千早「まだ恋かどうかは分からないけれど」 (39)

恋って、なんだろう?

普段、歌を歌うときには、その歌の中の人物に問いかけながら歌を歌う。

勿論歌の中には恋愛を歌った物もあるし、失恋を描いた歌もある。

私自身、恋をした経験がないので心情までは理解出来ない。

……なんて考え出しているのは何も歌の為じゃない。

私は、同じ765プロ所属アイドル、双海真美に突然告白をされ、悩んだ末にお付き合いを始める事になった。恋人として。

……でも、恋というのはまだ分からない。恋とはどのような状態を指すのだろう。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399516904

――――

「春香、少し、相談に乗って欲しいのだけれど……。」

「どうしたの?千早ちゃん?」

「……屋上でいいかしら、人に聞かれたくないのよ。」

「なになに、もしかして私に告白しちゃうの!?」

「しないわよ。……行きましょう。」

春香を連れて屋上へと上る。

次のオフ、真美に遊園地に誘われたのでオシャレをした方が良いのかどうか、聞いてみる事にしたのだ。

「ねえ、春香。今度のオフ、真美と遊園地に行くのだけれど……。」

「えええっ!春香さんとじゃないの?」

「春香には誘われてないじゃない……。」

「それもそっか。それで、どうしたの?」

「いえ、オシャレをして行った方が、いいのかしら、って、悩んでしまって。」

春香は、少し悩んだ後、そう言えば、と切り出す。

「そもそもなんでオシャレしようって思ったの?」

「ああ、話してなかったかしら。真美に告白されて、付き合い始めたのよ。」

春香は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、それから、ムンクの叫びの如く顔に手を当てて驚く。

「ええええええええええっ!?」

「し、静かにして春香!」

「だ、だって!あの、千早ちゃん、どっきりとかじゃないよね?」

「どっきりじゃないわ、本当よ。真美と付き合う事になったの。」

「そ、そっかぁ……。はぁぁ、ビックリしたよぉ……。」

「驚かせてごめんなさい。……それで、どうしようかと思って。」

「オシャレ?付き合ってる、って言うならね?オシャレしようよ!」

ぐっと拳を握り、笑顔を見せる。……そうね、私もオシャレ、しようかしら。

……しかし、私は余りオシャレな服を持っていないから、何を合わせればいいのか。

考え込むそぶりをしていると。

「千早ちゃん。今日、帰りに買いに行こ?」

「えっ?」

「オシャレのコーディネイトで悩んでるんでしょう?だったら、新しく買っちゃおう?」

「そ、そう言う物なのかしら?」

「うん!そーいうものなんですっ!じゃ、お仕事終わったら事務所で待ち合わせね♪」

「分かったわ、ありがとう、春香。」

「親友の恋路を応援するのも務めだからね!」

「何なのよ、それ、ふふっ。」

笑いあいながら、階段を下りる。春香は、ついでに飲み物を買ってくると言う事で事務所の中には入らなかった。

……デートというので、恋が見つかるのかしら。探してみましょう。

真美「愛しいお姉ちゃん」
真美「愛しいお姉ちゃん」 - SSまとめ速報
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こちらの続きです、百合スレなので嫌な方はブラウザバックで。

