ガンダムAGE ~ヒロイン達の目線~(55)




age……どうしてこうなった。

そんな思いから、ちょっと妄想したssです。


だけど>>1は、アセム編の途中で切ってしまった上にドラマcdも聞いてません。

公式ガン無視なので、キャラ崩壊が多分あると思います。


そのへんは、ぐっとこらえて見てください。

あしからず……。





 ――アスノ家宅――



ユノア「ただいまー」

エミリー「お帰り、ユノア」

ユノア「あ、お母さん」

エミリー「今、ちょうどお茶にしようと思ってたの」

エミリー「あなたもどう?」

ユノア「わお! それはいい時に帰ってきた!」

エミリー「ふふ、マフィンを焼いたの。 お兄ちゃんの分は残してあげてね?」

ユノア「はーい!」


     コポポポ……

ユノア「んー! いい匂い!」

ユノア「お母さんの入れる紅茶って、ホントにステキ!」

エミリー「ふふふ、おだてても お小遣いは、あげないわよ?」

ユノア「ちぇー」

エミリー「はい、マフィン」 コト…

エミリー「ミルクは いる?」

ユノア「あ、うん!」

ユノア「いただきまーす」

エミリー「いただきます」


ユノア「美味しい!」

エミリー「うん、我ながら上手く焼けてるわ」

ユノア「いつか私も作りたいな♪」

エミリー「ええ、いつでも教えてあげるわよ?」

     アハハ……

ユノア「お兄ちゃん、今日も遅いのかな……」

エミリー「そういえば、部活で忙しいって言ったわね」

エミリー「ms部?だったかしら……?」

ユノア「そうそう。 そんな名前だったね」


ユノア「…………」

ユノア「ねえ、お母さん」

エミリー「ん? 何かしら?」

ユノア「お父さんの事……好き?」

エミリー「……? ええ、もちろん」

ユノア「そう……なの?」

エミリー「どうして、そんな事を聞くの?」

ユノア「…………」

ユノア「今のお父さん……なんか、好きじゃない」

エミリー「…………」

エミリー「そう……」


ユノア「お母さんは、お父さんのどこを好きになったの?」

エミリー「ふふ、そうね……」

エミリー「話すと長くなるわよ?」

ユノア「いいよ。 私、聞きたい」

エミリー「そう……わかったわ」

エミリー「…………」

エミリー「ちょうど、今のユノアくらいの時かしら?」

エミリー「私が お父さんの事、はっきりと意識したのは……」

ユノア「へえ……」

エミリー「でも私とお父さん、幼馴染だったから」

エミリー「その辺りは、ちょっと曖昧かな……」 クスッ


エミリー「でもね……ヴェイガン……あの当時は、ue(アンノウン・エネミー)って呼んでたけど」

エミリー「私達の住んでたコロニーにも襲撃してきたわ……」

ユノア「うん……歴史の授業で習った」

エミリー「…………」

エミリー「お父さん、その時にね」

エミリー「お母さんを……ユノアから見たら、お祖母ちゃんに当たる人を」

エミリー「亡くしたの……」

ユノア「…………」

エミリー「お父さん、もの凄く怒ったわ……」

エミリー「私には、チンプンカンプンだったけど」

