提督「おおしお」 (419)

大潮「司令官!」

提督「どうした大潮」

大潮「司令官がお困りかと思ってお助けに来ました!」

提督「今は別に困ってないかな」

大潮「そうですかぁ。では司令官に困ったことがあるまで、大潮はここで見てますね!」

提督「あ、そう」

大潮「……」

提督「……」

大潮「もうちょっと近くで見てます」

提督「う、うん……」

大潮「……んー、いざというときにすぐ対応できるように、もっと近い方がいいですね」ズイズイ

提督「膝に乗るな膝に」

大潮「大丈夫です! 大潮は小さいのでジャマじゃありません!」

提督「わりと邪魔」

大潮「あー、司令官はやく困らないかなー」

提督「今めっちゃ困ってる」

大潮「えっ!? やったぁ! 大潮がお助けします!」

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提督「じゃあ大潮、窓を拭いておいてくれ」

大潮「やれます!」

提督「そうな」

大潮「司令官!」

提督「なに」

大潮「上のほうに手が届かないので持ち上げて下さい!」

提督「脚立使って脚立」

大潮「脚立はぐらぐらするので」

提督「足が竦んでるだけだろう」

大潮「ではやってみます!」

提督「その意気だ」

大潮「わぁあ! ぐらぐらするー!」グラグラ

提督「二段上っただけで」

大潮「持ち上げて下さい!」

提督「はいはい」ヒョイッ

大潮「アゲアゲで行きましょ!」

提督「上げてるよ既に」

大潮「もうちょっと下げてください」

提督「はいはい」

大潮「それ! どーん!」

提督「優しく拭けよ、窓だぞ……」

大潮「……」フキフキ

提督「……」

大潮「司令官! 右に移動して下さい!」

提督「はいよ」

大潮「……」スイー

提督「……」

大潮「今度は左です!」

提督「了解」

大潮「……」スイー

提督「……」

大潮「……」フキフキ

提督「俺が自分で拭いたほうが楽!」

提督「頑張った大潮にお小遣いをやる」

大潮「!!」

提督「はい、これやるから、何か買って食べろ」

大潮「うおー!」

提督「雄々しいな」

大潮「おおしいおおしお」

提督「そうだな」

大潮「お小遣いありがとうございます! 何か補給してきますね!」

提督「そうしろ、是非そうしろ」

大潮「司令官!」

提督「なに」

大潮「また何かお困りのときは、大潮を呼んで下さいね」

提督「うん、呼ぶ呼ぶ」

大潮「では! 全力で補給してきます!」

ガチャッ バタンッ

提督「……あぁ、疲れた」

ガチャッ

大潮「司令官! 次はいつお困りになりますか!」

提督「ちょっとうるさい」

大潮「……」モグモグ

赤城「あら、大潮ちゃん……何を食べているのでしょう」

大潮「からあげを食べてます!」

赤城「唐揚げ、ふうん、唐揚げですか……ふうん」

大潮「お小遣いで買いました!」

赤城「そうなんですか……唐揚げ、ふうん」

加賀「赤城さん……」

赤城「えっ、どうかしましたか加賀さん? 私は別に普通ですが?」

加賀「まさか、まさか小さい子がお小遣いで買った唐揚げを、分けてもらおうなんて……」

赤城「そんなまさか、一航戦の誇り、見くびらないで下さい」

加賀「……」

大潮「んー、貴重なからあげだけど……でも赤城先輩なら、食べても構いませんよ!」

赤城「えっ、そお? じゃあ、少しだけ……」ソッ

加賀「……」ガシッ

赤城「……あの、加賀さん?」

加賀「駆逐艦の子、厚意だけ受け取っておくわ」

赤城「!!?」

加賀「赤城さんは自分のお小遣いで唐揚げを買って食べるから」

大潮「さすが赤城先輩です!」

赤城「そんな、そんな……」

加賀「行きますよ、赤城さん」

赤城「加賀さん……どうして……」

加賀「……」

赤城「お小遣いなんてもう全部使っちゃったに決まってるじゃないですか!」

加賀「計画的に使えば十分やりくり出来る金額を貰っているはず」

赤城「貰って二日くらいで食費に消えました……」

加賀「……」

大潮「……」モグモグ

赤城「……」

大潮「司令官のお手伝いをするとお小遣い貰えますよ!」

赤城「!!」

大潮「補給作戦が完了しましたよ!」

赤城「私はまだ完了していません」

提督「戻ってきた上に増えてる」

赤城「上々ね」

提督「何が」

大潮「赤城先輩が司令官のお手伝いをしたいそうです!」

提督「ほう、何でまた」

赤城「いえ、あの、時々は、お役に立たねばと思いまして」

提督「いつも航空戦で役立ってもらってるけど」

赤城「いえ、その、何と言うか……」

提督「……う、うん、まぁいいや、じゃあ何をしてもらおうかな」

赤城「お小遣いのためです……」

提督「いいって言ったのに正直だなおい」

赤城「一航戦の誇りが……」

提督「分かった分かった、じゃあもうこの際、大掃除するから手伝って」

赤城「艦載機の皆さん、お願いしますね」

提督「てめぇでやれ」

大潮「ちなみに加賀先輩は帰りましたよ!」

提督「何の話だ」

提督「という感じで、いま司令官室はてんやわんやだ」

加賀「私が説得できれば良かったのだけれど」

提督「いや、加賀が居たからあの程度で済んだんだと思う」

加賀「あら、優しいのね」

提督「まぁ、でも悪気は無い二人だし、手伝いは助かるし」

加賀「そうね」

提督「後でおやつでも買ってやるか……さて、戻って掃除の続きしよう」

加賀「そう。掃除くらいなら、私も助力させてもらおうかしら」

提督「えっ、おやつの為か?」

加賀「そう思う?」

提督「ううん、ありがとう加賀、チュウしていい?」

加賀「ん、んー……駄目」

提督「そっか。よし、さっさと片付けてぴかぴかの部屋で元気に仕事するぞ!」



大潮「あっ、いた! 司令官!」テテテッ

赤城「……」ションボリ

大潮「大丈夫です赤城先輩! 正直に話しましょう! 大潮がお守りしますので!」

赤城「……」シュン



提督「……」

加賀「……」

提督「何か凄く嫌な予感がする」

加賀「そうね」

提督「何処の誰とは言わないが、誰かさんが司令官室の壁を艦載機でぶち抜いた」

エー ザワザワ ウソー

提督「そういう事だから、資源の調達を頼む」

龍田「遠征かしらぁ」

提督「そうだな」

大潮「大潮が行きます! お任せ下さい!」

提督「天龍、龍田、朝潮、満潮、赤城、加賀の六人で」

大潮「大潮が皆を守ります!」

提督「あと赤城は今日の夕飯抜きな」

赤城「……」パタリ

提督「寝るな」

赤城「もう全然やる気ないです……」

提督「冗談だよ、ほらアイス食べて行け」

赤城「アイス」

大潮「よぉーし、いっきまっすよぉー!」

提督「大潮は留守番だ」

大潮「!?」

提督「アイスは食べていいぞ」

大潮「アイス」

提督「あー」

大潮「あー」モグモグ

提督「うまいか」

大潮「美味しいです! ありがとうございます!」

提督「そっか」

大潮「……」パクパク

提督「……大潮ってさ、加賀と仲良い?」

大潮「加賀先輩ですか! ちょー仲良しですよぉ!」

提督「今度さ、何か、好きなものとか、こっそり聞いてきてくれない?」

大潮「お任せ下さい! 加賀せんぱーい!! 司令官がー!!」

提督「やっぱいいや、やめて」



天龍「よっしゃぁっ! いくぜおめーら!」

加賀「……」グイグイ

赤城「待って下さい! 少しだけ待って下さい!」グググッ

加賀「……行くわよ」グイグイ

赤城「待って下さい! アイスのおかわりが有りか無しかだけ確認させて下さい!」



提督「あとこれ赤城にあげてきて、俺の食べかけだけど」

大潮「やれます!」

提督「そうな」

提督「もがみーん、もがみん居るかー」

最上「ん? 提督、呼んだ? ボクに何か用?」

提督「あ、もがみん、司令官室の片付け手伝って貰えないか」

最上「司令官室、ああ、壁が大破したんだっけ」

提督「うん、一人で片付けるのはちょっとしんどい」

最上「わかった、いいよ」

大潮「大潮もお手伝いします!」

最上「あはは、大潮、秘書艦がんばってる?」

大潮「もちろんです! 最近の大潮はお役立ちっぷりが目に余ります!」

提督「目に余りますか」

最上「手伝いはボク一人でいいのかな? 他にも誰か呼ぶ?」

提督「そうだな、もう一人くらい……」

三隈「……」ジー

提督「……ぶつかって被害出さない奴がいいな」

三隈「……くまりんこ」

最上「さあ、ぶつからないよう気を付けてやろうね、三隈」

三隈「はい、くまりんこ、頑張りますね」

大潮「大潮も頑張りますよぉー!」

提督「よし、とりあえず大きめの瓦礫を纏めるか」

最上「うん、任せて」

三隈「これは……」

提督「ん? どうした?」

三隈「お洋服が、汚れてしまいそうですわ……」

提督「う、うん、まぁ……」

三隈「でも、提督のご命令とあらば……三隈、張り切ってお手伝い致しますの」

提督「いや、無理しないでもいいぞ……」

大潮「大潮が三倍働きます! やれます!」

三隈「あら、うふふっ、頼りになりますのね」

大潮「ふにににににっ、ぐぬぬぬぬっ……重いよぉー」グググッ

提督「……」

大潮「大潮はここで見てますね」

提督「そうか」

提督「あらかた片付いたな」

最上「そうだね」

提督「大潮もよく頑張った」

大潮「困ったときこそ大潮の出番です!」

提督「そうだな、撫でてやろう」ナデナデ

大潮「えへー」

三隈「……」ジー

提督「三隈もよくやってくれた。服汚れてないか?」

三隈「はい、この程度でしたら、問題ありませんわ」

最上「提督、三隈のことも撫でてあげてよ」

三隈「えっ!? そ、そんな、モガミン変なこと言わないで」

提督「そいやー」ナデナデ

三隈「……もう、提督」

提督「もがみんも撫でとこう」ワシャワシャ

最上「あっ、ちょっ、ボクだけ撫でかた雑じゃない!?」

大潮「大潮もかなり頑張りましたよ!」

提督「はいはい」ナデナデ ワシャワシャ

大潮「えへー」

提督「汗かいたから風呂行くか」

大潮「背中を洗うのは大潮にお任せください!」

提督「もがみんと三隈も一緒に入るか?」

最上「あはは、ボクは遠慮しておこうかな」

提督「残念」

三隈「あ、あの、提督……それは命令、ですの……?」

提督「ん?」

三隈「ご命令とあらば、三隈もご一緒します……」

提督「……ええと」

最上「三隈、提督のいつもの冗談だから、本気にしちゃダメだよ」

三隈「……」

提督「……」

三隈「……そ、そうですわよねっ、そんな、いくら提督といえど殿方と……あぁっ」キュー

提督「あの、ごめんなさい……」

三隈「申し訳ありません、三隈は、三隈ははしたない女ですの……でもどうか、軽蔑なさらないで……」

提督「ごめん、マジで、ごめんなさい」

大潮「この帽子手桶の代わりになりそう!」

提督「ならないよ」

大潮「そうかぁ」

カポーン チャプチャプ

大潮「司令官!」

提督「なんだ大潮」

大潮「タオルのくらげ作って下さい!」

提督「お安い御用だ」

大潮「司令官はくらげ作るのだけは上手です」

提督「いや他にも特技たくさんあるよ」

チャプチャプ

提督「空気をためて、閉じ込めて……」

大潮「もう大体くらげです!」

提督「そうだな。はい出来た!」チャプ

大潮「てぇー!!」バチャーン

提督「いきなり潰すことないだろ」

大潮「常に全力疾走です!」

提督「そうか……とかやってる間にまた出来た!」チャプ

大潮「てぇー!!」バチャー

提督「どちくしょう」

提督「ふぅ、温まった温まった」

大潮「お風呂はぽかぽかしますねぇ♪」

提督「はい、牛乳」

大潮「ありがとうございます! ……司令官のは何ですか?」

提督「俺はコーヒー牛乳」

大潮「大潮もコーヒー牛乳がいいです」

提督「でもほら、コーヒーは大人の飲み物だから」

大潮「大潮はコーヒー牛乳が激甘だって知ってます」

提督「そうか」

大潮「十回くらい飲んだことあります」

提督「十回もか、凄いな、じゃあ大潮にもコーヒー牛乳をやろう」

大潮「ありがとうございます!」

提督「……」カパッ

大潮「……」カリカリ

提督「……」ゴクゴク

大潮「……」カリカリ

提督「……」

大潮「ふた取って下さい」

提督「はいはい」

大潮「寝ます!」

提督「元気いっぱいだな、本当に眠れるのか」

大潮「……zzz……」

提督「早い」

大潮「あっ、そうだ、司令官!」

提督「起きてた」

大潮「司令官は明日はお仕事ですか?」

提督「明日は休憩の日だな」

大潮「荒潮がピクニックしたいって言ってましたよ!」

提督「あ、そう」

大潮「……」

提督「……」

大潮「ピクニック」

提督「マジかー、俺の休日……まぁいいか」

大潮「やったぁ! みんなに知らせに行ってきます!」ガバッ

提督「夜だから静かに行け」

大潮「みんなー!! ピクニック行くってー!!」ダダダッ

提督「うるさい」

大破した司令官室と寝室は別ということでここは一つ……

提督「朝潮型ー、集合ー」

朝潮「朝潮型、集まりました! いつでも出撃可能です!」ビシッ

提督「お弁当作ってきたか?」

朝潮「はい! ご命令の通り、人数分の食料を用意しました」

提督「よしよし、偉い偉い」ナデナデ

朝潮「……」ポワワ

提督「よーし、じゃあ、番号!」

朝潮「……あっ、は、はい! 番号! いち!」

大潮「大潮です!」

満潮「……うざっ」

荒潮「うふふ~」

朝雲「番号って、知ってるでしょ?」

山雲「生卵を持ってきたのー」

霰「……きゅう」

霞「これに何の意味があるわけ?」

提督「よしよし、朝潮と霰は一緒にピクニック行こうな。番号言えなかった奴は留守番」

「「!!!!??」」

大潮「大潮は二番です!」

朝潮「し、司令官!」

提督「ん?」

大潮「大潮は二番です!」

朝潮「その……申し訳ありません! 妹たちに、もう一度だけチャンスを頂けませんでしょうか!」

大潮「二番艦の大潮です!」

提督「じゃあもう一回だけ。ああ、今いる人数の確認だから、霰が七で霞は八で頼む」

朝潮「ありがとうございます! 番号! いち!」

大潮「大潮です!」

満潮「ふん……三よ」

荒潮「うふふ~、何だか楽しくなってきちゃったわ~」

朝雲「五番だから覚えておいて!」

山雲「ろく~。えへへ~♪」

霰「きゅう……なな」

霞「八だったら! これでいいんでしょ!」

提督「荒潮……」

霞「大潮も微妙にタイミングおかしいったら」

朝潮「……ぐすん、あ、荒潮は、ピクニックが楽しみで」

提督「な、泣くな朝潮、大丈夫だから」

朝潮「あ、あんまり、眠れなかったみたいで、ぐすっ……」

提督「うん分かった、それでちょっとテンションおかしいのな、分かったから泣くな」

朝潮「お留守番は、朝潮が受け持ちますので、ぐすんっ、どうか荒潮をピクニックに……」

提督「みんな連れて行くから、大丈夫だから」

朝潮「お弁当も、荒潮は頑張っておにぎりを、たくさん、ぐすっ、ううぅ……」

提督「誰か朝潮に話を理解させるコツを頼む」

大潮「……」

提督「……」

大潮「……あ、大潮は絶対ピクニック行きたいので」フリフリ

提督「いや代わりに留守番しろとか言う話じゃなくて」

満潮「抱きかかえて無理やり連行すればそのうち理解するわ、たぶん」

提督「そ、そうか、そういう感じでいくか」

山雲「えへ~、到着~♪」

朝潮「艦隊が無事、目的地に到着しました! 司令官、ご命令を!」

霞「切り替えが早いわね、さっきまであんなに……」

朝潮「終わった話を蒸し返すのは野暮というものであり――」

霞「あーはいはい、悪かったったら」

提督「じゃあまずレジャーシート敷く」

大潮「お任せください!」

提督「かまども作るか」

大潮「大潮が! 大潮がやります!」

提督「あとは薪を集めて……」

大潮「やれます!」

提督「じゃあぜんぶ大潮に任せて俺らは遊ぼう」

大潮「!!?」

荒潮「うふふ~、暴れまくるわよぉ~」

提督「暴れるのは止せ」

朝雲「じゃああとよろしくー、大潮の分も遊んで来たげる」

大潮「……」

霰「……んちゃ」

大潮「……司令官!」

提督「どうした大潮、あとは頼んだぞ大潮」

大潮「困ったときは大潮を呼んで下さい!」

提督「うん、じゃあ遊んでくるわ」

大潮「困ったときこそ、大潮を呼んで下さいね!」

提督「ああ、うん」

大潮「……」

提督「……」

大潮「レジャーシート、レジャーシート」バサバサ

提督「……」

大潮「……」チラッ

提督「……」

大潮「……困ったときのー、大潮ー」バサバサ

提督「……」

大潮「……」チラッ

提督「大潮が居ないと楽しさ半減で困ったなぁ」

大潮「じゃあ大潮も一緒に遊びますしょうがないので!!」テテテッ

提督「そうな」

荒潮「ぽかぽかで気持ちいいわね~」

提督「寝転がって雲を眺めてるだけでも気分が良い」

荒潮「……腕を借りてもいいかしら~?」

提督「はいよ」

荒潮「うふふ、よいしょ……あ、これは寝れちゃうわね~」

大潮「じゃあ大潮は司令官の上に乗ります!」

提督「上かよ、まぁいいけど」

大潮「朝潮も大潮の上に乗って!」ヨジヨジ

提督「誘うな」

朝潮「で、では失礼します、司令官!」

提督「マジかー、いいけどさー」

霰「霰も……こっち側、いい……?」

提督「ああ、おいでおいで」

霰「……ん、いいかも」ピタリ

提督「あとは朝雲山雲を両足にくっつけて、満潮は……背中に敷こう」

満潮「はいはい、そうね、ぶっ飛ばされたいって事ね」

提督「嘘ですごめんなさい。霞は……股間しか空いてないなあとは」

霞「このクズ、子孫を残せなくしてあげる」

提督「目が据わってるよゴメーン」

満潮と霞の書き分けとは……。ピクニック編もうちょっと続きます。

荒潮「……」

提督「荒潮、寝ちゃったか」

荒潮「……うふふ~、寝ちゃってるわよぉ」

提督「寝てたら勿体ないから遊んどけ」

荒潮「ではぁ、ここで問題で~す」

提督「うん?」

荒潮「眠りについたお姫様を起こすために~、必要なものはなんでしょうかぁ?」

提督「荒潮はお姫様だったのか」

荒潮「そこはスルーしてちょうだい」

提督「何だろう、朝ごはんの良い匂いか……皆はどう思う?」

大潮「大潮はハンマーだと思います!」

荒潮「えっ」

朝潮「敵襲を知らせるサイレンなら瞬時に目が覚めるかと!」

荒潮「あの」

ハンマー サイレン ハンマー グーパンチ ハンマー ハンマー エヘヘー キストカー

提督「民主主義に則りハンマーという事になったが、いけるか荒潮」

荒潮「死んじゃうじゃない……」

提督「山雲」

山雲「ん~?」

提督「なに作ってんの」

山雲「お花の冠~。朝雲姉にあげるんだ~」

提督「そうか、喜んでもらえるといいな」

山雲「えへへ~」

提督「俺にも作りかた教えて」

山雲「司令さんも誰かにあげるの~?」

提督「ん、うん、どうだろうな」

山雲「山雲はね~、司令さんの気持ち知ってるんだよ~」

提督「ん!?」

山雲「司令さんは~」

提督「……」

山雲「山雲のことが好きなんでしょ~?」

提督「……ああ、うん、そう、ばれちまったか」

山雲「でも~、ごめんね~、山雲は朝雲姉も一緒じゃなきゃだめだから~」

提督「そうかー、じゃあ諦めるしかないかー」

山雲「ごめんね~、朝雲姉と二人でだったらお嫁さんになってあげるから~」

提督「そうな」

提督「重ねて……回して……」

霞「……」

提督「あれ、なんかおかしい、なんでこんなに捩れてきてんだ」

霞「……」イライラ

提督「ちょっと一回戻そう」

霞「……」イライライライラ

提督「難しいな花の冠……あっ切れた!」

霞「貸しなさいよ! 見てらんないったら!」

提督「あっ待て、待て待て、俺やるから」