続きは夕方か夜辺りに投下します

――――

春香に服を色々見繕って貰ってからすぐ、約束の日がやってきた。

JR蒲田駅で待ち合わせ。事務所から近いってだけで私の家からはそこまで近くないのだけれど。

「お待たせー!千早お姉ちゃん、待った?」

「いえ、10分前に来たばかりだから。」

「おおっ、社会人のご飯みたいな行動だねぇ。」

「模範、ね。それじゃあ、ええと、案内してくれるかしら?」

「いいよーん。じゃ、いこっか!」

真美は、そう言って手を差し出してくる。私は、少し迷ったけど手を握る事にした。

真美の手は暖かかった。

――――

京浜東北線に揺られて十数分。JR桜木町駅に着いた。

以前、あずささんが仕事中にここで迷子になって色々大変だった、と聞いた。

桜木町駅のみなとみらい側の出口に出て、二人で歩き出す。やはり、ランドマークタワーは近くで見ると大きい。

真美は楽しそうに歩き出す。一応、変装はしているので仲の良い姉妹が手を繋いで歩いている様にしか見えないはずだ。

「そう言えば、千早お姉ちゃん?」

「何かしら?」

「おめかししてるっしょ!可愛いよ、千早お姉ちゃん!」

「あ、ありがとう……。ふふっ。」

なるほど、服装を褒められると言うのは恥ずかしいけど嬉しい、と言う気持ちになるのね。

私からも、やってみましょう。

「真美も、似合ってるわよ。」

「えっへへ、ありがと、千早お姉ちゃん。」

……真美は嬉しそうにしてくれたけど、私の言葉はありふれていてきっと気を遣ってくれたのだろうと思ってしまう。

自分の言葉に不満を抱いていると、真美はニコニコしながら、

「好きな人に褒められたら、どんな言葉でも嬉しいんだ!」

と、答えた。

……なるほど、恋にはそんな魅力があるのね。

――――

「着いたよん!よこはまコスモワールド!」

「ああ、あの大きい観覧車の所ね。」

遊園地というのは入場する為にチケットが必要だと聞いていたのだけれど、ここは必要ないのね。

辺りをうかがうと、人が多いと言う印象。

「じゃあ、早速チケット買っちゃうよ!回数券でいいっしょ?」

「任せるわ。」

「オッケー!」

真美はそのまま駆けだして行った。さて、周りのアトラクションを見ていると、ジェットコースターに水流を下るアトラクション、観覧車が目立つ。

最初はどれに乗るのだろう。

「お待たせー!二人分買ってきたよ!」

「ありがとう、真美。最初は、どれに乗るの?」

「もち、ジェットコースターっしょー!行くよ、千早お姉ちゃん!」

手を引っ張られてジェットコースターの列に並ぶ。ここは水中を潜ると言う事で人気のアトラクションらしい。

「楽しみだねぃ!」

「ええ。ジェットコースターは初めてだから興味があるわ。」

「あれ、そうなの?」

「ええ、遊園地、行った事がないのよ。……初めてが真美と一緒で良かったわ。」

「千早お姉ちゃん……んっふっふ~、今日は真美に任せてよ!楽しませちゃうかんね!」

……さて、順番がやってきて、荷物を預けて安全バーを下ろす。

「ストレス発散するよー!」

「ストレス発散?」

「叫ぶと気持ちいいんだよー!」

「そうなの。楽しみね。」

ガタン、ガタンと動き出すジェットコースター。わくわくしてきたわ。

ガタンガタンと音を鳴らすジェットコースターは頂上まできて、そして――

――――

「千早お姉ちゃん、大丈夫?」

「……、……ごめん、なさい……。」

見事にジェットコースターにやられた。私は落ちる感覚がダメらしい。

今は降りて端っこで蹲ってる状態。地面があるって素晴らしいのね……。

「……ふう、落ち着いたわ。次は別の物に挑戦するわ、リベンジマッチよ。」

次は丸太で水流下りね。と意気揚々と挑戦するも。

「……ううっ、うううっ……。」

「千早お姉ちゃん、落ちる物向いてないんじゃない?」

結果は見事に惨敗。ジェットコースターも水流下りも嫌いだわ!

