提督「長い一日」 (175)

・R-18エロまっしぐら
・地の文
・駄文

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   チュンチュン……


「朝か……」

カーテンの隙間から差し込む光と雀の鳴き声で目を覚ましぽつりと呟く
ぼうっとした頭で時計を見やり、普段より大分早い時間に目が覚めたと分かる

「夕べは……何時に寝たっけな……」

ゆっくりと就寝までの出来事を振り返ろうとし、自身が何も身に付けていない事に気づく
そのまま自身の状況を確認しようと首を起こすと


「…………すぅ……すぅ……」


提督に半分覆い被さる形で規則的な寝息を立てている女性が居た


「そうか、昨日は榛名と……」


榛名もまた、何も身に纏っていない状態で眠っていた事から夕べの行いを思い出し
就寝までの間に起こった事を振り返る


一言でいえば彼女との深夜まで続いた情事により
互いの体力の限界となりそのまま眠ってしまったのだ


情事の際に見せた榛名の表情と、今静かに寝息を立てている榛名の表情が重なる
快楽に溺れ恍惚とした表情……思い出すだけで体に熱が篭る


ゆるゆると左手で榛名の髪を撫でると、さらさらとした感触で何の抵抗もなく指が滑る

         さらり  さらり

指をそのまま滑らせ長く伸びた髪から背中へと移し
きめ細やかな肌もまたするりと手を滑らせる


なだらかに反った背中の奥、腰から下にかけてするり……するり……
そして彼女の臀部へと届く

女性らしくぷっくりとしたその臀部は指で押せば押し返してくる弾力と
手のひらで包み込もうとするとその形を簡単に変えてゆく二つの感触を楽しませるものだった

下着はやはりつけていない

自身も一糸纏わぬ状態である事と、昨日の出来事からほぼ間違いない事だが改めて確かめたかったのだ

そして感触を一通り味わった後、指は再び上へ登り
反対側へと手をまわし、腹部を撫で上げ、そのまま上へ……


      ふに ふに

胸の感触を今度は確かめる

「……んっ…………すぅ……」

一度触れて揉んだ所で榛名の寝息が乱れる
寝ているままの相手に悪戯するのは気が引けるのか
どきりとして一旦指を止め、そのまま暫く待つと再び規則的な寝息に戻った

しかしこの柔らかな感触を味わうと男としてそう簡単には止められない
落ち着いた所で再び榛名の胸を触る

ゆっくりと手で包み込むように、敏感な所は避け乳房をやわやわと揉んでいく

すべすべした肌触りと、簡単に指が沈んでいくその感触を楽しむと歯止めが利かなくなる


     ぐにっ   ぐにっ


先端には触れないままであるものの、手に少し込めた力でどんどん形を変えさせる
そのたびに指で感じるその感触がまたその行為を加速させる


「……んっ…………ふっ……」


いつしか寝息が無くなり、代わりに指を躍らせるリズムに沿って榛名の口から吐息が漏れ出す
寝息が聞こえなくなった事にも気づかずどんどんと揉み続けていき


そうしてついに先端を指でつまんだ瞬間


「……んぅっ! はぅっ!」

大きな声を上げ体がびくんと跳ねる


「……もしかして……起きてた?」

恐る恐る提督が寝ていた筈の榛名に問いかけると

「……あ、あの……おはよう、ございます……」

ゆっくりと目を開き、少し恥ずかしげにこちらを見つめ挨拶をしてくる
あちゃあ、と悪戯がバレた子供のような気持ちになりゆっくりと手を引こうとすると

「その……そんなによろしかったでしょうか? 私の胸……」

榛名は少しだけ困った様子ではあるが、それ以上は特に咎める風でも無く
それほどまでに触っていたかったのかと聞いてくる

「あ、ああ……つい、な。榛名の胸を触っているのが好きで……」

「そうですか……他の方に触られるのは嫌ですけれど、提督であれば……大丈夫です」

提督からの答えに榛名は頬を少し赤らめながらもにこりと笑顔で返してきた

寝ている所に悪戯をしていたというに、咎めるどころか許しを得てしまい
叱られるよりも逆に罪悪感に苛まれてしまいそうになる


榛名がゆっくりと起き上がり正座を崩した形でベッドの上に座ると
朝日に照らされたその体がはっきりと目に映る


白く透き通るような肌に長い銀髪のコントラストが映え
しっかりとした二つの膨らみがつんと上を向き
腰の括れから太ももまでの曲線がしなやかな体付きを見せる


「あ、あの……ですけどそんなにじっくり見られるのは……少し、恥ずかしいです」

シーツを手繰り寄せ、体を包み込むように隠してしまう
裸体を見ることはできなくなったが朝日に照らされるその姿は有名な画家が描くような綺麗な光景となる

榛名が所在無さげに辺りを見回すとふと一箇所で止まり、その先をじっと見つめる
目線の先は丁度提督の股間を捉えていた

起きたばかりの上に先の行いで十分に起立したソレはしっかりとシーツを押し上げている

「ええと……その……」

昨日の行いを榛名も思い出したのかみるみる顔が赤みを増していく
提督もまたばつの悪そうに困ったと彼女から目線を逸らす


「提督は朝から……お元気なようで」

「言わんでくれ……ちょっと恥ずかしい」

ぽりぽりと顔をかきながら提督が答える
榛名への悪戯はこれでしまいにしようと提督が上体を起こそうとすると


「あの……このままなのはお辛いのですよね……?」

榛名がそう言うとすっと手をシーツの中へ潜らせ
提督の股間へと手を伸ばしそのまま起立したモノを優しく手で包み込むように握る

「お、おい……」

突然の出来事にたじろぎ制止しょうとする提督に構わず、榛名はゆっくりと手を上下に動かし始める


       しゅっ……しゅっ


シーツの衣擦れと手の摩擦による乾いた音を出し、提督に刺激を与えてゆく

「う……無理しなくてもいいぞ」

「いえ……提督には喜んで頂きたいですから……大丈夫です」

いつも口癖のように呟く台詞を言いながら、こしこしと傷つけないよう手を動かしていく
榛名がその手をシーツごしにじっと見つめるその瞳は潤み始めていった


「……お加減は……よろしいでしょうか?」

「あ、ああ……うん、いい」

「……はいっ」


あくまでこちらを気遣うその仕草と言動に素直な感想を述べ
そのまま榛名に身を任せていく


      しゅっ……にちゅっ


優しい手の動きが快楽を呼び、乾いた音から少しずつ水気を帯びる音へと変化する
既に完全起立した状態であった為、先端から透明な粘液を吐き出すようになるまで幾許もかからなかった


「…………はっ……はっ……」


その音に応じて榛名の動きと吐息にも熱が篭る
ゆっくりと速度が上がっていき握る力も増してゆく

完全に榛名もスイッチが入りその行為に夢中になる


      しゅっ……くちっ……にちゅっ


榛名の息遣いと股間を擦る音だけが部屋に響き
朝日の差し込む爽やかな時間を淫靡なものへと塗り替えてゆく

「ええと……次は……こうすれば、よろしいんでしょうか……」


手を擦る速度が大分上がってきた所で次の段階へ移ろうとしたのか
シーツをめくりその部分を露わにさせる榛名

そのまま口をゆっくりと開き顔をその股間へ近づけていき……

「……まて」

「……えっ?」

股間を捉えていた視線が提督の制止によりくるりと向きを変える
止められる事が意外だったのか少し驚いたかのように提督を見つめる


「いや……それをされる前にこうしたくてな」

「あ……んぅっ……」

提督がゆっくりと榛名の顔を寄せ唇を塞ぐ
さすがに自身のモノを咥えられた口でキスをされるのは気が引けたのである


提督からの導きで口付けを交わしていく榛名は
その唇の感触だけでなく自身が求められているという思いに身を焦がしてゆく


「んっ……ふぅっ……ちゅるっ……」


互いの口が開かれどちらともなく舌を交わらせる
唾液が混ざりじゅるじゅると音を立てて吸い立てられてゆく


     しゅっ にちゅっ くちゅっ くちゅっ

口付けをしている間も休まず榛名の手は提督自身を扱き続け
それに負けじと提督も榛名の胸に手を伸ばし揉みしだき始める


    ふに ふに むにゅぅっ くにゅっ


「……じゅるっ……ふっ……んんっ……」


未だに離れない口から榛名の吐息が漏れていき
吐き出された息は大半が提督の口へと送り込まれ、榛名の甘い香りが鼻腔いっぱいに広がる


    くりっ


「……んぅっ! ふぅっ!」

胸の先端が摘み上げられた瞬間、より強い吐息が漏れ体をびくんと跳ねさせる
柔らかで形をぐにぐにと変えてゆく乳房とは裏腹にそこは硬くこりこりとした感触を楽しませる


   しゅっ……すりっ……しゅっ……

胸を弄られる快感からか、榛名の手が若干動きを鈍らせる
体が跳ね手元が狂うが、それでも離すまいと必死に提督自身を擦り続けていく

「ふっ……ふっ……んっ……」

榛名の手を動かすリズムと、提督が胸を揉み先端を摘んでゆく二つのリズムに合わせ
二人の息遣いも吸い、吐き、吸い、吐きを繰り返す

一度唇を重ねた所から離れる事のないキスを続けながらも
まだ足りないと榛名が口を押し付けるように提督へ体を寄せていく

提督への奉仕をしながらも自身を弄ばれ得られる快感に榛名も少しずつ我を失う

体勢が変わりぴっちりと閉じられた太股が開かれ、その付け根の奥がちらりと覗く



     ぐちゅっ

提督が胸を揉んでいた反対の手を伸ばしその秘裂に触れると
触れていなかったにも関わらず粘り気を帯びた液体で十分に濡れそぼっているのが分かった

「ぁっ……そこは……!」

ぴくりと体を揺らし互いの口がついに離れ、きゅっと体を強張らせる榛名
しかし太股に挟まれた手は榛名の力ではびくともせずぐちぐちと音を立てながら掻き混ぜてゆく


「ぁぅっ! うぅっん! っは……ぁ…うっ!」


     ぐちゅっ ちゅぷっ じゅぷっ

提督の指にねっとりとした蜜が絡み付き、動かす度にはっきりと聞き取れる水音を鳴らす
秘肉に指をうずめ、くいくいと折り曲げると敏感な部分を擦り上げていく


    つぷっ……ずにゅ……


「ぅぁぁあ……!」


折り曲げた指をそのまま奥へと差し込んでいき、榛名の中へと侵入させると
榛名がゾクゾクとした背筋を登る感覚に体を震わせ、腰くだけになり提督へ寄りかかる

榛名は手を最早動かす事ができず提督のソレを握る事しかできなくなっていた

それでも構わず提督は指を挿し込み、引き抜き、時には擦り上げ水音をより大きく奏でていく


「うぅ……ぁぁっ……そんなに……音出さないで、くだ、さぃ……ぁぁっ!」


自身から発せられるその淫猥な音を耳にし、提督に潤んだ瞳で訴えかける
しかし赤みがさした頬に乱れた吐息を漏らすその表情はより提督を興奮させるものであった


手の動きがより加速し途切れる事のない水音が激しさを増し
繰り返し榛名の中を行き来する指が執拗に彼女を責め立てる

「も、もう……あぁっ……だ、だめ、です……あっ…あっ……!」

びくびくと体を震わせ限界が近づいてきたらしく、下唇を噛み締め目をきゅっと瞑り
ごぽりと次々に榛名の中から愛液が溢れ出る


     ずるっ

不意に提督が指を引き抜き榛名への愛撫を止める

「……え?」

何故急に止めてしまったのかと榛名が目を開き提督を見つめる
その顔は最早奉仕を忘れ次の快楽を望んでいた


「榛名……そろそろ俺も我慢できない」


そう言いつつ榛名の体をゆっくりと抱き寄せつつ横へと倒す
ぽすんとベッドに仰向けにされた榛名へと提督が向き直り
限界にまで腫れ上がった自身の剛直を榛名の股間へとあてがう

