まどか「アビスゲート……?」【まどマギxロマサガ3】 (917)

-見滝原町 某日某所-

キャハハハハハハハハハハ

ほむら「マミッ! 射線をあけるからあの人形に一発大きいのを撃って!」

マミ「もう構えてる! 暁美さんこそ遅れちゃダメよ!」

ほむら(ワルプルギスの夜と戦いはじめてもうすぐ30分……)

ほむら(なんとか戦いにはなっているものの、私の用意した武器は大部分撃ち尽くした)

ほむら(このままじゃいつもと同じ……。このままじゃ……)

マミ「ティロッ・フィナーレッ!!」

ガオォオオオオオオン

マミ「やった!?」

ほむら「っ! まだよッ! けど、ダメージは与えられたはず……」

キャハハハハハハハハハハ

ほむら「(無傷!?)チッ! マミッ! もう一度よ!」

マミ「くっ、わかったわ!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1400915823

-同時刻 ワルプルギスの夜付近-

杏子「うっぜえんだよ! 使い魔どもがッ!」

杏子「さやか! 無事か!?」

さやか「あはは……。ごめん、ちょっと躱し損ねて結構いいのもらっちゃったかな」

杏子「(だいぶ傷が深いな)チッ! さっさとさがって回復してこい!」

さやか「ちょっと! あんた1人でなんて!」

杏子「1,2分なら大丈夫だ! やばかったらほむらに援護を頼む。いいからさっさと行きやがれ!」

さやか「っ! ごめん、杏子、すぐ戻る!」

杏子「……ったく」

杏子(くそがッ! ジリ貧じゃねえかよ……。特にさやかの被弾が増えてきてる)

杏子(畜生、このままやっても勝てる気がしねえな)

杏子「はあ、あの世にいけたら親父に謝りたいなぁ」

-同時刻 高層ビル屋上-

まどか「みんな、頑張って……」

キュウべえ「へぇ、頑張って、か。そんな言葉にどんな意味があるんだろうね」

まどか「……みんなは、絶対、勝つよ」

キュウべえ「ふーん。まどか、一つ忠告しておくよ」

まどか「…………」

キュウべえ「そろそろ決断した方がいいよ。彼女たちの限界が近いようだ」

まどか「!? 嘘っ! みんなワルプルギスの夜と戦えてるじゃない!」

キュウべえ「確かにこれほどワルプルギスの夜を食い止めたこと、それは過去類を見ない戦果だね」

キュウべえ「けれど、彼女たちもそろそろ気づきだしたんじゃないかな。ワルプルギスの夜はほとんど消耗していないってことにね」

まどか「っ! そんなっ!」

キュウべえ「このまま待っていても、彼女たちが死ぬだけだ。ああ、今さやかが負傷したみたいだね」

まどか「えっ!?」

キュウべえ「人員が減れば一人あたりの負担も増える。……おや、使い魔がここぞとばかりに攻めてきたね」

まどか「あ……。み、みんな……」

キュウべえ「さて、かくして状況は君に委ねられたわけだ。君の素質ならワルプルギスの夜だって確実に倒すことができるだろう」

まどか「わ、わたし……」

まどか(このままじゃみんなが……。けれど、私が魔法少女になったら……)

キュウべえ「さあ、鹿目まどか。君はどんな祈りでその魂を…………!?」

まどか(え?)

ほむら「!? ワルプルギスの夜の様子がっ!」

キャハhhgほrヒガガガガギギィィィィィ

マミ「止まった!? 攻撃が効いたの!?」

ほむら「いえ、これは──!?」



さやか「使い魔が消えていく……」

杏子「さやか! ワルプルギスの夜が変だ! 構えろ!」

杏子(ワルプルギスの夜の体が崩れてる? いや、あれは……)



まどか「黒い……穴……?」

まどか(何、あれ。すごく嫌な感じがする。見ているだけで体が冷たくなってくるような……)

キュゥべえ「空間に穴、異常事態だね。今、あのUNKNOWNに対して解析をしているけど……。おっと、解析結果が出たね。」

キュゥべえ「あれは魔女の結界に近いもののようだ。もっともその毒性は桁違いのようだけどね。
      アレの近くにいるだけでアレから溢れた力場によって生命活動が阻害される。
      魔女の性質と近いためか、希望の力を持つ魔法少女たちは持ちこたえられるようだけど」

キュゥべえ「UNKNOWNをアビスゲートと仮称することにするよ。
      どうもワルプルギスの夜の結界が異空間と繋がったようだ」

まどか「アビスゲート……?」

キュゥべえ「……追加情報だよ。溢れだした力自体が意思を持っているようだ。
      負の力が集まって形を作ろうとしている」

まどか「えっ?」

さやか「ワルプルギスの夜が完全に消えた……。っ! 穴が広がって! ま、まずっ! 吸い込まれるッ!?」

杏子「さやかッ!! くそっ、私も吸い込まれる!」

***

マミ「ダメ! 撃っても吸い込まれるだけだわ!」

ほむら「くっ! まどか! 逃げて……」

***

まどか「みんなあ! ひっ、いやあああああっ!」

まどか(やだ……何? 何か声が聞こえて……)

──滅びよ人間どもよ血を流せ死は幸いなり定めじゃ──
──我と一つにいざ我の袂へ──
──壊せ壊せ壊せ殺せ殺せ殺せ滅ぼせ滅ぼせ滅ぼせ──

まどか(いやっ!! やだやだやだヤダヤダやめてぇぇええ!!)

キュゥべえ「このままじゃあここも吸い込まれる! まどか! 契約を!」

まどか(やだあ! 来ないでぇっ!)

キュゥべえ「まどか!」

まどか(あ……)

私が気を失う直前にみたものは

すでに目の前まで迫った黒い穴、そして、

穴の中から私を冷笑するおそろしい「破壊するもの」の姿でした

-数分後-

キュゥべえ「キュップイ」

キュゥべえ「魔法少女たちは全滅。まどかも消失。ワルプルギスの夜も完全消滅。アビスゲートは沈黙」

キュゥべえ「やれやれ、困ったイレギュラーだよ。
      アレは破壊の方向に偏りすぎているからどうあってもこちらも目的とは合致しないだろう」

キュゥべえ「アレはあるだけで生命に悪影響を及ぼす。早急に対処したいな」


アビスゲートを見る。魔法少女4人と有望な候補1人、端末1体を飲み込んだソレは、
あの拡大の後、今度は規模を縮小してワルプルギスの夜のいた場所に留まり沈黙を保っているようだ。


キュゥべえ「それにしても、最後の穴の広がり方」

キュゥべえ「アレはまどかを狙っていたように見えたね。
      アレが近づいたときのまどかの反応にも気になるものがあったし」

キュゥべえ「まどかはアレの近くでも生命活動に問題なかったように見えた」

キュゥべえ「もしかして、まだ、まどかはアビスゲートの向こう側で生きているのかな?」

-シノンの村付近の森-

トーマス「いいか、ユリアン。我々モニカ姫護衛隊はデザートランスという陣形で戦う」

トーマス「腕力の高いエレンと年長のオレが両脇を固め、ユリアンとサラは中央後ろに立つ」

トーマス「そして、ハリードには正面最前列の最も危険なポジションに立たせる」

トーマス「ハリード以外のポジションは危険が少ない。安心して戦おう」

ユリアン「トム、お前、ハリードに何か恨みでもあるのか?」

トーマス「一番強いハリードが最前列に立つのは当然の配置だろう?」

ユリアン「だって、デザートランスの最前列ってパーティーの厄介者を据えるイメージが強いし……」

エレン「あー、別れようとしたらケッとか嫌ですとか言う奴なんかね」

トーマス「そういえば、恨みは別にないけれど、こんな話があるよ」

エレン「へぇ? 何?」

トーマス「あいつの持ってる名刀カムシーン……見せてもらったらただの三日月刀だった……」

ユリアン「うわぁ……」
エレン「それはまた……」
サラ「プレイヤーもがっかりだよ……」

ハリード「おい、お前ら。 準備できたならさっさといくぞ」

モニカ「すみません皆様。よろしくお願いします」

ユリアン「いえ、オレたちもどこまで力になれるかわからないけど」

サラ「モニカ様を頑張って守りますので」

ハリード「一応最後に確認だ。
     オレたち5人の仕事はゴドウィン男爵の謀反によって占拠されたロアーヌ侯国から逃げてきたモニカ姫を、
     遠征中のモニカ姫の兄、ロアーヌ侯爵ミカエルのもとまで送り届けることだ」

モニカ「早くお兄様に男爵の謀反をお伝えしなければ……!」

エレン「ミカエル様の宿営地はここからそう遠くないわね」

ユリアン「まあ、かの有名なトルネードがいるし、上手くいくだろ(持ってる武器は名刀(笑)だけど)」

トーマス「そうだな。ハリードはあのトルネードだもんな(名刀カムシーン(笑)だけど)」

ハリード「お前ら……その顔はなんだ」

サラ「あれ……?」

エレン「どうしたの。サラ?」

サラ「お姉ちゃん。大きな鳥がこっちに向かってきてるんだけど……」

ユリアン「大きな鳥? モンスターか」

トーマス「あの方角……タフターン山から来たのか?」

ハリード「ちっ、倒すか」

サラ「あの、それだけじゃなくて……あの鳥、人を掴んでいるみたいなんだけど……」

全員「!?」

サラ「えっと、ピンクの髪の女の子……。気絶しているみたいだけど、多分生きている……かな?」

エレン「ともかく、助けたほうがいいだろうね。ユリアン! フォロー頼んだ!」

ユリアン「は? エレン何するつもりって、ちょっ!」

エレン「トマホークッ!!」


エレンの投げた手斧は吸い込まれるようにガルダウィングに命中し、掴まれていた少女は放され落ちていった。


エレン「ユリアン、ダッシュッ!」

ユリアン「だあああああ! 無茶苦茶だあああああ!」

ハリード「ふん、あいつなかなか動きがいいな。あれならキャッチできそうだ」

トーマス「お、ナイスキャッチ……あ、潰された。そして動かなくなった」

モニカ「ユリアン様、大丈夫なんでしょうか?」

エレン「まあ、あっちはユリアンに任せてこっちを片付けないとね」


ガルダウィング「ピィシャアアアアアアア」


サラ「わー_、すごく怒っているね……」

ハリード「ユリアンが抜けたから陣形が乱れたな」

モニカ「でしたらわたくしがユリアン様の代わりに配置につきますわ」

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

ハリード「……戦闘開始時点でかなり弱っていたな」

サラ「お姉ちゃんの先制攻撃でかなりダメージ受けてたね」

トーマス「大した奴だ……やはり天才か……」

エレン「あーはいはい。ユリアーン。起きなよー」ゲシゲシ

ユリアン「うぅ……エレン、オレ頑張ったんだからご褒美にデートぐらい……」


「うぅ…………」


サラ「あ、目を覚ますみたい!」

エレン「ほら、ユリアンとっとと立ちなよ」ゲシッ

ハリード(鬼かこいつ)


「あ……れ……。ここは……?」


サラ「ここはシノンの村近くの森だよ。辺境の開拓村だから知らないかな? ロアーヌ領って言えばわかる?」

モニカ「あなたは大きな鳥のモンスターに運ばれていたのですよ」

サラ「大丈夫? 自分の名前言える?」


「え、っと……。あれ、うぅ…………」


サラ「?」


「あ、の……、私…………」





少女「私は、誰…………?」

ロマサガ3主人公簡易説明(一部攻略本参照)

ユリアン=ノール
20歳男性。剣使い。
エレンに気があるが、進め方によってはモニカともいい感じになる。リア充。

トーマス=ベント
22歳男性。槍使いで弓も使える。
シノンの村のリーダー的存在。

ハリード
33歳男性。剣使いで主に曲刀を使う。実力は主人公勢の中でトップクラス。
たまたまシノンの村の酒場にいた放浪人。装備した曲刀をカムシーンと偽る困った人。

エレン=カーソン
20歳女性。斧使い。シノンの村一番の美人。
ユリアンに懸想されているが相手にしていない。でも面倒はみてる。
腕ずもう大会で女性にしてシノンの村の頂点にたったとんでもない人。

サラ=カーソン
16歳女性。弓使い。エレンの妹の怖がりな少女。
エレンに子供扱いされているが、内心それが不満でひとり立ちしたがっている。
主人公勢で最年少である。

モニカ=アウスバッハ
19歳女性。小剣使い。ロアーヌ侯爵であるミカエルの妹。
兄の役にたつために剣や馬術の訓練をしていたらしい。
でも、主人公勢で一番弱い。年下のサラより弱い。

補足
デザートランス……中央前衛に攻撃が集中する陣形。そのため、仲間から外せないキャラを殺すために使うプレイヤーもいる。主に詩人とか。

-宿営地-

モニカ「お兄様! ゴドウィン男爵が謀反を起こしました!」

ミカエル「モニカ! わざわざ伝えに来てくれたのか!」

モニカ「はい、こちらの方々に助けていただきました」

ミカエル「そうか。すまない。礼を言う
     しかし、これから我々はロアーヌ奪還に向けて動かなければならない。
     お前たち、礼はするからもう一仕事頼まれてくれないか?」

トーマス「構いませんよ」

ミカエル「そうか、重ねてすまないな。
     仕事というのは、モニカをポドールイのレオニード伯爵のもとまで連れて行って欲しいのだ。
     そこならば敵の手も届かないだろう。彼ならば下手な人間よりも信用できる」

トーマス「あのヴァンパイア伯爵に……!」


***


トーマス「ということで、オレたちは北のポドールイまで行くことになった。
     ただハリードはロアーヌ奪還の戦力として別行動をとるようだ。
     それで、サラ。その子の調子はどうだい?」

サラ「うん……。やっぱり名前も何も覚えてないみたい」

少女「ごめんなさい……名前も、どこで暮らしていたかも、家族のことも思い出せなくて……」

エレン「服も見たことないものだし、手がかりが何もないわね……」

少女「うぅ……ごめんなさい……」

ユリアン「まあ、置いていくのもなんだし、一緒にポドールイまで連れていった方がいいな」

サラ「ねぇ……この子のこと何て呼べばいいのかな?」

ユリアン「少女でいいんじゃないか?」

少女(そんな身も蓋もない呼び方……)

エレン「まあ、それが無難かしら」
トーマス「妥当だね」
サラ「わからないんじゃしょうがないよね」

少女(それで、いいんだ……)

トーマス「さて、道中の陣形はどうしようか」

サラ「この子を戦力にするのは不安かな」

トーマス「よし、ハンターシフトでサラを最後列、少女はさらにその後ろで戦闘に参加せずバックアップ役」

少女「え、ええっと。バックアップって……?」

ユリアン「HPの少ない仲間に傷薬投げとけばいいよ」

サラ「この子にも一応武器をもたせた方がいいんじゃないかな?」

エレン「腕力はなさそうね。小剣や弓がいいかしら」

サラ「弓なら狩人の弓が一つ余ってるね。はい、これがあなたの武器」

少女「あ、ありがとう。サラさん」

サラ「同じ弓使いだから何でも訊いてね♪」

ユリアン(あ、サラがここぞとばかりに世話を焼いてる)

トーマス(自分より年下が出来て嬉しいんだろうなあ)

-ポドールイへの道-

サラ「でたらめ矢っ!!」

ゴブリン's「ウボァー」

テテテテーテーテッテテー

少女「わぁ……、サラさん凄い……」

サラ「ふふっ、そんなことないよ」

トーマス(サラ張り切っているな)

エレン(あの子もサラに対しては会話するようになってきたわね)

トーマス(記憶喪失になると、口数も少なくなり、不安からストレスも溜まりやすいと聞く。
     サラにはこのまま頑張ってもらいたいな)

ユリアン「大丈夫ですか? モニカ様」

モニカ「ありがとうございます。ユリアン様」

トーマス(こっちはこっちで頑張っているな)

エレン(ぐぬぬ、微妙に面白く無い)



-ポドールイの町-

トーマス「よし、ここで少し休憩をいれよう。30分後に町の出口に集合だ」

トーマス「オレは酒場で情報収集をしてくる」

エレン「私はモニカ様と少しの間休んでいるわ。サラはその子のことお願い」

モニカ「そうですね……。お気遣いありがとうございます。エレン様」

ユリアン「じゃあ、オレもモニカ様とエレンのそばにいるよ」


サラ「どうしよっか……私たちも休もうか?」

少女「あの、サラさん。その……、頼みがあるんですけど」

サラ「?」

-ポドールイ近くの丘-

サラ「はい。それじゃあ、弓を構えて」

少女「は、はい!」

サラ「引き絞って、相手の脳を揺らすように狙う。そして、撃つ際に矢を強く振動させるように放つっ!」

少女「矢を振動させて……放つ……」

サラ「イド・ブレイクッ!」

少女「イ、イド・ブレイクっ!」

ミヨンミヨンミヨンミヨン

ゴブリン's「ウボァー」

少女「で、出来た……」

サラ「そう、上手い上手い。ちょっと不安はあるけどコレなら戦えるよ」

少女「……戦闘ってドキドキしますね。私、汗かいちゃいました」

サラ「ふふ、私も昔すごくドキドキしたよ」

少女(袖をまくった方がいいかな…。あれ?)

サラ「? ソレって黄色いリボン?」

少女「……腕に結んであるけど、全然気づきませんでした」

少女(けど、どことなく見覚えが……。あ、何か書いてある)

少女(……。これ……これって……)

-回想 ある少女の家-

「明日……奴が……ワルプルギスの夜が現れるわ……」

「未だ誰も倒したことのない超ド級の大型魔女ねぇ……ハッ上等じゃねえか!」

「なんていうかさ。私らいがみ合ってばっかだったけどさ。今じゃ皆で力を合わせたらどんな奴にも負けないって気持ちになれるよ」

「ふふっ。暁美さんもそんな顔しないで。ほら、美樹さんを見習いなさい。ああ、鹿目さんも不安そうな顔しないの」

「マミさん……でも、みんなが戦うのにわたし一人見てるだけなんて……」

「うーん、そうねぇ……。鹿目さん腕を前に出してくれるかしら?」

「え? こうですか?」

「はい、ちょっと大きめのリボンをくるくるっと」

「え?えぇ?」

「で、サインペンを用意してっと。このリボンにみんなの打倒ワルプルギスの夜の抱負を書き綴りましょう」

「おお! なんかチームワーク向上の儀式って感じですね!」

「えー、恥ずかしいだろ。わざわざそこまでしなくてもいいじゃねーか、マミ」

「鹿目さんは明日、みんなの勝利を信じて一人で待ち続けなければならないの。それは魔法少女の戦いとは違った意味で辛い戦いになるわ」

「だからそのリボンを?」

「そう、キュゥべえに唆されても、みんなの想いと一緒にあれば、きっと信じ続けることができるわ」

「マミさん……」

「はい、じゃあ暁美さん。あなたから書きなさい」

「私から?」

「あなたにしてみれば今回以上に良い状態で迎えた世界はなかった。それだけに不安なはずよ。
 今回で成功しなければいけないのだから。そして、だからこそ、みんなでその気持ちを背負うの。
 それが仲間ってものでしょう?」

「巴さん……」

「!? あ、暁美さん……! 今の巴さんって呼び方もう一回!」

「う、か、書くわよ!」

『あなたとの約束を絶対守ってみせる 暁美ほむら』

「じゃ、次は不肖このさやかちゃんが書きましょうかねっ!」

『みんなのヒーローさやかちゃんはどんな逆境でも諦めないのだ! さやかちゃん』

「次は私かしらね。うーんそうね……」

『ワルプルギスの夜を越えたらみんなでお茶会しましょう 巴マミ』

「それ、死亡フラグじゃねーか……。しょうがねー先輩だな……」

『私はお前らを信じるから、お前らも私を信じろ 杏子』

「杏子、私も信じてるよー!」

「うっせぇ! ちょっと黙っとけ!」

「あ、マミさんマミさん! みんなの腕にこれと同じリボンつけましょうよ!」

「そうね。ふふふっ」

「みんな……ありがとう」

「あら、何言っているのかしら? まだ一人残っているでしょう」

「え?」

「そうね。巴マミの言うとおりだわ」

「ほら、親友。みんなで書かなきゃ意味ないでしょ」

「私も恥ずかしいこと書いたんだから、お前もちゃんと書けよな」

「う、うん。え、っと……。そ、それじゃあ書きます!」



『みんな、離れていても一緒だよ 鹿目まどか』

まどか「あ……。ほむらちゃん、さやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん、みんな……」

サラ「ど、どうしたの!? 泣いてるの!?」

まどか「サ、サラさん。わ、わたし……ほんの少しだけど思い出して……。
    友達が……、とっても大切な友達を思い出して……」

まどか「あ、会いたいようっ……! ほむらちゃん、さやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん……」

まどか「ぅう、うわあああああああぁぁぁぁん!」

サラ「え、えっと。どうしようっ。ほ、ほら! 私の胸なら貸すから!」

まどか「びぇぇえええええええぇぇええん!」

サラ「だ、大丈夫だよ。私も一緒に友達を探してあげるから。きっと見つかるよ」

まどか「うううっザラ゛ざあ゛あ゛あ゛んんっ!」

***

トーマス「5分遅刻だね」

まどか・サラ「ごめんなさい……」

エレン「はぁ……サラ。モニカ様も疲れているんだから、あまり寒い外で待たせないように」

モニカ「い、いえ。お気になさらず」

サラ「えっと、あのね、みんな。伝えたいことがあるんだけど……。この子の名前がわかったよ」

ユリアン「ん? 少女の名前?」

トーマス「記憶が戻ったのか?」

まどか「いえ、まだほんの少し思い出しただけです……。けど名前はもう大丈夫です」

まどか「私、まどかです。鹿目まどかです!」

サラ「うん、よろしくね! かなめ!」


まどか「…………まどかの方が名前です。サラさん」

-レオニード城-

レオニード「ほう、これは美しい。モニカ姫。あなたは祖先のヒルダにとてもよく似ていられる」

まどか(サ、サラさん。あの人吸血鬼なんですよね……)

サラ(う、うん……若くて美しい処女しか吸わないって聞いたけど、
   モニカ様は当てはまってるよね……)

まどか(大丈夫なのかな……。
    それと、な、なんかこの城ってお化け屋敷みたいですごく怖いんですけど)

サラ(う、うん。アンデッド系モンスターがたくさん出てきそう……)

レオニード「今日はもう遅い。部屋に案内するのでお休みになるといいだろう」

モニカ「は、はい。ありがとうございます」

まどか(あ、モニカ様も声が引き攣ってる)

-客室 女子部屋-

エレン「空いてる部屋は2つ。本来ならモニカ様に1部屋まるまる使ってもらうところなんだけど……」

まどか「片方の部屋に5人は多すぎますから男女でわかれるのがいいですよね」

モニカ「わたくしは皆様と一緒の部屋で全然構いません!」

サラ(モニカ様も一人は怖いんだ……)

エレン「モニカ様。すぐにロアーヌ奪還が終わって帰れるようになりますから」

モニカ「エレン様……」

エレン「そういえば、まどかは名前以外にも何か思い出せたことあったの?」

まどか「あ、はい。友達のことを少しだけ思い出しました。私の腕にリボンがあって……」


-客室 男部屋-

ユリアン「眠れない……」

トーマス「この城で寝れる奴がいたら心から尊敬するよ……」

ユリアン「トムー。なんか面白い話ないかー?」

トーマス「なら一つ、この場にふさわしい話を」


トーマス「あるところに一国の皇帝がいました。皇帝は来る戦いに備えて各地を視察しているところでした」

トーマス「そして、サバンナに視察に来たところで皇帝はそこで野営をすることに決めました」

トーマス「テントを張り、疲れから横になった皇帝ですが、奇妙な音がすることに気が付きました」

トーマス「初めは無視していた皇帝も音が増えていることに気づくと、音を確かめようとテントを出ました」

トーマス「そこで皇帝が目にしたのは、巨大なアリの大群が穴から押し寄せてくる光景だったのです」

トーマス「たまらず皇帝は叫びました」

トーマス「アリだあああああああああああああっ!!」


ユリアン「それ、何?」

トーマス「怪談」

-女子部屋-

モニカ「ア、アリ……? 今、アリだーという叫びが……」

まどか「トーマスさんの声だよね……。というか、なんでアリ……?」

サラ「あー、今のは無視していいから」

エレン「ちょっと男共を説教してくる」


そう言うとエレンは部屋から出て行った。ほどなくして隣の部屋から音がしなくなった。


エレン「ただいまー」

サラ「お姉ちゃんお疲れ様ー」

モニカ「そ、そろそろ寝ましょうか」

まどか「そ、そうですね。今日は色々ありましたし」

モニカ「お、おやすみなさい」

まどか「は、はい、おやすみなさい」

-深夜 女子部屋-

まどか(眠れない……)

まどか(……。ううん、違う。怖いんだ……)

まどか(独りを意識しちゃうと、すっごく怖い……)

まどか(モニカ様の護衛についていったのも、サラさんに弓を教えてもらったのも、
    怖さを紛らわせたかったからなんだ……)

まどか(私、あの人たちを……、サラさんを利用してるんだ……)

まどか(…………)

まどか(何も思い出せなかった時も怖かったけど)

まどか(今は、ほむらちゃんたちと会えないかも……そう考えるのが怖い)

まどか(もしかしたら、みんな、私のことなんて忘れてるんじゃないかって思えてきちゃう……)

まどか(…………)

まどか(私は、みんなのことを、友達のことを忘れてる……)

まどか(大切な友達ってことは覚えてる。けど、どんな話をして、どんな時間を過ごしたのか、ほとんど思い出せない)

まどか(私、どうして記憶喪失なんかになっちゃったんだろう……)

まどか「……。はぁ、ダメだなあ……。全然眠れる気がしないや……」

ガチャッ キィィィ

まどか「あれ? 隣の男部屋からドアの音が……」

まどか(どうしよう……)
 もう寝よう
>ちょっと様子をみよう

まどか「サラさんたちを起こさないように、そうっと……」

-レオニード城 客室前-

ガチャッ キィィィ

まどか「こ、こんばんは。トーマスさん」

トーマス「あれ? まどか。すまないね。起こしてしまったかい?」

ユリアン「悪いな。眠れなかったから散歩しようと思って部屋を出たんだ」

まどか「い、いえ。私も眠れなかったので、お気になさらず」

トーマス「ん、そうかい?」


レオニード「ほう、眠れないのかい?」ヌッ


まどか「ひっ!」ビクゥ
ユリアン「うわあっ!」ビクッ
トーマス「は、伯爵!?」

レオニード「おっと、驚かせてしまったかな。ふふふ、レディもいる前で不躾だったようだ」

ユリアン「は、はあ」

まどか「お、お構いなく?」

レオニード「そうかな? ところで、君たちは眠れないとのことだが……」

トーマス「は、はい。城内を散歩しようと思ったのですが、ご迷惑でしたか?」

レオニード「ふむ、城の地下には危険なモンスターもいる。迷惑ではないがあまりオススメできないな」

まどか「そ、そうなんですか」

レオニード「ただ、代わりにこんな話がある」

トーマス「話? それは一体」

レオニード「ここより北。財宝が隠された洞窟が存在する。
      モンスターもいるが、君らの実力で倒せないような奴はいないだろう」

レオニード「時間つぶしに行ってみてはどうかな? もちろん、行く行かないは君らの自由だ」

ユリアン「ダンジョン……ですか」

レオニード「ふふふ、では私は失礼」スッ

「…………」

まどか(影の中に消えた……)

ユリアン「……。どうする、トム? オレは行ってみてもいいんじゃないかって思うけど」

トーマス「まあ、すっかり目も冴えたことだし。トレジャーハントも悪くないか」

まどか(! この2人は行くつもりなんだ!)

ユリアン「二人だけで行くか?」

トーマス「眠っている女性たちを起こすのも悪いだろう。
     まどか、もしオレたちのことを訊かれたら説明を頼むよ」

まどか(一人で……待つ……?)ドクン





まどか「あの! 私も戦わせてください!」

ここまでで一度区切ります。書き溜めはかなりあるので、またすぐに投下します。
はい、すいません。まどマギ×ロマサガ3という謎クロスした挙句、勝手に主人公を記憶喪失にしてしまいました。
次の次ぐらいに、魔法少女を一人出したいです。

補足
ハンターシフト…最後列のキャラの弓攻撃力が上がる。弓系統の陣形技が多い。
余った狩人の弓…トーマスがひとつ装備してた。
北の洞窟…ポドールイの洞窟というダンジョン。クリア不要だが、けっこう宝箱がある。本来は5人で向かう。

どっちも好きなので期待。
ロマサガ3を最近やり始めたからよけい楽しみ。
>>1は誰が好きですか?
自分はハリードとエレンと妖精です。

もしかして
ほむら「時の卵?」
の人?

オープニングイベントの後編を投下します。

-道中-

ユリアン「…………」

トーマス「…………」

まどか「…………」

ユリアン(おい、トム。本当にまどかを前線に出す気かよ)

トーマス(ああ、少しチェックしたが、弓の扱い方は心得ているようだ。あれなら充分だ)

ユリアン(サラが教えてたみたいだったな。けど、モンスターの相手なんて出来るのか?)

トーマス(まあ、傷薬係に徹してもらう手もある。ひとまず様子見をして決める)

ユリアン(……まあ退却してもいいんだ。それに、宝が手に入らなくても問題ないか)

トーマス(そうそう、本来の目的は時間潰しだからな)


まどか(…………)

まどか(ほむらちゃん、さやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん)

まどか(何もわからないけど、友達のことだけはほんの少し思い出せる)

まどか(でも、待ってちゃダメなんだ。自分からみんなを探しに行かないと……)

まどか(戦わなきゃ。守られてばかりじゃダメ……)

まどか(みんな……。みんなは今どこにいるの……?)

-同時刻 ???-

「はあ……はあ……。くぅ……」

「ようやく……脱出できた……。けど、不覚をとったわ……」

「ここは、一体どこなの……。奴らは一体なんなの……」

「…………。まどか……」

-???-

「ボロっちい街だな……。まあ、贅沢はいえねーか」

「空き家でも探さねーとな。でもって、金と食料を手に入れねーと」

「そんで、その後はさやかを探すか……。あいつはきっとここに来てるはずだ」

「どう考えても天国じゃねーよな、ここ。ほんっとわけわかんねー。キュゥべえでいいから誰か説明しろよ」

-???-

「なんなのよ。ここ……」

「し、島……? 見滝原にいたはずなのに……」

「あ、あんたたちは何なの!? 何その格好!? きぐるみ!?」

「ねぇ……誰か説明してよ。私、どうなったのよ……」

-???-

「いやっ! どうしてこんな目に遭わなきゃならないのよっ!」

「私は何も悪いことなんてしてないわよっ! なのにどうして牢屋なのよっ!」

「誰かっ! 佐倉さん! 暁美さん! 美樹さん! 鹿目さん!」

「いやあああっ! ひとりぼっちはいやなのよおおおっ!」

-ポドールイの洞窟-

ユリアン「……着いたな」

トーマス「そうだな。モンスターも結構な数だが、確かに大した奴はいないようだ」

まどか「…………」

トーマス「陣形はオープンデルタ。オレたちは前列でまどかは後列だ」

ユリアン「まどか。ひとまず弱そうな奴と戦うから、弓で援護してくれ」

まどか「……はい」

ユリアン(やはり、緊張してるのか?)


まどか(…………サラさんは言ってた)


-回想-

サラ「弓使いにとって一番大事なのは見ることだよ」

サラ「前衛が守ってくれるから、私たちに敵が近づくことは少ない」

サラ「つまり、私たちは遠くから広い目で戦闘を眺められるの」

サラ「狩人の戦いは、相手の動きを観察することから始まるって覚えておいて」

まどか「は、はい!」

サラ「じゃあ次は、技の説明だけど……」

-現在-

ヘルダイバー「ピィイイイ!」
ゴブリン「ギャッギャッ」

ユリアン「鳥のモンスターとゴブリンか」

トーマス「行くぞっ! ユリアン、オレたちは近くのゴブリンを攻撃するぞっ!」

ユリアン「ああっ! 失礼剣!」

ズバッ

ゴブリン「ギャアアア!」ボシュウウウ

トーマス「仕留めたか……。なら、オレは! スコールッ!」

ポツ ポツッ ザアアアアアアアア

ヘルダイバー「ギャアッ! ギャア!」バッ

ユリアン「っ! まどか! そっちに行ったぞ!」
トーマス「まどかっ!」


ヘルダイバー「ギャアッ! …………ギャ?」ドスッ

ヘルダイバー「ギャアアア」ボシュウウウ

ユリアン「まどか……?」

トーマス(今の射……巧い)


まどか「……こっちに来ると思ってました。空を飛べるなら弱そうな獲物を狙うはずですから」

ユリアン「あ、ああ……」

トーマス「……まどか。モンスターと戦った経験は?」



まどか「サラさんと練習した時に、ゴブリンと狼を10体ぐらい倒しました」

ユリアン・トーマス「先に言えよ……」

トーマス「……まどかが予想よりも戦えることがわかった。もう少し奥に進もう」

ユリアン「まどか。技は何を覚えている?」

まどか「はい! 影ぬいとイド・ブレイクとでたらめ矢です!」

ユリアン「思いのほか、しっかりした技構成だっ!?」

トーマス「サラは良い教師になれそうだな……」

ユリアン「いや、これはまどかがかなり才能あったんじゃないのか?」

***

ラッパー×2「ゲコッゲコッ」

トーマス「カエル系モンスターだな。スコールは効かないな……しかし」


ユリアン「かすみ二段っ!!」
まどか「イド・ブレイクッ!」

ラッパーx2「ゲコオオオオオ」ボシュウウウ

トーマス「一撃で沈むなら問題ないか」

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

***

ユリアン「宝箱発見。お、200オーラムか」

まどか「オーラム?」

トーマス「……通貨だよ。まどか、君はどこから来たんだ。お金のないところから来たのか?」

まどか「そ、そんなことはないと思いますけど……」

トーマス「大分奥まで来たね……」

ユリアン「潜ってから1時間ってとこか。そろそろ帰還も考えた方がいいな」

まどか「は、はい」


トーマス「…………いや。ここでラストのようだ」

ユリアン「うん? ……ああ、なるほど。そういうことか」

まどか「えっ? ……あ! あそこのゴブリン……!」



ブラザー(ボス)「ギャッギャギャギャ」

トーマス「ダンジョンのボスのお出ましだな」

まどか「棍棒じゃなくて剣を持ってる……」

ユリアン「後ろの宝箱を守ってるな。アレを掻っ攫って城まで凱旋だ!」


ブラザー「ギャッ」ダッ

トーマス「来たっ!」

まどか「はいっ! …………あっ」ピタッ

ユリアン「? どうしたまどか?」





まどか「すいませんっ! 技力が切れてました!」

ユリアン・トーマス「初心者にありがちなミスッ!!?」

ブラザー「ギャッギャッギャッ」
インプ「クスクスクス」


ユリアン「……心なしかモンスターも笑ってる気がするな」

まどか「うう……!」カアアア

トーマス「ふぅ、笑い事じゃないんだけどね。ユリアン、おまえの技力はどうだ?」

ユリアン「この戦闘ぐらいなら余裕だな」

トーマス「そうか。まどか、オレと二人でインプを狙おう。ボスはユリアンに任せる」

まどか「は、はい……」



インプ「キャッ」[ねこだまし]

トーマス「のわっ!(スタン)」

まどか「トーマスさんっ! このおっ!」ヒュンッ

インプ「!?」ドスッ

まどか(倒しきれない……!)


ユリアン「ぐぅ……! すまん、毒を喰らった……」

まどか「ユリアンさんっ!!?」

ブラザー「ギャッギャッギャッ」

まどか(ど、どうしよう……。これってピンチなんじゃ……)

まどか(私が技力を使い果たしちゃったから、こんなことに……)

ブラザー「ギャハッ!」[巻き斬り]

トーマス「っ! いかん、まどか! 狙われてるぞ!」

まどか「っ!?」

ユリアン「まどかっ!」

まどか(あ……。こういう時、どうすればいいんだっけ……?)



──弓使いにとって一番大事なのは見ることだよ



ブラザー「ギャッ!!」スカッ

ブラザー「……ギャ?」



まどか「……サラさんの教えは本当に役立ちますね」



まどか「じっくり相手の剣を見たら、見切ることができましたから」[まどかは巻き撃ちの見切りを閃いた]

ユリアン・トーマス「それ絶対、サラの教えは関係ないからっ!!?」

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

トーマス「あー所詮ゴブリンだったな」

ユリアン「かすみ二段とスコールで終わったな。まあ、少しヒヤリとしたけど」

まどか「わ、私はかなりドキドキしました……」


ユリアン「それにしても、まどかは思ったよりも潜在能力が高いのかもな」

まどか「えっ?」

トーマス「ああ。エレンとサラもそうだが、近頃の女性は下手な男性よりも強いよなあ」

まどか「そ、そんな……。私なんか大したことないです! サラさんの教えがすごいだけですよ!」

ユリアン・トーマス「いや、それはない」

***

ユリアン「500オーラムとシェルブレーサー(腕防具)か」

トーマス「ふむ、まどか。装備してみるかい?」

まどか「え? いいんですか?」

トーマス「初心者なのによく頑張ったからね。敢闘賞ってとこかな?」

まどか「わあ、ありがとうございます!」



ユリアン「ところで、トム。少し知らせたいことがあるんだが」

トーマス「ん? どうしたユリアン」

ユリアン「オレの技力も切れそう」


「……………………」


トーマス「帰りは走るか……」

まどか「あの、私、短距離走は苦手なんですけど」

ユリアン「頑張れ」

-翌日 レオニード城 広間-

エレン「ふああ……。おはよーユリアン。なんか疲れてるね」

ユリアン「ああ、おはよう、エレン。昨日はあの後、伯爵から教えてもらった北の洞窟に行ってたんだよ」

トーマス「眠れなかったから時間つぶしにね。流石に3人だけでダンジョン攻略はキツかったね」

エレン「ふーん。私も誘えば良かったのに。…………、3人?」

ユリアン「まどかもついてきたんだよ」

エレン「えっ!? ちょ、ちょっと! あの子大丈夫だったの!? 素人でしょ!?」

ユリアン・トーマス「…………ふっ」

エレン「? 何その反応?」

サラ「まどかも連れて行ったんだ。んー、まどかの戦いぶりどうだった?」

トーマス「凄かった。弓に関してはオレより上だろうな」

サラ「そっか。良かった♪」

エレン「え? え?」



モニカ「皆様、聞いてください! お兄様がロアーヌを奪還したそうです!」

レオニード「つい先程、しもべから報告があってね。程なくして正式な使いがこの城にやってくるだろう」

まどか「わぁ、これで安心ですね。モニカ様!(しもべって何だろう……)」

サラ「やっとお家に帰れますね(訊いちゃだめだよ、まどか)」

-道中 馬上-

まどか「……もう城見えないですよね」(サラと相乗りしてる)

サラ「……うん、もう大丈夫じゃないかな」

まどか「モニカ様! あの人に咬まれてないですよね!」

モニカ「え、ええ! 朝全身をくまなくチェックしましたが特に問題ありませんでした!」

サラ「お姉ちゃんも咬まれてないよね!?」

エレン「え? 3人とも。どうしてそんなに焦っているの?」

まどか「だって、あの人モニカ様を見る目が何だか怪しかったです!」

サラ「あの人、獲物を吟味する目だったよ……。というか、まどかは大丈夫なの!?」

まどか「私はいいとこ中の上なのできっとセーフです! ほむらちゃんとかなら多分アウトでした!」

サラ「ダメだよまどか! ちゃんと咬まれてないか確認したほうがいいよ!
   ロアーヌについたらお姉ちゃんとまとめてチェックするから!」

ワーワーギャーギャー

ロアーヌ城 玉座の間

ミカエル「今回の件では多くの者に助けられた。特にこの場の6名は家臣でもないのによく働いてくれた」

まどか「えっと、私は大したことしてないような……」

モニカ「いえ、戦闘でのバックアップにはお世話になりましたし、一緒にいて楽しかったですよ」

まどか「そ、そうですか」ウェヒヒ

サラ(変わった照れ笑いだなあ)

モニカ「カタリナ、有難う」

カタリナ「モニカ様の勇気がロアーヌを救ったのですよ」

まどか(サラさん、あの人は?)

サラ(カタリナさん。モニカ様をロアーヌから逃した侍女さんだって)

ミカエル「みなに十分な褒美をとらせよう」

ハリード「まあ、当然の待遇だな」

モニカ「まあ、ハリード様ったら」

全員「はははははははっ」

ここまでで一旦区切り。
まどかは自分の容姿の自己評価が低いけど、魅力は18とそこそこ高めの作中設定。
あと、一応今後トリップつけることにします

ロマサガ3主人公簡易説明(続き)

ミカエル=アウスバッハ=フォン=ロアーヌ
27歳男性。小剣使い。3ヶ月前に領主に即位した若いロアーヌ侯爵。
切れ者で、実はゴドウィンが謀反を起こそうとしていることは知っていた。
反乱分子を燻り出し自身の地位を固めるために敢えて遠征に出ていた割りと黒い人。

カタリナ=ラウラン
24歳女性。大剣及び小剣使い。主人公勢でトップクラスの実力を持つ。
モニカの侍女兼凄腕の護衛で、聖王遺物の聖剣マスカレイドを扱う。

>>31
主人公はハリードとエレンとカタリナ
仲間は人外3人(伯爵除く)が好きです

>>34
違います

これはロマサガ厨の単なる戯れ言なんで無視してくれて良いんですが、
ロマサガ側のキャラのノリが妙に軽くてサガっぽくなくてちょっとガッカリしました。

>>56
非常にごもっともな意見なので深く受け止めます。
正直、好き勝手に書きすぎました。もう少しキャラの性格を読み込んでキャラ把握に努めてそれをできる限り崩さないように推敲して、次回投下します。
……どこまでできるか分かりませんが。

体術は歳星体術カタリナに使わせたい。とはいえ、歳星小剣カタリナも捨てがたい……。あと、人外3人ではなく、4人の間違いだった。エビの存在忘れてたよ……。
レベルの関係で見切りを閃けない巻き斬りから巻き打ち見切りを閃いたり、雑魚モンスターの強さがテキトウだったりしますが、気にしたら負けだと思ってます。

投下します。

-数日後 ロアーヌ 酒場-

まどか・サラ・トーマス・エレン「乾杯!」

エレン「今まで事件後でゴタゴタしてたけど、ようやく落ち着いてきたわね」

まどか「あれ? そういえば、ユリアンさんはどうしたんですか?」

エレン「……なんかあいつはプリンセスガードに抜擢されたらしいわ」

トーマス「つまり、モニカ姫の親衛隊だね」

まどか(ねぇサラさん。もしかしてエレンさんって嫉妬してるの?)

サラ(うーんわかんない。たんに散々言い寄られたのにあっさり離れていったのが不満なのかも。
   村の仲間としてなら仲は悪くなかったし)

トーマス「さて、オレは祖父からの用があるからピドナ行きの船に乗るよ」

サラ「あの怖いおじいさんからの?」

まどか(トーマスさんのおじいさん、怖いんだ……)

エレン「そっか。じゃあ、トムとはここでしばらくお別れなんだ」

トーマス「そうだね。しばらくは向こうに逗留することになると思う」

エレン「そういえば、ハリードはランスの聖王廟に行くからツヴァイク行きの船に乗るって言ってたわね」

トーマス「へぇ……」

トーマス「ああそうだ、まどかは友達を探すために旅に出るんだって?」

まどか「はい! まずはピドナに行こうと思います!」

エレン「へぇ。お金はこの前の褒賞金があるから大丈夫だと思うけど、何か心配よね……」

サラ「…………」

エレン「サラもそう思うでしょ。サラ?」

サラ「お姉ちゃん」



サラ「私、まどかの友達探しを手伝おうと思うの」

まどか・エレン「え…………?」

エレン「……………………ダメよ」

サラ「お姉ちゃん!」

エレン「あんたも聞き分けのない子供じゃないんだから、我儘言わないの」

サラ「っ! 子供子供って、お姉ちゃん、いつも私を子供扱いしてっ!」

エレン「サラッ!!」

サラ「もうお姉ちゃんなんか知らないっ!!」ダッ

カランカランカラン

まどか「え? え……? あ、あの……エレンさん……」

エレン「…………………………………………はぁ」

まどか(どうしよう……)
>サラを追う
 関わらないでおこう

まどか「あ、あの……。サラさんを探してきます!」

エレン「……待って。まどか」

まどか「え? えっと……」

エレン「しょうがないか……。ごめん、サラのことお願い」

まどか「は、はい?」

エレン「……あの子、引っ込み思案でさ。いつも私の後ろに隠れてるような子だったの。
    だから、ずっと私があの子のこと姉として守ってきたの」

エレン「けど、あなたが来て、あの子は今までになく積極的に動くようになった」

エレン「あなたのことを心配したり、弓を教えたり、友達のことを探してあげたりね」

エレン「良い変化だとは思うの、サラが活動的になるのは。
    けど、姉としてはすごく不安でもあるの。だから…………」

エレン「だから、サラのことお願い」

まどか「…………はい! わかりました!」

エレン「よろしくね。あなたがいればサラも無茶はしないだろうから」

-ピドナ行きの船 船上-

まどか「ということで、エレンさん、心配してましたよ」

サラ「うん」

まどか「でも、サラさんのしたいようにすればいいとも言ってました」

サラ「そっか。でも今は会いたくないかな」

トーマス「エレンは世話焼きだからな。サラやユリアンの面倒をずっとみてきたから、
     その2人が自分から離れるとどうしていいか分からないんじゃないかな」

まどか(エレンさん、落ち込んでいなければいいけど_)

トーマス「今回のことはエレンにもいい機会だったんじゃないかな」

サラ「……………………」

-ツヴァイク行きの船 船上-

エレン「……………………」

ハリード「よう。まだしけた面してるのか」

エレン「人を強引に連れ出して、ずいぶん失礼なことを言うわね。
    ユリアンでももっと気の利いたこと言うわよ」

ハリード「これでも気を使ってやったんだがね」

エレン「……大きなお世話よ」

ハリード「ふー。まあ、こっちとしては道連れが欲しかっただけだし、何を言われようと構わんがな」

そう言うと、ハリードは離れていった。
あのオヤジに気を使われるほど私は塞ぎこんで見えるらしい。

エレン(はぁ……)

サラのことを子供扱いしておきながら、自分自身妹離れできていなかったらしい。
これでは、サラやユリアンの方がよっぽど自立しているのではないか。


「ほむら! 何これ何これっ! 人間の乗り物っておかしいねっ!」

「はいはい。あんまり騒がしくすると、また捕まるわよ」

「ぶー。あっ、何あの生き物!」

「あれはイルカね。海の上を飛び跳ねてる……写真とか撮れないかしら……?」


エレン(向こうの子供連れ、うるさい……)

ピドナ行き船 船上

まどか「ぅうーーーーん」

サラ「?」

まどか「んんーっ てやっ」

まどか「ウインドダートッ!」

ヒュヒュン バチャバチャ

サラ「あ、蒼龍術を覚えたんだ」

まどか「はい! お金には余裕があったし、興味があったので港町の術士さんに教わりました!」

サラ「そっかー。私は術に手を出してなかったからなー。白虎術とかいいと思うんだけど」

まどか「白虎術というと土魔法でしたっけ。渋いですねー」

サラ「うん。白虎術も別に土系統だけってわけじゃないけどね」

トーマス「おーい、もうすぐピドナに着くよ」

まどか「はーい!」
サラ「すぐいくよ。トム!」

ピドナ 新市街

トーマス「ここがピドナだね。世界で一二を争う大都市だよ」

トーマス「この辺りは富裕層が多いけど、少し向こうの方に行った旧市街には貧困層が住んでいる」

トーマス「あと、ピドナには神王教団の支部があるけど、そいつらにはあまり近づかないほうがいい
     悪い噂もあるからね」

まどか「神王教団って何ですか?」

トーマス「神王教団は、次に現れる宿命の子を神に等しい存在、すなわち神王であると信じて崇めている集団だよ」

トーマス「詳しい説明は省くけど、宿命の子は300年周期で現れるんだ。
     600年前の魔王、300年前の聖王様、そのどちらも世界を大きく変革してる」

トーマス「だから、みんな未だ現れていない現代の宿命の子がどんな存在なのか気にしてる。
     神王教団のような連中が現れるのも無理はないってことさ」

まどか「はぁ、宿命の子ですか。どんな人なのかな」

サラ「結構、大したことない人かもね」

まどか「案外、そこら辺の村人がそうだったり!」

トーマス「おいおい、いくら何でもそれはないだろう」

まどか「ウェヒヒ! 冗談ですよー」

トーマス「じゃあ、オレはそこの家に用があるから、失礼するよ」

まどか「私たちはどうしましょうか?」

サラ「まず、酒場で情報収集しよう。その後、買い物しよっか」


-20分後-


まどか「特に情報ありませんでしたね……。みんなどこにいるのかな……」

サラ「で、でも! 今、グレート・フェイク・ショーっていうのがやってるんだって!
   見世物小屋らしいけど、気分転換に行ってみない!?」

まどか「……そうですね! 行ってみましょう!」

-30分後-


まどか「……………………」

サラ「……………………」

まどか「なんかグロいのがいただけでしたね……」

サラ「うん、そうだね……」

まどか「客もほとんどいなかったし……」

サラ「事情を訊いてみたら、珍しい生き物を捕まえようとして失敗したんだって。
   それで団長さん大怪我したらしいよ」

まどか「珍しい生き物って何でしょうね? 恐竜とかかなあ?」

サラ「かわいい生き物って聞いたよ。でも、女の子に邪魔されたって話なの。
   それ以来、団長さんは黒髪ロングの女性がトラウマなんだって」

まどか「はぁ。怖い女の子もいるものですね」

サラ「それじゃ、気を取り直して買い物行こっか」

まどか「そうですね。道具屋とか見てみましょう」


-10分後-


まどか「弓を新調できましたねー」(E.長弓)

サラ「この辺って産業は盛んだけど、武器とかは大したことないんだって。
   立派な鍛冶工房があるにはあるらしいんだけど……」

まどか「うーん、職人さんがいないんでしょうか?」

サラ「ヤーマスとかウィルミントンになら品揃えの良い武器防具屋があるらしいんだけど……」

まどか「北西の方の町ですよね……。お金ができたら行ってみようかな……」

サラ「あれ? トーマスだ」


トーマス「えーっと、旧市街に行くには……」スタスタ


まどか「こっちに気づかず向こう行きましたね」

サラ「どこ行くんだろ。あっちは貧民街だよね」

-旧市街-

トーマス「この家だね」

ガチャッ バタン

まどか「あの家に入りましたね」

サラ「うーん、入ってみようか? あ、もう鍵がかかってる」

まどか(え!? 他所の家に入ろうとしてる!?)

サラ「もしもーし。誰かいませんかー」

まどか(サラさんすごくアグレッシブなんだけど……。エレンさん、この人のどこが引っ込み思案なんですか)

サラ「うーん、反応がないわね」


「おい、あんた。その家に入ろうとしてるピンクの方」


まどか「えっ! あ、ごめんなさい! すぐ帰りますので!」


「いや、そうじゃなくてだな。ちょっとこっち向いて顔見せてくんない?」


まどか(ど、どうしましょう! サラさん!)

サラ(この家の人なのかな? それともまさか絡んできたゴロつき!?)

まどか(そ、そんな! 弓を構えた方がいいんでしょうか!?)


「おい、聞いてんのか? こっちはちょっと確認したいだけなんだけど」


サラ(ど、どうしよう! お姉ちゃんはナンパされた時、パンチ一発で沈めていたけど)

まどか(エレンさんじゃ参考になりません! とにかく逃げた方が……)


「おい、だから…………」



杏子「こっち向けって言ってんだろうがッ!!」

まどか「杏子ちゃん!!?」

サラ「え! まどかの友達!?」

杏子「やっぱ、まどかだったか。へへっ、無事で何よりじゃん
   さやかたちはいないのか? ていうか、おまえ大丈夫だったのか?
   ワルプルギスの夜が消えたと思ったら、わけわかんねー内にこっちに来ちまったけど」

まどか「え、あっ、えっと。うーんと」

サラ「あの。杏子……さん? ……実は」

杏子「?」

***

杏子「は? えっ? 記憶喪失?」

サラ「自分の名前とか、大切な友達のこととかはかろうじて覚えてるらしいんだけど……」

杏子「お、おいおい。大丈夫なのか!? 私のこととか分かるか!?」

まどか「えっと、杏子ちゃんだよね……」

杏子「ああ。……他には?」

まどか「えっと、髪が赤い?」

杏子「見たまんまじゃねーか!!」

まどか「ご、ごめんね。実はほとんど覚えてなくて……」

杏子「ああ、いや。別に謝ることはねーよ……。まあ、ほむらが知ったら卒倒しそうだけどな」


シャール「さっきから何してるんだ。君らは……」ガチャ

トーマス「サラにまどか? どうしてここに?」


杏子「シャール。わりーな、騒がしかったか」

トーマス「シャールさん、そっちの2人は私の仲間です」

サラ「トーマスが旧市街に向かったから気になって、
   それでこの家の前にいたら、まどかの友達の杏子さんが……」

杏子「ああ、杏子でいい。こっちが年下だし。こっちもサラって呼ばせてもらうよ」

シャール「おまえはもう少し年上を敬ったらどうなんだ……。ああ、私のこともシャールで構わない」

杏子「とりあえず、おまえら。色々話したいこともあるし、家の中入りなよ」スタスタ

シャール「なんて厚かましいやつだ……まったく」

***

ミューズ「そうですか。トーマスさんの仲間で杏子の友達なのですか」

まどか「は、はい!」

トーマス(こちらは没落した名家の娘で、事情があって旧市街に住んでいるミューズ様だよ)

シャール「ミューズ様は体が弱いので、あまり騒がしくしないようにな。特に杏子」

杏子「わかってる。ミューズの前ではおぎょーぎ良くするって。あ、りんごもらっていい?」

ミューズ「はい、どうぞ」

杏子「サンキュー。ミューズ」シャクッ

シャール「ダメだこいつ……。早く何とかしないと……」

ガチャッ

子供「うえ~ん、ミューズさま~。ミッチがぁ~。ゴンがぁ~」

杏子「どうした!?」

子供「かくれんぼで、ミッチがどこにもいなかったの。それでゴンがまおうでんをさがすって……」

ガチャッ

ミッチ「うえ~ん」

杏子「おい、言ってるそばからミッチが来たぞ」

シャール「ミッチ、ゴンはどうしたんだ?」

ミッチ「知らない。うえ~ん」

ミューズ「大変っ! 早く探さないと! シャール、魔王殿へ向かってください!」

杏子「ったく、世話の焼ける……。急ぐぞ!」

まどか「魔王殿って……?」

シャール「魔王殿は旧市街の奥にある建造物だ。あそこは、モンスターの巣窟になっていて、しかも神王教団が宝あさりをしている。
     ゴンがそこに行ったのなら非常に危険だ!」

まどか「説明ありがとうございます! 私達も手伝います!」

杏子「って、おい。まどか! おまえ戦えんのか!?」

まどか「大丈夫、弓と蒼龍術なら練習したから」

杏子(サラ、こいつ大丈夫そうか?)

サラ(後衛にいれば心配ないと思うよ)

-魔王殿 広間-

トーマス「いいか、まどか。我々はパワーレイズという陣形で戦う」

トーマス「(中略)……よって、最後列の君の術攻撃力が向上する。意識して戦ってくれ」

まどか「わかりました!」

サラ「まどか! 今何か子供の声が聞こえなかった!?」

まどか「階段の下のほうからですね! 行こう! 杏子ちゃん!」

杏子「焦って陣形乱すなよ! おまえは後列で術に専念しとけ!

シャール「む、モンスターか。杏子、倒すぞ!」

杏子「ハッ、誰にものを言ってんのさ! もう戦闘態勢に入ってる!」


クリプトン「……」


杏子「っしゃあ! 合わせろよ、シャール!」

シャール「おまえが囮で、こっちが攻撃だな」

杏子・シャール「時間差攻撃!」

クリプトン「!?」

ズシャッ ボシュウウウウウ

サラ「杏子が突撃したと思ったらジャンプで避けて、
   シャールが後からタイミングをずらして攻撃した!」

まどか「合体技……。サラさん、私たちもなにか合体技やってみましょう!」

サラ「この陣形だと無理じゃない?」

まどか「そんなのってないよ……」

杏子「おい、まどか! そっち行ったぞ!」

ゴースト「ウラメシヤー」

まどか「っ! ウインドダート!」ヒュンッ

ゴースト「ヌワーッ」

サラ「とどめっ!」シャッ ドスッ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

杏子「ん……まあ、ちょっと危なっかしいところはあるけど、戦えてるな」

まどか「ウェヒヒ……」

***

まどか「あれからゴンくんの声、聞こえないね……。影ぬいっ!」

杏子「ちっ、奥のほうにはいってったのか? おらぁ! チャージ!」

トーマス「モンスターが多いな……、どこかに隠れていればいいんだが。スコール!」

シャール「部屋の中に隠れたのかもしれないな……。大車輪!」


サラ「あれ? あそこの部屋の扉、開いてる……」

杏子「! ナイス、サラ! ゴンはあそこか!」

シャール「行くぞ、杏子!」

ゴン「うわああー、くるなーっ!」

羅刹x3「ギギギギギ……」

まどか「何アレっ! 強そうなモンスターが3体も……!」

杏子「魔王殿中盤のモンスターだ! くそっ!」ダッ

ゴン「きょーこっ!」

杏子「鉄砕鞭ッ!」

羅刹「ギャッ!?」ボシュゥゥゥ

サラ「槍がいくつにも折れて、鞭のように敵を切り刻んだ!」

シャール「杏子の槍は多節槍なんだ。しかし間一髪だったな」

羅刹x2「ギギッ!?」

トーマス「向こうもこちらに気づいたようだな。そして、こっちは走ったから陣形が乱れている」

杏子「はっ。フリーファイトか! 上等だっ!」

まどか(よく見たら、あのモンスター腰に生首ぶらさげてる……。うぅ、見なかったことにしよう)

羅刹A「……」

サラ「(何か詠唱してる?)フラッシュアロー!」カッ シュシュシュシュン

杏子「ヒュゥ! 思ったより素早いじゃん、サラ! 次は私だ! 鉄砕鞭!」

羅刹B「ギャハッ」バッ スカッ

杏子「っ! ジャンプして避けやがった! シャール! そっち行ったぞ!」

シャール「くっ、脳削りッ!」

羅刹B「シャアアアッ!!」[カウンター]

シャール「ゴフウゥッ! し、しまった……」バタッ

サラ「シャールがやられた!」

杏子「チィッ、油断しやがって!」

トーマス「今度はオレだ! 二段突き!」ザシュ ザシュッ

羅刹A「ニヤリ」[セルフバーニング]

トーマス「ぐあああああ」バタッ

サラ「トーマスもやられた!」

杏子「くそっ! 男二人沈むの早すぎんだろ!」

サラ「こいつら、カウンター系の行動を持ってる……! 接近戦じゃあ不利かも……」


まどか「わわわ、ソ、ソーンバインド!」

羅刹x2「ギィ!?」

杏子「当たったはいいが、効果が薄いな……。まどか、もっと別な術はないのか?」

まどか「えっと、あとひとつあるかな……。うん、使ってみる」

サラ「来るよっ!」

杏子(遠距離攻撃ならカウンターもセルフバーニングも防げる。
   なら、私に攻撃を集めさえすれば、まどかとサラは大丈夫か……)

羅刹A「ガアッ」[火炎]

杏子「はっ、ワルプルギスの夜に比べたら大したことねーな!」ヒョイ

羅刹B「ギギッ」[角]

杏子「ぐっ! いってーなっ! このッ!」ブンッ

羅刹B「ギャッギャッ」バッ スカッ

杏子(ちっ、最初の鉄砕鞭で完全に警戒されてるな……普通に攻めても避けられるか)

サラ「でたらめ矢っ!」シュシュシュシュシュシュシュシュン

羅刹x2「ギギ!?」

サラ「今よ! まどか!」

まどか「はい! 行きます!」

まどか「ナップッ!」モワワワーン

羅刹B「!? グゥ……」zzz

杏子「眠らせる魔法か! まどかナイスだ!」

まどか「あんまり成功しないんだけどね」ウェヒヒ

サラ「それより、杏子は大丈夫なの? さっき角を受けてたけど……」

杏子「へっ、別にいいんだよ。これぐらいな」

羅刹A「ガアアアァ」[キック]

サラ「ああ、また杏子にっ!」

杏子「はっ、なぁーに、こんなの…………」

杏子「狙い通りさ!!」

羅刹A「ギッ!?」

杏子「オラァッ かざぐるまああっ!!」

ズシャアアアアッ!!

