さやか「もう、大丈夫?」 (31)

※注意事項

・叛逆のネタばれあり

・さやか&杏子がメイン

・見切り発進上等

・それ故更新は遅めかも

・次から投下開始です

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流されている。

何気ない日常に、ありふれた毎日に、当たり前の光景に。

流されていく。

あたしの負った使命が、あるべき世界が、偽りの生活に。

何を忘れたのか、何を覚えているのか、何をしに来たのか、何の為にここにいるのか。

何もかもが、あやふやになっていく。

もう、何が正しいのか、何が間違っているのか、それすらもわかららなくなっていく。

これは、悪い夢か?それとも、優しい夢か?

それとも……これが現実なのか?

答えなんてわかるはずもなく、出るはずもなかった。

ただ、ひとつだけ確かなのは。

あたしは、今のこの生活を、確かに楽しんでいる、ということだけだった。

―――――――――

杏子「おーい、さやかー?聞いてんのかー?」

さやか「……ん?あ、ごめん、なんだっけ?」

杏子「なんだよ、ボーっとしちまって。考え事なんて、らしくねーぞ?」

さやか「なにおう!あたしだって年頃の女の子なんだから、考え事くらいするわよ!」

杏子「あーそうかいそうかい。愛しの上条君のことでも考えてたってのか?」

さやか「なんでここで恭介の名前が出てくんのよ」

杏子「恋に恋し恋焦がれる年頃なんだろ?」

さやか「残念ながらあたしはその年頃は過ぎました!今は友達と青春を謳歌するのに忙しいのだ!」

杏子「過ぎるの早いな!あたしたちまだ中学2年だぞ!?」

さやか「あんなデリカシーの無い奴に惚れてたのはもう黒歴史黒歴史!この世に男は星の数ほどいるのだよ杏子さん!」

杏子「男がどれほどいてもいいけどな、今はそんなことより直視しなけりゃならない大量のもんがあるってことを忘れてないだろうな?」

さやか「………さあ、何のことやら」

杏子「うおいっ!!露骨に視線を明後日の方向へ逃がすな!」

さやか「だって、終わるわけないじゃんこんな量の宿題!杏子だって薄々気付いてるでしょ!?」

杏子「女にはな、わかってても逃げちゃなんねー時ってのがあんだよ!!」

さやか「あーもうっ!二人揃って夏休みは何してたのさ!どっちか一人くらい真面目にやっててもいいんじゃないの!?」

杏子「それに関しては同罪だろうか!?あたしに言うなよ!いいから、ほれ、進めろ!あたしは国語と社会やるから、さやかは数学と理科だ!役割分担!」

さやか「ちょっ、なんでそんな役割分担なの!?杏子の担当なんて教科書見てたら全部答え書いてあるじゃない!」

杏子「たった今その話をしてたところだろ!?ボーっとしてるお前が悪いっ!!」

さやか「ひ、卑怯者ーっ!!」

~~~

杏子「あー……さやか、始めてからどれくらい経ったー……?」

さやか「ヘタるの早っ!!まだ始めて2時間しか経ってないわよ!?」

杏子「悪い、さやか……あたしさ、もう、ダメなんだ……」

さやか「何を今生の別れみたいな事言ってんのさ!?ただ教科書見て答え書き写すだけでしょ!?もっと頑張ってよ!」

杏子「あたしさ、こういう活字見てたら眠くなるんだよね……Zzz……」

さやか「言ってる側から寝るなーっ!!」

~~~

杏子「Zzz……うへへ……やめろよさやかぁ……もう食えねぇって……」

さやか「お、終わった……奇跡が舞い降りた……」

杏子「そこまで言うならお前も食えよなー……」

さやか「全く……途中から全部あたしに丸投げして寝てるんだから……」

杏子「へへ……さやかぁ……」

さやか「幸せそうな寝顔しちゃってまぁ……」

杏子「あたしたち……ずぅっと友達だよな……さやかぁ……」

さやか「……うん、ずぅっと友達だよ、杏子……」

―――――――――

それは、誰が願ったことだったのか。

あたしかもしれないし、杏子かもしれない。

あるいは、全くの第3者がこうあって欲しかったと願っていたのかもしれない。

もしかしたら、誰が、なんてのはもうどうでもいいことなのかもしれない。

だって、これが夢か現実かも、もう区別がつかなくなってしまっているんだから。

ただ、こんなことを考えているあたし自身を、おかしいと思っている自分がいるのもまた事実だ。

おかしい?何がおかしい?何もおかしくはないはずだ。

杏子とは、去年からの付き合いで、今はあたしの家に居候していて、こうしてバカみたいな話をするのがそれからの日常で。

何も、おかしいところなんてないはずだ。

でも、おかしいところがないのがおかしいんだ。

何がどうおかしいのかと問われると困るけれど、それでもやっぱり違和感は拭いきれないんだ。

こう考えているあたしがずれているのか?それとも、世界がずれているせいで違和感があるのか?

