マルチナ「エデンの戦士達disc2」(ドラゴンクエストⅦ&蒼天のソウラ) (27)



登場人物

ソウラ
ウェディ、男、戦士
冒険者の少年

マルチナ
ウェディ、女、魔法使い
ソウラの幼なじみ

アズリア
人間?、女、魔法使い
竜の卵から生まれた

ギブ
ドワーフ、男、盗賊

うりぽ
プクリポ、女、旅芸人



フォズ
人間?、女、大神官




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蒼天のソウラ・前回までのあらすじ
ヴェリナードへと向かう航海の途中、謎の海賊船と衝突し、異世界で不思議な体験をしたソウラとマルチナ達。
無事船に戻った彼らは、気を取り直して、竜の娘・アズリアの正体を探る旅を続ける…


パトリシア級8番艦ミーティア号・船内


カツカツカツ…

アレック「しかし…よろしいのですか?」

マルチナ「なにが?」

アレック「停泊予定のない港に、急に立ち寄るとは」

チナ「あぁ…仕方ないのよ。目に見えて損傷はないとはいえ、あれだけ激しく衝突したんですもの。一度停めて、入念にチェックしておかないと」

アレック「ふむ。慎重なご判断ですな。ただ、これにより遅れが出ますから」

チナ「分かってる。ちゃんと商品の受渡には間に合わせる」

アレック「いえ…そうではなく」

チナ「?」

アレック「遅れが出るからと言って、無理に急いだりなさらぬよう。…安全第一ですじゃ」

チナ「…うん、分かった。ありがとう」

アレック「いやつまらん老婆心ですから、忘れて下され。……さ、この部屋です。ワシは寄港の準備に」

チナ「えぇ、よろしくねアレック」

アレック「お任せを」ペコ…スタスタ…



チナ「ソウラーいるー?入るわよー」コンコンガチャ


うりぽ「ポ……ウボポ…ポポ」

ソウラ「おう、ちな。来てくれたのか」

チナ「…相変わらずつらそうね、うりぽ」

ギブ「酔い止めも飲ませたし、色々、楽になるよう試してはいるんだけど…」

チナ「もうしばらくで、港に着くから」

りぽ「…ポ……ほんとすまんポ」

ソウラ「気にすんなよ。冒険者は助け合いだろ?」ナデナデ

りぽ「ポ…」

チナ「…ソウラ」

ソウラ「あぁ…。うりぽ、ちょっと離れるけど、大丈夫か?」

ギブ「僕がついてるから。何かあったらスグに呼ぶしね」

ソウラ「…頼む」

ガチャ…バタン

ソウラ「悪いな…俺達のために」

チナ「いいってば、自分で言ったじゃない。助け合いでしょ?」

ソウラ「あぁ……それで」

チナ「うりぽのこと」

ソウラ「船酔いにしちゃ、キツすぎるぜ。いったいなんなんだ?」

チナ「確かなことは…でも一度きちんと診てもらった方がいいと思う」

ソウラ「…だよな。ボケもさえないし、変だもんな」

チナ(一応ボケてはいるんだ…)