まどか「カ、カウンター技!?」

羅刹A「ギャアアアア」ボシュウウウ

サラ「まさか! 敵の攻撃を自分に集めていたのは私たちを守るためだけじゃなく、
   かざぐるまを決めるためでもあったというの!?」

杏子「最初の鉄砕鞭で私は完全にマークされてたからな。
   けどそのおかげでかえってやりやすかったよ」

サラ「で、あとは……」

羅刹B「グゥ……」zzz

サラ「イド・ブレイク!!」
まどか「ウインドダート!!」
杏子「エイミング!!」

羅刹B「ウボアー」ボシュゥゥゥ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

ゴン「きょーこ……」

杏子「この馬鹿! 魔王殿には行くなっつっただろ!」

ゴン「み、ミッチは?」

シャール「大丈夫、ミューズ様のところで待ってるよ」

ゴン「……。うわーーん。きょーこおぉー。こわかったよぉー」

杏子「はぁ、ったく」

まどか「よしよし。頑張ったね、ゴンくん」

***

-ミューズの家-

ミューズ「皆様、ゴンを助けていただきありがとうございました」

まどか「いえいえ、ゴンくんが無事で良かったです!」

ミューズ「杏子もありがとう」

杏子「へへっ。まあ、いつも食わせてもらってるんだから、これぐらいしなきゃな」

サラ(何か、返し方がハリードみたいだね)

トーマス(こっちの方が可愛げあるけどね)


ゴン「それで、きょーこが、ずばあーってモンスターをたおしたんだぜ!」

ミッチ「きょーこすごーい!」

ゴン「オレ、がんばってとっくんして、きょーこのようにつよくなるっ!」

杏子「はいはい、頑張れよー」

ゴン「それで、つよくなったら、きょーことけっこんするっ!」

杏子「はいはい、頑張…………って何ィッ!!?」

ここまでで投下終了。
テレパシーを使える魔法少女はきっとファイターモードであっても陣形技を使えるに違いない。
というかゲームで、サラと少年の二人に陣形技を使わせることができないのがとても納得いかない。
よって、このSSではファイターモードでも使います。アラケスの戦鬼のごとく使います。

補足
パワーレイズ…後衛中央の術攻撃力が上がり、前列2人の素早さが上昇する陣形。
鉄砕鞭…まどポやまどオンの杏子の必殺技。このSSでは単体攻撃かつ遠距離攻撃。消費WP5
杏子の槍…攻撃力28 重量1 特殊技・鉄砕鞭 杏子の固有武器 ……という作中設定。
腰に生首…って攻略本に書いてあった。
フリーファイト…全員が横一列で自由に動く陣形と呼べない陣形。

今日の分を投下します。

-回想 ある廃れた協会-

「あ、こんにちは、杏子ちゃん……」

「ん、まどか一人か、珍しいな。他の3人とは一緒じゃなかったのか」

「うん、ほむらちゃんとマミさんはさやかちゃんについているから少し遅れるって。
 それで私一人先にここに来たの」

「ふーん。随分浮かない顔だけど」

「……ほむらちゃんが私抜きで話したいことがあるって」

「……まあ、昨日は色々あったからな」
「さやかもアレだけお前に汚い感情ぶちまけちまったんだ」
「しばらくはフォローする奴が必要だろ。マミとほむらならアメとムチってところか」

「う、うん……」

「で、おまえはおまえでマミやほむらにはできない相談をしにきたってとこか」

「……………………」

「ま、なんとなく内容は想像つくけどな」

「……昨日、さやかちゃんに言われたからってわけじゃないんだけど」

「いや、それ嘘だろ。思いっきり堪えたから相談しに来たんだろ」

「うぅ……」

「お前も化け物になってみろよ! とか、恭介も仁美もまどかも大嫌い!、だったか」

「…………」

「で、お前も魔法少女になろうかって?」

「ち、違うよっ! ほむらちゃんと約束したし、契約するつもりはないよ!」

「ま、それが正しいよ。じゃ、何に悩んでんだ?」

「…………私ね。今まで魔法少女にならなくても自分のできる精一杯をしようって思ってたの」

「……そうだな。よくわかるよ」

「ほむらちゃんと一緒にいたり叱ったり、さやかちゃんの応援したりお見舞いの付き添いしたり、
 みんなが喧嘩しないようにしようとしたり……」

「ああ、魔法少女でもないのにものすごくうろちょろしてたよな」

「でもそういうの、私が勝手にみんなのためって思ってるだけで、実際はただの迷惑だったんじゃないかって」

「昨日さやかにボロクソ言われてそう考えたってことか」

「魔法少女でもない私じゃ何もできないのかな……」

「ま、半端な慰めなんていらないだろうし、思ったことそのまんま言うけどな……」

「割りと鬱陶しかったな」

「ううっ」

「さやかとの戦闘止めるときの言い分も、さやか寄りだったし」

「ぐぅっ」

「ほむらから事情を聞いたせいか、妙に私に同情的で気味悪かったし」

「あうぅっ」

「ぶっちゃけマミが増えたかと思った」

「うぇひぃっ」


「ま、そう思ってたよ。けど、嫌いってわけじゃないな」

「え?」

「おまえやほむらがいなきゃ、私は今も一匹狼気取ってたし、さやかも勘違い正義バカやって野垂れ死んでた」

「…………」

「迷惑だけど、悪くない迷惑だったんじゃねーの?」

「そうかな……」

「おーいっ! まどかー!」


「さやかちゃん!? みんな!」

「はぁ、はぁ。まどか……。こんなこと言うのは恥ずかしいんだけど……」

「え? う、うん……」

「私を、ぶってください!!」

「ぇええっ!?」

「おい、さやか……。頭おかしくなったか?」

「そうじゃないわ、杏子。その……、これを発案したのは美樹さやかじゃなくて……」


「つまり、走れメロスよ! 美樹さんのなかにわだかまりがあるのなら、鹿目さんに殴ってもらって解消すればいいのよ!」

「……と、こういうことよ」

「あー、マミの思いつきか……」

「まどか……。昨日は私あんなこと言っちゃったけどさ……。私、まどかとは親友でいたいんだ」

「はぁ……まどか、殴ってあげなさい。さやかにはこうするのが一番いいから。……たぶん」

「う、うん……。え、えーい」

ペチッ

「…………」

「もう一回だな」

「もう一回ね」

「ぇえーー!?」

-魔王殿探索から2日後早朝 ピドナ 宿屋-

まどか「……また、少し思い出せた」

まどか「杏子ちゃんって言いたいことズバズバ言うけど、結構面倒見がいいよね」ウェヒヒ

サラ「あれ? まどか起きてたんだ」ガチャッ

まどか「サラさん。今までどこに?」

サラ「早起きしたから弓の訓練でもしようと思って準備してたの。まどかも一緒にやる?」

まどか「はいっ! ご一緒します!」

サラ「ふふっ、じゃあ行こっか」

-朝 ピドナ 新市街-

杏子「で、魔法少女ってのは魔法を使うたびにソウルジェムが濁るんだけどな。
   完全に濁っちまうと、……あー、……まあ、死ぬんだよ。死ぬと考えていい」

サラ「そうなんだ……。なんだか物語に出てきそうな話だね……」

杏子「全く厄介な話だよ……。それで、こっちに来た後に少し魔法を使ってみたんだけどな。
   何か魔法が使いづらくなってるんだよ」

まどか「使いづらく?」

杏子「なんか魔法を使うと露骨に生命力を削られる感じがすんのさ」

サラ「具体的には使うたびにLPが1減る感じ?」

まどか(サラさん、本当に具体的ですね!?)

杏子「まあ、私はもともとあまり使わないけど、さやかの奴が心配だ。
   マミやほむらなら魔法使わず戦えそうだけど、さやかはド素人に毛が生えた程度だからな」

まどか「で、でも私でも戦えるんだから、さやかちゃんだって大丈夫なんじゃ……」

杏子「なまじ無茶できる分、おまえより危なっかしいんだよ。さやかは」

まどか「そっか……」


杏子「着いたな。ここだよ、二人共」

サラ「ここが鍛冶工房……?」

杏子「おーい、ノーラ、ケーン、客が来てやったぞ―」スタスタ

-鍛冶工房-

ノーラ「杏子、久しぶり! あれ、そっちの2人は?」

杏子「まどかとサラだ。私の仲間だな」

ノーラ「そっか。よろしくね」

まどか「はい! こちらこそ!」

サラ「立派な工房なのに職人は2人だけなの?」

杏子「あー……。ノーラ、説明するけどいいか?」

ノーラ「ん……、ま、情報提供者は多い方がいいし、構わないわ」

杏子「そっか。ま、ざっと説明するとだな」

杏子「この工房には聖王の槍っていう宝があったらしいんだよ」

杏子「けど、ある時、ルードヴィッヒって奴がミューズの親父さんを殺した」

杏子「そして、その時に混乱に乗じて誰かが火事場泥棒したそうなんだ」

杏子「で、この工房の親方が取り戻そうとしたらしくて、1年後ピドナに槍があると突き止めたんだ」

杏子「けれど、取り戻しにいった親方は数日後に港で亡くなっていた」

ノーラ「親方が死んで、この工房から一人二人と職人が離れていった……
    残った職人は、ケーンと親方の娘の私だけよ」

ケーン「親方の仇の手がかりは、この赤サンゴのピアスと、ジャッカルという言葉だけなんです」

サラ「そんな……」
まどか「ひどい……」

ノーラ「あなたたちも何かわかったら教えてね」

まどか「はい! わかりました!」

杏子「ところで、ケーン。頼んだものは?」

ケーン「はい! ヘッドバンドです!」

サラ(うわあ、微妙な防具)

-ピドナ 旧市街-

杏子「さて、こっから重要な話なんだが……」

まどか「杏子ちゃん?」

杏子「まどか、おまえは記憶喪失だって話だけど、そうなったとき、一番最初どこにいたかわかるか?」

まどか「え? えっと、シノンの森かな」

杏子「シノン? どこだよ、そこ」

まどか「えっと、ロアーヌかな」

サラ「まどかは鳥のモンスターに気絶した状態で運ばれてたから、よく分からないんだ」

杏子「は? おいおい、何がどうなってそんな状態になったんだよ……」

まどか「ご、ごめんね。杏子ちゃん」

杏子「あー、まあいい。で、私のことなんだが」


杏子「私は気づいたら魔王殿の入り口にいたんだよ」

サラ「魔王殿に?」

杏子「ああ、それで、最初は魔王殿のどこかにおまえらもいるんじゃないかって思って探してたんだよ」

杏子「旧市街の空き家を根城にして、魔王殿の地下に挑む毎日だったな」

杏子「そしたら、神王教団の連中に目をつけられてさ」

杏子「ウザかったから実力行使で追い払ってたんだけど、結局しつこく付け回されたんだよ」

杏子「で、面倒だったから住処を変えようと思ってボロ屋に入ったら……」

杏子「そこはミューズの家だったって話さ」

まどか「そうだったんだ……」

杏子「最初は驚かれたけど、女で子供だからルードヴィッヒの手下ではないって信じてもらえたよ」

サラ「ふふっ、杏子は誰かの手下って感じじゃないもんね」

杏子「で、ミューズに色々と話を聞いて決めたんだけどさ」

杏子「私は、魔王殿の最奥に挑もうと思ってんだ」

まどか「魔王殿の最奥?」

サラ「! それってつまり……」


杏子「ああ、アビスゲートだ」

まどか「!」ドクン

まどか(アビスゲート……、何だろう……その言葉を聞くと動悸が……)

杏子「アビスゲートを調べれば、見滝原に戻る手がかりが見つかるんじゃないかと思ってさ」

杏子「まあ、間違いなく四魔貴族のアラケスと戦うことになると思うけどな」

まどか「四魔貴族って?」

サラ「アビスの魔物を統括する4体の魔貴族……かな」

杏子「要はモンスターの親玉だな」

まどか「それって、ものすごく強いんじゃ!?」

杏子「はっ、今さらだろ。ワルプルギスの夜だって誰も倒したことがないってのに戦ったんだ」

杏子「アラケスは聖王が一度倒してるって話だ。つまり、ワルプルギスの夜よりはマシっつーこった」

サラ「ワルプルギスの夜って?」

杏子「街ひとつ吹っ飛ばすモンスター」

サラ「なにそれ怖い」

杏子「しっかし、まどかはロアーヌにいたのか……」

サラ「まどかはロアーヌ、杏子はピドナ。それじゃあ……」

まどか「ほむらちゃんたちはどこにいるんだろう……」


3人「うーん…………」

-一方その頃 ランス-ファルス間の道-

野盗A「ひぃ~! なんだこのアマっ! むちゃくちゃ強ぇ!」

野盗B「相手は女一人だろ! 囲んで腕力で押さえ込め!」

エレン「やれやれ……、次元断」ギュイイイイン

野盗x5「ぐわあああああああ」ボシュウウウ

エレン「これで2000オーラムか。さっさと運搬を終わらせよう」スタスタ

-ファルス-

エレン「これで仕事終了っと。あら? 何だか活気がないわね」

兵士「うう……くそっ。スタンレーの連中め」

エレン「ねぇ、何があったの?」

兵士「ああ、以前からスタンレーの奴らが野盗を使ってこの町の交易を妨害してやがったんだけどよ……」

兵士「これ以上奴らの好き勝手にさせるかって、昨日スタンレーに対して戦争しかけたんだよ」

兵士「戦力はこっちの方が倍近くあって、絶対勝てるはずだったんだ!」

兵士「そしたらどんな卑怯な手を使ったのか、あいつら凄腕の傭兵を雇ったみたいなんだ」

兵士「……そいつはやたらと工作が上手くてな」

兵士「こっちの陣近くに爆発物が巻かれていたり、戦争直前に武器が大量に紛失したりしてまともに戦えなかったんだ」

兵士「トルネードなんか目じゃないぜ……。結果として被害をほとんど出さずに倍の戦力を叩き伏せたんだからな……」

兵士「見た目は美少女で13,14歳ぐらいって話だが、オレは魔術で加齢を止めた魔女だと見てるね」

兵士「恐ろしいぜ……。あの戦争以来、そいつは「黒魔女」って呼ばれてるんだ」

エレン「ふーん。まあ、何にせよ」

エレン「さっきの野盗から聞き出した、野盗のアジトを潰しに行かないと」スタスタ

-ピドナ 新市街-

まどか「……うん。旅を続けていたら、きっと他のみんなにも会えるよね」

サラ「きっと元気にやってるよ」

杏子「死にそうにない奴らばっかだから、まあ大丈夫だろ」

まどか「杏子ちゃん! 私も魔王殿攻略手伝うよ!」

杏子「おいっ! 本気かよ」

サラ「杏子こそ! 一人でダンジョンに挑むなんてお姉ちゃんでもやらないよ! ……たぶん」

杏子「いや、たまにシャールが付いてきたりするけどな」

まどか「そうなの? シャールさんが?」

杏子「理由はその都度違うけどな。おまえの槍の腕前を見るだの、腕を鈍らせないため付き添うだの」

まどか(シャールさん、杏子ちゃんを心配してるのかな?)ヒソヒソ

サラ(でも、シャールさんってミューズ様の部下だよね? この場合、杏子を心配してるのはミューズ様の方じゃない?)ヒソヒソ

まどか(あ、そっか。ミューズ様の許可無しにシャールさんが動くわけないですよね。というか……)ヒソヒソ

まどか・サラ「一人で魔王殿なんて聞いたらそりゃあミューズ様も心配するよ!」

杏子「うおっ!? いきなり何だよ!?」

まどか「サラさん、決まりですね。杏子ちゃんに同行しましょう」

杏子「はあ……。魔法少女は単独で動くのが基本なんだけどなー」

-ミューズの家-

まどか「そういうわけで、杏子ちゃんの魔王殿探索に付いていこうと思います」

シャール「是非付いて行ってくれ。本当に」

サラ「やっぱり、杏子が心配で付き添ってたんですね」

シャール「実力は知ってるんだがな……。14歳の少女が一人魔王殿に行くなど流石に前代未聞だ。
     ミューズ様がそれを聞いた時、気の毒なほど狼狽え心配なさったぞ」

まどか「そういえば、ミューズ様って杏子ちゃんに甘いですよね」

シャール「ああ、ミューズ様は病気でこの通りだからな。友人と言える立場の人間が少ない分、
     明け透けな杏子に親しみを感じ、また、その奔放さが眩しくもあるのだろう」

サラ「箱入りのお姫様と忍び込んだ盗賊が恋をする話のような感じだね」

まどか「確かに。そんな感じなのかも」ウェヒヒッ

シャール「話を戻すが、杏子に付いてくれるのはありがたい。
     ミューズ様がお休みになられた以上、お側を離れることはできんからな」

サラ「シャールは付いていかないんだね。じゃあ、3人で魔王殿に行くことになるんだ」

まどか「トーマスさんは何だか最近忙しそうですしねー」

サラ「会社作ったって言ってたね」

-魔王殿 入り口-

杏子「ん、来たか」

まどか「お待たせー」ウェヒヒッ

杏子「陣形はクローズデルタでいいな。私が前衛でおまえらが後衛だ」

サラ「わかった。あ、そういえば、ちょっと前に白虎術を覚えてきたよ」

杏子「白虎って言ったら土だったか?」

サラ「うん。岩石撃ちだしたり、地割れ起こしたりするよ」

杏子「おおっ、強そうだな」

まどか「杏子ちゃんは術を覚えたりしないの?」

杏子「んー、私は槍で戦ってるほうが慣れてるしなあ」


-魔王殿 地下-

サラ「この前のゴンがいた場所付近に結構あっさり辿り着いたね」

まどか「杏子ちゃんは今までどの辺りまで探索したの?」

杏子「ん? 結構奥までいったよ」

サラ「具体的には?」

杏子「あー、確か……」


杏子「骸骨系モンスターが大量に潜んでいるエリアまでだな」

-20分後 魔王殿 骸骨系モンスターが大量に潜んでいるエリア 入り口-

まどか「……道中の宝箱、全部空だったね」

杏子「ん? ああ、前に探索した時、全部回収しといたからな」

サラ「そりゃあ、神王教団にも目をつけられるよ……」


骸骨たち「…………」


杏子「あー、こいつらが面倒くさいんだよなあ」

サラ「骸骨系モンスターは槍や弓じゃダメージ与えにくいもんね……」

ゾロゾロゾロ

まどか「何か、ものすごく数が多いんですけど……」

杏子「ま、そんなわけで、こいつらから逃げ回りながら先に進むぞ」

まどか「え、相手しないの?」

杏子「使い魔と一緒だ。いちいち相手してられっか!」

-5分後 魔王殿 骸骨系モンスターが大量に潜んでいるエリア 大きな扉の前-

サラ「な、なんとか切り抜けたね……」

杏子「で、この扉なんだけどさ」

まどか「扉がどうしたの?(扉に触れる)」


「指輪を……」


杏子「こんな感じに扉を開けるために指輪を要求されるんだよ」

サラ「ふーん。それで、指輪は?」

杏子「あるわけないじゃん」

まどか「……………………」

サラ「……………………」

まどか・サラ「何しに来たのッ!!?」

サラ「普通、キーアイテム要求されたら、それを探しに行くよね!
   わざわざ二度も行く必要ないでしょ!」

杏子「いや、指輪って、情報少なすぎだろ。この世界にいくつ指輪あると思ってんだよ」

まどか「え、それは確かに……そうかも」

杏子「だからさあ、私の結論としてはさ」


杏子「扉破壊して強行突破した方が早くね?」

まどか「……………………」

サラ「……………………」

まどか「確かにその通りかも……?」

サラ(説得されたっ!!?)

サラ「待って! まどか、ものすごく非常識だから!
   そんなどこかの運河要塞のような方法がまかり通るように出来てないんだよ!」

杏子「なぁーに、魔法少女ってのは不可能を可能にする存在なんだ。奇跡ぐらい起こしてみせるさ」

サラ「かっこいいけど、明らかにそのセリフ使う場面間違ってるよっ!」

まどか「あ、杏子ちゃん。骸骨系モンスターがこっちに迫ってきてるけど、どうしよう?」

杏子「無視して扉攻撃するぞ」

サラ「ダメだこの人たち……。早く何とかしないと……」

-3分後-

まどか「ダメだったね……」

杏子「火力が足りなかったな。この手の破壊活動はほむらが得意なんだけどな」

サラ「(どんな魔法少女!?)……まどか、あなたの友達ってそんな物騒なの?」

まどか「えっ? ええっと……可愛い女の子だったと思いますけど……」←記憶があいまい

杏子「壊すなんて発想が出たのは、大体ほむらのせいだな」

サラ(すごく物騒な子だよ! そのほむらちゃんって子!)

杏子「はあ。この先に行くためには、ほむらを仲間にする必要があるってことか」

サラ「指輪でしょっ! 何で破壊活動にこだわるのよ!?」

杏子「結局、無駄足だったか」

まどか「ただのレベル上げで終わっちゃったね」

サラ「はあ、ちょっと疲れたよ……。無理言ってトムを連れてきた方が良かったかも……」


杏子「あ、そうだ。一箇所後回しにしてた場所があるんだ。まどか、サラ、そこ行くぞ」

まどか・サラ「?」

-魔王殿 転移魔法陣部屋-

蛇女A「ふふふっ、人間が来たわね」

蛇女B「可愛い女の子が3人も……、食べちゃいたいわ」

まどか「か、可愛いって言われちゃった」ウェヒヒ

サラ「こ、ここは?」

杏子「あのモンスターが守ってる魔法陣がどこかに繋がってるみたいなんだよ。
   けど、5匹もいるから流石に手が出せなくてな」

蛇女E「あ、この魔法陣? 入り口近くの部屋に繋がってるわよ」

まどか「あ、どうも」

杏子「入り口ね。使えるようにしとけば、今度来るとき楽だな」

蛇女C「私たちを倒す気? ふふっ、悪い子ねぇ。クスクス」

蛇女D「悪い子は教育してあげる……。うふふ、大丈夫、気持ちいいこと沢山教えてあげるから……」

蛇女E「まあ、気持ちいいこと=ライフスティールなんだけどね」

まどか「そ、そうなんですか」

杏子「先制攻撃だ! まどか、サラ、やるぞ!」

サラ「(杏子に補助をかけなきゃ)ベルセルクッ!」

杏子「っ! っしゃあ! 力が漲ってきた、大車輪ッ!」

ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン

まどか「補助術からの全体攻撃……! やった!?」

蛇女A「う……ちょっと油断したわね」

蛇女B「たっぷりお返ししなきゃね」[巻きつき]

杏子「ぐぅ!」ギュルギュルギュル

蛇女C「そして、そのままライフスティール!」[ライフスティール]

杏子「くあ……! はあっ……!」

まどか「杏子ちゃん!」

蛇女D「ふふっ、どうかしら? 体の芯まで甘い痺れが駆け抜けていって堪らないでしょう?」

まどか「なんでこの人たち、喋る言葉がいちいちいやらしいんだろう……」

蛇女E「えっと、ノリ?」[冷気]

まどか「あ、そうなんですか。……ひあっ、冷たっ!?」

蛇女A「あなたもおいしそう……」[サクション]

サラ「くぅ……!」

まどか「サラさんっ! フラッシュアローッ!!」カッ ヒュヒュヒュヒュヒュンッ

蛇女x5「キャアアァァ!」ボシュウウウ

サラ「倒した!? ううん、まだ一体残ってる!」

蛇女E「あちゃー。皆やられちゃったわね」

まどか「杏子ちゃん、大丈夫?」

杏子「魔法少女は一部の感覚を遮断できる。問題はねぇ」

まどか「つまりけっこう効いたんだ……」

サラ「クラックッ!」

蛇女E「わわっ危なっ! 地割れが!」ヒョイッ

サラ「あの一体だけ動きがいい……」

蛇女E「まあ、私がボス個体だからね」[冷気]

まどか「ひゃうっ……うぅ……」

杏子「まどかっ!」


まどか「ごめん、これ以上は戦えなさそう……」バタッ


杏子「チィッ! てめぇ! 鉄砕鞭ッ!」

蛇女E「蛇みたいな槍ね。こっちも蛇として負けられないわね」ススススッ

サラ「うねった動きで槍をくぐり抜けてかわした!?」

杏子「こいつ……速ぇ……!」

蛇女「消耗したし、回復したいわね」[ライフスティール]

杏子「またか……!」

サラ「……っ! しまった! まどか!」

まどか「!? ……っくあぁ!?」

杏子「こいつ……! 倒れてるまどかを狙いやがった!」

蛇女「いや、話しててこの子が一番気が合ったんで、つい……」

サラ「まどか! 今回復するから、アースヒール」ヒュゥゥゥン

まどか「はあ、はぁ……。サラさん、すいません……」


杏子「命中率の高い技を使うしかねえな……。エイミングッ!」

蛇女「痛たたっ! ちょっとは手加減してよ!」

杏子「うるせーっ! さっさと退治されろッ!」

まどか「……。あと少しなのになかなか倒せないね」

杏子「ちっ、どうしたもんか……」

サラ「瞬速の矢!!」ヒュンッ

蛇女「あうっ! ぐぬぬ、よくも。てりゃあ!」[巻きつき]

サラ「うぅ!」ギュルギュルギュル


杏子「…………」

まどか「杏子ちゃん?」

杏子「……何か技閃きそう」

まどか「んんっ?」


杏子「っ閃いた! 蛇女、これでも喰らえっ!」

蛇女「え?」

杏子「ミズチッ!」シャアアアッ

サラ「杏子の槍から、蛇のオーラが現出して、蛇女に襲いかかった!」

蛇女「ぐはぁあっ! ちょっ、蛇に蛇をぶつけるなんて……」

まどか「あ、私も閃きそう。…………サイドワインダーッ!」シャアアッ

サラ「まどかの弓から(略)!」

蛇女「きゃあああ!」

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

蛇女「うぅ……、降参よ。もう悪さはしないわよ」

杏子「やけに素直だな」

蛇女「うーん、私ってけっこう人に化けて街に繰り出したりするのよ。
   で、別に人間は嫌いじゃなかったりするわ。そもそも私、アビスの影響も特に受けてないし」

まどか「じゃあ、何で戦ったんですか?」

蛇女「まあ、他の4人は、私とは別の意味で人間大好きだったし。
   そもそも、ここは私の縄張りだったしねー」

杏子(ああ……多少友好的でもやっぱこいつらモンスターなんだな)

蛇女「じゃあ、街中で舌が二つに分かれてる美人を見かけたら、それ私なんでよろしくね!」

杏子「いや、知らねーよ……」

サラ「ま、まあ。これで魔法陣も使えるね」

杏子「何か疲れた……」


-ピドナ 旧市街-

サラ「帰りはあっという間だったね」

まどか「今後は行きも魔法陣を使えるから大幅に時間短縮できますね」

杏子「あとは、ほむ……指輪を探しだした後だな」

サラ「というか、この街でちゃんと情報収集したら指輪の詳細も解ると思うんだけど」

-ピドナ ミューズの家-

シャール「ちょっといいか? 杏子」

杏子「ん?」

シャール「ミューズ様の体調が優れないようだ。
     すまないが、しばらくはミューズ様のそばに居てくれないか?」

杏子「ん。いいよ、別に」

まどか「ミューズ様、大丈夫なんですか?」

シャール「ああ、たまにこういった時がある。
     ……すまないな、杏子。せっかく友人に会えたのにこの家に縛り付けてしまって」

杏子「まあ、無事も所在も分かったんだ。今までよりゃマシさ」

シャール「ありがとう。杏子がいるとミューズ様も笑顔が多くなる」


サラ「まどか。私たちは明日以降どうする?」

まどか「んっと。最初のように、まだ会えてない友達を探したいです」

サラ「となると、ピドナの船着き場から船に乗るべきかな」

まどか「どこへ行こう……」

今日はここまでです。

今日の分投下します

-翌日 ピドナ 新市街-

トーマス「あ、まどか。久しぶりだね。一人とは珍しいね」

まどか「トーマスさん、お久しぶりです。会社資産1億オーラム越えました?」

トーマス「いや、それがなかなかグループが集まらなくてね。トーマスカンパニーはまだまだ小さいよ」

まどか「大変ですね……」

トーマス「……この仕事依頼は君やサラにも来てたんだけどね。今からでもまどかカンパニー作らないかい?」

まどか「私は1万以上の大金を持つと、周りが泥棒に見える小心者なので無理です……」

トーマス「ミューズ様の信頼も厚いし、まどかならと思ったんだけどね……」

まどか「ウェヒヒ……」


トーマス「ところで、サラから聞いたんだけど、また友達を探しに出るんだって?」

まどか「はいっ!」

トーマス「ウィルミントンに行く予定はないかな?」

まどか「え? いえ、まだ次の目的地も決めてない状態なので……」

トーマス「フルブライト23世が仕事を受けてくれる人を探してるんだ。
     調査依頼って聞いたけど、もし良かったら考えてくれないか?」

まどか「はあ、フルブライトさんって会社作る仕事を持ちかけた人ですよね」

トーマス「オレもちょうどウィルミントンに行くつもりだったから、行くんだったら船賃は出すよ」

まどか「うーん」
>引き受けます
 いくらくれます?
 イヤです

-ミューズの家-

まどか「ということで、ウィルミントンに行ってみようと思います」

サラ「ウィルミントンかぁ。そこなら防具を新調するにもいいかな」

杏子「フルブライト23世っつったか? どんな奴だ?」

サラ「えっと、フルブライト商会を取りまとめる人で……。そのフルブライト商会は300年前に聖王様を支援したりしている深い歴史を持つ大会社でね……」

杏子「よく分かんねー。一言で」

まどか「すごいお金持ちだよ」

杏子「分かった。お土産は奮発してくれよ」

-ウィルミントン-

サラ「着いたね」

トーマス「さて、オレは商談に行くけど、まどかはどうする?」

まどか「お仕事の前に、ちょっとみんなの情報を探してみようかなって……」

サラ「じゃあ、酒場を探そっか。えっと……」


-ウィルミントン 酒場-

マスター「西沿岸のモウゼスでは町を二分する抗争が起こっているそうだよ」

まどか「そうなんですか。ところで、私ぐらいの年齢の女の子が噂になってたりしませんか?」

マスター「女の子? いや、特にないな」

サラ「この街は違ったかな?」

まどか「そうですね……。それにしても、抗争ですか。縄張り争い?みたいなものかなあ?」

サラ「いずれにせよ、関わるのはやめた方がよさそうだね」

まどか「うーん」
>そうですね
 誰かが首をつっこんでるかも

まどか「そうですね。近づかないようにしましょう」

-ウィルミントン 武器防具屋-

トーマス「おや、来たね」

まどか「こんにちは。武器屋の中にフルブライトさんの部屋があるんですね」

フルブライト「ああ、この武器防具屋もフルブライト商会のものだからね」

サラ「はあ、そうなんですか」

フルブライト「では、仕事の話をしようか」


フルブライト「君たちはヤーマスの町に行ったことはあるかな?」

まどか「いえ、ありません」

サラ「私もないかな」

フルブライト「……その町はドフォーレ商会という会社に取り仕切られている」

トーマス「ドフォーレ商会は少し前から急激に成長した会社だね」

フルブライト「だが、このドフォーレ商会には良くない動きも見受けられる」

フルブライト「恐喝、麻薬取引、人身売買、これらはいずれも聖王様によって固く禁じられたものだ」

フルブライト「そして、ドフォーレ商会はこれらの禁を破っているという情報がある」

まどか「は、はあ。あの、それで私は何をすれば……」

フルブライト「……フルブライト商会とドフォーレ商会は同盟関係にある。
       そのため、フルブライト商会がおおっぴらに調査するわけにはいかない」

トーマス「そこで、オレや君たちの出番ということさ」

サラ「えーっと、つまりヤーマスに行って調べてくればいいの?」

フルブライト「その通り、場合によっては荒事も予想されるから注意してほしい」

-ヤーマス-

サラ「ここが、ヤーマス……。見た感じは治安も悪くないし、活気のある港町って感じだけど」

フルブライト「悪行とは、人気のない場所や弱者の近くで行われるものだ。その辺りを注意して探そう」

トーマス「人気のない場所か……単独行動は危険だね」


まどか「あの……、皆さん。すいません、おトイレに行ってきていいですか?」

サラ「まどか、単独行動は危険だよ……」

フルブライト「……トイレはそっちの方にある。くれぐれも気をつけてくれ」

まどか「大丈夫です! 迷子になんてなりませんから!」ウェヒヒッ

-ヤーマス 人気のない倉庫-

麻薬売人A「…………」

麻薬売人B「…………」

まどか「…………。ま、間違えましたー……。うぇひひ」ダラダラ


売人A「畜生! 見られたぞ!」

売人B「女のガキが一人だ! 捕らえるぞ!」

まどか「キ、キャアアアア!?」ビクッ

BGM ♪怪傑ロビンのテーマ♪
テレレッ テーテーテーテッテー テレッテッテー テテテッ

ハ ハ ハ ハ ハ。
天知る 地知る ロビン知る!
とうっ!

売人A「何だ!?」

売人B「この声……! まさか奴が!?」

売人A「ロビンだ! 怪傑ロビンが来やがったっ!」

売人B「畜生! どこにいやがる!」


怪傑ロビン「ここだ!」

売人A・売人B「う、上からだと!?」

まどか(え? 何、この展開?)

ロビン「はあっ!」バキッドカッ

売人A・売人B「ぐはあっ!」バタッバタッ

ロビン「麻薬で人々の心と体を蝕んでおきながら、己はぬくぬくと大金を得ようとし、
    挙句の果て少女に暴行を加えようとは許せん!」

売人A・売人B「く、くそっ。覚えてろ!」ダダダダ


ロビン「大丈夫だったかい。お嬢ちゃん」

まどか「え……? あ、はい」

ロビン「それは何よりだ。ではさらば!」バッ

は は は は は!


まどか「…………」

まどか「あ、トイレどこだろう?」

-10分後 ヤーマス-

まどか「お待たせしましたー」ウェヒヒッ

サラ「遅いよ、まどか」

まどか「すみません。……あれ、トーマスさんたちは?」

サラ「先に調査を始めちゃったよ」

まどか「は、はあ。サラさん、すいません。私を待っててくれて……」

サラ「もう、まどかが危ない目にあったんじゃないかって心配したんだから!」

まどか「えっと、迷子になったら、麻薬の取引現場を発見しちゃって……」

サラ「ほ、ほんとに危険な目に遭っちゃったんだ……」

まどか「それでですね。変な人が来て……」

サラ「……はぁ」

***

サラ「怪傑ロビン?」

まどか「はい。マスクをつけて正体を隠して、こう、正義の味方をしてるみたいでした」

サラ「へー。かっこいい人だね」

まどか(あ、そういう反応なんだ)

サラ「あれ? かっこよくなかったの?」

まどか「あまりの展開で、かっこよく思う前に呆然としました」

サラ「うーん。それにしても正義の味方かー」

まどか「サラさん?」

サラ「その人に聞けばドフォーレ商会の悪事とかも詳しく分かるんじゃないかな?」

まどか「それは、まあ、そうかもしれませんね」

サラ「調査がてら、その人を探してみるのもいいかも」

まどか「ええっと……、探すって、一体何をどう……」

サラ「怪傑ロビンの正体を探ってみよっか!」

まどか「ヒーローの正体、暴くんですか!?」

-ヤーマス 酒場-

サラ「まずは、町の人の怪傑ロビンの評判を訊いてみよっか」

まどか「まあ、調査の聞き込みのついでなら……」

マスター「いらっしゃいませ、シーホークへようこそ! ライム! 客の応対頼んだ!」

ライム「……う、うん。父さん」

サラ「何かノンアルコールを。この子にはミルクをお願いします」

ライム「……かしこまりました。えっと、少々お待ちください」

***

ライム「……お待たせしました」

サラ「あの、この街に正義の味方が現れるって聞いたんですけど、どんな方か知りませんか?」

ライム「……は、はあ。僕もよく知らないんですけど、
    何でもドフォーレ商会の悪事を暴いて、困ってる人を助けているそうです」

サラ「ドフォーレ商会の悪事?」

ライム「どうも、彼らは麻薬の密売を行ったりして私腹を肥やしているようなんです。
    他にも、横暴な地上げ行為もしてるって話です」

サラ「そんなことが……、ドフォーレ商会の悪事って皆に知れ渡っているんですか?」

ライム「いえ、僕は酒場の人間なのでそういう情報に詳しいですけど、
    ほとんどの人はヤーマスを代表する立派な会社って思ってるでしょうね」

ライム「怪傑ロビンが現れるまではこの街で悪事が蔓延っているなんて誰も知りませんでした……。
    そして、今でも、悪事とドフォーレ商会を結びつける人はあまり多くない」

まどか「……そうなんですか」

サラ「お話ありがとうございます。代金はこちらに置いておきます」チャリッ

ライム「……あ、ありがとうございます」

バタンッ

売人A「ヒャッハー! 酒だあー!」

売人B「ったく、気分悪いぜ。飲まなきゃやってられん」


まどか「あ」
売人A「ん?」
売人B「お」
サラ「え?」

売人A「お、おまえ!」

売人B「へ、へへへ。今なら邪魔者はいねえ。こっちに来てもらうぞ」

まどか(サラさん! この人たち、さっき出くわした麻薬売人です!)

サラ(ということは、捕まえれば依頼も達成できるかな?)

まどか(でも、酒場で暴れるわけにも……)

サラ(まずは、表に出て対応しないと)

売人A「こっちへ来い!」

まどか「……わかりました」


ライム「ま、待て! お、おまえら、そ、その子をどうするつもりだ!」

売人B「ああ? うるせえな、若造が! 引っ込んでろ!」

ライム「こ、答えろ!」

売人A「ち! うっとうしい奴だぜ。オラア!」バキッ
売人B「やっちまうか」ドカッ

ライム「ぐうっ! あ、あなたたち、逃げてください!」

サラ「ライムさん! まどか、助けなきゃ!」

まどか「は、はい!」

BGM ♪怪傑ロビンのテーマ♪
テレレッ テーテーテーテッテー テレッテッテー テテテッ

そこまでだ! 悪党ども!

売人A「な! またロビンか!」

売人B「くそっ! 今度はどこにいやがる!」


ロビン「ここだ!」

売人A・売人B「カ、カウンターの向こう側だと!?」

ざわざわ

「すげえ、ロビン! いつの間にあんなところに!」「怪傑ロビン……一体何者なんだ!?」
「きゃーロビン様ーこっち向いて―」

サラ「あれがロビン……。ちょっとかっこつけすぎね」

まどか「……んん?」

サラ「どうしたの? まどか?」

まどか(あの人……どう見ても偽者なんだけど……)

ロビン(?)「ふっ、私に触れるとヤケドじゃすまないぜ」

まどか(体格もなんだか太っているし……声も違うし……)

売人A「スカしやがって! ぶっ殺す!」

ロビン(?)「ふっ 私が来た以上、この店で好きにはさせん!」

サラ「わっ、戦い出した。でも、相手の攻撃を小剣で器用にさばいてる」

まどか(本物の方は……)キョロキョロ

まどか(……………………いない)

売人A・売人B・売人C「ぐわあ!」バタッ

サラ「すごいわね。途中で敵が増えたり、仕込み武器を持ち出されたり、色々あったけど、事も無げに倒したわ」

ざわざわ

「きゃーロビン様ー」「悪党め!思い知ったか!」「怪傑ロビン……一体何者なんだ!?」

ロビン(?)「この街に私がいる限り、悪は決して栄えない!」バッ

まどか(あ、タルの上に乗った)

ずぼっ

ロビン(?)「おや?」

サラ「ああっ! ロビンがタルに嵌った!」

まどか(えぇー……)

ロビン(?)「ぐ、ぐぬぬ」ジタバタ

売人A「へ、へへへ。ロビン。どうやら動けねえみたいだなぁ」フラフラ

売人B「今度はこっちの番ってこったな」

売人C「おいっ! こいつをタルごと表に連れ出すぞ! この間抜けな姿を街の奴らに見せてやる!」

ドカドカドカ……バタンッ

サラ「まどか! 私たちも行こう!」

まどか「はいっ!」

-ヤーマス 酒場の前-

売人A「これより怪傑ロビンを名乗る盗賊に法による裁きを与える」

売人B・売人C「有罪だ!」

売人A「有罪とみとめる、刑の方法は……」

売人B・売人C「火あぶりだ!」

売人A「火あぶりとする。だが、刑の前に、こいつの正体を拝ませてもらう」

ざわざわ

「ロビン様……」「くっ、どうにもできん……」「ゴクリ……。怪傑ロビン……一体何者なんだ!?」

サラ「大変! 早く助けないと!」

まどか「……! サラさん! アレ!」

BGM ♪怪傑ロビンのテーマ♪
テレレッ テーテーテーテッテー テレッテッテー テテテッ

天知る 地知る ロビン知る
この世に怪傑ロビンがいる限り
悪は決して栄えない!
いくぞっ

売人A「な、ロビンの声がどこからか!」

売人B「そんな馬鹿な! ロビンはここにいるはずだ!」

売人C「ちぃ! 姿をあらわせ!」


ロビン「ここだ!」

売人A・売人B・売人C「え、煙突の上だと!?」

ロビン「とうっ」バッ

サラ「ロ、ロビンが二人……!?」

まどか「今捕まってる方が偽者なんじゃないですか?」

ロビン「偽ロビンさん、お疲れ様!」スパッ

売人A「くそっ! ロビンがロビンを解放しやがった!」

トーマス「サラ! まどか!」

フルブライト「これは一体何が起こっている?」

まどか「ドフォーレ商会の麻薬売人たちと正義の味方が戦ってるんです!」


売人A「こ、こうなったら……先生! お願いしますよ!」

モンスターたち「…………」ゾロゾロ

ざわざわ

「ひぃっ! モンスターだ!」「きゃーロビン様ー助けてー」
「畜生! こんなところにいられるか! オレは自分の家に帰るぞ!」

ロビン「アビスの魔物たちと手を組むとは……! なんと恥知らずな!」

フルブライト「ドフォーレ商会……。そこまで悪事に手を染めていたのか……」

サラ「まどか! 今度こそ私たちも手伝おう!」

まどか「はい!」

羅刹「…………」

まどか「…………」
サラ「…………」

まどか(魔王殿で散々戦った羅刹が来ちゃった……)
サラ(こいつらの行動もうほとんど覚えちゃったよ……)

サラ「……やっちゃおっか」弓構える

まどか「……そうですね」弓構える

ロビン「ヤーマスの平和は私が守る!」シャキーン


まどか・サラ「クロスボウボルトッ!!」

羅刹「ウボアー」ボシュウウウ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

ロビン「むっ、先を越されてしまったか」

トーマス「師弟だからか、まどかとサラの息もかなり合ってるな」

ロビン「次が来る! 気を引き締めるんだ!」

「ロビン様ーがんばってー!」「あの嬢ちゃんたちもかわいいのに強いな」「嬢ちゃんたちもいいがやっぱりロビンの活躍がみたいぜ」

フルブライト(場の空気を掴むのがうまいな、彼)

ガーゴイルx2「…………」

サラ「フラッシュアローッ!」
偽ロビン「スクリュードライバー!」
ロビン「ライトニングピアス!」
トーマス「二段突き!」
フルブライト「スターフィクサー!」

ガーゴイルx2「ギャアアー」ボシュウウウ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー


ざわざわ

「すげえ! モンスターたちが一瞬で!」「きゃーロビン様ーかっこいいー!」「やっぱロビンだぜ!」


ロビン「協力ありがとう、諸君! では、さらばだ!」バッ

まどか「あ、行っちゃった……」

サラ「色々話とか訊きたかったのに……」

トーマス「うん? まあ、何にせよ。こいつらを尋問すれば調査はぐっと進みそうだね」

売人A「うぐぐ……」

売人B「ち、ちくしょう……」

フルブライト「いずれにせよ。ドフォーレ商会は思った以上に悪事を起こしているようだな」

-夕方 ヤーマス-

フルブライト「ふむ、こちらの調査報告とサラの調査報告、それに連中からの証言で充分な調査結果を得られたな」

サラ「色々あったけど、仕事完了だね。じゃあ、帰ろっか」

まどか「…………あの、すいません。ちょっと寄りたいところがあるんですけど」

サラ「今から? どこに行くの?」

まどか「……えっと、一人で行きたいので! すぐ戻りますから!」ダッ

サラ「行っちゃった……」

トーマス「うーむ。またトイレだろうか?」

-ヤーマス 酒場-

ガチャッ

まどか「失礼します……」

マスター「おや、お嬢ちゃん。今は臨時休業中だよ」

ライム「……昼の騒動の片付けがあって……、も、もう少ししたら開店しますので……」

まどか「いえ、お礼を言いに来ただけなので。すぐに出ていきます」

マスター「お礼?」

まどか「助けていただきありがとうございました!」ペコ

ライム「え? そ、そんな! 僕なんて何もできなかったし……」

まどか「いえいえ! 私が言いたかっただけなので!」ウェヒヒッ

ライム「…………そうですか。その、それではお礼を受け取らせていただきます」

まどか「はい! それでは、これからもお仕事頑張ってください!」ペコッ

テッテッテッ バタン

ライム「…………」

マスター「ふうむ……」

ライム「目ざとい子だなあ……」

-翌日 ピドナ ミューズの家-

杏子「……これ何?」

サラ「怪傑ロビン饅頭。ヤーマスで売ってたの」

まどか「販売元はドフォーレ商会の物件じゃなくて、独立した物件なんだって」

杏子「ふーん……。ちっ、このマスクとれねえじゃん」グイグイ

サラ「ダメだよ。頭からマスクごとガブッて食べなきゃ」

杏子「別に食いもんを粗末にしたりしねーよ。けど、こういうの見てるとマスクの下の素顔が気になんじゃん」

サラ「そういえば、結局、怪傑ロビンの正体分からなかったねー」

まどか「…………。そうですねー。でもきっと優しい人ですよ」ウェヒヒッ

今日はここまでです。
本物より偽ロビンの方が強いのは定説。
フルブライトの出番が潰れてしまったので、もの凄く強引に出番を作りました。正直いらなかった気がします。

うちのウンディーネは仲間にして即、白虎術に転向してもらいました。

今日の分投下します。

-キドラント-

エレン「うーん、困ったわね……」トボトボ

エレン「男は不埒なことを企む奴もいるし、できれば女の人に頼みたいんだけど……」

エレン「幸い、オーラムは結構あるし、どうにか交渉できるといいんだけれど……」

エレン「手当たりしだい交渉するしかないのかしら……?」

エレン「うーん。こりゃ、最悪の場合も考えた方がいいかもね」

エレン「まあ、別に全く経験がないわけじゃないし、その辺で……」

「あ、あの、冒険者の方ですか?」

エレン「? そうだけど、何か用かしら?」

「は、はい。実はお尋ねしたいことがあるのです。どうか訊いていただけませんか?」

エレン「うーん、別に構わないけれど……。
    あ! なら、交換条件で私の頼みを聞いてくれないかしら?」

「はい! 何でしょうか!」

エレン「実はね……」

-キドラント ニーナの家-

エレン「あー、良かったわ。泊めてくれてありがとね、ニーナ。宿が満室で困ってたのよ」

ニーナ「村の宿も、旅人が滅多に来ないので大抵は空いてるんですけどね」

エレン「まあ、運が悪かったってことよね。
    でも、ニーナの家に泊まれたのは不幸中の幸いだったわ。あらためてありがとうね」

ニーナ「いえ、私も冒険者の方に訊きたいことがあって申し出たのです。お気になさらないで」


エレン「それで、訊きたいことって?」

ニーナ「はい。エレンさんにお尋ねしたいのは、村を出た私の恋人のことなんです」

エレン「ニーナの恋人?」

ニーナ「はい。あの人は冒険者になるって言って町を出たんです。ポールという名なのですが……」

エレン「ポール……?」

ニーナ「ご存知でしょうか……?」

エレン「えっと、ちょっと待ってね。確かどこかで……」

-回想 野盗の巣窟-

野盗「ひ、ヒィ! ダメだ! このアマ強すぎる!」

エレン「メガホークッ!」シュンシュンシュンッ

野盗's「ぎゃああー!」

エレン「やれやれ、ボスはどこかしら。あまり体力消耗したくないんだけど」


野盗「お、おいっ! ポール! オレらが逃げるまで足止めしとけっ!」

ポール「う、うわっ!」

エレン「ん? なんかチャラそうな奴ね」

ポール「見逃してくれ! オレには故郷に残した恋人がいるんだ! もう野盗なんてしたくないんだ! 頼む! この通りだ!」

エレン「恋人残して故郷から出たのに、野盗なんてやってたの……?」

ポール「う……、本当は冒険者になるつもりだったんだ! オレはポール。見逃してくれたらお礼を必ず……」

エレン「短勁ッ!」ボスゥ

ポール「ウグッ!」ズザアアアッ

エレン「フンッ。いいわ、行きなさい。恋人に土下座しときなさいよ」スタスタ

ポール「はあっはあっ、りょ、了解……。恩に着るよ……」

エレン「…………。感謝するぐらいなら、最初から恋人を蔑ろにするなってのよ……」

エレン(いたわね……。そんな奴……)

ニーナ「ど、どうでしょうか?」

エレン「…………。もうそろそろ、帰って土下座しにくるんじゃないかしら」

ニーナ「土下座……? い、いえ、それより、ポールが帰ってくるんですか!?」

エレン「ええ。反省して恋人に顔を見せるように言っておいたから」

ニーナ「ポールが帰ってくる……! ああ! エレンさん! あなたにお会いできて本当に良かったです!」

エレン「そ、そんなに喜ばれるとどう反応していいか分からないわね……(あの男を蹴っちゃったし)」

ニーナ「その。エレンさん。実は、もうひとつお話したいことが……」

エレン「?」

***

エレン「いけにえの穴?」

ニーナ「はい……。町長の方針で定期的にその洞窟の怪物に生贄を捧げているんです」

エレン「どうにも嫌な話ね」

ニーナ「そうなんです……。最近では、町の外の人間を生贄にしてしまおう。という意見も出てきています」

エレン「あー。報酬で釣って騙してしまえば、そう難しい話でもないものね。
    うーん。どうにかできないかしら」


ガチャッ

ポール「ニーナ! ただいま!」


エレン「あ」
ポール「え?」
ニーナ「あら?」

-1分後-

エレン「さて、甲斐性なし男の土下座も終わったし、話し合おうかしら」

ニーナ「本当に土下座されちゃった……」

ポール「う、話って……?」


ニーナ(それにしても、ポールとエレンさんってどんな関係なんだろう……)


エレン「いけにえの穴の怪物を何とかしたいのよ」
ポール「オレを生贄にしようとか考えてないだろうな……」

ニーナ(まさか! 旅のあいだ、ずっと一緒に苦楽を共にした仲間とか……!)

エレン「流石にニーナの一応恋人を餌にしようなんて考えてないわよ!」
ポール「ていうか、怪物なんて、あんたがスパッと倒しちまえばいいんじゃないのか?」

ニーナ(そういえば、二人の間に遠慮がないように感じるし……)

エレン「あんた、私のこと腕っ節が自慢の怪物女とか思ってない?」
ポール「野盗のアジトを単独制圧する奴には妥当すぎる評価だろ……」

ニーナ(エレンさん、すごい美人だし……。こんな人が近くにずっといたら気持ちも移っちゃうかも……)

エレン「ねぇ、ニーナ。あなたはどうすべきだと……」


ニーナ「ポ、ポールの恋人は私ですからねっ!!」


エレン「え? うん、そうね」

-いけにえの穴 入り口-

エレン「結局、まずは見に行くとこから始めるのか……」


町長「…………」


エレン「あら? あれは町長かしら……。まさか、もう誰か生贄にしたってこと……?」


「こらー出しなさーい! このハゲ町長ー!」

「出すのだー! オイラなんか食べてもおいしくないのだー!」

町長「な~にぃ? 聞こえんなあ~。まあ怪物を倒せたら出してやるよ。頑張るんだな」


エレン(あの町長……、腹立つわね……。いっそ町長が生贄になればいいのに)

「こらー出しなさ……、えっ? 何? 離れてろって?」

「何してるのだ? それなんなのだ?」

町長「んんー? 無駄無駄。その岩は内側からは動かせんよ。ヒッヒッヒ」





「その必要はないわ。内側から壊すから」



ズゴオオォオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!

ガラガラガラガラ……パラ……パラ……


町長「ひっ!? い、いいい、入り口を塞いだ岩がっ!?」

黒髪の少女「火薬式の破城槌よ。さて、覚悟はいいかしら、町長?」

黒髪の少女「私……。人を平気で騙す奴が大っ嫌いなのよ」チャキッ

町長「ま、待て! これは出来心で……!」


黒髪の少女「ブルクラッシュッ!!」カキーン

町長「ほーむらんッッ!?」キラッ

黒髪の少女「やれやれだわ……。あの町長、怪しいとは思ってたけど……っ!?」バッ

エレン「あ、待った待った。私、敵じゃないから」スタスタ

黒髪の少女「……誰かしら」

エレン「私は冒険者ね。ニーナって子にいけにえの穴の怪物について相談されたから見に来たのよ」

黒髪の少女「そう……。見ての通り、町の外の人間を生贄にするための町ぐるみの罠よ」

エレン「あー。それは、聞いたわ。そのうえで何とかしたいから、怪物をどうにかしようとここに来たのよ」

黒髪の少女「……あなた、一人よね」

エレン「そうだけど、問題ある?」

黒髪の少女「……武器は斧。あなた、もしかして」

エレン「何?」


黒髪の少女「野盗のアジトを一人で制圧したとかで有名な「進撃の斧娘」さん?」

エレン(えっ? なにその通り名?)

「そういう自分は「黒魔女」なんて異名をつけられたくせにー」

「ほむら、それ聞いた時、本気でへこんでたのだ」


エレン「…………。あなたは、この穴の怪物を倒すつもりなの?」

黒髪の少女「そうね。別口で依頼を受けたし、依頼主から鼠狩りの道具……ねこいらずをもらってきたわ」

エレン「(ねこいらず?)へー。目的は同じってことかしら。私はエレン。あなたは?」

黒髪の少女「そうね。あなたとなら協力するのも悪くないかしら。私の名前は……」


ほむら「ほむらよ。暁美ほむら」

ようせい「私はようせい! よろしくねっ」

ゆきだるま「オイラはゆきだるまなのだ!」

-3日後 ピドナ ミューズの家-

サラ「ねえ、まどか。ツヴァイク行きの船に乗らない?」

まどか「ツヴァイク? えっと、ピドナから船で500オーラムのところですよね」

杏子「ん? ツヴァイクっつーと北の方だったか?」

シャール「ピドナに並ぶ大都市だな。目的地をそこに決めた理由は?」

サラ「それはね。北のランスには、アビスゲートについて詳しいヨハンネスさんという人がいるそうなの」

まどか「そっか。そういう人にアビスゲートについて詳しく訊くのも大切ですよね」

サラ「それと、ピドナで情報収集したんだけど、扉を開ける指輪っておそらく王家の指輪のことじゃないかって話なの」

杏子「王家の指輪?」

サラ「うん。聖王遺物のひとつで、ランスの聖王家に代々伝わる指輪みたいなの」

まどか「うーん、事情を話せば貸してくれるかも」

杏子「なるほどね。っしゃ! 私も行くよ!」

まどか「え、杏子ちゃんも? しばらくはこの家にいるんじゃあ?」

シャール「流石に毎日この家に縛り付けるわけにもいくまい」

ミューズ「ええ。杏子と話をしたいとは思いますけど、それ以上に杏子には自由でいて欲しいのです」

杏子「ん、サンキュ。日帰りで帰ってくるから、土産話楽しみにしててくれ」

ミューズ「ええ。お願いしますね」


まどか「それじゃあ、今日はツヴァイクからユーステルム、ランスに向かいます」

サラ「北に行くのはポドールイ以来だね」

杏子「ま、何にせよ。行くならさっさと行くぞ」

ピドナ -新市街-

放浪娘「…………」

まどか「船着場に行ってツヴァイク行きの船に乗らないとね」

サラ「ロアーヌから行った方が安上がりじゃない?」

放浪娘「…………! ねぇあなたたち。船に乗るの?」

まどか「え? あ、うん。そうだけど_、あなたは?」

放浪娘「ね、ね! おねがい! 仲間に入れて!」

まどか「ぇえ!?」

杏子「おい、何なんだよ、おまえ」

放浪娘「ね。いいでしょ? 同い年ぐらいだし」

サラ「私たちは忙しいの。お友達と遊んでいなさいね?」

放浪娘「そんなのいない」

サラ「そ、そうなの? 何だかカワイソウね……」

まどか「うーん……。私たちがこの子の友達になりましょうか……」

サラ「そうね……。この子も寂しいだろうし……」


杏子「いや、騙されんなよ。こいつ、家出しただけだろ」

放浪娘「(ぎくっ)ど、どんなしょーこがあってそんな言いがかりをつけるの!?」

杏子「そりゃ、おまえ身なりがいいし、そのくまのリュックサックにたくさんお菓子が入ってるし」

サラ「え、えっと。お家の人も心配してるよ。おとなしく帰った方がいいんじゃないかな」

放浪娘「やだーーー! 絶対あなたたちについていくんだからあーー!」

サラ「私たち、モンスターと戦うことだってあるんだよ」

放浪娘「私だって戦えるよっ!」フルーレ構える

杏子「はあ……まどか。どうするよ、こいつ」

まどか「うーん……」

-ツヴァイク行きの船-

杏子「……結局、ついてきたな」

放浪娘「大丈夫だよ! 私だって自分のことぐらいできるもん!」

まどか「あなたの名前はなんていうの?」

放浪娘「え!? 名前はね、ね、キャンディーって呼んで!」

杏子「いや、偽名だろ」

放浪娘「(ドキーン)な、なにをしょーこにそんなこと言うの!?」

杏子「菓子の名前だし、呼んで、なんて本名があるってことだし」

サラ「本当の名前は何ていうの?」

放浪娘「……言いたくない。絶対言わないもん」

杏子「言わなきゃ、放浪娘って呼ぶぞ」

放浪娘「別にそれでいいよ」

まどか・杏子(いいんだ……)


サラ「そういえば、陣形どうする?」

杏子「……デザートランスで私が前にたつしかないだろうな」

-ツヴァイク-

杏子「なあ、まどか。私はピドナから出るの初めてなんだけど、まずは何すんだ?」

まどか「えっとね、まずは、酒場とかでほむらちゃんたちの情報を探すの」

放浪娘「ほむらちゃん?」

サラ「破壊活動が得意な魔法少女らしいよ」

放浪娘「なにそれっ! かっこいい!」キラキラ


-ツヴァイク 酒場-

マスター「そんな女の子の噂は聞かないな」

まどか「この町では活動してないのかな……」

マスター「でだ。今ホットな話題っつったらツヴァイクトーナメントだな」

サラ「これはわかりやすいイベントだね」

マスター「5人チームでのトーナメント戦さ。
     戦闘自体は個人戦で、負けたら次の選手と交代。相手選手を全員倒したらそのチームの勝利だよ」

放浪娘「面白そうっ! ね、ね、コレに出ようよ!」

杏子「ふーん、でも私らは4人だな」

マスター「……人数が足りてなくても出場は可能だよ。まあ、もちろん不利にはなるけどね」

杏子「ま、そりゃそうだ」

マスター「なお、優勝賞金は一万オーラムらしい」

杏子「今すぐシャール引きずって来て、出場するぞ」

まどか「さ、流石にシャールさん連れてくるのは出場に間に合わないんじゃないかな」

杏子「ちっ、しゃーねーな。この人数で出るしかないか」

-選手控え室-

サラ「…………。で、エントリーしたわけなんだけど」

まどか「私たちの相手はどのチームなんだろうね」

放浪娘「ねえねえ! 私が一番に行っていい!?」

杏子「ダメだ。先鋒は……、そうだな、サラに行ってもらうか」

放浪娘「えー!」

サラ「私? いいよ。行ってくるね」

まどか「サラさん、弓使いなのに一人で大丈夫なんですか……?」

サラ「うん。個人戦用の戦い方もちゃんとあるから大丈夫だよ」

-ツヴァイクトーナメント会場-

ブレイザー「キシャアアア」

まどか「赤くて小さいドラゴンだ。ちょっとかわいいね」
杏子「私は魔王殿で見たことあるけど、あいつら結構強いぞ」

杏子(魔王殿では3体同時だった。シャールがいなきゃやばかったかもな、私)


「始めっ!」


サラ「……」ブゥゥゥン

杏子「いきなり白虎術?」
まどか「飛んでる相手に地割れは効かないし……。何を使う気なんだろ、サラさん」


サラ「ストーンスキンッ!」ボコボコボコッ ガキッガキガキン

まどか「石畳がサラさんにまとわりついていく……!」

ブレイザー「ギャッ!」[牙]
サラ「ふっ!」ガキィィンッ

杏子「ノーダメージッ!? すげー防御力だっ!!」
まどか「すごい! あれなら前衛無しで弓を思う存分使える!」

サラ「ショットウェイブッ!!」シャッ シュゴオオオオォォ
ブレイザー「ギャアアア!」ボシュウウウ

[サラ1人抜き!]