霞「さっきからぜんっぜん進んでないじゃない! ほんとトロいんだから!」

提督「いいから、大丈夫だから」

霞「貸しなさいったら!」

提督「いや、これは俺が自分でやる」

霞「……」

提督「ありがとう霞、でも大丈夫」

霞「……」

提督「重ねて……回して……」

霞「……もう少し左寄りに重ねて」

提督「ん? ……こうか」

霞「そう、あと回すときに引っ張り過ぎないようにしなさい」

提督「なるほど」

霞「このくらい少し考えたら分かるでしょ、もっと頭使いなさいよ」

提督「ごめーん」

大潮「司令かーん!!!」テテテッ

提督「どうした大潮」

大潮「かまどを作りましたよ!」

提督「そうか、ご苦労、どれどれ」

大潮「あれです!!」

提督「どれ? 山積みの石しか見当たらないけど」

大潮「あれです!!」

提督「さては竈がどんなものだか知らないな?」

大潮「そうですねぇ」

提督「朝潮も知らなかったのか」

大潮「朝潮は石を積んで薪を使うという事は知ってましたよ!!」

提督「薪をどこにくべるつもりだったんだ朝潮」

大潮「さします!」

提督「挿すな」

大潮「朝潮ー!! さすの中止ー!! 違うってー!!」

朝潮「えっ!!? ……問題ありません、心得ていました!!」

大潮「知ってたならなんでやったって司令官がー!!」

提督「言ってないよ」

朝潮「……」シュン

提督「……」

朝潮「……」ションボリ

提督「一緒にやろうな、ごめんな投げっぱなしで」

荒潮「ではおにぎりを配りまぁす」

朝雲「もらっといたげる」

大潮「……コソコソ」

朝雲「ん? 大潮なにこそこそしてるの?」

大潮「!!」ビクーン

朝雲「あっ! 大潮だけおにぎり三個持ってるわ!」

大潮「しまったぁ!」

朝雲「ずるいじゃない! みんな二個なのにぃ!」

大潮「まだまだいけるよ!!」

朝雲「そういう問題じゃないでしょ!」

提督「ほら朝雲、俺のやるから」

朝雲「ん? いいの? ありがとう」

提督「よしよし」

満潮「……」

提督「俺はスープ多めに飲んで空腹をごまかそう」

満潮「……おにぎり半分――」

霰「司令官、おにぎり、半分……あげるね……?」

朝潮「私も一つで十分ですので、どうぞ!」

提督「マジかー、霰も朝潮も超好き、愛してる」ナデナデ

朝潮「……」ポワワ

満潮「……」

提督「ところで満潮、なんか言ったか?」

満潮「言ってないわよ!! バッカじゃないの!?」

提督「お、おう、すまん……」

赤城「……」

加賀「……」

赤城「どうして私はピクニックに連れて行ってもらえなかったのでしょうか」

加賀「司令官室の修繕を任されたでしょ」

赤城「……これ修復剤かけたら直らないかな」

加賀「無駄使いは駄目よ」

赤城「はぁ……今ごろ朝潮型の子達はきゃいきゃいしながら」

加賀「……」

赤城「おにぎりとか、スープ作ったりとか……いいなぁ」

加賀「……提督からの言伝なのだけれど」

赤城「ん? なんですか?」

加賀「片づけが進んだら鳳翔さんに、赤城さんの好きな夕飯をリクエストして良いそうよ」

赤城「本当に!? わぁ、さっさと片付けちゃいましょう!」

加賀「そうね」

数時間後



赤城「そろそろ出来ますか!?」バーン

鳳翔「もうすぐだから、大人しく待っていて下さいね」

赤城「もうすぐっていうのは、秒で言うとどれくらいのすぐですか!?」

鳳翔「ん、そうね、提督達が帰ってくる頃には」

赤城「私、呼びに言ってきます!」

鳳翔「すぐ帰ってくるから、大丈夫よ」

赤城「すぐっていうのは秒で言うと!」

鳳翔「加賀、大人しくさせておいて」

加賀「分かりました。赤城さん、こっちに」

赤城「加賀さんも一緒に迎えに行きましょう!」

加賀「いいから来なさい」

赤城「このから揚げの端っこは余ってるやつですか?」



朝潮「艦隊が帰投しました!」



赤城「来た! 提督!!」タタタッ

加賀「あっ、ちょっと」

鳳翔「……ふふっ、あの子は相変わらずね」

加賀「海の上では、凛として格好も付いているのですが……」

大潮「あっ!! 赤城先輩!!」

赤城「ご飯!」

大潮「ご飯じゃないです!! 大潮です!!」

赤城「取り乱しました」

加賀「……」

大潮「加賀先輩も! ただいま戻りました!」

加賀「そうね、おかえりなさい。楽しめた?」

大潮「ちょー楽しかったですよぉ!」

赤城「ところで提督は?」

朝雲「荷物置きに行ったわ。私がやったげるって言ったのに」

大潮「そうだ! 赤城先輩にお土産がありますよ!」

赤城「お土産! まぁまぁまぁ、それはそれは、ありがとうございます」

大潮「食べ物じゃないです!!」

赤城「あっ、あ、そうなんですか、いえ別に全然期待とかしてませんよ?」

大潮「お花の冠です!!」

赤城「あら、可愛らしいですね、ありがとうございます」

大潮「ちなみに加賀先輩のはありませんよ!」

加賀「……そう、別に、いいけれど」

大潮「加賀先輩の分は司令か――」

霞「余計なこと言ってんじゃないわよ!!」ベチッ

大潮「あ痛ー!!」

提督「おっ、赤城、加賀、ただいま」

加賀「おかえりなさい」

提督「部屋直った?」

加賀「それなり、と言ったところね」

提督「そうか、ありがとな加賀、赤城も」

加賀「いいけれど」

提督「そうだ、これ」

加賀「何かしら」

提督「俺が作ったやつだから不恰好だけど……花の冠」

加賀「……」

提督「……」

加賀「……こういうことをされると」

提督「おぉ……駄目か、迷惑だったか」

加賀「ううん……さすがに、気分が高揚します」

提督「そっか、良かった」

赤城「えっ? でもさっき別にいらないみたいに言って――」

霞「余計なこと言うなったら!!」ベチンッ

赤城「あ痛ー!! あー!! お尻がー……!」プルプル

大潮「霞の平手はほんとに痛いんですよぉ」

赤城「お尻が……! あー……!」プルプル

ピクニック編終わり。朝雲と山雲はうちの鎮守府に早めに来るように。

チュンチュン チュチュン



三隈「くまりんこ」キューン

三隈「……」

三隈「んー、もう少し可愛く……」

三隈「くまりんこ ♡」キューン

提督「……」

三隈「……」

大潮「早く行きましょうよぉ」

三隈「……」

提督「……」

大潮「司令官、約束の時間に遅れちゃいますよぉ」

三隈「……提督、いつから見ていらしたの」

提督「六時半頃から」

三隈「お恥ずかしい……声をかけて下さればよかったのに」

提督「三隈が可愛いから、見とれてた」

三隈「あらやだ、お世辞がお上手ですのね」

提督「いやホントに。で、準備できてる?」

三隈「あっ、はい、三隈、いつでも準備万端ですわ」

大潮「行っきまっすよー!!!」

提督「分かった分かった、行くから」

赤城「演習は良いですね、毎日演習でもいいくらいです」

鈴谷「えー、なになに? 赤城さん演習好きなの?」

赤城「演習に出向くと豪勢なお料理が振舞われたりしますからね」

提督「そういうの期待し過ぎるのは良くないぞ」

最上「でも、ボクもちょっと期待しちゃうなー」

提督「もがみんまで」

大潮「でもまずは演習を頑張らなきゃです!!」

提督「おっ、偉いぞ大潮」

大潮「大潮は演習大好きです!」

鈴谷「そうなんだ、何で何で?」

大潮「演習に出向くと豪華なご飯が出てきますからね!」

鈴谷「あれ何かデジャヴ」

提督「お前ら、くれぐれも失礼の無いように頼むぞ」

満潮「……」

提督「満潮は愛想良くな」

満潮「……うるさいわね」

提督「よしよし、向こう着いたら一緒にパフェ食べに行こう」

満潮「……」

大潮「大潮も行きます!!」

赤城「一航戦赤城もご一緒しますね」

【呉鎮守府】

大潮「到着ですよー!」

赤城「じゃあパフェ食べに行きましょうか」

提督「待て待て、ここで秘書艦の子と待ち合わせしてるから」

大潮「秘書艦の大潮です!!」

提督「そうじゃない、呉鎮の秘書艦の子と待ち合わせしてるから」

加賀「……あの子かしら」

提督「ん? あぁ、そうっぽいな。おーい、こっちこっち」



青葉「あっ! どもども、ようこそいらっしゃいました横須賀鎮守府の皆さん!!」テテテッ

提督「横須賀鎮守府提督以下九名、来たよ」

青葉「恐縮です青葉ですぅ! 一言お願いします!」

提督「そちらの提督さんは元気?」

青葉「司令官ですか? まぁまぁ元気ですねっ!」

提督「そっか。……あっ」

青葉「どうかしましたか?」

提督「首のところ」

青葉「???」ペタペタ

提督「……虫刺され?」

青葉「ふぇっ!?!??」ビクーン

提督「なんて、冗談。呉提督が元気そうで何よりだ」

青葉「あ、えっ、あの、いえ、その、ええと……」アセアセ

満潮「あんたが一番失礼じゃないの!!」ガスッ

提督「痛っ! おおぅ、すね、お前すねを……痛ぁ……」

加賀「……今のは貴方が悪いと思う」

提督「ご、ごめんなさい……」

大潮「虫刺されのお薬ありますよ!!」ゴソゴソ

青葉「だ、だ、大丈夫です、はい、恐縮です、あはは……」

提督「じゃあ、俺はちょっと呉の提督さんと話してくるから」

大潮「パフェは!!?」

赤城「そうです!!!」

提督「青葉ちゃん、この子ら甘味処にでも連れてってあげて」

青葉「……」

熊野「……」

提督「青葉ちゃん」

青葉「あっ、は、はい! お任せください!」

提督「満潮に財布渡しとくからな」

満潮「ふんっ」

提督「青葉ちゃんもこれで好きなもの食べてくれ」

青葉「いいんですか!? わーい」

提督「加賀ともがみん達はどうする?」

加賀「私は……ここで待ってる」

最上「ボクは師匠に挨拶に行きたいな」

三隈「では、私はモガミンと一緒に」

鈴谷「熊野どうする? パフェ行く?」

熊野「……」

鈴谷「……おーい熊野ー?」

青葉「……」ジッ

熊野「……何かご用ですの?」

青葉「い、いえ……何でもありません」

熊野「……」

鈴谷「熊野コラ! 意地悪やめなってば!」

熊野「まさか、そんなつもりは無くってよ?」

鈴谷「はいはい、昔は昔、今は今、仲良く仲良く!」

熊野「ですから、私は平素と変わりありませんわ」

青葉「……あの、あの……ごめんなさい」

熊野「今時のレディは些事に拘りを持ちませんの。今日と明日の演習、宜しくお願いいたしますわね」

青葉「……はい、こちらこそ、よろしくお願いします!」

大潮「パフェ!!」

赤城「それより提督のお財布でステーキとか食べませんか」

提督「張り倒すぞ赤城」

大潮「はぁー、パフェは偉いですねぇ」モグモグ

赤城「~♪」パクパク

青葉「いやぁ、何か悪いですねぇ、青葉までご馳走になってしまって」

満潮「……」ムスッ

青葉「満潮ちゃんはご機嫌ななめですか? も、もしかして青葉がいるからですか?」

満潮「違うわよ……あいつ、一緒に食べに行くって言ったのに」

大潮「司令官が居なくて寂しいんだ!!」

満潮「なんでそうなるのよ」

大潮「満潮! 大潮に甘えていいからね!!」ギュー

満潮「暑い暑い……違くて、あいつがいい加減な事ばっかり言うのがむかつくのよ」

大潮「司令官が?」

満潮「いっつもそうよ、テキトーな冗談言ったり、優しいふりで好感度上げようとしてばっかり」

青葉「……」メモメモ

満潮「何メモってんのよ」

青葉「あっ、お気になさらず」

満潮「……悪い風に記事にしないでよね、良い所も、まぁ、あるにはあるから」

赤城「満潮ちゃん」

満潮「な、な、何よ、お説教だったら聞かないわよ」

赤城「提督のお財布を、一回だけ私に預けてみませんか」

満潮「……」

赤城「大丈夫、安心してください、一航戦の誇りを信じて」

満潮「……これも記事にしないでね」

青葉「あっ、はい」メモメモ

演習編が長くなりそうです。そしてトリップ間違えました気にしないで下さい。

青葉「ところで、加賀さんはなんで来なかったんでしょう?」

赤城「提督を待っていたかったのではないでしょうか」

青葉「加賀さんは秘書艦さんなんですか?」

大潮「秘書艦は大潮です!」

青葉「あ、そうなんですね。ええと、じゃあ、つまり」

赤城「つまり?」

満潮「……」

青葉「……ひょっとして、ひょっとしてな感じですか?」

赤城「……」

大潮「……」

赤城「ちょっと意味が分かりませんね」

満潮「行間を読みなさいよ」

大潮「大潮は分かりましたよ!」

赤城「解説をお願いします」

大潮「だからー、つまりー、まずこのスプーンをネコさんだとします!」

満潮「分かってなさそうね」

青葉「これは秘密の情報なんですけど」

大潮「えっ!? 大潮にだけ教えてください!」

青葉「えへへ、じゃあ内緒ですよ」

大潮「大潮は内緒が得意です」

青葉「司令官という立場の人と仲良くなるにはですね」

大潮「ふむふむ」

青葉「秘書艦として従事するのは、かなり有効みたいですよ」

大潮「満潮!! 聞いて!!」

満潮「なに」

大潮「司令官と仲良くなるにはね」

満潮「聞こえてたわよ、っていうか何で私に言うのよ」

大潮「秘書艦のじゅ、じゅ……ジューシーな部分を食べる」

満潮「引くほど間違えてるわね」

赤城「大潮ちゃん、お腹の辺りが美味しそうだと思ってたんです」ヒョイッ

大潮「わぁあああああ放してぇえええええ!!!」ジタバタ

赤城「うふふ、冗談です」

大潮「死んじゃうかと思ったよぉ……」プルプル

赤城「私って何だと思われてます?」

青葉「情報によると、司令官と好い仲にある秘書艦の方は結構多いみたいですよ」

満潮「あんたとかね」

青葉「えへへ……」テレ

大潮「大潮も司令官と仲良しです!」

満潮「好い仲ってそういうのじゃないから」

赤城「じゃあどういうのなんでしょう」

青葉「……」

大潮「……」ジー

赤城「……」ジー

青葉「……ん? えっ?」

満潮「……」

青葉「いえあの、ですから……その、お付き合いとか、してたりとか」

赤城「お付き合いというと、ご飯を……」

満潮「食べ物から離れなさいよ」

青葉「いえ、ですから……こ、恋人同士と、言いますか……」

赤城「ああ! そういうのですね、分かりました。キスしちゃったりしてるやつですね」

青葉「はい、まぁ、キスとかは、まぁ……えへへ……」テレテレ

赤城「……とかって言うのは」

青葉「あの、青葉インタビュー受けるほうはあの、苦手で……勘弁してください」パタパタ

昼過ぎ



提督「よしお前ら、腹ごしらえは程ほどにしたか?」

大潮「ほどほどにしました!」

三隈「食べ過ぎてしまうと、満足に動けませんものね」

赤城「……」ケプッ

提督「赤城は、まぁ、出番明日だし、いいんだけどさ……」

加賀「ごめんなさい、明日は食べさせすぎないようにするから」

提督「いや、いいさ、大丈夫」

加賀「……そう」

提督「で、とりあえず今日のオーダーだけど」

最上「ボクたちはみんな出るんでしょ?」

提督「そうだな、こちらは航巡四隻に、駆逐二隻の編成で」

鈴谷「向こうは戦艦も居るんでしょー? 大丈夫?」

提督「うん、あちらは航空戦艦二隻に重巡二隻、駆逐二隻って感じだ」

熊野「制空権の、取りあい取り合いになりますわね」

最上「師匠の瑞雲に勝てるかなぁ」

提督「戦艦が徹甲弾積んでくるか分からんけど、どちらにしろ制空は拮抗以上に持ち込める予定」

赤城「そこで私の出番ですねっ♪」

提督「赤城の出番は明日だ」

満潮「ちゃんと聞いときなさいよ」

赤城「……」シュン

【演習場】



卯月「審判のうーちゃんだぴょん」

卯月「みんな正々堂々とやること!」

卯月「ぷっぷくぷ~!」ポインッ



満潮「……あれ開始の合図じゃないわよね」

鈴谷「どうだろ、分かんない……」

三隈「相手方の皆様も動かれていませんし、違うかと思うけれど……」

大潮「いっきまっすよぉー!!」

満潮「待って待って、まだ始まってるかどうか分かんないから待って大潮」



卯月「じゃあうーちゃんが始めって言ったら始めるぴょん」



満潮「始まってなかった! 戻ってきなさい大潮!」

大潮「うぉおおおおお!!」

満潮「戻ってこないと蹴っ飛ばすわよ、三隈を」

三隈「えっ……」

大潮「大潮がお守りします!!」テテテッ

卯月「位置についてー、よーい……」

卯月「……」

卯月「始めるぴょん!」



提督「おー、始まった始まった」

加賀「そうね」

赤城「……」モグモグ

提督「ひとまず航空戦か」

加賀「……」

提督「……向こうの瑞雲さ」

加賀「えぇ、私も同じこと思ってた」

提督「なんか多くない?」

加賀「多いわね」

提督「……あっ、あの航空戦艦二隻」

加賀「伊勢と日向」

提督「あれ、装備全部、瑞雲っぽい」

赤城「空を取られましたね」モグモグ

提督「マジかよ……」

鈴谷「何あれ!? 何あの量!?」

三隈「今から制空権を取り戻すのは……」

最上「無理無理、無理だよ!」

熊野「一機一機の動きも、尋常じゃありませんわね」

最上「きっと師匠が言ってた特別な瑞雲だ!」

大潮「大潮にいい考えがあります!!」

満潮「……」

大潮「大潮と満潮は素早いので」

鈴谷「どうすんの!?」

大潮「わーって近付いて! わーってやって! 旗艦を落とします!!」

満潮「六隻で旗艦に集中砲火浴びせれば……いけるかしら」

大潮「大丈夫!! まだまだいけるよ!!」

最上「えと、じゃあ、ボクたちが艦載機落として安全な道を作るから」

鈴谷「しおしお姉妹は前だけ見て全力で突っ走るって感じで!」

大潮「お任せ下さい!!」

満潮「しおしお姉妹……」


ズドンッ ズドンッ


三隈「きゃっ!」中破

熊野「きゃあっ!」大破

鈴谷「うぇっ!? 何!?」

提督「……いきなり二隻やられた」

加賀「……」

提督「おっ、反撃に出るのか、いいぞ」

赤城「……」モグモグ

加賀「あっ、あぁ……」キュッ

提督「あー……駄目か」

赤城「厳しいですね」

提督「青葉型二隻がやばいな、弾着観測で確実に連撃を当ててくる、何あの精度」

加賀「こちらの残った艦載機は睦月如月が着実に落としていって……」

赤城「砲撃は瑞雲を放って身軽になった伊勢日向が全て阻んでいます」

提督「……」

加賀「……」

赤城「……」モグモグ

提督「赤城、フライドポテトちょっとくれよ」

赤城「えー、自分のは自分で買って下さい」

提督「いや、そもそも俺の金で買ったやつだろそれ」

加賀「ちゃんと最後まで、見ていてあげて……」

提督「ご、ごめん、ちょっと逃避してた……」

とりあえずここまでで頼みます……

提督「で」

大潮「で!」

満潮「……」

提督「めっちゃ負けたな」

三隈「はぁ……三隈、まるでお役に立てませんでしたの……」

提督「いや、中破状態からよく頑張ってくれたよ三隈は」

三隈「……」テレ

最上「三隈いま、提督に慰めてもらえると思ってわざと――」

三隈「モガミン、どうしてそういう事を言うんですの!」

最上「わっ、わっ、ごめんごめん」

三隈「分かっていても言ってはならない事がありましてでしょう!」

最上「ごめーん三隈、許して」

三隈「提督、モガミンの言う事はお気になさらずにいて」

提督「えっ? うん、えっ?」

三隈「モガミンは先ほど変なキノコを食べてしまいましたの」

最上「凄い必至だね三隈、そこまで言う!?」

提督「で」

大潮「で!」

加賀「……」

提督「鈴熊はどこへ行った」

最上「あー」

三隈「……」

提督「何かあったのか?」

大潮「そう言えばちょっと怒ってました!」

最上「熊野はプライド高いからね」

提督「どゆこと? 最初に大破こそしたけど、その後は被弾ゼロだし、反撃にも一役買ったし」

満潮「……」

提督「抱きしめてやりたいくらいの大活躍だったと思うけど」

三隈「……」

提督「……?」

