アルミン「え、エレン、ミカサ!!どこぉ!?」スライム「ピギ-!」(395)



アルミン「うわぁぁぁぁ!」ダダダダッ

スライムA「ピギギー!」ピョインピョイン

スライムB「ピギ-!」ピョイン

ももんじゃ「もじゃぁ!」ダダッ


アルミン「一体何が…何がどうなったんだ!?」ダダダダッ


アルミン(見渡す限り草原で…よくわからない奴らもいる!もしかしたら壁の外の生き物なのかもしれないけど…)

アルミン(分かっていることは!)

アルミン「コイツらは僕の敵ってことだぁ!!うわあぁぁ!!!」ダダダダッ



アルミン「ハァ、ハァ」ダダダッ

スライムA「ピギピギ!」

アルミン「し、しつこいよぉ…!」

アルミン「も、もうダメだ!」

ももんじゃ「もじゃじゃー!」バッ

アルミン「うわあぁぁぁぁ!!!!」グッ




バキッ!



アルミン「……え?」

ももんじゃ「」ドサッ



青年「下がってて!!」

アルミン「え?」

スライムAB「「ピギ-!」」

青年「ハァッ!」ズバッ

スライムA「」ドサッ

スライムB「ピギ!」ヒュォ

青年「!」

アルミン「!! 危ない!」バッ


バキッ

スライムB「」ドサッ

青年「!! ありがとう!」

アルミン「え、えぇ。咄嗟のことでしたから…」



アルミン「あ、それとありがとうございました」

青年「あぁ、気にしなくて良いよ。僕の鍛練にもなるしね」

アルミン「鍛練?」

青年「うん。…あれ、君足を擦りむいたの?」

アルミン「わっ、本当だ」


青年「治してあげる!」スッ

アルミン「な、治す?」



青年「ホイミ!」パァッ

アルミンの膝「」シュゥゥ・・・

アルミン「き、傷が治っていく!!何で…?」

青年「君、呪文を知らないのかい?」

アルミン「呪文…?」

青年「呪文も知らないような人がこんな草原に来たの?魔物も出るし、危ないよ?」

アルミン「魔物って…さっきの奴らのことですか?」

青年「ま、魔物も知らないの!?」

アルミン(…常識なのかな)



青年「君、何者なんだ?魔物を知らない人なんて初めて見たよ」

アルミン「それが…目を覚ましたらここにいたんです」

青年「え?」

アルミン「ここがどこか探っていたら奴らが襲ってきて…それで逃げてました」

青年「…まぁ、仮に君の話が真実だとしよう。目を覚ます前……前に寝た時はどこにいたんだい?」


アルミン「…えっと…」

―――――――――
―――――――
―――――
―――




トロスト区訓練兵団宿舎のとある一室にて………。



アルミン「…これで全員集まったかな?点呼するから返事をしてね」

アルミン「1」

ミカサ「はい」

アルミン「2」

ライナー「おう!」

アルミン「3」

ベルトルト「うん」

アルミン「4」

アニ「…」

アルミン「4番いるね。5」

エレン「いるぞー」

アルミン「6」

ジャン「見りゃわかるだろ」

アルミン「7」

マルコ「はいアルミン」

アルミン「8」

コニー「いるぜ!」

アルミン「9」

サシャ「ハイハーイ!」

アルミン「10」

クリスタ「はい!」

アルミン「11」

ユミル「ケッ、いるぞ」

アルミン「12」

ミーナ「イエス!」

アルミン「で、13の僕…と。全員居るね」



エレン「で…教官はまだかよ」

アルミン「さぁ。でもビックリしたよ、いきなり教官からの呼び出しだなんて。しかも紙で」

ユミル「どれどれ?」パシッ

ユミル「えーと…
『下記のメンバーだけ連れて会議室へ来い     キース・シャーディス』か。横暴だな相変わらず」

サシャ「でも、教官の字ってもう少しきれいじゃありませんか?」

クリスタ「言われてみれば……そうかも」

ライナー「なんだサシャ。それは教官が書いた物ではないと言いたいのか?」



サシャ「そういうわけではないんですけど…」

ジャン「でもよ、本当に教官が書いた物だった時のことを考えると来ないってのはナシだろ」

マルコ「そうすると後が怖いしね」

コニー「だな!教官のアイアンクローは痛いぜー!?」

ベルトルト「君だけだと思うよそんなことされるのは…」

ミーナ「コニーの頭は掴みやすそうだもんねー」

ミカサ「実演してみせよう」キラン

コニー「すんなよ!?」


グワァー マジデイテェ キョウカンナミニイテェ
モットヤレー デハエンリョナク
ウギャアァァ

アニ「…」

エレン「ほー…」

アニ「何」

エレン「…別に」

アニ「…」

エレン「あ、今のはアニの真似な」

アニ「…」

エレン「そんなに怒んなよ」

アニ「…はぁ」


グラッ


アニ「」ゾクッ

エレン「ん?どうした?」


ミーナ「アニ?どうかした?」

クリスタ「具合でも悪いの?」

ナンダナンダ アニガドウカシタカ

アニ「いや、別に大丈夫だから…」

アニ「大……じょ…う…」グラッ



アニ「」バタッ

ミーナ「!? アニ!?」

ライナー「どうした!?」

ベルトルト「アニ!?」

エレン「…ねみぃ」

ミーナ「ちょっとエレン!そんなこと言ってる場合じゃ…」

エレン「…」

ミカサ「…エレン?」



エレン「…むり………ねみぃ」

エレン「アニィ…よこぉ…しつれ…い…す………る…」グラッ

エレン「」ドサッ

ミカサ「!? エレン、しっかりして、エレン!!」ユサユサ


ユミル「おい、起きろよクリスタ!」

クリスタ「」

ジャン「く、クリスタもかよ!」

ユミル「エレンと同時に眠るように倒れたんだ!クリスタ、しっかりしろよ!」


コニー「…」

サシャ「…ちょ、コニー? まさか…」

コニー「…おやすみなさーい…だ」グラァッ

コニー「」ドサッ



マルコ「こ、コニーまで!!」

サシャ「ぎゃあぁぁ、コニーが死んじゃいましたぁぁぁ!!!」

ユミル「縁起でもねぇこと言うな芋女!!」

アルミン(まさか…!)

アルミン「この部屋に何か仕掛けが…!?」

ライナー「!! まずいぞ、倒れた連中を連れて部屋を出ろ!」

ベルトルト「…」

ライナー「ベルトルト、早く…!」

ベルトルト「…ゴメン……無理」グラッ

ベルトルト「」ドサッ



ユミル「ベルトルさんもかよ!!」

ジャン「クソッ!!せめて扉だけでも…!」グイッ

ジャン「って開かない!?」

サシャ「えぇっ!?」

ライナー「どけジャン!!!」ダダダッ


ドォン!


ライナー「なっ…馬鹿な!無傷!?」

サシャ「只の木の扉ですよそれ!」


ミーナ「…ゴメン、わたしも…」グラッ

アルミン「!! ミーナ、寝ちゃダメだ!」



ミーナ「」ドサッ

アルミン「くっ、駄目か!!」

マルコ「じゃ、ジャン……!窓を…!」

ジャン「マルコ!?」

マルコ「ジャン…お前だけでも…!」グラッ

マルコ「」ドサッ

ジャン「くっ!! おいライナー!窓を叩き割れ!!」ダッ

ライナー「おう!」ダッ

ジャン「ミカサ!お前も………!?」

ミカサ「」

ジャン「…畜生ォ!!!…………!!」グラッ

ジャン「…ち…くしょ……」

ジャン「」ドサッ


ガィン!

ライナー「窓も駄目か!!」

ユミル「芋女!おい!!」

サシャ「……あ…」

ユミル「あ!?」

サシャ「…ありがとう…ござい…まし………た」グラッ

サシャ「」ドサッ

アルミン「!!!」

ユミル「!!……こんな時に礼なんか…!!!!」

ユミル「言ってる……場合……か…」グラッ

ユミル「」ドサッ



ライナー「はぁ、はぁ…」

アルミン「…そんな……」

ライナー「…どうやら、最後はお前の様だぞ」

アルミン「ライナー…」

ライナー「…こんなことになるなら……謝っておけば良かった……」

ライナー「…オレは…最後まで…」

ライナー「戦士には……な…れ……」グラッ



ドサッ・・・



シーン・・・


アルミン「…一体全体…何がどうなっているんだ…」

アルミン「皆…寝てるのか…?」

アルミン「ぐっ……僕もか…」

アルミン「…エレン……ミカ…サ…」グラッ


アルミン(瞼が……重い…)ドサッ



―――――――――
―――――――
―――――
―――



アルミン「…という訳なんです」

青年「…眠る様に…ねぇ」

青年「ねぇ、えーっと…」

アルミン「あ、アルミンです」

青年「アルミン君。その時甘い匂いはした?」

アルミン「? いえ、別に…」

青年「そっか」

青年(…甘い息ではなさそうだな。でも、ラリホーやラリホーマにしては変な寝方だなぁ…)



青年「…時にアルミン君、君は戦えたりする?」

アルミン「いや、戦いはちょっと…。戦いってさっきの……魔物って奴らと戦うんでしょう?」

青年「うん。けどこの時代、戦えなければ生き残れないよ?」

アルミン「うーん…」

青年「……はいこれ」つ

アルミン「…何ですかこれ。杖?」

青年「あげる。危ない時に使ってよ」

アルミン「! ありがとうございます!」



青年「それとこの盾も」つ

アルミン「盾って…」

青年「これで魔物の攻撃を防ぐんだ」

アルミン「へぇ…」

青年「…さて、君を町に送ろうかな」

アルミン「町って…どこにあるんですか?」キョロキョロ

青年「ずっと向こうだね」

アルミン「…どのくらいかかります?」

青年「5秒」

アルミン「へ?」



青年「賢者がくれた巻物があった筈…」ガソゴソ

アルミン「あ、あの…5秒って…」

青年「あぁそうだ。もうひとつ言っておこうかな」ガソゴソ

青年「恐らく君はこの世界の人間じゃない」ガソゴソ

アルミン「…それは……薄々感じてました」

青年「うん。君はいわゆる異世界人だ。けど、こちらの世界に来れたんだから、君の世界に行く方法もきっとある」ガソゴソ

青年「だから…諦めないでね」パシッ

アルミン「…はい!ありがとうございます!」



青年「じゃ、今から君を町に送るよ!文字通りね!」

アルミン「は、はい」

青年「いくよ…」ブゥン

アルミン「ま、巻物が光った!?」

青年「オクルーラ!!!」

アルミン「え」ブゥン

アルミン「ちょ、浮い」ヒュン


青年「行ったか…」

青年「けど、何もこんな時に来なくても良いのに…」

青年「…さて、僕も目的を果たさないと!集合場所まであと二日だ!」ダッ



北西の町――――――


アルミン「………あれ?」パチッ

アルミン「こ、ここは…町?本当に一瞬で着いた…」

アルミン「…それにしても、浮いたよ僕………。エレンに話したら喜ぶかな」

アルミン「…エレン、ミカサ…みんな…」

アルミン「…もしかしたらみんなも、こっちに来たのかな」

「あぁ、まぁな。だから皆を探さないとな」

アルミン「!! ………うん、そうだね。……とりあえず……」クルッ

アルミン「一人目だよ!ライナー!!」



ライナー「おう!!!」



北西の町の酒場――――――

ライナー「いやぁしかし驚いたぞ!休憩してたらいきなりアルミンが現れるんだからなぁ!!」

アルミン「休憩?」

ライナー「あぁ。オレは今、この酒場で雇われているんだ」

「おいライナー!!くっちゃべってねぇで働け!!」

ライナー「まだ休憩時間だよ店主!それに客なんてほとんど居ないだろ!」

酒場店主「ケッ…」

アルミン「…相変わらず逞しいなライナーは。たった1日でこうも順応して…」



ライナー「1日?何言ってるんだ?もう一週間になるぞ」

アルミン「え?僕は半日も……三時間も立ってないよ?」

ライナー「…ずっと寝てたんじゃないか?」

アルミン「まさか。魔物もいたんだ、そうだったら既に死んでるよ」

ライナー「…だよなぁ」

アルミン「…時間のズレ、か」

ライナー「ん?」

アルミン「いや、まだ確証はないけどね」

ライナー「…そうか」

訂正 >>27
アルミン「え?僕は半日も……三時間も経ってないよ?」
―――――――――――――――――――

ライナー「さてと。これからどうする?」

アルミン「…まずは皆を探すことだよね」

ライナー「第一目標はそれだな。二つ目は…元の世界へ帰る方法」

アルミン「何だ、気づいてたんだ」

ライナー「それはそうだろう。あんな呪文やら魔物やらが巨人と一緒に存在してたまるか」

アルミン「ははっ」

ライナー(壁外にもそんなのなかったしな)

アルミン「それと…強くなることかな」



ライナー「ほう、アルミンがそんな発言をするなんて珍しいな」

アルミン「…あの魔物とやらに対抗する為には仕方ないからね」

ライナー「あぁ。中には巨人並みにでかい魔物や、呪文を使う魔物もいるらしいしな」

アルミン「そんなのまでいるのか…」

ライナー「アルミンの実践経験は?」

アルミン「一度成り行きで一体倒しただけだよ」

ライナー「そうか。オレは1日に5,6回戦闘する様に修行してたからな、オレの方が先輩だな」

アルミン「すごっ!」

ライナー「何でも聞けよ」ハッハッハ



ライナー「よし!当面の目標は決まったな!そうとなれば…………店主!」

店主「あぁ?どうしたぁ?」

ライナー「聞いてたくせにとぼけないでくれよ」

店主「…」

ライナー「今日の分の給料をくれ。今日付でこの店を辞める」

店主「…ホラよ」ヒュッ

ライナー「おう。………ん?いつもより多くないか?」ヂャララ・・・



店主「…この町から真東に向かえば、町をひとつ経由して城下町に着く。城がある街だ」

アルミン「お城?」

店主「その城下町はこの大陸で一番人が集まる所。そこなら欲しいもんは大抵手に入る。武器や貴重品……人や情報なんかもな」

アルライ「「!!!」」

店主「そこならテメェらの望む物も手に入るさ。恐らくな」

ライナー「…アルミン!」

アルミン「うん。目的地が決まったね」



店主「だが道中山賊が出ると聞く。山道や隠れる場所が有る所は通るなよ」

ライナー「あぁ」

店主「それと…これはそっちのガキにやろう」つ

アルミン「僕にですか?これは…マント?」

店主「そんな派手な格好をしてるな。絡まれるぞ」

アルミン「! ありがとうございます!」

店主「…フン」



店主「今夜はうちに泊まってけ。わざわざ宿屋で金払うのもバカらしいだろ」

ライナー「何から何まですまないな」

店主「…かっ、生意気言うなバカ息子が」             ・・・・

アルミン「!」

ライナー「…悪いな、オヤジ…」
          ・・・



翌朝――――――――

ライナー「…じゃ、達者でな」

店主「とっとと行けや」

アルミン「ありがとうございました!」ペコリ




―――――――――
―――――――
―――――
―――



アルミン「ライナー、何であの人のことをオヤジって……?」スタスタ

ライナー「…世話になったからか妙に親近感がわいたんだ。…それに、店主は同期の誰かに似てないか?」スタスタ

アルミン「…? ライナーは誰だと?」

ライナー「ユミルだよ」

アルミン「」ブッ!!!

ライナー「いや、外見は全く似てないぞ?ただ、憎まれ口を叩きながらもオレたちを助けてくれる所はそっくりじゃないか?」

アルミン「…そうかな」

ライナー「あぁ。アイツの心の奥底は、実はクリスタそっくりだと見ている」

アルミン「確かに、恩は返させられたけど、優しくしてくれるよね」



アルミン「…」スタスタ

ライナー「…心配なんてする必要はないぞアルミン」スタスタ

アルミン「!」スタスタ

ライナー「殺しても死なん様な奴らだ、必ず生きてるさ」スタスタ

アルミン「…うん。そうだよね、きっとそうだ!」スタスタ

ライナー「ただ、クリスタだけは心配だな。あの可愛さだし」スタスタ

アルミン「…台無しだよライナー」スタスタ

ライナー「おっ、今のはベルトルトに似てるぞアルミン!」スタスタ

アルミン「…はぁ」

本日はここまで。

【Party1】
[アルミン・アルレルト] Job:なし
E:裁きの杖 E:皮の盾 E:訓練兵団制服上下E:訓練兵団靴 E:麻の

[ライナー・ブラウン] Job:元酒場店員
E:鉄の斧 E:皮の盾 E:布の服
E:皮のズボン E:皮の靴
持ち物:訓練兵団制服セット

【行方不明者】
・ミカサ・アッカーマン
・ベルトルト・フーバー
・アニ・レオンハート
・エレン・イェーガー
・ジャン・キルシュタイン
・マルコ・ボット
・コニー・スプリンガー
・サシャ・ブラウス
・クリスタ・レンズ
・ユミル
・ミーナ・カロライナ

訂正 >>37

本日はここまで。

【Party1】
[アルミン・アルレルト] Job:なし
E:裁きの杖 E:皮の盾 E:訓練兵団制服上下E:訓練兵団靴 E:麻のマント

[ライナー・ブラウン] Job:元酒場店員
E:鉄の斧 E:皮の盾 E:布の服
E:皮のズボン E:皮の靴
持ち物:訓練兵団制服セット

【行方不明者】
・ミカサ・アッカーマン
・ベルトルト・フーバー
・アニ・レオンハート
・エレン・イェーガー
・ジャン・キルシュタイン
・マルコ・ボット
・コニー・スプリンガー
・サシャ・ブラウス
・クリスタ・レンズ
・ユミル
・ミーナ・カロライナ



ライナー「…さて、一度ちゃんと戦ってみてはどうだ? アルミン」スタスタ

アルミン「そうだなぁ…。余り気は進まないけど…」スタスタ

ライナー「何事も慣れだ慣れ!いざという時の為にな!」スタスタ

アルミン「…うーん、じゃあ戦ってみようかな」スタスタ

ライナー「あぁ。丁度良くあんなのもいるしな」チラ

アルミン「あんなの……?」チラッ


一角兎「」ピョンピョン

アルミン「何あれ?うさぎ?」

ライナー「角が生えた兎だな ……お」

一角兎「」ギロッ

アルミン「…何かこっちを睨んだ気がするんだけど」

ライナー「目をつけられたな」



一角兎「」ググッ

アルミン(体勢を整えた!?)

ライナー「来るぞ!構えろ!」

一角兎「」ドンッ! ドドドドドッ

アルミン「突進してきた!?」バッ

ライナー「ソイツは動きは単純だが、突進攻撃は強力だ!気をつけろ!」

アルミン「何でそんな離れた所にいるのさ!」

ライナー「アルミン一人で戦うんだ!!」



一角兎「」ズザザザァッ

一角兎「」ググッ

アルミン「もう第二撃か!」

ライナー「そんなんでは一生終わらんぞ!」

一角兎「」ドンッ!

アルミン(避けて頭を狙う!)

一角兎「」ドドドドドッ

アルミン(今だ!)ヒラリ

アルミン「えいっ!」ビュッ

一角兎「」ボカッ



ライナー「良いぞアルミン!」

アルミン「うん!」

一角兎「」ムクリ

アルミン「あれ」

一角兎「」ドンッ!

アルミン「うわぁっ!何で!?」ヒラリ

ライナー(決定打に欠けるなぁ…)

アルミン「くっ!」ズザァッ

一角兎「」ググッ

ライナー「!! いかん!」

一角兎「」ドンッ!

ライナー「避けろアルミン!!」



アルミン「うわぁぁっ!!!」ブンッ



ビュォォォォォォ!!!



ライナー「…え?」


ヒュルルルルル・・・・・・

一角兎「」ドサッ


アルミン「………あれ?」チラリ

ライナー「今のは………バギ?」


ライナー「アルミン、お前呪文が使えたのか?」

アルミン「そんな!使えるわけないよ!」

ライナー「…じゃあ、今のは……………?…アルミン、その杖はどうしたんだ?」

アルミン「これ? 僕を助けてくれた人がくれたんだ これからこの時代でも生きていけるように、って」

ライナー「…恐らく今の竜巻はこの杖が発生させたんだ」

アルミン「えぇっ!?」

ライナー「この世界には武器や防具の中に、呪文の力がかけられているものがあるらしい アルミンの杖はその一つだろう」



アルミン「そっかぁ……。良いものくれたなあの人」

ライナー「うむ。だが、ここら辺の魔物は弱い魔物ばかりだと聞く。そんなのに手こずっていては、この先危ないぞ」

アルミン「…うん」

ライナー「まぁこれから強くなっていけば良いさ!ほら、行くぞアルミン!……………って、あれ?」

アルミン「どうしたの?」



ライナー「な、ない!オレたちの荷物がない!!!」

アルミン「えぇっ!?あれには次の町までの食糧やら水やらが全部入ってたんだよ!?」

ライナー「一体どこに……!!……ん?」

アルミン「……あ」

「…げ」



ライナー「山賊か!?」

アルミン「荷物を返してよ!!」

山賊「ちぃっ!!」ダッ

アルミン「逃げるな!」

ライナー「追うぞ!!」ダッ



ライナー「待てっ!!!!!」ダダダッ

アルミン(ここら一体は全部草原なのに………!一体どこから現れたんだ!?)ダダダッ


山賊「はぁっ、はぁっ………へへっ!」ダダダッ

ライナー「地面に穴!?」ダダダッ

アルミン「地下から出てきたのか!?」ダダダッ


山賊「おい、敵だ、仕留めろ!!」

「えぇっ!?」

山賊「早くしろっ!オレは先にアジトへ戻ってるぜ!」バッ

アルミン「地下に入っていったよ!?」

ライナー「オレたちも行こう!!」



穴「」モコモコ

アルミン「!!」

ライナー「何か出てくるぞ!」


いたずらもぐら「」ボコンッ!

