ベルトルト「なんか全体的に茶色い)(100)

午後 食堂 休憩時間

ベルトルト「でさ、じゃあ君はそれを踏まえて、どういうイメージを持ったの?」

ライナー「……」ムー

ライナー「……花、花だ」

ベルトルト「ふむ。じゃあそれはどういう花? 色とか、どんな種類の花とか」

ライナー「……黄色、黄色くて。……どっかで見たような」

ライナー「……ああ。確か、便所の裏に生えてた花だっけか。多分タンポポだ」

ライナー「小便に行った帰りに見た、確か。おとといくらいの夜だったか」

ライナー「確か寝ようとして、そんときに小便したくなってきて、確かそんな感じだ」

ベルトルト「ふむ」

ベルトルト「じゃあ、そのときどんなこと考えてたとか思い出せる?」

ライナー「……」

ベルトルト「ゆっくりでいいいよ」

ライナー「えーっと、確かあんとき、ジャンとなんか……」

ライナー「そうだ! 確かジャンがミカサの黒髪がどうかとかなんか言ってたんだ!」

ライナー「ミカサの黒髪が綺麗だとか、そんで、なんかくびれがどうとか、おっぱいがどうのこうのとか言ってた気がする!」

ベルトルト「うん。これで君はクリスタのおっぱいに対して、タンポポのイメージを持ってるってことがわかった」

ベルトルト「直前に彼女のおっぱいのことが頭にあって、それでタンポポを見た君は、それをクリスタと結びつけたわけだ」

ベルトルト「確かに彼女、金髪だし、ちょっと小柄な感じだしね。タンポポが彼女に似てるって気持ちもちょっとわかるかな」

ベルトルト「まあそういった感じで、自分の持っている性衝動がどんなものかとか」

ベルトルト「どういうふうに自分の性衝動と向きあっていくか。これは僕のやり方だけどね。割と有効な方法だと思う」

ベルトルト「まあそれをとっかかりにして、色々試してみればいいと思うよ」

ライナー「ふむ」

ライナー「……ふふ」

ベルトルト「?」

ライナー「相変わらずだな。ベルトルトは」

ライナー「毎回教えられるよ」

ベルトルト「……」

ベルトルト(なに喋ってるんだろ僕)

午後 格闘術

教官「では、始め! さっさと動けお前ら!!」クワッ


ベルトルト「……」ボーッ

ベルトルト「……」

ベルトルト(おしっこしたくなってきた)モジ

ベルトルト「……」

ベルトルト(あー……)ボーッ

ベルトルト(ん……)

アニ「……」ポツン


ベルトルト(アニだ)

ベルトルト(なんだろ。組む人居ないのかな)

ベルトルト(エレンは?)


エレン「おらぁっ!!」グワァッ

ライナー「うほっ!!」バタン


ベルトルト(なんかライナー投げてた。ちょっと笑える)

ベルトルト(……)

アニ「……」


ベルトルト(……)

ベルトルト(アニはそれをさりげなく見てる、のかな? 多分。すごくわかりにくいけど)

ベルトルト(そういやエレンとライナー最近仲良かったな。なんかエレンの興味の対象が若干変わっちゃった感がある気がする)

ベルトルト(あー……)

ベルトルト(……)

ベルトルト「……」テクテク

アニ「……」

ベルトルト「アニ」

アニ「……なに?」

ベルトルト(怖い)

ベルトルト「えっと、ちょっと久しぶりに組んでみない?」

アニ「……なんで?」

ベルトルト(なんでって)

ベルトルト「えー……っと。ほら、同郷のよしみでさ」

アニ「……」

ベルトルト「……」

アニ「……いいよ」

ベルトルト「ありがとう」

ベルトルト「……」テクテク

アニ「……」テクテク

ベルトルト(会話がない)テクテク

ベルトルト(アニはそういうとこ察しがいいからな。多分なんか感じ取ったんだろう)テクテク

ベルトルト(でもそこから続かないんから、いつもなんかこじれちゃうんだよな)テクテク

ベルトルト(……)テクテク

ベルトルト(まあ、でも。アニは基本優しい子だし)テクテク

ベルトルト(悪気はないのはわかるんだ。うん)テクテク

ベルトルト(と、もう着くな)

アニ「……」

ベルトルト「……」

ベルトルト(何か言えよ)

ベルトルト「よし。じゃあはじめよっか」

アニ「……」

ベルトルト(返事しろよ)