「ぁ……はい、お願い、します」

はあはあと息を乱しつつも提督の行為を受け入れようと笑顔で応える
提督は自身の起立しきったソレに榛名の愛液を塗りたくり、挿入への準備を整えた


     ずぶっ


十分にほぐされたその秘穴は何の抵抗も無く提督自身を飲み込んでゆく

「あっ……ぁぁぁあああ!」

その瞬間榛名が体を震わせ一際大きな声を上げる
今までの行為で十分に昂ぶったところへの侵入は、最高の快楽となりまっすぐに下腹部から脳天までを貫いた



「……いった……のか?」


提督からの問いかけを応える事もできず幾度か体を跳ねさせる


   びくん  びくん
   きゅっ  きゅっ


大きく体を震わせるリズムと同じように榛名のソコは提督の剛直を締め付け
絶頂を迎えたのは提督には体で感じる事ができた

提督はひとまず榛名が落ち着くまでその状態から動かずじっとしていると


「提督……わた、しの事は構いませんので、どうぞお好きなようになさって、下さい」


絶頂を向かえ息も絶え絶えといった所であるが
それでも提督へ気遣う余裕が出たのか、提督の為にこの体を使って欲しいと答える

いじらしい彼女の言葉に提督はそっと榛名の頭を撫で髪を梳いていく

「ぁ……ふゎ……」

その慈しむような手付きに榛名は目を細め、絶頂の余韻と合わせ体の緊張を解きほぐしていった


「それじゃあ……動くぞ」


そうして提督が腰をゆっくりと動かし始め、榛名の中から一旦剛直を引き抜く

「ぁぁ……んぅ……っ」

ずるずると引き抜かれる感覚が下腹部から背筋を通りゆっくりと快楽を榛名に与えてゆく


     ずぷんっ!


引き抜いた速度とは裏腹に腰を叩き付けるように一気に最奥へと挿入する
腰と腰がぶつかり、溢れ出た愛液が水音を立てる

「あんっ!」

一気に中を割り入ってくるその剛直に榛名は再び声を漏らす

そうしてまた引き抜かれ……また一気に挿入される
一連の流れが段々と等間隔になりその度に榛名は嬌声を上げていく


    ずるっ…… ずぷんっ  ずるっ……ずぷん


一定の速度で動くようになったその行為は互いの性器を刺激しあう
榛名は提督の剛直を締め付け、包み込む
提督は榛名の中をえぐり、擦り上げていく


    ずるっ ぐちゅっ ずちゅっ じゅぷっ

「はっ……んぅっ! ぁぁぅっ……ん……くっ」

動きは単純に、そして早くなっていき
腰を打ちつける度に出る水音と榛名の喘ぎ声が部屋に響く

そうして榛名の中へ幾度もその剛直を付き立てていくと
提督は柔らかに包み込むその膣肉の中に一箇所だけこりこりとした感触があるのに気づく


少し腰の角度を変え、その少しだけ硬い部分をこつんと叩いてやると

「……ぁぁぁっ! きゃうっ! な、何……あうっ!?」

びくんと榛名の体が跳ね腰が浮く
どうやらこの部分が榛名の最も弱い箇所のようだ

榛名は電撃のように走る快楽に目を白黒させ、提督と繋がっている部分を見る
提督が少し体勢を変え榛名を突いており内側の一部を執拗に責めているらしいと分かる

そしてその電撃は提督が腰を前に押し込む度にがつん、がつんと体を駆け巡る

「そこ、あうっ! だ、め……んぅぅ!!」

うわ言のように声が漏れ、腰が浮き、足がぴんと伸びる
強烈な快楽に口が緩みその端から唾液がたらりとこぼれ始める


普段の貞淑な榛名はそこにおらず、惚け切った表情で快楽に身を委ねる女となっていた

榛名の弱点を立て続けに責めたてると、膣肉がぐにぐにと蠢き
提督のそれを強く締め上げ剛直もまた強い快感に包まれる


「そろそろ……いくぞっ……!」

「ぁぅっ……! んぅっ……きて……くだ……ぁぁっ!」

互いに高まり限界が近づくと、提督は榛名の腰をがしりと掴み
最早自らの快楽の為だけに激しく腰を前後させる

体を叩き付けるような激しい動きに榛名は下腹部から登ってくる間隔に包まれていく

「……きちゃいっ……ますっ……ぅぅぅぁ!」

榛名は歯を食いしばりシーツをきゅっと握り締める



    どぷんっ!  どくっ  どくっ

「あ……あぁぁぁぁっ!!」

そして最奥にその剛直を突き立てた所で榛名の膣肉がぎゅっと締まり
その刺激により提督の剛直は精を吐き出し、それで榛名の中を満たす

注ぎ込まれた精を受け入れ榛名も体をびくびくと痙攣させ
どくどくと脈打つそれを膣肉が絞り上げ、余すことなく飲み干そうとしていく

いまだ止まない射精を続けながら提督は榛名に覆い被さり口付けをする
榛名もそれを受け入れながら提督の首へ手を回し、足を使い提督の腰を押さえつける

ぴったりと密着した状態で抱きしめ合いながら舌を交わらせ、余韻をゆっくりと味わう


    こぽっ  とぷっ


榛名の中から飲み切れなかった精液が愛液と混ざった状態で溢れ零れ落ちていく……

――――
―――
――

ここまで

次は暫くかかる予定

投下再開

1000を踏んで自らスレ立てするマッチポンプの鑑
誰か他にも立てて、立てて


一連の行為が終わって尚体を密着させ、じっと離れることのないままで居る二人
既に余韻も過ぎ暫く経つのだが……

「……ふふっ、提督。すごく素敵でした」

「榛名も可愛かったぞ」

覆い被さったままの提督が榛名の言葉に優しく答え
榛名を抱いていた手をほどき頭を撫で髪を梳く

この手触りはどちらにとっても心地よいらしく、よくやっては榛名が嬉しいといった表情を返す


「ありがとうございます……」


榛名は目を細め甘える猫のように頭を手に擦り付けてくる
その可愛らしい仕草に提督もいつまでもこうしていたくなった

榛名は手を回したままで提督と抱き合っている
その手に力を込め少しだけ首を持ち上げ、提督と口付けをする

先程のような深く交わるものではなく、唇をつつくような短いキス

ちゅっ、ちゅっと提督と幾度かその行為を繰り返す
幾度か繰り返した所で満足できたのか、頬を合わせるように顔を押し当て暫くそのままで居た


大分長い間密着していた所為で体は汗ばんでじっとりとしていた
執務にはまだ余裕があることから二人は汗を流そうと風呂へ立とうとするが


「……………ぁぅ」

「ん、どうした?」


まず提督が起き上がり榛名が動けるようにしたのだが
榛名はベッドにころんと仰向けになったままでいた

体に力を込めているようだが下半身はぴくりともしていない


「……あの、その、先程の……激しくて……その」


しどろもどろになりながら訴えかけてくるそれは
どうも激しく責めたてられた事により、腰が立たなくなってしまったという事のようだ

「ああ……すまない、少しやりすぎてしまったかな」

「いえ! その、それは気持ち……よかった……ですし」

調子に乗りすぎてしまったのかと謝る提督に
榛名は顔を赤らめ消え入りそうな声で返す


「それなら、しっかり掴まれよ」

「……え? きゃっ!」

不意に提督が榛名の膝裏と背中に腕を入れそのままぐいと持ち上げる
擬装が無いと非常に軽い榛名の体はいとも容易く持ち上げられ、小さく驚きの声を出す

俗に言うお姫様だっこという形となった

持ち上げられた榛名も驚きながら提督の肩に手を掛け、落ちないようにとしがみつく

ベッドから降りてそのままゆっくりと部屋の出口へと歩く


「え! こ、このままですか!?」


昨晩から今の今まで何も身に付けていない状態であった二人が廊下にそのまま出るのは
当然ながら部屋の外を裸でうろつく事になる

わたわたと提督の腕に抱えられたまま慌て、しかしがっしりと持ち上げられている以上抵抗はできない

ついに提督が扉の前に立ち少し腰を落とし扉のノブを回す


「~~~~っ!」


恥ずかしさの極地となり顔を真っ赤にし、ぎゅうっと提督にしがみついて少しでも体を隠そうとする榛名
提督はまるで怖気づく事なくそのまま扉を開き一歩、また一歩と廊下へと出る

「て、提督!」

「しっ。静かにしていれば気づかれないから」

朝日が昇りきったとは言えまだ早いほうの時間
他の艦娘の姿は無くしんと静まり返った廊下に提督の足音だけが聞こえる

提督の寝室は鎮守府でも奥のほうにあり
執務室や提督専用の浴室などといった提督の行動範囲が主だっている一角である

仮に他の艦娘がこの時間に起きたとしても朝食へと行く食堂や湯浴みも兼ねるドックはまた逆の方向である
誰ともかち合う事なく浴室前の脱衣所へとたどり着く


「もうっ、驚かさないでくださいっ」

一安心した所で榛名がぷくっと頬を膨らませ怒り……というよりは拗ねた表情を見せる

「はは、すまない。大丈夫だったろ?」

「もうっ……」

その仕草が可愛らしく提督は抗議されているにも関わらずつい頬を緩ませてしまう


「もう立てるか?」

「あ、はい。榛名はもう大丈夫です」


ようやっと体に力が戻ったのか、ゆっくりと降ろすと榛名は難なく足を床につけ立ち上がる
いくら先程乱れた姿を見せたとは言えやはり恥ずかしいものは恥ずかしいらしく
榛名はすらりとした手で胸と股間を隠す