アルミン「魔物だ!」

いたずらもぐら「うりゃあ!」ブォッ

アルミン「魔物がしゃべった!?」

ライナー「オレに任せろ!」ガキンッ

いたずらもぐら「ぬっ!?」



いたずらもぐら「このっ!このっ!」ヒュッヒュッ

ライナー「中々のスコップ捌きだな!だが、オレを倒すには足りん!」ガキガキンッ!

ライナー「はっ!」ブォッ

いたずらもぐら「ぐわぁっ!」バシッ

ライナー「トドメだ!」グワッ





いたずらもぐら「ま、待った!待ってくれ!」

ライナー「え?」

アルミン「うん?」



いたずらもぐら「あ、あんたら良い人間だろ!?」

ライナー「…良い人間……なのか?」

アルミン「少なくともさっきの山賊よりは良い人間だと思うよ」

いたずらもぐら「頼む!オレたちを助けてくれ!」

アルライ「「は?」」


いたずらもぐら「このままじゃオレたち全員殺されちゃうんだよ!!!」

アルミン「…事情を聞かせてもらって良いかな?」



いたずらもぐら「オレの名はイズモン。ここらを縄張りにするモグーラ盗賊団の一員だ」

ライナー「モグーラ?」

イズモン「ボスの名前から取ってる。いたずらもぐらやキラースコップっていう、もぐら系の魔物で構成されてる盗賊団なんだ」

アルミン「魔物って…さっきのは人だったと思うけど?」

イズモン「アイツはモグーラ盗賊団じゃない、天使山賊団の一員だ」

ライナー「…天使?また似合わん名前だな」

アルミン「人の山賊団と魔物の盗賊団が協力しあってるってこと?」

イズモン「違う!アイツらはオレたちを脅してるんだ!!」



イズモン「数日前に奴らはオレたちの住み処にやって来たんだ。そこで奴らはオレたちを蹴散らして、オレたちの住み処を乗っ取ったんだ!」

アルミン「乗っ取ったって…君はまだここにいるじゃないか。そこの穴から行った所が住み処なんだろう?」

イズモン「あぁ。けど、オレたちはこの住み処を捨てるわけにはいけないんだ」

ライナー「何か大事な物があるのか?」

イズモン「そうじゃなくて………オレたちのボスがここを気に入ってるんだ」

アルミン「…成る程」

ライナー「何が成る程なんだ?」



アルミン「たぶん君たちのボスは今住み処にはいないんだろう?」

イズモン「…あぁ。一週間前から出掛けてる」

ライナー「…もしかして、さっき言った殺されるってのは…」

イズモン「…ボスに殺されるんだよ。ボスはとても厳しいんだ」

ライナー「なんだそのボスは!横暴な奴だな!」

イズモン「仕方ないよ。ボスは頼りになるし、何より強いからな」


アルミン「そのボスが帰ってくるのは?」

イズモン「…今日の予定だ」

ライナー「おいおい…」

イズモン「頼むよ!あの盗賊団を追い出すのを手伝ってくれ!あんたらも荷物取られて困ってるんだろ!?」

アルミン「別に僕らは君たちの騒動が終わってからでも良いからなぁ、荷物を取り返すのは」

イズモン「ボスから奪い返せるわけないだろ。盗品は全部ボスが預かるのに」

アルミン「…そんなに強いのかい、そのボスって」


イズモン「魔王軍の幹部の一体だぞ」



アルミン「魔王軍?」

イズモン「知らないのか? 無知だなあんた」

アルミン(ぼ、僕が無知…)ガーン

ライナー「…わかった。手伝おう」

アルミン「ライナー!!?」

イズモン「本当か!?」


アルミン「…魔王軍ってそんなに強いの?」

ライナー「…らしい。聞いた話によると、魔王軍の魔物と野生の魔物とでは桁違いに強さが違うそうだ。それが更に幹部とはな…」

アルミン「…ところで、魔王軍ってのは何だい?」



イズモン「魔王軍ってのは人間たちを滅ぼそうとする魔物たちの組織のことさ。それを指揮するのが魔物たちの王、魔王。それで魔王軍って呼ばれるんだ」

アルミン「…じゃあ君は魔王軍じゃないの?」

イズモン「違うな。ボスだけが魔王軍に所属している」

アルミン「…もしかして今魔王軍は人間たちと戦っているの?」

イズモン「あぁ。今のところ魔王軍が勝ってるな」

アルミン「…何か面倒な世界に来ちゃったね」ヒソヒソ

ライナー「…だな」ヒソヒソ

イズモン「?」



ライナー「…で、具体的にオレたちは何をすれば良い?」

イズモン「天使盗賊団のボスを倒してくれれば良い。それだけだ」

アルミン「どんな人?」

イズモン「ナイフをいくつも操る女だ。あのナイフ捌き、十体のもぐらも物ともしねぇんだ」

ライナー「…女か、やりにくいな…」

イズモン「部下たちはオレらもぐらが引き受ける。その隙に奴らのボスを倒してくれ。今からお前たちを捕まえたフリをして連れていく。ボスの前まで来たら…そこで不意討ちだ」

アルミン「悪くないね」

ライナー「それしかないだろう。そこなら部下もすぐには来れまい」



イズモン「…じゃ、準備は良いか?」

アルミン「う、うん」

ライナー「あぁ」

イズモン「よし、行くぞ…」


―――――――――
―――――――
―――――
―――



スタスタ


アルミン「…見事な地下洞窟だね」スタスタ

ライナー「上を見てみろ、20mはあるぞ…」スタスタ

イズモン「へへっ、すげぇだろ。全部オレたちが作ったんだぜ」テクテク



キラースコップ「おい、イズモン。そいつらは何だ?」

イズモン「“メシア”だ」

キラースコップ「!! 本当か!?」

イズモン「あぁ。みんなに戦闘の準備をさせてくれ」

キラースコップ「わかった!」ダッ


ライナー「…メシアとは何だ?」

アルミン「救世主、って意味さ」



山賊「……ん?あ、さっきの…!」

イズモン「倒して捕まえました。ボスの所へ連れていきます」

山賊「おう、連れてけ!そうか、そんなに弱かったならオレが倒しゃ良かったな…」ヘヘ・・・

アルミン「…君って弱いの?」ヒソヒソ

イズモン「馬鹿言うなよ、奴らのボスが強いだけだ。後の天使盗賊団はスライム並だ」ヒソヒソ

ライナー「虎の威を借る狐だな…」ヒソヒソ



イズモン「もうすぐボスの部屋につく。抜かるなよ…」

アルミン「…ライナー、僕が杖で隙を作る。ライナーは竜巻と竜巻の間をすり抜けて行ってくれ」

ライナー「無茶な注文だな。…まっ、乗るがな」



イズモン「…姉御!姉御!旅人を捕まえました!捕虜にするなり奴隷にするなりごなんなりと…」

アルミン「姉御?」ヒソヒソ

イズモン「そう人間たちが呼んでるんだよ」ヒソヒソ





ユミル「…ん、あぁ。じゃあ面を見せ…………」クルッ

アルミン「」

ライナー「」

ユミル「…見せ…………いや、やっぱ見せなくて良いわ」

アルライ「「オイ」」



イズモン「し、知り合いなのか?」

アルミン「戦闘の心配はないくらいかな」

ユミル「なんだよお前らかよ…。おい、ソイツらを離してやれ」

ライナー「もう解けてるから良いぞ」シュルシュル

ユミル「は? …あぁ、そういうことか。お前ら担がれたな?」

アルミン「え?」

ユミル「そのもぐらに騙されたんだよ」

イズモン「ち、違う!本当にお前らごと殺されちまうんだ!分かってくれよ!」

アルミン「方便には聞こえなかったよ?」



ユミル「そいつが私らからこの住み処を奪い返すための嘘に決まってんだろ。…そうだ、お前らもうちの山賊団に入れよ。ここを拠点にして他の連中を探すんだ」

アルミン「…やっぱりそのつもりだったんだ」

ユミル「当然だろ?私以外の連中もこの世界に来たとは思っていた。目撃情報も部下から得てるしな」

ライナー「何!? 誰だ!?」

ユミル「あぁ、実はな…………」







ヴォォォォォォォォ!!!!!!!!


アルミン「え!?」

ユミル「何だ!?」

ライナー「おいおい、まさか…」チラッ

イズモン「…ボスだ」

アルライユミ「「「!!!!!!」」」

イズモン「ボスが帰ってきちまった…」ガタガタ

イズモン「…お前ら、頼み事を聞いてくれてありがとよ」ガタガタ

アルミン「…?」

イズモン「…けど、悪い」ガタガタ


イズモン「…全員、死んだ…!」



ノシッ ノシッ ノシッ・・・


イズモン「き、来た…」ガタガタ

「…イズモ~ン!」ノッシ

イズモン「ヒィッ!!!」


アルミン「あれが、ボス…」

ユミル「ちぃっ、不味いことになったな…」

「…なぁんで人間が………ここに居る…?説明してみろ…!!」ノッシ

イズモン「ど、ドン・モグーラ様……」

ドン「あぁ~?」ノッシ

イズモン「こ、これは…その…」



ユミル「お前らぁ!!!!」

アルミン「ユミル!?」


山賊「「「「へいっ!!!!」」」」ザザッ


ドン「ん~?」

山賊A「おらおらぁ、神妙にしろデブがぁ!」ザッ

山賊B「囲め囲め!」ザッ

ライナー「な、何人いるんだコレは…」

ユミル「約50だ。ここで奴を仕留める!」

アルミン「ちょっと、ユミル!?」

ユミル「この場所は絶対に渡さねぇ!!! ここでクリスタを探すんだよ私は!!!」


ドン「…成る程。人間どもに占拠されたのか」

イズモン「も、申し訳ありません…」

ドン「ちっ、まぁ良い。お前らの処罰は後だ。先にワラワラ鬱陶しいのを…」


ドン「ぶち殺すか」ギロッ

ユミル「」ゾクッ

アルミン「うっ!!」ゾクッ

ライナー「何だこの気迫は!」ゾクッ

アルミン(明らかにイズモンたちとは違う!こ、これが魔王軍幹部!)



ユミル(だが……やるしかねぇ!)


ユミル「かかれぇっ!!!!!」


山賊「「「「ウォォォォォ!!!!!」」」」バババッ


ドン「フン…」スッ

ライナー「? 何だあれは」

イズモン「愛用マイクだ!お前ら、急いで耳を塞げ!」バッ

アルミン「マイクって何!?」バッ

イズモン「早くしろ!!」

ライナー「」バッ

ユミル「」バッ



ドン「ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオォェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!!」ゴォォッ



ヴォォォォ・・・!

アルミン「な、なにこれぇ!!?」ビリビリ

ォォォォォ・・・!

ライナー「声なのか!!?」ビリビリ

ェェェェェ・・・!

ユミル「み、耳が…!」ビリビリ

ェェェェェ・・・!

イズモン「耐えろ!耐えるんだ!」ビリビリ



ェェェェェ・・・! ェェェェェ・・・! ェェェェェ・・・! ェェ・・・


ドン「…ま、こんな所か」


ライナー「ま、まだ耳がキーンとするぞ…」

アルミン「洞窟のせいで声が反響してすごい爆音になったね…」

イズモン「ボスの芸術スペシャルだ。耳を塞いでなきゃ……あぁなる」チラッ


山賊「「「「」」」」

ユミル「50人を、あの声だけで仕留めたのか…!?」

アルミン「死んだわけじゃなさそうだね」

イズモン「気絶しただけさ。ここでいつもだったらたこ殴りさ」

ライナー「成る程、事前に耳を塞いでいたもぐらとドン・モグーラだけが残るというわけか」


アルミン(たった一動作で50人以上を倒すなんて…!いや、状況次第ではいくらでも倒せる。魔王軍幹部はこんなんばかりなのか…)

ライナー「…さて、マズイんじゃないのかオレたち」

イズモン「馬鹿言うなよ、オレたちもぐらもだ」

ユミル「私もマズイな。アルミン、何か策はねぇか?」



アルミン「…今すぐ全力で逃げる」

ライナー「荷物は?」

アルミン「魔物でも食べて飢えを凌ぐかい?」ハハッ

ライナー「笑えない冗談だな。…オレが何とかしよう」

ユミル「大丈夫なのか?」

ライナー「あぁ。ただし、ドン・モグーラと二人きりになる必要がある」

アルミン「…わかった、それなら何とかしてみるよ」



アルミン「…あのー、ドン・モグーラさん?」

ドン「あぁ?何だ、まだ残ってたのか」スッ

アルミン「何であなたはもぐらたちまで殺そうとするんですか?人間だけならともかく…」

ドン「…イズモン」ギロッ

イズモン「ヒィッ!! す、すみません、藁にもすがる思いで…」

ドン「…まぁ、建前はそんな役に立たん部下はいらんってことだな」

アルミン「建前? では本音は?」

ドン「いつもは怒りで暴れちまってな。その際に部下も巻き込んじまうんだよ」

イズモン「うぇぇっ!!?」


アルミン「それはつまり、憂さ晴らしをしてる、ってことですよね」

ドン「…まぁな」

イズモン「あ、あのー、ボス?」

アルミン「ならばその憂さ、今回は彼が晴らします」

ライナー「ん? オレ?」

ユミル「…ライナー以外誰がいんだよ」

アルミン「それで今回は治めていただけませんか」

ドン「…そいつに務まるのか」

アルミン「えぇ。怪物と呼ばれた女の投げも、冷酷な戦士の蹴りも、全て耐え抜いてきた彼ですから」

ライナー「…大分話に尾ひれがついてる気がするんだが」

ユミル「気のせいだろ」


ドン「…良いだろう、相手をしろ」

ライナー「お、おう」

アルミン「イズモン、今の内に山賊たちも連れて全員で地上へ出てくれ」ヒソヒソ

イズモン「あいつは?あの金髪は放っといていいのかよ!」

アルミン「…多分」

ユミル「先に行ってるぜ、死ぬのはゴメンだ」タタッ

アルミン「じゃあライナー、死なないでよ」タタッ

イズモン「ありがとう!」タタッ

ライナー「…丸投げされたな」


ドン「…で、これでお前とオレの二人だけだ。言っとくが、今のオレは相当イラついてるぞ?」ピキッ

ライナー「あぁ…。そのわりには随分冷静に見えるが?」

ドン「ボスはいつでも冷静でいなきゃいけないんだよ」ピキキッ

ライナー「…そうか」

ドン「じゃあ………行くぞぉっ!!!」ドンッ

ライナー(来る!)スッ

ドン「一撃で終わってくれんなよ!?」グォッ



ライナー「」ガリッ


カッ!


ドン「ん!!?」



鎧の巨人「グォアアアアァァァァ!!!!」ゴォッ

ドン「なっ………でかい!?」

鎧の巨人「グォアアアアァァァァ!!!!」ブンッ



ドカァァン!


ドン「…これは殴りがいがある!!」ダンッ

鎧の巨人「グォォォォォォォ!!!!」グワッ



―――――――――
―――――――
―――――
―――


アルミン「ふう………ようやく外だ」ザッ

ユミル「太陽が眩しいな…」ザッ

イズモン「あの山賊たちはそこら辺に置いときゃいいのか?」

ユミル「あぁ、捨てとけ」

アルミン「ユミル、仮にも自分の部下なんだから…」

ユミル「仮以下だ」


アルミン「…ユミルはこれからどうするの?」

ユミル「…それは私に一緒に行かないか、って聞いてんのか?」

アルミン「うん」

ユミル「…まぁ、こんな連中連れてってもな…」チラッ

山賊「「「「」」」」

イズモン(薄情な人間だなぁ…)

ユミル「」ギロッ

イズモン「!?」

ユミル「こいつらは放っておけ。お前らのデカもぐらがいれば何も出来はしねぇだろ」

アルミン「! それなら…!」



ユミル「あぁわかった、行ってやるよ」



アルミン「!!」パァッ

ユミル「ただし!!!」ビシッ

アルミン「ただし?」


ユミル「歩く時はお前らが前を歩けよ。戦闘時は極力お前らが戦うこと。面倒な雑務もお前らの仕事。野宿する時はお前らが交代で見張れよ。宿に泊まるときはお前ら一部屋私一部屋な。食事は私におかず一品をプラスすること。それから…」ペラペラ


アルミン「」

イズモン(…もしかして、人間の女が傲慢なのか?)



ユミル「…最後に。これが一番言いたいことだ」

アルミン「わかってるよ。クリスタを見つけるのがユミルの優先目的、でしょ?」

ユミル「当たり前だ!」

アルミン「僕もライナーもみんなを見つけ切るまでは、例え元の世界に帰る方法を見つけたとしても帰りはしないさ。クリスタも例外じゃないよ」

ユミル「他の連中はどうでも良い!クリスタが優先だ!アイツはこういう世界だと間違いなく早死にする!」

アルミン「はいはい。でもクリスタだって成績上位にいるメンバーなんだよ、順応力だって高い。きっと生きてるよ」

ユミル(てめぇは知らねぇんだよ、アイツの本当の姿を!アイツは死に急ぎ野郎に負けないくらいの死にたがりってことをな…!)



ズズゥン・・・!
グラ・・・グラ・・・・・・

アルミン「うわっ。揺れてる?」

イズモン「ぼ、ボスが暴れてるんだ」

ユミル「どんな怪物だよあのデカもぐら」

イズモン「…お、おい!さっきの金髪は本当に大丈夫なのか?」


アルミン「さぁ」

ユミル「別に死なねぇだろ」

イズモン「は!?」


イズモン「そんな適当な…!仲間じゃないのか!?」

アルミン「だってライナーだしねぇ」

ユミル「あの筋肉達磨がそう簡単にくたばるかよ」

イズモン「え…そ、そうか?」

アルミン「ライナーにどんな策があるかは知らないけど、あのミカサの次に優秀なライナーだからね」

ユミル「ミカサの陰に埋もれちゃいるが、アイツも歴代次席で見たらかなり優秀な方だろうよ」

イズモン「?」


―――――――――
―――――――
―――――
―――



ガラガラ・・・
パラパラ・・・


鎧の巨人(…まさか)シュウウウ・・・

鎧の巨人(巨人体で負ける日が来ようとは……!)シュウウウ・・・

ドン「中々硬かったな……、良い戦いだったぞ」

ライナー「く…」シュウウウ・・・

ドン「…さて」

ライナー(ぐっ…ここまでか!)




ドン「帰れ。仲間が待ってるぞ」

ライナー「!?」


ライナー「オレを殺さないのか!?」

ドン「オレの気は済んだ。良いパンチをもらって目が覚めたのさ」

ライナー「…」

ドン「それに、チビの金髪に免じてな」

ライナー「…アルミンに?」

ドン「あぁ。奴は最初にオレの部下のことを気にかけた。自分ですら殺されそうな場面なのにな。オレはその気遣いをくんだのさ」

ドン「あんなことは中々出来るもんじゃねぇ。今回は、奴とお前に免じて引いてやるんだ。人間に敵対する魔王軍幹部としてではなく、一匹の雄としてな」


ライナー「…恩に着る。すまんな」

ドン「それに、上からのお達しでもある。『無闇に殺すな』ってな」

ライナー「…上って……魔王か?」

ドン「…いや。三将の一人からだ」

ライナー「…?」

ドン「魔王軍はトップが魔王。その次に三将という者たちがいて、その次に幹部がいる。後は下っ端だな」

ドン「その三将の一席が数十年空いていてな、今回はその一席が埋まったっていうんで顔合わせに行ってたんだ。
そいつから『無闇に殺すな』って言われてるのさ」


ライナー「中々好印象な奴だな」

ドン「そりゃそうだろ。何せ、魔王軍始まって以来の初めて人間が魔王軍に入ったんだからな」

ライナー「に、人間が!?」

ドン「あぁ。反対する奴は多かったが、魔王様は承認なさった………というより、魔王様が連れてこられたらしい。鶴の一声ならぬ、魔王様の一声だな」

ライナー「人間が魔王軍に与するのか…」

ドン「オレは好きだぜ、あの人間は。奴は僅か半年で三将に数えられる程の実力をつけた。ただの人間だった奴が、たったの半年で、だ。そんな努力が出来る人間だそうだ」

ライナー(…たった半年で、ドン・モグーラよりも強くなった人間がいる。ならば、オレたちも修行をすれば………)


―――――――――
―――――――
―――――
―――


アルミン「…あ」

ユミル「お」


ライナー「ふぅ…」ザッ

アルミン「ライナー!」

イズモン「だ、大丈夫だったのか?ボスは!?」

ライナー「もう怒りは治まってる。行ってこい」

キラースコップ「おぉ!やったぁ!!」

キラーピッケル「ありがとう人間!」

ドドドドド・・・


イズモン「ほ、本当にボスの怒りを治めたのか…。人間の男は凄いな…」

ユミル「人間の女は」

イズモン「傲慢…………はっ!?」

ユミル「んだとこら」グギュッ

イズモン「ハウッ」キュッ


アルミン「お疲れ様ライナー。何をしたの?」

ライナー「まっ、殴りあって怒りを発散させたんだよ」

アルミン「流石。伊達にいつもエレンやらミカサやらを止めてないね」

ライナー「アイツらも中々キツいぜ…」


アルミン(…あのもぐらの魔物とエレンたちは違う。あのもぐらに殴られたらそれだけで人間なんか死んでしまいそうだ……。何かしたのか…。今は話せないことなのか……?)


