女「幼女に寝取られた」(73)

女「ただいまー」

友「ん」

女「ふぅ……」

友「」 カタカタ

女「ご飯は?」

友「まだ」 カタカタ

女「了解。すぐ作るね」

友「助かる、ありがとう。いいところだから」 カタカタ

女「ん。簡単に摘める物でいいんだね。朝は?」

友「終わる」 カタカタ

女「がっつり系ね。根は詰めすぎちゃだめよ」

友「万全」 カタカタ

女「ならいいけど」

友「……ありがとう」 カタカタ

女「いいよ。その代わり――」

友「落ち着いたらな」 カタカタ

女「boo……」

 1ldk、駅近。都心からほんの少し離れたマンションに私こと女は住んでいる。もう二十代も半ば過ぎ、世の中恋愛だ結婚だと騒がしい中、男という概念ををどこかにおいてきたかのように縁なんてものがない。

 仕事に忙しいと言い訳しても周囲は認めてくれず絶えず猛獣に追われてる鹿に見立ててあせりを強要してくる。

 いい迷惑だ。男なんて邪魔なだけなんだから。

 自己評価だけど決して私の見た目は悪くない。ファッションもメイクも年相応だし性格もきっとおおむね温厚。十人中九人が一度で私のことを覚えてくれない程度の地味さはあるけれど家庭的で面倒見いい。

 そんな私が男と縁がないのには少なからず理由がある。

 あ、いや理由っていうほどたいしたものじゃないんだけど、実は一般的に言う、そしてプラスして少しオブラートに包んだ言い方で、その、そう、同性愛者なのだ。

 ただ、弁解させてもらうと好きなのは友だけであって、他の女性にはそんなに興味はない。

 つまりはたまたま性別が一緒になってしまったから同性愛者というレッテルを貼られているだけであって、仮に友が男だったならば世間的にも問題ない公認カップル、否、公認夫婦だったに違いない。

 大学生のころからの付き合いである友は現在売れっ子小説家として華々しい人生を歩んでいる。堅実に商社勤めをしている私と違い、剛毅かつ破天荒な友にとってはなんとなくなるべくしてなった感があり、そんなところにも憧れを抱いてしまうのもしょうがない。

 そんな彼女との付き合いはかれこれ三年目。それまではちょっと仲のいいルームメイトでしかなかった関係は、お酒という古来から伝わる媚薬によって強引に私が押し倒した。そのことについては後悔していない。

 俗に言う事故、ではあったけれど火のついた私はそこでとどまれず思いを告げあっけなくゴールイン。なんのゴールかは知らないけどゴールイン。世の中入ったもの勝ちでしょ。

 そんなおかしな関係の私たち。友に男でも出来た日には泣く泣く私が去らなければいけないのかと考えると不安な日々もあるけれど、現在おおむね良好、のはずなのに――

女「ごめん、もう一回言ってもらっていい?」

友「新しい家族、幼女だ」

幼女「え、あ、はい。よろしくお願いします」

 友が幼女に寝取られた。

\女「……」

友「」

幼女「……」 ソワソワ

女「……一ついい?」

友「どうした?」

女「あの、どういった関係?」

友「家族」

女「oh……」

女「っじゃなくて! どういった経緯でこの子がうちにいるのかってっこと!」 バンッ!

友「こら、幼女が驚くだろ」

幼女「あ、はい」

友「ほら、何も言えない」

幼女「え!?」

女「どう見てもあんたの振りのせいにしか見えないんだけど。で、詳しく説明してくれるんでしょうね?」

友「いいけど……いや、もう家族ってことじゃダメなのか?」

まさかの怒濤のレス、、、、

女「説明をめんどくさがらないの! 小説家なんでしょ?」

友「私の話は読者の邪推を裏切るところが売りだから必要以上に的確な描写説明はしない」

女「他のライターさんに謝ってこい」

幼女「あの、えっと……」

女「とにかく、どこから連れてきたのよ」

友「孤児院」

女「返してこい」

友「それはできない」

女「なんで?」

友「もう引き取ったから。帰してもすでに居場所はない」

女「えー孤児院ってそんなにシビアな世界だっけ?」

友「そこが特別なんだよ。審査もなかったしな。何を言っても無駄だ」

女「法治国家が家出してんじゃないわよ……」

>>7

誤爆?

友「……反対なのか?」

女「……友はその子をどうするつもりなの?」

友「一緒に暮らす」

女「いつまで?」

友「幼女が出ていくというまで」

女「決めたの?」

友「決めた」

女「……ならいいわよ」

友「ん、ありがとう」 チュッ

幼女「?」

女「うぅ。もう、子供の前で」

友「あぁ、幼女は性教育は一通り済んでるから別に気にすることはない」

女「おいその孤児院教えろ消す」

友「なに、若干あれなだけで彼女たちにも必要なことだからまぁ気にするな、な?」

幼女「え、あ、はい! いんちょうさんはいいです! えっちですけど!」

女「ダメな気しかしない……」

友「んーあいつも女だし、重度のペド野郎だけど嫁さんともう一人以外手は出してないぞ?」

女「女!? ちなみにそのお嫁さんは?」

友「8歳」

女「警察警察……」

友「だから無駄だって。国家も噛んでるんだから」

女「……もういい。これ以上聞かない。じゃないと私の胃に穴が開くわ」

友「それがいい」

女(はぁ……)