こういう違和感を覚えた時には、対策はひとつしかなかった。

それは、あたしはこの生活に不満があるのか?と自身に問うことだった。

その問いに対する答えは、いつも同じだった。変わるはずなんてなかった。

不満なんて、あるはずない。この生活が、あたしは気に入っている。

杏子も、それは同じはずだ。そう信じている。

そうして、違和感を拭い去る。拭いきれていないのなんて自分自身わかっているけれど。

気に入っている生活を壊すようなことは、したくなかったんだ。

それは、多分―――

ひとまずここまで
時期としては、ほむ改変後のお話となります。よろしければお付き合いください

投下開始します

――――――――――

杏子「おい、さやか!起きろ!」

さやか「んー……あと10分だけー……」

杏子「寝てる場合じゃねえって!奇跡だよ、奇跡が起きたんだよ!」

さやか「ふぁぁぁ……何よ、奇跡って……」

杏子「ホラ、見ろ!宿題が全部終わってるんだ!あたし、途中で寝ちまったような気がしたんだけど、そんなことなかったんだな!」

さやか「………」

杏子「寝ぼけてたからか、いつものあたしの字とはちっと違うような気がするけど、きっと気のせいだよな!いやぁ、あたしもやれば出来るんだなぁ」

さやか「……おやすみ」

杏子「おい、全スルーするなよ!おーきーろー!」

さやか「あーもう、杏子、あんたそれ本気で言ってんの!?」

杏子「お、おう!?急に怒るなよ……」

さやか「あんたが途中で寝ちゃってから、あたし一人で頑張って終わらせたの!」

杏子「そ、そうなのか!?すげぇ、やるじゃねえかさやか!」

さやか「それをさも自分がやったかのように言わないでよ、全くもう……」

杏子「そんな怒る事ないじゃん……」

さやか「そんなわけで、さやかちゃんは寝不足気味なのです。おやすみ」

杏子「おーい、今日一日寝て過ごすつもりかー?」

さやか「つもりも何も、夏休み最後の一日をエンジョイする為に宿題を終わらせようって話だったじゃない……今のあたしのエンジョイは睡眠を取る事なのー……」

杏子「えー、何それつまんねー!もう気兼ねする必要ないんだから、初日くらいバックレても大丈夫だろ!睡眠は明日取ることにして、今日は遊びに行こうぜー!」

さやか「アンタねぇ……始業式からバックれるって発想は一体どこから出てくんのよ……」

杏子「あたしを縛るものは何もねえんだ!あたしの自由は誰にも奪わせやしねえ!」

さやか「なんかカッコいいこと言ってるつもりだろうけど、内容はただの何も考えてない人だよねそれ」

杏子「よし、普段通りの突っ込みのキレだな!目ぇ覚めたか、さやか?」

さやか「そりゃ耳元でこんだけ騒がれたらねぇ」

杏子「おーっし!そんじゃ、遊びに行こうぜ!」

さやか「はぁ……しょうがないなぁ、もう。じゃあ、せめてシャワーくらい浴びさせてよ」

杏子「うしっ、そんじゃ一緒に入るか!」

さやか「湯船も入れてないのに一緒に入れるわけないでしょうが!」

杏子「なんと、こんなこともあろうかとあたしは起きた時に風呂を沸かしていたのだ!」

さやか「……なんというか、あれだね。勝手知ったる他人の家って感じだね」

杏子「ふふん、褒めても何も出ないぞ?」

さやか「いや、別に褒めてるつもりもないけど」

杏子「それに、他人の家ってわけでもないだろ。今はあたしもここの住人なわけだし」

さやか「まぁ……一応そうなのかな?」

~~~

杏子「ん~!たまには朝風呂もいいもんだなー!」

さやか「あんたは本当に自由だねぇ。風見野にいた頃もそんな感じだったの?」

杏子「あたしはいつもこんな感じだよ。何かに縛られるのはあたしの性に合わないからね」

さやか「そっかぁ……なんだろう、杏子とこうして一緒に暮らすようになってまだ一年しか経ってないけど、あたしと一緒にいる前の杏子ってちょっと想像つかないな」

杏子「そうか?まぁ、あたしも確かにここに来てからそんなに経ってないけど、それ以前の生活ってどんなだったのかイマイチはっきりしないんだけどな」

さやか「何それ?」

杏子「さあ?深く考えたこともねえし、考えるつもりもないけどな」

さやか「……んじゃ、今のこの生活はどう?気に入ってる?」

杏子「そりゃ当然。気に入ってなかったら、そもそもあたしはここに腰を落ち着けてなんかないしな」