ソウラ「ムードメーカーがあれじゃ、俺もギブも調子出ないぜ。とにかく早いとこ」


フーゴ「フゴッ!フゴーッ!!」ドタッドタッ

ソウラ「な、なんだぁっ」

フーゴ「フゴフゴッ」

チナ「なんですって!すぐ行くわ!」

ソウラ「なんなんだよ!?」

チナ「船内に侵入者が、って」

ソウラ「!…まさか、魔族か?」

チナ「分からない…こんな海の上でいつの間に……とにかく、行ってみましょ!」

ソウラ「あぁ!」

タッタッタッ……


……


ミーティア号・食堂

フーゴ「フゴーッ」ピタッ

チナ「ここ!?侵入者はっ…」



料理長「いかがですか?お味の方は」

少女?「はい。濃厚な舌触りにさっぱりとした喉ごし、高級な宿のものと比べても遜色ないと思います。つまり…とってもおいしかったです!」

料理人達「「おぉ~!」」

料理長「有り難いお言葉です…お口に合って本当に良かった…」

少女?「ふふ、大げさですね。私、好き嫌いはありませんよ?」

料理長「い、いやぁ、そういうつもりでは…たはは」

料理人達「「わはははは!」」



ソウラ「な、なんだぁ?」

チナ「……なによこれ」

フーゴ「フゴッ」

チナ「あ、あんな小さい子がっ、侵入者なの!?迷子の間違いじゃなくて!?」

ソウラ「見た目じゃ分かんねぇよ。アズだって、あれでドラゴンなんだぜ?」

チナ「そうだけど…」

ソウラ「とりあえず話してみようぜ!じゃないと何も始まらないって!…おーい!」タッタッ

チナ「あっちょっと!」


料理長「はっ!お嬢!」

少女?「どなたですか?」

料理長「この船の所有者であるマルチナお嬢様と、ご友人のソウラ様です」

ソウラ「よ!俺は冒険者やってるんだ。あんたは?」

チナ「ま、待ちなさいよっまだ」

少女?「まぁ!これは大変失礼致しました。勝手に乗り込んでおきまがら挨拶が遅れましたこと、お詫び申し上げます…」

ソウラ「お、おぉ、いいって。で…」

少女?「…私は、ダーマで大神官の職を務めさせて頂いています。フォズと申します」



ソウラ「だ、ダーマ…!?」

チナ「大神官んん!?」

フォズ「はい。幼い身ではありますが、転職を司る神殿で、精一杯」

ソウラ「ダーマってあのダーマ神殿か!?レンダーシアにあるっていう!」

チナ「出張所じゃなくて、大元の神殿の!?それも大神官様!?」

フォズ「あ、あの」

ソウラ「すげーっ!俺っ俺いつかは勇者になるつもりなんで!そんときは」

チナ「こんな小さな子が?大神官??そんな…いやでもフウラちゃんだって立派にやってるんだし…でも…」

フォズ「…こほん!こほんこほん!」

フーゴ「フゴッ!!」

チナ「あっ……ごめんなさい私ったら…つい動揺して…」

ソウラ「ご、ごめんっ俺も興奮しちゃって」

フォズ「いいんです…私の説明不足が原因ですから…」

チナ「説明不足…?」

ソウラ「ダーマの神官様じゃないのか?何か違ってたのか…?」

フォズ「それは確かにそうなのですが、…私が治めるのは、この世界のダーマではないのです」

チナ「えっ…!」

ソウラ「それって…」

フォズ「あなた方の住まうこの世界とは、遠く離れた別の世界。そこにもダーマ神殿があり、転職を望む人々を助けているのです」

ソウラ「じゃあ、フォズはっ」

フォズ「はい。別の世界から、こちらへと飛ばされてきたのです。…何らかの、転移現象に巻き込まれて…」

チナ「……そうだったの」

ソウラ「なぁ、その転移って、もしかして」

チナ「えぇ…多分、私達がこっちに戻ってくるときに…」



フォズ「…それで、1つ聞いて頂きたいことが」

ソウラ「おう、なんだ。なんでも言ってくれよ」

フォズ「既にご迷惑をおかけしている身で、心苦しいのですが……お願い申し上げます」


フォズ「今しばらくの間、私をここに置いては頂けませんか?」

ソウラ「……」キョトン
チナ「……」キョトン


ソウラ「ぷっ…あはは!そんなことか!」

フォズ「え?え?」

ソウラ「そのぐらい当然だろ?あんたが元の世界のダーマへ帰れるまで…いや、俺達で帰る方法を、一緒に探そうぜ!な!ちな!」

チナ「…あんたねぇ…また厄介事を……はぁ、まぁいいわ。この状況じゃそうするしかないし」

フォズ「ほ、本当にっ!?本当ですか!?」

チナ「な、なによ急に。…本当だけど、それが」

フォズ「良かった…!良かったです…」

ソウラ「そ、そんな喜ぶことか…?」

フォズ「…私はてっきり、泣くまで断られ続けるものかと……」

ソウラ「はぁ!?そんなことしねぇって!ていうかいないだろ、フォズにそんな酷いことするやつ」

フォズ「…………そう、ですね」

チナ「……と、とにかく…しばらく、ここにいていいから。少ししたら港だけど、一緒に帰る方法を探しましょ」

フォズ「はいっ!」パァッ

ソウラチナ((…天使だ……))