女「とりあえずになっちゃったけど、嫌になるまで幼女ちゃんよろしくね」

幼女「はい! よろしくおねがいします!」

女(あらかわいい)

友「じゃ、幼女はもう寝るか。明日学校だし」

女「は!? 今日の明日でどうやって学校行くのよ? 手続きだって――」

友「終わってる。言ったろ? 国家が噛んでるって」

女「……まじかー。ってランドセルとか教科書とかの用意は終わってるの?」

友「あ」

女「はぁ……しっかりしなさいよ。これからお弁当も一人分増えるんだから」

幼女「え? しょうがっこうってきゅうしょくってものがあるんじゃ……」

女「……今の無し!」

 幼女を引き取るにあたって問題ならそれこそ腐るほどあった。ただそれのどれもがどうしようもないほどというわけでなく、どちらかといえばひどく些細なことだった。

 後日戸籍等を確認しに行くとしっかりと幼女は友の幼女であるという国のお墨付きまであったくらいだ。

 それより私たちにとっては住人が二人が三人になることへの準備に追われる羽目になった。

 本当に翌日から小学校に通える準備がなされていたけれどこちらとしては準備が一切出来ておらず、朝一番でその学校に欠席の連絡をするという、今後の幼女ちゃんの学校生活に一発爆弾を放り投げてしまった。

 もともと不定休な友だけでは不安に感じ、急遽有給休暇を会社に頂きその空いた一日で全ての準備をこなすこととなった。

 お金のほうは友と私のほとんど使うあてのない貯金から出せたので問題なく、この時ばかりはまじめな勤労に感謝するばかり。

 ただ、本当に久々の友との休暇が、デートが子守に変わってしまったことだけがすこし、面白くない。

友「で、何買うんだ?」

女「何買うか決めずに外に出るんじゃありません。とりあえずは生活に必要なものをそろえちゃわないとだからモールに行くわよ」

幼女「もーる?」

友「近くにある大型のショッピングモールのことだよ。車は?」

女「昨日どっかにいって疲れてるでしょ? 私が運転するわ。うーん、ベッドは車に入らないから布団で我慢するしかないかな。来客用の布団もないなんて盲点だったわ」

友「一緒に寝ればいいんじゃね?」

女「黙らっしゃい。寝相悪くて結局私と一緒に寝たんだから」

友「じゃあそれで」

女「夏は暑いの! 汗もになったら大変じゃない」

友「そうなのか……」

女(つうか友以外の人と寝たくないってこと分かってもらえてない?)

女「とりあえず布団。ベッドは後で寸法測ってから。あ、底冷えすると行けないからマットレスも買わなきゃね」

幼女「あ、ありがとうございます」

女「いーのよ、これぐらい。ていうかランドセルもないとかその孤児院の神経疑うわ。お金ないの?」

友「勉強は教師雇ってたからな。孤児院自体が学校みたいなもんだったし」

女「……すげぇ」

幼女「いんちょうせんせいもせんせいだったよ!」

女「うん、どうせ保健体育専門だろうけどね」

友「いや、一般過程全部」

女「何回大学入ればそんなことできるのよ……」

友「あれだ、群大」

女「あーリベラル科。あの変態学科ね。納得したわ、教師でロリコンなのも」

友「嫁さん以外手、出してないからいいんじゃね?」

女「そこ、犯罪を認可しない。それにダメに決まってるでしょ。そんな報道毎月されてるわ。もう爆発すればいいのに」

幼女「で、でもいいひとなんです!」

女(ちっ、うらやましい)

