チノ「ココアさん、熱が出てるじゃないですか!」 (34)

昼間VIPで書いたのをちょっと修正しただけです

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ココア「いってきまーす」

チノ「ココアさん、そんなに走ると転びますよ」

ココア「大丈夫だよー……あ」ふらっ

どさっ

チノ「ほら、言ったじゃないですか。雪が降って滑りやすくなってるんですから気をつけてください」

ココア「……」

チノ「ほら、早く起きてください。遅刻しますよ」

ココア「……はぁ……はぁ……」

チノ「ココアさん、大丈夫ですか? ……熱が出てるじゃないですか!」

チノ「お、お父さん! ココアさんが!」

チノ「もう、体調が悪いならちゃんと言ってください」

ココア「ごめんね……」

チノ「とにかく今日はゆっくり休んでいてください」

チノ「学校から帰ってきたら看病しますから」

ココア「本当!? チノちゃんに看病してもらえるなんて風邪をひいてよかったよ!」

チノ「馬鹿なことを言ってないで寝ていてください」

ココア「……うん」

チノ「じゃあ、今度こそ行って来ます」

チノ「ただいまもどりました。ちゃんと寝ていましたか?」

ココア「……はぁ……はぁ……ん……チノちゃん……おかえりなさい」

チノ「朝よりも熱が出てるじゃないですか! 本当にちゃんと寝てたんですか!?」

ココア「うん……」

チノ「とにかく、今日はお仕事は休んでください。私とリゼさんで何とかしますから」

ココア「え」

チノ「じゃあ、起きてきちゃだめですよ」

ばたん

ココア「……」

リゼ「ココアが風邪?」

チノ「はい、朝から熱が出てしまって……寝てるようにいったんですが」

リゼ「いいのか、看病しなくて」

チノ「……でも、ラビットハウスをお休みにするわけには」

リゼ「こっちは私が何とかしておくからついていてやってもいいんだぞ」

チノ「……ココアさんは甘やかすとすぐ付け上がりますから」

リゼ(とか言いつつ、心配してるんだな、顔に出てる……)

ティッピー「チノ、本当によいのか?」

チノ「いいって言ってるじゃないですか」

チノ「やっとお仕事が終わりました……ココアさん、ちゃんと休んでいたでしょうか?」

がちゃ

ココア「……はぁ……はぁ……」

チノ(まだ息が荒いです……でも、さっきより熱はないみたいです……あれ?)

チノ(気のせいでしょうか、少し泣いたみたいな後が……)

チノ(……とにかくぐっすり寝ているんですから、起さないようにしましょう)

がちゃ、ばたん……

チノ(朝になりました。そろそろ熱も完全に引いているころだとおもうのですが……)

がちゃ

チノ「おはようございます、ココアさん」

ココア「……あ、おはようチノちゃん」

チノ「もう大丈夫なんですか?」

ココア「うん、元気になったよ!」

チノ「それはよかったです」

ココア「じゃあ、そろそろ私は学校に行く準備を……」

チノ「あ、待ってください。念のため熱を……」ぴとっ

ココア「あ」

チノ「! まだ熱いじゃないですか!」

ココア「ご、ごめんね、みんなを心配させたくなくて」

チノ「いいから寝ててください! また倒れられても困ります!」

ココア「で、でも」

チノ「でもじゃありません! ココアさんのためなんです」

ココア「……うん、わかったよ……」

チノ(あれ、ココアさん、何でこんなにつらそうな顔を……熱のせいでしょうか……)

チノ「と、とにかく、私が学校から帰るまでちゃんと寝ていてくださいね」

ココア「うん」

チノ「ただいまもどりました」

ココア「あ、おかえりなさい」

千夜「ココアちゃん、もう風邪は大丈夫?」

リゼ「しっかり寝てるか?」

ココア「あ、リゼちゃんと千夜ちゃん!」

チノ「ちょうど帰りに一緒になって……」

千夜「お見舞用の羊羹を持ってきたの」

ココア「わぁ、ありがとう!」

チノ(他に持ってくるものはなかったんでしょうか……?)

