友「これはただのゲームじゃない 人生ゲームだ」俺「…」(77)

人生とかいうクソゲー

セーブもできない

一度選択を踏み間違えると二度と戻ることができない

ゲームの途中棄権は認められない

あるならば自殺という選択肢くらいだろう

なぜ俺達はこんなクソゲーに参加させられているんだ?

ーーーーー

友「お前最近人生楽しくないだろ」

俺「は?」

友「だってもう今にも自殺しそうな顔してるもんお前」

俺「黙れ」

友「ほらほらでたでたその返し
昔なら いや前からこんな顔じゃ~い とか言ってただろw」

俺「知るか」

友「はぁ…いいのかお前
俺みたいな優しい友達がいなかったら今頃一人で飯を喰ってるんだぞ」

俺「別に一人でいい」

友「ったく…なんでこうなっちまったのかねぇ…お前は」

俺「関係ないだろお前には」

友「やだねぇその返し」

俺「なんなんだ?飯食い終わったならどっか行けよ」

友「ほんと冷たいなお前…
いやお前にしか頼めない事があってな それを話そうと思って」

俺「俺にしか?」

友「まあお前にしか…ってわけではないんだけど」

俺「なんだよ」

友「ゲームを買い取ってほしい」

俺「死ね」

友「まあまあそう言わず話聞けって」

俺「知ってるだろ?俺はゲームなんて興味ないって」

友「知ってるよ
でもこれはただのゲームじゃない
人生ゲームだ」

俺「…」

友「…反応薄いな そのゲームを使えば今の現実世界とほとんど同じ世界を体験できるっていうゲームらしいんだけど」

俺「…」

友「それが本当に繊細に同じらしくてさ 凄くないか?欲しいだろ?そのゲーム」

俺「…」

俺「あのさぁ…」

友「なんだよ」

俺「色々と言いたいけどまず俺がそもそも今人生楽しんでないのにそれをゲームの中でやって何になるんだよ
まあそもそもそんなゲームあるか事態疑わしいが」

友「分かってないな~
ゲームなんだぞ?てことは何でもできるんだ」

俺「…」

友「人生は確かに辛いよ
思い出したくない過去、真っ暗な未来…理性というものに縛られ生きていくだけでも辛いというのに…
しかしこのゲームなら自由!なんでもできるんだ!」

