待って真ちゃん、まだ……」

真「あ、そっか」ピタッ

真「まだ……終わってなかったね」


P「じゃ、皆集まれ~。表彰とかするから」

社長「ウォッホン!」

社長「えー、まずは諸君、お疲れ様。いやいや、想像していた以上に素晴らしい試合で、つい魅入ってしまったよ」

社長「そして我那覇君、真美君、優勝おめでとう。これが優勝賞金の100万円だ。受け取ってくれ」

真美「ぃやったー!!!」

亜美「犯罪的だっ……まばゆすぎるっ……!」

響「よーし、みんな! この後ご飯行こう! 自分、奢るぞ!!」

貴音「真ですか!?」ジュルッ

響「うん! 876組も来るよね?」

愛「はいっ! えへへ、ありがとうございまーす!」

社長「さて、続いて……副賞の方だが」

真美「!」

P「副賞?」

社長「ほら、君との一日デート権のことだよ」

P「あれマジだったんですか!?」

社長「マジだよ。嘘をついてどうするんだね」

社長「君はアイドルたちからモテモテだったからねぇ。君のことをまだ諦めていない子たちもいると確信した上で、やる気を出させるために付けた副賞というわけだ」

P「いや、しかし、俺……」

社長「まぁ、一日くらいどうってことはない。それで、真美君、響君、それについてはどう考えているのかね?」

真美「真美! 真美がもらうよっ! その副賞!!」

春香「!」

美希「!!」

その他「!!!」

P「真美……」

P(モテて辛い)

社長「おお、そうかそうか。では真美君、希望の日にち等はあるかね?」

真美「いつでも良いけど……ちょっと確認するよ」

社長「なんだね?」

真美「その日、兄ちゃんは完全に休みになるんだよね?」

社長「もちろんだとも。一日デートなのだからね」

真美「その一日の間、他のアイドルはよっぽどのことがない限り電話したり見に来たりしたらダメってことに出来る?」

社長「ああいいとも。デートなのだからね、干渉されたくないのも当然だろう」

P「しゃ、社長、そこまでしなくても……」

真美「んっふっふ~、たしかに聞いたよん」

春香(ま、真美……こんなにも油断ならない子だったとは)グギギ

雪歩(きっと真美ちゃん、私たちの目の届かないところでプロデューサーとあんなことやこんなことをあわわわわわ)

真美「じゃあ……」




真美「兄ちゃんにあげるよ! その権利!」

皆「!?」


P「えっ……」

P(どゆこと?)

真美「真美ね、考えたんだ。兄ちゃんってメッチャ忙しくて休みもほとんどもらえてないっしょ?」

社長「ま……まぁ、そうなる、かな、はは」

真美「なのにたまーに休みになったりちょっと時間空いても、ほとんどアイドルの相手してるよね?」

真美「ゆきぴょんとかいおりんに呼び出されたり、はるるんとかミキミキに押しかけられたり……真美だって最近、テニスに誘ったし」

真美「真美が思うにね、みんな兄ちゃんのこと好きすぎるんだよ!」

真美「そんなの、ダメなのに……」

亜美「真美……」

雪歩「……」

伊織「べ、別に好きってわけじゃないわよ! ただ、たまたま暇だから相手してあげてるだけで……」

真美「いらないっしょ、そんなの、今の兄ちゃん」

伊織「うっ」

春香(…………諦め、られない)

真美「とーにーかーく! そうじゃなくっても兄ちゃん暇さえあれば真美たちアイドルのことばっか考えてくれてるし、一日くらい仕事のこと忘れてじっくりどっぷり休んでほしいの!」

真美「いいっしょ? こういう使い方でも」

社長「う、うむ……」

真美「というわけで、兄ちゃん君には一日の自由を与える!」

真美「その日はアイドルのこと考えるの禁止だかんね! だから……」

真美「ユーフォーカツ丼してよね、兄ちゃんっ」パチッ

P「……!」

律子「……ふふっ」

律子「有効活用、でしょ。真美」

真美「あ……そう、それそれ」ポリポリ

律子「まったく……」クスッ

律子(そういうことね、真美……味な真似するじゃない)

P「真美……」

P(俺は仕事に徹するあまり……大切なものを蔑ろにしかけていたのかもしれないな)