エミリー「ヴェイガンの襲撃を予測までしていたのに、大切な人を守れなかったから……」

ユノア「…………」


エミリー「お父さん、ガンダムに乗り込んで」

エミリー「連邦軍ですら成す術が無かったヴェイガンを 初めて倒す事が出来たの」

ユノア「ふうん、凄いね。 お父さん」

エミリー「……お母さんは、ちょっと怖かったけどね」

ユノア「どうして? 頼もしいじゃない」

エミリー「確かにそう……。 でも、それは」

エミリー「お父さんは、常に戦いの矢面に立つ事を決意した、という事でもあるわ」

エミリー「いつか……お父さんが居なくなってしまうんじゃないかって」

エミリー「お母さん、怖かったな……」

ユノア「…………」


ユノア「それから?」

エミリー「結局、私達のコロニーは崩壊してしまうわ……」

エミリー「で、お父さんは、ガンダムに乗ってたけど」

エミリー「逃げ遅れてた女の子を救助してたの」

ユノア「おー……なんかドラマチックな展開」

エミリー「私は、その時のいきさつを全く知らなかったけど……」

エミリー「その時の女の子からもらったリボンを」

エミリー「今でも大切に持ってるわ」

ユノア「んな!?」

ユノア「ひっどーい! 浮気だわ! 浮気!」

エミリー「うふふふ……」


ユノア「どうして笑ってられるのよ、お母さん」

エミリー「こんなの、まだ可愛い方だからよ」 クス

ユノア「……私、本格的にお父さんの事、嫌いになるかも」

エミリー「まあまあ……いいから聞いてくれる?」

ユノア「むう……」

エミリー「……それからの私は、お父さんの傍に居たくて必死だったな」

エミリー「軍艦のディーヴァに密航したりもしたし」

ユノア「お母さんが!?」

エミリー「そうよ? 恋の力って、偉大だなって思うわ」 クスッ

ユノア「それでそれで?」


エミリー「しばらくは、何の進展も無かったわ」

エミリー「私もバルガスの手伝いや、雑用で忙しかったし……」

ユノア「えー……」

エミリー「お父さんもリボン握りしめて、上の空だったし」

ユノア「ホントにお父さん、サイテー」

エミリー「でもね……、一生懸命だったわ」

ユノア「…………」

エミリー「ヴェイガン、という驚異が迫っているのに」

エミリー「コロニーの内部で派閥争いをしたり」

エミリー「めんどくさがって、何もしない連邦軍だったり……」

エミリー「ユノアと同じくらいのお父さんが、それら全部を何とかしようとしてわ」

ユノア「…………」


エミリー「もちろん、そんな状況をお父さん一人だけで、一変させるなんて出来なかった」

エミリー「お父さんは……自分に出来る事の限界を知って」

エミリー「悔しそうだったわ……」

ユノア「…………」

エミリー「そして、ね……」

ユノア「うん」

エミリー「当時は知らなかったけど……」

エミリー「あのリボンの持ち主と再会があったそうよ」

ユノア「んな!?」

エミリー「グルーデック艦長の作戦で、立ち寄ったコロニーの有力者に」

エミリー「孤児になった彼女は、引き取られていたの」

ユノア(何? その運命的なドラマ展開……)