俺「そんな都合良いゲームあるかアホ」

友「それがあるんだよ 貰っちゃったんだよ親の友達のどっかの社長か誰かに
俺も最初は内容のあまりの都合良さに金払って貰ったんだけど…」

俺「なんだよ」

友「ほら…俺彼女もいるしw …まあ友達もそこそこいてまあ見ての通り充実してるわけで…w」

俺「俺に譲ると」

友「そう」

俺「金は」

友「30万」

俺「いらん」

友「そう言うと思ったから取りあえず1日だけブツをお前に授けるから気に入らなかったら返却ってことにしてやる」

俺「だからいらねぇよ」

友「まあそう言うなって」

そう言って友は正方形の四角い箱を俺のカバンに無理やり突っ込み俺の肩を叩いて食堂を出て行った

俺「…しょうもねぇ…」

俺は一カ所に集まり騒ぐリア充共を眺めながらゆっくりと飯を食べ始める

今日もセミの鳴き声が響いていた

ーーーーー

生きるのがもうめんどくさい

俺は最近人生が楽しくない

友の言うとおり
それどころか俺の人生はもうどん底だった

この大学に入ってから俺の人生は狂った

所謂DQNと呼ばれる奴らに俺は狙われたのだ

毎日会えばパシりにされ罵倒されそれのせいで周りから見る俺の目も蔑まれるようになり今では元々同じ高校だった友くらいしか話す人はいない

勿論彼女などもできたことはない

糞みたいな人生だ

そろそろ自殺も考えていた

ーーーーー

チリリリリリ…

いつものように目覚ましで目を覚ます
時間は7時30分

いつも通り蒸し暑い朝だ
セミの鳴き声がうるさい

目覚めるとなぜか一番にあのゲームの事を思い出した

俺「…ゲームねぇ」

ベッドから降りた俺はカバンから取り出した箱を警戒しつつ机に置いた

中を開けると黒いヘルメットのような物と説明書?らしき薄めの本が入っていた

俺「うわぁ…怪しすぎ」

取りあえず説明書だけ取り出す

俺「なになに…【楽しい人生ゲーム】…か
糞みたいなタイトルだな」

俺「えぇー…【このゲーム内ではアナタの記憶からアナタの身近な世界をコピーしそれを造り出すことができます。アナタはそれを疑似体験できます。】」

まるで英語で書いてあったものを和訳したような文章だ

俺「だからそれじゃなんの意味もないだろ…」

俺「【このゲームのコンセプトは自由です。
このゲーム内でアナタは何をしても構いません。
なぜならこれはゲームだからです。
アナタは日頃出来なかった事をすることができます。
日頃の破壊衝動を解放できる新感覚のゲームをお楽しみください。】」

本当にそんなゲームなら都合が良すぎる気もするが

俺「ちっ…まぁやったら分かるか」

俺は机に座り恐る恐るその黒いヘルメットのような物を被った

見た目はヘルメットのようだが被ると顔全体が隠れる形になった
勿論前は真っ暗だ

そして説明書通りヘルメットの側面に付いてるボタンみたいなのを押した

一瞬目の前が眩しくなり今度は暗くなった

俺「うっ…なんだ?」

俺はゆっくりヘルメットを外し目を開くと自分の部屋の机に座っていた

そう広がっていたのはさっきと全く同じ光景だった
何も変わっていないのだ

俺「…は?どういうことだ?」

俺は呟きヘルメットを机に置いた

俺「これが…ゲームの世界なのか?」

俺「いや…さっきと何も変わってない…」

身体の感覚だってしっかりしてる
これがゲームなわけがない

俺はため息をつきいつも通り大学へ向かうべく家のドアを開けた

俺「…」

しかし一つだけ

ヘルメットのボタンを押したとき何か今まで感じたことのない感覚にとらわれた気がした
体が自分の体で無くなるようにフワッとして…なんとも説明しにくい感覚だった

もしあの時本当にゲームの世界に移動していたのだとしたら…

俺「…」

俺「いや…まさかな」

バカか俺は
こんなリアルなゲームがあるか

俺が家を出て歩道に出るといつも家の前で掃除をしてる隣の家のオッサンがいた
今日も落ち葉を掃除している

俺はこのオッサンがどちらかというと嫌いだ
いっつも機嫌悪そうにこっち見てるしこの前は挨拶しなかっただけでキレられた

俺「…」

この世界は本当にゲームじゃないよな?
もし…もしゲームなら今あのオッサンを殴っても大丈夫なんだよな?
でも…これはゲームじゃないわけで…

俺は心の中で葛藤していた
そんなリアルなゲームあるわけないと思いつつあってほしいと願う気持ちがやはり心の奥底にあるらしい

俺「ふっw」

何を考えてんだ
俺はもうすぐ死ぬんだろ?
オッサン殴ったところでさっさと自殺すればいいだけの話

オッサン「おい若造!なにぼさっと立ってる掃除の邪魔だ!」

俺「…」

そうだ俺はどうせもうこの世から消えるんだ

やってやる

オッサン「おい!聞いてんのか!?」

俺「…っ」

俺「…!」

なんてことだ
体が強張って動かない
いくら死ぬとはいえここに引っ越してきてから2年間毎朝見てきたオッサンを殴るのは緊張する

オッサン「ふざけてるのか!」

俺「…いや…」

オッサン「だからそこをどけって…!」

オッサンがホウキを持って早歩きで近付いてくる
俺はもうすぐ死ぬ俺はもうすぐ死ぬ俺はもうすぐ死ぬ俺はもうすぐ死ぬ

俺「どうにでもなれぇ!」

俺は渾身の力を込めてオッサンを思いっきりぶん殴った

オッサンはドス太い音のような声を出して地面にぶっ倒れそして俺を睨んだ

遂にやっちまった

オッサン「ひ…だ…誰か!誰か来てくれぇえ!」

俺「…!」

オッサン「お…おい!誰かあ!殴られた!誰か警察を呼んでくれぇ!」

俺「ひ…ひ…!」

まずい…どうすれば…

そうだ…あのヘルメットだ…!