P「ありがとう! 大切に使わせてもらうよ」

真美「んっふっふ~、よきにはからえい」ニコッ

社長「えー、まぁ、それはそれとして……ここで一つ発表がある」

社長「実は、優勝した真美君と我那覇君にはテニスアイドルとしてユニットを組んでもらい、どんどん売り出していこうと考えているのだよ」

真美「うええっ!? そうなの?」

響「おおっ! ついに自分もユニットデビューかー。よろしくね、真美!」

真美「んっふっふ~、竜宮小町に負けないくらい、人気ユニットになっちゃうかもねぇ」

社長「しかし……うーむ、これでいいものか」

社長「んぅ……」

律子「……!」

律子「社長、そのユニットのプロデュース、私に任せて貰えませんか?」

社長「律子君に? 何かプランがあるのかね?」

律子「はい! テニスアイドルというコンセプトに基づいて、且つアイドル活動におけるバランスも考慮すると……」

律子「その二人にもう一人加えた三人ユニットにするのがベストかと思いまして」

社長「うむ! たしかに私も今、何か少し足りないと思っていたところだよ。それにここまで実力者が揃っているのに、2人しか選抜しないというのも勿体無い」

律子「そこで、そのもう一人ですが……」


律子「やよいを入れるのはどうでしょう?」


やよい「! 私ですかっ?」

涼(こういう話、僕達聞いててもいいのかなぁ)

絵理(765プロに……信頼されてる?)

律子「テーマは『元気』! 見た目的にも性格的にも、ユニットとしてのバランスは完璧かと」

律子「テニスの実力も申し分ありませんし、ね」

社長「なるほど……良いな、うむ、そうしよう!」

真美「やよいっち、よろよろ~!」

やよい「私が……ユニットデビュー……」

伊織「よかったじゃない。力を入れて売り出してくれるらしいし、頑張り次第ではこれまで以上にお金もいっぱい稼げるわよ?」

やよい「!」

やよい「うっうー!! 嬉しいですー!」

響「はは……やよいの目的も、達成出来そうな感じだな」

春香「……」

社長「さて、こんなところかな。プロデューサー君、締めを」

P「あ、はい」

P「えー、長くなってしまったが……これにて!」

P「アイドルテニス大会、全日程を!!」

P「終了する!!!」ド ン



P「はい」

社長「うむ」

社長「では、解散」

P「お疲れ様」

わーわー  おーおー
  わいわい  がやがや


響「……じゃあ、みんなどこ食べに行く? どこでもいいぞ! なんたって50万円も持ってるからね!」

響(ちょっとでも皆のために使いたいぞ。今まで仲間をあんまり大事に出来なかったから……)

伊織「あ、そういえば近くに私のお気に入りの高級フレンチの店があるんだけど、そこにしない?」

響「えっ」

愛「わーっ、伊織さんのオススメですか! いいですね!」

律子「そうね、そこにしましょう」

響「ちょっと待って、伊織が『高級』って言うなんて相当……」

やよい「あのっ、そのお店、タッパーに入れてお持ち帰りって出来るかな?」

伊織「やよいなら特別に良いわよ。あのお店確か水瀬グループ系列だし、私が許すわ。たくさん頼んじゃいなさい」

やよい「うっうー! 弟たちにも、ご馳走食べさせられるかも!」

貴音「あの……らぁめんはありますか?」

伊織「無いけどどの料理も絶品よ。せっかくだし一通り注文して食べてみたら?」

貴音「そうですね。なにせ響は50万円も持っているのですから」

響(ぜ、全部使うって言ったっけ?)

伊織「それじゃあ皆行くわよ! にひひっ」

みんな「おーーーー!!!!」

響「う……」

響「うぎゃーーーーーー!!!!!」



P(……こうして、アイドルたちのテニス大会は幕を閉じた)

P(だが彼女たちの戦いはまだ始まったばかり)

P(だってこの大テニス時代、芸能界にはまだまだたくさんの強者がいるんだからなーーーー)

~某所・テニスコート~



???「ふふ……私の勝ちね」

モブ「そんな……! 今のもアウト!? どう見ても入ってたのに!!」

???「貴女がそう思うんならそうなんでしょう。貴女の中では、ね」

???「でも……審判はそう判断しなかったみたいだけど」ククク

モブ「うぐぅっ……強すぎる……これがあの……」

モブ「魔王エンジェルの……リーダー……!」

麗華「どんな手を使ってでも勝つ……それが私のテニスよ」


 『審判使い』 東豪寺麗華


麗華「ああ、それと」

麗華「後ろの二人はもっと強いから」ニッ

モブ「!?」

りん「……」ニヤニヤ

ともみ「……」


モブ(魔王エンジェル……新人テニスアイドルは大体こいつらに潰されるって聞いたことが)