最上「中破から頑張った三隈も抱きしめてあげてよ」

三隈「モガミン!」

熊野「……」

青葉「え、え、あの、な、何でしょうか……」

衣笠「青葉すっごい睨まれてるじゃん、今度は何したの」

青葉「い、いや、青葉は何も……」

熊野「……手を抜きましたわね」

青葉「えっ?」

熊野「最初の一撃以降、全く私を狙わなくなりましたわよね」

青葉「えっと、その……た、大破まで持って行けたので、十分かと思いまして……」

熊野「大破判定を受けていても、私はまだ動くことが出来ましたわ」

青葉「……」

熊野「私を航行不能にしておかなかったせいで、そちらの旗艦が危なかった場面もあったでしょう」

衣笠「まぁ結果的にはこっちの勝ちだけどねっ」

熊野「……」ジロッ

衣笠「……はーい、静かにしてまーす」

熊野「あの状況なら、S勝利も狙えたはずでしてよ」

青葉「や、いやー……あそこからの追撃は、さすがに申し訳ないかなぁと……」

熊野「……申し訳ない?」

熊野「私たちは、戯れにここまで足を運んだわけではなくってよ?」

青葉「は、はい、重々承知してます……」

熊野「練度を上げるため、演習に来ているんですの」

青葉「そうですね、はい……」

熊野「それなのに、まさか」

青葉「……」

熊野「まさか、負い目があるから情けをかけたなんて、そんな事は仰いませんわよね」

青葉「……」

熊野「……あら、図星なんですの?」

青葉「いえ、その……」

熊野「ふふっ、随分とまぁ、お優しいんですのね」

青葉「……」

熊野「ですがその優しさ、この熊野に対する侮辱と受け取らせて頂きましてよ」

青葉「そんな……!」

熊野「明日こそは本気でやってくださいまし。必ずですわ」

青葉「は、はい……」

熊野「では、ごきげんよう」

青葉「……あ、あの、待ってください」

熊野「いいえ、待ちませんわ、補給がまだなんですの」

青葉「……」

熊野「『お先に失礼』いたします」

青葉「っ……」

鈴谷「……」

熊野「……」

鈴谷「お疲れ」

熊野「……はぁ」

鈴谷「補給は呉鎮の人たちがすっごいご飯用意してくれるんだって。めちゃ楽しみー」

熊野「……何も、言ってくれないんですの?」

鈴谷「熊野は悪くないよ! 全部あっちが悪い! 熊野は正しい!」

熊野「まるで思っていませんわよね」

鈴谷「熊野だって思ってないじゃん」

熊野「……」

鈴谷「熊野、手ぇ繋いで」

熊野「……」キュッ

鈴谷「じゃあ、戻ろっか」

熊野「……」

鈴谷「今日は頑張ったから提督にうーんと褒めてもらおー」

熊野「……私、嫌な女ですわよね」

鈴谷「そうかもね」

熊野「……やっぱり手を放してくださらないかしら」

鈴谷「やだ」

熊野「……」

鈴谷「あ、この後のプチ宴会でまた青葉さんと顔合わせるだろうけど、まぁ頑張って」

熊野「気まずさMAXですわね……」

ワイワイ ガヤガヤ

提督「大潮」

大潮「ん?」モグモグ

提督「めっちゃ食べてるな大潮」

大潮「どーんと! 大盛りでお願いしました!」

提督「食費は呉鎮持ちだからたんとお食べ」

大潮「お任せください!」

提督「ところで大潮」

大潮「なんでしょうか!」

提督「熊野が元気ないからさ、あとでちょっと様子を見てきてもらえないだろうか」

大潮「見てきます!」タタタッ

提督「あとででいいんだぞ」

大潮「見てきました!」テテテッ

提督「早すぎるだろ」

大潮「ウーロン茶みたいなの飲んでましたよ!」

提督「それはここからも見えるんだ大潮、そういうんじゃないんだ大潮」

大潮「???」

日向「最上、調子はどうだ、頑張っているか」

最上「もちろんです師匠!」

日向「そうだろうな、今日の演習でも感じたことだが」

最上「師匠的にはどうでしたか? 今日のボクは」

日向「最上の瑞雲、良い動きだったぞ」

最上「本当ですか!?」

日向「ああ、またずいうんと腕を上げたんじゃないのか」

最上「……?」

日向「……ふふ、すまない、とっておきの冗談だ」

最上「あっ、ああ! 面白いです師匠!」パチパチパチ

伊勢「クソ食らえって言っていいんだよ」

日向「伊勢、食事中に汚い言葉を使うな」

伊勢「クソ召し上がれって言っていいんだよ」

日向「そうだ」

三隈「いえ違いましてよ」

翔鶴「あ、あ、あの、あのあのあの」

加賀「……何か用」

翔鶴「あの、五航戦、翔鶴と、も、申します」

加賀「……」

翔鶴「一航戦の、先輩方に」

加賀「……」

翔鶴「お会いできて、光栄です……!」

加賀「そう」

翔鶴「はいっ。明日は加賀さんと赤城さんもお出になると聞いて」

加賀「ええ」

翔鶴「明日の演習、よろしくお願いいたします」ペコリ

加賀「そうね、お互い、全力を尽くしましょう」

翔鶴「は、はい! はぁあ瑞鶴、瑞鶴! 加賀さんとお話ししてしまったわ!」

瑞鶴「良かったじゃない」

翔鶴「瑞鶴も、きちんとご挨拶して」

瑞鶴「ん、うん……」

加賀「……」

瑞鶴「あの、えっと……明日は敵だけど、同じ空母仲間として、仲良くしてよね」

加賀「……同じ空母?」

瑞鶴「う、うん。……あっ、まだ加賀さんに並べるなんて思ってないけど、でも」

加賀「五航戦の子なんかと、一緒にしないで」

瑞鶴「えっ……」

提督「いいか大潮」

大潮「大潮はいつもいいです!」

提督「俺はまだ呉提督と話すことがあるからここを動けない」

大潮「そうですねぇ」

提督「大潮は自由に動ける」

大潮「時速500キロで動けます」

提督「飛ぶ気かよ」

大潮「!!?」

提督「飛ばないよ安心しろよ。で、大潮は自由に動けるから、熊野の様子を見てきてほしい」

大潮「ウーロン茶飲んでます」

提督「そうじゃない」

大潮「???」モグモグ

提督「熊野を……そうだな、熊野にくっついててくれ」

大潮「わかりました!」

提督「良かった」

大潮「でも大潮はいまでっかい鳥肉を食べてるからなぁ」

提督「あとででいいぞ、食べてからで」

大潮「んー、司令官が行ったらいいのになぁ」

提督「また最初からか大潮」

ワイワイ ガヤガヤ

熊野「……」

満潮「……隣、いい?」

熊野「えっ? あ、ええ、よろしくてよ」

満潮「……」

熊野「……なにか、ご用ですの?」

満潮「別に」

熊野「……」

満潮「……あっちに唐揚げが無くなっちゃったから、貰いに来ただけよ」

熊野「そ、そうなんですの」

満潮「……」

熊野「……」

満潮「明日は、勝てるわよきっと」

熊野「えっ」

満潮「……」

熊野「……ありがとうございます、お優しいんですのね」

満潮「ふんっ」

三隈「皆さま少し、お行儀が悪くってよ」

最上「ごめーん」

日向「すまない、伊勢には私からよく言っておこう」

伊勢「いや日向も大概でしょ」

三隈「くまりんこがマナーについて、教えて差し上げますわ」

衣笠「……」ジー

三隈「……なんでしょう」

衣笠「くまりんこって何?」

三隈「く、くまりんこは、くまりんこですわっ」

衣笠「……」

三隈「……」

衣笠「そう言えば演習の前にも変なポーズとってたよね」

三隈「変なポーズ……」

衣笠「あれ、もう一回やって見せてよ!」

三隈「……く、くまりんこ♡」キューン

衣笠「えー可愛いー!! なにそれ衣笠さんも教えてほしい!」

三隈「え、えっと……くまりんこ♡」テレテレ

衣笠「青葉ー、あれ? 青葉―? まだ来てないのかな」

三隈「……」

衣笠「ぶりっこのポーズで写真撮ってもらいたいのに」

三隈「ぶりっこのポーズ……」

瑞鶴「ちょっと、一緒にするなってどういう意味なわけ」

加賀「……」

瑞鶴「な、なんとか言ってよ!」

赤城「まぁまぁまぁ」

瑞鶴「……赤城さんいたの」

赤城「まぁまぁまぁ、どうぞどうぞ」トクトクトク

翔鶴「赤城さんにお酌してもらえるなんて……すみません、すみません、ありがとうございます……!」

赤城「さあさ、ぐいっと」

翔鶴「んくっ、んくっ……」

瑞鶴「え、ちょ、翔鶴姉」

翔鶴「ぷはっ、はぁ……」フルフル

赤城「あら、いい飲みっぷり、ささ、どうぞどうぞ」トクトクトク

瑞鶴「ちょっと、やめてやめて、飲ませすぎないで」

加賀「あ、赤城さん、やめなさい」

赤城「美味しいですよ?」

加賀「美味しくても大丈夫じゃないことだってあるのよ」

翔鶴「んくっ、んくっ……」

瑞鶴「翔鶴姉!」

翔鶴「ぷはっ……」

瑞鶴「だ、大丈夫?」

翔鶴「……ウェイ」

瑞鶴「翔鶴姉!」

翔鶴「ワーイ」

瑞鶴「翔鶴姉!」

大潮「熊野さん!」

熊野「いかがいたしまして?」

大潮「司令官が熊野さんを見てきてというので見に来ましたよ!」

熊野「気を遣わせてしまいましたわね、ごめんなさい」

大潮「熊野さん、元気ないですか?」

熊野「……いいえ、おかげさまで、元気はつらつでしてよ」

満潮「……」

大潮「アゲアゲでいきましょ!」

熊野「ふふっ、アゲアゲ、ですわ」

大潮「ところでなんですけどー」

熊野「何かしら」

大潮「大潮、さっきからずーっと、おトイレ行きたいんですよぉ」

熊野「行ったらいいのではなくて?」

大潮「でも大潮は熊野さんを見てなきゃだしなぁ……」

熊野「わたくしは大丈夫ですので、ぜひ行っていらして」

大潮「でももうダメそうなんですよぉ」

熊野「……」

大潮「おトイレの場所もわかんないし」

熊野「一緒に探して差し上げますから、我慢しなさいな」

満潮「……」

熊野「……満潮さんはどうしてそんなに遠く離れてるんですの?」

満潮「大潮はやるときはやるわよ」

熊野「不吉なことを言わないで」

大潮「漏れるー」

熊野「もう少しの辛抱ですわ、我慢なさいな」

大潮「てぇー!」

熊野「やめなさい」

大潮「やれます!」

熊野「やめなさい」

大潮「おトイレの場所、聞いて来たらよかったですね」

熊野「その辺にあるだろうと高を括ったのが間違いでしたわ」

大潮「漏れるー」

熊野「その辺に誰かいらっしゃらないかしら……」

青葉「……あっ」

熊野「……」

青葉「……あの、さっきは」

熊野「緊急事態ですの、お手洗いの場所を教えて下さらないかしら」

青葉「えっ?」

大潮「ではじゃぶじゃぶ出してきます!」

熊野「はいはい、じゃぶじゃぶ出してきなさいな」

ガチャッ バタンッ

熊野「……」

青葉「……」

熊野「お礼申しあげましてよ、おかげで助かりましたわ」

青葉「いえ、分かりにくい構造ですみません」

熊野「……」

青葉「……」

熊野「……お食事の場に、いらっしゃいませんでしたわよね」

青葉「あっ、はい、ちょっとお仕事が残ってまして」

熊野「そうなんですの、大変ですのね」

青葉「一応、ここの秘書艦ですので。あっ、でももうすぐ行きますよ、お腹も空きましたし」

熊野「……」

青葉「……」

熊野「……先ほどは」

青葉「えっ?」

熊野「頭に血が上って、随分と嫌味なことを言ってしまいましたわ」

青葉「えっ、いえ、いいんです気にしないで下さい!」

熊野「……」

青葉「あ、青葉が悪いんですから」

熊野「……」

青葉「……」

熊野「申し訳ありません」

青葉「いやいやいやほんとに気にしないで下さい!」

熊野「許してくださいますの?」

青葉「いやもう許すとか許さないとかじゃないんで!」

熊野「ありがとうございます」

青葉「いえ、あの……恐縮です」

熊野「……」

青葉「……明日は、びっくりするくらい本気でやりますので」

熊野「ふふっ、望むところですわ」

青葉「はい」

ガチャッ

大潮「おまたせしました!」

熊野「あら、無事に済ませられましたの?」

大潮「ダメでした!」

熊野「ダメでしたの!?」

大潮「嘘です! あとハンカチ置いてきちゃったので貸してください!」

熊野「……」

鈴谷「ちょっと目を離した隙に熊野がいない!」

満潮「心配しなくても、トイレ行っただけよ」

鈴谷「あ、なーんだ」

満潮「……丸ごと無事とは限らないけどね」

鈴谷「えっ? どゆこと?」

満潮「尿意が限界の大潮を連れて行ったから」

鈴谷「……」

満潮「大惨事に、なってないといいけど」

鈴谷「帰ってきた熊野がびしょびしょしてたら、鈴谷はどう接してあげたらいい?」

満潮「さぁ」

鈴谷「ビールとかかけて誤魔化してあげたらいいかな」

満潮「それやられたら私なら蹴っ飛ばすわね」

翌日・昼前



加賀「……」

加賀「迷ったわ」

加賀「この辺りだと聞いたのだけれど」

加賀「……」

ガサガサッ

加賀「っ」

ネコ < ……

加賀「……」

ネコ < ニャーン

加賀「……ちっちっち」

ネコ < ……

加賀「おいでおいで」フリフリ

ネコ < ニャーン

加賀「にゃーお」

ネコ < ゴロゴロゴロ

加賀「にゃんにゃんにゃーん」ナデナデ

瑞鶴「……加賀さん?」

加賀「この辺りに弓を引ける場所があると聞いたのだけれど」キリッ

瑞鶴「いや取り繕うの無理だから、ずっと見てたから」

加賀「……」

瑞鶴「んふっ、ぷくくくく」クスクス

加賀「……」

瑞鶴「えっ? 今さらそんな澄ました顔しても遅いんですけど?」

加賀「……」

瑞鶴「あっほら、猫ちゃん遊んでほしいみたいよ? 撫でてあげたら?」

加賀「……」

瑞鶴「にゃんにゃーん、ぷくくくく」クスクス

加賀「……」

瑞鶴「皆にも教えてあげよ」

加賀「……」ジロッ

瑞鶴「わー睨まれてる! 怖ーい」

加賀「……」

瑞鶴「昨日の嫌味な物言いを訂正してくれたら、黙っててあげてもいいかなー」

加賀「……」

翔鶴「瑞鶴ー? どこへ行ったのかしらあの子……」



瑞鶴「あっ、あんなところに翔鶴姉が! おーい翔鶴姉ー!」

翔鶴「瑞鶴っ、あっ、か、か、加賀さんもご一緒だったんですね」アセアセ

瑞鶴「ちょっと翔鶴姉聞いてよ、加賀さんったらね」

加賀「……」

翔鶴「???」

瑞鶴「さぁ、どうする加賀さん?」

加賀「……昨日は」

瑞鶴「はい駄目ー時間切れー、翔鶴姉、加賀さんさっき、猫ちゃん撫でてにゃんにゃん言ってたんだよ」

翔鶴「えぇっ!?」

加賀「……」

瑞鶴「ぷくくく、笑っちゃうよね」クスクス

翔鶴「加賀さんも猫がお好きなんですか!? わぁー奇遇ですね、実は私も大好きなんです!」

瑞鶴「翔鶴姉は何でそんなにメロメロなの」

大潮「こっちです司令官!」

提督「なんだよ大潮、どこ行くんだ」

大潮「昨日この辺にネコさんがいたんです!!」

提督「猫? 猫が見たいのか?」

大潮「懐っこくて触っても逃げないんです!」

提督「へぇ、人慣れしてるんだ、飼い猫かもな」

大潮「大潮のネコさんじゃないです!!」

提督「分かってるよ」

満潮「……」

提督「満潮も猫に触りについてきたのか?」

満潮「……別に、あんたたちが迷わないように来てあげただけよ」

提督「そっか、ありがとな満潮」

満潮「……」

大潮「あっ、いました! 加賀先輩のところです!」

提督「ん? ほんとだ、おーい加賀ー」



加賀「!!」ビクッ

提督「瑞鶴ちゃん、翔鶴ちゃんも、おはよう」

大潮「もうこんにちはの時間です!!」

翔鶴「おはようございます、横須賀の司令官様」

大潮「こんにちはの時間です!!」

翔鶴「ふふっ、こんにちは、大潮ちゃん」

大潮「こんにちは!!」

翔鶴「元気いっぱいですね」

大潮「大潮はいつでもアゲアゲです!!」

翔鶴「まぁ、それは素敵ですね。満潮ちゃんも、こんにちは」

満潮「……ん」

提督「満潮」

満潮「わ、わかってるわよ! ……こんにちは」ペコリ

翔鶴「あら、これはご丁寧に、ありがとうございます」ペコリ

満潮「……」

翔鶴「……あらあら、あと、きちんとご挨拶が出来ていないのはどなたかしら」

瑞鶴「……」

加賀「……」

ネコ < ニャーン

大潮「あっ! ネコさんもご挨拶できましたよ!」

加賀「……おはようございます」

瑞鶴「えっ、うん、おはよう、ございます……」

提督「二人とも、今日の演習よろしくな」

翔鶴「はい、よろしくお願いいたします」

提督「一航戦が相手だからって遠慮とか、気負いとかしないように」

瑞鶴「もちろんよ! ぎったぎたにしてやるんだから!」

提督「と言っておりますが加賀さん、どうですか」

加賀「鎧袖一触よ、心配ないわ」

瑞鶴「へぇー」

加賀「……」

瑞鶴「……にゃーんにゃんにゃん」

加賀「やめて」

瑞鶴「ん? なに焦ってんのよ」

加賀「……」

提督「なんだ? なんか可愛いな瑞鶴ちゃん、なにそれ」

加賀「なんでも、ないわ」

提督「うん?」

瑞鶴「……」

加賀「……」

瑞鶴「……あぁ、ふぅーん、なるほどなるほど」ニヤニヤ

加賀「……」

提督「えっ、なに?」

提督「さて、そろそろ戻るか、昼も取らないとだし」

大潮「えー!! まだ猫さんと遊びたいです!!」

提督「これは難しい命令なんだが、戻ったらまず手を洗えるか大潮!」

大潮「えっ!? やれます!! お任せあれです!!」

満潮「……」ナデナデ

提督「満潮も、行くぞ」

満潮「……えっ、あ、もう行くの?」

提督「戻って昼ごはんにしよう」

満潮「ちょっとだけ、待って……」

提督「ん? どうした」

満潮「……朝潮たちに送ってあげる写真撮るから、待って」

提督「そうか、じゃあ少し待とう」

満潮「……」ゴソゴソ

ネコ < ニャー

満潮「あっ、ちょっと、動かないでよ」

ネコ < ニャーォ

満潮「もうっ」

提督「俺が撮るから、満潮はそいつ抱っこしてやれよ」

満潮「えっ?」

提督「ほら、携帯貸せ」

満潮「う、うん……」

提督「よしよし、じゃあ撮るぞ」

満潮「……」

提督「はい、チーズフォンデュ」

満潮「……」キュッ

カシャッ

提督「これでいいか? ちょっと確認して」

満潮「……うん、大丈夫」

提督「いい笑顔」

満潮「なによ、いいでしょ別に……」

提督「そうだな、よし、じゃあ戻るぞ」

大潮「行っきまっすよー!!」

提督「はいはい」

満潮「……」

提督「さて、なに食べるかな」

満潮「……ねぇ」

提督「何だ」

満潮「ありがと」

提督「ん、いい写真撮れて良かったな」

満潮「うん」

昼過ぎ



提督「そういうわけで、楽しい演習の時間だ」

赤城「それより聞いて下さい提督!」

提督「どうした」

赤城「加賀さんが私のご飯とったんですよ!」

加賀「……」

赤城「『そのくらいにしておきなさい』って、私に意地悪したんです!」

提督「ふむ、加賀」

加賀「……何かしら」

赤城「言ってやって下さいよ提督! もう!」

提督「ありがとな加賀」

加賀「うん、いいけれど」

赤城「えっ? あれ? どうして加賀さんがお礼を言われてるんですか?」

提督「赤城」

赤城「んっ? えっ?」

提督「演習に勝ったら、何か食べに連れてってやるよ」

赤城「!!?」

提督「あと加賀はお前に意地悪したわけじゃないから、勘違いしないように」

赤城「そうなんですか? じゃあ何だったんです?」

提督「今回こちらは航巡四隻と赤城加賀、向こうは重巡四隻に鶴姉妹だ」

最上「昨日とは始まり方が違うって聞いたけど」

提督「そうだな、小島を囲んで相手が見えないところから始める」

鈴谷「向こうは地形とか全部把握してるんだよね? なんかズルいー」

赤城「大丈夫ですよ、地図を貰いました」

提督「……」

鈴谷「……」

赤城「……どうかしましたか?」

提督「赤城が食事に関係ないこと言うと、なあ?」

鈴谷「なんかビックリするよね」

赤城「加賀さんこれ、怒ってもいいところですよね?」

加賀「日頃の態度を改めることね」

赤城「どこかに私の味方いませんか?」

大潮「大潮は赤城先輩の味方です!!」

赤城「あらっ、ふふっ、可愛らしい味方が付いたので私の勝ちですね」

加賀「そうね」

