切嗣「僕は夢限少女を目指すよ」 (108)

アイリ「何を言っているの、切嗣」

切嗣「聖杯に異常が見つかって第四次聖杯戦争が中止になってしまった」

切嗣「僕の願いである恒久的世界平和を叶えるには夢限少女になるしかない」

切嗣「夢限少女になればどんな願いでも叶えられるらしいからね」

切嗣「そのためにはまずウィクロスのデッキを購入しなければならないな」

アイリ「ウィクロス?」

切嗣「最近流行のカードゲームさ。それで勝ち続けることによって夢限少女になれるんだ」

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アイリ「でも切嗣、あなたは少女じゃないわ」

切嗣「ああそれは問題ないよ」

切嗣「夢限少女っていうのはあくまで称号みたいなものだろうからね」

切嗣「少女という単語が入っているからと言って女子高生限定なんてことはない」

切嗣「成人男性でも問題なく夢限少女になれるはずさ」

アイリ「それならいいのだけれど」

アイリ「ところで切嗣、これからカードを買いにいくってことは、まだルールを把握していないということ」

切嗣「まさか。既に情報収集は済んでいる」

切嗣「インターネットを使ってウィクロスの公式サイトにアクセスすれば、ルールの書かれた説明書やプレイシートを印刷することができるからね」

切嗣「しかもそれだけじゃない」

切嗣「ウィクロスには赤、青、白、緑、黒の五種類のカードがあるが、その内赤青白のスターターデッキのサンプルはダウンロードすることができるんだ」

アイリ「じゃあカードを購入しなくてもゲームをすることができるということ」

切嗣「あくまでサンプルだけどね」

切嗣「元々は品薄になったからとった措置らしいが、購入を検討している人はそれで遊んでみるのもいいかもしれない」

切嗣「もちろん夢限少女を目指すならサンプルじゃ駄目だ」

切嗣「デッキを購入して何としても生きたルリグカードを手に入れる必要がある」

アイリ「ルリグカードというのは何なの」

切嗣「あまり専門用語を使うと分かり辛くなるから簡潔に言うと、デッキの代表みたいなカードってところかな」

切嗣「夢限少女は皆が動くルリグカードを持っているらしい」

アイリ「動くということは魔術に関係があるということかしら」

切嗣「信憑性が出てきただろ。僕は夢限少女というのは聖杯みたいなものだと思っている」

切嗣「舞弥に調べさせたから、これはかなり確かな情報だ」

アイリ「舞弥さんが……」

切嗣「さっそく僕はカードを購入してくるよ」

切嗣「カードショップの場所は調べてあるからね」

切嗣「そこのカードを全部買い占めれば、生きたルリグカードぐらい簡単に手に入るはずだ」

切嗣「カードを買いに来た子供たちには悪いが、手段を選ぶ気はない」

カードショップ


切嗣「まさか先客がいたとはな」

「君は確かアインツベルンが雇った傭兵だったね」

「こんなところに何の用があるのかな」

切嗣「それはこっちの台詞だ……遠坂時臣」

時臣「こちらのことも調査済みというわけか」

時臣「ここでやることなど一つしかあるまい」

時臣「ウィクロスのカードの購入。すなわち……」

切嗣「目的は夢限少女か」

時臣「その通り。私は夢限少女になる」

時臣「大聖杯が解体されることになって遠坂家の悲願の達成は困難になってしまった」

時臣「別の手段を探していたら夢限少女の存在を知ってね」

時臣「私も目指すことにしたのだよ。夢限少女になって根源に至る」

時臣「カードゲームなるものはよく知らないが、花札のようなものなのだろう」

時臣「しかもやっているのは大半が学生ときた」

時臣「ならば私に負けはないと思っていたが、厄介な鼠が紛れ込んだようだな」