まどか「一撃で倒したっ!」
杏子「飛行タイプにこうかばつぐんの技みたいだな」


バイター(次鋒)「キシャアァ」

まどか「あ、今度はさっきのドラゴンの黒い種類だ」

サラ「ショットウェイブッ!」
[サラ2人抜き!]

まどか「今度も、簡単に倒せちゃった」
杏子「おいおい。こりゃ、サラ一人で全員抜きできんじゃねーか?」
放浪娘「むー、つまんない! 出番まだ!?」

ワイバーン(中堅)「ギャアッ ギャアッ」

まどか「あ、今度は大きいし強そう」


ワイバーン「ギャッ!」[毒針]
サラ「っ!」

杏子「まずいっ! 毒を喰らった!」
まどか「ええっ! そんな、サラさん!」

サラ「(回復してる余裕なんてない!)ショットウェイブッ!」シャッ シュゴオオオオォォ
ワイバーン「ギャッ!?」

まどか「さすがに、一撃じゃあ沈まないみたいだね……」
杏子「つっても、もう一発撃ちゃ終わるだろ」


ワイバーン「ギャアッ ギャアッ」バサッ バサッ
サラ「……?」

杏子「ん?」
まどか「あれ?」


バサッバサッバサッ

サラ(っ! 飛んで逃げまわり始めた!)

杏子「! あのヤロー! 毒がまわるまで待つ気か!」
まどか「そんなっ! サラさん!」

サラ「くっ!」シュンッ
バサッ スカッ

杏子「ダメだな……。完全に逃げに徹してやがる」
まどか「サラさん! 回復してください!」

サラ(残り時間は少ない……。なら、回復は無意味。このまま攻める!)

サラ「はっ!!」シュンッ
ワイバーン「ギャアッ ギャアッ」スカッ

杏子「サラッ! 闇雲に撃っても当たらねえ! ここは回復しろっ!」
まどか「サラさんっ!! 早く回復を!」

シュンッ シュンッ シュンッ シュンッ
バサッ バサッ バサッ バサッ


ワイバーン「ギャアッ ギャアッ」バサッ バサッ

ワイバーン「ギャッ!?」バサッ ピタッ


杏子「!? ワイバーンの動きが止まった!」
まどか「え!? どうして!?」


サラ「……影ぬい。何発かは本体じゃなくて、影を狙ったの」

杏子「! そうか、外したと思わせて……」
まどか「すごいよ。サラさん!」

サラ「ショットウェイブッ!」
ワイバーン「ギャアッ!!」ボシュウウウ

[サラ3人抜き!]

まどか「やった! けど、早く回復しないと……」

サラ「ううん。どのみち毒とは関係なく、もう無理かな」

ピタッ

まどか「サラさん?」

サラ「ストーンスキンはね……。時間が経つと最後には石化する自滅術でもあるの」

サラ「というわけで、あとよろしくね」ピョンッ ピョンッ ピョン


まどか「え……。何ですか、そのあんまりな術……。不良品じゃないですか……?」

杏子「……。次鋒は、放浪娘、おまえ出てみるか?」

放浪娘「zzz」

杏子「どういうことだ、おい! こいつ……。寝てんじゃねーかよ!」

まどか「放浪娘ちゃん、起きてよ」ユサユサ

放浪娘「んんー、ふあああ。出番?」

杏子「次、相手の副将が出てくるから、おまえはそいつとだな」

放浪娘「うんっ。いってきまーす」トコトコ

レッドドラゴン(副将)「…………」ズシーンズシーン

放浪娘「えっ…………」

まどか「…………」
サラ「…………」
杏子「…………、リオレウス?」

ざわざわ

「おいおい、出たぞ。前回トーナメント覇者が」「あーあ、死んだなあの子」
「フルーレで戦うとかw無謀すぎw」「つか、あいつ一体のせいでトーナメントの難易度あがりすぎだよな」

レッドドラゴン「ギィシャアアアアアアアアアァァァァ!!」

放浪娘「ひっ!」ビクゥッ

まどか「い、放浪娘ちゃんすごい涙目で震えてるよっ」
サラ「こ、これタオル投げたほうがいいかな!?」

杏子「いや! 待て、あいつ、まさか!」


放浪娘「ううー! 怖くなんかないもんっ! このーっ!」ダッ

杏子「震えながら立ち向かっていった! すげーガッツだ!!」

放浪娘「やああああ! たった今閃いた、アクセルスナイパー! くらえーっ!」

レッドドラゴン「ゴアアアー!」[火炎]

放浪娘「やられたーっ! うえええええん! こいつキライ!」バタッ

杏子「やっぱ無理だった!」

杏子(中堅)「鉄砕鞭ッ!」
レッドドラゴン「グルアアアーー!」[通常攻撃]
杏子(中堅)「今閃いた双龍破っ!」
レッドドラゴン「ギシャアアアーー!」[踏みつけ]

まどか(副将)「えっええっと……、サイドワインダーッ!」
レッドドラゴン「ガアアアアッ!」[ファングクラッシュ]

全滅した……
テーテーテーテーテーーテー


-ツヴァイク 入り口-

まどか「ここは……外……、レッドドラゴンは強い……、まだ勝てない……」

杏子「初戦からあんなのと当たるとはな……」

放浪娘「むううー! もっと活躍したかった!」

サラ「気を取り直して、情報収集でもしよっか……」

-ツヴァイク 酒場-

マスター「おかえりー。まあ、一杯飲みなよ」

まどか「レッドドラゴン強すぎます。あんなのインチキです」

マスター「あー、前回トーナメントの覇者に当たっちゃったかー。飛び入りでアレに勝つのは無理だろうねえ
     ベテランなら、炎と打撃の耐性を上げたりするんだろうけどね」

杏子「対策が必要なら言ってくれよ……」

マスター「はっはっは。お嬢ちゃんたちがそこまで本気だとは思わなかったからねえ」

杏子「ぐぬぬ」

マスター「それにしても初戦で当たるとは運がねえな。中堅まで倒せたんなら他のチームには勝てただろうに」

放浪娘「もー! あんなのもういいから、どっか面白いとこ行こう!」

杏子「はあ、マスター。何か面白い噂とかない?」

マスター「ん? 西の森に何か変な動物がいるって聞いたな。それでも探してみればどうだ?
     捕まえれば売れるかもしれないぞ」

まどか「変な動物ですか……」
>行ってみよう
 嫌な予感がするので却下

まどか「うーん、行ってみよっか」


杏子「しっかし、もうちょっと対策すれば、いけたかもなー」

まどか「私たちじゃ、まだ無理だよ。みんなを探すことを優先しよう」

-西の森-

杏子「……ここに珍しい動物がいるんだよな」

サラ「そういう噂らしいね。でも見た感じ、普通のモンスターばっかりだね」

放浪娘「出てこーい! 変なのー!」

まどか「もっと奥にいってみよっか。……でたらめ矢!」シュシュシュシュシュシュン

***

まどか「あ、あそこに館があるよ!」

杏子「あ? 館? 何でこんなところに館があるんだよ」

サラ「ううーん……」

杏子「あそこに住んでるのなんてよっぽどの変人だろうな」

まどか「確かに……」

サラ「でも、変な動物のこととか訊けるかもしれないし」

まどか「それは、そうかも……」

杏子「ん? 放浪娘の奴どこ行った?」

サラ「え? そういえば……」



放浪娘「たのもーっ!」ガンガン

杏子「なんか、あの館の扉をガンガン叩いてるな」

放浪娘「あ! 開いた!」

サラ「……行こっか」

-教授の館-

放浪娘「どこだーっ! 出てこーい!」

まどか「ほ、放浪娘ちゃん、あんまり失礼なことは……」

ガシャン!

サラ「照明が消えた!?」

杏子「な! まさか罠か!」

あーらあらあら。これは小さな侵入者さんね
ここは、才色兼備の大天才が住まう館
侵入者の皆さん、ようこそ教授の館へ

まどか「どこからか声が……、教授の館……?」

サラ「女の人の声だね……。でも絶対変人だ、この人」

私の研究に目をつけてここまで来たあなたたちはとてもお目が高いですわ
そんなあなたたちには特別に新しくなった私のペットをご覧入れましょう

放浪娘「けんきゅー?」

杏子「よく分からんが、誤解されてることは分かった」

来なさい! マコちゃんMk-Ⅱ 、バーニィちゃん二世!

マコ「ニャ!」バッ
バーニィ「キュッ」ピョーン

まどか「わぁ、かわいい! 猫と兎だ!」

サラ「大きいし、二足歩行してるね。珍しい」

杏子「猫の方はポシェットを持ってる? 兎は……懐中時計?」

ふ ふ ふ よくぞ訊いてくれましたわ!
つい最近、サンプ……、ごほん、おトモダチと協力して
新装置を発明したのです!

サラ(今サンプルって言いかけた)

バーニィ「キュゥ(懐中時計を構える)」

杏子「気をつけろ! なにか来るぞ!」

バーニィちゃん二世! クイックモードを起動しなさい!

バーニィ「キュッ(カチッ)」ギュンッ

バーニィ「キュキュキュキュキュッ」ピョンピョンピョンピョン

放浪娘「うさちゃんが速くなった!?」

まどか「鳴き声も倍速再生したみたいに早いね」

マコ「ニャッ!(ポシェットを開ける)」

うふふ 驚くのはまだ早いですわ 皆さん
マコちゃんMk-Ⅱのマジカルポシェットは異次元に繋がっているのです

マコ「(ごそごそ)」

杏子「……あー、要するにいくらでも物が入るっていうアレか」

まどか「ポシェットの大きさからは想像できない物が出てくるかもしれないね……」



マコ「ニャッ!」[ベレッタM92]

まどか「拳銃!? 何で!?」
杏子「どっから持ってきた!?」

マコ「ミャアー!!」バンバンバン

サラ「キャア!?」
放浪娘「び、びっくりしたー!」

まどか「ていうか、全然当たってない……」

ああ、マコちゃん! 本棚撃っちゃダメー!
ああ! そのティーカップもお気に入りなのに!

バーニィ「キュキュキュキュキュッ」ピョンピョン ベキィ

バーニィちゃんも机蹴らないでえええ!


まどか「……何これ」
杏子「さあ……」

-1分後-

まどか「ふぅ……」

放浪娘「ねこちゃんたち、眠っちゃった」

サラ「まどかの蒼龍術だよ」

ふ ふ ふ ふ ふ よくぞマコちゃんMk-Ⅱとバーニィちゃん二世を倒したわね!
しかし! まだ、奇面草ブラックとメタルムクチャーが……!

まどか「あのー、私たち。研究狙いとかじゃなくて、訊きたいことがあって訪ねに来たんですけど……」

杏子「ていうか、変な動物って明らかにこいつらだよな……」

あ、あら? そうなの?
それならもっと早く言ってくださればよろしいのに

パッ(照明点灯)

教授「では、改めまして……。ようこそ、皆さん。私が大天才の教授ですわ」

サラ「ど、どうも……」

まどか(自分で天才って言ってる……)
杏子(マミ以上に自信家でマイペースだな)

サラ「えっと、変わった動物がいるって聞いたのでこの森に来たんですけど」

教授「あら、それならこの子たちのことですわ。
   一度、逃げちゃったところをおトモダチに頼んで捕まえてもらったんですの」

まどか「そうなんですかー」


放浪娘「きゃー、肉球ぷにぷにー」

マコ「みぃ……」zzz

-西の森-

サラ「変な動物にはちゃんと飼い主がいたね」

杏子「流石に盗んでまで捕まえようとは思えねーな。……ていうかあまり関わりたくねー」

まどか「うぇひひ……」


放浪娘「ね、ね。次はどこ行くの?」

杏子「あー、次か。……、まどかー。次の目的地ってどこだっけ?」

まどか「えっとね。次はここから西にある、ユーステルムの街だね」


サラ「そういえば、ツヴァイクトーナメントはどうなったんだろうね?」

まどか「ドラゴンズが優勝したんじゃないですか?」

-一方その頃 ツヴァイクトーナメント決勝戦-

レッドドラゴン「ギャアアアアーー!!」ボシュウウウ

[エレン1人抜き!]

エレン(中堅)「ぜぇ、ぜぇ。な、何とか削りきったわね」

ゆきだるま(先鋒)「と、溶けるのだ……」グッタリ
ほむら(次鋒)「カウンター技は偉大ね……」ボロボロ

ようせい(副将)「ほむらの奮闘が効いたねっ! やっちゃえーっ!エレンー!」
ハリード(大将)「フン、臨時パーティー組まされたと思ったら……。オレの出番は来るのか、コレは」

[エレン2人抜き! 優勝ほむらチーム!]

ゆきだるま「勝ったのだ!」

ようせい「ほむらの対レッドドラゴン用、卑怯上等切り落とし連発戦法が功を奏したわねっ!」

ほむら「勝ったのだから何も問題ないわ」

ようせい「でも、ほむらって試合開始前にこっそり自分にセルフバーニングとハードファイアーかけてたわよね。
     あれっていいのかしら?」

ほむら「セコンドを6人目として出すチームよりはよっぽどマトモよ」


ツヴァイク公「よくぞやった! 優勝賞品としてわしの顔を彫り込んだありがたいメダルをやろう!」

エレン「ハリード、どうぞ」

ハリード「これはいらん」

-ユーステルム 酒場-

マスター「そんな女の子たちは噂になってないなあ」

杏子「ふーん、そうかい。ま、しゃーねーな」

まどか「ほむらちゃん、さやかちゃん、マミさん……。どこにいるんだろう……」


ガチャッ

ウォード「よー、マスター。元気かい?」

マスター「ウォードさんか、久しぶりだな。調子はどうだい?」

ウォード「このあいだ、まとまった金が入ったからな。しばらくはのんびりと儲け話を探すさ」

マスター「はっはっは! のんびり儲けるか! あんたらしいな。
     このあいだといったら、氷湖のモンスター退治の仕事だったか?」

ウォード「ああ、助っ人がいたからな。なかなか楽に仕事が進んだぜ
     そういや、あいつ、今では黒魔女って呼ばれてるらしいな」

マスター「ほー。その人もまたなんとも陰気な通り名をつけられたな」

ウォード「ま、話した印象としては確かに、黒魔女って感じの奴だけどな
     体つきは貧相だけど美人でもあったな。あと数年すりゃいい女になりそうだ」


まどか「ほむらちゃんたち……どこにいるのかな……。ツヴァイクにもいなかったし……」

サラ「これだけ探しても全く情報が出てこないなんて……」

杏子「ま、北のほうにはいないってこったろ。もっと別の場所探せば見つかんだろ」

放浪娘「次はランスー?」

まどか「……そうだね。この街にもう用事はないし、行こっか」

-道中-

まどか「いよいよ、最終目的地のランスだね」

放浪娘「ね、ね。ランスってどんな街ー?」

サラ「えっと、聖王様に縁の深い街でね。聖王家と聖王廟が有名だね」

杏子「で、私らはヨハンネスって奴から話を訊くのと、聖王家から指輪をもらうのが目的だな」

放浪娘「せいおーびょー?」

サラ「聖王廟は、要するに聖王様のお墓だね。ものすごく大きい建物らしいよ」

まどか「聖王家は聖王様の子孫の家なんだって」


-ランス-

サラ「着いたね」

まどか「あの大きな家が聖王家だよね。ヨハンネスさんの家はどこだろう……」

放浪娘「ねーねー、この家じゃない?」

-ランス ヨハンネス家-

アンナ「ヨハンネスですか? それなら私の兄のことです」

まどか「ヨハンネスさんにお訊きしたいことがあるんですけど……」

アンナ「私でよければ、お答えしますが、一体何を知りたいのですか?」

 君のこと
>アビスゲートのこと
 なし

まどか「…………。アビスゲートのことを」

アンナ「アビスゲートのことですか。ええっと……」

「私がお答えしましょう!」

アンナ「兄さん!」

ヨハンネス「アビスゲートは全部で4つあります。すなわち、
      ビューネイのゲートはロアーヌのタフターン山に。
      アウナスのゲートはアケのジャングルの火術要塞に。
      フォルネウスのゲートは西大洋に。
      そして、アラケスのゲートはピドナの魔王殿に」

杏子「魔王殿……」
まどか「タフターン山……」

サラ「魔王殿に開かない扉があったのですが、扉を開ける方法をご存知ありませんか?」

ヨハンネス「ほう、魔王殿の奥まで入ったのですか。
      かの扉を開けるには、王家の指輪が必要と聞きます。
      王家の指輪は聖王家に保管されているはずです」

杏子「やっぱ聖王家か……」

ヨハンネス「……ゲートの開きは今は小さいです。
      しかし、四魔貴族たちはゲートを大きくする機会を虎視眈々と狙っています。
      実際、奴らはアビスの中からこの世界に自分たちの影を送り込んでいます
      もし、ゲートを閉じるなら、奴らの影との戦闘は避けられないでしょう」

サラ「影……つまり、分身だよね……」

杏子「なあ、アビスゲートの向こう側ってどうなってるか分からないか?」

ヨハンネス「ゲートの向こう側はアビスに繋がっています。
      アビスは瘴気に満ちた異空間。そこは生命の住める場所ではありません。
      仮に人がアビスに入っても生きることは難しいでしょう」

杏子「あー、異空間っつったよな。アビスを通じて異世界に繋がってるとかないか?」

ヨハンネス「……ないとは言えません。
      もしも、アビスの中に4つのゲートとは違う出口があるとしたら、
      誰も知らない場所に出る可能性はあります」

杏子(……見滝原に帰れる可能性もあるってことか)

ヨハンネス「しかし、仮にそれを試すとしても、ゲートを閉じる手段が必要でしょう。
      アビスゲートが開けば、世界に必ず悪い影響が発生する
      その先は誰にとっても不幸しかない」

サラ(閉じる方法……)

杏子「ま、そりゃそうだ。我儘で世界を滅ぼすなんてマネはさすがにごめんだね」

ヨハンネス「ふむ、話はこんなところでしょうかね」

杏子「ああ、参考になったよ。ありがとさん」

まどか「ありがとうございました、ヨハンネスさん。それでは失礼しますね」

タッタッタ バタンッ


ヨハンネス「…………。ふむ」

アンナ「兄さん、あの人たちってもしかして……」

ヨハンネス「確証はないが、多分そうだろう。同じことを訊いてきたからね」

アンナ「あの人たちが、ほむらさんの友達……」

ヨハンネス「…………ほむら君は聖王廟の試練を受けた。ゲートを閉じる、聖王の後継者として。
      そして、彼女たち……。おそらく、彼女たちもまたアビスゲートに挑むのだろう」

アンナ「あの人たちはゲートを閉じるの……? それとも……」

-10分後 ランス-

まどか「結構、王家の指輪もあっさり手に入ったね」

杏子「なんか、どうぞどうぞって感じだったな」

放浪娘「ひょっとしてその指輪、99個ぐらいあったんじゃない?」

杏子「いや、そりゃないだろ」


サラ「ところで、今日の目的は達成したわけだけど、この後どうするの?」

杏子「んー。私はとりあえずピドナに戻るかな」

サラ「そっか。杏子は、それでいいとして、まどかはどうする?」

まどか「えっと、次はまだ行ったことのない、リブロフかバンガードに行こうかなって」

放浪娘「っ!」ピクッ

サラ「? 放浪娘?」

放浪娘「り、リブロフはやめた方がいいよ! あそこ、何もないから!
    何のイベントもないつまんない街だもん!」

まどか「でも、ナジュ砂漠に行くにはリブロフを通らなきゃいけないって聞いたよ」

放浪娘「砂漠なんてつまんないよ! 神王の塔だってハゲじじいがわけわかんないこと言ってるだけだもん!」

杏子「神王の塔?」

サラ「ナジュ砂漠に建っている神王教団の本部だよ」

杏子「ふーん。放浪娘くわしいんだな」

放浪娘「と、とにかく! リブロフはダメーーーーー!」

「タチアナ!」

放浪娘「っ!」ビクッ

ニコライ「タチアナ! 探したぞ! さあ、私とリブロフに帰るぞ!」

杏子「タチアナ?」

放浪娘「お兄ちゃん!? どうしてここに!?」

ニコライ「家の者に目撃証言を集めさせて、所在を突き止めたんだ。
     さあ、今すぐ、リブロフのラザイエフ家に帰ってもらうぞ」

放浪娘「や、やだーーー! 私はまどかたちと旅したいのーーっ!」

ニコライ「家出して、家に迷惑をかけるに飽きたらず、この方たちにまで迷惑をかけるつもりかっ!」


サラ「な、なんかいきなり変なことになったけど、まどか、コレどうしよう……」

まどか「う、うーん……」
 お兄さん! タチアナちゃんは私の仲間です!
>ウェヒヒ! タチアナちゃんバイバイ!

まどか「タチアナちゃん!」

放浪娘「! ……まどかっ!」

まどか「バイバイ!」ウェヒヒ

放浪娘(見捨てられたっ!?)ガーン

ニコライ「さあ、帰るぞ! タチアナ!」ズルズル

放浪娘「うえええええん! まどかのばかーーーーー!」ズルズルズル


サラ「行っちゃったね……」

杏子「やっぱ、いいとこの娘だったんだな。あいつ」

まどか「……あの子は、家族や友達を大切にすべきだと思うの」

杏子「何かあったときに、後悔するのはあいつだからな。ま、あいつの人生だし、口出しする気はねーけど」

サラ「……。家族かあ……。お姉ちゃん、今頃どうしてるかな……」


まどか「とりあえず、リブロフはタチアナちゃんからは不評だったので、バンガードに行くことにします」

サラ「…………。えっと、バンガードに行くには、ピドナからの船に乗らないとね」

杏子「なら、帰りも一緒か。へへっ、今日は色々あったな。ミューズに色々話してやるか」

-一方その頃 ポドールイの町-

ほむら「…………」

エレン「聖杯の奪還依頼ね……。レオニード伯爵には以前世話になったんだけどなあ」

ほむら「ツヴァイク公も面倒な依頼をよこしてくれるわ……。けれど、私としても聖杯は手に入れておきたい」

エレン「聖王の血を受けた杯で、持ち主に力を与えるって伝承ね……」

ようせい「ねー、エレンー。レオニードって奴は吸血鬼なのよね?」

エレン「ええ」

ゆきだるま「オイラに血なんてないから安心なのだ!」

ほむら「いちごシロップでもかけてやろうかしら」

ゆきだるま「やめて!」

ようせい「ならさ! ほむらの血と交換とかなら喜んで、しょーだくするんじゃない?」

ほむら「い、イヤよっ! そんなの!」

ようせい「じゃあ、エレンは?」

エレン「私もちょっと……」

ゆきだるま「そういうようせいはどうなのだ?」

ようせい「私は女じゃないわよ。性別不明」

ほむら・エレン「え」

エレン「それにしても、ほむらって変わった戦い方をするわね」

ほむら「なんのこと?」

エレン「だって、その盾から色んな武器を出して、いちいち違う武器で戦ってるじゃない」

ほむら「そうね」

エレン「大剣かと思えば、棍棒使ったり。どれか一つの武器に絞ろうとは思わないの?」

ほむら「私はあまり素質に恵まれていないから、
    一つを集中して修めるより、多くを覚えて状況に応じて武器をかえるようにしてるのよ」

エレン「へー、よく使ってるのは大剣かしら?」

ほむら「ええ、この氷の剣が一番攻撃力が高いから」

ようせい「あのね、エレン! ほむらってひどいのよ!
     私を囮にして氷の剣の前にいたドラゴンルーラーを引き離して、剣をぶんどってきちゃったもの!」

ゆきだるま「そのときのドラゴンルーラー、( ゚д゚)ポカーンとしてたのだ」

エレン「は、はあ。そうなの」

ほむら「空を飛べるのだから適任だと思ったのよ」

ようせい「ぶー、ぶー!」


ようせい「はぁ……。でも、しょうがないかもね。私たちには氷の剣が必要だったし……」

エレン「?」

ほむら「……ええ、そうね。奴を倒すために氷の剣を何としても手に入れる必要があった」

エレン「奴? ほむら、あなたやけに強力な装備を集めてたけど、何と戦うつもりなの?」

ようせい「……………………」





ほむら「妖精の村を滅ぼした四魔貴族、魔炎長アウナスと戦うのよ」

今日の分、投下終了です。

最近、タチアナ(名前キャンディー)を育ててみた。何を使わせても微妙だったので、最終的に月術による回復係に収まった。
でも、何故か閃き適正のない龍神烈火拳をそのへんの雑魚から閃いてくれた。

前回の嘘あらすじ
ようせいが魅了されまくるなか、4ターン耐えるほむら。なんとか突破し聖王のブーツを取りセーブした後、ハートエイクを取り損ねたことに気づく……!

投下します。

-翌日-

まどか「…………」

サラ「まどかと二人旅も久しぶりだね……」

まどか「そうですね……」

サラ「……空が青いね……」

まどか「そうですね……」

サラ「海も青いね……」

まどか「ほんとですね……」

サラ「……………………舟こぐの疲れたね……」

まどか「……………………はい」

ギッコギッコギッコ……


まどか・サラ「まさか、バンガードに港がないなんて……」

-バンガード 舟着場-

まどか「やっと着いた……」

サラ「やっと着いたね……」

まどか「船から小舟でここまで漕ぐのは面倒だよ……。なんで港がないの……?」

サラ「えっと……。聖王記によると、バンガードは聖王様がフォルネウスと戦うために作った要塞都市だったはず」

まどか「それならなおさら港とかありそうじゃあ……」

サラ「ううん、バンガード自体が船のようなものなの。
   バンガードを動かしてフォルネウスのいる海底宮を攻めたって伝えられているよ」

まどか「え!? バンガードって動くんですか!?」

サラ「う、うーん。そうらしいよ」

まどか「うーん。本当かなあ。眉唾のような……」

サラ「まあ、何にせよ。今日もいつも通り、酒場でまどかの友達の情報を訊こうよ」

まどか「……そうですね! 今度こそ何か情報が手に入りますよね!」ウェヒヒッ

-バンガード-

まどか「……あれ?」

サラ「どうしたの? まどか?」

まどか「サラさん、今揺れませんでした?」

サラ「え? 揺れたって何が……!?」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ミシッ ミシッ

まどか「っ! 地震!?」

サラ「な、なに!? 地面が揺れてる!?」

まどか「サラさん! なるべく広い場所に避難しましょう!」

-バンガード コントロールルーム-

「ふっふっふ。ついにバンガードを発進させる時が来た!!」

ウンディーネ「ちょっと! 無駄口叩かないでさっさと術力を増幅器に送り込みなさいよ!」

ボストン「すぐに調子に乗って舞い上がるその性格が、君の欠点だな」

「なっ! いいじゃんっ! ちょっとぐらい役に入っても! 私、パーティーリーダーなんだし!」

ボストン「陣頭指揮ならハーマンがやっている。私たちは玄武術でバンガードに力を注ぐ役割だ」

「ぐぬぬ。それってオペレーターですらないモブの役どころじゃん……」

ウンディーネ「はいはい。はしゃぎたい気持ちは分かるけれど、動かした後にしなさい」

「むう。だったらフルパワーで力を注ぎ込んでやる! うおお、私が一番術力をつぎ込むんだあっ!」

ボストン「君の魔力値は15。術士としてそこまで恵まれていないと思うのだが」

ボストン「なお、ウンディーネは24、私は21、ハーマンは16だ。君がパーティー内で一番下になる」

「ぐおおーっ! 見てろ、このエビっ! 魔法少女は限界なんて簡単に越えちゃえるんだからあっ!」

BGM ♪バンガード発進!♪
テーーッテッテーテ テーッテレテーテー テーッテレテーテッテッ テーテレテッテー

ザ ザ ザ ザ ザ ザ……

サラ「バンガードが……動いてる……」

まどか「い、いきなり、超展開ですね……」

サラ「で、伝説は聞いてたけど、こうして目の当たりにすると、とんでもないね……」

まどか「……! バンガードを動かすっていうことは、フォルネウスと戦う人がいるってことじゃ!?」

***

「はあ、はあ。や、やった……」

ボストン「お疲れ様だ。そういう何事にも全力で打ち込めるところは、君の長所だと思うぞ」

ハーマン「出力も安定した。ここまで来りゃ、最低限の術力で舵をきれる」

ウンディーネ「ふぅ……疲れたわね……。それじゃ、リーダーさん、決めの言葉を言ったら?」

「……………………うん、よし!」





さやか「バンガード………………はっし…」
まどか「あのー、ごめんくださーい」ガチャッ バタンッ

さやか「ちょっと! 誰よ! 今決めようとしたところなのにっ!」
まどか「あ、ごめんなさい。ちょっとだけ、お話を伺いたくて……」


さやか「……え?」
まどか「あれ?」


さやか「まど……っ!」バッ
まどか「ざ、ザリガニ人間っ!!?」ガーン

ボストン「おや、私のことか。私はロブスター族のボストンという」

まどか「え? あ、ど、どうも、ご丁寧に。私はまどかです」

さやか「……いや、ちょい待ってよ、親友。そこのエビ人間に挨拶する前に、とるべきリアクションがあるでしょ」

まどか「えっ?」クルッ

「……………………」

まどか「さやかちゃん! よかった……、無事だったんだね!」

さやか「う、うん。もう少し早くそのセリフが出れば感動的だったんだけどね……。
    まどかこそ、無事で良かったよ……」

サラ「あの子が、まどかや杏子の友達……」

ウンディーネ「さやか。その子は?」

ボストン「察するに、彼女もさやかの友人ということか」

ハーマン「ハッ。フォルネウスと戦おうってのに、平和なもんだぜ」

***

さやか「鳥に連れ去られて、ロアーヌで男爵の謀反騒動に巻き込まれた……?」

まどか「うぇひひ……」

さやか「ま、まどか、よく無事だったね……」

サラ「色々あったからかな? まどか、最初は頼りなかったけど、最近は逞しくなったよ」

さやか「そっか。…………サラさん」

サラ「?」


さやか「親友を守っていただいて、本当にありがとうございました!」フカブカ

サラ「えっ!? いえ、そんなっ。私は何も……」

まどか「ううん。サラさんには本当に感謝しています。私、サラさんに会えて本当に良かったです!」

サラ「ま、まどかもやめてよ……。そ、そんな……。
   そ、それより! さやかは今までどんなことしてたの!?」

さやか「あはは。私? 私はまず、こっちに来た時……」



さやか「いきなり海で溺れて気を失って、最果ての島付近でボストンに救助されました」

まどか「大丈夫だったのっ!!?」

サラ「よく生きていたね……」

サラ「まどかの鳥や、杏子の魔王殿もすごいけど、さやかの海っていうのもまたすごいね……」

さやか「えっ? ひょっとして、まどかとサラさん。杏子に会ったの?」

まどか「うん。結構パーティーを組んだりしたよ」

サラ「ピドナの旧市街にいるから会いに行ってみれば?」

さやか「んー、これで所在が全く分からないのはマミさんだけかー」


まどか「ん?」
サラ「あれ?」


さやか「……あ、そっか。まどか、私、ほむらに会ったよ」

まどか「ほむらちゃんに会ったの!?」
サラ「噂のほむらちゃんに?」

さやか「(噂?)う、うん。だいぶ前のことだけどね」

まどか「ほむらちゃんとどこで会ったの? どんな様子だった?」

さやか「あー、今説明するよ。あれは確か……」

-回想 グレートアーチ-

丁度、ボストンと一緒に最果ての島を出て、
グレートアーチに辿り着いた時のことだったね……

さやか「ぜひ、ぜはー_。や、やっと陸についた……。もう海なんて見たくないよ……」

ボストン「さやかは魔法を使えないとひ弱なのだな」

さやか「な、なにをー……。こ、これでも活動的で明るい親友キャラで通ってるんだからー……あふぅ」

ボストン「フォルネウスはおろか、手下の水龍すら倒せるかどうか不安だ」

さやか「ちょ、ちょっと……休ませて……正直、喋るのもキツいから……」

ボストン「そうか。では、水でももらって来よう」テクテク

さやか「あ、ありがと……」


さやか(……はぁ。少しは呼吸も落ち着いてきたかな)

さやか(最果てから小舟を漕いでここまで来るなんて、ボストンが手伝ってくれなきゃ絶対無理だったなあ)

さやか(…………。みんなは、こっちに来てるのかな? それとも私だけ、あの穴に吸い込まれたの?)

さやか(もし、来てるんなら、探さないと。私のように誰かに助けられるとも限らないんだし)

さやか(最果ての島を救って、みんなも探す。両方やらなくちゃいけないのがヒーローの辛いところだね)ニヤニヤ


「見知った顔を見つけたと思ったら、何をにやにやしてるの。さやか」

さやか「えっ、その声……!?」ガバッ

ほむら「正直話しかけるべきか、他人のフリすべきか迷ったわ」

ようせい「……………………」

さやか「ほむらっ!? どうしてここに!?」

ほむら「アケから船でここまで来たわ。そして、この世界にいる理由なら、あの穴に飲み込まれたから、ね」

さやか「みんな来てるの!? 杏子やマミさんも!? まさか、まどかも!?」

ほむら「……わからないわ。けれど、杏子とマミも、あの時、穴に飲み込まれた……。
    こっちに来てると考えるべきでしょうね……」

さやか「…………。まどかは……?」

ほむら「…………。それは、私にも分からない。巻き込まれてなければいいんだけど……」

さやか「ほむら……」



さやか「じゃあ、キュゥべえは?」
ほむら「どうでもいいわ」バッサリ

ようせい「ねえ、ほむら。この人間は?」

ほむら「私の……あー、えー、……友人よ」

さやか「何で今、口ごもったのっ!? ていうか、妖精!?」

ようせい「(ビクッ)」ササッ

ほむら「心配はいらないわ。さやかはあなたを攫ったり、危害を加えたりしないから」

ようせい「……うん。わかったわ」スッ

さやか(な、なんか、ほむらが妖精に懐かれてる……。今も裾を掴んで後ろに隠れられてたし……)

さやか(ていうか! 仕草かわいいなっ! このっ! こっちなんてエビ人間が仲間なのに!)

ほむら「さやか。この子は私の仲間で、…………えっと、ようせいと呼んで頂戴」

さやか「ん。わかったよ。よろしくねっ! ようせいちゃん!」

ようせい「……うん。よろしくね、さやか」

さやか(な、なんかちょっと雰囲気暗い子だね。ほむら)

ほむら(……本当は元気な子なのよ。今は色々あって元気がないけど、そっとしておいてあげて)

さやか(? うん、わかった)

さやか「そうだ! ほむらもフォルネウスと戦うの手伝ってくれない?」

ほむら「えっ? フォルネウス?」

ようせい「…………!」

さやか「うん、四魔貴族のフォルネウス。
    今、私の世話になった最果ての島がフォルネウスの手下に攻められているの」

ほむら「……そう」

さやか「それで、そいつを倒すための戦力と、フォルネウスと戦うために、バンガードって町を探しているの。
    お願い! 手伝って!」

ほむら「……………………」

さやか「えっと、ほむら?」



ほむら「さやか、ごめんなさい。手伝うことはできないわ」

さやか「えっ!? そんな!?」

ほむら「私には、フォルネウスと戦うより優先しなければならないことがあるの」

さやか「優先って何? みんなを探すこと?」

ほむら「……確かにそれもあるわ。けれど、それとは別にやらなければならないことがあるの」

さやか「でも! 早くしないと最果ての島は沈められるかもしれないんだよ!
    そこの人たちは、私にとっては恩人なんだよ!」

ほむら「それでもよ。私は手伝うわけにはいかない」

さやか「っ! ああ、そう! ほむらは見知らぬ他人なんて助けたくないっていうんだねっ!!」

ようせい「っ!」

さやか「所詮、ほむらにとってまどか以外……」
ようせい「勝手なこと言わないでっ!!」

ようせい「ほむらは私が人間に捕まったとき、助けてくれたんだから!
     村が滅ぼされた時も、アウナスを倒すって約束してくれたんだから!!」

さやか「えっ? えっ?」

ほむら「……………………」

ようせい「こっちの事情も知らない癖に、ほむらのこと好き勝手言わないでっ!!」


「……………………」


さやか(な、なんか。ひょっとして、私、地雷踏んじゃった……?)


ほむら「……私がこっちに来たとき」

さやか「え?」

ほむら「ジャングルの火術要塞の入り口にいたわ」

さやか「火術要塞……?」

ほむら「四魔貴族の一体、アウナスの拠点よ」

さやか「四魔貴族っ!?」

ほむら「突然、右も左もわからない場所に来てしまった私は、迂闊にも火術要塞に忍び込んだ」

ほむら「けれど、火術要塞は、魔法もろくに使えなくなった私が太刀打ち出来る場所じゃなかった」

ほむら「瀕死の重傷を負った私は、ほうほうの体で火術要塞から逃げ出し、そしてそのまま気を失った」

ようせい「……そこで、私がほむらを見つけたの。バカな人間だなって思ったけど、気まぐれで手当てしたかな」

ほむら「そのおかげで、どうにか生き延びられたわね。……散々からかわれたけれど」

さやか「…………」


ようせい「けど、私も油断したのかな。
     その後、人間に檻に入れられて捕まっちゃって、どこかに連れ去られたわ」

さやか「連れ去られたって……」

ようせい「見世物小屋で見世物にするため、だって」

さやか「! そんなのって!」

ようせい「それで、人間なんて碌なものじゃないって、檻の中で怒っていたら……ほむらに助けられたわ」

ほむら「そいつらも船に乗る前だったし、どうにかアケでようせいを見つけることができたわ」

さやか「そうなんだ……」ホッ

ようせい「それで……。ほむらと一緒に……妖精の村に……帰ったら……」

ようせい「……………………」

さやか「えっ? あ、あの?」



ほむら「妖精の村が、アウナスの手下に燃やされていたわ……」

さやか「も、燃やされた……? 何で……?」

ようせい「……火術要塞は普通に探しても辿り着けないわ。
     人間が探しても、ジャングルを彷徨った挙句、野垂れ死ぬでしょうね」

ようせい「けれど、私たちは違う。
     虫や木々の声に耳を傾けることで容易に所在を突き止めることができるの」

さやか「えっ。じゃ、じゃあ、まさか……。妖精の村は最果ての島と同じ理由で……」


さやか「ただの口封じのために、滅ぼされたの……?」


ほむら「……そうなるわね」

さやか「そんなっ! そんなの酷すぎるよ!!
    そんな理由で、村を滅ぼすなんて……! 許せるわけがないっ!」

ほむら「……そうね。本当にその通りだわ」



ようせい「それで……。燃え尽きた村で泣いていた私に、ほむらが近づいて……」



ようせい「「私と結婚してください」って耳元で囁いたの」
さやか「ちょっ」
ほむら「捏造はやめなさいっ!!?」


ようせい「きゃははっ! えー、確かそう言ってたと思うけどなー」

さやか「ほむら……」

ほむら「ようせい……。あなた、人をからかうのなら、時と場合を考えなさい」

ようせい「まあ、冗談はおいといて、アウナスを倒すって約束してくれたの。
     不覚にもちょっとときめいたわ」

さやか「そ、そうなんだ。正直あのタイミングで冗談を言うのはやめて欲しいなあ」

ほむら「この子は隙あらば、人をからかうのよ……」

ようせい「ほむらは私の嫁になるのだー」

ほむら「却下よ」

ようせい「ぶーっ。ノリわるーい」

さやか「あれ? じゃあ、ほむらのやらなきゃならないことって」

ほむら「アウナスの討伐よ」

ようせい「そういうことよ。…………じゃあ、さやか」

さやか「え?」


ようせい「謝って。ほむらに」

さやか「はい?」

ようせい「ほ、む、ら、に、あ、や、ま、っ、て!」

さやか「あっ! ほ、ほむら! ごめん! そんな事情があったのに酷いこと言って!」

ほむら「別にいいわ。今回の暴言は、歴代さやかの暴言録の中でもマシな方だったし」

さやか「……そんなに、今までの時間軸の私って酷いの?」

ほむら「ええ」キッパリ

さやか「あー。それにしても私ってほんと馬鹿だなあ。友達を信じないで誤解するなんて」

ようせい「ふふっ。でもほむらも悪いと思うわよ。ほむらってむっつりしててすぐ誤解されるもの」

さやか「おお! ようせいちゃん、よく理解してるね!」

ほむら「私はちゃんと説明しようとしたわよ。でも、さやかに遮られたのよ」

ボストン「そうだな。さやかは興奮すると人の話を聞かない癖があるようだ」


「……………………」


ほむら「ザリガニお化けっ!?」
ようせい「……もしかして、ロブスター族? 初めて見たわ?」

ボストン「おや、妖精族の方とは。これは奇縁だ。
     私はザリガニお化けではなく、ロブスター族のボストン」

さやか「あ、ちなみに、私の命の恩人。海で溺れていたところを助けてくれたの」

ほむら「何やっているのよ。さやか……」

ボストン「さやか、遅くなったが、水だ。どうぞ」

さやか「あ、ありがと。(ゴクゴク)ぷはーっ。生き返ったあー」

ボストン「本当はもう少し前に来ていたが、談話中だったので待機していた」

ほむら(まったく気が付かなかったわ……。この人、かなりできる?)


ボストン「そこの海の中にいたのだが、気づかなかったか?」

ほむら(予想外の場所だった!)

さやか「ところでさ、ほむら。これからほむらはどうするの?」

ほむら「まずは、各地を廻って装備を集めようと思ってるわ。
    それと、他の魔法少女。……そして、もしかしたらいるかもしれない、まどかのことも探すわ」

ほむら「グレートアーチからピドナに向かって、ミュルス、ツヴァイクと船を乗り継ぐ予定よ」

さやか「うん、そうだね。それがいいよ」

ようせい「私はちょっと疲れちゃったわ。ほむらー、おんぶしてー」

ほむら「盾の中にでも入ったらどうかしら」

ようせい「わーい! じゃあ、入るね!」シュルル

さやか「その盾に入れるの!?」

ほむら「実はこの盾、物を入れると時間が止まって、生物は止まらないのよ」

さやか「そんな都合のいい設定、初めて聞いたよ……」

盾の中「オヤスミー ホムラー」


ボストン「私たちはバンガードに向かう。
     そして、聖王のようにバンガードを用いて海底宮に攻め込むのだ」

さやか「あ、でも、その前に最果ての島に寄ってフォルネウスの手下を倒すよ!」

ほむら「そう。私には応援しかできないけど、頑張って」

さやか「ほむらもね! 何かあったらバンガードに来て! 絶対ほむらの力になるからさ!」

ほむら「ええ、頼りにさせてもらうわ」

-バンガード コントロールルーム-

さやか「と、こんな感じだったよ!」

まどか「そっか。ほむらちゃんはアウナスと戦うつもりなんだね……。
    それじゃ、なかなか会えそうにないかな」

さやか「会えないのは寂しい?」

まどか「うん、そうだね。でも、何でだろう……。
    ほむらちゃんがそのようせいちゃんのために立ち上がったのはとっても嬉しいって思うの」

さやか「あー、まどかはほむらの保護者だからねー。ほむらの成長が嬉しいんじゃない?」

サラ「ほ、保護者?」

さやか「あ、はい。ほむらって、基本的には善意で動くんだけど、
    無愛想、言葉少ない、まどかしか見えてないの三拍子で悪く誤解されやすいんです」

サラ「へ、へぇ……」

さやか「そんなほむらを、ことあるごとにフォローしたり、叱ったりしてたのがまどかです。
    あと、たまにマミさんも」

サラ「そ、そうなの……」

さやか「まどかがいなかったら絶対ほむらは孤立してた……!
    というか、実際、まどかと仲良くならなかった時間軸、孤立してたみたいだし」

サラ「は、はあ……」

さやか「ぶっちゃけ、まどかは一ヶ月間、ほむらのお母さんをしてました!」

まどか(私、そんなことしてたんだ……)←憶えていない

サラ(そ、想像つかない……)

さやか「ということで、まどかはお母さんとして、ほむらの成長が嬉しいのでしょう」

サラ(ほむらちゃんって一体……)

-バンガード 外-

ウンディーネ「やれやれ、さやかたちの話はまだまだ続きそうね」

ボストン「消息不明の親友とようやく出会えたのだ。そのぐらいはしょうがないだろう」

ボストン「私たちは浮かれている彼女をフォローすべきだ」

ウンディーネ「……ねえ、ボストン。あなた、前から思っていたけど、結構さやかに甘いわよね」

ボストン「そうかもしれない。島の誰もが滅びを受け入れていたなか、彼女は他人である我々のために立ち上がった」

ボストン「ああいう人間は見ていて気持ちのいいものだ。彼女が戦うというのなら、私も手助けしてやりたい」

ハーマン「ハッ。馬鹿だが、ああいう馬鹿は嫌いじゃない。フォルネウスと戦うのならあのぐらい活きが良い奴じゃなければいかん」

ウンディーネ「ハーマン。あなたはあなたで、さやかのこと買っているのね」

ハーマン「ケッ。尻の青いガキだが、あいつのおかげでこうしてもう一度海に出ることができた」

ハーマン「今のオレはグレートアーチで腐っていたころじゃ考えられないぐらい昂ってやがる……!」

ウンディーネ「はあ……。何だかこのパーティー、バカばっかりね……」

ボストン「そういうあなたはどうしてさやかについてきてるのだ?」

ウンディーネ「色々と馬鹿らしくなったのよ……。井戸の宝を手に入れるため散々頭を使ってボルカノとやりあっていたのに……」

ウンディーネ「結局、あのおバカに私もボルカノも叩き伏せられて……。ショックすぎて井戸の宝も町のこともなんかどうでもよくなったわ」

ハーマン「フン。だが、フォルネウスとの戦闘は間違いなく死闘になる。留守番するのも手だぜ?」

ウンディーネ「ふん、ここまで来たんだから見届けるぐらいはしてやるわよ。ゲートを閉じた聖王の後継の誕生って奴をね」

ハーマン「ハ ハ ハ ハ ハ ハ! さやかが聖王の後継かよっ! 聖王の品格が落ちそうだな!」

ウンディーネ「私も自分で言っててそう思ったわ……」

ウンディーネ「そういえば、海底宮にはどうやって向かうつもりかしら? まさか、闇雲に探すってわけじゃないんでしょ?」

ハーマン「ああ当然だ。海の地理を知るには、現地民に訊くのが最も手っ取り早い」

ボストン「この場合の現地民とは、我々ロブスター族のことだな」

ウンディーネ「そう。……つまり、今向かっているのは」

ハーマン「ああ、そうだ」
ボストン「そうなるだろうな」





ハーマン「最果ての島へ!! 世界の果てまで西へ走り続けるのだ!」

ここまでで終了です。
緊急事態。ゲーム内でのボストンのセリフが少なすぎて、口調がイマイチわからない。

前回の嘘あらすじ
ようせいが魅了されまくるなか、4ターン耐えるほむら。なんとか突破し聖王のブーツを取りセーブした後、ハートエイクを取り損ねたことに気づく……!

投下します。

-数日後 ロアーヌ 酒場-

まどか・サラ・トーマス・エレン「乾杯!」

エレン「今まで事件後でゴタゴタしてたけど、ようやく落ち着いてきたわね」

まどか「あれ? そういえば、ユリアンさんはどうしたんですか?」

エレン「……なんかあいつはプリンセスガードに抜擢されたらしいわ」

トーマス「つまり、モニカ姫の親衛隊だね」

まどか(ねぇサラさん。もしかしてエレンさんって嫉妬してるの?)

サラ(うーんわかんない。たんに散々言い寄られたのにあっさり離れていったのが不満なのかも。
   村の仲間としてなら仲は悪くなかったし)

トーマス「さて、オレは祖父からの用があるからピドナ行きの船に乗るよ」

サラ「あの怖いおじいさんからの?」

まどか(トーマスさんのおじいさん、怖いんだ……)

エレン「そっか。じゃあ、トムとはここでしばらくお別れなんだ」

トーマス「そうだね。しばらくは向こうに逗留することになると思う」

エレン「そういえば、ハリードはランスの聖王廟に行くからツヴァイク行きの船に乗るって言ってたわね」

トーマス「へぇ……」

ここまでで投下終了。
テレパシーを使える魔法少女はきっとファイターモードであっても陣形技を使えるに違いない。
というかゲームで、サラと少年の二人に陣形技を使わせることができないのがとても納得いかない。
よって、このSSではファイターモードでも使います。アラケスの戦鬼のごとく使います。

補足
パワーレイズ…後衛中央の術攻撃翌力が上がり、前列2人の素早さが上昇する陣形。
鉄砕鞭…まどポやまどオンの杏子の必殺技。このSSでは単体攻撃かつ遠距離攻撃。消費WP5
杏子の槍…攻撃翌力28 重量1 特殊技・鉄砕鞭 杏子の固有武器 ……という作中設定。
腰に生首…って攻略本に書いてあった。
フリーファイト…全員が横一列で自由に動く陣形と呼べない陣形。

投下します。
しばらくさやかのターンが続きます。

-回想 見滝原 雨の降る公園-

ザアアアアアアアアアアアア

「は、はははは……。私たちって、化け物なんだ。魔女って私たちの成れの果てなんだ……」


「……。さやかちゃん……。
 ……キュゥべえ、どうしてそんなことを今更教えたの……!」

「魔法少女は魔女になる。このことを教えるとなぜかみんな僕のことを怒りだすんだ」

「まったくわけがわからないよ」


「っ! ……今すぐ消えて! 二度とさやかちゃんの前に、みんなの前に現れないで!」

「そうかい。君がそういうのなら、さやかや彼女たちの前にはなるべく姿を見せないようにしよう」スッ

ザアアアアアアアアアアアア

「魔法少女って最後には魔女になっちゃうんだ……。は、はは……、転校生が言ってたのはこのことだったんだ」

「どうして、教えてくれなかったんだよ。転校生の奴……」

「さやかちゃん……」


「ああ……。ははっ! 言えるわけないか! あいつの言うことなんて信じるわけないもんね!」

「バカな私に、何度も何度も否定されて! きっと教えるのやめちゃったんだろうね! はははっ!」

「さ、さやかちゃん……」

「こんな事実を抱えて、何度も何度も繰り返してっ!
 あははははははっ! すごい! 今まで好きになれなかった転校生を今なら尊敬できそうっ!」

「……………………」

「さやかちゃん……、帰ろう……。マミさんか、ほむらちゃんの家に一度帰ろうよ……」

「ああ、うん。そうだね、まどか……。ちょっと一人で帰っといてよ」

「さ、さやかちゃん!?」

「……魔女退治してくるよ。……化け物はちょっとでも少ないほうがいいでしょ」

「…………! さやかちゃんは化け物じゃないよっ!」

「…………何よ、ソレ。慰めてるつもり?」

「っ! …………」

「いいから放っといてよ。……少し一人にさせてよ、まどか」

「……できないよ。……さやかちゃん、帰ろうよ。まずは、みんなと話し合った方がいいよ」

「……ねえ、まどか。あんたさ、私に同情してんの?」

「えっ?」

「ねえ、まどか。今、私が何を考えてるのか教えてあげよっか?」

「さ、さやかちゃん……」

「ウザいよ。あんた」

「……ははっ。まどかはいいよね! 転校生が助けてくれてさ!」
「契約しそうになったら、すぐに現れて妨害してさ! あいつがいなきゃまどか、とっくに化け物じゃん!?」
「そのくせあんた、魔法少女の戦いに何度も何度も首を突っ込んでさ! すごいね、あんた。何様のつもり!?」

「…………」

「ちくしょう……。何よ……みんな……」

「私は……恭介のために契約したはずなのに……、私以外のみんなばっか幸せでっ……!」

「どんどん私が転落していってっ! 終いには魔女っ!?」

「それなのにまどかのように、誰かが助けてくれないっ!」

「もうっ! 恭介も! 仁美も! まどかも大ッ嫌い!!」

ザアアアアアアアアアアアア

「……まどか、消えてよ。正直あんたにだけはそばにいてほしくない」

「さ……、さやかちゃん…………」

「それとも何? あんたが契約して、私を人間に戻してみる?」

「えっ……」

「……。あはははははははははっ! できるわけないよねっ! 転校生と、ほむらちゃんと約束したんだもんね!」

「大事な約束を、こんな化け物なんかのために破れるわけないもんね!」

「っ! …………」

「それともまどかは、ほむらちゃんなんかどうでも良くて、私を選ぶ?」

「…………」

「私を憐れむなら、私を助けたいっていうなら、あんたも化け物になってみろよっ!!」

「…………………………………………」



「……ごめん、ちょっと言い過ぎた。私、何言ってるんだろう」

「もう、私のことは放っておいて。……さよなら」バチャッ バチャッ

ザアアアアアアアアアアアア


「よう、まどか」

「……………………あっ……」

「途中からだが話は聞いた。……私らは魔女になんのか」

「………………きょうこ、ちゃん…………」

「随分、好き放題言われたな」

「…………わ、わたし……………………」

「……。おまえはほむらのとこにでも先帰ってろ。私もあいつに言いたいこと言ってくるから」


ザアアアアアアアアアアアア

-翌日 早朝 バンガード宿屋-

ガバッ

まどか「はあっはあっ……!」

まどか(さ、さやかちゃんとの思い出……)

まどか(……あの後、杏子ちゃん、果てはほむらちゃんやマミさんも一緒になって説得した)

まどか(…………って後で聞いた)

まどか(私はなにもできなくて、最後にみんなに連れて来られたさやかちゃんに謝られた……)

まどか(それで、さやかちゃんが無事に帰ってきたことが嬉しくて、大泣きしちゃったんだっけ)

まどか(……それがあの時の顛末)

まどか「よりによって、思い出せたのがこの記憶なんて……。それだけ心に残ってたんだろうなあ」


ボストン「もう、起きたのか。さやかと違って朝早いのだな」


まどか「ぼ、ボストンさんっ!」

ボストン「ホットココアだ。飲むといい」スッ

まどか「あ、ありがとうございます……」

まどか(いつ用意したんだろう?)

ボストン「ふむ。嫌な夢でも見たのか?」

まどか「…………はい」

まどか「あの、ボストンさんは魔法少女についてどこまで知っていますか?」

ボストン「ひと通り、さやかから聞いた。最後には魔女というモンスターになることも含めて」

ボストン「それと、そのことを知った時に君と喧嘩したことも聞いたな」

まどか「そ、そこまで知ってるんですか……。随分さやかちゃんと打ち解けてるんですね……」

ボストン「彼女も見知らぬ場所に一人で寂しかったのだろう。秘密を打ち明けられる程度には信頼されている」

まどか「そうなんですか……。あの、さやかちゃん、魔法少女が魔女になることについて気にしてました?」

ボストン「本人は強がっていたが、気にしているようではあったな」

まどか「そうですか……」

ボストン「これは私の意見だが」

まどか「?」

ボストン「さやかはそもそも悩むことに向いていない。悩みなど脇において、目の前の誰かのために戦えば自然立ち直る類の人間だ」

まどか「? えっと……?」

ボストン「目的に向かって突っ走るさやかは強い。私はそう言っているのだ」

まどか「あ、それは分かります」



まどか「あの、さやかちゃんと旅してたんですよね。どんな感じだったんですか?」

ボストン「基本的に、今までバンガードを動かすために陸地を駆けていたな」

まどか(陸地って……)

ボストン「まだ、日も上っていないことだ。詳しく話そう」

まどか「はい! お願いします!」

-回想 グレートアーチ-

ほむらと出会った時のことはさやかから聞いたのだったな
では、その後。ハーマンに出会った時のことから話そう

さやか「うーん。ようせいちゃん、可愛かったなー」

ボストン「ようせいの魅力値は20だ。確かにかなりの魅力だ。ちなみに、ほむらは魅力が21あったな」

ボストン「ちなみにさやかは魅力18で、私は残念ながら魅力9だ」

さやか「エビに魅力があってたまるか……」

***

「海賊ブラックの財宝に興味ないか? 120オーラムでいいぜ?」

さやか「あ、押し売りは結構です」

ボストン「ここにいる人間の多くは海賊ブラックの財宝が目当てのようだ。情報を売って儲けている人間がかなりいるな」

さやか「仲間になってくれそうな人はいないのー?」

ボストン「ふむ。それはわからんが」



ハーマン「…………」

ボストン「腕の立ちそうな人間は、あそこにいるようだ」

さやか「あの海を見つめているおじいちゃん?」

ボストン「どうやら、海になにか複雑な思いがあるようだ」

さやか「ふーん。よしっ! ちょっと話を訊いてくるよ!」


さやか「ねえ、おじいちゃん。ちょっといい?」

ハーマン「おお、おまえ。海賊ブラックの財宝に興味…………。なんじゃガキか」

さやか「は、はあっ!? ちょっと! ガキって何よ!」

ハーマン「フンッ。ションベン臭ぇガキに用はねえ。とっとと家に帰りな」

さやか「だ、だいたい年齢は関係ないでしょ! 財宝探しに必要なのは実力とかそういうのじゃないの!?」

ハーマン「みたとこひよっこもいいとこだろう。まあいい、情報は100オーラムだ。訊きたきゃ払え」

さやか「ぐ、ぐぬぬ。誰があんたの情報なんか……!」


ボストン「熱くなるな、さやか。止まれ」

ハーマン「! ロブスター族だと?」
さやか「ボストン! 止めないでよ! このジジイにガツンといってやるんだから!」

ボストン「あのままいけば、争いになりかねなかった。そして、負けるのはさやかの方だ」

さやか「そ、そんなの分かんないじゃんっ!」

ハーマン「……最果てに棲むロブスター族がどうしてガキのお守りをしてる?」

さやか「ボストン! こんな奴に教えなくていいよっ!」

ボストン「落ち着け、さやか。目的を忘れたのか」

ボストン「フォルネウスを倒すため、戦力を集めバンガードに向かう。そのために最果てからここまで来たのだ」

ハーマン「フォルネウスと戦う……!」

ボストン「我々ロブスター族のモードは玄武の水。フォルネウスはおろか、その手下にも通用しない」

ボストン「だから、島がフォルネウスの手下に攻められても、我々は滅びを受け入れるしかできなかった」

ボストン「しかし、さやかは戦うと言った。未熟な戦士だが、その意思に可能性を感じた」

ボストン「だから、私は彼女についた。滅びに抗おうと決めたのだ」

ハーマン「このガキに可能性ねえ……。見たところ、玄武術なしのおまえでもこのガキの3倍は強そうだが」

さやか「い、いちいちムカつくジジイね……」

ボストン「私と彼女の実力差がなくなるのは、そう遠くない未来だと考えている」

ハーマン「フン? まあいい。そこはおまえの見立てを信じるとしよう」

さやか「な、なんて偉そうな……」


ハーマン「(ジロッ)」

さやか「(ビクッ)な、なによ……」

ハーマン「おい、さやかって言ったか」

さやか「あんたに名前を呼ばれる筋合いなんてないんだけど」

ハーマン「……てめえはフォルネウスに片脚を喰われても、仲間を皆殺しにされても、戦い続ける覚悟はあるか?」

さやか「…………」

ハーマン「答えな」

さやか「…………私さ」

ハーマン「あん?」

さやか「ものすごく強くてでっかい敵と戦ったことあってさ。仲間と一緒に家族や故郷を守るために立ち向かったの」

さやか「仲間たちのなかで私が一番弱くてさ。あんたの言うとおりひよっこで未熟もいいところで、何度も何度も傷ついたよ」

さやか「それでもさ……! 逃げようとか諦めようなんて、私も仲間も一度だって考えなかったよ!」

さやか「……あんたさ。その片脚、フォルネウスにやられたんだね」

さやか「それで、こうして惨めな負け犬になって、自分より弱い奴相手に偉そうにふんぞり返ってるんだ」

ハーマン「……口の減らないガキだな」

さやか「ウジウジしてるジジイよりはよっぽどマシだよ」


ハーマン「フン! まあいい。利口な奴より、こういう馬鹿の方が確かに可能性はあるか」

ハーマン「おい、ボストンって言ったか。わしも連れて行け」

ボストン「そうか。助かる」

さやか「は、はあ!? ちょっと、何勝手に仲間に入ってんのよ! 大体パーティーリーダーは私なんだからっ!」

ハーマン「てめえがリーダー? おしめがとれてからほざきな」

さやか「ぐ、ぐぬぬ。……やっぱ絶対イヤ! このジジイ今すぐ酒場で仲間から外そう!」

ハーマン「ケッ」

さやか「こ、こいつ……。私の意見は完全に無視する気だ……」

-現在 バンガード 宿屋-

まどか「…………。えっと……」

ボストン「実際、当時の彼女は弱かった。魔法に頼りすぎていたからなのだろう」

ボストン「剣の扱いも力任せで、レベルでいうならば4ほどだ。私やハーマンならば5秒で倒せる程度の実力だった」

まどか(さやかちゃん……。友達としてちょっと恥ずかしいよ……)

ボストン「だが、それでも彼女はひたむきだった」

ボストン「自分の弱さを自覚して、強くなるためにひたすら前に進み続けた」

ボストン「私やハーマンは、彼女のそういう心の強さにこそ、期待したのだ」

ボストン「バンガードに着くころには、彼女も剣士としてまずまずの実力になっていた」

まどか「そ、そうなんですか(まずまずって反応に困るなあ)」



ボストン「倒されるまで、15秒といったところだ」

まどか「違いが微妙だよ……」

-回想 バンガード-

さて、続きだが、バンガードに辿りついた私たちはそこである噂を聞いた。
夜に正体不明の殺人鬼が現れて、猟奇殺人を起こすというものだ。

「この町で殺人事件が起こるなんて……」

「物騒ね……私怖いわ……」

「なんでも、相当猟奇的な有り様だったらしいぜ……」

さやか「殺人事件……」

ハーマン「フンッ。どうみる、ボストン」

ボストン「猟奇的な殺害手口。アビスの魔物が犯人かもしれない」

ハーマン「死体を検分すればはっきりするかもしれんが、流石に余所者がそこまでするのは無理だな」

さやか「殺人鬼めっ! このさやかちゃんが成敗して牢屋にぶちこんでやるんだから!」

さやか「ねえ! こういうときって、聞き込みと張り込みかな!?」

ハーマン「まあ、好きにすればいい」

ボストン「張り込みは不要だが、住民に訊くのは悪くない」

さやか「じゃあ聞き込みしてくるよ!」タッ

さやか「すいません! 怪しい人を見かけませんでした!?」

「いえ、特には……。そういえば、あなた余所者よね」

さやか「え?」

「もしかして、あなたがその剣で……」

さやか「なっ!? ち、違います! 私は犯人を捕まえようと!」

「ふふっ、冗談よ。あなたみたいな子供が殺人鬼なわけないものね」

さやか「あ、あはは」

「本当は、私も他所から来たのよ。ちょっと事情があって各地を回っていてね」

さやか「はあ。お姉さんも旅をしてるんですか」

「でも、犯人探しなんて危ないわよ。この町から離れたほうがいいんじゃないかしら」

さやか「大丈夫ですよ! さやかちゃん必殺のスクワルタトーレでやっつけちゃいますから!」

「ス、スクワルタトーレ……?」

さやか「はい! 先輩に名付けてもらった技なんです! まあ、実は言葉の意味は知らないんですけどね」

「そ、そう。あまりこの町で技名を吹聴しないようにね」

さやか「? わかりました。ところで、お姉さんはどうして旅を?」

さやか「あ、えっと。話しづらいことなら言わなくても結構ですよ!」

「……。奪われた大切なモノを探すためよ」

さやか「奪われた大切なモノ……?」

「あなたも、大切なモノがあるのなら、決して油断しないようにね」

さやか「ん。ちょっと分かります……。気づけなかったせいで失っちゃったモノ、私にもありますから」

「そうなの……」

さやか「……まあ、私の場合、物じゃないんですけどね」

「そう……」

さやか(……あれ? そういえば、ボストンたちはどうしてるのかな?)クルッ

ハーマン「わしらはバンガードの町長に話を訊くか」スタスタ

ボストン「そうだな。闇雲に聞きまわるよりも、一番詳しい人間に訊くのが良いだろう」スタスタ


さやか「あー! ちょっと! 私を置いていくなってのー!」

さやか「お姉さん、サヨナラ! 探しもの見つかるといいですね!」

「そうね。あなたもいつか、失ったものを取り戻せるといいわね」

さやか「ん……それは無理かな……。でも大丈夫ですよ! 私には大切な友達がいますからっ!」

「そうなの……。あなたは強いのね」

さやか「お姉さんも、私の友達に会うことがあったら、よろしくお願いしますね! 私と同じぐらいの年だけど、みんなすごく強いんですよ!」

「そう、わかったわ。そういう子にあったらあなたのことを伝えてみるわ」

さやか「はい! 私、さやかです! それじゃお姉さん、またどこかでっ!」タッ

「元気な子ね……」

-バンガード 宿屋-

ハーマン「バンガードを動かそうにも、殺人鬼を捕まえなければ無理だ」

ハーマン「だが、わしらの見立てでは、恐らく犯人はフォルネウスの尖兵だ」

さやか「それって、最果ての島のように、ゲートに辿り着けなくするために送りこんできたの?」

ハーマン「てめえにしちゃ、察しがいいな。おそらくはそういうことだろう」

さやか「……あんた。どんだけ私のこと馬鹿にしてくれてんの?」

ハーマン「てめえは普段の言動に問題がある。もう少し考えてしゃべれ」

ボストン「話がそれている。さやか、ハーマン、話を戻せ」

ハーマン「ああ、そうだな。……町の住人は殺人鬼を警戒している。夜は出歩かず、鍵をかけて家にこもるはずだ」

ハーマン「そこで、わしらは殺人鬼を敢えて誘い込む」

さやか「へー。そして、まんまとやって来た殺人鬼をふんじばるってこと? いいんじゃない、それで」

-深夜-

さやか(…………うーん、困った)

さやか「ねえ、二人とも。ちょっとトイレ行ってきていい?」

ハーマン「ちっ。日が沈む前に行っておけよ」

ボストン「……気をつけろ。異常を感じたらすぐに引き返すのだ」

さやか「わかってるよ。バンガード殺人事件・第2の被害者なんてごめんだからね」ガチャッ バタン

***

さやか「ふぅ……」ガチャッ

さやか(用を足してる間に襲われるなんてことは起こらず、さやかちゃんは無事トイレから出れました)

さやか「さて、手を洗って戻りましょうかね」

ヒタッ ヒタッ



さやか(…………)

さやか「誰? ボストン?」


ヒタッ ヒタッ

さやか「ねえ、ちょっと返事しなよ」

ヒタッ ヒタッ

さやか「ねえってば!」

ヒタッ ヒタッ


フォルネウス兵「ゴシャアアアアアアアッ!!!」


さやか「ヒィッ!! ば、化け物っ!!?」

フォルネウス兵「ギャッ! ギャッ!」

さやか「いやっ! 助けて! 誰かっ!!」

さやか「いやあああああああああああああああ!!!!」



ズシャアアアアアッ!!

