ユウキ「ジュカイン、ハードプラント!!」 (33)

RSリメイク願ってSS書きます

更新はめちゃめちゃ遅いのがデフォですので、一日一レスしてたら僥倖程度に思っておいてください

対戦大好きなので廃人要素あり

ストーリーはゲームの方中心

XYはやったことないので、技や特性などは全てBW2までのものを使用

地の文あって小説っぽいので、それが嫌ならカッコ書きのとこだけ読むのも有りだと思います

以上のことが許せるなら、読み進めていただけると幸いです!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1395452842

構わないけど、そういうペースなら速報より深夜のが良いかも
とりまきたい

ガタガタとトラックが揺れながら森林に囲まれた道を走る

車体には”ゴーリキー運送”と書いてある

そのトラックのコンテナ内部で眠る一人の少年

真っ赤なバンダナと白いニット帽が印象的なその少年は、懐にラルトスを抱き、二人仲良く寝息を立てていた

トラックはやがて森林を抜け、開けた道を走る

そして段々と失速していき、遂には完全に止まった

バタンと扉が開かれ、斜陽がコンテナ内に差し込む

少年は眩しそうに目を細めながら、起床した

運転手「着いたぞ、坊主」

ユウキ「…ふあ~、着きましたか。じゃあ降ります。起きろラルトス」

少年は左手でラルトスを揺り動かしながら、もう片方の手で、眠そうに目を擦る

ラルトス「…ラル~」

ポケモンはトレーナーによく似るというが、ラルトスの方も、少年と同じように目を擦っていた

運転手「よし、起きたな」

ユウキ「はい、すいません」

少年がコンテナから飛び降りると、それにラルトスも続く

ママ「お疲れ、ユウキ。疲れたでしょ?」

降りた先には少年母親が立っており、長旅に対する労いの言葉をかけてきた

ユウキ「殆ど寝てたし、こいつもいたから退屈しなかったよ」

そう言って、少年はラルトスを両腕に抱きかかえた

ラルトスも嬉しそうに少年に頬ずりをする


運転手「それじゃあ奥さん、ちゃっちゃとはこんじゃいますね」

ママ「あ、はい。お願いします!」

少年の母親が頼むが早いか、運転手は腰に手を掛け、モンスターボールを二つ取り出した

運転手「行けっ、ゴーリキー!」

運転手がそれを放り投げると、二つのボールは空中で何回転かすると、唐突に開き、中から人型の、少年とほぼ同じ大きさのポケモンが出てきた

ゴーリキー「「ゴーリキ!」」

運転手「よし、ゴーリキー、いつも通りやってくれ!」

ゴーリキー「「ゴーリキ!」」

ゴーリキーたちは、元気良く返事をすると、コンテナ内に入り、自分と同じ大きさまで積み上げたダンボールを軽々と抱えてきた

運転手「じゃあ奥さん、適当に運んどきますね」

ママ「はい、お願いします」

運転手はゴーリキーに的確に指示を出し、家の中へと積荷を運んで行く

ママ「ユウキ、言うの遅れたけど、ここが私たちの新しい家よ」

母親の指差す方向には立派な二階建ての一軒家

ママ「あんたの部屋もあるのよ。取り敢えず中に入りましょ」

母親は少年の背を押す

中に入ると、如何にも新居という匂いが充満していた

ゴーリキーたちもあくせく働いており、これならすぐに引っ越しの準備も終わりそうだ

ママ「しっかし、ポケモンってすごいわね~。あんなに重そうなものを簡単に移動させちゃうんだもんね。あ、あんたの部屋の話だったわね、二階にあがってごらん?」

ママ「ここがあなたの部屋よ」

二階の一室に入るとそこにはベッドやパソコン、さらにはテレビにゲームキューブまでの大盤振る舞いであった

ユウキ「…こんなにいいの?」

ママ「まあお父さん稼いでるからね」

ニヤリと母親がイタズラっぽく笑う

ユウキ「…ありがと!」

運転手「奥さ~ん! 荷物運び終わりました!」

ママ「はーい、今行きます! じゃああんたは部屋の中見てなさい。私は下にいるから」

母親はパタパタと階段を降りて行き、少年は一人、部屋に取り残された