ユミル「終わったんならさっさと行くぞ」

アルミン「事の発端の癖に…」ボソッ

ユミル「あ゙?」

アルミン「ごめんなさい何でもないです」

ライナー「何だ、一緒に行くのか?」

ユミル「目的の一致だ、悪いかよ」


イズモン「も、もう行っちまうのか…?」



アルミン「うん。早くみんなと合流したいからね」

ユミル「クリスタの生存を確認しねぇとオチオチ寝れやしねぇよ」

ライナー「同感だ」ウンウン

イズモン「…そうか。ありがとなお前ら」

ユミル「気にすんなもぐら」

アルミン「それはライナーの台詞でしょ…」

ライナー「いや、お前にも感謝してたぞドン・モグーラは」

アルミン「え?」


イズモン「そうだ、お前らにお礼の品をやるよ!」つ

アルミン「これは…巻物?」

ライナー「オレには…盾だな」

ユミル「私にはねぇのかもぐら」

イズモン「…お前、逃げるときにうちの宝物庫から色々パクったろ」

ユミル「」ギクッ

イズモン「…見逃しといてやるよ」ハァ

ユミル「…良いもぐらだなお前」

アルミン「うわっ、ユミルが褒めた」

ライナー「珍しい…」


ライナー「…じゃあ、達者でなイズモン!」

アルミン「元気でね!」ノシ

ユミル「暇が出来たら来てやるよ!」



イズモン「…あぁ!またな!」ノシ




イズモン(…人間も、捨てたもんじゃねぇな!)


アルミン「…それで、誰を見つけたって?」スタスタ

ユミル「ん?」スタスタ

アルミン「部下から他のみんなの目撃情報を得たって言ってたろ!?」スタスタ

ライナー「あっ、そういえばそうだな」スタスタ

ユミル「あぁ、あれな」スタスタ



ユミル「…次につく町で、ミカサらしき奴が居たってよ」

本日はここまで。コメントありがとうございます。

【Party1】所持金:400G(ライナーの給料)
[アルミン・アルレルト] Job:なし
E:裁きの杖 E:皮の盾 E:訓練兵団制服上下E:訓練兵団靴 E:麻のマント
持ち物:イオの巻物

[ライナー・ブラウン] Job:元酒場店員
E:鉄の斧 E:青銅の盾 E:布の服
E:皮のズボン E:皮の靴
持ち物:訓練兵団制服セット,皮の盾

[ユミル] Job:盗賊
E:聖なるナイフ E:聖なるナイフ E:ターバン
E:旅人の服 E:忍のズボン E:木の靴
持ち物:もぐらたちの宝

【行方不明者】
・ミカサ・アッカーマン    ・ベルトルト・フーバー
・アニ・レオンハート     ・エレン・イェーガー
・ジャン・キルシュタイン   ・マルコ・ボット
・コニー・スプリンガー   ・サシャ・ブラウス
・クリスタ・レンズ     ・ミーナ・カロライナ


アルミン「!」スタスタ

ライナー「ミカサか!」スタスタ

ユミル「部下が町で話しかけられたらしい。こんな服を来た人物を見なかったかって」スタスタ

アルミン「服って…訓練兵団の制服?」スタスタ

ユミル「らしいな。聞いてきた奴は黒髪で、『…、ので…』とか『…するべき』とか、独特のしゃべり方をする女だったそうだ」スタスタ

ライナー「ミカサだな」

アルミン「ミカサだね」


ライナー「何にしろ、これで四人だな」スタスタ

アルミン「うん!」スタスタ

ユミル「もうすぐ次の町に着く。ミカサと合流したら今後のことについて話すぞ」スタスタ

ライナー「今後のこと? 目的は決まっただろう」スタスタ

ユミル「それより更に細かいことだよ」スタスタ

アルミン「お金のことやどうやって他のみんなを探すかだね」スタスタ

ユミル「その通り。ほら、あれが北の町だ」スッ


ライナー「おおっ、北西の町より都会だな」スタスタ

ユミル「あんな所はド田舎だろ。しかしライナー、あんたあの町に居たのか? 二週間前に見に行った時は誰もいなくてね…」スタスタ

ライナー「二週間前!?」スタスタ

ユミル「?」スタスタ

アルミン「その話は後。それも細かいことに入るよ。ほら、行こう!」タタッ

ライナー「あっ、おい!」スタスタ

ユミル「…アルミンのやつ、性格が少し前向きになってねぇ?」スタスタ

ライナー「良い影響だな」スタスタ


ワイワイ ガヤガヤ


アルミン「うわぁ…ここが北の町」

ライナー「思った通り賑やかだな。ここなら色んなことができそうだ」

ユミル「はしゃぐなよ、まずはミカサだろ」

アルミン「うん。手分けして探そう」

ライナー「この町の宿屋に一時間後に集合しよう。何があってもな」

アルミン「宿屋?泊まる所があるの?」

ユミル「旅人用にあるんだよ。大抵の村や町にある。ここにもあるだろう」


アルミン「そう。…それじゃ、行こうか」

―――――――――
―――――――
―――――
―――


ライナー「…いないな」

ライナー「…しかし、ミカサがまだこの町にいるかどうかが怪しいな。奴も必死にエレンやアルミンを探しているだろうし…」

ライナー「…ん? 何だこの建物は?」

ライナー「入ってみるか…」

ライナー「失礼…」

ライナー(厳格な雰囲気だな…)

神官「ようこそ迷える子羊よ。ここはダーマ教会。転職をご希望か?」

ライナー「…ダーマ………教会?」

神官「む、ご存知ないか。では説明いたそう」

神官「ここは、転職を行うダーマ神殿の支部とも言える場所。このダーマ教会でも転職を行える」

ライナー「転職?職業を変えることですか?」

神官「うむ。その職業の道のりを分かりやすく示し、その職業の道の行く末を祝福し、人々がその職業の技術と精神を学び終えることを助ける。それが私たちの仕事」


ライナー「…それは要するに、職業を分かりやすく学べる、と?」

神官「その通り」

ライナー「戦う職業に転職することも出来るんですか?」

神官「勿論。近年はそちらの方が多いくらいです」

ライナー(ならば、オレが転職して皆を守るということも…!)

ライナー「転職を希望します!」

神官「よろしい、ではこちらへ…」


―――――――――
―――――――
―――――
―――


アルミン「ここは市場だね…。人が大勢いるよ」

アルミン「少しシガンシナ区やトロスト区に似てるかな…」

アルミン「…」

アルミン「…いや、弱気になっちゃダメだ。僕がエレンやミカサを助けるんだってくらいの気持ちじゃないと!」

アルミン「よし!……あ、このリンゴ美味しそう」

アルミン「リンゴ一つ…4Gか」

アルミン「じゃあ4G………ゴールド?」

アルミン「流通通貨が違うのか。やっぱりここは僕がいた世界とは別世界なんだなぁ…」

アルミン「…あれ、もしかして僕って一文無し?」

アルミン「…今後の収入どうするんだろう…」ハァ


―――――――――
―――――――
―――――
―――


ユミル「…よし、町の出口は東西南北の4つだな。いざって時の脱出経路は確保しとかねぇとな」

ユミル「アイツらあぁ見えて間が抜けてるからな。私がしっかりしねぇと…」

ユミル「…いやっ、別にアイツらの為じゃなくて私の為だけどな!!うん!」

ユミル「…」

ユミル「…はぁ。やっぱりクリスタがいねぇと調子が出ねぇな」

ユミル「クリスタぁ~……早く見つかってくれよ~……。……そういえば、町の中心に大きな施設があったな。…見に行くか…」トボトボ・・・


「…町には大勢の人間が集まってます。はい。………わかりました、すぐに戻ります」

「…人間ども、今は穏やかな時を過ごすが良い。より一層、恐怖を味わえるようにな…!……ルーラ!」シュン!

―――――――――
―――――――
―――――
―――


一時間後…


ユミル「…」イライラ

アルミン「…」

タッタッタッタッ・・・

ライナー「…やぁー、スマン!遅れてしまった!」ニコニコ

ユミル「」ブチッ

アルミン「」ビクッ

ライナー「聞いて驚け、実はオレ…せんボグゥ!!!?」バゴンッ

ユミル「言い出しっぺのテメェが遅れてんじゃねぇ!!張った押すぞ!!」


ライナー「…も、もうやられた…」ピクピク

アルミン「…ベルトルトって苦労してたんだなぁ…」トオイメ


ユミル「で、ミカサは見つかったのか?」

アルミン「…いや、見つけられなかったよ」

ユミル「…ライナーは」

ライナー「見かけなかったな」ボロボロ

ライナー(ダーマ教会には居なかったな!うん!)

ユミル「」ギロッ

ライナー「!?」

アルミン「…とりあえず、宿屋に入ろう。色々あって疲れたよ…」

ユミル「そうするか」


カランカラン・・・

ワッハッハッハ オウノメノメェ


アルミン「ごめんくださーい」スタスタ

ライナー「酒場と宿屋を兼業してるのか…」スタスタ

ユミル「酒くせぇし騒がしいし…最悪だな」スタスタ

荒くれ男「おうおう兄ちゃん、おたくも若いのにやるねぇ!しかも女連れたぁな!」

アルミン「え?」

ユミル「は?」

ライナー「…?」

荒くれ男「いや、それとも女の方は後ろのマッチョのコレかぁ?」コユビピン


ユミル「はぁ?こんな頭でっかちやら筋肉ゴリラやらなんてお断りだね」

アルミン「う」

ライナー「中々キツいぞ…」


オォ- アノオンナモイイナ イイ・・・

ユミル「…?」

荒くれ男「なんだそりゃ失礼した!もしかして兄ちゃんたち、旅人か?」

アルミン「えぇ。宿屋で一泊しようと思いまして…」

荒くれ男「おうおうそうかそうか!ならライバルが少なくて良いぜ!」

アルミン「ライバル?」

荒くれ男「…じゃあオレが店員を呼んでやるかね…」ガタッ




男ども「「「「「」」」」」ギラッ

アルライユミ「ん?」

男A「バカ野郎!!店員を呼ぶのはオレだぁ!」ガタンッ

男B「ふざけんな、オレだぁ!」ガタタンッ

男C「テメェは昨日呼んだだろうが!!」ガタタタンッ

荒くれ男「何抜かしやがる!!言い出したオレに決まってんだろ!!」ドダァンッ

ギャーギャー ドッタンバッタン


ライナー「…店員を呼ぶことがそんなに大事なのか?」

アルミン「多分その店員に何かあるんじゃない?」

ユミル「…らしいな」チラッ

アルライ「え?」チラッ


コツ・・・コツ・・・

ライナー「お」

コツ・・・コツ・・・

男ども「「「「」」」」ピタッ

コツ・・・コツ・・・

ユミル「…全く、どこに行ってもアイツはアイツだな」

コツ・・・コツ・・・

アルミン「……あ、ああぁ……」フルフル

コツ・・・コツ・・・・・・コッ!


ミカサ「うるさい」



ミカサ「今、上には怪我人がいる。何よりお客がいる」

ミカサ「……ので、静かに」

男ども「「「「」」」」コクコク

ミカサ「…わかったなら、良い」クルッ




アルミン「み、ミカサ!」

ミカサ「!!!!」クルッ!



ミカサ「アルミン!!」ダッ

アルミン「ミカサ!無事だったんだね、良かっ………うぎゅっ!!?」ガシッ

ミカサ「アルミン、無事で良かった。怪我はない?」ペタペタ

アルミン「ちょっ……大丈夫だから…」


ユミル「相変わらずだ」

ライナー「幼なじみ二人は大変だな…」

荒くれ男「う、うらやましい…」

ユミル「あん?あんなことをアイツがやるのはこの世に二人だけだぜ」

荒くれ男「ぐぅっ!!」

男ども「「「「うらやましい…」」」」

ライナー「…成る程。何となく同じ臭いがするな」


アルミン「そうだ、今後のことについて…」

ミカサ「わかっている。上で話そう」

ライナー「じゃ、いくか」

ユミル「これで四人だな」

ミカサ「…ライナー、ユミル」

ライナー「お前絶対今気づいただろう!?」

ユミル「そういう扱いはライナーだけにしてくれるか?」

ライナー「」

ミカサ「ユミル、四人ではなく五人」

ライナー「無視すんなよ………って、今何て言った!?」

荒くれ男「み、ミカサちゃん……その…」


ミカサ「…次騒いだら追い出す」

男ども「「「「「」」」」」ビクッ

ミカサ「静かに…」

男ども「「「「「」」」」」コクコク

ミカサ「…では行こう」コツコツ

ユミル「やるなぁおい」

アルミン「あまり驚けない自分がいる…」

ライナー「分かるぜその気持ち」ウンウン

ライナー「…ところで、オレの発言がすべて流されているのは!?」

ミカサ「冗談」

アルミン「機嫌良いねミカサ」


アルミン「…ところで、ミカサは何でこの町に?」カン カン

ミカサ「…この町では誰も見つけられなかった。直ぐにでも次の町に行きたい………が、出来ない理由がある」カン カン

ライナー「理由?」カン カン

ミカサ「それが……」カン カン スタッ

ユミル「部屋…?」

ミカサ「これ」ガチャ・・・


「よぉミカサ、客どもは静かになったのか………ってお前ら!?」

ライナー「ジャン!?」

ジャン「…チッ、もう来たのか…」ボソッ

アルミン「下心丸見えだよジャン」

ミカサ「下心?」

ユミル「あぁ、それはな………」

ジャン「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


ジャン「おいユミル!!」

ユミル「わかったわかった」ケタケタ

ミカサ「ジャン、騒いだら身体に響く。安静にしていないとダメ」

ジャン「お、おう…」

アルミン「ジャン、怪我してるの!?」

ミカサ「全治二ヶ月」

ライナー「何やってんだお前」



ジャン「…オレが好きでやった結果だ。気にしてねぇ」プイッ


ミカサ「私を魔物から庇って怪我をした。私にはジャンの世話をする義務がある」

ライナー「ほう!男を見せたなジャン!やはり男は女を守らなきゃな!」

ジャン「う、うるせぇ!」カァッ

アルミン「うわ、真っ赤」

ユミル「珍しくミカサが死に急ぎ野郎とアルミン以外に接していると思えば…」


アルミン「とりあえず、これで五人だね」

ライナー「あぁ。残り八人……。この世界がどれだけ広いかは分からないが…何とかしないとな」

ミカサ「…エレン」

ジャン「……あの野郎なら絶対に生きてる。まだオレはアイツにいつか食堂で恥を掻かされた返しをしてねぇんだからな。勝手に死なれてたまるかよ」

ユミル「無様だったよな」ケタケタ

ジャン「ぐうっ…」


アルミン「…まず、ジャンはどれくらいで旅が出来るようになるんだい?」

ジャン「…最低でもあと二週間はかかるって医者には言われたよ」

ライナー「医者? 呪文なんて便利な物があるのにそんなのがいるのか?」

ジャン「勿論医者も呪文を使う。ただ、オレの傷が医者の呪文じゃ治りにくくてな…」

ユミル「…オイ、まさかその傷…魔王軍の奴につけられたのか?」

ミカサ「…その通り」

ユミル「ちぃっ、面倒だな…」


ライナー「魔王軍に傷をつけられると何か問題があるのか?」

ユミル「奴らは野生の魔物とは違って、魔王軍の紋章をつけてるんだ。その紋章は魔物のマ素っていうのを色濃くするんだってよ」

アルミン「マ素……魔物の構成物質みたいなものかい?」

ユミル「あぁ。全ての魔物にある成分で、その濃度が濃いほど魔物として能力が高いらしい。そんでもってマ素は人間には毒なんだそうだ」

ライナー「…まさか、ジャンの傷ってのは」

ジャン「そのマ素がたっぷり残ってるらしいな。そのせいで回復の呪文がほとんど意味をなさねぇんだってよ」

ユミル「回復呪文ってのはそのマ素を傷から取り除く作用もある。魔物に直接つけられた傷はまずマ素を取っ払ってから治すんだと」

アルミン「じゃあジャンの傷が回復呪文で治らないのはマ素の濃度が単純に濃いからか…」

ミカサ「自然治癒を待つしかないらしい」


アルミン「…じゃあ、魔王軍と戦っている人たちを探すしかないね」

ミカサ「?」

ジャン「はぁ?」

ユミル「だな」

ライナー「何でそうなる?」

アルミン「だって魔王軍と戦って傷をついても更に戦うんでしょ?だったら傷は治しておくべきだ。なら、彼らは魔王軍から受けた傷を治す方法を知ってる、もしくは開発したんじゃないの?」

ジャン「…それは」

ミカサ「有り得る」

ユミル「なら探すのは勇者たちだな」

ライナー「勇者……魔王軍を倒そうとしてる奴か」

ユミル「ま、端的に言えばそんな連中だ」

アルミン「よかったねジャン。予定よりも早く治るかもしれないよ」

ジャン「…お、おう」

アルミン「…ミカサに世話されるのとミカサと一緒に旅するの、どっちが良いかな…」ボソッ

ジャン「!!?」


アルミン「…次。みんなを探す方法」

ライナー「手分けして探すのは?」

アルミン「この人数だと分けても二組だよ。世界中を探すとなると時間がかかりすぎるよ」

ユミル「冒険者組合……ギルドに依頼することは?」

アルミン「ギルド?」

ユミル「何か頼む人々と頼まれる人々の仲介所だ。そこで依頼をこなしたりすると、金がもらえるのさ。仲介料はさっ引かれるがな」

ミカサ「ユミル……物知り」

ユミル「情報は最大の武器だからな」

アルミン「そのギルドならお金のことも解決できそうだね」

ジャン「金か。み、ミカサもけっこう稼いでなかったか?」

ミカサ「特別ボーナスももらっている」


ミカサ「…それと、占い師に頼ろうと思っている」

ライナー「占い?占いなんかで見つかるもんなのか?」

ユミル「…『王都の裏の占い師』か。だがあれは何百年も伝わる伝承だって聞いたぞ?」

ライナー「なんだそれは?」

ユミル「何百年も前に栄えていた占い師だとよ。王都の普通は入れない所にいるそうだが……どうだかな」

アルミン「何百年て………生きてるわけないじゃないか」

ミカサ「…分からない。けど、他に頼れない…」

アルミン「…まぁ、頭には置いておこう」


アルミン「…後は?」

ミカサ「…この世界で安全に旅をする方法」

ジャン「安全に、な…。そりゃまずはあの魔物どもだろ。アイツらに対抗する為の強さが要るぜ」

ライナー「…そうだ、転職!!」

アルミン「転職?」

ライナー「実はな…………」


―――――――――――
―――――――――
――――――
―――



アルミン「じゃあライナーは戦士に転職したの?」

ライナー「あぁ。ようやくオレは戦士になれたんだ!」

ジャン「は?」

ユミル「…ワケわからないこと言ってんなよ。ちなみに私も転職済みだ」

アルミン「え!?」

ライナー「いつの間に…」

ユミル「随分前に南西の町でな」


ジャン「盗賊だろ」

ユミル「あ? なんでわかるんだ?」

ジャン「お前が履いてるのは忍のズボンだろ。盗賊専用の装備品だ」

ユミル「ほう、よく知ってるな」

ミカサ「ジャンは暇だから色々な図鑑や装備品写真集をよく読んでいる」

ジャン「こんなんもあるぜ」つ

ライナー「…『魔物図鑑』?」

アルミン「あ、これこの前のつのウサギ」

ライナー「うお、イズモンだ。…いや、いたずらもぐらか」


ユミル「ミカサは?お前もなんか職業あるんだろ?」

ミカサ「バトルマスター」

ユミル「おま、上級職だぞそれ!!」

ライナー「上級職?」

ジャン「上級職ってのは戦士や盗賊といった、ある基本職を二つマスターすると転職できる。上級職は基本職よりも優れてるものが多いんだよ」

アルミン「じゃあできるだけ上級職の方が良いのかな?」

ジャン「成りたくて成れるもんじゃねぇけどな。ミカサの場合は特別で、素質を見込まれていきなりバトルマスターに転職できたんだよ」

ミカサ「やってみないかって言われたから」

ライナー「どこの世界でも規格外な奴だな…」



アルミン「じゃあ僕も後で転職しに行こうかな」

ジャン「オレもいくぜ。そろそろ動きたいしな」

ライナー「よし、それなら……………」



ゾクッ

ミカサ(町の外から殺気!?)ゾクッ





ドォン!!