エミリー「私はその時、ディーヴァでお父さんの力になりたくて」

エミリー「必死の訓練をしてたけど……」

エミリー「その女の子と、ピクニックしたりしてたそうよ」

ユノア「……お母さん。 よくお父さんと結婚したね」

エミリー「結婚してから聞かされたから……」

ユノア「私なら離婚してる」

エミリー「……そうね」

エミリー「この後の話が無ければ……」

エミリー「そうしたかもね……」

ユノア「……何があったの?」


エミリー「今の話を聞いた、きっかけでもあるんだけど」

エミリー「お父さん寝言で……」

エミリー「”ユリン”って、言ったのよ」

ユノア「それが浮気相手の名前だった、と……」

エミリー「まあ、その話を聞いた時、もう『過去』の話だったから」

エミリー「浮気……と言うのは、酷いかもしれないけどね」

ユノア「……お母さん、優しすぎるよ……」

エミリー「もちろん、ただでは済まさなかったわよ?」

エミリー「お父さん叩き起して、誰なの!? って問い詰めたわ」

ユノア「お母さんのターンね!」

エミリー「ふふふ……」


エミリー「でも……」

ユノア「……?」

エミリー「……ユノアは、xラウンダーって、聞いた事はあるかしら?」

ユノア「ううん……知らない」

エミリー「そう……」

エミリー「簡単に言うと……msに乗る上で、この上なく」

エミリー「力を発揮できる超能力……らしいわ」

ユノア「ふうん……」

エミリー「で、ね」

エミリー「そのユリン、という女の子は」

エミリー「特に優れた、xラウンダー能力を持っていたそうなの……」

ユノア「…………」


エミリー「彼女と別れた後、お父さんの知らない所で」

エミリー「彼女はヴェイガンにさらわれた……」

エミリー「その、たぐいまれなる才能のせいで」

ユノア「…………」

エミリー「……そして、お父さんはユリンと再び再開する」

エミリー「戦場で、敵として……」

ユノア「ウソ……」

エミリー「彼女は、ね」

エミリー「本心で敵対してたわけじゃ無かった」

エミリー「その力だけを、msのパーツとして組み込まれていたの」

ユノア「…………」


エミリー「お父さんは、何とか救おうとしたけど……」

ユノア「…………」

エミリー「結局……彼女をその手にかけた」

ユノア「……っ!」

ユノア「あんまりだわ! そんなの……酷すぎる!」

ユノア「ヴェイガンは人間じゃない!」

エミリー「…………」

エミリー「……お父さんも同じ事を言ってたわ」

ユノア「……!」

エミリー「……でね、お母さん、彼女の話を聞いてから」

エミリー「何にも言えなくなっちゃった……」 クス…


エミリー「当時は……ユノアと同じくらいで」

エミリー「恋愛って言うより、『一緒に居たい』ってだけの……」

エミリー「…………」

エミリー「……ううん、何を言っても負け惜しみね」

エミリー「きっとお父さんは、誰よりもそのユリンという女の子が好きだった」

エミリー「そんな人を……理由はどうあれ、自分の手で殺してしまった」

ユノア「…………」

エミリー「お母さん……お父さんを放って置けなかった」

ユノア「…………」

ユノア「……でも」

エミリー「ん?」


ユノア「お父さん、やっぱりずるいと思う」

ユノア「そんな事は、お母さんと結婚する前に言うべき事だよ」

ユノア「私は……私だったら」

ユノア「自分の好きな人が、自分を一番好きじゃ無いなんて……」

ユノア「絶対、嫌だもん!」

エミリー「…………」

エミリー「……そうね」

エミリー「きっとユノアの意見は、正しいわ」

エミリー「だけど……」

エミリー「やっぱり、好きなんだもの。 お父さんの事」

ユノア「……!」


エミリー「幼い頃から見て来たお父さんは」

エミリー「強くて、賢くて、頼りがいがあって……素敵な所がたくさんあるの」

エミリー「けど同時に、融通が利かない頑固さや、思い込みが激しい、という」

エミリー「欠点がある事に気がついた……」

ユノア「…………」

エミリー「そしてそれは」

エミリー「私も同じなんじゃないのかな?と感じる様になったわ……」

ユノア「…………」

エミリー「ねえ、ユノア」

ユノア「うん……」

エミリー「ユノアの小さい頃、お父さんはユノアに酷い事をした?」

エミリー「ユノアに、愛情を注がなかった?」

ユノア「…………」


エミリー「……夫婦ってね」

エミリー「お互いの欠点が、よりはっきり見えてくるの」

エミリー「お母さんが、お父さんの嫌な所を見つけてしまった様に」

エミリー「お父さんもお母さんの嫌な所を見つけていると思うわ……」

ユノア「…………」

エミリー「もちろん、私だって わだかまりが全く無い訳じゃない」

エミリー「でも、お父さんはユリンという人への想いを断ち切れなくても……」

エミリー「私を愛してくれている……」

エミリー「それを私は知っているから、はっきり言える」



エミリー「私は、お父さんを……フリット・アスノを愛してるって……」



ユノア「…………」


エミリー「ふふっ……何だか恥ずかしい事言ってるわね、私」

ユノア「ううん……そんな事ないよ」

ユノア「私、お母さんの気持ちが聞けて」

ユノア「とっても嬉しい!」 ニコ!