ベルトルト「えっと、じゃあどっちやりたい?」

アニ「……」

ベルトルト「あー、じゃあ僕が暴漢役でいいかな」

アニ「……」コクリ

ベルトルト「うん。じゃあ準備しよっか」

アニ「……」ゴソゴソ

ベルトルト「……」ゴソゴソ

ベルトルト「……いくよ」

アニ「……」コク

ベルトルト「だっ!」ダダッ

アニ「……」スーッ

ベルトルト「ぜっ」ブンッ

アニ「」スパンッ

ベルトルト「ぎゃっ!!」ドタッ

訓練後 休憩時間

ベルトルト「……」ボロボロ

ベルトルト(あのあと散々ボロクソに蹴られた)テクテク ヨロヨロ

ベルトルト(なにあの子? こっちは気を使って話しかけたのに、なんでそういうことすんの?)テクテク ヨロヨロ

ベルトルト(腹立ってきた)テクテク ヨロヨロ

ベルトルト(……)

ベルトルト(まあ……、でもしょうがないか)

ベルトルト(アニは根がけっこう真面目なとこあるし……)

ベルトルト(まあこう、対応に焦った結果、あんな感じの残念な結末に至ったんだろう)

ベルトルト(……)

ベルトルト(体痛い……)テクテク ヨロヨロ

エレン「あ、おーい!」


ベルトルト「ん……」

エレン「ベルトルトー!」タッタッタッ

ベルトルト(エレン)

エレン「なあ……、っておい。どうしたんだんだよ」

ベルトルト「あ……」

エレン「ん?」

ベルトルト(……)モゾモゾ

ベルトルト(そういや、僕おしっこしたかったな)

エレン「なー、どうした?」

ベルトルト(かわいい)

ベルトルト「あ、なんでもないよ」

エレン「そうか」

ベルトルト(早くおしっこいきたい)

エレン「あ、そんでな! さっきな!」

ベルトルト「ん? うん」

エレン「こうな! ライナーの袖を思いっきり引っ張ったんだよ!」グッグッ

エレン「そんでな!」

ベルトルト「う、うん」

ベルトルト(なんかテンション高い)

ベルトルト(早くおしっこ行きたいのに)モジモジ

ベルトルト(ていうか話の要領悪いな)

ベルトルト(多分ライナーをうまい感じで投げたとか、そんな話だと思うけど)

ベルトルト「そう」モジモジ

エレン「そんで、なんか……、な!」

ベルトルト「そうだね」モジモジ



相変わらず見事な「完」だな

この「完」を見るためにベルトルトのどうでもいいモノローグを読んでるみたいなもんだ

投下します

食堂 夕食

ベルトルト「……」

ベルトルト(うん。あれはエレンだから仕方ないや)

ベルトルト(あのあと延々と要領の得ない話が続いたけど、まあエレンだし)

ベルトルト(……)

ベルトルト(今は食事に集中するか)

ベルトルト(えーと、今日のメニューは……)

ベルトルト(……)

ベルトルト(なんか全体的に茶色い)

ベルトルト(ええと、パンと、なんか暗ぼったくて薄い感じのスープ。と、多分人参とかキャベツを炒めたやつと)

ベルトルト(あとなんか……、なんだ? なんか、えっと、多分根っこ? かなんかを煮た感じの煮物)

ベルトルト(……)

ベルトルト(まあ、とりあえず食べるか)

ベルトルト(えっと、とりあえず炒め物から見て回ろう)

ベルトルト(凄く全体的に茶色い。むしろ黒に近いな。油でテカテカしてる)

ベルトルト(味は……、お)モグ

ベルトルト(結構甘い感じだ……。風味がついてる気がする)モグモグ

ベルトルト(なんの風味だろ……。とりあえず結構うまい)モグモグ

ベルトルト(パン……)モグ

ベルトルト(次スープいくか。……)ズズッ

ベルトルト(……)

ベルトルト(うん。なんか)

ベルトルト(試行錯誤した感じの味がする)

ベルトルト(……食えなくはないな。っていうか割とうまい)ズズズッ

ベルトルト(こういう味だと思えば。うん、いけるいける)ズズッ

ベルトルト()フゥ

ベルトルト(具は大根かな? あと菊系の野菜だ)グルグル

ベルトルト(……)パクッ モグモグ

ベルトルト(うん。パリパリしてて美味しいな)

ベルトルト(大根もポロっと溶ける感じで、うん)

ベルトルト(……)

ベルトルト(どのメニューも、思ってたよりも美味しかった)