ユミル「何だ今の爆発音は!!」

アルミン「町の東の方からだ!!」

ジャン「…なんだありゃあ。魔物が百はいるぞ……!!」

ライナー「…ミカサ、魔物たちが持っている旗のマークが見えるか」

ミカサ「…見える。……あれは……」



ミカサ「魔王軍の紋章…!」ギリッ


ユミル「…どうやら、また面倒事に巻き込まれちまったようだな!」



アルミン「…魔王軍…一体何をしに!?」

ライナー「そうだな。ユミル、奴らは何が目的で人間の町を襲うんだ?」

ユミル「さぁな」

ライナー「は?」

ユミル「諸説あるぜ。ただ単純に人間は敵と思ってるが、殺しはなぜかしない。人々を何十人何百人と拐ってるケースもある。町だけを破壊し、さらっていける奴はさらう。最近はこんな傾向にあるらしいが…」

ジャン「んなことは後で良いんだよ!要するに今からオレたちはどうするかってことだ!」

ミカサ「私は町のみんなを助けに行く」

アルミン「ミカサ!?」



ミカサ「ここの人たちは右も左もわからなかった私たちを色々と助けてくれた。今度は私が彼らを助けに行く…!」

ライナー「…一人では危険だ。オレも行くぞ」

アルミン「なら僕も行くよ!」

ジャン「オレも行きたいが…逆に足を引っ張っちまいそうだな。……ユミル、てめえはどうする」


ユミル「…私は遠慮させてもらう」

ライナー「なっ…ユミル?」

ミカサ「…これは個人の自由。私は一人でも構わない」

ユミル「他人のために命をかけるなんざ……ごめんだね。…だから、せめてジャンを安全な所くらいには連れてってやるよ」

ジャン「はぁ!?」

ミカサ「…ありがとう」



ユミル「ケッ。…町の中央に避難所があった。行くぞ」グイッ

ジャン「うぉっ!」ズルズル


アルミン「ジャンはユミルに任せて大丈夫だよ。行こう!」ダッ

ミカサ「アルミン…」

ライナー「オレたちは自分の意志で動くんだ!お前が気にする必要はない!」ダッ

ミカサ「…三人とも、ありがとう…」ダッ



「…」

「イー様!侵攻準備整いました!」

イー「…あぁ」

イー(…すぐに勇者たちが来る。急がなきゃいけねぇな…)

イー(さて、この町は…どうだろうな)




イー「全兵進めぇ!!!!町を破壊し、オレ達の脅威を知らしめてやれ!!!!」バッ





魔物「「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」



リザードマン「凄まじい覇気だな…」

ゴーレム「魔王軍ニオイテノ初ノ人間ノ将……アタリダッタヨウダナ」

リザードマン「あぁ。新三将としては上出来だな、イーの奴…」

ゴーレム「呼ビ捨テハマズイダロ。モウ共ニ修行シテタ間柄デハナイノダ」

リザードマン「奴がそんなことを気にするタマか。さぁ、オレたちも行くぜ!」バサッ

ゴーレム「ヤレヤレ…」ズシン



トロル「グワハッハッハ!!」

「うわぁぁ!!」


ダークホーン「ふん、他愛ない…」

荒くれ男「くそ…めちゃくちゃ強ぇな、この羊…」

男A「町が…次々と崩れてく…」

男B「向こうからは火が…!」

ダークホーン「住民を無闇に殺すなとは言われてるが…」

ダークホーン「刃向かって来る者には容赦するなとも言われている」ギロッ

男C「ひっ」

ダークホーン「悪く思うな…!」グォッ

荒くれ男「くそぉ…」



「火炎斬り!」ボォッ

ダークホーン「ぬっ…」バッ

荒くれ男「み、ミカサちゃん!!」

ミカサ「…あなたたちは町の住民たちを」

男A「そんな!ミカサちゃん一人じゃあ…」

ライナー「お生憎だがオレたちもいるぞ!」

アルミン「流石にミカサ一人で戦わせはしないさ!」

荒くれ男「…適材適所って奴か。お前ら、ミカサちゃんを頼んだぞ!!」ダダダッ

男A「傷一つつけるんじゃねぇ!」ダダダッ

男B「つけたらオレがその三倍お前らに傷をつくるからな!」ダダダッ

男C「ならオレは五倍だ!!」ダダダッ



アルミン「…」

ライナー「…」

ミカサ「…削ぐ」チャキ

ダークホーン「中々慕われているな、少女よ。まるで我らが将の様に…」

アルミン「…将?」

ダークホーン「そう。我らが将は三将の一人。イー様だ。唯一人間で我ら魔王軍に与するお方…!あのお方もまた我ら魔王軍に慕われている」

ライナー「ドン・モグーラの言ってた奴か…!」

ダークホーン「ほう、ドン・モグーラ様にも会ったのか。それでも尚生きてるとは………中々の実力者と見た」

アルミン「う゛」

アルミン(あまり嬉しくない見られ方だな…。どうせならナメられている方が良いのに)



ライナー「…どうやら、貴様はドン・モグーラよりは下のようだな」

ダークホーン「その通り。我はただの一兵卒に過ぎん」

ミカサ(この威圧感でただの兵…!?)

ダークホーン「だが我々を甘く見ぬことだ。我らはそれぞれが下手な村ならば一体で全滅させられるように鍛えられている。三将イー様の部隊、そう軽い隊ではない…!」ブルル

ミカサ「くっ…」


「グワハッハッハ……ダークホーン、オデもまぜろ!」ズシン

ダークホーン「トロルか…」

アルミン(もう一体!?)

ライナー「でかい!」ザッ

トロル「グワハッハッハ…旨そうだな、人間…!」ベロリ



アルミン(まるで巨人みたいなデカさだ…!いや、むしろ巨人より厄介だ。知能もあるし武器もある…!)

ダークホーン「…好きにしろ。ただ、やり過ぎるなよ…」ザッ

トロル「食べ残しはしねぇぞぉ…」ズシン



ミカサ「私は羊を殺る。アルミンたちはあの鬼みたいな奴を…」

アルミン「うん!」

ライナー「よし…!」



ダークホーン「ダークホーンのホルク!参る!!」バッ

トロル「ジャックだぁ!!まとめて食ってやるぜぇ!!」ズシンズシン


ミカサ「バトルマスターミカサ!!」ドンッ

ライナー「戦士ライナーだ!!かかってこい!」バッ

アルミン(始まる…!)スッ


町の郊外――――――――

ボォォォォッ ギャアアアァァァ

「…キキッ。イーの奴、上手くやってるっぽいッキー」

「…フン。アイツならば当然だ…」

「…キ?」チラッ

「…来たな」

「アイツらが勇者たちだ…」



ダッダッダッダッ


勇者「お、遅かった…。既に魔王軍は侵攻している…」ハァ ハァ

戦士「くそ!アイツら好き勝手やってくれやがって…!」

魔法使い「本当に面倒なことしてくれるわね…!」

僧侶「急ぎましょう!人々が…」

「…」ハァ ハァ


「うそっ!?はやすぎッキー!」

「足止めは失敗したらしいな…。行くぞ!敵は5人だ」バッ

「いってらっしゃいッキー」

「貴様は行かんのか…!キドラ!」

キドラ「後々の任務に支障は出したくないッキー」



「止まれ」ズザン

戦士「うぉ!シャンタク!?」

勇者「魔王軍か!」チャキ

シャンタク「少しここにいてもらおうか…」

魔法使い「シャンタク…強敵よ!」

僧侶(このシャンタクも足止め役…!?魔王軍は町で一体何を!?)


勇者「戦士!」ダッ

戦士「おう!」ダッ

僧侶「あなたは下がっていてください!」


「は、はい!」

シャンタク(一人は民間人か……。実質四人だな)

戦士「うぉぉぉぉっ!!!」ダダダッ

勇者「やぁぁぁっ!!!」ダダダッ

シャンタク「芸のない…」スッ



魔法使い「ベギラマ!」カッ

シャンタク「!?」ボォォッ

シャンタク(呪文で先制…成る程)グッ

戦士「もらった!」バッ

勇者「」バッ


ズババン!


戦士「どうだ!?」



シャンタク「…笑止。この程度とは…」


勇者「な……無傷!?」

魔法使い「ベギラマも…全く効いてない」

シャンタク「オレはシャンタク。竜の皮膚を持つ鳥。貴様ら程度の剣撃や炎なんざは全く効かん」

シャンタク「さぁ…大人しくしてもらおうか!」スゥッ

シャンタク「」ヒュウ!


ビュォォォォォォォ!



戦士「氷の息だ!!」

魔法使い「ベギラマ!」カッ


ボゴォォン!




キドラ「キキッ、シャンタクの奴、相変わらずッキー!」

キドラ「…キ? 勇者たちが四人しかいないッキー…最後の一人はどこだッキー?」



僧侶「皆さん、彼女は逃がしました!もう気を使う必要はありません!」

勇者「よし…!」

シャンタク「!?」

シャンタク(まさか、最後の民間人を気にして全力で戦えていなかったのか!?)


―――――――――――――――――――「…」ハァ ハァ

「もう…ここら辺なら大丈夫ですかね」ハァ ハァ

「…勇者さんたち、無事だといいんですけど…」クンクン

「あ、向こうの方から良い匂いが…」フラフラ

―――――――――――――――――――



戦士「いくぜぇ!」ダダダッ

シャンタク「今度はたった一人か…人数を減らしてどうするんだ」スッ

魔法使い「バイキルト!」ブゥン

僧侶「スカラ!」ブゥン

戦士「」バァァッ

シャンタク(……成る程、元から一人で十分だったということか)

戦士「兜割り!!」グォッ

シャンタク「バギマ!」トゥルルルル

ビュォォォォォォォ!

戦士「ぐっ!!」ザシュザシュ


勇者(今!!!)ババッ

シャンタク(! 呪文詠唱の間に…)


勇者「くらえドラゴン斬り!!」


シャンタク「ぬっ!!」ザシュ!


シャンタク「ふん……中々だな」

勇者(剣が入ったのに………微動だにしない!)

僧侶「くっ…ホイミ!」

戦士「アイツ、普通のシャンタクより強いな!」パァァッ

魔法使い「流石魔王軍、ってわけね…」

シャンタク「さぁ…まだオレは倒れてはいないぞ!さっさとかかってこい!」

勇者「長引かせては不味いのに……くそ!」チャキ


町の中心―――――――――


一角竜「グカカカカ!!」

ユミル「そらよ」シュッシュッ

一角竜「ガカッ」グササッ

ドサッ


ユミル「ようやく倒れたな……タフなとかげだった。おいジャン、とっとと来な」

ジャン「…おう」

ジャン(コイツめちゃくちゃ強いな…なんつーナイフ捌き)

ユミル「…ん?…おい、隠れろ!!」グイッ

ジャン「おわっ」ズザッ



ユミル「…」ササッ

ジャン「誰かいるな…って魔物!!ヘルビーストだ!」


ユミル「それ以外にもう一人…。あんな大層なマントつけてるってことは…あれが敵の大将みたいだな…」ジーッ

ジャン「…あれ、本当に魔物か?人間みたいな背格好だぜ」

ユミル(魔王軍の新たな三将に人間が就いたって噂は聞いたが……まさか!?)


パチパチパチ・・・ ギャアアアァァァァ


イー「…大体は終わったか」

ヘルビースト「はっ。町の大部分は破壊し終わりました」

イー「キドラからさっき連絡が入った。町の郊外に勇者たちが来たらしい。今シャンタクが応戦中だ」

ヘルビースト「では…」

イー「あぁ。そろそろ撤退の準備を始めろ。オレが殿を務める」

ヘルビースト「はっ!」



ユミル(…どうやらもうすぐ魔王軍は退くらしいな)

ジャン(マジで何しに来たんだアイツら。人間への嫌がらせか?)

ユミル(さぁな。……ん?)

ジャン(あれ、ガキ!?)




子供「…」ヒック ヒッグ

ヘルビースト「…む?」

イー「…」


子供「……お、おねえ……ちゃっ」ヒック

イー「…」

ヘルビースト「…失せろガキ。三将イー様の手前だぞ」



ジャン(おい、あのガキまずいぞ!)

ユミル(…だから?)

ジャン(あぁっ!?)

ユミル(私らが飛び出ても纏めて殺される。あのヘルビーストのレベルがお前にはわかんねぇのかよ?)

ジャン(…)

ユミル(…生き残るためだ。仕方ねぇんだよ…!)

ジャン(…ちぃっ…!)


子供「お、おねえちゃん……がっ」ヒック

ヘルビースト「…ちっ、だから人間のガキは嫌いなんだ…」ザッ ザッ

ジャン(!!)グッ

ユミル(よせバカ!)ガシッ

ジャン(ぐっ…!)


イー「…ヘルビースト」

ヘルビースト「はっ!」


イー「…構うな」


ヘルビースト「はっ!?」

ジャン(ん!?)

ユミル(…!)



イー「お前は撤退の準備をしろ」

ヘルビースト「…いえ、しかし…」

イー「ビルツ」

ヘルビースト「!!」


ジャン(…ビルツ?)

ユミル(あのヘルビーストの名前だろ)


イー「行け」

ヘルビースト「…ハァ。…わかったよ、イー……」



ユミル(…!?)

ジャン(呼び捨て…?)


ヘルビースト「言う通りにしよう…」バサァッ


バサッ バサッ・・・


イー「…」ザッ ザッ

子供「」ヒック ヒック

イー「…おい」

子供「…?」ヒック


イー「お姉ちゃんが…どうかしたのか」

子供「…おうち…」ヒック

イー「…」

子供「おうちの……したじきに…」グズッ

イー「…」スッ

ダキッ

子供「あ…」

ジャン(え…?)

ユミル(…)

イー「…どっちだ」

子供「あ、あっち…」

イー「…よし」ザッ ザッ


ジャン(…ど、どういうことだ…?)

ユミル(追うぞ!)


ドォン! パキパキパキ…

キドラ「…キキッ!戦いは五分五分…むしろ勇者たちが少し押してるッキー!…………キ?」チラッ



シャンタク「…ん」チラッ


僧侶「あれは…!町に一筋の青い煙!?」

魔法使い「魔王軍の撤退の合図だわ!奴らもう退く気なんだ!」

勇者(もう目的を果たしたのか…!)


シャンタク「やれやれ…魔王軍の合図、盗まれてるのか。合図の色を変えねばいかんな…」バサッ

戦士「逃げる気か!」

シャンタク「当然だ。足止めはもう必要ないのだからな…!」バッサ バッサ


僧侶「町の方に向かっていきます!!」

勇者「魔王軍の本隊に合流する気か…!?追おう!」

戦士「逃がさん!」

勇者(…クソッ!倒しきれなかった…!しかも奴は全力を出していないようだった…!まだまだ強くならないと…!)

魔法使い「…勇者」ボソッ



キドラ「…キキッ!シャンタクも勇者たちも町の方へ行ったッキー。魔王軍も大部分は撤退完了…。とりあえずオイラはここで待機ッキーな…」


町の広場――――――――


ダークホーン「ぬぅん!!」ブォッ!

ミカサ「くっ」バッ

ボゴォン!


ダークホーン「早いな人間…」ボコッ

ミカサ「当然」スタッ

ダークホーン「さらに全ての呪文の属性技を使えるとは…。中々の手練れ」

ミカサ「…あなたたちに褒められても嬉しくはない」チャキ

ミカサ(…この羊、明らかに他の魔王軍の魔物とは違う…!いくらなんでも一兵卒でこの強さは有り得ない!)

ダークホーン「だが…貴様のような戦士タイプでは数多の戦いを勝ち抜くことはできん」

ミカサ「…」

ダークホーン「我のような技法を持ち得ねばな!」スゥッ

ミカサ「!?」


トロル「おー…」グォォッ

ライナー「来るぞ!!かわせアルミン!」バッ

アルミン「うん!」バッ

トロル「らぁっ!!!!」ブォッ



バッゴオオオォォォン!



ライナー「うあああぁぁぁ!!!」ブワァッ

アルミン「なんて風圧だ…!!」ブワァッ

アルミン(かすってもないのに…凄まじいパワーの持ち主!)


パラパラ ガラッ・・・

トロル「おいお~い…逃げんなよぉ…。ミンチに出来ねぇだろうが…」


アルミン(けど、その反面スピードはない!そして………めちゃくちゃなバカだ!)

ライナー(コニー以上のバカだが、その強大なパワーと驚異的なタフネスで知能と速さの無さを補っている!!)

トロル「さぁ…かかって…………!?」


ライナー「…ん?」

アルミン「…え?」


トロル「…」

アルミン「…止まった…?」

トロル「…イー様…」

ライナー「!?」クルッ

アルミン(後ろ!?)クルッ


イー「」ザッ・・・


ザッ・・・ザッ・・・


ダークホーン「…イー様……なぜここに」

ミカサ「…!」クルッ

ミカサ(あれが…魔王軍三将の一人、イー!)


ユミル(あれは…ミカサたちか!)

ジャン(あの羊とデカブツ!!ダークホーンとトロルだ!)

ユミル(どうやら戦ってるらしいな…こんな状況で敵の大将が現れるたぁ……まずいな)


イー「…!」

ダークホーン「い、イー様…」

イー「…そろそろこの町から撤退する。準備しておけ」

ダークホーン「ハッ!」

トロル「わかったぜぇ…」


イー「…で、どこだ」

ダークホーン「…は?」

子供「あのお兄ちゃんの…後ろのとこ」

イー「…」ザッ ザッ

ダークホーン「子供…」

トロル「旨そうだなぁ…」



アルミン(こっちに向かってくる!?)バッ

ミカサ「アルミン!!」バッ

ライナー「あれが三将か!!」バッ

アルミン「ミカサ!ライナー!」


イー「」ザッ ザッ

イー「」ザッ!


イー「…退け」

ミカサ「…? 何の真似…!」チャキ

イー「…良いから、退け」


ミカサ「………」

ミカサ「…」スッ


アルミン(一体何を…?)スッ

ライナー(…)スッ


イー「…これか」

子供「うん」

イー「…」チャキ

アルミン(剣…)

イー「…空裂斬!!」ビッ



キィン


ミカサ(…一陣の…風……)


ドォォォォォォォン!




パラパラパラ・・・


アルミン「…なっ」

アルミン(民家が数軒、まとめて吹き飛んだ…!?)

ライナー「今のは…風か!!」


イー「…いたぞ」

子供「…お、おねえちゃん!」

少女「」


イー「…ダークホーン、ホイミンを連れてきてくれ」

ダークホーン「ハッ!!」ダッ


ミカサ「…人間を…助けた?」


イー「…さぁな」グイッ

ガラガラ・・・


少女「」

イー「…生きてるな。まだ間に合うだろう」

子供「おねえちゃん!おねえちゃん!」ユサユサ


ユミル(…どうやら、人間っぽいな)

ジャン(人間って…あの魔族がか?)

ユミル(あぁ。ありゃ間違いなく人間だ)

ジャン(人間なのに魔王軍にいんのかよ!?)

ユミル(そんなもん他人の自由だろ)

「そうそう。お前らも魔王軍に入りたかったら入って良いんだぜ?」

ユミル(いや、私は遠慮す…………る!?)クルッ!

ジャン「あ!!?」クルッ!


イー「」ピクッ

ミカサ「誰かいる!!」



「…見タナ」

ジャン「ゴーレムとリザードマン!ヤバいぞ!!」

ゴーレム「遅イ…」グォッ

ユミル「逃げろバカ!!!」グイッ



ドォン!


ジャン「ぐうっ!!」ゴロゴロ

ユミル「なんつう怪力だよ!!」ザッ


アルミン「ユミル、ジャン!!」

ライナー「お前ら、避難所に行ったんじゃなかったのか!?」

ユミル「好奇心出しすぎたぜ…」

ジャン「万事休すとはこのことだな…。くそっ、いてぇ…」

ミカサ「…」チャキ



リザードマン「どういう状況だこりゃ」

ゴーレム「…イー様、奴ラハ…」

イー「…」

トロル「イー様ぁ、あの人間たち食っていいかぁ?」


イー「……無理、だな」ボソッ


ミカサ(無理…?)

イー「…最近身体を動かしてなくてな」

アルミン「身体?」

イー「…丁度、一暴れしたかったんだ」

ミカサ「!?」

ライナー「くっ!」

ユミル「チィッ…」チャキキ


イー「ジャック、ここはオレに譲れ」

トロル「…仕方ねぇなぁ…」


ジャン(またタメ口になった…どうなってんだ?)



バッサ バッサ

イー「…ん、リリィとビルツか」

シャンタク「イー、勇者たちが来るぞ」ドシン

ヘルビースト「撤退準備は整ったぞイー!」スタッ


イー「…勇者か。そっちの方がコイツらよりは……………!?」



ガキンッ!


ヘルビースト「イー!!」

リザードマン「コイツ…!!」ヂャキ


ミカサ「…」ギギッ

イー「速いな」ギギッ


アルミン「ミカサ!!何を…!?」

ミカサ(コイツが今回の主犯…!!ならばコイツを殺せば…!!)

ミカサ「っ!!」ブォン

イー「」ギィン!

イー「…かかって来い」

ミカサ「殺す」


ミカサ「火炎斬り!!」ボボッ

イー「」ヒョイ


ライナー「かわした!!」

ミカサ「く…」ヒュッ

イー「氷結斬りか」ヒョイ

パキキッ!


ミカサ「!!!」


ユミル(今……ミカサが技を放つ前に技名を当てた!?)


ミカサ「」ビュッ

イー「真空斬り」ヒョイ

ミカサ「!?」グォッ

イー「稲妻斬り」フワッ

ミカサ「くっ!!」ドゥッ

イー「ダークスパイク」クルッ

ミカサ「何故!」ボッ

イー「最後は裂波斬」ヒョイ


ボバァン!



ミカサ「…何故!何故私の技が…」

イー「腕を使う技なら大体は肩から動かすからな。肩を見てればわかる」

ミカサ「肩…!?」


ライナー(…アニが使っていた方法だ。確かに実践してみた時、これほど分かりやすいものなのかと思ったが…!)