ハーマン「おまえにしては機転が利いていたな」

さやか「ふふんっ! そうでしょ!」

フォルネウス兵「ギ……ィ……」ボシュウウウ


フォルネウス兵x3「ギギッ!?」

さやか「あんたらも驚いたでしょ? こんなに早く仲間が駆けつけてきたんだもんね」

さやか「ふっふっふ、あんたたちに特別に種明かししてあげるわ」



さやか「魔法少女にはね。テレパシーっていうほとんど魔力を使わない便利な魔法があるのよ!」

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

さやか「ねえ、見た!? 今回の戦闘、私かなりいい動きしたんじゃない!?」

さやか「あいつらを嵌めた手口、見事だったでしょ!?」

ハーマン(ちょっと褒めるとすぐこれだ……)

ボストン「そうだな。戦闘については及第点だろう」

ボストン「その前のテレパシーについては咄嗟の判断としては良かったと思う」

ボストン「だが、そういうことは事前に説明しておくと混乱が少なかっただろう。最悪こちらが動けないこともあり得た」

ボストン「そもそも、さやかがトイレに行かず、3人で迎え撃っていれば何も問題はなかった」

さやか「うっ……。ボストン先生、厳しいです……」

ハーマン「フッ」

さやか「って! このジジイ! 今、私のこと笑ったでしょー!!」

ハーマン「ハン、てめえの被害妄想だ」

さやか「ぐぅぅ……。ムカつく!」

ボストン「ふむ。こいつらの死体を見せれば、バンガードのキャプテンもフォルネウス打倒に協力するだろう」

さやか(そういや、バンガードの町長さん、自分のことをキャプテンって呼ばせたがるんだよね)

ボストン「殺人鬼はもう現れない。今日はこれで休もう」

さやか「ん。そうだね」

ハーマン「やれやれだぜ……」



ボストン「ところで、さやか。手は洗ったのか?」

さやか「あ……」

-現在 バンガード 宿屋-

まどか(さやかちゃん……。手を洗い忘れるなんて友達としてちょっと恥ずかしいよ……)

ハーマン「何を話してるのかと思えば……、フォルネウス兵との戦闘の時の話か」

まどか「あ、ハーマンさん。おはようございます」

ボストン「ハーマン、せっかくだ。君も何か話してやるといい」

ハーマン「あん? さやかの話か? ……面倒臭ぇな」

まどか「は、はあ……」


ハーマン「……そうだな。フォルネウス兵との戦闘の後、バンガードのコントロールルームへ行くためにバンガード地下へ行ったんだが」

まどか「はい……」

ハーマン「その時、さやかはボスの冷霊に突っ込んでフリーズバリアでお陀仏だったな」

まどか「…………。さやかちゃん……………………」

ボストン「ハーマン。もう少しマシな話をしたらどうだ?」

ハーマン「フン? なら、そうだな……。海賊ブラックの財宝の洞窟へ行った時のことでも話すか」



まどか「ちなみに、その時のさやかちゃんの実力は?」

ハーマン「むやみに突っ込まなければ、オレ相手に30秒は持つ程度だ」

まどか「う、うーん……」

-回想 バンガード 町長の家-

バンガードのコントロールルームに辿り着いた後、一度町長の家に戻り状況報告をした。
だが、町長との情報の食い違いから、ある物が紛失していることが分かった。

町長「コ、コントロールルームからイルカ像が無くなっているなんて……」

さやか「ねえ、キャプテン。そのイルカ像ってそんなに大事なの?」

町長「大事も大事だ! アレはオリハルコーン製の玄武術増幅器なのだ! アレが無ければバンガードは動かせない!」

さやか「そんなっ! どうして無くなっているの!?」

町長「……盗まれたとしか考えられん。オリハルコーンは高く売れるからな」

ボストン「地下への入り口を知る者ということか? 心当たりはあるのか?」

町長「わからん。考えたくないが、町の者かもしれん……」

町長「わしがバンガードのキャプテンになる前、そのぐらい昔に既に奪われていたのだろう……」

さやか「とにかく、町の人たちに訊いて……」


ハーマン「待て。わしに心当たりがある」

さやか「ハーマン?」

ハーマン「海賊ブラックの財宝、そのなかでも特に素晴らしい宝にオリハルコーン製のイルカ像があった」

ハーマン「売られた盗品がブラックの手に渡ったのだろう」

町長「あの悪名高いブラックに……!」

さやか「…………。ハーマン、何でそんなこと知ってんのさ」

ハーマン「わしも財宝の洞窟に立ち入ったことがある。その時にイルカ像を見たのさ」

さやか「……ふーん?」

ボストン「さやか、詮索は良くない」

さやか「……わかったよ。それじゃ、そのブラックの財宝を探しに行けばいいんだね」

ハーマン「ああ。イルカ像までの道はわしが知っている」

-温海沿岸地方南部 財宝の洞窟-

ハーマン「この辺りには、洞窟が多い。海賊ブラックはその内の一つを最も大切な宝の隠し場所として選んだ」

ハーマン「ブラックの財宝の情報は多いが、そのほとんどはブラックの用意したダミーの洞窟やただのモンスターの巣だ」

ハーマン「真の財宝が隠された洞窟はただ一つ。つまり、ここだけだ」

ボストン「既に財宝を誰かに回収された可能性はないのか?」

ハーマン「おそらく、その可能性は薄い」

さやか「なんでさ? 場所を教えてるのなら、もう回収されてんじゃないの?」

ハーマン「ここの仕掛けは他の財宝の洞窟とは格が違う」

ハーマン「生半可な実力じゃ罠やモンスターの餌食だ」

さやか「でも、ものすごく強い人が来たかもしれないじゃん」

ハーマン「そんな奴には情報を教えとらんな」

さやか「こ、このジジイ……。あくどいな……」

ボストン「それで、私たちの実力で財宝を手にすることは可能か?」

ハーマン「可能だ」

ハーマン「そもそも、オレが道を知っている。オレの案内があれば、さやかの実力でも充分だ」

さやか「また私を見下すようなこと言って……」

さやか「ん? オレ?」

ハーマン「おっと、昔の自分の呼び方が出てきちまったな。少し熱くなったようだ」

さやか「ふーん。別にそっちの方がいいんじゃないの? オレって言った方がかっこいいし」

さやか「何かさ。こう、現役バリバリ!って感じじゃん。海を見ながら黄昏れていた時よりよっぽどいいんじゃない?」

ハーマン「ハッ。言ってろ馬鹿が」

さやか「ちょっ! こっちは善意で言ったのに、すぐに人を馬鹿にするんだから!」

ボストン「さやか。今のはハーマンの照れ隠しだ」

さやか「ん? そうなの? ……へー」ニヤニヤ

ハーマン「ケッ」

***

ハーマン「ここにスイッチがある。だが、押すのは待て」

さやか「ん? どういうこと?」

ボストン「ふむ。察するに」


ドラゴンの像「…………」


ボストン「アレと関係があるということか」

ハーマン「ああ。今までにも進むためスイッチが必要な扉はあったが、ここも同じくスイッチを押す必要がある」

ハーマン「だが、ここの場合、押すと同時にドラゴンが動き出す仕掛けになっている」

さやか「えっ! あの強そうなのが動くの!?」

ハーマン「そうだ。やり過ごすのがいいんだが、戦闘の可能性も考えて奴の特徴を教えておく」

ハーマン「アレはブルードラゴン。主に電撃と殴打系物理攻撃をつかって攻撃する強力なモンスターだな」

ハーマン「注意すべき行動は、電撃と尾撃の二つ。これらはそれぞれ縦横異なる一列攻撃だ」

さやか「じゃ、ブリガンディ装備の私がクローズデルタの前列に立つよ」

ボストン「そうだな。殴属性や雷属性だと私には厳しい」

ハーマン「さて、何とか戦闘をやり過ごせればいいんだが……」

ハーマン「やはりこうなったか」

ブルードラゴン「ギャアアアアアアアアス!!」

さやか「くっそー! 行く手を遮られたー!」

ボストン「さやか、構えろ! 来るぞ!」


ハーマン「気をつけな! 奴は最初に必ず電撃のブレスを使ってくる!」

ブルードラゴン「ギャッ!」[電撃]

さやか「来るのが分かってるなら防御するよ!」バチバチバチッ

さやか「くうぅーっ! け、結構効くなあー……」

ボストン「ハサミッ!」ズシャッ

ブルードラゴン「ギャアッ!?」

さやか(相変わらずスゴく痛そうな攻撃だ……)

ハーマン「ふん……。居合い抜きッ!」シュバンッ

ブルードラゴン「ギャアアッ!?」

さやか(ハーマンはアレが強いんだよね。私との組手の時は使わないみたいだけど)

さやか(……悔しいけど、太刀筋が全く見えないや。アレを使われたら私じゃ何もできずに負けると思う)

***

ブルードラゴン「ギャアァァ……」ボシュウウウ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

ハーマン「フン、こんなもんか」

ボストン「攻撃は強力だが、それだけだ。そこまで大した敵でもなかった」

さやか「ねえ、私、さっきの戦闘で防御しかしてないんだけど」

ハーマン「守りは戦闘の基本だ。てめえはやたら頑丈なんだからこういう戦いも覚えておけ」

さやか「うー……。確かに上手く噛み合ってたと思うけど……」

ボストン「さやか。君は腕力、素早さ、体力といった戦士として重要な能力に恵まれている」

ボストン「だからこそ、君は色々な戦い方ができる。戦法の引き出しは多い方がいい」

さやか「そう言われると悪い気はしないかな、うん!」

さやか「ふっふっふ。さやかちゃんは戦士としてすごい才能があるってことですな」

ハーマン「やれやれ……。すぐ調子に乗りやがる」


ボストン「なお、器用さや魔力には恵まれていない」

さやか「うぅっ!」グサッ

-財宝の洞窟 イルカ像前-

ボストン「着いたようだな」

さやか「アレがイルカ像……」


ハーマン「さて、ここにも罠があるんだが」

さやか「ま、まだあったんだ……。ブラックってどんだけ宝を取らせたくないのよ……」

ハーマン「当然だろう。……話を戻すが、イルカ像に触れるとモンスターが現れる」スッ


ザパーンッ

クローカー「ゲコッ ゲコッ」
カンヘルドラコ「シャーッ」
ポイゾナスリーチ「(ヌルヌル)」


さやか「えっ、ちょっと! 対策とかは!?」

ハーマン「問題ない」


クローカー「……」[三すくみ]
カンヘルドラコ「……」[三すくみ]
ポイゾナスリーチ「……」[三すくみ]


ハーマン「こいつらは三体揃っていると動かない。とっととずらかるぞ」スタスタ

[ハーマンはイルカ像を手に入れた!]

ボストン「下手に攻撃しない方がいいということか」スタスタ

さやか「え、えぇー!?」

-現在 バンガード 宿屋-

まどか(ドラゴンに勝ったんだ、さやかちゃん……!)

まどか(でも、防御しかしてないらしいけど……)

まどか(さやかちゃん…………)

ボストン「その頃のさやかは、ようやく突撃癖が直ってきた。守りを覚え、攻める時も工夫するようになった」

ハーマン「だが、まだまだ甘かったがな。依然行動は読まれやすく、ボストンからすれば隙だらけだ」

ボストン「ハーマン、君も訓練ではさやかを近づかせずに倒していただろう」

ハーマン「突っ込みたがりの馬鹿には良い薬だっただろ。くくくっ」

まどか「…………」

まどか「何だか、二人共。さやかちゃんの仲間というよりはお師匠様みたいですね」

ハーマン「ケッ、あいつが弟子かよ。仮にそうなら師匠を敬ってほしいもんだぜ」

ボストン「私は組手の相手を務めただけだ。師匠と言えるほどの働きはしていない」


まどか(……良かった)

まどか(さやかちゃんも良い仲間に巡り会えたんだ)

ここまでで投下終了。わたしはさやほむ派です。
爺さんはロマサガ3屈指のイケメン。
けど、若返ると、どこかキャラが薄くなる気がする。
モウゼス編は長くなりそうなので、次に回します。

投下します。
どうしよう……。マミさんのイベントをそろそろ出したいのにそこに行く流れが思いつかない……。

ウンディーネ「あら? ボストンにハーマンに……まどか? 珍しい組み合わせね」

ハーマン「ああ、まどかに今までのさやかの話をしてんだよ」

まどか(あれ? そういえば)

まどか「さっきまでの話にウンディーネさんが出てきてませんね」

ボストン「ああ、ウンディーネが仲間になったのはこの後だ」

ボストン「ちょうどいい。ウンディーネ、君もモウゼスでの話をまどかにしてやってくれないか?」

ウンディーネ「え? 正直あの時の話はあまりしたくないんだけど……」

まどか「モウゼス?」

ボストン「バンガードを動かすには玄武術士の力が必要だ」

ボストン「そのため、イルカ像を取り戻した後、私たちは玄武術士が多く集うモウゼスの町に向かったのだ」

まどか(あれ? そういえば、モウゼスって……)

まどか「えっと、確かモウゼスって町を二分する抗争が起こっているって聞いたような」

ボストン「その通りだ。私たちがモウゼスに行った時が丁度その最中だった」


ウンディーネ「はあ……。私と、朱鳥術士のボルカノで、ある物を巡って対立していたのよ」

まどか「ある物?」

ウンディーネ「魔王の盾。術法を増幅する伝説の装備よ」



まどか「ちなみに、ボストンさん。その時のさやかちゃんの実力は?」

ボストン「玄武術を実用レベルで活用できるようになって、戦いに幅が出来た。50秒は持つな」

まどか「た、確かに強くなってますね……」

-回想 モウゼス(北) ウンディーネの館-

互いに多くの配下を持つ私とボルカノは、正面決戦を避け、相手を出し抜くために隙を伺っていた……。
そんな時、さやかが一人で私の館に現れたのよ。

…………何よその顔。ボストンとハーマンはいなかったわよ。あの子一人だったわ。


さやか「ごめんくださーい! ちょっとお聞きしたいことがあるんですけどー!?」

ブロンズマギA「何者だ!? ここをウンディーネ様の館と知って侵入したのか!?」

ブロンズマギB「ちょうどいい! 新しい陣形を試してやろうぜ!」

さやか「え、ええ!? ちょっ、ちょっとタンマ!?」

さやか(な、何よ。この急展開! この人たち問答無用すぎない!?)

ブロンズマギA「へっ、行くぜ、嬢ちゃん! 恨むんなら馬鹿な自分を恨むんだな!」

ブロンズマギA「はあっ!」[シャドウボルト]
ブロンズマギB「うおおーっ!」[でたらめダート]
ブロンズマギC「ひゃっはーっ!」[サクション]

さやか「くっ! ホントに攻撃してきたっ!」

ブロンズマギA「しぶとい嬢ちゃんだな。だが、まだまだ続くぜえっ!」


さやか(この人たちは術士だよね。……なら!)

さやか「サンダークラップッ!」ババババンババンババンバン

さやか(速さを活かして、サンダークラップで術妨害!)


ブロンズマギ's「ぐはあああああああ」ボシュウウウ


さやか「えっ、あれ?」

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

さやか「よ、よわっ!?」

ブロンズマギA「く、くそ……。なんて強い嬢ちゃんだ……」

ブロンズマギB「戦闘不能にした後、かわいがってやろうと思ったのに……」

さやか「しかも、なんか口走ってるし……」


さやか(けど、術だけで倒せるなんて……。もしかして、私って結構強い?)

さやか(いや、油断しちゃダメダメ! フォルネウスを倒すならもっと強くならなきゃいけないんだ!)

さやか(昨日だって、ハーマンのダンシングリーフの防御を全く崩せなかったし……)

さやか(一昨日はボストン相手に龍尾返しをカウンターされちゃったし……)

さやか「うん。やっぱこいつらが弱いだけだ」

ヒソヒソ

「おい、どうするよ」「オレらで勝てるのか?」「ぜ、全員でかかればもしかしたら……」


さやか「むっ、来るか?」

「おやめなさいっ!」

ブロンズマギ「ウンディーネ様……」

ウンディーネ「部下たちが失礼いたしました。それにしてもお若いのに素晴らしい腕前ですね」

さやか「え? ……いやー、それほどでもないですよー」

さやか(実力を褒められた……)

さやか(でも……。うーん、いまいち実感がわかないなー)

さやか(私って、実際どのぐらいの実力なんだろう?)

ウンディーネ「その実力を見込んでお願いがあるのです。もちろん報酬はお支払いしますわ」

さやか「はあ……、お願いですか?」

ウンディーネ「ええ。そのお願いとは、町の南の館にいる朱鳥術士のボルカノを倒して欲しいのです」

さやか「…………」

ウンディーネ「受けてくださるのなら、前金を2000オーラム支払いいたしますわ」


さやか「…………あの。少し訊いてもいいですか?」

ウンディーネ「はい? 何でしょうか?」

さやか「そのボルカノって人。悪い人なんですか?」

ウンディーネ「…………」

ウンディーネ「彼はモンスターを集め、また、危険なアイテムを開発していると聞きます」

ウンディーネ「善人とはとても言えない人ですね」

さやか(…………。この感じ、覚えがある)

さやか(嘘は言っていない。けれど、重要なことをまだ言っていない)

さやか(この人、喋り方も丁寧で、いい人そうな印象なんだけど……)

さやか(もしかして、私を利用して何かしようとしてるのかも)


さやか「あの、ボルカノって人はモンスターとアイテムを使って何をしようとしてるんですか?」

ウンディーネ「……そんなものは決まっているではありませんか」

ウンディーネ「戦力ですよ。現に、私の部下たちは何度も彼に負傷させられています」

ウンディーネ「そのせいで、部下たちは気が立っているのです。
       長として、あなたにご迷惑をおかけしたことは大変申し訳なく思いますわ」


さやか(えっと、聞いた感じだと向こうは充分悪い奴に聞こえる)

さやか(けど、どうも印象がほむらと被るんだよなー)

さやか(うーん、実は向こうはいい奴で、悪いウンディーネに対抗するために力を集めてるとか?)

さやか(わ、わからん)

ウンディーネ「依頼を受けていただけますか?」

さやか「……………………」

ウンディーネ「あの……?」


さやか「だあああっ! もう考えるの面倒くさーーいっ!!」


さやか「私っ! ボルカノのとこに行きますっ!」

さやか(向こうにも事情を訊こう。そしたらちょっとは分かるよね!)

ウンディーネ「……ボルカノのもとへ行くのですか」

さやか「はい」

ウンディーネ「……本気ですか?」

さやか「……? はい」

ウンディーネ「……そうですか」



ウンディーネ「残念ね。なら、あなたはここで倒れてもらうわ」

[落雷]

さやか「!?」バッ

ゴロゴロ バチバチ ピシャアアンッ!

さやか「くぅっ!?」バチバチ

ウンディーネ「あら、咄嗟に防御したの? 思ったより反応がいいのね」

ウンディーネ「術士と思ったけど、もしかして術戦士なのかしら?」

さやか「…………。やっぱ、私の勘は当たってたんだ……」

さやか(悪いのはこの人! 依頼なんて受けなくてよかった!)


ウンディーネ「益々もってボルカノにつかせるわけにはいかないわね」

さやか「ふんっ! あんたの思い通りになんていかないんだから!」

ウンディーネ「まったく、厄介なことになったわ……」

ウンディーネ「けれど、これで早いけど決着ね」

さやか「えっ?」


ゴールドマギx3「我々の合成術を喰らえっ!」[ゾティアックフォール]

さやか「うわああっ!!」

さやか(くうっ! 油断した……!)

ウンディーネ「その子は痛めつけて町の外にでも放り出しておきなさい」

ウンディーネ「私は自室に戻るわ」スタスタ

さやか「ま、待て……」


ゴールドマギA「ふふふ。戦闘不能状態なのにまだ足掻くのか」

ブロンズマギ「へっへっへ。ウンディーネ様もああ言ってたことだし、さっきのお返しをたっぷりしてやるぜ」

さやか「く、くそお……」

さやか(くやしい! こんな奴らに……!)

ゴールドマギA「ぐあああああああっ」バタッ

ブロンズマギ「なっ!?」
ゴールドマギx2「何者だ!?」


ボストン「さやか。道具屋にお使いに行った君がなぜこんなところにいる?」

ハーマン「チッ。どうせまた考えなしに行動した結果だろ」

さやか「へへっ。助けに来るの遅いよ……二人共……」


ゴールドマギx2「な、仲間か!?」

さやか「ふ、ふふふ……実は種明かしすると、またテレパシーなんですよっと」フラフラ

ボストン「宿屋でさやかを待っていたら、いきなりテレパシーで救援要請されたのだ」

ハーマン「驚きを通り越して呆れたぞ」


さやか「だ、だってさー」

さやか「この町を散々探しまわったけど、道具屋なんてどこにもなかったんだよっ!」

ボストン「道具屋は南モウゼスだ。北モウゼスを探してもあるわけないだろう」

さやか「この館で尋ねようとしたら、襲われちゃうし……」

ハーマン「抗争中に武装した見知らぬ奴が来たら、まあそうなるかもな」

さやか「で。こいつらの長のウンディーネは悪いやつっぽいし」

ゴールドマギB「……悪いやつ?」

ゴールドマギC「まあ、町にかけた迷惑を考えれば、悪い……のか?」

ハーマン「はあ……まあいい。とっととずらかるぞ」

さやか「待って! まだ、あのおばさんをぶっ飛ばしてない!」

さやか「悪人にあれだけやられたんだ! これからは正義のヒロインの逆襲だよっ!」

ざわざわ

「ウ、ウンディーネ様をおばさん呼ばわり……」「命知らずな……」

さやか「だからっ! ハーマン! ボストン! ここをお願いっ!」

さやか「私はあいつを追うっ!!」ダッ


ハーマン「ちっ、バカが……。あいつの実力で敵う相手じゃねえだろうに……」

ボストン「こいつらの長となると、相当な術士だろう。しかも、玄武術士か」

ハーマン「……ああ」


ハーマン「おそらく、さやかとの相性は最悪だ」

-ウンディーネの私室-

ドタドタドタ

ウンディーネ(……………………)

バタンッ!

さやか「な、何よ。あのワープ装置……。絨毯を踏んだら転移するなんて、どんな仕掛けなのよ……」

ウンディーネ「まさか、追ってくるとは思わなかったわ」

ウンディーネ「何か切り札でもあったのかしら?」

さやか「私には頼りになる仲間が二人いるのよ!」

ウンディーネ「そう。教えてくれるなんて親切ね」

さやか(うっ! ちょっと迂闊だったかも)


さやか「ま、まあね。状況は既にこっちが有利だよ。二人ならあんたの手下なんか簡単に捻っちゃうんだから!」

さやか「そして、あとは私があんたをぶっ飛ばせば万事オッケーってことよ!」

ウンディーネ(……………………)

ウンディーネ「ねえ。今からでも私についてくれないかしら?」

ウンディーネ「それが嫌なら、しばらく町を離れてくれるだけでも構わないわ」

ウンディーネ「こちらとしては、自分の手の内にないイレギュラーは出来る限り排したいのよ」

さやか「今さら何を……」

ウンディーネ「攻撃したのは悪かったと思っているわ」

ウンディーネ「けど、あなたのような実力者を、ボルカノにつかせたくなかったのよ」

さやか「……イヤよ。こっちはあんたをぶっ飛ばすって決めたんだから!」

ウンディーネ「ふふっ。嫌われたものね」

ウンディーネ「まあ、交渉成立なんて初めから考えていなかったけど」ズズズ

さやか(……? っ! これはまさか!?)

ウンディーネ「時間稼ぎは充分。既に周囲は水気に満ちた」

さやか「玄武地相!? 話しながら自分に有利なフィールドを!?」

ウンディーネ「そして……」スッ

さやか(っ! 来るっ!?)

ウンディーネ「ふふっ。……ウォーターポール」ニッコリ

ザパーンッ

さやか「……こっちに来ない?」

さやか(……っ! しまった! あの術は!?)

ウンディーネ「その顔からすると、この術のことは知っているみたいね」

さやか「魔法盾!」

ウンディーネ「ご名答」クスクス

さやか(あれは、ハーマンのダンシングリーフと同じ、魔法盾!)

さやか(おそらく、周囲の地相が玄武である限り、こちらの物理攻撃はほとんど通らない)

さやか(しかも、あの術の効力が続く限り、あいつは回復し続ける)

ウンディーネ「あら? どうしたのかしら? 攻撃しないの?」

ウンディーネ「ふふっ。もしかしてこちらを気遣ってくれているのかしら?」クスクス

さやか「っ! よくも抜け抜けとそんなことをっ!!」

さやか(そして……。ハーマンのダンシングリーフよりも厄介な点が一つある)

さやか(それは……)


ウンディーネ「やはり、あなたは玄武術しか使えないみたいね」クスクス

さやか(私じゃ、玄武地相を乱せないってことだ)

さやか(地相を乱すには他系統の術が必要になる……)

さやか(ハーマンは蒼龍術士。だから、あいつとの組手では蒼龍地相を乱せれば何とかなった)

さやか(でも、同じ玄武術士では、ウンディーネの魔法盾は消せない!)

ウンディーネ「ふふっ。悩んでるみたいね」

ウンディーネ「でも、何も難しいことじゃないでしょう? 物理が効かないのなら、術で戦えばいいじゃない」

さやか「よく言う……! 術の撃ち合いじゃあ、こっちに勝ち目なんてないのを分かってて言ってんでしょっ!」

ウンディーネ「あらあら、当然じゃない。あなた程度の術士なんて何人も倒してきたわ」


さやか「くっ!」ダッ

さやか「龍尾返しっ!」シュバッ シュバッ

ザパーンッ!

さやか(魔法盾で防がれた!)

ウンディーネ「万策尽きて、突っ込む……。やはり、まだまだ未熟ね」[落雷]

さやか「ぐぅっ!!」バリバリバリ


さやか(今のがダメならっ!)

さやか「スクワルタトーレッ!!」シュンッ シュンッ ダンッ シュバッ

ウンディーネ「あら、速い。それに面白い動きね。……でも」

ザパーンッ!

ウンディーネ「突破できてないわよ」[スコール]

さやか「くっ!」

さやか「くそっ! まるで歯がたたない……!」

ウンディーネ「やれやれ。町を出て行ってくれるなら、これ以上何もしないであげるわよ」

さやか(何かないの!? こいつの魔法盾を突破する方法!)

さやか(何か……)



──ああーっ! もう! ハーマンのダンシングリーフずるいよっ! ボストンッ! アレ突破する方法ないの!?

──ふむ。常道なら、地相を乱すのが正解だ。

──もう、やってるわよ! でも、全然乱れないの!

──ハーマンの方が格上の術士だからな、さやかの実力で乱すのは一苦労だ。だが、そういう場合は、私ならこうする。



さやか(あ……)

ウンディーネ「私はこれでも優しいの。見逃してあげるから、さっさとどこかに行きなさい」

さやか「…………」

ウンディーネ「……? ちょっと。何とか言いなさいよ」



さやか「うっさいわよ。おばさん」

ウンディーネ「お、おばっ!?」

さやか「さっきから黙っていたら、勝ち誇ってムカつくことをピーピー囀ってくれちゃって」

さやか「ほんっと、年寄りってのはどいつもこいつも小言が多いんだから」

ウンディーネ「随分躾けがなってない小娘ね……!」

ウンディーネ「見逃してあげようと思ったけど……気が変わったわ。ぶち殺し確定ね」スッ


さやか「ふーん。あっそ」

さやか「でも、ここからはずっと私のターンだよっ!」


さやか「シューティングスティンガーッ!!」バシュッ

ウンディーネ(っ!? 剣を飛ばした!?)

ウンディーネ(……でも)

ザパーンッ!

ウンディーネ「驚いたけど、魔法盾を突破なんて……」

──私ならこうする。懐に潜り込み、蹴りで相手の急所を穿ち、勁力によって相手の内部を破壊する

──け、けりで……?

──この技なら防御を突破できる。やってみろ、さやか。



ウンディーネ(っ!? こちらが驚いた隙に近づいて!?)

さやか「さやかちゃん! 新! 必殺!」


さやか「黄金の美脚っ!! さやかちゃんキックッ!!」

ズゴオオォォッ!!

ウンディーネ「がはあっ!!?」

ウンディーネ「い、いまのは……」

さやか「ボストンから……私の仲間から教わった体術技」

さやか「蹴りで相手の防御の上から、内部を破壊する技なんだって」

さやか「……まあ、本人はハサミで殴ったほうが強いから、滅多に使わないみたいだけど」

ウンディーネ「き、聞いたことあるわ……。その技……、短勁ね……」

さやか「短勁……。あんまりイメージと合わないなあ」

さやか「そうね……! マーメイドキック。これからはそう呼ぼうかな!」

ウンディーネ(勝手に名づけ出した……)


さやか「そして……! もう一発ッ!」

ウンディーネ「そう何度も同じ手を喰うとでも!?」

さやか「はあっ! さやかちゃん必殺、マーメイドキックッ!!」





さやか「と見せかけて、失礼剣ッ!!」ズバンッ

ウンディーネ「きゃあっ!?」ズシャッ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

さやか「ふふーん。実は剣技にも、一つ守りを無視して攻撃できる技があったのよね~」

さやか「ボストンやハーマンにはよく読まれるんだけど、あんたには通用したみたいね」

さやか「ねぇねぇ、どんな気持ち? 散々小娘を馬鹿にしてたら逆転されて、どんな気持ち?」

ウンディーネ「こ、この小娘……」

さやか「ねぇ、どんな気持ち? ねぇねぇおばさん、教えてよ~」


ボストン「意外だな。さやかが勝ったらしい」

ハーマン「で、あいつは相手を煽ってんのか」

ボストン「あの煽りは、君の挑発から学習したんだろう。さやかは吸収力が高いからな」

ハーマン「あいつのは戦術的な挑発じゃなくて、ただの追い打ちだろ」


さやか「あれあれ? 怒ったの? 年寄りは高血圧ですねぇ~」

ウンディーネ「(ギリギリッ……)」

ハーマン「調子に乗ったさやかの鬱陶しさは、オレの比じゃないだろ」

ボストン「確かに」

手下「う、ウンディーネ様……」ボロボロ

さやか「うわあ、ボロボロだ……。随分派手にやったんだね、二人共」

ハーマン「待て、こいつはオレたちがやったわけじゃない」

ボストン「怪我の様子からして、火の術士が下手人だろう」


手下「ぼ、ボルカノに……魔王の盾をとられました……」バタッ

ウンディーネ「な、何ですって!?」ガバッ

さやか「ん? 魔王の盾って?」

ウンディーネ「あ、あなたのせいよっ!! あなたが騒ぎを起こすから、ボルカノに隙をつかれて……!」

ボストン「魔王の盾というと、術法を増幅するとされる所在の知れない魔王の持ち物のひとつだな」

ウンディーネ「私とボルカノは魔王の盾を巡って対立していたのよっ!! それが、こんな小娘のせいで……!」



さやか「ん? あれ? ボルカノって、悪いウンディーネを倒すため、正義のために、戦力を集めてたんじゃなかったの?」

ウンディーネ「そんな勘違いをしていたのっ!!? このおバカ!!?」

ウンディーネ「あああ……! こんなおバカに全てを台無しにされるなんて……!」

さやか「う、うーん……。ど、どうしよう、ボストン、ハーマン」

ハーマン「チッ、そこでオレらに投げんなよ……」

ボストン「どうしようもない。とりあえず、謝ればどうだ?」

さやか「ご、ごめんね。ウンディーネ」



ドゴオオオオオオオオンッ!!


さやか「うわっ!? なに!?」

ウンディーネ「っ!? まさか……」


「これはこれは、ウンディーネ。襲撃されたと聞いていたが、随分元気そうじゃあないか」

ウンディーネ「っ! ボルカノっ!!」

ボルカノ「ふふふ。だが、元気でいてくれて嬉しいよ。君にも見せてあげたかったからね」

ボルカノ「これが魔王の盾の力だっ!!」

[ファイアウォール]

ハーマン「っ! 防御しろ!!」

ウンディーネ「ひっ!?」

ゴオオオオッ…… ズドォオオオオオオオオンッ!!!

ハーマン「さやかっ! あの馬鹿……!」

ウンディーネ(あ、あら……? 生きている……?)

さやか「へ、へへっ……。ウンディーネ、怪我はない?」

ウンディーネ「あ、あなた……! どうして、私を……!?」

さやか「なんか……。私のせいっぽいからね……」バタッ

ハーマン(避けられたのに、あの女を庇いやがった……!)


ボルカノ「クククッ。まあ、いい。もう一度撃つだけだ」

ウンディーネ「っ! ボルカノ! あなた、どういうつもりなのっ!?」

ウンディーネ「私を倒して、北モウゼスを手中におさめるつもり!? だったら、町は譲るからもうやめて頂戴!」

ボルカノ「……クッ。フッフフフッ」

ウンディーネ「ボルカノ……?」


ボルカノ「ハーッハッハッハッ! 町だと!? そんなものはもう私には必要ない!!」

ボルカノ「この盾の力があれば、何でもできる!! そうっ! 今から私が魔王だっ!!」

ウンディーネ「な、なんですって!?」

ボルカノ「アビスの魔貴族も支配し、私がこの世に君臨してやるぞっ!!」

ボストン「あの目……。どうやら、魔王の盾の魔力に当てられて正気を失っているようだ」

ボストン「そも、魔王の装備は、手にした者を破滅に導くと云う曰くがついている」

ボストン「持ち主の魔王自身、破壊と残虐の限りを尽くした人物と聞く」

ボストン「ウンディーネ。アレを見てもまだ、魔王の盾を欲するか?」

ウンディーネ「……いいえ。結構よ」


ボルカノ「フハハハハハッ! 力だっ! 力が満ち溢れているぞっ!!」


ウンディーネ「私はあんなふうになりたいと思わないわ。あんな醜態はごめんよ」

ボストン「そうか」

ハーマン「居合い抜きっ!」シュバンッ

カキンッ!

ボルカノ「んんー? 今何かしたかな? ご老人」

ハーマン「チッ」

ハーマン(盾が奴の周りを自動で飛び回ってやがる)

ハーマン(奴自身は術士だが、盾のおかげで攻撃への守りは万全ということか)

ボルカノ「お返しだ。消し飛びたまえ」[ファイアウォール]

ハーマン「てめえはそればっかだな、小僧。さやかでももっと工夫するぞ」グッ

ゴオオオオッ…… ズドォオオオオオオオオンッ!!!

ボルカノ「フハハハハハッ!! 火力こそ全て! 最強の火力と鉄壁の守りがあれば他には何もいらんのだっ!!」

ボストン「あまり、調子に乗らない方がいい。ハサミッ!」

カキンッ!

ボストン「防がれたか。確かに堅い守りだ」

ウンディーネ「いつものボルカノとは火力が比べ物にならない……」

さやか「ぐっ……。ウンディーネでも、どうにかならないの?」ググッ

ウンディーネ「あなた……! 起き上がっても大丈夫なの!?」

さやか「答えて。ウンディーネ」

ウンディーネ「……無理よ。普段のボルカノとなら互角だけど、今の術力が増幅されてるボルカノ相手だと私じゃ撃ち負けてしまうわ」

さやか「術力を増幅……」

さやか「あっ」ピコーン

ウンディーネ「?」

ボルカノ「フハハハハハッ!! そろそろ終わりにしよう! この町もろともファイアウォールで焦がし尽くしてやるっ!!」

ハーマン「ちっ。いくらなんでも、てめえの火力じゃこの館までが限度だろ」

ボストン「頭が茹だって周りが見えていないようだ」


ウンディーネ「そこまでよ、ボルカノッ! スコールッ!」

ポツッポツッポツッ……

ボルカノ「んんっ? ウンディーネか。君程度の術士がこの魔王に敵うとでも……」


ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!

ボルカノ「ぐおおっ!? な、なんだこの威力は!?」

ウンディーネ「ふんっ。教えるとでも?」

ウンディーネ(まさか、こんなもので術力を増幅できるなんて……)[E.イルカ像]

ウンディーネ「地相が朱鳥から玄武になったわね。自慢の術も弱体化したんじゃないかしら?」

ボルカノ「クッ! ならもう一度、ファイアウォールを使って朱鳥地相に戻してやる!」

ウンディーネ「ふんっ、スパークリングミストッ!」

ボルカノ「霧だと!? 猪口才なっ! ファイアウォール!!」[ファイアウォール]

ゴオオオオッ…… ズドォオオオオオオオオンッ!!!

ボルカノ「くそっ! 当たった手応えがない! どこに隠れた!?」

「……………………」

ボルカノ「……まあいい」

ボルカノ「この館ごと、燃やし尽くしてしまえば問題ないッ!!」

「それは出来ないね」

ボルカノ「むっ? そこか!」バッ


さやか「あんたは、ここでさやかちゃんに蹴り飛ばされるんだからっ!」

さやか「さやかちゃん、必殺! マーメイドキーックッ!!」

ボルカノ「ふん? そんな蹴りなど、魔王の盾の前では……」

ズゴオオォォッ!!

ボルカノ「ごふううううっ!!」

さやか「防御できない技もあるって覚えといた方がいいよ。魔王様」

ボストン「そうだな、なら私もひとつ。空気投げっ!」

ズダアァァンッ!!

ボルカノ「がはああっ!!」バタッ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

さやか「ふうー、さっきは生命の水ありがとね。ウンディーネ」

ウンディーネ「別にいいわ。防御を突破するには、あなたの技が最適だったしね」

ウンディーネ「私は霧による目隠しと、回復術による補助に徹した方がいいと判断したわ」

さやか「おおー。ボルカノよりも冷静だし頭いいね」

ウンディーネ「……言っておくけど、普段の彼は理知的で狡猾よ」

ウンディーネ「決して、あんな火力バカ相手に今まで張り合ってたわけではないわ」

さやか「あ、あはは……。色々と酷かったもんね、ボルカノ」


さやか「ところで、イルカ像は返してね」

ウンディーネ「返さなきゃダメ?」

さやか「ダメっ!!」

ウンディーネ「はあ……。わかったわよ」スッ

[さやかはイルカ像を手に入れた!]

ウンディーネ「まさか、魔王の盾に匹敵する術力増幅アイテムがあるなんて……」

さやか「んー。バンガードを動かす中枢となるアイテムだから、ある意味聖王遺物だよね。コレも」

ウンディーネ「聖王遺物か……。研究すれば再現できないかしら……」ブツブツ


さやか「ところで、この魔王の盾どうしよう」ヒョイ

ウンディーネ「私はいらないわ。あんな恥を晒したくないもの」

ウンディーネ「というより、あなた……。その盾を持っても平気なの?」

さやか「うーん……。この盾、重い……。盾のくせに……」

ハーマン「頭空っぽな奴は、正気の失いようがないのかもな」

ウンディーネ「ああ……なるほど」

さやか「むきーっ! 何よっ! 大体ウンディーネはその頭空っぽな奴にまんまとやられたんでしょっ!」

ウンディーネ「うぐっ!!」グサッ

さやか「はあ……。で、どうしよう? この盾ってもともとはどこにあったの?」

ウンディーネ「死者の井戸っていう町の中央の井戸よ」

さやか「じゃあ、そこにでも放り込んじゃう?」

ボストン「それは良くないな。また、誰かの手に渡ってしまうだろう」

ウンディーネ「仕方ないから、あなたが所持していなさい」

さやか「えー。この盾、さやかちゃんの趣味じゃないんだけどなー」

さやか「大体、バーサーカーモードとか。さやかちゃんにとっては黒歴史ですよ」

ウンディーネ「さて……」

ボロボロ…… ヒュウウゥゥゥ……

ウンディーネ「私の館……。コレ、どうしようかしら……」

さやか「スコールで鎮火は終わったけど、これ、人住めないよね……」

ウンディーネ「ボルカノに弁償させましょう……、絶対に」

さやか「うん。そだね」


ウンディーネ「でも、しばらくの間、どこに住めば……」

さやか「あ、じゃあさ、ウンディーネ。私と一緒に来る?」

ウンディーネ「えっ?」

さやか「私らさ、フォルネウスと戦うためにバンガードを動かすんだ!」

さやか「それで、バンガードを動かす玄武術士の力を必要としてるの!」

ウンディーネ「フォルネウスと……」

さやか「ウンディーネも一緒に行こうよっ!」

ウンディーネ「…………」

さやか「……ダメ?」



ウンディーネ「……ふふっ、いいわよ」

さやか「! ウンディーネ……!」

ウンディーネ「魔王の盾も諦めて、館もこの有り様。丁度手が空いてるわ」

ウンディーネ「あなたの無茶を手伝ってあげるのも悪くないわね」

さやか「ありがとう! ウンディーネっ!」

さやか「私、さやか! こっちのエビがボストンで、口の悪いジジイがハーマンだよ!」

ボストン「よろしくだ。ウンディーネ」

ハーマン「ハッ。そんな安請け合いしていいのか?」

ウンディーネ「よろしくね。まあ、確かに、苦労はしそうだけど……」



ウンディーネ「あのおバカの勢いに流されるのも、きっと悪くはないわ」

-現在 バンガード 宿屋-

まどか「さやかちゃん…………!」

まどか(今回のさやかちゃんはかっこよかった…………!)

まどか(でも、道に迷ったり、勘違いで突っ走ったりするところは相変わらずだね……)

まどか(さやかちゃん……………………)

ウンディーネ「そういえば、私の館から、ちゃっかり魔女の瞳と湖水のローブを回収していたらしいわね」

ボストン「ああ。私とハーマンでボルカノが来る前に回収していた」

ハーマン「ま、結果的に貴重品が燃えなくて済んだな」

まどか「うぇ、うぇひひ……そうなんですか」


ウンディーネ「バンガードに着いた後も、大変だったわ」

ウンディーネ「私一人の術力じゃ、バンガードを動かすのに全然足りていないことが分かったし」

ウンディーネ「解雇した玄武術士を集めるのにどれだけ苦労したか……」

ウンディーネ「それでも人員が足りず、さやかとボストンの力も使ってギリギリだったわ」

まどか「そ、そうだったんですか」

ダダダダダダダダダダッ

ウンディーネ「あら? この足音は」

ボストン「噂をすれば」

ハーマン「あのバカだな」


バタンッ!

さやか「まどかっ!! サラさんから聞いたんだけど、記憶喪失って本当!?」

まどか(あっ、そういえば言ってなかったっけ)

さやか「大丈夫なのっ!? 私の名前言える!? ほむらのこととかちゃんと分かる!? 私ってまどかにとってどういう人か言える!?」


「……………………」

ボストン「ふむ」
ハーマン「フッ」
ウンディーネ「やれやれね」

サラ「あ、あはは……。ごめんね、みんな。さやかに今までのまどかとの旅の話をしてたんだけど……」

さやか「ま、まどか!?」





まどか「さやかちゃんは私の親友だよっ!」ウェヒヒッ

投下終了です。
マーメイドキック…要は短勁。ただし、男性相手にたまにスタン効果あり。
さやかちゃんはウザかわいい。あるいはバカかわいい。

昼だけど投下します。
とりあえず、フラグ回収しときました。

-バンガード 舟着場-

さやか「ついに……」

まどか「?」

さやか「ついに……、ついに!」

まどか「……」


さやか「ついに5人以上のパーティーなんだよ!」

まどか「あ、そうなんだ。おめでとう、さやかちゃん!」

さやか「ありがと! まどか!」


まどか(私たちは久しぶりですね。サラさん)

サラ(そうだね。モニカ姫護衛隊や、ゴン捜索隊のとき以来だね)

まどか(ヤーマスのときは寄ってたかってみんなでモンスターを攻撃しただけでしたし)

サラ(そうだね。決してフリーファイトでクロスボウボルトを使ったわけではないんだよね)


さやか「ねえ、ハーマン! 陣形は龍陣で行ってみようよ!」

ハーマン「まあ、悪くねえんじゃねえか?」

さやか「先頭はもちろん私っ! みんな、私に続けーっ!」

ウンディーネ「……敢えて、さやかを控えにしたら面白いかもしれないわね」

ボストン「なるほど」

さやか「何でっ!!?」

-最果ての島-

さやか「……。戻ってきたんだなあ……」

ボストン「島もまだ無事だ。私の仲間も息災なようで何よりだ」


「おや、ボストン。戻ってきたのですか、それは何よりです」

「あら、ボストン。何だか強くなりました? ハサミのキレが増しているのではありませんか?」

「ふむ。どうやらさやかも随分成長したようだ。殺魚と互角の戦いを繰り広げていた頃が嘘のようだ」

「そうだな。ボストンの手加減したキック一撃で吹っ飛んでいった頃が懐かしいな」


さやか「あ、あははは。みんなも元気そうだね」

ボストン「みなに紹介しよう。ハーマン、ウンディーネ、まどか、サラ。私の仲間たちだ」

ボストン「私は、さやかや彼らと共に、水龍、そして、フォルネウスと戦う」

さやか「ん。ついに決戦のときが来たって感じだね」

「そうですか」「あなたたちなら、きっと出来ると信じてます」「頑張れ、さやか」「ボストンもな」


さやか「あ! まどかたちにも彼らを紹介するよっ!」


さやか「えっと、上から順に、クーン、コーデリア、サルーイン、ジェラール。みんないいエビなんだよ!」

サラ「なかなかユニークな名前だね……」

まどか「うぇひひ……」

まどか「ところで、思ったんですけど」

サラ「あ、私もかな」

まどか「ロブスター族って強いんですよね」

ボストン「ふむ。化石魚程度ならば、みな、ハサミで叩きのめすことができるだろう」

サラ(堅くて大きなモンスターをハサミで……)


まどか「なら、ロブスター族総出で、そのフォルネウスの手下、水龍を倒すことはできなかったんですか?」

ウンディーネ「それは、確かに。私も気になったわ」


ボストン「ああ。それは難しいだろう。我々と水龍では相性が悪い」

さやか「……ロブスター族はね。得意の玄武術が水龍に効かないってのもそうだけど、水龍の雷にすごく弱いの」

ハーマン「フン。まあ、そうだろうな」

ウンディーネ「確かに、私もボストンと戦うとしたら、雷を撃ち続けるでしょうね」


さやか「それに、水龍は水気で……、つまり玄武地相で回復するの」

さやか「玄武地相を乱せないロブスター族はやっぱり不利なんだ」





「水龍が来たぞーー!!」

さやか「!?」

ハーマン「水龍が来ただと!?」

まどか「そんな! どうしてこんな急に!?」


ウンディーネ「っ! バンガードを近づけたことで、水龍を刺激してしまったのね!」

サラ「迎え撃たないと!」


さやか「…………」

ボストン「さやか」

さやか「うん、やろう。ボストン」



さやか「島の破壊なんて、このさやかちゃんが許さない!」

ボストン「形あるものはいずれ滅びる。だが、島の滅びは今ではない」

ハーマン「てめえの首を掻っ切って、フォルネウスに送りつけてやるぜ!」

サラ「……滅びなんて、ごめんよ!」

ウンディーネ「私の術がどこまで通じるか……試してみましょう!」

まどか「みんな……! 応援してるよ!」


水龍「ギュウアアアアアアアアッ!!」

さやか「みんな! 私に続いて!」

さやか「牙龍舞っ!」

さやか「龍尾返し!」
ボストン「ハサミッ!」
ハーマン「アクセルターンッ!」
サラ「ストーンバレットッ!」
ウンディーネ「サンダークラップッ!」

水龍「ガアアアッ!?」

まどか「さやかちゃんを起点に、みんなが連続して攻撃を繋げていく……!」

さやか「どうだ! 思い知ったか!」


水龍「グルル……」[スコール]

ザアアアアアアアアアアッ!

サラ「きゃっ!?」

まどか「サラさんっ!」

サラ「大丈夫。ダメージは大したこと無いよ。けど……」

サラ(あいつのスコールがある限り、玄武地相を乱すことは私では難しい……)

サラ「……ここからは、術を諦めて弓に切り替えた方がいいかもしれないね」


水龍「グルル……?」

さやか「ふっふっふ。スコールの効いた人が一人だけってのがおかしい、水龍?」

さやか「なんと! さやかちゃんにはデフォルトで水耐性が備わっているのだっ!!」

ウンディーネ「……私との戦闘のときも、スコールは効いてなかったのね」(E.湖水のローブ)

ハーマン「いちいち勝ち誇って説明してんじゃねえ。バカが」(E.魚鱗)

さやか「ボストンッ!」

ボストン「心得た」

さやか・ボストン「ダブルインパクトッ!!」

ブンッ ドゴオッ ズダアアアアンッ!

水龍「ギャアアアアアッ!?」


まどか「さやかちゃんが水龍の体を持ち上げて、ボストンさんがハサミで水龍を地面に叩きつけた!!」

さやか「この日のために、ボストンと練習した陣形技だ! 見たか、水龍!」


水龍「ゴアアアアアッ!!」[マッドサンダー]

さやか「あ……、ま、まずっ!」

ゴロゴロ…… ピシャアアアンッ!

ボストン「ぐっ!?」バチィッ

ピシャアアアンッ!

ボストン「ガハァッ!」バリバリバリッ バタッ

ピシャアアアンッ!

ボストン「(ビクンッ)」バチバチバチッ


さやか「うわっ! マッドサンダーが三連続でボストンに……!」

まどか「ボストンさん! ……手当てしないと!」

ボストン「ぐ、不覚をとった」

まどか「私、ボストンさんの代わりに配置につきます!」

ボストン「ぬ、やむを得んか」

***

サラ「浮遊している敵なら……! ショットウェイブッ!」シュバッ ゴオオオオオオ

水龍「ぎゃっ!?」

サラ「よしっ! 効いてる!」

「ショットウェイブッ!!」

水龍「がああっ!?」

サラ「まどかっ!?」

まどか「ボストンさんの代わりに入ります!」

さやか「まどか……!」

ハーマン「……だが、ボストンが抜けてまどかが入ったことで、フリーファイトになったな」

ハーマン(どうにも嫌な予感がするぜ……)


水龍「……………………」

水龍「グルアッ!!」[尾撃]

さやか「きゃっ!?」バコッ
サラ「きゃあっ!?」バコッ
ウンディーネ「くっ!?」バコッ
まどか「わぁ!?」バコッ

ハーマン「チッ! フリーファイトになったタイミングで一列攻撃が来たか!」カーンッ

サラ「アースヒール!」

ウンディーネ「生命の水!」

水龍「ギャアアッ!!」[尾撃]

ウンディーネ「くっ、これは回復が追いつかないかもしれないわね……」

さやか「ならばっ!」ピコーン

さやか「新技! 疾風剣!」タッ シュバシュバシュバシュバシュバンッ

さやか「……手応えありっ!!」


水龍「グウウアアアアッ!!」

さやか「まだこいつ、こんなに元気なの!?」

ハーマン「居合い抜きっ!」

ハーマン「……チッ。地相を乱せなかったのが、ここに来て響いてきたか」

まどか「うっ……。こんなことなら、全財産はたいてトルネードの蒼龍術を買っておけばよかったかも……」

まどか「さ、サクション!」ギュウウウ ズウウウウン キラキラキラ

ボストン「むう」

ボストン「回復に手を取られて、攻撃の手数が足りなくなってきている」

ボストン「できれば、相手の回復を上回る攻撃をしたいのだが、それをあまりさせてもらえないのが現状か」

ボストン「ふむ」

***

水龍「ゴアアアアアッ!!」[マッドサンダー]

まどか「きゃあっ!? あうぅ……」バタッ

さやか「まどかっ! くそっ、こいつ厄介な行動ばっかり……!」


「さやか。後は任せろ」


さやか「ボストン!?」

さやか「……え? ……え、は?」


ボストン「後のことは我々に任せろ」
クーン「やはり、自分たちのことは自分たちでやらねばなりません」
コーデリア「ボストン程ではありませんが、体術の心得はあります」
サルーイン「久々にハサミを振るうときが来た」
ジェラール「覚えておけ、水龍。数はときにに暴力なのだと」

「ハサミ」
「ハサミ」
「ハサミ」
「ハサミ」
「ハサミ」

[千手観音]

ドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカ

水龍「ギイイィアアアアアアアアアアアアァァッ!!!???」ボシュウウゥゥ


まどか「…………」
さやか「…………」

まどか「なにこれ」
さやか「……悪夢の具現?」

ウンディーネ「ねぇ、さやか。私、ものすごく訊きたいことがあるんだけど」

さやか「えっと……。私も、あそこのエビたちに問い詰めたいかなーって」

ウンディーネ「あなた、散々ロブスター族は水龍に勝てないって言ってたけど」

さやか「う、うん。確かに言った気がするね……」

ウンディーネ「どう見ても、私たち無しで勝てたわよね」

さやか「……知らないよっ!! そんなこと言われたって、私はあのエビたちが言ったことをそのまま言っただけだよっ!!」

ハーマン「ケッ」


まどか「なんだか夢に見そう……」

サラ「うん……。水龍がかわいそうに思えたね」

まどか「私、当分エビ料理は食べられないです……」


ボストン「何とかなったな」

ボストン「みな、我々の勝利だ」

「何とかなるものですね」「勝利とは気持ちの良いものです」「ボストンのハサミは流石だな」「戦いとは虚しいものだ」

まどか「ふー」

まどか(何だか、精神的に疲れたなあ……)

まどか(……)

まどか「ほむらちゃんに会いたいな」

サラ「え? いきなりどうしたの? まどか?」

さやか「あー。まどかの構いたがり症候群ですね」

サラ「か、構いたがり?」

さやか「ほむらの世話を焼く時のまどかって生き生きしてるんですよ」

さやか「こう、まどかからすれば、ほむらって放っとけないオーラが出てるらしくて」

サラ「は、はあ」

さやか「当時の私には、ほむらのことそんな風に見れなかったけど、今ならちょっと分かるかな」

さやか「で、まどかは精神的に疲れたから、ほむらで癒やされたかったんじゃないかな?」

サラ「は、破壊活動の得意な魔法少女で……?」

サラ(ほむらちゃんって一体……)

-一方その頃 ロアーヌ 酒場-

ようせい「ほむらって放っておけないオーラが出てるわよね」

ゆきだるま「いきなりなんなのだ?」

ようせい「何だか、構わずにいられないというか、一人にさせたくないというか……」

エレン「うーん? 守りたいということ? あのほむらを?」

ようせい「間違ってはいないけど、エレンの考えているようなものとはちょっと違うわ」

ようせい「ほら、ほむらって、無愛想じゃない?」

エレン「そうね。確かに、何考えているかイマイチ分からないタイプよね」

ようせい「でも、私からすると、何考えているか結構分かるのよ」

エレン「それって妖精族の能力?」

ようせい「ううん。付き合っている内に分かるようになっただけ」


ようせい「それでね。ほむらって一人にすると絶対仲間なんて作れっこないわ!」

ようせい「あんな正体不明の意味不明な無愛想人間じゃあ、みんな逃げていっちゃうわ!」

ようせい「そして、そのまま四魔貴族を一人で倒しに行っちゃうのよ!」

ゆきだるま「……。想像できるのがすごいのだ……」

ようせい「それで、一人にするのが不安で、何だか放っておけないの」

エレン「あー、なるほどね。よく分かったわ」


ようせい「あと、イタズラすると楽しい」

ゆきだるま「急にようせいらしい理由になったのだ」

エレン「…………ところで、改めて思うけど、ほむらってすごいわね」

ようせい「そうなの?」

エレン「そうよ」

エレン「まあ、この場合は、黒魔女がすごい、とも言えるわね」

ゆきだるま「黒魔女の名前を出したら、一発だったのだ」

ようせい「ほむら、いつ帰ってくるかなー?」


エレン「まさか、ミカエル様と予約無しで面会できるなんて……」

ゆきだるま「ほむらは傭兵の仕事をして、たくさんお金を稼いでるのだ」

ようせい「最近、黒魔女ってかなり有名になっているらしいよっ!」

エレン(ふう……。ロアーヌか……、ユリアンはどうしているかしらね)

エレン(一度決めたらやり通す性格だとは知ってるけど……。あいつに王宮勤めができるとも思えないわ)

エレン(一緒に連れて行ってくれないか。こんなかた苦しい場所はオレには合わないよ。とか言い出したりしないでしょうね……?)