あのヘルメットを被りもう一度ボタンを押せば元の世界…現実世界に戻れると説明書に書いてあった…!

俺「…っ!」

俺は全力で自分の家へ引き返し部屋へ入った

もしこれがゲームなら何も無かったことになってるはず…!

オッサン「待てこらぁあああ!!」

家の中でオッサンの声がする
急いで家に入ったせいでドアを閉め忘れていた

心臓の音が鳴り止まない

俺「頼む…!」

俺は机の上に置いてあったヘルメットを被った

オッサン「そこかぁ!」

オッサンの声が部屋近くで響いたと同時に俺は目を瞑りヘルメットのボタンを押した

俺「…っ!」



俺は震えながらヘルメットを両手で掴んでしゃがんでいた
そんなバカみたいな格好で10秒ほど目を瞑っていた

ゆっくりと目を開ける

いつもと変わらぬ自分の部屋だ

オッサンは…いない

俺「…」

俺「戻ってきた…のか?」

俺「…」

俺「戻ってこれたのか…?」

俺「じゃあやっぱり…このゲームは…本物…」

時刻を見る

8時12分だ
ゲームの世界と現実世界の時間の進行は同時らしい
…まあ当たり前か

俺「…」

俺「やべっ大学!」

俺は急いで家を出た
すると隣のオッサンが掃除をしていた

俺「あ…」

オッサン「…」

オッサンはいつも通り落ち葉を掃いている

オッサン「…」

俺「…」

オッサン「…なんだ?なにしてる掃除の邪魔だ」

俺「あ、ははい」

確信した
あのゲームは本物だ

俺はニヤリと笑い大学に向かった

ーーーーー

友「!?」

俺「ほらよ30万丁度だ」

友「おま…まじかよ…?」

俺「ま…お前遊ぶ金欲しいだろうし」

友「やそういうのいらねぇから
気に入ったのか?あのゲーム」

俺「…まあな」

友「…」

友「…分かった それじゃありがたく30万頂戴いたしますw」

俺「あと俺今日早退するから」

友「なんで」

俺「いやちょっと」

友「人生ゲームか?」

俺「…」

友「いや…まあいいんだけどさ」

俺「なんだよ」

友「なんか売った身でこんなこと言うのもあれなんだけどさ…気をつけろよ」

俺「なんで?」

友「いやその…あんま入り込み過ぎるなよ…てこと」

俺「は?w」

その時俺の頭上から大量の冷たい水が流れてきた

俺「冷たっ!」

男「おっとごめんなさ~いw」

俺「…!」

男「こんなとこに俺君がいるなんて気付かなくてさぁw」

俺「…」

こいつが俺の大学の人生を狂わしたDQNだ
俺の頭にオレンジジュースを零しやがった

友「お…おいおいやめてやれよ」

男「おい友…お前もいつまでこんなボンクラと絡んでんだよw 」

友「…そんな言い方ないだろ」

男「こいつがどんなけ嫌われてるかお前も知ってんだろw」

友「…」

俺「友…俺帰るわ 悪い」

友「…俺…」

男「フハハハハwwまた逃げた逃げたww」

俺「…」

ーーーーー

俺が向かったのは勿論家だ

許さねぇ

あの男に復讐してやる

俺はヘルメットを被りボタンを押した
一瞬目の前が眩しくなる

そしてまた来たのだ
ゲームの世界へ

この世界は俺の記憶を基準に創られている
つまり現実世界の続きをゲームの中で出来るってわけだ