イー「そして技に収束される魔力。その質と大きささえわかれば大体分かる」

ミカサ「ぐぅっ…!!…まだ!!」チャキ


イー「…焦ってるな」

ミカサ「…」ギリ

イー「…お前が焦ってるのはらしくないな」ボソッ


ミカサ「知った風な口をきかれたくはない!!」

イー「…」

ミカサ「…削ぐ!」チャキ

イー「…残念ながら、ここまでだ」

ミカサ「!?」


勇者「待て!」ダンッ


イー「来たぞ」

リザードマン「ありゃあ…勇者!!」

シャンタク「来ると言っただろう」

ゴーレム「勇者一行揃イ踏ミダナ」


戦士「おいおい、大漁だなこれぁ」

僧侶「冒険者らしき者が五人、魔物が六体…!」

魔法使い「あの鉄仮面、敵の大将じゃないの!!」


ヘルビースト「人間側が九人、内一人は戦闘不能。実質八人」

ヘルビースト「魔物側は…イーを除けば八体…!」

アルミン「八…?」


「ホイホイ~」フワフワ

アルミン「うわっ!何だコイツ!」ズサッ

ジャン「ホイミスライム。そこまで害はない魔物だ」

ホイミスライム「その言われ方は何かムカつく~。…イー、誰を治せば良いの~?」


イー「この子だ」

少女「」


ホイミスライム「りょうかい~」フワフワ


子供「うわぁ……かわいい…」

ホイミスライム「ありがと~。ちょっとどいててね~」フワフワ フワフワ

ホイミスライム「ベホマラ~~!」パァァッ


僧侶「べ、ベホマラー!?」



少女「…………ぁ」

子供「あ…」

少女「……。……あれ………?」

子供「おねえちゃん!」ダキッ

少女「わっ」

ライナー「もう治ったのか…!呪文の力は凄いな…」



ジャン「…痛くねぇ。オレの傷も治ってる…!?」

アルミン「本当に!?」

ユミル「魔王軍がつけた傷は魔王軍なら治せるってことかよ…」


イー「…ホイミン、ホルクは?」

ホイミン「後ろ~」


ダークホーン「全く…怪我人がいると知るとはりきりおって…」ハァ ハァ

「走るこっちの身にもなって欲しいわ…」ハァ ハァ


ライナー「あ、あの女も魔王軍なのか…?」

僧侶「油断してはいけません。あの魔物はウィッチレディ。その美貌で人間の男性はたぶらかす魔物です」


ミカサ「!?」

僧侶「…あ、それと私は僧侶です。初めまして」

魔法使い「初めまして初心者冒険家たち!魔法使いよ!」

戦士「戦士だ。よろしくな」

勇者「最後に…僕が勇者。…そして、久しぶりだね」


ユミル「あ? 久しぶり?」

ジャン「誰のことだ?」



アルミン「…あなたは、僕がこの世界で初めて出会った……」

勇者「そう、あの時の青年さ」

アルミン「お、お久しぶりです!その節はありがとうございました!」

勇者「ううん、無事で良かったよ」

ミカサ「アルミン、知り合い?」

アルミン「僕を助けてくれた人なんだ!この杖と盾もこの人がくれたんだよ!」

ミカサ「…そう。アルミンがお世話になりました」ペコリ

勇者「いやいやそんな…」テレッ


勇者「…さて、お前が三将のイーだな!」

イー「あぁ」

僧侶「今現在最も三将の中で前線に出ている者ですね」

イー「間違ってないな」

僧侶「…各地の町を襲い、破壊し続けているようですね」

イー「……ゴタゴタうるせぇ!」

僧侶「!!」

アルミン(いきなり激昂した!?)


イー「…とっととかかってこいよ」


僧侶「なっ…」

勇者「僧侶、もう良い」

僧侶「しかし…!」

勇者「…どう見ても話し合ってくれそうにないよ」

イー「テメェらが人間の5人やら500人やら連れてきてくれたら考えてやるよ」

勇者「」キッ

魔法使い「最っ低…!!」

戦士「貴様に人々など1人もやらん!!」

僧侶「くっ…。本当に仕方ないのですか…!?」


僧侶(…けど、あの人からは…。いえ、あの魔物たちからも……)

僧侶(敵特有の、殺意はほとんどない)



リザードマン「おいおいイー…」

イー「お前らも下がってろよ。子供らを連れてな」

リザードマン「あ゛!?」

イー「勇者一行、まとめて潰す」


ホイミスライム「はいは~い、こっちだよ~」フワフワ

子供「行こっ、おねえちゃん!」グイッ

少女「え? わわっ!」



リザードマン「てめ、オレだって勇者たちとなぁ…」

ゴーレム「ヨセ」

ウィッチレディ「もう無理よ、リュカ」



リザードマン「…」

ウィッチレディ「イーったら……殺る気だわ」

ヘルビースト「…イーの意向に従おうぜ。新たな三将の力を見せつける良い機会だ」


ミカサ「…私も…!」ダッ


ダークホーン「よしてもらおうか」ズンッ

ミカサ「!?」チャキ

トロル「やめとけよぉ…。せっかくイーの奴が見逃してやるって言ってんのに」

アルミン「え…? 何で…」

トロル「ん~…?」ギョロッ

アルミン「ひっ」

ゴーレム「イーハ弱イ者……特ニ弱イ人間ニハ興味ハナイ」


シャンタク「『無闇に殺すな』……」ズシッ

シャンタク「奴が口癖の様に言っている言葉だ。ありがたく思うんだな」


ユミル「…なぁ、鳥」

シャンタク「シャンタクだ」

ウィッチレディ「あら、リリィってかわいらしい名前じゃなかったかしら?」

シャンタク「…で、なんだ人間」

ウィッチレディ「無視は酷いわ…」

リザードマン「からかうからだろ」


ユミル「なんで、あのイーって人間は…魔王軍にいるんだ?」

ライナー「ドン・モグーラは魔王が連れてきたと言っていたが…」


シャンタク「…それは本人に聞くんだな。オレが言って良いことじゃねぇ」

ユミル「へぇ、魔物もそういうことを気にすんのかよ?」

ジャン「おいおいユミル!!」

シャンタク「…あぁ。奴は大切な仲間だからな」

ダークホーン「イーが我らを大切にしてくれるように、我らも奴が大切なのだ」

ホイミスライム「えっへへ~!仲間仲間!」フワッフワッ



ユミル「…ふぅん」


アルミン「…イーの鉄仮面の下は…本当に人間なの?」

ヘルビースト「紛うことなく人間だ。大体歳はお前らくらいか」

ウィッチレディ「あの端正な顔立ち…たまらないわ……」ゾクッ

ゴーレム「…押サエタ方ガ良イカ」

リザードマン「イーの邪魔はしそうにないから大丈夫だろ」


シャンタク「無駄口もそこまでだ。始まるぞ…」

ミカサ「…」

シャンタク「…よく見ておくんだな」

シャンタク「お前たちが一生敵わない、強さを…!」


勇者「」ザッ

イー「…」



勇者「やぁぁぁぁっ!!!」ダッ

イー「真空波!!」バッ


勇者「ぐっ!!」ヒラリ

イー「あれをかわすかよ普通!」ザッ


勇者「稲妻斬り!!」ゴォッ

イー「」チャキ

イー「雷神斬り」バリッ


バリバリバリバリッ!!


ゴォォッ!


ユミル「きゃっ!!」ゴォッ

ライナー「!?」ゴォッ

ダークホーン「雷と雷のぶつかり合い!流石に凄まじい!!」ゴォッ


勇者「ぐっ…」ビリビリ

イー「雷神斬りに稲妻斬りで挑もうなんて……無理な話だ」


アルミン「勇者さんがダメージをくらってる?」

ミカサ「雷神斬りは稲妻斬りの上位技…当然雷神斬りの方が威力は高い」


イー(そういえば他の三人は…?)


戦士「急げ!急がないと勇者が!!」バァッ

魔法使い「やってるわよ!」ブゥン

僧侶「くっ…スカラ!」ブゥン

魔法使い「バイキルト!ピオラ!」ブゥン

戦士「良し!」バァァッ!


イー「…成る程。万能な勇者がオレを1人で相手し、その間に戦士をフル強化。そうしたら戦士が参戦、一気に畳み掛けると」


勇者(バレてる…!!)

僧侶(今まで戦ってきた敵は勇者1人で精一杯だった。その間の私たちの動きなんて気にかける者は1人もいなかった…!)



ウィッチレディ「それなのにイーが勇者を簡単に押さえつけちゃったから…周りを見渡す余裕が持てたと。やっぱりなんだかんだ言って強さが物を言うわね」

シャンタク「当然だ」

リザードマン「第一オレはグループで戦うってのが気に食わねぇ。1人で生死をかけろっての」

ミカサ(…そこだけ共感できる)


勇者「…けど、遅い!!」スッ

勇者「ベギラマ!!」カッ

イー「海波斬!!」ボッ


スパァン!

勇者「ベギラマを…斬った…!?」

イー「…無知な奴だな。海波斬は炎やら吹雪やらを斬るんだ」



ユミル「あれか…。かつてどんな武器にも精通した勇者が発明したという自流剣術の一つ、海波斬」

リザードマン「他にも大地斬と空裂斬があるぜ。イーもオレも全部使える」

アルミン「魔物が勇者の技を使うの!?」

リザードマン「時代は回るんだぜ、ガキ」


戦士「勇者ぁぁ!!」ダァンッ


イー「五月雨斬り!!」バババッ

戦士「ぐぅっ!!」ガキキキンッ

イー(受けた!?)


戦士「ガフッ!!…今だぁ!!!」



魔法使い「メラゾーマァ!!!!」ボァッ

僧侶「バギクロスです!!!!」カッ

戦士「蒼天魔斬!!!!」ドォッ

勇者「ギガスラーッシュ!!!!」ズシャァ



勇者(勝った!!!)



ゴーレム「…ムダダ」



イー「ベタン!!」


ベッコォン!



アルミン「な……」

ジャン「…一定の範囲に重力を何倍もかける呪文………ベタン」

ユミル「呪文一つで、勇者たちの渾身の一撃を防いだのか………」


シャンタク「…アイツに挑むのはまだ早いな、あの勇者どもは」


イー「…けっ。弱いな」

勇者「何!?」

イー「ただ単純に攻めてくるだけなんて………能がないって言ったんだ」


戦士「…じゃあお前だったらどうするんだ?」

イー「ん」クイッ

僧侶「…え?」

魔法使い「……しまった。やられたわ」


アルミン「…僕らの方を指差してるけど…」


ミカサ「…」

ミカサ「………!!?」バッ

ウィッチレディ「気づくのが遅れたわね、お嬢ちゃん」

ダークホーン「貴様らは…先ほどから我々に囲まれている。さりげなくな」


ライナー「!?」

アルミン(…しまった!!友好的に話しかけてきたから気づかなかった!!)

ユミル「ちぃっ…」


ジャン「つまり…オレらが人質ってことかよ」

イー「そういうことだ。もしオレが負けそうになったら、お前らを使って勇者たちを脅してたさ」

イー「どっちにしろ……勇者たちの敗けだ」

勇者「…くそっ!!!」ダンッ



ミカサ「くっ…」チャキ

ホイミスライム「止めといた方が良いよ~。それぞれ1人で僕たち2体を相手にすることになるから~」

ヘルビースト「勇者に劣るような連中がオレたちを1人で2体……そんなものは過信だ」


イー「まぁ人質なんてなくてもオレはお前らに勝てたけどな。まだまだ修行が足りないぜ、勇者御一行」

勇者「…」


イー「しかも、歳下に負けてるし」

魔法使い「と、歳下って…」

イー「オレは15だ」

アルミン「15歳って……僕らと同い年?」

ミカサ「…」


イー「…それに、もうちょっと強くなってもらわねぇと、こっちが困るぜ」ボソッ

勇者「…?」



イー「…まぁ良い。行くぞお前ら」

勇者「な………待て!!」


トロル「ウハハ…。コイツら食って良いってことかよぉ、その言葉は」ベロリ

アルミン「うわっ」

ライナー「アルミン!」


勇者「ぐっ…」

イー「お前らもあいつらも見逃してやるって言ってんだ、ありがたく思いな」



リザードマン「さて、帰るか」

ホイミスライム「帰ったら祝勝パーティ~!」フワッ

ダークホーン「浮かれすぎだ」

ウィッチレディ「ここんとこ毎日浮かれてるわよ、みんな」

ゴーレム「集マレ…」

ヘルビースト「この数でのルーラは大変だな」



ミカサ「待て!!」


イー「あ?」

ミカサ「まだ私との勝負が途中だ!!」チャキ


シャンタク「…めざといな」

ダークホーン「全くだ」


イー「やだ」

ミカサ「」

イー「面倒くさいからな。パス」

ミカサ「ぐぐぐぐぐ…」


ライナー「なぜわざわざ挑むんだ…」

ジャン「ミカサも何だかんだ言って負けず嫌いだからな」

ユミル「アニとの対人格闘の時は酷かったな。どっちも泥まみれになってよ…。エレンがようやく止めに入って終わったからな」

ライナー「あぁ、あれは酷かった。それからミカサとアニは犬猿の仲って風になったよな」

アルミン「…あそこまでミカサが感情を露にしてるの、エレンとアニの前以外で初めて見たよ」



イー(…負けず嫌い、か)


イー「…しゃあねぇな」ヒュッ


ミカサ「…これは?」パシッ

イー「やる。持ってろ」

ミカサ「は?」

イー「それがいつか…オレと再戦するための手がかりとなるだろう」

イー「そして…それはお前が本当のピンチに陥った時にも使える。使えるのは一度きりだがな」

ミカサ「…敵からの贈り物を持ち続けるとでも?」



イー「持ってろ」

ミカサ「…!」


イー「…よし、行くぞ」

ヘルビースト「あぁ」


子供「お兄ちゃん!」

イー「ん?」

少女「助けてくれて…ありがとう!」


イー「…気にするな。至極当然のことをしただけだ」

少女「…ハイ!!」

子供「またね、お兄ちゃん!」ノシ


アルミン「…」


イー「…」チラッ

アルミン「?」

アルミン(…今、誰を見たんだ?)

アルミン(僕たちを……見たのか?)


イー「…生き残れ!!!」

イー「強くなって…仲間を集めて…」

イー「そして!!!魔王城に来い!!!」


勇者「…!!!」

イー「…待ってるぜ」



ヘルビースト「…ルーラ!」



シュウウゥ・・・・・・・・・シュン!


ユミル「…行った……のか?」

僧侶「…もう、町には魔物はいません。完全に撤退した様です」

ジャン「とりあえず……一息つけるぜ」フゥ


勇者「」フルフル

戦士「…強かったな」

勇者「…うん。簡単にあしらわれてたよ」

勇者「強く……ならなきゃ」


魔法使い「その前に町の復興ね」

ライナー「オレたちも手伝うか?」

ジャン「そうだな。傷も治ったし…。これだけが魔王軍と遭遇して唯一の利点か」

ユミル「あのままだったらただの役立たずだったな、お前」



アルミン「…ミカサ、何をもらったの?」

ミカサ「…これ」チリン

アルミン「これは……鈴?」

ミカサ「想い出の鈴……」


・・・チリン


魔王城―――――――――


イー「…つーわけでそいつらにお前の想い出の鈴やったから」スタスタ

キドラ『キー!?』

イー「いざというときは……まぁ、力を貸してやってくれ」スタスタ

キドラ『仕方ないッキーな…』

イー「じゃあな」ブツッ

ダークアイ「通信終了です」

イー「あぁ。…あと、魔王に今回の戦果を伝えておいてくれ」

ダークアイ「い、イー様!!せめて魔王様と…」

イー「ハイハイ。じゃあ魔王によろしくな」スタスタ

ダークアイ「」シクシク


魔王城客室前―――――――


イー「…よう」

ベビーサタン「お帰りなさいませイー様」

イー「お前までその口調かよ…」

ベビーサタン「…仕方ねぇだろ、オレらが怒られんだからよ」


イー「…お姫様は?」

ベビーサタン「寝ておられます。イー様が不在であるということに大変不満そうなご様子でした」

イー「…いつも通りだな。じゃ、入るわ」

ベビーサタン「お気をつけて」

イー「はいはい」ガチャ

ギイッ・・・ パタン


ベビーサタン「…全くよぉ、姫がわがままだと騎士は大変だな」ボソッ


イー「…」ギイッ・・・


パタン


「」スー スー


イー「…グースカ寝てるじゃねぇか。不満な割には」スタスタ


イー「…」ボスッ



「」スー スー

イー「……ようやく、半分だぜ」

イー「なぁ…クリスタ。…いや、ヒストリア」

ヒストリア「」スー スー


コンコン


ベビーサタン『イー様!魔王様がお呼びです!』



イー「…わかった。また後でな、ヒストリア」ナデ

ヒストリア「」スー


イー(…後半分だからな)


魔王の間―――――――



イー「…呼んだか?」


「…今回の戦果」

イー「…」

「…上々に町を破壊し、勇者たちを退けたそうじゃな」

イー「あぁ」

「…して、殺人数0とはなんじゃ」

イー「そのままの意味だろ。偶然だ」


「…やはりお前も人間か」

イー「……確かに人間だが魔族側にはいるぜ」

「そういう意味ではない。人間の甘さが残っておるということじゃ」

イー「…」



「…儂らよりも人間が好きか」

イー「…さぁな。ただ、お前らには感謝してるってことは確かだ」


「…イシュダル」


イシュダル「はい」

イー「…何だ、いたのかイシュダル」

イシュダル「…ごめんね、イー君」スッ

イー「!? 何を………」


イー(……動けない!?)ビタッ


「ほっほっほ……。申し訳ありませんね、イー。私の仕業です」

イー「……!」

イシュダル「あら、三将が揃うのは久し振りね」


イー「どういうことだこれは!!」

「ほっほっほ、今としてのあなたはここまでということです」



イー「…それはオレはもう用済みってことかよ」

「…それは違う。生まれ変わるのじゃ、お主は」

イー「…!?」

「…イシュダル、やれ」

「お早めにお願いしますよイシュダルさん。イーの力を以てすれば拘束は長くは続きません」

イー「ぐっ…」ギシギシ


イシュダル「……闇よ」ズッ

イー「…!?」


イシュダル「彼の者の記憶を…」


イー(記憶!!記憶封印の呪いか!?)



イー「テメェ…魔おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


魔王「…」


イシュダル「彼方へ…」スゥッ


イー「がっ…」カッ・・・





イー「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」キィィン!


イー「あ……」グラッ


ドサッ



「…成功したようですね」

イシュダル「…かつて、如何なる呪いをも弾く勇者がいた。その勇者が最初にかけられた呪い……それが記憶封印の呪い。その強力な呪いのおかげでその他一切の呪いを弾いたという…」

イシュダル「…ただ、私の力では完璧にこなせる呪いではないわ。イー君の記憶がどう変わったかは見当もつかない」

イシュダル「しかし、彼が今まで通りの記憶であることはないわ。恐らくね」


魔王「…また1人、至高の魔族が生まれた。しかも人間の魔族」

魔王「…どの勇者も人間であった。最強の種が人間だと言うならば、人間を配下につければ良いだけのこと」


魔王「かつて、儂を倒した勇者の様に……強くなるがいい、イーよ」



イー(…)

イー(……ヒストリア………キドラ…)


一週間後―――――――


町では――――――――


トンテンカン ソレトッテクレー アイヨ



ユミル「……大分直ってきたな、町」

ライナー「勇者さんたちの手伝いと励ましのお蔭だ。あれは凄かったぞ」

ミカサ「…今回死者は誰も出なかったと聞く。不幸中の幸い…」

ライナー「…偶然……ではないだろうな」

ユミル「あの敵将のイーとかいう奴の方針が『無闇に殺すな』だからな。全く、魔王軍ってのは何がしたいんだ?」



ガチャ


アルミン「ただいまー」

ジャン「転職してきたぞ」


ライナー「何に転職したんだ?」

ジャン「戦士」

アルミン「僧侶」


ライナー「戦士ってオレと被ってるじゃないか」

ジャン「別に勝手だろ」


ミカサ「…アルミン、その本は?」

アルミン「これ?僧侶の書と魔法使いの書」

ユミル「魔法使いの書?賢者でも目指す気かお前」

アルミン「……うん」


ライナー「!?」

アルミン「いや、才能があるから目指してみないかって……」


ジャン「オレも魔法戦士に誘われたぜ」

ライナー「!?」グルッ

ジャン「まぁとりあえずは戦士からってことになったけどな」

ユミル「資質がある奴らは直ぐに誘われるな。私はモンスターマスターに向いてるっていわれたっけか」

ライナー「!!?」グルッ

ユミル「そんなもんやりたくねぇから蹴ったけどな」


ミカサ「…ライナー」

ライナー「……何だ」

ミカサ「…大丈夫」

ライナー「余計に惨めになるわ!!」


ガチャ


勇者「やぁ」

アルミン「勇者さん!」

勇者「復興作業が大分カタがついたからね。少し話さないか?」


魔法使い「勇者から事情は聞いてるわ。異世界から来た……壮大な話ね」

ライナー「他の二人はどうしたんです?」


勇者「あの二人いつも町に着くといなくなるんだよなぁ」

魔法使い「…私たちに気を使ったんでしょ」ボソッ


ユミル「…ははーん」ピカーン

ミカサ「同士」ガシッ

魔法使い「…あなたも?」

ミカサ「」コクッ

魔法使い「…お互いに頑張りましょう!」ガシッ



ジャン「…」


勇者「…で、後何人見つかってないんだい?」


アルミン「八人です」

勇者「うーん、まだ3分の1か」


魔法使い「話を聞くと、全員散り散りに飛ばされたって感じがするけど…」

アルミン「…多分、少し違います」

魔法使い「え?」

ジャン「何かわかったのか?」

アルミン「うん。…これを見てくれないかい?」ガサッ

┌──────┬──────┐
│意識を   │こちらで  │
│失った順  │過ごした時間│
├──────┼──────┤
│1アニ   │?     │
│2エレン& │?     │
│ クリスタ │      │
│3コニー  │?     │
│4ベルトルト│?     │
│5ミーナ  │?     │
│6マルコ  │?     │
│7ミカサ  │約二ヶ月  │
│8ジャン  │約二ヶ月  │
│9サシャ  │?     │
│10ユミル  │約二週間  │
│11ライナー │一週間と三日│
│12アルミン │三日    │
└──────┴──────┘


