チノ「くっ…腕が……それ以上近づかないでください」ココア「えっ」 (159)

ココア「前起きなくチノちゃんに嫌われた!?」

チノ「いえ、これは一般人のココアさんの為に言ってるんです」

ココア「それってどういう…」

チノ「私の腕に封印されし邪眼龍がココアさんに反応して目覚めてしまいます…うぅ!」

ココア「ちょ、チノちゃんどうしたの!というかその包帯…もしかしてケガ?」

チノ「ケガじゃないです、呪印が疼いてるだけなので一般人のココアさんには関係ないです…くっ…今回ばかりはまずいか…」

ココア「そこまで一般人を強調されるとちょっと凹むよ」

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チノ「ぅあああ!!」

ココア「本当に大丈夫?物凄く辛そうに見えるけど…」

チノ「さすがに辛いです…ティッピーを…契約獣をここに…」

ココア「契約…?」

チノ「とにかくはやくしてください!」

ココア「えっと、ティッピーを連れてくればいいんだね!お姉ちゃんに任せて!」

---------
チノ「…ふぅ」

ココア「落ち着いた?はい、ホットココアだよ」

チノ「ありがとうございます…危ないところでした」

ココア「それで、突然どうしたの?」

チノ「一般人のココアさんに言ってもわかってもらえないので話すだけ無駄です」

ココア「うーん…じゃあ今日はゆっくり寝てね?」

チノ「夜は魔物狩りの時間なので…」

ココア「ゲームかなにか?」

チノ「現実です。現実から目をそむけちゃだめです…一般人のココアさんはゆっくり寝てください」

ココア「むぅ…よくわかんないけど無理しちゃだめだよ?」

---------
ココア「っていうことがあってね」

リゼ「チノも魔族の一員だったか…」

ココア「え?まぞ?」

リゼ「いや、何でもない」

ココア「うーん…どうしたらいいのかなぁ…」

リゼ「まあそういう年頃なんだろう、放っておいてやれよ」

ココア「でも心配だよ…お姉ちゃんとして」

リゼ「私からも何か聞き出してみるよ」

ココア「あ、うん、よろしくね」

-------
リゼ「チノ、聞きたいことがある」

チノ「何ですか改まって」

リゼ「…貴様も魔族の一員かっ!」

チノ「魔族…聞いたことがあります…自らの魂と引き換えに…えっと…敵と戦う族のことですよね」

チノ「私が所属する暗黒界とも多少繋がりがあると聞いています」

リゼ「暗黒界!貴様暗黒回の人間だったのか!」

チノ「な、なぜばれたんですか!」

リゼ「こんなところで同志と会えるとはな…チノ、この世界に来て何かわかったことはあったか」

チノ「いえ…まだなにも…」

リゼ「ふっ…情けない…私は暗黒龍の居場所を突き止めたぞ」

チノ「えっ、ですが暗黒龍は私の腕に封印されていて…」

リゼ「えっ」

チノ「えっ」

リゼ「えーっと…違ったな、暗黒龍じゃない、閃光龍だ」

チノ「線香龍…臭いを司る伝説の龍のことですか…!」

リゼ「いや…えと…ああ、そうだった、匂いを司ってるんだ」

チノ「…とにかく、一般人に被害が及ばぬよう最善を尽くしましょう」

リゼ「ああ、聖なる掟に誓って」

--------
ココア「っていうことがあってね」

千夜「あらあら」

シャロ「中二病って奴じゃないの?」

ココア「ちゅうにびょう…?えっ!病気なの!?」

千夜「大丈夫よ、中学生くらいの子なら普通だわ」

シャロ「そ、そうよ、普通よ」

千夜「シャロちゃんも3年前まd」

シャロ「んもぁあぁあああ!!余計なこといーうーなー!」

ココア「へぇ、どういう病気なの?」

シャロ「自分が特別だーとか思っちゃうような痛い子のことよ」

千夜「そうね、昔のシャロちゃんみたいな」

シャロ「あんただってメニューに変な名前付けてるんだから立派な中二病じゃない…」

千夜「でね、ココアちゃん、シャロちゃんは左腕に紋章があって」

シャロ「あー!!あーー!!!!」

ココア「うーん…よくわかんない…」

千夜「心配ないわよ、シャロちゃんだって2年くらいで完治したしね」

ココア「チノちゃんが2年もあの調子じゃ辛いよ…」

千夜「私も辛かったわぁ…シャロちゃんったら夜中にまで」

シャロ「もう私の話はやめてよ!謝るから!」

シャロ「とにかく!中二病なんて放っておけば治るから!」

ココア「わかったよ…しばらく様子見てみるね」

千夜「ええ、でもどうしても耐えられなくなったときは…」

ココア「ときは…?」

千夜「私が何とかするわ」

ココア「千夜ちゃん…!持つべきものは親友だね!」

千夜「いつでも呼んで!シャロちゃんの左手の紋章を一発で消した治療法をチノちゃんにもしてあげるわ」

シャロ「やめてあげなさいよ…チノちゃん寝込むわよ…」

----------
ココア「ちーのーちゃんっ」

チノ「何ですか一般人のココアさん」

ココア「取りあえずその一般人のっていうのだけは辞めてもらえるかな…」

チノ「…わかりました」

ココア「チノちゃんがどんな病気でも…私は治るまでずっと傍にいてあげるからね!」

チノ「病気じゃないです、私はけんこ…いや、幾億もの並行世界を巡ってきたこの身体…健康なはずがないですね…」

ココア「?」

チノ「ふっ…なんでもないです…」

チノ「そういえば、ココアさんに一つ聞きたいことが」

ココア「何!?お姉ちゃんがわかることなら何でも教えてあげるよ!」

チノ「魔界や魔族って単語に何か感じることはありますか?」

ココア「マカイ…?族?うーん…マサイ族?」

チノ「原人じゃないです」

ココア「特に何も感じないかなぁ」

チノ「リゼさんが同志だったからもしやと思ったんですが…ふっ…私としたことが夢を見過ぎたようですね…」

ココア「血は繋がって無くても…チノちゃんは私の可愛い妹だよ!」

チノ「複雑な事情を持った家庭みたいに言わないでください」

ココア「…とにかく、何か不安とかがあったら遠慮なく相談してね?」

チノ「不安…不安ですか…感情を抱かなくなってからというもの、不安なんて感じたことはないですね…」

ココア「そうなの?」

チノ「そうです」

ココア「じゃあ私がもしチノちゃんのプリン食べちゃってても怒らない?」

チノ「そんな小さなことでこの私が激昂するはずが…え?今なんて…」

ココア「よかったー」

チノ「…食べたんですか」

ココア「あのコクが強いにも関わらず決してくどくはない味と、拘り抜かれたカラメル…最高に美味しかったよ!」

チノ「っぅぅ…!」

ココア「どうしたの?」

チノ「美味しかったですか…そうですか…」

ココア「うん!あれ?もしかして泣いちゃった…?ご、ごめんね!今度代わりの買ってくるから!ね?」

チノ「泣くことを忘れた私が泣くなんてありえないです」

ココア「前アニメ映画見て泣いてなかったっけ?」

チノ「泣いてないです、見間違いです、私がココアさんの記憶を改竄したんです」

ココア「わかったから落ち着いて?ね?」

チノ「むぅ…とりあえず魔狩りの時間なので私はこれで…」

ココア「あ、ホントだ、もう寝る時間だね」

チノ「この街を守るため…私は今夜も戦います」

ココア「夜更かしはお姉ちゃん許さないよ!」

チノ「くっ…まさかココアさんは組織からの刺客…!」

ココア「四角形でも三角形でもないよ」

チノ「…私がやらないで誰がこの街を守るというんですか!」

ココア「警察の人とか自衛隊の人とか?」

チノ「もういいです、ココアさんの分からず屋、私は魔法使って外出ますから」

ココア「じゃあチノちゃんが寝るまで枕元にいてあげるね!あ、そうだ!絵本でも読んであげよっか!」

チノ「むぅ、子供じゃないです」

ココア「それで……タヌキのジョセフィーヌが…くぅ……」

チノ「ジョセフィーヌは!ジョセフィーヌとエリザベスはどうなったんですか!」