友「んじゃ、さっさと行くか?」

女「はいはい」

幼女「……おおきいですね」

女「そう?」

友「んー。田舎だからな、土地安いし」

女「一応何でもそろうから助かるけど……割高なのよねー」

友「ま、行くか。で、何買うんだっけ?」

女「衣服を5セット以上。食器に生活用具。寝具とランドセル、ノート類に小物……ノートって大学ノートじゃなくて学習帳みたいなのじゃなきゃダメなのかしら……

友「大学ノートならまだ空けてないのが8冊近くあるぞ?」

女「商売道具でしょ? 一月ぐらいで全部使い切っちゃうんだから人にあげる余裕もないくせに。学習帳もいろいろあるからなぁ……分かる?」

幼女「ちょっと……わかんないです」

女「だよねー。とりあえず色々買っておこっか。どうせ学校行けば向こうから足りない物指摘してくるでしょう」

友「面倒だなー」

女「もう……」

幼女「ご、ごめんなさい」

女「幼女ちゃんのせいじゃないのよ。友ーちょっとは言葉も考えてよー」

友「……夕飯は下のレストラン街にしよーぜー」

女「聞け!」

友「あーきーたー」

女「はいはい。幼女ちゃん疲れてない?」

幼女「だ、だいじょうぶです!」

女「……本当は?」

幼女「すこし、だけ」

女「もう、私たちに気なんて使う必要ないからね。じゃ、買い物も一段落したし少し早いけどご飯にしよっか」

友「にーく! にーく!」

女「おんたは簡単で助かるわ。幼女ちゃんは何がいい?」

幼女「えっ……と……」

女「……」

友「にーくにーく」

幼女「……」 チラ

女「……」

友「にっくにっく! にっくにっく!」

幼女「……お肉で」

女「そこ、黙ってろ!」

友「にく……」

女「えっと、特にこれって食べたいものがないってことでいい?」

幼女「はい……」

友「にく?」

女「んじゃ肉ってことで」

友「っし!」

友「うー……」

女「だから飲むなって言ったのに……ほら肩貸してあげてるんだからしっかり歩きなさい」

幼女「おねーちゃんだいじょうぶ?」

友「へーきへーきぃ」

女「落とすよ」

友「ごめん」

女「たく……運転して帰る人の身にもなりなさいっての」

友「ごーめーんー」

女「……それ以上しゃべったら本当に置いてくから」

友「むー」

女「……」

友「……」

幼女「?」

友「……最近かまってやれなくてごめんなー」

女「……酔ってないときに言え、酔ってないときに」

友「なんだよー素面だと恥ずかしいだろ、女が」

女「……私は素面よ。いいからしゃきしゃき歩く」

友「うるせー」 チュ

女「ん!?」

友「」 チュー

女「ん、んー!」

友「ん、そんなにのけ――」

女「チェンジ」

友「は?」

女「幼女ちゃん」

幼女「あ、はい!」

女「友と手つないで」

幼女「はい……」 ギュ

友「あったかいなー幼女は」

女「じゃ、車まで行くよー。幼女ちゃんそこのバカしっかり連れてきてね」

幼女「え、えぇ!?」

 初日、二日目とごたごたが続き、今後の生活に少し不安を感じていたけれど、いざ生活が始まってみると、本当に拍子抜けするほど何事もない日々が待っていた。

 学校に通い始めた幼女ちゃんも一週間もすれば生活に慣れたようで毎日元気よく家を出ていく。そのうち友達をうちに連れてくる日も遠くないんだろうなぁ。

 私たちも幼女ちゃんと暮らして何が変わるわけでもなくそれ以前となんら変わらない生活を送っている。

 もともとほとんど家にいない私に代わり日中の家事のほとんどを引き受けてくれている友も大した愚痴をこぼさないのだから本当に何にもないんだろう。

 あ、唯一変わったことがあるとするのならば夜の情事くらいかもしれない。

 幼女ちゃんが来る前もソフトに済ますことがほとんどだったとはいえ、友も自重しているのか最近ご無沙汰です。

 まぁそれは些細なことと笑っていられるからいいのだ。そんなこんなで私たちの新生活はおおむね良好だった。

 その日、友がそれを言うまではの話なんだけど、ね。

友「幼女」

幼女「なに? おねーちゃん」

友「……何か、あったのか?」

幼女「へ?」

女「あ、あんたもいきなりね。どう、幼女ちゃん最近何かあった?」

幼女「えっと……あ、いえとくには」

女「……幼女ちゃん、本当に?」

幼女「ほんとうになんにもないですよ?」

女「……」

幼女「……」 ニコ

女「……友、何か根拠でもあったの?」

友「勘」

女「……幼女ちゃん、じゃあ今後何かあったら言ってね」

幼女「はい、そのときはよろしくおねがいします。じゃあ、おやすみなさい」

女「って話だったけど、まだ気にしてる?」

友「いや。気のせいかもしれないし、それこそ自分でどうにかできる程度の問題だったら甘やかしてもしょうがないからな。どこまでも自分で片づけようとする性格とはいえひどくならないよう様子見するのが今は最善手だと思う」

女「……」

友「ん?」

女「友ってさ、子供好きなのかと思えばそれほどかまったりしないし、何考えてるのかなぁって思ってたとこ」

友「人それを気分屋という」

女「嘘おっしゃるな。何か考えがあるんでしょ」

友「……実は」

女「実は?」

友「ない」

女「……」

友「幼女は頭いいからな。こっちがかまいたいなって思ったときにほいほい寄ってきてくれる忠犬みたいなところあるし。だから一見ドライに見えるかもしれないけど結構遊んでるぞ?」

女「……そうか」

友「子供なら子供らしくいつでも全力でぶつかって来いとは思うが、そこはまだ、な。それに今の関係も悪くない。むしろ心地いいくらいだ」

女(……むー)