ユウキ「しかきすっごいなあ…あ、パソコンに傷薬がある。…一応引き出しとくか」

少年はマウスを操り、引き出しのボタンを押した

横に付属されている転送装置から淡い光が発せられ、やがて傷薬が出現した

ユウキ「バッグに入れて…ラルトス、下に行こう」

ラルトス「ラル~」

少年はラルトスを抱え、下の階に降りると

ママ「あ、ユウキ! 早く来なさい! お父さん出てるよ!」

急いでテレビの前に躍り出るが、既に画面はVTRからスタジオへと戻されたようで、アナウンサーか誰かがまとめをしていた

ママ「あ~、もう少し早かったらお父さん見れたのに」

ユウキ「別にしょうがないよ」

少年はそう言うものの、母親の方は満足しないらしく、未だに落胆の色を隠せず、む~と唸っている

ママ「あ、そうそう。あんた、お隣さんに挨拶行って来な。同年代の子がいるから仲良くなって来なよ」

ユウキ「ん、わかった。行くぞ、ラルトス」

ラルトス「ラル~」

少年の後をラルトスはちょこちょこと着いて行く

そんな後ろ姿を微笑ましく思いながら、少年の母親は行ってらっしゃいと声をかけた

~第一章?久しぶりのバトル~

少年が外へ出ると、お隣さんの家はすぐに見つかった

というか近場には家と呼べそうなものが、自分の家以外でそこしかなかったのだ

同じような一軒家が二つ仲良く並んでいた

ユウキ「あっちはオダマキ研究所。 オダマキ博士がいるんだって、わかるか、ラルトス?」

ラルトス「ラル~?」

ラルトスは首を傾げ、隣の少年を見上げる

ユウキ「わかんないよな。まああっちは後て行くとして、取り敢えず挨拶だけ先に…」

少年が呼び鈴を押すと、ピンポーンとインターホンが鳴る

「はーい」

返事とともに扉が開く

ハルカママ「あら、どちら様?」

中から現れたのは大人の女性だった

ユウキ「あ、こんにちは。隣に引っ越してきました。ユウキって言います」

ハルカママ「あなたがユウキ君か!」

女性は得心したようにうなづいた。

ハルカママ「話は聞いてるわよ。あら、可愛らしいポケモンね。まあまず中におあがんなさい」

ユウキ「え!? あ、はい」

なし崩し的に家に入れられることに少年は慌てふためくが、女性の方はお構いなしに少年の背を押す

ハルカママ「二階に行ってごらんなさい。ちょうどあなたと同じ年の娘がいるから。あ、その間、そのラルトスちゃん貸してよ」

ユウキ「は、はあ…」

女性の勢いに押され、少年はラルトスを女性に任せて階段を昇った

ガチャリと音を立てて戸が開いた

青いバンダナを巻いた八重歯の少女が出てきた

ハルカ「え?」

素っ頓狂な声をあげる少女

当たり前だろう、家に見知らぬ男がいるのだから

ユウキ「えっと、隣に引っ越してきたユウキ…ていい…」

ハルカ「ああ! ユウキ君!」

少年が言い終わらないうちに少女は歓声をあげ、少年ににじり寄った

ハルカ「私楽しみにしてたんだよ! この近くに同年代の人なんていなかったからさ!」

元気よく捲し立てる少女に既視感を覚える少年。母親譲りなのだろう

ハルカ「私はハルカ! ユウキ君、よろしくね!」

そう言って、少女は右手を差し出した

少年も躊躇いがちではあったが、やがて腹を決め、その手をとった

ユウキ「こちらこそよろしく」

少女が何回か手を上下に振っていると、突然何かを思い出したかのように、

ハルカ「あっ!」

と叫んだ

ハルカ「私、お父さんにフィールドワークの手伝い頼まれたからもう行くね。じゃあまた!」

と、少女は嵐のように会談を駆け下り、行ってきますの声と共に、ドアが閉められた

少年は苦笑いを浮かべると、階段をゆっくりと下りた

ハルカママ「あはは、ごめんね。ハルカ、ちょっと今忙しいみたい」

先ほどの女性、つまり少女の母親はラルトスを抱いて椅子に座ったまま少年に謝った

ユウキ「いえ、こちらがいきなり押しかけたのが悪かったんですよ」

少年が姿を現すと、ラルトスは女性の膝から降り、駆け寄ってきた

ユウキ「よしよし」

少年が頭をなでると、ラルトスは笑顔になり、膝にすり寄る

毎度のことながら、少年はこれを見るたびに心が温かくなる

