GACKT「ぷちどる?」 (102)

これはGackt「THE IDOL M@STER?」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa5.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1399994138/)
の途中くらいのssです

いつものように、小鳥が淹れてくれたコーヒーを飲みながら、それなりに忙しくなってきた765プロの予定を整理していた。

そんな時、元気な足音が僕の耳に聴こえてきた。

それも二つ。

多分、あの双子だろうな。

扉を強く開ける様子も、まさに双子らしい。

朝から元気なことだ。
子供はこうでなくっちゃ。

でも、建付が悪いんだからあまり乱暴に開けるのはよろしくないな。

後ろを振り返り、注意しようとすると、真美が何かを抱えている。

それと僕に何かを期待するような笑顔だ。

「おはよう。亜美、真美。
…何それ?」

すると、真美が僕の目の前に出したのは、雪歩に似たぬいぐるみだった。

「ゆきぽ拾ったよー!!」

拾った、そうか。
恐らく何処からかおもちゃを拾ったんだろう。

けれど、誰が作ったんだろうな。

「可愛いぬいぐるみだな。
どこにあったんだ?」

「違うよ~!ゆきぽは生き物だよ~!」

亜美が訴えてくる。
こんな生き物、いるわけないじゃないか。

「ぽえ~」

…あれ?

たかにゃはよ

微かにではあるが、このぬいぐるみから声がした。

真美が降ろすと、おぼつかない足取りで僕に近寄ってくる。

そして、一礼。

どういうことか。

僕は今まで生きてきてこんな生き物は見たことがない。

何処かの子供だろうか。とも思ったが、それにしては頭身の比率がおかしい。

それに指が無い。

辿り着いた結論。

この子は、未確認生物だ。

じっと見ていると、段々と震えだし、いきなりスコップを何処からか取り出した。

やっぱり雪歩に似ているな。

「ねーねー兄ちゃーん。事務所で飼っちゃダメ~?」

二人がそう頼み込んでくる。

しかし、こんな得体の知れない生き物、どうやって飼うんだろう。

それに、この二人は、ちゃんと飼えるのだろうか。

「悪いけど、許可できないな。お前達が飼えるとは思えないし」

まあ、こんな言葉ではいそうですかと言わないのは分かってるけどね。

案の定、二人はぐずりだす。

小学生じゃないんだから。

「事務所で何されるか分かったものじゃないし、無理だよ」

「兄ちゃん!見てよ!」

真美がその生き物を指差す。

ゆきぽだったっけ?

「ぽえ…」

瞳から涙を出している。

「こんな可愛くて大人しいゆきぽが事務所荒らすと思う?」

思わないかな。

「じゃあ飼ってもいい?」

「ダメ」

「「兄ちゃんのケチんぼ!!」」

新作きた

すると、ゆきぽが僕によたよたと近寄って、よじ登ってくる。

噛みつくつもりだろうか。

それともスコップで殴りかかるかな?

