P「ええっ!?春香が黒井プロに干されただって!?」 (100)

小鳥「はい、どうもそうみたいなんです……」

P「な、なんてこった……」

律子「まさか、一介の芸能事務所がウチの子を勝手になんて……」

P「いや、相手はあの黒井プロだ」

P「それくらいのことはするかもしれない……」

律子「なんて傍若無人な……」

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P「小鳥さん、それは何処からの情報ですか?」

小鳥「あ、あの、黒井社長本人から私の携帯にメールが」

律子「直接ですって!?」

小鳥「は、はい……」

P「何てやつだ、黒井社長め……」

律子「きっと、私たちを嘲笑ってるんですよ!」

P「許せないな……律子!」

律子「はい!」

P「今から961プロに乗り込むぞ!」

961プロ

P「黒井社長を出せぇー!!」

小鳥「ちょ、ちょっとプロデューサーさん……」

P「何ですか!」

小鳥「あんまり叫ぶと、不審者扱いされちゃいますよ」

P「これが叫ばずにいられますか!?」

律子「そうですよ!ウチの春香を無断で干したんですからね」

律子「というか、どうして小鳥さんまで付いてきてるんですか」

小鳥「だって、お二人があんまりヒートアップしてるから、不安になっちゃって……」

P「黒井社長!出てこい!!」

小鳥「で、ですからプロデューサーさん!」

律子「黒井社長!!」

小鳥「律子さんまで!」


P「くそ、全然姿が見えないな……」

P「こうなったら、社長室に押し掛けるぞ!」

961プロ従業員「こ、困ります!ただいま社長は休憩中で……」

P「えーいうるさい!通してくれ」グイグイ

従業員「そ、そう言われましても!」

律子「黒井社長!いるのは分かってるんですよ!」

小鳥「お二人とも、ちょっと落ち着いて……」

ガチャ

黒井「何だ!社長室の前で騒々しいぞ!」

小鳥「黒井社長!」

P「でたな!黒井社長!」

黒井「お前たちは……ふん、あの高木の所の弱小プロデューサーか」

律子「弱小ですって!?」

黒井「ふん、弱小に弱小と言って何が悪い」

P「この野郎……」

黒井「何だね?文句があるか」

P「ええ!ありますとも!」

黒井「何?」

P「今日は、あなたに抗議をしに来たんです!」

黒井「抗議?そんなことされる筋合いなど……」

律子「私たちは、ウチの事務所の天海春香について講義しに来ました!」

黒井「何?天海春香だと?」

黒井「……ククク、そう言う事か」

P「何がおかしい!?」

黒井「君かね、この無能プロデューサー二人にこの事を伝えたのは」

小鳥「は、はい……」

黒井「ふはは、そうか!」

黒井「いかにも!お前たちの事務所の天海春香は我が961プロが干した!」

律子「や、やっぱり!」

P「この、悪びれもせずに……!」

黒井「いや、何だ」

黒井「君たちの事務所のアイドルがチラチラテレビに映ると目障りでねぇ……」

