アルミン(はぁ…またこれだよ…)(43)

僕には悩みが一つあるんだ。
それは……

「ねぇアルミン!座学のここがよく分からないんだけど…」

「ミカサと付き合うにはどうしたらいい?」

「クリスタと結婚したいんだが…」

「私がやったと悟られないように女狐を痛めつけたいのだけど」

毎日、どこにいても、色んな人から相談を受けることだ。

いい加減こっちの身にもなって欲しい。
一人で安らげる瞬間と言えば睡眠時間だけである。

いい加減にしてほしい。


僕は最近そう思うようになった。
座学の成績がいいからってみんなは僕を頼りすぎている。
それは相手にとっても、自分にとっても良いことではない。


「おいアルミン、最近私のクリスタに変な男が…」

来たなソバカス女……!
もう僕はお前たちの頭脳じゃないんだ!

「……さい」

「ん?アルミンなんて言ったんだよアルミン」

「うるさいから黙ってろって言ったんだよソバカスババア!!!」

「……今、変な言葉が聞こえた気がしたんだが気のせいか? 返答によってはタダでは済まさないよ…」ゴゴゴ

目の前に立つソバカス女ーーーユミルは僕を睨み付ける。

そうだ、その目だ。 僕を苦しめた“脅しの目”だ。

「いつもいつも…僕に相談してばっかり……少しは自分で考えられないのかこのブスッ!!!」

口から出てきたのは彼女に対する罵声だった。

オチどうしよ

思いついてないから>>↓か即興の思いつきのままに終わらせる

エレンに対して渾身の右ストレート

>>6 了解です なるべく右ストレート決められるよう尽力します。


「なっ……てめェ………!売られた喧嘩は買ってやる…よっ!」

彼女はそう言ってすぐ、僕に拳を振りかざした。
なんでこうなったんだろう、幾度も殴られるうちに彼女が誰かも分からなくなるほど、僕は殴られた。


「…!」

次に目を覚ましたのは医務室。 
エレンとミカサがつきっきりで3日間も看病してくれたらしい。
彼らが言うにはユミルは開拓地送りとなったらしい、複雑な気持ちだ。

「アルミン、無理はすんなよ。」

「そう、エレンの言うとおり。無理だけはしないで。」

僕の親友のエレンとミカサは僕を心配してくれていた。
彼らは僕の家族も同然の、大事な人達だ。

「…で、だ。アルミン、なんでユミルに殴られてたんだ? あのユミルでもお前をここまでボコボコにする奴には思えないぞ」

「そ、それは……」

僕は言葉に詰まる。
冷静になった今の頭で考えれば理由は明白だった。
僕が彼女に喧嘩を売ってしまったからである。

「エレン、アルミンにも言いたくないことはある。」

「あ、ああそうだよな。ごめんなアルミン」

頭を強打したせいであまり理由が思い出せないのが本音だ。

あれ…? そういえばミカサは僕に相談を……
ああ、思い出したぞ。僕がユミルに殴られていた理由を。 

「ねぇ、ミカサ……」

「死んじゃえよ!!!このバカ!!!」

無意識のうちにひどい罵声を親友に浴びせていた。
彼女が驚きの表情を浮かべる前に僕の右拳は彼女の鼻を捉えていた。


「おい、アルミン何を…」
エレンが何かを言っている。でも僕の頭には届かない。


今、僕は彼が呆気にとられている隙にミカサを一方的に殴っている。

なぜ?

そんなの決まってる。 僕が限界だから。

体が疲れを感じ、一時攻撃を止めた。

目の前には血だらけで倒れる、ミカサらしきもの。
横には今まで見たことのない表情を浮かべるエレン。

今頃になって僕がしたことの重大さを思い知る。

(はぁ……やっちゃった…引き返せないところまで来てしまった。)

「なぁ、アルミン。なんでだよ……」

彼は光の消えた目に、涙を浮かべた。

フラフラとした足取りで僕に近づくエレン。

「……」

僕は沈黙を質問への答えとした。 

「アルミン、分かった……今までありがとな」


こう言って彼は僕に、アニから教わったのだろう鋭い蹴りを飛ばしてきた。

運動能力でエレンに劣る僕が彼の蹴りを避けれるはずもなく、小さくうめき声を漏らした。

(もう、ここまで来たらヤケクソだ。心残りは……無い!)



(勝負は今、ここで決める!!!)

「食らえェッ!」

今までの人生で最も力の入った右ストレートを、彼の腹部へ放った。

「うぐっ……」

その場に倒れ込むエレン。
ここで止めてもいいのか…?
否、ここでやらなければ、やられてしまう。


僕は覚悟を決め、天を突くようなアッパーを決めた。
あまりの勢いにエレンは空を飛んだ。
そんな勢いに僕自身も驚く

「おらっ! このっ!!」

全身の残存する力の全てを振り絞り、殴る。

「くそっ…また家族が襲われてるのに……手が出ねえや……」

「母さん…今そっちへ行くよ……」

エレンside


「母さん…今そっちへ行くよ……」

ああ、巨人を駆逐する前に人間にやられちまうとはな……悔しい

自分の無力さを恨むが、そんなことをしてもこの状況は打開出来ない。

ふと、自分の母の死にゆく姿を思い出す。
金髪の巨人に食われる、母の姿を。

(金髪…?蛙の子は蛙って事か……俺も金髪に殺されるのか?)