ゆきだるま「聖杯も無事手に入ったのだ。アウナスとの決戦も近いのだ!」

ようせい「えっとね。ほむらは術を鍛えてから挑みたいって言ってたわ」

エレン「聖杯ね。レオニード伯爵も、結構あっさり渡してくれたわね」


ようせい「…………」
ゆきだるま「…………」


エレン(うっ……。伯爵の話題は禁句だった……)


ゆきだるま「ほむら、泣いてたのだ」

ようせい「アレはイタズラじゃ済まされないわね」

エレン「……流石にアレは私も引いたわ」



3人「まさか、ほむらが咬まれるなんて……」

エレン「……。仲間に参入した初戦闘で、やってくれたわよね……」

ゆきだるま「味方を咬むなんて、流石、600年生きた吸血鬼は違うのだ……」

ようせい「ほむら、顔真っ赤にして半泣きで、あの変態に反撃してたわね」

エレン「私でも多分、同じことするわ」


ゆきだるま「そういうようせいも、あのときレオニードを攻撃してたのだ」

ようせい「悪より悪い、最悪とはあいつのことだと思ったわ」


エレン「ところで、ほむら、伯爵相手に新技閃いていたわね」

ようせい「短勁から活殺破邪法をね!」

ゆきだるま「アンデッド特効なのだ」

エレン「極意を教えてもらいたいわね」


ゆきだるま「でも、吸血鬼化しないで良かったのだ」

エレン「一応、ただの体力回復行為だったみたいね」

ようせい「あいつの城に縛り付けられるとか、ゾッとしないわよね」

ガチャッ バタンッ

ほむら「待たせたわね。今、戻ったわ」

エレン「おかえり、ほむ……」


ミカエル「エレン。久しぶりだな」


エレン「ミカエル様……! どうして、ここに?」

ミカエル「影武者に留守を任せた。何、要件が済んだらすぐに戻る」

ほむら「どうやら、侯爵はエレンに仕事の依頼があるみたいよ」

ほむら「ちなみに、私の用はもう済んだわ。5万オーラムの報酬をもらえたわね」

ゆきだるま「ほむら、何をしたのだ?」

ほむら「戦術開発の協力と、兵器の製法の提供よ」

ミカエル「ああ、それだけの価値があった。流石は黒魔女といったところか」

ほむら「……その名前はあまり好きじゃないのだけど」

ようせい「でも、通りがいいから使わないわけにはいかないのよねー」

ほむら「はあ……。やれやれね」


エレン「私に、仕事の依頼ですか……?」

ミカエル「そうだ。君はユリアンの幼なじみだったな」

エレン「そうですけど、何か……?」

ミカエル「これは、極秘の情報なのだが……」


ミカエル「モニカとユリアンが駆け落ちした。この二人の捜索を依頼したい」

エレン「か、駆け落ち……?」

エレン(え、え? あの二人ってそんな関係になったの……!?)

エレン(モニカ姫とユリアンって釣り合うの? あの冴えないユリアンが!?)


ミカエル「ことの始まりは、モニカに縁談が来たことだ。相手はツヴァイク公の息子だ」

ほむら(ツヴァイク公の息子……。確か、父親に輪をかけたバカ息子と聞いたわね)

ミカエル「ロアーヌとしてはツヴァイクとの国交を強めるいい話だった」

ミカエル「それと、モニカはユリアンに好意を持っていた。身分違いの恋だ、到底認めるわけにはいかん」

ミカエル「だからこそ、私はその話を受ける方向で話を進めるつもりだった」

ほむら「……ところが、モニカ姫はユリアンと駆け落ちした?」


ミカエル「そうだ。これは私にも予想外だった」

ミカエル「モニカも侯爵家に生まれた者。覚悟はできているはずだった」

ミカエル「しかし、モニカの恋心は予想以上に大きかったのか、打診があった当日にはロアーヌを出ていた」

ほむら「す、すごい行動力ね……」

ミカエル「あるいは、こちらに気を使ったのかもしれんな」

ミカエル「正式な決定がなされた後に行動を起こしてしまえば、ツヴァイクとの間に大きな溝ができる」

ミカエル「幸い、ツヴァイク公の息子の評判も悪かった。縁談を断ることに問題はなかった」

ほむら「そのお姫様もしたたかね。想い人との仲を深めるために状況を利用したともとれるわ」

ミカエル「モニカは純真だが、頭はいい」

ミカエル「旅をするという夢、ユリアンと結ばれたいという恋心、国を守りたいという侯爵家としての義務感」

ミカエル「全てを考えた結果が、あのタイミングでの駆け落ちだったのだろう」

エレン「……。ミカエル様は、二人を見つけたら、どうなさるつもりですか?」

ミカエル「私としては、モニカをロアーヌに連れ戻したい」

ミカエル「だが、それが叶わぬならば、無事であることを確認し、所在を把握したい」

ミカエル「エレン。君に依頼したいのは、まさにそれだ。二人を探し、その状況を私に伝えて欲しい」

エレン「……。ユリアンはどういう処遇になるのですか?」

ミカエル「ロアーヌを出たのはモニカの意思だ。そのことでユリアンに罰を与えるつもりはない」

エレン「…………」

ミカエル「だが、もしも、モニカが無事でないのならば」

ミカエル「彼は、モニカの護衛として重い罰を受けるだろう」

エレン「…………!」


ほむら(この侯爵……。賢しいわね)

ゆきだるま(どういうことなのだ?)

ほむら(エレンの幼なじみ、ユリアンの実力は知らないけど)

ほむら(一国のお姫様を一人で護衛するなんてかなり大変なはずよ)

ほむら(だからこそ、エレンにこの話を持ちかけたのよ)

ほむら(こうなれば、エレンはユリアンを守るために、二人を探さなければならない)

ほむら(要は、エレンにモニカ姫の護衛をさせたいのよ。捜索よりもそちらがメインなのかもしれないわ)

ゆきだるま(なるほど、それが分かったほむらも賢いのだ)

ようせい(だったら、直接エレンにそう言えば良いのに。人間って面倒ね)

ほむら(護衛のお金を払いたくないんじゃないかしら?)

ゆきだるま(なんだか、急に話がしょっぱくなったのだ)

ほむら(冗談よ)

エレン「その依頼……。仕事として、受けるつもりはありません」

エレン「ですが、ユリアンは私の仲間です。私自身の意思で二人を探したいと思います」

エレン「ですから、報酬は結構です。もちろん、見つけた暁には侯爵にお伝えします」

ミカエル「そうか。感謝する」

ほむら(エレンのこの返しも巧いわね)

ほむら(仕事じゃないのなら、報告も融通が利く。行動に縛りも少ない)

ほむら(要するに、ユリアンに有利な行動をとりやすくなるわ)

ミカエル「だが、報酬なしで頼み事をしては侯爵家の名折れだ。成し遂げた暁にはロアーヌ侯として以後君の力になることを約束したい」

ようせい(以後、君の力になる?)

ほむら(できる限りの援助をするってことでしょ。何かあったら侯爵を頼ることが出来そうね)

ほむら(要は、ロアーヌ侯に貸し一つってことね)

ミカエル「では、仕事の予定が詰まっているので、これにて失礼する」スッ

ガチャッ バタンッ

「…………………………………………」

ほむら「…………総じて、モニカとユリアンに対して対応が甘い様に感じたわね」

エレン「ほ、ほむら! どうしようっ!?」

ほむら「!?」

エレン「駆け落ちってどういうこと!? モニカ様無事なの!? ユリアン、罰を受けちゃうの!?」

ほむら「ぇえー……。あなた、冷静に対応してると思ったのに……」

エレン「頭真っ白だったわよ!」

ほむら(あの対応は、素で答えただけなのね……)

エレン「さ、探すってどうすればいいのかしら……? ほむら、分かる!?」

ほむら「まずは、港町のミュルスに行って情報収集すれば? おそらく、ピドナに行ったと思うけど」

ゆきだるま「理由はなんなのだ?」

ほむら「ピドナかツヴァイクの二択なら、モニカ姫はピドナを選ぶでしょう」

ゆきだるま「なるほどなのだ!」


ほむら「けれど、足跡を追えるとは思えないわね」

ゆきだるま「なぜなのだ?」

ほむら「モニカ姫は頭がいいと聞くわ。そう簡単に情報を追手に掴ませはしないでしょう」

ほむら「お金で口止めするかもしれないし、偽の情報で混乱させるかもしれない」

ほむら「ミカエルが私たちに期待しているのは、知り合いとしての動きかしら」

ほむら「知り合いだからこそ分かる相手の行動、あるいは、向こうから接触することを期待しているのでしょうね」

エレン「つ、つまりどういうことなの?」

ほむら「このまま旅を続けましょう」

エレン「これだけ引っ張ってその結論なの!?」

ほむら「探したところで見つかるとは思えないわ」

ほむら「それとも、エレンは心当たりがあるの?」

エレン「な、ないけど……」

ようせい「ないんだー」

ゆきだるま「仕事として受けなくて正解なのだ」

エレン「ああ、うん。そうね……」

ようせい「ほむらー。次はどこ行くのー?」

ほむら「……そうね。あの変態の言ったことが気になるわ」

エレン「変態……。ああ、伯爵のことか」

ほむら「ええ」


ほむら「東……。見捨てられた地よりさらに向こう側」

ほむら「そこに、魔王によってもたらされた破壊から復興し、独自の文化を築いている民族がいる」

ほむら「そこでは、失われた天術が伝えられている……」

ようせい「太陽術と月術ね。ほむらの月術を強化できるねっ!」

ほむら「ええ、それが無くとも、一度行って調査したい」

ほむら(マミ、杏子、…………それに、まどか。もしかしたら彼女たちがいるかもしれない)

ほむら「……けれど、そこに行くには、見捨てられた地を越えなければならない」

エレン「ねじれた森か、乾いた大河か……」

ほむら「どちらも、奥深くに行けば帰って来られないと聞くわね……」

ほむら(せめて、帰る方法があれば……)


「……………………」


ほむら「ま、いいわ。当分やめときましょう」
エレン「そうね。モニカ姫もいないだろうし」
ようせい「別のところに行こー!」
ゆきだるま「なのだ!」

-一方その頃 バンガード-

ウンディーネ「しばらくは、バンガードサブマリンモードのテストね」

ボストン「それが終わったなら、海底宮の正確な位置の調査だ」

ハーマン「流石に、フォルネウスとすぐに戦うってわけにはいかねえか」

サラ「でも、だいたいの位置はわかったね」

まどか「そうですね。私とサラさんは、一度大陸に戻って杏子ちゃんにさやかちゃんのこと伝えてきます」

さやか「そうだね。それじゃ、まどかたちが戻ったらフォルネウスとの決戦だね!」


サラ「そういえば、まどか。ほむらちゃんの話はよく聞くけど」

まどか「はい」

サラ「残った一人……。マミさんって人は大丈夫なの?」


まどか「うぇひひ! マミさんなら大丈夫ですよっ!」

サラ「き、記憶喪失なのにすごい信頼だね、まどか……」

さやか「うんうん! マミさんならきっと、一人でだって華麗にモンスターを倒しちゃってると思います!」

まどか「きれいで優しいひとだから仲間も作れると思いますし!」

さやか「私たちのなかでは、一番余裕をもって行動してると思いますよ!」

サラ「メンタル強い人なんだね……」

まどか「うぇひひ! つまり、マミさんは頼もしい人ってことですよっ!」





まどか「だから、マミさんは大丈夫に決まってますっ!」

投下終了。
\エビだー!/
レオニードにほむらちゃんが咬まれるフラグ回収。今回の話のメインはきっとそれ。

本日のほむら

ほむら「無刀取り無刀取り無刀取り……」
ようせい「挑発撃ち挑発撃ち挑発撃ち……」
クリプトエルダー「……」

投下します。

-遥か東の地 ムング族の村-


「ふ、フフフ。我ながら名案だわ!」

これをお読みになっている方へ

この手紙は無事、西の地へ届いたでしょうか?

私は、遥か東、死の砂漠よりさらに東の地にて、この手紙を書いてます。

私の名前は、マミ・トモエ。

この手紙を拾った方にお願いがあります。

もしも、私のお友達と出会うことがあれば、私のことを伝えて欲しいのです。



マミ「ボトルメール! コレを川に流せば、そのうち海まで流れていって、やがて、西へ辿り着く!」マミーン

マミ「これなら、(多分、西にいる)佐倉さん、暁美さん、美樹さん、鹿目さんに私のことが伝わるわ!」

マミ「うふふ……。後輩をお友達って書くのは、ちょっと照れちゃうわね」

マミ「さあ! 後は、みんなの特徴を書いて……!」


ツィーリン「何してるの、マミ?」

マミ「ツィーリンさん!」

ツィーリン「傷薬の空き瓶と、手紙?」

マミ「はい! 見捨てられた地を越えられず東から出られなくっても、手紙だけなら送れるんじゃないかって!」

マミ「うふふ! みんなに伝わりさえすれば、向こうでも合流する手立てを考えてくれるかもしれないわ!」

マミ「これで、私はもうひとりぼっちなんかじゃないわ!」

マミ「体が軽い……。こんな幸せな気持ちは(この世界に来て)初めて……」


マミ「もう何も恐く……!」
ツィーリン「海に流れたら、そのまま最果ての滝まで出ちゃうんじゃないかしら?」

マミ「…………。さいはての、たき……?」

ツィーリン「ええ。最果ての滝よ」

ツィーリン「雨、大地を巡り、川を流れ、海に出て、やがて滝より落つる」

ツィーリン「つまり、その瓶詰めの手紙の行き先は、西じゃなくて、世界の最果てに存在する滝になると思うわ」

マミ「え、ええっと……? 世界の最果てに……滝?」


マミ「ツィーリンさん。この世界って丸くないんですか?」

ツィーリン「? 何かしら、それ?」


マミ「……………………」

ツィーリン「マミ? どうしたの?」





マミ「もう、いやああああああああああああああああっ!!!!」

マミ「違う世界に来たら、いきなり牢屋に入れられて!」

ツィーリン「マミ、怪しかったものね」

マミ「魔法はほとんど封印で!」

ツィーリン「マスケットジュウって武器、燃費がイマイチよね」

マミ「みんなを探そうにも、ここは断絶された地域で、外に出られない!」

ツィーリン(西へは私も行ってみたい……。でも、ゼルナム族のせいで今は協力できないわね)

マミ「来る日も来る日も老師の手伝い!」

ツィーリン「異世界の魔法には、老師も興味津々ね」

マミ「村の人からは、変な格好って笑われ続け……!」

ツィーリン「すごく変だと思うわ」

マミ「私からすれば、あなたたちの格好が独特よっ!」


マミ「もういやぁ……」

ツィーリン「けれど、老師のおかげで大分待遇が良くなっているじゃない」

マミ「そうですけど、いつもいつも叱られて……」

ツィーリン「それに、そのそうるじぇむ? も浄化できたのだし」

マミ「はい……。野生の薬(LP3回復)を飲むと浄化されるんですね……」

ツィーリン「けれど、あなたの使うその魔法。老師は魂を削る邪法だと分析していたわ」

マミ「……はい」

ツィーリン「魂から希望の力を取り出す……。その力はアビスの力に対抗できるけれど、同時にアビスに制限される」

マミ「そうですね……。以前よりも消耗が激しくなっています」

ツィーリン「この世界において、あなたの魔法はより自身の生命力を削ることになる」

ツィーリン「10回も使えば、あなたの生命力は底をつき、魂は反転し、物の怪へと転じる」

ツィーリン「老師はそう判断を下したわ」

マミ「……それで、ツィーリンさんは私のお目付け役として、ここにいるんですよね」

ツィーリン「それと、世話役と護衛も兼ねているわ」

マミ「……。そして、魔法の代わりに手渡された、私の武器が……」


>フルーレ(攻撃力7)


マミ「フルーレ……」

ツィーリン「…………」


マミ「頼りなさすぎるわよっ!!」

マミ「この武器、ものすごく弱いですよね!? そのぐらい私にも分かりますからねっ!」

マミ「コレ、序盤で手に入る最弱武器のポジションですよねっ!?」

ツィーリン「マミは腕力より器用さが高いタイプだから……」

マミ「器用さを活かすなら、ツィーリンさんの弓のような強い武器がいいですよっ!」


>あずさ弓(攻撃力26)


ツィーリン「この弓、高いわよ。確か、3900オーラムね」

マミ「うっ……」

ツィーリン「それに、マミの場合、ソレが邪魔で弓を引くのは難しいんじゃないかしら?」

マミ「…………」ボイン


マミ「けど、ツィーリンさんも、胸が大きいじゃないですか」

ツィーリン「私は子供の頃から弓を引いていたから、慣れているもの」

マミ「そうですか……」

ツィーリン「まあ、そう気を落とさないで……。気を強く持つのよ、マミ」

マミ「強く持ってますよ! もう、この世界に来てからメンタル鍛えられまくりですよ!」

ツィーリン(まあ、牢屋で喚き散らしていた頃に比べれば確かに……)


ツィーリン(老師は、マミがこの世界に訪れたのは何かの前兆だと言っていたわ)

ツィーリン(……確かに、この頃は京の空気もおかしい気がする)

ツィーリン(そして、最近現れたアビスの魔物、ゼルナム族……)

ツィーリン(老師の言うとおり、何かが動き出そうとしている……)


マミ「うぅ……。佐倉さんたちはどうしているのかしら……」

-その頃 ピドナ 道具屋-

「まいどあり! ん? 嬢ちゃん、あんたどこかで見たような……?」

「あ、あたし! シノンの村からお使いでピドナまで来たんです。カタリナって言います!」

「そうかい、気のせいだったかな。遠いところからわざわざご苦労様」

「モ……、カタリナ。雑貨を買い終えたなら早く親戚の家まで行こう」

「……そうだね。ユ、ユリアンお兄ちゃん。それでは、店主さん。これで失礼しますね」


ガチャッ バタンッ


ユリアン「ふぅ……。呼び止められた時はヒヤッとしましたよ」

モニカ「あらかじめ、設定を考えておいて良かったですね」


ユリアン「……。オレとモニカ様は、義理の兄妹という設定……」

モニカ「私は別に、恋人という間柄でも良かったのですけど……」

ユリアン「いえっ! オレなんかがそんな、恐れ多い……」

モニカ(……もうっ!)

ユリアン「しかし、わざわざ兄妹にしなくとも、同じ村の仲間とかで良かったのでは?」

モニカ「ごめんなさい。私には仲間という間柄が分からなかったので……」

モニカ「それでも、兄妹ならば、お兄様がいるので何とかなると思ったのです」

ユリアン「はあ。なるほど、そうだったんですか」

モニカ「ええ。そうなのです」

ユリアン「では、トムが世話になっているらしい、トムの親戚の家に参りましょう」

モニカ「はい。トーマス様に会うのは久しぶりですね」

ユリアン「トムならきっとモニカ様の力になってくれます」

モニカ「ええ。何かあった時に頼れる人がいるのは心強いです」

モニカ「けれど、私にできるお礼なんてない……。それでも頼りにして良いのでしょうか……?」

ユリアン「大丈夫です! そこはオレが何とかしますよ!」

モニカ「ユリアン……。ありがとう」


ユリアン「さあ、着きましたよ」

モニカ「はいっ」

ユリアン「では、ここはオレが……。すいませーん、私、トーマスの友人なんですけどー……」ガチャッ



トーマス「ん?」
まどか「あっ」
サラ「あれ?」


ユリアン「え?」
モニカ「ええっと……?」

ユリアン「サラにまどか! 二人も来てたのか!」

モニカ「お久しぶりです。みなさん」


サラ「モ、モニカ様!? ユリアンも!?」

まどか「え、ええっと!? あの!?」

サラ「こ、このタイミングでっ!?」


モニカ「……? あの……?」


トーマス「すいません、モニカ様。
     本来ならば領民として、また、友人として、モニカ様をもてなすのが当然なのですが、今は立て込んでまして……。
     場所を移動してもよろしいでしょうか?」

モニカ「は、はあ」

ユリアン「トム……? その様子だと、尋常じゃないことが起こったみたいだな」

トーマス「……ああ」





トーマス「クラウディウス家の娘、ミューズ様が毒薬を呷ってしまったんだ」

毒薬の名前は、夢魔の秘薬。
飲んでしまえばたちまち眠りに落ちてしまう。
そして、服用者は夢魔の世界に囚われてしまい、眠りから覚めなくなる。

眠りから覚ますには、外から何をしても無駄。
唯一の手段は、夢魔の世界にいる夢魔を倒すことだけなんだ。


-ピドナ ミューズの家-

ミューズ「」

まどか「ミューズ様……」
サラ「そんな……」

トーマス「そして、事態が発覚した後に手に入った薬は5つ」

トーマス「内、2つはそこの二人が飲み、ミューズ様の後を追って、夢魔の世界に入った」


シャール「」
杏子「」


まどか「杏子ちゃん……」


トーマス「オレは立場上夢魔の世界に入るわけにはいかず、後事を任された」


まどか「あのっ! トーマスさん、私も薬を飲みます!」

サラ「まどかが行くなら、私も行くよ!」

トーマス「……二度と眠りから覚めないかもしれないが、それでも飲むのか?」

まどか・サラ「当然(です)(よ)!」

ユリアン「…………トーマス」

モニカ「…………!」

ユリアン「モニカ様のこと、少しの間頼めるか?」

モニカ「ユリアン……」

トーマス「構わないが……。行く気か? 夢魔の世界に」

ユリアン「ああ」


ユリアン「モニカ様。ユリアンは少しの間、あなたの護衛から外れます」

ユリアン「ですが、護衛の任を投げ出すつもりはありません。必ず戻ってきます」

モニカ「ユリアン…………」

モニカ「……………………ご武運を」


ユリアン「サラ、まどか。薬はあと一つあるよな。オレも行こう」

まどか「ユリアンさんも!?」

サラ「……いいの?」

ユリアン「ああ。人数は多いほうがいいだろう?」

ごくっ ごくっ ごくっ

バタッ バタッ バタッ

モニカ「……………………。ユリアン……」

トーマス「……。その……。ユリアンを止めなくとも良かったのですか?」

モニカ「…………。あれが、あの正義感がユリアンの良いところですから……」

モニカ「私も、その正義感に助けられた人間です。彼の決意を否定することなんてできません」

トーマス(ふうむ)

トーマス(以前も感じたが、やはり、モニカ様はユリアンに好意を抱いているか……)

トーマス(そして、ユリアンは根本的に女性の扱いが分かっていないな)


ミューズ「」


トーマス(自分を置いて、美人の女性を助けに行く……。モニカ様が嫉妬しないわけないだろうに)

トーマス(ユリアンは自分に向けられた好意にまるで気づいていないということか……)

トーマス(まあ、エレンから相手にされないまま20歳。好意に鈍感にもなるか)

モニカ「……………………」

トーマス「モニカ様? どうされました?」


モニカ「……ユリアンが戻ってきたとき、彼にかける言葉を考えています」

トーマス(対して、女性は精神的に強いな……)

-ミューズの夢 ミューズの家-

まどか「ん……」

まどか「ここは……」ムクッ

ユリアン「ここが夢魔の世界か……」

サラ「ここはミューズ様の家?」

まどか「ミューズ様はいませんね。杏子ちゃんとシャールさんも」

ユリアン「別の場所で夢魔と戦っているのかもな……」

サラ「……扉から外に出てみよっか」ガチャッ


-ミューズの夢 ピドナ王宮-

ユリアン「ここは……。もしかして、ピドナ王宮か?」

サラ「そっか……。ミューズ様のお父さんは近衛軍団長だった。だからミューズ様も王宮に出入りしていたんだよね……」

まどか「……もしかして、ミューズ様はお父さんの夢を見ているのかな?」

ユリアン「この場合は、夢魔が父親の夢を見せているって言うべきかもな」

ユリアン「そういえば、まどか。倒れていた赤い髪の女の子はまどかの友達なのか?」

まどか「はい。杏子ちゃんっていって、槍を器用に扱うベテランの魔法少女なんです」

ユリアン「魔法少女?」

サラ「それについては後で説明するから」

ユリアン「そうか、友達に会えたんだな。良かったじゃないか」

まどか「はい! 4人の内2人に会えました!」



まどか「ところで、こっちも気になっていたんですけど……」

サラ「うん。だよね……」

ユリアン「?」


まどか「えっと。モニカ様と二人でどうしてピドナに?」ドキドキ

サラ「うん。気になるよね」ワクワク


ユリアン「ああ、簡単に説明すると、政略結婚からモニカ様を逃がすために、二人でロアーヌを出たんだ」

まどか・サラ「!!!!」

まどか「わあー……! わああー……!」カアァ

サラ「ユリアン……すごい!」カアァ

ユリアン(え? 呆れられるかと思ったのに)

まどか(モニカ様とユリアンさん、一緒にロアーヌを出たんだ! これって、これって……!)ドキドキ

サラ(すごい! 駆け落ちだよ! 愛の逃避行だよ!!)ドキドキ


まどか「ユリアンさん! おめでとうございますっ!」

サラ「ユリアン、かっこいいよ!」

ユリアン「ええ!? いきなりどうした!?」

ユリアン「と、とにかく、二人共、早くミューズ様を助けないと……」


まどか・サラ「……」ピタッ


ユリアン「こ、今度はどうした?」


まどか(考えてみれば、おかしいですね)

サラ(モニカ様を置いて、他の女性を助けにいく……?)

まどか(それって、かなりアウトな行動ですよね)

サラ(うん)

まどか(情報を整理しましょう)

サラ(了解。そうしよう)

まどか(モニカ様はユリアンさんのことが好き。……ですよね?)

サラ(うん、私もそう思う。間違いないと思うよ)

まどか(そして……、ユリアンさんはそれに気づいていない)

サラ(気づいていたら、こういうことはしない。しても、もっとモニカ様にフォローを入れる)

まどか(そして問題なのは、ユリアンさんはモニカ様のこと好きなのか、ですね)

サラ(好きといえば好きだと思うよ……。トムから聞いたけど、ユリアンの好みって「美人」なんだって)

まどか(うわっ直球ですね!)

サラ(お姉ちゃんも美人、モニカ様も美人。……そして、ミューズ様も美人だね)

まどか(……アウト)

サラ(アウトだね)


まどか「ユリアンさんにはがっかりしました」

サラ「やっぱり、かっこよくないや。ユリアン」

ユリアン「さっきから何なんだ、二人共!」


まどか「何でもないです。早くミューズ様を助けましょう」

サラ「モニカ様を待たしても悪いしね」

ユリアン「ああ……、もういい。行こう……」

***

まどか「ところで気になったんですけど……」


メイド「…………」ヒタヒタ
メイド「…………」ヒタヒタ


まどか「メイドさんがたくさん……」

ユリアン「無言で歩きまわっているな……。まどか、近寄らないほうがいい」

サラ「……でも、無視し続けるのもどうなの?」


まどか「……話しかけてみましょう」

サラ「気をつけてね……。まどか」

ユリアン「すぐ動けるように構えておくぞ……」


まどか「あのー。メイドさん、ちょっといいですか?」





メイド(?)「シャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」ブワッ

バク「グルルルッ!」

まどか「わあ! やっぱりこういう展開!?」

サラ「まどか、下がって!」


バク「シュルシュルシュル……」[催眠]

キュイイイイイイイイン

まどか「あ……」

サラ「ん…………」

パタッ パタッ

ユリアン「……くっ! サラ! まどか!」

「サラ! まど…! 目を覚…せ! サ…! …ど…! ………………!」

「ん……」

「まどか。どうしたの?」

まどか「あ、あれ? ほむらちゃん?」

ほむら「登校中にボーっとして。具合でも悪いの?」

まどか「え? あ、そっか。今学校に向かってるところだっけ?」

ほむら「……まどか。本当に大丈夫? 熱があるのならHR前に保健室に行った方が……」

まどか「ウェヒヒ! 大丈夫だよ! さっ、行こっ! ほむらちゃ………………」



ほむら「? どうしたの、まどか?」ボインボイン


まどか「!!!!?????」

ほむら「……急に私の胸を凝視して、まさか、まどかまでさやかのようにセクハラするつもりじゃ……!」ボインボイン


まどか「こんなの絶対おかしいよっ!!!?」

ほむら「ま、まどか!? おかしいのは今日のまどかの方じゃ……」ボインボイン

まどか「そ、その胸。偽物だよね……。ほむらちゃん、これドッキリだよね……!」

ほむら「偽物っ!? ドッキリ!!?」ボインボイン

まどか「……………………。ねえ、ほむらちゃん。ちょっと触らして」

ほむら「え? 触るって……? ま、まどか。こんな往来で何を……」ボインボイン

むにゅ

まどか「!!!!!!!!??????」

まどか「そ……」


「そんなばかなああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ」

***

「飛水断ちッ!!!」

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

まどか「ハッ! 夢!?」ガバッ

ユリアン「目を覚ましたか。モンスターは倒したぞ」

まどか「し、心臓止まるかと思いました……」

ユリアン「なんだ? 高い所から落ちる夢でも見たのか?」

まどか「もっと酷い夢です」


「お姉ちゃん……やめて……。魔王殿ごとゲートを叩き割るなんて……」

ユリアン「サラも起こさないとな」

まどか「どんな夢を見てるんだろう。サラさん」


まどか「それにしても、ユリアンさんは眠らなかったんですね」

ユリアン「ああ。眠かったけど、根性で耐えてやったよ」

まどか「意志力強いんですね……」

ユリアン「まあ、なんにせよ。先に進…………」


バクA「グルルル……!」
バクB「シュウウウウ……!」
バクC「コオオオオオ……!」


ユリアン「あ、集まってきた……。こ、これは……」
まどか「え、ええっと……」
サラ「ん? あれ? お姉ちゃんは……?」ムクッ

[催眠]
[催眠]
[催眠]

***

-その頃-

杏子「シャール! 起きろっ!」

シャール「うっ……。すまない、また、催眠を喰らっていたのか……」ググッ


[催眠]
[ナイトメア]


シャール「ぐぅ……」バタッ

杏子「チィ! ウザってえ!」

杏子(倒しても倒しても湧きやがる! これじゃ、先に進めねえ!)

バク「ぎゃおおおおおおん!」[ハードヒット]

杏子「ああ、くそっ。さっさと消えろっ! スパイラルチャージッ!」ギュイイイイン

ボシュウウウ

杏子「くっ。こんな場所でミューズは無事なのか……?」



バク「シャオオオオオッ!」[体当たり]

杏子(っ!? チッ、油断した!)

[ユリアンブロック]

ドカアッ!

バク「シャアアッ!?」バッ


「ぐっ……。走っていたら、合流できたか。不幸中の幸いだな……」

杏子「あ、あんたは……?」



ユリアン「オレはユリアン。サラとまどかの仲間だ!」ドン

まどか「むにゃ……。さやかちゃん、東大に行くなんて嘘だよね……」

サラ「ううーん。トム……、ナジュの熱き血の前に2回ねまわしするのは基本だよ……」


杏子(寝ているまどかとサラを抱えた見知らぬ男に、体当たりから庇われた……)

杏子(何が何だか分からない)

投下終了。
モニカ様が腹黒く見えるかもしれませんが、モニカ様は初恋に一所懸命なだけです。ぽかぽか。
何故かユリアン回になりました。
バク「キノコのほうし、みがわり」

平面世界を中心に太陽や星が廻っていた(天動説的世界感)

破壊するもの撃破

サラと少年の共同作業

平面世界は球体になり、恒星を中心に廻る惑星のひとつに

こういうことでおk?

>>392
そういうことでおkです。

今日ロマサガ3でユリアンブロックの極意取得しました。コレ、知らなかったらすごくシュールですね。
投下します。

-現実 ミューズの家-

トーマス「こちらの近況は以上ですね。拙い説明でしたがお役に立てましたか?」

モニカ「ありがとうございます、トーマス様。分かりやすい説明でしたわ」

トーマス「あとは、そうですね……。野盗のアジトを壊滅させた冒険者がどうやらエレンのようなんです」

モニカ「まあ……。エレン様が……」

トーマス「その3日後に、ハリードや黒魔女という傭兵と共に、ツヴァイクトーナメントで優勝しているみたいですね」

モニカ「ツヴァイク……」


トーマス「……ロアーヌからは特に目立った動きはないですね」

モニカ「お兄様は、私の逃亡を隠すつもりなのでしょう」

モニカ「私の逃亡が知れ渡ってしまえば、良からぬことを考える輩も現れてしまいますから」

トーマス「だとすれば、モニカ様の捜索は秘密裏に行われることになりますね」

モニカ「ええ。しかし、カタリナのいないロアーヌで誰がその任を……?」

トーマス「そういえば、モニカ様。男爵に誘拐されたと聞きましたが……」

モニカ「まあ、よくご存知なのですね」

トーマス「私の仕事は情報が命なので」

モニカ「ええ。ゴドウィンの洞窟に囚われたのですが、ユリアンと詩人さんに助けていただきました」

モニカ「……。男爵はもうこの世にいないでしょう……。彼は、自ら洞窟を崩しました。捜索隊が見つけたのは私たちだけだそうです」

モニカ「お父様を殺したのは男爵でした……。彼自身が洞窟を崩す間際に告げたのです」

トーマス「……。その男爵は結局命を落とした……。悪因悪果ということか……」


トーマス(それにしても、この誘拐事件の話……)

トーマス(察するに、ユリアンとモニカ様の距離が近くなったのは、その出来事が大きいのだろう)

トーマス(案外、その時に詩人さんがいなければ、ユリアンもモニカ様の好意に気づくぐらいに仲が深まっていたかもな)


モニカ「ユリアンたちが薬を飲んで1時間……。皆様大丈夫なのでしょうか……」

トーマス「……。あいつは一度決めたらやり通す奴ですから……」

トーマス「サラとまどかも強くなっています。きっと大丈夫ですよ」

-ミューズの夢 ピドナ王宮の一室-

ガチャッ バタンッ

杏子「……ここなら連中も追って来ないか」

メイド(?)x6「…………」

ユリアン「この部屋の奴らは襲ってこないみたいだな……」


まどか「むにゃむにゃ……。まさか、ワルプルギスの夜がサラさんの魔女化した姿だったなんて……」zzz

サラ「ううーん……。まどか、その大金はどうしたの……その、きれいな指輪はどうしたの……」zzz


ユリアン「……。催眠攻撃を連発されると仲間がほとんど無力化されてしまうな……」

杏子「そういや、あんたは何で眠らないんだ?」

ユリアン「正直、さっきまでものすごく眠かったんだけどな」

ユリアン「けれど、耐えたり、体を張ったりするのは慣れてるんだよ」

杏子「ふーん」


ユリアン「ん? そういう君も寝てないよな」

杏子「私は、精神と睡眠の状態異常に耐性があるんだよ」

ユリアン「へー。便利なんだな、魔法少女って」


杏子「…………」

ユリアン「?」

杏子「……あのさ。あんたがどこまで魔法少女について知ってるかは知らねーけどな」

杏子「私以外の魔法少女の前で、軽々しく便利だとか絶対に言うな」

ユリアン「……………………。わかった」

ユリアン(何か気に障ってしまったみたいだな)

ユリアン(サラとまどかが眠ってしまったから、この子に魔法少女について聞こうと思ったのに……)

ユリアン(結局聞けなかった……)

杏子「それと、さっきはすまなかったな。庇ってくれて」

杏子「私としたことが油断した。一人で戦うのには慣れてるはずだったんだけどな……」


シャール「ぐ……、ここは……」

杏子「目ぇ覚めたか」

シャール「すまない、杏子。迷惑かけたな……。むっ? 君は?」

ユリアン「オレか? オレはトーマスの幼なじみで、サラとまどかの仲間のユリアンだ」

杏子「あー。そういや、いつだったかまどかからあんたのこと聞いた気がするな」

杏子(まどかが悪い男爵の謀反騒動に巻き込まれたときの仲間か)

シャール「そうか……。ありがたいが、いいのか? 夢魔を倒せなければ永遠にこの世界を彷徨うことになるのだぞ」

ユリアン「自分が正しいと思うことをしろって、おやじはいつも言っていた……」

ユリアン「オレはそれに従っただけだよ」


杏子「……………………」

杏子「自分の得にならない。下手すりゃ感謝すらされないかもしれない」

杏子「それでもあんたは親父さんの言うとおりに、正しいと思うことをするのか?」

ユリアン「当然だろ」

杏子「……その自分の行動のせいで、かえって事態が悪化してもか?」

ユリアン「ああ。つい最近失敗したばかりさ」

ユリアン「護衛対象をみすみす誘拐されてな。それでも、挽回することはできた」

杏子「……取り返しなんてつかない場合もあんだぞ。そうなっても同じことが言えんのか」

ユリアン「辛くとも失敗することがあっても、おやじの言葉は別に間違ってはいないんだ」

ユリアン「オレはこれからも、自分が正しいと思うことをするよ」


杏子「…………。ふー……」

シャール「……? どうした、杏子」

杏子「いや、何でもねーよ。ただ、こいつバカだなって思っただけだ」

杏子(バカだけど……、でも、こいつは強いんだな……)


シャール「……。さきほど、杏子は感謝されないと言ったが」

シャール「少なくとも私は感謝する。ミューズ様のためにここまで来てくれたことに感謝を」

シャール「もちろん、杏子にも。まどかとサラにもな」


まどか「むにゅ……ほむらちゃん……、突然ゆきだるまの話をしてどうしたの? クールアズアイスって何……?」zzz

サラ「ううーん、クールアズアイスは……場を凍らせる、かけひき技……」zzz

***

まどか「ご、ご迷惑おかけしました……」

サラ「あはは……。杏子、シャール、久しぶり……」

杏子「ま、いいさ。シャールだって眠ってばっかだったんだ。おまえらだけってわけじゃねーさ」

シャール「面目ないな……」


ユリアン「しかし、夢魔はどこにいるんだ? それにミューズ様も……」

杏子「ああ。それなんだけどな」

まどか「? 杏子ちゃん?」

杏子「さっきの廊下。幻術の気配を感じたよ」

杏子「多分だけど、幻を生み出している奴を倒さないと先に進めないようになってる」

サラ「幻を生み出してる奴って……。あのメイドの化け物の中から探すの?」

杏子「いや……」



メイド(?)x6「…………」

杏子「…………」ツカツカ


杏子「おらっ!」ズシャッ

メイド(?)「ギャアアァァァ」ボシュウウウ


杏子「多分、今の奴だ」

サラ「どうして分かったの?」

杏子「あいつだけ弱そうだった。私たちが戦ってたのを魔女とするなら、さっきのは使い魔程度だな」

まどか「そうなんだ……」

-ピドナ王宮 下階層-

杏子「ここも、幻術の気配がするな」

シャール「ならば、術者を探すか」


「グルルルル……」
「ゴオグル……」
「シャアアア……」


まどか「ま、また集まってきちゃった……」

杏子「チッ、催眠を使われたら面倒だ……。となると、手は一つだな……」

サラ「……うん。そうだね」





サラ「使われる前に、倒す!」
杏子「面倒だから逃げるに限る!」

まどか(意見バラけちゃった!)

杏子「いや、サラ。おまえは眠ってたかもしれねーけど、私はほとんど一人でこいつらの相手し続けてんだよ」

杏子「もうこいつらの相手なんて、やってらんねーよ」

サラ「厄介な行動は使われる前に潰すべきだよ」

サラ「素早くクラックでスタンさせれば、杏子が味わった苦労なんて今後はないと思うよ」

まどか(サラさん、素早さ高いからなあ)


シャール「……このまま言い争っても囲まれるだけだ。今回は杏子の意見を優先してやってくれ」

ユリアン「わかった。走るぞ、サラ、まどか」

まどか(うっ、私、走るの苦手なんだけどなあ)

タッタッタ…… ガチャッ バタンッ

ユリアン「なんとか撒けたな」

サラ「やっぱり、廊下のモンスターは部屋には入ってこないみたいだね」

杏子「ふぅ、この部屋に術者がいそうだな」ツカツカ

ズシャッ ギャアアア ボシュウウウ

シャール「これで、奥に進めるか……」


シャール「ピドナ王宮の広さから考えて……。おそらく、そろそろ玉座の間だ」

ユリアン「やっぱり、ボスは玉座にいるものなのか?」

杏子「今まで、ミューズも夢魔も見かけなかったんだ。多分そこにいんだろ……」

シャール「ミューズ様……。どうかご無事で……!」

サラ「…………」キョロキョロ

サラ「…………ねえ、まどかは?」


杏子「……え?」


サラ「まどかがいない……」

ユリアン「おいおい……。まさか……」

シャール「さっきの廊下で、モンスターに追いつかれたのか!」

杏子「っ! やべえ、すぐに戻るぞ!」ダッ


ガチャッ

まどか「ウェヒヒ! 遅れてゴメンナサイ!」

サラ「まどか! 良かった……! 心配したんだよ!」

杏子「ったく。ヒヤヒヤさせやがって」

シャール「いや、確認しなかったこちらも悪い。まどか、すまなかった」

杏子「あー。まあ、そうか。悪かったな、まどか」

まどか「ウェヒヒ!」


シャール「廊下の幻術もとけたんだ。奥に行けばきっとミューズ様と合流できるだろう」

サラ「うん。早くこんな世界から出よう」

ユリアン「モニカ様をあまりお待たせするわけにもいかないしな」

まどか「ウェヒヒッ ユリアンさんはモニカ様のこと大好きなんですね!」

ユリアン「バッ……、変なこと言わないでくれ! そんな恐れ多いこと考えるわけないだろう!」

杏子「? モニカ様って?」

サラ「えっとね……」

まどか「ウェヒヒッ、ところで、ユリアンさん。剣は持っていますか」

ユリアン「ん? ああ、これか」(E.ブロードソード)

まどか「ちょっと見せてもらえますか?」

ユリアン「ああ」スッ

まどか「借りますね。……では、ちょっと場所を移動して」トコトコ

ユリアン「…………? 何をしてるんだ?」

まどか「……ウェヒッ」

ユリアン「…………っ! まさか、おまえは!」





ユリアン「サラッ!! 危ない!!」ダッ

まどか「……ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッヒヒヒぃッ!!」

サラ「えっ?」クルッ


ズシャアアアアッ!!

杏子「なっ…………! どういうことだ、オイ……!」

シャール「バカな……。そんな、まさか……!」



[ユリアンブロック]

ユリアン「グッ……」バタッ

サラ「え……、ゆ、ユリアン……? まどか……?」


まどか「あーあ。サラさん殺し損ねちゃったヨ!」

まどか「ウェヒヒヒヒヒッ!」


サラ「まどか……!? あ、あなた! まどかじゃないわね!?」

杏子「て、てめええっ!! ぶった斬って化けの皮剥いでやるッ!」


まどか(?)「化けの皮? ワタシの正体が知りたいのかね?」


まどか(?)「フフフ……。ワタシは君たちが探している存在だよ。君たちは私を倒しに来たのだろう?」

シャール「何!? それじゃあ、貴様が!!」


偽まどか「クククッ、その通り」

偽まどか「我こそは夢魔。この夢の世界の支配者だよ……」

偽まどか「……なんてねっ! ウェヒヒヒヒヒッ!!」

サラ「ユリアン、しっかりして! アースヒール!」シュイイイイン

ユリアン「ぐっ……」


偽まどか「あれ? サラさん。そんな役立たずを治療してるんですか? ……ウェヒヒ!」

サラ「っ! ユリアンは役立たずじゃない! まどかの顔でそんなこと言わないでっ!」

偽まどか「そーなんですかー。それじゃあ、サラさん……」

偽まどか「コレ、なーんだ」(ブロードソードを掲げる)

サラ「それ……、もしかして、ユリアンの剣……!?」

偽まどか「ウェヒヒッ、敵に自分の武器を渡すバカなんて役立たずで充分でしょ~?」


杏子「そこまでにしやがれ……! クズ野郎!」ブンッ

偽まどか「きゃっ! 危ないなー、もう! ひどいよ杏子ちゃん! ぷんぷん!」

杏子「……! ちょーウゼえ……!」

偽まどか「ところで、杏子ちゃん。私からひとついいカナ?カナ?」

杏子「黙ってろ、クズ」

偽まどか「やだよ~。……あのね。みんなは私の事、偽者って言うけどネ」ウェヒヒッ

偽まどか「じゃあ、本物の私はどこにいるのしょう!」

シャール「本物のまどか……? っ! まさか、さっきの廊下でモンスターに……!」

偽まどか「んー、もうちょっと考えたら? シャールさんって頭固いんだネっ!」

シャール「貴様……!」ギリッ


偽まどか「えっとねー。私はさっき、そこの廊下からこの部屋に来たんだヨー?」

杏子「……。まどかは既にてめえの手中に落ちていて、これからてめえは捕らえたまどかを人質にする……か?」


偽まどか「わあ! 杏子ちゃんもなかなかゲスい発想をするネ! 70点カナ!」

杏子「てめえの考えそうなことを考えただけだ、カス」

偽まどか「んー。でも、それなら、こう考えて欲しかったナー」


偽まどか「実は、このまどかは本物で、夢魔に操られている」

杏子「なっ!!?」

杏子「てめええええええっ!!」

サラ「あ、あなたって最低よっ!」

偽まどか「ウェヒヒッ! つまりこういうことだネ!」


偽まどか「みんな! 夢魔を倒すために、私を殺してっ!」

偽まどか「……なーんてねっ」

シャール「悪魔め……!」

***

-その頃 ピドナ王宮 玉座の間 前-

ミューズ「…………」

ミューズ「ああ……」

ミューズ「私ひとりでは無理だわ……」

ミューズ「勝てない……。何度戦っても、あいつには勝てない……」

ミューズ「お父様……。シャール……」

ミューズ「……。杏子…………」

ミューズ「もう一度あなたに会いたかった……。けれど、もう……」



「うぅ……。ソーンバインドで上手く敵を足止めできたけど、みんなとはぐれちゃった……」

「えっと。こっちかな? 杏子ちゃーん、サラさーん」


ミューズ(ああ……。聞こえるはずない人の声が……。夢魔のまやかしかしら……?)


「ユリアンさーん、シャールさーん」

「うーん……。もっと奥かなあ……?」


ミューズ(だんだん近づいてくる……。夢魔は私に希望をチラつかせて、絶望を楽しむつもりなのね……)


「…………あれ? …………あっ!」

「ミューズ様っ!!?」


ミューズ「えっ?」クルッ

ミューズ「あ、あなたは……、どうして……!?」

***

(陣形:フリーファイト)

偽まどか「ウェヒッ!」[通常攻撃]

ユリアン「くっ、防御!」ガッ ガッ

ユリアン(剣があれば、バリィできるのに!)

偽まどか「あれれー? ユリアンさん、何で武器持ってないんですかー? 今、敵のボスと戦ってるんですよー?」

偽まどか「さすが! 役立たずは違いますねっ!」

偽まどか「ウェヒヒヒヒヒヒヒッ!」

杏子「まどかっ! 目を覚ませッ!!」

偽まどか「うっ……きょうこちゃん……? あ、あたまが……!」

サラ「まどかっ!」

偽まどか「なんてねっ 烈風剣!」[烈風剣]

ズオオオオオッ!

シャール「ぐっ!」
ユリアン「ぐぅっ!」
杏子「ちぃっ!」
サラ「きゃあっ!?」

偽まどか「ウェヒヒッ! ユリアンさんの剣って使い勝手がいいなあ」

偽まどか「ユリアンさん、ありがとうございます! この剣はあなたの墓標に突き立てておきますネ!」

[通常攻撃]

ズシャッ ズシャッ

シャール「ぐぅっ……!」

シャール「……このままでは、私たち全員やられるだけだ」

サラ「……っ! シャール! でも……!」

シャール「このまま、まどかが正気に戻らなければ……、私がまどかを殺す」

杏子「……っ! 私は諦めるつもりはねーぞ!」

シャール「だがっ! 私たちが倒れれば、誰がミューズ様をお助けするのだ!」

サラ「……でもっ! でもっ!!」

シャール「……おまえたちの手を汚させるつもりはない。私だけでやる」

ユリアン「……。オレもやろう」

サラ「ゆ、ユリアンまで……」

ユリアン「あくまで、最悪の場合だ。それに、剣を奪われたのはオレの失敗だからな」

サラ「そんな……」


偽まどか「んー……。何か話し合ってるところ悪いけど、邪魔しちゃうよ」[催眠]

キュイイイイイイイン

シャール「くっ……!」

サラ「ね、眠気が……」

サラ(寝ちゃダメ……。まどかを……助けなきゃ……!)


「ウインドダートっ!」

偽まどか「きゃっ!」バシッバシッバシッバシッ

「大丈夫っ!? みんな!?」

サラ「えっ! な……、どうして……?」

偽まどか「あーあ、なんだ、来ちゃったんだ」



ミューズ「皆さん! ご無事ですか!」

まどか「えっ!? わ、私がいるっ!?」

まどか「さ、サラさん、みんなっ! だ、騙されちゃダメです! アレは私の偽者です!」


シャール「ミューズ様!? それに……」

サラ「ま、まどか……。本物のまどか……?」

杏子「……。ってことは、つまり……」

シャール「貴様……。先ほどまでの言葉は虚言かっ!」


偽まどか「ウェヒヒッ……………………。何のことカナ?」ズズズ

シュウウウウウ……

夢魔「ワタシは一度たりとも嘘をついていないヨ……」

夢魔「カナメまどかを操っていると仄めかしはしたが……、そのように断定したかネ?」

夢魔「そもそも、言ったはずだろう?」

夢魔「我こそは夢魔、とネ」

杏子「き、汚え。キュゥべえ並に汚えぞ、コイツ……」

夢魔「ヤレヤレ、考えれば分かることだろうに」

夢魔「その方法を使うならば、カナメまどかではなく、ミューズを使って実行すべきだ」

夢魔「そうすれば、君らは完全に手出しできなかっただろう?」


ミューズ「……夢魔はこちらの精神を追い詰めることに長けています」

ミューズ「私が戦った時も、お父様やシャール、それに、杏子の姿で私に揺さぶりをかけてきました」

ユリアン「なんて腹のたつ奴だ……!」

ミューズ「? ……あなたは?」

ユリアン「あ、えっと……。オレ、私はユリアンといって……」

杏子「正義感ひとつでミューズを助けにきた、正義バカだよ」

ユリアン「おい! なんだよ、その説明!」

ミューズ「そうでしたの……。私のために……、ありがとうございます」

ユリアン「い、いえっ!」


まどか「(じーっ)」
サラ「(じーっ)」

まどか「アウトですか?」

サラ「うーん、一応セーフかな?」

ミューズ「シャール!」

シャール「はっ!」

ミューズ「これを受け取ってください」

シャール「……! これは、まさか!」

ミューズ「ええ」


ミューズ「聖王遺物のひとつ、聖王十二将オトマンの銀の手です」

ミューズ「銀の手は、切り落とされたオトマンの右腕の代わりを見事こなしたと聞きます」

ミューズ「ならば、ルードヴィッヒに筋を切られた貴方の右腕の代わりもこなせるはずです」

シャール「! ミューズ様……。ありがたく使わせていただきます」

杏子「へえ。両腕つかえるシャールか……。そりゃ頼もしいな」

ミューズ「杏子……」

杏子「ミューズはそこで見てなよ。すぐにあいつぶった斬ってこんな世界から脱出させてやっからな」

ミューズ「…………はい!」

(陣形:龍陣)

夢魔「フフフッ、楽しい夢の世界へようこそ……」

ミューズ「夢魔…………」

シャール「私が先頭に立つ! 夢魔! 私の全力を思い知らせてやろう!」

シャール「双龍破ッ!!」シャッ グオオオオオオンッ

夢魔「む?」

夢魔(言うだけのことはある……。高い能力と技量、要注意か)

杏子「もう一発だよ! 双龍破ッ!」グオオオオオンッ

夢魔「……。カナメまどか……」[角]

まどか「きゃっ!?」


[ユリアンブロック]

ユリアン「ぐっ。剣が無くても、コレぐらいはできる!」ガッ

まどか「ユリアンさん!」


サラ「……私、怒ってるんだから」

サラ「ショットウェイブッ!!」シャッ シュゴオオオオオ

夢魔「ぐっ」

サラ「効くよね? あなた浮いてるもの」

まどか「そっか、なら私も撃ちます! ……ショットウェイブっ!!」シュゴオオオオ

夢魔「ぐぅう……!」

夢魔「…………」

夢魔「おお。ミューズ……。ミューズはどこだ……」

ミューズ「!?」

シャール「クレメンス様の声……! だが、夢魔! もはや貴様の戯言など聞かん!」

夢魔「…………」[デスグリップ]

シャール「甘いぞっ! かざぐるまっ!!」

ズシャアアアッ!!

夢魔「チッ」

杏子「おいおい、とんでもねえな。こりゃ、私も負けてらんねー! スパイラルチャージッ!」

サラ「このままたたみかける! ショットウェイブッ!」

ユリアン「パンチッ!」

まどか「ショットウェイブっ!」

夢魔「ぐおおおおおおっ」

「……………………」

「ミューズ……。いとしき娘よ……」

ミューズ(っ! お父様……)

「私の魂はルードヴィッヒによってこの世界に捕らわれた……」

「そして、悪しきアビスの力によって私は夢魔と化し、おまえたちを襲ってしまったのだ……」

「だが、おまえたちが夢魔を追い詰めたことによって、アビスの力が弱まり本来の私になったのだ」

「シャール、礼をいうぞ……。ミューズ、これからはずっと一緒だ……」


ミューズ「…………」

「ミューズ、いとしき娘よ……」


ミューズ「お父様は」



ミューズ「もういないのよっ!!」

夢魔「っ!?」



ミューズ「サミングッ!!」ドシュッ

夢魔「ぐああああああああああっ!!」ボシュウウウ

-現実 ミューズの家-

ゴン「ミューズさま……」

ミッチ「ミューズちゃま……」


モニカ「……………………」

トーマス「ミューズ様は、父親亡き後、この旧市街に移り住み、近所の子供たちの世話をして過ごしているのです」

モニカ「お父上を亡くされたのですか?」

トーマス「ええ。シャールさん曰く、ルードヴィッヒの手の者に暗殺されたとのことです」

モニカ「そうですか……。それなのに、立派なのですね」

モニカ「これほど子供たちに好かれているのです。この方はとても良い方なのでしょう」

トーマス「……モニカ様もご立派だと思いますよ」


「お父様はもういないのよっ!!」


ゴン「ミューズさま!」
ミッチ「ミューズちゃま!」


ミューズ「……。ここは……。夢から覚めることができたのですね」ムクッ

ユリアン「うっ……。元の世界か……」ムクッ

モニカ「ユリアンッ! 良かった……! 無事に戻ってこれたのですね!」

ユリアン「! はい! ただいま戻りました、モニカ様!」

ユリアン(剣もちゃんとあるな)

ユリアン(これで、今度からはちゃんとパリィができる……。やれやれ)





まどか「一件落着だね! ウェヒヒッ!」

サラ「あ、まどか。その笑い方、しばらく控えてくれないかな?」

まどか「!?」

投下終了です。
おかしい……、カッコいいユリアンを書くつもりだったのに、あんまりカッコよくないぞ……。
ゲームをなぞってたら良い展開が思いつかなかったので、開き直って好き勝手やりました。やりすぎた。

ハリードは「準備はいいな?」と言いつつ、サラが陣形を整える間もなく先制攻撃をしかけるが
サラは「ハリード…せめて、つけてからにしてくれない?」と、一旦マタドールする。
ハリードは「おっとすまない…」と言って、財布から取り出したストーンスキンをカムシーンに装着させると、
クイックタイムにサラのアビスゲートをくしざしにした。
ここ一週間ほどパワーセーブしていたハリードのカムシーンは既にジャングルフィーバー状態なので、
ちょっと石突きしただけでもハードヒットする。
サラが「もっと最強打が欲しい…」と勝利の詩をあげるとハリードは更にスペルエンハンスして、
海底宮にみね打ちするほど深く活殺獣神衝したり、いん石のかけらをハイパーハンマーしたりと大技を連発する。
サラは「あぁ…凄い…もっとシールドラッシュして!」とハリードの腕をかぎ爪したりするので、
より一層激しく腰をグランドスラムさせると、全身を大震撃させながら
「ああ…私、シャッタースタッフしちゃいそう…!」とスケアーボイスした。
ハリードは最後の力を振り絞り、明王拳のような速さでデッドリースピンして
「行こう…最果ての島まで!」と言うと、ついにファイナルレターした。
しかし、カムシーンから発射されたデミルーンエコーが予想外にブルクラッシュだったので、それは
ストーンスキンをマキ割りダイナミックしてサラの中へメイルシュトロームしてしまった。
サラ「はぁ…はぁ…ハリードったら、何て事を…」
ハリード「すまない、パワーセーブしすぎたのがまずかったようだな。」
サラ「あ、そう言えば少年君…」
少年「ぼくにかまわないで!」

投下前に一つ。
このSSで魔王の盾が居合い抜きを防いでいましたが、居合い抜きは魔王の盾で防げないみたいです。勘違いしてました。
投下します。

***

モニカ「私たちは少ししたら、旅立とうと思いますわ」

サラ「もうですか? 二人だけで大丈夫ですか?」

モニカ「ええ。ユリアンが守ってくれますから」

ユリアン「はい、お任せください。モニカ様」

ミューズ「まだ、ろくなお礼もできていませんのに、そんな……」

モニカ「……こうして、旅に出ると実感するのです」

モニカ「自分がどれだけ狭い世界で生きてきたのかを……」

ミューズ「狭い世界……」

モニカ「だから、今は色々な場所を見て回りたいのです」

モニカ「いつの日か、ロアーヌに帰るその時まで……」

モニカ「……。もちろん、ユリアンと一緒に、です」

ミューズ「……そうなのですか」


まどか「ロアーヌに帰るって……、大丈夫なんですか?」

サラ「ミカエル様、怒ってるんじゃ……」


モニカ「かもしれませんね。ですが……」チラッ

ユリアン「?」

モニカ「こちらの望みが通らないのなら、お兄様と徹底抗戦するつもりですわ」

まどか「!」
サラ「!」


まどか「そ、その時は、私たちも協力しますっ!」カアアァ

サラ「うん! 絶対認めさせようねっ!」カアアァ

モニカ「ふふっ、お二人共、ありがとうございます」

ミューズ「素敵ですね……。何だか憧れてしまいますわ」

ユリアン(? 何だか女性陣が妙に仲いいな?)