そのゲームの世界は言わば現実世界と全く同じパラレルワールドだ

俺はニヤリと笑いまた大学へ向かった

ーーーーー

教室に入ると生徒は40数人いた

友「え…俺!?なんで戻ってきたんだ!?」

俺「…」スタスタ

こっちの友はあくまで偽りの人間だ
コミュニケーションをとる必要はない

友「おい…俺…!」

俺は真っ直ぐ周りのDQN共と喋ってる男の元へ歩いていった

男「あれ?あれれ?w 帰ったんじゃなかったのかな?w」

俺「おい男!」

男「は?なんだお前」

俺は近くに置いてあったパイプ椅子を掴み全力で男の元に走った

男「は?は?」

俺「おらぁあぁあ!!」

ドゴォと鈍い音を立てパイプ椅子が男の頭部を直撃した

男「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!」

しっかりと感触があった
周りのDQN共がざわざわ叫んでる
男の頭部から血がドバドバと垂れ始めた

俺「ふ…」

俺「フハハハハハハハハハハww」

男「てんめぇぇぇえええ!!」

俺は笑いながら後退りをしそして走り出した

後ろから「追い掛けろ」という声が聞こえた

俺「フハハハw」

友「おい!お前まさか人生ゲームを…!」

俺は友の言葉などに耳を傾けず教室を全力で抜け出した

ーーーーー

俺「はあはあ…」

なんとか家に辿り着いた

俺はヘルメットを被りボタンを押した

元の世界に戻った俺はヘルメットを外すと息をきらし汗をかいていた

心臓の鼓動が止まない

何が疑似体験だ
あまりにも出来すぎた体感ゲームじゃないか

だが悪くない

俺「へへ…面白いじゃねぇか…」

俺「ふふふ…」

俺「ふははは…」

俺「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハwww」

俺は1人部屋の中で大きな笑い声をあげた
今までこんなに心から笑い声をあげたことがあっただろうか

俺に生きる希望ができたのだ

その日俺は一晩中狂ったように笑い続けた

ーーーーー

あれから何ヶ月が経ったろうか

俺は不登校になり家に引きこもるようになっていたのだ

金は親の仕送り 家を出るのは飯を買いに行く時だけ

言わば世間で言われるクズの仲間入りを果たしたわけだ

しかし俺に口惜しい気持ちなど微塵もなかった

俺は毎日この人生ゲームに明け暮れていた

俺はもうゲームの世界でいくつもの罪を犯した

嫌いだったDQNをボコボコにした
意味もなく店から物を盗み警察から逃げるのを楽しんだりした
挙げ句の果てには前から好きだった女を犯しまでした

罪を犯してはログアウト 罪を犯してはログアウトを繰り返した

ただただ行ったことのなかったゲームセンターやボウリング場で遊んだ事もあった 意外に面白かった
大学の奴らと普通にコミュニケーションをとろうとしたこともあった

しかし俺が求めたのは刺激だった

この世界で怪我すれば痛いし飯を食べれば旨いし満腹感もある そう、感覚神経も現実世界と同じらしい
しかし勿論現実世界に戻ってくるとその痛みや満腹感などは無かったことになってる