切嗣「ならどうする。ここで魔術戦でもするっていうのか」

時臣「白昼堂々一般人の前で魔術の行使など愚の骨頂」

時臣「いかに魔術師の恥さらしとは言えそのぐらいは弁えているだろう」

切嗣「なら僕がウィクロスのカードを買う邪魔はしないってことだな」

時臣「邪魔はしないが先にレジの前に並んでいたのは私だ」

切嗣「……買い占める気か」

時臣「君もそのつもりだったのだろう」

時臣「とはいえここで買い占めれば、まるで私が君にカードで負けることを恐れたようにとられかねない」

時臣「常に余裕を持って優雅たれ。戦いにも品格が求められる」

時臣「カードゲームであろうとそれは同じだ」

時臣「この遠坂時臣は正面から正々堂々と勝負をする」

時臣「それでこそ優雅というもの」

時臣「購入するカードはこの店にある半分の量にしておくから安心するといい」

「それならば三分の一にしてもらえるかね」

切嗣「お前は……ケイネス・エルメロイ・アーチボルト」

ケイネス「ふん、アインツベルンの雇った鼠風情が私の名前を気安く呼ぶな」

時臣「これは失礼しましたロード・エルメロイ」

時臣「もしやあなたも夢限少女になるつもりですか」

ケイネス「その通りだが、別に私は叶えたい願いがあるわけではない」

時臣「それはどういうことでしょう」

ケイネス「聖杯戦争が中止になって時計塔に帰ろうと思ったら興味深い噂を耳にしたのでな」

ケイネス「夢限少女システムなるものがどのような魔術によって成されているのかは、研究者として大いに興味がある」

ケイネス「そこでまずは私が夢限少女になってみることにした」

ケイネス「そのためにわざわざこんな小汚い店に足を運んだというわけだ」

ケイネス「カードゲームなど私からすれば低俗極まりない遊戯」

ケイネス「本来ならやろうとは思わんが夢限少女になる手段として必要なら致し方ない」

ケイネス「それで遠坂、返答を聞かせてくれ」

時臣「もちろん構いません。魔術師殺しも不満はないだろうね」

切嗣「……ああ、それでいい」

切嗣(ここでこいつらが購入するのを防止したところで、別の店で買われるだけだ)

切嗣(ならカードを買わせて、デッキの色を探っておきたい)

切嗣(元々カードゲームで勝たなければいけない時点で僕にとっては不利な勝負だ)

切嗣(何せ狙撃して相手を殺害してもそれは勝利にカウントされないのだから)

切嗣(僕の十八番が潰されたようなもの)

切嗣(身内を人質にしてわざと負けさせるという手はあるが)

切嗣(こいつらがそう簡単に隙を見せるとは思えない)

切嗣(基本はあくまでも正攻法で勝利しなければいけないわけだ)

切嗣(そう言えばこの店。デッキやパック以外にも単品でカードを売っているみたいだな)

切嗣(必要があれば利用してみるのもいいかもしれない)

時臣「それでは私から買わせてもらおう」

カードショップの隅


ケイネス「ではカードの開封を始めようか」

時臣「動くルリグカードなるものを誰が最初に手に入れるか、楽しみですね」

ケイネス「競争というわけか。だが残念ながら結果は決まっている」

ケイネス「この私は成功者。世界から祝福を受けている男」

ケイネス「例え運の勝負であろうと君たちに勝ち目はない」

切嗣(勝手に言ってろ。まずはこいつらの様子を探る)

切嗣(こいつらが良いカードを引かなければ、必然的に僕の買った方にあたりが入っている可能性が高いということ)

切嗣(この二人にポーカーフェイスが出来るとは思えない)

切嗣(良いカードを引けば顔に出るか、もしくは何か言うはず)

時臣「……ふっ」

切嗣(遠坂時臣の表情が緩んだ、引いたのか生きたルリグカードを)