トーマス「ふぅ……。やれやれ、こいつは……」

ユリアン「なんだよ、トム」

トーマス「何でもないさ。おまえは、お姫様のナイトを続けていればそれでいい」

ユリアン「なんか、含みのある言い方だな……。
     あのな、モニカ様と恋仲になろうとか大それたこと考えたら、ミカエル様に逆さはりつけにされるよ。
     変なこと言ってからかわないでくれ」

トーマス「そうとも限らないと思うがな」

ユリアン「は?」

トーマス「おまえはけっこうすごい奴かもしれないってことさ」

ユリアン「意味がわからないぞ……」



モニカ「そろそろ、私たちは失礼しますね。……行きましょう、ユリアン」

ユリアン「ええ、わかりました。モニカ様」

トーマス「オレもそろそろ仕事に戻るとするか」

杏子「ま、ユリアンは次からは剣を2本持っとくんだな」

ユリアン「……そうするよ」

トーマス「何かあったら、トーマスカンパニーを頼ってください。必ず力になります」

モニカ「ありがとうございます。トーマス様」


モニカ「それでは、皆様。ごきげんよう。またいつか、お会いしましょう」

***

ミッチ「ミューズちゃま~!」

ゴン「ミューズさま、ごめんなさいー!」

ミューズ「あら。ゴン、ミッチ」

ゴン「おれがあんなくすりをもらってせいでー!」

ミッチ「グスグス」

ミューズ「大丈夫よ、ゴン、ミッチ。私は元気だから」

ゴン「あのくすり、あかいピアスをつけたひとからもらったんだ……。やさしそうなひとだったのに……」

ミッチ「あのひと、きょーだんのいちばんエライひとだよ」

シャール「教団の一番偉い人物……。マクシムスか!」

杏子「……あの野郎か」

まどか「マクシムス……?」


杏子「…………神王教団のピドナ支部のトップだよ。確か、聖王遺物を集めようとしているって話だったな」

まどか「聖王遺物? えっと、それって、シャールさんの持ってる銀の手のような?」

杏子「ああ。大層な理由を語っていたが、正直ろくな目的じゃないと思うよ」

杏子「マクシムスの説法は上辺だけ。教本をそのまま読んで、善人の振る舞いをしてる。あいつはただそれだけだ」

サラ「分かるの?」

杏子「宗教ってのは、人を救うためのもんさ。あいつがしてるのはただの勧誘でしかなかった」

杏子「自分の手下を増やして、尤もらしい理由でお宝集め」

杏子「……そんな説法で、教徒を増やしているのがムカつくよ」

ミューズ「杏子……」
まどか「杏子ちゃん……」

杏子「……。そんなあいつが犯人か……、なんのためにやりやがった……?」

杏子「…………そういや、どうしてミューズは銀の手なんて持ってたんだ?」

ミューズ「え? それはですね。かつて銀の手はお父様の所有物だったからです」

ミューズ「ですが、お父様が亡くなった後、行方は分からなくなってしまいました……」

ミューズ「私の夢の中に銀の手があったのは、本物を見たことがあったからなのでしょう」

ミューズ「夢の産物ではなく、本物があれば良かったのですが……」


杏子「ん?」
まどか「え?」
サラ「あれ?」
シャール「……あの、ミューズ様」


ミューズ「はい? どうかしましたか?」


シャール「この銀の手……。ミューズ様は夢の産物だと?」(E.銀の手)

ミューズ「はい。現に夢から覚めたら消えて……」

ミューズ「あ、あら? 消えてない? 変ね……」


杏子「…………。あー、ミューズ。つまり、この銀の手って夢の中で手に入れたのか?」

ミューズ「はい」

杏子「…………それだ」

まどか・サラ・ミューズ・シャール「?」

杏子「その銀の手。よくわかんないけど、ミューズの親父さんが持ってた本物の銀の手なんじゃねーか?」

杏子「どうやったかは分かんないけど、親父さんは娘の夢の中に聖王遺物を隠した」

杏子「で、それを知ったマクシムスが聖王遺物を手に入れるために、夢魔の秘薬をミューズに飲ませた」

シャール「……それは、話が飛躍しすぎじゃないか? ミューズ様の命を狙ったのかもしれないじゃないか」

杏子「それなら、わざわざ夢魔の秘薬なんて物を使うのは回りくどすぎんだろ」

シャール「む、確かに……」


シャール「だが、銀の手の隠し場所など分かるものなのか?」

杏子「そこは、ルードヴィッヒから訊いたとかじゃねーの?」

杏子「ルードヴィッヒと神王教団って友好関係なんだろ?」

シャール「む」

シャール「クレメンス様が亡くなった後、クラウディウス家はルードヴィッヒに私財を没収された……」

シャール「没収した私財の中に銀の手が無ければ、誰かが隠し持っている可能性が高い……」

シャール「この場合、最も疑われるのはミューズ様か……」

杏子「そ。で、当然、親父さん亡き後、セコい連中が銀の手の隠し場所をとにかく探すだろうな」

シャール「しかし、肝心のミューズ様は銀の手を所持している様子をみせない……」


シャール「……。クレメンス様が誰にも見つからないように銀の手をミューズ様に託すとしたら……」

シャール「確かに、ミューズ様の夢の中というのは絶好の場所か」

杏子「もしかしたら、ほとぼりが冷めたころにミューズの手に渡るようになってたんじゃないか?」

シャール「あるいは、今回のようにミューズ様の危機に手に入るようになっていた……か?」

ミューズ「そういえば、銀の手はオトマンが命を落とした後もなお動き続け、聖王様の背後を守ったという伝承があります」

ミューズ「自動で動く腕……。お父様は私の安全に保険をかけていたということですか」

シャール「クレメンス様……」

杏子「……。マクシムスは、ルードヴィッヒから事情を訊いてミューズが何らかの方法で隠し持っていると推測した」

杏子「そして、とにかく調べて、ミューズの夢という隠し場所を突き止めた」

杏子「あるいは、最初からルードヴィッヒも知っていたけど、場所が場所だから手を出せなかったか、だな」

シャール「なるほど……」


サラ「杏子……、どうしたの? 何だか今日の杏子、別人みたいに頭が冴えてない?」

杏子「そりゃどういう意味だ、サラ。……ったく、失礼な奴だな。オイ」

まどか「ま、まあまあ、杏子ちゃん」

ミューズ「ふふっ。杏子は面倒くさがり屋で、まわりくどいことを嫌いますけど、本当は賢い子ですものね」

杏子「……………………、ああ」プイッ

まどか(あ、照れた。……杏子ちゃんかわいい)

ミューズ(かわいい)

シャール「杏子の推測が真実だとしたら、この銀の手は隠した方がいいだろうな」

まどか「…………そういえば」

サラ「どうしたの、まどか?」

まどか「えっと、そのマクシムスって人は赤いピアスをつけてるんですよね」

杏子「ん? そういや、そうだっけか?」

まどか「ゴン君から聞いたときは、気に留めなかったんだけど……」

まどか「それって、赤サンゴのピアスと関係あるのかな……?」

ミューズ・シャール「?」
杏子・サラ「!!」


杏子「ノーラの親父さんの仇……マクシムスが……」

サラ「聖王の槍も聖王遺物……。ピドナにいるらしい犯人……。偶然にしては出来すぎだよね」

シャール「何の話だ?」

まどか「えっと……」

***

シャール「鍛冶工房の聖王遺物を盗んだ犯人が、この町に……?」

ミューズ「手がかりが、赤サンゴのピアス……?」

杏子「ああ、今までの情報から考えれば、疑うにゃ充分だ」

シャール「…………ならば、我々はこの先どう動くべきか」

まどか「これまでの推測。証拠はないんですよね……」

杏子「…………証拠が無いなら、見つけるしかねーな」

ミューズ「杏子?」

杏子「私が教団に潜入して、マクシムスが犯人って証拠を掴んでやるよ」

杏子「シャールは今まで通り、ミューズを守っててくれ」

ミューズ「そんな! 危険すぎるわ!」

シャール「私もミューズ様と同意見だ。相手は権力者。モンスターを相手にするのとはまるで違う」

杏子「けど、じっとしてたらその権力で銀の手を奪われるんじゃねーのか」

シャール「……クラウディウス家には未だ支持者が存在する。また、ミューズ様自身も慕われている」

シャール「ゆえに、銀の手を狙おうにも、そう簡単には手出しできないはずだ」

杏子「表立って手出ししなくとも、今回みたいに裏から手を回してくることもあるんじゃないか?」

杏子「だったら、こちらから攻めた方がいいと私は思うよ」


サラ「う、うーん。まどか……どうすべきなのかな……」

まどか(杏子ちゃん…………)
 悪い人は懲らしめるべき!
>危険すぎる、却下

まどか「待って、杏子ちゃん。相手もきっとこっちがそう行動すること読んでるよ」

まどか「よした方がいいよ、潜入なんて。危険すぎるよ……」

杏子「確かに向こうも予測済みだろうな。けど、虎穴に入らずんば虎児を得ずだ。やらなきゃ何も変わんねーだろ」

まどか「えっと……。手がかりはもうひとつあったはずじゃないかな?」

杏子「ん……?」


サラ「えっと、聖王の槍を盗んだ犯人の手がかりは、一つは赤サンゴのピアス」

サラ「もう一つは、ジャッカルという言葉……だね」

杏子「ジャッカルか……。シャール分かるか?」

シャール「いや、悪いが思い当たらない」

シャール「ただ、赤サンゴは温海の特産品だ」

まどか(温海っていうと南の海……、グレートアーチやアケの辺りだね)

まどか(…………)


まどか「あ」

杏子「何かわかったのか!?」


まどか「え? あ。え、えっと……。ここまでの話には関係ないんだけど、すっかり忘れてたことがあって……」

杏子「あん? 関係ないなら後回しにしろよ」

まどか「ううん、えっとね。関係ないけど、重要なことなの」

杏子「なんだよ。重要な事って」



まどか「さやかちゃんに会ったよ」

杏子「へ?」

サラ(あ、そういえば、それを伝える目的でピドナに来たんだっけ)

***

杏子「そっか。さやかは元気にやってんのか。で、さやかはほむらに会ってんのか」

杏子「……となると、あとはマミだけか」

まどか「でも、マミさんなら一人でも安心だね!」

杏子「マミが……一人……」

杏子「(ボソッ)絶対テンパってるだろうな……」

まどか「?」


杏子「ま、さやかでも無事だったんだ。マミだって何とかなってんだろ」

まどか「うん!」

まどか「あ、それでね。赤サンゴやジャッカルについて調べるなら、知ってそうな人に聞けばいいんじゃないかな」

まどか「ほむらちゃんか、あるいは、さやかちゃんの仲間のハーマンさんなら、グレートアーチやアケで活動していたはずだよ」

ミューズ「私はまどかの意見に賛成です。虎穴に入らずとも成果が出るのなら、その方がいいと思います」

杏子「……ま、確かにそうだな」

杏子(さやかにほむらに、マミか……)

杏子(そろそろあいつらとも合流したいもんだな)

杏子(あいつらは、今頃は何してんのかねぇ?)

-その頃 ムング族の村-


「フフフッ ついに私の時代が来るわ!」

マミ「サンシャイン! ヒートウェイブ!」

カアアアアッ ゴアアアアアアッ

ギャアアアアッ ボシュウウウ

マミ「うふふっ! さすが老師! とってもいい考えね!」

マミ「今までの魔法が使えないなら、術で代用すればいい。まさにその通りだわ!」マミーン

マミ「ふふっ。今日から私は、日輪の射手、巴マミよっ!」

マミ(……うーん、月術で暗銀の魔砲使い、巴マミと名乗るのも悪くなかったかしら……)

マミ(黄金の太陽と白銀の月は相容れない宿命……! どちらか片方しか選べない……それが人の業(カルマ))

マミ「(ボソッ)満月の夜にまた会いましょう……。うん、これもなかなかいいわね……」

マミ「いえっ! 私のイメージカラーは太陽の黄金! サンライトイエローよ! このままいくわっ!」マミミーン


ツィー リン「あら? マミ。太陽術を覚えたの?」

マミ「! ツィーリンさん!」

マミ「はい! これからの私は太陽の射手、巴マミです!」

マミ「老師から助言をもらったんです。術をそれまでの魔法の代わりにしたらどうか、と!」

マミ「月術も捨てがたかったんですけど、太陽の方が私のイメージに合うかなって思って修得しました!」

ツィー リン「太陽術……」

マミ「あ、いけない。技名も決めなきゃダメね」

マミ「うふふ! 太陽のティロ・フィナーレ……。なんだか素敵な響き……!」

マミ「ティロ・フィナーレ・ソラーレ……。これはないわね」

マミ「ティロ・ソラーレ……。これね!」

マミ「……。太陽の光弾? 太陽の光波? 閃光の魔弾?」ブツブツ

ツィー リン「…………」


ツィー リン「ねぇ、マミ。あなた、陰陽思想って知ってる?」

マミ「破邪の金弾……。え? 陰陽?」

[リンリン先生の雑学講座]

ツィー リン「陰陽思想について語ると長くなるから簡潔に要点を話すけど、

       森羅万象は陽と陰に分けられる。光と闇、熱と冷気、太陽と月、……そして、男と女。
       男は陽気、女は陰気を司る存在なの。
       つまり、何が言いたいかと言うと、太陽は陽気、月は陰気を司る存在だから……」


ツィー リン「ほとんどの場合、女性は、太陽術より月術に適性があるわ」

※ロマサガ3の天術成長補正は基本的に、男性が太陽≧月、女性が太陽≦月となっているようです(一部例外あり)

マミ「……………………」

ツィー リン「適性があれば、レベルの上昇が早くなるの」

ツィー リン「まあ、マミが太陽術にしたいっていうのなら、そのまま太陽術を修めればいいと思うけれど……」



マミ「いいですよ、もう……」ショボーン

ツィー リン(あ、やっぱりへこんじゃった……)

ツィー リン(マミのために黙っていたかったけど、どうせ老師が指摘するでしょうし……)

マミ「私は魔法少女、巴マミです! みんなを照らす明るい陽光が似合ってるんです!」

ツィー リン「え、ええ。マミがそう言うなら特に問題ないと思うわ」

ツィー リン(マミってよくおかしなことを言うけれど、いい子ではあるわよね)

ツィー リン(変にはしゃいだりおかしなことを言うのは、きっと不安の裏返し)

ツィー リン(そうして自分を鼓舞しないと不安なのね……)

ツィー リン(……なるべく、マミのそばにいてあげましょう)


マミ(魔なる者よ! この巴マミの浄罪の砲光に焼かれなさいっ!)

マミ(ティロ・フィナーレッ!!)

マミ(…………イケるわっ! いい術が無いか老師に訊いてみましょう!)

マミ(大砲からレーザーを出すのにちょうど良い術とかないかしら……)

-ムング族の村 テントの中-

バイメイニャン「ファンファン。今日は何の用だい?」

ヤン ファン「老師! もう子供ではないのですから、ファンファンはやめてください!」

バイメイニャン「わかったわかった、ヤンファン将軍殿。で、何の用じゃ?」

ヤン ファン「はい。ゼルナム族の件です」

バイメイニャン「ふん、アビスの連中か。奴らの巣でも判明したのかい?」

ヤン ファン「いえ、奴らの根城についてはまだ……」

ヤン ファン「今は、奴らに対する対応について指示を仰ぐため黄京へ使いを送り、つい先程返事が帰ってきたところです」

ヤン ファン「ミカドからの指示は、防備の強化。……ほぼ現状維持です」

バイメイニャン「どうせ、それも側近のツァオガオが勝手に決めたことじゃろう。
        まったく、アビスの力が間近に迫っているというのに、黄京の連中は!」

ヤン ファン「……老師はどうなさるおつもりですか?」

バイメイニャン「そうじゃの……」

バイメイニャン「…………ふむ。リンリンとマミに、使いでも頼むか。ネフト族のところに二人を遣る」

ヤン ファン「ネフト族に……!? それに、ツィーリンだけでなく、あの娘も!?」

バイメイニャン「不服かい?」

ヤン ファン「ツィーリンは分かります。ですが、あの異世界から来たという娘を信用していいものか……」

ヤン ファン「あの娘がアビスの者でないことは分かります。ですが、信用するかどうかは別でしょう」

バイメイニャン「ああ、マミのことは別にそこまで重要じゃないね」

バイメイニャン「しょーもないことを口から垂れ流すバカだけど、ありゃ悪い娘じゃない」

バイメイニャン「リンリンがついていれば、そう悪いことにはならん」

ヤン ファン「……老師がそう言うのでしたら、私も信じましょう。ですが問題は他にもあります」

ヤン ファン「彼らネフト族とは、確かにこれまで争いも起こさず友好的な関係を築いてきました」

ヤン ファン「また、彼らもゼルナム族の被害を受けていると聞きます。協力を仰ぐにはこれ以上ない相手でしょう」

ヤン ファン「しかし、彼らは異形の存在! 彼らの言葉は我々には聞き取れず、会話は成り立たないはずです!」

ヤン ファン「互いの意思を伝えるのにどれだけの時間がかかるか……」


バイメイニャン「おまえはバカだね、ファンファン。そんな問題とっくに対処済みに決まってるじゃないか」

ヤン ファン「な! こんな短時間で……!?」

バイメイニャン「ネフト族が思念通話によって意思伝達していることは分かっていた」

バイメイニャン「その思念を術によって受信する道具を作れば会話は簡単さ」

ヤン ファン「なんと……! そのような道具を短時間で作るとは……!」


バイメイニャン「まあ、この件ではマミが存外役に立ったんだがね」

ヤン ファン「あの娘が……?」

ツィー リン「老師。ただいま戻りました」

マミ「老師、太陽術についてお訊きしてもよろしいですか?」


ヤン ファン「むっ?」

マミ「きゃっ!? 私を牢屋に入れた人!?」


ツィー リン「ヤン将軍。老師にご用事ですか?」

ヤン ファン「ああ。ゼルナム族への対処について老師に相談に来たのだ」

マミ「え、ええっと……?」

バイメイニャン「ファンファンは私の弟子だよ。マミ」

ヤン ファン「ファンファンはやめてください!」


バイメイニャン「リンリン、マミ」

マミ(リンリンって可愛いアダ名よね)

マミ(老師、私にも何か可愛いアダ名つけてくれないかしら……?)

ツィー リン「もう子供じゃないのに、リンリンはやめてください!」

バイメイニャン「おまえたち、お使いだよ。ネフト族の巣へ行き、彼らの協力をとりつけてきな」

ツィー リン「! ということは老師、サイコメットは完成したのですか!?」

バイメイニャン「ああ」

マミ(私のテレパシーの魔法から生まれたマジックアイテムね!)

マミ(……ちょっと照れちゃうわ)

バイメイニャン「なに、ニマニマ気持ち悪い顔してんだい。小娘」

マミ「あっ、ところで、老師! 太陽術で強力な光線を放つ術はないでしょうか!?」

バイメイニャン「あん? 太陽風なんかいいんじゃないかい?」

マミ「太陽風……」

バイメイニャン「小さな太陽を呼び寄せ、熱・冷気・雷の三要素を含む強力な光線で大量の敵を攻撃する術だよ。
        あんたそういう派手なの好きだろう?」

マミ「さすが老師! 話が分かるわっ!」

バイメイニャン「ちっとも嬉しくない尊敬のされ方だね」


ヤン ファン「…………本当にこの子供を行かせるのですか?」

バイメイニャン「何言ってるんだい。あんたも一緒に行くんだよ。ファンファン」


ヤン ファン「はい?」
マミ「えええっ!?」

ヤン ファン「老師! 私には仕事があるのです! あまり、玄城から長く離れるわけには……!」

バイメイニャン「その仕事も、ゼルナム族に関する仕事じゃろう! ならば、ここで連中を叩くことこそが誰にとっても最良なのじゃ!」

ヤン ファン「むぅ……」


マミ「ファンファンさんも一緒に来るんですか……」

ヤン ファン「ファンファンと呼ぶな! ヤンファンだ!」

バイメイニャン「ファンファン。あんたももう部下を持つ身分なんだから、上手く一行をまとめな」

ヤン ファン「は、はあ。しかし……」

バイメイニャン「ほらっ、これがサイコメットだよ」ポーイ

ツィー リン「わっ! 老師、投げないでください!」パシッ

バイメイニャン「ネフト族の巣は大草原の南じゃ。準備ができ次第向かってもらうよ」


「……………………」


バイメイニャン「なんじゃ? 文句あるのかい?」

ヤン ファン「いえ……わかりました」

マミ(流石は老師……。ものすごく強引に、3人で行く流れにしたわ)

-玄城 城下町-

ヤン ファン「ネフト族の巣には、既にゼルナム族が侵入していると聞く。当然戦闘が予想される」

ヤン ファン「よって、まずは玄城にて武器や術の買い付け、それに道具の補給を行う」


ヤン ファン「それと、一応自己紹介しておこう。私はヤン・ファン。この玄城の守りを任された、衛将軍だ」

ヤン ファン「技能は月術を修め、一応他にもひと通りの武技を修得している」

ツィー リン「私の紹介は別にいいわよね」

マミ(ツィーリンさんはムング族の族長さんの娘で、部族で一番の弓の使い手ね)


マミ「私は巴マミです。魔法少女なんですけど、現在魔法は封印中です。武器は……小剣で、術は太陽術です」

ヤン ファン「ふむ、魔法少女については老師からある程度聞いている。魔法は使わないようにしてくれ」

ヤン ファン「ただ、魔法無しでどの程度戦えるのかが分からないな。ツィーリン、巴マミの実力はどの程度なのだ?」

ツィー リン「もともと戦闘慣れしていたし、魔法無しでもゼルナム族を倒せる実力はあったわ」

ツィー リン「それに、既にゼルナム族をかなりの数倒しているから、小剣レベルもなかなか高いわね」

ヤン ファン「ほう……」


マミ「あ、あの……」

ヤン ファン「む?」

マミ「私の武器……。もっと良いものに買い換えられませんか?」(E.フルーレ)

ヤン ファン「……………………」
ツィーリン「……………………」

ヤン ファン「無理だ。この地方で小剣はあまり使われない。それで我慢するしかないだろう」

マミ「そんなあ……」

術士の爺さん「太陽風は2800オーラムじゃよ」

マミ(うっ、高いわ!)

ヤン ファン「…………私の財布から出そう」

マミ「いいんですか!?」


ヤン ファン「準備は大切だ」[ささやかなプレゼント]

マミ(この人いい人なのかもしれないわ)[マミはヤンファンの心づかいに感じ入っているようだ]

ヤン ファン「翁。私にはソウルフリーズの術を頼む」

術士の爺さん「あいよ」

***

ツィー リン「終わった?」

マミ「あ、はい。ツィーリンさんは術を覚えたりしないんですか?」

ツィーリン「私は、老師から才能皆無というお墨付きをもらったわ」

ツィーリン「魔力、たったの10だもの……。マミの半分だもの……」グスン

マミ(訊いちゃ悪かったかしら……)

ヤン ファン(巴マミは魔力20なのか)

ヤン ファン(私の方が高いな。フフフ)←魔力23

マミ「ヤン将軍、お金出して頂きありがとうございました」ペコリ

ヤン ファン「気にするな。子供に金を出させるつもりはない」

ヤン ファン「君を牢屋に入れたことに対するお詫びだとでも思ってくれ」


ヤン ファン(それに、巴マミは私に不信感を持っていた)

ヤン ファン(故にそれを拭うためのかけひきでもあった)

マミ(ヤン将軍って思ったよりも律儀な人なのね)

ツィー リン(マミが将軍に買収されたわ)


ヤン ファン「では、ネフト族の巣へと向かうぞ」

マミ「そういえばヤン将軍、陣形はどうするんですか?」


ヤン ファン「…………」(術士)
ツィー リン「…………」(弓使い)
マミ「…………」(本来は銃使い)


ヤン ファン「…………フリーファイトで行こう」

-ネフト族の巣-

ゼルナム族A「ギギギッ! ホロビロ、ムシケラドモガッ!」[電撃]

バチバチバチッ

ネフト族(……………………アビスの魔物よ。調子に乗ってくれるな……………………)[防御]


ゼルナム族B「シネッ!」[ダブルアタック]
ゼルナム族C「ヒャハハハハッ」[サンダーボール]

ネフト族(……………………おのれ……………………)



ツィー リン「大変! ネフト族がゼルナム族に囲まれてるわ!」

マミ「え!? アレがネフト族なんですか!? 虫型モンスターじゃなくて!?」


ネフト族「……………………」(黙々と防御中)


ヤン ファン「彼らは争いを好まない友好的な種族なのだ。今まで会話こそできなかったが、高い知能を持っていることは分かっている」

マミ(これ、知らなかったら、ゼルナム族を味方しそうよね……。ゼルナム族は人型だし……)

ゼルナム族A「ヒャハハッ、トドメダッ!」

「そこまでよ!」

ゼルナム族x3「!?」
ネフト族(……………………!)


マミ「罪の無い生き物をいたずらに苦しめるなんて、許すわけにいかないわね。ここからは私が相手になるわ!」

ゼルナム族A「ナンダ キサマ」

マミ「私はあなたたちの敵。そう、魔法少女、巴マミよっ!」ビシィッ



ツィー リン「今のうちに、ネフト族を助けましょう。はい、傷薬よ」

ネフト族(…………あなたはムング族ですね。感謝します…………)

ツィー リン「ええ。これからあなたたちの住処を荒らすゼルナム族を退治します」(E.サイコメット)


マミ「一気に決めるわっ! 太陽風!」

ヤン ファン「ソウルフリーズッ!」

ゼルナム族x3「ギャアアアッ」ボシュウウウ

ネフト族(…………助かりました。もしよろしければ私の仲間も助けて下さい…………)

ツィー リン「ええ。そのつもりです」

ネフト族(…………奴らは数が多いのですが、リーダー格は2体だけです。その2体を倒せば奴らも撤退するはずです…………)


マミ(うぅ……。虫の姿だから何を考えているか分からないわ。本当に友好的なのかしら?)

マミ「ツィーリンさん。その。ネフト族の方はなんて言ってるんですか?」

ツィー リン「感謝の言葉を告げているわ。マミもサイコメットかぶってみる?」スッ

マミ「いいんですか? それじゃあ、ちょっとだけ……」



ネフト族(…………ニク…………)

マミ「ひっ!?」ズザッ

ツルッ ズシーンッ ベキッ


ツィー リン「どうしたの!?」

ヤン ファン「いきなりこけたな。どうした、巴マミ」

マミ「このヒト。私のこと、肉って!
   いやああああああ! もう食べられるのはイヤよっ! 私はおいしくないわよおっ!!」

ツィー リン「もう、って何!? 食べられたことあるの!?」


ネフト族(…………ニクというのは我々の言葉で、歓迎を意味…ていた…ですが…………)

マミ「え?」


ツィー リン「……よく分からないけど、マミの誤解みたいね」

マミ「す、すいません」

ネフト族(…………我々は、ゼ……ム…に追…立て…れて、…窟の南…隠れ……ま……………)

マミ「あ、あら? サイコメットの調子が……?」

ツィー リン「え!? マミ、貸して!」

ネフト族(…………ど……し…………?…………)

ネフト族(…………ど…………………………………衝…………………………………………………)

ネフト族(…………)


ツィー リン「受信出来なくなった……」

ヤン ファン「何だと!?」

ツィー リン「さ、サイコメットが壊れた……。もらったばかりなのに……」


マミ「わ、私のせいですよね……。すみません……」ショボーン

ヤン ファン「ぬぅ……。これからどうする?」

ツィー リン「…………。ゼルナム族を早めにネフト族の巣から追い出したいのだけど……」

ヤン ファン「老師に報告すべきか……?」


マミ「報告……。あの老師に……」

ツィー リン「う……。ものすごく気が進まないわね……」

ヤン ファン「間違いなく、罵倒されるな……。おそらく3人全員がな……」

「……………………」

ヤン ファン「…………まずはゼルナム族を退治しよう」

ツィー リン「そ、そうね。報告はその後でいいわね」

マミ「え、ええ。ゼルナム族もこの3人ならさほど苦戦しないで倒せるでしょうし」

***

ゼルナム族「ギャハハハハッ」

ヤン ファン「いたな。アレがリーダー格だ」

マミ「悪いけど。一気に決めさせてもらうわよっ!」


ゼルナム族「ハンッ」[ライトボール]

ヒュンヒュンヒュンッ

マミ「きゃっ!」
ツィー リン「くっ!」
ヤン ファン「むっ」


マミ「め、目が……目がぁ……(ダーク)」

ツィー リン「目をくらまされた……!(ダーク)」

ヤン ファン「…………(ダーク)」

ゼルナム族「ヒャハハハッ、マヌケ! ジワジワ ナブリゴロシ ニ シテヤル」


ヤン ファン「ふん。間抜けは貴様だ。ソウルフリーズ」

ヒュオオオオオオオオ

ゼルナム族「ギャッ!?(マヒ)」

ヤン ファン「術を避けることは困難を極める。およその位置が分かれば問題ない」


ツィー リン「私の弓もまた同じ。熟練の弓使いは心眼で的を射抜く」

ツィー リン「我が矢、避けること能わず! 心眼でたらめ矢ッ!」ヒュヒュヒュンッ

ゼルナム族「ギィ!?」ドスッドスッドスッ


マミ「ちょっと予定が狂っちゃったけど、宣言通り一気に決めるわっ!」

マミ「はああああっ、太陽風ッ!!」

ゼルナム族「ギャアアアア」ボシュウウウ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

ツィー リン「あと、もう一体を倒せばゼルナム族も撤退するはずね」

ヤン ファン「ああ。この分なら特に問題なく倒せるだろう」

マミ「そうですね!」


ヤン ファン(老師からこの少女をここに向かわせると聞いた時はどうなるかと思ったが)

ヤン ファン(これなら何事も無く終わりそうだな……やれやれ)

***

マミ「…………。こっちですね」

ヤン ファン「その、そうるじぇむで、アビスの妖気を感じ取れるのか……。なるほど、老師が推薦するわけだ」

ツィー リン「距離が近くないと分からないけれど、近ければ非常に正確みたいよ」

ヤン ファン「ほう……たいしたものだ」

マミ「ふふっ。そんなことないですよ」


マミ(…………けど、変ね)

マミ(ゼルナム族の魔力の数がさっきより減ってるような……)

マミ(もう撤退を始めてるのかしらね?)

マミ「この空間の奥ですね」

ヤン ファン「ふむ。では殲滅を始めるとするか……」

ツィー リン「!? アレを見てっ!」

ヤン ファン「む!?」

マミ「え!?」



ゼルナム族の死体「」


ツィー リン「これは……! ゼルナム族のリーダー格の個体!」

マミ「え!? アレって死んでますよね!?」

ヤン ファン「……! 付近を警戒しろっ!」


マミ「け、警戒ってどういうことですか!? ゼルナム族を倒した人がいるのなら、私たちの味方なんじゃ?」

ヤン ファン「…………そうとも限らん」

マミ「ど、どういうことですか!?」

ヤン ファン「…………あのゼルナム族は一撃で仕留められていた。それも全く抵抗した様子なく……だ」

ヤン ファン「そんなことができる武人など、私は知らない。黄京の大将軍殿ですら不可能だろう……」


マミ「……つまり、やったのは人間ではなく、もっと強大なナニカ……?」

ヤン ファン「…………」コクリ

ツィー リン「…………。周囲には何もいないわ…………。気配の察知には自信があるけど、全く感じない」

ヤン ファン「本当か?」

ツィー リン「え、ええ」

ヤン ファン「…………ここは行き止まり。ここに来るまで何者ともすれ違わなかった」

ヤン ファン「それなのに、周囲に気配はないのか?」

ツィー リン「…………」コクリ

「……………………」

マミ「あ、あの。一旦老師に報告に行きませんか?」

ヤン ファン「そうしたいのはやまやまなんだが……、ネフト族の巣に得体のしれない存在がいるのだ」

ヤン ファン「それを突き止める必要がある……」





「…………………………………………」

ヤン ファン「…………私はこれから死体を検分する。ツィーリンは周囲の警戒を頼む」

ツィー リン「わかったわ。ヤン将軍」


ヤン ファン「…………爪か、あるいは武器か。鋭利なもので一突きだな」

ヤン ファン「突属性の攻撃。やはり、人ではない、か? この地方の人間が使うのは刀、斧、弓のはず」

ヤン ファン「凶悪な爪や牙を持つモンスターが襲ったとみるべきか……獣系モンスターだろうか」

マミ「獣系モンスター……。そういえば、このネフト族の巣にもいたわね……」

ヤン ファン「ああ、確かに。だが、せいぜいがショック程度の雑魚だ。イノシシ風情にこんなことはできん」

マミ(い、一体どんな怪物が潜んでるの……?)

マミ(何だか恐くなってきたわ……)


コツンッ


マミ(きゃっ!? 頭に小石が!?)

マミ(上の方から落ちてきたわね……)グッ





ようせい「あ、見つかっちゃった」

マミ「!!!!??????」

投下終了です。
ネフト族の強さが分からなかったのでマンティスゴッドを参考にしようとしたのですが、調べたところネフト族はバガーに似た弱い種族なんですね。
危うく烈風剣でゼルナム族を屠る昆虫さんが登場するところでした。

サガフロ2のアルティマニアの小説ページを眺めつつ、キュゥべえをサガフロ2の世界に放り込む妄想をする今日このごろ。
ゼルナム族編の後編投下します。

ようせい「むー! 後ろから脅かしたかったのにー!」パタパタパタ

マミ(よ、妖精!? 妖精さんが頭上を飛んでいたの!?)

ようせい「ねーねー。人間ではないもっと強大なナニカ、って私のこと?」クスクス

マミ「え、え?」


ヤン ファン「下がれ! 巴マミ!」

マミ「や、ヤン将軍?」

ヤン ファン「ゼルナム族を一撃で仕留めたのは間違いなくコイツだ! 油断するな!」

マミ「は、はい!?」

ツィー リン(頭上という死角に潜んでいたとはいえ、この距離で気づけないなんて……!)

マミ(え、え? 怪物ってこの子のこと? こんな見るからにひ弱な子がそんなわけ……)


ようせい「確かに倒したのは私だねっ! でも、どうしてそこまで警戒するかなー」フヨフヨ

ようせい「私はまだ、あなたたちに何もしてないのにね」

ようせい(実は、イタズラしようとしてたんだけど)


ヤン ファン「物の怪め……。一体、何が目的だ……?」

ようせい「んー。強いて言うなら……」

ようせい「あなたたちでちょっと遊びたいかな?」ニコッ

ヤン ファン「っ!」

ようせい(イタズラ的な意味でだけどねっ! でも、ちょっと黙っとこうかな)

ヤン ファン「先手必勝だ! ソウルフ……」バッ
ようせい「じゃー、こっちも先手必勝ー! 足払いッ!」シュパーンッ


ヤン ファン「のわっ!(スタン)」ドサッ
ツィー リン「ひゃあっ!(スタン)」クルンッ
マミ「きゃあっ!(スタン)」ズテーンッ

ようせい「もー、いきなり襲うなんて怖い人ね」(E.アーメントゥーム:槍:攻27)

ヤン ファン「速い……! 私より後から動き始めて、先に行動するだと……!?」

ツィー リン「ヤン将軍の素早さ21を遥かに上回る素早さ……!」

マミ(何でこの子と戦う流れになってるの……?)



ようせい「きゃははっ。……あっ! ねえねえ! あなたってもしかして魔法少女!?」

マミ「え、私のこと? どうして分かるのかしら?」

ようせい「んー。巴マミってあなたよね?」

マミ「え、ええ」


ようせい(旅の始めの頃にほむらから聞いた、ほむらの友人の話……)

ようせい(鹿目まどか、美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子)

ようせい(ほむらに会わせてあげれば、ほむら喜ぶかなあ?)

-回想 ロアーヌ-

ほむら(東に行くのはやめるとして……。後は何をすべきかしら?)

ほむら(装備を集めた。レベルも上げた。資金も潤沢。思い当たる戦力の補強はほとんど終えたと言っていい)

ほむら(残ったのは術の修得ぐらいだったのだけど……。それでも東に向かうのはリスクが高すぎるわね……)

ほむら(もうアウナスに挑むべきかしら……? それとも、マミや杏子を探す?)


ほむら(…………いや、いっそ私一人でねじれた森を強行突破して東に向かう?)

ほむら(ねじれた森は強力なアビスの瘴気が漂うため、普通の人間は瘴気の毒でやられてしまう)

ほむら(けれど魔法少女なら、アビスの力に耐性があるはず。私ならばねじれた森を通過できる)

ほむら(しかし、それも道に迷わず進める場合の話よね。やはり、リスクが高すぎるか……)


ようせい「……………………」


ようせい「ねーねー、ほむら。東に行きたいの?」

ほむら「いえ、さすがに戻ってこれる保証がないのに行くことはできないわ」

ようせい「んー。私ひとりなら普通に行き来できるけどね」


ほむら「…………え?」


ようせい「だって私、飛べるもの。乾いた大河の方なら行き来できるよ」

ようせい「流砂も崖も、空を通ればへっちゃらだもの!」

-現在 ネフト族の巣-

ヤン ファン「空気投げっ!」ブンッ

ようせい「私、体重軽いからあまりダメージないわよ」タンッ

ヤン ファン「ぬぅ……」


ツィー リン「ショットウェイブッ!」シャッ

ようせい「ワンダーバングルで防御!」カーン

ツィー リン「浮遊タイプ特効の攻撃を防いだ……!」

ようせい「自分の弱点ぐらい対策してるわ」

ようせい(浮遊に強い攻撃の多い射属性の攻撃は、このガーダーで全て防げる)

ようせい(ほむらと一緒にリリスを狩っていたらこのガーダーをドロップしたわ)


マミ(私も戦わなきゃいけないのかしら……?)

ヤン ファン「巴マミ! 何をしている!」

マミ「え、はあ……。それじゃあ……」


マミ「はぁっ! フェイント!」ヒュッ

ヤン ファン「それは攻撃じゃないだろう!」

ようせい「しかも私はスタン耐性持ちだから、まるで意味がないわね」

ヤン ファン「くっ、素早い身のこなしに、小柄な体躯で槍を軽々操る腕力と技量……」

ツィー リン「接近戦に関して、この場の誰よりも強い……!」

ようせい「きゃははっ。接近戦だけじゃなくて、弓も得意なんだけどねっ」

ツィー リン「なんてこと……。私のお株が……!」





ようせい(…………はっ! 殺気!)ビクッ





エレン「ようせいっ!! あんたは何やってんのよおおおっ!!」[ハイパーハンマー]

ドゴオオオッ

ようせい「ぎゃんっ!?」ヒューンッ ズタアンッ


マミ(あ、ありのまま今起こったことを解説するわ! 怪物が妖精さんでヤン将軍たちと戦いになったと思ったら妖精さんが見知らぬ女性に殴り飛ばされた)

マミ(わけがわからないわ)

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

エレン「うちのイタズラ娘がご迷惑おかけしました」

ようせい「もうちょっと遊びたかったのに……。エレンはあの村で待ってるんじゃなかったの?」

エレン「あんたを一人にしたらトラブル起こすってわかりきってるからね」


ヤン ファン「……おまえたち二人は何者なのだ? この地を守る者として、怪しい奴には相応の対処をせねばならん」


エレン「私たちは、ついさっき西から来たのよ」

ようせい「目的はえっとね。ほむ……」

エレン「あんたは黙ってなさい。話をややこしくしそうだから発言禁止」

ようせい「むー!」


ヤン ファン「西から来ただと? にわかには信じられんな……」

ヤン ファン「だが、確かにその奇天烈な装い……、この地では見られぬものだ」

ツィー リン「マミの衣装に通ずるおかしさね」

マミ「だから、私からすれば、変わってるのはこの地の服装なんですって!」

ヤン ファン「西の者がこの地に来るには、見捨てられた地を越えねばならなかったはずだ」

ヤン ファン「それ故に、今まで生きた西の人間がこの地に辿り着くことはなかった」

エレン「私たちは乾いた大河を通ってここまで来たわね」


ヤン ファン「……確かにおまえたちの実力ならば、生きたまま大河を下ることは可能か」

ツィー リン「本当に、西から……」

マミ(でも、帰るときはどうするのかしら?)

マミ(後で訊いてみないと)

ヤン ファン「だが、何のために来た? 良からぬ目的ならこの地を守護するものとして……」


エレン「目的は、魔貴族を倒すための力を求めて、よ」

エレン「西では、天術の多くが失伝しているの」

エレン「私たちの仲間に一人月術使いがいて、東にあると思われる失伝術を会得するためにここまで来たわけ」


ツィー リン「その仲間というのはどちらに?」

エレン「バイメイニャンというおばあさんのところで東西の術に関して議論をかわしているわ」


3人「ああ……、なるほど……」

エレン「私たちのパーティーは4人で、術を使えるのは2人。私とようせいは術を使えないから村を散策していたんだけど……」

ようせい「飽きたからこっちに来たわ」

エレン「この子はイタズラ好きだから、放っとくと碌なことにならないの」

エレン「だから、私も監視のために追いかけて来たってわけ」

エレン(ほむらが来れば、ようせいの関心がほとんどあの子に向くから楽なんだけどね……)


エレン「まあ、こんな子だけど、害意はないの。さっきの戦闘もこの子にとってはイタズラだったのだと思うわ」

ヤン ファン「むぅ……」

ようせい「えへへ。ゴメンネ!」クルリ

マミ(キュン)

マミ(かわいい……)


エレン「改めて自己紹介するわ。私はエレン、そっちの子はそのまんま、ようせいね」

ようせい「ヨロシクねっ!」

マミ「はあ……。ようせいちゃん……欲しい……」

ようせい「!?」

マミ「あ、あら? 私なにを……」

ツィー リン「でも、3人相手に戦闘なんてイタズラにしては危険じゃないかしら?」

ようせい「実質2人だったじゃない。それに、不利なら逃げるわ」

エレン「けど、あのまま戦闘続けてたら、いずれようせい負けてたんじゃないかしら」

ようせい「まあねー。矢を防ぐため片手は使えないし、術で動けなくされたらどうしようもなくなるからねっ」


ヤン ファン「ふむ……、ならば、あの戦闘中断はそこの童女のためでもあったのか?」

エレン「まあ、一応ね」

ようせい「あと私、女じゃないわよ。性別不明」


3人「え」

***

エレン「ああ、そうそう。バイメイニャンさんからあなたたちに手紙をもらってきたわ」

ヤン ファン「手紙……? どれ……」

西から来た人間に術を教える代わりに、私に協力するよう取引した。

しばらく手が離せないから、私に頼らずあんたたちの判断で行動しな。

それと、そのようせいがゼルナム族の巣を突き止められるそうだから、西の人間と協力して叩きな。

バイ メイニャン


ヤン ファン「待て」

ようせい「なあにー?」

ヤン ファン「なぜおまえがゼルナム族の巣を突き止められるのだ」

ようせい「だって、草木や虫、鳥の声を聞けばすぐに分かるもの」

エレン「その子はあらゆる生物の言葉が分かるらしいのよ」

ようせい「うん。だから……」

***

ネフト族(…………ニク…………)

ようせい「ニクっ!」

ネフト族(…………ゼルナム族を退治してくれたのですね。感謝します…………)

ようせい「どういたしましてー!」

ネフト族(…………それにしても妖精族の方ですか。魔王による破壊以後に会うのは初めてです…………)

ようせい「私たちは基本、住処から出ないしねー」


マミ「本当に話せている……、ようせいちゃんすごいわ!」

ツィー リン「マミの様子がおかしい……」


ネフト族(…………ゼルナム族の巣は草原の北にあります。どうやらそこに奴らを呼び寄せる何かがあるようなのです…………)

ようせい「うん、わかった! みんなに伝えるねっ!」



ようせい「赤いチョウを追っていくと、アウナスの火術要塞に行けるわ!」

エレン「マジメに伝えなさい」

ようせい「はーい」

-大草原 北部-

サワサワサワ…… チュンチュンッ

ようせい「うんうん。ほーほー。なるほどー。…………わかったわ」

ようせい「こっちだって」


マミ(自然のなか、鳥と戯れるようせいちゃん……)

マミ(幼いころ憧れた理想郷(ユートピア)がここにある……)

ようせい(なんか、この人間とはあまり関わらない方がいい気がするわ)


エレン「イタズラさえしなければ、頼りになる存在なのよね。ようせいって」

ヤン ファン「確かに。戦闘のみならず、斥候としての能力も優れているな」

エレン「うちのリーダーはよく、ようせいに斥候や囮をやらせているわよ」

ツィー リン「あの子が素直の言うことを聞くの?」

エレン「ようせいはリーダーに懐いているから、大抵のことは素直に従うわね」

ヤン ファン「ほう。求心力に優れた指導者なのだな」

エレン「え? えっと……」

エレン(どちらかと言うと、単独先行するタイプよね……。場合によってはようせい以上に無鉄砲な感じだし……)

エレン「よ、ようせいに言わせれば放っとけないタイプらしいわ」

ヤン ファン「ほう……。あの奔放な子供からそこまでの言葉を引き出すとは……」


ようせい「着いたよー! この先がゼルナム族の巣だってー!」

-ゼルナム族の巣-

ギャア ギャア

ツィー リン「鳥のモンスターが飛び交っているわ」

マミ「でも、ゼルナム族はいませんね……」

ヤン ファン「……連中は奥か?」


ようせい「ねーねー。ゼルナム族をたくさんやっつければいいの?」

ヤン ファン「む? まあ、そうだな」

ツィー リン「何かいい手でもあるの?」

ようせい「ううん。そんなのないよ」

マミ「?」



ようせい「ただ、誰が一番多く倒すか、競争しようって思ったの」

エレン(あ、まずい。やらかす気ね)

エレン「ちょっと、ようせい。待ちなさ……」


ビュンッッッ

ようせい「きゃはははっ! エレーン、どっちが多く倒すか競争だよーー!」パタパタパタ

エレン「ちょっと、競争って! こんな崖ばっかの入り組んだ地形じゃ、あんたが有利すぎんでしょーーっ!!」


エレン「まったく、あの子ったら……!」

マミ「ああ……、ようせいちゃんがいなくなったわ……」

ツィー リン「マミ……」

エレン「ごめんなさい、3人共。私はあの子を追うわ」

エレン「あの子の実力は疑っていないけど、目を離すと面倒ごとを引き起こすのよ。だから、捕まえてくるわ」

ダッ…… タッタッタッタ……


ヤン ファン「に、西の連中というのは随分と……」

ツィー リン「いえ、あれはあのようせいが奔放すぎるだけじゃないかしら」

マミ「ああ……、ようせいちゃんが……」

ツィー リン「マミがおかしい……」

***

ツィー リン「ショットウェイブッ!」

マミ「これで最後っ! 太陽風!」

ワイバーン「ギャアアア」ボシュウウウ


ヤン ファン「浮遊に強い攻撃を持つ者が二人いると、心強いな」

ツィー リン「ええ、この辺りには浮遊している敵しかいないみたいね」


エアリアル「ウフフ……」


ツィー リン「ショットウェイブッ!」

マミ「消え去りなさいっ! 太陽風!」


エアリアル「ヌワー!」ボシュウウウ


マミ「ふぅ、おしまいっ。……二人は奥に行ったんでしょうか?」

ツィー リン「入り組んで迷路みたいよね。果たして二人に合流できるかどうか……」

ヤン ファン「西の連中のことなど気にしてもしょうがない。連中の実力ならばゼルナム族にやられることはないはずだ」

ヤン ファン「それに、我らはゼルナム族の精確な位置が分かるのだ。ならば、そこへ向かうべきだ」

-ゼルナム族の巣 奥-

マミ「……ゼルナム族の魔力が近いです」


ドビー「ギャッギャッ!」

ヤン ファン「この辺りは獣人系モンスターが多いな」


ツィー リン「瞬速の矢っ!」
ドビー「ギャギャギャッ!」[でたらめダート]
ヤン ファン「月読の鏡っ!」
マミ「ヒートウェイブッ!」

ボシュウウウ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー


マミ「……………………」

ツィー リン「マミ? どうしたの?」

マミ「ゼルナム族の魔力が、そこの横穴から感じられるんですけど……」

マミ「上手くは言えないけれど、それとは違う邪悪な魔力が感じられるんです」

ヤン ファン「邪悪な魔力? それがゼルナム族を呼び寄せる源か?」

マミ「おそらく、そうだと思います」

-ゼルナム族の巣 ???-

ズ…ズ…ズ…ズ…ズ……

ツィー リン「う、これは……、私たちにも分かるすごい邪気……!」

ヤン ファン「奥に何かがあるな……。しかし……!」


ゼルナム族A「ギギッ」
ゼルナム族B「ニンゲンガッ!」
ゼルナム族C「ヤツザキ ニ シテヤル!」


マミ「ゼルナム族が数えきれないほど集まっているわ……!」

ツィー リン「おそらく、この奥にある存在がアビスからゼルナム族を呼び寄せているのね」

ヤン ファン「奥にある存在を消さねば、ゼルナム族は湧き続けるだろうが……」

ツィー リン「ゼルナム族を倒さなければ、奥に進めない……!」


ヤン ファン「厄介極まりないが、行くしかないだろう」

ヤン ファン「まずは、私が行く! ソウルフリーズッ!」

ゼルナム族x3「ギィ!?」

ゼルナム族A「オノレッ クライナ!」[電撃]

ヤン ファン「ぐっ!?」

ツィー リン「ヤン将軍! でたらめ矢ッ!」ヒュヒュヒュヒュヒュヒュン

ゼルナム族x3「グワアアアッ」ボシュウウウ


ゼルナム族D「ケケケッ」[電撃]
ゼルナム族E「ヤッチマウゾオ」[電撃]

ツィー リン「くっ!」

***

-10分後-

ゼルナム族U「シヌガヨイッ!」[針]
ゼルナム族V「アキラメナッ!」[突進]


ツィー リン「もう、20体は倒したのに……!」

ヤン ファン「奥にある存在に辿り着けん! 今のままでは手が足りんぞっ!」

ツィー リン「くっ! 全体攻撃を繰り返しても、すぐに補充されるわ!」

ヤン ファン「一度退くべきか!?」

マミ(小規模な攻撃はダメ……)

マミ(必要なのは全体攻撃よりも、むしろ奥まで届く貫通力の高い攻撃。つまり……)


マミ「……………………」


マミ「ツィーリンさん、ヤン将軍。私に考えがあります」

ヤン ファン「何だ?」





マミ「私の本来の武器を使います」

ヤン ファン「……魔法の使用は許可できんぞ」

ヤン ファン「魂を削る邪法を子供に使わせるような腐った矜持、私は持ち合わせておらん」


マミ「ヤン将軍…………」

マミ「ふふっ。ヤン将軍は本当にいい人なんですね」

ヤン ファン「……フンッ」

マミ「けれど、大丈夫です。魔法は使いませんから」

ヤン ファン「なに……?」


ツィー リン「マミの武器というと……。あのマスケットジュウと……」

ツィー リン「巨大なタイホウ、ね」

ヤン ファン「タイホウ……?」

ツィー リン「一度だけ見たことがあるわ」

ツィー リン「彗星の矢が、数多のモンスターを薙ぎ払い、岩石を崩し、空へと駆ける様を」

ヤン ファン「何だと? それは一体……」

ヤン ファン「!?」

マミ(この世界にも、人々を苦しめる存在がいた)

マミ(アビスの魔物、ゼルナム族。多くのムング族の人たちが奴らによって傷つき、苦しめられていた)

マミ(だというのに、私は魔法を失い戦う力を奪われたわ)

マミ(守るための力を取り戻す必要があった……。けれど、それだけじゃない)


マミ(両親が死んでから、ずっと共にあった魔法……。使うことができなくなった時、胸がぽっかり空いたような虚無感に襲われた)

マミ(この世界にひとりぼっちで……。私は、本当は、魔法という拠り所を取り戻したかったんだわ)

マミ(老師に師事したことも、術を覚えたことも、それが本当の動機)

マミ(でも……)

マミ「ツィーリンさん、ヤン将軍……」

マミ(この世界でも、優しい人たちに巡り会えた……)

マミ(私はひとりじゃない……。もう、虚無感はない……!)

マミ(もう何も怖くない!)

ヤン ファン「あれは……! あのタイホウの中に術の力を……」

ヤン ファン「いや、小さな太陽を呼び寄せているのか!?」


マミ(老師は本当に流石よね……。私の希望以上の術を教えてくれたんだもの)

──小さな太陽を呼び寄せ、熱・冷気・雷の三要素を含む強力な光線で大量の敵を攻撃する術だよ。

マミ(小型太陽……、弾としてこれほど強力なものはないわ!)

マミ「魔なる者よ! この巴マミの浄罪の砲光に焼かれなさいっ!」





マミ「ティロッ・フィナーレッッッ!!!」

カッッッッッッッ!!!



ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォ………………ン

ズズズズ…ズ…ズ…ズ…………プス…プス…プス…………



ツィー リン「……………………すごい」

ヤン ファン「ゼルナム族も、邪気も、根こそぎ消し飛ばした…………」





マミ「……………………」


マミ「やった……」

マミ「上手くいったわ! 私の新しいティロ・フィナーレ!」

ワイバーン「ギャッギャッ」

ツィー リン「あら? 鳥型モンスターが来たわ」

ヤン ファン「むっ、巴マミの方に向かうな」



マミ(やっぱり、名前はティロ・フィナーレが一番しっくりくるわね!)マミーン

マミ(完全に新技として、ティロ・ソラーレと名づけてもいいけど、掛け声としては……)マミミーン


ワイバーン「(アーン)」


マミ(ティロ・フィナーレ。切り札としてこれ以上ふさわしい名前は……)マミミミーン


パクッ


ツィーリン・ヤンファン「マミイイイイイイぃぃぃぃッッッ!!!!」


プラーン……ジタバタジタバタッ

「トマホークッ!!」

ズシャアアアッ

ワイバーン「ギャッ!?」ポロッ


エレン「まったく……。鳥型モンスターに捕らわれた人を助けるのはこれで二度目ね」

ツィー リン「なっ! あなたは……!」


ヤン ファン「まずいっ! 巴マミが、落ちる! 地面に叩きつけられるぞ!」


「ハードファイアーッ!」

ボッ ヒュンッッッ


ガシィッ



「何でまたあなたは頭を丸呑みにされてるのよ……。マミ」



マミ「あ、あ、あ…………。暁美さん?」

ほむら「久しぶりね……マミ。会えて嬉しいわ」

マミ「あ、ああ……!」


マミ「あげみ、ざんっ!!」ボロボロ

ほむら「ま、マミッ!?」ビクッ


マミ「グスッ、わ、私、もう、みんなに、会えないかもってっ……!」

マミ「知らない場所でっ、みんなが無事なのか心配でっ……、でも、それ以上に自分が寂しくてっ……!」

マミ「色々な手を使ってっ……、みんなに連絡をとろうとしたけどっ…………、でも上手くいかなくてっ…………!」

マミ「諦めちゃダメって思ってもっ……、やっぱり不安でっ…………!」

ほむら「マミ……」


マミ「ズズッ……。ごめんなさいね……。こんなダメな先輩で……」


ほむら「……………………」


ほむら「…………大丈夫ですよ」


ほむら「巴さんが、強い人だって、私はよく知っています」

マミ「あけみ、さん……?」

ほむら「辛くても、寂しくても、挫けそうになっても、それでも頑張ってたんですよね」

マミ「…………!」

ほむら「私の先輩の巴さんは、どんなに怖くても、苦しくても、守るべき後輩たちのために前に進む人ですから」





ほむら「だから、巴さんは私の自慢の先輩です」

マミ「あ、ああ゛っ、あげ、み、ざん……!」ボロボロ

***

-数分後-

エレン「ほ、ほむら……。あの慈愛に満ちた表情と、敬語モードは……!?」

ほむら「忘れなさいッ!!」


マミ「グスッ、私はいい後輩を持ったわ……」

ツィー リン「良かったわね……。マミ」ホロリ


ヤン ファン(わ、私はこの空気でどう行動すべきか……)

ヤン ファン(むぅ……。とりあえず……)


ヤン ファン「あー、暁美ほむら。さきほどの巴マミを受け止める前に使った術は?」

ほむら「(助かったわ)ハードファイアーのことかしら?」

ほむら「あれは、対象一人の素早さを向上させる朱鳥術よ」

ほむら「あの術で、自身を加速してマミの下に走ったのよ」

ヤン ファン「ほう、なるほど。西方の術の一つか……」

ツィー リン「…………あら?」

ツィー リン「ねえ、みんな。あそこ……」

ヤン ファン「むっ?」



魔王の鎧「…………」



ヤン ファン「まさか、アレは……、魔王の鎧か!?」

ツィー リン「アレがゼルナム族を呼び寄せた根源……!」

ほむら「…………厄介なものね。マミのあの砲撃を受けても、傷すらついていない」


エレン「破壊は無理よね……」

ほむら「無理ね。マミのアレを越える攻撃は用意できないわ」

ヤン ファン「だが、邪気を払ったとはいえ、放置しては後々問題になるやもしれん……」


ほむら「…………仕方ないわね。あまりこんなものを入れたくないのだけど」

ヤン ファン「む?」

ほむら「よいしょっ」ヒョイッ

シュルルル……

ヤン ファン「盾の中に……入れた!?」

ほむら「この盾の中は時が止まった世界」

ほむら「この中に入れておけば、魔王の鎧も悪さできないでしょう」

ほむら「それに、魔法少女の力とアビスの力は相反するわ」

ほむら「仮に鎧の時が止まらなくとも、この盾の中が一番アビスの力を封じられる空間だと思うわ」


ヤン ファン「ふむ、なるほど。一応尋ねておくが、魔王の鎧を悪用するつもりはないのだな?」

ほむら「ないわ。おそらくだけど、魔王の装備と魔法少女の力は互いに相性が悪い」

ほむら「魔法少女が装備すると、かえって自身の力を発揮できなくなることになりかねない」

ほむら「この中なら、見知らぬ誰かの手に触れることはないし、私の力を制限されるような事態も起こらないわ」

ヤン ファン「ふむ。一人の人間が管理するというのも、あまりいい話ではないが……」

ヤン ファン「しかし、この東の地に争いの種となる存在を残すのも良くない。管理できる人間に渡すのが妥当か」

ツィー リン「ところで、あなたはどうやってこのゼルナム族の巣まで辿り着けたの?」

ほむら「大体の場所を教えてもらって、巣の近くでエレンと合流したわ」

マミ「そういえば、今思い出したんだけど……」

マミ「ようせいちゃんはどうしたのかしら?」


エレン「……………………あの子、ね」

マミ「?」


ほむら「あー、マミ。順を追って説明するわ」

ほむら「ようせいはゼルナム族の巣でエレン相手に狩り勝負を仕掛けたんだけど……」

ほむら「なかなかゼルナム族を発見できなくて、だんだんテンションが下がってきたのよ」

マミ「えっと……?」

ほむら「目標を狩れず、ただただモンスターの討伐数だけが増えていく」

ほむら「そして、ついに技力が尽きたわ」

マミ「えっ!? それはマズイんじゃあないかしら……?」


ほむら「いえ、心配はいらないわ。なぜなら……」

-ムング族の村 テントの中-

ようせい「ぐー、すぴー……」zzz

ほむら「こういうことよ」

エレン「ようせい……、私たちを放置して村に帰ったのよ……」

ゆきだるま「暇だからと出て行ったようせいが、疲れたー、と言って一人で帰還したのだ」


マミ・ツィーリン・ヤンファン「うわあ……」


エレン「ほむらからテレパシーで教えてもらったときの私のやるせなさといったら……、もう……」

ツィー リン「自由すぎるわね……この子」

マミ(寝顔かわいいわ)


ほむら「まあ、弁護するなら……、今日は色々あったからこの子も疲れたんでしょう」

ほむら「乾いた大河、死の砂漠、水晶の廃墟、ネフト族の巣、ゼルナム族の巣……。これらを一日でまわったのだから」

ほむら「特にようせいは、空を飛んで、色々やってもらったから疲れも溜まりやすいわ」

ほむら「もともと、体力の少ない子、だしね」

エレン「はあ……。説教は起きた後にするわ」

マミ「そういえば、暁美さん。どうやって西に戻るつもり?」

ほむら「これを使って帰るわ」


>タラップ


ほむら「ようせいに頼んで東に向かう際に乾いた大河の端の岩場の崖の数カ所にとりつけてもらったわ」

ほむら「岩場を登りながら西へ戻って行くつもりよ」

マミ「ずいぶんと力技ねっ!?」

投下終了です。
ゼルナム族は開幕電撃固定だったけど、キニシナイ!

魔海侯編投下します。エンサガ設定は一部無視します。

-翌日 朝 ムング族の村 テントの中-

チチチッ ちゅんちゅんっ

ほむら「ん……、朝……」

ほむら「…………」ムクリ


ようせい「(ジーッ)」ニヤニヤ


ほむら(ようせいがテントの外でこっちを見ながらニヤニヤしてる)

ほむら(間違いなく、何かイタズラされたわね)キョロキョロ

ほむら「……………………」


マミ「う、ううーん」ピチピチ


ほむら「マミが私の魔法少女服を着てる……」

ほむら「ということは……(下を見る)」クッ

ほむら「…………」

ほむら「服が黄色い……」

ほむら「ご丁寧に胸の辺りに詰め物までしてあるわ」ツンツン

ほむら「! ……なんてこと! 下着まで取り替えられているわっ!」

ほむら(どうやったのかしら……?)