しかし、ゆきぽがやったのは、その二つでも無ければ、予測もつかないことだった。

僕を座らせ、背後に回ると。

「ぽっ」

肩をトントン、と。

肩叩きのつもりだろうか。

あまり気持ち良くはないけど。

恐らく、何でも手伝います、ということだろう。

…全く、僕も丸くなったなあ。

「…分かったよ。律子に話しておくから」

双子が手を叩き合っている。

多分世話するのは律子になりそうだけど。

さて、律子は何て言うかな。
やっぱり断わるだろうな。あはは。

「ダメです」

だろうね。まあ当然だと思うよ。

「大体あなたがいながら何をやってんですか!こういうの許可したら次なに持ってくるか分からないでしょ!?」

「一匹だけなら大丈夫じゃないかな」

「そりゃあ、そうですけど…」

すると、また元気な足音が聴こえてきた。

「あふぅ拾ったよー!!」

今度は亜美が奇妙な生き物を持ってきた。

何事にも限度があるということを知らないのだろうか。

僕は一匹だけならいいかと思ったんだけどなあ。

「に、兄ちゃん、その、ご、すいませんでした…」
「ナノ…」

しかし、今度は美希にそっくりな生き物だな。

「ええ。でも何ででしょう。あの子だけは引き取りたくないです」

「そうだな。僕も同じ気持ちだよ」

あふぅとやらは、僕の机の上で暴れまわっていた。



「こら!何をやっているの!」

律子がつかみ上げると、ノラ猫のように暴れる。

そして、大人しくなったかと思えば、また暴れだした。

「ナノー!」

うーん。この子はNASAにでも売り飛ばしてやろうかな。

「ナノ…」

「あの、兄ちゃん、その辺で…」
「多分あふぅ今本気で怖がってるよ…」

いけないな。
こんなちいさな子を睨みつけるなんて、まだ僕も子供っぽい証拠か。

まあ、それが良いんだけどね。

「で、どうします?この二匹」

ゆきぽとあふぅを座らせ、僕と律子で結論を話し合っている。

もちろん、飼うか、飼わないか、だ。

「飼うにしても何を食べるのか分かりませんし…」

すると、亜美が何処からかおにぎりを持ってきた。

美希に似ているなら、もしかしたらと踏んだのだろう。

その推測は間違ってはいなかった。

おにぎりを見た瞬間、あふぅは亜美の手に向かって飛びついた。

そしてガツガツと食べている。

そういえば美希もおにぎりをあんな感じで食べているな。

僕も死ぬ時はあんな感じで食べたいものだ。

「あれ、私のお昼ご飯なのに…」

あはは。後で何か奢ってあげるから。

「でも、こっちは何を食べるんですかね…」

さあ。雪歩に似ているなら、お茶かもな。

「お茶…」

真美がお茶っ葉を持ってやってきた。

流石に無理があるんじゃないかな。

けど、ゆきぽはそれに向かって飛びついていった。

どうやらこの二匹もここから出ていく空気ではないらしく、仕方ないので面倒を見る事にした。

しかし、ほんとに不思議な生き物だなあ。

可愛いけど、不思議な感じだ。

ふと時計を見ると、もうすぐ美希が帰ってくる時間だった。

美希は自分にそっくりなこれを見たら、どんな反応をするのかな。

楽しみだ。

「あふぅ…疲れたの…ハニー」

美希が疲れた表情でやってきた。
頑張ってたみたいだな。

「ハニーの顔が見れたから回復したの!…でも、お腹すいたの…」

今日はまだ何も食べていないらしい。

食欲より睡眠欲を優先した結果らしい。

ソファに座り込んで何か食べたいと訴えてくる。

すると、そこにいた先客に反応した。

「これ、何なの?」

むんず、と掴んで振り回す。
それでも起きないのは、やはり美希に似ているからか。

それより、今何かあったかな…。
ああ、あったあった。

「じゃ、これあげるから」
「あの、それ私のお昼ご飯だってばぁ…」

おにぎりを差し出すと、美希が飛びついてくる。
けど、それよりも早く、あふぅがおにぎりをかっさらっていった。

「美希のおにぎりを返すのー!!」
「ナノー!!」

あはは。思考レベルは同じくらいかな。

まあ彼女らは律子に任せるとして。

先程から美希の鞄から何か変な音がする。

猫が壁を引っ掻くような、そんな音だ。

道中何か拾ってきたのか。

まさか、な。

「美希、ここには何が入ってるんだ?」

「?…あ、そういえば」

そう言って鞄をまさぐりだす美希。

すると、中から凄まじい勢いで、何かが飛び出してきた。

僕に向かって。

視界が真っ暗だ。

だけど、微かに感じる鼓動と、体温で何かの生き物が僕の顔にひっついているのは分かった。

引き剥がすと、僕の目に映ったのは。

千早にそっくりな二頭身の生き物だった。

「…くっ///」

美希が言うには、ロケ先で押し付けられたのだという。

断ればよかったものを、おにぎりひとつで快諾してしまったらしい。

律子が後ろでハリセンを構えているのは黙っておくか。

こあみまみのイタズラにマジぎれしそうなガクちゃん

それと、この子の特徴として、ばいんばいんな女の子には噛み付くらしい。

まあ、巨乳嫌いだということか。

千早にそっくりな時点で、何となく予想は出来たけど。

しかし、貰ってしまった以上世話は見ないと可哀想だ。

だけど、事務所で飼うにしてももう二匹もいるんだから、すこし負担が大きいかな。

せっかく似てるんだし、一人暮らしなんだから、千早に押し付けておこうか。

寂しさを紛らわすくらいにはなるだろうし。

「でも、何でさっきからこの子、僕の頭叩いてるの?」

痛くはないが、うっとうしい。
スキンシップのつもりなのだろうか。

僕は叩くのは好きだけど、叩かれるのは嫌かな。

「戻りました~」

どうやら、小鳥が買い出しから戻ってきたようだ。

「小鳥、お疲れ。ちゃんと全部買ってきたか?」

「もうっ子供じゃないんですから!」
「ええと、コーヒー豆に、コピー用紙、それとファイル…」
「あと牛乳…」

小鳥が牛乳と言った瞬間、千早に似たそれが僕の頭から離れ、小鳥の目の前に陣取った。

いきなりの事に小鳥は驚いていた。

そして、じー、と見られ続けることに慣れていないからか、次第にクネクネしだす。

その子が見ているのはお前の持っている牛乳だよ、と言いたかったが、やめておこうか。

どうやら、それが好物のようだな。

すると、その子を律子がつかみ上げる。

巨乳の持ち主である律子に対して牙を向いているが、律子はお構いなしにテーブルへ連れていき、降ろした。

どうやら、ご飯を作ってあげていたらしいな。

「律子」

「はい?」

「良いお嫁さんになるよ」

「……もう///」


しかし、初めて目にするのか、食べるものなのかどうかも判別がつかないようだ。

箸を一本掴み、パンをつつく。
害が無いと分かったのか、食べだした。

小鳥、鼻血拭いておけよ。

「話は何となく理解出来ました。…でも、何で私が飼わなければならないんですか?」

千早が怪訝な表情で話す。
休日に呼び出され、いきなりこんなものを押し付けられればそうもなるだろう。

「大体、律子が飼えばいいでしょう」

すると律子が苦笑しながら語りだす。

「あはは…私が飼っても良いんだけど、あの、そのぉ…何か、体の一部が気に食わないらしくて、ね?」

千早の目に律子の体がズームアップされていくのが分かった。

そして、その一部を見て、自分の一部を見ると、ようやく分かったようだ。

どんよりとしながら、飼うことを承諾した。

「…というか、GACKTさんは飼わないんですか?結構なついてるみたいじゃないですか」

千早が僕の頭の上のそれを見ながら話す。

確かに、僕は男だしな。
でも、僕は飼うならもっと大人しいやつがいいから。

「じゃあ、ゆきぽ?」

美希がゆきぽを僕の目の前に持ってくる。

「所々穴を開けるような奴は嫌だなあ」

「ぽえっ!?」

しかし、この声は何処から出しているのだろうか。

真似してみたくなるな。

「…ところで、この子の名前は決めたんですか?」

「ああ、そういえば…」

「でしたら、私に決めさせてください!名前はゴンザr」
「はーいちひゃー、ご飯よー」
「くっ」

ちひゃーというのか。
良かったな。律子が名前をつけなければお前はゴンザレスになってたぞ。

はーいみんなー!キューティーアイドルの水瀬伊織でーす!!

今日私はやよいとプロデューサーに連れられて!!