ココア「くぅ…くぅ……んにゃぁ」

チノ「にゃあじゃないですよ…はぁ、続きが気になって寝られないじゃないですか…」

ココア「んん…あれ?チノちゃんタヌキ狩りは?」

チノ「今日はその…えっと……リゼさん!そう、リゼさんの当番の日なので私はゆっくり休めるんです」

ココア「しょうにゃんだぁ…じゃあおやすみ…」

チノ「ですからココアさん!さっきのお話の続きを…あっ…」

ココア「すぅ…えはぁ……うさぎだぁ…」

チノ「…」

------------
ココア「…あれ?私どうしてチノちゃんの部屋で寝て…」

チノ「コ…コアさん…ジョセフィーヌは…」

ココア「え、ちょ、チノちゃんどうしたの!?」

チノ「ココアさんのお話の続きが気になって一睡もできませんでした…」

ココア「お話…?あ、私が適当に作った童話のこと?」

チノ「あれココアさんが考えたんですか!」

ココア「え、うん、即興で」

チノ「即興で!?」

ココア「で、どんな話だっけ?サラリーマンの順一郎さんがエアコンの修理をするお話だったっけ?」

チノ「タヌキのジョセフィーヌと機械人間エリザベスの初恋のお話だったじゃないですか」

ココア「うーん…ごめんね、忘れちゃった」

チノ「寝ない、で、ずっと…待ってたのに…あっ…意識、が……」

ココア「え、チ、チノちゃん!?」

チノ「すぅ…すぅ…」

ココア「寝ちゃった?」

ココア「昨晩寝てないっていうのは本当みたいだし…」

ココア「今日は寝かしておいてあげようかな」

--------
ココア「…ということがありまして」

タカヒロ「ふむ…では、今日は寝かせておいてあげてくれるかな?」

ココア「そのつもりです!お姉ちゃんとして無理させるわけにはいかないですから」

タカヒロ「…店の方は私も手伝おう」

ココア「あ、いえ、二人だけで十二分に回せるので」

タカヒロ「そうかい?では、よろしくお願いするよ。大変になったらいつでも呼んでもらって構わないから」

ココア「あ!ついで、と言ってはなんなんですけど…一つだけチノちゃんのことで相談が…」

----------
ココア「っていうことがあってね」

リゼ「へぇ、少し心配だな」

ココア「ただの寝不足みたいだし大丈夫じゃないかな?」

リゼ「睡眠を甘く見るなよ!」

ココア「え?」

リゼ「スナイパーが常に欠かしてはいけないもの…それは十分な休息と睡眠だ!」

ココア「チノちゃんはスナイパーじゃないよ!?」

カランコロン

リゼ「お、客か、こほん…いらっしゃいませ!」

青山「お久しぶりです」

ココア「あ!青山さん!いらっしゃいませ!」

青山「近くに来たもので…その、ついでに…」

ココア「久々に会えてうれしいです、ゆっくりしていってください」

青山「ありがとうございます」

ココア「あ、そうだ、そういえば一つ相談が…」

青山「はて?何でしょう?私にできることは少ないですが…できることならなんなりと…」

ココア「実は、チノちゃんがかくかくしかじかでして…」

--------
青山「人は、誰しも悩める時期があるというものです」

ココア「ふむふむ」

青山「若いうちにたくさん悩めるというのは、とてもいいことなのではないでしょうか」

ココア「なるほどなるほど…」

リゼ「お前本当に理解してるか?」

ココア「に、2%くらいは…」

カランコロン

リゼ「おっと、また客か」

マヤ「やっほー!リゼ!」

メグ「ココアちゃんこんにちわー!」

----------
ココア「っていうことがあって、学校で何か変わったこととかない?」

メグ「あ!そういえば、最近ちょっと難しい言葉を使うことが多くなったかも!」

マヤ「うん、ゲームの主人公みたいなこという事も多くなったよね」

ココア「そっかぁ…思春期の大事な時期みたいだから、二人ともお友達としてチノちゃんを大事にしてあげてね!」

マヤ「もちろん!」

メグ「そっかぁ、心配だね」

マヤ「ところでチノは?」

リゼ「今日は睡眠不足でまだ寝てるみたいだぞ」

青山「二日酔いですか?」

ココア「チノちゃん未成年だよ!?」

青山「性徴期に寝不足はよくないですからね…ゆっくり寝かせてあげてください」

青山「若い方の邪魔をしては申し訳ないですし、私はこれにて」

マヤ「えー、もっとゆっくりしてけばいいのに」

メグ「そうだよぉ、青山さんともっとお話ししたかったのにー」

青山「ふふ、ありがとうございます、ですが、この後少し用事もあるので」

メグ「そっかー…」

青山「恋は偶然、出会いは必然…お互い生きていればまたすぐに会えますよ…」

マヤ「何それカッコイイ!」

青山「では」

メグ「マヤちゃん、私達はどうする?」

マヤ「うーん…騒いでチノを起こしても悪いしなぁ」

リゼ「お?お前ちょっと大人になったか?」

マヤ「リゼよりは…な」

リゼ「こいつ、言うようになったな!」

マヤ「へへー!じゃあそういうことだから、私たちは帰るよ」

メグ「うん、チノちゃんによろしくって伝えてね」

ココア「二人ともありがとう!」

千夜「こんにちわー」

シャロ「リゼ先輩!」

ココア「今日はお客さんいっぱいだね」

リゼ「知り合いばかりだけどな…いらっしゃいませ」

千夜「今日はチノちゃんのことでお話に来たの」

ココア「考えてくれてたんだ!」

千夜「ええ、もちろん!この宇治松千夜、親友の頼みを無碍になんてしないわ」

ココア「心の友ぉ!」

シャロ「茶番やってないでさっさと本題に…」

シャロ「(あっ、リゼ先輩ちょっと羨ましそう…)」

シャロ「リ、リゼ先輩も…その…悩みがあったらいつでも私に…」

------
シャロ「寝不足は別件だとして…治る気配がないわね」

ココア「元罹患者の言葉は説得力が違うね!」

シャロ「中二病じゃないわよ!」

リゼ「その…ちょっといいか?」

ココア「ん?どうしたの?」

リゼ「勉強不足で申し訳ないんだが、中二病って何だ?」

ココア「それはね!現代社会においてチノちゃんのような悩める若者がかかってしまう精神的な」

千夜「つまり、いわゆる痛い子よ」

ココア「遮られた…!」

千夜「実際に見てもらった方がわかりやすいかしら…リゼちゃん、コーヒー淹れてもらっていい?お金は払うから」

リゼ「それは構わないが突然どうした?睡魔にでも襲われたか?」

千夜「ええ、ちょっとね」

ココア「あ、じゃあついでに私も」

シャロ「じゃ、じゃあ私も何か飲み物を…」

千夜「コーヒー4杯、お願いね」

シャロ「さ、さんばいです!私はいらないです!」

リゼ「腕に自信があるわけではなかったが…面と向かっていらないと言われると少し凹むな…」

シャロ「ち、違います!そうじゃないんです!」

千夜「シャロちゃんお金の心配をしているのね…リゼちゃんのコーヒーあんなに飲みたがっていたのに不憫だわ…」

シャロ「ちょ!」

リゼ「ほ、本当か!?なら遠慮するな!子の席は全員分私の奢りだ!」

シャロ「あ、ありがとうごじゃぃます…」

ココア「え?いいの?わーい!」

シャロ「おのれ…はめたわね…」

千夜「何の話かしら?」

リゼ「ほら!淹れたぞ!遠慮なく飲んでくれ!」

シャロ「い、いただきましゅ…」ズズズ

リゼ「ど、どうだ…?」

シャロ「ぃっええぇぇい!おいしいでーっす!」

リゼ「それはよかった!」

千夜「シャロちゃん、ちょーっと耳貸してね」

シャロ「えー、にゃに?内緒ばなし?」

千夜「ごにょごにょ」

シャロ「え、本当にリゼ先輩喜ぶの!?シャロ、中二病やりまーっす!」

シャロ「……」

ココア「シャロちゃん?」

シャロ「人間風情が我に気安く話しかけるでない」

リゼ「…貴様、何者だ」

シャロ「我は体に紋章を持つ者の一人…人間からはスラッシュロードと呼ばれている者だ…」