このラルトスが、自分を信じていると信じられるから

ハルカママ「あら、やっぱり自分のトレーナーさんの方がいいのね。妬けちゃうわ」

ユウキ「はは。僕はラルトスのパートナーですから」

少年はラルトスを抱き寄せ、顔に寄せる

ラルトスの体温が頬に伝わる心地よさに、自然と少年は笑みを零していた

ユウキ「それじゃあ僕、もう行きますね」

ハルカママ「わざわざ挨拶ありがとうね。ラルトスちゃんも、また遊ぼうね」

女性がラルトスの頭を撫でると

ラルトス「ラル~」

と返事をした

ユウキ「それじゃあ」

ハルカママ「またいらっしゃいね」

ユウキ「はい。ありがとうございました」

少年はドアを潜ってから、ラルトスを抱えたまま会釈し、ドアを閉めた

子供「あっ! そこのお兄ちゃん!」

少年が家から出ると、自分より年下の男の子が、血相を抱えて走ってきた

ユウキ「どうしたの?」

子供「いいからはやく来て!」

言うが早いか、子供は少年の手をとり、力の限り引っ張っていく

少年はその勢いに転びそうになりながらも体勢を立て直し、子供の導くままに前に進む

子供「博士が、オダマキ博士がポケモンに襲われてるんだ! 助けてあげて!」

ユウキ「!」

子供の指差す方にはポチエナに追い回される、白衣姿の中年男性が見える

ポチエナは低く唸りをあげながら、じりじりと中年男性を追い詰めている

ユウキ「大丈夫ですか!」

少年は思わず飛び出し声をかける

四つの目がこちらに向き、男性の目に安堵の色が映る

しかし少年は焦っていた

なぜなら彼の唯一の手持ちであるラルトスのタイプはエスパー

攻撃技もエスパーのものしかなく、あくタイプのポチエナには僅かのダメージも見込めないのだ

そんな少年の内心を知ってか知らずか、男性は少年に救いの手を差し伸べた

オダマキ博士「そこの少年! そこのバッグにモンスターボールが入っている! そのポケモンを使ってくれ!」

男性はポチエナに気を払いつつも、少年に指示を出す

少年も、バッグの存在を認め、その中にあったモンスターボールを掴み、投げようとしたときだった

『お前は二度とポケモンバトルをするな!』

かつて言われた言葉が脳内にフラッシュバックする

ドクリと心臓が大きく鳴り、冷や汗が頬を伝う

しかし、事態は一刻を争う

人を助けるためだと、少年は震える体を奮い立たせ、思いっきり右腕を振った

ラルトスかわいいよラルトス

当時はサーナイト欲しさにラルトス探すの必死だったなぁ…

モンスターボールが開くと同時に赤い光を放つ

それと共に現れたのは、黄色い大きな目に、長くて太い尻尾が特徴的なポケモンだった

その瞬間ゲッという声が聞こえた

男性が発したのだ

しかし少年の耳には届かない

彼は今、思考の中にいるからだ

彼は知っていた

このポケモンが何と言う名前で、どんな技を覚えるか

ユウキ「キモリ! 睨み付ける!」

キモリと呼ばれたポケモンは、少年の命令を聞き届けると、素早く行動に移した

キッと目を見開き、ポチエナをその大きな両目で睨み付ける

ポチエナは萎縮し、半歩下がる

その後ろで男性は大変驚いていた

ポチエナが半歩下がることも気にならないほどの驚きを

睨み付けられたままポチエナが黙っているはずもなく、キモリに向かって走ってくる

少年は一先ずポチエナの標的を男性から変えられたことに胸を撫で下ろす

そのため、キモリに対する指示が遅れてしまったのだ

ユウキ「しまった!」

叫んだときにはもう遅く、ポチエナのたいあたりがキモリにクリティカルヒットする

キモリは後方に吹っ飛び、数回転がるが、すぐさま立ち上がり、少年に目配せをした

早く次の指示を、と

少年はその眼差しを受け止め、頷くと、次の指示を出した

ユウキ「キモリ! はたく攻撃!」

キモリはその声を聞くと駆け出し、ポチエナの横に移動し、その尾を横っ腹に叩きつけた

ポチエナは痛みからか鳴き声をあげ、その場にうずくまる

しかし、一度大きく空に吠えると、脇目もふらずにキモリに最後の攻勢を仕掛けた