赤城「ねぇ嫌い? 私のこと嫌いですか?」

提督「大好き」

加賀「私もよ」

赤城「……」テレ

【演習場】

如月「はぁーい♡ 審判の、如月よぉ」

如月「始まりの合図を出すから、如月から、目を離さないでね?」

如月「うふふ♪」



赤城「南からの風が吹いていますね」

加賀「……」

赤城「緩やかで、湿った風」

最上「……」

赤城「相手方には地の利があるんですよね」

三隈「……」

赤城「昨日の戦い方を鑑みるに、最もよい場所を取るでしょう」

鈴谷「……」

赤城「風に乗って届く音、潮の揺らめき」

熊野「……」

赤城「……では皆さん、慢心せず、全力で参りましょう」



如月「それじゃあ、よ~い」

如月「……」

如月「うふふっ、はじめてぇ」



赤城「……」ヒュカッ

青葉「ではまず索敵から始めましょうか!」

瑞鶴「任せて。おのれ一航戦、目にもの見せてやるんだから!」

衣笠「……ねぇねぇ青葉」

青葉「どうしました?」

衣笠「あれ、なんか……既に攻撃機が来てるみたいなんだけど」

青葉「いやいや、まだ開始15秒ですよ、こちらの位置すら把握してないはず……」チラッ



村田隊 < ヤッタレー



青葉「っ!!? そんなまさか!?」

衣笠「ど、ど、どうする!?」

青葉「出来る限り撃ち落とします! 翔鶴さんは戦闘機の発艦を!」

翔鶴「はい!」

青葉「瑞鶴さんは索敵を全速力でお願いします!」

瑞鶴「わ、わかった! なに、どうなってるのよ……?」

提督「大潮、プリン食べるか」

大潮「食べます!!」

提督「はいこれ」

大潮「二個も!? やったぁ!! ありがとうございます!!」

提督「いや違うぞ、一個は満潮の分だぞ」

満潮「……」

提督「満潮もこっちおいで」

満潮「……」

大潮「よいしょ」グイグイ

提督「膝に乗るな膝に」

大潮「半分空けといたから、満潮はこっち座って!!」

提督「聞いてないな」

満潮「遊んでないで、もっとちゃんと応援しなさいよ!」

提督「ん、大丈夫、ちゃんと見てるよ」

満潮「……」

提督「はいこれ、プリン。満潮も膝に乗るか?」

満潮「乗るわけないでしょ」

提督「そうか」

赤城「相手方の艦載機もやってきましたね」

加賀「索敵機が帰っていったから、そろそろだと思っていたわ」

赤城「攻撃機48に、爆撃機24てところですね」

加賀「そうね」

赤城「加賀さんの戦闘機で、全て撃ち落とせますか?」

加賀「少し、撃ち漏らしが出ると思う」

赤城「そうですか、では、最上型の皆さん?」

最上「はい!」

赤城「加賀さんの補助をお願いします」

最上「わ、わ、わかりました! みんな、対空射撃用意!」

赤城「私は第二次攻撃隊を発艦します」

加賀「戦闘機の発艦が終わったら、私も続くわ」

赤城「はいっ。では、皆さん」

最上「……」

三隈「……」

鈴谷「……」

熊野「……」

赤城「向かい来る敵を、皆々殺しにしてあげましょう」

鈴谷「一航戦こわい!!!」

演習編の終わりが見えているので、今回は近いうちに続きを書けると思います……。

提督「で」

大潮「で!」

満潮「……」

提督「どうにか判定勝ちなわけだけど」

加賀「やりました」

提督「皆よくやってくれた、MVPは、まぁ……」

加賀「赤城さん、でしょう?」

提督「そうだな、相変わらず、と言ったところか」

赤城「皆さんの援護があったおかげです」

提督「うん、じゃあみんなMVPで」

大潮「大潮もMVPですね!!」

提督「大潮はプリン食べたり俺の服にこぼしたりしてただけだろ」

大潮「大潮は司令官にも食べさせてあげようとしました!!」

提督「そうな、ありがとな……で、また鈴熊が居ないんだけど」

最上「たぶんまだ演習場に浮いてると思うよ」

提督「なんでだ、また大破させられたからって、気にしなくていいのに」

最上「ボクも三隈も大破だったけど、大きい顔してるしね」

三隈「あら、三隈は小顔もチャームポイントの一つでしてよ♪」

最上「くっそー三隈かわいいなぁ……」

熊野「……」プカプカ

鈴谷「熊野ー、いつまで浮いてるつもりー?」

熊野「……」

鈴谷「おーい熊野ー、戻ろうよー」

熊野「……手も足も出ませんでしたわ」

鈴谷「判定勝ちだったじゃん」

熊野「……」

鈴谷「はいはい、青葉さんだけ無傷だったもんね」

熊野「加賀さんですら小破させられましたのに……あら?」

鈴谷「ん? ……あぁ」

青葉「あの……」

熊野「……」

鈴谷「あれぇ、挨拶に来てくれた人に寝たまま対応するのが今時のレディなんだっけ?」

青葉「えっ、あの、鈴谷さん……!」

熊野「いえ、仰る通りですわね、失礼いたしました」

青葉「ふぇえええ恐縮ですぅ……」

熊野「……あれが貴女の本気、ということで、宜しいんですのよね」

青葉「は、はいっ、青葉、全力でやりました……!」

鈴谷「だよね、あれで本気じゃないとか言われたら鈴谷もう寝るよ」

熊野「どれだけ鍛錬を積めば、あの域に達せるんですの?」

青葉「ええと、あはは……何処へ行くにも連れ回されている内に、いつの間にか」

鈴谷「練度で言うと? 数字で言うとどれくらい?」

青葉「はい、確か……百四十、いくつかですね」

鈴谷「鈴谷たちの倍くらいかー、そりゃ敵わないよねぇ」

熊野「修練とは極めるほどに、一つ上にあがるのが難しくなるんですのよ」

鈴谷「ん? なんて?」

熊野「倍どころか、三倍四倍の経験を積んでもまだ届かないのでしょうね」

青葉「……」

鈴谷「まぁ彼氏いる時点で経験値は桁違いだよね」

青葉「!!?」

熊野「!!?」

鈴谷「初めての時ってやっぱり痛いの?」

青葉「ふぁ!? あ、え? あの、えと」

熊野「痛いんですの?」

青葉「ちょ、ちょ、ちょーっと勘弁して下さい!!」

大潮「いっきまっすよー!!」

提督「よし、皆いるか? いないやつ返事しろー」

最上「はーい」

大潮「最上さんがいないみたいです!!」

提督「仕方ない、置いていこう」

最上「そんな! 最上さん大事だよ! 探そうよ!」

提督「もがみん……達者で暮らせよ」

三隈「えっと、み、三隈もおりませんでしてよー」

大潮「三隈さんもいないみたいです!!」

提督「三隈ー! どこだー!」

最上「温度差!!」

三隈「ここでしてよー」

提督「良かった三隈、いた」

大潮「よかったぁ」

満潮「……何が楽しいのその遊び」

最上「温度差!!」

提督「青葉ちゃん、色々ありがとな」

大潮「大潮もありがとうございました!!」

青葉「恐縮です! お役に立てて嬉しいです!」

提督「翔鶴ちゃんと瑞鶴ちゃんも、今朝はありがとう」

瑞鶴「??? 何の話?」

提督「いや加賀の、朝練、あれ? 一緒に居たからてっきり付き合ってくれたもんだと」

加賀「あ、朝は、あの……」オロオロ

瑞鶴「……ああ、そんなこと、別にいいわよ、私も練習になったし」

加賀「!?」

提督「いやいや、礼の心は忘れてはならないからな」

大潮「お礼は大事です!!」

加賀「……」

瑞鶴「加賀さん、あの人のこと好きなんでしょ?」ヒソヒソ

加賀「な、な、何を言ってるの……」

瑞鶴「打倒一航戦、とは思ってるけど、好きな人の前で恥かかすほど性格悪くないから」

加賀「……」

加賀「昨日この子に、随分と嫌味なことを言ったわ」

提督「……うん?」

瑞鶴「えっ、ちょっと、加賀さん?」

加賀「ごめんなさい」

提督「……だとしたら、謝るべきは俺じゃないと思うけど」

加賀「そうね。瑞鶴、昨日の発言を取り消させて、ごめんなさい」

瑞鶴「ええぇ……どうしちゃったの加賀さん」

加賀「いずれ五航戦の子たちは、私たちに追いつくか、追い抜くかすると思う」

瑞鶴「な、なな、何なの、やめてよ急に」

加賀「それを考えて、焦りが出たのかもしれない。どうか許して」

瑞鶴「いいよもう、私も、仕返しっぽいことしちゃったし……」

加賀「それと、今朝は私、猫を愛でて大はしゃぎしていたの」

瑞鶴「えっそれ言っちゃうの」

加賀「……幻滅した? 落ち着いた大人じゃなくて」

提督「どちらかと言えば抱きしめたい」

加賀「……」

翔鶴「加賀さんお帰りになる前にサイン下さい!!」バッ

瑞鶴「空気読んでよ翔鶴姉!」

加賀「……これで良いかしら」

   【加賀   

        翔鶴へ】

翔鶴「はぁああああありがとうございます、ありがとうございます!」

大潮「大潮のサインはいりませんか?」

翔鶴「あ、赤城さんも、もしお手数でなければ……」

赤城「お安いご用です」キュキュー

   【一航戦赤城より

    私の大切な後輩 翔鶴さんへ ♡】

翔鶴「ふぁああああああ!」ビターンッ

提督「サービス精神」

瑞鶴「この二日で翔鶴姉の尊厳ぼろぼろだよ」

大潮「大潮のサインは!!」

瑞鶴「じゃあ大潮のサインは私が貰うよ」

大潮「えー、しょうがないですねー……じゃあ書いてあげますね!!」

瑞鶴「う、うん、ありがと、あっちょっ、飛行甲板はやめて! ちょっとホントにやめて!」

演習編終わりです半年以上演習してました……。
sageたまま書きこんでるし大潮出番減ってるしぼろぼろです……。

【ある日の執務室】



大潮「なので、つまり、大潮の考えでは!!」

提督「……」

朝潮「……」

霰「……」

大潮「お菓子の部屋を作るといいと思います!!」

霰「おぉ……」

提督「……」

大潮「以上で大潮の報告おわりです!!」

霰「……」パチパチパチ

提督「もう仕事に戻っていい?」

霰「じゃあ、次は霰、『あさがおとカブトムシの観察日記』……はじめるね?」

提督「この遊びもしかして長い?」

朝潮「朝潮は原稿用紙に100枚書いてきました!」

提督「あっ長いな、コーヒー淹れてくるわ」

ガチャッ バーン

天龍「よぉ提督、ちょっといいか!」

提督「おかえり天龍」

天龍「おう、回収した資源資材は全部倉庫にぶっこんどいたぜ」

提督「ん、ご苦労、コーヒー飲むか?」

天龍「ああ、貰う。それより提督、一個聞きてぇんだけど」

霰「霰が、先……順番……」

天龍「ん? なんだよ何かやってんのか?」

提督「順番らしいから、急ぎでなければ後にしてくれ」

天龍「あぁー、まあいいけどな」

霰「じゃあ、報告」

中略

霰「あさがおは、種がたくさん採れたから、また植える」

天龍「玄関先のあさがお霰のだったのか」

霰「今度は、あさがおの色ごとに、取れた種を別々にしてみる」

天龍「へぇー、まめだな、俺には無理だわ」

霰「以上、報告おわり」

提督「霰らしくて凄く良かったぞ」

霰「うん……ありがと」

大潮「……はっ」ビクッ

提督「まさか寝てないよな大潮」

大潮「寝てないです!!」

提督「今の霰の話どうだった?」

大潮「んー……『あ』で始まる?」

提督「そうだな」

大潮「朝潮がぬいぐるみに司令官って名前付けてる話?」

朝潮「大潮っ!!?!?」

提督「わはは、そうなのか」

朝潮「ち、違うんです司令官! 司令官を尊敬していてこそ、お名前を」ワタワタ

提督「ほほう、なに、殴ってストレス解消とかしてんの?」

朝潮「そんなことしません!!」

大潮「ぬいぐるみ抱っこしないと寝れないみたいです!!」

朝潮「大潮っ!!?!?」

霰「こっそり撮った、朝潮の動画、これ」ピッ


朝潮『……』ゴロゴロ

朝潮『司令官……!』ギュー


提督「ははは、俺のこと大好きか朝潮」

朝潮「……」

提督「ん?」

朝潮「朝潮が、司令官をお慕いしていては、そんなにおかしいですか……?」ジワッ

提督「うおっ、ごめんごめんごめん」

天龍「泣かしてんじゃねぇよ」

提督「悪かったよ、大好き朝潮」

大潮「……はっ」ビクッ

提督「えっこの流れで寝る?」

大潮「寝てないです!!」

提督「いや絶対寝てたよ今」

大潮「……zzz……」ムニャムニャ

提督「寝言かよ」

提督「どうにか落ち着いた」ナデナデ

朝潮「……」ポワワ

天龍「そろそろ俺の話していいか?」

提督「ん、あー、まだ朝潮の報告が」

朝潮「朝潮は、もう少しこのままで大丈夫なので、お先にどうぞ」ギュー

提督「だそうだ」

コンコンコンッ ガチャッ

龍田「天龍ちゃ~ん、遠征の報告は済んだ~?」

天龍「さっき龍田と話してたんだけどよぉ」

龍田「あら~?」

天龍「この鎮守府で、一番強ぇのは誰だ」

朝潮「聞き流せない話題ですね」キリッ

提督「さて、誰だろう」

大潮「まさか……大潮……!?」ピーン

提督「寝たり起きたり忙しいな大潮」

提督「……」チラッ

龍田「……」

提督「……何だかんだで赤城じゃないか?」

天龍「やっぱそうか、鈴熊もそう言ってたしな」

龍田「うふふ♪」

提督「そんなこと聞いて、喧嘩でも吹っ掛ける気か?」

天龍「バーカ、ちょっと訓練に付き合ってもらうだけだ」

霰「天龍も、すごく強い……」

天龍「わはは、まぁ軽く世界水準超えてるからな」

霰「霰のカブトムシ、名前、天龍」

天龍「カブトムシかよ、光栄だなおい」

龍田「結論が出たところで、補給に行きましょ」

天龍「ついでに最強空母に果たし状でも叩きつけてやるか」

朝潮「私もお供します!」

提督「あれっ、朝潮の報告は?」

大潮「大潮も行きます!!」グー

提督「大潮はお腹減ってるだけだろ」

ガチャッ バタンッ

提督「……静かになったな」

提督「……」

提督「仕事しよ」

カチャッ

提督「ん?」

荒潮「……」チラッ

提督「……」

荒潮「……」テテテッ

提督「どうした荒潮」

荒潮「うふふっ」ゴソゴソ

提督「何だその紙束は」

荒潮「荒潮と、司令官の、ナ・イ・ショ・の、うふふっ、マル秘研究報告、始まるわよぉ」

提督「何か始まった」

荒潮「……」テレテレ

提督「照れるならやめろよその謎タイトル」

【食堂】



天龍「ちょっといいか」

赤城「あわわ……」アセアセ

天龍「慌てんな、食いもん横取りしに来たわけじゃねぇ」

赤城「あっ、そうなんですか、すみません反射的に」

天龍「いつも誰かに取られてんのか?」

赤城「ときどき提督が『食べ過ぎだ』などと言って強奪していきますね」

天龍「あんま面倒かけてやんなよ……」

赤城「それで、私に何かご用でしょうか」

天龍「おう、いっちょ勝負しねぇか、っつう用件だ」

赤城「なるほど、受けて立ちましょう」

天龍「なんだ、ノリがいいじゃねぇか」

赤城「どこのラーメン屋さんで勝負しますか?」

天龍「食いもんから離れろ」

赤城「やです! 離れた瞬間にやっぱり私のアイス横取りする気ですね!」

天龍「物理的にじゃねぇよ思考を切り離せってんだよ」

赤城「艦隊内の、最強、ですか?」

天龍「みんな口を揃えてあんただって言ってるぜ」

赤城「まさか、そんなはずありません」

天龍「ほう、だとすると、空母赤城から見たこの艦隊の一番は誰だ?」

大潮「まさか、大潮……!」ピーン

朝潮「やはりこの朝潮……!」ピーン

霰「……!」ピーン

赤城「……」チラッ

龍田「……」

赤城「加賀さんはどう思いますか?」

加賀「どう、と言われても……」チラッ

龍田「……」

加賀「……鳳翔さん、かしら」

龍田「うふふ」

天龍「鳳翔さん? あっはっはっ、加賀も冗談言うんだな」

赤城「……」

加賀「……」

天龍「な、なんだよ、なに黙ってんだ」

鳳翔「天龍さん、何か召し上がりますか」

天龍「水くれ、それと駆逐どもに何か、甘いもん」

大潮「大潮は今月お小遣いピンチです!!」

天龍「財布はしまっとけ、仕方ねぇから奢ってやる」

大潮「えー!! じゃあ大潮、チョコのパフェ食べてもいいですか!?」

霰「霰も……!」

天龍「おう、朝潮は」

朝潮「あの、しかし……」

天龍「日が暮れちまうぞー」

朝潮「……あんみつ」

天龍「アイス入れとけよ」

朝潮「……アイスのあんみつ」

天龍「鳳翔さん、チョコパフェふたつとクリームあんみつ頼むわ!」

赤城「私も天龍さんのお金でサバ味噌定食を」

天龍「あと一航戦のモテねぇほうにありったけの爆薬もな!」

赤城「そんな! 加賀さんが何をしたって言うんですか!」

天龍「自己評価高ぇなあんた!!」

天龍「あんたが一航戦より強ぇってのは本当なのか」

鳳翔「そんな、昔の話ですよ」

加賀「……」

鳳翔「二人とも鍛錬を積み、今では当然、私より数段強くなっていますよね?」

赤城「は、ははは……」

天龍「おいおい一航戦、マジでビビってんじゃねぇか」

赤城「そ、そんな、ねぇ、加賀さん、ねぇ?」

加賀「そうね」

鳳翔「……」

赤城「あっ、大潮ちゃん、チョコがお洋服にこぼれてますよ、ははは……」

大潮「あー」

鳳翔「……」ジー

赤城「……」

鳳翔「……」

赤城「……」ジワッ

天龍「や、やめてやれ鳳翔さん、大の大人が泣きそうになってる……」

鳳翔「うふふっ、冗談ですよ」

龍田「天龍ちゃんは何か食べないの~? 私もお金だすよ~?」

天龍「いらねぇ。で、鳳翔さん」

鳳翔「はい」

天龍「そんなに強ぇなら、一つ俺にも稽古つけてくれよ」

鳳翔「それは、構いませんが……」

龍田「天龍ちゃんも甘いもの、食べたらいいのにね?」

大潮「では大潮のアメをあげます!!」

朝潮「私からも、キャラメルしかありませんが、どうぞ!」

霰「霰の、ゼリーも」

天龍「おう、ありがとなチビども」

霰「昆虫用、ゼリー」

天龍「カブトムシなのか俺は」

霰「……!?」

天龍「いやカブトムシではねぇんだ、悪ぃな」

霰「そう……」

大潮「これツノですか!?」

天龍「電探だ。だからカブトムシじゃねぇんだって」

荒潮「そうして楽園にたどり着いた司令官と荒潮が」

提督「……」

荒潮「禁断の木の下で手をつなぎ、あ、愛を囁き……」テレテレ

提督「……」

荒潮「誓い合うと、突然、木が葉を震わせ光り輝き」

提督「……」

荒潮「大きな果実が一つ、枝の先に実を付けました」ペラッ

提督「……」

荒潮「二人で力を合わせ、その実を割ってみると」

提督「……」

荒潮「中から、それはそれは可愛い赤ちゃんが生まれ」

提督「……」

荒潮「子供を授かった二人は、それから末永く、幸せに暮らしました……おしまい」

提督「ところで研究報告って意味わかってるか?」

荒潮「……頑張った荒潮に、ご褒美、必要よねぇ?」

提督「分かってないな? まぁいいか、コンビニ行くぞコンビニ」

荒潮「うふふっ、素敵 ♡」

【演習場】



天龍「っしゃあ!! どっからでもかかってこい!」

龍田「天龍ちゃ~ん、頑張って~」

大潮「大潮、鳳翔さんが戦うところ初めて見ます!!」

鳳翔「あの、どの程度の力でという要望は、あったりしますか?」

天龍「はぁ? んなもん全力で――」

赤城「やめた方がいいです」

天龍「……なんだよ、まさかこの俺を心配してんのか?」

赤城「絶対にやめたほうがいいです……!」

加賀「……」コクコク

天龍「……じゃあ、まぁ、半分くらいで」

鳳翔「えっ、は、半分ですか……?」

天龍「うはははっ、だよなぁ、そうなるよなぁ! やっぱ全力で――」

鳳翔「最初は十分の一くらいからが良いと思ったのですが……」

天龍「ん?」

鳳翔「すみません、見くびっていたようです、そこまで覚悟がおありなら」

天龍「……」

   ゴウッ

鳳翔「では、半分の力で」

  ゴゴゴゴゴ

天龍「……」ダラダラ

鳳翔「行かせて貰いますね」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

天龍「あっ、やっぱ十分の一でお願いします」

鳳翔「発艦!」ヒュカッ

天龍「墓には『世界水準を超えた最強の軽巡』と書いてくれ」

大潮「大潮ちょうどアイスの棒もってます!!」

天龍「アイスの棒かよ、カブトムシじゃね――」

  ドーン!!