リゼ「スラッシュロード…聞いたことがあるぞ…族長殺しの罪で魔界より追放されし元魔族…!貴様だったのか!」

ココア「千夜ちゃん!二人とも何言ってるのか全然わからないよ!」

千夜「あらら?リゼちゃんも真性さん?」

リゼ「まさか…チノを…我が同志を葬ったのも貴様の仕業か…っ!」

シャロ「察しがいい魔族は嫌いではないぞよ?ふははは!」

ココア「チノちゃん寝てるだけだよ!?」

リゼ「くっ…だが今は太陽の光が天より降り注ぐ刻…」

ココア「普通に『昼』じゃだめなの!?」

リゼ「貴様は十分に力を発揮できないはず…!やるなら今か!?」

シャロ「笑止…自ら火を放ち、我にその閃光を浴びせる恒星は、40億年前に既に滅んだ」

ココア「太陽まだあるよ!?というか何でいちいち難しい表現しようとするの!?」

シャロ「馬鹿めが…あれは貴様ら人類を惑わす擬似的な人工恒星に過ぎん…」

リゼ「くっ…チノと二人でならどうにかなったかもしれんが…一人では…」

千夜「じゃあ、そろそろシャロちゃん封印する?」

リゼ「そんなことができるのか!?…はっ!まさか!貴様月の巫女か!?」

千夜「ええそうよ、シャロちゃん、またちょーっと耳貸してね」

シャロ「なによ、今いいところだったのに…え?やめたらリゼしぇんぱい喜ぶの?じゃあやめる!」ヘナァ

リゼ「…!シャロから覇気が消えた…!」

ココア「ち、千夜ちゃん…これってどういう…」

千夜「新事実が発覚したわ…リゼちゃんもチノちゃんと同じ中二病よ…!しかもこれはかなりこじらせてるわね…」

ココア「じゃ、じゃあリゼちゃんも一緒に治療してあげないと…」

千夜「それは無理ね…」

ココア「どうして…!」

千夜「リゼちゃんのこの感じ…既に末期症状だわ…」

ココア「そんな…!」

千夜「でも大丈夫よ、リゼちゃんは相手がいなければ症状が発症しないみたいだし」

ココア「そんなことまで今のでわかったの!?」

千夜「8割は勘よ」

ココア「中二病って難しいんだね…」

シャロ「んぁー…んん…」

千夜「カフェインが抜けてきた?」

シャロ「私、今凄い恥ずかしいこと言ってた気がするんだけど…」

千夜「気のせいよ」

シャロ「そ、そうよね」

リゼ「シャロ!大丈夫か!スラッシュロードの封印はもう完全に済んだのか?」

千夜「ええ、そのはずよ」

シャロ「スラッシュ…?…………」

シャロ「ぁぁぁ……」

ココア「シャロちゃん?」

シャロ「りじぇしぇんぱいに、しら、れた…?」

千夜「久々のスラッシュロードちゃん可愛かったわよ」

シャロ「いやああああああああもう帰るうあうああああああああ」

シャロ「もうしぬ!うさぎにかまれてしぬううううう」

千夜「あらあら…どうかなっちゃう前に連れて帰るわね」

ココア「もうどうにかなってるように見えるんだけど…」

千夜「あ、それから、チノちゃんは私が蘇生しておいたから安心してね」

リゼ「本当か!?それは助かる!蘇生魔法は体力を使うからな」

千夜「ココアちゃん、またあとで電話するわ」

ココア「う、うん」

-------
チノ「ん…んん…」

ティッピー「目が覚めたか」

チノ「おじいちゃん……っ!ち、遅刻です!どうして起こしてくれなかったんですか!」

ティッピー「寝不足じゃまともに働けんじゃろ、店はリゼとココアの二人でどうにかなっとるわい」

チノ「…そうですか、迷惑かけちゃいましたね」

ティッピー「迷惑とは思っとらんだろうに」

チノ「…優しい方たちですからね」

ティッピー「じゃが、その思い込みについてはどうじゃろうな」

チノ「えっ?」

ティッピー「魔法だか何だか知らんが、そのことでココアは治そうと必死になっておるぞ」

ティッピー「…リゼに関しては何とも思っとらんだろうが」

チノ「ですが、私には魔界を守る責務が…」

ティッピー「ココアを影から守れるような人間になりたい、ココアの驚く顔が見たい……」

チノ「……」

ティッピー「少し前、そう言っていたな?」

チノ「…記憶にありません、では、私は仕事に行きますので」

ティッピー「あ、ちょっと待」

チノ「女子更衣室、ついてくるんですか?…では、先にお店に行っててください」

ティッピー「…今までがいい子過ぎたのじゃろう」

ティッピー「時には道を間違うのもいいのかもしれんな」

ココア「チノちゃん!」

チノ「おはようございます…という時間でもないですね…遅れてすみません」

ココア「」

ココア「もう大丈夫なの?」

チノ「はい、十分に寝ましたから…」

リゼ「顔が少し赤いぞ?本当に大丈夫か?」

チノ「…ちょっとおじ…ティッピーと喧嘩したので、そのせいかもしれませんね」

ココア「へぇ、ティッピーとは以心伝心なんだね」

チノ「私達は契約で結ばれているので、そのくらい造作もないです」

ココア「ふぅん…あ、そうそう、ついさっき、色んな人が来たんだよ!」

チノ「メグさんたちですか?」

ココア「うん!マヤちゃんにメグちゃんに、千夜ちゃんとシャロちゃん…それに青山さんも!」

チノ「そうですか…楽しそうでいいですね」

ココア「楽しかったよー!ね、リゼちゃん!」

リゼ「ああ!あ、それより聞いてくれよチノ!実はシャロの正体は…」

チノ「…ラビットハウスに私なんていらないですね」

ココア「え?」

チノ「私みたいな子がいると、お店の雰囲気が暗くなりますし」

リゼ「何言って…」

チノ「すみません、今日はやっぱり寝ます」

ココア「チノちゃん!」

リゼ「あ、おい!」

ティッピー「…」

ココア「…どうしちゃったのかな?」

リゼ「悪い夢でも見たのかもな…少し一人にしてやろう」

ココア「うん…」

---------
コンコン

ココア「チノちゃん、起きてる?…ドアの前にパン、置いておくね」

チノ「…ごめん、なさい……」

ココア「え?今なんて」

チノ「……」

ココア「気のせい…かな?明日は学校もバイトもお休みだから、今日はできるだけ起きてるね」

ココア「チノちゃんの力になれるかはわからないけど…悩みを聞くことくらいは私にもできるから」

チノ「…」

ココア「…もしも私の何かが気に入らなかったんならごめんね…私、鈍感だから自分じゃ気づけなくて」

ココア「……おやすみ」

チノ「……」

------
千夜『そう…』

ココア「うん…私、気づかない内にチノちゃんに何かしちゃったのかなぁ…」

千夜『情緒不安定なんだと思うわ、きっとココアちゃんのせいじゃないと私は思うけど…』

ココア「…あれ?」

千夜『どうしたの?』

ココア「ちょっとドアの前に何かの気配が…」

千夜『えっ!?強盗さん!?開けちゃだめよ!』

ココア「も、もしかしたらチノちゃんかもしれないから…」

千夜『そ、そうね…くれぐれも気を付けて…!』

ガチャ

ココア「…あれ?誰もいない…?…わひゃっ!」

千夜『こ、ココアちゃん!?もしもし?もしもし!』

ココア「びっくりしたぁ…ティッピーだったよ」

千夜『そ、そう…よかったわ…最近読んだホラー小説に似たような場面があったからもしかしてと思って…』

ココア「怖いこと言うのやめてよぉ!…ティッピーもチノちゃんの部屋に入れてもらえなかったみたい」

千夜『もう遅いし…寝ちゃってるだけかもしれないわ』

ココア「あっ、ホントだ、もうこんな時間…ごめんね、遅くまで付き合わせちゃって」

千夜『ううん、気にしないで』

ココア「千夜ちゃんは明日もバイトだったよね?」

千夜『ええ、でも、ココアちゃんの気が済むまで付き合うつもりよ』

ココア「ありがとう…でも、もう大丈夫かな」

千夜『無理しちゃだめよ?チノちゃんも難しいお年頃なんだから』

ココア「うん、ありがとう…じゃあまたね」

ココア「…はぁ」

ティッピー「…」

ココア「ねえティッピー、私、チノちゃんに何かしちゃったのかな…」