「それじゃあ入るか」

「はい」

提督が浴室の扉を開き榛名を導く
浴槽にシャワーといった設備のごく普通な浴室は、二人同時に入るには程よい広さを持っている

提督は普段から使い慣れている為、慣れた手付きでシャワーの蛇口をひねり少し熱めの湯を出す


       しゃぁぁぁぁぁ……

すぐさま浴室に湯気が立ち昇り視界がぼんやりと白みがかる
そして流れてくるシャワーに二人して当たり色々なものを洗い流す

榛名の体を湯が跳ね、髪を濡らしてゆく
シャワーが肩から胸、臍をたどり下腹部を通り太股へ滑り落ちる


「あっ……やだ……でできちゃう」


シャワーの湯に混じり股間からどろりと注ぎ込まれたものが溢れる
榛名の秘穴が下を向いたせいでまだ中に残っていたものが流れ出てきたのだ


「ん、どれ……見せてごらん」

「あっ……」


榛名をぐいと壁に向かわせ、臀部を軽く突き出すような格好にさせると
提督はその後ろに立ち腰を降ろす

シャワーの湯が跳ねる臀部の中心から透明な湯とは異なった白く濁った液体がこぽこぽと出てくる
我ながらどれだけの量を出したのやら、と思いつつ眺めていると


「うぅ……恥ずかしい、です」


榛名がもじもじと体をくねらせる
その動きに沿って臀部もふりふりと提督の前で揺れ、更にその奥から白濁液を垂れ流す


「ふむ、大分残っているようだな。後で零れ出てしまうのはよくないな」

「ここで掻き出してしまおう」


      つぷっ

「……えっ?  ぁっ!」

提督がそう言うな否や、その臀部を左手でぐいと広げぱっくりとその口を開けさせる
そのまま続いて右手の人差し指を榛名の中へとゆっくり差し込んでゆく


      ぐにゅっ ぐにゅっ ぐにゅっ


中で指を折り曲げひっかかりを作りながら指を前後させる
引き抜く度にそこからどろりとした白濁液が零れ、湯に当たり半固体状になりながら下へと落ちる

      ぐちゅっ  ぐちゅっ

秘穴から次々と流れ出てくるその液体が白濁液から少しずつ透明度を上げてゆく
シャワーの音でかき消されているが提督の手を濡らすそれは明らかに水音を立てる愛液であった


「んっ……ふっ……ぅぅっ」


明らかにその行為は掻き出す為だけのものではなかったが
榛名はそのまま抗議することなく提督に身を任せ、湯気に混じる熱い吐息を漏らす

これは後で周りを汚さない為、きっとその為……そう自分に言い聞かせつつも
指使いに快感を覚えていく榛名


「大分出せたかな……どれ」


そう呟いた提督は臀部を押さえていた左手を離し
右手と同じく人差し指でずぷりと秘穴に差し込んでゆく

両手の人差し指が入った所で左右に力を入れ広げる
ぐぱぁ……と口を大きく開けたそこは透明な愛液をたたえ糸を引きながら中を曝け出す


「いやぁ……中まではどうかお許し下さい……」


熱にうなされたように榛名が訴え、恥辱に染まった顔を提督に向ける
壁についていた手を動かしなんとか自身の臀部まで手をやろうとするが


    じゅるっ

「ひぁっ!?」

唐突に襲い掛かるぞりぞりとした感触に声を上げ動きが止まる榛名
提督がその秘穴に顔を付け、今度は指の代わりに舌を差し込んでいた


     じゅるっ  じゅぶっ  じゅるじゅるっ


音を立てて吸い上げられるとその度に榛名がぞくぞくとした快楽に震える
ずるりと舌が中へ侵入してゆくが、顔を密着させた所であまり深くへは届かない

代わりに舌を動かし中を掻き混ぜる

「そんな所、きたないですから……ぁっ!」

「いや、榛名の体ならどこも綺麗さ」


最も恥ずかしい部分をまじまじと見られた上に口まで付けられ
羞恥の極みに榛名が懇願する

きっぱりとそれに答えその行為を止めようとしない提督
幾度となく舌を蠢かせその中身を味わう

絶えずその行為を繰り返してゆくと、提督の口の周りが愛液でべとべとになり
シャワーを浴び湯で流していくのだが、それでも後から後から溢れ出るそれは顔をその度に濡らしていった


一旦舌を引き抜き、秘穴から少し顔を下げ
榛名のほんの僅か膨らんでいる突起を口に含む


「ぁぁっ! んぅっ!」


提督がじゅるっと音を立てて口に含んだまま吸い立てると榛名は背中を反らし一層艶のある声を出す
陰核を刺激されびりびりとした快楽が榛名を襲う

それを受け更に秘穴から透明な愛液がごぽっと零れる
最早そこには白濁液は一切混じっておらず、全てそれが榛名の中から分泌されている物であると示す


目的は果たされているのだが互いにスイッチが入りどちらもその行為に何も言わず
榛名はひたすらに快楽を受け入れ、提督は秘所の感触と味を楽しむ

    じゅぷっ じゅるっ! ずずずずずっ

「そ、そんなに吸っちゃ……あぅっ! だ、だめです! んぅっ!」


激しく吸いたてると今度は小刻みにさらさらとした液体が榛名の股間から噴出してくる

     ぷしゅっ ぷしゅっ

粘り気も何の香りもないその液体は、吸い付けるリズムに沿って幾度か提督の顔をぱしゃぱしゃと叩く
恐らく潮を吹いたのだろうと提督は気づきながらもその行為を続け、何度もそれを吐き出させる


「全部洗い流されたみたいだな、もう大丈夫」

「はぁっ……はぁっ……んっ……ふぅ……」


やっとの事で顔が離れ、息を乱し体を朱に染める榛名へ
建前でしかないのだが提督が声をかける

それを受け榛名が振り向くと

「あっ……また、そんなに」

提督を見やるとその股間が天井を差す程上を向き、硬く直立していた
朝にあれだけ精を吐き出したというにまだまだといった風だ

「そのまま榛名は壁に手をついて」

「はい……」


提督の指示に従い壁に手をつき上体を支え、腰を付き出し足を少し開く
最早この後何をされるか聞くまでもなかった


       ずぷんっ


朝に続いての二度目となる挿入
愛液に加え湯で濡れた秘穴がそれを再びするりと受け入れる


    ぱんっ  ぱんっ  ぱんっ


そのまま抽送を始め、提督は榛名の尻を叩くように腰を打ち付ける
それにより榛名の柔らかな臀部が音を立て形を歪ませていく

「んっ……んっ……ふっ……んぅん……」

榛名は腰をぶつけられる度に肺の中にある空気を押し出され、口から吐息を漏らす

その息遣いと腰の動きが同調し一定のリズムを刻んでゆく


     ぱんっ ぱんっ ぱんっ ぱんっ


幾度も臀部を叩かれるような衝撃と提督の剛直が割り入ってくる感覚に
榛名は体を揺らしながら壁にもたれかかり全てを受け入れてゆく


体が揺れるたびそれに合わせ、下へ向いた榛名の胸がたゆんたゆんと揺れ
提督は榛名の背中越しに見えるその光景に見とれながらも抽送を繰り返す


「榛名、どうだ……?」

「はっ……い、気持ち……いいです……ぁぅっ」


榛名が腰を打ち付けてから漏らす嬌声は熱を帯び、引き抜く度に震える体は
快感に溺れている事を十二分に示していたが
この体勢ではあまり顔が見えない為、提督はどうかと問いかける