黒井「それで、私がちょっとばかり気を利かせた、そういうことだ」

律子「何ですって……!」

P「春香は、春香は今どこだ!」

黒井「ふふ、屋上だ」

P「屋上…・・」

P「くそっ、待ってろよ春香ぁ!」ダッ

961プロ屋上

P「春香!」

P「……!」

P「い、いた……」

P「春香ぁ!」ダッ

P「くそ、やっぱり遅かった……」

春香「……」

P「ごめんなぁ、春香、俺がしっかりしてなかったから……」

春香「……」

P「こんな……」

春香「……」


P「こんな青空のもと、天日干しにされるなんて……!」

春香「……」プラーン

P「はは……お布団みたいにきれいに干されてやがる…・・」

P「そうだよなぁ……春香、お前体柔らかいもんなぁ……」

P「2つ折りだって、お茶の子さいさいだもんなぁ……」

律子「プロデューサー!」ハァハァ

P「律子……」

律子「はぁ、はぁ……は、春香は!?」

P「……」フルフル

律子「そ、そんな……春香……!」

律子「春香ぁーーー!!」

春香「……」プラーン

黒井「ふはははは!いい眺めだろう!我が屋上は!!」

律子「黒井社長……!」

P「く、黒井ぃ……!」ギリッ

黒井「ふふ、どうだね?そちらの天海春香クンは?」

黒井「皺ひとつなく、ぴっちりと干されてるだろう……?」

P「ぐ……」

小鳥「春香ちゃん……」

黒井「これが、我が961プロの洗濯技術なのだよ!」

黒井「お前たちのような弱小プロダクションになど、真似できまい!」

律子「ううっ、春香……」

黒井「ふははははは……はぁーっはっはっはっはっは!!!」

春香「……」プラーン

律子「……なぜ」

黒井「ん?」

律子「あなたはなぜ!こんなことをしたんですか!」

黒井「……さっきも言ったはずだが?」

P「テレビでチラチラされるのが、煩わしかったから……」

黒井「分かってるではないか、その通りだ」

P「……」

P「律子、帰るぞ」

律子「プ、プロデューサー!?」

P「小鳥さんも、帰りましょう……」

黒井「フン、珍しく素直じゃないか」

律子「プロデューサー!あなたって人は……」

律子「このまま尻尾巻いて逃げるっていうんですか!?」

律子「それじゃあ、春香は、春香はどうするんですか!?」

P「置いていくしかないだろ!!」

律子「」ビクッ

P「一度天日干しにしたアイドルは、キチンと乾くまで干しておかなければいけない……」

律子「……皺に、なってしまうから、ですか?」

P「そうだ……」

P「だから、今日の所はこのまま帰るしかないんだ……」

律子「プロデューサー……」

P「さぁ……帰るぞ」

黒井「フフ、安心したまえ……」

黒井「天海春香は天日干しののち、しっかりとアイロンがけをしてそっちに帰してやるからな」

P「ぐっ……」

黒井「我が事務所の粋を集めて、丹念に、丹念になぁ……」

P「……律子ぉ!」

P「……帰るぞ」

律子「プロデューサー……」

律子(ごめんなさいプロデューサー、あなたが一番つらいはずなのに……)