-数分後 ムング族の村 外-

ほむら「戻しなさい」

ようせい「えー、つまんなーい」


ツィー リン「その服、脱げないの?」

ほむら「脱げるように出来ていないわ。消すことはできると思うけど……」

ほむら「消えるのは私の服だから、この場合マミが裸になるだけね」

ようせい「やっちゃえば?」

ほむら「イヤよ」


ツィー リン「でも、どうやって服を取り替えたの?」

ようせい「えっとね。チェンジリングの応用よ」

ほむら「答えになってない……」

ゆきだるま「すごいことしてるのに、用途がイタズラだからすごくないように感じるのだ」

ほむら「固有装備を取り替えているものね……」

※チェンジリング…子供を攫い、代わりに妖精の子供を置いていく妖精のイタズラ。

ツィー リン「ところで、胸はどうなっているの?」

ほむら「……マミのブラの中に花が敷き詰められていたわ」

ようせい「素敵でしょっ!」


ようせい「でも、実は胸ごと取り替えることもできるのよ」

ほむら「!?」


ようせい「嘘だけど」

ほむら「でしょうね。できたとしても、する必要はないわ」ファサアッ


ゆきだるま「今、一瞬すごく反応したのだ」

ほむら「くっ」カアア

ようせい(当分は、この話題でからかおうっと)ニコニコ



「きゃあああっ! 何よこれ!? 胸がキツいわ! コレ、暁美さんの服!?」

ツィー リン「マミ……」

ほむら「…………」

-その頃 バンガード行きの船 船上-

まどか「ふと、思ったんですけど」

サラ「どうしたの?」

まどか「鍛冶工房のノーラさんって胸大きかったですよね」

サラ「うん……。私たちは小さいのにね」チマッ

まどか「はい……」チマッ


まどか「でも、あの胸を見て、ちょっとマミさんを思い出しました」

サラ「マミさんは胸、大きいんだね……」

まどか「はい。それはもう」

サラ「……ところで、噂のほむらちゃんの胸は?」

まどか「あ、ほむらちゃんは私よりも小さいですよ!」

サラ(ほむらちゃんは仲間っと)

サラ(杏子も仲間かな。……あ、タチアナも仲間だね)


まどか「えっと……。確か……ほむらちゃんは胸が小さいのを気にしてたかな……」

まどか「でも、本人は気にしてないように取り繕っていた。うん、確かそうだったよね」

まどか「それで、それがとってもかわいいなって、私、思ったんです!」

サラ(ほむらちゃん……)

-バンガード 舟着場-

さやか「まどか、サラさん、おかえりっ!」

まどか「うぇひひっ! さやかちゃん、ただいま!」

さやか「あれ? ねえ、まどか。もしかして弓を新調した?」

まどか「うん。ピドナの武器工房で作ってもらったんだよっ!」(E.カナリアの弓:攻25)

サラ「フォルネウスとの戦いが控えているんだから、装備は整えないとね」(E.カナリアの弓)

さやか「おーおー、気合入ってますなあ。さやかちゃんも自前の剣で頑張っちゃいますよ!」(E.さやかの剣:攻26)


サラ「……あれ? さやか」

さやか「はい? サラさん、どうしたんですか?」


サラ「前まで抜身の剣だったのに、鞘付きに変えたの?」


さやか「ギクッ!」

さやか「あはは……。いやー、鞘があった方が安全かなーって」

サラ「魔法少女って、使わない時は武器を消せるんじゃなかったっけ?」


さやか「ギクギクッ!」


まどか「あっ! もしかして……」

さやか「な、何かな? まどか」



まどか「さやかちゃん、ハーマンさんの居合い抜きに憧れて……?」

さやか「ギクーッ!!」



さやか「ち、違うのよ! ハーマンに憧れたわけじゃなくて、ただ何か居合ってかっこいいなーって……!」

まどか「…………」
サラ「…………」

さやか「う、うう……」


「……………………」


さやか「うわーん! どうせあたしは影響されやすいわよーっ!!」ダダダダ



サラ「別に悪いなんて思わないのにね」

まどか「ハーマンさんの居合い抜きって強いですしねー」

***

-バンガード コントロールルーム-

ハーマン「6人揃ったな」

ウンディーネ「全員、準備も覚悟も終えたとみていいわね?」

さやか「あったりまえよ! この数日間、ずっと修行してたんだからっ!」

ウンディーネ「はあ……。あなたの心配はしてないわよ」


ウンディーネ「まどかとサラも、覚悟はいいかしら?」

サラ「……うん、いけるよ!」

まどか「さやかちゃんは親友です。だから、さやかちゃんが戦うなら、私はさやかちゃんを助けます!」


ボストン「バンガードを海底宮へ向かわせている。今、このときが最後の休息となるだろう」

ボストン「何かすべきことがあるなら、早めに終わらせることだ」

まどか「あ、そうだ。ハーマンさん」

ハーマン「あん?」

***

ハーマン「ジャッカル……だと?」

まどか「はい、工房の親方さんを殺した犯人の手がかりなんですけど」

ハーマン「ジャッカルってのは、温海を荒らしまわった海賊の名だ」

ハーマン「そして、赤サンゴのピアスは奴の一味の証に他ならん」

サラ「海賊……?」

ハーマン「ブラックも多くの悪事を働いたが、質の悪さに関しちゃジャッカルはその遥か上だ」

ハーマン「ガキを誘拐して人身売買、悪事のなすりつけ、アビスの魔物と手を組んでの蹂躙……」

ハーマン「奴ほどのクズは生まれてこの方会ったことないな」

サラ「まさか……、マクシムスの正体がそんな危険人物!?」

ハーマン「だが、奴は海賊ブラックに首を掻っ切られて海に沈んだはずだ」

ハーマン「生きているとは思えん……」

まどか「うーん……。なら、ジャッカルの手下とかなのかなあ?」

ハーマン「分からんが、てめえらの話を聞く限り、やり口は奴のソレに似ている」

ハーマン「いずれ、そのマクシムスとかいう奴の悪事を暴くつもりなんだろう? その時はオレもついていってやる」

まどか「はい! ありがとうございます。ハーマンさん!」

ハーマン「ケッ、これはオレ自身のためでもあんだよ。あのクソ野郎が生きてるなら必ずブチのめす、それだけだ」

サラ(一体、海賊ジャッカルとの間に何があったんだろう……?)

***

ウンディーネ「これより、バンガードサブマリンモードに移行するわ」

さやか「おっけ。準備いいよ」

ボストン「こちらも問題ない」


ウンディーネ「海底宮の位置は確認済み……後は潜るだけね」ガチャッ


ピンポンパンポーン


ウンディーネ「えー、テステス。……これよりバンガードは海中に潜ります! 住民は家の中に避難しなさい!」


パンポンピンポーン

ウンディーネ「さてと、それじゃあリーダーさん。何か決めの言葉をお願いね」

さやか「うん! えっと……」

さやか「……………………」

さやか(ねえ、まどか。何か決め言葉のいい案ない? 正直思いつかないんだけど)コソコソ

まどか(え? 急に言われても……)
>打倒、フォルネウス! とかでいいんじゃない?
 さやかちゃんの御出陣! 御出陣!
 あたしがあの海に虹をかけてやる!

さやか「打倒! フォルネウス!」

ハーマン「ああ! 叩きのめしてやるぜ!」

ボストン「最果てから海底へ……。それもまた悪くない」

ウンディーネ「水底の決戦とは、また洒落ているわね」

サラ「まどか、行こう」

まどか「はい!」


***

-海底宮-

まどか「……静かなところですね」

サラ「うん、もっと禍々しいところを想像していたね」

まどか「荘厳で幻想的な場所ですね……」

ハーマン「けっ、醜悪な巨大魚が宮殿の主なんだ。幻想もクソもねえ」

サラ「ハーマンはフォルネウスのことすごく嫌いなんだね……」

ハーマン「当然だ。でなきゃ、さやかについていくこともなかっただろうな」


ボストン「フォルネウスによる被害は他の四魔貴族に比べ目立っている」

まどか「? そうなんですか?」

ボストン「ああ」

ボストン「フォルネウスに沈められた船は多い。大洋は奴らの領域でもあるのだ」

ボストン「奴に見つかってしまった船は、生きて帰れない」

ハーマン「忌々しい話だぜ……」

さやか「そういえば、あたしが最果ての島から出るときはボストンが大陸まで案内してくれたっけ」

ボストン「ああ、今の大洋はかなり危険だからな。小舟であってもフォルネウスの配下に見つかればただでは済まない」

さやか「そっか。ありがと、ボストン」

ボストン「気にするな」

ボストン「フォルネウスの、他の四魔貴族と違う点はまだある。敵対者に酷く容赦がないことだ」

ボストン「海底宮に侵入される可能性は徹底的に潰す」

ボストン「おそらく、フォルネウスは四魔貴族でも特に自尊心の強い一体だ」

ボストン「これまでのこと、私には、『我こそが大海の主、人間共にくれてやる海など無い』と、そう言っている様に思える」

ハーマン「チッ。やはり、気に入らねえな」

ボストン「私もフォルネウスが嫌いだ。決して相容れない存在といえる」

***

メーベルワーゲンx2「(うぞうぞ)」

まどか「あ、あのタコは……?」

ウンディーネ「メーベルワーゲンね。巨大アンモナイトの殻に隠れて触手で攻撃するモンスターよ」


さやか「触手か……恐ろしいね」

サラ「うん、あまり喰らいたいね」

まどか「そうですね……」ブルリッ


メーベルワーゲンA「(にゅるにゅるにゅるっ!)」[触手]

まどか「きゃっ!? 来た!?」


ボストン「ぐわっ! 触手が体に巻き付く!」ニュルニュル


さやか「ボストーーン!?」


メーベルワーゲンB「(ブピュッ)」[スミ]


ハーマン「ぐおおっ!? 体がベトベトに!?」ビチャアッ


さやか「ハーマンっ!!?」


サラ「触手は攻撃力が高いから、危険ね!」

ウンディーネ「戦闘不能者が出る前に早く倒さないと! サンダークラップッ!」

まどか「え? ……………………あ、はい! そうですねっ!」

まどか(なんか、恥ずかしい……)カアアッ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

ウンディーネ「どうやら、海底宮のモンスターは水棲系が大半のようね」

ハーマン「スミは水耐性じゃ防げねえようだな……」ベトベト

さやか「その辺で洗い流せるのが救いだね……」

ボストン「むっ、こっちに道があるな」スタスタ

***

石像's「……………………」ズラアァ

まどか「石像がたくさん……」

さやか「あからさまに怪しい……」

ボストン「ふむ、気をつけて進もう」

さやか「これ、絶対動き出すよね」

ウンディーネ「走り抜けるべきかしら?」


そ~っ …………ダダダダダダダダダッ


サラ「出口に辿り着いた!」

さやか「石像は!?」



石像's「……………………」シーン

さやか「……………………」



さやか「動き出さないのかいっ!!」ペシンッ

まどか「いたっ!?」

***

まどか「今度は長い通路だね……。けど……」


フォルネウス将ABC「(ビュンッ)」ドドドドッ

フォルネウス将DEF「(トコトコ)」

フォルネウス将GHI「(のろのろ)」


サラ「何か、変なのがうろついてるね……」

さやか「んー。まあ、こういう場合……」

***

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

さやか「よしっ、こんなもんか」

サラ「倒しちゃうんだ……」

ボストン「以前戦ったフォルネウス兵と行動はまるで変わってないな」

ハーマン「能力が強化されてるだけの雑魚だ。さやか一人で充分だったな」

ウンディーネ「あの子もずいぶんと強くなったわね……」

まどか「さやかちゃんかっこいい!」

さやか「うんうん! もっとさやかちゃんを褒めるが良いぞ!」


ボストン「技の選択が甘い」

ハーマン「術妨害をもっと狙えたはずだ」

さやか「ぬぐっ!」


サラ(あの二人、さやかにすごく厳しいよね)

まどか(……でも、あの3人の関係はあれでいいと思います)ウェヒヒ

***

石像's「……………………」ズラアァ

ウンディーネ「また石像がズラッと並んでるわね」

サラ「これも動かないのかな……?」

ウンディーネ「……。さっきと比べて道が限定されている……。罠があるとすれば……」ブツブツ

まどか「ウンディーネさん?」


さやか「動かないって分かってんだから、とっとと行こうよ」スタスタ

ウンディーネ「あっ、ちょっと!」


パキーンッ

ミノタウロス「グウウオオオオオオオッ!!」


さやか「な、なにーっ! 動かないと安心させたところで敵を嵌める罠だったのかーっ!!」

さやか「このさやかちゃんの目をもってしても見抜けなんだ……」

ウンディーネ「このおバカっ!!」

まどか(さやかちゃん……。親友として恥ずかしいよ…………)

(陣形:龍陣)

ミノタウロス「フウンンんッッ」[ハイパーハンマー]

さやか「さやかちゃん必殺!」

さやか「剣両手持ちからの、切り落としカウンターッ!」ズシャアッ

ミノタウロス「ンモオオッ!?」

サラ「切り落としが完全に入った!!」


ウンディーネ「アレは大剣技……。それに両手持ち……、さやかが盾を使わないからこそできる戦法ね」

ハーマン「ま、トドメはオレがいただくか」

ハーマン「オラッ、ジンギスカンッ!」ヒュンッ ドカッ ヒュンッ ドカッ ヒュンッ ドカッ

ミノタウロス「モオオォッ!」ボシュウウウ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

まどか「今のうちに、出口に向かわないと!」

サラ「他の石像が追ってくる前にね!」

***

さやか「さっきの戦闘での私の動きは良かったよね! ボストン、ハーマン!」

ハーマン「戦闘以前に、慎重に行動しろ」

ボストン「迂闊に石像に近づくな」

さやか「…………。なによう。そりゃ悪かったけど、別に褒めてくれてもいいじゃんか……」

まどか(あ、さやかちゃん拗ねちゃった)

ウンディーネ「はいはい。切り落としすごいすごい」

さやか「全然心こもってなーーーい!!」

まどか(でも、扱いは変わらないんだ。さやかちゃん……………………)

***

サラ「大分進んだよね……」

まどか「あとどれくらいで、アビスゲートなんだろう……?」


さやか「ん…………」

まどか「? さやかちゃん、何見てるの?」

さやか「あたしのソウルジェム」

まどか「?」

さやか「さっき気づいたんだけど、アビスの力って魔女に似ているみたいなんだ」

さやか「だから、アビスゲートに近づくとソウルジェムが反応するみたい」

ボストン「ほう。あとどのぐらいなのか分かるのか?」

さやか「んー。もう少しかな?」

ハーマン「フン……、いよいよってことか」

ニクシー「シャアアアアッ! フォルネウス サマ ニ タテツク モノハ シネッ!」

サラ「あっ! 魚系モンスターが!」

ボストン「ほう? 魚系か。ならば問題ない」



ボストン「はああっ! ナイアガラバスターッ!!」グンッ グオオオオオッ ズンッ

ニクシー「ぎゃあああっ!」ボシュウウウッ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

さやか「ボストンがハサミじゃなくて投げをっ!?」

まどか「私、初めて見たよ!」

さやか「うん! すごく珍しいよ、まどか!」


ボストン「見せる機会がなかっただけなのだが」

ハーマン「大抵、ハサミで充分だからな」

ウンディーネ「さっきの投げは、魚系特効の技ね。フォルネウスにも有効かしら……?」

***

さやか「…………みんな、ストップ」

ハーマン「……言われなくても既に分かってるぞ」

ボストン「だが、確認はしておこう。さやか、この先なのだな?」


さやか「…………うん。そうだよ」


ウンディーネ「凄まじい負の力を感じるわね……」

まどか「…………」ドクンドクン

サラ「……まどか。緊張する?」

まどか「サラさん……」

サラ「大丈夫。……何かあっても、私がまどかを守るから」

まどか「…………サラさん」

まどか「何だか、今のセリフ。ほむらちゃんが言いそうなセリフでしたよ」ウェヒヒッ

サラ「え、そうなんだ。あはは……」

まどか「…………ありがとうございます。もう大丈夫です」

サラ「うん。それじゃあ、行こっか」





まどか「はい。アビスゲートへ」

-アビスゲート-

海に存在するこのゲートには、さしもの聖王もなかなか辿り着けなかった。
聖王は七度大船で挑むも、七度とも魔海侯に船を沈められ敗れてしまう。
しかし、その後、聖王は動く島、バンガードを作り海底宮に乗り込む。
さしものフォルネウスもバンガードを沈めることは能わず、ついにフォルネウスは聖王に敗れアビスに追い返された。

(聖王記より)


まどか「アビスゲート……」

さやか「…………。あたしたちが通った、あの黒い穴のようなのを想像してたんだけど……」

まどか(儀式場のような……何かの装置のような……)


サラ「暗い部屋……その中央の床に、丸い発光する装置が……」

サラ「ううん、装置じゃなくて、アレが門なんだ……」


ハーマン「フォルネウスはどこだ?」

ボストン「ふむ。魔貴族がゲートの破壊を黙って見ているとは思えんが」


ウンディーネ「……………………どうやら、ボストンの言う通りみたいよ」

さやか「ゲートから、強い魔力が来る……!」





…………ォォォォオオオオオオッ!!
────アビスの力を知れ!

(陣形:龍陣)

フォルネウス「アビスゲート ヲ トジヨウナドト」

フォルネウス「ニンゲン ゴトキ ガ オモイアガッタナ……」

まどか(巨大な魚が喋った……!)

まどか(あれが、フォルネウス……。大きな口を持つ、不気味な巨大魚……)


さやか「行くよっ! あたしに続いて! ハーマン、ボストン、サラさん、ウンディーネ!」

ハーマン「さやか。てめえの位置が一番重要で、そして危険だ。」

ボストン「攻撃の主力と守りの要、さやかはこの二つの役目をこなすのだ」

サラ「……前衛の回復は私とウンディーネで行う」

ウンディーネ「補助と回復は任せて、さやかは攻撃だけを考えなさい!」


フォルネウス「ウミ ノ シハイシャ ガ ダレナノカ オシエテヤル……」


まどか「さやかちゃん……みんな……」

まどか「……。頑張って!」


フォルネウス「メザワリダ……ニンゲン」[尾撃]

さやか「くぅっ!!」バシッ
ハーマン「チッ」バシッ

まどか「さやかちゃん! ハーマンさん!」

さやか「大丈夫! ここからだ……!」





フォルネウス「チガウナ コレデ オワリダ……」[メイルシュトローム]

さやか「っ!!?」

-その頃 火術要塞 最深部前-

ほむら「いよいよね……」


エレン「魔貴族に挑む……か。シノンにいた頃は想像もしなかったわね……」

マミ「四魔貴族……。アビスゲート……。ついに宿命と宿命が交差する……。そう、決戦の時がきたわね」

ツィー リン「西に来て早々、大仕事ね。……けれど、アビスは東の人間の宿敵。邪悪を断つことに迷い無し!」

ゆきだるま「ここまで来たのだ、勝つのだ!」


ようせい「……………………」

ほむら「…………ようせい。怖いの?」

ゆきだるま「? ようせいが怖気づくなんて珍しいのだ」

ようせい「……ううん、違うの。ちょっと感傷に浸ってたの」

ようせい「この戦いが終わったら、妖精の村を復興しないといけない……」


ようせい「ほむらとも、別れなきゃいけないのかなって」

ほむら「……………………」

ようせい「ほむらとの約束……。ほむらは私と一緒にアウナスを倒す。私はほむらを助ける」

ようせい「アウナスを倒しちゃったら、その約束も終わっちゃうなって」

ほむら「……。ようせい……」


エレン「はあ。何を言うのかと思えば」

ようせい「な、何よ! エレンには関係ないじゃない!」

エレン「あのね。約束だか何だか知らないけど」

エレン「村の復興が終われば、また会いに行けばいいし」

エレン「ほむらとの約束が欲しいのなら、終わった後にもう一度約束を交わせばいいじゃない」

ようせい「…………」

ほむら「エレン……」



ようせい「それもそうねっ!」

ほむら(軽っ!)

ようせい「うーん、どんな約束がいいかなー?」

ほむら「そういうのはもう一人の当事者を交えて考えるものじゃないかしら」

ようせい「うん! 決めた!」


ようせい「私は、妖精の村の復興を終えたら、ほむらのところに行くから……」

ようせい「ほむらは、私が来るのを待ってて!」


ほむら「? それが約束なの? しなくとも別に、妖精のことを待つぐらい……」

ようせい「ううん! ぜんぜん違うわよ!」


ようせい「約束があるから、頑張れるのよ」

ほむら「…………!」

──約束するわ。絶対にあなたを救ってみせる。何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる。


ほむら「そうね。そうだったわ……」

ようせい「ほむらー、聞いてるー? 約束忘れたら怒るからねー!」

ほむら「ふふっ、忘れないわよ。あなたを怒らせたら大変だものね」

ようせい「うん! 活殺獣神衝の刑だからねっ!」


マミ「暁美さんとようせいちゃんの仲が良すぎて妬ましいわ……」ギリギリ

ツィー リン「マミ……。あなたはどこへ向かっているの……?」

エレン「……ていうか、勝つ前提で話進めすぎじゃないかしら? 相手は魔貴族なのに……」

ゆきだるま「なのだ」


ようせい「でも、私とほむらは戦うの二度目だし」

ほむら「……勝てるだけの戦力を集めたつもりよ」


エレン「……やけに、対策がしっかりしていると思ったら」

ゆきだるま「そういえば、ほむら。仲間もアウナス戦を想定して集めてるみたいだったのだ」

ツィー リン「でも、勝負は何が起こるか分からないわ」

ほむら「当然油断なんてできるはずがないわ。相手は魔貴族だもの」

ほむら「けれど、私はこんなところで止まるつもりはないの」

マミ「そうね、その通りだわ。……それじゃあ、暁美さん。陣形の確認よ」


ほむら「陣形はもちろん……」

ようせい「スペキュレイションよっ!」

-海底宮 アビスゲート-

「ぐっ……。みんな……!」


さやか「みんな! 大丈夫!?」


ウンディーネ「はあ、はあ……。魔海侯の洗礼といったところかしら……?」

ハーマン「これしきで倒れるような、半端な意志力じゃねえ」

サラ「水耐性があっても、かなりのダメージね……」

ボストン「私もまだ立てる。全員無事なようだ」


さやか「今度はこっちの番! みんな、行くよ!」

さやか「新技! 居合い抜きッ!」シュパンッ

ハーマン「ったく。オレの真似か? ……続くぜ、マキ割ダイナミックッ!!」ダンッ ズドッッ


フォルネウス「…………ウットウシイナ」


ボストン「ナイアガラバスターッ!」ググッ


フォルネウス「オ……?」


ボストン「ハアっ!!」ズオオオオッ

フォルネウス「グウッ…………」ズンッ


サラ「私たちは回復を! アースヒール!」シュイイイン

ウンディーネ「生命の水!」キュイイイイン

まどか(順調に攻撃できてるように見える……。でも……)


フォルネウス「……フン」


まどか(フォルネウスに効いてるの……?)

まどか(今までの敵とは、体力がぜんぜん違う……!)


フォルネウス「マズハ イッピキズツ ツブスカ……」[ふみつけ]

さやか「っ!?」


ズズウウウウウウゥゥゥゥゥ…………ン

さやか「がっ……はぁっ!」


まどか「さやかちゃんっ!?」


フォルネウス「ツギダ……」[落雷]

バチバチバチバチッ……ピシャアアアアァンッ!!

ボストン「ガッ……!」バチィッ


まどか「ボストンさんっ!!」

ボストン「ぐぅ……私はまだいける……。それより、さやかだ……!」


まどか「……! ぁ……ああっ! さやかちゃんっ!!」

さやか(ああ……いいのもらっちゃったな……)

さやか(頭ははっきりしてるのに、目の前が真っ暗だ……)

さやか(怪我、どんな感じなんだろ……?)


「さ…かっ! しっか……て! 今、回…を!」

「…どい……。さやか……んの体が……」


さやか(サラさんと、まどかの声……。聞こえづらいな)


さやか(ああ……、そっか。真っ暗なのは目がイカれてるから。聞こえづらいのは耳がイカれてるからか……)

さやか(あはは、魔法少女になってから……怪我するのが当たり前になったなあ、あたし)


さやか(……ああ、何で、あたし。こんなにボロボロになってまで頑張ろうとしてるんだっけ)

さやか(……どうして、あたしは、自分から率先してみんなを守ろうと思ったんだっけ)

さやか(……………………。ああ、そうだ……)


さやか(まどかに酷いこと言って、そして、その後に…………)

***

-回想 見滝原 路地裏-

ザアアアアアアァァ……

さやか「……………………」

さやか「まどか……。泣いてたよね」

さやか「…………。あんなこと、言うつもりじゃなかったのにな」

さやか「ああ……。あたしってこんなに汚かったんだ……」

さやか「ははっ。救いようのないバカだな、あたしって……」

さやか「…………もう、何もする気が起きないや」

さやか「ここが、あたしの墓場かな……。薄暗くてあたしにぴったし……」



さやか「……………………何よ」

杏子「よう、青二才」

さやか「何の用よ。用が無いなら帰ってくれない?」

杏子「ん、用ね……。そうだな……それなら」

杏子「魔女になりそうなバカがいるから、そいつのグリーフシード目当て、なんてどうだい?」


さやか「……………………」

杏子「さっきのおまえらの話、あたしも聞いてたからな」

さやか「……………………」

杏子「あんな話聞いちまったからには、今まで以上にグリーフシードを集めなきゃいけないね」

杏子「だから、あんたのグリーフシードも有効活用させてもらうよ」

さやか「……………………」

杏子「これまでと一緒さ」

杏子「弱肉強食。弱いあんたを喰らって、強いあたしが生き延びる」

杏子「それだけのことだよ。あたしにとっては何も変わりゃしない」

さやか「………………………………」

杏子「ああ、でも。遺言ぐらいならあっちの友達に伝えてやるよ?」

杏子「そうだな……。どうせ、あんたのことだから……」



杏子「助けて、まどか。あたしを人間に戻して!」

杏子「……とか、そんな感じか?」

さやか「…………っ!!」

杏子「どうせ、おまえ。この期に及んで、魔女になりたくない、とか、何であたしが、とか、考えてんだろ」

さやか「…………だまれ」

杏子「図星かい? 正義だの何だの言っておきながら、あたしなんかよりよっぽど最低だったってことさ」

さやか「……五月蝿い」

杏子「まあ、でも、魔女になっても即始末してやるから。それが、半端なあんたに相応な結末だろ」

さやか「その口を閉じろおおおおおおおぉっ!!!」


ガキンッッ


杏子「……ああ、ついでに、もう一つ言っておくとだ」


杏子「あたしさ、あんたのこと…………、ずっっっと、見ていて気に入らなかったよっ!!」

さやか「黙れええええええええええええええっ!!」

***

ガキンッ ズザアアアアアアアッ

杏子「…………もう終わりか?」

さやか「はあっはあっ…………!」

杏子「あんた、結局何がしたかったのさ」

さやか「なんでよ…………」

杏子「…………」


さやか「なんで、あんたはそんなに強いのよ……」

杏子「…………」


さやか「頑張っても何も無いんだよ……。願いにだって裏切られたんでしょ……」

さやか「何で、あんたも転校生も戦い続けられるのよ……」


さやか「あたしとあんたは、どうしてそんなに違うのよっ!!」

杏子「…………違う、ねえ」

杏子「以前言ったよな。あたしは昔、正義の味方気取ってたって」

さやか「……聞いたわよ。その後一家が心中したこともね」

杏子「まあね。…………あたしの大事な家族だったよ」

杏子「あたしは、顔も知れない誰かを守って、いいことをしてるって思ってた」

杏子「で、自分の願いのせいで家族を死なせちまって、そりゃあもう心の底から後悔したね」

杏子「自分のため魔法を使うと決めて、マミと喧嘩別れして、……けれどその一方で、何が悪かったのか考えながら生きてきた」

さやか「…………」

杏子「…………そして、あたしはただ、家族が大事だったことに気づいた」


杏子「親父の言うことは正しい。それを認めて欲しかった」

杏子「あんなに頑張ってる人が、正しい人が、報われないなんて嫌だった」

杏子「あたしの原点がソレだ。正義の味方をしようと思ったのもその思いからだった」

さやか「…………」

杏子「大好きだった……。だから、生きていて欲しかった」

杏子「それに気づいたとき、マミと喧嘩別れしたこともほんの少し後悔したかな」

杏子「分かるかい? あたしは本当は顔も知らない誰かなんてどうでも良かった」

杏子「ただ、大切な人を守りたかっただけなのさ」

さやか「…………」

「なんて顔をしてるのよ。美樹さやか」

さやか「っ!? 転校生……」

ほむら「まどか。この世の終わりのような顔をしてたわよ」

マミ「契約しかねない雰囲気だったから、私たちが帰るまでは待つように言っておいたけど……」

さやか「マミさん……」

杏子「やれやれ……。じゃあ、もう一度訊くよ」

さやか「えっ?」


杏子「あんたはこれからどうしたいのさ」

さやか「…………。あたし、は…………」

さやか「あたし……。まどかに謝りたい」

さやか「あんな最後なんて、やっぱり嫌……」

マミ「うん、うん」


さやか「恭介にも、ちゃんと告白したい……。しないまま魔女になんてなりたくない……」

さやか「振られても、恭介と仁美に、おめでとうとか、嫌味とか、言ってやりたい……」

ほむら「……振られたら、巴マミの胸ぐらいなら貸すわよ」

マミ「…………そうね。ここにいるみんなと鹿目さんで、バカヤローパーティーでも開きましょう」

さやか「…………。あはは…………、いいですね……、ソレ」


杏子「……いつ魔女になって消えるか分からないけどさ。あんたはまだ失ってないんだ」

さやか「……うん」

杏子「あたしも、これからマミに謝るよ。一方的に出て行って悪かったってな」

さやか「……うん。あたしも謝らなきゃね」

さやか「…………ねえ、杏子」

杏子「なんだよ、さやか」

さやか「まどかに上手く謝れるかわからないから、一緒にいてくれない?」

杏子「何であたしなのさ」

さやか「……なんとなくかな」


杏子「…………。いいよ、一緒にいてやるよ……」

さやか「……………………ありがと」

-現在 海底宮 アビスゲート-

フォルネウス「キョジャク……ヒンジャク……」[通常攻撃]

ガシュッ ガシュッ

ハーマン「くっ!」
サラ「あぅっ!」

フォルネウス「ムチ モウマイ……ニンゲン ナド」[毒針]

ザクッ ザクザクザクザクッ

ウンディーネ「ぐあっ!?」


フォルネウス「ワレラ アビス ノ アシモト ニモ オヨバナイ……」


ハーマン「……回復を優先するぞ。パワーヒールだ」

ボストン「生命の水」

サラ「アースヒール!」

ウンディーネ「生命の水!」


フォルネウス「ムダナアガキ……」[角]

フォルネウス「カトウ デ オロカ……」[ファングクラッシュ]

フォルネウス「ナカマ ダノ マモル ダノ」[尾撃]


フォルネウス「スベテ ガ クダラナイ」[スコール]

ウンディーネ「攻撃が激しすぎる……!」

サラ「さやかを回復させる暇が無い……!」


フォルネウス「キサマラ ニンゲン ナド……」

フォルネウス「アビス ノ チカラ ノマエニハ ゴミクズ ニスギナイノダ」


「…………はいはい。すごいすごい」


フォルネウス「…………?」


さやか「ぐっ……、アビスの力を知れだっけ……? まあ、確かに強いよね」ヨロ……

さやか「あたしより強い奴なんて、別に珍しくないけど」

さやか「うえっ、口の中が血まみれだ」ペッ

まどか「さやかちゃんっ!!?」


サラ「まだ、回復してないのに……?」

ボストン「さやか、まさか」

ハーマン「魔法を使いやがったな、あのバカ……!」


さやか「……あーあ。久しぶりに使うけど、こりゃ酷いや」

さやか「傷が治るのに、命はガンガンと削られていく感じだよ」

ウンディーネ「あなた……! 死ぬ気っ!?」

まどか「さやかちゃんっ!」

さやか「ねえ、まどか。ソウルジェムの真相を知ったとき、あたしたち喧嘩したよね」

まどか「え?」

さやか「あの時のことを考えると、みっともなくて、自分をぶん殴ってやりたいぐらいムカつくけどさ」


さやか「アレがあったからこそ、本当に大切なものがわかったんだ」


フォルネウス「…………」[ふみつけ]


さやか「…………あー」

ズズウウウウウウゥゥゥゥゥ…………ン


ハーマン「さやかっ!?」



さやか「二度目だと……さすがに見切りやすいね」スタッ

フォルネウス「ナニ……?」


ハーマン「かわした……!」

フォルネウス「…………」[スコール]

ザアアアアアアアアアアアアアッ

さやか「……あたし、よく、正義とか何とか言っちゃうけどさ」

さやか「本当に大切なモノは、正義じゃないんだ」


さやか「魔法少女になったのは、恭介を助けたかっただけ」

さやか「町を守るのは、マミさんを手伝いたかったから」

さやか「ワルプルギスの夜と戦ったのは、家族と友達を守りたかった。ほむらを救いたかった……」


まどか「さやかちゃん…………泣いてる……?」


さやか「……………………」

さやか「…………守りたいのよ」

さやか「自分の命を使ってでもっ、ここにいるみんなを守りたいのよっ…………!」

フォルネウス「マタ ナカマ カ……」

フォルネウス「セイオウ トイイ ニンゲン ハ ソレバカリダナ」

フォルネウス「クダラナイ……イイカゲン アキアキダ」


さやか「くだらなくなんかないっ……!」


フォルネウス「フン」


さやか「……絶対に負けないっ! アンタにだけは絶対に負けるもんかっ!!」

フォルネウス「ミノホド ヲ シレ」[スミ]


さやか「スクワルタトーレッッ!!!」

フォルネウス「ヌ……?」

ヒュンッ ズバッズバッ ダンッ シュバンッ


まどか「さやかちゃん……速い……!」


フォルネウス「チョウシ ニ ノルナ」[落雷]

バチバチバチバチッ……ピシャアアアアァンッ!!

さやか「ま、だ、まだあぁっ!!」バチィッ

フォルネウス「フン……マアイイ」

フォルネウス「オワラセル」[のみこむ]


さやか「あ……」


バクンッ ブクブクブクッ


まどか「さやかちゃんっ!? そ、そんな……いやあああああっ!!?」


フォルネウス「…………(ブクブクブク)」

フォルネウス「っ!!?」

フォルネウス「がああああああああああっ!!!!???」バタバタバタッ ペッ


まどか「えっ!!?」


ハーマン「おいおい、オレを忘れてもらっては困るな」スタッ

ドサッ

さやか「うっ……げほっげほっ」

フォルネウス「キサマアアアアアアアアッ!!!」


フォルネウス「オ ヲ……! ワタシ ノ オ ヲ……!」

フォルネウス「ヨクモ キリオトシテクレタナアアアアアッ!!!」

ハーマン「ケッ」

ハーマン「さやかにゃまだまだ到達できない、抜き打ちの極地……」スラッ

ハーマン「体の一部を失った気持ちはどうだ? フォルネウス」

さやか「ハーマン……何をしたの?」

ハーマン「おまえにゃ見せたことなかったな……」

ハーマン「居合い抜きには、まだ先があってな……。フォルネウスの尾を切り落とした技こそが……」



ハーマン「抜刀ツバメ返し、だ」

フォルネウス「オノレエエエエエエエッッ!!!」

「ハサミッ!」

バキィッッ

フォルネウス「ガッ…………!」


ボストン「ずいぶんと、頭に血がのぼっているようだな。フォルネウス」

ボストン「そんなおまえの顔面を殴るのは、とても簡単だったぞ」


さやか「ボストン……!」

ウンディーネ「さやか、あなたが時間を稼いだおかげで、態勢は整ったわ」


サラ「……いくよ」

サラ「プラズマショットッ!!!」ヒュンッ バチバチバチバチッ

フォルネウス「ガアアアアッ!!?」バリバリバリ


サラ「雷の攻撃が得意でも、自分が雷をもらったことはなかったでしょ?」

ウンディーネ「あら。なら、私も便乗しようかしら?」

ウンディーネ「サンダークラップッ!!」ババンババンバンバンッ

フォルネウス「キサマラ……!」[ぶちかまし]

ウンディーネ「っ! アレはまずい……!」


さやか「ううん…………。的が近づいてきただけだね」

さやか「スプラッシュ……」

シュンッ シュンッ シュンッ シュン


ウンディーネ「……! 剣を大量に作り出して……。あなた、また魔法を……!」


さやか「スティンガーッ!!!」ビュンッ

シャ シャ シャ シャ シャッ

ウンディーネ「全て、投擲したっ!!?」


ザク ザク ザク ザク ザクッ!


フォルネウス「ガアッ!!?」


さやか「ヘヘ……。全部命中なんて、さやかちゃん、天才スナイパーだね……」

フォルネウス「オノレ オノレ オノレ オノレ オノレェェエエッ!!!」[スミ]

ビチャアッ

さやか「ぐぅっ、目にスミをっ!?」

さやか(この期に及んで、目潰し!?)


フォルネウス「コンドコソ オワリダ……!」[メイルシュトローム]


サラ「あれは……! あの攻撃は止めなきゃダメ……!」

まどか「ダメ、間に合わない……っ! そんな……!」







さやか「ううん。もう視力の回復は終えている」

ヒュンッ





フォルネウス「ナ…………!」

フォルネウス(バカナ……! ナゼ コイツ ガ ワタシ ヨリ サキニ ウゴケル……!?)



さやか「…………。さやかちゃん、必殺ッ!!」



ウンディーネ「アレは……?」

ハーマン「あの技か……」

ボストン「フッ、昨日の訓練で、初めてハーマンに一撃入れた技だな」

ハーマン「…………ああ」


フォルネウス(バカナ…………バカナ バカナ バカナ バカナッ!!)

フォルネウス(ナゼ ニンゲン ニ フカク ヲ トル……!?)

フォルネウス(ナゼ コイツハ ワタシニ ケンヲ フリオロシテイル……!?)





さやか「五月雨斬りッッ!!」

フォルネウス(ナゼ ワタシ ハ クビヲ キリオトサレテイルノダ……?)


ドサッ ゴオオオオオオオオオォォォォォォ……………………

まどか「…………………………………………やった」

まどか「やった……! やったねっ! さやかちゃん!!」


さやか「……………………」フラッ

ドサッ


まどか「さやかちゃんっ!!?」

さやか(あ……こりゃマズイや……)

さやか(ソウルジェムがヤバイ……魔法使いすぎたかも……)


「さやかちゃんっ! さやかちゃんっ!」

「早くバンガードに運びこむぞ!」

「えっ!? は、ハーマンさん……!?」


さやか(これぐらい平気だと思ったんだけどなあ……)


「ボストンッ! ゲートは破壊しろっ! ウンディーネ! さやかに応急処置を!」

「わ、わかったわ!」


さやか(限界までソウルジェムを酷使したのは初めてかな……。まあ、でも)


「さやかちゃんっ! しっかりして! さやかちゃんっ!」


さやか(仲間を守ってこの結果なら、悔いはないかな……)

さやか(ハーマンなら、ちゃんとあたしの魔女も倒してくれるよね……)

さやか(ああ……。何だかすごく眠いや……)

***

-アビス-

「……………………ム?」

「影がやられただと……?」

「倒したのは……。ふん……あの時、膨大な力と共にアビスを通り過ぎた連中の一人か」

「人間などゴミ。聖王のいない今、制圧など容易いと思ったのだが……」

「……貴様に問うぞ。あの娘は何者なのだ?」

「…………美樹さやか、貴様の言う魔法少女の一人、か」

「アレは魔法少女の中でも特別な存在なのか? ……なに? とりたてて強くない新米魔法少女だっただと?」

「そんな存在に影はやられたというのか。……気に入らんな」

「まあいい。宿命の子を見つけ出した暁には、直々にあの娘をその魂ごと喰らってやろう」

「ゲートが開いた時こそ、幻影ならざる我と真のアビスの力を見せてくれる」

「……それまでは、貴様の話でも聞いて気を紛らわせることにするぞ」

「おまえの話はなかなか興味深い。確かにおまえは人間より知能が優れている」


「なあ、インキュベーター」


キュゥべえ「…………君らは人間以上に理解し難いよ。フォルネウス」

キュゥべえ(アビスの力は、破壊に傾きすぎている)

キュゥべえ(……。アビス……、四魔貴族……、それに、宿命の子か……)

投下終了です。
勢いだけで書きました、そしたらハーマンが最強技(閃き難度的意味で)を使ってました。勢いって怖い。

投下します。

「………………ゃん! ………………!」

「……やかっ! 聞いてるの! さやかっ!」

さやか「んあ?」

-見滝原 さやホーム-

ほむら「さやか! 早くしないと遅れるわよ!」

まどか「さやかちゃん! もう、時間ギリギリだよ!」

さやか「え? あ、あれ? アビスゲートは?」


ほむら「あなた。テレビゲームの夢でも見ていたの?」

まどか「さやかちゃん。夜更かしはダメだよ……」

さやか「え? ……あ、あはは」

さやか(あ、あれ? 今までの冒険は全部夢? え、夢オチってマジで?)


まどか「ほらっ、さやかちゃん! 早く服を着替えて!」

さやか「あ。ご、ごめんごめん」

さやか(確かに、いきなり異世界に行くなんて突拍子もないこと、起こるわけないよね)


さやか「えっと、学校に行くんだっけ?」

まどか「何言ってるの? さやかちゃん、恭介君の晴れ姿を見ようって自分から言ったんじゃない!」

さやか「え? そ、そっか。そうだったねー」

さやか(そっか。恭介のコンサートに行くんだっけ? あたしたち)

さやか(いやー。インパクトの強い夢をみたせいか、記憶がぼやけてるなー)





まどか「恭介君と杏子ちゃんの結婚式、楽しみだねっ!」

さやか「って! ちょっと待てえええええええぇぇぇっ!!!?」

まどか「それにしても、恭介君と杏子ちゃんがゴールインするなんて意外だったよねー」

ほむら「志筑仁美は、自分を放ったらかしでバイオリン漬けな上条恭介に愛想を尽かしたのよね」

まどか「それで、ショックを受けた恭介君が魔女の結界に囚われて、杏子ちゃんに救われて……」

ほむら「杏子の笑顔に勇気づけられて、そのまま仲を深めた……」


さやか「ないない。この設定はない」


まどか「でも、当時、それでさやかちゃんと杏子ちゃん大喧嘩しちゃったんだよね……」

ほむら「今もギクシャクしてるわね。杏子はさやかとの友情よりも、愛をとったのよね……」


さやか「いや、あたし、そこまで未練がましいつもりないから」


まどか「学生結婚って素敵だよね……」

ほむら「私なら……、まどかのお父様のような人と結婚したいかしら?」

まどか「ほむらちゃん、男の人と付き合うつもりあったんだ?」

ほむら「私たちも大学生だし、仲間内で浮いた話が出てくるとそういう気分にもなるわ」


さやか「いやいやいや。あたし、受験した記憶ないから」

さやか「ていうか、いくらあたしでも、これは夢や幻覚だってわかるわ」

さやか「こういう場合、頭を思いっきり打ちつければいいんだっけ?」

さやか「ちょっと展開が気になるけど、起きまーす」

***

-バンガード 宿屋-

「ぐっ」

ムクッ

さやか「んん……。やっぱり、夢か」キョロキョロ

さやか「……あっ」


まどか「すー、すー」zzz

さやか「まどかが椅子で寝てる。あたしの側で」

さやか(そっか。看病してくれてたんだ)

さやか(てっきりあたし、魔女になると思ったんだけどな……)

さやか「ソウルジェムはどうなってるの?」スッ


さやか「あれ?」

さやか(意外と余裕がある。結構濁っているけど、大丈夫っぽい?)

「魔女にならなかったのが意外かしら?」

さやか「あ、ウンディーネ」


ウンディーネ「感謝してほしいわね。薬を調合して応急処置をしてあげたんだから」

ウンディーネ「私がいなかったら、あなた今頃魔女になってたわよ」

さやか「そっか。ありがと、ウンディーネ」

ウンディーネ「フンッ。まどかにもお礼を言っておきなさいよ」

ウンディーネ「ついさっきまで寝ずにあなたの看病をしていたんだから」

さやか「そっか……」


ウンディーネ「…………そのソウルジェム」

さやか「ん?」

ウンディーネ「あなたたちが穢れと呼んでいる、その濁り……。それは死の力に似ているわ」

ウンディーネ「言い換えれば、アビスの力ね」

さやか「えっと?」

ウンディーネ「だから、ソウルジェムを浄化したいなら、生の力を注ぎ込むのが一番いいわ」

ウンディーネ「今回、私が処方したのは野生の薬をベースにした霊薬よ。玄武術と材料があれば誰でも作れるわ」

ウンディーネ「後で作り方を教えてあげるから、長生きしたいなら覚えておきなさい」


さやか「ウンディーネ……」

さやか(あたしのこと、心配してくれてるんだ)

ガチャッ

「目が覚めたようだな。さやか」

「フンッ 運の良さは一人前だな」


さやか「! ボストンッ! それに……」

さやか「……………………」

さやか「(・3・)アルェー」


????「おい、何だその反応。ウンディーネ、こいつの頭大丈夫か?」

ボストン「君は、まず名乗るべきではないか? さやかが混乱しているぞ」

????「こいつがバカ面するもんで、ついな。それじゃあ、改めて自己紹介だ」



ブラック「ハーマン、改め、元海賊のブラックだ。今までのジジイ姿はフォルネウスのせいで、そうなってた」

***

9年前のことだ。
当時は海賊時代の末期で、メッサーナ王国が大規模な海賊討伐に乗り出した頃だった。

…………。メッサーナ王国ってのは、メッサーナ地方を束ねる国だ。首都はピドナ。そのぐらい知っとけよ。

で、オレは、その海賊討伐から逃れるため、温海での海賊稼業に見切りをつけて、西大洋に乗り出した。
だが、そこで四魔貴族の一体、フォルネウスに遭遇した。

フォルネウスに船を沈められ、仲間を全員丸呑みにされ、オレ自身も左足と生気を喰われちまった。
その結果が、あの片足のジジイ姿だ。

船も仲間も若さも失ったオレは、海賊をやめ、ハーマンと名乗り、グレートアーチで暮らし始めた。


ブラック「そして、フォルネウスを倒した今、オレ様は若さと左足を取り戻したってわけだ」

ウンディーネ(ぐぬぬ、若返るなんて羨ましい。あの姿、30歳ちょうどぐらいかしら?)


さやか「……………………」

ブラック「過去、悪事を働いたオレのこと、非難するか?」


さやか「ひとつ、訊かせて」

ブラック「ああ」


さやか「若さを取り戻したハーマン、いや、ブラックはさ。海賊に戻るの?」

ブラック「…………いや」

ブラック「どうも、そんな気は起こらねえな」

ブラック「欲しいものは何だって手に入った……、海賊船を見れば誰もが宝を差し出し命乞いした……」

ブラック「そんな自分を、グレートアーチにいた頃は取り戻したくてしょうがなかったな」

ブラック「だが、今では不思議なことに、このまま穏やかに生きるのも悪くないって思えるんだよ」

ブラック「ククッ、信じられるか? この悪名高いブラック様が、だぜ?」


さやか「ま、いいんじゃない?」

ブラック「あ?」


さやか「悪事働く気、無いんでしょ? なら、別に好きに生きればいいと思うけど」

ブラック「オイ、本気か? てめえの性格なら、絶対オレのこと許さないと思っていたが」

ブラック「そもそも、オレが悪事を働かないなんて、何故信じられる?」

さやか「ていうか、ハーマンがブラックの関係者ってのは、予想ついてたし。本人とは思わなかったけどさ」

ブラック「…………」

さやか「そもそもさ」


さやか「これまで、一緒にいた仲間のことなんだから、信用しないでどうするのよ」

ブラック「……クッ、クククク」

ブラック「ハハハハハハハハハハッ! さやか。おまえ、聖王の生まれ変わりか何かか!?」

ブラック「フォルネウスを倒して、悪党を赦して。おまえのようなお人好しは見たことがねえっ!」

さやか「な、なんか、もの凄くバカにされてる気がする」

さやか「ていうか、まどか起きちゃうじゃん。もっと静かにしてよ」

ブラック「ハハッ。っと悪い悪い」


さやか「赦すっていうか、あたしとしては今後は罪を償うため、善行を積んで欲しいんだけど」

ブラック「フッ、ああ、誓う誓う。ここにいる聖王の後継者様に、今後は清く正しく生きますってな」

さやか「なんか、真剣味が足りない……」


ボストン「フッ」

ブラック「……何だ」

ボストン「なに、ここにいる我々が君の誓いの見届け人だ」

ウンディーネ「そうね。宣誓通り、清く正しく生きてもらわないとね。まあ、私たちがいなくとも大丈夫そうだけど」

ボストン「君は素直でないからな。特にさやかに対しては」

ウンディーネ「ああいうふうに茶化すのは、照れ隠しなのよね」

ブラック「ケッ」

ウンディーネ「じゃあ、さやか。治療のため、改めてお薬を飲んでもらうわ」

さやか「あ、うん。わかった」


どよーん…………ボコ…ボコ…………


さやか「(絶句)」

ウンディーネ「あ、それと。一度に大量に飲むと副作用が怖いから、何日かに分けて飲んでもらうから」

ウンディーネ「そうね。大体1週間ぐらいかしら?」

さやか「…………コレヲ、7日間、飲ミ続ケルノ?」

ウンディーネ「長生きしたいならね」


さやか「…………アタシッテホントバカ」



ごくっ ばたんきゅ~

***

さやか「」

まどか「すー、すー」zzz


ボストン「ふむ。さやかは眠りについたようだな」

ウンディーネ「ええ。これでマジメな話ができるわね」

ブラック「で、ウンディーネ。さやかの今の状態はどうなんだ?」

ウンディーネ「危機は去ったと考えていいわ。今は安定しているわ」


ウンディーネ「…………さやかは、あの時、魔女になってもおかしくなかった」

ボストン「だろうな。さやかは明らかに魔法を使いすぎていた」

ウンディーネ「そうね。……でも、魔女化しなかった」

ウンディーネ「これまでの診察で、その原因についてだいたいわかったわ」

ブラック「言ってみな」

ウンディーネ「結論から言えば、要因は2つ。タイミングとさやかの精神状態ね」

ブラック「タイミング?」

ウンディーネ「ええ。さやかのソウルジェムは、アビスからの力によって制限を受けていたわ」

ウンディーネ「そもそも、魔法少女の力は生にして正の力。アビスは死にして負の力」

ウンディーネ「そして、アビスは、生の力を封じる。聖王の生み出した最強術もアビスによって封印されていたと聞くわ」

ウンディーネ「ゆえに、魔法少女の力もまた封じられた」

ウンディーネ「魔法の出力は弱まり、使った際は通常よりも早く穢れが溜まり、生命力も大きく削られる」

ウンディーネ「事実上、魔法は封印状態。無理な魔法の使用は破滅と隣合わせよ」

ウンディーネ「おまけに、魔法少女は生の力の自然回復も無いようだし。薬による死の力の除去しか回復手段は無いわ」

ボストン「ふむ」


ウンディーネ「そして、あの時さやかのソウルジェムは限界を迎えていた」

ウンディーネ「けど同時に、フォルネウスが倒され、アビスからの干渉は弱まった」

ブラック「なるほどな。そういうことか」

ウンディーネ「ええ」


ウンディーネ「限界を迎えたはずのソウルジェムだったけど、アビスからの干渉が弱まったおかげで、猶予が生まれた」

ウンディーネ「そのおかげで、穢れの浄化が間に合ったということよ」

ボストン「2つ目のさやかの精神については、ある程度予想がつくな」

ブラック「まあな。要はこういうことだろ?」


ブラック「あのバカは、負の感情を抱かなかった。だから、穢れの溜まりが少なかった」

ウンディーネ「その通り」


ウンディーネ「穢れは死の力であり、負の力。当然それが溜まれば、精神も影響を受けやすくなる」

ウンディーネ「あの時のさやかは、死に魅入られやすく、また、負の感情を抱きやすい状態だったはずよ」

ウンディーネ「そして、そういった精神は、ますます穢れを呼び寄せる」

ウンディーネ「…………けれど、さやかの心は歪まなかった」

ウンディーネ「仲間を守る、ただそれだけの想いを胸に戦った」

ウンディーネ「倒れた時も、穏やかな気持ちで眠りについたんでしょうね」

ブラック「……バカは厄介だぜ。本当にそれだけしか考えないんだからな」

ボストン「フッ」


ボストン「あとは、ウンディーネの処置が素早かったことか」

ブラック「ボストンの迅速なゲート破壊も、アビスの力を抑える一助になったんじゃねえか?」

ウンディーネ「指示を与えたのはブラックね」


ボストン「フッ」
ブラック「ケッ」
ウンディーネ「ふふっ」


3人「ハハハハハハハハハハハッ!」

まどか「ん……むにゃむにゃ」zzz

さやか「ほ、ほぎー」zzz

まどか「すー、すー」zzz

さやか「あ、あくー」zzz


***

-その頃 ジャングル 妖精の村跡地-

ほむら「……………………」

ようせい「……………………」


エレン(ここが、妖精の村だった場所か……)

マミ「……今は、二人だけにしておきましょう」

マミ「きっと、二人だけじゃないとできない話もあるでしょうし」

ツィーリン「そうね」


エレン「ほむらー! 私たちは向こうにいるからー!」

ほむら「…………ええ。わかったわ」

マミ「暁美さんは」

エレン「ん?」

マミ「あの子は、ずっと長い間、一つの目的のため戦い続けてきたわ」

マミ「ひとりぼっちで、何度も何度も失敗して、それでも諦めずに……」

マミ「そんな繰り返しのなかで、あの子は人を信じることが苦手になってしまったの」

エレン「…………」

マミ「私たちと友達になって、ある程度緩和されていたけど……」

マミ「友達と離れて、一人見知らぬ地に放り出された暁美さんは、再び心を閉ざしてもおかしくなかった」

マミ「そうならなかったのは、きっとようせいちゃんのおかげなのだと思うわ」

マミ「もちろん、エレンさんやゆきだるまさんも……」

マミ「皆さんが、暁美さんの心を支えたんですよ」

エレン「マミ……」

ゆきだるま「アウナスとの戦いは激戦だったのだ」

ツィー リン「そうね。私は控えだったけれど」

ツィー リン「炎を身にまとう大鎌を携えた戦士。強力な剣技と範囲の広い炎の攻撃を併せ持つ魔貴族」

エレン「……ほむらの事前情報が無ければ、勝てたかどうか。それほどの難敵だったわ」

マミ「そうですね。火炎やヒートウェイブといった全体熱属性攻撃、ようせいちゃんの苦手な烈風剣、厄介な状態異常攻撃のインサニティ……」

マミ「けれど、厄介な攻撃への対策は充分に練ることができた。これはアウナス戦を想定して動き続けてきた暁美さんの功績ね」

エレン「……ところで、事前の作戦会議で思ったのだけど、マミとほむらって、戦いの思考が似てるわね」

エレン「相手の行動を読むことを主眼に動いたり、罠やカウンター、行動を封じることを重視したり」

マミ「……ふふっ。そうかもしれませんね」

ツィー リン「まあ、アウナス戦は激戦だったけど、対策のかいもあって優勢に戦えたわね」

***

-アウナス戦(一部分)-

 [烈風剣]
ようせい「ワンダーバングルっ! 練気拳!」
エレン「マキ割りダイナミックッ!」
ほむら「セルフバーニング!」
 [火炎]
マミ「幻日ッ!」
ゆきだるま「生命の水なのだ!」

ようせい「双龍破!」
エレン「練気拳!」
 [超振動剣]
ほむら「シャトウサーバント!」
 [インサニティ]
マミ「再生光!」
ゆきだるま「神秘の水なのだ!」

ようせい「プラズマショット!」
ほむら「霧氷剣!」
 [死神のカマ]
エレン「短勁ッ!」
 [ヒートウェイブ]
ゆきだるま「生命の水なのだ!」
マミ「ティロ・フィナーレ!」

***

ツィー リン「結果として、短期決戦だったわね」

ゆきだるま「敵も味方も、攻撃力の高い奴ばかりだったのだ」


エレン「さて、あいつら二人はどうしてるかしらね」

ほむら「…………」

ようせい「…………」

ほむら「……かつての村の跡地で、村の復興をするの?」

ようせい「ううん、ここはダメね。妖精は木の上で暮らすの」

ようせい「ここの木は燃え尽きて既に死んでるわ。私たちに木を生やす能力なんてないしね」

ほむら「そうでしょうね。あなたってイメージと違って、魔力低かったし」

ようせい「むー。その分、腕力とか高かったじゃない」

ほむら「つくづく、妖精のイメージと違うわ。どこの戦闘民族よ」


ようせい「ほむらはこれからどうするの?」

ほむら「そうね……」

ほむら「さやかが気になるし、バンガードにでも行ってみようかしら?」

ようせい「そうだね。ほむらの友達、まどかや杏子とも既に会っているかもしれないし」

ほむら「噂では、バンガードを発進させた人がいるらしいわ。きっとさやかのことね」

ほむら「もっとも、古い情報だから、今どうなっているかわからないわ」

ほむら「さやかとは、できればフォルネウスと戦う前に会いたいわね」

ようせい「んー。案外、私たちと同じぐらいのタイミングに倒しちゃってるかも?」

ほむら「ふふっ。さやかの実力じゃ、ありえないわ」

ようせい「そうかなー?」

ほむら「まあ、素質に関してはマミや杏子も認めていたし、否定しきれないけど……」

ようせい「…………ああ、ダメだなあ」

ほむら「ようせい?」

ようせい「ほむらのこれからを考えたら、私もついて行きたくなっちゃうよ」

ほむら「そう」

ようせい「…………」


ほむら「私、この世界に来てすぐ、あなたに会えてよかったと思ってるわ」

ようせい「ほむらにとって、私は命の恩人だしね」

ほむら「そうね。……ただ、初めてあなたに会ったとき」

ようせい「うん」


ほむら「正直、ものすごく警戒したわ」

ようせい「知ってる」


ほむら「人じゃない存在とか、愛らしい外見とか、そういうのに昔、酷い目にあわされたから」

ようせい「…………」

ほむら「命を助けられた後も、疑念を晴らすことが出来なかったわ」

ほむら「そんな時に、あなたが人間に攫われた」

ほむら「あの時はどうしようか、すごく迷ったわ」

ようせい「もー。そこはすぐに助けようって考えて欲しかったわ」

ほむら「けど、時々考えるの」

ほむら「もしも、あなたを助けなかったら。あるいは、もしも、私が重症を負わず、あなたに出会えなかったら……」

ほむら「今の自分は、この世界でどう生きていったのかって」


ようせい「…………勘だけど」

ようせい「今よりもずっと冷たくて、面白みのない人間になってたと思う」

ようせい「私の嫌いなタイプの人間ね」

ほむら「…………そうね」

ほむら「目的のためなら手段を選ばない。ただ一人の友達のために何でもするという、かつての誓いそのままに」

ほむら「私のこの過酷な世界の中で、心を凍らせる。……そうなったかもしれない」

ほむら「だから、ようせいに会えたことで私は救われた。ようせいを助けたことで私の方が助けられた」

ほむら「ようせいと一緒にいることで、私は私のままでいられた」

ほむら「私って、いつもそうね。助けようとした相手に、助けられている……」


ようせい「うん、知ってる」

ほむら「こら。何を言ってるの」

ようせい「だって、ほむらって、何でも一人で出来るつもりなんだろうけど、一人にしちゃうと何も出来ないタイプだもん」

ほむら「なっ! そ、そんなはずは」

ようせい「さやかと再会したときだって衝突してたし、根本的に不器用だし、意外と鈍くさいとこあるし」

ようせい「何ていうか。ほむらって、集団で二人組作るとき最後まで残るタイプよね」

ほむら「(グサッ)」


ようせい「ふふっ。やっぱり、ほむらは私がいないとダメなんだね!」

ほむら「ま、待って! まどかなら! まどかなら、私とペアを作ってくれるはず!」

ようせい「んー。さやかとペア作った後で、ほむらに気づいて申し訳無さそうな顔をするに一票」

ほむら「まどかああぁっ!? というか、ようせい。まどかと会ったことないはずなのに、なんてリアルなシチュエーションをっ!?」

ようせい「ふふふっ。何だか安心したわ」

ほむら「何にっ!?」

ようせい「心配しないで、ほむら。なるべく早く妖精の村を復興させてあげるから。そしたら、傍にいてあげるね!」

ほむら「心配しないで、って何の心配よ!」


「おーい、ほむらー! ようせいー!」


ようせい「あ、エレンの声だ。もう出発かしら?」

ほむら「そうね……」

***

エレン「そう、次はバンガードに行くんだ」

ツィー リン「残りの四魔貴族を倒すつもりなの?」

ほむら「まだ考えてないわ。アビスゲートに関しては開閉不可能だってわかったし」

ほむら「奴ら四魔貴族にはどうも開く当てがありそうだけど、ろくな方法とは思えないし」

ほむら「元の世界に帰るのは、別の手段を考えた方がよさそうね」

エレン「やっぱり、ほむらは元の世界に帰るの?」

ほむら「そうね。残してきた友達がいるし」

ほむら「……もしかしたら、その友達もこっちに来てるかもしれないけどね」

ほむら「もし、そうなら早く見つけてあげないと」

エレン「いきなり知らない場所に放り出されるなんて、大変でしょうしね」

エレン(ん? 知らない場所で一人? そんな子がいたような……)


ようせい「ほむらー! みんなー! またねーっ!」


ほむら「ええ、また会いましょう。ようせい」

エレン「あの子のイタズラが無くなると思うと、少し寂しくもあるわね」

ゆきだるま「なのだ」

マミ「ようせいちゃん……」


ほむら「さて、さやかに会いに行きましょうか」

***







まどか「すーすー。むにゃむにゃ」zzz


まどか「ん…………」zzz


***

-回想 見滝原中学 教室-

「はい、あとそれから、今日はみなさんに転校生を紹介します」

「そっちを後回しかよ!」


(……さやかちゃん。転校生ってどんな子かなあ?)ボソボソ

(まったく……。ん? さあねー。本好きの眼鏡っ子とか!)ボソボソ

(うーん)ボソボソ


「じゃ、暁美さん、いらっしゃい」


「……………………」


「? 暁美さん? もう入ってきて結構ですよ?」


(転校生の子、来ないね。さやかちゃん)ボソボソ

(緊張してんのかな? それとも自己紹介に悩んでるとか?)ボソボソ


「…………暁美さん? 暁美ほむらさん?」ガラッ

「…………。あっ……。すいません、ボーっとしてました……」

「えっ!? 大丈夫? 顔色悪い様に見えるけど」

「……いえ、大丈夫です。早乙女先生」


「うおっ、すげー美人! でも、何か体調悪そう」

「えっ……?」

(あの子、夢の中で見た子!?)