双方共に体力は少なく、一撃も耐えられないはずなため、キモリが勝つにはこの攻撃を避けなければならない

短い時間の中で、少年は考える

どうすれば確実に勝てるかと

そして少年は解いたのだ、勝利への方程式を

ユウキ「キモリ! 左の木!」

短い指示だった

端から聞いていたら何の話かわからない者もいるだろう

しかし、キモリにはこれで十分だった

キモリは左の木に足の裏の小さなトゲを引っ掛け、上方に飛んだ

ポチエナは勢い余って木に激突し、意識が朦朧としているようで、若干ふらついている

そこに少年は、ここぞとばかりに叫んだ

ユウキ「キモリ、はたきつけろ!」

キモリは空中で回転し、尻尾を鞭のようにしならせ、ポチエナを打つ

重力の力をも加えたその攻撃は、ダメージを負っていたポチエナをダウンさせるには申し分なく、その場に立っているのはキモリだけであった

ユウキって途中でセンリからポケモン借りてラルトス捕まえる子だっけ?

>>14 それミツル

ユウキは普通の主人公の名前

男がユウキ、女はハルカのはず

>>11 非常にわかる

一週目はレポートすらよくわからんガキだったから(一番初めに買ってもらったゲームだし)存在知らなかったけど、攻略本貰って、誤ってデータ消されたときは超探した

そしてLV4捕まえて一レベあげてやっと攻撃技覚えると思ったら覚えるの6レベで絶望みたいな

ミツルは悪あがきでよく頑張ったんだな・・・

>>2 SS書けるとこここしか知らんからな・・・

深夜は更新遅いのが普通のところなんかな?

もう立てちゃったのでここで書こうとおもいます 

勝った

その言葉が少年の心を過ぎったとき、心臓がドクリと跳ねる

先ほどのような緊張によるものではなく、そこには充足感や単純にバトルが楽しかった、などといった正の感情しかなかった

ラルトスも小さい手をペチペチ鳴らしながら、祝福してくれる

キモリもドヤ顔気味だ

オダマキ「助けてくれてありがとう。積もる話もあるが、とりあえず研究所に移動しよう」

少年は「はい」と言うと、モンスターボールをかざしてキモリを戻し、ラルトスを片手に男性の後を追った

~~

オダマキ「じゃあ君が隣に越してくるセンリさんの息子さんか!」

先ほどの男性は大仰な声をあげた

その声に、周りの研究員や少年とラルトスは体を震わせる

ユウキ「あ、とりあえずキモリは返しておきます」

そう言って、少年は腰のモンスターボールを一つ取り出し、渡そうとしたが、男性がそれを手で制した

オダマキ「いや、そのキモリは君に譲ろう」

少年は思わず「えっ」と零した

ユウキ「こんな珍しいポケモン悪いですよ」

オダマキ「いやね、実はそのキモリ。てんで私になつかなくってね。他の研究員や、ハルカにも・・・ハルカって言うのは私の娘なんだがね」

ユウキ「あ、はい。さきほど会いました」

オダマキ「ほう、それなら話ははやい。それでハルカたちにも試してみたんだが、全くと言っていいほどいうこと聞かなくてね。こうやって」

男性は少年に差し出されたモンスターボールを指さす

少年が渡そうとすると、それを拒むかのようにガタガタと揺れるのだ

オダマキ「まあこういうわけだから貰ってくれんかね? あそこまで言うことを聞かせることがでいるのは君くらいしか知らないんだよ」

ユウキ「いや、それでも・・・」

なおも拒もうとする少年に男性は説得を続ける

オダマキ「それにこのポケモンは非常におかしな点があるんだ」

ユウキ「おかしな点?」

少年が興味を得たことに満足した男性はニヤリと笑みを浮かべ、話を続ける

オダマキ「君は、〝ハードプラント〟という技を知っているかい?」

ユウキ「はい、知っています。限られた草タイプのポケモンのみ使うことができる草タイプ最強の技ですよね?」

男性は頷き、真剣な表情を見せる

オダマキ「その限られたポケモンの中に、このキモリの最終進化系であるジュカインは確かに入っている。だがその技の反動は他の技の比じゃない。ジュカインじゃないと使えないはずだし、特別な教えを受けなければ覚えないはずなんだ」