エミリー「そう……」 ニコ

ユノア「でもやっぱり、お父さんずるいと思うな」

ユノア「連邦軍のお偉いさんになってから、お母さんをないがしろにしすぎだよ」

ユノア「もっと傍に居てあげて!って言ってやるんだから!」

エミリー「ふふ、ありがとう、ユノア」

エミリー「お母さん、嬉しいわ」 ニコ


エミリー「でも……今は、そっとしておいてあげて?」

エミリー「お父さん、大事なお仕事をしているだろうから」

ユノア「……はぁ~い」

エミリー「さて……あら、紅茶、冷めちゃったわね」

エミリー「入れ直すわ」

ユノア「あ! お母さん、私も手伝う!」

エミリー「そう? じゃあ、そっちのポットを持ってきてくれる?」

ユノア「はーい!」


―――――――――――





―――――――――――

 ――最終決戦・セカンドムーン戦後――

 ――アスノ家宅――



     ギィィィィッ……

????「……ただいま」

エミリー「!?」

     タッ タッ タッ…

エミリー「フリット?」

フリット「ああ……エミリー。 ただいま」

エミリー「い、いったい、どうしたの?」

フリット「……もう、あそこで ワシのやる事は無くなったから」

フリット「みなに任せて、一足先に帰ってきたんだ」

エミリー「ううん……私が言いたかったのは……」


フリット「……?」

エミリー「いえ……何でも無いわ」

エミリー「それじゃあ、いつも通り お風呂で汗を流しますか?」

フリット「……そうだな」

フリット「でも……その前に」

エミリー「……?」

フリット「君に謝っておきたい……」

エミリー「!? ……あなた?」

フリット「…………」


フリット「どうか、聞いて欲しい」

エミリー「…………」

フリット「……ワシは、今回の戦いが終わって、やっと」

フリット「自分の歩んで来た道を振り返る事が出来た」

フリット「血塗られた、ワシの過去を……」

エミリー「…………」

フリット「そして……」

フリット「その道すがら……」

フリット「いつも陰、日向に、支えてくれていた存在が居てくれた事に気がついた」

エミリー「…………」

フリット「思えば……ワシがまだ、ケツの青いガキの頃」

フリット「ディーヴァに乗り込んだ時から……」

フリット「……いや」

フリット「もっと前から……」




フリット「君は、ワシの傍に居てくれていたんだ……」



エミリー「…………」

フリット「すまない、エミリー……」

フリット「こんな……こんなに時間をかけてしまってから……」

フリット「君の大切さに……やっと気がつくなんて……」

フリット「ワシは……ワシは……!」 グスッ…

エミリー「…………」

エミリー「……フリット」

エミリー「顔を上げて? フリット…」

フリット「…………」


エミリー「……いいのよ」

エミリー「私は……私自身が、それを望んだのだから」

エミリー「それに……ちゃんと、私に気づいてくれた」

エミリー「それだけで、私は……嬉しいわ」

フリット「エミリー……」

     ギュッ……

フリット「すまない……エミリー、許してくれ……エミリー」 ポロポロ…

フリット「今更だけど……ワシは……ワシは……」 ポロポロ…

エミリー「いいの……フリット」 ポロポロ…

エミリー「もう……いいの」 ポロポロ…

エミリー「あなたの気持ちは……わかっているから……」 ポロポロ…

フリット「いや……だめだ。 言わせてくれ、エミリー……」 ポロポロ…


フリット「ワシは、君を……エミリーを愛している……」 ポロポロ…

フリット「誰よりも……君を……」 ポロポロ…

フリット「愛してる……!」 ポロポロ…



エミリー「ええ……ええ……」 ポロポロ…

エミリー「わかって……いたわ……」 ポロポロ…

エミリー「私を……愛していてくれた事に……」 ポロポロ…

エミリー「そして……ずうっと、あなたが……苦しんでいた事にも……」 ポロポロ…

エミリー「だから……もういいの……フリット……」 ポロポロ…



―――――――――――


エミリー「はい、あなた。 お風呂上がりのビールをどうぞ」