女「はいはい。どうせ私はかまってちゃんですよーだ」

友「ほれほれ、嫉妬するでないよ。幼女ももう寝たんだし今日は背中くらい流してあげるから」

女「……うん」

幼女「いってきまーす!」

友「おー」

女「いってらっしゃい」

友「……」

女「……」

友「……ん? 女、今日仕事は?」

女「え? 今日は休みだけど」

友「ん、そうか」

女「いや私が出るの幼女ちゃんより早いんだからこの時間までいたらおかしいわよね」

友「あぁ。だから聞いた」

女「聞くなら後一時間は早く聴きなさいよー」

友「ん、ごめん。それにしても平日休みなんて珍しいな」

女「代わりに今月の日曜出勤が二回増えたけどねー。あーやだやだ」

友「そうか」

女「そっちは今日も仕事? 家事なら私がやっとくからノルマ分さっさと進めちゃえば?」

友「いや今日は午後から担当と話すからそれまで暇なんだ。午後一だから特に何もできないんだけど」

女「ん、了解。んじゃ帰ってきてからでいいわね」

友「何が?」

女「買い物。確かトイレットペーパーも残りが少なくなってたはずだからそれも買わなきゃだし」

友「ん、分かった」

女「あ、なんなら三人で行きましょうか。そんなに遅くならないんでしょ?」

友「まだ二年だしな。三時頃には帰ってくるぞ」

女「そっか……あーでも友も外に出るのよねぇ。幼女ちゃんに鍵持たせたほうがいいのかな?」

友「え、もうスペア持たせてあるけど」

女「え? いつから!?」

友「一昨日」

女「ちょっと、そういうことはわたしにもいっといてよ」

友「あー言ってなかったっけ?」

女「言ってません。だから何かってわけじゃないんだけど。まぁありがとう」

友「私も必要なことだったし、ごめんな」

女「うん。でもそういうことになると幼女ちゃんが一人お留守番することもあるかもしれないんだよね……」

友「そんなに心配か? 幼女だぞ幼女」

女「世間一般じゃ小学二年生が一人で家にいたら心配になるものよ。たとえそれが幼女ちゃんでもね」

友「そうなのか……」

女「だからと言って頼れる人……兄嫁さんくらいしかいないかぁ」

友「は? 兄嫁ってアレだろ? やだやだ絶対やだ」

女「いや、いくら嫌だって人の兄の嫁をアレ呼ばわりって……」

友「アレはアレで十分だろ。あれと話してると馬鹿になる」

女「ま、まぁ確かに空気の読めない人ではあるけどさ」

友「アレがうちの敷居をまたぐくらいなら仕事だろうがなんだろうが幼女を連れてくからな」

女「はぁ……まぁ現状危なくないようだったら学童保育も考えつつ保留でいいわよ」

友「本当か?」

女「えぇ、本当よ本当。たく、なんでそんなに兄嫁さんが嫌いなんだか」

女(まぁ私も好きじゃないんだけどね、あの人。兄からして嫌いだし)

キーンコーン

幼女「ふう」

女子「ようじょちゃん」

幼女「はい、なんですか?」

女子「つぎたいくだからはやくきがえにいこうよー」

幼女「あ、はい。でもすこしまってください」

女子「ん。なにしてるの?」

幼女「きょうわからなかったところをしるしつけてるのです」

女子「なんでそんなことしてるの?」

幼女「ふくしゅうするとき、らくだからですよ」

女子「そうなの?」

幼女「ひとによりますが、わたしは」

女子「そうなんだ。じゃあわたしもやる!」

幼女「はい。がんばってください」

女子「よーし。じゃあね」

幼女「あ、いまからだとやすみじかんおわっちゃいますから、またあとでやりましょう」

女子「そうなの?」

幼女「はい」

女子「わかった」

幼女「ではきがえにいきましょう」

女子「はーい」

先生「んじゃ、ドッヂボールやるぞー」

生徒「はーい」

先生「チーム作るから……a、b。お前ら一人ずつ選んでけ」

男子a「はーい」

・・・

男子a「んじゃつぎは……よ、幼女」

幼女「はい」

男子b「は? 幼女とか、おまえすきなのかよー」

男子a「は、はぁ? そんなんじゃねぇし! だんじてそんなんじゃねぇし!」

男子s「うわーaって幼女すきなんだー」「ぷすす」「こくはくすればー」「こーくはく!」「こーくはく!」

男子a「ち、ちげーし。だんじてちげーし! こんなブスしらねー」

男子s「こーくはく! こーくはく!」

幼女「……せんせい。じゅぎょうがとどこおっています」

先生「お前……いや、そうだな」

先生「ほーら、お前らそんな不毛な話してないでさっさと分けろ。どうせ後々黒歴史として中学くらいで猛反省することになるんだから。あと幼女、大学生くらいまで待つから付き合わないか?」

幼女「それまでにいいひとがいなければよろしくおねがいします」

先生「あれ? これオッケー? これってオッケーなのかな? よし、お前ら大学まで変な虫寄せ付けんじゃねぇぞ。それとお前ら自身が変な虫になるんだったらおまえんちにバルサン7、8個投げ込むからな。マジで」

男子s「?」

先生「とりあえず、まぁさっさと分けろ」

男子b「せんせーってたまになにいってるかわかんないよな」

男子c「おれしってるぜ。せんせーみたいのロリコンっていうんだぜ」

男子a「ロリコン? なんだそれ?」

男子c「いや、しらないけど……」

男子s「なんだよ、しったかぶりかよー」「ロリコーン」「ロッリコン! ロッリコン!」

先生「よーし、今ロリコンとかいった奴授業終わるまでマラソンな。それがいやなら今後俺のことをロリコンとか言うなよ。特に親とかには絶対言うなよ、絶対」

男子a「校長は?」

先生「先生その質問に悪意しか感じません。校庭行くか?」

男子a「やだー」

先生「じゃあさっさと組み分けするように」

生徒「はーい」

男子a「せんせー」

先生「どうした?」

男子a「ひとりあまった」

地味子「……」

先生「あー地味子か。じゃあじゃんけんして勝ったほうのチームな」

男子b「はーい」

男子s「地味子かーいらねー」「まけたほうがよくね?」「まーけーろーまーけーろー」

地味子「っ……」

先生「お前らそういうこというんじゃねぇよ。あと十年もしたら今度はお前らが選ばれる側に回るんだからな。今のうちに媚売っとけよー」

男子s「せんせ-なにいってんの?」「わかんねー」「ロリ……」「いまこいつロリコンっていった!」「い、いってねーし。だんじていってねーし!」「いったいった!」「せんせーこいつロリコンていったよ」