ベルトルト(段取りはどう組むかな。えーと)

ベルトルト(うん……。うん……)モグモグ ゴクゴク

ベルトルト(……ん)モグモグ

ベルトルト(……あ)


アニ「……」モグモグ


ベルトルト(アニ)


アニ「……」モグモグ

ミーナ「ねえ。これ美味しくない?」バッ

アニ「別に……」

ミーナ「そーお? じゃあこっちは?」バッバッ

アニ「……」

ミーナ「ん?」

アニ「……味が薄い」

ミーナ「ん? あー、いっつも味うっすいもんねー」

ミーナ「やんなっちゃうよね」

アニ「……」

ミーナ「でも、こっちはけっこう美味しいと思わない?」バッ

アニ「……」

アニ「わかんない……」

ベルトルト(……)

ベルトルト(おお……!)

ベルトルト(ミーナが頑張って話しかけている……!)

ベルトルト(なんてコミュ力の高さだ。ミーナ凄い)

ベルトルト(あのアニが押されているぞ)

ミーナ「……」ペラペラ

アニ「……」チラ チラ



ベルトルト(本当に凄い。なんで話止まんないんだろ)

ベルトルト(アニがソワソワし始めた……。徐々に目線が泳ぎ出しているぞ)

ベルトルト(……)

ベルトルト(なんかホッコリする)

ベルトルト(ありがとうミーナ。密かに感謝するよ)

ベルトルト(……)

ベルトルト(……)モンモン

ベルトルト(……ちょっと心配だな)

ベルトルト(アニも、それにライナーも……)

ベルトルト(僕は割り切れる。そういう性分だったから)

ベルトルト(……僕たちは友達で、だけど戦士だ)

ベルトルト(本当に、このままで……)

ベルトルト(……)

ベルトルト(……あ)ジッ


ミーナ「……」ペラペラ


ベルトルト「……」

ベルトルト(ミーナ……)

ベルトルト(……)



これ今見返したけど短すぎたな
ごめんね 多分明日か明後日ラスト出します

ファミマで60円で牛肉コロッケ買ったので
醤油ベースでそれと溶き卵で甘辛くし煮ます
それツマミに酒飲んで寝ます お休みなさい

なんか長くなっちゃったんで二回位に分けて投下するね

夕食後 廊下 休憩時間

ベルトルト(……)モンモン テクテク

ベルトルト(……)モンモン テクテク

ベルトルト(……んー)ピタ

ベルトルト(いや……、でも……)

ベルトルト(……)

ベルトルト(……どうしよう。ここは……)

アルミン「あれ?」


ベルトルト「……ん?」

アルミン「どうしたの? ベルトルト。こんなとこで」

ベルトルト(……あ)

ベルトルト(ここ廊下だった)

ベルトルト(なんか悶々として止まっちゃった)

ベルトルト「いや。なんでもないよ」

アルミン「そう? 大丈夫?」

ベルトルト「うん。特に気にすることじゃ……」ジッ


アルミン「……ん? どうしたの?」コテリ


ベルトルト(あ……、アルミンの……)

ベルトルト「……あ」

ベルトルト「あ、ああ!」グワッ

アルミン「わぁっ!」

アルミン「ど、どうしたのいきなり!?」

ベルトルト「あ……」スーッ

ベルトルト「な、なんでもないよ。ごめんねいきなり」

アルミン「そ、そう?」

アルミン「……」ジッ

ベルトルト(あの目)