俺はこの世界での生活を満喫していた

しかし俺は更なる満足感を求めた


そして遂にやってしまったのだ

ーーーーー

俺「さて今日は何をしようか…」

俺「取りあえずまた大学まで来てみたが…」

こっちの世界での行動はほとんど大学だ

俺「ん…今は休み時間か」スタスタ

周りの奴らがざわつき始めた
これは毎度の事だ
なんせ俺は現実では不登校なのだ
その記憶で構成された世界にいるのだから当然だ

「え、あれ俺君じゃない?」

「あの人って不登校の…」

もうその陰口は慣れた

教室に入る

友「え!?俺じゃねぇか!」

友のこのリアクションを見るのは何度目だろうか

俺「よう」

友「お前…何してんだよ…!なんで急に不登校に…まあ想像はつくけど…」

俺「なんだよ」

友「人生ゲームだろ?」

俺「ふふっ 正解で~す」

友「…」

俺「あれ?お前なんか元気ないなw」

友「やっぱお前に渡すんじゃなかった…あのゲーム」

俺「俺が買ってやったんだろ?おかげでお前沢山お金貰えたじゃん」

友「笑えねぇよ」

この会話は何度目だろうか
俺はいつもこの世界で友に会うと同じ返事をしてた

俺「ま、おかげでほら 俺もこんな元気になったんだ
良かったろ?」

友「…どうせお前…明日からまた学校来なくなるんだろ?」

俺「…」

いつもなら俺の返事は「ま、そうかもな」だ

しかし今日は気分が違った

魔が差してしまったんだ

俺「…」

俺「…ふw」

友「…なんだよ」

俺「ふはははw」

友「なんだよ!」

俺「…ねぇよ…明日なんて」

友「…なに?」

俺「お前に明日なんてねぇよw」

友「どうゆうことだよ」

俺「…ふふふw」

俺「お前は気付いてないだろうけどな…ここはゲームの世界なんだよw」

友「なに?」

俺「だからここはあの人生ゲームで創り出された偽りの世界なんだよ!w」

友「…何言ってんだよ…」

俺「だ~か~ら~
俺がまたあのゲームのボタン押せば終了ww取りあえずこの世界は消えるってわけww」

友「こ…ここは現実世界だろ…?」

俺「ゲームの世界だって言ってんだろw」

友「嘘だ…嘘だ…」

俺「ふっw 」

ゲーム世界の人間にここがゲーム世界であることを教えたのは初めてだが中々これも面白い反応をするものだ

俺「さ~て 今日は何しようかなw」

友「…」

友「…」バッ

俺「お?どこいくんだ?w」

友「…お前ん家だよ」

俺「…は?」

友「お前ん家乗り込んであのゲームぶっ壊してやる」

俺「…」

友は教室を飛び出した

待て…
もしこの世界のあのヘルメットが無くなったら俺はどうなるんだ?