ティッピー「チノ自身の問題じゃろ」

ココア「そうかなぁ……………ん?」

ティッピー「……」

ココア「今、喋った?」

ティッピー「!!」フルフル

ココア「喋ったよね?」

ティッピー「………」ブンブンブン

ココア「幻聴、かな?…私も疲れてるのかな」

ティッピー「!」コクコク

ココア「…私の独り言、聞いてくれる?」

ティッピー「…」

ココア「私ね、ずっと妹がほしかったんだ」

ココア「ここに…ラビットハウスに居候することになって、チノちゃんと一緒に暮らすようになって…」

ココア「私、嬉しすぎて浮かれすぎちゃってたのかも」

ティッピー「(それは否定できんの)」

ココア「精一杯明るく振る舞って、チノちゃんの理想のお姉ちゃんになろうって決めて…」

ココア「それで、それで……あれ?おかしいな…涙が…」

ココア「ごめんね、ティッピー濡れるの嫌いなのに…でも、止まらないよ…」

ティッピー「構わんよ、気が済むまで泣きなさい」

ココア「やっぱりティッピー、喋ったね…」

ティッピー「…これは夢じゃ、だから思ったことを想ったように吐き出せばそれでよい」

ココア「うん…そっか……あのね、私、チノちゃんに近づくなって言われたとき、ホントに泣きそうになったの…」

ココア「今でも思い出すと、もう生きてる心地がしないくらい辛いよ…」

ココア「みんなは私のせいじゃないって言ってくれてるけど…でも、でも……」

ティッピー「不安で仕方ない…じゃろ?」

ココア「えっ…」

ティッピー「それはみんな同じ気持ちじゃろ…チノも、お前も、もちろんわしじゃって」

ココア「そう…なのかな…でも、もしかしたらチノちゃんは私のことなんて」

ティッピー「もしかしたら、か…人間なんてそんなもんじゃ」

ティッピー「別に説教を垂れる気はないが…例えば、お前はリゼのことが嫌いか?」

ココア「そ、そんなはずないよ!大好きで大切なお友達だよ」

ティッピー「…じゃが、リゼからしたらどうじゃろうな?お前に『もしかしたら』嫌われているかもしれない、そう思っていても不思議ではないんじゃないかの」

ココア「で、でも!私リゼちゃんのこと大好きだし…」

ティッピー「その『リゼ』が今のお前じゃ」

ココア「あっ…」

ティッピー「わしも長いこと生きてきたが、人間関係というものは本当に複雑で、今になっても慣れんわい」

ココア「…あはは、私、ティッピーのこと何歳だと思ってるんだろ」

ティッピー「…自信を持て、お前は大きな間違いは犯してはおらん…それに、チノは…」

ココア「チノちゃんは?」

ティッピー「…いや、これはお前たちの問題じゃな、ついつい口を出し過ぎたようじゃ」

ティッピー「とにかく、じゃ…お前たちが紡いできた絆は少しのことで切れてしまうような脆さではないじゃろ」

ココア「そっか…うん、ありがとう…ティッピー……あれ?安心したら体の力が…」

ティッピー「…今日はもう寝なさい」

ココア「夢の中で、寝るなんて…変、なの…」

ティッピー「…まだまだ小娘だと思っておったが、心持ちだけはしっかりチノの姉をやっとるわい」

ココア「くかぁ……チノ…ちゃ……」

ティッピー「…チノのこと、大切にしてやっとくれ」

----------
タカヒロ「…どうだった」

ティッピー「何の話じゃ」

タカヒロ「ココア君のところに行っていたんだろ?」

ティッピー「はんっ、知らんわい」

タカヒロ「ふっ…」

ティッピー「な、なんじゃ!おちょくっておるのか!」

タカヒロ「……」

ティッピー「はぁ…チノは、いい『姉』を持ったの」

タカヒロ「…そうだな」

------------
ココア「てぃっぴぃ…もふ、もふ……っは!」

ココア「…あれ?朝?…私、寝ちゃったんだ」

ココア「確か、部屋に戻ってきてから千夜ちゃんと電話して、それから」

ココア「…あれ?それからどうしたんだっけ……」

ココア「あ、そっか、ティッピーが来て、ティッピーが喋って…」

ココア「うーん…どっからが夢なんだろ……うー、もやもやする」

ココア「はぁ………ティッピー、私を励ましに来てくれたんだよね」

ココア「……不安なのはみんな同じ、か」

----------
ティッピー「起きたか?」

チノ「あ、おじいちゃん…おはようございます」

チノ「はぁ…昨日あんな態度とって…もうココアさんに合わせる顔がないです……」

ティッピー「ココアなら大丈夫じゃろ」

チノ「そうでしょうか…」

ティッピー「普段通りを心掛けなさい」

チノ「普段通り…簡単そうで難しいことを言いますね」

チノ「じゃあ、普段通り、まずは朝ごはんを作ることにします」

--------
ココア「あ、チノちゃん、おはよう」

チノ「お、おふぁよお…ごじゃじゃす」

チノ「(き、緊張しすぎて盛大に噛んだ…)」

ココア「あふぁお?」

チノ「な、何でもないです!呪文…そう、呪文を唱えたんです!」

ココア「へぇ」

チノ「…あ、ご、ご飯そろそろできるので、飲み物だけ用意してもらっていいですか?」

ココア「うん!えーっと、野菜ジュースでいい?」

チノ「大丈夫です」

チノ「あの…昨日は、その…すみませんでした」

ココア「お店お休みしちゃったこと?ううん、気にしないで!私にも責任があるわけだし…私の方こそごめんね?」

チノ「い、いえ!ココアさんが謝ることなんてないです!」

ココア「身体はもう大丈夫?」

チノ「あ…は、はい…一晩休んだら元気になりました」

ココア「よかったー、みんな心配してたんだよぉ」

チノ「そう、ですか」

チノ「(お休みしたことじゃなくて、昨日の態度を謝りたかったのに…)」

チノ「(…でも、ココアさん、昨日のこと本当に気にしてない…?)」

チノ「あの、こ、ココアさん!」

ココア「うん?なぁに?」

チノ「今日って、その…予定とかありますか?」

ココア「あ、うん、ちょっと街の方に一人で行こうかなって」

チノ「あの、わ、私も付いていってもいいですか?」

ココア「え!?いや、えと…あ!戦艦のプラモデル!あれもうすぐ完成するんだよね!」

チノ「ボトルシップのことですか?」

ココア「うん!それそれ!私がいなくて静かだし、やるなら今日だと思うよ!」

チノ「そ、そうですか…わかりました」

ココア「お、お土産ちゃんと買ってくるから、完成したら見せてね!」

チノ「…はい」

----------
ココア「じゃあ行ってきまーす」

チノ「気を付けてください」

ココア「うん!ありがとう」

チノ「…完璧に拒絶されました」

ティッピー「それは違」

チノ「もういいんです!私がいけないんですから!」

ティッピー「お、落ち着きなさい!」

チノ「ココアさんは私のことなんて、もうどうでもいいんです!」

チノ「いつもだったら私のいうこと、ちょっとだけ鬱陶しく感じるくらい聞いてくれるのに…」

チノ「何で今日に限って『一人』で出掛けるんですか…」

ティッピー「…」

チノ「…ごめんなさい、大きな声を出し過ぎました」

チノ「…部屋に戻ります、静かにボトルシップを作りたいので入ってこないでください」

ティッピー「…」

ティッピー「…青春ってやつかの」

ティッピー「まあ、これだけお互いのことを好き合っていれば、近いうちに仲は直るじゃろ」

ティッピー「わしも若かりし頃は親友と」

タカヒロ「独り言で自分語りとはな…ついにボケたか」

ティッピー「ボケとらんわ!わしはまだあと30年は生きるぞ!というかお前いつからそこにいたんじゃ!」

タカヒロ「…ふっ」

ティッピー「何じゃ!」

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ココア「うーん…街で一番大きな本屋さんの医学書コーナーを一通り見て回っても、一切中二病に関する情報がないなんて…」

