ユウキ「キミへ」 (14)

ユウキとアスナ(SAO)に関するネタバレあるかも
書き溜めなし
ただのポエム
若干、百合






眩しい。
太陽だ。
ボクの目の前に、
広がっている。

光。

全ての光。
朝靄の中で、
神に祈りを捧げるように、
ボクは剣をかざした。
右手にはとても大切な仲間の手を握り締めていた。

剣は光を遮って、
ボクらの顔に陰を作った。
それ以外の全てを照らしてくれる、光。

「アスナ」

名前を呼ぶと、必ず笑ってくれる。

「なあに」

問いかけてくれる。
瞳の中に、焼き付けるように、じっとこちらを見る。
彼女の癖なのか。
どうなのか。
わからないけれど。
その瞬間、ボクは彼女の中にいるんだと、
とても落ち着いた気持ちになる。




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優しいのだ。
お母さんのような。
お父さんのような。
姉ちゃんのような。
離れても、そばにいる。

優しいものは、どうしていつも、
こんなに近くまできてしまうのだろうか。
近すぎて、今まで頑なに張っていた線を
飛び越えて、すぐそばまで来て。
本当は、ダメなのに。
優しい人を、傷つけたくなんかないのに。

優しく頭を撫でて、ここへおいでと手招きする。
そこへ行くわけにはいかないのに。
足はふらふらと向かう。
突き放そうとしても、ダメ。

「森の家、今日は誰も来ないの?」

「そうよ、今日はね二人だけ」

「そっか」

「のんびりできていいでしょ」

「うん、キリトはたまに小言を言うからね」

「あらあら……ふふ」

ゲーム中なら、どんな敵が出たって、
いの一番に突っ込んでいく。
猛進して、ぶつかって。
後ろなんて振り返ってられない。
それが楽しい。
生きている実感が湧く。
なにしろ、それがボクの全てだ。
ボクは人生の全てを捧げている。
この、仮想世界に。
でも、不意に。
驚かされる。
あまりにも近くにいるものだから。
錯覚してしまう。

触りたいと、欲求が生まれてしまう。
それは、そう。
赤ん坊が腕を広げて、
母の温もりをせがむように。
手を伸ばせば、掴めるんじゃないかと
そんな思い込みに過ぎないけれど。

「そう言えば、キリト君がまた決闘したいって……ぼやいてたよ」

「えー、今度は両手剣?」

「んーどうだろ」

「なんか、片手だとアンバランスだよね、あの人」

「やっぱり分かるんだ」

「まあ、ボス部屋の前であんな戦い見せられたらねえ」

「でも黒い剣と金色の剣って地味なの派手なのどっち? って思っちゃった、私」

「あの人は、金より黒って感じだよね」

「そうそう、金は似合わない」

アスナは言ってから、苦笑した。

「今のは内緒ね」

人差し指を薄桃の唇に当てる。

「うん、わかってるよ」

仮想世界で握り締めた手の感触が、どこまでリアルを再現できているのかというと、
ボクには、もうよくわからない。
遠い遠い昔。
感じたことがある。
でも、忘れてしまっている。
そう、忘れてしまっているだけ。
思い出せないだけで、ボクの体にはきっと記憶されている。

だから、まだ、手を繋ぎたい、と思うのだ。
それは、ボクがまだ生身を忘れていないという証かもしれない。

「今日はね」

ぽつりとアスナが言った。

「ユウキと二人になりたかった」

互いにソファに座って、手を握り、窓の外を見ていた。
雪が降っていた。
部屋は暖かい。
そういう設定変更だ。ただの設定。
BGMの音量を調節したり、グラフィックの解像度を上げることと、
なんら変わりない。
でも、暖かい飲み物を飲みたくなるし、暖かいシャワーを浴びたくなる。

現実世界で目覚めた時には、絶対にそんなこと思わない。
ただ、クラゲみたいにボクは海中を漂っている。
そんな気分で。

クラゲにいるのはほんの少しのエネルギーだけ。
例えば、本物のクラゲは体の拡張と縮小を行う過程で、
クリティカルな一時休止を挟み、高効率な推進性を
獲得している。

ボクは、ほんの少し体力を削って、
成長と崩壊の傍ら、
仮想世界で暴れまわり、
現実世界でふよふよとジェルに身をゆだねている。

キミが近づいてきて、ボクを見つけてしまった時は、
とても驚いたけど。
ボクはただ、ふよふよと漂うクラゲだった。
これからもずっと、クラゲ。

ボクは海の上で、波の気のまま、ダンスを踊る。
キミの清らかで、優雅な動きには劣るかもしれないけど。
速さなら負けないよ。


「だから、誰も呼ばなかったの?」

ボクは聞いた。

「……ええ」

「嬉しい……」

ボクは笑った。

こてん、とアスナの頭がボクの肩に置かれた。

「今日は、帰るまで、こうしてたいなあ」

「甘えん坊だ」

「そうよ、知らなかったの?」

「全然、知らなかったよ」

「私、たぶん年下に甘えるの……好きなのかも」

最後の方は、尻すぼみであまりよく聞き取れなかった。
その照れくさそうな感じ。
優雅?
じゃないかもね。

「お疲れモード?」

「ユウキの子守がちょっとね」

「えー!?」

「うそうそ」

笑い声が、広いログハウスに響く。
こんな日々が、とてつもなく愛おしい。
アスナが大好きだ。
大好きで、大好きで堪らない。

「アスナ」

「はーい?」

ボクはゆらゆらと漂うクラゲになって、
キミのすぐそばで踊っていたい。

どこにいても誰かを想ってしまう切ない気持ちを、
ボクはきっと、生涯、どの世界に行こうとも、
忘れることはない。
幸せだ。
もしかしたら、一目惚れ?
女の子同士だから、それはないか。
ただ、この想いを。
心からの幸せを。
いつまでも。
どこまでも。
願わくば忘れたくないよ。

「大好き」

恥ずかしそうに笑った。





おわり

SAO見るたびに、ユウキ熱もらう。
誰か書かないかな。ユウキとアスナss

難しいんだよ
あの病気は下手なこと書けないし……

>>10
ですよね……
自分もぼかして書くくらいしかできない……

>>10-11
逆に考えるんだ。病気じゃなかったことにすれば良いんだ、と考えるんだ。

ユウキとかユージオとかみんな生きてて幸せな世界なssとか読んでみたい

>>12
>>13

優しい、泣いた

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