大潮「天龍さぁーん!!!」

大潮「っていう感じで、鳳翔さんが凄かったです!!」

提督「なるほど、鳳翔か、最近出撃させてないから忘れてた」

大潮「天龍さんアフロになってました!!」

提督「今度笑ってやろう。さ、そろそろ寝よう大潮」

コンコンコンッ

提督「ん? 誰だこんな時間に」

ガチャッ

朝潮「お休みのところ申し訳ありません!」

霰「……んちゃ」

提督「どうした二人とも」

朝潮「あの、ええと、夜間も司令官の身辺を警護するのが、やはり駆逐艦としては――」

霰「今日は、一緒に、寝てもいい?」

提督「ん、いいよ、おいで霰」

霰「……」トコトコ

朝潮「で、では私も……」

提督「あぁ、夜間警備はいらないです」

朝潮「えっ」

朝潮「しかし、この頃は近海にも深海棲艦が、出たり……」アセアセ

提督「夜の哨戒もしてもらってるから大丈夫だ」

朝潮「で、でも、急に、危ないかもしれないし……」

提督「……」

朝潮「……」シュン

天龍「いちいち苛めんなよ」

提督「いたのか天龍」

天龍「いたよ、朝潮かわいそうだろうが」

提督「いじめてないぞ」

天龍「しょんぼりしてんじゃねぇか」

朝潮「……」ションボリ

提督「このまま部屋に入れると、本当に朝まで見張りしかねないからな」

天龍「……まぁ、確かに」

龍田「提督は朝潮ちゃんの、素直な気持ちが聞きたいみたいよ~」

提督「いたのか龍田」

龍田「うふふ、お邪魔しますね」

大潮「ここからここまで大潮の陣地!!」

霰「霰は、ここ」

提督「俺の領土が侵略されていく」

朝潮「あ、あの、司令官……」

提督「何だ」

朝潮「朝潮も、寝床をご一緒させていただいてよろしいでしょうか……」

提督「ん、いいぞ、おいでおいで」

朝潮「ありがとうございます! こら大潮、霰!」

大潮「!!」

朝潮「ここからここまでは朝潮の陣地にします」

提督「さては俺の寝る場所無いな?」

大潮「しょうがない」

提督「俺の台詞だろそれ」

龍田「予備のお布団、敷いちゃうね~」

天龍「龍田、俺のも」

提督「着々と……!」

大潮「あれ? 朝潮のお人形は?」

朝潮「大潮!!」

大潮「司令官のお人形!!」

朝潮「大潮!!!」

提督「なんだ、人形持ってきてないのか」

朝潮「あ、朝潮は、そんなに子供ではありません!」

提督「いつも一緒に寝てるなら、持ってきてやれよ、人形かわいそうだ」

朝潮「……いいのですか」

提督「うん」

朝潮「ではすぐに持ってまいります!」

提督「いってらっしゃい」

ガチャッ バタンッ

提督「……」

天龍「……」

提督「これカギ閉めといたらどうなるかな」

天龍「ホントにやめろ、想像しただけで泣ける……」

天龍「ところで」

提督「何だ」

天龍「俺の頭見て何か一言あんだろ」モサモサ

提督「……」

天龍「龍田が防御に入ってくれたおかげで、なんとかアフロで済んだ」

提督「そうか。でも龍田はアフロになってないのな」

龍田「やっぱり、イメージがあるから~」

天龍「イメージで防げるのかアフロって」

提督「しかし実際見ると、不憫で笑いにくいな」

天龍「笑えよ」

提督「ははっ……」

天龍「ドン引きじゃねぇか」

ガチャッ

朝潮「持ってまいりました!」

提督「おお、早いな、何の人形? クマ?」

朝潮「駆逐イ級です!」

提督「敵じゃん」

天龍「……zzz……」

朝潮「……zzz……」

霰「……zzz……」

大潮「……zzz……」スピー

提督「なぜ上に乗るんだ大潮……重い……助けて天龍……」

龍田「天龍ちゃんなら寝ちゃってるわよ~」

提督「あっ龍田、ちょっと助けて、三人にがっちり組み付かれてて動けない」

龍田「はぁい、大潮ちゃん、こっちに来ましょうね~」ヒョイッ

大潮「……zzz……」ムニャムニャ

提督「腕にくっついてる朝潮と霰も外してくれ」

朝潮「……zzz……」

霰「……zzz……」

龍田「……え~いっ」ズムム

提督「痛たたたたたた! ツボを突くな、何すんだ」

龍田「そんな事より、私ちょっと困ってるんですけど~」

提督「上官のお願いをそんな事って言ったか今」

龍田「何だかね、私が実は強いって思われちゃってるみたいなのよね~」

提督「無視なのか?」

龍田「一航戦の二人にも勘違いされちゃってるみたいで」

提督「勘違いも何も、実は本当に強いだろ」

龍田「私なんかまだまだだよ~」

提督「ここ最近、出撃しても無傷で帰ってくるよな」

龍田「それは、怪我すると天龍ちゃんが心配するから~」

提督「天龍が一緒だと何故か二人とも無傷だよな」

龍田「天龍ちゃんが怪我するのも嫌だし」

提督「しかも何故か狙ったように天龍が手柄を立てる」

龍田「喜ぶ天龍ちゃん、可愛いわよね~」

提督「赤城が言うには、敵味方ともに誘導して、戦場を支配してる奴がいるとか」

龍田「……」

提督「ほとんど誰にも気付かれずに」

龍田「だから全部、偶然で勘違いな~の~!」

提督「……」

龍田「天龍ちゃんにまで勘違いされちゃう前に、誤解をときたいの……」

提督「……このしおらしさは演技と見た」

龍田「え~いっ」ズムム

提督「痛い痛い痛い! ツボ突くのやめてマジで」

満潮「……さっきから見てるその写真なに」

荒潮「……司令官にちゅーされたい」ハフゥ

満潮「な、な、なに言ってんの」

霞「ちゅーされた!? 今ちゅーされたって言ったの!?」ガバッ

満潮「落ち着いて霞! されたいって言っただけだから!」

霞「あっ、そうなの、ならいいわ」モゾモゾ

満潮「えっいいの?」

霞「……」

満潮「いいんだ……」

荒潮「……」

満潮「……」

霞「良いわけないったら!!」ガバッ

満潮「そうよね!? やっぱり良くないわよね!?」

朝雲「あーもーうるさーい! 何時だと思ってるわけ!?」

山雲「……zzz……」スヤスヤ

朝雲「山雲起きて! あんたも言ってやりなさい!」ユサユサ

山雲「ふぁっ……なに……? えっ……ええぇ……?」

満潮「山雲かわいそう!」

小ネタをいくつかやりながら、少しずつ終わりに向かっていく予定です。

お昼頃



赤城「……」チラリ

赤城「……」

赤城「……」

赤城「……」チラリ

赤城「こんなものでしょうか」

赤城「悪くはない、ですよね、多分」

赤城「あっ、加賀さん」

加賀「……?」

赤城「少し出かけてきます」

加賀「……」

赤城「……加賀さん?」

加賀「……」

赤城「あの」

加賀「もしかして、赤城さん?」

赤城「えっ、はい、一航戦赤城ですが」

加賀「ど、どうしたの、そんな、垢抜けた服を着て……」

赤城「変でしょうか」

加賀「いいえ、綺麗よ……毛先も巻いて、お化粧まで……」

赤城「提督と、お出かけなので」

加賀「……」

赤城「提督のお隣を歩くのに、恥をかかせてはいけませんからね」

加賀「……そうね」

提督「誰だお前」

赤城「おかわり」

提督「赤城だ」

赤城「お待たせしてしまいましたか?」

提督「いや、そうでもない」

赤城「ふふっ、では、参りましょうか」

提督「あ、そうだ、加賀」

加賀「何かしら」

提督「大潮の面倒見てやってほしいんだけど」

加賀「構わないけれど」

提督「ん、ありがとう」

加賀「……二人で出かけるなんて、珍しいのね」

提督「うん、食事に連れてく約束だったからな」

加賀「そう」

提督「加賀も今度行こうな」

加賀「……」

提督「……えっ、駄目でしょうか」

加賀「気を遣ってくれなくても、いいのに」

提督「大潮」

大潮「大潮です!!」

提督「加賀の言うことをよく聞くように」

大潮「お任せあれです!!」

提督「今日やることは分かってるな大潮」

大潮「……」

提督「……」

大潮「……ポケモン」

提督「大潮は花壇の水やり係だ」

大潮「そうでした!!」

提督「頼んだぞ大潮」

大潮「ピカチュウいないかなぁ」ウロウロ

提督「大潮」

大潮「大潮です!!」

提督「大潮」

大潮「大潮です!!!」

赤城「今日はどこへ連れて行ってもらえるんでしょうか」

提督「とりあえず街に出て、なんか雑誌に載ってたとこ行ってみよう」



加賀「……」

大潮「……」ウロウロ

加賀「……」

大潮「ポッポしかいない」

加賀「水やり、早く済ませましょう」

大潮「そうでした!!」

加賀「……」

大潮「じゃあポケモンはおしまいです!!」

加賀「そうね」

大潮「加賀先輩はポケモンやらないんですか?」

加賀「私には、よく分からないわ」

大潮「じゃああとで教えてあげます!!」

加賀「……ううん、その時間も、鍛錬に励みたいから」

大潮「すごいです!! 大潮も訓練します!!」

加賀「そう、偉いのね」

大潮「さっそく訓練場に行きましょう!!」

加賀「まずは花壇よ」

鈴谷「あれ? ちーっす、加賀さんじゃん」

加賀「……」

大潮「大潮もいます!!」

鈴谷「おっはよう大潮、どしたの? 何してんの?」

大潮「お花にお水をあげに来ました!!」

鈴谷「へぇー、偉いじゃん、鈴谷もお手伝いするよ」

大潮「ありがとうございます!!」

加賀「貴女は、時間はいいの」

鈴谷「鈴谷? あはは、へーき、ぼーっとしてただけだから」

加賀「……そう」

鈴谷「花見るの結構好きなんだよね、って、鈴谷には似合わないか」

加賀「そんなことは、ないと思うけれど」

鈴谷「あっそうだ! さっき提督が出掛けてくの見たんだけどさぁ」

加賀「赤城さんと、でしょう?」

鈴谷「……あれ赤城さんだったの? めちゃ可愛かったけど」

大潮「ジョウロこれですか!!?」

加賀「それは急須よ」

鈴谷「どっから持ってきたの」

シャワワワワ

鈴谷「デートかな、提督と赤城さん」

加賀「食事、と言っていたわ」

鈴谷「ふーん」

加賀「……」

鈴谷「……正直、鈴谷、ものすごく気になります」

加賀「そう」

鈴谷「えー、加賀さん気にならない?」

加賀「別に、私は、二人の好きにしたらいいと思う」

鈴谷「おめかししてさ、赤城さん、かなり気合入ってたじゃん?」

加賀「……」

鈴谷「提督も楽しそうだったし、っていうか距離近かったし!」

加賀「……」

鈴谷「付き合い長いんだっけあの二人、仲いいよね」

加賀「……」

鈴谷「……加賀さん、同じところに水あげすぎ」

加賀「っ、これは、か、乾燥、していたから……」

大潮「お腹空いたよぉ」

鈴谷「さっきから何もしてないじゃん大潮」

鈴谷「大潮こぼしてる、こぼしてる」

大潮「……?」モグモグ

鈴谷「こぼしてるってば、ソース垂れてる!」

加賀「貴方も食べて」

鈴谷「うん、あっ、お金払うよ、えーといくらだったっけ」

加賀「構わないわ、これくらい」

鈴谷「えーダメダメ、鈴谷そういうのヤなの」

加賀「……」

鈴谷「ごめんね折角買ってくれたのに、面倒くさいよね」

加賀「ううん、お金にしっかりしてるのは、いいことよ」

鈴谷「さすが加賀さん、お話が早いようで、はいこれ」

加賀「……」

鈴谷「……でさ」

加賀「なにかしら」

鈴谷「追いかけてみない? 提督たちのこと」

加賀「そういうのは……良くないと思う」

大潮「ああー!!!?!?」

鈴谷「うわビックリした、どしたの大潮」

大潮「ソースがこぼれてます!!」

鈴谷「そだね」

加賀「今から追いかけても、きっと見つからないわ」

鈴谷「ご心配なく、鈴谷は最近、新しい情報網を手に入れたからね」

加賀「……」

鈴谷「まぁ熊野に聞くだけなんだけど」ピポパッ

加賀「そう」

鈴谷「……もしもーし、熊野?」

大潮「ソース取れないです」ゴシゴシ

加賀「これを水にぬらして、使って」

大潮「えー、加賀さんのハンカチ、汚れちゃいますよぉ」

加賀「汚さずにいては、ハンカチが意義を失ってしまうわ」

鈴谷「……そうそう、提督と赤城さん、うん、分かる?」

加賀「……」

鈴谷「うんうん、はーい、りょうかーい、っと」ピッ

加賀「……」

鈴谷「……」

大潮「だいぶ取れました!! ありがとうございます!!」

加賀「礼には及ばないわ」

鈴谷「さて、熊野から折り返し連絡あるまで、ぶらぶらしてよっか」

加賀「熊野は、どこから情報を仕入れているの」

鈴谷「んー、何か、情報通の人と友達になったとか言ってたよ」

加賀「そうなの」

鈴谷「鈴谷以外に友達いたんだって思った」

加賀「あんまりな印象ね」

大潮「大潮は熊野さんのお友達です!!」

鈴谷「あはは、そっかそっか」

大潮「この前いっしょにプリキュア見ました!!」

鈴谷「あー、意外と好きだよね熊野、そういうの」

大潮「いっしょにライト振って応援したんですよ!!」

鈴谷「まさかの劇場版」

加賀「……」

鈴谷「さて、とりあえずどっか出てみようか」

加賀「提督は、街の方へ行くと言っていたわ」

鈴谷「おっ、のって来たねー加賀さん」

加賀「別に、そんなつもりでは……」

鈴谷「よぉし、街まで出るよ大潮!」

大潮「おもちゃ買ってもらえる?」

鈴谷「おもちゃは買ってもらえないよ」

大潮「そうかぁ」

【繁華街】



鈴谷「なんかクレープ食べたくなってきた」

大潮「!!?」キラキラ

鈴谷「まぁ我慢するけど」

大潮「!!?」

加賀「人が多いわね」

鈴谷「これくらいの時間は混むよねー」

大潮「……!」アセアセ

prrrrrrr prrrrrrr

鈴谷「おっ、熊野じゃーん……もしもーし」

加賀「……」

鈴谷「うん、うんうん、えっ、ちょー近くなんですけど」

加賀「……」

鈴谷「うん、うん分かった……ん? はいはい、了解でーす」ピッ

加賀「……なんて?」

鈴谷「同じ通りにいるっぽいね」

加賀「そう……向こうに見つかるのは、避けたいわ」

鈴谷「あと、『野暮なことはいたしませんように』、だってー」

大潮「でも大潮は成長期だからクレープいけると思うけどなぁ……」

鈴谷「えっ何が?」

鈴谷「……おお、ほんとに居た」

加賀「そうね」

大潮「……」モグモグ

加賀「あれは、何の店なの」

鈴谷「ゲーセンだね、UFOキャッチャーやってる」

大潮「あー!! 司令官です!!」

鈴谷「そだねー、司令官だねー、静かにしてね大潮」

大潮「司令かーん!!」テテテッ

加賀「……」ガシッ

鈴谷「待って待って待って聞いて大潮」

大潮「大潮もぬいぐるみ取ってほしいです!!」

鈴谷「今度ね、今度取ってもらおう、鈴谷もほしいし」

加賀「……取れたみたい」

鈴谷「あっほんとだ」

大潮「大潮が欲しいやつじゃないです!!」

鈴谷「多分だけどあれ、大潮に取ってくれたわけじゃないよ」

大潮「???」

鈴谷「……っていうか、普通に、デートだよねこれ」

加賀「……」

鈴谷「はしゃぐ赤城さんめっちゃ可愛くない?」

加賀「そうね……当然と言えば、当然よ、赤城さんですもの」

鈴谷「あっ」

加賀「……」

大潮「あー!! 司令官が悪そうな人たちにからまれてます!!」

鈴谷「あんな美人連れてるから……てか今どき居るんだあんな人たち」

大潮「大潮がお助けします!!」ガシャンッ

鈴谷「待って待って待って」

加賀「艤装顕現は、さすがに……」

大潮「司令官!! 大潮がついてるからね!!」グイグイ

鈴谷「いや大丈夫だから、へーきへーき」

加賀「そうね」

大潮「でも司令官が!!」

鈴谷「……」

加賀「……」

大潮「あっ大丈夫でした、倒しました!! 司令官つよい!!」

加賀「あの人は、のんびりした人だけれど……」

鈴谷「まあ一応、勲章貰うほどの軍人さんだからね……」

大潮「……」ドヤァ

鈴谷「なにその顔」

熊野「……」

ガチャッ

最上「やっほー、あれ? 熊野、一人?」

熊野「ええ」

最上「鈴谷はどこいっちゃったの?」

熊野「街に出ているのだと思いますわ」

三隈「ご一緒に行かれなかったんですの?」

熊野「そんな、四六時中まで一緒というわけではなくってよ」

最上「熊野、いま暇?」

熊野「……そうですわね、暇と言えば、はい」

最上「良かった! 実はいま朝雲と山雲と遊んでるんだけどさ」

熊野「あら、珍しいのね」

最上「役者が足りなくて、困ってるんだよね」

三隈「是非とも、お力を貸して頂けませんかしら」

熊野「ん……何の役ですの?」

最上「イヌ」

熊野「お断り申し上げますわ」

三隈「サルでも構いませんのよ?」

熊野「さては桃太郎ですわね?」

鈴谷「けっこう歩いて来たね」

加賀「どこまで行く気なの」

大潮「大潮は遊園地に行きたいです!!」

鈴谷「また今度ね」

加賀「……道を曲がったわ」

鈴谷「おっ、目的地はそろそろかな」

大潮「大潮この辺ぜんぜん来たことない」

鈴谷「うん、鈴谷も初めて、何があるんだろ」

加賀「行ってしまうわ」

大潮「司令かーん!! 待ってー!!」テテテッ

加賀「……」ガシッ

鈴谷「人通りが少なくなってきたから、慎重にいかないとね」

加賀「このまま追うの?」

鈴谷「鈴谷だけこっそり様子見てくるよ、大丈夫そうだったら呼ぶから」

加賀「分かったわ」

大潮「加賀先輩いい匂いする」スンスン

加賀「やめて」

加賀「……」

大潮「あっ!! 鈴谷さん戻ってきました!!」

加賀「そうね」

大潮「鈴谷さーん!!」

鈴谷「……」

加賀「……どうしたの?」

鈴谷「……」

加賀「顔が赤いようだけれど」

鈴谷「あの、何ていうか……ここまでにしない?」

加賀「……どうして」

鈴谷「いやぁ、これ以上は、ちょっと……」

加賀「曲がった先に何があったの」

鈴谷「ん、うん……いろいろ」

大潮「大潮も見てきます!!」

鈴谷「ダメダメダメダメ! 大潮はダメ!」

加賀「……」

鈴谷「……あの、泊まるところっていうか、そういうの」

加賀「???」

鈴谷「あの、だからその……ホテル、ビジネスとかじゃないやつ……」

加賀「!!?」

提督「何かすまん」

赤城「迷ったんですか?」

提督「いや、地図によるとこの辺りのはずなんだが……」

赤城「こういうホテル、外装は綺麗ですよね」

提督「内装も綺麗なんじゃないのか」

赤城「そうなんですか? 入ったことないので分かりませんが」

提督「……早く抜けよう、嫌だろう赤城も、こういう場所」

赤城「ふふっ、平気ですよ、提督の弱虫奥手は心得てますから」

提督「なんだと? 見くびるなよ、何ならどれか入ってみるか」

赤城「……」

提督「……冗談だよ、何か言えよ」

赤城「……その後も」

提督「ん?」

赤城「その後も大切にして下さるのであれば、構いませんけど」

提督「……」

赤城「……冗談ですよ、何か言って下さい」

提督「やめろよそういう冗談」

赤城「お互い様です、あとそんな事よりご飯まだですか!」

提督「あー何か安心する、赤城はそうでなくちゃ」

赤城「……」

熊野「ですから、どうしてわたくしがイヌ役などやらされねばなりませんの!?」

朝雲「だから! もうそれしか役が無いんだってばぁ!」

熊野「何かあるでしょう!? 例えば、そう、主役とか」

朝雲「桃太郎は私! 山雲がお姫様! これは譲れないんだから!」

熊野「桃太郎にお姫様は登場いたしませんわ!」

天龍「そうとも言い切れねぇぞ、東北では――」

朝雲「山雲がお姫様やりたいって言うんだかしょうがないでしょ!」

熊野「んむむ、でしたら、そうですわね……鬼の大将はどうですの?」

朝雲「鬼のボスは龍田さん! これは全会一致で決まったの!」

龍田「……」

熊野「イヌ、このわたくしに、イヌになれと……?」

山雲「それなら~、山雲のお姫様と、交換してあげるね~」

熊野「……さすがにわたくしも、姫を名乗るのは憚られますわ」

最上「すごい面倒くさいよ熊野!」

熊野「他の方は何の役なんですの?」

最上「おじいさん」

三隈「おばあさんですわ♪」

霰「きびだんご」

熊野「きびだんご!? 霰さんはそれで納得しているんですの!?」

霰「んちゃ」

熊野「どっち?」

鈴谷「あーあ、結局最後まで尾行できなかったねー」

加賀「……」

大潮「……」ペロペロ

鈴谷「大潮、アイス美味しい?」

大潮「おいしいです!! 大潮気分もアゲアゲです!!」

鈴谷「うん、良きかな良きかな」

加賀「夕飯の分もお腹を空けておかないと、鳳翔さんが悲しむわよ」

大潮「そうかぁ」

鈴谷「半分食べてあげようか?」

大潮「……」

鈴谷「そんな悲しい顔しなくても……」

加賀「……そろそろ、鎮守府に戻りましょう」

鈴谷「そだね、さあさあ、行くよ大潮」

大潮「朝潮たちにおみやげ買って行きましょう!!」

鈴谷「鈴谷そろそろお財布がピンチです」

加賀「私が出すわ」

鈴谷「うぐ……じゃあ鈴谷も半分出す」

加賀「たまには年長者を立ててくれても良いのではないかしら」

鈴谷「んー……うーん……お言葉に甘えさせて頂きます」ペコリ

加賀「うん」

赤城「ただいま戻りました」

加賀「おかえりなさい」

赤城「加賀さん、大潮ちゃんのお相手、お疲れ様です」

加賀「別に、疲れたという程のことでもないわ」

赤城「ふふっ、さすが加賀さん」

加賀「……赤城さんと、提督は」

赤城「えっ?」

加賀「……交際関係に、あるの?」

赤城「ええっ!? いやいやいや、ないです、あり得ないです」

加賀「今日、貴女たちを、その……宿の近くで見たっていう、情報が……」

赤城「えっ、ちがっ、あのあれは、目的地へ行くための道が、あのっ」アセアセ

加賀「誤魔化さなくても、私は気にしないわ」

赤城「ほんとに違います! あっそうです、提督の所に行ってみて下さい!」

加賀「……」

赤城「今日のお出かけの、真の目的が……いま明らかに……!」

加賀「……」

赤城「こうご期待……!」

加賀「……」

赤城「……ほんとのほんとに違うんです」オロオロ

加賀「赤城さんがそう言うなら、信じるわ」

提督「大潮」

大潮「???」

提督「なぜ俺の上に乗ってゲームしてるんだ大潮」

大潮「司令官が大潮のふかふかの椅子に座ってるからです!!」

提督「いやこの椅子は俺のだ、俺の机と椅子だ」

大潮「……」

提督「……」

大潮「今日もピカチュウ捕まらなかった」

提督「あれ椅子の話おわり?」

コンコンコンッ

提督「どうぞ」

ガチャッ

加賀「失礼します」

提督「ああ、加賀、今日はありがとうな、大潮のこと」

加賀「いいけれど」

提督「大潮はちゃんと大人しくしてたか」

大潮「してました!!」

提督「自己申告は信用ならんな」

大潮「飛んだり跳ねたりしてました!!」

提督「まるで大人しくない」

加賀「赤城さんに、提督の所へ行くよう言われて来たのだけれど」

提督「ああ、加賀に一つ、渡すものが」

加賀「……」

提督「大潮ちょっとどいて」

大潮「や」

提督「一文字で……大潮に椅子を譲ってやるから」

大潮「大潮は司令官のお膝がいいです!!」

提督「あとでな、またあとで」

大潮「もー……」

提督「よしよし、で、加賀にはこれを」ゴソゴソ

加賀「……」

提督「赤城に選ぶの手伝ってもらったんだけど、これ」

加賀「……髪飾り?」

提督「うん」

加賀「今日は、食事に出かけたのではなかったの」

提督「いや、ご飯も食べてきたけど」

加賀「……」

提督「まぁ、主目的は、これ、です」

加賀「……ありがとう、頂いておきます」

提督「どきどきした、受け取り拒否かと思った」

加賀「貴方と赤城さんで選んでくれたのでしょう? 大切にする」

提督「良かった」

加賀「……」

提督「……」

加賀「昼間に、私も食事にと誘ってくれたでしょう」

提督「えっ、うん、まぁ、断られたけど」

加賀「やっぱり、連れて行って」

提督「いいのか?」

加賀「うん……でも」

提督「なんだ」

加賀「そのとき私が、着飾って、それが似合わなくても……笑わないで」

提督「いや、笑わないだろ」

加賀「……それだけよ。それじゃあ、夕食の準備を手伝いに行くから」

提督「うん、頼む」

ガチャッ パタン

提督「……意外と脈ありな感じか大潮これ」

大潮「ねむい」

提督「そうか」

赤城「……」

赤城「まさかあんな誤解をされているとは……」

赤城「……」

赤城「でも、今頃は誤解も解けているでしょう」

赤城「……提督にとって頂いたぬいぐるみ、どこに飾りましょう」

赤城「机……窓際……?」

赤城「……」

赤城「……」ギュッ

赤城「……」

赤城「……」ギュウー

赤城「……」

赤城「……はぁ」

赤城「提督と、加賀さんが、上手くいきますように」

鈴谷「ただいまー」

熊野「おかえりなさい」

鈴谷「……なにその耳」

熊野「あら? あらあら、付けたままでしたのね、お恥ずかしい」

鈴谷「鈴谷がいない間に何してたの?」

熊野「わたくし、本日はとても大切なことを学ばせて頂きましたわ」

鈴谷「なに?」

熊野「最上型重巡、熊野、主たる役こそが舞台において最も大切と、勘違いしておりました」

鈴谷「鈴谷にも分かる言葉でお願い」

熊野「しかし、どうでしょう、蓋を開けてみれば『最も大切』などという言葉が、どれほど陳腐なものか」

鈴谷「なにが」

熊野「イヌ畜生と侮るなかれ、イヌにはイヌの矜持があり、世界を輝かせる星の一端を担っている」

鈴谷「……」

熊野「まさか、小さな子どもたちに気付かされるとは、この熊野、驕慢を恥じ入りますわ」

鈴谷「……」ポチポチポチ

熊野「そして、物語というものの、なんと美しく趣き深いことか」

鈴谷「……」

熊野「わたくし、次は自作の物語を携え参戦させて頂きます」

鈴谷「……それなに書いてんの」

熊野「桃太郎vs鬼vsイヌvsプレデターですわ」

鈴谷「イヌ死んじゃうよ」

遅くなってすみません……。

またある日



提督「……」

鳳翔「……」

大潮「……」

提督「俺の膝が定位置になってきたな大潮」

大潮「……」ペラッ

提督「やい」

大潮「しーっ! 図書室で音量アゲアゲはダメです!!」

提督「執務室だけどな」

大潮「もー」

鳳翔「ふふっ、お膝がお気に入りなんですよね」

提督「……」

大潮「……」ペラッ

提督「その漫画そろそろクリリン死ぬよ」

大潮「!!?」