榛名はそれに素直に応え、後ろを向く形で提督に微笑みかけた


その答えに満足したのか、提督はずんずんと腰の速度を上げていく

    ばちんっ ばちんっ ばちゅんっ ばちゅんっ

勢いが増した事により結合部が奏でる音もより大きくなり
更に周囲の水分を弾き撒き散らす


提督が榛名の腰を押さえていた手を動かし
脇から胸を掴み先端を摘む

もう片方の手は臍の下を回るように榛名の股間に伸び
結合部のやや手前側、榛名の秘所で一部硬く尖っていた部分に触れる


「きゃぅっ! 同時なんて……あぁぅぅぅっ!!」


秘穴を塞ぎ、乳首を抓られ、陰核を擦られる
あらゆる箇所からの快感に強い嬌声が上がり榛名の体は悲鳴を上げるように背を強く反らす

その刺激が提督の剛直をぎゅっと締め上げる動きへと繋がり
榛名に快感を与える事が、提督にも快感として戻ってゆく


榛名はがくがくと足を震わせ、立っているのがやっとという状態になる
時折くず折れるものの、必死で壁にもたれかかりその体勢を維持し
提督の手を、腰を受け入れ続ける


「はぅっ! あっ、あっ……あっ!」


腰の動きによって体が揺れると、摘まれた胸が引っ張られ
陰核がしゅりしゅりと擦り上げられる

とめどなく押し寄せる快感に榛名は最早声にならない声を上げるのみとなっていた


「ううっ……いくぞっ、ちゃんと、外に出すからな」

「あっあっ、は…はいっ……あぁんっ!」


提督も締め上げられる剛直が限界を向かえつつあり
最後の勢いをつけ榛名を激しく責め立てる


     ぱんっぱんっぱんっぱんっぱんっ


最高速に達し途切れる事のない音が浴槽に響き渡り
二人は高みへと昇りつめて行く


    きゅっ


止めの一撃と言わんばかりに榛名の陰核を強く摘み上げると

「~~~~~っ!」

榛名が歯を食いしばり全身を硬直させる
ぎゅうっとその強張りを表すように膣肉も強く収縮していく


「ぐうっ!」

提督のソレも最後の一撃を食らい寸前の所で引き抜き
榛名の尻に押し付けた剛直が勢い良く精を吐き出す


    びくっ  びくっ びくっ
    ぷしゅっ  ぷしゅっ  ぷしゅっ


提督が脈打ち精を吐き出すのと同じように
榛名は体をびくびくと震わせ再び潮を噴き出す


吐き出された精液は榛名の尻を、背中を汚し
綺麗なその肌に白濁模様をつけていく


絶頂を迎えた榛名は強張った体から力が抜けると
ずりずりと壁を滑り浴槽の床にぺたんと腰を落としてしまう……


―――――
――――
―――

今日はここまで

次は多分来週末になる見込み

週末までの繋ぎじゃないけどおまけにほんのちょっとだけ

視点が移り描写が変化してるのでご留意

【SIDE:榛名】


その後はそれぞれのお部屋に戻って着替えようとお互いに別行動となりました

榛名は何も着ていませんでしたので、脱衣所に置いてあったバスローブを貸して頂けました


提督がいつも使われているバスローブ


それは少し榛名には大きくて、袖が手首を隠すくらいになっちゃいます

シャワーで体が温まったままそれを着ると、とてもぽかぽかして暖かい感じに包まれて

まるで提督が包んでくれているように……


そうして自分の部屋に戻り、ゆっくりとベッドに腰をかけました

本当は着替えをしないといけないのに

このバスローブを脱いでしまうのがほんの少しだけもったいなくて……


そのままベッドに横になり少しだけ深呼吸を


すぅ

はぁ

すぅ

はぁ


提督の香りが体の中にまで入ってきます

榛名の事をいつも気にかけて頂いている提督の香りは

あたたかくて、とても優しい香りでした

ぎゅっと自分の体を抱くように腕をまわすと

まるで提督に抱きしめて頂いているような錯覚に陥ります


すぅ

はぁ


体は冷める事がなく、むしろどんどん暖かくなって……

そうして深呼吸を繰り返していくと、今度は切なくなっていきました


体の芯が熱くなって、頭の中がちりちりと焼けていくような

提督を受け入れたお腹の下も、じんわりと熱を感じて


あの時、お風呂場で、提督はそこに手を、こんなふうに……


自然と指が動いて、切なくなった自分を慰めていきました


呼吸をする度に提督の香りを感じながら自分で指を動かすと

あたかも提督が榛名の熱くなった体を慰めて頂いているような

そんな感じに陥っていきます


だめ

指が止まらなくなってきて

だけど、このお部屋で声を出してしまうと他の子に気づかれちゃう


提督のバスローブを噛んで息を飲み、大きな音にならないよう気をつけて

ふうふうと声を漏らしました


段々と目の前が白くぼやけてきて、手の動きを早めていきます

考える事ができなくなってきて

頭に残っているのは提督の事ばかり


榛名に微笑みかけてくれるお姿

任務で厳しく指示を出すお姿

そして、榛名の事を抱きしめて頂くお姿……



とても切なくて、それを拭うように手を動かしていくとだんだん目の前が真っ白になって


最後にきゅっと指で大事な所を摘むと

体がびくん、となって目がちかちかして……

今度は真っ暗な海の中に沈んでいくように力が抜けていきました


提督

榛名は今とても、切ないです―――

以上。

次はまた元の書き方に戻る
分かりにくいのはおまけってことと駄文故御容赦を

再開

今回はR-18成分あまり無いかも

【SIDE:提督】

-鎮守府・提督執務室-



提督は榛名より先に着替えが終わったらしく、一人執務室へ入り仕事に取り掛かる。
女性は色々と大変なのだろうと、未だ現れない榛名を特に気にするでもなく書類を片付けていく。

もっぱら山積みとなっている書類と格闘するのが提督の日常となる。

    かりかり  かりかり


「……多いな」


問題は、ひたすらにその量がかさむという所か。
資源に関するもの、作戦・任務に関するもの、編成、装備その他諸々……とにかくキリが無い。

軍装という制服でなければ軍人というよりは会社に出て働く人間のように見えるだろう。


       かりかり  かりかり


止まる事の無いペンが走る音と、紙をぺらぺらとめくる音。
判を押して片付いた書類の山を増やしていく。

まだまだ残りの山もあるのだが、一気に片付けられそうもない量を見てふうと嘆息する。

書き終えたものを一枚取り、これは後に出す分と
机の引き出しに仕舞おうとした所で開けた所から小さな箱が姿を見せる。


    ぱかっ


息抜きがてらそれを手に取り、小箱を開く。
箱に入っていたものは、何の飾り気も無い指輪だった。


『ケッコンカッコカリ』


艦娘と提督との間で交わされる契りの証。
練度が限界に達した所で能力を更に高める事ができるようになる。
但し条件が二つ。

一つは練度を限界まで上げる事。
もう一つは艦娘の左手、薬指にその指輪をはめること。

これの意味する所が何なのか、その上通称においても『ケッコンカッコカリ』と
最早そうとしか捉えられない形である。

この鎮守府で身に付ける条件を満たす艦娘は誰も居ない。皆練度が足りないのだ。

兼ねてから総司令部より1つ支給されていたものが今尚身に付ける主がおらず、提督の机で眠っていた。

渡すべき相手だけが決まっている。
じきに練度も最大に達し、且つ指輪の持つ意味も含めて渡すにふさわしい相手。

提督は榛名の顔を思い浮かべ、これをどのように渡してやろうかと思案する。
今渡すべきか? それとも練度が最高の状態に達した段階で?
場所はここで? いや、そういった意味も持つのだから二人きりでどこか雰囲気のある場所ではどうか。

腕を組みうんうんと唸り、考えが纏まらないまま時間が過ぎてゆく。

指輪が支給されてから以降、息抜きと称しては毎度こうやって考えては決まらず結局机に再びしまう。
そんな日々を送り続けていた。


「誰かに相談できればよいのだが……」

しかし事が事なだけに他の艦娘に聞くのも気が引ける。

うーん、と首を捻った所で時計の針が目に入る。
一息付くぶんの時間は十分過ぎている。やはり今日も決まらなかったかと嘆息して小箱に仕舞い、引き出しへと再び眠らせる。


そうしてまた書類との戦闘を再開する。
残りの書類を読み、ぽつりと

「ああ、そろそろ戦力増強も考えねば。戦艦の建造を指示するか……」

すぐさま仕事へと思考が切り替わり、再びペンを走らせてゆく。


これを渡せる日は来るのだろうか……

――――
―――
――


 ◇ ◇ ◇ ◇

      こんこん

「提督? 榛名です」

扉をノックする音が部屋に響き、扉の前に榛名が立っているようだ。
支度を終え、秘書艦としての仕事へとやってきたのだろう。

「入れ」

提督が短くそう返すと、かちゃりと扉が開き榛名が入ってくる。
白の衣装に短い朱のスカート、太股にぴっちりとしたハイソックスが少し眩しい。


「本日も一日、宜しくお願い致します」


ぺこりと頭を下げ一礼。そうして提督が座る机にすたすたと歩いてくる。
既にいくらかの書類を片付けて尚机に向かったままの提督を見やり、早速補佐の仕事へと取り掛かる。


     かりかり  かりかり


まず榛名は片付いていない書類を確認し、仕分けする。
閲覧のみの書類、捺印が必要な書類、筆記が必要な書類。
書類の山が小分けにされ、手際よくそれらを整えていく。



「榛名」

「はい」


提督が短く榛名を呼ぶと、榛名はすぐさま次の書類を手渡す。
受け取ったものに目を通し、次へと移っていく。

一人でも仕事はこなせるが、やはり秘書艦としての補佐が付くと効率は上がる。


「こちらは私が記入いたしますね」

「頼む」


短いやりとりをし、榛名も自身が記入して問題ない書類を手に取り片付ける。
提督の机に自分用の小机を出し、隣に座ってペンを取る。


    かりかり かりかり
     かりかり  かりかり

ペンの音が2倍になり小分けにした書類の山が加速度的に小さくなっていく。
二人の間には朝のような甘い雰囲気はなく、黙々と仕事を片付けていくのみであった。

  ◇ ◇ ◇ ◇


「大分片付いたな……」

あっという間に小分けにされた山の一つがなくなり、残りの山もその大きさを元の半分以下へと減らしていた。
時計を見ると時間は昼を過ぎ午後に差しかかった所だったが
仕事に集中していた所為か提督はいつの間に、と呟いた。

「お昼過ぎてしまいましたね、昼食に致しますか?」

「ああ、そうだな」


榛名の提案に自身の腹具合を見て首肯する。
少し昼食の時間にずれてしまったが食堂はまだ間に合うだろう。

提督がペンを置き、書類がバラバラにならないよう束ね、トントンと机で叩き揃える。
そうして片付けて席を立つと榛名も後に続く。

廊下へと出て食堂への通路を二人がゆっくりと歩いて行く。
提督は後ろ手に組み、ゆったりとした足幅で。
榛名はその少し斜め後ろ、歩幅は狭いが提督と離れないように同じ速度で。


「…………」

「…………」


特にこれといった話題もあまり無く、静かに廊下を進んでいく。
少しだけ榛名が所在無さげに辺りを伺いながら付いていくと、後ろ手に組まれた提督の手が目に入る。
並んで手を繋ぐ、そんなイメージが脳裏をよぎり……

     すっ……

提督の手を握ろうと榛名が静かに手を伸ばし、握ろうとすると。


「お疲れ様です!」

「っ!」

丁度角から出てきた別の艦娘が、提督に気づいたのか声を上げ敬礼をする。
びくりと小さく跳ねた榛名はその勢いで手を引っ込めてしまう。

提督はそれに気づくでもなく、組んでいた手を解き右手を軽く前へ出し挨拶を返す。
心の中であぁ……と溜息を漏らしほんの少しだけ眉尻を下げる榛名。


「……?」

敬礼をしたまま通り過ぎるのを見送っていた艦娘がその様子を少し不思議そうに眺めていた。


昼時を過ぎたことでがらんどうの食堂へとたどり着いた二人は
厨房でゆっくりと片付けをしている給糧艦娘である間宮の前へと歩き声をかける。

因みに間宮は厨房の一切を任されており、鎮守府の台所事情は彼女に支えられていると言っても過言ではない。


「すまない、まだ昼食は出せるかな?」

「あ、はい大丈夫ですよー。何になさいますか?」

間宮が片付けの手を止め提督へと向き直り笑顔で答える。


「すぐ出せるもので構わないよ」

「私も、一緒で大丈夫です」

提督が特に拘らない形でと頼み、榛名も続いて同じものをと頼む。

「では、カレーでいいですか?」

昼食で出したカレーが残っていたらしく、ご飯を皿に乗せルーをさっとかける。
二人の前に出されたカレーは湯気を立て、香ばしい匂いを辺りにふりまく。


それぞれ皿を受け取り席へと腰を降ろす。
提督がまず厨房そばの長机に座ると榛名は決まってその左隣に座る。

なんとなく席が厨房に近いからと座り始めた事が日々続き、定位置となっていた。


「……ふふっ」


日々変わらぬその光景を今日も目にした間宮は小さく微笑みその二人を眺める。
特に会話は無いが、それでも必ず二人一緒に居るのはとても仲睦まじいものと見守る。

そうだ、と小さく手を叩き、冷凍庫をあけ中を覗く間宮。
目当ての物があったらしく満足げにうんうんと頷くと後で榛名ちゃんにサービスしてあげよう、などと考えながら
再び二人の姿に目をやる。


  ◇ ◇ ◇ ◇


「……ふぅっ、うまかった」

スプーンを置き感嘆の声を漏らす提督、少し量があったのだろうかお腹をさすり満足げに息をつく。
スパイスが効いてたらしく、少しばかり体が熱くなっていた。

「間宮さんのお料理、どれもおいしいですものね」

榛名も完食した所で静かにスプーンを置き口を拭く。


食後の余韻に浸っていた所で。ふと、

「お粗末さまです、食後にこちらを榛名ちゃんにどうぞ」

そう言いながら間宮がトレイを持ち二人の下へとやってくる。
トレイの上には小さなアイスがガラスの食器に飾られていた。

「え? 榛名にこれを……いいのでしょうか?」

「いいんです、一つ余っていましたので~」

そう言いながらにこりと笑う間宮。
今日だけサービスですよ、と付け加え空になった皿と取り替えながら続ける。

「あ、それとこれから食材の補充に席を外しますので、食べ終わったらそのままにして頂いて結構ですからね~」

アイス以外の食器を片付けたかと思うとぱたぱたと厨房へと戻りそのまま勝手口から外へ出る。
代金は……と提督が言い出す前に間宮の姿が無くなってしまい、元々他に誰も居なかった為ついに二人きりとなってしまった。