さやか「そっか……なら、良かった」

杏子「なんだよ、急にそんな事聞いて来るなんて」

さやか「んーん、別に?杏子も気に入ってくれてて良かったな、って、そう思っただけ」

杏子「変なさやかだな」

さやか「気にしないで!あたしはいつも通り、なーんにも変わってないから!」

杏子「変わられたらこっちが困っちゃうよ。あたしの居場所がなくなっちまうじゃねえか」

さやか「別に杏子の居場所はここだけじゃないでしょ。マミさんだっているんだし」

杏子「……マミ?なんでここでマミの名前が出て来るんだよ」

さやか「えっ?……あれ、なんでだろ。ほら、同じ魔法少女同士だし?」

杏子「別に、魔法少女はさやかも一緒だろ。それに、ほむらだってそうだろ?」

さやか「……ほむら……っ」

杏子「……どうかしたのか、さやか?」

さやか「っ……ううん、ごめん、なんでもない」



杏子の口から聞かされた名前に、引っかかりを覚えた。

ほむら。明美ほむら。

こいつは、こいつだけは忘れていない。

何があったのか、今となっては思い出すことすら出来ないけれど、これだけは絶対に忘れないと決めたから。




明美ほむら。こいつは、悪魔だ。

さやか「……ねえ、杏子」

杏子「うん?」

さやか「杏子は、今のこの生活に……なんて言うんだろう、違和感?って感じない?」

杏子「今度はどうしたんだよ?」

さやか「ごめん、何も聞かないで、ただ答えて欲しいの」

杏子「………」

しばらくあたしの眼をじっと見ていた杏子だったけど、あたしの真面目な雰囲気を汲んでくれたのか、答えてくれる。

杏子「………ごめん、さやかが何を言いたいのか、よくわからない。別にあたしは違和感とか、何も感じないけど。何より、さっきも言ったけど今のこの生活が気に入ってるしな」

さやか「………そっか」

杏子の気持ちは、あたしと同じだった。

嬉しい事のはずなのに、何故か落胆の気持ちの方が大きかった。

何を言いたいのかわからない。そんなのは、あたしも同じだ。

自分で言っておいて、何を言ってるんだろうという気持ちが大きい。

だからこそ、杏子もこの違和感を感じていてくれていたなら、この疑問も確信に変わるのかもしれないって、そう思っていたんだ。

その思惑が外れたから、落胆している……んだと思う。

杏子「……なあ、さやか。今度はあたしの質問に答えてくれないか?」

さやか「ん?なに?」

杏子「あの、さ……。さやかは、どこにも行かないよな?」

さやか「………えっ?」

杏子「ずっと、こうしてあたしと一緒にいてくれるよな?」

さやか「………」

何故そんなことを聞いて来るのか、わからなかった。

この違和感の正体を突きとめたら、その後、あたしはそれでも杏子と一緒にいられるのだろうか?

いや、そもそもこの違和感に、正体なんてものはあるのだろうか?

思考がずれて行くのを感じたあたしは、まずは杏子の質問に答える事にする。

さやか「何言ってんのさ、杏子。あたしが、あんたを置いてどこかに行っちゃうと思うの?」

杏子「……そう思ったからこそ、こうして聞いてるんだよ」

さやか「っ……」

軽い口調で受け答えしても、杏子の口調は変わらず真剣そのものだった。

さやか「大丈夫。あたしだって、杏子とこうして一緒に過ごす日常が楽しいし、大切だから」

杏子「……っ」

不意に、杏子は湯船の中に沈んだ。

さやか「え、ちょ、杏子!?」

そして、すぐに出て来る。

杏子「……目が赤いのは、お湯が目に染みただけだからな!それだけだ!」

早口でそれだけ言い訳すると、杏子はバスルームから出ていく。

杏子「先にあがってるぞ!こんな長く湯船に浸かってたら、のぼせちまう」


杏子がバスルームを後にしてから、あたしはこれだけ呟く。

さやか「……ごめんね、杏子」

こうして謝るのは、確信に似た何かがあるからだった。

多分、この違和感の正体を突き止めた時。


あたしは……杏子と一緒にいることは、出来ない。

ここまで
叛逆後の世界ってどうなってるのかほとんど明かされてないから、独自解釈を多く含んだものになりそうですね

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