プロジェクトX~挑戦者たち~ 「ラビットハウス」 (17)

ラビットハウス――それはウサギと触れ合える珍しい喫茶店だ。
木組みの家々が立ち並び、石畳みの道路が広がるとある街の一角にぽつんと佇んでいる。
我々はそこのマスターの娘さんに密着取材をすることにした。

――香風智乃の朝は早い

記者「お早う御座います」

チノ「お早う御座います」

彼女は店内のカウンター席に座っていた。
優雅にコーヒーカップを持って小さな口で啜っている。

記者「何を飲んでいるんですか?」

チノ「ココパンを出汁にしたブレンドコーヒーです」

普通誰にも振る舞うことはないのだというが我々は特別に頂けることになった。
コーヒーカップには切り刻まれたパンツがTバックのように入っている。
我々はブレンドコーヒーを口に含もうとすると彼女にそれを止められた。

記者「なぜ止めるのですか?」

チノ「あと5秒待ってください……コクがでますから」

彼女はやはり只者ではないと我々はそう感じた。
言われたとおりに5秒待ち……そして一気に飲み干すと口の中で匂いと味が広がったのがわかる。

記者「美味しいですね」

チノ「美味しくないわけがありません」

彼女は自信満々に言っていた。
頭にパンツを被った姿で言っていた。

それから彼女は今から仕込みをすると言う。
我々は彼女の後追いかけ倉庫の中に潜入した。

チノ「仕込みをしている時が一番幸せですね」

彼女は被っていたパンツをポケットに押し込むと。
懐から小さな瓶を取り出す。

チノ「仕込みに欠かせないのがココパン……」

ココパンの数によりコーヒー豆の性質や味も変わるのだという。
美味しいブレンドコーヒーを作るのは至難の業だ。

チノ「これで終わりです」

瓶の中に少量のコーヒー豆と先程被っていたパンツを押し詰めた。
そして蓋をして奥の厳重そうな金庫の中に保存した。
これから一ヶ月間放置するらしい。
我々はコーヒー豆の仕込みは単純ではないと瞬時に理解できた。

仕込みが終わったらいよいよブレイクファーストだ
彼女はお姉さんが起きてくるまでに朝食を作っておくという
すると彼女はフライパンを手で転がしながら何かを食べだした

記者「何を食べているんですか?」

チノ「ココパンです」モグモグ

彼女は美味しそうにお姉さんのパンツを頬張っていた
我々は彼女のその笑顔を見て幸せな気分になれた
やはり中学1年生……無垢な笑顔をしている

ココア「おはよう~チノちゃ~ん」

お姉さんが起きてきた

チノ「お早う御座いますココアさん!朝食もできていますよ!」

記者「あれ?先程食べていませんでしたか?」

チノ「パンツは別腹なんです」

彼女は至極当然のことを言っていると言わんばかりの真面目な表情で我々に応えた

朝食も終わるといよいよ学校へと登校だ
彼女は今日は学校が休みでお留守番、登校はお姉さんだけのようだった

記者「これからどうするんですか?」

チノ「ココアさんを観察します」

彼女はそう言うと自室からバックを持ってくる
中には双眼鏡と集音器に可愛らしい麦わら帽子が入っていた

お姉さんが通う高校の近くには公園がありそこのベンチで6時間ほど観察するらしい
我々も一緒についていくことにした

記者「どうですか?」

双眼鏡でプールサイドを覗いている彼女に話しかけた

チノ「最高ですね」

鼻血を垂らしながら双眼鏡で覗いている彼女にティッシュを差し入れる
だが彼女はそれはいらないと言って自前のポケットティッシュを取り出した
どこまで用意周到なのだろうか

ID変わりましたが1です

キーンコーンカーンコーン

どうやらお昼の授業が終わったようだ
すると彼女は集音器を耳につけ何処かへ移動をし始める

記者「どこに行くんですか?」

チノ「女子トイレです」

お姉さんはいつもお昼休みになるとトイレにいく習慣があるとのこと
彼女はお姉さんのことはなんでも知っているのだ

我々は個室トイレの前へとついたが大勢で女子トイレに入ることはできないため
近くで待機することにした

数分待っているとお姉さんがトイレに入っていくのが見えた
そしてハンカチで手を拭きながら用を済ませたお姉さんがトイレから出ていく
その後また数分後彼女が満足顔で出てきた

記者「何か嬉しい事でもあったんですか?」

チノ「ココアさんのタンポンが回収出来ました」

我々はその言葉を聞いて戦慄した
彼女のお姉さんへの愛は少々行き過ぎていると……

彼女はお姉さんのタンポンを回収出来て満足したらしく
今日はもうラビットハウスへと帰ると言い出した

ラビットハウスへと戻り我々はカウンターで休息をとっていると
彼女が二階へとスキップで駆け上がるのが見えた
後を追って我々も二階へと足を踏み入れると……
そこにはお姉さんの部屋の前で鍵を使って扉を開けようとしている彼女がいた

記者「そのカギは?」

チノ「合鍵です」

詳しく聞いてみるとお姉さんに黙って部屋の合鍵を数十本作っているとのこと
お姉さんがいない日は部屋に忍び込んで色々するらしい

記者「部屋に入って何をするんですか?」

チノ「最近は枕に顔を埋めることにハマっています」

彼女はそういうとお姉さんのベッドへと一直線にダイブ
自らの顔を枕に強く押し付けていた
我々はそこで一つの発見をした――彼女は匂いを嗅ぐと同時に自らの臭いもつけているのだと

チノ「こうしていると落ち着きます……一つになれている気がして」

我々はそろそろやばいと感じた
ディレクターに取材をここで辞めていいかと尋ねると

ディレクター「勿論だ」

即答だった
我々は彼女に密着取材はここで終わりと宣言し
彼女の罵詈雑言を背中に受けながら逃げ出すように帰った

後日編集したテープをテレビにて放送
視聴率は70%を記録し大盛況となった

終わり

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