このゲームの世界と現実世界の移動方法はあのヘルメットだけだ

もしあれを壊されたら…

背筋がゾッとした

現実世界の俺は今現在家で一人
勿論他に人などいない

俺は走り出した

大学を出ると友が俺の家の方向に向かって走っていた

大学から家までは大体10分
友は俺の家を知ってる…まずい

俺は全力で友を追い掛けた

ーーーーー

友がこの辺の地形をあまり知らないのが幸いし俺はなんとか近道を使い友に近付いた

そして友が俺の家に窓から入ろうとしたところを俺が後ろから走ってきた勢いで突き飛ばした
そのため部屋の畳に友を押し倒し抑え込む形になった

友「はぁ…はぁ…はぁ…」

友「…な…なんでこうなっちまったんだよ…」

俺「うるせぇ!お前のせいだろ!」

友「…そうかもな…てか…そうか…」

俺「…」

友「なあ…どけてくれよ…」

俺「…」

友「なあ…」

俺「頼むから…頼むから壊さないでくれ…」

友「…」

俺「これが無くなったら…終わりなんだ…」

友「ふふっ…」

俺「なんだよ」

友「お前…前まであんなにゲーム嫌ってたのにな…」

俺「…」

友「昔なんて俺がゲーム持ってって執拗にお前にやらせようとしたら…お前そのゲームぶん投げようとしたろ…覚えてるか?…笑っちまう…ほんと…」

俺「…」

俺「…これは…他のゲームと違うんだ」

友「…」

友「分かったよ…」

俺「…」

友「分かった…壊さない…壊さないからどけてくれ」

俺「…嘘だな」

友「ほんとだ」

俺「…」

友「信じてくれ」

俺「…」

俺は警戒しつつ友を解放した

友「ふっ…さんきゅ」

俺「…」

友「…なに睨んでんだ」

俺「出ていけ…取りあえず部屋から出て行ってくれ」

友「分かったよ」

友は部屋のドアまで行きそこで立ち止まった

友「ただ…」

俺「…なんだよ」

友「お前…分かるか?ゲームのキャラクターの一人にされた気持ち」

俺「…別にそういうわけじゃ…」

友「それも自分が渡したゲームのだ」

俺「…悪かったよ」

友「…分かんねぇよな…そりゃ」

俺「…」

友「…一つだけ…約束してくれ」

俺「お…お前…泣いてるのか…?」

友「…」

俺「お…おい…」

友「こんなゲーム二度と使うなってなあぁ!」

友が振り返り勢いよく机に向かい走り出した

俺「な!?」

友がヘルメットを掴み取り地面に叩きつけようとした

俺「やめろぉ!!」

グヂャァアッッ



俺「はぁ…はぁ…はぁ…」

友「」

俺は気付くと手にバットを掴んでいた

部屋に飾りとして置いてあった物だ

そのバットは血で赤く染まっていた

俺「…お…おい…」

俺「嘘だろ…おい…友…」

俺「おい…!おい!友ぉ…!」

俺「ひ…!」



殺してしまった

初めて人を殺してしまった

勿論ゲームの中ではあるがこんなの現実と一緒だ

手の震えが止まらない

それどころか腰が抜けて動けなくなっていた

俺「あ…あ…あ…」

俺「と…友…あ…!」

俺「………っ!」

下を向いたまま倒れた友の頭から出てきた大量の血が畳染み込み始めた

あまりの恐怖に息が出来ない
しかし俺は一瞬だけ理性を取り戻す

俺「そそうだ…!へ…ヘヘヘルメットだ…!」

俺「そそそうゲームだこれはゲームだゲームなんだゲームなんだ…!!」

俺は必死にヘルメットを掴もうとするが上手く掴めない

俺「ち…ち…ちくしょ…!」

俺は完全にパニックになっていた

しかしなんとか震える手でヘルメットを被りとにかくボタンを連打した

目の前が数秒眩しくなりそして暗くなった

俺「…はぁ…はぁ…はぁ…」

ゆっくりと目を開けヘルメットを外す

俺は部屋の机に座っていた

俺「はぁ…はぁ…はぁ…」

部屋を見渡す

友はいない

俺「…」

手足の震えが止まらない

しかし戻ってこれたのだ…

俺「…」

俺「ふ…」

俺「ふははは…」

俺「は…」

俺はポロリと涙を流した

あと少しで俺は一生ゲームの世界で生きていかなくてはならなかったんだ

俺「もうコリゴリだ」

俺は一人目を瞑り笑みを浮かべた

しかしなぜか俺は心から安心出来なかった

何かある

何か違和感がある

何かを見落としている気がする

俺はまだ震えてる手を抑え考える

思い出せ…さっきの行動を
俺が友をバットで殴り…俺は腰を抜かした…俺はヘルメットを被り…ボタンを押し

た?

いや連打したんだ

そういえばさっきの移動の時 いつもなら一瞬で移動するが今回は長かった
それも今思うと眩しくなった光は点滅しているようにも思えた

あれはボタンの連打により現実世界とゲームの世界の行き来を一瞬で繰り返したということか…?

まさか…まだここはゲームの世界?

いやでも机に座っていたから…
違うな…それではここが現実世界である証拠にはならない

連打で一度現実世界に戻ってからまたゲーム世界に移動したのだからどちらにしても机に座っているのは当たり前…

ここまで考えた時俺にまたもや恐怖が襲い掛かる

どっちだ?

今どっちの世界にいるんだ?

現実世界?

ゲームの世界?