提督「動けない腹いせにネタバレしてやった」

鳳翔「そんな、クリリン……」フルフル

提督「鳳翔も読んでたのか、ごめん」

コンコンコンッ

提督「どうぞ」

ガチャッ

朝潮「失礼します!」

提督「おかえり朝潮」

朝潮「はい! 遠征より、艦隊が帰投しました!」

鳳翔「おかえりなさい、いまお茶を淹れますね」

朝潮「あっ、いえ、それは朝潮が自分でやります!」

鳳翔「お疲れでしょう? どうぞ、座っていて下さい」

朝潮「え、えっと……」

鳳翔「ケーキも用意しますね」

朝潮「ありがとうございます! では、お言葉に甘えて……」チラッ

大潮「クリリン……」

朝潮「……」テテテッ

大潮「……」

朝潮「……」グイグイ

大潮「あっちょっ、なんで引っ張るの朝潮! やめて下さい! やめて!」

朝潮「……」

提督「……」

朝潮「では朝潮はこちらのソファーに座ります!」ビシッ

提督「そうな」

朝潮「……」チラッ

大潮「あークリリン逃げてー……」

朝潮「……」ジー

提督「……」

朝潮「……」

提督「ちょっと大潮、一回降りて」

大潮「……」

提督「無視すんな」ヒョイッ

大潮「わぁーやだー!!!」ジタバタ

朝潮「し、司令官、僭越ながら、そこまで嫌がるのであれば、無理に降ろすのは……」

提督「朝潮を膝に乗せてやろうと思ったんだが」

朝潮「こら大潮! 司令官のご命令に従いなさい!!」

大潮「いやー!! やーだー!!」ジタバタ

大潮「うっうっうっ……」グスグス

朝潮「……♡」チョコン

大潮「大潮は……大潮はこんなに、秘書艦のお仕事を頑張ってるのに……」グスグス

提督「今日はおやつ食べて漫画読んでただけだな」

大潮「……」

提督「……」

大潮「大潮はこんなに頑張ってる……」

提督「そうな、またあとで乗せてやるから」

鳳翔「それじゃあ、大潮ちゃんは私のお膝に来ましょうか」

大潮「っ!!? そうします!!」テテテッ

提督「誰でもいいのか大潮」

鳳翔「はい、どうぞ」ポンポン

大潮「どーん!!」ボフッ

提督「ゆっくり行けゆっくり」

大潮「……あれー? おかしいなぁ」

鳳翔「どうしましたか?」

大潮「龍田さんのお膝に乗ったときは、頭の後ろに自動でふかふかの枕がきたんです!!」

鳳翔「……」

提督「死ぬのか大潮」

鳳翔「はい、大潮ちゃん、あーん」

大潮「あーん」

朝潮「……」

鳳翔「どうですか、今日のケーキはとても上手に焼けたんですよ」

大潮「おいしいです!!」モグモグ

鳳翔「ふふっ、ではもう一口、あーん」

朝潮「……司令官!」

提督「何だ」

朝潮「鳳翔さんを見てください!」

提督「鳳翔がどうした」

朝潮「とても楽しそうですね」

提督「鳳翔が?」

朝潮「はい!」

提督「鳳翔それ楽しい?」

鳳翔「はい、とっても」

朝潮「楽しいそうです! あの『あーん』ってするやつは楽しいみたいですね」

提督「そうなのか」

朝潮「朝潮としては、司令官がお楽しみになるのにお力添えするのも、やぶさかではありませんが」

提督「そうか」

鳳翔「……提督」

提督「ん?」

鳳翔「分かるでしょう」

提督「うん、まぁ」

鳳翔「なら早くやってあげて下さい」

提督「んー」

朝潮「……」キラキラ

提督「朝潮」

朝潮「はい!」

提督「ケーキ食べないなら貰っていい?」

朝潮「えっ」

鳳翔「張っ倒しますよ提督」

提督「はははっ」

朝潮「司令官がお召し上がりになるのであれば、この朝潮、喜んで我慢いたします!」

提督「そうかそうか」

鳳翔「大潮ちゃん、少しのあいだ降りていて下さい、あの人に教えてあげなければならないことが」

大潮「や」

鳳翔「いえあの、一撃で済みますので、ちょっと真心をぶち込んで終わりですから」

大潮「やっ」

鳳翔「……」

提督「しかし鳳翔は」

鳳翔「なんですか」

提督「店もやって、休みの日もケーキ焼いて、いったい何者なのか」

鳳翔「一応、あなたの艦娘ですが」

提督「……」

鳳翔「……」

提督「艦『娘』」

鳳翔「言いたいことがあるなら、はっきり仰ったらどうですか?」

提督「鳳翔は可愛いからな、艦娘でオッケーだよ」

鳳翔「どうしてこう意地悪なのでしょうね、この人は」

提督「朝潮も鳳翔のこと、可愛いと思うよな」

朝潮「はい、その意見には朝潮、全面的に同意いたします!」

提督「ほら」

鳳翔「そうですね、それより早く、朝潮ちゃんにケーキを食べさせてあげて下さい」

提督「よしよし、朝潮、あーん」

朝潮「司令官は食べないのですか?」

提督「俺は朝潮の幸せのためなら、ケーキくらいいくらでも我慢するよ」

朝潮「……」キューン

大潮「あーん」

鳳翔「あ、はいはい、すみません、あーん」

朝潮「司令官にお尋ねしたいことがあります!」

提督「口元、クリーム」フキフキ

朝潮「んむ……」

提督「で、なに」

朝潮「はい、荒潮のことなのですが」

提督「荒潮がどうした」

朝潮「遠征の途中、荒潮が言っていたんです」

提督「うん」

朝潮「司令官と、で、デートしたと……」

提督「……んん?」

朝潮「本当なのですか?」

提督「記憶にないぞ」

大潮「大潮なんか司令官とパン作りしたことありますが?」

提督「大潮は隣で急かしてただけだけどな」

朝潮「荒潮はショッピングを楽しんだと言っていました!」

提督「やはり記憶にないが、最近の話?」

朝潮「はい、お姫様抱っこで写真も撮ったと!」

提督「……写真は撮ったな、ちょっと前だけど」

朝潮「!!?」

提督「観光の外国人に艦娘とバレて、記念に一枚とポラロイドで、俺も軍服だったし」

朝潮「デートの話は本当だったのですね……!」

提督「あのときは確か、コンビニでジュース買っただけだけど」

朝潮「手を繋いで、二人でショッピング……」

提督「道路渡って行くからな、手は繋ぐよ」

大潮「大潮なんか司令官と交番に行ったこともありますが?」

提督「行ったな、迷子の大潮を迎えに、交番」

朝潮「荒潮は何か凄いことをしたのですか? やはりそのご褒美に」

提督「ん、何か、よく分からん研究報告書」

朝潮「!!」

提督「どうした」

朝潮「朝潮も報告書を作ってあります!」

提督「そう言えば聞いてなかったな、原稿用紙100枚」

朝潮「持ってまいります!」ピョーン

提督「飛んだ」

テテテッ ガチャッ バタンッ

提督「……」

大潮「……」モグモグ

鳳翔「……」

大潮「大潮のお菓子のお部屋はできましたか?」

提督「既にここがお菓子の部屋みたいなもんだろ」

朝潮「持ってまいりました!」バーン

提督「早っ」

朝潮「すぐにご説明いたします」ヨジヨジ

提督「ごく自然に膝に乗ったな」

朝潮「朝潮は遠征が多いので、それについて纏めてみました」

提督「意外と本格的だ」

朝潮「ではまず、遠征中に見かけた深海棲艦の分布と出現傾向から始めます!」

提督「凄い本格的だ」

中略

朝潮「次に、将来的な戦況の予想と安全な航路の考案を」

提督「ん、もういいぞ」

朝潮「……まだ四分の一くらいですが」

提督「残りはあとでじっくり読ませてもらう」

朝潮「では、これは司令官にお渡ししておきます!」

提督「よく出来たな朝潮、偉いぞ」ナデナデ

朝潮「……」ポワワ

鳳翔「これはご褒美が必要なんじゃないですか?」

朝潮「えっ、いえ、そんな、朝潮は見返りを求めてやったわけでは」アセアセ

提督「じゃあいいか」

朝潮「……」シュン

鳳翔「許しませんよ」

提督「そういうわけで、コンビニ行くか」

朝潮「申し訳ありません! 朝潮が催促してしまったようで……」

提督「朝潮は頑張ったからな、頑張ったら良いことがあって当然だ」

朝潮「こ、光栄です……」

大潮「……zzz……」グー スピー

提督「いびきうるさいな大潮」

朝潮「すぐに息の根を止めます!」

提督「殺す気か」

鳳翔「お布団に寝かせてあげましょうか」

提督「いや、そのままコンビニ連れていこう」

鳳翔「このままですか?」

提督「置いていったのが分ったら、相当ごねるからな」

鳳翔「では、私が抱いていきますね」

提督「俺やるけど」

鳳翔「提督は朝潮ちゃんと手を繋いであげて下さい」

提督「ああ、そうか」

朝潮「……」テレテレ

提督「……」

鳳翔「……次また意地悪したら、分かっていますね」

提督「さぁおいで朝潮」

大潮「大潮はコアラのマーチとー、ポッキーとー」

提督「コンビニに着いた途端に起きたな」

朝潮「こら大潮! 一個までにしなさい!」

大潮「そんなルールない!」

朝潮「一個までですよね司令官?」

提督「んー、本来なら一個までだが」

大潮「後付けルールはズルいです!!」

提督「毎度言ってるからそろそろ覚えてほしい」

大潮「聞いたことないです!!」

提督「俺の話を聞いてたことがあったか大潮」

鳳翔「……」テテテッ

提督「……」

鳳翔「……」ガサッ

提督「こっそりかごに入れるなよ、子供かよ」

鳳翔「果たして本当にこれが最良の選択なのでしょうか……」

提督「鳳翔も買ってもらう気満々なのは何故なの」

鳳翔「あっ、いいことを思いつきました、ハーゲンダッツの詰め合わせにしましょう」

提督「この図々しいお母さんどうにかなんない?」

鳳翔「一箱も一個の内ですよね」

提督「小賢しい」

提督「よーし、朝潮型、全員そろったか」

朝雲「なぁに? 私に用事?」

荒潮「うふふっ、荒潮に用があるのよねぇ、司令官?」

提督「うん、まぁ、みんなに」

鳳翔「皆さん、ケーキとお菓子、どちらにしますか?」

霰「ケーキ……!」

山雲「ケーキがいいわ~」

提督「せっかく全員分お菓子買ってきたのに」

鳳翔「ふふっ、では、それは明日のおやつにしましょう」

大潮「大潮もケーキがいいです!!」

提督「大潮はケーキ食べたろ」

大潮「それ昨日の話です!!」

提督「騙されないぞ」

鳳翔「お茶を淹れますね。提督はコーヒーになさいますか?」

提督「じゃあそれで」

大潮「満潮の分のケーキが大潮のものになる」

提督「ならないよ」

満潮「……」ハラハラ

提督「ちゃんと満潮の分もあるから安心しろ」

満潮「……」ホッ

提督「ケーキ食べた順に写真撮るからな」

朝潮「!!?」

提督「まぁゆっくりお食べ」

朝潮「残りは先日のMVPだった朝雲に差し上げます!」

朝雲「もらっといたげる!」ピコーン

提督「もういいのか朝潮」

朝潮「実はこの朝潮、先ほどもケーキを一つ頂きましたので!」

提督「実はも何も俺が食べさせたけど」

朝潮「どのように撮りましょう、やはりここは基本に則り……」

提督「並んでピースか」

朝潮「お姫様みたいに……」

提督「基本でそれだと応用編がどうなるのか楽しみだな」

朝潮「……」キラキラ

提督「……」

鳳翔「……」ジー

提督「……分かってるよ」

鳳翔「何も言っていませんけど」

提督「鳳翔もあとでしてやるからな」

鳳翔「いいですよ」

提督「ノリノリじゃん」

鳳翔「撮りますよー」

提督「いいぞー」

鳳翔「……これ押せば撮れるやつですか?」

提督「しっかりしろお婆ちゃん」

鳳翔「おもて出てください」

提督「お姉さんしっかりー」

鳳翔「……」

霞「右上の丸いの回して、人を撮るモードにして」

鳳翔「えっ、あ、はい、これですか?」

霞「そしたらあとは覗いて、押せば勝手にピントは合わせてくれるから」

鳳翔「ありがとうございます、では改めて、はい、チーズ」

朝潮「……♡」ギュッ

パシャリ

鳳翔「これで撮れたんですか?」

大潮「あー!?!!?」

鳳翔「えっ、えっ!? 私なにかしてしまいましたか?」オロオロ

提督「あーあ」

鳳翔「えっ、もう、だから嫌だと言ったじゃないですかコンピューターは」アセアセ

大潮「大潮、朝ご飯食べたっけ……?」

鳳翔「……食べてましたよ」

提督「じゃあ次、満潮」

満潮「なんで写真なんか撮らなきゃなんないのよ」

提督「たまにはいいだろ」

満潮「……」

提督「満潮が撮ってくれなきゃ俺もう仕事しない、あー全然やる気ない」

満潮「わかったわよ……はい」スッ

提督「ん?」

満潮「えっ?」

提督「満潮もお姫様抱っこで撮るのか?」

満潮「っ!!? なに言ってんの!? 違うから!!」

提督「でもいま……」

満潮「あ、あんたが、朝潮も荒潮も、そういう感じで撮るからでしょ……!」

提督「よしよし、おいで満潮」ヒョイッ

満潮「ちょっと、何すんのよ!! 離して!!」

提督「よし今だ、撮れ鳳翔」ギュー

満潮「離して、離しなさいよぉ……」キューン

鳳翔「うふふっ、はーい、チーズ」

パシャリ

大潮「ああー!!?!?」

鳳翔「っ!!? も、もう騙されませんからね!」

提督「霰はどういうポーズにする」

霰「……司令官の、好きに、して?」

提督「そうか、じゃあとりあえず片手に抱いて」ヒョイッ

霰「……」

提督「霰は前を向いて、お行儀よく座って」

霰「……うん」

提督「あとは背筋を伸ばし少し斜め気味に立てば……」

霰「……」

提督「出来た、写真のスタジオで撮るみたいなやつ」

霞「どこかで見た構図だわ」

満潮「……いっこく堂」

鳳翔「いっこく堂ですね」

パシャリ

霰「司令官」

提督「ん?」

霰「写真、嬉しい。大事に、するね……?」

提督「ほんと可愛いな霰は」ギュー

霰「……」スリスリ

朝潮「朝潮だって大切にしますが!?」

提督「必死だ……」

大潮「では大潮はプリキュアのポーズをやりますので!!」

提督「俺プリキュア分かんないよ」

大潮「司令官もプリキュアでいきましょ!!」

提督「……」

大潮「……キュアゴリラ」

提督「なんで急に罵倒されたの」

大潮「そういうプリキュアがいるんです!!」

提督「何事だ」

大潮「じゃあー、どうしようかなぁ」

提督「俺は仮面ライダーやるよ」

大潮「それはアゲアゲですね!!」

提督「アゲアゲの使える範囲広くなってきたな」

大潮「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!」

提督「変…………身っ!!」

大潮「キュアタイダルウェーブ!!」ビシッ

提督「英訳まちがってない?」

大潮「いいから」

提督「さあ、振り切るぜ!」ビシッ

鳳翔「……」

提督「撮れよ」

霞「……」

提督「霞、おいでおいで」

霞「……」

提督「怖い顔するな」

霞「……はぁ、まあいいわ」

提督「おお、嫌がるかと思った」

霞「仕事柄、これが最後の写真になるかもしれないしね」

提督「なんでそういうこと言うの……」

朝潮「うっ、ううぅ……」

提督「そら見ろ朝潮泣いちゃっただろ」

霞「何よ、泣くことないでしょ」

朝潮「か、必ず朝潮が、妹たちの窮地には、駆け付けますので……」シクシク

霞「悪かったったら……もう早く撮っちゃって」

提督「ではお姫様抱っこで」ヒョイッ

霞「何だっていいわよ」

提督「……」

霞「……」

提督「今後も写真撮るからな」

霞「そう、なら良い采配を揮いなさい」

パシャリ

朝雲「私は山雲と二人で撮って」

山雲「ね~」

朝雲「いいでしょ? はい、じゃあ山雲が真ん中よ」

提督「ポーズはどうする」

朝雲「あっそうね、やっぱり山雲をお姫様みたいにしてあげたいわ」

山雲「え~? 山雲がお姫様でもいいの~?」

朝雲「あたりまえじゃない!」

提督「じゃあそうするか」

朝雲「来なさい山雲!」ギュッ

山雲「は~い」ギュー

提督「……朝雲が抱き上げるのか」

朝雲「撮っていいわよ?」

提督「俺だれだよ」

朝雲「司令は司令でしょ?」

提督「うん、まぁ、うん」

パシャリ

鳳翔「はい、お疲れ様です」

提督「俺だれだよ」

鳳翔「通りすがりのおじさんも棒立ちお疲れ様です」

提督「おもて出ろよ鳳翔」

提督「さて、あとは」

鳳翔「……ん」スッ

提督「何その手」

鳳翔「……」

提督「……」

鳳翔「んっ」

提督「何が」

鳳翔「どうぞ」

提督「冗談だろ」

鳳翔「……」

提督「……」

鳳翔「ん!」

提督「分かったよ、今日ほんと子供だなお前……」

ヒョイッ ギュムッ

提督「重っ……」

鳳翔「提督の今日の夕飯はカナブンですね」

提督「軽いな、羽のようだ」

鳳翔「ふふっ♪」ピース

提督「ピースが古い」

鳳翔「カナブンが好きみたいですね」

提督「最後になっちゃったな、荒潮、おいで」

荒潮「……」

提督「どうした」

荒潮「荒潮は前にも一枚撮ってもらっちゃったんだけどぉ、いいのかしらぁ」

提督「みんな撮ってて荒潮だけ無しというわけには、いかないだろ」

荒潮「……うふふふふっ、じゃあ、また抱き上げていただける?」

提督「ん」ヒョイッ

鳳翔「撮りますよー」

荒潮「……司令官」

提督「何だ」

荒潮「勝利の女神を、離さないでね」

提督「当然だ」

鳳翔「はーい、チーズ」

荒潮「……」

チュッ♡

パシャリ

提督「……」

荒潮「……」テレテレ

大潮「荒潮お腹空いてる?」

提督「何その解釈」

大潮「最後にみんなで撮りましょう!!」

提督「そうだな」

鳳翔「では、皆さん並んでください」

提督「タイマーにして鳳翔も入れよ」

鳳翔「……タイマー?」

大潮「大潮がやります!!」

提督「出来るのか大潮」

大潮「お任せください!!」

カチャカチャ パシャリ

大潮「ぜんぜん分かんない」

提督「そうな」

霞「貸しなさいよ、私がやるわ」

提督「頼りになる末っ子だ」

霞「……出来た。じゃあ撮るから、並んで」

大潮「並んで!!」

提督「大潮も並べ」

大潮「あわわわわ」

ジー パシャリ

大潮「では今度こそみんなで撮りましょう!!」

提督「いま何したつもりでいたの」

熊野「はい、あらそうなんですの、そんな事がありましたのね」

鈴谷「……」

熊野「はい、はい、構いませんわ……ええ、承りましてよ」

鈴谷「……」

熊野「いえ、お気になさらなくて結構ですわ……はい、では、ごきげんよう」ピッ

鈴谷「誰と電話してたの? 鈴谷も知ってる人?」

熊野「そうですわね、知っているも何も、青葉さんですわ」

鈴谷「へー、連絡先、交換してたんだ」

熊野「ええ、それで、赤城さんと加賀さんの写真を頼まれましたの」

鈴谷「そう言えば、みんなで写真撮ってるみたいだね」

熊野「丁度よかったですわね、カメラをお借りいたしましょう」

鈴谷「……」

熊野「いかがいたしまして?」

鈴谷「めっちゃ仲良くなってんじゃん、青葉さんと」

熊野「そうですわね、週一でお話するくらいですわ」

鈴谷「ちょっと引く」

熊野「引かなくてもよろしいでしょう」

鈴谷「やきもち!」

熊野「あら、わたくしはお雑煮にして下さいます?」

鈴谷「そうでなくて」

後日

大潮「満潮の手帳を拾いましたよ!!」

提督「満潮が落とし物なんて珍しいな」

大潮「読みましょう!!」

提督「やめてやれ」

ガチャッ バーン

満潮「……」

提督「……」

満潮「……」キョロキョロ

提督「手帳なら大潮が拾ってきたぞ」

満潮「……っ! 見たのね、見たんでしょう、最低……!」

提督「見てないよ」

満潮「笑えばいいじゃない! つんけんしといてって、笑ったらいいでしょ……!」

提督「何の話だ」

満潮「なによ、なによなによ良いでしょ別に! 私だって、私だって……」

大潮「写真みたいなのが挟まってます!!」

満潮「や、や、やめて……!」

提督「誰か助けて」

大潮「大潮をお呼びですね?」

提督「いや?」

プリキュアについてはGoogle先生にちょっと聞いた程度なので、何か間違っていたらすみません……。

書こうと思ったのに風邪に見舞われてる無能です

支援
雑なトレスですが
http://i.imgur.com/xDJCq45.png?1

ぎりぎりまだ残ってた! よかった

二月十四日



提督「……」

ガチャッ

山雲「司令さ~ん」

提督「ノックノック」

山雲「え~?」

提督「人の部屋に入るときはノックしなきゃ駄目だぞ」

山雲「は~い」

ガチャッ パタン

提督「……」

ガチャッ

山雲「山雲で~す」

提督「今度ノックについて教えてやるからな」

山雲「司令さん、今日は何の日か知ってる~?」

提督「まぁ、一応は」

山雲「今日は~、戦艦ビスマルクさんの進水日で~す」

提督「知らなかった」

山雲「あとバレンタインで~す」

提督「そっちは知ってる」


山雲「朝雲姉に、チョコをあげたいんだけど~」

提督「ふむ」

山雲「というわけで~、じゃじゃ~ん、カカオの実で~す」デン

提督「そこからやるのはキツくないか」

山雲「本当は~、鳳翔さんに教えてもらおうと思ったんだけど~」

提督「鳳翔でも出来るかどうか」

山雲「でも鳳翔さんは、大人気だから~」

提督「みんなチョコ作りしてるみたいだな」

山雲「人気のない司令さんの所に来ました~」

提督「そうか……」

山雲「……」

提督「……」

山雲「山雲は~、司令さんのこと、好きよ~?」

提督「フォローもばっちりだな」

山雲「司令さん、チョコの作り方、教えて?」

提督「溶かして固めるだけだろあれ」

山雲「一人で火を使っちゃダメって、言われてるから~」

提督「んー、まぁいいか、じゃあひとまず材料を買いに行こう」

山雲「カカオの実で~す」デン

提督「どこで手に入れたのそれ」

大潮「司令かーん!!」テテテッ

提督「どうした、今日は何もしてない秘書艦大潮どうした」

大潮「どこ行くんですか!?」

提督「ちょっとスーパーへ買い物」

大潮「大潮も行きます!!」

提督「チョコ作りはもういいのか」

大潮「……」

提督「……」

大潮「ないしょ」

提督「そうか」

大潮「大潮は用事を思い出しました!!」テテテッ

提督「美味しいの作ってくれよ」

大潮「あっ、山雲ー!!」ブンブン

山雲「は~い」

大潮「お買い物のかごにこっそりポケモンソーセージ入れてきてー!!」

提督「こっそり言えよ」

山雲「まかせて~」コソコソ

提督「今さらこっそりしても遅い」

大潮「えー!! なにー!?」

提督「聞こえてないしな」

提督「とりあえず調理用のチョコと、トッピングは……」

山雲「あっちにお魚が売ってるわ~」

提督「うん、山雲たちが守った海で獲れた魚だ」

山雲「えへ~」

提督「よしよし、で、トッピングどうする?」

山雲「そうね~、チョコに文字を書きたいわね~」

提督「となると、このペンみたいなやつ買えばいいのか」

山雲「うふふ」

提督「型は鳳翔のところにあるとして」

山雲「お魚は、おいしいわよね~」

提督「そうだな、皆が美味しい魚を食べられるのも山雲たちのおかげだ」

山雲「えへ~、嬉しいわ~」

提督「で、あとは何だ、ラッピングか」

山雲「お魚といえば、山雲ね~、この前、敵の雷巡をやっつけたの~」

提督「ああ、天龍に聞いた、偉いぞ山雲」ワシャワシャ

山雲「きゃ~、うふふ、司令さんったら~」

提督「お魚買ってくか?」

山雲「いらな~い」

提督「えっ、うん、そうか」

山雲「リボンはピンクで~」

山雲「ただいま~」

提督「材料は揃った、あとは調理器具だな」

山雲「お台所は、どうしましょ~」

提督「鳳翔のところで一緒にやるか」

山雲「ん~、朝雲姉には、内緒で作りたいわ~」

提督「なら給湯室だな。じゃあちょっと型とか鍋とかだけ借りてくるから」

山雲「は~い」

提督「大人しく待ってるように」

山雲「……」ガラガラッ

提督「むやみに引き出しを開けるな」

山雲「は~い、いってらっしゃいませ~」

提督「……」

山雲「山雲はご本を読んで待ってます~」

提督「……」

山雲「……」ガラガラッ

提督「そうとう引き出しの中が気になるらしいな」

山雲「面白いものが入ってないかしら~」

提督「たぶん山雲にとって面白いものは、ない」

山雲「ちぇっ」

提督「ちぇって」

提督「鳳翔いるか」

満潮「っ!!? な、な、何よ!」

朝雲「司令!? 何しに来たの!」

提督「おお、作ってる作ってる」

満潮「なに普通に入ってきてるのよ! 変態!」

提督「酷い言われようだ」

満潮「これは、自分用に作ってるだけだから! 変な勘違いしないでよね!」

朝雲「そうよ! 私だって自分のと山雲にあげるのしか用意してないから!」

提督「そうか、で、鳳翔」

鳳翔「はいはい、どうしましたか?」パタパタ

提督「ちょっとこっち来て」

鳳翔「???」

提督「くれぐれも内密に、チョコの型をいくつか貸してもらえないだろうか」

鳳翔「あら、ふふっ、どなたかにお渡しに?」

提督「いや、俺じゃなくて」

鳳翔「そんな、分かっていますよ……私に、ですよね?」

提督「うざっ」

鳳翔「うざくないです」

提督「うざっ」

鳳翔「うざくないです、心地良いくらいです」

大潮「司令かーん!!」

提督「どうした大潮」

大潮「ポケモンソーセージ」

提督「……」

大潮「……まさか」

提督「買ってきたよ」スッ

大潮「やったぁ!!」

提督「皆で分けて食べるんだぞ」

大潮「……うーん、でもなぁ、荒潮はダイエットしてるからなぁ」

荒潮「ちょ、ちょっと、そういうのは内緒にしてもらえないかしらぁ」

提督「ああ、どうりで荒潮、最近いっそう可愛くなったと思ってたんだ」

荒潮「えっ? うふふふ、そーお?」

提督「でも今の可愛い荒潮を保てるように、ご飯を抜いたりするんじゃないぞ」

荒潮「はぁい、うふふ」

提督「よしよし」

荒潮「……荒潮はぁ、チョコ、司令官のために作ってるから、楽しみにしててね ♡」

提督「うん」

大潮「……」コソコソ

提督「皆で分けて食べるんだぞ」

大潮「!」ビクッ

提督「さて、山雲は大人しく待っているだろうか」

鈴谷「あっ、提督!」

提督「鈴谷」

鈴谷「ほーい、鈴谷のチョコ! ア・ゲ・ル」

提督「ああ、ありがとう、大事に食べさせて頂きます」

鈴谷「お返し期待してるからね、にっひひひ♪」

提督「はいはい」

鈴谷「あ、それと、熊野なんだけど」

提督「熊野がどうした」

とぉぉおおぉぉう!!