(そんなの御免だっ…!!!)

僕は疲れの表情を隠せないでいた。
喧嘩なんかしたのは何年ぶりだ?

こんなことを考えながら俯いていた顔を上に上げる。



そこにはさっきまで伏せていたはずのエレンが、立っていた。

「……殺してやるよ、家畜野郎が!!!」



「エレン!?アルミン!? どうしたんですか一体!?」 

病室の入り口に立っていたのはサシャだった。

「あ、あれ……ミカサは?? ミカサとエレンの姿を見てこっちに来たんですけど…」

目の前に転がる血まみれの人間を見て涙をこぼしながら、彼女は僕等に質問をした。

興奮状態にあったエレンと僕は何も答えなかった。

サシャは目の前の現実が理解できずにいた。
同時に理解したくなかった。
最悪の状況である可能性を孕んでいるから。

さっきまで僕が寝ていた部屋には、久しぶりの静寂が訪れた。

「…少し外に行って頭を冷やしてくる」

「僕も」

「ア、アルミンはここに居て下さい!」

なぜ彼女は僕だけを引き留める? 
今の僕は自分自身が正常ではないことを理解していた。

このまま外へ行けばどちらかが、いや僕が死ぬまで殴り合いをしていただろう。
少しでも長く生きるにはサシャと、ここに残るほか無かった。

いつもは明るく振る舞っているサシャだが、今だけは暗い顔を浮かべた。

「なんで……こうなっちゃったんですか?」

「……僕が悪いんだ。ミカサをこんな状態にしたのも僕だ。」

「えぇっ!?あのミカサを!?…って違う違う」

驚きのあまり話が逸れかけたが、勢いよく首を横に振り、元に戻す。

「もう一度聞きます。なんでこうなってしまったんですか?」

「…話せば長いかもしれない」

「構いません!!」

「なら……」

それからは、僕がみんなの相談を受けていたこと。
相談のせいで心が疲弊しきっていたこと。
ユミルが開拓地送りとなった理由。
ミカサに襲いかかったこと…全てを話した。

どう考えてもおかしな僕の話を何も言わず、静かに聞いてくれた。
話し終わると、心の重荷を下ろせた気がしてその場に倒れ込んでしまった。

「…………アルミン。」

サシャは長い間をおいて、口を開いた。

「これは、アルミンの苦しみに気付けなかった私達104期訓練兵団の全員に罪があると思います。」

彼女の口から出た言葉は、予想に反した言葉だった。
てっきり批判されると思っていたが、擁護の声を聞くとは思わなかった。

「アルミン……すいませんでした!!!」

何故か瞳に涙を浮かべ、悲しそうな顔をして僕に謝ってきた。

「サ、サシャ…これは全部僕が悪い。僕が勝手に逆ギレしてしまっただけなんだよ」

教官に罪を告白してくる。と言おうとするが体が動かなかったのでやめた。

「大丈夫か!?」

医療班の人間がやってきた。
エレンが呼んだのだろう。

彼らは足早に、持ってきたタンカーにミカサを乗せ、いつの間にか立ち去っていた。

「……ごめんねミカサ」
僕は小声でそう言う。
許してもらえるはずもない罪への手向けとして。


「アルミン……ほんとに、ごめんね………」

そう言うと僕に近寄ってくる。この動きは肘打ちでもする気なのか?
暴力的になってしまった頭で相手の手を考える。

いや、肘打ちなんかじゃない。
……いや、顔が近いから頭突きかな?

チュッ…

瞬間、僕の唇に柔らかいものが当たる。

「……もし、初めてだったらごめんね……」

また唇に柔らかい感触が当たる。
次は口の中に何かが入ってきた。

暴力的な思考回路を断ち、出来るだけ冷静に考えた。


この感触、さっきの発言から察するにこれはーーーキスだ。

「ずっと好きでした。アルミン」
「この事は遅かれ早かれ、教官の耳に届くと思う。でも私はあなたを守り抜きます。この命に代えても」

彼女は唇を僕の口元から話すとこう言った。

この後のことは覚えてない。すっ、と体の力が抜け、深い眠りについた。

目覚めると僕は拘束されていた。

「アルレルト訓練兵。貴様がしたことは理解しているか?」

「…はい」

教官は僕に問う。

「……本来なら開拓地送りなどではなくすぐにでも死罪にしているところだが……」

教官は言葉を濁し、もう一度話し出した。

「貴様の座学の成績。イェーガー、アッカーマン両名と互角に戦う身体能力。それに……ブラウス訓練兵の懇願を加味し、1ヶ月の営倉行きを貴様の処分とする。」

「!……はっ!」

考え得る最良の結果に転んでくれてよかった。
営倉では一日五分のみ面会時間が与えられる。
毎日身体トレーニングをしろ。
との事をその後言われた。

「いち…にっ…さんっ……」

言われたとおりトレーニングに励むが、やはり辛い。
もともと体が強くなかったのと、仲間が居ないことによる精神的不安で通常の訓練より疲れる感じがする。

「おいアルレルト。面会だ。」

でも、今の僕にも希望はある。
それはーーー

「今日はお肉盗……持ってきましたよ!」

「また盗んだの?」

「今日のはホントに違いますよ!! ちゃんと町で買ってきたんです。貴男のために…」

「そっか…ごめんね」

「いえ! これで元気付けて頑張って下さいね!」



ーーーーサシャ・ブラウスだ。



           完

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