P「黒井社長、失礼します……」

765プロ

真「ええ!?は、春香が961プロで天日干しに!?」

雪歩「そ、そんなぁ……」

P「ごめん、俺に力が無いばっかりに」

律子「プロデューサー、そんなこと言わないでください」

P「俺のせいで、俺のせいで春香が……」

律子「プロデューサー……」

P「……ちょっと出てくるよ」

律子「プロデューサー!」

P「……ごめん、今は独りにしてくれ」

バタン

真「行っちゃった、プロデューサー……」

雪歩「大丈夫かなぁ……」

律子「あの人は強い人よ、きっと大丈夫」

小鳥「だといいですけれど……」

律子「さぁ!皆!この件は私たちに任せて!」

律子「皆は心配しないで仕事に取り掛かってちょうだい!」

真「う、うん……」

雪歩「分かりました……」

P「くそっ、くそっ……」

P「俺のせいだ、俺の……」

ドンッ

P「痛てっ」

P「す、すみません!大丈夫でした、か……」

P「って、お、お前は!」

冬馬「ああ、こっちこそすまねぇ……って、お前……」

冬馬「765プロの……」

P「天ヶ瀬冬馬!」

P「くそ、嫌な奴に会っちまった……」

冬馬「おい、何だよそれ」

P「うるさい!ぶつかったのは謝るから、とっとと消えてくれ!」

冬馬「何だと!?」

P「……やっぱ俺が消える!じゃあな!」

冬馬「お、おい、待てよ!」ガシッ

P「離せ!」

冬馬「随分荒れてるみたいじゃねぇか!ほっとけるかよ!」

P「荒れてるみたいだって……?」

ドン

冬馬「痛てっ」

P「誰のせいだと思ってるんだよ!お前の所の社長のせいだろうが!」

冬馬「はあ!?意味わけねーよ!落ち着けって!」

P「黒井のせいで、春香は、春香はなぁ……」グスッ

冬馬「お、おい、泣くなよ……」

P「ううっ……」

冬馬「……くそっ、おっさんの奴、また面倒事起こしやがったな……」

冬馬「……なあ、何があった?」

P「ぐすっ……うっ……」

冬馬「……泣いてちゃ分かんねーよ」

P「く、黒井社長がぁ……」

P「うっ、は、春香を……ほ、干した……」

冬馬「はぁ?」

P「だから!お前んとこの黒井がウチの春香を勝手に干したんだよ!!」

冬馬「な、何だって!?」

P「俺が、961プロに押し掛けたときにはすでに……天日干しだったんだよぉ……」

P「くっそおおおおおおおお!!」ドンドン

冬馬「お、おいやめろ!俺を壁に叩き付けるな!」

冬馬「分かったから、落ち着けって、な?」

P「ふぅー、ふぅー……!!」

冬馬「大分興奮してるな……」

P「……ごめん」

冬馬「え?」

P「ごめん、八つ当たりだったな」パッ

冬馬「あ、ああ……構わねえけどよ……」

P「……」

冬馬「ま、まあ俺からもおっさんには言っといてやるから……」

P「……」

冬馬「そ、それで、キチンと謝りにいかせるからよ……」

冬馬「だ、だから、俺が言える立場じゃねえかも知れねえけど……」

P「……」

冬馬「……あんまり、気を落とすなよ」

P「……ああ、ありがとう冬馬」

P「お前、良いやつだな」

冬馬「……こんなの、たいしたことねーよ」

P「ふふ、そうか」

P「ごめん、シャツ汚れちゃっただろ、クリーニング代出すよ」

冬馬「ああ、要らねーよ別に」

P「でもな……」

冬馬「本当に要らねーよ、事務所でおっさんに洗ってもらうさ」

P「……黒井社長に?」ピクッ

冬馬「あ、ああ」

P「……そのシャツ洗われるのか、961プロの洗濯技術ってやつで」

冬馬「ま、まあ、961プロの技術っていうか、おっさんの技術っていうか……」

P「……何だと?」

冬馬「お、怒るなよ!」

冬馬「だってしょうがねえだろ!ジュピターの洗濯全般はおっさんが直々にやることになってるんだよ!」

P「社長が直々にだって!?」

冬馬「そうなんだよ!俺たちのシャツも、ジュピター丸洗いも!」

冬馬「お前が腹立つのも分かるけどよ、こっちにはこっちのルールがあるんだって!」

P「黒井社長が、洗濯を……」


P「それじゃあまさか、春香を洗ったのも……?」

765プロレッスンスタジオ

雪歩「心配だなぁ、春香ちゃん……」

真「大丈夫だよ、きっと……」

響「……洗い方、間違われてたりしないかなぁ」

真「ひ、響!」

響「あ、ご、ゴメン……」

伊織「でも確かに、響の心配もわかるわ」

真「伊織まで!」

伊織「だってそうでしょ?春香って意外と洗うのめんどくさいじゃない」

伊織「リボンは別洗い出し、漂白剤使えないし、ネットに入れなきゃいけないし……」

伊織「全部キチンとされてるか、不安だわ……」

雪歩「確かに、765プロのアイドルって一人一人洗い方違うから……」