モブ(おっそろしい……マジおそろしいデス、こいつら)

~また別のテニスコート~


モブ「うわあああっ! こ、こいつのオーラが渦巻いて、中心に集められて……!!」

翔太「ほらほら、サイドが……ガラ空きだよっ!!」パコォンッ


 『水洗』御手洗翔太



北斗「エンジェルちゃんたちー! 応援ありがとう!」

女性ファン「「「きゃーーーっ!!!」」」

北斗「今日もみんなで……」

北斗「同調、しようぜ☆」

女性ファン「「「はいっ! 北斗様ぁ!」」」


 『ラブ同調』伊集院北斗



北斗(さて……冬馬は今ごろ、あの人と試合中か)パコォンッ

翔太(一矢報いてるといいけど……ま、無理だよねぇ)パコォンッ

~テレビ番組・伝説への挑戦~


冬馬「はぁ、はぁ……へへっ」

冬馬「一点!!! 取ったぞーーーー!!!!」

 『羅刹』天ヶ瀬冬馬


冬馬「どうだ、見たか!」

冬馬「ーーーーーー玲音!!!」


玲音「うん、やるね。えっと……鬼ヶ島君だっけ」

冬馬「天ヶ瀬冬馬だ!」


 『オーバーランク』玲音


玲音「流石はAランクアイドルってところかな? 良いオーラをしている」

冬馬(もう4ゲーム目だが、一点取れたってことは可能性があるってこと。まだ終わっちゃいねぇ!)

玲音「それじゃ……一段階、アクセルしようかな」

冬馬「……へ?」

玲音「しっかり、着いてきてよ!」


モブ(あ、一方的な試合になるな、これ)

モブ(ギアを上げた玲音さんは本気で化け物だからなぁ。今のアイドル界に、対抗出来る人なんていないよ)

冬馬「ぎゃー!!!!」

モブ(でも……全盛期のあの人なら、もしかしたら……)

モブ(いや、やめよう)

モブ(引退したアイドルのことなんて、考えても仕方ないか)

~水瀬家・地下特訓施設~


???「……久しぶりに遊びにきたけど、変わらないわねぇ」

舞「歯ごたえなさすぎ」ハァ


 『最強』日高舞


舞「次はどうしようかしら? 右手と……左足も無しにしようかな」

舞「真面目にやって部屋壊しちゃうのも悪いし縛りプレイでやってたけど、やっぱつまんないわね」

舞「とはいえまともなテニスをするにしても、私の相手が務まる人間なんていないだろうし……」

舞「……あっ」

舞「そういえば……玲音だっけ。すごすぎてオーバーランク扱いになってるってたしかニュースで……」

舞「……よっしゃ決めた! アイドル、復帰しちゃおっと」

舞「その玲音って子ならもしかしたら、私を楽しませてくれるかも♪」

舞「さぁて、待ってなさい! 日本!!」

舞「私が!!! 帰ってくるわよ!!!」



~961プロ事務所~


黒井「くそっ! 我那覇響……私の洗脳に打ち勝っただと!?」

黒井「認めぬ! 認めるものか! 私のやり方が間違っているはずがない!」

黒井「こうなれば……もうこれしか手はないようだな」キュッ


黒井「―――私自らが、この腐ったアイドルテニス界に参入するとしよう」ザッ


『執念の中年』黒井 崇男


黒井「ふふふ……見ていろ高木! これが私のやり方だ!」

黒井「たしか書店に『よくわかるテニス入門』なるものがあったはず……念のため購入しておくか」

黒井「ふふふふふ……あーっはっは!!!!」

~765プロ・帰り道~

やよい「ご飯、とーってもおいしかったです!」

響「うう……自分の50万円……」

律子「響、やっぱり私も少し……」

響「いや、いい! 全部奢るって、決めたからな」

律子「そう……ふふっ」

美希「……」


美希「律子……さん、ちょっと良い?」

律子「ん、美希。どうしたの?」

美希「響たちのユニット、すごいの。絶対売れて、すっごくキラキラするって思うな」

律子「ふふっ、貴女にそう言ってもらえるなら、私の目は確かだったってことね」

美希「ねぇ、律子さん……」

美希「ミキも……」

律子「!」

 美希『頑張ったら、竜宮小町に入れてもらえるって……』

律子(まさか、また……)