ココア「やっぱり、珍しい病気なのかな」

青山「あ…こんなところで会うなんて奇遇ですね」

ココア「青山さん!こんにちは」

青山「こんにちは。お困りのようでしたが…何か探し物ですか?」

ココア「はい…中二病に関する本を探していたんですけど、なかなか見つからなくって」

青山「中二病ですか…それなら、あちらに山というほど」

ココア「あそこは…えっと、ライトノベルコーナー…?」

ココア「か、可愛らしい女の子の絵でいっぱいですね」

青山「凛々しい殿方の絵の方がお好みでしたか?」

ココア「あ、いや、私はどちらかといえば…って、そうじゃなくて!」

ココア「これ、中二病と何か関係あるんですか!?」

青山「大いに」

ココア「そ、そうなんだ…」

青山「そうですね…中二病に関するラノベなら、こんなのはどうでしょう」

ココア「やたら詳しそうですね…」

青山「ごくたまに描かせていただいていますので」

ココア「えっと、『中二病でも恋愛したいっ!』…えっ、恋愛ものの小説!?」

青山「中二病の女の子と、元・中二病の男の子の恋模様をコメディタッチで描いた恋愛小説…といったところですね」

ココア「な、なるほど…?」

青山「多少の着色はありますが、中二病という"病気"について理解するには適した一冊だと思いますよ」

ココア「ふぅむ…プロの小説家の青山さんが勧めてくれるんなら間違いないですよね!多分!きっと!」

ココア「今日はこれを買って帰ります」

青山「気に入っていただけたら私も勧めた甲斐があります」

ココア「助かりました、ありがとうございます」

青山「チノさんの”病気”、早く治るといいですね」

ココア「はい!」

青山「…それでは、また」

ココア「……あれ?私、チノちゃんのことなんて一言も…」

ココア「あ、そっか…あの時、チノちゃんの様子がおかしいって相談したから…」

ココア「『ラビットハウスに私なんていらない』、か…」

ココア「チノちゃんのこと、大切に思ってくれてる人、いっぱいいるよ」

ココア「もちろん、私だって…」

ココア「…っていけない!お会計済ませなきゃ!」

---------
ココア「ただいまー」

ココア「…チノちゃんは自分の部屋かな?」

ココア「邪魔しても悪いし私も部屋で読書タイムにしよっと」

チノ「(…あ、ココアさん、帰ってきたんだ……)」

チノ「(……まっすぐ自分の部屋に…)」

チノ「(………やっぱり、私のことなんて、もう…)」

チノ「…………」

--------
千夜「へぇ、それで今そのラノ…小説を読んでいるのね」

千夜「中二病については大体わかった?」

ココア「うん!おおよそはわかってきたよ!」

千夜「…肝心のチノちゃんの方は、今どんな調子かしら?」

ココア「それがね…昨日は帰ってきてからチノちゃんに会えてなくって…」

千夜「あら、晩御飯や朝ごはんも一緒じゃなかったの?」

ココア「うん…『お鍋にシチューがあるので温めて食べてください』って書置きだけあって…」

ココア「メールしても返事くれないし、部屋に行っても居留守使われちゃうし…」

ココア「はぁ、やっぱり私嫌われちゃったのかなぁ…」

千夜「それはきっとないと思うけれど…ちょっと心配ね」

ココア「そうなの…」

千夜「学校にはちゃんと行ったのよね?」

ココア「うん、チノちゃんのお父さんに確認したから、それは大丈夫だと思うよ」

千夜「中二病が原因で学校を休みだしたら、下手をすると将来にも関わるからそれだけは断固止めなきゃだめよ」

ココア「そ、そうなんだ…」

ココア「はぁ…私どうしたらいいんだろ…今日もお店お休みだから、またチノちゃんに会えないかもだし…」

千夜「そうなの…あっ、そうだ、あの子たちに聞いてみたら?」

ココア「あの子たち…?あっ!そっか!マヤちゃんにメグちゃん!」

千夜「学校に行ってるなら会っているはずだし、きっと彼女たちならチノちゃんの目線でいいアドバイスをくれると思うわ」

ココア「うん!さっそくメールしてみるよ!」

ココア「千夜ちゃん、ありがとう!」

千夜「ううん、親友だもの。また困ったことがあったらいつでも相談してね」

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マヤ「どうしたの?なんか元気ないじゃん」

チノ「あ、マヤさん…いえ、大丈夫です、私は元気です」

メグ「辛かったら無理しちゃだめだよ?」

チノ「はい…ありがとうございます、体調不良が悪いわけでは無いので本当に大丈夫ですよ」

マヤ「チノはもっと私たちのことを信頼してだなー」

メグ「あはは、マヤちゃんお父さんみたーい」ヴヴヴ

マヤ「えーせめてお母さんって言ってよー」

メグ「(…あれ?メール?誰だろう…後からで大丈夫だよね)」

マヤ「メグ、どうかした?」

メグ「ううん、なんでもないよー」

キーンコーンカーンコーン

メグ「あ、休み時間終わっちゃったね」

チノ「次は算数の時間ですね」

先生「はい、授業を始めますよぉ、席についてください」

マヤ「じゃあまたあとで!」

クラスメイトA「きりーつ、れー」

「「おねがいしまーす」」

先生「はぁい、それでは今日は教科書52ページの…」

メグ「(見つかったら怒られちゃうけど…ちょっとメール確認するだけなら大丈夫だよね)」ピッ

メグ「(えっと…あ!ココアちゃんからだ!)」

ココア『メグちゃん!折り入ってお願いがあるの!

     学校が終わった後、マヤちゃんと一緒にちょっとだけ会ってくれないかな?
     チノちゃんのことでちょっと相談したいことがあるの。
     だから、チノちゃんにはばれないようにお願いしたいんだけど…大丈夫かな?
     あ!用事があるなら無理に来なくてもお姉ちゃんは怒ったりしないから安心してね!
     じゃあ、返信待ってるね!
     P.S.会ってくれたら美味しい紅茶とクッキーをご馳走します(・x・U)』