…何故か無人島に来ています。

「いやーまさかこんなロケをすることになるとはな。まあ良い機会だし、頑張れ」

「あんたは何テント張ってくつろいでんのよバカプロデューサー!働いてんのやよいだけじゃない!」

「ならお前も働くんだな。僕は監視するのがお仕事だから」

「ぐっ…この、覚えてなさいよ!」

そう吐き捨ててやよいの所へ走っていく伊織。

あはは。元気だなあ。それにこの二人はほんとお似合いだ。

「とったどー!!」

やよいが魚を捕まえたらしい。
やはり、サバイバルはお手の物か。

しかし、伊織は…。

「…!!…~!!」

そんな目で見るなよ。舐めたくなっちゃうだろ?

「やめてよ変態!!」

翌日

「あーもう!どうしてこんなどしゃ降りなのよー!あんま替えが無いんだから勘弁してよねー!!」

「あ!あんな所にお堂が!…何でかは知らないけど、しのぐには良いわね」

「はぁ…いつになったら止むのかしら、この雨…」

『ヴぁ~い』

「!!?」

「うっうー!大っきいお魚が取れました~!」

あはは。ほんと大きいな。
写真に撮っておきたいくらいだよ。

「そういえば伊織は?」

「伊織ちゃんなら山菜取りに向こうへ…」

やよいの指差した方向を見ると、確かに伊織が走ってきていた。

いくつかおまけがいるようだけど。

「助けてやよいぃぃぃぃ!!!!プロデューサァァァァァァ!!!!」

今度は春香にそっくりな生き物が蛙飛びで伊織を追いかけている。

しかしずいぶん大量だな。

「伊織ちゃーん!!」

隣を見ると、やよいが背負い投げの要領で魚を投げ飛ばしている。

「お土産だよー!!」

…JESUS。

おお!がっくんとぷちますかwwwwwwww

待ってたぜ!!

「…生臭っっっ!!!」

どうやら伊織が起きたようだ。

あのアクシズみたいな攻撃からよく生きていられたものだ。

伊織は周囲を見渡し、先程の生き物を発見すると、驚きの表情を見せた。

恐らく夢だと思いたかったのだろう。

「ねえ、この子ってたくさんいなかった?」

伊織がやよいに尋ねると、やよいは振り返らず、ただ淡々と魚を切り刻んで。

「き き た い ?」

と一言。どうやら伊織はビビってしまったようだ。

結局どうやって一匹にしたかって?

あはは。僕はゴアな表現は苦手なんだ。ごめんな。

やく三日間の滞在を終え、帰りの船に乗る。

どうやらこの子も自然に連れて帰る流れになったらしい。

全く、皆勝手に持ってくるんだもんなあ。

「どうせなら名前でも決めたら?」

伊織が喋り出す。
そうだなあ。第一発見者はお前なんだし。

「伊織が決めたらどうだ?自分のぬいぐるみに名前をつけるくらいなんだから」

「失礼ね!ぬいぐるみじゃなくて、シャルル・ドナテルr」
「却下かな」
「今のはウサギちゃんの名前よ!…じゃあ、逆にあんたはどうなのよ!」

僕?僕が名前をつけるのか。
うーん。

「ベル・コンスタンティn」
「似たようなもんじゃない!!」

「はーい!事務所に帰ってからにしましょう!」

やよいが手を上げて意見を言う。
まあ最もだな。
シャルルなんて名前をつけられたら…

「あんただってベル何とかはやめなさいよ!」

やよいが似たもの同士だと笑っていた。

まあ、この笑顔が見れただけよしとしようか。

「…というわけで、この二つ、どちらが良いか、律子、お前が決めてくれ」

「あの、まさか本気でそんな名前をつけるつもりなんですか?」

「千早のゴンザレスよりは良いだろう」

「いや、同レベルな気もしますが…」

「はるかさんが良いと思います!!」

「「…」」

「…じゃあ、合わせてシャベルは」
「…流石にはるかさんの方が良いと思いますよ?」




はーい!決定!!


というわけで、今日からこの子ははるかさんに決まった。

水をかけたら増えるらしい。
グレムリンじゃないか。あはは。

まさにモグワイというよりグレムリンなんだよなぁ……

はるかさんのもう一つの特徴として、人懐っこいというものがある。

しかし、誰彼構わず甘噛みしようとするので困り者だ。

おかげでベトベトだよ。

このスーツ、それなりに高いのに。

「気持ちはわかりますから!!はるかさんに悪気は無いから許してあげてください!!」

あはは。律子が止めなかったら、解剖してたよ。

「はーい!はるかさん!ご飯ですよー!」

春香が白飯と水を持ってはるかさんに近寄る。

ああ。これは多分やらかすんだろうな。

そう思った僕は、男のゴールデンタイムに行く事にした。




数分後、事務所から悲鳴と怒号が聞こえてきた。

面倒事は律子に任せればいいさ。

765プロにも秋が訪れ、少々肌寒くなってきた。

乾燥の季節は肌と喉に悪いからな。

アイドル達にも気を配るとしようか。

「ほうらやよい。喉飴だ」

「うっうー!ありがとうございますー!」

この子は特にそうだな。
節約節約と生活に全くお金をかけないから、あまり健康的ではないだろうし。


「はいさーい!」

「響か、おはよう」

響がいつものように事務所に入ってくる。

この子はまあ、大丈夫だろう。
強いて言うなら動物達の匂いだろうか。

響からは全く臭わないが。

それでも心配しておいて損はないだろう。

「響、やよい。お前達はちゃんと健康に気を使ってるか?」

「大丈夫です!」
「なんくるないさー!」

良い返事だ。

するとやよいが何かを思いだしたらしく、懐から何かの紙を出した。

「千早さんからこんなのもらいましたー!」

どれどれ?