時臣「アキラッキー!」

切嗣「!?」

ケイネス「何だね遠坂、そのアキラッキーというのは」

時臣「ご存じありませんか、蒼井晶。人気アイドルの少女で、アキラッキーというのは彼女の口癖なのですが」

ケイネス「知らんし下らん。魔術師でありながらアイドルなどという下賤なものに現を抜かすとは」

時臣「いえ私も初めはそう思っていたのですが、偶然にも娘が見ていた番組に出ていまして」

時臣「彼女は立派な少女だと一目見ただけで分かりました」

時臣「清楚で清らかな心の持ち主であるのは間違いないかと」

時臣「ぜひとも凛には彼女を見習ってもらいたいものだ」

ケイネス「ほう。遠坂家当主がそこまで言うとは」

ケイネス「一見する価値はあるかもしれんな」

時臣「彼女の出る番組を録画したでぃーぶいでぃーがあるのでお貸ししましょう」

時臣「使い方が分からなかったので妻の葵に録画してもらったのですが」

時臣「何故か最近葵の視線が冷たい」

時臣「これは一体どういうことなのか」

ケイネス「君たちの家庭事情を私が知っているはずがないだろう」

ケイネス「それでラッキーというからには良いカードが当たったのかな」

時臣「ロード・エルメロイ。ラッキーではありません、アキラッキーです」

切嗣「そんなのはどっちでもいい」

切嗣「一体何が手に入ったんだ」

時臣「どちらでもいいというのは聞き捨てならないな、魔術師殺し」

時臣「君のような男が蒼井晶を知っているとは思えないが、それでも今も発言は度し難い」

切嗣「知っているさ。テレビに出ているのを見たことがある」

切嗣「だけど僕は蒼井晶よりも浦添伊緒奈の方がアイドルとして上だと思うけどね」

時臣「何だと! それはこの遠坂時臣に対する宣戦布告と受け取っていいかな」

切嗣「僕は事実を言ったまでだよ」

切嗣「実際、今は伊緒奈の方が人気があるだろ」

時臣「それ以上の侮辱はこの場での戦闘行為に繋がると思え!」

切嗣「冬木のセカンドオーナーさんが、白昼堂々一般人の目の前でそんなことをしていいのか」

切嗣「さっき自分が言ったことを忘れたわけじゃないだろう」

時臣「……さすがは魔術師殺し。他人の弱みをつくのは得意らしいな」

切嗣「それとあまり大声を出さないでくれよ」

切嗣「ただでさえ成人男性三人という組み合わせは目立つのに」

切嗣「お前が大声を出したせいで店内の女子高生から注目を浴びている」

時臣「ふん、貴様のような男の言う事を聞くのは業腹だが仕方あるまい」

切嗣「話を戻そう。遠坂時臣、お前は一体何のカードを手に入れたんだ」

時臣「動くルリグカードと言いたいところだが、残念ながらそこまでは至らない」

時臣「これだよ」

切嗣「それは……レアカードか」

ケイネス「ほほう。レアということは珍しいカードということかね」

時臣「仰る通りです、ロード・エルメロイ」

ケイネス「たかが紙切れと馬鹿にしていたが、中々に綺麗なデザインをしているではないか」

時臣「ええ。ウィクロスのカードの大半は可愛い女の子らしいのでコレクションする価値はあるかと」

ケイネス「おや、これはもしや」

時臣「おお、ロード・エルメロイも当たったのですね、レアカードが」

ケイネス「こういう時は何と言うんだったかな」

時臣「アキラッキー。ラッキーではないのでご注意を」

ケイネス「アキラッキー!」

ケイネス「ふむ。響きが良い言葉ではないか」

ケイネス「アキラッキー!」

時臣「アキラッキー!」

ケイネス「アキラッキー!」

時臣「アキラッ」

切嗣「静かにしろと言っているだろ!」

ケイネス「貴様も大声を出しているではないか、アインツベルン」

切嗣「それはお前たちがふざけたことを連呼するからだ」

時臣「アキラッキーがふざけた事とは、君とはつくづく趣味が合わないようだね」

ケイネス「もしや自分だけレアカードが当たらないからイライラしているのではないかね」

時臣「なるほど。そういうことか」

時臣「見事な推理です、ロード・エルメロイ」

切嗣(こいつらの眉間に起源弾をぶち込んでやりたい)

切嗣(それにしても認めるのはシャクだが僕だけレアカードが当たらないというのも気分が悪いな)

切嗣「くそっ!」

時臣「待て、魔術師殺し。今破ったパックを投げ捨てたが店を汚す気かね」

時臣「それから苛ついて煙草を吸おうとしているがそれもマナー違反だ」

切嗣「煙草ぐらい別にいいだろう」

時臣「副流煙という言葉ぐらい知っているな」

時臣「煙草は吸っている本人よりも周りにいる人間に被害が及ぶ」

時臣「私とロード・エルメロイはもちろんのこと、カードを買いに来た子供たちまで害を被るのを見過ごすわけにはいかない」

切嗣「それは……」

時臣「自らの行動に責任を負うのが人としての第一条件だ」

時臣「それができない者は人以下の狗だよ」

切嗣「……悪かった以後気をつける」

時臣「意外に素直だな」

切嗣「僕にも娘がいるからね。軽率な行動だったのは認めるさ」

時臣「それはけっこう、自分の間違いを認められるのは良いことだ」

時臣「おや今君が開けたパックのカード一枚重なっているようだが」

切嗣「気づかなかった、これは……」

時臣「どうやらレアカードを引いたようだね」

切嗣「……白属性か」

時臣「不満かね」

切嗣「僕のデッキは黒にする予定なんだ」

時臣「欲しい属性でないのなら向こうの学生たちとトレードする手もあるが」

切嗣「いやこれはこれでとっておくよ」

切嗣(この白い子、少しイリヤに似ている)