メグ「(チノちゃんのことで相談…?なんだろう)」

メグ「(えっと…何とか頑張ってみるね、紅茶楽しみにしてます、と…)」

先生「奈津さぁん」

メグ「ひゃい!」

先生「今は何のお時間ですかぁ?」

メグ「ご、ごめんなさい先生…」

先生「お昼休みまで没収しますねぇ、お昼を食べ終わったら職員室まできてください」

メグ「うぅ…」

キーンコーンカーンコーン

メグ「うぅ…やっちゃった…」

マヤ「どしたの?メグにしては珍しい」

チノ「誰か大切な方からのメールでもありましたか?」

メグ「えと…コ…(っは!チノちゃんには内緒なんだった!)」

マヤ「こ?」

メグ「コ…コートジボワールに住んでるおじいちゃんからメールがあって!」

マヤ「え?メグのおじいちゃんって二人ともこの街に」

メグ「じゃなくって!えっと、えと…その…」

マヤ「ま、まさか…彼氏とかですか……?」

マヤ「そんな…!私ですら気づけなかったなんて…」

チノ「メグさん、結構やり手ですね」

メグ「もう…違うよぉ」

メグ「えっとね、お母さんからで、今日は帰りが遅くなるからお使いお願いねって」

マヤ「なーんだ、つまんない」

チノ「メグさんのはじめてのおつかいですか…どんな感動的なお話になるか楽しみですね」

マヤ「あ、私もあの番組好き!」

メグ「もーチノちゃんまでー」

マヤ「…メグ!どんなに辛くても、どんな困難が待っていようとも、必ずお使いを成功させるんだよ!」

チノ「お茶の間に感動を届けてください」

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ココア「…あ!メグちゃんからの返信だ!」

千夜「どうだったかしら?」

ココア「えーっと…うん!今日の放課後に会えるように頑張ってくれるって!」

千夜「そう、それはよかったわ」

ココア「それで、なんだけど…もしよかったら千夜ちゃんも同席してくれないかな?」

ココア「私だけだと、どうしても重要なこと聞きそびれちゃいそうで…」

千夜「三人がいいのなら、是非ご一緒させてもらおうかしら?私もチノちゃんのことが心配だし」

ココア「ほんと!ありがとう!マヤちゃんもメグちゃんも、千夜ちゃんがいたらきっと喜んでくれるよ!」

千夜「そうだと嬉しいんだけれど…お話する場所とかは決めてあるの?」

ココア「うん!フルール・ド・ラパンで、美味しい紅茶でも飲みながらお話しようかなって」

千夜「それなら、落ち着いた雰囲気でお話できていいかもしれないわね、シャロちゃんもいるし」

ココア「でしょ!あ、そうだ!リゼちゃんとチノちゃんも呼んだらもっと賑やかにならないかな?」

千夜「うーん…人が多過ぎるとチノちゃんに気付かれちゃうかもしれないし、それに、チノちゃんを呼んだら根本的に間違ってないかしら…」

ココア「あ、そっか…うぅ、本来の目的を見失うところだったよ…」

千夜「でも、みんなで集まってお話はまた別の機会に是非やりたいわね」

ココア「うん!そのためにも、チノちゃんの病気を早く治してあげないと!」

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マヤ「おなかすいたー!」

チノ「漸く午前中の授業終わりましたね」

メグ「うぅ…すっごく長く感じたよ…」

チノ「メグさんが怒られることなんてそうそうないですもんね」

マヤ「言われてみれば確かに…もしかして初めて?」

メグ「うーん、そんなことないと思うけど…あ!この前の全校集会のとき校長先生に!」

チノ「校長先生に怒られたんですか!?」

メグ「うん!最近服装の乱れてる生徒が多いから皆気を付けるようにって」

マヤ「そんなことよりお昼にしようよー」

チノ「話が全くかみ合いませんね…」

マヤ「それが私たちチマメ隊のよさでもあるんだよ!」

チノ「マヤさん実はそれ気に入ってたんですか…」

チノ「(私も…私も含めて''チマメ隊''…私の居場所はもしかしたらここだけなのかもしれませんね…)」

メグ「どうしたのチノちゃん?難しい顔して」

マヤ「えっ?もしかしてやっぱり具合悪い?」

チノ「いえ、大丈夫ですよ、それよりお弁当にしましょう、マヤさんもそろそろ限界そうですし」

マヤ「そうだった…おなか空き過ぎて倒れそう…がくっ」

メグ「えと…わ、わーたいへんー、マヤちゃんがー」(棒

チノ「じゃあマヤさんは放っておいて私達だけ先に食べちゃいましょう」

メグ「そうだね、私もお腹すいちゃったー」

マヤ「えー!二人とも酷い!」

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メグ「ふぅ、ごちそうさまー」

マヤ「ごちそうさま!ヒットポイントがマックスまで回復したよ!」

メグ「お弁当って凄いんだねぇ」

メグ「あ、そうだ、マヤちゃん、職員室の前まででいいから、一緒に来てくれない?一人じゃ怖くって…」

チノ「それなら私も一緒に行きますよ、もうすぐ食べ終わるので」

メグ「う、ううん!チノちゃんは大丈夫!急いで食べると体に悪いってお母さん言ってたから、ゆっくり食べて!」

マヤ「えー、せっかくだし三人で行こうよ」

メグ「えと…あ、時間!お昼休み終わっちゃうかもしれないから!」

マヤ「…うん、わかった、じゃあちゃちゃっと行っちゃおっか、じゃあチノ、お留守番よろしくね」

チノ「あ…」

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マヤ「メグ、チノに知られちゃいけないことでもあるの?」

メグ「…ケータイだけ先に取りに行ってもいいかな?きっとその方が説明しやすいから」

マヤ「うん、わかった」

メグ「じゃあ行ってくるねー」

マヤ「こっぴどく叱られてきなー」

メグ「もー!マヤちゃんってばぁ」

マヤ「あはは!冗談だよ!先生優しいから大丈夫だって!」

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メグ「うぅ、先生恐かったよぉ…」

マヤ「よしよし、でも先生笑顔だったしそんなに怒られてなかったように見えたけど」

メグ「私にとってはどきどきだったよ…次やったら反省文20枚だって」

マヤ「うーん…20枚分も何書けばいいんだろう」

メグ「言われてみればなんだろうね?」

マヤ「ってそんなことはいいとして、チノがついてくるのを許さなかった理由、そろそろ聞いてもいいよね?」

メグ「うん、取りあえずこのメールみてみてくれる?」

マヤ「えーっと、なになに」

マヤ「ふぅむなるほど…」

メグ「マヤちゃんも付いてきてくれるよね?」

マヤ「うん、もちろん!…と言いたいところだけど…」

メグ「だけど?」

マヤ「何かチノに嘘ついたり省いたりしてるみたいで、ちょっと気になったりならなかったり…」

メグ「うん、確かにそうかも…」

マヤ「だから、話の内容にもよるけど、明日になったらちゃんとチノに謝ろ?」

メグ「そうだね、理由はどうであれ、大切な友達に嘘ついちゃってるんだし」

マヤ「よし、じゃあ決まり!で、場所とか時間は?」

メグ「えっと、紅茶とクッキーをご馳走してくれるらしいから、どこかの喫茶店かな?…あ、ココアちゃんから新しくメールきてる」

マヤ「それに書いてあるかな?」

メグ「えっと…フルール・ド・ラパンに学校が終わったら来てね、だって」

マヤ「ふるーるどらぱん…何か聞き覚えがあるような」

メグ「もー、マヤちゃんもう忘れちゃったの?ほら、あのときココアちゃんに連れて行ってもらった」

マヤ「あー!フリフリでぴょんぴょんの!」

メグ「うん!制服可愛かったよねー」

マヤ「ちょうどまた行きたいと思ってたところだったんだ!」

メグ「お店の名前忘れちゃってたのに?」

マヤ「それは…ほら、こう、私の魂がフルール・ド・ラパンを求めてたというか」

チノ「フルール・ド・ラパンがどうかしましたか?」

メグ「ひゃ!チノちゃん!?い、いつからそこに…」

チノ「つい今来たばかりですよ、お昼も食べ終わって暇になったので」

チノ「それで、フルール・ド・ラパンがどうかしたんですか?」

メグ「えと…フ、フルール・ド・ラパンが文房具屋さんになるといいねって!」

マヤ「言ってない!そんなこと誰も一言も言ってないし思ってもないよ!?」

チノ「文房具屋さんならフルール・ド・ラパンの近くにも一軒あるじゃないですか…」

マヤ「(メグ!嘘つくならもうちょっとましな嘘ついてよ!)」

メグ「(ごめぇん…嘘って慣れてなくって…)」

マヤ「え、えっとね、フルール・ド・ラパンって長くてちょっと言いにくくね?だから、いい具合に略せないかなって話してたんだ」

チノ「なるほど…確かに"ル"が続いて言いにくいですし長いですもんね」

マヤ「チノはどう略すのがいいと思う?」

チノ「うーん…それぞれの頭文字を取って、"フドラ"、なんてどうでしょう」

メグ「なんか怪獣の名前みたいだねー」

マヤ「可愛さの欠片もねえ!」

チノ「むぅ、そういうマヤさんは何かいい略し方を思いついたんですか?」

マヤ「私はやっぱり、"ルーラ"がいいかな!」

チノ「移動魔法使わないでください」

メグ「お店の中で唱えないように注意しないとねー」

マヤ「くっ…渾身の略だと思ってたけどいまいち受けなかったか…」

チノ「では真打メグさんの発表の番ですね」

メグ「え、えぇ!私も言わなきゃダメなの?」

マヤ「そりゃあ私たちだって言ったんだし?ね、チノ」

チノ「はい、メグさんだけ恥ずかしい思いしないなんてずるいです」

メグ「もー、最近二人ともいじわるだよぉ…うーん…フ…」

マヤ「ふ?」

メグ「…フルパン……とか?」

チノ「…パンの部分をどうとるかが争点になりそうですね」

マヤ「最近メグは思春期だからなぁ、きっとフルオープンなぱんつを想像したんだと思うよ」

チノ「メグさん…」