『た す け て』





「千早もちゃんと健康的な生活してるかな?」
「プロデューサー、逃げちゃダメだぞ」

何があったのだろうか。
千早がこんな手紙を送ってくるという事は、相当まずいという事だ。

内心焦りながら千早のいるマンションの一室のチャイムを鳴らす。

すると、中からドス黒いオーラを見にまとった千早が現れた。

とりあえず、中に入るとしよう。

千早が淹れたお茶を飲みながら話を聞いていると、つまりはこういう事だ。

ちひゃーの髪の毛がわさわさになり、毎晩千早の顔にひっついて離れず、寝られないのだという。

「ですが、切ればよろしいだけなのでは?」

貴音が提案する。
というか、いたのか。

「ええ、ずっと」

「切ったんですよ?切ったんだけど…」

千早がぶつぶつと喋り出す。

何を言ってるのか良く聞こえなかったので、耳を近づけると。

「…っても」
「え?」
「切っても…」
「…」
「切っても切っても切っても切っても切っても切っても切っても切っても切っても切っても切っても」
「次の日には生えてるんですぅぅぅぅぅぅう!!!!」

参ったな。
大した悩みじゃなさそうだ。

「プロデューサー、結構な悩みだと思うぞ…」

「だけど、随分フサフサになったんだな、お前は」

「くっ///」

髪の毛を撫でると、恥ずかしそうに身を潜める。
しかし、これは冬毛だろうか。

もし、と呼ばれ後ろを振り向くと。

貴音が狸のような尻尾の生えたゆきぽを抱っこしていた。

「しっぽは生えたようですが…」

「何で?」

「さあ…しかし、こちらを、このようにすると…」

貴音が僕に近づいてくるゆきぽの尻尾を軽く踏んづける。

べちょ、と転ぶ姿は確かに愛らしいが。

「このような愛おしさに…」

貴音のよく分からないキャラに気を取られていた。

「しかし、その点でいうならば、この子も負けてはいませんよ?」

そう言って貴音が後ろから出したのは、やよいにそっくりな生き物だった。

名前はやよと言うらしい。

やよいよりも一オクターブ低い声で鳴いている。

話を聞くと、小銭を落としたら食いついてきたらしい。

ふーん。

「やよー、ほーらほら」ジャラジャラ

「うっ!うっ!うっ!」

忙しいな。

「プロデューサー!やよで遊ぶなー!!」

「と、いうわけで千早、解決法があります」

「ほんとですか!?」

「諦めてください」

「酷いっ!?」

「後お茶をもう一杯」
「酷いっ!!?」



成る程。
どうやらこの子達は動物のように夏毛と冬毛があるんだな。

まあ尻尾は別として。

しかし、冬の間中こんなもっさりとしているのか。

「うっうー」モサ…

「おっはようございまーす!」まっこまっこりーん

「おはよう真。今日も元気だな」

「へへー。当たり前でしょ!それがボクの取り柄なんですから!ね、律子!」

「めっ」

しばしの沈黙の後、真が目を擦ってもう一度、それを見る。

まあ、そうなるだろうなあ。

僕も一度見間違えたから。

「プロデューサー!あれ、何ですか!?」

「小鳥が連れてきたんだし、小鳥に聞いてくれる?」

小鳥から聞いた話では、道端で寒そうにしていたのを拾ったのだと言う。

何処となく律子に似てるので、事務処理をやらせた所、凄まじい勢いでこなしているのだという。

でも会話が出来ないからなあ。

劣化版律子かな。

「ちっちゃんですよ。ね?」

「めっ!」

真が溜息をついているが、もうすぐ御本人が来るから、それに任せようじゃないか。

「………」
「……もー」

そして現在、ちっちゃんと律子が顔を合わせている。

まさか自分に似た生き物が現れるとは思わなかったのだろうな。

認めたくないのか、逆立ちしたり、回転したり、もうめちゃくちゃだなあ。

僕に似た生き物もいたりしてな。

すると、小鳥が世界の終わりのような顔で僕に向かって走ってきた。

どうしたと言うのか。

「プロデューサーさん…その、今度の会議の書類、失くしてしましました…」

あーあ。
やっちゃったかあ。

「うーん。どうしようかな」

どこかで落としたか、家に置き忘れたとかじゃないかなあ。

なんて思っていると、後ろからぽんぽんと肩を叩かれる。

振り向くと、デスクの上に乗っていたちっちゃんが例の書類を手にしていた。

どこからか拾ってきてくれたのだろう。

「ありがとな」

頭を撫でると、赤面し、卒倒してしまった。

僕のかっこよさはこの子達にも影響するのか。あはは。

「…めっ!?」

「あ、気がついた?」

「もー?」

「事務処理もできるし、結構やるみたいだけど…プロデューサーには弱いんだ?」

「!?めー!!」

「あっはっは!」

「もー!!もー!!」

「(何でこんな所まで似るのかしら…)」

そして、会議も終わり、色々な計画をたてている時に、あずさの名前が出てきた。

そういえば、あずさの顔を最近見ていない気がする。

えーと、有給が出てるのか。

でも、三ヶ月前なんだよなあ…。

無断欠勤は良くないぞ。全く。

「ただいま戻りました~」どたぷーん


「あずさ、連絡くらいはよこしてくれないと困るよ」

すいませ~んと言うが、ほんとに分かってくれたのだろうか。

心配だが。

それにこのお土産。

何処まで迷ってたんだか。

…あれ、何だか眠いなあ。
うん、寝よう。


「プロデューサーさん、あ、また寝落ちですか…」

「…はっ!」

ああ、また寝ちゃったか。

あはは。僕もあずさの事言えないなあ。

…ん?

「小鳥、なんで僕の顔を見て青ざめてるの?」

小鳥が僕を見て震えている。
まるで地震を予兆する動物達のように。

まあ、いいや。

あれ?

デスクの上に何かいるなあ。

「とか!」
「ちー!」

真美と、亜美に似ているなあ。

今度は双子かあ。

しかし、どうして僕のデスクに落書きしてるのかな?

「とか…」
「ちー…」

あはは、震えなくてもいいよ?