……


……

チナ「でも、帰る方法ねぇ…私達、いつのまにか戻ってきちゃってたし」

ソウラ「向こうに行ったキッカケなら、海賊船マールデドラゴーンにぶつかったことだけどな。…もう一回なんかとぶつかってみるか?」

チナ「やめて。記憶喪失や入れ替わりじゃないんだから…」

ソウラ「それもそうか…」

フォズ「あの…」

チナ「ん?どうしたのフォズちゃん」

ソウラ「なんか思いついたか?」

フォズ「…実は、心当たりがあるのです。転移に巻き込まれた理由と……帰る方法も」

チナ「そうなの?」

フォズ「はい…お恥ずかしい話なのですが……おそらく、私自身に原因があるのです」

ソウラ「フォズ自身に…?」

フォズ「私の…精神への負荷。それに対しての逃避願望が……転移に干渉してしまったのです」

チナ(精神への、負荷……そうよね、ダーマの大神官様なんて重荷を、こんな小さな子が背負うなんて…)

フォズ「ですから、私自身が、その負荷を克服すれば…」

ソウラ「それって…ストレスがたまったから、羽を伸ばしに来た。ってことか。ならゆっくりしてけばいいじゃん!なぁ!」

フォズ「ありがとうございます。…しかし、そうも言ってはいられません」



ソウラ「仕事が大事なのは分かるけど…けどさ」

フォズ「…」フルフル


フォズ「……私の治めるダーマ神殿は、つい先日まで、魔物に占拠されていました」

チナ「魔物にっ…!?」

フォズ「はい。私は地下に幽閉され、ニセの大神官が、人々から力を奪っていたのです」

チナ「ニセの大神官…魔物が化けてたってこと…?」

フォズ「その通りです。名前は確か……」


フォズ「アントニオ」

チナ「強そうね」


ソウラ「だ、大丈夫だったのか!?」

フォズ「全てが元通りとはいきません…命を失った者、力を取り戻せなかった者も。けれど、皆さんの尽力で、復興と信頼回復を…」

チナ「あのねぇそうじゃなくって」

ソウラ「フォズ自身は大丈夫だったのかよ」

フォズ「あ…はい。ご覧の通り、……幽閉されている間、イノブタとトラの魔物には、酷い目に合わされましたが…」

チナ「!……そんな、ことが。…よしよし、頑張った…頑張ったわね」ダキッナデナデ

フォズ「ひゃっ…は、はい」

ソウラ「許せねぇ…その魔物ども」

フォズ「あ、でも、きっちり借りは返しましたから」

ソウラ「そうなのか?」

フォズ「はい。力を奪い返して、カチンカチンのボッコボコに」

チナ「そ、そう」

フォズ「はい…私に対し、食事抜きなどという、非道な仕打ちをした相手ですから」

チナ「……食事抜き?」

フォズ「はい」

チナ「それだけ?」

フォズ「彼らも、近づくのは危険と分かっていたのでしょう。実際、私を閉じ込める結界内に一歩でも踏み入れれば、その瞬間氷漬けにするつもりでしたし」

チナ「……」


ソウラ「それだけったって、飯食わせてもらえないのはかなりキツいぜ。下手したら餓え死にしちまうし…」

フォズ「それは大丈夫です」


フォズ「私、食事なしでも死にはしませんから」

ソウラ「へっ…」

フォズ「ただ……食事は、数少ない楽しみなのです…まして幽閉され、やることもなく…」

ソウラ「…大神官ってすごいんだな」

フォズ「トイレもいきません」ドヤッ

チナ「それはウソでしょ」

フォズ「……こほん。とにかく、私はこうして無事です。ご心配には及びません」

ソウラ「あぁ…」

チナ「でも、それがストレスになったから、ここへ来たんでしょ?…ここでは気丈に振る舞わなくていいのよ、あなたを知る人はいないんだからっ」ギューッ