先生「うるせぇ。さっさとじゃんけんしろ!」

男子a「じゃん」

男子b「けん」

男子a「ぽい」 パー

男子b「ぽい」 グー

男子s「うわー」「よし!」「なにやってんだよー」「a-」「ロリコーン」

先生「いいから黙ろうな、てめぇら。んじゃドッヂやんぞー」

生徒「はーい」

幼女「ただいまー」

女「おかえりなさい」

幼女「……」

女「ん? どうしたの?」

幼女「おねーちゃんじゃなくておねぇちゃんがいるってなんだかふしぎだね」

女「まぁそうねぇ。あ、そうそう。今日は買い物行くからランドセル置いてきなさい」

幼女「はーい」

女「……」

女(あの子、遅いわね。担当さんと話してるらしいけど基本即決即断の彼女がこれだけ掛かるってことは……)

幼女「おねぇちゃん?」

女「ん。あ、なになに?」

幼女「えっとおねーちゃんはどうしたのかなって」

女「友? あの子なら担当さんとお話しにちょっと出てわ。もう帰ってきてもいい頃なんだけど」

ブロロロロロ

幼女「くるまのおと!」

女「んー噂をすればなんとやら、ね。友かな」

ガチャ

友「あーただい、ま……」

女(あっ)

幼女「おかえりなさい!」

友「おーただいま。なんだ私が一番最後か。っていうか玄関で二人とも何してんだ? 幼女なんかランドセルしょったままで」

女「んー、あなたの帰り待ち?」

友「待ちってまじかい」

女「いや、幼女もついさっき帰ってきたばかりなのよ、ねー」

幼女「うん」

友「そっか。まぁいいや。さっさと中入れてくれ」

女「はー、いってもう、今朝言ったでしょ。これからお買いもの」

友「……あー、いや覚えてる覚えてる。さっきのはちょっとしたジョークだよ」

幼女「……」

女「はい嘘。幼女ちゃんだってそう思ってるわよ」

友「うー」

女「んじゃ、車エンジンかけといて。運転は私がするから」

友「はいはい。たく、またもどんのかい」

女「無駄口叩いてないで行きなさい。こっちも準備あるんだから」

友「へーい。幼女、ランドセル置いてきな」

幼女「うん!」

女「とりあえず友はトイレットペーパーと洗濯用洗剤と柔軟剤買ってきて」

友「? 洗剤と柔軟剤ならまだなかったか?」

女「今日安いの。いつものね」

友「ん、了解。もしそっちが先に買い物終わっても下にいてくれな」

女「うん」

友「じゃ」

幼女「きょうはなにかうの?」

女「冷凍してた肉が終わったからそれ買って、あとは私のお弁当用にいくつか。あとは何か安いものかなぁ……なにか欲しい物ある?」

幼女「え? ないですよ?」

女「ほんと? お菓子でもいいんだよ?」

幼女「だいじょうぶです」

女「そっか。じゃあ何か欲しい物が出来たらいってね」

幼女「はい!」

女「これくらいかなぁ」

幼女「たくさんですね」

女「そう? 三食食べてたら普通このくらいでしょ?」

幼女「そうなんですか……」

女「まぁね」

友「おー」

女「あ、お帰り……ってなんで籠持ってるのかな?」

友「買いたくなった」

女「はぁ……って酒とお菓子だけじゃない」

幼女「……た、たくさんですね」

友「そうか? 三食飲み食いしてたら普通このくらいだぜ?」

女「誰が三食お菓子とお酒飲むのよ、ったく」

友「まぁいいじゃん」

女「はいはい、レジ行くわよ」

友「あー買った買った」

女「ちょっと! 買っただけで満足しないでよね。捨てるとか許さないから」

友「大丈夫大丈夫。どっちも期限が近いものじゃないんだから」

女「むー」

友「よーし、さっさと帰るか……」

女「ん? どうかした? 車空けてよ」

友「……アレ」

女「あれ? どれよ」

友「アレ。四つ奥の左から十三番目」

女「遠すぎるわ!」

友「とりあえず見ろって」

女「もう……あの車?」

友「そうそう」

女「あの車……あ、車種は兄嫁さんのだね」

友「ナンバーは?」

女「見えないし見えてても覚えてないから」

友「……うーん。まぁ店んなかであわなかったからいっか」

女「いや、あんたどんだけ嫌いなのよ」

友「生理的に受け付けないんだよ」

女「あーはいはい。そんなことより早くあけてよ」

友「ん」

友(アレがもしいたら……ちっ面倒だな)

女「んじゃ洗い物済ませておくからどっちかお風呂はいっちゃいなさい」

幼女「はーい」

友「ん。あ、どうせなら二人で入るか?」

幼女「え?」

女(むっ)

