勇者「人間嫌いだから魔物を召喚して使役する」【安価・R-18有】 (28)

―旅立ちの日


王様「勇者よ、まずは酒場に赴き仲間を集めるのじゃ!」
 
勇者「ふん、自分勝手な人間共と旅なんてやってられるか」

勇者「俺は自分のやり方でやらせてもらうぜ」

王様「な、なんじゃと……」

王様「ではせめてこの王家の剣を用いて…」

勇者「いらん。俺にはこの杖一本あればいい。もらえるなら金に換えてやっても良いが」

王様「なんという言い草じゃ」

大臣「まぁまぁ、これでも奴は歴代でも魔法の才能は随一。彼に任せましょう」

王様「…む、では頼んだぞ」

勇者「あぁ。吉報を待ってろ」



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-王宮の自室


勇者「この部屋ともお別れだな」

勇者「…さて、旅立ちの前に一体だけ召喚してみるか」

勇者「といっても知性のある魔物を召喚したことはないからうまくいくかわからんが…」

勇者「杖よ。我が魔翌力に答えよ」ブォン

魔法の杖『現在のあなたのLvで召喚できそうな魔物はこちらとなっています』


      【性別】  【区分】   【性格】
①インプ.  ♀   悪魔系  悪戯が好き
②ウルフ  ♀   動物系  主人に忠実
③ドライアド  ♀   植物系  おとなしい


勇者「なんだすべて低級の魔物じゃないか…期待はできないな」

勇者「ではこの中から>>5を召喚する」

3

 
杖『召喚に成功いたしました』

勇者「よし…!」

召喚魔法陣のを包んでいた魔霧が晴れる。
中からは金色の髪の毛をたずさえた少女が現れた。

ドライアド「…」キョロキョロ

ドライアド「えっと、あなたが私のご主人様ですか…?」

勇者「あぁそうだ」

ドライアド「わぁ。ありがとうございます。これから私のことを思う存分に使役してくださいね」ペコリ

勇者「わかったが、しかしなぜお前は…」

ドライアド「はい」

勇者「服を着ていないんだ」

ドライアド「?」

少女は一糸纏わぬ姿で不思議そうな顔をし俺を見つめている。

 
ドライアド「服ですか…?」

勇者「そうだ。目のやり場に困るし、連れて歩くこともできん」

ドライアド「そうですか…しかし私は木の精霊ですので」

勇者「わかった。この娘に合う服を生成せよ」

杖『(あなたの)魔力切れです』

勇者「ッ…わかったもういい。女物の服をとってくる! ここで待っていろ!」

ドライアド「はい」

バタン

ドライアド「…えへへ、ご主人様…」


ドライアド「優しそうな人でよかった…」

ドライアド「そうだ杖さん。私を召喚してくれてありがとうございました」

杖『私はマスターの魔力を元に魔法を発動するだけのただの道具です』

ドライアド「そうですか…」

ドライアド「杖さん、どうして私は人型なのでしょうか」

杖『召喚は魔法使用者のイメージが強く反映されます』

ドライアド「そうですか…」

ドライアド「杖さん、私はどうしてこんなに胸がおおきいのでしょうか」たゆん…

杖『召喚は魔法使用者のイメージが強く反映されます』

ドライアド「そうですか…」

ドライアド「ご主人様にいただいた体…大切にいたしますね」





 

勇者「戻ったぞ…はぁ、ハァ」

勇者「姫のドレスしかなかった! これでも身につけていろ」

ドライアド「ありがとうございます」

勇者「よし、では見つからんうちにさっさと旅立つぞ…といいたいところだが…ハァはぁ」

勇者「ちょ、ちょっと走って疲れたから一旦休憩だ…ハァァ」ぐったり

ドライアド「……ご主人様お疲れですか?」

杖『マスターは類まれなる魔法の才と引き換えに身体的能力はそこらの小娘にも劣る貧弱――

勇者「くっ、くだらんことを言うな! いまはちょっと魔力を使い果たしただけで普段は魔法で強化できるから問題ない!」

勇者「ええい行くぞ! 外に荷を積んだ馬車が止めてある」

ドライアド「はい!」

 
もぞりもぞり…

勇者「…? そうか、足先が木の根のようになっているから歩きづらそうだな」

ドライアド「いえ、そんなことは…」もぞりもぞり

勇者「すまない。俺にもう少し魔力があればもっと良質な肉体を生成することができたかもしれないな…」

勇者「だが俺はお前のその少し人間離れした見た目が好きだ」

勇者「お前とならうまくやっていける気がする」

ドライアド「ありがとうございますご主人様。私これからがんばりますね!」

勇者(やはり人外は良い…心に汚れがない)