「そ、そうね……次はお化け屋敷にしてみましょう。」

「定番だねー!よーし、行くよー!」

――――

私は遊園地を舐めていたとしか言いようがない。

お化け屋敷も惨敗、私にどうしろと言うのかしら。

「ち、千早お姉ちゃん、ゲームならきっと楽しいっしょ!」

「そ、そうね……ごめんね、真美。」

「うあうあ~!謝らなくていいよ~!」

遊園地の中のゲームセンターに行くと、クレーンゲームやメダルゲームなど、所狭しと並んでいる。

「あ、千早お姉ちゃん!ぬいぐるみあるよ!」

「可愛いわね。」

「真美が取ってあげるよ。腕が鳴るぜぃ、んっふっふ~。」

真美はクレーンゲームの筐体に向かってお金を入れる。

クレーンが動いてぬいぐるみに降りていき、ぬいぐるみはそのままクレーンに捕まって穴に落とされる。

「一発で取れた!……はい、千早お姉ちゃん!」

「本当にいいの?」

「うん、千早お姉ちゃんの為に取ったから当然っしょ!」

「ありがとう、真美。大事にするわ。」

「えへへ、喜んでくれて良かったよ!」

真美が満面の笑みでぬいぐるみを手渡してくる。

その笑みに一瞬ドキッとしてしまう。嬉しいのと恥ずかしいのと、他にも色々感情がごちゃごちゃして。

……なるほど、これが恋というもの。

「ふふ。ふふふ。」

「千早お姉ちゃん、どしたの?」

「なんでもないわ。ありがとう、真美。連れてきてくれて。」

「いいのいいの!」

――――

やがて、夜になり、最後にお決まりの観覧車に乗る為に列に並ぶ。

「間近で見るとこのイルミネーション、凄いわね。」

「でしょでしょ?乗ってみたら凄いよ!」

「真美は乗った事あるの?」

「亜美と一回だけかな?新人の頃はお仕事なかったっしょ?だから亜美と一緒にこっちに来て遊んでたんだ~。」

「そうなのね。……あの頃は、歌しかないと思っていたわ。」

「千早お姉ちゃん、歌しか歌ってなかったもんね。」

「ええ。……私に道を示してくれた皆には感謝しかないわ。」

「うあうあ~!大げさっしょ!だって千早お姉ちゃんも765プロの仲間だもん!……あと、真美の恋人だもん。」

まただ。ドキッとしてしまった。真美が、とても愛おしいと思った。

少し不自然な沈黙があった後、私たちの順番だ。ゴンドラに乗り込んで、扉が閉まる。

「……千早お姉ちゃん、楽しんでくれた?」

「ええ、そうね。ジェットコースターとか、急流下りとか、まさか自分でも苦手だとは思わなかったのだけれど。」

「千早お姉ちゃんが涙目で座り込んでる所はレアだったね!」

「ちょ、ちょっと。」

「冗談だよん。……楽しんでくれたなら、良かった。」

「真美……。」

しおらしくしている真美が愛おしい。元気な真美が好きになっていく。

「……真美、あの、そっちに行くわね。」

「え?いいよん。」

席を立って隣に座る。窓から外を見ると、みなとみらいの夜景が美しく見えた。

「真美、あのね。私、分かったのよ。恋が。」

「えっ?」

「真美、大好き。」

そう言って、真美に不意打ちでキスをしてみた。真美は驚いてバタバタした後に、ぎゅっと抱きしめてくれた。

「ぷはっ……、千早お姉ちゃん、反則っしょ……。」

「あら、嫌だったかしら?」

「……嫌なわけないじゃん。」

真美は自分から出来なかったのが不満だったようで、今度は真美の方からキスをしてきた。

ぎゅっと抱きしめ合っていると、ドキドキがお互いに伝わってくる気がする。

お互い名残惜しく唇を離して、じっと見つめ合う。

「ぷっ……ふふっ、ふふふふっ。」

「あはは、あははは、あははっ!」

じっと見つめ合うだけなのが何故か可笑しく、笑ってしまった。

笑い合っていると、ゴンドラが下に辿り着き、扉が開く。

「ふふふ、面白かった。」

「ね、なんでだろうね?」

「ふふ、さあね。」

真美と私は自然と手を繋ぎ、夜の横浜へと歩いていった。

「折角だし、晩ご飯も食べましょう?」

「いいよー!行くしかないっしょー!」

二人でぶんぶん手を振りながら、ランドマークプラザの方へと歩いていく。

……真美、連れてきてくれてありがとう。お陰で、恋が分かった。

二人で一緒に、歩いていきましょう。これからも。

おわり

ちはまみアーイイ…。

さて二連続ちはまみで来たので、そろそろ皆さんのちはまみが見たいです
皆さんの滾るちはまみをお待ちしております

見てくれてありがとう

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