ライナー「これは?」

アルミン「向こうの世界で意識を失った順とこっちの世界で過ごした時間だよ。ジャンとミカサにも聞いたんだ」

ジャン「…これを見ると、意識を失ったのが早ければ早い程長く時間を過ごしてる様に見えるな」

アルミン「間違いないよ。アニなんて一年くらい過ごしてるかも…」

勇者「…それは、早い段階で意識を失ってしまった人程危険にさらされてるってこと………だね」

ミカサ「そんな………エレン!」

アルミン(…僕なんて、全然ラッキーな方だったんだ)


ライナー「このエレン&クリスタというのは何だ?」

ユミル「アイツらは同時に寝てた。間違いねぇ」




魔法使い「……ねぇレオ」

勇者「ん?どうしたのルナ」

魔法使い「…この、サシャって……」

勇者「…あ!!」


魔法使い「…ねぇ、もしかして、サシャって女の子?」

アルミン「え? はい」

魔法使い「…食いしん坊で」

アルミン「ですます口調で…」


魔法使い「…間違いないわ!」ガタッ

ユミル「知ってるのか?」



魔法使い「この娘、この町に来る時に私たちと一緒にいたの!」



一同「は」


ジャン「…随分近い所にいたもんだな」


ミカサ「一緒に、とは?」


勇者「町に入る時にシャンタクと戦ってね。その際に危険だからって逃がしたんだ」

ライナー「どこに行ったんですか!?」

勇者「…しまったな。忘れてた」


ライナー「」



アルミン「はぁ…。…わかりました。シャンタクと戦った方を探してみます」

勇者「ご、ごめんね?」

ミカサ「いえ、見つかっただけまだマシです」

ユミル「…どうせなら連れてきて欲しかったけどな」ボソッ

ライナー(…いつもだったらここでクリスタのお咎めが入るんだよな)


アルミン「…………うん」

ミカサ「? どうしたのアルミン」

アルミン「もうひとつ、確信できたことがあるよ」


勇者「…彼、何者なんだい?」

ライナー「アルミンです」

ユミル「頭でっかち」

ジャン「魅力的な男の娘」

アルミン「…裁きの杖を振りたくなってきたなぁ」ボソッ

ジャン「」



アルミン「…で、今度はこっちを見てくれる?」ガサッ

┌────────────────┐
│    ___-------   __-_  │
│    |    |   | |__ │
│    |________|   |  | │
│----------__      |  | │
│|ラユ ミジ  | ____   |====| │
│|ア    || └┘   <|?||> │
│----------       <====> │
│      --|?|---      │
└────────────────┘



アルミン「これは僕が、この世界の全貌を記された地図……いわゆる世界地図を写した物だよ。商店にあったから写してきたんだ」

ミカサ「…何故買わなかったの?」

アルミン「僕今無一文なんだよね…」ハハッ


ジャン「世界地図? そんなもんがこの世界にはあるのか?」

魔法使い「あなたたちの所にはないの?」

ユミル「私らの世界はある一定範囲からは出られないようになってんだよ」

アルミン「…その範囲をいつか出るのが、僕と………僕の親友の夢です」

勇者「へぇ………夢……か」


ライナー「このアとかラっていうのは何だ?」

アルミン「アは僕でラはライナーだね」

ユミル「成程。これは私らがどこで目覚めたかの大まかな分布か」

アルミン「うん。…これを見ればわかるけど、意識を失うのが早かった人程…ある方角により近くへと向かっている」



アルミン「ある直線に沿って向かっているのか………それとも」

ミカサ「…この世界の中央の島に向かっているか、ということ?」

アルミン「そういうことだね。…勇者さん、この中央の島には何があるんですか?」


勇者「…」

アルミン「…勇者さん?」


勇者「…この中央の島には、地面にある一つの扉がある。生命体は一体だけだ」


アルミン「…扉……?」


勇者「…強大な魔物がいるんだ。その扉を頑なに守っている、ね」


ミカサ「…まさか、その扉は…」


勇者「…魔王軍の本拠地、魔王城。その魔王城がある魔界へと、繋がっている」



アルミン「!!」

ユミル「…まさかその魔物ってのは魔王軍の…」

勇者「…あぁ。間違いなく魔王軍の紋章をつけていた」

ユミル「…けっ、厳重な警備なこった」


魔法使い「そしてその扉は、もう何百年も開かれたことはないわ。その魔物が扉を守り始めてから、ずっとね」

ライナー「それだけその魔物が強いってことか…」


ジャン「…じゃあどうやって魔王軍の連中はこっちの世界に出てくるんだ?」


魔法使い「ルーラね。魔界への扉が閉じられる前、その時期にこちらの世界に来たことがある魔物にルーラを使わせたのよ」

勇者「一度行き来をすればルーラで移動できるからね…」




アルミン「…まぁともかく、早めに意識を失った人程…魔界の近くに来たのかもしれないね」


ライナー「…魔界に誰かが直接行ったって言う可能性は?」

アルミン「否定出来ないな。…ともかく、各大陸を探しながら中央の島に向かおう。その頃には全員見つかるでしょ…」


勇者「ならば、僕らは今西の大陸に居るから……東の大陸から探索すべきだね」

ユミル「…ま、妥当だな。北の大陸はまだ開拓されてないし、人もほとんど踏み入ってないからな」


ライナー「そんな所を探すのか!?」

魔法使い「原住民はいるわよ。私らの仲間にも北の大陸出身がいるし」


ミカサ「…アルミン、このクエスチョンマークは何?」


アルミン「…さぁ?」


勇者「そこも未開の地だよ。真南のクエスチョンマークの方は海に歪みがあるんだ」


ミカサ「歪み?」

勇者「うん。ある一定の大きさの黒い歪みがそこにはある。その歪みに入ったら最後、帰って来た人はいないらしいよ」


ライナー「…出来ればごめん被りたいな」


ユミル「この東の大陸の方のクエスチョンマークは何だ?」

魔法使い「そこも未開ね。険しい山々に囲まれてて入れないのよ」


勇者「空を飛んだり、山を掘り進むしかないね」


ユミル「…どっちも非現実的だな」

ジャン(この世界自体が非現実的だけどな)


アルミン「…じゃあ最後に一つ。どうやって元の世界に帰るか」


ミカサ「…それは…」

ライナー「…全く見当がつかんな」

ジャン「あぁ。まずどうやってこの世界に来たかがわかんねぇからな」


ユミル「…そんな話、今話しても仕方ねぇだろ」

アルミン「…やっぱり?


ユミル「…」

アルミン「…そうだね。みんなが揃ってからだね」

ミカサ「明日はサシャを捜しに行こう。ようやく人数の半分に迫れる」

アルミン「うん」


ユミル「…」

ライナー「…どうしたユミル」

ユミル「…いや? それと、あんまり熱烈に見つめてくれたらセクハラで叩きのめしてもらうぜ。…ミカサに」

ライナー「」


ユミル(…帰る、か)

ユミル(…この世界には巨人はいない。そのかわり魔物がいるが、言葉は通じる。)

ユミル(巨人化や立体機動装置以外も魔物への対抗策はある。…そう、呪文だの何だのっていう不可思議能力が)

ユミル(…この世界の方がよっぽど安全なんだ)


ユミル(……全員が全員、帰ろうとするのかね)



勇者「若いのに、彼らは自分たちだけでことをなそうとしている。…強いね」

魔法使い「…そうね」

勇者「僕も…弱気になんてなっていられないよ」

魔法使い「…勇者……」


夜―――――――

アルミン「…今夜は満月だね」

ミカサ「…うん」

アルミン「皆も…あの月を見てるのかな」


ミカサ「…そうかも……しれない」

アルミン「きっと………エレンも」

ミカサ「…エレン」


とある戦士の呟き――――――――


ライナー「…満月、か」

ライナー「ユミルの奴、何か思い詰めたような表情をしていたが……やはりクリスタのことなのか」

ライナー「クリスタが…恋しいのかな」


ライナー「…」

ライナー「…ベルトルト、アニ」

ライナー「もしこのままこの世界に居れば……オレたちは……」

ライナー「…みんなを裏切らずに…済むのか……?」


ライナー「…」


【孤独なひねくれ者】――――――



ジャン「…明日は町の郊外でサシャを捜す。それ以降は西の王都って所を目指しながら捜す…」

ジャン「…ミカサは居る。後はマルコか…。死に急ぎ野郎も忘れちゃいねぇがな、あの野郎!ミカサに心配ばかりかけやがって……」

ジャン「……あんなうるせぇ野郎も、いなかったらいなかったで……」ボソッ

ジャン「!? いや、何言ってんだオレェェェェェ!!? …い、いや………そ、そうだ、月のせいだ!」

ジャン「うん、全部満月が悪いんだ!」アッハッハッハッハ



【疑う盗賊】―――――――

アッハッハッハッハ アッハッハッハッハ


ユミル「…うるせぇな! あの馬面!!」イラッ

ユミル「ふぅ…良い湯だってのに、最悪だぜ」チャポン


ユミル「…………クリスタ。生きてるよな?」

ユミル「…あの世界に戻ろうとする奴はどれくらい居るんだろうな。死に急ぎ野郎くらいじゃねぇの?」

ユミル「…いつもだったら、『死に急ぎ野郎なんて言っちゃダメでしょユミル!ちゃんとエレンって呼びなさい!』とかって言われんのによ…」

ユミル「……我ながら似てるな」チャポン



【鍛練する者】――――――――

「はぁっ、はぁっ…!」

「どうした!!若い癖にもう限界か!!」

「…! まだ……やれます、老師!!」

老師「ほっほっほ、良い根性じゃ!ゆくぞい!!」バババッ

老師「この満月が落ちるまでにワシに呪文を当てて見せよ!さすれば試験終了じゃ!」

「ヒャダルコ!!」キィン

老師「ほっ、マホターン!!」キィン

ビキビキビキ!

「うわぁっ!!」ズザァッ

老師「ほっ、終わりかの!?トベルーラ!」ヒュン

「まだまだぁ!!」バッ

(見ててくれ……ジャン、アルミン!!)



【祭られる者】――――――――

リーリー ホー・・・


村人A「…な、なぁ」ビクビク

村人B「な、なんだよ」

村人A「本当にこんな山に…守り神様がいんのかよ」ビクビク

村人B「…さ、さぁな。でもよぉ、オレたちが行かねぇと……村はいつか全滅だよ。次の満月の夜が最後のチャンスなんだ!」

村人A「そ、そうだな。…早いとこ守り神様を見つけてお願いしねぇと……!」

ガサガサ


村人A「ヒィっ!!」

村人B「守り神様か!?」



虎男「グォォォォォッ!!!」ガサッ!


村人B「げぇっ、魔物!!」

村人A「ぎゃあああぁぁぁ!!」


ドゴォンッ!


村人A「…え」

虎男「」ドサッ

村人B「あ………あなたは?」



「…へへっ…………守り神、って奴だぜ。多分な」ザッ


【異端と繋がる者】――――――――

「…」

「…」スゥッ

「…ラー…♪」

「ラァラララァ…♪ ラララララ…♪」

「ラララララァ…ラァラララ…♪」


『…歌って……いますね』

「…あ、ユグドラシル様!」


ユグドラシル『皆も……聞き惚れているようですよ』


「あ、本当だ。もう、ユグドラシル様はどこで歌っても聞かれちゃうから良いけど…………。みんなに聞かれるのはすっごい恥ずかしいんだけど」

ユグドラシル『…満月とあなたの歌う姿が、とても合うからでは?』

「そう言われると…怒れないんだよなぁ、もう!」

ユグドラシル『…もう一度、お願いしてもよろしいですか? 皆を寝かしつけると思って…』

「…しょうがないなぁ!」エヘヘ


【安らぎを得た者】――――――――

「…満月、だ」

「…綺麗、だなぁ。……ん?」チラッ


ガチャ


シスター「…あら、まだ起きていらしたんですか?」

「…シスターこそ。子供たちはもう寝かしつけたので?」

シスター「えぇ。今日もたくさん遊んでましたから。…みんな、あなたが来てから毎日がとても楽しいのですよ」

「…そう言われると、嬉しいです」



シスター「…満月……ですね」スタ・・ スタ・・

「…はい」

シスター「…今宵は、月が綺麗ですね」

「…? …そう………ですね」

シスター「…」

「…シスター?」


シスター「…もう良いです」

「へ?」

シスター「お休みなさい」カツカツカツ


ガチャ バタン!



「…とても怒ってたな。僕、何かしたっけ?」



【誘い込まれる者】――――――――

ワイワイ ガヤガヤ


「フォォォォォ!!美味しい、美味しいですぅ!!」ガツガツ


バニーガール「ハァイ、こちらもいかが?」

「いただきます!!」ヒュッ

バニーガール「あら、何て早業」


「おかわりお願いします!!」ガツガツ


バニーガール「ふふ、かしこまりました~」カツコツカツコツ



バニーガール「…ふふっ、人間なんてチョロいものだわ」

イシュダル「…さぁ、どうかしらね?油断はしない方が良いわ」

バニーガール「い、イシュダル様!」

イシュダル「様子はどう? 今、何人くらいかしら」

バニーガール「順調です!人間が約300人…頃合いかと思われます!」

イシュダル「分かったわ。では…明日準備をして、明後日この人間達を連れていきましょう………魔界へね」

バニーガール「はい!失礼します!」タタッ


イシュダル「…かつて私を殺したのは人間だった。勇者達も皆全て人間……」

イシュダル「…ふふ。その人間が味方だなんて………喜ばしいことこの上無いわ」


イシュダル「ねぇ………イー君?」


【待ち続ける者】―――――――――

「」ブンッ ブンッ

「」シュババババ

「」バシッ バシッ


「……ふぅ」

「…覗き見してないで出てきたら? 賢者」


賢者「あら…今日も修行ですか」



「白々しい。10分も見てたくせに」

賢者「20分ですけど?」

「…」

賢者「…ふふ、冗談ですよ。10分です」

「…で、何の用?」イラッ

賢者「今夜は満月。たまには外に出てみてはいかがです?」

「…」

賢者「…思わぬ旅人に出逢うかもしれませんね」ボソッ

「先にそれを言いなよ」スタスタ

賢者「ふふ、可愛らしいこと!頼れる殿方が居る方は幸せですね」

(…応答したら、敗けだ)スタスタ


ガチャ バタン


賢者「…早く私も勇者君に会いたいなぁ」


イー「…」

「…来てたなら入って来れば良いじゃないか」

イー「…」

「…どうしたの?」

イー「…お前は…オレの友人……だよな」

「…寝ぼけたの? 友人って言い方が正しいかは知らないけど…命を預け合ったことくらいはあるよ」

イー「…初めて会ったの、いつだっけか」

「…はぁ?」

イー「…忘れちまった……」

「…!?」

イー「…思い出せねぇ……。まるで、ぽっかりと穴が空いてるように…」

「…ここで待ってな!!賢者を連れてくる!!」ダッ

イー「あ、おい…」

(何が…どうなってる!? 記憶を無くしたのか…!?)


【戻ってしまった者】―――――――

ベビーサタン「ヒィィィ!!」ダダダダッ

ホイミスライム「あれ~? どうしたのベビーサタン」

ベビーサタン「た、助けてくれよぉ!! ヒストリア様が………ムギュ!?」グワシッ


ヒストリア「ねぇ…メルディ?」ゴゴゴゴゴ

ベビーサタン「は……はい」ガタガタ

ホイミスライム「…あっちゃあ~」

ヒストリア「イーは…どこ?」ゴゴゴゴゴ


ベビーサタン「…夕方に魔王様に呼ばれて…夜になってから出ていきましたぁ!!」ビクビク

ヒストリア「あのじじい…!」ボソッ


ホイミスライム「うひゃっ!!」ビクッ

ホイミスライム(魔王様をじじい呼ばわり……肝っ玉据わってるなぁ)


ヒストリア「行くよ」スタスタ

ベビーサタン「ちょっ、ホイミン助けてくれ!!!」ズルズル

ホイミスライム「…僕し~らない」フワフワ



ヒストリア「…」スタスタ

ベビーサタン(…無言のヒストリア様こぇぇよぉ……イーの奴、早く帰ってきてくれよぉ!?)ズルズル

ヒストリア「」ピタッ

ベビーサタン「…ん? ヒストリア様?」


ヒストリア「静かに。声が聞こえる」ヒソッ

ベビーサタン「…これは…魔王様と…三将の……」



魔王『…して、どうだったんじゃ?』

三将Ⅲ『はい。恐らく、一年以上前のことを忘れたようです』

魔王『…それはつまり、ヒストリア嬢や同期の魔物たちのことは覚えておる、と?』

三将Ⅲ『はい。しかし、その方が我々にとっては都合が良いと思われますが…』


魔王『…うむ。人間を殺さないという甘さは残るが……その方が奴もずっとここに残るじゃろう』

三将Ⅲ『はい。…今は日課の散歩に出掛けているようです。この一年間一週間に一度の散歩はずっと続けてますからね、覚えているのでしょう』

魔王『…散歩…………か。大それた散歩じゃな』

三将Ⅲ『…探りますか?』

魔王『いや、良い。余計なことをして奴を怒らせてみよ。先程みたく上手くいくとは限らんぞ』

三将Ⅲ『ほっほっほ、ですな』


ヒストリア「…」

ベビーサタン(…今のは……イーの話なのか!?一年以上前の記憶を無くした!?)

ヒストリア「…一年以上前の記憶を無くしたってことは、私やメルディたちのことは覚えてるよね」

ベビーサタン「…多分」


ヒストリア「じゃ、良いや」アッケラカン

ベビーサタン「え」

ヒストリア「イー、きっともうすぐ帰ってくるよ。お迎えに行こ」スタスタ

ベビーサタン「…」

ベビーサタン(…良い……のか? 本当に……)


【封印された者】―――――――――


?「…ここは……どこだ?」

?「オレは確か……そうだ、魔王に呼ばれて………拘束されて、イシュダルに…!!」

?「そ、そうだ!記憶封印の呪い…!」

?「…あれ? 記憶なくなってねぇじゃん」


?「…ははっ。なんだ、不発かよ!イシュダルも腕が落ちたなぁ!」ハッハッハ


?「…はっはっは………。……なわけねぇか」


?「ここはオレの記憶の奥底みたいな奴か。くそっ、記憶のあるオレの精神をまるごと封印しやがったな」

?「…けど、今の記憶を無くしたオレは、ここ一年の記憶はある。なら、ヒストリアを守ろうってのは覚えてる筈」

?「キドラにも頼んであるし…大丈夫だろ」

?「…頼むぜ、みんな」

?「早くオレたちのところに…!」


?「…そういえば、オレはどうやったら元に戻れるんだ?」


翌日、北の町郊外――――――


ミカサ「」パキン

ミカサ「…氷の息の痕。間違いない、勇者たちはここで戦った」


ジャン「…すげぇ痕だな。ここら一帯が氷で覆われてる」

ユミル「それだけあのシャンタクって魔物が強かったんだろ。一体で勇者たちと渡り合ったって聞いたぜ」


ライナー「…それで、サシャはどこに?」

アルミン「…サシャを逃がしてから既に一週間が経過してる。とっくに逃げていてもおかしくないよ」

ミカサ「…」

ジャン「町にはいなかったんだよな?」

アルミン「うん。もしいたらいたで、勇者さんたちが連れてきてくれるよ」

ジャン「…さて、どうするかだなこりゃ」

ライナー「ここらへんは平原ばかりで、隠れるような所もない。あるとすれば…小さな林」チラッ



キドラ「…キキッ、ようやくアイツらこっち向きやがったキー」

キドラ「ていうかなんでアイツら一週間も同じ町にいるッキー!? バカみたいだッキー!」プンプン

キドラ「…さて、どうやって接触するッキーか」


チョンチョン

キドラ「いや、後にするッキー。今はアイツらにどう接触するかを…」

チョンチョン

キドラ「だから後に…」

チョンチョン

キドラ「だぁっ、鬱陶しいッキー!!」クルッ



切り株お化けA「…」

キドラ「…なんだ切り株お化けて…ただのザコ…………………」

切り株お化けB「…」

キドラ「…」チラッ

切り株お化けC「…」

切り株お化けD「…」

切り株お化けE「…」

切り株お化けF「…」

切り株お化けG「…」

切り株お化けH「…」

人面樹A「…」

人面樹B「…」

人面樹C「…」

人面樹D「…」

人面樹E「…」

人面樹F「…」

人面樹G「…」




キドラ「…面倒くさ」


切り株お化けs「」ニタァ

人面樹s「」ニタァ



キドラ「キー!!!!」バサバサッ


ミカサ「!?」

ライナー「何だ!?」

ユミル「おい、あの林動いてねぇか?」

アルミン「あ、何か来る…」


キドラ「キー!!助けてッキー!!」バサバサッ

ミカサ「…?」

ジャン「ありゃドラキーだな…ってミカサ!危ねぇ!」



キドラ「キー!!」ボフッ

ミカサ「わ」ダキッ



ジャン「」カチン

ライナー「いや、待て。まだキレるには早いぞ」


キドラ「た、助けてくれッキー!」

ミカサ「?」

キドラ「あれ、あれ!!」


切り株お化けs「」ドドドドドッ

人面樹s「」ドドドドドッ



ユミル「おいおいあの林…全部魔物だったのか!?」

ライナー「こっちに来る……っていうか凄い数だぞ!」

キドラ「切り株お化けが八体、人面樹が七体。めちゃくちゃ面倒くさいッキー!」


ミカサ「あなたは下がってて」

キドラ「た、助けてくれるのかッキー?」

ミカサ「少なくともあなたに敵意はない」

キドラ「…」



アルミン「行こう!」

ジャン「うしっ、久しぶりの戦闘だぜ!」

ライナー「やるか。ユミル、下がってても良いんだぞ」

ユミル「じゃあ下がってるわ」

ライナー「うぉい!!?」


ミカサ「」チャキ



切り株お化けA「ギギッ!」

切り株お化けB「ギギギッ!?」


アルミン「くらえ、裁きの杖を!!」ブンッ


切り株お化けA「」ザクッ

切り株お化けB「」ザクザクッ


アルミン(…そういえば、ジャンはどうやって戦うんだろう?)チラッ


ジャン「」チャキ


アルミン「あれは……レイピア!」


ジャン「疾風突き!!」ヒュォ

切り株お化けC「」ドスッ


ジャン(奴らの弱点だけを正確に狙う!)ヒュォ

ジャン「うらぁ!」


切り株お化けC「」ドドッ

切り株お化けD「」ドドッ


切り株お化けE「ギイッ!」バッ


ジャン「!! チィッ!」グルッ


ドシュ


切り株お化けE「」ドサッ


ジャン「…ナイフ!?」


ユミル「もう少し周りに気を配れ、アホ」ビュッビュッ


人面樹A「グガッ!?」ドシュ

人面樹B「グガガ…」ドシュ


ユミル「ポイズンダガー!!」ドトッ

人面樹C「グガカ…」ドトッ

ユミル「…のろまだな」


ジャン「ぐ…」




ライナー「大、木……」グァッ


人面樹D「!?」


ライナー「斬!!」ブォッ

人面/樹E「カッ」ザンッ!