切嗣(このカードを中心にもう一つデッキを作ってアイリに渡そうかな)

時臣「それにしても黒属性とは……」

切嗣「何か文句でもあるのか」

時臣「いや逆だ。君のイメージカラーに合っていると思ってね」

時臣「ちなみに私は赤でデッキを組むつもりだ」

切嗣「そっちこそお似合いじゃないか」

時臣「そうだろうとも。赤は私に相応しい色だよ」

ケイネス「くく、そちらが雑談している間に私は二枚目のレアカードを当てたぞ」

時臣「なんと、二枚目とは」

ケイネス「アキラッキー!」

ケイネス「この調子で三枚目を狙うとしよう」

時臣「見事なまでにアキラッキーを使いこなしていますな」

ケイネス「ふふん。この程度ロード・エルメロイにとっては造作もないことだよ」

切嗣「僕達もパックの開封を急いだ方がよさそうだね」

時臣「言われずとも分かっているさ」

ケイネス「よろしい。私に少しでも近づけるように努力したまえ」

時臣「受けて立ちます。ロード・エルメロイ」

切嗣(こうして僕たちは購入したカードを開封していった)

切嗣(だが……)

切嗣「そんな馬鹿な」

時臣「動くルリグカードを……」

ケイネス「誰も引けないだと」

切嗣「馬鹿野郎! 馬鹿野郎! 馬鹿野郎! フザケルナ――!!」

時臣「あってはならないことだ!!」

ケイネス「この私が動くルリグカードを当てられないなど、不条理という名の偶然に過ぎない!!!」

時臣「……どうやら私たちの認識が少し甘かったようだ」

切嗣「どんな願いでも叶うとなれば、そう簡単に手に入るはずがないか」

ケイネス「このロード・エルメロイの威信にかけて、何としても夢限少女の謎を解明してやる」

時臣「とりあえずはここら一帯の店を回ってカードを買い占めるとするか」

時臣「綺礼と手分けすれば左程困難でもないはず」

切嗣「待て、遠坂時臣。それは軽率な行動だ」

時臣「どういうことかね」

切嗣「分からないかい。ここで僕達がカードの買占めをし過ぎれば女子高生たちにカードが行き渡らなくなる」

時臣「……そういうことか」

切嗣「理解したようだな。仮に僕達が動くルリグカードを手に入れても、対戦相手がいなければ勝負は成立しないんだ」

切嗣「動くルリグカード保有者、セレクターがどのぐらいいるのかは不明だが、できるだけ多いに越したことはないだろ」

切嗣「カードの買占めのし過ぎは自分たちの首を絞める行為だ」

時臣「肝に銘じておこう」

切嗣(同じ理由で僕の得意分野である暗殺ができない)

切嗣(狙撃でセレクターを殺してその数を減らすなんて論外、愚の骨頂だ)

切嗣(あくまでもカードゲームで勝負をつけなければならないからね)

切嗣(ペナルティもあるらしいから、こちらが負けそうになった時、相手に銃を向けるのも駄目)

切嗣(妨害されるかもしれない上に、仮に殺せてもそれによって僕がデスペナルティを負う可能性もある)

切嗣(まったく、これなら聖杯戦争の方がよほど楽だったよ)

時臣「ところで魔術師殺し、せっかくデッキも出来たのだし一勝負しないか」

切嗣「互いに動くルリグカードを持たない状態だからこそ、気兼ねなく練習試合ができるか」

時臣「理解が早くて助かる。実のところ私はこの赤デッキを早く使ってみたくてね」

切嗣「わかった、その勝負を受けよう」

ケイネス「それならば私も相手をしてやる」

ケイネス「光栄に思いたまえ。このロード・エルメロイが直々に特別授業をしてやるのだからな」

別の場所でも夢限少女になるべく男たちが動き出していた


雁夜(大聖杯が解体されることになって俺の努力が水泡に帰してしまった)

雁夜(もっとも爺は魂が抜けたように放心状態になって、結果的に桜ちゃんは救われたんだが、このままじゃ俺が死んでしまう)