提督「……この声は」

熊野「謎の美少女仮面、推参いたしましたわ!」

提督「なにその仮面」

熊野「提督、この熊野のチョコレート、受け取っても、いいのよ?」

提督「謎の美少女仮面どこいった」

熊野「淑女たるもの、殿方に贈り物をとあっては、そう簡単にはいきませんの」

提督「えっ、うん」

熊野「しかしこの熊……美少女仮面でしたわね、失礼、ともかく画期的なアイデアを」

鈴谷「長いからあっちでお茶しよ提督」ギュムッ

熊野「お待ちなさい!!」

ガチャッ

提督「お待たせ山雲」

山雲「……」ポキポキ モグモグ

提督「なに食べてんの」

山雲「ポッキー、さっき赤城さんが来て、くれたんだ~」

提督「そうなのか」

山雲「はい、半分は司令さんにって~」

提督「とんでもない見返りを要求されたりしないだろうか」

山雲「あと~、ご飯の雑誌を置いていったわ~」

提督「連れて行けと」

山雲「ポッキー、どうぞ~」

提督「ありがとう山雲、ありがとう赤城」

山雲「それじゃあ、さっそく~」

提督「そうだな……あれ?」

山雲「どうしたの~」

提督「トッピングのチョコチップ開いてるけど」

山雲「……」

提督「食べた?」

山雲「……にゃーん」

提督「可愛い生き物のふりしても駄目だ」

山雲「……」

提督「……簡単に出来たな」

山雲「ね~」

提督「まぁ、溶かして型に入れるだけだしな」

山雲「朝雲姉に渡してきま~す」

提督「まだドロッドロだけどな」

山雲「司令さ~ん、面白いこと言って~」

提督「なに急に」

山雲「いいから~、言って~」

提督「冷蔵庫に入ってたお寿司を食べようとしたんだが、賞味期限が切れていたんだ」

山雲「……」

提督「時すでに、おすし」

山雲「……」

提督「……」

山雲「冷えたかな~」

提督「まさかこの空気を見越して」

山雲「どろどろで~す」

提督「固まってたら泣いてたよ俺」

山雲「司令さん、泣かないで~」ギュー

提督「優しいと見せかけてそもそも山雲のせい」

提督「でかいハートが一個と、小さい星がたくさん」

山雲「上手に出来て、よかった~」

シレイカーン アレー?

 シレーイカーン ドコー

提督「ん? なんか大潮が呼んでる」

山雲「そうね~」

提督「見つからないうちに完成出来て良かったな」

山雲「司令さんのおかげね~」

提督「じゃあ、俺は行くけど」

山雲「は~い、朝雲姉には、内緒にしてね~」

提督「ラッピングは一人で出来るな」

山雲「山雲、頑張ります~」

提督「うん、朝雲きっと、喜ぶぞ」

山雲「うふふ、司令さん、ありがと~」

 シレイカーン チョコデスヨー

提督「はいはい、いま行くよ」

ガチャッ バタンッ

山雲「ありがたいわね~」フリフリ

山雲「……」

山雲「うふふ、司令さん、優しいひと」

朝潮「あっ、司令官! お待ちしておりました!」

提督「うん」

朝潮「こちらのチョコレートを、どうぞ、お受け取り下さい!」ビシッ

提督「ありがとう朝潮」

朝潮「あ、あの、でもあの、少々、形が不格好に……」

提督「いやいいよ……というか、なんだ、美味しそうに出来てるじゃないか」

朝潮「え、ええと、味は、毒見まで済ませてありますので、安心安全、です」

提督「毒が混入する可能性もあったのか」

満潮「……ちょっと」

提督「ん?」

満潮「端材を集めたらもう一個だけ出来たから……はい」

提督「ああ、うん、ありがとう」

満潮「言っておくけど、あの、完っ全に、義理だから!」

提督「義理でも嬉しい、ありがとう満潮」

満潮「ふんっ、はい終わり、もう帰るから」

提督「逃がすかっ」ギュッ

満潮「あっ、ちょっと、やーめーてー!」ジタバタ

提督「朝潮も来い!」

朝潮「ご命令とあらば!」ギュー

満潮「離しなさいよ、ちょっと、もぉー!」

荒潮「うふふふふ……しれーいかんっ♡」

提督「期待の荒潮」

荒潮「ほら見て、チョ・コ・レ・エ・ト、食べる?」

提督「是非とも」

荒潮「ほんとぉ? じゃあ、あ・げ・る ♡」

提督「ありがとう」

荒潮「……あっ、いま開けたらだめよぉ、お部屋で一人で、ね?」

提督「ん? 何かカードが」

荒潮「あっダメダメダメ、あとでにしてちょうだい」アセアセ

提督「ええと、『司令官へ』」

荒潮「んー!」ペチペチ

提督「ははは、わかったわかった、あとでゆっくり食べさせてもらう」

荒潮「もぉ、いじわる……」

提督「ごめんて」

荒潮「……」

提督「あれ、怒った?」

荒潮「……荒潮のことは、ぎゅってしてくれないの?」

提督「いや、するけど」

ダキッ ギュー

荒潮「あんっ……うふふふふ、おいしく召し上がって下さいねぇ」ギュッ

大潮「これは大潮の分のチョコ」

提督「がっつり自分の確保してる」

大潮「司令官の分もありますよ!!」

提督「たぶん小さい包みの方だ」

大潮「はい司令官、アゲアゲな気持ちになるチョコ、差し上げます!!」

提督「うん、ありがとう大潮」

大潮「司令官はいま元気ですか?」

提督「えっ、うん、割と」

大潮「元気なくして」

提督「なんて酷いことを言うんだ」

大潮「はい、元気がない時は、これたべて!」

提督「俺をどうしたいんだよ」

大潮「するとー、なんとー」

提督「元気が出ると見た」

大潮「ぶぶー、間違い、正解はたちまち元気がアゲアゲです!」

提督「そうか」

大潮「お部屋に戻ってさっそく食べましょう!!」

提督「お夕飯前だからちょっとだけだぞ」

大潮「お茶もいれましょう!!」

提督「淹れるの俺だろそれ」

大潮「……ああっ! 天龍さーん!! 龍田さーん!!」テテテッ

天龍「よお、戻ったか」

提督「どうした二人そろって」

天龍「どうしただと、わはは、期待してるくせによぉ」

提督「おお、まさか」

天龍「おうよ、ほら龍田、早く渡せ」

龍田「……無いわよぉ」

天龍「じゃあその手に持ってるの何だよ……手作りだぜ提督、まぁほとんど龍田のだけど」

提督「マジか、ありがたく頂戴します」

天龍「俺も手伝ったんだからな、世界水準ぶち越えちまったからビビって食え」

提督「分かってる分かってる、お返し寄越せってことだろ」

天龍「わかってりゃ良いんだよ、おい龍田、渡してやれ」

龍田「はぁい、大潮ちゃんにチョコクッキーよ~」

大潮「えー!? ありがとうございます!!」

天龍「いや、それもだけど……」

提督「……」

龍田「……あらぁ、何を物欲しげな目で見ているのかしらぁ、欲しがり屋さん」

提督「龍田じつは照れてるだろ」

天龍「ここ来るだけなのにわざわざ風呂入って化粧までしてんだぜこいつ」

龍田「天龍ちゃん!!」

コンコンコンッ

提督「ん? どうぞ」

カチャッ

加賀「……夜分に、失礼します」

提督「おお加賀、どうした」

加賀「……甘いものはお好きかしら」

提督「あっ……うん、あの、好き、超好き」

加賀「そう……」

提督「……」

加賀「他の子たちみたいに、手作りではないのだけれど」

提督「はい」

加賀「こういう機会、折角ですから、これを」スッ

提督「ありがとうございます」

加賀「……それだけよ、おやすみなさい」

提督「ありがとう、お返し、ちゃんとするから」

加賀「うん……楽しみにしてる」

カチャッ パタン

大潮「司令官!! お風呂のアヒルさん見つかりました!! 行きましょう!!」テテテッ

提督「加賀って笑うと死ぬほど可愛いよな」

大潮「??? アヒルさんも可愛いです!!」

翌日



三隈「提督、一日遅れてしまったのですが、はい、どうぞ」

提督「装丁が、やばいなこれ、いくらかかってんの……」

三隈「遠慮なさらないで、中身はいつものくまりんこチョコですもの」

提督「ますます価値が上がるだろ」

三隈「……」テレテレ

提督「あの、お返し、頑張りますので」

三隈「あっ、それは結構ですわ」

提督「えっ」

三隈「これは三隈の気持ちです、見返りなんて求めていません」

提督「……」

三隈「……なんて言うと、提督はますます頑張ってしまいますのよね」

提督「なんか性格把握されてる?」

三隈「ふふっ、では提督の手作りで、何か贈って頂けないかしら」

提督「分かった、必ず」

ガチャッ バーン

大潮「司令官!!」

三隈「あら、秘書艦さんがお戻りになりましたわ」

提督「秘書艦どこ行ってたんだよって話だけどな」

大潮「ほら朝雲!! 早く!!」

朝雲「なによちょっと引っ張らないで! 服が伸びるでしょ!」

山雲「は~や~く~」

朝雲「山雲まで、押さないでよもー!」

提督「騒がしいな」

大潮「朝雲から司令官に、渡すものがあるみたいですよ!!」

朝雲「はぁ!? 違うわよ! 別にそういうのじゃないから!」

提督「楽しみです」

三隈「うふふっ」

朝雲「なに言ってんのよ! 司令になんか用意してないわ!」

山雲「え~」

朝雲「……」

提督「……」

朝雲「た、ただ、その、自分用に作ったんだけど、あの」

提督「うんうん」

朝雲「私は、山雲から貰ったから、それで……あんまり食べ過ぎると、アレじゃない……?」

提督「アレだな」

朝雲「だから……はい、司令が処分してよね、す、捨ててもいいから」

提督「味わって食べるとも」

朝雲「ほんとに違うからね! ほんとに普通に自分用だったんだから!」

提督「……」

山雲「……」

提督「ふふふ」

山雲「うふふ~」

朝雲「ん? なによ、なに笑ってんの二人して」

提督「山雲から貰ったのか」

朝雲「そうよ? 見る? すごいんだから!」

提督「そうかそうか」

朝雲「見て! ちっちゃい星型のチョコ、こんなにたくさんあるのよ」

提督「上手に出来てるな」

朝雲「でしょ? 出来た妹を持って鼻が高いわ!」

提督「うんうん」

山雲「……」

提督「……待てよ、星形?」

朝雲「えっ? うん、羨ましい?」

提督「うん、まぁ……」チラッ

山雲「……」プイッ

提督「???」

大潮「満潮も大潮にくれたりしないかなぁ」

提督「大潮は俺が貰ったやつちょっと食べたろ」

提督「さて、チョコだけでかなりの数になったな」

大潮「一人では食べきれませんね!」

提督「頑張って食べよう」

大潮「……」

提督「……」

大潮「困ったときは大潮を呼んでくださいね?」

提督「はいはい」

大潮「ぜったい呼んでくださいね?」キラキラ

提督「目がきらっきらしてるけど」

三隈「三隈、お茶を淹れて参りますね」

提督「頼む。ひとまずチョコは引き出しにしまっておくか」

ガラガラッ

提督「ん? なんだこれ」

大潮「なになに」ズイズイ

提督「じゃまじゃま」

【司令さんへ

 今日はありがとうございました

 山雲からのお礼の気持ちです   山雲より】

大潮「あっ、大潮のだ」

提督「嘘をついている」

朝潮型で山雲ちゃんだけバレンタインボイス無いのほんと納得いかない

>>261
遅ればせながら、ご支援をありがとうございます
まさかこんな素敵な物を作って頂けるとは……

晴れた春の日



提督「笛やりたいひと」

大潮「はーい!! 大潮お任せください!!」

朝潮「笛はこの朝潮が! 朝潮は笛が得意と自負しております!」

霰「霰が、霰がやります……」

山雲「司令さん、山雲がやってあげるわね~」

提督「じゃあはい、皆の分あるからな」

キャッキャッ ワーイ

大潮「ではお花見隊、大潮の笛に続いて下さい!!」

朝潮「朝潮の笛に合わせて行進をお願いします!」

霰「霰の後に、ついてきて」

山雲「見て見て朝雲姉~、面白いわね~」

 ピッピッピッ ピピッ ピー

   ピッピピ ピッピッ ピッピッピッ

 ピッピッピッ ピー ピピッピピッピー

提督「めっちゃうるさいな」

天龍「お前の采配だろうが」

満潮「……」

提督「満潮の分の笛もあるぞ」

満潮「いらないわよ別に」

提督「ああ、そう」

大潮「司令かーん!! 旗は、旗はないんですか?」テテテッ

提督「あるよ」スッ

大潮「これでもっとアゲアゲです!!」

朝潮「あ、あの、朝潮にも旗をください」アセアセ

提督「はいよ」

朝潮「ありがとうございます!」

提督「満潮の旗もあるぞ」

満潮「……うるさいわね、いちいち構ってくれなくていいから」

提督「ん?」

満潮「私は私なりに楽しむから、放っときなさいよ」

提督「……」

満潮「うざいのよ、さっきから」

提督「……」ギュムッ ヒョイッ

満潮「あっ、ちょっと! 下ろしなさいよ!」

提督「このまま公園まで行く」

満潮「ちょ、ちょっとほんとに勘弁して! 見てるから! みんな見てるからぁ!」

提督「場所取りご苦労、助かった」

鳳翔「いえ、お買い物を任せてしまってすみません」

満潮「……」

鳳翔「満潮ちゃんはどうしたんですか?」

提督「ここまで抱きかかえてきた」

鳳翔「可哀相に……」

提督「どういう意味だ」

満潮「もう、なんなのよ……」

提督「抱っこしてもらえて良かったなー満潮」ナデナデ

満潮「ほんとに、ほんとにうざいから……」グググッ

大潮「これはお菓子の袋と見た」ガサガサ

提督「お菓子はご飯食べてからにしろ」

大潮「えー」

提督「鳳翔の特製お弁当が食べれなくなってもいいのか」

大潮「!!」

鳳翔「腕によりをかけたので、たくさん食べてくださいね」

大潮「大潮、お皿とお箸をお配ります!!」

鳳翔「ふふっ、ありがとうございます、お願いしますね」

提督「俺どうしようか、歌ってようか」

鳳翔「はい、公園のむこーうの隅の方でお願いします」

加賀「遅れました」

大潮「お箸とお皿です!!」

加賀「ありがとう」

霞「はいはい場所を開ける! あっ、ごみはすぐ片しなさいったら!」

赤城「皆さん働き者ですね」

満潮「……」

鳳翔「お母さんとしては大助かりです」

提督「お母さん醤油とって」

鳳翔「鎮守府のお台所にありますよ」

満潮「……ねぇ」

提督「どうした満潮」

満潮「私も、何か、やることあったらやるけど……」

鳳翔「あらあら、満潮ちゃんもお手伝い出来て偉いですね」

満潮「別に、そういうんじゃないから……」

鳳翔「ではコップに飲み物を注いでいただけますか」

満潮「ん……司令官はなに飲むの、醤油?」

鳳翔「そうですね、醤油がお好きなようなので」

提督「醤油は鎮守府のお台所に行かないと無いんだなこれが」

鳳翔「ありますよ」スッ

提督「話が違う」

満潮「で、なに飲むのよ」

提督「んー、いちおう酒買ってきたけど、鳳翔どうする」

鳳翔「では少しだけ、頂きましょうか」

提督「じゃあ満潮これ、コップにいれて」

満潮「うん……」

大潮「お箸ないひとー」

朝雲「あっ大潮、こっちにもう一本ちょうだい!」

大潮「すぐにお届けします!」タタタッ

ドンッ

満潮「わっ」バシャッ

大潮「あっごめんっ……あー! 司令かーん!!」

提督「びたびただ」

鳳翔「タオルタオル」

大潮「お料理がー!!」

満潮「えっ、えっ……?」

鳳翔「ちょっとかかっただけですから、大丈夫ですよ」

提督「酒がかかったとこは俺が食べるから、あっ、でもほとんど無事みたいだぞ」

満潮「あの、違うの、だって、大潮が押すから……」

大潮「でも大潮、お箸、持ってかなきゃって……」シュン

提督「よしよし、大丈夫、二人ともいい子だ」ギュー

大潮「大潮反省のポーズ」チマッ

提督「反省のポーズはいいから早く料理食べよう」

大潮「司令官おこってない?」

提督「いやまぁブチ切れだけど」

大潮「ひゃああああああ……」プルプル

鳳翔「……」ドスッ

提督「痛った、うそうそ、怒ってないよ」

大潮「よかったぁ」

鳳翔「着替えを持って参りましょうか?」

提督「いやこのままで問題ない」

満潮「……」

提督「はい、満潮、もう一回お酒注いで」

満潮「……他の人にやってもらったらいいじゃない」

提督「満潮にやってほしいなー」

満潮「誰がやったって一緒でしょ!」

提督「……」

満潮「っ……何よぉ」ウルウル

天龍「……」スクッ

龍田「天龍ちゃん?」

天龍「一番、天龍、誰もが恐れる構えをとるぜ」ビシッ

天龍「荒ぶるヘブンリィドラゴンの構え!!!」ザッ

龍田「天龍ちゃんかっこい~」

天龍「フフフ……怖いか?」

大潮「ぜんぜん怖くないです!!」

天龍「そんなことねぇだろ」

満潮「……?」パチクリ

赤城「二番、一航戦赤城、歌います!」

加賀「……」パチパチパチ

赤城「加賀さんが歌います!」

加賀「!!?」

デデン!