「ど、どうしましょう……」

「そのまま返すのも無理だろうし、頂いてしまうか」

榛名も何もなしに貰うのはどうだろうかとも思ったが
当の間宮はもう外に出てしまったし、アイスをそのままにしていても溶けて食べれなくなってしまう。

「では……いただきますね」

後でお礼を言っておかないと、と思いつつアイスのスプーンを手に取り一掬い。
一人分であるため、提督は何も無く手持ち無沙汰となっている為その仕草をそっと見ていた。


榛名はアイスの乗ったスプーンを口へと寄せ、ゆっくりと口を開けていく。

ぷっくりとした唇は薄く紅をさしており、艶のある色を見せていた。
食後でありながら汚れ一つないその唇に榛名の品行が伺える。

スプーンが口の中へと入り込み、それにあわせて口が閉じられ唇とスプーンの間に隙間がなくなる。

そうして手を引くとスプーンが唇をなぞるようにするすると口の外へと姿を見せる。


口元を手の指先で隠し、アイスをじっくりと味わう。
ひんやりとした食感と口内に広がる甘みを堪能し、もう一掬い。

先と同じように口に運ばれ、同じ動作を繰り返す。



「ふふっ……おいしいです」


目を少し細め提督に喜びの表情を見せる榛名。
その様子に提督も少し顔を綻ばせ、後でお礼を言わないとな、と返す。

「提督も一口如何ですか?」

「ん?」

榛名がスプーンの持ち手をこちらに向け問い掛けてくる。
提督は差し出されたスプーンと榛名の顔を交互に見やり、先程まで眺めていたその唇を見て……そうだ、と心内で閃く。

「……ふむ、じゃあ貰おうかな」

「はいっ。どうぞお好きにお取り下さい」

そうして榛名からスプーンを受けとり一つ掬い上げる。
ゆっくりと手を動かし……。



「えっ? ……あ、あの?」

「ん?」

提督はにこにことした表情で榛名の口元へと差し出す。
榛名は自分に差し出されるとは思いもしていなかったようで何故? といった表情で提督を見つめる。

「ほら」

それでも笑顔のまま榛名の前へとアイスを差し出して動かない。

「…………あ、あーん……」

観念したのか、榛名が小さく口を開けそのアイスを受け入れようとする。
それに応えゆっくりと歯に当ててしまわないようにスプーンを差し込んでゆく提督。

ゆっくりとスプーンを引き抜き、アイスがきちんと食べられた事を確認する。


「あの、提督が頂かれるのでは……」

「まあまあ、俺もちゃんと貰うから、ほら」

そうしてもう一回榛名の前へとアイスの乗ったスプーンを差し出す。
困った風ではあるが引き下がらない提督とアイスの味に負けて2度目もそのまま口にする。


「あー……ん……んぅっ!?」


すっとスプーンを引き抜いた瞬間、提督が口を重ねる。


    ちゅっ ちゅるっ ちゅるちゅる


優しく提督が榛名の口を吸い上げると、提督の口内にひんやりとしたものが流れ込んでくる。
榛名は驚き目を見開いているが引き離そうとはしてせず
そのまま吸い立てる口付けを受け入れ、なすがまま榛名の中にあるアイスを差し出してくる。


「んぅっ……ふぅっ」

アイスの甘い香りいっぱいに唇を重ね、今度は提督の舌が榛名の口内へと入り込んでくる。
互いにアイスによって熱を奪われた舌が絡み、提督が榛名の中をなぞると
榛名はゾクゾクとした背中を走る感覚と甘い香りに囚われ、瞳を潤ませる。

   ちゅぷっ ちゅるっ  じゅるっ

二人以外誰も居ない食堂は口を塞いでいる二人の音だけが響いていく。
ひとしきり吸い終えると、ゆっくりと唇が離れていき、その別れを惜しむようにつうっと糸を引く。


「……もうっ……急に、そういうのは……少し困ります」


榛名が抗議をするものの、その表情は頬を赤らめ瞳を潤ませており然程困った風ではなかった。


「はは、アイスはおいしかったぞ……もう一口、いいか?」

「……はい」


そうして再び榛名へとアイスを運び、唇を重ねていく。


  ◇ ◇ ◇ ◇

「そろそろお二人とも食堂出たかしら~?」

てくてくと外を歩き厨房への勝手口へと向かう間宮。


「もしも残っていたら騒がしくするのも悪いでしょうし、静かに戻りましょうっと」

一人呟きながら厨房の勝手口に手を掛け、そっと静かに中へと入り……


「っ!?」


声を上げそうになる所を即座に口を押さえとどまる。
ここからでは良くは見えないが提督と榛名はまだ席に残っていた、のだが。

丁度提督の後ろ頭に榛名の顔が隠れている。そして微かに聞こえる吐息の漏れる音。

入ってきた時以上に一切の物音を立てず、そっと再び外へ出る。

「ひゃぁぁぁぁ…………!」

その日、真っ赤にした顔を手で覆いぱたぱたと走ってゆく間宮の姿が目撃された。


―――――
――――
―――

遅くなったけれどもできた分投下

再開


二人はその後、やけに慌てふためく間宮に礼を言い食堂を後にした。
やはり一人で食堂を切り盛りするのは大変なのだろうか、ああも焦っている間宮を見た事はないな、と
提督は考えながら歩いていた。

「……ああ、そうだ榛名」

「はい? 何でしょうか?」

休憩を終え仕事に戻ろうと思考を切り替えた所で
今朝方にある指示を出していた事を思い出す。

「今朝、戦力増強に戦艦の建造を指示していたんだ」

「そろそろ完成するだろうから、このまま工廠へ行って出迎えていこうか」

「あ、はい! それは良いお話しですね。歓迎されたらきっと喜ばれるかも!」


榛名が執務室へとやって来る前に工廠へ連絡をつけ、建造を指示していたのだ。
新たな仲間を迎えるのだから、顔合わせも兼ね歓迎しようという提案に榛名は二つ返事で快諾する。

来た道から一つ角を曲がり、そのまま工廠へ続く通路へと進む。


程なくして工廠へと到着し、めいめいに動き回る妖精の合間をくぐる。
彼らは人のそれよりもずっと小さいので殆ど跨いでいく事にもなるが。


「さて、新たに迎える艦娘はどこだろうか」

動き回る妖精の一人に声を掛け、今日建造を指示した結果はどうかと尋ねる。
声をかけられた妖精は提督に向き直った後、片手であちらです、と指し示す。

「……あれが完成した擬装か」

その指し示す先を見ると丁度艦娘の擬装が土台に乗せられたままの状態で母港の方へと運ばれようとしていた。
完成したばかりの擬装は傷一つ無くぴかぴかに磨き上げられている。

提督がその擬装の側へと行き、確かに戦艦クラスの擬装であると確認する。

直線型の擬装は中央部に艦娘との接続具を持ち、装着すると体に対して横一直線の配置となる。
接続具も腰を基部に接続するのだろう。

そういえばこの擬装によく似たものを覚えている。確か強化改装する前に使用していた榛名の擬装。
擬装の中央部にある十字型のマストは、ほぼ榛名のものと同じであった。

「…………もしかして」

榛名も心当たりがあるらしく、その擬装を眺めぽつりと呟いた。


     タタッ!

突如榛名は走り出し工廠の奥へと進んでゆく。
いきなりの事にどうしたのかと提督がその後を追う。

「お、おい。榛名?」

提督の制止も届かず榛名はぱたぱたと更に進んでゆく。
一体何事なのか、榛名がこうまで周囲に目もくれず突き進むなど滅多にない。

ひとまず榛名の後に付いて行き、その姿が仕切りの奥へと消えた後に続くと……


「………………」

榛名が小部屋の中でしゃがみ込み、四角く綺麗に畳まれた布を手にとっていた。

それはどうやら衣装らしく、これまた榛名のそれとよく似た色と襟元を象っている。
そしてその衣装の上に乗せられている電探の機能を備えているというヘアバンドは、これまた強化改装前の榛名のそれと殆ど同じである。

金剛型。
榛名はその3番艦として生まれ、上に二人、下に一人という四姉妹の艦娘である。

恐らく今回の建造で生まれた艦娘はそのうちの一人だったのだろう。
この鎮守府には金剛型は榛名一人しか居なかった。

提督は榛名が姉妹との対面を果たせると分かり、先のような行動になったのだろうと
急に駆け出した理由を悟った。


そして榛名がしゃがみ込んでいる所の前には四角くカーテンで区切られた小部屋がある。
衣服がそこに置かれていたという事はその中に居るのだろう。


     ぺたっ ぺたっ  シャーッ

足音に続くカーテンがレールを滑る音と共にその姿を表す。
屈んでいた榛名からゆっくりと顔を動かし、カーテンの開いた先を足元から目線を上げると……


「あ……て、提督っ」

小さく榛名が声を上げた。開かれたカーテンから出てくるそれは構わず姿を表す。


すらりと綺麗に整った足先。
細く伸びたふくらはぎ、そこから続く太股は女性のそれをしっかりと示す肉感を持ち

その付け根は何も遮るものが無いぴったりと閉じた割れ―――


「っ!?」


提督の靴が唸りを上げ、急速反転する。
服が折り畳まれているのだから当然それを着ていないのは分かるが
かといって一糸纏わぬ状態とは思いもよらなかった。

出迎えをしようという提案がよもやこんなハプニングになろうとは。


提督はとにかくこの場を一旦離れて、後で謝罪をしたほうがいいだろうと思い

「わ、私は先に執務室へ戻る。後で二人とも来てほしい」

そう背中越しに言いつつ真っ直ぐもと来た道へと歩き出し……



「Hey, Stop!」


凛と響く声に足を止められる。この場で謝罪をしろというのだろうか。
かといってこの僅かな間で服を着れる筈もない。提督は振り向く事ができずその場で停止していると

「アナタがここの提督デスネ?」

「英国で産まれた帰国子女の金剛デース! ヨロシクオネガイシマース!」

活発な印象を残す挨拶をされた。

間違い無く金剛型戦艦1番艦、金剛であるのだが……。
挨拶を返すにしても振り向く事はできない。


「そ、そうか。私はここの鎮守府を預かっている提督だ。以後宜しく頼むよ」

またしても背中越しに挨拶を返す。

「ウーン……? どうしてこっちを向かないデース?」

「あ、あのお姉さま……服を……」

「え? ……Ah!」


どうやら自身が裸であった事に気づいていなかったらしい。
小さい悲鳴が響く。

榛名に心の内ででかした、と褒めてやりその場を後にしようとする提督。

「と、とりあえず、落ち着いたらでいいので榛名と一緒に執務室へ来るように」

「あ、アハハ……OKネー……」

先程のような勢いは完全に失われ、弱々しく返事が返ってくる。


「榛名はそのまま彼女についてあげなさい、私は先に戻る!」

「それとすまんっ! 後でもう一度謝る!」


言うや否や今度は提督が駆け出しその場を後にする。返事は待たない。
初対面の異性に裸を見られるなど、恥辱の極みだろう。どれだけ謝れば許されるだろうか……

提督は謝罪の言葉を考えつつばたばたと執務室へ走ってゆく―――


 ◇ ◇ ◇ ◇


「……ふぅ」

提督は先に一人で執務室へと戻り椅子へと座る。
歓迎しようと出迎えた事がよもや裏目に出ようとは……。

これは平身低頭謝って許しを得るしかない、金剛が激昂していようものなら懲罰も避けられない。
感動の再会を台無しにしてしまった為榛名にも申し訳が立たない、どうすればいいだろうかと一人思い悩む。