「まさか」と、少年はつぶやく

オダマキ「気づいたようだね。そう、このキモリは〝ハードプラント〟を既に覚えている」

少年は自分の手の中のモンスターボールを見つめる

一見何の変哲もないキモリに見えて、そのうちにはとてつもない力を持っていたのだ

確かに、先ほどの戦いでは見事な戦いっぷりであった

ドクリと少年の鼓動が跳ねる

このポケモンを使ってみたい

こいつを使ってバトルをしたい、と

オダマキ「私も研究者の端くれとしてこの件については非常に興味がある。しかし私の身の回りの人間じゃ使えない。ほとほと諦めようとしていたところに君の登場だ。もう私はこれに運命を感じずにはいられない!」

ユウキ「いやいや、そんな大げさな」

口ではそう言いつつも、少年の心はそちらに向かいつつあった

久々のバトルで高揚した心に、その言葉はいとも簡単に響いたのだ

オダマキ「君も旅に出るんだろ?」

少年の目が見開かれる

子供なら一度は夢見るポケモンとの旅

そこに広がるは無限の可能性

憧れのポケモンマスターへの道

ギュっとモンスターボールを握りしめる

オダマキ「…心は決まったかい?」

少年は首を縦に動かす

それを見て、男性は満足そうに微笑んだ

オダマキ「よかったよ。君に断られたらどうしようかと思ったよ。少し異質なポケモンだから扱いには十分気を付けてくれ…何て、センリさんの息子の君に言うことじゃないよね。才能のある君には」