リゼ「今日はラビットハウスも休みだし、ゆっくり休んでいるんだぞ。そうそう、シャロもバイトが終わったら来てくれるそうだ」

ココア「うん、楽しみだなぁ……っ……けほっ……」

千夜「ココアちゃん!?」

チノ「あ、また熱が上がってます!」

リゼ「わ、悪い、無理をさせたか?」

ココア「こ、このくらい平気だよ」

チノ「何が平気なんですか! ちゃんと寝ていてください。今薬を持ってきますから」

ココア「えへへ、チノちゃん、お姉ちゃんみたい」

ココア「そういえば……こうやって、一緒にいてくれたのは……だったなぁ……」

3人「え?」

ココア「ううん、なんでもないよ……あはは……」

シャロ「おそくなりましたー」

千夜「あ、シャロちゃん」

シャロ「ココアは?」

チノ「薬を飲んで寝ています」

リゼ「熱はあるみたいだが、ほとんどいつも通りだし、もう心配は要らないと思うぞ」

シャロ「よかった……最近インフルエンザが流行ってるみたいだから念のために病院とかに行ったほうがいいかもって思ってたんだけど」

チノ「……そうなんですか? それなら明日、病院に行ってみます」

千夜「ただの風邪ならいいんだけど……」

リゼ「熱も下がってきたんだろ? きっと大丈夫だ」

チノ「と言うわけで、明日は病院に行きますから」

ココア「……」

チノ「あの、聞いてますか?」

ココア「……いやだ……」

チノ「え?」

ココア「病院に行くの、やだ」

チノ「熱がなかなか下がらないんですから、病院に行かなきゃダメです!」

ココア「やだよ! 注射、怖いし……」

チノ「子供ですか! とにかく、明日も熱が下がらなかったら病院ですからね」

ココア「……」

チノ(そんなわけで、病院へ来ましたけど……結局ココアさん、最後まで病院を嫌がっていました)

チノ(注射が怖い、といっていましたけど、本当にそれだけなんでしょうか)

チノ(私には、別の何かを怖がっているように見えたのですが……)

チノ(あ、そろそろ診断が終わるころですね……)

看護師「あの保登 心愛さんのご家族の方ですか?」

チノ「え、はい。ココアさんが何かご迷惑を?」

看護師「少しこちらでお話を。出来れば保護者の方も一緒に」

チノ「え?」

チノ「……ココアさんが入院?」

医者「小学生のころの病気が再発をしているらしく、このままでは命にかかわるかもしれないと」

チノ「……え……?」

チノ「ココアさんが……死ぬ、ん、ですか……?」

チノ(何かの間違いだと思いました。思おうとしました)

チノ(そんな状態の私に、医者から説明がありました)

チノ(ココアさんは小学生になったころ、重い心臓の病気を患い、生死の境をさまよったこと)

チノ(治ったと思っていたその病気の再発。入院をしても必ず助かるかどうかわからないということ。いや、寧ろ助かる可能性のほうが低いそうです)

チノ(わたしは、自分がどんな顔をしてその話を聞いていたのかわかりません)

チノ(あんなに元気なココアさんが、そんな病気だったなんて……)

チノ「……」

ココア「……ばれちゃったんだね……病気のこと……」

チノ「……ココアさん、時々見せた寂しそうな顔の理由……病院を嫌がった理由……話してくれませんか?」

ココア「……私ね、小学生になったころにはじめて病気で入院したんだ」

ココア「最初はね、お兄ちゃんたちもお母さんもお父さんも毎日お見舞に来てくれた」

ココア「毎日看病してくれるって、約束もしたんだ」

ココア「でも、しばらくすると、お姉ちゃん以外、みんな忙しいって……あまり、会いに来てくれなくなって」

ココア「……約束、したのに……」

チノ「……約束……あ」

チノ『学校から帰ってきたら看病しますから』

チノ「……ごめんなさい」

ココア「仕方ないよ、忙しいんだから……」

ココア「お姉ちゃんは、それでも毎日お見舞に来てくれて、リハビリで町を歩いたりするときもいつもついてきてくれたんだ」

チノ(あのときの、こうやって一緒にいてくれたのはって……ココアさんのお姉さんのことだったんですね)

ココア「でも、病院は、すごく寂しいところなんだよ」

ココア「誰かと話も出来ないし、友達が出来ても、すぐにどこかへ行っちゃうの」

チノ(私は、なんであのときの約束を破ってしまったんでしょう)

チノ(あの涙のあと、きっと……ココアさんは人知れず寂しさで……)