加賀「えっ、ちょっと、えぇ……」

天龍「音源出すの早ぇな」

コノテニヨセル フクサ シュノイロー

満潮「……」

提督「……」ポンポン

満潮「……コップ、出しなさいよ」

提督「おお、ありがとな満潮」

満潮「……」トプトプトプ

朝雲「お箸が来ないわ」

提督「おっ、三隈から電話だ、着いたのかも」

大潮「大潮はお菓子のようす見てよーっと」ガサガサ

提督「もしもし、着いたか、うん、あーじゃあ迎えに行く、うんうん」

大潮「満潮どれがいい?」

満潮「どれでもいいわよ」

大潮「小さい子順!!」

満潮「ならまず霞からなんじゃないの」

大潮「……」マルッ

満潮「なに丸まってんのよ」

大潮「だいぶ小さい」

満潮「小さい子順てそういうのじゃないでしょ」

提督「俺ちょっと行ってくるわ」ピッ

荒潮「うふふっ、荒潮も一緒に行くわぁ」ギュッ

朝潮「朝潮もお供いたします!」

提督「いや、すぐそこだし、一人で行くけど」

荒潮「だーめっ♡ うふふふ、行きましょ」

朝潮「あっ、すぐに靴を履きますので、少々お待ちを!」アタフタ

荒潮「置いてっちゃうわよぉ」

朝潮「待って下さい! 待って下さい、待って、うっううぅ……」

提督「泣くな泣くな」

一端きります続きは近日

大潮「大潮は任務中なので」ガサガサ

満潮「あんた秘書艦の割には、何て言うか、自由よね」

大潮「大潮は司令官をお守りしてるもーん」

満潮「そもそもなんで大潮が秘書艦なのかしら」

大潮「それ知ってる!!」

満潮「あっそうなの、なんで?」

大潮「大潮が、一番、ナントカって司令官が言ってた」

満潮「いやそのナントカの部分が知りたいんだけど……」

大潮「たぶん、大潮が、一番、可愛い……」

満潮「……いや、否定はしないけど」

大潮「でもなぁ、満潮も可愛いしなぁ」

満潮「はぁ? 興味ないから、そういうの」

大潮「頭のお団子が可愛い」

満潮「これは、別に、あの、なんとなくだし……」

大潮「あと朝雲もリボンが可愛い」

朝雲「なに言ってんの! これは別にそういうんじゃなくて、その、なんとなくだから!」

満潮「……」

龍田「満潮ちゃんも傍から見たらあんな感じに可愛いわよぉ」

満潮「うそ、あんなんなの……」

朝雲「あんなんって何よぉ!」

加賀「……」

赤城「加賀さんも秘書艦、やってみたいんじゃないですか?」

加賀「私は……あの人の人事に従うまでよ」

赤城「んー、でも加賀さんでは無理かもですね」

加賀「……」

赤城「提督が大潮ちゃんを秘書艦にしている理由、知ってますか?」

加賀「……手がかかるから、かしら」

赤城「あら、ご明察」

加賀「昔、迷子になったことがあったわね」

赤城「ありましたね、二つも隣の町の交番で保護されて」

加賀「……」

赤城「私たちは今さら、手のかかる子になれませんしねぇ」

加賀「……」

天龍「いや赤城、あんたにはだいぶ手ぇ焼いてるぞ提督のやつ……」

赤城「えっ嘘」

加賀「言わないでおいたのに……」

赤城「え? 嘘ですよね? 本当ですか? 私もう大人なんですけど」

加賀「……」

赤城「ちょっと電話して聞いてみます……もしもし提督ですか? あっ急にリンゴ飴食べたい」

天龍「そういうとこそういうとこ」

提督「何だったんだ赤城のやつ……」ピッ

荒潮「司令官、荒潮、わたあめが食べたいわぁ」

朝潮「荒潮! わがままは慎みなさい!」

荒潮「えー、だってぇ、ねぇいいでしょう司令官」ギュッ

朝潮「離れなさい荒潮! 往来ではしたない」

提督「朝潮もおいで」ギュムッ

朝潮「ああー!!」ギュー

提督「落ち着け」

荒潮「うふふふっ、朝潮ちゃんも、司令官のこと、大好きだからぁ」

提督「そうかそうか」

荒潮「司令官にぎゅってされたら、きゃーってなっちゃうわよねぇ」

提督「きゃーって言うか、あーって言うか」

荒潮「……ね、司令官、わ・た・あ・め♡」

提督「仕方ない、内緒だぞ」

朝潮「朝潮は、朝潮は心の弱い駆逐艦です……」

荒潮「あらぁ、そんなことないわよねぇ」

朝潮「どうか、どうか弱々な朝潮に処罰を……」

提督「朝潮はわたあめいらない?」

朝潮「そういうのは無しです……」

提督「無しかぁ」

鈴谷「あっ、来た来た、おーい提督ー」

提督「おまたせ」

三隈「まぁ可愛い、わたあめ買ってもらいましたのね」

朝潮「……」ムグムグ

荒潮「……」モグモグ

提督「なんかわたあめ与えたらすごい大人しくなった」

最上「甘いもの食べると静かになるよね」

鈴谷「分かるかも、頭の中がこう、『甘いっ!』ってなるよね」

熊野「あらまぁ、お子様ですのね」

鈴谷「気付いてないかもだけど、熊野もアイス食べてるとき虚空を見てるよ」

熊野「根も葉もない言いがかりですわ」

最上「ボクも見た事あるよその熊野」

三隈「私も」

熊野「……」

鈴谷「あっ、それより提督聞いてよ、鈴谷たちさっきナンパされちゃった」

最上「そうそう、三隈と鈴谷がすっごいしつこくされて」

熊野「身の程をわきまえない庶民の方たちが、困ったものですわ」

三隈「腕を掴まれて、怖かったです……」

提督「ははは……どこの野郎だ」

最上「目が笑ってないよ提督」

荒潮「司令官」

提督「なんだ」

荒潮「司令官はいま、女の子を連れてるのよ」

提督「そうだな」

荒潮「だからぁ、お腹がふつふつしても、笑って堪えなきゃ、ね?」

提督「……」

荒潮「ここは荒潮に免じて、落ち着いて? うふふっ」ギュー

提督「すみません……」

鈴谷「荒潮の女子力やばくない?」

三隈「ぜひ見習わせて頂きたいものです」

熊野「さすがですわ荒潮さん、神戸生まれはそういう所ありますわよね」

鈴谷「……」

熊野「……仰りたいことがあるのであれば、構いませんのよ」

最上「即席でボケれるなんて熊野は凄いよ」

鈴谷「荒潮を褒めながらさりげなく自分を持ち上げたのがややウケ」

熊野「その喧嘩、言い値で買いましてよ」

最上「罠だ!」

鈴谷「言えっていったから言ったのに!」

朝潮「……」ムグムグ

三隈「本当に静かですのね朝潮ちゃん……」

霞「ちょっと霰! 遠慮してないでもっとちゃんと食べなさいよ!」

霰「うん……ありがと」

霞「朝雲! 苦手な物を山雲に渡さない!」

朝雲「な、なな何よ! いいじゃない山雲はこれ好きなんだから!」

霞「山雲も甘やかすんじゃないわよ!」

山雲「え~」

霞「大潮はいつまでお菓子選んでんのよ!」

大潮「命がかかってるから!!」

霞「満潮!」

満潮「なによ」

霞「……」

満潮「……」

霞「……あのー、愛想とか、よくしたら?」

満潮「言うこと無いならほっときなさいよ!」

鳳翔「霞ちゃん、お膝の上に来ましょうか」ヒョイッ

霞「えっ、ちょ、なに」

鳳翔「お世話を焼くのも素敵ですけど、霞ちゃんも、はい、あーん」

霞「自分で食べられるったら……」

鳳翔「はぁー、末っ子かわいいですねぇ」ナデナデ

霞「何なの……」モグモグ

天龍「朝雲ぉ! そりゃ俺の酒だ!」

朝雲「いいじゃない少しくらい!」

加賀「……もう少し大きくなったらね」

朝雲「なによ皆してイジワルして!」

加賀「意地悪ではないのだけれど、駄目よ」



大潮「鳳翔さんなに飲んでるんですか!! 大潮も飲みたいです!!」

鳳翔「いいですよ」

赤城「えっ駄目ですよ鳳翔さん……」

鳳翔「構いません、ではええと……龍田さん、こちらへ来て頂けますか」

龍田「あら~、何かしら~」

鳳翔「私が飲んでいるのと同じものを、大潮ちゃんに注いであげて下さい」チラッ

龍田「……ああ、うふふ、そうねぇ、でも良いんですか?」

鳳翔「はい」

龍田「いいのかしらぁ、こんな上等な……リンゴジュース」

大潮「えー!? 鳳翔さんリンゴジュース飲んでたんですか!!」

鳳翔「そうなんです、うふふっ、内緒ですよ」



加賀「……スマートね」

天龍「龍田もよく鳳翔さんの意図を汲んだな」

朝雲「やり方が下手なのよあんたたち」

天龍「あれそれお前の台詞だっけ」

提督「ただいま」

大潮「あー!! 熊野さーん!!」

熊野「あら大潮さん、ごきげんよう」

大潮「熊野さんはこっちに来てください!!」

熊野「では、そちらに失礼いたしましょうかしら」

大潮「そうして大潮がお膝に入る」ポスッ

熊野「いつ抱えても温かいですわねこの子」ナデナデ

鈴谷「……」

満潮「……」

鈴谷「しょうがないなぁ、こっち来な満潮」

満潮「えっ、嫌よ、なんでよ」

鈴谷「だってズルいじゃん熊野ばっかり」

満潮「霰とか山雲とか、大人しいのにしたらいいでしょ」

鈴谷「いいから、来なってば、この……!」グググッ

満潮「やだってば、ちょ、離しなさいよ……!」

熊野「……」ギュムッ

鈴谷「あー! せ、背中掴むのはやめて……」

熊野「鈴谷の弱点は背中のお肉ですわ」

満潮「……」

鈴谷「分かってるから、ちゃんと痩せるから、やめて……」シクシク

霞「……何よ」

提督「なんだ霞、鳳翔に捕まえられて、食われるぞ」

霞「知らないわよ、なんか、成り行きで……」

鳳翔「私がこんな可愛い子を食べるわけないじゃないですか」ギュー

霞「何なのこれ……」

提督「……ああそうだ、赤城これ、隠せ隠せ」コソコソ

赤城「何ですか? あっ、リンゴ飴……」

提督「皆にねだられるからこっそり食べろよ」

赤城「ありがとうございます……」

提督「よしよし、あっ熊野、大潮いろいろこぼすから気を付けろよ」

熊野「構いませんわ、そのくらい」

大潮「こぼさないです!!」ポロポロ

赤城「……」キュッ

加賀「赤城さん」

赤城「ふぁあああああなななななんですか!?」

加賀「どうしたの、そんなに慌てて」

赤城「何でも、ない、です、けど?」

加賀「……」

赤城「……お、お夕飯まだかなぁ」

加賀「お昼を食べている最中よ……」

満潮「……」

鈴谷「はぁ……」

満潮「……」

鈴谷「……」

満潮「……座るから、膝貸しなさいよ」

鈴谷「えっいいの!? はいはいはい、おいでおいで」ポンポン

満潮「……」ポスッ

鈴谷「ちびっ子、あったかい、やわっこい」ギュムギュム

満潮「頭の後ろのでっぱりがジャマ……」

鈴谷「我慢して」

大潮「……」

熊野「……」

大潮「でっぱりがない……」

熊野「必要ありません」

鈴谷「これだけは熊野に負けないもんねぇ」

熊野「レディの価値は胸の大小で決まったりいたしませんわ」

鈴谷「やーい絶壁」

熊野「……」ギュムー

鈴谷「あー背中やめて掴まないで!! 分かってるから、やめ、うっうっうっ……」

満潮「ほんとに痛ましいからやめてあげて……」

朝雲「……なんかお菓子だいぶ減ってない?」

大潮「……!」ビクッ

朝雲「まさか大潮、あんた」

大潮「……」ダラダラ

朝雲「熊野さん、見てたでしょ、大潮食べてた?」

熊野「ええ、もりもり召し上がっておられましたけれど」

朝雲「どうして止めないのよ! ほっとくと無限に食べるのよ!」

熊野「え、ええ、そうなんですの?」

朝雲「みんなで食べる分だったのに!」

熊野「……湯水のようにあるものだと思っておりました」

鈴谷「熊野、普通のお家ではお菓子は湧いて出てこないんだよ」

熊野「それくらい存じておりますわ、パティシエが作るのでしょう?」

鈴谷「本日の残念熊野」

熊野「ともあれ監督が行き届かなかったこと、お詫び申し上げます」

朝雲「……」

熊野「そうですわね、ではこの熊野が、お買い物に行って差し上げてもよくってよ」

鈴谷「帰ってこれなさそう」

熊野「どうしてそういうこと言うんですの」

鈴谷「青葉さんにお先に失礼されそう」

熊野「背中掴んだこと怒ってますのね?」

提督「俺行ってくるから、座ってろ」

熊野「あら、いいんですの? お礼申し上げます」

提督「ちょっと大潮貸して」

熊野「ええ、構いませんわ」ヒョイッ

大潮「……」

提督「よしよし、おいで大潮」ギュムッ

大潮「……」

提督「なんでお菓子たくさん食べちゃったんだ」

大潮「……」

提督「大潮」

大潮「……でもいっぱいありましたよぉ」

提督「大潮がたくさん食べたら、他の子の分がなくなっちゃうだろ」

大潮「……」ウルウル

提督「ちょっと間違えちゃったな大潮」ナデナデ

大潮「……」

提督「そしたら一緒に皆に謝ろう、よし、せーので、ごめんなさい」ペコリ

大潮「ごめんなさい……」

鳳翔「まぁ! 偉いですね、とっても良い子だからちゃんとごめんなさいが出来るんです」

朝雲「……」

満潮「……」

提督「ついでに飲み物とか買ってくるけど」

加賀「……」

提督「何かほかに欲しいものある人」

鳳翔「新しい食器乾燥機を」

提督「鳳翔以外で」

鳳翔「けち」

提督「特になければ行ってくる」

加賀「……」スクッ

提督「ん? どうした加賀」

加賀「飲み物を買うなら、荷物が多くなるでしょう」

提督「ゆっくりしてて構わないぞ」

加賀「……」

提督「……いや、そうだな、ありがとう、手伝って」

加賀「うん」

提督「それじゃあ、ええと、朝雲」

朝雲「……なに」

提督「すぐお菓子買ってくるからな、どんなのがいい」

朝雲「……別になんでもいいわ」

提督「可愛い奴だなこいつめ」ムニムニ ナデナデ

朝雲「っ!!!!?!?」ビクーン

最上「元気出しなよ大潮、ほら、ボクを見て、こんなに元気!」

大潮「……」シュン

三隈「リンゴジュースがありました、ご一緒に頂きましょう」

大潮「……それ鳳翔さんのジュースですよぉ」

三隈「鳳翔さん、いいんですのよね」

鳳翔「はい、飲み切ってしまって構いませんよ」

大潮「……」

最上「ほら、もう誰も怒ってないから、元気出して!」

三隈「いつものように、あげあげですわ」

大潮「……でも朝雲は怒ってる」

最上「そんなことないって! ね、朝雲」

朝雲「……」プイッ

最上「あ! ねぇ、朝雲」

朝雲「知らない!」

大潮「……」

最上「だ、大丈夫だよ! ボクにとっておきの策があるからね」

三隈「まさか、あれをやるんですの?」

最上「ボクにはそれくらいしか出来ないからね」

三隈「久しぶりに見れますのね、モガミンのショートコント」

最上「えっいや、違うし今までやったこともないよ」

朝雲「……」

天龍「何だよしけた面してよぉ、おら飲め、これも食え」

朝雲「……」

天龍「……あーあ、ほら、こっち来いよ」ギュッ

朝雲「……」

天龍「で、お菓子は提督が買ってくるっつーのに、何が不満だ」

朝雲「……大潮が食べちゃったのがいけないのに」

天龍「おう」

朝雲「怒った私が悪者みたい……」

天龍「はぁ? んなワケねぇだろ」

朝雲「……」

天龍「間違った奴を怒ってやれる、かっけぇじゃねぇか」

朝雲「でも私、大潮のためとかじゃなくて、カッとなっちゃっただけだし……」

天龍「後悔してんのか、なら十分だ、お前は悪くねぇ」

朝雲「……」

天龍「だが、そうだな、熊野にまで当たったのは、ちょっとばかし頂けねぇな」

朝雲「……」

天龍「分かるか」

朝雲「……ん、ありがと、行ってくる」ノソノソ

天龍「最高にクールだ、よし、行ってこい」

朝雲「……熊野さん、さっき怒っちゃったの、ごめんなさい」

熊野「あら、どうしたんですの」

朝雲「熊野さん、悪くないのに、怒っちゃって……ごめんなさい」ペコリ

鈴谷「熊野のせいでいいよ」

熊野「……」ドスッ

鈴谷「うっ……」

朝雲「……」

熊野「構いませんわ、朝雲さん、わたくしは貴女を許します」

朝雲「いいの?」

熊野「少し前に、色々ありまして、人を許すということの大切さを学びましたの」

朝雲「……」

熊野「難しくて、とても素敵なことですわ」

朝雲「……」

熊野「朝雲さんも、もし真摯な態度で頭を下げる方がいらっしゃったなら、どうか許して差し上げて」

朝雲「……」

熊野「その方が大切な相手ならば、尚更のこと、ですわよ」

朝雲「……うん、分かった」

鈴谷「っていうかそもそも熊野がちゃんと見てなかったのが」

熊野「……」ドスッ

鈴谷「うっ……! どうして鈴谷は許されないの……」

大潮「……朝雲」ソロソロ

朝雲「……」

大潮「朝雲ごめんね……」

朝雲「……」

大潮「これ、大潮の秘密の飴なんだけど、朝雲にあげる……」スッ

朝雲「……」

大潮「……もう一個あげる」

朝雲「いらない」

大潮「……」ウルウル

最上「朝雲! 大潮を許してあげて! ボクからのお願い!」ナムナム

三隈「三隈からもお願いいたします」ナムナム

最上「そうだ! 明日ボクがホットケーキ作ってあげるよ! 約束する!」

三隈「メイプルシロップもたっぷりご用意いたしますわ」

最上「大潮は本当に反省してるんだ! だから、どうかどうか、お願い!」ナムナム

朝雲「……そうじゃなくて、飴なんか貰わなくても、許してあげるってこと」

大潮「……!」

朝雲「私も、怒鳴っちゃって、ごめん」

大潮「あさぐもぉ……!」フルフル

最上「ホットケーキはどうする?」

朝雲「それは作って」

鳳翔「子供たちの、日々の成長を見守る……幸せですね」

龍田「うふふっ、本当に」

鳳翔「うちの鎮守府は、お手本となるような方ばかりで助かります」

龍田「あら~、もちろん鳳翔さんがその最たる例ですけれど」

鳳翔「そんな、恐縮してしまいます」

霞「謙遜しないで、その通りなんだから胸張って良いのに」

鳳翔「ふふっ、ありがとうございます、そうあれるよう努めますね」

赤城「……」

霰「……赤城さん、ずっと食べてた」

赤城「霰ちゃんお静かに」

霰「……」

赤城「霰ちゃん、お箸の持ち方とか……いや、綺麗ですね」

霰「三隈さんに、教えてもらった」

赤城「正座とかどうですか、足痺れません?」

霰「加賀さんに、コツを教わったから……できます」

赤城「……」

霰「……」

赤城「バランスよくおかず取ってあげますね! あれとこれと、ああっ!」ポロッ

鳳翔「赤城、少し落ち着きなさい、霰ちゃんを見習ったらどうです」

赤城「す、すみません……」

加賀「……花は、綺麗ね」

提督「そうだな」

加賀「ええ」

提督「ん? こんなところに桜にも負けない美女が」

加賀「……貴方は、すぐにそういうことばかり言う」

提督「調子に乗ってすみません」

加賀「……」

提督「荷物重くないか」

加賀「重いものは、全部貴方が持っているでしょう」

提督「いや、これくらい大潮に比べれば軽い」

加賀「……ふふっ」

提督「あいつ最近すげぇ重いんだよ」

加賀「子供は、すぐに大きくなるから」

提督「……」

加賀「……どうかして?」

提督「笑った顔が可愛い」

加賀「……」ペチッ

提督「痛った」

加賀「……鳳翔さんの、真似」

提督「怖ぇ……」

提督「ただいま」

鳳翔「お帰りなさい、度々すみません」

提督「これ飲み物、重いから気を付けろよ」

大潮「司令かーん!!」

提督「お、何だ大潮、元気になったか」

大潮「大潮がちゃんと謝ったら、朝雲が許してくれました!!」

提督「そうか、ちゃんと謝って、偉いな大潮」

満潮「……」

提督「朝雲、おいで」

朝雲「なに」

提督「朝雲もちゃんと許してあげられて偉いぞ」ナデナデ

朝雲「……そお? べつに普通よ」テレ

提督「お菓子いっぱいあるから、好きなの選べ」

朝雲「……とか言って、皆の好みで選んできてるんでしょ?」

提督「うん、まぁ、だいたいは」

朝雲「私に選んでくれたの、頂戴」

提督「ん、じゃあ、イチゴジャムのミニクリームサンド」

朝雲「……ふふっ、いいじゃない、ありがとう」

提督「うちの子みんな可愛いなぁ……」

鳳翔「もう完全に同意です……」ハフゥ

夕方頃

提督「よし、だいたい片づけ終わったか」

大潮「大潮まだ遊べます!!」

提督「鳳翔」

鳳翔「うーん、お買い物のお手伝いして下さる方がどこかにいらっしゃらないでしょうか」

大潮「!!! 大潮にお任せください!!」

天龍「ごみ残してねぇな、んじゃあちゃっちゃと帰るぞ」

朝雲「ねぇ待って、山雲がすっごい眠そうなの」

天龍「ああ? 仕方ねぇな、来い山雲」ヒョイッ

山雲「んー……」ウトウト

鈴谷「熊野、鈴谷も抱っこ」

熊野「仕方ありませんわね、よいしょ、あっ無理ですわ」

提督「アホなことしてないで帰るぞ」

満潮「……ねぇ」

提督「ん? どうした」

満潮「あの……服、濡らしちゃったの、ごめん」

提督「うん?」

満潮「だっ、だから、お酒かけちゃったの、ちゃんと謝ってなかったから……ごめん」

提督「満潮は俺が抱っこして帰ろう」ヒョイッ

満潮「何でよやめてよ! 謝ったのに! ちゃんと謝ったのにぃ!!」ジタバタ

近日(二か月)
補足:朝潮型最終艦は霰ですが、竣工順も参考にここでは霞とダブル末っ子ということでどうか……

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年07月30日 (木) 22:00:41   ID: EAza6Ivi

なにこれかわいい

2 :  SS好きの774さん   2015年09月18日 (金) 01:47:08   ID: rM-68VDP

ちょっと大潮育ててくる

3 :  SS好きの774さん   2015年09月25日 (金) 10:06:56   ID: 284vuMIE

大潮に目覚めそうだ

4 :  SS好きの774さん   2015年11月21日 (土) 20:52:08   ID: 57h-s2TE

大潮を秘書官にしてくる!

5 :  SS好きの774さん   2016年01月18日 (月) 17:35:22   ID: ZUldJ9TV

大潮、、こんなにも魅力に溢れているなんて!素晴らしい子!

6 :  SS好きの774さん   2016年01月19日 (火) 02:09:37   ID: 4MyZtkNl

このSSの作者はできる人だ

7 :  SS好きの774さん   2016年03月17日 (木) 04:12:33   ID: w_0yBhzP

提督、苦労してんなぁ…

8 :  SS好きの774さん   2016年03月19日 (土) 14:32:12   ID: oG9QCaoJ

続きがきてたーーうれしい、大潮の良さは青天井やでぇ。

9 :  SS好きの774さん   2016年06月06日 (月) 16:43:22   ID: HgPY1Tpw

ええテンポやなぁ

10 :  SS好きの774さん   2016年10月16日 (日) 00:09:35   ID: DLqS36Hd

やっぱ朝潮型は最高

11 :  SS好きの774さん   2017年02月22日 (水) 21:28:38   ID: VwmQrQ7r

続いていたのか!嬉しいなあ。
大潮はもちろんだけど皆素敵。

12 :  SS好きの774さん   2017年04月29日 (土) 21:45:35   ID: VTi89kkF

生きてたか作者

13 :  SS好きの774さん   2017年05月01日 (月) 19:23:34   ID: -twDBCes

このssが一番好き。

14 :  SS好きの774さん   2017年05月08日 (月) 10:23:31   ID: My9gFzJb

このよつばと!の空気感をよく再現出来てる感じが素晴らしい

15 :  SS好きの774さん   2017年05月19日 (金) 05:36:08   ID: yen8OLmM

なんだこのss!?(驚愕

16 :  SS好きの774さん   2017年06月29日 (木) 06:08:16   ID: 8FXg3ROJ

ついに大潮が秘書官の謎が明らかになった!
皆素敵だ。

17 :  SS好きの774さん   2017年07月01日 (土) 04:03:54   ID: Ew-TYfn9

控えめにいって最高

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