ユウキ「さい…のう…?」

少年の体がピタリと止まる

輝いていた目は光を失い、紅潮していた顔は血の気を失くし、無表情になる

『才能がある才能があるなんて言って皆がもてはやすからこうなるんだ!』

『お前のせいでこうなったんだぞ! わかってるのか!』

『才能も無いのにあんなポケモンといるからこんなことになるんだよ』

思い出されるは投げ掛けられ続けた冷たい言葉、視線

惨劇の二文字が相応しい光景

そして横たわる…

オダマキ「ユウキ君! 大丈夫かい!」

男性に肩を掴まれ、我に返る少年

目の前の男性の心配そうな顔に、何も知らず自分の安否を問う姿に、そして臆病な自分にイラついた少年は、強く男性の手を払った

少年「僕に才能なんてありませんよ。これはお返しします。行くぞラルトス」

少年は早口でそう言うと、手にあるモンスターボールを男性に押し付けると、腰から出した空のモンスターボールにラルトスを入れて足早に去って行った

突然のことで呆然とする男性

しかし、悲しそうな少年の背にかける言葉を、彼は見つけることができなかった

ユウキ「何で…お前が…」

キモリは右手のモンスターボールをギュッと握ると、少年の前に突き出した

その目は、「早く取れ」と語っているような気がする

それでも動かない少年に痺れを切らしたキモリは、モンスターボールを少年の胸に押し付けようとする

少年は逃げようと、体を反転させようとするが、動かない

念力だ、ラルトスの念力が自分の動きを阻害しているのだ

つまりこれはラルトスに仕組まれたことなのだろう

いつまでも引きこもっている自分を奮い立たせるために

少年の意思を感じ取ったのか、ラルトスは念力を止めた

パートナーにここまでさせておいて逃げるわけにはいかない

震える足を無理やり動かし、少年はキモリに一歩踏み出した

キモリの目は一点の曇りもなく少年を見つめている

少年は考える

一ポケモントレーナーだった人間として

ラルトスのパートナーとして

そして、キモリと一度戦ったトレーナーとして…

第二章 ~ライバル!~

ユウキ「行ってきます!」

十歳の少年が元気良く家を飛び出す

頭にはトレードマークの白いニット帽に赤いバンダナを巻いて、ラルトス、キモリを引き連れてオダマキ研究所を一直線に目指す

ユウキ「おはようごさいます!」

ドアを開けて、全体に聞こえるように大きく挨拶する

中では皆が一様に慌ただしく動いていた

オダマキ「やあユウキ君。折角来てくれたけど今は…キモリ!」

その一声で周りの研究員が振り向く

オダマキ「探してたんだよこのキモリ! どうしてユウキ君が…」

白衣の男性は訳もわからないという風に頭を混乱させている

ユウキ「昨日の夜、僕の家に来たんです」

オダマキ「!! その話は詳しく聞かせて欲しい。みんなは通常業務に戻ってくれ」

しばしこちらを気に留めていた研究員たちだったが、やがて自分の仕事に戻って行った

オダマキ「ユウキ君、こっちへ。あ、君。お茶を頼む」

男性は少年を席に案内し、一人の研究員に声をかけた

少年が腰掛けて待っていると、お茶を持った男性が対面に座った

オダマキ「それで、昨日、何があったんだい?」

ユウキ「さっき言ったとおり、このキモリが僕の部屋に来たんですよ。真夜中に」

男性が腕を組み、ウーンと唸る

オダマキ「ポケモンが勝手にモンスターボールから出る、そんなことがありうるのか?」

男性はしきりに首を捻りながら、ブツブツと独り言をつぶやく

コトリと少年が湯呑を置いた音に、男性は顔をあげた

オダマキ「すまない。少し考え事をしていた」

男性は小さく頭を下げた

ユウキ「いえ。・・・それで、僕。やっぱり旅に出ようと思います」

オダマキ「本当かい!?」

男性が大仰に驚く

無理もない、少年は昨日強引にキモリを押し付けるほどの嫌悪感を示していたので半ばあきらめていたからだ

ユウキ「はい。昨日こいつが来て。・・・理由は何か知りませんけど、わざわざ研究所を飛び出してきたってことは僕を選んだってことじゃないですか。そこまでポケモンにされたら、さすがに動かなきゃって思いました」