ベルトルト「うん。もう大丈夫」

アルミン「そっか」

ベルトルト「うん」

アルミン「このまま寮戻る?」

ベルトルト「そうだね。行こっか」

アルミン「うん」テクテク

ベルトルト「そういやね、今日エレンがさぁ」テクテク

アルミン「えー? また?」テクテク

ベルトルト「はは。そんな感じ」テクテク

今日の格闘術の授業でね……

えーホントに? もうエレンったら……



あはははは……

ミーナの後頭部が亀頭に似ているということは公然の秘密となっており、

近頃、近辺の人物を起点にして妄想を楽しんでいた僕は、そのことに改めて気がついた。

そこを着想のヒントにできないか。僕はここで悩んだ。

だって女性をそういうのに使うのって、なんか抵抗あるじゃない。

さっきアニ気にかけてくれたし。そういうのは、ね、うん。

僕は悩みに悩んで、食堂を出たあとも、しばらくそのことを考え続けた。

クリスタは、全身から醸し出される悲壮感というか、いわゆる薄幸の少女然とした雰囲気をまとっていたので、

あんな感じのキャラにするのに、違和感あんまり感じなかったからあんなふうになったけど、

最近クリスタを見るときになんか申し訳ない気分になったし、

たぶん最終的に、ユミルと幸せな最後を遂げる感じで幸せになるんだと思う。僕の中で。

食堂を出たあと、アルミンと話している途中で僕は、あることに気がつき驚嘆した。

アルミンの頭部は、見ようによっては亀頭に見えなくもない。

彼はおかっぱ頭で、髪の毛が耳を覆っている。全体的に丸いデザインだ。

首から上を見れば、そういうふうに見えないこともないだろう。

しかも頭いいから、いつも鬱憤とか抱え込んでそうな印象なので、

多分そういう鬱憤とか、そんなんが頭頂部から常に垂れ流していてもおかしくはない。

よって、僕の中で彼はそういう感じのキャラになった。

多分、怒ったときとかに何らかの液体が頭部から排出される。そんな感じだ。

あとは適当にライナーと絡ませれば話が進んでいくだろう。

どっか適当な、ちょっと明るめの、横に草木が生え揃った庭があって、

そんな感じの、えー廊下で、アルミンとライナーは二人で歩いていた。

サラサラと軽やかな空気が満ちていて、太陽はいい感じに光を彼らに照らしている。

そんなまったりとした、爽やかな、多分早朝だ。

アルミンが悩みながら歩いている。だから廊下は水浸しだ。

ライナーはそれをフンフン鼻を鳴らして臭いを嗅いでいる。

興味があるみたいだ。じっくり見てみることにしよう。

寝落ちした

再開

四足歩行で前のめりに、ノッシノッシとライナーはアルミンについて歩く。

ご存知の通り、ゴリラは拳に手を突きながら歩く、独特の歩き方をする。

いわゆるナックルウォーキングというやつだ。だからなんだって話なんだけど。

いつのまにか二人は外に出ていた。

二人がトコトコ進んでいくたび、砂利がカチャカチャ小気味よい音を鳴らす。

柔らかくて暖かい日差しが彼らを優しくつつんでいる。

ムシムシした湿気はなく、透き通ったような爽やかな空気がそこにあった。

お、小鳥さんがライナーの肩に止まった。

ライナーは気づいてないのかな。

小鳥さんはライナーの背中や肩をケンケンと跳ねている。

気がつくと一羽、また一羽と、二人の周囲には鳥達が集まり始めた。

ところでアルミンは、決して近寄りがたい訳じゃないけど、しっかり者で、とても優しい。

そんな彼は、見るものを安らかにするような、そんな人だ。

僕の中で彼は、天使とか神みたいなイメージだ

皆にとても繊細な気配りのできる彼は、おそらく豊穣の女神みたいな、そういう神聖な存在を思い起こさせる。

だからアルミンの歩いたあとには、花とか、草木が伸び始めた。

アルミンの通った場所は、まるで公園にある花壇のようだ。

そこにライナーが着いていく。花とか草にはまだ気がついてないようだ。

臭いが気になって、それどころではないのかもしれない。多分いい匂いだ。アルミンのだし。

草原に生えているような背の低い草、チューリップやタンポポや、ひまわりみたいな、赤、白、黄色の色鮮やかな花々。

そこから細っこい木が生えて、だんだん太くて大きな樹木もニョキニョキ伸びてきた。