勇者「一方で…」

女剣士「勇者殿!」

勇者「…あぁ、お前達は…(誰だっけな)」

女剣士「発たれるのですか」

勇者「あぁ今日出発する」

女僧侶「私も連れて行ってくださいよぉ、身の回りのお世話ならなんでも致します…もちろん望まれるなら夜の方も…///」

女賢者「勇者様にあこがれています…ぜひ私をお側に…///」

女剣士「私もあなたに付き従い、いつでも盾になります! あなたのためなら命を賭す覚悟はできています!」グッ

勇者「申し訳ないが人間はNG」


女僧侶「そんなぁ」

女賢者「あっ、さてはその魔物の娘がいるからですよね! そんな枝葉だらけの汚い娘のなにがいいんですか!」

女剣士「そうです! 魔物なんていつ人間を裏切るかわかったものではありません大変危険です!」

勇者「……行くぞ」グイッ

ドライアド「あっ、はい」もぞりもぞり

女剣士「お待ちください!」


女剣士「あっ…行ってしまわれた」

女僧侶「はぁ。どうして顔は良いのにあんなに偏屈なのでしょうか。そこがとても惜しい」

女賢者「しかたないわ。次の男探しましょ」

女剣士「あ! 騎士様だ! 騎士様ー今日も剣術おしえてくださ~い♥」



 ・  ・  ・  ・  ・


 


馬車の中――


勇者「うぅ…揺れる…オエ…」

ドライアド「大丈夫ですか…?」さすりさすり

勇者「…御者の男、もう少し馬車の速度をおとしてくれないか」

御者「あんさん、それだと今日中に次の町にたどりつきませんぜ。日が暮れちまうよ」

勇者「…オエ」

御者「ただでさえあんさんが遅刻して出発がおくれたんですからねぇ。こっちとしちゃあそれじゃ困る」

勇者「クソ…ええいだったらもういい! あとは俺のペースで行くからお前は降りろ! 俺が手綱を握る!」

御者「…へい。片道分の代金はしっかりもらいますぜ。それと迷惑料」

御者「あとあっしはその辺で他の馬車に相乗りさせてもらいますんでその運賃もw」

勇者「これくらいでいいだろ」チャリ

御者「へいwさすが勇者となれば羽振りがいいねぇ」

御者「まいどありwこの街道での宵越しは気をつけてくださいよぉ」

御者「おっかねぇ魔物が出るって噂だ。ま、あんさん勇者なら大丈夫だろうけどねぇ」

勇者「…世話になったな」

 
ドライアド「魔物ですか…怖いですねぇ」

勇者「お前も魔物だぞ」

ドライアド「そ、そうですけど…私は精霊なので。悪い魔物ではないんです」

ドライアド「だけどどんな悪い魔物が出てきてもご主人様がいらっしゃればへっちゃらですよね…?」

勇者「あぁ任せとけといいたいところだが」

勇者「あいにく――

杖『魔力の回復にはあと1週間ほど要すると思われます。魔法の発動には安定した魔力の流動が必要です』

ドライアド「あの…それは一体」

勇者「コレの言ったとおりだ。俺はしばらく大した魔法がつかえん」

ドライアド「どうしてそんなに…」


杖『召喚魔法は使用者の魔力を全て捧げ、媒介に力を与えることで成立します』

勇者「国では禁術に指定されている。上級魔導師でも扱えん」

勇者「普通の人間ごときの魔力量で召喚など到底無茶だったということだ」

ドライアド「ですが私はここにいます」

勇者「普通ならな。発動しないか、たとえ成功しても召喚した魔物にすべての力を吸い尽くされて死に至る」

勇者「悪魔を儀式召喚して魂を食われて死ぬっていうアレだ」

ドライアド「…申し訳ございませんそのような危険な魔法で呼び出していただいて」

勇者「ま、俺は稀代の天才勇者だからそれすら容易とするわけだが」フフン

勇者「…ゴホン//」

勇者「ええと、その俺でもお前の肉体を安定させるためにまだしばらくのあいだ魔力を注がなくてはならない」

勇者「いましがた言った、吸い尽くされるという状態だ」

勇者「つまりお前はいま無意識に俺の魔力を吸っているわけだ」

ドライアド「そうなのですか。ご主人様の側にいるとなんだかホッとします」

勇者「おかげでろくに魔力を練ることもできん」


勇者「無駄話が過ぎたな」

勇者「しかし心配しなくていいぞ」

勇者「俺が魔法をつかえなくても、俺が魔力をわけあたえたお前がいる限り問題はないはずだ」

ドライアド「そ、そうですね! 私がんばります!」

勇者「だから1週間は俺を全力で守ってもらうぞ」

ドライアド「命にかえて!」

ドライアド「たとえ死んでもご主人様をまもります!」

勇者「いやだめだ死んだらなんのために召喚したかわからないだろ。絶対死ぬんじゃないぞ」

勇者「お前は俺の最初のパートナーなんだからな」

ドライアド「あ…ぅ…はい//」


勇者(とは言ったものの、魔力が一切練れないというのは心細いな。凡人になった気分だ)

杖『あと一週間、出発をおくらせなかったのはなぜでしょうか?』

勇者(あのなぁ。人間の国に何日もこいつを置いておくわけにはいかんだろ」

勇者(これ以上あんな人間共と一緒にいられるか。俺は人間が嫌いなんだ)

杖『しかし、マスターは召喚した魔物は不完全ながら人間の姿をとっている』

勇者(……うるさい。もうお前は黙ってろ)

本日はここまで

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