メグ「そ、そんな想像してないよぉ!」

-----------
ココア「…?あ、メグちゃんからメールだ」

千夜「放課後の件?」

ココア「うん、そうみたい。えーっと…あ、マヤちゃんも誘えたよって!それから…」

千夜「それから?」

ココア「フルール・ド・ラパンの正式な略を知ってたら教えてって」

千夜「うーん…私も聞いたことないわ」

ココア「フルール・ド・ラパン…ラパン……浮かびそう…今物凄く私の中のインスピレーションが疼いてるよ…!」

千夜「がんばって!ココアちゃん!」

ココア「ぬぬぬぬ…これだ!これに違いないよ!"パン"!!」

千夜「…パン?」

ココア「うん!美味しそうだし、なによりふわふわ感ともふもふ感が8割増しだよ!」

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マヤ「うー…やっと授業全部終わったー」

メグ「国語の授業難しかったね…」

チノ「お二人はこの後何か予定ありますか?よかったら…その、私とお茶でもしませんか?」

マヤ「ごめんチノ!今日はちょっと用事があって…また今度一緒にいこ?ね、メグ」

メグ「う、うん、そうだね、また三人で一緒に」

メグ「ごめんね?せっかくチノちゃんが誘ってくれたのに…」

チノ「あ、いえ、大丈夫ですよ、ただの気まぐれですので」

マヤ「じゃあ今日のところはこれで帰ろっか」

チノ「あ、私はもう少しだけ学校に残っていきますので、お二人はお先に帰ってください」

メグ「係のお仕事かなにか?」

チノ「あ、いえ、ちょっと図書室にでも寄ろうと思うので」

マヤ「そっか、じゃあまた明日ね!ばいばいチノ!」

メグ「またねー」

チノ「はい、さようなら」

チノ「(…はぁ、帰りづらい……)」

チノ「(取りあえず図書室で宿題だけ済ませよう)」

----------
シャロ「いらっしゃいませー!」

マヤ「おお!いつ見てもカゲキ!特に腿のあたりが!」

シャロ「しょ、しょうがないでしょ!制服なんだから!」

メグ「あの、ココアちゃんたちってもう来てますか?」

シャロ「え、ええ、あっちの窓際の席に…」

客A「すみませーん、お勘定」

シャロ「ありがとうございます!只今!」

客B「注文お願いしまーす」

シャロ「喜んでー!」

マヤ「何か忙しそうだし席行こっか」

メグ「そうだね、邪魔しちゃ悪いし」

ココア「あ!メグちゃんたち来たみたい!おーい!メグちゃーん!マヤちゃーん!」

メグ「ごめんねココアちゃん、待った?」

ココア「ううん、私達も今来たところだから!」

マヤ「あ!これこの前漫画で同じようなシーン見たかも!」

千夜「奇遇ね、マヤちゃん…私も今二人の背景に美しい一輪の百合が見えていたところよ」

マヤ「え?百合?」

千夜「いえ、何でもないわ、そんなことより飛び入りで参加させてもらったけれどよかったかしら?」

マヤ「うん、もちろん!」

青山「みなさん楽しそうですね」

マヤ「うわ!びっくりした…」

ココア「わっ!あ、青山さん!」

青山「みなさんお久しぶりです、ココアさんとは…昨日振りですね」

ココア「あ!勧めてもらった本!まだ途中ですけど、中二病について少しずつわかってきた気がします!」

青山「それはよかったです」

ココア「そうだ、せっかくだし青山さんも一緒にお話しませんか?」

青山「すみません…せっかくなのですが、今日はこの後すぐに出版社さんとの打ち合わせがありますので」

メグ「小説家さんって忙しいんだねー」

マヤ「大人の女性って感じでカッコイイかも!」

青山「また機会があればご一緒させてください、それでは今日はこれにて」

-----------
チノ「(案外早く宿題が片付いてしまった…)」

チノ「(ココアさん、もう帰ってるかな…)」

青山「あ、チノさん、こんにちは」

チノ「こ、こんにちは青山さん…お久しぶりですね」

青山「今帰りですか?遅くまでお疲れ様です」

チノ「は、はい、ちょっと学校でやることがあったので」

青山「さきほどフルール・ド・ラパンでココアさんたちをお見かけしましたが、チノさんもこれから行かれるんですか?」

チノ「あ、そうなんですか…いえ、私は寄り道せずに帰ります」

チノ「(よかった…今の内に部屋に籠ろう…)」

青山「そうでしたか…マヤさんとメグさんもいらっしゃったので、もしやと思ったのですが」

チノ「…え?」

青山「すみません、引き留めてしまって…」

青山「また近いうちにコーヒーを頂きに伺います、それではまた」

チノ「ぇ…ぁ……え?」

チノ「(メグさんはお使い、マヤさんは用事があるって…)」

チノ「(…だから、私とお茶はできないって……)」

チノ「(二人とも、私に嘘をついてココアさんとフルール・ド・ラパンに…?)」

チノ「(…そんなのない、絶対有り得ない)」

チノ「(きっと、青山さんの見間違えかなにかで…そう、きっとそうに違いない…!)」

------------
バイトA「桐間さぁん!3番テーブルオーダーお願い!」

シャロ「は、はいぃ!」

バイトB「お皿なくなりそう!桐間さん早く洗って!」

シャロ「オ、オーダー取り終わったらすぐに行きます!」

バイトA「桐間さん!ちょっと!」

シャロ「な、なにか?」

バイトA「背中痒いから掻いて貰えない?手とどかなくって…」

シャロ「もう帰ってもいい!?」

ココア「シャロちゃーん!」

シャロ「何?注文?」

ココア千夜「「スマイルくださいな!」」

シャロ「帰れぇ!」

ココア「シャロちゃんいつも以上に忙しそうだね」

千夜「今日は定休日のお店も多いからみんなここに来るのかしら?」

ココア「言われてみればラビットハウスの常連さんもちらほら見かける気がするよ」

シャロ「はぁ…それで注文は決まった?」

ココア「えーっと、またシャロちゃんにお任せしちゃってもいいかな?」

シャロ「構わないけど…」

ココア「あ、それから」

シャロ「スマイルならあげないわよ」

ココア「違うよぉ、えっとね、8番さんにそろそろケーキ出してあげる頃合いじゃない?」

千夜「あと6番さんにお子様用のお皿とフォークをお出しした方がいいんじゃないかしら?」

シャロ「えっと…確かにそうね、あ…ありがとう」

マヤ「二人ともすげぇ!」

メグ「どうしてわかったの?」

ココア「簡単だよー!8番テーブルの人はそろそろ食事が終わりそうだし」

千夜「6番のお客さんは親子で1つのケーキを食べたい様子だったものね」

メグ「かっこいいね!マヤちゃん!」

マヤ「ちょっと見直しちゃうよね!」

ココア「えへへ、お姉ちゃん照れちゃうなぁ」

シャロ「(お店の外からこっちを見てるあの子は…もしかしてチノちゃん?)」

シャロ「(そういえば何で今日はチノちゃんいないのかしら?)」

バイトC「桐間さーん!」

シャロ「は、はーい!」

シャロ「(いけないいけない…今は仕事仕事)」

チノ「………」

チノ「(何で…どうしてみんな私から離れていくんですか………)」

チノ「(ココアさんに嫌われて、親友だと思っていたメグさんやマヤさんにも裏切られて…)」

チノ「(もう、私なんて……)」

チノ「(…ココア、さん………)」


ココア「…?今、チノちゃんの声がしたような…」

千夜「…!コ、ココアちゃん!あれ!」

マヤ「今走ってったの…チノ、だよね?」

メグ「う、うん…制服もうちの中学のだったし多分…」

ココア「私、追いかけてくる!」

メグ「あ、わ、私も!」

千夜「メグちゃん待って!…これは多分、チノちゃんとココアちゃん二人の問題だから…ね?」

マヤ「でも私達、チノに少し嘘をついてここに…」

千夜「…きっと大丈夫よ、ココアちゃんが誤解も解いてくれるわ」

マヤ「だといいんだけど…」

千夜「シャロちゃーん」

シャロ「なによ、今忙しいんだけど…って、あれ?ココアは?」

千夜「ちょっと今席を外してるの、だからココアちゃんの分は後から持ってきてくれる?」

シャロ「え、ええ、それは構わないけど」

千夜「それから紅茶をもう一杯追加でお願いするわ、それはココアちゃんのと一緒に持ってきてね」

---------
ココア「チノちゃーん!どこー!」

チノ「(コ、ココアさん!?気づかれてないと思ったのに…)」

ココア「…あ!チノちゃん!」

チノ「み、見つかった…逃げないと…」

チノ「はぁ…はぁ…(…どうして私、ココアさんから逃げているんだっけ……)」

リゼ「おわっ!?」

チノ「んむっ!」

リゼ「誰かと思ったらチノか、前を見て歩かないと危ないだろ?」

チノ「すみません…ちょっと追われているもので」

リゼ「追われている…?まさか奴らか!?」

チノ「えと…は、はい!そうです!んと…ココアさんに扮した奴らが私を追っています!」

リゼ「クックック…ついに我が相棒ダークマターマシンガンが光の刃を放つ刻が来たようだな…」

チノ「どこから突っ込んだらいいのかわかりませんが、取りあえずそれマシンガンじゃないと思います」

リゼ「細かいことは気にするな!で、倒してしまっても構わんのだろう?」

チノ「い、いえ、ただ誤情報を流してくれるだけで十分です」

リゼ「そうだな…真昼間から平穏なこの街に鮮血の雨を降らせたくはないしな…」

チノ「そういうわけなので、ココアさんが来ても私の居場所教えないでください」

リゼ「ああ、いいだろう…聖なる盟約に誓って…」

チノ「(私も傍から見たらリゼさんみたいに…?は、恥ずかしい……)」

チノ「そ、それじゃあよろしくお願いします」

--------
ココア「はぁ…はぁ……チノちゃん…一体どこに…」

リゼ「貴様は…!」

ココア「ん?あ!リゼちゃん!奇遇だね!」

リゼ「あ、ああ」

ココア「って挨拶はいいの!チノちゃんがこっちに来たと思うんだけど、どっちの方角に行ったか知らない?」

リゼ「ああ、チノなら公園の方に…ってしまった!つい口を滑らせた…!」