女「そうね、たまにはいいんじゃない?」

幼女「だいじょうぶですよ? ひとりでも」

友「いいのいいの。二人で入ってもそんなに狭いわけじゃないんだし」

女「私としてはどっちでもいいんだけど……嫌なの?」

友「嫌なのか?」

幼女「いや、じゃないですけど……」

女「んじゃさっさとはいっちゃいなさい」

友「うっす。んじゃ行くよー」

幼女「は、はい」

友「はい、じゃあ流すからな」 ザパー

幼女「んにゅー……はぁ」

友(変な痣とかはないし……いじめられてるとかじゃないんだな。まぁ小二がそこまでするはずもないか。最近のニュースに感化されすぎてんのかなぁ、はぁ)

幼女「おせなか、ながしましょうか?」

友「んーお願いするわ。あ、強めでな」

幼女「はい」

友「ふぅ……」

幼女「はふぅ……」

友「風呂はいいなぁ」

幼女「はい……」

友「なぁ」

幼女「なんですか?」

友「何、溜めてんだ?」

幼女「……なんのことですか?」

友「ふっふっふ。私に隠し事なんざ百年早いぞー」

幼女「んにゃ!? や、やめっくすぐりゃにゃいで、ください!」

友「ならば言うべし」

幼女「ないですよ、うぅやめにゃー!」

友「ならば言うべし」

幼女「もう、こわいです……べつになんでもないですけど」

友「でも悩んでるんでしょ?」

幼女「……おとこのこたちがわたしにわるくちいうんです」

友「デストロイ確定だな!」

幼女「えっま、まってください! まだあるんです」

友「まだあるのか……余罪についても深く罰せねばな」

幼女「……べつになんていわれてもわたしはいいんです。ただそのこたちはまわりにせかされて、いいたくないのにいっているようで……」

友「ふーん」

幼女「いってからかおをまっかにしてすごくっこうかいなさってるようで」

友「はーん……ん? なぁなぁ」

幼女「え? なんですか?」

友「それってお前の容姿についてとかの悪口だったり、周りも好きだなんだいってないか?」

幼女「は、はい!」

友「あーうん。はぁ……くっだらねー」

幼女「く、わたしはちゃんとなやんでるんです!」

友「あ、幼女じゃなくて周りのガキどもな。はぁ……っかしねぇ」

幼女「なんですか?」

友「なんというか、早い」

幼女「?」

友「身の程知らずに勝手にやられても迷惑だな確かに」

幼女「わたしにもわかるようにはなしてください」

友「……無理」

幼女「え!?」

友「まだ無理だと思うぞー。知識だけ先行させてもしょうがないし。そこんところ学ばせたくて私に預けたんだろうしな、あいつも」

幼女「いいんちょうさんのことですか?」

友「あー、そうそう。あいつとその婚約者みたいなことしたい相手がそのガキどもの中にいるか?」

幼女「え、えぇ!?」

友「まぁそういうことだ。身の程をわきまえろってこと」

幼女「はぁ……」

友「が、それじゃあ何にも解決しないから、そうだな、今度同じこと言われそうになったら、うだうだ言ってないで玉砕覚悟で掛かってきな屑ども。十年後位にまた相手してやるよって」

幼女「……」

友「うん、これで問題ないな。んじゃのぼせる前にささっとあがっちゃおうか」

幼女「う、はい……」

女「あーね。好きな子をいじめちゃう子供心のアレね」

友「幼女はまじめだからな。恋愛の恋の字も知らないままあんなことになったら誰だって困惑するわ」

女「まぁなんにせよ大事そうでなくてよかったわ」

友「うーん、これから大事に発展……はないか」

女「ないでしょ現実じゃ。あなたの仕事場以外ではね」

友「いじめ系作品は尻つぼみだからな、今は書いても受けんよ。楽しくもないし」

女「理由それでいいんかい」

友「書きたくない物書いても面白くない。書きたいものかけるから売れてるんだよ」

女「……うっそー」

友「まじまじ」

女「そういえるあんたがすごいわ。でもこれで幼女の問題は大方解決と……」

友「そうだな」

女「まぁそれより――」

友「それより、な」

女「だいじょうぶなの?」

友「私のほうはまぁ。自分でもあそこまで担当ともめるとは思わなんだ。新人のころから手塩にかけてもらっただけになぁ……」

女「帰ってきたときの様子だけでどんだけやっちゃったかわかるわ。言いたいだけ言ってきたんでしょ?」

友「そんなに顔に出てたか?」

女「顔って言うか態度? 本当に言いたいこと言えないで後悔してまーすみたいな感じ。ぽっと浮かんだことばっかいって帰ってくる途中で考えまとめてそこで結論でちゃったんでしょ?」