雪歩「いっつも小鳥さんが一人一人手洗いしてくれてるもんね……」

響「雪歩と貴音は日陰干しとか、やよいと伊織はゆるま湯洗いとかね」

真「うう、不安にさせること言わないでよ……」

ガチャ

みんな「!」

律子「皆、いるかしら?」

真「なんだ、律子かぁ……」

律子「何だじゃないわよ」

律子「さ、皆、新しい仕事取って来たから、スケジュールの確認するわよ」

律子「まず、雪歩はグラビア」

雪歩「うう、またグラビアかぁ、緊張するなあ……」

律子「真は、スポーツ系バラエティ」

真「はーい」

律子「それで、響は、無人島ロケね」

響「ええー!?自分、また無人島か!?」

律子「あら、……ダメだった?」

響「ダメってことないけど……」

響「しばらく家開けちゃうと、家族に申し訳ないし、それに……」

律子「それに?」

響「あそこのディレクター、悪乗りするんだ、もっと面白い画にしたいからって」

律子「ええ?私、そんな報告受けてないわよ?」

響「今、はじめて言ったから……」

律子「で、でも、流石に今からキャンセルは……」

響「分かってる!自分、今回は頑張る!」

響「でも、次はしばらく……」

律子「……そうね、向こうとよく相談しましょう」

響「うん、お願い……」

ガチャ

みんな「!」

春香「お、おはようございます……」

みんな「春香!」

真「春香!大丈夫だった!?」

雪歩「ううっ、心配したよぉ!」

春香「えへへ、ゴメンね、みんな……」

響「酷いことされなかった?ちゃんとネットに入れてもらったか?」

春香「う、うん……」

伊織「リボンは?ちゃんと別洗いしてもらったんでしょうね?」

春香「うん、大丈夫」

律子「本当に、良かった、春香……!」

伊織「さーてと、春香も無事に帰ってきたところで」

響「みんなでレッスンだね!」

伊織「違うわよ」

響「え?」

伊織「え?じゃないわよ!」

伊織「アンタ、961プロにいいようにやられてこのまま黙ってるっていうの!?」

伊織「今回の件、正式に抗議しておかないと、これからもあったらどうすんのよ!」

響「た、確かに……」

伊織「律子、アンタその辺、どう考えてるわけ?」

律子「ええ、もちろん、正式に抗議しようと思ってます」

真「おお……!」

春香「あ、あの……」

律子「高木社長にも、もう連絡が行ってるわ、直ぐに事務所に来てくれるそうよ」

雪歩「そ、それじゃあ……」

春香「ちょ、ちょっとみんな……」

律子「ええ、今回の一件、徹底的にやろうと思ってる」

響「お、おお……!」

春香「ちょ、ちょっと待ってたら……」

律子「さ、みんな気合い入れるわよ!」

春香「ま、待っててばぁ!!」

伊織「何よ、春香」

春香「あ、あのね」

春香「その、今回のことなんだけど……」

律子「ええ、安心して、こんなこと二度と無いように抗議を……」

春香「で、ですから律子さん」

春香「その、抗議は必要ないんじゃないかなって……」

律子「はあ!?」

伊織「アンタ、何言ってんのよ!?」

春香「わ、私は大丈夫だから……」

真「そんな、遠慮することないよ!」

雪歩「そ、そうだよ、酷いことされたんだから、ちゃんと言ってもらった方が良いよ……」

春香「別に、遠慮してるわけじゃないの」

律子「春香、あなたが一番悔しいんじゃないの?」

春香「え?」

律子「知らない洗濯機でジャブジャブされて、ピンと皺伸ばして干されて、アイロンを丹念に掛けられて!」

律子「あなたが一番悔しいはずじゃない!」

春香「そ、それが……」


春香「そうでも、無いんです……」

伊織「どうしてよ!」

春香「だって、黒井社長、私の洗い方間違えなかったし……」

伊織「そんなの当り前じゃない!もし間違ってたら、抗議なんかじゃ済まさないわよ!」

春香「で、でも私、何にも言わなかったのに……」

伊織「はあ?」

春香「『フン、こんな弱小事務所の小娘なんぞ、何も見ずとも洗える』って」

伊織「な、何よそれ……」

真「そんなこと、黒井社長がホントに?」

春香「うん……」

伊織「そ、それじゃあ、それじゃあまるで……」

伊織「あの社長が直々に春香を洗ったみたいじゃない!!」

真「……」

雪歩「……」

響「……」

伊織「……」

律子「……」

春香「……」


prrrrrr、prrrrrrr


律子「あ、電話……」

律子「はい、秋月です……プロデューサー……」

律子「はい、はい……」

律子「えっ?黒井社長がウチにですって!?」

律子「わ、分かりました!すぐに戻ります!」


律子「アンタたち!大変よ!」

765プロ

バァン!

