勇者「僕はね、正義の味方になりたかったんだ」 (33)

勇者「正義は本来、『誰も犠牲にせず全員を救う』ものだろう」

勇者「けれどね、実際は不可能だった」

勇者「良くこんな例えがあるよね。1人を殺して100人を救うか、100人を殺して1人を救うかって」

勇者「理想は101人を救いたいけれど現実はどちらかしか選べない」

勇者「力があれば、その状況になる前に、別の方法を考える……まあ色々思うことはあるだろう」

勇者「けれど現実はその考えは通用しないのが殆どだ」

勇者「下手すれば誰も犠牲に出来ないあまり誰も救えなくなるだろうね」

勇者「『だから』なんて言葉は諦める言い訳でしかないけれど、」


勇者「強すぎる正義の姿勢は逆に正義から最も遠ざかってしまうのではないかと思うんだ」

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勇者「この考えに至ったものの未来は簡単だ」

勇者「数による大衆の正義を選ぶのか」

勇者「自己基準による正義を選ぶのか」

勇者「でもどちらも必ず犠牲が出るから、すでに正義ではないんだけどね」

勇者「ああ、正義を捨てるって選択肢もあったか」

勇者「因みに僕は大衆による正義を選んだ」

勇者「自分の感情での判断は人々に――いや、世界にとっては最も悪だからだ」

勇者「その結果、最愛である筈の家族を[ピーーー]羽目になったんだけどね……」

勇者「けれどお蔭で強くなれた」

勇者「より確実に、より正確に、より多くを救うために利用できるものは何でも利用した」

勇者「代代から受け継がれる力を全て引き継ぎ」

勇者「他者が持つ力の中で利用できるモノは全て奪い」

勇者「使えそうな知識は無理矢理にでも詰め込んだ」

勇者「お蔭で、僕は失敗とは無縁になった……はずだった」

勇者「僕はすがってしまった」

勇者「不確定であるはずのモノに、自分の力ではない存在に」

勇者「――ソレが余りにも魅力的だったからスガッテシマッタ」

勇者「結果は知っての通りだ」

勇者「お蔭で全て無駄になってしまった」

勇者「殺し屋から英雄とまで呼ばれるようになり、悪党から勇者とまで称えられるようになったはずが」

勇者「今では何者でもなくなったただの抜け殻さ」

勇者「今でも後悔してるよ、どうして今まで何も信じなかったのにあんな戯言を信じてしまったのか」

勇者「未だ正義の味方になりたかったのか、それとも周りの言葉に自惚れたのか……」

勇者「いや、すまない。話が脱線してしまったね」

殺し屋「結局僕は何処にでもいる殺し屋でしかなかった」


殺し屋「けど、君は違う……!」

殺し屋「確かに君の言ったソレは余りに途方もなく、しかも結果は無意味に近い」

殺し屋「更には正義とは言わないかもしれない、むしろより多くを苦しめる可能性の方が高い」

殺し屋「けれど僕は――その言葉に心打たれたよ」

『全ての人が幸せになれないのなら別の世界でそれぞれ幸せになれば良い』

殺し屋「正直言うと最初は現実から目を逸らしているようにしか思えなかった」

勇者「だけど君の目を、意志を、そして何より言葉の強さを感じて本当に救いたいのだと解ったよ」

「ああ、もう自己が崩壊して来たな。まあ自分がどうかなんてどうでも良いか」

「僕はなれなかったけれど、君なら正義の味方に至れるだろう」

「この先君が報われるか解らないけれど、ただ一つ確かな事は」


切嗣「僕は確かに君に救われたよ、士郎」

今日はここまでです。
初めてなので色々おかしな部分はあると思いますがご指摘して頂ければ直していきたいと思っています。

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