ライナー「よし、行ける!」グッ


人面樹F「グカカッ!」ワサワサ

人面樹G「グカカッ!」ワサワサ


ミカサ(枝を伸ばして、相手を囲い、止めを刺す…)バッ バッ


キドラ(…でも全然囲えてないッキー)


切り株お化けF「ギギッ!」バッ

切り株お化けG「ギッ!」バッ

切り株お化けH「ギギッ!!」バッ


キドラ(人面樹の枝に紛れて突撃。少しは頭が使えるっぽいッキーが…)



ミカサ「火炎斬り!」ビュッ


ボォン!

切り株お化けs「」パチパチパチ

人面樹s「」パチパチパチ

キドラ(力の差がありすぎて意味無いッキーな)


人面樹G「ギ……」ヒラッ

人面樹A「」パァッ


キドラ(ん……今のは…)


ライナー「終わったか」

アルミン「ミカサの技、凄い効率良いね」

ミカサ「相手が枝を伸ばしてきたから纏めて燃やせるかな、と」

ユミル「うわ鬼畜」

ジャン「……イイ」

ユミル「うわ変態」

ジャン「」


人面樹A「ガガッ!!」ムクリ

ライナー「!!」

ユミル「後ろだミカサ!!」


ミカサ「!!」

人面樹A「ガガッ!」ビュォ!

ミカサ(間に合わない!)グッ

アルジャン「ミカサ!!」



キドラ「ラリルマ!!!」トゥルルルル



ボォン!


人面樹A「ギィアァ…」パチパチ


ミカサ「…え?」

ジャン「何だ…今の」

アルミン「…君が………?」



キドラ(…とりあえず、合格だッキー!)

キドラ「…キキッ、おいらはドラキーのキドラ。よろしく頼むッキー!」

ミカサ「……よ、よろしく」

ユミル「…何だ? このこうもり」

ライナー「…さぁ………?」


ユミル「しかし待てよ。さっきの人面樹、ちゃんと倒したはずだったが…」

ミカサ「…なぜ?あの人面樹は間違いなく鼓動がなかった」

キドラ「さっきの人面樹は世界樹の葉で生き返ったんだッキーな」

ジャン「せ、世界樹の葉だとぉぉぉ!!?」


ライナー「世界樹の葉?なんだそれは」

ジャン「バカかテメェ!世界樹の葉って言ったら冒険者の必須アイテム!しかしその希少価値は高く、ある商人しか売ってくれないっていう超お宝アイテムじゃねぇかぁぁぁぁぁ!!」ユッサユッサ

ライナー「」ガックンガックン


ユミル「そこまで無知なのかよお前…。なぁお前ら」

ミカサ「」メソラシ

アルミン「あー空が青いなー(棒」

ユミル「…」


キドラ「世界樹の葉の効果は瀕死の蘇生。とある商人から買うか……ある魔物が持ってるのを奪うかのどちらかだッキー」

ジャン「なっ…あの人面樹ってのも持ってんのか!?」

キドラ「まぁ代表的な一体ではあるッキー」

ジャン「おいお前らぁ!!!今すぐ探すぞ!!」


ライナー「いやいやいやいや、あれはもう消し炭に………」

ジャン「つべこべ言ってんじゃねぇ!!!」クワッ


ライナー「はい!?」ビシッ

ジャン「さぁがせぇぇぇぇぇぇ!!!!」

ライナー「はいいいいいぃぃぃぃぃ!!!」



ユミル「……あいつ、私より盗賊っぽくね」

ミカサ「」コクリ


アルミン「そうだキドラ、聞きたいことがあるんだけど」

キドラ「キ?」


―――――――――
―――――――
―――――
―――



キドラ「……一週間前、勇者に連れられた一般人?」

アルミン「うん」


キドラ「…あぁ、そういえばシャンタクと勇者たちが戦ってて…僧侶が人間を一人逃がしてたッキー」

アルミン「そ、そうそれ!!その子どこ行ったか知らない!?友達なんだ!」

キドラ「確か………西の王都の方角に向かっていったッキー」

アルミン「西の……王都?」

キドラ「あぁ、この世界には国が二つあるッキー。西の王都と東の王都。この大陸には西の王都があるんだッキー」

アルミン「国が二つも!?」

キドラ「いやいや、北の大陸にも小国があるって噂だッキー。どこかに妖精の国や、魔物の国とかもあるッキー」

アルミン「よ、妖精……?」


アルミン「…ま、まぁとにかく、サシャは西の王都の方に向かったんだね!」

キドラ「こっから東北東の方角だッキー」

アルミン「ありがとう!皆、サシャの居場所が………」クルッ



ユミル「うっしゃあ有ったぜぇぇ!!!!」

ミカサ「くっ、見つからない!」

ライナー「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」ガサガサガサ

ジャン「ナイスだユミル!今日の晩飯はおかずを一品増やしてやるぞ!!」



アルミン「…………」

キドラ「…大変そうだッキーね」

アルミン「うん」ホロリ


アルミン「皆、一回街に戻ろう。準備をして、そのまま西の王都に行こう」

ミカサ「賛成。私も店を売らなければ…」

ライナー「オレは装備を整えたいが………」

ユミル「もぐらたちからパクった宝があるぜ。何か掘り出し物があるかもな」

ジャン「勇者の連中から要らない物でもせびってくるか」

アルミン「うん。二時間後に町の郊外に集合ね」

キドラ「了解だッキー!」ビシッ

一同「え!?」


キドラ「ん?どうかしたッキー?」

ユミル「お前、ついてくる気か?」

キドラ「面白そうだからッキーな」


ユミル「…良いのか?」

アルミン「良いんじゃないかな?食糧もそこまで減りそうにないし」

キドラ「キキッ、足りそうになかったら何か狩るッキー!」

ジャン「…お前、逆に狩られそうだよな」

キドラ「ナメてるッキーか?オイラはお前よりかは強いッキー!」

ジャン「はぁ!?お前、ドラキーなんて精々さっきの切り株お化けぐらいだろうが!」


キドラ「普通のドラキーならばそうだッキー。ただ、オイラは違う。オイラは最強のドラキーである自信があるッキー!」

ジャン「…どっから来んだこの自信」

ライナー「まぁ良いじゃないか。本人もこう言ってるんだし」

ミカサ「虚偽かどうかは一緒に居れば分かる。今疑う必要はない」

キドラ「キキッ!」

アルミン「…うん、じゃあ宜しくね!キドラ!」

キドラ「キキッ、よろしくだッキー!」


北の町にて―――――――――

宿屋――――――


ミカサ「というわけで宿屋を売る。欲しい人…」

男ども「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!」」」」」

ミカサ「………じゃんけん」

男たち「「「「「最初はグーパンんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!」」」」」ドゴォ!

ウラァ ヤッタレヤッタレ!

ミカサチャンノヤドヤハオレノモンジャイ!


ミカサ「…良かった。売れそう」



ユミル「…うるせぇなアイツら!」イラッ

ライナー「まぁ気にするな。お前だってクリスタから贈り物をもらったら嬉しいだろう?それと一緒だ」

ユミル「…ちぃっ。で、何がありそうだ?」

ライナー「まずはお金だな」ヂャラヂャラ

ユミル「けどもぐらどもは金なんか使わねぇからか、あんまりねぇな」


ライナー「うーむ。……お、良い防具」

ユミル「人間用の防具が多い……そうか、武器は連中が加工してスコップとピッケルにしちまうのか」

ライナー「中々良い武器はないな。まぁ一応全部もらうが」


北の町中央―――――――――


ジャン「…ってなわけなんで。もう少ししたら町を出るつもりなんだ」

勇者「そうか…。僕たちも町の復興に目処が立ったら、西の王都には向かうつもりだからね。また会えるよ多分」

ジャン「はい。…それで、旅先不安なんで、何か余った物くれないかなーと」

勇者「あ、わかった。ルナ、マァヤ、ガラマ。何かあったっけ?」


魔法使い「私は全部売り払ってるからなぁ」

僧侶「申し訳ありません、私もちょっと…」

戦士「……これをやろう」つ

ジャン「…なんだこりゃ。指輪?何だっけかこの指輪…」

戦士「お前は戦士だな?」

ジャン「あ、あぁ。いつか魔法戦士にもなれたら良いなと」

戦士「ならば尚更だ。そっち方面も強くならなければならん」

ジャン「…あ、ありがとう。大切にするぜ」

戦士「うむ」

ジャン(…そっちって……どっちだ?)


アルミン「えぇ、この町にはギルドがないの!?」

少女「はい、西の王都に行かないと、ちょっと……」

アルミン「…うーん、そっかぁ……」

アルミン(まぁ今すぐお金が必要って訳じゃないけど、でも早く皆を探したいし…。……とりあえず西の王都までの食糧や水代はミカサの店の代金で賄うしかないか)

アルミン「わかった。ありがとうね」


子供「ねぇ、お兄ちゃん!」

アルミン「うん?」

子供「このまえのお面のお兄ちゃんはぁ?」

アルミン「え…」

少女「わたしもあの人にもう一度会って、ぜひお礼がしたいんですが………どこに行かれたか存じませんか?」

アルミン「…ごめん、ちょっと分からないや」

少女「…そう…ですか」シュン

子供「元気だしてお姉ちゃん!また今度あえるよ!」


アルミン(…彼女らに、彼は敵だなんて言う必要はない)

アルミン(……けど、改めて考えると、何で魔王軍のイーって人はこの子を助けたんだろう?)

少女「…そうだね、またいつか会えるよね!」

子供「うん!」

アルミン(…不思議だ……)


二時間後、北の町郊外―――――――


アルミン「…さて、ミカサの店はいくらだったの?」

ミカサ「二万ゴールド」ズッシリ

ライナー「…それは多いのか?」

キドラ「戦うことが出来ない一般市民や中級冒険者からみたら十分な大金だッキー」

ミカサ「私の宿屋に五人で千回泊まれる額」

ジャン「大金だな!」

ユミル「いきなり楽が出来そうだぜこりゃ」


アルミン「それと、ギルドに皆の捜索依頼を出すのは西の王都に着いてからってことになったよ」

ジャン「この町にギルドなんてもんはねぇからな」

ミカサ「有ったらとっくに私が出している」


ユミル「ま、全ては西の王都に着いてからだな」

ライナー「あぁ。早くサシャに追いつかねばな」

キドラ「キキッ、途中で飛ぶのが疲れたら休ませてもらうッキー」

ジャン「オレ!?」

ミカサ「アルミン、早く行こう」

アルミン「…うん!」


おまけその1

【活躍する者しない者】

クリスタ「進撃ぐだぐだ話~!」

エレン「わーー!!」

アニ「…わぁー」

クリスタ「アニ、テンション低い!」

エレン「アニ、しっかりやらなきゃいけないんだぞ!」

アニ「何で私まで……。ていうか何でこの三人なの?」

エレン「オレたちが一番出番少ないからだってよ」

クリスタ「他のみんなと比べて本当に出番が少ないからだって」

アニ「」イラッ


エレン「その分演出が来いらしいけどな」

クリスタ「私だって!」

アニ「…そ。ならまだマシだね」



クリスタ「ようやく5人揃ったねーアルミンたち」

エレン「後はオレたちを入れて8人か」

アニ「次はサシャらしいね」

エレン「ま、アイツのことだからどうせ食い散らかしてんだろ?色々」

クリスタ「…そういう言い方は良くないと思うけど……そうじゃないとサシャらしくないよね」

アニ(…とても納得できる、何故か)

>>327 訂正∥来い→濃い
―――――――――――――――――――

クリスタ「でも……戦士二人にバトルマスターと盗賊、そして僧侶って…」

アニ「バランス悪いね」

エレン「何でだよ、まさしく『ガンガンいこうぜ』だろ?」

クリスタ「…エレンは絶対アタッカーだよね」ヒソヒソ

アニ「…だね」ヒソヒソ

アニ(…多分私もだけど)

エレン「?」


クリスタ「最終的には職業が被るなんてことはなくすらしいけど……どうだろ」

エレン「コニーをどんな職業にするかってのがまだ決まってないらしいな」

アニ「職業野生児…」ボソッ

エレン「」ブフッ

エレン「あっはっはっはっは!それだそれ!」

クリスタ(否定したいけど出来ない…)プッ


エレン「……さて、そろそろ戻るか」

アニ「あんたらは大変だよね、私に比べて」

クリスタ「…うーん、でも少し嬉しいから」

エレアニ「?」

クリスタ(自分をさらけ出せるからね………)クスッ

エレン「…普段とは違う笑い方だな」

アニ「そうなの…? 私は分からないけど……」


アニ「…まぁ良い。またね」

エレン「おう!」

クリスタ「またいつかねー」ノシ


本日はここまで。ありがとうございました。


【Party1】所持金:21172G

[アルミン・アルレルト] Job:僧侶
E:裁きの杖 E:甲羅の盾 E:絹のローブ
E:神官のタイツ E:皮の靴 E:麻のマント
持ち物:イオの巻物

[ライナー・ブラウン] Job:戦士
E:鉄の斧 E:青銅の盾 E:厚手の鎧
E:皮のズボン E:皮の靴
持ち物:毒消し草

[ユミル] Job:盗賊
E:聖なるナイフ E:聖なるナイフ E:ターバン
E:旅人の服 E:忍のズボン E:木の靴
持ち物:果物ナイフ×10,薬草×10

[ミカサ・アッカーマン] Job:バトルマスター
E:鉄の剣 E:鉄の剣 E:エレンのマフラー
E:絹のローブ E:ガーターベルト E:ハイヒール
持ち物:想い出の鈴

[ジャン・キルシュタイン] Job:戦士
E:レイピア E:銀のリスト
E:皮の鎧 E:鉄の膝当て E:皮の靴
E:破幻のリング
持ち物:魔物図鑑,装備道具全集

【キドラ】 Job:ドラキー
E:スーパーリング
持ち物:悪魔の手鏡(通信用)

【袋】
訓練兵団制服セット×5


【行方不明者】
・ベルトルト・フーバー   ・アニ・レオンハート     ・エレン・イェーガー    ・マルコ・ボット
・コニー・スプリンガー   ・サシャ・ブラウス
・クリスタ・レンズ     ・ミーナ・カロライナ


プリズニャンA「ニャー」

アルミン「こんな可愛らしい魔物もいるんだ」

キドラ「プリズニャンだッキー。油断してると引っ掻かれるッキーよ」

アルミン「…油断、か。けどさぁ…」チラ


ミカサ「邪魔」ブンッ

プリズニャンB「ギニャッ」ザシュ

ユミル「寄るな駄猫」ヒュッ

プリズニャンC「ギッ」ドシュ


アルミン「…あそこまで冷徹になるのもやだなぁ……」グスン

キドラ「…あの女二人はもう少し思いやりの心を持った方が良いッキー」


ライナー「…このまま行くとやはり西の王都に着くな」ガサッ

ジャン「…まぁ……そうだな」

ライナー「サシャが本当にこの道を通ったならばそれは一週間前になる。にしては戦闘の跡があまりないな」キョロキョロ

ジャン「…魔物を避けて通ってんじゃねぇの?」

ライナー「まぁ、あまり戦いたくないという気持ちは分からんでもないが」

ジャン「それか、魔物なんて目に入らない程夢中だったとか?」

ライナー「……何に?」

ジャン「一つしかないだろ」


ライジャン「「メシだな」」ウンウン


ライナー「…まぁ、進むしかあるまい。ここまでは一本道だったんだ。ここらは山も多いし、道を逸れてはいないだろう」

ジャン「だな。…おーい、アルミン!二人と一匹を連れてこっちに来てくれ!行くぞー!」


アルミン「ほら、行くよ二人とも」

キドラ「…なぜわざわざ“一匹”にわけたんだッキー…」

ユミル「良かったじゃねぇか」ププッ

ミカサ「…アルミン、そいつは?」チャキ

アルミン「大丈夫だよ、敵意はないし。さ、お行き」

プリズニャンA「ゴロニャ~ゴ」タタッ



ユミル「あの駄猫も西の王都の方に向かっていくな」

アルミン「何か惹かれる物でもあるのかな?」

ミカサ「……」チラッ

ミカサ(プリズニャン二体の死体が消えている……?)



西の王都と北の町の中間地点―――――



プリズニャンA「ニャゴニャーゴ」タタッ


イシュダル「……あら。プリズニャン、他の二匹は?」

プリズニャンA「やられた振りをしてるニャー。もう少ししたら戻ってくるニャー」

イシュダル「! 人間?」

プリズニャンA「ニャー。人間が五人とドラキーが一匹ニャ」

イシュダル「…ドラキー……? まぁ良いわ。それでは案内してさしあげましょうか………我が館へ」スッ

館「」ザァッ・・・

イシュダル「……さ、入りましょう」

プリズニャンA「ニャ!」


ライナー「……あのうっすら見えるのが西の王都か?」スタスタ

アルミン「うん、間違いないよ」ガサッ

ミカサ「この距離にしては中々大きく見える。かなり巨大な城下町かもしれない」スタスタ

ジャン「時間にすると……あと丸1日くらいか」スタスタ

ユミル「…」スタスタ

キドラ(……ん?)パタパタ


ジャン「しっかしよぉ、何だか襲ってくる魔物の数が減ってきてねぇか?」スタスタ

アルミン「……そう……かな?」スタスタ

ジャン「あぁ。ぱったりいなくなったような……」スタスタ


ライナー「…」スタスタ

ジャン「…み、ミカサはどう思う……!?」

ミカサ「」スタ・・・スタ・・・

ジャン「お、おい、ミカサ!道から逸れてるぞ!?」

ユミル「」スタ・・・スタ・・・

ジャン「おいおい、ユミルもかよ!何やって……」

キドラ「静かに!」

ジャン「はぁ?」


キドラ「アルミンとライナーのふたりもだッキー」

アルミン「」スタ・・・スタ・・・

ライナー「」スタ・・・スタ・・・

ジャン「なっ…」

キドラ「四人とも同じ方向に行き始めてるッキー」

ジャン「同じ方向って言ったって……あっちは森だぞ!」

キドラ「つけてみるッキー!」パタパタ

ジャン「あ、おい!」ダッ


北東の森―――――――――

ジャン「…何だあいつら。どこまで行くんだ?」ガサガサ

キドラ「さぁ…」パタパタ

ジャン「ていうかよぉ、あいつらに声かけて止めりゃ良いじゃねぇか!」ガサガサ

キドラ「…サシャって子を探してるんじゃないないのッキー?」パタパタ

ジャン「!?」

キドラ「もしかしたら、サシャって子もこんな風に連れ去られたかもしれないッキー。奴らの本拠地までつけて、サシャって子がいるか否かを探すべきだッキー」パタパタ

ジャン「奴ら?奴らって誰だよ!」ガサガサ

キドラ「ミカサたちに幻惑をかけた者たちだッキー」パタパタ

ジャン「幻惑……ミカサたちを連れ去ろうとしてるってことかよ!?」ガサガサ

キドラ「恐らく……」パタパタ


四人「」ザッ


ジャン「ん?あいつら止まったぞ!」ガササッ

キドラ「あれは……館?」パタパタ


四人「」スタ・・・スタ・・・

ジャン「館に入っていく……。どうする、オレたちも追いかけるか?」

キドラ「…そうだッキーな。追いかけるべきだッキー。ただ、ちょっと待って欲しいッキー」

ジャン「あぁ?」

キドラ「………モシャス!!」ボワンッ

ジャン「うお!?」


生娘「ジャーン!!」キャピッ

ジャン「は?」

生娘「あ、お前のことじゃないッキーよ」

ジャン「おま………キドラか!?」

生娘(キドラ)「あったりッキー!!」


ジャン「な、なんでモシャスでそんな風になれるんだよ!?モシャスってその場にいる奴らの姿を借りて変身する呪文じゃねぇの!?」

生娘(キドラ)「オイラはある呪文を会得する為に特別な鍛え方をしてるッキー。この“何にでも変身できるモシャス”はその過程で得た副次的なものに過ぎないッキー!」

ジャン「呪文………。いや、もうひとつ言いたい事がある。なんで女なんだよ!?」



生娘(キドラ)「だってオイラ♀だし」

ジャン「」


生娘(キドラ)「ほら、早く行くッキーよ」スタスタ

ジャン(…もうどうにでもなりやがれ畜生!!!)ダッ


館内――――――――――


ワイワイ ガヤガヤ


ジャン「…なんだこりゃ」

生娘(キドラ)「たくさんの人間たち…」

ジャン「いや、それはまだ良い…」

ジャン「こいつら………一体何やってんだ!?」

生娘(キドラ)(ここはまさか…魅惑の館!?)