律子「た、ただいま戻りました!」

P「ああ、律子……みんなも来たのか」

黒井「ふん、ドアもまともに開けられんのか、ここの人間は……」

律子「く、黒井社長、本当に……」

律子「何をしに来たんですか!?」

黒井「……」

伊織「何とか言いなさいよ!」

黒井「……」

伊織「この……!」

P「謝罪、だそうだ……」

伊織「え?」

P「春香の件について、正式に謝罪に来たと……」

真「謝罪……?」

律子「そ、そんなわけ……」

黒井「…・…」ガタッ

律子「!」

黒井「このたびは、そちらのプロダクションの人間を勝手にこちらで干したこと、申し訳なかった」

律子「!!」

黒井「許してくれ」ペコッ

真「あ、あの黒井社長が……」

雪歩「頭を下げた……」

春香「……」

黒井「それでは」

律子「ちょ、ちょっと……」

冬馬「おい、待てよおっさん」

P「冬馬」

黒井「ふん、外で立ち聞きとは、趣味の悪いことを」

冬馬「俺はまだ納得しちゃいねーぜ」

黒井「何?」

冬馬「どうして天海を干したりなんてしたのか、その理由をまだ聞いてねえ」

黒井「……」

冬馬「それを言わなくちゃ、誰も納得なんてしないぜ」

冬馬「俺も、この事務所人間もな」

黒井「……」

黒井「……フン、簡単なことだ」

黒井「汚れていたのだよ」

冬馬「……ああ?」

黒井「そこの、天海春香とか言ったか」

黒井「テレビ局ですれ違った時に、随分汚れていたのでな」

黒井「見かねて、我が事務所で干してやったのだ」

P「……汚れていた、だって……?」

P「黒井社長、意外にも素直に謝罪に来たと思って、この件は水に流そうと思っていましたが……」

P「今の発言、許せませんよ」

黒井「この発言を取り消すつもりはない」

P「なんだと……!」

冬馬「おいおい、おっさん、流石にそれは……」

黒井「実際に汚れていたではないか」


黒井「テレビのバラエティで、芸人風情になどにいじられてな」

P「!!」

P「なん、だと……」

黒井「お前は、気が付いていなかったのか?」

黒井「このところ、天海春香はいわゆるバラドルとして良くテレビに出演していた」

黒井「最初のうちは、可愛い可愛いと持てはやされていたようだったが……」

黒井「彼女のキャラクターが明確になって行くにつれ、段々とヨゴレ役を任されるようになっていた」

黒井「そのせいで、私が彼女とすれ違った時には、随分汚れてしまっていたのだよ」


黒井「心がな」

P「……!」

黒井「だから見かねて洗ってやった、そういうことだ……」

律子「ま、まさか……」

伊織「961プロがそんなこと……」

冬馬「……」

冬馬「……へっ、安心したぜ」

冬馬「やっぱりおっさんはおっさんだったな」

冬馬「俺たちジュピターのことを、いつも丁寧に洗ってくれる、な」

律子「……え?」

伊織「黒井社長が、ジュピターを……?」

黒井「……余計なことを言うな」

冬馬「良いじゃねえか、別によ」

冬馬「だって、ホントのことだぜ?」

黒井「……チィ」

伊織「ま、待ちなさいよ……」

伊織「それじゃ、やっぱり、春香を洗って干したのも……」

春香「うん、黒井社長」

伊織「なんですって……」

律子「まさか、あの黒井社長が……?」

バタン

高木「黒井!まだいるかね!?」

律子「社長!?」

黒井「高木か」

高木「はぁ、はぁ、良かった……」

黒井「まだ私に何かあるのか?」

高木「キミィ!」

P「は、はい」

高木「黒井の誤解は、もう解けているかね……?」

P「あ、は、はい」

高木「そうか、良かった……」

黒井「……それだけか?もう行くぞ」

伊織「ま、待ってください!」

黒井「まだ何かあるのか?」

伊織「え、えっと、その……」

伊織「こ、このたびは、うちのプロダクションが、とても失礼なことをしてしまったみたいで……」