雁夜(何とか体を直す手段はないかと探して、見つけたのは夢限少女だった)

雁夜(これになりさえすれば俺の体を健康体に戻せる)

雁夜「そして時臣、お前も夢限少女目指しているそうだな」

雁夜「くくく、魔術しか興味のなかったお前がTCGで俺に勝てるはずがないだろ」

雁夜「目にもの見せてやる。葵さんの前で恥をかかせてやれば、葵さんも奴を見限って俺と結婚してくれるかもしれない」

雁夜「いや必ずそうなる。凛ちゃんや桜ちゃんも俺を受け入れてくれるはずだ」

雁夜「健康な体になれば葵さんを抱くのに支障はない。夢限少女になれば全て上手くいくんだ」

雁夜「今に見てろよ、時臣ィィィィィ!」

綺礼(時臣師から適度な量のカードを複数のカード屋から買い集めるように指示があった)

綺礼(何故か衛宮切嗣と共にカードを購入したらしいが、奴もまた時臣師と同じように夢限少女を目指しているらしい)

綺礼(そんな痛々しい真似をしてまで奴には叶えなければならない願いがあるということ)

綺礼(それが一体何なのか問わねばなるまい)

綺礼(とはいえ奴が素直に私の問いに答えるかは分からないから、場合によっては力づくもやむを得ないか)

綺礼(いや夢限少女になれば奴の願いを知ることができる)

綺礼(ならば私も夢限少女を目指すとしよう)

ウェイバー(ケイネスは夢限少女ってやつを目指しているらしい)

ウェイバー(なら僕が先に夢限少女になれば、奴を出し抜いてやることができる)

ウェイバー(だけど聖杯戦争なら勝ち残るだけで僕の評価は上がっただろうけど、夢限少女はマイナーだからなるだけじゃ駄目だ)

ウェイバー(夢限少女は聖杯と同じで、どんな願いでも一つ叶えることができらしいから)

ウェイバー(何らかの願いを叶えることによって僕が正当な評価を得られるようにしなきゃならない)

ウェイバー(魔術回路の本数をケイネスよりも増やすか、僕がケイネスより上の魔術師になりたいと願うか)

ウェイバー(何にしても夢限少女になれば僕の時計塔での評価は大きく変わるはずだ)