「心臓病のこともあるし、保健室に行った方が良いわ。……。確か、保健係は鹿目さんでしたね」

「っ! いえっ! 私は、大丈夫ですから」

「鹿目さん、暁美さんを保健室へ。暁美さんは心臓病の持病で、今まで入院を……」

***

「はい。ここが保健室だよ。暁美さん」

「…………ありがとう。鹿目まどか」

(やっぱり、夢の中で会った子にそっくり)

(でも、何だか)


「……………………」


(私と目を合わせようとしない……)

(ううん、目が合うのを怖がっている……?)

(それに廊下で、何かを言おうとして、途中で止めていたし)


「保健の先生はいないみたいだよ。暁美さん」

「…………ええ」


(夢の中で会った子と違って、明らかに覇気がない……)

(今にも、消えてしまいそうなほど、儚く見える)

(ど、どうしよう)


「まどか…………」

「え?」

「っ! ごめんなさい。何でもないの」

「あ、ううん! 別にいいよ! 名前ぐらい!」
「え、えっと! 私もほむらちゃんって呼んでもいいかな?」
「素敵な名前だよね! 何だか燃え上がれーって感じで!」

(な、何言ってるんだろう。私)

「……………………ありがとう。まどか」

「うぇ、うぇひひ」

***

「なかなか、保健の先生来ないね。ほむらちゃん」

「…………ええ」

「……………………」

「……………………」

(気まずい……。この子と何喋ればいいんだろう?)

「……ねぇ、まどか」

「えっ?」


「私ね……。ずっと、ある人のために頑張ってきたの」

「う、うん。そうなんだ……」

「その人のことを、どうしても助けたくて。上手くいかなくても次こそはって……、一人で何度も何度も」

「そう、なんだ」

「けど……」

「?」


「私の努力は、結局何の意味もなかった。…………それどころか、逆にその人を苦しめていた」

「…………」

「それが分かっても、最後に……、全力で足掻いて……、でも…………」







────どうして? どうしてなの? 何度やっても、アイツに勝てないッ!

────繰り返せば……、それだけまどかの因果が増える。私のやってきたこと、結局……

────まどか……まさか……!? …………ダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!





「ほ、ほむらちゃん?」

(も、もしかして、泣いてるの?)


「わたしっ、がんばったのにっ! でも、けっきょくっ、ぜんぶムダでっ!」

「ほむらちゃん!?」

「こんなのってっ! こんなのってないわよっ!」

「ほむらちゃん」

「ごめんなさい、まどか……。ごめんなさい。ごめんなさい…………」


「もう、頑張れないよ。こんな、弱いわたしじゃ…………」


「こんなわたしを見ないで。まどか…………」


「お願い、一人にして…………」



「……………………」


(ほむらちゃん。ど、どうしちゃったんだろう?)

(えっと。一人にするのは、きっと、良くないよね……)

(何とか、何とか励まさないと!)

「んんっ、……大丈夫だよ。ほむらちゃん」

「…………」

「会ったばかりだけど、私分かるよ。ほむらちゃんが頑張り屋さんだってこと」

「…………」

「その人のこと、とっても大切だったんだよね」

「…………」

「どんなに辛くても、頑張れるぐらい大切だったんだよね」

「…………」

「私、その人のこと知らないけど。でも、その人も、そんなに頑張ったほむらちゃんのこと、恨んだりしないと思うな」

「…………」

「私が、その人なら。きっと、こう言うと思うよ」

「…………」


「ほむらちゃん、お疲れ様。今まで私のために頑張ってくれてありがとう」


「どんなに失敗しても、めげずに頑張ってくれたんだよね。辛くても、今までずっと諦めなかったんだよね」


「大丈夫。ほむらちゃんの努力は、無駄なんかじゃないよ。ほむらちゃんの頑張りひとつひとつが私には嬉しいんだよ」


「…………。え、えっと。やっぱり、私の言うことじゃあ、慰めにならないかな?」

「…………」フルフル

「そ、そう? うぇひひっ、良かった」

「……………………」

「んっと。それでね、ほむらちゃん」

「…………」

「きっと、ほむらちゃんが失敗したのは、一人だったからだよ」

「…………………………」

「大丈夫だよ、ほむらちゃん。もし、まだその人のために頑張れるんなら……」

「…………………………」

「…………次は、私も手伝うよ。もう、ほむらちゃんは一人じゃないんだよ」

「…………………………」

「ほむらちゃんは、一人で悩んじゃダメ。辛いなら、誰かに頼って」

「…………………………」

「約束だよ。ほむらちゃんは一人で悩まないで。そしたら私もほむらちゃんのそばにいるから」

「何のとりえもない私だけど、ほむらちゃんがその人を助けられるように、頑張るから」

「…………………………」

「…………だからね。ほむらちゃん」

「……………………………………」

「もう、一人で苦しまなくてもいいんだよ」



「え、えっと。げ、元気出たかな? ほむらちゃん」

「……………………」コクッ

「そ、そう? それじゃ、顔を上げてこっち向こう?」

「…………!」フルフルッ

「え、ええっ!?」

(やっぱり、まだ、不安なのかな!?)

ガラガラッ

「まどかー。遅いから先生に言われて見に来たよー」

「(ビクッ)」バッ

(あっ、ほむらちゃん。びっくりして、顔を上…げ………て………)


「……………………」


「て、転校生が、むっちゃボロ泣きしてるーーっ!?」

「ほ、ほほ、ほむらちゃんっ!!? 顔がすごいことになってるよっ!?」

「ぢ、ぢがうの……!(ズズッ)み、みないで、まどが……!」

「美人の面影がまったくないよっ!? まどか、あんた、転校生に何しちゃったのっ!?」

「わ、私のせいっ!?」

「ぢ、ぢがっ……!」


***

-現在 バンガード 宿屋-

まどか「ん……」


まどか(ほむらちゃんの夢……)

まどか「(ぼーっ)」


まどか「あっ! そうだ、さやかちゃんはっ!?」ガバッ


ウンディーネ「さやかなら、一度起きたわよ」

まどか「う、ウンディーネさん?」

さやか「うーん、うーん」zzz

ウンディーネ「まだ安静にしてなきゃダメだけど。本人も元気そうだったし、もう心配はいらないわ」

まどか「そ、そうなんですか。良かった……」ホッ


ウンディーネ「それじゃあ、私も少し席を外すから、何かあったら呼んで」

まどか「あ、はい」

ガチャッ バタンッ


さやか「うーん、うーん。下水道が……、ディープワン先生が……」zzz

まどか「さやかちゃんも、元気そう。良かった……」

まどか「そういえば、ほむらちゃんの夢」

まどか「懐かしいなあ。あの後、必死に落ち着かせようとして、でも、なかなか泣き止まなくて」

まどか「最後には、早乙女先生まで来て、大混乱だったよね」ウェヒヒッ


まどか「その後、キュゥべえに魔女の結界へ誘い込まれて、キュゥべえが襲われて、でも、一悶着の後にほむらちゃんから事情を聞けて……」

まどか「みんな、仲良くできればいいのに、でも、なかなかそうならなくて」

まどか「ホントに苦労の連続だったよね……」


まどか「あれ? 私……」

まどか「…………」

まどか「誕生日10月3日、血液型A型、好きな芸能人は氷川きよし!」

まどか「ママはキャリアウーマン! パパは専業主夫!」

まどか「恥ずかしいエピソードその1、登校中にコケて、何かを必死に掴んだら、さやかちゃんのスカートだった!(当然さやかちゃんからすごく怒られた)」


まどか「今までのこと、思い出せる……。記憶が戻った?」

まどか(夢を見たから? えっと、夢は記憶の整理整頓って言うし、それでかな?)


まどか「……………………。あれ? でも…………」



まどか「ワルプルギスの夜のときのことは、思い出せない……?」

***

-バンガード 外-

サラ「…………」

「あなたと会うのは、男爵の謀反事件以来ね」

サラ「ええ。まさか、この町であなたとお会いするとは思いませんでした」

「そうね。……ただ、私は以前にもこの町に来たことがあるの」

サラ「そうなんですか?」

「ええ。そのとき、さやかという子と少し話したかしら」

「でも、まさか、その子がフォルネウスを倒すとは思わなかったわ」

サラ「さやかは、強かったですよ」

「そうね。確かにあの子は強い子だったわ」

サラ「けれど、どうして、あなたがロアーヌを離れてこの町に? あなたはモニカ様の護衛のはずでは」

「……今の私は、モニカ様の護衛の任務とロアーヌ貴族の身分を返上しているの」

サラ「……そう、ですか」

「今回、あなた達を訪ねたのは、そのことにも関係しているわ」

サラ「そうですか」





サラ「話を伺いましょう。カタリナさん」

カタリナ「ええ。サラ」

カタリナ「そうね。本題に入る前に、私の身の上の話になるのだけど」

カタリナ「私は、前ロアーヌ侯爵、フェルディナント様から聖剣マスカレイドを受け賜わっていた」

サラ「ロアーヌ侯爵家に代々伝わる、聖王遺物ですね」

カタリナ「ええ。けれど、私はこともあろうか、その聖剣マスカレイドを奪われてしまった」

サラ「聖王遺物を奪われた……。それはまさか」

カタリナ「とんでもない失態だわ。けれど、これまでの調査で犯人の目星はついたわ」


サラ「……マクシムスですか?」

カタリナ「その通りよ」


カタリナ「ロアーヌでマスカレイドを奪われた……。当然犯人は港町のミュルスに向かったはず」

カタリナ「私はミュルスで調査したけれど、かろうじてわかったのは犯人がピドナに向かったことだけ」

サラ「…………」

カタリナ「情報は少なかった。けれど、その周到さが逆に犯人の手がかりになったわ」

サラ「周到さ……ですか?」

カタリナ「ええ」

カタリナ「犯人がマスカレイドを奪った手口。あれは、私のことを念入りに調べてなければ不可能なはず」

カタリナ「それに、ミュルスでも、犯人の足跡はほとんど消されていた」

カタリナ「ならば、それが出来る犯人は相当な権力、組織力を持っているはず」

カタリナ「神王教団の幹部、マクシムスのことを疑うには、あまり時間がかからなかったわ」

サラ「なるほど……」


サラ「ところで、どうやって奪われたんですか?」

カタリナ「それは訊かないで。お願い」

カタリナ「マクシムスに疑いをもった私は、奴の経歴を洗ったわ」

カタリナ「すると、ある時期から奴の経歴が辿れなくなった」

カタリナ「捜査は行き詰まったわ。けれど、ある日、その時期の少し前に死んだと言われる犯罪者の一人と、奴の特徴が似ていることが判明した」

サラ「! それはまさか……」


サラ・カタリナ「海賊ジャッカル……」


カタリナ「やはり、あなたたちも突き止めていたのね」

サラ「……私たちもマクシムスについて調べてましたから。確証はありませんでしたけど」

カタリナ「そう」

カタリナ「海賊ジャッカルの最期は、海賊ブラックに殺された」

カタリナ「手に入った情報はここまで。それ以上は手に入らなかったわ」

サラ「…………」


カタリナ「だから、これ以降の話は、私の推測」

サラ「え?」





カタリナ「海賊ジャッカルは、魔海侯フォルネウスと取引をして、命を拾った」

サラ「!?」

カタリナ「もともと、海賊ジャッカルはアビスの魔物と手を組んで悪事を働いていた」

カタリナ「フォルネウスにとって、奴は手駒としてちょうど良い存在だった。だから……」

サラ「待ってください! フォルネウスと取引したなんて、いくら何でも信じられませんよ」

サラ「身代わりを立てるとか、そういう手段だって……」

カタリナ「海賊ブラックは果たして、身代わりに気づかないほどマヌケなのかしら?」

サラ「…………」

カタリナ「そもそも、海賊の首領が身代わりを立てて一人だけ逃げ出すなんて不自然よ」

サラ「それは確かに……」

カタリナ「ジャッカルとの戦いの後、海賊ブラックの一味はフォルネウスに襲われて壊滅したとも聞いたわ」

サラ「!」

カタリナ「これには、ジャッカルの手引きがあった。そう考えられないかしら?」

サラ「…………」

カタリナ「もちろん、ジャッカルがフォルネウスと手を組んだ証拠はないけど……。魔貴族と手を組む人間の話は決して少なくない」

サラ「カタリナさんの推測も、充分にありえる話……!」

サラ「じゃあ、マクシムスの目的は……?」

カタリナ「アビスの魔物と聖王遺物を利用しての、この世の支配……。私はそう見てるわ」

カタリナ「これは魔貴族にとっても都合のいい話よね」

カタリナ「けれど、実のところ、こんな推測を立てたところであまり意味は無いわ」

サラ「え?」

カタリナ「重要なのは、マクシムスこそが聖王遺物を悪辣な手段で聖王遺物を集めまわっている犯人だということ」

カタリナ「そして、奴の悪事を白日のもとに晒すには、奴の正体がジャッカルであることを証明するのが最善ということ」

サラ「もしかして、カタリナさんが私たちに接触したのは……」

カタリナ「ええ。ジャッカルについて、詳しい人物を探していたの」

カタリナ「あなたの仲間のハーマンという老人が、温海の海賊やフォルネウスについて詳しいと聞いたので、こうして訪ねたのよ」


「なるほどな」


カタリナ「? あなたは……?」

ブラック「オレか? オレはおまえが訪ねに来た相手のハーマンだ。まあ、それは偽名で、本名はブラックだがな」

カタリナ「海賊ブラック!? 生きていたの?」

ブラック「色々あったがな。それと、もう海賊は廃業している。元海賊ってのが正しいな」

カタリナ「…………(チラ)」

サラ「……彼のことは信用して問題ないと思います」

カタリナ「そう……」

ブラック「フォルネウスがジャッカルの手引きでオレを襲った……か」

ブラック「確かに、西大洋に出てフォルネウスに遭遇するまでが早すぎた」

ブラック「これはマクシムスとやらに会う理由が増えたな」

ブラック「おい、サラ。まどかが起きたら、ピドナに行くぞ」

サラ「え? でも……」

ブラック「マクシムスが奴本人なら、長く野放しにしない方がいい。こうしている間にも奴は悪巧みをしてるはずだ」

ブラック「それに、おまえらの話だと、奴は銀の手を狙っている可能性が高いんだろう?」

ブラック「ならば、なおさらだ」

サラ「う、うん」

カタリナ「私としても、マスカレイドを取り戻すのは早いほうがいいわ」

***

-バンガード 宿屋-

さやか「復ッ活ッ! さやかちゃん復活ッッ!」

まどか「まだ、安静にしてなきゃダメだよ。さやかちゃん」

ウンディーネ「当分は戦闘も禁止よ」

さやか「えー」

ボストン「ふむ。二人共起きたのならちょうどいい。客が来ている」

まどか・さやか「?」

***

カタリナ「お久しぶり、ね」

まどか「えっと……。あっ! ロアーヌで会ったモニカ様の侍女さん!」

さやか「以前バンガードで会ったお姉さん!」


ブラック「起きたなら、今からピドナに行くぞ」

サラ「これから、カタリナさんと一緒にマクシムスの野望を潰すの」

まどか「え、急過ぎませんか? さやかちゃんも起きたばかりだし……」

さやか「ん? 別にいいよ。てか、あたしはすぐにでも行きたいかな。杏子にも会いたかったし」

ウンディーネ「まあ、戦闘に参加しないなら、さやかの同行を許可してもいいけど」

まどか「うーん。ウンディーネさんが大丈夫って言うなら」

ボストン「私は、最果ての島に帰ろう」

さやか「ボストン……」

ボストン「島の仲間にもフォルネウス戦のことを報告せねばならん」

ボストン「さやか。私の助力が必要なときは、いつでも来い。ロブスター族はおまえの仲間だ」

さやか「そうだね。うん」


ウンディーネ「私もバンガードに残るわ。バンガードを動かす人がいないとボストンが帰れないしね」

ボストン「確かに、さすがに最果てまで泳ぐのは骨だ」

さやか「そっか……」


さやか「ボストン! ウンディーネ! 今まで本当にありがとう!」

ボストン「気にするな。さやか」

ウンディーネ「まあ、苦労はしたけど、退屈はしなかったわね。あなたとの旅は悪くなかったわ」

カタリナ「ということは、ピドナに向かうメンバーは5人ね」

サラ「さやかを戦わせないなら、戦闘メンバーは4人かな」

さやか「うーん。つまんないけど、まあ雑魚戦ぐらいならいっか」

ブラック「フンッ、強くなりたいなら観るのも修行のひとつだ」

まどか「杏子ちゃん、大丈夫かな。神王教団に忍び込んだりしてないかな……」


さやか「あ、そうだ。ブラック」

ブラック「ん?」

さやか「抜刀ツバメ返し、見せて! あたし、フォルネウス戦では見れなかったんだよね」

ブラック「イヤだね」

さやか「何でよっ! 見せてくれたっていいじゃん!」

ブラック「自分の奥義を軽々しく披露する奴なんていねえ。今まで使わなかったことから察しろ」

さやか「ケチっ!」

***

ウンディーネ「行ってしまったわね」

ボストン「ウンディーネは私を最果ての島に送った後、どうするのだ?」

ウンディーネ「バンガードに残るわ。もう、バンガードを動かす必要はほぼ無いでしょうけど」

ウンディーネ「動かせなくする必要もまたないでしょうし」

ボストン「ふむ。そうか」

ウンディーネ「さて、最果ての島に向かいましょうか」

-ピドナ 新市街-

さやか「ここがピドナかー」

カタリナ「ピドナに来たことがない人って珍しいわね」

サラ「ほとんどの港町からピドナ行きの船が出てますからね」

さやか「え? あたしってもしかしてお上りさん?」

まどか「ウェヒヒ……。と、とりあえず旧市街に向かおうよ」

サラ「うん。あれ?」

さやか「どうかしました? サラさん」

サラ「ゴンとミッチが……」



ゴン「まどか! サラ!」タタタタ

ミッチ「たいへんなの! キョーコが……」テテテテ


まどか「えっ!? 杏子ちゃんがどうしたの!?」


ゴン「キョーコがきょーだんからつみにとわれてるんだ!」

まどか「ええっ!!?」

ブラック「チッ。そう来たか」

投下終了。
以下、おまけの没ネタ。

※没ネタ(本編との関連性はありません)

ウンディーネ「ソウルジェムの浄化には、あなたたち魔法少女が使うというグリーフシードを参考にしたわ」

さやか「えっと。それって、穢れの除去?」

ウンディーネ「そうよ」

ウンディーネ「術によって、あなたの魂と肉体の結びつきを一時的に強め、そのうえで特殊な薬を飲ませる」

ウンディーネ「この薬は、死の力との親和性が高く、死の力を吸収するの」

ウンディーネ「薬を大量に飲ませることで、穢れを体外に放出することが可能よ」

さやか「ほうほう」



ウンディーネ「ただし、穢れは尻から出る」

さやか「えっ」

ウンディーネ「あと、尻から出たソレは、『死のかけら』という貴重な開発素材になるわ」

さやか「えっ」

ウンディーネ「…………」

さやか「…………」


さやか「あたし、もう二度と魔法は使わないよ。あと、間違っても開発に使わないでね」

ウンディーネ「賢明ね」

これで本当に今日の分投下終了です。失礼しました。

マクシムスの野望編を投下します。遅れて申し訳ありません。

-旧市街-

さやか「旧市街に駆けつけたけど……」


神王教徒s「……」ゾロゾロ

さやか「何よこいつら」

まどか「神王教団の人たちが沢山いる……。それに……」


ざわざわ

「おいおい、盗人だってよ」「教団から物を盗むなんてやばくないか?」「ミューズ様に被害が無ければいいんだけど」


まどか「旧市街の人たちも集まってきてる……」

ブラック「フン、やはりそういう展開か」

さやか「ブラック?」

ブラック「アレを見てみな」

まどか「あっ! 杏子ちゃんたちと神王教団の人が言い争っている!」

ブラック「奴の汚い手口が目の当たりにできるぜ」

ミューズ「お帰りください。杏子は無実です」

マクシムス「おや。クラウディウス家のご令嬢ともあろう方が、盗人を庇い立てるのですか?」

杏子「……」ギリッ

ミューズ「ですから! 杏子は盗みなどしておりませんっ!」

シャール「杏子の潔白はクラウディウス家が保証する。言いがかりはよしてもらおう」

マクシムス「ほほう。あなた方はあくまでその少女の無実を主張するのですか。こちらには証人もいるというのに」


男性「そこの少女が、コソコソと辺りを見回しながら教団に忍び込んでいったんだ。
   旧市街出身っぽかったし、盗人だってピンときたね」

教徒「教団で祈っていたら、突然物音がして少女が逃げていったんだ。間違いなくその子だったよ」

女性「教団から出てきたその子が、何かを抱えて旧市街まで一目散に駆けていったんです」



さやか「どういうこと!? まさか、本当に杏子が盗みを!?」

サラ「ううん、違う。多分あれは偽の証人だよ」

マクシムス「もはや、どちらが正しいかは明白でしょう。あなた方も罪に対し向き合うのです!」

ざわざわ

「あの少女が盗みを……?」「ミューズ様にご迷惑をかけるなんて……」「教団の物を盗むなんて、罰当たりな」
「ミューズ様もあんな奴なんて庇わなければいいのに」「おまえなんて罰せられちまえー!」


男性「こんな感じで良かったですか? マクシムス様」ヒソヒソ

マクシムス「おい、馬鹿。余計な事を言うな。誰が聞いてるかわからんだろう」ヒソヒソ


ミューズ「マクシムス……あなたという人は……!」

シャール「卑劣な……!」



さやか「何よこれ! 街の人まで杏子を悪者だと思っている……!」

カタリナ「これがマクシムスの狙いね。家柄や地位のない相手なら、陥れることも容易い」

ブラック「向こうからすりゃ攻めやすく、クラウディウス家からすれば切り捨てられない人間。狙うにゃ格好の獲物ってことか」

サラ「このままじゃ杏子は捕まるし、クラウディウス家もただじゃすまないんじゃ……」

さやか「っ! 今すぐ、あいつら全員ぶっ飛ばしてやるッ!」

ブラック「してどうする。そんなことをしたら無実どころか、罪が増えるだけだろうが」

さやか「じゃあ、どうしろっていうのよッ!」

ブラック「……おまえ、相変わらずバカだな」

さやか「はあっ!?」


まどか「……あ、そっか」

サラ「まあ、人が沢山いるならこっちも好都合だよね」

カタリナ「最初の作戦通りにいきましょう」

***

マクシムス「皆さん! 静粛に! ……我々神王教団は寛大。罪人にも慈悲の心を忘れないのです」

マクシムス「盗んだ物を返すというならば、彼女を罰することはしないと約束します」

マクシムス「さあ、あなた方の持つ、"聖王遺物"を神王教団に返却するのです!」


杏子「チッ、やっぱりそれが狙いかよ」

シャール「どうしますか、ミューズ様。このままでは杏子が……」

ミューズ「……。こうなってしまってはどうしようもありません。銀の手を渡すしか……」

杏子「いや、ひとまずあたし一人が罪を背負う。で、隙をみてなんとか逃げ出してやるさ」

ミューズ「ダメです! そんな、杏子を切り捨てるような真似はできません!」

杏子「ミューズが親父さんの形見を渡すのだっておかしいだろうが!」

シャール「……マクシムスの悪事を掴めば形勢は変わります。ミューズ様、ひとまず杏子に任せてみては」

ミューズ「で、でも。そんな……杏子が……」


「やれやれ。ちょっと邪魔するぜ」

マクシムス「……っ! バカな、おまえは!?」


ブラック「神王教団ってのは、残虐非道な犯罪者に教えを説かせるのか。変わってるな」

ブラック「フン。なにがマクシムスだ。キサマの正体は海賊ジャッカルだ!」

ざわっ

「海賊ジャッカル!?」「どういうことだ? マクシムス様が犯罪者!?」「他人の空似じゃないか?」
「でも、マクシムス様もあの人を見たときにうろたえたし……」「まさか本当に……?」


杏子「ジャッカル……」

ミューズ「これは……」

シャール「どうやら、風向きが変わってきたようだな」


ブラック「ジャッカル一味のあかしは赤いピアス。そして、奴本人の腕には決して消えないジャッカルのイレズミがある!」

まどか「腕を見せて!」

マクシムス「ぐっ」

ざわざわ

「おい、なかなか袖をまくらないぞ」「なんか挙動不審だし」「おいおい、すごいことになってきたぞ」
「嘘だろ……マクシムス様がそんな……」「俺、神王教徒やめようかな……」


マクシムス「……くそっ。ブラックめ」

マクシムス「やれ! モンスターども!」

神王教徒(?)「ギャギャギャッ」バッ

マクシムス「フンッ。俺様はこの隙に逃げさせてもらう」ダッ


杏子「っ! あのヤロー、逃がすか!」

「うわー、モンスターが!」「ひー、お助けー」「びえーん、ママー」

シャール「杏子! まずはモンスターを倒すんだ!」

杏子「ッ! クソッ」

***

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

まどか「杏子ちゃん!」

さやか「杏子!」

杏子「まどかに……、さやか!? オイオイ、久しぶりだな!」

さやか「いやー、ちょっと死にかけたけど、無事杏子と再会できて良かったよ!」

まどか「さやかちゃん、フォルネウス戦のような無茶は今後禁止だからね」

杏子「おいおい……何したんだ」


カタリナ「あなたはマクシムスの手下かしら?」チャキッ

男性「ヒッ! ち、違う! 俺はマクシムスに金で雇われて嘘の証言をしただけなんだ!」


ざわざわ

「つまり、濡れ衣だったのか……」「マクシムスの奴、最低だな……」「やっぱりミューズ様が嘘つくはずないもんな」
「ミューズ様、マジ女神」「俺、今度から神王じゃなくてミューズ様崇めるわ」


まどか「良かった……! 杏子ちゃんの疑いも晴れたみたい!」

ブラック「安心してる場合か。ジャッカルを追うぞ。おそらく港に向かったはずだ」

杏子「あの野郎! 絶対にぶった斬ってやるッ!」

-ピドナ 港-

船員「マクシムス様? 今しがたリブロフ行きの船に乗りましたよ」

杏子「チッ。遅かったか」

まどか「リブロフって確か」

サラ「タチアナの故郷で、ナジュ砂漠の入り口だね」

サラ「そして、ナジュ砂漠には神王の塔がある」

カタリナ「神王の塔……。考えうるマクシムスの目的地で、そこが一番ありそうね」


杏子「それにしても、今回は本当に腸が煮えくり返ったよ」

杏子「マクシムスの奴、あたしを使って銀の手を奪おうとしやがった!」

まどか「杏子ちゃんが神王教団に忍び込んだっていうのも、相手の嘘だったんだよね?」

杏子「ああ。確かに潜入することも考えたけど、やるにしてもまどかたちを待ってからの方がいいだろうしな」

ブラック「潜入しなくて正解だろう。もし、連中に見つかっていたら、もっと面倒な事態になっていたはずだ」

杏子「うへぇ……。っと、そうだ。遅くなったけど、まどかたちには礼を言わなきゃな」


杏子「ありがとな。正直、さっきの状況はヤバかった」

杏子「あのままだと、あたしが捕まるか銀の手を渡すかの二択だったと思う」


さやか「うむうむ。もっとさやかちゃんを褒めるがよいぞ」

杏子「(無視)じゃ、一度ミューズの家に戻るぞ」

さやか「ちょっ、久しぶりに会ったのに、スルーなんて冷たくない!?」


サラ「(無視)今後のことを相談しないとね」

ブラック「(無視)正体がバレた以上、ジャッカルはこれから迅速に行動するはずだ」

まどか「(無視)作戦会議しないと!」


さやか「もしもーし。……ぐすん」

カタリナ(この子の立ち位置が分かってきたわ)

***

-ピドナ 旧市街 ミューズの家-

杏子「ってことだ。あたしはマクシムスの奴を追うよ」

ミューズ「あの、私も一緒に行ってはいけませんか?」

シャール「ミューズ様! 夢魔と同時に病魔も去ったとはいえ、危険な場所に行くのはよしてください!」

ミューズ「そうですか……」


まどか「ミューズ様、以前より行動的になりましたね」

シャール「幼い頃のミューズ様はお転婆で、よくクレメンス様を困らせていた」

シャール「むしろ、あれがミューズ様の本来の姿なのかもしれないな」

まどか「杏子ちゃんと相性良さそうですね」ウェヒヒッ


さやか「それで、神王の塔に向かうのは6人でいいの?」

杏子「そっちのメンバーにあたしが加わるわけだね」

ミューズ「杏子。怪我には気をつけてくださいね」

杏子「はいよ。それじゃ、行くとするか」


さやか「それにしても」

杏子「ん?」

さやか「ようやく、再会できたね。杏子」

杏子「ああ。お互い無事みたいで何よりだ」

さやか「そだね。……残りの2人とも、早く合流したいな」

まどか(ほむらちゃんとマミさん、元気かなあ)

-その頃 静海沿岸地方 西沿岸-


ザザーン……


ほむら「……」キョロキョロ

マミ「暁美さん、これはどう考えても……」

ゆきだるま「バンガードは今この近海に来てないみたいなのだ」

エレン「ここまで来て、無駄足……」

ツィー リン「動く島……、見てみたかったわね」


ひゅううううぅぅぅぅ…………



ほむら「今さらだけど、バンガードなんておいそれと立ち寄れないわよ。さやか!」

ほむら「何が、『何かあったらバンガードに来て! 絶対ほむらの力になるからさ!』よ!」

ゆきだるま「これじゃ、伝言も残せないのだ。とほほ」

-ナジュ砂漠 神王の塔 付近-

さやか「や、やっと辿り着いた……」

杏子「方角間違えて、乾いた大河に辿り着いたときは焦ったなー」

まどか(ハシゴがたくさん設置してあったけど、誰がつけたんだろ?)


カタリナ「さて、今すぐ神王の塔に侵入してマクシムスを探したいのだけど……」


神王教徒「……(塔の前で立ち塞がっている)」

カタリナ「やはり、神王教徒以外は塔に入れないみたいね」

ブラック「教徒以外は寄付一万オーラムの必要あり、か。……あいつら叩き斬っていいか?」

杏子「あんた、結構物騒なんだな。いや、気持ちはわかるけどさ」


まどか「サラさん、どうしましょうか? 私たち、一万オーラムなんて持ってないですよ」

さやか「あたしはフォルネウス戦に備えて、買い物たくさんしちゃったし……」

杏子「つーか、一万オーラムなんて、持ってても払いたくねーよ。やっぱ強行突破するか?」

さやか「あんたね……。そういう、犯罪で解決しようとする考え、いい加減やめなよ」

杏子「犯罪って何だよ。つーか、さやかは知らないだろうけど、あたしは連中に随分と迷惑かけられてんだよ」

さやか「だからって、やり返していいわけ?」

杏子「ちょっと気絶させるだけだろうが。そんな目くじら立てるほどのことじゃねーだろ」

さやか「だから、そういうやり方は!」


まどか「ちょっとちょっと! さやかちゃん、杏子ちゃん、ストップ!」

サラ「ちゃんと、入る手段は用意してあるのに……。あの二人ってよく喧嘩するの?」

まどか「はい。普段は仲がいいんですけど、お互い意地っ張りなので……」

ブラック(やれやれ、さやかが二人に増えたな……)

***

エージェント「あなたがサラさんですね? トーマスカンパニーにはいつもお世話になっています」

サラ「はい。それで、例のモノは?」

エージェント「ええ、ここに。丁度6人分です」

[サラは神王教団のローブを手に入れた!]

サラ「ありがとう」

エージェント「いえいえ、トーマスカンパニーにはいつもお世話になっていますから」


さやか「え、えっと……?」

まどか「ナジュ砂漠やアケの物件は、全部トーマスカンパニーの物件なんだって」

カタリナ「そういえば、少し前にドフォーレ商会がトーマスカンパニーに買収されたって聞いたわ」

サラ「既に、世界の経済の半分はトーマスカンパニーが握っているんだって」

さやか「マジですか」

杏子「トーマス、すごすぎんだろ」

***

-神王の塔-

ブラック「さて、ジャッカルはどこにいるのやら」

カタリナ「そうね。ここは、最も偉い人物。つまり、教祖のティベリウスに尋ねてみましょう」

まどか「ティベリウス?」

杏子「タチアナいわく、わけわかんないこと言うハゲじじいだ」

まどか「ああ! タチアナちゃん、そんなこと言ってたね!」

サラ「あはは……」

***

-数十分後-

まどか「……」ゼエゼエ

サラ「……ちょっと休憩しよっか」

さやか「ま、まどか、大丈夫?」

杏子「砂漠のど真ん中の塔の階段を登り続けたら、こうなるよな」


さやか「あ、そうだ。カタリナさん、ちょっと訊いていいですか?」

カタリナ「あら、何かしら?」


さやか「マクシムスはどんな手口でマスカレイドを奪ったんですか?」

杏子「それはあたしも訊きたいな。奴の次の行動を予測するのに役立ちそうだし」

カタリナ「!?」ギクッ


まどか(あれ? カタリナさんが、すごく後ろめたそうにしてる)

サラ「杏子の言うとおりです。言いにくいかもしれませんが、話してもらえませんか?」

カタリナ「……! わかったわ。話しましょう」

-回想 男爵謀反事件後 ロアーヌ-

偽ミカエル「カタリナ、ご苦労だった。怪我はないか?」

カタリナ「はっ! もったいないお言葉です」

偽ミカエル「私はカタリナという一人の女性を心配しているのだ」

カタリナ「み、ミカエル様……。うれしい……」

***

偽ミカエル「ふぅ、ところでカタリナ。マスカレイドは持っているか?」

カタリナ「はい、ここに!」

バッ

偽ミカエル「ふはははは、バカめ! カタリナよ、俺の変装術は見抜けなかったようだな!」

カタリナ「しまった! マスカレイドを盗まれたわ!」


***

-現在 神王の塔-

カタリナ「……というわけなの。敵の見事な変装術と策略によって、私はマスカレイドを奪われたわ」

まどか「そうだったんですか……」

サラ「カタリナさんの目を欺くなんて……」

さやか「な、なんて卑怯な手を……!」


ブラック(いや、ただマヌケなだけだろ)ボソッ

さやか(ちょっと! 思っても、そういうことは言っちゃダメ!)ヒソヒソ

杏子(主君に化けられて見抜けないなんて、残念すぎねーか?)ヒソヒソ

サラ(う、うん。何だか、カタリナさんのイメージが崩れちゃった)ヒソヒソ

ドゴオオオオオオオンッ


全員「!?」

カタリナ「今の衝撃は!?」

杏子「向こうの部屋からだッ!」


***


-神王の塔 礼拝堂-

レッドドラゴン「ギャアアアアス!」

フェーン「…………」ズズズ

バガー「シャアアアアッ!」

グリフォン「キェエエエエッ!」


ティベリウス「くっ! なぜこの塔にモンスターが!?」


「ハハハハハッ! ティベリウス、この塔はもらったぞ!」


ティベリウス「マクシムスか!? 貴様、どこにいるのだ!」


「フン、知る必要などあるまい。貴様はここで死ぬのだからな!」


サラ「! おじいさんがモンスターに襲われているわ!」

カタリナ「マクシムスのモンスターね。それに、あの人は神王教団の教祖のティベリウスだわ」

さやか「助けなきゃ!」

ブラック「分担してモンスターを仕留めるぞ!」


モンスターたち「ギャアアアアアアアアスッ!!」

-カタリナサイド-

バガー「シャアアッ!」

カタリナ「こいつの相手は私一人ね。まあ、大して強くないから問題ないけれど」

カタリナ「バガーは甲殻のせいで守りが堅い。ならば、ここは……」


バガー「シャッ!」[通常攻撃]

カタリナ「マタドール」ヒラリッ

ビシュンッ

バガー「ギャアアアッ!?」ボシュウウウ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

カタリナ「やはり防御無視攻撃が一番ね」



-さやか・ブラックサイド-

(陣形:フリーファイト)

さやか「よっしゃ。リハビリに軽い運動でもしますか!」

フェーン「……」ズズズ


ブラック「次元断」シャッ

ブイイイイイイイイン

フェーン「ヌワー」ボシュウウウ


戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

ブラック「終わったぞ」

さやか「……ねえ、ブラック。あたしの出番は?」

ブラック「てめえは、まだ戦闘を控えろと言われてるだろうが」

ブラック(さて、バガーやフェーンはともかく、グリフォンとレッドドラゴンは強敵だ)

ブラック(あいつらはどうなっている?)

-杏子・ティベリウスサイド-

(陣形:ライフシールド)

グリフォン「キエエエェッ!!」

杏子「オイ、爺さん。死にたくなけりゃ後ろに下がってな」

ティベリウス「おぬしらは神王教徒ではないな。何者だ?」

杏子「何者と言われてもな……。マクシムスの被害者たち、ってとこか?」

杏子「あいつの正体は、元海賊のジャッカル。神王教団を隠れ蓑にして悪事を続けていたんだよ」

ティベリウス「なんと……」


グリフォン「キエッ!!」[グライダースパイク]

杏子「よっと」ヒョイッ


ティベリウス「神王様のための教団を利用するとは……マクシムスの奴めが!」

杏子「……神王様のための教団、ね」

ティベリウス「何が言いたい?」

杏子「いや、言いたいことも訊きたいこともあるけど、あいつを倒してからにしよう」

ティベリウス「……そうだな」


杏子「双龍破ッ!」シャッ グオオオオオオンッ

ティベリウス「スターフィクサーッ!」ギュルギュルギュルッ

グリフォン「キエエエッ!」

グリフォン「ギャッギャッ」バサッバサッ

杏子「チッ! 空にいる敵ってのは面倒だな。思うように攻撃できねー!」

ティベリウス「この部屋は天井が高いからな……」

杏子「爺さん。あんた、何かあいつの動きを止める手はないか?」

ティベリウス「……あるぞ」

杏子「へえ。どんな手なのさ」

ティベリウス「奴が空を飛んでることを利用し、風で体勢を崩すのだ」

ティベリウス「上手くすれば、混乱の状態異常も誘発できるはずだ」

杏子「なるほどね」

ティベリウス「そして、お主は体勢の崩れた瞬間を狙って攻撃するのだ」

杏子「タイミングが重要ってことか」

ティベリウス「だが、上手く合わせられるのか?」

杏子「うん? あたしの実力を疑っているのか?」

ティベリウス「違う。お主は儂にいい感情を持っておらんだろう」

ティベリウス「そんな相手と呼吸を合わせることができるのか、と訊いておるのだ」

杏子「……その辺はこっちも上手くやるさ」

ティベリウス「そうか。ならば、こちらからは何も言うまい」

グリフォン「キエエッ!」ビュンッ

ティベリウス「いくぞっ!」


ティベリウス「太陽風!」ビビビビビビッ

グリフォン「ギャッ!?(混乱)」

ティベリウス「今だッ! やれッ!」


杏子「あいよっ! 活殺獣神衝!」タンッ

ティベリウス「跳んだッ! だが高すぎるぞ!」

ティベリウス「落下の勢いで攻撃するのだろうが、あれではおそらく……」

グオオオオオッ

杏子「オラアアアアアッ!!」

グリフォン「!?」ピクッ


グリフォン「キエエエッ!」バサッバサッ


ティベリウス「いかん! やはりタイミングが遅い! アレではギリギリでかわされる!」

杏子「いや、これでいい」

クイッ

バラバラバラ……


グリフォン「キエッ!!??」

ティベリウス「槍がいくつにも折れただと……!?」

杏子「そらっ!」

ブンッ グルグルグル

グリフォン「ギャッ!!??」ジタバタ

ティベリウス「折れた槍がグリフォンの胴に巻き付いた!」

杏子「捕まえたよッ! このまま地面に叩きつける!」

グリフォン「!?」


グオオオオォォ


グリフォン「ギャアアッ!!??」バタバタバタバタッ

杏子「そして、二本目の槍、ノーラからもらったブリッツランサーで!」

杏子「今度こそ活殺獣神衝ッ! 地面に叩きつけると同時に槍を突き立てるッ!!」ブンッ


ズドオオオッ……ズシャアアアッ

グリフォン「キ……エエエ……」ボシュウウウ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

ティベリウス「なんと……!」

杏子「ふんっ、さてと……」

-まどか・サラサイド-

(陣形:フリーファイト)

レッドドラゴン「ギャアアアアアアアアスッ!!」

サラ「こいつの攻撃で一番危険なのは、火炎……」

サラ「まどか。手筈通りに!」

まどか「……はい!」


レッドドラゴン「ガアア……」[火炎]
サラ「させないっ!!」



サラ「挑発撃ちッ!!」ビシュンッ

まどか「こ、来いよ。ドラゴンっ! 火炎なんか捨ててかかって来い!」ビシュンッ


レッドドラゴン「……!」

レッドドラゴン「ガアアアアアアッ!!!(狂戦士)」ドドドドド


サラ「よしっ! 火炎をキャンセルして、突撃してきた!」

まどか「このまま、強力な攻撃を封じつつ時間を稼いで、みんなの応援を待ちましょう!」


レッドドラゴン「ガアッ」[通常攻撃]

まどか「うっ!」ビシュッ

まどか(……大丈夫。今ぐらいの攻撃なら全然耐えられる)

サラ「ストーンスキンッ!」ズズズズ
まどか「ショットウェイブっ!」ビュンッ

レッドドラゴン「ギャアアアアスッ!!」[通常攻撃]

サラ「うぐっ!」ビシュッ

まどか「このまま、強力な攻撃が来なければ二人でもいけるかも……!」


サラ「ハアッ! ショットウェイブッ!」

レッドドラゴン「……(ピクッ)」

レッドドラゴン「ガアアアアアッ!!」[ふみつけ]

まどか「!?」

サラ「まずい! レッドドラゴンが正気に戻った!」

サラ(よりによって、一番威力の高い攻撃を……!)


グオオオオオオオッ ズズウウゥゥゥゥ……ン

サラ「ガハッ!!」バタッ

まどか「サラさんっ!?」

レッドドラゴン「グルル……」

まどか「あっ……」

まどか(ど、どうしよう。サラさんが倒れて、私一人だ)

まどか(高級傷薬でサラさんを回復? ううん、次で火炎や尾撃が来たらやられちゃうかも)

レッドドラゴン「ギャアアアアアスッ!!」

まどか(挑発撃ちでもう一度狂戦士状態にする……? でも、失敗したら……)

レッドドラゴン「ギャアアッ!」ドドドドド

まどか「こっちに向かってくる!? 何かしなきゃっ! 何かを……」


ヒュウウゥゥ……


まどか(……風!)



まどか「ダ、ダンシングリーフッ!!」

レッドドラゴン「グルアアアアッ!」[ファングクラッシュ]

バサアッ

レッドドラゴン「ギャッ!?」


まどか「魔法盾で防げた……!」

まどか「今のうちに高級傷薬でサラさんを回復しなきゃっ!」パアアア


サラ「うっ。まどか、ありがとう」ムクッ


まどか「現在の地相は蒼龍……。火炎で地相を乱されない限りは魔法盾は消えないはず」

サラ「ふみつけにも気をつけて。アレは魔法盾じゃ防げないから」

サラ「ショットウェイブッ!」シャッ

まどか「トルネードッ!!」ビュオオオオッ シャオオオウッ

レッドドラゴン「ゴアアアアアアッ!」[火炎(単体)]


まどか「うわっちゃちゃッ!? 地相が相殺されちゃった!」

サラ「まどかっ!」

まどか「大丈夫、まだいけます! ただ、次に攻撃を受けたらマズいかも……」

サラ「すぐにアースヒールを!」

まどか「いえ、私に考えがあります。回復は自分で何とかします!」


レッドドラゴン「グルル……!」[セルフバーニング]
サラ「させない! 挑発撃ちッ!」ビシュンッ


レッドドラゴン「! ガアアアアッ!(狂戦士)」[通常攻撃]

サラ「くっ!」


まどか「……いまっ!」

まどか「サクションっ!」ギュウウウ ズウウウウン キラキラキラ

レッドドラゴン「ギャッ!?」

まどか「このまま蒼龍地相に戻す!」

サラ(そうか。私の白虎術ではなく、まどかの蒼龍術で回復すれば、地相が蒼龍地相に戻る)

ヒュウウウウウ……


サラ「地相が蒼龍地相に戻った!」

サラサラサラ……

まどか「ダンシングリーフの魔法盾も復活しました!」

まどか「このまま畳み掛けます!」


レッドドラゴン「ガアアアアアッ!」[通常攻撃]

バサアッ

まどか「効かないよっ!」

サラ「行くよっ! まどか!」


サラ「ショットウェイブッ!」シャッ シュゴオオオオッ
まどか「ショットウェイブっ!」シャッ シュゴオオオオッ


レッドドラゴン「ギャアアアアッ!?」


サラ「よしっ! もう虫の息だね!」

まどか「あと一撃で倒せます!」

タタタタッ

さやか「まどか! 助太刀するよ! スクワルタトーレッ!!」

まどか「え?」
サラ「え?」


レッドドラゴン「ギャアアアアッ!!」ボシュウウウ

戦闘終了!
テテテテーテーテッテテー

まどか「……」

サラ「……」

まどか・サラ(何だろう、このモヤモヤ感……)

さやか「あ、あれ? えーっと……」


杏子「お? そっちも終わったか」

カタリナ「あっちの3人。変な顔をしてどうしたのかしら?」

ブラック「さやかが少しやらかしただけだ。気にすんな」

***

ティベリウス「すまない、助かった」

カタリナ「礼には及ばないわ。それより、マクシムスの居場所に心当たりは?」

ティベリウス「この塔には奴の作ったエレベーターがあるはずだ」

ティベリウス「奴がいるとしたらその先としか考えられん」

ブラック「根拠は?」

ティベリウス「奴はエレベーターの存在をひた隠しにしていた。起動スイッチの場所は儂ですら知らん」

さやか「うーん。確かに、そこにいるっぽいかな」

ティベリウス「スイッチの詳しい場所は分からんが、おそらく一階にあるはずだ」

ティベリウス「一階には、奴の手の者が封鎖している通路があるのだ。おそらくそこにスイッチが隠されている」

まどか「え……。ここから、一階まで下りるの?」

ティベリウス「関係者用の螺旋階段を使うといい。それを使えば素早く一階まで下りられるだろう」

さやか「ん、ありがと。ティベリウスさん。……良かったね、まどか。下りが少しだけ楽になったよ」

まどか「もうっ! さやかちゃん!」


杏子「……」

さやか「ん? どったの、杏子」

ティベリウス「……ふむ。儂に言いたいことがあるようだな」

杏子「あたしはさ。教祖のあんたにどうしても訊きたいことがあったんだよ」

ティベリウス「なんだ?」

杏子「あんたたちは、宿命の子を使って何をするつもりなのさ?」

さやか「ちょ、ちょっと。杏子!」


ティベリウス「使う、か。よく訊かれる問いだが、こうも無遠慮な物言いは初めてだな」

ティベリウス「だが、我らの目的は、神王様による救世に他ならん」

杏子「……あんたたちはホントにその目的を達成できんのか?

杏子「マクシムスに内側から崩されそうになったくせして、大層なことを言ってくれんじゃねーか」

さやか「ちょっと、杏子! 失礼だよ!」


杏子「だいたい神王教団ってのは、何のための教団なのさ? 誰のために活動してんのさ?」

杏子「恵まれない人のためか? 神王のためか?」

杏子「あたしには、自分たち教徒のため。それだけのためにしか見えないんだけど」

ティベリウス「違う。我らはいずれ来る神王様のため、活動してきた」

ティベリウス「我らは神王様に尽くし、神王様は全ての人のためにその御力を発揮なさる」

ティベリウス「神王教団はそのために存在するのだ」

杏子「……新しい時代を救うには、新しい宗教が必要、か」ボソッ

さやか「杏子……」

杏子「爺さん。あんたは大層な理想を語ってくれたけど、あんたの知らない所で教団から被害を受けた奴だっているんだよ」

ティベリウス「……」


杏子「ピドナの旧市街。そこに住む奴は、どいつもこいつも貧しいやつばかりだった」

杏子「そんな連中に手を差し伸べた底抜けのお人好しが、ミューズだ」

杏子「野良犬のような暮らしをしていた連中が、ミューズのおかげで人としてまともな生活を送れるようになった」

杏子「なのに、そのミューズが、マクシムスのせいで死ぬところだったんだ」

まどか「それは……」

ティベリウス「……」

さやか「けど、それはマクシムスがやったことで、神王教団は関係ないんじゃ……?」


ティベリウス「いや、確かに我らの失態だろう」

ティベリウス「マクシムスが力を持ってしまったのは、奴が我ら神王教団を利用したからだ」

ティベリウス「教団を率いるものとして、奴の本性を見抜き、奴を止めねばならなかった」

ティベリウス「すまぬ。儂が至らぬせいで、ぬしらに迷惑をかけた」

杏子「フン」


ティベリウス「だが、これだけは言わせてもらう」

ティベリウス「教徒たちは、神王様のため、神王様から与えられる救いのために信仰を捧げている」

ティベリウス「その信仰は、決して誰かを傷つけるためのものでも、幸福を独占するためのものでもない」

杏子「……そうかよ」

まどか「あの、ちょっといいですか?」

杏子「何だ、まどか?」


まどか「神王ってそんなにすごい人なんですか?」


「…………」


まどか(えっ。何だろう、この空気)


サラ「そういえば、まどかには宿命の子についてザッと話しただけだったね」

ティベリウス「ぬ、ぬぅ……。宿命の子を知らぬ者がおるとは」

カタリナ「……移動しながら説明するわ。ティベリウスさん、案内を頼めるかしら?」

ティベリウス「ああ、構わんぞ」


カタリナ「いい? 宿命の子は、死食から生き残った新生児のことで……」

……死食……
300年に一度
死の星が太陽をおおい隠す
その時、すべての新しい生命が
失われる

人も獣も草花も
モンスターでさえも
その運命から逃れることは
出来ない


サラ「つまり、死食が起こるとその年に生まれた赤ちゃんは、みんな死んじゃうのよ」

カタリナ「他にも、アビスゲートが開いてしまうとか、色々悪いことが起こると言われているわ」


まどか「そうなんですか……」

さやか「何だか、怖いですね……」


カタリナ「何者も逃れられないはずの死の宿命。それを退けて唯一生き残った赤子こそが宿命の子」

カタリナ「この世界で唯一人、死の宿命をはねのけた生命」

カタリナ「ゆえに、宿命の子は強大な力を持つ」

ティベリウス「そうだ。宿命の子は世界を変革するほどの力を有している」

ティベリウス「かの聖王は人々の旗印となって、アビスの魔物どもと戦った」

ティベリウス「だが、聖王といえど、アビスを完全に滅ぼすことはできなかった」


ティベリウス「ならば、次に来る宿命の子こそがそれを成し遂げる存在ではないか?」

ティベリウス「聖王にすら実現できなかった真なる平和をもたらす、神王様が現れるのではないか?」

ティベリウス「我ら神王教団はそう考えておる」


サラ「聖王様すら越える……。でも、そんな立派な人物とは限らないんじゃ」

ティベリウス「儂に言わせれば、死を覆すこと自体が凄まじい偉業だ」

ティベリウス「我ら神王教団は、神王様の偉大性を微塵も疑っておらん」

ティベリウス「だからこそ、教徒たちは神王様にお力添えするために、命すら惜しまず活動しておるのだ」

サラ「……」


ティベリウス「そう。正しき行いには救いが。悪しき行いには報いが来る」

ティベリウス「聖王の救済と魔王の破壊は、周囲の人間の行いを映していたのではないか?」

ティベリウス「ゆえに、神王様からの救いを求めるならば、神王様に尽くすべきなのだ」


さやか(正直いまいちよく分かんなかった)

杏子(救う、ねえ。果たしてこいつらの行いがどれだけ人間のためになってるのやら)

まどか(私には、この人たちが正しいのかどうか、分かんないや。ほむらちゃんやマミさんならどう考えるんだろ?)

-その頃 ウィルミントン 宿屋-

ほむら「ここで前列突撃よ」

マミ「札を切ってきたわね、暁美さん。けれど、統率回復・強よ!」

ほむら「手堅いわね。強撃陣に統率回復なんて……」


ゆきだるま「何してるのだ?」


ほむら「トーマスカンパニーが発売している卓上遊戯、『マスコンバット』よ」

マミ「まあ、カードゲームみたいなものね。手札を上手く使って相手の兵力を0にすれば勝ちよ」

ほむら「山札から軍略をドローして、モラルを消費して行動するのよ」

ゆきだるま「まるで意味が分からないのだ」

ほむら「ウィルミントンを中心に色々な町で流行しているみたいね」

マミ「この世界にも、こういう遊びがあるなんて驚きよね」

ほむら「そうね」


ゆきだるま「見てても分かんないから、新聞でもみるのだ」パラッ

ゆきだるま「……えーっと、速報! 神王教団のマクシムスは元海賊!?」

ゆきだるま「神王教団ってなんなのだ?」


ほむら「神王教団……正直興味ないわね」

マミ「私もあんまり……。魔法少女としては、救われる側より救う側でいたいわ」

ほむら「私にとって宿命は抗うものよ。誰かの救いを待つなんてあり得ないわ」

ゆきだるま「そーなのかー。で、神王教団ってなんなのだ?」


マミ「それにしても、暁美さんもこういう遊びをするのね」

ほむら「やったことはなかったけど、入院時代に憧れていたのよ」

投下終了です。
次はもっと早く書き込みができるはずです。

投下します。諸事情で遅くなりました、申し訳ありません。

-神王の塔 1階 エレベータ前-

ティベリウス「着いたぞ。あの格子の先にあるのがエレベータだ」

ティベリウス「そのエレベータを利用するには、塔のどこかにある起動スイッチを押さねばならん」

ティベリウス「そして……」チラッ


神王教徒(?)「……」


ティベリウス「この者が立ち塞がっている通路の先に、おそらく起動スイッチがあるはずだ」

ブラック「フン、ジャッカルの手先か」

ティベリウス「お主は教徒か? そうであるならば、叛徒のマクシムスを庇うのではなく、神王様のために……」


神王教徒(?)「グルル……」


杏子「どいてな、ティベリウス。こいつもモンスターだ」

ティベリウス「ぬぅ……」



ヌエ「グオオオオオンッ!!」バサッ

***

ブラック「オラッ! 最高傷薬よこせッ!」ゲシッ

杏子「魔獣の革よこせッ!」ゲシッ

ヌエ「きゃいんっ!」ボシュウウウ


サラ「カツアゲ……」

まどか「やめたげてよお!」


戦闘終了!


杏子「チッ、落とさなかったか」

ブラック「しけてやがるぜ」ベッ

さやか「こいつらガラ悪いわー。マジないわー」

ティベリウス「ぬ、ぬぅ。ともあれ、これで先に進めるな」

サラ「うん。でも」


神王教徒s(?)「……」ウロウロ


まどか「神王教徒が通路の先にも……」

カタリナ「こいつらもモンスターね」

バサッ

オーガバトラー「ブヒヒッ」

ブラック「獣人系モンスターが多いな。面倒くせぇ……」


まどか「あ、でしたら、私たちが何とかしますね」スチャ

サラ「そうだね。こういう時に最適な技があるね」スチャ

さやか「ん、なになに?」


まどか・サラ「せーのっ!」

オーガバトラー「ブヒ?」


まどか・サラ「レゾナンスウィープッ!!」

パランピロンポロン……

オーガバトラーs「ぶひいいいいいいい!」ハアハア

ボコスカボコスカ


杏子「うわっ、モンスター同士で殴りあっているな」

カタリナ「なるほど、魅了技ね」

さやか「おおっ! まどか、モテモテだね!」


オーガバトラー「ぶっひいいいいいいい!」ハアハア

ボコスカボコスカ


カタリナ「けど、直視したくない光景ね」

まどか「こんなのにモテても嬉しくないよ……」

サラ「うん」

さやか「そうだね。ごめん……」

ブラック「とっとと、先に進むぞ」

-神王の塔 2階 スイッチ部屋の前-

カタリナ「スクリュードライバーッ!」

リリス「オノレェェ!」ボシュウウウ

戦闘終了!


カタリナ「スイッチはこの部屋の中ね」ツカツカ

カチッ ザザザザザザ……

杏子「おっ。スイッチを押したら辺りからモンスターの気配が無くなったな」

さやか「ホントだ。さっきまで鬱陶しいぐらいに、ローブ羽織った奴らがいたのに」

杏子「ここに一人残ってるぞ」

ティベリウス「儂のことか。お主、いい度胸だな」

まどか「きょ、杏子ちゃん。よしなよ……」


カタリナ「このスイッチ……」カチッ カチッ

杏子「ん、スイッチに何か問題でもあるのか?」

カタリナ「それが……。押し続けていないとすぐに戻っちゃうみたいなのよ」

ブラック「つまり、誰か一人残って押し続けないといけないわけだな」

サラ「誰か一人……」


杏子「……」チラッ

ティベリウス「ふむ」


カタリナ(あの子、ティベリウスを置いてく気満々ね)

まどか(杏子ちゃん、露骨すぎるよ……)

さやか(杏子の奴、ティベリウスさんのような宗教家は嫌いだろうしなあ)

ティベリウス「構わんぞ。儂が残ってこのスイッチを押し続けよう」

杏子「そうかい。ありがとよ」

ティベリウス「フン、感謝などしておらんくせによく言う」

さやか「杏子! いくらなんでも、そんな態度はないよ!」

杏子「……」

ティベリウス「別によい。だが、一つお主に言いたいことがある」

杏子「……何だよ」


ティベリウス「お主はおそらく儂らのことをこう思っておるのだろう」

ティベリウス「救いだの大層なことをのたまっているが、結局は全てを神王に任せている……」

ティベリウス「誰かからの救いを盲信して、自分自身の力で道を切り開こうとしない愚か者、と」

杏子「……だったら何だよ」


ティベリウス「……覚えておくといい」

ティベリウス「人間ひとりに出来ることなど、たかが知れている」


ティベリウス「どれほど助けたいと願っても、目の前で人に死なれることがある」

ティベリウス「儂が救おうとして実際に救えた人間など、ほんのわずかだ」

ティベリウス「苦しみに喘ぐ人々を前にして、何度この世の宿命を呪ったか」

ティベリウス「……何度、彼らを救う奇跡を願ったことか」

杏子「……」

ティベリウス「……今の世に必要なのは、そんな"奇跡"を起こせる存在なのだ」

杏子「なあ、あんた」

ティベリウス「なんだ?」


杏子「もしも一度だけ、自分が重い代償を背負う代わりにどんな願いでも叶う奇跡があったら……」

杏子「あんたならどうする? 誰かのために使うのかい?」

ティベリウス「……即断できんが、おそらく救いを願うだろうな」

ティベリウス「だが、所詮は意味のない仮定だ」

ティベリウス「儂には奇跡を起こす資格など無いのだからな」

杏子「……」


ティベリウス「……言いたいことは言い終わった。さあ、行くがよい」

ティベリウス「マクシムスの野望を潰してくれ。頼んだぞ」

杏子「ああ、わかったよ」

***

-神王の塔 中層 マクシムス管理エリア-

さやか「つ、着いた……」

サラ「体が浮き上がるエレベータなんて、すごい技術だね」

まどか「もし突然落下したらって考えると、怖かったです」


骸骨s「……」ウロウロ


カタリナ「骸骨系モンスターが多いわね」

杏子「刺突が効かない相手は面倒だな。無視して先に行くぞ」

まどか「動きも遅いしね」

ブラック「さっきと同様に、スイッチを押せばこいつらもいなくなるはずだ」


さやか「ねぇ、杏子」

杏子「あ? 何だよ、さやか」

さやか「杏子は、さっきのティベリウスさんの話を訊いてどう思った?」

杏子「……」

さやか「あたし