伊織「本当に、申し訳ありませんでした!」バッ

黒井「……」

伊織「で、でも、まだ一つ納得がいきません!」

伊織「いくら汚れていたからと言って、どうして春香のことをわざわざ……?」

黒井「……」

黒井「……そんなことを答える義理はない」

黒井「事務所の謝罪も、そこのでこっぱちの言葉で十分だ」

黒井「冬馬、帰るぞ」

冬馬「あ、ああ……」

黒井「そうだ、最後に一つ」

P「……何でしょう」

黒井「そこの沖縄娘」

響「え?じ、自分?」

黒井「ウィ、お前も随分過酷なロケを強いられてるみたいだな」

響「え、ま、まあ……」

黒井「私から口利きしておこう、余りアイドルに無茶をさせるなと」

響「え?あ、ありがと……」

黒井「……フン、それではな」

バタン

春香「行っちゃった……」

高木「黒井……」

P「あの、社長」

高木「何だね?」

P「黒井社長って、あんな方だったんですか?」

P「業界内で噂されていたのと、随分違うみたいですけど……」

高木「うむ、奴はな、不器用なだけなのだよ……」

P「不器用、ですか」

高木「私たちももうずいぶん年を取った……」

高木「色々と、汚いことの多い業界で、何年も何年も仕事をしていると、どうしても心を汚す」

高木「黒井はな、そんな業界からアイドルを守るために、自分を汚すことを選んだのだよ……」

高木「本当は、一番アイドルのことを大切に思っている奴なのだ」

高木「なあ、黒井……」

それから、数か月

春香「んー!良い風!」

春香「やっぱり屋上は気持ちいいですね、プロデューサーさん!」

P「ああ、そうだなー」

春香「えへへ、私、やっぱりお日様の下が一番好きです!」

P「そうか……」

春香「……どうしたんですか?プロデューサーさん」

P「いや、ちょっとな……」

P「春香が961プロに干されたときも、こんな天気だったと思って」

春香「ふふ、そんなこともありましたね」

P「あの時ほど、自分が未熟だと思わされた時もないよ……」

春香「そうですよー、私、実は結構傷つきやすいんですよ?」

P「ああ、もう覚えたさ」

春香「ならいいですけど!」

春香「……」

春香「ね、プロデューサーさん」

P「何だ?」

春香「私、頑張りますね」

P「どうしたんだ、急に」

春香「黒井社長も、高木社長も言ってました」

春香「芸能界には、汚いことも、目を瞑りたいことも、いっぱい溢れてるって」

春香「でも、私、負けません」

春香「どれだけそういうものに傷つけられても」

春香「私、それでもファンの皆に元気を届け続けますから」

P「春香……」

春香「だから」

春香「これからも、私のことよろしくお願いしますね?プロデューサーさん!」

P「ああ、任せろ!」

春香「えへへ……」

P「ふふふ……」


小鳥「プロデューサーさーん!春香ちゃーん!」

春香「小鳥さん」

小鳥「今、響ちゃんのこと洗ったの!干すの手伝ってくれるかしらー!」

春香「あ、はーい!」

春香「行きましょ!プロデューサーさん!」

P「ああ!」

響「」プラーン

小鳥「これでよし、と!」パンパン

春香「バッチリですね!」

小鳥「ええ、ありがと、春香ちゃん」

春香「いえいえ!」

小鳥「……どうしたの?何か嬉しそうね?」

春香「いえ、何でもないですよ!」

小鳥「ふふ、そうかしら?」

春香「はい!」

春香「それじゃあ、今日も一日頑張っていきますよ!」


響「」プラーン


                おわり

うん、これで終わりです、ありがとうございました

一発ネタでこんな長さのSS書くからこうなるんだよね、一つ勉強になった

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