フォズ「あぅ、ありがとうございます…けれど、それだけではないのです…」

ソウラ「まだ何かあるのか…?」

フォズ「はい…実は、神殿の地下に、魔物達が作った闘技場や、ふきだまりの町への抜け道があるのですが……」


……


~~

神官A「さて、あの地下闘技場、どうしたものか」

神官B「今のままでは、また魔物が湧いてくるやもしれませぬぞ」

フォズ「そうですね……では、どうにかして封印を」

神官C「そうだ!私にいい考えがある!」

神官A「ほぅ、申してみよ」

神官C「地下闘技場をそのまま利用し、モンスターコロシアムにするのです!」

神官A「ほぅ」
神官B「なんと」

神官C「どのモンスターが勝つか客に予想させるのです!モンスターは優秀な魔物ハンターに管理させれば」

フォズ「い、いけません。賭事なんて」

神官B「いいですなぁ!カジノ場に客足をとられ、最近は転職もせずに無職の遊び人ばかり増えている。人を呼び込む手はないかと思案していたのです」

神官A「いっそ魔物ハンターが連れてきた魔物同士で競い合える、というのはいかがか、ハンターへの転職希望者も増えますぞ」

神官C「そりゃいい!そりゃあいい!踊り子やバニーガールへの転職者は、すぐ仕事を得られますしな!」

神官A「お……ぱふぱふ、ですかな」

神官B「ぱふぱふですかな~」

神官C「よして下さいよも~そりゃ少しは…ぱふぱふ、ですけどもぉ~」

フォズ「……」

神官C「そうだ!景品には、我が神殿ならではのものを用意しましょう!」

神官A「お、いいですな」

神官B「我が神殿ならでは……」

神官A「というと……」


神官達「「大神官様!」」

フォズ「ひゃいっ!?」

神官A「やはりプロマイドか、写真集」

神官B「転職のときにチュッてしてもらえる権利とか」

神官C「使用済みゆめのキャミソールなんてどうですか!」

フォズ「…………」


……

フォズ「……」

ソウラ「そ、そりゃ…」

チナ「大変だったわね…」


フォズ「…みな、真剣にダーマのことを考えてくれているのは、分かるのです。けれど……真剣だからこそ、困るのです…」

チナ「あぁ…」

フォズ「ごめんなさい…こんな話を…」

ソウラ「いいって!話して楽になることもあるだろーしさ!」

チナ「そうよね…吐き出せて良かったじゃない」

フォズ「…はいっ」パァッ

チナ(神官達の気持ちも、少し分かるわ)

フォズ「心労の原因を聞いて頂けて、少し楽になりました。そのお礼…というには些細ですが……」


フォズ「みなさん、転職してみませんか?」

ソウラ「えっ…!」

チナ「転職って…そんな気軽く」

フォズ「ここは私のいた世界ではないので、正式な転職はできません。…だから、少しの間だけの、お試し転職です。ぜひ、お気軽に」

ソウラ「いいのか!?何になれるんだ!?」

フォズ「ふふ、なんでもいいですよ」

ソウラ「じゃあっじゃあっ…………」

チナ(そりゃもちろん…)

ソウラ「海賊!」

チナ「えっ」

ソウラ「海賊にしてくれ!」

チナ「勇者じゃないの?」

ソウラ「…それも考えたんだけどさ。けど、それはちゃんと自分の力でならなきゃ、って思うから」

チナ「ソウラ…」

フォズ「分かりました。…こほん。では……」



フォズ「分かりました。…こほん。では……」


フォズ「ソウラよ、海賊の気持ちになって祈りなさい」

ソウラ(海賊の気持ち……『肉うめー!』『酒だぁ!』『海賊に、俺はなる!』よし!)