友「うん、まぁ」

女「もう、あれほど事案は後日返答にしろって言ったのに」

友「はい……」

女「まぁそんなこと向こうもわかってると思うから明日電話しなさいね。あとちゃんと謝ること!」

友「うん」

女「もう……」

友「でさ」

女「おい」

友「いや、まぁ私はそれでどうにかするから。次に行こうぜ?」

女「……で?」

友「アレのことなんだけど」

女「アレ?」

友「アレだよアレ」

女「……兄嫁さんのとこ?」

友「そうそう、アレ」

女「指示語で話すなっての」

友「はいはい、でアレなんだけど」

女「……夕方のこと?」

友「うん。一応な」

女「ていうか仮に見られてたとしてもそれでどうなのよ」

友「……わからん」

女「えー」

友「だけど首の後ろがむずかゆくなるような嫌な感じがすんだよ」

女「いや、気のせいでしょ」

友「……」

女「そりゃあんたの勘はすごいけどただ会っただけでどうにかなるんだったら今まで何十回も問題発生してるわよ」

友「そうか……」

女「そうそう。いつもと変わらないんだから向こうも何も言ってこないって」

友「……そうか。そうだよな。いつもどおり」

女「いつもどおり……」

友「……」

女「……」

友「……」

女「……」

友「……いつもどおり?」

女「……だめかもしんない」

キーンコーン

幼女「……」

男子s「……」 ヒソヒソ

幼女(おとこのこたち、またさわがしいかも)

男子s「……」 ヒソヒソ

幼女(これからまたなにかいわれるのかな?)

男子s「……」 ヒソヒソ

幼女(……よし)

ガタッ

幼女「ちょ、ちょっといい?」

男子a「え!?」

男子s「!?」 ヒソヒソ

幼女「ちょっとおはなしがあります」

男子a「え? ちょ、え!?」

男子s「あれか? こくはくか?」「え?」「なになに?」

幼女「……」

幼女(な、なんだっけ)

男子a「……」

男子s「……」

幼女「……」

男子a「……?」

男子s「?」

幼女(えっと……あ)

幼女「かかってこい!」

男子a「へ?」

男子s「え?」

幼女「……あれ?」

男子a「……」

男子s「……」

女子s「?」

幼女「……うーんと」

幼女(おねーちゃんがいってたこと……いいんちょうさんみたいなこと?)

幼女「えっと、ちゅーしたいの?」

男子a「え!?」

生徒s「え、え、え!?」

幼女「あ、しないからね。しようとしたらころすから」

男子a「あ、はい」

男子s「ですよねー」

幼女「でも……じゅうねんご? それでもしたいならかんがえますよ?」

男子a「oh……」

男子s「え?」「どういうこと?」「いいの?」「いいなー」「おれも……」「いいなー」

幼女「あ、うしろのひとたちははんせいしなきゃいやですよ?」

男子s「はんせいしました!」 キリ

ダダダ……ガラッ

先生「反省しました!」 キリッ

幼女「かえれ」

先生「……はい」 ガラッ

結果、幼女は何事もなく学園生活に戻ることができた。

もとより手を出す必要のない事案だっただけに少々お節介な気もしたが彼女が飯時に思案に耽る様なことがなくなったことが私にとって何より嬉しく感じてしまい、私が悩んでも仕方ないとする。うん、今日も飯がうまい。

それでも問題は残るわけで数日後女のほうに電話が掛かってきた。

案の定といえば案の定の彼女の実家から。

私は杞憂なんて言葉を信じない。やはり憂いは断つべきだったんだよ。

女「……」

父「……」

女「……」

父「……なんとかいわんかこのバカ者!」

女「だ、だから友とルームシェアしてるよ」

父「そんなことは知っている。そうではなくお前が人様の子を預かっているのではないかということだ!」

女「誰から聞いたし」

父「兄嫁さんだ」

女(でしょうね)