死にはしないから。

何だか、顔が痒いなあ。

顔を掻いて、指を見ると、何だか汚れている。

鏡を出して見てみると、ああ、そういうこと。




「ふーん」

「プロデューサーさん!!水責めだけは!!水責めだけはぁ!!!」

「とかー!!」
「ちー!!!」

こあみ、こまみと名付けられたようで、貴音が引き取る事になったらしい。

この二匹は水責め以来、僕には近づかなくなった。

そんな怯えなくても大丈夫だよ。

「とか…」
「ち…」

765プロのアイドル達がしきりに口ずさむ歌がある。

なかなか面白い歌詞だ。

単調で、覚えやすい。

「食って寝て遊べ~…か」

僕も、食って寝て遊びたいものだ。

ふと前を見ると、大きな荷物がずるずると動いている。

何だろうか。

「…!…ぴっ!」

また変なのに会ったなあ。

無視しよう。

「ぴー!ぴー!」

無視しても着いてくる小鳥似の生き物。

名前は知らないが、多分ほっといても765プロに来るだろう。

仕方ない。連れていくか。

「ぴー」

しかし、成りは人間みたいなのに言葉はそれか。

可愛いけど、何だか不気味だよ。

「で、また連れてきちゃったんですか…」

「今更一匹二匹増えてもいいんじゃないかな?それにこのままなら全員分揃いそうだ」

まあ疑問はたくさんあるけどね。

服とかどこから調達してるのかとか、今までどこで生活してたのとか。

まあ、言ってしまえば、この世界に移動した現象もおかしいんだけどね。

「たまには僕が名前をつけてもいいかな?」

律子が怪訝な表情でどうぞ、と言う。

うーん。そうだなあ。

「…チェン・マルスt」
「ぴよぴよでいきましょうか、ね?ぴよぴよ?」

「ぴっ!」

ひどいじゃないか、律子。

「せめて空気は読んで下さいよ…」

そのやりとりを見ていた小鳥が鼻血を出しながらぴよぴよを持ち上げ、欲しい欲しいとせがんできた。

別に誰のものでもないし、僕はいいよ。

落ち着けよ。血が飛んでくる。

「じゃあ、チェン・マルスt…ぴよぴよは小鳥が飼おうか」

あはは。ぴよぴよ、そんな僕のつけた名前は嫌か。

泣きながら首を横に振るなよ。

さて、ぴよぴよの最初の仕事。

それは、美希のおつかいだった。

いや、お前が行けばいいだろうに。

「だって眠いのぉ…」

特殊な性癖の男だっているんだ。

誘拐でもされたらどうするつもりだ?

「ぴー!」

あ、飛べるんだ。

あはは。

まるでスカイライダーだな。

ほんと、一回捕まえてテレビにでも持っていきたいよ。

もしかしたら、一財産築けるかもよ?

…なんて、させてもらえるわけないか。

それに、僕もそんなつもりはないよ。

しかし、やけにぴよぴよの袋が暴れてるな。

「何が入ってるのかな…ん?中に何かg」

猫だろうか、何かが僕の顔に飛びついてきた。

これはデジャヴだ。

もしかしたら、なあ。

ああ、やっぱり。

真に似た生き物がかなりのボリュームで泣いている。

「まきょー!!まきょー!!」

…ほんと、響と律子が羨ましいよ。

是非とも会話してみたいものだ。

この子の名前は、三つ上がった。

ゴンザレス
ベル・コンスタンティン・チャピ
まこちー

え?

名前はどれに決まったかって?

あはは。

決まってるだろ?




「なあ?ベr」
「まこちー!今日からボクが家族だぞー!」
「まきょー!」


悔しくなんか、ないさ。

「ハニー、歯軋りうるさいの」

「えー…今回、企画した修Gack旅行だけど…伊織、聞いてる?」

「聞いてるわよ!だからこんな不満な顔してんじゃない!!」

全く。
雪歩とやよいはちゃんと聞いてるぞ?

今回僕が企画した修Gack旅行。
エジプトで三日、過ごす。
それだけ。

何が不満なの?

「あのねえ…あんたの企画した内容って大概めちゃくちゃでしょ!?またあの無人島みたいな生活だったら、絶対拒否よ!!」

「大丈夫だよ。ちゃんと現地の人にも話は通してあるから」

「ほんとでしょうねえ…」

大丈夫大丈夫。

死にはしないから。



「…ってか、何であんたは来ないのよ!Gacktの四文字も入ってんのよ!?」

「え?だって日に当たるから…」

「…………」

いやあ、参ったなあ。

無理矢理連れてこられたよ。

完全防備してるからまあ大丈夫だと思うけど。

「日焼けどめベッタベタ、白の布被って、サングラスに日傘。
あんた、何かのカルト集団みたいよ?」

あはは。そういう伊織だって。

「アイドルなんだから、当たり前でしょ!!何もしてないのやよいくらいよ!!」

ほんとだ。危ないなあ。

「雪歩が携帯用テント持ってきてくれたからよかったものの…」

「お父さんに言ったら、頑丈なテントくれましたぁ」

良かったなやよい。
これでガングロギャルにならなくて済むぞ。

「うっうー!助かりました!!」


はい。
じゃあ。

「修Gack旅行、始めまーす」

「口元まで隠してるからなに言ってるかわかんないわよ」

「下剋上ゲーム?」

「そう。あるゲームをして僕に勝てたら、僕が罰ゲーム。
負けたらお前達が罰ゲーム」

「完全に出来レースな感じがするけど、一応聞いとくわ。内容は何?」

「ラクダレース…ですかぁ?」

そう。
ラクダに乗って速さを競うレース。

「ラクダって走るんですか?」

やよいが聞いてくる。

「走るんじゃない?」

乗った事ないけどね。

「まあ、それなら五分五分かしらね…いいわ!やってやろうじゃない!!」

伊織が胸を叩く。

全く。

知らないのかな?