フォズ「おぉ、この世全ての命を司る神よ!ソウラに新たな人生を歩ませたまえ!」ポワァアア…

ソウラ「おぉ…!なんか身体の奥から力が…!」

フォズ「ではこれを」スッ…

チナ「海賊帽と…フック?」

フォズ「眼帯もありますよ」

チナ「…これって、なんかコスプレ…」

ソウラ「じゃーん!へへっこれで俺も海の荒くれだぜ!」

チナ「もうつけてるし…」

フォズ「よくお似合いですよ」

ソウラ「そうかぁ?なんか嬉しいな。…でも海賊って何すんだ…?」

フォズ「宝探しとか…」

チナ「略奪とか人さらいとか」

ソウラ「ちな……」

チナ「あ、ごめん…」

ソウラ「よーしじゃあ女の子をさらっちまうぞ~」

フォズ「きゃ~」

チナ「き、きゃ~」

ソウラ「ちなのことは、さらわないって」

チナ「……」

ソウラ「んなことしなくても、ついてきてくれるだろ?」

チナ「っ…!ぁ、あんたねぇ…それは無茶ばっかするうえ、頼りないからっ仕方なく」

ソウラ「じゃーアズにこのカッコ見せに行ってくるぜ!」タッタッタッ…

チナ「……」

フォズ「……」

チナ「…」

フォズ「おぉ神よ、マルチナに新たな人生を」

チナ「やめて」

フォズ「はい」


……


……

ミーティア号・甲板

ザザーン…ザブザザーン…

アズリア「…うーみーはひろいなーおおきーいー……」


アズ(…空、青さが増してきた気がする)

アズ(だんだんと、ウェナ諸島へ、ヴェリナードへと近づいてるんだ)

アズ(ソウラの故郷……太古龍の手がかり…そして…)

アズ(……ボクとソウラの、出会いの…)


アズ「アズライト……ボクの…瞳の色の宝石……ボクに、勇気を分けて…!」ギュッ


ソウラ「お、ここにいたのか。おーい!アズー!」


アズ「秘密があるって、つらいよっでもボクは…どうしてっ」

ソウラ「?何が秘密なんだ?」

アズ「へひゃああ!?ソウラぁ!?なっ、なんでもなっ……って、そのかっこう…」

ソウラ「へへーん!どうだ!海賊に転職してみたぜ!」

アズ「すごーい!!カッコいい!」

ソウラ「へへへ…照れるな」

アズ「わー!手がフックだよ!お洋服かけれるよ!」

ソウラ「そういうフックじゃないんだけど…」

アズ「でも……海賊って何するの?」

ソウラ「ふふふ…それはな」



ソウラ「女の子をさらっちまうのさー!」ガバッ

アズ「わわぁー!?な、なにっなに」

ソウラ「お姫様だっこ。危ないから暴れるなよ?」

アズ「ぅ、うん…///」

ソウラ「んじゃ、アズも転職しに行こうぜ」

アズ「転職…?」

ソウラ「お試し転職。神官様が来ててさ、ちょっとだけ違う自分にしてくれるんだ。…俺みたいに」キラッ

アズ「わー!私もっ私も転職する!」

ソウラ「わわっ暴れるなってば!っとと」


……


……

アズ「あ!この子!?」ピッ

チナ「指ささないの」

フォズ「初めまして、竜の御子」

アズ「ぼ、ボクのことっ」

フォズ「大神官ですから、そのぐらいは」

アズ「すごーい!!」

チナ(さっき私が教えたんだけど)

フォズ「転職をご希望ですか?」

アズ「はい!はい!はーい!」

フォズ「ではあなたは……」ゴソゴソ…


フォズ「こちらにしましょう」

アズ「わっ!なにそれ!キレー…」

チナ「ハート型の、宝石…?」

フォズ「これは心です。モンスターの心」

ソウラ「心っ!?どういうこった!?」

フォズ「森羅万象を生きるモンスター達の、強い想いが結晶になったもの…これを用いることで、人がモンスターの力を得たり、モンスターを別の姿へ転身させることができるのです」

チナ「そんなことが…」

アズ「うん……分かるよ。世界の良き夢が、形になって零れ落ちたんだね。私…それを直に感じたい」

フォズ「では……アズリアよ」



フォズ「あなたはだんだんホイミスライムになーる」ユーラユーラ

チナ「心の使い方ってそんなんなの?」

フォズ「だんだん触手が生えてくーる」ユラユラ

アズ「ぅ……うぅ」

フォズ「だんだんぷるぷるになってくーる」ユーラユラユラ

アズ「…ぷるぷる」

フォズ「あなたはわるいスライムではありませーん」ユッラユラユラユラララ

アズ「ボク…わるいスライムじゃないよ…」

フォズ「はい!アズリアさんはホイミスライムになりました!」パチン!