そこにツタが絡まりはじめ、天へ天へと上を目指す。

木々のスキマからは光が漏れだし、彼らを優しく照らしつける。

徐々に犬や猫、馬とか、見たこともない大きな動物も彼らのもとに集まってきた。

あーあ、ライナーが気づいちゃった。

象に驚いてるみたいだ。何度目だこの流れ。

あとは同じ要領でうんこが地上を覆い、サシャがそれを食べた。

ところで第二次ライナー大戦の結末についてだが、それはサシャの勝利に終わった。

第二次ライナー大戦では、最後の場面ではサシャとライナーは互いに拮抗していて、勝負はつかないかに思われた。

その時だった。ライナーが腕を抑えてうめき声をあげた。

何が起こったんだろう。僕らの大半は既にその場に居なかったが、そこにエレンが駆け寄った。

彼はクソ真面目にも、二人の戦いを最後まで見ていたらしい。

ちなみにアニも「くだらないね」とかいってそっぽむいたが、目線だけは戦いぶりに向いていた。

どうやらライナーは腱鞘炎にかかってしまったようだ。

うんこをひたすら投げ続けるライナーと、食欲に関して無限のポテンシャルを秘めるサシャ。

なにしろこの世界を覆い尽くすほどのうんこを食べ尽くしたサシャなのだ。やる前から結果は決まっていたのだろう。

雌雄は決したようだ。オスであるライナーは無様にもその場に倒れた。

サシャはうんこをたらふく食べて、いかにもご満悦といった表情をしている。

彼女はお腹をポンポン叩きながら、ありがとうございました! とライナーに元気よく言い残してその場を去った

まあそれはいいとして、

さきほどライナーが象さんに驚いたあと、この世をうんこが包んで、サシャがそれを食ったあとの話だ。

またしてもうんこで世界を滅亡に陥れかけたライナーだったが、いつもの通りみんなは許した。

なにしろゴリラのすることである。いちいち反応していてはきりがないのだ。

そんなわけで、再びいつもの日常に戻った僕らだったが、

昼食の済んだあと、皆がボツボツとのんびり騒ぎ始め、ちょっと気怠い雰囲気が食堂に漂った中、

あるときアルミンが、床をギトギトにさせながら、ある考察を僕らに語った。

それは、サシャの口の奥はどうなっているのか、という話だった。

確かに彼女の胃袋は無限に広がっている筈だ。そうでないと説明のつかないことがある。

ライナーのうんこだ。

本来なら彼女の口にしたうんこは、食道を伝って胃袋に入り、消化され、そこから小腸、大腸を巡って肛門から体外に排出される。

つまり消化器官の構造上、どこかにうんこは残っているはずなのだ。

しかし、ここにもどこにも、うんこは影も形も見当たらない。

これは一体、どのような事態が起こっているのか。

アルミンは続けて、彼女の口腔の、その奥を調査してみないか、と告げた。

調査という言葉にエレンが騒ぎ始めた。エレン、可愛いからちょっとだけ静かにしててね。

僕が諌めると彼は一転して、背筋を伸ばしてアルミンの次の言葉を待った。とても真剣な眼差しだ。可愛い。

ライナーはなんかボケーッとしている。恐らく話の内容が掴めていない。

それから彼の後ろ、部屋の四隅あたりの床で、マルコと、それから何故かアニが体育座りをしていた。

こちらから見てマルコは左手側、アニは右手側に座っている。

二人揃って両の腕で顔を隠し、彼らの表情はこちらからは伺えない。

そのさまは悲愴感に包まれている。

マルコは、クリスタと同じく精神を病んでしまった。

以前、腹をすかせたライナーに、好意からパンを渡そうとした彼だったが、

それは手ひどく振り払われ、僕の顔面へと飛んできた。

ちょっと八方美人っぽい彼だから、そのことを気に病んでしまったのかもしれない。

あれからずっと、彼は食堂のその位置から動こうとはしなかった。

先程ライナーのうんこが頭上に迫りこようとしていたときも、彼は平然と体育座りをしていた。

あ、ミーナが彼らに気づいたようだ。二人の方向に、交互に首をきょろきょろ動かしている。

ミーナはアニのもとへ、てこてこと歩いていくと、彼女の正面で体育座りを始めた。

ミーナはアニの膝をつついたり、前髪をちょこちょこ引っ張ったりしていた。何がしたいのだろう。

それに気づいたアニが顔を上げた。

逃げるんだミーナ! 蹴り殺されるぞ!