フリット「ああ、ありがとう、エミリー」

     ゴク ゴク ゴク…

フリット「ふう……美味いな」

フリット「今日のは、格別だ」

エミリー「ふふ、いつもと同じビールですけどね」 クスッ

フリット「そ、そうか……」 ///

     ハハハ……

フリット「さて、と」

フリット「エミリー」

エミリー「はい?」


フリット「ワシは……これからの時間を」

フリット「出来る限り、君の為に使いたい」

エミリー「あら」

フリット「……ただ、どうすれば、君が喜んでくれるか」

フリット「それがわからなくてな……」 ///

エミリー「あらあら……」 クスッ

エミリー「ちなみに、どんな計画を立て様としたのかしら?」

フリット「まず、最初に考えたのは、プレゼントだ」

フリット「でも……君の好みを良く知らないし」

フリット「モノで君の心を釣っている様で、どうも……という気がして」

フリット「もちろん、欲しいモノがあったら遠慮なく言ってくれ」

エミリー「ふふ、そうね。 いつか利用させてもらうわね」


エミリー「それで、他には?」

フリット「次に考えたのは、旅行だ」

フリット「新婚旅行もほとんど、おざなりだったしな」

エミリー「そうだったわね」

フリット「だけど……今は、大きな戦いが終わったばかりで」

フリット「危険が伴ってしまう……」

フリット「観光には、まだ時期尚早かな……」

エミリー「そうねぇ……」

エミリー「他には?」


フリット「そこで、最初の文言になった」

フリット「気の望む事を、出来る限りやる」

フリット「それならば、君の気持ちに答えられるんじゃないか?」

フリット「そう考えたんだ……」

エミリー「どんな事でも?」

フリット「ああ、もちろんだとも」

フリット「君が望むなら、屋敷の掃除だって 洗濯だって 庭の草むしりだって」

フリット「何だってやるとも!」

エミリー「まあ……嬉しいわ」

エミリー「でも洗濯は、洗濯機を壊した前科があるから、頼まないけどね」 クスッ

フリット「あ、あれは、手順がわからなかっただけだ」 ///


エミリー「でも……」

エミリー「あなたのその気持ちが、とても嬉しい」 ///

フリット「エミリー……」

エミリー「そうね……」

エミリー「…………」

エミリー「そうだわ……!」

エミリー「さっそく、したい事があったわ」

フリット「よし、それはなんだ?」

エミリー「ふふ、それはね……」


―――――――――――




 ――数日後――

 ――アスノ家を見下ろす丘――



エミリー「ほうら、フリット」

エミリー「もう少しよ?」

フリット「ふう……ふう……」

エミリー「ふふ、無理はしないでね?」

フリット「な、何の、これしき……ふう……ふう……」

     チュピ…… チュピピピピ……

エミリー「はい、お疲れ様」

エミリー「着いたわ」 ニコ

フリット「ふーっ……」


フリット「な、情けないな……」

フリット「これしきの事で、息が切れるとは……」

エミリー「しょうがないわよ」

エミリー「フリットは、低重力下での生活が長かったのだから」

フリット「そ、それにしても、君は元気だね……」

エミリー「趣味でガーデニングとか、していますから」 ニコ

エミリー「庭仕事って、意外と体力を使うのよ?」

フリット「そうか……ワシも今度やってみようかな?」

エミリー「いいわね。 私、張り切って教えてあげる」

フリット「ハハハ……」


     サアアアアア……

エミリー「…………」

フリット「…………」

フリット「……木陰の風が、気持ちいいな」

エミリー「ええ……」

     トク トク トク…

エミリー「はい、冷えたお茶よ」

フリット「おお……ありがたい。 いただこう」

フリット「グビグビッ……ふー。 美味い」

エミリー「良かった」 クスッ


フリット「…………」

フリット「……それにしても」

エミリー「ん?」

フリット「こんな近場のピクニックで いいのか?」

エミリー「ええ……」

エミリー「もっとはっきり言うと」

エミリー「場所は、どこでも良かったの」