ココア「公園だね!ありがとう!じゃあまたラビットハウスでね!」

リゼ「あ、お、おい!もう聞こえてないのか…」

リゼ「だ、大丈夫だ!今のはチノがさっき言っていた紛い物のココアではなく本物のココアだったはずだから…」

リゼ「そう!私の右目…伝説の堕闇真眼がそんな小細工を見破れないはずはないからな!ふははは!」

-----------
チノ「…ふぅ、ここまでくればしばらくはココアさんも…」

ココア「私がどうかしたかな?」

チノ「…!コ、ココアさん!?さっ、さようなら!」

ココア「待って!」

チノ「……」

ココア「…前にチノちゃんに話した物語のこと、覚えてるかな?」

チノ「…忘れるはず…ないじゃないですか……」

ココア「あはは…そうだよね、それのせいで睡眠不足になっちゃったんだし…」

チノ「…」

ココア「あの物語の続き、考えてみたの…聞いてくれるかな?」

ココア「…エリザベスとジョセフィーヌ、二人の間にはあまりにも多くの問題がありました」

チノ「…機械とタヌキだからですか?」

ココア「うん、半分は正解だよ、続けるね」

ココア「機械人間とタヌキ、種族が違う二人の恋など許されるはずはなかったのです」

ココア「でも、問題はそれだけではありません、二人の性格や考え方があまりに違い過ぎたのです」

ココア「タヌキのジョセフィーヌは、おっちょこちょいでいつも失敗ばかり」

ココア「でも、持ち前の明るさと元気で、色々な人や動物とすぐに仲良くなることができます」

ココア「一方で、機械人間のエリザベスはしっかり者の努力家」

ココア「けれど、無口で友達を作るのがあまり上手ではありません」

ココア「正反対ともいえる性格であったため、二人は自分たち二人が両想いであるなんて夢にも思っておらず、気持ちを伝えたことはありませんでした」

ココア「…そんな二人に、ある日事件が起きました」

チノ「…」ゴクリ

ココア「エリザベスの数少ない友達である2羽の鳥さんが、楽しげにジョセフィーヌとお話をしていたのです」

ココア「何を話しているのかまではわかりませんでしたが、確かにそれはエリザベスの親友2羽と初恋の相手でした」

ココア「エリザベスは絶望しました」

ココア「なぜならば、鳥さんは昨日、明日は大事な用事があるからと自分の誘いを断っていたからです」

ココア「もう、誰も信じない…そう固く決心しました」

ココア「でも、ジョセフィーヌや鳥さんたちのことはどうしても嫌いになれません」

ココア「ならば、と、エリザベスは少し前から動きが鈍くなっていた右腕を精一杯振り上げ、自らの頭を殴りました」

ココア「パチっと乾いた音が周囲に響いた後、エリザベスは再び動きだしました」

ココア「その音に気付いたジョセフィーヌと鳥さんたちはすぐに駆けつけましたが、そこには自分たちが知っているエリザベスの姿は有りませんでした」

ココア「ただただ、プログラムに従って同じ場所を何度も何度も耕す耕作ロボットが一機」

ココア「ジョセフィーヌは傷つくことを恐れ、心にあたる部位を想い出と共に自らの拳で破壊していたのです…おしまい」

チノ「…悲しいお話に見えますけど、ハッピーエンドですね」

ココア「どうして?」

チノ「きっとジョセフィーヌたちはその後幸せに暮らしたんですよね…きっとエリザベスも本望だと思います」

ココア「違うよ」

チノ「えっ…」

ココア「ジョセフィーヌと鳥さんたちが何を話してたのかわかるかな?」

チノ「普通に日常会話じゃないんですか?」

ココア「ううん、ジョセフィーヌたちはね、エリザベスの腕のことを話してたんだよ」

ココア「親友の鳥さん達ならきっと何か知ってるんじゃないかって思ってジョセフィーヌはお話しようって約束したの」

チノ「そんなの…酷いです、誰一人幸せになんてなってないじゃないですか…」

ココア「今、チノちゃんがしようとしていることは、エリザベスがしたことと同じなんじゃないかなって私思うの」

チノ「それってどういう…」

ココア「私ね、チノちゃんに嫌われたんじゃないかと思って色んな人に相談したんだよ」

チノ「え……」

ココア「リゼちゃん、千夜ちゃん、シャロちゃん、青山さん、メグちゃん、マヤちゃん、チノちゃんのお父さん、それにティッピーにも…」

ココア「みんな、チノちゃんは私のことを嫌いになんてなってないって言ってくれてすっごく安心したよ」

チノ「……ですが、ココアさんは私のことなんてもう…」

ココア「大好きだよ!チノちゃんのこと!」

チノ「…っ!」

ココア「私、馬鹿だからチノちゃんの本当の気持ちなんてわかんないよ…」

ココア「でも、これだけは絶対に言えるの!私はチノちゃんのこと、誰よりも大好きだよ!」

ココア「だからお願い!本当の気持ち、チノちゃんの口から教えて!」

ココア「そうしてくれたらきっと…チノちゃんの"病気"も治るって…そんな気がするの…!」

チノ「わ、私は…ココアさんの…こと……」

ココア「……」

チノ「…大嫌い、です……」

チノ「もう、顔も見たくない…くらいに」

ココア「っ……」

チノ「なんで皆さんに言っちゃうんですか…果ては父にまで…」

チノ「その…できるだけ人には知られないようにしたかったのに…」

ココア「ぇ…」

チノ「そうやって口が軽くておせっかいで私を子供扱いして…ココアさんのそういうところは嫌いです」

チノ「でも…普段のココアさんを嫌いになるなんて…そんなことないです、絶対にありえないです」

ココア「チノ…ちゃ……?」

チノ「確かに不器用で、鈍感で、年下なら誰でもよくて、街の国際なんたらなんていう都合のいいことばっかり言ってますけど」

チノ「それでも、私のことは自分のことよりも優先してくれて、いつも優しい…その……大好きで、掛け替えのないおね…家族ですから」

チノ「…ふぅ、わ、私の本音は以上です…」

ココア「……」

チノ「は、恥ずかしいから黙らないでください」

ココア「チノちゃあああん!うわああん!」

チノ「い、一般人のココアさんに抱きつかれたせいで、私の中に眠っていた力も消えちゃったみたいです」

ココア「それって…もしかして"病気"が治ったってこと…?」

チノ「病気かどうかはわかりませんが、もうやめにします…リゼさんにはちょっとだけ申し訳ないですけど……」

ココア「うぅ…チノちゃん大好き…!」

チノ「と、突然抱きつかないでください…」

ココア「あれ?もしかしてチノちゃん泣いてる?」

チノ「泣いてなんてないです…子供扱いしないでください……ぐすん」

ココア「落ち着くまでこのままで大丈夫だからね」

チノ「はい………もう、大丈夫です」

チノ「でも、一つだけわからないことがあるんです…」

ココア「うん?何かな?」

チノ「メグさんとマヤさんは、私のことを嫌いになってしまったんでしょうか…」

ココア「もしかして、私たちがチノちゃん抜きでフルール・ド・ラパンでお茶してたの気にしてる?」

チノ「…はい」

ココア「メグちゃんたちはね、鳥さんだよ」

チノ「鳥さん…?あっ…」

ココア「ごめんね、メグちゃんとマヤちゃんは私が呼び出したの」

ココア「チノちゃんの"病気"について相談したいから、チノちゃんには内緒でねって」

チノ「そうだったんですか…」

ココア「ごめんね?勘違いさせちゃうようなことして」

チノ「いえ、勝手に被害妄想を膨らませていたのは私の方ですから」

チノ「…ところで、メグさんたちの方はいいんですか?」

ココア「メグちゃんたちのって…?…あ」

チノ「あ、じゃないですよ…主催のココアさんがいきなりいなくなって、きっと皆さん混乱してますよ」

ココア「き、きっと千夜ちゃんが何とかしてくれてるから!大丈夫!多分!!」

チノ「そうだったとしても、きっと皆さん心配してますよ」

ココア「そうだね…うぅ、後先何も考えずに出てきちゃったよ…」

チノ「実にココアさんらしいですね…じゃあフルール・ド・ラパンに戻りましょうか」

チノ「…今度は、私も行っていいですよね」

ココア「もちろんだよ!じゃあ手繋いでいこっか!」

チノ「ぶー、子供扱いしないでください」

ココア「!!今のぶーっていうのすっごい可愛かったよ!もう一回やって!」

チノ「や、やりませんよ」

ココア「ぶー、チノちゃんのケチー」

チノ「う…(か、可愛い…)」

ココア「どうしたの?顔ちょっと赤い気がするけど…もしかして病気!?大変!」

チノ「な、何でもないです!そ、そうだ、きょ、競走しましょう!ココアさんが負けたら全員分奢りですからね!はい用意、どん!」

ココア「元からそのつもり…ってチノちゃん待ってよー!」

チノ「(私の小さな過ちから始まった、たった数日の小さな小さな出来事)」

チノ「(でも私は大きな大きな何かを得られた気がする)」

ココア「チノちゃーん!待っ…わぶっ!」

チノ「ちょ…何もないところで転ばないでくださいよ…大丈夫ですか?」

ココア「あいたたた…ってあれ?どこも痛くない?」

チノ「取りあえずケガはなさそうですね…立ち上がれますか?手、貸しますよ」

ココア「ありがとー!」

チノ「(人間には他の誰も持っていない特別な力なんて持ち得ない、だからこそ…)」

チノ「こうして、助け合って生きていくんですね」

ココア「うん?何の話?」

チノ「何でもないです!さあ、競走の続き、始めましょう」

おわる

くぅ疲
当初思ってたのとは全然違うモノになったけど取りあえずこれで終わります
矛盾点、疑問、質問等出たら補足するかもしれないししないかもしれません

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月30日 (土) 10:20:37   ID: ixwOMBrq

これは期待!最後までガンバ

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