僕の予想に反して、アニはしばらくミーナの顔を呆然とした表情で眺め、ふいにそっぽをむけた。

多分恥ずかしかったんだろう。

そっぽむいたアニだったが、顔を向けた方向にマルコがいた。

彼が自分と同じポーズをしているのに気づいたであろう彼女は、そさくさと立ち上がりその場を去ろうとしたが、

何故かまだそこにミーナが着いてきた。

しばらくどこかへ向けて歩いていたアニは方向転換して、僕たちが集まっているテーブルの椅子のひとつに座った。ミーナもその隣に座った。

アルミンの演説はまだ続いていた。彼の話を大まかに要約すると、

彼女の体内は異世界に続いている可能性がある、というのが彼の推測で、

そこを調査し、なんらかの物資や情報を持ち帰ることで、この人類の閉塞された状況を打破するきっかけになるかもしれない。

しかし、異世界うんぬんは所詮推測に過ぎない。故に、僕たちの中から調査チームを編成し、潜り込んでみてはどうか、という提案だった。

エレンは大はしゃぎだ。アニは途中から加わったのでいまいち状況が把握できてないらしい。

僕としては、この話に反対する理由はない。

しかし肝心のサシャに、その承諾を得ていないのではないか。僕はアルミンに訪ねた。

アルミンが唸っている。

そこで、千鳥足のクリスタがやってきた。相変わらず彼女はアヘアヘしている。

ユミルもそこへ着いてきた。

クリスタはよどんだ目付きでこちらを見ていた。なにがしたいのだろうか。

僕たちは一拍おいて、ひとまず話を先に進めることにした。

どのような手段で彼女を呼び出すか。皆から様々な案が出た。

僕はパンを床に置いておき、その上にザルなどを落として彼女を捕獲すればどうか、と提案した。

そのとき、クリスタの目がかっと開いた。

と思ったら閉じた。特に意味はなかったようだ。

そうこうしてるうちにサシャがこちらへ走ってきた。彼女のお目当てはライナーのようだ。

ライナーは怯えていた。壮絶な戦いのすえの敗北の記憶が、彼の中に刻み込まれているらしい。

そこでここぞとばかりに、アルミンが彼女に先程の話を告げた。

サシャはなにを思ったのか「食べていいんですか!?」とよくわからないことを喋っていたが、

アルミンが調査ということを強調していうと、彼女は快く承諾してくれた。

話は決まったようだ。

あとは調査チームの編成である。

アルミンはやはり成績上位の人たちで組んだほうが望ましい、と言った。

それを聞いたエレンが、かなり強引な感じでアニ、ライナー、クリスタ、マルコなどの成績上位組をチームに組み込んだ。

アニとライナーはいいとして、現在のクリスタとマルコはどうなんだろう。

クリスタはボーッと天井あたりを見ていて、無理矢理引きずって連れてこられたマルコは床に突っ伏している

そこでライナーが胸をドスンと叩いた。

俺に任せろ、と言っているらしい。

ライナーはクリスタとマルコを担ぎ上げると、自分の両肩にそれぞれ乗せた。

彼は僕をつぶらな瞳でじっと見てきた。どうだ? 頼りになるだろ? と言いたいらしい。

ご存知の通り、ゴリラは臆病ではあるが、とても優しい性格である。

頼もしいことこのうえない。ライナー、やはり君は戦士だ。

だからといって、その二人を連れていく意味はあんまりないと思うが。

まあいいか。

いよいよ出発である。

エレンが先導して、サシャの正面に立った。

僕らはエレンの後ろで、ひとかたまりになって待っている。

そういえば、どうやって彼女の口に入ればいいんだろう。

ふと疑問に思って、そうこうしているうちに「いただきます!」と元気な声が聞こえた。

いきなり視界が暗くなる。

投げ出されたみたいな浮遊感があって、しばらくするとどこかへ着地した。

声が聞こえる。みんな無事のようだ。

周囲をよく見回す。まるでトンネルのようだが、どうやらここはサシャの食道らしい。

エレンがわれさきにと走り出す。アルミンがそれを追うように駆けた。

僕らも続いた。ライナーはクリスタとマルコをしょって走っているのでしんどそうだ。

ユミルはさっきから執拗にライナーを蹴っている。走りながら器用だなぁ、と思った。

アニはブツブツ言いながらも走っていた。ミーナもアニにじゃれながら走っている。

さて、この先にはどんな世界が待ち受けているんだろう。

たぶんしばらくはライナーのうんこで詰まっているんだろうけど、

しかもこれは僕の妄想だけれど。

だけど、妄想だからなんでもありだ。

ここなら皆幸せだ。

ライナーが僕の横でウホリと笑い、

それにつられて僕もクスクスと笑った。

今日は青い空だった。明日はどうだろう。

曇りかもしれないし、やっぱり今日みたいに、

くっきりとした青空かもしれない。

エレン・アルミン・ジャン・マルコ・コニー、

ミカサ・サシャ・クリスタ・ユミル・ミーナ、

きっと僕らは殺しあうのだろう。

そのとき、ライナーはどんな顔をするのだろう。

アニはどんなふうにして彼らと向きあうのかな。

僕はどんなことを思い、考えて、感じるのだろうか。

明日のことすらどうなるかわからない僕らだけど、

それでも僕らは、それぞれ、自分の信じる道を歩いていくんだと思う。

明日も、晴れたら嬉しいな。



強引な感じで終わり。

色々とお見苦しいところをすいませんでした。

最後まで書けて結構満足してます。

ありがとうございました。

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