僕の乗馬技術を。

「完全出来レースじゃないの!!!」

キーキーうるさいなあ。
やるって言ったじゃない。

「うぐ…いいわよ!分かったから、早く罰ゲームを言いなさい!!」

罰ゲームの内容。

ピラミッド一周。

「じゃ、やよいと伊織、宜しく」

「これ、初めからやらせる気だったわねぇ…」

ワナワナとしながらも、やよいを引き連れてピラミッドの中へ入っていく伊織。

ちなみに雪歩は待機だ。

「あの、私は良いんですか?」

「ああ、お前はそのカバンを開けてくれればいいから」

「え?」

雪歩が何だか分からないといった感じでバッグを弄る。

すると、ガクガクと震えだし、後ずさる。

だけど、時すでに遅し、か。

雪歩の頭ははるかさんの口に含まれていた。

ちゃんと助けたよ。
そこまで悪人じゃないさ。

「なら初めからやらないでくださいよぅ…」

唾液塗れの雪歩が気絶する前に放った最後の言葉だった。

「意外とひんやりしてたわね」

伊織とやよいがなかから出てくる。

奇妙な生き物を連れて。

今度はあずさか。

髪は長いんだな。

しかし、ほんとに特徴を捉えているな。

「あらー」

あずさより一オクターブ高い声で鳴いている。

ありゃー、みたいな。

「雪歩は何があったか一目瞭然として、まあこれで罰ゲームも終了だし、もういいでしょ!?」

まだ二日も滞在なのに?

「もういたくないわよ!あんただってそうでしょ!?」

「まあね」

「そんなデストロンの大首領みたいな格好してるんだから、さぞかしいたくないんでしょうね。ってかそんな嫌がる事を私達に押し付けんじゃないわよ!!」

あはは。ごめんごめん。

すると、ミニマムあずさが僕に向かって手をパンパンしている。

やよい曰く、戻りたい所を想像して手を叩けというのだ。

何だろうか。

うーん。とりあえず事務所として、あ、そういえば律子と美希、今日収録に行ってたんだっけ?

「あらー」スタンバーイ

「うーん。困ったわね…台風で飛行機が出れないなんて…」

「あふぅ…しょーがないから、美希は寝るの…」

「こら!休みなわけないでしょ!!…にしても、これじゃなあ…」












「あらー」

「うわっ!!伊織とやよいと、雪歩とはるかさんと、…誰!?」

「あはは。僕だよ」

「プロデューサー!?…もう、何なんですか!いきなり現れたから、びっくりしましたよ!?」

驚いたのは僕の方だけどね。
まさかテレポーテーションが現実になるなんてさ。

ほんとに瞬間移動しちゃったんだ。

すごいなあ。この子がいれば、世界一周できるじゃないか。

「あらー」





「うぐぅ…重いのぉ…」

「ただいま戻りました~「なのー」」

美希とあずさがロケから戻ってきた。

今回は美希がいたから迷わなかったか。

しかし、あずさの肩に乗っているのが気になるな。

「キー!」

髪をかきあげた時の伊織にそっくりだな。

デコが広いよ。

「キー!?~!!」みょんみょん…

「…?」

何だか、デコが光ってるけど、何これ。

「ハニー、流石にかわいそうなの」
「あら~」



「キー!!!」


え?

「さ~て今日も元気に事務仕事しますか♪」

「ぴっ!」

「うふふ。可愛いわねえ」

「ぴ~」

「あらやだ鼻血が…」

ピシッ

「?何だか事務所が…」
「ぴー?」

ズアオッ!!