アズ「ほっいみーん!」ウニョウニョ

ソウラ「すげぇ!どことなく髪の毛が触手っぽい!」

チナ「お肌もぷるぷるしてるわ…」

アズ「ぷるぷる」

フォズ「生まれ変わったつもりでホイミに励んで下さいね」

アズ「ホイミ!」ピロリロリ…ポワァン

ソウラ「おぉ…ホイミが使えるように」

チナ「今は使わなくていいけどね…」

……


……

ギブ「あ、君が?」

フォズ「はじめまして。フォズと申します」

ギブ「ギブです。よろしくね」

チナ「うりぽの看病はいいの?」

ギブ「今は少し落ち着いて、寝ちゃったから。ソウラと交代してきたよ」

フォズ「転職をご希望ですか?」

ギブ「うん。話を聞いて、色々と興味がね。モンスターの心とか」

フォズ「そうですか。…でも、手持ちの心はもう……あ!それならば、魔物ハンターに転職されてはいかがでしょうか?」

チナ「魔物ハンターって…」

フォズ「こちらでは、魔物使いとも呼ばれます。優しさを持って、モンスターと心を通わす者。…ホイミスライムに転職されたアズリアさんと心を通わすことで、何か見えてくるやもしれません」

ギブ「ムフ…それはいいね。新しい研究課題になりそう」

フォズ「では…魔物ハンターの気持ちになり以下略」

チナ「おい」



ギブ「お手」

アズ「ほい」スッ

ギブ「お座り」

アズ「ほい」ペタン

ギブ「三回まわって」

アズ「ほいみーん」クルクルクル


チナ「すごいわね…」

フォズ「相性も良かったのでしょう」



アズ「ほいほい」パクッ

ギブ「あ、つまみ食いしないの。お行儀悪いよ」

アズ「ぷるぷる…」

ギブ「……なるほど。モンスターの心は、その人の本質を変えるものじゃないんだ。むしろ根源にある人とモンスター共通の」

アズ「ほいほいみーん」ニュルニュル

ギブ「触手やめて」


ギブ「フム…ということは……アズ、ちょっとその触手でソウラに」

チナ「ギブくん」

ギブ「はい」

チナ「ダメ」

アズ「?」

ギブ「……別に変なことをするつもりじゃ」

チナ「……」

ギブ「分かった…ソウラは実験に絡ませないから」

アズ「ソウラ…?ソウラにホイミ?」

チナ「しなくていいから」

アズ「ちなホイミ!」ピロリロリポワァン

チナ「……」

ギブ「ははは……」


……


……


ルビビ「えぇ~っ転職ですかぁっ」

チナ「お試しなんだから、ビビるこたないわよ」

ルビビ「そ、そうですか…でもなんで私が」

ギブ「ごめんね。空気に耐えられなくて」

ルビビ「ひ~んただの道連れでした~」

フォズ「では以下略」

ルビビ「えっ」



ひつじ「メェ~」ドドド
ひつじ「メェ~」ドドドド
ひつじ「メェ~」ドドドドド
ひつじ「メェ~」ドドドドドド

ルビビ「ひぃいいーっ!ひつじ!ひつじなんでうわああああ!」

ドドドドドド


チナ「何に転職したの…」

フォズ「羊飼いです。あれは怒涛の羊という、羊飼いの心強い特技です」

ギブ「自分が食らってるように見えたけど…」

フォズ「ひつじさんの洗礼ですね」

チナ「……どっか連れてかれちゃったけど」

フォズ「……」

チナ「……」

フォズ「ひーとりぼっちのひーつじかーい、レムオル、レムオル、ラッリッホー」

チナ「歌わない」

フォズ「はい」

ギブ「姿を消したってことでレムオルは分かるけど、ラリホーはどういう…気絶させられるのかな…」

チナ「解説しない」

ギブ「はい」

……


……

フォズ「それで、マルチナさんは何に転職なさいますか?」