本来であれば殺人者として第四次聖杯戦争に参加するはずだった男、雨生龍之介はウィクロスによって大きく人生を変えられていた

死に興味を持ち姉を手にかけようとした龍之介だったが犯行前日、姉にウィクロスのデッキを渡される

そのあまりの面白さに龍之介は死への興味を失ってウィクロスに没頭することになったのだ

店長「ショップ大会を制したのは雨生龍之介さんです」

龍之介「やったぜ、COOLに優勝だ!」

今では多くの大会を制した一流のウィクロスプレイヤーだった

女子A「そう言えば雨生さん、夢限少女の都市伝説は知ってます」

龍之介「噂ぐらいは聞いたことあるけど」

女子A「これだけの実力があれば雨生さんも狙えるんじゃないですか、夢限少女」

龍之介「え? いやいや無理でしょ」

龍之介「仮に夢限少女が実在しても男がなれるってことはないと思うぜ」

女子A「そう言われればそうですよね」

龍之介「もし男でマジになって夢限少女目指してる奴がいたら、そいつ頭がおかしいだろ」

カードショップ バトルスペース


ケイネス「宣言しておくぞ、アインツベルン。一番最初に夢限少女になるのは私だ」

ケイネス「ここでこのカードを発動して貴様の手札を抹殺する」

切嗣「くっ! ハンデスか。それが青属性の特徴だったな」

ケイネス「自分の手札を増やし相手の手札を減らす」

ケイネス「実に合理的な戦術をとれる属性ではないか」

切嗣「まだ勝負は終わっていない、一番早く夢限少女になるのは僕だ」

時臣「さすがはロード・エルメロイ。何をやらせても一流というわけですか」

時臣「しかし魔術師殺しはまだ諦めてはない様子」

時臣「油断は禁物かと」

切嗣「僕はこのカードでお前のカードをトラッシュする」

ケイネス「何だと!? 馬鹿な!」

時臣「黒属性の特徴はパワーマイナスとトラッシュ。見事なコンボだ、魔術師殺し」

時臣「ロード・エルメロイ、残念ながら勝負は決まりましたな」

ケイネス「慣れない遊戯とはいえこの私が敗北するとは」

ケイネス「負けたままでは終わらんぞ、もう一回だ!」

時臣「お待ちください」

時臣「負けたものは一度抜けるルール」

時臣「次にバトルをするのは私と魔術師殺しであり、ロード・エルメロイは一回お休みになります」

ケイネス「くっ、そうだったな。なら早く始めたまえ」

ケイネス「アインツベルン。遠坂に負けることは許さんぞ」

ケイネス「ここでお前が負けたら再戦することができないからな」

切嗣「言われずとも全力でやるつもりだが保障はできないね」

切嗣「このウィクロスというゲーム思った以上に奥が深い」

切嗣「僕でもそう簡単にはマスターできそうにないよ」

時臣「確かに。私も女子高生相手な容易く勝利を得られると思っていたが、そうはいかないかもしれないな」

切嗣「このゲームの経験は女子高生の方が上だろうからね」

ケイネス「何を弱気なと言いたいところだが、ウィクロスが単純でつまらん遊戯でなかったことは認めるさ」

ケイネス「ソラウに勧めてみることにしようと思う」

時臣「私も葵に勧めてみます。妻との時間を過ごしながら練習できれば一石二鳥ですからな」

時臣「魔術師殺しも奥方にデッキを作ったのだろう」

切嗣「ああ、僕もアイリと練習はするつもりだが、大会に出てみるのも悪くはないかもしれない」

時臣「より多くのプレイヤーとバトルした方が上達するということか」

切嗣「欲しいカードがあったらトレードしてもらえるかもしれないしね」

時臣「トレードと言えば、君は赤属性のレアカードを一枚持っていたね」

時臣「バトルが終わった後でいいからトレードをしないか」

時臣「こちらもデッキに入れていないレアカードは何枚かあるから、君が欲しいものもあるかもしれない」

切嗣「いいだろう。そちらが僕に必要なカードを持っていればトレードに応じよう」

ケイネス「ならば私のカードも見てみるかね」

時臣「ロード・エルメロイも赤属性のレアカードを?」

ケイネス「二枚程あったと思う。私は使わないから欲しいなら交換してやる」

時臣「感謝します」

ケイネス「とはいえそれは後だ」

ケイネス「二人とも早く勝負をしたまえ」

時臣「分かりました。ではバトルといこうか魔術師殺し。いや衛宮切嗣」

切嗣「先攻はもらったぞ、遠坂時臣」

時臣「待て、そこは公平にジャンケンで決めるべきだ」











この平穏は戯言










ケイネス「そう言えば君たちには夢限少女になって叶えたい願いがあるのかね」

時臣「はい。遠坂家の悲願を達成するため私は夢限少女になります」

切嗣「ああ、僕も絶対に叶えなければならない願いがある」

ケイネス「そうか。まあ応援ぐらいはしてやろう」

ケイネス「聖杯とは違い夢限少女になれるのは一人ではないだろうからね」

時臣「ロード・エルメロイは本当に叶えたい願いがないのですか」

ケイネス「ない。聖杯だろうが夢限少女だろうが、それは同じだ」

ケイネス「私の人生は常に順風満帆」

ケイネス「奇跡の力を以て叶える願望など持ち合わせてはいないのだよ」

ケイネス「聖杯戦争に出ようと思った理由は戦歴という箔をつけるため」

ケイネス「そして夢限少女になろうと思ったのは知的好奇心だ」

ケイネス「このケイネス・エルメロイに叶えたい願いなどありはしない」











その祈りは冒涜










並行世界ではマスターとして血戦を繰り広げた7人の男たちが、この世界では夢限少女を目指す

そして彼らは夢限少女になる素質を持った少女、セレクターと出会うことになる










その出会いは劇薬










7人の魔術師はセレクターの少女たちとの出会いによって聖杯戦争とは異なる戦いへと身を投じることになるのだが、それはまだ少し先の話

第一部・完

セレクター側のキャラも出そうかと迷ったけど、とりあえずここで区切っときます
セレクターのアニメが進んだら第二部書き始めるかもしれません
ちなみに上で何度か言われてた『カイジ「俺は無限少女になる……!」』と同じ作者だという指摘は的中しています
あれを書いたのは私です。ネタ被りはあったかもしれません。主にアキラッキーとか

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