俺「あ…あ…あ…」

俺「う…」

俺「うわああああああ!」

ーーーーー

「そういえばアイツ学校戻ってきてたな」

「誰だよアイツって」

「アイツだよ 俺ってやつ」

「あぁあの不登校の奴か」

「なんか今大学に来るなり何か騒いでるらしい」

「騒いでる?何を?」

「なんだっけな…ここはどうのこうの…て色んな奴らに聞いて回ってて…」

「分かんねぇよw」

「あ、あれじゃないか?」

「ほんとだ なんかすげぇ焦ってる」

「こっち来た」

俺「はぁ…はぁ…はぁ…」

俺「なぁ…?ここは…」

俺「ここは現実世界だよな?」

俺「なぁ?なぁ?現実の世界だよなぁ?そうだよな!?」

俺はパニックだった

大学に行くなりそんな質問ばかりしていた

皆俺を変な目で見てやがる

こいつらもだ

俺「ははっw」

俺「ゲームか…」

俺「やっぱこれゲームの世界だな!?」

俺「…」

俺「なんだよ…なんだよその目…」

俺「みんなみんなそうだ…」

俺「やっぱりこれゲームの世界に違いないっ!」

俺「俺は自由だぁ!」

俺はその男達をぶん殴った

そしてそれを見ていた周りの人間も殴っていった

俺を蔑んでる奴を殴るのは爽快だ

色んなとこから悲鳴や叫びが聞こえる

俺「ゲームだ!これはゲームだぁ!」

拳が血で染まっていく

俺「うおおおおおおおお!」

友「…やめろ」

俺「…!」

後ろから友の声がした

友「…何があった?」

周りの人間は逃げて行きその広場には数人の倒れた男と俺と友だけになった

俺「…」

友「人生ゲームのせいだろ?」

俺「なぁ…お前はここ…現実だと思うか?」

友「…なに?」

俺「なぁ…これは現実なのか?ゲームなのか?」

友「…」

友「…そりゃ現実だよ」

俺「…」

俺は友のそのあまりにも平凡な返事を聞いてやっと我に返った

ここの人間に現実世界かゲームの世界かなんて分かるはずない
誰だってここが現実だって思ってるんだ

俺「ふっ…ふふふ…」

友「…」

俺「ふふふはは…」

友「…」

俺「…ふ…」

友「俺が悪かった…あんなゲーム渡すから」

俺「…」

もうこの世界がどっちの世界かなんて…誰にも分からない

友「俺…泣いてるのか…?」

俺「…」

友「…」

俺「友…助けてくれ…」

ーーーーー

俺は友に全ての事情を話した
今まで起こったこと全部

友「…ごめん」

俺「…」

友「俺にはどうしようもない…」

俺「…」

友「…いや…まてよ…」

俺「ん?なんだ?何かあるのか?」

友「あ…いや…」

俺「はぁ?」

友は何か動揺し始めた

俺「なんなんだよ」

友「いや…やっぱなんもない」

俺「教えてくれよ」

友「いやだ」

俺「友…俺にはもう居場所がないんだ」

友「…」

俺「何か知ってるのか」

友「…説明書あったろ」

友「…あれをよく読め…俺から言えるのはそれくらいだ」

俺「説明書?あれに何か書いてあるのか?」

友「…俺にもここが現実世界かゲームの世界かなんて分からない」

俺「え?」

友「でも俺はどこの世界でもお前の味方だ」

俺「え…おいどこいくんだよ…!友…!」

友「…」

俺「…」

俺は1人 広場に立ち尽くした

ーーーーー

やはり俺の行く場所は家しかなかった

俺「説明書をよく読め?」

俺は薄っぺらい説明書を開く

俺「…」ペラペラ

俺「【疑似世界からのログアウト方法】…」

俺「【再度装飾品を着用し側面に付属しているボタンを】…ってそれは分かってるけど…」

俺「ん?【※もしもゲーム内で死亡した場合は強制的にゲームからログアウトされます。】…」

俺「…死ぬと強制的にログアウトされる…」

俺はすぐに気付いた
友の伝えたかった事に

もしもこれがゲームの世界なら…今俺が死ねばログアウト…
確実に現実に戻れる