念の為憲兵への連絡先も伝えておくか、と机の引き出しを開ける。
引き出しから小箱が姿を覗かせるが今はそれどころではない。


そうして思案に暮れる提督を置いて榛名と金剛、その二人はと言うと……。


「お姉さま、本当にごめんなさい!」

工廠の一角で榛名もぺこぺこと頭を何度も下げ、金剛に謝っていた。

「あー……うん。びっくりしたけど、まあ大丈夫ネー」

頬をぽりぽりと掻き苦笑いをしつつも、もう大丈夫だからと金剛が返す。


「私も何も着てなかった事にすぐ気がまわらなかったから、おあいこ? デース」

「でも私がここに来なかったら今回のような……」

「stop, ストーップ! もう過ぎちゃった事だから、もういいネ」

「次に今回みたいな事にならなければいいデース!」

とりあえず今回の事は事故だから仕方ないとして
次に不慮の事故にならなければ良いと切り上げようとする金剛。

「それに、早く提督の所。行きまショ?」

「あ、はい……」

服を着終え、とりあえず執務室へと案内を頼む。
榛名も提督に後で来るようにと言われている以上、一旦向かおうと首肯する。


榛名の先導で工廠を後にし、通路を歩いていく。
ほぼ同じ衣装に身を包んだ二人は片や栗毛、片や銀髪をたなびかせながら静かに進む。
歩く度に赤いスカートとブラウンのスカートがひらひらと舞う。

「……ふふっ、でもこうして一緒になれるなんて思わなかったデース」

「……そうですね。お姉さまの擬装が完成したのを見たとき、一刻も早く会いたくて……それで……」

「ノン、ノン!  もうAccidentはいいネ! それで榛名はいつここに来たノ?」


すぐに先の事を思い出しそうになり榛名が落ち込むが、それをとめて話題を切り替える。
どうも他の姉妹は居ないらしく、金剛が最初に再会できた姉妹だということが分かる。

そして金剛は榛名がこの鎮守府で中々に古株の一人だという事も聞かされた。
戦艦クラスでは榛名が最初の一人目だったらしく、随分と長く艦隊の中心として戦ってきたのだと。


「そっかー……それなら私も同じ立場ならきっと今回みたいな事になってたかもネ」

「その、ごめんなさ」

「そうじゃなくて! 再会できた事がすっごく嬉しいって思うネ!」

「……はい!」

やっと榛名に笑顔が戻る。
金剛も着任早々のトラブルではあったが、再会の喜びは何物にも変え難いと笑顔を向ける。


「それに提督もいい人そうデース。最初の出会いはAccidentだったケド、すぐに気を遣ってくれたネー」

「あ……はい、提督はとてもお優しい方ですよ、私もここへ着任できてよかったと思ってます」

そうして話題はもう一人の人物の事へと移る。

榛名が言うには提督は気配りを欠かさず、自分たちが存分に戦っていけるように尽力してくれているという。

陸に上がっている間は生活においてはあまり不自由せず、軍務に関わらないような事については
極力こちらの意思を尊重してくれるといった配慮をしてくれているとの話だった。


榛名は更に続け艦娘達の相談にもよく乗ってもらったり、一人一人にとても真摯な対応をしてくれていたと語る。
金剛も提督が取った先の対応を思い返すに当たり、それほど不誠実ではないと感じる。

「……とても素敵なお方です」

榛名にしては色々と饒舌に語るその顔は

「……ネー榛名? ちょっと赤くなってる?」

「えっ!?」

微かに頬が朱を差していた。
榛名は金剛に指摘され顔を手で触ると確かに少し熱を感じた。

「フーン……? ヘー……?」

「あ、あのっ……そのっ……」

笑顔で会話していた金剛が笑う。しかしその笑顔はニヤリと何かいいネタを見つけたと言わんばかりのものだが。
何か取り繕うとする榛名だがうまい言葉が見つからずあわあわとしかできないでいる。


「ね、榛名? 提督とはどこまでいったノー?」

「え、ええっ!?」

提督と榛名との間に何やら確信を得た金剛はストレートに質問をぶつける。
自分の妹なのだ、小さな仕草から何を考えているかぐらいすぐに想像がつく。

榛名も姉には見透かされていると感じ、少しばかり観念したように口を開く。

「ええと……少し前から……その……お、お付き合いを……」

「Wow! その話、後で詳しく聞かせて欲しいネー!」

榛名は今朝の出来事も思い返すがさすがにそれは言えようものでもなく、やんわりと答える。
やはり年頃の女性ともなるとそういった話題は特に興味深いものなのだろう。
ましてや金剛にとっては自分の妹が惚れているという、より一層の事である。

ひとまず執務室の前へと辿り付き、話を一旦打ち切り榛名に部屋へ入れてもらうよう頼む。


ここでも金剛は幾度となく頭を下げられる事になるのであった。

――――――
―――――
――――

今日はここまで。段々R-18から遠ざかってゆく……

次も週末更新の見込みです

生きてる

生きてる、かろうじて
忙しい

この10月を乗り切れば書き溜め再開できる……!

俺この戦いが終わったら……


「さて……気を取り直して」

ひとしきり詫びをし、ひとまず収まった所で提督が軽い咳払いをしつつ
金剛へと向き直り直立の姿勢を取る。

「本日より貴官の着任を命ず。以後全力をもって任務に当たられたし」

「OKデース! まかせてくだサーイ!」

ビシリと音が立つのではないかと思う程の敬礼を金剛へ向けると
それに対し金剛も返礼し、くだけた言い方ではあるが迷いの無い返事をする。


「それともう一つ」

「ウン……?」

敬礼の手を下ろした提督が姿勢を崩し

「艦娘は兵器だと言われているが、この鎮守府では人として扱っている」

「私の下にいるのは全て人であり大切な部下だ。金剛にもその事を承知しておいてもらいたい」


「……イエース!」


艤装を装着し、海を駆けその力を以って敵を撃ち砕く。
普通の人間ではいずれもできる事ではない。
嘗ての軍艦を根底に持つ艦娘は人ならざる者としてよく扱われる。

しかし、彼女達には心があり感情を持つ。
自らが考え色々な姿を見せるそれは人と何ら変わりは無い。

提督はそうした彼女達の姿を見て、軍艦といった兵器ではなく
人間と同じ存在として接していた。


金剛はどうやらその言葉が胸を打ったらしく
一瞬の間を置き表情をぱあっと輝かせ、今までで一番の表情を見せる。


「私が大切な存在……大切な……」

そうして金剛が提督の言葉を反芻しその思いを噛み締める。
その内容は少し捻じ曲がって伝わっているようだが。


「差し当たっての予定だが、着任の挨拶を皆にしてきて欲しい」

「それと金剛の艤装は砲の換装をしておくので演習や任務は明日からとなる」

「もう装備を換えてくれるノ!?」

     ずいっ!

「ち、近いぞ……榛名の戦闘を元にした装備と改装のノウハウがあるからな」


着任して初日であるにも関わらず早速の強化という提案に目を輝かせ提督に詰め寄る金剛。
提督がそれをどうどうと抑えながら説明をする。

「提督から貰った装備……大切にするネー!」


「装備を大切にするのは有難い話だが、いざというときは自分の事を大切にするように」

「その為にできるだけの事をしているのだからな」


「……~っ! 私すごく嬉しいデース! 提督ーっ!」

     ぎゅっ!

ついには喜びを抑えきれず提督にとびつく金剛。

「うおっ! お、抑えるんだ金剛っ」

抱きつかれた提督が身を捩り引き剥がそうとするが
艦娘としての力もあるのだろう、全く抜け出せる気配が無くされるがままになっていた。

ぐいぐいと提督にくっつく金剛の体は女性らしい感触を提督に強く印象付けていく。

「お、お姉さま落ち着いて下さいっ」

それまでのやり取りを静かに見ていた榛名が、慌てて金剛を引き剥がそうとすると
提督の力では動かなかった金剛が榛名の手によってようやっと離れる。


「コホン……嬉しいのは分かったから程々に、だな」

金剛の柔らかい感触に動揺を隠せず、落ち着こうと咳払いをしつつ金剛を諫める提督。
勿論悪気があってしている訳ではない事は提督にも分かっているのであまり強くは言えない。

「もうっ……お姉さま、提督をお困りにさせてしまうのは……」

「榛名までひどいネー、私はいっぱい嬉しい気持ちを表しただけなのにぃ~……」

榛名も金剛を少し嗜めるように言うと、金剛がぷぅと頬を膨らませ不満を訴える。


「……それと、提督もちゃんと抑えるように言って下さい」

「う……そう言われてもだな……」

金剛の不満をよそに、今度は榛名が提督を嗜める。
いくら姉とはいえ、提督が自分以外の女性とくっつくのは榛名にとってはあまり面白くない。
しかもそれで提督が照れているともなると抗議の一つでもしたくなる。


普段控え目な榛名ではあるがこの時ばかりは提督をジト目で睨む。
半ば理不尽なものを感じる提督だが、榛名の前で金剛にどぎまぎしてしまった事で言い返す事ができずしどろもどろになる。

「ウーン……あっ」

榛名からの拘束が解かれ、そのやり取りを見ていた金剛が何かに気づいたらしく声を上げる。
執務室に入る前、榛名と提督の間柄を聞いた事を思い出し今のやり取りに照らし合わせ……


「榛名も提督にHugしてもらえばいいデース!」


    ぽんっ

「え……きゃっ!」

「おっと……大丈夫か、榛名?」

榛名なりにほんの少し嫉妬をしていると気づいた金剛は、同じようにすればいいと軽く榛名の背中を押し動かす。
突然の事に吃驚した榛名はよろけて提督の胸へとぶつかり、提督は切磋の反応でそれを抱き止める。


「私だけ抱きつくのは不公平ネー! だから一緒の事をすれば問題Nothing!」

「……って、あーっ! 提督ずるいデース! 私のときはHugしてくれなかったのに」

「榛名にはちゃんと腕を回してるネー!」

ぶつかる形になった榛名はバランスを少し崩していた為、そのままでは転んでしまうと思った提督が
しっかりと背中に腕を回し支る形になっていた。


「今度は私もちゃんとHugしてもらいマース!」

榛名への気遣い(?)は瞬く間にどこへやら。
自分も抱きしめて欲しいと提督へと再び飛び込む。


「お、おい金剛待て」

「No! 待ちませんよー!」

「お、お姉さま落ち着い……ひゃぁっ!」

先程は榛名が金剛を止める事で落ち着いたが、その榛名は提督に抱き止められ動けない。
その横から二人いっぺんに抱きつかんばかりに金剛が飛び込み3人の団子が出来上がる。


「もう……いくらお姉さまでもお許しできませんっ!」


そしてついに榛名の雷がはしゃぎすぎだと金剛に落ちたのであった……

―――――
――――
―――

短いけど今日はここまで
久しく間があいてしまった故この量でも書き溜めに時間がかかる……申し訳ない

生きてる。次のR18シーンまで書き溜め進められたら投下する。


執務室での騒動が落ち着いた所で榛名は鎮守府の案内をし
金剛を自室へと招いて紅茶を片手に談笑をしていた。


「どうでしょうか? 鎮守府の様子は」

ティーカップを置き金剛へと尋ねる。

「ウン! 皆いい人ばっかりネー。私もここが好きになれそうデース」

にこりと笑顔でそれに答える金剛。
鎮守府の案内をする折に、各々居た艦娘達とも挨拶を交わし
そのどれもが良い印象を与えていったのであった。


「一番は……やっぱり提督がいい人だからですネー」


鎮守府をまとめる人物たる提督の考えは、そのまま艦娘達の行動や振る舞いにも表れる。
艦娘達を人と同じく部下として扱う提督。その一人一人を大切にしている想いが
彼女らにも自然と周囲を気遣う暖かな雰囲気へと繋がっていく。


「はい。皆さんもとてもいい方達ですから、すぐにお姉さまも馴染めるかと」

榛名もこの鎮守府を支える一人として、忌憚無い感想に顔を綻ばせる。

「それで……その提督だけど」

金剛がティーカップを置き、部屋は二人だけしか居ないのだがずいと榛名に迫り
小声でひそひそと榛名に語りかける。


「本当のところ、どこまで行ったノ?」

提督との挨拶を交わす前の時点で二人の関係を見抜き
後で詳しく聞かせてもらうと言っていた事を切り出した。


「え、ええっと……」

やはり姉とはいえこういった事は恥ずかしい。
榛名はうまく答えれずに顔を赤らめ、俯いてもじもじとするばかり。


「ンー……Ringは……つけてないネ?」

「あ、はい……まだ練度が足りなくて……」

膝の上で指を絡める榛名の手を見やり、その左手には何もつけられていない事に気づく金剛。
この鎮守府では榛名が最も高い錬度を誇るが、それでも付ける段階にまでは至っていない。


「でも、ケッコンカッコカリ。するんだよネ?」

「提督からは……そういったお話しはあまり……」

「hmmm...」

少し榛名の表情に陰りが出る。
常に提督の傍を付き従い、公私共に並々ならぬ付き合いとなっているものの
絆を深めるというその事については全く聞かされていない状態であった。


「榛名はもっと攻めないとだめデース、自分からいっぱいLoveをぶつけないと!」

「そ、そんな私には……」

金剛が榛名を焚き付けようとするもイマイチ火が付かない。

榛名の性格はよく知っている。
淑やかな振る舞いは我侭を抑え、自らを前面に押し出す事を許さない。
しかし自分の妹なのだ、求めるものは自分と同じである筈。
先の表情はそういった部分を抑えている苦悩の表れかもしれない。


一肌脱ぐ必要があるだろう。
そう考えた金剛は多少強引な方法を取ってでも炊きつけようと―――――




「それなら、提督は私が貰っちゃうヨ?」



強烈なライバルとして名乗りを上げた。


「…………えっ?」


思いもよらぬ一言に榛名は目を見開き、一瞬理解が追いつかず固まる。


「私も提督の事、好きになっちゃったかも」

固まった榛名にそのまま続けて笑顔で続ける。
その表情は若干の挑戦的な含みも持たされたものであった。


「お姉さまが……提督を……」


他にも提督の事を慕う艦娘は居たものの
こうも榛名と直接相対する者はいなかった為に、不測の事態として榛名を激しく揺さぶる。

自身が最も身近な存在で、皆からも良い間柄と評されていた事が
このような事を予測させなかったのかもしれない。


「でも、お姉さまは今日着任したばかりで……」

「そんな事は関係ありまセン。私は、私の思う心に従って動くだけデース」

金剛はどちらかというと猪突猛進をする方だ。
自らの決めた事には何の疑いも持たず相手にお構い無しと突き進む。

こうなったら止められない。

榛名も金剛の事をよく知っている。言った事は容易く曲げず、屈する事はない。
そんな高潔な姉を持つ自分として誇る事ができる。

しかし、それが自分に対して挑戦状を叩きつけられる事になるとは。


「フフ……それじゃあ私は早速提督の所にアタックしてくるネー」

言うや否や席を立ち部屋を出ていく金剛。

「お姉さまが……そんな……」


榛名は金縛りを受けたように動けず、それを目で追うしかできなかった。

―――――――
――――――
―――――

執務室では提督が一人で書類を片付け終えた所だった。
書類の山が一つとなり、それら全てにペンと判がつけられたものとなっている。


「ふぅ……今日の所はここまでだな」


執務を終えて嘆息した提督は肩に手を当て首をコキコキと鳴らす。

今日やらねばならぬ作業を終えたという解放感から
吐き出した息と共に力を抜いて椅子へ大きくもたれかかる。

日が傾き始め空が赤い。あと暫くもすれば夕食の時間だろう。
後は何をしようか……。

執務室は日差しが当たり、室内にオレンジ色の装飾を施す。
椅子越しに感じる暖かさは仕事を終わらせた提督の体を労わるように温もりを与える。


今日は色々あったが、それでも無事に一日を過ごせたようだ。
ゆっくりと目を閉じ今日の出来事を少しばかり振り返ろうと夢想する。

 ◇ ◇ ◇ ◇

        くぷっ  ぬちゅっ


夕日が差し込む執務室に異質な水音が響く。

「…………う……」

提督が股間に強い違和感を覚え、目を開き視線を落とすと


     『ん……ぶっ……はぁ……ちゅっ……』


自身のズボンが肌蹴ており、そこへ顔を埋める艦娘が居た。

「な、何を……ぐっ!」

聞くまでもないその光景を認識すると違和感が快楽へと置き換わり提督を襲う。

日差しとは全く違う暖かさ。
ぬるぬるとソレを飲み込み包むその口は絶えず刺激を与え続ける。


視線を落としてもその艦娘の顔は股間に埋められているせいでよく見えない。

オレンジの日差しで髪の色も覚束ない。銀なのか、栗なのか。
艦娘は頭を前後させているせいで髪型も乱れている。


「ま、待て……」


声がうまく出ない。絶えず刺激され椅子を立つ力も出せない。

     『うふふ…………』

提督の制止を聞く耳持たず、桜色の唇は赤黒い剛直を咥えて離さない。
そうして口腔に納められたソレは次に舌での洗礼を浴びる。


     じゅるっ  じゅぷ…… ちゅばっ


丁寧に舐めまわす舌の動きが剛直に熱と快楽を伝え
唾液を十分に絡めているだろうその口内は、隙間から出る水音を部屋へ響き渡らせる。


    くぷ……くぷ……くぷくぷ……


汚れを残さず拭き取るような舌の動きが止まると
口をさらに開き全て飲み込もうとゆっくり頭を前進させる。

「ぐ……くっ……」

ゆっくりとしたその動作は包み込んだ所から熱を広げ
やがて提督の全身を暖めるかのような感覚を与える。

完全に根元まで飲み込まれた所で、再び舌が絡み付く。

続いて口全体をもごもごと動かし肺から吐き出される熱い息を当て
頭の角度を変え剛直を頬肉の内側へと押し付ける。


艦娘は口腔全てを使い提督への奉仕を行う。


    『ああ……おいしい……』


剛直の放つ臭いに恍惚としているのだろう。
口篭ったままそう聞こえるうわ言を提督への快楽として伝えていた。


「もう……持たん……!」


提督は自身の内からせり上ってくる強烈な感覚を抑える事ができない。
精を吐き出すのも時間の問題である。

すると艦娘はゆっくりと頭を後ろへと動かし剛直を引き抜いていく。
その際に剛直に沿って舌を這わせながら……。


天井を向かんと反り立つ剛直に舌を這わせようとすると
顔は自然と上を向く。


そうして露わになったその顔は――――――

ここまで。大分間があいてすまん

あ、それと机の下フェラーリは男のロマン

これは言いたかった

目標投下ポイント到達

再開


「So.Cuteネー……」

「――――うぉっ!」

「キャッ!?」


電気ショックを受けたかのように椅子から跳ね上がり驚きの声を上げる提督。
次いでそれを間近で見ていたであろう金剛が驚き小さく声を上げる。

「……? ……?」

一瞬提督は何が起こっていたのか分からず辺りを見回し状況を確認する。

自身のズボンは肌蹴ておらずシワ一つ無い。
部屋に響き渡っていたであろう水音は一切せず、男女が交わる特有の匂いも無い。


「…………寝ていたのか」

「提督、大丈夫ですカ?」


提督はようやっと先の出来事が夢であったことを理解し、安堵の声を漏らす。
その溜息を金剛は疲れからくるものと思い心配の声を掛けた。


「ああ、いや、問題ない……少し気を抜いていただけだ」

「ホント? それならいいですケド……」

「本当に問題ない。……が、金剛が何故ここに?」

どこで意識が途絶えたか辿っていくと、記憶に残っているのは一人で執務室に居た所までだ。
金剛が部屋のドアをノックし入室を許可した覚えもない。


「提督とちょっとお話しがしたくて来たんですケド」

「ドアをノックしてもお返事がなかったデース」

恐らく金剛がこの部屋へとたどり着いた時には既に眠っていたのだろう。
ノックをしたと主張はするが記憶には残っていない。


「返事が無ければ居ないと思わんのか?」

寝ている所を見られていた、という気恥ずかしさを紛らわせる為
提督は入室していた事を少しばかり非難する。


「部屋の中に居るのはわかってましたカラ」

「だけど全く動く反応がなかったので何かあったのカナ~……と」

そう言いながら金剛が頭につけているカチューシャを自身の指でつつく。
確か電探の機能を有しているというそれはどうやら人の動きも探れるらしい。


「成程。もしもの事を考え部屋へ入ったら私が寝ていた……と」

「ではそこで引き返さなかったのは何故だ?」

「……テヘっ♪」

悪戯のばれた子供のように小さく舌を出し小首をかしげる金剛。
ちらりと覗く赤々とした舌が先の夢に見てた舌と被る。


「っ……ま、まあいい。次からは脅かすのはやめてくれ」

「ひどいネー、私は提督の寝顔を眺めてただけヨ?」


にこにこと笑顔を見せる金剛から目を逸らし夢の内容を忘れようとする提督。
そのまま気を紛らわせようと、机を片付ける為に引き出しを開ける。


「……! 提督! それは……!」


開けられた引き出しが視界に入り、何かに気づき声を上げる金剛。
視線の先には指輪を納めた小箱があった。


「これは……その」

提督はあまり人に見せるものではないと思う為か
ばつの悪そうな口ぶりで引き出しを閉めようとするが


「……私? 私につけてくれるのですカ!?」

身を乗り出し手を伸ばす金剛に遮られてしまった。


「いや違う」


提督は反射的に答え小箱に届かんとする金剛の手を止める。


「……そんなすぐに否定しなくても……うー……」

半分は冗談のつもりであったが
こうも強く否定されるのは女として少々不満である。

――半分は。


「じゃあ、誰とですカ?」


膨れっ面からすぐさま表情が変わり、今度は真っ直ぐに提督を見つめる。
金剛はこの時ほぼ確信していた。この指輪が誰に贈られるものか―――


「それは……だな、渡したい相手は決まっているのだが……その」

「どのようにして渡せば喜んでくれるか思いつかなくてだな……」


「……………」


ぐちぐちと何やら口篭る提督。
先程までの力強さはどこへやら、中々答えない提督に業を煮やした金剛は


「……! フフッ。言わないなら考えがありマース」

ニヤリと笑みを浮かべ
小箱へ伸ばそうと止められた手を今度は提督の方へと伸ばす。
その動きはさながら獲物を見つけた蛇の如くであった。

もう片方の手は自身の服に指を掛け、服と胸に隙間を作る


「……な、何を……!」


提督が艦娘の力になす術無く押さえつけてしまった。

―――――――
――――――
―――――


榛名は自室で動けずに呆然としていた。

姉からの挑戦状。挑発的な笑み。提督の笑顔。
いくつかの映像と音声が脳内で反復し、思考を掻き乱す。


―――お姉さまが、提督を
―――奪ってしまわれるのでしょうか。


横から掠め取る。
金剛がそう宣言をしたようなものだった。


―――どうすれば。


しかし止める事はできない。
姉である金剛の事はよく分かっている。ちょっとやそっとでは止まる事はない。


―――榛名は提督のお傍に居られなくなるの?
―――……そんなの、嫌!


混乱している思考が最悪の光景を映し出す。
提督が金剛の手を取り自分が置いていかれるという光景。



―――嫌、嫌、提督と離れたくない。
―――どうにかしてお姉さまを止めたい。


じっとしてはいられない。
ふらふらと席を立ち、覚束ない足取りで部屋を出る。
悲痛な面持ちのまま廊下を渡り、迷い無くある一室を目指す。


「…………………………」


執務室。
提督が居るであろう場所、金剛が向かった先もここしかない。


考えがまとまる前に辿り付き、扉の前で立ち止まる。
説得しようにも何と話せば良いか。


       『…………どの……わた…………だな』

       『……それ……いい……マース……』

いくらかの話し声が聞こえる。
提督と金剛で間違いは無いが、どのような内容かまでは聞き取れない。


      がたっ がたたっ


ノックをしようと扉の前に手を出した瞬間
部屋からの話し声が止まり、何やら物音が聞こえてきた。

様子は伺えないがあまり芳しい状態ではないようだ。
先刻の金剛が放った台詞から、既に行動に移っていると考えて良いだろう。



      『Wow、テートクのここ凄いWildデース!』


「…………!」

先の物音と部屋からハッキリと聞こえた金剛の台詞。
よもや執務室で提督を組み敷こうとしているのでは……。

最早一刻の猶予もない。
実力行使でもなんでも、金剛を止めなければ。


     がちゃっ!  ばたん!


勢い良く扉を開け部屋へと駆け込む。
そしてすくに飛び込んできた目の前の光景は――――


「や、やめろっ」

「ノン、ノン! やめませン!」


確かに提督を抑えつけてはいるのだが、
二人の衣服は乱れておらず、椅子に座っている提督が金剛に手で目隠しをされているだけ。
提督が手を解こうとしているものの、金剛の手はぴくりとも動かない。


「フフ……このRing素敵デース、綺麗ネー」

「やめろ……それに触れるな……!」

金剛は片手で提督の目を覆いながら
もう片方の手で声がよく通るように口に手を当ててこちらを向いている。
特に指輪に触れているようには見えない。

ただ恐らくその仕草により途中から声がはっきりと聞こえるようになったのだろう。



「…………? おね」

「……しーっ」


榛名が一体どういう事なのかと金剛に声をかけようとした瞬間
金剛はそれに人差し指を口に立てて静かにするよう応える。

金剛の様子は部屋を出る時の小悪魔的な表情とは全く違い
まるで悪戯を楽しむような子供じみた笑顔を見せている。


「この指輪は一体誰にあげるものですカー? 私ですよネ?」

「違うと言っているだろう……!」

榛名が机に目を移すと、その上に小さな小箱が置かれている。
恐らくそれに入っているのであろう。艦娘に贈る指輪とすればその中身はただ一つ
ケッコンカッコカリの為の物。


提督が尚も抵抗を続けるが、金剛は艦娘の力をここでも使っているのか
まるでぴくりとも動じない。


「応えてくれないなら私のものにしちゃいマース!」

「よせっ! それは榛名に渡すものだっ!!」



―――――――え?


「……やっと言ってくれたネー。んもー遅いデース」

「……なんだと?」


金剛が提督を押さえつけていた手をするりと離し
ふと目の前を見るように指差す。

提督の目にはその場で固まって動かない榛名の姿があった。


「………………お、おい。今の……」

「ばっちり聞かせてあげたネ!」

わなわなと震える提督にしれっと答える金剛。


「お姉さま……私が居るのをもしかして知ってて」


「ウン! 榛名なら後から来るって思ってたし」

「これですぐに部屋の外に居るって分かったカラ」


金剛はそう言いながら自身のヘアバンドをちょいちょいと指でつつく。
先程部屋の外から中を伺う際に使ったが今度は逆の要領で
外に榛名が居る事を察知したという事だ。


「中々入ってこないからちょっとperformanceを……ネ!」

榛名と提督、どちらも固まったままの中で
金剛が一人楽しそうに事の次第を続ける。

要は提督が見せた指輪を榛名に贈るものだと確信し
いっそ全部ぶちまけさせようとしたのだ。


「…………く……謀られた……」


提督はいつどうやって渡そうかと日々思い悩んでいたものを
全く予想していない形でのサプライズにされ言葉も出ない。

むしろ提督も金剛に一芝居打たれて驚かされた方である。


「…………………提督が、榛名に……」


今まで全く聞かされていなかった指輪の存在をぶちまけられ
榛名も提督の一言に驚かされた形となり、頭の中が真っ白になっていた。
鳩が豆鉄砲ならぬ、榛名が主砲を食らう。


「Hey! 提督!」

「う、うむ……なんだ」


「ムードもタイミングも大切だけど」


「一番大切なのは気持ちデース! 思いを全力でぶつけて、ネ?」


金剛が提督に檄を飛ばす。
指輪を見た時に四の五の言うばかりで
思い切りが足りなかった事から、今の今まで榛名に言えずじまいだったのだろう。

榛名を炊き付ける為に打った芝居に
渡りに船と言わんばかりの提督が隠し持っていた指輪。

これは好機と今この状況を作り上げた。


邪魔者は退散するのみ。
それとその後邪魔が入らないようにせねばと


「提督。一つお願いがありマス」

「皆を呼んで私の歓迎パーティをして欲しいデース!」

「……パーティ?」


「Yes! 食堂で皆といっぱい仲良くしたくて……」

「あ、でも提督と榛名はこれから忙しいでしょうカラ」

「それ以外の皆を私は集めるノ! という事で行ってきマース!」


「あ、あぁ。わかった。許可する」


提督も断る理由がなく、元より歓迎会の一つでも用意せねばと
思っていた為に自由にして良いと返す。


その返事を受け金剛がぱたぱたと執務室の扉へと向かう。
そして榛名の横を通り過ぎる時。


「榛名。ガンバッテ!」


小さくガッツポーズの仕草をし、榛名を後押しする。


     ぱたん


部屋の扉が閉められ、嵐が過ぎ去っていった。
提督と榛名だけとなった執務室は、固まっていた二人により静寂が作られる。


「……………………」

「……………………」


お互いうまく切り出せずその場から動けずに居た。
程なくして提督が机の上にある小箱を手に取り


「…………その、なんだ」

「は、はいっ!」


席を立ちゆっくりと榛名の下へと向かう。
びくりと跳ねるように榛名が返事を返しかちこちに体を強張らせる。


「先に口走った事は一旦忘れてくれ……」

「えっ……?」

「改めて伝えたい」


榛名の正面へと立ち、互いに視線を交わらせる。
手のひらに収まる小さな小箱を開け、その中身を取り出す提督。


「こんな形になってしまったが、前から渡そうと思ってはいたのだが、その」

「うまく渡せずにいてだな……」

「はい……」


ぽつりぽつりと提督が語り始め
榛名も一言たりと聞き逃さんと返事をする。


「まだ練度は届いていないが、つける意味はあるだろう」

「どうかこれからも一緒に居てもらえないだろうか」


榛名の左手を優しく取り、その薬指に指輪を通す。
サイズはちょうど合うらしく、あるべき場所へ収まるように左手を彩る。


「……………………」

榛名が左手を持ち上げ、はめられた指輪をゆっくりと眺める。
夕日に照らされキラリと光るそれは榛名にとって最も美しい装飾品と映った。


「…………提督……」


      すっ  きゅっ


榛名が静かに提督へと抱きつく。
腕を背に回し提督の胸に顔を埋め、手に力を込め提督の軍装にシワを作る。


      ぎゅっ

提督もそれを気にする事なく、榛名を優しく抱きしめる。


「……………………」


「……………………」


互いに言葉をかける事無く、ただ静かに抱き合う。
時間にしてほんの一時の事だが、二人にとっては長い時間そうしているように感じていた。


「あ、あの……提督。一つ、お、お願いが……あります」

「……ん、何だ。教えてくれ」


先に静寂を破ったのは榛名だった。
いくらか上ずった声でお願いをすると
提督はそれに許可という形ではなく教えて欲しいとの意味で答える。


「……何も言わず、ついてきて……下さい」

「……ああ」


榛名が提督から離れ、手を引くように動く。
いくらかの身長差からか、顔を少し下に向けた榛名の表情は提督からは伺えない。


    すた すた すた


執務室を出て廊下を歩く。
金剛達が居るであろう食堂へ続く廊下とは逆方向へと。


「………………」


この先にある部屋は提督には分かっていたが
何も言わず、と頼まれている以上黙ってついていく事にした。
その先で何があるのかまでは分からない。


     がちゃっ


扉を開け執務室とは異なった部屋へと入る。
そこは提督が普段寝起きしている寝室。

今日に至っては榛名と共に朝を迎えた場所である。


ゆっくりと部屋の中へと進むが二人の手は未だ離れていない。

「……榛名? ここに何―――」


   とんっ  ぼすっ


提督をベッドへと引き倒し、そこへ榛名が覆い被さった。

今日はここまで

最近寒くなってきて堪える
次はR-18がっつり予定、エンディング間近

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