フリット「む?」



エミリー「あなたと……二人きりで、ピクニックに行きたかった」



フリット「そうなのか……?」


エミリー「もう……」

エミリー「全然わかってない」

フリット「え!? す、すまん……」

フリット「だが……どういう事なんだ?」

エミリー「…………」

エミリー「ユリンとは、行ったんでしょ? 二人きりでピクニックに」

フリット「ぬがっ……!」

フリット「そ、そういう事だったのか……」

エミリー「そうよ? 私……悔しかったんだから」

エミリー「もの凄く」

フリット「す、すまない……」


エミリー「ふふ……でも、もういいの」

エミリー「今、フリットは」

エミリー「私の傍に居てくれてる」

エミリー「若い頃なら、きっと彼女に勝った、とか思うんだろうけど……」

エミリー「今は……彼女に会えるのなら、会ってみたいって思ってる」

フリット「そ、そうなのか?」

エミリー「同じ人を好きになって……」

エミリー「二人きりだった時、どんな気持ちだったのか」

エミリー「フリットを どんな風に見ていたのか」

エミリー「フリットを どんな風に好きだったのか」

エミリー「会って、話をして聞いてみたい」 クス

フリット(……なぜか嫌な汗が出る) ダラダラ…


エミリー「後は、フリットの悪口も言い合いたいな」

フリット「どうしてそうなる……」

エミリー「あら、二人の女の子のハートを盗んだ罪は、重いのよ?」

フリット「返す言葉もない……」

エミリー「ふふ……ごめんなさい」

エミリー「ちょっと いじめすぎたわ」 クス

フリット「胃に穴が空くかと思ったよ……」

     サアアアアア……

エミリー「…………」

フリット「…………」


フリット「……どうして、忘れていたんだろう」

エミリー「え?」

フリット「ワシは……ユリンと過ごした数日……」

フリット「コロニー内の人工環境だったのに」

フリット「風の心地よさ、小鳥のさえずり、川のせせらぎ……」

フリット「それらが、とても素晴らしいものだと感じていた」

エミリー「…………」

フリット「だが……今の今まで、すっかり忘れていた……」

フリット「どうして今、思い出したのだろう……」

エミリー「…………」


エミリー「……それはきっと」

エミリー「あなたが……自分を許したからよ」

フリット「……!」

エミリー「あの日……」

エミリー「セカンドムーンの戦いの後、帰ってきた時」

エミリー「あなたは、『ただいま』って言ったの」

フリット「……?」

フリット「いつも言っていただろう?」

エミリー「……ううん」

エミリー「あなたはいつも」

エミリー「『戻ったぞ』だったわ」

フリット「……本当か?」


エミリー「ええ」

フリット「まったく気がつかなかった……」

エミリー「そう……」

エミリー「私は、それを聞いて」

エミリー「フリットは自分を許して、終りの見えない戦場から本当の意味で」

エミリー「『帰ってきた』って感じた」

フリット「…………」

フリット「……そうだ」

フリット「きっと……そうだな……ふふ」

エミリー「…………」







エミリー「お帰りなさい」

エミリー「フリット……」

フリット「…………ああ」





フリット「ただいま、エミリー」






―――――――――――




 それからの フリット・アスノと エミリー・アスノの
仲睦まじさは、多くの人々が目撃している。

 戦後復興でのアドバイザーで、時折、長旅に出かける際も
フリットの傍らには、優しく微笑む彼女の姿が必ずあった。


 フリット・アスノの晩年は、長年酷使し続けた体ゆえか、病床に伏せる事になる。


 ……だが、彼はいつも笑っていた。
いつも笑顔のエミリー・アスノが傍らに居たのだから。

彼の周りは、常に笑い声で溢れていた……。







 ……そして、彼を看取ったのも彼女、エミリー・アスノであった。

「ありがとう」の言葉を最後に、笑顔で旅立ったフリットを
彼女は、彼と同じ様に笑顔で、静かに涙を流し「こちらこそ、ありがとう」と
フリットを見送ったのだった……。