ワイワイ ガヤガヤ

ユミル「………ん?」ハッ

ユミル「…あれ、ここどこだ?」キョロキョロ

ユミル(こんなにたくさんの人間たち…………いつ現れたんだ!?)

ユミル(いや待て!その前にミカサたちがいない!一体どこに!?)

ユミル(くっ…一瞬で罠にはめられた!?それとも、今の今まで私に意識がなかった!?)

ユミル(あのこうもり野郎か!?あいつくらいしかこんなこと出来そうなのは…!)


「…ユミル?」

ユミル「!?」クルッ


ライナー「ぐっ…ここはどこだ?みんなはどこに?」キョロキョロ

ライナー「それに何だこの人の数は!いつの間に…」

バニーガール「お兄さ~ん、飲み物いるぅ?」つ

ライナー「え、あぁ……。頂こう」テレッ

ライナー(中々の谷間…)

バニーガール「お兄さん、私なんかに見惚れちゃったらダメよ?」

ライナー「あ、いや、その…」

バニーガール「後ろの女の子が悲しむわよ~」スタスタ

ライナー「え!?」クルッ

「…」


アルミン「ここは…?」キョロキョロ

アルミン(…いつの間にか意識を奪われた?誰に?)

アルミン(……恐らく、この建物の支配者に)

アルミン(他のみんなは無事なのか…?僕らをどうする気なんだ?)キョロキョロ

アルミン(…ダメだ。人混みが多すぎて見つからない!)

「おまえ……アルミンか?」

アルミン「え!?」クルッ


ミカサ「あぁっ…」ギュッ

「く、苦しいってミカサ…」

ミカサ「本当に…無事で良かった」ギュッ

「…ミカサもな。他のみんなもいるのか?」

ミカサ「アルミンもライナーも…ユミルもジャンもいる」ギュッ

「アルミンがいるのか!早く会いに行こうぜ!」

ミカサ「…もう少しだけ」

「?」

ミカサ「もう少しだけ、このままでいさせて欲しい……エレン」ギュッ・・・

エレン「…仕方ねぇなぁ」フゥ


ユミル「クリスタ!」ダキッ

クリスタ「わわっ」

ユミル「クリスタ、よく生きてたぜこの野郎!」ギュウギュウ

クリスタ「く、苦しいってユミル…」

ユミル「お前みたいな死にたがりが、よくもまぁ…」

クリスタ「うん。助けてくれた人たちがいたから…」

ユミル「助け……た?」

クリスタ「…うん」


ライナー「く、クリスタ…」

クリスタ「ライナー!無事だったんだね、良かったぁ~」ホッ

ライナー「クリスタこそ…無事で何よりだ」

クリスタ「うん!お互い…本当に」

ライナー「オレだけじゃない、アルミンもミカサも、ジャンも……それにユミルもだ」

クリスタ「ユミルも居るの!?」パァッ

ライナー「あぁ!後で会いに行こう。クリスタはどうしてここに?ここは一体…?」

クリスタ「私ね、助けられたんだ……」

ライナー「助けられた?誰に?」


クリスタ「…」


アルミン「え、エレン?」

エレン「やっぱりアルミンか!ははっ、絶対生きてるって思ってたぜ!」

アルミン「エレンこそ!」

エレン「まぁな。そうだ、オレ以外にも生きてる連中を見つけたんだ」

アルミン「僕もミカサにジャン、ユミルとライナーと一緒さ!」

エレン「マジか!じゃあ全員集合だな!」

アルミン「本当!!?」

エレン「あぁ。何せオレらは助けられたからな」

アルミン「助けられた?誰に?」


エレン「…」


ミカサ「…そう。エレンはたった一人…」

エレン「あぁ。ま…別に何ともねぇけどな」

ミカサ「大丈夫。今日からは私が一緒にいる」

エレン「…うるせぇよ」テレッ

エレン「…オレも今まで連中の助力があって生きてきたからな」

ミカサ「連中?」

エレン「あぁ……」






クリスタ『魔王軍にね』

エレン『魔王軍にな』


ワイワイガヤガヤ オイシイデスゥ

ジャン「こいつら……一体何食ってやがんだ?」

生娘(キドラ)「野草に魔物のエサ…人間が食べれないわけではないけど、美味しいものでもないッキー」

ジャン「けど、こいつらは旨い旨いって…」

生娘(キドラ)「…どうやら、幻惑状態にあるようだッキー」

ジャン「幻惑?」

生娘(キドラ)「いわゆるマヌーサだッキーな」

ジャン「!!」


生娘(キドラ)「…オイラは奥を調べてくるッキー。その間にジャンはみんなを探すッキー!」タタッ

ジャン「お、おい!」



タタタッ・・・

ジャン「あの野郎……行っちまいやがった」

ワイワイガヤガヤ オカワリデスゥ


ジャン「…くそっ、とりあえずあいつらを探さねぇと…」キョロキョロ


オカワリ オカワリィ!


ジャン「さっきからうるせぇな!!おかわりだの美味しいですだの何だの……………!!」クルッ



サシャ「おかわり、おかわりぃ!」ガツガツ


ジャン「ってお前かよ!!!」ビシッ


キドラ『魅惑の館?』

イー『あぁ。三将のイシュダルが営んでる』

イー『人間を無闇に殺すのはよくないって三将の二人に言ったらよ、二人ともが“誘拐”って答えを選びやがった』

イー『イシュダルのやり方を体現したのが魅惑の館だ。あの館で人間を誘き寄せ、ある程度人間が集まったら、魔界にある人間の街へと送還する』

キドラ『…まぁ、確かに人間を傷つけてはいないッキーけど』

イー『…まぁな。魔王軍に殺されるよりかは余程マシだ。それに、道中に魅惑の館を置くことによって連絡も断てる』

イー『尚且つ、勇者たちは罠に掛けず通す』

キドラ『…成る程。人が段々消えていけば最終的には勇者たちが探りを入れ始め、勇者たちだけがその道を通れるという話になる。そうすれば勇者たちは魅惑の館周辺にでずっぱり』

イー『その隙に他の大陸に侵攻する。随分といやらしい手だ。あいつらしい…』

キドラ『キキッ、イーのやり方に反してないのもいやらしいッキー!』パタパタッ

イー『全くだ』ハァ



生娘(キドラ)(…ここが魅惑の館ならば!どこかに……!)キョロキョロ

生娘(キドラ)(…居た!)ピタッ



イシュダル「……あら?何だか妙に騒がしいわね」スタスタ


生娘(キドラ)(…イシュダル!)

生娘(キドラ)(やばっ、隠れないと…)ササッ



イシュダル「…入り口の方かしら?」スタスタ



生娘(キドラ)(入り口……ジャンかッキー!?)

生娘(キドラ)(追うべッキーか!?いやでも、イシュダルに勝てるわけがないし…)

生娘(キドラ)(…いや、まずはこの幻惑状態をつくってる奴から倒すべッキーだッキー!!)ダッ



ジャン「テメェは何してんだよ芋女!!さっさと目ぇ覚ませ!!」ユッサユッサ

サシャ「ご飯おいし~……」ガックンガックン


破幻のリング「」キィン

サシャ「」パァッ


ジャン「…ん!?」

ジャン(今、光った…?)



サシャ「まだまだいけます~……………………………ん?」

サシャ「…あれ、ジャンじゃないですか」

ジャン「Σ遅い!!もっと早く気づけバカ!!」

サシャ「まぁまぁ、久しぶりですね!再会を喜び合う為にまずはパーッと食べましょう!美味しいですよ~」

ジャン「そんな不味そうなもの食うかよ!!まだ幻覚を見てるのか!?」

サシャ「へ?」チラッ

サシャ「」


ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!



サシャ「私の豪華暴れ牛鳥の焼肉三昧がァァァァァァ!!!?」

ジャン「牛か鳥かどっちだよ!?ていうかちょっと黙れ!!!」ガシッ

サシャ「」モガモガ

ジャン(こいつ、幻覚が見えてない!!幻惑が治ったんだ!…でも、なんでだ…?)


サシャ「……あ!」プハァ

ジャン「今度は何だ!」

サシャ「あれ、ミカサじゃありませんか?」ユビサシ


ジャン「何!!?……本当だ、ミカサだ!お前よく見つけられるなあんな隙間の所を…」

サシャ「目と観察力は確かですよ!」フンス


ジャン(こいつ、使える!)キラン

ジャン「おい、他の連中も探せ!」

サシャ「え?他にも誰か居るんですか?」

ジャン「あぁ、早く………………!!?」


グァッ!

サシャ「」ゾクッ

ジャン「」ゾクッ


ジャン(…な、何だこの威圧感は!?)


・・・スタ・・・スタ・・・


イシュダル「…あら。可愛らしい子達ね」


ジャン(…こ、こいつか!?)

イシュダル「…幻惑が効いてないのかしら?」

ジャン「!! やっぱりこの騒ぎはお前の仕業か!!」



イシュダル「…ふぅん………面白そうね」

ジャン「!!?」

サシャ「…」



イシュダル「私はイシュダル。魔王軍三将の1人よ」

ジャン「さ、三将だと!?」


ジャン(…ってことは、あのイーと同格!?何だってこんな奴がここに………)


サシャ「…」

イシュダル「…その指輪…かしら」

ジャン「何?」

イシュダル「破幻のリングね。マヌーサを打ち消す指輪…」

ジャン「破幻………」ハッ

ジャン(そうだ破幻のリング!装備大全集にも載ってた希少なアクセサリー!)

ジャン(戦士のおっさん、良いものくれたぜ…!)

破幻のリング「」キラン



イシュダル「…けど、私の計画には邪魔ね。その指輪、私にくださる?」

ジャン「ふざけるな!!お前、ここの主だな!?ここの人間たちをどうした!?何が目的だ!!」

イシュダル「ふふっ、血気盛んね」

イシュダル「…ここは魅惑の館。推察の通り、私がここのオーナーよ。ここでは望む物を得られるの」

ジャン「望む物…」

イシュダル「そう。この人間たちは今、自分の望む物が叶う幻覚を見ているわ」

ジャン(…どうやら間違いねぇようだな。こいつが豪華な飯の幻覚を見てたのが良い証拠だぜ)チラッ

サシャ「?」


イシュダル「それに設定を追加して、魔王軍に好印象を持たせるようにもしてあるけど」

ジャン「!? 洗脳ってわけか…?」


イシュダル「言い方が悪いとそうなるわね」

ジャン「ちっ…!!」


ジャン(魔王軍……その中でもこいつはとびっきりまずい奴だ!何とか逃げないと、魔王軍の奴隷にされちまう!)


ジャン「おいサシャ、逃げ………!?」

サシャ「」ギリギリ

イシュダル「あら、大きな弓矢」


ジャン「お、おいサシャ?」

サシャ「逃げますよジャン!!」ビシュッ

イシュダル「!!」サッ

イシュダル(矢の先に玉!?)


ボワン!


モァモァ・・・


イシュダル「煙玉!」


サシャ「早く!」タタッ

ジャン「ナイスだ!」タタッ


イシュダル(出口へ…!?)

イシュダル「門番、門を閉めなさい!」

―――――
―――


ジャン「お前、弓矢が使えるのか!」タタタッ

サシャ「えへへ」タタタッ

サシャ「…とりあえず、ここら辺に隠れましょう。人混みでそう簡単には見つからない筈です」サッ

ジャン「よし」サッ



サシャ「…さて、これからどうします?出口は閉められちゃったようですけど」

ジャン「とりあえず、他の奴らを探さないとな…。後はどうやって出るかだが」


サシャ「…」キョロキョロ

サシャ「ダメですね。人と雑踏が多すぎて他の方々を見つけられません」

ジャン「くっ…」

ジャン「…そういえばキドラはどこだ?」

サシャ「キドラ?誰ですかそれ」

ジャン「ドラキー……いや、今は人間か」

サシャ「?」

ジャン「全体的に紫っぽい格好をした女だ。年齢はユミルくらい」

サシャ「…うーん、見つかりませんねぇ」キョロキョロ

ジャン「くそっ…」


・・・キィン


サシャ「…うん?」ピクッ

ジャン「どうした!?」

サシャ「何か今呪文の音がしたような…」

ジャン「どっちだ!?」

サシャ「部屋の隅の方…あっちです」

ジャン(結構距離があるな……イシュダルの方向じゃなさそうだ)

ジャン「…良し、行くぜ」タッ

サシャ「はい!」タッ


笑い袋「ケケケ!マヌーサ!」キィン


ジャン「あれは……確か笑い袋って魔物だ」

サシャ「変な魔物ですねぇ…」

ジャン「どうやらあいつがマヌーサを部屋全体にかけてるみたいだな」

サシャ「でも、この大きな部屋全部にあんな魔物一匹で呪文をかけられますかね?」

ジャン「他にもいるんじゃないかってことか?」

サシャ「えぇ………」キョロキョロ

サシャ「…全部で8匹ですね。部屋の八方にいます」


ジャン「…お前、そいつらを撃ち抜けるか?」

サシャ「うーん、誰か他の人に当たるかもしれません…」


ジャン(…どっちにしろ、人手が足りないな。イシュダルを抑える奴も必要だから………キドラが見つかればまだマシなんだが)

ジャン(…ん、人手?)

ジャン「…そうだ!」

サシャ「静かにしてください」ブンッ

ジャン「へぶっ!?」ボカッ

サシャ「狩りをするときは私たちは周囲と一体になるようにしましょう。ブラウス流狩人術です」

ジャン「」ピクピク


生娘(キドラ)「ようやく見つけたッキー…笑い袋」コソッ

笑い袋B「ケケケ!マヌーサ!」キィン

生娘(キドラ)(他にも何体かいる…早く仕留めなければ!)

生娘(キドラ)「くらえ………」ヒュルル




バニーガール「はぁいお嬢さん」

生娘(キドラ)「!?」クルッ

バニーガール「あら…とんだ曲者かしら」


生娘(キドラ)「…お前、魔物…!?」

バニーガール「……へぇ」バッ

エンプーサ「よっぽど死にたいようね」バサッ

生娘(キドラ)「エンプーサ!?」

エンプーサ「さぁ死になさい!」グァッ

生娘(キドラ)「ちぃっ!!」

ボカァン!


イシュダル「…あら。誰か暴れ始めたわね。エンプーサかしら?」

イシュダル「それにしても、さっきの子たちはどこに行っちゃったのかしら?」

イシュダル「あの指輪だけはもらっておかないと………」


「ゲァァッ!!」

イシュダル「!」

イシュダル(今のは……笑い袋の悲鳴!)

イシュダル(誰かが笑い袋を倒した?さっきの子たちかしら)


イシュダル「…」


ビシュン!

イシュダル「!」サッ

イシュダル(今のはさっきの弓使いの子みたいね。私の足止めをしながらもう一人の子が笑い袋を倒して回る、か)

イシュダル「…甘いわね。そこにいるのでしょう?」

人混み「」Σギクッ


イシュダル「マヌーサ」キィン

人混み「」ポワン

イシュダル「笑い袋を倒して回るにはどうしても破幻のリングが要る。ならば私を足止めする役は破幻のリングを持っている訳がない……迂闊だったわね」







人混み「」ビシュン!


イシュダル「な」


パシッ

イシュダル「…どういうことかしら。マヌーサが効いてないわけ?」

人混み(や、矢を素手で取ったぁ!?)


「ギャアアァ!」

イシュダル(また笑い袋がやられた。急いだ方が良さそうね)


イシュダル「………確認すれば済むことね」バサッ

人混み(つ、翼!?飛べるんですかあれ!)


イシュダル「ほぉら、見ぃつけた………………………!?」バサッバサッ

サシャ「くっ!」ギリギリ

ジャン「早くしろ芋女!来るぞ!」


イシュダル「なっ……二人!?」

イシュダル(じゃあ、笑い袋をさっき倒したのは!?一体誰が!?)



ボカァン!

「ギャアアァ!」

イシュダル「!?」


イシュダル(今、爆発音と悲鳴が別々の所から聞こえた。爆発音はおそらく、エンプーサと誰か。悲鳴は誰かと笑い袋!奴らは四人……!?)


サシャ「余所見はダメですよ!」ビシュン

イシュダル(まさか…嵌められた!?)ガシッ

サシャ「なっ!余所見しながら取られました!」

ジャン「あいつ……化け物かよ!」


イシュダル「仲間を……潜伏させていたようね」

ジャン「!!」

イシュダル「…」キョロキョロ

イシュダル「…居た。エンプーサと戦っているのは紫の女の子。笑い袋を倒して回ってるのはマフラーの女の子……」

ジャン「!!」

サシャ「バレちゃいましたよ!」ギリギリ

ジャン「クソッ!」チャキ


イシュダル「…してやられたわ。それにしても、あの二人はマヌーサは効かないの?」

ジャン「…」

―――――――――
―――――――
―――――
―――



破幻のリング『』キィン

ミカサ『エレン…』パァッ

ミカサ『………え?』

ジャン『おし!』

サシャ『ミカサ、大丈夫ですか!?』

ミカサ『ここは……』キョロキョロ


ジャン『説明してる暇がねぇ!ここは敵地!今からオレたちがすることはあの笑い袋を8体倒すこと!その間魔王軍の三将を足止めすること!それらを終えたらアルミンたちを回収、そして逃げる!質問あるか!?』

ミカサ『…エレンはどこ?』

ジャン『あいつが居るわけあるか!そりゃ幻覚だ!』

ミカサ『…このサシャも幻覚?』

サシャ『わ、私は本物です!』

ミカサ『』ジーッ

サシャ『う、疑ってるんですか!?』

ミカサ『…ここにパンがあ サシャ『パァンください!!』……わかった。本物』


サシャ『ミカサ、パァン!』

ミカサ『ない』

サシャ『』ガーン

ジャン『…とりあえず、三人で固まらねぇとな。マヌーサにもう一度かかるのもバカらしい。この破幻のリングから離れるなよ』

ミカサ『…マヌーサ』

サシャ『幻惑呪文だそうです』

ミカサ『……成る程。ならば私は大丈夫』

二人『?』


ミカサ『最初は不意討ちで喰らったが、今は警戒してる。問題ない』

ジャン『み、ミカサ?』

ミカサ『私が警戒してるならば、私に状態異常は効かない。私は自らの身体を100%支配できる』

二人『』


ミカサ『顔が割れてない私が笑い袋を倒して回る。二人に足止めをお願いしたい』

サシャ『…改めてミカサって凄いですね』

ジャン『…言うな。惨めになるのはお前よりはオレなんだからよ』

ミカサ『?』


―――――――――
―――――――
―――――
―――



ミカサ「フッ!」ヒュン

笑い袋D「ゲゲァッ!」ザシュッ

ミカサ「討伐数4。残り4…」タタッ

ミカサ(急がなければ、二人が危ない…)タタタッ


ジャン「はぁっ!」ダァン

イシュダル「」ギロッ!

ジャン「ギッ!?」ピタッ

サシャ「ジャ、ジャン!?」ギリギリ

ジャン(か、身体が動かない!?)グググッ

イシュダル「あなたたち人間なんてこんな程度よ。私が一睨みするだけで身体が止まる」

ジャン(何だこれ!マジで動かねぇ!)グググッ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年02月01日 (日) 12:40:00   ID: n130GJ_Q

期待

2 :  SS好きの774さん   2015年02月08日 (日) 22:20:43   ID: _EBjSmMQ

続き早く

3 :  SS好きの774さん   2015年03月01日 (日) 12:52:42   ID: KNhd8qnk

アルミンの活躍に期待!

4 :  SS好きの774さん   2015年03月01日 (日) 18:35:02   ID: rvVsm_7S

期待

5 :  SS好きの774さん   2015年03月05日 (木) 19:30:52   ID: kbd-XhsX

続きマダー?

6 :  SS好きの774さん   2015年03月15日 (日) 09:11:18   ID: HauMZ940

続きまだあ

7 :  SS好きの774さん   2015年03月16日 (月) 18:24:34   ID: 8B66oAUi

もう無理かな


8 :  SS好きの774さん   2015年03月24日 (火) 20:17:08   ID: pL9sZUz7

続き書いたのなら教えてください!
お願いします。

9 :  SS好きの774さん   2015年03月28日 (土) 09:33:05   ID: r9RWzFdV

SSノートに、続き書いてあったよ。

10 :  SS好きの774さん   2015年06月08日 (月) 18:18:54   ID: 4qKsZP7W

http://www.ssnote.net/archives/32924

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