チナ「私!?…私は……」



チナ「ぉ、お試しなら…ちょっとだけ……す、スーパースターに…」

フォズ「はい。笑わせ師ですね」

チナ「うぉい!」パシッ

フォズ「早速良いツッコミを」

チナ「なんでよ!」

フォズ「芸の道は険しいのです。笑わせ師、踊り子、吟遊詩人をマスターして初めて、スターへの道が開かれるのです」

チナ「お試しなのに…」

フォズ「どんな芽でも花になるんですよ?」

チナ「花になりたいんであって、芽になりたいんじゃないし…」


うりぽ「オメーは甘ぇポ!」

チナ「う、うりぽ!?」



チナ「どうしてここにっ休んでないと」

りぽ「う、ウポポポ…芸の道、なめたら、いかんポ…ポ…ポ」

フォズ「!」


フォズ「いけません!みなさん下がって!!」

チナ「え?」

りぽ「ポォオオオオーッ」

ズモモモモモモ…

???「ぬぁーはっはっはぁ!ついに時の壁を越えたぞ!この依代も、用済みよ!」ポイッ

ソウラ「うりぽぉー!」ズザァァ!

ギブ「ナイスキャッチ…!ソウラ!」

チナ「ど、どうなってんのよ!あんた、うりぽの面倒見てたんじゃ」

ソウラ「すごい力ではねのけられて、突然走りだしたんだ。そんで急いで追いかけてきたら…」

???「わはははは!久しぶりだな……ダーマの愚かな大神官よ…!」

フォズ「お前は……」



フォズ「アントニオ!」

アントリア「アントリアだ!」


チナ「じゃ、じゃあ」

ソウラ「あいつが、フォズを苦しめたニセの大神官か!」

ギブ「でも…なんで復活を」

アントリア「ははははは!フォズよ、絶望するが良い。…未来世界では、魔王様が復活なされた!」

フォズ「な、そんなっ」


アントリア「我も魔王様の力で蘇ったのよ。それもっ」グオオオッ

アントリア「数十倍の力でなぁ!!」ズガァアア!

チナ「きゃあああ!」

ソウラ「ちな!俺の後ろに!」

チナ「うっ…うん」

アズ「ホイミ!」ピロリロリ…ポワァン


アントリア「もっとも…ここでは、未来世界すら、遠い遠い過去のお話だがなぁ……未来の最果てで朽ちろ!大神官!」ビュウン!

ガキィンッ…!

アントリア「むっ…」

ソウラ「させるかよっ…そんなこと!」

アントリア「こやつっ」

ソウラ「アズ!龍脈(ライン)だ!」



ホイミスライム「ぷるぷる」プルプル


ソウラ「……」

ホイミ「……」

ソウラ「ホイミスライムになってるぅー!」ガビーン

フォズ「モンスター職をマスターされたのですね」

アントリア「なにか知らんが…羽虫め!散れい!」ドガッ

ソウラ「ぐぁあっ!」

ギブ「ソウラっ」

ソウラ「く、来るな…ギブは、うりぽを守っててくれっ」

アントリア「ぬわははは!無駄よ!ここで全員っ」

フォズ「いいえ、そうはさせません」

アントリア「…強がりを。今の我はあの時の比では」

フォズ「アントキノ!」

アントリア「アントリアだ!」



フォズ「私とて、あの日のままではありません…二度とあのような事態を起こさせぬよう、力をつけてきました!」

アントリア「なんだと…」

チナ「私達だっているわ!マヒャド!」ピロリロリッキキィイン!

アントリア「ぬぅんっベギラゴン」ピロリロリッボボボォオウ!

チナ「っ!打ち消されたっ!?」

アントリア「ふん…仲間の助力を断つために遥かな時の果てに飛ばしたが…どこでも目障りな雑魚はいるものだ」

ソウラ「雑魚かどうか……食らって確かめろ!」

アントリア「!」

ソウラ「うおぉおお!メイルストロム!」

ゴゴオォオオオオッ!!