「事務所ぉぉぉぉぉおおおおお!!!?」
「ぴいいいいいい!!?」

「…あれ、よく見たら全裸のプロデューサーが…」
「ぴ…」

「事務所の壁に穴が空いてるけど、何の騒ぎよこれ」

「あら伊織ちゃん。あなたにそっくりな子が来たわよ~」

「?あら、私に似てキュートじゃない」
「もっ」

「そうねぇ、じゃ、やよみたいな感じで、いお。でいいかしら?」

「もっ!」

「にひひっ♪いい返事ね!」
「にひひ♪」

「ハニーには誰も突っ込まないの。報われないの」

「ふんっ!いつもの仕返しよ!ねー?いお?」
「もっ!!」

「いやあ、参ったよ」


「「全裸で戻ってくるなああああああああ!!!!」」

「はて、南国のらぁめんですか」

「まぁ、怖いもの見たさってやつかな。お前ならどんなラーメンでも愛せそうだからな」

「私にも流石に好みはありますが…あなた様のご命とあらば、謹んでお受け致します」

出されたものは全て食べる貴音には丁度良い仕事かとおもったんだけど、違うみたいだな。

まあ、良しとしよう。

そして一週間後。

『どうだ貴音、首尾良くやれてるか?』

「はい。南国のとろぴかるらぁめん。大変美味でした」

『…そうか。終わったら直帰で良いからな』

「いえ、少々話したい事がありますので、事務所へ行きたいと思います」

『?ああ、分かったよ』

「…では、後程」





「…」しじょーん

「…」しじょ~ん



「「…」」しじょー~ん

翌日、貴音が連れてきたのはミニチュアの貴音だった。

事務所で飼ってほしいという。

今までの者達と違い、ある程度は会話できるという。

「ぷろ!ぷろ!」

しかし、これでは…。

文字も書けるというが、ほとんど一単語なので、分かりづらい。

「飼うのはいいけど、お前に似て大食いなんだろう?あんまり満足な暮らしは出来ないぞ?」

そう。何より貴音に似ているというのなら、胃袋の大きさもそう変わらない筈だ。

予想通りショックを受けているみたいだし。

律子も同意見のようだしな。

しかし、涙目で訴えるそれを見て、どうにも拒否権出来なかった。

見るに見兼ねたのか、真美と亜美が引き取ってくれることになった。

名前はたかにゃ。

どうやら丹後の頭二文字だけならしゃべれるようで、ある程度文字も書けるらしい。

ほかの者達よりは少し頭は良いようだ。

しかし、たかにゃを飼ってから双子の様子がおかしくなったのはまあ、突っ込まないでおこうかな。

>>68
丹後→単語で…

「がく!がく!」

「…」

まあ、がっくんて呼ばれてるものだと思えばいいかあ。

しかし、そこまで出るのなら、全部出してくれないかなあ…。

たかにゃが765にやってきて数日。

響の顔が優れなかった。

どうしたというのか。

…あ、そういえば。

「響のやつだけまだ来てないな」

「そうだぞー…自分の似たやつも来てくれないかなー。
新しい家族が欲しいぞー…」

まあお前が良くても向こうが嫌がるかもしれないけどな。

「そんなことゆーなー!…これでも、自分動物達には好かれるんだからな!!」

「動物達には、か…」

「うがー!!」

あはは。冗談冗談。

だったら、こいつに頼めばいいさ。

「あらー」こたぷーん

「みうらさん?なんでだ?」

「もしお前に似た奴が存在するなら、念じればもしかしたら会えるかもしれないぞ?」

「!!…そっかあ。プロデューサーはやっぱり頭が良いぞー!!」

まあ、分からないけどね。
自分の居た所に行くだけかもしれないけど。

もしかしたら会えるかもな。

「それじゃ、行ってくるぞー!!」

「あらー」スタンバーイ

「…」

「…」

「あらー」

移動はしない、か。

「そりゃ、どんな姿かも分からないもんなあ…」

どんよりした響をみうらさんが撫でている。

「なら、ゆきぽとかはるかさんとか持っていけばいいんじゃないか?」

「うー。そーじゃなくてさ、自分に似た子がいてほしいんだ」

奇遇だな。
僕もそう思うよ。

すると貴音がこあみとこまみを抱えて現れた。

そういえばこの子達も南の方から現れたんだっけ?

なら、あり得るな。

貴音の予想は当たっていたらしく、ものの数分でミニマム響を連れてきた。

よくやったな。

「とか…」
「ちぃ…」

そんな逃げなくても大丈夫だよ。

ぷち響……かわいい

無理矢理連れてこられたせいか、ミニマム響はかなり震えていた。

周囲をしきりに気にして、事務所の隅に縮こまっている。

やはり、慣れない環境のせいか、近づくと短い手をブンブン振っている。

威嚇のつもりだろうか。

仕方ないので、こそりこそりと距離をつめ、おそるおそる頭を撫でると。

思いっきり泣き出した。

あはは。ごめんごめn

「…はっ!!」

いきなり視界がブラックアウトしたと思ったら気絶していたのか。

寝落ちしたのかな?

いやあ、しかし頬が痛いな。

ずっと床に押し付けていたからかな。

うーん。おかしい。

僕の顔、こんなにパンパンだったかな?

「いや、ちびきが怪物召喚したからだぞ」



どうやら響が膝枕をしていたらしい。

「可愛い女の子に膝枕してもらうなんて、僕は幸せだなあ」

「…嬉しいけど、その顔で言われてもなあ…」

響が差し出した鏡を見ると、左頬が腫れていた。

話を聞くと、あのミニマム響、通称ちびきが泣くと、怪物を召喚するらしい。

その怪物にやられたようだ。

もう何でもありだなあ。
参ったよ。

「これじゃあ、ナンパも出来ないな」
「いや、営業とかが先じゃないの?」

新しい仲間、ちびき。

初対面の我々との接し方と反してすぐに懐く。

そして泣き虫で、泣くとどこからともなく怪物を召喚する。

恐らく、この子は僕の天敵になりそうだな。

あまりからかわないようにしよう。

近づきすぎても泣かれるし、接しないようにしても泣かれるので、難しいところだ。

やれやれ、女の子ってのはほんと扱いづらいよ。

「だぞだぞ!」

おや、ちびきが絡みついてきたな。

何を求めているのか。

ほーらほら。
ねこじゃらしだ。

「あいえなー」

どうやら正解のようだ。


やよが一番扱いやすいな。

「ほらほら」ジャラジャラ

「うっ!うっー!」
「プロデューサー!!やよで遊ばないでください!!」

しかし、ついに全員分のミニマム達が来たのか。

うーん。

納得いかないな。


どうして僕のは来ないんだ?

ガクポか。。

そして、季節は夏。

全く、嫌な季節だ。

蒸し蒸しするのは好きだけど、日光があるのは好きじゃない。

そんな事を思って事務所に辿り着くと、何かが猛スピードで僕の顔に飛びついてきた。

「はにぃ♪」

いや、まあすぐに分かったけどね。

どうやらあふぅは夏になると、髪が生え変わり、毛の色も変わるらしい。

そして、恐らく発情期になるのだろう。

この子達に繁殖能力があるのか疑問だが。

それに異常なまで抱きついてくるだけだから、美希が小さくなったと思えば苦ではない。

「はにぃ♪」
「ハニー♪」

いやあ、モテる男は辛いな。

だけど、あふぅは何時の間にか真に熱視線を送っていた。

「はにぃ!」

ああ、男なら誰でもいいのか。

真のショックは大きかったようだが。

「でも、プロデューサーにこんな接近してくる子なんてあふぅくらいじゃないですか?他のぷち達は怖がって近づかないのに」

真が言う。
あはは。まあその通りだな。

その上あふぅに至っては夏限定だしな。

















「アホ毛が!アホ毛がぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「うう…図星だからってボクの髪の毛引っ張らなくても…」

いいじゃないか。
身長が伸びたぞ。

「だけど、プチって何?」

「?ぷちはぷちですよ。そう呼ぶ事にしたんです」

なるほど。
小さいからぷちか。

ぷちアイドル。

略してぷちどる、か。







「で、僕のは?」
「知りませんよ…」

そして翌日、そんな話をしたせいか、何だろう。事務所に行く途中の道。

ちょっとだけ懐かしいデザインの生き物が僕の目の前にいた。

「…」

「…」

よし。
連れて行こう。

「…!」

あはは。暴れない暴れない。

「へ~。この子がGACKTさんのぷち…ですか」

「何だか似てないね…」

「髪の毛も紫だし、格好も似てないし…」

「おまけに喋らないし」

好き勝手言ってくれるな。

僕だってこの格好したことあるんだよ?