でももしこれが現実世界なら…俺は実際に死ぬ

俺「…」

俺は決心を決め立ち上がった



ーーーーー

俺は最寄りのマンションの屋上に立っていた

俺「…」

俺「さて…いくか…」

俺「…」

俺「ふふ…何を怖がる事がある?」

俺「どちらにしてもこの世界にもう俺の居場所なんてない」

俺「そう…俺は前から自殺志願者だったんだ」

俺「…」

俺「なんなんだろ…この感じ…」

俺「前から死にたいって思ってたのに…いざ立ってみると怖いもんだな…」

俺は無意識に下の道路を覗きながらでブツブツと独り言を言っていた

俺「…」

俺「ふふふ…あれ?…俺もしかして…」

俺「死にたくないのかな…」

俺はいつのまにか涙を流していた

俺「なんでだよ…こんな糞みたいな人生なのに…」

俺「…」

俺「…そうか…」

そう…俺はあの人生ゲームを通して学んでしまった

良い生き方を 楽しい生き方を

俺「ゲームセンター…楽しかったな…」

俺「ボウリングに1人で行ったのは恥ずかしかったけど…1人であんなに楽しいんだから…みんなと行くと…もっと楽しいんだろうな…」

俺「…」

なぜか涙が止まらない

俺「それに…俺から話し掛けた時も…意外と皆話してくれたよな…」

俺にはこの世界が現実世界であるとしか思えないのだ

俺「…きっと俺は死ぬんだろうな」

俺「ふふふ…自業自得さ…」

俺は足を一歩踏み出した

俺「…」

俺「もし…もしも…これがゲームの世界で…俺が現実世界に戻れたとしたらどうしようか」

俺「…そうだな…取りあえず頑張って友達を作ろう…」

俺「…あと友にはもっと優しくしてやらないとな…」

俺「それでたくさんたくさん遊びたい…」

俺「…」

俺はもう一度下を覗く
かなりの高さだ

俺「…どっちの世界にしても痛いんだよなぁ…」

俺「…」

俺「仕方ないんだ」

俺は今度こそ決心した

俺「…」

俺「…うおおおおお!!」

俺は少し助走をつけてマンションを飛び降りた



不思議と飛び降りると空中での時間がまるでスローモーションのようにゆっくりと流れ始めた

なんだよこれ

怖い

もう少しで地面についてしまうのに

自殺ってこんなに怖いものなのか

すると向かいの道路の先の坂道に丁度楽しそうに話す何人かの学生が見えた



俺は心から後悔した

友の忠告に耳を傾けなかったことを

もうあと数メートルで地面だ

俺は涙ながらに最期に呟いた

俺の本心を

「生きたい…!」



やっぱり死ぬほど痛かった

てか…もう死ぬのか…
これが死ぬって感覚か…

意識が遠のいていった

ーーーーー

人生とかいうクソゲー

セーブもできない

一度選択を踏み間違えると二度と戻ることができない

ゲームの途中棄権は認められない

あるならば自殺という選択肢くらいだろう

なぜ俺達はこんなクソゲーに参加させられているんだ?

そんなこと誰も分からない

でも人生がクソゲーかどうかは人による

自分なりに楽しもうとすればそれは神ゲーになるかもしれない
例え周りにどう見られても

全てはその人生というゲームをどう楽しむかだ

ーーーーー

ミーンミンミンミンミン…ミーンミンミンミンミン…

セミの鳴き声がうるさく響いている

俺「…」

俺は目を瞑りゆっくりとヘルメットを外した

目を開けると俺は机に座っていた

服は汗でビショビショだ

俺「…」

俺「…ふふ…」

俺「…やっぱゲームは好きになれそうにない」

俺は手のひらを見る

生きている

これで何度目だろう

俺は手の平に涙を落とした

そう

俺は生きているんだ



end

おわり

そうか気付かなかった
普通に机以外の場所でスイッチ押せば分かるのか…

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