 それから二年後……彼女、エミリー・アスノも息を引き取った。



彼女は、いつもと同じくガーデニングの最中だった。

死因は心不全、とされたが、苦しんだ様子もなく
安らかな顔で庭に倒れていた所を発見される。







 ――そして――

 ――その手には――



 ――おそらく、日課になっていた――





 ――フリットの墓に添えられるはずだった花が、一輪――





 ――握られていた――





―――――――――――

     ……ェ………リ………エ………リー…

????「エミリー」

エミリー「……えっ?」

エミリー「フリット?」

フリット「良かった、気がついたかい?」

エミリー「あれ!? なんで、昔の……少年の姿なの!?」

エミリー「っていうか、私も!?」

フリット「はは、どうしてかな?」

フリット「僕にもわからないよ」

フリット「一つ言える事は……君も旅立ったって事かな」

エミリー「……そっか。 私、死んじゃったのね」


???「はじめまして」

エミリー「え?」

エミリー「あなたは……?」

???「私はユリン。 よろしくね」 ニコ

エミリー「! あなたが、ユリン!」

エミリー「わぁ~……やっぱり可愛い女の子だなぁ~」

ユリン「ありがとう……」 ///

ユリン「ところで、エミリーって、呼んでもいいかな?」

ユリン「私の事も、ユリン、で、いいから」

エミリー「うん! もちろん!」

エミリー「よろしくね、ユリン!」

     アハハハ……


ユリン「あなたの事、フリットからたくさん聞いた」

ユリン「エミリーは凄いんだぞ」

ユリン「エミリーは、エミリーは、って」

ユリン「凄く惚気られたわ……」 クスッ

エミリー「フ、フリット……バカ……」 ///

エミリー「嬉しいけど、ユリンの気持ちを考えなさいよ……!」 ///

フリット「い、いや~……何か、止まらなくて……」 ///

ユリン「ふふ、お互い、厄介な人を好きになっちゃったね」

エミリー「ホントにそうね……」

エミリー「でも、私、あなたに会えて、とても嬉しい!」

ユリン「うん、私も、あなたとお話したかった!」


ユリン「何から話そうかしら?」

エミリー「やっぱりフリットの悪口?」

ユリン「そうそう! 私もそれがいい!」

     アハハハ……

フリット「……えっと、出来れば、本人の目の前では止めて欲しいけど」

フリット「まあ、好きにしてくれ……」

エミリー「うん! 好きにする!」

ユリン「ね!」

フリット「それじゃ行こうか?」

エミリー「え? どこに?」

エミリー「あ……なぜか、あっちに行かなきゃ、ってわかる」

フリット「うん、そうだね」


フリット「たぶん、あの世って奴かな?」

エミリー「……あれ?」

エミリー「フリットは、二年も前に……」

フリット「……エミリーを待ってた」 ニコ

エミリー「!」

フリット「君と、一緒に行きたかったから……」

エミリー「フリット……」 ジワ…

エミリー「バカ……」 グスッ…

フリット「でも、僕なんて、まだまださ」

エミリー「……え?」


フリット「だって……ユリンは、70年も僕を待っていたんだから」

エミリー「……!!」

ユリン「……ちょっと、辛かったけどね」 ///

エミリー「…………」

エミリー「……まったく、フリットは、ホントに罪作りなんだから……」

フリット「……ごめん」

エミリー「まあ、いいわ」

エミリー「行こう? ユリン、フリット」

ユリン「うん! エミリー、フリット」

フリット「ああ、行こう! エミリー、ユリン!」



フリット「僕達を待つ、新しい世界へ!」



     エミリー編 おしまい

エミリーは酷かった……。いや、ageのメインヒロインの扱い、みんな酷いんだけど
特に報われて欲しいな~と思ったヒロインだった。(あくまで個人的解釈ですけど)
age終わってから書き始めたけど、結局今頃投下……。
ロマリー編いつ投下できるやら……。あと、読んでくれた人ありがとう。

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