父「……まさか自分の子とは言うまいな」

女「まさかぁ」

父「当たり前だろうがバカ者。結婚もしてない奴が子供なんてはしたない」

女「最近多いけどね。シングルマザーも」

父「ふざけてるのか?」

女「ごめんなさい」

父「で、どこの子なんだ?」

女「孤児」

父「なら孤児院に連れて行け」

女「いや、私達が孤児院からひきとったんだけど」

父「お前はアホなのか? どうしてそんなことをした。だいたい審査とかはどうした?」

女「パスした」

父「夫婦でもない奴がパスできるか!?」

女「出来たよ?」

父「……」

女「えー出来たんだもん。いいじゃん」

父「これからがある身でどうするつもりなんだ?」

女「結婚とかたるいっす」

父「おま……」

女「別に家業がーとか跡継ぎがーとかないじゃん、父さん公務員だし。兄貴が家相続でほらオールオッケー」

父「バカ者! お前なんぞ知らん、出ていけ!」

女「はーい」 ヨッコイショ

父「……」

女「あ、孫は期待すんなよ」

父「早く出ていけ!」

母「女ちゃん」

女「ん、何?」

母「父さんああ言ってるけど心配してるのよ」

女「いや、知ってますがな。逆にあれで心配してなかったらこっちが心配になるっての」

母「ならおとうさんのことも少しは考えてあげてね」

女「あんたの少しは父さんのことマックスで聞けってことでしょ?」

母「そんなこと言ってないでしょ? ただお父さんの気持ちもわかってあげてってだけで」

女「結果が兄貴じゃん。一人いりゃ充分でしょ? それとも耕したからには両方収穫したいって?」

母「そ、そんなこと――」

女「言ってるよ。少なくとも私にはそうきこえる」

母「そ、そんな」

女「そう、そうじゃないはどうでもいいんだよ。相手にそう聞こえた時点でそういうことを言ったことに気付けないほうが悪いんだよ、今わね」

母「……」

女「そういうことだから。お金もなにも頼らないからそっちからも何も言わないで。お歳暮と年賀状と暑中見舞くらいは送るからね」

母「……元気でね」

女「大丈夫、今超調子いいから。じゃ」

女「ただいまー」

友「ん、おかえり」

女「……」

友「……」

女「………」

友「……どうだった?」

女「別に。だいたい予想
どおりよ」

友「予想どおり、か」

女「言ってることは理解できるんだけどねー、どうしようもないわ」

友「後悔してるのか? 幼女のこと」

女「あ、ごめん。全然そんなこと無いの」

友「分かってるよ」

女「……でもねぇこれから幼女ちゃんが大人になるまで、やっぱりちゃんとしたお父さんお母さんがいないっていうのもどうなのかしらって思っちゃうわね」

友「え?」

女「え?」

友「いや何か問題なのか?」

女「問題って……」

友「私は問題ないとおもうから引き取ったんだが」

女「……」

おんな

>>67は、ミス
友「いや何か問題なのか?」

女「問題って……」

友「私は問題ないとおもうから引き取ったんだが」

女「……」

女(小中高、親が居ないとなると……でも別に家にはほぼ友が居るし友達が家に来てもシングルマザーで通せば……)

女「問題……ないのかな?」

友「問題があったらそのつど声を、気をかけてやればいいだけだろ。それが子育てだよ」

女「……うん、胡散臭い」

友「えー」

女「自分の子供を育てあげた事もないのに子育てがなんたるかを語られたって誰だって胡散臭さを感じるっての」

友「……そう?」

女「イエス。現に幼女ちゃんが年不相応に理解力が高くていい子だからこの状況でも上手くやっていけてるのよ? 他の子だったらまずあなたぶちぎれてるわ」

友「……ありえる」

女「はぁ……幼女ちゃんのことはそれでいいとして、後はうちの両親ね」

友「突っぱねてきたんだろ?」

女「まぁほぼ勘当ってところかしら。だいたい結婚結婚ってうるさいのよ!」

友「勘当云々は置いとくとしても結婚は別にいいんじゃないか?」

女(――――)

女「なにいってんのよ、相手なんかいないっての」

友「んじゃ、私と?」

女「えーいいのー?」

友「にやにやすんな、突っ込むとこだって」

女「知ってるくせに」 ボソ

友「……人の好き嫌いはうつろいゆくものよ。その度合いも含めてな」

女「そ、そりゃ私だって夢見る少女じゃないもの、永遠の恋だのは信じてるわけじゃないけどさ……」

友「まぁ私はかわらんけど」

女「おい。誰だ今うつろいゆく言ったの」

友「一般論が必ずしも万人に当てはまるとは限らないしなぁ」

女「むー」

友「は、冗談として私に縛られるのは止めな。好いた人が居たらそっちに心変わりしたほうが幸せになれるよ」

女「……何かあった?」

友「別に。今まで相当自分勝手に生きてきたんだ。いつそのつけが回ってくるかわからないし、それが回ってきたときに誰かの荷物になるのが嫌なだけさ。それが好きな奴ならなおさらな」

女(好きな人がそうなっても気にしないって分かってるくせに……)

女「それこそ自分勝手よ。先払い分より負担になるなら後払いすれば済む話でしょ?」

友「……ごめん、ちょっと詰まってた。らしくねぇな」

女「えぇ、らしくないわ」

友「んじゃまぁ仕事はさっさと片付けるか。最近ご無沙汰だったしな」

女「――もう、馬鹿」

 家のこととか幼女ちゃんのこととか、その時はぶっちゃけどうでもよかった。

 友が優しく抱いてくれている間はいつも、私は今あるどんな問題もとても些細な事のように感じられていた。

 でもそれはただの杞憂でしかなく、誰にとってもいい方向に転ばないと後々で思い知らされるのだ。

 そういう時は必ず友は優しく、私はそれに甘え、溺れていってしまう。

 このとき、もし彼女のいうとおり、また父のいうとおり適当に男を作り、適当に結婚して、一般的な家庭を築けていればよかったのかもしれない。

 でも私にはそれが出来なかった。

 そしてそれでも私は駄目になっていただろう。

 それほどまでに私にとった友は大切な、どこまでも頼りになる伴侶になっていたんだ。

後日

ピーンポーン

女「はーい」

友「誰だ? こんな夜に?」

女「さぁ? 出版社からとかじゃないの?」

友「……かもな」

幼女「おねーちゃん、はやくでないと」

ピーンポーン

おんな「んー今いきますよー」

ガチャ

女「はい……」

兄「夜分にすまんな」

女「げっ、兄貴!?」

兄「突然だったとは思うがいきなりげっっていうのはないだろ」

女「突然っていうより私がこっちに越してきてから一回も来たことない人が顔見せたら何かと思うわ、普通」

兄「仕事が暇じゃなかった」

女「はいはい。別に来てほしかったわけでもないからどうでもいいんですけどね」

友「どしたー?」

女「あー、いいや。じゃ、あがって」

兄「すまんな。失礼」

友「ん? 兄さんじゃん。ごぶさたー」

兄「君はいつあっても相変わらずだな」

友「人間そう変わらんでしょ」

兄「そこまで変わらないのは君だけだと思うよ」

友「褒め言葉さんくす」

幼女「こ、こんばんわ」

兄「……こんばんわというよりはじめましてかな。女の兄です」

女「……」

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