美希「ミキも、頑張ったら……」

美希「同じくらい、キラキラ出来るかな?」

律子「!」

美希「ユニットに選ばれなかったのは残念だけど、ミキ、もっともっと強くなる! それで一気にトップまで上り詰めるから」

美希「待っててね? 律子さん」

律子「美希……」

律子(まったく、私、何考えてんだか)

律子(この子はもう……一人前のアイドルなんだから)

律子「……ええ」

律子「待ってるわ。 ……てっぺんで!」

千早「料理美味しかったわね、春香」

春香「……」

千早「どうしたの? さっきから元気ないみたいだけれど」

千早「負けて悔しいのは分かるわ。でもあんなすごい試合を楽しめたんだから、いつもの春香らしく前向きに……」

春香「……ねぇ、千早ちゃん」

春香「私……どうしたかったのかなぁ?」

千早「……えっ?」

春香「テニスを楽しめればそれでいいって、思ってた……はずなのに」

春香「なんで私、今、こんな気持ちなんだろ?」

春香「なんでこんなに、色んなものが憎いんだろう?」

千早「春香……?」

春香「やっぱり私ね、プロデューサーさんとデートしたかった。間違ってるって分かってても、好きだから」

春香「それがあの大会を頑張ってた最大の理由だったら、ダメなのかなぁ?」ゴォッ

春香「いつまでもプロデューサーさんを思ってちゃ、いけないのかなぁ!!」ゴゴゴ

千早「は……春香……」

春香「……」

春香「えへへ、なーんて。ごめんね、変な話して」クルッ

春香「こんなこと考えてないで、もっと頑張らないとね! さ、帰ろ」

千早「そ、そうね」

千早(気のせいかしら……今、春香から、黒いオーラが……)

千早(黒は黒でも、なんというか今の……今までに見たことのない)

千早(嫌な……ドス黒さ……)


春香(さ、もっと頑張らないと! 頑張って、強くなって……)

春香(みんなが私に平伏すくらいになれば、プロデューサーさんも私のこと認めてくれるはずだから……)

春香(……ふふ)


春香(ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ)

~P宅付近~

P(こうしている間にも、アイドルテニス界のレベルはどんどん上がっていっているはずだ)スタスタ

P(でも765プロも負けちゃいない)スタスタ

P(律子プロデュースの新ユニットはきっと世間を驚かせるだろう。その勢いに乗って皆どんどんテニス界に進出していければいいよな)スタスタ

P(ん、着いた)スタッ

ガチャッ



小鳥「あ、おかえりなさい」

P「ただいま、小鳥」



P(とにかく、トップまで上り詰めるためには、これまで以上の特訓が必要だ)

P(俺も頑張らないとな……ボーカル、ダンス、ビジュアル、テニス、それぞれのレッスンのバランスをよく考えて皆をプロデュースしないと)

P(忙しくなってきたな。俺たちの戦いはこれからだ!)

小鳥「……」

P(あ)

P「……」

P(いかんいかん……たまには休息も大切……だよな)フー

P「あー、そうそう、今度一日完全な休みが貰えることになったんだけどさ、どっか行きたいとこあるか?」

小鳥「えっ! あの社長が、休みを……?」

P「はは、まぁ真美の計らいのおかげだよ。その日はアイドルたちのことは考えずに、好きに過ごしていいんだってさ。それで、どこがいい?」

小鳥「そう……真美ちゃんが」

小鳥(なんだか久しぶりだなぁ。プロデューサーさんいつも忙しくて、一緒に休日を過ごすことなんて、諦めてたのに……)

小鳥(ありがとう、真美ちゃん)フフッ

小鳥「私、家でのんびり過ごしたいなぁ。あなたといっしょに、家で……」

P「そっか。じゃ、そうしよう」

P「……愛してるよ、小鳥」

小鳥「!」

小鳥「……私もっ」ニコッ





こうして、二人は幸せに暮らしましたとさ




これにてハッピーエンドです
色々と粗の目立つSSでしたが、読んでくれてありがとうございました

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