ココア「だから、私は病院が嫌いで……けほっ……」

チノ「! ココアさん?」

ココア「……ごめん、ちょっとだけ休むね」

チノ「……私はいますから。ずっとココアさんのそばにいますから! だから、早く元気になってラビットハウスに帰りましょう!」

ココア「うん、そうだね……」

チノ(その日の夜、家に帰った私はお父さんがココアさんの病気のことを知っていたこと。家族に囲まれて暮らしたいというココアさんの願いのことを教えてもらいました)

チノ(そのことを知ると、ベッドから出ないようにと冷たくあしらわれ、一人寂しく過ごしていたココアさんを思い浮かべるたびに胸が痛くなりました)

チノ(それから、昼間のラビットハウスは毎日お休みになりました)

チノ(私は毎日ココアさんのところへお見舞に行きました)

チノ(たまにリゼさんや千夜さん、シャロさんやマヤさんにメグさんも。他にもいろんな人がお見舞に来てくれました)

チノ(実家に連絡をしたこともあって、ココアさんのご両親や兄弟の方もお見舞に来てくれて、ココアさんはすごくうれしそうにしてました)

チノ(でも、病状は日に日に悪くなるばかりで……ココアさんはどんどん弱っていきました)

チノ(それでも、ココアさんは私のことを妹だといって姉のように振舞ってくれました)

チノ(そして雪が解け始めたころ)

チノ(すっかりやせてしまったココアさんにりんごを剥いていたとき、私はココアさんに声をかけられました)

ココア「……チノちゃん」

チノ「なんですか? 私ならここにいますよ。後ちょっとでりんごが剥けますから」

ココア「私、チノちゃんのお姉ちゃんとして、ちゃんと役に立てたかな?」

チノ「……ココアさんはドジで、いつもちょっと抜けてて、色々鈍感で……」

チノ「……でも、やさしくて、あたたかくて……本当に私にお姉ちゃんがいたなら……きっと、こんな感じかなって」

ココア「……よかった」

チノ「……ですから、早く元気になってまたラビットハウスで一緒に働きましょう」

チノ「皆さんもココアさんが元気になってるのを待っていて……」

チノ「……ココアさん?」

チノ「……寝ちゃったんですか?」

チノ「……」

チノ「ココア、さん?」

チノ「……嘘、ですよね。また、私をからかってるんですよね?」

チノ「目を、開けてください……私のこと、呼んでください……お姉ちゃん……!」

チノ(初めてそう呼べたときには、すべてが遅かったんです)

チノ(そう呼べば、お姉ちゃんは目を覚ましてくれる。いつもみたいに笑ってくれる)

チノ(そう、思っていたのに……)


チノ(あの会話が、私とお姉ちゃんの最後の会話になりました)

チノ(あの後、お医者さんがお姉ちゃんの病室に駆け込んできて、色々、手段を尽くして……それでもお姉ちゃんが目を開けることはありませんでした)

チノ(皆さんはお姉ちゃんの死んだ事実を受け止め、涙を流しました。でも、私はなぜか泣けませんでした)

チノ(私は、お姉ちゃんが死んだなんて信じられずに何日も抜け殻になってしまったように過ごしました)

チノ(お姉ちゃんのお葬式で、お姉ちゃんが火葬されて、初めてお姉ちゃんがもう二度と帰ってこないことを実感して泣きました)

チノ(あれから、10年……私もすっかり大人になりました)

チノ(もしお姉ちゃんが生きていたのなら、私と一緒にラビットハウスで働き続けていたのでしょうか。それとも夢をかなえて小説家になっていたんでしょうか?)

チノ(……どちらの未来でもいいから……見てみたかったです……)

からん……

チノ「! いらっしゃいませ」

女の子「わっ、もふもふ!」

チノ「……あれ」

女の子「?」

チノ(こんなこと、前にも……)

チノ「ご注文はお決まりですか?」

女の子「そのうさぎさんがいい!」

チノ「コーヒー1杯で1回です」

女の子「コーヒーを頼めば触らせてくれるの?」

チノ「はい……ではご注文はうさぎでよろしいですか?」



おわり

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月18日 (金) 01:05:12   ID: 6zuXsFGp

かっ、、、悲しいよ!
うるっときたよ!

2 :  SS好きの774さん   2015年01月13日 (火) 04:28:12   ID: 0Y0P-Yyl

なんで皆すぐココアを死なせるんだ……

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