アントリア「ぬぅっ!?」

チナ「これはっ…嵐!?」

フォズ「今です!ヒャダルコ!」ピロリロリッキィン!

チナ「!…ヒャダルコ!」ピロリロリッキィン!

アントリア「ぐおあぁああああっ!」ザシュザシュザシュッ

ギブ(すごいっ…巻き起こる嵐の飛沫が凍って、無数の氷の刃が敵を突き刺しているっ)

アントリア「こ、この程度のことでぇえ…まだ、まだ我はっ」

フォズ「いいえ」


フォズ「もう終わりです」シュオオン…

チナ「あれはっ…暴走魔法陣!?」


フォズ「この世の全ての命を司る神よ……冒涜者に、裁きを!!」

フォズ「グランドクロス!!」

ゴゴゴゴッ…ボオオォオオゥッ!!

アントリア「ぁああぁああああっ!ぎぃあああああ!!」

ソウラ「うおおおお!とどめだ!アンモニアぁあ!」

ビュッズバァッ!!

アントリア「アン…トリア……だぁ…」

ズシャアァアア…


チナ「…消えた」

ソウラ「やった、のか?」

フォズ「おそらくは。しかし、危機は去ってはいないようです」スゥウ…


ソウラ「!?フォズ!体が透けてっ」

フォズ「術者が倒され、私も、元の世界へと帰るのです。心配いりません。私が帰ればみなの転職は解けます」

チナ「…フォズ。…無理しないでね。つらくなったらいつでもっ」

フォズ「……ありがとうございます。本当に。…大丈夫。この世界があるということが、彼らが魔王に負けなかった証」

チナ「えっ…」

フォズ「さようなら…みなさん。ダーマ神のご加護を……」

パァアアッ……

ソウラ「フォズ……元気でなぁああ!」

チナ「…さよなら。……またね」



……


……

…ズ……アズッ…………アズーッ!!



アズ「はっ」

ソウラ「アズ!」

アズ「ソ…ソウラ…?」

アズ「ソウラ…ソウラだ…!ボクはアズ…アズリア!ホイミスライムじゃないっ…」

ソウラ「大丈夫か…?戦いが終わってから、みんなにずっとホイミを…」

アズ「ホイミ……そっ…そうだ!ボク、嵐の中でホイミスライムになって、ホイミを唱えてた!」

アズ「たぶん……あのホイミスライムが」

アズ「ボクのしょうた」

チナ「違うから」

ソウラ「なんにせよ、ホイミスライムから戻れて良かったぜ」

うりぽ「何があったかまるで知らんけど、なんかスッキリしたポ。吐いて楽になった感じポ」

ギブ「全員無事、うりぽも健康になって、アズ戻れた。一件落着、かな」

チナ「……船内が荒れてなきゃあね…」

ソウラ「はは…みんなで片付けようぜ」

ギブ「うん……けど、何か忘れてるような…」


……


ひつじ達「「メメメメェェ~」」

ドドドドドドドドドドドド…

ルビビ「だぁれぇかぁ~…」

ドドドドドド…



END




……

神官A「おぉ…」

神官B「こ、これは」

神官C「…なんと」


じいさんバニー「うっふ~ん」クネッ


神官達「ぐわああああああ!」


フォズ「いかがですか?みなさんの希望に応えて、まずはバニー転職希望者を転職させてみましたが」

神官A「すみませんでしたぁああ」

神官B「地下はっ地下は封印しますぅうう」

神官C「どうせなら大神官様のバニー姿が見たかったぁあああ」


フォズ「……もう。えっちなのはいけません。ここは神のおわす御殿。神聖な場所なのですから…」



フォズ「ひつじさん着ぐるみなら、着てもいいですけど…なんて」


神官達「「うぅうおおぉおおおお!!」」


……

うりぽ「こうしてダーマ神殿の地下は封印され、神官達はいっそう職務に励んだポ」

うりぽ「めでたしめでたし……じゃねぇええポォオオオオオ!!」

うりぽ「出番なさすぎポォオオ!出番をっ出番をよこせポポポォオオオオウ!!」



END…2

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