それに僕に似てめちゃくちゃプリティーじゃないか。

http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/amiami/cabinet/images/2012/19/fig-ipn-4227.jpg

「そういえばプロデューサー。名前は決めたんですか?」

律子が聞いてくる。
当たり前だよ。

「…がくぽ、なんてどうかな?」

「「……」」

あれ、何で皆黙ってるの?
凄いいい感じじゃない。語呂も良いし。







「「……みんなの名前もそれくらいちゃんと決めろー!!!!!」」

がくぽについて分かったことがある。

まず、基本的に喋らない。

そして、無表情。

しかし、誰かが歌い出すと、それを真似る。

というより、そのままコピーしたかのようだ。

好きなものは楽器と歌。

それと、漫画とゲーム。

まるで僕みたいだな。

いやあ、嬉しいよ。

自分の分身が現れるなんてな。

元の世界でもがくぽはいたけど、ここまで愛くるしくはなかったよ。

「は~い。がくぽちゃん。ご飯ですよ~」

「…」

小鳥の出したご飯。
今日の献立はひじきのおひたしに、味噌汁、白米。

…全く。僕のことを理解してない証拠だな。

「あら?いらないの?」

「小鳥。僕は昼は食べないんだ。がくぽには夜、野菜と肉を用意してやってくれ」

朝は野菜ジュースを頼むよ。

それと、炭水化物は出さない事。

出してもいいけど、一年に一度、ラーメン一杯だけだ。

「ぽぇ~」

「…」

「ぽぅ?」

「…」

「はるかっか!」

「…!」

「かっかー!」

「めっ!?」

「ぽぇ~…」

「うー?」

「ぽぇーぽ~」

「う?うっうー!」

・・・・・・・。

「くっ!」

「うっうー!」

「くっ!…くっ!くっく!」

「…」

「くっ!…~♪」

「~♪」

「ぽへぅ~」

「めっ」

「うっうー!」


「「~♪」」




どうやら、他のぷちどる達とも馴染んだようだ。

じゃあ、久しぶりに僕も歌うとするか。

「がくぽ、おいで」

「…?」

がくぽに楽譜と歌詞、CDを差し出すと、子供の様にはしゃいでいた。

あはは。

この辺は似てないかな。
いや、そっくりか。

「じゃ、僕の後に続いて歌うんだぞ?」

「こにゃにゃー!」





………あの挨拶、止めておけば良かった……


http://www.youtube.com/watch?v=j8hpHw-3lXk

がくぽと一緒に歌った翌日、事務所へ行くと、アイドル達がどんよりしている。

小鳥も、律子もだ。

どうしたというのだろうか。

「…そういえば、ぷち達は?」

今の質問は、彼女達にはNGだったのかな。

沈んだ顔でこちらを向いてるよ。

おお、こわいこわい。

どうやら、目を離した隙にぷちどる達が全員消えたらしい。

少々困ったな。

それぞれ、実は家族がいたりするのだろうか。

「実家に帰ったのかもな」

そう言うと、凄まじい剣幕で怒られたよ。

僕も一応、心配してるんだけどなあ…。

「何か心当たりないの?何かヒントになるものはない?」

そう聞くと、律子がハッとしたように自分のデスクに戻ると、一枚の紙を持ってきた。

そこには、恐らくぷち達のいるであろう場所が示されていた。

見て一瞬で分かったよ。

…もうすぐ、春になるのか。

じゃあ、お酒でも買ってくかな。

http://www.youtube.com/watch?v=CbuOIT5WaDE

あはは。
やっぱりいたか。

まさか全員でお出迎えしてくれるとはな。

お酒も食べる物も用意出来なかったみたいだけど。

それでも、精一杯恩返ししようとしているぷち達の姿に、隣にいた律子が涙を流している。

はじめてのおつかいみたいなもんなのかな。

何にせよ、ありがとう。ぷち達。

…あれ?

何だか眠いなあ。

まだお酒一滴も飲んでないのに、もったいないなあ。

…少しだけ、少しだけ寝ようかな。

「…トさん!」

何だろう。
聞き覚えのある声だ。

「…クトさん!」

それに、このパイナップル頭。
うーん。

「Gacktさん!!」
「はっ!!?」

ガバッと起き上がると、律子の顔がどUPで映った。

びっくりしたなあ。
律子、何時の間に髪型変えたんだ?

「…は?」

怪訝な顔をされる。

あれ?と思って周囲を見渡すと、花見会場ではなかった。

事務所。

あれ、ぷち達は?

そう聞くと、今度は肩をすくめる。

「恐らく、寝ぼけてるんですね。顔、洗ってきてください!」

律子曰く、仕事中に寝落ちしてしまったようだ。

中々起きないので、声をかけたらしい。

うーん。
夢、見てたみたいだな。

確かに、あんなのが現れるわけないし。

「じゃあ、お言葉に甘えて顔、洗ってくるよ。…膝枕、ありがとな」

「ばっ!!?い、いえその疲れてたみたいだからと言うかその違うんです違うんですぅ!!/////」

あはは。
可愛いな、ほんと。

冷静になってみると、まあ夢だったな。

確かに、時の流れが早い感じだったし、まず小鳥と律子は僕の事をプロデューサーではなく、GACKTさんと言うからな。

ま、ゆっくり休めたし、良しとしようか。

「…」

ぷちどる、か。

元の世界にはあるのかな?

いずれにせよ、面白かったなあ。

それに、僕の分もいたしね。

うーん。

じゃ、伊織とやよいに、修Gack旅行でも行かせてみるかな?

ま、とりあえず。

「今は、トップアイドルを目指すとするか」

閑話休題みたいな感じで見といて

>>97のGACKTはGacktで

とりあえず完結

(・ω・`)乙  これは乙じゃなくてポニーテールなんだからね!

うん!乙!

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom