真姫「音戯噺」 (14)


真姫「永遠に、変わらないモノって在ると思う?」

にこ「在るわけないでしょ、そんなの」

真姫「即答ありがとう。そういえば、にこちゃんって意外と現実主義者だったわ」

にこ「……まぁね」

真姫「きっと、今まで色んな事を経験してきたからでしょうね」

にこ「優しい言葉をかけてもらいたいなら、花陽やことりの方が適任よ」

真姫「……別に」

にこ「……めんどくさい子」


真姫「……足がすくんで動けなかった、普段なら絶対にミスなんてしないのに」

にこ「……」

真姫「頭の中が真っ白になって、声も発せなくて、喉の奥が何かで塞き止められた様な」

真姫「その時思い知らされたわ、私は皆みたいに強くない……とても脆い……何もないのよ、私には」

にこ「……ていっ!」

真姫「痛っ!」

にこ「頭も良くてスタイルも良くて、歌も上手くてお金持ちの御嬢様が何言ってるのよ」


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真姫「同情? それとも純粋な優しさかしら?」

にこ「どっちでもいいでしょ、そんなの。皆も真姫ちゃんのことは認めてるわよ」

真姫「……そうね、うわべだけ見れば私は何でもこなせる完璧人間だもの」

にこ「ねぇ、歌ってみて」

真姫「今ここで?」

にこ「早く」

真姫「はいはい……、すぅー……」




真姫「……で? これが一体何なの」

にこ「それが真姫ちゃんの音」

真姫「……は?」

にこ「歌声だけじゃなくて、今こうしてにこと話してるのも、いつもみたいにむすっとして本を読んでるのも、お弁当食べてるのも、西木野真姫としてこの世界に存在しているのも」

にこ「全部引っ括めて、真姫ちゃんの音」

真姫「……そうなるわね」


──全てを肯定させる綺麗事


にこ「にこの音はどう聴こえてる?」

真姫「心地好いわよ、すごく」


真姫「心地好すぎて、涙が溢れてくるわ」

にこ「拭う涙なんて見当たらないけど?」

真姫「本当よ、耳に優しく響いてくる……耳だけじゃなくて、目も鼻も口も肌も、すごく幸せを感じてる」

にこ「へぇ……」

真姫「……」

にこ「……不安? なら与えてあげようか? 真姫ちゃんが今一番求めてる言葉」

真姫「……いらない」

にこ「にこ達は……、μ'sはずっと一緒だよ」

真姫「いらないって言ってるでしょ!!」

にこ「真姫ちゃんは、どうしたいの?」

真姫「私は……」



にこ「まったく……あの捻くれ者……」


絵里「誰の話かは簡単に想像がつくけど、貴女も相当だと思うわよ?」

にこ「……否定はしないわ」

絵里「可愛いわね、二人とも」

にこ「自分だけ素直で良い子です、って?」

絵里「私と比べて、という意味よ。私の捻くれ加減知ってるでしょう?」

にこ「うっ……」

絵里「お互い、大人にならなきゃね」

にこ「それって関係あるの? 誰でも子供の頃は素直なわけじゃない?」

絵里「あれは純粋、少しワケが違うと思うけど……どうなのかしら?」

にこ「……知らないわよ」


絵里「変わることを恐れない勇気……あの子にも教えてあげたら? にこ先輩」

にこ「……あんたが、やればいいじゃない」

絵里「それでもいいけど、後悔しない?」

にこ「……っ」


絵里「ふふっ、わかってる……本当は私じゃ役不足だってことくらい」



にこ「ちょ、ちょっと……これって、どういう状況……?」

真姫「にこちゃんが言ったのよ」

にこ「あれ……、何言ったっけ?」

真姫「そういえば、まだ聞いてなかったわね……」


真姫「にこちゃんには、私の音……どんな風に聴こえてる?」

にこ「……キスするの? にこが何て答えても」

真姫「……」

にこ「可哀想な子……そんな手段でしか私を……、皆を繋ぎ止められないんだ」

真姫「うるさいっ」

にこ「いいよ、出来るものなら」

真姫「……本気よ」

にこ「何でもできるけど、何にもできない……自分でそう言ってなかったっけ?」

真姫「いつもいつも馬鹿にして……っ」

にこ「なら証明してみたら?」

真姫「……」

にこ「この体勢で体格の差……にこはもう逃げられない、真姫ちゃんの為すが儘」

真姫「……っ」

にこ「どうしたの? 俯いてたら唇、届かないわよ」



真姫「はぁっ……、はぁっ……」


にこ「意気地無し、拍子抜けよ」

真姫「うるさいわね……何よ、震えてたくせに」

にこ「……真姫ちゃん」

真姫「何……?」

にこ「にこはアイドルになるわ、なにがなんでも」

にこ「欲しいモノはどんな手を使ってでも絶対に手に入れてみせる……、真姫ちゃんにそれが出来る?」

真姫「……」

にこ「真姫ちゃんは弱いんじゃないよ、ただただ甘いだけ」

真姫「何よ……、偉そうに……」

にこ「覚悟決めなよ、何事も綺麗にこなしていくんじゃなくて、もっと泥塗れに……地面を這いつくばって求めなさいよ!!」

にこ「真姫ちゃんが欲しいモノはそこまでする価値があるモノ? だったら願ってるだけじゃどうにもならないわよ」

真姫「……うるさい」

にこ「また穂乃果やにこが何とかしてくれるとでも思ってた? 甘えるな!!」

真姫「うるさいうるさいうるさいっ」

にこ「あんたのその手は、声は、何の為にあるのよ!! 聞かせてよ!! もっとがむしゃらに求めなさいよ!!」


真姫「…ッ」

にこ「ン……、ぁ……っ」


──もう戻れない……交じり合って奏でられる私の音と、彼女の音



にこ「馬鹿、じゃないの……あんたが欲しいモノはこんな、こんなのじゃないでしょ!?」

真姫「……魔法をかけたのよ」

真姫「唇と唇のキスは誓いの証……貴女を一生繋ぎ止める為の」

にこ「それって魔法じゃなくて呪い……」

真姫「別に呪いでも何でも構わないわよ」


──胸が灼ける様に熱い、空っぽだった私の心に何かが注がれている


にこ「……にこは変わるわ、あんたの思い通りにはなってやらないから」

真姫「別に、構わないわ」

にこ「……めんどくさくて素直じゃなくて、頑固で」

真姫「私の音、教えてよ」

にこ「……真姫ちゃんはオルゴールみたい」

にこ「綺麗な音を鳴らしているけど、誰かがネジを巻いてあげなきゃ……一人じゃ何も出来ない」

真姫「……巻いてくれるの?」

にこ「だから甘えすぎなのよ、あんたは! 思い通りになってやらないって言ったでしょ?」

真姫「そうね、でも……」


──貴女を想う私の気持ち、それこそが変わらないモノ……永遠と呼ぶに相応しいのだろう




━━fin━━

短すぎぃぃぃぃ
この雰囲気の練習的な感じで書いたのです
さらば

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