 『お前は二度とポケモンバトルをするな!』

少年の両手が服の裾をギュッと掴む

大して暑くもない初春の朝にも拘わらず、少年の額に汗が滲む

オダマキ「・・・ユウキ君、大丈夫かい?」

男性が心配そうに俯き加減の顔を覗き込んでくる

そのとき、主人の隊長の変化を察したのか、ラルトスが右手に手を添えてきた

それで幾分か落ち着きを取り戻した少年は若干引きつっているながらも笑顔を浮かべて顔をあげた

ユウキ「大丈夫・・・ですよ」

少年は目の前のお茶を一気に飲み干し、大きく深呼吸した

大丈夫、俺は大丈夫だ、と

ユウキ「昨日はすいませんでした」

オダマキ「いや、顔をあげてくれ! 別に気にしていないから!」

男性の表情に焦りが生まれる

ユウキ「いや、でも・・・」

渋る少年に男性は一つの提案をした

オダマキ「じゃあおつかいに行ってくれないか?」

ユウキ「・・・おつかい?」

ビョオンという強風に誘われ、101番道路に桜吹雪が舞い散る

二つのモンスターボールを腰に、草むらを掻き分け、前進する

時折現れるジグザグマやケムッソなどを倒していると赤い屋根と青い屋根

トレーナーご用達のポケモンセンター、フレンドリーショップが見えた

ユウキ「ここがコトキタウンかめちゃめちゃ近いな。でもミシロにはポケセンとかないからありがたいか」

ウィーンと自動ドアが開く

少年は傷ついたポケモンを癒すため、白衣の女性にモンスターボールを手渡す

ジョーイ「こちらポケモンセンターです。このキモリとラルトスの回復でよろしいですか?」

ユウキ「はい、お願いします」

ジョーイ「それではお預かりしますね。時間が少々かかりますのでお待ちください」

ユウキ「はい」

白衣の女性は微笑みを浮かべ、ハピナスとともに奥へ行き、マシンを動かしている

暇ができた少年はこの間にフレンドリーショップにでも行くかと、ドアを出た時だった

「ちょっと!」

ユウキ「え?」

いきなり現れた中年の女性が少年の腕をグイグイと引っ張る

少年は成す術なく引きずられていく

ユウキ「え、ちょっと何するんですか!」

おばちゃん「あんた、トレーナーになり立てやろ?」

中年女性からいきなり解放された少年はおもいっきりお尻を地に打ち付けた

おばちゃん「何や、よわっちい。そんなんじゃ今から長い旅に耐えられへんで」

おばちゃん「・・・まあこれくらいはトレーナーなら知っておくべきやな!」

ドヤ顔とともに解放された少年はお礼を言い、即座に中に入ろうとしたところを首根っこを掴まれ、情けない声をあげながら再び足止めを食うこととなる

おばちゃん「これ持っていきいや」

お中年女性が懐から取り出したのは傷薬

先ほどパソコンから取り出したものと同じものだ

少年は素直に受け取り、今度は心からお礼を言った

別れの挨拶と共に自動ドアを潜り、店内を見渡す

傷薬やモンスターボールなど、様々なものが所狭しと並んでおり、少しだけ効いた空調が心地よい

種類も多様であり、スーパーボールやハイパーボールなどもあるにはあるが、それを買うにはジムバッジが必要なようだ

何かを買おうかと財布の中身を確認しようとポケットに手を突っ込む

・・・感触が無い

どうやら家に忘れてきたようだ

仕方なく少年は踵をかえし、ポケモンセンターへと足を向ける

予想外の出来事に時間を使ってしまった故、とうに回復は終わっていたようで、ボールから出したキモリはややご機嫌ななめの様子だ

ユウキ「悪かったよ」

キモリ「・・・キモゥ」

そっぽを向いたキモリをボールに戻し、当初の予定通り、103番道路を目指す

オダマキ博士のおつかいの内容、それはハルカを研究所に呼んで来いとのことだった

ユウキ「キモリ、はたく!」

ユウキ「ラルトス、念力だ!」

少年の指示に合わせて両ポケモンが技を繰り出す

実際に見るのは初めてのポケモンに、少年は興奮を隠しきれず、自然と足が加速する

草むらを掻き分け、広い場所に出たときに目についたのは見覚えのある赤いバンダナ

岩に腰掛け、少し離れたジグザグマのスケッチをしている

ユウキ「…ハルカ、だったよな?」

少年の声に、少女は髪を揺らす

走っていた筆は止まり、大きく目が開かれる

ハルカ「ユウキ君!? 何でここに…て、あっ!」

思わず立ち上がったため、それに反応したジグザグマが草むらの奥へと入り込んでしまったのだ

ハルカ「あー、あと少しだったのにー…」

落胆の表情を隠さず、あからさまに落ち込む

ユウキ「わ、悪かったな…」

ハルカ「…いいよ。気にしても仕方ない! 逃がしちゃったのは私のせいだし」

さっきの表情から一転

初春の日差しにも負けない暖かな笑顔へと変わる

ハルカ「それで、どうしてユウキ君が?」

ユウキ「ああ、ハルカを、呼んでこいって頼まれてね」

得心したように少女は頷く

ハルカ「でも、何でだろ。旅の件、許してくれるのかな?」

ユウキ「旅の件?」

ハルカ「うん。お父さんが、女の子が一人で旅なんて危ないって…。ポケモンも一緒なのにさ」

少女は大きく溜息をつく

聞くところによると、彼女の年は少年と同じ、つまり、既に10歳ではある

10歳になれば希望者は旅に出るのが普通だ

しかし、親元を離れ、ポケモンがいるとはいえ、一人て旅することは親にとっては不安の種であることは間違いない

故に、こうして旅を禁じられる子供もいるのだ

ハルカ「こうしてお父さんの手伝いもいいけど、やっぱり色んなところ見たいって思っちゃうんだよね。まあお父さんの気持ちもしょうがないと思うけどね」

ユウキ「…」

自分の親はどうなんだろうか?

そんな問いが頭を過る

勝手に引きこもって、何の相談も無しに旅にでることを決めて

ハルカ「そういえばユウキ君、あのキモリ使いこなせるんだって?」

ユウキ「…え、ああ」

少年は一時思考を停止する

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